運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1993-04-21 第126回国会 参議院 産業・資源エネルギーに関する調査会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十一日(水曜日)    午後二時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     会 長         浜本 万三君     理 事                 上杉 光弘君                 星野 朋市君                 藁科 滿治君                 横尾 和伸君                 長谷川 清君                 立木  洋君                 萩野 浩基君     委 員                 合馬  敬君                 岡  利定君                 佐藤 静雄君                 関根 則之君                 田沢 智治君                 楢崎 泰昌君                 南野知惠子君                 吉村剛太郎君                 大森  昭君                 久保田真苗君                 庄司  中君                 西野 康雄君                 深田  肇君                 白浜 一良君                 吉田 之久君                 小池百合子君    事務局側        第三特別調査室        長        秋本 達徳君    参考人        芝浦工業大学シ        ステム工学部教        授        東京大学名誉教        授        平田  賢君        東京農工大学工        学部教授     柏木 孝夫君        東京大学工学部        教授       月尾 嘉男君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○産業資源エネルギーに関する調査  (二十一世紀に向けた地球環境問題とエネル  ギーに関する件)  (二十一世紀に向けた省エネルギー社会シス  テムのあり方に関する件)     ―――――――――――――
  2. 浜本万三

    会長浜本万三君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。  産業資源エネルギーに関する調査を議題とし、二十一世紀に向けた地球環境問題とエネルギーに関する件、二十一世紀に向けた省エネルギー社会システムあり方に関する件につきまして、参考人皆様から御意見を拝聴いたしたいと存じます。  本日は、お手元に配付の参考人名簿のとおり、芝浦工業大学システム工学部教授東京大学名誉教授平田賢君、東京農工大学工学部教授柏木孝夫君、東京大学工学部教授月尾嘉男君に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。  参考人皆様から、忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  議事の進め方といたしましては、二十分程度それぞれ御意見をお述べいただきました後に委員質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いします。  なお、意見の陳述、質疑及び答弁の際は御着席のままで結構でございますので、よろしくお願いします。  それでは、平田参考人からお願いを申し上げます。
  3. 平田賢

    参考人平田賢君) 御紹介いただきました平田でございます。  本日は、この国会の場で日ごろ私が持論としておりますことをお話しできるチャンスをいただきまして大変光栄に存じます。ちょっとスライドを使わせていただきますので、よろしくお願いいたします。今二時四分でございますので、二十四分まで時間をいただきます。  それでは、スライドを見ていただきます。お手元に主な図面は用意してございますけれども、あるいは遠くてごらんになりにくいかもしれませんので、お手元の図と対比しながら見ていただきます。(スライド映写)  これは日本エネルギー需給見通し、今国会の場でこの見通しの修正をする必要があるんじゃないかと衆議院の商工委員会等話題になっているようでございますが、通産省の総合エネルギー調査会が一九九〇年の六月に作成をしたものでございます。横軸は一九六〇年、七〇年と年代がとってございます。  日本高度経済成長期は大変なエネルギー消費で支えられてまいりました。当時一番安かった石油で支えられてまいりました。後で問題にいたしますが、恐らく中国経済発展もこのように大量のエネルギー消費に支えられていくものだと思っております。それで、第一次のオイルショックが参りまして、さすがに日本経済も一年間だけ停滞をいたしましたけれども、エネルギー消費も波を打ちました。日本の場合にはたちまちのど元を過ぎまして、もとへ戻りかけたところヘイラン・イラク戦争が起こりまして、第二次オイルショックが来て、前よりももう少し大きく波を打ちました。そして、再びもとへ戻りかけたわけでございますが、それが九〇年の六月の時点でこの調査会が持った危機感でございます。もしもこのままエネルギー消費を伸ばしていったら事は重大でございます。  それで、この調査会はある省エネルギー率を想定されまして、日本需要伸びをぐいと曲げたわけでございますが、現実は、その後この破線のように進行しておりまして、需要はどんどん伸びております。九一年のデータはバブルがはじけまして少し横に寝ました。今のところ非常に心配されるのは、まず需要が依然として伸び続けておるということでございます。  一方、石油消費ないしは供給をどんどんふやしていくというわけにはちょっといきませんので、現状を維持する。それから石炭は、御存じのように、地球環境問題で二酸化炭素の元凶でありますから、石炭輸入をどんどん拡大するというわけにはいかない。  そうなると、残るのは原子力天然ガスということになるのでありますが、この調査会はこの時点原子力をちょうど二倍にふやすことを想定しております。つまり、今、日本に四十一基原子炉がございますけれども、二〇一〇年までにそれとほぼ同数をつくっていくという計画になっております。御存じのように、原子炉の立地、建設は少しずつおくれておりまして、とてもそのように伸ばすことはできそうもないというのが皆さんの一致した見解でございまして、仮に二十基できたといたしましても、二〇一〇年には二十基分のショートが起こります。つまり、原子力供給ショートエネルギー需要の増大が依然として続いているという状況が、二〇一〇年には非常に大きな需給のギャップを招くのではないかということであります。  同じ熱量をとるのに発生する二酸化炭素の量は、石油基準にいたしますと、石炭はそれの二割から四割増してあります。天然ガスは大体石油の三分の二でございます。したがって、化石燃料の中では天然ガスが一番たちがいいということになります。天然ガスCO2発生量石炭の約半分ということに相なるわけであります。  では、エネルギー需要としては何が伸びているかという問題でございますが、第一次のオイルショック時点基準といたしまして指数化いたしますと、まずGNPは、一年間だけ横に寝ました。しかしあとは順調に伸びております。それを支えた産業界エネルギー消費量はその第一次のオイルショックの当時に使っておりましたエネルギーの総量に現在まだ戻っておりません。日本産業界省エネルギーの優等生でありまして、少ないエネルギー消費GNP成長を支えてきたわけでございます。  問題は民生用運輸用エネルギー需要でございます。特に民生用は、家庭でお使いになるエネルギーの量でありまして、大体におきまして電力と朝シャンなどの給湯、暖冷房、そんなような身近なエネルギーでありますが、これがGNP伸びとともに順調に伸びているということに相なります。  よく出す図なんでございますが、日本エネルギーのフローと申します。ちょっと古くて申しわけありませんが、一九八六年度でありまして、私が自分でこの図面を書くものですから、ちょっとサボりますとたちまち古くなりまして申しわけありません。  日本で使う原子力水力・地熱、石炭石油天然ガスと、一次エネルギー供給量がそれぞれにパーセンテージに比例をして横幅を作図してございます。次に、これを発電発電以外というふうに並列に分けるわけでございます。一次エネルギー燃料でありますから、すべて火をつけて燃やしてしまう、そして、高温の熱を発生させます。その熱を発電とそれ以外に振り分けるわけであります。  発電に振り分けられた熱のうち、四割だけが電気になりまして、残りの六割は環境の中に入ってしまう、損失であります。四割電気になりましたものが民生用と電車、それから産業界でお使いになる電力に分かれます。  次に、非発電用に流れました熱のうちに、民生用に入ってまいりますのは都市ガスと灯油を燃焼させた分でございます。運輸に入るのは、もちろんガソリンとディーゼル燃料です。産業用でお使いになるのは石炭石油であります。それぞれの用途電力と熱の形で入ってまいりますが、そのパーセンテージが数字で書いてございます。この一九八六年はたまたま民生用運輸用とほぼ等量でありまして、それの約二倍を産業界で使っております。  用途別効率を見ますと、民生用家庭主婦が財布をしっかり握っておられますから、それほどむだはしておりません。大体六割はちゃんと目的を達しております。四割がロスでございます。  運輸、これがぐあいが悪くて、輸送の目的を達しておりますのは大体二割から三割ぐらいでありまして、残りの六、七割はロスでございます。  次に、日本産業界は大体六割が有効で、四割がロスで使っております。合計いたしますと、日本の中で目的をちゃんと達したと思われる使われ方、つまり効率はこの横幅で示されるように、この年は日本全体で三五%でございました。残りの六五%が損失というわけです。  ここでエネルギー保存法則という熱力学法則がございまして、エネルギーは常に不滅であります。つまり、この横幅総和は、用途別に分けましても、それから有効、無効に分けましても、その総和は常に一定不変であります。  そこで重要なことは、例えば朝シャンをやめれば石油何リットルの節約になるとか、あるいはマイカーを自粛してくれれば石油がどれだけ減るとか、そういう形の省エネルギーは、国民皆様に我慢を強いるお願いベース省エネであります。皆さんが本当に欲しいエネルギーというのはこの三五%の横幅にすぎません。それをもうちょっと倹約してほしいというのがお願いベース省エネでございます。  ところが、問題は、この損失が六五%もある点であります。この膨大な損失の原因はひとえに熱の使い方の誤りにあるというふうに私は思っております。これは、この後の柏木先生のお話にもございます。  万一この損失を半分にできる技術があったら、それはその半分の損失分最初から投入する必要がございません。その横幅分最初投入量から減らせばよろしい。そうしますと、石油輸入量は今の半分になるかもしれません。これを半分にすることができる技術を開発するのが省エネルギーの究極の目標でございます。これを実現できるのはコージェネレーション以外にないというのが私の持論であります。  ここで一言補足しておきますと、日本社会日本エネルギー供給システム問題点の根本が発電と非発電並列に分けることにございます。つまり、発電電力会社熱供給ガス石油会社二つ並列に分けて供給するということは、こういうシステムになっているということです。発電の方に流れ込みました高温の熱のうち、六割は損失となります。  つまり、温排水でございます。その温排水ふろに入ろうと思っても、これが例えば福島柏崎にございますと、残念ながらふろには入れません。一方、都市ガス会社石油会社発電をしないでいきなりふろをたいたり飯を炊いたりいたします。つまり、エネルギー供給構造並列性に根本問題があるわけでして、もしも発電をした後で非発電直列に入ったといたしますと、例えば発電の後の温排水ふろに入ることが可能であるということになります。  ただし、ここで問題は、日本の例えば一次エネルギー供給の中の原子力水力石炭火力日本発電のために投入されております一次エネルギーの約半分のエネルギーインプットに関しましては、これは、この温排水に目をつぶることにする。これは、例えば福島柏崎できちんと安全第一で管理をしてもらって、温排水には目をつぶる。  ところが問題は、石油火力天然ガス火力でございまして、これについては町の中に分散配置をして、その温排水を使える状態発電をしてもらいたいというのがコージェネレーションの基本的な概念であります。  この考え方が徹底しないがゆえに、お手元の図で見ていただきますと、年々日本の国全体の効率は悪化しております。上は十年ほど前の一九七五年の図でありますが、この時点では日本全体の効率は三七%でございました。これが十年後の一九八六年には三五%に落ちております。日本省エネルギーが進んだのに、国全体のエネルギー消費効率は悪化している。それはひとえに次のポイントにございます。つまり、発電用のために投入される一次エネルギー量、つまり、電力化率がふえていく。そうしますと、温排水損失は随分ふえまして、その損失が全体の損失にきいてまいります。情報化社会が進み、電力への依存度が増しますと国全体の効率の悪化はどんどん進んでいくということに相なります。ですから、エネルギー供給の基本的な構造直列構造に、少なくとも部分的に直列構造に改めなければいけないということであります。  少しカラースライドをごらんいただきます。  東京都内で第一号のコージェネレーションです。簡単に言えば自家発電をやりまして、それの排熱ふろに入ろうと、そういうことであります。芝浦の地域暖冷房であります。上方東京駅、上方ビル東京ガス本社、次が東芝本社、さらに南にシーバンスがございます。  東京ガス本社の建物の地下にエンジンを置きまして、発電をやりながら暖冷房をやっております。  エンジンの外観でございます。  大阪の例は、ツイン21と申しまして、大阪城が見えております。  この例はピストンエンジン自家発電をやりまして、それの排熱を回収いたします。  産業用にもこういうシステムは非常に有効でありまして、このスライド東京都かのあるフィルム工場でありますが、フィルムのように蒸気や温水を大量に使うところは、これまではボイラーをたいていたのを、ガスタービンに置きかえて発電をやりながら排熱蒸気をつくるというシステムであります。  システムは全部パッケージになっておりまして、中でガスタービンが回っておりますけれども、音は外に聞こえません。  小さい家庭用のものも開発されておりまして、このパッケージの中にエンジン発電機熱交換器が入っております。家庭主婦が相手でございますから、冷蔵庫並みにきれいにいたしませんと使ってくれません。  このようなコージェネレーション事例数としてことしの三月の時点日本全国に千五百事例ぐらいになりました。発電容量にして大体二百五十万キロワット、ちょうど原子力発電所の二基分くらいに相当いたします。発電容量の八割ぐらいが産業用でありまして、残りの二割ぐらいが民生用でございます。  同じような原理をごみに適用するべきです。日本の場合に、ごみ焼却をいたしますと、焼却排ガスの中には塩酸がたくさんございまして、それがボイラーのチューブを腐食いたします。それを怖がりまして、蒸気の温度を余り上げない、せいぜい摂氏三百度ぐらいでございますが、それをそのまま使って発電をいたしますと、極めて効率が悪い。その蒸気をそのままもらいまして、それをガスタービン排熱でスーパーヒートするわけです。ちょっと専門的になりますけれども、ごみ焼却場コンバインドサイクル発電所にしてしまう。そういうシステムの一例でございます。  昨年の秋から、自治省がスーパーごみ発電と名前をつけて、これから普及させようとしております。  次のスライド燃料電池、これはこれからの大きな発展の武器でございます。天然ガス燃料として供給いたします。  このように、これからは天然ガス需要が非常に大きく拡大すると考えます。現在日本液化天然ガス、すなわちLNGの形で一年に約四千万トン輸入されておりますが、これではとても足りません。二〇一〇年までに大体その二倍半から三倍ぐらい、つまり約一億トンベース天然ガス輸入していかないと足りないのではないか。原子力ショート需要伸びに対してそのような手当てが必要だというふうに考えております。  そこで、天然ガスを何とかパイプラインの形で導入し供給しようと考えております。日本の場合には例えば東京ガス高圧パイプライン東京を囲んでおります。しかし、そのパイプラインは隣の名古屋の東邦ガスあるいは大阪ガスのラインと横につながっておりません。それが非常に弱点なわけです。  アメリカの場合には四十四万キロメートルの幹線導管が縦横無尽に敷設されております。  ECの圏内には八十万キロメートルございます。ガス供給元は北海、西シベリア、アルジェリアと三方向からガスパイプラインで入ってきております。  この図を見ていただきますと、この八十万キロメートルのパイプライン網はたった二十年で建設されております。一九七〇年にはオランダのあたりにちょろちょろっとあるだけで、九〇年には八十万キロになった。やる気があれば八十万キロは短期間にできる、そういうことであります。  そこで、日本の中にもぜひパイプラインのネットワークをつくろうということを今私どもの研究会でやっておりまして、日本の北から南まで縦貫したいと考えています。既存のLNGのサイトを横につなぎながら、同時に北のサハリンなどから天然ガス供給を受け、南の中国からも供給を受けるということを前提にしております。  どういうところに埋めるんだということがすぐ問題になりますが、できれば公有地優先、例えば国有林でありますとか、高速道路敷の中など、それからJRの鉄道敷とか、そういうところに敷設していくということです。  公有地の使用を前提といたしまして、直径一メートル、七十気圧ぐらいのパイプラインを、北から南まで約三千三百キロぐらいの建設費を試算いたしますと、大体一キロメートル当たり九億円ぐらいかかりますので、総額約三兆円。大体ガス代に換算して一立米当たり五円ぐらい上乗せをする計算で四・五%ぐらいの低利融資のような何らかのインセンティブがないとなかなかこれは建設できない、私企業ベースでは非常に難しいということでございます。  問題はそのパイプライン日本の国内に建設するだけではありません。先ほど申しましたように、中国のこれからの経済成長石炭ベースで行われるといたしますとこれはゆゆしき問題でありまして、CO2の問題ばかりでなく、酸性雨等が今日本に降っております。そこで、中国天然ガス化を促進することが重要です。日本のODAで協力できれば非常に望ましい。  中国の中には大きなガス田が六つございます。さらに西の方にトルクメニスタンという非常に大きなガス供給国がございます。中国のオフショアにもガス田がございます。香港から南の方はもう大体石油メジャーが押さえておりますからほっておいてもガス化は進むと思います。問題は北の方で日本がリーダーシップをとってやっていくべきだというふうに思っております。  実は去年の秋でございますが、サハリンフョードロフ知事にお会いしました。それから、このスライドはマレーシアのマハティール首相です。次のスライド中国王濤さんで、中国石油天然気公司総裁国家委員の一人であります。こういう方々が皆この計画に大変賛成され、王濤総裁はぜひ日中台作でやろうと言ってくださいました。ぜひこういうことを進めていただきたいというふうに思います。  ちょっと二分延長いたしました。とりあえず私の話題提供を以上で終わらせていただきます。
  4. 浜本万三

    会長浜本万三君) ありがとうございました。  それでは柏木参考人お願いいたします。
  5. 柏木孝夫

    参考人柏木孝夫君) 柏木でございます。  私に課せられた課題というのは、省エネルギーシステムと合理的なエネルギー利用はどうあるべきなのかということですけれども、今私たちが考えるときにその背景に二つ事象があるんだろうと思っております。一つ地球規模の環境問題、もう一つ電力ピークカットじゃないかなというふうに思います。  御存じのように、地球規模の環境問題に関してはもう既に我が国温暖化防止行動計画というものを策定しております。これも既にこの調査会の中で前任の先生方がお話されたと思いますけれども、具体的に申し上げれば、二〇〇〇年をめど国民一人当たり排出する炭酸ガスの量を一九九〇年レベルで排出した炭酸ガスの量、それをめどにして安定化させますということを言っているわけです。  翻って日本エネルギー消費はどうなっているのかというのを見てみますと、このレジュメの一番の一の一というところをごらんいただきますと、七三年に使った総消費エネルギー量を一〇〇といたします。普通、日本の場合には民生運輸産業と、この三つのカテゴリーに分けてエネルギー消費を分類していますけれども、私今この中では、家庭業務運輸産業と四つに分けて考えています。七三年、それぞれの分野において一〇〇というエネルギー消費があったとしますと、一九九〇年レベルで一番伸びが大きいのが家庭用だった。これは既に中止さんがこのことについては述べておられると思います。一八五と。その次に大きいのが運輸なんです、一七二。これはやはり車の大型志向とかそういうことが重なってどうしてもエネルギー消費伸びてきた。業務オフィスビルだとかそういうものですけれども、一四六と。産業はやはりコストベネフィットを考えますので、価格効果が一番効いてくる産業ではかなり省エネルギーを積極的にやったおかげで九八という総消費エネルギーで済んでおる。全体としては一九七三年を一〇〇にしますと九〇年で一二二という伸びになっているんです。  ところが、一九八六年までは大体総消費エネルギー量が一〇〇で推移してきたんです。オイルが安くなると、これは安いんだから使っちまえということでぐんぐん伸びてきまして、二二も伸びたのは過去数年、六年ぐらい、一九八六年以降ぐらいで伸びてしまったということなんです。このままどんどん伸ばしていきますと、温暖化防止行動計画を遂行することはできない。しかし、我が国は国として策定しておりますのでどうにか守らなければいけない状態になっています。  じゃ、自然体のままでエネルギー消費がどうなるかというと、レジュメの一の二に移っていきますと、図一と参照しながら見ていただくとわかりやすいと思いますが、このままの状態で今の経済性のある技術を導入することによって省エネルギーが図れる自然体のケースでいきますと、最終エネルギー消費は全部含めて石油換算にしますと二〇〇〇年で四・二から四・三億キロリットルぐらいに伸びてしまう可能性がある。  もちろん、温暖化防止行動計画を遂行するためにはどうしなきゃいけないかというと、省エネルギーを積極的にやるとともに、ということは総消費エネルギー量を抑えるという努力と、あと炭酸ガスの排出の少ない一次エネルギー源へシフトすることになりますが、今、平田先生おっしゃったように、例えば原子力であるとか、あるいは化石燃料の中にあっては天然ガスであるとか、そういう方向にシフトする。シフトするにしてもそれほどトラスチックにシフトをすることはできませんから、どうにか一次エネルギー構造炭酸ガスの少ないエネルギー源へシフトできるぎりぎりの限界として、二〇〇〇年で三・九一億キロリットル、大体四億キロリットル弱ですね、このくらいの消費エネルギー量で抑えられれば温暖化防止行動計画はどうにか遂行できるということになります。我が国としても国際的に言ったことが遂行できるということになりますから、イメージアップにもなりますし、また技術開発にもつながるということになります。  それで、三・九一にするためにはかなりの努力をしないといけない。間違いなく、普通の能力では四・二から四・三億キロリットルと申し上げましたので、この差の三千から四千万キロリットルの省エネルギーを何らかの形でやっていかないと温暖化防止行動計画を遂行できないという事態になってくるわけです。そのためにどういうふうな省エネルギーが必要になってくるかということをこれから話していきたいと思います。  ちなみに、三千から四千万キロリットルというのはどのぐらいの量に相当するかを考えますと、少し具体的な例をここに述べておりますけれども、まず原子力でいきますと百三十五万キロワット、普通の原子力発電ですね、これが三十五基分とべらぼうに大きな量になる。あるいは太陽電池で発電するということになりますと東京都の面積全部が必要であるとか、あるいはGNPを今三・五%程度と見込んでいますが、GNPを抑えてエネルギー消費を抑えるということになりますと、二%へ低下と。そうすると、二〇〇〇年までの累積GNP損失が大体四百兆円ということになります。環境投資をするにしてもやはり経済成長がなければ環境コストなるものを見積もることはできませんので、経済成長を伸ばしながら、かつ環境保全にその額を回していくという努力が必要になってくる。具体的に言えば、これだけの節約をして目標値に近づけるためには、GNPで言えば二%へ低下させて、損失の累積が四百兆円ということになり、環境コストの捻出も困難になるといっても過言ではありません。  今申し上げたのを復習しますと、この三千から四千万キロリットルを節約するために、我々はかなり積極的な省エネルギー活動あるいはエネルギーの合理化利用を推進しなきゃいかぬというふうな事態になっているということです。  電力ピークカットに関してはもう御存じだと思いますけれども、電力自体はためておくことができませんから問題が生じます。電気を水のタンクで例えますと、水のタンクがあって蛇口がたくさんあるとします。ユーザーがばっと水すなわち電気を使うとします。使うと水位すなわち電位が下がり、電力会社は一生懸命発電して電力をくみ上げるわけです。ところが、発電能力が目いっぱいのところがありますから、一生懸命全部全開してこいだとしても使うのが多ければなくなっちゃうわけで、停電になります。今、日本エネルギー経済研究所の中に東京大停電委員会ができていまして、私もその委員の一人として参画させていただいております。この委員会でいろいろな興味深い定量的なデータが出てきまして、真夏の八月の午後一時に停電を起こして、東京、埼玉、それから神奈川、千葉が三日間大停電を起こしたとします。大体その圏内で売り上げているGNP日本の三〇%に相当するんですね。三日間停電が起きると損失が大体一兆八千億円というふうな試算が出ておりまして、これはいろいろとまだ議論の多いところだと思いますけれども、ピークカット対策の一つの目安として我が国電力の安定需給という観点から非常に重要な資料だと思います。  以前は、夏だけ冷房、特に甲子園で野球をやっていて、テレビを見て冷房をつけると極端なピークになる。ついこの間も極めて高いピークを記録したことがあります。特に現在はヒートポンプという熱を運ぶ機械がありまして、水のポンプと同じて、熱をポンプで上げるのをヒートポンプと我々呼んでいます。今のエアコン自体は、夏は冷房、冬は暖房と冷暖兼用になっていますから、冬も電力を使って暖房しているということで、冬夏両方ともピークが存在し、ツインピークになっておりまして、年間を通して電力ピークカット対策を推進する上からも合理的なエネルギー利用あるいは省エネルギーというのが特に重要になってくるということになります。  それでは、どういうふうな考え方でこれからのエネルギーの合理化利用ビジョンを展開しなければいけないかという話になりますと、レジュメの二番に書いてある、私の持論になります。今、平田先生もおっしゃっておられましたけれども、私自身はエネルギーのカスケード利用というのを強く推奨しているわけで、もう七、八年前から一貫してずっと言い続けてきているわけです。なかなか地におりてこれが機能しないところが非常にフラストレーションのたまるところでありますけれども、徐々に通産省を初め各省庁も推進しつつあります。  カスケード利用というのは何かと。カスケードというのは小さな滝という意味でありますから、エネルギーの質を考慮に入れて何段階でも使っていくというのがカスケード利用の根本なんですね。御存じのように、今、平田先生おっしゃったみたいに、例えば今まで日本エネルギーの流れというのは、発電用に三七%、発電以外の用途に六三%、ですから、発電に関しては、一次エネルギーを投入したとしても、これは発電効率を上げることに努めます。別に熱を使わなくたって関係ない。三七に関しては、発電のためにこれは使っていいとして使っているわけですから、その中でいかに発電効率を上げて四十何%とか五〇%とか、三七のエネルギーのうちの発電効率をいかに上げるかということに心がけていた。排熱使い方は余り関係ない。熱は捨てちゃっても構わない。特に普通の発電所は海の水で冷却していますから、なるべく海の温度が上がらないように温度を低くしてみんな廃熱で捨てているわけです。大体今の日本発電効率は三八%と言っています。一〇〇のエネルギーを投入して、電気になっているのが三八の耳ネルギーしかない。すなわち六二に関しては海の水や大気に捨てているということになります。それをやはりうまく使うべきだというのが一つ。ですから、電気を起こしたらその後の熱をうまく使うべきだと。  それから逆に今度は熱利用になりますと、電気のビジョンというよりどうしても熱の高効率利用になりがちです。ガス石油会社は今コージェネレーションをやっておりますけれども、なかなか出てきた電気経済的に売ることもできないし、熱としていかに有効に利用しようかというところにやはり重みを置きますね。ですから、一〇〇のエネルギー、例えばガスを投入したら、その九〇%以上を熱に変えて有効に使おうと。ところが、熱の温度レベルは全然考慮に入れていないことが多いんですね。単位エネルギー、例えば一〇〇のエネルギーをいかに熱に変えるかだけであって、これを千何百度の熱なのか、あるいは百度のお湯を沸かす熱なのか、レベルを全然考えてないんですよ。それはおかしいじゃないですかと。高温の熱利用がないんであれば、やはり電気をとって廃熱で普通の民生用の熱を賄えば、電気だけもうかることになります。だから、これは電気、熱のカスケード、要するにコージェネレーションという言葉になるわけです。熱のカスケードということになりますと、何もお風呂のお湯を沸かすのにガスを使うことはないんじゃないですか。ガスというのは、燃焼温度大体御存じだと思いますけれども千七百度ぐらいありますね。千七百度の高温で四十度のお湯を沸かす必要は何もないんじゃないですか。四十度のお湯であれば、間違いなく三百度ぐらいの廃熱があれば十分ボイラーで沸きますね、廃熱ボイラーで。ですから、例えばガスが千七百度から四十度までおろす間に何らかのほかのエネルギーをとってやる。あるいは製鉄業で熱を使いますね。鉄を溶かして固める、その潜熱に蓄熱されたものを今度逆に民生に分けてやれば、今までは一生懸命使いつくそうと思って工場の中で使っていましたけれども、もう百度以下になると大体産業では使い道がありませんから捨てざるを得ない。民生用としては百度以下だけで十分使い道があるわけで、そこをうまく産業民生とが複合化を組めば熱がきれいに使い切れるということになります。ですから、温度レベルを考慮に入れて何段階でも使っていこうというのがカスケードの理論なんです。  それを絵に書いたものがありまして、これが図二です。これは私のオリジナルの絵でありまして、学生と一緒に書いたものなんです。熱のカスケードの絵というのは、例えば燃焼温度、これは天然ガスを対象にしていますから、千七百度の燃焼ガスからまず千五百度のレベルで製鉄工業に使って、それから九百度ぐらいでスチームクラックキング、蒸気利用石油精製、それから触媒反応、乾燥、ビルの暖房というふうに使っていけば、今まではそれぞれの工程に単位エネルギー量を投入していたものが、一つ製鉄に入れればそれが何回でも使えることになりますから、五回使えば五分の一のエネルギーで済むということになります。これが熱のカスケード利用、こういうことをやはり推奨しなきゃいかぬ。そのためにはどうしたらいいかというと、間違いなくある要素、今まで点だとか要素の技術開発に主点を置いていた考え方からいかに面レベルエネルギービジョンを構築するか、すなわちコミュニティーレベルでこれからのエネルギービジョンを策定していかないとこういういいものがなかなか入ってこないということになるわけです。  三番に移らせていただきますと、こういうふうなカスケードの概念をいかに先生方の御尽力で地に下りた技術システムにしていただけるかということになりますと、コミュニティーレベルで地域開発をやっていかなければならないということになります。これがレジュメの大きな三のコミュニティーレベルでのエネルギーシステム構築の時代、これがまさに温暖化防止行動計画並びに電力ピークカットを遂行するためにも非常に重要になる概念なんです。要するに、やはり政治が主導しないとなかなかうまくいかないのが今のエネルギービジョンだというふうに言っても過言ではないと私は思っています。通産省が今のカスケードの概念に沿ってどういうプロジェクトを推進していったら環境調和型の合理的な省エネルギービジョンが遂行できるかというプロジェクトを今推進しています。これが図三に書いてあるものですけれども、簡単に申し上げますと、今申し上げたような工業団地もカスケード型にしてほしい。ですから、今までの工業団地のあり方というのはあくまでも物流の流れで縛った工業団地だったですね。それをいかにエネルギーの縛りを入れるか、すなわち高温レベル産業があってその熱をうまく食品工業とか温度の低いレベルの熱に与えてやる。何回でも使えるカスケード型の工業団地を構築する。ところが、カスケード型の工業団地といってもA社がB社に対して熱を供給する義務が生まれちゃうとなかなかやらないですね。そんな義務が生まれたらとてもじゃないですが、熱は供給できないうちの生産がとまったときに供給しなきゃいけないということはできないんだということになりますと、やはりそこに専門のエネルギー供給会社がなきゃだめですね。これが一つエネルギーセンターになるんだろうと思います。あるエネルギーセンターがそこにあって、第三セクターで、それがある工場から熱を買ってきて、そこにはボイラーも入っていてコージェネも入っている、それで電気も熱もブレンドしてうまく欲しい人に上げてやる。何回か使えるようにエネルギーの合理的な利用ができるようなエネルギーセンターを地域内に置けば確実にこういうふうなシステムが機能してくる。すなわち今一つ申し上げたのがカスケード型の工業団地。  それからもう一つが大規模コージェネレーションプラス地域熱供給。今まで地域熱供給をやるときには熱は間違いなくボイラーで熱を送っていた。電気は売電の集中型の系続から来る電気で賄っていた。それをピークカット対策の一環としてとらえても結構ですけれども、エネルギーの合理化ビジョンということから言えばそこに大規模のコージェネレーションガスタービンでも燃料電池でもいいですよ、そういうものを入れて、一次エネルギーを投入して、そして電気を出して排熱民生用の熱を賄ってやる、これも地域レベルでやるということが極めて大事になります。一軒の中じゃなくて、いろんな幾つかのビルがうまく熱バランスを保ちながら電力のバランスも保つような規模にして、大体十ヘクタールから百ヘクタールぐらいまでの範囲でしょうか、そういう地域開発を推奨していくということになりますと、やはり地方自治体の役割というのが非常に大きくなってきますね。これが大規模コージェネレーションプラス地域熱供給。  それからあとは、さっき申し上げたように発電所だとか工場等の余剰エネルギーを周辺に与えていく、すなわち産業で使えないエネルギー民生に分けてやる。産民複合型の地域開発を推進すべきだということを現在通産省では推奨しています。  それからもう一つ、コミニティーレベルで重要になってくるのは民生用エネルギー消費を少なくするために未利用エネルギーを使おうと。これは川の水だとか海の水だとかヒートポンプというものを使って、ヒートポンプというのは既に言いましたが、水のポンプと同じで高いところまで水を揚げればたくさん動力が要りますね。熱も同じです。温度を非常に高めればたくさん動力を必要とします。ですから、温度差が小ちゃけりゃ小ちゃいだけ小さな動力でたくさんのエネルギーを運ぶことができる。ですから、川の水だとか海の水を使うことによって非常に高効率な地域冷暖房システムが構築できる。これもコミニティーレベル。  最後に、これらのエネルギーコミュニティーの実現に対して我が国が今後どういう努力をしなきゃいけないかということに対して、これは私の私見ですけれども、述べさせていただきます。  今まで産業コンビナートに対しては日本は成功しました。なぜ成功したかと考えますと、通産省が主導して仕切ったからです。産業界は通産が管轄してますから、通産省が産業コンビナートのイニシアチブをとって通産省独自でうまく産業界をまとめることができた。これからは、より大きなフレームから日本エネルギービジョンを考えることになりますが、これは民生用エネルギーだとか産業用エネルギーだとかあるいは未利用のエネルギーだとかいろいろなことが考えられます。  すなわち、知識情報集約的な都市コンビナートのエネルギー的概念がどうあるべきかということになります。都市コンビナートのエネルギーでは、例えば川の水を使おうとなるとこれは建設省ですね。海の水を使おうとなるとこれは運輸省。出てきた電気はこれは通産省になります。それから今度、ごみを使おうとなるとこれは厚生省ですね。地方自治体がごみ焼却炉で発電しようということになると今度は自治省が絡んできます。ですから、今まで何か一つの地域開発をどんどんとやるときに、ある一つの代表的な省庁で対応できれば話は比較的スムーズにいく。もちろん、今各省庁間で積極的かつ前向きに尽力されているわけですが、あえて申し上げたいのがより一層のインター省庁体制が重要となる気がします。ですから、資源エネ庁というのは通産省の中にありますけれども、私見を申し上げれば、これは資源エネルギー省になってもいいぐらい、エネルギー環境省とか。日本ぐらいですよね、エネルギー輸入国であるにもかかわらずエネ庁のように、庁になっているというのは。それだけエネルギー自体は省際の問題だと。いろんな省庁をまたぐ横断的なビジョンが必要になってくる。コミュニティーレベルでのエネルギービジョンを構築する上でこれから非常に重要になってくる一つの課題であると思います。  二分を超過しましたけれども、以上で終わります。
  6. 浜本万三

    会長浜本万三君) どうもありがとうございました。  最後になりましたが、月尾参考人お願いいたします。
  7. 月尾嘉男

    参考人月尾嘉男君) 月尾でございます。あと座ってお話しさせていただきます。  お手元に配付させていただきました図を使いながら説明させていただこうと思います。  私が話をさせていただきますのは、交通とエネルギーの問題について話をさせていただきます。  図二を見ていただきたいのですが、現在日本で輸送部門が使っておるエネルギーはおおよそ全エネルギー需要の四分の一になっております。次のページの図三をごらんいただきますと、それがどんどんふえてきておるというのが現状でありまして、オイルショックの年でありました一九七三年には全エネルギーの一六%程度でありましたけれども、それが九〇年では二三%までふえてきております。もちろん社会的に輸送というものが必要であり、それにエネルギーが必要であるということであればそれはそれで結構なことなんですが、三つほどこの交通部門でのエネルギーについては大きな問題があります。  第一点は、エネルギーの節約ということが余り進んでいない分野であります。図四というのは既に平田先生の御説明にも使われましたが、このほぼ二十年間のGNPエネルギー消費の関係を見ていただきますと、産業用というのはむしろ減る程度に努力をしてきたわけですが、交通用、民生用エネルギーというのはGNPにほぼ比例した形で消費がふえてきておりまして一エネルギーを節約するということが必ずしも十分進んでないというのが第一番目の問題。  それから第二番目の問題は、図八をごらんいただきたいのですが、交通部門、運輸部門のエネルギー石油依存度が異常に高い、ほぼ九八%が石油に依存しております。これは可搬型エネルギーを必要とする、つまり自分で持ち運ぶエネルギーを必要とする自動車のようなものが中心になっておりますから、やむを得ない部分がありますが、石油依存度が非常に高いということも問題でありまして、ちなみに日本石油製品の消費のうち三八%が現在輸送部門で使われております。  それから三番目は、資源だけではなくて、環境への影響が非常に大きいということであります。図七は日本の全部門で発生しておるCO2二酸化炭素のうち運輸部門がどれだけかということですが、二三%。それから世界規模で見ますと、これはCO2ではありませんが一酸化炭素、これも地球温暖化ガス一つでありますが、COが現状でほぼ六〇%。OECD諸国だけでは七五%が輸送部門からの排出ガスがCOを排出しておるということになっております。それから窒素酸化物、NOxにつきましてはほぼ四〇%、世界全体の四〇%が交通に起因するものである。この環境問題への影響というものも無視できないことでありまして、この三つが輸送とエネルギーの関係で重要な問題かと思います。その主要な原因というのは自動車にあるということはほぼ先生方も御推察のとおりであります。  では交通との関係で見るとどういうことかということで図九と図十をごらんいただきたいと思います。  現在日本の交通の中で自動車が負担しておる割合が、図九でありますが、旅客の場合でごらんいただきますと、バスも含めますとほぼ六五%が自動車に依存しております。バス、乗用車に依存しております。貨物では五一%が自動車に依存しております。自動車がどういう問題をはらんでおるかということでありますが、次のページの図十二をごらんいただきたいと思いますが、まず第一番目に現在の自動車というのは非常にエネルギー効率の悪い乗り物であるということでありまして、この図十二の見方は一番下の一〇〇と書いてありますところが投入されたエネルギーでありまして、一番上の数字がそれが実際最後に役に立ったのはどれくらいかという比率を示すものであります。例えば交流電化で走っております、水力から起きた電気で走っております電車の場合はエネルギーの五八%が動くということに使われております。それから火力発電で起こした電気を使って走る電気機関車というのは二八%、ディーゼル機関車で走る鉄道でも二二%が最終的な目的のために使われておりますが、自動車の場合六%程度しか最終的な移動のためには使われておらない、こういう効率の悪い手段ということであります。  その結果どういうことが起こるかということでありますが、図十四、図十五のあたりをごらんいただきたいと思いますが、例えば上の旅客のところを見ていただきますと、この人の形が書いてあります図の下の段がどれだけそれぞれの手段が運んでおるかという図でありまして、上の段の四角い箱がそのためにどれだけのエネルギーを使っておるかというのをあらわしております。  鉄道をごらんいただきますと、日本中の旅客の移動の三〇%を負担しておるにもかかわらずエネルギー消費は八%でありますが、自動車の場合では四三%しか運んでおらないのにエネルギー消費は六五%ということになっております。同じように貨物につきましても、営業用と自家用と合わせますと五〇%の貨物を運ぶのに対してエネルギーは九〇%を使っておるということになります。  それを別の表現にしましたのがちょっと飛んだ十九図というところにありますが、これでごらんいただきましてもおわかりいただけますように、旅客の場合自家用自動車と営業バスで四九%、ほぼ半分の人を運んでおるのにもかかわらず、エネルギーとしては六八%、七割弱を使っておるというようなことになりますし、貨物についてはほぼ五〇%運んでおるものが九〇%近いエネルギーを使うというような構成になっておりまして、非常に便利であるけれども、これが自動車というものを使うときの大きな問題であります。  同じことを別の視点から見ましたのが図十四、図十五の下の電車の絵や船の絵がかいてあるものでありますが、例えば旅客の場合鉄道で一人の方を一キロ運ぶのに必要なエネルギーを一〇〇としますと、自動車では五三四、五倍以上のエネルギーが要るとか、貨物の場合鉄道である単位運ぶのに一〇〇というエネルギーを必要とするのに対して、営業用トラックで五二九、自家用トラックでは一七〇〇、実に十七倍のエネルギーを必要とするというようなことになるわけであります。  その結果、もう一つ起こってくるのが環境への影響でありまして、大分飛びますが二十一図をごらんいただきたいと思います。  これはある単位の旅客、例えば一人の人を一キロ運ぶのにそれぞれCO2をどの程度排出するかということでありますが、鉄道を一〇〇としますとバスで二六八、ほぼ二・七倍、自家用乗用車では八倍以上排出するということになります。貨物では同様に営業用貨物車で八倍、自家用になりますと実に三十五倍以上の炭酸ガスを排出するということになります。  こういうような問題があるということでありまして、これを今後解決していくということが結局交通とエネルギーの問題を解決していく重要なことであります。  どんなふうに解決していったらいいかということでありますが、この基本的な考え方は、私は一ページ目の二というところに書きましたようなサステーナブルディベロプメントというような考え方を導入する必要があるだろう。これは御存じのように、一九八四年にできました環境と開発に関する世界委員会の中で検討され、八七年の東京宣言の中で出された考え方でありますが、将来の世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たすような節度ある開発をしていくということが言われております。つまり、現在の人が非常に我慢に我慢を重ねて将来のために何かを残すという考え方ではなくて、虫がいいようでありますが、現在の必要も十分に満たしながら将来の必要も損なわないような発展を考えていくということでありまして、移動ということについても同じような発想を入れない限り多くの方々の賛同を得られないだろうということであります。  それを具体的にどうするかということについては、これを三つに分けて考えたらいいと思いますが、一つ経済はまず成長させる。それから、それに伴ってエネルギーが比例してふえるのではなくて、エネルギーについては相対的に減少するというようなことを考える。なおかつ人々に不便を強いるのではなくて、そこにはプラス・サム・アメニティーという言葉がありますが、快適さをより向上するというような移動の方法を社会的に導入していくという、考え方によっては極めて好都合なというか、ある意味では虫のいいということかもわかりませんが、そういうような考え方を導入する可能性がないかということであります。  これに関しましては、だれでもまず最初にやったらいいだろうと思いつきますのは、モーダルシフトという言葉がございまして、効率の悪い自動車から効率のいい鉄道とか営業用のバスとかそういうものにどんどん移っていったらいいだろうというような考え方、貨物であれば自動車を少なくして鉄道で運ぶ分をふやせばいいだろうというような考え方があると思いますが、実はこれが一見解決のようなんですが、現実には解決にはならないということが最近だんだん計算の結果わかってきております。  例えば、まず一番目は、それは不便であるということで賛成される方が少ないということであります。つまり、自動車をやめて鉄道で我慢しろということは、多くの人がよほど自動車を利用する費用が高くならない限り納得しないだろうということであります。二番目は、既に大都市圏では鉄道の利用がかなり進んでおりまして、それほど移す余裕はないということであります。例えば首都圏では通勤の移動のうち九〇%が既に鉄道を利用しておりますから、それをさらに鉄道に移すということを努力しても効果は努力の割には少ないということになります。それから、地方圏ではアクセスが必ずしも十分でありません。鉄道のようなものが密には入っておりませんから、例えばそこまでオートバイで来るとか自動車で来るというようなことを考えますと、結局総合的には近い、自動車と鉄道は同じ距離を同じ人数運ぶのにエネルギーがそれほど変わらないという状況にもなります。貨物についても同じことでありまして、鉄道と自動車は長距離を運ぶ場合は既にエネルギーはもう同じくらいになっておりまして、必ずしも自動車が不便だということにはならない。つまり一言で言えば、モーダルシフトというのは、一見解決しそうですが、エネルギーという観点から見ると必ずしも問題を解決することにはならないということです。  じゃ、どういう考え方かということで、私は三段階に分けて考える必要があるだろうと思っています。  一つは、まず日本は科学技術大国でありますから、技術の力を使って問題を解決する方法を模索するということであります。  それにつきましては二十五図を見ていただきたいと思いますが、既にいろいろな努力がなされてきておりまして、例えば自動車の燃費をよくするということはこの十数年大変な努力が進みまして、ほぼこの十数年の間に同じ距離を移動するのに必要なエネルギーは七五%から八〇%にまで減ってきました。  それから、環境問題に関しては排出ガスの規制をするということでありまして、図二十六に書いてありますが、昭和四十八年、つまりオイルショックが起きた年から大変な努力がされまして、例えばガソリンを使う一般の乗用車では排出ガスは八%、オイルショック前後のときの八%まで減る規制がとられており、ディーゼルエンジンを使う自動車でも二〇%とか四〇%という、車種によって違いますが、削減が行われておるということで、こういう努力を今後も積み重ねていくということが必要だろうと。  それから、もう少し前向きの解決としましては、図二十七に幾つかの例が出ておりますが、代替エネルギー車、つまり有害なガスを出したりエネルギー損失が大きい自動車をやめ、有害な排出ガスが少なくエネルギー効率のいい自動車を新しく開発して普及していくということをやったらどうかということで、現在研究が進み、ある程度の見通しが出始めたものとしては、右側三列に書いてありますようなメタノール車、アルコールを使うという自動車でありますとか、電気自動車でありますとか、CNGといいますのは天然ガスを使った自動車でありますが、そんなようなものを今後技術開発を進め、導入していく。現時点ではまだ本格的に導入する具体的なプログラムはありませんが、こういう方向を推し進めていくというようなことがまず第一番目でありまして、要は技術が問題を解決するという方向であります。  それから二番目は、社会的な構造、例えば国土の構造その他を変えていくというようなことであります。  図二十九、三十というところに渋滞がどんどんふえておるということがグラフにしてあります。渋滞というのは大変エネルギー効率を悪くするものでありまして、図三十一を見ていただきますと、平均十キロぐらいで走るというときには一キロ走るのに百七十二ccのガソリンを使うのに対して、四十キロ、五十キロ、六十キロぐらいで走りますとその三分の一近いエネルギーで同じ距離が走れるというようなことになるということであります。そういう渋滞をなくすような新しい技術を導入していくということを考えたらどうかと。  ちなみに、おもしろい計算がございまして、図三十三を見ていただきますと、もし一日にある方が車で通勤され、五十回発進、停止を行われたとしますと、そういうことを一年間繰り返しますと、その間にむだに使われるエネルギーで一体どれだけ走れるかというとほぼ二千キロ程度走れるということになりまして、日本列島を九州から北海道まで移動することができるというような計算もありまして、その渋滞による発進、停止というものがいかに大きなむだをもたらすかということであります。  それから、同様に、今東京で通勤のために必要としておる時間は一人の方が大体九十四分を往復に使っておられますが、全国平均では四十七分、ちょうど半分であります。つまり、そういう大変遠くから一点に集まるというような都市構造をつくってきたということをもう一度考え直して、より分散的な、エネルギー効率のいい都市構造をつくっていくというようなことも考える、そういう国土構造とか都市構造というものを考えることによってエネルギーと交通の関係を改善していくというようなことも考えていいんではないか。  それから、最終的には精神的な構造改革と言っていいかと思いますが、そういうものが必要ではないかということです。  図三十二をごらんいただきますと、特に若い方に多いわけですが、急発進とか急加速というようなことをやるとどの程度エネルギーがむだに使われるか、それからゴルフバッグを積んだままいつも走りますとどの程度むだなエネルギーが使われるかというようなことがいろいろ出ております。例えば十キロの荷物をいつも積んでおられますと、それで五十キロ走りますと、その余分なエネルギーだけで、これはわずかと言えばわずかですが、二百十メーターさらに余分に走ることができるというようないろいろな計算がありますが、そういうむだをいろいろ排除する精神を社会的に養っていくということ。  それから、図三十四をごらんいただきますと、年々貨物自動車の輸送効率が落ちておると。つまり、空きスペースが非常に多い状態で貨物自動車が走り回っておるという状態が示されております。ある輸送会社が日本のわがまま運びますというテレビコマーシャルをやっておりましたが、あれは会社の宣伝としては結構ですけれども、エネルギーから見ると大変なむだを実はもたらしておるということでありまして、そういう何でも必要なときにすぐ送りたいとか、一つの荷物でもすぐ送るというようなことを、もちろんそれは便利でいいんですが、そういうむだなことは少し控えるというようなその精神の改革ということをやっていくというようなことも必要ではないか。  そういう技術と、国土構造を変える、それからさらには人間の考え方を変えるということによってこの問題を解決していくことが必要ではないかというふうに思っております。  以上で終わらせていただきます。
  8. 浜本万三

    会長浜本万三君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 藁科滿治

    藁科滿治君 各先生方から大変貴重なお話を承りまして、まことにありがとうございました。  それでは、早速平田先生に数点御質問をさせていただきます。  エネルギーの長期的な需給関係の見通しては深刻な供給不足が予測される、そしてそれを補うものとして天然ガスの相対的な位置が相当高まるというお話を承りました。したがって、私は天然ガス問題に絞って数点御質問をさせていただきます。  時間の関係もございまして深層ガスのお話を余り詳しく聞けなかったわけでございますが、我が国における深層ガスの開発の可能性について、それからコスト的にはどういう展望が持てるのかということを第一に御質問いたします。  それから二つ目に、パイプライン構想、お話を承りまして大変強い関心を持たされました。そこで、こういった例は諸外国で成功しているんでしょうか。  あわせて、仮に我が国に採用した場合、防災面、特に我が国の場合地震が多いわけでございますが、この地震対策についてどのように判断をされているか。  それから加えて、列島改造計画の際には大変脚光を浴びたわけでございますが、結果的には超インフレとそれから資産格差の拡大と、こういう大きな問題点を現出したわけでございますが、こういった問題についても十分配慮していく必要があるんじゃないか、こんなふうに思うわけでございますが、以上の点について御質問いたします。
  10. 平田賢

    参考人平田賢君) 大変ポイントをついた御質問をいただきましてありがとうございました。  初めに、深層ガスの御質問でございますが、スライドを実は用意しておりまして、きょうお話をするつもりでございました。(スライド映写)  ことしの二月でございますけれども、アメリカのオクラホマに参りました。オクラホマにGHKカンパニーというのがございます。この会社はすぐれて深いところを掘る技術を持っております。現在、日本石油資源開発株式会社が北海道の勇払で掘っておられます井戸が約四千メーターちょっと超えたところでございますが、GHKは浅いところと深いところを四千五百メーターで区別しております。四千五百ぐらいのところから浅いものを浅い井戸、四千五百メーターから九千ぐらいまでのところを深い井戸と言っておりまして、この会社はオクラホマに約百五十本ほどの井戸を持っておりますけれども、それのうちの二十本ぐらいが深い井戸でございます。残りの百三十本ぐらいは浅い井戸でございますが、この会社の商業生産量がちょうど半々ずつでございまして、つまり深い井戸と浅い井戸は二十本と百三十本でほぼ等量のガスを産出しています。  この会社で掘っております井戸では、このスライドに示しましたように、直径五インチ、長さ三十フィートくらいのパイプをつなぎまして、それの先端にドリルがついております。これをごろごろ回して掘っていく。このスライドはちょうど一万八千フィート、大体五千四百メートルぐらいのところを掘っているところです。  この会社のロバート・ヘフナー会長が、今ほど深層ガスが有名になる以前から深い井戸を掘っておりまして、このスライドのように一九六九年に、三万一千三百三十一フィート、九千メーターを掘った。トーマス・ゴールドという先生が深層ガスについて八〇年に論文を出されましたが、それよりも十年以上前から深い井戸を掘っております。深い井戸を掘りますと、大量の高圧ガスが出ます。そのガスの減圧弁を開発いたしまして、地上にとり出すということをやったわけです。  この図が世界一の掘削リグで、大体一万五千メートルを掘る能力があります。  この会社が日本の北海道に大変関心を持っております。北海道で昔からガス爆発を繰り返したような閉山した石炭鉱山では、深いところから天然ガスが出ていたんではないかということを言っておりまして、できれば日本の北海道をぜひ試掘してみる、探査してみようということを盛んに進めてくれております。  現在石油天然ガスの開発の国のプロジェクトは第七次まで進行しておりまして、平成六年度が第七次の終了でございます。第八次の新規のプロジェクトに深いところを掘るということをぜひ入れていただければというのが私の一つの希望でございます。もしも北海道で大きなガスが出るといたしますと、日本縦貫のパイプラインの北半分の意味が非常に出てくるというふうに思う次第であります。  コストの御質問でございましたが、先ほど申しましたように、GHKは現実に商業ベースで生産しております。なお、ちなみにアメリカに五千メーターを超える深い井戸が百六十本もあり、非常に大量にガスを出しているということを補足的に申し上げておきます。  次にパイプラインの安全の問題でございますが、先ほどヨーロッパのEC圏内に八十万キロの高圧パイプラインが存在するというお話をいたしました。これのきっかけをつくったのはイタリアでございます。イタリアは地質構造といい、地震国であることや、火山国であることなど極めて日本と状況がよく似ております。  そのイタリアの中に、縦横無尽に高圧幹線パイプライン網が走っておる。そのきっかけをつくりましたのはイタリアの現在ENIの会長になられるメアンティという方でありますが、その方が一番オイルの安かったときに、パイプラインでイタリアに天然ガスを持ち込むということを構想されまして、まず北のアルプス越えラインを完成いたしましたのは第一次オイルショックの翌年の春でございます。先見の明と申しますか、次にアルジェリアからシシリー海峡を海底で横断するパイプラインをつくられまして、次いで西シベリアからイタリアに持ってくるパイプラインをつくられた。  現在、イタリアはこのシベリアからのパイプラインをダブルにしようとしております。つまり、需要がどんどんふえております。パイプライン建設というのは最初需要の想定から始まりますが、逆にパイプラインを先に引いてしまいますと、後で需要がどんどんついてくるというふうに私は考えております。  そういう意味で地震の問題は私は余り心配しておりません。この間の釧路の地震も幹線の導管には何ら影響はございませんでした。地震でやられましたのは末端の配給ラインでございます。  それから、御質問の列島改造というお話でございましたが、国民皆様のコンセンサスの上で進めていくテーマだというふうに思っておりまして、そういう意味では、実は私のレジュメの一番最後にございますように、こういうプロジェクトはすぐれてインター省庁と申しますか、通産、建設運輸、その他もろもろの省庁が関係してくるわけでございます。そういう意味では、何かやはりそれを超える立法措置が必要なんではないか。例えば天然ガスの高度利用促進法といったような、何らかのインセンティブを与えていただければ非常にありがたい、このように思っております。
  11. 藁科滿治

    藁科滿治君 ありがとうございました。  それでは、柏木先生に実は数点御質問を用意しておりました。先日四月十六日でございますが、本調査会東京電力の箱崎の河川水によるエネルギー施設、それから東京ガスの芝浦のコージェネ施設、これを視察いたしまして、私ども大変啓発をされました。その上でちょっと御質問したいと思っていたんですが、幸い先ほど先生のお話で解説をしていただきましたので、ひとまず質問は留保させていただきます。大変したかったんですが、ちょっと時間がありませんので。  月尾先生に最後に質問をさせていただきます。  消費動向から交通部門の対策が非常に重要であると、全体の四分の一近くを占めていると、こういうお話でございました。確かに、今のお話の範囲でもその割合が拡大しているということ、それから石油依存度が非常に高いということ、それから排気ガスなど環境への影響が非常に大きい、こういうようなことを考えますと、環境対策の面からは交通、運輸への対策が最も重要な一つの課題だということが言えると思います。  そこで、個々のお話を承りながら、それぞれ重要だということはよくわかりましたけれども、一方で今アメリカで進められておりますゴア構想に基づく全国的データ・ハイウエー、これは内外から非常に注目をされておりますが、我が国の場合にも交通問題については渋滞、それから事故、騒音、それに公害と、こういった障害を総合的に解決するためには、大胆なしかも大規模な思い切った対策が必要ではないかと私は思うのでございますが、その点どのようにお考えになっているんでしょうか。
  12. 月尾嘉男

    参考人月尾嘉男君) ゴア構想は、今回新社会資本整備の中でもそれに近いことを日本でも検討するというような方向で動き始めて大変結構なことだと思っておりますが、通信が発達することによって交通の移動をある部分置きかえるというようなことについて昔から議論があるわけですが、過去の経過を見ますと、通信が普及することが交通を代替し交通を抑えるということには必ずしもなっておらないというのが過去の経験であります。大体は通信が便利になることによってそれに引かれてというか、それがきっかけになって交通がふえておるということだと思います。  今後わかりませんが、ゴア構想で出ておるような、現在日本で考えておりますB-ISDNという二十一世紀の初めごろからやろうとしておるような通信網のさらに一けた上の情報がやりとりできる通信網をつくろうというようなことになって、テレビ電話その他が自由に使えるような社会というものが実現したときには、かなり交通の分野を代替する可能性が出てくるという議論もあります。これは、私はぜひ今後日本としてそういうことを進めていくということは必要だと思います。  その通信網を使ってそれによって交通を抑制するというためには、やはり社会の習慣とか、それから多くの方々の考え方も同時に長期的な啓蒙活動をやって変えていくということが必要だと思います。例えば直接本人が出向いてあいさつしないと失礼だというような考え方、特に先生方いろいろ御苦労しておられると思いますが、そういう考え方ではなくて、例えば通信路を使ったあいさつでもそれは社会的には十分な礼儀だというような、そういう考え方をビジネスの面とか、いろいろ日常生活の面にだんだん入れていくということは必要だと思いますが、それが必ずしも十分な交通を抑制する要因にはならない。  もう一つ、通信技術を使った交通エネルギーの解決というのには交通の流れをそういう情報網を使って制御していくというような考え方があります。例えばナビゲーションシステムという考え方がございまして、現在のナビゲーションシステムは個々の自動車に現在どこにいるかということを教えるだけなんですが、もう一歩進めまして、あなたが行きたいところへ行くためには次の道を例えば左へ曲がって二つ先を右へ曲がってというようなことを、走っておる途中でどんどん指示を出すというようなことをやる。それで全体を見て最も車が合理的に流れるというようなことを指示していくというようなことが既にこの二十年ほど日本でも研究がされておりますし、現在アメリカでも新しくゴア構想といいますか、クリントンの政権の中でそういうことを研究しようという動きも始まっております。これをやった場合どの程度効果があるかということなんですが、これは計算機の上でのシミュレーションにしかすぎませんけれども、かつて七〇年代に通産省と建設省がそのプロジェクトを推進しておったときにやった計算では、東京二十三区にすべての車をうまく制御するようなシステムを導入するということをやりますと、それによって一三%交通がスムーズになるというようなシミュレーション結果が出ております。一三%というのは大したことないというふうにお思いになるかもわかりませんが、その分道路をつくるというようなことをもし考えますと、現在都心に道路をつくると一キロメーター一兆円近くというような計画もあるわけですから、これによって一三%節約できるということは実は大変な公共投資の節約にもなり、同時にそれによるエネルギーの節約にもなるということですね。  私は、今の御質問に対しては二つの方向で考える必要があるだろうと。一つはおっしゃいましたようなゴア構想に近いようなことを日本でも推進し、それをうまく社会の中で使っていくような考え方とか習慣、行動様式というものを取り入れることによって交通を抑制する、もう一つは、必要な交通を通信を使って制御をし、よりうまく誘導することによってエネルギーを節約する、その二方向で考えていくということが必要ではないかというふうに思っております。
  13. 藁科滿治

    藁科滿治君 ありがとうございました。
  14. 岡利定

    ○岡利定君 お三方の先生から大変意義深いお話を承りましてありがとうございました。  それでは、まず柏木先生にお教えいただきたいと思いますが、今藁科先生のお話もございましたが、私も一緒に箱崎と芝浦を見せていただきまして、勉強不足だったものですからイメージがわかなかったんですが、具体的なものを見せていただいて何となくこういうものかなということでわかってきたわけでございます。また、平田先生のお話ですと、あの浜松町の方は第一号だということでございます。そういうことの中で、日本でもコージェネ施設的なものが、平田先生のお話だと千五百カ所ぐらいもうできておるというようなお話でございますが、世界の状況と比較してどうなんだろうかというようなことが一つ技術的に見て日本のコージェネ施設というのはどのレベルなのか、またさらに改善すべき点があるとしたらどういう点だろうかということ。  それから、あれを見せていただいている中で、全国レベルはそれこそ電力会社とかガス会社のそれぞれの機能の中でやっていくべきでありますけれども、地域的な利用ということの中で上手に使っていくということが主になるのでないのだろうか。そうなったときに電気事業、ガス事業というのが合体するような形になってきて、今の法体系も何か変わってくるということができてくるのかなというようなことを感じたわけでございますが、その点についてお教えいただけたらと思います。
  15. 柏木孝夫

    参考人柏木孝夫君) 世界的に見て技術的には日本技術自体は非常にすぐれていると私は見ています。箱崎の例は河川水を利用した熱供給ですが、コージェネについては例えばガスタービンガスを燃焼させて、風車みたいなものですね、動力をとりますね。廃熱を廃熱ボイラー蒸気を発生させて、それで熱利用する。ですから、電気と熱と両方とるのがコージェネレーションになります。  ここで、ガスタービンに関しては、航空機用のエンジンが基本になることが多くて、アメリカあるいはイタリアとかイギリスであるとか、日本の場合よりも諸外国の方がすぐれていると思います。もちろん、国内メーカーも精力的に開発を行っていますが、日本ではパッケージャーと称して、これらタービンを一つパッケージに組むメーカーもあるわけです。日本に特有の合理性に富んだシステムに組み合わせて導入していくということに関しては世界の超一級になっているんだろうと。私自身コージェネレーションに関しては短期的には回転型と。ですからガスタービンであるとか、あるいは小型であればガスエンジンだとか、地方にあってはディーゼルを使ったエンジン、これはディーゼルは安いですから採算は非常によくなるわけですね。都市部にあってはやはり環境対策が非常に問題になってきます。ガスを燃焼させますと高温になりますので、NOxという窒素酸化物が出てまいりまして、これは酸性雨の元凶ですから、そういう意味では環境対策を、いかに窒素酸化物を減らすかということに心がけなきゃいけない。  日本の場合には脱硝技術、脱硝装置は非常にすぐれたものを持っていまして、世界の最先端を行っているというふうに考えてよろしいだろう。日本の場合特有なのは、産業界で脱硝をやろう、NOxを減らそうということになりますと、ある基準を決めますね。基準を決めると諸外国はそれをちょっとでもクリアすればいいという考えでやっていますけれども、我々はそうではないですね。工業国ですから、その基準をいかに下回るかというのを競うわけです。それで技術発展してくるということがありまして、脱硝に関しても非常にすぐれている。  ですから、今これからの技術開発はどうあるべきかということに関して脱硝の問題をできる限り下げていかなきゃいけない。長期的には燃料電池になっていくんじゃないかなと。現在は経済性が合わない。燃料電池自体スタックを組み合わせていきますと容量がどんどんふえてまいりますし、要するに大型というか中型というか発電所規模のものまで分散型でできる可能性がある。私の今申し上げたカスケード利用の概念というのはあくまでも電気と熱と併給するわけですから、今までの集中型の発電所ですと熱の使い道がないから捨てざるを得なかった。その熱を使うということで個別分散型になりますね。ある地域の中で全部うまく使い切る。一次エネルギーを入れたらば、それから電気もとり、熱もどって全部使い切る。  そうなりますと、日本の場合ある領域の中に第三セクターがあって、これは例えば生命保険会社などでもいいですが、ある投資をする。その会社が熱料電池と熱の両方を扱って、あるビル群に電気も熱も併給していくことが省エネの観点からは望ましい。これには特定供給問題というのがありまして、法的な問題からできにくい状態になっています。今はそれが徐々に変わりつつある最中だと思いますけれども、外国の場合には我が国で言う特定供給の問題は少なく第三セクターによるコージェネレーダーが実際に多く存在しています。コージェネレーダーには、電力会社でもどこでもいいんですけれども、ある第三セクターがその施設を所有して、そこである領域の中で電気も熱も売っていけるということも可能になっている場合が多いわけです。ソーラーの普及も含めて、ソーラーも同じようなことが言えますから、やはり特定供給の緩和すなわち都市エネルギーセンター構想を推進し、そのエネルギーセンターの管轄内ではある効率以上を達成すれば電気も熱も売れるというようなことが重要になってくるように思えます。  例えばそういうことができますと、私の資料の図八に例えば都市エネルギーセンターができて、そこで電気も熱も全部うまく活用できる、供給できるような体制にしますと、別個に電気電気、熱は熱で供給してきたケース一に比べて、ケース三を見ますと省エネルギー性が三六%、ほぼ三分の一程度の省エネルギーが可能になるということになりますので、一つの例として提示させていただきました。この辺が我が国の法体系の課題と考えています。
  16. 岡利定

    ○岡利定君 平田先生にお伺いをさせていただきたいと思います。  私も先生の天然ガスパイプライン構想というのを大変興味深く聞かせていただきました。それがあわせて、先ほどの地図の上にもあらわされておりますように、中国を中心としたような地域も含めての大構想だと。中国の場合にはよく聞くわけでございますけれども、これからの経済成長の中でエネルギーの使用が非常に高まってくる。しかし、そこはほうっておけば、ほうっておけばというとおかしいですけれども、そのままでは石炭中心になって酸性雨だとかいろんな環境問題というのも発生してくる。そういう意味で、中国発展を手伝うという意味からも、中国も含めた大パイプライン構想というのが大変関心が深いわけでございます。  ところで、先ほど日本の地図の中でずっとパイプラインを引いていくということでございますけれども、何となく心細いなと思ったんですが、先生の今のお話でぜひ実現してもらいたいなと思うのは、国内に井戸があったらありがたいな、何か両方押さえられてしまったら、パイプだけあるけれども、だれもやってもらえないというような事態というのは大変怖いというような気もしたんですが、いずれにしても北海道あたりでそういう可能性があるということになりますと、非常に活用の方法もまたさらに進んでくるんではないかな。  そういうようなことで大変心強く思ったわけでございますが、新聞などを見ますと先生、天然ガスパイプライン研究会というようなことで、先ほどスライドもお見せいただきましたが、世界的なそういうレベルについていろいろと御研究していただいたと思うんですが、日本の井戸掘りの技術というんでしょうか、その辺は国産で間に合うのかという点はいかがでございましょうか。
  17. 平田賢

    参考人平田賢君) 幾つかポイントがございましたと思いますが、まず井戸元でとめられたら大丈夫かという御議論でございますが、先ほどスライドでもごらんに入れましたように、ECに対しては北海とアルジェリアと、それからシベリアからガスが入っております。シベリアから幹線が八本入っておるんですが、冷戦中も安定してガスが送られたわけでございます。  逆に言いますと、パイプでつながるとより一層安全保障体制がむしろ強固になる。パイプラインをけんかの道具に使うということからはむしろ反対の方向に動くというふうに私は考えております。やや善意に過ぎるかもしれませんけれども、あの厳しい東西冷戦の中で非常に安定して送られていたという事実がございます。  それからもう一つは、技術の御質問でしたが、まずパイプラインを敷く技術につきましては、日本はリーダーシップを十分持っています。鉄管をつくる技術から土木工事技術はもう世界一流でございます。  井戸を掘る方でございますが、問題は井戸掘りの機械、リグ。先ほど世界一のリグというのをスライドでごらんに入れました。世界最大のリグは大体一万五千メートルを掘る技術でございます。天然ガスに関しましては大体一番深くても九千メーターぐらいなんですが、今日本石油資源開発株式会社が持っておられます井戸は大体四千ちょっとなんですね、四千五百メーターぐらいでございます。  北海道の勇払の井戸は大成功で今大量にガスが出ております。ただ、それをさらに深く掘るためには大きいリグを持ってくる必要がございます、あるいは購入する必要がございます。それを現在、石油資源開発株式会社は外国に発注しておられまして、再来年入ってくるということであります。五千メーター以上掘るというのはかなり継承された技術でありまして、実は先ほどごらんに入れましたスライドのGHKという会社は親子三代、自分の息子まで四代続いている井戸掘りであります。
  18. 岡利定

    ○岡利定君 パイプラインの関係でさらにお尋ねしたいと思いますが、結局、国内にこれからそういうパイプラインを引いていくといったときに、先生のお話の中で経費的な面で私企業レベルではなかなか難しいというようなお話もあったわけでございますが、そういうことも含めまして、実現していくための条件といいますか、克服すべき課題というのがどういう点にあるのか、お教えいただけたらと思います。
  19. 平田賢

    参考人平田賢君) やはりこれも非常に大きなポイントだと思います。何らかの国家的なインセンティブがぜひ必要です。一例を申しますと、運輸省が今提案しておられます常磐新線、これは無利子のお金を国に用意してほしいと言っておられます。例えばそういうような国からの資金的な援助と御指導と、それからもう一つは、先ほどちょっと申しましたように、すぐれてインター官庁的な性格を持っておりますから、何かそれを越える促進法的なもの、そういうものが必要なんではないかというふうに思っております。
  20. 岡利定

    ○岡利定君 もう一方は、今度は大陸の関係でございますけれども、先ほどのスライドでありましたように、ロシア、それから中国、それにマレーシアの幹部の方々と先生お話しになっての状況がありましたが、向こうの方とお話しされている中で、先生の御判断として実現可能性というのがあるとお考えなのか。それから、そういう点を実現していくためには、国家レベルと言っていますが、国としてのいろんな動きというのが必要になってまいると思うんですが、そういう意味で国に期待する働きといいましょうか、あったらお聞かせいただけたらと思います。
  21. 平田賢

    参考人平田賢君) それではちょっとまたスライドを。(スライド映写)  非常に膨大な構想に見えますが、よく見ていただきますと、実はこの構想の大半の部分はもう既に計画がございます。例えばこの図でございますが、この図で真っ先にやらなくてはいけないのは、中国の東海岸から長崎に揚げる、実は済州島を経由して東シナ海、東中国海を横断するラインです。この部分は非常に浅い大陸棚でありまして、水深が二百メーターよりも浅い。ここへ海底パイプラインが、上海-済州島が大体四百キロ、済州島-長崎が大体四百キロぐらいでありまして、約八百キロの海底パイプラインです。これをつないでおきますと、実は中国の奥地に非常に大きなガス田が六つございます。  それから、先ほど申しましたトルクメニスタン、それからオフショアの海南島とそれから上海沖の平湖ガス田と申しますが、幾つか大きなガス田でございまして、これらをつなぐパイプライン建設費を試算いたしますと、日本の場合にはキロメートル当たり大体九億円かかりますけれども、中国のこの辺では大体一・二億円で済むと思っております。中国の部分だけで大体一万二千キロメートルで、総額一兆五千億円ぐらいのものであります。これを十年ぐらいのスパンで考えればよろしいので、大体年間一千五百億円ぐらいのODAを考えていただければこのインフラは可能です。  中国東海岸の南北ラインですが、深川-上海がつながれば南のラインはかなりしっかりいたします。北のロシアのラインはなかなか政情不安定でございまして、こちらの方は政情の改善が待たれるわけでございます。実は今週の土曜日から私このヤクーツクヘ参りますけれども、北の方の政情の安定化を待つと同時に、日本の国土縦貫パイプラインの北半分を確立するためにはやはり北海道でガスが出るということが非常に大きいことだと思っております。
  22. 岡利定

    ○岡利定君 それでは、月尾先生にお伺いさせていただきます。  藁科先生と同じようなことを感じたわけでございますけれども、交通の面でのエネルギー、それから省エネのサイドからの問題点、それから環境保全との関係での問題点、そういう意味で端的に言いますと、むだなと言うとあれですけれども、自動車をできるだけ使うのを少なくするということが大切なことだと。しかし、社会生活、経済活動を行っていく上でどうしても必要な分野であるし、先ほど先生おっしゃったように不便になるとか、地方にいきますと自動車と電車と余り値段が変わらないとかいうようなことで、現在の社会生活そのものを変えない限りはいろんな難しい問題がある。  そこで、藁科先生の御質問も、通信網なんかの整備が今言われておるんだから、思い切った生活態様の変更というもの、電気通信なんかの部門も使ってやったらどうかということのお考えかなと思って、私も同じことを思ったのでございますけれども。ちょうど今何かアメリカと同じように日本でも広帯域の通信網の建設というのが非常に大きな課題だということで議論なされておりますし、また近々そういう地方広帯域通信網を使っての実験システムなんかもやりたいというふうな話もあるというふうにも伺っておるわけでございます。  そういう意味で、社会システムとしての中に電気通信網を組み込んでいくというような観点で考えたときに、今度は交通のサイドから通信網に対してこういうようなことを考えるべきであるというようなことの御注文もあるんじゃないかなと。それが、先ほどありましたように、交通コントロールとしての役割とかいうようなことをおっしゃったわけでございますが、ほかにもあれば参考のためにお教えいただけたらと思います。
  23. 月尾嘉男

    参考人月尾嘉男君) 幾つかございますが、まず一点は、柏木先生がおっしゃったことと近いんですが、よく御存じのことかと思いますが、交通というのは今いろんな省にまたがっております。道路をつくるというのは建設省であります。自動車そのものについては通産省が所管し、認定その他は運輸省がやる。それから、交通そのものは警察がやるというような形になっております。  情報を使って交通をいろいろ整備、交通網をより有効に使っていこうというようなことについても現在各省がそれぞれ通信網を交通のためにつくろうというようなことを実験したりしておるわけですね。なかなかこれが歩調がとれて一体として交通をうまく通信とマッチさせていくというようなことが進まないという点で、先ほどのエネルギー問題と同じように、交通と通信の関係についても少し統合的なまず進め方ということを何とか国を挙げてやっていくということをぜひお考えいたたく必要があるんではないかということだと思います。  それから二点目は、ゴア副大統領が副大統領になる以前から高速の大容量の通信網を提案されておったときに、その背景に、一体その通信網を整備することがどういう社会をもたらすかということの膨大な研究がございまして、例えばそれによって出版業界はどう変わるかとか、家庭生活がどう変わるかとか、教育はどう変わるか、医療はどう変わるかというようなことをかなり積み上げた上でそれらをカバーする形での通信網を整備するというようなことを提案しておられるわけです。日本の場合は、どちらかといいますとハードウエア先行型でありまして、B-ISDNというのも大容量のものをとにかくつくれということで、じゃ一体それが社会をどう変えるかというところについては十分な研究がなされておらないわけですね。そういうことがこれまでもいろいろ問題を起こしておりまして、通信衛星、放送衛星についても同じようなことが起こって、ハードはお金さえあれば打ち上げられるということでどんどん打ち上げましたが、それを今十分には使いこなしてないということで放送会社が乱立したりというような問題も起きておる。  私は、通信網をつくっていくということは必須のことだと思いますが、じゃそれによって二十一世紀以降の日本社会、特に今回のことで申し上げました交通というのは一体どうなるかということをまずよく研究して、こういう社会を目指すためにこのような通信網が要るという方向での研究をぜひ進めていく必要があるんではないか。そういうことは私どもの責務でもありますけれども、国の新しい大きな予算をとった研究としてもそのあたりをぜひ進めていただくことが必要ではないかというふうに思っております。
  24. 平田賢

    参考人平田賢君) 一言だけ。  今岡先生の冒頭で、コージェネレーション技術はどうかという御質問でした。私、今日本コージェネレーション研究会会長というのをやっておるんですが、国のお金で六年間、アドバンスコージェネレーション技術研究組合というのができまして、電力ガス、メーカー、ユーザーが一緒になりまして非常に進んだシステムを開発いたしましてことしの三月で終了いたしました。効率もいいし、それから環境問題もクリアされた非常に立派なシステムができ上がったというふうに思っております。  それからもう一つ、冒頭に御指摘の諸外国との比較で電力ガスがもっと密接にと、あるいは合体というお言葉がございましたけれども、私は合体にはちょっと反対でありまして、健全な競争とそれから協調が必要だというふうに考えております。
  25. 岡利定

    ○岡利定君 ありがとうございます。
  26. 白浜一良

    ○白浜一良君 きょうは三人の先生方、本当にお忙しい中、ありがとうございました。白浜でございます。私、十五分の持ち時間でございますので、簡潔に質問させていただきたいと思います。  まず平田先生、先ほどおっしゃいましたように、エネ庁のこのエネルギー需給見通しを見ましたら、ほとんど原子力ベースになっているんですね。原子力を拡大するということが化石燃料を抑えるというベースに確かになっているんです。実際はいわゆる立地そのものが難しいということもございまして、私どももこのエネルギー需給見通しには懐疑的な面があるんです。逆に考えましたら、先生おっしゃいましたように、エネルギーの利用効率が悪いということがございましたですね、現在三五%ぐらいだというお話がございましたけれども、中期見通しといたしましてどのぐらいにすべきだと、エネルギー利用効率を、こういう考え方の何か基準みたいなものがございますか。
  27. 平田賢

    参考人平田賢君) お手元の私のつくりました先ほどのフローの図をちょっと見ていただきたいんですが、冒頭に申しましたように、原子力水力石炭火力につきましてはこれは温排水に目をつぶる。しかし、石油天然ガス火力につきましては温排水を使ってふろに入りたい、そういうことを言っているわけです。つまり、コージェネレーションのようなシステムが普及していないためにふろの部分を改めて燃料をたいてつくっているというのが現状だと思います。要するに石油天然ガスのようなきれいな高級燃料については温排水までしっかりしゃぶり尽くしたい。  それはどういうことかというと、天然ガス火力発電所は、例えば富津、東新潟というようなところにコンバインドサイクルとして立地しております。百万キロ、二百万キロワットというように原子力並みの大きさの発電所が立地しておるわけですが、富津や東新潟ではその温排水は使えません、遠くて。温排水が使えるためには天然ガス火力発電所が町の中にないといけないんですね。例えば新宿西口になくてはいけない。そういう意味で、天然ガス火力温排水を使える状態にあれば、つまりコージェネレーションとして存在すれば、エネルギーのダブルカウントがなくなる。つまり、温排水の割合分だけ、民生用ふろあるいは暖房それから産業用の低温の熱から差し引きますと、二〇%ぐらいは二酸化炭素の発生が減るというふうに考えております。
  28. 白浜一良

    ○白浜一良君 もう一点お伺いしたいんですが、先ほども少し話が出ましたけれども、天然ガスパイプラインを引く場合、先ほど特別立法とか低利の融資ということをおっしゃいましたが、要するに事業主体としてどういうイメージをお持ちなんでしょうか。いわゆる民間なのか、第三セクターみたいなものなのか、どういうベースが一番実効性があるのか。
  29. 平田賢

    参考人平田賢君) これもポイントでございますが、私どもの研究会としてはやはり第三セクター、国がかなり関与した第三セクターが建設をする。つまり建設の主体と、それからそれを使う主体あるいは運用する主体と事業主体は別だというふうに考えております。
  30. 白浜一良

    ○白浜一良君 地方自治体やなんかも入ってですね。
  31. 平田賢

    参考人平田賢君) と思います。
  32. 白浜一良

    ○白浜一良君 どうもありがとうございました。  柏木先生に二点ほどお伺いしたいんですが、先ほどいわゆるカスケード利用というのをおっしゃいました。非常にわかりやすい例でおっしゃったと思うんですが、例えば工場があって、いろんな工場群がある。周辺に住宅街があって、それを多段階で効果的にエネルギー利用していくという非常にイメージはわかりやすいんですが、そういう集中してエネルギーを工場のように利用されると非常にイメージはわかりやすいんですが、実際はコミュニティーを考えた場合に商業地域もしくは住宅地域、こういうところをどうするかというところが非常に問題なんです。いわゆるイーブンなそういう個体がいっぱい集まっているところですね。そういうことを考えたら、それは確かにコアとしていわゆるコージェネのガスタービンを利用したり燃料電池を利用したりしたら払いいと思うんですが、今高層ビルがありますね。高層ビルの場合は一個でいわゆるガスタービンを持っていたり、燃料電池を持っていたりして利用をされているわけですが、平面的に広がった場合、私思うんですが、一つ電力会社とかガス会社、全域に網羅している会社があるんですね。特に電力会社が問題だと思うんですが、この辺との関係はどのように考えていらっしゃるんですか。
  33. 柏木孝夫

    参考人柏木孝夫君) 非常に難しい問題なんですけれども、コージェネレーションがメリットが出るというのは、間違いなくある地域の中で一次エネルギーを投入して出てきた電気と熱がありますね。その中で全部使い切ることなんですね。どっちがが余ってもだめで全部使い切る、これが一番経済性が合うわけなんです。そうしますと今の状態ですと、一つビルのオーナーがコージェネの施設を所有している、そこの中でしか使えないわけですね。今外に出すことも可能になりつつありますけれども。  私がコミュニティーレベルと言っているのは、ある幾つかのビル電気が非常に多くて熱が少ない、もう一つビルは熱が多くて例えば電気が少ない、そこにエネルギーセンターができればちょうどバランスがとれますね、電気も熱もちょうど全部使い切るようになりますから。あくまでもある領域内で電気、熱が併給されすべて一次エネルギー投入したそのコミュニティー内のエネルギーセンターから送れるような状態にするプロジェクトをふやしていく。熱で抑えると電気が余る場合が多く、電気が余った場合には電力会社の方に逆送してやるという、そこでまた電力会社にも経済性が発揮できるようなシステムにしないと実際にはうまくいかないだろうと。  今おっしゃっておられたカスケード型だと、都市部の熱利用の多いところでなかなか厳しい。私が言っているカスケード型の熱利用というのはあくまで工業団地がメーンになると思うんです。あるいは工場の周りに民生用の例えば公民館があるとか、公共設備がある。民生用の熱利用がある場合には都合がよい。あるいはごみがあれば、ごみの焼却の周りに団地をつくって発電した後の熱を送っていくという話になりますね。都心部にあっては、あくまでもカスケード型のエネルギー利用になりますと、やはりコージェネになってくるんだと思うんですね、熱だけというより電気と熱のカスケード。カスケード自体は質を考慮して何回でも使っていくという意味ですから、熱の場合にはもちろん温度レベルになるし、電気、熱の場合にはコージェネになるし、電気電気の場合にはコンバインドサイクル、全部含めて私はカスケードという言葉を使う。都市部にあってはさらにヒートポンプによる未利用エネルギーを組み合わせた熱供給も重要となる。それをうまく、かつ合理的にやるためにはエネルギーセンターの推進になってくると私は思います。電力ガスが相乗りしてもいいし、ゼネコンさんが入ってもいいし、どういう母体になるか、地方自治体が推進してもいいし、これからの問題になってくるんだろうと。ただし、エネルギーの有効ビジョンからいけば、そこを避けて通るわけにはいかないというのが、我々エネルギーを専攻している者としては強調したいところなんです。
  34. 白浜一良

    ○白浜一良君 そこで私、芝浦のああいう東芝とか東ガスのああいう地域に限定されて、ですから非常に有効利用されているわけですが、ただそういうふうな全域に広がりますと、先ほど私が御質問しましたように、既設の電力会社とか、それは余った電力は買えばいい、こういうことです。足らない分は買う、こういうことには当然なるんでしょうけれども、実際そういうものを全域的に普遍していく場合に非常に抵触が起こるんじゃないか。  もう少し具体的な話をしましたら、現段階でも自家発電される、特に大口消費の企業なんかは自家発電率が非常に高いんですね。結構ふえてきているんですよね。それはそれといたしまして、民間の家庭用の余った電気というのは、それを電力会社が買い取るというシステムが非常に日本はまだ弱いんです。私はそういうふうに聞いているんですが、そういうことに象徴されるように非常に関係が難しいんじゃないかというふうに私疑念しているわけですが、そこの考え、ちょっと伺いたいと思います。
  35. 柏木孝夫

    参考人柏木孝夫君) 例えば米国の例をとりますと、PURPAがあります。PURPAで認定された施設からの電力は入札制によりアボイデッドコスト以下で電力会社が買いますよと。アボイデッドコストの計算は、通常例えば新しい石炭ベース発電所を一個つくったときにキロワットアワー幾らですかと、その額を算定して、それ以下の入札者から買うというようなオークション制度があります。日本の場合、そのアボイデッドコストの考え方、算出方法に議論があると思います。去年の四月から関連各位の尽力により売電できるということになっていまして、電力会社としては安定に電力を売ってくれるんであれば、幾らですよ、夜間だったら安くて四円とか、普通だと十数円で買いますよということを言っているわけです。  極めて大きな進展で評価していますが、私は、一つの考え方として、分散型のカスケード利用型の電源自体を電力会社主導でピークカット対策として推進していくべきだと思っているんです。我が国ではほかのセクターというよりも、まず電力会社が主導すべきだと。そうなりますと、アボイデッドコストの計算にもピークカットのメリットを加味しキロワットアワーは随分高くなりますよね。日本の特有のピーク時のアボイデッドコストを考慮に入れた買い取り価格というのが出てくるんじゃないかなというふうに思っています。答えを言えば、まず最初電力会社が分散型に出るべしということを申し上げておきたいと思います。
  36. 白浜一良

    ○白浜一良君 私も同感というか、私は本当に素人でございますが、何となくそういう素人なりにそれがいいなと、分散型で発電してそれが電力会社と一体になっているというのが非常に効率いいなと私もそう思いまして御質問したわけでございます。  時間もございません。最後に月尾先生、申しわけございませんが、先ほど三つの改革をおっしゃいました。この基本的な視点とされているプラスサム・エコノミー、プラスサム・アメニティーという観点から申し上げましたら、いわゆる構造改革というのは物すごくロングタームで考えないと非常に時間かかりますよね、なかなか変わらないと。それはひとつ置きまして、もう一つ精神改革という方は非常に難しいというか、現実に生きている人間の感性、価値観、そういうものからするとなかなかそういう改革は難しいという面があると私は思うんですが、そういう面でここを強調した方がいいとか、ここをこうした方がいいというような何かポイントがございましたらお教えいただきたいと思います。
  37. 月尾嘉男

    参考人月尾嘉男君) まず、構造改革については確かに全体、例えば日本の主要な都市が変わっていくという程度まで考えますと時間がかかるかと思いますが、部分的に既に動き始めております。  例えば、今先生が柏木先生に質問されたこととも関係するんですが、これまで都市をつくるときには大体住宅地は住宅だけ集めてつくるとか、オフィスはオフィスだけ集めて離してまた別の場所へつくるというような考え方でできてきたわけですが、現在それがもたらすむだということが見直されまして、ある数ヘクタールの地域にオフィスも住宅も、場合によっては劇場とかさまざまな遊ぶ施設も入れた空間をつくっていこうというような考え方がかなり出始めております。  それで、現実の例で申し上げますと、例えばアークヒルズのようなところはそういうことをやりまして、五・五ヘクタールの土地にホテルがあり、オフィスがあり、住宅があり、音楽ホールがあり、放送局があるというようなところをつくったわけですが、そういう考え方で既に町ができ始めております。それは今のカスケードでエネルギーを使うという点でも有利な環境でありますし、それから不要に長距離から人が通勤したり移動したりということを避けていくという点でも交通の点にも有利な条件になるということです。こういう考え方が長らくは都市計画の中にありませんでしたが、ここ数年検討が始まりまして、例えば建設省では、まだ制度にはなっておりませんが、現在検討している例でアーバン・コンプレックス・ビルディングというようなことを新しい都市計画の制度にしていこうというふうなことで、あるまとまった開発の中にいろいろな機能を複合してつくっていくというような考え方ができております。そんなようなことを制度にし、それに対する促進する税制その他を入れていくということによって、かなり思われるよりは早い時間でいくのではないかという気がします。  それから、精神的なことについては、おっしゃるようになかなか大変だと思います。かなりのショック療法的なオイルショックのようなものがないとできないと思いますが、これはやはり時間がかかるということで、長期的にいろいろな形でのキャンペーンとか教育ということを進めていく以外なかなかできないのではないかというふうに思っております。
  38. 白浜一良

    ○白浜一良君 どうもありがとうございました。
  39. 吉田之久

    ○吉田之久君 大変三人の先生方からまことに参考になるお話を承りまして、参考人皆さんに心から敬意を表します。  まず、平田先生にお伺いいたしますが、先ほどからECでの成功例も挙げて、壮大な天然ガスパイプラインの構想、これをアジアに、中国から日本への横断あるいはシベリアも含めてという構想はまことに将来への希望を感ずる次第でございます。  そこで、その前にお伺いしたいんですが、この天然ガスというのもしょせん有限なんでしょうね、それが一つ。  それから、人間が人為的にいろんな加工、工作を加えなくても自然に天然ガスというのがかなり大気中に噴き出しておるのかどうか。だとするならば、それは地球環境に対しては必ずしも私は有益なことではない、むしろ有害なことかもしれない。だとするならば、まずその辺のもったいない、有害なものをいかに人類が利用するかということを考えるべきじゃないか。  先ほど藁科先生からもお尋ねありましたが、深層ガス、これも無限にあるんだろうと思いますが、むしろほっておいて将来の子孫たちのために貯蔵してやることの方が親切ではないだろうか、あるいは今当面する天然ガスを大いに使っても将来核融合反応等によるかわるべき新しいエネルギーや太陽エネルギーがふんだんに予定されるはずだと、その辺の長期的な見通しはどうお立てになっていますか。
  40. 平田賢

    参考人平田賢君) ただいまの御指摘も本当にポイントを突いていると思いますが、まさにメタンガスは大気中に放出されますと、これはCO2の数十倍の温暖化効果がございます。現実に、例えばその辺の沼沢地でぶくぶく出ているようなメタンガスは、大気中に放出されております。それを全部カウントした上で現在のCO2の温暖化の効果の計算が行われているわけでございますが、まさにおっしゃったように、その辺でぶくぶく出ているような天然ガスを商業的に集めて、これもコストの問題だと思いますけれども、それを集めて利用する技術ができればいいとは思います。  ただ、現状では商業生産するということになりますと、やはり現在存在する井戸から集めてくるということになるかと思います。確かに現在世界にございます井戸、例えばシベリア等の井戸はほとんど浅いところの井戸であります。先ほどアメリカに百六十本深井戸があると申しましたが、確かにアメリカはもうかなり深井戸を掘り始めている。これを次の世代に残す方がいいという御意見ですが、確かにそうかもしれません。現在採掘されている天然ガスの下を掘ったら、もしかしたら無限に出てくる可能性もあるわけですね。  と申しますのは、深いところから出てきているガスというのは、これは有機物がメタン化したものではないということになっておりまして、その理論に実は二つございますが、ちょっとそこまできょうは立ち入れませんけれども、現在掘っております。その下を掘ったらまだ相当出てくるんではないか。そこら辺の探査が済んでいないということが一つございます。  それから、もっと長期的な問題でございますけれども、御指摘のように核融合あるいは将来太陽光発電がもうちょっと安くできるようになったときに、初めて水の電気分解あるいは水の熱分解で水素を経済的につくりまして、水素エネルギーが使える時代が来ると思います。車の燃料として水素を使う時代が二十一世紀の後半には来ると思います。したがって、今私どものパイプライン研究会では、パイプラインというのは一度敷いてしまいますと半永久的に使えますので、二十一世紀の後半に水素も運べる仕様にしておいてもらいたい、そういうことを言っております。  ことしの二月に参りましたアメリカでも既にヒューストンのあたりでは百四十マイルぐらいのパイプラインで水素を運んでおります。アメリカでは比較的気楽に水素を運んでおります。
  41. 吉田之久

    ○吉田之久君 ありがとうございました。  ところで、ちょっと気になるんですが、政治的な大問題の中を乗り越えて成立した日韓大陸棚ですね。あれはどこへ行っちゃったんでしょう。どうなっていますか、その後。
  42. 平田賢

    参考人平田賢君) その辺につきましては、実は私どもの調査団、天然ガス研究会では昨年の夏に韓国のガス公社の李会長、今副首相になられてしまいましたが、孝経植会長ともお会いいたしました。ただ、パイプラインの話はまだそのときにも全然何も動きはございません、というか何も話は出ませんでした。日韓大陸棚を含めて、実は東シナ海、それから今の日韓大陸棚のあたりの天然ガスの存在量は相当多いということは言われていると思います。
  43. 吉田之久

    ○吉田之久君 わかりました。  柏木先生にお尋ねいたしますが、今私ども究極の環境問題は、地球温暖化の問題だというふうに認識しているところなんでございますが、そういう点で、ある学者の説によれば百年間で三度C、プラスマイナスで一・五度ぐらい地球が温暖化するかもしれぬと。ちなみに、東京の平均温度は十五・三度、高知県が十六・三度ですから、一度差だと。鹿児島とは二度違う、八丈島とは三度違う、奄美大島とは四度違う、沖縄とは六、七度違うと聞いているんです。ともあれ、いろいろほかに太陽の黒点の変化等もあるんでしょうが、地球が温暖化していく傾向はそのようにとらえるべきでしょうか。だとするならば、これは大問題だと思うのでございますが、その辺について、最近の学者先生方見通しとか御判断につきまして聞ければお聞きしたいと思います。
  44. 柏木孝夫

    参考人柏木孝夫君) 温暖化問題というのは、今国際会議なんかですとクライメットチェンジと言っていますね。昔グローバルウォーミングだったのが、今クライメットチェンジだと、気候変動だと。ですから、例えば生態がその変動に対してついていける速度以内で温暖化が起こっていくのであればそれほど大きな問題ではない。ですから、生態がついていく以上に速い速度で温暖化が進んでいくということになりますと、違う疫病がはやってくるとか、生態がついていかないということになれば。そこが問題だというふうに私どもは理解しております。もちろん、平均気温でいけば数度上がろうが、ちょっと遠くまで行けば三度ぐらい高いところはすぐあるわけですから。ただ、今の気候が台湾ぐらいになってしまうとかそういうことになったときに、我々がそれに順応できない、世界全体が順応できないというところにやはり問題がある、私はそういうふうな理解をしております。  これに関しては不確定要素が多いですから、この間茅先生もおっしゃっておられたと思いますけれども、まだ具体的にどれが正解だと言うのはなかなか難しい、だれも言える人はいないだろうというふうに思っていただいて過言じゃないだろう。ただし、確実にその温室効果性ガスなるものの濃度は大気中で上昇していますから、温暖化傾向には全体としてはある。それが気候の、要するに異常気象としてあらわれてくるというところが怖いところで、それをいかに今の状態に維持するかということにやはり心がけるというふうに私はとらえております。
  45. 吉田之久

    ○吉田之久君 なお、先生はエネルギーのカスケード利用についていろいろと御指導などをいただいたわけでございますが、私ども民社党の方でも佐々木良作先生、既にリタイアされましたが、中心にいたしまして環境とエネルギー問題、磯村先生ら少壮の学者の方々といろいろ研究をしているところでございますが、特に東京エネルギー問題、これほど過密な大都市が、しかも非常に遠方から送られてくる電力に依存しておる、非常に脆弱な立場にある。かつ先ほどお話しのとおり、もっと利用できる熱源があるはずだと。そこで、大きな熱幹線というのをつくりまして、例えば埼玉方面、千葉、神奈川との接点を持ちながら大熱幹線を引いて、媒体は水でいいと思うんですが、いろいろ支線を引いて、そして、たとえ数度でも、十度近くになればもう大変な温度だと思うんですが、それを利用しながら日常家庭に便宜を図っていくというような計画などを考えているんですが、都内二十三区に存在する二・三万テラカロリーにも上る年間の廃熱量があるとかというようなことを言われているわけなんでございます。  そこで、その計画や先ほどのお話とあわせまして、ちょっと飛躍した話かもしれませんけれども、東京や大阪の地下あるいは近郊の地下に原子力発電所をつくる。あれは温排水処理が必要だから海岸で大体つくってきているわけでございますが、地下につくったって水は循環できますし、ほとんど無限に循環できると思いますし、そんな放射能が漏れるおそれはないはずでございます。その出た温度、熱を民間に、今申しましたような熱幹線をつくっておけばまことに見事に利用できるんじゃないか。あらゆる面で、非常に都市も強くなるし、原子力問題も解決するし、そういう発生する熱をほとんど一〇〇%近くお互い民生にも使えるという構想があっていいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  46. 柏木孝夫

    参考人柏木孝夫君) 大深度を利用したエネルギープラントというのは私は決して反対ではなく推進すべきだと思いますけれども、かなり長期ビジョンになるんだろうと思います。私自身原子力に関して言えば、今後日本では電力化率が進む国にどんどんなっていくでしょうから、間違いなく推進すべきだと思いますが、一般的に言って成熟した社会というのは急激に原子力伸びないということも忘れてはならないわけです。例えば現在話題になっている廃棄物の処理等を全部社会インフラとして整備して、燃料投入から最後のボトミンクに至るまで一環して完璧に処理できるようなことを条件にした上で原子力は進めるべきであり、もちろん日本はそういう方針で現在やっていますからいいんですが、ただそう思うようにどんどん進んでいく話じゃないだろう。  ですから、当面我々がやらなければいけないのはさっきおっしゃった大規模のパイプライン構想ですね。もちろん、これは後世に残る貴重なエネルギーインフラですから。日本エネルギーインフラ自体、特に熱のインフラが非常に少ない、非常によくないですね。一般的には、公園とかエネルギー・情報関連のインフラが欠けているというふうに私は理解していまして、平田先生のおっしゃっておられるパイプラインもそうですし、今まさに良質な熱・エネルギーインフラを整備しておくべきだと思います。一たん整備すれば汎用的に使用できるため大規模の基盤インフラというのは意を決して整備すべきだと思います。ただ、御質問の原子力との問題というのは長期的に考えるべきだと思います。
  47. 吉田之久

    ○吉田之久君 月尾先生にお伺いいたしますが、先ほど先生も、交通問題一つをとらえてみても各省の一元化は難しい、余りにもばらばら過ぎると。おっしゃるとおりだと思うんですが、私は交通問題もそうでありますし、環境問題もそうだと思うんです。あるいは環境エネルギーというくくり方で考えても同じだと思うのでございます。しかもこれほど完成した中央官庁の縦割りというのはなかなか簡単に統合したり壊したりできないと思うんです。  そこで、私はいっそこの際そういうものを思い切って地方に移してしまう。地方分権を促進しながら、交通問題や環境エネルギー問題を極めて自主的にその独自性を加えながら地方でやらせる。臨調が言っていますように、今の都道府県もややアンバランスでございますから、道州制のようなものを設定して、そこで思い切って新しい分野か切り開いていく。その道州間の接点になるのを中央がコントロールする、あるいは縦断的なパイプラインとか大構想は中央がやる、そういうふうにもう日本のこういう問題への取り組みの根幹を変えるべき時期に来ているんじゃないかと思うんですが、いかがでございますか。
  48. 月尾嘉男

    参考人月尾嘉男君) 私も基本的にはもう少し分権をしたらいいというふうに思っておりますが、今先生の御質問の中にもお答えが半分ほどありましたけれども、何を全体でやらなければいけなくて、何を分権できるかというあたりの議論だと思います。  例えば新幹線網というようなものをつくるという、運営はこれは分けても恐らくできると思いますが、つくるという構想を考えるというか、高速道路網をつくるというような構想を考えるということについては恐らく全体の調整を持った役所なり全国的な視点の官庁がやるんだろうと思いますが、それをできたものをうまく運営するということは分権でできるだろう。例えば北海道なら北海道というところを考えた場合、そこでできるエネルギー政策、交通政策というようなものはそれはむしろ地方で考えた方がより地方の実態がよくわかり、生活習慣その値もわかりということがありまして、私はそういう全体の調整をしなければいけないことをちゃんと全体でやれるという前提があれば、どんどん分権するということには個人として賛成でございます。
  49. 吉田之久

    ○吉田之久君 ありがとうございました。
  50. 立木洋

    ○立木洋君 どうもありがとうございました。  もういろいろな方々が聞かれたので、ダブらない程度でお尋ねさせていただきたいと思います。  最初平田参考人にお尋ねしたいんですけれども、省エネという考え方が、何といいますか、我慢を強いるんではなくて、そして技術の開発によって今存在している六五%のロスをどう少なくしていくかという問題、コージェネレーションという考え方、段階的にそれをどう利用していくかというカスケード利用の方法、私もなるほどなと思ってお聞きしたんです。先ほどちょっとお触れになったかと思うんですが、原発の場合はそういうコージェネレーションにはなかなか向かないというふうなお話で、それで私たち原発の安全性が確保されるならばその将来的な平和利用ということには何も反対ではないんですけれども、そういう状態省エネに向かないということになると、将来的には原価がどうなるのだろうか、それから将来的に考えて原発の平和利用というのは中期的、長期的に見るとどういうふうに考えたらいいのかという問題をお尋ねしたい。  それからもう一つは、現実的にコージェネレーションによってCO2の削減効果を現在何か試算なさった一定の数字みたいなのがありましたらお知らせいただければありがたいと思うんですが、その二点。
  51. 平田賢

    参考人平田賢君) 日本の場合には、二十一世紀の後半に核融合などが立ち上がってくるまでのつなぎとしてどうしても核分裂型の原子力発電所が必要じゃないかというふうに思っているんですが、未来永劫これをずっとやっていけるとは思えないんです。しかし、現状としてはベースロードを担う電源として原子力以外にはちょっと考えられない。原子力石炭火力だと思いますが、そういう意味で原子力ベースがあって初めてコージェネが生きてくる。コージェネが天然ガスあるいは石油で分散電源としてピークを担っていくわけですが、それはあくまでもベースがしっかりしていてくれないと困る。先ほどもちょっと申しましたように、天然ガスベースロードを担うというのは非現実的であります。ベースロートをきちっと担ってもらうためには原子力発電所がしっかりと安全管理をされ、末端までの全体のシステムに国がかなり関与した状態できちんと維持されるということが非常に大事だと思います。  そうなりますと、どうしても立地点というのは巨大化せざるを得ない。例えば一つの立地点に幾つも原子炉を置くという形になると思いますね。つまり、分散型の原子炉というのは考えにくい。先ほど東京の地下につくったらというお話もございましたけれども、やはり現状としては例えば福島なり柏崎なりにかなり集中して立地され、きちんと管理されるということが非常に大事だというふうに思います。
  52. 立木洋

    ○立木洋君 もう一つコージェネレーションによるCO2の問題。
  53. 平田賢

    参考人平田賢君) 恐れ入ります。  先ほどちょっとお答えの中に申したんですが、エネルギーフローの図で石油火力天然ガス火力の一次エネルギー分が全部コージェネになったといたしますと、CO2の排出量は二〇%減ると、そういうことを申したのでございます。
  54. 立木洋

    ○立木洋君 次に、柏木参考人にお尋ねいたしたいんです。  地域におけるカスケード利用という形でのやり方というのは、国際的にはどの国が一番普及率が高い状態に今なっているのか、それが一番技術的に進んだというか、現実にそれが採用されている国はどの国なのか。  それから、先ほどおっしゃった、技術的には日本も相当の水準にまできているというんだけれども、その普及の状態から見れば日本をどういうふうに判断されるのか。  それから、一〇〇%エネルギーを利用するという、そういう点ではお話を聞いているとすばらしいわけですが、そのカスケード利用というのには何ら問題がないというふうにお考えになっているのか、こういう懸念はあるんだという何か問題点は存在しているのかどうなのか。その三点を、済みませんけれども。
  55. 柏木孝夫

    参考人柏木孝夫君) 諸外国の例ですと、やはり北欧なんですね。ヨーロッパではかなりカスケード利用というのは盛んに行われているわけです。要するに、カスケード利用自体は温度レベルで何回でも使っていこうということですから暖房が最後になってきたりする場合が多くて、冷房はなくても生活できますけれども暖房はないと生活できませんので、どうしても寒い国でこういうふうな有効なビジョンというのが盛んになっている。例えば一つの例を挙げれば、まず家庭で給湯をやって、それから暖房をやって、それから道の下にそれを通して融雪に使うとか、これで三段階の、ドリブルのカスケード利用になりますね。これはもうスウェーデン、ノルウェー等でやっていますから、やはり寒い国でそういうことが知恵として生まれてきている。  一方、日本での普及というのは、そういう観点からしますと日本自体は温暖ですから冷暖兼用ということになりますので、カスケード利用自体は今ほとんどないと言っても過言じゃないだろう、これからの問題だと思います。ただ、産業部門でのエネルギー消費が多いですから、そういう意味ではカスケード型の工業団地というのは当面まず推進すべき問題なんじゃないか。あと民生産業とのコンビネーションというのは合理性に富んだカスケードになりますね。  さっきちょっと言うのを忘れたんですけれども、一ついい例があります。日立熱供給という会社があるんです。これは日立セメントの排熱から出てくる蒸気民生用に活用している。この例では日立セメントと東京電力とが日立熱供給という合弁会社をつくってセメント会社の排熱を地域冷暖房に使っている。日立駅前の地域冷暖房に全部使っていますから、これは産民複合型のカスケード利用。東京電力が入っていますので、タービンを持っていまして、熱需要がないときにはタービンで電力を起こして自分の系統で東京電力が使っている。ですから、さっき先生がおっしゃったのと重複しますけれども、電力会社が主導してやるということになりますと非常に合理的なビジョンがあります。これをよい例にして、これからどういうセクターを考えていくかということについて一つの指針になるんじゃないか。  問題点としては、熱搬送があります。熱はなかなか遠くまで運べないというデメリットがあります。ですから、エネルギー輸送をどうするか。例えば化学反応に変換をしてある書エネルギーをしてやろうとか、エネルギー輸送の問題がやはり最後まで残ってくる一つの課題。ですから、結論を申し上げれば、電気というのはやはりいいなというのが結論になるわけですね、どこでも効率よく運べますので。熱というのはなかなか運びにくいということです。
  56. 立木洋

    ○立木洋君 最後に、月尾参考人お願いしたいんです。  先ほど見せていただいた自動車の排出ガス規制の経緯の問題ですね。これは最後までディーゼル重量車というのが一番おくれているといいますか、そういうふうになっているということが出ているんです。これは現実的な問題になるんですが、東京でNOxの排出規制がいろいろ検討された結果、二十三局内で二十一局が基準に達していないというふうな状態があって、今この規制の問題をどうするかということで検討されて二月に最終報告が委員会から提出されたという方向があるんです。このディーゼル重量車に関してこういう排出物をさらに規制することが技術的に可能なのかどうかという問題が一つ。それから、今東京都でそういうふうに新たに出されている最終報告でのディーゼルトラックなんかのNOxの排出量や走行量の規制あるいは一定地域内の乗り入れ制限などの問題はどのようにお考えになるのか、その二点、済みませんけれども。
  57. 月尾嘉男

    参考人月尾嘉男君) 技術的には、技術という視点からだけでは可能ということなんですが、要はそれがどの程度高価なものになるかということと、エネルギー効率をある程度落とすということにもなりまして、そのあたりとのバランスで、今後社会的にどう考えていくかということだと思います。  つまり、強力に推し進めれば、物流コストにもはね返ってくるわけですから、そのあたりをどんなバランスで考えるかというようなことが、恐らく今後の社会的な議論の対象になっていくんではないかというのが前半のお答えです。  それから、後半のことについては、これも社会的な合意ということになるかと思いますが、例えばヨーロッパの多くの都市ではトラックの乗り入れ規制というのを時間的にやりましたり、それから荷物の積みおろしをある一定時間に限るというようなこともやって規制をしておるという社会もあります。そういうことが社会的に受け入れられるかどうか。  例えば商店に荷物を積みおろしするのは朝の六時から八時までの間だけに限るとか、それから工事用のトラックが町の中を夜中の十二時から朝の六時までというような時間は一切通さないとか、そんなようなことをやっている都市もあるわけですが、それをどの程度社会的な合意を得る形で進めていくかということになると思いますが、やっている国もあるということで、お答えになるかどうかわかりませんが、そういうこともあります。
  58. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっとまだ時間がありますから、もう一問お尋ねしたいんですが、参考人の書かれたのをちょっと読ましていただいたんですが、ジャストイン方式だとか、それからPOSシステムですね、これで輸送量が非常にふえるというふうな問題で、そういうやり方というのは見直すべきだというふうなことが書かれてあったんですが、その見直す内容について何かもうちょっとお聞かせ願えればと思うんですが。
  59. 月尾嘉男

    参考人月尾嘉男君) これは、まず大きなとらえ方でいえば、社会的コストをどこが負担しているかという議論になるかと思います。  つまり、ジャスト・イン・タイムのときよく議論になりましたが、本来多くの車が走るべき道路空間を、ある特定の会社の倉庫といいますか、在庫空間として使っているというような議論があったわけであります。そのコストは当然社会的に負担して、ある自動車をつくる企業がそれによって実は利益を得ておったというようなことでありまして、それをじゃ、もう少し負担の比率を変えるかというようなことを議論していくと、ジャスト・イン・システムというのは必ずしも社会的に見たときにいいかどうかというようなことになってくるんだと思うんです。そんなことの議論がこれから社会の中でされる必要があるんだろうというふうに思います。
  60. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 萩野です。お三人の先生方、大変長時間にわたりましていろんな新しいことを教えていただきまして、大変ありがとうございました。  幾つか質問メモを書いておりましたけれども、同僚の委員の方がほとんど質問しましたので、大変幼稚な質問をいたしますけれども、ひとつよろしく御指導をお願いします。  化石エネルギー資源の有限性というのは、先ほど来出ておりましたが、明らかになっております。それから、CO2を初め温暖化とかいろんなのが出ておりますけれども、地球が果たしてどの辺まで寛容性があるんだろうか。また、地球号に乗れる人間というのは、まあ大体四十億から五十億と言われているんですが、二十一世紀になるとこれは定員オーバーと、こういうことから考えますと、いろんな限界というのがもう若者たちにも大体わかっているんです。ですから、先ほど来ちょっと出ておりました、次に残しておったらどうかというのも、なるほどと思ったりもしました。  我々がこういう限界ということを知ったときに重要なことは、人間の抱く価値観、これで便利で能率的で、そして豊かになれば我々は幸せになるんだというような、そういう価値観をまだ慕っておる。また、確かに人間は原始社会には帰れないという、そういう面も持っております。だけど、このままでいくとやがて滅びていくんではないかというような世紀末的な考え方も非常に出てくるんじゃないか。  そういう点から、我々の価値観というものの転換、そういう面から先ほど月尾先生もおっしゃっておられましたが、最終的には教育の問題にもなってくるんではないかというようなことも、お聞きしながら考えておりました。  きょうの大きな問題は、エネルギーということについてであったわけなんですが、先ほど来出ております熱とは一体何か。だれ先生でしたか、書いていらしたのをちょっと見ましたけれども、    〔会長退席、理事藁科滿治君着席〕 本当に考えてみると、冷暖自知というように、暖かいとか熱というのはいかにも知っているように思いながら、実は目に見えないから我々は本当はわかっていないんじゃないか。そういう面から、エネルギーと同じディメンションで我々はこれをとらえる傾向にあるんじゃないか。当然ながら熱というのは再生がきかない、だからエネルギーとは違うんだという考え方がなければならないんではないか。そういう点から考えると、人生と非常に類似しているようにも思うわけです、二度とない人生といいますか。だから、生まれた高温から半ばの常温までいかに利用するか。ここに先ほどカスケードの問題だとかいろんなのが出てくる。何かちょっと哲学じみたことを言ってしまいましたけれども、とっても感じておるわけです。  二十一世紀を目の前にしてのコージェネレーションだとか、またリパワーリングの普及だとか、先生方はそういう面で御努力されており、我々は大変啓発されるんです。こうした問題は、先ほどの平田先生のパネルにも出ておりましたが、アジア・太平洋の大きく広い範囲でいろいろ解決していかなきゃならない面もあります。それからまた、地域においてはコミュニティー構想というようなものの重要性とか、きょうお話を聞いて私はそういうのをとっても感じたところなんです。  私がいただいている時間は十五分です。三人の先生方、せっかく国会という場所にいらしたわけですから、少しでも政治の中に生かし、行政の中に生かしていく、そういう面から何でも先生の御自由で結構でございます。私の次は小池さんだけでございますから、お三人の先生方に二分ちょっとぐらいずつでよろしく御指導をお願いいたします。
  61. 平田賢

    参考人平田賢君) 大変哲学的な御質問をいただきました。  先ほど柏木先生のカスケードのお話がございました。(ボードに図示)私はよくこういう図をかくんですが、水力発電をいたしますときに、山の上にダムをつくりまして水を張ります。そして、川の流れに沿って黒部第一発電所、黒部第二発電所というように、次々と水力発電所をつくって山の上から海面までの水の落差を使い尽くすというのが常識でございます。  それに対して熱の方は、水の落差に相当するのが温度差でございます。ということは、燃料に火をつけて最初に得られる温度は摂氏千八百度あり、海面に相当するのが常温でございます。常温というのは十五度でありますが、熱は千八百度から千五百度までの落差を使ってくるわけでございます。  私どもが今欲しいのは例えば暖房であります。暖房というのは二十五度の温風が出ればよろしい、おふろに入るのに必要なのは四十六度のお湯であります。御飯を炊くというのは、一気圧のもとでは百度です。民生用エネルギーというのは、このようにほとんど常温のちょっと上の温度の熱がほしいわけです。日本じゅうで初めに投入された一次エネルギーから最初に出てくるのは、例えば原子炉燃料棒の中心には二千度の熱がございます。炎の中には千八百度の熱がございます。そのような高温の熱をつくっておいて何をやるかというと、いきなり常温近辺の温度の熱をつくる。熱の高温から低温への流れは不可逆でございまして、一遍おりてしまったら、水の流れのように覆水は盆に返りません。ですから、水力発電のように千八百度の熱をつくったら千八百度から使ってこなければならない。千八百度で暖房をする必要はありません。暖房というのは、先ほどから言っておりますように、常温の少し上なのですから。日本国じゅうで投入したエネルギーが全部常温へ向かって流れ下る。暖房やふろは途中でつかまえればいいんですね。途中でつかまえるシステムがないだけの話であります。  ということはどういうことかというと、燃料に火をつけて最初に得られる温度、つまり千八百度の熱を使いこなしている技術とは車のエンジンです。その次の温度レベル、例えば千三百度ぐらいのところの温度レベルの熱を使う技術はターボであります。それの次の温度レベル、例えば八百度ぐらいの熱を使う技術蒸気タービンでございます。それで、途中から蒸気を引き抜いて御飯を炊いて、ふろをたいて、暖房をやって残りを捨てればいいんです。こうすれば水力発電の常識が熱の方の常識になります。  これを徹底いたしますと、発電をした排熱は全部ふろに入れるわけであります。現在は、残念ながら福島にあるから入れないということなんですね。日本で投入したエネルギーは全部常温へ向かって流れてくるんですから、これを利用するシステムさえあれば一日じゅうふろに入っていても入り切れない。朝から晩まで小原庄助さんのようにおふろに入っていても使い切れないぐらいの熱が出てくる。  そうしますと、結局使う知恵の問題なんです。ですから、せっかく使えるものを我慢するという議論ではなくて、知恵さえあれば幾らでも使えるというか、一日じゅう朝シャンやっててくれと、こういうことになるわけです。
  62. 柏木孝夫

    参考人柏木孝夫君) 私の持ち時間、今平田先生に差し上げましたので、全く同じことを申し上げたいのですが、ただ、ちょっと観点を変えて考えてみます。  快適性志向、すなわちアメニティーへの願望を満たすにはそれに伴ってエネルギー消費が増大するという誤解が今まであった。ここに環境問題が入ってきたわけですから、アメニティー・エネルギー消費と環境保全とはある意味ではトレードオフの関係になりますね。そこを解消できるのが、すなわち二者択一の関係を解消できるのがこういうカスケードの概念であり、あるいは合理的な利用構想、エリアで何かコミュニティーレベルでやることによって快適性が味わえて、かつエネルギー消費が少なく環境性に富むという言い方。  あともう一つ、熱というのは、私はいつも各種エネルギー源の墓場だ。熱というのはどんなエネルギーでもすべて熱に変わりますから、ですから墓場に何もいいエネルギーを加えることはない。ですから、墓場にあるんだったら電気のようないいエネルギーをとった後で墓場に捨てなさいというのが、今平田先生の言い方を私なりに言えばそういう言い方です。
  63. 月尾嘉男

    参考人月尾嘉男君) 萩野先生もおっしゃいましたが、私は教育ということを世界規模で考えるということが非常に重要だと思っています。    〔理事藁科滿治君退席、会長着席〕  おっしゃいましたように、人口がエネルギーも含めた問題の根源にあるわけでありまして、人口が減ればこういう問題が非常に簡単に解決できる方向に行く。人口を減らす、もしくは安定した状態にしていくために何が一審効くかといいますと、世界の教育水準と出生率というのはかなり比例しておりまして、各国ごとにとりますと。つまり、教育を高めるということが結局人口を安定した状態へ持っていく一番大きなことだと思っております。  しかしこれはなかなか困難なことでありまして、まず一つは、文盲の比率が高い国がたくさんありますから、そういうところでいかに教育するかということであります。  かつて国連がインドの人口を減らそうということで、日本で発明されたオギノ式の普及をしようということで、二十八のビーズのついた数珠をたくさんつくりまして、毎日一つずつ動かす、それで赤い色のときはしちゃいけないということをやりました。しかし、なかなかこれがうまく伝わりませんで、その数珠さえかけておれば子供ができないとみんな誤解しまして、ますます人口がふえたという経験もあったりしまして、意外と教育というのは難しいんですが、これをやらない限り、恐らく出生率というのは世界的な規模では減っていかないということだと思います。  それから、先進国については、日本の特殊性を言うのは危険だという考え方もありますが、日本がかつてやってきた生活スタイルその他を伝えるということも重要じゃないかと思っておりまして、例えば江戸時代というのは三百年間にわたって人口が完全に一定の状態を保った状態でありました。それから、何千年か連作をして連作障害がない作物のつくり方というのは水田だけでありまして、これも世界に類がないものであります。  そういうような技術とか発想を持っておった国の考え方を先進国に対してはだんだん伝えていくということが、私はエネルギー問題の解決と同時に、日本が今のような世界から疎まれる、と言ったらいいかわかりませんが、疎外されるような環境に置かないという点でも、先進国に対しては日本がやってきたすばらしい側面を伝えるという、そういう意味で、二種類の教育というものにもっと力を入れたらどうかというふうに思っております。
  64. 萩野浩基

    ○萩野浩基君 大変三人の先生方、本当にありがとうございました。啓発されるところ、またたくさんありまして、まだ時間残っておりますけれども、量より質の時代ですから。ありがとうございました。
  65. 小池百合子

    小池百合子君 毎回トリを務めさせていただいております小池でございます。  エネルギーの話といいますと、非常に壮大な話か急にせこい話になるかどちらかとは思うんですが、きょうは、まず平田先生の方から天然ガスパイプラインプロジェクト案という大変印象深い壮大なお話を聞かせていただきました。殊のほかエネルギー基盤が脆弱な日本でございますので、こういった大きな枠組みで考えていくことがやはりエネルギーの安全保障上非常に重要なことであるというふうに大変印象深く伺わせていただきました。  お伺いしたいところは、このパイプラインのことではございませんで、次のコージェネのことでございます。先ほどわかりやすく御説明いただいたスライドの中に、きれいな女性がモデルさんになっていて家庭用のコージェネのシステムがございましたね。これがどのように今普及し、またそれを普及させるために、たしかオイルショックのころ、アメリカもさまざまな法律などもつくったと聞いておりますので、それがいかに経済的なインセンティブにもなり得たのか、その辺を伺いたいと思います。
  66. 平田賢

    参考人平田賢君) 先ほど来申しておりますように、燃料に火をつけたら必ずエンジンが回っていないといけないんですね。燃料に火をつけていきなりふろに入るというのは間違っていると、こう言っているわけです。  私のこの持論からいくと、各家庭の台所とふろ場でガスに火をつけたら必ずエンジンが回っていなければいけない。各家庭の台所とふろ場で回るエンジンというのは非常に小さくなければいけない。その一例が先ほどごらんいただいた家庭用システムです。まだ台所に置くには大きいですけれども、これに近いものがガスエンジン・ヒートポンプと申しまして、エンジンでコンプレッサーを駆動いたしましてヒートポンプを回す。これが軒下に置けるぐらい小さいものができております。もちろん、そういうものはすべて分散型でございますので、NOxに対しては十分配慮する必要があります。ただ、エンジンでありますからどうしてもメンテナンスが必要であります。そういう意味では、まだまだお値段が多少高いと思いますが、技術開発は今そこまで進んでおります。  その究極の姿は燃料電池だと思います。ガスに火をつけるかわりに、ガスでまず燃料電池を動かす、それの排熱ふろに入って電気が出るという状態が一番望ましい姿だというふうに思っております。
  67. 小池百合子

    小池百合子君 実際には、それではまだアメリカでも先ほどの家庭用の普及というところまでは至っていないんでしょうか。
  68. 平田賢

    参考人平田賢君) ドイツもアメリカもそうですが、五キロワットというのができております。五キロワットというと、そろそろ家庭に入ってくるかなという状況であります。
  69. 小池百合子

    小池百合子君 どうもありがとうございました。  柏木先生に伺います。  今のコージェネの問題でございますけれども、資料で拝見させていただいたわけなんですが、このコージェネを進めていく上で、先ほどもちょっとお伺いしようと思ったんですが、法律的にそれを推進するようなことが例えばアメリカでも行われているようなんですけれども、その実態について伺いたいと思います。
  70. 柏木孝夫

    参考人柏木孝夫君) 米国では、さきに述べましたが、有名なPURPAという公益エネルギー法案があります。PURPAによって認定されたコージェネレーションのプラントがありますと、これをQF、クオリファイドファシリティーといいますが、そうなりますと、そこから出る電力や税制などで大きなインセンティブが与えられます。電力会社はそこから出たものを買わなきゃいけないとか、いろんな規制が生まれてくる。日本では昨年回転型のものでも余剰電力電力会社が買ってくれることになりまして非常に大きな変化だったと思いますけれども、さきに述べましたように経済性に対してはこれからの課題として考えています。  ちなみに米国の例で経済性を言いますと、大体売電で買っている電力コストよりも一〇%安ければユーザーのメリットが生じ、かつサードセクターとしてコージェネレーダーなるものが機能できるとされています。  日本でもこれらの経緯を参考にして価格体制もこれから徐々に決められていくんだろうというふうに思っていますが、関連業界の協調が極めて大切であると考えます。
  71. 小池百合子

    小池百合子君 ありがとうございました。  それから、先ほど来ずっと電力電気等の質の問題がございますよね。こういうカスケード型ということで言うならば、例えば今もう高度情報化社会でそしてコンピューターを使うわけですから、その辺で電気に電圧のフラクチュエーションなどがあると非常に危険だと思うんですけれども、その辺の安全性などは、じゃ平田先生お願いいたします。
  72. 平田賢

    参考人平田賢君) コージェネレーションから出てくる電気は質が悪いという説があります。そういうものが電力会社の系統にたくさんぶら下がったときに全体の質が落ちるんじゃないか、そういう説がございます。それにつきましては例えばドイツにしてもアメリカにいたしましても、コージェネをたくさんぶら下げた系統でコンピューター社会を動かしているわけです。  ただ私が一つ考えておりますのは、ちょっとそれを言うと多少問題かもしれませんが、現在の電力系統がややオーバークオリティーではないかと思います。電力会社供給責任ということを考えておられて、非常に立派な電気が来ておりますけれども、場合によってはそれほどの質は必要ないかもしれない。  もう一つは、現在は例えば百ボルト、五十ヘルツの電気が来ておりますけれども、コージェネによってつくられた直流が来ておったり動力配線で二百ボルトが来ておったり、さらにこれから老齢化社会が進むときに高周波が来ている電磁調理器が使いやすいとか、そういういろんな種類の電気がその団地だけは来ているということが考えられる。その電気は地元のコージェネでつくったものだというようなそういうバラエティーのある選択、お客様が選択ができる社会というのはあり得るかなと思っております。
  73. 小池百合子

    小池百合子君 ありがとうございました。  それでは、月尾先生に伺います。  きょうは交通面でのエネルギー問題ということについてお話を伺いました。ありがとうございました。特に先生の場合、情報からのアプローチという視点をお持ちでこれまでいろいろ御研究なさっておられると思いますけれども、確かに交通渋滞の中でむだに消費されている労働時間というのを考えますと、もうこれは大変な社会損失で、どうも日本の場合には、景気対策で道路を掘り起こしてその分の社会的な損失の部分は勘案されてないような気が実際にドライバーとして感じるわけなんでございますけれども、また一方で大変な渋滞が起こって、先ほどのナビゲーションシステムなどがありますと、日本人はどうもその辺が余りにも器用ですぐ裏道にすっと行ってしまっていつも根本的な問題を片づけないような気がいたしまして、情報と交通渋滞の解消、余りに情報の方も行き過ぎても根本問題をそのまま先送りするような気もしないでもないんですけれども、その意味で非常にグラウンドデザイン的なものを踏まえた上で情報と、そして交通とのバランスということが必要だと私は思っているんです。  そういった意味で、特に東京問題ということで言うならば、一極集中という点が交通渋滞を引き起こし、さらにそれがまた情報化を進めているという皮肉な結果でもあると思いますが、そのあたり、東京ということをまずイメージしての交通と情報のこれからの展開といいますか、どういうイメージを描いていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  74. 月尾嘉男

    参考人月尾嘉男君) 第一点は、現在私たちが、例えば東京でも結構です、日本全体でもいいんですが、交通のために持っておる資源をどれだけ有効に使えるかという形で情報を使うという考え方が必要だと思います。  つまり、よくベテランのタクシーの運転手さんの車に乗りますと、思ったよりはるかに早く目的地へ着くというようなことがありますが、あれはタクシーの運転手さんが使われてない資源を自分の持っておる情報によって有効に使うということによって早く運んでくれるということをやっておるわけです。これは今非常に人に依存しておるわけですが、それをもう少し社会的なシステムに依存させるというような形に持っていく。それによって使われてない駐車場を有効に使うとか、使われてない道路を有効に使うというようなことを行っていく。  それから、時間的にも有効に使う。例えばほんのあと十分家を出るのを待っておればすいた道が通れるというような情報をあらかじめ車で出発する前に与えてくれるとか、電車で出発する前に与えてくれると。それは現在経験的には皆さんやっておられるわけですが、そうではなくてリアルタイムでどんどん情報が与えられるというような社会をつくっていくということによって、既に私たち十分持っておる資源が今使われないままにほうってある、それを使うという発想で情報を使っていくということをまずやったらどうかと思います。  それからもう一つは、考え方の大きな転換だと思いますが、私最近「見捨てられる東京」という論文をちょっと書かさせていただきましたけれども、かつて一九八五年までのような状態東京に集中してきた状態がこの五年間ほどの間に大きく変わりつつあるというデータが今国土庁の審議会などで出されておりまして、つまり東京というのは、働くという視点から見たら大変すばらしい環境であるけれども、生活するという視点から見れば必ずしもすばらしい環境ではない。家賃でも数倍しておるとか、会社がオフィスを構えようとするとほかの都市に比べれば十倍ぐらいお金がかかるとか、人もうまく集められないとか、さまざまな問題があります。そういうことに対して最近、もっと生活を重視して地方へ移るとか、別の社会に生活するというような方がだんだんふえてきた結果、今東京から少しずつですが企業が動き始め、それから外資系企業も動き始め、大学生も動き始めるというような動きが始まりました。これはほんの五、六年のことです。こんなような動きをもっと大きく社会に知らせるという形で、多くの人たちが先ほど小池先生おっしゃいましたような今までの生活に少し疑問を感じて新しい生活を進めるというような方向へ、広い意味での社会教育をしていくというようなことも必要ではないかと思います。それも考え方によっては、日本全体で見たときの持っておる自然の資源であるとか空間の資源であるとか、さまざまなものを有効に使うという考え方では同じだと思うんですが、そういう有効な利用を進めるための情報をもっと提供するということをやったらいいんではないかというふうに思っております。
  75. 小池百合子

    小池百合子君 どうもありがとうございました。
  76. 浜本万三

    会長浜本万三君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言お礼を申し上げます。  参考人皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  なお、本日、参考人から御提出いただきました参考資料のうち、発言内容把握のため必要と思われるものにつきましては、本日の会議録の末尾に掲載させていただきたいと存じますので、御了承いただきたいと存じます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会      ―――――・―――――