○角田義一君 私は、
日本社会党・
護憲民主連合を代表して、ただいま議題となりました一九九三
年度予算案三案に対しまして、反対の討論を行います。
まず申し上げなければならないのは、今
国会では昨年に引き続き、東京佐川急便事件を契機に深まる
政治疑惑の真相の徹底的な究明が求められておるということであります。衆議院での
竹下元
総理を初めとする
関係者の
証人喚問に引き続き、本院の
予算委員会におきましても、我々の毅然とした要求によって、新たに展開する金丸元副
総理の脱税事件の
関係者を含め
証人喚問が
実現をいたしましたが、
疑惑はいまだに究明されてはおらず、かえって深まりを見せております。これで佐川問題や金丸脱税事件などの
国会としての真相究明の努力をやめてしまうわけには断じてまいりません。
とりわけ問題なのは、自民党の派閥領袖で政権中枢にあった
国会議員と暴力団との
関係が取りざたされ、しかも一
内閣誕生に暴力団が深く
関係した事実であり、それを少なくとも事後的には
総理大臣在任中に知りながら、
責任を一切回避して
政治的延命を企てる
竹下元
総理の不見識極まる
態度であり、これを許す泊民党の体質であります。我々が衆議院で
竹下元
総理の議員辞職勧告決議案を提出したのはまことにもって適切な
対応であります。それを無視する自民党にはもはや政権担当の資格はないと私は
思います。長期政権でおごり高ぶり、業界や
行政と
政治が癒着する構造が巨額の不正蓄財をした金丸脱税事件の根本的な要因であることを
国民は知り、怒っております。
それにいたしましても、自民党の領袖であり政権の中枢にあった
国会議員がさまざまな
疑惑を持たれ、暴力団との
関係が明らかになる一方、副
総裁であった者が逮捕、起訴されるという深刻な
事態に至っているにもかかわらず、
宮澤総理は
竹下元
総理の議員辞職問題にさえ明確な
態度表明はせず、金丸脱税事件でさえ第三者然としている印象を我々が持たざるを得ないのはまことに残念であります。
政治腐敗に対して
総理・
総裁の
地位にある者としての毅然とした
対応が見られないことに
国民はいら立っております。このような
宮澤総理の
政治姿勢では
国民の支持率が低下するのも当然であり、反省を求める次第であります。
さて、一九九三年度総
予算案でありますが、バブル
経済の崩壊後、急激に景気が落ち込む中で、それにどう
対応するのか問われた
予算であります。しかし、残念ながらさきの本年度補正
予算によっても景気の改善傾向はいまだに見られず、九三
年度予算案も景気を下支えするものとしてさえ不十分ではないかと思われるのであります。順次反対の理由を申し上げます。
第一に、我々野党が共同で衆議院において
予算修正要求を提示し、強く迫った所得減税や福祉一時金の支給、住宅、中小企業対策の拡充などのための
予算修正が行われなかったことであります。我々の要求は不況に苦しむ方々に対する必要不可欠の施策であり、景気対策として差し迫ったものに限定しておりました。現在の
段階でそれが
実現されていないのは極めて遺憾ております。
とりわけ所得減税は、税制の面からも、景気対策の面からも不可欠であります。景気停滞の影響は個人消費にも重大な影響を及ぼしており、景気対策として所得減税は欠くことができませんし、公平な税負担を
実現するためにも必要なことであります。物価調整としての負担調整の必要性からも、消費税導入時以来実施されていない大規模な所得税減税を実施すべきであります。財源問題や財政均衡に固執する余り、所得減税を回避することは今日許されないと
思います。所得減税は景気回復に余り効果がない、貯蓄されるだけだといって済まされる
状況ではないと私
どもは考えております。財源問題をもって所得税減税を回避しようとする政府・自民党の
態度を認めることはできません。
第二の理由は、
予算全体を見ても、景気対策の面からは言うに及ぼす、生活充実策としても不十分であり、政府の
経済見通しの達成は困難ではなかろうかということであります。
経済の現状は、昨年から
公共事業拡大と住宅建設に若干回復の動きが見られますけれ
ども、悪化の一途をたどっております。景気の底割れを懸念する声も出ております。九二年度の当初の政府
経済見通しては三・五%の実質成長が見込まれておりましたけれ
ども、九二年末の実績見込みで一・六%、半分以下に引き下げられております。これさえ
実現不可能なのが現状であります。政府の甘い
経済見通しが適切な
経済対策を滞らせる一番の原因であるにもかかわらず、九三年度の政府
経済見通しにおいても実質成長で三・三%を見込んでおり、民間調査機関と比較して昨年以上に突出が目立つ
経済見通しを継続しており、反省の色は全くないように思われます。九三
年度予算案がどれほど
経済見通しの達成に寄与するんでしょうか。
また、
一般会計予算を見ましても、対前年度当
初比で〇・二%増、政策経費である一般歳出でも三・一%増と、ほとんど景気対策
予算になっておりません。また、景気対策の柱である
公共事業も国の一般会計では前年度当初比で四・八%増としたとされておりますけれ
ども、今年度補正後と比べれば大幅な減額であり、これだけでは対策としての効果は見込めません。したがって、本
予算が成立しないうちに、景気対策としての大規模な補正
予算の今
国会での成立の必要性について、政府・
与党の首脳が公言するような筋違いのことになってしまうのであります。
第三の理由は、いわゆる隠れ借金の多用で、不健全な
予算であるということであります。
交付税特会借入金分や国鉄長期債務分等の一般会計承継債務七千億円弱のほか、地方交付税の特例減額四千億円等の歳出計上繰り延べが行われております。これらは隠れた赤字国債にほかなりません。財政運営上極めて不健全で、
予算書を見てもその把握は困難であります。財政の再構築を放棄し、明示できないつじつま合わせに終始する
予算に賛成することはできません。
第四に、生活関連の
予算が抑制される一方、防衛費が増額される
予算案が継続されているということであります。
中期防衛力整備計画の見直し、縮小も不十分であり、冷戦崩壊という情勢の歴史的変化を看過していると言わなければなりません。防衛
関係費は、対前年度比一・九五%増の四兆六千四百六億円と低い伸びとはいえ相変わらず増額されており、軍縮を率先して実行すべき
我が国の立場からして全くの時代錯誤であります。平和と軍縮促進は
日本の世界に果たす使命であり、中期防衛力整備計画は若干削減するだけにとどまらず、これを抜本的に見直し、軍縮計画を明らかにするとともに、来年度防衛
関係費についてはAWACSなど不要な武器の購入、開発の中止などを行い、前年度を下回る規模に抑制すべきでありました。
第五の理由は、高齢化社会対策に係る経費の計上あるいは生活関連社会資本整備等に係る経費の配分が不十分、不適当であることであります。
五年度の社会保障
関係費の伸び率三・二%増と、四年度の四・三%増を大きく下回り、いわゆるゴールドプランの実施もその負担の多くを地方自治体に押しつけているほか、推進テンポも極めて不十分であります。一方、生活大国づくりを標榜しながら、依然として
公共事業予算の事項別配分の構成比はほとんど変わっておりません。大型公共投資優先の縦割り
行政の弊害から脱せずにおります。このような
国民生活軽視の
予算は認めることはできません。
反対の主な理由を申し述べましたけれ
ども、政府の
経済財政運営に対する
不信感も、
政治不信同様、看過できないほど大きくなっていることを政府はどれほど自覚しておられましょうか。今こそ、財政運営を
国民との信頼
関係の上に成り立たせるという原則に戻って、
予算のあり方を抜本的に改める必要があることを強く申し上げて、私の反対討論を終わります。
以上でございます。(拍手)