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公述人(
岩崎駿介君) こんにちは、
岩崎と申します。今
日本国際ボランティアセンターの
代表を務めております。座って話をさせていただきます。
私自身、
日本国際ボランティアセンターといいますNGO、
国際協力を
推進する市民団体を十二年やっておりますが、傍ら筑波大学で教えておりまして、私自身の専門は都市
計画です。したがって、むしろ
環境を
保全するよりも都市を拡大することによって
環境を破壊するといいましょうか、結果的にはそういうような仕事を長く続けてきたんですけれども、
開発途上国等の関連の中で、我々の都市生活のあり方あるいは地球
環境との関
連の中での私たちの
経済システムのあり方、そういうものを考えるに至って、きょうこのような場を与えられたと考えます。
それで私は、お配りしましたメモと、それからもう一つB4版を二つに折りました「
日本市民による地球憲章」の二つの資料をお配りさせていただきまして、これをもとにお話しさせていただきます。
公述メモというふうにありますA4の方が、公述の「公」が既に間違っているあたりも含めて、非常ににわか勉強的で忙しい中、私自身の考えをまとめたメモでありまして、これはあくまでもメモで、私の話はこれをずれて少し多面的な問題について触れていきたいと思います。
まず、ここにありますように、
環境基本法に対する
基本的な態度としましては、この
法案については、
法案そのものの成立には
基本的に賛成であるが、
法案の
内容には重大な欠陥があるので修正願いたいというのが私の
基本的な態度です。
今までも、特に
浅野先生が
環境基本法が出てくる
社会的な背景といいますか歴史的な背景をお述べになったと思いますけれども、私もここに書きましたように、いわゆる
公害対策基本法あるいは
自然環境保全法の
時代は、いわゆる
日本の戦後
経済が
公害をもたらし、その
経済活動に伴う都市域の拡大によって自然破壊を生じたと。一言で言えば
公害と自然破壊。自然破壊については、今
川道先生が長く論じられましたけれども、そのような破壊が生じた。しかしながら、それは
日本の
国内において当然生じたと同時にある
意味で局地的であった、と同時に、その
被害は
被害者限定的であったと言えると思います。
しかしながら、皆さん御承知のように、
日本経済がさらに拡大し、国際的なべースを獲得するに従って、その
被害あるいはまた
環境に対する
影響は国際的または
地球的規模になり、いわゆる地球
環境問題と密接なつながりを持つようになったと思います。
これと同時に、
日本国内における
環境に関する加害者と
被害者の対立を残したまま、つまり
被害を及ぼす側と
被害を受ける側は、いまだ水俣病を初めとして根源的な和解が成立してないわけですけれども、しかしながら国際的に見れば、その
被害者、加害者すべてを含んで
日本全体が
開発途上国に対して加害者的な位置を占めてくるということがこの歴史的な過程で特徴的であったと考えます。とりわけその
資源取得ですね、私たちが必要としている熱帯林あるいはエビ、あるいはきょうも配られておりますこの紙をつくる原材料等々、私たちの生活を支える
基本的な
資源と生産過程ですね、すなわち工場も安い労働力を求めてさらに
海外に進出していくという過程において、
環境に関しましては
開発途上国に加害者的な
立場を強めてきたと私は考えています。
ですから、ここに書きましたように、
日本に住む我々は他人を痛めつけることによってみずからを痛めつける
状況に陥っている。我々が生きること、生活することが我々の
地域と地球の
環境を劣化させており、我々の生き方、生活の仕方そのものが問われているという、言ってみれば絶対的なジレンマといいますか、重大なところに私は立ち至っていると考えます。
このような認識といいますか
状況把握、これは
皆様御承知のように地球サミットにおいても強く表明されたわけですけれども、そのような認識をベースに、今まで二法でこのような問題に対応していたことを、
環境基本法というものを成立させながらさらに効果的に対応しようというのがこの
基本法の
基本的な背景といいますか、趣旨であろうと思います。
では、もう少し具体的になぜ
環境破壊が生ずるかということで、私は二つそこに書きました。三のところで二つの経路と言っていますが、その第一は直接的な
環境破壊。私たちの生活そのものが
環境を直接的に破壊する。オゾン層あるいは温暖化、CO2等を初め、非常に我々の生活と一見遠い位置にある資産そのものを直接的に破壊してくる。ここにあります温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、大気汚染、水質汚染、海洋汚染など、生活と生産
活動の
基本的なエネルギー消費に伴う
環境破壊。これは私たちの過大な物質要求、大量生産、大量消費、大量
廃棄の生産
システム。したがって、このことを
解決していくには、
基本的には物の
使用を減ずることによってのみ可能だと。もとより、技術によって物の
使用、エネルギーの
使用を高めても、なお汚染を防いでいくという技術開発を一方に努力しなければならないにもかかわらず、絶対量として既に問題が生じているというふうに考えています。
その第二は間接的な
環境破壊。先進国における第三世界からの
資源取得の過程で発生する熱帯林破壊、換金作物栽培による土壌の疲弊と流出、そして砂漠化。この問題は、我々はえてして
日本国内にのみ目を奪われる中で、私たちの
経済と密接な
関係を持ちながら刻一刻と進行しているというふうに考えています。したがって、つくられるべく
環境基本法は、このような直接的な
環境破壊と間接的な
環境破壊に対していかに効果的かということにおいてその是非が問われなければならないと考えるわけです。
したがって、四のところの
環境基本法の
基本的性格です。これらの
環境破壊を食いとめ、人類永続のための新しい方向を見出すには、これまでどおりの
経済活動に対する
規制もしくは救済
措置のみではなくて、広く
価値観の転換、
経済システムの転換、そして生活様式の転換を目標とするという私たちの根源的なあり方まで問うことが必要なんだと思います。したがって、
環境基本法はこれらの目標を実現するのに必要な
措置が明記されていなければならない。つまり、これらの目標を一緒くたに今を飛び越えて実現することは現実に不可能です。しかしながら、
環境基本法はこの目標に沿って何が可能かということが具体的に明記されることによって
解決に近づくことができるという保証性を
確保できると思うんです。その
意味で、私は
基本的に三つの要件が
環境基本法の中に含まれていなければならないというふうに考えるわけです。それは四のところに第一、第二、第三とあります。
第一に、
環境と開発に関する
基本理念の確立ということです。これについては後で述べます。第二は、過剰にして不必要な消費を含む過大な
経済活動に対する抑制策の確立。つまり、いかに使わないかといいましょうか、使ってもさらに
環境負荷を
増大させないか。第三に、
基本的には
被害者救済としての国際
関係の改善または
国際協力の
推進というわけです。これは俗に南北問題と言われることと関連してくるわけですが、この三つが
環境基本法の中に確固たる形で含まれていることが必要だと思います。
そこで、この話す順番なんですけれども、まず第三番目にあります南北問題といいますか途上国との
関係改善ないしは
国際協力の問題から少し触れたいと思います。
A4の紙の資料の二枚目に参りまして、①が
資源収奪を行わない。すなわち、ここの①、②、③と丸で囲った番号のところは、私たちの生活と
開発途上国の
関係の道筋を三つ書いているわけです。ほぼこれに尽きる。しかし、これを落としてはならない。
資源収奪を行わない。
資源取得の過程、第一次産品の輸入、森林破壊、換金作物による土壌破壊。
これらの事例は、私も
開発途上国を数多く歩く中で、例えばユーカリ植林ですね。これは先ほど申しましたけれども、タイにおいては二十万ヘクタールの緑化、いわゆる
環境援助というような名目において行われているわけですが、それは言うまでもなく紙の原料としてのユーカリという木なわけです。ユーカリの木は土壌の水分を急激に吸い取り、五年で成木するわけですけれども、土壌に対して甚大な
影響を及ぼすという
意味において、途上国では深刻な
環境破壊の原因になっています。そのような土壌乾燥化あるいは流出化の延長上にいわゆる砂漠化の問題ということが控えており、途上国にとっては砂漠化の問題は最大であります。
それから、温暖化、オゾン層等々の深刻な問題にあるにもかかわらず、多分地球最大の
環境問題は砂漠化の問題、土壌疲弊の問題だろうというふうにも個人的には考えております。つまり、
資源を取得する過程で
開発途上国の
関係をどうするかが第一点です。
第二点には、
公害を持ち込まない。有害
廃棄物を持ち込まない。これもAREといいましょうか
日本で立地不可能な郊外工場を第三世界において操業するという事例は見られます。そのようなことに対してどういうふうに対処していくか。
そして三番目。援助による
環境破壊と人権侵害を引き起こさない。最近の事例で言えば、カンボジアに一億円の農薬援助が行われました。一億円の農薬援助は、FAO、国連食糧農業機関及びIRRIといいまして国際稲
研究所が発表したレポートによれば、カンボジアの気候的特性、地理的特性において農薬は必要ないという提言にもかかわらず、
日本の援助の中にそれが含まれている。そういう形で
環境破壊。特に、タニシあるいは田んぼにいるそういうものをとって食べて生活している、動物性たんぱく源を得ているカンボジアの人々にとっては極めて大きな
影響力を及ぼすと思われますが、このようなものに援助が行われているという、そういうことに対する効果的な
規制といいましょうか、チェックが必要なわけです。
しかし、原案第五条、三十二条は
国際協力という名目においてそこを触れているわけですけれども、ここを見ますと、「
我が国の
経済社会が国際的な密接な相互依存
関係の中で営まれていることにかんがみ、地球
環境保全は、
我が国の能力を生かして、及び国際
社会において
我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に
推進されなければならない。」というふうに、つまり最初の、ちょっとここで網をかけて言いましたが、「
我が国の能力」というのはつまり技術援助、それから「
我が国の占める地位」というのは、これは多分お金のことを
意味している。なかなかそういうふうにはとりにくいんですが、あえて善意にとって想像力豊かに解釈した結果、多分技術援助と資金援助を言っているんだと思うんです。
この二つは、書きましたように、この援助を過信した、何ら原因者、汚染者としての自覚を欠いて高慢な姿勢に終始していると。つまり、原因をつくっていながら助けてやっているんだというようなすりかえが行われることによって問題をはぐらかしているというところにまず第一の重要な欠点、つまり一方では守りつつ一方では守り切れない、だらだらと守った分だけ外に
負担がかかっていくような締まりがない
部分に
国際協力という記述がなっていると思います。
この問題を
解決するには、すなわち
資源収奪を行わない。収奪という言葉が強ければ取得でもいいんですけれども、あるいは
環境税の問題があろうかと思います。ここに書きましたように、
環境税または貿易関税法などによって
基本的な
環境価格を途上国に返還していく。このようにして、古紙などのリサイクルが途上国からの安価な
資源輸入によって成立し得ない
状況を改善する。ただし、途上国における利益還元の配分が問題であると同時に、ガットの自由貿易概念に
部分修正を迫って行く必要がある。
これはもちろんいろんな他の努力を必要とするのですが、
環境税は一般に大気汚染あるいは炭素税などと言われているように、
開発途上国との
関係の中で十分に論議されていないんですけれども、このリサイクルの古紙にも見られるように、本来は森林を持ってくるということは非常に貴重な
環境源なんですが、安く買い取る、そのことによって破壊を強めているとすれば、正当な
環境コストを払っていくということが必要。そして、それを途上国に還元していく。ただし、問題は、途上国の
政府に入ってしまいますとそれが地元に落ちないという欠陥はあるんですけれども、しかしながらそういう努力をしていくべきだろうと思われます。
二番は、進出企業の監視体制の確立。例えば、進出する企業がその地における
環境に対して十分な
配慮を行うよう指導監督するというような
条文を挿入して、こういう問題に対しても対処していくべきだ。企業
活動に対する国際監視。例えば、国連における多国籍企業監視
委員会などについてもなくなってしまったわけですけれども、これを復活させていくというようなことも努力の方向だろうと思います。
三の問題の
解決には、いわゆるODAに関する
環境アセスメントを
実施するということが必要だと思います。アセスメント法については
国内の問題もあるわけですけれども、援助そのものについてもこれを積極的に適用する姿勢が必要です。また開発援助に当たっては、言うまでもなく
政府開発援助
大綱、ODA四原則の中の第一項、
環境と開発の両立及び第四項、
基本的人権
状況に十分注意を払うということをもっと積極的に遵守していくということが必要だろうと思います。
これが途上国の関連ということで、ちょっと時間を使いましたけれども、次に
経済の問題について申します。
過大な消費と
経済活動に対する抑制または
環境負荷の
低減については、
環境基本計画及びアセスメントの
法制化、そして
経済的措置という三つが具体的な手段としてここに明記されていると考えるわけです。しかしながら、
環境基本法がC02を九〇年レベルで安定させるというような状態になっているんですが、本当に地球
環境に基点を置きながら総量の予測を立て、それによって
経済配分をしてくるという中をどこまでやり切れるのか。そしてそれがかつ各
省庁間においての利害といいましょうか、そういうことの中でどれだけ
調整努力を図れるかということがもとより問題だと思います。しかし、このことを定めることは私は結構だと思います。
それから、アセスメントの
法制化については、衆議院でですか、検討していくという宮澤首相の御回答があったというようなことですので、これをもとより
推進していくべき方向と考えます。そして
経済的措置につきましては、いわば
環境税といいますか、いわゆるこの二十二条二項、原案では二十一条だった。それが送って二十二条二項で書いてあるわけですね。これにつきましても、実は
環境税といった場合に、先ほど申したように、私たちと地球との直接的な
関係のみではなくて、
開発途上国の
資源という
意味で私たちと
開発途上国との
関係、それにおける
環境税ということが本来
議論されてしかるべきだというふうに考えているわけです。
もとよりこの
環境税は、税財源としてではなくて、抑制誘導策と書いていますけれども、抑制策としてこれが出てくる。しかしながら、税の行方というものが極めて不鮮明です。この二十二条二は、御承知のように三つの条件ですか
調査とか
国民の合意等々をとっていくという形で書かれているわけです。しかしながら、これを私の
立場としては積極的に
推進していくということです。しかしながら、まだ確かに多くの問題を
解決しなければならない。これは途上
国内における利益配分といいますか、還元配分といいますかそういうことも残されているというわけです。
以上、時間の
関係でそこを若干しか述べられませんが、七、上記二つを実現するについての
基本的要件としての市民の参加、市民への権限委譲です。
一、あくまで
情報公開を
基本とする。知ることによってのみ力を発揮することができる。
情報公開法との関連において、これが定かでないんだというような御
意見を聞いたようなこともありますけれども、言いわけでしかないように感じます。積極的に
部分で積み上げ全体を法として成立するという方向で、ここは公開をはっきり明記すべきだと考えます。
二、市民の参加を促進する。市民を客体としてでなく主体として位置づける。これは根源的な問題提起になると思うんですけれども、一例としてこういうふうに書いてあるんです。いわゆる「国
民の
責務」というところに、「
国民は、国又は
地方公共団体が
実施する
環境の
保全に関する
施策に
協力する
責務を有する。」ではなく、国は
国民または
地方公共団体が
実施する
環境の
保全に関する
施策に
協力する
責務を有するということが本来であって、どうも国というのが強い。この国家主義というのが私はヨーロッパ諸国と比べて
日本の最大の欠陥だと思っているんですね。
つまり、もう少し平たく言うと、国がすべて問題を
解決するという思想を乗り越えていくといいますか、そこのところ。ですから、ヨーロッパにおいてはECという国家統合を行おうというような歴史的な背景もあって国家が持つ機能
限界を自覚している。その分だけ市民にその権限と力を委譲していくという歴史的な動きが見られるわけですけれども、このことに対する
日本の自覚が全くないということがいろんなことにマイナスの
影響を及ぼしていると思われます。
そして三番、市民参加の手続、また手段、道具を与えよ。市民と自治体に
環境保全にかかわる監視と検証を委任するということがもっと積極的に行われていく。
そして四番、NGOへの権限委譲またはNG0の
政策決定過程への参加。これは、もとより国連の場あるいは国際
会議の場においてNGOを正式なメンバーとして加え、市民の
意見を多様に反映させていくという努力、ですから国は、ファジリテートといいましょうか、
国民が活発に
活動しやすいように
支援することが
基本なんであって、英語で言うとインテグレートといいますか、抑えつけて、支配してといいますか、そういう
立場ではない、
基本的に支えるという位置に歴史的に転化しつつあるということを自覚する必要があると考えています。
そして最後の一、先ほど、一、二、三という三つの要件が必要で、いわゆる南北問題と
経済の問題について述べたわけですが、その
理念につきましては、
環境が
経済より優位であることの
基本理念を明確に明記することが本来必要だと思います。
環境を守って初めて
経済的利益を得る、あるいは金もうけができる仕組みというものができてしかるべきなんであって、決して金もうけをしなきゃいけないんだけれども
環境も守らなきゃいけないというんではなくて、
環境を守ることによって初めて
経済的な利益を得るような
システムをつくらない限り根源的な
解決はできない。
そして二、
開発途上国における
環境破壊の責任を自覚せず、あくまで我々は技術的、
経済的に優位に立っているというおごりの精神を続けるならば、自国を守って自国を守れず、頭隠してしり隠さずのそしりを免れることはできないという状態だろうというふうに考えます。
そして最後、文章が難解にして不可解。例えば二十二条二項。これは、私は学校の教師ではありますけれども、十回読んで少し
意味がわかったという程度に非常に複雑にして難解な文章、これももう少し改善を加えていただきたい、かように考えます。
以上です。ありがとうございました。