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説明員(五味
廣文君) ただいまお話がございましたように、鉄道
共済の長期の組合員の数、最大を記録いたしましたのが昭和二十三年の六十一万三千人ということでございます。
ところで、こういったいわゆる戦後の、今御
指摘のような国策というようなことで大量の引揚者等の再就職が鉄道
共済年金の財政にどういう影響をもたらしているかという点は、若干技術的なことで恐縮でございますが、御
説明をさせていただきたいと思います。
問題は
二つに分けられると思いますが、
一つは、鉄道
共済年金が発足をいたしました昭和三十一年前後の問題、それからもう
一つは、民営化を控えまして非常に合理化が進んだ時代、この
二つの
状況があるというふうに存じます。
まず第一の、いわゆる引揚者なり旧満鉄の職員の方を大量に採用した関係でございますけれ
ども、六十一万三千人を昭和二十三年に記録いたしました後、今おっしゃいましたように人員の適正化が行われまして、鉄道
共済が発足をいたしました昭和三十一年の七月の時点では四十六万人程度の体制になっておる。この人員体制が適切であったかどうか、適正規模であったかどうか私には判定する能力はないわけでございますが、少なくとも昭和二十年代後半から昭和四十年代いっぱいにかけましての約四半世紀にわたりましてこの人員で推移をしております。したがって、企業としてはそういう人員が必要であるということで企業活動を続けておったのであろうと思います。
ところで、そうなりますと、この六十一万人を四十六万人体制まで削りました結果生じております昭和三十一年の鉄道
共済発足以前の
皆さんの恩給の
給付なり
年金の
給付なりはどういう財源から行われているかということでございますが、恩給
対象につきましては、御承知のとおりこれは恩給で処理をしておりますので、鉄道
共済の財政とは全く関係がございません。
それから、いわゆる旧法、旧令、現在の
共済組合の
法律の前の
制度で
年金の受給権がおありになる方、この方につきましては現在も清算事業団の
共済事務局、鉄道
共済から
年金の
給付が行われておりますが、これに必要な財源は全額事業主
負担ということでございまして、旧国鉄がございました時代は旧国鉄がその財源のすべてを
負担し、また現在におきましては、国鉄清算事業団がその債務を継承いたしましてやはり全額を
負担しております。したがいまして、この方たちに対する
年金給付が現在の鉄道
共済年金の財政の悪化の直接の原因ではないというふうに申せると存じます。
また、昭和三十一年を挟みまして在職なさっていらっしゃった方の昭和三十一年六月以前、
制度発足以前の
年金の必要額につきましても、それに相当いたします
部分は全額事業主
負担ということで、現在であれば清算事業団本体が
負担をしておりますので、この点につきましてもやはり
制度の財政悪化の直接の要因ではないというふうに考えております。まあ裏返して申しますれば、この
部分につきましては、現在も長期債務ということで清算事業団がその処理を将来にわたっていたすべく保有しておりますので、これは清算事業団の長期債務でございますから、最終的には国において処理する債務ということになります。国策であったから
負担をしておるということではございませんが、文脈がちょっと違いますが、結果といたしましては、事業主の
責任として現在の鉄道
共済年金の財政に影響を及ぼさないような形での
負担というものが
制度的にできておるということであろうと思います。
次に、いわゆる民営化の方にも御言及がございましたが、経済情勢、社会情勢が変化をいたしまして企業として必要な要員が減少をする、それに伴いまして企業といたしましては余剰な人員を整理しあるいは新規の採用を行わないということは世の中いろいろな場面で行われておりますし、またそういったことが国策という言葉に適するかどうかはわかりませんが、国の関与のもとに行われる例というのはあるわけでございます。例えば、石炭産業しかりでございます。
石炭産業におきましては、坑内員の方の現役の数というのは、昭和四十年とその二十五年後でございます
平成二年を比べますと九五%減少しております。国鉄の場合にはこの減少が六〇%でございます。いずれの場合も、もし単独の
年金制度を運営しておりますならば当然立ち行かないことになるわけでございますが、幸いにして坑内員の皆様につきましては、
厚生年金という非常に大きな母体の中の一部門として
年金を運営しておられましたので、これが
年金の支給に特別の支障もございませんし、また格別の高い
保険料率等の自助
努力を行うということもなしに支給が確保されている。
国鉄の場合には、これを単独の
年金制度として運用をしておりました結果、この六割という人員の減がそのまま響いてきた。石炭産業の減員が国策だということが言えるかどうかはわかりませんが、公的に非常に深い関与、例えば関係地方自治体への手厚い
交付金など、こうした公的な深い関与のもとに円滑に行われた
経緯を考えますと、国鉄におきましてやはり同じようなことが起こりましたが、これが
年金財政の破綻ということに結びついたにつきましては、そのために国がなすべきことと申しますのは、やはりこのような
一つの企業で
一つの
年金制度を運営しているというような、公的
年金の原則から申しますと非常に危険なこういう仕組みを一刻も早くもっと安定したものに改めるということが国の
責任であろうかというふうに考えまして、関係のお役所の皆様、あるいは
関係者の皆様ともよくお話をさせていただきながら、
公的年金一元化ということの
お願いをしておるわけでございます。