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政府委員(
中田恒夫君) お答え申し上げます。
まず最初に、今回の改正法で規定されます自首と認められる要件の
関係でございます。この法案の三十一条の四で言っております自首の意義でございますけれ
ども、刑法上の自首と同義だと考え
ておりまして、つまり、犯人が
捜査機関に対して自己の犯罪事実を自発的に申告して、その自分の訴追を含む処分を認めることをいうということだろうと思います。
判例等によりますと、自首と認められるためには、実体面、手続面での両方の要件を満たすことが必要とされておりまして、まず実体的要件でございますけれ
ども、数点ございますが、例えば一つは、自発的に自己の犯罪事実を申告する必要があるということであります。それから二つ目には、申告の中には自己の訴追を含む処分を認める趣旨が明示的または黙示的に含まれていることが必要であります。それから三つ目には、一罪を構成するすべての犯罪事実について申告する必要がある。四つ目に、当たり前のことでありますが、申告内容が虚偽でないことであります。
それから、手続的な要件として言われておりますのは、例えば一つは、
捜査機関、検察官なり司法
警察員でございますけれ
ども、この
捜査機関に対する申告であることが必要であります。それからまた、書面または口頭でなされた申告であることというような手続的な要件が言われておるところであります。
なお、刑法の四十二条では「夫タ官ニ発覚セサル前自首シタル者」というような書き方がしてございますけれ
ども、この法案の三十一条の四におきましては
捜査機関に発覚する前であることは要件としておりません。この理由でございますけれ
ども、
けん銃等の提出あるいは自首を促すことによって
けん銃等の使用を防止するという政策上の必要性は、
捜査機関に発覚した後であっても変わりはないというように考えたことによるものであります。
それから、あと具体的な当てはめの問題について三点
お尋ねでございました。
具体的にどのような場合に自首に当たるかということについては、大変失礼でございますけれ
ども、個々の
事案ごとに今申し上げましたような要件に当たるかどうかということについて、最終的にはこれは
裁判所の判断でございますので
裁判所の判断にゆだねなくちゃならないわけでありますが、ごく
一般論としてこうではないかというようなことで申し上げます。
初めに、別件で逮捕、勾留されている者がその別件で取り調べを受けている途中に自発的に
けん銃の隠匿場所を
お話しになったということが第一のケースでございますし、第二のケースは、余罪として
不法所持罪について追及を受けて
けん銃等の隠匿場所を自供した場合、この二つのケースでございます。
これも個々具体的なケースによるわけでございますけれ
ども、
一般的には、逮捕、勾留中の者でございましても、
捜査機関の働きかけ、例えば尋問なりその他の
捜査活動ということで
捜査機関の働きかけを受けることはあるわけでありますが、そういった
捜査機関の特別な働きかけを受けることなく余罪について自発的に供述をしたんだというような場合には、この改正法案で言っております自首に当たるんだというふうに私
ども判断しております。ですから、最初のケースは自首に当たりますけれ
ども、二のケースは余罪として
不法所持罪について追及されているという場合でありますので自首には当たらないんではないかと思っております。
それから、三つ目のケースでございますけれ
ども、
けん銃等の隠匿場所なり自己の住所、氏名だけを告げて出頭してこない場合ということであります。犯人がみずから出頭しないままに自分の犯罪事実を申告するケースとしては、例えば他人を介して申告する場合、それから犯人みずからが電報とか電話で申告する場合というような場合があるんだろうと思われます。
このような場合に、自首について代理が認められるのかどうかとか、電報というのは先ほど申し上げました書面に該当するのかどうかとか、あるいは電話による申告というのは口頭の自首に該当するのかどうかといったさまざま論点があることは承知しておるわけでございますけれ
ども、いずれにいたしましても、法律上、自首に刑の減免の効果を付与している根拠というものが主に自首を促すことによって犯人の検挙を容易にするなどの政策的な配慮にあるということからいたしますと、申告した時点で犯人がいつでも
捜査機関の支配内に入る態勢にない限り自首とは認められないのじゃないかというふうに考えます。したがいまして、所在を不明にしたままにしての申告というものは自首に該当しないというふうに考えております。