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1993-03-05 第126回国会 衆議院 予算委員会第五分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年三月五日(金曜日)     午後一時十六分開議  出席分科員   主 査 柳沢 伯夫君       小杉  隆君    宮里 松正君       綿貫 民輔君    上原 康助君       緒方 克陽君    沢藤礼次郎君       新盛 辰雄君    目黒吉之助君       木島日出夫君    兼務 池田 元久君 兼務 小川 国彦君    兼務 川島  實君 兼務 佐藤 恒晴君    兼務 斉藤 一雄君 兼務 鈴木  久君    兼務 永井 孝信君 兼務 吉岡 賢治君    兼務 井上 義久君 兼務 遠藤 乙彦君    兼務 藤原 房雄君 兼務 川端 達夫君  出席国務大臣         農林水産大臣  田名部匡省君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 林  大幹君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       森  仁美君         環境庁長官官房         会計課長    小沢 通成君         環境庁企画調整         局長      八木橋惇夫君         環境庁企画調整         局地球環境部長 加藤 三郎君         環境庁自然保護         局長      大西 孝夫君         環境庁大気保全         局長      入山 文郎君         環境庁水質保全         局長      赤木  壯君         農林水産大臣官         房長      上野 博史君         農林水産大臣官         房予算課長   堤  英隆君         農林水産省経済         局長      眞鍋 武紀君         農林水産省構造         改善局長    入澤  肇君         農林水産省農蚕         園芸局長    高橋 政行君         農林水産省畜産         局長      赤保谷明正君         農林水産省食品         流通局長    須田  洵君         農林水産技術会         議事務局長   貝沼 圭二君         食糧庁長官   鶴岡 俊彦君         林野庁長官   馬場久萬男君         水産庁長官   川合 淳二君  分科員外出席者         環境庁長官官房         審議官     齋藤 紘一君         外務省アジア局         北東アジア課長 武藤 正敏君         外務省経済局漁         業室長     関 興一郎君         大蔵省主計局主         計官      坂  篤郎君         大蔵省主計局主         計官      寺澤 辰麿君         文部省初等中等         教育局小学校課         長       銭谷 眞美君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 牧野 利孝君         通商産業省生活         産業局文化用品         課長      上野  裕君         運輸省自動車交         運局企画課長  洞   駿君         運輸省港湾局環         境整備課長   門司 剛至君         運輸省港湾局海         岸・防災課長  石田 省三君         建設省都市局下         水道部流域下水         道課長     亀田 泰武君         建設省河川局開         発課長     坂本 忠彦君         参  考  人         (環境事業団理         事長)     正田 泰央君         農林水産委員会         調査室長    黒木 敏郎君         環境委員会調査         室長      西川 義昌君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ————————————— 分科員の異動 三月五日  辞任         補欠選任   楢崎弥之助君     沢藤礼次郎君   目黒吉之助君     沢田  広君   木島日出夫君     菅野 悦子君 同日  辞任         補欠選任   沢田  広君     大畠 章宏君   沢藤礼次郎君     新盛 辰雄君   菅野 悦子君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   大畠 章宏君     渡辺 嘉藏君   新盛 辰雄君     緒方 克陽君   藤田 スミ君     木島日出夫君 同日  辞任         補欠選任   緒方 克陽君     上原 康助君   渡辺 嘉藏君     目黒吉之助君   木島日出夫君     小沢 和秋君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     楢崎弥之助君   小沢 和秋君     木島日出夫君 同日  第一分科員池田元久君、永井孝信君、井上義久  君、第二分科員川島實君、遠藤乙彦君、第三分  科員小川国彦君、第四分科員佐藤恒晴君、鈴木  久君、吉岡賢治君、藤原房雄君、第七分科員斉  藤一雄君及び第八分科員川端達夫君が本分科兼  務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成五年度一般会計予算  平成五年度特別会計予算  平成五年度政府関係機関予算  〔総理府環境庁)及び農林水産省所管〕      ————◇—————
  2. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。  平成五年度一般会計予算平成五年度特別会計予算及び平成五年度政府関係機関予算総理府所管環境庁並び農林水産省所管について審査を進めることとし、補充質疑を行います。  農林水産省所管について審査を進めます。  質疑に入るに先立ちまして、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力をお願い申し上げます。  また、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢藤礼次郎君。
  3. 沢藤礼次郎

    沢藤分科員 農業をめぐる状況が厳しい中で、大臣御苦労さまでございます。水田農業を柱とす る同じ農業地帯に住む東北人として、大臣の御努力、御活躍を心から御期待申し上げます。  まず最初に、農林漁業についての基本的な認識をともにしながら、二十一世紀に向けて、農業林業をいかに守り育てるかという視点から、大臣の所感をお聞かせ願いたいと思います。  農業林業は、水産業もそうでありますが、単なる生産産業だけではなくて、特に人類の生存にとって不可欠の空気、水、食糧、これをつくり、守っているのが農林漁業だという基本を大切にしたいと思います。このことが一つ。いわゆる環境産業であり、同時に生命産業であるという認識をともにしたいということであります。したがって、米を輸入する、しない、自由化の問題は、ただ単なる経済上あるいは貿易の問題ではなくて、日本環境生命をいかに守るかという重大な課題であるということの認識もともにしたいわけであります。米や木材は金を出せば輸入できるかもしれませんが、水田機能森林は輸入できないのであります。降水量の多い、しかも急峻な条件を持っている日本にとって、一たんこの米や林業が崩れますと、大変な事態になると思うわけであります。  そういう意味で、米を守り、農業林業を守り、環境生命を守るこの重要な使命を強く意識しながら頑張っていただきたいと思うのですが、まず大臣の御所見を承りたいと思います。
  4. 上野博史

    上野(博)政府委員 今御指摘のとおり、農林業あるいは農山村というものは、単に農業生産なりあるいは林産物の供給なりを行っているということにとどまりませんで、洪水の防止であるとか水源涵養あるいは土や大気保全、緑の豊かな景観というようなことを果たしているわけでございます。  御指摘のような考え方で、今後とも農林業なり農山村の果たしていく公益的な機能というものも考慮に入れながら、各種の政策を実施してまいりたいというふうに考えております。
  5. 沢藤礼次郎

    沢藤分科員 非常に大事な農業林業でありますけれども、今率直に申し上げて、大変危機的な状況にあるわけであります。このまま推移いたしますと、農業は私の代限りという状況、そういう状況が出てきているわけでありますが、二十一世紀を目指した場合、この農林業を衰退させてはならない、そしてその中心となって、第一線となって農林業を進めていく人材というのが不可欠でありますが、この人材育成ということについての御所感を賜りたいと思います。
  6. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおり、私どもそういう受けとめ方をいたしておりまして、何としても農林業を担う人材というものを育成確保することは大事だ、こう考えております。特に意欲のある人にそういう仕事をしてほしいというのが私の率直な気持ちでありまして、そういうことから、意欲があるということはとりもなおさず経営感覚にすぐれていなければならぬということから、そういうものの経営体もまた育成していこう、こういうことが非常に大事だ、こう思っておりますし、若い人たち農林業及び農山村を魅力あるものにして、そこで定着をして努力していただける環境、そういうものをつくっていきたい、こう考えておるわけであります。  そのためには、農用地を集積することでありますとか、生産基盤あるいは生活環境、こうしたものを整備をする。加えて、金融でありますとか税制でありますとか、そういうものも含めた総合的な対策というものを今とらなければならないときだ、こう考えておりまして、この五年度においても、青年の円滑な就農のための例えば情報収集、提供、相談、あるいは研修教育林業改善資金充実のための法制度改正、そういうことに取り組むことといたしておるわけであります。  さらに、これらの体制整備強化するため、青年農業者対策室を設置することにしております。
  7. 沢藤礼次郎

    沢藤分科員 今の問題と密接に関係のあります農林業についての学校教育の場における取り扱い、学習指導要領あるいは教科内容ということになるわけでありますが、農林業について学校教育との連携を強化すべきであると思うのですが、一言お考えをお聞きしたいと思います。
  8. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 今先生からお話がございましたように、農林業とか農山村がそれぞれの地域経済社会あるいは文化環境の中で重要な役割を果たしておるわけでございまして、その辺の国民のコンセンサスを確立するということも重要であるというふうに思っております。そういうことから、学校教育におきましても、学童とかあるいは青少年自身農林業あるいは農山村への興味であるとか理解を深めていただいて、国民にとって身近なものとしていただく必要があるというふうに思っております。  このため、農林水産省といたしましては、普及員によります学童農園指導であるとか、あるいは林業の方ですと、都道府県の林務部局による緑の少年団指導であるとか、あるいは青少年向けの副読本を作成して配付する。また、先生方あるいは生徒の皆さん方対象といたしまして、先進的農家であるとか林家に視察研修をする機会を設けるとか、あるいは高校生の皆さん対象といたしまして農林業技術研修をやるというような施策もやっておるところでございます。  我々といたしましては、今後ともこれら施策の実施や、あるいは文部省関係者皆さん方との意見交換の場も設けておりますので、こういった交換の場を通じまして、学校教育との一層の連携の強化に努めてまいりたいと思っております。
  9. 沢藤礼次郎

    沢藤分科員 文部省からもおいでになっていると思うのですが、学習指導要領の中に、あるいはまたそれに基づく教科内容で、今論議されておりますような問題をどのように扱われているか、これも簡潔にお答えをお願いしたいと思います。
  10. 銭谷眞美

    銭谷説明員 御説明申し上げます。  学校教育におきましては、農林業が我が国の重要な産業であるとの認識のもとに、小中高等学校を通じまして、社会科中心農林業に対する関心と理解をさせるよう指導しているところでございます。  例えば義務教育を例に申し上げますと、小学校の第五学年では、農業の特色や国民食糧確保の上で農産物の生産が大切であることを理解をさせるとともに、森林資源育成保護に従事をしている方々の工夫や努力に気づかせるようにすることとしているところでございます。  また、中学校では、地理的分野におきまして、産業地域についての学習の中において、地域の地理的な諸条件と関連づけて農林業の様子などについて理解させることとしております。  今後とも、こういった教育が適切に行われるように努めてまいりたいと考えているところでございます。
  11. 沢藤礼次郎

    沢藤分科員 この問題は終わりますが、農水省、文部省にあわせてお願いを申し上げておきたいのですが、今御答弁になったように、産業という面の記述はもちろん大事でありますけれども環境というかかわり方、その視点を強く青少年理解してもらうということと、視点の中でちょっと欠けているなと思うのは、海との関係ですね。水産業、海との関係ですが、森は海の恋人であるという言葉があるのであります。詳しくは申し上げませんが、森がきれいに保全されていないと、その水が流れ込む海が、水産業も育たない、環境も汚染される、この視点もあわせて強調されるように両省にお願いしておきたいと思います。  ただ、高校関係内容を見ますと、まだこの視点の取り組みなり指摘が足りないと思うのです。これは新しい指導要領の中で今後ひとつ御検討願って、高校段階でも今のような問題について御配慮をお願いを申し上げておきたいと思います。  なお、いずれ機会を改めて大臣ともお話お願いしたいのですが、高等専門学校制度というものが、今までは商船と工業だけであったものが、この前の学校教育法改正によって他の分野に拡大されました。むしろ私は、二十一世紀に向けて今のこういう農林業が危機的な状況であればあるほど、てこ入れとして、また人材確保のためにこの 制度を生かすべきであるという考えを持っております。これは機会を改めて論議したいと思いますので、ひとつお心にとめておいていただきたいと思います。  次に、林政について二つほどお伺いしたいと思います。  私ども社会党は、一月の十七日、青森営林局管内岩手花巻営林署管内調査に入りました。日野市朗先生を団長とする調査団であります。いろいろ見聞をし、学習をしてまいりました。この中から二つだけ取り上げて御指摘をし、御答弁お願いしたいわけであります。  一つは、管理手入れの問題であります。私どもが入りました宮守村の山林では、国有林民有林、これは県行造林でありますが、二つ調査してまいりましたが、その違いの余りにも甚だしいのにびっくりしてきたわけであります。胸高直径というのですか、胸高直径が同じ樹齢でありながら三倍違うのですね。つまり、県行造林の方は除間伐が完全に行き届いている。すくすく育っている。ところが国有林の方は、これが林かと思うくらいやたらめちゃくちゃ、除伐、間伐下草払いもしないという状況で、いわゆる管理手入れの不足というのが余りにもはっきりしておったと思います。どうぞひとつ、人員の問題、予算の問題もあられると思いますが、やはり森林管理一つの手本を示すべき国有林野の問題につきましては、大蔵省との折衝等もあると思いますけれども、一層力を入れていただきたい、これが一つであります。  二つ目は、流域管理システムというのが大きな課題になって浮かび上がってきているわけですが、現地に行ってまいりましたところ、当初設定されておりました北上川中流流域管理システムというくくり方よりももっと細かく、猿ケ石流域みたいなところで、いわゆるシステムを支える活性化協議会センターがつくられている。これは非常に狭い範囲になっているわけです。そうしますと、流域という設定の中で今後どういうふうにこの活性化協議会なりセンターなりをリードしていくのか。  このことについて二点お願いします。
  12. 馬場久萬男

    馬場政府委員 現地を御視察されての御意見ということでございますが、最初国有林の問題でございます。  確かに、国有林につきまして、手入れ仕方等地域によっていろいろと違ったりしておりまして、私どもも必ずしもすべてを承知しているわけではございませんが、過去において植林をいたしましたもので手入れをする時期に来ているもの、これは営林署の職員の作業予定によりまして順次しているわけでございますが、今御指摘のように、必ずしもできていないところがあるじゃないかということでございます。  これらにつきましては、我々としては、作業のスケジュールを組ませまして、必要なものはきちっとやるということで臨んでいるところでございますので、御指摘のあるところについても、どういう計画になっているのか一度調べさせていただきますが、手入れができるようにしていきたいというふうに考えております。  二つ目流域管理の問題でございます。  全国百五十八の流域を指定しまして、それぞれにおいて流域管理システムをつくろう、その中核になる流域林業活性化センターというものをその流域でつくりましようということになっているわけでございます。これは、考え方としては、地方公共団体なり、森林組合等その流域内の林業関係者によって構成される自主的な組織であるというふうに考えておりまして、それぞれの地域の中で話し合いをしながらセンターをつくっていくということになっているわけでございます。もちろん、流域として全体がまとまってできることが望ましいわけでございまして、そういう方向指導しているところでございます。  先ほど委員指摘地域におきましては、現在のところ、たまたまセンターは遠野市と宮守村の二つだけでつくっているという実態にあることは御指摘のとおりでございます。これは、この流域の中で特にこの二つの市と村が非常に林業の中核的な地域であるということで、とりあえずその二つの市町村でセンターをつくったという経緯にございます。  ただ、他の地域もほうってあるわけではございませんで、ほかの地域は、花巻地区協議会あるいは一関地区協議会等、それぞれ協議会をつくっております。この協議会センターとの連絡調整のもとに結び合わされて、いずれ一つセンターのもとに入ることになろうと思いますが、現時点ではまだそこまで機運が熟していない、かといって、流域林業のためには早くセンターをつくることが必要ということで、とりあえず発足させたものでございまして、今後順次センターに参加するものが多くなってくるのだろうというふうに思っております。
  13. 沢藤礼次郎

    沢藤分科員 この問題、最後に一つだけ要請を込めて御答弁お願いしたいのですが、活性化協議会なりセンターの構成と申しますかメンバーに、第一線で直接林業に携わっている林業労働者も当然入るべきである、林業労働者代表が入るべきであろうと私は思うわけであります。この基本について一言お願いしたいのです。
  14. 馬場久萬男

    馬場政府委員 流域林業活性化協議会メンバーにつきましては、この仕組みをつくるときに、民有林国有林を通ずる実効性のある、いわゆる川上から川下まで一体的な連携のもとに協議が進められるようにということで、その流域関係するさまざまな分野の人が参加することが望ましいということで指導しているところでございます。  林業労働者代表というお話でございますが、これにつきましても、その流域におきます関係者合意のもとで参加し得るということになっておりまして、現在、設置されております六十七の流域林業活性化協議会のうち、三十二の協議会については森林労連あるいは山労などの方々が入っている状況にございまして、地域の中で合意が得られて参加することが望ましいのじゃないかというふうに考えております。また、そういう方向で今後とも指導してまいりたいと思っております。
  15. 沢藤礼次郎

    沢藤分科員 時間が経過しておりますので、今申し上げたことについて、ひとつじっくりとと申しますか、確実に実行、指導なさいますように強く要請をして、この問題については終わりたいと思います。  次に、水産庁関係質問に入らせていただきます。  海面漁業についての質問になるわけでありますが、最近の海面漁業の動向、問題点というものを私なりに見ますと、遠洋、沖合というものがどんどん範囲も狭くなる、実際の生産も少なくなってきている。そして、それに引きかえ、これからの重点は沿岸漁業養殖を含めた沿岸漁業になると思うのであります。  私の岩手県の資料をちょっと取り寄せて、沿岸漁業生産量生産額のシェアを調べてみたのですが、平成二年の数字であります。海面漁業の総生産量に占める沿岸漁業生産量、パーセンテージを調べましたところ、三七・六%という数字が出てまいりました。ところが、同じ年度の数字として生産額で計算しますと、五五・七%なんです。つまり、生産量では四割に満たないのだけれども生産額については六割近いという実態があるわけで、当然今後の海面漁業方向を示唆しているものと思うのです。  さて、そこで、沿岸漁業あるいは養殖漁業ということになりますと、やはり資源管理という問題が非常に大切であり、重要な問題になると思うのです。  資源管理ということについていえば、例えば二つの県がありますと、操業区域ですね、境界と言ってしまっていいのでしょうか。そしてまた、どういう漁法が許可されているかいないか、あるいは期間はどう設定されているかというふうな、いわゆる資源管理における平等性というのでしょうか、近隣との協調性というものが重要であっ て、片方は厳しいが片方は緩いとか、境界線がまるであいまいだ、片方はここが境界だと言っているのに片方はこっちだと言っている。現実に宮城岩手の間にそれがあるわけです。そして、宮城の主張している境界線岩手が本来から主張している境界線がかなりずれているものですから、その間における海域では両県の漁船が入り乱れて漁をするわけだけれども、一方の岩手刺し網によるサケの漁獲は禁じられている。片方は、なぜか宮城の場合は刺し網が許されている。全国で唯一の県だというふうに聞いているのですけれども、こういうことがありますと、やはり海区調整といいますか、漁業の均衡ある進展、充実ということについては問題があろうかと思うのですが、この点についての御見解をまずお聞きしたいと思います。
  16. 川合淳二

    川合政府委員 各県の間の海の上の漁業に関します一定の線あるいは区画というものにつきましては、それぞれ過去の歴史的な状況によって決まっているわけでございます。一部の県の間におきましては必ずしもそこが明確でないということも、実際問題としてあるわけでございます。  私どもはやはり、各県がそれぞれ受け持っております漁業につきましては各県それぞれに決めていただく、また、その相対します県の間でお話し合いをいただくということを基本として、これまで対応してきているところでございます。
  17. 沢藤礼次郎

    沢藤分科員 水産庁の立場というのは理解できるわけですが、やはり二つの県にまたがる海域については協議協調合意というものがあれば大変いいことなわけです。現に農水大臣の青森県と私ども岩手県とでは、あの境目で、昭和二十六年から協定が結ばれている。両県仲よく共存体制で進んでいるわけですが、残念ながら宮城県との間に二十年間、いわゆる操業区域ラインの問題で合意に達していない。あるときには、平成何年でしたか、イサダ漁限定ラインというものに合意をした。このときは水産庁の調停もいただいてうまくいったのですが、一年たったらそれはもう終わりだよという一片の通知が舞い込んできて、また再びもとの状態に戻ってしまった。  どっちがいいか悪いか私はここで論断するつもりはありません。少なくとも漁業ラインをめぐっての意見の不一致が二十年間続いている。そして一方から言わせれば、同じ海域で違う漁法が許されている。一方ではどんどん刺し網でサケを捕獲する、一方では刺し網がきちっと禁止されている。目の前の同じ海でそれが出ているわけですから、漁民の心情としたら、やはりこれでいいというふうにはならないわけですよ。  ですから、今おっしゃったように、両県、両当事者で合意に達するというのが基本だと思います。しかし、二十年間合意に達しなかった場合どうしたらいいのでしょう、どうぞ。
  18. 川合淳二

    川合政府委員 今先生から例示的に出されましたイサダ船の問題につきましては、先生お話しのように一度合意が、短期的な合意でございますがありまして、その後、その両県でそれぞれ従来どおりでやろう、こういう合意で来ているというふうに表面的にはなっているわけでございます。  ただ、これをめぐりまして解釈の相違があるのは今の御指摘のとおりでございます。現在、両県で、この点につきましてお話し合いが続けられております。私ども、この経過を今見守っているわけでございますが、両県水産担当局間の話し合いによっては、私どもといたしましても、それぞれの事情聴取などを行いながらやってきておりますので、その結果によって私どもの対応を決めていきたいと思っております。
  19. 沢藤礼次郎

    沢藤分科員 まだ経過の途中であるというふうに理解いたしまして、質問をそろそろ締めくくらせていただきたいのですが、さっき触れましたように、やはり海面漁業においての重要なファクターといえば、操業ラインの問題がありますね、簡単に言えば県境というのですか。これは、国境を決めるときは一体どうするのだろうかとか、県の陸上の県境を決めるときは一体どうするのだろうかということなど、難しく考えれば、やはりそれには長い歴史が必要だったということもわかります。しかし、だれが見てもこれはあった方がいいのじゃないかなという結論が見えているような、見えつつあるような場合の判断というのは、いっかはだれかがしなければならないと思うのです。  そういった意味で、さっきも例を引きましたが、刺し網という漁法に対する両県の認可の違い、底びきを岩手では禁止している、開口板底びきは禁止している。これは資源保護資源管理という観点から、自発的にというのでしょうか、それを禁止している。ところが、一方ではそれが行われているというふうなことになりますと、魚にとってみれば県境というのはないものですから、岩手県の方にいようとか、宮城県の方に行くのはやめようなんということじゃない。そうしますと、海面漁業一つの特徴として、やはり同じ日本の領土の中における同じ漁業者が、できるだけコンセンサスを形成させながら、同じようなコンセンサスのもとにラインを引いたり、漁法あるいは期間、漁期、設定される期間とか、そういったものをそろえる方向に行くというのが、漁業行政、水産行政の一つ基本じゃないかと私は思います。  ですから、確かにおっしゃったように、当事者同士で合意に達するというのが基本だと思います。ただ、このくらいなかなかその合意に達しないとなれば、両県の責任者というのでしょうかあるいは当事者が、水産庁に対して、あるいは行政に対して、何とか知恵を拝借できないか、調整、調停をお願いできないかというふうなことになった場合、これはやはり応すべきだろうというふうに私は思うのですが、そのことを最後にお聞きしたいと思います。
  20. 川合淳二

    川合政府委員 両県の主張はそれぞれ言い分があるわけでございまして、なかなか結果的に合意に至らないということもあり得るわけでございます。そうした場合には、当然のことながら、我々もその調整に乗り出すということが必要であろうと思います。  ただ、一方的に線を引きましても、それが守られないと何ともなりませんので、やはりお話し合いを前提として、我々の出る場面を見守っていきたいというふうに考えております。
  21. 沢藤礼次郎

    沢藤分科員 最後に要望を申し上げて、ちょうど時間になるはずであります。  さっき青森と岩手の例を引きました。海域調整委員同士が出てきて、それから課長クラスかな、県の水産担当者が来て、それから両県の漁連の役員が来て、そしてお話し合いをして、協議書というのですか、協定書というのですか、合意書ではなかった、たしか協定書を結んでいるわけですね。そういうあり方というのは私は望ましいと思っているんです。岩手県の南は昔から同じ仙台藩ですね。青森の場合は同じ南部藩だからうまくいったのかもしれませんが、南の方に行けば、岩手の仙台藩と仙台と、同じ仙台藩なわけです。この辺で何とかひとつ、大臣も今お聞き取りのとおりでございますので、水産庁長官とも十分いろいろ意見交換されながら、非常に穏やかに、しかも両方が納得できるような解決に向かって御努力お願いしたい、このことを申し上げて、質問を終わります。
  22. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて沢藤礼次郎君の質疑は終了いたしました。  次に、新盛辰雄君。
  23. 新盛辰雄

    新盛分科員 私の方からは、きょうは、主にカツオ・マグロの漁業の経営状況が非常に悪化しておりますが、この問題と、いよいよ五月に第四十五回のIWC京都会議が開かれますが、その二点に絞って御質問をしたいと思うのです。  まず、農林水産大臣にお伺いしますが、最近のマグロはえ縄漁業の経営状況、極めて異常な状況になっているという環境にございます。水産庁としてもいろいろとその打開策を立てていらっしゃると思いますが、総括的に、今厳しい遠洋漁業という一つ漁業の形態、それに伴う経営の諸条件がどういうふうになっているか、この点、どうい うふうに認識しておられるか、お伺いしたいと思います。
  24. 田名部匡省

    田名部国務大臣 遠洋カツオ・マグロ漁業をめぐる情勢というのは、非常に厳しい状況にあると理解をいたしております。もう五年ぐらい前でしょうか、随分私も、団体の皆さんの説得に当たってみたり、いろいろなことをしたときもあります。このときはカツオの一本釣りがなかなか容易な状況でないというので、網の方の人たちを呼んで生産調整を働きかけたこともありますし、また、マグロについては、台湾に直接出向いて、実態を説明し、要請をしたこともあります。何といっても、やはり二国間交渉、多国間協議、そうしたものを通じて海外漁場を積極的に確保する努力が必要だ。といいましても、各国またこれにはいろいろ賛否両論がありまして、現状のような状況になっているわけであります。  しかし、国内の生産者あるいは輸入業者、流通業者、こうしたマグロの需給動向について討議検討を実施しなければならぬ問題が実はあるわけです。これも随分要請をいたしました。何でもそうですけれども、なかなか思うように、議論して決まったことがきちっといく業界でないというところに実は難しさがあるわけでありますが、しかし、一方では経営の安定、合理化をどう進めるか、あるいは労働力の確保、経営の多角化、経営再建のための金融措置を実施しておりますけれども、今後とも、そうした全体的、総合的にと申し上げた方がいいと思うのでありますが、的確に対処して、カツオ・マグロ漁業の振興が図られるように努力をしていかなければならぬ、こう考えております。
  25. 新盛辰雄

    新盛分科員 そうしたお答えの上に立って、少し具体的に質問をしたいと思うのですが、私は、データを見ますと、平成元年から平成三年の間におけるマグロはえ縄漁業の償却前利益が最近非常に赤字になっていますね。ミナミマグロの漁場で主として操業する経営、これは業界によってそれぞれ状況が違うのでしょうが、二五%全体的にはふえています。そして、太平洋漁場でも三割が赤字経営、こういう状況の中で、メバチとかキハダの漁場では三分の一が赤字経営、こうした状況が続いているわけです。  さらに、遠洋マグロ漁業の一日当たりの経費が約百十万円と言われていましたけれども、現在ではそれを大きく下回って九十万円台だ、こうしたことでございますから、何としても、今大臣がお答えになったように、漁業関係者の業界の調整というのもいろいろありましょうが、何とか運転資金を低利で貸してもらえまいかという強い要望があるわけです。  漁権の方も二百五十万から既に五十万円になっている。したがって、こうした金融措置というので漁業経営維持安定資金だとか漁業経営再建資金があるのですけれども、借金が返せなくて固定化しなければこういう資金の活用ができない、これが今現状の実態であります。こうした仕組みは仕組みとしてあるのですが、借金が固定化しない前に、何とか、転ばぬ先のつえだということもありますが、この漁業者の経営の実態にかんがみて低利の資金を政府として用意する必要があるのじゃないか。いわゆる金融措置を何とかしてもらいたい、こういう強い要求があるわけです。  現に私は、鹿児島は串木野、マグロの基地ということで、タスマニア沖でミナミマグロを追っかけてやっておられる方々の経営の実態も見てまいりましたが、もうここは大変なピンチだというふうに言われておりますので、いろいろ制度資金の問題では事情がありましょうけれども、低利の金融措置というのは考えられないのかどうか、また検討されているのか、またこれからの経営安定のためにどうなければならぬのか、その辺のことをひとつお答えいただきたいと思うのです。
  26. 川合淳二

    川合政府委員 今先生お触れになりましたように、カツオ・マグロに関しまして利用できます資金といたしましては、漁船の建造などに使われます資金のほかに、漁業の経営再建整備資金あるいは系統資金を利用した近代化資金などもございます。また、既往の負債の整理のための経営維持安定資金、先生今お触れになった資金でございます。それから、再建資金というようなものもあるわけでございます。さらに、これは実質的な再編成の場合でございますけれども、構造再編整備資金というようなものがございます。  こうした資金が、今先生の御指摘によりますと、なかなか使いにくいということでございますけれども、カツオ・マグロ業界、特にカツオ業界につきましては、従来から、どちらかというと民間の資金を中心に運営されていたようでございまして、こうした資金についてなじみがないということもございまして、確かに利用の実績は低いようでございます。  ただ、他の業界では使われている例もございますので、私どもといたしましては、まずこうした資金が本当に使えないだろうかということ、それから、何よりもそれに、前提といたしまして、現在の経営状況などが、これは地域あるいはそれぞれの経営体によって違うと思いますので、そうしたことをよく把握すべく、県ともよく相談しながら、どうした対応がよろしいかということについて、今いろいろと情報を集めているところでございます。
  27. 新盛辰雄

    新盛分科員 具体的にここで水産庁としても答えられにくいところもあろうかと思いますが、関係業界からの強い要請があることを十分認識をしていただいて、しかるべき処置をひとつやっていただきますように要望しておきます。  資源の問題ですけれども、まあ何といいましても、今こうした日本の魚食民族、これは何よりも刺身用のマグロの輸入ということにつながりますけれども、今第一にこうした危機的状況に陥っているのは、輸入の増大とそして漁場の競合、台湾とか韓国を初め、マグロ船の増加が、漁船の増加が非常に経営を圧迫している状況だ、こういうように聞いております。  マグロの資源状態も非常に悪化しているということで、ワシントン条約での会議でも、最近ICCATで十分に規制をというふうな強い要望もありますね。  したがって、この辺のことから考えますと、一番、輸入という面でくると、便宜置籍船が横行している、このことが非常に日本のマグロ経営者を圧迫しているという面では注目すべき問題でありますね。  それで、この便宜置籍船を、世界最大の消費国である日本としては無視するわけにはいきません。これは何とか規制をして世界のマグロ資源を守る、結局、日本がこのことにもっと力を出す、漁業外交の面においてもしっかりとやる。ガットの二十条には、有限天然資源の保存について輸入制限ができると書いてあるのですが、このマグロの輸入制限をしてもガット違反にならないと思うし、また、この資源保存を求める世界の声である。この観点から、漁業協定の枠外にある便宜置籍船からの輸入をもう直ちに禁止する手だてはないのか。  昨年の十月には、小渕前幹事長と私は中南米を訪問してホンジュラスなどに行きました。ここでも便宜置籍船の課題があるわけですね。まあ日本も輸入しなきゃならないという面も一面ありますけれども日本国内における業界の経営を圧迫させるような形になることは余りよくないということを申し上げていたのですが、この便宜置籍船の排除、これを禁止するという外交的手段はないのか、あるいは台湾、韓国などとの話をされているらしいのですが、さっき大臣お答えになっているようでしたが、この辺のことをどういうふうにお考えになっているのか、お聞かせいただきたい。
  28. 川合淳二

    川合政府委員 今御指摘のように、この便宜置籍船に対します国際的な批判は急速に高まっていると考えております。  二月の初旬に、FAOでこの問題につきまして専門家会合が開かれております。そこでは便宜置籍船によりまして国際的な管理、今先生がまさにお触れになりました資源管理を免れる行為を防止 するための条約づくりということで、かなりの話し合いが持たれております。こうした対策が今後かなり進捗するのではないかと私ども期待しておりますし、我が国としても積極的に対応していきたいと思っております。  今すぐこうした問題につきまして輸入規制という措置をとることは、いろいろなルールの上から、あるいは国際環境からなかなか難しいわけでございますけれども、一方で原産地証明というようなことをやろうという動きもあるわけでございまして、これは決定しているわけでございますので、そうしたことをステップにして資源管理という面を今後強めて、そうした対応をしていかなければいけない時期にも来ておりますし、我が国としても積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
  29. 新盛辰雄

    新盛分科員 時間が三十分間ということで上辺だけ通っていく話になりますけれども内容的には十分認識をしている問題でございますから、今後、こうしたいわゆるマグロ業界の経営安定、力をつけるために、何としても打つべき手は打ってほしいということを強く要望しておきます。  次に、二十五年ぶりに日本で開かれます第四十五回のIWCですが、これは非常に関心を集めているわけです。二月五日、海の幸に感謝するといういわゆる捕鯨のキャンペーンが全国的に行われていることも聞いているわけです。  商業捕鯨が禁止になりまして、これは一九八七年でしたが、このときから以後、復活のために一生懸命汗を流して、昨年はグラスゴー、おととしはアイスランド、アイスランドは私も行きましたが、国際的な環境が極めて悪くなりつつある。各国々、反捕鯨国として、日本、ノルウェーあるいはアイスランドその他の捕鯨国に対して極めて強い圧力がかかっている。アイスランドあたりは脱退をして、この際、もうIWCの機能はない。保存して、資源を確保して、そしてふえ続けていく。  日本が今調査捕鯨で出しております、第五次まで調査をしましたミンクを中心にした調査のための捕獲、このデータから見ましても、科学的に非常に立派なものができている。七十六万頭もふえるのだから、これから、科学委員会等が計算をし、あるいは日本が出しております改定管理方式によっても、これは百年を展望して二十万頭、毎年二千頭は間引きをしてもいいというデータも出ていることを聞いております。  そういう面で、この会議でどういうふうな展望を持って、そしてモラトリアムを何としても排除するというか、いわゆる商業捕鯨の復活。さらには、フランスが去年来出そうとしております、南緯四十度以南の南氷洋における鯨の聖域をつくろう、サンクチュアリ案というのが出まして、去年はフランス大使館などに私ども社会党も一生懸命陳情に行ったり、あなた方の提案を引っ込めろということも、あそこは社会党政権の国ですから、強く要望しておきました。前回は科学的データがまだ備わっていないということで、一応ことしに先送りになったのだが、またどういうふうになるかわかりませんが、そうした状況も踏まえて何とか商業捕鯨復活のために全力を挙げていただきたい。  水産庁の島コミッショナーを中心にして、国際的な会議ではちょうちょうはつしやっておられるわけですが、また農林水産大臣も非常に関心を持っておられるわけで、我が鯨食文化を守るためにも、ここは一番、幸い日本で開かれる今回のIWCですから、目鼻をつけていただきたい。また、動植物保護のための運動、保護のためのグリーンピースの余りにも激しい抵抗、こういうようなこともありますから、それだけに理論的なデータを駆使して、国際間の問題ですから、ぜひとも日本のしっかりした態度を示していただきたい。  場合によっては、どうですか、もう脱退しようじゃないですか。アイスランドは脱退すると言った。ノルウェーも恐らくそうなるのだろうと思いますね。私は、いわゆる捕鯨国の皆さんだけで今度は新しい会をつくってもいいと思うのですよ。ここまで来れば少し毅然たる態度をとる必要があると思っているのですが、総括的に農林水産大臣のお考え方を聞きたい。
  30. 田名部匡省

    田名部国務大臣 世界の漁業大臣あるいは大使等が時々お見えになりますので、その都度この問題については強く要請をし、理解を求めておるところであります。  お話の一九八七年というのは、私は党の水産部会長をいたしておりまして、このときに全面撤退というのでありましたが、水産庁は困ったようでありますが、絶対だめだ、そういうことで調査捕鯨という形で行ってもらったという経緯があるわけです。そのことが細々ながら、科学的根拠、データを集めるために大変な努力日本がしてきたということでありまして、これは鯨ばかりではなくて、全体に漁業はそういう科学的知見に基づいてやるべきだという提案をして、これにはどこの国も大体賛成いたしております。  鯨ということになると、どうも、お話のように反捕鯨団体、この人たちが熱心になるということで、これに対しては批判もありますが、いずれにしてもIWCが正常に機能することが大事だ、こう考えておりますし、もともと国際捕鯨取締条約の精神であります資源の持続的利用に沿った捕鯨の再開が図られる、これは大事なことでありますから、私どもも全力を挙げて京都大会成功のために最大の努力をいたす考えであります。
  31. 新盛辰雄

    新盛分科員 農林水産省としては、やはり日本の鯨食を守ろうというその決意は随所随所に見受けられます。ただ、外交的に日本の姿勢ということになると、やはり外務省、すなわち漁業外交という面で大きな全体を包んだ問題として出てくるわけですね。  今、日ロ漁業交渉、サケ・マスの沖取り問題で苦労されているようですが、こうした状況も踏まえながら、特にIWCに向かって外務省として、関漁業室長がおいでのようですが、今農林水産大臣がお答えになっているいわゆるIWCに向ける姿勢、それに対応する、外務省としては本当はその先頭を切っていかなければいけないのですが、どういうふうな決意で臨んでおられますか。
  32. 関興一郎

    ○関説明員 先生指摘のとおり、捕鯨に反対する国が多数を占め、捕鯨をめぐる国際情勢がなかなか厳しいということは事実でございますが、外務省としては、国際捕鯨取締条約があって、これが鯨の保存と合理的利用を目的としているということを前提にして、捕鯨条約に基づく合理的な我が方の主張が入れられるようにこれまで粘り強く努力してまいったところでございます。  今、五月の年次会議を前にして、在外公館のハイレベルから関係各国に積極的な働きかけをいたしております。さらに、我が国と立場を同じくするノルウェーとも不断の意見交換を図りつつ、捕鯨に反対する国に対して連携して当たっているところでございます。  このように、捕鯨の問題というのは、今まで科学議論を尽くして、科学議論の蓄積をもとに一歩一歩我が国の主張を前進させてきたわけでございますので、引き続きその努力を最大限、水産庁と協力してやっていきたいと思っております。
  33. 新盛辰雄

    新盛分科員 では確認しておきますが、この四十五回の国際捕鯨委員会年次総会に向けて、まず日本が主張し、何としても強調しなければならないこと、南氷洋捕鯨サンクチュアリーの導入の阻止ですね。これはぜひひとつ、現在の状況の中では七十六万頭にミンクもふえていることですし、今後毎年二千頭とっても可能というデータも出ていることですから、これからの、シロナガスとかナガスクジラのでかいのも、みんながふえる。最近、鯨を見るいわゆる観光資源的な状況も加味し出しておりますが、それはそれとして、それは保存しなければならないわけですから、それに対する、またふやし続けたために海洋資源あるいは海洋形態あるいは鯨類の生存の状況も非常に変わるというようなこともありますので、この辺のバランスを十分考えた上で処置をしていただくこと。  それから、商業捕鯨再開のためのおととしから出されております改定管理制度の方式、これはぜひとも実現ができるように、これは検査監視制度を含めた作業を完成させていかなければならないわけですから、この点についてぜひとも商業捕鯨復活への一段階として、今回の第四十五回のIWCで結論づけていただきたい。  そして、南氷洋の鯨類調査は既に第五次まで終わっておりますから、まだ六次、七次と将来に向けてさらに引き続き調査が可能になるように、第八条があるのですから、当然調査捕鯨は可能ですから、これは継続をしてもらう。  それから、沿岸小型の鯨類の五十頭ぐらいの捕獲枠の問題ですが、これもいつも言われている差しかえという形をとられておりますので、これはぜひひとつ実現をしていただきたい。  小型の鯨類は、従来どおり沿岸の重要な資源でございますし、今後とも地域漁業環境、言うならば地域のこれから漁業を興していく面でも大事なことでございますから、これも現実的な効果のあるようにしてもらいたい。  そして、最近鯨の話題というのは、若い人たちにはもう関心ないのですね。さっき申し上げたように、見る方に楽しみを感ずる。それは、ああいう動物が海洋を泳いでいるという面では関心の深いものであるし、また私どももその保存のために全力を挙げなければなりませんが、しかし、一方でふえ続けるものについては、これは何としても、ある意味では間引きをしなければいけない。その観点に立って全体的な商業捕鯨復活を、こういうことにしてもらいたい。この確認を、お答えされるようなことをもう全部申し上げてしまったのですが、よろしいでしょうか。
  34. 川合淳二

    川合政府委員 今、先生、特に五点、さらに、日本で開かれるということを契機に国民的な理解を深める必要があること、私ども、そうしたことを中心にこの総会に臨んでいきたいと思っております。  サンクチュアリーの問題は、私ども、決して科学的な根拠のない問題だというふうに考えておりますので、これをまず阻止しなければいけないと思いますし、改定管理制度につきましても、監視制度を残せば、あとは完成度の高いものでございます。  それから、捕鯨調査につきましては、ここから科学的な根拠が出るものでございますし、沿岸につきましても、これは一つの伝統的捕鯨として根拠のあるものでございます。そうしたことを中心にこの総会に対応してまいりたいと思いますので、よろしく御支援をお願いしたいと思います。
  35. 新盛辰雄

    新盛分科員 よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
  36. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて新盛辰雄君の質疑は終了いたしました。  次に、小川国彦君。  小川君に申し上げますが、持ち時間を厳守され、議事進行に御協力をお願い申し上げます。
  37. 小川国彦

    小川(国)分科員 私は、政府の政府米買い入れ政策がここ数年来大変な失敗を重ねてきて、一体それをどう改善するのかということが懸念されるわけであります。以下、順次その数字を申し上げ、その実態について農林水産大臣がどういう認識をされているか、まず伺いたいと思うのです。  最近、この七カ年における政府の買い入れ状況を見ますと、昭和六十年ごろは政府米は四百三十三万トン、昭和六十一年、四百三十二万トン、昭和六十二年、四百十九万トンときましたのが、昭和六十三年には三百十五万トンと百万減り、平成元年には二百八万トンというふうに、またここでも百万落ち、平成二年は百六十三万トン、平成三年は百七十六万トン、こういうことでございます。  一方、自主流通米は、昭和六十一年ごろ三百五十八万トンであったのが、昭和六十二年には三百七十八万トン、昭和六十三年には三百七十五万トン、平成元年には四百五万トン、平成二年には四百六十五万トン、平成三年は四百五十七万トン。こういうふうに、自主流通米が伸びてきているのに対して、政府米は逆にずっと落ち込んできてしまっている。百万トンずつ、だん、だん、だんと落ち込んできているのですね。  そして、政府の買い上げ数量を見ましても、米の集荷実績を最近で見ると、一九九〇年が百七十七万トンに対して、一九九一年には百十二万トンという数字になっているのですね。一方自主流通米は、一九九〇年も四百五十一万トン、一九九一年も四百五十五万トンということで、四百五十万トン台を維持している、こういう状況なんです。  ともかく政府米の買い入れ状況の悪化はもう大変なもので、昭和六十一年四百、六十二年三百、六十三年二百、これはいずれも万トンがつきますね、平成元年が百六十三、平成二年が百七十六、こういう悪化の事態というものを農林大臣農林水産省は一体どういうふうに認識しておられるか。大臣あるいはまた農林水産省の担当者のひとつまず認識を伺いたいと思います。
  38. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 御指摘のような数字で推移しておるわけでございますけれども、御案内のとおり、米の需給が緩和し米が過剰になるという中で、一方で減反を強化したわけでございます。他方、米需要拡大ということで、消費者の良質米への志向をとらえて、良質米の生産を政府としてもまた系統としても奨励してきたわけでございます。そういう中で、良質米志向が最近の多様な需要から見ますと行き過ぎになっているというのが現実の姿ではないかと思っています。四年産米自身、減反緩和する中で、昨年に比べまして百万トンの増産となったわけでございます。全体としての需給操作自身には支障がないと考えていますけれども、政府米の減少ということで、業務用米でありますとか標準米の操作に相当意を用いなければいけない事態になっておるかと思います。  他方、良質米自身も需要から見ますと過剰になっているということで、ことしの米の入札結果、五回ほど行われたわけでございますけれども、二月の入札結果を見ますと、全体で、今までなかった不落の品目も出ております。また、価格自身も、特に値段のいい方を中心に値下がりというようなことになっておるわけでございます。  そういう点からしますと、いわゆる自流米、政府米、さらに加工用米等につきまして、それぞれの用途に合った需要を、難しいとは思いますけれども誘導していかなければいけないような事態を迎えておるというふうに認識しておるところでございます。
  39. 小川国彦

    小川(国)分科員 大臣、いかがですか。
  40. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今食糧庁長官からお話があったとおりでありますが、いずれにしても、農家は所得を上げたいという気持ちが多いわけでありまして、これはもう当然のことだと思うのですね。そのために、当初これを始めたころは、単収が悪いということもあり、余りやる人がいないということでいろいろな助成をいたした。今八〇%までこれがいきまして、そうすると、黙っておきますと、市場原理を導入しておりますから価格が下がる。ところが、自分だけは何とかつくっていいものを高く売りたいという意識が働くということで、そうしたことが今日のこういう状況になっていることもありますし、昨年ですか、冷害、そうしたこと等もこれに拍車をかけたということはあると思うのです。  しかし今度、何とか、こういうことであっては、やはり政府米が必要な国民もおるわけですし、他用途利用米も必要な国民もおるということで、安定的に供給するためにはどうするかということでいろいろとやっております。水田農家への活性化対策におきまして、そういうことをやろうということで、政府米確保のために新たな助成措置を講じながら、その実効確保に向けて、生産者団体と一体となって今取り組んでいるところであります。  政府としては、責任を持って国民にそれぞれ必要なものが安定的に供給できるという基本方針にのっとって努力をしていきたい、こう考えております。
  41. 小川国彦

    小川(国)分科員 米が集まらなかった理由は、政府米に絞って質問をしたいと思いますが、一九八五年、昭和六十年ごろまでは逆ざやの状況であったわけですね。それが一九九〇年、平成二年から順ざやに転じているわけです。一九九〇年、一万六千五百円で購入したお米を一万八千三百九十六円で売っているわけです。それから一九九一年には一万六千三百九十二円で政府が買い入れたお米を一万八千二百三円、こういうことで、一九八五年のときには三百四十一円マイナスであったのが一九九〇年の買い入れでは千八百九十六円の黒字、それからまた一九九一年でも千八百十一円の黒字と、約二千円近いものを政府が、言葉をわかりよく言いますと、もうけているということなんですね。  これは、少しでも高く買ってほしいという生産者農民から見ると、政府はこれだけもうけているのに買い上げ価格は抑え、そして高く売って、そして利益が出ているのにちっとも農民の方を見向きもしようとしない、ならば自主流通米をつくって、その中で価格の高いものをつくっていこう、こういうふうになるのは自然の状況だと思うのですね。  こういうふうな政府がもうけ過ぎているという農家の批判があるのですが、この点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  42. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 もう御案内のとおり、政府米の買い入れ価格と売り渡し価格というものは、それぞれ固有の考え方によりまして、食糧管理法の規定に基づきまして適正に決定しておるところでございます。その結果、先生が御指摘のように、売買逆ざや自身はそういうことになっていますけれども、政府管理経費を入れましたコスト逆ざやというのは依然として現在で六十キログラム二千七百五十一円あるわけでございまして、毎年一般会計から食管会計に相当の金額を繰り入れておるわけでございまして、政府はこれによってもうけておるということには当たらないと思っております。  ただ、生産者自身が、同じ米をつくるわけでございますので、それぞれ少しでも利益の上がる米をつくりたいという意向というのは、私どももそれは十分気持ちはわかるわけでございますけれども、しかし、米自身、先ほど大臣も申し上げましたように、少し高くてもうまい米を食べたい、家庭用もありますし、それから標準米でありますとかあるいは外食その他安い米が必要であるという需要もあります。論議はしないとおっしゃいましたけれども、加工用というものもあるわけでございまして、それぞれのおのずからの需要を余り超えますと、それぞれが値崩れするとか、さらにまた在庫が必要以上に積み増していくとか、物の需給、流通に支障があるわけでございますので、やはりここは用途に合った生産、流通というのを、我々もあるいは系統も農家の理解を得て真剣に取り組んでいかなければいけないのではないかというふうに考えておるところでございます。
  43. 小川国彦

    小川(国)分科員 用途に合った米ということは、それは一つの時代の流れとしてあるわけですが、問題は、政府米の買い入れというものと自主流通米の買い入れというものがあって、かつては自主流通米は一割か二割、政府米が米の買い入れの大宗をなしていたわけですね。それが逆転してしまって、自主流通米が七割、八割を占め、政府米は一割か二割だ。もう百万トンぐらいしか集まらなくなってしまった。一千万トン米の生産、需要があると考えれば、どんなに悪くても、政府米はその半分の五百万トン以上は政府が確保するというのでなければならないと思うのですよ。五百、四百、三百、二百、百なんて、百万トン単位で政府の買い入れの数量がどんどん落ちてきて、もう百万トンになってしまったというこの現実は、私は農林大臣も農水省も重大な責任があると思うのですよ。  この百万トンになってしまった現実というものを、一体どういうふうに直されるおつもりですか。     〔主査退席、目黒主査代理着席〕
  44. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 御指摘のように、政府米の比率が下がってきているということは事実でございますけれども平成三年産米が特に不作であった。しかもその不作の影響を最も受けたのが三類が多い九州産米である。これは九州産米の作況というのが全国の中で最も悪かったわけでございます。そういう中で、とりわけ政府米の直接集荷が難しくなったわけでございますけれども、系統自身もそれぞれ用途に合った需給が基本であるというようなことから、自流米と、まあこれは俗な言葉で言いますと、Uターンとかいう言葉を使っておるわけでございますけれども、そういうことにも努力していただきまして、現在のところ百六十万トンは超えるような政府米の集荷になっているわけだと思います。ただ、自流米を合わせました量は六百万トンを若干上回るぐらいになっておりまして、昨年に比べて多い数字でございます。自流米自身も政府米とあわせて政府の基本計画のもとで管理するわけでございますので、そういうものの売却あるいは流通というのを見ながら、やはり需給操作に不安のないようにしていきたいというふうに考えております。
  45. 小川国彦

    小川(国)分科員 政府米の年々落ち込んできた問題を自主流通米と一緒に考えれば何とかなるんじゃないか、そういう安易な姿勢が今日の政府米が底をつくという状態になってきたんじゃないかと私は思うのですね。生産農家の意見を聞きましても、まず第一に言うのは、こんなに安くては米を政府に納められないというのですね。例えばマル自の、自主流通米の米は、Aランクですと新潟のコシヒカリがあり、Bランクですと秋田のキヨニシキとかあきたこまちがある。こういう価格はどんどん上がっているというのですね。そこに政府米と四千円とか六千円の差が出てきている。すそ物の米というものでも三千円、四千円の差が出る。こうなると、いかに国家のために政府米を出そうとしても、供米しようと思っても、こんなに値が開いていては政府に納められないというのですね。結局、だれでもそうですよ、物を売るときに、高く買ってくれる方へ売るのは。これは経済の法則ですからね。政府がこんな安い値段でしか買ってくれないのに、自主流通米の値段がどんどん上がってくれば、そこへ米が流れていくのは、これは自然の法則なんですよ。そういうものに改革の手を伸べないでいたのでは、食管制度をつくっている政府というものが、その食管制度を支えていく、維持していく、その政府の食管制度の存在意義そのものを問われることになってしまうと思うのです。そういうことで、まず農家の人たちは価格問題でもっと実情をしっかり把握してくれ、こう言っておりますが、この点はいかがですか。     〔目黒主査代理退席、宮里主査代理着席〕
  46. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 おっしゃっておるように、同じものであれば少しでも高く売りたいというのは個々の農家の考えだと思います。ただ、先ほどから申し上げていますように、米自身もおのずからそれぞれの需要があるわけでございます。だぶついていたときは、それが目に立たなかったわけですけれども、全体的に需給が窮屈になってきた中で、そういう岩盤があらわれておるところが出てきておる、それが安い米にあらわれておるわけでございますけれども、安い米の操作が一方である反面、高い米もどんどんつくっていきますと、それがどんどん流れなくて、どこかでたまっていって、やはりそれが需給をややこしくする。また、値下がりが、今現に、十二月くらいからそういう兆しがあったわけでございますけれども、二月は大阪、東京ともはっきりした動きが出てきておるわけでございます。そういう点から、生産から誘導する必要があるんじゃないかと思います。これを自流米、政府米、他用途米を考えて価格自身で操作することは、私は率直に言って難しいんじゃないかと思います。  ただ、そういういろいろな生産、流通を誘導する必要というのは、我々も操作の責任があるわけでございます。如実に考えておるわけでございまして、昨年十一月にポスト後期対策というのを決 定し、現在地方段階までおろして五年産米から取り組んでいただくことにしたわけでございますけれども、そういう中でも自流米、政府米、他用途米、さらにはモチ米についての誘導目標を定め、またそれに対する奨励措置も講じているところでございます。  その際に、自流米の行き過ぎというようなことは、これはいろいろな点であらわれてきておるということで、自主流通米の奨励費の見直しを行い、その財源も余すことなく使って、政府米あるいは他用途米の生産、集荷の誘導に当たりたいということで、全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
  47. 小川国彦

    小川(国)分科員 政府米に対するところの国民からの要望というのは、今まで政府米というのは、やはり標準価格米と言われまして、一番消費者にとって手ごろな値段のお米であったわけですね。だから、政府米というものは一定の国民の中から需要があった。そこに加えて今度は、いろいろな外食産業もやはり政府米というものを多く利用するようになった。そういう意味で政府米に対する需要は一定のものがあり、またそれが伸びてきているという状況があるんですね。政府米に対する需要がありながら政府米が集まらない。これは一体どういったことなのか。需要にこたえる食糧庁の政策というものが確立されていないんじゃないかと思うのですが、需要を把握して需要に見合った生産の確保というのはできないのですか。
  48. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 おっしゃっているように、米全体の需要が減退してきたというのは事実でございますけれども、最近いろいろな影響、この分析は的確にできないかもわかりませんけれども、やはり景気の減退の中で、外での消費じゃなくて家庭内消費がふえてきている。それから、反面また、食の調理を外部に依存するというような格好での外食といいますか、そういうふうな需要が逐次ふえていっているというようなことが起きているわけでございます。その反面、米の生産が、先ほど言いましたように、特に三年産米が不作であった。四年産米については減反緩和はしたわけでございますけれども、復田その他に手間取ったりいろいろなことがありまして、百万トンの増加にとどまったわけでございます。  そういう点からしますと、個別用途の以前に、全体的な需給、来年度、私どもの見通しでも、二十六万トンの在庫持ち越しが来年の十月には古米で四十万トン程度にしかならないのではないかというような全体的な動きの中で、やはり個別需要にいろいろな問題が起きてきておるわけでございます。そういう点からしますと、全体的に米のゆとりある需給といいますか、そういうことがまず一番基本ではないかということで、来年以降の米の生産調整といいますか、ポスト後期対策、いわゆる水田活性化対策では、さらに転作面積を減らしまして、生産の増加というのを一方やり、在庫の積み増しということをやっているわけでございます。  そういう中で、それぞれ、先ほど言いましたように、良質米の需要でありますとか政府米の需要あるいは加工用米の需要というものがあるわけでございますので、そういう用途についての指標というのを各県に流しまして、そういうふうな対応をしていただく。それについて奨励金を来年の予算でも計上しておるわけでございまして、そういうことを活用して農家の方の理解を得ながら用途に合った生産、集荷の誘導に全力を挙げていきたいというふうに考えておるところでございます。
  49. 小川国彦

    小川(国)分科員 用途に合った集荷ということも大事なことの一つだとは思いますが、問題は政府米の政府の手持ちがどんどん減っている。平成四年産米はほぼ買い入れを終了したと言われているわけですが、しかしその実態は、政府米の集荷は百万トン、それから自主流通米からUターンさせたお米が六十万トン、さらに二十六万トンの持ち越しを加えてやっと百八十万トンの確保ができた、こういう事実は認めますか。     〔宮里主査代理退席、主査着席〕
  50. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 五月三十一日までに集荷でまだ努力していますけれども、大体ほぼそういうことになろうかと思います。ほぼそういう水準ではなかろうかと考えています。ただ、需給操作は政府計画では政府米と自流米をあわせた計画をやります。それから、来年産につきましては、十月末には新しい米が四百万トン程度出回るわけでございますので、そういう点から全体的な需給操作には心配はないというふうに認識しております。
  51. 小川国彦

    小川(国)分科員 平成五年末には在庫ゼロという深刻な状態が予想されているわけです。平成四年に集荷した、一応いろいろなところからかき集めた百八十万トン、これを売っていきますと、ことしの十月には在庫ゼロになる、こういう事態が予想されるのですね。平成四年の米穀年度でも国の持ち越し在庫は二十六万トンということですから、約二カ月分ですね。そういうところから見て、ことし百八十万トン、平成四年の寄せ集めを使っていって、順調にいけばいいんですが、やはり一昨年あったような、そういう不作とかいうような事態が起こってくると、これは在庫ゼロになるおそれがあるのじゃないですか。そういうことを考えたら、やはりしっかり政府米を積み重ねていくという努力が必要なので、まず在庫ゼロの状況の懸念はないのか。それから、今百万トンになっている現状を、これからもう一度、少なくも半分は政府米でやる、二百万トン、三百万トンと積み上げてもとの状態に戻す、こういう見通しはあるのかどうか。  在庫ゼロに対する見通しと、今後政府米の買い上げ数量をもどのように戻す、そういう積み重ねていく見通しはどう持っているのか。
  52. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 十月末の古米の在庫でございますけれども、これは政府米自身は、先生指摘のように、政府に直接集まったもの、それから俗に言うUターン合わせまして百六十万トン強ではないかと思います。それに二十五万トンの在庫がございますので、百八十万トンとか百九十万トンとかという数字ではないかと思います。  一方、そうでございますけれども、同じく政府の管理下にある自流米は、前年より集荷がふえているというようなことでございます。いずれにしましても、そうすると需要の方は一定でございますので、その辺の操作によりまして在庫量がどうなるのか。例えば、自流米の供給がふえれば、政府米が売り控えすることもあろうかと思いますし、そういう中で自流米自身の販売も、それに見合った販売、政府米との連携をとりながらの販売というのも今後考えていくことにしておりますので、定かではございませんけれども、とにかく需給操作に支障がないようにはしたい。  それから、来年産の米の出回りというのは、御案内のとおり八月ぐらいから出てくるわけでございまして、十月末段階では四百万トンのものを持っておるわけでございますので、そういう点から需給操作の心配というものはないというふうに考えておるわけでございます。  それから、在庫につきましても、二十五万トン自身多い在庫だと思っておりませんし、来年度我々四十万トン前後と思っております。ポスト後期対策では、さらに在庫の積み増しということを考えまして、減反面積を割り出し、しかも、今回は減反面積だけでなくて、稲の水張り面積も合わせまして都道府県の方にお示しいたしまして、稲作に取り組んでいただくということにいたしておるところでございます。
  53. 小川国彦

    小川(国)分科員 一年先の見通しか何か、植えるところまでの見通ししかないみたいなのですが、やはり多いときは五百万トン、少なくとも三、四百万トン政府米というのは持っていたわけでしょう。それが今百万トンにまでなってしまったのですね。これを、政府米がちゃんと四百万トンなり五百万トン確保されていくという、そういう政府米をきちっとそこへ、もとへ戻すという見通しはないのですか。
  54. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 今おっしゃっておるような五百万トン、六百万トンというのは、従来操作し、二 度の過剰を招き、いろいろな面で問題が起きたわけでございまして、そういう数字は多いかと思いますけれども、今回のポスト後期対策では、期央で百万トンの在庫を持つということをねらいといたしまして、現在、国、県、系統を挙げて取り組んでいるところでございます。
  55. 小川国彦

    小川(国)分科員 まあ、百万トンを目指している状況では、どん底になってそのままやっているという状況では、あなた方が食管制度を守るとか主張しても、それはもう国民に支持されないものになってまいりますよ。政府米を四百万、五百万、多いとき、過剰のときはそうかもしらぬけれども、少なくも今のように政府米が一割か二割になって、八、九割を自主流通米に頼らなきゃならないというのは、食管制度の中で国民に安定をした米を供給するという農水省の役割を放棄しちゃったんじゃないですか、百万トンでいくというのは。片や、自主流通米があるからそこから戻るといったって、それは高いお金なんだから。やはり政府自身も自分たちの値段のつけ方、買い入れ方、食管のきちんとした運営、そういう中で農民が安心して、納得して政府米を売ってくれる、そういう状況をつくる責任は、農水大臣、あるのじゃないですか。百万トンでいいというふうに長官も大臣もそう考えていらっしゃるのですか。
  56. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 百万トンがいいということではございません。まあ、そういうことでもあるわけでございまして、ちょっと俗な言葉で悪いわけですけれども、Uターンというのも、政府米がある程度必要であるということで、系統と話して六十万トン強の積み上げをやって百六十万トンを上回るものが政府米として確保されるかと思います。  いずれにしましても、百万トンでいいとは思っていません。転作目標面積でも百八十万トンの政府米を目途に今お示ししておるわけでございますので、政府米は、今申し上げましたように、来年度は百八十万トンを目標につくっていただくということで、県を通じて農家段階にお示しし、それの生産、集荷の奨励に全力を挙げてするわけでございまして、百万トンの政府米の集荷で足れりというふうには考えておりません。
  57. 小川国彦

    小川(国)分科員 時間が参りましたから、これは農水大臣にもあれなんですが、Uターン米なんて言葉はいいですけれども、政府米は政府が買い上げる、それから自主流通米は農協が買い上げるあるいは商社が買い上げるわけですよ。その商社や農協が買い上げたお米を政府の方に回してもらって百八十万トンのつじつまを合わせるのは私はだめだというのですよ。国民が求めている政府米というものは、政府の力で、政府の経済政策で、価格政策で、食管政策できちんと買えるような仕組みの努力をやはりしなければいけないのではないか。これは非常に大事なことだと思うので、最後に、農水大臣が政府米確保の展望、見通し、決意をどう持っているか、伺いたいと思います。
  58. 田名部匡省

    田名部国務大臣 なかなか私どももこのことについては、先般も団体と話し合いをしたのでありますが、いずれにしても、必要な量は、農家の皆さんいろいろおありでしょうけれども、責任を持って生産をしていただくということでないと、高いのだけつくるんだ。全体的に見ますと、これは需給の関係がありまして、年々減ってきている。この先減るかどうかという見通しはわかりませんが、いずれにしても、全体量というものは決まっているわけでありまして、高い方がいいといってそれを望むと、一方の政府米は少なくなっていかざるを得ない、その関係が私はあると思うのです。  しかし、いずれにしても、農家の皆さんが不足にならぬようにやる。価格政策でどの程度やるか、いろいろありましょうけれども、そのことが結局、先般百五十円ずつ良質米の方から対策費に回したわけでありますけれども、これを減らすとまたなかなか問題も出てくる。しかしながら、黙っていてもいいものは、おっしゃるように、五千円、六千円と高く売れておるというのに、政府米は、一体いつまで助成をしていくのかという問題も、これは本当に議論して、そうして需給のバランスというものをとりながらやっていかなければならないというふうに私ども考えていまして、余り偏ったやり方ではなかなか農家の方々も協力してもらえぬものですから、いろいろとバランスをとりながら、そのことの御協力をいただくということで、価格も安定的に、また供給の面でもきちっといく体制というものを、これは政府だけの問題ではなくて、農家の皆さんの御協力を十分得ながらやっていかなきゃならぬというふうに考えております。
  59. 小川国彦

    小川(国)分科員 これで最後ですが、これは農家の問題ではなくて、挙げて農水省の農政の責任の問題だと思いますよ。ですから、百八十万トンの目標はひとつしっかり政府米で確保するように、その取り組みをまず第一段階要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  60. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて小川国彦君の質疑は終了いたしました。  次に、緒方克陽君。
  61. 緒方克陽

    緒方分科員 きょうは農林大臣と構造改善局の方を中心に、いわゆるパイロット事業の問題について質問をしたいというふうに思います。  ほかの委員からも既に質問もあったかと思うのですけれども、ガット・ウルグアイ・ラウンドで非常に大きな焦点になっております米の市場開放の問題でありますが、私たち野党といたしましても、この問題については大変重要だということで、過日も代表団をアメリカにも派遣をいたしまして、きのう帰ってまいりましたが、政府なりあるいは議会あるいは全米の精米者業界などとも接触をして、日本の米というものがいかに重要なものであるかということで、このことについては食糧自給率の現状から見てもなかなか簡単に認められるものではないという立場をぜひ理解してもらいたいということで、いろいろな立場で、野党外交ということも含めて社会党としても努力をしてきているわけでございますが、今日の状況、いろいろありますけれども、このガット・ウルグアイ・ラウンドにおきまして、米の市場開放阻止ということで大臣も取り組まれているというふうには承知しておりますが、基本的な考え方について、対応の方向についてお尋ねをしたいと思います。
  62. 田名部匡省

    田名部国務大臣 社会党の代表団が訪米されて、このウルグアイ・ラウンドのことでお話し合いをしてこられたということは、大変感謝いたしております。  そこで、私どもも従来から申し上げているとおりでありますが、日本国民の主食であります米、これは農業の基幹をなすものでありまして、特に水田稲作は、国土でありますとか自然環境あるいはその保全地域経済上不可欠の役割を今日まで果たしてきております。そういうことから考えて、国会決議等の趣旨を体して、国内産で自給するという基本方針のもとで従来も対処してまいりましたし、これからもその方針で対処してまいりたいと考えております。
  63. 緒方克陽

    緒方分科員 今大臣から、従来の方針を含めてこれからも堅持ということでいきたいということがございました。  ところで、このウルグアイ・ラウンドをめぐっては、いろいろな各国の動きなどもあります。我が党の代表のいろいろな活動の中では、例えばともに行動をする国として、フランスだとかあるいは韓国だとかいろいろなところの議員さんなんかも含めて、外交なども含めながら、野党も接触をしながら、いろいろなところと連携をとりながら取り組んでいくべきではないかという報告なども受けております。  ところで、そういう状況でありますが、マスコミの報道などでは、東京サミット前の決着ということなども報道をされているわけでありますが、大臣も従来の方針堅持、堅持ということでは言われておりますが、さっき言いましたように、いろいろな要求をともにする国々と一緒にさまざまの 行動をするということが必要ではないかというふうに思うわけでありますが、政府は今日までの国会決議等あるいは先ほど申し上げられましたような方針に基づいて具体的に動いていくべきではないか、また動いているかと思いますが、その具体的な内容は、現状ではどういう形で取り組みをされているのかということについてお尋ねをしたいと思います。
  64. 田名部匡省

    田名部国務大臣 ウルグアイ・ラウンドにつきましては、アメリカの政権交代前にこの大筋決着を図ろうということで努力を払われたわけでありますけれども、他の分野、この問題で各国から問題が提起されたということで、アメリカの政権交代を機に交渉が停滞しておるというのが現状であります。したがって、私どもは、米のような基礎的な食糧や国内で生産調整を行っているものについては、包括的関税化の例外とするようにという主張をしているわけでありますが、お話のように、フランスでありますとか韓国、カナダ、こうした国も、このダンケル案については異論を唱えているところでありますけれども、ただ、包括関税化で反対しているのかというと、これまたばらばらでありまして、量的なこと、いろんなことで反対ということでありまして、必ずしも、ダンケルの案には問題あるけれども、そこまでいくと一緒になれるかというと、若干違う面もあるわけでありまして、米については日本と韓国、この二カ国が反対という立場をとっておるわけでありますが、いずれにしても、このダンケル案を修正すべきということでは一致点が見出せるものですから、私どもいろんな国と共同で努力をしていく必要があるということで、今日までもその努力を続けてまいりました。
  65. 緒方克陽

    緒方分科員 今大臣答弁では、いろいろな国と共同して取り組んでまいりましたということですが、余りそのことについては見えない方がいいのか、見えるのがいいかわかりませんけれども、そこら具体的に、例えば最近の例ではどういうことをされてきたというようなことがあれば、ぜひお聞かせ願いたいと思うのです。
  66. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私もアメリカ、カナダ、ヨーロッパを回りまして、また各国の農業大臣が随分訪問してくれておりまして、その都度、それは賛成する例えばオーストラリアとかニュージーランドも来ます。カナダにも行きましたし、来ましたし。そういうところを回って、あるいはお会いしたときに、その話を随分やっております。ですから、何といいますか、先ほど申し上げたようなことで、一緒になって、例えばこの十一条二項(c)とは共通する問題でありまして、そういうことは一緒になってやろう。全体としてあの案について問題ありということでは一致して頑張ろうということで話し合いをいたしておりますので、今後ともそういう面では一緒になってやっていける、こう考えております。
  67. 緒方克陽

    緒方分科員 田名部大臣のそういうお答えでありますので、いよいよ正念場に向けてこれからが努力のしどころだと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思いますし、私たち野党も野党の立場でこの問題については全力を挙げて頑張っていきたいということを申し上げておきたいと思います。  それから、ウルグアイ・ラウンドで、通産省お見えでしょうか。——まだ来てないですね。では、通産省も関連しておりますが、ちょっとそれは後に回しまして、国営農地開発、いわゆる国営パイロット事業についてお尋ねをしたいと思います。  このパイロット事業については、既に三十五地区で終了したということでありまして、現在三十三地区がやられているということで、言うならば、農業の中でパイロット事業ということで非常に華やかに宣伝をされまして、その目的としては、本事業は、農産物需要の動向及び農業経営の改善の方向に対応して農用地を開発し、もって農業生産性の向上、農業生産の選択的拡大及び農業構造の改善に資するものとする。あわせて国土資源の保全並びに高度利用ということを目的としてスタートして、さっき言いましたように、もう既に三十五地区では完了しているということになっているわけでありますが、この目的が既に終了したところでありますけれども、この間、いろいろな農家をめぐる状況については変化をしてきておりますし、農業をめぐる状況も変化をしてきているわけでありますが、そんな中で、その目的が十分に達したというふうに思われているのかどうかをお尋ねをいたします。
  68. 入澤肇

    ○入澤政府委員 御指摘のとおり、国営農地開発事業は、昭和三十六年に国営開拓パイロット事業として発足して、農地の開墾だけでなくて、農業用用排水施設の整備であるとか農業用道路の整備とか土壌改良等の工事を一体的に行う事業として実施してきたところであります。三十五地区で、全体として受益面積約二万四千七百ヘクタール、水田は四千四百ヘクタール、畑が二万三百ヘクタール造成されたわけでございます。  いろいろな問題があるところもありますが、総じて、この事業の結果、需要に即応した農産物の生産の増強が図られましたし、経営規模拡大によりまして自立経営農家の育成もされた。国土資源の有効利用だとか、あるいは農業を基盤とする地域開発の促進などの面で、地域の特性を生かした野菜あるいは果樹の産地の形成については非常に大きな効果があった。それから、農家の規模拡大による農業所得の増加、後継者を含む農業担い手の定着につきましても、各地域で大きな役割を果たしてきたと言っていいのではないかというふうに私は考えております。  例えば、首都圏のキャベツの供給基地となっております群馬県の嬬恋村、ここでは五百七十ヘクタールの大キャベツ団地を形成したのですけれども農業所得の大幅な増加とか農業後継者の定着等の面で非常に評価されているということでございます。
  69. 緒方克陽

    緒方分科員 いろいろ問題はあるだろうが、全体としては大変立派な成果を上げたというふうに今お話がありました。後ほどそのことについてはまたお尋ねをいたします。  そこで、現在内地で三十三地区が同じように農地開発事業ということでやられているわけでありますが、ここは問題は起きていないのでしょうか。
  70. 入澤肇

    ○入澤政府委員 この事業は、大規模な開発適地の減少という事情もございまして、平成元年度に制度を廃止しまして、新規地区の採択を行わないこととしております。現在継続中の地区につきましては、受益農家等の意向を踏まえた計画の見直しを含めまして早期の事業完了に努めているところでございます。  この国営農地開発事業の実施地区のうち一部につきましては、先生の御質問の中にありますように、物価の上昇とか整備水準の向上に伴う工法変更などによりまして、農家負担が若干割高になるという地区も見られまして、そういう問題に対していかに対処すべきかということが一つの大きな課題でございます。  我々といたしましては、近年のいろいろな状況を踏まえまして、経済的工法の工夫などによる事業単価の抑制の措置、それから事業計画の見直しを行いまして、事業を実施しておりますし、また具体的には、負担金の軽減を図るということから、支払い総額の増加を行わずに支払い期間の延長を行う計画償還の制度とかあるいは年償還額の平準化等を行う土地改良負担金総合償還対策事業、こういうふうなことをやりまして、農家負担の軽減に努めているところでございます。
  71. 緒方克陽

    緒方分科員 幾つかの問題点については、それぞれ対応しているというような趣旨の答弁がありましたけれども、私が調べたところでも、例えば平成四年の十二月十五日に出されました質問主意書では、我が党の志賀一夫議員が提出した母畑地区総合農地開発事業などの例をいろいろ調べてみますと、国が通達を出して、例えば単価等が非常に上がった場合には、当然見直しをしなければならないというような問題が放置をされている。実際には通達が無視をされているというような事実 を私は幾つか承知をしておりますが、きょうはこの問題については主要な問題でありませんので、そういう点については次回、実際に政府が言っていることとしていることの違いについては指摘をしたいと思いますけれども、さっき問題点についての一応のお答えがあったということで、そのことを踏まえて次回質問をさせてもらいたいと思います。  そこで、きょうの質問中心は、既にもう実施をされたいわゆるパイロット事業の三十五地区の問題です。  私が幾つかのところでお聞きをいたしましたところ、この事業は、御承知のように土地改良区が仕事をしながら農家負担を分担していくということで事業費の返済をされ、国費が七五%ですか、そういうことになっているのですが、実際には完了していて、農家がその返済金の支払いができないということで、結局土地改良区もその能力がない、だから自治体が債務負担行為をして、何とかしのいでいるという実態を聞きました。それは問題ではないかということで農水省の方にお尋ねをいたしましたら、農水省の方では、完全に償還金は県を通じて入ってきておりますから、一切問題はありませんという答弁であったわけです。  しかし、私が今ここに持っております資料などの中でも、例えば大分県の国東町などでは、これはミカンですけれども、事業費が二十一億五千万円でありますが、滞納がここもある。これは一千二百万円ということでありますし、佐賀県の鹿島市などでも滞納額が六十三名で二千百二十九万ということで出ているわけでございますし、また島根県の益田市などでは滞納額がこれまた二千七百六十万円ということで出ているわけであります。この部分については、私が農水省にお尋ねをするまでは、そんなことはわからない、金はちゃんと入ってきているから問題はないのだというのが農水省の認識でありました。  しかし、御承知のように、オレンジ・牛肉の自由化、特にオレンジなんかでミカンその他が大変な打撃を受けているわけでありますし、また農業をめぐる情勢が厳しいということで、農家の後継者もなかなかいない。そんなことも含めて非常に地方自治体が困っているわけです。債務負担行為をしても、その入るめどがない。一体どうするかということで議会では毎年毎年問題になっている。農水省としては、もう仕事をやったことだから何にも問題がないと思っているのに、地方議会ではそのことが毎年毎年議論になっているということについては、これはやはり問題ではないかと思うわけでありまして、そういう事実についてはどういうふうに御承知でしょうか。
  72. 入澤肇

    ○入澤政府委員 私どもがその滞納額がないというふうに先生に御説明いたしましたとすれば、それは恐らく国が県から徴収する分についてだと思うのです。国営土地改良事業負担金は土地改良法第九十条の規定に基づきまして、国は県から徴収し、県は地元農家から県の条例で定めるところにより徴収する、そういう二段階の仕組みになっているわけです。この場合、県は地元農家の負担金を市町村または土地改良区を経由して徴収することができる。  この国営農地開発事業に係る県からの国への負担金の収納未済額というのは、平成五年一月末現在では発生しておりません。しかし、農家から市町村または土地改良区、さらには県への負担金納入につきましては、今先生指摘のような地区につきまして未納金の発生状況が出ているということは私どもも聞いておりますが、全国的な形で把握していないので、これからその必要に応じて調べていきたいと思っています。一部の個別地区ではこういう問題がありますので、市町村等が未納金の解消につきまして農家の理解が得られるように一生懸命努力しているというふうに聞いております。
  73. 緒方克陽

    緒方分科員 さっきの繰り返しになりますが、国は県から入ってくるので一切未納はないという認識だったということですが、実際にはいろいろ問題があるということで、最初は鹿島市の話だけでしたが、調べてみますと、さっき言いましたように国東町とかあるいは益田市とか、そんなのが私の調査でも出てきたわけでありまして、このほかにもやはりあるのではないかと思います。  ですから、せっかくやった国の事業でありまして、いろいろな問題があるということについては、例えば私が聞いたところでは、静岡県あたりでは県営のパイロット事業ですが、これは国庫補助六五ぐらいですか。ところが、ミカン園は荒れほうだい、もう一体どうもならぬというようなところまであるやに聞いておるわけでありまして、そんな意味でいうと、机の上で見ていることと実際は違うということもありますので、既にこういうことで実施をされたところについても、そういう滞納金の問題を含めた農家の状態とかあるいはパイロット事業の問題点とか、そういうものについて総体的に調査をぜひしていただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  74. 入澤肇

    ○入澤政府委員 現在のところ、農地開発事業によりまして造成された農地での営農のあり方等につきましては、関係者による協議会を設けまして、そして具体的に営農指導をする、それからさらに農用地利用増進事業を活用しまして規模を拡大する農家には、その手助けをする、あるいは補足的な整備事業をやる場合には、どういうふうにやるかというふうなことを具体的に検討して、やるための機関ができております。この機関を有効に働かせるように、先生の今の御質問をきっかけにいたしまして、もう一度指導通達を出したいと思っております。
  75. 緒方克陽

    緒方分科員 協議会というのは初めて聞きましたけれども、これは三十三の地区とそれから県なんかで構成されているものですか。
  76. 入澤肇

    ○入澤政府委員 協議会は地区ごとに都道府県が設置するというふうになっておりまして、メンバーは都道府県、市町村、土地改良区、農協、それから受益者の代表者、学識経験者等で構成するというふうになっておりまして、三十三地区のうち二十地区で今形成されております。
  77. 緒方克陽

    緒方分科員 それでは二十地区しかないということで、ほかのところはどうなのかということもありますし、全体でつくるということも必要でしょうが、私が言いたいのは、当面やはり実態について、まず、自分たちがやった仕事ですから、そのことについての問題点とかちゃんと把握をして、よりよくなるように、そういう転作の問題もあるだろうし、ソフトの問題、ハードの問題、いろいろあるでしょうけれども、そういうものをやるために調査をして、そして調査をした上でしかるべき対応をしていただきたいと思うのですが、その点、どうでしょうか。
  78. 入澤肇

    ○入澤政府委員 御指摘のとおり、最大の努力はしてみたいと思います。
  79. 緒方克陽

    緒方分科員 それでは、そういうことでまだまだ私がつかんだ以外にも大きな問題があるところもあるやに思いますので、実態把握をしてできるだけの手だてを農水省としてもしていただきたいというふうに思います。  時間がなくなってまいりましたが、通産省、お見えになったでしょうか。それでは、ガット・ウルグアイ・ラウンドの問題で通産省の方にお尋ねをしたいと思います。  この場でも皮革あるいは革靴の問題が、輸入関税割り当て制度の問題が議論をされているわけであります。包括的に米の問題も含めてまだ決着がついていないということでありますけれども、並行して行われております二国間協議などの中では、アメリカ、ECの双方から、一次関税の引き下げなども含む一次関税の問題も含めて、強い要求が出されているというふうに聞いておるわけであります。この皮革、革靴というのは、日本においては部落産業というものであったという歴史的な経緯、その他いろいろな問題も含めて、米と同じような性格のものを持つ内容だというふうに思うのです。このことについて毅然たる態度で対応をすべきと思いますが、この点についての現状認識と対応についてお尋ねをいたします。
  80. 上野裕

    上野説明員 御説明申し上げます。  ウルグアイ・ラウンドの全体の状況につきましては、既に十分な御議論があったかと思いますが、皮革、革靴をめぐる諸状況につきまして御説明いたします。  私ども、皮革、革靴につきましては、九二年の三月二日に皮革、革靴の二次関税率の一部引き下げを含む提案を行ったところでございます。しかしながら、御案内のように、その後農業問題を含めましてウルグアイ・ラウンド全体が中断をしたところでございます。昨年の十一月の末に至りましてまたウルグアイ・ラウンドの交渉が再度活性化をするという事態に至りまして、皮革、革靴につきましても、昨年の十二月から本年の一月半ばにかけまして日米、日EC間を初めといたしまして各国間でかなり精力的な交渉が行われました。この中では、先生指摘のように、非常に厳しいECあるいはアメリカ等からの引き下げ等の要求がございました。しかしながら、ウルグァイ・ラウンド全体が御承知のような状況で、再び中断状態のようなことになっておりますので、現時点のところではまだ決着を見るには至っておりません。  今後の交渉が再び活発化した折におきましては、皮革、革靴についても非常に厳しい改善要求がさらになされるというふうに、私どもも身を引き締めておりますけれども、既に提案をした範囲内で関係国の理解を得られるように全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  81. 緒方克陽

    緒方分科員 九州でも福岡、佐賀はゴム、革靴産業が多いところでありまして、ぜひそういう決意でしっかり頑張っていただきたいと思います。  時間が参りましたので、もう一点だけお尋ねいたしますが、その中でも革靴の最近の売れ行きが非常に厳しいということで、買う値段もずっと下がっている。今まで一万八千円であったのが一万五千円とか一万三千円の靴を買うということと同時に、例えば靴工場に靴底を張りかえてもらいたい、上はこんなに傷んでいるのに、もうそこまでかえなくてもいいんじゃないかと。要するに、買いかえればいいじゃないかというようにつくる人が思うほどのものも今返ってきているという状況で靴底の張りかえなどもされているわけであります。  売り上げも落ちておりまして、そんな状況の中で、政府の施策としては、雇用調整給付金であるとかあるいは信用保険法における債務負担行為の拡大とかいろいろな施策があるわけでありますが、革靴の問題についても予断を許さない状況ではないかというふうに思います。そのことについては、十分注目をしながら、早急な対応ができるように政府としては対応していただきたいと思うのですが、そのことについてお尋ねをいたします。
  82. 上野裕

    上野説明員 御説明させていただきます。  我が国経済全体が非常に停滞をし、また特に消費の面でも低迷が続いております。これを受けまして、皮革、革靴におきましても販売の不振などに直面をいたしております。  ちなみに、皮革、革靴の最近の生産の動向を見てみますと、皮革につきましては、昨年の当初から減少傾向にございます。昨年の十−十二月期におきましては、対前年同期比八・一%の減少ということで厳しい状況になっております。また、革靴につきましても、昨年の秋ごろから生産の減少が出てまいりました。昨年の十−十二月期について見ますと、対前年同期比で生産は五・五%の減少となっております。  私どもとしても、当面こうした皮革、革靴産業を取り巻く厳しい状況というものがなお続くものというふうに厳しい認識を持っております。このため、既に政府一丸となって各種の景気対策に取り組んでいるところでございますけれども、皮革、革靴の産業につきましても、関係業界から雇用保険法に基づく雇用調整助成金の対象業種及び中小企業信用保険法の不況業種の指定の要望などが出されましたならば、速やかに対応してまいりたいというふうに思っております。
  83. 緒方克陽

    緒方分科員 そういう状況ですので、ぜひ緊急な対応を要望いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  84. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて緒方克陽君の質疑は終了いたしました。  次に、藤原房雄君。
  85. 藤原房雄

    藤原分科員 最初に、過日の委員会でも申し上げたのでありますが、本年の一月十五日、釧路市で釧路沖地震がございまして、非常に大きな烈震の中での被害でございます。特に水産関係、漁港区、それからまた酪農に切って離せないところの飼料の荷揚げ場、これらのところに大変な被害をもたらしたわけでございますが、あれから二カ月たっておりますので、最初に運輸省に、被害に対応しましての応急処置としまして現在まで進められてきたことや、また査定とか、いろいろな復旧事業、またそれに伴います諸施策につきまして、現状、御報告をいただきたいと思います。
  86. 石田省三

    ○石田説明員 御説明させていただきます。  去る一月の釧路沖地震で釧路港が一番被害が大きかったわけですけれども、港湾被害が相当出たということで、具体的には、釧路港におきましては、各埠頭で沈下や亀裂等が発生いたしまして、穀物のあるいは石炭の荷役機械あるいは漁港埠頭等に大きな被害が生じたということで、現時点で被害の総額が釧路港ほか含めまして百四十億円程度ということになっておりまして、釧路港の被害額が大体百三十億円程度ということになっております。  地震が起きました後すぐに担当官等を派遣しまして、それから応急復旧工事にも入っております。応急復旧工事につきましては、クラック、亀裂の埋め戻しであるとか、あるいは沈下しているところと岸壁のエプロン部分の本体部分といいますか、ここに段差が生じたところが数多くありまして、そういうところの、車が入れるようなすりつけ工事、そういう応急復旧工事をやっておりまして、現時点ではほぼ応急復旧工事は終わっている状況でございます。  荷役機械につきましては、釧路の西港区の第二埠頭というところに穀物の荷役機械が三基ございまして、この穀物の荷役機械が相当被害を受けたわけでございます。一基一時間当たり四百トンの能力があるわけですけれども、一号機、二号機、三号機とございまして、一号機、ちょうど真ん中にある荷役機械でございますけれども、これにつきましては、この二月十日に仮復旧、まだレールの修理が終わっておりませんので仮復旧ということでございますけれども、稼働できるようになっておりまして、その一号機と、それから船のクレーンであるとかそういうものを使って荷役に対応しております。それから、石炭の荷役機械につきましては、これも二月十五日に復旧しまして、具体的には、二月二十日に船が入って荷役に活用できるようになっております。  それで、一応今まで応急復旧ということで、現在の港湾活動に対応するように対応してきたわけでございますけれども、本格的な復旧が急がれるということで、現在、港湾管理者あるいは北海道開発局におきまして設計、積算の見積もりを行っておりますけれども、国が実施します直轄災害復旧事業につきましては、既に二月の十五日から十九日の間に査定を終わっております。  それから、補助事業で釧路市が実施します復旧事業につきましては、市の方の準備等もございまして、三月の半ばに担当官を派遣して復旧事業費を決定いたしまして、早急に本格的な復旧工事に入りたい、このような状況でございます。
  87. 藤原房雄

    藤原分科員 このことについては災害の委員会でもいろいろ聞きまして、それから一カ月、一生懸命当局としましても頑張ってやっていらっしゃるようでございます。  当委員会は農林水産省関係することでございますが、私が申し上げるまでもなく、一つは、酪農地帯に穀物、飼料、えさの荷揚げの埠頭、地盤沈下によりますものと荷揚げの機械の故障という、これが北海道の酪農地帯で比重を占めます根釧とか十勝方面の北海道の酪農に大きな影響をも たらす、こういうことで、私どもは非常に関心を持って一日も早い復旧を望んでおったわけでありますし、そのことをお願いをいたしておったわけであります。このことについては、今お話ありましたように一生懸命頑張っているようでございます。これはぜひひとつまた支障のないように、最大の御努力お願い申し上げたいと思うのでございます。  これが局地激甚災害の指定を受けるようなことになりまして、大方国でこういう工事が進むということなら、それなりに将来のことについてもそう心配しないのでありますけれども、今酪農、農業を取り巻く諸情勢が非常に厳しい中にありまして、今回の復旧に当たりまして、港湾管理者が釧路市であるということです。しかも、機械とかそれから漁港区の建屋とか、こういうものにつきましては港湾管理者、しかも公営企業でやっておるということで、市の負担でこれをしなきゃならぬ。そういうことからいいますと、これは起債事業としてやらざるを得ない。ここだけの被害ですとよろしいのですけれども、市内のライフライン、それから団地、こういうところに大変被害をもたらしておるわけであります。  そういうことからいいまして、今回のこの被害によりまして、復旧いたしたとしましても、国と地方との費用負担の関係によりますと、公営事業ということからいいますと、荷揚げいたしますえさにしましても、また漁業の、漁港区になっております地域につきましても、荷さばき場の使用料、こういうもの等で農業漁業にそれぞれ使用料ということでこれははね返ってくるのではないか。非常に現在厳しい状況の中にあって、さらにまた負担を農業、酪農に覆いかぶせるようなことがあると、現在でも厳しい中にありながら、これは非常に大変なことだ。こういうことを地元からも陳情もございますし、私どもも厳しくこの問題について考えているわけでございます。  この件につきまして農水省としましても、これは当然法的なことからいいますと、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法からいいますと起債でやることになるわけでありますけれども、しかし、現在の酪農や漁業を取り巻く諸情勢の中で、農林省として、こういう価格転嫁のできないような形で何ができるかという御努力をいただきたい。これは過日も申し上げたことでございますけれども、ここら辺のことについては農林省としてはどのような、これは国土庁を中心にして各省庁間でまたいろいろなお話があったのだと思いますけれども、その進捗状況とか現状とか、これらのことについてお話をいただきたいと思います。
  88. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 十分なお答えにならないかと思いますけれども、私ども、本当に先生がおっしゃったように、えさ問題、十勝、道東、大変な問題でございますので、当面物量が足らなくなると困る。幸いにして、あそこに政府助成の備蓄穀物がございましたので、それを貸し付けるというような形でしのいでおります。港湾の復旧、これから本格的に始まるわけでございますが、関係地域の農家に対する影響ができるだけ生じないように、その本格的な復旧に当たって関係省庁とよく御相談、御協力をしてまいりたいと思います。
  89. 藤原房雄

    藤原分科員 ぜひ漁業につきましても、水揚げ日本一でありました釧路が一位の座を譲る、こういう状況の中にありまして、また酪農につきましても、今乳価が目前になっておりまして、現状についてはいろいろ試算なさって、またお調べになっていらっしゃることだろうと思うのでありますけれども、こういう状況にかんがみまして、生産者に最小限、負担をかけないような形で、これらの被害の復旧等につきましての御努力をぜひひとつ御配慮いただきたいと思うのでありますが、大臣、いかがでしょう。
  90. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私どももそのことを念頭に置きながら、実際どういうことができるか、いずれにしても、農林水産省だけで取り組みができない部分もありますので、関係省庁とよく相談をして進めたいと考えております。
  91. 藤原房雄

    藤原分科員 国務大臣という立場にあるわけでございますから、それから各省庁との連携ということで、これは災害委員会でも申し上げましたが、国土庁も中心になって各省庁間の連絡をとるだろうと思うのでありますけれども、積極的にひとつお取り組みをいただきまして、せっかくここまで積み上げてまいりました酪農にしましても、また漁業にいたしましても、非常に厳しい環境の中でそれらのものが守られるような農林省としての御努力をいただきたいことを重ねて申し上げておきたいと思うのであります。  次に、今、加工原料乳保証価格と加工原料乳の限度数量、これがいよいよあと二、三週間の後に決定するときが来たわけであります。このたびのこの加工原料乳の保証価格のことにつきましては、農業団体も現在の厳しい諸情勢にかんがみまして必ずしも値上げをせよという一方的な主張じゃございませんで、「現行価格を基本として生産者の期待に応える価格とすること。」非常に控え目といいますか、こういう記述になっております。そしてまた、所得政策という、農業全体の中で負債とか年次の計画を立てておりますそれらのものにのっとりまして、償還ができる、そしてまた、現在牛肉の自由化によりまして、さらにまた引き下げ、価格が低迷をいたしておりますこと等、あらゆる施策を通じまして、農家の所得がこれらの負債、そしてまた安定的な農業経営のできるような基盤を築いてもらいたいというのがこのたびの要求といいますか、要請の文言になっているわけであります。  時間もございませんから一つずつ申し上げることができませんが、所得政策といいますと、今日までもいろいろな政策がございました。そういう中で、新しい事業としてぜひやっていただきたいということや、今日まであります優良乳用牛緊急確保対策事業の拡充強化とか、肉用牛肥育経営安定緊急対策事業の継続強化とか、今までありますものを強化するとか、また拡充するとか、そしてまた、個体価格安定化対策事業の新設、こういう.ことでぜひその安定化のために新しい制度をつくってもらいたい、事業を進めてもらいたい、こういう要望がなされておるわけであります。  価格につきましては、審議会でいろいろ諮問するわけでありますけれども、この酪農をめぐります一段と厳しい現状については、どう認識していらっしゃるのか、そしてまた、酪農を取り巻く諸情勢について、いろいろな施策についての事業、また対策について、どのようにお考えになっていらっしゃるか、そこら辺をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  92. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 酪農の現状でございますけれども、ここ数年間は酪農経営の収益性、規模拡大だとか一頭当たりの乳量の増加、あるいは子牛の価格が非常に高水準で推移してきた、そういうようなことがありまして、収益性は順調に推移をしてきたわけです。しかしながら、牛肉の輸入増大に伴いまして、輸入牛肉とか品質的に競合度の高い乳用種の枝肉価格は低下傾向で推移をいたしております。特に、平成二年度以降、乳用種の雄牛の枝肉価格の低下に伴いましてぬれ子の価格が低下した、そういうことによりまして酪農経営の収益性は低下をしてきているところでございます。このぬれ子の価格ですけれども、昨年末以降現在まで四万円台、そういう水準でございますが、最近、酪農経営につきましては、規模拡大あるいは一頭当たりの乳量の増加というようなことがありますので、粗収益の大部分を占める生乳の販売価格は増加をしていると見られるところでございます。  関連対策というか、いろいろ所得全体としての御質問がございました。それは、価格をいわば補完するようなものとしてこれまで実施をしてきておりますので、いろいろな団体の方、先生の地元の方からもいろいろ御要望がございます。価格の補完的なものとしてこれまで実施をしてきておりますので、今後、検討してまいりたいと思います。
  93. 藤原房雄

    藤原分科員 今もお話ございましたように、牛肉の自由化に伴いましてのぬれ子を初めとします老廃牛等の急激な暴落によりまして、今まで負債を補う大きな部分でありましたものが、それを失うということで、経営が大変厳しくなったことはもう御存じのとおりです。ですから、今回の農業団体等の要請の中にも、価格と所得政策というものは一体不離のものであって、乳価の安定というものが第一に大事なことだろうと思います。  価格政策と一体の中で所得政策というものの実現を図ってもらいたいという要望が出されているわけでありますが、これはまさしくそのとおりだと思います。乳価が上がることは当然その安定化をなしていくものでありますけれども、諸情勢の中でそんな大幅なことができるわけないだろうと思いますが、しかし総体として、農家の経営ということからいいまして、所得が確保される、こういうことの中で生産コストの低減とか、各般にわたりまして総合的にそういうものが積み上げられていかなければならぬだろうと思うわけであります。  そういうことからしまして、ここしばらく見ておりますと、乳価の引き下げはありましても、バター、チーズ等の小売価格と連動していないという問題については、農水省としてはどう見ていらっしゃるのでしょうか。乳価を引き下げるということについては、確かに今日までも数字や何かいろいろありますから申し上げなくてもおわかりだと思うのですけれども、それに引き比べてここのところずっとバター、チーズというのは価格が下がっていない。それから、農機具やそれにまつわります。辺の諸問題、こういうことも同時に検討して、全体としての所得の維持ができるような施策というのは維持されなければならない。それでなくても、今、円高ということでいろいろな動きがある中でありますけれども、このことについてはどうお考えでしょう。
  94. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 乳価が下がっているのに乳製品の価格が下がっていないというお話でございますが、最近、昭和六十二年以降、牛乳・乳製品は逼迫基調で来たわけですが、天候の問題とか景気の問題とかございまして、最近緩和基調に移っているのかなということでございます。そういうことを受けまして、バター、脱脂粉乳等の卸売価格もここのところまだ安定指標価格に比べて六%くらい高いかと思いますけれども、ここのところ低下傾向で推移してきている。それから、生産資材の問題につきましては、私ども、直接はえさですが、そのほか、農機具の問題あるいは畜舎の問題でコストをできるだけ少なくするということが大切なことでございますので、関係局、農林省内で、これまでもやっておりますけれども、畜舎の建設に当たりましてもできるだけ安い材料を使うとか、自家労賃も助成の対象にするとか、できるだけ安く済むような、そういうことで進めてきております。今後とも機械なり飼料なり、農林省の中、他局ともよく相談をして、できるだけ低廉な価格で供給できるように努力をしてまいりたいと考えております。
  95. 藤原房雄

    藤原分科員 ここの答弁だけじゃなくて、ぜひ真剣にお取り組みをいただきまして、農家の経営全体としてコスト低減につながるような安定的な方向に進むようにぜひ御努力いただきたい。  それから、農家の畜舎等につきましても、建築基準法にのっとってつくらなければならぬ、そういうこともどうかという、これは農林省だけのことじゃないかもしれません。また、自動車の運転免許のことにしましても、整備のことにいたしましても、そういう諸問題の解決といいますか、そういうものが相伴って総体として安定経営の方向性が見出せるのじゃないかと思うのです。今までも何もしなかったということではないと思いますけれども、こういう厳しい環境の中にありまして、より一層こういう問題の解決に御努力いただきたいと思うのであります。  さて、次の話になりますが、婦人の地位向上ということが叫ばれておりまして、女性の農業に携わる方々の数も非常に多うございます。数字もいろいろございますけれども農業従事者の数からいいますと女性は男性に比較して一・五倍いるのではないか、基幹的農業従事者では男女同数くらいか、こんなことも言われているわけであります。  それぞれの立場、それぞれの地域、職場で女性の地位向上ということについてはなされておりますが、農業についても等閑視しているわけでは決してないだろうと思うのでありますけれども、現状としましては、農協組合員の中で女性は一〇%、これはいろいろな要因がありますから、社会の仕組みがいろいろありますから、この数字だけで云々できないことがあります。しかし、その阻害要因は何かということについても考えていかなければならない。役員に至りますと、八九年当時では〇・〇九で〇・一%にも達しないという農協の役員ですね。婦人部というのがあるじゃないかということですけれども、婦人部というのは農協を運営する主体ではないわけでありまして、役割と権限が制約されていることからしますと、やはり役員という立場で女性の方々が発言力を持つということが大事なことだろうと思います。  私は、過日、農業青年の研修にオリンピックセンターに参りましたけれども、二十代、三十代、若い方々が非常に多かったのですが、その中には、二百人ほどの中に二十人ほど二十代の若い女性の方々がいらっしゃいました。こういう新規就農希望者、最近は都会の方が北海道等で農業に携わる方が多いようでありますが、一つの時代の流れですからやむを得ないとしましても、そういう中で改革できるものは何かということで、時代に即応して、一年か二年、三年もたちますと本当に一昔と言われるくらい物事が変わっていく、そういう中にあるわけでありますから、ぜひそういう問題についても農林省としてもお考えいただきたい。  ただ、決して農協の組合員が少ないとかなんとかといってここで解決がつくことではないのですけれども、そういう集落におきます女性の立場、また土地の所有権の問題とか労働の編成とか、これは意識的なことだと思いますけれども、また、女性の感性を生かすといういろいろなことについて、そういう仕組みといいますか、全体のことをお考えいただかなければならないのではないかと思います。こういうことについて一つはお考えをお聞きしておきたい。  もう一つは、婦人の年金の問題ですが、これは私がここで声を大にして叫ぶものでもなく、「新しい食料・農業・農村政策の方向」では女性の役割の明確化ということをうたっておりますから、当然この方向に進んでいただきたい。  それから、女性の農業者年金のことにつきましては、附帯決議が平成二年ですか、「農業のもつ家族経営体としての特性等を考慮し、経営移譲年金の受給権者が死亡した場合における遺族年金等の実施については、次期財政再計算時を目途に検討すること。」「また、」のところで、「農業に専従する主婦等の年金への加入について引き続き検討すること。」という附帯決議がありまして、これは採択になっているわけであります。いよいよあと二、三年いたしますとこれを見直すときが来るわけでございますが、現状の中でこれをすぐ実施するということは非常に難しいことだと思いますが、「新しい食料・農業・農村政策の方向」という新しいものをつくっていこうということでありますから、その中でこういう婦人が年金に加入することのできるような環境をつくるにはどういうことが大事なのか、そういうこともあわせまして、婦人問題について御答弁をいただきたい。
  96. 田名部匡省

    田名部国務大臣 最初の、女性が農業に関して発言力を高めるべきだ、そういう考え方で今努力をいたしております。基本的には農家の意識を改革するというか、変えていただくことが大事なことでありまして、そのためには何をしなければならぬかということは、私どもがこれはお手伝いをしていく部分であろうと思います。実際問題、若い人たちに会ってみると、相当知識も豊富で、意見もしっかりしたものを持っている。農業経営に 関してもそれ相当の意見を持っているわけでして、そういうことを研修の機会をとらえて農業婦人の方々に自信を持ってやってもらうということでないと、農協に役員として入っても、実際に発言力がないということでは、その役割を果たすことができないだろうと思いまして、その点についてはこれから努力をしてまいりたいと考えております。  農業年金のことですが、おっしゃるとおりいろいろございまして、経営移譲あるいは今お話がありました国民年金の上乗せ給付、そういうことを踏まえて総合的に検討をしていくことが必要だと考えております。これは各方面から非常に強い要請もありまして、それらの意見を幅広く聞きながら、お話しのように、平成七年の財政再計算を目途に検討を進めていきたいと考えております。
  97. 藤原房雄

    藤原分科員 これから審議会に諮問をして検討をいただくのだろうと思いますけれども、その前に、農水省としましても、今大臣のおっしゃったように、積極的に農村婦人の方々が参加できるような農業者年金、そのための環境といいますか、農村は長い歴史があるわけでありますから一概にはいかないのかもしれませんけれども、逐次その方向性を模索しながら加入、この決議が実現できるような方向で一歩一歩ひとつ進めていただきたい、このことを強く要望いたしまして、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  98. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて藤原房雄君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  99. 上原康助

    上原分科員 限られた時間ですから、端的にお尋ねします。  今、農業問題は国際的にも国内的にも大変厳しい環境下にあることは御案内のとおりであります。後継者あるいは省力化、価格問題等々、農林大臣もいろいろ御苦労いただいておりますが、割と今の宮澤内閣の閣僚の中ではよく頑張っていらっしゃるお一人だと思っております。ウルグアイもひとつ、ぜひ米の自由化も国会決議を踏まえて、日本の伝統ある農業、また将来の農業を守っていただきたいと思うのです。  そこで、沖縄の農業振興、基盤整備その他についても農林省を中心に大変御尽力をいただいて相当よくなってまいりましたが、特に基幹作物である甘蔗が、サトウキビが今大変な危機に直面をしている。せんだっても食品流通局長さん、また砂糖類課長さんにもお会いをして、長時間いろいろ意見交換をし、お願いもしたわけですが、このサトウキビの現状をどう御認識し、企業統合、合併等の問題を含めて、私は、沖縄農業の将来を考える場合に、このサトウキビの基幹産業としての位置づけをしっかり守りながら地元地域においても努力をする、それだけでは到底この難局を突破することは難しいので、やはり政治、行政の力というもの、バックアップというものがなければいかないと思うのですね。  このことについて、農水省としてどのようにお考えであるのか、また、今いろいろ取りざたされている工場合併等の問題について、今後どのような基本方針で対策をしておられるのか、お聞かせを願いたいと存じます。
  100. 須田洵

    ○須田政府委員 沖縄県、さらには鹿児島県もございますが、そこにおきますサトウキビ生産ということにつきましては、本当に基幹作物としての大変な重要な地位を占めているということにつきましては全く同様に認識しておりますが、しかし、先生も御指摘のように、最近の農業労働力、特に高齢化が相当進展しておる、そういう中で、あるいは他作物との競合もございまして、サトウキビ生産が非常に構造的に弱くなっているといいますか、そういう面が否めないと思います。  そういうことに対しての対策そのものにつきましては、農蚕園芸局、生産部局の方でも一生懸命やっておるわけでございますが、私ども、サトウキビ、甘蔗糖企業、さらにはそれに関連します糖価安定制度上の価格の運営といいますか、そういうことを通じまして、こういう原料サトウキビの生産振興ということも本当に気になるところでございまして、関係局といろいろ打ち合わせをしながら何とか立て直しをしていくという方向で頑張ってまいりたい、かように考えております。  その関連で、こうした原料供給面でいろいろ脆弱化してまいりますと、当然甘蔗糖工場のいわゆる企業問題ということが避けて通れない課題になってくるわけでございます。これにつきましては、私どもとしまして、農林水産省といたしまして、昨年でございますが、甘しゃ糖企業体質強化検討委員会を設けまして、地元の関係者と具体的な対応策の検討を進めておる状況にございます。また、当然のことながら沖縄、鹿児島両県におきましても国と同様の取り組みを進めておるところでございまして、いろいろな形でこれからの具体的な合理化対策についての論議を進めておるという状況でございます。  こうした検討を踏まえまして、特に御指摘の沖縄県につきましては、具体的な方策について協議が進みつつあるというところのように認識しております。  いずれにしましても、この問題につきましては、やはり地元の関係者間で十分な話し合いが持たれるということが重要であることは言うまでもございませんが、地元の検討状況も踏まえた上で、国といたしましても、製糖工場におきます原料サトウキビの安定確保、コスト低減によります経営の安定化等に向けて適切に指導してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  101. 上原康助

    上原分科員 せんだってもいろいろ意見交換いたしましたので、ある程度農林省のお考えはわかるわけですが、今も御指摘ありましたように、これは生産者価格の問題あるいは省力化、いろいろな面が複合的に作用して今日の状況になっているわけですね。農業者の高齢化の問題、もちろんです。  だが、やはり一つは、他作目に転換するにしても、花卉園芸、いろいろあるにしても、歴史を振り返ってみても、沖縄にサトウキビが入って三百年ないし四百年以上の歴史を持っている。近代化されてからも百年の歴史があるわけですね。干ばつ、台風、その他沖縄の地勢に一番適しているのはやはり甘蔗糖である。その認識を農民も、行政も、政治も持っていただかないと、ややもすると他作目に転換すれば何か農業収入がふえるような安易な転換というのはいかないと思うのですね。そこはひとつしっかり農林省、踏まえていただきたい。  そして、省力化の問題で、特に機械化の問題は、私はもう何回か取り上げているんですが、なかなかうまくいっていない。それには基盤整備やらにゃいかぬでしょう。あるいはそのオペレーターをどう確保するかという問題もありますので、農業の公用化、共同化ということをもっとお考えになっていただきたい、生産体制、収穫体制あるいは工場を含めて。その総合的な施策の上にしかこのサトウキビの危機というのは打開できないと私は思いますので、その点をぜひ積極的に政策、制度の面で進めていただきたいということが一つ。  もう一点は、当面している沖縄本島の五社五工場をどうするのか。二社三工場にするのか、二社二工場にするのか。これは今局長おっしゃるように、関係者の意向というのは最も尊重しなければいかないわけですが、その点もぜひ地元の意向を聞きながらやっていただきたいということ。  それと、何といっても百五十万トンの生産体制をどう確保するかということだと思うのですね。そのためにどういう施策をとるべきかということをぜひお考えになっていただきたい。一時期は百八十万トンまでいったわけですから、百三十、百五十という、このマキシマム百五十万トンの生産量を確保するにはどうすべきなのか、そのための施策を立てた上での対策考えていただきたい。  それと、工場合併に当たっては、もちろんいろいろの工場や企業に対する手だても必要でしょうが、働いている従業員の生首が飛ばないような、 こういう基本的な面についてもぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  102. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 若干、生産対策のことについて申し上げますと、ただいま先生お話がございましたように、我々もサトウキビは沖縄県農業の基幹作物ということで位置づけておりまして、この地域をサトウキビの生産振興地域ということで指定して振興を図っておるわけです。  ただいま先生からお話がございましたように、やはり何といいましても、特に収穫段階における機械化、これが非常におくれておるわけでございまして、これは労働時間でも半分占めるわけでございますので、そこのところを今何とか機械化をしたいということで、かなり地元の方も熱心になってまいりまして、中型、大型、小型のハーベスターが導入されるというようなことで、地元もかなり熱心に取り組むような体制ができつつあると思っております。  そのほか、もちろん土地基盤の整備の問題であるとか、あるいは高品質安定生産技術、これをいかに普及していくかということで、実証展示圃をつくってやっていくとか、そのほかいろいろと新しい品種の普及であるとか、あるいは共同利用施設であるとか機械の整備といったようなことにも力を入れておりまして、何とか沖縄におけるサトウキビの重要性を考えましてその振興を図っていきたい、こんなふうに思っております。
  103. 上原康助

    上原分科員 これだけ取り上げるわけにいきませんので、大臣の方からも、今若干やりとりしたものを含めて、大臣のこれからの所見をお聞かせいただきたいと思います。
  104. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私もたびたびお邪魔をいたしますけれども、非常に亜熱帯性気候地帯に位置しておりまして、やはり沖縄というのは、何といってもこういう気候をどうやって生かすかということは、私の方から見ると本当に全く条件が違いますので、そこに着目をしてやっていかなければならぬ、こう思うわけです。  何といっても、一つのものだけに依存するというのは危険でもあり、できれば農業というものは多様にやられた方がいいし、また年間通じて労働時間というものを確保していくという観点からも、そういうものと組み合わせて一体どうするか。安定的に収入を上げるということも一つある。そういうことは実際に、沖縄には沖縄のよさというものがあるんですから、地域人たちが本当に実情に合った農業というものはどうすれば一体よくなるか。今お話にあったように、沖縄に確かにサトウキビというのは適しておる。沖縄に適しただけでいいのかどうかという問題もまたあろうと思うのですね。消費者にも適していなければならぬ。それを的確に時代時代にとらえていくということも必要ですし、そういう観点からいろいろとおやりいただく。  我々は、担い手でありますとか基盤整備でありますとか、例えば流通、加工、そうしたいろいろな整備というものはやれるわけでありますけれども、実際におやりになるのは農家の皆さんであって、若い人たち意欲を持ってどういうことをしたらば取り組んでいけるかというのは、やはり農家個々に違いがありますので、そういうことを考えたことに我々が支援をしていくというのが私は本当のやり方であろう、こう思うのです。  したがって、今それぞれの局長答弁しておりましたけれども、そういうこと等も踏まえながら、何としても意欲的な農家を育成して、そうして個性ある地域社会というものにする努力をしていかなければならぬと考えております。いずれにしても、全力を挙げて支援体制はとっていきたい、こう考えますので、どうぞ農家の皆さんにも勇気を出していい知恵もまた出していただくということをお願いしたい、こう思っております。
  105. 上原康助

    上原分科員 これはなかなか容易でありませんけれども、バブルがはじけてこう不景気風も吹きますと、日本農山村の新たな価値観というものが私は出てくると思うのですね、時代的に。その意味では、やはり農業をもっといろいろな面で大切にしていく政治行政をやる、その上でしか農民も意欲が出ませんから、その点はひとつ私の方からも強く要望を申し上げておきたいと思います。  そこでもう一つは、沖縄農業にとって大変明るい面もありまして、復帰後の政府の対策によっていわゆるウリミバエがこの十一月に根絶をされるようになります心これは沖縄県、地元の努力もありますが、何といっても農水省、開発庁等の積極的な資金面、技術面の裏づけがあって初めてここまで、二十年有余かかってようやくこの十一月には、八重山の地域がウリミバエがなくなれば沖縄全県下から駆除されるわけですね。大変結構なことで、農業者にとっては大変明るい話題になっておるわけです。  そこで、このことに沖縄県も着目をいたしまして、ことし十一月に今申し上げたように沖縄県下でウリミバエが根絶達成になるということを踏まえて、特に東南アジア、アジア諸外国への普及をぜひ働きかけてもらいたいという内外からの強い声が出てきているわけでございます。恐らく農水省も知っていらっしゃると思うのですね。そういうこととあわせて、ウリミバエ根絶国際貢献という立場から、十一月に国際シンポジウムを沖縄県でやろうという計画が今なされておるわけでございます。私はこの点は、日本の技術を東南アジアなりこういった発展途上国、特に農業に力を入れている諸外国に技術援助をするという面では大変大きな国際貢献で、積極的にやるべき課題だと思うのですね。この点についてどうお考えなのか。沖縄県の方から具体的にやがて農水省の方に御要望が出ると思うのですが、ぜひ積極的な対応をしていただきたい。所見をお聞かせ願いたいと存じます。
  106. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 実は、二月二十七日付琉球新報によりますと、今先生がおっしゃいましたように、沖縄県知事がウリミバエの国際シンポジウムを国の関係機関と調整して開催できるように検討しているというふうに述べたということが報道されておるわけでございます。こういった国際シンポジウムに関しましては、過去におきまして、平成三年九月でございますが、沖縄県などが主催いたしまして、このときは農林省も後援をしておりますが、世界のミバエの学者が集まりましてミバエ類の生態と防除に関する国際シンポジウムというものを開催したことがございます。  それで、今回の国際シンポジウムにつきましては、まだ我々、実は今回先生お話で初めてこういう話があるということを知ったところでございまして、全く聞いておりません。したがいまして、また沖縄県から協議あるいは相談がございますれば、特に東南アジア諸国が関心を持っているというようなことがございますので、そういった諸国の考え方も踏まえまして、国際シンポジウムの開催にどんなふうに協力ができるのか検討してまいりたい、こんなふうに思っております。
  107. 上原康助

    上原分科員 農水省もODA予算があるんでしょう。どのくらいあるんですか。
  108. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 一般的な話でございますが、この関係で何かODA予算を持っているということはございません。
  109. 上原康助

    上原分科員 それはわかるんですよ。きょう初めての話題ですからね。しかし、あるはずなんだ、それは主に技術、そういう農業振興という面で。なければ、私は外務もやっていますから外務でこれを取り上げますけれども、ぜひ大臣、こういうことこそ日本は積極的に協力すべきなんですよ。ですから、これから具体的に上がってくると思いますから、そのシンポジウムを成功させるということと、そして技術援助という面で、東南アジアというか諸外国のウリミバエに対しても、要望があれば積極的に我が方から技術と資金援助をODAでやってこそ喜ばれる国際貢献ですよ。いかがですか。
  110. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃることはよくわかります。国際貢献をすべきだということもそのとおりだと思いますし、私はよくわかりませんが、実態としてどういうところでできるのかという問題はあると思うのですね。例えば、島でありますと かそういうところはやりやすいが、そうでないところは難しいという問題もあることかと思います。ただ一方では、そういう防除体制が確立されて開発途上国等がどんどん我が国に今度はそれを輸出できるということは、開発途上国にとったはいいことだ、私はこう思います。そのときまた一方では、この問題でそれぞれの各県がどういう対応をしていくかということとあわせて検討しなければならぬ問題もあるのではないか、こう思います。いずれにしても、そういうことで日本が国際貢献するということはいいことだ、私はこう考えております。
  111. 上原康助

    上原分科員 もちろんこれは押しつけはいけませんし、相手国からそういう要請があって協力体制ができた上での話ですので、せっかくの実績とその施設が沖縄県にあるわけだから、そこを大事に今後活用しながら、諸外国の要望があれば技術的あるいは資金的に援助をしていくということは、これはもう間違いなく喜ばれることですからぜひ進めていただきたい。念を押すようで恐縮ですが、よろしいですね。
  112. 上野博史

    上野(博)政府委員 ODAのプロジェクトになるかどうかということにつきましては、それぞれの関係国がそういう希望を持っているかどうか、それから具体的なプログラムとして採用ができるような状況にあるのかどうか等々、いろいろ検討すべきことはあろうと考えるわけでございまして、今後具体的にそういう御要請がありますれば対応をしてまいりたいというふうに思います。  今お話ございましたように、この沖縄のミバエの不妊虫の生産施設といいますか、これはこの沖縄での事業が近々終わるという見通しのもとでどういうふうに活用していくかということは、これは一つ課題だというふうに考えるわけでございまして、このウリミバエで非常に苦労しているいろいろな地域の皆様のために使えるということであるならば、大いに積極的な活用を検討してまいるということは当然じゃないかというふうに考えております。
  113. 上原康助

    上原分科員 恐らくそういう方向に進んでいくと私は期待をしておりますので、ぜひ特段の御配慮をお願いしておきたいと思います。  次に、沖縄の漁業振興について、余り時間がありませんのでちょっとだけお尋ねをいたしますが、御承知のように沖縄は四万海です。漁業振興も従来以上に進めていこうということで、大田県政も九三年度、いわゆる平成五年度県政方針の中で、国立水産研究所の誘致を進めていきたい。こういう国の研究機関というものが沖縄に比較的少ないのですよ。サトウキビだって沖縄が主であるのに種子島にしか置いてない。これはいいですが、もう一つ沖縄につくれというのです。昔から言っているが、向こうにあるからといってなかなかつくっていただけない。  これは別として、きょうは議論しませんが、こういう国立水産研究所の誘致問題について政府はどう御認識をしておられるのか。その可能性の問題あるいは今後の漁業振興についてどうお考えなのかということ。最近、中国のやみ船問題で大変東シナ海の漁場が荒らされているようなこともあって、漁民に不安を与えている向きもありますが、この点についてひとつ御見解を聞いておきたいと存じます。
  114. 川合淳二

    川合政府委員 亜熱帯水域におきます水産研究につきましては、マグロなど暖水性の回遊魚種の資源管理の強化が急務となっているわけでございますので、特に黒潮源の流域であります海洋環境の研究、まさにこれは沖縄の周辺だろうと思いますが、そうしたところにおきます産卵とかその他稚仔魚期における生態とかいう研究が非常に大事だと思っております。また、昨今環境問題から、いろいろなところから指摘があります混獲の問題、あるいは生物の多様性あるいは生産性の高いサンゴ礁とかマングローブとか、そういう特有の海洋生態系などにつきます研究というようなものも非常に大事だと思います。それから、二百海里時代に入りまして、つくり育てる漁業あるいは資源管理漁業というようなためにも資源増殖につきます研究が求められておりまして、そういう意味では、沖縄周辺の海洋生態系の研究というのは非常に大事だと私ども考えております。  したがいまして、今御指摘のような専門機関、研究機関の設置のために基本構想の樹立とか基本設計とかいうことにつきます調査関係の経費を五年度計上しているところであります。この調査の結果を待ちまして、さらに検討してまいりたいと思っております。
  115. 上原康助

    上原分科員 ぜひひとつ実現できるようにやっていただきたいと思います。  最後に、これも時間があれば少し議論をしながらお願いをするつもりでしたが、もう一つの基幹作物である、地域特産物になってしまいましたが、パインの問題ですね。最近ようやく政府も見直しをするおつもりなのか、最近、パイン生産振興対策研究会ですか、おつくりになって、私レポートも読ませていただきました。あの中身はおおよそ期待できるものだと思うのですね。したがって、加工用原料それから生食用のこれからの品種改良を含めて、八重山と北部の生産農家にとってはパインというのは大変重要な作物であるのに変わりがない。また、波及効果も大きい。そういう面でこのパインの育成についても、もちろん沖縄県や農家の皆さんの自助努力は当然ですが、政府としてももっと積極的におやりになる必要があると思うのですが、その点の御方針をお聞かせ願いたいと存じます。
  116. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 ただいま先生お話ございましたように、沖縄県の関係者、国も含めまして、パインアップル対策研究会をつくりまして、みなさん非常にそこでも意欲的な取り組みをしていこうじゃないかということで、非常に地元の方も燃えていらっしゃるというふうに伺っております。我々もこのパイナップル産業の体質強化を図っていくためにいろいろな対策を講じていきたいと思っておるところでございまして、ただいまお話しのようなパイナップルの優良種苗の緊急増殖であるとかあるいは生産、流通、加工対策、さらには加工原料用パイナップルの価格安定対策、需要の拡大、そういったことに力を入れてやってまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  117. 上原康助

    上原分科員 最後にまとめて今のパインの問題と海洋研究所設置の問題、大臣の方からお答えいただきたいと思います。
  118. 田名部匡省

    田名部国務大臣 海洋研については、先ほど長官の方からお答えしたとおり、まずどういう状況にあるかということを調べた上で、必要であればそれはこの先進めていかなければならない。いずれにしても、調査をさせていただきたいということであります。  パイナップルについては、確かに需要の拡大を図りながら今後とも強力に進めていかなければならぬということでありまして、生産、流通、加工対策を拡充するとか優良種苗の緊急増殖とかいろいろなことはありますので、そういうことをしながら進めてまいりたい、こう考えております。
  119. 上原康助

    上原分科員 ありがとうございました。よろしくお願いします。
  120. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤恒晴君。
  121. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)分科員 他用途利用米の問題を中心に若干お尋ねをしたいと思います。  その前に、大臣にちょっとお伺いをしたいと思いますが、私から言うまでもなく、大変御苦労されているガット問題、大変厳しい状況が長引いておりまして、九九年までに何とかしようということでありますが、そういうことで九九年までに一応のことを決めて、その間に日本農業なり米産業、米農家を何とか守っていくという対策をとれば例外なき関税化ということでもいいんではないかといったような御意見もあるようであります。  しかし、アメリカやECなどは、輸出補助金なりあるいはまた価格等の共通政策をとりながら国際市場における立場を守っているというか維持し ているというか、そういう状況だと思います。  工業製品なんか見てもそうでありますが、結局のところは関税化というのは行き着くところが決まっているというふうに私は思っております。米という産品に象徴される農業問題というのは、個々の農家の経営問題ということがもちろんありますけれども日本農業の将来と自給力の向上あるいはまた環境保全、こういったような点から農業の果たす役割というのは重視していかなければいかぬというのは最近の共通した多くの世論ではないか、こう思っております。いずれにしましても、貸借対照表に結果を求めるような市場原理で論議をするというのはなじまない産業だと私は思っております。人類と地球が共生をするというようなそういう壮大な、何といいますか、理念のあるバランスシートを考えていくというそういうものだろうと思っております。  そういう意味で、食糧の問題を考える場合には、一国の自給力の維持を図るということを国際的にやはりお互いに保障し合うというそういう仕組みが必要だろうし、また、国連などの国際的な農業食糧の援助といいますか、そういったことを行う機関等もありますけれども食糧のある、産品のあるところは産品を出す、金のあるところは金を出すといったようなところで、政治的な意図を持たない食糧の備蓄、援助といったような国際的な流通といいますか、そういうあり方を考えるべきではないのか。そういうことが進んでいくならば、農産物の貿易をめぐる経済的な摩擦といったようなことでの先鋭化というものも、避けていくことはできないけれども、少なくともそういう方向に誘導することができるのではないか、こういうふうに思います。  そんな意味で、これからの国際的な農産物の流通のあり方といったようなものについて、大臣の所見をお伺いしておきたいと思います。
  122. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私も、おっしゃるとおり、やはり食糧というのは地球人類に安定的に供給できる体制というものを確立していく必要がある、こう考えておりまして、先般も、イタリーでFAOのサウマ事務局長にお会いをしてその話をいたしてまいりました。  当面、そう言ってみても開発途上国の一部には援助を必要とする国がある。これについては、食糧問題というのは、もうその国で基礎的なものは自給する体制ができなければ、未来永劫に援助をしていくのかということになるとこれはなかなか問題があると思う。そういうことで、日本はそれ相当の援助をしながらやってきておるわけであります。何とか技術的な問題でありますとかいうこともやっているのもそのとおりでありますけれども、ただ、一方では過剰農産物を抱えている国というのがあるわけですね。ですから、一方は自給率が高まっていく、一方は過剰のままでおっては、これは大変なことになってきますので、なかなかそこは話し合いができません。そういう体制をとっていくというのは、恐らくFAOあたりのきちっとした計画に基づいて世界が話し合いをして、それでもなお不足する国というのがあるわけでして、そういうものは余剰に持っているところはそこへ出してやるということが必要であろう。しかしこれ、農業面ばかりでやってもなかなか難しい問題がある。  例えば、アメリカ等のように農産物が過剰なものを輸出している国が、それが輸出できなくなることを一体どこかでカバーできるかという問題もあわせて解決の道というものを探さないと、そのままにしてというわけにはまいりません。ですから私は、輸出とか輸入、特に輸出というものはやはり節度を持ってやるということが大事であって、相手の産業をつぶすまでやっては問題があるというふうに実は考えて、そのことも常日ごろ申し上げておるわけでありますが、いずれにしても、本当に貿易というものはどうあるべきかということを、本当に基本的なことをきちっと議論して、そういうことにのっとってやはりやっていくということは本当は必要だなとこう思うのですが、まだ当面それはすぐ目の前で実現できるわけではありませんし、何としても食糧需給の状況というものを、世界のそういうものを見ながら積極的に日本食糧計画等の活動に対して貢献をしていく、そのことは大変重要だというふうに考えております。     〔主査退席、宮里主査代理着席〕
  123. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)分科員 ありがとうございました。  そこで、ちょっと具体的な問題でお尋ねをしたいと思います。  ことしの十月末で大体政府米の持ち越し量が前年を若干上回るというような予測ではありますけれども、大体四十一万トンぐらい、こういうような予測のようであります。こういう状況でありますけれども、やはり高値に動いてきた自主流通米、こういうものが非常に作付が拡大をしてきて、いわゆる米の流れが変わってきた。そういう結果として政府米の集荷が落ち込んできているというような状況があろうかと思います。  それで、標準米あるいは業務用米百八十万トンの確保が必要だ、こう言われているわけですが、他用途米あるいはまたモチ米など加工用需要が百四十万トンというふうに試算をされて、そのうちの三〇%ぐらいが他用途利用米からの充当ということだけれども、いずれにしてもこの他用途米というのは集荷が減少の一途をたどっている、モチ米は不足をしているというような状況があるというふうに報道されております。景気が家計に影響するのかどうかという話題を含めて、米やみその売れ行きが拡大しているといったような話もあるわけでありますが、みそも近々メーカーによってはかなり大幅な値上げをやらざるを得ないといったようなことが報道されておりますが、これも他用途米の不足というようなものが原因ではないのか、こんなふうにも実は思うところであります。  自主流通米の入札制度ができまして、需給と価格の安定というのが目的ではあったわけですけれども、しかし、自主流通米と政府米の手取りの格差といいますか、そういうものは拡大しているのではないか、こういうことですから、他用途米も影響が出てくる、こういうことだろうと思います。  そんなような意味で、この二、三年の他用途米の価格の動向、あるいはまた、今後といっても将来の話ではなくて、間もなく不足対策として放出をされるのではないかといったような話も聞くわけでありますが、その辺の状況についてどんな見通しを持っておられるか、お伺いをしたいと思います。
  124. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 御指摘のように、他用途米は主として加工用米に充当されているわけでございますけれども、加工用米の需要が大体百四十万トンぐらいあるわけですが、そのうち三分の一が自流米、三分の一が他用途米、三分の一が規格外米、特定米穀というようなことで充当されてきたわけでございます。  そのうち、物によって、用途によって供給される割合が異なっておりまして、清酒等は自流米のウエートが最も高くて、次が他用途利用米となっていますし、米粉、お菓子はむしろ特定米穀が多くて、次が他用途米、自流米というような、お菓子の中身によっても違っているわけでございまして、みそは他用途米が最も多くて、それに特定米穀が相当供給されているというようなことで推移してきたわけでございます。  三年産米の生産が減少、作が悪かったというようなことから、こういう安い米を利用している需給も逼迫したというようなことに加えまして、四年産米、減反緩和したわけでございますけれども、他用途利用米に充当していたもののうちから主食用に回されたというのが率直に言って相当あったんではないかというようなことで、こういう関係の需給がかなり窮屈になり、それが特定米穀の価格にはね上がり、その結果、他用途米の需要が従来よりふえているというのは否めない事実でございます。  他用途利用米につきましては、五十九年から、過剰米の処理がなくなってからこういう仕組みを つくり、生産調整、減反の中でこういう制度を拡充してきたわけでございます。  価格につきましては、他用途米については、生産者団体と需要者団体で構成されております他用途利用米協議会の場において決定されまして、制度発足以来、他用途米価格はほぼ横ばいで推移しておるわけでございます。最近も、百五十五、六円の価格で推移しております。  一方、同じような用途に使われています特定米穀の価格の方は、これは自由な取引がされているということもありまして、年々増加しておりまして、最近他用途米よりもむしろこれが上がっているというようなこともありまして、従来特定米穀のウエート、高く依存しておりましたみそ屋さんなどでは、若干、需給といいますか、調達に苦労されているわけでございます。  我々としましては、他用途米の全力集荷に努めますとともに、集まったものにつきましては、適宜そういう面に供給するように、農業団体、それからこの他用途利用米協議会の場を通じまして対応していきたいというように考えております。
  125. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)分科員 最近の米粉の調製品の輸入ということですが、若干統計的には古いのかもしれませんが、大体金額にして六十億円前後、あるいは数量にして五万トンぐらいというふうに言われておりますが、これはどういうふうに状況が変化してきているのか。このごろは増加の傾向が著しいのではないかというふうに実は思うわけであります。  米菓あるいは米飯、米粉調製品ということで、私は五万トン程度と申し上げましたが、これからのこうした米粉調製品等の輸入の動向というのはどういうふうになっていくというふうに思っておられるのか、予測をお尋ねをしたいと思うのです。  あわせて、何か、タイ産米が、不許可のものが輸入されて、輸入というんじゃないですね、持ち込まれているのではないかといったような一部の話も聞くわけでありますが、その辺の実態についても明らかにしていただきたいと思います。
  126. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 米粉の調製品は、一定の基準のものにつきましては自由化品目とされているところでございます。従来は、特定の用途につきまして、価格差を生かした特定の用途で活用されておりまして、ここ二、三年、二万トン程度で輸入は推移してきたわけでございます。ところが、平成四年に入りまして、三年産米の作が悪かったことの影響を受けまして、その用途が若干膨らんできているというふうに見受けられるわけでございまして、平成四年、年間通算してみますと、前年に比べまして二・二倍の四万八千トン程度になっているというふうに我々見ているわけでございます。  この今後の問題でございますけれども、加工用米の他用途米とかくず米とか含めました、特に需給事情やあるいは為替レートによって左右されるわけでございまして、長期的な動向について判断することはなかなか難しいわけでございます。しかし、最近の、直近四カ月ぐらいの数字を見てみましても、依然増加の傾向にあるわけでございまして、現下の需給事情から見れば、当面は高水準の輸入が続くのではないかと見ております。  ただ、私どもとしましても、加工品に対する供給というのは、やはり我々あるいは系統、農家の務めではないかというふうに考えておりまして、加工用に対する需要、これは自流米それから規格外米にもあるわけでございますが、特に他用途になろうかと思いますけれども、他用途米の確保につきまして、系統等と一緒になって努めていきたいと思っています。  それから、タイ米の話は、過日新聞に載った密輸問題ではないかと思いますけれども、報道されたわけでございます。  その問題につきましては、現在私ども食糧事務所あるいは県等と協力しながら調査に当たっておるわけでございます。現在のところ、まだ事実関係、ああいう新聞に出ました後で行きますとなかなか物が見えなかったりなんかして、捜査自身、率直に言って難しいところがあるわけでございますけれども、なおちょっと時間を置いて、時間をかけて見ていく必要があろうかと思いますけれども関係県の協力を得ながら、我々としても関心を持って見ていきたいというふうに考えております。
  127. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)分科員 いずれにしても、物が足りないということ、あるいはまた外国産の方が安いということで、そういう安い原料を求めて、例えば米粉調製品のように安い原料を求めて輸入をしても採算がとれる、あるいはまたそういうものを分離をして、調製品を分離をしてやっても使い道がある、用途があるといったようなことも実際はあるのではないか、こう言われるわけですが、今のは菓子の話でありますけれども、みそ醸造業界の中では、原料輸入についての期待をするといいますか、そういう話も聞くわけです、つまり品不足ということで。そういう話もありますけれども、いずれにしましても、先ほどみその値上げの話を申し上げましたが、中国産の大豆の問題もありまして、大変みそ業界は大変なのではないのかな、こう実は思っております。  いずれにしましても、基本的に他用途米が不足だというのは、今までの説明の中でも、生産と流通の双方の問題があろうと思いますけれども基本的に両方なんだ、こういうことなのかどうかわかりませんが、いわゆる不足というのは基本的にどちらにあるのか、流通の問題なのか、あるいは生産上の問題なのか、いずれのことも原因だろうと私は思いますけれども、その辺と、それから、昨年も三万トンぐらいは政府米を転用しているということのようでありますが、ことしも相当数量を転用するということになるのではないかな、こう思うのですが、そのあたりはいかがでございましょう。
  128. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 昨年度といいますか、最近、ここ一年間におきましては、むしろ他用途米は、持ち越し在庫も含めまして、一昨年、それより前より供給量をふやして対応したわけでございます。そういう点からいきますと、他用途米自身はそういうふやす努力もしてきたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、加工用の需要というのが、自流米と他用途米とそれから規格外の米、それがそれぞれ三分の一ずつ程度を占めているわけでございます。従来でありますと、最も価格が安いのが規格外米でありまして、規格外米で加工用需要を賄える業界は、従来であればまず規格外の米を調達し、それで不足するものを他用途米に依存していた。自流米の需要の場合はまたちょっと違いますけれども。そういうところで、むしろ最近の全体的な需給が引き締まりぎみなことを反映しまして、自由流通しております規格外の米の出回りが私どもが想像している以上に少ない、少し値上がりを踏まえて持っているんじゃないかというようなことから、そこに依存していたものが他用途に来て、表面的には他用途が逼迫したように見えていますけれども、全体としてはくず米といいますか、規格外の需給自身が従来と変わってきているということが今の原因ではないかと思います。  それで、私どもとしましては、加工用需要百四十万トンを視野に置いて、物を考えたり見たりしていっておるわけでございます。今後規格外の米がどういう経路でどういうふうに出てくるか、もう既にかなり出払って主食用にむしろ回っているのか、その辺の正確な把握は定かではございませんけれども、まだそういうものもあるのではないかというように見ているわけでございます。  それから、他用途利用米の集荷につきましても、もうかなりの部分は終わっておりますけれども、まだもう少し努力すべきものはし、それは供給していきたいと思っていますし、これから来年度にかけましては、ことしやりました政府米との交換、これは政府米との交換ができるかどうかわかりませんけれども、自流米全体を含めまして、物はあるわけでございますので、そういう活用、あるいは五年産米の他用途利用米の前倒し供給等々によりまして、需給に支障のないように最善 の努力をしていきたいというふうに考えております。     〔宮里主査代理退席、主査着席〕
  129. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)分科員 それで、平成五年から三年間、転作目標が六十七万六千ヘクタールということで緩和をされたわけですが、そのうち他用途米については実は十万七千ヘクタールということになっているわけです。そういうことではありますけれども、実際今まで厳しい減反を求めてきた、そういう中で、いろいろ農家の事情などがあって、実は超過達成というような状況も出ている。こういうことで見てまいりますと、この他用途米十万七千あるいは全体としては六十七万六千という数字が一体どうなっていくんだろうか、こういう心配がございます。  平成三年の場合に、実施見込みで八十五万ヘクタールだったと思いますが、目標よりかなり多くなっている。そのうち他用途米が大体一〇%ということになってまいりますと、緩和をしたといってもなかなか復元をするというのは難しいのではないか、容易ではないのではないか、こんなふうに実は思うわけです。  また、うまい米志向ということでありますから、当然そういう方向に作付が流れていっているというようなことなどを考えてまいりますと、なかなか減反目標という点も、目標を達成する、つまり数量を達成するよりは、それを超過していくんではないかと実は心配をするわけです。  そういう事情なども考えてまいりますと、平成三年度の場合には、集荷割合が約八〇%、こういうような状況でございますし、先ほどありました米粉等の輸入数量も、そういう数字と比べてまいりますと一〇%を超すような段階になるのではないか。さらにはまた、トン当たり五万円その他集荷補助等々、安定供給対策ということで財政的な措置も購じておられるようでありますけれども、一体安定的な供給対策というのはこういうことで達成されていくんだろうかというような懸念もあるわけであります。さらに、モチ米なども不足しているというような状況もございます。そういう意味で、いわゆる用途別の需給体制、需給均衡を図っていくということが、今政府がやっているような減反政策とそれから補助金政策でいいんだろうかということが心配されるわけでして、そのあたりの見解をお尋ねしたいと思います。  さらに、これは時間もありませんからお尋ねをいたしますが、米の価格の問題と当然深くかかわり合いを持つわけでありますけれども、やはり担い手対策といいますか、米生産農家の経営の安定という問題を抜きにしては、いずれにしてもこの米問題は議論できないというふうに思います。  市場原理の導入を前提としていろいろやっても、結局は規模拡大をするといっても、市場原理を導入する、そのためには規模拡大だ、規模拡大をやるといっても、一方では減反だ、こういうことになれば、そういう農政というのは果たしてどうなんだろうかという疑問を持たざるを得ないわけであります。私は生産調整と規模拡大というのは両立しないのではないか、個々の農家にとっては、ある意味では両立する農家もあるのかもしれませんが、全体としては、両立をする政策ではないのではないか、こういうふうに思います。さらにはまた、山間地の米作あるいは山間地の営農対策という点でも、私は今の政策だけではなかなか難しいし、この需給バランスをとっていくという点で問題があるのではないか、こういうふうに思います。  そういう立場で、他産業の就労者と類似的な所得を保証するというような政策をとっていかなければ、私は農家、とりわけ米生産農家、しかも大規模化できない地域における生産農家は担い手がどんどんなくなってしまうのではないか、実はこんなふうに思うのであります。  ちょっと長めに御質問を申し上げましたけれども、お答えいただきたいと思います。
  130. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 他用途米でございますけれども、他用途米は、御案内のように、五十九年から過剰米がなくなった後を受けまして、加工用米に回す、それが減反が強化される中で転作の一つの形態としてやれば需要者側にも受け入れられるし、生産者、農家の方にも受け入れられるということで発足し、以来もう相当の年月がたって需給関係に定着している制度でございます。  率直に申しまして、転作を強化する過程では比較的それがやりやすかったのですけれども、四年産米に転作緩和したわけでございますけれども、緩和した中では、必ずしも転作緩和が予定どおり進まなかったというようなこともありまして、他用途米から主食用に回ったりしたものがある、それが今の需給関係に影を落としておるわけでございます。  そういう緩和の中では他用途米がつくりにくいというのは、私は率直に言ってそういうことはあるのではないかと思います。ただ、この他用途米部分の供給ができなければ、米の需要自身が、高くてもいい主食米とか、あるいは標準米等安い米、それから加工用米等々、それぞれの用途があるわけでございますので、それが欠落するといろいろな問題が起きてくるというようなことで、やはりどうしても供給に努力する必要がある。系統団体あるいは都道府県もそういう点については十分に認識してもらっておりまして、積極的な取り組みをしていただくということで現在やっていただいておるわけでございます。そういう点で、農家にどうしても最近の需給事情なり、それへの対応について理解を得ながらやっていく必要があるのではないかと思うのです。  そういうことから、昨年度策定いたしました水田営農活性化対策では、ことしから基本的単価についてさらに助成をするほか、集約加算とかあるいは多収米の導入についての加算とか、さらに他用途モチ米の加算、いろいろな加算制度を、少しでも農業団体が末端農家に浸透させるのに役立つのではないかということで、現在、来年度予算に計上しておるわけでございます。そういうことを活用して、何とか需要に合ったものをやっていきたいと思っています。  いずれにいたしましても、これは強制でも何でもありませんので、やはり誘導でございます。生産者、末端の農協というようなところの理解がなければ進まない話でございます。私ども、一生懸命実態を説明しながら、系統団体とともに対応をやっていきたいというふうに考えているわけでございます。
  131. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)分科員 いずれにしても、この安定した米農家なり担い手対策のためには、他産業並みの所得を保証するようなことがなければだめなのではないか。一方で規模拡大、一方で減反というようなことは、総論としては理屈に合わないと私は思うのですが、個々の農家を考えた場合には、やはり他産業並みの所得を保証する方向性を何かつくらなければいけないのではないか、こういう質問をしたわけです。
  132. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおりだと思って、新農政でもそこのところが基本的に考えたところでありまして、どうやって他産業並みの所得が得られるか、それがなければ担い手が育つわけがないんだ。ただ、育てるために、おっしゃるように生産調整をやりながら規模拡大というのはおかしい、ひょっと見ればそうですけれども、稲作だけに依存していいのかという問題が一つあるわけですね。ですから、十から二十ヘクタールというとそんなところはないとか、できないとかという、まあそれは一つの形を示したのであって、具体的にはやはり年間通じて働けるような条件をどうつくっていくか。それは農家自身の問題ですから、それで水田はわずかでも、こちらの方ではこうするとか、そういうことに農業といい経営というものを考えていかなければならぬ。同じ東北でありますから、山形のようにサクランボ、今やもうハウスですから、ああいうふうにやれば、米をつくって、こちらでも働けて、それで所得が上がって、こういうことの組み合わせば農家自身がお考えいただいて、何とか八百万、生涯通じて何億という、二億から二億五千万と出しておりますが、そういう組み合わせば一体何なのかというこ との中で、米は我々は安定的に確保していかなければならぬ。一つは、収入が上がることは、米と何を組み合わせれば働く時間と収入とうまくいくかというのは、これは農家、地域実態で、創意と工夫の中で考えてやっていただきたい。それに対して我々は支援していこうということでございます。
  133. 佐藤恒晴

    佐藤(恒)分科員 時間が来ましたので終わらせていただきますが、山間地あるいは地域特性に合った農業の中で、米作農業もつぶれないようにぜひひとつお願いしたいと思います。  終わります。
  134. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて佐藤恒晴君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木久君。  時間が限られておりますので、持ち時間を厳守されるようお願いいたします。
  135. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 引き続き福島県でまたお願いをします。私は、牛肉の自由化に大変苦しんでいる中山間地の農業の実情をお話ししながら、政府の施策についてただしたいと思っております。  牛肉の自由化から三年、関税が六〇から五〇にという段階を迎えて、産地では大変深刻な事態が進んでおります。私の住んでいる福島県の阿武隈山系というところ、これはかなり広大な地域なんですけれども日本一広いいわき市の山間地、田人、遠野、三和、川前、そして原発で有名なあの双葉地方の山間地、川内、葛尾そして相馬の飯舘という三つの村、これはまさに典型的な中山間地農業を営む地域でございます。もちろん、過疎が進んで、後継者がどんどん減っていって、花嫁がいなくてという、まさに苦しみにあえいでおります。  つい先日、このうちでも最も肉牛産地で、今一生懸命努力をしている飯舘村というところと葛尾村にお邪魔をいたしまして、現実、生の声を聞いてまいりました。葛尾村というのはこういうふうに紹介すればわかっていただけると思うのですが、人口が二千人、交通死亡事故ゼロ一万日達成といいますから日本一なんです。三十年近く交通事故の死亡者がいない。飯舘村というのは、実はその人口七千八百人、比較的ここは大きいのですけれども、飯舘牛というブランド品をつくって売り出そうということで必死になっておりまして、みずから公社をつくって肥育をやっている、こういうところでございます。どちらも文字どおり農林業、畜産、とりわけ畜産に力を入れておりまして、和牛あるいはホルスタイン種の繁殖、肥育、全体では飯舘村の場合は一貫でそれをやる、こういう地域でございます。  農家は、もう一方で米の自由化という問題が今叫ばれている中で、大変先行き不安を感じております。この地域は、それ以前に牛肉の自由化の洗礼を受けて、まさに価格の暴落等、もともと膨大な固定負債を抱えておりました。四苦八苦の状況でございます。農家の皆さんの生の声をここで率直に言えば、政府が言うとおり少し規模拡大をした、そうしたらこのありさまなんだ、働いても働いても赤字がふえるばかりだ、固定負債の利子分も払えない、いつになってもこの元本は減らない、何のために働いているのだかわからないというのが正直言った実態でございます。それでも先に見通しがあれば働く意欲も出てくるんだけれども、これから先関税率もどんどん下がっていくし、外産牛とのまさに競合が本格的に始まるということを考えると、極めて絶望視するような、そんな状況なんだというのが率直な声でございます。  政府も今、中山間地の農業振興のための新しい施策を打ち出してきている。我が党もその中山間地振興のための法案を提出するという意味では、まさに抜本的にそういう問題について議論しなければならない重大な局面に立っていると思いますけれども、きょうはその全体的な議論をする時間がございませんので、私は、最も深刻なこのいわゆる肉牛対策の問題について率直にお尋ねをしたいと思います。  質問の第一点は、価格が低迷する中にあって、素牛を導入して肥育を継続していくというためにどうしても必要な肉用牛肥育経営安定緊急対策事業というのを政府も行ってまいりました、助成をしてまいりました。ことしの三月でこれがいわゆる期間が切れるということになって、これは系統も含めて農家の皆さんも大変心配をいたしております。一年先に延ばすとかそういう問題ではなくて、もう少しこの問題では、これから先もっと厳しくなるだけに、その延長措置、同時に助成の基準になっている家族労働費というのがありますね。これがいわゆる助成の基準としてあるわけですけれども、これもどうも少し低いのじゃないだろうか、こういう御意見もございます。  したがいまして、このいわゆる緊急事業の今後のあり方、内容の改善という問題についてどのように考えていらっしゃるか、まずお尋ねをしたいと思います。
  136. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 今お話のございました肉用牛の肥育経営安定緊急対策事業、これは牛肉の自由化関連対策として昭和六十三年に措置されたものでございまして、その後、肥育経営の悪化がございまして発動いたしております。平成四年度に入りましても、第一・四半期、第二・四半期発動しておりますが、第三・四半期につきましては、出荷する肥育牛の素牛価格が下がっているというようなこともございまして、発動をしないで済んだところでございます。  これまでのそういったような状況を考慮しまして、来年度以降どうするか、この事業を継続するかどうするか、そういった事情を考慮しながら、今後検討してまいりたいと思っております。  それから、発動基準の緩和についてのお尋ねでございますが、この肥育経営の維持継続を図るためには、素牛の価格だとかあるいはえさ代、そういったものの経費に加えまして、最低限家族労働費が賄われるということが必要でありますので、この事業におきましては、一頭当たりの推定所得が家族労賃を下回った場合に助成金を交付することとしているところでございまして、この基準を緩和するのは非常に難しいと考えております。
  137. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 今三月ですからね、延長の問題というのはそんなにのんびりした話じゃないのですね。現在のもう少し具体的な姿勢をお示しいただきたい。再度、改めてこれは御回答をいただきたいと思います。  同時に、今ずっと累積しているというのか、前から借金づけになっておりますから、莫大な固定負債というのを抱えております。これは、特にホルスタイン系の事業をやっております飯舘村の例を申し上げますと、これは浪江農協が系統としてかかわっているのですけれども、十四戸の農家で資本を投資している額が三十八億円と言われている。そのうち、固定負債がその半数を超えています。したがって、一戸当たり一億円を優に超えている負債を持っている。出荷頭数はどのくらいあるかというと、大体千五百頭ぐらいしかいない。  だから、まさにこういう人たちは一番競合する部分で仕事をしておりますので、累積赤字を支払う、そして利子を支払うということに大変苦労いたしております。利子補給制度があって、大家畜制度や経営安定特別資金などの制度を適用いただいて三・五%の利子で、今負債の方はそういう制度資金を運用いただいておりますけれども、それでも厳しい。欲を言えば、もっと安くならないかというのが一つですね。同時に、元本はいつになっても減らない制度ですからね、このままいくと。ですから、切実なのは、利子を五年間ぐらい凍結してもらって、元本が減る方式にしてもらえないかというのが正直言うと農家の物すごい願いなんですよ。  ですから、これは虫のいい話だ、こういうふうに言われればそれまでかもしれません。しかし、系統農協を含めて、実際はこのままいったら共倒れになる可能性さえ持つくらい大変厳しい状況に立たされているということを考えますと、各県レベルでも努力をいたしておりますけれども、政府 としても、そうした固定負債というよりも、累積した不良の債務についての対応の仕方というものについてはもう少し考えてもいいんじゃないだろうかと思いますので、前段の質問とあわせてお答えいただきたい。
  138. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 肉用牛肥育経営安定緊急対策事業、来年度の問題をどうするかというお話、もう一度ということでございますが、平成二年の第二・四半期から発動しておりまして、発動しているときもありますし、発動していないときもある、発動しているときの方が多いのですけれども。そういう実態を踏まえまして、繰り返しになりますけれども、さらに検討させていただきたいと思います。  それから、固定化負債を抱えて大変御苦労されている農家の方々の問題ですが、借入金に多くを依存して、投資額も多いわけですが、その規模拡大を図った経営の一部には負債が固定化している、そういう農家も見られるわけでございます。  このために、そういった経営に対しましては、これまでも各種制度資金の貸し付け条件の緩和だとかあるいは自作農維持資金の融通だとか、そういった措置を講じてきたところでございますが、さらに牛肉の輸入自由化に対応した負債対策といたしまして、今先生お話にありました大家畜経営体質強化資金というものを設けたところでございます。  この事業の最終年度である本年度におきましては、これまで行ってきた既借入金の年約定償還額のうち償還不能額を借りかえるいわゆる約定借りかえに加えまして、平成五年度以降に償還がある既借入金の残高につきましても、経営の安定を図るために必要な範囲で一括して借りかえられるいわゆる残高借りかえ、それを実施しておりますので、固定化負債の相当部分については、この長期低利の資金に借りかえられるものと考えております。  また、本資金の借り受け者に対しましては、農協等の融資機関のほかに、県の農協中央会それから県畜産会、そういうところが一体となって、借り受け者の作成した体質強化計画に沿った経営改善を進めるよう指導をしておりますので、それはまた、そのお金を貸す農家には、そういう計画を立てて達成可能と認められる農家に貸すわけでして、一体となってその経営改善のための指導をしておりますので、今後逐次これらの経営の安定が図られるものと考えておるわけです。  こうした中で、負債整理のための資金を無利子にする、できたら無利子にしてくれというような御趣旨だと思いますが、今申し上げましたように、みずからの努力によりまして経営改善を図ってきた者との間に著しい不公平が生ずるというような問題があったり、あるいは金融の秩序が著しく阻害されるというようなことがございますので、無利子にするというような措置をとることは困難であろうと考えております。
  139. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 確かにそういうのは不公平にわたる大変なことだと思うけれども、二戸の農家で一億も超えるような固定負債を抱えた上で、ホルスタイン関係を農協の指導で一生懸命努力をされても、現実この三年間やってみて、四年間やってみて、特に自由化になってから、むしろ赤字がずっとふえておるわ。だから、見込みとしては大変厳しい見込みであるということだけはしっかり受けとめていただきたい。そして、今後の対策が今言ったような回答では、とてもじゃないが、そういう農家は救済されないという現実があることを私ははっきり申し上げておきたいと思っております。  肉用の子牛の価格の問題の対策でちょっとお尋ねをいたしますけれども、いわゆる安定基金の問題ですね。  繁殖を行っている農家というのは、私どもの方で比較的小規模の農家なのでして、まさに中山間地の農家をこれから振興していくためには、どうしてもこういう畜産をちゃんとやって子牛を育てていく、そういう事業が複合経営にとっては大事な事業でございますので、どうしても残したい、残していかなければならない、こういうふうに思っております。  しかし、どうも乳用種は、いわゆるホルスタイン系の場合には、保証基準価格をずっと下回って、合理化目標価格も下回るという事態になって、いろいろな補てん措置をしておるわけでございますけれども、これが今後大変財政的にも、運営資金が厳しいとかというお話も聞いておりますけれども、今後の保証基金のあり方、同時にこの問題では、特に和牛の問題で、和牛の方は価格差が高いところと低いところとこんなにあるものですから、それを平均しますから。我々の方の地域はどちらかというと、高い方じゃなくて後発で始めた地域なものですから、和牛でもほとんど、言ってみれば目標価格ぐらいのところで実質的には生産をしているのです。ですから、保証基準を下回っているところで仕事をしている、あるいは生産をしているという状況なんです。大宗がそうなんです。それでも、これは和牛の場合補償が受けられないということを考えますと、おれらはもう自由化になるとすそ切りで、おれらのところはやめた方がいいというふうに言われているのかなという認識が農家にはあるのですね、正直言って。ですから、これがもしそのようにどんどん進んでいったら、これはまさに繁殖をやっている農家が激減をしていくということにつながっていきますので、今酪農の方も子牛価格がぬれ子の問題も含めて暴落して、酪農そのものも危機になるという状況を踏まえてまいりますと、どうしてもこの価格保証制度について、もう少しこの点は見直しをする必要がないのかどうかも含めてお答えをいただきたい。
  140. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 和牛の子牛の価格の地域間格差が広がっている、それは枝肉の格付等級が低いほどその枝肉の価格が大きく低下していることを反映をいたしまして、子牛の価格も低下しているわけです。  その枝肉価格の格差が生じる原因ですけれども、それはその地域における和牛の改良の進捗状況の差異だとかあるいは肥育技術の差、そういうものが要因となって地域間の格差が拡大をしていると考えられるわけでございます。その枝肉価格の格差に応じて、また子牛の価格に格差が生じているということであろうと思います。  こういった地域間格差を是正するために、子牛価格の安い地域においては、和牛の改良の一層の促進による子牛の資質の向上だとか、あるいは流通面ですけれども、家畜市場の再編整備等による市場の活性化、活性化して買い手が集まらないと値も出ない。市場の活性化の問題と流通面の問題、あるいは肥育技術の向上、そういったことに努めているところでございます。  この運用の問題ですけれども、肉用子牛の生産者補給金制度におきましては、自由化による価格水準の低下分を全国ベースで判断して補てんするという考え方のもとで、全国一律の制度運用を行ってきたところでございます。輸入牛肉との差別化を図って国内の肉用牛生産振興を図るためには、資質の劣る肉用牛の品質向上を図ることが基本的に重要であろうと考えております。そういうことですから、制度地域別運用を行うということは、制度の仕組みとして適当ではないんじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  141. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 それは一つの理屈だと思うのですね。それで、飯舘村の例をちょっとお話ししますと、この村というのはもともとは繁殖が中心でやっておりました。ですから、和牛の肥育というのはやってなかったのですね。それで、村が公社をつくって飯舘牛というのを売り出そう、こういうことで努力をしていますよ。それはもう結局、繁殖の子牛を村が買い取って、それで肥育の技術を上げて高い枝肉にして売ろう、ここまで村が努力している。それでもさっき言ったようになかなか難しいのですよ。それでもいわゆる子牛の方の生産は、価格は基準よりずっと下なんだ。  こういう、言ってみれば繁殖、肥育を一貫してやって、村も努力をしている、こういう地域に は、何か少し、今の基金制度で補償できないというのだったら別のバックアップも考えるべきじゃないか。いわゆるハード面とソフト面の双方から支援措置を考えてやる、もちろんそれは改良繁殖の問題とか、肥育の生産施設、技術の問題とか、そういうためのいろいろな技術確立の問題でのバックアップとかたくさんあると思いますけれども、もう少し総合的にそういう問題についてバックアップをする。  もう一つは、一番不満に思っているのは、こんなに牛肉の生産者の値段の方は落ちていっているのに小売価格はちっとも下がらないじゃないか。幅は結局みんな流通業界のところにとられている。猛烈な反発がありますよ。  ですから、そういうことを考えますと、もう少し一貫的にそういう生産をしている者に対する指導、バックアップ。今度は農協が部分肉を販売して、できるだけ自分たちの生産した肉をその地域で売ろうというところまでやろうとしている。そういうことについてどうですか。いわゆる今までにない新しい支援の方法というか方針というものを打ち出すべきなんじゃないか、私はこんなふうに思いますけれども、いかがでございますか。
  142. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 今先生おっしゃいましたような地域内一貫生産というのですか、そういうことは非常に重要なことであると思っております。特に、繁殖地域に子牛を保留をしまして、その地域で肥育を行ういわゆる地域内一貫生産ですが、これは当然なことですけれども、子牛の流通の合理化という利点もありますし、また繁殖部門と肥育部門の間でそれぞれ情報の交換をしまして、飼育管理技術の改善にも役立つという面もございますし、いわゆる銘柄牛、大体産地の名前をつけた銘柄牛が多いわけですが、そういう銘柄牛としての評価を得やすい、そういったいろいろな利点があるわけでございます。  そのようなことから、地域内一貫生産につきましては従来からそのためのいろいろな施策をいたしております。例えば、子牛の生産地域において地域内の一貫生産体系の確立を推進するために必要な共同利用畜舎の整備に対する助成だとか、あるいは繁殖、肥育部門間の子牛取引の協定化、それから産地において、と畜解体から部分肉処理までを一貫して行う近代的な食肉処理施設の整備に対する助成、そういった施策をこれまでも講じてきているところでございます。  特に、今予算の審議をお願いしているわけですが、平成五年度におきましては、地域資源の有効活用と地域農業連携による効率的な肉用牛生産を推進するために、都道府県それから市町村、それぞれの段階における地域内一貫生産等の推進体制整備、ソフトの面です。それから、繁殖地域に中核的な肥育施設を整備をする、そういったことを内容とする新たな事業も行うこととして、今予算の審議をお願いをしているところでございます。  今後ともこうした施策を通じまして、肉用牛の地域内一貫生産の推進に努力をしてまいりたいと考えております。
  143. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 もう一つは、これは建築基準法との関係もございましてなかなか難しいのかもしれない。しかし、畜舎の建設等のいわゆる補助事業あるいは畜産振興資金のあり方の問題では、どうも不満たらたらですよ。あのとおりつくったらとてもじゃないがばか高いものになって、それでなくてもこういう状況なのに容易でない。それはもう少し何とかならないのだろうか、いわゆる建物の構造の問題、設計基準の問題、こういう問題についてもう少し、畜舎独自のそういう基準というのは、皆さんに直接質問して答弁になるかどうかもわかりませんけれども、どうもそれは考える余地がある、こういうように思うのですが、いかがでございますか。
  144. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 畜舎の設置基準の問題でございますけれども、畜産物の生産コストの低減を図るためには、投資額の大きい畜舎、そういった施設のコストダウンを図るということは重要な課題でございまして、畜舎の設置に当たっては極力簡素な構造とする、安い建築資材を用いるということに留意する必要があると考えております。  このために、補助事業だとか制度資金の借り入れ等による畜舎等の施設の整備に当たりましては、設置基準は設定をいたしておりませんで、過剰設備、過剰投資を防止する、そういう観点から、立地条件、経営条件に応じた投資を行うことを基本としている。それでできるだけ低廉な材料を選択する。あるいは関連施設、壁だとか扉だとかそういうものについては必要最低限の整備水準へ引き下げる、あるいは自家労賃、こういうものも活用していくという指導をしているところでございます。それで、特に補助事業の実施に当たりましては、建築費の低減のために、古材だとか間伐材あるいは自家労働力の活用、こういったものも補助の対象として積極的に活用するように指導しているところでございます。  それから、建築基準法の問題ですけれども、今までもいろいろそういう御議論はございます。例えば、積雪地域で雪おろしの慣行のあるようなところにつきましては、建築基準法上も規制を少し緩めてもらうとか、その都度いろいろ建設省と御相談をして、限度はありますができるだけ軽い基準にしてもらっている。そういう必要最低限の基準で設計、施工をしてもらうように、建築サイドにもいろいろ要請をしたりしておりますし、低コスト事例集その他をつくっていろいろ努力はしているところでございます。
  145. 鈴木久

    鈴木(久)分科員 時間が参りましたので最後に大臣に、今ずっと質問してまいりまして、まさに肉用牛問題は自由化の嵐の中で大変厳しくなってくる。国内の対策を一層進めていただきたい。農家は、その意味で、この問題に希望を持てる、展望を持てるということにしていただかないと、何のために働いているのかわからないという苦悩の中におりますので、この点を少ししっかりとした方針を打ち立てていただきたいというのが一つ。  もう一つは、まさに自由化をして厳しい目に遭っている教訓を、米には絶対にしてほしくないというふうに思います。そこまでいったら農業をやめてしまおうか。それこそ中山間地農業の方針を決めても絵にかいたもちになるというふうに私は思っております。食糧安全保障の立場、日本農業の最後のとりでである米問題をどのように考えていらっしゃるか、最後にお尋ねをして私の質問を終わります。
  146. 田名部匡省

    田名部国務大臣 お話は十分承っておりますし、輸入自由化によって受けている苦労というのもよく承知をいたしております。そのためには一体どうするかということを考えなければいかぬので、ただ大変だ、苦しいと言っているばかりでは先に展望が見えない話でありまして、私は全般に言えることは、工業でも商業でも農業でも、業というのはなりわいであって、一体どういうふうにこれを生かしていくかということは大事なことだ、こう考えております。  そういうことから、生産性向上による経営体質の強化あるいは受精卵の移植技術あるいはフリーストール・ミルキングパーラー方式などによる新生産方式、担い手の育成確保、畜産環境整備、いろいろありますけれども、要するにどうすれば本当に経営が成り立つだろうかという創意工夫というものを、みんなだめかというと中にはうまくやっている人もおるということを見ますと、今の畜舎のことでもそうですが、私の六ケ所村等は補助金をもらわずに自分で好きなようにつくっている。ちょっとこれは大丈夫かなと思うものもありますが、しかし何十年間もそれで立派にやっているところを見れば、いかに低コストで工夫をしながら経営をしているか、このあたりは非常にうまくやってくれておりますので。一律にそうでないというところに農業経営の難しさがあり、また対策に対する苦労というものはあるわけでありまして、しかし、そうばかり言っておられませんから、十分対応をしていきたい、こう考えております。  米については、もう再三、一年数カ月にわたっ て私はお答えしておるとおりでありまして、何といっても日本の水田稲作の格別の重要性ということを考えた場合に、包括関税化というものは受け入れがたいということで、これはもちろん国会決議もありますから、そういうことをその趣旨を体して努力をいたしてまいりたい、こう考えております。
  147. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて鈴木久君の質疑は終了いたしました。  次に、吉岡賢治君。
  148. 吉岡賢治

    吉岡分科員 まず最初に、田名部農水大臣にお尋ねをしたいと思います。  山陰沖の漁場における韓国漁船問題についてお尋ねしたいと思うのですが、我が国と韓国との間における漁船の操業問題については、日韓漁業協定及び日韓漁業自主規制措置によって秩序ある操業確保の努力がなされているところでありますが、日本海、とりわけ兵庫県の主要漁場である山陰沖においては、韓国漁船による漁場占拠あるいは禁止している区域や期間、漁法等を無視した無秩序な操業が繰り返されている実態があるわけであります。日韓漁業関係の現状と、今後の取り組みについて、大臣の所見をまずお伺いをしておきたいと思います。
  149. 田名部匡省

    田名部国務大臣 日韓問題はなかなか漁民の皆さんの思うような進展が見られないということは、私も大変遺憾に思うし、私も当初水産部会長のときに三度実は交渉に行きました。その後、日韓議員連盟の定期総会で毎回発言をいたしまして、その是正方を訴えてきた一人でもありますが、いずれにしても平成四年、これは五十五年以降自主規制措置を実施しておるわけでありますけれども、特に四年三月からは取り締まり措置の強化等を内容とした自主規制措置を実施いたしておるわけであります。このときも実は私はかかわって、資源の確保あるいは調査、そういうものをしながら、お互いにそれをきちっと守りながら、後世にすばらしい海を渡していこうではないか、そういうことで韓国側にそういう施設をつくるということであれば我々も努力をしましようということで、この自主規制措置を実施したのです。  にもかかわらず、違反操業が後を絶たないということでありまして、定期的な場を通じて、この是正を強く申し入れておるところであります。もちろん、今申し上げたように、資源の問題についてもなかなかのってきません。結局それを守ろうとすると漁獲を制限されるということもあるのだろうと思うのです。この問題につきましては、いろいろな各方面を通じて努力をしていかなければいかぬ。これは資源が枯渇していけば向こうにとっても大変なことなのです。そのことの理解を求めていくということも大事なことでありますから、もちろん取り締まりも大事でありますが、安定的に両国の漁民が生計を立てられる状況をつくっていくことも大事だ、この二つのことで、これからも全力を尽くして当たっていきたい、こう考えております。
  150. 吉岡賢治

    吉岡分科員 兵庫県の但馬地域の各漁協で問題になっておりますのは、一つは何といいましても、山陰沖の大陸棚でズワイガニ保護区域を設定し、自主的に操業を禁止し、また漁期を十一月六日から三月二十日ということに決めております。そして、特に雌ガニは一月末まで、こういうふうにして水産資源保護に取り組んでいるところであります。韓国漁船によって底刺し網というのが、漁期のいかんを問わず、近海十二マイルないし十三マイル、この辺に高さ一メートルぐらい、幅五千メートルというふうに聞いておりますが、それを五連くらい張りますから、まさにカニ、カレイ、そこにおるもの大小問わず捕獲していく、こういう現実があるわけであります。また大規模なバイかご漁具、この敷設によりまして、漁場の占拠もあります。  今申し上げましたように、刺し網があったり、バイかごがあったりしますと、山陰海岸の各漁協の底びき船はそこを避けて通らなきゃならぬ。またある意味では危険な状況さえ生まれていると言わねばならないと思うのであります。日本海の水産資源の枯渇が憂慮されている中でありますが、このような状況が続けば、水産資源保護の取り組みが徒労となるばかりか、漁獲量も年々減少して、零細な漁業経営者に壊滅的な打撃を与えてきつつあるのではないかと思っています。また一方で、韓国漁船がとったカニなどが、また回りめぐって輸入されているのではないかというようなことも言われているわけでございます。水産庁としてどのような認識をされ、漁業経営者のこの苦境にこたえようとされていらっしゃるのか、お聞きをしたいと思います。
  151. 川合淳二

    川合政府委員 今お話ございましたズワイガニ関係の事件でございますけれども、昨年十月中旬に兵庫県沖で韓国漁船四隻が刺し網によりズワイガニを漁獲しているという報告がございました。これは、今先生まさに御指摘がございましたように、ズワイガニにつきましては、その資源の状況から地元漁業者が資源保護に大変な努力を払っております。そうした中で、我が国のズワイガニの解禁日が十一月六日というふうに決めてございますけれども、これより前にこうしたことが行われたということもつけ加わりまして、地元漁業者から私どもにも非常に強い陳情がございました。  実は、このズワイガニにつきましては、現在日韓間で特別な取り決めがないわけでございます。これはやや微妙な問題を含んでいるわけでございますが、そうしたことでございますので、取り決め上は、この問題につきまして自粛を求めるということはなかなか難しい面もないわけではございませんけれども、今御指摘のように、我が国漁業者がこのズワイガニの増殖に真剣に取り組んでいるという現状でございますので、私どもといたしましては、韓国側に対しまして、こうした事実を説明いたしまして、昨年十二月八日から九日にかけまして実務者会議がございましたので、そこで強く操業の自粛を要請したところであります。その後、現在まではこうした形での韓国の操業はないというふうに聞いております。  しかしながら、いずれにせよ、こういう資源保護に非常に努力をしている地域でのこうした行為というものは非常に問題が大きい、両国間の関係にも影を差すことになると思いますので、私どもとしても今後十分注意していきたいと思っております。  それから、一つ例に出されましたバイかごにつきましては、これもなかなか難しい問題ではございますが、これにつきましては、昨年三月の自主規制措置が実施されたときに、民間で早期に協議をしようということになっておりまして、そのラインに沿って今協議をしているところでございます。前例としてアナゴかごの例がございますので、こうした形で民間間で取り決めができないかということで努力しているところでございます。  いずれにしましても、日韓の問題は取り決めがありながら違反がなお続発しているということでございますので、最大限の対応をしなければならないというふうに取り組んでいるところでございます。
  152. 吉岡賢治

    吉岡分科員 山陰海岸の各漁協に所属する漁業者が今大変厳しい状況に置かれているのは十分御理解いただけていると思うのですが、国際法上十マイルしか漁業権はないというように言われております。それをよいことに韓国漁船の無秩序操業というのは許せませんよと、漁業者にとってはまさに歯ぎしりの思いで見ているわけであります。  水産庁は、我が国の漁船の操業と安全の確保並びに水産資源確保のために、二百海里漁業専管水域を設定する、あるいは韓国漁船の無秩序操業に対して規制を遵守させ、監視の取り締まりを一層強化する体制を築くなど、緊急に措置を講ずるということが必要だと思うのですが、この点についての見解をお尋ねしておきたいと思います。
  153. 川合淳二

    川合政府委員 先ほど大臣からもお話し申しましたように、今の日韓漁業関係は日韓漁業協定が 基本になっておりまして、現在の取り締まり関係は、昨年三月に措置の強化ということを内容とした自主規制措置がこれにつけ加えられているという形になっております。私どもは、現在この枠組みの中で何とか韓国の違法操業を食いとめたいということで努力しているわけでございます。当然のことでございますが、海上保安庁、外務省とも連絡をとりながら、私ども自身も取り締まり船を派遣いたしまして対応しているわけでございまして、そうした線に沿って今後とも最大限の努力をしていきたいと考えております。
  154. 吉岡賢治

    吉岡分科員 漁業者によりますと、海上保安庁の船は十マイルより内側に入ることをとめるのが仕事のようで、具体的に十二、三マイルでやられますと、手も足も出ない現状だというように悔しがっております。  そこで外務省に、本件について韓国政府にどのような折衝をされたのか、また今後どのように臨むおつもりなのか、日韓漁業協定あるいは自主規制措置にかんがみて、外務省の方の見解をお尋ねをしたいと思います。
  155. 武藤正敏

    ○武藤説明員 お答え申し上げます。  日韓の漁業問題につきましては、水産庁と外務省は常に緊密な連絡をとっておりまして、一昨年日韓漁業の間で自主規制について協議いたしましたときも、常に水産庁と私ども一緒になって最大限の努力をしてきたわけでございます。その結果、昨年やっとこの自主規制措置がまとまりまして、今それを実施しているところでございます。また、違反操業等が目立ってまいりますと、私ども常に韓国側にきしつとした監視をするようにということを申し入れているわけでございます。  それから、先ほど先生おっしゃいました資源保護の問題につきましても、この自主規制措置に関する交渉の中で資源保護の重要性ということを訴えてまいりまして、その結果といたしまして、昨年日韓の漁業実務者会議を開くことになったわけでございます。こういった中で資源保護ということを昨年訴えたわけでございますけれども、さらにこの点強く韓国側に申し入れるようにしていきたいと考えております。
  156. 吉岡賢治

    吉岡分科員 両国の間の問題もございますから、大変難しいと思います。漁業者の心情からいいますと、水産庁も外務省もなまぬるい、何とかしてくれ、これが真実の声であります。そのことにかんがみて、今後ひとつ一層の御努力お願い申し上げておきたいと思います。  この件の最後に、環日本経済文化圏構想というのが今俎上に上がってきております。二十一世紀に向かって、東北アジアの国々と、やはり日本海の環境あるいは資源保護、操業秩序、こういうものも含めて有効に、しかも豊かな日本海として私たちは温めて、そしてまた活用させていただかなければならぬと思っているわけですが、例えば、そういう意味を含めた魚のネットワーク、こういうものを形成していく、こういう発想に立ちながら、今一方では韓国と日本という関係がございますけれども、朝鮮民主主義人民共和国あるいはロシアという関係をぜひひとつ形成をしていただくようなことができないだろうか、こんなことをふと思いますので、大臣なりあるいは外務省の方のお考えがあればお聞かせいただいておきたいと思います。
  157. 田名部匡省

    田名部国務大臣 お話しのことは、この資源の保存でありますとか、管理、有効利用ということで、環日本関係諸国の間でそういう協力を進めるべきだという考えがあるということは聞いておりますけれども、しかし、それらの諸国は漁業事情が異なることもありますし、経済的にも政治的にも異なった体制にありまして、直ちに多国間で効果的な協力を行っていくということは、進められれば、それはそれにこしたことはないのですが、私どもいろいろな、台湾、韓国、ロシアとの交渉を従来からずっとやってみまして、本当にうまくいくだろうかということについては、いささか困難な面もあるというふうに考えております。  ただ、水産分野においては、ロシア、韓国、中国とは個別に資源の管理を考慮した漁業協定を結んでおりまして、日本海の水産資源の保存、管理、有効利用のためには、当面これらの諸国との協力関係を維持発展させていくことが現実的だというふうに考えられますが、水産庁としても、中長期的観点に立って、環日本海におけるこの水産業交流、そうしたものは検討を進める必要があると私は思っております。ただ、日本とはそういう関係はありますが、そっちとの関係がなかなかうまくいきませんと、これはまた難しいという問題があろうかと思いますが、せっかく話は聞いておりますので、十分検討していきたいと考えております。
  158. 吉岡賢治

    吉岡分科員 二つ目の問題に入りたいと思います。  全国各地で河川改修工事が行われているだろうと思います。実は私の方で、その河川改修によって、それが長期にわたる場合には泥が浅海に沈殿をする、こういうことによりまして、生態系破壊と浅海漁業者の生活権が奪われているということが起こっているわけであります。  日本海の但馬地域の農林省の統計事務所、ここが出しております統計によりましても、ここ二、三年、アワビ、サザエ、そしてワカメ、こういうものの収穫量が激減をしているのはもう御承知のとおりであろうと思います。平成二年の十九号台風、これが直撃をした関係がございますので、その復旧や河川改修に濁り水、これが伴いますから、河口周辺の浅海の生態系が崩れ、困っているわけであります。零細な浅海漁業者の被害となってあらわれておるだけに、生活権に深刻な打撃を与えている、このように見なければならないというように思っているわけでございます。このことは、単に兵庫県のみでなく、全国的な現象でもあろうと思いますが、また一方で、兵庫県の場合によりますと、アワビの稚貝を放流する、こういう事業もやっているわけでございますけれども、その周辺のところはすべて死んでしまっているということで、その事業の効果も上がっていないようなこともあるわけでございますが、現状の認識といいますか、そういうものについてございましたら、まずお伺いしたいと思います。
  159. 川合淳二

    川合政府委員 具体的なお話につきましては、私ども必ずしもつまびらかにしているわけではございません。河川改修で、それが原因で濁水が海に流れ込んで、それが直接的因果関係で何らかの事故が起こった、損害が起こったというような場合には、一般論として申しますれば、民事上の問題として工事の事業者に損害賠償を請求するという形になろうかと思っております。ただ、この件につきましては、私ども詳しいお話は承知しておらないのが実態でございます。
  160. 吉岡賢治

    吉岡分科員 大きな河川改修あるいは復旧工事ということになりますと、かなり長期にわたる場合があるわけです。これはもう被害が大きいです。したがって、国土を災害から守るということでは本当にやむを得ないというふうに言いながらも、今もおっしゃっております因果関係の解明が困難ということも一面あります。それだけに、生態系が崩れていくということも含めて考えていきますと、やはり現状を調査してきちんとつかむということは、環境保護の上からも、あるいは浅海漁業者の生活権の上からも非常に重要だと思うのでございます。ひとつその辺、調査をするというお考えはないか、このことについてお尋ねします。
  161. 川合淳二

    川合政府委員 この種の工事は全国でいろいろな形で行われていることだと思っております。本来的には、したがいまして、県の段階で必要があればそうした調査も行われるべきものではなかろうかと思っております。国がそうした段階に出ていっていろいろな形で調査する、そういう必要がある場合もあろうかとは思いますけれども、一般的にそうした形で出ていくのは実際問題としてなかなか難しいのではないかと思います。     〔主査退席、宮里主査代理着席〕
  162. 吉岡賢治

    吉岡分科員 おっしゃいますけれども、やはり 川には建設省の直轄河川もあるわけです。自治体に自治体にということには限度があるわけです。そういうことを県なら県に調査をしてもらうということがあったとしても、掌握をしてやっていくという姿勢が必要ではないか、これほど環境問題が叫ばれている中で、生態系が崩れていくのは明らかでありますから。それと同時に何らかの補償措置も講ずるべきではないか、このように思っておりますので、一言見解を述べていただきたい。  といいますのは、浅海漁業者にとっても漁業共済があるというふうに聞いておりますが、強制加入でないものですから、もう零細ですし、なかなか入れないのが現状です。だから、現状、何の補償もないのです。だから、県の方だとかそういうところで今いろいろやっていただいているようでございますが、被害補償の措置というものを国で一応方針でも出す、こういうことが必要じゃないかというように思うわけでございます。民間でやってくれなどということではちょっとまずいのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  163. 川合淳二

    川合政府委員 環境問題としてのいろいろな調査、これは必要に応じて私どももしなければならないと思っております。ただ、こうした工事に基づきます事業の結果の補償につきましては、やはりこれは原則として当事者間で行われるべきものではないかと思っております。それが結果としてどういう形になるかというのは、それぞれそのときどきによって先生おっしゃるようにいろいろな形があろうかと思いますが、原則的にはやはりそういうふうに考えるべき問題ではないかというふうに今のところ考えております。
  164. 吉岡賢治

    吉岡分科員 ぜひひとつ全国的な問題としてとらまえながら、御検討いただくようにお願いをしておきます。  三番目に、畜産農家に対する助成のあり方についてお伺いをしたいと思います。  但馬牛は、先人の不断の愛育への努力関係機関の適切な指導によりまして、世界に冠たる肉質を誇り、牛肉の輸入自由化の今日、日本全国はもちろんのこと、世界に肉質改良の基礎牛として注目されております。このため、その流通において大型取引、こういうことが急速に高まり、市場としての設備の充実が求められておるわけであります。  実は、昭和四十六年、県指導のもとに但馬の五つの和牛市場が統合する、家畜市場再編整備事業だったと思うのですが、そういうことで、国、県の助成を得て現在の但馬家畜市場を設置してきました。しかし、市場統合に合意した美方郡、これは純血主義を守って非常に優秀な牛なんでございますが、そういうところで湯村市場というものを郡単位で今開設をしているという現状があるわけであります。しかし、但馬家畜市場といたしましては、平成元年に、何としても市場取引の広域化、こういうこと等も考えながら、競り棟の改築とか、あるいは競りの電算システム、あるいは追い込み牛舎、こういうことを改善せねばならない、こういうことに迫られてきた。そういう状況の中で統合の一元化が未達成である、こういうことによって国の助成が受けられないのではないか、こういうことになったわけであります。結果は、放置できないのでということで、約一億五千万円の建設費というものを構成組合の自己資金、これは全額負債でありますけれども、それによって、但馬地域はもとより、兵庫県内陸部の肉用牛市場開設に必要な設備規模を満たすものになっているわけでありますけれども、こういう状況の中で、その負債の問題で困っているわけであります。  そこで、農水省、県の農政局の市場統合と畜産振興の方針に沿って肉牛取引の大型化に対処するために、市場機能の一層の強化を図るために行った近代化に国の助成が受けられないのか、このことをお尋ねしたいと思います。  また同時に、今後、それはもう既に建ってしまったことだからだめじゃないかというふうにおっしゃるかもわかりませんが、負債で困っている現状について、何らかの方法で助成の方法がないのかというのが二つ目質問であります。  三つ目につきましては、いわゆる市場統合という方向の中で、この平成五年五月になろうかと思いますが、宍粟郡あるいは佐用郡のいわゆる山崎市場が但馬家畜市場の方へ利用を申し入れたいというようなこと等があるわけでございます。こういうことで統合の条件が少しずつ整いつつあるわけでございますけれども、この点についてぜひ深い御理解をいただきながら、三つ目の問題として、金利補給でもしてもらえないだろうか、こういう農家の切実な願いがあるわけでございます。  畜産農家、畜産の振興ばかりでなく補助金行政のあり方も問われているのではないかと思われる節がありますけれども、その点について、時間がありませんので、三つの質問をさせていただきましたけれども、御回答をいただきたいと思います。
  165. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 但馬家畜市場の件でございますけれども、当初は先生おっしゃいましたように、昭和四十七年、四十八年ごろ整備計画を立てて、その計画に則して整備が終わったわけですが、その後、おっしゃいましたような競り場だとかつなぎ場、追い込み場、そういうものの整備を市場の方で独自に自己資金で実施をされたわけです。それで、その時点で、整備する時点におきまして近代化資金等による融資を受ければ受けられたわけですけれども、地元で自己資金で対応したものと承知をいたしております。そういうものに対して事後的に何かできないかというお話でございますけれども、事後的に融資等の措置を講ずるということは、お話ではございますけれども、融資制度の体系上難しいというふうに考えております。  それから、ほかの市場と一緒になるというような機運が地元にあるというお話でございます。それは地元の関係者の間でそのお話し合いが行われまして、家畜市場の再編整備計画が作成されますれば、それは助成の対象になるものでございます。  それから、もう一つ、事後的に何か融資とか金利助成とかいうお話だったと思いますが、一番最初にお答えしたことでございますが、やはり今の制度の仕組みからしますと、事後的に助成をする、あるいは融資をするというのはなかなか難しいと思います。
  166. 吉岡賢治

    吉岡分科員 近代化の方向をとりつつ、県の指導、農水省の指導方向でずっと来ている問題でございますので、ぜひひとつ、そう冷たいことを言わないで、補助金のあり方について再度御検討いただけないかということを申し上げて、私の質問を終わります。
  167. 宮里松正

    ○宮里主査代理 これにて吉岡賢治君の質疑は終了いたしました。  次に、川端達夫君。  時間が限られておりますので、持ち時間は厳守されるようお願いいたします。
  168. 川端達夫

    川端分科員 民社党の川端です。大臣、よろしくお願いいたします。  私は、生糸に対する価格安定制度並びに一元輸入制度につきまして質問をさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。  現在、絹織物業界という業界、産業を見ますときに、養蚕農家の保護のために生糸一元輸入制度というものが行われております。絹織物業界としては、使用する生糸は、手当てが数において、そして価格において規制をされているという状況にあります。実態といたしまして、この絹織物業界、それから養蚕農家がどういう状況にあるかということは重々御承知だと思いますが、制度が実施された以降、昭和四十九年に、生糸のいわゆる輸入というのは十万三千俵、それが平成四年度では四万六千俵ということで四五%に輸入糸は落ち込んでいる。ということでは、輸入制限をした部分のいわゆる効果といいますか、数字は出ております。一方、絹織物二次製品というのは、これはいわゆる自由化商品でありますので、その原料の糸は輸入規制をされているけれども、一元化輸入 されているけれども、織物はフリーマーケットであるということで、織物の輸入量は、昭和四十九年が原糸換算で四万一千俵が四・四倍の十八万俵になっているということで急増をいたしております。すなわち、国産の織物業者にとりましては、糸においては輸入が減り国産糸を使うということで、織物は輸入品と競争する、こういう実態になっておるわけであります。  実態として養蚕農家がどういうことになったかといいますと、昭和四十九年に養蚕農家数は二十八万一千四百、これが平成四年で八八%減の三万四千八百七十。要するに、原料である生糸を輸入制限というか、一元化輸入ということで規制を加えて、養蚕農家の保護育成をしようとされた政策でございますが、実質的には輸入織物が急増するということで、保護育成、活性化には、全くと言ったら語弊があるでしょうが、寄与していないばかりか、その糸を使って国産の織物をする業界が衰微してしまったということで、逆に、織物業者が衰微すると生糸を使わないわけですから、その分でも養蚕農家に対しての需要は減退するということになっております。  そういう意味では、本当に養蚕農家を保護育成し、織物業界も健全に発展させようと思えば、例えば二次製品もすべて輸入制限する。原料は制限するけれども、製品が自由であれば、一方で蛇口を締めて一方はあけているわけですから、効果を果たしていない。これは数字が明らかに示している。そういう部分では、二次製品も含めて全部輸入規制するということで、国内においては、国産の糸を使い、国産の織物しか買えないという状況にしない限り、実質的には保護育成、活性化はできないという理屈が生まれてまいることになってしまいます。  現実に、国際的な観点から、今ガット・ウルグアイ・ラウンド、大臣も大変な御苦労をいただいておりますけれども、そういう中でも、いろいろな製品を輸入規制するなんというのはまさに国際社会に逆行する、そして日本の立場からも到底考えられないことだと思います。ドンケル・ペーパーなんかでは、むしろ原料の生糸でももう輸入制限、一元化輸入はやめるべきだという対象になっておるはずであります。  そういう状況の中で、今日なお一元輸入制度を堅持されているという意味で、どういう見通しとどういうお考えなのかということをまずお伺いさせていただきたいと思います。
  169. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 現在の輸入管理措置に関連しての御質問かと思います。  先生から今お話がございましたように、我が国では、現在、蚕糸業に関連いたしましては、繭と生糸、それから絹織物業に関連いたしましては、絹糸と絹織物につきまして輸入管理措置を講じておるところでございます。  御指摘のように、確かに絹の二次製品にはそういった輸入管理措置がございませんので、近年輸入量が非常に増大してきております。どのくらい増大しているか、なかなか統計が難しゅうございますが、我々が推定いたしましたところでは、生糸換算にいたしまして、絹の二次製品の輸入量が絹需要全体の約三割を現在占めているところでございます。  こういった状態の中で繭あるいは生糸などの輸入管理措置をとってまいりますことは、生糸の需給それから価格の安定を図って、それによって養蚕業を初め機屋さんあるいは製糸業者さんといった関連業界の発展のためには、こういった管理措置はまだ必要性はあるのじゃないかというふうに考えているところでございます。  それから、さっきガットの関係お話もございましたが、現在、生糸につきましては、国家貿易による一元輸入という措置をとっておりますが、この国家貿易についてガットではどういう取り扱いをするのかということについて、まだはっきりした見解が出ておりません。したがいまして、我々は、その点については、これからの議論の経過も見ていかなければいけない、こんなふうに思っているところでございます。
  170. 川端達夫

    川端分科員 時間がありませんのでくどくどは申しませんが、現時点において、なおこの養蚕農家の発展に必要性があるとおっしゃいます。なしよりという部分では全く否定するものではありませんが、発展という言葉をお使いになるのはいかがなものかと言わざるを得ません。二十八万一千四百農家が三万四千八百七十農家、これはどんどん減少いたしております。そういう中で私は、歴史があり、地域産業という部分で養蚕農家の果たしてきた役割は高く評価いたしますし、そういう部分をこれからどういうふうにしていくかということは非常に大事な観点ではございますが、産業全体として、このような輸入の状況の中で、そして国際的な貿易の環境の中で、この一元輸入制度のこれから果たすべき役割はないというふうに私は思います。  余談でありますが、一月十三日の毎日新聞を見ましたら、「「絹」輸入を自由化」、「新ラウンド合意後、十年猶予」、「政府は絹糸、絹布の輸入自由化を決めた。」こう書いてあったので、やっと踏み込んでいただけたかと思いましたら、違うとおっしゃいましたので非常に残念でございます。客観的な情勢は、私はそういうことの猶予のない時代に入ってきたというふうに認識をいたしております。  そういう中で、今は生産量の話をいたしましたが、実際に絹織物業界がどういう状況で事業をやらざるを得ないのかといえば、原料の糸は国際価格の約二倍ですね、原料は非常に制約された中で入手をして、二倍の原料を使い、そして、あふれるがごとき輸入品と競争しなければならない。なおかつ、着物等々の需要の減退という部分で需要は落ち込んできているという中で、頑張れと言っても頑張りようがないのが現実ではないかということでございます。  いろいろ繊維産業自体の構造改革、特に絹織物業界の構造改革ということで、通産省等々もワーキンググループをつくり、いわゆる繊工審のまた新しい答申に向けて議論をしておりますが、そういう中でも、通産省としては明確に、例えば最近のワーキンググループの資料でも、「輸入規制のデメリット」ということで、例示として、「生糸の輸入を規制すると、川上の養蚕業者と当該製糸業者が利益を受け、川下の撚糸、織布、製品加工業者と最終消費者が損害を受ける。」ということを通産省の資料で言っているわけですね。同じ政府の中で、縄張りが違うと言えばそれまでですが、国際的な環境の中でいえば、そして国民生活からいえば、私はこちらの方が説得力がある話だと思います。  そういう中で現実にどういうことが起こっているかといえば、報道されていますが、二月二十六日、つい十日ほど前、京都府の丹後ちりめん、いわゆるちりめんの日本で一番大きな産地ですね。丹後ちりめんの織物工業組合理事長からゼンセン同盟丹後織物工業労働組合執行委員長殿で、「加工場合理化に関する申入書」、要するにこれは、加悦町というところにある加工場を閉鎖しますという合理化の申し入れが組合に対してされました。報道で、地元ではもう大変なことになったと。決していろいろな産業がたくさんある地域ではありません。地場の中で長らくやってきた、そして比較的過疎にも悩む地域であります。そういう中で工場がなくなるということは大変なことだということで、町の商工会も何とか残してくれということで、町じゆうで署名活動までした。しかしそういう現実があった。その申し入れ書、要するに織物工業組合から労働組合に対する申し入れ書の中に、「合理化の必要な理由」というのが書いてあります。非常に需要が減って大変になってきた、前段はこう書いてあるわけですね。そして、「これは消費者の着物ばなれもさることながら、内外の生糸価格差による国外からの絹織物の輸入の増大が最大の原因であり、組合」、これは工業組合ですが、「組合としては一元輸入制度撤廃の運動を続けているが、いまだ実現を見ず今後も困難が予想される。」だから合理化しますという申し入れ書を書いているわけですね。こういう 実態にまで来ている。  そうすると、確かに養蚕農家という皆さんのことをどう考えるかという大事な問題はあるけれども、そういう仕組みを持つことによって、それを原料としてしか織物をつくれない、そして安い半値の糸でつくった織物が輸入されるのと競争して、どんどん衰退していって雇用問題まで引き起こし、そこの経営者は組合員に対して、政府がこんなことをやっているから会社は閉めます、ごめんなさいという紙を書くんですね。そこまで来ているという状況の中で、私は、その働く人たちのことも考え地域考えたときに、これは本当にどういう手だてを打つのか、日本の歴史と伝統があり、文化、芸術も支える織物業というものを、こういう状況に置いておいていいんだろうかというふうに感じます。  そういう部分でも、この現状、先ほど申し上げました需要供給、輸入の問題、生産量の問題、養蚕農家の問題を含めまして、大臣は、この状況の中で一元輸入制度というものをどのように認識されているのか、御見解を賜りたいと思います。
  171. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私も、この問題に随分取り組んで、いろいろな業界、農業団体、お話を伺って、難しいものの一つだ、こう考えておりまして、何かいいアイデアがないかと思っていろいろと担当者とも話をしてきたのです。おっしゃるとおり、糸が二倍で輸入と競争するという立場を見ると、本当に大変だなと思うし、一方では農村社会でこれにかわるものがあれば別でありますけれども、実際にこれに努力しておる人たちを見ると、これも生かしていかなければならぬなということもあります。国際競争の中で、今お話しのようにいろいろありましたが、確かに需給というのが大きな要件であろうと思うし、イタリーやフランスに行ったとき聞いてみましたら、もうほとんど中国から輸入して製品だけつくっておるというところもある。どんどん需要が高まって価格が上がっていけば、またこれは採算性という面からよくなるんだろうとは思うのですが、その辺は、確かに需要という面から見れば、着物は昔のようにふえてない、むしろどんどん減っているという傾向の中で、どうあるべきかということをいろいろやってみるのですが、なかなかいい知恵も出ていかない。  しかし、農林省としてみれば、農山村あるいは畑作地帯の重要な作目として地域農業の発展に寄与してきた、寄与しておるという面もある。一方、高齢化や価格の低迷あるいは生産量は減っているという中で、可能な限り内外価格差の縮小を図っていくためには、何といってもやはり生産性を向上させなければいかぬ、あるいは低コストの養蚕を確立するということは急務であろう。こう思って、この間も農林省で、一階の消費者の部屋でやっておりまして、行って見てまいりました。随分工夫して、えさ等も随分低コストのものに改善をしたり、いろいろやっておりました。  そういうことでございますので、何といっても価格、これは生産性の向上を促すことに配慮した水準に設定するということが一つあります。あるいは生産対策としては、革新的技術を駆使した先進国型の養蚕業を確立していかなければならぬ。それから絹の需要の増進を図るということが大事であろうと思うのです。この前も、何か輸入糸でやる皆さん、それはそれとしてあるだろうし、あるいは国産で、うまく工場等もそこの地域につくりながら、何か特殊なものをつくってやるというふうなことはできぬのかな、両方立つことをいろいろと考えておりまして、しかし、今申し上げたようなことを当面全力を尽くして取り組んでいきたい、こう考えております。
  172. 川端達夫

    川端分科員 大臣、いろいろやっておられるのは承知をしておるのですよ。大変な御努力をし、研究も含めてやっておられるのは承知をしている。ただ、今の仕組みで続けますと、これはもう織物業が成り立たなくなるんですね。そうしますと、その人たちがいなくなれば、正直申し上げて、生糸は要らないんですよ。そして、一元化政策をこのまま維持しても、今のこの減少率からいえば、昭和四十九年を一〇〇としたときの養蚕農家指数というのは、平成元年が二〇%、平成二年一八%、三年二八%、四年一二%ということで、最近ですと大体数千農家が毎年やめていっているんですね。そして、きょうは私ちょっと資料を持ってこなかったのですが、平均作付面積掛ける売上高というもので見れば、これが将来的にどういう暮らしに支えられるか。今お米の問題で、専業農家、第一種、第二種兼業農家とあります。そういう部分でいえば、いわゆる第二種、もう第三種かなにかっくらなければいかぬのじゃないかぐらいのことになっているということでは、一元化を進めていっても、先ほどうなるのかということに今もう追い込まれている。ですから私は、発想を変えて、本当に織物業界が成り立つということは表裏一体だというふうに思いますし、農水省のお立場でいろいろやっておられるのはよく承知をしています。現に和装は落ちていますが、イタリア物というのはブランドで非常に高いもの、そして、大臣お触れになりましたけれども、イタリアは中国といわゆる産直、こういう規格のこういう糸をこういうことでやってくれということで、量も含めて、品質も含めて、ダイレクトに商売をしているということの中でやっている。だから、そういう仕組みなんかを取り入れながらやろうとすると、相当これは通産省とも連携をとりながら、そして、何か守るということは間違いなくじり貧だ、こういう議論はこういう委員会とかいろいろな場で毎年出ていると思うのですが、それを言い続けながら、どんどんと衰退をしていっているということを打破しないといけない。そして、この養蚕農家が本当に前向きにしっかりとやって、意欲的にやっていけば、こういうやり方できっちり生き残れるというか発展できるんだという、そういうものをつくっておやりになるべきだというふうに私は考えます。いかがでしょうか。
  173. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 我々確かに、現在どういう制度かということですが、生糸、御承知のように需要の方は、そのときどきの景気動向、特に今回のように不景気になりますと、非常に需要が減退する。繊維が非常に大きな影響を受けていますが、またその中でも、この絹製品は非常に需要が減退しているというのは、百貨店の売り上げの状況からもわかるわけですが、そういうことで非常に需要が大きく変化いたしますが、それに対して生産の方は一定でございまして、なかなかそれに敏感に反応しないというようなことがあって、ほっておくとなかなか価格変動の激しい、そういう商品じゃないかというふうにまず思っておるわけでございます。  そうすると、そういう中で何とか養蚕農家あるいは製糸業者、織物業者、そういった関係業者の皆さん方が安心して経営の合理化を図っていくという方法をとるには、需給の安定を図るとか価格の安定を図っていくことが必要じゃないだろうかということで、現在こういった一元輸入制度をとっておるわけでございます。先ほどお話がございましたように、現実問題としては三割程度、製品がふえてきたという状況がございますが、我々としては、なお現在、そういう価格安定なり需給安定に果たしている役割というのは大きいのじゃないかなというふうに思っていることが一つでございます。  それから、実際に和装とかあるいは洋装、ブラウスとかワンピースとかそういったものはそうでございますが、消費者の立場から立って見ましても、末端価格に占める絹織物の原価といいますか、そういうものは三%か四%ぐらいでございまして、そういう中で安価な絹製品を提供していくということを考えますときに、やはりその養蚕業者だけではなくて染め加工問屋から小売段階といった、そういう川中から川下といいますか、そういったところの流通段階のコスト低減ということも我々としてはいろいろと考えていかなければいけない、そういう問題だと思っておるということでございます。  それで、先ほどからいろいろ申し上げておりますが、我々としては、先ほど大臣がおっしゃいま したように、養蚕業というものについて何とかコストダウンを図って、少しでも絹織物業者に安価な生糸を供給していくということが第一の使命ではなかろうかということで取り組んでおる、こういうことでございます。
  174. 川端達夫

    川端分科員 行革審でいろいろな、いわゆるこれは国民の生活、いわゆる生活者といいますか、消費者の立場ということでいろいろな議論がされております。そういう中で、内外価格差問題等々もあります。消費者の立場からどうだ、やはりいろいろな国の政策はこうあるべきだという議論もされていると思います。そういう中で、総理も、いわゆる経済大国から生活大国というのですか、ということで生活者のことを大事にしよう、こういうことで内閣を挙げて取り組んでおられる。  そういう中でちょっとお尋ねしたいのですが、行革審の中でこの一元化輸入の問題がいろいろな議論の中で出てきているやに聞いておるのですが、どのようにお聞きになっているのかということと、どういう意見が農水省に対して言われているのかということと、それをどう受けとめておられるのかをお尋ねしたい。
  175. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 我々二月十二日の日に行革審の方から農林省呼ばれましてお話があったわけでございます。これは農林省にございます事業団とか公団とかそういった政府関係機関についてどういうふうに考えるかということでの御説明を申し上げたわけでございます。  それで、そのときにありましたのは、まず一つは、農林省はいろいろな価格政策をとっておりますが、そういう価格政策全般について、今は自由な社会であるから、そういったいろいろな制限をするといいますか、かなり需要と供給をいかにバランスさせていくかということを農林省はやっているわけですが、そういうようなことはもう余りやらなくてもいいじゃないかという御意見がありましたことが一つ。それから絹の用途としてはもう和装ぐらいであるから、そういうものについてはもう特別なことをやらなくてもいいのじゃないかというようなお話がございました。  それで、まず第一点の初めのところは、今は自由な経済社会だから、もう余り制限しなくても、価格政策とかそんなことをやらなくてもいいのじゃないかというお話がございましたが、その点については、我々としては、現在、自由な社会経済であるからこそ、いろいろな価格変動とか農業は大変であるということでいろいろな施策をとっているのであるということが一つです。  それから、養蚕についてはもうそんないろいろな保護は要らないじゃないかというお話については、養蚕については、なお中山間あるいは畑作地帯で重要な作目でございますよと。今、日本社会で中山間問題をどうするかというのは非常な重要な問題である中で、やはり養蚕というのをそれなりに育てていかなきゃいけないのじゃないかということと、養蚕は、別に養蚕だけじゃなくて、そのほか製糸業者、織物業者、染め業者、問屋さんとか非常に関係者が多いわけですから、これらの人たちをどういうふうにしていくかということも我々としては重要なことであるというふうにお答えを申し上げておった、こんなことでございます。
  176. 川端達夫

    川端分科員 時間がほとんどなくなりましたから終わりにしますが、今言われたことを今聞いていただけで、後精査をして言えば非常に矛盾するのですね。  くどくなりますけれども、その養蚕農家を保護育成するということの中で、結局、例えば繊維の後の染色であるとか云々ということですが、織物が売れなかったらそんな業界は成り立たないのですね、まずは。結局、先ほど雇用問題のお話をしましたが、所管としてそこを守らなければいけないというのは非常によくわかるけれども、その国際社会の中でいろいろな貿易問題、経済の原則というのは、ほかのところは全部価格問題と言われますが、それで一生懸命農産物の部分からの価格はコントロールしていると言うけれども、できた製品は価格が輸入品とでフリーなわけでしょう。そういう意味で、そのしわ寄せをそこに働く人たち産業にいる人たちに全部かぶるという部分が、果たしてトータル的にいい政策なんだろうか。そして、消費者にとっても、確かに生糸のもともとの値段が製品に行くというふうにおっしゃいましたけれども、それならばなお、消費者の立場でどういうあり方がいいのか。それから中山間対策等々の問題も含めて、養蚕というものが本当に将来どういう絵をかいていけばいいのかというのを、今の、何かを守り、そこの範疇で少し大きくなるというふうな絵だけをおかきになって、結果的にはどんどん下がっていく、生産量なんて毎年五%ずつ下がっているわけでしょう。この議論をして五年ほどして見たらどう言われるのかというのを非常に疑問に思います。  そういう意味で、養蚕、大変難しい問題であることは承知をいたしておりますが、国際社会の中で日本のこの政策がどういうふうにやっていくかということは、いま一度真剣にお考えをいただきたい、御決断をされる時期ではないかということを申し上げて終わりにします。ありがとうございました。
  177. 宮里松正

    ○宮里主査代理 これにて川端達夫君の質疑は終了いたしました。  次に、永井孝信君。
  178. 永井孝信

    永井分科員 非常に短い時間でありますので、問題を端的に絞ってお尋ねいたしたいと思いますので、御答弁の方も要領よくひとつお願いをいたしたいと思うわけでありますが、まず、農水省が進めてきた圃場整備ですね、圃場整備での共同減歩でっくられた農道の目的と機能はどのように定義づけたらいいのか、これをまずお伺いをいたします。
  179. 入澤肇

    ○入澤政府委員 まず、農道の目的と機能でございますが、農業の振興を図るべき地域におきまして、農業生産の近代化、農業生産物等の流通の合理化を図り、あわせて農村の生活環境の改善を図るということを目的とした道路でございます。  その機能は圃場への通作、通うということですね、それから営農資材の搬入などの生産活動に寄与する、それから圃場からの農産物搬出による流通改善に寄与、それから農村の生活道としての利用というふうな多面的な機能を持っております。
  180. 永井孝信

    永井分科員 今お聞きいたしました。そうすると、いわゆるこの圃場整備でつくられた農道は、一般的な交通は基本的に認めることができるのですか。
  181. 入澤肇

    ○入澤政府委員 そもそもはでございますと、まず圃場整備事業等の換地を必要とする土地改良事業の実施地区におきましては、土地改良法五十三条の三第一項第一号の規定によりまして、農道その他の土地改良施設の用に供するための土地を共同減歩によって生み出すことができるというふうになっているわけですね。  そして、このように共同減歩によって生み出された用地においてつくられた土地改良施設を含めまして、一般的に、土地改良施設につきましては、その本来の用途または目的を妨げないのであれば、他の用途にも使用され得るというふうに解釈しております。
  182. 永井孝信

    永井分科員 今の御答弁は、今から私が質問しようとすることにとっては重要な意味を実は持っているわけであります。分科会ですからお許しいただきたいのですが、実は私の地元で農道の使用をめぐって大変な対立が起きているわけです。若干の経緯だけ短く私の方から申し上げたいと思います。  私は、昨年も予算委員会でこの問題について建設省に質問をいたしました。その経過というのは、昭和五十一年に完成した同和対策事業でありましたけれども、いわゆる圃場整備を行ったところがあるのです。この圃場整備をしたときに整備委員会をつくりまして、いわゆる地権者の集まりでありますが、整備委員長という役職がございます。この整備委員長が、持っている自己の農地をある企業に販売をすることを約束いたしました。 そこで、これは市街化調整区域になっているわけでありますが、自己の持っている土地を売るために、整備委員長の名前で公印を使って、自己の売却しようとする土地に面した農道を、共同減歩でつくった農道を、その業者に自由に使ってもらって結構です、よろしいですという許可証を発行したのですね。これがそもそもこの問題の発端であります。  そのことがわかりまして、急遽農地整備委員会が開かれまして、厳格に言いますと、整備委員二十一名中十七名の賛成をもって、その農道の使用は認められない、引き続き地権者総会におきましても、同じように使用禁止の決議を確認することがなされました。したがって、そういう地元の決議に基づいて整備委員長は解任をされたのですね。  いわば総会も開かず、整備委員会も開かず、自分が総会を開いて許可の同意を得たという、公文書になるのでしょうね、これを捏造して、公印を押して、その業者に条件として示した。これがあったものですから、当時そのいきさつを県の土木事務所は承知しておったのですが、書面上は同意書があるということで開発許可を与えてしまったのですね。  そのことは去年私が予算委員会質問いたしまして、これは法の不備であるということから、建設省は都市計画法の改正をしてくれました。だから、この四月一日から施行されますから、これからそんな問題は起きないのですよ。しかし、佐倉宗五郎と一緒で、問題の起きたところは適用されないものですから、この紛争は依然として続いているわけですね。  そこで、この農道の問題についてお尋ねしているわけでありますが、この農道は、農道からまた農道へと経由していかないと、一般の町道には隣接をしていない農道なんです。幅員は四メートル。そして実際に車両の通れる幅員は、簡易舗装でありますが、二メートル、あとの二メートルは路肩ですね。ですから、非常に狭い道路でありますが、そこに、開発許可を受けた業者が生コンの工場を建設いたしました。最近は大々的に営業を始めたものですから、連日のように朝から晩まで、大型ダンプカー、ミキサー車が農道を占拠しているのと一緒ですね。その農道を使わないことには自分の工場の営業活動ができないわけでありますから。  ところがその過程で、この農道の管理の責任はどこにあるのかということで、弁護士も入ったりして双方がいろいろやりました。私からも聞きました。そうすると地元の町長は、この農道は圃場整備委員会が管理を行っています、管理主体として町道認定等による管理を行う計画はございません、という公文書を私のところに回答で持ってきたのですね。だから、その農道を使うかどうかの問題についてはあくまでも実質管理をしている整備委員会がその任に当たるべきだ、こういう公文書で私のところに回答してきたわけであります。  ところが、都市計画法の改正問題が、去年私が提起いたしまして改正がされたのですが、ただ、そのときの質問でいいますと、これは建設省の所管ですが、あえて私は経過として申し上げるのですが、この工場建設を認可するに当たっての道路の使用問題については、開発行為に関係がある公共施設と認定したところは同意が要る、ところが、公共施設として認定していない道路については農道管理者の同意は不要だという建前で、都市計画法三十二条に基づいて許可を与えたというのが県当局の見解なんですね。法律の運用上からいけばこれは間違っていないと思うのでありますが、だから実態的なことが実は問題になってくるわけであります。  なお、開発をしている側の事業主は、この道路の問題についてこう言っています。これも公文書で、裁判に持ち出した資料でありますが、その資料を見ますと、地元と協定が成立しなくても、農道の使用ですね、成立しなくても、これは町道であるから何人といえどもこの農道の使用を阻害することはできないという見解を公文書で裁判所に提出をしているわけです。ところが町長は、これは町道ではありません、将来とも町道として認定する気持ちはありませんということを言っているし、現に整備委員会が管理をしている。  こういう農道が、今構造改善局長答弁されたように、農道の設置目的、しかも共同減歩でつくったという設置目的からして、果たしてこういうことが許されていいのかどうか。これをひとつ端的にお答えいただきたいと思います。     〔宮里主査代理退席、小杉主査代理着席〕
  183. 入澤肇

    ○入澤政府委員 今先生指摘の地区の農道の使用につきましては、御指摘のような事態が生じていることは私どもも承知しております。  ただ、これにつきましては事業者の方から誓約書が出ておりまして、例えば最高速度は三十キロ以下とするとか、農業機械等の運行を優先するように配慮しなければいけないとかというふうなことで誓約書を出しております。町としても、農道の本来的な機能を維持するということについては当然認識しておりまして、特に農繁期には事業者に誓約事項の遵守の徹底を強く求めているというふうに聞いております。  私ども、この話を聞きまして、やはりきちんとした換地処分が行われて農道の管理者が特定されるということが最優先でございますけれども、そのためにいろいろな手続を踏まなくてはいけない。現在滞っている拠地処分を早急に実施して、当該農道の管理主体を明確にして、その管理者による適切な管理が行われるように、県等を通じまして指導をしていくということでございます。
  184. 永井孝信

    永井分科員 確かに経過の中で、業者が、農道を使用する場合には速度の制限をすべきだとか、あるいはカーブミラーを設置すべきだとか、道路が傷んだときはそれを補修せよとか、これは町長の方から業者に要望をしたと私に対する回答書類の中で言っているのですよ。  どう言っているかというと、この農道を使用するについては圃場整備委員会の同意のみが対象であります、町は関係ありませんと。整備委員会が持っているのですからね。しかし、換地処分後の管理主体がどこになろうとも、申請者の原因で道路が破損した場合はこのように直しなさいよということを町当局としては要望しています。これは当然のことですね。同意するかしないかは別にして、農道を使用して傷めたら、傷めた者が直すのは当たり前。  しかし、私はそのことを問題にしているのではなくて、冒頭に聞いたように、圃場整備によってつくられた、共同減歩でつくられた農道の使用目的、これは、今言ったように農業振興のためであって、いわば一般のトラックがどんどん通っていいよという前提でつくられたものではないはずですから、たとえどのようにこの業者が弁明しようとも、現実に三百六十五日営業しているわけですから、これが農作業に悪影響を与えないわけがないのであって、そうすると、本来の農道をつくるという目的から、法律上はどうあろうとも、現実はこれはもう逸脱しているのではないのか。これについて農水省としてはただ都市計画法上の問題だということで手をこまねいておっていいのかどうなのか、そこらのところを聞きたいのですよ。
  185. 入澤肇

    ○入澤政府委員 繰り返しになりますけれども、確かに社町久米地区の農道は換地処分が滞っているために敷地に係る権利関係が確定していない、そのために管理者が必ずしも明確でないということでございますが、このような状況にある農道であっても、本地区における換地処分が行われ、事業が完全に完了するまでは、終了する段階までは、事業主体である社町が施行管理の責任を負っておりますので、地元の関係農家が本件農道の農業上の利用を確保するために必要な措置をとるべきだということであれば、まず社町に対して要請を行うことが適当ではないかと考えます。私どもは、県等を通じて、社町との間でそのような農業上の利用を確保するということで適切な措置がとられるように指導してまいりたいと考えております。
  186. 永井孝信

    永井分科員 委員会ですから、ここで言い争うつもりはないのですけれども、町当局や県当局に、この種の問題は、もうそれは使用禁止の仮処分申請も含めて法廷闘争もしました。あるいは異議申請を県に出してこれがうまくいかなかったから、今建設大臣に再審請求をして作業をしてもらっている。そういうことは町の議会でも、ここに議事録随分ありますけれども、ずっと提起してきているのですよ。提起してきているけれども、もう町長ではどうにもならぬ問題になってしまったわけです。  町長がいいとか悪いとかの問題ではないのですね。現実にもうどうにもならない問題になって、一時は農家の方が農道の入り口にバリケードを築いたのです。そうしたら、地元の警察にすればそんなことから傷害事件が起きたら大変だというので、警察は何とか円満にということで撤去せいという話があって、農家の方は撤去した。撤去したらダンプが入ってきて、工事が始まった。工場ができた。ミキサー車やダンプカーがどんどん毎日朝から晩まで出入りする。これは全面的に農家の皆さんだけが被害を受けるわけでしょう。業者の方は痛いこともかゆいこともないわけです。どんどん一方的に使えばいいのだから、営業活動はどんどん進んでいるわけですから。そうすると、せっかくの圃場整備をしても、農家の方の農業振興ということについてはもう一〇〇%阻害されておると事柄的には言っていいと思うのです。  私は、これを都市計画法上の問題としてではなくて、農業を振興する立場に立っている農水省としては一体手をこまねいていていいのかということを聞いているわけですよ。もう町長の問題ではないの。農水省はどう乗り出すかという問題ですよ。どうですか。
  187. 入澤肇

    ○入澤政府委員 先ほど来の御質問に対しましては、私どもは県等を通じて事情を聴取して、そしてきちんと指導するようにと言っているのですけれども、一般的に、農道の上の交通規制というのは道路交通法で公安委員会に属するわけでございまして、構造改善局長名で五十八年の十二月二十六日付で「農業用道路の新設・改築に係る都道府県公安委員会との協議調整について」という通達を出しておりまして、事業主体が関係公安委員会に対して、農道の交通規制等に当たって、農道が主として農作業の用に供される道路であること等の特殊性を有することに配慮して規制を行ってほしいというふうなことを申し入れたわけでございます。その申し入れているということを通達で関係都道府県に出しまして、協議をするようにというふうに言っているわけでございまして、ここはやはり関係機関が集まって具体的な交通の実態ということを十分調べて、きょうの先生の御質問なんかも参考にしながら、よく実態を踏まえた上で指導することが必要ではないかと思います。
  188. 永井孝信

    永井分科員 短い時間ですから、もっといろいろなことを言いたいのですが、なかなかうまく言えないのですけれども、例えば今問題にしている農道ですね。いわゆる公文書の偽造によって許可を与えたというその農道が、直接幅員の広い県道であるとか町道であるとかに隣接していないのですよ。その農道の部分を通ってさらに次の農道を通らないと町道に行かないのですね。そうすると、これは開発関係になってくるのですが、公共施設を使う場合は同意を必要とする、こうなるわけです。  だから、その農道から隣接する町道について、じゃあそこは町長が同意を与えたのかということを、これまた照会をしたわけですね。そうすると町長は公文書でこう答えています。その地区、今の問題の地区の、本来公共施設として町が管理している町道、農道じゃなく隣接する町道ですね。この町道については、都市計画法による開発行為許可申請に関して都市計画法三十二条に基づく公共施設の管理者としての同意を与えた事実は一切ありませんと。  そこの町道は町長は許可を与えていないのですよ。与えていないけれども、その町道をどんどん通らないとダンプカー、ミキサー車が通れない。簡単に言うと、大きな道路があって、そこに農道があって、すぐそこに工場が建っておるのじゃなくて、その大きな町道から入り組んで入り組んで、その田んぼの真ん中に工場が建っておるわけです。そうすると、その農道だけが問題ではなくて、既に町道として認定している公共施設についても当然開発許可の対象にならなければいかぬのだけれども、町長はそれに許可を与えた事実は一切ありませんと答えている。だから、ある意味でいうと町長だって腹が立っておるかもしれぬ。町長だって、何でそんなことで町議会でがたがたやらなければいかぬといって腹立っているかもわからぬ。しかし、現実はそういう問題ですから。  今そういう通達が出ておるということだけれども、それなら、わずか幅員二メートルの簡易舗装の道路を、だれが常識で考えたって、大型のダンプカーやミキサー車がどんどん通ることはあっていいはずがない。あっていいはずもないものを、そのようにきちっと対応するのが行政の責任だと私は思うのですよ。法律はどう決められておろうとも、法律を運用するのはこれは組織ですから、そうすると、行政という組織が農民の立場に立って対応するのは当たり前でしょうが。このことをまず一つ。  もう一つ。その換地の問題が最前から出ています。この換地の問題についてもいろいろ経過を調べてみました。そうすると、日本道路公団の用地を抱え込んで圃場整備がされたとか、一部山林まで抱え込んで圃場整備がされておったとか、そういう問題の、極端に言えば後始末をするために近畿財務局との間の交渉が長引いたとか、あるいは山林の地権者との間の交渉が長引いたとか、いろいろな理由があったそうでありますが、これはもう現時点では全部完了しているのです。解決しているのです。  解決しておっても、なおかつこれから換地事務を完了するのに一体どれくらいの期間がかかるのか。あるいは、圃場整備をする段階で、道路公団の用地まであるいは廃川の河川敷まで取り込んでの圃場整備であったとすると、なぜ所管の建設省などと事前にそういうことの合意がなされないままにそういう圃場整備がなされたのか。これは行政のミスでしょう。直接農水省本省のミスだとは言いませんけれども、行政のミスでしょう。その結果、完成したのが昭和五十一年、現在までの間になおかつ本換地が一切できないというのは、これは行政の怠慢と言われてもしようがないでしょう。  しかも、その行政の怠慢で換地事務ができなかったために、なおかつ、問題になっているその農道の管理責任者の所在が法的には明確でない。こういうことになってくると、ここでもまた、農道をつくり出した農家の方だけが行政のミスを全部背負い込むことになってくる。これは果たしてこのままでいいのか。もう一回言いますが、現状においてその換地事務は一体いつになったら完了するのか、どの程度の見込みなのか、それも含めてひとつお答えいただきたいと思います。
  189. 入澤肇

    ○入澤政府委員 この地区は、今先生指摘のとおり、昭和五十四年度にすべての工事が完了しているにもかかわらずいまだに換地処分が行われていないという現状にあるわけでございます。いろいろと理由を今先生も御指摘になりましたけれども、我々が聞いているところによりますと、隣接する中国縦貫自動車道路の敷地との間に境界が不明なところが多数あり、境界確定に手間取っている、それから、従前の土地の地積を再確認してほしいという地元農家の意見もあって、現在地元の圃場整備委員会の中で協議中であるというふうに聞いております。換地計画の作成前に確定をしなければならない事項につきまして、いまだに処理ができないという事情にあると聞いておりまして、非常に遺憾に思います。  一般的には、換地というのは土地改良事業の工事が完了した年度の翌年度までに終えるということを原則としておりまして、遅くとも工事完了の翌々年度までには換地処分を行うように通達等で 指導しておるところでございまして、本件はそれにある意味では逸脱しているというところでございます。これは事業主体が町でございますから、可能な限り町当局を督励するということにしていきたいと思います。
  190. 永井孝信

    永井分科員 御承知のように、この圃場整備には、国営もあれば県営もある、団体営もある。私が今問題にしているのは同和対策事業で、だから町が事業主体者となってやってきたわけですね。これは、国営であろうと県営であろうと団体営であろうと同和対策事業であろうと、圃場整備という目的は同じなんですね。圃場整備をする目的は、冒頭に聞いたように同じなんですね。そうすると、目的は同じなのに、例えば国が直接関与する国営事業、あるいは自治体として県が関与する県営事業、これらが比較的スムーズにいって、町が工事の主体者になったこの同和対策事業が、いろいろな障害があるという前提があったにいたしましても、おくれるということは、これは私は不公平じゃないかと思うのですね。  今、五十四年の完成と言われましたけれども、五十一年に完成をして、当初の計画でうまくいかないことが判明した。アフターケア的な工事を終わったのが五十四年なんです。これも、当初の計画にずさんさがあったということです。ずさんさがあったから、五十一年に一たん完了しながら五十四年までかかった。それで、五十四年にすべてが完了して、ところがそこで廃川敷の問題だとか日本道路公団の土地の問題なんかが出てきておくれた、こう言っているわけです。こんなものは初めからわかっている話だから。だから、何回も言うようだけれども、これはやはり行政の側の、極端に言えばミスにつながることではないのか。そのことから結果的に農民たちがしわ寄せを受けるということは、これはあってはならないこと。  あるいは、昨年の十一月二十七日付でありますが、農林水産省あてに「同和対策農業基盤整備事業推進のお願い」ということで文書が出ているはずです。これは受け取っていらっしゃいますか。農林水産省あてに出ています、文書が。中身は、今の問題でありますが、事業主体たる町当局の議会答弁によればということで、いろいろな問題点があった、しかしそれはすべて解決済みのことでありますから事務停滞の理由に当たりません、したがって、迅速に換地事務が進行するよう御助力をいただきたいという文書が出ている。私の手元には写しがあります。行っていませんか、これは。  だから、地元の人たち国民の立場から国に対してこういう要望もしているわけでありますから、なおさら私はこの換地事務は速やかにやってもらいたい。むしろ私は、言いかえれば、同和対策事業だから差別意識があるのじゃないかとさえ思うのですよ。同和対策事業の方がおくれて一般地区が早く換地が進んでいるということになると、そう勘ぐらざるを得なくなってくる。私はそうではないと思います、ないと思いますが、そうあってはならぬので、なおさらこういう地元の、こういうややこしい、関西弁で申しわけないけれども、ややこしい事柄については、もっと明確に解決するような手段をとってもらいたいと思うのです。  こう言ったら、もう時間がなくなってきました。いいですね。ちょっと一言だけお答えいただきましょうか。
  191. 入澤肇

    ○入澤政府委員 同和対策だから差別意識があるなんということは一切ございません。したがいまして、この事業は、繰り返しますけれども、町営の事業でございますので、町当局によく事情を聞いて、きちんと処理するようにというふうに督励をしていきたいと思っております。
  192. 永井孝信

    永井分科員 町営事業であるのにこの国会の場でこの問題を取り上げるというのは、実は遅疑逡巡したのです。昨年の予算委員会質問したときは、これは都市計画法に不備がある、だから都市計画法を改正すべきだということで私は去年取り上げたのですが、きょうはこの法律の改正を求めておるわけではないから遅疑逡巡するところもあったのだけれども、しかし、町営事業であったとしても、現実に農業振興という目的からするとこれは逸脱をしている。だから、私はここで農水省にぜひひとつ積極的な対応をお願いしたいと思ったのであります。  大臣、最後にお答えいただきたいと思いますが、繰り返して恐縮でありますけれども、本来の目的が阻害されて深刻な地域の問題となっているこの今私が提起している問題ですね、これは、農業振興のための農業生産基盤であることを踏まえて、農水大臣としては毅然たる態度でこの処理ができるようにしてもらえないか。ひとつ大臣、お答えいただけますか。     〔小杉主査代理退席、宮里主査代理着席〕
  193. 田名部匡省

    田名部国務大臣 お話を伺っておって、何か非常にこの問題がこじれておるんだなという感じを受けました。  農道は、今局長からどういう目的かという話がありましたが、何といってもやはり農家が農業振興のために利用するというのは建前であります。しばしば、私の方でもそうでありますが、どうもそういうところをほかの車が、便利で早いものですから利用するということはあっても、基本的にはやはり農業振興のためにつくったものであるということは間違いないと思うのです。  ただ、私は地理が不案内でありますから、田んぼの中にどうしてこういう工場が建つことになったのかな、あるいはそのときになぜ問題にならなかったのかなという気持ちが一つはあります。しかしそうはいっても、できてしまった工場というものを、これは地元のまた雇用でもあり産業でもある、うまく生かして双方が了解を得るようなやり方というものはないのかなという感じを実は受けて伺っておりました。道路がどのぐらい長いのかわかりませんが、別な道路をつくる余地があるとかないとか、いろいろ私は状況がわからないものですからこういうことを申し上げておるのですが。  いずれにしても、私どもとしては農家の立場に立って、この農道の持つ農業振興上の本来的な機能が十分発揮されるように、県等を通じて指導に努めてまいりたい、こう考えております。
  194. 永井孝信

    永井分科員 これで終わりますが、大臣、農道でも、便利がいいから乗用車が朝、通勤のときに通ろうか、そういう条件のところではないのですね。だから一般の自動車は一台も通らないのです。全く通らない農業地帯の中で農道をつくったわけですから。そこに工場がぽつんとできて、そのときから大反対運動が起きたけれども、開発許可を受けたということで、それは都市計画法の不備があったのだけれども、開発許可を受けたということでどんどん工場が建ってしまって、紛争が起きたままで建ってしまって、それで営業が始まってどんどん今営業が本格的に動いておる。  ところが、生コン工場ですから、地元の雇用なんてないのですよ。そこで働く人はわずかですから、ないのですね。しかも、その業者は地元の業者ではなくて尼崎の方から、遠いところから進出してきた業者ですから、全く地元とはつながりがないという企業ですね。そういう農道に今言ったように農業の振興目的から外れたそういう利用の仕方でどんどん工場のためのダンプカーやミキサー車が通る。これは地元の農民にしてみたらもう言いようのない、持っていきようのない怒りを持つのですよ。だから今でもずっとその工場とは対立していますね。  こんな状態をいつまでも放置できませんから、まず申し上げたように換地事務を早いことやって、その財産権を明確にすること。そして管理主体が明確になったら、改めてその問題の解決の方法が出てくるかもわからない。しかし、少なくとも農業目的に逸脱するようなことのないように、そういう立場に立って農水大臣としてもひとつ強く指導してもらいたい。これは町の責任だと私は言いません。町営だろうとどこだって一緒ですから、農業振興の目的のためには。そういう立場でひとつ大臣御協力いただきたい。よろしいですか。いいですか。  それなら、これで終わります。
  195. 宮里松正

    ○宮里主査代理 これにて永井孝信君の質疑は終了いたしました。  次に、木島日出夫君。  時間が限られておりますので、持ち時間は厳守していただきたいと思います。
  196. 木島日出夫

    ○木島分科員 私の地元は長野県であります。田名部農水大臣の地元は青森県でありまして、両県に共通する大変重要な農産物にリンゴがあります。  そこで、最初に私は、ニュージーランド産リンゴ生果実の輸入解禁の問題についてお伺いをしたいと思います。  リンゴ生果実につきましては、一九七一年、昭和四十六年に輸入自由化措置がとられておりますけれども、植物防疫法によって、我が国において未発生の大害虫コドリンガの発生国からの輸入は禁じられてまいったわけであります。最近、政府、農水省は、輸入禁止対象国の一つでありますニュージーランドにおきましてコドリンガの完全殺虫技術が開発されたこと、また、我が国において未発生の、これまた重要な病害虫であります火傷病についても完全防除技術が開発されたとして、近々植物防疫法で規定する公聴会を開催して、本年中にも輸入解禁の措置をとろうとしていると聞き及んでおりますが、そのとおりでしょうか。農水大臣は公聴会をいつ開催しようと考えておるのか、まずお聞きをしたいと思います。
  197. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 ニュージーランド産のリンゴの輸入解禁につきましては、先生が今お話しになったような制度になっておるわけでございますが、我が国へニュージーランドの方から解禁を求めてまいりまして、具体的な作業といいますか、そういうのが始まりましたのが一九八七年ころからでございまして、向こう側のその消毒技術につきまして逐次いろいろなデータを出してきたわけでございます。我々といたしましては、そうしたデータを検討いたしまして、またさらに、昨年暮れでございますが、二回にわたりまして現地調査をやったところでございます。  そうした結果から、ニュージーランドで開発した殺虫技術は、まずコドリンガにつきまして、我が国への侵入を防止する上で問題はないというふうに確認をしたところでございます。さらにまた、火傷病につきましても、ただいまお話しのように未発生なものでございますが、これの侵入を防止するためにも十分な検疫措置を開発したというふうに確認をしたところでございます。  したがいまして、我々といたしましては、いつ公聴会を開催するかということをはっきり決めておりませんが、いずれにいたしましても、近々公聴会を開催したいということで準備を進めているところでございます。
  198. 木島日出夫

    ○木島分科員 もうちょっと具体的に、いつごろ公聴会をお開きになろうと考えているのか答えていただけませんか。
  199. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 諸手続がありますので、いつというふうにはっきり申し上げられませんが、三月下旬ごろを予定いたしまして今準備を進めているということでございます。
  200. 木島日出夫

    ○木島分科員 植物防疫法によりますと、利害関係人や学識経験者の意見を聞かなければならないと規定されておりますが、農水省としては、事前にこの問題について公述人を具体的に指名する予定があるんでしょうか。
  201. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 植物防疫法第七条四項で公聴会では利害関係人あるいは学識経験者の意見を聞かなければいけないというふうになっておりますので、我々といたしましては、公聴会において技術的なデータの方をこちらから御説明し、その後、公述の申請があらかじめございますので、その人たちから御意見を承るということにする予定にしております。
  202. 木島日出夫

    ○木島分科員 その申し出は具体的に名前が挙がっているんでしょうか。
  203. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 公聴会をいつ開くかということにつきましては、官報に告示をして明らかにするわけでございますが、まだその手続をしておりませんので、まだ具体的な人も、そういう申請はございません。
  204. 木島日出夫

    ○木島分科員 もう農水省は御案内のことかと思いますけれども、まず害虫コドリンガでありますが、これはリンゴやナシ、マルメロ、桃、スモモ、アンズ、サクランボなどバラ科の果実の世界的な大害虫であります。その卵は果実の表面や果実に近い葉面に産卵されまして、ふ化した幼虫が果案内に侵入して加害すると言われているわけでありますね。  ニュージーランドではこの殺虫技術として、一つには臭化メチル薫蒸、一立米当たり二十四グラム、これを二時間さらす。十二度C以上の気温でさらす。収容比四〇%以下の室内でさらす。そして二つ目に、低温処理として、果実温度が〇・五度C以下、これを二十五日以上にわたってさらす。これによってコドリンガの完全殺虫ができたとの実験データが日本政府、農水省に提出されたと言われておるようであります。  しかし、日本のリンゴ生産者あるいは生産者団体に対してはいまだにこのデータが全く開示されていないわけであります。今御答弁にありますように、コドリンガについてはこの技術の開発によって問題ないと確認をしたと農水省はおっしゃっておりますけれども、非常に大きな不安をリンゴ生産者、生産者団体は抱いているわけであります。生産者に対して、一番の利害関係人でありますから、ニュージーランドから農水省に持ち込まれたデータをきちっと示して、生産者自身がその内容についてきちんと検証する機会が与えられて、その上で生産者が利害関係人として公聴会において的確な意見を述べることがまことに大事ではないか。データも与えないで的確な意見など述べようがないわけであります。生産者団体から要望が既に出されておりますように、早急にこのデータを開示すべきであると考えますが、農水省、いかがでしょう。
  205. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 我々、農家の皆さん方に信頼をしていただくといいますか、変に不信感を持っていただいてはいけないということで、早い段階からリンゴ生産県の関係者に説明をしているところでございます。それで、やはり簡単な説明だけではいけないということで、より詳細な説明につきましては、現地からの要望もございましたので、当省担当官を派遣いたしまして、関係者に対し技術的な説明を行って理解を得るように努めたところでございます。  それで、今お話のありましたデータでございますが、これはかなり膨大なものでございますので、我々も、今先生おっしゃったように、生産者の団体の方からもそのデータをひとつ見せてくださいというようなお話もございました。したがいまして、関係県にそのデータを提供いたしまして、生産者からデータに関する具体的な照会があった場合にはひとつ対応できるようにというふうに措置しているところでございます。
  206. 木島日出夫

    ○木島分科員 私も調べてみましたが、長野県当局そして青森県当局に厚さ一センチくらいの英文のデータが渡されたようであります。しかし、今御答弁のように、データそのものはもっと膨大なものだと言われているわけであります。一部しか渡っていない。しかも、問題は、長野県当局の担当者も青森県当局の担当者も、このデータは生産者そのものには秘匿しろ、秘匿しなきゃならぬと受けとめて生産者団体に見せていないのですよ。だから、一番の利害関係人である生産者団体が知らされていない。一たびこの病気が日本に上陸したら壊滅的な打撃を与える。後で質問しますが、火傷病と同じであります。猛威を振るうことが懸念されるわけであります。なぜ生産者団体に開示しないのですか。
  207. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 我々の方といたしましては、専門的な問題でございますので、したがって、県の試験場にそのデータを差し上げて、いつでも開示できるようなそういう状態にしているつもりでございます。
  208. 木島日出夫

    ○木島分科員 そうすると、今長野県や青森県当局にあるその英文データは、各県は生産者団体に 開示してもいいわけですね。
  209. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 我々の方としては、別に隠し立てすることはございませんので開示する用意はありますし、それから今おっしゃったように、何かわからないことがあれば本省の方でも対応できるようにいたしたいと思っております。
  210. 木島日出夫

    ○木島分科員 じゃ、少なくとも長野、青森両県にあるデータは生産者ないし生産者団体に開示してもよろしいというお墨つきが農水省からも正式に得られたと受けとめます。  もっと膨大なデータを皆さんは持っておられるわけだから、一番必死なのは生産者そのものなんですから、これを全部明らかにして、生産者自身がみずから信ずる科学者なり大学教授などにそのデータを渡す、あるいはみずからこのデータの信頼性、それを検証するような余裕、期間を与えて、その上でこれは公聴会というものをやるべきではないか。私は科学的なことはよくわかりませんが、日本にいない病害虫であります。それだけに、この検証をやるには、場合によってはニュージーランドに行かなきゃいかぬだろうと思いますし、発生等の関係がありますから最低でも一年は期間がなきゃいかぬと思うわけでありますが、それをやっていただけませんか。それまで公聴会というものの開催をとめていただけませんか。これは非常に重要な問題でありますから、農水大臣のそういう決断を求めたいと思います。
  211. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 我々は、去年の六月ごろからいろいろと生産者団体、関係者皆さん方にもそれなりに御説明をしてまいりましたし、技術的なことに関しましてもいろいろと説明してきたところでございます。したがいまして、今我々の考えでは、ニュージーランドが示してきました消毒技術については問題ないものというふうに確認をしておりますので、先ほど申しました三月下旬を予定して準備を進めたいと思っております。
  212. 木島日出夫

    ○木島分科員 今日に至るまで、直接の利害関係者である農民、生産者、その団体にデータも示さない。口では説明しております、しかし、肝心のデータを秘匿して、そして今月下旬に公聴会をやるが、意見を言え、そんな話はないと思うのですね。  厚生省をお呼びしております。  臭化メチル薫蒸によって殺虫をするとのことであります。これでやりますと、残留するものは臭素だとお聞きしておりますが、食品衛生上、臭素の残留基準はどのようなものか、そのチェック体制はどんなようになっているか、臭素の毒性はどんなものか、簡潔で結構であります、御答弁願います。
  213. 牧野利孝

    ○牧野説明員 厚生省におきましては、農産物の安全性を確保するために、農産物中農薬の許容基準、残留基準でございますけれども、この基準を設定しております。この残留基準といたしまして、リンゴにつきましては、国産品、輸入品を問わず、臭化メチル薫蒸をした結果としてリンゴに残留いたします臭素に対しまして、二〇ppmの基準値が設定されております。この基準値を超える臭素の残留が明らかになった場合には、当然ながら流通は禁止されることになります。  また、そのチェック体制でございますけれども、ただいま御質問されてございますニュージーランド産のリンゴのように、今回の場合でございますけれども、こういったように新たに輸入される品目につきましては、通関の時点で残留基準に適合しているか否かについて確認することになるわけでございます。
  214. 木島日出夫

    ○木島分科員 時間の関係上急ぎますけれども、次に火傷病についてでありますが、これはリンゴ、ナシ、スモモなどにも発生する、これまた我が国未発生の大変重大な病害虫菌であります。過去にアメリカ、ニュージーランド、イギリス、オランダなどでリンゴやナシ、サンザシなどの花木類に壊滅的な打撃を与えた、そのような病原菌であります。  お聞きするところによりますと、ニュージーランドで開発された防除技術によりますと、次亜塩素酸ソーダ一〇〇ppmにして、これを一分間浸漬する、浸らせる、そして輸出果実の表面を殺菌して、この病原菌を防除をすると言われているわけでありますが、これはもうコドリンガと同様に、その試験データがいまだに生産者やその団体に開示されていない。これも先ほど質問したとおりであります。生産者が欲しいと言ったらすぐ開示していただきたいと思うわけであります。  ニュージーランドの隣国であるオーストラリアでは、この火傷病の発生を恐れてニュージーランド産のリンゴ生果実の輸入は禁止しているとお聞きをしておりますが、それは事実でしょうか。
  215. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 この火傷病でどうかということは別にいたしまして、いずれにしろ、植物防疫上の理由で、現在のところ日本と同じように輸入禁止になっております。
  216. 木島日出夫

    ○木島分科員 伝え聞くところによりますと、オーストラリアでは、あくまでも火傷病のオーストラリア国内での発生を防ぐという立場から引き続いて断固としてこれは禁止する、輸入禁止の措置をとり続けると言われているようであります。隣国のオーストラリアでそれを恐れて、オーストラリアのリンゴ生産農家を守るという立場からそういう措置がとられようとしているのにですよ、なぜこの我が国で、まだリンゴ生産農家からの理解もない段階で輸入を解禁しなくてはならぬのでしょうか。
  217. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 このリンゴにつきましては、先ほどお話がございましたように、四十六年に輸入の自由化をされているわけでございまして、こういうものにつきましては、植物防疫法上問題がないということが確認された場合には、それを輸入禁止するということはできないわけでございます。  ニュージーランドにつきましては、先ほど申し上げましたように、一九八七年からいろいろとそういう技術的な問題について詰めてまいりまして、我々としてはこういった技術、先ほど先生からお話がございましたような防除処置をとれば問題はないというふうに確認をいたしまして、今回解禁の方向で準備をしているということでございます。
  218. 木島日出夫

    ○木島分科員 ニュージーランドで開発された火傷病病原菌防除技術に使われると思われる消毒剤、次亜塩素酸ソーダ一〇〇ppm、非常に高濃度だと思うわけです。  厚生省に再びお伺いしますが、横浜市の衛生研究所の実験報告によりますと、粉砕したモヤシやゴボウを次亜塩素酸ソーダで消毒したところ、発がん性のあるクロロホルムが生成していた、そういう実験データが得られたと私は聞いておるのですが、そういう事実はあったのでしょうか、御報告願います。
  219. 牧野利孝

    ○牧野説明員 市販のモヤシやカット野菜につきまして横浜市の衛生研究所におきまして分析したところ、クロロホルムが検出されたという報告例は承知しております。この報告によりますと、検出されましたクロロホルムの発生メカニズムはなお不明でございますが、野菜に使用されました次亜塩素酸ナトリウムが関与しているのではないかと推測してございます。
  220. 木島日出夫

    ○木島分科員 ありがとうございました。  大臣、改めて大臣のお考えを聞きたいと思うのですが、今ずっと明らかにしてきましたように、コドリンガにしろ火傷病にしろ、我が国未発生、大変な害虫であります。今、農水省の御答弁にありますように、農水省としては、その完全防除技術を確認したと一生懸命おっしゃっておりますけれども、データそのものが国民にも生産者団体にも今のところ知らされていない。非常な不安が実は長野県の農民にもありますし、農水大臣の地元である青森県のリンゴ生産者の皆さんはもっと強い不安を持っているわけでありますね。これは一たび入ってきたらもう大変だということであります。  それで、きょうは時間がありませんから、その問題を質問できませんが、ニュージーランドでこの駆除のために使われている農薬の残留の問題、ポストハーベストですね。収穫した後、臭化メチ ルにしろ次亜塩素酸ソーダにしろ、ポストハーベストで残留農薬がついて、それが日本に入ってくる。その日本の食品安全の上での問題、大きな問題がある問題なのですね。国民、農民に全然情報を知らせないまま公聴会を開くことだけはちょっととめてほしい。公聴会がもう開かれてしまうと、植物防疫法上はすぐ輸入解禁の措置がとれるようになるわけです。規則改正ができるわけであります。しかもこれは省令ですよ。農水省だけで規則改正できて、この夏にもリンゴが入ってくることが可能になるわけであります。そういう重大な問題であります。ぜひデータを開示して、それに対して十分得心のいくような確認、検証の措置が生産者においてとられるまで公聴会を開くのをストップしていただきたい。重ねてお願いをいたしますが、農水大臣の御意見を。
  221. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私のところでも随分会合を開いておりまして、陳情にも再三おいでいただきましたが、専門的な分野でありまして、私もこの問題については自分の知識で安全か危険かというのは判断はつきにくい。専門家の皆さんに十分議論してもらう。問題があるとすれば、これは輸入するわけにはいきませんから、そういうことであろうと思っております。  ただ、この前も地元の人たちに申し上げましたけれども、問題がないとすれば、いろいろありましても、世界各国からたくさんの果物というものはもう既に入っておるわけでありまして、それらも一々やはり検査をして安全であるという確認のもとに既にもう入っておる。ただ地元が反対しておるからということで、それを私が輸入禁止をするというわけにはまいりません。貿易問題全部、そういうことであれば、だれも輸入して影響を受けない人はいないのであって、それ全部輸入を禁止していくことはできるかどうかという問題に立ってみると、安全であれば、これは受けざるを得ないということを回答いたしました。  こういうことで、入ってきたとすればこういうことをきちっと対応してほしいという条件を持って二度目に参りましたので、そのことは十分検討して万遺漏ないようにやっていきたいということを申し上げて、賛否両論ありますけれども、しかし今申し上げたように、どこから見ても、専門家も公聴会に参加して問題がないということであれば、それはそれなりの措置をとっていかなければならぬというふうに考えております。
  222. 木島日出夫

    ○木島分科員 問題があれば輸入されないとおっしゃいましたが、問題があるかどうかわからないから農民は不安に思っているわけで、その不安を解消するためにはデータ公開、そして十分にその検証の機会を、農民自身が検証する機会を与えてもらいたいという提起をしているわけであります。  時間がないので急ぎますが、現在、植物防疫法によって輸入禁止措置がとられている国で、我が国に対して輸入解禁の要請をしている国は今言ったニュージーランド以外にあるのでしょうか。リンゴ生産国であるアメリカ、フランス、カナダ、オーストラリアからはこういう輸入解禁の要請は来ているのでしょうか。
  223. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 現在承知しているところでは、アメリカとか豪州、カナダ、そういったようなところから来ております。
  224. 木島日出夫

    ○木島分科員 そういう要請に対してはどういう対応をとられるつもりなのですか。
  225. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 これはそれぞれの国と、どういうような病害虫がいるかというのは、またそれぞれの国によって違うこともあるわけですが、それぞれの国とどんなふうな消毒技術を開発していくかということで技術的な詰めをやって決めていくということにしております。
  226. 木島日出夫

    ○木島分科員 ニュージーランドからのリンゴ生果実の輸入解禁の措置が一度とられてしまいますと、今後の輸入拡大については全く歯どめがきかなくなるわけですね、法律上も。  田辺良則弘前大名誉教授は、もし我が国に入ってきた場合の東京市場への上場価格を試算して、十キロ当たり二千二百五十円程度と言っておるわけであります。昨年の我が国の市場の平均価格が十キロ三千五百四十円だったわけでありますから、これはリンゴの生産農家にとって極めて重大な脅威になると思うわけであります。一口に、我が国リンゴ生産量約百万トン、青森県が半分の五十万トン、私の長野がそのまた半分の約二十三、四万トンであります。リンゴ輸入解禁はこういうリンゴ主産地の経済、農家経済に大きな打撃を与えることになる、そんなことをしっかり見ていただいて、私のきょうの要望を受けとめていただきたいと思うわけであります。  次の問題にちょっと移らせていただきますが、今度は小梅の問題であります。  私の長野県の飯田、下伊那地方、上伊那地方は全国有数の小梅の生産地なのです。竜峡小梅と名づけられた地域の特産品でありまして、かつての桑園からの転作あるいは中山間地域の休耕田の転作作物として非常に大きな役割を果たしてきた。中山間地の保全の上でも大きな役割を果たしてきた。  ところが現在、加工用小梅価格が極めて低い水準にある。生産者に深刻な打撃を与えているわけであります。例えば、生産者から漬物業者に納入される価格は、一等級のものでも、平成元年キロ当たり五百五円だったのが平成二年三百七十円、平成三年百七十円、平成四年になりますと百四十四円という状況であります。キロ当たり三百円ないと生産費も賄えない、三百五十円ないと所得保証もないという試算もあるわけであります。農家が生産意欲を喪失してしまって、梅の剪定、消毒など二年も放置しますと、梅の木はもうだめになってしまうと言われているわけであります。  一九九二年、昨年の我が国の梅の生産総量は、小梅、中梅合わせて約八万一千九百トンと言われているわけでありますが、台湾からの輸入が約一万九千トン、中国から七千トンもあるわけです。こうしたことも全体として小梅価格の低迷に大きな影響を与えていると思うわけであります。  そこで、これは農水省にお願いなのですが、小梅の価格を安定させて生産意欲を向上させ生産振興を図ることは、中山間地域農業経済地域経済、国土保全の上からも非常に重要だと思うのです。こういう課題を踏まえて、農水省としてどう梅の振興をとっていただけるのか、時間がありませんので簡潔で結構でありますが、答えていただきたい。
  227. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 小梅につきましては、ただいまお話がございましたように、梅が地域特産果樹というようなことで、中山間、そういったところで重要な位置を占めております。最近、確かに需要が伸びてまいりまして、全国的にも若干ふえぎみという感じでございます。  ただいま何か価格対策といいますか、価格支持政策というようなこともございましたが、我々としては、こういったものについて価格支持政策をとるということはなかなか難しいことだと思っておりまして、やはり何と申しましても、需要の動向に留意した生産それから流通対策をどうしていくかということが重要ではないかというふうに思っておりまして、現在、先進的農業生産総合推進対策という事業を展開しておりますが、その中で、地域の自然条件を生かしました生産条件整備、それから付加価値を高めるための加工施設の導入、特に加工の段階をどんなふうにしていくかということが重要ですから、そういうような対策を講じているところでございまして、今後ともこうした事業を活用して推進をしてまいりたい、こんなふうに思っております。
  228. 木島日出夫

    ○木島分科員 最後にもう一問、他用途利用米の販売代金と助成金の精算問題についてお尋ねしますが、去る二月十八日の農水委員会におきまして我が党の藤田委員から、生産者と農協、経済連、全農との間の他用途利用米売り渡し委託契約に基づく販売代金の精算が行われていないじゃないか、八九年からの四年間で三十億八千八百九十五万円が生産者に還元されていないという点でただしました。これに対して食糧庁長官から、これに 関する資料を全農に請求しているところだ、早速提出したいという御答弁があったわけでありますが、今日に至るも何の音さたもないわけであります。調査の結果を、簡潔で結構です、ここで明らかにしてください。
  229. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 あの際申し上げましたのは、要求されました資料につきましては、私どもで調製できるものについては既に提出いたしましたと、あとその際に、他用途米の金額ですか、それは資料を要求したが出てないという話がありまして、それは全農に請求しておりますと、それにつきまして私の方から、午前中に出す約束でなかったかという御指摘がありましたので、そういう約束をしながら出せなかったのであれば謝りますということで、出せる資料は既に出しておるわけです。  十八日の農水委におきます藤田スミ先生からの質問、これは委託契約書の内容が不明である、それからまた今御指摘のように利益が出ているのに精算してないじゃないかという話がございました。それについてはそれなりの事情を私はいろいろ御説明はいたしましたけれども委員会終了後すぐ全農を呼びまして、生産者に対して制度の趣旨及び契約書の内容を十分説明し、理解をしてもらうようにしろ、それから共同計算の実態については速やかに報告しろ、それからまた、その系統内部において生産者まで十分説明するようにしろ、それから、生産者に還元すべきものがあれば還元する方針のもとに共同計算の内容の見直しを行えというようなことを指導いたしました。  それで現在、共同計算の内容について全農からまだ正式な報告は受けてませんけれども、三月十日に系統内部で水田農業確立対策中央本部常任委員会というのが開かれます。そこに報告し、そこで了解を得れば正式に出てくるというふうに承知しております。
  230. 木島日出夫

    ○木島分科員 終わります。
  231. 宮里松正

    ○宮里主査代理 これにて木島日出夫君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。     〔宮里主査代理退席、主査着席〕     —————————————
  232. 柳沢伯夫

    柳沢主査 次に、総理府所管環境庁について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田元久君。
  233. 池田元久

    池田(元)分科員 環境庁に対する質問の時間がようやく参りました。  環境問題は二十一世紀に向けてますます重要になってきたと思います。アメリカの新政権では、環境派議員のリーダーであるアル・ゴア氏が副大統領に就任しまして、強力な環境政策を実施するということになっております。私もずっとこの永田町といいますか、見てまいりまして、歴代環境庁長官では、三木武夫さん、大石武一さん、なかなか活躍されました。林大幹新環境庁長官は、あの有名な陽明学者の安岡正篤さんの高弟ということを私も前から伺っております。哲学のある環境行政をぜひ実行していただきたいと思います。  きょうは、近年日本でも問題にされ始めました酸性雨の問題を取り上げてみたいと思います。  私の住む神奈川県の北西部に丹沢山塊があるのですが、この山塊は国定公園に指定されています。首都圏の一角にありますが、豊かな自然が残されていたわけです。しかし、近年その丹沢の樹木に異変が起きておりまして、ブナの原生林が立ち枯れている。その丹沢山から主峰の蛭ケ岳というのがあるのですが、そこの稜線のブナはほとんど立ち枯れているといった状態です。  長官も御存じのように、こうしたブナの林というのは豊かな生態系を象徴するもので、緑のダムとも呼ばれておりますように、水資源の涵養にも大変役に立っていたんですが、そのブナが大変、惨状だと言っていいと思います。そして少し見ますと、老木が倒れて若木が生えてくるという世代交代ではなく、ある専門家に言わせると、みんな同じような枯れ方をしている、短期間に一気に枯れてしまったのではないかと。ドイツのシュワルツワルトの被害のように、どうも原因は酸性雨、酸性の霧ではないかという見方が有力になっております。丹沢の東隣の、首都圏側といいますか、市街地により近い大山ではモミの原生林の立ち枯れも前から指摘されております。このような森林の衰退が続いているわけですが、自然が危機に瀕していることにつきまして、環境問題を主管する長官としてどのように考えるか、まずお伺いしたいと思います。
  234. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 池田先生の御質問にお答えいたします。  今酸性雨による森林の被害、影響につきましては、本当に心配にたえないところでございます。ただいま先生から丹沢山系のブナの惨状とかあるいはモミの惨状などもつぶさにお話しをくださいましたけれども環境庁としましても、酸性雨については重大な関心を持って対応するようにいたしております。特に五十八年度から順次五カ年計画を決めて調査を行っております。  ただ、現在の調査の段階におきましては、調査地点にある幾つかの森林の衰退を見ながら、その原因の追究をするところでありますけれども、なかなかその、酸性雨だけという形に決めつける手がまだございませんで、あるいは病害虫、あるいは積雪害、寒害、そのほかいろいろ、この樹木の成長に大変悪影響を及ぼす気象関係などのこともありまして、これが酸性雨だという形ではっきり認定できないという点もございます。しかし、酸性雨につきましては、特に地球大気環境ということから極めて重大なことでもありますので、今後とも一層調査を厳密にして、その結論をつかんでいきたいと思っております。
  235. 池田元久

    池田(元)分科員 森林の衰退につきましては、環境庁は九二年度、間もなく終わるのですが、第二次酸性雨対策調査というものをやっておりまして、その一環として、酸性降下物による土壌・植生影響緊急実態把握調査という長い名前の調査なんですが、こういった調査を実施しているんですが、その調査結果はどうだったか、どこでやるか、簡単に手短にお答え願いたいと思います。
  236. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 今先生から御発言がございました緊急実態調査平成二年度に行っておりまして、我々はモミ、杉、アカマツという針葉樹林の衰退が指摘されているような地域全国で七カ所選びまして、その衰退度を研究いたしたわけでございます。内容的には、健全な木を衰退度ゼロといたしまして、枯れたものを衰退度四というようなレベル分けにいたしまして、例えばモミであれば二前後ぐらいの衰退度の地域があるというふうな結論が得られております。
  237. 池田元久

    池田(元)分科員 この調査は次の第三次調査でもやると思うんですが、丹沢山塊などは対象になるんでしょうか。
  238. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 平成二年度調査におきましても、神奈川県の大山地区について、伊勢原市のモミ林をやっておりますけれども、今後ともこうした形の調査を続けていきたいと思っております。
  239. 池田元久

    池田(元)分科員 翻って酸性雨の問題全般についてお尋ねしたいと思うんですが、まず、この酸性雨の我が国での発生状況はどうなっているか。お尋ねしたいと思います。
  240. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 大臣からも御答弁申し上げましたように、昭和五十八年度以降、順次五カ年計画という形で酸性雨の測定をしてまいっておりますが、その結果によりますと、全国的に多くの地点からpH四台の酸性雨が観測されている、あるいは酸性雨の主成分である硫酸イオン等の降下量は冬季に主に日本海側で多いというようなことが明らかにされております。
  241. 池田元久

    池田(元)分科員 酸性雨の被害というのはなかなか形としてあらわれにくいというふうに一般的に言われております。しからば、どのような形で発現というかあらわれるか、その点をお尋ねした いと思います。
  242. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 酸性雨によります影響といたしましては、例えば陸水、河川、湖沼でございますが、そういったところの酸性度が上がるということに伴いまして、いろいろな魚あるいはプランクトン、そういったものに対して影響があらわれる。あるいは陸に降りましたものにつきましては、木々を中心とします植生がいろいろな影響を受ける、土壌が酸性化するというようなことによって木が立ち枯れるというようなことが懸念されております。  ただ、我々のこれまでの調査のまとめといたしますと、酸性雨による陸水、土壌、植生等生態系への影響は顕在化していないということが、我々のとりあえずの結論として出ておるところでございます。
  243. 池田元久

    池田(元)分科員 顕在化していないというふうに断定していいものでしょうか。これは各国の専門家なども、要するに進行が非常に初めの段階ではのろいと。ですから、そうすべて観測でわかるものでもないと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
  244. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 先生指摘のように、酸性雨の被害は初期の段階ではほとんど気づかれないうちに進行して、影響が明白になった時点での回復対策が極めて困難であるということが明らかになっておりますので、我が環境庁といたしましては、今後とも、調査研究の充実により酸性雨による被害の未然防止を図っていきたいというふうに考えております。
  245. 池田元久

    池田(元)分科員 樹木の立ち枯れ、森林の衰退というのは大変大きな問題だと思うのですが、それは確かに専門的に分析すれば、原因としてはいろいろ頭の中では考えられる。しかし、かなり各国の状況を見ても、これからこの問題が顕在化するおそれが大変強いわけですね。  そういった意味からいいますと、この被害というのを、被害といいますか因果関係といいますか、そこはもう腰を据えて調べなければならないと思うのですが、ただわからないと言うのではなくて、この場合樹木ですけれども、樹木の立ち枯れと酸性雨の関係についてもっと積極的といいますか、科学的な方法において積極的にやるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  246. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 樹木の衰退の原因といたしまして酸性雨が疑われるということがございます。そのほか、樹木衰退の原因としましては、病虫害とか雪とか寒さとかいろいろ原因がございます。そうした意味におきまして、酸性雨と樹木衰退のメカニズムの関係が複雑であるということでございますので、この因果関係を明らかにしていくことがぜひ必要であると私ども認識しておりまして、そのための努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  247. 池田元久

    池田(元)分科員 そういった立ち枯れているところの気流それから地形等々、やはり科学的に観測をして実証するといいますか、事実の裏づけでもってこの問題を取り進めていかなければならないと思うのです。  そういった意味から、大変調査といいますかモニターが大事だと思うのですが、環境庁は、一九八三年から第一次、八八年から第二次の酸性雨対策調査を行っているのですが、この九二年度で終了する第二次調査の概要はどのようなものか、お尋ねをしたいと思います。
  248. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 先ほど来申し上げましたように、五十八年度からの五カ年計画、第二次が現在今年度で終わるという段階に差しかかっておりますが、この間、降る雨のpH、イオン沈着量等は欧米とほぼ同程度でございまして、年平均値のpHが四・三から五・三のレベルで推移しております。これは、第一次調査の平均値が四・四から五・五ということに比べましても顕著な変動は見られなかったというのが第二次調査での測定結果でございます。  それから、樹木等の植生への影響に関しましては、先ほど申し上げましたように、幾つかの地域において樹木の衰退があるということがあるわけでございますが、酸性雨の関与がどの程度かというようなことにつきましては、さらに多角的な調査が必要であると考えております。
  249. 池田元久

    池田(元)分科員 そして今後の九三年度から始まる第三次調査、要点といいますか重点事項は何であるか、お示しいただきたいと思います。
  250. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 我々は、平成五年度から平成九年度ということで第三次酸性雨対策調査を開始したいというふうに考えております。  この第三次酸性雨対策調査におきましては、酸性雨と原因物質の定量的関係の解明、陸水、土壌、植生等の継続的モニタリング、それから各種影響等予測モデルの開発を行いまして、酸性雨問題の実態解明と対応措置の検討に資することとしております。  それから、我が国の酸性雨監視測定網を充実強化するとともに、東アジアにおける監視ネットワーク構想の策定を推進してまいりたいというふうに考えております。
  251. 池田元久

    池田(元)分科員 第一次、第二次、第三次とやっているわけですね。それなりの成果といいますか、あると思うのですが、やはりこの汚染の進行状況、そしてまたこれが非常に不可逆的なものである。要するに、一度影響が出てしまうとなかなか回復困難である。こうした問題の特性から考えると、ちょっとペースが遅いのではないか。行政官として行政ペースでおやりになっていると思うのですが、これはやはり二十一世紀考えた場合、先ほどアメリカの新政権のことも言いました。やはり政治としてこういったものを重点的に取り上げていく。これちょっと大臣質問通告はしていなかったのですが、この辺の酸性雨に対する調査というのを五年、五年でやっていくのではなくて、もうちょっとスピードアップをしてやらないと、二十一世紀も、もう一九九三年ですから、間もなく二十一世紀ですから、その辺のところをぜひ考えていただきたいと思うのですが、大臣、いかがでしょうか、お聞きになっていて。
  252. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 池田先生のお説に同感するところが多いのでございます。特に、最近この数年間急速に地球環境という認識環境問題が取り上げられておることもありまして、今までの国内だけにとどまった環境政策から、地球規模の環境政策にこれから変えていかなければならない。それだけにまた、取り組み方に対する環境庁の責任あるいはまた環境庁の責務、環境庁の取り組む意識、そういうものについては先生の申されることはもっともだと思っております。
  253. 池田元久

    池田(元)分科員 環境一つの何かトレンディーなあれで、与党の中には新環境族というのができて、これは要するに環境保護環境ではなくて、環境がいろいろ経済的な利益を生むということもあってにわか環境族が大変多いようですが、私は本来の環境族の立場でといいますか、そういった考えでやっていただきたいと思います。ここには本物の環境族と見られる議員もいらっしゃるので、これ以上は申し上げません。  さて、酸性雨の原因物質の大陸からの飛来問題、これは大変重要だと思うのですが、国立環境研究所が昨年十一月に行った観測の結果、西北西の季節風が吹くときには大変濃度の高い硫黄酸化物と窒素酸化物が検出された、酸性雨の原因物質が大陸から飛来していることが明らかになったとされているのですが、これはどのようにお考えになるか、お尋ねしたいと思います。
  254. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 大陸からの原因物質の飛来についてでございますが、先ほど申し上げましたように、冬季に主に日本海側で硫酸イオンが多く観測されているような事実もございますし、それから、先生指摘のような研究者の報告があるということは承知しております。大陸からのこうしたものが定量的にどうなっているのか、あるいは日本の酸性雨への寄与がどうなっているのかということについては必ずしも明らかになっていないところから、大陸からの影響について、今後これらに関する調査研究の結果を待ちたいというふうに考えております。
  255. 池田元久

    池田(元)分科員 きょうは余りきついことを言うつもりはなかったんですけれども、必ずしもわからない。しかし、この状況的なものもありますし、実際調べてみればそんな難しい問題じゃありませんから、今日に見えないところでわからない問題がいっぱいあるわけですね。これはもう物質の問題ですから、これはそういったスタンスではなくて、積極的に究明していただきたいと思います。  先ほど申し上げましたような観測以外にも、随分最近は出ているわけですね。同じように北西の季節風が吹き続けると、酸性の強い雪、pH三・七のそういった濃度の雪が検出されたというような大学の調査もあるわけです。ですから、この辺は議論の出発点としてきっちりと押さえていく必要があるんではないかと思います。  さて、日中両国の硫黄酸化物の年間排出量を見ますと、日本は百万トンちょっとですね。これに対して中国は九一年のSOxの排出量は千六百万トン余りで、十五倍以上になっている。中国の発電所などの燃料が化石燃料の石炭が主力で、しかも脱硫装置が不備でありまして、最近は高煙突化、煙突を高くする傾向にあると言われているわけです。この辺についての認識をお尋ねしたいと思います。
  256. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 中国の石炭がいろいろだかれるというような状況を背景といたしまして、酸性雨問題が中国において進行しているというふうなことは我々も承知しております。我々といたしましては、中国を含む環日本海の諸国との地域協力ということを念頭に、昨年十月におきましては、環日本環境協力会議というふうなものを開催して情報交換をやっておりますし、今後は酸性雨監視ネットワークの構想も策定してまいりたい。  それから、中国における酸性雨対策に対しての協力といたしましては、外務省やJICAを通じまして、中国の酸性雨モニタリング及び脱硫技術等に関する技術協力を実施していきたいというふうに考えております。
  257. 池田元久

    池田(元)分科員 認識ですからね。今やっていることを聞いたわけじゃありませんので、答弁資料もあるようですが、正確に答えていただきたいと思います。  これから中国経済というのは、本当の意味でどうなるかわかりませんけれども、とにかくここ数年見ていると、大変な活況を呈しているわけです。特に臨海部が非常に高度成長となっております。SOxの年間排出量は年率五・四%くらいの伸びでふえている、今世紀末には二千万トンを超えるおそれがある。アメリカはたしか年間二千万トンくらいですね。しかし、これを大幅に削減する計画があるわけですが、これは大変な問題だと思うのですね。報道によりますと、重慶では街路樹を十年間に三遍取りかえたというようなことも報道されておりました。中国ばかりではありませんが、韓国も、これも大変経済が伸びた、そして伸びている国です。こうした大陸各国との酸性雨対策、今ちょっと抽象的におっしゃいましたけれども、どういう気構えでやるのか、その点お尋ねしたいと思います。
  258. 齋藤紘一

    ○齋藤説明員 我々といたしましては、酸性雨問題のこれまでの中国の状況等についての情報交換を行っておりますが、先生指摘のように、かなり深刻な問題になってきているということもございますので、我が国の経験等を踏まえまして、できる限りの協力を行ってまいりたいというふうに考えております。
  259. 池田元久

    池田(元)分科員 御承知のように、ヨーロッパでは、一九七九年に長距離越境大気汚染条約というのを結んで硫黄酸化物などの削減を進めているわけです。アジアでも、今すぐはできないでしょうが、その準備といいますか、取り組みをする必要があるのではないかと思います。安全保障ではCSCE、僕らは、このアジアではCSCAPというようなことが必要ではないか、アジア・太平洋の安全保障の枠組みづくりが必要ではないかということを言っておりますが、同じようにヨーロッパでは安全保障体制の枠組みづくりが進んでいるわけですね。ぜひともアジア地域でも、地域が一体となった協力関係をつくる必要があるのではないかと思います。その辺の外交努力も含めて、政府委員の方からまずお聞きしたいと思います。
  260. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 先生おっしゃいましたとおり、この東アジア地域におきまして、酸性雨、あるいはきょうの話題になってございませんが、例えば海洋汚染とかそういったものも含めて環境協力を進めていく必要があるという認識に立ちまして、先ほど審議官の方からも御答弁申し上げましたが、昨年の十月に環日本環境協力会議というのを開いてございます。これには中国、韓国それからロシア、モンゴルからの環境の専門家が集まりまして、非常に熱心に討議したわけでございます。その中の議題の一つに酸性雨対策がございまして、例えば、まずは酸性雨の測定の方法などの一種のハーモナイゼーション、そういったものから始めようということで、まず第一歩は踏み出したところでございます。これを育てていって、この東アジア地域におきます酸性雨を含む環境協力の強化につなげてまいりたいというふうに考えてございます。
  261. 池田元久

    池田(元)分科員 第一歩として大変結構なことだと思うのですが、問題意識としては、各国の官僚ベースといいますか、モニターの方法とかそういったハーモナイゼーションというようなことも必要でしょうけれども、単にそれにとどまるのではなくて、問題意識としては、やはりこれは強力な条約でいいと思うのですが、今すぐじゃなくてもいいのですけれども、そういう問題意識を持ってぜひ取り組んでいただきたいと思います。答弁お願いします。
  262. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 まさに先生指摘のとおりでございます。行く行くはこの地域環境協力の何か枠組みをつくりたいとは思っておりますが、例えば韓国と中国が国交回復したのもつい最近でございます。また、韓国とロシアが国交を回復したのもこれまた最近でございます。この地域関係国がやっと同じ土俵に乗れるような状況になりましたので、今先生がおっしゃったことを視野に置いて、着実に協力の基盤を固めてまいりたいというふうに考えてございます。
  263. 池田元久

    池田(元)分科員 従来ややもすると、これは国内問題だからお互いに干渉しない、少しためらいがちにやってきた部分があるのではないか、もちろん今おっしゃるように、国交回復もできていない状況ですから。しかし、国交が回復されても、何となく一国の内部の問題だ、このようなあれがどうしても環境庁だけじゃなくていろいろあるわけですね。例を挙げればいろいろあるんです。しかし、二十一世紀を展望した場合、これからの価値としては、環境とか人権というのは大変これは大事な問題です。グローバルな形でこういった問題に取り組んでいかなければなりません。中国の天安門事件も、アメリカなどの態度を見れば明らかです。フランスもそうです。ですから、従来の主権国家の、古い十九世紀のあれじゃなくて、やはり地球市民といった立場で、国境を越えたそのような話し合い、これをぜひやっていただきたいと思います。  先ほども申し上げましたように、酸性雨の問題、きょう本当にわずかの時間取り上げました。申し上げましたように、酸性雨の影響というのは、初めはほとんど気づかれないうちにひそかに進行をする、なかなかつかみにくいと言われています。しかし、一たん被害、影響が明らかになると回復が極めて困難である、そういった特性を持っております。汚染物質の排出をいかに早いうちに、手おくれにならないうちにコントロールしておくかが問題だと思うわけです。  そういった意味で、日本の酸性雨の問題を見る場合には、大陸との関係が一番大きいのではないかと思います。そういった意味で、今政府委員の方がおっしゃいましたが、そういった協力関係を強力にやっていく必要があるのではないか。日本はそれだけのまた力があるはずですから、その辺のところは環境行政の大きな目玉といいますか、重点事項としてやっていただきたい。今あらゆる 問題は、どうしても省を越えた形で出てくるわけです。ですから、余り憶病にならずに、どしどしやっていただきたい。  最後に、先ほど、冒頭安岡さんのことも申し上げましたけれども、林長官の決意をお尋ねしたいと思います。
  264. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 池田先生にお答えいたします。  今一番私どもが注目し、また注意しなければならないのは、環境経済がどんな形で、統合という何か訳した言葉を使っていますけれども、私はその統合という言葉にちょっとまだ抵抗があるんですけれども、そういう意味じゃなくて、環境経済ということ、必ずこれはぶつかってくる問題であります。日本ども、大変とうとい反省の中で今日を迎えていることも事実でございます。しかしまた、開発途上国になりますと、まず経済の方にどうしても走りますね。そのために環境保全ということについてはどうしても手抜かりになりがちです。  そこで、これはやはり一国の問題ではなくて、関連する地域の問題として取り上げなければならないということもありますものですから、そう遠くない機会に、アジア・太平洋環境会議のようなものを日本は主唱して、できればそういうところから、今先生のおっしゃった条約の問題も含めました広範にわたる環境対策をそれぞれの国々が責任を持って取り組んでいけるようなそういう雰囲気、あるいはムードといいますか、地盤といいますか、そういうものに入っていきたいという気持ちを持っております。
  265. 池田元久

    池田(元)分科員 ありがとうございました。終わります。
  266. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて池田元久君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤乙彦君。
  267. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 どうも遅い時間まで御苦労さまでございます。  私、公害工場移転集団化事業につきましてお伺いをしたいと思っております。バブル経済崩壊に伴う東京都の臨海部副都心開発計画の行方が今大きな注目を集めておりますけれども、同じように、東京湾の埋立地を利用しまして国や東京都及び区の主導で進められてきた公害工場の移転集団化事業が今大変深刻な事態に陥っております。  私の地元、品川区、大田区が、国の方針に沿いまして公害工場の移転促進事業を昭和四十年代から呼びかけてまいりました。特に平成二年から三年にかけまして、大田区の城南島に京南金属加工協同組合、東京臨海産業協同組合、大田テクニカルセンター協同組合及び湾岸物流協同組合など幾つかの組合が結成されたわけであります。  設立準備会が発足したのは昭和六十年から六十二年にかけてでございまして、当時のこの城南島地域の譲渡価格は、昭和六十年あるいは六十一年ごろは大体平米当たり十二万円から高くても十八万円ということだったわけでございます。それが昭和六十二年の時点では三十七万円になりまして、またその後は一年ごとに一・一%の上昇率で価格設定をしていくということで事業団からの通告がありまして、区を通じてこれを受け取ったわけでございます。こういった価格設定方式は、東京都の港湾審議会のいわゆる時価主義、原価主義じゃなくて時価主義の答申に基づいたものと考えられるわけですけれども、実際の価格はこれをさらに上回りまして、昭和六十三年には平米当たり四十万四千円、それから平成元年ごろの高値の予想は四十九万円くらいになるのではないかと言われておりましたけれども、図らずもその後これが現実の価格となってしまったわけでございます。  さらに、京南金属加工、東京臨海産業それから大田テクニカルセンターの三つの組合の場合は、分譲を受ける土地の地形から私道をつくらなければなりませんで、私道負担分を含めますと、平米当たり五十万円を超える価格にもなってしまうわけでございます。ちなみに、国土庁が発表しております平成四年十月時点での城南島の土地公示価格は平米当たり四十万円でございまして、実際の分譲価格よりも大幅に下回った価格なわけでございます。  こういった状況に直面をいたしまして、現地に進出した企業等は、当初買いかえ資産を適用して移転を考えていたわけですけれども、バブルの崩壊によりまして、その可能性も閉ざされまして、また、この分譲を受ける土地の担保価値が大幅に下落をいたしまして、金融機関から十分な資金の供給を受けることもできない。また、他方、組合を脱退しようとしますと、かわりの企業を探すことが条件になっておりまして、また、事業団からは違約金を取ると迫られるような状況でございまして、こういったいわば残るも地獄、退くも地獄といった大変厳しい状況に直面をしておるわけでございます。  私も何度か現地の企業からヒアリングをいたしましたけれども、やはり公正に見て大体平米当たり三十万円程度、三十万円台の低い方でないと採算がとれないということは率直な事情のようでございまして、こういった平米当たり五十万円を超えるような、これはいかにも高過ぎる、バブルの一番高いところの時点で売りつけられて何ら救済措置がないという状況でございます。  こういった状況にかんがみまして、事業団、環境庁にお伺いをしていきたいと思います。  まず、この事業の直接の担当者であります事業団にお伺いをしたいわけでございますけれども、国や東京都及び区の指導のもとで進められてきたこの公害工場移転集団化事業がこういった状態に陥っていることに対しまして、組合員の率直な気持ちからすれば、国やあるいは都、区がやっている事業なんだから悪いことはないだろうということで信頼して、特に事業団が言ういろいろな条件あるいは価格等をそのまま受け入れてきたわけでございますけれども、こういった事態になって全く見放されてしまった、何の救済措置もないということで、組合員の気持ちからすれば、いわば信頼を裏切られたといった気持ちすら持っている状況でございます。こういった問題につきまして環境事業団としてはどのように認識を持たれておるか、まずこの点につきましてお伺いをしたいと思います。
  268. 正田泰央

    ○正田参考人 当団地につきまして大変先生の御懸念をいただいているわけでございますが、恐縮に存じております。  本件につきまして、事業団としてもいろいろ考えてございますが、環境事業団、創設三十年近くになろうといたしておりまして、その間いろいろな社会経済の情勢の変化に応じまして対処してまいったわけでございます。  基本的に申し上げますると、このような事業を実施するに当たりまして、まず計画の段階から、移転企業の皆様方はもちろんのことでございますが、関係地方公共団体とも十分連絡をとって採択、実施している次第でございます。特に、本件につきましても、組合の方々、さらにまた東京都、大田区、品川区等とも密接な連携を保ってきて実施してまいったつもりでございます。  しかしながら、ただいま先生おっしゃいましたように、大変な経済情勢になって、地価高騰を中心として事業費が非常に増大したということが一点、さらには、事業終了移転時期に来まして景気が非常に低迷してしまったというようなことで、私ども事業団役職員一同、当団地のみならず、ほかの団地につきましても苦境をお察ししているところでありまして、本件につきましてはできる限りの配慮を検討いたしたい、こういうふうに思っております。
  269. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 できる限りの配慮ということで大変心強く思うわけですが、具体的な対応について、また後ほど伺っていきたいと思っております。  続きまして、環境庁にお伺いしたいのですが、このまま事業を推進していくと、倒産企業が出てくるのは目に見えている状況でございます。環境事業団及びこの事業団法を所管する環境庁として は、どういった御認識、お考えでいるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  270. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 御指摘のように、現在バブル崩壊後の不況で、企業、特に中小企業の方々の経営環境が非常に厳しくなっているということは、私ども十分認識しているわけでございます。  そういった中で、環境庁といたしましては、公害防止のために実施される事業というものが適正に行われることはもちろんのことでございますが、それを通ずることによって、環境事業団法にございますように産業の健全な発展が図られるということも目的であるところでございます。したがって、公害防止はできた、しかし企業はつぶれたということがあってはならないことでございまして、そのため、制度上また運用上できる限りの配慮が払われるように進められていくべきである、また事業団としてはそのような配慮が行われるということを私どもは期待しているわけでございます。
  271. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 環境庁がそういうお考えでいるので安心をしておるわけでございますけれども、問題は各論で、具体的に何をしていただくかということが大きな問題になるわけでございます。  まず、これは東京都の港湾局がこれを埋め立てをして、それを事業団に売却する、それをまた事業団がさまざまな造成をして企業に分譲するわけでございますけれども、今理事長また局長が言われましたように、公害規制という公共的な目的、あるいはまた健全な産業の発展という非常に公共性の強い事業でございますし、また事業団として、都の土地を公害関連企業に仲介したわけですから、決して無関心であっていいわけはないということは御理解いただけるかと思います。  確かに、バブルの当時、だれ人もバブルがはじけるということは想定をしていなかったのでしょうし、その時点でこういった価格づけがあった、あるいはやむを得ないという面があるかもしれませんけれども、今バブルが崩壊して、振り返ってみれば、バブルというものはまさに一過性の異常な事態であった。私自身の表現で言えば、一種の天災みたいなもので、雲仙の普賢岳と似たような状況かもしれません。そういった意味で、こういったいわば一過性の異常な事態によってバブルの崩壊のツケが実際には中小企業の方たちの上にのしかかっているわけでございますけれども、こういった異常事態の中で苦しんでいる人たちの姿を見るときに、このまま放置しておくことは事業団法の趣旨に沿ったものとは到底思えないわけでございます。  そこで、まずこの解決策として、環境庁が事業団を指導されて、実際に高い価格でこれを売却した東京都との間で価格の下方修正交渉をさせるのが環境庁としてあるべき立場ではないかと思うわけでございますけれども、今までどのような手を打ってこられたのか、また今後どのようにされるか、その点につきまして、これも環境庁にお伺いしたいと思います。
  272. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 環境庁といたしましては、この問題があるということを私ども知りまして、早速本件の直接当事者でございます東京都の港湾局から、その事情、特に土地の売却価格をどういうふうに決定するのか等について事情を聴取したわけでございます。  その際聞きましたところによりますと、東京都におきましても、やはり公正な手続、公正な価格で売るというのは行政として当然でございますから、東京都といたしましては、東京都の公有財産規則に基づきまして土地の売却を決定するという仕組みになっておりまして、その際、その規則によりますと、適正な時価によって設定しなければならないというぐあいになっているようでございます。そこで、そういった考え方に基づきまして事務局が算定をした価格につきまして、やはり規則で定めるところによりまして東京都財産価格審議会というところの機関の議決を経まして、そういうことで決定されたというぐあいに承知しているわけでございます。  そういたしますと、環境庁といたしましても、行政手続面におきましても、東京都は規則に基づいて適正に決定しているということになるわけでございまして、また私的契約の観点から見ますと、両者間の合意に基づいて売買契約が締結され、その履行も完了しているというようなことから、環境事業団に対して価格見直しの交渉ができる立場、状況、そういうことを指導し得る立場にはないということが言えるわけでございます。
  273. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 確かにこれが純粋に私的な取引であればどうこう言う立場にはない、だれが損しようと、それはそのリスクを当事者が負うべき話であると思います。しかしながら、このケースは、先ほども御説明があったように、公害規制という目的、また産業の、特に中小企業の健全な発展という非常に公共的な性格の強い事業であって、そういった点から見て、かつまた環境庁がこれを監督し、事業団が推進をされてきたわけでございまして、そういった公共的性格を考えれば、これは私的契約だから何も知らぬということは、ちょっとこれは問題なのではないかと思うわけでございます。  この大きな原因は、何といっても今御説明のあった東京都の価格設定のやり方、特に審議会の答申が、これは昭和四十八年の時点で、それまでは原価主義で来ていたものを時価主義に変更をしたわけでございますね。やはりこれに非常に問題があるのではないか、そもそも問題があるわけであって、形式的には問題はないとしても、この答申の中身自体、実体的な中身自体に公共的事業のいわばガイドラインとしては大変問題があると私は感じておりますし、まさにそれが今回バブルの崩壊によって多くの中小企業が被害をこうむっているわけでございまして、国や都がすることを単純に信じて契約させられてしまった組合こそ最大の被害者ではないかと私は感じております。  そういった観点から、ぜひとも東京都に積極的に働きかけまして、地価の下方修正の交渉をすべきではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。
  274. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先ほど申し上げましたように、この土地の売買契約が事業団と東京都との間で締結されたものでございまして、しかも土地の引き渡し、代価の支払いということも両者の合意に基づいて完了しているわけでございます。  そこで、そういう事情にあるものを、環境庁が東京都との間で土地価格の見直しが後になってみればどうこうというようなことからぜひ交渉しろということを言える立場にはちょっと立ちにくいわけでございますが、その後、事情変更ということがあり得るものか、また関係者がそういうような要望を持っているということ、そのこと自体についてはお伝えすることはやぶさかではございませんが、しかし東京都も規則にのっとってやったというようなことで、東京都の方もいろいろ事情がおありになるのではなかろうかというぐあいに拝察するわけでございます。
  275. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 確かに立場上、環境庁ないし事業団ができることは限りがあるかと私もその点は理解するわけでございますが、ただ、実際に苦しんでいる中小企業を放置することはできないということで、ぜひとも関係者には知恵を出していただきたい、できるだけの配慮をいただきたいということが我々の希望でございます。  そこで、確かに立場上はできることは限られているかもしれないけれども一つ考え方として、この譲渡契約の中には東京都の買い戻し条項があるわけでございまして、例えばこれを使って、今回非常に特例な、非常に特殊な事情のもとで起こったことでございますので、この買い戻し条項をいわば弾力的に運用して、一たん東京都が売った値段で買い戻して、それをまた今の適正な時価で譲渡契約をやり直す、こういったことは可能かどうか、お答えをいただきたいと思います。
  276. 正田泰央

    ○正田参考人 ただいま先生のお尋ねの御趣旨は、譲渡契約の中の都の買い戻し条項であろうと存じます。  御案内のように、これは当事業団に対して、さらにまた譲渡先の組合に対して、さらにまた将来組合員に対して、つまり各企業に対して有効に法的に機能する条項だと思っておりますが、この条項と申しますのは、いわゆる義務違反と申しますか、目的外の使用などの義務違反、都の承認を得ないでやったような場合、その場合には都がその土地を買い戻す、しかもその場合には原状回復の上で土地を返してもらいたいというような公有水面埋立法その他一般的な制度を受けた当然の規定だろうと思っておりますが、この義務違反による買い戻し条項によりまして返却した土地をもう一度購入ということになりますと、都の方の判断でございますが、私ども考えますになかなか難しいかと存じております。したがいまして、本条項を適用して御指摘のような取り扱いというのは非常に困難ではないかと私ども考えております。
  277. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 確かにこの問題の一番の根源は、東京都の価格設定のあり方にあることは今の御説明のとおりでございます。これは環境庁、事業団に言う話じゃないのですけれども、やはり都の港湾審議会のあり方が非常におかしい。答申自体、時価主義の答申が非常に問題があると私は考えております。公共事業であることを考えず、単なる商業ベースで地価を割り出して、これを押しつけるというのはいかがなものかと思います。また、居住できないのに、土地が宅地の申請になっていることも問題ではないかと思っておりまして、この件は都及び都議会でぜひ追及をしていきたいと思っておりますので、きょうはこの点はこれ以上触れないようにいたしたいと思っております。  そこでもう一つの、今度は事業団に関連する問題点でございますけれども、この事業のもう一つの大きな問題点が、公害工場移転集団化事業に年数がかかり過ぎるということではないかと思うわけでございます。城南島の例をとりましても、当初の話があったときから譲渡契約に至るまで四年から五年もかかっております。その間、社会情勢の変化に大差がなければよいわけですけれども、今回のような急激なバブル経済の生成と崩壊といった事態がございますと、中小零細企業が対応し切れないという事態が生じてくるわけでございます。譲渡契約をしてから確定契約が完了するまで一年半以上もかかっている状況でございまして、もっと期間を短縮するように努力すべきではないのかと考えるわけですが、この点はいかがでございましょうか、事業団にお伺いいたします。
  278. 正田泰央

    ○正田参考人 お説のとおりと存ずる次第でございますが、私どもの三十年間にやっておりましたプロジェクトの標準的な期間というのは、大体二年ぐらいでほとんど完成いたしております。ただ、事前のいろいろな準備というのがそれぞれの個性によってあろうかと思います。すぐできるものと、それから事前の調整に実に十年ぐらいかかっているものも全国ではございます。  特に本件の場合は、もう先生御存じのことでございますが、想像以上の事業の参加の希望者がいらっしゃいました。その時期と、それから場所の立地のよさ、その他でそうなったのだろうと思いますが、そのために必要な用地の確保が非常に難しかった。百四十八社、十四組合で二十ヘクタールほどの希望があった。結局は七十一社九組合、六ヘクタールぐらいに落ちついたのでございますが、私ども、東京都さらにまた関係区それから皆様方の組合との調整に多くの時間の調整を要しました。したがいまして、譲渡契約に至るまでにかなり長期にわたってしまったという事情が本件についてはございます。  いずれにいたしましても、参加企業の方々の御意向を踏まえて、いたずらに長期にわたることのないように、全国的な視野においては努力してまいりたいと思っているわけでございます。  ちなみに申し上げておきますが、譲渡契約をしてから売り渡すまでの確定契約までの期間の中には、一連の開発行為の協議関係とか用地買収、設計、造成、建設その他がございますのでなかなか時間がかかるのでございますが、今後も工程管理をしっかりといたしまして、平均的な標準的な期間でやらせていただきたい、こういうふうに思っております。
  279. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 いろいろ御事情はあることは推察いたしますが、ぜひそういった期間の短縮化には今後努力お願いしたいと思っております。  今取り上げております問題は、決してこの大田、品川だけの問題ではございませんで、例えば大阪の大正区とか千葉県の沼南町、さらには埼玉県、八王子市等全国的な問題であることは御承知かと思います。同じような事情で進出した公害関連企業が大変苦境に立たされておるわけでございますけれども、こういった企業の苦境を救済するためにも、例えば金利の引き下げ、利子補給あるいは償還期限の延長あるいは賃貸への移行等、具体的な措置を何とか考えていただけないかということをお願いをしたいと思うのですが、この点につきましては環境庁、お答えをいただければと思います。
  280. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 今先生いろいろな救済策について、そういう手は打てないかどうかということを御指摘になったわけでございますが、まず最初に金利の引き下げということについて申し上げますと、環境事業団の償還金利は譲渡契約時の利率による固定金利制というぐあいになっておりまして、これは既に締結された契約にかかる金利の変更は制度的にはなかなか考えにくい。原資は財投ということにもよりまして、これは非常に難しかろうと存ずるわけであります。したがって、そういうことを前提にいたしまして、制度的に予定されていない利子補給を行うということもかなり難しい。これはあらかじめ配慮した低金利ということになっていることもございまして、そういうことは非常に難しかろうと思うわけでございます。  また、それでは土地の買い取りでなくて賃貸ではどうかというようなことにつきましては、実は環境事業団の法律では、そういった事業というものは事業団の対象事業に入っておりません。建設譲渡事業ないし資金の貸付事業がその行い得る事業でございまして、法律改正を直ちに行うというのはなかなか難しいだろう。  それでは、償還猶予についてどうだろうかということでございます。償還猶予につきましては、災害その他特別な事情によりまして支払いが著しく困難であると認められる場合にこれはできるというようなことになっておりまして、したがって、この場合は、個々の会社ごとにその経営状態、償還能力を踏まえながら事業団において個別具体的に検討していただく、こういうことになろうかと存じます。
  281. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 せっかくこの事業で進出した企業が倒産したら全く意味がないわけですから、倒産させてまで取り立てばしない、そういった趣旨かと思いますけれども、そのように理解してよろしいでしょうか。
  282. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 ただいま申し上げましたように、もちろん経営状態とか償還能力を踏まえながら検討していくわけでございまして、それを個別具体的に事業団の方で検討していただくということでございます。
  283. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 時間がなくなってまいりましたので、最後に、長官にお聞きしたいと思います。  今御説明申し上げましたような公害移転事業の問題、バブルの生成と崩壊によって大変な苦境に立たされていることは御理解をいただけたかと思います。もちろん、環境庁の立場でできることには限界があるかと思いますけれども、どうか長官として、最大限の配慮をこういった苦境に立つ企業に対してお願いをしたい、そのように私は強くお願いをしたいと思っております。この問題に対する長官の強い御決意をぜひお伺いしたいと思います。
  284. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先生指摘の事業が、本来騒音公害等の解消という目的のもとに進められてきたものでありますだけに、その実施に当たる中小 企業者の方々の経営を危うくするというようなことがあってはならない。そのためには、事業団等も督励しまして、経営の安定を図るように努力したいと思っております。
  285. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)分科員 持ち時間が終了しましたが、今の長官の言葉を大変多とするものでございまして、ぜひともまた環境庁、事業団とも、今の長官の御決意に沿って最大の御努力をいただきますことを希望して、質問を終わります。
  286. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて遠藤乙彦君の質疑は終了いたしました。  次に、斉藤一雄君。
  287. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 私は、国の環境基本法の策定に当たって、若干提言を含めて質問をいたします。  まず初めに、法案作成に当たっては、特に建設、通産などとの間で基本的な意見の相違があり、それに財界、産業界をバックにしたいわゆる族議員と言われるところからの圧力などによって、環境庁当初の構想から内容が大きく後退していると思われますが、その点はどうですか。
  288. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生指摘になりました環境基本法の作成作業に現在当たっているわけでございますが、これは昨年の十月二十日に御答申をいただきました公害対策審議会と自然環境保全審議会の答申を受けまして、それをもとに現在鋭意作業をしているわけでございます。  申すまでもなく、環境政策は、政府全体としての今後の環境政策のあり方、枠組みを明らかにするものでございますから、その策定は、国としての重要な長期的政策決定を行うということになるわけでございます。  そこで、そういう事柄の性質上、当然、各省庁の意見、また各方面の意見を聞きながら、その調整を図って法案化の作業を進めているわけでございます。したがって、そういうことでございますから、後退したとか前進したとかということではございませんで、国のさまざまな施策分野に関する環境保全の意思決定そのものを地球環境時代にふさわしいものにしていくためのプロセスの一つであるというぐあいに御理解をいただきたいわけでございます。  私どもといたしましては、答申に盛り込まれた内容を最大限盛り込みたいということで、現在政府部内で鋭意作業中のところでございまして、なるべく早く成案を得まして、御審議を賜りたいと存じます。
  289. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 ここがどこかの圧力で後退をして申しわけありませんとここで言うわけにはいかないだろうと思いますが、決意としては、地球環境保全日本環境と自然を保護する、さらには国民の命と健康を守るという重大な決意を持ってぜひ臨んでいただきたい、こういうふうに思います。  次は、リオ宣言で述べられた持続可能な開発という考えをそのまま日本の現状に当てはめると、かつての経済との調和条項を思い出すわけでありますが、日本における考え方としてはどういうことになるでしょうか。
  290. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生ただいま御指摘いただきましたことでございますが、私どもこれは非常に記憶に残っているところでございまして、四十五年の公害対策基本法の改正の際に、いわゆる経済調和条項を削除するということがございました。これまでの経緯といたしましては、政府として、いやしくも経済優先といったようなそしりを受けることのないように、環境保全に努めることが大事だという精神だというぐあいに私ども理解しているわけでございます。  その精神というのは当然引き継がれて、今回リオ宣言等でうたわれました持続可能な開発というものの中にとうとうと波打って入ってきていると私ども理解しているわけでございます。すなわち、持続可能な開発というものは、やはり環境保全が長期的に見た健全な経済活動の基盤であるというふうに考えるべきであるということでございまして、そういう点では、先ほど申し上げました中央公害対策審議会の答申におきましても、我が国においては「これまでの生産と消費のパターンを見直し、」「その内容の変化を伴う健全な経済の発展を図り、環境負荷の少ない経済社会を構築していくことが重要である。」こういうぐあいに御指摘を受けているわけでございます。  私どもといたしましては、こうした考え方を踏まえまして、積極的に環境保全を進め、持続可能な経済社会の実現を図っていく必要がある。今度私どもがっくります環境基本法の基本理念の中には、そのことをぜひうたい込みたいと思いまして、現在鋭意作業をやっている最中でございます。
  291. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 海外進出企業の環境破壊を防止するため、環境上の配慮や規制についてお伺いいたします。  ODAや対外直接投資、国外事業への融資に当たっては、環境保全を初め、地域住民の文化、人権保護、軍事支出の削減などを十分に配慮し、一定の基準を設けるべきではないのか。
  292. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 我が国の政府開発援助、ODAの実施、さらには民間企業の海外投資に際しましては、現地環境保全に配慮することは極めて重要というふうに考えてございます。  政府といたしましては、地球環境保全関係閣僚会議における申し合わせによりまして、ODA実施に際しての環境配慮の強化を図るとともに、民間企業が海外に投資するような場合、適切な環境配慮が行われるように努力しているところでございます。  先ほど先生、一定の基準と申されましたが、私ども先ほどの認識を踏まえまして、援助の実施機関である国際協力事業団(JICA)及び海外経済協力基金(OECF)におきましては、環境配慮のガイドラインの策定に努めているところでございます。さらに、環境対策に当たるための体制の強化等も進めておられます。援助案件の決定に当たりましては、これらのガイドラインによる審査環境への影響調査などを行い、環境配慮の徹底を図っているところでございます。  また、先生御高承のとおり、経団連におきましても、平成三年四月に経団連地球環境憲章というものを策定いたしまして、経済界におきましても自主的に投資先での環境保全に努めているところでございます。  こういった問題を基本法にどう反映するかにつきましては、先ほど来の局長の御答弁にもございますように、中公審などの答申が基本法制について出ております。その中で、先生お尋ねの件につきましては、「国際協力における環境配慮の重要性にかんがみ、我が国としてその適切かつ着実な実施が必要」と言い、また、「事業者の海外活動に関しては、経済団体連合会の地球環境憲章等のガイドラインに沿って環境保全に対する自主的な取組が進みつつあり、こうした取組の進展が図られることが重要」というふうに述べられているところでございます。  この答申を受けまして、私ども、現在作成中の基本法案におきまして、環境配慮が適切に位置づけられるよう、今政府内で最後の調整を行っているところでございます。
  293. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 憲法二十五条で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」で不可欠の要素である環境権あるいは日照権についての法整備が必要ではないでしょうか。
  294. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生、ただいま憲法上の条文を引いてお話しになったわけでございます。  健康で文化的な生活を送るに当たりまして、環境の恵沢を享受するということが重要なことは申すまでもないところでございます。先生、その際環境権というお言葉をお使いになったわけでございますが、環境権という表現でもって言うことにつきましては、まだ判例上、学説上いろいろな議論がございまして、そこまで確定的な文言を使うということは、今のところまだ問題が残るかというぐあいに考えておりますが、しかしいずれにいたしましても、良好な環境を実現するということはやはり重要なことで、中公審の答申におきましても、環境政策の基本理念として「広く国民、ひ いては人類が環境の恵沢を享受するとともに、将来の世代に健全で恵み豊かな環境を継承することができるよう適正に環境保全」を図っていかなきゃならぬということを指摘しているところでございます。  こういった考え方というものは、ぜひ、私どもが用意しております環境基本法案の中に基本理念として位置づけまして、今後の環境政策の指導理念としてそれを守っていく、またそれを中心にして政策展開をしていく必要があるのではないかというぐあいに考えておる次第でございます。
  295. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 日照権についてもお尋ねしたがったのですけれども。一言。
  296. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 失礼いたしました。  日照をめぐる問題ということは、基本的には民法の相隣関係から発達した問題で、当事者間で交渉し、補償を行うといったような方法で従来対処されてきたというぐあいに理解しておるわけでございますが、都市における居住環境の変化に伴いまして、そういった日照の確保が国民生活に重要であるというような認識の高まりに応じまして、例えば行政的にも建築基準法等におきまして所要の措置が講じられてきたというぐあいに進展してきたと私ども理解しておるわけでございます。
  297. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 環境権、日照権というのは今までは明確な解釈なり定義なり規定がない。だからこそ、環境基本法を制定する際に、それとしっかり取り組むべきではないかという考えに立っておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。  次は、環境アセスメントの重要性を認めるならば、当然法の制定を明示すべきではないか。また、情報公開、住民参加についても、これまでは極めて不十分でありますので、この点についてもきちんと位置づけるべきではないかという点についてお尋ねをいたします。
  298. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 環境影響評価の環境基本法制上の位置づけにつきましては、これは昨年いただきました中公審答申におきましても、「現行措置の実態や事業者の自主的取組を踏まえつつ、環境影響評価の重要性・考え方を盛り込」んで位置づけることが「重要である。」というぐあいにされているところでございまして、今この考え方をもとにして、鋭憲政府間で調整をし、原案の策定作業をやっている最中でございます。  そこで、今先生がお触れになりました住民関与、また情報提供という一連の手続におきましても、閣議決定要綱に基づいて国の環境影響評価制度をやっているわけでございますので、そういった現在やられております措置というものを今度法制上きちっと位置づけるということによりまして、その健全な推進方が図られるということを期待したいところでございます。  別途、なおアセスメントと直接的な結びつきではなしに、一般論として申し上げさせていただきたいのですが、情報提供でございますとかまた環境保全に対する国民の取り組みの問題等につきましても、これは国として積極的に推進していかなければならぬというような規定につきましても、同時にこの基本法におきまして何らかの位置づけをしてまいりたいというぐあいにして、今鋭意作業中でございます。
  299. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 国が環境基本計画をつくることになっておりますが、その場合、都道府県レベルの計画作成についてはどうするんですか。
  300. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 これは先生非常に地方行財政にお詳しいことですから、私が上から申し上げるのは失礼に存ずるわけではございますが、現在地方公共団体におきましては、地域の特性に応じまして、二十団体余りで地域環境管理計画の策定、促進に今取り組むというような格好で、地方独自の取り組みが既にかなり行われているところでございます。  そこで、先生指摘になりました、中央公害対策審議会から環境基本法制のあり方について御答申があったわけでございますが、そこにおきましても、「地方公共団体においては、国の施策に準じ、国との連携を保ちつつ、当該地域の自然的、社会条件に応じ、地方公共団体としての施策や住民の取組に関して計画的、総合的な取組を行うよう努めることが重要である。」という御答申をいただいておるわけでございます。この計画的、総合的な取り組みを行う必要があるという地方公共団体の行政のあり方についても、基本法制の中にこの考え方は位置づけてまいりたいというぐあいに考えております。
  301. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 地方公共団体の自主性を十分尊重し、またすぐれた面をどんどん支援をしていくということは当然のことなんですが、環境基本法という基本法を一方ではっくるのに、自治体レベルでは、今までどおり環境管理計画だとかいろいろな計画を持っているからそれでいいじゃないかということだと、これはちょっと、じゃ、何のために基本法をつくるのかということにもなるわけだし、また地方のレベルアップのために、やはりしっかりした基本計画を国がつくる責任があると思うのですね。そういう点も含めて、ぜひ御検討いただいておきたいと思います。  次は、今問題になっておりますNOxを中心とした大気汚染対策など、地方自治体の条例によって独自の規制なり基準を認めるべきだ。東京都を初め大都市の府県からもかなり強い要望が年々出されておるわけでありますけれども、その点については、やはり基本法をつくる以上は、従来とは違った立場、観点からこうしたものを十分尊重していくということをしっかり踏まえるべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  302. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 御指摘のように、環境政策の推進に当たりまして、国が基本的、総合的なことを行っていく、それとあわせて、地方におかれましては、それとの連携を図りながら、地域の自然的、社会条件に応じた施策を実施するということが適切であるということは、申すまでもないことであると思うわけでございます。  そこで、そういったことから、現行の個別の法律におきましても、例えば国民の健康の保護とか生活環境または自然環境保全の観点から、それにふさわしい分野におきまして、そういったことが合理的であり、かつ必要がある場合は、その自然的、社会条件に応じながら、地方公共団体がいわゆる横出し、上乗せ等の対策を講じるということが、それぞれの個別法で認められているわけでございます。  こういった地方独自の対策についても、個々にその必要性、合理性を勘案しながら推進されることが望ましいということは言うまでもないところでございまして、私どもはこういった現行法の法体系の考え方を変える必要は毛頭ないというぐあいに考えております。
  303. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 現在、例えば道路整備五カ年計画などのように、各省庁でそれぞれの計画が定められております。今後つくられる基本法や環境基本計画との整合性についてどうなるのかなというふうに思うわけでありますが、この点についての見解をお尋ねいたします。
  304. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生指摘のように、環境問題というのは政府の関係各省にわたって行われるものでございますので、そういった政策のそれぞれに環境に対する配慮が十分行われ、しかもそれが政府全体として整合性のとれた格好のものになる必要があるということを私ども考えているわけでございまして、私ども考え方といたしましては、そういうことを計画的、総合的に推進していくことが必要であるというぐあいに考えているわけでございます。こういった仕組みをぜひこの環境基本法案の中に盛り込むべく、私ども今鋭意努力中のところでございます。
  305. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 もう一つ環境行政の中で環境基本法関連で重要なのは、現行法における環境保全のための措置規定というものが極めてばらばらでありますし、不十分なわけであります。  法律の条文中に環境庁長官の関与が明記されているものということになりますと、工場立地法、公有水面埋立法、都市計画法、総合保養地域整備 法、農薬取締法、電源開発促進法、道路法、都市再開発法、河川法ということになっておりまして、また、法律の条文中に環境庁長官の関与が明記されていないものとしては、国土利用計画法、公共用飛行場周辺の騒音障害防止法、広域臨海環境整備センター法、港湾法、電気事業法、廃棄物処理法ということになっております。  そして、私は、環境基本法との関係で、各法律の目的または理念に、環境保全ということをどうしても位置づける必要があるだろうと思うのですね。環境基本法は環境基本法、その他の各省庁の所管している法律は環境保全とは関係なくそれぞれの目的を持っている、環境とは関係ありませんよという法律になっている。これでは、せっかくの環境基本法もあるいは地球環境保全も絵にかいたもちということになろうかと思うのです。  もう一点申し上げますと、法律の目的または理念に、環境保全等を図る旨の記述のないもの、つまり環境保全ということを法律の目的や理念にうたっていないものという面では、港湾法、公有水面埋立法、都市計画法、総合保養地域整備法、電源開発促進法、道路法、都市再開発法、河川法、こういうふうになっているのですよ。  ですから、この環境基本法とこういう法律との関係、ここをきちっとしないと、環境問題、環境行政について委員会で幾らやりましても、それは私どもの所管じゃありませんので、それは我が省の法律の目的、趣旨になっておりませんのでというようなことになってしまうので、この点は今すぐ答弁しろと言ってもちょっと無理じゃないかと思うのですね。できればしてもらいたいのですけれども、無理だと思いますので、この点はどうするかということを皆さん環境行政に携わる職員として真剣に考えていただいて、法整備までの間にぜひ考え方をまとめてもらいたいな、こういう点を要望しておきたいと思います。
  306. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生指摘になったようなことを解決するために、私は、環境基本法のようなものをぜひっくりたいという動機の一つもまたそこにあるわけでございまして、政府のあらゆる政策の中に環境配慮をやっておく。ただ、法律ができましたならば、その時代時代によってそれに対する配慮が十分であった、十分でなかったという時代があるわけではございますけれども、これからの政策をやるに当たっては、やはり環境配慮が大事だ、すべての政策にわたってそれが大事だというようなことが、今回、環境基本法を策定いたしまして国会の御審議をお願いしたい理由の一つになろうかと思います。  そこで、私どもは現在案を作成しているわけではございますが、環境に影響を及ぼすと認められるような施策を策定したり、またはそういったものを実施するに当たっては環境保全について配慮をしなければならないというような規定をぜひ置きたいと思いますし、また、政府全体としてそういったような事柄をできる仕組みといたしまして、例えば閣議決定による基本計画のようなものをつくるというような計画的手法というものを取り入れていく必要があるのではないかということで考えている次第でございまして、できるだけ早く成案を得まして、国会の御審議をいただきたいものだというぐあいに考えております。
  307. 斉藤一雄

    ○斉藤(一)分科員 そのためには、環境庁環境省に格上げをして、そして環境庁長官環境大臣になって、その人が総理大臣になって、そして地球環境保全に全力を挙げて国際社会に貢献していくというくらいの姿勢が、考え方として必要じゃないか、そんな感じがいたします。  時間も余りありませんので、最後に、先ほどお答えいただいた点で再質問させてもらいたいと思うのですが、海外進出企業、ODA絡みなんですが、これは通産なりあるいは関係団体に質問いたしますと、それぞれの国の指示に従うとか、あるいはそれぞれの国の環境基準を初めとした規制に従っておりますというふうにおっしゃるのですね。これは、日本の公害企業と言っては語弊があるかもしれませんが、公害を出す企業にとっては大変ありがたい話なんですよ。東南アジアなり、あるいは日本のような公害先進国ばかりじゃありませんね。環境アセスメントというような法律がない国もあるでしょう。あるいは条例もない国があるでしょう。環境基準、そういうものもきちんとしていない地域もあるでしょう。そこへ日本の企業が行って、いわゆる資金援助をして、その企業が公害を垂れ流しする。それで、その垂れ流しと言われるか言われないかの基準は、要するに、その国なりその国の地域の基準に従うんだ、こういうことになっているのですよ。  私の考えでは、地球環境保全という意味はそういう意味ではない。特に日本の公害企業の場合は、すぐれた、そしてまた厳しい日本環境基準というものを持っているはずであります。したがって、そうした日本の基準に沿った、そういう環境の仕事をやはりすべきではないのかというふうに考えるわけです。  そうしないと、いつまでたっても、そこの国の指示に従っております、垂れ流しされたと言われましても、裁判になりましても、住民の被害が出て、住民が命をなくしたとしても、それはその国、その地域の指示に従っているのですから、企業には何ら責任はないのですよ、もし地域の住民が文句があるのなら、裁判で争いましょう、裁判所の結果が出たらそれに従いましようというような発想と仕組みに現在なっておるわけですね。  そういう結果が水俣病というわけじゃありませんけれども、三十八年間もほったらかしにされて、いまだに解決がつかない。結局はその地域の再開発や何かの犠牲になっているわけですから、こういうことのないようにするには、やはり基本法の中に海外進出企業に対する規制あるいは指導というものをきちんと組み入れるべきじゃないかと思います。この点はぜひ検討していただきたい。  今すぐ答弁しろと言っても無理だと思いますので、ぜひ検討していただきたいということを強く申し上げて、質問を終わりたいと思うのです。どうもありがとうございました。
  308. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて斉藤一雄君の質疑は終了いたしました。  次に、井上義久君。
  309. 井上義久

    井上(義)分科員 初めに、NOx対策、それからDEP、いわゆるディーゼル排気微粒子対策についてお伺いしたいと思います。  長官も御存じだと思うのですけれども、最近、環八雲という、環状八号線に沿って積雲が発生するということが大変話題になっておりまして、東京都も、都の環境科学研究所が、「環状八号線周辺は、地上でも大気汚染度が高い場所。汚染が雲をもたらすことは考えられる」ということで、汚染物質が原因じゃないか、こういうことで具体的な調査を始めるという動きも出ております。  私の選挙区東京三区、世田谷、目黒ですけれども、東西に甲州街道、二四六、それから目黒通りの幹線道路が走っている。それから南北は山手通り、環七、環八というふうに貫かれておりまして、特にこれらの幹線道路が交差する世田谷区の大原とか八幡山、上馬、あるいは目黒区の大橋、柿の木坂、こういう地域は非常に大気汚染に悩まされておるわけでございます。特に、平成三年度の環境庁データによりましても、NOx汚染地ワーストテンに挙げられているところに世田谷、目黒が二カ所も入っておるわけでございます。  先般も、私の友人が大原の交差点に住んでおりまして、子供が小学校六年生なのですけれども、ぜんそくで悩んでいる、ともかく一回実態をよく見てくれということで、行ってまいりました。十年間ずっとぜんそくで、ともかく夜中に突然発作が起きる。そうすると、両親はおさまるまで介抱に当たらなければいけないというようなことであります。  東京都のいわゆる認定患者、大気汚染による健康被害の認定患者も年々ふえておりまして、昭和六十三年には一万八千八百二十二人だったのが、平成三年には二万八千六百十三人にふえている。私の住んでおります世田谷区だけでも、平成四年三月現在で千七百五十二人の十八歳未満の子供が 認定患者になっているということで、この大気汚染の改善というのはもう待ったなしの状態だというふうに思うわけでございます。  ともかく、何とか実効ある大気汚染防止策を講じてもらいたいというのが住民の皆さんの切なる要求でございまして、このことについて何点か質問させていただきたい、こう思います。  二月二十三日に、東京都の自動車交通量対策委員会の最終報告が出ました。現状では二〇〇〇年の基準達成は事実上不可能ということで、具体的には、事業所ごとの総量規制あるいは一定区域への走行量、乗り入れ規制も検討すべきであるというかなり踏み込んだ報告がなされているわけでございます。  環境庁として、二〇〇〇年の基準達成に向けてどのような見通しを持って今やっていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  310. 入山文郎

    ○入山政府委員 自動車NOx法の基本方針に盛り込まれました施策のうち、車種規制でございますとか単体規制でございますとか、あるいは低公害車を普及していくといったこと、それから物流、人流、交通流対策といったような施策を、関係省庁、関係地方公共団体と緊密に連携をとって推進していけば、二〇〇〇年度までには環境基準のおおむねの達成は可能であるというように私どもは思っております。
  311. 井上義久

    井上(義)分科員 今後東京都がこの自動車NOx法に基づいて、当然総量削減計画を策定するということになるわけですけれども、今御答弁がございましたように、関係省庁と協議をしてということになるわけですけれども、先ほど申し上げましたこの東京都の最終報告でも、事業所ごとの総量規制あるいは一定区域への走行量、乗り入れ規制、これをやらなければ達成できない、こういうように言っているわけでございます。  一つは、きょう来ていただいておると思いますけれども、運輸省はこのことについてどのようにお考えなのか、それからまた、東京都がそういう削減計画をつくっていくということについて、環境庁としてどういうアドバイスをなさるつもりなのか、両省にお聞きしたいと思います。
  312. 洞駿

    ○洞説明員 お答え申し上げます。  私どもといたしましても、NOx法に基づきます基本方針の各施策を総合的に講ずることによって、二〇〇〇年までの環境基準を達成すべく一生懸命頑張りたいと考えております。  先生指摘の東京都の報告の中には、自動車の交通量抑制に関する乗り入れ規制とか、事業所ごとの総量規制の提言がなされておりますが、私どもはこれも一つの貴重な見解であると受けとめております。ただ、この報告書の中にもございますが、これらの提案については、各方面に多大な影響を及ぼすものでございますし、その具体化に当たっては、関係機関を交えてさらに詳細な検討をしていくべき問題であろうかと考えております。  いずれにいたしましても、今後NOx法に基づきまして、東京都においても、私どもの出先も交えていろいろな議論がなされて、具体的な削減計画がつくられていくわけでございますので、同計画の中に盛り込まれました施策につきましては、私ども運輸省といたしましても、その円滑な実現のために最善の努力、支援を行っていきたいと考えております。
  313. 入山文郎

    ○入山政府委員 環境庁といたしましても、地方自治体が地域の実情に応じてそれぞれ工夫をしていただく、いろいろな施策を独自に考えていただくということは大変結構なことと思っております。  今回のことにつきましても、具体的にどういうことをやろうとしているのかということにつきまして相談をいたしまして、有効なものであれば、私どももできるだけの支援をしていきたい、このように考えております。
  314. 井上義久

    井上(義)分科員 NOx法制定の経緯もこれありですので、環境庁としてはぜひ頑張っていただきたい、こういうふうに思います。汚染の実態は非常に厳しいところに来ておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  もう一点、NOxとともに、いわゆるDEP、ディーゼル排気微粒子の有害性というのが問題になっているわけでございます。国立環境研究所の研究結果、先般発表されておりましたけれども、それによりますと、ディーゼルエンジンの排気中に含まれ、環境汚染の原因とされる窒素酸化物以外にディーゼル排気微粒子、いわゆるDEPと呼ばれる微細物質が器官内で肺組織を壊し、ぜんそくと同じ症状を引き起こす本体であることがこれまでの研究で裏づけられた、そういう発表がなされております。  このDEP対策、これから非常に大事だと思うのですけれども平成元年の中央公害対策審議会の答申で、DEPの長期目標、十年以内に達成をするという答申がなされておるわけですけれども、このディーゼル排気微粒子が都市型ぜんそくを誘発している原因であるということがほぼこの研究で明らかになっておるわけでございますので、これは余り悠長なことを言っていられない、早急に対策を講ずるべきだ、こういうふうに思うわけですけれども環境庁、どうでしょうか。
  315. 入山文郎

    ○入山政府委員 御指摘の研究につきましては、私どもも承知をいたしております。ただ、この結論につきましては、新しい知見であるということは私どももそのように考えておりますけれども、直ちに人体に当てはめるということにつきましては、まだまだこれから先に研究を進めていかなければならないのではないか、その研究について、将来の研究について注目をしてまいりたいと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、ディーゼル排出ガス、NOxのみならず粒子状物質につきましても、これから環境基準を達成すべくいろいろな施策を講じていかなければならない重要な問題であるというふうに私ども認識はいたしております。御指摘のように、長期目標それから短期目標、できるだけ早く達成するように、これから頑張ってまいりたいと思っております。
  316. 井上義久

    井上(義)分科員 これは公害対策で私がいつも感じてきたことでございますけれども、私が生まれた、私の故郷というのは富山なのですけれども、富山はイタイイタイ病で大変有名になったところでございますけれども、たまたま発見者が私の親友のおじさんということもあって、このイタイイタイ病なんかに非常に強い関心を持ってきたわけですけれども、やはり疑わしいという段階で早急にこの対策を講ずるということがこういう公害対策の一番大事な点だろうと思うのです。  一つの知見ということで、この国立環境研究所のこういうデータが出たわけですから、やはりそれを重要視して、早急にという御答弁いただきましたので、ぜひしっかりやっていただきたい。十年ということではなくて、大幅に期間を短縮してやっていただきたい、こういうふうに思います。  その次に、酸性雨の問題につきましてお伺いしたいと思います。  先般、私ども公明党の東京都本部で、東京全域で酸性雨、酸性の雨、それから酸性雨つららあるいは酸性雨によると見られるコンクリートの建造物破損状況実態調査を行いました。調査の結果、都内全域にわたってPH四から四・五の酸性度の高い降雨が確認されたわけでございます。また、酸性雨つららとか建造物の破損も各所で見られておりまして、酸性雨被害というものが顕在化をしている。  また、この調査結果に基づきまして東京都にも申し入れをいたしまして、東京都としても調査をやるということで今スタートしているわけでございますけれども、この酸性雨の場合、特に私は心配になるのは人体への影響、これが本当にどうなのか。やはりこれは被害が出てからでは遅いわけでございまして、酸性雨の総合的な研究対策、酸性雨を防止するということも当然でございますけれども、この健康被害ということについて早急に研究を進めるべきではないか、こういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  317. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 酸性雨につきましては、も う先生御高承のとおり、欧米におきまして、まず湖沼、森林等の生態系に対する深刻な影響ということで、地球環境問題の典型的な問題の一つであるということで国際的な関心を集めているところでございます。我が国では、この酸性雨問題、昭和五十八年度から調査を開始をいたしておりまして、順次、第二次酸性雨対策調査、これは昭和六十三年度からやっているわけでございます。  このような状況で、今後とも調査研究を充実してまいるということでございますけれども、お尋ねの酸性雨による人への影響につきましては、先ほど申しましたように、欧米においても生態系に対する影響が中心でございまして、被害等の影響に係る報告はないというふうに承知をいたしてございます。しかし、住民の不安を解消するためにも、人の健康への影響について解明すべきという先生の御趣旨だと思いますが、私どもといたしましては、情報収集に努めてまいりたいというふうに思っております。
  318. 井上義久

    井上(義)分科員 それから、酸性雨の日本における降雨の大きな原因の一つに、中国大陸における硫黄酸化物の大量排出ということが一部に指摘されているわけでございまして、これはどの程度影響があるのかということは私も余り承知しておりませんけれども、いずれにしても、この東アジア地域における環境破壊というものに対して、やはり日本が率先してこの防止のために取り組むということは大変重要だろう、こう思うわけです。この発展途上国への技術供与等も含めて積極的な環境ODAの展開を図るべきであるということで、この面における環境庁考えをお伺いしておきたいと思います。
  319. 加藤三郎

    ○加藤(三)政府委員 中国におきましては、もう先生御高承のとおり、主に石炭の大量消費に伴いまして硫黄酸化物あるいはNOx、さらにはばいじんによる大気汚染が深刻化しておりまして、中国における公害対策の最大の懸案の一つになっているというふうに私どもも観測をいたしております。また、特に南西部の中国の都市を中心に強い酸性雨が観測されているというふうにも聞いております。これらの問題に対します中国の取り組みを支援するためにも、我が国が有します技術なり経験なりを生かして協力を進めていきたいということでございます。  具体的に申し上げますと、環境庁におきましては、所管のODA予算によりまして、平成元年度から二年度にかけまして酸性雨問題を含む中国との環境協力の検討のための調査を実施をいたしておりますが、さらに中国を含む環日本海の諸国、具体的に申しますと、韓国とかロシアとかそういった国でございますが、そういった環日本海の諸国との地域環境協力を推進するための一助といたしまして、昨年の十月に、新潟におきまして環日本環境協力会議というものを開催をいたしてございます。さらに、東アジアにおきます酸性雨監視のネットワークの構想を策定するための新規の予算平成五年度の政府予算案に計上をいたしておりまして、国会の御審議をお願いしているところでございます。  また、外務省、JICAなどを通じまして、現在建設中の日中友好環境保全センター、こういったものを通じた協力におきましても、通商産業省などとも連携を図りながら、中国の酸性雨モニタリング及び脱硫技術等に関する技術協力を実施することといたしてございます。  環境庁といたしましては、これらの事業を通じまして中国の大気汚染問題の解決のための協力を推進してまいりたい、このように考えてございます。
  320. 井上義久

    井上(義)分科員 環境基本法についてお伺いしたいと思います。  今法制化の作業が進められているというふうに伺っているわけでございますけれども、焦点は、一つ経済的措置をどうするのか、それから二つ目環境基本計画の策定、それから三つ目は環境アセスの問題、これらが焦点になると思うのですけれども、この経済的措置、特に環境税導入等については、国民的なコンセンサスを得るということでかなり議論を要する問題だと思いますけれども、特に環境基本計画の策定、それから環境アセス、この問題だけはこの法案化に当たってぜひとも盛り込まなければいけない。とりわけこの環境アセスについてはぜひとも法制化しなければいけない、こういうふうに思っておるわけでございますが、状況はどうでございましょうか。
  321. 八木橋惇夫

    ○八木橋政府委員 先生指摘になりました環境基本法制の作業につきましては、昨年十月に中央公害対策審議会、自然環境保全審議会、両審議会の合同の審議の結果出されました答申をもとに、私どもでは、その答申の内容を最大限盛り込むような形で今政府間で調整を進めつつあるところでございます。成案を得ましたならば、国会に提出いたしまして、速やかな御審議を賜りたいと思って今鋭意努力中でございます。  そのうちの二つ、具体的に今作業経過がどうなっているのかという御質問があったわけでございますが、一つ環境基本計画の問題でございます。この点に関しましては、中央公害対策審議会の答申におきましては、国の環境政策の基本的な方針的事項や計画を国民の前に明らかにする適切な仕組みを環境基本法制に位置づけることが必要であるとされ、またこの中では、環境政策の理念を受けた長期的な基本方針、環境政策の中長期的な課題、体系的な施策を描くことが必要であるという指摘を受けているわけでございます。こういうことを盛り込んだ内容がどういうことであるかということは、私どもからすれば先生指摘のような道具立てが必要になるのじゃなかろうかというぐあいに考えるわけでございますが、これにつきましては、今鋭憲政府で努力中でございます。できるだけいい案をつくりまして御審議を賜りたいというぐあいに考えております。  第二の環境影響評価についてでございます。これにつきましては、この答申では、現行措置の実態や事業者の自主的な取り組みを踏まえながら環境影響評価の重要性、考え方を盛り込むことが重要であるということを言われまして、この考え方、その位置づけを法制的にしっかりやっておけというのがこの答申の趣旨だということでございまして、そのため、この答申の指摘に沿いまして、環境影響評価というものを基本法制に位置づける必要があるということで、私ども鋭意努力中でございます。これにつきましても、先ほど申し上げましたように、成案をできるだけ早く得まして、御審議を賜りたいと思っております。
  322. 井上義久

    井上(義)分科員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。  それからもう一点、最近いわゆる飲料水に対する不安が非常に高まっておりまして、水道水の異臭であるとかあるいは受水槽の衛生管理などいろいろな問題点指摘されて、水道水に対する不安を訴えるアンケート結果なんかもいろいろな形で出ているわけでございます。各省庁にまたがる問題でございますけれども、先般厚生省の水道水源の保全に関する有識者懇談会が報告書を提出して、今後の開発規制だとか農薬、肥料の規制など、かなり厳しい規制措置の検討が盛り込まれているわけでございます。この水道水源の水質保全に関して、環境庁としてどういうように取り組むお考えなのか。  それからまた、この報告書によりますと、水質汚濁防止法に基づく排水規制について、排出基準が排出場所に関係なく水質環境基準の十倍となっている現行法の規制をさらに強化すべきであるあるいは生活環境項目に関する排出基準の見直しなども指摘しているわけでございまして、排水規制について環境庁考えをお伺いしておきたいと思います。
  323. 赤木壯

    ○赤木政府委員 お答え申し上げます。  厚生省の水道水源の水質保全に関する有識者懇談会報告書が先月の四日に公表されたわけでございますが、当庁といたしましても、厚生省からその報告書の内容について説明を受け、現在、今後の対応についていろいろ調整を行っているという状況でございますが、報告書の中には、水質保全行政の分野にも踏み込んだ幾つかの提言がござい ます。当庁といたしましても、水道水源を含む公共用水域の水質保全につきましては、これまでも公害対策基本法に基づく水質汚濁に係る環境基準の設定あるいは水質汚濁防止法等に基づく排水規制、さらには水質保全のための計画の策定あるいは関連事業の推進等各種施策を進めてきたところでございます。まずこうした既存の制度を十分に活用することによって積極的に対応していきたいということが第一に重要であるというふうに考えてございます。  こういう考えから、現在も、一月に中央公害対策審議会答申が出されて、水質汚濁に係る環境基準の大幅な拡充の答申が出されたわけでございますが、これを受けて水質汚濁に係る環境基準を近日中に拡充強化して公表するということにいたしてございます。これが公表されますれば、これを達成するための排水基準あるいは地下水浸透規制あるいは廃棄物の処分基準の強化あるいは農薬の登録保留基準の改正など広範な水質保全対策を強力に展開していきたいというふうに考えてございます。今後とも必要となる施策について十分検討しながら、現行の対策の運用上改善を図る必要があるものがあれば、それについては的確に対応すると同時に、必要であれば制度の検討、見直しも含めて前向きに対応していきたいというふうに考えてございます。  また、お尋ねの水質汚濁法に基づく排水規制の話でございますが、現在排水基準については、水質汚濁防止法に基づきまして、総理府令で基準を定めてございまして、工場、事業場に対しての排水規制を行ってございます。お話がございましたように、この排水基準は、カドミウム等の有害物質につきましては環境基準値の十倍を排水基準値として基本として定めてございます。また、有機性汚濁などの生活環境項目につきましては、ナショナルミニマムということで必要な基準を定めておるわけでございます。  有害物質の十倍値ということについて御疑念が提示されたわけでございますが、一般に排出水の水質は、河川などに排出されるわけでございます。排出されますと、そこを流れる河川水などによって通常少なくとも十倍には速やかに希釈されるという想定の中でこういうふうにしておるわけでございます。  ただ、これらの排水基準というのは、規制対象事業場からの排水に適用される最低限の基準で、全国一律に適用されるというようなものでございまして、都道府県が水域の水量だとか流量だとかの自然的条件やあるいは水域に排出されます排出水の量だとか汚染状況だとかあるいは水道用水を含む各種利水状況などの社会条件から判断して、必要ならばいわゆる上乗せ規制ができるというふうな水質汚濁防止法三条三項の規定がございます。  また、同様に水質汚濁防止法による規制項目以外の項目につきましても、地域の実情に即した形で都道府県等の条例でいわゆる横出し条例というようなもので独自に排水規制を行うことも水質汚濁防止法の二十九条でもできるようになってございます。  したがって、実際にもこういう上乗せや横出し条例の制度を活用して、その地域実態に合った形で排水基準を定めているところが多いわけでございまして、またこれらの都道府県で条例で定める基準につきましても、一般的には地域実態に合わせて水道水源保全という面も十分配慮しながら対応しているというような実態でございます。  環境庁といたしましても、こういう制度を的確に運用した形でやっていただきたいというふうに考えてございますので、そういう趣旨で都道府県も指導していきたいというふうに考えてございます。
  324. 井上義久

    井上(義)分科員 最後に長官、環境行政の重要性、また環境対策に対する国民のニーズは大変高まっているわけでございまして、環境行政を一体的かつ計画的に推進する行政組織、強力な行政組織が不可欠であると思うのですね。これまで環境省、いわゆる環境庁を省に格上げするというようなことも含めて主張してきているわけでございますけれども、この環境行政の機能強化ということについて環境庁長官の御決意を承っておきたいと思います。
  325. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 井上先生から今大変重要な御発言をいただいたわけでございますが、環境庁としましては、現在の組織、機構を、全力でこれを運用していくということでございまして、省の場合につきまして、これは国の問題でございますものですから、あくまでも私に課せられた使命は、現在の庁の組織の中でこれを最大限に力を発揮できるように運用するということで取り組んでいこうと思っています。
  326. 井上義久

    井上(義)分科員 終わります。
  327. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて井上義久君の質疑は終了いたしました。  次に、川島實君。
  328. 川島實

    川島分科員 大変遅くまで御苦労さまでございます。十時にはきちっと終わりますので、ひとつ簡潔に御答弁をいただきたいと思います。  私は、既に通告をいたしております三河湾の浄化推進対策についてお尋ねをいたします。  三河湾は、外海水との交換が少ない閉鎖性水域であるため汚濁物質が滞留しやすく、富栄養化、ヘドロの堆積による水質悪化などの発生をとめるため、周辺地域十七市町村を初め愛知県ほか七市町村の協力もいただき、懸命にかつての美しい、恵みの多い三河湾を再び取り戻すために全力を挙げて努力をいたしておるところでございます。  具体的な浄化対策として、下水道の整備、生活排水の浄化、産業排水の浄化、海底の浄化、地域住民の意識の高揚など施策が行われてはおりますが、さらにこれらの事業の推進を求めているところであります。これらの浄化対策の進捗状況、今後の見通しについて、まずお伺いをしていきたいと思います。
  329. 赤木壯

    ○赤木政府委員 三河湾等の広域的な閉鎖性海域におきましては、海水が交換しにくいという地形的な要因に加えまして、また人口や産業の集中等のために環境基準の達成がなかなか困難な状況にあるということでございます。  三河湾におきましても、依然として環境基準未達成の水域が残されてございまして、赤潮が発生するということなど水質の改善がいまだ十分でないことから、三河湾を含む伊勢湾につきまして、現在、平成六年度を目標年次とする第三次総量規制を実施しておるところでございます。  この第三次総量規制では、愛知県全体で発生する汚濁負荷量の七%強を平成六年度までに削減していくということを目標として設定してございます。これを達成するために、県として生活排水処理施設の整備の促進等生活排水対策をやると同時に、総量規制基準の強化等の産業排水対策等の諸施策を総合的に推進しているという状況になっておるわけでございます。  環境庁といたしましても、こういうことをさらに強化していくために、昨年九月に、閉鎖性海域における富栄養化を防止すると同時に、これらの水域の水質改善を図るためということで、海域の窒素、燐に係る環境基準の設定等につきまして中央公害対策審議会に諮問をいたしておりまして、現在この内容について御審議をいただいておるところでございます。  今後は、こういう答申を受けますれば、それに対応した形での必要な施策を進めていきたいというふうに考えてございます。
  330. 川島實

    川島分科員 非常にいろいろな施策を行っていただいているわけでございますけれども、海はよくならない、汚れる一方。十七市町村でいろいろ協議をしながら施策を講じているのですが、あと取り残されておりますのは、市町村がみんなが協力をし合って、家庭から出る合成洗剤の汚染、それはもう台所の洗剤、それからふろ、トイレの洗剤、おのおの基準が違うようですけれども、これらが非常な影響を与えている。それから農薬の汚染、これらが問題になっているわけでございます けれども、地球に優しい、蛍だとかオタマジャクシだとかメダカだとかザリガニだとか、そういうものが河川に生きれる、生物が生きれるような、そういう施策を講じてもらいたい。どういう基準、どういう形をとろうともそれは結構ですけれども、市民なり県民なりが見える形で、結果的にそういうものが生物と共存できる、地球に優しい、そういう地域づくりをしたい、こういう願いがあるわけでございますけれども、これに対する対策お願いをいたしたいと思います。
  331. 赤木壯

    ○赤木政府委員 今農薬の話や家庭排水の対策についてお尋ねがあったわけでございますが、農薬につきましては、今までと違って、先ほど申し上げました新たな環境基準を設定するという中で、新たにチオベンカルブ等四項目を環境基準として農薬に追加いたすことにしてございます。そういうものを追加したことによって、今度排水基準等いろいろ検討していかなければいけないわけですが、そういうことの対策充実することによって環境中での農薬の排出についての対応もしていきたいというふうに思っております。  また、生活排水についてでございますが、生活排水は水質汚濁の主な要因の一つであるということで、これも強力に対策を推進していかなければいけないというふうに考えてございます。水質汚濁防止法も平成二年に改正されまして、生活排水対策と取り組むような規定も充実されたわけでございまして、こういうものについても、生活排水対策重点市町村というようなのを指定しながら、そこで計画をつくっていく。その計画の中では、住民意識の啓発も含め、さらにいろいろな排水規制その他生活排水をきれいにする事業の推進をどうやっていくかということを内容とした計画をそういう市町村でつくっていただいて、これで地域での生活排水対策を一層強化していくという制度でございます。  三河湾なんかの地域でも、こういう制度に乗っていろいろ事業をやっておられるところもあるわけでございます。生活排水対策内容というのは、やはり基本は下水道等の生活排水処理施設を整備していかなければいけないということでございます。下水道の整備がいかないところであれば、合併浄化槽等を整備していく等、いろいろのことをやっていかなければいけないということだと思いますが、それのほかにも、各家庭での台所での汚濁負荷の削減に努めるということも非常に重要だというふうに考えておりまして、住民に対する啓発普及もあわせてやっていただかなければいけないというふうに考えてございます。  今後とも、こういう制度がありますので、これは地域指定だとか計画策定はまだ緒についたばかりでございます。これから、ひとつこういう制度を運用しながら、その実が上がるように、我々としても推進していきたいというふうに思っております。  洗剤等のお話もあったわけでございます。また、蛍、タニシ等の生物の保護をするための農薬の規制のお話もあったわけでございますが、環境庁では、農薬による生態影響問題が非常に重要なことであるということで、従来から、その評価手法等につきまして、内外の知見を集積してきてございます。平成五年度から、新たな野生生物への農薬の影響試験を行って、その結果を用いて、農薬の影響分類基準とか農薬の使用上の留意点を作成していきたいというふうに考えておるわけでございます。先ほど申し上げました一月の中央公害対策審議会の答申の中でも、水生生物や生態系への影響についても考慮した環境基準というものについても早急に検討していく必要があるという御指摘もいただいておるわけでございます。  我々としても、まだ知見、十分集積されてございませんけれども、今後とも、専門家の御意見も聞きながら、こういう問題にも的確に対応していきたいというふうに考えてございます。
  332. 川島實

    川島分科員 東北の方では、合成洗剤を廃止して、条例でもって合成洗剤を使わさない、そのかわりで地域をよみがえらせた、こういう政策をとっている市町村もあるように聞いております。  十七市町村も、そういう政策をとったときに、合成洗剤にかわる形のそういう洗剤を使用したときに、厚生省なり環境庁なりがきちっとした助成策をとっていただける、こういう形で目に見える施策を講じてもらいたいと思います。農林水産の関係でも、農薬がきちっと生物と共存できる、目に見える形の政策をお願いをしておきたいと思います。  それから、三河湾は閉鎖性で、豊川の水が少なくなると海が汚くなるという学者の結果がデータとして出ている。それは、今までは水の量が多かったから、海水が来て浄化作用をして、海へ汚れを出していくという作用があったわけですが、年々水が少なくなってきているわけですから、その浄化作用がなくなる。  そこで、昔、愛知県が計画をしておりました、渥美半島をぶち抜いて太平洋と三河湾とをつなぐ浄化の運河構想が検討されました。昨年運輸省がこれらのことについて再度模型をつくって調査をした。特に、今の太平洋側と三河湾との海の格差というのは、潮の満潮期で一メーターぐらいありますので、自然流域できれいになるというふうに承っているわけでございますが、その成果の件についてお伺いをしたいと思います。
  333. 門司剛至

    ○門司説明員 お答えいたします。  運輸省では、従来から実施してきました公害防止事業などに加えまして、昭和六十三年度より水質、底質の改善や生物相の回復等を目指して、汚染の著しい海域で覆砂であるとか、あるいは海浜造成を行う海域環境創造事業を行ってまいりました。  三河湾におきましても、国の直轄事業として、港湾区域外の一般海域で覆砂を行う予定であり、現在、調査を実施中でございます。  また、港湾管理者が行うものといたしましては、三河港蒲郡地区における水質、底質の改善の事業、あるいは市民のレクリエーションにも利用可能な海浜の整備を行うなどを実施しております。また、衣浦港におきましても、平成三年度から汚泥のしゅんせつを行っております。  ただいまお話のございました渥美半島横断運河の水質浄化効果に対してでございますが、この調査は、昭和四十年代後半の三河湾臨海工業開発に合わせまして、一万五千トン級の船が伊良湖水道を通過しないで直接三河港に入港できる運河構想として、昭和四十六年から五十年ごろに愛知県で検討されたものであり、運河開削による水質浄化効果についても若干の検討がなされたと聞いております。  一般に、閉鎖的な海域の水質の浄化については、導水等も有効な手段の一つであると考えられますが、御指摘調査で構想されたような大規模な運河の開削については、水質のみならず干潟等の周辺の自然環境地域社会に与える影響も大きいものと予想されることから、慎重に対処する必要があると考えております。
  334. 川島實

    川島分科員 運輸省が模型をつくって検討をしたという事実関係はございませんか。
  335. 門司剛至

    ○門司説明員 本格的な検討ではございませんが、模型実験として、その一部、水質改善効果をいろいろ検討する中で、そういうものも一つのケースとして検討した事実がございます。
  336. 川島實

    川島分科員 昨年質問をしたときから、いろいろ地元で聞いているわけですから、そういう検討結果も、実験者の人の声は、一メーターの格差があるから十分浄化対策として可能性がある、こういうふうに承っているわけですから、そのことをきちっと言っておいていただきたいと思います。  次に、油ケ淵の浄化推進対策についてお尋ねをいたします。  油ケ淵は、碧南市、安城市、西尾市、高浜市の、西三河の中核にある四市の河川の水系を流域とした湖沼ですが、周辺は地盤が海面と同じ程度で、排水の不良地帯であり、汚染が年々ひどくなってきております。しかし、愛知県を中心とした環境保全の重点施策をずっと講じてまいりましたので、大分よくなりましたけれども、現在の下 水工事の進捗率、河川改修、環境保全等の対策についてお伺いをしておきたいと思います。
  337. 亀田泰武

    ○亀田説明員 油ケ淵関連の下水道事業でございますが、現在、矢作川・境川流域下水道の矢作川処理区それから衣浦東部処理区の事業並びに関連する公共下水道事業を実施してございまして、その整備に努めているところでございます。  矢作川処理区につきましては、平成三年度末に供用開始となりまして、関連する安城市におきましては、平成四年度末に流域下水道に接続見込みでございます。また、高浜市、碧南市等を対象といたします衣浦東部処理区は、第七次下水道整備五カ年計画中に供用開始する予定で、現在建設中でございます。  建設省といたしまして、油ケ淵の水質保全生活環境の改善のため、下水道の整備、非常に重要であるという認識に立ちまして、その整備促進に努めてまいる所存でございます。
  338. 川島實

    川島分科員 ひとつ、その河川改修等を含めまして、環境対策に万全を期していただきたい。ワーストスリーの中に入っている湖沼でございますので、愛知県としても全力を挙げて今頑張っておるところでございます。  次に、長良川の河口ぜきの建設についてお尋ねをいたします。  環境保全か、治水、利水かの議論の中で、建設が着々と進んでおります。河口ぜきは、自然を愛する世界の人々が我が国の河川行政を問うておる、こう言っても言い過ぎではないと思います。  一九六八年、当初、利水目的が前面に出ておりました。その後、見込んだほどの水需要がないことがわかり、現在は塩害防止の目的が強調されております。長良川は、本州に残る唯一の本流にダムがない川で、貴重な魚類も住んでいるため、自然保護を唱える市民グループが運動を展開し、反対運動は全国的に、世界的にまで広がってきたところでございます。反対グループは、自然保護には河口ぜきはもう必要ない、さらに治水や利水上も必要ないと主張しておるわけでございますが、建設省はどのような御所見をお持ちなのか、お伺いをしておきたいと思います。
  339. 坂本忠彦

    ○坂本説明員 お答えいたします。  長良川河口堰は、水害の危険に脅かされております長良川沿川の住民六十七万人の生命財産を守るために治水上不可欠な施設であるとともに、中部圏発展のために必要な水資源をあわせて確保する事業でございます。  今川島委員がダムがない自然の川であるというふうにおっしゃいましたが、確かに本流に大きなダムがないため、また下流部は逆に非常に洪水の危険にさらされている川でございまして、我が国の中でも最も危険な河川の一つというふうに認識しておるところでございます。昭和三十四年の伊勢湾台風あるいは昭和五十一年九月の安八町での破堤等大きな災害を受けております。地元の人々の安全のためにも、一刻も早く治水事業を進めなければならないと思っておるところでございますが、この地域におきまして水害を防ぐためには、大規模なしゅんせつ、川底を掘ることが必要でございまして、これに伴って不可避的に塩害が発生いたしますので、その潮どめぜきとして長良川河口堰をつくるものでございます。  また、利水面につきましては、水は生活を支える重要かつ基本的な資源でございまして、将来の渇水による甚大な被害を防ぐためにも水資源開発施設としての備えが必要であると思っております。水の利用につきましては、愛知県におきましては、長良川河口堰の完成早々に河口ぜきの水を使う予定といたしておりますし、三重県においても、北伊勢地域のみならず広域的な水の利用を考えておるところでございます。  もとより環境保全には十分留意をしながら、地元の三県を初め関係市町村長の事業の早期完成についての強い促進要望を踏まえて、平成六年度の完成を目指し、事業を進めていく所存でございます。
  340. 川島實

    川島分科員 質問は本当に短くやっています。そして余分な質問は今やめているのですよ、時間の関係もありまして。だから、ひとつ簡潔な答弁をいただきたいと思います。  建設省は昨年環境庁と打ち合わせして、水質シミュレーション、既往調査結果の検証、魚類のカジカ類の補足的調査、改変予定の高水敷の動植物の補足的調査、この三項目を行っております。その結果は、周辺住民、特に市民グループ等、これらの結果について納得をされたかどうか、簡単に。
  341. 坂本忠彦

    ○坂本説明員 この調査につきましては、調査成果を広く一般に公表するとともに、関係の市町村を初め住民の方々に数多くの説明会を開いておるところでございまして、御理解をいただいたものと考えております。
  342. 川島實

    川島分科員 反対市民グループは全然納得をいたしておりません。詳しいことを公表されないという態度をとっております。  建設省は、環境対策として当初河川の両側に自然流下式の呼び水式魚道の建設を行う、その後環境保全対策としてさらに両側にもう一度ロック式魚道をつくることを決めました。その後、いろいろとこの呼び水式魚道、ロック式魚道を改革して今日に至っておるわけです。  しかし、今日、反対グループが全国的、世界的になって注目を集めておるのに、なぜ建設省はこの残されたゲートの最後の工事のところを、これが環境保全のために一番いいと言われておりますロック式魚道をつくらないのかという疑問が残るのです。昨年私がそのことを質問いたしましたら、お金が倍かかるからなかなか難しい。地球規模の環境を守るこの時代に、先進国の日本環境対策として本当に先頭に立ってやらなければならない時代に、お金がかかるからできないんだという理屈では通らないと思います。このことについて御所見をお伺いしたいと思います。
  343. 坂本忠彦

    ○坂本説明員 長良川河口堰には、現在呼び水式の水路とロック式、いわゆる間門式とも呼ばれておりますが、こういう魚道をつくる予定にいたしております。  この魚道は、この事業を始めるに当たりまして、木曽三川河口資源調査団というチームを編成いたしまして、学識経験者の方々の御指導を得て開発した方式でございまして、魚が川の両岸を上っていくという習性を踏まえて、効率よく魚道に魚を集めるために、勢いのいい水を出して、それに乗せて魚を集めるという呼び水式水路と、余り遊泳力のない、上流に向かって泳ぐ力の弱い魚を、二つの水門を操作することによって、その中に誘い込み、また上流に上げる、そういう仕組みで魚を通すといういわゆるロック式魚道を設置することにいたしておるわけでございます。また現在……(川島分科員「余分なことは必要ないですよ、なぜつくらないかということを聞いているんです。一言で済む」と呼ぶ)そういう二つの水路、それから追加調査で実施することを検討いたしましたせせらぎ魚道という魚道をつくることで十分に対処可能であると考えております。
  344. 川島實

    川島分科員 これほどまでに世界的な問題になっている長良川、建設が始まって、あとゲート五つ残されたものをこれからやってやれぬことはない。なぜそれをこたえてあげないのですか。先進国として環境問題にこういうふうにこたえておりますという姿勢をなぜ見せてあげることができないのですか。たかがお金がかかるだけじゃないですか。そして、その負担をする市町村の住民にも住民投票でその是か非かを問いなさいと言っても、なかなかそれをやろうとしないんじゃないですか。  環境庁長官、三河湾のいろいろな閉鎖的な、海が汚れ、これ以上きれいにならない、おいておけば汚れるだけだ、こういう緊迫した状況、長良川のように日本でただ一つ清流だと言われているものが、幾ら反対しても、ストライキをやっても、命をかけるストライキをやっておるのに少しもそういう気持ちを酌み取ろうとしない、こういう行政のあり方が問われているわけでございますが、環境庁長官の御所見をいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  345. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 先生の御質問に直接お答えになるかどうかはわかりませんけれども、我々が、すべての生物が生きていくために大事な環境というのはまず水であります。それから大気であります。土であります。したがって、その中の良好な水質の環境を維持していくということは政府の重要な責務でもあるし、これは政府だけではなくて人類の責務でもあると考えております。  したがいまして、環境行政としましては、その大事な水質をどうするかということで、水質環境基準の設定も実は中公審の答申を踏まえて決めることにしております。そしてまた、水質汚濁防止法等に基づく排水基準あるいは下水道等の生活排水の処理施設、そのようなものの整備、これを図って、総合的に水質を保全する作業を計画して進めていきたいと思っております。
  346. 川島實

    川島分科員 ありがとうございました。終わります。
  347. 柳沢伯夫

    柳沢主査 これにて川島實君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総理府所管環境庁についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会補充質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  分科員各位の御協力により、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後十時散会