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及川一夫君 問題としては大きなことではございますけれ
ども、それだけでもって終わるものではないんだと思います。
もっと構造的なものがあるはずだということを前提にして考えていきますと、
先ほど局長もNTTのあり方の問題とか、あるいは競争
政策のあり方の問題とか、国内と国際の区分問題とか、
インフラ整備の問題や研究開発の問題、それぞれ課題があるわけですね。したがって、すべてを申し上げるのには時間もないし、また、本来の法案の
意味からすると、関連はしますけれ
どもやや本筋じゃないということですから、ある
意味できょうのところは遠慮をしたいというふうに思いますが、ただ大臣、
現状、僕はこのことだけは知っていてもらいたいというふうに思うんです。
今、確かに競争になっていますけれ
ども、規制下の競争ということに実はなっているんです。例えば、あまねく公平にNTTはしなければいけないということになると、いかなるところにも電話を引いて、市外回線も全部引かなきゃいかぬということになりますし、片やあまねくという
条件がないと、好き勝手にもうかると思うところに回線をつけなさい、そして
事業をやりなさい、言われる方からいえば損をするなと思うところには線を引かなくてもいい、こういう問題が
一つあるわけですね。あまねく公平というのは当然なことだと思うが、競争という理念だけから考えればそういったことが
一つの大きな問題になっていく。
それから、競争競争と言うけれ
ども、料金上の競争、つまり料金が安ければよろしい、サービスは向上された、こういうものと、それからいろんな
意味でのサービス、これを向上させる競争と二つあると思うんですが、今現実にはもう料金上の競争に集約されている。こういったことで果たしていいのかどうかというような問題。
それから、競争されているのは俗に言う市外回線ですよね、長距離回線と言われている。したがって、市内回線ネットワークというのは、よく
郵政省は独占独占と言うんだけれ
ども、私から言えば、これまで競争のエリアに入れたらまずもってNTT以外の
事業者は自分で回線を引かなきゃいかぬわけですね、東京なら東京の中に。住宅まで全部引かなきゃいかぬ。これでは社会資本の二重投資ということになるんじゃないかという当時議論があって、そして、市内ネットワークというか市内回線というのは、これは競争にしないでNTTの持ち分にしたということになっている。
しかし、現実の電話というのは、市内ネットワーク、そして市外回線、長距離回線というものがなければサービスは成り立たないわけですから、やはり市内ネットワークというのは非常に大事な要素なんですね。これに対する
投資額も相当なものだと私は聞いている。一兆八千億の年間の
投資額のうち八〇%はこの市内ネットワークに対する、競争
分野でないところに投資をしないと良質な通話ができない、
通信ができない、こういう
条件に立たされているわけで、そういったものをどういうふうに考えるかという問題もあるだろうと思うんですね。
それから、これは大臣は長い政治生活をやってきているから多少なりとも御存じだと思うけれ
ども、もともと電信電話公社のときには、今
郵政省、政府が指導しているような
事業部制なんというのはないわけですね。全部ひっくるめて収支を計算して黒か非かということになっていた。そういう中で市外料金はやや高くして、そして市内料金は低くして、番号案内は無料にして、公衆電話も公衆全般が使うんだから安くしてというような形で運営されて、市外回線のサービスでもってある
程度ほかのゼロであるとか安い面を補ってきた、こういう経過になっているんですね。
ところが、民営化するときにそれは全部総括していないんですよね。民営になってから
事業部制だということになって、市外、市内、番号案内、公衆電話あるいは基本料金というふうに立てられできますと、当然
事業部制ですから独立採算ですわね。独立採算を前提にしてやればコスト主義になるから、結果はもう明らかなんです。
例えば、電話番号案内というのがあるけれ
ども、あれはゼロだったんです。無料だったんです。しかし、当時二万名ぐらいの電話交換手がおったということになると、それはどこから持ってくるかといえば、別のところでやってきたわけでしょう。番号案内が独立採算ということになったら、ゼロですから何としても有料化しなければならないということになって、今現実にはたしか三十円ということになっている。しかし、それでコストに見合っているかというと見合っていない。こういう問題が実はそれぞれにあるわけですよね。だから、そういう構造上の問題というやつを本当の
意味で整理してあげないと、なかなかもって公正な競争というところにいくような形にはならないんじゃないか、私はこんなふうに実は概括的に言うと思っている。これが
一つ。
それから、もう
一つは国際
通信の問題ですね。これは
我が国だけと言ってもいいんじゃないでしょうか、国内と国際
通信を別々の企業にしているのは。国営であろうと民営であろうと他国の場合は大体一緒なんですね。そして、世界的な
通信戦略というものを決めて、そして今や世界に乗り出してきている。今や情報化社会だ、世界経済を握るには情報を先取りしなきゃいかぬ、そのためには
通信というのは重要だよと。そのためには
通信でいかに主導権を握るかということで、とりわけイギリスのBTなどという
民間会社はそういう発想で実は二十二億ドルほどのいわば投資というものも考えて出されてきているわけですよね。
そういうふうに考えると、今のKDDで二十二億ドルに匹敵するような国際投資というのはできるだろうかどうだろうか、あるいは国際的ないろんな
通信技術上の要請にこたえていけるだろうかどうだろうかというようなことを考えると、
運用の問題はともかくとして、
通信という技術も
運用もさらに建設もというような
立場からいえば、この国際という問題に対してどういうふうに対応するかということも現実問題としてはあるんではないでしょうか。
例えば、今タイで建設工事をやっているというふうに聞いていますけれ
ども、これはNTTがやるべきであるということで
郵政省から了解をもらってやっているというふうに私は聞いているんですけれ
ども、事ほどさように、今の
法律では国際のコの字がつくとNTTは何にもできないんですよ。
郵政省の了解をもらって初めて乗り出すことができるという形のものなんですね。
一方、株価の問題があるでしょう。株価について何とかして上げることはできないかということで自民党の
先生方も、ささやかでも我々もいろいろ考えてみた。しかし、方策方策がすべて公正取引
委員会を意識しなきゃいかぬし、あるいは独禁法違反になるし、商法上の違反にもなってくるということでどれもこれもうまくいかないんですよね。国内法でも規制がかかっている。そして、回り回って戻るのは、やはり株の値というのは、この企業が、産業がこれから発展性があるのかどうか、あるいはすばらしい企業だというふうに言われる企業なのかどうなのかということが株の値段を決めていくんだよということになると、NTT自体の業績あるいは
収支関係等がよくならなければ株の値段も上がっていかない、こういうことに私はなってくるんだろうと思うんです。
そんなことからいえば、どうもこの国際という面では象徴的にKDD、こうなるけれ
ども、KDDで補い切れない国際的な課題がある。そのことを
先ほど白井局長も触れたんだろうと思います。
一応きょうはこの二点について、大臣どんなふうに考えられているか、ちょっとお聞きしたいというふうに思います。