○井上哲夫君 これ以上追ってもなかなか大臣のお答えをいただけないので、次の
質問に入ります。
もう
一つの私のきょうの
質問は、旅行者がいろいろ旅行をする際に旅行の取次業者のお世話になって旅行をする。これは国内旅行と海外旅行とあると思いますけれ
ども、最近、不景気不景気といいながら海外旅行は大変ふえております、国内も海外もですけれ
ども。さらに、数日前の新聞では女子
大学生の就職希望のランキングが出ました。何と、驚くなかれ、第一位は旅行取次会社であり、第八位もそうであります。つまり、並みいる日本の企業の中でそういう旅行業者と言われるのがベストテンの一位と八位を占めるなんというのは大変な人気といいますか、大変なことであります。私
どもが就職をしたころには重厚長大でございまして、そういう時代から見ると万感といいますか、本当に変わったということを思うわけであります。
実は、旅行者が取次業の各社にお世話になってよかったと言って帰ってくる、あるいは感謝をしてまた次の旅の企画をしたいと思う人が大部分でございましょうが、中にはもう二度と行きたくないとか、とんでもない業者にぶつかったというふうなことで、もうそれこそ帰国するや否や腹立ち紛れに暴れ回る、こういうのも必ずしも珍しいことではないわけであります。私自身もそういう経験もしております。
そこで、旅行者という消費者の立場と、取り次ぎをする旅行業者との間のトラブルについて
苦情処理がなされているわけでありますが、その
苦情処理の
内容について監督官庁である
運輸省の方にどのような認識を持ってみえるか、お尋ねをしたいと思います。
海外旅行の場合には主にこれは社団法人日本旅行業協会、JATAが
苦情処理を一手引き受けをしているようでございますが、このJATAが出している一年間の苦情の報告書というパンフレットがございます。これを私も読ましていただきました。読むと本当にひどい例が書いてあります。これはひどい例が書いてあるからなのだと言えばそれまでなのですが、けしからぬというような気持ちだけじゃなくて、相手を土下座させたいとか、もう本当に絞め殺してやりたいというふうな、極めて何といいますか激しい。そして、この
苦情処理を見ますと、典型的に私は思うんですが、とにかくおわびをして済ませようと、おわびの
パターンは日本古来、菓子折りを持って平身低頭を繰り返す。しかも、相手を怒らせた張本人じゃなくて、おわび専門屋というのが大手にはございまして、おわび専門屋が菓子折りを持って何とぞ何とぞと、そういう
パターンが非常に多いということを私は感想として持ちました。
こういう形で果たしていいのかと思いますと、むしろ
苦情処理機関、本日はJATAの人にお尋ねをした方がよかったわけでございますが、持ち時間も少ないものですから、いろいろ御迷惑をかけない方がいいということで
運輸省の方にお尋ねをするんですが、こういう旅行のことでまず考えられるのは、苦情があって、消費者といいますか旅行者の一方的な思い違いで、自分で勝手に怒ってわめいている、それはそういうのもあるでしょう。しかし、中には、そうじゃない、本当にやっぱり被害を受けたと。そうするとその場合に、菓子折りと平身低頭で済まそうということが非常に多いというのは、考えようによってはこれはなかなかサービスの向上あるいは旅行の業界の拡大にはつながらない。
そういう考え方に立ちますと、こういうところは、例えばささいな苦情でも旅行者の方の言い分が正しいときには、いわゆる示談書というんですか解決書というのを書類を交付させて、だれが悪かったのかということは明確にして、菓子折りとかクーポン旅行券で何が何だかわからないような解決をむしろするなという
指導をすべきではないか。
さらに、こういうところでは、私
ども昔、昔というか、今も弁護士をやっていますが、大変弁護士のところへ相談に駆け込んでくるんですが、五万円、十万円を取り返すために弁護士費用三十万、五十万でやりますかというと、現実に泣き寝入りをしてしまうんです。まあ無事に命からがら帰ってきたからいいわとか、無事に終わったからいいと。そういうことで、本当に旅行者の権利が回復されているかというと、それはいわば、(「高いからじゃないの」と呼ぶ者あり)今高いという声もありましたが、そういう法律の権利の実現のための周囲の環境が整備されておりませんので、法律扶助システムが極めて貧困なために泣き寝入りが実に多い。そういう泣き寝入りを当て込んでどうも旅行業者もやっているんではないか、そんなふうには思いたくありませんが。そして、
苦情処理の公平な第三者であるというそのJATAにおいても、菓子折りと陳謝で済ますことを最もいいと考えておる向きがあるんではないか。
時間もありませんので
一つだけ紹介しますが、どういうケースかといいますと、飛行機の切符は当日飛行場で渡しますと、これが手違いで切符をもらえなかった、それで旅行に行けなかった。それで頭にきて損害賠償だと、五十万。五十万の内訳は、十五万円が慰謝料で、その他もろもろの費用、さらに航空券の分と。こういうことを言った人と実際に
苦情処理機関でどういう解決がなされたかというと、解決はつかなかったんですが、航空券の半分ぐらいで、そしてあとは菓子折りでと。ところが、その人は我慢ができないということで簡易裁判所に訴えた。そうしたら裁判所は、航空券全額は当然返しなさい、そのほかにさらに考慮しなきゃならない、こういう結論が出ているという記載があります。
したがって、こういう問題について監督官庁の規制を強化しろというのは私は本当は言いたくない。むしろ、そういうものはなしに、なるべく薄くしろということを考えておるわけですが、やはり現状では、
運輸省の方でこういう現状をどのようにとらえ、どういうふうに今後
指導をされるのか、お尋ねをいたしたいと思います。