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1993-04-07 第126回国会 参議院 環境特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月七日(水曜日)    午前十時二十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         松前 達郎君     理 事                 石川  弘君                 西田 吉宏君                 堂本 暁子君                 広中和歌子君     委 員                 狩野  安君                 河本 英典君                 釘宮  磐君                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 真島 一男君                 大脇 雅子君                 竹村 泰子君                 中尾 則幸君                 本岡 昭次君                 横尾 和伸君                 有働 正治君                 粟森  喬君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  林  大幹君    政府委員        環境庁企画調整        局長       八木橋惇夫君        環境庁企画調整        局地球環境部長  加藤 三郎君        環境庁自然保護        局長       大西 孝夫君        環境庁大気保全        局長       入山 文郎君        環境庁水質保全        局長       赤木  壯君    事務局側        第二特別調査室        長        小林 正二君    説明員        厚生省生活衛生        局水道環境部水        道整備課長    浜田 康敬君        農林水産省農蚕        園芸局植物防疫        課長       大川 義清君        林野庁林政部林        産課長      郡  完治君        林野庁指導部計        画課長      伴  次雄君        通商産業省立地        公害局環境政策        課長       今井 康夫君        運輸省運輸政策        局総合計画課エ        ネルギー対策室        長        福本 秀爾君        郵政省大臣官房        企画課環境企画        室長       山川 鉄郎君        建設省建設経済        局調整課長    澤井 英一君        建設省都市局下        水道部公共下水        道課長      安中 徳二君        建設省河川局開        発課長      坂本 忠彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (公害対策及び環境保全基本施策に関する件  )     —————————————
  2. 松前達郎

    委員長松前達郎君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、公害対策及び環境保全基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 本岡昭次

    本岡昭次君 長官所信表明におきまして真っ先に地球環境問題を取り上げておられます。そして、昨年六月に開かれた地球サミット持続可能開発理念のもとに成功をおさめたというふうにも言及されているわけであります。この持続可能開発ということなんですが、これはどういうふうに理解したらいいのか、長官の方からひとつ御説明をいただいたらありがたいと思います。
  4. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) ただいま本岡先生からの御質問でございますが、これは先生指摘のように、昨年のリオにおける会議のときに、宮澤総理言葉に出てきておりますが、環境保全開発というものを両立させるという意味において持続可能という言葉が使われております。詳細につきましては担当の局長の方に説明させます。
  5. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 先生指摘持続可能開発、サステイナブルディベロプメントという考え方でございますが、これは、環境問題への取り組みの理念といたしまして歴史的には一九八〇年代から国際機関で提唱されまして、特に一九八七年の環境開発に関する世界委員会日本が提唱したわけでございますが、この報告書の中でその中心的な考え方として国際的に定着した概念だというぐあいにども考えております。さらに、ただいま長官からお答え申し上げましたように、昨年の地球サミットにおきましても、世界が合意したリオ宣言、またアジェンダ21等を通ずる共通認識ともなっているところでございます。  我が国におきましても、そういうことで、現在国会に提案している環境基本法案におきましてこの考え方環境保全基本理念として盛り込んでいるところでございます。この持続可能開発考え方内容でございますが、先ほど申し上げました環境開発に関する世界委員会報告の中では、将来の世代ニーズを満たす能力を損なうことがないような形で現在の世代ニーズも満足させるような開発ということを言っているところでございます。私ども国会に提案申し上げておる環境基本法案におきましては、その趣旨として「現在及び将来の世代人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように」というようなことや、「環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会構築等」ということを規定いたしまして、これからの環境政策の目指す方向性を明らかにしているところでございます。
  6. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 今の本岡先生の御質問に対する私の舌足らずの補足にもなるわけでありますが、持続可能という概念につきましてはただいま企調局長より説明がありましたとおりでありますし、それからまた今度の基本法におきましても持続可能ということを協調しております。これは概念としては今企調局長説明したとおりでありますけれども、私はやはり、人間が生きていく限り向上しようとする欲求人間から取り去ることはできない、人間には必ずこの欲求がある。つまり、それが人間エゴとなって環境を破壊するということになると持続可能できないわけであります。  したがって、環境保全していくという至上命令を忠実に守るためには、開発に取り組む人間エゴがどこかで抑制されなければならない。それを両立させるということがこれからの環境政策としては大事であるという信念に基づいてその文言も挿入いたしました。
  7. 本岡昭次

    本岡昭次君 私も、環境庁長官官房総務課編集の「地球環境キーワード事典」の中の「持続可能開発」ということの説明文章をここに持っております。おおむねこの考え方については私もこういうことでいいんじゃないかと思うんですが、実は私は、この持続可能開発というのは、環境問題をめぐる先進国とそれから開発途上国の違いを埋めるための妥協の産物というふうにとらえていたわけです、より強くですね、考え方として。しかし、環境庁が出しているこの事典の中にもそう書きながら、「しかし、環境開発を相反するものとしてではなく互いに依存するものとしてとらえ、環境保全してこそ将来にわたっての開発を実現できるとの考え方は、そのような対立を超えるものである。」というふうに書いているんです。私は、この言葉に特別反論する中身は持っておりませんが、こういう形でこれから進んでいけるのかどうかという問題をなお我々自身が追求していかなければならぬ、このように思うんです。  そこで、今局長の方から、持続可能開発というこの理念考え方はこれから私たち審議する環境基本法の中に盛り込まれている、こういうふうにおっしゃいました。そうすると、一九九一年十月に「新・世界環境保全戦略——かけがえのない地球を大切に」という日本語版が出版されています、その中の「行動・8の4」の項にこのようなことが書いてあるんです。文章はこうです。「憲法その他、国政基本となる文書において、持続可能社会実現のための原則の尊重を明記する」、こう書いてあるんです。今、国政基本となる文書ということで、環境基本法というものがこれにこたえて出てきているんだというふうに私は理解しようとしているんですが、その解説の中にこのような文書があります。私が今読むような中身のものが環境基本法の中にそれでは盛り込まれているのかどうかということを関連として聞いておきます。  文章にはこう書いてあります。   政府持続可能社会規範を、憲法その他、国政基本となる文書に明記すべきである。政府はこの公約により、国民の人権を保護し、子孫の利益を守り、国の生命維持システム生物学的多様性を保存し、再生可能な資源持続可能な方法で利用することを保証し、最も影響を受けるであろう地域社会利益集団がその決定過程において効果的に参加できるように、国の義務を規定すべきである。そして、個人と市民団体に、これらの義務に対応して要求を主張できる権利を与えるべきである。 というふうなことが解説として書いてあるんです。だから、持続可能開発というのを今我が国環境基本法というところの中に盛り込んでいこうとしているわけで、文字どおりこの「かけがえのない地球」の中に示してある「行動・8の4」のこの文章を実現しようとしているんですね。  しかし、今私が読んだような中身のものがこれから我々が審議するであろう環境基本法の中に盛り込まれております、こう言われるのか、そうでないと言われるのか、いや盛り込んであるけれどもそう明確でないと言われるのか、今の時点でちょっと事前に聞いておきたいと思いますが、いかがですか。
  8. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) ただいま先生が御引用なさいましたものは政府ベース合意文書ということでは必ずしもないというぐあいにども理解しておるわけでございます。この十年間を通じていろんなところでいろんな提言が行われている、そういう中で、持続可能性のある開発というのは共通理念として国家ベース、また民間ベースでいろいろ議論され、それが共通認識として定立してきた。そういうようなことで、昨年、リオデジャネイロにおいて地球サミットが開かれ、リオ宣言というものが採択されたわけでございます。  私どもは、そういう世界の潮流、世界共通認識を踏まえながら今回の環境基本法というものをつくらせていただいた。もちろんその過程におきましては、中央公害対策審議会自然環境保全審議会その他もろもろから寄せられた意見というものを参考にしながら、今回の立案作業に入らせていただいたわけです。  そういう意味におきまして、例えばリオ宣言等でも、新たな理念に従って新たな環境法制をつくりなさいというようなことが言われている、その他いろんなことが言われているわけですが、大勢として言われている意見につきましては最大限盛り込むような格好で今回の法案作成作業をさせていただいたところでございます。
  9. 本岡昭次

    本岡昭次君 私が引用しましたのは、「新・世界環境保全戦略——かけがえのない地球を大切に」ということで、この発刊には、国務大臣環境庁長官愛知和男さんの文章があって、そしてこれがいわゆる日本語翻訳、出版されたものです、日本語版に。だから、世界共通一つの物の考え方として、持続可能開発というものを裏づけていくものになるんではないか。持続可能開発ということが至るところにずっと出てきております。  政府がどれだけ責任を持つべきことかというのはいろいろあると思いますが、先ほど私が引用して読んだ文章ですね、「行動・8の4」というところ、これについて、それではどう思われますか。もう一遍読みましょうか、今のところ。私はこれは非常にいい文章だと思うんです。このとおり環境基本法の中に盛り込まれているとすれば、環境基本法も立派なものだ、こう思うんですが。読んでみましょうか、もう一遍。——また改めて環境基本法のときにやることにしましょう。  それで、アジェンダ21というのがここにも載っているんです。環境開発に関するリオ宣言アジェンダ21。このアジェンダ21というのが、行動規範というんですかね、どういうことをやれというふうなことがより詳しく、リオ宣言以上に書いてある、こう思うんです。項目を見ただけでも随分いろんなことが書いてあります。経済社会的側面、それから国際経済環境、貧困の撲滅、消費パターンの変更、人口問題、健康、ずっと書いてあるんです。  次に環境基本法審議をするまでにこれ和訳をして、我々にも勉強できるような状態にぜひしていただきたい。せっかくいい資料を我々が目を触れないで環境基本法審議するというのはまずい、こう思うんです。それまでに、私はちょっと英語ができませんので、ぜひそれを和訳にして資料としていただけるということをお約束いただきたいんですが、いかがでしょうか。
  10. 加藤三郎

    政府委員加藤三郎君) 今先生がお触れになられましたアジェンダ21は、先生自身おっしゃられましたように、行動規範行動計画化したものでございます。  もう少し正確に申し上げますと、昨年六月の地球サミットにおきまして、環境開発に関するリオデジャネイロ宣言、まあ俗に私どもは簡単にリオ宣言と言っておりますが、リオ宣言をまず合意いたしております。このリオ宣言が二十一世紀に向けてのいわば行動規範を示すようなものでございます。実は、その性格をもうちょっとわかりやすく申し上げますと、準備過程におきましては地球憲章という名で準備されておりました。地球憲章をつくろうということで準備しておったものでございます。いわば憲章的な文章でございます。ただ、開発途上国からの強い要望もありまして、地球憲章という名称からリオ宣言というものに変えたものでございます。  問題のアジェンダ21でございますが、このアジェンダ21の方は、これは先ほども申しましたリオ宣言の精神を外しまして、二十一世紀にかけての、政府機関国際機関、そういったものがどういう行動をしていったらいいのか、環境を維持しながら持続可能開発をするためにどういう行動をすべきかということを詳しく書いたものでございまして、実は膨大な文書になってございます。細かい活字で五百ページ以上に及ぶ膨大な文書になってございます。  私どもリオ宣言直後から外務省ともども翻訳作業に入っておりまして、今、出版をすべく準備をしているところでございます。残念ながらただいま現在ではまだ活字にはなっておりませんが、 それに向けて今準備をしている最中でございます。
  11. 本岡昭次

    本岡昭次君 今おっしゃるような内容のものであるならば、なおさら環境基本法審議するときに我々が参考にしなければならぬと思うんです。  ある意味では、環境基本法が、アジェンダ21に書かれてある行動計画、それを一〇〇%といかずとも、ほぼ充足する。あるいはまた別の意味で、アジェンダ21と照らして、それにたえられる中身のものになっている。ということは、要するに国際水準とのかかわりの問題だと思うんです。そういうふうになっているかどうかということを私たちは検証する必要があると思うんです。  だから、そういう意味で、ちょっと英語が理解できない我々にもきちっと対応できるようにしてもらいたいという要請をしているんです。ぜひそれは希望をかなえていただきたいと思います。
  12. 加藤三郎

    政府委員加藤三郎君) 先ほども申し上げましたように、何せ大部のものでございます。したがいまして、翻訳にもかなり時間がかかっておりますが、私ども、今の作業状況でいきますと、五月の初旬ぐらいをめどに刊行できるところまでいくんじゃないかというふうに思っております。  ただ、それは刊行といいますか出版して一般の国民皆様方にも見てもらえるような状況にするのが現在の作業進捗状況でいくと五月初旬というふうに考えておりますが、いわばその前のゲラ刷りのような段階で、いわば未定稿というような格好でよろしければ、それよりも早く先生方の御参考に供することは可能かとは思われます。ただし、あくまでも未定稿というようなことにならざるを得ませんが、そういう前提で、便宜、本当の御参考資料として差し上げることはできるかと存じます。
  13. 本岡昭次

    本岡昭次君 ぜひともそういうふうによろしくお願いいたします。  それで、地球環境問題の解決、これは本当に難しいと思うんです。世界人口が増加する、しかもそれは十七世紀以降急激に増加しているんです。科学技術が進んで、人間が自然を征服するということが可能になったときからでございます。日本も、徳川の江戸時代から比べると、三千万、四千万と言われたのが一億二千万というふうに、ここ一世紀ほどの間に急激にふえております。  そういう意味で、世界人口の増加とそしてそれに伴う資源消費という、いわば人間自身が生きていくために、しかし、生きるということはより快適でそして内容が豊かでというものを求めていくわけですから、そういう意味では、生命活動をやっていくその結果引き起こされていく問題だというふうに認識をして、さればどうすればいいのかという問題を根本的に考えていかなければならないのではないかというふうに思うんです。  ある川が汚染された、あるいはまたどこかの堤防をつくったらそれがどうと、また瀬戸内のある部分を埋め立てたらそこはどうなるとか、海岸がどうとかいうふうに、部分的に、地域地域生態系の問題とか、あるいはまた緑、水、さまざまな問題の変化を我々はとらえていろいろ議論しますけれども、しかし、より根源的なところはそういうものにあるという認識をしておかなければいけないんじゃないか。自然をありのままにといって、限りなく過去に我々を戻すというふうなことは、これは不可能だというふうに思いますから、そうした認識を持ってこの議論をしていかなければならないと思いますが、そういう点について長官はどのように御認識されていますか。
  14. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 我々は、日進月歩という言葉が一面あると同じように、我々自身のよりよい生活を築いていく、あるいはよりよい社会を構成していく、そういう意味における行動というものは、人間が生存する限りこれは断ち切ることはできませんし、それは今くしくも先生おっしゃいましたように、過去に戻ることはできないということと共通する考えであります。  しかし、それだけにこれからの社会というものは、どうしても大量消費型社会という形で、社会経済活動の拡大に起因する問題としても非常に物資を大量に生産する、あるいはまた大量にこれを消費していく、そしてまた大量に破棄されていくという、この三つの姿というものはこれは消すことのできない現象であろうと思いますので、こういう中に立ってこれからの経済活動を、そしてまた国民生活のあり方をどのようにするかという、ここの認識は私も先生と同様の認識を持って対応してまいりたいと思います。
  15. 本岡昭次

    本岡昭次君 私の申し上げたいのは、どこかで自然破壊があるからその地域の人が、どこかで生態系が乱れたからその地域の人がという問題ではない。やっぱりこれは地域全体、あるいはまた日本なら日本一億二千万人、四十七都道府県全体の問題であるというふうに私は言いたいわけなんです。  私は基本的には、環境問題をとらえる視点として、現在の自然とか環境が先祖から譲り受けたものじゃなしに、これから生まれ、これから生きるであろう未来の人たちから私たちは借りているんだ。だから、借りている以上、現在の形を損なわずに、借りているものには利子をつけて払うべきで、よりいいものにして送っていくという発想が基本的になければいかぬというふうにいつも思っております。  それだけに、先ほど言いましたように、人口が増加する、人口が増加するには増加するだけの理由があるわけでありますから、増加することが悪いというふうに私は決めつけるわけにはいきません。しかし、ふえた人口の皆さんがそれぞれ生活水準の向上というものを求めていくときに資源がそれだけ消費されるわけで、より多くの物が今長官もおっしゃったように消費されます。そのことによって、部分的に食料不足エネルギー不足が起こってくる、一方ではあり余るというふうなバランスのとれない状態にある。  それで、エネルギー消費の増が酸性雨など環境汚染というものを、国境を越えて大きく広がっていくという、ある意味では大きな環境汚染そのものを生み出していくし、さらにそれで森林が破壊されると今度はそれによって生態系が乱れてくる。水不足、洪水による土壌破壊砂漠化、そしてまたそれが食糧不足を促進していくという、ある意味では悪循環をぐるぐるしていくわけです。その悪循環をどこかで何かの新しいシステム、制度をつくって断ち切らない限り、部分的に、先ほど言いましたように、どこかの川がどうの、湖がどうの、海岸がという、それも極めて大事ですけれども、やはり全体を絶えず見ながらどこでシステムとして切りかえていくのかという、そういう視点がなければ環境庁仕事はうまくいかないんじゃないか。  非常に大事な環境仕事、私も質問するのにあれこれ言うと、これは農水省だ、これは林野庁だ、これは通産省だ、これは運輸省だといって限りなく全省庁にわたってくるわけですね。産業活動をやっているところは全部わたってきて、結局、それぞれが本来固有に環境を守ることをやればいいんだけれども、それができないからといって環境庁があるんだろう、こう思う。しかし、環境庁が本当にそういうところに対して、地球環境保全するんだということで強力な、今言った経済そのものシステムを変えていくような、そういう力を本当に持ち得ているんだろうかというふうなことを私自身も堂々めぐりをするんです、考え方の中で。  そういう意味で、環境庁長官、私が環境庁長官だったらこんなことを思うな、こういうふうにしてみたいなという、絶えず私たちもそういう思いを持つんですが、率直に長官思いを述べていただきたい。それに対しては再質問しませんから、どうぞ私の言っていることについて率直なひとつ御感想でも結構ですから、お述べいただきたいと思います。
  16. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 先生からの大変厳しい御質問をちょうだいしているわけでございますけれども、しかし、基本的認識としては、私も先生と同様の認識を持つものであります。  ただ、環境庁も生まれて二十一年でございまし て、既に百年の歴史を持つ省庁もあるわけであります。この年代の長さだけで論ずるわけじゃありませんけれども、なぜ環境庁が生まれたかということを振り返りますと、そのころは一地域における、また一公害という形からこれをどうにか救わなきゃならない、これに対応しなきゃならないということからスタートしたものでありましたが、その後、そういう問題はずっとその時代からもさらに今日まで及んでおります。  しかし、それとともに、先ほど先生の御意見にも、あるいはまた御質問にも出ておりますように、地球環境という新しい姿が我々の目の前に出てきたわけであります。これも突如としてという言葉でありませんで、期せずしてそういう時代に遭遇したわけでありますけれども、ただ、基本的には地球を救えるものは地球に住む人間しかないということであります。それとともに、また地球を破壊するのも人間である。したがって、先ほど申し上げましたような人間の限りない欲望が、人間エゴイズムが自分の生活を楽にしようと思うことから、ある意味においてはそれが環境破壊につながっていくという、それをどうして防ぐか。これにはいろんな防ぎ方があろうと思います。一つには国民生活する人々の自覚を深めること。つまり、それには環境教育と一口に言えばそれまでですけれども、単なる環境教育という言葉で片づけることのできない人間としての責任の問題、生きる人間の責任の問題としてこれにどう取り組むかということが大事でございます。  しかし、今度これを行政面から見ますと、先ほど先生指摘のように、十幾つかの省庁にまたがってそれぞれ環境問題を抱えております。農林水産省は農林水産省として問題を抱えております。ですから、それらはやはり自分の省庁として抱えている問題を省庁の責任において解決しなければならないという責務もございます。それが場合によっては環境行政でどうも足並みがそろわないじゃないかといったような御批判を生む原因にもなるかもしれませんが、だからこそ環境庁は大所高所に立って、そういう意味におけるリーダーシップをどう発揮するかということにかかわるわけであります。  その意味におきましては、環境庁としましても責任の重大を自覚いたしまして、各省庁それぞれが抱えておる環境問題に対する取り組みを一層解決に向かって力を合わせることができるように、環境庁としても、リーダーシップという言葉を使うとほかの省庁に対してもいろいろ問題が起こりますけれども、いわゆる一つの指針という形で取り組んでいく。  そうしてまた、環境問題については、そのような生まれてくるべき環境破壊の原動力、原因、それをどう取り除くかという努力もすべて人間にあるということを踏まえて取り組んでいきたい、このように考えております。
  17. 本岡昭次

    本岡昭次君 残された時間がわずかですが、具体的な問題について、林野庁の方にも来ていただいておりますので、林野庁の皆さんを交えて若干議論をしてみたいと思います。  先ほども言いましたが、森林そして木材、この問題でありますが、日本は残念ながらこういう言われ方をしております。日本は木材の輸入とか消費を通して地球規模で天然資源である森林の乱獲を行っている、こういうことをよく言われ、現にそうした問題が起こっていることも事実であります。  しかし、先ほど議論しましたように、森林というのは、地球温暖化を初め、土壌の流失とか洪水、こうした環境破壊を防ぎ、また多様な生物を生存させていく大もとになっている、こう思うんです。林野庁、今世界の森林資源の現状はどうなっているか、簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  18. 伴次雄

    説明員(伴次雄君) 世界の森林の現況でございます。  まず熱帯林でありますが、先生の御指摘がありましたように、非常に人口がふえているということもありまして、それによる移動耕作というもの、それから放牧が過ぎているというようなこと、それから薪炭材が過剰に伐採が進んでいるというようなことがありまして、ここ十年間で一億数千万ヘクタールの森林が減少しているというような非常に深刻な状態にあるわけでございます。  また、ヨーロッパ等の先進地域では温帯林を中心に、面積は減ってはいないわけでございますが、酸性雨というような問題があって森林の劣化といいますか質の低下というものが非常に大きな問題となっているところでございます。
  19. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の林野庁の方の御報告とあわせて、最近の新聞に、いろんな世界各国の森林を資源として保全をしていく、環境を守っていくというふうな動向が出ておりますね。カナダでは資源保護のために伐採規制を行うとか、アメリカではマダラフクロウなどの野生動物を保護するために伐採規制するとか、あるいはまたニュージーランド、マレーシア、ロシアなども資源保護、環境保全で伐採を規制するというふうなことが起こっている。  これはある意味ではブラジルでの地球サミットと関係なしとは言えないわけで、今後こうしたことが環境保全のためにさらに強まっていくというふうに我々は見なければならぬのですが、林野庁が把握しているこうした環境保全と森林事業というものはどういうものがありますか。
  20. 郡完治

    説明員(郡完治君) 我が国の木材需要量の大体四分の三は外材に依存しておるわけでございます。これらのうち最大の輸入相手国でございますアメリカにおきましては、一九九〇年にマダラフクロウという鳥が絶滅のおそれのある種として認定された、こういうこともございまして、その生息環境の保護のために翌年に連邦有林、日本で言えば国有林でございますが、その立木販売の一時禁止が決定される、こういったことで、アメリカにおきましては森林の伐採規制につながるような環境保護運動が高まってきている、こういうふうに認識しております。  また、南洋材の丸太の約六割を占めておりますのがマレーシアのサラワク州というところでございます。ここにおきましては、持続的経営を図るという観点から、国際熱帯木材機関、これは横浜に本部がある機構でございますけれども、この勧告に従いまして昨年から伐採量の削減を実施している、こういう状況にございます。  こういったことから、米国、マレーシア等々の主要な日本に対する木材輸出国におきましては、環境保護運動の高まりから伐採規制の強化等の動きが見られるという状況にございます。
  21. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうしたこと、また需要が高まっているということもあって、輸入量が減って木材が非常に高騰しているということも聞くんですが、その事実と、何か具体的に対策を打っておられますか。
  22. 郡完治

    説明員(郡完治君) 御指摘のとおり、この年明けぐらいから外材を中心に木材価格の上昇が見られるわけでございます。これは先ほど申しましたアメリカ、マレーシア等の主要な木材輸出国におきます自然保護運動あるいは資源的制約、こういったことから供給量が減少いたしまして、まず産地の木材価格が高騰したというところから始まっております。これに起因いたしまして、我が国の合板とかあるいは米材の製材でございますとか、こういった外材価格の上昇を見たわけでございます。一方、国産材の価格はこういった一部外材のような急激な上昇はしていないという状況にございます。  そこで、林野庁といたしましては、こういった需給安定対策につきましては従来から、四半期ごとに主要な木材の需給見通しというのをつくりまして公表いたしましたり、あるいは日本木材総合情報センターというところを通じまして木材需給情報の収集、提供を行うといった格好で需給安定対策をやってきたところでございますけれども、今回の値上がりに対処するために、先般、木材のユーザーでございますとかあるいは生産者、流通業者、こういった関係団体から幅広く需給動向につきましてヒアリングをいたしまして、こういっ た団体ごとに需給安定対策について協議し、林野庁としても需給安定のための要請をいたしたところでございます。  特に合板の値上がりが大きかったわけでございますけれども、これにつきましては、国内の合板メーカー団体、あるいは輸入合板の大部分を扱っているニッピンドという会社がございますけれども、こういった会社に対しまして、合板入手の不足が起こらないように、要望があれば的確にあっせんするような相談窓口の開設を指導いたしましたり、また合板原料でございます南洋材原木の安定供給を図るということから、外交ルートを通じました情報収集といったことも行ったところでございます。
  23. 本岡昭次

    本岡昭次君 この木材というのは住宅と深くかかわるわけで、今まで住宅を建てるときに土地というものの価格が非常に制約事項になっておりましたが、これから木材が制約事項ということになれば大変なわけで、林野庁の的確な対応を望みたいと思います。私もその動向をこれから注目をして、おっしゃるように、さらに高騰するようであれば一体どうするのかという問題を、またいろんな機会をとらえて議論をさせていただきたい、こう思います。  そこで、環境庁長官もお聞きいただいておると思うんですが、森林資源の問題です。  日本が、今も言われていましたように四分の三近くを外材に依存している、しかし外材が環境というような問題でだんだんと輸出というものが減少してくる、我々もそういうことを覚悟していかなければならぬだろう、こうなってきます。そうなると問題は、国内森林の整備促進あるいはまた森林生産体制の整備、林業振興、そして基本的には自給率を引き上げていく。林野庁も自給率の計画を六十二年以降やっているんですが、しかし結果としては上がらずに、横ばいかあるいはまた下がるかというそういう状態であるわけなんで、よっぽど強力なてこ入れをしなければ自給率を高めるということが不可能な状態にあるんではないか、こう思うんです。  そのために、これは林野庁だけではなくて環境庁もその気になって財政措置を含めた諸対策を急がなければならぬじゃないか、こう思っているんですが、どうですか環境庁長官、一言。
  24. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 先生のおっしゃる自給率を高めることは非常に大事でありますし、それから私は、林野庁が今一番困っている一つは人件費だろうと思います。これは林野庁で森林を管理する人々に対する待遇の問題、人件費の問題、こういう点も非常にゆるがせにできない問題だろうと思いまして、日本林野庁がいい素材をどんどん割安に提供していただけるという、そういう基本をやはりつくるために、環境庁としても所要の意見を、またそれぞれの場所で協議していこうと思っています。
  25. 本岡昭次

    本岡昭次君 ぜひとも環境庁環境の面からこの問題のバックアップをしていただきたいと思うんですが、そうした森林は、外材を持ってくるということの立場だけじゃなくて、日本の国内にある森林の持つ多様な機能をどう持続的に発展させていくかという問題もあるわけです。ある意味では、森林がそうした生産なんかをしていくための天然資源とかいうことではなくて、ある意味では人間生活に欠くことのできない社会資本というふうな観点を強く押し出していくということが必要じゃないかと思うんです。  先ほどから言っておりますように、洪水を防ぐ、あるいは土壌の崩壊を防ぐ、あるいはまた酸性雨を防いでいく、森林そのものが持つ人間との多様なかかわり、だから林野庁の方は、森も単に木を切るための森じゃなくて、人間の暮らしとどうかかわるかということをいろいろと追求されておるようです。だから私は、森林というものが持つ重要な機能に対して社会的コストを含む負担というものをみんながしていくんだという、こういう国民的合意形成をもっともっと真剣にやっていく必要があると思うんです。  だから、あるときに出してつぶれた水源税というのがありましたね、私のところの社会党も反対したんじゃないかと思うんですが、私は個人的にはあの水源税というものの発想はいいと思っているんですよ。川上があって川下があって、川下の人間は川上があることによってそれだけの潤いを受けているんですよ。川上がひとたび荒れればもう川下はだめになるんですよ。その川上が過疎になり、人がいなくなって荒れるに任せたらどうなるかという問題は、川下の人の問題であるわけでしょう。だから、川下の人が安全に快適に住むために、それでは川上に対するどういう社会的コストをうちの方では負担するのか、こういう発想が全体に出てこなければ、私は環境保全というような問題なんか解決しない、こう思っておるんです。  ところが、この社会的コストとなると、税金、新税は悪税だ、こうなって、できるだけ負担せぬ方がいい、こうくる。私はここの社会的コストをどうするのかという問題をもう少しみんなが真剣に——先ほど来、人間の問題とおっしゃったけれども、やっぱりそことかかわるんです、環境庁長官。だから、そうしたことも環境庁がもっと声を大にして、環境という問題に対してどうでもいいとだれも思っていないわけですし、私が言ったように、これは先祖から譲り受けたものじゃなしに、これから生きる子孫、将来の人たちのために預かっているものをこれ以上どう、という問題があるわけでしょう。だからそういう意味でぜひとも積極的にかかわってほしいと思うんです。  そういう意味で、社会的コストの問題と、それからもう一つは、海外にどんどん商社が、アメリカがだめならアフリカがあるじゃないか、北欧があるじゃないか、それがあかぬなら中南米があるじゃないかと、世界至るところ森林のあるところを荒し回って、結局日本が国内の森林を保存するために海外の森林を荒し回っている、こういう状況も一方海外から大きな批判をされるということもあってはならぬ、こう思います。  そしてまた今度は、ODAで五年間にわたって一千億ドルを貿易黒字の対策のためにやるんだ、こうなったときに、そのODAが、今言いました森林とか天然資源の問題と企業の方で深くかかわってくるわけですよね。そういうことになってきますと、本当に日本の立場というものが大変なことになってくると思う。  だから、国内におけるそうした問題と、海外におけるそういうさまざまな対応の問題を総合的に環境庁がしっかりとかかわっていただかなければならぬし、これから審議する環境基本法が恐らくそういったこと全体を網羅するような形になっているんじゃないかと私は期待をしているんですけれども、そうした点について最後に長官言葉をいただいて、もう時間が一分しかありませんので、私の質問を終わらせていただきます。
  26. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 先生の御質問は一々非常に重大な内容でございます。特に環境庁にとりましては、環境基本的な考え方として、文化的で健康な生活を保障するためにもまず空気、大気が非常に大事である、それからまた水が大事である、そしてまた生きていくために土が大事であるということから、こういうものをいかに環境汚染から守っていくかということが環境行政の一つの大きな任務になっております。  そのためにも、今先生から御質問のありました森林の保全ということは非常に重要な意味を持つものでございますので、環境庁としましても、よりよい生活を人々が享受するためにそれなりの条件を絶えず整えることに大変な配慮を払っていくことが任務でございますので、環境に配慮した形で健全に発展させなきゃならぬということを念願しながら行政を進めていきたいと思っております。
  27. 本岡昭次

    本岡昭次君 終わります。
  28. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今回、環境庁長官所信表明を拝見いたしますと、まず、地球環境保全を視野に入れて、持続可能環境負荷の少ない社会経済の構築に向けて新たな環境政策を総合的に推進していくというふうに述べておられます。さらに、具体的な方法として、その一つである環境影響評価、 公害防止計画等につきましては引き続き推進してまいりますと述べておられますので、この点に関連しまして質問をさせていただきます。  前回の委員会におきまして、私は、読売新聞の三月二十九日月曜日の朝刊に基づきまして、環境アセス法制化見送りの覚書あるいは合意といったものがないかというふうにお尋ねをいたしました。そのときに企画調整局長から午後にお返事をいただきましたが、もう一度とういうお返事であったかということをお尋ねしたいと思います。
  29. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 先日の御答弁申し上げた内容を私正確に申し上げたいわけでございます。  環境基本法案につきましては、環境アセスメントを含めまして、法案の解釈等につきまして共通の理解を得る必要があるということから、各省間で想定問答といったような所要の検討を行っていることは事実でございますが、環境アセスメントにつきまして将来の法制化を否定するような覚書を結んだという事実はございません、というぐあいにお答え申し上げております。
  30. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 では、そのような覚書を結んだことはないということを前提にいたしまして、共通の理解を得るために環境庁はどのような省庁と協議をなさったでしょうか。
  31. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) この環境基本法案政府全体の法案でございます。また、政府がやっております各政策のそれぞれにわたって環境問題というのは関係してまいるわけでございます。  したがいまして、関係省庁との協議ということは、以上のような性格がございますことから、環境影響評価の部分を含めましてその全体を全省庁、すなわち二十一の省庁と協議したところでございます。
  32. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そのような協議というのは、協議のたびごとにメモなどをおつくりになるのでしょうか。それとも、一つ一つ共通事項の認識というものを書きとどめられるのでしょうか。いわゆる想定問答というものはどのような形を指されるのでしょうか。
  33. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) それは事柄の性質によって変わってまいりまして、お互いに認識の違いがないものについては文書にするまでもなく、お互いにこういうことだなということで認識をすることもございますし、事柄の性格が微妙なニュアンスを伴ったような場合には文書に基づいてやるということもございます。ケースケースによりいろいろございます。
  34. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そういたしますと、環境基本法ですから全般にわたることは当然のことですが、とりわけアセスメントについて狭めてお聞きをいたしたいわけです。環境アセスメントの法制化に対してはどういう共通認識を得られたのでしょうか。
  35. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 環境基本法制のあり方につきまして、私ども中央公害対策審議会並びに自然環境保全審議会、この二つの審議会に濃密な御検討をお願いしまして、「環境基本法制のあり方について」という御答申をいただいたわけでございます。その御答申をもとに、私どもは今回、政府全体の共通認識としてこれを土台に法律化をする必要があろうということをまず関係省庁と話し合ったところでございます。  そういう前提のもとに、「環境基本法制のあり方について」という中央公害対策審議会及び自然環境保全審議会の答申におきましては「環境政策の新たな枠組みを示す環境基本法制においては、」「環境影響評価の重要性・考え方を盛り込むことが重要である。」というぐあいに指摘されている、この事実をもとに私どもは考えていく必要があるということでございます。基本法案の政府部内の協議におきましては、この答申を踏まえて、環境影響評価の重要性、考え方基本法に法制的に位置づける必要がある、そのためにどういう規定ぶりにする必要があるのかということについて検討を行ったところでございます。その結果、国は環境影響評価を推進するため必要な措置を講ずるというぐあいに明確に規定するということで合意を見たところでございます。
  36. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そういたしますと、中央公害対策審議会自然環境保全審議会の答申の内容、今言われました「環境影響評価の重要性・考え方を盛り込む」そして「必要に応じて現行の措置を見直していく」ということは、当然に法制化の含みを持つというふうに御解釈になっているのでしょうか。
  37. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 私、ただいまの御答弁で後半に関するところを若干落としたわけでございますが、環境基本法案は制度、政策に関する基本方針を明示することによりまして基本政策の方向を示すということを主な内容としているわけでございます。  そこで、個別具体的な措置内容を規定するというような性格のものではないわけでございますが、事業活動に係ります環境影響評価の具体的な実施に関連しまして個別の措置があるかにつきましては、答申におきまして、先生ただいま御指摘になりました「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行の措置を見直していくことが適当との意見が大勢であった。」というぐあいにされたところでございます。したがって、「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行の措置を見直していく」というこの答申を踏まえまして適正に対処する必要があるという共通認識のもとに立って政府部内での協議を行ったところでございます。
  38. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 重ねてお尋ねいたしますが、私がお尋ねいたしておりますのは、「必要な措置を講ずる」と環境基本法案に盛り込まれ、審議会の答申におきましては、「必要に応じて現行の措置を見直していく」というふうに書かれたことが法制化の含みを持つと環境庁は解釈されるかということであります。
  39. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 「必要な措置」ということにつきまして一般的に書きましたことから、法制化につきましてもそれが必要ならば必要な措置に入るというぐあいにどもは解釈しております。
  40. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、その「必要な措置」に法制化が入るということは、二十一の省庁の間の共通の理解と解釈してよろしいでしょうか。
  41. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 条文的に「必要な措置」ということに関しましては、それも入り得るというのは共通認識であるかと思います。ただ、それを現実に実行するかどうかということにつきましては、先ほどの中公審の答申を踏まえて適正に対処していくべきであるという共通認識でございます。
  42. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは、法制化もひとつ必要な措置を講ずるうちに入るというのが共通認識だというのが環境庁でありますから、きょう来ていただいておりますのは代表的な三省、通産、建設、運輸の省庁の方に伺いたいと思いますが、それはそれで同じような共通認識に立たれますか。順次お答えいただきたいと思うわけでございます。
  43. 今井康夫

    説明員(今井康夫君) ただいま企画調整局長から御答弁のあったとおりでございまして、私どもといたしましても、環境アセスメントにつきましては、基本法十九条におきまして「環境影響評価の推進」を位置づけたところでございまして、今後につきましては、先生指摘のとおりでございまして、この中公審、自環審の答申に基づきまして、「経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行措置を見直していくことが適当」ということでございますので、その方向に従って進めていくということでございます。
  44. 澤井英一

    説明員(澤井英一君) 環境庁の御答弁と同種でございますが、私どもといたしましても、中公審、自環審の答申を踏まえまして今後的確に対処していきたいと考えております。
  45. 福本秀爾

    説明員(福本秀爾君) 運輸省といたしましても、現在、環境影響評価実施要綱等に基づきまして環境アセスメントの実施を既に図っておるところでございまして、現行の措置の適正な推進が現段階では大変重要であると考えております。しかしながら、先ほどございました中公審さらには自 環審の答申も踏まえまして、アセスメントの法制化につきましては必要性を含め今後検討されるべき問題というぐあいに考えております。
  46. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 私がお尋ねしております環境アセスメントの法制化に関しては、ただいまの運輸省の方は環境庁と明確に共通認識に立たれるということがわかりましたが、前二つ、建設省と通産省については、いわゆる審議会の答申にのっとりということについてはアセスメントの法制化も含んで理解しておられるかどうか、重ねてお尋ねいたします。
  47. 今井康夫

    説明員(今井康夫君) アセスメントの法制化も含んでということでございます。
  48. 澤井英一

    説明員(澤井英一君) 建設省といたしましては、環境と調和した住宅社会資本整備を進める上でアセスメントは極めて重要だということにつきましては明確な認識を持っております。この認識に基づきまして、これまで閣議決定要綱に基づいてアセスメントの的確な実施に大変努力をしてきているつもりでございます。  アセスメント制度のあり方につきましてはさまざまな御意見があると思いますが、建設省の立場といたしましては、基本法案の趣旨を踏まえまして閣議決定要綱に基づきますアセスメントの内容の一層の充実を図っていく、それによって的確にアセスメントを実施していくということでまずは対応してまいりたいと考えております。
  49. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そこが私のお尋ねいたしたいところでございまして、閣議決定で行われる場合のいわば限界というものがありますがゆえにアセスメントの法制化ということの必要性が言われているわけでありまして、建設省はそのアセスメントの法制化についてどのような意見か重ねてお尋ねいたします。
  50. 澤井英一

    説明員(澤井英一君) 政府部内で法制化について議論が出れば、当然私どもも十分に議論をいたしたいと考えております。
  51. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それでは次に、先ほど、経済社会情勢の変化等を勘案しながら必要に応じて現行の措置を見直すと。確かに現行の措置は閣議決定の環境影響評価実施要綱に基づいて各省庁の通達でアセスメントが行われているわけですけれども環境庁はこの法制化の時期というものについていかなるお考えがお尋ねをいたしたいと思います。
  52. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 私どもといたしましては、やはり環境保全を図っていく上から環境破壊を未然に防止するというようなことがまず必要であるという基本的な認識を持っているわけでございます。そういう認識に立って、このアセスメントというものを経済社会の中にぜひ位置づけていく必要があるというようなことを考えているところでございます。  そういうことで、中公審、自環審の答申をいただいたわけでございますが、その答申といたしましては、やはり経済情勢の推移等を見ながら見直していけということで、現行の措置を直ちに変えるという、また現行の措置から一歩踏み出したところまでやれという御意見は私どもとしてはいただけなかったわけでございますので、環境庁といたしましては、先ほど基本的な考え方に立って、現行のアセスメントを適正に実施し、それを実施することを通じてどういう問題点があるのか、またどういうところに改善すべき点があるのか、それを踏まえてどういうふうにそれじゃ新たな方向性を見出していったらいいのかということを検討し、それを行うことによって将来の方向性を見出していくべきであるというぐあいに考えております。
  53. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 持って回った言い方ではよくわからないのでありまして、率直に言いまして、環境アセスメントの法制化というのは今国会においては考えておられるのかどうか、そしてあるいは近い将来考えておられるとすればそれはいつかということをお尋ねしたいと思います。
  54. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 先ほどの答申の趣旨を踏まえますと、今国会において直ちにそれを出すということは無理でございます。  私どもといたしましては、やはりアセスメントの持っているところの状況それから実施状況を踏まえ、また問題点、それからそれがどういうふうな問題をもたらしているかということを分析した上で、なるべく早い時期に改善した方向に持っていきたいというぐあいに考えているわけでございます。
  55. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今言われました実施状況の問題点というのは何でありましょうか。
  56. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) それはいろいろこれから分析していくことでございます。
  57. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 実は、五十九年の八月の閣議決定になる前に既にアセスメントの法案というのは不十分ながら提案をされているわけです。さらに現在におきましては、経済的社会情勢の変化というものは、地球サミットで論議されましたように、環境破壊も非常に著しい、まさに後世の世代に受け継ぐべき地球について私どもが積極的な行動をとらなければならないというところにある状況で、その法案提出から十年がたちましていまだ実施状況の問題点とかあるいはその法制化について当面考えられないというのはいかがかと思いますが、長官、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  58. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 大脇先生の御質問にお答えいたします。  環境基本法制の中で、先ほどからそれぞれ政府側、そしてまた先生の御質問、それに応じた御答弁、いろいろありまして、環境影響評価の重要性というものについては見解を一つにいたしておると私は認識しております。したがいまして、今度の基本法制の中にもその重要性というものを位置づけております。  ただ、大脇先生の御質問は、じゃ環境アセスメントの法制化を図るのかどうかということでございますけれども、今回は基本法案をまず先生方の御審議にお願いしまして、まずこれを議決していただきたいということであります。その後に、次の時期に、どうしてもアセスメント法が単独法として必要である、そういう認識をすべきときには、当然これは、今度の環境基本法案に基づきまして単独法としてのアセスメント法もこれは制定する時期が来れば当然提案します。
  59. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 十年前にその法制化の必要性と重要性というものが認識されて法案の提出がなされたのにかかわらず、今回においてまだその時期にないというのは何とも納得がいかないわけです。この点については十年たって後退しているというふうに思わざるを得ないわけですが、いかがでしょうか。
  60. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 実は考え方の後退は全くないと私は認識いたしております。ただ、国全体あるいはまた国民各界各層が環境問題というものに大変認識を深めてきていただいておる、そういうことから、環境の問題を整えていく努力においても十年前のそれぞれの国民各界各層が認識しておったときと今日では大変な差を生じております。  その意味からも、新しいアセスメント法というものを制定するのにはそれぞれの条件をもっと検討する必要があるという認識に立って、今回は基本法案という中でその重要性を盛り込みまして、そして単独法の制定の必要がどうしてもということで認識されればそれなりにまた国会の御審議を賜りたいということでございますので、取り組み方と考え方が後退しているということではありません。国民の各界各層が環境問題に対して非常にその重要性を御認識いただきまして積極的にそれぞれの場で取り組んでおられることが、私は一つの今日十年間たってもそういうようなことになっていると理解しております。
  61. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 現在は通達、要綱あるいは地方自治体の条例等で行われているわけですけれども、現在その問題点は、省庁間あるいは各地域間でアセスメントをする手続等が統一的でないという欠陥が広く指摘されておりますが、この点については環境庁としてはいかがお考えなのでしょうか。
  62. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 私どもといたしましては、できるだけアセスメントというものについ て統一的な手続で行われるということが好ましいことだとは考えますが、一方で、その事業の性格に応じまして、どの段階でそういうことができ得るのか、またどのぐらいの情報をもとにしてそれをやるべきなのかという、実施する事業の内容によってかなり相違があることもまた事実でございます。  私どもといたしましては、アセスメントの実績を積み上げながら、共通するものは何なのか、またはそれぞれの個別の事業の特性に応じて独自に展開していくべきものはどうなのかということ、両方を踏まえながらそこはやっていく必要があるというぐあいに考えております。
  63. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 現場の問題といたしますと、隣接県にまたがる事業や国の直轄等の大規模事業に関しましては、各地方自治体の条例とか省庁間の差というもので非常に手続的に重複が起こり、二度手間があったりして、非常に経済的なロスを生み、大きな混乱がもたらされているというようなことが報告されたりしておりますが、そういう現状認識はおありでしょうか。
  64. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) おっしゃるように手続面におきまして、例えば自治体が条例なり要綱なりに基づいてやっておりますときに、それぞれの団体によって若干の違いがあったり、また国自体といたしましては大きい事業につきましては閣議決定要綱に基づきまして統一的な手続をやっておるわけでございます。  私どもといたしましては、そういった中でおおむね適正に行われているという認識を持って、不平不満があるというようなことはそれほど聞いてはおらないわけでございます。現場では、お互いの団体が調整をしながらやる、または事業当局と環境部局の間で話し合いをしながらその辺は調整をとっているようでございます。しかし、先生が御指摘になるように、経済的なロスが生じたりまた手続の重複が起こるというようなことがございますれば、やはりそれは一つの問題点になるわけでございますので、私どもといたしましては、その辺の事情につきましては今後ともよく勉強してまいりたいというぐあいに考えます。
  65. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 各地方自治体は現在三十七団体が条例によるあるいは要綱によるアセスメントがあるということでありますけれども、全国知事会とかあるいは全国市長会からアセスメントの法制化、すなわち早期にそれを制定してほしいという要望が相次いでいるという現実はあると思いますが、いかがでしょうか。
  66. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 先生が御指摘になりました三十七、私どもが今手元に持っておりますのは、政令指定市も含めて整理しますと条例が四団体、要綱が三十八団体、四十二団体でございます。  環境影響評価につきまして、今回基本法では法制的にその位置づけをきちっと行ったわけでございます。今後、そういう要綱なり何なりを定めたいという地方公共団体の意見があることも聞いておりますし、基本法におきましてアセスメントということを法制的に位置づけるということになりますと、私どもとしましてはそういうような動きに一つの弾みを与えるのではないか、私どもとしては逆にそういう地方公共団体の動きもやはり歓迎し、私どもとしてはできるだけのお手伝いをしてまいるべきではなかろうかというぐあいに考えるわけでございます。
  67. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 昭和五十六年の国政のモニターでアセスメントが必要だというのが九〇%、法制化が必要だというのが七四%。アセスメントの法制化は既に国民の意識としてその必要性と重要性が根づいていると思われますが、五十六年以降、環境庁としてはアセスメントの法制化についての世論調査あるいは意見調査、あるいは各諸団体からの意見聴取などを行われたことがあるでしょうか。
  68. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 五十六年以降特に調査はやっておらないようでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、今回中公審、自環審で御審議をいただくに当たりましては、いろんな団体、いろんなところからの要望、意見等も徴した上でああいう御結論をいただいた、いろいろな意見はあるけれども、とにかく経済社会情勢の推移等を見ながら見直していくという意見が大勢であったというような答申になったわけでございます。
  69. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 常に審議会の意見に立脚して考えられるという各省庁の立法パターンというのはわからないわけではないわけですが、しかし本当に国民の意識に根づいた立法化を図っていくというためには、環境庁としてはそういった国民の意識調査というものも私は非常に重要ではないかと思います。どうかそういう点について、これからさらに国民の意識というものが那辺にあるのかというところを御調査いただきたいと思いますが、そういう方策というか施策につきましていかがお考えでしょうか。
  70. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 私どもは、今回この基本法におきましてアセスメントの重要性というものを位置づけ、この基本法考え方のもとに関係各省におきましてアセスメントに積極的に対応していただけるというぐあいに考えているわけでございますが、そういったような状況をも踏まえて、もう一度意識調査をする必要があるというぐあいに考えられる場合には、私どもとしてはそれは考えてまいりたいというぐあいに考えます。
  71. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 一九六七年だと思いますが、アメリカで環境影響評価に関する法律が成立いたしましてから、諸外国でのアセスメントの法制度化というのは一つの大勢を占めていると思いますが、そういった状況についてどのように認識しておられるでしょうか。
  72. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 先生指摘のように、環境影響評価の考え方が法律上明らかにされましたのは一九七〇年に施行された米国の国家環境政策法が最初であるということは御指摘のとおりだと思います。その後、環境影響評価はほとんどの先進諸国や多くの途上国において制度化されてきたわけでございます。  現在、環境影響評価法を持つ国といたしましてはカナダ、ドイツ等がございますし、また環境保全に関する一般的な法律におきまして環境影響評価を定めている国といたしましては米国、フランスがございます。そのほかイギリスにおきましては都市計画関係の法体系の中で環境影響評価が行われており、またイタリアにおいては行政運用により環境影響評価が行われているということで、環境影響評価と申しましてもその国の実情、事情等においてやり方がいろいろでございます。  アメリカにおきましては国家の政策に関与する部分というようなやり方もやっているようでございますし、そういう意味では環境アセスメントをやる範囲、また手続等についてもいろいろあるようでございます。しかし、いずれの国におきましても、アセスメントをやろうという一般的な体制の中で、それぞれ特色を持った法制または行政措置の中でやっているという状況にあろうかと存じます。
  73. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そういたしますと、今回環境基本法を制定するに当たって、世界の中で先進的な環境保全の役割を担おうとする我が国においては、我が国における風土に適した実効性ある制度を今後は検討するということが十年前に決まっているわけでありますから、そういった作業が消えてしまったということについて私は非常に残念であります。ぜひ今回は早急にそういった検討を行われたいというふうに考えます。  私は、今省庁の方たちのお話を聞きまして、決して法制化の道を閉ざす協議はなかったというふうに認識をいたしました。そして今まさに、いつまでかということが問題になっているわけですけれども、実は私は、これを決めるのはやはり立法権の問題でありまして、各省庁間のそういった話し合いというものが先行するということに国会のあり方として疑問を持たざるを得ないということを強く述べさせていただきたいと思っております。  次に、アセスメントに関係をいたしまして、きょ う配付をいたしました「長良川河口堰に関する報告書」というものに基づきまして二、三御説明を求めたいと思っております。  広大な濃尾平野を流れる木曽の三川、長良川の河口五・四キロの地帯に既に巨大な柱が林立をしております。昭和六十三年にスタートいたしまして、千八百四十億の総工費、担当する事業体は大成建設、鹿島建設、五洋建設と言われておりまして、国庫負担が二十三年間の間に償還利息を含めて約一千億、こう言われております大きな工事であります。  しかし二十年たちまして、二十年前の科学的技術が全く環境に配慮しないというものであったということについて、現在さまざまな批判をされております。平成四年三月に長良川河口堰に関する追加報告書というものが出てまいりまして、水質への影響とかカジカ類等の回遊性魚類への影響についての報告書が出されたということを承知しておりますが、環境庁はこの環境影響評価の作業にどのようにかかわられたのでしょうか。
  74. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 平成四年四月に公表されました長良川河口堰建設に係る環境に関する追加調査は、学識経験者の指導を得て建設省及び水資源開発公団において実施されたものでございますが、学識経験者の選定、あるいは調査の手法、あるいは調査内容、取りまとめ等調査の実施について環境庁とも調整を図りつつこれらを進めたということでございます。
  75. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、この追加調査が行われるようになったといういきさつというのは、環境影響評価に欠陥があったということが出発点となっているんでしょうか。
  76. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) この追加調査がなされたということは、平成二年の十二月に公表しました「長良川河口堰問題に関する環境庁長官の見解」というものに沿ってこういう追加調査が行われたということでございまして、長良川が良好な環境の河川であるという認識の中でこういうふうな環境庁長官の見解を出したわけでございまして、こういうものに即しながら調査が行われたということでございます。
  77. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 工事が二十年にわたるという大きな工事もさることながら、ある程度の期間を経ますと事前に予測したものではないような影響も出てくるということで、私は、環境影響評価のいわゆるアセスメントと言われるものを、事前に限ることなく事後においても、すなわち工事中あるいは施設が建設された後にもフォローアップし、なおかつモニターをしていくというシステム環境保全のためには非常に重要だと思うんです。その点については、いわゆる環境影響評価の時期的射程距離といったものについてはどのようにお考えでしょうか。
  78. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) ただいまの御質問は、一般的に環境アセスメントのような環境影響調査を事後的にも追加的にやるべきであるというような御趣旨の質問であったでしょうか、ちょっとよくわからなかったんでございますが。まことに失礼ですが、そういう意味だったでしょうか。
  79. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 開発事業に関するアセスメントというのはその開発事業が始まる前に事前に予測し評価をするという手法なんですが、私は、新しい時代環境影響評価というのは、事前だけではなくて工事中のフォローアップ、そして事後、施設の後、予測に反して環境が汚染されることもあるわけですから、そういういわゆる事後のモニターということも含めていわゆる環境影響評価ということを広く考える時代になってきているんではないかというふうに思っておりますので、その点について御見解をお尋ねいたします。
  80. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 先生指摘の点はごもっともでございまして、予測したことと現実に起こったということが違った場合にそれをどう取り扱うのかということは非常に重要なことでございます。  そこで、私どもといたしましては、環境庁意見を求められた際に、工事中における注意事項という御指摘も申し上げておりますし、場合によって、環境影響評価の予測というものが不確実性を伴うような場合におきましては、それを事後にフォローしていただきたいというような意見も申し上げたり、またそういうことで関係各省と話し合っている状況でございます。
  81. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、中部弁護士会連合会の公害対策環境保全委員会のこの報告書は、いわば長良川河口ぜきの影響評価については自然保護団体その他の学会の意見と、それから建設省などがやられている、建設OBの人たちが入っておられるようないわば評価団体の評価とが真っ二つに分かれているわけです。  そういった状況の中で、いわば中立的な第三者の報告書として私は価値が非常にあってしっかり読むべきだと思うんですが、この報告書では「中立的な第三者機関による公正な環境影響評価を実施すること。」というふうに書いてあるわけですが、この見解についてどのようにお考えでしょうか。建設省と環境庁にお尋ねいたします。
  82. 坂本忠彦

    説明員(坂本忠彦君) 長良川に関します環境調査につきましては、事業着手前の昭和三十八年から四年余りにわたりまして、約九十名に上ります専門家によりまして木曽三川河口資源調査団によるいわゆるKST調査と申しておりますが、この調査を実施したわけでございます。また、工事期間に入りましては、平成二年十二月の環境庁長官の見解を踏まえまして、従来より実施してきました環境調査内容それから環境保全対策につきまして建設省、環境庁の両省庁で点検いたしまして、その結果、水質、カジカ類等の回遊性魚類、高水敷の貴重な動植物の三項目につきまして環境庁と十分協議の上、事業者である建設省と水資源開発公団で追加調査を実施したものでございます。  追加調査を進めるに当たりましては、水質五名、カジカ類三名、高水敷の動植物七名の十五名の専門的知識を有する学識経験者により、調査の方針、調査結果の検討、分析等に関し指導を得、報告書の具体的記載内容についても指導を得てきたものでございまして、その結果は十分に客観的な評価がなされた調査であると考えております。
  83. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 各種事業の実施に際しまして、環境影響にかかわる調査につきましては、事業者が調査を実施することによって調査結果が事業計画に的確に十分反映されるというようになること等から、その事業を行う者の責任において実施することが定着しているというふうに考えてございます。  平成四年四月に公表された長良川河口ぜきの建設に係る環境に関する追加調査の実施につきましても、平成二年十二月に示した環境庁長官の見解に沿って学識経験者の指導を得ながら建設省及び水資源開発公団において調査が実施されたわけで、その結果も関係自治体及び地元住民にも説明されてきているということでございます。環境庁としても、基本的にはこれらの措置によって調査の公平さは確保されているものと考えでございます。
  84. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そういう御返事はもうさまざまの委員の方がお尋ねになって、さまざまな質問に対して異口同音に答えておられるわけです。私が申し上げましたのは、いわゆる中立的な弁護士会のいわば提言というものを、前にお配りをいたしたと思うんですが、どのように受けとめられたかということを再度お尋ねしたいと思います。
  85. 坂本忠彦

    説明員(坂本忠彦君) 中弁連から出されました報告書は、三月一日に、事業の実施につきましての責任機関でございます建設省中部地方建設局が受理いたしました。その報告書を検討させていただきましたが、その中で、長良川の治水対策の重要性などについて基本的に理解を示されている点もありますが、私どもと見解を異にする点もございます。一つ参考とさせていただくつもりではございますが、見解を異にする部分につきましては、三月五日に建設省の見解を公表し、中部弁護士会連合会にもその見解を伝えているところでございます。
  86. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 環境庁の方、いかがでしょうか。
  87. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 中部弁護士会連合会がま とめられた報告書につきましては、我々としても一つの御意見として参考にさせていただきたいと思っております。
  88. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 最後に、長官にお尋ねをいたしたいんですが、長官自身環境アセスメントの法制化のいわば期間というものはどの程度のところに置くべきだと考えられるのか。今の状況について、まさに必要ではないかということであります。  とりわけ今の閣議決定というものの限界というのは、当然、法的拘束力の差だけではなくて、いわゆる各法令が優先するわけで、法令の中に環境庁長官意見を述べるという条項を持つ法令というのは少ないということで、所管の主務庁の判断が優先していくということについて、私は環境庁の指導的な役割を心から期待するものでありますので、ぜひとも立法化については御尽力いただきたいと思っているのですが、その点を最後にお話しいただきたいと思います。
  89. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) アセスメント法の立法化の問題でございますけれども、本来環境影響評価は非常に重大な、そしてまた重要な面を持つことでありますので、これに対して我々環境庁としては後退した考えを持っていることは毛頭ございません。  むしろ環境影響評価というものに、積極的にその重要性を認識して、そして正しくアセスメントをつくることが、地域住民、それからまたその原因となる一つの産業構造、そういうものから見ても非常に大事なことでありますので、これは環境影響評価に対して全く後退していることではございませんし、なお、今回の基本法においては、その重要性というものを殊さらに取り上げて、法制的に位置づけるということまで実は考えておるわけでございます。  ただ、先生今おっしゃいましたような、それでは単独のアセスメント法についてどう考えるかということでありますけれども、今申し上げましたように、その重要性は私も十分認識しておりますし、今は環境問題に取り組む枠組みづくりと言ってもいい基本法案を国会に御提出させていただいておりますときでありますので、まずこれの一日も早く成立することを念願しております。そしてまた、その後で今度、アセスメント法に限らずに、基本法の示される枠内で幾つかの我々の国民生活に直結する個別法あるいは実定法が必要となれば、それにもまた取り組まなければならないという任務もございますので、アセスメント法も含めて真剣に考えていきたいと思っております。
  90. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 最後に、長官に心からお願いとお尋ねをしたいんですが、環境アセスメントの法制化に向けて御努力いただけるでしょうか。
  91. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) これはもう真剣に努力してまいりたいと思っております。ただ当面、環境基本法の制定ということに全力を挙げますけれども、それとともにアセスメント法についても極力取り組みたいと思っております。
  92. 松前達郎

    委員長松前達郎君) 本件に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開いたします。    午前十一時五十七分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  93. 松前達郎

    委員長松前達郎君) ただいまから環境特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、公害対策及び環境保全基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  94. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 国会に出まして初めての質問でありますので、一生懸命頑張りますからよろしくお願いをいたします。  初めに、私は、国民が将来にわたり健康で安心できる生活を送っていくためにも、自然環境と国土の保全は大変重要な国の施策であると思います。  今環境問題は我が国だけの問題ではなく、国境を越え地球全体でのかかわりが重要視されております。人類を初めとする動植物の生存の基盤である地球環境を、将来にわたり人類全体が賢明な利用をしていくためにも、世界全体を視野に入れた環境政策を推進していくことが重要であると思います。こういった観点に立ち、以下質問に入らしていただきます。  まず、開発途上国に対する環境協力についてお尋ねをいたしたいと思います。  環境分野の国際貢献は、世界の中の日本としてPKOや一般的な政府開発援助、いわゆるODAと並んで最も重要な国際貢献の一つであると考えます。したがって、環境ODAの拡充、強化や開発途上国に対して我が国のかつての苦い経験とそれを克服した技術、さらにはノウハウ、資金の提供はもとより、専門家の派遣など積極的に推進していくべきと考えますが、現在の取り組みと今後の課題についてまずお尋ねをいたしたいと思います。
  95. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 釘宮先生の御質問にお答え申し上げます。  私も先生のお考えと全く同感でございます。したがいまして、これまで我が国が蓄積し、そしてまた積み上げてきた環境保全に関する多くの経験、またすぐれた技術、これを活用いたしまして、開発途上国における環境問題に取り組み、これを支援していくということは、非常に大事な我が国の国際貢献の一つの柱であるという認識も同様でございます。また今回、これからまた御審議をお願いすることになります環境基本法案におきましても、この問題は法案の中に流れとして盛り込んでございます。  なお、環境庁としましても、従来から途上国の環境の把握に努めながら、国際協力事業団を通じた各種の環境協力プロジェクトに積極的に対応しているところでもございます。これから先も政府開発援助大綱、あるいはまた中公審、自環審などの答申、国際環境協力のあり方などに沿いまして、関係省庁と一層連携を深めて協力を拡充してまいりたいと思っております。
  96. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 大変心強い長官の決意を聞かせていただいたわけであります。  そこで、専門家の派遣等いわゆる国際協力の中で、技術協力の面で環境庁推薦等により、アジアを初め世界各国へ専門家が多数派遣をされております。それもその数が最近急増をしてきております。ちょっと調べてみたんですが、平成二年が六十三名、平成三年で六十五名、さらに昨年度は十二月末ですが五十八名というような形で皆さんがその専門性を生かして海外に出られておる。大変すばらしいことだと思うんですが、こういう専門家の人たち世界各国へ派遣されるわけでありますけれども、政情不安な国もありますし、派遣される人にとっては、国内に残された家族の問題や帰国後の身分保障、さらには経済的な問題など、かなりリスクがあるわけであります。十分な保障、待遇、処遇をしてあげるべきだというふうに思うわけであります。  さらに、私は特に地方議会から出た人間として、地方公共団体の方からも、平成二年には六十三名中十人、三年度には六十五名中十六人、四年度の十二月末で五十八名中十九人と、実に三人に一人が地方公共団体から派遣をされておるわけであります。  聞くところによりますと、国家公務員に比べると地方公共団体の職員の場合は、いわゆる身分保障や待遇、処遇というものが必ずしも十分とは言えないというふうに聞いております。そういうふうなこともあわせて、こうした海外派遣の皆さんに対する保障、待遇、処遇というものがどのようになっているのか、また今後の配慮していくことについてのお考えをお聞かせいただきたい。
  97. 加藤三郎

    政府委員加藤三郎君) 先生が御指摘になられましたように、我が国の地方公共団体には地域環境管理について豊富な経験と人材を有しております。したがいまして、先ほど大臣からお答え申し上げました環境分野での国際協力を進めていくという上では、地方公共団体が極めて重要な役割を担っているわけでございます。  環境庁といたしましても、先生数字を挙げられ ましてもう既にお触れになられましたように、地方公共団体との密接な連携のもとに国際協力事業団、JICAを通じました専門家の派遣、あるいは途上国から日本にやってきます研修員の受け入れ、そういった技術協力を推進してきているわけでございます。  世界じゅうに、アジアのみならずアフリカ、南米、いろんなところに日本の専門家が散らばってございますが、例えばそのうち二年前後滞在いたします、私ども長期派遣専門家と言っておりますが、長期派遣専門家の場合、現在でいきますと、タイ、インドネシア、マレーシア、そういった国で活躍をいたしておるわけでございます。  問題は、この地方公共団体などから出ます専門家が、それじゃ後顧の憂いなく海外の地においてお仕事ができるかという問題でございますが、この問題につきましては、外務省を初め関係機関の御努力によりまして、近年は前に比べますればかなりの改善がされてきたというふうに思っております。特に給与面におきましては、非常に低いというようなことが専門家派遣の障害になっているという例は少ないかというふうに認識しておりますが、問題はむしろ人事面でございまして、特に地方公共団体から長期で派遣される場合には、例えば派遣期間中の後任者の補充の問題、あるいは帰ってきて後の処遇の問題等、人事の問題が大きな問題になっております。これが大きなネックかと考えております。  私ども環境庁におきましては、昨年の五月に中央公害対策審議会及び自然環境保全審議会でこの問題も含めて国際環境協力のあり方について御議論をいただきまして、御答申をいただいております。その中で、国際環境協力を着実に実施できる体制の整備をすべきだという強い示唆をいただいております。これも受けまして、昨年の十二月に私ども所管の法人に環境専門家を養成する長期戦略検討会というものを設置いたしまして、今申し上げましたようにいろんなネックをどうやって解決していったらいいかという方策を検討しているところでございます。  また、先ほど大臣からお答えございましたように、今回御提案申し上げております環境基本法におきましても、地方公共団体または民間団体等による国際環境協力の活動を促進するための措置についてもこの中に書き込まれている次第でございます。  私どもといたしまして、今後とも地方公共団体を含む関係機関との連携を一層強化いたしまして、開発途上国からの専門家の派遣の要請にこたえられるよう十分努力をしてまいりたいと思っております。
  98. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 これは環境庁だけではなくて、外務省の協力等も得ながらやっていかなきゃならない問題でありますけれども、やはり後顧の憂いなく海外にそうした形で出ていけるような条件整備をしていただきたい、このように思います。  次に、環境基本法の本格的な論議は今後なされるわけでありますけれども、この環境基本法の問題について若干私として触れさせていただきたいと思うんです。  環境基本法基本理念としては、地球の限られた環境地域間、世代間で共有していかなければならないという基本的認識のもとに、継続可能で環境に及ぼす負荷の少ない経済社会の構築と、我が国のこの面での国際的取り組みを率先して推進していく体制の確立が柱となるべきだと思います。  そこで、とかくこうした法律の制定の際には建前論が先行しがちであります。そして、内容的にどうしてもそういう細かいところまでの規定がありませんので、例えばこういう環境問題等になりますと、末端行政においてその運用の際にしばしば混乱を生じるケースが出てこようかと思います。そういう意味で、今回の基本法についてはそうしたことがあってはならないというふうに考えるわけでありますが、その策定過程における基本姿勢と配慮といった点についてお答えをいただきたい。
  99. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 御指摘のような問題点に対処するために、環境庁として法案策定過程においてどう注意したかという問題点の指摘でございます。  今日の環境問題は、午前中大臣から御答弁申し上げましたように、従来のような産業公害型の環境問題、これについては引き続き私ども真剣に対処していかなければならないことはもちろんでございますが、むしろそれ以上に、またそれと並んで大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動の定着とか、また人口社会経済活動が都市に集中したことによって起こる都市型、生活型の公害問題、さらには地球環境問題、また身近な自然の減少問題ということがあるわけでございます。  さらにはまた、先生指摘になりました地球環境問題、これにつきまして国際的な連携も図っていかなけりゃならぬ、こういうような状況のもとにございますと、やはり新たな環境問題に対しましては社会経済活動そのもの、事業活動そのもの、生活そのものから発生してくるという点が非常に多い。  そういうことになりますと、これからの環境問題にどう対処するかという一種の考え方というものをきちっと打ち立てる必要がある。特に関係各省を通じましていろんなところで政策が行われているわけですが、そういった政策の中に今申し上げたような環境に対する視点というのをきちっと盛り込んでいっていただく必要がある。そういうことになりますと、やはりこれからの環境に対する考え方理念というものをきちっと打ち立てる必要がある。しかも世界共通認識となっているところを踏まえてそれを打ち立てる必要があるというようなことで、まず理念をはっきりと提示することに最大の重点を置いて議論されたということが一つございます。  それと同時に、やはりそういった認識に立って、これからの環境問題はそれぞれの人がそれぞれの立場でその任務を果たしていく必要がある、役割を果たしていく必要があるということから、国、地方公共団体、事業者、国民の責務という格好でそれぞれの立場における責務というものをはっきりさせたということでございます。  さらにそれ以降は、政府がこれから環境問題にどういう政策のフレームワークで取り組んでいったらいいのか。これは基本法でございますので細部にわたる書き方はしておりませんけれども基本的な大枠を、こういった格好でやっていきたいという大枠をこの基本法において掲げさせていただいたということでございまして、今後はこの基本的な理念、それに基づく基本的施策のもとに総合的な枠組みをつくりまして、環境政策を総合的、計画的に推進してまいりたいという意気込みでつくったものでございます。
  100. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 次に移りたいと思います。  今回の基本法の中で経済的手法の検討もなされておると聞いております。いわゆる経済的手法としては、価格メカニズムを通じての対策を位置づけると同時に、国際的な整合性や国民的合意の形成という点で解決すべき課題は多くありますが、具体的な施策としての環境税など、基本的には思い切った積極姿勢を示すべきである、このように私は考えるわけでありますが、御所見をお聞かせください。
  101. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) ただいまお答え申し上げましたように、これからの都市・生活公害とか地球環境問題に取り組むということになりますと、やはり通常の事業活動、日常の生活、そういった幅広い社会経済活動そのものを環境への負荷の少ない形で営んでいく必要があるわけでございます。そういうことになりますと、規制といったような一種の警察行政的な考え方でこれに対処することは極めて困難である、それのみに頼ることは極めて困難だということになろうかと思います。  そういうことから、従来の手法に加えまして、先生指摘のように市場メカニズムを通ずる経済的手法、これは例えば先生がお挙げになりました環境税でございますとか、または廃棄物に対する 課徴金を賦課して廃棄物をできるだけ少なくするようにしていくとか、または容器等につきまして、一たん消費者のところに回ったものがまた生産者のところに戻ってくるというような仕組みを確立するためにデポジット制度をつくるべきでございますとか、そういうことがいろいろあるわけでございます。それが今世界的にいろいろ試みられておりまして、有効であるということが世界のほぼ共通認識になってきているかと思われますし、また幾つかのサミットを通じまして、また先般の地球サミットにおきましても、そういった政策を開発しそれを推進していくべきであるということが合意されているところでございます。  そういった考え方に基づきまして、基本法におきましては、環境に対する負荷の発生に関連する活動を行う者、すなわち負荷活動を営む者が自分の活動にかかわる活動から環境に対する負荷を少なくするために経済的なインセンティブを与える、またはディスインセンティブを与える施策の重要性とその考え方基本法に盛り込むことにしたわけでございます。  御指摘に関する環境税との問題につきましても、基本法におきましてはそういった重要性にかんがみまして個別措置の効果、影響等を適切に調査研究し、個別措置を講ずる必要がある場合には、当該施策を活用して「環境保全上の支障を防止することについて国民の理解と協力を得るように努める」というふうに規定したところでございます。  これは基本法でございますので、やはり考え方及びその手順につきまして基本法では書かせておいていただいている。実際に個々の措置をとります場合には、やはりこれは国民の負担に関することでございますから、この基本法考え方を踏まえまして、現実には実定法が要るわけでございますので、やはり調査研究、それから国民の理解と協力ということを踏まえた上で実定法を制定していくべきである、こういう考え方のもとに規定を入れさせていただいているということでございます。
  102. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 いわゆる環境アセスメントについてはその重要性と考え方基本法で明記すべきことは論をまたないわけでありますけれども、若干そのアセスメントについてお伺いをいたしたいと思うわけであります。  産業振興や地域開発、さらにはまた大規模事業の推進に当たってはトラブルが頻発をし、事業や開発が中断されたり大幅に遅延するケースが最近目立っております。こうした問題に対処するため、事業や開発の実施に先立ち環境アセスメントを行うことが必要不可欠となってきております。このため、環境庁として産業界や関係省庁とも十分に調整をし、円滑な事業や開発の推進にも資するような適切な環境アセスメントを実施していくよう努める必要があると思いますが、この点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  103. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 御指摘のように、開発事業を実施するに際しまして事前に環境影響評価を行いまして、環境保全上適切な形で開発事業を実施することが極めて重要なことだというぐあいに考えておるわけでございます。  そういうことで、政府におきましては閣議決定の環境影響評価実施要綱や公有水面埋立法等々の個別法に基づきまして環境影響評価の推進を図ってきたところでございますが、環境保全上の支障を未然に防止するという考え方は今後あらゆるところでその重要性を確認しこれを徹底していく必要があろうということから、今回御提案申し上げております環境基本法案におきまして環境影響評価の重要性、考え方を法制的に位置づけたということでございます。すなわち、これは午前中にも申し上げましたが、環境基本法案においては、環境影響評価について国は環境影響評価を推進するため必要な措置を講ずるというぐあいに位置づけたところでございます。  環境庁といたしましては、我が国環境影響評価が適切に運用される、またその中身が充実されるということに今後とも努めていく必要がある、御指摘の点を踏まえまして今後充実していく必要があるというぐあいに考えております。
  104. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 最近、ゴルフ場や産廃の処理施設等の建設の中で住民とのトラブルが絶えません。  私は大分県でありますけれども、大分県でもそういう問題が起こってきて、我々もその間に入って大変困っているわけであります。こういった場合に末端行政というか、直接住民と接している行政はなかなかそのことについて明確な対応がとれないというようなケースが非常にあるわけでありまして、今後そういう意味で事業者に手続的な義務を負わせることは当然でありますけれども、しかし住民に対しても、例えば説明会のボイコットなどを防止するとかそういった意味での義務をきちんと負わせるというようなことが私は必要ではないかというふうに考えるわけであります。特に環境行政の不幸は、行政と産業界と国民との不信感というのが私は非常に大きいと思います。そういう意味で、これは答弁は要りませんけれども、こういった問題が今後非常に重要だというふうに思いますので、私の意見として聞いておいていただきたい、このように思います。  次に、いわゆる環境教育について御質問をさせていただきたいと思います。  人間と自然環境との関係が危機に満ちたものとなっており、自然の浄化作用能力を超えた企業活動や生活を抑制することが求められています。便利さ、快適さ、安さばかりを追求するのではなく、少しぐらい高くても環境負荷の少ない商品やサービスを選択してそれらを長く使用することや、省エネルギーやリサイクルに積極的に取り組む環境に優しいライフスタイルの実現が望まれていると思います。  このためには個人が消費の段階から本当に必要なもの、環境負荷の少ない再利用、再生利用を必ず実施していくとともに、企業も省資源、省エネルギーの製品開発を一層推進し、繰り返し利用できる回収システムの整備や部品の保管、修理体制を社会全体として確立していくことが必要であります。こうしたことの意識を啓発するための家庭内や学校での環境教育も重要であると思います。環境庁としては、こうした国民の意識の改革を進める啓蒙運動の展開等、環境教育をどのように推進していったらいいとお考えなのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  105. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) まさに今日の環境問題は先生指摘のような視点があるわけでございます。そこで私どもといたしましては、人と環境とのかかわりにつきまして国民の理解が深められるということが大事だということが一点。同時に、その理解をもとにいたしまして、環境保全のために望ましい行動がとられるような格好環境教育が行われる必要がある。この二つが大事だろうというぐあいに考えているわけでございます。  そこで、そういう視点から環境教育を推進するためには、国民に対しいろんな格好で教材や情報の提供が行われるということが大事であると同時に、やはり住民との関係が深い地方公共団体によるこういった取り組みへの支援というものを大切に努めていく必要があろう。さらには、お触れになりました学校教育の面においてそういった充実を図る必要がある。そのため、文部省とも十分な連携を保っていく必要があろうというぐあいに考えているところでございます。  こういった我々の取り組み、また環境教育の重要性を踏まえまして、今回御提案申し上げております環境基本法案におきましても、環境教育の推進をこれからの環境行政、環境政策基本的施策の重要な柱の一つとして位置づけているところでございまして、私どもといたしましては、環境教育の一層の充実のためにさらに努力を続けてまいるつもりでございます。
  106. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 よろしくお願いしたいと思います。  次に、自然保護のための特定民有地買い上げ事業についてお伺いいたしたいと思います。  我が国の国立公園、国定公園の特別保護地区等にあっては、自然保護のため規制を行い私権を制限しております。特定民有地買い上げ事業の制度 は、自然保護と開発行為との調整に当たり極めて重要な機能を果たしており高く評価するものであります。しかしながら、我が国の国立公園はアメリカ、カナダの国立公園と違ってすべてが公有地とはなっておらず、重要な地域にも民有地が存在すると聞いております。  そこで、国立公園のすぐれた自然を保護していくためには、特定民有地買い上げ制度をさらに積極的に活用していくことが必要と考えますが、この点について見解をお伺いしたいと思います。
  107. 大西孝夫

    政府委員(大西孝夫君) お答えを申し上げます。  私ども基本的に今先生指摘のお考えと同じ考え方に立って行政を進めておるところでございます。  まず、自然保護のための特定民有地買い上げ制度、ちょっと説明をさせていただきたいと思いますけれども、国立公園等において自然保護のために、一方で規制があり、私権と調整を図る必要があるという事態がどうしても出てまいりますので、公有化しないと厳正な保護が図れない地域について、土地を都道府県が発行する交付地方債という形で買い上げをいたしまして、私どもはこれに要する元利の償還金及び買い上げ事業費に対して一定の補助率で補助を行っているということでございます。  対象地は、今ちょっと先生もお触れになりましたが、国立公園、国定公園の特別保護地区、それから第一種の特別地域、それから国設鳥獣保護区のうちの特殊鳥類とかあるいは天然記念物に指定している鳥獣等の生息地内の民間地、こういうことになっておりますが、平成三年からはさらにこれを少し広げまして、二種、三種の特別地域でありましても特に自然環境あるいは動植物の生息地、生息環境が非常にすぐれているという地域につきましては新たに補助対象に加えるということにいたしております。  この制度は、先生もおっしゃいましたように、自然保護と開発行為との言うならば調整に当たる上で非常に重要な機能を果たしておりますし、今後もより一層果たしていく必要があると考えておりますので、今後とも積極的に活用してまいりたいと考えておるところでございます。
  108. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 この制度で実は今回大分県の湯布院町にある小田野池周辺の民有地を買い上げていただくことになったわけでありますが、この土地はただいまお話がありましたように第二種の特定地域でありまして、そのために業者がリゾート開発のためにこれを購入して分譲マンション、ホテルの建設などを計画しておったわけであります。この小田野池というのはやまなみハイウエーの中にありまして大変景観のいいところであったわけでありまして、非常に県民も心配しておったわけでありますけれども、今回のこの制度で我々としては大変喜んでおるわけであります。まだ周辺地域の買い上げ計画もあるようでございますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。  最後に、環境行政についてお尋ねをして私の質問を終わりたいと思うんです。  今まで述べてきましたように、環境行政というのは早急にしかも飛躍的な整備強化が求められておると思います。実は私も初めての質問でありまして、今回いろんなところで資料を調べて勉強もさせていただきましたが、それで質問をつくって、昨日その答弁が、一つ質問で全省庁がかかわるような質問が多々あって実はやめた質問が大分あるんですけれども、これほど縦割り行政を私は感じたことはなかったわけでありまして、それゆえ環境行政というのは極めて全省庁にまたがる問題であるわけであります。  したがって、具体的には今後環境庁環境省に格上げすることを軸に、各省に分散している環境行政を一本化して、総合的で効果的な行政が行われるような体制整備が緊急の課題であるというふうに私は考えるわけであります。極端に言えば、各省庁の上にあって内閣直結のところに位置するというくらいの私は位置づけが必要ではないか、このように思うわけでありますけれども、この点について長官にぜひお答えをいただきたい。
  109. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 先刻来より釘宮先生の御指摘の数々ございまして、一つ一つ環境行政に携わる者として大変大事な御指摘を含んでおりまして、尊重していきたいと思っております。  ただいまの問題は、機能の問題を含めた環境庁の省への昇格をどう考えるのかといったようなことを含めての御質問と理解するわけでありますが、釘宮先生の御質疑基本になるのは環境行政そのものが多方面にわたって各省庁にそれぞれ含まれておるということからのお考えじゃないかと思いますが、このことにつきまして、実は率直に言いましてそれぞれの行政の中で環境行政に取り組んでおる省庁がたくさんございます。したがいまして、三月三十一日をもって御決定願いました平成五年度の予算の中でも、各省庁のそういうような事業費を含めますと一兆数千億円になる状態でございます。  したがいまして、それなりに非常に広範囲な行政でありますけれども、ところがそれぞれの省庁に附属しております環境行政というものはそれなりに意味と歴史がございまして、その省庁でなければこなせないという面も私はあるのではないかと思うんです。例えば、通産行政の中には通産省を離れてはなかなかこれは環境行政として進めにくいという点もあろうかと思いますし、建設省にある面につきましても同じようなことが言えるんじゃないかと思います。  ただ、いずれにしましても環境庁としましては、環境問題そのものが身近な我々の一人一人の生活に直結する中から考えなきゃならぬ問題とともに、また地球規模にまでこれを考えていかなければならないという大変広範囲な問題を含めておりますので、そういう意味におきましては環境庁といたしましても関係各省庁と緊密な連絡、連携をとりながらその任務に邁進したいということで今取り組んでおる次第でございます。したがいまして、環境行政の中における中枢といいますか中核といいますか、そういう立場を理解しながら十分なリーダーシップが発揮できるように、各省庁との連携を深めていきたいというのが第一点でございます。  それから、省への問題でありますけれども、これはまた国全体の行政組織のあり方にかかわる問題でもございますから、現在の私の立場としましては、環境庁というこの組織体制を充実強化して、その中でその任務を十分に果たしていきたいという気持ちでございますので、御理解賜りたいと思います。
  110. 釘宮磐

    ○釘宮磐君 最後に、これは委員長に私はお願いをしたいと思うんですが、衆議院は環境常任委員会というのがありますけれども、参議院は特別委員会となっております。環境行政がこれほど国民的また国家的な課題となって、さらには地球的な課題になってきているそういうときに、この良識の府である参議院に環境常任委員会がないというのは私は極めてバランスを欠くのではないのかというふうに思います。  そういう意味で、議運に諮る等の時期に来ているんではないのかということを最後に私の要望としてお願いをいたしまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  111. 松前達郎

    委員長松前達郎君) ただいまの釘宮委員の発言につきましては、重要な御意見として承らせていただきます。
  112. 河本英典

    ○河本英典君 ただいまの釘宮磐先生ともども、私も初めての質問に立たせていただくわけでございます。釘宮先生は県議会で御経験があったわけでございますけれども、私は議会というものを経験しておりませんので初めてのこういった質問でございます。一生懸命やりますとともに、一つの練習だと思ってやらしていただきますので、よろしくお願いいたします。  まず、大気汚染について少しお話を伺いたいと思うわけでございます。私も実は花粉症でくしゃんくしゃんやって今困っている重大な問題でございますけれども我が国において、ここ二十年来の取り組みによりまして、工場などの活動による かつてのような激しい大気汚染は軽減されてきているわけでございます。しかしながら、大都市においては自動車から排出される窒素酸化物による大気汚染が依然として深刻な状況になっているわけでございます。  これに対して、政府においては昨年、盲動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法、いわゆる自動車NOx法を制定したところですが、現在この法律の施行状態はどのようになっているのかをお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
  113. 入山文郎

    政府委員(入山文郎君) 御指摘の法律の施行の状況でございますが、一部を除きまして昨年の十二月一日に施行されているわけでございます。既に総量削減基本方針がことしの一月二十六日に閣議決定されまして、これに基づいて具体的な総量削減計画を策定する作業が特定地域内の各都道府県において開始されているわけでございます。また、二月九日には製造業、運輸業等の事業所管大臣によりまして、自動車使用合理化指針といったものも作成されたところでございます。  それからまた、いわゆる車種規制についてでございますが、これはことしの十二月一日からの施行に向けまして関係法令の整備を終えまして、現在広報活動等を進めているという状況でございます。  この自動車NOx法につきましては、ことし十二月の全面施行に向けまして現在作業を進めておりますが、関係各省庁それから地方自治体等と十分に連絡をとりながら、法の円滑、着実な施行を図ってまいりたい、このように思っております。
  114. 河本英典

    ○河本英典君 自動車NOx法では、平成十二年度までにおおむね環境基準を達成することを目標としていますが、その実現はなかなか難しいのではないかという声もあるようでございます。  具体的にどのような対策を実施することにより、東京や大阪などの地域において窒素酸化物の総量削減の実効を上げていくのかをお尋ねいたします。
  115. 入山文郎

    政府委員(入山文郎君) この法律の基本方針におきましては、自動車単体規制とそれから車種規制に加えまして、電気自動車などの低公害車の導入、それから輸送効率の向上やトラックターミナルの整備などによる物流対策、それからバイパスの整備や交差点の改良などによる交通流対策、それからまた公共交通機関の利便性の向上などによるいわゆる人流対策、こういった施策を総合的に講ずることにしているわけでございまして、こういった施策の全体の効果によりまして環境基準のおおむねの達成は可能である、このように考えているわけでございます。  環境庁といたしましては、この基本方針に基づきまして関係省庁、自治体と緊密に連携を図ってまいりたい、このように思っております。
  116. 河本英典

    ○河本英典君 いろいろ考えていただいておるようでございますけれども、二十一世紀をにらんでの環境政策の策定に当たりましては、これから確実に迎える高度情報化社会においてでございますけれども環境問題と情報通信基盤との関係で今よく言われておるわけでございますけれども、人が移動するかわりに情報通信を利用して仕事をしたらエネルギーの節約ができて環境改善対策になるというような考え方が言われておるわけでございますけれども、そのようなことについてどのようなものでしょうか。
  117. 山川鉄郎

    説明員(山川鉄郎君) 情報通信はクリーンでエネルギー消費の少ない社会資本でございまして、大きな環境改善効果が期待できるものでございます。例えばテレビ会議システムなどの普及によりまして出張や通勤を削減いたしまして、交通機関による環境負荷を低減できることなどが期待できます。既に米国では、電気通信システムによる大気汚染対策が実施されているものと私どもも伺っております。  人類の経済社会活動自体が国境を越え、あるいは世代を超えて環境への負荷を高めていると言われます。環境問題の解決のためには、国民生活や事業活動そのものを環境と調和したものに変えていくことが必要です。  情報通信は、先生も御指摘になったように、今後訪れると考えられます高度情報社会におきまして社会経済の基盤となるものでございます。こうしたことに大きく貢献していけるものと考えております。
  118. 河本英典

    ○河本英典君 今郵政省からお答えいただいたわけでございますけれども環境庁にもちょっとお伺いしたいわけでございますけれども環境対策に情報通信を活用しようという考え方は方向としては正しいものだと思うわけでございますけれども、この辺、環境政策にこれからこういった考え方の活用は可能であるか、どのように考えていらっしゃるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  119. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 御指摘になりました情報通信を活用することによりまして、物の移動、人の移動が削減されるということを通じまして環境に対する負荷が少なくなるという考え方がありますし、そのようなことをただいま郵政省の方から御答弁申し上げたわけでございます。  こういう議論は私ども承知しておりまして、その議論を踏まえて、これから環境政策を推進していく上で情報通信を環境保全上どう意義づけていくかということにつきまして関係省庁とも十分相談、検討してまいりたいというぐあいに考えております。
  120. 河本英典

    ○河本英典君 ありがとうございます。  四全総や生活大国五カ年計画などでは、情報通信基盤が重要な社会資本として位置づけられておるわけでございますけれども、これから環境問題との関連でもまだまだ不十分だと思いますので、その辺よろしくお願いしたいというふうに思います。  それから、ちょっとほかの質問に移りたいと思います。ラムサール条約のことでございます。私は滋賀県の選出でございまして、琵琶湖という大変環境にかかわりの深いところから出させていただいておる者でございまして、今回の琵琶湖をラムサール条約登録湿地に指定することに関連しまして少し質問させていただきたいと思うわけでございます。  本年六月に北海道の釧路市で第五回のラムサール条約締約国会議が開催されるというふうに聞いております。このラムサール条約とは、昭和四十六年に採択された水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約で、現在日本を含めて七十四カ国が加盟しているものであります。この条約において定義されている湿地という言葉は、いわゆる湿原のようなところから湖沼、河川、干潟など、およそ水に関係する地域はすべて含むような大変広範にわたるものであります。この湿地というものは多様な生物相を有するとともに、渡り鳥を中心とした水鳥の大変重要な生息地でありまして、また高度な水質浄化機能を発揮し、さらには漁業の場としても重要なものであります。この湿地を保全し、それを賢明に利用していくことは、我が国においても国際的に見ても大変意義深いところであると思います。  さて、環境庁はこのたび、滋賀県の琵琶湖を含む五カ所の湿地を釧路での会議までにラムサール条約登録湿地に追加指定すべく、自然環境保全審議会に諮問することを決めたというふうに伺っております。御案内のとおり、琵琶湖は関係する市町村が二十一に及び、面積約六万七千ヘクタールにわたる我が国最大の淡水湖でありまして、毎年五万羽を超える渡り鳥が渡来する我が国有数の水鳥の生息地でもあります。また、琵琶湖は古くから交通の要衝、近畿地方の水かめ、漁業の場、さらには良好な自然環境を有することから風光の地として利用も行われておるわけでございます。昭和二十五年には日本で初めて国定公園に指定されるなど、琵琶湖の適切な保全及び健全な利用が推進され、さらに平成三年には、ヨシなどの生態系を重視した自然環境保全を目指した滋賀県ヨシ群落の保全に関する条例を制定するなど、滋賀県民が一生懸命守り続けたところであります。  滋賀県民の大事な宝の琵琶湖が国際的に評価さ れることは大変すばらしいというふうに考えております用地球的規模で環境問題が議論されるこのような時期に、国際的に重要な湿地の保全に関する国際会議を開催することは、広く国民環境保全の意義について普及啓発するまたとないチャンスであり、ぜひとも成功させてほしいと思っております。  そこで、この釧路での締約国会議の成功に向けての環境庁の決意のほどをお伺いしたいと思います。
  121. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) ラムサール条約の登録湿地につきましてはただいま先生の御指摘のとおりでございますが、実は先生の御指摘にもございますように、今回改めて締約国会議に間に合うように、それぞれの自治体と鋭意協議いたしまして五カ所を新しく湿地として指定することに決めたわけでございます。従来、釧路湿原を初めとして四カ所でございましたが、今回五カ所を改めて指定しますと九カ所になるということでありまして、環境庁としては最大の努力をしてきたわけであります。ただ御案内のように、自治体の御意向も大変重要でございますので、自治体の御意向とともに環境庁の希望が一致するところで湿地登録ができるということになりますので、その手順を踏むために五カ所を選ぶということに今回はしたわけでございます。今の先生の御指摘の琵琶湖につきましても、これは我が国最大の淡水湖でございますが、そのほぼ全域を登録するということになろうかと思います。しかし、これはひとえに滋賀県民の御理解と、また県知事を初めとして指導者の方々の御努力、御協力がございましてこのようなことができたのでありますので、環境庁として深く敬意を表明しておるところでございます。  我が国におけるラムサール条約締約国会議の開催ということは、実は我が国にとっても大変意義の深いことでありまするし、それからまた、ようやく地球環境という大きな枠の中で環境問題に国全体が取り組む、こういう時期に当たりまして、湿地保全の重要性というものを国民に訴える絶好の機会が締約国会議ではなかろうかと思いますし、ぜひこの締約国会議を成功に導きたいということで、外務省を初め関係省庁そしてまた地元の自治体とも連携を図りながら、現在鋭意その準備に遺漏のないよう努力している最中でございます。
  122. 河本英典

    ○河本英典君 琵琶湖のことばかり申し上げて大変申しわけないんでございますけれども、お許し願いたいと思うわけでございます。  琵琶湖は滋賀県のものだけじゃなしに、また単に近畿千四百万人の水源であるということだけでなくて、本当に貴重な国民的財産でございます。これまでも滋賀県では、県政の最重要課題として公害防止条例の全面改正、琵琶湖条例の制定、湖沼法に基づく水質保全計画の策定など、時代に即応した水質保全施策の展開を図ってまいってきたわけでございます。この結果、近年の人口の増加や産業構造の変化の中で琵琶湖の水質がおおむね横ばいの状態で推移しておりますことは、これは努力のかいといいますか、一定の成果であると高く評価してもよいと思うわけでございます。  しかしながら、依然として赤潮であるとかアオコの発生が続いておりますし、最近では北湖でピコプランクトンと呼ばれる非常に小さなプランクトンが大量に発生したり、CODもやや上昇の傾向にあるなど、水質の悪化が懸念されているところでございます。琵琶湖の水質を改善するためには、琵琶湖に流入する汚濁負荷量を削減することが基本でありますし、滋賀県では全国に先駆けて窒素、燐規制の導入を初めとする工場排水の規制や、また高度処理を組み込んだ下水道の整備などのいわゆる発生源対策を中心に施策の展開を図ってきております。これらの施策によって大規模な発生源からの汚濁負荷は大幅に削減されているところでございます。  さらに、滋賀県では従来の施策を大幅に転換するとも言える取り組みを始めております。先ほどもちょっと言いました、平成四年の三月に滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例ということで制定いたしまして、この条例に基づきまして保全地域を指定しまして、保全基本計画を策定し、平成五年三月一日から施行されたところでございます。  湖辺に広がるヨシ群落は湖国らしい自然の風景であるとともに、水鳥や魚の大切な生息場所でございますし、湖岸の浸食を防止して水質を保全するなど、すぐれた自然の働きを有しております。このヨシ群落を保全することは湖自身の健全な自然の営みを重視し、水辺の生態系保全するという我が国でも初めての取り組みであります。また、この条例は今日までの我々の経済社会活動がもたらす自然環境への影響をいま一度考え、持続可能環境への負荷の少ない経済社会を構築するという我が国にとっても重大な課題に挑戦する試みでございます。  そこで質問いたしますが、滋賀県における新たな取り組みであります琵琶湖内の底泥改善事業や、河川の河口部での流入負荷削減対策事業では、対策技術がまだ確立されていないことや、多額の経費が必要であること、さらにヨシ群落の増殖技術の確立や財政負担の増大など、まだまださまざまな課題があるわけでございます。  滋賀県では、これまでも琵琶湖の水質保全に対する先駆的な取り組みをしてきたわけですし、今後とも環境立県を目指した可能な限りの努力を継続していくというふうに聞いておりますが、一地方自治体だけの力では技術的にも財政的にも限界があるわけでございます。さきに申し上げましたように、琵琶湖は単に近畿千四百万人の水がめであるというばかりでなく、貴重な国民的財産であることからして、国としてこのような地方自治体の努力を高く評価していただくとともに、必要な財政面での援助や技術的な指導を積極的に行うべきであるというふうに考えますけれども、今後の国の具体的な見解をお聞きしたいと思うわけでございます。よろしくお願いいたします。
  123. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 琵琶湖における環境改善の事業、その一つはやはり琵琶湖の湖底にある底土といいますか、底泥といいますか、泥を排除する事業とか、あるいはまた汚染が琵琶湖に流入してくるということを防ぐためにも、河川河口部における流入負荷の削減対策事業と、これらはいずれにしても大事な事業でございます。しかも、こういう事業に対して国の補助事業というものが確定されていけばやはりそれなりのことになりますけれども環境庁としましてはこういう事業そのものの推進について側面からできる協力、支援を惜しまないつもりでございます。  それからまた、ヨシ群落の増殖につきましては、このことは今先生が申されたように、環境を整える意味におきましても大変効果の多い事業の一つでございますし、また水生植物やあるいは水鳥の生息などにも大変大事な場所にもなるわけでございますので、そのヨシ群落の増殖技術の確立ということにつきましては、環境庁が委託事業してヨシ群落を初めとした湖辺の水生植物の育成、保全を目的とした調査を今琵琶湖で実施しているところでありますので、これは滋賀県に対する技術面での支援につながっているものと実は考えているところでございます。  今後も琵琶湖の水質保全に対する滋賀県の取り組みにつきましてはできる限りの支援に努めてまいりたいと、そのような決意でございます。
  124. 河本英典

    ○河本英典君 どうもありがとうございます。  環境問題全般じゃなしに、滋賀県、琵琶湖を特定したような質問ばかりで大変申しわけございませんでしたけれども、私ども滋賀県から山さしていただいた議員といたしましては、滋賀県の環境ということを一つの軸といたしまして環境問題に関心を持っていきたいなと思っているわけでございます。環境庁におかれましては、先ほど釘宮議員からもお話がございましたように、ぜひともリーダーシップをとっていただいて頑張っていただきたいなというふうに思うわけでございます。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。  終わります。
  125. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 私は、国民のほとんどすべての人々が毎日口にしている、すなわち人の健康に直接影響を与えている水道の件についてお尋ねしたいと思います。  この水道の水源汚染の問題が深刻になってきている、このままでは安全でおいしい水の供給はできなくなるという大変物騒な話が最近新聞をにぎわしているわけであります。  そこで、水道の水源についてお尋ねしますけれども、去る四月四日の朝日新聞の一面トップに「水道水源の汚染深刻に」というタイトルで日本水道協会が行った調査が公表されております。この調査の目的と結果のポイントについて整理してお尋ねしたいのが一つ。あわせて、厚生省の方で去る二月四日に、水道水源の水質保全に関する有識者懇談会の報告書が提出されておりますけれども、この趣旨についてもそのポイントを教えていただきたいと思います。
  126. 浜田康敬

    説明員(浜田康敬君) ただいまお尋ねの二点につきましてお答えいたします。  まず、先日新聞に載りました社団法人日本水道協会の水道水源の汚染状況に関します調査についてでございますが、これは昨今、水道水源の汚染問題が社会的にも問題になっている中で、同協会が二月十九日に、この構成団体であります全国の水道事業体、市町村の水道事業体千八百九十四に対しまして実態調査を含めましたアンケート調査を行ったわけでございまして、三月十一日までに回答のありました九百団体の事例について取りまとめたものと承知しております。  この調査結果、私どもも見ましたけれども、その中で報告されておりますのは、概要を申し上げますれば、取水口に近い事業場の廃水あるいは未処理の生活排水などによりまして、水道事業が取水の停止を初めといたしましてさまざまな影響を受けているということでありますとか、農薬、肥料の使用あるいは水源上流域での開発に伴います森林伐採などによって水道がさまざまな影響を受けている事例が少なくないというような結果になっております。また、この調査の中には、水道事業者から国や都道府県などに対しまして水質改善について要望をしたというふうな結果なども集約されておりますけれども、なかなかそうした要望によって解決されなかった問題も多いというふうなことがまとめられております。  また、第二点の御質問の有識者懇談会につきます趣旨あるいは報告書内容でございますけれども、今申し上げましたように、水道水源の水質保全問題が昨今極めて重要な課題になっているということから、厚生省内に設けました水道水源の水質保全に関する有識者懇談会におきまして、約三カ月余にわたりまして御議論をいただいた結果が去る二月四日に報告書として私どもの方に御提出いただいたものでございます。  この報告書におきましては、水道水源の水質の現状あるいは水道事業の実態を踏まえまして、将来にわたって安全で良質な水道水の供給を確保するためには、今後工場排水、農薬、生活排水に関する種々の規制的な措置、あるいは生活排水処理施設の整備などを一体的かつ計画的に実施していく必要、それから水質汚染事故発生時の適切な対応といったようなことにつきまして大変幅広い内容にわたる貴重な政策提言をいただいたものでございます。
  127. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 水道水源に起因する水道水質の問題として、被害者の一番多い問題として異臭味の問題が一つあると思いますが、異臭味の発生状況我が国では大まかに見てどのような被害が出ているのか、お答えいただきたいと思います。
  128. 浜田康敬

    説明員(浜田康敬君) 水道におきます異臭味被害の状況でございます。これは申すまでもなく、原因といたしましては、湖沼など水が停滞しやすい水域におきまして各種排水によって富栄養化の現象が見られる、そうした水域から取水している水道におきまして水道水つまり飲み水にカビ臭などの異臭味が発生するといった問題でございます。厚生省では、こうした被害の状況を昭和五十八年度より毎年金国的に調査してきております。  その結果によりますれば、被害人口はここ数年増加傾向にございまして、直近の調査結果であります平成三年度の結果によりますれば、首都圏あるいは近畿圏を中心とした九十八の事業体で約二千万人の水道利用者の方がこうした被害を受けているというデータがございまして、八年間の調査になるわけでございますが、この間約倍増してきているという状況でございます。
  129. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 今の御説明で一千万人、二千万人という単位で毎年のように異臭味に悩まされている国民がいるということですけれども、異臭味というと臭い水ということで健康には影響ないというふうに解釈をされる方も多いようですけれども、とんでもない話なんです。厚生省の国立公衆衛生院の水道工学部長が述べている文章がありまして、ちょっと紹介しますと、  ヒトを含めて動物には生体の防御機能があり、飲み水にしても、食べ物にしても、あるいはそれ以外のさまざまな環境などについても、安全であるかどうかは、いわゆる五感で判断をしています。 こういう前置きがありまして、  (WHO)では、その憲章のなかで、「健康とは単に疾病状態にないという肉体的な状況ばかりでなく、精神的にも社会的にも健全であること」と定義しています。このような定義に従えば、水道水がかび臭かったり、どぶ臭かったりしていても、厚生省や水道局が安全だといっているからとか、あるいは他に水を得る手立てがないでやむを得ず水道水を飲むというようなことは、精神的なストレスとなりますので、決して 健康によい水とはいえないことになります。 つまり国民の何割かの人たちが、健康によい水ではないと厚生省の国立公衆衛生院の水道工学部長が言っているように、決して健康によい水とは言えないものを国民は飲まされている、強いて飲まされている、こういう状態があるわけであります。  ちょっと横道にそれますけれども、私も十数年前に千葉市内に住んでおりまして、臭い水を一カ月間飲まされた経験があります。これは利根川の下流部、手賀沼の水が利根川に出まして、そのすぐ直下流に木下の取水場がありまして、そこから取った水が柏井の浄水場で浄水されてそれを飲まされたということですが、一カ月間私は苦しみました。  家に帰って水割りも飲めない、コーヒーも臭くて飲めない、それからみそ汁も飲めない、レストランに入ってもスープが臭くて飲めない。こういう状態が続いて、初めは我慢をした。次にはなれよう、忘れようと努力をしました。よく覚えております。その後には怒りが込み上げてきました。その後には、もう数週間たっておりますけれども、恐怖を覚えました。こんなに臭い水をいつまでも飲まされて本当に自分の体はどうなっちゃうんだろう、同じように同じ水を飲んでいる何十万人かの人たち、それから同じ水を飲んでいるもっと体力的に弱い人たち、赤ちゃんとかあるいは御老人あるいは病気になっている方々は逃げられないんです。ずっと毎年のように全国民の約二割の人たちがそういう苦しみをしているということなんです。このことを、この重みをきちんと受けとめていただきたいと思います。  水質問題のちょっと別な点から申し上げますと、水道水源に流れ込んでくるいろんな問題、化学物質が多く含まれるという問題ですけれども、今いろんな説がある中で、少な目に見積もったある書物によりますと、化学物質約二万種以上が出回っている、特にそのうちの一万種ぐらいのものが私たちの芽の回り近いところで常に循環しているという説があります。これは多くが使用後には水に入るわけです。  この中で具体的に農薬についてちょっと取り上げてみますと、そこで、農薬を所管している農水省にお伺いしたいんですけれども、使用が許可されている農薬の種類と量について、それからさらに、その許可の際に水道水源に流入した場合の影響とか、あるいは水道の浄水技術によって除去が できるかどうかといった検討がなされているかどうか、これについてお答えいただきたいと思います。
  130. 大川義清

    説明員(大川義清君) お答えいたします。  平成四年九月三十日現在で登録を受けております農薬の銘柄数は六千三十七件でありまして、これらに含まれる有効成分数は四百五十一化合物でございます。また、平成三農薬年度の出荷数量は約四十九万三千トンでございます。農薬につきましては、農薬取締法に基づきまして環境庁長官の定める水質汚濁等に係る登録保留基準に照らしまして、安全性を確認した上で使用時期、方法などを設定いたしまして公共用水域での水質汚濁等の防止に努めているところでございます。  先般、水道法に基づく水質基準及び公害対策基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準が拡充されたところでございます。さらに環境庁におかれましては、水質汚濁に係る登録保留基準値の設定作業が進められております。農林水産省といたしましては、今後とも登録保留基準値の設定に合わせまして農薬の使用時期などの使用方法を定め、その適正使用、指導に努めてまいる所存でございます。  また、農薬の登録の際におきます水道水中の農薬の除去技術の検討に関しましては、そもそも水道原水を含みます公共用水域における水質の安全性ということを確保することを前提としているところでございまして、今後とも登録時の厳正な検査及び適正使用の指導に努めてまいりたいと思っております。
  131. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 今、後半の部分でお聞きしたかったのは、その登録の許可の際に水道の技術によって除去できるものかどうかという検討がなされているかどうか、イエスかノーかでお答えいただきたいと思います。
  132. 大川義清

    説明員(大川義清君) 登録に際して水道原水に含む公共用水域での安全性の確保を前提に厳正な審査の上登録しておるということでございます。したがいまして、お答えといたしましては、除去技術があるかどうかそのものを検討していることはないということでございます。
  133. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 水道の技術には関係なく許可されているということで、それ自体が悪いと言っているわけではないんですが、現実はそうなっているということをまず踏まえて次にお尋ねします。  こういった農薬等の微量化学物質、この人の健康への影響について、もちろん慢性毒性からいろいろチェックはしているんでしょうけれども先ほど言った化学物質の数からしても四百何十種類あるいは許可されている農薬の数が六千何百種類、こういう中の複合的な人体への影響についての科学的知見というのはそうそう簡単に得られるものじゃないと思うんですけれども、そういう点では十分解明がされているんでしょうか、私はされていないと思っているんですが、いかがでしょうか。
  134. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) お話しのように数多くの微量化学物質があるわけでございまして、そういうもののすべてについて人体への慢性的な影響等が明らかになっているということではないわけですけれども、人の健康の保護に関する環境基準が定められている物質や登録されている農薬というようなものについては、項目ごとに慢性的な影響については十分な検討がされているということでございます。  また、お尋ねのこういう微量化学物質の複合的な影響でございますが、これにつきましては現在の科学的な知見では評価が困難であるという実態でございます。十分解明されているということは言えないわけでございますが、今後ともそういう面での知見の集積には努めていかなきゃいけないというふうに考えてございます。
  135. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 十分解明されていないとすれば、対応としては水道でどれだけ除去できるかということになると思います。厚生省にお尋ねしたいんですが、水道事業のサイドから技術的なあるいは費用的な面での水質への対応の能力といいますか限界といいますか、御説明いただきたいと思います。
  136. 浜田康敬

    説明員(浜田康敬君) ただいまお尋ねの件は、原水に一定程度化学物質等が含まれていた場合に水道の処理技術でどの程度の対応が可能かというふうなことだと伺いました。  これにつきましては、現在の一般的な水道におきます浄水処理技術は、沈殿池、ろ過池という非常に物理的な処理方法を中心にきておりますので、そうした処理技術におきましては化学物質等につきましてほとんど処理する、除去する能力はないというふうなことになるわけでございますが、昨今、特に先ほどお話にもありました異臭味被害ということに対応するために、水道側におきましてもオゾンあるいは活性炭を用いました特殊な処理、つまり高度浄水処理という手法がかなりの事業体で実施され、あるいは計画されつつございます。  こうした処理技術を使いますれば一定程度そうした化学物質にも対応できる余地はございますけれども、ただ除去できる物質の種類あるいは程度というものは一定の限界がございますし、こうした処理技術には大変高度な管理あるいは多額の費用を要しますので、大規模な事業体はともかくとして、中小規模の事業体までこうした処理技術を早急に導入することは極めて困難ということで認識しておりまして、水道水源にこうした物質がふえてまいりますと一般的には水道では対応し切れないという問題があると認識しております。
  137. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 冒頭にお尋ねした有識者懇談会の報告書の中の一部をちょっと引用しますと、昨年の暮れに飲料水の水質基準が改定になって大幅に項目もふえたわけですけれども、それについて述べている箇所があるんです。「新たに基準化された化学物質は、」「今後、それらの物質を含む製品等の使用が拡がれば、水道事業者が新しい水質基準に適合した水道水を供給することが困難となる事態が発生することも予想される。」、これはすなわち、新基準はつくったもののこのままでは達成できない、達成する自信がない、こういうことを言っているんだと思うんです。  これは大変なことです。国民の生命を預かっていると思っていた水道の担当あるいは水道をやってきた有識者の人たちが、これは本当にゆゆしきことだということを言っているわけでして、今厚生省からもお答えいただいたように、本来的には水道では水源中に何百種類と放出された農薬等の微量化学物質は十分には除去できない、し切れないということを言っているわけであります。  そこで、これまでの環境行政の実態について、特に河川における水質汚濁の改善状況を大まかに状況を御説明いただきたいと思います。
  138. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 河川の水質汚濁の状況でございますが、水質環境基準の健康項目について見ますと、不適合率が昭和四十九年度に〇・二七%であったわけですが、これが平成三年度には〇・〇二%ということで相当減少してございまして、改善されてきているというふうなことが言えようかと思います。また、もう一つの有機汚濁の代表的指標でありますBODの達成率で見ますと、昭和四十九年度の五一・三%から平成三年度の七五・四%へ、こういうふうに改善されてきているわけでございます。  こういうふうに水質改善が進んでおりますのは、排水規制や下水道の整備が進んだこと等によるものだというふうに考えてございますが、ただまだ四分の一の水域でBODの環境基準を達成していないというような状況でございますので、環境庁といたしましても、今後とも排水規制の強化徹底を図る必要があるというふうに考えていますし、また有機汚濁の問題であれば、生活排水対策についてもっと推進していかなきゃいけないというふうに考えます。  水質汚濁防止法に基づいて総合的な計画を策定しながら対策を進めるということになっていますし、これに基づきまして下水道等の生活排水処理施設の整備や家庭での台所等の対策、普及も推進していかなきゃいけないというふうに考えてございまして、こういうことを通じて河川の水質改善 に一層努めていきたいというふうに考えてございます。
  139. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 有害物質については相当な改善が図られていて、生活環境項目については徐々によくなってきている、こういう御説明だったかと思うんですけれども、しかしそうは言っても、先ほど来長時間かけて私がお聞きしてきたのは、実はそうなっていない。私たちの口に入る水道ということを念頭に置いて世の中を見たときには全然よくなっていなくて、むしろ不安が高まっている、異臭味も二割の人たちが苦しんでいる、こういう実態であるわけです。  何でこういうことになるかというと、環境基準の利用目的の適用性、いわゆる水質の環境基準を定めるときに、水道もレクリエーションも、それから点もみんな同じように考えてやってきているというのが、これまでの行政が悪かったということを言いたいわけではなくて、これからこの水道水源、口に入る水、これがこれだけ危険、危機にさらされているということがわかったということを踏まえたときには、今までのやり方から一歩進んで、水道水源がここにあるとすれば、そのある水道水源を守るという、いわばスポット的な対応というのが必要なんじゃないか。  今まで環境基準はつくった。つくったものに対して目標だからということだけで達成できなくても大きな反省がなかった。しかし、水道水源を守るんだということになると、守れなかったということに対してもっと本気にならなきゃいけないんです。そういう形で、水道水源の位置づけをもっと優先的にきちっとすべきではないか。今までの水質環境行政を否定するわけではなくて、今までの環境行政は平均点を上げるための行政であったと思うんです。この平均点をさらに上げて水道水源までよくするというには、やはり五十年、百年かかるんじゃないか。それを待っていられないので、平均点の上に今度はスポット的に、スポット対策として、ここに水源があるんだ、その上流は守ろう、地域の人もあそこにあるんだということをきちっと認識する、そういうような考え方の転換といいますかそれが今こそ必要になっていると思うんです。  すなわち、そういう意味で水道水源、いわゆる霞が関かいわいで水道水源を担当しているのが厚生省とかそんなことは関係ないんです。国民にとっては口に入るということが大切なんで、嫌でも口に入れなきゃいけないというこのことを踏まえて、水道水源の水質保全について特別な考えを持ってこれから水質の環境行政をやっていく、進めていく、そういうお考えがないかどうかお尋ねします。
  140. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 水質保全施策の推進に当たっては、水道水が人の健康に直接影響するという特殊性を踏まえて対策を進めていく必要があるというふうに考え、これまでもそういうふうに進めてきたつもりでございますが、特に有害物質でございますけれども、飲用水として利用しても安全性を十分確保し得るような形で環境基準も定めてきておるわけでございます。  水道水質の環境基準の拡充強化が昨年末行われましたが、これに合わせた形で去る三月八日には環境基準も有害物質については大幅に拡充強化したわけでございます。  こういう強化されたものをもとに、これを達成するために今度は工場の排水基準というものも拡充していかなきゃいけないということで、これも先般四月五日には中央公害対策審議会に諮問したところです。できるだけ早く検討してもらって、ここで内容の充実を図ったものとしての排水基準の設定をお願いしたいというふうに思っているわけです。  特に今有害物質についてお話し申し上げたわけでございますが、生活環境項目につきましても、今の環境基準というのは、先生よく御存じのとおり、利水目的に応じた形で類型区分されておるわけです。その中では、水道というのは国民の健康や生活に直結する重要な利水であるという認識のもとにつくられておるわけでございまして、環境基準の類型指定に当たってもそういうようなものが現地の実態に合わせて的確に対応するように指導しているわけでございます。  御承知のとおり、類型はAAとかA、B、C、D、Eというふうな区分になってございまして、水道一級、水道二級、水道三級というので、水道の使われ方、処理の仕方に応じながら水質の基準値をいろいろ決めておるわけでございまして、こういうふうな形で、水道水というような利水もちゃんと視野に入れた形でやってございます。  特に現在の水質汚濁防止法では排水基準についても定めておるわけでございますが、排水基準を国が定めるのは全国一律の規制という形で決めておるわけでございますが、水質汚濁防止法では、この全国一律の基準の上に上乗せ排水基準も都道府県で設定できるような形になっています。これは地域の実態に合わせた形で制度の活用を図るということができるようにということでこういう制度になっているわけでございまして、そういう意味では地域の実態に合わせた形の水質保全施策が展開されなければいけないということだと思います。  ただ先ほど、現実はちゃんとそうなっていないではないかというようなお話もあったわけでございますが、この点につきましては、地域の実態に即して水道として利用される公共用水域等における水質保全が的確に図られるようにさらに指導を徹底していかなきゃいけないんじゃないかというふうに考えてございます。
  141. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 まだ悠長なことを言っていらっしゃるようですけれども、今までの制度でできなかった、上乗せはできる制度になっているけれども実際は上乗せが何カ所できているか。これはそれじゃ、環境行政に携わっている現場の人たちが、あるいは今環境庁にいる人たちあるいは先輩方、そういった人たちが手を抜いていたのか、怠慢だったのか、その辺のところをお伺いします。
  142. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) この問題は、有害物質と有機汚濁の問題と分けて考える必要があると思います。有害物質につきましては、先ほど申し上げましたとおり、環境基準なんかも水道水質基準なんかに合わせながら対応して、ほぼ一〇〇%近い形で達成されているわけで、今後有害物質がふえていけば、それに合わせた形でそういうふうな規制をやっていきたいと思っておりまして、こういうもので十分対応できるんじゃないかと思っています。  有害物質ではなくて有機汚濁につきましては、生活排水対策をどうやっていくかということが基本になろうかと思います。先ほども申し上げましたとおり、生活排水対策を考える場合……
  143. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 手短にお答えください。
  144. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 下水道等の整備をしっかりやっていかなきゃいけないということで、この整備が今全国で四五%というような状況になっているわけで、こういうものをしっかりと推進していく必要があるだろうというふうに我々は考えでございます。
  145. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 先ほど来臭い水といっても健康に影響があるんだ、今までの有害物質とそれから生活環境項目と、単純な考え方じゃいけないということを言っているんです。水質保全局長、全然変わっていないですね。言っていることがわかっていただけていないと思います。  いわゆる水道水源、公共用水域において有機性の汚濁があったとしても、今やこんなことも知らないんじゃちょっと困りますけれども、塩素を作用させるとトリハロメタンという有害物質ができるわけです。これは水道事業体の中でできることかもしれないけれども、そこまで考えていただきたい。だから、有害物質と生活環境項目、健康項目を分けて考えるんだなんて、そんなことは前提なんです。生活環境項目でさえも有害物質になり得るんだ、それから水道の水質として望ましくない水になるんだ、原因になるんだということを申し上げているんです。  だから、今の制度でできていないということに対して新しい手を打たなければいけない。先ほど 農薬の問題も言いましたけれども、何百種類あるいは何千種類、数え方によれば、何千種類の組み合わせは何万種類がもっとになると思いますけれども、そういったものの除去はできないんだと。となれば、抜本的に考え方を変えた対応をしなければいけない。それを、いつまでたっても同じことをやって、今の制度でできるはずだと。これではいけないんだということを申し上げたいわけです。きょう即答できなかったら、また回を改めてお聞きしてもいいですけれども、お答えできる範囲でお願いいたします。
  146. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 今の施策の中でいかなる事態にも対応できるというようなことを申し上げているわけではございませんで、今おっしゃられたトリハロメタンのような問題は、新たな問題としてどう取り組んでいけばいいかということについては真剣に我々取り組んでいかなきゃいけないと思います。  それを実施するためには、どういう形の施策をどういう形でやればいいかということを十分検討しながら実行できるものにしていかなきゃいけないというふうに考えてございまして、これも中央公害対策審議会の答申の際にもそういう御意見をいただいていますし、また今回も、厚生省ともその問題なんかについてはどういうふうにこれから対応すればいいかということで真剣な議論をやっておる段階でございます。
  147. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 それではますます真剣な議論をして、百年河清を待つようなことにならないようにひとつよろしくお願いいたします。また、次の機会がありましたら、この進捗状況あるいは考え方の変化をお聞きしたいと思っております。  ちょっと角度を変えまして、同じ水質の問題ですけれども先ほど水質保全局長からも御指摘のあった生活排水の問題なんです。これは、現在施策としては、下水道の整備あるいは合併浄化槽の整備という形で、都市部は下水道、あるいは都市部から外れた郊外のようなところは合併浄化槽、こんな分担があろうかと思うんですけれども、今回はその中で、合併浄化槽は合すごい勢いで伸びているのでこれはまた次の機会にしまして、下水道の整備についてお伺いしたいと思います。  下水道の整備に関して一つ私は問題だと思うのは、これだけ予算が生活関連枠等々でふんだんについているわけです。その下水道の整備が河川の上流域あるいは中流域には余り普及しないで、これは郊外という意味じゃないです、中流域だってちゃんと都市部もあるわけですけれども、そういうところにはほとんど普及がされていない。みんな河口部、大都市が河口部にあるからなのかもしれませんけれども、集中している。  一つの例で申し上げますと、私の選挙区の話になって大変恐縮ですけれども、遠賀川という川があります。河口部には百万都市の北九州市があります。この百万都市を除いてそれから上流部というのは、流域人口で約五十万人、河川の延長で約三十キロメートル、こういうところなんですけれども、北九州市の下水道の普及率は九〇%です。北九州市を除く上流五十万人分の下水道の普及率はたったの五%です。こう思うんですけれども、建設省にもし間違えていたら御指摘いただきたいと思います。
  148. 安中徳二

    説明員(安中徳二君) おおむね先生の御指摘のとおりでございますけれども、私どもの数字ですと北九州市の普及率は九一%、遠賀川の上流部の普及率は五%ということでございます。
  149. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 そこで、北九州市の人の立場に立ってちょっと考えていただきたいんですが、北九州市の人たちの百万人分の中の四十万人分の人、周辺のほかの市も含めると約五十万人分の水を遠賀川の下流部で取水しているんです。つまり、その水は下水道の普及率でいくと五%、九五%は普及していない水を水道水源に使っているんです。  北九州市では九一%というお話でしたけれども、別にその北九州市が下水道の普及が進んじゃいけないと言っているわけじゃなくて、ここまで進んできたら大都市に投資する十分の一でも中流あるいは上流部の市街化された区域に下水道をもっと積極的に普及させるべきだと思うんです。  今申し上げたように、一番多くの北九州市の人たちが飲んでいる水は九五%が下水道じゃない、垂れ流しに近い形になっているものを飲んでいて、なおかつ臭い水で困っているんです、北九州市は。こういう状況があるんですけれども、下水道を御担当されている建設省にお伺いしたいんですが、この中流域、上流域にもっと積極的な普及を図るというお考えはないのかその点についてお尋ねします。
  150. 安中徳二

    説明員(安中徳二君) まことに先生の御指摘はそのとおりでございまして、まず、なぜ大都市の方に投資が先に行われてきたかということなんでございますけれども、北九州市も含まれるわけでございますけれども、やはり戦後の経済成長の影響を受けまして人口の都市集中が起こったということで、これが我が国の場合は河口部の大都市に集積してきた。  私どもの下水道整備はそういった都市問題、浸水問題ですとか都市環境の整備、工場問題を中心にしてこざるを得なかったということでございまして、現在の状況は大都市の整備もおおむね九〇%以上になったということでございまして、先生指摘の中流部、上流部の方に投資は着々とシフトしているということでございますので、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  151. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 着々と、というのは非常にあいまいでよくわからないんですけれども、どういった施策をとっているんでしょうか。
  152. 安中徳二

    説明員(安中徳二君) 幾つかございますけれども、中流部、上流部の、先生は大都市もあるとおっしゃったわけでございますけれども基本的には小さな市町村が立地しているわけでございまして、下水道整備がおくれた理由は幾つかございますけれども、その大きな理由の一つが財政問題ということでございます。  下水道をやるとお金がかかるということで、やむを得ず下水道が十分整備できないでこられているところが多いわけでございますけれども、そういったところに対します下水道の計画の策定のための調査費の補助ですとか、あるいは国の補助対象率といいますか、国庫補助の率を上げるというふうなことを考えてやってきているわけでございます。
  153. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 率を上げるというのはいつごろされたんでしょうか。
  154. 安中徳二

    説明員(安中徳二君) 五カ年計画の都度財政当局と話しまして、補助対象率を小さな町村につきましてはより大きなところよりも上げるという形でやってきております。
  155. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 細かいことをお聞きしてきたが、実は下水道を普及させる考え方に甘さがあるんじゃないかということなんです。  下水道整備五カ年計画、今七次五計になっているんですか、を見ても、「特に緊急に実施する必要のある地域について、」云々、こういう言葉がやたらに多いんですね。それ以上具体的な言葉が書いてないんです。「特に緊急に実施する必要のある地域」、特に実施する必要のある地域が本当になされていれば、先ほど言ったような遠賀川の九〇%対五%というああいうばかな話はないんじゃないかと思うんです。  あるいは補助率云々にしても、要するに補助率を変えるといってもちまちまし過ぎているんじゃないか。本当に何を守るべきかということが定まっていないから、全国一律をベースにして、そして少しだけ段差をつけるみたいなことをやっているというのは、もうそろそろ間違っているんじゃないか。つまり、上流にもっと思い切った、例えば財政的に問題があれば思い切った施策をとることによって結果的には下流が守られるんです。下流の人たちから文句は出ないんです。そういうことも踏まえて、本来ならば「緊急に実施する必要のある地域」云々ということにとどまらずに、本当に緊急に実施する必要のある地域というのはここなんだということをはっきりさせるべきだと思う。  そういう意味で、私は先ほど来申し上げているように、水道水源を守るというそういう考え方をきちんと位置づけるべきだと。そうすると、あそこの水源を守るためにここをやるんだ、一般的にきれいにするんだということに加えて、まあ前後関係が逆転しますけれども、本来この水源を守るために、今の例で言いますと、北九州市百万人分のほぼ半分の人たちが飲んでいるあの水を守るために、上流にも対策が必要なんだということを地域全体として考えるようになれば、あるいはそれが実施できるようになれば普及の仕方も変わってくる、また地域住民のあるいは関係者の意識も変わってくる。厚生省云々ではなくて、人の口に入る水なんだという、そこの原点はきちんと押さえて、それを守るためにこれをするんだと。その施策の中には周辺の生活環境としての水もきれいになるという副産物がついているわけです。  そういう意味で、私が今申し上げたいのは、「緊急に実施する必要のある地域」云々ということで抽象的なことを言っていなくて、具体的な思想、哲学を持つべきだ。思想というとちょっとあれですけれども、人の生命を守る、人の口に入る水を守るという哲学を持つべきだ、こう申し上げたいんですけれども、下水道所管の建設省の御意見をお伺いいたします。
  156. 安中徳二

    説明員(安中徳二君) 私どもといたしましても、水道水源の水質保全につきましては十分重要性を認識して下水道の整備を行っているつもりでございます。  水道水源が下流にある場合には、その利用状況等を勘案いたしまして、私どもといたしましては、通常の処理に加えまして高度処理を実施するという形で、より高度に浄化された水を放流できるように努力しているということでございます。
  157. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 もう一歩踏み込んでいただきたいのは、何回も申し上げますけれども、「緊急に実施する必要のある地域」なんて言っていなくて、水源を守るんだ、こういう具体的な、生々しい生きた現実性のある目標を掲げるべきである。  つまり私も、この際下水道についてどういう思想で日本じゅう普及がなされているのか、六次五計、七次五計を見てみても約四割ぐらいですか、ちょっと正確でないですけれども、予算にして四割も伸びているんです。これだけ大きな思い切った投資がなされているんだったら、もう少し考えがあってもいいんじゃないか。むしろ私、うがった見方かもしれませんけれども、四割もふえる予算をどうやって消化するかにきゅうきゅうとしているんじゃないだろうかという心配さえもしなきゃいけないような状況です。  思想を持ってやっていただきたい。水道水源を守るんだということを、あるいはそういうことを含めた、建設省さん、そういう考え方を一回まとめて公表したらどうでしょうか。
  158. 安中徳二

    説明員(安中徳二君) 私どもといたしましても、現行の第七次五カ年計画におきましては、下水道整備がナショナルミニマムだという立場に立ちまして、大都市だけではなくて中小市町村の下水道整備が十分促進できるようにということでやっているつもりでございますし、それから機会があることに下水道整備の必要性というものを国民皆様方にPRしているということでございます。
  159. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 最後に、下水道に関しての要望をしておきますが、過疎地域に普及させるとか少しは考えているようですけれども、もう一つ生きた目標、現実的な目標がわかるような普及の考え方、これだけの予算をとって国民の税金を使っているわけですから、その考え方をもう少し具体的に明確に公表していただきたいと思います。要望しておきます。  以上、水道水源について申し上げてきましたけれども、最後に大臣にお尋ねします。  特に「水道水源の水質保全対策の推進について」というあの報告書、水道関係者のよりすぐりの有識者が集まって書いた報告書だと思います。その中で、今のままでは日本国民の健康を水道は守っていけなくなるというギブアップ寸前の悲鳴が聞こえてくるわけですけれども、これに対して環境庁は、今までどおり百年河清を待てばいいんだというごとでいくのか、あるいは積極的にこの問題の改善に厚生省と一緒になって対応していくのか、その辺のお考えをいただきたいと思います。
  160. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) いろいろ横尾先生の御高説を拝聴しながら、私も先生の御趣旨に賛成するところが多いわけであります。同じ水源にいたしましてもいろいろございます。先生おっしゃるように、水道以外にも農業用水とかあるいは別の用水とかいろんな角度の水源がありますけれども、しかし水道ということに焦点をきちっと当てて、そのためにどうあるべきかということに取り組まないともう遅いという先生の御指摘はまことに同感するところがございます。  実は環境庁が特に強く主張できるのは、水質環境基準をどうするかということが一つの方策でございます。したがいまして、これにつきましても去る三月八日に水質環境基準の大幅な拡充を図ることを中公審の方にも実は諮問いたしまして、これは先ほど水質保全局長からの説明もありましたけれども、別の角度、つまり排水基準あるいは地下水の浸透規制などのあり方も踏まえて中公審の方に諮問しまして、この答申は十月に環境庁にもたらされることになっております。  したがいまして、環境庁としましても、廃棄物の最終処分基準の強化、あるいは農薬登録保留基準の改正なども含めた広範な改正に取り組むという意味でこのような諮問をしたわけでありますが、この答申を受けまして今後の水道問題についてもいかにあるべきかということでまいりますが、この前にいただいている環境基準につきましては、既に三月八日に実施段階に入っておりまして、一層基準のきちっとした選定をしたいということでございます。
  161. 横尾和伸

    ○横尾和伸君 終わります。
  162. 有働正治

    ○有働正治君 私は、環境行政上今日的に新しい重大な問題として、国民の前にあるいは自然環境保護団体の皆さんに対して提起されて、また新たな怒りを呼んでいる問題として、金丸金権政治と環境破壊というのが結びついているという問題を中心に所信をお伺いしたいと思います。例えとして、東京臨海部開発、長良川河口ぜきを取り上げてお伺いする次第です。  まず、臨海部開発問題について、これが環境に対して非常に大きな影響を持つものであることは各方面から指摘されているところであります。幾つかの点につきまして事実確認を求めます。  環境庁の企画調整局が平成元年にまとめました「東京湾地域開発環境保全に関する基本的方策について」のレポートがあります。これは東京湾の保全と創造に向けての政策的な提言であります。内容は極めて貴重な内容になっていると私も考えるものであります。その提言の前提といたしまして、臨海部開発環境への影響についてしかるべき論及がされています。簡潔に、項目的にでも結構ですから述べていただければと思います。
  163. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 御指摘報告におきましては、東京湾に残存する自然の干潟の重要性を指摘いたしますとともに、東京湾の臨海部開発等に伴う環境影響評価を幾つかの想定のもとに一九八五年を基準にしながら推定した結果を報告しておるものでございます。  中身を申し上げますと、一つは、自動車交通に起因する窒素酸化物の排出量は、二〇〇〇年度には大体一九八五年度に比較すると臨海部開発によって七%程度上昇するのではないかというような問題、また臨海部開発が進むと人工熱が増加いたしまして、夏の気温が昼夜とも〇・五度C以上高くなる地域が生じるといったようなことが指摘されておるところでございます。  さらに報告書は、仮に地球温暖化によりまして二〇三〇年に海面上昇が八十センチ上昇する場合、百八十センチ上昇する場合を想定した場合にどうなるかということで、標高が満潮時の潮位より低くなる面積が約二百三十六平方キロ、または四百十一平方キロになるだろうというような推定を行っているものでございます。
  164. 有働正治

    ○有働正治君 いま一つ確認を求めます。これは環境庁の水質保全局で発表されています平成二年度の「東京湾の望ましい水域環境を実現するための方策について」の報告書がございます。「かけがえのない東京湾を次世代に引き継ぐために」という、これも実態に基づく提言です。これも私は、非常に貴重な方策が環境庁としてまとめられて提示されていると考えるわけでありますけれども、その概要を簡潔にお述べいただければと思います。
  165. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 御指摘の提言は、平成二年七月に、研究者、漁業従事者等の有識者から成る東京湾水域環境懇談会によって、東京湾をよりよい姿で次世代に引き継ぐために、中長期的な視点に立って今後推進すべき施策の基本的方向についていただいたものでございまして、具体的には、東京湾における望ましい水域環境を実現するために、一つは総合的な水質保全対策を強力に進めること、二番目に干潟等のなぎさ環境を積極的に保全、創造すること、三番目に東京湾をかけがえのない環境資源として次世代に引き継ぐことを国民的運動として展開すること、こういうことが提言されてございます。
  166. 有働正治

    ○有働正治君 一つつけ加えますと、海面の埋め立ての抑止の問題も非常に強調されているわけであります。  それで、その後のそうした提言の方向が具体的な現実の政治としてどう進展しているかという問題で、東京都では御承知のような臨海部開発が推進されています。東京都におきまして各種のアセスメントが行われました。しかし、これについてはさまざまの疑問、問題点が指摘されています。  例えば、一つは臨海開発の総合アセスについて、平成三年、一九九一年九月二十六日に発表された東京臨海部の環境影響評価でありますけれども、それに先立つ一年半前に、平成二年、一九九〇年三月、三菱総研に対して行われた委託調査報告がまとめられました。この最初の委託調査、そして一年半後に発表されました影響評価の公式発表、これには大きな落差が見られます。  例えば、環境汚染予測が極めて低目に修正されているという疑惑が指摘されているわけであります。例えば、NOxの三五ppmを超える箇所が都内全体で六割も減らされてますし、臨海部におきましても四割も減らされているという状況があります。一年半前の委託調査報告では、自動車交通量の増加に伴う窒素酸化物の増加について、埋立地及び都心では約五ppm増加、三ppm以上増加は都心三区のほぼ全域、一ppm以上は十三号埋立地を中心に半径十キロに達すると具体的に記述していましたけれども、一年半後の都の発表では、これが具体的な箇所が削除され、影響は少ないとされました。これは都議会でも大問題になりまして、当局はコンピューターに入れる数字がいろいろ間違ったと子供だましの答弁をする一方、数字を補正したことは認めたところであります。  いま一つは、幹線道路網についてのアセスが行われました。これも平成三年六月の原案が五カ月後の平成三年十一月の最終の公表におきまして修正されて発表された疑惑が持たれています。つまり、原案では半数を超す地点で環境基準を上回ると予測していたのに、最終の公表では基準をほぼ満たすと。調査地点も変えられて数値を低く差しかえたという関係者からの疑惑も指摘されているわけであります。  この臨海開発に伴う環境への影響については、そのほか例えば環境庁の国立環境研究所の地球温暖化影響の研究グループが、気温上昇の影響による都市部の大気汚染の変化をシミュレーションで予測したものも発表されていますが、その概要を簡潔にお述べいただければと思います。
  167. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) まず最初に、先生前段に触れられました東京都の環境影響評価、環境予測調査につきましては、いずれもこれは都が実施なさったものだというぐあいに承知しておりまして、環境庁はこれについては承知しておりません。  次に、国立環境研究所が行いました研究につきましてのお尋ねでございますが、これは私どもの国立環境研究所が平成二年度における地球環境研究総合推進費によりまして研究を行いました成果の一つとして報告されたものであるというぐあいに伺ったところでございます。これは、室内実験の結果をもとにしまして、気温が五度上昇した場合に関東地域における光化学オキシダント汚染の広がりがどの程度になるだろうかということをシミュレーションによって推定した研究であるというぐあいに承知しております。
  168. 有働正治

    ○有働正治君 五度上がった場合という仮の予測だけにとどまらない、今日的な、現実的な問題があると私は認識してこの問題を重視しているわけであります。  と申しますのは、気象庁の気象研究所の主任研究官の調査によりますと、都市の気温上昇いわゆるヒートアイランド現象を再現するコンピューターシミュレーションを開発されまして、東京湾が半分埋め立てられたとき、最高約五度の気温上昇が起こるということまで現実的に提示されているわけであります。この気温上昇に伴う問題は、例えば東京都の環境科学研究所が約百年にわたる東京の年平均の気温上昇を調べてみますと、地球全体の平均気温上昇の四倍のペースで温暖化が進んでいること、あるいはこの百年近くの間に三・四度最低気温が上昇、平均気温もそれに匹敵する上昇をして、逆に湿度が減少する等々の現実的な進行の仮定もあるということで、仮定の問題というふうに言えない問題が提起されているということで、そういう点では環境庁のこの研究所のシミュレーションというのも極めて注目されるという点で、私は取り上げているところであります。  さて、東京都の開発につきましては、東京都だけでありませんで首都圏にわたる広範多岐にわたる環境破壊の影響が指摘されています。そこでお尋ねしますけれども、昭和六十三年六月二十一日に港湾審議会で東京港の開発についての検討が行われました。これは、現に進行している臨海副都心開発を前提にいたしました港湾の土地利用に対する議論でありまして、この開発推進に当たりまして環境庁として所見を付されたと聞いておりますが、どういう内容が、その概要を御説明いただきたいと思います。
  169. 八木橋惇夫

    政府委員八木橋惇夫君) 先生指摘のように、重要港湾の港湾計画を決定したり変更する際には環境庁も港湾審議会の委員として関与しているところでございます。  六十三年に改定されました東京湾の港湾計画におきましては、環境庁といたしましては、大気汚染、水質汚濁といったような事象の防止のためには所要の対策を実施する必要があること、臨海部の長期的な環境予測調査の実施と、これを踏まえた環境保全上の配慮の必要性があること等を要請したところでございます。
  170. 有働正治

    ○有働正治君 環境庁としてそうした指摘はそれとして重視されるべきものであります。  ところが、現実にはその指摘が行われた後の進行を見ますと、さきに述べましたようにさまざまの環境への影響が指摘されています。東京都が行いました各種のアセスメントもさまざまの疑問が提示されていますし、とりわけNOx等々は悪化の状況にあるというのが進行しているわけであります。  つまり、この環境庁指摘が正面から受けとめられて、それに対応した都としての処置なりが行われず、事実上それを無視したような形での臨海開発が強行されているというふうに、あるいは軽視されているというふうに私は考えるわけであります。なぜそれが強行されるのかという問題の背景に、今マスコミで中心的な政治問題になっている大手ゼネコンからの金丸被告への裏金、金丸政治献金、金権政治、これがあるというふうに私は指摘せざるを得ないわけであります。と申しますのは、これに金丸被告を中心にさまざまの干渉を行い、国も関与して開発を強力に促進した経緯があるわけであります。  例えば、東京都の副知事をやられました横田政 次さん、この方が「僕は裏方」という著書を発表されています。その中で、臨海がいかに大きく国の行政関与の中で変転したかということが明記されています。これは当事者としての証言であります。つまり、ここでは鈴木都知事、この横田副知事も含めました、金丸被告らの、あるいは当時の国務大臣などの臨海部視察が行われます。自民党の中に民活路線の推進が声高に叫ばれて、特別調査会も設置されて動き出すと。その中でこのように記述しています。   中曽根さんが首相で、民活、内需拡大路線だ。テレポート基地は副都心構想に成長、かねて都庁内にもあったオフィス群構想が浮上した。国土庁、建設省、民間研究機関などが次々と開発構想を打ち上げた。その秋、当時は副総裁だった金丸さんも臨海部を視察、鈴木知事も案内役に立った。国土庁も都に来て、「早く都の構想をまとめてくれ。金丸さんに報告しないといけない」とせっつくようになった。  金丸さんの秘書官から築地の料理屋に呼ばれた都の幹部もいて、「民間に先を越されている。ぼやぼやするな」とけしかけられた。知事は「埋め立て地は都の土地なのに、勝手な絵をかいてけしからん」と苦々しくも思った。 と、当事者としての苦々して証言であります。  一方、こうした開発推進の裏で、金丸被告に対するいわゆる大手ゼネコンからの裏献金問題が今日大問題になっていることは周知のとおりです。既に大成建設や鹿島建設など東京地検の強制捜査を受けています。金で政治が動かされる、あるいは環境無視の開発が行われるということは放置できない問題であります。いやしくも環境行政が金でゆがめられるということはあってはならないと考えますが、長官いかがでありますか。
  171. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 結論的に、環境行政ばかりでなくて行政諸施策を進めるについて、それが公式な定められた予算で行われるのは当然でありますけれども、そうでないことで動いていくというのは、これは全く納得のできないことであります。ただ私は、今先生の御指摘の点については大変不明にして、そしてまた私の勉強不足もありまして、今初めて伺ったわけでありますし、それからだれとかというその副知事の書いた本というのは、これは市販されているんでございますか。
  172. 有働正治

    ○有働正治君 ええ、市販されております。図書館にもあります。
  173. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) そうなんですか。そういうことの内容も私はまだ全く知りません。  先ほど先生は東京都の環境影響評価についての落差の問題を話されましたけれども、随分政治家として落差があるものだなということを私も感じております。しかし、いずれにしてもそういうことは環境行政にはあってはならないことでありますし、ないということをはっきり断言いたします。
  174. 有働正治

    ○有働正治君 しかし、ないと断言されるには、やっぱりそう言えない現実問題がある、過去あったということは私は指摘せざるを得ないわけであります。  この点で、長良川河口ぜきも同様の問題があります。  環境庁の歴代、何代かにわたる長官は、この長良川河口ぜきをめぐりまして環境破壊のことを憂慮されて、これに批判的見地をとるなど、対応されてこられました。ところが、長良川河口ぜきにも金丸被告が直接介入して推進したという事実があるわけであります。例えば、河口ぜき反対運動が全国的に広がったとき、一例として、九〇年十一月、当時の北川環境庁長官が、河口ぜき建設現場を視察して、環境破壊への懸念を表明されました。そのときに金丸被告は、三回にもわたりまして北川石松長官に電話をかけてきまして、大臣なら閣議決定の重要性がわかっているはずだ、長良川のせきは必要で、早くつくらなきゃならぬと直接圧力をかけた。これは北川氏自身が明らかにしたことで、新聞にも大きく報道されたところであります。私も、質問に当たり事実確認を行いました。私どもの機関紙赤旗の記者に対しまして、北川氏は、そういうことはあったという事実も認めました。そしてあれは、あれはというのは河口ぜきでありますけれども、百害あって一利なしと言ったんだと、今でもそう思っている、いかぬことはいかぬということをはっきり述べておられます。  そこで、お尋ねいたします。  長良川河口ぜきをめぐって、歴代環境庁長官環境保全の立場からしかるべく対応をなされてきた、これはこれとして私どもは注目して評価するところもあるわけであります。現在の林長官、この長良川河口ぜき問題についての基本的見地をまずお伺いしたいと思います。
  175. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 長良川河口ぜきにつきましては、それなりの歴史を踏まえて取り組まれておることと私は認識しておりまして、もし河口ぜきの建設がそのような環境破壊そのものにつながるということであるならば、恐らく環境庁はそれについては、環境破壊には同調しないという考えで来ておったと私は思います。しかし、環境破壊という言葉だけで処理しないで、これは河口ぜき建設という面がどれだけ地域住民の必要性を含んでいるのかという点もいろいろあわせ考えて進めてきたものと私としては理解しております。
  176. 有働正治

    ○有働正治君 歴代長官から見れば非常に後退した重大な発言だと、もっと積極的な対応、見解を示すべきだと私は思うわけであります。  そこで、時間の関係で先に進みますが、河口ぜき建設というのは、大成建設、鹿島建設、五洋建設のジョイントベンチャー、この大手ゼネコン三社のジョイントベンチャーで工事が進められています。この三社というのは臨海副都心開発の企業体の中心的な企業体でもあります。この大手三社ゼネコンからの政治献金というのは非常に大きなものがあります。  長良川河口ぜきは、一九八八年この三社と水資源開発公団との間に工事請負契約を結びます。臨海副都心開発は八九年に事業計画が都として発表されて、翌九〇年から進出企業の公募が始まります。ここら辺から自民党の政治資金団体である国民政治協会への献金もぐんとふえます。一九八七年はこの三社で七千二百万円、それが八八年八千七百万円、八九年一億二千万円、九〇年一億五千万円、そして九一年までの五年間だけで三社で五億五千万にも達すると。工事発注、契約等々と相まって政治献金がふえている、これは明確な事実であります。同時に、裏金が大量に膨大に金丸被告のもとに流されたと、そのために特捜を受けたということは御承知のとおりであります。  そこで、お尋ねします。ともに環境上重大な問題を抱えている二つの大規模プロジェクトであります。先ほども申しましたように、長良川については歴代長官はそうした圧力に抗して環境庁としての面目を保つためにそれとして努力されてきたと。また、臨海副都心開発についても調査し、また意見書を発表するなどされてきました。そのことは私も注視しているところであります。それが現実には、そのほか論証すればいろいろございます、金の力で実際はそれの推進が優先されているという状況にあるというのは極めて遺憾なことであります。  環境庁長官として、この間の環境庁としてのそれなりの対応を無視した、こういう傍若無人な横やり的な対応、これは当然遺憾だと思われますけれども長官いかがでありましょうか。
  177. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 大変重大な御発言を有働先生なさったわけでありますけれども、私が環境庁長官に就任したのはたしか十二月十二日だったと思います。それ以来今日に至るまで、長良川河口ぜきを中止しろとかあるいは推進しろとかという、そういう御意見を直接私が伺ったことは一度もございませんし、それからまた、今私伺って非常に驚いたのでありますけれども、金丸云々という言葉も出てきますけれども、私は金丸さんとはすべての問題で話をしたことはありませんし、全く環境庁としてもこれは関係ないことであろうと思っております。  したがいまして、この点につきまして、私は、純粋に環境保全というもの、あるいはまた木曽三 川が持っている能力、それをいかに地元のために活用するかという、そういうことをあわせ含めて、それらが両々環境保全もしながらしかも木曽三川の川としての使命というものも十分に合うさせるためにはこのような開発もしなきゃならないということを踏まえて、この長良川というものは私は公正に見ていきたいと思っておりました。  したがいまして、私にこの問題に対して、開発に賛成しろとかあるいはそうでなくて、環境保全環境の問題に取り組んでおられる皆さん方の意見を十分に取り入れるべきじゃないかとかという、そういうことは私は直接に伺っておりません。ただ、衆議院の環境委員会におきましては、委員の先生方の何人かから長良川問題の質疑を受けたことがございます。
  178. 有働正治

    ○有働正治君 いやしくも環境行政に対してこれがねじ曲げられたのではないかという、私が指摘したような疑惑、金丸金権政治と環境破壊というのが結びついて国民の前に提示されているという問題がある以上、それは真摯に受けとめて、誤解がないように解明をするところはして、環境行政を推進するということが大事であろうと思います。そのことを指摘しておきます。  具体的な問題で一、二だけお尋ねします。  一つは、大分の新日鉄製鉄所の粉じん防止対策であります。四十万市民の住宅地に最も隣接した立地に進出した新日鉄大分製鉄所からのばいじん、粉じんの被害が、私どもの現地のアンケート調査、一千数百通が市民から返ってまいりましたけれども、その中でこの問題が数多く寄せられました。  私も新日鉄あるいは県とも直接交渉もいたしましたけれども、新日鉄側も県の指導を受けて七十数億の資金を投入して粉じん対策をやるなど、一定の対応を行っていることは私も承知しています。しかし、特に最大の粉じん発生源となっています原料ヤードというのはまだ不十分である。これは新日鉄側の当事者もそのことを認めましたし、今後しかるべき対応をしていくと。また、県の方も、現状は十分とは考えないので県としてもしかるべき指導をしていくということも申していました。その点で環境庁としても、四十万市民にかかわる問題として現状を掌握して、このヤードに対する必要な行政指導、環境対策を求めるというのが一点であります。  もう一点、時間の関係で続けて述べさせていただきます。熊本県八代市における旧十條製紙八代工場の石炭火力建設に伴う石炭灰の処分場建設問題についての問題であります。  これにつきましては、八代市に隣接する坂本村今泉地区にこの石炭灰の最終処分場を計画しています。当該部落八十数戸の水道水源、地下水に依存している八代市民の飲み水として、石炭灰に含まれています砒素だとか鉛、カドミウム、水銀などの有害物質による水質汚濁が大変心配されています。また、石炭灰の運搬に伴う騒音なども心配されています。  そこで、環境庁として厚生省とともども水道水などの水質環境基準の強化を目指していることでもありますので、また石炭灰の運搬や埋め立てに当たって大気汚染、水質汚濁、土壌汚染の各防止にかかわる問題でもあるという立場からお尋ねします。  一つは、環境上問題が起こらぬよう万全を期すように県に対して、また県を通じて企業に対して指導を求めるものであります。いま一つ、熊本県側も企業と住民とで十分話し合って行うとの意向を私にも表明いたしました。環境庁としても厚生省などとも連携しながら県を通じて企業に対して住民の納得のいく話し合い、合意の上で対応すべきということを指導するよう求めるものでありますけれども、所見をお伺いします。
  179. 松前達郎

    委員長松前達郎君) 時間が来ましたので、二つの御質問がありましたけれども、続けてそれぞれ御答弁願います。
  180. 有働正治

    ○有働正治君 長官、簡潔にお答え願います。
  181. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 実は、先ほどの有働先生の御質問で私の説明がまだ舌足らずの点が残っておりまして、それをちょっと触れたいと思いましたけれども、時間がなければやむを得ません。今の問題につきましては担当局長から説明させます。
  182. 入山文郎

    政府委員(入山文郎君) お尋ねの件につきまして、大分の問題ではございますが、これにつきましては県、市とよく連絡をとりながら引き続き大気汚染防止法上の対策が適切に講じられるようにしてまいりたいと思っております。
  183. 有働正治

    ○有働正治君 熊本は。
  184. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 廃棄物の最終処分場につきましては、環境保全上の問題が生じないように廃棄物の処理基準が定められてございまして、都道府県が最終処分場の設置の許可を行うに当たっても、構造だとか維持管理に関する基準に適合しているかどうかということで許可するようになってございます。こういう基準や手続が確実に実施、遵守されれば環境保全法上の問題は生じないように対応できるんではないか、またそういうふうにする必要があるというふうに考えてございます。  先生指摘の最終処分場につきまして、熊本県では事業者に対して地元と十分に話し合いをするように指導しているというふうに聞いてございます。我々もその状況を見ながらまたいろいろ考えていきたいというふうに思っております。
  185. 粟森喬

    粟森喬君 私は、環境対策のうち土壌汚染対策を中心にして幾つかのことをお尋ね申し上げたい、こういうふうに思います。  まず、一つは、私の手元に環境庁が対外発表されたんだと思いますが、ことしの一月に土壌汚染が五年で三倍になったという報道がございます。  まず土壌汚染の問題で象徴的なのは、カドミウム汚染など、そういうことが幾つかあったわけですが、これはもう二十年ほど前のお話でございます。それにもかかわらず、これについて平成三年八月二十三日まで環境庁は基準をつくることをしなかったわけでございます。例えばカドミウム対策なんかでも個別対策は立てていたことは私は承知しております。しかし、五年間で三倍にもなるということは毎年の調査があったからなんでございますが、なぜこんなにおくれて土壌汚染対策がされたのかということが一つの大きな疑問でございます。  と申しますのは、土壌汚染というのは、大気汚染や水質や騒音などの直接的な環境というより、二次汚染的な要素もかなりある、そしてほとんどが蓄積されてしまう。同僚議員からも上水道、いわゆる水道の問題をかなり言われておりましたが、この間の過程のところは非常に問題視しなければならないにもかかわらず、なぜこれほどおくれたのか、まずその原因についてお尋ねをしたいと思います。
  186. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 土壌の汚染に係る環境基準につきましては、これまで得られております科学的知見や関連する既往の諸基準等に則して設定可能なものから設定するという考えできたわけでございます。いろいろな知見等を集めながら、平成三年八月に、人の健康の保護と生活環境保全の両者の観点を包摂したものとして、土壌環境基準を定めたということで、確かにいろんな問題を含みながらきておりまして、ほかの水質汚濁あるいはほかの環境基準なんかに比べますと、随分その設定がおくれてきたということはあるわけでございます。  とにかくおくればせながら平成三年八月にこういうものを設定することができたというふうに考えてございまして、これを今後どういうふうな形で達成していくかということも含めて考えていかなきゃいけませんし、そういうものをいろいろ考えた場合に、この時点でやっとこういうふうな基準ができたというふうに我々は聞いてございます。
  187. 粟森喬

    粟森喬君 私は、環境行政のある種の優し過ぎるというか弱過ぎるというか、大変問題が多いと思います。  といいますのは、幾つかお尋ねをしたいんですが、まず、この基準はっくられたわけでございますが、一つの事例で申し上げますが、発がん性物 質というんですか、これは因果関係を特定するのは非常に難しいんでしょうが、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレンなどは今度の基準の中に明示されていないわけです。そういう状況で非常に不十分、不完全で出た。  お尋ねをしたいのは、十の物質に規定をしたわけでございますが、今申し上げた二つの物質などについてはどういうふうに取り扱うのか、まずこれをお尋ねしたいと思います。
  188. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 今お話のあったトリクロロエチレン等につきましては、三月八日に定めました新しい水質汚濁に係る環境基準なんかにつきましてはこれを取り入れでございます。これとの関連で、土壌の環境基準も、新たにそれとの連携をとるという意味もあり、さらに最近いろんな新たな知見もございますので、そういうものを含めて、土壌の環境基準についての見直しを近々中央公害対策審議会に諮問いたしたいと考えでございます。諮問の後にできるだけ早急な検討をいただきながら答申をいただき、これを受けた形で土壌の環境基準というものを設定していきたいというふうに考えてございます。
  189. 粟森喬

    粟森喬君 見直しをしたということでございますが、どういう基準をどういう格好でこれを提案したんですか。私、ほかのこともこの際お尋ねしたいんですが、基準はカドミウムですと検液一リットルにつき〇・〇・一リグラム以下である、農用地については米一キログラムにつき一ミリグラム未満である、こういう表がありますね。  そうすると、今発がん性のあると言われるこの種の物質について、いわゆる土壌に流していけないというふうに言ったのか、ある種の基準までならオーケーだというふうに言ったのか、そこをちょっとはっきりしてもらえぬですか。というのは、私は、トータルの問題意識として申し上げると、例えばカドミウムであろうと何であろうと基準以下でいいというのはちょっとおかしいと思うんです。蓄積されるんですね。私なんかより環境庁の皆さんの方が専門的な見地を持っておられると思いますが、特に重金属なんというのはほとんどが蓄積をされて、ある基準ならオーケーだよと言っても、絶対量がふえたらそれは結果としてそのことが及ぼす影響というのは蓄積されていくわけです。  ですから、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレンなどについて流しちゃだめだというふうに言ったのか、ある基準ならいいというふうに言ったのか、ここはちょっと今の前段の部分も含めてお答え願いたいと思います。
  190. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 土壌環境基準のほかに水質汚濁の環境基準もあるわけでございますが、同時に工場、事業場から出されるものについての排水基準というものもございます。有害物質になりますと地下浸透禁止の措置も水質汚濁防止法においてとられています。  こういう措置によって、地下に浸透してはいけないというふうな形で土壌中に入る分を防止するような観点からの措置もとられるようになっていますが、土壌の汚染にかかわる環境基準というのは、どういう状態であれば望ましい環境上の土壌条件がということで考えるようになってございます。  そういう場合に、考え方としては人の健康の保護の観点からこれを考えるということにしていまして、土壌の持つ環境機能がいろいろあるわけですが、水質を浄化し、地下水を涵養する機能を保全する観点からということで基準を定めるというふうにしているわけでございます。  したがって、土壌中に浸透した場合に、そこから水が出てくるという場合に、既に設定されております環境基準の基準値を満たすようになることが必要じゃないかというふうなことで決めているものがございます。これは溶出基準というような形で書いてございます。先ほどおっしゃったカドミウムなんかにつきましては、作物を通じて人体に摂取することによって人の健康に被害を及ぼすというものでございますので、こういうものについては含有量の基準も一つある、絶対的に何グラム中何グラム以上になれば環境基準を超えるというふうな判断基準を出してございます。  これは、作物が生育する過程で根を張って、土壌中から溶出していかなくても、その養分を吸収するというようなことを考えた場合は、そういう基準でなくてはいけないだろうということで、土壌の環境基準の場合は含有量基準と溶出基準の二通りのものを組み合わせた形で見てございます。
  191. 粟森喬

    粟森喬君 私は、その組み合わせの中で、私どもから見れば非常に問題のあることが行われている。といいますのは、食物、例えば野菜から摂取するという場合と、地下水に、あるいは川の周辺ですと地下水じゃなくそのまま流れていく、この種の汚染に対する見地というんですか見解について国民が納得できる基準を今環境庁がつくり得ているのかというと、かなりここが疑問だというふうに私は思っているんです。  したがって、これから見直しをするという前提で言われたわけでございますが、見直しの際にはこの種の基準のあり方も私は見直すべきではないか、こういう意見でございますので、後で大臣からもその部分についてはお尋ねをしたいと思う。  問題なのはもう一つです。今度の土壌汚染の中で、私有地というのはどうするんですか。例えば一つの例で申し上げると、産業廃棄物が捨てられるところに対しては立入検査ができるようになっています。しかし、私有地というのは、今回の基準でここに仮に問題があったとする、工場団地なら工場団地もそうだと、工場がそうだと、立入検査を今回の規定では、例えば工場の場合だとするとそういう立場でできるけれども、全く無届けの場合、そういうことがされたときに私有地というものに対して本当に立入検査ができるような基準といいますか、立場でこの環境基準がつくられたのかどうか、ここを私は疑問に思っているので、この際お尋ねしたいと思います。
  192. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 土壌環境基準の意義というようなことになるかと思いますけれども、今、土壌汚染の調査に関してでございますが、土壌汚染が明らかとかあるいはそのおそれがある場合、土地改変の機会をとらえて土壌環境基準に合っているかどうかというような調査をするというふうな指導をしたりしているわけでございまして、そういう場合に適合しない土壌があったというような場合どうするかということで、これは一つの指導の指針にはなるわけでございます。ただ、それをもって直ちに立入検査だとかそういうわけにはなかなか相まいらぬということでございます。  ここら辺につきましては法律制度も実はないわけでございまして、環境基準は公害対策基本法の中で決められるようなことになって決めておるわけでございますが、これを実施するための措置につきましては、土壌汚染の場合は大変難しい問題をいろいろ多く含んでございまして、汚染が蓄積していくという特殊性もありますし、それから土地所有者とそれから汚染者とはどういう関係になるか、あるいはそういう原因者が不明の場合も随分あるわけで、そういう場合どういうふうにして改善していけばいいかということで、法律制度についても随分難しい問題をいろいろ抱えてございます。  我々は、こういう面について有識者の方にお集まりいただいて目下一生懸命勉強している段階でございまして、的確な対応ができるような形で何らかの検討成果を得たいというふうに考えてございます。
  193. 粟森喬

    粟森喬君 私は、今答えられたように、ある種の機会、別の機会でしかとらえられないような土壌汚染対策というのはやっぱり問題をかなり残す。といいますのは、蓄積されるものが例えば土地の入れかえなら土地の入れかえをすることによって何とかするといったって、これはもう限度があるわけでございます。  したがって私は、今環境行政の中で土壌汚染対策がそういう意味では非常に矛盾というか、問題点が多過ぎるという意味で、この部分について、例えばクリーニング屋がさっき言った発がん性の物質を流していても、これは厚生省が、といいま すか保健所なりが立入検査して、そのもとのところは調べられるけれども、土壌に流れたものについてはどうやって調べるのかということが、全くなかったら、どんなものを使っているのかだけ聞いてふんふん言って、絶対量がどういう使われ方をしているかということの検証というのは——私は、ある種の私有の土地に対して権利を守ることも必要だと思いますが、環境問題というのはそういう所有権に対して一定の制約を、それも余り無理のかからない格好でやるべき方法をつくるべきではないか、こういうふうに思います。  そこで、大臣にお尋ねとお願いをしておきたいのは、今日まで土壌汚染の問題でいろいろ御苦労を行政官庁としてやられたんでしょうが、現状についてはかなり不十分で、もう一度見直しをしていくという前提で物を考えていただけるのかどうか、それは対象となる基準の問題だとか私有地に係る問題、その辺のところについて答弁をお願いしたい、こういうふうに思います。
  194. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) 土壌の環境基準の見直しでございますけれども、現在までは先ほど局長が答弁したとおりに環境庁としては進めてまいっておりますが、また、含有量によることも考慮すべきじゃないかそれもひとつ考えるべきじゃないかという先生の御指摘思います。  土壌汚染問題は今後とも極めて重要な問題で、環境庁としても非常に重要視して考えておることでございますので、御指摘の問題も含めまして、今後検討すべき問題が多いものですから、引き続き真剣な検討を進めていきたいと思っております。
  195. 粟森喬

    粟森喬君 私が知り得る範囲の情報でございますが、日本環境行政というのはかなり進んでいるけれども、土壌対策だけはちょっと一歩おくれているという全体の印象は否めません。欧米の技術では土地そのものをクリーニングするとかいろんな技術開発をやっているわけでございますから、日本における、今度新規の予算もついたのはどこかその辺のところを考えているのかなというふうな気もいたしますが、具体的におくれている部分を挽回するための技術の問題も、この際お尋ねしておきたいと思います。
  196. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 土壌の汚染の回復対策というのは、確かに日本は今まで多くの手法を持っていなかったわけです。実際は、汚染土壌に含まれる汚染物質が雨水等によって流れ出るというようなことを防止する観点から、今まででいいますと、コンクリート層等の中に封じ込めるという手法が一般的であったわけですが、欧米の状況を見ますと今おっしゃったようにいろんな手法がとられている。蒸気で抽出するだとか熱分解するだとか生物分解、ガラス化だとか、いろんな手法がとられています。こういうふうな新しい技術の開発我が国でなされると同時に実用化されることがこれはもう必要なことですし、こういう面でのおくれは大変あるというふうに我々認識してございます。  本年度から五カ年計画で、こういうものについての新しい処理技術を確立、実証するための調査等もやりながら、こういうもののおくれを早急に挽回していくような形で対応していきたいというふうに考えてございます。
  197. 粟森喬

    粟森喬君 土壌問題に関連をして、ちょっと農薬の関係で、たしか予算委員会だったと思いますが、同僚議員から、カンボジアに今農薬がいわゆる国際協力として送られている、しかしこれはカンボジアの農業にとっても大問題だし、農薬をここで使わすべきかどうかということがかなり論議になっているわけでございます。  そこで、環境庁が今知り得ている中で、例えばインドネシアでは、ダイアジノンやスミチオンを使うとウンカも発生をする、それから別の生態系を壊してしまうということなどがあって私は禁止をしたんだと思いますが、そういう状況と、今度カンボジアに送られた問題について、どういうふうに環境庁としてはそこの部分にコミットしているのか、ちょっとお尋ねをしたいと思います。
  198. 赤木壯

    政府委員(赤木壯君) 今お話のあったのは、農薬による病害虫防除に関連して、病害虫の特性や生態バランスの変化によって農薬の効果が減少する場合があるということについてだと思いますが、そういうことがあることは知られておるわけでございまして、こうした現象の一つとして、天敵と害虫のバランスが崩れて農薬散布後にかえって害虫が増加するという現象があると言われでございます。  今お話のあったダイアジノンやスミチオンを水稲害虫の防除に我が国で使用した場合に、これまではそういうふうな害虫誘発多発の現象を生じているような例は言われてございません。したがって、我が国での農薬の使用に関してで言いますとそういう面からの支障はないというふうに考えていますが、今現在、いわゆるリサージェンスというような現象とかメカニズム、こういうものについて十分解明されてない面が非常に多いわけですけれども、今後関係省庁とも十分連絡をとりながら、この面でも科学的知見を集積していきたいというふうに考えてございます。
  199. 粟森喬

    粟森喬君 私は、日本における農薬散布というのはさまざまな功罪を持ちながらある種の現状に来ているんだと思います。東南アジア、特にカンボジアなどは二十年間も内戦が続いたわけでございます。肥料も含めまして極めて不十分なときに、農薬をまくことによっていろんな害虫を退治して食糧増産をするんだという一辺倒だけでは、日本の中で過去さまざま起きた環境汚染の問題を、私は環境汚染のある種の輸出につながりかねないほど、非常に重要な問題だと思います。  したがって、この際大臣にもぜひともお願いをしたいのは、今問題になっているこの部分について、今局長からも関係省庁と少し意見交換もやってみたいという意見でございます。私もここでだめだというふうに言い切るというのはある種の限界があることを知っていますが、十分問題意識を持ってこれからこの問題について、当面カンボジアの問題でございますから、検討を願いたいと思いますが、大臣、いかがでございますか。
  200. 林大幹

    国務大臣(林大幹君) ただいまの粟森先生の御質問でございますけれども先ほど局長が答弁しましたように、環境庁としてもこれに対して鋭意取り組ませていただきたいと思っております。
  201. 粟森喬

    粟森喬君 終わります。
  202. 松前達郎

    委員長松前達郎君) 本件に対する質疑は以上で終了いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十三分散会      —————・—————