○
委員以外の
議員(村沢牧君) ただいま
議題となりました
林業労働者の
雇用の安定及び
雇用管理の
改善等に関する
法律案について、その提案の理由及び
内容の概要を御説明申し上げます。
地球
環境問題の深刻化を背景として、昨年の六月に、リオデジャネイロにおいて
環境と開発に関する国連会議、いわゆる地球サミットが開催され、熱帯林を初め、すべての森林の保全と持続可能な森林経営に関する最初の世界的な合意である森林に関する
原則声明が採択されたことは御承知のとおりであります。
生態系としての
環境の有限性を超えた人類の活動の急激な拡大は、温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、熱帯林を初めとする世界の森林の減少と劣化、砂漠化の進行など地球
環境の悪化を招いており、地球
環境を保全する上で重要な機能を果たしている森林を保全することは、人類の生存にかかわる世界的な課題とされているのであります。
我が国の森林は、国土面積の約六七%に当たる約二千五百万ヘクタールを占め、このうち人工林の面積は約一千万ヘクタールに及び、その蓄積量は約十三億六千万立方メートルと、全森林蓄積量の約四八%に達しておりますが、これらの森林を世界の森林の一部として位置づけ、木材等の供給という経済的な視点にとどまらず、森林が有する多面的な機能を総合的に発揮できるよう質的強化を図っていくことが重要であります。
申し上げるまでもなく、森林がこれらの要請にこたえ、十分に機能するためには、山村の維持・発展と健全な林業の育成を欠かすことができません。
しかしながら、今日の林業を取り巻く情勢は依然として厳しく、外材輸入量の増加や非本質系建築資材の進出等を背景にした国産材価格の低迷、経営コストの上昇等によって林業経営の収益性は著しく悪化しており、林家の経営意欲が減退するとともに適正な森林管理も十分に行われない
状況が深刻化し、これが山村における過疎化の進行に拍車をかけているのが実情であります。
我が国の森林が人工林を中心に成熟過程にある中で、持続可能な健全な森林経営を育成し、森林の保全を通じ
環境の創造に一層貢献する必要性が今日ほど強く求められていることはありません。そして、この要請にこたえていくためには、森林の育成に欠かすことのできない
林業労働者を確保することが重要な課題となってまいります。
しかしながら、
平成四年度の林業の動向に関する年次
報告によりますと、林業
就業者数は生産活動の停滞を反映して減少傾向で推移しており、
平成二年には昭和六十年を三万人下回る十一万人となっており、その
年齢構成も五十歳以上の
就業者の
割合が六八パーセントに達し、全
就業者の高齢化指数の二倍以上に達しております。このような林業
就業者の減少と高齢化の進行は、今後における森林の適正な管理や国産材の安定供給を図っていく上で深刻な影響を及ぼすものと危惧されているのであります。
このような
状況に対処し、林業
労働力を将来にわたって安定的に確保してまいりますためには、白書も
指摘しておりますように計画的な事業実行による事業量の安定確保と
雇用の長期化・安定化、省力化や
労働強度の軽減に資する林業機械化を推進するための効率的な機械利用システムの確立やオペレーターの養成・訓練、林業の
労働形態から見て林業の
労働形態から見て林業
労働従事者の確保に特に必要な福利厚生施設の
整備、社会保険への加入、月給制や週休制の導入、
労働時間管理の適正化等による勤務・給与体系の
改善を図るなど、
労働に関する諸
規定の
適用を含めて、他産業並みの
労働条件の
整備を早急に進めることが必要となっております。
今国会で成立いたしました
労働基準法及び
労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する
法律におきまして、林業を
労働時間法制の
適用対象とする措置が講じられたところでありますが、
林業労働者の
雇用の安定と
雇用管理の
改善、福祉の増進等の広範にわたる課題への対応が急がれているのであります。
我が党は、既に第九十八回国会から
林業労働者の地位の向上と山村地域の振興に寄与するため、林業
労働法案を提出してきた経過がございますが、今日の
状況を踏まえ、改めて
林業労働者の
雇用の安定と
雇用管理の
改善等を図る観点から本法案を提出した次第であります。
次に、この
法律案の
内容につきまして概要を御説明申し上げます。
まず第一に、この
法律案は森林の有する諸機能を維持増進する上において林業に必要な
労働力の確保が極めて重要であることにかんがみ、
林業労働者について、その
雇用の安定、
雇用管理の
改善、
能力の開発及び向上等に関する措置を講ずることによって林業
労働力の確保に資するとともに、
林業労働者の福祉の増進を図ることを目的としています。
第二に、
雇用の安定等を図るための国、地方公共団体、事業主等の関係者の責務について定めています。この中で事業主の責務につきましては、その
雇用する
林業労働者について
雇用の安定及び
労働環境の
改善、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の
雇用管理の
改善を図るために必要な措置を講ずることによりその福祉の増進に努めなければならないこととしており、国の責務につきましては、
林業労働者の
雇用の安定の確保、
林業労働者の
雇用管理の
改善の促進、
林業労働者の
能力の開発及び向上その他の
林業労働者の福祉の増進を図るために必要な
施策を総合的かつ効果的に推進するように努めなければならないこととしているほか、国有林野事業の経営管理において培った知識や技術を活用して
林業労働者の
雇用の安定確保や
雇用管理の
改善に資するための
調査研究に努めることとしています。
第三は、農林水産大臣及び
労働大臣は、
林業労働者の福祉の増進に関する
基本指針を定めなければならないこととしています。
基本指針は、地域林業
労働計画の
指針となるべき事項について定めることとしており、この
策定、変更に当たっての手続、公表等について定めております。
第四は、地域林業
労働計画についてであります。
都道府県知事は、
基本指針に即して、森林計画区ごとに毎年、地域林業
労働計画を定めることとしていますが、この計画では、
林業労働者の
雇用の動向に関する事項、
林業労働者の
雇用の安定の確保を図るための措置に関する事項、
林業労働者の
雇用管理の
改善を促進し、並びにその
能力の開発及び向上を図るための措置に関する事項、その他
林業労働者の福祉の増進を図るための措置について定めることとしております。
また、地域林業
労働計画は、当該森林計画区における森林施業の合理化に関する事業と調和するものでなければならず、かつ
林業労働者の
就業の促進及び通年
雇用の確保を図るとともに、
林業労働者の所得を増大して、その経済的、社会的地位の向上に資するように定められなければならないこととしています。
さらに、地域林業
労働計画の
策定、変更を行うに当たっての手続、公表について定めるとともに、国及び都道府県は、地域林業
労働計画の達成に必要な財政上の措置等を講ずるように努めることとしています。
第五は、
林業労働者の
雇用の安定及び
雇用管理の
改善等を図るための措置についてであります。
事業主は、その
雇用する
林業労働者の福祉の増進を図るために実施する
雇用の安定及び
労働環境の
改善、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の
雇用管理の
改善に関する措置について
改善計画を作成し、これをその主たる
事業所の所在地を管轄する都道府県知事に提出して、その
改善計画が妥当である旨の認定を受けることができることとしており、国は、この
改善計画について都道府県知事の認定を受け、認定計画に係る
改善措置を実施する認定事業主に対して、農林水産省令、
労働省令で定めるところにより、必要な助成を行うことができることとしています。
また、国がこの助成を行うに当たっては、振動障害の症状が軽快した
林業労働者の
雇用の安定のための措置を講ずる認定事業主について、特別の措置を講ずるものとしております。
さらに、国及び都道府県の認定事業主に対する
指導及び助言を
規定しているほか、
林業労働者に対する職業訓練の実施、
林業労働者になろうとする者の速やかな
就業を促進するための職業紹介の充実等の措置について
規定をいたしております。
第六は、
林業労働者雇用安定センターの設置についてであります。
都道府県知事は、
林業労働者の福祉の増進に関する支援機関として、森林計画区ごとに
一つの林業
雇用安定センターを指定し、
林業労働者の
雇用及び福祉に関する
調査研究、林業
労働に係る
雇用に関する情報の収集と関係者への提供、
林業労働者の福祉の増進を図るための措置に関する事業主等に対する相談等の援助、
林業労働者及び
林業労働者になろうとする者に対する研修等の業務を行わせることとしております。
また、国は、都道府県が、
林業労働者雇用安定センターの行う事業に要する経費について補助する場合におきましては、当該都道府県に対して、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、当該補助に要する経費の一部を補助することができることといたしております。
以上のほか、この
法律の実施のために必要な手続その他の事項の農林水産省令、
労働省令への委任、認定事業主が認定計画に係る
改善措置の実施
状況について都道府県知事の求めに応じなかった場合における罰則について
規定しております。
また、附則におきましては、この
法律の施行期日について、公布の日から起算して六月を超えない範囲で政令で定める日からとするとともに、
政府は
林業労働者の
雇用状態等を考慮して、
労働者災害補償保険
制度、
雇用保険
制度、健康保険
制度及び厚生年金
制度について検討を加え、その結果に基づいて速やかな措置を講ずべきとした検討
規定等を設けております。
以上、この
法律案の提案理由及び
内容の概要につきまして御説明申し上げましたが、
林業労働者の
雇用の
改善は、
我が国林業の再生と、山村地域の活性化を図る上で必要不可欠な課題であるとともに、持続可能な森林経営の確立を通じ、世界的な課題とされている地球
環境の保全に貢献するものであるとの御理解をいただき、御審議の上、速やかに御可決をいただきますようお願い申し上げます。