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参考人(
長谷川徳之輔君)
建設経済研究所の
長谷川でございます。
私は、
地価動向と
土地政策ということで私の
意見を申し上げたいと思います。
レジュメを準備しましたので、
レジュメの
図表等を中心に御説明を申し上げます。
最初に、
立場でございますが、
土地や
住宅問題を論議するときにどうしても実は
立場が優先してしまう。お役所の
立場、
民間の
立場、
会社の
立場、銀行の
立場、いろいろな
立場がありますが、しかし
立場というものは、すべての場合に
個人の
生活という
視点が私は絶対必要だと思っております。しかし、今までの論議というのは、実はこれは、端的に申し上げれば、
自分の
会社にとって損か得かということが、
税制にしろ
土地神話にしろ、あらゆる場合の
判断の基準になりました。事
土地住宅問題に関しては、組織あるいは
会社にとっての損か得かということではなくて、
個人の
生活にとって望ましいか望ましくないかという
判断で物を決めるべきだというふうに私は思います。
その
意味で、私は、
個人の
生活、
生活者の
視点で物を評価して考え方を述べたいというふうに思います。
最初に
地価の
動向についてですが、私は、
地価の
動向を見ると、今、
構造的変化が起こっているというふうに思います。
その
あたりを
図表で見ていただきますと、四ページ目が
地価公示による
住宅地の
地価の変動でございます。詳しくは申し上げませんが、
東京圏、
大阪圏、それから
東京都の
区部等で
数字を挙げてございます。
東京都の
区部では
昭和五十八年に比べて六十三年に三倍に
上昇し、それから
大阪圏では
平成三年にほぼ三倍に
上昇し、
東京圏では同じく
平成三年に二・五倍に
上昇する、こういう経過でございますが、ここで私が見ていただきたいのは、三年も四年も実は
バブルが続いたということでございます。
大阪圏の場合には実は急
上昇して急落しています。本来、
東京の二十三区も急
上昇して急落すべきはずでございますが、残念ながら、実はこの六十二年、六十三年に大変矛盾した
政策がとられた結果、その
バブルの
崩壊が長引いてしまったというふうに私は思います。
昭和六十二年、そこに書いてございますとおり、ブラックマンデーの前後に株価も下がり
地価も下がったわけでございますが、実はそこでとられた
政策は、一方で
土地臨調を発足し
監視区域を導入するという
対策をとりながら、他方で、六兆円の
緊急経済対策を実施し、公定歩合を二・五に下げ、
NTT株の
大量発行をするという
バブル経済が同時並行的に進んだ。これが実は
バブルの
崩壊のシグナルを見失って三年も四年も続いてしまったということで、実は
政策の
整合性ということが欠けていたのが非常に大きな
原因ではなかったかということをこの
グラフは示しております。
五ページの図の2が
商業地でございまして、同じような傾向でございます。
それから、六ページの図の3は、実はこれは少し日本全体に目を転じて、
都道府県別の
平均地価の
動向を
縦軸の
グラフにしてみました。
北海道から
沖縄まで、
住宅地の一平方メートル
当たりの
値段が
幾らが
幾らになったかという
数字を出してみました。これは一九八〇年、八四年、それから一番高いとき、それから
平成四年、この四
時点で
県ごとの
地価の
水準を見てみました。
そうすると、一番黒いところ、一番下が
昭和五十五年、
地価高騰前でございますが、この
時点で見ますと、
東京が大体十八万円ぐらい、
東京周辺の埼玉、千葉、神奈川が大体九万円ぐらい、
大阪、兵庫、京都が大体九万円か十万円。この
東京とその
周辺、
大阪とその
周辺を除きますと、
北海道から
沖縄までほとんど四万円から五万円という
数字でほぼパラレルでございます。
この時期の
地価は大変に高かったのでございますが、私はかなり
合理性があったと思います。
この
水準でもって
住宅価格、ここでは二百平米の
敷地に百平米の
床面積の
戸建て、それと八十平方メートルの
敷地に八十平方メートルの
床面積の
マンション、この
値段を計算しますと、
昭和五十五年、一九八〇年には、
東京では
戸建てが四千六百万円、
地方では二千六百万円、
マンションは
東京で二千四百万円、
地方で千四百万円、こういう
数字でございました。これが
ピーク時、
東京では百二十万、
大阪では六十万になるわけでございますが、この
ピーク時で計算しますと、
東京では
戸建てが二億八千万円、
地方では三千六百万円、
マンションでは
東京では一億二千万円、
地方では二千六百万円という計算になります。今度は一九八〇年の
時点をごらんいただきますと、実は
東京の
マンションと
地方の
戸建てが同じ
値段でございます。こういうことは実は大変リーズナブルな
地価水準だというふうに思います。
ところが、その
ピーク時には
東京と
地方で、
戸建てで八倍、
マンションで五倍の差が出ております。世の中の
商品に、
地域によって五倍、十倍差のある
商品はございません。同じ自動車が
東京で二千万円、大坂で二百万円するわけがございません。
これはアベレージの
住宅でございますから、少なくとも私は、この一九八〇年というような
水準に
合理性がある、そういうふうに合理的な
地価形成が図られるべきだと思いますが、残念ながら、実はこの
地価の
高騰の結果、大変
地域的に矛盾した
地価形成になっているというふうに思うわけでございます。
さて、こういうことで
地価の
動向を見ていただきましたが、この
地価の
動向を少し見てみますと、一九五五年から一九八五年まで、
昭和六十年までの三十年間に私は
土地神話ができてしまったと。これは、
地価上昇率が常に
GNPや
所得や金利より高いという
時代が三十年続きました。その結果、我々に
土地神話が定着してしまいました。そして、一九八五年から九二年はこの
土地神話が極端に実は増殖した
時代でございまして、大変矛盾した
時代でございまして、
バブルが極限までになって壊れた
時代でございます。
これからは、実はこの三十年続いた
土地神話、三十五年続いたというそのゆがんだ
経済というのが
崩壊しまして、私は、
経済と
地価が均衡した
状況、収益に応じて
地価が形成されるというごく
当たり前な
状況になっていくというふうに思っております。
それを七ページの図でごらんいただきます。
七ページの図は、これは
昭和三十年から
平成四年までの間の
地価と
GNPの
関係を示しております。上の線が
地価、下の線が
GNPでございます。
昭和三十年から
昭和六十年の三十年間、
地価は五十六・一倍に
上昇しております。
GNPは
名目GNPで三十七・七倍であります。そうしますと、実はこの三十年間、
地価も大変
上昇しましたが、
GNPも
上昇しました。したがって、時間を置いて必ず
GNPが
地価に追いつくという
関係がございました。言ってみれば、時間差でもって
バブルが消えるという
関係にございました。ここに実は、必ず
最初に買った方が得だ、必ず売れるという
土地神話が生まれたわけであります。
ところがこれが、六十年以降を見ますと、
昭和六十年から
平成三年にかけて
地価が五十六・一倍から百七十二・二倍に
上昇しました。
GNPは三十七・七倍から五十三・五倍。実はここにこれだけの格差ができます。この格差を従来どおりの成長率で埋めようと思えば何年かかるかということでございます。この百七十二・二に五十三・五という
水準が追いつくには、
経済成長は合せいぜい四%、賃金もせいぜい三、四%でございますから、その
水準でいけば実に二十五年という年月がかかります。二〇一五年にならないとこの
GNPが上の
地価に追いつかないわけでございます。
実はここに
バブルの
崩壊した
原因があるわけでございまして、かつてのように
地価に
経済が追いつくという
関係ではなくて、
経済、
生活の方に
地価が追いつかないと
経済は機能しない、こういう時期になったというふうに理解すべきですし、今
バブルが
崩壊し
地価が急落したのもまさにそういうことに基本的な
原因があるというふうに理解すべきだと思います。
さて、こういう
構造的変化が起きた
状況での
土地対策でございますが、
最初の一ページ目にお戻りいただきまして、私は、
土地政策の目的というのは
個人の
生活の質を向上することだし
住宅と住環境を改善することだと思います。昨今の不況から
経済か
生活かとかあるいは景気か
土地かという選択を迫られますが、私は、
土地対策が講じられ住環境が
整備され
住宅があって初めて
経済も成長するわけでございますし、
経済も
生活も同時に達成するでしょうし、景気も
土地も同時に達成するでしょうし、相矛盾するものではないと思いますが、最近ともすると景気
対策のために
土地政策が後退してもいいというふうなムードがございますが、しかし私は、それは非常に近視眼的な
視点だろうと思います。
土地政策の総合性、
整合性でございますが、
土地政策というのはいろいろな
視点が重なり合ってその
政策が行われます。その場合に、実は基本的にそれらは同じ方向を向いているという総合性と
整合性であります。一、二年の短期的には
監視区域の設定、
不動産金融規制による緊急避難的な公的介入、これによって仮需、投機を抑制するということにしました。中期的には
土地税制をしっかり立てて
土地制度の枠組みを設定します。現
時点ではこの時期まで来たわけでございます。この四、五年でこの
時点まで来まして、これからは実は長期的な
都市計画、
住宅宅地の計画的
供給ですが、にわかに
都市計画や
宅地供給ができるわけではございません。これを安定的、計画的に実施するしかないわけでございます。
この三つの時間的な流れに従った
整合性を持って方向づけていくべきで、これを後戻りしたりするのは大変まずいことだというふうに思います。
この
意味で
政策についての評価をさせていただきますと、短期的な
監視区域、これは時限的な
緊急措置で実際的には役目を終えたと私は思っております。
石原先生もお述べになりましたように、やはり
土地情報の収集、公開の手段として、市場をクリアにする手段として利用していくべきだと思います。
不動産金融規制、これは既に発動され解除されておりますが、これは基本的にはまさに
緊急措置でございまして、その対応は的確であったというよりむしろ発動が非常に遅かったという点を私は危惧しておりますし、これからも機動的に発動し得るという余地を残していくべきだろうと思います。仮需の抑制には、最大の効果は実は
不動産金融規制でございます。これの効果というのは絶大でございますので、これについて
地価の監視等に機動的に発動し得る余地を残していくべきだというふうに思います。
さて、
土地税制でございますが、
地価税、これは一面大変評判が悪うございますが、私はこの
地価税についてはもう少し大所高所から考える必要があると思います。
自分の
企業にとって損か得かという
視点ではなくて、大所高所から考えていく必要があると思います。
この
地価税は、
土地税制の改革の象徴でございます。
土地の
資産としての
有利性を縮減して有効利用を
促進するということでございますが、実は一番の効果は
地価公示の一元化を図るということでございます。
この
地価税によりまして、
税制の
課税標準が
地価公示の一定割合、八割ということになりました。八割に対して
課税をするということは、実はこれは
バブルに対して
課税するということでございます。
バブルに
課税をしたのでは、実は収益では支払えません。したがって、
バブルに
課税することによって現実には収益によって支払える
水準まで
地価が下がらざるを得ない。
地価税というのはこういう効果が実はございます。非常に逆説ではございますが、
バブルに
課税をして結果的に
バブルを消すということでございますが、その役目を実は私は果たしていると思っております。
今〇・二%、ことしからは〇・三%ですが、この
程度の
地価税が
企業の収益を圧迫するというのは、いかに実は収益性がないかということ、
地価が高過ぎるかということでございます。〇・二%、〇・三%の収益の上がらない
土地というのはいかにも収益が落ちるわけでございます。それを実ははっきりさせたということが
地価税の大きな目的でございますし、これは今度の
地価税の発表に、よってはっきり
企業も認識したはずであります。問題は、
地価が高過ぎるから
地価税の負担が重いんだということをしっかり認識すべきだろうというふうに思います。
固定
資産税との二重
課税の問題、これが実はございます。パーフェクトな
制度ではございません。
私の理解では、固定
資産税改革へのインセンティブになりまして、いずれ固定
資産税の改革がきちっとできるはずでございます。
地価税の機能が固定
資産税に引き継がれるはずだというふうに思います。その引き継がれることが早ければ早いほどいいわけでございますが、固定
資産税の持ついろいろな問題から
地価税がしばらくの間その役を担わざるを得ない、こういうふうな
状況だと思います。さらに、
地価税というのは、
所得と
消費と
資産の
バランスということであれば、実はこれは減税財源にこそ充てるべきだというふうに私はずっと理解しております用
地価税はそういうことでございます。
それから、次の問題は不良
資産の問題でございます。
これからの最大の問題は不良
資産の問題であります。不良
資産はどのぐらいかわかりませんが、在庫としての不良
資産は百兆から百五十兆だと思います。六カ月以上利子が滞納している不良債権は十二兆円、回収不能は四兆円と言いますが、実際には私はもっと多いと思います。これはオープンにしませんからわかりません。
もし百兆円の在庫とすれば、これは九州全土の宅地
資産額に匹敵します。九州全土の宅地が買える
値段になります。そして、二戸四千万円の
マンションで
土地代を半分にしますと、百兆円の
土地というのは五百万戸に相当する在庫になります。実に巨大な在庫圧力でございます。この
土地が虫食い、不整形、高
地価、非採算、こういう
状況で町中に放置されております。これはほっておけば腐ってしまいます。
今、共国債権買収機構は、
土地ではなくて債権を
買い取って、とりあえず右から左手に移して帳簿の処理をしようというふうに考えておると思いますが、私は、
不動産不況の解決、それから
経済の再建には、この不良債権、不良
資産をどう有効利用してどう
住宅地に充て、どうビルを建て、これをアフォーダブルな
水準の
値段でもって
消費者に
供給していく、こういうプロセスが最も必要だと思いますが、残念ながら世の中は、当面損したくないということで損を先送りにし、なおかつ
土地を塩漬けにして、実は事態を悪くするだけです。
実は積極的な対応が私はどうしても要ると思います。その場合にある
程度ゼロクーポン債によって買収するなり何なりして公が何らかの形で介入し、これを積極的に有効利用する手段をとらざるを得ないというふうに理解しております。
それから、
住宅宅地の計画的な
供給でございますが、市場を活性化する最大の条件は、
住宅価格が
消費者のアフォーダブルな、要するに購入可能な
水準に回帰することでございます。
年収五年分の
住宅供給が質の向上、高遠狭の解消ということを伴いまして建築空間を拡大し、付加価値を高め、
経済を振興し、そして
住宅、住環境を改善するということにいくことによって、市場は活性化し、
経済は機能するはずであります。
今、例えば四千万円の
水準が
年収五年分だと仮定しましても、従来は
土地代に二千五百万払って建築費に一千五百万でございましたが、これからは
土地代に一千五百万、建築費に二千五百万、そういうふうにコストの構成を変えるべきだと思います。
土地代は下がっても実は別に
住宅の効用が落ちるわけではございません。しかし、建築費に入れる
値段がふえればそれだけ面積がふえます。面積がふえれば電気製品も家具も売れるでしょう。
経済の振興になるはずでございます。まず建築面積をふやすことが大事であって、面積がふえない
土地に金を入れても何にもならぬということを理解すべきだと思います。
これからは、例えば建築費を三十万として悠々二千五百万で百平米近い
住宅ができます。それに対応する
土地代が千五百万であれば、容積率一〇〇%で平米二十万、二〇〇%で四十万、四〇〇%で八十万、こういう
数字になるわけでございまして、
年収五年分という
水準は、
地価水準のあるべき姿としての方向を示すべきだというふうに思います。
それから、優良賃貸
住宅の充実、
地価を反映させない
住宅供給、これはこれからぜひお考えいただきたい。
政府も、優良賃貸
住宅事業の助成について方向を見出したようでございますが、
土地を買って
住宅をつくるという何ともばかばかしいこのボタンのかけ違いを戦後の
住宅政策がしたのが実は事の間違いの始めでございます。いろいろな方法があると思いますが、市街化区域農地や既成市街地の
土地利用
促進にしろ、
土地を買わずに有効利用を
促進する、利益をみんなで享受し合って
住宅供給を進めるということの
政策をとるべきだと思います。
それには実は、私の案では、建築費は公共負担、
土地代は地主負担、建物の所有権は地主にくれてしまって家賃は
土地代を抜いた家賃で形成し、そして自治体は固定
資産税や住民税をもって支出を回収するというふうにすれば、だれも損じないで実は安い
住宅が
供給できるはずだというふうに思っております。
それから、
石原先生からもお話しございましたが、市街化区域農地の
宅地化についての
整備プログラムを実施する。その場合に、実は
宅地並み課税というのは税収を伴うわけでございますが、この税収をインフラ
整備なり宅地
開発なりに投入するようにして
宅地供給が進むように総合的な対応を図るべきだというふうに思います。
それから、その他たくさんございますが、さらにいわばこれから大きな
国土利用の変革がある。
それから減反農地でございますが、今八十万ヘクタールの減反がございます。八十万ヘクタールの減反というのは全国の宅地面積に等しい面積でございます。もしこの減反面積が有効な都市的
土地利用になっていくようにすれば、今の倍の実は宅地面積ができる計算になります。そういう
意味では、さまざまな国際
関係の中で、こういう問題、農業の問題、いろいろございますが、こういった問題を含めていかにして都市的
土地利用に国土をうまく有効利用していくかというもっと広い
視点で
宅地供給、
住宅供給を考えていくべきだろうと思います。
それから、七番にオフィスビルの不況でございますが、これはマイナーですから省略いたします。
以上でございます。