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国務大臣(
森喜朗君) 私もかねがね、
国会に当選いたしまして二十四年目になるわけですが、早い時期に文教
関係に興味を持っていろんな問題を勉強してみたんですが、やっぱり大学院、つまり博士号を取られて就職がないという
ケースが非常に多いということについては、これはどこか問題があるなど、そういう認識を実は持っておりました。理由はいろいろあるんです。いろいろあるんですが、私は今担当
大臣じゃありませんから余り余計なことを申し上げちゃいかぬのですが、末は博士か
大臣かなんという
言葉は、政治家の
大臣というのは非常に軽いんですけれ
ども、博士になられても実際はそれを生かす道がないという、つまり博士浪人が多いというのはやっぱりどこかに問題があるんだなと。これはやっぱり解決しなきゃならぬ。その点を
委員が御
指摘されたというのは極めて大事なところだと思っております。
ただ、
通産省の
立場の産業政策からいって、このオーバードクターなど高学歴者が未就職という問題、これは労働市場の問題との兼ね合いはどうかということですが、これは我々の役所の
立場からいえば部門間の需給のミスマッチでしょうかというのが事務当局からの説明なんです。
したがいまして、雇用対策といたしましても、また我が国経済の潜在的な成長力から
考えてみましても、これはやっぱり健全な発展を図っていかなきゃならぬわけでございますから、とにかくそういう意味ではこれら未活用の人材の有効な活用というのは不可欠であるというふうに私はもちろん認識をいたしております。
しかし、企業におきます採用は基本的には企業と就職希望者との間において自主的に決定されるべきものでございますから、
通産省としては、今後これら当事者の
自主性を尊重しつつ
関係省庁と連絡をして高学歴者の就職機会拡大に努めていかなきゃなりませんし、またそうしたことを産業界、経済界にも呼びかけていくということは当然私
どもとしてしていかなければならぬことだと思っております。
ただ、大学は、正直申し上げて大学進学率が三五、六%、それに各種学校も最近専門学校というふうになりまして高等教育機関の位置づけというものもきちっとしておりますから、そういう面から見ると、私も明確な数字は覚えておりませんが六〇%近くじゃないでしょうか、大学、短大も含め専門学校、各種学校に進む方というのは。そういうふうにいきますと、ある意味では大学というのは大衆化したという面もあるわけでしょう。ですから、より高度な学術、真理の探求を進めていくということになれば、やはり一般に大学は大学院化していくということがこれは非常に大事なことだ、このこと自体も大事なことだと。問題は、そこに入っていく学生さんたちがどういう目的を持って実際学問をしていくのかというところが一つ問題点であろうと思います。
我々の学生時代は逆に、就職がどうもうまくいかないものだから大学院にでも行くかなんというのが結構ありました。そういう
考え方もあったのかもしれない。それから、
自分がやるべき、進むべき道、専門の道に入れば入るほどそれが現実の
社会の中に、産業界の中に実はその専門の学問との乖離がある。ちょっとこれは
文部省の皆さんがおられて言いにくいんですけれ
ども、端的に言うと、専門の大学院で勉強しても今の産業
社会に実は役に立たない学問というのは結構あるんですよ。具体的には言いません。現に私は随分調べて見ました。そういうこともございますから、そういう点をもう少しやはり
文部省自体も
考えなければならない。大学自体もやっぱり改革していかなければならない。
もう一つ、大学院で博士になられて将来は助教授、教授という道を
考えておられるかもしれませんが、これは大学は講座制になっておりましてましてや国立大学に至っては定員の問題がございますから、有能な人でありましても上があかないことにはなかなか上へ進めないという点もあるわけです。したがって、学問をして将来教育者としてやっていきたいと思っておっても、現実に上があかなきゃ助教授になれない、教授になれないという
ケースも極めて多い。そうすると、今さら産業界に転ずるということが非常に難しくなってくるというような、そんな例も私が調べてみただけでも随分
ケースが多うございました。
いずれにしても、大学はやはりどんどん高度化していくわけでありますから、大学院化していくことは私は正しいことだと思っております。むしろ、やはり十八歳人口が激減をしていく、先ほど森山
大臣から
お話がございましたが、そういう中に大学自体がみずから改革をしていくということが極めて大事なことだろうというふうに、私はそんなふうに思っております。
通産省の
立場からいえば、産業
社会の発展のためにやはりその基礎ベースとなっていく優秀な人材をぜひ輩出していただきたいなという、そういう気持ちでございます。