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石原健太郎君
法務当局におかれましては、日夜御苦労さまです。
今日の
政治不信の大きな原因の
一つは、
政治とお金、特に政界と業界との金銭的癒着にあると思われますが、現在その一端が解明されつつあることは
政治や
行政への
国民の
信頼回復のため大いに役立つ好ましいことと御
努力に敬意を表し、高く評価いたすものであります。今後腐敗の根源を絶つためさらに御
努力いただきますことをまず要望させていただきます。情において忍びがたいこともおありと推察いたしますが、かつて司法省の創設者であった江藤新平さんも司法当局に捕縛されたことに思いをいたしますとき、それが
検察の宿命なのかとも感じております。
ところで、
後藤田法務大臣の所信の中にもありました外国人の人権の保全について伺わせていただきます。
私は、当
委員会に所属させていただくようになりまして在日外国人のことを知りたいと
考え、本屋さんでそんな関係の本を探しているうち、「タイから来た女たち」とか、「ラパーン
事件の告発」あるいは「近くて近いアジア」などの本を見出しましたけれ
ども、そういう本を読んでいますと中身がとても悲惨で読み続けることができない、もう三、四ページ読むとあとは嫌になってしまう、そんな感じの本でございました。それで本当にこんなことがあるのかとびっくりして警察庁に問い合わせたら、それが本当なんです。
それで、警察庁の資料をちょっと読ませていただきますが、「キャバレー経営者らによるフィリピン女性十八人に対する労基法違反
事件」、「松山市内のキャバレーの経営者は、従業員四名と共謀して、
平成三年七月二十五日ごろから、同年九月六日ごろまでの四十四日間にわたり、フィリピン女性十八名を自己の経営する三店舗において従業員として稼働させ、トップレスダンスや客への卑猥なサービス、売春行為を強要していた。」。
それで、九一年九月十日、読売
新聞にその
事件が報じられているんですけれ
ども、「ジャパゆきさん強制労働−松山のキャバレー比の十八人保護」、「……容疑者ら五名は共謀し、……十八歳から二十六歳のフィリピン人十八人を、……プレハブ小屋に住まわせ、階段への出入り口に鍵を掛けて行動を制限。殴る蹴るの暴行や脅迫を加えて、……売春を強要するなど労働を強制していた疑い。……パスポートや帰国用航空券は会社側が預かっており……小屋は、約二十八平方メートル。」、十六畳くらいなんでしょうか、「……多いときは二十一人が詰め込まれ、
一つのベッドに二、三人が体を縮めて寝ていた。」、こうなってるんです。
それから、これ一件だけじゃなくてもう一件ぐらい例を挙げさせていただきたいと思うんですが、これも警察庁からいただいた資料です。「一九九一年十月、相模原市内のスナック売春を端緒とした一連のタイ人女性を使用した売春事犯の概要(神奈川県警)」、「神奈川県警では、
平成三年五月、相模原市内のスナックでタイ人女性にホステスをさせながら、飲食客らに売春をさせていた同スナックの経営者である暴力団幹部とその妻の二名を売春防止法違反で逮捕するとともに、」、さっきの記事では女性は保護したと書いてあるんですけれ
ども、こっちは女性は逮捕したとなっています。
続いてその
事件との絡みで、「埼玉県浦和市内でスナックを経営する暴力団幹部らからタイ人女性の斡旋を受けた」、「浦和市内のスナック経営の暴力団幹部らは、千葉県松戸市内でスナックを経営する暴力団準構成員らと共謀してタイ人女性を支配下に置いて売春をさせていた」。
これはこのときの
新聞記事によりますと、「監禁して強要・搾取−タイ女性組織的売春苛酷
ぶり全容解明」となっているんです。「……相模原市内のスナックの売春が発端になった一連の
事件で、売春防止法違反で六人が起訴され、入管法違反容疑で逮捕されたタイ女性は五十人以上にのぼった。女性たちは、タイのブローカーを通じて千葉県の九十九里浜近くのスナックに送られ、」、「スナックがブローカーに払う金は一人あたり約百五十万円。しかし、スナックは渡航費用や借金を口実に約三百五十万円を女性の借金として負わせ、半ば監禁状態にして売春を強要、代金の殆どを搾取した。」。
どうもこれは暴力団の資金源にもなっているようでして、今五万人ぐらいのタイやフィリピンの女性が
日本にいるかと思うんですけれ
ども、一人百万ずつ暴力団に入っていたとしても五万人ですから五百億円ですか、大した金額になると思うんです。
この本には、「タイから来た女たち」という本に書いてあるんですけれ
ども、「現行の捜査機関は、彼女達の問題を正面から「人身売買」として把握しようとせず、徹底した捜査・事実究明を一貫して、半ば意識的に怠っているのである。」、こう出ているわけです、これはちょっと書いた人の独断もあるかもしれないんですけれ
ども。
これ、最近出された不法滞在者問題分科会の報告書による数字なんですけれ
ども、
平成二年七月一日現在にはタイとマレーシア、フィリピンの女性の
日本に滞在する合計が二万三千人でありまし
た。しかし、
平成四年五月にはこの三国の女性たちが五万一千人も
日本に滞在している。まさにそうした女性たちが
日本に来ることが、それは入国管理局や何かで水際でも随分防止しているようですが、こういうふうに実態は増加しているということを見ますと、何かさっきの著者の言うこともあながちいいかげんなことばかりではないと思うんです。
こういう事態がこの
日本で行われているということは文明国の名に恥じるものではないかと私は
考えるのであります。また、人道的見地から国際貢献をしなくてはいけないなんて言っておりながら、一方国内でこんな非人道的な仕打ちを外国人に対して行っていたのでは、これは支離滅裂なことではないかとも思うわけであります。
法務大臣は、こうした実態があることをどのように受けとめられるかお聞かせをいただきたいと思います。