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国務大臣(
森喜朗君) 吉村
委員、大変広範な御
質問でございまして、簡単な答弁で私の哲学などはなかなか申し上げられませんし、またここで余り表立って哲学などを申し上げると、後からまた野党の皆さんからそれについてまた御批判をいただいたり御
論議の種になる可能性もございます。
中堅層の所得税に対する負担感の増大、これはまさに
委員御
指摘のとおりだろうと私は思っております。したがいまして、所得税減税を
実施する必要があるかどうか、昨年私、党の仕事をいたしておりますときも、今回の予算
委員会あるいはこの
商工委員会、衆参合わせまして各党の皆さんの献身的な御
意見を踏まえましても、この問題についてはやはり正面から取り組んでいかなければならぬ、そういう時期に来ているというふうに私は認識をいたしております。
私
ども通産省の
立場から見れば、今の景気の動向をずっと見てまいりますと、やはり一番
基本的に見なきゃならぬのは、鉱工業生産指数あるいは在庫、生産あるいは販売、それぞれの角度から十二分に見ていかなきゃならぬわけでございます。そういう中で在庫の問題をいろいろ見てまいりますと、耐久消費財、生産財、資本財とございますが、耐久消費財の在庫がはけていかないということがやっぱり問題だ。
この耐久消費財がなぜはけていかないのか、売れていかないのかということは、今
委員もお話ございましたように、パートがなくなったとか、残業がなくなったとかという実質な収入、余裕がなくなってきたということが
一つあろうかと思います。あるいは耐久消費財の場合は、よく目玉商品がなくなる。車にいたしましても電気製品にいたしましても、かなり広範に行き届いている。テレビなどは、恐らくNHKの対策上は一戸に一台になっていますけれ
ども、実際は各部屋にみんな持
っておると申し上げてもいいと私は思うんですね。車についてもかなり広範な普及がございますし、しかもなおかつ今の電気製品も自動車も非常に性能がいい。
今まででございますと、余裕がございますから買いかえというのは割と早くスムーズに行っておりましたけれ
ども、最近のずっとトレンドを見ておりますと、やはりぎりぎりいっぱいまで大事に使おうという気風が出てきている。これは逆に言えば、つつましい生活に移っていこう、質のある生活に移っていこうという日本人の気持ちから見れば好ましいことなのかもしれませんけれ
ども、産業全体の動向がそれによって違ってくるわけでございます。
その辺のことも十分考えていかなきゃならぬというふうに考えますと、耐久消費財がどのようにして売れていくかということを考えれば、
一つはやはり目玉商品というものは当然必要になってくると思いますし、もう
一つは、今
委員から御
指摘ございましたように、かなり高額になるような耐久消費財を買おうとする意欲を持つ層、これはやはり中堅層だろう、こう私は思うんですね。
特に子供たちが学校に行く、あるいは子供たちが
社会にいよいよ出る、あるいは結婚するという時点で親の負担が一番多くなるわけでありまして、こういうときにやはり一番耐久消費財というものも必要になってくるわけでございますから、もしこれから減税というものを議論していくならば、やはりそうした中堅層というものを十分考えていく必要があるのではないだろうか。
議論のよって立つ基盤も
政策も違うわけでありますけれ
ども、我が国の税の体系を見ておりますと、例えば課税最低額が我が国の場合は三百万円までは実は無税だということであります。イギリスやアメリカやフランス、イタリーというものと比べて見ますと、課税最低額が非常に高いということから考えれば、こうしたところも少しやはり検討してみる必要があるだろう。さらに一番下、経費のかかる層、先ほど中堅層というふうに吉村
委員おっしゃいましたけれ
ども、そういう層に対してはもう少し購買意欲が出てくるような措置をやはり考えていくという面も私は大事なのではないだろうかというふうに考えております。
消費税につきましての御
意見も
委員からございましたけれ
ども、消費税を初めて
実施いたしましたときは
国会の中でも大変な議論も呼びましたし、国民の皆さんの中からもいろいろと御批判もございましたことは
十分承知をいたしております。この間接税、つまり消費税というのは我が国にとって初めての試みでございましたが、税というのは、初めて取られるという
立場から見れば大変痛痒感が伴うものでございましょう。
家庭の主婦というのは、端的に言えばいろんな情報をもとに一円でも二円でも安いところに足を伸ばしてでも行って買う、そして家計の少しでも手助けにしなきゃならぬというのが主婦の哲学でもあるわけでございます。そういう主婦の
立場から見れば、今まで直接税金を払うということは、給与所得者の場合はほとんど
会社で源泉徴収されていくわけですから御主人は給与表の明細表をごらんになりますが、最近はダイレクトに銀行にそのまま振り込まれておりますから、直接主婦がまず税金を毎月どれくらい払っているのかということをよほどのことでない限りはごらんになる方は少ない。
ですから、御婦人層にとって税を直接払うというのは、この消費税によって初めてそれを痛感されたわけであります。先ほど申し上げましたように一円でも二円でも安い卵を買おう、肉を買おうという
立場から見れば、三%であれ、それを支払うということに対してやはり相当の痛痒感があって批判があるということは、私は十分
理解ができることでございます。
しかし、先進諸国でこうした制度が当たり前のようになってきている、あるいは日本の国民が外国に行けば当然のように税率のむしろ高い消費税を払っているということから見れば、これはだんだん定着していくということが、長い将来にわたっていけば私は必ず国民の皆さんの
理解を得ることになるだろうと考えております。したがいまして、これを今すぐまた税率を上げるか上げないかという
論議を今この時期にここで申し上げることは、いささか時期尚早かと思います。やはり直接税、間接税の比率のいわゆる直間比率ということをよく言われているわけでございますが、そうした点からも考えましてこれから十二分に私は
論議をしていく必要があるのではないか。
大変長々申し上げましたけれ
ども、そういう考え方の基盤に立つと、今回の景気対策で所得税減税をすぐやることが、財源の問題も考えてあるいは即効性の問題を考えますと、先ほど申し上げましたように生産財、資本財あるいは耐久消費財というものに波及をするためにはむしろ別の角度で、例えば新しい
社会資本ということを私は申し上げてまいりましたけれ
ども、そういう角度で波及効果のあることの方を選んだ方がむしろ効果があるのではないだろうか。
だからといって、所得税減税は全くやる必要がないということを私は申し上げているわけじゃございませんで、これは今後十分税制のあり方あるいはそのときどきの
社会経済情勢の中で国民が選択する事柄でございまして、中長期的観点に立って、幅広く国民各界各層の御
意見を踏まえた税の御議論を私はやるべきではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。
なお、今回の不況対策としての所得税減税問題につきましては、減税を
実施する場合の財源の問題も含めまして、与野党間において今
国会で引き続き協議を続けるということになっておりますので、その協議事項を越えて私からあえて申し上げるということはこれは失礼かというふうに考えておりますので、今後とも注意深くこの推移を見てまいりたい、このように考えております。