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1993-02-03 第126回国会 参議院 産業・資源エネルギーに関する調査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月三日(水曜日)    午後二時開会     ―――――――――――――    委員異動  二月二日     辞任         補欠選任      小池百合子君     寺澤 芳男君   出席者は左のとおり。     会 長         浜本 万三君     理 事                 上杉 光弘君                 星野 朋市君                 藁科 滿治君                 横尾 和伸君                 長谷川 清君                 立木  洋君                 萩野 浩基君     委 員                 合馬  敬君                 岡  利定君                 佐藤 静雄君                 楢崎 泰昌君                 南野知惠子君                 矢野 哲朗君                 吉村剛太郎君                 久保田真苗君                 庄司  中君                 西野 康雄君                 深田  肇君                 白浜 一良君                 吉田 之久君                 寺澤 芳男君    事務局側        第三特別調査室        長        秋本 達徳君    参考人        日本労働研究機        構研究所長済学        信州大学経済学        部教授      高梨  昌君        日本労働組合総        連合会事務局        長        河口 博行君        日本経営者団体        連盟専務理事   小川 泰一君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○産業資源エネルギーに関する調査  (二十一世紀に向けての労働力事情展望と課  題に関する件)  (労働時間短縮推進上の課題に関する件)  (二十一世紀に向けた労働力事情変化に伴う  労働者への影響に関する件)  (二十一世紀に向けた労働力事情変化産業  経済への影響に関する件)     ―――――――――――――
  2. 浜本万三

    会長浜本万三君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、小池百合子君が委員を辞任され、その補欠として寺澤芳男君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 浜本万三

    会長浜本万三君) 産業資源エネルギーに関する調査を議題といたします。  本日は、二十一世紀に向けての労働力事情展望課題に関する件、労働時間短縮推進上の課題に関する件、二十一世紀に向けた労働力事情変化に伴う労働者への影響に関する件、二十一世紀に向けた労働力事情変化産業経済への影響に関する件の調査のため、参考人といたしまして日本労働研究機構研究所長信州大学経済学部教授高梨昌君、日本労働組合総連合会事務局長河口博行君、日本経営者団体連盟専務理事小川泰一君に御出席お願いいたしました。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。皆様から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の調査参考にいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  続きまして、議事の進め方といたしましては、まず、二十分程度参考人方々からそれぞれ御意見をお述べいただきました後に委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。  それでは、高梨参考人からお願いを申し上げます。
  4. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 高梨でございます。  お手元に日本労働研究機構の封筒に入りました資料を差し上げております。一つ研究機構の出しております「JILリサーチ」という雑誌に書きました私の論文でございます。ちょっとコピーは不鮮明ですけれども、「雇用政策発想転換」と題したペーパーでございます。もう一つ雇用問題政策会議の、昨年一月二十日労働大臣に建議いたしました「人間尊重時代にふさわしい新たな社会システムの構築にむけて」、これがございます。これを踏まえまして昨年七月十日に政府が閣議決定いたしました「第七次雇用対策基本計画の概要」、この三つの文書がございます。  この雇用問題政策会議提言並びに第七次雇用対策基本計画、これを今日の労働需給状況、また将来展望を踏まえた場合どういう問題があるか、こういうことについて私はきょう皆さん方参考人として意見を申し述べたいと思います。  時間も限られておりますから、私の「雇用政策発想転換」の文書がございますけれども、これを柱組みにしながら私の意見を申し述べたいと思います。  まず、今日、円高経済下で大変な労働力不足問題が大きな社会問題になりました。私は、この数年間労働市場需給状況を見ていまして大変暗たんたる気持ちでこの事態を見ておりました。といいますのは、いわゆるバブル景気のもとで株とか土地とかこういう資産に対する一種の投機的な行動、そういう過程の中で、額に汗して働く労働のとうとさというものがどうも軽視されたんじゃないか。バブルがはじけたことによってやっと労働のとうとさ、また雇用の問題というものがそれぞれの国民の多くの人たちに真剣に語られなきゃならない、こういう状況を得たことは、バブル景気がはじけたことによって、いろんな問題はもちろんありますけれども、少なくとも冷静にかつ科学的に議論ができる素地が整いつつあると私は判断しております。  雇用問題政策会議提言に当たりましては、雇用問題政策会議座長代理を私は務めておりまして、この起草に当たって、この転換期の、「雇用政策発想転換」という文書の中で私が展開した理論にほぼ沿ってこれが作案された経過がございます。この会議労使の代表の方が参加されている審議会でございますので、労使方々も一応御異存がなかった、こういうものと考えております。  まず、私が今後の労働需給の見通しを考える場合に大変幾つか気になる問題がございます。これは皆さん方承知のとおり、この数年間に起きたバブル景気下労働力不足といいましても、この数年間労働供給が大変豊富、潤沢な時代でありました。供給不足しているというような事態ではありません。  といいますのは、年々新規学卒者学校を卒業して新たに追加投入されますけれども、その頭数は百三十万人前後と大量供給でありました。一番多かったのが第一の団塊の世代労働市場に追加投入された昭和四十年代の前半の時期ですけれども、この時期でも百四十万から百五十万人でありました。それに比べれば若干少ないですけれども、かなりな大量供給があったということであります。しかも、この間に、総雇用者数で見ても、年々百五十万から二百万人近い純の増加がありました。ただ、一年間には、高齢、病気その他で労働から引退する人、また女性のように結婚、出産で引退する人がいますから、その欠員補充分を含めれば二百万から二百五十万人ぐらい労働需要が発生して、それは働く人たちがふえることによって充足されたということを意味しております。  事実、パートタイマー市場で働く女性頭数を見ましても、週間労働時間が三十五時間未満の人たちは、五年前には五百万人ぐらいでしたけれども、今日では八百万人を超えています。三百万人もふえている。これは大量供給があった証拠であります。そのことはいろんな面で出ていまして、一般職業紹介求人求職バランスを見ましても、毎月求職者が百四十万人ぐらい滞留しております。求職活動をしても職にありつけなかった人がそれだけ膨大量いたということであります。また、総務庁の労働力調査を見ましても、完全失業者は百三十万から百四十万と大量に存在し続けてきています。  そういうようなことで、どうも労働力不足と言っても、その不足の中身、意味は違うのではないか。もちろん中小企業経営者方々は、なかなか人材が集まらない、人手が充足できないということで、労働力不足感なるものはあったわけですけれども、私は、この時期の労働力不足問題の最大の特徴は、労働需給ミスマッチによることが大きいということであります。需給ミスマッチに基づく失業を普通、構造的失業といいますけれども、この数年間構造的失業が大量発生した時代だと、こういうように言いかえてもいいかと思います。これが先ほど言いました一般求職者が百四十万人も滞留している、また完全失業者が百三、四十万存在すると、こういうところに出ているわけであります。  したがいまして、需給はある程度ミスマッチがありますけれども、需要についての供給が豊富でしたから、需給の堅調によって賃金が大幅に上がることはありませんでした。賃金はほぼ年率四ないし五%のマイルドな上昇にとどまり続けた。そんな急激に賃金は上がっていません。本当に労働力不足であれば、賃金がもっと大幅に引き上げられたはずですけれども、そういうような市場状況ではなかったということであります。  そういうようなことを私は考えまして、これから日本産業がより一層知識集約型の高付加価値産業構造へ転換しなければなりませんから、その過程の中で、需給ミスマッチはより一層拡大する可能性があります。雇用政策一つは、これらの需給ミスマッチをどうしたら解消できるか、それぞれの労働者に良好な雇用機会をどう提供できるかということに、私は一つ大きな雇用政策課題が課せられていると思います。  そういうようなことで、この数年間は、需給ミスマッチという問題はあるにしろ、労働市場はまあまあの状況で推移してきたと言っていいわけでありますが、本格的な労働力供給量が減少し始めるのがこれから二、三年先に訪れます。  それで、この雇用問題政策会議の中では労働力不足という表現労働力供給制約という、こういう表現を使ったわけでありますけれども、この供給制約はどういう点であらわれるかといいますと、言うまでもなく出生率の低下が、これから一九九〇年代半ば以降、労働市場にもろに影響を及ぼしてまいります。昨年は十八歳人口がピークで約二百五万人でしたけれども、ことしから減り始めます。それでも、新規学卒就職者数は、短大、大学へ進学する人がおられますから、まだ供給量はほぼ百二十万から百三十万人ぐらい毎年供給され続けるかと思います。これが一九九五、六年まで続くと見込まれますけれども、その後になりますとつるべ落としに供給量は減り始めます。今世紀末には新規学卒者供給量は百万人前後になると予想されます。ほぼ三分の一近くがカットされるということであります。  こういうように若年労働力人口が減っていくことと、もう一つ労働寿命が延び、人生八十年時代と言われるように中高年人口も急速に伸びてきております。この結果、日本人口構成は従来のピラミッド型の人口構成から次第につり鐘型もしくはずんどう型に変わりつつあります。つまり、どの年齢世代も同じような頭数存在すると、こういう状況であります。そうしますと、さまざまな問題が出てまいります。日本社会システムにしても、また企業の中での人事労務管理システムにしても、いずれもピラミッド型の労働力構成を前提にしてシステムができております。そういうようなシステムがこれからは維持できがたいという、こういう問題が出てくると思います。  例えば、産業界が新規求人する場合でも新規学卒者求人が殺到いたしますけれども、そういう市場ではなかなか新規学卒者は集めがたくなることは言うまでもありません。また、高齢者もどんどんふえてまいりますけれども、現在の六十歳定年制で六十歳代前半のまだ健康で十分に働く能力を持っている人たち能力を活用しなきゃならない。ところが、現状雇用は六十歳代へ入りますとそれほど思わしい状況ではありません。それに対してどういうような対応がとれるかということが大きな問題であります。  それからまた、教育訓練システムにしましても、学校教育、特に大学などは十八歳人口をめどにして入学試験をやっていますけれども、これから十八歳人口は減りますから、大学施設教員が過剰になることになりかねません。そういうような場合には、大学大学院等施設教員をもっと活用して社会人のリトレーニングのための機関として大幅に切りかえなきゃならない大変大きな問題がここでも提起されております。  それから、年金制度にしましても、現在六十歳支給開始でありますが、年金財政の上からいえば到底これに耐えられることではありません。早晩年金支給開始年齢の繰り下げが大きな政治課題になると思われますけれども、その六十五歳に繰り下げるに当たって、六十歳代前半層雇用機会がうまく提供できるのかどうかということは大変問題であります。  また、年金が成熟したために高齢者の中では引退志向が大変強まっております。とりわけ大企業のサラリーマンと公務員で顕著であります。月額年金が二十万円を超しますと、四〇%ぐらいの人しか働いていない、六〇%の人は労働から引退しているのが現状であります。そういうような中で年金支給開始年齢を簡単にずらすことは、私は大変難しい問題であろう、こういうように考えざるを得ません。  こういうような労働力供給制約がある。それならば、その不足する労働力外国人日本労働市場を開放したらどうかと、こういう意見も当然出てくるわけでありますけれども、私はそれについては原則的に反対であります。それはどういうことかといいますと、この調査会でも直接関係するテーマであるかと思いますが、今、日本経済が置かれた条件というのは、国際社会の中で二つの大変大きな制約条件を背負っております。  一つは、日本は大変な国際輸出競争力を持ち始めております。そのために貿易摩擦は今慢性化しております。また、海外から資源エネルギーを輸入して、これ以上商品生産日本国内で行い、海外に商品輸出して大幅な貿易黒字を計上するということは、国際競争の上からいってもそう許される状況ではありません。つまり外需依存型の経済成長は簡単には実現できない、こういうような大変大きな障壁があります。  それからもう一つ障壁は、資源エネルギーを大量に消費する、こういう産業、それによって経済成長率を維持し、また高めていくという、こう いうような選択も大変しにくい状況であります。経済学では外部不経済の拡大と言っていますけれども、これらの資源エネルギー大量消費によりまして、さまざまな産業廃棄物も大量に発生いたします。それから、大気汚染等自然環境破壊も進むことを容易に防ぐことは不可能であります。  そういうようなことで、日本のように狭い国土で稠密な人口社会の中で、これ以上また内需拡大して経済成長を遂げることも大変困難だというような状況ですと、日本のこれからの経済政策も含めて運営は大変難しい問題を私は背負っていると思います。  それに対して雇用政策の面でどういうような対応が考えられるかということでありますけれども、先ほど私が申し上げましたように、これからの雇用政策の基本的な考え方は、働く人の側のニーズに雇う側が合わせる、経済学言葉を使えば、労働供給労働需要を合わせていく、こういう政策でなければならないということであります。  従来の政策は、むしろ労働需要労働供給を合わせるという、こういうようなことで雇用政策は運営されてまいりました。例えば失業中の生活保障をするための失業保険給付とか、失業者の再就職促進援助とか、これはいずれも事後的な雇用対策であります。  そうでなしに、失業を予防すると同時に、供給量が減ってまいりますから、当然それに見合ったように労働需要そのもの抑制的に運営していかなければならない、こういうことであります。  その中の政策は、中心は、先ほどから申していますように、二つあります。  一つは、労働力需給ミスマッチを解消していく政策。この中心は、何といっても日本産業構造がだんだん専門職技術職を必要とするような高度な知的熟練、これも大量発生しておりますから、このための人材養成教育訓練でもってシステム的に開発する必要がある。これを早急に実行する必要があるということであります。  それからもう一つは、これは既に法律で準備されていますけれども、雇用形態も、パートとかアルバイトとか派遣とか、こういうことで多様化しております。こういうような多様な雇用形態に見合った需給システムを早急につくる必要があります。準備されているものとしては、労働者派遣法というのがございます。これも私が審議会責任者としてまとめた法律一つであります。それからもう一つは、今国会に多分上程される予定になりますパートタイム労働法案であります。これはパートタイム労働市場についての一つ法律上のルールをつくろうという提案であります。  こういうような需給ミスマッチ政策と、いま一つ労働需要抑制政策であります。そのためには、労働力の多消費型産業とか多消費型の生産方法を改める必要があると思います。言うまでもなく、労働力節約、こういうような労働力節約のための省力化投資に対して積極的に支援していく必要があると思います。これにつきましては、既に先行法で、国会で既に審議して成立いたしました中小企業労働力確保法、これは一昨年の法律、それから昨年の中小企業時短促進法という法律がございます。  こういうような労働力節約対策を一方でやると同時に、もう一つは、過度なもしくは過大なサービス抑制する必要があるということであります。いわゆるコンビニエンスストア等がジャスト・イン・タイム方式で小口多頻度配送していますけれども、これはベースがうまくできないと大変非効率な結果に落ちかねません。この辺の見直しも当然必要であります。それから、コンビニエンスストアのように、二十四時間、夜中まで販売行為をする必要があるのかどうかも検討の余地が十分にあります。  こういうようなことで、この種のサービスについてどうも日本ではサービスという言葉そのものがただ働き、サービス残業とか、それからサービスしちゃうというのはまけちゃう、無償だと、こうなっていますけれども、もっとサービス料金サービスの価格を高めるような政策を私は誘導する必要があると思います。それによってサービスに対する需要抑制も当然できるに違いない、こう考えるわけであります。  最後に申し上げたいのは、これから高齢社会で大変な介護看護ニーズが高まってまいります。医療行為でも治療から予防へと変わっていますように、可能な限り介護看護の発生を抑制する必要があります。そのためには、健康管理とか定期健康診断とか人間ドック入りとか、こういうようなさまざまな介護看護ニーズを発生させないような対策が必要であります。それは、当然労働時間の短縮も必要でありまして、過労を可能な限り予防して、そこで健康に働ける条件を私は整える必要があると思います。  それからまた、これは医療とか福祉サービスというのが、どうも日本現状を見ていますと産業としての体をなしていない。もう少し産業として効率的に医療福祉サービスができるような経営形態に私は変えいく必要があるかと思います。  以上、時間も参りましたので、私が雇用問題政策会議提言で特に強調いたしました論点についてかいつまんで申し上げました。どうもありがとうございました。
  5. 浜本万三

    会長浜本万三君) どうもありがとうございました。  次に、河口参考人お願いをいたしたいと思います。
  6. 河口博行

    参考人河口博行君) 河口でございます。後は座ってやらせていただきます。  まず、資料についてでございますが、連合の袋に入っているものが二つ連合白書とそれから「取引関係現状労働時間への影響」ということで、中小企業労働時間と経営者の御意見を収録したものを入れております。これは、あくまでも参考資料でございますので、後ほど必要であれば御参照いただければと思います。  時間の制約もございますので、レジュメレジュメのほかに若干の資料を添付しておりますので、それに基づいて申し上げていきたいと存じます。  まず、結論でございますけれども、日本型の産業雇用システムリストラクチャリングが現在時点からここ四、五年で進んでいくというように見ております。それが時間短縮によってずっと進行をしていくということであります。その面で、政府が既に決定されております生活大国五カ年計画並びにこの国会に提案される予定労働基準法改正、この二つ政策に沿って時間短縮産業構造リストラクチャリングがキックオフされていくというのが現在時点と、このように思っております。  そこで、まずレジュメのところで「内外公正基準を示すとき」ということを申し上げております。  第一点は、今さら申し上げるまでもなく、八七年のときの前川リポート以来の公約が労働時間の短縮であるし、また今日生活大国五カ年計画具体的課題の第一課題が時間短縮であるということで、既に国民合意された内容として動き出しているということであります。それに基づいて労働時間を中心とした労働基準法改正がこの国会で行われるということであります。  そこで、内外格差というものを一つの例で申し上げておきたいと思いますが、現在の連合の中だけでも最も時間短縮の進んでいる産業で申し上げますと情報労連でありますが、NTTを中心としたところですが年間千八百四十二時間でございます。それから、トラックを中心とした運輸産業は二千五百六十三時間でございまして、産業間の上下格差だけで年間七百二十時間ばかりあります。これは全体でいいますとさらに広がって、千時間近くの格差があるというふうに見ております。したがいまして、全体はここ数年時間短縮は画期的に前進しておりますが、下の底上げをしていかなきゃならない。それが労働基準法改正ということになっていく。でないと国民的に不公正であるということであります。  それから二番目に、国際間の格差是正は既に各界が周知されておられることでございますから今さら申し上げるまでもございませんが、欧米から指摘されている点のとおりであります。したがいまして、この春ないしこの百二十六通常国会においてこの点がキックオフされなきゃならない、きちっと示すときであろうというように考えております。  それから、何も今基準法改正が審議されるからというわけではございませんが、一つ資料として、欧米との時間格差あるいは制度格差は周知のことでありますから申し上げませんが、一枚目の資料のところに「アジア諸国労働時間法制」という資料をつけております。  ここで、一つの象徴的な例でございますけれども、現在の日本労働基準法に基づく時間外手当というのは、御承知のとおり二五%以上でございますが、アジアの各国の労働法制による時間外は、ここに「割増賃率」のところに書いてありますようにほとんどが五〇%以上で、フィリピンと日本だけが二五%、こういう内容でございます。もちろん国の経済条件労働市場条件の違いは十分承知した上でありますが、労働法制上はこうなっているということを承知しておく必要があると考えております。  それから二番目に、労働時間の短縮生産性についての見方、考え方について少し触れておきたいと思います。  この点は、後ほど日経連小川専務から御説明もあろうかと思いますが、日経連がごらんになっているのは過去十五年の労働生産性の実績が三・五%である、このままでいくと九六年千八百時間というのは少し無理じゃないでしょうかと、こういう御指摘で、また資料にもついておるとおりでございますが、連合としては、これを現在の状況から推定をして、また生活大国五カ年計画が示す三・五%のGNPの成長等を維持して両方実現していくことは可能である。そのためには五%程度の労働生産性は必要ということになっているということで、日経連の計算が間違っているというふうには思っておりませんけれども、一つの問題提起として理解しておりますが、そういうふうに見ております。  そのことの資料が二枚目のところでございまして、二枚目のところにドイツの金属の経営者連盟が出した労働時間短縮生産性の絵がかいてございますが、このようにずっと毎年、現在四・九%ぐらい上がっている。連合が試算する、これは連合研究所が試算した中身ですが、五%強の生産性のアップで可能ではなかろうかと。ちなみに、最近のここ八〇年代後半から九〇年代にかけての日本生産性は四%以上上昇しておりますし、現在各産業及び各企業中小企業等を含めてもそういう状態で、実態は生産性は非常に上がっていく状況に移っているというふうに見ておりますから、ある面は、時短は労務コストという感じで見るよりも業務革新を進めていく中身にある、むしろ労使が協力して、あるいは政労使が協力して進んでいけば画期的に生産性が上昇していくと、このように見ております。  労働省の委託研究で能率協会が研究された中身でもそういう中身が出ておりまして、百社調査された中身で八十三社、九三%のところが生産性が向上した。七十社、七九%のところが労働時短率以上に生産性が向上した。一つの例で申し上げますと、卸売・小売業では生産性が一〇%上がったけれども時短率は三・一%でしたと。建設業で申しても、一〇%上がったけれども時短率は四%ですと。こういうふうに、非常に生産性が上がっていくし、そういった面では、ここにも少し産業界の時短を推進しておられるところが言っておられることでありますが、人と時の生産性、人・時生産性という考え方でやった方がいいのではないかと、こういうことを提起しておりますが、こういった時代に入っていると。ある面からいえば、経営のトップが考えることが大事ではないかということであります。  それから三番目に、過当競争の是正と新しい産業政策というところに入っていきたいと思いますが、これは三枚目の資料で申し上げたいと思います。  一つの例として自動車産業と電機産業を取り上げさせていただきますが、御承知のとおり、自動車産業は、プラザ合意のあった八五年のときの自動車の国内生産販売台数は約五百五十六万台でございますが、平成景気の一番盛りのときが約七百八十万台、約四〇%アップでありました。現在は七百万ちょっと切っておりますが、それでも八五年のときに比べると二五%アップの状況でございます。  ここで、産業界もそうですが、労働界として反省しておりますことは、労働時間を拡大しながら一生懸命くたくたになるまで働いた、しかし決算をあけてみると会社はもうかっていない、外からは、アメリカからはたたかれっ放し、こういう三重苦から脱出しないとどうにもならないではないかと。それが、労働時間短縮ということが一つの切り口になっていくんではないか。  さらに言えば、これで今不況の中で雇用不安までいったら何をしておることかと、こういうことで産業構造そのものといいますか、あり方を検討しなければならない。先ほど高梨先生も御指摘のように、環境問題を含めてそういう時代が来ているということで、ここの資料はモデルチェンジを長くしていく、ドイツ並みにしていったらどうでしょうかというようなことを提起しております。  また、これは電機の半導体の設備投資、研究投資の中身を挙げておりますが、売上高の四〇%も研究投資するということはどうなんでしょうかと、こういうことで、そのあり方というものを考えていくときに来ているんではないか、でないと内外の調和がとれないという指摘で、それで進んでいくときに来ているんではないでしょうかと。日本社会全体が競争、効率でシステムがすべて優先されてできておりますから、その是正を図るときに今来ているんではないでしょうかと、このように考えております。  それからその次に、とは言いながらも、先ほど高梨先生も御指摘のように、構造問題を持っておりますから、時間短縮と構造改善政策というものを今進めるときに来ている。そのときに挙げているものをレジュメで申し上げれば、四項のところで受発注、取引関係の改善から自由時間まで挙げておりますが、先ほどお配りしましたこの関係資料についてですが、これで経営者も含めて中小企業、下請の実情というものがよく出ておりますので、後ほど御参照いただければと思います。  なお、四枚目の資料のところで、これは東京商工会議所と日本商工会議所の資料を使わせていただいているんですが、大変立派な資料だと思って使わせていただいておるんです。これが一日当たりなり年間労働時間の現在の実態の数値でありますが、労働組合が調査をしてもほぼ同じ数値が出てまいります。そこで現在の中小企業が時短について取り組んでおられる姿がよく出ております。  五枚目の資料でございますが、これは商工会議所の資料で、立派な資料だと思っておりますが、各企業が取り組んでおられる中身でいいますと、週四十時間制の実現に七〇%以上が全力を挙げて取り組んでおられる。あるいは時間外の大幅短縮とか省力化への投資、人手の確保とか業務の見直し、こういったことに非常に多く取り組まれておりますが、あわせて時短の阻害要因としても、お客さんとの関係があるから産業企業だけではなかなか変えにくいと、こういう御指摘もあって、こういった諸点はもうほとんどこのとおりだというふうに認識をしております。  それから、政府が実施すべきこととして、意識の合意形成とか、あるいは投資への税制金融上の措置とか職業安定行政の拡充などいろいろ出ておりますが、ある面で共通していることは、今議論があるところですけれども、法制によってある程度前進させていくということは必要だと。というのは、日本社会は横並び意識があるのと、お客さんのこともありますから、中の努力だけでは解決のつかない問題を持っております。そういった 面で、時短と生産性、そして業務革新ということで非常に大きく変わって前を向いて前進していく時代に来ているということを強調しておきたいと思います。  個々の課題に触れると長くなりますが、先ほど高梨先生が御指摘の構造問題でホワイトカラーの問題も御指摘でございますが、今日そういったところに来ていることを申し上げておきたいと思います。足らない点は後の質疑のところで多少補足をさせていただきたいと思います。  最後に、中長期的には産業雇用システムリストラクチャリングが進んでいくと同時にライフスタイルが変わっていくというふうに見ております。  一番最後のところに資料をつけております。これは一つのアンケートでございますけれども、五つのライフコース・パターンというものを挙げております。現在は、あえて言えば人生六十年を前提にして労働力過剰時代雇用システムになっておりますけれども、しかし実態は、労働力不足時代に実際は変わっていると同時に人生八十年に変わっている。したがって、人生六十年を前提にした雇用システムから人生八十年を前提にした雇用システムヘのリストラクチャリングを進めていかなきゃならない。その面で言えば、当然労働時間も年間労働時間千八百時間から生涯労働時間という概念にこれから変わっていくであろう。千八百時間というものを六十歳までの年に単純に直していけば生涯労働時間は七万時間でございますが、生涯自由時間が二十一万時間、生理的な時間が七十万時間。こういうことで、生涯労働時間七万時間をどのように配分していったらいいのかということが下の図で、先ほどのリカレント型A、有給による教育訓練ということでございますけれども、十年置きに半年ぐらいのリフレッシュ休暇をとって再生して高付加価値型のことをやって、また高齢時代雇用対応していくというようなスタイルというものが考えられるわけですが、そういう時代に今移っているんではなかろうか、このように考えております。そういったことで大きな変化対応していくときではないか、それから高齢化に対しても直線的な考え方でなくて多様な対応の仕方があるのではなかろうか、このように考えております。  最後に、物に対する投資の時代から人に対する投資、とりわけ生涯教育学校教育だけの投資ではなくて、生涯を通じての教育投資の時代を迎えているということを申し上げ、さらには二十一万時間ある自由時間をどのように過ごしていくかということも大きな課題になっている、その面で時短が農水産業、林業とも提携する時代が大きく来ている、そういった時代ではなかろうか、こういうふうに考えておりますことを申し上げまして、とりあえず私の方の報告にさせていただきます。
  7. 浜本万三

    会長浜本万三君) どうもありがとうございました。  それでは、続きまして小川参考人からお願いを申し上げます。
  8. 小川泰一

    参考人小川泰一君) 日経連小川でございます。  お許しを得まして、座らせていただきたいと思います。  御指示によりまして労働時間問題と労働力問題につきまして、簡単に私どもの主として中長期的な観点からの考え方を申し上げさせていただきます。  レジュメを差し上げてございます。それから、「新しい国際時代における日本労使の選択」というパンフレットを差し上げてございますので、この両方を御参照いただきながらお聞き取りいただければと存じます。  このパンフレットは、いわゆる春の労使交渉に向けてつくられたものではございますが、中長期的な課題もかなり織り込んでございますので、本日はその部分を中心に引用させていただきながら参考にしていただきたいと存じます。  レジュメに従いますが、まず労働時間問題でございます。  よく使用者側は時間短縮について大変消極的であるという御批判もちょうだいいたしております。私ども日経連という立場におきましても、既に時間短縮をかなり前向きに取り上げましてからもう六、七年たつわけでございます。このパンフレットにおきまして、四十ページをちょっとお開きいただければと存じますが、まず、時間短縮は春の労使交渉におきます賃金とは必ずしも同一に論じがたい側面がございまして、経営の体質、設備投資あるいは現場第一線の仕事のやり方等を含めて改善をしながら、着実に、後戻りしないように進めていくという視点から、中長期的な重要課題というふうに受けとめております。  昨今は御承知のとおり大変な不況でございまして、若干投資がスローダウンするという側面はございますが、企業が懸命にあらゆる角度からむだを省くということに現在力を入れております。お金のむだだけではなくて、時間のむだを省くという視点も大切でございますし、かねて労働組合との間に中期的な時間短縮の交渉も進んでおりますので、そういったものを念頭に置きながら着実に時間短縮を進めていくという姿勢が大事ではないかというふうに総括的には存じております。ただ、河口さんから既に御指摘ございましたが、中期的ないわゆる千八百時間目標ということにつきましてはいろいろ大きな課題があるのではないかというふうに思っております。  四十六ページをちょっとお開きいただきたいと思います。四十六ページの下の図に「政府の新経済計画と成長、時短などの整合性」という表がございます。これは昨年の春にやった作業でございますのでいろいろ条件は変わっておりますし、専門家の御指導は受けましたけれども、大変簡単なシミュレーションでございますから、単に問題の所在を指摘するだけというふうに御理解をちょうだいできれば幸いであろうかと思います。  御案内のように、時間短縮を進めるということと三・五%の中期的な成長を確保するということが政府の新経済計画でございますが、これを達成するには生産性の向上と一定の労働力の確保が当然前提になるわけでありますが、四者がどのようにバランスを保てはそれぞれの目標が実現されるのかということを簡単に試算をしてみたわけでございますが、ケース一から五までございます。  ケース一は、何よりも時間短縮を優先してまいりますと、そのほかの生産性の伸び率であるとか労働力率を一定にしたという場合、どうしてもやはり経済成長にかなりの問題が起きるのではないか。二番目は、逆に経済成長を優先いたしまして、労働力率、生産性の伸び率を一定といたしますと、労働時間短縮の方がかなりスローダウンせざるを得ない。ケース三は、経済成長と時短の両立、生産性の伸びを一定にしますと、労働力の面にかなり問題が起きるのではないか。ケース四は、経済成長と時短を両立させますと労働力を一定とする限り生産性の伸びは五割増しと、これは正確かどうかは別にいたしまして、かなりこれは頑張らなきゃいかぬということでございます。これらは従来の数字を延長したものでございますので、このシミュレーションの示しますところは、千八百時間の目標を否定するためにつくったものではございませんで、リストラクチャリングという御指摘が既にお二人からございましたが、かなり日本産業企業リストラクチャリングを伴わないと時間短縮経済成長の達成は難しいのではないか、相当困難な問題があるということをみずから戒めるためにつくったというふうに御理解いただければと思っております。  そういった視点もございまして、私どもとしては、現在この不況も含めまして企業リストラクチャリングを進めておりますが、当面現実的な課題としては、ここ一、二年のうちに千九百時間台の半ば、この辺をまず第一の目標にいたしまして、これは確実に達成できるのではないかというふうに、これは勘でございますが、感じております。これをまず目標に置きまして、しかる後に中期的展望のもとに千八百時間をターゲットにするというような構えが現実的ではないかという提起をい たしております。御批判はいろいろあろうかと思います。御指摘をいただければと思っております。  それから、労働時間問題の三番目といたしまして、中小企業の立場でございます。これにつきましても河口さんから大変いい御指摘をちょうだいいたしておりますが、私どもといたしましては五十一ページに中小企業の問題を取り上げでございます。  実は、労働基準法改正の議論を進めていく過程でにわかに不況と重なりまして、私どものところに要請が参りましたのは、中小企業労働時間短縮へのハードルがとりわけこの不況によって極めて高くなったといういわば大変悲痛な叫び声でございまして、私どもとしては大変耳を傾けざるを得ないというふうに考えております。  したがいまして、そういった諸問題は労働時間法制の面にもいろいろ御考慮をいただくと同時に、労働時間短縮の進め方について私どもといたしましてもいろいろ中小企業を支援する必要があろうかと思いまして、私どもの内部委員会でございます日経連中小企業問題特別委員会で中小企業問題と時短の関連について問題を煮詰めた実は研究を出しております。本日お配りをいたしませんでしたが、五十一ページにはその骨子が、幾つかの中小企業における時短の成功例からピックアップをしてございます。一々御説明するいとまもございませんが、時短は従業員の人間尊重の一手段あるいは自己実現という観点から大変大切なものだという自覚のもとに、トップが何よりも決断をしなきゃならないという前提におきまして、幾つか大企業なりその他環境整備の問題について問題点を指摘いたしておりますので、これはぜひ御参考までにごらんいただきたいと同時に、中小企業が大変時短については真剣な前向きな姿勢を持ちながら、非常に厳しい環境、それから経営上の苦しみを抱いているということだけはぜひひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。  さて、労働時間問題の四番目でございますが、労働時間法制が現在中央労働基準審議会で一応の結論が得られまして、今後国会において御論議をちょうだいする段取りになるだろうと思っております。細かいことはこれは申しませんが、労働時間法制についての考え方を若干申し述べさせていただきたいと思います。  私どもといたしましては、基本的には労働時間というのは、これはどこの国でも同じでございますが、労使あるいは経営者と従業員の立場の中で前向きに解決されていくべきものであって、法律による誘導というのは、これは率直に言って最低限度にとどめるべきものであると思っております。特に、労働基準法のいわゆる国際比較もございますが、罰則をもって労働時間法制を強制しておるという例は必ずしも世界では共通のものではございません。そういう観点から見ますと、労働時間短縮の促進法制は先般国会で御決定をいただきました労働時間短縮促進法、こういったものによって促進をちょうだいすることについては私どもも賛成でございますが、法によって強制いたしますのは、私どもとしては限界があるというふうに考えております。  したがいまして、当然四十時間への到達について、法案によれば労働基準法が来年以降原則移行という建前をとることについては異存がございませんが、それにいまだついていけない中小企業については、少しずつ前進をさせながら、無理なくいわゆる強制的な法律の枠内におさめていくという誘導方法をとっていただきたいということと、それから割り増し賃金については、これは話せば長いことでございますが、いろいろな雇用慣行あるいは職場の時間外労働に対するさまざまな習慣、その他もろもろのことを考えますと、相当慎重であっていかねばならぬということも考えております。  それから、雇用の問題とも関連をいたしますが、今後労働時間法制の上で大きな問題になりますのは、ホワイトカラーと割り切るにはちょっと言葉としては正確ではございませんが、いわゆる裁量労働、自分自身の判断で物事を進めていくという仕事の分野がかなり実は広がっていくだろうというふうに思っております。これは雇用の面とも関係がございます。そういった側面をサポートする労働時間法制というのが、率直に言ってまだまだ日本労働基準法の中には十分とは言えないと思います。労働基準審議会でさまざまな議論がなされておりますが、次なる課題というふうにおおむねはなっておるようでございますので、私どもといたしましては今後この面を十分研究の上、当然これは適切なる処遇と十分なる休養というのを伴わなきゃなりませんが、一般的ないわゆる升目ではかるような労働時間管理というものからは若干違った目で見ていく必要があるのではないかと思っております。  労働時間問題につきましては、以上のようなことでございます。  次に、労働力問題に移らせていただきたいと思っております。これもレジュメに従いまして申し上げます。  当面の雇用情勢でございますが、昨日も大変厳しい雇用情勢が発表されております。差し上げてございますパンフレットの三十九ページをお開きいただきたいと存じます。その上に失業率の国際比較が載っております。統計のとり方その他にいろいろ直接比較するには留保しなきゃならぬ側面もあろうかとは思いますが、いずれも現在先進諸国においては構造的不況に悩んでおるさなかでございますが、これだけ日本と他の先進諸国と画然と差があるということ、現在この二・一が若干上向いておりますが、それにいたしましてもいわゆる日本的な労使慣行、あるいは日本の中の雇用をまず優先する企業行動というものがかなり反映しているのではないかと私どもは思っております。もちろん、それに耐えるには企業の存立の限界まででございまして、企業の存立条件が失われればこれは耐えていけないわけでありますが、私どもといたしましても雇用については最後まで、決してその雇用調整について従業員の不幸をもたらすようなことについては慎むべきであるし、使用者の社会的責任として頑張るべきであるということを繰り返し言っておりますし、いろいろ企業産業によっては例外なり髪もございますが、大勢としては、現在なおかつての円高不況のところまではいっておりませんので、何とか早く景気浮揚を、諸般の条件を整えていただきまして、雇用についてももう少し楽な状況に持っていくことが大事じゃないかというふうに思っております。  中期的な労働力情勢と課題につきましてはおおむね高梨先生、河口先生のおっしゃることとさほど違いはございませんが、若干このパンフレットの引用をいたしながら、私どもの考えを御説明させていただきたいと思います。  私どもも中長期的には日本は人手不足社会に転換をするというふうに思っております。しかしながら、日本産業は人手がだんだん要る産業の形にここ二十数年間で転換をいたしております。引用するまてもございませんが、昭和四十年以降日本産業日本経済が毎年一〇%前後の高度成長をした時代には一%の雇用、GNP上昇に対する雇用、就業者の弾性値は〇・一三でございました。ところが、中成長に転換をしまして四%前後の成長が定着をしました一九九一年に例をとりますと〇・四六でございまして、同じ経済成長を達するためにはかなり多くの人手を追加投入しなきゃならぬという実態がまだまだあらわれております。これはサービス化であるとか高付加価値化であるとかいうことであろうかと思います。この辺の体質転換をしてまいりませんと、話はもとに戻りますけれども、時間短縮あるいは適度な経済成長あるいはこれから国民的な負担となります高齢社会におきます社会保障の問題あるいは海外の貢献の問題等の負担も負い切れないのではないかということを痛感をいたしております。  したがいまして、今後は日本産業企業リストラクチャリング、とりわけ人手を大事に使うという方向に転換をしなきゃならないということは、お二人の先生方の意見と同様だろうと思います。その辺の基本的な考え方につきましては、パ ンフレットの二十九ページに書いてございます。特に、第一次産業、第三次産業あたりが相当中心になるのではないかと思います。それを解決するためには、先生方の御審議もちょうだいいたしまして、やはり主として政府の許認可規制、保護行政等によって、たまたま生産性が必ずしも向上してないという分野についてぜひ解決をいたしていただきながら、内外格差も解消しつつ人手がかなり厳しくなる事態対応できるスリムな、しかも豊かな日本産業社会を構成していくことが必要であろうかと思っております。  若干各論につきましては、三十ページ以降に書いてございます。その視点については、これはどなたの御意見とも同じでございますが、いわゆるホワイトカラーでございます。私ども反省をいたしておりますのは、バブルの時期におきまして、大変大学卒を中心とします新規卒業生に対して殺到して採用いたしました。これについては、大変戒むべきことであったと反省をいたしておりますが、ホワイトカラーの生産性、特に仕事の成果に対する評価を含めて、もっともっと能力を引き出しながら使うということがまず第一点であろうかと思います。  第二点は、これはどなたもおっしゃっております女性社会進出でございまして、これは男性中心考え方企業の中から改めていくということが一つの柱、そのほか女性の方が働きやすい環境を支援をしていくという体制が必要であろうと思います。  高年齢者の労働環境については、特に改めて言及する必要もなかろうかと思いますが、特に年功制人事の見直しというのが高年齢者に対する適切な職を維持する一つの前提になろうかとも思っております。要は、多様化する労働力をどう企業の中に包摂をしながら、企業のアイデンティティーを確保して全体の従業員の幸福も図りながら発展していくかという道を探っていくのが今後の企業の人事管理の大きな使命であろうかと思っております。  最後に、外国人労働者問題について、三十二ページから三十三ページに述べておりますので、一言申し上げます。  外国人労働の受け入れについては、企業経営者の中にはさまざまな意見があることも承知いたしておりますが、私ども日経連の立場としては、いわゆる単純労働者を受け入れることについては慎重な態度を一貫してとっております。外国人労働者の受け入れについては、国益を中心に考えろというお話もございまして、まことにそのとおりであると思っております。同時に、国際協力という観点も大事でございまして、今政府でいろいろ審議をいたしております技術移転、それから一定の研修後にある程度雇用という形をとりながら、技術移転の成果確認を含めて、その成果を確実なものにしていくという方向が模索されているようでございますが、その辺は私どもも賛成でございます。  なお、今後こういった外国人研修については、ODAのぜひ資金も投入しつつ、国際協力という視点からいい方向に向かっていければと思っております。もちろん反省すべき点、あるいはこれから改善しなきゃならぬ点多々ございますが、基本的考え方としてはそのように思っておりますので、最後に一言申し上げたいと存じます。  以上でございます。
  9. 浜本万三

    会長浜本万三君) ありがとうございました。お三人の参考人の皆さんから御意見をちょうだいいたしました。  これより参考人の皆さんに対する質疑に入りたいと思います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 庄司中

    ○庄司中君 貴重な御意見ありがとうございまする。  まず高梨先生にお伺いしたいというふうに思います。  先生がおっしゃられましたように、これから中長期に見た場合には、今までの政策の視点を変えまして労働供給需要を合わせていく、それ以外に方法はないだろうと思います。そこで、中長期の状態を見てみますと、例えば去年の三月でしたか、雇用政策研究会が大体二十年以上の長期の労働力需給の推計を行っておりますけれども、来世紀になりますと絶対量として労働力が減るというふうな推計がなされておるわけであります。そういうふうに中長期に見た場合に、先生特にお触れにならなかったわけでありますけれども、ミスマッチという問題で、例えばパートタイムの労働が中長期にどういうふうになっていくだろうかという問題が一つございます。  それからもう一つは、外国人労働者の問題でございまして、例えばヨーロッパなんか見ていますと、日経連小川先生の方から指摘がございましたように、失業率は非常に高いわけですね、フランスにしてもイタリアにしましても。ところが、職業選好というものが非常に強いわけです。嫌いな職業と好きな職業という区別がありまして、やっぱり三K職場には人が集まらないということが実はあるわけですね。  そうしますと、物すごく賃金を上げていくか、それから単純労働のところに外国人を入れていくか、そういう問題が生じてくるのではないかと思います。そういうことがヨーロッパでも起こり得ないだろうか。単にミスマッチということでそれを片づけていいだろうかという問題が実はあるように思いますので、この二つの点について先生の方からお伺いしたいと思います。
  11. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 私は、労働力の絶対量の過不足というのは経済学のカテゴリーにないものですから、普通、労働力不足すれば賃金が上がるなり労働力節約投資が進むなりして需給がバランスするはずだと思っています。ですから、さまざまな需給見通しで、今のままの生産性とかそれから生産方法その他が変わらないとすれば供給量需要に比べて不足する、こういうことは数量的には言えますけれども、それは経済学方法でなくて数学上の問題だと私は考えます。  ただ、それにしても問題は、私は冒頭にもっと強調して申し上げればよかったんですが、何か経済成長率信仰みたいなものがありまして、労働組合もその仲間にどうも入っているようで気になるんですけれども、成長率さえ高めればみんな豊かになると。どうも結果はそうでなかったのが現状であります。  そういうようなことで、低い成長率でもなおかつどうしたら日本産業がもっと豊かな生活を国民が築けるような状況に変えていけるかが問題でありまして、そういう意味で日本産業構造をいかに知識集約型の高付加価値産業に変えていくかという、こういう産業政策が私は一番ポイントだと思います。だから、労働力を多量消費するような産業はすべからく縮小する、もしくは発展途上国に移設をするということが必要です。そうすればアメリカとの付加価値生産性のこれほどの格差が急速に是正されるに違いない、こういうように予想するわけであります。  それから、パートタイマーとか外国人労働者問題で、パートタイマーにつきまして、現状は主婦等のパートタイマーが一番の大量を占めておりますけれども、これからパートタイム労働市場供給量がふえていくのは高齢者であります。だから、高齢者向けのもっとパートの市場を健全化し、そういうような雇用機会を拡大していく、こういう政策が私はぜひ必要だと思います。  それから、外国人労働者の例の三K職場の問題でありますが、これは可能な限り省力化投資をしてきつくて危険な仕事を縮小していくことが先決であります。日本人がそれにつかないからといって外国人をそういう三K職場につける、人手不足対策として入れることは、海外とのかえって摩擦を私は激化させるに違いないと思います。とりわけ建設産業などは、諸外国と比較してみましても日本の建設産業は大変労働集約的方法をとっていまして生産性が低い代表的な産業一つであります。もっと生産性を高めるような工夫、改善をしていく必要が私はあると、こういうように考えておりまして、外国人をそういうところの不足分を 充足するために入れることには反対であります。  ただ、私先ほど申しましたように、日本は、これから発展途上国にどんどん日本企業も移転し多国籍企業化いたします。進出した企業についての人材養成をどうするか。とりわけ管理職の養成がポイントであります。それらの管理職の養成のために海外の事業所と日本の国内との人事交流は必要であります。そういうようなことで、日本産業が世界で協調しながら発展していくためには、そういうような外国人との、特に知識水準の高い人たちとの交流はぜひこれ以上太い輪にする必要があるだろう、こういうように考える次第であります。
  12. 庄司中

    ○庄司中君 小川先生に質問させていただきます。  さっきも申し上げましたように、労働省の雇用政策研究会の労働力需給の推計がございまして、その中にケース二というのがございます。そのケース二といいますのは、育児休業制度を実施する企業の割合が九五年に一〇〇%になっていること、それからもう一つ条件としては希望者全員が六十五歳まで働くことができる継続雇用制度を有する企業の割合が半分を超えるといいますか五〇を超えるという条件をつけた上でシミュレーションをしますと、例えば労働力率はかなり上がっていく。労働力人口でいきますと二〇〇〇年に約七十万人ふえるという予測がございます。それから二〇一〇年に約八十万人ふえるという予測が実はあるわけでありまして、七十万、八十万というのはこの時期には非常に大きい数字になるだろうというふうに思います。  そういう点で、経営者側、企業の側から見まして、例えば育児休業であるとか、それから継続雇用の問題であるとか、さらにこれから出てまいりますのはやっぱり介護休業の問題だろうというふうに思います。こういう制度の導入に対してやっぱり積極的になっていく必要があるんではないだろうか、そんなふうに思いますけれども、それについての御意見をお伺いしたいと思います。
  13. 小川泰一

    参考人小川泰一君) お答えをさせていただきます。  育児休業につきましては、現在導入を逐次いたしております。いろいろ企業の様子を聞いてみますと、働く女性の方にもいろいろ御希望があるようでございまして、育児休業を一年間とることはよろしいけれども、例えば職場を離れ過ぎることによって何かおくれをとるという御懸念もありまして短期間に済ませるという方もございまして、むしろ例えば企業内保育の方向をお望みになるというようなケースもございます。  いろいろございますので、育児休業九五ないし一〇〇というのはかなり理想的な数字、あるいはそれぞれ多様な御希望を例えばここまでいくのかなという感じはいたしますが、それぞれ家庭と両立するような選択肢を十分豊富に用意することが重要であろうかと思っております。私どもといたしましても、特に保育施設を何とかいろいろ便宜設けるように御支援をいただきまして、さまざまな働く女性のご要望を受けとめるような形にさせていただきたいと思っております。  なお、例えばお子様をお持ちになると、東京の真ん中ではなくて住所に近いところに再雇用をするとかいろんな方法がございますので、育児休業一本ということではなくて工夫をさせていただきたいと思っております。  それから、六十五歳までお望みになる方が全員雇用というのは大変望ましい姿でございますが、御案内のように、高齢化をいたしますといろいろこれは人によって差が出てまいりまして、若いうちからつけております能力が果たして生きるような職場がぴったりあるかどうかということでミスマッチがますます大きくなります。私どもとしてこれから考えたいと思いますのは、もう少し手前からの、高齢者が専門的な知識をづけられるような勉強の場を用意していくことが必要であろうと思っております。  日経連は、ここにも書いてございますが、産業大学という名称で中高年層に専門能力をつけてもらって、それこそ必要に応じ働けるような知力、体力をつけていただく。あるいは、高梨先生御指摘のように大学を開放していただきまして、生涯教育の中で、言葉は悪いんですが、能力主義の高齢者雇用というのが実現するように持っていかないと、なかなか六十五歳まで御希望の方が全部雇用されるようにはならぬと思いますので、企業の努力と御本人の努力と相またなければいかぬのではないかと思っております。  介護については、これから大問題でございますので、十分勉強をいたしたいと思いますが、在宅介護と同時にやはり施設の充実も並行してまいりませんと、私は個人的な見解でございますが、なかなかこれは一〇〇%の解決はできないのではないかと思っております。いずれにいたしましても、企業側は十分努力をする所存であろうかと思います。
  14. 庄司中

    ○庄司中君 次に、河口さんに。  高梨先生が触れられましたように、現在公的年金の受給年齢の延長問題が出ていますね、六十歳から六十五歳に引き上げると。先生が指摘されましたように、年金問題といいますのは労働力率の問題と非常に関係を持っているわけです。例えば、年金制度が成熟をしてまいりますと受給者がふえてくる。それで加入期間の長い人がふえてくる。そして水準が上がってくるということになりますと、現在もそうでありますけれども、緩やかにやっぱり高齢者労働力率は低下してくるような状況になりますね。今度六十五歳ということになりまして、ストレートに延長しますと、これは労働力率は当然上がっていくだろうというふうに思いますけれども、しかし高齢者の就業ニーズの方から見てみますと、やっぱりストレートに上げるということには大変な問題があるということになるだろうと思います。  例えば、労働省の高齢者就業等実態調査が八八年にありましたけれども、これを見てみますと、高齢者ニーズから見ますと、就業ということを考えますとやはり短時間労働を希望する人が一番多いということなんですね。それから二番目は、非雇用の就業がいいと。任意就業ですね、自営業もそうですけれども、これがいいと。三番目が、意外にフルタイムといいますか普通勤務をしたい。これは就業希望の中でも全体を一〇〇としますと、大体四分の一ぐらいございます用意外に多いということがわかります。  そして、これからのそういう問題を考えていく場合に、労働組合として就業と所得保障の両面をにらみながら、どんな制度づくりを考えていったらいいのか。もちろん、一本で決まりというわけではないと思います。ニーズはいろいろありますので、それに応じた対策が必要だろうというふうに思いますけれども、どの辺にウエートを置いて問題を考えていくべきだろう、この点について御意見をお聞きしたいと思います。
  15. 河口博行

    参考人河口博行君) 大変重要な課題であるというふうに思っております。直接お答えする前に、現在連合がこの春の取り組みと並行しながらこの問題について取り組もうとしておりますので、そのことを先にちょっと御紹介を申し上げておきたいと思います。  御承知のとおり、九四年が年金財政再計算の年でございますので、この春からことしの秋ぐらいまでに労働組合としても国民的討議を今御指摘の問題で行いたい。だから、賃上げ、時間短縮、それから政策、制度、その中でも高年者の生活と社会保障、年金の問題について、それから高齢者の継続雇用等の問題について国民的な討議を行いたいと思っております。その面では労働時町と同じぐらいのウエートで取り組みたいという気持ちでおります。  そこで、今連合として考えておりますことは、年金支給開始年齢と引退年齢というものが完全に結合しておらなければならないということの基本に立っておりまして、現在の六十歳定年制が普及してきてほぼ八〇%ぐらいになりますけれども、これを現在、高齢者の就業条件ができていない時点で六十五歳に繰り延べるということについ ては、基本的にいかがなものであろうか。あえて率直に申し上げれば反対ということの姿勢でおります。  そこで、今高齢者の就業の環境条件を十分に整えていくということが最も重要である。そのときに多様な選択肢を出していくということが必要である。そのために、御指摘のように、フルタイムもあれば任意就業もあれば短時間労働もある。それもいろいろな形態があるということは既にはっきりわかってきておりますので、そういったものに対応する必要がある、このように考えております。  そこで、具体的にこれから本格的討議をして、連合としても世に問いたいこととしましては、部分就労・部分年金という概念を出しております。現在の在職老齢年金制度を抜本的に改革していくということがベースにあるわけでございますが、その面では、高齢者が就業を積極的にしていこうというインセンティブを持つ制度というものを導入していかないと進まない制度になっているというふうに考えております。  したがいまして、あえて申し上げれば、現在考えておる内容で申し上げますと、平均標準報酬月額までは全額支給していくという考え方であります。そしてその上に、六十五歳までは減額をしていくという形で一・五倍のところまで減額をしていく。金額に直せばこれが四十八万ぐらいになったかと思いますが、そういったところまで減額していくという考え方で、部分年金・部分就労というものを積極的に推進していきたいということが一つであります。  それから、雇用にかかわる条件を整備していくために、現在の制度は特に大企業、中堅企業あるいは公務員制度とかもそうでありますが、六十歳以上を雇用するような制度的条件は、継続雇用ということの制度はございますけれども、その制度の普及率もほぼ二〇%程度で、ところが量としては消化できない仕組みになっている。したがって、六十歳でもって物理的に切っていくということが基本的な制度になっておりますし、あるいは職務設計及び設備設計全体が若い層から中年層を中心とした職務設計、設備設計になっておりますから、設備設計及び職務設計全体を六十代が就業できるような条件をつくると同時に、いろいろな諸制度をそういった方向に変えていくということが必要である、このように思っておりますが、そういったものを年金財政の検討とあわせて並行的に、高齢者雇用の問題を国民的最大の課題として取り組んでいかなきゃならない。そのために高齢者雇用条件を急いでといいますか、盛り上げて改革に取り組んでいかなきゃならない、このように考えております。そのための具体的な方法は、先ほど申し上げましたような部分年金・部分就労という考え方に立っているということでございます。
  16. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 大変貴重なお話をお伺いしまして、なおかつ高梨先生のお話ですと、これから労働供給に対して労働需要をどうやって合わせていくかという、まさに労働行政の発足当時とは全く百八十度視点を変えた労働行政が必要になってきたのかなと、こう考えるわけであります。  特に私、昨年の七月に当選をして上京させていただきました。私は栃木県を地元にしているわけでありますけれども、まだまだ栃木県においては、官公庁がリードして週休二日というような形が進行していることは事実でありますけれども、実際の経済活動の中で週休二日というのはまだ中小企業の段階では正直申し上げて将来の青写真かなぐらいの私なりの考えを持っていたわけであります。ところが、上京しまして、土曜日目が覚めると、本当に土曜日は休みなんだなと、こういうふうな東京の実感がありました。ですから、地方と東京の格差というものはまさに隔たりが大きいなということを感じたわけであります。  ですから、そういった意味からして、実際地方と中央の格差と同じように大企業中小企業格差が大きくあるんではないか。その辺での中小企業の今後の展開について、相当痛みを伴う時短ではないのかなと、こう感じるわけであります。  今回基準法が改正されますということで、大企業は来年の四月一日から四十時間をもってと、こういうような一つの方向が示されました。中小企業は経過措置をもって平成九年まで四十四時間というようなことですか、そんなことで記憶しておりますけれども、そうすると、ますます中小企業労働環境が悪いよということで大企業にどんどんどんどん人を押しやってしまう、こういうふうな現実がまさに中小企業にとって改めて大きな問題になってきてしまうんではないのかな、こういうふうに感じるわけであります。ですから、そういった意味で実感として、地方の展開を中央と一緒にというふうなことの隔たりをどうとらえていらっしゃるのか。  加えまして、我々地方ですと、先ほど冒頭に高梨先生がおっしゃったように、額に汗してというふうなことが我々の人生観の一つの価値観だったことは事実だと思うのであります。なおかつ日本人共有の価値観だったなと、こう考えるのでありますけれども、何かここのところの時短を含めての生活大国五カ年計画、今進行中でありますけれども、その計画に取り組むに当たって、仕事が人生の喜びだという価値観、そういったものが大変希薄になっている、それでもって反面、仕事は生活の一手段だというふうな、どうもそんな色彩が強くなってきたんではないかなと。その辺での考えを私は強く印象に持つので、高梨先生からひとつ所見をお伺い申し上げたいと思います。
  17. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 日本人の勤労観にかかわる大変重要な問題で、一言ではお答えしにくいわけですけれども、私は経済学の立場から言いますと、バブル景気下でいろんなエコノミストや評論家が発言した中で、どちらかといえば人間の持っているどん欲な欲望を刺激するような論説が多過ぎると思うんですね。経済学はもともと必要の経済学で、人間が生きていくための最低の必要は何か、これを科学的に測定するのが私は経済学の主要任務だと思ってきたわけです。どうも必要よりも欲望の方に偏ったと思うんですね。そのことによって、一部ではいろんな長労働時間とか過労の問題が一方で出てくるわけでありますけれども、私はバブルがはじけて今悪夢から覚めだというような気持ちでいて、やっと日本人が正当な勤労についての評価ができる環境が今できつつあると思うんです。ただ、バブル景気の中で、どうも欲望が刺激されて、それに走って、またその夢を再度追う人がもちろんまだ存在するわけでありますから、これをどうしていくか。  その際、私は、日本産業界としても、労使関係の中でも大変外国からうらやましがられている伝統がございます。というのは、日本労働者の勤労観、例えば古典派経済学のアダム・スミスなどは十九世紀のイギリスの状況を見て、労働というのは苦痛だ、ドイル・アンド・トラブル、こういう表現になっております。むしろ労働以外のところで人生を感じ、生きがいを感じと、こういうような労働観が古典派経済学の中にございます。ところが、日本はそうでなしに仕事に対する喜び、また仕事の能率を高めるための動機づけが大変日本経営者はうまい。そのことの伝統は相変わらず今日でも私は残っていると思います。終身雇用とか年功システム等いろいろ批判がありますけれども、そこで安心して会社に勤めていられるという安心感も大変重要なわけですね。そういうようなことがあればそれなりの高い労働意欲を発揮できる、また発揮させるようなシステムが残っていくだろうと思います。  それから、もう一つ日本の経営のよさは、これは外国からしばしば質問を受けるのですが、日本企業の中の人事労務管理システムの一番のよさというのは、モデルチェンジその他で解雇の必要性が発生しても企業は可能な限りそれらの余剰人員を外部に失業者として投げ出さずに企業の中に抱え込む。既に日本産業界でも、昭和三十年代には繊維産業が大変な難局を乗り切って経営を多角化して、今日まで良好な企業はビッグビジネスで残っております。  そういうような多角経営化していく段階でもそ れらの従業員の能力を可能な限り活用していく、こういう人事の養成システムだと思うんですね。そのために狭い仕事の縄張りじゃなしに仕事の縄張りを広げていく。こういうような、仕事の守備範囲を広げながら熟練養成していくという方法日本特有のものであります。そういうようなことのために日本人の労働意欲は大変高い状況で維持され続けている。これはこれからも維持しなければならないし、また産業界にも維持するような努力を私は大いに期待したいわけであります。その意味で、若干バブル景気下日本人の勤労観というか仕事観が変わったのかなという感じを持ちましたけれども、まだまだそうではないだろう。  それからもう一つ労働時間短縮のときに絶えず労働と余暇という表現が使われますけれども、レジャーを余暇と訳すのは私は反対でございます。余った暇、暇をつぶすためにごろごろしていると、こうなっちゃいますから。そうじゃなしに、日本人というのは、河口さんも、組合はこのごろそういう表現を使わずに自由生活時間というのを使っています。自由生活時間は別に日本人はレジャーで遊ぶわけじゃないんですね。多くの人はふえた自由時間を有効に活用して自学自習していく。日本人は大変勉強家ですから勉強のチャンスがふえる。そのことがまた、労働時間が短縮されても仕事の面にはね返っていくと思うんです。  そういうようなことで、労働時間を短縮したら能率が低下するということじゃなしに、それぞれの人たちが絶えずリフレッシュするための知識を得る、そのためのチャンスを公共サービスで大いに提供していくことが必要だろう。そうすれば、労働時間の短縮労働能率の向上にもつながって、日本産業のリストラにもつながっていく、こういうように私は判断しております。
  18. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 ありがとうございました。ぜひ日本の伝統としてのよさはよさとして残したいなと、そんな希望を多く私なりに感ずるものですから、その点での御指導もお願いしたいと思います。  加えまして、今回生活大国五カ年計画の中で、一九九六年をもってして一千八百時間の総実労働時間に短縮をしたい、こういうふうな一つの目標設定があるわけであります。しかしながら、目標設定をした段階と現在の経済環境は全く様相を異にしている、こう考えるわけであります。ですから、平成四年度の速報で二千時間を切ったという報道をいただきましたけれども、内容を見てみますと、所定外・時間外労働が大幅に減って、それでもって二千時間の大台を切ったと。つまり不景気のために残業がなくなって二千時間を切ったという一つの因果関係があろうと思うのであります。  ですから、そういった意味で、この経済環境の中で本当に一九九六年に三・五%の成長率を維持しながら、なおかつ千八百時間の総実労働時間に短縮をするんだという目標設定が果たして現実に可能なのかどうなのか。先ほども御意見をいただきました。河口さんと小川さんそれぞれから見解の違うお話をいただきました。ですから、そういった意味でのひとつ見解をお伺いしたい。  と同時に、先ほどお話がありましたように、策定段階においても、経営者側の考え方としましては、時間当たりの生産性を今の三・五%というセッティングからすると、その倍の約五・二%ぐらいですか、先ほどの資料を見させていただきますと。そのくらいの単位当たりの生産性を向上させないととてもとても難しい。しからば、その五・二%の単位当たりの生産性の向上ということは、果たして今の政策展開で可能なのかということになると、これは難しいというふうな断定をなされているようであります。  反面、先ほど河口さんからお話がありましたように、いやその三・五%はちょっと数値が違うぞ、もう少し高いんだ、四・何%ぐらいじゃないかな、直近の数値は。そうすると、五%台は意外とそんなに苦労しなくても単位当たりの生産性は向上できる。しからば、一九九六年に双方の要するに目的達成は決して不可能ではない、こういうふうな現状、御意見が分かれているようであります。  ですから、その辺をもう少し詰めさせていただいて、本当にどうなんだろうな、現実問題として本当に可能なのかな。その辺でのざっくばらんな御意見をちょっとお聞きしたいと思うのでありますけれども、河口参考人とそれから小川参考人にひとつお願いを申し上げます。
  19. 河口博行

    参考人河口博行君) 結論を急ぐわけではございませんが、私ども割と明るく見ておりまして、現実を無視するわけではございませんが、結論からいえばできると思っております。  それで、政府生活大国五カ年計画並びにこのたびの基準法改正も、そういったことを十分考慮した上ででき上がっているというふうに見ております。それで、過去の経緯からいえば八七年から九二年まで政府がやるといってできなかったものを再度再スタートを切ってやる、こういうことでございますから、やらなきゃならないということでございます。  実際の動きを見ておりますと、最近は八〇年代後半から現在までの生産性は四・三%ぐらい伸びておりますが、商工会議所の資料とかあるいは各中小企業を含めた努力しておられるところがやっておられる中身は、生産性向上の方がはるかに時短率よりも高い結果が出ておる。その面では明らかに労使あるいは政労使の協力をしなきゃならない分野というものは非常に多くあるというふうに思っております。ただし、幾つかの点で、ここにも挙げておりますように、物流とかあるいは現在の看護介護の問題とかあるいはいろいろな点で構造的な支援を政府なり地方自治体としてしなければならない点がたくさんあるということは承知しておりますが、そういったことを的確にやっていくことによってそういったものが可能になっていく、このように考えております。  いささかちょっと抽象的ですが、状況はそうである。例えば物流で言えば、先ほど二千五百時間から運輸があるというふうに申し上げましたが、道路が渋滞するために待ち時間が長い、あるいはジャスト・イン・タイムするために先に行って待っている、こういう状況がありますから、そういったものは運輸体系全体を、モーダルシフトと言われていますように、トラック運輸から鉄道とか航空とか船舶とかという全体の構造改善が必要な面があることはもちろん承知しております。  あるいは社会サービスと協力との関係ということももちろんございますが、あるいは現在の看護労働についても同様でございまして、人的能力だけに依存しているところがありますから、福祉機器を含めた全体の改善というものが必要であることも承知しておりまして、そういったものを政府として積極的に推進していくことが大事である。  あるいは中小企業についても、連休の前に発注して月曜日に持ってこいとか、この種の悪例は積極的に社会が、発注側が改善して直していく、法によってそういったものがどんどんと改善が進んでいく、このように思っておりまして、それでないと横並び意識等社会からの圧力に沿って変えていけなくなっていく。そういった面で計画法制というもの必要である、このように思っております。
  20. 小川泰一

    参考人小川泰一君) お答えをいたします。  細かい数字の詰めは、これはちょっと私専門家でございませんので差し控えますが、私どもといたしましては、そこのパンフレットの四十二ページに書いてございますが、かなり計画達成は今の延長線上でいけば無理なんじゃないかというふうに考えております。  もちろん、今、河口先生がおっしゃったように、いろんな改善すべき諸点については努力をしていくべきだろうというふうに思っておりますが、それぞれ産業企業の実態、それから今御指摘のような地域の産業の実態あるいは東京周辺の大都市の実態、それから働く人の物の考え方、さまざま多様でございまして、それを一律に千八百時間の鋳型に押し込められるのか、平均値だけで追求していくのが果たして妥当なのかという基本的な疑問も実は持っているわけであります。  それからもう一つは、それを誘導する国の政策でございますが、いろいろ労使が努力いたしますのを御援助いただくのは結構でございますが、実態をやや乖離し過ぎて法の鋳型に当てはめて誘導するのは、これは必ずどこかにひずみをもたらして、いい結果を生まないというふうに思っております。要は、政策目標でございますから否定はいたしませんが、それに持っていくためにいろんな経済の実態、地域の実態、人の意識、法律の役割等も御考慮願って、無理のないように持っていっていただきたいということでございます。
  21. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 繰り返すようでありますけれども、この目標掲示は確かに我々夢と期待を持たせていただいて、そこに行こう、こういうことはいいことなのでありますが、現実にそれが達成不可能ということになりますと、そこにおける期待感というんですか、そういったものが期待感に基づくより一層の挫折が常に生じちゃうような感じがいたします。ですから、せっかく労使協調の中でこの目標明示をしたということでありますから、その辺改めてコンセンサスをひとつ十分とらえながら、じゃ実際どうなんだということを改めて御検討いただきたいなと、その辺は強く私からもお願いをしたいと思います。  加えまして、最後に一言申し上げておきますけれども、先般ある業界紙で、何と二千八百時間というふうな見出しで非常に労働時間、拘束時間が長いよ、まさに夢の話だというような大分県のガソリンスタンドの実態が報道されておりました。まさにそれが一つ中小企業の実態ではないのかなと。その辺での痛みを十分感じていただきながら、今後諸施策の展開を図られていただきたい、こんなことを最後にお願いを申し上げまして、私の質問にかえさせていただきます。  ありがとうございました。
  22. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 三人の先生方には大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。今まで御質問のあったことと一部重複があるかもしれませんが、できるだけお答えの方でさらにその上に立ったお答えがいただけたらと希望するものでございます。  まず初めに高梨参考人にお聞きしたいんですけれども、労働力供給の状態が現在豊富であるということから、今後は不足な状態に移るだろう、その分布を言うとピラミッド型からつり鐘型に変わっていくだろうと。これは御説明の中でよく理解をできたように思います。ただ、これから具体的な対応を考えようとするときにもう少しこれを量的なとらえ方ができないものだろうかということで、大変難しい問題ではあるんですけれども、御説明の中でもし労働力が今後不足するということをとらえる量的な方法、先ほどの御説明に加えてもしありましたらお教えいただきたいと思います。
  23. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 本日お配りしました雇用問題政策会議、これは雇用政策研究会の需給の見通しの量的な測定を踏まえて開いたものであります。それからもう一つは、第七次雇用対策基本計画の巻末に一部表が出ていますが、これも労働力需給見通しで、実績が一九八四年と一九九〇年、それから見通し、推計が一九九六年、こういうようになっております。これをごらんいただいてわかりますように、これを算定するためには労働力率とか、また生産性とか、さまざまなことを一応予測しながら需要量を予測していくのは、これは下の見通しの数字ですけれども、上は人口変動で労働力率がわかれば供給量は大体わかる、こういうことであります。  だから、この供給量に対して需要をどううまくマッチングさせ、需給バランスをとるかということが問題で、これはきょう数式的なことは表はお配りしていませんけれども、その点についてはさまざまな推計値がありますが、労働省の推計に従ってこの雇用対策基本計画が企画立案されている、こういうことだけ申し上げておきたいと思います。
  24. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 続けて高梨参考人にお尋ねします。  労働供給制約条件がある、労働供給制約条件労働需要を適応させる、こういうお考えが示されたわけですけれども、基本的には私もそのとおりだと思うんですが、このお考えの中に、現実には例えば外国人労働者が実際にもう既に日本には相当いらっしゃると思いますし、今後そういった中で外国人労働者の現実的な位置づけ、これをどのように考えていったらいいのか。理想的な意味でのお話は何点が御指摘があったんですけれども、現実を踏まえての外国人労働者のとらえ方、位置づけ、そういったことに関しての御教示をお願いしたいと思います。
  25. 高梨昌

    参考人高梨昌君) この外国人労働者問題については、いろいろ国民の中でも考えがありますけれども、私は中央職業安定審議会会長を務めて絶えず外国人労働者問題について関心を抱いてきましたし、私自身もこの現状の取り扱い方については大変批判的な意見を持っています。  といいますのは、今は外国人雇用対策というのは真っ当にございません。法務省の出入国管理政策の中で出国入国の関係でチェックされているのみでありまして、雇用対策として対応していない。やっと雇用対策として対応できるような措置を最近とりました。これが外国人雇用報告制度であります。外国人がどういう事業所にどのくらいの数いるかということの正確な統計を政府は持っていません。そういうようなことで、まず報告制度を入れていく。  これは、ヨーロッパやアメリカの経験からいいますと、例えば旧西ドイツにしましても労働許可証制度があります。日本にはありません。労働許可を得て初めて入国管理局に入国のビザ申請をする、こういう手順でありますけれども、日本は出入国管理だけでやっていますから、雇用政策として外国人を捕捉する手段がないということであります。そのことのために、さまざまな外国人が合法非合法を問わず、日本社会で働く場合の権利の保護、またそこでのさまざまな混乱、これに雇用政策の側面からうまく対応できていないのが私は現状だと思います。その意味で私は、日本でも早急に労働許可証制度もしくは雇用許可証制度を入れながらその外国人の権利義務、これを明確にしていく必要があるんではないかと。  それからもう一つ、何といっても国際社会日本は生きていくわけでありますから、当然海外日本のさまざまな人たちも旅行以外でも出かけますし、多国籍企業であれば海外に駐在員として派遣されます。今日、世界の先進工業国では多国籍企業の事業所でも簡単には入国が認められません。それほど世界は今鎖国状態でありまして、日本はかなりルーズに開国してしまった。そのツケをこれかに我々は払わなきゃならない。お金とか物であれば何とか解決は可能でありますけれども、人の場合にはそう簡単ではありません。日系移民の問題にしても、日本で働いている人たちが今解雇される、その他いろいろ問題があかます。こういう人たち雇用を安定させ、生活を一体どう成り立たせるかという、こういうところまできめ細かい政策をこれから早急に打っていかなきゃならない。絶えず日本外国人労働者問題は後手後手に回っている嫌いが強いということであります。国際社会の中ではルールがありますから、ルールは厳格に守ってもらわなきゃ困る。産業界には非合法の労働者を雇っている業者が何人がおられますけれども、やはり日本は法治国家でありますから、法のルールに従って労働者を雇い、使う、こういうことが少なくとも浸透してもらわなきゃ困るわけです。  そういうようなことで外国人労働者雇用報告制度というのを、別に不法就労を取り締まるという意味じゃなくて、そこで働いている人たちがどういう条件で働き、どういう問題を背負っているかということのまず情報の第一を得る、こういうことで、先日、中央職業安定審議会でそれを決定して大臣に建議した次第であります。  そういうようなことで、これから外国人労働者は我々の仲間として入っている人もいっぱいいるわけですから、また我々も、外国での工場とか事 業所の管理者、とりわけ中間管理職を養成するためにはやはり日本の国内との人事交流を経ながら進めなきゃなりません。そういうようなことで、海外にそういう点は大いに開いていかないと日本産業の発展途上国への雇用機会の提供等はそう容易に進まないのではないか、こういうように考える次第であります。
  26. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 ありがとうございました。  もう一点だけ小川参考人にお尋ねしたいんですが、残業時間を削減する目的で時間外・休日労働に対しての割り増し率の問題があると思うんですけれども、現在の割り増し率ではなくて、さらにこれを上げていくということは基本的には有効な手段だと思うんです。それについてのお考えをいただけたらと思います。
  27. 小川泰一

    参考人小川泰一君) 私ども、まず第一に法律によって上げるということに対して反対をいたしておりまして、労使交渉でお取り決めいただくことについて何ら物を申しているわけじゃございません。  背景にあります考え方でございますが、一つは、現在中小企業中心労働時間短縮をしていくプロセスにございます。例えば四十四時間の労働時間を四十時間に縮めれば、賃率をカットすれば別でございますが、日本の場合は月給なり週休はそのままにいたしましていろいろな努力で時間短縮をいたしますので、自然に一時間当たりの単価が上がるわけでございまして、それに割り増し率が上がればいわばコストのダブルパンチになるというのが第一点。  それから、割り増し率を上げることは、これは時間外をすることの抑制になるんではないかという御指摘でございます。確かに、使用者にとりまして制約要因になることは事実でございますが、果たして日本の職場慣行その他から見てストレートに使用者の負担に見合う程度にうまく残業が減るかどうだろうかということについてはいろいろ疑問がございまして、私個人は必ずしもそううまくはいかぬよというふうに思っております。  それから三番目は、現在残業が減っておりますが、これはいい悪いは別にしまして雇用の絶対量のコントロールの一手段でございます。残業のコストが大変高いということは、逆にもう少しドライな方法を取り入れなきゃならぬかなというような感じに使用者を少なくとも考えさせるわけでございまして、いかがかなと思っております。  しつこいようでございますが、四番目でございますが、現在二五%という割り増し率をとっておりますのは事業所にしまして恐らく八五%から九割だろうと思います。法をもって強制するには余りにも一般化をしていない。  それらを総合いたしまして、大変消極的な姿勢をとって御批判をちょうだいいたしておりますが、事情を御理解いただきたいと思います。
  28. 長谷川清

    ○長谷川清君 今の話を引き継ぎまして、私も往復十分しかございませんから端的にお話をお聞きしたいと思います。  河口先生、時間を短縮する、こういうことのためにはやはり三つあると思いますね。一つは所定内労働時間を短くするということ、それから二つには時間外労働を少なくするということ、三つにはいわゆる休暇を一日でも多くとる、完全取得するということだと思うんですね。この三つによって初めて時間の短縮という数字が出てくるということだと思いますが、これはいずれの場合でもやはり一時間当たりの労働生産性を高めるということなくしては、現実の問題からいくと前進しないのではないか、こういうふうに考えますが、そこのところの連合としての考え。それとまた、全国にそういう啓蒙や運動、八百八十万からの組織でございますから、そういう点がどの程度まで行き渡ろうとしているのか、そういったことについてお伺いをしておきたいと思います。  さらにまた、この時短の問題は小川さんにも質問したいのでありますが、やはりキーは、大企業は割と労使双方の知恵によって進み得ますけれども、これが中小零細企業のところになかなかその数字が、実績が上がってこないわけですね。ですから、私は、日本産業というのは大手があってずっと幾重もの構造によって下請、孫請がありますから、資本系列別にあるいは企業別にそれぞれの系列傘下の中における、中小零細におけるそういうところとの仕事の流れ、今まで大企業の元請でやっておりましたところの仕事の内容もそれによって変えなきゃなりませんけれども、受ける側の下請の子会社のためのことも考えたいわゆる新しい工夫と仕事の流れをどう改善するか、そういう具体的なことなどを含めた、親会社の側の時間短縮のためのコストを含めたあらゆる体制ということをやはり経営側の方で親心を持っていきませんと、なかなかこの問題は前進しないのではないかと思いますけれども、そういう部分について小川さんにもひとつ聞いておきたいと思います。  それからまた、高梨先生の方には、今労働力が非常に不足をしております。当面の問題とすれば、やはり私はやるべきことはまず高齢労働高齢者労働の活用と女子労働の活用というこの二つが当面ありまして、これがどこまで行き着くかによって外国人労働との関係を、内容をよく整備して、混乱しないようにこれをやっていくという、そういう手順が大事なのではないかと考えますけれども、その辺のところはそうじゃないよという点がございますかどうか。そしてまた、高齢労働の活用という場合も、阻害しております要因は、もう今は雇用形態が非常に何というか単体なんですね。老いも若きもみんな八時半から五時二十分までとかという、こういう雇用契約になっておりますから、六十歳の定年を過ぎてそれ以降もやろうという場合も、これはやっぱりフレックスタイムの選択制に雇用形態を変えていく。やっぱり雇用形態がだんだん多様化していきませんと、朝六時何分に起きて、そしてもう六時半には電車に乗っていないといけない、一時間半かけてこんな満員の殺人電車の中で通うにはちょっと六十歳からは、これだから私は嫌なのよと、こういう卒業生は多いわけでございます。  そういう点を考えますと、そういったところに、契約社会でない日本でございますから、どうも一本調子な雇用しか今のところない、これがもっともっと労使の工夫によりまして、そこら辺の道が開けないかどうか。それからまた、技術の保存というもの、そういうことなどについてちょっとお伺いしたいと思うんです。
  29. 河口博行

    参考人河口博行君) 基本的に御指摘のとおりでございますが、認識の点で組合がこういうふうに思っているということを少し申し上げたいと思います。  所定内時間、時間外労働、休暇等の関係でございますが、大企業中小企業との年間実働時間における差というのは余りありません。むしろ時としては大企業の方が長い傾向を今持っております。所定外を含めるとそういうことでございまして、所定内の労働時間で申しますと規模間の格差があって大企業の方が当然短くなっている、こういうことが現状でございます。むしろ業種間における差の方が大きいというのが姿でございまして、したがいまして全体を通じまして所定内あるいは所定外ともに目標に向かって時間短縮をしていくということが基本にあると思っています。その面では、先ほど庄司先生も御指摘のように、所定内の時間をできるだけ大企業中小企業一致させておかないと、人の異動の面でやはり大企業ばかりに人が集まる、こういうことになりますから、そういったことが必要だと思います。  それから、労働生産性については、先ほど来私も幾度か強調しておりますし、わざわざまたこのレジュメにもそういうふうに書いたわけでございますが、単純に労働生産性だけというよりも、ここにも人・時生産性というふうに挙げておりますが、人と時間と両方に生産性を上げていくということが非常にこれから大事になってくる。その面では、御指摘のように仕事の仕組みそのものを見直していくというふうになっていく。とりわけ今焦点になっているのは、現業生産部門というよりも、ホワイトカラー分野の間接部門の、今まで即応的にどちらかといえばやってきておりますけれ ども、そういった仕事のあり方全体を見直すことによって生産性が非常に高まっている。したがって、観念的議論も大事ですけれども、むしろ現場は今私どもが思っている以上に労働生産性が非常に高まっていっているという実績が出ておりますので、そういったものを積極的に普及していくことと、また政策支援をしていくことが大事ではないか。当然労使協議あるいは政労使協議が大事なんだということを申し添えておきます。  以上です。
  30. 小川泰一

    参考人小川泰一君) お答えをさせていただきます。  第一点は、大企業中小企業に対する時短上の考慮でございますが、私ども実は、先ほど御紹介しましたパンフレットの五十一ページにも指摘をいたしておりますが、中小企業経営者のトップの決断と同時に、関連をする大企業の協力が不可欠であろうかと存じております。  いろいろ話を聞きますと、それぞれ大企業のトップはそれなりに承知をいたしておりますが、発注をいたしますところに参りますと、発注者の効率ということでなかなか意思が通らないようなこともあるようでございますので、ぜひひとつ中小企業トップと大企業トップが十分話し合って、そういったものの考え方を浸透するように私どもも働きかけてまいりたいと思います。  第二点は、時短促進法の活用でございまして、これは中小企業一つのグループとなって関連する取引先あるいは地域の需要家等に対しまして、お役所が中に入って御理解をちょうだいする手続を推進するということでございますので、一つではなかなか実現できない中小企業が横にまとまって壁を破っていく手段であろうと思っております。  あくまでもこれは企業並びにそれとお話し合いをしております労働組合とのお話し合いが前提になるわけでありますが、そういう方法もあろうと思っておりますので、十分関心を持っていきたいと思っております。
  31. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 高齢者女性の活用はもちろん大変必要なことでありますけれども、先ほども申し上げましたように、高齢者の中でパートタイム勤務希望が大変多うございます。そういうようなことで、雇用形態の多様化を図りながら高齢者雇用機会の提供、こういうことを当然進めなきゃならないわけでありますけれども、ただ現実に見てみますと、六十歳代の高齢者を活用しているのは専ら中小企業でありまして、大企業は六十歳になると定年退職、大企業高齢者をほとんど使っていない。  先日も、年金法の改正問題で厚生省の幹部の方々に申し上げたんですけれども、今の共済組合年金でも厚生年金でも六十歳支給開始を六十五歳まで繰り下げるためには、大企業のサラリーマンと公務・公共部門で働いている人たち、これが一番の難題ですと、こういうように私は率直に申し上げました。この人たちは一体雇用延長ができるだろうか。  先ほども申しましたように、三年前の調査でちょっと古いんですけれども、労働省の高齢者の就労実態調査によりますと、六十-六十四歳層で月額年金が二十万円を超える人は四〇%ぐらいしか働いていない、六〇%の人は非労働力化している、こういう実態があります。昨年十一月にやっておりますから、恐らくより一層その傾向は進んでいると見ています。  というのは、老齢年金制度はもともと労働からの引退促進効果を持っているわけですから、年金が成熟すればするほど引退志向が強まるのは当然でありますけれども、そういうような傾向が日本でも顕著に見られ始めている。そういうようなことで高齢者に、例えば先ほど河口さんの方から連合の方で部分就労・部分年金という、こういう提案もございますけれども、そういうような部分年金、部分就労というようなシステムで果たしてうまくいくのかどうか、この問題を含めてこれから大いに私は検討しなければならない問題だろうと思っております。  それから、女性の活用というのは、これは男女雇用機会均等法以後大変進みました。先ほどのパートの市場で申しましたけれども、パートタイム労働市場はこの五年間に純増加を三百万人もしています。その多くは女性であります。それほど女性は働く意欲も高く、子育てが終わればまた再度労働市場に参入してきます。そういう人たちの受け皿として、パートタイム労働者の権利を保護していくためのパート労働法が私は必要だと思っております。  それからその前に、労働者派遣法という法律の中で、ここでも事務処理サービスでは多くの女性の方が働いております。今、派遣市場で働く人たちは、政府の業務統計では五十万人を超えております。それほど大きな市場になりつつありますけれども、この派遣社員の権利義務関係も労働者派遣法の中でルールを決めたわけでございまして、ここにも多くの女性の方が参入しております。これも良好な、しかも健全な労働市場として育成していかなければならない。健全な市場になれば、私は女性高齢者も参入してくるに違いない。そういうことをしながら、若い労働力供給量が減っていくことに対して対応し、老いも若きも、同世代人たちが健全に健康で働ける、こういう社会システムをつくっていかなきゃならない。現状は、残念ながら産業界でも大企業の場合には五十歳になりますと早期退職優遇制度があって退職金を割り増す、こうやってきますけれども、これはもともとピラミッド型の人事労務管理システムを前提にしているからそういう問題が起きるわけで、だから、どの世代でもまんべんなく能率よく働き、しかも働く意欲を失わないシステム産業界で大いにこれから知恵を出してもらわなければ私は困る。いたずらな勤続年数比例の処遇とか機械的な年功制の処遇とか、こういうことは今容易にとりがたい状況になっているということを申し上げたいと思います。
  32. 長谷川清

    ○長谷川清君 ありがとうございました。
  33. 立木洋

    ○立木洋君 私も時間が限られておりますから、労働時間短縮の問題についてのみお尋ねしたいと思います。  最初に、時短に対しては消極的と言われておると率直におっしゃっていただいたんで、小川参考人からお伺いいたしたいと思うんですが、日本の長時間労働というのは国際的にも今大変な問題になっております。これはどなたも御承知のところですが、しかし一九六〇年代までは欧州の労働時間の方が長かったんですね。日本労働時間の方が短かったんです。それが結局六〇年代の終わりから一九七〇年代のオイルショック、あのときの対応日本労働時間というのは非常に長くなるという状態。あのとき、ヨーロッパの方では結局いかにして労働時間を短縮して、そして雇用を維持し雇用をふやすかという努力をしたのが欧州の対応だったわけですね。日本の場合はそうではなくて、これは高梨参考人のあれを読ませていただいたら書いてあるんですけれども、一時休業だとかあるいは定年の延長だとか一時出向だとか、そういうふうな形で解雇を抑制する、だから労働時間の短縮というのは問題にしなかった。そういうのがやっぱり二十年、三十年のおくれをとったと思うんです。ですから、今私はこの労使の問題においても、それから政治の問題においても、この労働時間の短縮の問題というのは非常に重視しなければならない情勢が国内だけの問題でなく国際的にも要請されている、これは経済摩擦の要因にもなりますから。そういう点で、今日の労働時間の実態をどのようにお考えになっているのかということをお尋ねしたいんです。  先日の労働省の発表によりますと、労働時間が昨年は千九百七十二時間になったというのが発表されました。しかし私は、これを顔面どおりこう受け取っていいんだろうかという感じをちょっと持っているんです。  一つの問題は、これはドイツやフランスに比べてもやっぱり三百時間から四百時間長く、政府が立てた目標にも達成しなかったという問題があることだけにとどまらないで、サービス残業という のが依然として根強いんですね。これは今まで、去年のデータなんかでも結局金融・保険業界、これが時短では最先端を行く、それが昨年の場合には一千八百二十三時間。ところが実際に調べてみると、何とサービス残業が三十七時間も月にあったということが明らかになったわけです。この間も労働省が出されております勤労統計調査とそれから総務庁の労働力調査の差から推計してみますと、サービス残業というのはすべての業界にある。それぞれの業界によって違いがありますけれども、少ないところで月に二十時間、多いところでは三十五時間のサービス残業があるという実態が労働省と総務庁の統計の差から見れば明らかに推計される、これが二つ目のサービス残業の問題。  三つ目には、最近、昨年来急激にふえてきましたパートとアルバイトの急増です。  九二年の二月の調査に比べますと、前年比にしてパートが六二二%、アルバイトが七・一%ふえておる。正規職員の就労が一・八の増ですから、それに比べると数倍の増なんです。これは名前は申し上げると大変失礼だから申し上げませんけれども、官庁のある方のお話によれば、パートをふやして時短を図ればいいというふうなことさえ、本末転倒のようなことまで言われる方もおいでになる。こういうことを見てみますと、今のやっぱり労働時間の実態をどのように把握されるのか。それから、これ先ほどいただいたのを読ませていただきましたけれども、国民の真のゆとり、豊かさの実現、ゆとりということになれば、時短ということが非常に重要な問題になりますので、その時短ということをどういうふうに位置づけておられるのか、この二点を小川参考人にお伺いしたいと思います。
  34. 小川泰一

    参考人小川泰一君) お答えいたします。  時短重視という視点についてはそこに書いてあるとおりでございまして、私ども残念ながら御指摘のように消極的と言われておりましたが、既に物の考え方をかなり大きく転換をいたしておりますことは事実でございます。  それから、おくれをとったという御指摘でございますが、私ども、欧米日本労働時間短縮の環境というのが大変違うわけでございまして、ヨーロッパは主として人手余り、つまり失業者をなるたけなくすためにワークシェアリングという視点から推進されておりますが、日本の場合は人手不足の中で時短を進めるという、まことに彼らから見れば魔法遣いのようなことをしているわけであります。そこには大変ないろんな彼らにはない努力が要請されるところでございまして、それだけに生産性向上あるいは労使の協力、その他国民の世論、人手不足、いろんな欧米では経験していないファクターをクリアしながら時短を進めておるということについてはぜひ御理解をいただきたいと存じます。長期的な統計を見ますと、人手不足で高度成長のときに時短が進んでいるというちょっと変な関係になっております。私どもも、今回は確かに残業で時間が減りましたが、それが後戻りしないように努力しようじゃないかということを言っております。  それから、サービス残業でございますが、これは私ども仮に当然そういう割り増し賃金を払うべき労働を命じておきながら払っていないとすれば、これは大変法律に違反することでございまして、戒むべきことであろうかと思っております。ただ、といって別にあれするつもりではございませんが、ホワイトカラーがどうしても中心になろうかと思います。ホワイトカラーの働き方というのはやはり現業労働と同じ規律だけではなかなかコントロールしにくい側面がございますので、そこは十分な処遇を与えつつ、別途の法制を考えていくこともあわせて必要ではないかというふうに考えておりますことは、冒頭申し上げたとおりでございます。  パート、アルバイトがふえれば平均値が下がるというのは、これは統計のとり方でございまして、恐らく諸外国もパート、アルバイトを含めての時間だろうと思います。私は、労働時間については総体として短縮の方向に向かうことは結構だと思いますが、それぞれ産業企業、ポジション、それから人の物の考え方等が複合いたしまして大勢が決まるわけでございまして、短時間労働をお望みになる方がふえてそれなりに全体の時間が下がること、それ自体は悪いとは思っておらないわけであります。しかし、よく分けまして実態を見ることも大事だと思いますので、私どもも十分その辺は承知をいたしまして考えてまいりたいと思っております。
  35. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間が残り少なくなったんですが、高梨参考人とそれから河口参考人にお尋ねしたいんです。  一つは、つまり労働生産性の向上が時短の前提だというふうなことがよく言われるんですが、私たちももちろん労働生産性の向上というのは人類の進歩ですから、これはもちろん賛成なんですけれども、それを時短の前提とする考え方がどうだろうかという点ではどうも納得できない点があるんです。  これまで、日本生産性本部が出している統計を見ましても、一九六五年、これを一〇〇としますと、一九七五年までの十年間、これは労働生産性の指数に比較的合った形で労働時間が短縮されました。ところが、一九七五年からこの十数年間にわたる事態を見てみますと、労働生産性は一九七五年から九〇%上昇しているんだけれども、時短は全く進んでいない、それどころか労働時間が長くなっているという結果さえ、この日本生産性本部の統計でも出ているわけです。  ですから、その成果配分論というふうな格好を見ても、結局労働生産性が向上したら時短になるという保証はない、現実に見ても。生産性の向上ということから、結局は長時間の過密労働を生み出して過労死までなるというふうな事態にまでなりかねない。  そういうことを考えるならば、こういうふうな考え方でなくして、やはり労働時間の大幅短縮、これは労働コストと、それから時間当たりの産出量を見てみましても、結局日本のみが労働コストが低下しているということがこの十年間余りの内容でも明確です。ですから、長時間過密労働ではなくて、ゆとりのある生活、残業しなくても生活できる賃金というふうな考え方を今後重視することが極めて重要ではないかということが一点。  それからもう一つは、小川参考人は明確に述べられたんですけれども、残業時間の法的な規制ですね、河口参考人にお伺いしたいのは。これについてはどのようにお考えになっているのか。  結局、残業時間を法的に規制するについては積極的な立場をとられないような小川参考人のお話だったんですけれども、しかし日本の場合に、労働組合が組織されているのが二四%、この八万に上る労働組合が全部労働協定を結んで、そして完全にそれが実施されたとしても、あと四分の三の労働者というのは時短の枠からはみ出してしまうというふうなのが現実なんです。ヨーロッパみたいに労働組合が結んだら、同じ産業であれば八割から九割の労働者がそれによって拘束されるというふうな実態とは全然違っているわけですから、結局、日本の場合のように組織率が低くて、そして個別交渉による問題が中心になっているような場合には、時短のためには法的な措置というのが私は非常に重要ではないだろうか。  これは、連合の方の九〇年度の調査を……
  36. 浜本万三

    会長浜本万三君) 立木さん、そろそろまとめてください。
  37. 立木洋

    ○立木洋君 済みません。  連合の方の調査を見せていただきますと、時間外労使協定に一年の限度がある場合の一年の限度時間、事業所数の割合を見てみますと、製造業では四百時間から四百五十時間の残業が可能だと、そういうふうに述べておるのが五一・八%も占めておるわけです。そういう点では、残業時間の法的な規制、三六協定の見直しが必要ではないだろうかというふうに考えるんですが、この点については河口参考人にお答えいただきたい。
  38. 高梨昌

    参考人高梨昌君) 今の生産性の問題では、私は日本の物的な労働生産性、単位生産物当たり の労働投入量、これは世界に冠たるもので、高いです。それが高まった一九六〇年代には、製造業労働者年間労働時間が二千六百時間ぐらいあったんですが、その物的労働生産性が高まったために、大体二千百時間ぐらいまで来ました。それ以後、日本労働時間の変動を見ていますと、残業時間が景気変動に感応的になってきて、不況の時期には残業時間カット、好況の時期には残業時間が延びる、こういう循環で来た。  そこで、オイルショックの後問題になるのは、物的労働生産性よりむしろ付加価値生産性なんです。アメリカと日本と比べると、物的生産性はなるほど日本はダントツに高いです。付加価値生産性はそれほど高くないです。それは、余り付加価値の高くないものをつくり過ぎているんです。だから、付加価値の高い産業の方に切りかえていくことが付加価値生産性を高める一番の秘訣だと思うんです。そのために、通産省などが言いますように、知識集約型の高付加価値産業構造へどうやったらうまく転換できるか、この転換を妨げるようなことがあれば、それを全部排除していかなければならぬ、こういう問題だと思うんです。それによって労働時間も短縮されるし、またそれなりに日本経済は豊かになっていくと私は見ているわけです。
  39. 河口博行

    参考人河口博行君) 二点申し上げておきたいと思いますが、高度成長時代から今日までの二十数年間状況のお話がございました。  端的に申し上げれば、第一次、第二次オイルショックに対して、労働組合もある面では入るのかもしれませんが、社会全体が外からの危機に対して団結をして危機を乗り切ったと言ったら率直でいいと思っているわけです。第一次、第二次ともにそれであった。  円高危機のときに同じような対応をしたと思います。そこが明らかに間違ったと思っておりますが、平成バブル景気も、ある面からいえばそこから出ている。あれだけ前川リポートが提起されながら、政府もあるいは労使も取り組んだけれども、結果としてできなかったということだろうと思いますが、その反省の上に生活大国五カ年計画ができていると思っておりますし、労働組合としてもそういうスタンスで今日の状況に臨んで時間短縮に取り組まなきゃならない。二十年間かけてやればソフトランディングできたものですが、ある程度のハードランディングはやむを得ない状況内外ともに来ている、こういう認識でございます。その面では、先生の御指摘については、ある面で認識の共通するところもございます。  それから二番目に、組織労働者と未組織労働者のかかわりを含めた時間外への取り組みについてでございますが、確かに現在の組織率は二五%を切っております。しかしながら、戦後、日本労働三法以来、今日の労働法制のでき上がった姿は大変なものを意味しておりまして、未組織のところにおきましてもほとんどのところが従業員代表制がございまして、それは労働法制に基づいております。したがいまして、事実上の労使協議が行われている。アメリカの労働法の視点で申し上げれば、全部組織があるに等しいぐらいの状況労働法制はなっているということでございますが、その面では今日までの政労使の努力、あるいは国会の御努力については評価して積極的に進める必要があると認識しております。  傍ら、労使間の問題で労働組合が時間外規制の問題について、御指摘のように三六協定を含めてもっと厳しく厳正な取り組みが必要であるというふうに認識をしております。そうすることが極めて大事である。と同時に、政令に基づいての大臣告示もございますから、そういった方向で目安、基準を出して、社会全体が前を向いて取り組んで円滑に進めていくところに今来ている。今こそ、踏み切って全体が進んでいくところではないでしょうかと申し上げておきたいと思います。  なお、関係の資料連合白書の後ろの方に少しつけております。
  40. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 きょうはお三方の大変貴重な御意見をいただきまして勉強になりました。どうもありがとうございました。  今、日本は、ひとり歩きの日本ではもうないわけでありまして、当然のことながらアメリカあるいはECとの競合関係にある。連中が今考えているのは、同じ土俵で日本が競争してほしいという、さもなければアンフェアだという声が今非常に高まっております。同じ土俵でという場合に、一番わかりやすい目安というのは労働時間であろうと僕は思います。  したがいまして、いろんな問題があることは重々わかっておりますが、今の日本労働時間は先進国としては余りにも長過ぎる。これは、ただ先進国のECとかあるいはアメリカを意識するのみならず、発展途上国のことを考えても今の日本労働時間をもう少しゆとりのある、一つの目安として、五カ年の間に千八百時間ということを目安にするということは非常に大事なことである、私はそう思います。河口さんが、そのことは可能であるとおっしゃっていただいたので非常に勇気づけられました。  と同時に、小川さんのお立場は経営者の団体でありますので、日本が資本主義経済市場主義経済をとっている以上、企業のオーナーは株主である、株主を無視して企業の経営はできない、一株当たりの利益を上げなければいけない。あのIBMのエーカーズ社長も、去年、四百九十億ドルの赤字を出したことによって引責辞任をいたしました。当然のことながら、資本主義社会においては経営者は常にそういう株主のための利益追求という大きな課題がある。その中で、欧米と同じようなゆとりのある生活を従業員に与えながら、なおかつオーナーである株主にそれ相応の利益の分配をするという、ますます経営者にとっては厳しい環境になってまいりました。  その辺について小川さんから、小川さんの個人的な御意見でも結構ですからコメントをひとつお願いいたします。
  41. 小川泰一

    参考人小川泰一君) 御指摘のとおり、大変難しい事態になったのではないかと存じております。  まず労働時間でございますが、私どもは千八百時間の目標を否定するものではございません。当面、実現可能なものとして千九百時間台の半ば、すなわち先進諸国の中で英米水準までともあれ到達して、そこから先は考えていこうではないかという態度をとっておりまして、千八百時間を否定するものではございません。また逆に、全く諸外国の水準を無視するものでもございませんで、私どもは英米水準をまず目指そうというふうに言っているところでございます。  もう一点の株主に対する問題と、それから従業員を尊重していく経営との調和でございます。これは、これからいわゆるボーダーレスの経営になるに従いまして、経営にとって大変重くのしかかる課題ではあると存じております。  日経連の立場でございますが、これはこの中にも、きょうは御説明いたしませんでしたが、今後の経営と労働のあり方ということで一つ考え方を貫いておりますが、日本経営者が変えてはならないのは、一つは長期的視点からの経営でございます。したがいまして、長期的視点からの経営という観点から株主さんにも我慢をしていただくということもあり得ると思います。それから二番目は、やはり従業員を大事にしていくという経営。この二つはこれは世の中が変わっても、あるいは諸外国との関係がどうなっても、日本の経営としては極力維持していこう、頑張っていこうではないかという決意を表明いたしております。大変険しい道ではあろうかと思いますが、これは労働組合、従業員の御協力もちょうだいしながら、あるいは政府の諸施策等もよろしきを得て貫いていかねばならぬのではないかというふうなことでございまして、これが一応日経連としての決意であるというふうにお受け取りいただいて結構でございます。
  42. 寺澤芳男

    寺澤芳男君 もう一つ、諸外国から日本を見て奇異に映ることは、いわゆる日本株式会社、すなわち余りにも経営者労働組合、あるいはそれに 行政が絡んで、そして仲よく題しくやり過ぎているんではなかろうかという、そういう批判があります。  これは、やはり小川参考人が指摘されましたように過度の行政の介入、当然資本主義ですから、自由主義経済ですから、会社の経営者労働組合との間の問題、これを過度に行政が介入し過ぎますと、当然そういう批判が起こるわけでありまして、この辺のところは、やはり純粋に日本もほかの国と同じように自由主義経済市場経済をとっているのであるということを明確に世界に示すためにも、過度の行政の介入、これは避けるべきだと思います。  きょう私の質問は以上です。
  43. 浜本万三

    会長浜本万三君) ありがとうございました。  以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  一言お礼を申し上げたいと思います。  参考人の先生方には長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。ただいまお述べいただきました御意見につきましては、今後の調査参考にさせていただきたいと存じます。本調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  なお、本日、参考人から御提出いただきました参考資料のうち、発言内容把握のため必要と思われますものにつきましては、本日の会議録の末尾に掲載させていただきたいと存じますので、御了承いただきたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会      ―――――・―――――