○
政府委員(
瀬田公和君)
厚生省の
総務審議官の
瀬田でございます。
国民生活に関する
調査会の
委員の
先生方におかれましては、日ごろより
厚生行政の
推進に深い御理解と多大な御尽力を賜っておりまして、この
機会に改めてお礼を申し上げたいと思います。
また、このたび、本格的な
高齢化社会への
対応ということをテーマにして
厚生省における取り組みを御聴取、御
調査をいただく
機会をいただきまして、あわせて感謝を申し上げたいというふうに思います。では、この
配付をさせていただいております
資料に従いまして御
説明をさせていただきたいというふうに思いますが、「
本格的高齢社会への
厚生省の
対応」という
資料の一ページからごらんをいただきたいというふうに思います。
まず、一ページの
高齢化社会への
基本的対応方針ということでございますが、下の方に表がございますので、ちょっと見にくい表になっておりますが、ごらんいただきたいと思います。
ごらんいただきますように、
平均寿命の伸びによる
高齢者の
増加とそれから
出生率の
低下によります
子供の数の減少によりまして、
人口構成の
高齢化というものが急速に進展をしているという
状況でございます。
現在の十五歳
未満の
人口というのは、詳しく言いますと二千百九十万人でございますが、ごらんいただきますように
平成三十七年、二〇二五年のいわゆる十五歳
未満の
人口というものは千八百二十五万人ということになりまして、
平成二年を一〇〇といたしますと
子供の数は八三に減少するというふうなことになります。
また、現在の六十五歳以上のいわゆる
老年人口というものは千五百五十八万人でございますけれども、今後三十年間
増加を続けまして、
平成三十七年、いわゆる二〇二五年の
老年人口というものは三千二百四十四万人というふうに推定をされておりまして、これは
平成二年を一〇〇といたしますと二〇八ということで二倍以上になる、こういうことでございます。
これを
人口の
割合で見ますと、いわゆる十五歳
未満の年少の
人口というものは、
平成二年がこの表にございますように一八・二%というのが、
平成三十七年には一四・五%というふうに下がる。また、
老年の
人口というものは、ここにございますように
平成二年には一二%でございますけれども、
平成三十七年には二五・八%に達するというふうな
状況でございます。
こうした
我が国の
高齢化の
特徴というものは、もう
先生方は御
承知でございますが、その
スピードというものがいわゆる欧米の諸外国に比較いたしまして例を見ない速さであるということでございまして、例えばこの
老年の
人口比率というものが七%から一四%に達する年数というものを諸外国と比較をいたしますと、
我が国はイギリスやかつての西ドイツの二倍、フランスやスウェーデンの三から五倍ぐらいの
スピードというふうなことになるわけでございます。
またさらに、
我が国の
子供の
出生数、
出生率というものは、戦後二回の
ベビーブームを
ピークといたしまして近年は御
承知のように急速に
低下をいたしておりまして、
平成二年には、
先生方これも御
承知のように
史上最低の一・五四という
出生率を記録いたしてございます。こういう
状況でございます。
平成三年度には、第二次の
ベビーブームに生まれた者が
出産適齢期に入ったというふうなこともございまして、
出生数というものは十八年ぶりにやや
増加に転じてはおりますが、
出生率として見るとさらに下がりまして、
出生率一・五三というふうにさらに
低下をしている、こういう
状況でございます。
こうした現在の
出生率の
低下の主たる原因というものは、これは
晩婚化の進行によりまして
女性が結婚する
年齢が遅くなっているということもございますし、ただ、いろんな形での
調査をいたしますと、結婚した
女性が平均二人程度の
子供は産みたいというふうな
調査結果もございますので、こういう傾向、こういう
女性の
考え方というものを前提として考えますと、
出生率はいずれは少しずつ回復していくだろうというふうに考えております。
いずれにいたしましても、
子供を産む産まないというふうな問題は個人の
価値観でございますとかプライバシーにかかわる問題でございまして、国がこの領域に直接踏み込んでいくということは非常に困難だとは思いますが、
調査の結果から見て、欲しい
子供の数と実際に生まれてくる
子供の数にギャップがあるというふうなことを考えていきますと、
厚生省としては、全体として、
子供を生み育てやすい
環境づくりというものをさらに
推進していく必要があるだろうというふうに考えております。
また、
労働力の需給という面からも、
平成十二年、二〇〇〇年までは
労働力人口の伸びというのは鈍化しながらも少しずつは伸びていくという
状況でございますが、それ以後は絶対的にマイナスに転ずるということでございまして、二〇〇〇年以後ということを考えますと、
労働力不足の状態というものも徐々に深まってくるだろうということが考えられるわけでございます。
こういった
状況でございますが、
高齢化社会というものは非常にこういった意味でのネガティブな面が強調される嫌いがあるということもございますが、しかしながらむしろ医学や
科学技術の飛躍的な進歩によってこういった
高齢化社会が達成できるという
状況になってきたわけでございまして、私
たちといたしましては、二十一
世紀の本格的な
高齢化社会におきましても、すべての
国民が健康で
生きがいを持ち、安心して生涯を過ごせるような明るい活力ある
長寿福祉社会を築き上げていく、こういったことを
厚生省の責務というふうに考えております。
そこの上の表の中にも若干書いておいてあるわけでございますが、
年金や
医療保険につきましては、既に各国と比較をいたしましても基本的には遜色のない
制度が
確保されており、今後は
高齢者を中心とする
保健・
福祉分野の
施策を緊急に
充実強化をさせていくことが必要であろうというふうに考えております。
また他方、
高齢化等によりまして増大が避けられない
国民の
負担というものが
国民生活や
経済社会の活力を損なうことがないように必要な改革を進めていくということも特に重要であるというふうに考えておりまして、特に第二次の行革審の
答申、これは
平成二年の四月十八日の
答申でございますが、
高齢化の
ピーク時においても
国民負担率が五〇%を下回ることを
目標とするという
答申をいただいておるわけでございますが、それを
一つの
指針として必要な改革を進めていきたいというふうに考えております。ちなみに、
平成三年度の
国民負担率は三九・二%という
状況でございます。
二ページの方をお開きいただきたいと思います。
まず初めに、
老人保健・
福祉でございますけれども、
高齢者に対する
保健・
福祉サービスの
整備ということでございますが、
老人保健・
福祉の
推進に当たっての基本的な
考え方というものは、
高齢者が可能な限り住みなれた
家庭や
地域の中で暮らしていけるように
在宅福祉サービスの
充実を図るとともに、在宅の
生活が困難な場合には
特別養護老人ホームその他適切な
施設が利用できるように
施設整備の
充実を図っていくということでございます。
このために、
先生方御
承知でございますが、
平成元年の十二月に、今
世紀中に実現を図るべき具体的な
目標を定めました
高齢者保健福祉推進十カ年戦略、
略称ゴールドプランというふうに称しておりますが、この
ゴールドプランを作成いたしまして、その積極的な
推進を現在図っているところでございます。
この
ゴールドプランの概要というのは、この二ページの下の方に表で図示をしておりますが、現在までの
実績といたしましては、
ホームヘルパーが
平成三年度の
実績で四万八千六百人、ショートステイが
平成三年度の
実績で約一万三千四百床、
デイサービスセンターが
平成三年度の
実績で二千二百カ所というふうに、ごらんいただけますように大体着実な歩みで
推進をさせていただいております。
特別養護老人ホームにつきましても、
老人保健施設につきましても、ほぼ
計画に沿って進行をしているというふうな
状況でございまして、今後ともこの
ゴールドプランの達成に向けまして着実に取り組んでいきたいというふうに考えております。
また、
ゴールドプラン等の
推進に当たりまして、住民に最も身近な
行政主体におきまして、
在宅サービスと
施設サービスというものが一元的かつ
計画的に提供されるような
体制を組んでいくことが必要であるというふうに考えております。
このため、本年の四月からは
特別養護老人ホーム等の
措置事務というものを
都道府県からそれぞれ各
市町村へ移譲をいたしております。また、今年の四月から全
市町村及び
都道府県におきまして
老人保健福祉計画というものを策定するということにいたしておりまして、これによりまして
高齢者のそれぞれのニーズと将来必要なそれぞれの
地域におきます
保健・
福祉サービスの量を明らかにいたしまして、必要とされる
サービスの
提供体制というものを
計画的に
整備していく、そしてまたそれを促進していくというふうなことにしたいというふうに考えております。
三ページをごらんいただきたいと思います。
三ページは、
高齢者に適した
居住環境の
確保ということでございまして、
高齢者が可能な限り住みなれた
家庭または住みなれたそれぞれの
地域におきまして安心して暮らせるということが非常に大切なわけでございまして、極力そういった
家庭、
地域で自立した
生活を行っていくことができますように、
居住環境の
整備というものを図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。特に、御
承知のように、最近は
ひとり暮らしや
高齢者の世帯というものが
増加をしておりまして、
高齢者の
生活というものに配慮した
住宅の
開発、供給というふうなものが必要になってきております。
こういった
観点から、
厚生省といたしましても、建設省などともまた協議をしながらということでございますが、
高齢者の
世話つきの
住宅、
シルバーハウジングなんて呼んでおりますけれども、に対する支援、これは
平成三年度では
モデル事業として三十七カ所を指定というふうなことをやっております。また
ケアハウス、これは車いすや
ホームヘルパー等を活用いたしまして
高齢者が自立した
生活を継続できるように工夫された
老人ホームというふうなことで、
平成三年度の
実績といたしましても約二千五百人分の
整備ということで
推進をいたしておるわけでございます。
また、
地域の特性に応じまして
官民一体となって総合的にこの
高齢化に
対応する
町づくりというものを
推進したいということで、二十一
世紀に向けまして、
ふるさと21
健康長寿の
まちづくり事業といったものを
推進いたしております。そして、こういった
ふるさと21
健康長寿の
まちづくり事業の
基本計画を策定する
地方公共団体に対しましては若干の補助をいたしますとともに、
有料老人ホーム等を
民間事業者が
整備する場合の税制上の
優遇措置、または
低利融資等の資金上の
優遇措置というふうなものも実施を始めている、こういう
状況でございます。
四ページをごらんいただきたいと思います。
四ページは
高齢者の
生きがいと
健康づくりの
推進ということでございますが、長い将来を
高齢者の方一人一人が健康で
生きがいを持って過ごせるような
社会とするためには、
高齢者の
生きがいと
健康づくり対策ということが特に重要であるというふうに考えてございます。その
推進母体として、
都道府県に明るい
長寿社会づくり推進機構というものを設置いたしまして、
高齢者の
社会活動についての
国民の啓発、また
高齢者の
スポーツ活動、また
地域の
ボランティア活動といったものを
推進するための
組織づくりを実施いたしております。また、
モデル市町村を設定いたしまして、
各種事業の
推進を重点的に進めているところでございます。
このほか、各地に
老人クラブの
活動の
活発化を図るための
助成事業、また、就労の
機会の
確保や、
高齢者が
社会活動を行うための
各種情報の提供等々を行う
高齢者能力開発情報センターといったものの設置、また
全国健康福祉祭、私
たちは「ねんりんピック」というふうに呼んでおりますが、この
全国健康福祉祭の開催など、多様なメニューの
施策を実施させていただいているという
状況でございます。
また、特に重要なのは、ここの下の方の表にちょっと書いてございますが、「ねたきり
老人ゼロ作戦」ということで、
寝たきり老人ゼロを目指して
地域におきまして
機能訓練を受けやすくするための
体制の
整備、また
脳卒中の
情報システムの
整備、また
脳卒中とか骨折の予防のための
健康教育の
充実というふうなことを図っているわけでございます。
さらに、若いころからの
健康づくりということが特に大切でございますので、そのための栄養、運動、休養のバランスのとれた健康的な
生活習慣の確立を目指しまして、若いうちからそういった健康的な
生活習慣の確立をお願いしたいというふうに考えまして、第二次
国民健康づくり対策、私
たちはアクティブ80
ヘルスプラン、八十歳になっても健康でということを
目標にいたしましてアクティブ80
ヘルスプランというふうに言っておりますが、そういったものを実施いたしまして、具体的には、適切な食
生活の指導、また
健康増進施設の
認定制度の実施でございますとか、また
健康づくりのための
運動指針、
休養指針等の作成といったことも行っているわけでございます。
五ページの方をお開きいただきたいと思います。
五ページは
シルバーサービスでございますけれども、
高齢者が老後の
生活を送る上におきまして必要な基礎的な
サービスにつきましては公的な部門の
施策によって
確保を図るというのが私
たちの第一義的な
考え方でございますが、また同時に、多様かつ高度なニーズにつきましては民間部門を活用すべきだということが私
たちの基本的な考えになっているわけでございます。
今後、御
承知のように
高齢化の進展とか、また
年金制度の成熟等によりまして、いわゆる
シルバーサービスというものは一層の拡大が見込まれるわけでございますが、私
たちといたしましては良質な
シルバーサービスの育成というものが今後の
高齢化社会にとっては不可欠のものであるというふうに考えております。
シルバーサービスの具体例につきましては、その五ページの下の方の表に一部書かせていただいておるわけでございますが、こうした
シルバーサービスを民間の事業者に行っていただくというわけでございますけれども、民間の事業者が行う
高齢者の介護とか自立というものを支援する
調査研究プロジェクトへの支援
体制の
整備等、民間
サービスの健全育成化を図る。また、有料
老人ホームの設置とか、在宅の介護
サービスとか、在宅の入浴
サービスというものを民間の
シルバーサービスが実施する場合におきましてのガイドラインの設置でございますとか、また社団法人として
シルバーサービス振興会というものがございますが、こういったところにおきます
サービス内容についての自主規制でございますとか、また
社会福祉・
医療事業団等によります公的な低利融資といったものを実施していきたいというふうに考えている次第でございます。
特に、有料の
老人ホームにつきましてはいろいろ問題点もあるところから、入居者保護の
観点から、その指導につきましては今後できるだけ強化をしていきたいというふうに考えている次第でございます。
それでは六ページをごらんいただきたいと思います。
六ページは
保健・
医療・
福祉マンパワーの
確保ということでございますが、これまで御
説明を申し上げました
各種の
福祉関係の
施策を初めといたします
保健・
医療・
福祉サービスの拡充のためには、御
承知のようにこれを担う人材の
確保というものが不可欠なわけでございまして、下の方に表を載せさせていただいておりますが、簡単に申し上げますと、
平成二年におきます
保健・
医療・
福祉のマンパワーの数というのは総計で約二百二十万人ほどでございますが、さきに御
説明申し上げましたような
高齢者の数の伸びというものを考慮いたしますと、
平成十二年、二〇〇〇年にはほぼ三百五十万人近い人材の
確保というものが必要になってくるわけでございます。
これを端的に申し上げまして二〇〇〇年の
労働力人口に占める
割合で見ますと、大体五%以上というふうなことになりまして、大体五・二、三%になるものというふうに考えております。現在の
福祉・
保健関係のマンパワーの
労働力に占める
割合が約三・六、七%ということから考えますと、やはり非常な
増加であろうというふうに考えております。
また、さきに
ゴールドプランの御
説明をさせていただいたわけでございますけれども、
ゴールドプランの円滑な
推進のためには、
ゴールドプランの期間中に新たに
ホームヘルパーが七万人、また看護関係の看護婦さんを初めといたしまして看護関係の職員が五万人ほど、また
老人ホーム等の寮母とかそれから看護関係の職員の数が十万人から十一万人ほどは必要ということでございます。
さきにもちょっと御
説明申し上げましたが、今後若年
労働力が絶対的に減少するということが予想される中におきまして、こうした
福祉・
保健関係の人材
確保を図っていくということは本当に困難であり、またかつ重要な問題でございまして、処遇の改善でございますとか、またこういった分野への就業の促進とか、またこういった分野で御活躍いただく方々の資質の向上でございますとか、そういった点につきまして中長期的な視点から息の長い取り組みが今後必要になってくるだろうというふうに考えております。
このため、昨年の国会におきましては、看護職員、また
社会福祉施設の職員、
ホームヘルパー等の
確保のためにいわゆる人材
確保法というものを御制定いただきまして、これに基づきまして現在総合的な
施策というものを
推進させていただいているということでございます。
看護職員の
確保に当たりましては、処遇の改善のほか、現在四十数万人というふうに
推計をされておりますいわゆる潜在的な看護職員というものを視野に入れまして、再就業の促進のための
都道府県ナースセンターの設置でございますとか、
子供を持っている看護婦さんのために病院の院内保育の
充実でございますとか、また看護に関する普及、啓発等の
各種の
施策というものを現在
推進させていただいておる、こういう
状況でございます。
また、
社会福祉施設の職員、
ホームヘルパー等の
確保に当たりましても、職務の専門性等を適切に評価をいたしました処遇の改善、また再就業の促進等のための
都道府県福祉人材センターの設置をやりましたし、また育成
施設への助成等を実施させていただいておる、こういう
状況でございます。
七ページの方をお開きいただきたいというふうに思います。
七ページは
ボランティア活動等の振興でございますけれども、今後
長寿福祉社会の建設に向けて
地域福祉の
推進を図っていくためには、できるだけ多くの
国民に自発的に
社会福祉的な
活動に御参加をいただくということが重要であろうというふうに考えております。このため、
ボランティア活動が円滑に行われるような基盤づくりを行うという視点に立ちまして、
国民への
ボランティアヘの参加の呼びかけ、また
ボランティアが
活動しやすいような条件
整備というふうな支援を行っているところでございます。また、このたび
ボランティア活動促進のための
指針を策定いたしまして、ちょっと長い名前でございますが、
国民の
社会福祉に関する
活動への参加の促進を図るための措置に関する基本的な
指針といったものを策定させていただきまして、
各種の
ボランティア対策の
推進を図っているというふうな
状況でございます。
具体的には、ちょっとそこにも書かせていただいておりますが、
国民への
ボランティア活動への
参加の呼びかけとか、
ボランティア活動を始めるに際しての基本的な条件
整備とか、県や
市町村のレベルで具体的な
ボランティア活動ができるような
体制の
整備といったような
ボランティア活動のための基盤づくり、そういったことを中心にして
推進を図らしていただいておる、こういう
状況でございます。
それから、八ページをお開きいただきたいと思います。
八ページは
年金制度の現状と方向ということでございまして、これは
先生方既に御
承知いただいている部分が大部分でございますが、公的
年金制度は
国民の老後の
生活の主要なる柱ということで、長期にわたる老後の
生活の基本的な部分というものを確実に支えるという使命を担っているわけでございまして、本格的な
高齢化社会が近づいているわけでございますが、公的な
年金制度というものがこうした
役割を十分に果たしていけるように、諸
状況の変化に
対応しながらもその長期的な安定を図るための
施策を行っていくということが重要であるというふうに考えているわけでございます。
そのために解決しなければならない大きな課題というのは、実は二つございます。
その
一つは、活力ある
高齢化社会、
人生八十年
時代というものにふさわしい
社会システムを構築するため、既存
制度というものをどのように変えていくかというふうな
観点から、
年金制度におきましてもどのような
対応を図っていくかという問題だろうと思います。特に、御
承知のように、厚生
年金の支給開始
年齢の引き上げという問題は、
高齢化が急速に進んでいく中で、適切な
年金の給付水準というものを
確保しながらも後の世代への
負担を適当な範囲に抑えていくためには、これは避けて通れない一番重要な問題である、避けて通れない課題であるというふうに考えております。
このことは、単に
年金財政の問題だけにとどまらず、
長寿社会における高齢期の
生活のあり方というものとも関連する問題でございまして、
高齢者の
雇用という問題とも深くかかわっている問題でございますが、こういった
高齢者雇用の
状況等も勘案しながら、御
承知のように、
平成六年に予定されております財政再計算の中で幅広く検討を進めさせていただきたいというふうに考えている問題でございます。
なお、支給開始
年齢の引き上げという問題に当たりましては、実はそれぞれの方々が、働いでいるという、就労という状態から引退という
生活へ円滑に移行していく、また老後の
生活における多様な選択というふうな
観点からも、円滑にいくということを考えました
年金制度の中での何らかの仕組みといったものも御相談をさせていただかなければならない非常に重要な問題だろうというふうに考えております。
いずれにいたしましても、この支給開始
年齢の問題を含めまして、次の
制度改正に向けて、御
承知のように、
年金審議会で本格的な御審議をいただいているところでございまして、遅くとも本年の秋ごろまでには基本的な御意見をいただきまして、来年、
平成六年の通常国会には改正法案を提出させていただきたいというふうなスケジュールで進ませていただいている、こういう
状況でございます。
第二の問題というのは、これは
年金制度全体にわたる給付と
負担の両面における公平を
確保するとともに、産業構造、就業構造の変化にも
対応し得る安定的な
年金制度を構築するという課題でございまして、この問題につきましては、
先生方も御
承知のように、
昭和五十九年の二月に実は閣議決定が行われておりまして、
平成七年を目途に公的
年金制度の一元化を完了させるということが既に決定済みでございまして、既にこの方針のもとに
昭和六十年改正で基礎
年金制度が導入をされたところでございまして、残る課題は、そこにもございますが、いわゆる二階部分、すなわち被用者
年金制度の一元化というふうな問題でございます。この点につきましては、
平成二年度から当面の措置として被用者
年金制度間の費用
負担の調整を図るための
制度間調整事業というものが実施されているというふうな状態でございます。
いずれにいたしましても、
平成七年度を目途とする被用者
年金制度の一元化につきましては、鋭意検討を進めさせていただきたいというふうに考えております。
それからもう
一つ、老後の所得保障の主たる柱は公的な
年金制度でございますが、いわゆる企業
年金といったものも老後における多様なニーズにこたえる、サラリーマンのより豊かな老後
生活を保障していく上には非常に重要なものでございまして、私
たちといたしましては、企業
年金の中核でございます厚生
年金基金といったものの一層の育成普及といったものにも積極的に取り組ませていただきたいというふうに考えているわけでございます。
では、九ページの方、最後のページになりますが、ごらんいただきたいと思います。
医療保険制度の現状と方向ということでございますが、簡単に
医療費の動向をまず初めに御
説明させていただきたいと思います。
国民医療費は
平成二年度で約二十兆六千億円ほどになりまして、その前年、
平成元年度に比較をいたしますと約八千九百億円ほどの
増加、率にいたしまして四・五%ほどの
増加ということでございます。また、
国民医療費の
国民所得に対する
割合としましては
平成三年度で約六%ということになっておりまして、近年におきましては
昭和五十年代の初めごろよりは
国民所得に対する
割合ということですと若干下回るような水準というふうなことで
推移をしているわけでございます。
厚生省といたしましては、
昭和五十九年以来
国民医療費の伸びというものを
国民所得の伸びの範囲内にとどめるということを政策
目標に掲げまして、
制度改正や
医療費の適正化
対策というものを進めてきたところでございまして、今申し上げましたように、近年の
医療費の動向というものは比較的落ちつきを見せているわけでございますが、ただ、最近は
医療費の伸びというものがまた高くなってきておりまして、今後の動向というものを注意深く見守る必要があるだろうというふうに考えております。
また、今後
高齢化の進展や
医療技術の進歩等に伴いまして
国民医療費が増大をしていくということは避けられないことであるというふうに考えますけれども、今後とも
国民にとって必要な
医療費というものは
確保しながら、また
医療費の
国民負担というものが過大なものにならないように各般の
医療費の適正化
対策のようなものを進めることによりまして、
医療費が
社会経済の実態に見合ったものになるように配慮をしていきたいというふうに考えております。
また、二十一
世紀の本格的な
高齢化社会におきましてもすべての
国民が良質な
医療を安心して受けられるように、
医療保険制度につきましては給付と
負担の公平化等を図ることによりまして
制度の長期的な安定化を図ることが重要であるというふうに考えております。こうした
医療保険制度の将来構想につきましては、御
承知のように、関係者の間にさまざまな
考え方がありますし、また、
高齢化の進展とか疾病構造の変化とか
国民の
医療ニーズの高度化とか多様化といったような
医療保険を取り巻く
状況というものは非常に変化をしておりまして、いろいろ問題点はあると思っております。
このため、昨年、御
承知のように、
社会保険審議会を発展的に解消いたしまして、
医療保険審議会を設置させていただきました。そして、現在、公的な
医療保険の
役割、
医療給付の範囲、内容、給付と
負担の公平といった
医療保険制度全般についての幅広い
観点から御審議をいただいているところでございます。
医療保険審議会におきましては、当面こうした公的
医療保険の
役割とか保険給付の範囲、内容を中心に検討を進めさせていただいておりまして、本年夏ごろを目途といたしまして中間的な取りまとめをいただくというふうな予定にいたしております。
また、診療報酬につきましては、その基本的な
骨格というものが
昭和三十三年に
整備をされて以来、長年御
承知のように経過をしているわけでございまして、そのあり方についての幅広い見直しを求める声というものも関係者から出されております。このため、診療報酬に関する多岐にわたる基本的な問題について中長期的な
観点から検討をするために、
平成三年七月に中央
社会保険
医療協議会の中に診療報酬基本問題小
委員会というものを設置させていただいたわけでございますが、以後その検討が進められておりまして、これにつきましても本年夏ごろを目途に取りまとめをいただくというふうな予定になっているわけでございます。
以上、
厚生行政を取り巻くいろんな問題につきまして御
説明をさせていただいたわけでございますが、「
本格的高齢社会への
厚生省の
対応」ということで概要を御
説明させていただいたわけでございますけれども、どうか御審議をいただきまして、またいろいろな点につきまして問題点を御指摘いただければ私
たちとしても非常にありがたいと思いますし、また積極的に
対応をしていきたいというふうに考えておりますので、どうかよろしくお願いいたします。