○今井澄君 これはあと一言だけつけ加えておきたいと
思いますが、薬価算定方式は、基本的には開発された新薬品に効能効果、薬理作用、構造式が類似している医薬品がある場合は一日用量による薬価比較でやるということですから、私は、この趣旨からいえばロレルコから計算して百三円三十銭ということの方が正しいだろうと
思います。しかも、クエストランという薬は余り使われていないんですよ。そういうこともありまして、どうも
厚生省の薬価のつけ方は私はやっぱりおかしいというふうに思っております。
それから、薬価の見直しの方式なんですが、
厚生省の薬価基準、これまで毎年あるいは二年に一遍切り下げてきましたが、それは売れている値段をもとにして、過去一年間、二年間幾らで売れたかということで、その基準でやっているわけです。前は九〇%バルクライン、昨年からは今度は加重平均プラス一五%とか、来年は。一二%、こういうことでやると思うんですが、こういうやり方でやりますと製薬メーカーから不満が出るわけです。お薬の値段は下がるだけで上がることがないと。もちろんごく特殊なものは上げる例があるようですけれ
ども、あれは全く例外で、原則として薬は下がる一方で上がらないという、これは非常にやっぱり硬直した様式で、これはメーカーからも疑問がありますね。
それから、もう
一つ問題なのは、一たんメバロチンみたいに高い値段がつけられて、しかもお医者さんはコレステロールの薬を出すのが好きで患者さんももらうのが好きなような感じがありますから、用もないのにと言っては失礼ですが、私はちょっと使われ過ぎだと
思いますが、一千億を超える売り上げになっているわけですね。幾ら開発にかかったかしれませんけれ
ども、一千億はかかっていないわけです。はっきり言って、これが高いお薬だと使うともうかるわけです。値引き率が一〇%であっても、高ければもうかるからやっぱり使うということになるわけです。
そうすると、
一つの
考え方としては、お薬をむだに使わせない
意味でも
国民医療費を節約する
意味でも、例えば三百億とか五百億とか年商売り上げがあったら、その次からは幾らで売れたかには
関係なくやっぱり適正な値段に、百三十円とか百
円とかに私は下げる方式があってもいいと思うんですよ。そういうことなしにただ機械的にやっているというこの
厚生省の薬価政策が、結果として非常に薬価高という、日本の
国民医療費の中に占める薬価の
比率がここ十年ぐらいほとんど変わらないんですよ、大分薬の使われる量は減った、薬づけは減ったと
思いますが、変わらない、こういうことを招いていると思うんですね。ですから、こういうことについては、やはり見直していただかなければならないだろうというふうに
思います。
それで、
厚生省の
医薬品産業に対する産業政策、これは前回のときも言いましたけれ
ども、ただひたすら薬価を下げるものですから、製薬メーカーは、これじゃたまらないというので前の値段の下がったお薬はもうやめにして、それに似た新しい薬を持ってきてちょっと高い値段をつけてもらうということでずっと収益をあるいは売り上げを維持しているわけです。こういうところも非常に大きな問題が出てきている。
そういう中で、今日本の製薬産業は、例えば国際競争力がない、最近ぼちぼち国際的に通用する薬も出てきましたけれ
ども、ほとんど輸出はふえていない、輸入も減っていない、国際的にも通用しないということ、これは明らかですね。製薬産業自身が、国際競争力をつけるのにあと二十年かかるなんてばかなことを言っているような
状況にあります。
それから、企業の数が多過ぎますよ、日本は一千三百とか四百とかある。ドイツでさえ千社ですし、アメリカに至っては七、八百社ということです。そういうことで非常に多過ぎるということがあります。多いということは中に弱小があるわけです。だけれ
ども、弱小の薬屋さんがつぶれたという話は余り聞かない。いわゆる護送船団方式ということで弱小のところを守ってやってきている。
それから、流通
改善の中でも、たしかこれは業務
局長さんも、日本ではお薬のセールスマン、MR、情報提供者と言われるわけですが、これが諸外国に比べて多過ぎるということをあちらこちらで講演で言っておられます。それを減らすということなんですが、それも減っていないらしい。すなわち、医者のところに行って、薬を売るだけならまだしも、たばこに火をつけたり靴を磨いたり御機嫌をとったりするような仕事をやっているMRの人件費まで全部薬代の中に入ったままずっと維持されているわけです。これが日本の
国民医療費の中の二八%も占めることになっているということ、これは
国民経済から見ても非常なむだだと思うんです。
そこで、最近、二十一世紀の医薬品に関する懇談会というのを
厚生省がつくりまして、二月に中間報告、そしてつい先月二十八日に最終報告を出されました。私もそれを読ませていただきましたけれ
ども、率直に言って、
医薬品産業をどうするかという政策が全然ないと思うんですね。あれは、要するに研究開発をどうするかとか製造物責任をどうするかとか、そういう非常に細々した今の製薬産業のそのままの中でのことしか答申が出ていない。私は、
厚生省が政策官庁に脱皮しようという決意を持っておられる割には非常におくれていると
思います。
それで、五月十四日の日経新聞には、通産省が、石油業界は合併をして生き残りをしたらいいんじゃないかということを基礎産業
局長の諮問機関である石油化学製品需給協議会の国際小
委員会というのが
報告書を出したという記事がありまして、私も取り寄せて読んでみました。そうしますと、そこには大変すぐれたことが書いてあるんですね。石油ですから薬品とは違う面もありますが、石油化学という
意味では極めて近い産業部門だと
思います。はっきり言って、合併を含むリストラクチャリングをやれということを指導していると思うんです。
私は、
厚生省が、卸にしてもそうですが、製薬メーカーについて大々的な政策転換をする、弱小を含めたたくさんの薬会社を抱え、その収入を保障して高い薬価をつけて、
国民医療費のかなりの部分を毎年食っていくということをもうやめなければならないというふうに
思います。そのことについていかがお
考えがお聞きしたいと
思います。