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1993-03-25 第126回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年三月二十五日(木曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月二十四日    辞任         補欠選任     江本 孟紀君     長谷川 清君     有働 正治君     西山登紀子君     島袋 宗康君     下村  泰君  三月二十五日    辞任         補欠選任     西山登紀子君     高崎 裕子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長        遠藤  要君     理 事                井上  裕君                石川  弘君                上杉 光弘君                柳川 覺治君                角田 義一君                村沢  牧君                山本 正和君                白浜 一良君                寺崎 昭久君     委 員                井上 章平君                石井 道子君                岩崎 純三君               大河原太一郎君                大島 慶久君                沓掛 哲男君                下稲葉耕吉君                成瀬 守重君                野間  赳君                野村 五男君                服部三男雄君                林田悠紀夫君                星野 朋市君                松浦 孝治君                穐山  篤君                及川 一夫君                喜岡  淳君                久保田真苗君                櫻井 規順君                清水 澄子君                種田  誠君                堂本 暁子君                肥田美代子君                三重野栄子君                山口 哲夫君                荒木 清寛君                猪熊 重二君                広中和歌子君                長谷川 清君                高崎 裕子君                西山登紀子君                吉岡 吉典君                磯村  修君                乾  晴美君                下村  泰君                武田邦太郎君   政府委員       大蔵政務次官   片山虎之助君       大蔵省主計局次  武藤 敏郎君       長   事務局側       常任委員会専門  宮下 忠安君       員   公述人       青山学院大学国       際政治経済学部  阪中 友久君       教授       亜細亜大学経済  藤田 至孝君       学部部長       慶應義塾大学経  佐々波楊子君       済学部教授       日本労働組合総       連合会事務局  河口 博行君       長       ジャーナリスト  大熊 一夫君       一橋大学経済学  小野  旭君       部教授     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○平成五年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成五年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成五年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     ―――――――――――――
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  本日は、平成五年度一般会計予算平成五年度特別会計予算及び平成五年度政府関係機関予算につきまして、お手元の名簿の六名の公述人方々から項目別に御意見を伺います。  まず、午前は二名の公述人にお願いいたします。  この際、公述人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  お二方には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げ、本日は、平成五年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度の御意見をお述べいただきまして、その後委員の御質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、まず外交防衛につきまして阪中友久公述人からお願いいたします。阪中公述人
  3. 阪中友久

    公述人阪中友久君) 私、御紹介いただきました阪中でございます。  本日は、参議院予算委員会公聴会意見を述べる機会を与えられまして大変光栄に存じます。  私の専門国際政治でございまして、中でも安全保障政策分野に関心を持っておりますので、その観点から意見を述べさせていただきたいと存じます。  御承知のとおり、世界はただいま地殻変動とも言えるような激動期を迎えております。一九八九年に東欧で発生しました民主化自由化の波は瞬くうちに東欧圏を席巻いたしまして、ソ連解体へと発展いたしました。一九九〇年十月には冷戦の象徴であった東西ドイツが統一し、欧州諸国は分断と対立時代は終わったと高らかに宣言いたしました。この激動を二百年前のフランス革命になぞらえて、一九八九年革命と呼ぶ政治学者もおります。  ドイツ統一ソ連の崩壊がはるか昔のことと思えるほど、世界激動いたしております。一九九一年一月には湾岸戦争が始まり、それが片づいたかと思いますと旧ソ連東欧圏では民族紛争が激化し、旧ユーゴスラビアを初め、第三世界の国々で殺りく、流血、破壊がなお続いております。ここ数日の報道に見られますように、ロシアの政治的安定も懸念されております。  冷戦後の世界について明確な見通しを語れる人はまだいないように思います。東西冷戦米ソという核兵器を持った超大国の力の均衡の中で維持されてまいりました。双極的な世界が崩壊した後の世界について、アメリカの政治学者の中には冷戦時代は長い平和の時代として記憶されるだろうと分析した人もおります。  この激動の中で、我が国が今問われておりますのは、この歴史的転換期をどのように認識し、新しい世界秩序建設にどのような構想を持ち、世界の平和と安定の建設にどのように参加していくのかということでございます。私どもは歴史的展望を持って世界地殻変動と取り組んでいく必要があると思います。我が国安全保障政策もこの観点から再検討する必要があると思います。  最初に申し上げたいのは、東西冷戦終結した現在こそ、我が国安全保障政策を抜本的に見直し国民的コンセンサスに基づいた安全保障政策を構築するチャンスであるということでございます。  東西冷戦時代我が国安全保障政策は、ソ連拡張主義的脅威に対して、西側一員としてこれにいかに対処するのかを焦点としてまいりました。このため、国内的には、西側一員として国際社会の平和と安全への貢献を重視する勢力と、これに反対する勢力に二分されてまいりました。  冷戦終結と、それに続くソ連解体は、我が国が戦後の国際的、国内的環境の拘束から解放されたことを意味します。我が国は今、これからの安全保障政策国民的規模で根本から見直し国民コンセンサスを形成するのにふさわしい国際的、国内的環境の中に置かれていると言えると思います。冷戦終結によって、世界的規模戦争可能性は減少したと言えましょうが、地域紛争は激化し、国際情勢不透明性と不確実性を増しているように思われます。  我が国安全保障は、我が国の安全と周辺地域の安全を確保すれば済む問題ではございません。世界相互依存関係の増大の中で、世界の平和と安定は我が国の安全に直結いたしております。冷戦後の我が国安全保障は、我が国の安全は世界の平和と安全に直結しているとの認識のもとに、世界の平和と安定への貢献を視野に入れた政策を構築することが重要であると思います。  私は、冷戦後の我が国安全保障政策を考える際、四つのレベルの問題を考える必要があると思います。  第一は、グローバルなレベルでの平和と安定をどのように確保していくかという問題でございます。第二は、地域レベルでの安全保障をいかに推進していくかという問題でございます。第三は、日米協力というバイラテラルな関係をいかに進めていくかという問題でございます。第四は、我が国の自主的な努力をめぐる問題でございます。  第一のグローバルなレベルでは、国際連合安全保障活動への積極的な協力を検討することが必要であります。冷戦終結に伴って国連安全保障上の役割が大きくなってきております。我が国でも、昨年六月、国際平和協力法が成立し、自衛隊国連平和維持機能に参加する道が開けました。我が国は、当面PKO参加の実績を積み重ねて、国連平和維持機能強化協力することが重要であると思います。  将来の問題として、国連憲章第四十三条によって国連軍が編成されたり、あるいはガリ国連事務総長の提唱している予防外交によって、国連の権威によって紛争の防止に当たることも予想されます。こうした国連による平和維持活動に対しても我が国協力する方法を前広に検討することが必要だと思います。  第二に、東アジア西太平洋地域には、欧州に見られるような地域安全保障を推進する枠組みができておりません。地域諸国が多様な価値観を持ち、経済社会発展段階が異なっておりますので、地域的安全保障枠組みをつくることは簡単なことではございません。しかし、二十一世紀を展望した場合、この地域諸国による安全保障上の協力を進めていく必要があります。  冷戦終結したとはいえ、東アジア西太平洋地域には多くの紛争要因が残っております。中国と台湾の関係朝鮮半島、カンボジアなど予断を許さない問題もあります。それぞれ問題ごとに個別的な枠組みを通じて、関係国あるいは関係者が具体的に紛争の解決を図るアプローチも必要ですが、同時により広い域内諸国が参加する地域全体の政治的対話を促進して、信頼関係を構築していくアプローチも重要でございます。  第三は、日米安保体制の問題でございます。日米安保体制維持し、活性化努力を継続することが重要でございます。日米安保体制は、日米協力関係の基礎となっており、安全保障側面にとどまらず、政治経済文化的協力関係基盤を提供しております。また、日米両国国民総生産を合計しますと、世界のGNPのおよそ四割にも相当いたします。この両国が安定的な協力関係維持することは、我が国の安全だけでなく、世界の平和と発展のためにも重要です。  東アジア西太平洋地域では、朝鮮半島などで厳しい対立が続いており、米国中心とした日米安保条約米韓相互防衛条約の二国間条約地域的安全保障中軸的役割を果たしております。日米安保体制国際的安全保障レジームの一翼を担っているとも言えます。その意味両国協力関係を緊密にしていくことが大事だと思います。  第四に、我が国がみずからの安全を確保するための自主的努力が必要です。冷戦後の国際社会の中で、国連平和維持活動欧州における軍縮・軍備管理交渉進展に見られるように、国際関係安定のための多角的な努力が続けられております。しかしながら、安定した国際秩序を確立できる見通しは生まれておりません。こうした国際環境のもとでは、各国がそれぞれ国際環境に適応した自主的な防衛努力を続けることが必要であります。  我が国防衛政策は、自衛隊日米安保体制を二本柱として運営されてまいりました。自衛隊専守防衛原則のもとで、国土と周辺海空域防衛に当たり、不足する分野については米軍によって補完し、日米両国協力して侵略を抑止する防衛体制をつくってまいりました。冷戦後も我が国防衛にとってこの二本柱の維持は必要でございます。米国との協力関係を緊密にするのとともに、我が国自身自国の領土や周辺海空域防衛できる能力を維持発展させていくことが必要だと思います。  冷戦後の防衛政策について、二点申し述べさせていただきたいと存じます。  第一は、冷戦後といえども防衛力近代化努力を継続する必要があります。現在の防衛力整備は、防衛計画大綱に沿って、独立国として必要最小限基盤的防衛力整備を目指しております。この考え方は、冷戦後の事態にも基本的には妥当するものと考えます。しかしながら、冷戦後の国際環境と二十一世紀を展望して大綱を見直すことが必要であると思います。  防衛力の適切な水準を示す客観的な指標は存在しません。各国自国の置かれている国際国内環境を考えながら、自国の安全を守るのに効率的な防衛力建設、保持しております。防衛力は量と質の両面で均衡のとれていることが重要と言われます。自衛隊は二十五万人の水準維持していますが、周辺諸国軍事力と対比してみますと、人口対比面積対比国民総生産対比のいずれをとっても低い水準に置かれております。特に予備兵力が著しく少なく、他国と異なった構造となっております。  しかしながら、冷戦終結という国際環境のもとで自衛隊数量的増強は考えられません。また、我が国人口動態雇用状況から見ても現在の水準以上に増強することも困難でしょう。したがって、今後の防衛力整備では、自衛隊質的改善を重視し、技術の進展に対応した近代化努力を継続することが重要だと考えます。  第二に、戦後の防衛政策枠組みを再検討することが必要でございます。我が国防衛政策は、憲法第九条のもとで防衛力必要最小限のものとし、自衛以外の目的に使わないことを基本的な枠組みとしてまいりました。この政策の中で、専守防衛海外派兵の禁止、非核三原則など我が国防衛政策基本的概念が生まれました。こうした戦後政策は、第二次世界大戦に対する反省と平和を求める国民世論を反映したものであり、国民の意識に定着し、我が国防衛政策上の重要な指針になっていると言えます。  しかし同時に、こうした防衛政策枠組み国会審議の過程で政府によって次第に厳しく解釈されるようになり、国際社会の平和と安定に対する我が国貢献を拘束する側面も生まれていることを否定できません。  国連憲章第五十一条は、加盟国が個別的・集団的自衛権を持つことを固有の権利として定めております。政府は、憲法解釈上、個別的自衛権は認められるが集団的自衛権の発動は認められないとの立場をとっております。現代の安全保障は一国だけで達成することは不可能です。集団的な安全保障世界の大勢となっております。冷戦終結に伴って、地域紛争に対する国際協力が一層必要となってくることが予想されます。国連国際社会への協力のため、憲法を含めた諸制度の見直しを検討することが必要であると存じます。  最後に、国民の一人として、国会に対する期待を述べさせていただきたいと存じます。  私は、冒頭、現在が歴史的な地殻変動の時期であるという私の認識を申し上げました。安定している時期には、政治がつくり上げた枠組みに従って行政が政策を着実に実行すればそれで十分でした。しかし、転換期におきましては、政策座標軸そのものを動かすことが必要になってまいります。これは政治の仕事でございます。戦後の半世紀にわたって我が国国際環境に恵まれて平和を享受し、かつてない経済繁栄を謳歌してまいりました。このために、何もしなくても世界の平和と安定が維持できるといった気持ちが生まれていることを否定できないと思います。  我が国は、世界第二の経済大国となった現在、過去のような国際平和のために何もしなくても済ますことができる時代ではなくなったと思います。政治国際情勢の行方を見定めて、これからの我が国の生きる道について大胆なグランドデザインを提示して、国民をリードしてくださるよう期待したいと存じます。  これで私の陳述を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
  4. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  次に、生活大国につきまして藤田至孝公述人にお願いいたします。藤田公述人
  5. 藤田至孝

    公述人藤田至孝君) 御紹介いただきました藤田でございます。座らせて話をさせていただきます。  私は、生活関係予算と施策につきまして意見を申し上げます。また、中長期的な立場に立ちましても今後の課題について意見を申し述べさせていただきます。  豊かでゆとりある国民生活の確立ということが現在の日本政策目標であることは、もう既に昨年の六月の政府生活大国五カ年計画で策定されておるところでございます。  さて、生活の豊かさ、ゆとりということを考えますと、それは大きく分けまして賃金労働時間、住宅社会資本社会保障環境、それから思いやりのある社会連帯づくり、こういう七つのことが考えられると思います。日本はこれから大変な高齢化時代、あるいは労働力不足、あるいは人口減少時代に入るわけでありまして、三%の成長は長期的に見て難しいと言われておるのであります。    〔委員長退席理事井上裕君着席〕  ただ、これまでは欧米に比べましてかなりの高度成長維持することができたのでございまして、そのおかげによりまして賃金労働時間、あるいは住宅社会資本社会保障などの整備が進んでまいったのであります。ところが、これからは低成長人口要因から避けられないということでございまして、これからは厳しい時代に入ると。ことしの春闘などはその第一年目ではないかというふうに考えられるわけでございます。  そのような高度成長を終わりまして、長期的な低成長時代に入る前に、とにもかくにも賃金におきましては、名目賃金でございますけれども、欧米並みに追いついたということは大変幸せなことであったと思うのであります。ところが、賃金欧米と同じ水準になりましたけれども物価が非常に高いと。いろいろな国際統計を見ましても三割から四割高い。したがいまして、賃金は同じでも物価が高いために生活水準はやはり依然として欧米に比べて三割から四割低いという、そういう結果になっておるわけでございます。  したがいまして、これからの生活大国づくりのためには、まずもって物価の安定、むしろ引き下げが必要である。これから賃上げが難しい状況に入るという中では、むしろ物価引き下げるということによって生活水準を引き上げていくということが必要になってくるわけでございます。  幸いにして、今大変な円高でございます。これは輸出産業中小企業などにとりましては大変な問題をもたらしているのでありますけれども、国民生活全体から見ますというと、これは物価安定の最大の援護射撃でございまして、これを何とか活用いたしまして現在の一・一%台の物価の安定を図る、できれば物価引き下げを導いていかなければならないということでございます。  そこで、この物価の動向を見てみますというと、生産物関係の物の値段は安定しているのでありますけれども、サービス価格が上昇しておるということでございますので、大体、日本は衣食住が満ちまして物に対する需要安定期に入りまして、それで今、国民は百円所得がふえますと四十円近くは旅行でありますとか観光でありますとか、いろいろなサービスに使うようになっておるのであります。したがいまして、日本もだんだんと製造業が横ばいあるいは衰退に入りまして、第三次産業サービス産業需要の面からも拡大期に入っておると。そうしますと、需要もふえているということでありまして、しかもこの分野生産性がなかなか上がらないということでございまして、そういうことでこれから考えられますことは、そういう第三次産業における物価の上昇ということが非常に心配になるのでございまして、そういう第三次産業サービス産業中心とする物価安定策をとらなければならないということでございます。  次の二番目の労働時間でございますけれども、これは先ごろ毎勤統計が発表になりまして、平成四年は一九九二年ということで、長年の目標でありました二千時間を超えるようになったのであります。これは主として残業が減ったということでございます。したがいまして、電機、自動車、鉄鋼、造船、その他の部門におきましては残業による減収賃上げによる分を下回るというそういう減収状況になっておるのでありまして、これがここ数年は続くのではないか。政府の言っておりますように、千八百時間の残業は千四百八十時間くらいでございまして、今そういう分野におきましては三百時間も超えているのであります。それをそこまで持っていくためには一年に五十時間ずつ残業を減らしても三年かかるということでございまして、そういう時間的なゆとりはあるけれども所得はふえないという、まさに今そういう時代に入ったんではないかと思うのであります。  それから、ゆとりのその自由時間をどう使うかということが課題でありまして、例えば高速道路代新幹線よりも高く取っているような国は世界にないのであります。私が行きましても、高速道路代を取られるのはニューヨークでありますとか、サンフランシスコの川を越えるときでありますとか、あるいはフランスとかスペインにも若干ありますけれども、それは名目的なものでございまして、日本のように家族で自由時間を使うために車でドライブをするといえば新幹線に乗ったよりも高い高速道路代を取られるというようなことでは、これはとても生活の自由時間のゆとりを享受できないということであります。そういう意味から社会資本充実ということが必要なわけでございまして、今度の予算でもかなり使われておりますけれども、私の考えでは、借金を将来の世代に残してまでそういう社会資本充実を図るということは問題でありますけれども、今、特にこの不況というそういう緊急避難を必要とされるときであるということの中で、公債の発行による社会資本充実ということも必要になっているんではないかというふうに考えるわけでございます。  それから、住宅も地価の安定により、また住宅ローン引き下げによりまして取得しやすくなっているわけでありますけれども、政府の五カ年計画目標とされている五年分にはほど遠いものであります。外国は大体二年から三年分で家が持てるのでありまして、やはり依然として豊かさを阻害しているものは住宅、持ち家であるということでございます。  ところが、よく考えてみますと、六一%の労働者は土地と家を持っているのでございまして、そういう意味でこれからの対策といいますものはまだ家を持っていない人に対する対策、特にきょう主として意見を申し上げまする子供を生み育てる人たちが良質の安い価格での借り家を求められるというそういう政策が、非常に重要になってくるということでございます。  そこで、そういう物の豊かさから心の豊かさということが求められる時代でございまして、いつまでも日本人がお金だ、物だ、財産だと言っていては、これはもう何か守銭奴国民みたいになるおそれがあるのであります。私は、ゆとりとはある程度の所得と自由時間と財産を持って、その一部を社会やほかの人のために使うゆとりである、思いやりであるというふうに定義をしているのでありまして、そういう点から、これから日本はそういう自由時間やお金の一部を人のため、社会のため、世界のために使うというそういうことこそ、本当のゆとりではないかというふうに考えるわけでございます。  さて皆さん、予算でございますとか国民所得の分配が世代間でどういうふうに分けられているかということをお考えになられたことがあるでしょうか。  例えば、今、日本の六十五歳以上の高齢者は一三%でございますけれども、年金でございますとか医療でございますとか老人福祉でございますとか、そういう十三%の人に四割近い予算が使われているというふうに私は試算をするのでございます。また、それに対しまして、多数の人口を占めながら非常に予算配分が少ないという年齢層があるのでございまして、それが結婚して子供を育てるそういう中間層なのでございます。  そういうことで、私が二番目に申し上げたいことは、予算の世代間配分あるいは国民所得の世代間配分をもう少し公正にいたしまして、子供を生み育てる世代にもっともっと配分をしないと日本は大変なことになるということなのでございます。  考えてみますと、現在の不況も、これは第二次ベビーブームの世代が十八歳に到達するのが終わったということ、そして昨年の日本の出生数は百二十万と史上最低でございまして、合計特殊出生率も一・五二になったんではないかというふうに予測をされておるわけでございまして、要するに労働者がふえない、人口すなわち消費者がふえないということで生産もふえないし所得もふえないし不況になるという、これが現在の日本の姿でございます。ですから過去における高度成長といいますものも、昭和二十一年から二十四年に生まれた二百七十万人という戦後の第一次ベビーブームがだんだん就職をしてきたということの成果であったのであり、バブル景気とよく言われますけれども、これもよく考えますと、第二次ベビーブームの一年間に二百万人生まれた人たちがどんどん就職をして所得を得て結婚をして家を建てるという、そういうことの結果として土地に対する需要も急騰いたしましてバブル景気が生まれた、こういうことなのでございます。それがこれからはずっと労働力も減る、人口も減るというそういう過程でありまして、やはり経済成長は人口が中心的な決定要因でございますので、日本はこの人口要因から見まして将来が非常に心配されるということでございます。  御承知のように、ベバリッジは一九四二年にベバリッジ報告を出して社会保障の父と言われておるのでありますが、この報告はイギリスのちょうど日本の今のような出生率低下に対する対策として出されたものなのでございます。  そこで、ビバリッジ報告が言っておりますことは、まず児童手当を新設しまして、安心して子供を生み育てられるようなそういう生活環境をつくらなきゃならない、それから、病気になった場合の医療、児童手当と医療というものを前提といたしましてその上に年金を構築するという、それがアイデアなのであります。  日本は、ずっと臨調路線で国民負担率を、例えば高齢化が一番進む二十一世紀の一五年から過ぎても五割で済むようにというような基本政策でずっとまいったのでありますが、ただ私は、ベバリッジと違うところは、その国民負担率を安定させるために、そういう子供に対する社会保障でありますとかあるいは子供を育てる人たちに対する社会保障でありますとかそういうものを切りながら高齢者の方に回してきたという、そのことが今日の少産社会というものをもたらしまして、これがこれからの大変な事態を招こうとしているのではないかということなんでございます。  そこで、考えてみますと、マンアワー当たりの労働供給といいますものは、労働時間短縮が今大体年二%、年四十時間ぐらいで一九八九年以降進んでおりまして、それで労働者が大体一%ぐらいしかふえておりませんので、マンアワーで見た労働供給といいますのはもう既に一九九〇年から減少の段階に日本は入っておるわけであります。それで、働いてくれるのは十五歳から六十四歳のいわゆる生産年齢人口でございますので、この人たちの数は、これは一九九五年でありますからあと二年後に減少に入るのであります。  それで、人口そのものが現在の一億二千四百万が二〇一八年の一億二千九百万、わずか二十七年で今よりも五百万しかふえないのであります。ということは年間十五、六万しかふえないという計算でありまして、そういうことで人口も減り出すということなんであります。これはもちろん言うまでもないことでありますけれども、出生率の低下によるのであります。  そこで私は、健やかに安心して子供を妊娠し生み育てられるという、それが本当の高齢者にとってもまた日本全体にとっても長期的に生活大国維持するあるいは実現する基本であるということで、もちろん出産は個人の自由でありまして、それが政策的にどうというような意図は全くないのでありますけれども、とにかく環境をつくるということは、これは次の世代に対する大人の責任ではないかと考えるのであります。  そこで私は、そういう安心して子供を妊娠し生み育てられるために、これから九つのことを申し上げたいのであります。  一番目は児童手当の充実ということでございまして、御承知のように、日本は第一子五千円、第二子五千円、第三子以降一万円ということでありまして、三人子供を持ちますと児童手当は二万円でございます。それに対しまして、ドイツは子供を三人持ちますと三万五千円でございます。スウェーデンは四万六千円でございます。フランスは四万六千円でございます。そして、老齢年金の一人当たり平均とそれを対比してみますと、例えば日本の老齢年金は今十五万円でございますので、十五万分の二万円でありますので、それは一三%に当たるのであります。そのパーセントがドイツは三四%であります。スウェーデンは二七%であります。フランスが三二%でございます。そういうことで、私が先ほど予算社会保障生活の費用の配分を世代間で公平にしなきゃならないと言うことの一つの例証は、例えばこういうところにもあらわれているのであります。  それで、ILOの調査によりますと、児童手当の社会保障費に占める割合は日本は〇・四%にすぎないのであります。それに対してイギリスは七%、ドイツは四%、フランスは一一%、スウェーデンは一五%でございます。また、国民所得に対する児童手当の給付率も日本は〇・〇六%でありまして、イギリスの二%、ドイツの一%、フランスの四%、スウェーデンの六%に対しまして非常に劣っているということ。もちろん、一人子供を生めば幾らもらえるから子供を生むというような、そんなことはあり得ないのでありまして、ただこれは、児童手当というのは、子供を持つことに対する国民全体の思いやりのあらわれであるということであります。そういうふうにビバリッジは言っているのでありまして、子供を持って大変ですねというそういう意思を国民としてあらわすということが必要なんではないかということで、児童手当の拡充ということを私は考えていただきたいのであります。  それから二番目には住宅手当であります。  子供を持つ人はそんなに給与が高くありませんけれども、ヨーロッパでは、やはりある程度子供が生めるような広さの質のよいアパートに住むためにはかなりの家賃を払う、そこで収入と子供数と払っている家賃の三つを比べまして、それで社会保障として住宅補助を行っている、住宅手当を発給しているということでございまして、これが二番目でございます。  それから三番目には、ILOの百二号条約にも言われておりますように、分娩費といいますのはこれは社会保険で現物給付で全額負担しなければならないのでありますけれども、日本は御承知のように二十四万の現金給付でありまして、出産は病気ではないということでこれは保険の給付の対象になっていないのであります。それは先進国の中では日本くらいでありまして、そのために日本はILOの百二号条約でこの部分を留保している状態でございます。現実には三十万くらいかかっているのでありまして、分娩費を保険のカバーにしていただきたいということ。  それから四番目には、三歳未満の医療を無料にすることを考えていただきたいということ。  それから五番目には、保育所の拡充と夜の保育の充実ということ。  それから六番目には、教育の税控除ということを設けていただきたい。  それから、特に育英会の育英資金に、入学金を程度とするそういう貸付制度を育英会で公的にやるようにしてはどうかということ。  それから今度は八番目でありますけれども、育児休業、介護休業ということがこれからの生活大国維持の非常な基盤でありますので、これを充実させる。昨年から育児休業が導入されましたけれども、その社会保険料の使用者負担というのは二〇%程度でございまして、やはりそういう経済面も充実をしなければならないということ。  それから九番目、最後でありますが、日本くらい若いときに賃金が安くて子供を育て終えたころに高くなるという国はないのでありまして、いわゆる年功賃金というのは、若くて結婚し、子供を育て、うんと金がかかるときには給与は低い。ところが子供を育て終わったころになりますと、これはもう非常な高さになるということでございまして、これは非常な矛盾でございます。  やはり、仕事に見合った賃金ということで日本社会全体がもっと早くから高い給与が取れるような、そういう賃金体系というものを考えるべきではないのか。使用者にせよ労働組合にせよ、何歳で結婚をしろとか、そうすればこれだけかかるからそれに見合う賃金を払うとかというような、そういう大それたことを一体どんな権限で言うのかということを私は考えざるを得ないのでありまして、考えてみますとそういういろいろな矛盾というものが結局日本の出生率を低下させているのだということでございますので、その点をお願いしたいということであります。  それからもう一つ、これで最後でございますが、今、日本は人口が一億二千四百万でありまして、六十五歳以上が千六百万人、一三%であります。そのうちで七十五歳以上のいわゆる後期高齢者と言われる人が六百三十万でありまして、高齢者の三九%を占めているのであります。それが二○二〇年ころになりますと人口が先ほど言いましたように一億二千九百万、そして六十五歳以上が三千二百万人でありまして、二四%、四人に一人になる、のであります。ところが、そこまでしか一般に言われていないんですが、問題はその中の実に千六百万、ちょうど今の六十五歳以上全部の人が二〇二〇年以降は七十五歳以上の後期高齢者になるのであります。  そういうことで、今は年金を払えば元気でお年寄りの人は生活できるのでありますけれども、そろそろ二十一世紀に入りまして病気がちで寝たきりというようなお年寄りがふえてまいりますので、今度は介護ということが社会保障生活の安定の中心になる。そのためにはやはり介護制度というものをしっかりさせまして、そして在宅介護に対しては介護手当を、例えば自宅に住んでは衣食住が必要でありますし、あるいは妻や嫁や子供がやはり休む、働けなくなるわけでございますので、やはり介護手当を今のお金で五、六万程度は、かつて一年間だけ国会で認めたことがありますけれどもそういう介護手当というものの制度化をぜひお考えをいただきたいということでございます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 井上裕

    ○理事(井上裕君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  7. 服部三男雄

    服部三男雄君 阪中先生にお伺いいたしたいと思います。  先生御指摘の点、全く同感でございまして、今後の日本防衛というものについて結論としておっしゃった政治家の責任が非常に大きくなっている、日本政治中心にこの問題を据えて真剣に討議すべきであるという御指摘、そしてそのよって来る理由としての種々の分析ということにつきまして全く同感でございますが、私はむしろもっと強く、アジアにおいてはまだ冷戦は終わっていない、北鮮のいわゆる核拡散防止条約からの脱退、それから中国の目をみはるような海軍力の増強及び空軍力の増強という点を考える。さらに、アジアには集団的な防衛体制を諮る協議の場さえない。これはもう冷戦の終了というのはいわゆるアメリカとヨーロッパの考えであり、ヨーロッパの現状を見ると確かに冷戦は終わったように見えますけれども、アジアではなかなかそうはいってないという現象。  それから、先生の論述の中にありませんでしたけれども、ちょうど一九二〇年代に似ているんではないかと。いわゆる二十世紀初頭までのイギリスの圧倒的な経済力、海軍力、それから一九六〇年代まで続いた戦後のいわゆるゴールデンシックスティーと言われておりますアメリカ軍のオーバープレゼンスともいうべき世界戦略あるいは世界生産の四割を占めたという圧倒的経済力、こういったものが今後二十一世紀を通じであり得ない世界状況というものを分析しますと、むしろ東南アジアにおいては一九二〇年代のヨーロッパに近い状況になってくる可能性を否定できないと思うんです。  それだけに先生のおっしゃった、今後の方策としての四つのレベルでの対策というものをおっしゃいましたが、より強く日本の自主的な防衛力というものの再検討というものを考えなければいけないと私は思っております。その点について先生の御意見をお伺いしたいんです。
  8. 阪中友久

    公述人阪中友久君) 御指摘なさいましたアジアの戦略環境それから国際環境がヨーロッパと違うのではないかというのは、私は御指摘のとおりだと思います。しかし冷戦、しかしと申しますか、ヨーロッパは完全に冷戦の構造が崩壊いたしました。そのいい影響がアジアにも次第に私は生まれてきているように思います。したがいまして、確かにアジアには地域が持っております、地域に持っておりますといいますか地域に内在しております紛争要因がそのまま残っているのはそのとおりでございますけれども、紛争レベルあるいは暴力行為である武力をもし行使するとすればその武力行使のレベルは、冷戦時代よりもはるかに低い水準になるであろうというのは大体間違いのないところではないかと私は思います。  したがって、今御指摘のありました中国の海軍力の増強、東南アジア諸国の海軍力の増強、そういった新しい問題ができておるのは事実でございますけれども、これに単に軍事的に対応するだけでは不十分であって、政治的、経済的に対応していくという方法が必要なんではないかと思います。そういう意味で、私は冷戦はアジアは確かに終わってはいない、冷戦の残した遺産、負の遺産というものがまだアジアであるということは認めますけれども、御指摘のとおりだと思いますけれども、それを単に軍事的な手段で対応するだけでは私は不十分である。もちろん軍事的な手段が重要であるけれども、もっと広い視野で対応する必要があるだろうと思っております。これが第一点でございます。  第二点、非常に難しい問題は、先ほど議員はアメリカのオーバープレゼンスという表現を使われましたけれども、アジアにおいてはアメリカが少なくとも国際社会におけるバランサーの役割を果たしてまいりました。これに関しましては中国ははっきりとこれを支持はいたしませんけれども、暗黙のうちに認めております。それから、ロシアは明白にアメリカのバランサーとしての役割認識しておりますし、最近では東南アジアの諸国も次第にバランサーとしてのアメリカの役割認識するようになっております。しかし、アメリカは平和の配当をよこせということで次第にその軍事的プレゼンスを縮小する傾向にあります。これをいかにしてこの地域諸国が補完していくかということが今から先の非常に大きな私は課題になるのではないかと思います。  したがいまして、議員の御指摘のとおり、私は日本自主的努力というものがこれまで以上に求められる。その自主的努力は単に軍事的な手段を強化するということにとどまらず、政治経済、そういった広い総合的な安全保障上の手段を強化していくことが必要ではないかというふうに考えます。
  9. 服部三男雄

    服部三男雄君 先生御指摘の、経済的な援助というものを強調されておられるんですが、例えば一九五〇年代のアメリカの経済援助というのは、世界各国が非常に低開発の国が多くて、国自体のナショナルミニマムがそんなに高くない時代であったから比較的じやすかった。だからヨーロッパにおけるマーシャル・プランと日本に対するガリオア・エロアを初めとして、比較的生産基盤もあり知的水準も高い国に対して集中的にやればその波及効果が非常に早く及ぼしやすい状況にあったと思うんです。  ところが、今世界じゅういろんな国が出てきまして、それらの各国民族紛争を重ねて、かつナショナルミニマムはアップしてきておりますので、しかも一九五〇年代のアメリカと今の日本経済力等を考えますと、アメリカがやったような経済援助というのはなかなか日本では行いにくい。事実、世界三大経済国の西ドイツが東ドイツ、もとの旧統一民族を併合するだけで国家の財政がもう一挙にがた落ちになってくるという非常に難しい状況にあるので、私は経済援助というのは余り世界平和の観点で強調すべきエレメントとしては思っておらないんです。  しかし、日本は今後も、二十一世紀には世界各国からアメリカと並んで国際平和に貢献すべき国という要望と期待を受けておるわけでありまして、その日本経済力を今後発展させていく上では中東問題がある。特に、イラン・イラク問題があったわけですけれども、クウエートの問題があった、湾岸戦争があったんですが、これは日本の生命線でありまして、これをまたアメリカの第七艦隊だけにおんぶにだっこというわけにはなかなか今後いかない。  事実、アメリカは海軍力を一挙に空母を十六から十二に減らし五十万人以上の人員を削減してくるわけでありまして、こうした中で世界の火薬庫となりつつある中東、そして東南アジアにおいても民族紛争が激化している、そのシーレーンの防衛というものと日本の自主、専守防衛というものとを今後どのようにかみ合わせていくかということについて、先生の御意見を承りたいと思っております。
  10. 阪中友久

    公述人阪中友久君) お答えさせていただきます。  安全保障には、私は三つのことを考える必要があると思います。  まず第一は、グローバルレベルでどう対処するのかということで、これは国際連合中心になっておりますコレクティブ・セキュリティー、集団的安全保障という概念が今非常に言われております。そういった側面で、国連中心にした協力環境を強化していくということが地域紛争それから中東の紛争をも含めまして重要な点ではないかと思いますけれども、国際連合安全保障は実際にどの程度実効を期待できるのか、効果を期待できるのかというのは非常に難しゅうございます。  冷戦後でありますから、五大国の、今安保理事会における五常任理事国の協調体制は現在は進んでおりますけれども、五大国の利害が衝突するような問題になりますと、なかなかうまくいかないだろうと思います。もう現に北朝鮮の、朝鮮民主主義人民共和国の核保有の問題に関しましては中国の姿勢が微妙になっております。あれを見ましても、国際連合の平和解決の努力は低い水準紛争に対しては有効でございますけれども、高い水準紛争に対してどの程度効果的に対処できるのかは非常に問題でございます。  したがいまして、次に出てまいりますのが地域的集団安全保障ということで、今までヨーロッパでは北大西洋条約機構、それからアジアでは日米安保体制米韓相互防衛条約というようなアメリカを中心にした地域的集団安全保障の機構が出てまいりました。私は、依然としてそれがここしばらくと申しましょうか、予見し得る将来、平和維持のための有効な手段になるだろうと思います。  それから、第三番目が自主的な努力ということになると思いますけれども、自主的努力に関しましては政治的あるいは歴史的な背景から日本の置かれている環境は非常に難しゅうございます。  したがいまして、私は当面の問題は、日米の協力体制をいかに保持して、その中で日本の安全と世界の平和と安定に寄与していくのかということが非常に重要になるのではないかと思います。もちろん、日本憲法上の拘束がございますし、すべてのことがやれるわけではございませんけれども、私は政府が今まで言っております集団的自衛権の発動は認められないということは、これは政策として認められないということはわかりますけれども、憲法がそういうものの発動を認めないというのはなかなか私の理解できないところでございます。  これはもう国連憲章にもはっきりと、どの国も固有の権利として固有の自衛権、個別的自衛権、そして集団的自衛権は持っていることを明記しているわけでございまして、私はその点を政府がもっと明確に統一的な見解を出して国際協力、特にアメリカとの協力関係を前広に考えていくことが重要ではないかと思っております。
  11. 服部三男雄

    服部三男雄君 先生御指摘の国連による世界平和の問題というのは非常に日本国内でも期待が強くなってきて、ガリ事務総長の国連憲章にない新しい国連警察軍に近いような執行力のあるPKOに関する考え、新提案とかいろいろ出ておりまして、新機軸ではあろうと思いますけれども、実際いざやってみるとなると、じゃその経済的負担に耐えられるかとなりますと、世界じゅうから要請されているPKOの数を見ましてもとても国連の今の規模では対応できないというのは極めて残念でありますが現実の姿であると、国連の無力というものを痛切に感ずるわけであります。  二十一世紀、将来にわたって国連がどのように機能を充実強化していくかということは日本の国策上も重要な問題だとは思いますが、いざ防衛という問題になりますと、これは日々のことでありますから、そこまでにやはり日米安保協定のより充実強化というものを考えなければならないという先生の論説は全く同感でございますが、それに加えて先ほどの問題をもう一度繰り返すんですが、シーレーンの保護というのと、要するにこれは公海でありますから国際法上そこにおける武力行使に対してはどの国も自国の船を守る機能と、むしろ義務というものを持っておるわけでありますから、常温核融合が四、五十年先にできれば別ですけれども、どうも技術的には考えにくいので、やはり二十世紀世界のすべての問題の根源にあった油という問題は今後も数十年間続くだろうと思われます。  そういう場合の日本のシーレーンの保護というものを考えないと、せっかくここまでアメリカのおかげで繁栄した日本が砂上の楼閣になりかねない危険性を含むシーレーンの保護と専守防衛との観点についてもっと議論を深めていく必要があると私は思っております。  続きまして、藤田先生に数点質問させていただきますが、今日本ではゴールデンシルバーエイドとか計画とか言いまして、お年寄りを大事にしなきゃいかぬ、戦後の日本の繁栄を築いてがむしゃらに生活を犠牲にしてまで日本経済繁栄の礎となったお年寄りの方々を大事にしていただかなきゃいかぬ、ゆとりある高齢化社会をつくらなきゃいかぬというテーマで与野党問わず全党一致してその政策に当っておるわけでありますが、こういったことに対して先生が非常に現実的に厳しい実態というものを御指摘いただいて、非常に参考になったと思っております。  世界の平和を考えますと、軍備を持たない日本が今後も世界のリーダーとして繁栄をし、この平和と安定の時代をつくっていかなきゃいかぬ。そういう時代にあって、その日本発展の礎となった労働力という問題について厳しい現実というもの、バラの約束を振りまいている高齢化社会というものはなかなかないんだ、実際は高齢者を支える後世代の負担というものは非常に厳しい時代が来るから今の間に手当てしていかなきゃいかぬという御指摘は全く同感でございます。  その点で非常に新機軸としていろんな六つの政策を挙げられたわけでありますが、やはり日本より先に高齢化社会を迎えた先進ヨーロッパ諸国、スウェーデン、フランス、イギリス等のこういった政策に対応した諸政策というものを日本でもっと、鋭く指摘しておられる先生の論旨を国会において、特に政権を担っている自民党において着実にかつ積極的に実行していかなければならないと思っております。  その点で、今六つの点を挙げられましたが、子供を生み育てる点を中心に置かれたわけでありますが、六つの中のどれが比較的即効薬があるかという点でちょっとお伺いしたい。六つとも全部即座に実行するというのはなかなか予算の問題で難しい問題がありますので、先進ヨーロッパでこういう、この六つの政策の中でプライオリティーをつけていただければありがたいなと思っておるんですが。
  12. 藤田至孝

    公述人藤田至孝君) お答えさせていただきます。  どれも重要なんでございますけれども、一番目に見えてわかるというのはやはり児童手当ではないかと思います。日本社会保障あるいは賃金でありますとか労働時間でありますとかは、ずっと欧米水準に到達してきたかあるいはきつつあるわけでありますけれども、だんだん離れて格差が大きくなってしまったのはこの児童手当だけ一つでございます。絶対額で見ましても、あるいは給付を日本は三年間だけでありますけれども、外国の場合はどこの国も最低十六歳、ドイツなどでは大学に行っている場合には二十七歳までという、そういうことでございますので、やはり目に見えた形で国民がそういう子供を持つことに対する、何といいますか、そういう感情をあらわすという意味ではやっぱり児童手当を一番優先すべきではないかと思います。  それからもう一つ、ヨーロッパや、あるいはアメリカも州単位でやっているわけですけれども、ヨーロッパでやっていて日本がやっていないという社会保障の種類もこの住宅手当というこれだけでございます。そして、現実に家を持つのが厳しい、それで子供を妊娠すると何か出ていってくれと言われるようなこともあるということを聞きますので、そういう意味ではやっぱり住宅の質を維持するということと、それから住宅費の援助という意味住宅手当を設ける必要があるんではないかと思います。  以上でございます。
  13. 服部三男雄

    服部三男雄君 ありがとうございました。質問を終わります。
  14. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  15. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 速記を起こして。
  16. 久保田真苗

    久保田真苗君 先に藤田先生にお伺いいたします。  大変傾聴させていただきました。特に、リソースの世代間配分ということについて日本は先進国の中ではかなり違った存在であるということもわかったのでございます。  私、子供を大事にしていく社会そのもの、それが政治であるということは、その大事にされた子供は人も大事にするだろう。そして大事にされない子供は反社会的になるのかもしれないということは日ごろの生活の中で感じておりますので、このことは非常に大事なんでございます。  ずっとここ何年かの政治経済状況を見てまいりますと、私どもも、社会党ですけれども、例えば広い住宅、込まない通勤電車、もっと短い通勤時間、そして残業残業で子供の顔が見れないという労働生活をやめたいやめたいということでいろんな提案もしてきたのでございますけれども、実際問題としては住居は遠くなり狭くなり、場合によってはカプセルマンションに泊まって子供たちはずっと遠いところに住む、単身赴任の増加ですね。それから労働時間はこの十年間を見ておりますと、それまで動いてきたペースでは余り動かなかった。そういうことも感じますし、住宅はますます持ちにくいと。これだけいろんな条件が重なり合って、大変なことだと思います。  先生は児童手当、住宅手当というところに最優先の順位をお考えなんでございまして、それはよくわかりましたんですが、そのほか生活環境を取り巻いている物価高の問題、これは私どもも痛感しております。  そして、先生は第三次産業物価安定策ということが優先するだろうと言われますけれども、第三次産業のコストは人件費が多いわけでございまして、その部分に賃金が回るということを考え、かつサービスが向上するということを考えますと、第三次産業物価を安定させるという、どういう策があるとお考えでございましょうか。
  17. 藤田至孝

    公述人藤田至孝君) お答えさせていただきます。  確かに、国民経済のマクロの立場からいいますと、生産性の高い分野では賃金を上げまして、その賃金生産性上昇で吸収して物価を上げない、あるいは物価引き下げる、それが可能なんでありますけれども、第三次産業の場合には、機械化でございますとかそれが難しいものでございますから、なかなか生産性が上がらない。  そこで、第三次産業賃金の上昇は、どっちかといいますというと、コストの産業間の移転と申しますか、あるいはマクロ的な国民所得の配分というふうな、そういう点は確かにございますので、また第三次産業労働条件あるいは賃金が第二次産業に比べて高いということではございませんので、そういうことで結局、今久保田委員がおっしゃられましたように、第三次産業物価がある程度上がるということは、これはある程度認めざるを得ないということが前提でございます。  ですけれども、やはり流通部門にいたしましても今いろいろ努力をされておられますが、いろいろな資本集約化を図るというようなことによりまして生産性を上げるということが必要でございまして、それに対して政策的な援助を行うということが重要でございます。  もっとも、第三次産業価格につきましてはそういう国民的な合意が必要でございますが、同時に消費者も過剰サービスを自制する、例えば商店の包装でございますとかあるいはいろいろな配達でありますとかそういうものを自分でできるものは自分でするという、生活者は同時に労働者であり消費者でもありますので、消費者の分野におけるそういう過剰需要を自制するということがやはり第三次産業物価安定の大きな要因であろうというふうに考えます。  以上でございます。
  18. 久保田真苗

    久保田真苗君 もう一つ、労働時間の問題なんでございます。  今ちょうど基準法が提出されておりますけれども、私ども長年言ってきましたのは、上限について、つまり残業の上限について一定の制約を加えるということを主張してまいりました。ところが、実際にはそこは長年青天井で来まして、そして今度も一つの、何というんですかインセンティブの逆になるんですが、割り増し賃金を、従来二五%、それを二五から五〇でございますか、それを政令委任という形にしておりますんですが、私がえって上限をつけたような感じで余り感心はしておらないわけでして、これがどれくらい有効な実効を持ち得るものか、そういう点に疑問を持っておるわけです。  先生は、労働時間をまともな労働時間にして、そして勤労者が子供を加えた生活の中で十分なゆとりを持てる、そのためには労働時間についてはどのような政策が一番有効だとお考えになりますでしょうか。
  19. 藤田至孝

    公述人藤田至孝君) お答えさせていただきます。  労働時間は、皆さんが決められましたように来年の四月から四十時間ということに原則としてなるわけでございます。ただ、日本労働時間は企業規模別あるいは産業別で非常に大きな差がございまして、大企業でございますと大体週四十時間制を達成いたしてございます。そうしますと、後はそれを何日に配分するかというそういう配分の問題に移っておりまして、それで一日当たりの時間短縮よりは休日をふやすことによって年間の総実労働時間を短縮していこうという、そういう考えで今進んでおると思うのであります。  また、特に問題になります残業につきましては、これは一つには企業としましては終身雇用体制の中での雇用調整というような意味もございますし、また労働者の方としましては考えられないような非常に高い住宅ローンを払っておるわけでございまして、そういうことで、労働者の期待と企業のそういう必要性というものがこれまではうまく合いまして日本は非常に残業が多いということできたわけでございます。しかし、やはり労働組合の方も、所得よりは今先生がおっしゃられたような時間的なゆとりの方が大事だということで、残業の削減に積極的に取り組んでおられるということでございます。  それで残業の上限についてどうかということでございますけれども、日本労働基準法は、御承知のように、現在の八時間、四十四時間というそれを基本といたしまして、それを超えた場合には残業を払うという三六協定を結びまして、そういう体系になっておるわけでありますけれども、フランスですとかドイツなどでは、今先生がおっしゃられたように、ある一定以上の残業は認められないというそういう法制になっておるわけでございます。  日本につきましても、だんだんと残業の行政指導によりまして上限が低められてはきておるわけでございますけれども、まだなお多いという先生の御意見には私も賛成でございまして、法律でそれを規制するというところまでは、今申し上げたような企業規模別、産業別の大きな格差の中で一挙に法制化するということは、この法律の実効性を確保するという点からも難しい点もございますので、やはり時間をかけて進めざるを得ないのではないかというのが私の考えでございます。  以上です。
  20. 久保田真苗

    久保田真苗君 阪中先生にはたくさんお伺いしたいと思いますんですが、私は安全保障という概念をかなり広く考えているものでございます。そして、今の国際社会の中で最も必要なことは国連の初心に立ち返るということが一つあると思うんです。  憲章ができました当時は五十一カ国でしたけれども、今は約百八十。そして、その中には植民地から独立した国が一九六〇年代ぐらいにたくさんありまして、それがうんとふえまして、今度は東欧その他。ただ東欧の動きも、これもアフリカ、アジアに関係のないものではございませんで、そういう形で崩壊の過程を踏んでいるという状況でございます。  そうなりますと、私、武力闘争をやっている当事者たちが政権を担当するあるいは支配を確立する別の方法がないことには武力闘争はしょせんやまないだろうと、こう思います。  そういたしますと、国際的な大原則としては普通選挙というものがあるわけでございます。この選挙を、じゃ今の百八十の中でどれだけの国が選挙制度というものを経験しているかといいますとまことに心細い限りでして、私はいわば国連学校のようなそういったものが必要ではないかと思っているわけでございます。そうでなくて、七章の制裁という行動ばかりが発動されているということには実効上私は疑問を覚えるものなのでございます。  それで、先生は、国連あるいはリージョナルな機構として、あるいは二国間の関係として、この選挙制度の普及というふうなことに日本協力をどのようにできるか、あるいはし得るものとお考えでございましょうか。
  21. 阪中友久

    公述人阪中友久君) お答えさせていただきます。  御指摘の安全保障分野以外でも国連のやる仕事は多いんではないかという御指摘は、私はそのとおりだと思います。ただ、安全保障といいますより武力行使、国連の第七章に規定されております国連の制裁あるいは武力行使というものは最終的な側面で議論しておるわけでございまして、その最終的な局面に至る前までは各国がそれぞれ努力をし、そして国際機関がこの平和的解決に当たるようにそれぞれ努力をしているわけでございまして、国連憲章でも第六章において、明白にそういった紛争を解決するような努力について詳細に規定しているところでございます。  ですから、もし私が申し上げましたことが非常に何といいますか制裁の側面を強調しているように思われますならば、私は最終的な局面で国連が武力制裁という手段を持っているということを申し上げたわけでございまして、その前に平和的な手段で解決しなければならないということはごく当然のことだと思います。  それから選挙制度に関してでございますけれども、日本というのは、戦後四十数年間、もう半世紀近くの間、民主的な選挙制度を運営してまいりましたし、そのノウハウというのもたくさんの蓄積があるわけでございますから、そういった側面協力していくというのは私はごく自然のことであろうと思っております。
  22. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は、選挙制度の普及とか民主化、このことは安全保障の大事な一環だと考えるものでございまして、安全保障以外というふうには考えておりません。したがいまして、国連の場合など、今なぜ信託統治理事会が閑古鳥なのにあのままにあるのか。今の制度では使えませんけれども、そういったところでこういう問題を扱うべきじゃないか。したがって、PKOの一環としてのみ、選挙の実施ということはほとんど国内紛争の場合に位置づけられるんですけれども、それを安保理だけが管理することが正しいかどうかということを……。自分がしゃべり過ぎて申しわけございません。  もう一つは、軍備規制の問題なんです。  先生は大変お詳しくていらっしゃるんですが、安保理も軍備規制の責任を負っているわけでございます。ところが、実際は冷戦下であるせいもあってそれの逆を実行してきた。そして、カンボジア、ソマリア、モザンビークと、全部他国からの、特に超大国からの武器供与による後遺症が今日の姿だと思います。こういうことを見ますと、このマッチポンプを繰り返してまたまた国連に迷惑をかけるというようなことは根絶すべきだと私は思います。  それで、この軍備規制について、何をどこから手をつけたらよろしいのか、先生の御高説があれば承りたいと思います。
  23. 阪中友久

    公述人阪中友久君) お答えさせていただきます。  軍備規制の問題は、議員御指摘のとおり、安保理の常任理事国五カ国が最も責任を負わなければならないところでありますのに、恐らく第三世界に供与している武器のほとんどはその五大国が供与している。この点は私は、御指摘のとおり、今から考えなければならないところであろうと思います。  また、なぜそういった武器供与が行われたかと申しますのは、これはもう明らかに冷戦関係しておりまして、冷戦時代は東西に分かれてゼロサムゲームをやっていたわけで、東が進出すれば西がマイナスになる、西が進出すれば東のマイナスになるということで、お互いに武器供与の競争が行われたわけでございます。これは私は次第に是正されるであろうと思います。  しかし同時に、五大国が軍備規制、特に第三世界に対する武器供与を自制していく必要があるということは御指摘のとおりだと思います。これにつきましては、もう既に通常兵器の移転に関しまして先進工業国の間で話し合いが進展しておりますし、日本政府も通常兵器の武器移転に関しましては規制を厳しくすべきだというイニシアチブをとっております。私は正しい方向だと思います。  それから第二に申し上げたいことは、軍備規制が平和を確立し戦争をなくする唯一の手段ではないわけでございまして、国家間の不信、国家間の利益の対立というものが戦争の原因でございます。したがいまして、軍備管理の側面では、お互いに信頼関係をつくっていくということが私は軍備管理の中の重要な部分になると思います。そういう側面で、この地域、特に東アジア西太平洋地域ではこういった軍備規制、あるいは信頼醸成と申しましょうか、そういった信頼感をつくり上げていく機構そのものがないわけでございまして、その側面での努力政府はやっていく必要があろうかと存じます。
  24. 久保田真苗

    久保田真苗君 時間がないんですが、ロシア、それから北朝鮮の問題です。  御説明申し上げません。ともかく北朝鮮を契機としてこの地域がかなりきな臭い状態になりかねないということ、それからロシア、中央アジア、あのあたりからの難民を予想するという声がたくさんございまして、アジアは大変だなと思うんです。先生の御所見を伺いたいと思います。
  25. 阪中友久

    公述人阪中友久君) 私は、今から我々が直面します安全保障上の問題の深刻な一つの局面は、政府のガバナビリティーと申しましょうか、政府がどの程度責任を持ってその地域の安全と平和を確立していくのかという、その地域を担当している政府の統治能力ということが今から深刻な問題になるんだろうと思います。そういう点で、今からの安全保障は単に軍事的な脅威に対抗するというよりも、そういった地域の安定をいかにして確保していくかという側面での関心を強めていかなければならないんだろうと思います。
  26. 白浜一良

    ○白浜一良君 本日は、両先生におかれましてはお忙しいところありがとうございます。  公明党の白浜でございます。  まず、藤田先生に先にお聞きしたいと思いますが、先ほど九点にわたっていわゆる子育て世代を守る施策、それぞれごもっともな主張で本当に参考になりました。  一点お聞きしたいんですが、児童手当制度というのは我が党も一生懸命頑張りまして既に制度導入されているわけでございますが、いわゆる税の問題ですね、扶養控除最低三十五万、今されております。特に、高校生、大学生の家庭は大変だということで特別扶養控除四十五万になっているわけですね。私どもはもう少しこの控除率を上げるべきだということで、五十五万にするように、こういうことを政策要求しているわけでございますが、また一方で、本当に小学生になるまでの費用負担も高いわけで、いわゆる子育て減税等の要求もしているわけでございますが、そういう税控除をしていくというこういう考え方と、児童手当のように手当を支給するというこの辺の政策的な整合性、この辺をどのように考えたらいいか御意見を伺いたいと思います。
  27. 藤田至孝

    公述人藤田至孝君) お答えさせていただきます。  ヨーロッパの例を見ますと、まず児童手当の中に割り増し制というのがございます。これはフランスでございますけれども、十歳から十四歳についてはその基本児童手当の九%、それから十五歳から二十歳につきましては一六%、それぞれ教育費でありますとかそういうものがかかるということで、手当を加算するというそういう方向がございます。  それから、今、白浜議員御指摘の手当と減税とどっちが有効かということでございますが、これもヨーロッパの歴史をたどりますと、初め税控除で出発したのでございますが、だんだんと今はそういう税控除を廃止いたしまして、それで児童手当という目に見える形でそういう子供を産むことが大変であるということの国民の意思を表明するという、そういうふうに移っております。私も、説よりはむしろ手当という方が、実効性といいますか感じは強いのではないかというふうに思います。  以上です。
  28. 白浜一良

    ○白浜一良君 もう一点お伺いしたいと思います。  先ほど、賃金は名目上欧米社会に近づいた、物価が高いので実質的にゆとりがない、こういうお話をされたわけでございますが、しかし観点を変えれば、日本のいわゆる勤労者というのは労働分配率が欧米社会と比べて非常に低い、このように言われているわけですね。そういうデータでございます。しかし、一方で、これは日本の企業税制のあり方にも多少問題があると思うんですが、フリンジベネフィットという分野が、これは企業にもよるんですけれども、非常に拡大されてきているというそういう実際日本の構造にあるわけでございますが、賃金の問題といわゆるフリンジベネフィットという問題はどのように考えていけばいいのか御意見を伺いたいと思います。
  29. 藤田至孝

    公述人藤田至孝君) お答えさせていただきます。  労働分配率は確かにこの不況の前までは欧米に比べましてかなり低かったのでありますけれども、御承知のように、日本は、投資が高くて生産性の上昇率が高くてそれで成長も高いということで、その分母になる付加価値あるいは国民所得の伸びが欧米に比べましてかなり高かった。それに対しまして賃金の方が安定的でありましたので、そういうことでバブルの好況のときにはかなり労働分配率が下がりまして、確かに先生おっしゃられるような状態でございました。  それが、恐らく今度の不況でほとんど成長はないというような中で、企業にとりましても売り上げや付加価値が減少しているという中で、賃金は減ることはありませんし、それで春闘で確かに労働者にとっては気の毒でありますけれども低い率でしか上がらなくなったのでありますが、とにかく安定的でありますので、恐らくこの不況によりまして日本労働分配率も欧米と並ぶようになったのではないかというふうな今そういう計算もございます。  ですから、今、日本名目賃金労働時間も労働分配率も大体欧米と同じになった。ところが、考えればそういうものが低かったからこそ高度成長が可能だったのでありまして、そういうものが欧米並みになった以上もはや日本欧米を超えた成長は考えられない、そういうことが言えるのではないかというふうに思います。  それから、先生御指摘のフリンジベネフィットは確かに大きな格差を持っておりまして問題なのでありますけれども、これは、やはり住宅不足でありますとかあるいは余暇施設の不足でありますとか、国がやるべき点をやらないのでしょうがなくて企業の労使が力を合わせてやってきたというそういう一面もございますので、大企業のフリンジベネフィットを引き下げてそれで平等を図るということは、これは労働者の利益にならないのではないのか。むしろ、国が現在中小企業の市町村の地域単位のそういう福祉共済会、中小企業福祉センターというのをつくりまして、今、中小企業のそういうフリンジベネフィットの充実に国は力を上げておるのでありますけれども、やはりそのような方向がこれからの方向ではないのかというふうに私は考えます。  以上です。
  30. 白浜一良

    ○白浜一良君 どうもありがとうございました。  時間がございませんので、阪中先生、申しわけございません、一問だけ伺いたいと思いますが、先ほども少しテーマが出ておったわけですが、いわゆる地域安全保障の問題で、アジアは特に難しいんです。ヨーロッパは交流もございますしキリスト教文化圏ということもございますが、ところがアジアの方は非常に宗教も民族もたくさんございます。また一方で、ヒンズーもイスラムも原理主義運動が起こっておりまして、また一方で社会主義イデオロギーの国もある。  こういう中で、いわゆるアジア地域安全保障というのは非常に大事なんですが、こういう中で築いていく場合何がポイントになるかということを伺いたいのと、もう一つは、アジアの安全保障体制が確立された中でいわゆる日米安保体制はどうなるのか、全体の中で包含されるのか、リンケージされるのかこの点をお伺いしたいと思います。
  31. 阪中友久

    公述人阪中友久君) お答えさせていただきます。  私は、この地域における地域的安全保障をどう進めていくかというのは今から考えなければならない非常に重要な課題だと思いますが、アプローチとしては二つあると思います。  一つは、朝鮮半島とか、例えば中国と台湾の関係とか、その利害を関係している当該国が話し合っていくということが一つの方法でございますけれども、それと同時に、この地域全体の国がそういった雰囲気をつくり上げていくということが非常に重要だろうと思います。つまり、二国間のアプローチと多国間のアプローチが同時並行的に行われるのが望ましいのであろうと思っております。  第二点の何ができるのかということでございますけれども、一番必要なことはこの地域の国の間の信頼関係の醸成でございます。先ほどお話がありました兵器の規制とかあるいは兵力の削減とか、そういったものは極めてやるのが難しいだろうと思います。と申しますのは、地域の国の防衛力の持ち方がおのおのの国によって違いますから、そういったものを話し合おうとしてもできないのであって、一番必要なことはこの地域信頼関係をどのようにして築いていくかということが焦点になるのではないかと思っております。
  32. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 阪中先生にお尋ねいたします。  先ほど先生のお話の中に、冷戦世界の新しい秩序づくりが求められている、その中にあって国連中心になるであろうという御趣旨のお話がございまして、私もそのとおりであろうと思うわけでありますけれども、その際、果たして国連はその役割を今のままで果たせるのか、期待にこたえることができるのかどうかこれが問題なんだろうと思います。  そのためには、国連自身が権威を高めること、あるいは今持っている組織とか機能を今日的な情勢に合わせて再構築するということが求められているのかなというように思う次第でありますけれども、先生のその辺に対するお考えをお聞かせいただければと思います。
  33. 阪中友久

    公述人阪中友久君) お答えさせていただきます。  私は、今、寺崎議員御指摘のとおり、国連の機構改革ということが今から重要になってくるのであろうと思います。国連は御承知のとおり第二次世界大戦の結果生まれた機構でございまして、連合国、その中で中心的な役割を果たしました五大国が今もその中核をなしております。しかし、戦後四十五年間、半世紀近い国際情勢国際関係の変動の中で国際的な力を持った国が五大国に限らなくなっておるのは御高承のとおりでございます。ドイツ、日本という国が出てまいりますので、安保理事会は当然のことながらこういった新しい国際環境に対応した力の配分を考えるべきだと私は思います。  それから二番目に、国連憲章には依然として敵国条項が残ったままになっております。その敵国条項が残った国連に対して日本は多額の負担をしておるわけでございまして、やはり敵国条項の削除ということがこれからの大きな課題になるのであろうと思います。  それから第三番目に、私は先ほど冒頭、ガリ事。務総長が予防外交というふうなことに重点を置いていると申し上げましたけれども、国際連合は今後の国際的な安全保障の中でコレクティブセキュリティー、集団的安全保障ということが一番国際社会に妥当する考え方ですので、この側面国連の機能を強化していく必要があるだろうと思います。つまり、ガリ事務総長の言っております予防外交というのは、その線に沿ったものであろうと私は思っております。
  34. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 もう一点お伺いいたします。  先ほど防衛計画大綱についてお話がございました。ただいま政府自身もこの見直しに着手しており、あと二年半後には新しい防衛計画大綱というものが発表されるのかと思いますけれども、その際、私は、これまでの専守防衛という自衛隊役割のほかに、先生も御指摘のように、国際貢献という役割が新たに付与されるべきであり、これは国土防衛の任務に準ずる重要な柱として盛り込むべきではないかとかねがね思っておるんですが、この大綱見直しに当たって先生のこういう点を考えたらどうかという御意見をちょうだいできればありがたいと思います。
  35. 阪中友久

    公述人阪中友久君) お答えさせていただきます。  国連への協力自衛隊の主要任務の一つにつけ加えるべきだというのは議員御指摘のとおりでございまして、私は賛成でございます。  しかし同時に、私が懸念いたしますのは、冷戦終結が直ちに防衛力の削減あるいは防衛費の削減に発展させていいというそういった風潮でございます。日本防衛力は極めて欠陥の多いものでございまして、私冒頭申し上げましたように、予備兵力というものが他国に比べて極端に少のうございますし、それから有事法制の側面でも何ら何回か議論がされながら準備されないわけでございます。それから、情報収集機能においても不十分でございますし、そういった幾多の欠陥があるわけでございますから、防衛計画大綱見直し冷戦に即応して防衛費の水準を落としてよいというような、そういう前提条件のもとに私は始めるべきものではないんであろうと思います。日本の安全を確保するために、どの部分が足らないのか、どの部分を改善すべきかということを議論すべき問題であろうと私は思っております。
  36. 寺崎昭久

    ○寺崎昭久君 終わります。
  37. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山でございます。  阪中公述人にお伺いいたします。  先生のお話の中では、東西冷戦終結した今、安全保障対策の抜本的見直しが必要だと言われたわけですが、私も東西の軍事ブロックの対抗という古い枠組みが崩壊した今、世界平和の可能性が生まれたというふうに思っておりまして、日本も従来型の政策や発想を思い切って見直す必要があると考えております。しかし、その方向はとりわけ軍縮政策への転換が必要だと思っております。国民の福祉や教育、生活向上の要求にこたえて、真に日本生活大国を実現していく上ではこの軍縮政策への転換という問題は避けて通れない問題ではないかということで、二点お伺いしたいわけでございます。  まずその一つは、世界の主要国が軒並み軍縮計画を進めているわけですが、我が国は本予算でも総額四兆円を超え、前年度比の伸び率は二・〇%、冷戦終結ソ連の脅威論が成り立たなくなった今日でもなお軍事費をふやしているわけでございますが、しかも世界第三位の軍事費を持つ軍事大国、こういう日本になるということは国民生活を圧迫して、しかも世界の軍縮と平和の流れに逆行する方向ではないかと考えております。  そこで、先生にお伺いしたいのですけれども、軍事費の削減、それから軍縮政策への転換、この必要性についてどのようにお考えになっておられるかお伺いいたします。
  38. 阪中友久

    公述人阪中友久君) お答えさせていただきます。  私、先ほど久保田議員の御質問に対してお答えいたしましたように、紛争とか流血とか破壊とかと申しますのは、兵器があるからだけ始まるわけではございませんで、それに伴います。その原因があるわけでございます。つまり、その原因をどのように見きわめそれを解決していくかということが重要でございますけれども、私は日本が直ちに軍縮政策をとってよいというふうな理由はないと思います。私は、その理由として三つ挙げたいと思います。  一つは、東アジア・西太平洋の地域が依然として紛争要因を抱えている地域であるということでございます。朝鮮半島、中国と台湾の関係、それからロシアの将来というようなことを考えますと、必ずしもヨーロッパのように冷戦構造がもう終結したから紛争要因がすべてなくなったというふうには考えられないわけでございます。これが第一点。  第二点が、私冒頭の陳述で申し上げましたけれども、この地域には地域的安全保障を推進する機構が存在いたしません。ヨーロッパのように、全欧安全保障協力会議、CSCEと言われておりますけれども、そういったものもございませんし、そしてこの地域協力して安全保障を推進していこうという話し合いのメカニズムそのものがないわけでございます。ですから、ヨーロッパとはそういう側面で基本的に違うわけでございます。  それから三番目に、私は日本防衛力につきまして先ほど日本防衛力そのものに多くの欠陥があるというふうに申し上げましたが、その欠陥の是正ということが必要なのでございまして、それには日本防衛力は数量的な拡大ができないとするならば、質の改善でこの不足部分を補っていくよりしょうがないわけでございます。したがいまして、私は軍縮ということが冷戦後の今、今から先、非常に大きな課題になっていくとは思いますけれども、直ちに軍縮という政策をとるのには私は多くの疑問があると申し上げさせていただきたいと思います。
  39. 西山登紀子

    西山登紀子君 もう一つは米軍基地の問題でございますが、先日、アメリカの国防総省は内外の基地施設の閉鎖縮小計画を発表しておりますけれども、ソ連解体によりまして従来の米軍基地を日本に置く最大の根拠がなくなったわけですから、米軍基地を撤去するよい機会だと思うんですけれども、先生の御意見をお伺いいたします。
  40. 阪中友久

    公述人阪中友久君) お答えさせていただきます。  米軍基地が整理縮小されまして既にもう骨幹的な、つまり機軸的なものも縮小されております。東南アジアのケースで申しますと、フィリピンのスビック、クラーク両基地を閉鎖した後の東南アジア諸国ではむしろアメリカ軍を一時的に駐留させようという雰囲気が出ております。つまり、アメリカのこの地域におけるバランサーとしての役割を東南アジア諸国認識し始めております。これは今まで冷戦時代とは変わった意識だと思います。したがいまして、私は米軍基地の縮小整理というのは必要だと思いますけれども、それはこの地域の平和と安定の発展度合いと対応をしながら進められるべきものだと思っております。
  41. 乾晴美

    ○乾晴美君 私は、藤田公述人にお願いしたいと思います。  住宅のことなんですけれども、地価が安定しているので持てるようになったのではないか、六五%ぐらいの人は持っているというような先ほどのお話でしたけれども、年間の賃金の五年分ぐらいで持てるというのが目標なんですが、三年分ぐらいの方がいいんじゃないかということなんです。私は、あとの住宅を持てない方々にどうするかということを考えなきゃならないというようなお話を伺いまして、これはやっぱり今の生産中心だとかまた産業重視でやってきたこの世界の中で一番ひずんで出てきたのが土地の問題だろうというように思うわけです。  それで、この土地をちょっと調べてみましたら、昭和三十年を一〇〇といたしましたら、勤労者実収入は全国ベースで平成三年は一八八一なんです。ですから、約十八倍になっておるわけです。その間に全国の市街地の地価指数は、地価が下がったといっても六六三一、すなわち六十六倍になっておるわけです。これが六大都市を見てみますと、一四五四七。ですから、百四十五倍にもなっておるわけですね。平成五年はさらに地価が下がったと今言われているんですけれども、でも昭和六十年の水準と比べてみましても五六一一ということで、五十六倍になっておるわけなんです。ですから、結局、汗水垂らして働いてもマイホームはなかなか持てないということで、やっぱり生活大国からはほど遠いなというように思うわけなんですが、この地価とか土地問題についてはどのようにお考えでございましょうか。
  42. 藤田至孝

    公述人藤田至孝君) お答えさせていただきます。  確かに、おっしゃられるように、日本における最大の不平等といいますか不公平といいますのは、土地を持っている人と持っていない人、持っていない人はだんだん家が持てなくなっているという、このことでございます。  それで、今、委員御指摘のように、そういう不平等に対しましていろいろ政策を立てているわけでありますけれども、私はやはり基本的には土地というのは公のものでありますので、土地につきましては、かなり利用は促進しますけれども、そういう所有でありますとかそういうことについてはやっぱり公的な規制が入るべきではないかというふうに考えます。  以上です。
  43. 乾晴美

    ○乾晴美君 そうだろうと私も思いますが、住宅の問題なんですけれども、住宅は大企業では社宅というのがありましてそこへ入れていただけるわけなんですけれども、中小企業の人はその社宅もないところで働いている方が大方なんですね。ところが、大企業で働いている方も、六十歳定年としますと平均寿命からいえばあと十五年ぐらい、七十五歳ぐらいまではその十五年間を自分の家をどうすればいいかということが問題になってくるわけです。また女性は、働いてない方は連れ合いが亡くなってから、夫が亡くなってからも二十年ぐらいは生きるだろうというふうに言われているわけなんですよ。そういうことになってくると、住居というか、大変問題になってくるだろうと思うんですね。  今まさに高齢化社会に入っていこうという入り口のところでこういう問題を考えていくという、いわゆる生活重視を考えていく上では非常に大切なんだろうなというように思うわけです。ですから、福祉の最重要目標にこの住宅問題を取り上げたらなと思うんですが、いかがでしょうか。
  44. 藤田至孝

    公述人藤田至孝君) お答えさせていただきます。  全く同感でございます。
  45. 乾晴美

    ○乾晴美君 それでは、また地価の問題に返ってくるんですけれども、今、景気が浮揚しないから地価の下落をとめようというようなそういう動きもあるように聞いているわけなんですが、もう私は絶対に生活重視の点からこの地価を上げようとする考え方には反対したいなというように思うんですが、いかがでしょうか。
  46. 藤田至孝

    公述人藤田至孝君) お答えさせていただきます。  その点についても全く同感でございます。
  47. 乾晴美

    ○乾晴美君 ありがとうございます。
  48. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 日本新党の武田でございます。  先ほどの先生のお話、当面の現実問題としてはもうほとんどことごとくそのとおりだろうというふうに思いました。そこで、それと並んで近い将来に、もっと理想をといいますか、より平和的な防衛の形ができるかできないかということの可能性を、先生のお考えが聞ければと思うんですね。  例えば、国連軍をもっと強化する、各国単位の軍隊は専守防衛的に圧縮する、できれば国内の治安を完全に維持するぐらいまでに圧縮した場合に、各国あるいは世界経済なり、あるいは国民、人民の生活がどういうふうに好転するのか、そういうことを検討する必要はないか。これはまことに楽しい夢かもしれません。  そういうことを考えますと、文明の進歩によって世界は明らかに一体化の方向に進んでおりますし、ということは国境は低く薄くなることを意味しておりますし、文化、芸術、スポーツでもまだ国境はありますけれども、非常に薄くなっている。あるいは交通、輸送、あるいは情報手段、これはもう情報は瞬時に世界を駆け回るという状況になっております。こういう文明の方向あるいは発展の速度は非常に加速する状態にありますので、現在の状態が直ちに今後二十一世紀といってもせいぜい前期、中期、後期の前期も読めない、まあ前期の中ごろまでしか読めないと思いますけれども、そういう近未来を見て、どの程度そういう国境をもっと薄く低くして、武器を持って対峙する程度を減らすことができるのかというようなことについて、その可能性ですね。  そういう状態で、少々とっぴになりますけれども、戦争放棄の憲法を持っている日本が駆け回りまして、アメリカ、中国、ロシアの間に二十年くらいの期間の不可侵条約を結んだらどういうものだろうか。それは全く夢なのか。先生のお考えを伺いたいと思います。
  49. 阪中友久

    公述人阪中友久君) お答えさせていただきます。  世界の平和と安定はそういった非常に大きい夢のような話が必要なんだろうとは思いますけれども、安全保障と申しますのはやはり国の基盤であり、そして国民生活を守る最後のとりででございまして、そういった夢にすべてを託すわけにはまいらないかと存じます。そういったグランドデザインといいますか、将来を見越した大きい夢のような話があっていいとは思いますけれども、それを直ちに現実的な政策として採用していいかどうかは私は疑問があると思います。  議員御指摘のとおり、国際社会は変わってまいりました。私は、この経済側面における相互依存関係の増大というものが、紛争をできるだけ武力でなく平和的に解決するという方向に動いていくだろうとも思います。それから二番目に、民主的な国家が次第にふえておりますので、民主的国家の間の紛争というのは次第に少なくなっておるわけでございます。つまり、民主主義の国では、武力あるいは暴力によって問題を解決するよりも話し合いによって解決した方がはるかにコストが安いという認識が一般化しているわけでございまして、世界の平和と安定の行方はこういった経済発展あるいは世界の民主国家の発展と私は非常に深い関係にあるのだろうと思います。  そういった意味で、今のボーダーレスの経済進展させたり、特に第三世界各国において進んでおります民主化を援助していくということが世界の平和と安定のためにも私は大変重要な措置であろうと思います。
  50. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 恐縮でございますが、時間でございますので簡単に願います。
  51. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 もう時間がなくなったんですけれども、最後に申しました四カ国の間の不可侵条約の締結の問題ですね。これは単なる夢と言っていいか、現実的な意味があるか、これを最後に伺いたいと思います。
  52. 阪中友久

    公述人阪中友久君) 私は、問題をそらすようで申しわけございませんが、そういう意見よりも、現在ある国際連合の集団的安全保障の措置を強化していく方がむしろいいのであって、今から新しい不可侵条約をつくるということは私は現実的には実現の過程でいろんな困難があろうかと存じます。
  53. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げたいと思います。(拍手)  午後一時まで公聴会を休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ――――◇―――――    午後一時二分開会
  54. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  平成五年度一般会計予算平成五年度特別会計予算及び平成五年度政府関係機関予算につきまして、休憩前に引き続き、四名の公述人方々から項目別に御意見を伺います。  まず初めに、お二人の公述人に対してお願いいたします。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  お二方には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成五年度総予算三案につきまして皆様から忌憚のない意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  お一人二十分程度で御意見を述べていただきまして、その後で委員の質疑にお答えを願いたいと存じます。  なお、公述人意見の陳述、答弁とも、御着席のままで結構でございます。  それでは、まず財政・税制につきまして佐々波楊子公述人からお伺いいたします。佐々波公述人
  55. 佐々波楊子

    公述人佐々波楊子君) 慶応大学の佐々波と申します。  私、本日は財政と税制についてというふうに伺っておりますけれども、慶応の方で国際経済学を担当しておりまして、長い間研究及び留学生を含めまして国際経済関係の教育でありますとか人材育成をやっておりましたので、どうしても財政とか税制とかを見ましてもこのような経験からお話しするようなことになるかと思います。  いろんな申し上げたいことがあるんですけれども、マクロ的な要請というのを二点ばかりと、それからマクロ経済というのは必ずその背後に個別の問題を含みますので、それに関連しての個別の問題というのを二、三点申し上げたいというふうに思っております。    〔委員長退席理事井上裕君着席〕  今日、財政とか税制の問題と申しますと、すぐ今日の景気低迷というようなことをお考えいただくんじゃないかというふうに思います。景気低迷すなわち財政の出動というのは、経済学の方で申しますとケインズ経済学の定石なんですけれども、ちょっと違った、まあ経済学者はケインズだけではなくて、シュンペーターというのがその同時代におりまして、その人の言っておることなんかちょっと聞いてみますと、経済というのは成長するだけではなくて循環というものもあるんだ、停滞期というのは次なるステップに対しての一つの懐妊期間ではあるんだと。そういたしますと、今日の景気低迷というのもその前の好況期に行われたような投資の拡大というものと無縁ではないんではないか。  とは申しましても、学校の講義ですと非常に無責任なことを言っていられるんですけれども、現実問題として、日本の貿易というのは世界の中で八%から九%を占めておりまして、アメリカの景気の拡大がようやっと始まったとはいえ、やっぱり日本の景気を拡大して、それで内需の拡大が輸入の増加につながるということを国際的な役割として考えなきゃいけないんじゃないか。  それに関連しまして、昨年度の貿易黒字というのは、御承知のように、ドルベースで史上最高と言われているわけです。この黒字に対しましては経済学者の中で非常に多くの論議があるんですけれども、ともあれ貿易というのは、財を輸入するなり輸出するというときにはそれをつくっている人たちがいるわけで、景気の後退期に各国が失業とか雇用とかいうものを非常に問題視しているときに史上最高の黒字というのはやっぱりぐあいが悪いんではないかというのが第二点。  そうしますと、その中での財政ということになるんですけれども、これはもう少し現実的に考えてみますと、国民総支出の中で占める政府消費の割合というのはたかだか九%ぐらいというふうに私は理解しているんです。それから、非常にこの後論議を呼ぶであろういわゆる公共投資を含めましての政府の固定資本形成というのは、一九九一年の数字で、出る前にちょっとぽちぽち電算機を押してきたんですけれども、民間が大体資本形成の八割ぐらいでして、二割ぐらいが政府というふうに思っております。  そうしますと、第一の論点としては、そういった二割ぐらいのもので景気浮揚策をした場合の第一の論点というのは、あくまでその八割とどういうふうに結びつくかとか、その間にどういった部門に投資を拡大したら大きな波及効果を生むのかというのが第一の論点かというふうに思います。  ですけれども、今度、そういったそのときだけの短期だけでは先ほどのシュンペーター先生に怒られてしまいまして、次の拡大というものに役立つような配分というものを考えていかなきゃいけないんじゃないか。そうしますと、その技術開発なり成長ということに対しまして一体公共投資の配分というものが従来型でいいのかどうか。生活関連とか道路とか建物といったものに対して私自身異論があるわけではないのですけれども、もう一つの観点に立ては、やっぱり今後の日本成長というものに役立つ、それから次に来る好況期の成長というものがさらなる日本経済発展なり成長に役立つような配分というものはできないだろうかというのが一つの点としてあると思います。  例えば、国立の研究所であるとか研究機関というようなものの、何というんですか、建物にしても施設にしても、私自身は経済の経験しかございませんけれども、現在、経済関係の研究所というのは、民間の場合には非常に新しい建物でやっているわけなんです。ところが、非常に今大切になっておりますような地域研究の研究所にいたしましても、きょうのマイクロホンはキーキー言わないでとても快調に話させていただいているんですけれども、うっかり国立の研究所へ行きますと途中でキーとか言って中断させるということがしばしばありまして、マイクロホンがそうであるということは、ほかの設備は言うに及ばずなわけです。  こういったことは、単に設備だけの問題ではなくて、今の若い方はやっぱり魅力のある建物、魅力のある設備じゃないと有能な人材というのはなかなか入りませんで、民間の研究機関ではできないような研究を遂行するというのがやっぱり政府の務めではないかというふうに思っております。そうしますと、経済学部で申しますと、有為の人材はほとんど今問題になっておりますような銀行員になっちゃうんじゃないかしらなんて私はいつも笑っているんですけれども、そういうことをなくすためにも、やっぱり研究機関というものは見てくれも魅力のあるものにしていただきたいというのを痛切に。感じているような次第でございます。  それから、第二のマクロ的要請というのは、今回のODA予算というのを拝見いたしましたけれども、六・五ですか、かなり高い伸びというものが示されているようでございます。九一年度はドルベースで世界第一位。これは、従来の開発援助型に加えまして、難民を含めましての人道的な援助でございますとか地球環境問題に絡めての援助というようなものが加わって日本の貿易黒字というものは確かに大きいんだけれども、その分非常に援助にもお金を回しているということは、先ほどのマクロ拡大と、もう一つの柱として非常に今回の財政・税制の問題で重要なポイントではないかというふうに理解しております。  ただ、そのODAにつきましても、先ほど申しました公共投資と同じようなことが当てはまるかと思いますのは、先日、NHKで日曜日に「クイズ百点満点」というのがあって、それでODAというのがあったから私見ていたんですが、そうしたら、大抵できるだろうなんてうぬぼれていましたら、もうさっさと間違えました。どこで間違えたかというと、日本の援助は何と呼ばれているか。正解は箱物援助と言うというんですよね。なるほど、つまり箱ばっかりつくっているということらしいんですけれども、そこで申しますのはやっぱり箱をつくったら人もそこで働いていかなきゃいけないということではないかというふうにテレビを見ながら思った次第で、ここに引用させていただきました。決して箱物援助というのは私のつけた名前ではなくて、NHKのテレビで言っておりました。  と申しますのは、ここでも国内での財政で申し上げたと同じようなことがございまして、最近、各大学、研究機関でもっていわゆる開発に携わるような人々の教育というものを行う研究学科の増設が実はふえてはいるんですけれども、何しろ新しい分野でございますし、急に金額の方が拡大したのにつれまして、やっぱり人材の育成というのはかなり時間のかかる問題でして、時間がかかるだけではなくて、私もこの商売非常に長いことやっておりまして考えますには、やっぱり有為な人材というのが要るわけで、そういう方々に来ていただかなければいけないわけです。そのためにも、いわゆる単に金額だけではなくて、国内の支援体制と申しますか、単にODAだけに目を向けるという時代ではなくて国公立大、私大も含めまして、いわゆる国内での支援体制、教育体制というものとODAというものは一体化していっているのではないかというふうに今考えております。  ここでも、経済で長期と短期というふうな分け方をするし、ミクロとマクロというような分け方をするのは、あくまで分析上の手法でありまして、いわゆる各個別の支援体制というものがあって初めてこのODA予算の六・五というものが生きるといいますか、その数字だけではかれない波及効果というものが出るんだということは事実だろうというふうに思っております。  日本経済国際化ということが言われて久しいんですけれども、やっぱり言われて久しいということ、それからさらに進んでいくときに、いわゆる民間企業部門でできないことというものをするのがやっぱり国の施策ではないかというふうに思っております。いわゆる開発を担っていくような日本の若い人を育てるというだけではなくて、そういう研修生を日本に呼んだ場合の設備であるとか、それからその設備の中で日本の学生とそういう人たちをどういうふうにミックスしていくかというのが、この六・五%というそのODAの伸びというものを一〇%にもするか、それとも六・五は箱だからそれは非常に短期的な効果であってそれはそれだけのことなんだというものと分ける、いわゆる分岐点ではないかというふうに思っております。  財政の各項目というものを見せていただきますと、項目別にはなっているのですけれども、実はその経済国際化というのはどこまでが国際化部門に関連する項目なのか、それともどこまでが国内なのかということが非常にわかりにくい時代になっているんじゃないか、そういうのが私の感想でございまして、マクロ的な視点とミクロ的な視点と、それからその二つの柱について感想のようなことを述べさせていただきました。  以上です。
  56. 井上裕

    ○理事(井上裕君) ありがとうございました。  次に、経済・景気につきまして河口博行公述人にお願いいたします。河口公述人
  57. 河口博行

    公述人(河口博行君) 御紹介賜りました河口でございます。よろしくお願いします。  この中身に入ります前に、大変失礼でございますが、若干資料を配付しておりますのでよろしくお願いいたします。  経済並びに景気について公述するわけでありますが、立場で申し上げればサラリーマンと申しますか労働者と申しますか労働組合の立場で、今日の経済なり景気というものをどう見ているのか、そして今後どうしようとしているのかということについて公述をさせていただきたいと思います。  まず初めに、今日の経済なり景気に対して、労働組合、連合としての基本スタンスを三点ほど申し上げたいと思います。  まず第一点は、八五年のプラザ合意以降、円高そして一時円高危機から平成景気あるいは平成バブル景気になってきたわけでありますが、その反省の上に立っているということであります。もう少し具体的に申し上げれば、前川リポートで生活重視ということがあれだけ国民的に提起されながらそれが十分実行できなかったということに対する反省が第一点です。  それから二番目に、今日の政府が出されておられます生活大国五カ年計画そのものは労働組合の立場としても賛成でございますし、言いかえますれば、労働者立場あるいは労働組合の立場でこれを推進する立場に立っております。したがいまして、今日の不況を景気回復に反転させていくに当たりましても、この生活大国五カ年計画を基本に据えて回復が図られなければならない、このように考えております。  これを少し労働組合の立場で具体的に焼き直していきますと、こういうことになります。  政府の五カ年計画は、実質成長で三・五%の成長、消費者物価二%、失業率二%強、こういうことになっておりますが、それを賃金の引き上げに焼き直していきますとおおむね丁三倍ぐらいの賃金の引き上げということになっていきますが、一人当たりの雇用所得の伸びに直しますと名目で五%程度ということになります。それを賃上げベースに直しますと名目で六%から七%の要求ということになりまして、ことしの連合の要求にほぼ近いわけでございますが、それを実質賃金ベースにいたしますと二%から二・五%程度のものになっていくということでございます。  時間短縮で申し上げれば、申すまでもなく千八百時間。当初、政府は九二年に千八百時間を達成するということにしましたが、それが不可能であるということで、新計画で新規巻き直して九六年度までにそれを達成するということになっております。あわせまして、この国会にかかっております労働基準法の改正がそのベースになる、こういうことでございます。  そして、全体を通じまして労働組合としても今、経済五カ年計画といいますか、生活大国五カ年計画をベースにした、政府も企業もあるいは労一働組合も中期視点を重視した視点が大事であるし、いろいろなことについても中期の収支バランスということが一つのキーワードになるというふうに考えております。  そこで、具体的な経済見通しということについてでございますけれども、現下の不況は、端的に現状を申し上げればもう消費不況ということになると思っております。そこにあって、きょうお手元に資料を配付させていただいておりますので後ほど参考にしていただければ結構でございますけれども、連合が持っております連合総研という研究機関がありますが、そこがシミュレーションした内容でいいますと、Aケース、Bケース、Cケースと、こういうふうに立てておりまして、Aケースでいうと、賃上げ七%、それから所得税減税を含む減税を五兆円程度、それから先ほどの話にあります新社会資本投資なり政府固定資本投資というものを四兆円程度のものを投入しないと三・三%の本年度の計画目標の達成というのは困難であると、こういう判断に立っております。Bケースというのが、五%で二兆円の減税と二兆円程度の政府固定資本の投資、こういうことでございます。  そこで連合として、この消費不況を脱出していくためには、政府並びに国会と経営者並びに労働組合が力を合わせてと申しますか、ある面で言えばそれぞれがそれぞれの役割を全うしていく、その政労使の関係がどう回転していくかによって変わっていく、それがプラスに回転するかマイナスに回転するかということが一つの焦点であったわけでございます。  そこで、現下の労働組合として、一定の賃上げを図っていかないとこの消費不況からの脱出も困難でありますが、きょう一つの山場を越えた状況でございますので、賃金状況について申し上げますと、現在時点で申しますれば一万七百二十二円、三・九一%ということであります。状況で申し上げれば、できれば四%台の半ばなり後半ぐらいのところが願望的目標であったわけでありますが、最低でも四%を超えていきたいということがあったわけであります。  しかしながら、当初多くのエコノミストが三・三%の前半の前半ぐらいと言っておりましたけれども、四%に迫るところまできているわけでございます。今から中堅、中小を含めた交渉が行われますが、過去の実績ではずっと上がっていくことでありますから、四%に迫っていく、あるいはうまくいけば超えていくかもわかりません。したがいまして、景気回復という面で申し上げれば、ある面でこれで一つの最低必要な景気回復の条件というものはできてきたと言うことができると思います。  それにプラスして、いろいろ財源論等の論議があることは十分承知の上でございますけれども、四兆円を上回る所得税減税を含む減税ということが必要であります。内容的に申し上げれば、党派的に申し上げて恐縮でございますが、野党四党、社、公、民、社民連並びに改革連合とあわせた減税案が現在出されておりますが、それを連合は支持する立場に立っております。ぜひ実現を図っていきたいと。  プラスして政府固定資本の投資というものが必要である。これも兵力を集中的に行わなければ、多くのエコノミストが指摘されておりますように、景気の底割れが二段底になって割れていく可能性もないことはない、それだけに集中的な対策が必要だと、このように考えておりまして、その面で非常に重視をしております。  既に論議をされております所得税の減税というものについて、早期の決意と実行というものが必要ということを強調をしておきたいと思います。  なお、GNP等に与える効果についてどういうふうに見ているかと申しますと、少なくとも賃上げ等についで申し上げれば〇・三ないし〇・四程度の効果はあるというふうに見ております。それから、時間短縮も相当進んでいきます。時間短縮は比較的地味に見られますけれども、成長効果というものは非常に大きくて、〇・三から〇・四は進んでいくというふうに見ております。そこへ所得税減税等がありますと、所得税減税につきましてはいろいろ見方はございますけれども、連合の見方で申し上げれば〇・七程度の波及効果を持っているというふうに強く思っております。  なお、先ほどの新しい社会資本形成についても同様で、非常に重視をしていることを申し上げておきたいと思います。  そこで、減税のことについて少し勤労者、サラリーマンの気持ちを申し上げておきたいと思うわけでございます。  今、ここの資料1の図の右側のところに図表-3というのを出しておりますが、これを見てもわかりますように、雇用者所得並びに雇用者の現金給与総額、並びにとりわけ所定外給与というものが大幅にダウンをしているということでありまして、これがやはり何と申しましても今日の不況の最も大きい要因というふうに言っていいと思います。  ちなみに、いろいろな業界が所得税減税を申されているように伝え聞いておりますが、時間外は減らしていかなきゃなりませんけれども、所得という面では減ってきておることは事実でございまして、ちなみに実績では平均的に毎勤統計で言うと少なくとも二時間強時間外労働は減っております。それを収入ベースに直しますと約一兆二千億ぐらいのマイナスということに計算上なります。製造業になるともっと大きい削減を行っておりますから、相当進んでいるというふうに見ております。  加えまして公定歩合の引き下げは景気対策上必要であるということは当然私どもも承知をいたしておりますけれども、結果において、個人の定期性の預貯金の九一年度末の残高が四百十五兆あるということが報告されておりまして、金利低下の〇・四三%を単純に掛けていきますと、一兆八千億というものが勤労者の家計といいますか個人の家計から、結果において産業なり金融機関に所得が移るといいますか貢献をしている、ある面で言えばそういうことが言えるということでございまして、結果的には、率直な言い方でございますが、所得の減とそういう定期性預金の金利に伴う移動というものでもう三兆円程度というものが勤労者の家計から移っていっているということが申し上げてあるわけでございます。  加えて、税制の問題で言えば、十分御承知のとおりでございますけれども、最近で申し上げますと、消費税導入以降だけで申し上げましても、この間九十年から九十三年まで賃金ベースに直しますと一〇・九%ぐらい上がっておりますが、所得税は三八・八%上がっております。それだけに勤労者の直接税にかかる重課負担というものは非常に高まっているということは御承知のとおりでございますので、制度的にもあるいは現下の不況を脱出する意味から申し上げましても、現在野党が出しておられます減税ということについては必要不可欠であるというふうに考えております。  その次に、今、佐々波先生から社会資本のことが御指摘がございましたが、このことにつきましても少し触れておきたいと思います。  まず第一点は、総合経済対策が昨年八月に決定されて、昨年の臨時国会で決まってスタートしていますが、当初この十兆七千億という総合経済対策について相当思い切った額というふうに私個人は思いました。しかしながら、相当の額でありながらこれだけ景気の回復に貢献しないのはなぜなのかということについて今いろいろ論議をされておりますけれども、一つは決定が三カ月ずれたとかあるいは行政各機関に問題があるというふうにされておりますが、少なくとも旧来型の公共投資では効果がないということはかなりはっきり出てきている。  同時に、現在問題になっております政治献金問題につきましても、ある面で言えば単なる汚職の範囲を超えて世に言う鉄の三角形そのものが旧来型の中で経済対策含めて景気対策の効果が動かない状態になってきて、全体を通じて問題になってきておる。したがって、単なる汚職の範囲を超えて構造的な制度疲労というものを意味していると同時に、結果において相当いろいろな形で漏水をしているということになるわけであります。  そういった面で景気と政治、行政あるいは企業、そういったもののあり方そのものが見直され、行政執行が改めて進んでいかないと公共投資の効果を生まないし、同時に国民からの信頼が回復されない。従来、国民はいろいろ政治に対して批判は持っておりますけれども、行政と産業、企業に対しては比較的信頼をしておったわけでございますけれども、こういう形で実行効果が出なくて、さらに問題があるということになりますと、景気対策にも重大な影響を与えるというふうに見ております。その面で、そういった仕組みの見直しと新しい対策というのが効果的に進められなければならないと思っております。  それから、二番目に住宅について今非常に多くの論議が行われておりますけれども、持ち家だけではなくて賃貸住宅についての政策が重要である。この国会建設省から特定優良賃貸住宅の法案が出されておりますが、極めて画期的な法案であり、西ドイツの住宅政策に迫っていく賃貸住宅社会政策というふうに見ておりますので、また景気対策効果も非常に大きい。この対策の場合には土地に対するものがほとんど費用がかかっていかない中身でございますから、政府予算で申し上げれば二百七十億と、住宅予算一兆円の中の二百七十億ですからごくわずかでございますけれども、しかしながら資金需要としては膨大な資金需要が、少なくとも五、六兆円ぐらいの資金需要が出て、乗数効果は二・四倍と言われておりまして、一兆円ぐらいの効果は持つわけでございますけれども、画期的なものとして見ております。  それから、福祉関係のものとか、いずれにしてもこのものについては高齢化なりあるいは先ほどの佐々波先生が御指摘の情報化なり技術革新なり、あるいは国際化なりというものを基本に据えた新しい社会資本投資が行われてしかるべきであるというふうに考えております。  あと、労働時間の短縮と基準法の改正について、時間の制約がありますからごくかいつまんで申し上げていきます。  この国会労働基準法の改正が提案されておりますが、これは生活大国五カ年計画の第一重要課題でありますし、ある面でこれが決定的に重要であるということを申し上げておきたいと思いますし、同時に、基準法の改正は中小企業問題であるし、中小企業労働者問題である。したがって、国民的に中小企業問題と中小企業労働者問題に取り組んでいくきっかけとして基準法改正の論議をしていきたい。同時に、基準法改正によって、時短によって労働時間の短縮と生産性は向上していくということを申し上げておきたいと思います。  それから雇用政策等につきましては、ある面で人生六十年から人生八十年の雇用システムの国全体のリストラクチャリングが今進んでいる状況にあると見ておりますが、この点は時間がありませんので後で申し添えていきたいと思います。  最後に、沖縄年金の格差是正につきまして、沖縄本土復帰以来二十年、ぜひ本年度内にこれについての政治決着を図られますよう参議院並びに国会にお願い申し上げたいということを申し添えまして、私の公述にさせていただきます。  以上でございます。
  58. 井上裕

    ○理事(井上裕君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言をお願いをいたします。
  59. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 自由民主党の松浦孝治でございます。  佐々波、河口両公述人にはただいま貴重な御意見をお聞かせいただきまして参考になりました。ありがとうございました。  ところで、佐々波公述人国際経済ということで海外等で御活躍をされたと拝聴しておるわけでございまして、先ほど我が国経済について、外からと内からの見方をされたわけでございまして、私も外から見ればそのような形になろうと思うわけでございます。  特に、ODAについていろいろお話がございまして、従来の箱型と申しますか開発型から、やはりそれも大切だけれども、それを運用する人的な貢献もやっていかなければいけないということで、ごもっともだと思うわけでございます。そして、国内的にもやはりそういう中で国公立の大学の研修生等の受け入れについても環境整備をきちっとやって、そしてそういう形の中でODAの問題も有効に活用していかなければいけないということで、今ODAの事業内容等についていろいろ意見があるわけでございまして、参考になったと思うところでございます。  ところで、私は、そういう国際的な問題もあるわけでございますが、今、河口公述人も申されましたけれども、日本の今までの政策と申しますか、そういう中で非常に景気対策として公共事業を中心としたものをやってまいりました。そして、いろいろな社会資本整備ということで、日本は既に百八十二兆円という膨大な国債発行残高を抱えておりまして、金利の支払いで非常に実は財政が硬直化しておるわけでございます。そういう中で、先ほど国際的な貿易インバランスの中で日本としては国際貢献をしていかなければいけないということでございますが、それをやるといたしましても、今の日本の財政は、今言いましたように百八十二兆円、そして利払いに苦しんでおる。  アメリカの場合、レーガン大統領が景気対策として減税等をやりまして、そしてそれに伴う景気浮揚対策をやろうということで実行されたわけでございますが、結果的には大きな財政赤字を来してしまって、それに苦しんでおるというアメリカ経済の実態が今あるわけでございますが、その点について、景気対策上大幅な所得減税をやることによる景気浮揚策について、国際的な経済状態の中、ケインズの経済学も十分御勉強されておる佐々波公述人から御意見をお聞かせいただけたらと思います。
  60. 佐々波楊子

    公述人佐々波楊子君) 確かにケインズ経済学というのは、財政を拡大せよ、それからいわゆる家計の消費というのは所得が拡大すれば拡大するんだからというので減税というのが一つの有効な手段であるということは事実です。  ただ問題になりますのは、減税というのは、一たび所得に入ったものがどれだけ実質所得に還元されるか、つまりどれだけ税金で持っていかれてしまうかということのワンクッションが一つと、それから、それぞれの家計がどれだけ消費に回すのか、欲しい物があるかというその二点に依存しております。それでかなり減税効果についてはそれぞれの意見が分かれるところかと思います。  一つには、どれだけ物が欲しいかというところで、またシュンペーターが出てきて恐縮なんですけれども、彼に言わせますと、どれだけ景気が拡大するかというのはどれだけ人が物が欲しくなるかということだ、それでその欲しい物を提示するというのは企業の責任なんだと。どれだけ人間が欲しい、家計が欲しい、人間が欲しいというと変な言い方ですけれども、消費者が欲しがるような技術革新ができるか。その技術革新というのは、物がどれだけ安くっくれるようになるかということも一つですし、それからもう一つは、どれだけ魅力的なもの、盛んにこのごろテレビはハイビジョンだハイビジョンだとはやしておりますけれども、ただ、現状ですと、二、三年前にかなりきれいなカラーテレビをいっぱい買ってしまった人は一体どれだけ飛びつくかということと、もう一つはハイビジョンがどれだけ安いのかということではないかというふうに思います。  ですから、減税による景気回復効果というのはかなり、二つぐらいのクッションを置いての効果であるということは経済学の提示しているところ。それからもう一つ、先ほど申しましたように企業側がどれだけ魅力的なものを開発できるかというのも景気の停滞期の一つの役割である。  経済学のグラフをかきますときに、幾ら景気が拡大するといっても五%ぐらいなり一〇%でしゃっと右上がりにかいたら私も答案にはバツをつけまして、大抵波を打ちまして、平らなところを波を打たれますとちょっとぐあいが悪い。まあここで言うのはいけないかもしれませんけれども、イギリスみたいなのですと平らにかいて波を打つのかなという感じなんですけれども、まだ日本の場合には右上がりで波を打ってするとすれば、その波の打つものの下降局面もやっぱりそこは一つ必要なことなんだというのが私どもの認識でございます。
  61. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 佐々波先生ただいまお話がございましたが、私もそのとおりだと思っておるところでございまして、今回の日本の景気停滞、先ほど河口公述人が消費不況だ、こういうように言われましたけれども、私は、今佐々波公述人が言われましたような、やはり欲しい物が実際あるのか。特に今言われましたようなテレビとか自動車とか、あるいは電気製品その他いろいろな耐久消費財、これについては長い好景気といいますか平成景気といいますか、バブルではございましたが非常に好調な日本の景気であったわけでございまして、この時期にそういう自動車とかテレビとか家庭用品その他自分の欲しい物をほとんど買ってしまって、今、日本の景気は、消費の減退は、やはり欲しい物がない。家庭にはと申しますか家計にはかなりの貯蓄も持っておられるわけでございます。  したがって、先ほど大幅な所得税減税によって景気対策を図りたい、そういう河口公述人のお話であったわけでございますが、今言いましたように、果たしてこの所得税減税が消費動向を刺激するのかどうかというと、私は若干疑問に思っておるわけでございます。貯蓄に回ってしまうんではないか、こういうようなことがよく言われるわけでございまして、昨年の暮れのボーナスでも六〇%ぐらいが貯金に回っておるし、また、今巷間言われております所得税の戻し税等の方式、一時的なものならばとりあえずは預金しておこう、こういうような消費者の考え方があるように理解をしておるわけでございます。  したがって、所得税減税の効果、〇・七ぐらい、所得税のなにはあるというようなお話でございましたが、政府の乗数効果では〇・五三ぐらいだというような見方もしておりますし、今言いましたような考え方に立つと本当に所得税減税が経済対策にいいのかなという感じがいたします。  また、その財源も非常に問題でございまして、赤字公債で発行してもいいというような御意見もあるわけでございますが、その点について河口公述人さんはどのように考えておられるでしょうか。
  62. 河口博行

    公述人(河口博行君) ありがとうございます。  まず、今後の日本経済の全体の展望、中長期の展望について少し触れておきたいと思いますが、新経済五カ年計画に見ますように、日本経済は新しい成長をしていくポテンシャルを十分持っていると私どもは思っております。そういった面で今の不況は新しい成長軌道に乗るための一つの過程にあるとまず見ております。これがまず第一点でございます。  しかしながら、現下の不況の状況は、結果としての消費不況でございますけれども、いろいろ論議されておりますように構造的な複合不況の要素を持っております。その中の一つが、雇用も大きく新しい時代に変わるときになりますが、現下の中では雇用の構造問題も持っておりますし、中高年のホワイトカラー問題が一緒に大きい衝撃を与えておりますように、そういう構造上の問題を持っております。  それと、現下の景気につきましては、この賃上げ所得税減税含む政府投資を行うことによって脱出が可能である。ある面で、比喩的に申し上げれば、かなり体力が弱っている状況でございますから輸血をして再生しないとこのままでは長期化していくということになるというふうに、事態は相当緊迫した状況にあるというふうに思っております。それだけに賃上げ所得税減税、それから政府固定資本投資と三つが集中的に整っていく必要があるというふうに思います。これで、もし景気回復が失速してさらに二段底の景気が底割れしていきますと、今度は間接雇用調整が直接雇用調整にまでいく可能性はあるというふうに見ておりまして、事態はそんなに楽観はしていないということが二番目でございます。  それから、三番目に申し上げれば、財源の点でございますが、赤字公債の残高並びに建設公債の残高の額も承知をいたしておりますけれども、今の場合は中長期的といいますか、中期的視点に立って中期バランスを考えていくべきである。そして新しい成長過程の中で、全体のバランス等構成の問題の解決も国民的に図っていかなきゃならない。今その面では、何よりも景気回復並びに政治、行政、企業等含めた経済活動の信頼を回復することが大事である、このように考えております。
  63. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 私は所得税減税については預金に回ってしまうんじゃないかというような危惧をいたしておるわけでございますが、ただその中で、やはり現在の税制を見ましたときに、先ほども河口公述人が申されましたが、やはり所得税に余りにもウエートがかかっておりまして直間比率のバランスというものが非常に崩れてしまっておる。特に五段階のいろいろな所得税の段階を過般の税制改革でやりましたが、その当時はかなり直間比率の見直しもできたわけでございますが、今お話しのように、所得が上がってまいりますとどうしても税率が上がってそれだけの所得増につながらないというそういう構造的なものがあるわけでございます。  したがって、私は、もし所得税減税というものを考える場合にはやはり抜本的に税制体系を考え直して、そういう中で今言われたように中長期的な考え方に持っていかなければならない、そのように思うわけでございますが、その点で直間比率の見直しということになりますとやはり消費税の税率アップという問題が浮かんでくるわけでございますが、そういう点について両公述人さんはどのようにお考えになっておられるか、お聞かせ願えたらと思います。
  64. 佐々波楊子

    公述人佐々波楊子君) ただいま御指摘がありました、私は減税の短期的な効果のお話をしたのであって、現在の税制、直間比率がいいということは一つも言っていないわけで、確かに中長期的といいますか、もう長期ではなくて中期的に現在の税体系というんですかを直さなきゃならない。先ほど河口公述人がおっしゃっていましたように、勤労者への税負担というものが拡大しているということは御指摘のとおりで、消費税の税率を含めましての改正ということが必要だと思っております。  それと、先ほどもお話しになりましたように、現在の十兆七千億ですかの経済効果が出ていないというようなお話もありましたけれども、そのように経済構造自体が非常に変革期を迎えている中で、そういった経済構造の変化を踏まえての財政、税制のあり方というものは、もう長期と言わずに中期的な課題だというふうに考えております。
  65. 河口博行

    公述人(河口博行君) まず税制で、所得、消費、資産のバランスをということがよく税制改革で基本的な論議がされておりますが、そのことの基調としてそれを見直していかなければならないことは当然のことであります。消費税があれだけの論議がされて、いろいろ論はあるにいたしましても入った以降、また直間比率で言えば直接の比率が八〇%までなっておるわけでございますから、その面では考え直さなきゃならない状況にあるということは大多数の国民は承知をしていると思っております。  それで、しかしながら今なすべきことというのを申し上げれば、景気の回復並びに政府あるいは産業、企業活動含めての政治経済の信頼を回復することが何よりも先である。その上に立って将来の問題について考えるときは当然来ると思っております。その面で、今景気回復と政治経済の信頼を回復していくことによってそういったものの協議が、国民的合意形成できる基盤は自動的に形成されていくというふうに申し上げておきたいと思います。  ただ、現在時点ですぐ消費税でもってバランスを保つということについては、現在の経済情勢から見ても適切でないというふうに申し上げておきたいと思っております。
  66. 松浦孝治

    ○松浦孝治君 どうもありがとうございました。
  67. 穐山篤

    ○穐山篤君 社会党の穐山でございます。きょうは本当に御苦労さまです。  最初に、佐々波先生に三つほどお伺いをします。  御案内のように今予算の審議中でありますが、数字を見てもらえばおわかりのとおり、ことしの予算七十二兆円というのは全くやりくり予算になっているわけですね。しかし、その中で、三年前、一九九〇年度、赤字国債の発行をしないようにしようというのは一応実現をしました。それから今は平成七年度には国債依存度を五%にしたい、こう第二目標を立てておりますが、縦横から見てもこれは全く至難のことではないかなというふうに思います。我々もそれなりに研究はしておりますが、第二の財政再建目標、あるいは第三の近い将来の財政再建目標をどこに置いたらいいのかということをまず第一にお伺いします。  それから二つ目は、御存じのようにことしの一般会計予算は七十二兆円です。実際に国民のために使えるお金は三十九兆円余になっているわけですね。しかし財政投融資は四十五兆円余というふうに、随分前から見ますと変化はあります。本来一般会計で扱うべきものにもかかわらず、財政投融資の方にその財源を全部移しかえているのが昨今の財政投融資ではないかなというふうに思います。財投の財政化ということが今強調をされているわけですが、その点についての先生の考え方をお伺いしたいと思っております。  それから三つ目の問題は、従来の循環型の不況の克服のためには、それ財政の出動というのが一般論であったし原則であったわけですが、今日のような複合不況といいますか複雑骨折を起こしているこの不況の中では、単純な公共投資だけでは不十分であるということは先ほど言われたわけですが、国会の中でも新しい資本の形造をしようというふうなことで、先ほどは技術開発など若干の事例が出されておりますけれども、もう少し幅広いお考えがあろうかと思いますので、その点についてのお考えを伺いたいと思います。  今の問題と裏腹になりますが、先ほど先生冒頭に言われました貿易収支、経常収支、ともに日本は膨大な黒字を持っております。そのうちの貿易黒字というのが八割以上を占めているわけです。これを黒字資金の還流ということで今民間はやっておりますけれども、国が何らその手だてをしていないわけですね。一般論として言えば、内需を拡大してアメリカなり諸外国から品物を買うというのが一般論ですけれども、今のような状況ではそういう一般論だけでは済まされないわけですね。その点についての何らかの御発想があればお伺いをしておきたいというふうに思います。
  68. 佐々波楊子

    公述人佐々波楊子君) いずれも物すごく難しい問題でうまく答えられるかどうかわからないんですけれども、財政再建目標につきまして、一体財政でこういった赤字国債もしくはその国債の利払いに非常に多くの部分を占めてしまうというのがどういったような状態を生むのかということ。それから、再建と言うけれども、財政というのは国の中の政策のうちの一つなんだから、それだけ単独で再建というのはどういう問題を持つのかというようなのは従来からの議論にあるかと思います。  ただ一つ、今回、私自身気がついたことなんですけれども余り広範囲に及びますもので本日触れなかった問題に、現在の金融為替市場というものが資本移動が非常に活発化してしまったために、いわゆる金融政策の自由度というものが各国非常に狭まってしまっていて、それから為替市場も国の介入というようなことで為替相場が決められないというような状態が起きているというのが一つの現実だろうというふうに思います。これが非常に端的にあらわれましたのが昨秋、去年の秋のヨーロッパでの通貨の混乱かと思います。  そうしますと、あのとき売りを浴びた国というのをよく見てみますと、軒並み財政の赤字が非常に大きかった国、つまり財政の出動余力というものがほとんどないということを見越しての売り浴びだったように私は記憶といいますか理解しているんですけれども、そうしますとやっぱり最後の受け手といいますか、いわゆる政策に対する信頼度というお話が河口公述人からかなり出ていたんですけれども、日本ですらというと非常に語弊があって大蔵当局から怒られるかと思うんですけれども、各国とも財政節度というものが今日のような為替金融市場の状態であればこそ新しく見直されねばならないのではないかというのが第一点のお答えでございます。  それから二番目は、財投の財政化についてなんですけれども、それも第一点と非常に結びついてのお話のように理解しております。そういった非常に国債利払いが拡大した中でのやりくりというようなお話がございましたけれども、それが結果として第二というような問題を生んでいるのではないかというふうに理解しております。  第三点につきましては、一体、政府固定資本形成というものが従来型でいいのかどうかという点。それは私自身の好みの問題もあるかと思うんですけれども、従来公共投資といいますと道路というような考え方、それからすぐ建物を建てるという考え方については、確かに道路ができるということは自動車がいっぱい走るとか流通が敏速にいくとかいうことがあればこその道路だというふうに理解しているんですけれども、その道路というのは全部つながっていないと意味がないわけです。ここで申し上げるのも非常に釈迦に説法でございますけれども、私は青山の方に住んでおりまして、成田の空港に行きますのに一番警戒しますのがそこの通り口でして、その分岐点のところでいつもひどい目に遭いますもので、いよいよ乗りおくれそうなときは地下鉄を利用させていただいているんですけれども、道路を幾らつくっても全部つながっていないときは余計渋滞もするように思いますので、やっぱりここは固定資本形成の考え方というものを変えていかなきゃならないんじゃないか。  その点二つありまして、一つは先ほど申しましたように、なけなしのお金を使うわけでございますから、景気浮揚効果というものをどういった地域に公共投資を向けたら波及効果があるのかとか、それからどういった部門にしたら波及効果があるのかというのが一点。それからもう一つは、どういった部門にしたら最も将来にわたって有意な資本形成というものができるのか。有意というのは単に産業効率の面だけではなくて、先ほどから出ております生活大国ゆとりと豊かさでございますか本当にゆとりを感じられるというのは単に建物を建てればいいという話ではなくて、やっぱりきれいなものを建てた方がいいんじゃないかというふうに思っております。  それから最後に、四番目は何でございましたかちょっと失念してしまいましたけれども、関連してのことであったか、もっと中長期的に財政自体をどういうふうに考えるかということでございましたでしょうか。
  69. 穐山篤

    ○穐山篤君 河口公述人にお伺いをいたします。先ほど、きょう現在の賃上げ状況のお話がありまして、平均三・九一%前後という見通しのようでありますが、私の計算でいきましても、この消費性向の落ち込みを解消するというにはとてもほど遠いし、ましてや上向きにさせるというのもかなり困難な数字ではないかなと。加えて最近、所定外賃金のダウンをする部分が非常に多いといつ意味では、各家庭の収入及び可処分所得というものは今の物価状況から考えてみまして非常に厳しいものがある、こういうふうに思います。そこで、先ほども強調されましたが、当然いよいよ最終の需要を喚起するということになれば、新しい公共的な資本の投資あるいは減税というものを強調されているわけでありまして、その点は私ども全く賛成であります。  なお、消費を高める一つとして先ほど減税というお話があったわけですが、戻し減税とかあるいは税率の改正による税制改正とかいろんなことが考えられますが、連合さんの考え方としてはどういう道をとられるのが最も妥当な道だろうか、その点についてまずお伺いをします。  それから二つ目は、御案内のように雇用の問題が今政治問題、社会問題になっております。日産座間工場の問題もそのとおりでありますし、採用の内定を取り消しをする、中間管理職はいや応なしにやめてもらうというふうな去年までは全くなかった事例が今発生をしているわけです。この雇用の状況、動向についてどう考えられているのかという点と、雇用の創出のために当然連合さんとしてもいろんなアイデアを考えられていると思いますのできれば、何か雇用の創出の問題について特段のお考えがあればその点についての御紹介をいただきたいなというふうに思います。
  70. 河口博行

    公述人(河口博行君) まず、税制についての戻し税か税制の改革かということでございますが、基本的には、中長期的には税制の改革というものが基本になければならないということはほぼ共通した認識であると思いますが、現下の状況で申し上げれば、別に連合と野党四党との協力関係が云々というわけではございませんけれども、今野党四党並びに改革連合が出しておられます四兆二千六百四十億の減税で、そのうち戻し税が三兆八千億で夏の一時金という考え方で、制度改正が一兆円ということで出ております。現下の情勢で言えばこの内容が適切である、先ほどの経済と景気の回復という諸点から考えましても適切であるということを申し上げておきたいと思います。  中長期的に言えば、当然、先ほど来問題になっております所得、消費、資産のバランスとあわせて、過重にかかっております勤労所得に対する重課税についての是正がなされなければならないということが基本的なスタンスである。とりわけ連合としては物価調整減税については最低限実現を図っていただきたいということが基本的な点であります。  それから二番目に、雇用の問題につきまして申し上げたいと思います。  雇用の問題につきましては、現在考えておかなければならないことは、中長期の雇用対策と雇用政策、それから短期及び短中期の雇用構造政策と二つに分けて考えていく必要があると思います。中長期的に申し上げれば、日本の始まって以来、労働力過剰時代から労働力不足時代に間違いなしに大転換を図ってきた。したがって、労働力過剰の雇用システムから労働力不足の雇用システムに変えるということが基本の一つである。同時に、現在の雇用システムは人生六十年を前提にしてつくられた雇用システムである。しかしながら実態は人生八十年の実態になっておりますから、人生八十年を前提にした雇用システムに転換をしていかなければならない。しかし、その過程の中で、構造問題で言えばある面で中高年サラリーマンは一つの非常に大きな課題になっておりますが、構造的に多い分野と構造的に不足する分野、いわゆるミスマッチを構造的に持っているということでございます。したがって、その中長期と構造的なミスマッチとをうまく組み合わせながら緩やかに改革をしていくことが必要であるというふうに考えております。  まず中長期のことで言えば、既にこの国会にもかかっておりますが、労働省からパートタイムの雇用市場についての整備をする法案が出ております。野党からも既に衆議院にパートの差別を禁止する野党立法が昨年出ておりますが、こういったものによってパート労働についての正常化を図っていくということが基本に一つある。  それから、人生八十年を前提とすることで六十歳以上の高齢者の雇用創出を図っていくということがもう早急の課題としてなっている。既に労働省でも松浦次官のときから相当検討されておりますけれども、来年は年金の財政再計算の年度を迎えておりますけれども、その前に高齢者雇用というのは日本にとって必要欠くべからざる大課題であるし、取り組んでいかなきゃならない、こう思っております。  それから、やや余っているということで中高年サラリーマンの問題が出ておりますが、P社なりT社なりというような事例が出ましたが、わずかなことでありますが非常に大きい衝撃を与えて、ある面で今日の日本の企業、産業の、オーバーに言えば基本秩序を変えるぐらいの非常に大きい衝撃を与えました。ある面で日本の大企業、中堅企業が持っている基本的な構造問題だと思いますけれども、そういった面を考えるときに、人生六十年を前提とした考え方ではなくて人生八十年を前提とした生涯雇用という点を考えるべきだと。千八百時間を生涯労働時間に直しますと約七万時間でございますけれども、それをどのように配分していくのかという生涯労働並びに生涯教育についての配分政策というのが必要である。  したがいまして、先ほど佐々波先生も教育の点を含めて御指摘でございましたが、人材投資あるいは雇用投資という視点が極めて大事である。ある面で学校教育時代だけではなくて働いておる期間におけるリカレント制度、有給による教育訓練制度でございますが、こういったものを企業も国も思い切ってとっていくときに来ている。そうすることによって今の中高年問題及び雇用のミスマッチ問題というのは変わってくる。同時に、最近アメリカのクリントン政権のライシュさんでしたか、超エース級の労働長官ができたといって評判になっておりますが、人材投資と雇用投資ということを強く強調しておられますが、日本も改めてそういったことを思い切って行うときではなかろうか、このように考えております。
  71. 穐山篤

    ○穐山篤君 最後にお二人に共通してお答えをいただきたいのです。  最近、一連の不正事件あるいは政治腐敗の問題が出ております。またそれはそれで当然たださなければならないと思いますが、公共投資、公共事業というのは、国民の税金を使って直接それが社会資本に変わっていくわけですね。その過程で税金が例えば上納金という形で上に吸い上げられる、あるいはやみの献金で政治家や政党に出されるということがずっとここ数年続いて、今や救いがたい状態にあるわけです。  そこで、私が問題意識を持っておりますのは、とんでもないという国民全体の気持ちがあると思いますね。それならば積極的に政治を直していこうというプラスの意見と、マイナスの意見が出て、現にあるわけですね、税金なんか納められるものかと。これはもう私の後援会へ行きましてもそういう声が非常に強いんです。  きょうはせっかく女性の方、男性の方それぞれ来ていただいたわけですから、今の一連の事件と納税の問題について国民的な立場から御感想をいただければありがたいなというふうに思います。
  72. 佐々波楊子

    公述人佐々波楊子君) 公共投資に回される云々は別にいたしましても、ともかく政治的な腐敗なり不正なりというのはいけないというのはこれはもうコンセンサスだというふうに理解しております。  それと、やっぱり税金を納めなければいけないのだううかというのは、この間のちょうど確定申告の時期と一致いたしましたものですから、私ども同僚の中で言っていたのは、あの時期やっぱり抵抗があるわねというのは非常に庶民的な感覚としてあったと思います。  ただ、日本が国としてやらなければいけないことというのは先ほど来るると公述させていただきましたけれども、国がやらなければ私ども個人ではできないことというのがありますものですから、そういった意味でのいわゆる納税の必要性というのは、やっぱり国あっての個人であり、個人あっての国であるというのは基本だというふうに存じております。
  73. 河口博行

    公述人(河口博行君) 税に対しては庶民の立場で言えば抵抗があることはもちろんでありますが、日本国民の多くは納税をしなければならないという基本的な責任感と義務感は持っていると思っております。  それだけに今回の一連のことというのは極めてやはり重大視すべきでありますし、先ほど来申しあげましたが、政治はどちらかというと派手な立場でございますから批判される立場にございますけれども、政治だけでなくて、明らかに行政並びに業界、企業そのものが問われているという中身であって、間もなく戦後五十年を迎えますけれども、戦後来の日本のシステムの疲労というものがあります。そういった面で、戦後五十年を迎えるに当たって、それまでの間にプラスの視点で日本のシステムというもののリストラクチュアリングがなされなければならない、このように思っております。  以上です。
  74. 広中和歌子

    広中和歌子君 公明党・国民会議広中和歌子でございます。  まず、佐々波先生にお伺いいたします。  日本は外国に対しまして千百十七億ドルという膨大な黒字を抱えている、御指摘のあったとおりでございます。これは対米を初めといたしまして、EC、アジア、世界じゅうに黒字をつくっているわけでございますけれども、言ってみればあちらの国の側から見ますと日本によって赤字を抱え込む、そういう状況があるわけでございます。いわば日本は勝ち過ぎているんじゃないかという批判があるわけで、そういう中で、先生も御指摘になりましたように、日本国際貢献でバランスをとるということをおっしゃっているわけでございますけれども、それについて少しおっしゃいましたけれども具体的にどういう形の援助がアプリシエートされるのか、評価されるのかということについて触れていただきたいことが一点でございます。  それから続きまして、勝ち過ぎということですけれども、幸か不幸か我が国は現在不況の真っただ中にあるわけでございます。それでいいかというと、本当に不況からいかにして脱却したらいいかという声が非常に強いわけですし、また世界的にもEC、アメリカともにそれぞれ経済問題で悩んでおりますから、この前もコール首相が言っていらっしゃいましたように、EC、アメリカ、日本世界経済の牽引車にならなければならない。そういうことで、日本経済の三・五%の成長というのは国内的にも国際的にも求められているんではないか。  そういう中にありまして、しかし一方で環境の視点から、いわゆる持続可能な成長という観点からしますと、もう今までのような三・五%の成長を望んではいけないんじゃないかといったような考え方もございますし、それから高齢社会に向かって私たちはもっと落ちついた経済というんでしょうか真の豊かさを味わえるような、つまり今までの構造、もう低成長でもいいから今の社会全体のストラクチャー、構造を変えることによって案外もっと実質的な豊かさが得られるんじゃないかそういうような考え方もあるわけでございます。  ちょっと質問が長くなりましたけれども、バランスのある経済成長、それが日本にとってもまた世界的な視点からも、国際的な視点からも望ましい、そういう成長についてお伺いいたします。
  75. 佐々波楊子

    公述人佐々波楊子君) 最初の黒字につきましては、私は貿易というのは物をつくっている人の雇用という側面があると同時に、アジアの国の場合には日本から輸入している物というものを通じまして、日本から輸入しているのは機械製品、その国でつくれない機械製品というようなものが非常に多いものですから、それがばねになりましてアジアの国々の成長を支えているという側面が非常に強いと思います。  黒字をここで問題にいたしましたのは、総額として非常に大きいものですから、やっぱり雇用という側面は問題があるだろうということを申しましたためであって、アジアの国が非常に日本からの輸入で生産性の向上なり工業化という側面で助けられているということは事実でして、むしろ日本としては胸を張っていいのではないかというふうに思っております。  それから、国際貢献、どのような援助で、バランスをとるという言い方もあるんですけれども、この貿易の問題とそれから国際貢献でしなければならないことは、黒字だろうと赤字だろうとやらなきゃならないことはやらなきゃいけないんだというふうに思っております。  アジアの国なり途上国に行きますと、貧困からの脱却というのを非常に念願にしている国もありますし、今は途上国は非常に多様化しておりますものですから、貧困への援助が必要な国もあれば、援助も若干は利子を取るわけですから、むしろ民間のこういった貿易と若干のインフラ整備へのODAといったものとのコンビネーションの方がいい国というものがあるかというふうに思っております。  それから、第三の勝ち過ぎ云々というのは、産業界でいえば勝ち過ぎかもしれないけれども、日本の消費者の立場からいえば、つくっているよりも外に売っているわけですから、それをみんなでぱっと使ってしまおうというのも内需拡大のあり方としてはあるかというふうに思います。ただ、そういう比喩は余りよくないので、それではなくて、やっぱり先ほど御質問にありましたようにバランスのとれた内需の拡大でEC、アメリカ、日本というものが、途上国も含めまして望ましい成長を遂げていくのが一番貢献としてあるべき姿だというふうに思います。  国際貢献をここで黒字の問題と並行して第二のポイントに置きましたのは、貿易とか投資だけの援助じゃない、お金なり物の流れではカバーのできない問題というのが先ほど御指摘になりました環境の問題とか、それから本当に貧困の国には投資をする国なんというのはないわけですから、そこまで持っていくためのODAであり国際貢献であるというふうに理解していただく。私の真意が大変短い時間で申しましたものですから伝わらなかったかとも思います。  それから、私どもが国際貢献をし、世界の中で日本が望ましい成長を保ちながら、しかも住んでいる国民にとって望ましい社会とは何かというのは四次元にも五次元にも方程式を解かなきゃならないような問題で非常に難しいことだと思うんですけれども、ただ、今までどちらかといえば、私なんか外から見るという癖がついております者にとりましてはやっぱり国内的な方に座標軸がずれて、ずれてというのか向いているのではないかと思うので、きょうは外からの方をお話しさせていただいた次第です。
  76. 広中和歌子

    広中和歌子君 次に、河口公述人にお願いいたします。全部お答えいただけるかどうかわかりませんけれども、ちょっと述べさせていただきます。  日本経済の競争力の強さというのは、過去、エネルギー危機を乗り越え、また円高不況を乗り越えたということで証明されているわけですけれども、これは生産ラインの合理化とそれから技術革新を徹底的に行ってきた結果というふうに言われております。  今回の不況でございますけれども、これはまず金融、証券、デパートと、都市型不況に始まったと言われていまして、つまりサービス産業を直撃した不況だというふうに言われているわけですけれども、日本サービス産業における労働生産性が低いということは事実でしょうか。そしてその理由は何かということ。  それから、サービスを低下させず、時短、休日をふやすにはやはり何かストラテジーが必要だと思いますけれども、つまり一つの仕事を自分だけで抱え込むんじゃなくて、それをシステム化することによってだれでもしやすいというような抜本的な対応が必要なんじゃないかと思いますこと。  それから、そういう中で今までの日本的雇用が非常に難しくなってきた。特に中高年層の人たちが失業の不安におびえているという状況があるわけでございますけれども、日本的雇用の行方はどうなんだろうか。  そして、先ほどの佐々波先生への御質問にもかかわりますけれども、もし給料がこれから伸び悩むというような時代が長く続きますのならば、当然物価を下げることに取り組まなきゃならないと思いますけれども、連合のお立場はどうかお伺いいたします。
  77. 河口博行

    公述人(河口博行君) 最初の生産と雇用、あるいは現在の不況とサービス、あるいは日本の雇用問題についての問題認識と問題提起の諸点については、ほとんど同じ問題点を持っておるということを申し上げておきたいと思います。  それから、特に中高年の問題で申し上げれば、この点につきましては緩やかな改革が必要である。急激にやりますと日本社会の基本的な秩序を根底から変えるということを意味しますから、その面では企業も十分我慢して、そして全体で変えていくべきものだということを申し上げておきたいと思います。  それから、物価の点につきましては、よく言われますように日本一〇〇に対してアメリカは七〇ポということを言われますが、ある面からいえば生産性もおおむねそれに近い状態にあると思います。ある面でこの点に関しては連合と日経連は共通認識を持っておるわけでありますが、その面では生活大国五カ年計画でも主要課題になっております内外価格差の是正というものは十カ年ぐらいで是正を図っていくべきではないか。少なくとも年度三%ぐらいの是正がされなければならない。その面では物価政策というのは物価安定政策ではなくて、物価引き下げ政策政府も転換していただきたい、このように考えております。
  78. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。
  79. 長谷川清

    長谷川清君 民社党の長谷川でございます。  佐々波先生に一点お伺いをしたいんですが、ODAの問題について、何かこれは一兆五千億、いい知恵が使い道としてないんでしょうか。現状で言いますと、大体お金を貸すんでございますね。借りた国は利子をつけて返さなきゃいけない、向こう三十五年かかってずっと。借りたときにはありがたいと思いますけれども、今度は長い間かけてこれを返さなきゃいかぬ。  あるいはまた、研修生を国内に入れましても、お国に帰ったときには親日家になっているんじゃなくて反日家になってしまうような、こういうありようというものは何かいい知恵がないんだろうか。額を下げてでもあげる方がいいんじゃないかとか、アメリカの米を買ってそれを渡して、そういうお米の方が口に合う国はいっぱいあるわけでありますから、といった何かそこにいい知恵がないだろうか。この点についてどうでしょうか。
  80. 佐々波楊子

    公述人佐々波楊子君) 先ほどのODAの効率性といいますか、の問題につきましては、かなり受け手の国の問題もありまして、非常に長い間借りても効率性が発揮できないというのはかなり出し手としての問題で、ちょっと難しい問題があるかと思うんです。  第二点の、親日じゃなくてむしろ嫌いになって帰ってしまうというのは、先ほど申しました支援体制というのが、日本は物を習ったりすることは長い間百年以上やっていたんですけれども、今度は自分の持っているものを人に使うと。それでもここ数年来かなりよくなったかと思うんですけれども、例えば私どもの大学で見ておりましても、留学生というと留学生会館をつくって別の講義メニューをこなして、よく言うんですけれども、アメリカ人の留学生がやってきまして、スタンフォードの大学院生がバークレーの学生と仲よくなって帰ってもしょうがないのよねなんて言うんですけれども、留学生仲間はまた、これは日本の出島じゃないのなんていうことを言っておりました。  それを改革するには、やっぱり日本の学生寮ですか、何か日本はお客様はいいところに泊めなきゃいけないと思っている。それというのが自分のところが社会資本といいますか、それぞれの家が貧しいといいますか、学生寮なんというのは従来型の発想でやっておりますものですから、それをレベルアップするというのが先ほど申し上げましたようないわゆる支援体制であって、これはODA予算ではなくて、何でしょうか文教設備費なんでございましょうか、それとの関連というふうに考えております。
  81. 長谷川清

    長谷川清君 わかりました。  それでは、河口公述人にお願いしたいんですが、生活大国と言われる柱の中の一つの住宅という問題ですね。これは、恐らく連合傘下のそれぞれの皆さんも関心を持っていらっしゃると思いますが、今連合の中の職場では「一戸建て 周りを見れば 一戸だけ」なんという川柳がはやっておりましてね、あるいは「一戸建て 手の出るところは 熊も出る」なんという話がいろいろはやっておりまして、非常に悲しい現状だと思います。  宮澤総理は、今我々が進めようとしております生活大国の中の一つの基準のとり方として、年収の八百万というのを基準にとっているんですよね。ここについてちょっと問題意識があるんですけれども、この八百万というのは平均値をとっているんですよ。しかも世帯所得なんですね。これは現実的には今家が欲しいという年代層の年間所得は下がっているはずであります、六百万台でしょう。ここに基準のとり方も違いますし、よしんば百歩譲って今八百万を基準にしてその五倍というこのスケジュールですらなかなか現実の問題はさっき言った状況ですから、そういう川柳がはやってしまう、もうあきらめておる、こういう実態とこの計画との差があると思うんですね。  この辺のところのとり方について、何か連合の方で具体的にそこはこういうふうになっていくべきだという点があるのではないかと思いますので、そこをひとつお聞きしたいと思います。
  82. 河口博行

    公述人(河口博行君) 的確な川柳で、そのとおりというふうに認識いたします。  それから、御指摘の点の年収の五倍ということについてでございますが、このことそのものについては数字的根拠をどこまで正確に言うかはありますが、世間一般と今日の住宅事情からいえば妥当な目標かと認識せざるを得ないんです。多少無理して認識するところがあるわけでありますが、申し上げたいことは、戦後以来今日までの日本住宅政策の場合に、もうほとんど持ち家と公共住宅だけ、賃貸住宅というものはほとんど放置されてきておりますが、先ほど申しましたように今国会で出されております建設省の特定賃貸住宅法案というものは、いわゆる賃貸住宅の画期的な住宅政策というふうに言っていいと思いますけれども、持ち家と賃貸住宅と並行的に進めていくべきである、その面では生活大国論の点で賃貸政策の面が足らないと私は思っております。  それは、端的に申し上げれば共同住宅の共有部分は三分の一以上、全建築費の二割ぐらいは公的に出していきましょう。だから、家賃は市場価格だけど差額は家賃補助いたしましょう、多いところは月十万から五万ぐらいの家賃補助しましょう、利息は四・五%を二%ぐらい利子補給しましょうと。相当思い切ったものでございますから、そういったものがことし高齢住宅とあわせて進められようとしますが、こういったものを積極的に進めることによりまして、結果的には借家に住んでも持ち家に住んでも同じ、生涯通じてそういう状況になる。そうしないと資産格差による格差が非常に拡大しておりますから、そういったことが可能になるのではないかと思っております。
  83. 長谷川清

    長谷川清君 どうもありがとうございました。
  84. 高崎裕子

    高崎裕子君 共産党の高崎です。  河口公述人にお尋ねいたしますが、先ほど春闘が三・九一%と言われました。これは私はやっぱり極めて低額だと思うんですね。勤労者の個人消費は国民総生産の六割近くを占めています。総務庁の九二年の家計調査報告速報によっても、昨年の消費支出、これ実質ですが、わずか〇・四%増、勤労者の可処分所得も〇・五%増、実に九年ぶりの低い伸びで、これが消費不況を招いているわけですが、その主な原因が賃上げ、一時金が抑えられ、残業代が激減しているということなんですね。  今日の不況を克服する上で大きなかぎとなっているのが個人消費を拡大することだと思うんですが、そのためには残業なしでも暮らしていける賃金水準に引き上げるということで、そのためのやっぱり大幅賃上げということは不可欠であろう。  それから、もう一つはやっぱり所得税減税で、この減税の財源について言われるわけですけれども、四兆六千億円に膨らんだ軍事費を半減する、あるいは国際的にも例を見ない大企業の優遇措置、引当金・準備金制度を整理縮小するとか、企業設備の償却年数を延長するなど、こういう不公平税制を是正するだけでも財源としては十分あるわけです。  こうして国民労働者の懐を暖かくして個人消費を拡大をするということが不況打開の道と考えるわけですけれども、この点いかがでしょうか。
  85. 河口博行

    公述人(河口博行君) ありがとうございます。  賃上げの点につきまして率直に申し上げておきたいと思います。  先ほど冒頭に公述するときにも申し上げましたけれども、当初大多数のエコノミストは三%の前半の前半ぐらいかという状況でございましたが、現在時点で申し上げれば一万七百二十二円で三・九一%でございますが、今から中堅、中小等の組合が第二段階の交渉に入ってまいりますけれども、まあ、過去数年の実績で言えばさらに上がっていく状況にございます。それによって実質賃金維持され、実質生活が向上をしていく。こういう状況になって、連合の言葉で賃上げたけに端的に限って申し上げれば、この結果については率直に満足しておりません。もう少し率直に申し上げれば不満であると思っております。  余分でございますけれども、日本の経営者も日銀もそうでありますが、冬から春がなくて、いきなり夏を迎えるような感じでございまして、これに不況が重なっております。十分とは思っておりませんが、激励というふうに受け取りますので、今後さらに頑張ってまいりたいと思っております。  それから、所得税をめぐる財源についてのことでございますが、ある面で一つの御意見というふうにお伺いをしておきたいと思っております。
  86. 高崎裕子

    高崎裕子君 もう一点、河口公述人にお尋ねいたしますけれども、大企業の側から見ても、大幅賃上げの要求に対して、それにこたえる十分な体力、蓄積があるという点を指摘したいと思うんです。  大企業四百三十三社がバブルの中でも八十八兆円を超える内部留保を行っています。トヨタ、日立ても、円高からバブル経済を通じて、八五年と九二年を比較しても二倍近くの内部留保。電機十六社で見ても約十兆九千億円で、バブル経済前の八五年九月と比べて七年間で五兆円近くふえ、バブルがはじけた九二年九月までの一年間でも千五百億円ふえているわけです。  ですから、これ、三万五千円の賃上げで試算をしても、四百三十三社の内部留保はわずか二・四%吐き出すだけで三万五千円の賃上げが実現できるという点でも、長年の高収益による蓄積の一部を放出させるだけで残業なしで暮らせる賃金という、労働者賃上げ要求にこたえるということは十分可能だというふうに思うのですけれども、この点いかがでしょうか。
  87. 河口博行

    公述人(河口博行君) 今、高崎先生が御指摘の内部留保の問題、経営者はいつでも、何といいますか、我慢を強調します。景気のいいときは将来不況に備えてと、不況のときは不況だから我慢しろと、大体こういう感じでございます。  今、高崎先生が御指摘のように、内部留保があるではないか、将来は日本成長するではないかと、今とほとんど同じようなことを要求の根拠にしてぐいぐいとやっていたわけでございますが、賃上げも単年度、労働組合も単年度決算ではちょっとやっていけないという状態に来ておりますから、少し中期的に、今御指摘の点を生かして、取り損ねたというとちょっと組合的でございますが、足らない点を少し回復していきたいと思っております。中期的にまた御評価をいただければと思います。
  88. 高崎裕子

    高崎裕子君 ありがとうございました。
  89. 磯村修

    ○磯村修君 私は、民主改革連合の磯村でございます。よろしくお願いいたします。  ごく一般論からお伺いいたします。  まず、河口公述人にお願いしたいと思うんですけれども、私どもも、今、勤労者の所得減税ということは賛成の立場に立って主張している立場でございます。ともかく今の経済不況というのは、私どもの立場から申しますと、その主たる原因といいましょうか、いわゆるこの経済不況に伴いますところの生産調整、こういうことから、そこで働く人々の所得減少ということがつながってきている、それがやはり景気の、消費の落ち込みにも大きく結びついていると。こういう点からいろいろ考えてまいりますと、所得減税ということはどうしても考えていかなければならない問題であると、こういうふうに受けとめているわけでございます。  そこで、私どもこの予算委員会でも、所得税減税につきましては各党の皆さんからもお話が出ていたわけなんでありますけれども、政府の御答弁の中では、所得減税につきましての波及効果あるいは財源問題等を考えて新年度予算の選択をしたんだと、こういうふうなことが申されているわけなんでありますけれども、そうした政府側のお考えに対する評価、受けとめ方はいかがなものかお伺いいたします。
  90. 河口博行

    公述人(河口博行君) 今の場合に、先ほど来少し強調していますように、景気の落ち込み、消費の落ち込みの場合に、上っていく局面もありますけれども、反面二段底で割れる状況も両方持っておるという状況であって、それでまず、所得税減税は日本経済が新しい成長軌道に乗るための、ある面からいえばポンプの呼び水のような効果的役割を持っていると思っておりますけれども、タイミングを外した場合には効果が出ないというふうに思っております。  したがいまして、政府が現在出されて、また一番今なされなければならないのは、宮澤総理の訪米の日程もほぼ確定的になっていると思っておりますけれども、それまでの間に、賃上げも一定の役割を果たしますけれども、減税並びに景気対策を含めて政府の態度を明確にすることではないか。衆議院を舞台に与野党の協議が行われて、前向きに検討する等の見解も出されておりますけれども、そういったものを少なくとも訪米前までに明確にされるという政府の態度が極めて重要と思っております。それによって著しく変わってくると思います。それがある面で企業マインドも変えますし、消費者マインドも変えていくというふうに認識をしております。  それから、ついでで余分なことを申し上げていきたいと思いますが、買いたいものということが先ほど来話題になっておりますけれども、ある面で、今の企業活動もその面でやや防衛的といいますか、萎縮し過ぎている、新しいマーケットの開発に対して弱いといいますか足りないというふうに思います。  少なくとも高齢化社会へ向けて、高齢化に向けた住宅であるとか、あるいは一つの例で申し上げれば福祉機器とか、あるいは先ほど来情報に関連する幾つかの課題が出ておりますけれども、そういったもので伸びているものはたくさんあるわけでありまして、不況になると一斉に全部不況になって萎縮してしまうというようなところがございますけれども、そういったものが減税等を通じて一つの呼び水になって新しいものが伸びていくと思います。恐らく、桜の花が咲くとともに、毎年のこととは言いながらも、急速に回復する条件を持っているだけに、今の政府の態度というのはもう極めて効果を持ちますだけに、政府の決断をぜひこの国会で求めていただきたいと思います。
  91. 磯村修

    ○磯村修君 所得減税を実施しますと貯蓄に回ってしまうとかという論議がたびたびあるんでございますけれども、これは先ほど来お話が出ておりますように、いわゆる先行き不安という消費者の気持ちから貯蓄に回るんじゃないか。要するに、その先行き不安を解消していくためには何といっても政策の責任であると、こういうふうに私考えるんです。これは貯蓄に回るというんじゃなくて、やはり景気の先行きが心配だから若干貯金するんだという、私はそういう傾向になると思うんです。そういう意味合いにおいて、その心配をなくすことが政策であり政府の責任でもあると思うんですけれども、その辺の河口さんのお考えはいかがですか。
  92. 河口博行

    公述人(河口博行君) 基本認識は全く同感でございます。  特に、もう政府立場は、あるいは国会立場もそうでございますけれども、国民にある面での安心を先導する立場にございますので、その心理的効果というものは非常に大きいということを重ね重ね強調し、また、戦いには戦機があると同じように、やはり景気対策にも戦機があるということを、大変僭越でございますけれども申し上げておきたいと思います。
  93. 磯村修

    ○磯村修君 もう一つ、佐々波先生にお伺いしたいんですけれども、先生も御家庭に帰ると台所に入っていろいろと調理もすると思うんです。こういう所得減税のお話が出てきますと、すぐに消費税の税率云々という話がぱんとこう飛躍して出てくるんですよ。これは非常に論理が飛躍していると、私はそう考えるんです。  もう時間がございませんが、一言お伺いしたいのは、税制改革ですね。  税制改革というのは、やっぱりぽんと消費税の税率を上げるのだというそういうのではなくて、もっと不公平税制の是正からまず考えなければいけないんだと私どもは考えるんですけれども、税制改革について一言御意見をお伺いしたいと思うんです。
  94. 佐々波楊子

    公述人佐々波楊子君) 私どもの立場ですと、改革というのは理念がまずあって、それから制度をきちんとするというのがあって、それと台所の前がけというのはちょっと落差がありまして、台所の前がけの方は今日的で、むしろその今日的なものはちょっと別なんじゃないかというのが私の感覚でございます。
  95. 磯村修

    ○磯村修君 ありがとうございました。
  96. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 日本新党の武田でございます。  農業問題でございますが、農業外の立場から両先生の御意見を伺いたい、こう思います。  今、農水省は壮大な構造改革をやろうとしておりまして、大体戸当たり十ヘク、二十ヘクの規模拡大をやると。現在の十倍、二十倍ですね。田んぼ、畑、果樹園のつくり直しに十年間で四十一兆円の事業費を投入すると。一年平均四兆一千億ですね。これはうまくやれば私どもは方向としては大変結構だと思います。つまり田んぼ、畑、果樹園のつくり直しの設計をうまくやれば、大体ほとんど行われておらない二毛作、裏作を青森県まで全部やることができます。今、穀物の自給率はわずか三〇%でありますけれども、六〇から七〇%ぐらいに引き上げることが可能であります。値段も半値、三分の一にすることは困難でありませんし、徹底してやればやがて輸入価格ぐらいに、大体六分の一になる可能性もなくはありません。貿易の黒字が幾らかふえるのはちょっと問題でありますけれども。  いずれにしても、投資効率が高い設備投資であることは間違いがないんですが、それを十年間に四十一兆円使う。ウルグアイ・ラウンドのことを思いますと、私どもは五年間でやってもらいたいと思うんです。そうなれば一年間に八兆二千億使うわけですが、そういう農業の設備投資が当面の景気なりあるいは経済成長なりにどの程度評価できる影響を持ち得るかということをお伺いできればと思います。
  97. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 先生、どちらの公述人にお聞きですか。
  98. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 できれば両先生です。時間があれば。
  99. 佐々波楊子

    公述人佐々波楊子君) 景気拡大のことを最初に申し上げましたのは、いわゆる日本だけが世界の国ではないわけで、与えられた国際環境の中でどうやって成長をしていき、かつそれを国際的に調和的に持っていくかということの中での成長誘発でなければならないというふうに思っております。  ちょっとよくその計画の詳細がわからなくてコメントしにくいんですけれども、今のウルグアイ・ラウンドの現状からいたしまして、農業を含めましての補助金というのが焦点になっております段階で、そのような計画というのがどういうような国内でのお金の補助金とのかかわりになっているのかちょっとわかりませんのでコメントできないんですけれども、産業補助金というものに対して極めて鋭いというんですか、厳しい目が向けられているということだけ一言申し述べたいと思います。
  100. 河口博行

    公述人(河口博行君) 基本的には、その政策についての理解を表明したいと思いますが、今、御質問で私が受けましたことは、現下の景気対策というよりも、先ほど広中先生が成長環境の点について御指摘でございましたけれども、そういったものについて日本の国土というものを残していくというものの視点で考えた方がいいのではないか。それから、人を含んだ日本農業の再生と申しましょうか、そういった面で新しい人材が農業経済といいますか農業社会に入っていくという条件がよりできればいいと思っております。  ついでに申し上げさせていただければ、今、労働組合と農協との定期的な協議を行っておりまして、ある面での連携を含めて日本の農業の再生また私たちに対する理解というものを深めていくようにしていきたいと申しておきます。
  101. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
  102. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  103. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 速記を起こして。    〔理事井上裕君退席、委員長着席〕     ―――――――――――――
  104. 遠藤要

    委員長遠藤要君) それでは、引き続き二名の公述人方々から項目別に御意見を伺います。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  お二方には、大変御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、平成五年度総予算三案につきまして、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人二十分程度の御意見を述べていただき、その後で委員の質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、まず社会保障につきまして、大熊一夫公述人からお願いいたします。どうぞ、着席のままで結構です。大熊公述人
  105. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) 大熊でございます。  私に与えられたテーマは社会保障であります。社会保障と申しましても、これは大変間口が広いものでありまして、二十分でこれをお話し申し上げるというのは大変無理がございますので、私がこの八年ぐらいかなり集中的に取材をしてまいりました高齢者の問題に絡めてお話し申し上げようかなと思って参りました。  社会保障の問題というのは、質と費用の両面から論じられなければならないものではないかと私は思っております。ところが、これまで国会論議でもややもしますと費用の面のみに何か焦点が当てられてしまう、そういう嫌いがありまして、私としては大変残念に思っているわけであります。金銭の側面というのは確かに必要不可欠ではあるんですけれども、もっと重要なことというのは、やはりその費用でどのような高齢者福祉、どのような高齢者に対する医療が国民に提供されているのか、つまりその中身が重要なわけであります。この日本で提供されております。その実態なのですが、私から見ますと大変お寒い限りでありまして、しかも日本の行政府も立法府もほとんどとんちゃくしてくださらない。ここが私には大変不満なところでございます。  高齢者の問題に入りますけれども、今、日本は他国に例を見ないスピードで高齢化が進んでおります。このことにつきましては、有権者の半分を占めます女性たちには大変大きな関心を呼んでいるところであります。私は二年半前までは朝日新聞の記者をやっておりましたんですが、大体ここ八年ぐらいかなり集中して日本の高齢者の問題を取材してまいりました。雑誌に発表したりあるいは何冊か著書がございまして、そういうことで人様の前でお話しするようなチャンスがたびたびございますけれども、大体いつも聞きにきてくださる顔ぶれは女性が九八%ぐらい、そんなような状態でございます。  何で女性が多いかと申しますと、結局、高齢者の問題といえば何が大変かといいますとその介護の問題でございますけれども、介護がだれに任されるかといえば日本の場合は女性でありまして、その大変さについてやはり敏感になっているのが女性である、これは当然の話であります。一方、じゃ日本の男性はどうかと申しますと、これはもうはっきり申して全くの無関心と申し上げて差し支えないかと思います。無関心であられる男性が牛耳るいろいろな社会の要所で、きょうの皆さんはどうか私は存じ上げませんけれども、大体本当は、何と言うんでしょうか、やっぱりこの種類の問題はややマイナーな問題としてとらえておられる嫌いがあるのではないか、そういう心配をしているわけであります。  一つ例を申し上げますと、たしか四年前のことだったと思うんですが、九月十五日の敬老の日でありました。ある高齢者問題のシンポジウムがございまして、そこに日本労働界の大立て者と日本経済界の重鎮と言われるような方がシンポジストに出ておられました。それで、司会者から、あなたが老いて年をとって体が不自由になったときにどうなさるおつもりかというふうに聞かれました。そうしたら労働界の重鎮は、そういううっとうしいことは考えないことにしている、そういうふうにおっしゃったんですね。それから、経済界の代表の方はこういうふうにおっしゃいました。うちには家内がいますし、よくできた嫁もおりますから大丈夫と。実は、このお二人の答えというのはかなり日本の男性のこの問題に対するとらえ方というのでしょうか、心構えというのでしょうか、を象徴しているのではなかろうかと思うわけであります。  それで、多くの男性が、年下の女房がいて万が一のときにはとにかくうまいこと面倒を見てくれるのではないか、そういうふうに思っておられる節があるわけですが、これははっきり申し上げて幻想だと私はここで断言しておきます。  なぜ幻想かといいますと、やはりもうかつての人生五十年時代と現在の人生八十年時代では全く状況が異なるということであります。例えば男性の皆さんが八十九歳ぐらいになられたとしましょう。すると、奥さんが八十七、八ということになれば、息子さんのお嫁さんは六十代ということになります。つまり、奥さんやお嫁さんに頼ろうと思ったって頼る先がさらにもう年をとってしまってそんなエネルギーは残ってない。この現実をまずきちんと踏まえないと、我々は何か大事なことを見逃してしまうのではないかと思うわけであります。  しかも、医学は大変進歩しておりまして、例えば半身不随になった状態の人のことを考えますと、その人々が平均余命はどのくらいかといいますと、実にお世話がよければ二十五年生きてしまうんですね。つまり、脳卒中で倒れて中風になってどちらかの手が動かなくなったとして、でもその先まだ二十何年と人生が残ってしまう。この部分をうっとうしいから考えないではちょっと、何というんでしょうか、余りに能がなさ過ぎると私は思うわけであります。  この問題は、日本ですととにかく家庭でだれかがお世話をするということになるわけですが、結局、家庭ではやり切れません。としますと、どこかへ預けよう。日本ですと特別養護老人ホームが用意されていますが、これは全く数が足りません。例えば東京で今ウェーティングリスト五千人ぐらいあると聞いております。とすると、やむを得ずどこか老人ホームにかわるところにお年寄りが預けられる、こういう実態がここに待っているわけであります。  私がきょう強調したいのは、そういうところに預けられるお年寄りの身の上が余りきちんと知られていないことの心配であります。こういうことの実態がわかって初めて社会保障政策が走り出す、そういうものでなければおかしいと思うわけであります。  いかに日本の体の弱った状態のお年寄りの身の上が大変なものかということを、これから幾つか実例でお話し申し上げます。  私自身がこの問題に気がつきましたのは今から二十三年前のことでありまして、一九七〇年二月であります。東京都内のある精神病院に入院いたしました。入院いたしましたというのは、朝日新聞の記者として私は中を取材するために、患者を装ってアル中に化けて、ただお酒を飲んで精神病院へ行っただけなんですが、うまいこと鉄格子の向こうに入れられてしまいました。それで、精神病院の中はまた別の大問題がございます。きょうはそこまでは触れる時間がございませんが、それで一番最初に遭遇したのが実は高齢者の問題でした。  その鉄格子のはまった私の入った男子閉鎖病棟の中に、さらにおりのような部屋が三つつくってありまして、不潔部屋と書いてありまして、そこに今で言う痴呆性老人と言われる方が四人、五人ぐらいを一部屋、そういう形で三つ部屋が用意されていたんです。私はやっぱりそういう形で病院に潜り込んで取材をしなかったら今の今までそういう目に遭っている人々がいるなんて全く気がつかなかっただろうと思いますけれども、とにかくその現実を見てしまったわけであります。実際、全員失禁状態でありますから、もうすさまじいにおいを発してまして、確かに不潔ではありますけれども、しかしこれは、人間としての扱いとしてはこんな扱いをしていいのかと思われるような状態だったです。私だったら、あれは殺された方がましと思うようなそういう状況なんですね。  しかし、こういうことはだれも社会問題として取り上げてくださるわけではありません。その病院は私に書かれてちょっと改善したでしょうけれども、でも日本を広く見れば似たような状況というのはまだまだ私は残っていると思うわけであります。  また、もっと近い例を申し上げれば、例えばこれは一九八七年、私がかなり苦労をして取材したことであります。  ある一軒の老人病院をターゲットにいたしました。二百十九人入院していました。神奈川県庁の監督下の課長さんがおっしゃるには、神奈川県の平均的な老人病院だということでありますが、二百十九人のうち、実に多い日で五十人、一番少ない日でも三十五人ぐらい、夕方六時から朝六時まで十二時間ベッドに縛りつけられているお年寄りがいました。こんなに縛りつけられて、これは大変なことだと私は思ったわけであります。また、二十六人の方がかぎのかかったスペースに閉じ込められていました。それから、閉じ込められたり縛られたりした人もちょっとダブっているんですが、四十人の方が精神病院でよく使われる抗精神病薬を投与されて薬で行動を抑制する、そういう方法がとられておりました。  つまり、この状況を何で我々は放置しているのかと申し上げたいわけであります。私は、こういうのはやっぱり病院と呼んだら間違えるんではないかと思います。あえて病院と言うなら、うば捨て病院とはっきり申し上げた方がわかりやすいのではないかと思うわけであります。  もう一つ、私は記事の中で病院の実名をきちんと書きました。これは当時、週刊朝日に私は十何回と連載をしたんですが、ちゃんと縛られた写真と病院の実名と書きました。何で実名で書いたかといえば、私は家族に知ってもらいたいと思ったからであります。また、私の書いたことがうそだと思われたくなかったからであります。  で、実際にじゃ御家族はその実態を知ってどのくらい自分の父や母を退院させたかというと、ほとんど退院なしなんですね。これはなくて当然なんであります。  つまり、日本ではまず一番最初に御家族が面倒を見ています。しかし、面倒を見切れなくなる家庭が当然たくさん出てきますね。そういう人々の唯一の助かる道といえば、これはお年寄りをどこかに預けることですね。その預ける先としてそういう私の入ったような病院がたくさんこの日本に用意されている、そういうわけであります。だから、私に書かれたからといってつぶれたような病院は一軒もないんですね、この二十年間。というのは、つまり、ちゃんとしたニーズがあるんです、残念なことに。  ですから、日本では病人や障害者を家族が面倒を見る、これを日本型福祉と称して何かたたえている方がいらっしゃいますけれども、これはとんでもない間違いだと思うんですね。もうその裏で大変な目に遭っておられて、捨てられて、さらに大変な目に遭うお年寄りがたくさんここにいらっしゃる。これをまず私はぜひ知っていただきたいと思うわけであります。  こういううば捨てされるような方、うば捨て病院に入るような方がどのくらいいるか。これはちゃんとした統計はございませんけれども、病院統計から、何歳以上の方が例えば半年以上入っているとかそういう形で類推することは可能でありますけれども、実にこれは三十万人に届くのではないかと思うわけです。これは到底無視するような数ではないと思うわけです。  それから、縛られたり閉じ込められたりだけが虐待ではありませんで、例えば寝たきり老人、今日本では一口に七十万人と言われますけれども、これだって本当は人手をちゃんと加えられれば寝たきりにならないで済むということがはっきりしております。国際比較でデンマークやスウェーデンに比べて日本の寝たきり老人は一けた多いということもはっきりしております。これは明らかにやっぱり我々がなすべき社会保障をきちんとやっていないということの証拠ではないかというふうにここで申し上げておきます。  日本だけ見ておりますとこんなものかなと我々思いがちですが、これはどうも違うようなんですね。例えばデンマーク、スウェーデンヘ行きまして、私は今までベッドに縛りつけられたお年寄りを見たことがありません。もう私は過去八回か九回訪問していまして、かなりしつこくその部分は取材しておりますけれども、いないんですね。いないのが当然であります。つまり、老人ホームで比較しますと、お世話の人手はデンマークで日本の三倍、スウェーデンで日本の四倍、それから、これが在宅のお年寄りを支える人手ということで考えますと、これは主としてホームヘルパーのことで考えていただきたいんですが、デンマークで日本の十五倍、スウェーデンで二十倍以上、そのくらいに違うんです。余りに違い過ぎるんですね。比較の対象にならないくらい大変な違いであります。これはいかにやっぱり我々は社会保障についてむとんちゃくであったかということの答えではないかと思うわけであります。  金銭の問題に戻りますけれども、社会保障というのはすごくお金がかかる、これは確かであります。例えば人手がそのまま人件費として返ってくるわけでありますから当然でありますのでも、言われているほどに、国が傾くほどにそんなに大変なものかどうかここを最後によく考えていただきたいんですね。  例えば、日本でデンマーク並みにホームヘルパーをそろえますと五十万人ぐらい必要です。現在まだ四万人ぐらいですから、一けた以上必要です。じゃ五十万人のホームヘルパーを本気で我々は手に入れたとしますと、幾らかかるでしょうか。これをもう飛び切り年収を弾んで一人四百万円としましょう。四百万円掛ける五十万人です。二兆円です。二兆円は高いでしょうか。我々、今日本国民の金銭感覚としてはこんなもの決して高いとはだれも言わないと思います。それから、あるいは老人ホームの人手、あるいは車いすに関するもろもろのそういう高齢者の問題の費用、出費を含めたとしてもせいぜいが四兆円何ぼ、そんなレベルの問題なんですね。  ですから、ちまたでよく言われるように、税金が物すごく高くならないとこういうことはできない、これは実は真実ではないと思います。北欧でのあの物すごい高い税金というのは、もう住宅費から、すごい教育費から、それからさらに日本の看護婦さんが四倍ぐらい働いているあの病院の費用から、全部ひっくるめての社会保障費であります。ですから、事高齢者のことを大切にしようという費用からしたら、デンマーク、スウェーデン並みのあの物すごい税金は実は必要ないんだということをぜひここで強調しておきたいと思います。  時間がございませんけれども、とにかく実態が掌握されていないということを私は最後に強調しておきたいと思います。  高齢者の問題に限らず社会保障の問題というのは、まず実態が掌握されて、この人々にどんな生活をしていただくべきなのか、それには幾らかかるのかそこで最後に財源をどこから求めるべきか、そういう話にならなきゃおかしいわけでありますが、今のところ、そういう順序で話が全然きていない。  それから、実態については、日本の行政機関はきちんと調べてくだすったという経験が私にはありませんし、立法府から建設的な提案がなされたという記憶も私にはございません。ぜひともこの実態の掌握こそを社会保障制度の基本に置きまして、まずその部分に、こうしてせっかく私に発言の機会をつくってくだすったわけですが、最後ここで強調させていただきたいのは、ぜひともその実態に多大の関心を寄せていただきたいとここで切にお願い申し上げまして、私の話を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  106. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  次に、雇用につきまして小野旭公述人にお願いいたします。小野公述人
  107. 小野旭

    公述人(小野旭君) 一橋大学の小野でございます。  雇用問題につきまして御報告を申し上げます。  私の報告は大きく二つに分かれておりまして、前段部分は最近の雇用情勢について、後段部分におきまして供給制約下の問題について簡単に触れたいと思います。ウエートは最近の雇用情勢に置かれます。  御存じのとおり、一九九一年の三月、一昨年になりますか、有効求人倍率が一・四六という非常に高い値を記録して以後、一貫して低下を続けまして、昨年の十月にはこれが一を切りました。昨年の十一月有効求人倍率が〇・九四、それから十二月に〇・九二、この一月は〇・九三と、こんなふうに推移しておるわけであります。    〔委員長退席理事井上裕君着席〕  このような有効求人倍率の急速な低下にもかかわらず、失業率は長い期間二%あるいは二・一%ぐらいの値をとっておったわけでありますが、これも昨年の十一月に二・三%、それから十二月に二・四%と上がりました。一月は二・三%というふうに下がっております。  以上のような指標の動き、これは絵にかいてみるとよくわかるのでありますが、最近少し底打ちをしたかなというふうに思えなくもないのでありますけれども、しかしながら有効求人の月次系列をずっと眺めてみますと、これはもう一貫して下降趨勢をたどっておる。それから有効求職者、これの月次系列も趨勢的には上昇しておりまして、雇用情勢はしばらく厳しい状態が続くのではないか、こんなふうに考えられます。  最近の雇用情勢の悪化は、他の若干の指標からも裏づけることができます。三つだけここでは指摘したいと思います。  一つは、よく取り上げられます日銀の短観でありまして、労働力過不足感であります。これは過剰と考える企業の割合から不足と考える企業の割合を引いたものでありますけれども、これが昨年の十一月ごろより大企業でも過剰感に転じておりますし、中小企業でも不足感が大変後退しております。  それからもう一つの指標は、雇用調整方法別の実施事業所割合であります。この雇用調整、いろいろあるわけであります。一時帰休とか解雇とかあるいは残業を減らすとかいろいろあるわけでありますが、この雇用調整実施事業所割合、これは製造業をとってみましても、あるいはサービス業をとってみましても、円高不況期の水準に達しております。大体四割ぐらいの企業が何らかの雇用調整を実施しておるというのが最近の情勢であります。ただし、さっき言いました一時帰休とかあるいは解雇というような、そういう極端な方法をとっている企業の数は少ないのでありまして、多くは残業規制あるいは中途採用者の抑制、こんなような方法をとっているようであります。  それからもう一つは、雇用調整助成金の対象常用労働者数であります。これは、ことしの三月一日現在でありますが、対象労働者の数が大体二百四十万ぐらい。これは円高不況期の値にほぼ匹敵します。当時の八七年三月が二百三十万ということでありますから、大体円高不況期に匹敵するぐらいの対象労働者数である、こういうことであります。  以上のようなマクロ的な議論に加えまして、ちょっと追加しておきたいことがあります。それは、年齢別の議論と地域別の議論であります。  年齢別に失業率を見ますと、御存じであると思いますが、U字型をしておりまして、若いところでは失業率が非常に高い。中年ぐらいでは下がりまして、高年になるとまた失業率が上がっておるわけであります。このU字型をしたまま、最近の雇用情勢の悪化に伴いまして失業率が全体として上に上がっておるというのが実態であります。例えば十五歳から二十四歳では四・三%から四・六%に上がっておる。それから六十-六十四歳、大変な高齢の部分でありますが、ここでは三・六%から四・二%に上がっておる。この高齢の方が上がりぐあいが大きいわけであります。こういうぐあいに年齢別に見ても、この雇用情勢の悪化ということが観察できます。  有効求人倍率は、これは若い人は非常に高く歳をとるとだんだん求人倍率が低くなるわけでありまして、求人倍率が若い年齢層で高い。例えば十九歳以下で最近でも三倍ぐらいの有効求人倍率であります。つまり、若い人は失業をいたしましてもすぐに口が見つかるわけでありますが、歳をとった方たちは一たん職を失うとなかなか仕事を見つけるのが難しい。これは六十-六十四歳の求人倍率が最近で〇・二を切っております。大変低い値であります。したがいまして、一たん職を失いますと仕事を見つけるのが大変難しい、こういうことであります。  それから、地域別の問題でありますが、これは北海道とか東北、それから南関東、近畿、九州、こういうところで有効求人倍率が一を切っております。そういう地域ではまた失業率も他に比して高い値をとっていることは言うまでもありません。それらの地域は、地元に非常に成長産業がないというようなことによって有別求人倍率が低くばっているということもあるわけでありますけれども、他面、最近の不景気が工作機械とか電子部品とかあるいはソフトウエア産業、こういうようなところに集中しておるわけで、そういう産業のウエートの大きい地域で有効求人倍率が非常に大きく低下する、こういうことが言えるのではないかと思います。こういうふうに、今申しましたように雇用情勢は悪化の一途をたどっておるのでありますけれども、この雇用情勢の悪化の中で、先ほどちょっと申しましたけれども、我が国の失業率が比較的安定的に推移したわけであります。以下では、なぜこういうふうに失業率が安定的に推移し得たのかという点について、二つの要因を指摘したいと思います。まず第一は、企業内の余剰労働の存在ということであります。例えば、鉱工業の生産指数をとって見ますと、最近ずっと下がっている。しかしながら、労働投入指数の方は生産指数ほどは下がっていない。そついうことで、企業内に余剰労働力があるのだ、こういうことは幾つかの研究機関でも発表しておりますけれども、そういう生産と労働投入指数とり関係から余剰労働、こういうことが言われているわけであります。ただ、私は、余剰労働ということが言われてこれは現に存在するわけなんでありますけれども、この解釈として、次の二点をちょっと諸先生方にお伝えしたいわけであります。  一つは、例えば生産指数が製造業で下がっている。しかしながら、よく見ますと、雇用指数あるいは就業者指数も微増しておるんですね。なぜ微増しておるのか。これは、いろいろな理由があると思いますけれども、一つは、やがて労働力の供給制約、こういう事態が来るだろう、そういうことを見越して労働力を少しふやしているというところもあるかもしれません。もしそうだといたしますと、余剰労働の全部が意図せざる余剰とは言えない。少し計画的に余剰をため込んでいるというところもあるかもしれない。こういう解釈が一つであります。  もう一つは、終身雇用というのが我が国ではあるわけでありますが、この終身雇用のもとで不況下に余剰労働が出るというのはある程度予想されるところであります。  ところで、この終身雇用制度というのは一体どういうものかと申しますと、これはいろいろ考え方があるのでありますけれども、私は長期雇用を通じて労使間に信頼関係をはぐくむ制度である、こういうふうに考えております。  学者によっては信頼というのも一つの財であるというふうに考える学者もおります。ただ、この信頼という財は、町へ出ていってスーパーで買うというわけにはいかないのでありまして、これは企業の中で長い期間をかけ育てていくしかないわけであります。こういう長期雇用を通じて信頼関係を築く、これが大変重要なことなのでありまして、企業の組織上の効率もそれによって上がってくる。そういうことでもって企業は大変利益を受けるわけであります。その見返りとして不況下には雇用の削減を企業が控える。こういうことでありまして、こんな観点から考えますと、余剰労働の存在はただ単に余った人間を抱えているということではありませんで、信頼関係の形成あるいは信頼関係の確認というもっと積極的な意味があろうかというふうに考えております。  いずれにせよ、こういう終身制度のもとで雇用減少、失業の増大というプロセスが回避し得たことは事実であります。  もう一つは、労働供給側の事情にかかわることでありまして、求職意思喪失効果と呼んでよろしいものであります。ディスカレッジンクエフェクトと英語では言っておるわけでありますが、これは昨年の二月ぐらいから七月ぐらいにかけまして労働力率が六四・五%から六三・五%に一%ポイント低下いたしました。わずか一%ポイントの低下でありますが、これが大変重要であります。  というのは、十五歳以上人口は約一億いるわけであります。一億の一%というのは百万人であります。つまり、労働力率が下がったということは、百万人の労働力が追加的に労働市場に出ないで済んだということなんですね。これが日本の失業の上昇を回避させたもう一つの大きな理由であります。  ただし、この求職意思喪失効果と申しますのは短命でありまして長続きがいたしません。その後、つまり昨年の八月以降は労働力率が上昇しておりまして、これは先ほどちょっと申しましたけれども、有効求職者数の上昇というのが最近出ておりますけれども、そういう中にも反映されているわけであります。  いずれにせよ、しかしこういう企業内余剰労働、これは終身制によるもの、それから求職意思喪失効果、こういうものによって日本の失業率が比較的安定的に推移したということであります。  ちょっとこの席をかりて強調したい論点が二つあります。  一つは、今申し上げました日本の雇用慣行に関してでありますけれども、最近一部の外資系の企業とかあるいは日本の企業の中でも、労働者とりわけホワイトカラーの解雇を行っておるところがありまして、終身雇用制度は崩壊してしまうのではないか、こういう懸念が表明されておるわけであります。この問題を論ずるに当たりましては、さっき申しましたことになるわけでありますが、終身雇用制度の本質は一体どういうことなのか、こういうことをはっきりさせる必要があります。  さっき申しましたように、終身制度というものは信頼という財を調達する機構である。これによって企業の組織効率が上がるわけであります。多くの経営者はこの点を認識しておると思いますので、若干の企業の行動によって私自身の予想では終身制度ががらがら崩れてしまうとは思いません。ただ、オリジナルな形態の終身制度、これは子飼いとかあるいは同一企業による雇用保障とかこういう中身を持っているわけでありますが、子飼いというような制度は、これは若年労働者の意識の変化によって変わっていきましょう。あるいは同一の企業による雇用保障、これも同一企業ではなくて、あるいは企業グループによる雇用保障、こんなふうに考えた方がいいかもしれません。  とにかく、こういうぐあいに多少の変質はあるかもしれませんけれども、少なくともコアになるような労働者に関しては依然として長期雇用による信頼という財の生産、育成というものが今後とも行われていくのではないかと思います。これは国際的にも共通したことでありまして、日本は勤続年数が長いというふうにこう言われているわけでありますが、統計資料によりますと、ヨーロッパの国の中にも日本と同じくらい勤続年数の長い国があるわけでありまして、何のためにそういう長い勤続年数がとられているかというと、やはり信頼関係の形成によって企業効率を高めよう、こういうことで日本だけじゃなくてヨーロッパ諸国の中にも勤続年数の高い国が発生してくるのではないかというふうに考えます。  それから、強調したい論点の第二番目でありますが、最近いろいろ景気に関する見方が発表されておりまして、新聞報道によりますと、宮澤首相も景気に先が見えだというような発言をなさっておるようでありますけれども、さっき申しましたけれども、有効求人数の月次系列が一貫して下降趨勢をたどっておる、それから労働力率が上がっていて有効求職者が増勢の勢いを持っておる、こういうことでありますので、有効求人倍率は私の見るところではより一層悪化するということも予想できるわけであります。つまり、厳しい雇用情勢がまだ続くんじゃないか、こういうことであります。  仮に、生産面での回復ということがあったといたしましても、実は労働市場の出来事というのは多少おくれるのであります。これは前回の円高不況のときを考えてみるとよくわかるのでありますが、景気変動の日付によりますと、景気の底をついたのが一九八六年の十一月であります。それが底であります。ところが、雇用状態が一番悪くなったのは翌年の五月であります。  これは新聞紙上でも騒がれましたからおわかりでありますが、一九八七年五年に失業率が三・二%。これは現行の調査方式を採用して以後最悪の数字と言われたわけでありますが、三・二%になる。それから、失業者の数は百九十三万とか百九十四万と言われておりまして、失業者二百万時代は来るか、こういうようなことがささやかれたときであります。その間、つまり景気変動が底をついてから失業率が最悪になるまで円高不況のときは六カ月かかっているわけですね。半年ぐらいかかる。  そういうふうに生産とそれから労働、雇用の間にはラグがありますので、仮に生産の面で回復ということがありましても労働市場はしばらく厳しい状況が続く。したがいまして、雇用対策という面に関してはそういうおくれという面もお考えいただきまして対策を講じていただきたいというわけであります。まだ、今のところ気を許すことはできないということであります。  それから、ちょっともう時間もございませんので長期的展望に関してはごく大ざっぱなことしか申し上げる時間がありませんけれども、御存じのとおり、我が国は長い期間労働力人口の増加率が大体一%ぐらいで推移してきましたが、これがだんだん減っていきまして、二〇〇〇年になりますとこれがマイナスに転ずるわけであります。  こういう場合に一体どうして労働力を確保し、そして経済をスムーズな成長軌道に乗せるかということが問題でありますが、よく人手不足のときに言われるわけでありますけれども、過剰なサービスを見直すとか、それから働く意思のある人々を就業化させる。御婦人とかあるいはお年をとった方の中にもまだ就業意思を持つ方がおるわけでありまして、そういう人たちは大変多様なニーズをお持ちでありますから雇用管理が難しいのでありますけれども、そういう方たちに労働市場に出て就業化していただく、あるいは生産性を高める、こういうことであります。  これはごく大ざっぱな議論なんですが、横軸に労働力人口の伸び率を計ります。縦軸に実質経済成長率を計ります。OECDの加盟国全部で二十幾つありますけれども、一九七〇年から一九九〇年、この二十年間にかけて労働力人口の増加率、平均値をとります。それから、実質GDP成長率の平均値をとりますので、絵をかくわけであります。そうすると、しばしば言われるのは労働供給の制約があると経済成長率が落ちる、こういうようなことが言われるわけでありますが、絵をかきますと、これはクロスセクションの資料でありますが、分布は真ん丸であります。つまり、無相関であります。  一番労働力人口の高いところはカナダであって大体二・四%ぐらい、一番低いところはベルギーで〇・五であります。その範囲に日本とかアメリカが入るわけでありますが、分布は真ん丸であります。つまり、労働力というのはもちろん大切な資源でありますけれども、しかし成長率を規定するのは、労働力の動きというよりむしろ労働生産性というものが非常に重要である。したがって、この生産性をどうするかということによって今後の日本経済成長というものは大いに規定されてくるであろう、こういうふうに考えるわけであります。  ちょっと早口でしゃべりましたのでおわかりにくい点があったかもしれませんが、それは質問がありましたらそれで補いたいと思います。  以上でございます。
  108. 井上裕

    ○理事(井上裕君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  109. 野間赳

    ○野間赳君 野間と申します。  きょうは、両先生の御公述をいただきまして大変にありがとうございました。  それでは、まず大熊公述人に対してお尋ねを申し上げたいと存じます。  先生はジャーナリストとして各方面で御活躍になられまして、身をもって御体験をなされたお話をきょうこのようにかいつまんで開陳をちょうだいいたしたわけでございますが、今日、日本が抱えております問題、いろいろ大変な問題があるわ付でございますが、最も身近な問題といたしまして高齢化社会の問題がここに大きく横たわっておると私は考えます。  その中で、特に約七十万人とも言われます痴呆性の御老人の皆様方が大変私も気になっておることの一つでございます。今、国におきましては平成元年から高齢化社会ゴールドプラン十カ年という福祉政策を鋭意進めておるわけでございまして、今年度も具体的にその事業がいろいろこの予算にも盛り込まれておるわけでございますが、ヘルパーの問題を一つとらせていただきましてもこの十カ年で約十万人に到達をする、こういうふうなことでございます。今、大熊先生のお話を承りますと、スウェーデン、デンマークにおきましてはこういったものは物の比でないというような、五十万人もおいでになるというようなことでございます。  福祉は、いずれにいたしましても、高福祉というのはそこにやはり高負担という問題が横たわっておると私は考えます。お話にもちょっとちょうだいをいたしたわけでございますが、税金の問題に当然これは振りかかってくる問題でございます。消費税のあの三%の問題のときにも、やがて日本は高齢化社会を迎える時代で負担に耐えることができないというようなことで議論が集まったときであったわけでございますが、デンマーク、スウェーデンあたりの実は税制の関係が私は少し不勉強なわけでございますが、できましたらひとつそのあたりのことをお教えいただきたい、それが一点でございます。  もう一点は、先生いろいろ御心配をなされております老人関係の施設であるわけでございますが、私は、できますればそういうふうな施設をチェックをする機能がもう少し公共の立場で働かないものかなというような感じを持っております。当然今日、都道府県また厚生省の中におきましてもそういった問題は十分検討が加えられておるものであると思いますが、そのことが少し私も気になる問題でございます。  もう一点は、福祉のあり方というのはそれぞれの国がいろんな形で今日までやってきておると私は考えております。アメリカにおきましてはナーシングハウスのスタイル、また欧米型の先ほど先生から御紹介ございましたようなこと、また我が国日本におきましては在宅福祉を中心とした地域福祉を進めていかなければならぬというようなことで今日のゴールドプランが推し進められておるところであると私は考えておるわけでございます。  このように、国の方の方向が今日はっきり打ち出されておるわけでございますので、その内容の充実をより一層発展的に私はやっていかなければならない、こういうふうに考えておりますので、ひとつ先生のお教えをいただきたい、このように思います。
  110. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) まず第一点の北欧の税金の問題でありますけれども、国家間での税金の比較というのはそれぞれの国で仕組みが大変違いますから、余りずばりと比較するようなことはできないと思いますが、ちまたで言われますのは、例えばGNPの中で税金とそのほかの社会保障費を含めたあれがどのくらいのものか。これを日本ではよく国民負担率というような言い方をなされていますけれども、それで見ればスウェーデンがたしかGNPの中で七四%でしょうか、日本がたしか二十数%、そのような大変な開きがあることは事実であります。  例えば消費税で比べれば日本は三%、スウェーデンは二五%とか、あるいは今大体GNP国民一人当たりの額は北欧も日本も似たようなものと考えまして、もうこれは直観的な庶民の税金、自分の所得の中でどのくらい税金が取られるのかというようなことで、私の取材を通しての感じからしますと、日本人の倍以上払っている、そういうようなものであることは確かだと思います。  ただし、先ほども私強調いたしましたけれども、それはすべて高齢者福祉に使われているというようなものではございませんで、もっともろもろの住宅費の問題から大学教育の問題から、それからもっと手厚い医療の問題からあるいは失業保障の問題から、すべてひっくるめたものでありまして、その物すごい税金がすべて高齢者福祉に食われるもの、そのすごい税金でなければ高齢者福祉はできないもの、そういうふうに考えるのは私は誤りではないかというふうに考えております。  それから、次は施設のチェックの問題でありますけれども、これはおっしゃるとおり確かにもう大問題だと私は思います。  例えば、私は今まで本当に欲張りな病院の実態を随分二十何年間記事にしてまいりましたけれども、私に書かれたときのみ後追い的に役所が監査に入るとかいうようなことはあるんですけれども、やっぱりジャーナリズムに暴かれない時点できちんと問題が指摘されてというようなことは余り私には記憶がないんですね。  それから、例えば病院のチェックというのも、これは恐らくは日本の厚生行政と医師会との間の話し合いでそういうことが決まるのかなと私は推測いたしますけれども、例えば監査というのがありますけれども、監査は必ず事前に通告されて監査されるんですね。いついつ行きますと。私の知る限りで一番厳しく短時間で監査するというときでも、その日の午前中に通告して午後行くとか、そういうような必ず時間があるんですね。本当の意味での監査というのは、やはり私は抜き打ちでなければ意味がないと思います。特にこういう弱い立場の人々の問題をきちんと把握しようとしたらもう抜き打ち以外には私はあり得ないと思いますが、ぜひそういう何か仕組みをつくっていただけたら、これはもう間違いなく有効なことだと私は思います。  それから、福祉のあり方は国それぞれ確かに違いまして、例えば福祉という座標軸で文明国を見ますと、恐らくは民間活力というのを最大限に使ったアメリカが一番右側にあるとしますれば、公的な責任ですべてを賄うというスウェーデンが一番左側にありまして、スウェーデンに近いところにヨーロッパの諸国がかなり固まっていて、日本はどちらかというとアメリカに近いようなところにある、そういうふうな位置づけで見れば間違いないと思います。  ただし、民間活力、つまり企業ベースでこういう社会的な弱者をいろいろなお世話を含めてやるということには私は非常に大きな問題があると思っております。一九八九年ですけれども、私はアメリカのナーシングホームのことを取材に行ったことがありますが、その株式会社のナーシングホームにアメリカの体の不自由な高齢者は集まっているわけですけれども、そこでの虐待事件、もう累々たる虐待事件というような事実がございます。ですからつまり、やはりこの部分は、私は資本主義を否定する立場ではございませんけれども、資本主義にきちんとそぐわない問題があるのではないかというのが私の意見であります。  じゃ日本が今どのレベルかということを先ほども申し上げましたけれども、不十分な時間だったんですが、つまりこの問題は人手をかけなければ非常にむごたらしいことになる。人手はつまりお金であります。お金をかけないことにはいろいろな問題が起きる。お金をけちったらばどこかで縛らなきゃいけない。閉じ込めなきゃいけない。寝たきりをたくさんつくってしまう結果にもなる。そういうようなものではないか。ですから、ここはやはりいかにお金をかけるかということがポイントではないかと思いますのでも、それは先ほどから何度も強調しますけれども、そんなべらぼうに高いものではないんだということを申し上げておきます。
  111. 野間赳

    ○野間赳君 よく理解ができました。  現在、痴呆性の老人が私の調査では約七十万人、平成十二年にはこの数が百五十万人という膨大な方々になられるということであります。スウェーデン、デンマーク、先生のお話の福祉の最進国であるわけでありますが、その国あたりに参りますと逆に、そのような寝たきりの方の数が日本と逆進をいたしまして減ってきておるということを非常に私はうらやましい気持ちでおるわけでございます。これはそういうふうな福祉行政の非常に人対人ということが大きく前進ができておるところであると私は思っております。  お話しのとおり、日本の在宅福祉というスタイルはアメリカ型のスタイルであるということをよく言われておるわけでございまして、今後どのような方向でやっていくのがいいかということになるわけでございますが、やはり私は、家族制度の非常に強い我が国日本であるわけでございますので、在宅福祉また地域福祉をより一層強固にさせていただいて、そういうふうな福祉を進めていきたいなというような気持ちを率直に持っております。  今ここで大きく転換を図って欧米先進諸国のような福祉に転換をしていくということは、先ほどから話題に出ております財政の面を中心に大変厳しい問題があろうかと私は考えておりますが、先生の御意見またお伺いをいたしたいと思います。
  112. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) 財政の問題、余り一口に言えるような生易しい問題ではないんですが、私は、先ほどからたびたび強調いたしますように、そんなに腰の抜けるような大変な出費ではないんだと申し上げたいのと同時に、もう一つの側面をここで強調しておきたいと思います。  たしか今、日本の医療費というのは二十数兆円になっておりまして、まずこれが高いか安いかというところをちょっと申し上げますと、たしか一人当たりの医療費というのは世界で十四番目がなんかのはずであります。つまり、日本の医療費というのは決して高くない。もっときちんとお金をかけてちゃんとした医療を受けたとしても、全然ぜいたくではないということがまずはっきりしております。  その中で、もう一つここで高齢者の問題で強調しておかなきゃいけないのは、日本の医療の部分に、実は先ほどからのうば捨て入院というような社会的な入院ですね、病院を永久下宿として利用しているそういう人々が医療費をたくさん食っているというこの事実なんです。これはやはり本当は医療費ではなくて福祉としての出費できちんと支えなければいけない人々をも日本の医療費はそこで抱えている。この事実を忘れちゃいけないわけです。  それからもう一つはっきりしているのは、きちんとした本当の意味での在宅の支えをいたしますと医療費は減るということは、いろいろな日本の中の進んだ自治体の幾つかの実績でこれはわかるわけです。明らかに在宅福祉をきちんとやっている町村は国保税が安い。国保税を安くすることができるということがもうはっきりしております。  そういうことからすると、つまり高齢者福祉をきちんとやるというのは、医療費を少なくするという以上に国全体としての利益をもたらす問題だということもここで強調しておきたいと思います。
  113. 野間赳

    ○野間赳君 ありがとうございました。  それでは、小野公述人様に雇用問題につきまして一言お尋ねを申し上げたいと思います。  実は私、最近の新聞を拝見させていただきまして、十二月の有効求人倍率が〇・九に、そして一月度が〇・九三というようなことで、少し雇用情勢がこれは好転したのかなというような気持ちを実は率直に持っておりました。また、宮澤総理初め経済関係のそれぞれのお立場の皆様方も底打ちしたかなというような御意見をお出しになられておりまして、若干私は安心をしつつあったわけでございますが、先ほど小野公述人さんの御説明を聞きますと、まだまだそういう情勢でないというようなことで、また私も心配をいたしておるところであるわけでございます。  国におきましても、緊急経済対策、総合経済対策、また今回の大型予算、それぞれ国を挙げてこの不況対策に今日当たっておるところであるわけでございますが、先ほどお話しのとおり、この雇用情勢というのは非常に反応が鈍いというところに結びつくわけでございます。私どもは一日も早い景気回復を念願いたしておるわけでございますので、公述人におかれまして今後の見通し、先ほど違った角度からお話をちょうだいいたしたわけでございますが、ひとつお話をいただきたい、このように思います。
  114. 小野旭

    公述人(小野旭君) 有効求人倍率というのはこれは一つの比率でありまして、分子と分母があるわけであります。景気の状況を判断する上からいいますと、その比率を眺めると同時に、有効求人数、これは労働力に対するデマンドに当たりますし、分母の有効求職者数、これはサプライに当たりますが、それぞれの動きもまた同時に観察した方が労働市場の動きをより的確にとらえることができるのではないかというふうに考えます。  私の先ほどの近い将来に関する予測でありますが、それはただ単に比率を見るだけじゃなくて、求人数の動き、求職者数の動き、これは季節調節済みの月次系列で見てもうちょっと先がそう楽観はできないなと、こういう感想を述べたわけであります。したがいまして、政府におかれましてもこういう雇用情勢についてどうか十分な気配りをお願いいたしたい、こんなふうに考えております。
  115. 野間赳

    ○野間赳君 ありがとうございました。
  116. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 きょうは文字どおり大変な御見識のお二人に公述人に御出席いただきまして、感謝するものでございます。  社会党・護憲民主連合を代表してといいますか、の櫻井規順でございます。  質問をさせていただきますが、最初に、大熊先生にお願いいたします。  大熊さんの本は大部、精神病棟物、老人病棟物、最近では「ほんとうの長寿社会をもとめて」を読ませていただきました。大変インパクトを受けております。  そこで、最初三つ質問させていただきます。  一つは現状の問題、現状把握の問題。  今も、うば捨て病院、欲張り病院というお話がありました。特徴的に大熊さんから紹介されているのは、寝たきり状態になっていて、食べる方は点滴、出す方はバルーンカテーテルというんでしょうかそういうもので出して寝たきり状態と、こういう典型例が具体的に紹介されてびっくりしているわけでありますが、こういう営利を専らとする病院経営、特にぼけ老人を扱う病院あるいは特別養護老人ホーム等において改善の方向にあるのかどうなのかということを、ひとつジャーナリストの直感力とあれで教えていただきたいというふうに一つは思います。  二つ目は、厚生省が提起しておりますゴールドプランについてどういうふうにお考えになっているかということであります。  今、ホームヘルパーの話が出ましたが、御案内のように平成十一年までに十万人のホームヘルパーにするという構想であるわけであります。今は一日二時間程度、そして週に二日というのが大体の目安になっているようであります。これ、今四万五千人から五万人くらいですが、これが十万人になりますとこの倍になるという勘定をすればいいわけでありますが、今それを全国の市町村で実態調査の上に立ちながらこの消化目標のために検討を進めているわけですが、こういう実態についてどういうふうにお考えになっているかこれが二番目。  それから三番目は、本格的な高齢者福祉の改革についてどうしたらよろしいのか。  大熊さんの方からはいろいろと言葉が出されております。社会ぐるみの助け合いの機構、国ぐるみの安全保障機構、そして心を病む人をいつから、どのくらい、どこで、どう支えていくかという社会システムが必要だというあれが提案されております。私は、実際に市町村あるいはもっといえば小学校か中学校くらいのコミュニティーという単位でもって、どういうふうに福祉計画を立てるかということから政策立案がされて、それが厚生省、国レベルでもってどう把握するか、かなり国民自身の意識改革というものが前提でやらないと寝たきり老人ゼロという展開はできないのではないかと思うわけでありますが、大熊先生の御見解を承りたいと思います。
  117. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) まず第一点の日本の現実は改善されているのかどうかということでありますけれども、特にハンディーを持ったお年寄りの行き先は大きく分けますと医療機関と福祉関係であります特別養護老人ホームとに分かれます。これは一応分けて考えた方がよろしいんですけれども、医療機関に入っている方の問題から申し上げますと、私は余り改善されていないと思います。  それから、特別養護老人ホームも病院よりややましというのは、例えばお世話の人手がもともと厚くなっておりますから、その分では余りめちゃくちゃなことは行われない。おむつの交換回数は明らかに老人ホームの方が多い。そういう現実はございますけれども、こちらにしても例えば私が一番我慢ならないのは雑居部屋であるということですね。その点からしましたら、あれはやはり収容所と言われても仕方がないのではないかと私は思うんです。あれが収容所と言われなくなるのは、特別養護老人ホームが個室になったときではないか。もうデンマーク、スウェーデン、それが当たり前になっております。つまり、プライバシーが全くない。それから、私物はミカン箱二つぐらいしか持ち込めない。これでそこで死ぬまで生活しろというんですから、これはかなりのひどい状態と言わざるを得ないわけであります。  この二つから、改善されているかどうかというふうに問われれば、私は今の状態ではとても我慢ならない。それは少しずつは改善されるでしょうけれども、本当の意味で抜本的な改善はなされていないというふうに申し上げなければならないと思います。  これは何がポイントか。  先ほどからくどいように申し上げますけれども、やはりしかるべくきちんとしたお世話の人手をかけるかかけないかですべては決まることなんですね。日本はいかに人手を惜しんでいるか、ここをわかっていただきますれば、改善のポイントというのはおのずともうはっきりすることではないかと思うわけであります。  もう一度繰り返しますけれども、例えば日本の特別養護老人ホームとデンマークの特別養護老人ホームを比べますと、明らかに人手は三分の一以下、スウェーデンに比べたら四分の一以下。この人手で何かお世話をしようというのは、どんなに職員が親切でも僕はだめだと思います。実は去年の十月、私は一週間デンマークのある老人病院に泊まり込んでじっくりと二十四時間一週間取材したことがございますけれども、何が違うか。結局、これだけの人手をかけますと、生活が全く違うということに気がつきました。  日本の老人ホームは、実は朝の八時からの八時間だけですべての行為をそこに詰め込んでいるんですね。皆さんよく考えていただきたいんですが、たったの八時間で三度の食事を全部そこに詰め込まれて、しかも入浴も済ませて、あとの十六時間は寝ていてください、こんな生活はとても人間の生活ではあり得ないと思うんですね。これが日本の実態であります。  向こうで二十四時間観察しますと、ちゃんと晩御飯も五時で終わりなんというそんなことはあり得ません。六時過ぎに御飯があって、さらにその後で音楽療法士がちゃんと残っていて歌を歌うなりレクリェーションがちゃんと残っていて、皆さんと同じようにかなり遅くなってから床につく。だから、ちゃんとした人間の生活のリズムが出てくるわけであります。この一点を見ても、いかに日本がおかしなことをやっているかというのがわかっていただけると思います。  それから第二点、ゴールドプランについての評価ですけれども、私はゴールドプランというのは一応これは評価します。  といいますのは、二十二年前からずっとこの問題に関心を持っておりますけれども、初めて一応お年寄りを、何というんですか、社会で支えるという姿勢が出てきたのは私はこれではないかと思うんですね。これの前は十何年間ほとんど何もなかったと言ってよろしいかと思います。そういう意味では評価しますけれども、これがうまいこと達成されたとして、例えば一番のポイントはホームヘルパーと申しますけれども、二十世紀の最後でうまくいって十万人です。恐らく今の状態だったら十万人にならないと思いますけれども、これが十万人になったとして、やはりデンマークの五分の一のレベルであるということをぜひ知っていただきたいですね。ですから、まだこんなものではなまぬるいというふうに私は申し上げておきます。  それから第三番目、じゃ本格的な改革とはどういうことか。  冒頭から何度も申し上げますけれども、これはすべて何をやったらいいかわからないとか、どこでだれがどういう目に遭っているかは全然わからない、そんなことではないんですね。その気になれば絶対に全部の状態を我々は把握することができるようなものだと思うわけであります。ですから、とにかくまず実態をきちんと把握して、それでこの人々にどういう生活をしていただくのがふさわしいか、あるいは我々がその状態になったらどういう目に遭いたいのか、そこを出発点にして考えてくださるならば、これは初めて本格的な高齢者福祉というふうに言ってよろしいのではないかと思うんです。それなくして何か場当たり的なことをやっていただくのは、私は何かまだ福祉の名に値しないのではないかというふうに考えております。
  118. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 なお大熊先生に、一つは、今ホームヘルパーの手当が年間三百万くらいでしょうか、その身分は直用と委託ヘルパー、こういうふうになっております。これをもう明確に直用化しないと、どうもボランティアか責任があるかというのがちょっとわからない面があるような感じがいたしまして、直用化ということはもうそれはあった方がいいに決まっているじゃないかと言うかもしれないけれども、そうなけりゃならぬのじゃないかという点はどうか。  それから、問題はボランティアなんですけれども、デンマーク、スウェーデンに行きますとボランティアというのはいませんと、こうくるわけですが、ボランティアというのは日本の風土の中でやっぱり求めていかないとできないのではないかというように思うのですが、その辺の評価をどうごらんになるか。  それから、何か余分なことを言うようですけれども、大熊由紀子さんという方が「「寝たきり老人」のいる国いない国」という本の中で、デンマーク、スウェーデンには寝たきり老人がいないということを明言しているわけですが、大熊一夫先生はいるかのようなお話をしておりますが、その辺はどうなんでしょうか。
  119. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) まず、ヘルパーの雇用の問題でありますけれども、日本のヘルパーというのは実は非常に不安定な雇用形態の方がほとんどなんです。大体、市町村の社会福祉協議会で一年契約の臨時雇用として非常に安い賃金で雇われているというのが実情でありまして、公的にきちんと地方公務員として雇われている方はもうごくごく一握りであります。今、年収三百万円とおっしゃいましたけれども、そういう方は非常に例外的な部分だということをはっきりさせておきます。ですから、この雇用形態がこれからホームヘルパーを日本でたくさん養成できるかどうかの重大なポイントだというふうに言うこともできるわけです。  長野市が、一九九〇年の四月からホームヘルパーを市役所の職員と同じような給与体系に直しました。そうしましたら、たしか募集人員の四、五倍の人が一挙に集まったという事実がございます。それから、大卒の男子がたしかその中で五人もあらわれました。つまり、きちんとした社会的な評価をすれば人は集まるということをここで教えてくれているわけです。  私は、ホームヘルパーという仕事は非常に難しい大変な仕事だと思います。とにかくお年寄りの単純なおむつの取りかえとかそんな問題ではない。お年寄りときちんとつき合うことができ対話ができなければいけないという大変な仕事で、そう言ってはなんですが、これはかなりの教養を要求される大変なお仕事だと私は思っています。それにしては今の社会的な評価はいかにも低過ぎまして、こんなようなことでしたら恐らくゴールドプランの目標であります二十世紀の最後までに十万人という、これも達成できないだろうと思います。ですから、まずきちんとした社会的な評価をということを私は強調しておきたいと思います。  それから、ボランティアの問題です。  ボランティアはないよりはたくさんいてくだすった方がいいに決まっております。日本のような貧しい福祉の現実でしたらば、ボランティアは確かに必要だということは言えるのですが、じゃボランティアで今の日本の窮状を救えるか。絶対に私は救えないと断言します。かけてもよろしいというふうに申し上げても大丈夫です。  あのボランティアの一番進んだと言われるアメリカで、じゃ本当に体の弱ったお年寄りはボランティアによって救われているか。実は救われてないですね。本当に体の弱った人々の集まるナーシングホームではボランティアは余り活躍していません。ボランティアがよく活躍しているところを見ますと、ゲームのお相手とか歌のお相手とか話し相手とか、そういうような軽い部分なんです。実際にホームヘルパーというか、つまりお年寄りのお世話の仕事というのは非常に難しくて、単純に簡単に素人が何でも肩がわりしてできるというものではないんだということはぜひ知っていただきたいです。  ですが、ボランティアを大勢の方にやっていただくというのは、これはある意味で非常に有効な社会教育であるということも事実なんです。ボランティアをやっていただくといろんな問題点が見えてしまいます。今まで気がつかなかった問題点に直面するわけであります。そこで初めて、じゃどうしよう、こういうことを行政に要求しよう、我々の社会はこういうシステムにつくりかえよう、そういうふうになって当然なんです。そういう意味でボランティアは意味があるというふうに私は強調しておきたいと思います。  それから最後、寝たきりが北欧でいるかいないかというお話ですけれども、これは程度の問題です。  寝たきりの定義というのは非常に難しいんですが、私は、普通はこういうふうにイメージしていただいたらいいと思います。寝巻き姿で寝床に放置されている人々、そういうふうに考えていただいたらわかりやすいと思うんです。  これは本来はやっぱりちゃんと着がえをお手伝いして、それで車いすに乗っけちゃう、これが北欧でやっていることなんです。日本だったら、横にほったらかしにされていた方をちゃんと着がえをさせて車いすに乗せた途端にこれはもう定義としては寝たきり老人ではなくなるわけであります。別にリハビリ医学が足りないから寝たきりになっちゃっている。その部分も確かにありますけれども、それだけではないんです。もっと非常に基本的なお世話の部分で人手を惜しんだためにそういうふうな目に遭っている人がいっぱいいる。  これはたしか厚生省の特別研究の国際比較で、デンマーク、スウェーデンに比べて日本は八倍か九倍寝たきり老人が多いという数字が出ております。だから、デンマーク、スウェーデンがゼロではないことは確かです。ただ、寝たきり老人という言葉もありませんし、日本みたいなああいう形での寝巻き姿でほったらかされている、お世話の人手が必要なのに放置されている、こういう人々は極めて少ないという意味で寝たきり老人はいない、そういうふうに受け取っていただいてよろしいかと思います。
  120. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 小野先生お願いします。  きょうの冒頭のお話とあるいはちょっと違うかもしれませんが、先生の論文の中で、労働時間の実態調査の結果と実態というのはかなり隔離というか差があるという論文を読ませていただきましたが、これはただ実態調査上のミスというよりも、報告する側にかなり操作があるのではないか。例えばタクシーの場合なんかを見ますと、ことしから四十四時間という指導になるわけですが、例えば四十六時間という時点にしても、これは見事に四十六時間で実施しているという報告が陸運に上がる仕組みになっているわけですよ。その仕組み、協同組合があって協同組合が全部指導して報告書を作成しますから、そこに協同組合の存在意義があるというふうなものがあるのではないか。ですから、そういう実態を正確に把握する上において何か手続的に、例えば労働組合があるところだったら労働組合が、ないところは従業員の代表がサインするような報告書、何かそういう改善策があるかどうか。具体的で恐縮でございますが、それが一つ。  それから、時間短縮という問題をいわゆる雇用の拡大、ワークシェアリングに日本の場合に何とか結びつけていきたいと思っているわけですが、そういう展望というのはいかがでしょうか。
  121. 小野旭

    公述人(小野旭君) 労働時間の把握の問題でありますけれども、個々の企業では一体どういうふうにして労働時間を記録しているか、これはいろいろだと思うのであります。例えばタイムレコーダーですか、あれでもってやっているところとか、あるいは職場の上司に届け出て承認してもらうとか、あるいはもともと予算というのがありましてその予算の範囲で申告しろとか、その職場職場によっていろいろあり得ると思うのであります。  そういう予算の範囲とか監督者の許可を取るということになりますと、実際に働いてもそういうのが少な目に報告されるというケースが実態としてあり得る。その結果、事業場から報告されてきます労働時間と実際各人が働いた労働時間、その各人が働いた労働時間というのは各人が記録するわけでありますから、正確性という点からいうとちょっと問題があるかもしれませんけれども、そこの間にギャップが生じてしまうわけであります。  それをどういうふうにして改善するかということでありますが、今先生は組合の関与というようなことをおっしゃいましたけれども、こういう労働時間の管理というものがそういう組合だけで実際の企業の場で済むものかとか、そこら辺はちょっと私は実情に疎いのでわかりませんけれども、実際はそういうふうに大変複雑な手続をとっているようであります。  それから、時間短縮の雇用増加に関する働きでありますけれども、時間を短縮することが雇用増加にどういう影響を与えるかというのは、これはいろいろ経済学者が分析をしております。  一般に考えられるのは、時間を短縮いたしますと、賃金がもし変わらなければこれは時間単位当たりの賃金コストが上がるわけでありますから、企業としては労働時間を減らす、こういうような効果が一つ考えられます。少し長期的には、賃金コストが上がることによって、これは長い期間をとりますと労働から機械へ設備を変えてしまう、代替と言っていますが、そういうことも長期的には考えられる。  ただ、時間短縮をすることによって所得がいろいろなものに支出されていきまして、需要面から、何といいますか、例えばレジャーにお金を使うとかその他いろんな支出があると思います。そういう需要面から需要を喚起してくる、それが雇用につながる、こういうルートはもう一つ考え得ると思います。
  122. 櫻井規順

    ○櫻井規順君 時間をいただいたんで、大熊さんに最後にもう一つ。  政治家、それから行政官に対して何か基本姿勢のようなもので御提言があれば、大熊さんの取材の方法を見ていて思うわけですが、何か御提言がございますか。我々の福祉行政に参加していく姿勢の問題で、政治家に何かございますか。
  123. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) とにかく実態を把握するというところをぜひ皆さんのお力でお願いしたいと思います。  アメリカの福祉、私は全然高く評価しないんですが、一つ評価することは、国会議員の名においてすぐに調査委員会ができて、いろんな実態が調査されて非常にいい報告書が出てくるという点なんですね。あの点はぜひともこの日本国会でもお願いしたいと思う点であります。
  124. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 公明党の猪熊と申します。  最初に大熊公述人にお伺いします。  きょうは大変に有益なお話を拝聴させていただいて本当にありがとうございました。  老人をどこのだれが介護するのが一番いいんだろうかという点に関し、要するに介護の主体、これはどういうことが考えられ、どれが一番いいんだろうか。というのは、例えば私も、私の女房の母親が八十五でほとんど寝たきりなんです。そうすると、うちの女房が週に二回、ほかの兄弟が週に一回とか、こう割り振って面倒を見ているんです。そうすると、朝六時に起きてすぐ飛んでいきまして、週二日私が自分でネクタイを探す、こういう状況になっているわけです。それで、だれか人を雇って見られないかな、こういうことで、家庭での介護という場合の問題はどうだろうか。  それから、国と地方団体の役割ですね、だれがどういう機関がどう介護を担当したらいいんだろう。その担当する機関というか担当者の問題と、それからそれに対する費用、経費、これをどういうふうにだれが負担するのが一番適当なんだろう、この辺のことについて、非常に初歩的なことで恐縮なんですがお教えいただきたい、これが一点なんです。  それからもう一点は、今、櫻井委員の方からも質問がありましたけれども、現在の収容施設というか、病院なり介護老人ホームなり、そこの実態を聞いて非常に驚いたわけですが、こういうものの実態を調査する、それは国会が行けというふうに大熊先生は今おっしゃられたんですが、なかなかこれ国会が行けと言われても、行くの行かぬのと言って、またこちらが行くなというときには大掃除していますからほとんど行った価値もないだろうということになってくる。どういうふうにしてだれがこの実態をもう少し明確にできるんだろうか。  そしてまた、病院の方がまるで豚小屋のような状況で置いておくというのは、それだけの金がないからそうしているのか。病院自身も非常にいいぐあいに置いてあるというふうに思ってはいないだろう。しかし、経営上の経費計算からいくとこんな状況でほうっておくよりしょうがないんだということなのか、それとももうけ切っているのか、その辺はどうなっているんだろうか。  以上二点について、大変素朴な質問ですけれどもお願いします。
  125. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) 弱ったお年寄りをだれが面倒見るかという問題ですけれども、これは確かに家族が面倒を見切れるならそれはそれで、見たいとおっしゃる方がおられるならそれは構わないと思います。どうぞ見てくださいと私は申し上げたいんですが、実際にはそれは不可能なんですね。不可能な事態が必ず来るんだと、ここを考えていただきたいんですね。もうある確率で必ず大変な人々が出てくるわけですね。  例えばお年寄りのお世話で何が大変かというと、やっぱり夜中もおむつの交換をしなきゃいけないとか、いつもだれかがついていないとどこに行くかわからないとか、いろいろな事態が起きるわけで、これを家族だけで面倒見切れるかどうか、まずそこをきちんとわかっていただきたいと思います。家族じゃ面倒見切れないんです。その結果がうば捨て病院がたくさん繁盛している、こういうふうに考えていただければ、まずじゃ家族をくたびれさせない何かが必要だということになります。  家族がくたびれない、家族をくたびれさせない。何かと言えば、これはもう何らかの形で外部から助っ人が入ってこなきゃいけない。これを公的な責任でやるか、あるいはヘルパー派遣会社から人手を買うか、そういう分かれ目はありますけれども、とにかく外から入れなきゃいけない。ただ、ヘルパー派遣会社だったらこれは高くて結局買える人と買えない人といて、やはり本当の意味での解決にはならない。私はやはり公的な責任においてきちんとやるべき部分ではないかなというふうに思っている一人であります。  それから、国と地方の役割とおっしゃいましたけれども、確かにこの問題はもう地方の役割だろうと思います。ですから今度、高齢者福祉は市町村の役割というふうに福祉八法が変わりまして、そういう改正がなされたのはこれは正しいことだと思いますね。霞が関から望遠鏡で日本の津々浦々見えるわけではございませんで、やはり自分の町の人々をどういうふうに支えるかこういうふうにして初めてできることであります。  それから、もう一つついでに申し上げれば、地方の役割の中で、今のように細かい自治体がたくさん集まっている、これは非常に福祉をやる上では効率が悪くてうまくできないということが、これはデンマークなんかではもうはっきりしております。大体デンマーク人が言うのは、人口一万人以下の自治体はきちんとした福祉制度を持てない、だからどんどんその意味で町村合併をして全部の自治体を一万人以上にしよう、こういうことを今盛んに言っていまして、また何年か後にはきっとあの国はそういうふうになると思います。だから日本も、そういう形で地方分権だけではなくて、地方の足元をきちんと固めてできるような体制にしなければいけないというふうに申し上げます。  それからもう一つ、その実態調査ですけれども、これは確かに難しい問題ですが、まずやはり実態を知るということは、こちらが行きますよと予告したら中を取り結われたのでは何の意味もありませんから、もう抜き打ちでやるに限ると思いますね。いつでも抜き打ちでやるという、これは監査ですけれども。  よその国にあって日本にないもう一つの重要なことは、オンブズマンというあの制度ですね。オンブズマンと言うと男になっちゃって怒られまして、最近はオンブズと言うらしいんですけれども、つまり弱い立場の人を代弁するような強い人がもう一つきちんと行政的に用意されていて初めてバランスがとれるようなものなんですね。でも、アメリカみたいに非常に問題の多いナーシングホームの中でさらにそのオンブズマンがいてもうまくいかないということもありますから、やはり本当の根本的な解決にはならないんですが、でもそういう立場の人がいればこれはもちろんありがたい、こしたことはないですね。  それからもう一つ、日本の状態は、今の状態では安かろう悪かろうだということをわかっていただきたいんです。その悪かろう安かろうの中でさらに利潤を上げようという人が出てきたらさらに悲惨なことが起きる、そういうふうに考えていただきたいんです。だから、今の日本の決められた仕組みの中でも非常にミゼラブル、その中でさらに利潤を上げようとする人が出てきたらさらにそれの何倍かミゼラブル、そういうふうに考えていただきたいと思います。
  126. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 どうもありがとうございました。  時間がありませんが、小野公述人に。  いろんな現在の雇用状況を前提にして、一つはこれを何とか時短の方向へなぜ行けないんだろうかこれが一点。もう一つは、要するに第一次産業への労働力の転換というふうな方向へ持っていけないものだろうか。  もう時間がありません。簡単で結構ですが、その二点についてお教えいただければと思います。
  127. 小野旭

    公述人(小野旭君) 今のこの景気の悪い状況の中で時短ということでありますけれども、これは、この時短を進めるということが国の政策の一部でありますので、そういうことをぜひ進めてもらいたいというふうに私は考えておりますが、ただ、個々の企業レベルでいきますと、この時短をやりますと、例えばさっき申しましたように、もし賃金が一定であれば賃金コストがかかってしまう、そういうことでなかなかそれが実現するのが難しいということになると思います。  それから、御質問は第一次産業への転換ということでございましょうか。これは農業ですか。  私は、長いその歴史的な趨勢を見れば、大体産業構造のウエートというのは二次あるいは三次、そういうところに移っていくのが大勢でありまして、一次産業のウエートをふやすというのはちょっと何か逆行しているような印象を持つわけでありますが、その点はもう少しいろいろケースを勉強してみればあるいは何か少し手がかりがあるかもしれないというふうに考えております。
  128. 長谷川清

    長谷川清君 民社党の長谷川でございます。  最初に大熊先生にお聞きをしたいんですが、きょうの午前中は子供とか児童を大切にと、このことを十分認識いたしましたところ、今うば捨て病院の話を聞きまして、これまた大きなるショックを受けておるところでございます。  つくづく思いますのに、この世に生をうけて死ぬまでの間、日本という国はいろいろと経済だけは大国だが本当に生活は後発国だな、後進国だな、こうつくづく思っておりますが、今例に挙がりましたような痴呆症の方とかあるいは精神病の方とか、そういうハンディを持っている方々の福祉という問題も実態が今そのようであり、また一般の健康である日本人が病院で死ぬ確率は六〇%と言われております。普通、これは死に直面をする十人に六人は病院で亡くなっているということですね。  病院に入りますと、大概六人か七人の大部屋に入ります。いいところでカーテンがあればプライバシーが多少守られる。カーテンのないところの方が多いでしょうね。もうテレビも小さくつけている。おなら一つ遠慮しながらやっておるという、こういうプライバシーのなさにかけては、しかもそのうちの六〇%は三カ月そこに入院している。四人に一人は七カ月以上そこに入院して死んでいくという。この大部屋から個室に入れられますね、この個室に入れられるときにはもう死の宣告。  この世に生をうけて、最後には必ず死ぬわけでありますけれども、こういうサイクルの中で死に直面しているこの人間としての尊厳が果たして今日確保できている社会かといいますと、非常に社会的なシステムがそこに及んでいないと思うんですが、こういう問題。それから、今、急を要する、真夜中にそういう重病になって自分ではどうにもならないハンディをしょった多くの人々が、先生おっしゃるようなこういううば捨て的病院という状況にある。その数字は私は定かではございませんけれども、この二つの部分はどこかつながっているように思えてならないんですけれども、これは一体のものとして考えていいのか、別個の課題と考えればいいのか、その辺についてひとつお気持ちを聞かせていただきたいと思うんです。
  129. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) 確かに一体のものとして考えて私は差し支えないと思っております。  先ほどから私は福祉の貧しさを強調いたしましたけれども、医療も物すごく貧しいということは、やはり同じように貧しいということもぜひここで強調しておきたいと思います。  先ほどから何度も申しましたけれども、国民一人当たりの医療費で考えれば、日本世界の中でたしか十四番目。これは物すごく低い数字でありますし、さらに本来その中で福祉が抱えなきゃいけないような人々をもその医療費で抱えているということになれば、さらにレベルの低いものを我々は受けていると。この事実からやっぱりすべての問題がここに隠されていると、そういうふうに考えて差し支えないと思います。
  130. 長谷川清

    長谷川清君 ありがとうございました。  小野先生にお伺いしたいんですけれども、今も出ました時間短縮という問題、私はこれは労使が取り扱う、それぞれ努力をしなきゃいけないと思います。  私は、労の部分が努力すべきは、一時間当たりの労働の密度は時間を短縮することによって高まる、創意工夫、知恵を働かせて労働するんだと、こういう分野が一方あると思います。また一方、使の側におきましては、これはもう今日のこの時間短縮は、単にゆとりと豊かさをという視点からのみ発生しているものではなくして、企業というものの存続、つまりは諸外国の企業と日本の企業、五つのいわゆるハンディがある、ノーマルでない、公平でない、こういうふうに言われております中の一つに長時間労働がある。労働の分配率は低いし、株主配当が低いし、地域に対する貢献も弱い、そして長時間労働であるという、ここが一つつまみ出された時間の短縮。  でございますから、私は結論的にこれからの企業というものは、企業哲学、経営哲学の中にこういう要素をがっちりと根っこにはめ込んでかからなければという課題があると思うんですが、そこまでの認識はどうもまだ、時間がありませんけれども、どうもその辺についで、連合側は大体その密度の問題はわきまえを持っていると思うんですが、ここにいま一つ、これは経団連、日経連、経済同友会、特に商工会議所の場合には大変だと思いますが、親子の関係、資本の系列、企業の系列、それ別にそういう経営の新しい哲学という柱の中からこれを促進していかなければなかなか数字が前進しない、こう思うのでございます。いかがでしょうか。
  131. 小野旭

    公述人(小野旭君) 労働者が短縮した時間の中で密度よく働く、これは御指摘のとおり私も賛成であります。  同時に、その時間短縮が企業の存続とも関係すると。これは特に今後予想されます供給制約のもとで、女性の方、結婚なさっている女性の方とか高齢の方とかこういう方に労働市場に出てきていただく、そういう場合彼らのニーズが非常に多様であります。ですから、ある人は私は月曜日はいいけれども火曜日や水曜日はだめだとか、私は午後はいいけれども午前がだめだとかニーズが多様でありますから、そういう多様なニーズに応ずるように雇用管理を行う、こういうふうにしていきませんと、やはり企業の存続にも関係するわけでありますから、おっしゃるとおり企業の存続という観点から労働時間の短縮というものが考えられていく、これは一つの視点であるというふうに考えております。
  132. 高崎裕子

    高崎裕子君 共産党の高崎です。  最初に、大熊公述人にお尋ねいたします。  この二月十四日に社会保障制度審議会が第一次報告をまとめました。これによりますと、今や豊かな社会となり、社会保障の目的も「すこやかで安心できる生活」とあいまいな基準を持ち出して、二十一世紀の高齢社会に耐え得る社会保障というのは「みんなのために、みんなでつくり、みんなで支えていく」制度だと。この「みんな」から国と企業が除外されているという重大な問題があります。そして、社会保障の守備範囲を再検討することは避けられないとして、国民に自助努力と相応の負担を迫っています。私は、これは健康で文化的な最低限度の生活を営む国民の権利と国の責任を明記した憲法二十五条を実質的に否定するものではないかということで、大変重大な問題だと思います。  国民の実態はどうかというと、公述人は老人問題それから精神障害者問題などで現場に多く取材に行かれておられますのでわかっていらっしゃると思うんですけれども、障害者に対する施策がなかなか進んでいかない最大の問題というのは、日本の障害者の定義、範囲が諸外国に比べ非常に狭い。特に、精神障害者の方というのは福祉法の対象にすらなっていない。各省庁とも定義、範囲がそれぞればらばらで、精神障害者はほとんど対象に入っていない、谷間のまた谷間に置かれているというのが実情で、治療と社会復帰が社会保障制度としてしっかり位置づけられることが必要だと思うわけです。  また、老人問題も同じで、年をとって一番やっぱり深刻なのは病気だと思うんですね。病気になったら安心して病院にかかれる、これが大切だと思うんですが、八三年に無料だった老人医療費が有料化される、あるいは老人保健法が改悪されてお年寄りは病院から追い出されるという老人差別医療がまかり通っている。老齢年金で生活されている方は、千五百九十万人のうち六割近い九百万人の老人が月三万円前後の年金しか支給されていない。生活に困って生活保護を受けようと思えば、個人の尊厳すら踏みにじられる、それに甘んじなければ受けられない。そして、老人の自殺率が世界の中でも高い。  介護の問題も言われました。家族の中でもとりわけ女性の負担が大きくて、そこから家庭崩壊の問題も引き起こされるというようなことで、豊かになったどころか新しい貧困が広がっているというふうに思うんですね。  こういうときだからこそ、私は今憲法二十五条の存在意義が非常に大きくなって光っていると思うんです。だから、この憲法二十五条に照らして社会保障制度を充実させるということが今こそ急務だというふうに考えるわけですけれども、その点いかがでしょうか。
  133. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) 今の御意見、全く私は異存ございません。そのとおりだと私も認識しております
  134. 高崎裕子

    高崎裕子君 次に、小野公述人にお尋ねいたします。  経済企画庁の世界経済白書では、先進国の不況の構造的な原因の一つとして、「企業が国際競争力の向上を重視し、大幅な合理化を行っている」ということが挙げられています。  現にアメリカでは、レーガン、ブッシュ政権の十二年間を見ますと、大企業の上位五十社というのは国際競争力の強化のためとして八〇年代には三百五十万人も従業員を減らして不況を深刻化させているという実態があり、新たに発足したクリントン政権はこの現実を踏まえて海外に安い労働力を求める企業への優遇税制を廃止するという方向を打ち出しているわけです。  ここから我が国を見ますと、今、我が国第二位、世界第四位の自動車メーカーの日産が座間工場を閉鎖するという計画を発表して社会的問題になっているわけですけれども、この日産を見ますと、九〇年に既に生産の三七・五%を海外に移しているわけですね。この不況のもとで、国内の生産を抑えて労働力の安い海外の生産だけを七割ふやすということで、これはもう極端な国内生産空洞化の政策を進める中での計画的なものだというふうに私は思うわけです。  この状況の中で、労働者の雇用という問題だけではなくて、家族だとか、それから関連企業の労働者だとか中小企業地域へのはかり知れない影響が現実にあるわけで、私はこういう問題を考えるときに、大企業の社会的責任ということを思わざるを得ないわけですけれども、この点についてどのようにお考えなのか簡単にお聞かせください。
  135. 小野旭

    公述人(小野旭君) 国際競争力を高めるために非常に合理化をしていく、こういうことが不況をもたらすということでありますが、こういう問題はやはりその短期的な面と長期的な面と二つの観点から考えていかなければならないと思います。  短期的にはその合理化の結果、日本では終身制がありますので雇用が比較的維持されやすいわけでありますが、それでも極端な合理化が行われれば、極端な場合には解雇というようなことも起こらないわけではありません。そういう解雇というようなことが起こった場合には、もちろん家族、当事者は大変な苦痛を味わうわけでありまして、こういうことは避けなければならないし、またそういうことが事態として起こった場合には国の施策が対応していなければならないと思うのであります。  ただ、少し長期的に見ますと、やはり日本国際社会の中で競争していくためには日本の力もつけていかなきゃならないわけであります。そういう長期的な観点から見ますと、そういう国際競争力を強めるための合理化というのは否定することはできませんし、またその合理化によっては逆に今度は設備投資がふえ、少し景気にプラスの効果を及ぼす、こういうことも期待できるわけでありますから、短期、長期両面から物事は判断していかなければならないのではないかというふうに考えております。
  136. 磯村修

    ○磯村修君 小野公述人にお伺いしたいと思うんですけれども、今六十五歳以上の方が全体の一三%を占めている、こういうことで高齢化時代に入ってきているわけなんですね。したがいまして、こういう高齢化社会所得保障あるいは生きがい、こういったことが大変重要なテーマになってきております。  連合、ユニオンが調査したところによりますと、六十歳以上の方を対象にした調査なんですけれども、働きたいと答えた方が四五・二%おりまして、何といってもこの高齢化の中で雇用とかあるいは所得保障、こうしたことを強く望んでいるということがうかがえると思うんです。  そうした意味合いにおいて、これから短時間の間働いてという方もふえてくると思うんですね。そういう時代の中で、短時間でもよいからということで働く、そうした人たちにもこたえていくだけのまた年金の制度というものも考えていかなければいけないんじゃないかと思うのでありますけれども、そういう部分就労、そしてそれにこたえられる部分年金制度、こういう制度というものの導入を考えていく必要があると思うんです。この点、先生何か御意見ございましたらお伺いしたいと思うんです。
  137. 小野旭

    公述人(小野旭君) 私も基本的には、高齢化社会のもとで就業意欲の強い方が非常に我が国は多い、そういう人たちが働きながら年金を受ける、こういうシステムが望ましい、こういうふうに今考えております。  ただ、最近いろいろ問題になりますことは、先ほど来問題になっておりますけれども、要するに負担の問題、つまり高齢者に年金を支給する、それに対して若い人あるいは壮年者がそれを負担していくわけでありますが、その負担の比率が現状より上がっていく、それが余り上がり過ぎますと今度はその働いている方の勤労意欲というものが問題になってくる、そういうことまで考えた上でこの問題は処理していく必要があると思います。  負担がふえながらなおかつその負担をしている人の生活水準が上がるという事態が望ましいわけでありますが、例えば負担を多くした結果一人当たり所得が変わらなければ、負担を多くした結果その人の実質的な生活が下がってしまう、こういうことになってくるわけですが、そういうことはやっぱり避けないと世代間の不公平が起こります。したがって負担をふやしながらその人たちがより高い生活を営んでいけるようになるためには、ある程度の経済成長率を維持していくということがどうしても必要になってくるわけであります。  近年、今までは成長一本やりでありましたから、それの反動でありましょうか、成長よりも福祉とかあるいは生活ということに非常に力点が置かれるわけでありまして、それは私は意味合いとして十分理解できます。しかしながら、要するに重要な点は生活と生産というもののバランスをとるということが一番大切でありまして、生活だけでもいけないし、また生産だけでももちろんいけないわけであります。そういう高齢者の福祉ということを考えました場合には、今申しましたように、ある程度の成長ということを覚悟しながらその中で高齢者に、例えば年金とかさっきから出ておりますいろいろな社会福祉的な負担というものも負っていくことが望ましいというふうに考えております。
  138. 磯村修

    ○磯村修君 大熊公述人にお伺いします。  先ほどからいろいろと福祉が大変我が国は乏しいというお話でして、一生懸命これはしなきゃいけない問題であると我々は考えているわけなんですけれども、福祉先進国のもし見たことでもって気がついたところがありましたらお伺いしたいと思うんです。  例えば、何と申しましょうか福祉介護機器という大変そういう対象になる方の機器というものがございますが、それはやはり、手に入りやすい、しかも使いやすい、そういうものを開発研究していくことが必要だと思うんです。それにはまた時間とかあるいはお金もかかるわけなんですね。そういう意味合いから、民間だけでこれをするということは大変なことだろうと思うんです。  諸外国では、福祉の先進国ではそういう面をどういうふうにしているのか、まずお伺いしたいと思うんです。そしてまた、我が国でもそういうものを普及促進させていくためには一つの制度が必要かなというふうなことも考えられるんですけれども、その辺、お気づきになった点がありましたら御意見を伺いたいと思います。
  139. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) 福祉機器の重要性を私はきょう時間がございませんから申し上げませんでしたけれども、ホームヘルパーだけではありませんで、例えば車いすですね、我々半身不随になったとしてもその後車いすに乗れるか乗れないかで全然人生が違ってしまうということがござへます。ですから、すごく大事な点なんですね。これを一番きちんと開発しているのはスウェーデンだろうと思います。北欧でもほかの国は余りきちんとやっていないでしょう。それから西ドイツ、イギリス、アメリカあたりだと、これは企業レベルでかなりきちんとやっておるような節はありますのでも、やはり日本の現実を見れば、かなりこれは公的な後ろ盾がないときちんとした本当の腰の据わったものはできないだろうなというふうに私は思っています。  それから、制度的にはどうしたらよろしいか。  やはり一番うらやましいなと思うのは、デンマーク、スウェーデンのように、大体人口三十万人に一カ所補助金センターという非常に大きなきちんとしたもうすべての福祉機器がそろっているようなものがあって、そこに専門家がいて、本人に合ったものを選んで改造して使い方をコーチして、それを無料で貸すというのが向こうのシステムですけれども、これはどういう形にしろ、何かこれに近いものが日本でも私は必要ではないかと思っております。
  140. 磯村修

    ○磯村修君 ありがとうございました。
  141. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 日本新党の武田でございます。  大熊先生に伺います。  先生のお話、大変感銘深く伺いましたが、先生からごらんになって、極めて好ましいと思われる程度の福祉政策がやれる地方自治体の人口スケール、先ほどデンマーク、スウェーデンの例がありましたけれども、日本の場合、地方分権などを考える場合、基本的にどれくらいの人口規模を持つ自治体に再編成すれば人口規模だけは一応整備されるというようにお考えでしょうか。
  142. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) 先ほど申し上げたように、デンマークの例で見ればやっぱり最低一万人ですね。  それで、日本の現実を見ますと、確かに人口千人前後の村がたくさんございますけれども、これは昔に比べましてもう道路事情がすごくよくなりましたから、私は物理的には町村合併というのはもう可能なレベルに来ているというふうには思っております。ぜひ合併していただきたいなと思っています。
  143. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 それで、デンマーク、スウェーデンの例で三十万人に一つのセンターですか。
  144. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) 補助金センター。
  145. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 これは、日本でも大体それぐらいの規模なら……
  146. 大熊一夫

    公述人(大熊一夫君) いや、それはすごくぜいたくな、恐らく世界で一番ぜいたくな例ですが、例えば日本でしたら、私が住んでいる世田谷区が八十五万だったら世田谷区に一つぐらいはきちんと欲しい、そういうようなものではないかなというふうには思います。
  147. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 ああ、はるかに大きい規模が必要になってくる……
  148. 井上裕

    ○理事(井上裕君) ちょっと待ってください。発言のときは手を挙げてください。武田君、お二人でお話ししないでください。
  149. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 もう終わりましょう。  ありがとうございました。
  150. 井上裕

    ○理事(井上裕君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言御礼申し上げます。  本日は、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げる次第であります。(拍手)  これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時五十七分散会