○渕上貞雄君 私は、
日本社会党・護憲民主連合を代表し、さきに行われた
宮澤総理の
施政方針演説に対して
質問をいたします。
佐川急便事件と
政治改革の問題、PKO、国連
改革を含む
外交、防衛問題や憲法改正問題、そして当面する
景気対策等については、昨日、同僚の矢田部議員が取り上げましたので、私は内政問題を
中心にして
質問することにいたします。
とはいいましても、
総理、私はこれまで
宮澤総理を初めとする
政府の
答弁を聞いておりまして、私も、冒頭、
佐川事件と
政治改革の問題について言申し上げなければなりません。
宮澤総理、長期にわたる
自民党一党支配のもとで利益誘導型の
政治と金権腐敗
政治が続き、
総理大臣の選任に暴力団が関与するという
事態まで生じたことに対し、
国民の怒りと
政治不信はかつてなく高まっております。
我が国の議会制
民主主義が危機に瀕していることは、これまで
質問に立たれた各党各会派代表が繰り返し強調されたとおりであります。したがって、
総理、今
国会の
課題は、何よりもまずこのような
国民の批判に明確な回答を示し、
政治不信の解消と議会制
民主主義の再生に取り組むことでありましょう。
しかしながら、
総理、
国民注視の中で行われたこの三日間にわたる質疑応答の内容は一体どうであったでしょうか。あなたの
施政方針演説を聞いても、また、これまで
総理が我が党の山花新委員長を初め各党各会派代表の
質問に対して行った
答弁を聞いても、
佐川急便事件の徹底
解明や
政治改革に対する積極的な
姿勢は全く感じられません。
総理の
答弁で
国民の
政治不信は本当に払拭されたなどとお考えなのでしょうか。私は、この際、
宮澤総理の積極的な
答弁をいま一度強く要求しておきたいと思います。
さて、ここで私は、消費税、リクルート選挙で本院に議席を得ました者として、今日の
国民の深い
政治不信の原因の
一つは
政府・
自民党の消費税問題の扱いにあることを強く
指摘しておかなければなりません。
自民党は、さきの総選挙で消費税の大幅
減税を公約いたしました。しかるに、選挙後、
自民党政府はこの公約をほごにし、税制
改革協議を一方的に打ち切ったのであります。このことは
政治不信を増幅しており、この問題の解決なしには
国民の不信を解消することはできません。この点からも、消費税の逆進性の緩和を図るため飲食料品の非課税化を早急に行うべきだと思いますが、
宮澤総理はいかがお考えでしょうか。さて、
我が国の
経済力に見合ったゆとりある豊かな生活の
実現が
国民的
課題となっていることは言うまでもありません。もちろん、当面する
景気対策も重要でありますが、
景気回復という短期的
課題も、効率優先の
経済社会から国際
経済社会に通用する
生活者優先の
経済社会への
転換という長期的、
構造的
課題と整合的に追求されなければなりません。私は、このことを特に
指摘して、以下具体的に
質問をいたします。
ゆとりのある生活の重要な柱の
一つは、時間的なゆとりであります。
現状は、ゆとりどころか、ドイツやフランスなどと比べ年間三カ月分も労働時間が長く、過労死も後を絶ちません。私
たちは、年間千八百時間の達成という新
経済五カ年計画の
目標を
実現するには、完全週休二日制、週四十時間労働制を
実施し、あわせて、時間外・休日労働の制限や年次有給休暇付与日数の増加等の措置を講ずるための労働基準法の改正が必要であると
指摘し続けてきました。
政府も先ごろ、週四十時間労働制の導入等を内容とする労働基準法の改正案を中央労働基準
審議会に諮問するに至ったことは、ともかくも評価をしたいと思います。しかしながら、時間外・休日労働の法定割り増し賃金率の引き上げには弱腰で、年次有給休暇の付与日数の増加も見送られるのでは、
総理、これで果たして本当に年間千八百時間を達成できるのでしょうか。
他方で、生活リズムを犠牲にするおそれのある一年単位の変形労働時間制を導入しようとしていることは許せません。年間平均すれば週四十時間におさまっても、特定の時期を見れば週六十時間も七十時間も働くことになる、これが
総理の言うゆとりある生活の姿なのでしょうか。お答えいただきたいと思います。
〔
議長退席、副
議長着席〕
次に、
高齢化社会対策について
質問いたします。
宮澤総理は、前
国会、我が党の代表
質問に対し、厚生年金等の支給開始年齢を六十五歳に引き上げることは避けて通れない
課題であるとの
認識を示されました。しかし、避けて通れない
課題と断定するには、条件はいまだ整っていないと言わざるを得ません。厚生年金の六十五歳支給案が見送られた八九年当時と比べ、六十歳前半層の雇用
状況はほとんど好転していないばかりか、いまだに六十歳未満定年制の
企業が四分の一を占めるというのが実情なのであって、六十歳未満定年制の禁止、雇用と年金の接続という大原則の確立こそ急務であると考えるのでありますが、
総理の御
見解をお聞かせください。
高齢者の
介護の問題も切実です。高齢者については可能な限り
地域社会の中で生活できるようにすべきでありますが、その
介護についても、これまでのように家庭に依存することを基本とするのでなく、基本的には
社会全体で支えるようにすべきです。
政府も確かに高齢者保健福祉推進十カ年戦略に取り組んでいますけれ
ども、このいわゆるゴールドプランの目指す水準では不十分であります。我が党は、このプランを九六年度に前倒しして
実施するとともに、新たなプランの策定を
提案しておりますが、この点について
総理のお考えを
お尋ねしたい。
あわせて、市町村が
介護関連事業を
実施しやすいように、国庫補助率のかさ上げのための特例措置の立法化が必要と考えますが、
総理の
見解を
お尋ねしたいと思います。
次は、
地方分権の問題であります。
総理は
施政方針演説で、地方への権限委譲の推進を述べられております。しかし、実態はどうでしょうか。昨年末の総務庁の報告によりますと、国の許認可権は減るどころかかえってふえているのが実情です。また、今回の地方財政
対策では、補助負担金の一般財源化、公共事業の補助負担率の恒久化がなされるとのことですが、負担だけが地方に押しつけられ、権限委譲は微々たるものです。我が党は、二十一世紀に分権型
社会を
実現するために、
地方分権推進法の
制定と分権推進の
国会決議の採択を提唱しておりますが、
総理は
地方自治体への権限委譲についてどのようにお考えでしょうか。
バブル崩壊により地方へも
不況の波は押し寄せ、税収の落ち込みは深刻であります。一方、福祉や環境
対策など地方財政の役割も大きくなっています。このようなときに、地方交付税は四千億円減額されます。これは
地方自治体へのツケ回しにすぎません。
総理、これがあなたのおっしゃる地方財政の円滑な運営なのでしょうか、お伺いをいたします。
次に、農業問題について伺います。
御存じのように、
我が国の農業の危機的
状況は極めて深刻ですが、
総理も
施政方針演説で触れられましたように、中山間
地域対策が今日の農業
政策を進めていく上で重要であります。
今月十四日に発表された農政
審議会の中間取りまとめでは、中山間
地域における新たな高付加価値作目の導入や融資
制度がうたわれております。しかし、今日の中山間
地域農業の危機的
状況を見るならば、新たな負債を生み出すおそれのある融資
政策が果たして有効と言えるでしょうか。私は、今こそ、EC諸国で導入されている直接的所得補償
制度、いわゆるデカップリング
制度を
我が国でも導入すべき時期に来ていると考えますが、
総理のお考えを伺います。
次に、林業問題について伺います。
今日、農山村の過疎、高齢化等により、農業同様、林業も深刻な危機を迎えています。国土・
環境保全、大気の浄化、水資源の涵養など森林の持つはかり知れない公益的機能を見るならば、
我が国の林業の再建は
国民的
課題であります。
総理はこの問題に一体どのように対処されようとしているのか、お伺いいたします。
私は、この際特に、一昨年九月の台風による風倒木の
被害問題を取り上げておきたいと思います。
台風十九号の通り道となった地方の森林は壊滅的な
状況であり、今日に至るもその復旧作業は思うように進んでおりません。これを放置すれば、第二次、第三次の災害が生じるおそれさえも
指摘されています。この件について農水大臣はどのように考えられておられるのか、お示し願いたいと思います。
次に、
釧路沖地震について、災害に見舞われた現地の皆さんに対し心からお見舞いを申し上げますとともに、その
復旧対策について
政府の
見解を
お尋ねしたいと思います。
我が党は、二十一日、佐藤副委員長を団長とする
調査団を現地に派遣したのでありますが、降雪などのため下水道などの
被害はなお十分把握できていない
状況で、特に、公共施設である港湾、道路、橋梁、学校、住宅等住民生活に直結する施設の
被害の大きさは、伝えられている以上に大きいようであります。災害
復旧対策として、激甚災害指定の検討を初め早急に対応ができるよう現行法令を
最大限弾力的に運用する必要があります。また、特別交付税の交付など地方交付税の支給時期や額についても弾力的な取り扱いが必要だと考えますが、いかがでございましょうか。
次に、雲仙・普賢岳の噴火災害
対策についても
お尋ねをいたします。
雲仙・普賢岳の噴火活動は依然衰えず、なお二千人余りが避難生活を強いられております。島原地方の復興計画が早急に策定され、噴火活動が完全に終息しない段階でも復興の準備に着手できるようにすることが重要であります。そこで、大
規模な集団移転の円滑な
実施のための特別措置や復興計画の根拠規定、その他の特別措置を盛り込んだ島原地方の復興のための特別法を
制定するお考えはありませんか。
総理のお考えを聞きたいと思います。
JR各社は、現在、時速三百五十キロを目指した次世代新幹線の開発競争にしのぎを削っておりますが、安全輸送の原点をいっときたりとも忘れてはなりません。鉄道の高速化、ハイテク化に見合った検査チェック
体制の
見直しと、十分な時間をかけての耐久車両試験を行うよう、この際強く求めておきたいと思います。
一昨年五月に起きた信楽高原鉄道事故の原因が、一年半以上もかかって昨年十二月に最終報告が出されました。しかし、その内容は信楽高原鉄道側の安全確認ミスというだけのもので、疑問点が
解明されたとは言えず、遺族
関係者からは批判の声も出ております。しかも、運輸省の最終報告が出された後になって、滋賀県警の調べによって信号固定装置設計ミスの疑いが持たれていることも報道されております。このようなことが起こる原因は、現在の鉄道事故
調査体制に不備があるからにほかなりません。
米国では、独立した事故
調査機関、国家運輸安全委員会、NTSBがあります。
我が国でも鉄道事故について、航空機事故
調査委員会や海難審判所同様の、独立した常設の第三者的な事故
調査機関の設置が必要だと考えますが、
総理、いかがでございましょうか。
アンダマン海でのタンカー衝突事故を初めとして、最近タンカーの原油流出事故が続発をしており、深刻な環境汚染が懸念されております。油汚染に対する準備、対応及び
協力に関する国際条約、OPRC条約を
我が国も早期に批准すべきではないでしょうか。相次ぐタンカー事故の多発は、船舶の二重船体化の必要性をさらに高めております。
我が国の
企業は率先して二重船体化を図るべきと考えますが、そのための助成措置を検討すべきではないか。また、今後浮上してくると思われるマラッカ海峡の通航税問題についてどう対応するつもりなのか。これらの点について、
総理の考えを明らかにしていただきたい。さらに、今回と同様な事故が
我が国近海で起きた場合における具体的な対応策について明らかにしていただきたい。
次に、高齢者や障害者といったいわゆる交通弱者に対する交通アクセスの改善を求めたいと思います。
高齢化の
先進国であるヨーロッパでは、交通弱者に配慮した交通施設が既に町の随所に取り入れられております。米国でも既に障害者法が
制定されています。この面に関して、
我が国はまだその後塵を拝しているというのが
現状であります。国連障害者の十年は昨年をもって終了いたしましたが、引き続き、道路や各種の交通アクセスについて高齢者や身障者用の施設整備に取り組む必要があり、それを推進するための中長期計画の策定が必要であると考えますが、運輸大臣、いかがでございましょうか。
次に、教育
改革についてお伺いをいたします。
業者テスト問題が大きな問題となっておりますが、受験生に多大の不安を与えたことは極めて遺憾であります。このような問題の提起は時期を考えてしてもらいたいものであります。しかし、受験のために学校教育の中に業者テストが横行するという極めて問題のある教育の
現状の
改革に手がつけられたということは、率直に評価をするものです。
しかし、事は、文部省が業者テストについて物申したということで済む問題ではないと思います。業者テストの本質は一体何だったのか。業者テストは、知識の多寡を偏差値に置きかえて受験生の優劣を
判断する現行の受験
システムにおいては、募集する学校の
立場、特に私立の高校の
立場からは、いわゆる優秀な生徒をローコストで集める手段であり、受験生を送り出す学校にとっては、教え子を間違いなくいずれかの学校に送り込むために必要な手段となっているのであります。したがって、文部省は、業者テストをやめさせることだけでなく、偏差値受験の
システムの
改革にこそ着手しなければならないのではないでしょうか。
最近、新規採用に当たって学歴や学校歴を問わない
企業が出てきております。この傾向はますます強まると考えます。偏差値受験の
システムによる学歴や学校歴でま
社会の
変化に対応できないということではないでしょうか。国際化
社会、情報化
社会と言われる今日では、多様な
価値観に柔軟に対応できることこそ未知の
課題に遭遇してもたじろぐことなく挑戦できること、また、自分の
意見を
価値観の異なる人々にも的確に伝えることができること等々の能力が求められているのであります。マル・バツ式の単一
価値観に基づく暗記力だけを誇っていては困るわけであります。
また、日米貿易摩擦やガット・ウルグアイ・ラウンドの知的所有権の交渉等を通じて独創的な科学研究のおくれが
指摘されておりますが、ここでも、画一的な
価値観から独創的な発想ができる人材が求められております。
こうした観点からも教育の
改革が求められているのでありますから、大学入試センター試験のあり方を含めて、受験の
システムが抜本的に見直されなければならないと考えるものでありますが、
総理並びに文部大臣、いかがでございましょうか。
宮澤改造内閣で、
官房長官との兼務とはいえ女性担当大臣が
誕生したことは、男女参画型
社会の
実現を目指す上でともかくも意義のある一歩として評価してよいと私は考えます。しかし、問題は、それによって
政府の具体的な取り組みが前進するかどうかであります。
例えば、二〇〇〇年に向けての女性の地位向上のためのナイロビ将来戦略
実施に関する第一回
見直し勧告は、二〇〇〇年までに男女平等を達成するため、九五年までに指導的地位につく女性の割合を三〇%までふやすことを
目標としています。
政府もこれまで、女性の
政策決定の場への参加促進のために、各種
審議会等への参加率を高める
努力をされていますが、
目標自体が九五年までに一五%と低い上、昨年十一月現在の参加率は一〇%にとどまっているのが実態であります。このままでは、低く設定された
目標でさえもその達成が危ぶまれるのであります。女性枠を設けるなど、より積極的な特別措置を講じる必要があると思いますが、
総理並びに担当大臣、いかがですか。
男女雇用機会均等法についても、同法の施行
状況の点検と同法の規定の
見直しを行い、より実効のある
法律に改正すべきであると考えますが、
総理、いかがでしょうか。
また、一昨年、通常
国会において一連の育児休業法が成立をし、昨年四月から施行されたところでありますが、休業期間中の
所得保障問題は先送りされています。この際、労働者が安心して育児休業をすることができるよう
所得保障制度の創設を積極的に検討すべきであります。同様に、看護・
介護のための休業の法制化にも取り組むべきであると考えますが、いかがでしょうか。
総理の積極的な
答弁を期待いたします。
近年、仕事と家庭の両立を図れる勤め方として、パートタイム就労を選択する人が非常にふえてきております。パートタイマーは今や八百万人を数えると言われ、基幹的、恒常的労働力として
日本経済に欠かせないものとなっております。しかしながら、パートタイマーの労働条件は劣悪であり、しかも、
不況になれば真っ先に解雇され、いわゆる雇用の調節弁として扱われているのが実態です。我々は既に一年前、社公民連四党と民主
改革連合共同のパート労働法案を衆議院に提出しており、この際、パート立法に対する
宮澤総理の積極的な
姿勢を示すよう強く求めた、と思いますが、いかがですか。
さて、ことしは国連の国際先住民年であります。しかしながら、
政府は今日に至るもなお何らの方針も計画も示しておりません。私は、まず
我が国の歴史的事実を率直に認めること、そして、アイヌの民族的権利の回復を前提とした総合的な施策を推進するため、
政府にアイヌ民族問題を担当する正式な窓口を設け、差別立法である北海道旧土人保護法を廃止してアイヌ新法を
制定すべきであると考えます。
政府も、この際、これまでの
姿勢を改め、アイヌ新法
制定を真剣に検討すべきと考えるのでありますが、
総理、いかがでございますか。
また、部落差別は今日もなお根強く残っております。一九六五年の同和
対策審議会答申を踏まえ、立法措置を含む総合的な
対策の推進が必要であります。
さらにまた、在日朝鮮・韓国人等の定住外国人に対し、安定した在留権を保障するなど歴史的経過を十分踏まえた特別措置を講ずることを含め、賃貸住宅への入居差別の禁止、
国民健康保険への加入促進など、在日外国人の人権を保障し得るよう国内
体制の整備を図らなければならないと思いますが、これらの問題には一体どのように取り組んでおられるのか、
総理のお考えをお聞かせください。
最後に、
総理、
政治は
決断と
実行、結果に対して
責任をとることだと言われています。
佐川急便事件に対する
責任の所在を明確にしないことが
政治不信を招き、
政治改革に対する
決断のなさが既成政党に対する批判となってあらわれ、対応のおくれが
景気の低迷を招き、いまだに暗いトンネルの中だと言われています。
私は、主として内政問題を
中心に
質問いたしましたが、
宮澤総理、私は理念や
状況の説明は求めません。
国民の納得する具体的な方策、
決断と
実行を求めて、私の代表
質問を終わらせていただきます。(
拍手)
〔
国務大臣宮澤喜一君
登壇、
拍手〕