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参考人(
河口博行君)
河口でございます。
こういう機会を与えていただきまして大変感謝を申し上げます。連合の立場でと申しますよりもサラリーマンの立場で率直に
意見を公述させていただきたいと思います。多少気持ちが入りますことにつきましては御勘弁いただければと思っております。
まず、連合としての
住宅並びに生活全体についてのスタンスを申し上げておきたいと思います。
今、政府は生活大国五カ年
計画を御推進でございますけれども、連合は基本的に生活大国五カ年
計画を支持しております。それを勤労者、サラリーマンの立場から推進をしていきたい、このように考えております。その
意味で、現下の景気対策なりあるいは減税、あるいはこの国会にも、参議院にも既にかかろうとしています時間短縮、そしてこの
法律ということについて非常に注目をしておりますし、期待を持っております。
生活大国五カ年
計画につきましては、支持はしておりますが、
住宅部分のことに関しましては、この生活大国五カ年
計画で基本的には記述されておりますが、具体的に打ち出されている中身が、世間一般では年収五倍の持ち家という主義を基本に打ち出されております。しかしながら、多少といいますか、現下の日本の宅地事情並びにサラリーマンの生涯収支等を見た場合には、一代限りの勤労所得でもって平均的なサラリーマンでは持ち家は事実上不可能な状態にある。その不可能な状態にあることを前提にしながら五カ年
計画の中で持ち家主義が打ち出されておるということに対して、
住宅部分について率直に言って余り魅力を感じておりませんでしたけれども、今回この
特定優良賃貸住宅促進法が具体的に法案で出された段階におきまして、極めて刮目すべき法案である、また画期的なものであるというふうに思っております。これをあわせまして、生活大国五カ年
計画の
住宅政策というものを支持していきたいというふうに思っております。ある面から言えば、今後の日本の
住宅政策について画期的な動きになっていくというふうに期待をしております。
そこで少し、全体的なことは既に政府から十分
内容が御説明でございましょうから、勤労者なりサラリーマンの立場で、現在
住宅についてどのような実情にあり、どのように意識をしているかということを資料を使って御説明させていただきたいと思います。
資料が小さくて恐縮でございますが、後で見ていただければと思いますが、まず、この資料は連合が昨年行った生活調査でございます。一ページの資料一の左の方の図でごらんになりますように、持ち家比率というものはかなり進んでおりまして、全体では五二%ありますけれども、しかしながら年代別に非常に大きな格差がある、年代間の格差があるということについて御承知おきいただきたいと思います。それは所得の差があるからやむを得ないとはいえ、しかし今後の時代の変化を見たときにこれが
一つの重要な
意味を持ってくるということであります。
それから二番目に、現在の
住宅の広さ等についてサラリーマンがどのように評価をしているかということでございますが、既に持ち家を取得して戸建て
住宅を持っておられるサラリーマン等については、十分な広さが実現されているということについての評価をしているわけです。事実、政府統計等の資料を見ましても、その状況は十分うかがえるわけであります。既に持ち家の床面積が百三十七平米あるわけでございますが、しかしながら持ち家でも、マンションの場合になるとそれが実現されてないというのが半分、五〇%を超えます。さらに、公営、
公団住宅になると七七%が不満、さらに
民間の
賃貸住宅になりますと七五%、それから社宅等につきますと六四%ということで、二戸建て持ち家以外のところは
住宅の広さについて強い不満を持っているわけであります。
とりわけ大きいのは、一戸建て
住宅と
民間賃貸住宅の、政府統計によりますと、貸し家の平米数は四十七平米でございますけれども、ある面で百三十七平米と四十七平米に象徴されますように、これだけの格差が存在するということが一番の問題点であるわけであります。このことについてまず申し上げておきたいと思います。
それから、その次に、
住宅と年収ということについて少し申し上げておきたいと思います。
勤労者が
住宅を持っていくのにどうかということでございますけれども、現在、政府が年収五倍ということで一応出されている数字については、八百六十五万の年収の人で現在のマンション価格が五千六十六万で五・九倍だから少し迫ってきた。事実このとおりであります。近畿及び
地方になればさらにそれが有利な状況になることも十分承知をしております。しかしながら、それを勤労者の生涯収支の立場で、持ち家を持っていくときに生涯収支がどのような状況になるかということを頭に置きまして、現下の状況を申し上げますと、このようなことになります。
資料二ページ目の方の左のところでございますが、現在、持ち家を持っておられる方の
住宅にかけている比率でございますけれども、
住宅費が大体一三・四%の率であります。マンションの方は一六・九%でございます。ただし、東京圏につきましては二〇%近くを
住宅費に負担しなければならない状況になっています。それから
民間の
賃貸住宅が一四%、公団、公社あるいは
公営住宅については一〇%、社宅は四%、こういうことでございます。
そこで、所得に対する
住宅費の割合についてでございますが、これは単年度もそうであります
し、生涯を通じてもそうでありますが、おおむねこの実態から申し上げまして、持ち家の年収の五倍とあわせて年収の一五%ということをぜひ打ち出していただきたい。これがまた実態でもございますし、目標である。戦略的にもっと長期の目標で言えば、一〇%ぐらいのところを
住宅費にかけられる目標ということで設定することが大事ではないか、このように考えております。これがこの
法律で言う、公的助成の部分でどれだけ公的助成をするかという
考え方の
一つの基本にかかわっていくところであるというふうに思っております。
その次に、現在の
住宅で困っていることに対する不満ということでございますが、それは資料、右のところで小さい字でございますから、後で少しごらんになっていただければ結構でございますが、
住宅の面積が狭いということが大きくて、特に
賃貸住宅になるとそれは強い要求を持っているということ、それから
賃貸住宅が持ち家を持つということは事実上
家賃並びに今後の展望としては難しいというふうに思っているということであります。
このことを意識ということで少し御理解をいただきまして、その次に資料三ページのところを使わせていただきますが、ここで生涯所得と持ち家ということについて少し御説明をしておきたいわけであります。
資料三ページの左に図を入れております。この左の図は、昭和六十二年、一九八七年、景気が上昇過程に入ってバブル景気に入る直前でありますけれども、労働省が
住宅持ち家と勤労者の生涯収支ということについて、労働白書で公式に政府見解として出した資料でございます。上の方の図が東京を
中心に大都市部の生涯収支と
住宅の中身であります。これで申し上げますと、三千六百万の
住宅購入をするということで、ピーク時の賃金が五百七十万ということを前提想定をしておりまして、しかしながら、勤労所得だけでは三千六百万で
住宅の購入はできませんという、これが政府としての見解であります。なぜできないかと申しますと、追加収入がないとできませんということで、パートで奥さんが十年間働くかあるいは遺産相続を含めて何らかの追加収入が一千万円以上なければできない。それでも六十歳定年時点での貯蓄残高は四百万程度ということになりまして、現在の平均余命で生きていきますと、この時点で最低でも普通の生活をすると六千万の老後生活費がかかるという計算をされておりますが、その時点で貯蓄残高が少なくとも一千五百万ないと六十歳から死亡するまでの収支が合わないわけでございますが、そういうことを指摘したわけであります。
それから、下の図は、
地方の場合の図でございますけれども、これが極めて健全な図でございますが、これは二千万の
住宅取得で一千二百万の自己資金を持ってという場合の
地方の姿でありまして、六十歳の定年のときに一千六百万の貯蓄残高を持つと、こういう中身であります。
既にこのときから、持ち家というのは事実上できないということを警告した中身であります。
そこで、右の図を見ていただきますと、これはごく最近、連合の附属研究機関の連合総研が生活の豊かさについて調査した中身でございますけれども、ここにありますように、
住宅の購入
方法としては、自力購入というのは東京では三三%、それから親の援助なり協力ということがやはり四四%ということでございます。それで、
地方の例えば石川とか富山とか、ある面で生活が非常にしやすいところではそれが一層高まる、こういう構図になりますが、そこであえて言えば、親子二代でないと事実上
住宅を持つことができない状況に現下の
住宅価格ではなっているということでございます。その面では、中身は違いますけれども、東京のスタイルと石川、富山のスタイルはある面で似てきているというような面も結果的にはあるわけでございます。
それとあわせまして、少し
住宅から離れて恐縮でございますが、今、ことしから来年にかけていわゆる年金の財政再計算の年を迎えて、ことしから来年が
一つの年金の大改革というふうに政府はお考えでありますし、世間もそう見ておるのですが、そのときに世代間の問題ということが非常に大きな問題になってきます。年金そのものが世代間の助け合いということで、ある面からいえば現役のOBに対する仕送り
制度でありますから、それにかわって今の世代が、特に中高年が中堅サラリーマン及び若い世代のサラリーマンに何をしなければならないかといえば、時間並びに
住宅ということについて思い切った投資をして公的助成をしていかなければ、生涯収支の面からも、年金の支払いを若い層が担っていくというふうに生活設計から、あるいは生涯収支設計から出てこないわけでございます。したがいまして、
住宅に対して現在の政府を初め、特に現在の経済を生かして次の世代に
住宅というものに思い切って投資をしていくということは極めて重要で、そこに公的助成が必要であるということを申し上げておきたいと思います。
ちなみに、高齢化についての東京都の意識については御承知のとおりでございまして、出生率が一・五三が全国的な予測として出されましたけれども、東京はその分に当てはめれば一・一八でございますし、そして東京の男女ともに、特に女性が、なぜ少子化したか、出生率が低下しているかということについては、子供を育てるのに金がかかるということを考えている人が六〇%ありますし、また
住宅事情がよくないということが五九・九%、六〇%ございまして、中長期の
国民生活を考える上でも
住宅というものが決定的に重要であり、公的助成が大事であるということをあらわしている状況ではなかろうかと思っております。
以上、少し全体の状況を申し上げまして、あと残された時間、少しこの
法律にかかわるところの要望を申し上げておきたいと思います。
まず、これを機会に生活大国五カ年
計画とあわせて、この
法律をキックオフの
役割を果たす
意味で新しい
住宅についての理念、そして目標を明確に掲げながら、この
賃貸住宅政策を強力に国会としても御推進いただきたいということが基本であります。そのために、年収の五倍とあわせて、年収の一五%の
住宅費ということをぜひ目標に挙げていただきたい。そのために、その中には連合としても要求しておりますが、
家賃控除も含んでおりますけれども、そこで少し資料四でもって実情的に申し上げておきたいと思います。
この資料四は、この
法律が行政
指導で鋭意、
建設省を初め各
地方自治体で進められた
内容の
一つの例でございますけれども、資料四にこういう図、格好になるのかなというふうに想定をしております。左が神奈川県が借り上げ
公共賃貸住宅の県借り上げ型についての現在募集している
内容でございますけれども、左にありますように、一番上の場合の例を挙げれば、当初、十五万の
家賃が公的助成を行って九万円になるというような
内容で、以下これで募集が行われております。右の図が、それで当初の
家賃が四〇%相当を
家賃対策補助を行ってやっていきましょう、そして年度を上げていきましょう、こういうふうになっておりますが、この背景の中の計算を、東京都と神奈川の資料を見た上でのことでございますが、
住宅費負担率が二五%ぐらいを想定して書かれておりますけれども、そういった面で公的助成をもっと入れて
住宅費負担率というものを下げていく必要がある。
同時に、これは現下の神奈川で行われていることでありますが、当初六〇%のところからスタートして、年々五%の
家賃を漸増させていくというふうになっておりますが、組合も賃上げで今からしっかりやってはいきますけれども、年五%というのはちょっときつい。しかし、財源にもかかわることでありますからこのあたりどう考えるかというのは、政省令にかかわる分野に
法律的になっておると思いますけれども、
住宅宅地審議会並びにその作業を進めていく政省令での検討というものは極めて重要でありますし、その中にも積極的に参加していきたい。ある面でこの
法律はドイツ型の社会
住宅というような思想がベースにあるというふうに私は理解をしておりますけれども、西ドイツは持ち家率が三九%と非常に低くて公的助成の社会
住宅が非常に進んでいる、そして非常に安定しているというようなことで、公的助成の政策というものと税制的な優遇
措置並びに
家賃補助等についても積極的に進めていただきたいというふうに考えております。
それから、一応これは広く国民に公平にということで現在の公社、公団と同じように募集が行われておりますことについては賛成でありまして、特に中小企業を含めて多くの人がこれに参加してこの政策の享受を受けるということが必要であります。
あわせて今私どもが取り組んでいることは、社宅あるいは官舎についても同じでありますが、共同社宅というものを意図してこの種の取り組みを農協とも提携しながら事業を進めてまいりました。それで、ことし既に建つ状況になっておりますが、そういった共同社宅等につきましても
家賃補助は企業に対して私は
責任を持たすべきである、企業の
責任で負担すべきであると思っておりますが、しかしいわゆる
建設費並びに利子補給、こういったところは公的立場で助成をしていくということも今後の検討課題としてぜひ御検討をいただきたいと思っております。
それから、その次に要望申し上げたいことは、設計等についてでございますが、明らかに高齢化に向かっていきますから、少なくとも高齢化に対応した段差のない設計とか含めて、将来に高齢化対応の福祉機器等が入れられていくような
内容でもって設計を
指導されたい。東京都等もそういった指針を既に出しておりますから、そういったことが必要ではないか。あわせまして、最低棺おけぐらい出入りできるぐらいの入り口になっていないとなりませんけれども、日本の
住宅はそういった
住宅、マンションになっておりませんが、そういったことも含めた設計
指導というものが必要であると思っております。
それから、その次に対応につきまして、この
法律の
趣旨が政府と
土地を持っておられる農家を初めとする
土地所有者と事業者の三者が協力する形になっておりますが、ぜひともこの協力
関係を一層推進するようにしていただきたいと思いますし、またこの
法律の中で、画期的な
法律と思いますから、年度年度
法律を
見直して、予算、施策の面で
拡充していく
内容でもって、また附則事項でもぜひ年度
見直しぐらいの強い姿勢で全体を推進していくぐらいのものを出していただきたいというのが気持ちでございます。
なお、景気対策的にも、二百七十億という国費を使ってのことでございますけれども、ごく簡単に計算しましても、戸当たり二千万の資金需要があるとしましても直接四千億の資金需要が出て、乗数効果二・三五を掛けていけばほぼ一兆円の景気対策効果が即効的に出てくる。
土地に全く資金が食われないという性格からいいましても効果を持っているというふうに思いますし、これから高齢化社会対応とともに、今の自動車産業以上に
住宅が日本のリーディング産業に成長する要素を持っているというふうに思っておりますので、余分なことを申し上げましたが、この
法律は画期的な
意味を持っているということを申し上げておきたいと思います。
以上でございます。