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1993-06-07 第126回国会 参議院 予算委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年六月七日(月曜日)   午前十時開会     ―――――――――――――   委員の異動 五月三十一日     辞任        補欠選任      藁科 滿治君    及川 一夫君      島袋 宗康君    喜屋武眞榮君 六月一日     辞任        補欠選任      直嶋 正行君    長谷川 清君      聴濤  弘君    上田耕一郎君      吉川 春子君    吉岡 吉典君 六月三日     辞任        補欠選任      小池百合子君    寺澤 芳男君 六月四日     辞任        補欠選任      乾  晴美君    萩野 浩基君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長        遠藤  要君     理 事                井上  裕君                石川  弘君                上杉 光弘君                柳川 覺治君                角田 義一君                村沢  牧君                山本 正和君                白浜 一良君                寺崎 昭久君     委 員                井上 章平君                石井 道子君                岩崎 純三君               大河原太一郎君                大鳥 慶久君                沓掛 哲男君                下稲葉耕吉君                成瀬 守重君                野間  赳君                野村 五男君                服部三男雄君                林田悠紀夫君                星野 朋市君                松浦 孝治君                穐山  篤君                及川 一夫君                喜岡  淳君                久保田真苗君                櫻井 規順君                清水 澄子君                種田  誠君                堂本 暁子君                肥田美代子君                三重野栄子君                山口 哲夫君                荒木 清寛君                猪熊 重二君                広中和歌子君                長谷川 清君                上田耕一郎君                吉岡 吉典君                磯村  修君                萩野 浩基君                喜屋武眞榮君                寺澤 芳男君   国務大臣       内閣総理大臣    宮澤喜一君       法 務 大 臣  後藤田正晴君       大 蔵 大 臣  林  義郎君       厚 生 大 臣  丹羽 雄哉君       通商産業大臣   森  喜朗君       運 輸 大 臣  越智 伊平君       郵 政 大 臣  小泉純一郎君       労 働 大 臣  村上 正邦君       建 設 大 臣  中村喜四郎君       国 務 大 臣  河野 洋平君       (内閣官房長官)       国 務 大 臣       (経済企画庁長  船田  元君       官)       国 務 大 臣  林  大幹君       (環境庁長官)   政府委員       内閣官房内閣外       政審議室長       兼内閣総理大臣  谷野作太郎君       官房外政審議室       長       内閣法制局長官  大出 峻郎君       国際平和協力本  柳井 俊二君       部事務局長       公正取引委員会  小粥 正巳君       委員長       公正取引委員会  糸田 省吾君       事務局審査部長       経済企画庁調整  長瀬 要石君       局長       経済企画庁物価  小林  惇君       局長       経済企画庁総合  田中 章介君       計画局長       経済企画庁調査  土志田征一君       局長       環境庁長官官房  森  仁美君       長       環境庁長官官房  小沢 通成君       会計課長       環境庁企画調整  八木橋惇夫君       局長       法務省民事局長  清水  湛君       法務省刑事局長  濱  邦久君       法務省アジア局  池田  維君       長       法務省経済局長  小倉 和夫君       法務省経済局次  林   暘君       長       外務省経済協力  内藤 昌平君       局長事務代理       外務省条約局長  丹波  實君       外務省国際連合  澁谷 治彦君       局長       大蔵大臣官房総  日高 壮平君       務審議官       大蔵省主計局長  斎藤 次郎君       大蔵省主税局長  濱本 英輔君       大蔵省理財局長  藤井  威君       大蔵省証券局長  小川  是君       大蔵省銀行局長  寺村 信行君       大蔵省銀行局保  鏡味 徳房君       険部長       大蔵省国際金融  中平 幸典君       局長       国税庁次長    瀧川 哲男君       文部大臣官房長  吉田  茂君       文部省学術国際  長谷川善一君       局長       厚生大臣官房審  佐々木典夫君       議官       厚生省老人保健  横尾 和子君       福祉局長       厚生省児童家庭  清水 康之君       局長       厚生省年金局長  山口 剛彦君       通商産業大臣官       房商務流通審議  細川  恒君       官       通商産業省通商  岡松壯三郎君       政策局長       通商産業省貿易  渡辺  修君       局長       通商産業省産業  熊野 英昭君       政策局長       通商産業省立地  堤  富男君       公害局長       中小企業庁長官  関   收君       運輸省鉄道局長  秦野  裕君       運輸省航空局長  松尾 道彦君       郵政省貯金局長  山口 憲美君       労働大臣官房長  七瀬 時雄君       労働省婦人局長  松原 亘子君       労働省職業安定  齋藤 邦彦君       局長       労働省職業能力  伊藤 欣士君       開発局長       建設大臣官房長  望月 薫雄君       建設大臣官房会  木下 博夫君       計課長       建設省建設経済  伴   襄君       局長       建設省道路局長  藤井 治芳君       建設省住宅局長  三井 康壽君       自治省行政局選  佐野 徹治君       挙部長   事務局側       常任委員会専門  宮下 忠安君       員   参考人       日本銀行総裁   三重野 康君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成五年度一般会計補正予算(第1号)(内閣  提出衆議院送付) ○平成五年度特別会計補正予算(特第1号)(内  閣提出衆議院送付) ○平成五年度政府関係機関補正予算(機第1号)  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成五年度補正予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁三重野康君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 平成五年度一般会計補正予算平成五年度特別会計補正予算平成五年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、景気経済に関する集中審議を行います。  質疑者等はお手元の質疑通告表のとおりでございます。  これより松浦孝治君の質疑を行います。松浦君。
  5. 松浦孝治

    松浦孝治君 自由民主党の松浦孝治でございます。  本日の委員会は、ただいま委員長からお話がございましたように、景気経済の問題に対する集中質疑でございますが、まず一言だけカンボジア問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  カンボジア選挙後若干の混乱が起きているようでございますが、選挙で示されましたカンボジア国民の願いとPKO要員カンボジアボランティアの方々のとうとい犠牲と御苦労に報いるためにも、選挙結果を踏まえた民主国家が一日も早く建設されることを強く望むところでございます。  総理から、カンボジア現状認識見通し、今後の支援方針についてお聞かせをいただければと思います。よろしくお願いいたします。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) カンボジアにおきまして非常にたくさんのカンボジア国民の参加を得て投票が行われたということ、我が国も貴重な犠牲を払いましたがそれに対して貢献することができたということは、結構なことであったと考えております。  そこで、パリ協定の予定しておりますところは、これから制憲議会ができまして、そうして文字どおりカンボジア人カンボジア国家が発足するということでございますが、今それに至りますまでのいわば経過期間において、カンボジアの各政党がどのようにして制憲議会に移行していくかというそういう期間において、我々はいろんな出来事を見つつある、またそれに関心を持っておるということであると思います。  何分にも選挙というものは実際上は初めて行われたと考えるべきですから、この選挙でいろいろなことが決まる、選挙即その後の政局を規定するというふうに必ずしもすべての人が考えていなかったとしてもそれは無理からぬことでございますけれども、そうは申しても、しかしあれだけの国民があれだけ恐らく自由かつ公正にやった結果というものは何人も無視し得ないというその常識は、私はやはり最終的には支配をすると考えていいのであろうと。  ただ、その間に、何分にも選挙というものを政権樹立のためのただ一つ方法だという習慣を仮に持っていない国民であるとしまするならば、その間においていろいろな意味での融和なり妥協なり話し合いなりが行われる、それは必ずしも西欧的なものでないかもしれませんけれども、基本的にやっぱり選挙の結果というものは動かせないという認識がございます限りは、我々はかなりその辺は余りしゃくし定規でなく事態を見守るべきではないだろうか、見守るばかりではなく、現在、実際UNTACがまだ仕事をしておりますし、我々もそれについて協力している立場でございますし、他方でSNCもある、それについて我々も協力している立場でございますから、我々としてやはり積極的に、あるいはプロダクティブに果たし得る役割があれば果たすことが望ましい。  これは決して内政干渉という意味ではございません。それにわならない、またわたってはならないという心構えのもとに、どうやって制憲議会に向かって各党が協力していくかということについては、我々も果たすべき役割があれば果たしていかなければならない。現に実は果たしつつあるわけでございます。  それで、さらにその後どうなるかというお尋ねでございましたんですが、これは幸いにしてカンボジア人カンボジア国が成立するという場合には、外部はそのカンボジア人カンボジア国の自由に任せるというのが本来であろうと思いますが、なおUNTACとしてすべき何がしかの仕事が残るのかという問題と、それからそれと別に今度は主権国家であるカンボジア国に対して、かねてパリ会議あるいは我が国の場合で申せばカンボジア復興会議等々で既に協力体制をとっているわけでございますから、そういうところで何をなすべきかということを協力国家の間で相談もしなければなりませんし、また、それともちろん無関係ではない、無関係であってはならないんですが、我が国自身の相対、バイラテラルの協力関係というものも進めてまいらなければならない。  つまり、事柄はこれからいわば始まる。それについては我が国も応分のと申しますか、かなりの負担をしてこの地域、殊にインドシナ半島全体の平和に貢献する、そういう心構えで進めてまいる必要があるであろうというふうに考えております。
  7. 松浦孝治

    松浦孝治君 どうもありがとうございました。  一日も早くカンボジアに平和が来ますように日本としても今までもいろいろ努力をされてこられたわけでございますので、なお一層の御努力を大いに期待をさせていただきたいと思います。  森通産大臣経済企画庁長官におかれましては、先般OECD閣僚会議への御出席、本当に御苦労さまでございました。  それでは、経済問題につきまして質問に入らせていただきます。  まず、世界経済についてお伺いをいたしたいと思います。  現在、ドイツフランスなどの主要国の多くでは景気後退が進んでいると聞いております。先般行われましたOECD閣僚会議におきまして、日本世界牽引役をするように期待されたと報道されておりますけれども、経済企画庁長官世界経済現状見通しをどのように認識しておられるのか、お聞かせいただければと思います。
  8. 船田元

    国務大臣船田元君) 松浦委員お答えをいたしたいと思います。  世界経済現状見通しという御質問でございます。今、松浦委員指摘ございましたけれども、世界経済全体としてはやはり停滞状況ということが続いている、こういうことであろうと思います。  もう少し詳しく申し上げますと、例えばアメリカでございますが、景気はこのところ回復過程にあります。ただ、前回一-三月の経済成長率がたしか最初の発表では年率一・八%、それが修正をされまして下方修正をされた、こういうふうにも伺っておりますが、若干そのテンポが緩まったかなと、こう思いましたけれども、しかし、最近のアメリカ景気をあらわす指標としては幾らかまた強い数字もちらほら出てきているというようなことでございます。  それから、西ヨーロッパ全体として停滞をしておりますけれども、イギリスは若干改善の様相を示している。しかしながら、あとのドイツ、イタリア、フランス、これはなお依然として後退あるいは停滞感を強めているという状況であると思います。その他アジア地域におきましては経済はおおむね順調に拡大を続けている、それから、市場経済への移行を進めております旧ソ連を初めとするいわゆる東ヨーロッパ地域におきましてはやはり深刻な経済状況が現在なお続いている、こういうふうに感じております。  今後の見通してございますが、アメリカでは財政赤字削減等の課題を有しておりまして、過去の回復局面よりは若干緩やかなものになると思いますけれども、今後も回復過程をたどっていくというふうに思っております。  西ヨーロッパにおいては、これはOECD会合でも大変大きな議論となりましたけれども、失業の増加の問題があります。それから消費者信頼感の低下、経営者マインドの冷え込みというようなことなどがございまして、当面、西ヨーロッパにおいては実体経済は弱い状態が続くというふうに見込んでおります。  ただ、アジア地域、これは引き続き順調な拡大が続くほか、ロシアは当面低迷が続く、このような全体的な見通しをとっております。
  9. 松浦孝治

    松浦孝治君 どうもありがとうございました。  それでは次に、国際貿易問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  先般のOECD閣僚理事会でのベンツェン米財務長官の演説の中で、日本貿易世界経済成長を妨げていると名指しで日本貿易黒字拡大を批判した上で、幸いにも日本唯一財政面で余裕がある、このように語りながら、強い調子で黒字削減景気拡大策を求めたと伝えられているのでありますが、会議内容はどのようであったのかまた、アメリカでは貿易均衡是正策として目標値を設定してというような管理貿易的な手法によりまして貿易赤字を解消しようというような考え方もあるようでございますが、今回のOECD閣僚理事会ではこの問題についてどのような議論がなされたのか、またどのような認識であったのか、森通産大臣にお伺いをさせていただきます。
  10. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) お答えを申し上げます。  今回のOECD閣僚理事会では、OECD全体の成長をいかに回復するか、これは今経企庁長官からも御答弁ございましたが、もう一つ大事なことは多角的貿易体制をいかに維持強化していくかが論議の中心でございました。  今、委員から御指摘ございましたように、一部の国から我が国黒字世界成長を阻害するとの発言はございましたけれども、その他の国々からはこうした我が国経常収支黒字についての特段の発言はございませんでした。ちょうどこの発言がございましたときは、経企庁長官が、日本側の今日までとっております景気全体に対する対応などについてお述べになっておられます。また私からは、我が国内需主導経済成長が対外不均衡是正に寄与するとの観点から今御審議をいただいておりますこの新たなる総合経済対策実施など、そうした点について発言をいたしておりました。  特に、私は、昨年の八月に立てましたときの総合緊急対策に次ぐ総合経済対策、また今度の新しい十三兆円を超えるもの、これは日本国会日本景気の問題は世界全体に対する大きな責任があるという立場も十分踏まえておりまして、実に平成五年度の予算が年度内に成立をしたというのは二十二年ぶりでありましたと。さらに、四月から始まっております予算により確実なものとするため新たなるまた予算措置をして今それを国会で御審議をいただいている、このことも三十四年ぶりのことですと。  こういうことは、まさに与野党とも日本経済に対して国会責任を持とうという各党のそうした基本的なベースから行っているものでありますと、こういうようなことも私はそうした会合でも申し上げましたし、またアメリカ閣僚皆さんお話しするときもこの旨を御報告申し上げ、このことについてはそれぞれ大変大きく評価もして、日本が大変な努力をしておるということについては皆さんの御理解を深めた、こう思っております。  それから、もう一点御指摘がございました管理貿易的手法によります通商問題の解決につきましては、貿易に関する討議の席上、私から多角的貿易体制の強化を閣僚の総意とすることを提案いたしました。閣僚理事会のコミュニケには、各国多角的ルールを遵守、強化するとともに、自由貿易の原則に反し多角的貿易体制を損なう行動をとらないということが明確にうたわれたわけでございます。  なお、OECD閣僚理事会の際のアメリカベンツェンあるいはカンター、ブラウン、それぞれの閣僚とは個別的にそれぞれ時間をかけてお話を申し上げました。  アメリカが管理貿易的なことをやっておるということを私ども申し上げているのではなくて結果的に数量明示型の手法、そういうふうになってしまいますね、アメリカ立場からいえば日本との貿易インバランス数字が明確に出ておる、このことが減少していかない限りは何かそれを解決させる、結果をきちっと出すという方法が必要なんだというような指摘もございましたけれども、いかなる数字を掲げましても必ずそれはひとり歩きしていくものです、したがって、そうした数字を書くということは、それは日米間だけじゃありません、そうなれば欧州はどうなりますか、あるいは韓国やその他のASEANの国々はどうなりますか、そういうことになれば結果的にそれはすべてシェアを分け合うということになって結果的に管理貿易方式になるんじゃないでしょうか、ということなども申し上げて強く改めてお伝えを申し上げておきました。  いずれにいたしましても、各国理事皆様方は、世界経済がもう一つ低迷をしておる、一つの弾みをつけるということは、やはりウルグアイ・ラウンドがなかなかまとまらないことについてあきらめにも似たような御発言もかなり各国理事からございましたが、やはりウルグアイ・ラウンドを何とか終結させることによって世界経済全体への自由貿易体制維持発展ということのめどをつけてもらいたい、そういうのが各国理事皆さんの御発言でもございました。  したがいまして、今回の機会を利用しまして四極の通商代表それぞれ協議を重ねまして、年内のウルグアイ・ラウンド合意に向けてさらに今努力 を続けていこうということなども確認をいたし、そのこともまた理事会での非公式会合にも御報告を申し上げたりして、世界各国がそれについての協力体制をとろうという確認もできたわけでございます。
  11. 松浦孝治

    松浦孝治君 OECD閣僚会議でのいろいろな精力的な会議内容等をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。  それでは次に、景気の動向について企画庁長官お尋ねをいたしたいと思います。  景気低迷してきた、そういう状態に対してようやく歯どめがかかり、前向きの兆しがあらわれてきたようでございます。先日発表されました景気動向指数によりますと、先行指数が三カ月連続で五〇%を上回っており、一致指数も二カ月連続して五〇%を上回っております。新聞報道等によりますと、経済企画庁は、景気は既に底入れし回復局面に入ったとの判断を固めたようでございますが、景気は本当に底を打った状態にあるのか、また、六月十日の閣議に提出されます六月の月例経済報告には景気底入れ宣言等が盛り込まれるのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  12. 船田元

    国務大臣船田元君) お答えをいたします。  今、松浦委員指摘のように、先般発表されました景気動向指数、いわゆるDIでございますが、先行指数が年初から一月、二月、三月と三カ月連続して五〇%を上回りました。また、一致指数につきましては、これも二月、三月と二カ月連続して五〇%を上回ったわけでございます。確かにこれらの動き景気局面が変化をする可能性は示している、このように理解をしております。このような状況や、またそのほかの経済指標などを見ておりましても、回復動きあるいは兆しというものがかなり強くなってきたかなということは感じております。  したがいまして、私個人としては、この景気が底を打ちつつある、あるいは今打ちつつある状況にあるということは個人的にはかなり強い気持ちは持っておるわけでございますが、なおしかし、特に今後注意をしなければいけない点としては、受注や生産、出荷等に見られた二月、三月のいわゆる期末要因、そういうものがあり、そしてその期末要因の反動がこの四月、五月でどういうふうに出てくるのかということは、これから実は実際の数字が入ってくるという状況でございます。そういうことも考えますと、なお私としては今後の推移を見守っていかなきゃいけない、こういうふうには感じております。しかしながら、個人的には底は打ちつつあるあるいは底打ちは間もないということは申し上げられるんではないか、このように思っております。  月例のことにつきましては六月十日に現在予定をしておりますけれども、それにつきましては、まだ現在関係省庁におきまして調整を続けておりまして、その点については現段階としては申し上げられる状況ではない、このように思います。
  13. 松浦孝治

    松浦孝治君 ところで、少しお教えをいただきたいのでございますが、戦後、各景気の山と谷を景気基準日付という形で決定をされているようでございます。暫定的なそういう決定をするのに約一年ぐらいかかる、そして最終決定を下すのに一年半を要する、こういうことを聞いておるわけでございますが、この景気基準日付設定がなぜこのように時間がかかるのか、あるいはまた基準日付設定というものが本当にどういう意義を持っておるのか、お聞かせ願えればと思います。
  14. 土志田征一

    政府委員土志田征一君) お答えいたします。  景気基準日付、一般には景気の出とか谷とかいうものでございますが、これの決定につきましては、先ほども御議論いただきましたDIの数字、それからGNP統計その他の動き、こういったものをもとにしまして、景気基準日付検討委員会というのを設けましてそこで専門家の先生方の御議論をいただいた上で決定するということでございますが、この景気基準日付検討委員会にお願いしております景気循環の専門家の方々の考えは、これは歴史的かつ客観的に出とか谷は決めるものであるということで、まず谷から山の一循環を過ぎたところでまとめて全体を見直すということでございます。  さらに、その場合の決定に当たりましては、やはりある程度データがそろって、一年間そろったところで全体を季節調整するとか、そういう手順が必要でございまして、例えばDIでも、単に今毎月出しておるものではなくて、歴史的に全部整理をしたのでつくり直して決定をするというようなそういう手順がございます。実際正式に決めるには理論的な点とそういった統計的な手続の点で時間がかかっているということでございます。
  15. 松浦孝治

    松浦孝治君 わかりました。  ただいま船田経済企画庁長官から政府の経済認識について承りました。  本日は、金融面から日本経済のかじ取りをしておられます日銀の三重野総裁にお越しをいただいております。そこで、二、三点お伺いをさせていただきたいと思いますが、三重野総裁には海外から帰国をされた早々で本当にお疲れのところありがとうございます。  それでは、お伺いをいたします。  最近の経済指標、今もいろいろお話があったわけでございますが、明暗相半ばするところがあるように思います。現在の経済認識と今後の経済展開への総裁の御見解をお伺いいたしたいと思いますし、それとともに、最近急激な円高が起こっておるわけでございますが、これが経済へどのように影響するであろうか、それにつきましての総裁の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  16. 三重野康

    参考人三重野康君) お答え申し上げます。  景気でございますが、委員が今御指摘になりましたように、明るい指標が幾つか出ております。例えば在庫が五カ月連続して減少しているとかマネーサプライが下げどまったとかその他でございますが、そういう明るい指標が出ておりますが、最終需要につきましては住宅投資が比較的堅実な動きを示しております。財政支出も非常に高い伸びを示しておりますけれども、個人消費及び設備投資につきましてはこれまでのところはっきりとした持ち直しの兆候がまだ出ておりません。  したがいまして、当面、目先はやはりまだら模様と申しますか明暗交錯した動きが続くのではないかと思いますが、もう少し先を展望いたしますと、本年度の上期は先ほど申し上げました住宅投資と財政投資に支えられた動き、展開ということになると思いますけれども、この間、設備あるいは耐久消費財のストック調整は着実に進んでおりますし、また民間需要を引き出すための財政金融政策の措置が十分講ぜられておりますので、下期にかけましては緩やかではございますけれども景気回復する展望は十分見きわめられるのではないか、そういうふうに考えております。  また、委員指摘の円高でございますが、これは私どもも非常に注目をしております。もちろん円高というものは、少し長い目で見ますと輸入価格の低落を通じましていわゆる企業のコストを下げますし物価の安定にも寄与するわけでございますけれども、とりあえずはやはり輸出企業に悪い影響が出てくるということがございます。しかも、今御説明いたしましたように、景気がこれから回復しようとする非常にデリケートな時期に当たっておりますので、円高のこれからどういう影響が出るのか、これは注意深く見てまいらなければならない、かように考えております。
  17. 松浦孝治

    松浦孝治君 どうもありがとうございました。  ところで、いろいろな指標を見ますと、最近、金利動向の中で上昇傾向が見受けられるわけでございます。特に長期金利、長プラも上がるようでございますが、この金利上昇が、今せっかくお話にもございましたような景気の上向き傾向にある中で、それに悪影響を与えるのではないか。このような懸念もあるわけでございますが、金利動向についてお話しをいただきたいと思います。
  18. 三重野康

    参考人三重野康君) 短期金利につきましては比較的落ち着いた動きを引き続き示しておるというふうに思いますが、委員指摘のとおり、長期 金利はやや上昇しております。  長期金利につきまして、私のような立場の者が余り詳しいコメントをいたしますことは市場に不測の影響を与えますので御勘弁願いたいと思いますが、市場の見方を御紹介いたしますと、最近の債券市況が金利が上がっている背景は、委員が最初に御指摘になりましたように、景気に若干明るい指標が出てきたこと、株価が持ち直したこと、この二つを一番大きな材料といたしているようでございます。  相場にはもちろんある程度の変動はつきものでございます。しかしながら、やはり今のような変動が直ちに景気を左右するような大きな影響はないと思いますが、これも先ほど御説明いたしましたように、極めて景気がデリケートなときでございますので、引き続き債券市況の状況あるいはこれが実体経済に及ぼす影響についてはやはり注目をしてまいりたいと、かように考えております。
  19. 松浦孝治

    松浦孝治君 どうも、日銀総裁ありがとうございました。  ちょっと相前後いたしましてまことに申しわけございませんが、先般開かれましたOECDについて森通産大臣船田経企庁長官からお話が実はあったわけでございますが、総理にちょっとお伺いをさせていただきます。  七月に開催を予定しております東京サミットまでもうあと一カ月に実はなったわけでございますが、その前哨戦として先般のOECD閣僚会議があったわけでございまして、その経済宣言が下地になると、こういうようなことを聞いておるわけでございます。そして、いよいよ東京サミットにそういう経済問題も移ってくるわけでございますが、特に年間千三百億ドルに及ぶ貿易黒字を持っておる日本といたしまして、非常に東京サミットは厳しい状態になるのではないかと懸念をするわけでございますが、総理がこの東京サミットに臨もうとされている、特に経済問題、景気問題についての御所見をお伺いできればと思います。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国が、あるいは我が国だけかと申し上げた方が適切かもしれませんけれども、非常に大きな貿易黒字を持っておる、経常黒字を持っておる、それもこの一、二年ということではなく恒常的にそういう状況にあるということについて、これは世界自由貿易がさらに大きくなるためにはやはりひとつ問題であるということを各国が考えることは、私は無理からぬことであるというふうに思っております。  それでありますからこそ、不況対策もございますけれども、昨年以来、またただいま御審議いただいております補正予算におきましても、内需振興ということを考えておるわけでございまして、やはり貿易黒字を減らすということは、基本的には内需が振興されて経済のエネルギーが内需に向かうということ、その分だけ輸出が減っていくということ、それから、内需が振興される結果その分輸入がふえるということ、これがやはり基本的な私は方策であろうというふうに考えております。多少時間がかかりましても、これがやはりいわば王道というものであろうというふうに考えております。そのことは過般、クリントン大統領にも私から申し上げましたし、また今回のOECD閣僚会議におきましても、我が国を代表してそういう主張をいたしておるわけであります。  今度OECD議論になりましたことは、我が国の大きな経常黒字、それからヨーロッパの失業、アメリカの財政赤字、貿易赤字といったような、従来からある意味で言われておるその問題がなかなか解決されないでおるということが中心になりまして、各国おのおのそれに対応することを求められたということであったように承知をいたしておりますけれども、他方で、そのようなマクロの政策をとります傍らで、我が国経済の開放体制が十分でないという指摘が御承知のようにございます。  アメリカが一番それを強く主張しておるわけでございますけれども、各国いろいろおのおのの国がおのおのの問題を持っております。我が国の場合には黒字が大きいものですから、やっぱりその点を指摘される度合いが強い。これも無理からぬことであって、そういう問題にどう対応するかということは、今度パリに閣僚が行かれましたときに、いわゆる四極の通商産業大臣会議というものがございまして、この中では、どっちみちウルグアイ・ラウンドが今年の末までには終局しなければならない、その中でしばしば御議論のあります我が国にとっての農業であるとか、アメリカにとってのダンピングであるとか、いろいろ各国基本的な問題意識を幾つか持っておって、その陰でダンケル・ペーパーをすぐには了承できないという問題がございます。  そのことはかなりこれからまだ議論を要するものでございますから、サミットまでにはそれ以外のといいますか、つまり工業製品とサービス部門についてのアクセスをまだまだ各国とも詰められる、詰めればもっともっと貢献ができる、交渉が進むわけでございますから、サミットまではその部分にひとつ精力を集中しようということで今度も会議がございましたし、この二十三日、二十四日でございますか、東京で関係閣僚がもう一遍寄られて、そしてサミットまでにその部分の詰めをしようと。これは言ってみますと、我が国にとって言えば、いわば開放体制の推進ということになる、各国ともそうでございますけれども、アクセスを詰めていってそして関税率を下げていって輸入をふやす体制に入ろう、そういう努力が他方でなされておると。  でございますから、最後に結論として申しますと、サミットで議論される問題は、一つはそのようなマクロの問題である、一つはそのようなウルグアイ・ラウンドの推進の問題である、それに加えまして、日米の間では先般私が訪米いたしました結果、両国の間でいろいろ、これ貿易に限りませんが、お互いに推進をしたい問題があるので、そのためのフレームワークをひとつサミットまでにつくろうということになっております。そのフレームワークの作業は、実はおのおのの国で相手に対する提案、注文というようなものを議論いたしておるわけですけれども、まだ両方が一緒になって案を交換して議論をするというまでには至っておりません。近いうちにそれをいたしませんとだんだん間に合わなくなってくるわけでございますから、遠からずそういうことになろうと思いますが、フレームワークの合意があって、日米としてはそのフレームワークに従ってお互いの問題の解決を図ろう、大体こういう構図でございます。  しかし、結論として、松浦委員が言われますように、これだけ黒字があるとやっぱりなかなか大変だろうとおっしゃることはそのとおりでありまして、そういう意味からも御審議を願っております補正予算も成立させていただきまして早く執行を図りたい、こう考えておるわけでございます。
  21. 松浦孝治

    松浦孝治君 前回の東京サミットでも経済問題が非常に重要な局面であったのでございまして、また今回もそういうような局面のようでございますので、どうか頑張っていただいて、成功をお祈りいたしております。  それでは次に、産業面から経済動向についてお尋ねをいたしたいと思います。  今も申しましたように為替市場では急激な円高が進行中でございます。この円高の波はいろいろな分野に大きな影響を及ぼしておるところでございまして、原材料の輸入や消費者物価にはメリットがあると考えられますが、長く不況に苦しんできた輸出型産業にとっては強烈なパンチであり、ダウン寸前の企業も出てきつつあるんではないかと私は懸念するわけでございます。日本経済を支え、雇用の安定に大きな役割を果たしてまいりました自動車産業、電子・家電産業、機械産業、鉄鋼産業等にはこの円高の波はもろにかぶるのではないかと思うわけでございます。  企業は懸命なリストラや体質の改善に努力をされておりますし、また政府も数度にわたる経済対 策等を打ちまして、だんだんと薄日ではございますが景気が上向きつつあるな、こういうような期待をしておるのに冷水をかぶせるような形に円高がなっておるんではないかと思うわけでございますが、このような急激な円高が国内産業にどのような影響を与えると通産大臣は認識されておるのか、また、それに対してどのような対応策をとろうとしておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  22. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 現下の経済動向をどういうふうに見ておるのかということについて、先ほど経企庁長官からお話がございました。ちょうど私がアメリカ船田長官とともに行っておりましたときに、帰った日の朝刊でございましたか新聞に底入れ宣言というのが出ておりまして、ファクスで見てびっくりしたわけでございます。  一つには、やはりそういう、次第次第にいい方向に行っておりますよ、経済というのは産業社会におきます一つの心理的なものが非常に大きいわけでございますからそういう方向を示唆するということは大事かと思いますが、現実はもう少し要注意をした方がいいというふうに私は実は見ております。前もこの委員会で申し上げたと思いますが、二月、三月というのはどうしても決算対策ということでいろんな数字がよく出てまいりますけれども、四月、五月になりますと、またこれは反動で必ず下がってまいります。確かに在庫調整は進展はいたしております。普通、在庫調整が進展しておりますと当然生産活動の動きが出てこなければいけないわけでありますが、そこのところがいま一つというのが正直なところでございまして、そこがいろんな原因があるんだろう。  先ほど申し上げました心理的なものもございますが、もう一つは、今松浦委員指摘ございました円高の問題が非常にやはり企業に対する心理的なものを与えているのではないかというふうに私ども見ておりまして、確かに一部に回復兆しを示す動きが徐々にあらわれてきておりますものの、基調としてはまだ予断を許さない状況にある、このように見ております。  このような状況の中で今回のような円高が進むということは輸出関連企業の円ベースでの手取り収入を減少させますし、収益の悪化を招くだけでございませんで、いわゆるすそ野の広い加工組み立て産業を通じまして直接的に円高に関係のない産業までにもやはり悪影響を及ぼしてくるということになりますので、国内景気を冷やしていくのではないかということが私どものやはり懸念材料でございます。  今回、主要企業を対象に円高に関する調査をいたしてみますと、今回の円高が企業経営に与える影響については、約五割の企業は経営が苦しくなるというふうに回答をいたしております。特に輸出比率の高い自動車、電機等の業種では影響が深刻である、このように見ているわけです。また、特に影響はないとした企業は約三割ほどございますが、しかし、そのうちのまた約四割は為替リスクをヘッジしていることを理由として挙げているためでございまして、円高がさらに継続していった場合にはこれらの企業の収益にもやはり影響を及ぼすということが予想されるわけでございます。  円高が及ぼすこのような悪影響に対しましては、先ほど総理御答弁ございましたように、内需拡大を図って国内景気の早期回復を図るということは、これは総理のお言葉をかりると、王道とおっしゃったと思いますが、まさに私は基本的にはそこだろう、こう思っておりまして、そういう面で、今般の新総合経済対策の早期実施を通じまして景気の一日も早い回復が実現されることを期待いたしておりますし、こうして予算委員会の諸先生方に今回の補正予算の早期成立をぜひ私からもお願いを申し上げたい、このように思う次第であります。  なお、今回の経済対策におきましては、最近の急激な円高により影響を受けております中小企業者に特に配慮いたしまして、都道府県と国が協力しまして実施しておりますいわゆる緊急経営支援貸付制度を拡充いたしました。最近の円高による輸出減等の影響を受けて経営に不安定が生じております中小企業者に対する特別枠を実は創設しておりまして、これが今御審議をいただいておりますこの予算の中にも組み込まれておりますので、ぜひ一日も早いひとつ御可決をお願いしたいと重ねてお願いを申し上げる次第でございます。
  23. 松浦孝治

    松浦孝治君 どうもありがとうございました。  それでは、設備投資につきまして少しお聞きをいたしたいと思います。  景気を支える大きなファクターであります設備投資は平成三年度、平成四年度とも対前年比で大幅な減少になっておるのであります。  ところで、通産省においては平成五年度の民間主要企業の設備投資計画につきまして報告書を産業構造審議会に提出したと聞いておるわけでございますが、どのようなそれは内容であったのか、お聞かせを願いたいと思います。
  24. 熊野英昭

    政府委員(熊野英昭君) ただいま委員が御指摘ございましたように、先週私どもが調査をいたしました設備投資調査結果を産業構造審議会の産業資金部会の方に御報告を申し上げました。その内容の要旨を申し上げたいと思います。  五年度の設備投資計画を見てみますと、全産業で見ますと対前年度比二・八%のマイナスということでございます。四年度、この同じ調査におきましてマイナスの九%になっておりますので、引き続き企業の投資マインドというのは大変慎重な状況が続いているということでございます。  若干業種別に申し上げますと、製造業におきましては前年に比べまして一四・六%のマイナスということでございます。これは、四年度がマイナスの一八・二%でございましたので、二年連続二けたのマイナスとなっております。非製造業について見ますと、四年度は対前年度比がマイナス〇・五%であったのに対しまして五年度におきましてはプラス五・五%と一応堅調な計画となっております。  ただ、中身を見ますと、実は電力等の公益事業関係の設備投資の拡大による部分が大変大きくございまして、この非製造業の中に入っておりますところの卸、小売といったふうな流通産業関係は消費の伸び悩み等を背景といたしまして大幅な落ち込みになっております。そういう意味で、非製造業はプラスではありますけれども、設備投資は電力等の公益事業を除いては大変慎重な状況が続いているのではないかということでございます。  今後の見通しにつきましても、いろいろ審議会でも御議論いただきましたけれども、資本ストックの調整がそれなりに進んでいることに加えまして、先般来の総合経済対策のいろんな効果、これには一般的な効果もありますし、それから設備投資自体についても、投資減税とかあるいは政府系金融機関による融資とかそういった対策等もございますので、順次その効果もあらわれてきて下期以降は緩やかながら回復に向けていくのではないかというふうに期待をされているわけでありますけれども、その際も、やはり先ほど来御議論いただいておりますような、円高が設備投資のそういう回復に水を差すというか心理的な効果等々でどういうことになるか懸念をするところもありますので、動向については十分慎重に見守ってまいりたいというふうに考えております。
  25. 松浦孝治

    松浦孝治君 設備投資については、やはりまだ厳しい状態があるようでございます。  それでは次に、中小企業についてお伺いをいたしたいと思います。  先ほど森通産大臣の方から今回の補正予算につきましても強力な中小企業対策を考えておられるということで、私も十分承知をいたしておるところでございますが、長引く不況によりまして中小企業はかなり苦しんでおるわけでございます。そういう点で、予算については、金融面とかそういうことよくわかるのでございますが、やはり受注面の問題についても強力に行っていただきたいと思います。  それは官公需の受注でございますけれども、こ ういう面について、御承知のように、中小企業に対する官公需については官公需確保法第四条に基づきまして目標値を毎年閣議決定をされておるのであります。しかし、残念ながら平成元年より毎年この目標値以下の実績に実はとどまっておるのでございます。  森通産大臣は実力大臣でございます。各省庁に対しまして必ずこの閣議決定された目標値を達成するように強く要請をしていただきたいと思うわけでございますし、また、地方公共団体に対しましても国の施策に準じて行っていただくように大臣の御努力をお願いいたしたいと思いますが、森通産大臣のこれに対する御所見をお伺いできればと思います。
  26. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 官公需におきます中小企業の受注機会を確保することにつきましては、今、委員から御指摘のとおりでございまして、従来から官公需確保法に基づきまして毎年度国等の契約の方針を閣議決定いたし、努力してきたところでございます。  ただ、近年、大規模工事などがございまして、いわゆるバブルの一つの時代、あるいはバブルのその延長時でございましょうが、大規模な工事になりますと、その性質上どうしても中小企業者に対する発注が難しいものが増加しているということの事情はございますが、平成四年度の閣議決定におきましては、中小企業者向けの契約目標を史上最高の四兆四千三百四十億円に設定をいたしまして、各省庁にその目標の達成について一層の努力の要請をいたしてきたところでございます。今年度の国等の契約の方針につきましても、閣議決定を少しでも早く行い、またより高い目標を設定していくよう、現在、各省庁との調整を行っているところでございます。  また、地方公共団体に対しましても、官公需確保法によりまして国の施策に準じて中小企業者の受注の機会の確保のための施策を講ずるように定めております。これに基づきまして、国の方針も参考にして中小企業者の受注機会の増大のための措置を講ずるように要請をいたしておるところでございます。  今後とも、各省庁等はもとより、地方公共団体の協力も得つつ、官公需におきます中小企業者の受注機会の増大に最大限の努力をしてまいる次第でございます。  実力はありませんけれども力はございますので、組み打ちならねじ伏せるんですけれども、なかなか思うようになりませんが、総理を初め内閣責任を持って、今、委員から御指摘の点につきましては一生懸命努力をいたしてまいる、このように申し上げておきます。
  27. 松浦孝治

    松浦孝治君 力強い御決意をいただきまして、中小企業者は非常に喜んでおると思います。どうかよろしくお願い申し上げます。  それでは次に、最近の雇用情勢とこれに対する雇用対策についてお伺いをさせていただきます。  我が国経済は、これまでかなり長い期間景気低迷が続いてきたことは皆様御承知のとおりでありますが、このところ、先ほどもお話がございましたように在庫調整等が進展するなど景気に一部回復兆しがあるわけでございます。しかし、その雇用面への影響を見ますと、求人倍率は低下が続いており、また企業の人員削減の動きも広がっておるように思われます。したがって、労働関係は必ずしも明るい状態にないと私は認識をいたしておるわけでございますが、労働省としては最近の雇用情勢についてどのように見ておるのか、求人求職及び雇用失業の動向、また企業内の雇用過剰感の動向等について、その状況を御説明いただきたいと思います。
  28. 齋藤邦彦

    政府委員(齋藤邦彦君) 結論を一言で申し上げれば、雇用情勢は依然として厳しい状況にあるというふうに認識をいたしております。  私ども公共職業安定所に対します求人求職の状況を見てみましても、依然として求人は減少しておりますし、また求職者数は増加をしてきております。したがいまして、有効求人倍率が四月は〇・八四倍という数字になっておりまして、三月が〇・八八倍でございまして三月に〇・八台になりまして、さらに一段と低下をいたしております。  雇用失業全体の姿を見てみますと、雇用者数は製造業で見ますと増加比率が減少を続けてきております。職種別に見ますと、管理的職業あるいは事務従事者ではむしろ減少傾向、こういう形になっておりますが、完全失業率自身は二・三%で率は同じでございますが、ただ、失業者数は前年を約二十万人前後上回るというふうな状況でございます。さらに、各企業におきます過剰感も各製造業それぞれ広がってきております。それから、私どもの労働経済動向調査によりますと、雇用調整を実施しております事業所の割合は製造業で約四〇%でございまして、昭和六十一年ごろの円高不況期をしのぐ動きでございます。  こういうような数字状況でございますが、今後につきましても雇用の回復景気回復におくれる傾向はございます。また、最近の急激な円高の傾向について非常に懸念を表明しておられる事業主の方は多々おられます。  そういうようなことで、中長期的な観点からいわゆる事業の再構築、合理化を図ろうというような動きも各般に広がっているようでございまして、ここしばらくこのような動きがどのように雇用の面に及ぼしてくるか慎重に見守っていかなければならない、情勢の把握に万全を期していかなければならない、このように考えております。
  29. 松浦孝治

    松浦孝治君 企業における雇用調整の広まりの中で雇用調整助成金の業種指定の拡大が続いておるわけでございますが、業種指定の状況がどのようになっておるのか、その推移等についてお聞かせ願いたいと思います。
  30. 齋藤邦彦

    政府委員(齋藤邦彦君) 昨年の十月に雇用調整助成金の指定基準を緩和いたしました。それ以来毎月業種を指定してまいりましたが、ことしの六月一日現在、百五十一業種でございます。これはかつての円高不況期の六十二年五月、百六十五業種指定したことがございますが、これに迫る形となっております。  この百五十一業種、対象事業所にいたしますと十四万八千事業所、雇用保険の適用事業所の約八%になりますし、また対象労働者三百七十三万でございまして、被保険者に対する割合といたしますと一一・四%、このような形になっております。  なお、現在でも新たに指定業種にしてほしい、こういうような御相談で来ている業種もございますので、まだ若干今後ふえてくるだろう、このように思っております。
  31. 松浦孝治

    松浦孝治君 雇用情勢は、ただいま御答弁をいただきましたように、必ずしも楽観できない状況になっておるわけでございます。  政府といたしましても、このような雇用情勢を踏まえながら、今回の総合経済対策において強力な雇用対策を推進しようとされておりますが、その対策の概要と効果について労働大臣よりお答えを願いたいと思います。
  32. 村上正邦

    国務大臣(村上正邦君) 今回の総合経済対策においては、依然として厳しい雇用情勢に対応し雇用対策を強化することとしており、約二百八十億円の補正予算を計上いたしております。  その一つは、企業の雇用維持努力を最大限支援していくため雇用調整助成金について助成率の引き上げや下請事業主の範囲を拡大するなど対象事業主の拡大を図る、二つ目には、雇用調整の影響を受けやすい中高年齢者の雇用の安定を図るため中高年齢ホワイトカラーを対象に雇用就業に関する情報の収集、提供や教育訓練の実施を行うことといたしております。  このように、今回の経済対策に盛り込まれた雇用対策は、失業を予防し企業の雇用維持努力を支援するため積極的な対策を行うこととしたものであります。「人は石垣、人は城」とうたわれますが、企業は人を最大の財産として大切にし、最後の最後まで雇用維持に努力してこの難局を乗り切っていくことが大事なことであり、雇用の安定 にとって極めて有効なものであると考えております。
  33. 松浦孝治

    松浦孝治君 次に、あすを担う人材である新規学卒者の問題についてお伺いをいたします。  今回の景気低迷に伴う雇用調整の広がりの中で、新規学卒者の採用内定取り消しという甚だ遺憾と思われるような事態が多く発生をいたしました。労働大臣はこうした動きにいち早く手を打ってこられたのでありますが、学卒者の採用内定取り消しに関する事前通知制度を、この四月ですか、スタートをされております。また、内定取り消し企業名の公表を行うなど、いろいろな努力をされておることは私も承知をいたしております。  そこで、今春の学卒者の就職状況について、その結果をどのように把握されておるのか、また、来春の学卒者の採用計画を見ますと大幅な採用減が予定されており、将来の日本を支えていくべき若者の就職に大きい強い懸念を抱くものでありますが、労働省はこうした来年の新規学卒者に対する採用減の動きについてその状況をどのように把握し、また対応しようと考えておられるのか、また、この厳しい新規学卒者の就職状況に対し労働大臣はどのようなお考えでおられるのかお聞かせいただきたいと思います。
  34. 齋藤邦彦

    政府委員(齋藤邦彦君) 平成五年三月に中学校、高等学校を卒業された方々につきましての就職状況を見てまいりますと、中学校で九三・九%、高等学校で九八・五%ということでございまして、ほぼこれは前年度と同水準の就職決定率でございます。それからなお、同じくことしの三月に大学を卒業された方々につきましては、各大学で職業紹介を取り扱っておられますので全体の就職状況を把握いたしておりませんが、今まで聞いておりますところではそれほど悪い状況ではないというふうに思っております。  それからなお、平成六年三月卒業予定者に対します採用予定は、大学卒については七月に計画を把握することにいたしておりますし、また中卒、高卒につきましては六月二十日以降求人の受け付けを開始いたしたいというふうに思っております。  昨年までの採用予定に比べましてそれぞれ減少することは予想をされますけれども、従来から新規学卒者に対します求人は極めて多うございます。従来から中小企業を中心といたしまして非常な採用期待努力があるにもかかわらずなかなか採用できない、こういうようなこともございます。  特に中長期的に見ますと今後若年労働力の供給が減少してくることが予想されておるわけでございまして、そういう意味におきましてこの機会にというようなことを言っておられる企業も多数おられる、こういうことでございますので、たしかきょうの報道機関、いろいろ大企業の採用予定計画の数字等も載っておりましたけれども、確かに一部上場企業を中心とします大企業におきましては採用計画が減少することは予想されますけれども、その他ということを考え合わせれば、今後の努力いかんによって円滑な就職ができるのではないか、このように思っております。
  35. 村上正邦

    国務大臣(村上正邦君) 新規学校卒業者は将来の我が国の発展を担う貴重な人材であり、その方々が円滑に就職することは大変大事なことであると思います。  今も局長お話しいたしましたように、けさの新聞でございますが、「主要三百社本社調査」、これはある新聞でございますが、「来春の採用減」、三百社のうち半数超す百六十九社が採用減、ふやすと言ったのはわずか十五社、ゼロが四社、こういう報道がされておりました。  そうしたことから、労働省といたしましても企業者側に対して、長期的な観点から採用計画を立てていくことが重要であると。先ほどもお答えいたしましたように、「人は石垣、人は城」ということを十分御理解を求めていく努力をし、新規卒業者がその適性と能力に応じて希望する職業につくことができるよう懸命の努力をしてまいりたい、このように考えております。  ことしの新規採用取り消しの企業名の公表によってそれが企業の消極的な姿勢に出たと、ならばこれは私の重大な責任であろうと、それだけに来年の新規卒業者に対しての企業側の積極的な採用努力を促したい、こう思っておるところであります。
  36. 松浦孝治

    松浦孝治君 いろいろお聞かせをいただきましたが、毎日の新聞を見ますと大幅採用減というような活字が躍っております。卒業を控えております学生等につきましては今非常に不安な心理を持っておると思いますので、労働大臣より今いろいろ御決意のお話をいただきましたが、やはり文部省も管轄であると同時に、政府一体となってこの問題については取り組んでいただきたいと心から期待を申し上げます。  次に、外国人労働者問題についてお伺いをいたします。  我が国で働いている外国人労働者の中には、南米諸国から合法的に入国し就労している日系人や、就労ビザを持たずに働いているいわゆる不法就労者が多数いると思われますが、このところの景気低迷に伴う雇用調整の広がりの中で、就労に当たってのトラブルなどさまざまな問題が生じております。政府は、こうした中で、このほど外国人労働者をめぐる環境条件を整備する目的で雇用や労働条件に関する指針を定めたと聞いております。一方、技能の移転を通じて国際協力を図る観点から技能実習制度を創設したと考えておりますが、これらについて概要とねらいをお聞かせいただきたいと思います。
  37. 齋藤邦彦

    政府委員(齋藤邦彦君) 近年、我が国で就労される外国人、年々増加してきております。総体といたしまして、今や雇用労働者全体の約一%を超えるような数になっているのではないかと推計されます。したがいまして、我が国の雇用市場、労働市場に及ぼす影響というのも看過できないものがあろうというふうに思っております。  最近、先生の御指摘のように、外国人労働者をめぐるいろいろなトラブルが起こってきておりますので、このようなことに対応するために、外国人労働者の雇用管理の改善、適正な労働条件、あるいは安全衛生の確保ということを推進するために事業主に考慮していただくような事項を「外国人労働者の雇用・労働条件に関する指針」という形で定めることにいたしました。  具体的な事項といたしましては、例えば採用時に在留資格の確認など外国人の募集、採用の適正化に関するような事項、さらには雇い入れのときの労働条件の明示など適正な労働条件の確保に関する事項、さらに安全衛生教育、健康診断の実施など安全衛生の確保に関する事項、さらに日本語教育、解雇の予防、再就職の援助など外国人労働者の雇用の安定、福祉の充実に関する事項などを盛り込んでおります。  関係各省御相談いたしまして、六月を政府全体としまして外国人労働者問題啓発月間と、こういうことにいたしております。このような期間を活用いたしまして集中的にこのような指針の周知徹底を図っていきたい。そのようなことによりまして正規に働ける外国人労働者の方々の雇用管理の改善あるいは適正な労働条件の確保というものを図っていきたいと、このように考えております。
  38. 松浦孝治

    松浦孝治君 最後に、労働関係について最後の質問を大臣にいたしたいと思います。  こういう景気低迷の段階にあって高齢者あるいは女子労働者に対しての雇用の不安というものが出てくるわけでございまして、長期的には高齢者あるいは女子の方々の職場への進出ということは出てまいりましょうが、このような不況の段階においてそういうようなしわ寄せがなされる懸念も多いわけでございます。そういう点について労働大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  39. 村上正邦

    国務大臣(村上正邦君) 雇用という問題について本当に最近非常に重要な我々政治家の課題だということが痛切に感じられますことは、これはきょうの一日の新聞でございますけれども、新聞 記事では、政治改革と雇用失業、これが大きな活字で毎日躍る、こういうことを考えましたときに、今、委員の御質問ありましたように、特に高齢者や女子労働者に雇用調整が及ばないように、集中しないように、私どもはその雇用調整の状況を敏速かつ的確に把握することがまずもって大事なことだと。そして、安易な雇用など行わないよう事業主に対する指導に努めていきたい。  と同時に、もう少し積極的に中高年者の豊富な経験だとかその知識を生かしていく新しい職場を開拓していきたい。特に国際貢献と言われている中で、こうした方々の国際貢献のあり方ということも考えて発展途上国にそういう場を求めていくことはどうだろうと、こういう仕組みも考えていきたいし、それからただいま労働委員会で御審議いただいておりますパートにいたしましても、女子の方々、女性の方々、強く申し上げます、女性の方々の社会進出、新しい職場を確保していく、こういうことに万全の努力を傾けてまいりたい、こう思っておるところであります。
  40. 松浦孝治

    松浦孝治君 それでは次に、金融、証券の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  バブル経済の崩壊に伴い我が国の金融システムの安定性について懸念が生まれまして、さまざまな論議が行われたのでございます。幸い、政府の諸施策によって国民の不安も徐々に解消されつつあります。つい先日、主な銀行の不良債権のディスクロージャーも行われました。  そこで、お伺いをいたしますが、今回の銀行による不良債権のディスクロージャーの内容と意義、そして去る一月に設立された共国債権買取機構の役割と実績について御説明をいただきたいと思います。また、金融機関の不良債権問題について大蔵大臣の御所見もお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
  41. 寺村信行

    政府委員(寺村信行君) まず、不良債権の問題からお答えを申し上げます。  去る五月の二十七日と二十八日に都銀、長信銀、信託、二十一行の不良債権が公表されました。その総額は、本年三月末におきまして合計約十二兆七千七百四十六億円となっております。今回のディスクロージャーは、昨年十二月の金融制度調査会のディスクロージャー作業部会の中間報告に基づきましてただいま申し上げました都銀、長信銀、信託、個別の金融機関が破綻先債権と延滞債権のディスクロージャーを行ったものでございます。いわゆる金融機関の不良資産の概念といたしまして、元本の回収可能性に着目をいたしまして、元本回収が不可能となる蓋然性の高い破綻先債権と将来におきまして償却すべき債権に転換する可能性の高い延滞債権につきまして、今回開示をすることになったものでございます。  この不良債権のディスクロージャーと申しますのは、現在のような情勢のもとにおきまして、経営内容の透明性を向上させることによりまして金融機関に対する信頼性を向上させるということのほか、金利の自由化あるいは金融制度の改革という金融の自由化が進展していく中で、金融機関の経営の健全性を確保するための自己規制の手段として極めて大きな意義を有するものではないかと考えているところでございます。次に、不良債権買取機構の状況について申し上げます。  本年一月に民間金融機関の共同出資によりまして共国債権買取機構が設立をされました。これは、金融機関の不良債権を早期に処理し損失を確定させることによりまして不良資産の処理の促進を図るということを目的としたものでございます。  本年三月期に同機構が買い取りました対象債権の額は六千八百十七億円でございます。この額面六千八百十七億円を四千五百二十一億円で買い取ったわけでございます。その結果といたしまして約二千三百億円の売却損が金融機関に発生をいたしました。この売却損をこの三月期の決算で償却をすることによりまして金融機関は六千八百億円の不良資産の処理を行った、こういうことになるわけでございます。
  42. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 今、松浦議員の御質問政府委員から概略を御説明申し上げたとおりでございますが、いわゆるバブル経済の崩壊後にいろんな問題が出てきたことは委員指摘のとおりでありますし、これからそれをどう解消していくかということが私たち今考えているところの諸問題だろうと思います。  申すまでもありませんけれども、金融機関といえどもこの自由主義経済の中においては競争原則でやっていかなければならない、これは一つの大きな原則だろうと思います。しかし同時に、金融機関は、預金者というようなものがありますから、これに対する信頼性を失うようなことがあってはならない。こうした中で、やはり銀行が健全な形に育っていく、また健全な形での融資というものがいろんな形でできる、国民にこたえてやるような方策を持っていく、こういったことが私は必要だろうと思いますし、そういった方向で、先ほど申しましたように、不良債権の買取機構であるとか、あるいは益出しの問題であるとか、さらには民間金融機関のディスクロージャーを今回やりました、いろんな諸施策を通じまして、国民の御期待にこたえられるような体制づくりに努めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  43. 松浦孝治

    松浦孝治君 次に、本年度、政府保有の株式の売却が計画をされておるようでございます。JT株が昨年は売却が見送られたわけでございますが、今年はどうも計画を立てておるようでございます。JT株とかJR株、そしてNTT株、こういう大型の株式を放出したりあるいは公開いたしますと、一般の企業の株式増資が株式市場の動向から見ますと非常に大変になるんじゃないだろうかと金融の円滑化の観点からも私は若干危惧するところでございますが、行政官庁としてどのような見解を持っておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  44. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) JT株の売却の話は平成四年度の予算でも初めは実は出ておったわけでありますが、総合経済対策をやる、株式市況も悪い、こういう形で昨年はやめました。五年度につきましては一応予算に計上しておりますが、今の委員指摘のような問題もありますので、今鋭憲政府の中でやっております。詳しくは政府委員の方からこういうふうなことを考えてやっていますということの御説明をさせたいと思いますが。結構でございますか。
  45. 松浦孝治

    松浦孝治君 もう時間がございません。  私自身は今述べましたような懸念を持っておりますので、十分慎重な上での公開と申しますか、売却にしていただきたいと期待をいたしておきます。  いろいろ我が国経済現状につきまして御質問をしてまいりましたが、昨年の緊急経済対策、総合経済対策、そして景気に配慮した平成五年度予算の年度内成立、さらに総規模十三兆円を超える史上最大の新総合経済対策により、まだ力強さには欠けるものの、景気は徐々に回復の方向に向かっているということがわかりました。なおその足取りを確実なものにするためには、補正予算の一日も早い成立と総合経済対策の円滑な執行が重要であると私も認識いたしておりますが、大蔵大臣の決意を聞いて、私の質問を終わらせていただきます。
  46. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 松浦議員から私が申し上げなくちゃならないようなことを言っていただきまして、全くそのとおりでございまして、私どもも持続的成長の段階へ持っていくために、予算に盛り込まれた問題ももちろんのことでございますが、そのほかの点において一層の努力を傾けてまいりたい、こういうふうなことを申し上げたいと思います。
  47. 松浦孝治

    松浦孝治君 どうもありがとうございました。
  48. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で松浦君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  49. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、種田誠君の質疑を行います。種田君。
  50. 種田誠

    種田誠君 私は、冒頭、昨今大きな問題を提起しております核拡散防止条約に関するアメリカと朝鮮の間における協議の件について、総理にお伺いをしたいと思います。  新聞の報道などによりますと、朝鮮への訪問団のビザが発給停止になった、さらにはアメリカでの会談も決してよい方向に進んでいない、こういうふうに報道をされ、聞き及んでいるわけでありますけれども、総理自身、身近なところにある国の問題でありますから大変な関心を持っておられると思いますけれども、この件についてどのような考えを今持っておられるか、まずお伺いしたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私自身重大な関心を持っておりますが、ここのところの経緯につきましてまず政府委員から御説明を申し上げたいと思います。
  52. 池田維

    政府委員(池田維君) お答えを申し上げます。  北朝鮮のNPT脱退につきましては、核不拡散体制への挑戦でありまして、東アジア地域の安全保障に重大な事態をもたらすものだというように考えてきたわけでございますが、当面の重要課題といいますのは、先月の十一日に安保理で決議が採択されました。  それに基づきますと、まず北朝鮮にNPT脱退を翻意させるというのが一つでございます。それからもう一つは、今いわゆる核疑惑の残っております二つの施設に対するIAEAの査察を受け入れてもらうということでございまして、そのために関係国があらゆる手段を尽くして説得を行うということで朝鮮民主主義人民共和国に対して働きかけを行っているというのが、全体としての最近の状況でございます。  その中で、ただいま先生が御指摘になられましたアメリカと北朝鮮とのハイレベルの接触でございますけれども、これは今月の二日にまず第一回目の会談が行われました。それから第二回目が四日に行われました。しかし、この二つの会談は結論的には見るべき進展がなかったというように私ども承知いたしておるわけでございます。そして三回目につきましては、多分来週中にも両国間で行われることになるのではないかというように聞いておりますけれども、まだ最終的に具体的な日時が決まったということは承知いたしておりません。  しかしながら、私どもといたしましては、本件につきまして朝鮮民主主義人民共和国が速やかに国際社会の要求に応じまして、何とか現実的かつ前向きに対処をしてくれることを強く期待しているというのが現状でございます。
  53. 種田誠

    種田誠君 総理は七月に予定されておりますサミットでも、この核拡散防止条約の体制の充実強化、こういう問題も提起していきたいような意向があるというようなことが報道されておるわけでありますけれども、そういたしますと、まさに条約の充実、さらには拡大を図るということに関して、今日起こっておる朝鮮の脱退の問題は相反する方向への動きなわけであります。この通告期限というものが、今月の十二日をもって事を決する、こういうふうなことも言われております。今の外務省の説明によると来週中にも第三回の会談が行われる予定だろうというようなことでありますけれども、どうもそれを待っておれないんじゃないか。  そういうふうな緊張感を感ずると同時に、さらに国連においても、仮に脱退というようなことが起これは、安保理において経済制裁等も含めて重大な決意をしなきゃならないというようなことも検討せざるを得ないんではないか、こういうようなことも一部報道をされているわけでありますけれども、そうなってまいりますと、まさにごく近くにある国のことでありますから、日本としてもいつまでもこれを座視しているというか傍観しているというか、これは許されないんじゃないか。日本国民にとっても、これは重大な問題である。今、こういうふうな極めて短い期間の間に大変なことが起ころうとしている、こういう事態にあると思うんですね。  いわんや、今申し上げましたように総理は、七月のサミットでこの核拡散防止条約に関する大きな議論をしたい、こうお考えのようですから、ぜひ今日における総理現状認識と、これから仮に経済制裁等々がもしも国連安保理で議決されていく、こういうふうになった場合に日本として一体どのように対応したらいいのか、示していただきたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点、種田委員と基本的に私も認識を同じくいたしております。  確かにこのNPT、核拡散防止条約の体制というのは、今世界国々の中で、いわば相対立しております国がお互いを牽制するような立場で加入をしていない幾つかの国がございまして、これはぜひ加入をしてもらいたいということをかねがね体制としてもまた我が国としても熱望をしておるわけでございますので、その中で従来加盟をしておった国がこれから脱退をするということはまさに全体の体制の進行に逆行するゆゆしき事態と思います。  殊に、今、種田委員の言われましたように、仮に朝鮮民主主義人民共和国が核兵器を開発いたしますとしますと、これを運搬する手段さえ保有するに至るならば我が国は直接その脅威を受けなければなりませんので、これはいわば人ごとではない重大な関心事である。御指摘のとおりに思っております。  そこで、その脱退を撤回する期限というものは六月の十二日ということに一応言われておるわけでございますので、それを前にして我が国としてもいろいろの努力を今日までいたしてまいりました。ついせんだっても、中国の外務大臣が来日をされましたので、朝鮮民主主義人民共和国にいろいろ影響力を有する中国としてもこのことについて関心を持っていただきたいと。  私の申しましたことは、中国はこのNPT、核拡散防止条約の中では核保有国でございます。我が国は申すまでもなく非保有国でございますが、この条約そのものはやはり保有国に対していろいろな義務を課しておる。保有ということを現実の問題として認めておりますかわりに義務を課しておる。それは核実験等々を減らしていって最終的には廃棄するということになるんですが、それに至りますまでの間にも保有国は非保有国に対してできるだけこの条約に入るように、そしてそれが保有国にならないように、そういうふうなことに努める義務が保有国としても一般論としてあるわけでございますので、保有国としての中国に対してそのような関心を持ってもらいたいということを、せんだって中国外相にも申し上げたところでございます。  もとより、朝鮮民主主義人民共和国と我が国は国交正常化の交渉をやっておりますけれども、この問題について進展がございませんとなかなか国交正常化ということも難しいということもしばしば交渉の機会に申しておるところでございます。  我が国としてそのような努力を払っておりますが、ただいま政府委員が申し上げましたように、この段階におきまして、六月十二日を控えましての折衝は国連安保理事会の決議を受けまして米国との間において行われております。ごく最近、二回行われたわけでございますが、それは今日までのところ、聞くところではこれといった成果を上げていない。で、三回目の接触があるかどうかにつきまして必ずしも見通しは明白でないという間にその六月十二日が到着をするという、そういう状況でございます。  おっしゃいますように、朝鮮民主主義人民共和国がこういう脱退を思い直すためにいわゆる制裁措置というようなものがいろいろに論じられておるわけでございますけれども、ただいまの安保理事会はその制裁そのものが目的ではございませんので、やはりそういうことを示す、そういう考えをいわば実行ではなくて明らかにすることによって朝鮮民主主義人民共和国側に事態を考え直してもらいたい、こういう状況に今おるわけでございまして、安保理事会はもう一つ先へ進むのを控え て朝鮮民主主義人民共和国に翻意を促しておる、そういう状況であると思います。  しかし、今日まで成果がないということはなぜであろうかと。実は、朝鮮民主主義人民共和国の国内の状況につきましては、甚だ我々知るところが少ない。こういうことをいたしましても特に得るところがあるとも思えないと思いますけれども、それにもかかわらず今日このような状況にあるということについて大変に憂慮をしておりますとともに、あらゆる努力をして翻意をしてもらいたいと考えております。
  55. 種田誠

    種田誠君 ぜひ、先ほど座視しているというふうな表現を使いましたけれども、そういうことではなくて、やはり朝鮮の近くにある国として、この米朝会談のさらなる積み重ねというか、そういうことも何らかの機会を通じて総理には努力をしていただきたいと同時に、先ほど総理からも、直ちに経済制裁を安保理が発動するとは思えないけれどもということでありますけれども、そこにいく過程の中においてもやっぱり日本一つ立場というものをはっきりと明らかにしつつ外交政策を展開していただきたい、このことをお願い申し上げまして、この問題は終わらせていただきたいと思います。  次に、先ほど松浦委員の方からも質問がありましたけれども、四月、五月と、あれよあれよという間に円が急騰いたしました。輸出関連の企業は今、特にカメラメーカーにしても電機関係のメーカーにしても、契約そのものの予約をとること自体もちゅうちょせざるを得ない極めて深刻な事態に陥っているということであります。  この円高に関しまして、日銀においてもかなりの介入をして円売りドル買いという行動をとってきたということでありますけれども、四月、五月、どのくらいの金額で介入による行動をとってきたんですか、まず御報告をしていただきたいと思います。
  56. 三重野康

    参考人三重野康君) 先生御案内のとおり、日本における為替市場の介入は外為会計がやっておりまして、大蔵大臣の所管でございまして、私どもはもちろんマーケットに直面いたしておりますので刻一刻の情報は大蔵省に緊密に流しておりますけれども、先生の御質問にはお答えできかねます。御勘弁を。
  57. 種田誠

    種田誠君 それじゃ、大蔵大臣、お願いいたします。
  58. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 委員指摘のように、為替市場がこの二月以来大変な思惑的な動きを示していることは事実でありまして、私どももこの市場に対しては非常によく注視をしておりますし、為替というのはファンダメンタルズを反映して動かなくちゃならない、急激な変動は好ましくない、これはG7でもありました各国の共通の認識でありますが、それに対しまして各国と話し合いをしながら適時適切に対処してまいりたいと、こういうことで今まで御答弁申し上げているところであります。  市場に幾ら出しているとかどうだという話につきましては、市場に対しまして不測の影響を与えるということであるのでこの際コメントをすることは差し控えさせていただきたい、こう思っているところでございます。
  59. 種田誠

    種田誠君 聞くところによると、五月だけでも三十億ドルぐらいの協調介入を行ってきたと。一日の世界の市場の動きが八千億ドルぐらいですから大した金額じゃないとは思いますけれども、そういう形でこれからこの円高というものに対して対処していくということが妥当なんだろうか。  今回の円高というのが市場の自由な取引という形で発生しているよりは、先ほど来議論があったように貿易黒字一千三百億ドル、よく考えてみますと一千三百億ドルというのは大きい金額かなと思いますけれども、また円に直しますと十一兆円ぐらいのお金ですから日本のGNP四百兆円から見ると大した金額じゃないそういう一千三百億ドルでありますけれども、この貿易黒字を何とか解消する手段として円高というものが政策的に何かとられている、そしてその結果内需拡大へというふうに持っていこうという、こういう何か非常な政策的な判断でこれがなされているんじゃないかなという気もするんですけれども、その辺のところは大蔵大臣はどのように見ていますか。
  60. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 先ほど申し上げておりますように、為替相場というのはファンダメンタルズを反映して動くというのが一番好ましい話でありまして、市場はいろんな形で動いておりますが、現在の市場は、いわば貿易の実物取引、輸出為替、輸入為替の取引の市場で動いておりますのは、その五十倍とか七十倍ぐらいの金が非常に為替市場の中では動いているわけでございまして、その中で、政府がいろいろな介入をしたりなんかするというのも委員指摘のように限界があるという話かもしれませんけれども、やはり各国の政策当局がファンダメンタルズを反映して安定的な形で動くということが望ましいという意見の一致を見ているところでありますから、そういったような形のものをやはり市場が察してもらわなければ困る、こういうことだろうと私は思うんです。  そういった意味で、私たちは冷静に考えて、この市場について各国協調しながらやっていくという形でやっておるところであります。  ましてや今、私の聞き違いかもしれませんけれども、何か日本政府が円高によって円高政策をとっていく、あるいはそれによって輸出を抑制する云々というようなふうに受けとられるようなお話があったんですけれども、そういうことは全然考えていないわけでありまして、むしろ私どもはそういったことでないような形の方が望ましい、安定的にやはり推移していくということが望ましいということでございまして、逆の方向からいたしましても、今度はいろんな私はそれぞれの国に問題だろう、まさにファンダメンタルズを反映していくというのが為替相場じゃないかなと、こういうふうに思っておりますし、この辺は恐らく諸外国も一致した見解だと私は認識しているところでございます。
  61. 種田誠

    種田誠君 そう言いながらも、先ほどもお話が出ていましたけれども、アメリカベンツェン財務長官の発言、こういうものが微妙に、微妙にというか、正確に市場に影響を与えて今日の状況をつくっているというようなこともやはり私はあながち否定できないんじゃないかなと、こう思うわけですね。  最大のものは、やっぱりずっとこの流れを見ておりますと、とりあえず当面七月に予定されるサミット、それまでにある程度円高がずっと進んでいって、そして日本が内需拡大政策を展開していく、内需型の経済へ完全に転換をしていく、こういうことを求められている、その反映が今日の姿じゃないかなと、こう私は思うんですよ。  ですから、その辺のことに関して日本の当局は敏感にこれをつかまえて、その上で政策を確実に展開する、こういう任務が今あるんじゃないかなと、こう思うんですが、大蔵大臣、いかがですか。
  62. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 実は、外国の話になりますが、森通産大臣が行かれたときにベンツェンにも会って、ベンツェンの方は、アメリカの方は日本の円高をやろうなんということは一つも考えていません、こういうふうな話をわざわざ私に対する言づけとして言ってこられたわけですよ。  したがって、市場がどう反応していくかということでありますけれども、私どもは、最初に申し上げましたようなファンダメンタルズを反映していくことが必要であろう、もうこれが私たちの基本的な考えであるということを繰り返し申しているところでありまして、それは私たちは、経常収支の黒字の問題とかというのはいろんな点で考えていかなければならない問題はあるだろうと思います。ありますが、事為替市場に関する限りは先ほど申し上げたような形で私たちはやっていき、また、これを市場に我々の意見というものを十分反映させるような努力をやっていくというのが一番大切なことじゃないかなと、こう思っておるところであります。
  63. 種田誠

    種田誠君 日銀総裁、今のような話を聞いておって、日銀としてこれまでとってきた態度に関しては正しいと、こういうふうな御認識ですか。
  64. 三重野康

    参考人三重野康君) お答えします。  為替市場及び為替政策に関する今の大蔵大臣のお話は私と全く同一でございます。
  65. 種田誠

    種田誠君 先ほど松浦委員質問にも出ていたことですけれども、今後の公定歩合等に関するいろいろな見方もありますけれども、日銀としてこの点についてどういうふうな見通しを持っておるのか、もう一度、その辺ちょっと述べていただきたいと思います。
  66. 三重野康

    参考人三重野康君) 今、公定歩合に対する御質問でございますが、公定歩合はもちろん当然委員御案内のとおりでございますが、いろいろなものを総合的判断でいたしております。それはもちろん景気、物価、為替等でございますが、現在の景気につきましては、先ほど松浦委員にも申し上げましたけれども、現在はまだ、明るい指標は出ておりますけれども、まだら模様のあれだと思いますが、今後のことに関しますれば、下期にかけてようやく景気回復の展望が開けてくるというふうに思っています。  と申しますのは、この二年の間に資本、それから資本と申しますか設備でございますが、耐久消費財、在庫のストック調整がかなり着実に進んでおりますし、財政金融政策からの民間需要の引き出し策も十分講ぜられているからでありまして、現在は、特にこの間政府が発表されました十三兆の景気対策、今この当委員会で御審議を受けているわけでありますけれども、そういった効果がこれから出てくる。公定歩合は既に六度下げて史上最低の水準まで下がっています。この累積効果もこれからさらにまた出てくる。  こういうことを冷静に注意深く見守っていきたい、かように考えております。
  67. 種田誠

    種田誠君 バブル景気を生みバブルの崩壊を生む過程の中で日銀がいろいろ果たした役割も極めていろんな意味で重要視されているわけでありますから、ぜひ慎重かつ適切に対応していただきたいと思います。  この点につきまして最後に、先ほど総理の方において、貿易黒字を解消していく、そういう中での今日円高が一つ大きな課題になっておる、これを解消していくのは内需の拡大、いわゆる内需主導型の日本経済をつくっていく、こういうことが王道だろうと。私もまさにそのとおりだと思うわけであります。  その王道をつくるに当たって重要なのは、一つは、今日、国民の消費、ある程度節度ある消費を回復していく、こういうことも重要だろう。このためには円高による差益の還元、これはもうかなり大きな影響を持つ場合もあるだろうと思うんですね。そういうことに関して、やはり節度ある消費を回復するためにもこれは税制の上で、もうずっと言っておる適切な所得税の減税とか税のあり方に関する施策の展開、こういうものが早急に求められているんじゃないかな、こうも思うわけであります。  そういう意味で、内需主導型の経済に転換していく、そのために今私が申し上げたような視点も含めて具体的にどういうふうに今後展開していったらいいのか、総理自身のその辺のところをお聞かせ願いたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 当面の所得税減税の問題は、しばしば申し上げてまいりましたとおり、各党間で御協議が続いておるわけですが、少し遠い展望をいたしますと、やはり我が国経済を内需重視の方式で運営していくということになりますと、よく申し上げております生活大国というようなことはそのための実は方策になるわけでありまして、そういう意味で生活大国というような政治目標を進めていくということが結局内需の拡大につながる、そのための財政、経済の運営も大事なことだと思います。  おっしゃいますように、税制というのもやはりその一つの問題ではないかと言われますことは、私は決してそうではないというふうに思っておることはございません。ただ、財政の問題がございますから、その辺をどうやっていくかという難しい問題を持っておるわけですが、やはり生活大国を推し進めていく上で我が国の税制を中長期的にどう考えるかということは大切な問題だというふうに私も思っております。
  69. 種田誠

    種田誠君 この点は私も総理も多分同じ視点に立つだろうと思いますのであえて聞きませんけれども、今おっしゃったように、社会資本の整備、高齢化社会を前にしてのさまざまな投資、こういうことを急ぐことによってまさに貿易黒字を解消していく、内需の拡大をしていく、こういうのにつながっていくんじゃないかなと思うんです。  また同時に、先ほど総理もおっしゃっておったように、農業問題に関しては各国それぞれさまざまな諸問題がありますから、そうにわかにこの方法がいいということはないにしても、市場の開放、これはやはり積極的にこれから進めていかなきゃならない。特に工業製品等においてアジアの途上国などからも逆に関税問題で指摘されるような状況になっておるわけでありますから、ぜひこれはサミットまでに市場開放のアクセスをもう一度総理から示していただきたいな、こういうふうにも思いますが、総理、その点ちょっとコメントがありましたらお願いしたいと思います。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) お考え、大体私も賛成でございますし、殊にこの際、来月までの間にこのウルグアイ・ラウンドの物とサービスのアクセスの部分は各国で何とかもう一歩先へ進めておきたい、こう思っております。
  71. 種田誠

    種田誠君 そこで、公共事業やさらには高齢化社会を前にした投資などがこれから大きく、現に行いつつ、また今後も求められるわけでありますけれども、この公共事業に関しまして、今日、国民は大きな不信の目というか、公共事業に対する不透明なものの存在というのを意識している、こういうふうに思わざるを得ないわけであります。金丸前副総理の逮捕、さらにはその後における山梨県の建設業団体に対する談合の疑いのもとに、公取や東京地検の捜査、検査、こういうものが立て続けに行われてきたわけであります。まさにそういう意味では日本の建設業待ったなしの状態に置かれているんじゃないかな、こうも思います。  そこで、これまで国税の方も所得税違反を中心に、またやみ献金などを中心に調査を行っていると思いますし、また公正取引委員会の方も、今申し上げましたように、山梨県建設業協会への調査、さらには東京地検もこれまでの間、所得税法違反、やみ献金等々の問題で捜査などを行っておると思いますが、それぞれその今日の状況をまず伺って、午前中の私の質問を終わりにしたいと思います。
  72. 瀧川哲男

    政府委員(瀧川哲男君) 私どもの方で、今、委員おっしゃった建設業の関係というのは最近専ら使途不明金の問題で指摘されておりますので、それについてお答え申し上げたいと思います。  私どもが原則として資本金一億円以上の法人のうち最近三年間の間に実地調査を行った法人について把握いたしました使途不明金の金額を、全体とそのうちの建設業に分けて御報告申し上げたいと思います。  まず、平成元事務年度でございますけれども、全体では五百六十三億円、そのうち建設業は四百八億円で、割合にしますと七三%。平成二事務年度は四百七十六億円が全体で、うち建設業が三百五億円、これが六四%。平成三事務年度は五百五十八億円が全体で、うち建設業三百八十二億円、六八%。以上と相なっております。
  73. 小粥正巳

    政府委員(小粥正巳君) お答え申し上げます。  公正取引委員会は、五月十三日、十四日の両日、社団法人山梨県建設業協会本部及び同支部の事務所並びに同協会加盟の建設業者の事務所、計五十数カ所において、独占禁止法に違反するいわゆる入札談合を行っていた疑いに基づき、独占禁止法による立入検査を実施したところであります。  調査の進捗状況等についてのお尋ねでございますが、何分まだ立入検査の直後でございまして、現在、資料の分析等鋭意調査を進めている段階でございますので、今後の審査の見通し等につきまして申し述べることは差し控えさせていただきたいと思います。
  74. 濱邦久

    政府委員(濱邦久君) 検察当局の捜査の関係についてお答え申し上げます。  検察当局におきましては、金丸前議員らに係る所得税法違反事件につきましてさきに捜査を行いまして、先般の当委員会で御報告を申し上げたとおりでございます。  検察当局におきましては、今、委員が御指摘になられましたように、山梨県内の建設業者の事務所等を捜索をして証拠物等を押収したところでございます。これはいずれも、先ほど申し上げましたように、当委員会でさきに御報告申し上げました金丸前議員らに係る所得税法違反事件の捜査に必要な証拠を収集する目的で行ったものでございます。
  75. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 種田君の残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、暫時休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ――――◇―――――    午後一時一分開会
  76. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成五年度一般会計補正予算平成五年度特別会計補正予算平成五年度政府関係機関補正予算、以上三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、景気経済に関する集中審議を行います。  種田誠君。
  77. 種田誠

    種田誠君 それでは、最初に公取の方に伺いたいと思います。  公取の今回の建設業協会等への検査に対しましては、意外とマスコミの各論評などを見ますと冷ややかなところがあります。というのは、一つには、あそこまでいっていた談合の所在に対して遅過ぎるというこういう意味合いも込めておる。さらには、どうせ公取が入っても大したことはできないだろうという公取に対する失望みたいなのが何か国民の中に蔓延している。そういうのが各大手新聞の論説にあらわれているんじゃないかと思うんですね。弱腰の公取、巨悪に弱い公取、こういうふうな言葉が解説の中に入っております。  それは過般の埼玉の談合疑惑に対する態度などからもそういうふうに思われているのかもわかりませんが、今回の公取の行動はこれからの公取のあり方そのものが問われるんじゃないか、私はこうも思うわけでありますけれども、今後のこの調査結果のまとめ、さらには公取においては排除勧告のほかに過去に一回しか発動されなかった刑事告発、ことし二月初めてシール事件で告発がありましたけれども、こういうことも心にしっかりと押さえて今調査に当たっているかどうか、確認をしておきたいと思います。
  78. 小粥正巳

    政府委員(小粥正巳君) お答え申し上げます。  いわゆる入札談合という行為は、申すまでもなく、公共事業における競争入札制度の根幹を否定する行為でありますし独占禁止法に明白に違反をする悪質な行為であるということで、私ども従来からいわゆる入札談合につきましては当然のことながら厳しい対応をとってまいりましたし、今後ともその方針には変わりはございません。  具体的に、午前中御答弁申し上げました山梨県下の建設業者に関する件でございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、何分、立入検査をいたしましてまだその直後でもあり、現在鋭意その資料の整理、分析に当たっているところでございますので、事件の処理の方針につきましては現在まだ方針を立てるまでの段階に至っておりません。そういう意味で、この処理につきましてはこれ以上は現段階で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  79. 種田誠

    種田誠君 まさに独占禁止法のお日付役である公取が信念を持ってしっかりした調査また処置をすれば、日本の業界の透明性というのが海外にもはっきりと認知されるわけです。そういう意味で、公取の果たす役割というのは、私はこれからこそ自由経済のもとでやっていくということならば大きな任務があると思うんです。  そういう中で、実は、これは間違いだと思いますけれども、過般、新聞や「エコノミスト」という雑誌に今回の山梨の建設業協会への検査に先立って情報が漏れて、大手ゼネコンの一部は社員を派遣して証拠を隠滅した、こういうふうなことがまことしやかに伝えられております。こういう事実はいかがですか。あったんですか、なかったんですか。
  80. 糸田省吾

    政府委員(糸田省吾君) 今御指摘の報道でございますけれども、報道はどうあれ、私どもは法律の定めるところに従って厳正に適正に審査を行っていく、そういった所存でございます。
  81. 種田誠

    種田誠君 間違ってもこういうことがまず報道されること自体に問題があるわけであって、ですから、公取に対する任務を考えれば、先ほど言ったように国民のあきらめが半ば今まであったわけですから、もう一度本来の職務を取り戻すためにも、今回の検査に関してはしっかりと国民の期待にこたえるような形をつくっていただきたい。このことを申し上げておきたいと思います。  次に、国税や法務省の方に伺いたいと思います。  今回問題になったのがまさに使途不明金、それにまつわるやみ献金、こういうことであります。日本の政治がまさに国際的にも民主主義社会の一翼を担ってそのリーダーになっていくんだというならば、私はこれらの問題に関して本当にけじめがつけられるのか、づけられないのか、これが今問われている。  過般、建設委員会などでも参考人の方々から御意見を伺った。その中で、私今度こそは本当にこれを実行してもらいたいと思ったのは、日本建設業団体連合会の方で三月三十一日に常任理事会の申し合わせをした。その中に「本会会員は、政治資金規正法に違反する行為は一切行わないことはもとより、」、こういうふうに強調をしております。もう建設業団体連合会も政治資金規正法に違反する行為は一切行わないということであります。団体の方が一切行わないというならば、私たちの方も違反するような献金は受け取らない、こういうことが重要だと思うのであります。  この使途不明金、これに関して過去三年間を見ただけでも平均五百億円。しかも、これは調査結果、一五%ぐらいの企業、資本金一億円以上の企業です。その結果、五百億前後の使途不明金があらわれている。このことに関して国税の方ではこれからどのように対処するのか、御見解を賜りたいと思います。
  82. 瀧川哲男

    政府委員(瀧川哲男君) 一般論として、私ども国税当局といたしましては、常に納税者の適正な課税を実現するという観点からあらゆる機会を通じまして有効な資料、情報というものを収集しておりまして、課税上問題があると認められる場合には実調を行うなどしまして適正な課税に努めているところでございます。  この実地調査に当たりましては、使途不明金はもちろん、政治献金につきましても、法人の帳簿であるとか証票類であるとかそういったものに基づきまして、その出資先あるいはその支出目的等を確認して適正な経理処理が行われているかどうか調査しているところでございます。  私どもといたしましては、建設業に限りませんけれども、従来から大法人に対しましてはいわゆる重点調査体制というものをとっておりまして、実地調査の割合とかあるいは一件当たりの調査日数といった面で大法人に傾斜をつけた密度の高い調査を実施してきたところでございます。  今回の国会での御議論も踏まえまして今後とも徹底した調査を行いまして、使途不明金それから政治献金等の実態解明というものに全力を尽くしてまいりたいと、かように考えております。
  83. 種田誠

    種田誠君 全力を傾注して調査をいただくことは大いに結構なんですけれども、この使途不明金をなくす一つの大きな方途は、現在三五%の重課税を倍の六〇%か七〇%の重課税にすることは考えられませんか、いかがですか。
  84. 濱本英輔

    政府委員(濱本英輔君) 使途不明金につきましては、あくまでも真実の所得者に課税をするという観点からあとう限り使途を解明いたしまして、その支出先に対して適正な課税を行うことが原則であると考えております。  どうしてもその使途が解明できない場合に、その支出した法人に対しまして経費として損金算入を否認することによって課税をするということで今対応しておるわけでございますけれども、法人税制と申します。そのルール、制度というものが収益の額から費用の額を差し引きました法人の所得に対して課税することを専らとする、そういうルールでございまして、こういうルールの枠内の措置といたしましては今の措置がぎりぎりのものというふうに私どもは考えております。  ただ、ちょっと今先生からも御指摘がございましたように、調査によって把握いたしました使途不明金の中で、支出の過程において仮装、隠ぺいなどの悪質な行為が介在している、悪質な行為によってそうなされているという事例につきましては、重加算税を課すということを現在でもやっております。  この重加算税という制度は、税一般につきましてこういった仮装、隠ぺいなる行為が介在し税を免れているという事案に対しまして課されていく罰則、罰課税でございますから、その体系の中で考えさせていただかざるを得ないことだというふうに思っております。したがって、そういうバランスのとれた課税体系の中で考えざるを得ない。したがって、それだけ突出して大きな賦課をこの行為に行うことが容易にできるものではないというふうに考えております。
  85. 種田誠

    種田誠君 業界の方でも、これから使途不明金は極力削減していきたい、違法な献金は一切しないとこう決意をしているんですから、こういうことは減るわけですから、役所の方でもバランスなんて言わないで倍ぐらいのことを考えるようなことをしていただきたいと思うわけであります。  それで、余り時間がないので、建設省。  建設省も、この使途不明金またはやみ献金と言われるような大きな叱責を建設業界が受けた、これに対してこの間調査をし、今後もさらに調査をした上でその結果などを公表して指導体制を図っていく、こういうことが考えられているということですが、どういうことを考えておりますか。
  86. 伴襄

    政府委員(伴襄君) お答え申し上げます。  建設省におきましても、企業活動の適正化あるいは企業倫理の確立にかかわる一般的な建設業の育成指導の観点から、従前は建設業団体に対してヒアリングをやりましたが、引き続きまして今月初めから中旬にかけまして大手ゼネコン業者に対しましてヒアリングを行っております。  このヒアリングにおきましては、企業活動の実態だとかあるいは会計処理等の実態とか、あるいは下請関係も問題になっておりますので下請契約等の実態、それからいろいろ独禁法等の関係法令等の遵守のための活動方針等につきまして一般的な実態を聞きたいと思っておりまして、例えば今御指摘の使途不明金等につきましても、例えばどういう原因で起きるのかというようなこととかどうしたら減らしていけるかといったようなことでヒアリングいたしたいと思っております。  こういったヒアリング結果を検討した上で、必要に応じまして指導、通達によりまして建設業者団体を通じまして適正な経理処理を行うように指導していきたいというふうに考えております。  なお、個々のヒアリング結果につきましては公表する考えはございませんけれども、その指導通達を行う際に、その裏づけとして指導が必要となった背景や事情につきましては十分説明させていただきたいというふうに思っております。
  87. 種田誠

    種田誠君 時間がなくなりましたので、最後の質問に参ります。  この間、私たち野党は、社会党、公明党、民社党、民主改革連合が協力いたしまして、今般の住宅の新しいあり方、こういうのにこたえるために住宅基本法を六月一日に衆議院の方に議員立法として提案いたしました。これに関しての建設省の方におけるコメント、さらには大臣の考え方などを伺いまして、私の質問を終わりにしたいと思います。
  88. 中村喜四郎

    国務大臣中村喜四郎君) お答えをいたします。  住宅政策につきましては、過去におきまして六期にわたる五カ年計画を策定いたしまして住宅政策の質の向上について図ってきたところでございますが、この基本法をその上につくれという御要望を野党の皆様方から以前からいただいていることは十分承知しておりますけれども、現段階におきまして、住宅に対する基本的な理念、あるいは国、地方の責務あるいは住居費の負担、こういった問題について完全に国民的なコンセンサスがまだできていないという状況は基本的に変わっていない、このように考えております。  ただ、御指摘をいただきましたように、住宅の質の向上というものを前提にした野党の基本法であるということを十分認識していかなきゃならないと、このように考えておりますが、これから基本法をつくって緩やかな方向を目指していくということと現在の政策の中で質を充実させるということが両々相まっていかなければならないだろうということは、やはり十分御認識をいただかなけりゃならない、このように考えております。  結論的に言いますならば、次期の五カ年計画、ことしの後半から検討に入りますので、現在の制度も含めて今後検討させていただきたい、このように考えております。
  89. 種田誠

    種田誠君 終わります。
  90. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で種田誠君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  91. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、堂本暁子君の質疑を行います。堂本君。
  92. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 前回に引き続きまして、私は景気と環境さらに福祉と人権の視点できょうは質問させていただきます。  本題に入ります前に、総理経済の専門家でいらっしゃるので伺いたいのですけれども、今回の補正予算景気回復ということでございますが、農村地区、特に例えば中山間地区ですとか山村とか、そういったような領域にまで景気の問題をお考えかどうか伺わせていただきたいと思います。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 景気対策を考えます上でいわゆる中山間地区というのは実は非常に難しい問題を持っておる地区でございまして、これは最近に始まったことではございません。我が国経済成長が片一方で始まり、しかし他方で農業基本法のような考え方がありまして、まあ十分ではありませんけれども、都市は都市、農村は農村という繁栄をしてまいりましたが、中山間地区というものが、その名が示しますように、まさにその間から取り残されたような格好になってきまして過疎のような問題が起こる。で、初めて今度立法ができましてこれに正面から対応するということになったわけでございますが、したがって、それに従いまして予算の方も中山間地域というものを一つのまとまった地域と考えまして対応していかなければならないというふうに思っておるわけで。ございます。  何分にも、しかしこの自然の経済という狭い意味での経済の流れからいいますと、ここはやっぱりどうしても後になりやすい、そういう問題を持っておりますので、このたびの法律も、そのような状況に国としても行政の上でも財政の上でも対処したい、こういう方針を示しておるものと思っております。
  94. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 一昨日、福井県でシャドーキャビネットの「一日農水省-農林・水産政策フォーラム」というのが開かれまして、私も参りまし た。  その席上、具体的には中山間地区にある池田町というところなんですが、そこの町長さんが、農業経営からいうともう本当に再起不能だと感じるような景気状況であるという訴えがございました。農業面での運営の財政的な援助なんかの必要もあるということだったんですけれども、何か私その話を聞きながら、非常に大都市型の公共投資が大きいのではないか、そしてもう少しそういった中山間地区に対しても公共投資の、大変細かいものになるかもしれないんですが、そういったきめの細かさのようなものが今回の景気回復でも配慮されていたらどんなにいいだろうかというふうに思いました。実際にはその辺が少ないんではないかと思いますが、そういった対策は幾ばくかでもございますでしょうか。政府委員の方で結構ですが、もしかしてお呼びしてないかもしれませんね。  それでは先に行かせていただきます。  実際に山村、そういった集落がもう一方二千カ所ぐらい消えてしまったということですから、何であえてこういう質問をしているかといいますと、やはり環境的視点からいいますと、昔から日本の農村、特に今問題になっている中山間地域、そういったところがまさに日本の健全な環境をつくってきたわけですが、そこのところが今、人が離れていくことで田んぼもだめになる、ミニダムの役を果たさなくなるという形でどんどん壊れていく、こういったことが環境を、まさに公共投資による景気回復という一方でどんどん環境が壊れていくという状況がございます。そういった環境をもう少し例えば社会資本としてとらえていただいたらいかがかというようなことを思いました。  これはおとといのことなので、これも質問の予告をしておりませんが、総理は環境を一つの社会資本というふうにはお考えでしょうか。
  95. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは先般環境基本法を御議論の際にも申し上げたことでございますけれども、私はそういう考え方でよろしいと思っております。
  96. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ありがとうございました。大変心強く思います。  ちょうど一年前の今ごろ、リオでは環境サミットが開かれておりました。ちょうど一年たちました。あのころは環境環境の国会だったんですが、今は景気景気の時代になりまして、日本の政府はとかく経済成長と環境保護の両立ということをずっと主張しているので、トータルでこの二年を見るとバランスがとれているのかもしれませんが、やはり日常的にそこのバランスが必要なのではないかと思います。  この二、三年、景気低迷している中で、これも総理、直観的に常識の域でお答えいただきたいことなんでございますけれども、不景気の中での環境にとってのプラス面、それからマイナス面と両方あるんではないかと私は考えますけれども、総理、それから環境庁長官も、そのようなお考えがもしおありになったら簡単にお答えいただきたいんですが。
  97. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 堂本先生にお答えいたします。  景気の悪いということが環境面でプラスになるのかマイナスなのか、こういう御質問だと受けとめましたけれども、環境の保全あるいはまた良好な環境をつくり上げていくということ、これは社会経済の情勢がどうであろうとその変化の中であらゆる機会をとらえて取り組まなければならない問題と認識いたしております。  したがいまして、環境保全型社会の着実な実現を図るということは大変重要でありますので、そういう意味からも常にプラスになるように、いかなる事態があってもその事態そのものをプラスに結びつけるという形で環境政策の努力を重ねたい、そういう信念でおります。
  98. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 それが現実であれば一番理想だと存じますが、やはりどうも両立を希望することが非常に強いのが日本ですけれども、実際には景気がいいとどうしても環境の破壊が進んでしまう、景気の悪いときは比較的その環境への負荷が少なくなるというのが現実がと思います。今は企業防衛、リストラというようなことが大手を振って歩いているんですけれども、やはりそのためには環境庁長官が今お答えになったような姿勢、景気回復しながら環境破壊をしないという姿勢が何としても必要かと思います。  しつこいようですけれども、総理にもう一度この点を確認させていただきたいと思います。
  99. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはおもしろい問題を提起しておられると思うんですけれども、不景気の場合に、今、堂本委員の言われますように、例えばどうもこのごろは、このごろというか先ごろといいますか、タクシーがつかまえやすいなんというのは、これは明らかに大気汚染がそれだけ少なくなっているということだと思いますね。  それから、消費がある意味で減退しているというようなことも場合によりましてはむだ遣いをしないということでございますから、そういう意味では、過剰包装にしてもエネルギーの消費にしても、要らないものは要らないということになっていっている点があるかもしれません。  それから企業にしてみますと、新しい設備投資をなるべくやっぱりやりたくない、できないということは、真っすぐに言えばそれだけ環境の破壊が少なくとまっているかもしれない。  そういうことはいろいろ言えますけれども、ただ一つ大事なことは、不景気というものは続いては困るわけでございまして、景気はよくなってくれないといけません。よくなったら全部今の話がなくなってしまうのではこれは意味がありませんので、それで不景気という状況の中で思いますのに、やはり消費というもののあり方について、消費は大事でありましょうけれども、乱費というものは大事ではないわけでありますし、物を大切にすることは常に必要でありますから、そういう美徳というものを不況の中で習っていくというそういうチャンスでもある、そういうことは申し上げられると思います。
  100. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 先日、衆議院の環境委員会総理が答弁なさったところを私は傍聴に行っておりましたけれども、アセスメントの問題も出ておりまして、私は、やはりこれだけ大きな公共投資に予算が使われているときにはぜひともアセスメントをきちんとやっていただきたい、そのことがやはり環境を守ることにつながるのではないかというふうに思います。  環境庁にお願いいたしますが、細かく伺っている時間がございませんから、補正予算でどれだけ環境庁は当初予算より予算がふえたかを簡単にお答えくださいますでしょうか。
  101. 森仁美

    政府委員(森仁美君) 今回の補正によりまして、環境庁では七十億七千三百万円を補正として計上いたしております。
  102. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ありがとうございました。  大蔵大臣、これは実に一一%の増額なんですね。ですから、環境基本法の審議をちょうど今参議院ではしておりますけれども、そういったときに予算をふやしていただいて大変ありがとうございましたと申し上げていいのか、本予算では余りにも少なかったのではないか、補正あってのこれだけの大きい環境庁予算というような気がいたします。  前回の予算委員会のときに私はアマミノクロウサギのお話を、助けていただきたいというお願いをいたしまして、行政的に総理も対応してくださるとおっしゃったんですけれども、例えば自然の生態系の調査の予算が、後から調べましたら何と二億七千万足らずでございます。これでは余りにも少なくて、クロウサギどころか何もできないのではないかという気がいたします。  生物多様性条約の批准に当たってクリントン大統領は、そのベースにもっとアメリカは大きな生態系の調査の予算を持っていますけれども、今回遅まきながら生物多様性条約にサインするに当たって二百億の予算と八百五十人のスタッフを全 米の生態系に充てるようにという指示をアースデーにいたしました。それから比べても余りにも少ない。それから、ほかの予算に比べても、三億足らずでございますよね、これでは環境先進国とは言えないんではないか。  ですから、日本の今までの環境先進国としてのあり方は、どちらかというと公害防止対策、そのことで世界のトップを行っている。ところが、自然保護という点に関しては後進国中の後進国で、もう本当に後ろから勘定した方がいいんじゃないかというぐらい、特にそういった生物種についての予算はございません。  自然保護についての自然環境保全法というような法律もございますが、これは例えば人工的な海岸と天然の海岸とどっちが多いかというようなことを調査する仕組みになっておりまして、一つ一つの生物種は調査されていないわけですね。  この前、総理は人がいないんじゃないかとおっしゃいましたけれども、この予算ですと実際に人材も育たないという悪循環が続くと思いますので、これはもう大蔵大臣にあえて、環境委員会では何度も取り上げさせていただいたことなんですけれども、やはり予算のバランスとして、例えば公共投資に対しての予算、今そういった両方のバランスをとるのであれば公害防止さらに自然保護といったそういった問題、特に農村地区に関しての問題もございます。そういったことで、環境庁の自然保護についてはぜひ充実させていただきたいというお願いをきょうはあえてさせていただきたいと思います。  それから、その問題でどうしても気になりますのは、環境基本法の二十二条に経済手法というのがあるわけなんですけれども、ガソリン税ですが、これは道路財源としてもう三十年ぐらい前から設定されているものですが、十一次五カ年計画は七十六兆でございますね。今後、もし例えば経済手法が導入された場合、やはりその目的がそのような開発に使われたのでは、もう本当に日本の自然、一つのパロディーになってしまうかもしれません。道は通っているけれども百年前は日本には美しい自然があったそうだ、こういうような形になっては困ります。  そのためには、やはりシーリングにおける今のような予算でどのようにその三億円からふやしていただいても、シーリングという域ではどうにもこの例えば道路財源の五カ年で七十六兆に対抗することはできないわけですから、その辺の抜本的なことをぜひお考えいただきたいと思いますが、大蔵大臣に、今度もふやしていただきましたが、またさらにいろいろ自然のことをお考えいただきたいと、よろしくお願いいたします。
  103. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 実は突然の御質問なものですから、私もよく勉強してなかったんですが、いろんな点で御不満のところはあるだろうと、こう思います。  私も実態がよくわかりませんからあれですが、環境庁だけの予算ではなくて、農林水産省やその他のところでもいろいろと環境に配慮したような考え方のものはやっておるところでございますし、いろんな点で工夫は私はあると思います。ただ私は、予算というのは実行可能なものでなければいけませんので、金さえつければいいとかいう話ではないと思います。  それから、今ガソリン税の話がございましたが、このガソリン税の話ももう長いことやっておる面でございますから、それではそのガソリン税のほかに新しくそういった税をつくったらどうかというような御議論の方がむしろ私は出てくる御議論ではないかと思うんです。ガソリン税を減らしてどうだという話じゃなくて、別に新しい財源をつくったらどうかというような御議論が私はあるんだろうと思うんです。ところが、そういうことになると、またこれは一体一般的な増税というのをどう考えていくかという私は議論になるだろうと思うんです。むしろそういった点で私は、環境問題というのは、もうかれこれ二十年もたちますけれども、かつてローマ・クラブのあのような話がありました、あの辺からいろいろ考えていかなければならない問題であろう。  今度、環境基本法ができまして一つの方向ができてきましたから、そういった方向の中で何ができるか、また何をすべきであるか、また何をすべきでないかというようなことをやはり総括的に考えていくことが私は必要だろうと思いますので、すぐに予算がどうだこうだという話ではないんじゃないかなと、こう思っておるところでございます。
  104. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 確かにそうですけれども、農林水産関係の予算、いろいろございます。私が指摘したかった点は、極度に少ない、ほとんどゼロに近いということで、確かに農水省はいろいろプロジェクトを持っておられますけれども、私の知る限りそういった生物種、本当に例えばツルのこと一つ、フクロウがどうだということは、これは環境庁以外のところの担当のものではないと思うんですね。そこが非常に弱いということを指摘させていただきたかったわけでございます。  さらに、そういった総合的な対策でお考えいただくことも大変いいのではないかと思います。  次に、厚生大臣に伺いたいんですけれども、保育問題検討会がスタートいたしました。どのような内容の検討を今これからなさろうとしているのか、お答えいただきたいと思います。
  105. 清水康之

    政府委員清水康之君) お答えをいたします。  保育問題検討会はことしの二月からスタートしたわけでございますけれども、保育ニーズの多様化と社会の変化に対応いたしまして保育に関する制度と費用負担の全体について検討していただく必要があるということから、幅広く検討をいただいているわけでございます。実はこの検討会、既にこれまで四回の会合をし、また現地視察もやっていただいておりますが、これからさらに関係団体からのヒアリングなどを行いまして、年内に総合的に保育のあり方あるいは費用負担のあり方ということについておまとめをいただく、こういうことになっております。
  106. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 今、費用負担のことをおっしゃいましたけれども、措置制度を中核に置くということを変えるおつもりかどうか、その点をお答えください。
  107. 清水康之

    政府委員清水康之君) 措置制度につきましては、我が国で保育行政が進展してくるあるいは保育サービスが充実することについて大変歴史的な役割を果たしてきた、今でも果たしている、そういうふうに評価しておりますので、保育制度における措置制度を基本的には堅持しながら、しかし大変時代とともに保育ニーズの多様化がございますので、必要な改善は改善として行いながら、今後とも国民の多様なニーズに十分こたえていけるように検討してまいりたい、こう思っております。
  108. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 労働省に伺いますけれども、保育施設の新設や運営について、事業所内に託児施設をつくることへの助成を決められたこの問題について伺いたいと思いますが、これはどのような規模で何人ぐらいの子供たちを対象にし、それからゼロ歳児を対象にしているのか、それからどのような基準をこれから設けようとしておられるのかお答えください。
  109. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) お答え申し上げます。  私どもが本年度より開始することといたしました事業所内託児施設の助成金制度でございますけれども、これはちょっとお答えに入ります前に趣旨を御説明させていただきますと……
  110. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 趣旨は結構です、十分にわかっておりますから。
  111. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) それでは御質問の点についてだけお答えいたします。  ゼロ歳児も対象にいたしております。それから、規模といたしましてはおおむね十人以上を預かれる施設ということで考えております。それから、具体的な施設の基準につきましては、現在細部につきまして詰めている段階でございまして、もうしばらく時間がかかるということでございます。
  112. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 もう一度松原局長伺いますが、これは無認可の施設ですか。
  113. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) そのとおりでございます。
  114. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 厚生省に伺いますが、八一年に出されました無認可保育所に対しての指導基準、ここで児童家庭局長通知が出ておりますけれども、この通知は今も生きているでしょうか。
  115. 清水康之

    政府委員清水康之君) 現在でも生きております。
  116. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ここは大臣にしっかり聞いていただきたいところですが、「指導基準は、劣悪な無認可保育施設を排除するための当面の基準であって、指導基準に適合する無認可保育施設を制度的に認める趣旨ではない。」、そういうことになっているんですね。  私、その当時記者でございましたから、このときにちょうどベビーホテルの取材をしていました。来る日も来る日もといっていいほど日本各地でゼロ歳児が亡くなったんです。それでこれができた。実に児童福祉法の三十何年ぶりの改正だったんですね。それで、今また労働省がこの助成をされるということは、制度として認めないというものに対して厚生省はどういうお考えをお持ちなんですか。
  117. 清水康之

    政府委員清水康之君) お答えをいたします。  いわゆる無認可の保育施設にはさまざまあるわけでございまして、ベビーホテルの問題につきまして堂本委員が五十年代に大変御尽力をいただきまして、新しい通知もでき、また法改正もできたということはそのとおりでございますが、現在、事業所内保育所と言われるものは全国に二千五百四十三カ所、人員にして三万八千人余の方々がこの事業所内保育所に通っております。  私どもは、事業所内保育施設というものは確かにいわゆる措置費の対象になる認可保育所ではございませんけれども、就業時間に合わせた保育時間の設定など大変働く女性の方々にとって利用しやすいという面もございますので、あくまでも補完的な役割ということでございますが、この事業所内保育施設の果たしている役割というものは正当に評価して、そして法に基づく指導監督はきちんとやっていくというふうに考えているわけでございます。
  118. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 当時、いろんな事故が起きたのは事業所内保育所の中なんですね。それから院内保育所もございました。そういったところで、事業者は何といっても保育にそれほどお金をかけようとは思いませんし、お母さんが一人の子供を一人で抱いて育てるのと違って保母一人に例えば二十人の子供とか三十人の子供がいたから、事故が起きたんです。例えば夜のデパートなんかでも時間が遅い。そういったところで赤ちゃんが長い時間預けられているといったようなことから事故が起こっていったわけなんですね。まだたったの十数年しかたってなくて、忘れていただいては困るわけでございます。本当に、亡くなった赤ちゃんたちは何のために亡くなったんですか。  その当時、だからこそ法改正をし、これだけのことを決めて、それでいずれは認可保育所に全部吸収しますということをお答えになったのは、私は当時記者席におりましたけれども、みんなそれは厚生省の方たちなんですよ。それからまだ十年もたたない間に、この縦割り行政の中で何の整合性もない。予算はついているのにまだ基準が決まっていないと今労働省はおっしゃっている。これは厚生省としては余りにも無責任じゃないでしょうか。  きちんと基準を決めて認可保育所に類するだけのことをしない限り、また必ず事故が起こります。赤ちゃんが死ななくても子供の育ち方が変わります。今、これだけ出生率が下がっているときに、いいんですか。私が見た子供は三歳で口もきけませんでした、そういうベビーホテルとか認可保育所とか事業所内保育所にいた子供は。今、環境にもお金を使っていただきたいと申しましたけれども、こういったところだけは、どんなに景気のために多くのお金を使われても、日本の将来をしょっていく子供たちのための予算を削ったり倹約をしてはいけないんですね。  労働省からいただいたところでは、一カ所について二千万円。今、認可の保育所をつくるのに保育の方たちに聞いたら大体八千万円ぐらいかかると。そうすると二千万円でつくる保育所なんていうのは知れたものなんですね。ちゃんとしたトイレがあるのか。ちゃんと赤ちゃんたちが寝るところができているのか。安全なのか。遊び場はあるのか。  この当時出た指針からいいますと、これは無認可の保育所のために出された指針ですけれども、ありとあらゆることが決められているわけです。その中で、果たして労働省はそれ全部に対して責任を持つんですか。きちんと責任が持てるんですか。どういうところを認可なさるんですか。認可するに当たってどういう調査をするんですか。これはもうきちんと、きょう労働大臣はどうしても来られないそうですけれども、厚生大臣は少なくとも責任を持って答えてください。
  119. 丹羽雄哉

    国務大臣(丹羽雄哉君) 大変難しい問題でございますが……。
  120. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 難しくないですよ。
  121. 丹羽雄哉

    国務大臣(丹羽雄哉君) いやいや、ちょっとまず私の認識をお聞きいただきたいと思います。  御案内のように、今出生率というのが極めて低下をいたしております。この間発表になりましたのも、ついに一・五〇になりました。終戦後の昭和二十二年の出生率の平均は、委員御案内のように四・五四でありました。そういう中で、どんどん出生率が下がってきている。いろんな要因があるわけでございますが、私どもの基本的なスタンスといたしましては、いわゆる働く女性が要するに子育てをしやすいような環境づくりというのをまずつくっていかなければならぬ。そういう中で、現に先ほど局長も答弁いたしましたように、今企業内保育所というものが全国で二千五百カ所に達しておるわけでございます。先生がおっしゃっているのは、非常にその環境が劣悪であるとこういうことで当時キャンペーンをなさった、こういうことじゃないですか。
  122. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 違います。
  123. 丹羽雄哉

    国務大臣(丹羽雄哉君) そうですか。じゃ、ちょっとお答えはあれします。  それで、私どもといたしましてはいずれにいたしましても、この企業内保育あるいはベビーホテル、こういったものを単に放置しておくのではなくて、要するに企業などを通じましていかにして指導、助成をして保育環境を改善していくか、こういうことを多様に対応していきたい、このように考えているような次第であります。
  124. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 その当時も問題になりましたけれども、どこで線引きをするということはできないわけです。最低基準というのが認可保育所にあります。今労働省がやろうとしていることは最低基準以下の基準をつくろうということなんですね。そもそも、最低基準以下の基準が当時できまして、いずれは必ず認可保育所で多様化して対応していくと。例えば東大の中に院内保育所がありますけれども、これは認可保育所です。ですから、そこの東大の病院の看護婦さんも来れば地域のお母さんたちも子供を連れてくる。それが一番理想的な形だと思います。  それから、私は企業の中に保育園があっていいと思います。それは働きやすいから。しかし、そのためには、女性が働く条件も大事ですけれども、それと同じだけ子供の発育も大事なんです。そのことをどう担保するのか。このあれを拝見する限りでは何にも担保されてない。説明に見えた労働省の方に、そもそもこれは認可ですか無認可ですかと。いや、それどっちかわかりませんと、大体労働省はそう言った。厚生省のこれは所管なんです。ですけれども、労働省と厚生省の間で十分そこを連絡をおとりになってやっているのかどうか。  一体それじゃ、例えば沐浴とか遊び場ですとか、それからミルクですとか、ゼロ歳児だったら東京都の場合三人に一人の保母がついている、そ ういったことまで全部労働省が責任を持つのか。厚生省が責任を持つのか。労働省にも伺いたい。労働省でそういった保育の内容にまで責任はお持ちになれるんですか。
  125. 松原亘子

    政府委員(松原亘子君) お答えいたします。  私どもこれを助成する場合に、全く基準なしに事業所がつくったらそれをどんどん助成していくという趣旨ではございませんで、働く労働者、特に女性の場合に多いわけでございますけれども、仕事と家庭を両立させていくためにはこういった保育施設の整備が非常に必要であるということでありますけれども、先生御指摘のように、子供の福祉ということも考えなければいけないというのは当然であるわけでございます。  そういうことで、今回私どもがこの事業所内託児施設を助成しようとする場合にまだ基準が決まってないと申し上げましたのは、厚生省を初め関係省庁と今調整をしているということから現段階では決まってないということでございますが、基本的な考え方といたしましては昭和五十六年に厚生省が通達で示されました無認可保育施設の指導基準というのがございますけれども、私どもも最低限これを下回らない基準とするということで保育の内容についての確保を図りたいというふうに思っておりますが、具体的にはこの無認可保育所であっても厚生大臣または都道府県知事の指導監督のもとにあるということでございますので、保育の内容の確保ができるように十分厚生当局と連携をとってやってまいりたいというふうに思っているところでございます。
  126. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 今、局長がおっしゃったまさにその指導基準こそが先ほど私が読みました「指導基準に適合する無認可施設を制度的に認める趣旨ではない。」と、そう書いてある指導基準なんですよ。制度として認めない。  それからもう一つ。今これから基準を決めるとおっしゃった。どうやって基準も決めないうちに予算が決まるんですか。おかしいですよ、これは。一つの保育所をつくるのに今八千万ぐらいかかる。これは二分の一を補助します、二千万円と、こう書いてある。おかしいでしょう。だったら、もしかしたらプレーグラウンドはないかもしれない、沐浴する場所はないかもしれない。ゼロ歳児を預かるとおっしゃった。もうとてもここでは、短い時間ではできないことなので後日に譲らせていただきますけれども、私は本当にぞっとしたわけでございまして、厚生大臣にも篤と、厚生省の責任じゃないのかもしれないんですけれども、労働省は少なくともこのことについてはもう本気で。  また、私は逆行するのだと。わざわざあのときに本当に大キャンペーンをして、国会に陳情して陳情して陳情して法改正までやってこれができた。それをまだ十年とたたない間にこういう形でなし崩されることは、私は我慢できません。そのことを篤と申し上げて、このことから次の問題に移らせていただきます。  次の問題ですけれども、在日の韓国、朝鮮の子供たちの教育について伺います。  子どもの権利条約が間もなく批准される運びになっておりますけれども、二十九条とそれから二条、両方に子供たちに対しての差別があってはならないということがございます。どこにいても子供たちは平等に教育されなければいけない。このことについては、もちろん総理、どこでも子供たちは平等に育てるという、よろしゅうございますね。
  127. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのとおりと思います。
  128. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 わざわざありがとうございました。  これを批准するに当たりまして、第二条、いかなる種類の差別もなしにこの条約に挙げる権利を尊重し確保することが大事だということ、それから二十九条には、児童の父母、児童の文化的な同一性、言語及び価値観、児童の居住国及び出身国の国民の価値観、そして自己の文明と異なる文明に対する尊重を育成する、教育するということが書かれているわけなんですけれども、こういった内容の問題についても、文部省、おいでいただいていると思いますが、十分に文部省は今後配慮していただけますでしょうか。
  129. 長谷川善一

    政府委員長谷川善一君) 御趣旨のとおり、私どもといたしましても民族の教育の問題そのほかおっしゃった種々の問題に対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  130. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 身近なことから伺いたいんですが、通学定期の問題がございます。  日本の子供たちと同じように例えば朝鮮人学校とかそういう学校に通っている子供たちは今でも学割がありません。こういった問題について運輸大臣はどうお考えでしょうか。子どもの権利条約の批准と同時にこういった問題を改正して、ぜひ子供たちが学割で学校に通えるようにしていただきたいんですが、いかがでしょうか。
  131. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) JRの通学定期割引につきましては、学校教育法に基づきましてその適用範囲を定めているものであります。外国人学校につきましては、学校教育法上各種学校として位置づけられております。そういうことから、外国人学校だけを特別扱いするということは、これは逆平等になると思いますのでございますから、学校教育法に基づいて決めておるわけでございますから、これを踏襲してまいりたい。  もう一点は、私鉄の場合は非常にわかりやすいようになっております。JRにいたしましても、収入と費用、これをにらみ合わせてのことでありますから、この次の改定の時期にはでき得るだけわかりやすくいたしたい、こういうふうに思っております。改定の時期につきましては今まだわかっていないという次第であります。
  132. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 ありがとうございました。  今までもうずっと運輸省が繰り返してこられた御答弁でございます。私は、子どもの権利条約が批准されたらば、国として、日本はこの条約の精神、内容に従わなければならない約束をするということで、今までの御答弁とは違った御答弁をいただきたいと思ってあえて伺ったわけです。  例えば、アメリカですけれども、公立の小学校でアメリカ籍の日本人の三世、四世に日本語を教えております。私、参りました。そろばんも教え、そして「さくら さくら」というような歌を歌っているんですね。これは全部アメリカの税金でやっていることです。それは移民の子供たちなんですけれども、ましてをや朝鮮の場合は違った事情がございます。韓国の場合には強制連行という形で日本へ連れてこられた。  もっともっと伺いたいことがあるんですが、私は結論として申し上げたいのは、この間一人のお母さんがこうおっしゃいました。強制連行で連れてこられた私たちのお父さん、おじいさんが日本でどれだけ多くの線路を敷くための労働に駆り立てられていったことだろうか、そこで死んだ親もいっぱいいた、それなのに今度は自分たちの子供や孫が学割すらもらえない。私は戦後の責任、やはり日本が今いろいろと問題になっていますけれども、日本の国内でできる国際協力、そして国際性というところはこういうところからだと思います。最後に総理にぜひ御答弁いただきたいと思います。
  133. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 少し関係のところから私として事情を聞いてみたいと思います。
  134. 堂本暁子

    ○堂本暁子君 どうもありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。  きょうは環境と福祉と人権と景気にかかわる問題を伺ったんですが、それは予算の組み方によって環境の問題も福祉や人権の問題も解決されていくのだということを主張したかったということです。どうもありがとうございました。
  135. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で堂本君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  136. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、清水澄子君の質疑を行います。清水君。
  137. 清水澄子

    清水澄子君 まず、年金改革と税制についてお尋ねいたします。  私は、経済の安定とともに国民生活の質的向上の立場から、高齢者の所得保障である公的年金制度の果たす役割の重要性を政府はもっと強く認識すべきだと考えております。政府は平成七年、つまり一九九五年を目途にこの公的年金制度の一元化を図るとしておりますが、総理はこの景気対策と年金財政との関係をどのように御認識をしておられるでしょうか。これまでの国会答弁で年金制度の改正の時期に合わせて税制の改正も必要という認識をお示しになっておりますけれども、この発言の真意とあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  138. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 御質問でございますが、税制改革というのは私は基本的な問題だろうと、こう思います。税制というのはやはり公正、中立、簡素というのが一つの大原則でございますし、社会経済情勢に応じてどうやっていくかというのは我々考えていかなければならないところであります。言いますと、所得である、消費である、資産である、そういったものからどういうふうな形で税金をいただくというようなことを考えたらいいかということでございます。それと同時に、また税及び社会保障負担と、こういうことがございますので、そういったものを含めて国民がどんな負担をしていったらよろしいかということを基本的に考えていかなきゃならない問題じゃないだろうかな、こういうふうに思っているところであります。  今、委員指摘のように、年金制度というのは日本のつくり上げた大変立派な一つの制度であります。これをこれからどういうふうな形でやっていくか。一元化の問題もありましょうし、また年金制度そのものの全体の問題もあります。そういったものも一つの大きな問題として、その中に含めて考えていくべき基本的な問題じゃないかというのが私の考え方でございます。
  139. 清水澄子

    清水澄子君 大蔵大臣はこの年金財源と絡めて直間比率の見直しを考える必要があるという発言をしておられますけれども、これは間接税である消費税の税率を引き上げるというお考えですか。
  140. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 恐らく委員指摘のは、ちょうど大蔵大臣に任命された後でお話がありました。私も今申し上げましたように、基本的な物の考え方としては、来るであろう高齢化社会にどう備えていくかというのは一つの大きな問題でありましょうと。そういった中で年金の負担をどうしますかということを考える、それから税の負担をどういうふうにするかということを考える、そういった総合的な中で考えていかなければならない。こういうことでございまして、短絡的に私としては消費税を上げてこれらを賄うべきだというふうなことを考えておったわけではございません。私はそういうふうな今申し上げました基本的な考え方の中でいろいろとらえていかなければならない話だろうと思っています。  また、こうした問題をいつの段階でやっていくか、こういうふうなこともあるだろうと思いますが、今の段階ではやはりこういった問題は極めて基本的な問題、国民の総意を聞かなければならない話でありますから、税制調査会等いろんな方々の御意見を聞いてやっていくべき問題でありまして、今すぐにどうだこうだということは考えておりません。
  141. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、総理にお伺いいたします。  今、公的年金制度の一元化に向けてそれぞれの審議会や委員会審議があるわけですけれども、全体的な総括的な討論する場が不足をしております。  昨年の秋、総理の諮問機関であります社会保障制度審議会の年金数理部会におきましても、年金財政の現状と将来展望についてもっと国民理解と合意を得るための情報が知らされなければならない、また二つ目には年金制度改正を前にしてもっと複数の政策案とかまた試算結果を広く公開して国民の判断を求められるような手段が必要である、そしてまた年金財政の健全性の客観的な評価と情報を公開する第三者機関を設置することが提起されておるわけです。これはその後の被用者年金制度間調整事業に関する懇談会においても、またことしの三月の参議院厚生委員会のこの被用者年金の制度間調整法の改正に当たっても同じ趣旨の附帯決議がなされているわけです。  これは、いかにこの各年金制度がばらばらであって、それを所管する行政省庁もばらばらかということをあらわしていると思います。今、税制調査会のような場で討論ができたらということを大蔵大臣もおっしゃいましたけれども、ぜひ私はこれはやはり総理のもとに税制調査会と同様の年金調査会を設置して、そしてもっと年金情報の公開と、そして国民各層の意見を聞けるようなそういう場をつくっていただきたいと思いますが、総理、いかがでございますか、お願いできますでしょうか。
  142. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) いろんなところに多岐にわたる話でございますから、私も関係省庁とも話をしてみたいと思っておりますが、年金問題でございますから、私もかつて厚生大臣をやって、大体厚生大臣が年金問題は担当すると、厚生大臣からひとつ、ぜひ一遍話を聞いていただきたいと思います。
  143. 清水澄子

    清水澄子君 これは厚生大臣のもとにある年金だけではだめなんです。もっと全体で討議できるということを今申し上げましたので、これはぜひそれを実行する、検討するというお答えをいただきたいと思います。
  144. 丹羽雄哉

    国務大臣(丹羽雄哉君) 私が年金担当大臣でございますので御答弁をさせていただきます。  現在、年金審議会の場におきまして検討をいたしておるわけでございますけれども、いわゆる共済年金、こういった問題を含めまして、ことしの秋ごろまでにはひとつそういうような場を設けるよう検討していきたい、このように考えております。
  145. 清水澄子

    清水澄子君 では次に、小泉郵政大臣にお伺いをしたいと思います。  私が昨年四月の予算委員会で軍事郵便貯金について質問をいたしました際に、政府答弁は、これは支払う義務があるということでございました。そして最近、御承知のように台湾からいろいろなグループがこの軍事郵便貯金を返してくださいということで訪日をしているわけですけれども、私のところにもたくさんの問い合わせの手紙が来ておるわけです。  ここで大臣にお聞きしたいんですけれども、特に台湾の軍事郵便貯金というのは、これは口座で大体軍事郵便が六万口座、二億四千七百万円、そして普通郵便で二百四十二万口座、一億二千二百万円と伺っているわけですけれども、これらはやはり貯金者に直ちに支払うべきものだと思います。郵便貯金法によりましても、国の郵便貯金として預け入れた貯金の払い戻しの義務を明記しているわけでございます。こういう本当に多くの人々の貯金をずっと日本が何十年も返さないでいるということではなくて、郵政大臣はこの問題についてどのようにお考えになっていらっしゃるか支払う意思がおありでございましょうかお答えいただきたいと思います。
  146. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 台湾の方の軍事郵便貯金については、政府の確定債務の一つであり契約上の債務として履行しなければならないものと考えています、基本的には。しかし、日台間の全般的な請求権問題との関連もこれは考慮する必要があると思います、外交問題として。そして、いかなる形での債務履行が実際的がはなお慎重に各省庁とも連絡をとらなきゃならない調整上の問題が残っております。  政府としてもできるだけ早くこの問題の解決に取り組みたいという意向でありますので、郵政省としてもこの問題が早期に解決できるよう努力をしていきたい、そう思っております。
  147. 清水澄子

    清水澄子君 この問題は、軍事郵便貯金だけではなくて、旧軍人軍属の未払い賃金とか恩給とか簡易保険とか非常にたくさんこの契約上の債務が残っているわけです。ですから、これはもう一 段上の段階で調整をされて、そしてもう今は政府は一つの決断をするときだと思うわけですけれども、これらについて、この全体の債務をどう返還するのかということについてどのようなお考えがあるでしょうか。
  148. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) お答え申し上げます。  ただいま先生から仰せのように、この問題は単にただいまお話ございました郵政省関係の郵便貯金にとどまりませず、未払いの恩給の問題とかその他関係省庁にまたがるいろんな問題がございます。そこで、私ども総理府の方で、事務的に私の方で取りまとめ、考え方の整理をさせていただいておりまして、ただいま関係省庁にお集まりいただきまして鋭意問題点の整理を行っております。私どもの事務的な考えといたしましては、何とか年内ぐらいをめどに私どものレベルの連絡会議の一応の結論、日本側としての考え方の整理、結論を出してみたいと思っております。そういうつもりで今作業を進めておるところでございます。
  149. 清水澄子

    清水澄子君 大変な進歩だと思います。その場合に、年内をめどに出されることに当たって、支払うことになった場合でも、五十年間近くの貨幣価値の変動からいろんな補償問題がまた生じてくると思いますので、例えばそういう補償を受けるべき人々を含めた補償基金のようなそういうものを検討されたらいかがかと思いますけれども、そういうこともお考えにあるでしょうか。
  150. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) お答え申し上げます。  ただいまのまさにその点が実は非常に難しい問題でございまして、郵政大臣から御答弁がございましたように、古い話ではございますけれども、元金利息合計、それだけをお支払いするということでございますれば私どもは事務的には非常に簡単なわけでございますけれども、ただいま仰せのように、いろいろな上乗せを当然台湾の関係の方々は希望しておられる。その辺を日本として応じられるものかどうなのか、法令の仕組みはどうなっておるのかどうなのか、その辺を事務的に今検討しておるところでございます。
  151. 清水澄子

    清水澄子君 一九九五年は日本の敗戦後五十年になるわけです。ですから、台湾の債権資格者は非常に高齢化をしております。それこそ私は、人道上の立場からこういう問題は一日も早く急いで解決をする、そういう姿勢を私たちは示すべきだと思いますし、それこそが日本政府の対外的な信用を得られる道だと思います。  総理は、外務大臣でいらっしゃった昭和五十年二月にも、これは何らかの解決を図らなければならないと発言しておられるわけです。あれからもう十八年が経過しておりますが、五十年目を控えて、それまでにこの確定債務の支払い、ぜひこれを台湾の方にお支払いする道を開いていただきますように、総理に二言お願いしたいと思います。
  152. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 第二次大戦の結果、我が国各国との関係というものはすべて法律、条約、あるいは宣言等の形で解決を実はいたしておるわけですが、台湾との問題は清水委員が御承知のような経緯でとうとうそういう交渉を妥結できるような状況が失われてしまったということでございます。したがって、今、関係大臣、政府委員からも申しましたように、そのような債務を我々は持っておるということは、これは疑いを入れない否定できない事実だというふうにやはり考えなければなりません。  そこで、ただ、まさに五十年たっておりますから、当時の郵便貯金を額面で払い戻して問題が解決するわけでないことはもういかにも明らかでございます。どのくらいが相当であろうかということになってこざるを得ません。恐らくそこで双方の主張がかなり実は分かれてくるだろう、そういうことがありまして今まで何となく時間がかかってまいりましたけれども、私はせんだっても、もうこのことははっきりした方がいい、我が国の債務でない、義務でないというのならば別でございますが、考えてみてやはり我々の債務である、そこが動かせないのならば、それならばやっぱりその履行というものはもう考えた方がいい、こういうことを指示いたしておきました。  願わくば具体的な金額について余り大きな違いがなくて話し合いがつけばと思っておりますが、基本的にはそういう態度で臨みたいと思っています。
  153. 清水澄子

    清水澄子君 どうもありがとうございました。本当にその決断をお願いいたします。  次に、今度は従軍慰安婦の問題ですけれども、政府はこれまで従軍慰安婦問題の真相解明の一環として現地での元従軍慰安婦からの聞き取り調査を表明されてまいりましたけれども、その進展状況、また聞き取りに当たっての基本姿勢、今後の見通しについてお聞かせいただきたいと思います。
  154. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) この問題は、ただいま外務省にお願いいたしまして、現地のソウルにおきまして大使館を通じて関係の先方の団体と打ち合わせを始めております。従来必ずしも意思疎通が十分でなかったこともございまして、具体的にヒアリングに至りますまでにいろいろ詰めなければならない段取り、やり方等がございますので、ただいま鋭意その辺を先方の団体とお話し合いを始めたところでございます。いま少しくお時間をいただきたいと思います。
  155. 清水澄子

    清水澄子君 ぜひその調査に当たりましては、相手方にも真相究明への協力を願って、一人一人にやはり謝罪の意味を込めて当たるということをしていただきたいと思います。そしてまた、現地の関係団体の要望を酌み取った調査をしていただきたいと要望しておきます。  同時に、この調査は一回であるわけですから、韓国政府も要求しておりますように、真相究明というのはもっと長期的な計画を立てて、もっと民間の歴史学者や協力者の協力を求めながら計画をしていただきたい。そしてまた、韓国だけではなくてフィリピンやその他の地域へも同様の聞き取りをしていただきたいと思いますが、そのような御計画はおありでしょうか、御意思はおありでしょうか、お聞かせください。
  156. 河野洋平

    国務大臣(河野洋平君) まず、韓国以外の国の元慰安婦の方からの聞き取り調査については、我が国と先方との関係、各地域の実情、相手方の意向などを考慮しなければならない点がいろいろとありまして、日韓関係、韓国の従軍慰安婦の問題につきましては先ほど政府委員が御答弁申し上げましたように、各方面いろいろな方々の御努力もございまして相手方の意向などもかなりわかってまいりましたが、韓国以外の国についてはまだもう少し相手方の意向その他確認をしなければならない点がございまして慎重に検討しているところでございます。  韓国の元慰安婦の方々からの聞き取り調査につきましては、先ほど政府委員が御答弁申し上げたとおりでございまして、関係団体から種々の要望が寄せられてきておりますことを承知いたしておりますが、お話をお伺いするにはそれなりのしかるべき環境も必要かと存じます。清水委員にはいろいろと御努力もいただいておることを承知しておりますが、そうしたしかるべき環境のもとで早期に調査が実施できるよう努力をいたしたいと、こう考えております。
  157. 清水澄子

    清水澄子君 ぜひ関係団体の意見などを酌み上げていただきたいと思います。  次に、最近、第二次世界大戦の末期に国内の労働力不足を補うために日本政府が閣議決定を行って中国人約四万人を強制連行してきたという、こういう外務省が調査をした資料がNHKのニュースで報道をされておりました。敗戦の翌年、昭和二十一年に外務省がいわゆる強制連行中国人労働者を使った全国の百三十五の事業所の調査を実施した記録の原本が出てきたわけです。そして、それをもとにしたいわゆる外務省報告書というものが東京華僑総会に保管されていることが明らかになりました。  私は、きょうは時間がありませんので余り深く聞けませんが、事実関係を中心にお聞きしたいん ですけれども、先日、私は内閣外政審議室に、外務省が昭和二十一年一月二十六日にその調査を指示したこの高裁案、つまり決裁文書、これがアメリカの公文書館から出てまいりました。これに、だれがいつやって幾らの手当を払っているか全部出ているわけですけれども、これは外務省の決裁文書であるということを御確認できますでしょうか。
  158. 池田維

    政府委員(池田維君) ただいま御指摘のありました本件資料が外務省のものであるかどうか、直ちにお答えすることは困難ではございますけれども、誠意を持って現在調査いたしております。  他方、当時関係しておりました者の証言等によりますと、当時外務省がこのような調査を行ったということは事実でございましてそういう意味からいいましてかなり蓋然性の高いものだというように思っておりますが、いずれにしましても、調査を行っているということでございます。
  159. 清水澄子

    清水澄子君 それは事実です。余りそう回りくどくおっしゃらないで、やはりこういうものは率直に私は認めていったらいいと思います。  この調査報告は正確には外務省報告とその百三十五の事業所報告と一体になったものですけれども、私はきょうここにその事業所の、ようやく出てきました、外務省が焼却を命じた、これが全部中に出てきていますね。こういうものをちゃんと私は借りてここに持参をしてきているわけでございます。本当に今までこれが幻のものと言われたり、いろんなところでこの実態が報告されていたんですけれども明らかにされませんでしたが、この中身を読みますと、日本軍による中国人へのいわゆる労工狩りとかウサギ狩り、または船底に閉じ込めて、またはふたのない貨車に乗せて日本に輸送してきた悲惨な状況とか、炭鉱での残虐な酷使、そういう実態がすべてこういう中に本当に克明に書かれております。  例えば、ここにあります三菱鉱業大夕張の調査原本によりますと、日本に上陸した中国人労働者二百九十二名中、もう次々と死亡されて二九%が最後の調査のときには死亡しているわけです。中には撲殺という死因すら、この中に全部書かれております。そして、これを外務省が調査をした項目が全部ここに書いて、それが一つずつこの中に入っております。  そしてまた、一九六四年に中国人の皆さんまたは日本人の皆さんと一緒に中国人殉難者の名簿を作成した実行委員会報告書をずっと見ましても、同じような虐待の実態があるわけです。その中には、本当にトンネルとかそれから土建労働、そこで酷使された中でどのようにひどい酷使をされたかということがもう次々と出てまいりまして、そしてもうほとんど死亡は栄養失調ということが書かれているわけです。それらの中に憲兵とか特高警察、そういう者の名前が具体的に出てまいります。そして、現場管理者は絶えずけん銃とか日本刀、そして棒やつるはしを持って振る舞ってきたということが記録に残っているわけです。  ですから、これは大変な中国人に対して行った日本の虐待の行為という歴史の事実というものはこれまで何回もこういう国会で問題になっていました。例えば、六〇年には自民党の平野三郎元議員がやはり政府に対してそういう質問主意書を出しておりますし、社会党の田中稔男議員も国会質問しております。  今、池田局長が事実がまだございませんと最初おっしゃったように、そういうことで非常に確認を拒んでこられたわけですけれども、それはもう今や戦後四十七年もたち、そして敗戦五十年を迎えるというこの時期に今こういうふうな事実が新たに出てきたわけですから、私は、総理はこのような事実が第二次世界大戦の末期において我が国にあったということをお認めになられるかどうか、ぜひ御返答いただきたいと思います。そして、その亡くなられた方々、またはその犠牲者の遺族に対してこの場でやはり謝罪を表明する意思がおありかどうか、このことについてお答えいただきたいと思います。
  160. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま政府委員お答えを申し上げましたとおり、ただいま政府が調査をいたしておるところではありますけれども、真実であるという蓋然性が高いというふうにお答えを申し上げました。  そのお答えに基づいて申し上げますならば、当時多くの中国人の労務者が中国より連れてこられて極めて不幸な状況に陥ったということは否定できないと考えられます。戦時という異常な状況ではありましょうけれども、多くの中国の人々に耐えがたい苦しみを与えたことは極めて遺憾なことであったと、こう申し上げます。
  161. 清水澄子

    清水澄子君 私たちは、国民の総意として、こういう歴史の事実に光を当てながら、その反省をやっぱり厳しくとらえなければならないと思うわけです。その意味におきましても、もうここにはっきりこういう政府の手による調査報告の所在が明らかになったわけですから、これは慰安婦問題と同様に、総理のもとで外政審議室できちんと調査をして、そして国会及び国民に明らかにしていただきたいと私は思うわけです。  そしてまた、河野官房長官も九〇年六月の毎日新聞では、「日本は過去の罪に充当てよ」という文章を寄稿していらっしゃいますけれども、私どもも全く同感なんです。そして、こういうふうに私たち日本が過去に犯した過ちを私たち自身の手で今これを明らかにしながら、そしてこれからの若い人たちを含めて日本が二度とこういうことを繰り返さないというそのあかしをここにつくっていくべきだと思いますので、政府は、東京華僑総会に保管されているこういう一連の資料を調査して、ぜひこの全容を改めて国会報告することを約束していただきたいと思います。
  162. 河野洋平

    国務大臣(河野洋平君) 外務省から御答弁すべきであるかもしれませんが、私からも、清水委員今御指摘のとおり、我が国の歴史的事実について正しい調査が行われて正しい歴史に対する認識を持つということが何よりも必要なことだと考えておりますので、先ほど政府委員が御答弁申し上げましたように、本件の資料の調査につきましては誠心誠意これを行いたい、こう考えております。
  163. 清水澄子

    清水澄子君 国会報告していただけますか。
  164. 池田維

    政府委員(池田維君) 当該資料につきましては先週末に入手をいたしました。それで誠心誠意私ども調査を行っておりますので、いずれ結果が明らかになりましたら適切な形で御報告申し上げたいと思っております。
  165. 清水澄子

    清水澄子君 私は、この資料を全部はとても読めませんけれども、こういうものの中をずっとこの二、三日読んでおりました。そうしますと、この中で、今まで私どもは、例えば従軍慰安婦の問題の調査に当たりましても、なぜ日本では、日本というより外政審議室に警察関係の資料が一部も出ていないのかということをいつも疑問に質問をしてまいりましたけれども、こういう資料を見ますと、この中にはっきり警察、特に特高警察関係の資料が非常に明快に、その担当警察官の氏名とかいろいろな記載が見られるわけです。ですから、今後ぜひ慰安婦問題の調査に当たりましても、旧内務省の特高警察関係部局の集めたそういう資料というものについてぜひ調査をしていただきたい、こういうことを私はお願いしたいわけでございますが、いかがですか。
  166. 谷野作太郎

    政府委員谷野作太郎君) 従軍慰安婦の問題につきましては、私どもの方から関係省庁にお願いしておりまして、関係省庁におかれましても今日までのところ誠実に御対応いただいておると思っております。  ただいまお示しの具体的な資料につきましては、外務省の方で今入手に努め、その上で整理が行われるでございましょうから、私どもはそれを拝見させていただきまして、その上で今のお話のポイントにつきまして対応ぶりを検討してみたいと思っております。
  167. 清水澄子

    清水澄子君 なお、この百三十五事業所の調査原本の中には、朝鮮人女性がいたと思われる特殊慰安施設というのが書かれております。そして、 そこにやっぱり徴用されてきたと思われる朝鮮人労働者に関することが触れられております。ですから、当時の国内における朝鮮人女性による特殊慰安施設というものがずっと一緒に並んでいるわけですけれども、それらと徴用朝鮮人労働者に関する事実関係についてもあわせて御調査いただきたいと私は思いますが、いかがでしょうか。
  168. 池田維

    政府委員(池田維君) 全部あわせて徹底的に調査したいと思います。
  169. 清水澄子

    清水澄子君 やはり日本景気対策といっても、私たちは自分たちの国の景気対策、不景気になると大変心配なことですけれども、しかしそれとあわせて、やっぱり今までの日本の過去の清算もきちんとしていかなければ日本が対外的な信用を得られるということに欠けてくると思うわけです。ですから、そういう問題について、きょうもその点を私はあえて今やらなければならないこととして御質問いたしました。  今申し上げたように、第二次世界大戦におけるたくさんの中国人の強制連行とか従軍慰安婦とか徴用朝鮮人労働者の問題などがまだ清算されていないということが、いろいろなところで絶えず絶えず出てくるわけでございます。こうした中で、やはりこれらの問題を私たちがどう本当に正しい歴史認識をするかということを絶えず申し上げ、政府の方もそのつもりでおりますとおっしゃっているわけでございますが、今回、厚生省は、戦後日本で初めてといいましょうか、国費百二十三億円をもって戦没者追悼平和祈念館の建設計画を進めておられます。  そこで私は、厚生大臣にお尋ねをしたいわけでございますけれども、この平和祈念館というのは、やっぱり第一に日本の過去の歴史の空白を埋めていく、そして歴史の真実に触れながらさらに国際的な評価にたえ得る、そういう祈念館としてのあり方、そしてそこにはそういう資料も集められ展示もされ、そして広く情報の提供を行い得るものでなければならないと思いますけれども、その点はいかがでございますか。
  170. 丹羽雄哉

    国務大臣(丹羽雄哉君) 戦没者追悼平和祈念館でございますが、ことしじゅうにも一部着工の運びでございます。さきの大戦におきましての資料、情報をできるだけ正確に集めまして、日本国民の変わらぬ平和への誓い、願い、こういうものを国の内外に訴えることを目指しておりますけれども、具体的な内容につきましては、今後、有識者から成ります委員会を設置いたしましてその場で検討を進めていきたい、こう考えているような次第であります。
  171. 清水澄子

    清水澄子君 ぜひ厚生大臣、お願いでございますけれども、この祈念館の運営とか企画に当たりましては幅広い国民の各層を代表するようなそういう人々による委員会の設置をお願いしたいと思いますけれども、それについてはお約束できますでしょうか。お願いいたします。
  172. 丹羽雄哉

    国務大臣(丹羽雄哉君) 今御答弁を申し上げましたように、幅広く御意見を承りたいと考えております。
  173. 清水澄子

    清水澄子君 以上で終わります。
  174. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で清水君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  175. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、広中和歌子君の質疑を行います。広中君。
  176. 広中和歌子

    広中和歌子君 経済審議に移ります前に、時の話題を二点、短く質問させていただきます。  まず第一にPKOの活動における正当防衛についてなんでございますけれども、最近のアメリカでの日本人留学生射殺事件の裁判を見ますと、正当防衛の概念あるいは正当防衛が認められる状況というのは国によって違うのではないか、そのような気がいたします。  PKOにおきまして自己防衛あるいは正当防衛のための実力行使が許されるのはどんな状況なのかPKOにはそうしたマニュアルがあるのかどうか、そして民間人が非軍事部門で参加する場合その自衛はどのように担保されるのか、そしてまた他国の民間人は自衛のためにピストルを持っているのかどうか数点についてまずお伺いいたします。
  177. 澁谷治彦

    政府委員(澁谷治彦君) 国連の関連文書におきましてはPKOのすべての要員は武器の使用に関して同一の方針に従わなければならないという記述が見られますけれども、この記述の趣旨は、PKOに参加するすべての要員は、武器の使用は厳に自衛のための最小限度に限られるというPKOの武器使用に関する原則に従わなくてはならないということを明らかにしたものというぐあいに考えられます。  この文書によりますと、自衛の範囲につきましては、通常、要員の生命等を防護することということのほか任務の遂行を実力をもって妨げる企てに対抗することというこの場合も含むことになっております。他方、派遣国において平和協力業務に従事する自衛官等の武器使用は、「自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員の生命または身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」、そういった場合にのみ限られるということになりますが、これはPKOにおける武器使用の準則の範囲の中であるというぐあいに考えられます。  それから、他の文民につきましても武器を持っている以上はこの原則が適用されるということでございます。  それから、他の文民警察の場合は、それぞれの国によって違いますけれども、ほとんどの国は、武器を例えばカンボジアには持っていっているけれども、実際にはそれを使っていないということでございます。ほんの一部の国については勤務中にそれを携行しているという事例があるようでございます。
  178. 広中和歌子

    広中和歌子君 私がこの点について質問させていただきましたのは、我が国では自衛、正当防衛と認められるという非常に厳しい限定された形での使用しか認められていないわけでございまして、そういうような人は現地に行きまして撃たれてから初めて自衛をしなくちゃならないというような状況も起こり得るのかもしれない。非常に心配しているわけでございます。ぜひこの点におきましては今後御検討いただきたい。一般論で結構でございますけれども、次の参加のときには、また現に参加している事態もあるわけでございまして、ぜひ御検討いただきたいと思うわけでございます。  次に、成田空港のシンポジウムの隅谷所見についてお伺いいたします。  隅谷所見によりますと、多数者の利益によって少数者の存在が侵略されることがあってはならないという所見を述べられているわけですけれども、人権の視点から一つの見識だと思います。しかし、多数者の権利あるいは利益が公共の利益であると認められる場合には、憲法十二条あるいは十三条に照らして少数者の権利はどう扱われるべきかということについてお伺いいたします。  ちなみに、この憲法十二条、十三条、非常に大切なので読ませていただきます。これは憲法の三章「国民の権利及び義務」に関することでございます。十二条、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」と。十三条、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」。つまり、十二条、十三条で公共の福祉ということが非常に大きくうたわれているわけでございます。  それと成田問題とのかかわりについてお伺いいたします。総理お答えいただければありがたいと思います。
  179. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 憲法に定める公共の福祉ということは、私ども大事に考えなければいけない。もとより公共の福祉であるからといってその権利を無償あるいは相応の対価なしに没収する、あるいは無視するということを言っておるわ けではありません。相応の対価をもって、しかし公共の福祉には服さなければならない、こういうのが憲法の精神だというふうに理解をいたしております。  なお、このことと先般行われました成田のシンポジウムの関連につきましては、実は私はシンポジウムの内容を詳細には存じませんし、またここで中途半端な知識でお答えをいたしますと事態の解決に役に立たないことがあるかもしれないと思いますので、その点についてのお答えはひとつ御容赦をお願いいたしたいと思います。
  180. 広中和歌子

    広中和歌子君 では、成田の二期工事は多数者の利益、公共の福祉に資すると思われますかどうか、だれかお答えいただけますか。
  181. 松尾道彦

    政府委員(松尾道彦君) 成田の二期工事は、私ども今、国際空港の建設途上にございまして、大変重要な施設でございますので、公共の福祉に合致するというふうに判断させていただきたいと思います。
  182. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。  次に、経済問題に移らせていただきます。  経済企画庁長官にお伺いいたします。  先ほどの御答弁にもございましたけれども、日本経済回復兆し、底を打った、あるいは底を打ちつつあるとおっしゃいました。しかし、ちまたの雰囲気、経済学者等の意見は、底は打っても底ばいという言葉、そういうものでございます。個人消費は盛り上がらず、それはデパート、スーパーの売り上げにも反映していると思いますけれども、総合経済対策は個人消費に連動しておりますでしょうか、お伺いいたします。
  183. 船田元

    国務大臣船田元君) お答えをいたします。  今回の総合経済対策が個人消費にどのように反映をしているかという御質問でございますけれども、一般的に言って、最近やはり景気低迷から若干回復兆しあるいは一部回復動きということでそのプラス面というものを取り上げてまいっております。しかし同時に、これはもう同時並行ということでございますが、今、広中先生御指摘のように、個人消費あるいは設備投資ということにつきましてはなお予断を許さない低迷状態が続いているといつ判断に我々立っておるわけでございます。  個人消費の伸びがなぜ低い状況であるのかということについてはさまざま原因が考えられると思いますけれども、一つはやはりバブル経済の発生から崩壊、そのことが資産デフレということを招いたということもあります。また、いわゆる景気全体が落ち込んでいるという状況から雇用所得の伸びというのがどうしても望めない、望みにくいというような状況もございまして、かなり複合的な要因があるだろうというふうには考えております。  私どもとしては、もちろんいろいろな対策を今日までとってまいりましたけれども、基本的には景気を一日も早く回復をさせる、そのことがやはり最終需要である個人消費というものにもいい影響を与えてくるだろう、こういうことで現在その努力を続けているところでございます。  今回の新総合経済対策、その点におきましてもこれは直接消費に結びつくということでは決してありませんけれども、しかしこれは相当の最終需要の伸びというものを期待できる、こういう点が一つございますし、それから特に住宅関係においての投資がより強くなるようにということで手だてをとっておりますけれども、やはり住宅建設などがふえてまいりますと、これは特に耐久消費財を中心としていわゆる消費の拡大ということにかなり影響があるもの、このように感じておりまして、総体的に消費の拡大を図るためにはやはり景気全体を浮揚させていかなければいけない、こういう考え方で現在まで取り組んできており、今後も取り組みたいと思っております。
  184. 広中和歌子

    広中和歌子君 なぜ消費は冷えているかといろいろおっしゃっていただいたわけですけれども、何かサラリーマンの実質所得が目減りしているんではないかなという感じがいたします、時間の関係で省略いたしますけれども。  次に、銀行預金金利の低下について、これが消費に非常に影響しているんじゃないかということを伺わせていただきます。  過去一年間、受け取る方の金利、それはどれくらい下がったんでしょうか、預金高が今大体どのぐらいあるのかお伺いいたします。
  185. 寺村信行

    政府委員(寺村信行君) 突然のお尋ねでございまして具体的なケースを今ちょっと持っておりませんけれども、昨年の四月以降でございますけれども、定期預貯金金利の引き下げは一・三%、ちょっと今手元の資料で計算をしておりますので詳細は……
  186. 広中和歌子

    広中和歌子君 じゃ、アバウトで申し上げますと、大体一%以上下がっているということでございます。預金高約五百兆円といたしまして、一%下がれば五兆円の利子所得が減っているわけですね。  一方、我々も借金をしているわけですけれども、貸し出す方の貸出金利、特に個人や中小企業が支払う住宅ローン、消費者ローン、クレジットローン、そういうものは一年間でどのくらい下がっているんでございましょうか。
  187. 寺村信行

    政府委員(寺村信行君) 大変恐縮でございますが、ちょっと過去一年間の計算というのが今手元に……
  188. 広中和歌子

    広中和歌子君 いや、一年間じゃなくてもいいですよ。
  189. 寺村信行

    政府委員(寺村信行君) 過去からの金利の低下割合を申し上げますと、例えば貸出金利で申し上げますと、短期プライムレートで四・二五%の低下でございます。それから長期プライムレートが過去のピークからの対比で三・五%の低下、それから住宅ローン金利でございますけれども、変動金利は三・一%の低下と、こういう状況になっております。
  190. 広中和歌子

    広中和歌子君 三・一%低下したんじゃないんですか。下げ幅がそれくらいになっているんですか。  それから新規の場合とそれから過去のローンとの差がございますよね。例えばリスケジュールというのは非常に簡単にできるんでしょうか。
  191. 寺村信行

    政府委員(寺村信行君) 住宅ローン金利を申し上げますと、過去のピークが八・五%でございまして現在が五・四%と、こういうことになっております。それから短期プライムレートで申し上げますと、過去が八・二五%が四%、六月一日現在でございます。四・二五%の低下幅でございます。
  192. 広中和歌子

    広中和歌子君 それが消費者ローンとかクレジットローンとか住宅ローンに反映されていると考えてよろしいでしょうか。
  193. 寺村信行

    政府委員(寺村信行君) 消費者ローンの場合でございますと、例えば住宅ローンは先ほど申し上げました金利でございますので……
  194. 広中和歌子

    広中和歌子君 新規の場合。
  195. 寺村信行

    政府委員(寺村信行君) 新規の場合、全体的にそういうふうに下がってきているということでございます。
  196. 広中和歌子

    広中和歌子君 何かいい数字が出てこないので大変まどろっこしいんでございますけれども、新たに家をお買いになる方は大変いいんだけれども、今まで買ったような方はリスケジュールがちゃんとなされているのかどうか。  それから、例えばクレジットで物を買ったときに、その金利は本当に下がっているのかどうか。幾らぐらいなんでしょうね、現実に。市場金利です。
  197. 寺村信行

    政府委員(寺村信行君) ちょっと今手元にございませんが、新規の約定平均金利で申し上げますと、これは銀行の貸し出しの約定平均金利でございますけれども、短期の場合、ピーク時は八・二六一%でございましたのが四・四二二%でございますから、三・八%低下しているわけでございます。  これは約定で期間がございますから、その期間が到来することによって新しい金利体系に変わるということで、全体として総平均金利も下がって いくという過程をたどっているわけでございます。
  198. 広中和歌子

    広中和歌子君 ですから、新たに借りる人にとってはこういうことは効いてきていることはわかりますけれども、既にたくさんの借金を抱えている人、バブルのときに高い値段で家を買った方にとっては依然として苦しい状況が続いているんではないかと思います。  これは新聞で読んだことなんですけれども、銀行の営業利益は過去最高だということでございます。これは何を意味するのかということですけれども、支払い利子が低く貸出金利が高い、つまり利ざやが大きいことではないかと思うんでございます。間違っておりますでしょうか。  それから、送金手数料なんですけれども、同じ銀行間でも四百円とか、違った銀行になりますと六百円、八百円など、非常に高いんですね。これだけコンピューターが発達した日本におきましてそのような高い手数料を取るということ、本当にどうしてなんだろうと思うわけでございます。  他方、金融機関における不良債権は十二兆七千七百億。先ほど御説明いただいたとおりでございます。実態はその三倍と言われている。それはともかくといたしまして、つまり私が申し上げたいのは、預金者からの金利益や手数料の形で銀行の利益を上げる、そしてそれによってバブルどきの不良債権を相殺する政策をとっていらっしゃるんじゃないかなと疑ってしまうんですけれども、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  199. 寺村信行

    政府委員(寺村信行君) この三月期の都・長銀、信託三業態の決算の状況は、業務純益は前期に比べまして上昇いたしております。これは金利の低下局面で資金調達コストが低下をしたということでございますが、同時に貸出金利も低下をいたしておりまして、預貸し金利ざや、金融機関の利ざやはむしろ三年度より四年度の方が低下をしているという状況でございます。  ただ、業務純益が増加をいたしました理由は、金融機関は貸し出しだけではなくて国債等の有価証券を保有しております。これは期間十年の国債を保有しておりますと、その部分は直ちに金利の低下が発生しないということで、金利低下局面にはよくあることでございますが、結果として業務純益が増加をしたということでございまして、むしろ実効貸出金利は調達コストよりも下回っているというような状況でございます。これは資金需要がございませんから、市場の需給からやはり貸出金利が順調に低下をしているということでございます。まさにこういうような貸出金利が下がることによって景気回復し、個人の所得も増大するということがまた政策のねらいでもございます。  それから、不良債権の償却につきましては、まさに金融機関はこうした経営努力によりまして業務純益から債権の償却を今懸命な努力で行っている、こういう状況でございます。
  200. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  201. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 速記を起こして。
  202. 広中和歌子

    広中和歌子君 今、局長からお答えいただいたわけですけれども、大蔵大臣、コメントがございましたらお願いいたします。  何か手数料が非常に高かったり、預金金利の私ども受け取る方が非常に低かったりということで、何か護送船団方式で銀行をお守りしている、一行たりともつぶさないというそういう方針でいらっしゃるのかなと思います。  確かに、銀行がつぶれるということは金融界に与える影響は大だと思いますけれども、しかしながら経営の失敗というのはやはりそれなりの自己責任でやっていただかなければならない、さもなければ庶民は納得しないというところがあるのではないかと思いますので、私の質問全体につきましてコメントをいただけたらと思います。
  203. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 銀行といえども自由主義社会にあるわけでありますから、自由競争原則でいかなければならない。経営がまずければそれはやっぱりその責任は当然とらなければならない、これは私はもう基本原則だろう、こう思います。これは、確かに金融の自由化という方策を一方において進めております中におきまして私どもが考えていかなければならないところでございます。  ただ、一つだけというか金融機関というのはやっぱり一般の方々からお金をお預かりしてやっているわけでありますから、その一般の方々の預金がつぶれるような話になったらこれはまた大変なことでありますから、それは別途の観点で私は処置をしていかなければならない、金融というのはやっぱり本来的にそういったものだろう、こう思っておりますので、そういったことをどうやっていくかというのが、我々が頭をひねり、またやっていかなければならないことだと思います。  と同時に、今、先生からずっとお話がありました、景気を上昇させるために金利を下げていかなければならない、そういった形でいろんな形の貸出金利その他は下げてきておるところでありますけれども、もう少し下げたらどうだ、こういうふうな御指摘もあるかと思います。  私は、それは下げるところはやはり自由競争という形で下げていくというのが正しい方向だろうと、こう思っておりますし、安易なる協調というか安易なる話し合いなどというのはやっぱりやるべきじゃない、それぞれの銀行が基本的に考えて貸し出しをどうしていくかと、こういうふうなことだろうと思います。  いずれにいたしましても、私は、そういった形で日本銀行が公定歩合を発動いたしまして、短期金利を上げたり下げたりする、それによりまして景気を調節していく、短期金利が下がりますと長期金利も連動して下がっていく、それによって貸し出しの方も下がっていく、また、少し引き締めをしなければならないときには逆の方向で動かしていかなければならない、こういうことだろうと思います。そういった形での私はメカニズムというのを本当にたっとんでやっていかなければならないものだろうと、こう思っておるところでございます。
  204. 広中和歌子

    広中和歌子君 次に、通産大臣にお伺いいたします。  貿易におきまして円高差益と差損の差はどのくらいあるのか、それは個人と企業にどういう影響を与えているのか、お伺いいたします。  そして、消費の伸び悩みの解消のためには円高差益還元が必要だと思うんでございますけれども、その努力はどのような形でなされているんでしょうか、お伺いいたします。
  205. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 円高につきましては、きょうの午前中でございましたか、日銀総裁も御答弁なさっておられましたように、これは長い時間をかけていきますと経済の基盤も強くなりますし、また物価にとってもいい傾向が出てくると思いますが、現段階のようにこうしていろんな思惑で急進をいたしますと、経済全体には大きな影響を受けますし、とりわけ今景気回復のまさに胸突き八丁というこういう時期に産業界にとっては大変大きなやはり影響をこうむるということでございます。したがいまして、今これが推移をしていくのをどの程度で計算をするのかというのは非常に難しいところでありまして、私どもとしては今のこうした激しい動きを容認したくないわけでございます。  さはさりながら、どの程度のことを還元すべきであるかどうかということについては、これは経企庁が中心になりまして今物価の検討しておられるようでございます。どの程度の数字でどのような準備があるか、これも突然の御質問でございますので用意がございませんが、必要でございましたら、事務当局が多少承知をいたしておると思いますので答えさせます。
  206. 熊野英昭

    政府委員(熊野英昭君) 大変恐縮でございますけれども、御質問の趣旨が必ずしも正確に理解できていないかもしれませんけれども、円高のメリット、デメリットということになりますと、例 えば輸入につきましては、円高によって当然のことながらドル建てで決められているものについては円での払いは安くなる、そういう意味でメリットがございます。他方、円高のデメリットということになりますと、輸出につきましてドル建てで決められているものにつきましては当然のことながら円の手取りが減ってくるわけであります、同じ価格で。したがいまして、何というか、差損が円高によって出るわけであります。  この状況は、輸出の総額、輸入の総額、それからまたそれが建て値としてどれだけ円建て、どれだけドル建て、いろんなものがございますのでなかなか一概にこれを申し上げることは難しいかと思います。  御質問の趣旨はそういうことでよろしゅうございましょうか。
  207. 広中和歌子

    広中和歌子君 いや、これは二、三日前の日本経済新聞に円高差益と差損の両方が出ておりましたものですから、それをどのようにとらえていらっしゃるかお伺いしたかったわけですけれども、質問通告がよく伝わっていなかったようですのでその問題についてはそれで結構でございます。  先に移らせていただきます。  こうしたさまざまな、消費の伸びが落ち込んでいる、消費が伸び悩んでいる、そういうことでいろいろな要因があるわけでございますけれども、減税が必要ではないか、そういうふうに思うわけでございますけれども、大蔵大臣。
  208. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) いわゆる所得税減税につきましては、当委員会におきましてもしばしばお話を申し上げているところでございますし、平成五年度の予算の御審議をいただくときからずっと御議論のあったところでございます。  各党間でいろいろお話し合いをされた、また、今回のこの前の五月におきましても各党間でのお話し合いがあっていまだこの国会までにさらに検討するというのが今の建前になっておりますので、私ども政府の方としてはそういった過程を見守っているというのが実情でございます。  あとの所得税減税というのは、繰り返して申しますけれども、いろいろと問題があるということを私どもは思っておりまして、第一にそれがどれだけの効果があるか。今やっているところのいわゆる公共事業なんかが一般経済に及ぼすところの影響と所得税減税というものが及ぼす影響とを比較したならば、公共事業の方がはるかに経済効果は高いだろう。それから、この大変な財政難のときに赤字国債を出してやらなければならないのでありますけれども、その赤字国債を出すということは大変な困難を伴う、またやるべきものでないという考え方を私どもは持っているところでございます。  また、今の所得税体系はこの前の抜本改革のときに相当やってきたわけでありますから、さらに一体どういうふうな形でもって所得税減税をやるのか、またこれを恒久的にやるのか一時的にやるのか。一時的にやれるような戻し税減税などというものはまたやるべきでないというようないろんな諸問題があって、私ども今の段階では非常に難しいということを考えているところでございます。  消費が非常に落ち込んでいるということでございますが、やはり一番大切なことは、日本経済が安定的な持続的な成長の路線へ乗っていって国民みんなひとしく所得を得ることができる、自分の働いているところに不安がない、そういったようなことをやっていくということが大切なことでありまして、これこそ我々が内需中心の経済運営をやっていってそういった日本経済をつくろう、そのことによって国民皆さん方に安心していただく、これによりまして消費も伸びていくというのがとるべき姿じゃないかな、私はこう思っておるところでございます。
  209. 広中和歌子

    広中和歌子君 税の問題はあと時間がございましたら総理にお伺いしたいと思っているわけですが、次に、大幅な黒字に対しまして世界の世論は非常に厳しいというところがあります。日本一国が世界じゅうに黒字をつくり続けていけば世界経済の破滅につながるというアメリカ経済学者の言葉もあります。OECD閣僚会議でも日本への厳しい批判があったと伺っているわけですけれども、貿易黒字を出し続ける社会構造の変革を求める声は、アメリカのみならず、ECからもアジアからも求められているんではないかと思います。その社会構造とは何だと認識されていらっしゃいますでしょうか、通産大臣にお伺いいたします。
  210. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 確かに御指摘のとおり、日本一国だけが黒字ということは、やはり世界全体から見ましてもバランスがとれないということになると思います。この委員会でもたびたび申し上げておりましたが、それにつきましては、黒字を獲得していくということはこれは決して悪いことではないのでありまして、そういう国民のやっぱり努力が実ってきているわけであります。  生意気なことを申し上げると、先生の方が学識が深いわけですが、かつて大英帝国は百年ぐらい黒字を続けたことがあるんです。それで植民地政策を続けていったわけです。いいか悪いかということは、これは皆さんで歴史を考えること。アメリカも七十年近く、途中の空間はあったそうですが、やっぱり黒字を続けたことがございました。それが今日のやっぱりアメリカの大きなプレゼンスだろうと思うんですね、経済的、軍事的。  そういうことを日本はやってはいかぬと思います。これから日本が恐らくこのまま一生懸命日本人が努力していけば当分続くと思うんですね。ですから、それについて国際的にどういう貢献をしていくのか、どういう役割をしていくかということが問われていくことだろうと、私はそう思っています。  したがって、社会的構造はどうだろうかと言われますと、やはり非常に合理的に、そして、よく企業も努力もしておりますし、さらに省力化も進めておりますし、技術の革新もやっておりますし、そうした日本人のひたむきなやっぱり努力ですね、まさに大げさに言うと血と汗の結晶といいましょうか、血はちょっとオーバーかもしれませんが、まさに汗と努力だろう、こう私は思いますから、問題は、そのことがこれから国際社会に対してどういう貢献をしていくのか、例えばODAもそうでございましょうし、あるいはまた逆に言えば、世界に対する還元をどう進めていくかということだろうと思います。  なお、OECDでは、一国から、黒字世界成長を阻害するという我が国に対する御発言は確かにあったことは承知もいたしておりますが、他の国々からは、我が国の経常収支についての御発言は、二十数カ国それぞれそういう発言はございませんでした。しかし、私どもとしては、やはりその内需主導経済成長というものを持続的に続けていくということが、日本のまず景気回復してそして日本が輸入の拡大ができ得るような体制をつくることが、総理のお言葉をかりれば王道であろうということでありますから、まさにそのことに今一生懸命お願いを申し上げております。  また、日本国会与野党ともにこのことの責任を感じて、そして二十二年ぶりにまさに平成五年度の予算を三月内に通過させていただきましたし、また引き続きこうした補正予算審議をいたしておりますということも、これも三十四年ぶりのことでございまして、こうした国会のまさに景気世界経済全体に対する責任というものを与野党ともにみんなが真剣に考えておりますと、こういうふうに、私は各国のそれぞれバイ会談をいたしました関係閣僚にもそういうふうに申し上げておきました。  アメリカのブラウン商務長官などは、そういうふうに次々と補正予算をやれるというのは実に国会運営がお上手なんですねと言って、随分褒められまして、そういうコツがあったら教えてくださいよとまでおっしゃられたわけでありますが、まさに日本人はそのことに対して今まじめに国会を中心にし一生懸命努力しておるということであろうかと思います。
  211. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本人の知恵とそして汗については十分内外ともに評価されているところでございますし、ODAを通じての資金還流などもどんどん進められなければならないと思いますけれども、もう一つ大切なことは日本へのマーケットアクセスではないかと思います。そうした中で、日本は七年ぶりにサミットのホスト国になるわけでございますけれども、このマーケットアクセスにつきまして、政府はどのようなプランを提出なさるおつもりか、お伺いいたします。  七年前の東京サミットでは、中曽根総理は、いわゆる前川レポートを提示することによって外国のプレッシャーを避けたわけですけれども、今回何か新前川プランのようなものを御提示になる必要があるんではないか。サミットでは特に日本で市場解放アクセスを求められているのは農業、工業製品、そして金融市場の自由化、特に保険業界などが求められているようでございますけれども、その点についで、総理ですか、お願いいたします。
  212. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 基本的な対応については総理お答えになるかもしれませんが、当面東京サミットを目指しまして、正直に申し上げましてアメリカの政権の交代もございましたし、あるいはだんだんマーケットアクセスについての詰め方でそれぞれの国が困難な問題を抱えておりますだけに、例えばアメリカとECの間のようにブレア合意などというものはできておりますが、そうした困難な問題も一つの動かなくなってしまった状態にもなりましたし、ある意味ではちょっと冬眠状態になっておったと思います。  しかし、世界全体がこの自由貿易体制というものを維持発展させていかなければ経済はよくならない。特に私も先般ASEANへ参りましたけれども、ASEANのこれから経済的に伸びようとしている国は、それぞれ自由貿易体制というものがなくなったら全くこれはお手上げの状態になるわけであります。ましてや、一方ではAFTA、NAFTA、あるいはEC、いろいろどちらかというとブロック化傾向になりつつある。そうしたことが世界全体の景気停滞させることになる。こういう声が大きく世界全体の中の声になって、そしてやはり東京サミットまでには、ウルグアイ・ラウンドの話し合いについては、ここでそれを一つの転機に、最終的にはことしの年末までには合意に向けて努力すべきではないか、こういう考え方になってまいりました。  したがって、先般トロント、それから今回のパリと四極通商で、まずとりあえず四極が、いろんな問題を抱えておりますから、四極で話し合えるだけの物とサービスの分野についてはある程度パッケージをつくろうではないかと。今、先生から具体的な御指摘がございました項目などについては、それぞれの国がいろいろつらい思いをしておりますが、まあここはお互いに苦しみは分かち合おうということで、まず四極が考えようと。  しかし、四極ですべて事足りるということじゃないわけでありまして、残りの百数カ国に対して、これに参加してもらわなきゃなりませんから、まず四極がある程度のパッケージを決める。つまり、これは大きなパッケージとも言いますが、私は最近やっぱり魅力あるパッケージと申し上げなきゃならぬだろうと。  そして、各国がこれに参加してくれることによって、七月の東京サミット以後は、さらにこれを包括的な各国が参加できるような協議にしていくことになるだろうと。さらに、最終的には年内の合意を目指すためには、いわゆるお米の問題でありますとか、それぞれの各国が持っております困難な問題をマルチでみんなで話し合っていこうではないかと。  少しずつこういうふうに整理をした方がいいのではないかという考え方で、総理の御指示もいただきましたので、トロント、パリと、そういうふうに大体話を進めてまいりました。  細かなことについての項目は、これはお互いにまとめ上げるまでそれぞれの国の問題がございますので、公表しないことになっておりますので、これは御了承賜りたいと思います。  さらに、今月の二十三、二十四日にもう一度サミット前に東京でこの四極通商代表が集まりまして、最終的に物とサービス分野におけるマーケットアクセスについて最終的なまとめをしていきましょうと。これで完全にまとまるわけじゃございませんで、これから世界全体に参加してもらうだけの一つの中心をつけましょうと。そういう意味で、まさにきざっぽい言い方でございますが、トロント、パリ、東京は、まさにホップ・ステップ・ジャンプかなと。そして、七月の東京サミットで総理を初めとした首脳がこの年内に向けてどのようないわゆるジャンプをするのかということは、これは総理のこれからお考えになられることであろうというふうに思っております。  いずれにいたしましても、我が国自由貿易体制の中で、もちろんこのことに対するやはり恩恵を受けておるわけでありますから、幸いことし東京でサミットがありますということも一つの契機として日本がそのイニシアチブをとっていくことが正しいであろう、このように考えて、総理からそういう御指導をいただいておるところでございます。
  213. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) サミットまでのことでございますけれども、二つございまして、一つ日米のいわゆるバイぐらいの関係、もう一つは通産大臣が今言われましたマルチの関係でありますけれども、まず日米の関係は、先般クリントン大統領と話をいたしまして、従来十年余りも両方いろいろ努力してきたわけでございますけれども、先ほども広中委員の言われますようなこういう貿易黒字、赤字の状況でありますから、さらにこの際気分を改めて、ひとつ新しいフレームワークで仕事をしようという約束をいたしました。  それは、もとよりアメリカの大きな関心は貿易赤字の問題ですが、しかし十年余り両国間でやってまいりましたように、それは例えば構造改革の問題もありますし、さらにもっと言えば、例えばグローバルな問題として地球環境の問題であるとかエイズの問題であるとかあるいは訓練の問題であるとかハイテクの問題でありますとか、そういう全部をひとつ日米関係で大事な部分をまとめて一つのフレームワークをつくって、その中で幾つかの部分にそれを分けて議論をしようという約束をいたしておりまして、そのフレームワークをどうつくるかということをアメリカアメリカ日本日本で今おのおの作業をしております。  まだこの両方を突き合わせるところに至っておりませんが、間もなくそういう段階に入ってまいると思いますから、そういうフレームワークのもとにクリントンさんと私との間で日米間の大きな合意がサミットのときにできるということになります。  もう一つはマルチの話で、これは主としてウルグアイ・ラウンドのうちダンケル案の根本にかかわらない部分、それは、今、広中委員の言われましたまさに工業製品、金融、サービス等々のアクセスの問題ですが、それを詰めようということでトロントの会議があり、先般パリの会議があり、この二十三、四日に東京の会議がありまして、閣僚の間でそれをマルチで詰めていこう、こういうことになります。  なお、その際に金融につきましては、ある意味で大蔵省と財務省との関係の問題が多うございますので交渉そのものは日米でややバイで今やっておりますけれども、実際の内容としてはマルチの内容になっていく、そういうふうに今考えております。
  214. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。  輸出産業というのは大体競争力の強いところでございますけれども、その輸出産業が八六年の円高、そしてバブル、そしてまた今回の円高を通しまして次第に一部生産拠点を海外に移すという形でリストラを行っているわけでございます。産業の空洞化も起こるかもしれないという心配もござ いますし、雇用調整もそこの中であるんじゃないかと思います。  過去におきましては、生産部門における生産性向上とか海外生産拠点の移転などリストラを行う場合には、そこで生じる雇用調整はサービス部門に吸収されるという形で行われてきたんじゃないかと思います。しかし、最近の雇用状況の悪化というのは、中高年、管理部門、サービス部門など、いわゆるサラリーマンを直撃しているわけです。ですから、別に産業の強い部分じゃないわけですよね。  産業の競争力という視点から見ると、幾ら労働大臣、「人は城」と非常にいいフィロソフィーをおっしゃっていただきましても、通産大臣のお立場としてはやはり調整、リストラ、そして競争力というのは大切なことではないかと思うんですね。ですから、日本としてどうしてもやらなきゃならないのは、そうした調整される雇用をどういう新しいところに吸収していくか、そういうことが大切だと思いますけれども、それは今回の財政出動、総合経済対策に反映されているんでしょうか。時間がございませんので、できるだけ短くお答えいただければと思います。
  215. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 雇用の問題は労働大臣からお答えをいただくことにしまして、時間がないと言われて随分難しいテーマを与えられますとそう簡単には答えられないわけでありますが、やはり年々産業の形態が変わってまいりますから、委員がおっしゃいますとおり、確かにリストラの動きというのは絶えずこれは企業として前向きに取り組んでいかなきゃならぬことだと思うんです。したがって、不採算部門を合理化するということもありますし、企業として、名前を出していいかどうかわかりませんが、新日本製鉄あたりがこんな仕事をなさるのかなと思うような新たな仕事までしていく、こういうことの市場メカニズムというものを前提とした企業の経営努力というものは、これは私は基本的には評価すべきだと、こういうふうに考えております。  しかし、おっしゃるとおり、そのことによって雇用の情勢がいろんな形でおかしくなったり、あるいは中小企業、下請企業等がそのことで影響を受けないようにしていくということが大事なことでありまして、今度の総合経済対策の円滑な実施を図ってまず景気回復させるということがやはり、今この景気の中に入っておるかとおっしゃいますと具体的に申し上げられませんが、まず正常な形の経済活動に持っていく。そして、たとえ経済がどういう形であろうと、今申し上げたような企業のリストラというのはこれは絶え間なく進めていかなきゃならぬことだと思います。  しかし、将来においては、私は国会の答弁で申し上げたかどうかちょっと記憶は薄れましたが、たしか先生にかつて、日本の労働市場はむだが多いですね、もう少し中高年齢で間に合う仕事は随分あるのに若い女性などを使っている、例えばデパートなんかそうですね、そういうようなところはやはり自主的にもう少し考えていくべき段階に来ておるんではないか、このように申し上げたことも記憶をいたしております。
  216. 広中和歌子

    広中和歌子君 質問を終わります。ありがとうございました。
  217. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で広中君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  218. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、長谷川清君の質疑を行います。長谷川君。
  219. 長谷川清

    長谷川清君 早速でございますが、まず総理にお伺いをしたいんです。  お伺いのテーマは、今も話題になっております、サミットがあるときには必ずアメリカから特に要請があるであろう市場開放の問題について。  今、聞くところによりますと、アメリカの方では市場開放の具体的な問題として分類別の目標数値化を求めておるようであります。さらに、これが達成されない場合には、そのときには報復措置だといったようなことまで言われております。私はこういう態度でアメリカが東京サミットに挑むという場合には、これは断固として自由貿易を守るという立場、本来のあり方からいきましてこの態度はやはり間違っていると思うんです。  そこのところは鮮明にはっきりと明確に態度を表明してもらいながら、さはさりながらアメリカは非常に今困っていますね。日本として本当に、何も向こう参入のあるいは日本におけるアメリカの参入のその額が同額であるとかどうの、そういう細かいことを言うんじゃなくて、やはり困っているときには助けようというこういう気持ちが少しはにじむような、そういう部分というものについての配慮というものはどのように考えているのか。  我が方にもいろいろと弱点があるはずでございます。市場の開放といいましても、それを阻害している、あるいはそれが不鮮明になっている談合の問題であるとか、あるいは労働時間は長かったりとか、我が方は我が方で内需主導型の拡大経済にと、そういう作業をしなきゃならない課題もございます。そういう点がアメリカに口実を与えていることも事実だと思うんです。  そういうことを兼ね合わせて総理がどのようにお考えかひとつその点をお伺いします。
  220. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的には今まさにおっしゃいましたように、日米両国というのは価値観を同じくし、しかも両方合わせますと世界のGNPの四割を占めるわけでございますから、この両国の関係というものは常に友好的なものでなければならない。それは両国のためのみならず世界の平和、世界自由貿易のために大事なことと思います。  それで、我が国貿易黒字というのはずっとかなり長いこと続いてまいりまして、日米両国ともほとんどこの十年間余りお互いにお互いの問題を出し合いながら随分真剣な努力をしてまいりました。これは、いわば社会のでき方に関係するところまで、構造協議というようなものはそういうものでございます、御承知のように。  そこまでやってまいりましたが、これはお互いにまじめにやりましたけれども、貿易のアンバランスというものは改善しない。何にもしなかったらもっと悪くなっていたであろうということは言えますけれども、しかし現実に過去に比べて改差をしていないということがございますから、アメリカとしてはやはりそれは非常にある意味でいらいらする問題である。自分自身の貿易赤字は千億ドルを割りましたので、全体としてはかなりよくなっている。しかし、日本との関係は同じでございますから、日本のシェアが大きくなっちゃった、こういう感じは理解のできるところです。  私がクリントンさんに申しましたのは、ですからお互いに随分長いこと議論努力をしてきた、でもなかなかうまくいかぬ、結果はなかなか改善しないということも事実ですから、もう一遍両方でひとつ新しい努力をしましょう、そのフレームワークというものをこれからつくりましょうと。それは日本にもアメリカ貿易赤字とか財政赤字とかいろいろ過去から申し上げていることもある、それから日本への開放ということもアメリカは言っていらっしゃる。両方とも一生懸命やって、できていることとできていないこととあるのですから、もう一遍フレームワークをひとつ両方で考えましょうということを申しました。  日本としては、今言われましたように、私が生活大国ということを申しましたのも、やっぱりもっと内需に向けるべきエネルギー、潜在力をもっともっと本当に内部に向けるべきじゃないのか、輸出ばかりしてウサギ小屋に住んでいると言われるのは残念ながら本当ではありませんかと思いますので、そこを直したい。それから、今、長谷川委員の言われましたように、生活大国の中にはやっぱり労働時間の問題も確かにあると思うのでございますので、そういうような内への内需拡大への努力、あるいは日本世界と比べてなお改めた方がいいというようないろいろな慣行等々、時間もそうでございますが、をやってまいりましょうと。  クリントンさんの方はどういうことを言ってこられますか、財政赤字、貿易赤字ということから競争力とかいろいろなお話が出てくるんだろうと思いますが、そういうものをひっくるめましたフレームワークでお互いにこれから相談をしてまいりたい、こういうふうに思っておりまして、事はいわば貿易、いわば商業のことでございますから、けんかをして商売ができるはずはございませんので、それはやっぱりお互いに話し合っていって世界の全体の貿易量をふやしていく、そういう心構えでやってまいりたいと思っております。
  221. 長谷川清

    長谷川清君 ただいまの点の各論、具体的な点で各省庁に聞きたいわけですが、時間がございませんので、建設大臣に簡単に。  建設市場の中で少しぐらいは参入の余地をというようなものは具体的にありますか、ございませんか。
  222. 中村喜四郎

    国務大臣中村喜四郎君) お答えをいたします。  我が国の建設市場は、民間も公共も含めまして内外無差別であります。しかし、こういった状況の中で、もともと建設業というのは人的にも地理的にも、現地で生産をするわけでありますので、国内的にも地域的なそうした色彩の強い業界でございますから、日本ばかりじゃなく諸外国においても、そこに外国企業が参入するというのは非常に難しいというのは先生御承知のとおりでございます。  ただ、アメリカ我が国との関係を考えてまいりますと、特例処置としてできるだけプロジェクトごとにアメリカ企業が参入できるようにということで、一九八八年から昨年の十月までの間に金額にいたしまして九百五十四億円の実績を上げているわけでありますし、また単年度単位で見ますると、一九九一年にアメリカ企業が我が国において受注した額は三百七十一億円、日本企業が同じ年に米国の公共事業として受注したのは三百六十一億円でございます。  日本アメリカの仕組みを勉強して そしてアメリカの市場の中で二十数年間にわたって積み上げてきた額がこの程度であり、アメリカの場合は四、五年でこれだけの実績を上げているわけでございますので、このことから見てもこのバランスというものはとれていると考えておりますが、しかし日米の建設レベルの中で引き続き意見を交換して、米国企業に対してもさらに習熟の努力をお願いしていきたい、そうすることによって相互の理解が深まっていく、このように考えております。
  223. 長谷川清

    長谷川清君 あっという間にもう時間がございませんから、大蔵大臣にも負担率の問題、国民の負担率は一体どういうふうにこれから推移するのかを聞きたかったわけでありますが、通産大臣の方にその前にお伺いします。  景気対策と今言う内需拡大というものを同時に効果あらしめるという視点から見た場合、今現在の景気というものが、先ほどからずっとやりとりがありますように、金はどんどんつぎ込むけれどもなかなかその効果が上がってこない。昨年の三月から五兆前倒しでやりました。八月には十兆七千億出しました。ことしには十三兆二千億つぎ込みました。年通常予算の中には大体四十三兆ぐらいの金が地方交付を含めてずっと出ております。膨大な金であります。幾らやってもなかなか出ません。  現在の企業のいわゆる業績がなかなか思わしくないし設備投資の意欲が出ないというのも、もう現在の市場には飽和状態が来ていると見ていいんじゃないでしょうか。私は、今、金をどんどんつぎ込むことも大事だと思いますし、従来型の生産工程の中で生産調整したり在庫調整をしたり、これも大事かもしれませんが、もっと新しい視点に立った新規市場の開拓というものが見えてこないわけです。これをもっとはっきりさせて、新しい技術なり新しい国民のニーズにこたえる商品の開発、こういう分野においては一体どういう動きになっているのか、これを通産大臣に聞きたいと思います。
  224. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 確かに委員指摘のように、公共事業として大変膨大なものをつぎ込んでいるわけでありますが、その割に効果が見えてこないではないかというのはいろんな要因があると思います。これはもう先生の方もお調べでございましょうから、時間もとりますので一々は差し控えますが。  ですから、本予算平成五年予算編成のときにも、この委員会、衆議院の予算委員会、いろんなところで議論がございましたように、結局最終的に、このGNPの約四分の三というのは民間設備と最終の消費なんですね。これがわいてこないということでございましょう。ですから、午前中にも御議論があって自民党の松浦先生の御質問でも申し上げましたけれども、確かに在庫調整は進んでおりますが、もう一つ生産の胎動といいますか、その息吹が出てこないというのは、これは円高もあるでしょう。従来のような景気というものがどういう形でもとに戻ってくるのかということのやっぱり様子見もあるのではないかそういうふうに考えます。  そこで、この委員会等でいろいろ議論出ましたように、結局、その消費を刺激するには減税だろう、各党皆様方はこうおっしゃるわけですね。だけれども、減税と公共事業とどちらが効果があるかというのは、先ほど大蔵大臣もおっしゃっている。私も必ずしも、効果の面からいい悪いという、つまり財源で赤字国債まで出してやるということのいい悪いということよりも、どちらが速効性があるだろうかということで公共事業というものを私どもは考えた。  ただし、今、委員からおっしゃるとおり、どう一もそれが詰まっているんじゃないでしょうかということでございますから、今度の公共事業には従来の建設中心のものではなくて、つまり土木中心のものではなくて、施設というものを考えていく。そのことに伴っていろんな機械類や設備類が必要になってくるはずです。そのことがまた輸入促進をしていく、外国に対してビジネスチャンスを与えることになるのではないだろうかということで、今回の十三兆円を超える規模の総合経済対策というものは公共事業にも新たなものを実は加えていく、そのことが、今回この補正予算が通過することによりまして、成立することによりまして、そうしたことの動きも顕著に見えてくるのではないか、私どもはこのように考えておるところでございます。
  225. 長谷川清

    長谷川清君 今、大臣がおっしゃったようなそういう視点について見えてくるということ以上に、積極的にこれは指導してそういう体制を整えていただきたい、こう願うものであります。そして、実効を上げていただきたいわけであります。  いま一つには、総理、生活大国、これは私はその言葉も否定しませんし方向は当たっていると思うんですが、特に私は、きょうは時間の関係でその中の住宅という問題、年収の五倍で豊かな住宅をというこの目標の設定の仕方に私は内容として疑問がございます。  一つには、まず年収のというこの年収は何によってとっているかといいますと、調べてみますると総務庁の貯蓄動向調査の資料を使っているようであります。これは質問をしておりますと時間がかかりますから飛ばしますけれども、大体使っている資料は平成三年の場合の世帯収入が八百二十八万円でとっていますね。四年度の場合が八百七十五万円というランクです。  もう結論的に言いますと、この数字は大卒の中でもトップクラス。大体、企業へ入りますと五年刻みで、五年、十年、十五年、二十年とA、B、Cランクを走っていくわけですね。この大体トップ、トップ、トップを走っているところの、なおかついわゆる妻が同時に働いているという、この二つの条件で初めてここに到達するわけです。これはそういう数字なんですね。  でございますから、家計調査というものもございますし、労働省の毎月勤労統計調査もございま すが、こっちの方で調べてみますると、大体単身者の場合で、単身者というよりも世帯主だけの収入でございますけれども、平均で四百五十八万八千円です、男女で。男性の場合で見てみますると、大体一番高いところで四十五歳から四十九歳、六百八十六万です、年間所得は。こういうとり方に非常に高いところの数字をとっていますから、それの五倍で買える、その条件は満たしやすいでしょうけれども、庶民感覚からするとまるでそういう所得にはなっていない。これが第一です。  第二には、広さの問題について、大体ここでとっていますのは七十平米でございますね。これはどう見ましても、いろんな民間調査では九十一平米ぐらいはありませんとこれはとても良質な、政府がここにも言っております「特色ある質の高い生活空間」、こういう状況の住宅というものをイメージした場合。あと距離の問題がございます、通勤にどのぐらいかかるかという。  今、一年間に一千三百億ドル、十数兆の円が日本にたまる、それに匹敵する生活になっていない、生活実感は豊かではないとよく言われます。物はあふれるほどございます。一番最大なのは何かといいますと、特に首都圏、人が集まっています。その中における住宅なんです。住宅のトータルを調べてみますると、沖縄から北海道まで全部トータルしますと九十四万ヘクタール、東京都と神奈川、埼玉を合わせたぐらいでしょう。これは非常に、今いみじくも総理言われたように、ウサギ小屋に住んでいる、経済だけは突出しているというこの状況だと思うんです。  どうかひとつプログラムの変更を、庶民が手の届く住宅五カ年計画というものにぜひ組みかえていただけないだろうか、この点をひとつお願いをしながらの質問にいたします。
  226. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) あの計画をつくりましたときに、サラリーマンがだれでもそういう住宅を持てると考えたわけではなくて、中堅になりましたときにそういうものを持てるようにしたいと。おっしゃいますように、まさしく確かにあのときの所得は八百万程度を考えていたと思います。それはその程度に、サラリーマンが学校卒業後ある程度いきました段階を考えておりますし、それから七十平米、そのとおりでございます。ですから、ほぼ四千万と五千万の間ぐらいを考えておって、それで都心からの通勤距離はまあ一時間半でございましょうか。ですから、一時間半という点と七十平米というところは必ずしも余り自慢のできる話ではない。しかし、それすらも実現しておりませんから、やはりそれを一つの目標にしたい、そういうふうに考えてまいりましたと思います。  かなり土地が下がってまいりましたので、その射程内には少しずつ入ってきそうでございますけれども、なお努力を必要とするという、ただいま御指摘のこともよく検討させていただきます。
  227. 長谷川清

    長谷川清君 大蔵大臣にお伺いしたいんですが、現在赤字は国債として百八十二兆と言われておりますが、今言うようにいろいろな投入をしております。これらの金は大体もう回り回って国民の御負担によるところでございます。  今後の問題といたしまして、今までの二五%ぐらいが今三二%ぐらいの負担率と聞いておりますが、これは果たしてずっとこれからそれ以外の要素も入れまして、国際的な貢献の問題もありますが、いろんな意味でどういう負担率に展開がされると予測をしているのか、これをお伺いします。
  228. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 国民負担率という問題でございますが、租税の負担率と社会保障負担率というものを一緒に考えてきておるところでございまして、行革審等でかつていろいろと議論をされたところでございます。  最初は四〇%台の前半でその二つをおさめたらどうかというお話がありました。その次には高齢化のピークに達するような時代には五〇%にならないようなと、こういうふうなお話が出ております。いずれにいたしましても、昔から四公六民とかというような言葉もございますし、余り国が税を取ってやるということは国民生活の中におきましていろいろ問題がある。やはりそういったことをひとつ頭に置いて私たちは物事を考えていかなければならない話だろうと思います。  百八十四兆円という大きな国債を抱えておる、これをどうしてやっていくかという形でありますから、財政はそういったものを解消していく財政再建の基本計画も立てまして今やっておりますが、なかなか厳しいことはもう先刻先生御承知のとおりでございまして、今一層いろんな形での財政の節減なり効率的な運用というものをさらに図っていかなければならない、こういうふうに考えているところでございます。
  229. 長谷川清

    長谷川清君 ただいまのように、もう国民の負担率はウナギ登りに上る一方でございます。そういう中にあって、今この景気対策であるとか内需拡大の策であるとかいろいろ策がとられておりますけれども、先ほども申し上げたような膨大な、諸外国から見まするとうらやましいのを通り越して恐ろしいほどの額が短期間の間にどんと出ておる今の状況の中で、これがやはり心配いたしますのは縦割りの弊害が出ないか従来型のようにそこに政治家が入り込んでいろいろと不必要なところにそういうお金が流れてしまって地域的なごく一部の満足にそれが終わってしまうようでは、確実に残ります国民の負担率ということを考えますと、そういうことは今回はぜひ避けなければならぬ、このように思うのでございます。  そういう意味においては、縦割りの弊害、お金は幾らやるにしても全部省庁に分かれて金がおりますから、それが実行箇所において、地方自治体においては一つの文化設備をつくる、会館をつくる場合でもいろんな金によってそれがおりてこなければできないという状況になりますから、スピードも落ちるでしょうし、途中においておかしげに流れてしまう、こういう点についてどうか高い次元において、これだけの膨大なお金をつぎ込んだ以上は、それを一〇〇%は無理でしょうけれども、今の何十分の一にしかならないほどの、何十分の一程度しか効果があらわれないようなそういう状況をぜひひとつ、鬼がわらのような顔をして頑張ってぜひこれだけはひとつ国民に、次の人たちに真っ正面から顔が向けられるように、政治改革をまず先取りしたような感じでそういう点はぜひひとつ実効を上げられるように、総理にもその決意をお願いしたいと思うんです。大蔵大臣。
  230. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 長谷川委員指摘のように、我々が特にこれから高齢化社会を迎えるに当たりましてだんだんだんだん負担が、今のところでもまた負担をしていけばますますそのときには負担がかさむわけでありますから、子や孫の世代に我々が今生きているところのお互いの政治家があのときにあんなことをしてくれたから大変だと決して言われないように頑張っていかなければならない。私はそうだと思います。やはり財政というものはそれなりに厳しい規律を持ってやっていくということが私は必要だと思います。  御指摘のように、各省それぞれ積み上げて金を持ってくるという話でありますが、やはり財政でございますから各省の予算をいろいろ査定をし、また概算要求基準などというものをつくりまして、やはり財政の効率的な運用また効率的な計画づくりというものに一生懸命これからも努めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  231. 長谷川清

    長谷川清君 その辺を総理にもひとつ決意をお願いしたいと思います。
  232. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、大蔵大臣の言われましたようなことで私もやってまいりたいと思います。政治改革につきましても同じでございます。
  233. 長谷川清

    長谷川清君 もう時間もなくなりましたが、先ほど通産大臣の方にもお願いをしましたけれども、生活の質をずっと大幅にダイナミックに変えていくためには新しい市場開拓、そういう点につきましては、光ファイバーのようなものが入りま すとこれはもう全国に、動脈から静脈に至るまでこれが入ってまいりますとあらゆる創意工夫が、そこに新しい製品の開発が可能になってくると思うんです。そういったような点について、これまた本気にそれぞれの省庁が手を組んで実効を上げていただきたい、このように最後にお願いをしておきたいと思うんですが、決意をお願いいたします。
  234. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) まさに通商産業省といたしましては将来のやはり企業を見据えた考え方で支援措置をしていかなきゃならぬと考えております。  けさ実は科学技術に関する会合がございましたけれども、そうした中でも、将来これから予想され得る科学技術としてどんなことをやっていくだろうかと。健康で安心な生活、総理のおっしゃっている生活大国を質的に高めていくには何だろうと。もちろん先ほどから議論がございました住宅等もございましょう、あるいは交通のインフラでありますとか今おっしゃったような情報のインフラもございましょうが、例えばそういう科学者の中の話の中には、フロン代替品というものの実用化がいつごろできるだろうか、あるいは電気自動車というものはいつごろ普及されるだろうかあるいはエイズでございますとかがん予防薬というものはどうできるだろうかあるいは自動通訳電話でありますとかそうした新たなものがどういう開発をされていくだろうか、こんなテーマも出ておりました。まさにそうしたことが産業面につながっていくことだろうと思います。  そういう意味では、科学技術に対する基礎研究を含めて思い切ったやはり予算措置もしていくことが将来我が国が引き続きこうした産業社会の中に大きな優位性を持っていけることだろうというふうに私どもは考えて、まさに委員の御指摘どおり、私どもとしては将来のいわゆる需要動向そして経済の将来性について十分積極果敢な政策を進めていきたい、このように考えております。
  235. 長谷川清

    長谷川清君 終わります。
  236. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で長谷川君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  237. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、上田耕一郎君の質疑を行います。上田君。
  238. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、公共事業とゼネコンのやみ献金の問題を取り上げます。時間もございませんので端的にお伺いしますので、端的にお答え願いたいと思います。  このゼネコンの献金問題、報道で非常に驚くべきことが多いんですね。  まず第一に、その巨額さです。公共事業というのは国、公団、地方自治体合わせると三十兆円弱で、国と公団などの中小企業発注率平均三四%ですから、六、七割が大手だとすると約二十兆円でしょう。それに対して一%から三%献金したという証言があるんですね。全部でないにしても、相当な額になる。  二番目に、それが自民党を支える最大の財源になっている疑惑があります。こういう報道がある。ゼネコンの献金先、金丸、閣僚経験者、建設族議員と続き、総数は自民党国会議員の計三百八十一人の半数に当たる約百九十人。報道ですよ。  三番目に、公共事業ですから税金、財政投融資などやっぱり国の資金でしょう。それがゼネコンからもし自民党に行っているとすると、やっぱり税金のピンはねになるんですね。相当、相当どころか極めて重大な問題だと思う。  法務省にお伺いします。  法務省はゼネコン十八社の家宅捜査、事情聴取を行われて、献金実態をかなりつかんだはずなんですね。大手ゼネコンの場合盆暮れ金丸に一千万円ずつ、年に二千万円、そのほか受注額の一%から三%常識だったというんですけれども、事情聴取などの結果、こういう実態はあったんでしょうか。
  239. 濱邦久

    政府委員(濱邦久君) お答えいたします。  委員が今お尋ねになっておられるのは、要するに、金丸前議員らの所得税法違反事件の捜査の過程でどういう事実を把握したかということについてのお尋ねだと思うわけでございます。  金丸前議員らの所得税法違反事件に関しまして検察当局が捜査した結果の報告につきましては、先般当予算委員会において御報告したとおりでございます。それ以上のことにつきましては、国会の場でお答えを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。
  240. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いつもこういうことになるんですけれども、法律違反の疑惑もやっぱりあると思うんですね。提供した側のゼネコンが政治資金規正法による献金枠を超えた場合は規正法違反になりますし、これは前田建設工業の前田社長、六千万円の枠を数千万円超えて約十人に献金したと、そう述べているんですね。それから、当該選挙で献金していれば公選法違反になりますね。受けた政治家もやみ処理していた場合には同じく規正法違反、所得税法違反の疑惑も生じます。  検察、厳正に捜査して、必要な場合、事実が確認できたら起訴する、当然でしょうね。
  241. 濱邦久

    政府委員(濱邦久君) 委員からお尋ねを受けるまでもなく、検察当局におきましては、一般論としてお答え申し上げるわけでございますけれども、犯罪の嫌疑が認められる事実がありますれば適正に対処するものというふうに考えているわけでございます。
  242. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今、私建設委員をやっているんですけれども、三%、田中角栄以来だというんですけれども、驚くべき額で、予定価格の中で適正利潤として入れられるのは三%だという話もあるんですよ。三%は消費税と同じですから、それが献金に回っていったら大変なことになる。  それで、どうやってこれだけの額を生み出すのかということでいろいろ問題があるわけで、私かなり調べたんです。今のところ、やみ献金の原資をひねり出す方法に三つある。一つは午前中も問題になった使途不明金、二つ目は架空会社を使って架空の口座と工事発注書をつくるというやり方、三つ目は下請会社に水増し発注して差額をプールしてキックバックさせる、この方法だというんですね。  使途不明金について首相にお伺いします。  首相は、五月二十一日の衆議院の予算委員会で、使途不明金の六、七割が建設会社、これは異常だと、児玉委員質問に対して共感するところが多いと。これ珍しいですよね。そう言われて、租税とは別のやり方があると思うとおっしゃられたんですが、租税とは別にこの使途不明金問題で具体的にはどういう方法を検討していらっしゃいますか。
  243. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういうお尋ねがございまして、確かに公共事業というのは納税者の金でするものでございますから、その公共事業の請負、施行に当たってそういうことがあるということはこれは見逃せないことであると。国税庁の調査によるといわゆる法人の使途不明金のうち六割とか七割とかいうのがこれに当たるというんですから、それは見逃せないことであると。そして、ただ使途不明金で処理をするだけか国税庁の方はということでございますから、それはやはり国税庁の立場、徴税の立場からいえば、一番のペナルティーは、使ったかもしれないがそれは経費には認めませんよといって否認をしてしまう、これが税というものの与えられた職責からいえばぎりぎりでございましょうと。ですから、こういう出来事をしかしやっぱり追及するとすれば、それは税ということでは無理かもしれない。  ただ、私があのとき申し上げたか申し上げなかったかですが、これらの建設会社はみんな免許事業で役所の監督下にあるわけでございますから、そういうことをやっている経理は少なくとも適当だとは思えない、そのところは監督官庁としては当然真相の究明をすべきではないかと思いますと、こういう趣旨のことを私は申しました。  なお、仮に不正があるということになれば、これはまたおのおの別の役所がございますから、それを申したわけではございませんけれども、そこ に至ります前でも、そのような経理は少なくとも正常な経理ではないということは監督官庁が関心を持ってしかるべきだと、こう申し上げた。またそう思っております。
  244. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 中村建設相、建設省はゼネコン三十社にこの使途不明金問題を中心にヒアリングを始めたというんですけれども、首相の今言われる監督官庁として、この問題をどういう方法で考えておられますか。
  245. 中村喜四郎

    国務大臣中村喜四郎君) お答えをいたします。  このヒアリングにつきましては、今月から大手ゼネコン業者に対してのヒアリングを行っていきたいと考えております。  その中身は、企業活動の実態、会計処理等の実態、下請契約等の実態、環境フォロー等の遵守のための活動方針、こういったことを中心としてヒアリングを行っていきたいと考えておりますが、必要に応じて建設業団体を通じて適正な経理処理等について指導していきたいと、このように考えております。  ただ、使途不明金の中で、これは具体的にこれから調査してまいらなければわかりませんが、ある大手の建設会社の場合ですと、多いときに全国に大体二千カ所ぐらいの工事現場を持っている、こういったことがございますので、そこで起こってくるいろいろの工事迷惑あるいは騒音、こういったことの中で会計的に領収書をもらえない、こういったものが使途不明金の中に含まれている要素が大変多い、こういうようなことも聞いておりますので、こういったことも含めまして実態を把握して団体に対して指導をしていきたいと、このように考えております。
  246. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ひとつ厳正にやっていただきたい。  それで、一体どこからこれだけ莫大な金が出るのかというので、私いろいろ調査をして聞きました。驚くべき実態の証言を得ました。普通土木工事では、ゼネコンは四%の経常利益を上げるためにはその工事で利益率八%要るというのですよ。ところが、大手のゼネコンは大体その二倍の一五%を標準の利益率としてやっているというのです。ところが、今大問題になっている臨海副都心、あそこの共同溝工事である大手ゼネコンは何と利益率五〇%近く上げたというのですよ。これは驚きましたね。  太田薫元総評議長は私にもよく話されていた。池田内閣時代に臨時行政調査会の委員だった。同じ委員だった花井忠元検事総長は、大きな工事というのは大体半値でできるよと、検察庁はそう見ていると、そう言っていたと言いました。まあこれは極端な例でも、私が調べた例でも実際に出たんだから、四十数%、これはなかなか、なるほど大変なものだと思ったんです。  何でこんなに大もうけができるかというので一つ問題になったのは、建設省の現場の危機的実態です。建設省はこの二十四年間に一万一千名定員削減、仕事はふえるのでどんどん業務委託をやっている。全建設労働組合の資料だと九一年十月の調査でアルバイト、委託労働者が全国で八千三百四十一人、職員比で三五・七%、三分の一以上アルバイトと業務委託だと。ですから、現場に行ったことがないというのです。建設省に入ったら設計ができるかと思ったら、設計させてもらえない、全部建設コンサルタントに基本設計、詳細設計、それが上がってきて積算を机の上でやっているだけだというのですよ。  私、工事事務所の職員に何人か会いましたけれども、現場には一度も行ったことがないというのですから。それで建設コンサルタントの受注量がどんどんふえて、六年間に二けたふえました。何と一兆円産業に近づこうとしている。その建設コンサルタントの中にダミコンというのがあるんですと初めて聞いた。ゼネコンのダミーのコンサルタント。それも入札でやるんですよ。要するにもう基本設計、詳細設計のところからどのゼネコンがとるかというのがかなり決まっているというんです。  私は、こういう現場を是正することから始めないとなかなか本当に進まない、問題は非常に大きいと思う。建設委員会では昨年各党一致で建設省の増員請願を決めたんですよ。こういう現場は建設大臣よく御存じでしょう。この人員の大幅増員を初め、ここを直さないと公共事業をめぐる不正問題というのはなかなか是正できないと思うんですが、いかがでしょうか。
  247. 中村喜四郎

    国務大臣中村喜四郎君) 御指摘をいただきましたように、行革の対象として建設省関係職員が大幅に削減されてきたということは先生御指摘のとおりでございます。  一方、景気対策として公共事業の果たしていく役割が大きく、予算も非常に大きく伸びているわけでありますので、その中で建設省の職員が景気対策の担い手として極めて過酷な労働状況の中で懸命に頑張っているということについては、いろいろの野党の先生方からも御指摘をいただいているわけでありますが、現体制の中で十分にその職務を遂行している、私はこのように考えております。  御指摘をいただきましたように積算そのものにいろいろの問題があるんではなかろうか、こういったことも再三にわたって委員会で御指摘をいただいてまいりましたので、六月四日の日に、会計検査院の兄事務総長秋本さんを委員長といたしまして、学者の方四人、そしてマスコミ関係の方二人、民間の方二人、こういった方々に基本的に積算の問題について客観的な意見をいただこうということで建設省の中に委員会を設けましたので、こういった中から積算体系の客観性、透明性、公正性を確保できるような検討結果が出てくるものである、このように考えておりますので、御指摘をいただいたような問題はないと現在では認識しております。
  248. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは首相も大蔵大臣も、建設省の現場のこういう実態、公共工事やっているんですから、本当に大変なんですから、これは共産党、社会党だけでなくて自民党の建設省出身の方々も同じ心配を持っているんですよ。だから建設委員会ではその請願が満場一致で通っているんですから、本当に考えてください。  今、積算の問題が言われました。具体的に私は、これは準公共工事なので東京湾横断道路の問題を取り上げたい。  資料を配付いたしました。  公取の方に見ていただきたいんですが、東京湾横断道路というのは事業費が最初一兆千五百億円だったのに今は一兆五千億にはね上がっているんですよ。非常にずさんなんですね。ここの二枚目の表はこれまで終わった工事十一件の当初落札額と変更額、増加額、増加率のデータ。落札額は十一件で千四百六十七億だったのが変更して千七百四十七億、二百八十億円ふえちゃったんですよ。これは計画がずさんだからだというんです。あるゼネコンの担当者は設計の七割をやり直したというんですから。  見てごらんなさい、木更津人工島東工事、下の方、これは清水建設、最大手ですね。増加率五八・八%、六割ふえているんですよ。予定価格なんて、これ意味ないでしょう。やってみたら六割ふえたという。これは本当にいかなることが行われているかという実例です。  さて、一枚目の表を見ていただきたい。それは落札の表です。それを私どもの方で島とトンネルに合わせて全部つくった表です。これを見ますと、実に見事なものです。トンネル工事は大手ゼネコン中心に八つのジョイントベンチャーが見事に各工区を割り振っている。各ジョイントベンチャーの代表会社は接続する人工島、浮き島、ちゃんととっているんですよね。島をとるとその隣のトンネルはそこがとるんですよ。これはもう一目瞭然ですよ。これは神様、天の声がなければこうはいかないということになるんですね。  それで、私は公取にお聞きしたいんですが、昨年の土曜会事件で勧告を出されて、勧告の徹底をゼネコン各社に通知したはずですね。ところが、こういう談合の部門がゼネコンで依然として残っ ている。ここにあるのは一番大手の清水建設の電話帳です。営業本部に横尾部というのがあるんですよ。横尾部長の名前をとって横尾部、これは談合担当なんですよ。電話帳に載っているんだから、横尾部というのが。  こういうことをやっているんだが、一体そういうことの中で東京湾横断道路のこういう表をごらんになって、これじゃやっぱり談合の疑惑があるとお考えになりませんか。調査する決意をお聞きしたいと思います。
  249. 小粥正巳

    政府委員(小粥正巳君) お答えいたします。  ただいま御質問にございました公共工事におけるいわゆる入札談合につきましては、当委員会でもたびたびお答え申し上げているところでございますけれども、これは申すまでもなく競争入札制度の基本を揺るがす行為でありまして、競争の実質的制限を禁止している独占禁止法に明らかに違反する行為でありますから、公正取引委員会といたしましては、従来からこの種の行為に対しては、法に照らして厳正な対応をしてまいったところでございます。  今後ともその方針にはいささかも変わりはございません。したがいまして、私どもはただいま御指摘の点を含めまして、この種の問題についての情報収集には鋭意努力をしているところでございます。
  250. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この一枚目の表を見ていただきたいんですけれども、川崎トンネル側、ここに飛島建設というのが入っている。これは飛島が代表幹事のジョイントベンチャーがとっている。だから、業界は大騒ぎになったんですね。なぜなら、飛島は不動産会社ナナトミの不良融資で三月期決算で四百四十二億の当期損失を計上、長短借入金五千億を超えたと、赤字決算だったんですね。だから、建設省のルールでも赤字決算、こういう赤字会社、これは指名しないということになっている。ところが、予定されていたと言われる佐藤工業を押しのけて飛島がとったんですよ、ここを。大騒ぎになった。  それで、真相を植良名誉会長が証言を四月末にされた。副社長を金丸のところに派遣して、指名へ入れてくれと頼んだというんですよ。それで、金丸が動いて、飛島が入って佐藤工業は飛ばされたんですよ。佐藤もほかのところへ結局入りましたけれども。入札約二百六十六億の工区を落札。飛島の取り分は百一億円なんです。新聞報道では、一般論だが工作が成功したら受注額の一%を届けるのがこの世界のしきたりだっていうんです。そうすると、飛島から金丸のところに、一%だといったって一億円ですな、謝礼が届いた疑惑も濃い。生原メモには、飛島の副社長が九二年、四回訪問してきたと、記録もあると報道されているんです。  もう一つ、報道では、この東京湾横断道路で五百トンの砂利の採取、これを千葉の館山からとることになって、その採取の認可をとるために金丸が便宜を図った。関係者の証言として、依頼した際に金丸被告側からは裏献金の方法として砂利やセメント、石材などの資材の納入額を水増しして裏金をつくるよう具体的指示があったと、そういう証言まで報道されているんですね。ですから東京湾横断道路には、談合の大きな明白な疑惑とともに、やっぱり金丸のこういう介入とやみ献金の疑惑もあると私は思うんですが、法務省、関心を持って調査する気があるかどうか答えていただきたいと思います。
  251. 濱邦久

    政府委員(濱邦久君) 改めて申し上げるまでもございませんけれども、具体的事案におきまして犯罪が成立するかどうかというようなことは、これは捜査機関が法律に定められた手続にのっとって収集した証拠によりまして事実を確定した上で個別に判断することでございます。したがって、法務当局からその点についてお答えを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございます。  ただ、一般論としてお答えを申し上げますれば、委員の御指摘をまつまでもなく、いかなる事案におきましても刑事事件として取り上げるものがありますれば、検察当局を含めまして捜査機関において適切に対処するであろうということは申し上げられると思うわけでございます。
  252. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 検察当局は七千件の資料を押収したというんですから、時間もかかるでしょうけれども、綿密な分析と厳正な捜査を国民とともに要望したいと思います。  最後に、これも新聞報道なんですが、驚くべき記事が出ているんですね。これは朝日の三月二十八日。   建設相経験者によると、金丸前副総裁らの「建設業界支配」は次のような構造になっている。  ①道路、河川改修、ダムなど毎年の建設予算の大まかな配分率は金丸前副総裁と竹下氏が建設省事務当局と協議して決める  ②建設予算をどこに使うかを決める「箇所付け」も、二人と田中・竹下派幹部の「建設族」議員が了承したあと各議員に公表される  ③工事発注では指名に加わろうとする業者の陳情を受け付ける  ④業者選定では「天の声」の役割を果たす――。  これは建設相経験者が話している。ほぼこういうことを山崎拓前建設相もお認めになった、こういうことになっているんですね。ところが、  渡辺派の建設相経験者が「利権のカラクリは  分かったのだが、あまりにも壁が厚く、手を出  すまでにはいかなかった」と。  後藤田さん笑っておられるけれども、なるほどそうだろうと思いますよ。中村さんは建設大臣になって、こういう構造を少しはさわられましたか。
  253. 中村喜四郎

    国務大臣中村喜四郎君) お答えをいたします。  三月二十八日の新聞報道につきましては、質問が出ましたので確認をいたしましたが、建設省といたしましては公共事業の工事につきましては緊急性、重要性というものを厳正に前提といたしまして工事というものを決定しておりますので、事務当局が全く関知しない中で他の力がその事業の配分あるいは方向を決めてしまうということは私の知っている限り全くないと、このように考えております。
  254. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう時間が参りました。  先ほど言った清水建設の横尾部でつくったんでしょうね。新聞報道では、清水建設献金リスト五十七人、宮澤さんもちゃんとAクラスに入っておられるんですが、こういう実態を皆さん否定はされるけれども、そういう構造があるんですよ。そこに手をつけなければどうにもならぬですよ。そんな選挙区いじりじゃなくて、国民の七割は金権腐敗を根絶することが今の政治改革の第一の課題だということを世論調査で願っている。私は、この問題は本当に企業・団体献金の禁止をやらなければ根絶できないと思うんですけれども、最後に首相にこういう問題についてのお考えと決意をお伺いします。
  255. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたように、不正があるないはともかくといたしまして、使途不明金がそれだけ多いという経理は正常と思えませんので、やはり監督官庁においてこの実態を調査されることが必要であると思います。不正事件がございましたときは、これはこれなりのおのおのの役所がございますので、当然厳正に対処されるべきものと思います。  なお、私のそのAクラスとかいうことは全くそういう事実がございませんので、申し上げておきます。
  256. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  257. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で上田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  258. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 一次に、萩野浩基君の質疑を行います。萩野君。
  259. 萩野浩基

    萩野浩基君 今回のこの集中審議は、景気経済問題でありますが、今、特に百二十六回のこの国会国民が期待しておりますのは、何といたしましても景気とそして政治改革、これが重要であ りますので、景気経済の問題に入る前に政治改革について少しお尋ねいたしたいと思います。  政治改革をやる今が戦後最大のチャンスだろう、この機会を逃したらできないのではないか。もう考えてみますときょう七日でございますから、期限等も考えますと、私いろんなところへ行きますと、一体どうなるのか、どうなるのかと問われております。実はこれごく最近のものなのですが。ほんの一部でございます。大学で政治学を学んでおる若い学生諸君のアンケートをとってみたわけなんですが、怒りにも似たものもあります。そしてまた、熱い声と、そして何としても改革をしてほしいという期待を持っております。もしよかったらお見せいたしますけれども。  これは議員一人一人に課せられておりますし、私もその中の一人といたしまして、また特に総理におかれましては政党の党首でもございます。また、この議院内閣制におかれては総理でございますので、大変長時間にわたって遠藤委員長総理も、また大蔵大臣もお疲れと思いますが、ひとつ御協力のほどよろしくお願いいたします。もし今国会で何もできないということになったら一体どうなるか。きょうの私の質問は非常にわかりやすく質問いたしたいと思います。  若者の特に怒りというものは、怒りを超えてやがてこれは絶望になってしまう、そういう危機感を私はとても感じております。よく言われておりますポリティカルアパシーというか無関心層が出てくる。これは先般の参議院通常選挙のあの投票率を見れば、まさに危機であるということは皆さん理解いただけるだろうと思います。  憲法におきましては最も理想と言われておりましたワイマール憲法におきましても、いつか来た道というわけではありませんけれども、あのワイマール憲法のもとでファシズムが起こりましたし、幾ら立派な憲法でありましても、この民主主義を我々が本当に守っていかなければこれはつぶれてしまうだろう、そのように私は考えております。  日本の政治の腐敗というのは、これは日本で言われておりますが、実は私、この一月にウェスト・イースト・センターがありますハワイ大学に行きました。別の集中講義で行ったんですが、突如、リフォーム・オブ・ポリティックス・イン・コンテンポラリー・ジャパンということで講演をしてくれということになった。というのは、今の日本はこの政治腐敗の問題を、これは国際的な一つの恥でもあるということをお互いに我々は認識しなければならないと私は思ったのであります。特に、先ほど来申し上げておりますあすを担う若者たち、また国民の声ある声というものに我々は目を向けることにおいて政治の信頼を取り戻して行かなきゃならないと思います。  特に私、いろんな人の意見をまとめますと、とにかく政治をクリーンにしてくれと、政治にはお金がかかることはわかっていますとみんな言います。だけど、それはインプットとアウトプット、特にインプットの方を明白にするということ。それから第二には、違反が起こったら、今の日本の法律におきましても百日裁判ということが言われております。それを本当にやってくれればいいという声もあります。そしてまた、違反を犯した者は二度と立候補できないようなものも織り込んだらどうか、これだけでもクリーンになるんではないか何としてもそういうことは今国会で逃すようなことはしないでほしいということを私は言われております。  私がここで言うまでもなく、御案内のとおりに、イギリスの一八八〇年代が最も政治が腐敗しておりました。これはよくいろんなところで誤解されておりますが、そのとき実は小選挙区にほとんどなっているんですね。小選挙区の中でそういつ腐敗も起こっておるわけです。  政治改革をという声は、ロッキード、リクルート、共和、佐川、そして脱税問題と、こういうようなところから出てきたんですけれども、この政治腐敗防止策と選挙制度改革というものがともすると一緒になってしまいまして、国民の関心事が少しよそにいってしまった、こういうような声を私は特に最近いよいよ会期が迫ってきましたので耳にするわけです。中にはこういうひどいことを言う人もいます。いろんな意見が出ているが、やはり党利、派の利益、それから私利のそういうような改革ではないかというような非常に厳しい声も聞きます。  私、代表質問でも言いましたけれども、政治は熱いときに打たなければ改革はできない、まさにそういう大事なときではないかと私は思います。私は非常にうれしく思ったんですが、今回の国会のときにも総理は、政治改革は今国会で実現する、不退転の決意を持ってやりますと。私は今でもその言葉を信じておりますし、政治はやはりどこまでも結果でございます。だから、この結果と責任というものを、何も総理だけを私は責めるわけじゃない、我々お互いにこれを考えていかなければならないと思っております。  総理は、数日前ですか、今混沌としておりますカンボジアのシアヌークさんに、とにかく指導力を発揮してまとめてくださいといったしか親書を送られたとニュースで見ましたけれども、私は今の我々のこの混沌とした政治の中で、ぜひとも総理、指導力を発揮していただきまして、総理のその率直な、今のこの状況というものを認識して、具体的な考えを示していただきたいと、そのように思っております。  ちょっと長くなりましたけれども、総理ひとつよろしくお願いします。
  260. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政治に対する国民の不信感がこれほどひどくなりました。かつて経験したことのない事態でありますから、この国会におきまして総合的な政治改革をいたしませんと我が国の民主主義というものは非常に危殆に陥る。先ほど一八八〇年代のイギリスのことをお話しになられましたが、まさにそれにも比すべき事態であるというふうに考えます。  衆議院の特別委員会におきまして、自由民主党は自由民主党の案を提出いたしております。各党の出された案もありましていろいろ御審議をいただいておるところでありますので、そのような認識のもとに各党ともぜひこの国会で政治改革をなし遂げるように、自由民主党はもちろんでありますが、御努力をぜひお願いいたしたい。私どもは自由民主党の案が最善と思っておりますけれども、各党もなお御自分の案が最善だというようなお考えももちろん当然ですがおありになって、関係の理事等々の中で非公式にはいろいろ御検討があっておるように伺っておりますけれども、ぜひともこの国会で成立をさせていただきたいと念願をいたしております。
  261. 萩野浩基

    萩野浩基君 総理、ひとつよろしくお願いします。  だけれども、なかなか予定どおりにはいかないということもあります。そこで、こういうことを言った人はいないかと思いますが、もしこの改革が進まないときに、国民がこれだけ改革を期待しておるので私は憲法の九十六条の第一項、これは御案内のとおりに、憲法改正のことについてということで大体そのように理解されておりますが、今、憲法学者、法律学者の中ではこの九十六条の第一項というものは何も憲法改正のみではない、レファレンダム、国民投票的なある意味では国会機能の補完作用、こういうような機能も持たせることができないことはないという学説も出ております。  方向性が見えないとき、重大な方向を決するときには、主権在民でございますから、レファレンダム的なものを取り入れて思い切って政治にインパクトを与え、また新たな方向性というようなものも考えてみたらどうかと総理に提言しておきますから、これはひとつ御研究を願いたい。まあ今何かお考えがあればコメントをいただければと思います。いろいろ学説で、そういう国会機能の補完作用としてそういうのを解釈するというのもできるんだというのがあるんです。
  262. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 憲法第九十六条第一項とおっしゃいましたか。
  263. 萩野浩基

    萩野浩基君 はい、「改正」のところです。
  264. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ちょっとよくわかりませんので、研究させていただきます。
  265. 萩野浩基

    萩野浩基君 これから開かれた国会、そして主権在民との密着したものというので、将来においてこれは考究に値するのではないかと思います。  時間がもうなくなりましたが、景気の問題についてお尋ねいたします。  先日一ドルが一時期百六円までまいりまして、この後またどのように高進されるか危惧するところでございます。これまでの輸出企業というものは為替予約、先物ドル売りと申しますか、こういうもののめどになる水準というものが今まで大体百二十円から百十円と、このように切り下げてまいりましたけれども、現実にはそれを上回る円高の進行というものが今進んでいると思われます。  そして、円相場の反落の期待というものを我々は最もそれが裏切られていくと。七月から八月の中の為替の予約というのを見てみますと、数字は小さく言いませんけれども、例年のほぼ半分しか進行していないと。この予約のおくれというものは企業の利益にも大きく影響してきまして、特に輸出産業としての中小企業というものの倒産というものにつながってくると思います。  例えば電機などの輸出産業が今非常に苦境のところに立っておる。私の宮城においてもそういうところが出てきております。この主要輸出企業の九四年三月期の想定円相場というのが百十円から百十五円が中心でありました。さきの決算発表で明らかにしたばかりの収益計画は早くも狂い始めておりまして、これは企業の合理化だけではもう対処できないと、こういう苦境に立っておるのが現状であります。  そうしたところで、今後の想定円相場をどのように認識し、またそれに対応していったらいいのか。それから、今の状況ですと中小企業の倒産というものをこれ以上ふやすわけにはいきませんので、それに対する具体的な対策というようなものがあればひとつお示しいただきたいと思います。
  266. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 今お話がございましたので、お答えをさせていただきます。  為替相場が幾らになったならばいいのか、百十円とか十五円とかというお話がございましたが、今の為替相場というのはまさに市場で動いているわけでございまして、いろんな市場の中に思惑がありましたり、またこの二月、三月ぐらいからアメリカの政府高官のいろんな話がありましたり、いろんな形で動いてきております。市場では、いわば輸出と輸入との為替あるいは貿易外の受取為替と支払い為替がマッチングをしてやるというだけではなくて、市場でやりまして、それの五十倍とか七十倍ぐらいの金が動いているところで市場が形成されているわけでございます。そうしたところでございますから、ここに対して我々がどのぐらいになるというようなことは言わない、こういうことに大体なっておりますので、これは先生せっかく御承知のことでございますけれども改めて申し上げておきたいと思います。  どんなものがよろしいかといえば、再三申し上げていますけれども、ファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいということだろう、こう思っているところです。  それからもう一つは、輸出企業に先物為替がない、こういうことでございますが、私は、こういうふうな状況になったときには先物為替を組むということもなかなか難しいことになってくるというのも実態だろう、こう思っておるところでございまして、先物為替はやっぱり手控えるというのが普通の形じゃないかなと思うところでございます。
  267. 萩野浩基

    萩野浩基君 同僚の委員からも質問がありましたが、まだもうちょっと時間がありますので、私も円高差益の還元について一つ質問させていただきたいと思います。  現在は大不況と言われておりますけれども、少し曙光も見えた感もないことはありません。しかし、まだ現実には苦しい状況に立たされております。  私も今から三年半前に大学で一ドルが百円になることも考えなきゃならないというようなことを言ってみんなに笑われたんですが、もう五円、六円というところに来ました。ここで例えば一ドル百円に迫るようなことになれば、現状ですと不況型の倒産がふえできますし、それに並行して失業というものが出てまいります。  私はここで申し上げたいのは、経常収支の黒字がかつてない規模になっておる、これは史上最大であるとも言われております。これが日米の間における、特にアメリカから日本に対する要望というもので出てきております。それにしても、円高傾向というものは九〇年代に入ってからずっと続いておるわけですから、今は強い円、高い円、それによりまして物価を安定させる、この物価の安定というのはある程度効力は出ております。だけど、いかんせんその恩恵をいかに最大限に我々の生活とかいろんなところに生かしてくるか、これが大事だろうと思うんです。円高効果というものは総じて霧の中に隠れがちであって、円レート変動で大きな影響を受ける電力とか都市ガスだとか公益事業、それからまた円高で輸入原料の値下がりというものに関係するものがあります。  私は、ここで強い円を単に外的に外から見るんではなくて、国民の実質所得をふやし、もって内需拡大へと切りかえていく経済構造の発想の転換、構造の転換というようなものがこれからの未来において大事ではないか、これが経済における一つ見通しの大事なキーポイントになるんではないか、そのように考えております。ひとつ御答弁をお願いいたします。
  268. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) この問題は、経済企画庁の方からお答えした方があるいは適当なのかもしれませんが、申しわけありませんが、私から答弁をさせていただきます。  お話しのように、円高になりましたならば、輸入の差益は出てくるわけでございますしいろんな形でそれが国内経済の中に浸透していくような形にする、外国で買う物の値段が安くなるわけでありますから原材料であるとか一般消費財であるとかそういったものが安くなってくる、これは日本の国内に対しまして需要効果をもたらしますし、また物価安定という形には非常なプラスの影響をもたらすものだろうと思うんです。今、内需拡大という形で我が国の方で経済政策を遂行しておりますが、こうした形で物が安くなれば当然に消費もふえてくる、したがってそこに貿易収支の改善というようなプラスの面も私は出てくるんじゃないかな、こう思っているところであります。  輸出の方に対しましては、中小企業その他に対しまして先ほど来先生からお話がありましたように、輸出の方の採算が非常に難しくなる云々ということがありますが、特に中小企業に対する影響がありますから、今回の経済対策の中でも中小企業施策につきましてはいろんなことをやってきている。投資減税その他のことをやりましたり、中小企業金融公庫に対する融資等も積極的にやろう、こんな形でやっているところでありまして、そういったものを踏まえたこれからの日本の内需拡大日本経済運営を図っていかなければならない、こういうふうに私は考えているところでございます。
  269. 萩野浩基

    萩野浩基君 まあ後手後手にならないようにひとつよろしくお願いいたします。  まだ三分残っておりますね。じゃ、サミットもいよいよ近づいてまいりましたので、ちょっとサミットについても触れておきたいと思います。  最近、金融市場の開放をめぐりまして政府間交渉が非常に活発になってまいりました。つまり、日米金融協議で大蔵省と米財務省との間におきまして、日本の特に株式先物に関する専門会議ですか、こういうことを開くということで一致したようであります。その内容は、アメリカの対日要 求、年金の運用とか社債引き受けとか保険の販売でしたか、そういうようなことが言われておると思います。そこで日本の対米要求がいろんな面で出てきておりますが、これは一体具体的にはどういうものかということを私自身考えさせられております。また、大蔵省はアメリカ通商代表部のUSTRとも日米保険協議を六月の何日ですかに開くことで調整中と聞いております。これは七月の先進国首脳会議すなわちサミットまでに何か一定のものを出したいという意図なんでございましょうか。外国の新聞なんかを見ますとその辺がいろいろ何か出ておるので、私はそういう疑問を投げかけたわけであります。  そこで、日米金融協議で成果が上がればその成果を新ラウンドの推進として公約するようなものになるのかその場になってみないといろんな問題が起こってくると思いますけれども、この際、東京サミットにおける我が国の提案、主張、そういうものに対して、総理、最後に一言お願いいたします。
  270. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今のお話は、大体筋としては物と金融サービスのアクセスをもっと進めようという話は本来ウルグアイ・ラウンドの方の話でございますけれども、たまたま金融関連については日米のバイの協議を進める方が効率的だというふうに両国の合意がありまして、そのバイの方の話を進めておいて、そしてそれをウルグアイ・ラウンドのマルチに広げていこう、大体そういう発想のようでございます。そういう協議をぼつぼつ日米間で、大蔵省と財務省との間で始めておるように承知しております。
  271. 萩野浩基

    萩野浩基君 質問を終わります。
  272. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で萩野君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  273. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、喜屋武眞榮君の質疑を行います。喜屋武君。
  274. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今国会国民の政治不信を浄化するという意図でスタートしました。間違いがないと思っております。ところが、事実は、日がたつにつれてますます国民の政治不信はエスカレートし、今や政治家不信にまでエスカレートしておることを私は聞いております。これも間違いのないことだと私思っております。  そのようにして、日がたつにつれてこの国会は政治不信からエスカレートして政治家不信に高まりつつあるこのごろ、総理はいかが受けとめておられるでしょうか、まずお聞きします。
  275. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政治ひいては政治家に対する不信が今日ほど甚だしい、かつてなかった状況ではないかと思っておりますが、このことは、お互いこの国会に身を置く者として一様にどなたも痛感をしておられる、党派を超えて痛感をしておられることから、この隣どうしても政治改革をこの国会で実現しなければならないという強い意識の盛り上がりがあります。  その内容につきましては必ずしも一致したわけではございませんで、そのゆえに衆議院の政治改革委員会においていかなる内容にすべきかについて今日現在御議論が行われておりますけれども、それだけの強い意識の盛り上がりがありますので、私はこの国会において政治改革というものを実現することができる、またそうしなければならないと思っております。
  276. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 では次に、具体的に問いを二、三進めてまいりたいと思います。  まず総理に対して、米国の日本に対する貿易黒字批判と内需拡大の要求に対してはどのように対処するのか、総理の対処方針を承りたい。  また、先日のOECD閣僚会議では日本政府が決めた景気てこ入れ策の効果を疑問視する意見が続いていると報道されているが、これに対してはどのような御見解を持っていらっしゃるのか、まずお伺いいたしたいと思います。
  277. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日米間の貿易均衡は、御承知のように実は非常に長い間の問題でございます。十年余りにわたって両国が真剣におのおのの努力をしております。  例えば、最近で申せば、我が国がいわゆる生活大国という方針のもとに内需の振興を図る。たまたま不景気もございましたけれども、昨年から今回のこの補正予算まで相当な財政の努力をして内需の振興を図っておりますが、これは長い間の日米間のそういう検討の反映でもございます。またアメリカ側も、財政赤字、貿易赤字を縮小せよという我々からの要請に対して、クリントン政権になりまして具体的な財政赤字の縮小の案が今議会の半分を通過したというような状況であります。  お互いそういう努力をしてまいりましたが、なおしかし依然として大きな不均衡が変わりませんので、先般、私とクリントン大統領との間で、従来のそういう努力を、さらにこの際改めて新しいフレームワークをつくって、そうしてお互いの努力をひとつ新たにしようではないかということで、この七月のサミットまでにそういうフレームワークをつくってお互いにここで新たなる努力を続けたい、こう約束をしたところでございます。  なお、OECD会議につきましては、出席せられました経済企画庁長官からお答えをいたします。
  278. 船田元

    国務大臣船田元君) お答えいたします。  国会のお許しをいただきまして、先般、六月二日と三日に行われましたOECD閣僚理事会出席をいたしてまいりました。特に御質問をいただきました、この閣僚理事会我が国景気てこ入れ策等がその効果について疑問視されているんではないかと、こういうことでございますけれども、私はずっと会に出ておりまして、まず基本的には、我が国経済対策につきましてはおおむね各国によって歓迎されたというふうに私は判断をいたしております。もちろん一部の国からは経常黒字削減の観点から我が国が引き続き必要な財政上の努力を行うことを希望する旨の発言があったわけでありますが、その我が国経済対策の効果自体について、それを疑問視するというような発言ではなかったと、このようなことでございました。  いずれにしましても、私どもとしては、現在御審議をいただいているこの新しい経済対策につきまして、やはり補正予算も含めたその早期の成立とそれの着実な実行、こういうことによって、回復兆しは見えておりますけれども、まだ回復のテンポが非常に弱いわけでありまして、それをより確かな回復に結びつけていくというためにもこの対策は大変重要なことである、このように考えておるわけでございます。
  279. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、大蔵大臣にお聞きします。  率直にお伺いいたしますが、所得税減税はなぜやらないのか。また、近い将来、消費税の税率を引き上げる考えがあるのか。また、食料品等に対する消費税を非課税とする考えはあるのか。大蔵大臣、率直にお伺いいたします。
  280. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) まず第一問は、所得税の減税をなぜやらないのかと、こういうことでございますが、野党の方からもいろいろな御要望があることは承っておりますし、本委員会におきましても、平成五年度の予算の際、またその後におきましてもしばしば御議論がありましたんですが、私の方として考えておりますのは、消費の現状にかんがみますと公共事業をやるよりは単純な所得税減税の方が景気に及ぼすところの効果が薄い、こういうことでございます。また、大変財政が厳しい状況でございまして、その財源をどうするかという問題がございます。いわゆる赤字国債ということになりますならば、それによって現在の人の景気はあるいはよくなるかもしれませんけれども、そのツケを後世代に回す、我々の孫や子に元利払いを払わせるということについては問題であろうと、こういうことでございます。また、景気対策としての問題でなくて、税制の体系の問題といたしましても問題があるという形で、私どもはこの問題については疑問視をしているところでございます。  第二の問題は、消費税率を上げるかどうか、こういうふうなお話でございました。消費税の税率の問題につきましては、基本的には税制全体の問題の中でどう考えるか。単に消費税をどうするかという話じゃありません。消費税というものの持つところの意味から考えまして、経済社会全体の中でどういうふうにしていくかということを考えなければなりませんし、消費税を導入するときの御議論からいたしましても、安易にこの税率の変更を行うべきではないというふうに考えておりますし、税制調査会を中心としまして国民各層からいろんな御議論、御意向があるところをそんたくいたしまして尊重していくべき問題でありまして、今何らかの形の方針を考えているものではございません。  三番目に、食料品と生活必需品に対して消費税をかけるべきでない、こういうふうな御質問がありました。この問題は確かにそういった御議論がありまして、自由民主党としても消費税率を少し軽減をしていくというような話を出したことがございます。しかしながら、国会におきまして平成三年度の税制問題等に関する両院合同協議会というのがございました。その場におきまして各党会派の意見の一致を見られなかったということが決まりまして、そういった形で立法府におきましてこの辺は決着を見ているところでございます。そういった立法府の御意向を十分に尊重してこれからも対処してまいらなければならないものだと思っているところでございます。  食料品のように転々流通するものにつきましては非課税を含めて特別な措置を考えるということにつきましては、課税ベースの非常に広い間接税としての消費税の基本的性格をやっぱりゆがめるものではないか、そうした措置が経済取引に対して大きな影響を与えるということにかんがみまして、非課税措置につきましては極めて問題が多いところではないかというふうに私どもは考えているところであることを申し上げておきたいと思います。
  281. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 問い返す時間がございませんので、また後日にいたしたいと思います。  じゃ、もう一問、経済企画庁長官お尋ねします。  消費支出が落ち込んでいるのは主として何に原因があると考えておるのか、そして消費支出をふやすための方策として政府は何をしようとしているのか、どうするというのかということについて、経済企画庁長官お尋ねします。
  282. 船田元

    国務大臣船田元君) まず、消費支出が落ち込んでいるその主要な原因という御質問でございました。  御指摘のように、昨年来我が国の特に個人消費が低い伸びとなっているわけですが、この要因としては、例えば雇用者数の伸びが低下しているあるいは賃金の伸びが低下しているということで、名目雇用者所得、所得の伸びが鈍化をしているということがまず挙げられると思います。  また同時に、耐久消費財、これは家電製品とかそれから自動車とか大きな消費財でございますけれども、これはバブル経済の時代にはかなり家計におきましても買い込みということがございました。それのストック調整というのが現在続いているということでなかなか耐久消費財が売れるという状況にはないということもあります。  それから、バブルの崩壊、これが資産価格の下落を招いて、それによる逆資産効果ということが消費にも影響しているということ、さらには消費者マインド、これは雇用がやはり先行き若干不安が残るということでございまして雇用不安ということが主な原因かもしれませんが、そういうことで消費者マインドが慎重化しているというようなこと、このような原因があると思っております。  しかし同時に、最近はひところに比べると明るい動きが出てきているということも事実でありまして、三月の家計消費支出は前年比で増加に転じている、それから耐久消費財のストック調整がほぼ一巡しつつある、こういうようなこともございますし、また、先ほど申し上げた逆資産効果の影響もかなり和らいできている、この点は指摘されると思いますが、いずれにしても、今後とも個人消費の推移を注意深く見守っていかなければいけないというふうに思っております。  その次に、この消費支出を回復させるための方法ということでございますけれども、私どもとしては、昨年三月の緊急経済対策、八月の総合経済対策、そして景気に配慮した平成五年度予算、これは年度内成立を図っていただいたわけでありますけれども、これに加えまして、景気の足取りを確実なものにするために今回の新総合経済対策を決定させていただいたということでございます。  こういう累次の対策ということによりまして、既に公共事業、公共投資関係は高水準で推移をしております。それに影響を受けた住宅投資、これも堅調に景気を支えているという状態でありまして、これがやがては個人消費あるいは設備投資、こういう方向にもいい影響を与えてくるだろう、このように理解をしているわけでございます。  もちろん、住宅投資という点においては、かなり住宅金融公庫の融資の枠の拡大、条件の改善ということをやりまして、住宅建築、非常に高まってきております。そういう中では、やはりその住宅を建てると同時に、いろいろな物を買うという行動も当然ながら出てくるわけでございまして、そんなことも考えまして、特に経済全体の最終需要をよくしていく、こういうために今後とも努力をしていきたいと、このように思っております。
  283. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 時間が来ました。いいですか。
  284. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間が参ったようでありますけれども、私、総理にもう一言申し上げて、本当の腹の底からの決意を述べていただくことを期待いたします。  それは、最初に私は、政治不信、高じて政治家不信にまでエスカレートしつつあるのが今日の状態だと率直に申し上げました。このような政治不信、政治家不信を浄化して、本当に宮澤内閣かくあるべしと、信頼を本当に取り戻すためにはどうすればいいと思っていらっしゃるのか、その決意を最後にお聞きしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  285. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 問題は、しょせんは一人一人の倫理の話ではございますけれども、ここまで来ました以上、この国会におきまして政治改革をなし遂げることが一番大切なことだと考えております。
  286. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で喜屋武君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  287. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 次に、寺澤芳男君の質疑を行います。寺澤君。
  288. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 まず、最近の円高の問題について、総理並びに大蔵大臣のお考えをお伺いしたいんですが、非常に複雑な心境であります。  すなわち、日本の産業全部が国際競争力があるわけじゃないわけで、国際競争力のない産業は、農業にしろ建設業にしろ、ざんごうの中で政府に手厚く保護されている。国際競争力のあるハイテクとか自動車はざんごうの中から首を出している。そこへ急速な円高という機銃掃射がやってきて、その日本世界に誇るべきいわゆるインターナショナルコンペティティブネス、国際的な競争力のある産業が今撃たれている。余りにもこれが急速に来たものだから、非常にまたこれは厄介なんですが、また考え方によっては、やはり日本の国の経済日本のみんなの力でこれだけ強くなった、その反映がとりもなおさず、若干のスペキュレーションはあるでしょうが、円高ということで日本の国の経済が評価されている。逆に、日本の国の経済が評価されずに円安になっちゃって三百円とか四百円になったら、もっと我々は憂うつであろうかと思います。  それで、この円高という問題について東京銀行 の行天会長も六月一日の日経に書いておられますが、もちろん日本貿易黒字が大きな原因になっているわけですが、その日本貿易黒字の要因は、短期的要因、循環的要因、そして構造的要因とありますけれども、行天さんは、やはり構造的な要因だろうと、「日本と米国の貿易・産業構造に根差した黒字要因である。」と、「日本ではまず流通制度の改善や許認可の削減などを通じて輸入品のマーケットアクセスを改善し、輸入の拡大、ひいては水平分業の促進を図ることが必要である。」、また、「日本は余剰供給能力を米国に移転して現地生産をより強力に推進し、一方米国は短期的な成果主義に傾斜することなく、日本企業を迎え入れるための環境整備を進めるべきだ。」と、こういうふうに考えております。  急速に来た円高ではありますが、とにかく我々、特に私の場合は去年の今ごろまではワシントンにいたんですが、日本の物価がまずワシントンの二倍、だから言うなれば一ドル二百円ぐらいの感じの生活しかしていないのに、今の百五円とか六円とか七円とかこの辺にも問題があるんですが、この構造的にある日本黒字、これについてこれから一体どう対処していくべきなのか、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
  289. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 寺澤議員はニューヨークにもおられた御経験もありますし極めて国際的な御感覚の高い方でございますから、私からお話し申し上げるのは釈迦に説法のような感じもいたしますけれども、日本の国際競争力というものが御指摘のような電子、電機関係であるとかいろんな機械関係が非常に強い、そうじゃないところはざんごうの中に隠れている、高いところ、いいところはたたかれていると、こういうお話でございます。  これはやはりそういったものが為替相場に相当に影響してくる、国内に入ってくるものじゃなくて、今お話しのあったようなものが貿易の中で大きな商品として取り上げられているから、それがやはり反映してくるというのは一つの事実だろうと、私はこう思うんです。それだからこそ日本の円高というものが現出をしてくるんじゃないんだろうかと思っています。そうした意味で、日本の国際競争力というものがやはり相当高いんだ、それがやはり一つの円高になってきている、私は、長い目で見たらそういったことだろうと思います。  ただ、この二月、三月には百二十五円ぐらいまでしておりましたものがもうさあっと落ちてきて百五円台までになる、二〇%も落ちるなどということは大変おかしなことでありまして、これは日本経済に対しても非常に大きな影響をもたらす、と同時にやっぱりアメリカ経済に対してもいろんな影響をもたらすのだろう、私はこう思うんです。アメリカ日本に対する輸出というのは相当ありますし、また日本からの輸入が相当にある。そういった点でいろんな影響がありますから、なだらかな形での私はファンダメンタルズを反映した為替というものを持っていくということが一番大切なことじゃないかと。両国とも安定的な形での成長を達成していかなければならないのだろう、こう思っておるところであります。  今回まさにお願いをしています補正予算などというのは、日本でも内需拡大を大きくこれからやっていこう、こうしたことの一つの大きな柱でございまして、そういった意味日本経済が大きくなっていくことによりましてアメリカその他の外国からの輸入もだんだんふえていくだろう、こういうふうに私は考えているところであります。  今、物価が二倍だというお話がありました。私もときどき言うんですよ。コーヒー缶がありますが、日本では百円だと。アメリカの方ではコーヒー缶などというのは一ドルで三つぐらい買えますよと。何でそんなことになっているんだという話でございますが、別に日本ではコーヒー生産しているわけじゃありません。ですが、やはりそこでありますのは流通の問題であるし、いろんな日本の中の制度の問題がありますから、そういったものが円高によりましていろんな形で変化を来してくる、新しい事態がつくられていく、そういったものが自由競争の原則じゃないかな、こう思っているところでございまして、国内の経済調整、国内経済体制の改革というものをそういった形によって進めていくということは必要なことだろう、私はこう思っているところでございます。
  290. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 ありがとうございました。  七月の東京サミットの前にやはり日米間の、特にアメリカから言われております金融市場の開放ということでいろんな議論が今なされていると思うんです。  私はずっと民間だったんですが、ニューヨークに十七年間ウォールストリートで働いていて、実感として基本的に日米に横たわっている壁というか、いわゆるインペディメント、障害というのは、極端に言うと、アメリカがディレギュレーション、規制のない国だ、日本は非常に強い、特に金融関係の場合は当然のことながら大蔵省のレギュレーション、規制がある国である。アメリカは規制がないかわりにディスクロージャー、開示が非常に進歩している、会計の面でもその他でも。  例えば、新しい商品を証券会社がつくる、そしてアメリカのSECに持っていく。SECというところはそれを認可するあるいは認可しないというところではなくて、新しい商品がちゃんと法律にのっとって投資家にわかりやすく開示されていれば、例えば商品がリンゴだと仮定しますと、リンゴのどこに傷があってどこが腐っているかということを法律に従ってきちんと開示さえすれば、そのリンゴを売ることができる。傷があっても腐っていても、その値段でリンゴを買うのはこれは投資家でありますから、SECはそれには関与しない。ところが日本の場合は、大蔵省が傷があっちゃいけないよとか、あるいはここが腐っているから売っちゃ困るとかという商品の内容についてまでくちばしを入れる、あるいは値段にまで入れる。これを日本の方はそれが投資家保護だというふうに勘違いしている。これが基本的にアメリカ日本の考え方の中にあるんだろうと思います。  だから、例えば不良債権の問題も、不良債権があるならあるで全部おっぴろげて正直に言ってしまう、これがすなわち投資家保護なんだ、あるいは預金者保護なんだという考え方がアメリカ側にはある。日本側は、なるべく言わずに済むものであればそっとしておこう、臭い物にはふたをしようと。そして、有能であると思っている官僚が、自分たちが指導することによってオーダリーマーケット、ちゃんとした金融市場をつくっていこうと。自分たちの指導があるからこそ金融市場は正常にファンクションするのであるという官僚の思い上がりがある。この二つの基本的なコンセプトがどうも合わない。  逆に、今アメリカが言っている管理貿易ということは私は大反対です。これは、やはり民間のビジネスというのは民間同士が競争すべきであって、政府がそれに介入すべきではない。しかし、日本がそれをアメリカに言う以上、日本の中でも、完全に官主導の経済ではなくて、もういいかげん今の先進諸国の日本としては発展途上国のような官主導型ではなくて民主導型の経済に持っていかなきゃいけない、そういう態度をとらないといつまでたっても日米の間のギャップは埋まらないと。  宮澤総理、私そう思うんですが、いかがでしょうか。
  291. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 一言で申しましたら過保護ということであろうと思います。  考えてみますと、しかし戦争に負けました後、どうかしなければならないということで国力を一つにしてというようなことから、行政がそういう生産に対しても消費に対しても保護をしてまいりました。それがきょうもなお残っておって、今、寺澤委員の言われるような問題になってきていると思います。  ちょうどクリントンさんになられまして私つく づく感じましたが、やっぱりブッシュさんという人は第二次大戦で自分も従軍しておって、その後日本をこれだけのものにしたというそういう誇りもあるし、そういう一つのセンチメントを持っていまして、まあ人によってはですから兄貴と弟みたいなそういう関係だと言った人もございましたけれども、もうそういうことはなくなりました、クリントンさんになって。  ですから、そういう意味でもう過保護というものをやめるときが来ているんだというそういう御指摘は、私はもうそういう時代が来たと、同感でございます。
  292. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 ありがとうございます。  船田長官にお伺いしたいんですが、六月一日付の日経によりますと、長官は、「内需中心の成長によって景気循環的な要因から生じた黒字はかなり解消される。それでも残る構造的な黒字については、市場参入機会の改善を進めるとともに、中長期的に貯蓄と投資のバランスを考えて各国がお互い努力していく必要がある。特に米国には財政赤字を削減してもらわなければならない」と発言しておられます。  私は非常に賛成なんです。本当にこの線に沿って日本の急速な為替変動あるいは貿易黒字等について政府、行政当局としてはやっていただきたいんですが、一言見解をお伺いいたします。
  293. 船田元

    国務大臣船田元君) お答えをいたします。  今、寺澤委員から私のOECDにおける発言を引用していただきまして、ありがとうございました。  確かに今まで御指摘いただいたように、この貿易均衡一つは、短期的には例えばJカーブなどの効果ということもあるでしょう。また、中期的といいますか、景気循環的な要因としては、やはり循環のずれということで輸出、輸入の伸び、あるいはその伸び悩みということが不均衡につながるということもあると思います。しかし、どうしてもやはり最終的にこれは残る問題として、構造的な要因というものはこれはなかなか中長期的に取り組んでいかなければいけない、そういう課題であると思います。  私どもとしては、やはり日本側としての努力として、まず構造調整という中では市場アクセスの改善、これはもう先ほども御指摘いただきましたけれども、私どもとしてもOTOの活用などを通じましてさらに市場アクセスの改善に努める、これが一つあると思います。また、どうしても貯蓄、投資のバランス、ここにもやはりメスを入れないといかぬと。そういうことで、あえて私からは、米国に対しましてあるいは赤字を出している国に対しまして、やはり財政的な赤字という問題、これもきちんと改善をしていただくということがこの均衡、不均衡の改善ということにつながっていく、こういうことを指摘を申し上げたわけであります。こういう方針で今後とも取り組んでまいりたい、このように思っております。
  294. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 最後に一言。  今度、東京サミットでは宮澤総理がチェアマンでホストカントリーとして大任を、そういう大変重大なる責任を負われるわけですが、今度のサミットで本当に実のあるエコノミックサミットとしての話が出ないと、一九九四年からのサミットというのはもうお祭り騒ぎで金ばっかりかかって本当に意味ないんじゃないかという、そういう声が出ないようにぜひ日本のホスト国のチェアマンとして頑張っていただきたい。御健勝をお祈りいたします。一言。
  295. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は、どうもサミットというものがそういうものになりかかっているということはある二、三の国から指摘がございまして、今度は極端に社会的な、ソーシャルな行事をなくしまして仕事だけに集中しようかと。なお、その上で今後サミットをさらにどのように簡素化するかという相談もいたしたいと思っております。いろいろまた御教示を賜りたく存じます。
  296. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 ありがとうございました。終わります。
  297. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で寺澤君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて景気経済に関する集中審議は終了いたしました。  本日の審査はこの程度といたします。  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十七分散会