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今井澄君 私は、
日本社会党・
護憲民主連合を代表し、ただいま
議題となりました
平成五
年度における
一般会計承継債務等の
償還の
特例等に関する
法律案につきまして、
総理並びに
関係各
大臣に対して
質疑を行うものであります。
我が国経済は、七五年には第一次オイルショックによる
不況、そして十年後の八五年には
プラザ合意による円高
不況に見舞われました。そして、さらにその約十年後の現在、複合
不況とも言われる大変深刻な未曾有の
不況に直面しております。このような深刻な
不況に陥った原因は、ただ単にバブル経済が破綻したということに起因するだけではなく、
財政金融当局のたび重なる政策的判断の失敗にあると言わざるを得ません。
昨年八月の総合経済対策、そして先月四日の第六次公定歩合引き下げは全く時期を失したものと言わざるを得ません。総合経済対策に盛り込まれた
公共事業のかなりの部分が九三
年度にずれ込んでおりますし、
景気に対する効果の発生がおくれているわけであります。
まず、
総理から、政策的おくれに対する率直な反省のお気持ちを伺い、さらに、
総理は常日ごろ、さきの総合経済対策の効果を見定めていきたいと述べておられますが、その見きわめのタイムリミットはいっと
考えておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
さらに、公定歩合が二・五%という史上最低
水準まで引き下げられました以上、
景気対策として残された
政策手段は大幅所得減税以外にないと
考えます。我が党は、三党共同で四兆円余りの大幅減税を提案いたしましたが、宮澤
総理の御見解をお示しいただきたいと思います。
次に、我が国の
財政の現状に目を転じてみますと、回復の兆しが全く見えない
経済情勢を反映してますます厳しさが増しております。
税収においては、九一
年度には約三兆円、そして九二
年度には約五兆円と
政府は大幅な減額補正を行わざるを得なくなっておりますが、九三
年度においても
税収不足が懸念されているところであります。九三
年度予算では、前
年度当初
税収を一兆二千億円も下回るという八三
年度以来最悪の
状態になっておりますけれども、現在の
状況ではこれすらも確保できるかどうか実現性は疑わしいと思われます。
政府見通しでは、実質経済成長率を三・三%と過大に見積もっております。
予算編成上はそれで
税収が確保されるかのようにつじつま合わせがなされておりますが、しかし、所得税、法人税のさらなる落ち込みは避けがたいと思われますし、預貯金金利の引き下げによる利子所得に係る源泉所得税の減少なども容易に予測できます。九三
年度においても減額補正を組まざるを得なくなるのではないかと
考えますが、
大蔵大臣の
税収見通しについての御所見を承りたいと思います。
政府の過大な
税収見積もりでも対処できない歳入不足をその場しのぎ的に
解消するために
考え出されましたのが、今回の
一般会計承継債務等の
償還延期等にはかなりません。歳入が限られている以上、歳出面で節減合理化を図るのは当然でありますし、入るをはかって出るを制すという
財政態度はやむを得ないことではありましょう。しかしながら、本
法律案による
措置は本来的な歳出削減ではありません。単なる
一般会計の
負担の先送りであって、将来的には利子をつけて
償還しなければならないものであることは言うまでもありません。かえって
負担増加になるものであります。決して、
政府が
説明するように、国の会計間での調整、
繰り入れ措置にすぎないと簡単に片づけるべき問題ではありません。
政府として、国の歳出面に関して一体どのような抜本的な
見直しを行った上でのこういった
措置なのか、
大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
本
法律案の対象となっている
債務を含め、
一般会計は、いわゆる隠れ国債と呼ばれる、今後処理を必要とする過去からの
特例措置を多数抱えており、その額は四十兆円を超えているわけであります。これらの
特例措置は八〇年代前半以降恒常的に行われてきたものでありますが、バブル経済発生によって
政府もその恩恵にあずかりました。九〇
年度にはこれらの
措置の大部分は停止されたのでありまして、赤字国債と同様、隠れ国債の発行からも脱却できたかに見えたわけであります。
ところが、バブルの崩壊とともに、九二
年度の補正
予算で
一般会計承継
債務の繰り延べが復活しておりますし、九三
年度の
予算ではさらに厚生
保険特会への繰り延べ
特例措置まで復活してきているのであります。赤字国債発行からの脱却だけを墨守する余り、緊急避難
措置を多用して
財政運営の
基本を逸脱し、
財政実態に反するこういった
予算編成の手法をとっていると言わざるを得ないのであります。
九〇年三月の
財政制度審議会の「
平成二
年度特例公債脱却後の中期的
財政運営の在り方についての報告」においても、
特例公債脱却後はこのような
措置に安易に依存した
予算編成を行うべきではないとするとともに、
債務の速やかな処理が求められているのであります。
財政の健全性をゆがめる承継
債務の繰り延べ等は今後は極力回避することとして、既存の
制度、政策や歳出構造の徹底した
見直しを行うべきであります。
宮澤
総理としては、このような
特例措置によらなければ
予算編成を行えなかったことについてどのように
考えておられるのか、また、この
措置が今後も継続していく懸念が持たれておりますが、九三
年度限りと断言できるのか、御答弁をいただきたいと思います。
また、今後処理を要する隠れ国債についてどのような展望のもとで
償還していくのか
計画を明らかにし、これを
国民に提示すべきであるというふうに
考えますが、
大蔵大臣の明確な御答弁をお願いしたい。
加えて、今回の
債務等の
償還の繰り延べ
措置を
考える場合、そこには
政府の
資金運用部資金に対する安易な依存体質がうかがえるのであります。好調な郵便貯金によって
資金運用部資金が潤沢であるからといって、本来
一般会計が担うべき役割を、
財政窮乏の折から
財政投融資に肩がわりさせるというのはいかがなものでありましょうか。
資金運用部資金の
運営等の
あり方については
財政秩序の
観点から
検討を進めることが必要であると
考えますが、
大蔵大臣の御見解をいただきたいと思います。
次に、今回の
法案に関連してお聞きいたします。
まず、今回の
法案では、八五
年度から八九
年度まで続いた政管健保に対する国庫補助の
繰り入れ特例措置がまたここで復活しているわけでありますが、これまでのいわゆる隠れ国債のうちでは厚
生省
関係の
措置が一番多くなっているのであります。厚生年金国庫
負担金の
繰り入れ特例、
国民年金特会への国庫
負担金の平準化
措置、政管健保の棚上げ
債務、そして政管健保に対する国庫補助の
繰り入れ特例措置などであります。
高齢化社会が世界に例を見ない速さで進んでいる中で、将来の給付に備えて積み立てられた
資金にまで
負担をかけるというのはいかがなものでありましょうか。政管健保について見れば、この間の収支
状況は、標準報酬月額の上昇による収入増と、一方で医療費の伸びが低かったということに支えられ健全に
推移してきてはおりますが、長期化する
不況と、それから医療費がここのところまた増加傾向にあるということによって
運営は楽観を許しません。九三
年度の収支は、千三百億円の
繰り入れ特例措置によってもなお辛うじて七十億円の黒字と見込んでいるようですが、これでは赤字転落のおそれも十分にあるのではないでしょうか。このような
状況を厚生
大臣はどのように
認識しておられるのか、
お答えいただきたいと思います。
また、政管健保への
繰り入れ特例措置については
償還計画が明示されておりませんが、本
法案の第一条と同様、それを明示すべきであるというふうに
考えますが、
大蔵大臣及び厚生
大臣の御見解はいかがか、お伺いいたしたいと思います。
もう
一つが
地方交付税関係の問題であります。
大蔵省の
整理するところによりますと、いわゆる隠れ国債には、後
年度の処理が
法律で定められているものと、それ以外のものとに区別されております。
地方財政対策に伴う後
年度負担である二兆五千五百七十三億円が前者に属しますし、
地方交付税の
特例減額分などの
年度間調整としての
措置による後
年度要精算額一兆五千七百二十二億円は、後者にも含まれておりません。
大蔵省資料では単なる参考として記載されるにとどまっているわけであります。一方で、
地方交付税法附則第四条等に規定されている
地方交付税の九四
年度から二〇〇一
年度までの加算額の合計額は、今述べました
金額の合計額である四兆一千二百九十五億円なのでありまして、
法律で明確に規定されております。
大蔵省は、この四兆円余りの全額を必ず
地方に返済するのか、それとも
特例減額分の方は
法律の規定にかかわらず返さないというのか、どういう
所存なのでありましょうか、
大蔵大臣及び
自治大臣から
責任ある御答弁をいただきたいと思います。
次に、隠れ国債なるものの
性格についてでありますが、隠れ国債は、
一般会計歳出として処理すべき
債務を繰り延べているという点では、国債のような市場性はないものの、赤字国債と同じと
考えていいはずであります。
政府は、赤字国債発行回避の原則を守っていくと繰り返し言っておりますが、実質的には赤字国債を発行しているのと同じだと言えます。ある意味では、隠れ国債に相当する赤字国債を発行した方が
国民にわかりやすいばかりでなく、
財政節度の点からもすぐれていると思われます。このような安易な
財源のつじつま合わせを行うべきではありません。
総理のお
考えを伺いたいと思います。
最後に、赤字国債回避という
財政運営の指針についてであります。
現在、国債は建設国債と赤字国債の二種類に分けられておりますが、この分類方法には大変疑問が多くなっております。建設国債には見合い資産があるが赤字国債にはない、したがって後世代に
負担を残すことになるから発行すべきではないと
政府は主張しておりますが、果たしてそうでありましょうか。そのような
説明は、
公共事業への
資金ばらまきに対する
政治的理由づけ以上のものではないと
考えます。教育、マンパワー対策あるいは科学技術開発などの人的資本の蓄積の方が後世代にとってはより大きな資産になる場合も多いはずであります。
赤字国債回避を唯一の
財政節度
維持の目標とするのではなく、この際発想を転換して、古い金権的な、あるいは物心崇拝的な発想から脱却して、人的資産を含めた新たな公共投資概念や国債の位置づけを行った上で、
高齢化社会を展望した健全な
財政運営のための指針を創造すべきであると思いますが、いかがでしょうか。宮澤
総理の御
意見を伺って、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣宮澤喜一君
登壇、
拍手〕