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政府委員(
清水湛君) 先生が検事の時代に具体的に捜査された事件と同一であるかどうか私存じませんけれ
ども、全く同じようなケースはないわけではございません。
御承知のように、
不動産登記手続において間違いない
登記をする手段といたしましては、まず第一に印鑑証明書、これは三カ月以内に発行した印鑑証明書でなきゃだめだと、こういう印鑑証明書の提出
制度がございます。それから、この
登記済証を出す、いわゆる
権利証を提出させる。
権利証がない場合には
保証人二人を立てる。これが今回問題になっているわけでございますが、所有権の移転の
登記に関する場合には、そういう保証書の提出がございました場合には
登記所の方では本来の申請人の家に郵便でもって、あなたはこういう保証書で
登記の申請をしているけれ
ども、間違いなく申請しているのかどうかという通知を出します。その通知に、提出した印鑑証明書に押した印鑑と同じ印鑑を押して、間違いないという返事が来れば、
登記所の方では安心してこれは間違いない申請であるということで
登記をするわけでございます。
ところが、悪い連中は、そうやって
登記所が送る通知を
本人の家の前の郵便ポストで待ち受けておりまして、郵便屋さんが来ますと、その通知は私が
本人に持っていきますと言って途中でカットして、自分たちが偽造した印鑑をそれに押して
登記所に送り返すというようなことをする。これが難しい場合には
本人の知らない間に住所を移転してしまいます。これは私も経験したケースでございますが、住所を移転してしまう。住所を移転してしまいますと、そこで
本人に成り済まして新しい印鑑登録をする。その印鑑登録に基づきまして印鑑証明書を
登記所に提出する。
登記所の方では、これはもうもちろん
保証人、
登記済証がないわけでございますから保証書で申請する。そうすると、
登記所の方の郵便による通知は、勝手に住所を移転したところのアパートの一室がなんかに
登記所の方の通知がいく。そこで偽造印鑑を押して
登記所に送り返す。
こういうような、まことに手の込んだ形での他人の
土地の売り飛ばしという方法、いわゆる地面師の行為と言われでおるんですけれ
ども、そういうのがないわけではございません。
ただしかし、最も大事な印鑑証明書の偽造とかあるいは印鑑証明書のだまし取りという行為が行われるということになりますと、これはなかなか
登記所の窓口ではチェックはできない。印鑑証明書によるチェックあるいは保証通知によるチェックと二重のチェックをするわけでございますが、それをさらに果たして間違いなくその
本人のところへ
登記所の方からの郵便による通知が行って、間違いなく
本人がそれに判こを押して送り返したかということまで確認をするということになりますと、これは非常に難しい問題になってくるのではないか。
年間、保証書による
登記事件が二十二万件
程度ございます。
そういう中で、いわゆる本当に悪質な地面師グループがそういう手の込んだ売り飛ばし行為をするわけでございますが、私
どもといたしましては、そこまで例えば
日本では
本人の身分証明書なんかは個人個人が持っているということはございませんので、たまたま運転免許証であればそれはその人は結構だということになりますが、そういうようなものを個別に提出を求めて
本人を確認するということは、
年間二十二万件ある保証事件の中で到底これは対応できないことになるのではないかと。
やはり勝手に他人の住所を移すようなことができるだけできないようにする。それから、そういうことまでしなくでも、最近高齢者問題というのが問題になりまして、高齢者に甘言をもって近づき全然
登記とは
関係ないものに使うんだと称して印鑑証明書をだまし取るとか、あるいは
登記済証をちょっと貸してくれということで借りてきて高齢者の知らないうちに
土地を売り飛ばすというような現象が新聞等でも報道されております。そういったたぐいの犯罪行為、これは
登記所の窓口でチェックできるものはチェックし、現実にチェックされた例もあるわけでございますけれ
ども、一〇〇%完全に防ぐというのはまあなかなか難しい問題もあるような気がするわけでございます。
年間、
登記事件は二千数百万件の
処理があるわけでございますが、その中でどの
程度のものがそういう不正な
登記ということで紛れ込んでおるかという問題もこれはあるわけでございまして、私
どもといたしましては、現在の
制度はかなりこれはよく考えられた
制度だと思いますので、これを的確に正確に履践することがまずもって私
どもに課せられた責務であると、こういうふうに考えているわけでございます。