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柴田範幸君
柴田でございます。
わざわざ
大阪へお出ましいただきまして、私
どもの
意見を聴取いただくことに心からお礼申し上げます。
私は、四つの論点について申し上げたいと思うのであります。
第一は、千八百時間のいわゆる
目標と
年次有給休暇、時間
外労働に関してであります。第二は、
時短推進に関する国の
基本的姿勢、これと
猶予措置に関する問題であります。第三は、
変形労働時間制の目的とあり方、第四に、
時短推進施策の地方分権的手法に関してでございます。
まず、論点の第一でございますが、
年間労働千八百時間達成が今回のこの改正で十分なのかという点に関しまして、
先生方の十分な御検討を煩わしたい、その必要があるんじゃないか、こう思っております。
このたびの改正によりまして、週四十時間
制実施の時期が明確化されたこと、並びに
猶予措置の
廃止期限が設定をされたことに関しましては、評価をしております。しかし、これでいわゆる九七年三月末までに
年間千八百時間
労働、こういう
目標が達成できるかについては疑問を残さざるを得ない、こう思っております。
目標達成のためのキーポイントとしまして、国際的な水準をやはり確保する、こういうことで二点を
指摘しておきたいと
思います。
その第一は、
年次有給休暇に関しましてでございますが、一九七〇年に採択されました
ILO条約第百三十二号が批准できるように改正されるべきであると
思います。特に、
最低の
目標を、先ほ
ども御
意見がございましたけれ
ども、三
労働週、つまり十五日とすることは欠かせない前提でなければならないと思うのであります。また、
中小企業におきましては、従来から長期勤続者が
比較的少ない実情にございました。これを考慮して勤続一年につき一日を加算する、こういう形になっております点は、二日を加算するという形に改めていただきまして、総日数を二十五日とするべきであろうと
思います。
二つ目には、時間
外労働、休日
労働に関してでございまして、
我が国のように
労使協定によりまして
労働時間の
延長措置をいわば無制限に認めておるというのは、国際的に見て
労働時間制上異端ではないか、こう前から思っておるわけでございまして、ぜひその上限を法律で規制すべきではなかろうか。同時に、アジア諸国に比べても恥ずかしい
割り増し賃金率、これにつきましては、
最低、時間外に関して三五%、休日に関して五〇%という形で法律で定めていただきたい、こう
考える次第でございます。
論点の第二に関してでございますが、国の
労働基準行政、特に
労働時間
短縮推進の
基本的姿勢を私はこの機会に問題にしたいと思うのであります。
四十六時間から四十四時間、つまり隔週二日制へというぎりぎりの時期に来てしまってから、急遽強引にいわゆる
猶予措置を
延長するなどということは、まことに朝令暮改のきわみであろうと思うのであります。言語道断の悪政じゃないかと思うわけでございまして、これがもたらした混乱、それから
基準行政に対する相当の不信、こういうものにははかり知れないものがあるのでございます。
ほんの一例でございますけれ
ども、
大阪の南部織物協同組合のケースについてこの際触れておきたいと思うのであります。
大阪では、昨年の十二月に、全国に先駆けまして事業主が共同で
労働時間
短縮実施計画を策定をして、いわゆる
時短促進法によって承認をいただく、こういうケースでございました。泉南地域、つまり岸和田から泉佐野にかけましての綿スフ織物
製造業二十社で成り、常用
労働者は、多いところで二百七十名の一社がございますが、そのほかは十二名から百名
未満の
企業、これがつくる協同組合でございますが、昨年の春ごろから
大阪労働基準局や所轄監督署の、ことしの四月には四十四時間になる、こういう前提での熱心な呼びかけがもとになりまして、この協同組合の役員の皆さんが音頭をとりまして、相当の反対が渦巻く中でたびたびの会合を重ねられたわけであります。そして、ようやく九月に入りまして、それまでの週四十六時間から、つまり四週五日休日制でございますが、それから土曜休日の増加を通じまして九四年末までに週四十二時間を達成しよう、こういうことで合意に達しました。
関係の連合傘下のゼンセン同盟と
協議も進めまして、十二月一日に
大阪労働基準局に申請をし、同月十七日に承認を得た、こういう流れになってまいっておるわけであります。
この承認を受けまして、非常に厳しい経済環境下でございますけれ
ども、四月からまず四十四時間にしなければならぬということで
調査検討を急速に行いまして、そして、資金もつぎ込んで苦労も重ねて
実施にこぎつけたやさきに新聞報道に接した、こういう次第なんでございます。
各社の経営者からは一斉に、協同組合は何やってんだ、こういう非難が集中をいたしまして、
基準局の方からも相当の釈明が必死に行われておるわけでございますけれ
ども、今やこの協同組合の組織問題に発展をしてきてしまっておるのであります。もう集まってくれまへんわ、こういう責任者の述懐が出ておるわけでございまして、これは何を
意味しておるのか篤とお
考えをいただきたいと思うのであります。正直者がばかを見るというのは御免だと、私
どもが言っているのじゃございませんで、その当事者の方々が怒り心頭なんでございます。不況であるからこそできるのだとこの方々は言ってこられました。彼らと苦労をともにしてきました
基準局の
人たちの
立場も、本当に想像を絶するものでございます。それまでの信頼をすっかり今や失ってしまって、どうして再び彼らに
時短促進の呼びかけを続けられることができましょうか、こういう状況でございます。
決して四十四時間に相当する隔週週休二日制が進んでいないのではございません。例えば、
大阪労働基準局の主催で去る三月二日に
大阪労働時間
短縮推進会議というのが開かれました。その席上、
大阪商工
会議所から書面によって
報告されているわけでございますが、それによりましても、昨年九月現在で、
大阪の百人
未満のところの月二日以上を含む月二回の週休二日ですね、これを含めて隔週週休二日制を
実施しているところが既に八五・五%に達しているわけであります、百人
未満でですよ。今後週休二日制を拡充すると答えているところが大部分でございます。つまり四十六時間、四週に五日休みから、この四週に一日休日をふやすという
努力を一
年間やってきたわけであります。この
努力を一年も繰り延べる、この
程度のことを一年も繰り延べるということでは、今後の困難が克服できるのかと私は大変心配しております。
こうしたことが府下の随所に生じているわけであります。困難な
条件、つまり
時短のコスト、先ほ
どもお話に出ましたが、これを吸収できる方法がなかなか見つからない、それでも世の中の進歩なんだから必死になって
努力しよう、こういうふうに事業主の方々を初めみんなが苦労をされておるわけでありまして、それを省みることなく頭からサボってきた向きの
意見を重視する、こういうふうな
基本的姿勢は断じて改めてもらいたいのであります。
中小企業主の多くから私は聞いておりますが、法律ですっきりさせてもらった方が、
労働力確保であるとか
下請振興基準の改正であるとか、そういうふうな措置よりも進めやすいのだ、こういうふうに聞いておるのであります。
これらとの関連で、私は
法案に関して三点を述べておきたいと
思います。
一つは、この点を前提にして、
猶予措置というものは今回
延長されましたけれ
ども、ぜひ本年度早期に隔週週休二日制、つまり四十四時間、この達成を図るために国の責任を明確にしてもらいたい、これが一点であります。二つ目は、このような経験にかんがみましても、法のもとの平等に反するような
猶予措置の
範囲というものは、来年度以降の分も極力限定すべきであると
思います。もともと一括して
適用猶予事業を指定するということはどうも
基本的に見て誤りではないか、むしろ私は猶予を必要とする立証責任は事業主の側が負担するべきだ、こう思っておるわけでございます。三つ目に、
特例措置につきましても同様でございまして、この点を重視して対象事業を厳密に検討していただきたい。そしてその限度は週四十四時間、こういう
段階に進めていただきたい、こう
考える次第でございます。
論点の第三に移ります。一年単位の
変形労働時間制、これはぜひ目的に沿った適切な規制、これが欠かせないと主張しておきたいのでございます。
平均週四十時間を前提としておる現行の三カ月単位の変形制の場合でも、
先生方もよく
御存じだと
思いますが、実は恒常的な時間
外労働、これが当然であるかの運用が行われているのであります。時間
短縮をやりやすくしようというこの制度の趣旨が必ずしも十分生かされていないと
思います。
ましてこれが一カ年単位ということになりますと、
労働者生活の安定上かなりのデメリットも出てまいります。時間
外労働賃金の精算でも、
労働基準法は賃金の毎月支払いの
原則を決めておるわけでありまして、それとの矛盾が拡大することになります。また、ぜひ御留意いただきたいのは、
年間を通じたカレンダー方式による休日増、これを大いにやっておるわけでございますが、これは必ずしも一年でなくとも三カ月単位でも
実施設定可能でございます。そういうふうに
思います。
したがって、
完全週休二日制への過渡的措置という認識に立ちまして、
最低でも、法律によりまして次の五つの要件を明確にされるべきだと
思います。
一つは、法律の提案趣旨説明において
年間における休日増を図るためと、このように述べられておりますから、そういう点を明確にしていただきたい。繁閑を前面に出すということであってはならぬ、こう
思います。第二に、一日の
労働時間の上限を八時間、一週の
労働時間の上限を四十八時間ということにしていただきたい。三つ目に、連続した
労働日の日数の上限を六日としてほしいということであります。四つ目に、あらかじめ
労働日、
労働時間を個々の
労働者にもわかる形にしてもらいたい。これは必ずしも明確になっておりません。五つ目に、
労使協定は当然でございますが、しかし、一月単位の変形制と同様に、この際、就業規則もしくはそれに準ずるものに規定をすることもつけ加えていただいてはいかがかと
思います。
なお、この点に関連しまして、現状、就業規則は届け出を含めて十人以上のところに義務づけられておる、これをもっと近代化すべきだと
思います。なぜなら、
労使の協定で各種の運用を認めるのは結構でございますが、
労働組合との協約でないケースが大部分でございますし、協定と届け出だけでは必ずしも
労働者個々に強制的な命令をするわけにはいかないという解釈が多いかと思うのであります。この際、
労働保険はすべての
事業所に
適用されておりますし、健康保険につきましても、強制被保険者が法人
事業所のすべて、法人ではないところでも常時五名以上の
事業所とされている現状でございますから、これを常時五人以上のところには就業規則の作成、届け出を行うべきであるということを補足しておきたいと思うのであります。
最後の四つ目の論点に移らせてもらいます。
労働時間
短縮支援センターを初め、
時短推進施策には地方分権的総合化が必要であろうと思っております。
本年度からの新規事業として、
中小企業におきまする時間
短縮に対する
助成金の支給などの趣旨には大いに
賛成でございます。特に
猶予期間満了を待たずに
時短を
実施した事業主に格別の奨励措置がとられるべきである、また、先ほど申し上げたような
時短促進法に基づく
時短実施計画を
推進する事業主
団体、これの活動に対しましても十分な支援措置が配慮されるべきである、こういうふうに
思います。
しかし、申し上げておきたいのは、これまでの時間
短縮の啓発なり支援
施策、いろいろ
努力をいただいておるのはわかっておるのですけれ
ども、これを見てまいりますと、
労働省本省が中央で
労働基準連合会等に委託をされまして、お金がそこに行く、そしてそれが下におりてくる、こういう形になっておるわけでございますが、これにはかなり問題を実は感じておるわけであります。地方分権的な発想が大事でございまして、地方
基準局にむしろ予算をおろしていただく、そして地方
基準局が責任を持って、各府県の関連する自治体あるいは
行政組織あるいは諸
団体などが
推進機構な
ども持っておりますから、そういう機構の
協議を通じまして各種の
時短推進施策を総合的に
推進する、こういう形にしていただくことが実効を上げるゆえんではないか、こう思っております。今回の
労働時間
短縮支援センターに関しても同様でございます。
以上、
意見にかえたいと
思います。
ありがとうございました。