○喜岡淳君 私は、
日本社会党・護憲民主連合を代表いたしまして、緊迫している
カンボジア情勢と
PKO問題などに関して、
関係大臣及び
総理に御
質問をいたします。
先般、志半ばにして不幸にも亡くなられました
国連ボランティアの
中田厚仁さん及び
PKO活動の中で命を落とされたすべての
皆さんに対して、私は心から追悼の意を表したいと
思います。
まず、
中田厚仁さんの射殺
事件について
総理はどのように受けとめていらっしゃるのか、見解を伺いたいと
思います。
さて、
PKO法案審議の際、
政府はどのように
カンボジア問題を
説明されてきたでしょうか、
総理には
思い起こしていただかなければなりません。
PKOの現場は弾の一発も飛ばないところだ、
停戦が合意したところへ行くのに何が危険なのか、こう言ってきたわけでございます。今になって、
PKOにトラブルはつきものだとか、あるいは我々も当初から犠牲は予測をしていたなどと言うのは全く無責任ではありませんか。
PKO協力法案審議の際、
総理が
説明をしてきたことは誤りだったということがはっきりしたわけでございまして、この点について
総理の責任を明確にしていただきたいと
思います。
外務省の責任も重大でございます。
カンボジアの
情勢の
説明に当たり、外務大臣は終始一貫安全性を強調し、私
どもの
指摘に対しては一顧だにしなかったではありませんか。
カンボジア情勢について外務省はどのような認識をされておるのか、改めて外務大臣の答弁を求めたいと
思います。
そもそも、
政府の
調査や情報収集は全く不十分と言わなければなりません。昨年七月の有馬
調査団は、わずか実質四泊五日の駆け足
調査、武装解除を拒否したばかりの
ポル・ポト派には会ってもおりませんし、
停戦状況については明確な記載も行われておりません。
カンボジアでの心配は交通事故だ、そしてマラリアだ、こういう記載に至っては虚偽の
報告書ともなりかねないものでありますが、有馬
調査団の
報告に基づき
政府は五
原則が満たされていると判断をし、
派遣を強行いたしました。
そこで、
停戦の合意について伺います。
パリ和平協定で言う
停戦条項のうち、四派の武装解除、各派軍事
要員の宿営地への集結、そして除隊兵士の完全な社会復帰、これらはどれ
一つ実現いたしてはおりません。それどころか、中部コンポントム州を中心に、
ポル・ポト派による武力攻撃、
UNTAC要員への襲撃は続発いたしております。これに反撃するために、プノンペン政権軍は大規模な軍事攻勢さえ繰り広げておるありさまであります。
カンボジア情勢は日増しに内戦の一途をたどっているのはだれの目にも明らかであります。紙の上の議論ではなくて、実体的に
カンボジアにおいて
停戦が実現しているのかどうか、
総理の明快な御答弁をお願い申し上げます。
大規模な戦闘が全国的に行われていない、もしかかる理由で
停戦合意が崩れていないとするのは間違いであります。そもそも、
ポル・ポト派はゲリラ戦であり、大
部隊による全国的大規模な戦闘は起こり得ないと思うからであります。さらに、
ポル・ポト派が
パリ和平協定を破棄していないから、かかる理由で協定が守られているというのは詭弁にほかなりません。
ポル・ポト派は自己保身の立場から協定の枠にとどまると公言しているのはもはや常識であります。
停戦の合意が崩壊した場合、
我が国PKO部隊は
業務を中断、撤収することとなっております。それでは
停戦の崩壊とは一体どういう場合を言うのか、具体的な判断の基準について
総理に詳しい
説明を求めるものでございます。また、この判断に当たっては、
我が国の
PKO協力法なのだから当然
我が国政府が独自に判断するものであるとたびたび
政府はその独自性を強調してまいったわけでありますが、この点についても改めて
総理に確認を求めておきたいと
思います。
判断に当たっては、
UNTACの情報にだけ依存するのではなくて、
我が国独自の情報収集はどのように行われているのか、外務大臣及び
総理の答弁を求めます。
ポル・ポト派は
選挙について反対しております。実力で阻止すると公言いたしておりますが、さらに先般、SNCの
ポル・ポト派代表団はプノンペンから引き揚げ、SNCの
準備会合の方もボイコットをいたしております。
紛争当事者の合意と
参加がないまま
選挙を
日程どおりに
実施するならば、四派の和解を目指したパリ協定の本来の
精神は崩壊することになると言わなければなりません。
政府はこの点をどのように認識し対処されるつもりか、
総理の御見解を伺いたいと
思います。
自由で公正、中立的な
選挙になるかどうかも疑問がございます。プノンペン政権と
ポル・ポト派による
選挙要員や
選挙事務所への攻撃、テロが激化しており、投票日が近づくにつれて、自由で公正な
選挙とは縁遠い混乱が拡大いたしております。
UNTACはプノンペン
政府軍に対して投票所の周りに軍隊を配置するよう
要請いたしておりますが、これではもはや官制
選挙にほかならず、
国連の中立性は崩れていると見なければならないと
思います。
PKOの
原則や
選挙の基本条件を崩してでも
選挙を強行しようとする理由は一体何なのか、
総理の明確な
説明を伺いたいと
思います。
先日、パリ
会議の
参加国が
UNTACの
選挙を
支持する
共同声明を発表いたしました。しかし、もう一度
紛争当事者四派の合意と
参加を得る
努力をしてはどうかとの意見もあるわけであります。
ポル・ポト派の揺さぶりに屈するというのではなく、
選挙後の
カンボジア情勢を考えるならば、メンツや形式にとらわれて拙速な道をとるのではなく、柔軟な政治的対応も必要ではないかと思うわけであります。
選挙を強行することによって
選挙後に内戦がさらに激化したり難民が再び大量流出するならば、これまでの
国際社会の
努力も水泡に帰することになりかねないわけであります。かかる事態を想定して、
パリ和平協定では
関係国による協議といういわゆる第二十九条の
規定がありますけれ
ども、この
規定の発動について
総理の見解を伺いたいと
思います。
武力攻撃の激化など
現地の
情勢の悪化により、
国連ボランティア要員の中には帰国やあるいは
任務地の再配置、あるいはPKFによる保護を求める動きも出てきております。
国連ボランティア、
文民警察、PKF、後方
支援などの
要員について、これまでに死亡した
要員の人数、
任務を中断して帰国した人の数、
安全確保のためにとられた対策などについて、
総理の具体的な
報告を求めるものであります。
五月二十三日の投票に向けて、
政府は
日本から五十名の
選挙要員を
派遣する
準備を進めておりますが、その
要員の確保の現状はどうなっているでしょうか。これまでに報道されたところによりますと、千葉県在住の女性が辞任をした理由として安全対策に確証が持てないということが報道されております。安全対策と不祥事が起こった場合の対処策について
政府はどのようなことを考えているのか、また本人の意思確認はどのように行われているのか、
総理及び自治大臣の答弁を求めます。
文民警察についても、
政府は、地元警察の
監視などを
任務とし、内戦も終わったことだから武器を持たないと
説明してまいりました。しかし、
日本の
文民警察官宿舎が攻撃されるなどの実態に直面し、武器携帯の議論も出てきております。
文民警察の
任務は武器を携帯しないことを前提にしていたはずであります。武器携帯は論外であり、何よりも
安全確保を最優先し、
PKO法に照らして現場の判断によって柔軟な対応をすべきと
思いますが、
総理及び国家公安
委員長の見解を伺いたいと
思います。
カンボジアに
派遣された
自衛隊の第二陣は、基地の周辺にざんごうを掘ったり銃を持った歩哨を立てたりしておりますけれ
ども、これは武器による攻撃を想定し、それへの応戦に備えたものではないかと
国民は見ております。特に、武装した歩哨は個人の正当防衛という範囲を超えており、基地及びその中にいる
部隊の防衛、あるいは
業務の遂行のための武力行使につながるのではないかと思うわけですが、武装した歩哨にはどのような
任務、命令を与えているのか、また、歩哨が武装しなければならないという事態は当然中断、撤収のケースに当たるのではないかと
思いますが、
総理及び
防衛庁長官の答弁を求めます。
また、投票箱の
輸送など
選挙の
支援が言われておりますけれ
ども、これは攻撃の対象となるのは必至と思うわけであります。さらに、選事
業務の
支援をする
自衛隊は他のPKF
部隊や
紛争当事者の軍隊と事実上一体となって
活動する場合が想定されますが、このような
活動は
法律上
自衛隊にはできないはずではないのか、
総理及び
防衛庁長官の答弁を求めます。
選挙後の見直しについて、
明石代表は
UNTACの規模を大幅に縮小した形で
国連が引き続き存続する考えを表明しておりますが、
我が国としては
選挙後も引き続き
参加していくつもりなのかどうか。もし
参加するとするならばまさに内戦の泥沼化も予想されるわけでありますが、
選挙後の見通しについて
総理の見解を求めます。
三月初め、シアヌーク殿下は、
選挙後の政治体制として
ポル・ポト派も含めた連立政権、いわゆる救国構想を提唱しております。
ポル・ポト派はこの構想
支持の態度を表明しておりますが、プノンペン政権側は当然反対を表明しております。
選挙がいまだ行われていない段階で
選挙を軽視する構想が出されたわけですが、この構想を
政府はどう評価されているのか、また、このような構想がSNC
議長から出されたこと自体パリ協定が実質的に空洞化していることを意味していると
思いますが、
総理の見解を伺いたいと
思います。
昨日、
政府は、
国連モザンビーク活動いわゆる
ONUMOZに対し、
自衛隊から
輸送調整部隊及び
司令部要員を
派遣すると
決定いたしました。
カンボジアUNTACへの
派遣が
PKO法に照らしても多くの問題を露呈しているにもかかわらず、さらに
国民の合意を得ることなく
自衛隊の
海外派遣をなしまし的に拡大することを認めるわけにはまいりません。そこで、次の点について
総理の明確な答弁を求めるものでございます。
第一に、昨年十二月、安保理の
ONUMOZ設立決議を受けて
国連から
派遣の打診がなされたのに対し、
宮澤総理、
河野官房長官は慎重な姿勢を維持していたのではなかったでしょうか。外務省、
総理府
国際平和
協力本部が事務的に
派遣準備を進め
派遣決定に至ったとの
指摘が絶えませんが、
総理のリーダーシップが見られないことはシビリアンコントロールの
観点からゆゆしい問題でございます。今回の
派遣の
決定過程を明らかにし、
自衛隊の
海外派遣なしまし的拡大の歯どめは一体何なのか、明確にしていただきたいと
思います。
さらに、今回の
派遣の
決定に当たり、去る三月、小西
調査団が
派遣されましたが、
現地には実質三日半しか滞在せず、
自衛隊の配置予定地もすべて
調査しておりません。
我が国の在外公館もなく独自の情報もないまま、地方視察もしていない。このような
調査で、責任を持った対応あるいは
派遣要員の
安全確保に万全を期すことができるでしょうか。
第三に、
モザンビークヘの
派遣は
PKO法の
参加五
原則を満たしているのかどうか。去る四月十四日、
国連安保理自身が、
モザンビーク政府と反
政府組織である
モザンビーク民族抵抗運動に対し、ローマ
和平協定に従い早急に武装解除などを進めるよう求める決議を行っております。小西
調査団の
報告の中にも、
和平協定署名時の高揚した気分が徐々におさまり相互不信が生じていると
情勢を記載しておりますが、
政府は
PKO法の
原則を踏みにじることのないように、このあたりの点についてお伺いしておきたいと
思います。
第四に、今回
派遣される
輸送調整部隊はいわゆるムーブメント・コントロール・ユニットを指すのでありますが、これは本来
輸送統制
部隊であり、PKFである
ONUMOZの司令部中枢と深くかかわる
業務を行うことになるのではないか。
輸送調整部隊は、従来言われてまいりました
支援業務ではなくて、
PKO法で凍結の対象となっているPKFの本体
業務に当たるのではないか。もしそうでないというのなら、納得のできる根拠を示していただかなければなりません。
第五に、司令部への
要員派遣の問題でありますが、
政府は個人の資格と
説明しておりますけれ
ども、これは
PKO法で言うところのPKF本体
業務に対する
部隊参加の凍結をかいくぐろうとするものではないのでしょうか。
モザンビークの
PKOいわゆる
ONUMOZへの
自衛隊派遣は取りやめ、
停戦の合意、当事者の受け入れ同意、中立性の確保が明らかになった時点で、非軍事の医療、
選挙監視、機械修理などの
分野に
文民要員の
派遣を考えるべきと
思いますが、
政府の見解をお伺いしたいと
思います。
最後に、旧ユーゴスラビア、特にボスニアの事態について、
PKOの五
原則との関係で
政府はどのように認識されているのでしょうか。これに関連して、ガリ事務総長が提起したいわゆる平和執行
部隊などの構想が
国連加盟国の十分な討議や合意もないままに
実施に移されようとしていることに対して、
国民は大きな危惧の念を抱いております。
総理としては、ガリ事務総長提案についてどう
理解されているのか、またどう対処されようとしているのか、明確な見解を求めまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣宮澤喜一君
登壇、
拍手〕