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1993-03-05 第126回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年三月五日(金曜日)     午後一時十三分開議  出席分科員    主 査 唐沢俊二郎君        粕谷  茂君     佐藤 信二君        谷津 義男君     加藤 万吉君        北川 昌典君     竹内  猛君        河上 覃雄君     草川 昭三君        鳥居 一雄君     冬柴 鐵三君        古堅 実吉君     兼務 阿部喜男君  兼務 五十嵐広三君     兼務 上原 康助君  兼務 川俣健二郎君     兼務 小松 定男君  兼務 斉藤 一雄君     兼務 野坂 浩賢君  兼務 元信  尭君     兼務 吉岡 賢治君  兼務 小沢 和秋君     兼務 塚本 三郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 河野 洋平君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣 鹿野 道彦君         (総務庁長官)         国 務 大 臣 中山 利生君         (防衛庁長官)         国 務 大 臣         (科学技術庁長 中島  衛君         官)  出席政府委員         内閣参事官         兼内閣総理大臣 山本 正堯君         官房会計課長         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣 伊藤 博行君         官房内政審議室         長         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣 谷野作太郎君         官房外政審議室         長         内閣法制局第一 津野  修君         部長         内閣総理大臣官 高岡 完治君         房審議官         国際平和協力本 柳井 俊二君         部事務局長         警察庁長官官房 石川 重明君         会計課長         総務庁長官官房 八木 俊道君         長         総務庁長官官房         審議官     池ノ内祐司君         兼内閣審議官         総務庁長官官房 瀧上 信光君         会計課長         防衛庁参事官  高島 有終君         防衛庁参事官  河路 明夫君         防衛庁参事官  三井 康有君         防衛庁参事官  太田 眞弘君         防衛庁長官官房 村田 直昭君         長         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練 諸冨 増夫君         局長         防衛庁人事局長 秋山 昌廣君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 中田 哲雄君         防衛施設庁長官 藤井 一夫君         防衛施設庁総務 竹下  昭君         部長         防衛施設庁施設 江間 清二君         部長         防衛施設庁建設 黒岩 博保君         部長         防衛施設庁労務 荻野 貴一君         部長         科学技術庁長官 興  直孝君         官房会計課長         科学技術庁長官 長田 英機君         技術政策局長         科学技術庁研究 石井 敏弘君         開発局長         外務省国際連合 澁谷 治彦君         局長  分科員外出席者         衆議院事務総長 緒方信一郎君         参議院事務総長 戸張 正雄君         国立国会図書館 加藤木理勝君         防衛庁経理局会 森田 好則君         計課長         防衛施設庁総務 荒木 丈彦君         部会計課長         外務大臣官房審 加藤 良三君         議官         外務省アジア局         南東アジア第一 山本 忠通君         課長         大蔵省主計局主 坂  篤郎君         計官         大蔵省主計局主 藤井 秀人君         計官         文部省学術国際 長谷川正明君         局学術課長         文化庁文化財保         護部伝統文化課 吉澤富士夫君         長         自治大臣官房情 牧野 清文君         報管理官         最高裁判所事務 今井  功君         総局民事局長         予算委員会調査 堀口 一郎君         室長     ――――――――――――― 分科員の異動三月五日   辞任         補欠選任   竹内  猛君     志賀 一夫君   松浦 利尚君     北川 昌典君   草川 昭三君     冬柴 鐵三君   古堅 実吉君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   北川 昌典君     永井 孝信君   志賀 一夫君     渋谷  修君   冬柴 鐵三君     鳥居 一雄君   東中 光雄君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   渋谷  修君     竹内  猛君   永井 孝信君     池田 元久君   鳥居 一雄君     森本 晃司君   山原健二郎君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   池田 元久君     加藤 万吉君   森本 晃司君     河上 覃雄君   吉井 英勝君     古堅 実吉君 同日  辞任         補欠選任   加藤 万吉君     松浦 利尚君   河上 覃雄君     井上 義久君 同日  辞任         補欠選任   井上 義久君     草川 昭三君 同日  第二分科員野坂浩賢君、第三分科員阿部喜男  君、川俣健二郎君、第四分科員吉岡賢治君、第  五分科員上原康助君、小沢和秋君、第六分科員  五十嵐広三君、元信堯君、第七分科員小松定男  君、斉藤一雄君及び第八分科員塚本三郎君が本  分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成年度一般会計予算  平成年度特別会計予算  平成年度政府関係機関予算  〔皇室費国会裁判所会計検査院内閣及  び総理府所管経済企画庁環境庁国土庁を  除く)並びに他の分科会所管以外の事項〕      ―――――◇―――――
  2. 唐沢俊二郎

    ○唐沢主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  平成年度一般会計予算平成年度特別会計予算及び平成年度政府関係機関予算皇室費国会裁判所会計検査院内閣及総理府、ただし経済企画庁環境庁及び国土庁を除く所管について審査を進めることとし、補充質疑を行います。  まず、国会所管について質疑の申し出がありますので、これを許します。元信堯君
  3. 元信堯

    元信分科員 私は、先日の当委員会一般質問におきまして、国会予算要求あり方について幾つか質問させていただきました。その中で、一つ二つ確認のために重ねて質問をいたしたいとまず思います。  現在の国会予算要求やり方が必ずしも財政法並びに予算決算及び会計令に沿ったものではないというようなことが事務総長から御答弁があったというふうに思います。法律があるわけですから、これに沿った執行が望ましいと思うわけでありますが、そういう事実が明らかになった上で、来年度予算要求、すなわち、それはことしの夏から秋にかけて行われることになろうかと思いますけれども、これを進めるについてどういうお考えであるか、その点伺っておきたいと思います。
  4. 緒方信一郎

    緒方事務総長 国会予算要求手続につきましては、去る二月二十四日の当予算委員会でお答えしたとおりでございます。先生からいろいろ御指摘をいただきました点につきまして、今後の取り扱いについては、今後一層よく検討を進めてまいりたい、かように存じております。
  5. 元信堯

    元信分科員 ぜひ議院運営委員会などで御討議をお願いしたいと思います。  仮定の問題ということになりますけれども、ちょっと大蔵省にも念のために伺っておきたいと思いますが、国会側から、財政法十七条の規定する手続に従ってきちんと予算要求が行われた場合に、大蔵省としてはどのように対処されるおつもりか伺っておきたいと思います。
  6. 坂篤郎

    坂説明員 お答えいたします。  先生指摘のような手続概算要求が行われることにつきましては、当然のことながら財政当局としては異存はございません。
  7. 元信堯

    元信分科員 それでは、その問題はそれまでにしておきまして、きょうは、国会会議録、私は過去二回ほど当分科会におきまして質問をしてまいりましたので、その問題について引き続き質問をしてまいりたいと思います。  国会会議録がもっと早く質問者手元に届かないかということについては、議員の各方面から大変強い要求があることは御案内のとおりだと思います。二十四日に前回一般質問をさせていただいたわけでありますが、きょうが五日、今日段階でまだ手元に届かないということでございまして、実際、一つ質問の上にまた次の質問をする上でも甚だ不便を来すということがございます。したがって、これを短縮するための方法について考えていきたいと思うのですが、まず、現状について伺いたいと思います。  きょうはこうして速記者が、今の時点では四人おいでなわけですが、実際には二人ずつというふうに承知をしておりますけれども、二人一組になって十分ずつ出て速記をして、そうしてそれを反訳して、こういうことになるらしいのですが、現在のこの速記あり方というのが何に基づいてこういう速記をされているか、その点から伺います。
  8. 緒方信一郎

    緒方事務総長 ちょっと今手元規則があれですが、たしか衆議院規則に、速記法に基づきということで明記してあったと存じます。
  9. 元信堯

    元信分科員 今の速記が始まったのは、私の伺っている限りではかなり古いことのように聞いておりまして、その当時は、今のような便利な録音機等もございませんで、速記符号によって速記をするのをただ一つ方法として、それの正確を期すために二人で一緒にやって、二重化することによって速記の誤りなきを期してきた、こういうことでないかと思います。しかし、最近は、テープレコーダーのみならず、この国会におきましてもテレビの撮影がされておりまして、ビデオにもおさめられておる。実は私、前回質問についてもビデオテープを何度も見直しまして質問あるいは答弁などを確認させていただいたわけでありますけれども、これだけこういう機械が進んでまいりますと、このやり方についてもそろそろ検討をしてみる、再検討してみる時期に来ているのじゃないかなと思います。  速記方法も、速記符号による速記やり方以外に、同じような効果をもたらすものとして、テープレコーダー録音したものをそのまま文章にしていくディクナーティングという方法もあるそうでありますし、あるいはまた裁判所等で用いられている速記タイプというようなものもありまして、これもまたその場で入力することによって日本語として自動的に反訳をされていく、こういうものだそうでありますけれども、そのあたりについて、国会として何か討議をされているようなことがあれば伺いたいと思います。
  10. 緒方信一郎

    緒方事務総長 いろいろ技術の進歩に伴いまして時代に合った方法を考えていくべきでないかという先生の御指摘は、全くそのとおりであると私どもも存じております。  ただ、速記につきましては、まずその第一段階としまして発言を何らかの形にとどめるという過程と、それを記録するというのがあるわけでございますけれども、なかなか究極的な、私ども余り技術のことは存じませんけれども技術というものがどうもまだ確立していないのじゃないかなという感じはいたしております。先生が例示をされましたソクタイプというようなものにつきまして、確かに裁判所では使用しておられると聞いておりますけれども、いろいろテープを見ながらもう一遍反訳をするというようなことで、かなりやはり時間が実際的にはかかるというようなことも聞いております。  それからディクナーションというのも、結局テープを聞きながらそれをまた書きとどめるということでございまして、専門の速記者がいないような場合にはかなり有効な制度であるというふうに聞いておりますけれども、ベテランの速記者がおります場合には、むしろそちらの方が能率的だという意見もありますし、いろいろなことがありまして、いろいろ議論はしておりますけれども、私ども基本的に、今衆議院につきまして、中で会議録を迅速にするための方法として議論しておりますのは、どちらかというと反訳段階を何とか合理化できないかという、そこから以降についていろいろ議論をしているというのが現在の状況でございます。
  11. 元信堯

    元信分科員 ディクナーションについて私の知っている限りで申し上げますと、テープ録音をして、それを速記符号を通さずにそのままタイプライターあるいはワードプロセッサー入力をしていくということだろうと思うのです。今の速記符号でなさっている場合は、一遍お持ち帰りになってそれを紙に書き直す、その段階ワープロ入力していくということになるわけでありますから、テープを聞きながらじかにワープロを打った方が実際には速いのではないかというふうに思われるわけなんですね。実際、民間でもさまざま、テープ起こしなどというような仕事があるようでありまして、ほとんど速記符号を用いてこれを行うということはないというふうに聞いておりまして、足踏みのスイッチで少しずつ戻しながら聞いてはそのまま入力していくというのが、ブラインドタッチと申しまして、手元を見ずに画面を見ながら入力できるようにさえなればかなり速いものではないかというふうに承知をしております。  そこで、これからどういうものを採用するかということは訓練の問題とも関連すると思うのですけれども、今速記士の皆さんは、衆議院参議院がそれぞれ速記士養成所をお持ちになってそこで訓練をされているように承知をしておりますけれども、その速記士養成所についてあらましをお聞かせいただけますか。
  12. 緒方信一郎

    緒方事務総長 御指摘のように、衆参会議録速記法で行うという関係上、速記者養成というのは不可欠であるわけでございまして、速記者というものが、これは国会速記を実用化する先駆けをなしているということもあったと思いますけれども国会がみずから速記者養成するということで当初から来ておるわけでございます。それで、衆議院参議院にそれぞれ別々に必要な生徒を募集いたしまして、必要な訓練を行って養成しておるという状況でございます。
  13. 元信堯

    元信分科員 この速記者養成の課程にも、今は速記符号を使って養成されているようでありますけれども、そろそろ時代要請によってディクナーションあるいはソクタイプ等、少し技術の幅を広げていく必要があるのじゃないか、そういう時代に来ているのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  14. 緒方信一郎

    緒方事務総長 速記者養成所教育内容につきましては、国会で取り上げられる広範な問題に速記者が十分対応できますように、折に触れて改善をしてきておるところでございます。反訳ワープロ化等、業務の機械化に即してカリキュラムを見直していくことも当然必要なことでございまして、今おっしゃいましたディクナーションについても、必要があればいろいろまた検討するということにやぶさかではございません。
  15. 元信堯

    元信分科員 ぜひ積極的に御検討いただきたいと思います。  先日来、私、国会の財政的な問題あれこれを申し上げましたが、財政自主権を確立すべきだというのが私の主張の趣旨でありますけれども、それは同時に、国会の方もそういう時代要請に見合った自己改革努力をするということが前提になければ、これはもう他力本願と申しますか、あちらこちらから物を言われて初めてということになりますので、ぜひ積極的な対応をお願いしたいと思います。  その対応の中で、これは答弁は結構ですけれども、従来からよく指摘されていることに、どうして速記法をやるのに衆参で別々に養成所を持たなければならないのか、一つあればたくさんじゃないか。速記法が違うからと言いますけれども、今申しましたように新しい技術も出てまいります、どこかで統一をした方がいいのじゃないかなということもありますので、あわせて御検討いただきたいと思います。  ところで、いろいろな方法があるかと思いますが、日本語反訳をされてまいりまして、これをフルテキスト・データベースとして利用していこうということをここ何年か私は続けて申し上げていますが、それぞれ衆参事務局あるいは図書館等で御検討されているやに伺っておりますが、現在どういうところまで検討が進んでおるかについて、この際承っておきたいと思います。
  16. 加藤木理勝

    加藤木国立国会図書館長 便宜私から御答弁申し上げます。  フルテキスト・データベースにして、端末機を操作すれば直ちに必要な会議録が出てくるような、あるいはその項目が出てくるような形にすることが最も望ましいことであります。それがまた国民の要望であり、先生方の御要望でもあるということはよく承知しているところでございます。  一昨年、先生からそういうような御意見がありまして、直ちに一昨年に両議院事務総長と私とで会合を持ちまして、会議録索引を、現在、索引国立国会図書館は作成しておりますが、その索引データベースをより引きやすいものにすること、それから会議録データベース化について検討すること、それからさらに国会全体のOA化と申しますか機械化についても検討する、そういうようなことを申し合わせた次第でございます。そして、それぞれの事務担当者の間でも検討を進めておりまして、会議録検索をより便利にすることの合意があったのでございますが、昨年さらに、会議録フルテキストにする方法についてどういうような進め方をしたらいいか、さらに協議いたしまして、これは光ファイルに、現在できております、活字化しております会議録については、フルテキスト・データベースにするのには準備がまだできておりませんので、活字化している会議録光ファイルにしまして、それをデータベース索引した会議録項目に従って検出して、それをとりあえずはファクスでお送りする、将来は、それをお持ちになっている端末機画面にも出し得るようにする、そういう方法をとることにいたしまして、現在作業中でございます。  さらにフルテキスト・データベースについては、これは将来の理想でございますので、先ほどから先生の御意見にありましたような、速記機械化対応して、技術面との進捗状況を見合いながらデータベース化を考えてまいりたいと思っております。  以上でございます。
  17. 元信堯

    元信分科員 フルテキスト・データベースにするためには、その前提として、電子符号によって記録がつくられねばならぬ、こういうことでありますが、これは両院事務局それぞれ御努力をいただいて、年次計画によって反訳ワードプロセッサー化が進んでおる、こういうふうに承りました。これが終わりますと、電子情報化は終わるわけでありますから、一応フルテキスト準備は整ったということになるかと思うのですね。それだけで全部できるわけではもちろんありませんが、第一前提が達成されたというふうになると思います。今のところ、衆議院参議院、それぞれどの時点で、今申しますワードプロセッサーによる反訳が終わるか、その辺の見通しについてお聞かせいただけますか。
  18. 緒方信一郎

    緒方事務総長 会議録作成過程でのOA化ということについて、先生も大変御指摘をいただいておりまして、私どもも鋭意真剣に取り組んでおるところでございます。  ただいまの反訳ワープロ化するということにつきましては、平成三年に記録部ワープロ二十四台を入れました。昨年は三十二台導入いたしました。新年度につきましても、記録部全課に必要なワープロが行き渡るように措置をいたしたいと考えております。  ただ、それは機械が入ったということでございまして、それに習熟をするということになるわけでございまして、ちょっと今、いつごろに完全にそういう体制に移れるとまだ断言できる段階でございませんけれども、できるだけ早い機会習熟をして、全部がワープロ化できるように、できるだけ早い時期に実現をしたいと考えております。その一環としまして、先ほどおっしゃいました速記者養成所での教育内容についても、ワープロを非常に重点的に取り上げてやってまいりたい、かように考えております。
  19. 戸張正雄

    戸張参議院事務総長 参議院記録部におきましては、本年度平成年度に、参議院には現場の速記者百名、大体五十組おりますが、これに全部、一組一台のワープロが行き渡るように配備いたしました。」  それで、先ほどおっしゃいましたようなフルテキスト・データベース、あるいは反訳ワープロ化、これを念頭に置きながら積極的に進めているところでございまして、今緒方事務総長からお答えがありましたように、いつということは確言はできませんが、なるたけ早い機会にそういった理想的な形に持っていきたいと考えております。
  20. 元信堯

    元信分科員 では、遅くとも最小限のインフラストラクチャーは来年度中にはそろうということですから、これは習熟といいましてもそんなに難しいことではありませんので、一年もすればできるのではないかなというふうに思います。そういたしますと、そこから先の準備というものが必要になってこようかと思いますが、両院事務総長さん、それから図書館長さん、御相談をいただいているようですが、私は、こういうものは初めが肝心だと思うのですが、やはり今の速記法みたいに衆参でまた方式が違うというようなことになるのは好ましくないだろうと思いますね。したがって、これはどこがどういう形でイニシアチブをとられることになるか、もちろん未定だと思いますが、ぜひ連携を十分にとっていただきまして、共通化できるところを最大限大きくして、使いやすいものにしていただきますようにお願いを申し上げておきたいと思います。  そこで、国会ではこういうことで、それなりにと申しますか着々とといいますか準備が進んでいるわけでありますが、自治体議会の方では、それぞれの自治体さまざま研究がされている、あるいは部分的にはそういうことが進んでいるところもあるようにちらほら承ることもあるわけでありますが、自治省でその辺のことをどういうふうに把握されているか、ちょっと承っておきたいと思います。
  21. 牧野清文

    牧野説明員 御説明いたします。  自治省で把握しております範囲で申し上げますと、都道府県議会につきましては、会議録データベース化している団体、十三団体でございます。また、市町村議会につきましては、全団体について把握できておりませんけれども、神戸市、埼玉県の北本市、滋賀県の大津市、そういった団体議会会議録データベース化を行いまして検索システムを稼働しておりますけれども、先駆的な事例というふうに受けとめております。  次に、これらの団体につきまして、その状況を見てみますと、入力のデータの内容でございますとか対象となる会議録の期間、検索方法、そしてオンラインの有無等につきまして差異がございますが、ほとんどがパソコンによる利用の状況でございます。
  22. 元信堯

    元信分科員 現状では、そういうシステムの業者のサイドから地方議会さまざま売り込みがあって、その結果行われているのが多いんだろうと思いますが、ばらばらに進んでまいりますと、でき上がってしまったものがこれまた自治体ごとに全部、極端に言えば違うということもあり得べきことでありまして、これは、それはいかぬというふうにはなかなか申しがたいわけでありますけれども自治体情報あるいは国会の情報もあわせて一元的に利用できるというのがやはり好ましいことではないかなというふうに思うわけです。したがいまして、それらの点について、ぜひ自治体間で相談をする場所、あるいはそれに国会も一枚加わって相談をするような仕組みをつくって将来に備えていただきたい。これは進み出すと割合早いと思いますので、ぜひ国会の側でもそういうことも視野に置いてお考えをいただきたいというふうに思います。  そこで、もう時間ですから、あと一、二伺っておきたいと思いますが、データベースについてはむしろやはり西欧諸国、アメリカ等で我が国より大分進んでいるというふうに思うのです。特にアメリカの議会は、もう会議が行われますと、翌日にはその会議録がオンラインで流されまして、それをさまざまに利用して国民の政治参加が行われているというふうに聞いております。あるいは、ECの議会なんかでも随分進んだやり方が行われているように承知をしているわけでありますが、国会からもそれらについて視察のチームを出して十分勉強していただくこともこれからのデータベース構築に当たって必要ではないかと思いますが、ちょっとお考えを承っておきたいと思います。
  23. 緒方信一郎

    緒方事務総長 いろいろ外国の制度について見聞を広め、勉強するということは、議員レベルでもちろんやっておられますし、私ども職員のレベルでも必要なことはいろいろ対処していかなければならないと考えておりますので、ただいまの御意見、十分参考にさせていただきまして、今後の問題として検討させていただきたいと思います。
  24. 元信堯

    元信分科員 これももう一つお願いになるわけでありますが、先回もちょっと申し上げたかとも思いますが、国会データベースができれば利用するというのは、議員もそうでありましょう、あるいは行政官庁も利用するでありましょう、それから広く国民の中でもこういうもののウォッチャーというのもいずれ出てくるだろうというふうに思います。したがって、今までの議論というのは、院内の都合と申しますか、こういうことができる、できないという観点から進めてきたところが多かったと思いますが、こういうものに対する需要ですね。どこにどういうふうに存在するかというようなことについて、一遍調べてみる必要があるのじゃないかと思うのですが、その辺について、何かお考えをお持ちでしたら承りたいと思います。
  25. 緒方信一郎

    緒方事務総長 今、私ども会議録というもので一番重点としておりますことは、正確な記録を正しく残すということでございまして、そこに全精力を傾注しておると申し上げてもいいかと思います。いつも御指摘のあります、例えば速報的なものができないかというようなこととか、いろいろ研究すべき問題はあろうかと思いますけれども、その辺について、国会自身がそういう一般の調査をみずからやるということがいいのかどうか、ちょっとその辺は私もよくわかりませんけれども、一般のニーズにこたえていかなきゃいけないということは当然だと思いますので、いろいろそういう点も研究させていただきたいと思います。
  26. 元信堯

    元信分科員 今、事務総長がいみじくもおっしゃいましたが、やはり視点が内向きといいますか、そういう点は否めないのじゃないかなと思うのです。これから我々が政治改革の中で考えていかなきゃならぬことは、内側だけで正確だの手落ちなくとか、これはもちろん基本として重要なことでありますけれども、より積極的に国民に語りかける国会でなくてはならない。情報発信源としての国会というような観点がこれからますます必要になってくるのじゃないかと思います。  そういう意味で、いろいろ御苦労はたくさんあろうかと思いますが、国民に開かれた、あるいは国民から積極的に注目される国会になるように、この点でもさらに一層御尽力いただきますようにお願いを申し上げまして、終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  27. 唐沢俊二郎

    ○唐沢主査 これにて元信堯君質疑は終了いたしました。  以上をもちまして国会所管についての質疑は終了いたしました。
  28. 唐沢俊二郎

    ○唐沢主査 内閣について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部喜男君。
  29. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 官房長官、どうも御苦労さまです。  私は、かねてからあなたの試案な人柄を尊敬しておるものの一人でございますが、きょうは、内閣の中枢にある官房長官として、実は私は、三権の分立、とりわけ立法府と行政府、いわゆる国会内閣とのあり方についてどういうふうにお考えか、まず官房長官のお考えを承りたいと思います。
  30. 河野洋平

    ○河野国務大臣 国会は国権の最高の機関でございます。国会におきましてさまざまな立法が行われ、その国会で御議論の末、成立をした法律に基づいて行政府は忠実にこれを執行するということであろうかと存じます。
  31. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 今、お答えいただきましたが、憲法の六十六条あるいは内閣法の二条、それから国家行政組織法等を見るまでもなく、いわゆる「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」こう定められておりますが、この「連帯して責任を負ふ。」ということをどういうふうに解釈されておりますか。
  32. 河野洋平

    ○河野国務大臣 内閣は、内閣総理大臣のもとで、おのおのの閣僚が一つの意思、方向に基づいて行政を執行するということだと存じます。
  33. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 その中で、特に内閣法の第三条、国家行政組織法の中の第五条に定められておる、各大臣が主任大臣として行政を分担するという明文があるわけですが、その限りにおいては、各大臣は内閣全体の一人として責任を負わなければならない、こう理解していいですか。
  34. 河野洋平

    ○河野国務大臣 つかさ、つかさがございますから、それぞれの担当する部分については、その担当する部分の最高の責任者でございますが、内閣を構成するという意味からは、例えば予算委員会でも、全閣僚が出席をして予算の審議に総括質問等で応じるということもその一つのあらわれと存じます。
  35. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 したがって、私は、一行政機関の長であるからというだけで内閣全体の責任を免るるものではない、そう考えていいですね。
  36. 河野洋平

    ○河野国務大臣 内閣総理大臣内閣を束ねて、その最高の責任者として全体の指揮をとるということになろうかと思います。
  37. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 もう一つお伺いしておきたいのですけれども、憲法六十六条等の解釈については、例えば憲法学者の宮沢先生等の解説があります。今ここに私が援用いたしますのは、宮沢先生の「日本国憲法 コンメンタール編」に書かれておる解釈でございますけれども、こう書かれております。   「国会に対し……責任を負ふ」とは、内閣が行政権の行使に関し、国会または各議院によつて批判その他のコントロオルを受ける地位に置かれ、国会議院 これは個々の議院です。  またはその議員に対して、そうしたコントロオルを実効的に行うべき各種の法的手段がみとめられていることを意味する。 もう一つ申し上げます。  国会または国会議員は、内閣の行政権の行使について、有効に批判し、これをコントロオルすることが、可能ならしめられる。内閣国会に対してかようにその批判を受ける地位に置かれていることが、本項にいう「内閣は、……国会に対し……責任を負ふ」ということの意味である。 こう解説されておりますが、この学説はいかがですか。
  38. 河野洋平

    ○河野国務大臣 正確を期すために、法制局から御答弁させていただきます。
  39. 津野修

    ○津野政府委員 憲法六十六条第三項の内閣の連帯責任ということの御趣旨についてのお尋ねかと存じますが、この憲法六十六条第三項におきましては、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」というふうに定めておりますけれども、ここに「国会に対し責任を負ふ。」と規定しておりますのは、内閣に帰属する行政権の行使につきまして、これを国会による民主的な統制のもとに置くという基本的な原理を明らかにする趣旨であるというふうに考えられまして、したがいまして、同項に言う「責任」というのは、これは本質的には法的責任と申しますよりは政治的な責任であるという、政治的責任を意味すると解すべきであるというふうに言われているわけでございます。「連帯して」ということでございますので、内閣が一体として責任を負うというのは常識的に言われている事柄でございます。それから、内閣の責任と申しますのは、これは行政権の全般に及ぶというふうに考えられるところでございます。  大体六十六条第三項についての解釈といいますか、考え方は以上でございます。
  40. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 今の御答弁、全く私の見解と同じでございますから、また学者の見解とも一致しておるというふうに考えますので、それを前提にして少し伺いたいと思います。  したがって、言えることは、行政機関の長は、国会のコントロールを受け、国会の意思を尊重して行政の執行に当たらなければならないのだ、そういうことが言えると思いますが、どうでしょうか。
  41. 河野洋平

    ○河野国務大臣 基本的にそのとおりだと思います。
  42. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 非常に意見が一致しましてスムーズに進んでおるようでございますが、そこで具体的にひとつお伺いをいたします。  一例を挙げますと、平成四年、昨年の四月十五日、まだ一年たっておりません。このときに、本院の逓信委員会において、郵便貯金法の一部を改正する法律案が委員会を通過をするに当たって附帯決議が付されております。ちなみに附帯決議の内容を読み上げます。「我が国の長寿社会の進展、国際化等に対応し、老人等の利子所得の非課税措置の拡充、国際ボランティア貯金の利子に対する税制措置の改善など、郵便貯金の利子に対する税制措置の改善・充実に努めること。」というふうに附帯決議が付されておりますが、この附帯決議というものは国会の意思であるというふうにお考えになりますかどうですか。
  43. 河野洋平

    ○河野国務大臣 附帯決議には法的拘束力はないと思いますが、国会の意思を示すものというふうに思います。
  44. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 そこで、さらにもう少し具体的になりますけれども、こうした趣旨を踏まえて、政府の部内においても、郵政省と大蔵省の間で協議が進められていた。たまたまその時期に行政機関の長、郵政大臣が交代をされました。その行政機関の長はいきなり、この法律で定められた、僕らマル老という言葉を使っていますが、老人の利子非課税の問題について、こういう制度はもともと私は反対なんだ、こういうふうに主張されたわけでございます。これは新聞等で明らかでございます。  そこで、私は問題が二つ起こると思うのです。その第一点は、憲法七十三条の、法律を誠実に執行するという内閣の責任があるはずでございます。この内閣の職務を忘れて、行政機関の長である人が法律そのものを非難をする、これは明らかに立法府を侮辱するものではないかというふうに思いますが、この点いかがでしょうか。
  45. 河野洋平

    ○河野国務大臣 もしそのことが法律を侮辱し、法律を真っ向から否定してその法律の執行を行わないということであるとすれば、それは問題だと思います。しかし、政治家として一つ意見、見識を述べられた、それには十分前提がつけられ、あるいは行政の長としての節度というものがあるとすれば、それは政治家の意見、政治家の一つの主張ということで許容されるものであるかもしれません。
  46. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 その点、後ほどもう一遍論議をさしてもらいます。  私の第二点目の疑問は、先ほど申し上げました、附帯決議という国会の意思に反対の意見を述べる、行政機関の長がでございます。一政治家がみずからの信念を述べることを私は少しも否定するものではありません。しかし、立法府と行政府との関係において、国会からコントロールされる立場にある人が、国会の決議、国会の意思に反対であるということを公然と述べることが、果たして立法府と行政府の関係において正しいのかどうか、どうお考えですか。
  47. 河野洋平

    ○河野国務大臣 お述べになりました方の文脈、事実関係というものをもう少し詳細に承知し、できませんと、それだけで評価をするということはなかなか難しいと思いますが、先生のおっしゃるお気持ちは理解はできます。
  48. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 私も政治家の一人ですから、例えば国会が附帯決議を付したとしても、手続上あるいは予算上、必ずしも国会の意思がそのまま実行できない場合は、これは私はあると思うのです。しかし、申し上げましたのは三権の分立、とりわけ国会と行政府とのかかわりは、先ほど憲法の解釈からずっと述べましたように、コントロールされる立場にある。その行政機関の長が、政治家一個人だということで勝手なことを言うことが行政の秩序を乱すものではないか、あるいは立法府との関係を軽視するものではないか、そう私は考えるのですが、どうでしょうかね。
  49. 河野洋平

    ○河野国務大臣 立法府が審議の上お決めになった法律の執行に当たって、その法律の執行について、執行の指揮をとるべき行政府の長がそれに反する命令を行う、あるいはその法律の執行を行わないということであれば大変問題だという御指摘であるとすれば、それはもうそのとおりだと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、法律をつくった、その法律に附帯して附帯決議がつけられた、その附帯決議については法的な拘束力はないわけでございまして、誤解のないようにお願いをいたしますが、法的な拘束力がないからいいのだと私は申し上げているのではございません、法律と附帯決議とは少し質的に異なるものではないかということを申し上げているので、誤解のないようにお願いをしたいと思います。そこで、立法府でお決めをいただいた法律の執行に当たっては、これはもうそのお決めいただいた法律に厳密に従って、その精神に基づいて法律の執行を行わなければならないと思いますが、それ以外の部分について一政治家としての御発言は、ある程度の許容があってしかるべきではないかというふうに思います。
  50. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 確かに、私もそのことを一切否定するものではありません。しかし、三権分立の中で立法府という立場と行政府という立場は、これは明確に区別されなければならないと思うのです。それで、一政治家であろうとも、行政機関の長なんですよ、これは。その行政機関の長が、私は政治家個人としてと勝手に申されたのでは、国会の意思というものは一体どうなるのか、その辺、やはり行政機関の長としてわきまえてもらわなければならないのではないか、そう思うのですが、この点とう思いますか。
  51. 河野洋平

    ○河野国務大臣 議院内閣制でございまして、行政府の長といえども、一方でバッジをつけた議員という立場を持っていることも、先生よく御理解をいただいていると思います。しかし、行政の最高責任者という立場に立ては、これは先生の御注意は御注意として受けとめなければならぬかと存じます。
  52. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 私も一政治家の立場を一切否定するつもりはありません。しかし、みずからが三権分立の中の行政府の機関の長になっているということを忘れて、国会のやったことを、あの法律は反対だと言ってみたり、あるいは国会の決議を、おれはあれは反対だなどと公然と言ったりということは、行政機関の長として、いささか私は慎みが足りないのではないか。その辺は、ひとつ官房を取り仕切る長官にお願いをしておきたいと思います。  続いて、私は、行政の継続性について、これは今のにも関連してくるのですけれども、行政の継続性というものを官房長官はどうお考えですか。
  53. 河野洋平

    ○河野国務大臣 国民の立場、その法律のもとで日常生活をしていらっしゃる方の立場を考えれば、行政の継続性というものは極めて重要なものだというふうに思います。
  54. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 これは、実は法制上明文はないようでございます。法制上明文はないようですけれども、学説としては既に定着しておるところのようでございまして、例えば原田先生の「行政法要論」の「行政と行政法」の中にはこう書かれております。「行政の総合性、継続性、合目的性を維持しつつ」いわゆる継続性は維持されなければならぬと、こう書かれておりますし、田中先生の解説にも、「行政は、全体として統一性をもった継続的な形成的国家活動である。」こう述べられておりますが、そうでなければ、今官房長官が答えられましたように、大臣がかわるたびに百八十度転換したのでは、国民は何をやっていいかわからないし、また行政府の立場も考えながら立法措置をとる立法府としても、大臣がかわるたびに主張が百八十度変わったのでは、これは非常に混乱を招くもとになるのではないかしたがって、閣僚の中に、継続性を否定する、前の人はそう言ったか知らぬが私はこうだという、大臣のかわるたびに勝手なことを言われたのでは、立法府も迷うし国民も困るし、恐らく前の方にも失礼だと私は思うのですけれども、どうですかね。
  55. 津野修

    ○津野政府委員 前段の、行政の継続性というところについてだけ私の方で御答弁さしていただきます。  行政の継続性というのは、先生今おっしゃられましたように、もちろん一般的に法律に特段の規定があるわけではございませんが、学説あるいは実務としても、当然行政の継続性というのは要請されるというふうに考えられます。しかし一方で、行政の継続性と言いつつも、いろいろその行政につきまして改正なり見直しというのは常に行われているわけでございまして、それにつきましては、そういう時点においては、また新たな立場からの行政という部分も出てくるわけでございますから、政策の変更というようなことも当然あり得る問題であろうというふうに考えております。
  56. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 私は、政策の変更が一切なかったら大変なことになると思います。政策の変更はあり得る。ただ、現行行政として執行されておるものがある日突然ひっくり返る、そういうようなことが、継続性を著しく損なって、国民その他が迷惑をする結果になるだろう、こう思うのです。  そこで具体的に申し上げます。前の大臣は、例えば老後の生活設計のためにはシルバー貯金というようなものをつくって、お年寄りが生活設計が立つようなそういう制度をつくりたいということをずっと主張された。そういう行政府の気持ちも十分配慮しながら、立法府としても一生懸命努力しておる。その真っ最中に、大臣がかわった途端に、おれはあれは反対だと言われたら、これはどうなりますか。どうお考えになりますか。
  57. 河野洋平

    ○河野国務大臣 その政策が、どちらがいいかということについてはこの際ちょっとおくとして、お尋ねの継続性という点についてだけ申し上げれば、法律は変わっていない、同じ法律が施行されているにもかかわらず、行政の長がかわった途端にその主張が違ってしまうということは、これは、先ほど申し上げましたように、国民生活に不安をもたらしたり混乱をもたらす一要因になる可能性がある、私はそれは好ましいことではないというふうにも思います。  しかしながら、先ほどから申し上げておりますように、一政治家の見識としてあるいは信念として、いろいろと時と場所を心得て御発言をなさるという場合には、二足の許容があってしかるべきだというふうにも思います。
  58. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 私も先ほどからそこのところを申し上げておるのですが、行政機関の長であるという立場にあるわけですから、そのことを十分踏まえて物を言わなければ、行政機関の長にあっても立法府の政治家一個人だということで物を言ったのでは、立法府が何を決めてもおれはやらぬと言われて実際に執行しなければ、それはそれなりの手続があると思います。それは僕も言ったのですが、その場合には不信任なりいろいろな手続があるだろう、しかし、日常的に混乱を招くようなことを行政機関の長が言うべきではないのではないか。今官房長官がいみじくもおっしゃったが、時と場所を考えて物を言ってもらいたい、言いかえるならば、行政機関の長たる者常にそれだけの配慮があって物を言うべきであると、そのことを閣僚の一人でございますから十分御注意しておいてもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  59. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員、大変お心遣いをいただいて、閣僚の固有名詞もなく、特定の方を指しての御発言ではございません。私も一般論としてお伺いしておるわけでございますが、閣僚たる者心得なければならないことが幾つかあると思いますが、委員おっしゃるようなところもそのうちの一つであろうかと思います。しかし、強いて思い当たるケースについて考えてみれば、国会議員の先生方初め先輩、同僚の御注意等もあって、あるいは御本人のお気持ちも、お考えも整理をなさって、私が今御注意を申し上げるまでもなく、納得のいく姿勢、発言になっておられるというふうに承知をしておりますので、この点はもう御心配はないかと存じます。
  60. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 官房長官も思い当たるところがあるということでございますけれども。  もう一つ、やはり閣僚の御発言にかかわる問題でございますけれども、省益よりも国益が優先するんだというふうにおっしゃっておられます。私は、内閣が連帯して責任を負う国の行政の中で省益などというものが一体あるのかどうか、あるとすれば、省益とはどういうものを指すのだろうか。あるいは国益という言葉をしばしば使われます。特に外交上の場合に国益という言葉が多いのですけれども、私は、国益といっても、ひっきょうするに、それは国民の利益になるかならぬかということが国益であって、その限りにおいて、連帯して責任を負う内閣の中に、省益というものがここに一つある、こっちに国益がある、そういう行政になっておるんでしょうか、見解をちょっと聞かせてください。
  61. 河野洋平

    ○河野国務大臣 先生おっしゃるように、国益という言葉は一般的にしばしば使われることがございますが、省益という言葉はほとんど使われることはない。ただ、国益という言葉をもじって、こういうことがあるとすればこういうことかなあといって使われたのだろうと思いますが、本来、省益などというものがあるとは私は思いません。
  62. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 私も実はそう思って御質問申し上げましたところ、よく言われておるように、省益あって国益なしとかなんとか、もう一つ言いましたね。要するに、省は省の利益を優先させて国のことは考えないという、そういう御答弁だったと言われる。省益あって国益なし、ここだけ私は覚えているのですけれども、そういうことが内閣の中にあるのかどうか。私は、省益がもしあるとするならば、即国益であろうし、国益とは即国民の利益ではないのかと考えておるのですが、もし間違っておるなら、これは御忠告してもらわなければぐあいが悪いのですが。
  63. 河野洋平

    ○河野国務大臣 おっしゃる意味はよく理解をすることができます。
  64. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 官房長官が理解をされたわけですから、恐らくまた閣議か何かのお席でおっしゃっていただけるものと思っておりますけれども、ここであなたに聞いてもらっただけでは、私が何を言うたかわからないわけです。  ちなみに、今の総理の宮澤先生が官房長官のときに、私は、やはり似たような問題で幾つか御質問をしました。はっきりと、それはこうである、これはこう言います、機会を見て伝えます、そういうふうに私は御答弁をいただいたことがありますが、大官房長官、機会を見て伝えるとか、忠告をしておきましょうとかいうようなことになりませんか。
  65. 河野洋平

    ○河野国務大臣 先ほども申し上げましたが、いろいろ御心配をいただいて、最近ではそうした御心配がなくなっているというふうに感じておりますが、もし依然として問題ありと、私、自分で判断するときには、率直に申し上げたいと存じます。
  66. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 次に、これは最近よくはやる言葉で、きょうあたりも新聞をにぎわしておったと思うのですけれども、官業は民業の補完に徹すべきであるという言葉が流行しております。これはかって、昭和五十五、六年ごろだったと思いますが、いわゆる郵貯戦争などということがあったときに、中曽根さんが総理で、何か私的な諮問機関、金融の分野における官業のあり方かなんか、そんな懇談会をつくりましたね。あれを私は、お茶飲み会だと言ったのです。貯金の問題は郵政省に審議会があって、郵政審議会で決めることになっておる、この公的な機関と、中曽根さんのお茶飲み話の友達の意見とどっちが尊重されるのかと聞いたら、宮澤先生は、それは当然公的な機関の意見が尊重されますと。  このとき意見は真っ向から対立をしておったわけでございますけれども、私は、官房長官、こう思うのです。官業がいいとか、民業がいいとか、あるいは民業を圧迫するからけしからぬとか、そういう発想はおかしいと思うんですよ。官で、政府がやることが国民の利益、国民の利便に有益なのか、それとも民間がやることが国民にとって有益なのか、それが選択の分かるるところだ。初めから、官業はけしからぬ、民業を圧迫する、民業を圧迫するというのは、言いかえるならばそういう金融機関を助けてやる、国民の利益がどうであろうと金融機関を助けてやるという発想しかないと私は思うのです。したがって、今盛んにひとり歩きをしておる、官業は民業の補完に徹すべきであるとか、こういうことについてはもう少し行政府としても考えてもらわなければならぬのではないかという気がしますが、どうですか。
  67. 河野洋平

    ○河野国務大臣 いろいろな分野があって、分野によってさまざまな考え方があるのだろうと思います。例えば学校は、私学と国公立との関係をどういうふうに調整をするか、調整といいますか、役割分担をするかというような問題もございましょうし、さまざまな分野でさまざまなすみ分けといいましょうか、役割分担があるのだと思います。  ただ、今先生のお話を伺っておりまして、これもかなり言葉としてつくられた言葉であって、官業、つまり官というものが、そういうふうになりわいとして見るものなのかどうなのかということも実はあるのだろうと思います。官の仕事と民の仕事をそうやって同じレベルで考えることが、これも果たしてふさわしいものかどうかということも実はあって、それらについても分野によってさまざまな考え方があるのだろう。それを一律、普遍的な言い方で決めてしまうというのはなかなか難しいかもしれないというふうに思います。
  68. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 私が申し上げたように、官業が悪いとか民業はいいとかいうふうな割り切った考え方ではなくて、いずれが国民のために有益であり、国民に利便を供することができるのかという、それが選択のもとでなければならない。例えば、政府事業としていろいろ官業としてやってきた鉄道にせよ、塩にせよ、たばこにせよ、あるいは郵便事業にせよ、それらのものは、それぞれの時代において先導的な役割を果たして、今日の経済の発展なり、多くの仕事はそういう官業が先導的な役割を果たしたことによって発展が行われてきておると私は思うのです。  だから、官房長官もおっしゃったように、一概に官業、民業という分け方ではない。政府がやる方がより広範に、よりあまねく国民のためになるのか、あるいは民業にやらせた方がいいのかというのは、国民の意思によって選択さるべきものであって、官業が民業を圧迫するからこれは何とかせんならぬというふうな発想はそもそも間違っておる、そういう見解を私は持っておるのですが、時間が来たようですから、最後に大臣の見解を承って、終わりたいと思います。
  69. 河野洋平

    ○河野国務大臣 お尋ねのような問題があると思います。それらはいずれも国力によっても違うと思いますし、あるいは地域の実情によってもさまざまな考え方があると思います。そして、いずれが、いずれがという言い方もどうかと思いますけれども、どういう方向を目指すことが、結局最終的に国民にとってよりよい選択であるか、しかも、その国民にとってよりよい選択というのが現在を指しているのか未来を指しているのか、その未来も、近未来なのか、かなり長期的な展望に立って考えるか、視点はさまざまあるだろう。いずれにしても、我々は、国民の利益というものを中心に考えていかなければいけないのではないかというふうに思います。
  70. 阿部未喜男

    阿部(未)分科員 官房長官、国民の利益、それが基本であるということをぜひ念頭に置いて、ひとつ御努力を願いたいと思います。いずれまたゆっくり議論のできる機会を期待をいたしまして、質問を終わります。
  71. 唐沢俊二郎

    ○唐沢主査 これにて阿部喜男君の質疑は終了いたしました。  次に、五十嵐広三君。
  72. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 人権問題には大変高い見識を持っておられる河野官房長官に、最近の内外の人権問題について二つばかりお伺いしたいと思います。  一つは、従軍慰安婦の問題であります。  これは、去年の七月三十一日に韓国政府側で中間報告を調査の結果発表しているわけです。「日帝下軍隊慰安婦実態調査 中間報告書」こういうのであります。その中でいろいろな事実が述べられておりますが、特に十三人に上る元従軍慰安婦の方の証言が入っておりまして、これは一々申し上げません。ここにこういう分厚いものであるわけですが、本当に読みましても苦渋に満ちた、読むのもつらいお話が続いているわけであります。こういう証言について、長官はどういうぐあいに受けとめておられるか。重く受けとめておられるというふうに思いますけれども、御所見を伺いたいと思います。
  73. 河野洋平

    ○河野国務大臣 従軍慰安婦と言われる方々の体験と申しますか、そしてまたこれまでの生活がいかがであったかということを考えると、大変胸が痛みます。当時の体験も、そしてまた戦争が終わった後生きてこられた長い年月に背負ってこられたであろうそうした記憶というものについて本当に我々は誠心誠意の思いを持たなければならないし、私はそういうものを持っております。
  74. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 去年の八月末に、社会党の調査団で、私団長としてソウルなどに入りまして、向こうでも元従軍慰安婦の方に直接お目にかかって当時の状況をいろいろお伺いいたしました。  先ほどの十二人の証言を入れた韓国政府側からの中間報告もそうですし、我々が直接調査に当たってお聞きしたのもそうなのでありますが、その証言の中では、いろいろなケースがあるけれども、相当部分、募集であるとかあるいは連行であるとかということに関して強制性が明らかな証言が随分あるわけですね。そのほかにも、今慰安婦問題で裁判が行われているわけですが、こういう裁判の記録等いろいろ見ましても、従軍慰安婦の皆さん方の強制的に連れて行かれたということの事実も随分明らかになっているわけであります。  それから、これはごく最近ですが、韓国挺身隊対策協議会とそれから挺身隊研究会の共同編集で「強制的に連れて行かれた朝鮮人軍慰安婦たち」という本が韓国で発刊されて、その第一集としては、特に確実と思われる十九人分の証言が載せられているわけですね。この中でも、軍人、憲兵によって連行されたというのが四人、それからだまされて連れて行かれたというのが十三人など、それぞれの証言が、これも本当に一々苦渋に満ちた話がつづられているわけであります。  私は、今外務省が中心になって、各省庁で従前の資料の調査に当たっている、それで昨年の七月ですか、一遍中間報告があって、その後もいろいろな調査が進んでいるというふうにお聞きしています。しかし、我が国側の調査とそれから韓国側の調査との大きな差、対立点、対立点というのは言い過ぎかもしれませんが、差というのは、要するに強制性があったかないかというところで、我が国の方もいろいろ調べるのだけれども、なかなかそれを裏づけるような資料がまだ出てこないというふうに我々伺っているのであります。  しかし、今私が述べましたように、現に当時の従軍慰安婦の方で生存しておられる方が、これは証言するといったってつらい思いだと思うのですが、しかし相当な人数の方々がみずからその経験を証言しているということがあるわけですから、私はやはり、ここで我が国としてみても進んでこれらの現存する元従軍慰安婦の皆さんの声をお聞きする、聞くこと自身が我が国の本当に一つの誠意というものでもあるわけですから、それが当面大変調査の上では大事なポイントではないかというふうに思うのでありますが、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  75. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 先生のお話しになりました韓国側の中間報告というのは、私どもも読ませていただいておりまして、読むのがつらいというふうにおっしゃいましたけれども、私も同じような気持ちで受けとめたわけでございますが、直接その従軍慰安婦だった方々の話を政府として聞いたらどうだ、伺ったらどうだというお話は前々から伺っておるわけでございます。  ただいまのところ、私どもがやっております作業は、いわば残された資料、そして関係された日本側の方々のお話を伺っておるわけでございますけれども、他方韓国側のそういった方々のお話は、私は努めて日本に来られたときに時間をかけて伺ってはおります。ただいま少し突っ込んだ形で伺う方がいいのかどうか、これは官房長官の御指示も得なければなりませんけれども、当面は、韓国側でその辺の韓国側の従軍慰安婦の事情聴取はいたしておりますので、その作業状況を見ながら、日本側としてそれに加えてただいま先生の御指摘の点についてどういうことをするのかしないのか、考えてみたいと思っております。
  76. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 募集し、連行するということの強制性というものも問題でありますが、同時に、慰安所に入れて、そして非常につらい生活を送っていたわけであります。慰安所における生活については、これはもう明らかに身柄を拘束するといいますか、つまり自由にさせない。記録なんか見ますと、外出を禁ずるとか、散歩も、慰安所のじき周辺のところを、わずかなところを指定してその限りにおいて散歩させるというようなことを強いていたことは、これは資料の上でも明らかなんですね。それはお認めになるんでしょう。
  77. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 仰せのように、大変異常な戦争のもとでの状況でございますので、そういった異常の状況のもとでの出来事でございますから、ただいまの仰せのようなことも含めて、少なくとも私は慰安婦の人たちからそういうことがあったということは直接聞いております。それからまた、戦争が激しくなれば置き去りにされたというようなことも、この方々は私に申されておりました。そういう異常なもとでの出来事であったことは事実でございます。
  78. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 いや、谷野室長さん、この慰安所で自由を制限して外出も禁じておったということは、これは外務省なんかでもいろいろ出している資料の中だとか我々目にするものでも随所に出てくるんですよ。ですから、そこは紛れもない事実であろうというふうに思うわけで、しかし、室長さん今お触れになられた、終わりましてから一体どうしたかということもまた重大な責任であって、そういうことが重なっているわけであります。  私は、この際やはり率直にこの問題について、大事なのはその調べ方自身に我が国の誠意がにじみ出ているかどうかという点であって、今この問題で、韓国側は官民ともに補償的行為よりもまず真実の追及だということを、これはもう金泳三新大統領を初めとして皆ひとしく言っておるわけですから、これからの未来における新しい日韓関係というものを築いていくことを考えると、いつまでもこの問題でちゅうちょすべきでない、先送りにすべきでない、とにかく早く解決する必要がある、こういうふうに思うのですよ。  それで、国連のファン・ボーベン博士が去年暮れに日本にも来たし、韓国にも行きました。その報告書を八月に国連の方に出す、そういうお話も聞いておりますし、あるいは六月には例のウィーンでの世界人権会議が行われるということ等もあるわけです。私はこの際、韓国側も新政権ができた折でありますし、機を失せずここでやはり決意をして、この問題に対する明確な我が国の強制性を認めるという態度、そのためにはまた、まだ未確認のものがあるとすれば、やはり証言をきちっと聞くという向き合った、一歩進んだ態度、それに基づく謝罪、そして一体どうするかというようなこと等について、今こそきちんと対応すべき時期だというふうに思うので、まずそのためには、先ほども言いましたけれども、従軍慰安婦の証言を聞くこと、それから始めるべきだというふうに思うので、もう一遍谷野さんのお答えをお聞きしたい。また、長官のお話も伺いたいと思います。
  79. 谷野作太郎

    ○谷野政府委員 一番最後の、従軍慰安婦の方々に直接会って、既にお会いはいたしておりますけれども、いま少しく時間をかけてという仰せだと思いますが、先生の従来から私どもにおっしゃっていることでございまして、そのような貴重な御意見として伺っておきたいと思います。今後の取り進め方につきましては、官房長官とも十分御相談し、御指示を得ながら進めたいと思います。  いずれにいたしましても、この私どもの仕事は誠実に進めておるつもりでございまして、ただ、事柄から申しましてなかなか満足な資料がないという世界でございますので、時間がかかっておりますけれども、私どもの作業に当たるに対しまして、誠実にこれに当たっておるつもりでございますので、その点は御理解いただきたいと思います。
  80. 河野洋平

    ○河野国務大臣 外政審議室を中心に、関係のありそうな省庁に手を広げて、調査を続けております。この問題は、できるだけ早く真実を見つけ出して、そして我々の気持ちを表現するということが大事だと私は思っております。  今委員おっしゃるように、韓国も新政権が発足をして、これを機にというお話がございましたけれども、私の気持ちからいうと、それはもうそうした政治の体制がどうであれ、この問題は先送りをするものではない、今室長申しましたように、できるだけ誠心誠意調査に当たって、そして我々がもうこれがすべてだと思える段階で、できるだけ早く、我々の調査のすべてを見て、我々の気持ちを表現するということが重要であろうというふうに思っておりまして、先に延ばしてという気持ちは全くございません。  それから、先生御提案の問題については、今私のところでどういう方法がいいかということを考えております。文書を探すというのが今の作業の中心でございまして、この文書を探していることでわかることは、人数は大変多数にわたっておりまして、その多数の方々に迷惑をかけているということは文書でわかってまいりますが、個別に一つ一つの事実を知るということも重要でございますけれども、それはまた一つ一つかなりさまざまなケースがあって、そのどのケースを見ることによって普遍的な事柄として解釈ができるかということになると、これはまた見方がさまざまだろうと思います。したがいまして、御提言も入れて、真実に迫る方法についてさらによく考えてみたいと思っております。
  81. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 提言を入れて真実に迫りたいという御回答でありますから、したがって、従軍慰安婦に直接会うということも御判断になっているというふうに受けとめたいと思います。この後第二分科会でまた晩に、八時四十分からですか、もう一遍これは外務大臣代理としての長官とやる予定になっておりますので、あとはそっちの方で。  それからもう一点、これは国内の方の人権問題で、アイヌの問題なんであります。余り時間もないのですが、簡潔に伺っておきたいと思います。  ことしは国際先住民年で、去年の暮れも質問をして、どうも非常に不十分な答えであったというふうに思うのですが、その後御努力いただいていると思うのですけれども、我が国の場合、これは国連の方でいわゆる行動計画的なものを先住民年についてお決めになっておられて、そこでは、先住民も含めて政府機関と非政府機関合わせた全国委員会を設けていろいろ協議する、そして先住民も入れながらその行事を進めていこう、こういうことになっているのですが、その全国委員会ができていないわけですよ。これはやはりおかしい話だというふうに思うのですが、最近聞いてもまだできていないようです。しかし、政府内における各関係省庁の連絡機関はあるようで、ここでは協議をしているようでありますから、そこで、少なくともこの各関係省庁の連絡会議の中にアイヌの代表を入れるなどして進めるということも一つ方法だろう、今の時期になってしまったら少なくともそういうことぐらいはやるべきではないかというふうに思うのです。  そのことをお伺いするのと、それから、主としてこれは文化庁に関する仕事でありましたが、その文化庁で昨年の暮れはまだまとまっていなかった、近く行事を決めると言っておりましたが、決まったかどうか。それから、文化庁以外の分野で決める部分があったわけでありますが、それは内政審議室であろうと思いますが、どういうことになっているか、時間がありませんので手短にお答えいただきたいと思います。
  82. 吉澤富士夫

    ○吉澤説明員 文化庁におきましては、アイヌの民俗文化財の保存、伝承、公開は、アイヌ文化を理解する上で大切であると考えており、従来よりアイヌの古式舞踊などのアイヌの民俗文化財については、国の文化財に指定するとともに、映像記録の作成、地域伝承活動などについて助成を実施しているところであります。  今回要望があります事業につきましては、アイヌの民俗文化財の普及振興の観点から意義があるものと認識しており、アイヌ古式舞踊の公演につきましては、毎年秋に国立劇場で行っている「うたとおどりの祭典」、それと、全国五ブロックで行われる民俗芸能大会においてアイヌの歌と踊りを取り入れることとして、現在その実施内容等を検討しているところであります。また、国立の博物館の特別展の開催につきましては、東京国立博物館においてアイヌ文化の展覧会を開催することとして検討を現在進めております。文化庁としては、今後これらの事業を適切に実施できるよう努めたいというふうに思っております。
  83. 伊藤博行

    ○伊藤(博)政府委員 先生の御質問は国連先住民の年に関連しての行事が中心かと思いますが、ウタリの代表者云々という点に関連しまして、私どもは新法の問題を含めていろいろやっております。それらの中で、特に後者の点につきましては、御案内のように、北海道庁の要望を中心にして検討しておりますけれども、それをお聞きする中で、ウタリの代表の方々からも御意見を伺うという形でいろいろやっているところでございます。  それから、前者の点につきましては、これは協会の方からの御要望等を中心にして、その中のメーンのものは、今文化庁から申し上げましたように、文化の紹介という点が中心でございます。どの程度になっていくかというのは、今申し上げました点を中心にして鋭意中身の濃いものにしていきたいということで、この点につきましては、外務省を窓口にしながらいろいろ幅広く関係するところに連絡しながらやっておるところでございます。
  84. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 外務省、恐縮ですが、外務省からもちょっと聞かなければならなかったですね。
  85. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 まず、ウタリ協会ないしはアイヌの方々の意見を聞くべきではないかという点でございますけれども関係各省庁は、例えば外務省もウタリ協会の方々と個別的にお話をしたり、あるいは情報をいただいたりしながら、それを関係省庁との協議の場で配付する等、できるだけウタリ協会からの御要望にはおこたえするように努力いたしております。  それから、ウタリ協会の方々ないしはアイヌの人々の代表が海外に出られる場合、その国際会議の性格等も考えながら、我が方として何ができるか、今後検討してまいるつもりでございます。  それから、事業につきましても、私どもはただいま全力を尽くして関係省庁との間で話し合いを行っておりまして、各省庁の御協力を得て成案がまとまりつつあるというぐあいに考えております。
  86. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 本当に時間だけ過ぎてしまいますね。  僕の方から言っておきますが、まず一つは、先住民年の基金を我が国がことし五万ドルですか、それを出すことにしたでしょう。あなた、そういうのをちゃんと言わなければだめだね、せっかくやっているのに。それから、英語などでのアイヌの紹介、こういうこともやろうということのようです。それから、これはちょっと今触れておられたように、ウタリの皆さんがその関連の国際的な行事に行くときには旅費などで応援しようということなんですね。大分おくれていたけれども、そんなことが一通り行事として出てきたようでありますから、どうか積極的に対応してもらいたい。  しかし、今のお話で、僕は非常に残念に思うのは、国連でせっかく計画を立ててあれを決議して、もちろん我が国も入っているわけですが、それぞれ全国委員会を設けて、国内行事については積極的に先住民族の意見も聞きながらやっていこうということになっているのだけれども、いまだにそれが設けられていないということは残念です。だから、陳情のときに話を聞くというようなことではなくて、せっかく各省庁の連絡会議があるのならば、そこにたまには参与か何かの格好でもいいし、お呼びしていろいろ意見を聞くということぐらいは最小限やるべきではないかというふうに思うのでありますが、長官、御検討をいただきたいというふうに思います。  もう時間が間もなくなくなりそうでありますから、ただ、長官、ここで非常に大事な問題で、アイヌの問題に関しては、アイヌというのは先住民族がどうかということなんですよ。少数民族ということは今まで確認されているのですね。そして、北海道に古くから住んでいるということも認めるのですね。しかし、先住民族ということになりますと、なかなか政府は認めようとしない。そこの認めようとしないということがアイヌのさまざまな政策、特に今北海道庁あるいは道議会も満場一致で出てきている議決をもって要請をされている、アイヌ新法をつくってほしいということなどに対する対応が非常に消極的だというところへつながるわけですよ。どうですか、アイヌというのは先住民ですか、長官。
  87. 河野洋平

    ○河野国務大臣 事柄を定義するというのは実はなかなか難しいようでございまして、特に先住民族であるかどうかということを定義するためには、これは国際的な定義ともかかわってくるということもあって、事務当局に聞いてみると、どうも国際的な定義がいまだもう一つはっきりしないということから、そこの定義がきちっと確定をし、はっきりしてこないと、また我が国内でもこれを定義をすることが難しいということになっているようでございます。  確かに、委員お尋ねのように、アイヌの方々が北海道に古くから住んでおられるということは、これは一般的な通説になっておりますし、少数民族であるということも、これはまただれもが認めていることでございますから、先住民族であるかどうかということについては、国際的に通る定義がまずでき上がるということが、そこがはっきりすれば、その定義に基づいて判断は下されるものというふうに思います。
  88. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 終えたいと思いますが、ただ、古くから先住しておられる人々だということは、これは通説であり、どこも異存がないというふうに思うのですが、それはいいですね。
  89. 河野洋平

    ○河野国務大臣 五十嵐委員はそこは非常に老練な議員でいらっしゃるから、古くから住んでおられた方々という言葉の使い方を我々は長く事務的に使ってきたようでございまして、私もまたその使い方を繰り返したいと思っております。
  90. 五十嵐広三

    ○五十嵐分科員 それじゃ、いずれまた引き続いてやりたいと思います。どうもありがとうございました。
  91. 唐沢俊二郎

    ○唐沢主査 これにて五十嵐広三君の質疑は終了いたしました。  次に、斉藤一雄君。
  92. 斉藤一雄

    斉藤(一)分科員 私は、国連のあり方並びに自衛隊のカンボジア派兵の問題についてお尋ねいたします。  まず最初に、自衛隊のカンボジア派兵以来、現地ではいろいろな出来事あるいは紛争が起きておりますけれども、それぞれ簡単に御報告を願いたいと思います。
  93. 山本忠通

    山本説明員 お答えいたします。  カンボジアの現在の状況でございますけれども、いまだ非常に限定的な停戦違反が発生しているという情報はございますけれども状況は大分おさまってきているようでございます。そういう状況でございますから、パリ協定の基本的枠組みは維持されているというふうに認識いたしております。  また、選挙の準備というのが今一番重要な問題なんでございますけれども、このことにつきましては、選挙を今度の五月二十三日から二十七日までの五日間実施するということで、決定が先ごろ行われております。既にUNTACが指導いたしまして、三十万人を超える難民の帰還が実現しておりますし、また四百七十万人に上る有権者の登録もカンボジア全土にわたって行われました。そういう状況にございまして、今後の課題といたしましては、このような中で選挙妨害等が行われない中立的な政治環境が醸成されるように努めていくことが大事だということで、UNTACも努力しておりますし、国際社会もUNTACと協力している、そういうところでございます。
  94. 斉藤一雄

    斉藤(一)分科員 これまでにどういう出来事や紛争が起きたのかということを聞いたわけですが、まるっきり今後の問題というようなことで見当違いの答弁をしておりますが、後ほどお聞きをしたいと思います。  いずれにしろ、プノンペン政権はポル・ポト派の再度の攻撃に備えなければならない依然緊迫した状態が続いているわけであります。そういう状況を踏まえますと、率直に言って五月の総選挙の見通しは大変暗いのではないか、こういうふうに思いますが、官房長官いかがでしょうか。
  95. 河野洋平

    ○河野国務大臣 いろいろな見方があるのだろうと思いますが、私どもはUNTACの明石代表などからのお話が一番全体を俯瞰した形で見ておられるというふうに実は思っておりまして、明石代表からいろいろお話も伺っておりますが、委員御指摘のように、五月の選挙についてはいろいろ問題はあるだろうと思います。しかし、今日既に九十何%という人たちの選挙のための登録が終わっているとか幾つかの具体的な例示を挙げられて、五月の選挙は必ずできるというふうに代表は言っておられます。ただ、投票所が安全に確保できるかとか、そうした問題が地域的に、局地的にあるかとは存じますけれども、この五月の選挙ができないとか、あるいは非常に混乱するのではないかという見通しは今言っておられませんので、我々は、繰り返しになりますが、局地的に緊張感の高まったりしている地域もあるかと存じますけれども、全体的に見て、私どもは五月の選挙は十分可能であり、必ずうまくいってくれるものと期待をいたしているところでございます。
  96. 斉藤一雄

    斉藤(一)分科員 ポル・ポト派の武装解除拒否という事実や、そして総選挙が実現できないということになった場合は、少なくとも四派の合意を前提としたパリ和平協定の枠組みが事実上崩れたというふうに認識するのが当然ではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。
  97. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま官房長官から御答弁ございましたところに尽きると思いますが、確かに最近一部の地域で武装集団による襲撃事件でございますとか、あるいは停戦違反事件等が発生しているのは事実でございます。ただ、現在カンボジアにおきましては全面的に戦闘が再開されているというわけではございませんで、パリ和平協定に基づく和平プロセスの基本的枠組みは維持されている、そしていわゆる五原則は満たされていると考えております。また、UNTACによりますれば、プノンペン政権及びポル・ポト派の両派ともパリ和平協定を守る旨表明していると承知しておりまして、UNTACといたしましても和平プロセスの基本的枠組みは維持されているという同様の立場であるというふうに理解しております。  また、先ほど先生が御指摘になりました武装解除の問題でございますが、ポル・ポト派がパリ和平協定に基づく武装解除に応じなかったということは大変残念ではございます。ただ、武装解除の問題と停戦の合意という問題とは一応別な問題でございまして、もとより武装解除がなされていきまして、いわば武装のレベルが低いところで停戦が守られるというのが理想ではございますが、ただ、現実はそのようにはなっていないのは事実でございます。しかしながら、武装はしてはおりますけれども、先ほど申し上げましたように停戦の合意そのものは守られている、停戦違反というのはございますけれども、基本的な枠組みは守られているというふうに申し上げて差し支えないと考えております。
  98. 斉藤一雄

    斉藤(一)分科員 ブトロス・ガリ国連事務総長は、平和執行部隊という構想を発表しておるわけです。それは、従来のPKOと基本的に違うところはどこでしょうか。端的に御説明いただきたいと思います。
  99. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 実はこの点につきましては、ガリ事務総長が先般訪日された際の会談で本来ならば詳細な議論をもう少しやりまして、ガリ事務総長の考え方をもう少し詳しく知りたかったわけでございますけれども、時間等の都合がございまして、それはできませんでした。  しかし、ガリ事務総長が行いました演説、それから先生承知の「平和のための課題」等を読んでみますと、確かに従来のPKOとは違った性格のものであり、そういった新しい考え方に基づいて平和の維持を図ろうとしているというぐあいに理解できると思います。
  100. 斉藤一雄

    斉藤(一)分科員 基本的にどこが違うのかということを聞いているわけですが、どうも違うようですというような話で、どうも一向に国民が聞いてもわからないようなお答えをされているわけです。それはまた後でお聞きしたいと思います。  次に、最近ははやり言葉になっているわけですけれども、国際貢献あるいは国連中心主義、声高に叫ばれておるわけですけれども、私はその陰で大変危険なものを感じているわけです。それは、すべて国連の名において行う決定と活動、それはすべて正義であり、それには日本の自衛隊も参加すべきであり、憲法も見直すべきであるという、そういう宣伝が盛んに行われている。その中には、国連を隠れみのにして、意識的にあるいは欺瞞的に事を運ぼうという意図すら感じられるというわけであります。  私が問題にしたいのは、現在の国連、すべての軍事措置が、加盟国百八十カ国ですか、のうちのわずか五つの政府にゆだねられている。しかも、この五大国はすべて超核大国であり、いずれも超武器輸出国であります。私は、国連がまず常任理事国のこうした武器取引の禁止を実現し、核軍縮を進めて、加盟百八十カ国の信頼を得ることがまず重要ではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、長官、どのような御認識に立っておられるでしょう。
  101. 河野洋平

    ○河野国務大臣 現在の国連の姿というものが、冷戦が終わって新しい平和秩序を求める国際社会の中でどういう役割を果たしていくか、あるいは他の多くの国連加盟国が今の常任理事国の存在というものに対してどういう信頼感を置くであろうかということが、今のお尋ねの大事なところなんだと伺いました。  確かに、五つの国が拒否権を持つ、そして多くの問題について、したがってこの五つの国が決定的な役割を果たす。五つの国というよりは、もっと言えば、もっと特定の国が決定的な役割を果たす。そういうことで国連というものが果たしていいのかという指摘が、これはブトロス・ガリ事務総長も実はそうした点について意見をお持ちでございました。そして、ガリ事務総長はむしろ多くの国が参加をすることが大事だ、できるだけ多くの国がそれぞれ役割を果たすことが国連という存在をよりよくすることになるということを先日も力説をしておられたわけでございます。  多岐にわたるお尋ねでございますが、前段の、国連の名のもとに日本の国際貢献の姿というものが変わってくるのではないか、変えようとしているのではないか、あるいは変えようとする動きがあるのではないかということに対する御心配が前段にございましたが、これはガリ事務総長と宮澤総理との会談の中でも、宮澤総理は、我が国ができ得る国際貢献というものは一定の限度があって、その我が国がすることができる範囲内で我々はできるだけのことをいたしますということを明確にお答えになっている、このことで御心配に対してお答えをまず申し上げておきたいと思います。  後段の、いわば国連改革とでもいうべき、新しい時代にふさわしい国連のあるべき姿、あるいは信頼される国連の姿というものについては、これはいろいろな議論があって、しかもさらに別の視点からいえば、今日の国連の財政的な状況を考えればさらに問題は多いわけでございますが、こうした国連の状況に対して、今日の国連に対する改革案をこの六月までに加盟国が出そうということになっておりまして、我が国も六月を目途に国連の改革案をつくるべく検討を始めるところでございます。こうした、各国がそれぞれ国連のあるべき姿について、さまざまな視点から恐らく改革の案が寄せられるものと期待をしつつ、それらを見てまたさらにこの話が進んでいくことになるだろう、こう考えております。  議員お尋ねの、五つの国が五つとも大きな武器輸出国ではないか、こういう御指摘でございますが、武器輸出国でないものもございます。そしてまた、この武器の移動というものはそれぞれにさまざまなケースがある。地域によって、どうしても生存のために一定の武器が必要だと考えて、その武器を何とか取得をしたいとお思いの国も一方にはあるわけでございます。そしてまた、武器というものが、どこまでを先生頭に入れてお話をしておられるかわかりませんが、武器というものを一定の範囲内でそれぞれ適当な価格で、また適当な性能のものを所持したいとする多くの国が一方にあるということもまた否定できない事実でございまして、我々は、願わくは武器の輸出、武器の移動というものはできるだけない方が望ましいというふうにかねてから考えて、国連その他にも移動についての透明性を確保するための援言をしてみたりいろいろしておるわけでございますが、輸出国には輸出国、輸入国には輸入国のそれぞれの主張があり理由があるということで、一概に全体について申し上げることは甚だ難しい、こう申し上げる以外にないと思います。
  102. 斉藤一雄

    斉藤(一)分科員 ただいまの官房長官の認識、若干不十分な点はありますけれども、基本的に私の認識とそう相違はないんじゃないかというふうに思いますが、それにもかかわらず、自民党の特別調査会、小沢一郎さんが会長をされている、ここから出た答申を見ますと、これは政府・与党でありますから、重大な関心を持たざるを得ないわけでありますが、PKFや多国籍軍、準正規国連軍への参加検討及び正規国連軍への参加協力を含め、憲法第九条が放棄した戦争や武力行使とは全く異質のものという新改憲解釈を行っております。私は大変危険な改憲解釈だというふうに考えておりますが、こうした問題について官房長官としてはどのようなお考えをお持ちでしょうか、率直にお答えいただければと思います。
  103. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員お尋ねのいわゆる小沢調査会の答申案というものは、自由民主党の党内におきます特別調査会でございまして、この調査会がさまざまな意見交換の上答申案をおまとめになって、自由民主党総裁たる宮澤喜一あてに提出をされたということを私も承知をいたしております。  それぞれの政党には政策を決定するまでのプロセスにはさまざまな議論があるのであって、それはむしろさまざまな議論があることが一つの健全性のあかしでもあると私は思います。しかし、その政策決定に当たっては、今委員御心配のそうした意見もあればまた別の意見もあるわけであって、さまざまな意見が闘わされて自由民主党としての一つの政策、方向性が出てくるわけで、その一方の意見だけを取り上げて御心配になるということはわからないではありませんけれども、これまで長い間自由民主党が政権を担当し国民の支持を集めてきたということを考えれば、それはさまざまな意見のうちの一つ一つと言っては御無礼になるかもしれません、かなり高いレベルの特別調査会でございますから、一つ意見ということであって、それは党の最終的な政策、意思ではない、まだそこに至っていないということを申し上げたいと思います。  なお、宮澤内閣の考え方は、先ほどブトロス・ガリ事務総長とのやりとりの中で申し上げましたように、宮澤総理大臣の考え方は、今委員がお読み上げになりましたようなこととはいささか考えを異にしておることは御承知のとおりでございます。
  104. 斉藤一雄

    斉藤(一)分科員 また、渡辺外務大臣はPKFの凍結解除とか、あるいは柿澤外務政務次官はPKO法に定めた停戦合意などの受け入れ五条件の緩和とかPKOに参加する定員の倍増を早急に図るべきだとかいうようなことをおっしゃっているわけです。憲法違反のPKO法については、我が党を初め、国民の少なくとも過半数以上だと思いますけれども、強くその成立に反対をしたことは御承知のとおりでありますし、また国会においてもいろいろな議論を経て、問題はありますけれどもPKO法が成立したばかり。そのときに外務大臣や政務次官がこういうことをおっしゃるということは、議会軽視ということももちろんでありますが、ガリ国連事務総長などが日本に来られたときに憲法を改正してでもやれといったような、そんな大変な誤解を国際社会に与えるわけでありまして、これはもうはっきり言うと取り消しをしてもらわないとならぬ重大な問題なんですよ。  私が官房長官にお伺いしたいのは、この外務大臣や政務次官のおっしゃったことということじゃなくて、政府としてPKFの解除とかあるいは受け入れ五条件の緩和とかPKO定員の倍増というようなことを考えているのかどうかということをはっきりお聞きをしたい、こう思うわけです。
  105. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 官房長官から御答弁がある前に、私の方から御説明させていただきたいと存じます。  結論から先に申し上げますと、現時点におきましては法律の見直し、どういう方向で見直すかというようなことは決まっておりません。御指摘のごとく、国際平和協力法は昨年の六月に成立したわけでございますが、その後実際のこの法律に基づく協力というものは、まだ半年たつか、もうすぐ半年になりますけれども、それほど長いこと実施してきたわけではございません。したがいまして、現段階におきましては、この法律に基づく協力の実績を積み重ねていくことによりまして、法律の見直しを行うに当たりましては、そういう経験を踏まえていろいろな議論をしていくということが必要であり、またそのようなことになろうかと存じます。繰り返しになりますけれども、現時点で特定の方向で見直すというようなことが決まっているわけではございません。
  106. 斉藤一雄

    斉藤(一)分科員 時間も余りないのですけれども、フィリピンにおける米軍基地が撤去される、あるいは自衛隊のカンボジア派兵を契機として、在日米軍基地がますますアジア・太平洋の戦略基地としてあるいは前線基地として日米安保体制の強化というのがアメリカの強い意向であろうと思われるわけです。日本がそれにどうこたえるのかということはもとより問題でありますけれども、そこで私がお聞きしたいのは、そういう立場に立ちますと、日米共同作戦計画あるいは装備の相互使用といったような、一言で言いますと日米共同軍、アメリカ軍も日本の自衛隊という名前の軍隊も同じ一つの軍事作戦が展開できる、そういう性格を強めてきつつあるのではないか、こういうように私は認識をしております。その点についてどういう御認識なり方針をお持ちでしょうか。日米安保体制の強化という問題と絡んでお伺いしておきたいと思います。
  107. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員も十分御承知のとおり、日本の国を守るために専守防衛、必要最小限度の力を日本の国はまず持つ、しかし、それで十分でないものは米軍の力をかりて日本の領土、領空、領海を守らなければならないわけでございまして、日本の領土を守るために日本独自の力プラス・アメリカの力、最終的には相手の攻撃力が強ければその双方の力を一つに合わせて日本の国を守っていくということがあるわけでございますから、日米両国の連携というものはその限りにおいて大いに強くなければならないのは当然のことであろうと思います。またさらに、米軍のプレゼンスがアジア・太平洋に向けて一定の意味を持つということも一方にございます。しかし、これはアメリカ軍の問題でございます。日本とアメリカとの、米軍との関係は、まずとにかく日本の領土を守るために日米安保条約というものに基づいて十分な連携が望ましいことは当然のことだろうと思います。
  108. 斉藤一雄

    斉藤(一)分科員 基本的な考え方が違いますけれども、これは見解の相違ということで今後また議論を積み重ねていきたいと思います。  時間がありませんので、最後に、先ほども長官が言われました我が国の防衛力のあり方、つまり、我が国が憲法上許される範囲内で防衛力を保有するといったようなことが政府の今日までの見解だと思いますし、現在もそういう見解に立たされていると思うのでありますけれども、この憲法上許される範囲というのはなかなかはっきりしてこないわけであります。したがって、その辺のことについてもう少し国民にわかるようにひとつ説明をお願いしたいなというふうに思います。
  109. 津野修

    ○津野政府委員 お答えいたします。  自衛力の行使についての憲法上のいわば制約がどういうものかというお尋ねかと思いますが、まず第一に、憲法第九条におきまして我が国が主権国として持つ自衛権はこれは否定していない、されているものではないということでございます。そして、この自衛権の行使を裏づける自衛のための最小限度の実力、つまり自衛力を保持することは、したがいまして第九条の禁ずるところではございません。憲法第九条第二項で保有することを禁止している戦力といいますのは、自衛のための必要最小限度の実力を超える実力をいうということでございます。  そして、このような自衛力の行使につきまして、政府が従来から、いわゆる自衛権発動の要件ということで三つのことを言っているわけでございます。一つは、我が国に対する急迫不正の侵害があること、すなわち、武力攻撃が発生したこと、二番目に、この場合にこれを排除するために他の適当な手段がないこと、三番目に、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こういったような自衛権発動の三要件を満たす場合に限りまして憲法上自衛権の発動が可能であるものと解しているということでございます。  したがいまして、以上のような考え方から出てまいります自衛権及びそれの行使についての具体的な制約の二、三の例を言いますと、一つは、例えば集団的自衛権でございますけれども、これは、我が国が国際法上集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然でありますけれども、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲内にとどまるべきものであると解しておりまして、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと解しているところでございます。  二つ目は、具体的な例の二つとして、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣する、いわゆる海外派兵でございますけれども、これは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものでありまして、憲法上許されないものと解しているところでございます。  大体それぐらいでございますが、さらに例えばもう少し細かな話をしますと、性能上専ら他国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器でございますが、これを自衛隊が保有することは、これによりまして我が国の保持する実力が直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなることから、いかなる場合にも許されない、というふうに解しているというような、いろいろな制約があるということでございます。
  110. 斉藤一雄

    斉藤(一)分科員 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。
  111. 唐沢俊二郎

    ○唐沢主査 これにて斉藤一雄君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして内閣についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  112. 唐沢俊二郎

    ○唐沢主査 次に、総理本府について質疑の申し出がありますので、これを許します。冬柴鐵三君。
  113. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 公明党・国民会議冬柴鐵三でございます。  本日は、昨年及び一昨年に引き続きまして、軍人恩給未受給者の問題に絞ってお尋ねをしてまいりたい、このように考えております。  まず冒頭、平成年度の歳出予算要求額のうち、総理本府の平和祈念事業特別基金事業の推進のための経費として幾ら要求されているのかこれが前年度と比較してどのように増減があるのか、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  114. 高岡完治

    ○高岡政府委員 先生指摘の平和祈念事業特別基金の関係でございますが、これにつきましては、現在国会で御審議をいただいております予算案におきましては、六十八億の予算をお願いをいたしておるところでございます。これは前年度が約七十七億でございましたが、シベリアの抑留者の関係の事業経費等が今年度いっぱいで終わるというような事情もございまして、それで減額ということになっております。  来年度お願いしております事業計画で申し上げますと、まず基金の造成経費でございます。これは昨年度同様五十億円お願いいたしております。それから、いわゆる祈念事業、特別基金事業の関係でございますけれども、これで申し上げますと、いわゆる補助金に相当する部分が十二億七千三百万円、それから補助金だとか基金運用の収入等を入れまして総額で基金事業といたしましては約二十四億、正確に申し上げますと二十三億八千六百万円の予算をお願いしているというところでございます。  なお、シベリア関係の強制抑留者の方々の関係につきましては、今年度いっぱいで終わるというようなこともございまして四億三千万円でございまして、前年度が十四億円でございましたのでかなりの減額、こういうことに相なっております。
  115. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 空前の低金利時代でございますし、この基金の運営がその程度でいいのか、それについて積み増し等もう少し考えていかなければならないのではないか、このようにも考えるのですが、一言で結構です。御感想で結構ですが、御答弁をいただきたい。
  116. 河野洋平

    ○河野国務大臣 日ごろから委員には、大変この問題について御心配をいただいておりますことを厚くお礼を申し上げます。  委員も御心配をいただいておりますように、基金の運用については、その積んであるもののフルーツで運用するわけでございますから、こういう低金利時代になればおのずからそのフルーツは少なくなってしまう、こういうことが私も大変心配でございます。こういう局面でございますから、でき得る限り効率のよいフルーツの利用を考えなければならない、少ない果実でできるだけ多くの成果を上げるように、さらに一段と努力をいたしたいと思っております。
  117. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 非常に基本的なことを伺いたいわけでございます。  この平和祈念事業特別基金事業の推進ということは、もちろん大変重要な事業であると認識しておりますが、この基金法の目的でございますが、これは法三条によりますと、「今次の大戦における尊い戦争犠牲を銘記し、かつ、永遠の平和を祈念するため、関係者の労苦について国民の理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す事業を行うことを目的とする。」こういうふうに理解をしているわけですが、ここで「関係者」、この範囲が非常に重要だと思うわけでございますが、これを有権的に決定されるその機関は、この法律上どういうふうになっておるのか。非常に基本的なことですが、御答弁をお願いしたいと思います。
  118. 高岡完治

    ○高岡政府委員 お答えをいたします。  関係者に対します慰藉の事業の関係でございますけれども、まず「関係者」の範囲につきましては、これはもう御案内のように、戦後強制抑留者、それから恩給欠格者の方々、それから引揚者の方々、大体この三問題に関係する方々を考えておりますが、ただ、それではそれ以外の方は全く入らないのかということになりますと、やはりこの三条の目的にかんがみまして、広く戦争の惨禍を後世に伝えていくという事業が基本的な事業でございますので、それに関連する方々についても、やはりその範囲は広げていかなければならないだろう。しかし、当面はやはり「関係者」の範囲というのはこの三問題に関係する方々に絞りまして、重点的に事業を展開させていただきたい。  それから、事業の内容につきましては、先生御案内のように……(冬柴分科員「それはいいです」と呼ぶ)
  119. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 それで、法律で言う「慰藉の念を示す事業」、これは何を指すのか。これは法二十七条一項一号から四号に具体的に内容が書かれているのですが、五号に「前各号に掲げるもののほか、」内閣総理大臣の認可を得て、その目的を達成するために必要な事業を行う、いわゆる内容自地の部分があります。したがいまして、この白地の部分を埋める手続、もちろんこの白地の部分は、先ほど読みましたこの法律の目的に即応するためにどういうことをするのか、こういうことに尽きるわけですけれども、ではその事業、「慰藉の念を示す事業」とは何か、こういうことを有権的に決める手続はどう予定されているのか、この点についても御答弁をいただきたいと思います。
  120. 高岡完治

    ○高岡政府委員 手続といたしましては、基金の行います事業につきましては業務方法書というものを定めますが、この業務方法書につきましては、もちろん内閣総理大臣の認可を得なければならないということになっております。この業務方法書によりまして、ほとんどの事業は二十七条の第一項第五号のいわゆる目的達成事業ということでやらしていただいておりますけれども、こちらの具体的な内容を決めていく。  その内容を基金が定めますに際しましては、内閣総理大臣の認可を受ける前に、やはり主たる事業につきましては、いわゆる運営委員会においていろいろと御審議をいただいて、その御審議を経た上で内閣総理大臣の認可を得る、こういう手続になろうかと思います。
  121. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 そこで、運営委員会ということが出てくるわけですが、法によりますと、その運営委員会は基金の「運営に関する重要事項を審議する」、こういうふうになっておりますから、先ほどの空白部分を決めるというのは、非常にこの法律上重要な事項であって、運営委員会の定めるところである、こういうふうになってくると思います。  そういたしますと、先ほど三分野おっしゃいましたけれども、恩給欠格者、恩給をいただく基準に達しないけれどもさきの大戦によって犠牲を受けた、そういうような人、関係者の中にはそういう方があるわけですが、そういう人たちに、運営委員会で、その関係者に対する広い意味で個別給付ということを行うことが基金目的に適合するという、そういう判断をする権限まで与えられているのか、そういう可能性はあるのか、この点についてお示しをいただきたい、このように思います。
  122. 高岡完治

    ○高岡政府委員 先生指摘の個別給付でございますが、これは個別給付の内容にもよろうかと思います。現在やっております慰労の品でございますとか書状等につきましては、私ども、この基金法の規定に従って許される範囲内の慰藉事業であろう、こういうふうに考えております。
  123. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 さて、そういう下敷きを伺いました。この基金事業の中で、関係者の範囲というものがある。その関係者というのは、恩給を受けることができない、一つの基準に達しない人たち。こういう人たちに何らかの慰藉をする事業。この内容は運営委員会で決めて、そして内閣総理大臣が認可をすればこの基金事業として行うことができる、こういうことになってくるようでございます。  私は、そういう理解のもとに、一昨年の質疑に対しても、また昨年も、内外地を問わず、一年以上軍務に服した人に対しては慰藉事業を広げてもいいんじゃないか。これはどれぐらいの人が予想されるかといいますと、百九十万人であるという答弁をちょうだいいたしております。現在行われている慰藉事業は、この百九十万のうち外地勤務、すなわち内地勤務の人は除いて外地勤務で、しかも加算年を含めて三年以上の方に限って、そういう絞りをかけて、こういう方に対して慰藉事業を行う。この人たちは一体何人いらっしゃるのかということをお尋ねしますと、百八万人いらっしゃる、こういうふうにおっしゃるわけでございます。  すなわち、この絞りを三年というものを一年にし、外地勤務というのを取り払って内外ともに軍務に服した、こういうふうに広げましても、百九十万人引く百八万人ですから八十二万人にしかすぎないというふうに思うわけでございます。したがいまして、運営委員会の決定を経て、そして総理大臣の認可を得て、そしてようやく平成年度から始められた個別的な措置の一環として、書状、すなわち総理大臣名で御苦労でありましたという、そういう書状ですね。もちろん内閣総理大臣という署名捺印があるわけですから、これを床の間等にかけていらっしゃるわけでして、それに銀杯を添えて、ささやかな慰藉の気持ちだと思うのですが、していらっしゃる。それからまた翌年は、加えて額縁あるいは時計等の給付の新規事業が行われる。これは非常に高く評価されているわけですが、なぜ三年以上で、また外地勤務に限られるのか。この点が、一つの基準としてはそれは予算を組む必要上わかるわけですけれども、そこまで下げてもいいんじゃないか、こういう強い気持ちを私は持っているわけでございます。  なぜそういうことを考えるのかという理由でございますけれども、実は私も引揚者でございまして、その戦争のさなかに母親を失ってしまったということで無一物で帰ってきた一人でございます。すなわち、当時を生きた日本人は、大なり小なり戦争被害を受けているわけでして、その人たちが一々慰藉を求めていたのではこれは際限がないと思いますけれども、しかし今老境にある老兵たち、これは本人の意思と関係なく赤紙一枚で召集をされた人たちであり、しかも、その後どこへ派遣されるか、いわゆる出征地を決めるのは日本国家だった。そこが危ないから行かないとか、PKOのときそんな話ありましたけれども、危険地域だから行くとか行かない、そんな選択は本人にもないし、日本国家もそういうことは考えずにやったわけでして、危険地域がどうかということで甲乙丙丁、地域が決められまして、それによって加算年、一年行っても三年と計算される。ある場所に行けばその加算年が大きい、内地におればこれはもう全然ない。そうしますと、日本国家の指図で行った先によって、本人の意思に何にも関係なしに同じ期間軍務に服した人が、片方は軍人恩給をもらって相当な金額、累計額にしたら相当な金額をもらっていらっしゃる。ところが、片一方は一銭ももらっていない。  それから、日本国家から慰藉の気持ちの表明すらないということはいかにも残念だというふうな運動をずっと続けていらっしゃる方があるわけでございますね。こういう青春時代を赤紙一枚で徴用された人たちに対して、戦後これだけたって豊かな国になって、国家が御苦労でございましたという言葉もかけられないで、一体どういう道理なんだろうというふうに私は考えるわけでございます。すなわち、本人の意思によって海外へ行ったわけではない。軍務に服したわけでもない。そういうことから、できるだけ広い人たちにせめて慰藉の気持ちぐらいは差し上げてもいいんじゃないかという考えでございます。私がこれを続けてやっていることは、戦後四十数年の歳月を刻みますと、当時の紅顔の美少年も今や老境にあって、もう六十、七十になっているわけでして、残された余命は少ない。一日も早くこの人たちにせめてそれぐらいはやってあげるべきではないか、こういう気持ちでやっているわけでございます。  さて、予算の問題に入るわけですけれども、先ほど来シベリア、モンゴル抑留者に対する慰藉品の贈呈、これは個別的な十万円の贈呈事業も含めますが、今月の末日をもって五年の期間が満了する、こういうことです。これに対しては、先ごろ官房長官、記者会見の席の後ろに何かそういう紙まで張ってPRをしておられましたし、随分政府もこれは広報活動をされたと思うのですね。  さて、もうあと少ししか期間はないのですが、現在までに一体、推定されている四十七万三千人の分母に対して何人の方が請求をされたのか、そして受けられたのか、この点についてちょっと数字を示していただきたいと思います。
  124. 高岡完治

    ○高岡政府委員 シベリア抑留者の関係につきましては、今まで御請求をいただきましたのが二十九万五千件でございます。これは、私ども最初想定いたしておりましたといいましょうか、対象として考えておりました方々の約六二・四%に当たる方々から御請求をいただいております。  それで、贈呈事業を完全に終えましたのが、そのうち二十八万二千人の方でございまして、これは請求いただきました方々の約九五%強に当たります。
  125. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 ですから、こういう関係者の方が相当陳情を重ね、政府も随分いろいろと時間をかけて協議をされた上予算措置をされて、請求期間を五年間。中には待ちに待ったという人たちもあったと思うのですが、それでも笛や太鼓で宣伝してもまだ約三七・六%の人が請求をしていらっしゃらない。これは失権する人が大体三十数%に及ぶだろうと思います。そういう権利を放棄する人がそこにあるということ、これをまず考えてほしい。  それから、この百八万名を分母にして、今行われている御苦労でありましたという書状、銀杯あるいは新規事業、これはことしでたしか九四年、新規事業で三年経過するんですが、どれくらいの請求があるんですか、お示しいただきたいと思います。
  126. 高岡完治

    ○高岡政府委員 恩給欠格者の方々に対します請求並びに贈呈事業の実施状況でございますが、対象の方百八万人に対しまして、請求いただきました方々は二十八万三千人の方々でございまして、これは百八万人の方々に対しましては四分の一強の二六・二%に当たっております。  それで、御請求をいただきましたこの二十八万三千人の方々のうち、既に贈呈事業を実施させていただきました人の数は二十三万七千人で、御請求いただきました方々の約八四%に当たっております。
  127. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 片っ方は十万円個別的に上げましょうということですから、請求をされる権利を失権される人も少ないわけですが、今回書状と銀杯ということになりますと、これはもう九四年も過ぎましても二六・二%の人しか請求していない、七三・八%がまだ権利を行使していらっしゃらない、こういうことがわかります。  さて、そういうことを前提としますと、私がずっと言っているように、この要件を三年を一年に引き下げ、そして内外地の区別を取り払いましても、ふえるのは八十二万人ほどだ。その人たちのうち、請求する人は三割くらいじゃないかと僕は思います。したがいまして、政府が百八万人として予算を確保された枠を超えて請求が行われるということは、確率的に絶対ない、こういうふうに思うわけでございます。  私は、これで新たに要件を緩和することにより新たな予算を確保しなきゃならないという事情のもとでは、いろいろな考え方もあろうと思うのですが、踏み出した事業、目的はきちっと法律の目的に適合しているし、あとは予算なり政府の考え方だと私は思うのですね。したがいまして、私はぜひこれを引き下げていただきたい、このように重ねて三年目のお願いを、要望をするわけですが、いかがでございましょう。     〔主査退席、竹内(猛)主査代理着席〕
  128. 河野洋平

    ○河野国務大臣 冬柴委員から、もう長年にわたってこの問題に大変熱心にお取り組みをいただいて、さまざまな御提言をいただいておりますことを、担当をする者として厚くお礼を申し上げたいと存じます。  委員が先ほどお話しになりましたように、過ぐる日の戦争の惨禍というものはだれしもが厳しく受けとめているわけでございまして、どこにいたからどうという区別の仕方は実はなかなか難しいところがあるという御指摘は、それはおっしゃるところよくわかります。ただ、もうこれも委員よく御承知のとおり、この事業を行いますときに、最初は全く手探りで始めたわけでございまして、やはり何といっても一定の線を引いてこの方々に気持ちをお示しをするということから始めて、今五年目、五年にもうじきなる最後の一カ月ということでございます。  請求をしてくださった方々、まだしてくださらない方々、それぞれでございますが、請求をなさらない方々の中には、我々が周知徹底の努力をいたしたにもかかわらず、まだ十分に伝わっていない部分もあるんだろうと思います。また、そうではなくて、わかっているけれども、何か心の中にそういうものを請求するということに対するこだわりのようなものがあって、わかっているけれども自分はもういいやという何かがあって、請求をなさらない方もおありなんだろうと思います。  いずれにせよ、残す期間あと二十何日間という期間でございますから、ぜひひとつこの慰藉のための事業には名のり出て請求をしていただいて、これは何も政府の気持ちというのではなくて、日本国民の気持ちでございますから、ぜひお受け取りをいただきたいという気持ちがまずございます。これが今月末になりますと、そこで一段落するわけでございます。  そこからどうするかという問題が次に起こってくるわけでございまして、今の段階ではまだ我々の気持ちは、まずこの事業をやり遂げたい。恐らくさまざまな状況があって、今月末で作業が全部終わりというわけにはいかない。名のり出てくださった方々についても、まだまだ若干作業としては残るわけでございますが、この作業をとにかくやり上げて、それからその次はどうするか。まだ別の部分もございますし、この部分で難しいのは、同じような種類のものが並行していきますと、多少こんがらがる部分もなくはないわけでございますから、一つずつきちんとやり遂げて、しかる後にどうするかということを考える場面があるいは来るのだろうと思います。  これは、もう長年にわたります委員からのさまざまな御提言がございます。事務当局は、十分それを承知いたしておりますから、それらのことも私もよく伺いましたので、もし次の段階で、次の問題をどうするかという局面が参りますれば、先生のお話を十分頭に入れながら考えたいと思っております。
  129. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 大変誠意のこもった答弁をいただいたと思います。頑張っていただきたいと思います。  これは官房長官に答弁を求める部分じゃないと思うのですが、政治家としての所見を言いただきたい。それはもう言い古されたことですけれども、官民格差という問題でございます。  戦後、各種公務員や公共企業体の職員となって、軍務に服した人が退職をした場合には、この公的勤務年数に軍歴期間が全部加算されるわけであります。例えば軍歴六カ月、たった六カ月ということでも、年間にすれば共済資金に数万円が加算される。二年半というようなことになると、三十万円以上のものが加給される。ところが、軍務に服したけれども戦後民間会社に、企業に勤めた、そして民間会社で退職をしたという人には、もう一切厚生年金、国民年金等ではこの軍歴というものは評価をされないのであります。官民格差であります。  これについての細かい理屈はもう十分聞いているのですが、私は、政治家として、非常にこれは国民感情として許すべからざる問題のように思えてならないわけでありまして、これは本来は厚生省に聞くべきでしょうけれども、政治家として一言伺って、私の質問は終わりたいと思うのです。
  130. 高岡完治

    ○高岡政府委員 いわゆる戦後処理問題のそもそもの問題の発端が、この年金格差問題でございます。先生、もう御承知のとおりでございます。  これにつきましては、総理府も早くから問題にいたしておりまして、御承知のように当時の総務長官から軍歴通算問題に対する報告書を有識者に求めまして、その結論をいただきました。その結果、いろいろ紆余曲折を経まして、政府部内でも関係省庁が集まりましていろいろと検討いたしました。その結果、今こういう平和祈念基金でこういう事業をやらせていただいておる、そこに政府の気持ちをお酌み取りいただきたい、そのように存じます。
  131. 河野洋平

    ○河野国務大臣 御指摘のところは、十分理解することができます。いきさつその他があってこういうことになっておりまして、お気持ち、もう一つ落ちないところもあるのだろうと思いますが、これまでのいきさつその他を考え、御理解をいただきたいと思います。
  132. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 ありがとうございました。終わります。
  133. 竹内猛

    竹内(猛)主査代理 これにて冬柴鐵三君の質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  134. 竹内猛

    竹内(猛)主査代理 次に、総務庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。野坂浩賢君。
  135. 野坂浩賢

    野坂分科員 総務庁の皆さんにお尋ねをいたします。  昨年の三月二十六日衆議院、二十七日参議院で、部落問題についての地対財特法は五年間延長になりました。この延長に当たっては、協議会の具申を受けて五年間延長するということであったわけでありますが、あのときの小山さんという審議官がいらっしゃいましたよね。小山審議官は、ハードの面が三千八百八十八億円残っておる、したがって事業が完済していないので延期はやむなし、こういうように語っておられましたように伺いますけれども、そのとおりでしょうか。
  136. 池ノ内祐司

    ○池ノ内政府委員 いわゆる法期限の延長の理由のお尋ねではないかと思います。  一つは、ただいま御指摘ございましたように、いわゆる残事業、これが三千八百億円程度残っておるということとあわせまして、非物的事業についても十分でない部分があるということをあわせまして、延期の理由になっております。
  137. 野坂浩賢

    野坂分科員 今審議官おっしゃったとおりに、物的、非物的あわせて考えなければならぬ、こういうことですね。  そこで「同和問題は憲法に保障された基本的人権の問題であり、二十一世紀に差別を残してはならないという固い決意をもって、同対審答申の同和問題を一日も早く解決すべきであるという精神を受け継ぎつつ、国、地方公共団体、国民が一体となった取組みに力を尽くすべきである。」こういう具申が出されましたね。それを受けて、五年間の地対財特法の延長を行った。金のこともあるが、ハードだけではなしにソフトの面も十分あるんだ、こういうことです。  そうすると、この前の五年前は、同和問題については、円滑に一般対策に移行することが協議会の主たる任務でした。今度は、この附帯決議にもありますように「人権尊重の視点に立った取組みが引き続き必要である」「心理的差別の解消に向けた啓発等のソフト面の推進、」「基本的な課題を審議するための仕組みが設けられるよう、特段の配慮が」必要である。こういう面は、ただ単にハードの面ではなしに、結婚とか就職とか、そういうソフト面の推進が必要である、だからそのために協議会はこういう任務でこの五年間やるべきだ、こういうふうに解釈できるわけですが、そのとおりですね。
  138. 池ノ内祐司

    ○池ノ内政府委員 地対協の任務でございますけれども一つは、先ほどお話ございましたように、地対財特法が五年間延長されたわけでございます。したがいまして、残り五年間の地対財特法の延長期間におきます地対対策というものにつきましても、当然これは地対協の任務であるというふうに考えます。  したがいまして、地対財特法自体の制定の趣旨でございますが、これは御承知のとおりと思いますけれども、いわゆる特別対策から一般対策への円滑な移行を図るための法律であるということで地対財特法が制定されたわけでございますから、五年間延長されました期間におきましては、引き続きその課題としましては特別対策の一般対策への円滑な移行というものも当然ございます。  それから、ただいま御指摘がございましたソフト面の問題でございますけれども、これは今御指摘ございましたように、昨年でございますか、法律の改正のときに与野党間の話もございましたし、それから法案審議の際の附帯決議でも、今お話ございましたように、いわゆる地対協の中に「心理的差別の解消に向けた啓発等のソフト面の推進、行政運営の適正化等、基本的な課題を審議するための仕組みが設けられるよう、」配慮するようにというところは、御指摘のとおりでございます。
  139. 野坂浩賢

    野坂分科員 この附帯決議は、自民党の皆さんが私に提案されたのです、一番初め。それで、そのとおりを載せたわけです。  したがって、今度は、一般対策の問題は円滑に移行というのは、完全にできればいい。しかし、結婚差別や産業振興の問題はたくさんある。したがって、抜本的に、総合的にやらなきゃならぬ。それが協議会の任務である。そこで、協議会というものは一体どういう性格を持つかということで、随分議論したのです。それで我々は、行政組織法の第八条に基づいて審議機関が必要じゃないのか、こう言って迫ったのですね。  当時、岩崎さんでしたかね、総務庁長官は。それで小山さんが、協議会も審議会も行政組織法の中で十分考えられる、しかし各省庁にわたる場合は協議会の方がむしろ円滑にいくのではないか。したがって、その性格はあなたが言う審議機関と同じですと、これは予算委員会の総括質問で私に答えた。そのとおり運営をされるものだというふうに理解しておりますが、そういうふうに考えていいですね。
  140. 池ノ内祐司

    ○池ノ内政府委員 ただいまお話ございました議論でございますが、多分昨年の二月二十日のこの予算委員会ではなかったかと思います。  今お話ございました議論は三点ございまして、一つは、審議会も協議会もいわゆる国家行政組織法八条に基づく合議機関である、これが一点でございます。  それから二番目は、いわゆる合議制機関の名称でございますが、それもただいまお話ございましたように、その機関の目的であるとかあるいは所掌事務であるとか、具体的内容を総合的に判断して付せられるべきものでありまして、ただいまの地対協につきましては、関係者間の協議というようなものが重点的に置かれるものですから協議会という名称が付されたのではないか、これが二点目でございます。  それから三点目が、今お話ございましたいわゆる審議会と協議会の権限の強弱でございますが、これについては権限の強弱はない。  この三点について御議論があったというふうに承知しております。
  141. 野坂浩賢

    野坂分科員 今私は、三点目がよくわからなかったのですが、審議会も協議会も任務なり権限は同じだ、こういうふうに理解して質問をしてまいりたいと思うのです。  去年の四月一日からきょうまで約一年になりますが、私は何を総務庁がやったのかよく承知をしておりません。どういうことをやられたのですか。予算は約千二百三十億組んではありますけれども、どういうことをやられましたか。
  142. 池ノ内祐司

    ○池ノ内政府委員 昨年改正法が施行されまして、一年たちつつあるわけでございますけれども一つは今お話にございました物的事業、これは四年度予算で申し上げますと約一千億でございますが、この物的事業を法期限に完了するようにということで、いわゆる計画的に実施ということで各省にも、これは各省中心でございますけれども、いわゆる物的事業の推進に努めておるというのが一つでございます。  それから、啓発等の非物的事業、これは重点を置いてやらなければいけないということで、これも予算で約三百億組んでございますが、これは総務庁含めまして啓発等の推進に努めるということでございます。  特に、総務庁所管で申し上げますと、啓発関係につきまして啓発センターというのがございます。これも地対協の意見具申がございまして、当初の設立の目的から照らしまして活性化されていないのではないかという指摘がございまして、そのセンターの活性化ということで、例えば理事を増員して理事会の充実を図る、あるいはセンターの中に企画委員会というのを設けまして、これは民間運動団体の協力も得まして、中央省庁とか地方公共団体あるいは学識経験者、研究機関の方も参加していただいて、センターの啓発活動の進め方を議論していただきまして、これも近々報告をいただくことになっております。  さらに、調査ということで、実態調査でございますが、これはただいま予算でお願いしておりますけれども、来年度に三億二千五百万で全国の実態調査をやる、こういうようなことで、一応大綱に基づく各般の施策を進めておるところでございます。
  143. 野坂浩賢

    野坂分科員 わかりましたが、今問題は、実態調査をして、その上で施策を推進するということのようですし、啓発センターは長い間開店休業でしたが、当該の運動団体等の協力によってこれから本格的に始動するということについては、敬意を表しています。企画委員会も設置されて進められておる、さすが鹿野総務長官だ、こういうふうに思っておるわけであります。  六月と十一月に実態調査をするわけですね。どういう実態調査をするか、その中身について御説明をいただきたい。
  144. 池ノ内祐司

    ○池ノ内政府委員 一応、調査の種類としましては三本立てでございます。  一つは、地区の概況調査ということで、これが、今お話にございました六月に地区の世帯数であるとか人口等につきまして概況調査をするということを予定しております。  それから、十一月に予定しておりますのは二つでございまして、一つは生活実態調査でございまして、もう一点は意識調査ということでございます。十一月に実施しますのは、この生活実態調査と意識調査……(野坂分科員「意識調査というのは国民の意識調査ですか」と呼ぶ)意識調査ということで、対象といたしましてはいわゆる同和関係者並びにその関係者以外の方とあわせまして調査をしたいというふうに現在は考えております。
  145. 野坂浩賢

    野坂分科員 ここの調査がこの五年間の一番基礎になるわけですから、私どもは非常に重要に考えております。  とりあえず六月には概況調査をされるわけですが、その中で、附帯決議にもありますように「心理的差別の解消に向けた啓発等のソフト面の推進こということをとらえまして、明治四年の解放令以来今日まで差別が残っておる。これは現実の問題だということで地対財特法があるわけですから、この差別というものをなくさなければならぬ。二十一世紀に残してはならぬ。  それで、例えば結婚の場合を想定をしますと、何でもなかった普通の恋愛等をして当事者の合意によって結婚をする。いよいよの段階になったときに部落出身者だというようなことがわかりますと、結婚が破れる例が多々あります。ことしの二月の三日に、東京で慰霊祭をやったのですけれども、広島で事件がありました。御承知かと思いますが、高校生が部落出身者であるというようなことから、睡眠薬を飲んで死にました。大阪でも青年が亡くなりました。皆結婚で、差別がゆえに自殺をしたという悲しい出来事が起きてまいりました。  昔は、昔といいますか解放令以来、融和主義政策というものを政府もとってまいりましたが、それでは本当の意味の平等にならぬ。本当の意味の民主主義にならない。だから、これはあってはならない差別がある、社会悪であるというようなことから今取り組んでおるわけですから、各調査をする際に各県を多かれるわけですね。どの県も多かれるわけですね。多かれた場合、地方自治体や運動団体がぜひこのことはやってほしいというようなことも全部調査をして、それは取り上げるというふうに私どもは理解しておりますが、そのとおり考えてよろしゅうございましょうか。
  146. 池ノ内祐司

    ○池ノ内政府委員 この実態調査のやり方につきましては、現在検討を進めております。その際に、どういうようなものを調査するとかあるいは調査方法等につきましては、運動団体なり地方公共団体の御意見も伺っております。
  147. 野坂浩賢

    野坂分科員 運動団体や地方公共団体意見はよく聞いて、それは取り上げて政策の方に移すというふうに理解していいでしょうか。
  148. 池ノ内祐司

    ○池ノ内政府委員 極端な話を申し上げますと、運動団体なりあるいは地方公共団体から意見があったものを、すべてその調査として取り上げて調査をするということまでは考えておりません。調査目的に照らしまして、やはり必要、的確な調査をというふうに考えておりますので、そういう観点から、御意見をいただいた中で必要なものについては調査をしたいというふうに考えております。
  149. 野坂浩賢

    野坂分科員 取捨選択をするということですけれども、その基準がありますか。基準があれば示してください。
  150. 池ノ内祐司

    ○池ノ内政府委員 そもそも調査の目的が、今までやってきましたいわゆる同和対策あるいは地域改善対策の効果を測定する、こういう観点でございますから、そういう観点に立ちまして調査項目等を検討していきたいというふうに考えております。
  151. 野坂浩賢

    野坂分科員 調査項目というのは別に言わないが、概況調査するわけですね。その上に立って実態調査をするわけですよ。生活調査をするわけです。だから今まで出したものはある、こういうものは。それに従ってずっとやってきた。それを具体的に各地方公共団体がこういうこともやるべきだったということがあると思うのですね、重要なことが。例えば自殺問題とか、あるいは就業問題とか産業振興とか教育の問題とか、たくさん出てくると思うのですよ。それらも取り上げてもらう。やはり基準がはっきりしなければ、何でもかんでもいいが取捨選択はしていくというわけにならぬから、全部それは調査対象として受け入れてもらうということでなければならぬじゃなかろうかな、こういうふうに思うのですが、いかがですか。私の聞きたいのはその辺なんだ。
  152. 池ノ内祐司

    ○池ノ内政府委員 ただいま申し上げましたように、調査自体は施策の効果を測定する、こういうことで地対協からも御指摘いただいているわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、その効果測定としましては、やはり同じような調査が五十年とあるいは六十年にも実施されております。そういう面におきまして、そういうものの比較ができますようにというような観点からも考えまして調査項目方法を考えていきたいと思っております。
  153. 野坂浩賢

    野坂分科員 長官、私はあなたにお尋ねをしたと思うのですが、先ほどおいでになって官房長官が答えておられましたね。年金の問題、恩給の問題、これについて河野官房長官は、十八年間にわたっていろいろと政府はPRしてきた、しかし手を挙げてもらえなかった人もたくさんあるでしょう、しかしこれからも政府の責任においてそういう不幸な人たちがないように全部調べていきたいと政府は考えておりますと、まことに温情あふるる答弁があったのです。私は、感心してここで聞いておりました。そうでなければならぬ。  しかも、部落差別というのは、民主主義の原点である自由と平等がないから差別があるんじゃないか。だからそういう点は徹底的に調査をしてもらって、地方公共団体がこれらの問題は問題がある、運動団体がこれは差別じゃないですか、これもちゃんと正してもらいたい、まだ今までやったことのないところもそういう点についてきちっと整理をしてもらいたい、こういうことを一言えば、調査項目に対してそれは没だというようなことはやはり慎重に、すべての意見というものは聞いてさしあげる、これが私は今の宮澤内閣の筋だと思います。  鹿野さんは、農水大臣もやって農業の厳しさもよく知っておられるし、それ以上に自由と平等という民主主義の大原則を踏まえてやらなければならぬ、そういう点を取捨選択というよりも全部貴重な意見として聞いて、それを実施に移すように努力をすべきだと私は思いますけれども、長官の御意見を承って終わりたいと思う。
  154. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 同和問題は、ただいま先生おっしゃられたとおりに、憲法に保障された基本的人権にかかわる重要な問題であるという認識のもとに、今日まで政府といたしましても、昭和四十四年以来二十四年間にわたりまして関係のいろいろな諸施策を進めてきたということでありますが、昨年改正された地対財特法及び今後の地域改善対策に関する大綱に基づきまして、残された物的事業のより迅速かつ計画的な実施に努めながら、法期限内の完了を目指してまいりたい。また、啓発等の非物的事業に重点を置いて、施策の積極的な推進を図ってまいりたい。  地域改善対策を円滑に進めていくために、行政の主体性の確立と行政運営の適正化に積極的に取り組みながら、同和問題の一日も早い解決に努力をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  155. 野坂浩賢

    野坂分科員 名答弁でありますけれども、一日も早く完全解放をする、いわゆる差別をなくする、差別は完全解消をする、こういうことであります。差別があったら完全解放にならぬわけですから、それは積極的に取り組んで、地方公共団体及び当該運動団体の調査事項のときに述べられる意見、それから具体的な事実というものを差別問題として取り上げていただいて、その解消に向かって一日も早く、二十一世紀には残さない、こういうことになると私は思いますが、そのとおり確認してよろしゅうございますか。問題はないでしょう。長官がいいです。最後、政治判断ですから。
  156. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 これまでの先生からのいろいろな御質疑の中におきましても御答弁をさせていただいたわけでありますけれども、現在、調査事項等の細部につきましては、本年の一月に総務庁の中に設置をいたしました同和地区実態把握等調査検討委員会におきまして検討しておるわけでございまして、近く地方公共団体、民間運動団体及び研究所からそれぞれ御意見を伺うこととしているなど、関係各方面の御意見を伺いながらさらに検討を進めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  157. 野坂浩賢

    野坂分科員 御答弁はいただきましたが、最後に一言だけ。  部落差別というものは社会悪であるから、あってはならない差別であるから、これは日本の国から完全に解放するまで徹底的に調査をし、施策を講じて完全解放を実施いたします、こういうふうに政府はお考えでございますか。そのとおりと確認したい。
  158. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 先ほど申させていただきましたとおりに、同和問題は憲法に保障された基本的人権にかかわる重要な問題であるという認識のもとに、同和問題の一日も早い解決に全力を挙げて努めてまいりたいと思っております。
  159. 野坂浩賢

    野坂分科員 終わります。
  160. 竹内猛

    竹内(猛)主査代理 これにて野坂浩賢君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総務庁についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  161. 竹内猛

    竹内(猛)主査代理 次に、科学技術庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。鳥居一雄君。
  162. 鳥居一雄

    鳥居分科員 地震の予知対策につきまして御質問をしてまいりたいと思います。  特に、南関東直下の地震予知手法の解明が急がれているわけでありますが、御承知のとおり、地震列島と言われるこの日本列島の中で目が離せないなという地域、特定監視地域が八地域あります。それから、観測強化地域、これは近く心配されるという意味で、東海、南関東。南関東地域につきまして、昨年は中央防災会議の大綱が取りまとめられました。それで、この大綱の決定の背景は、切迫性を取り上げまして被害の甚大性を懸念しているわけです。そういう背景の中で、毎年のように、東京を含めます関東地域、かつては六都県市でありましたが、予知手法の解明が急がれる、科学技術庁の一層の努力を、こういう要請が再々届いてきたのだろうと思います。  それで、科学技術庁、政府としては、昭和五十一年以来、閣議決定に基づきまして、科学技術庁長官が本部長になりまして地震予知推進本部が設置され、今日に至っております。一方におきまして、地震学者の集まりであります測地学審議会、これは文部省でありますが、第一次答申から始まりまして現在第六次答申の五カ年計画の目標をもちまして予知手法の解明、そして、その第六次の最終年度に当たっているのがことしです。したがいまして、第七次の測地学審議会の答申が間もなく、七月ごろ出るのだろう、こういう状況に置かれていると認識をいたしております。  それで、まず一つは、科学技術庁として、特に難しいと言われている南関東直下の地震。南関東地域は、東京を含めまして人口が極めて集中する地域であり、一たん発災ということになりますと大変な被害が想定されるわけであります。特に、かつての関東大震災は相模トラフ沿いに起きた非常に大規模な地震でありましたが、これは百年、二百年というレンジで、当分の間ない。しかし、直下の地震につきましては切迫性がかなり高いものがある。つまり、直下の地震対策というのが目下の急務であるわけです。しかも、都市型のノイズ、一方におきましては関東ローム層の厚い軟弱な地質のためになかなか観測がしにくい。必要なだけの井戸を掘る必要がある。一方におきまして、人工衛星を使った測地、GPSを必要なだけ設置をしていくという課題があります。また、海底における観測網、今要求されている観測道具というのはこれなのだろうと思うのですが、遅々として設置ができない。切迫性からいっても、なるべく早い時期に必要な分は必要なだけ完備をしなければならないはずだと思っているわけですが、これが遅々として進んでいないという現状だと思うのです。本年度、この事態がどう改善されるのか、まず伺いたいと思うのです。
  163. 石井敏弘

    ○石井政府委員 お答えいたします。  先生指摘の南関東地域直下の地震に関しましては、先生先ほど来おっしゃいましたように、昨年の八月に中央防災会議におきまして大綱を定めたところでございますが、中央防災会議の地震防災対策強化地域指定専門委員会が種々検討を行ってきた結果を踏まえて大綱を定めたということに相なるわけでございます。  この専門委員会検討結果によりますと、先ほど来先生指摘のように、南関東地域におきますマグニチュード七クラスの地震の発生につきましては切迫性が高まってくることは疑いなく、また百年から二百年先に発生する可能性が高いと考えられる次の相模トラフ沿いの地震が起こるまでの間に直下の地震が数回発生することが予想される、かようなことが明らかにされたところでございまして、これを受けて「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」が策定されたということでございます。この大綱の中でも、「地震予知観測、研究等の推進」ということを掲げておるわけでございまして、これにつきましては、直下の地震の予知は現状では非常に難しい状況にあるが、今後、その実用化を図っていくために、観測手法の開発とか、あるいは各種観測の充実等によりまして、長期的及び短期的予知のための観測を強化しつつ、予知に有効なデータの蓄積を図っていく、特に、直下の地震の規模及び関東平野の地域特性等にかんがみ、広域深部観測施設等の整備を積極的に推進する、かような位置づけを大綱で明らかにいたしたところでございます。  この南関東の直下の地震予知の問題につきましては、もとよりこの大綱策定前から測地学審議会におきましても、第六次地震予知計画にこれへの対応ということがそれなりに規定されておるところでございまして、従来から科学技術庁におきましては、防災科学技術研究所におきまして、これまでいろんな形で進めておりましたいわゆる三千メートル級の深層観測施設三カ所、従来置いておったわけでございますが、これが微小地震観測に大きな成果を上げてきた、かような実績を踏まえまして、既に平成年度から首都圏直下型地震予知のための広域深部観測施設の整備を推進してきた、かような経緯にございます。  この広域深部観測施設の整備というプロジェクトは、全体計画といたしましては、三千メートルクラスの深層観測施設を一カ所、二千メートル観測施設を十二カ所、それからケーブル式海底地震観測施設を一カ所、また人工衛星を用います、いわゆるGPSによる測地観測施設につきましても十二カ所整備を図る、かようなことでこれまでその推進を図ってきたという経緯があるわけでございますが、先ほど申しました大綱でも、広域深部観測施設の整備ということの重要性をさらに強く打ち出してきた、こういう経緯も踏まえ、また、昨年も予算委員会におきまして先生からも、より早急なる対応ということを求められたというような経緯等、いろんな社会の期待というものに科技庁としても積極的に対応していく必要があるということで、既に平成年度におきましても、補正予算でより加速するような施策を講じさせていただくというようなことをさせていただきましたし、また今年度予算におきましても、生活重点化枠の活用というようなことで、平成年度予算の政府原案の作成に当たりましても、広域深部観測施設の整備ということにつきましては、格段の努力を払って対応しておるというのが現状でございます。  現在までの状況について申しますと、三千メートルクラスの観測施設につきましては、先ほど言いましたように、平成年度から整備を進めておるところでございますが、既に観測井、井戸は穴掘りを完了いたしまして、現在観測室等の基礎工事を進めている、こういう状況にございます。また、二千メートル級の観測施設につきましては、平成年度におきまして二施設の整備に着手する、こういうようなところに来ております。  また、相模湾に敷設する予定のケーブル式海底地震観測施設につきましては、陸域部及び沿岸部の敷設設計を実施しておるという状況であり、また、人工衛星を利用して地殻活動を観測するためのGPS観測施設につきましては、十二カ所について平成年度内に完了するということを目途といたしまして、現在その整備を進めておる、こういうものが現在までの状況でございます。  また、平成年度につきましては、科学技術庁におきまして、さらに広域深部観測施設の整備により充実を図っていこうということで、平成年度におきましては十九億八千五百万、約二十億円というような首都圏直下型対応予算要求をさしていただいておるところでございまして、これは昨年度に比しまして三六%ぐらいの増加ということで、非常に加速させているというような状況にあるわけでございます。
  164. 鳥居一雄

    鳥居分科員 だれが考えてみても、南関東直下の地震の予知は難しい。確かに難しいのですが、やはり道具立てを整えない限り、難しい難しいというのは続いていくのだろうと思うのです。どんな道具立てか、穴を掘るだけの話です。十二本掘りたい。今の単純計算でいつでも、ざっと十年かかる計算ですね。  力武さん、予知連の副会長をやっていた方ですが、力武さんの話によると、一九九〇年から二〇〇〇年までの間の十年にマグニチュード六程度の地震、これの発生の確率が四〇%だという確率計算を表明されております。そうすると、そういう切迫性というのを考えてみたときに、予知の手法を開発する、その道具になる二千メートル級の井戸を掘らなければならない。それが十年もかからなければ井戸が振れないというのであるとすれば、これは何をか言わんやということになってくるのだろうと思うのです。  どんなものでしょうか、目標を明確にして、いかにも私たちの目で見るに、シーリング制度だとか予算制度というのが障害になって、めり張りのある予算措置がとれない。毎年何%という枠の中でこの井戸を掘っていくとなると、やはり十年かかってしまう。しかも十年かかるのが当たり前だというような考え方で対応せざるを得ないことになってくるんだろうと思うのです。二千メートル級の井戸が十二本どうしても必要だ。何とかこの井戸を短期間の間に、例えば向こう三年、あるいはどんなに長くても向こう四年、その短期間の間に二千メートル級十二本が掘り終わる、システムとして動き始める、こうならなければ、予知手法の確立なんというのは全く夢の夢と言って間違いないと思うのですけれども、どんなものでしょうか。
  165. 石井敏弘

    ○石井政府委員 先ほど申しておりました広域深部観測施設、これ自身、大変中身といたしまして大きな計画でございまして、私ども、ほぼ全体の金額で百五十億円ぐらいかかるのではないか、こういうように現在想定いたしておるところでございます。私ども、これまで大変な、私どもなりとしての努力を積み重ねてきたつもりではございますが、御指摘のように非常に重要な事業であり、かつ国民の生活という実感からいいましても、一日も早い整備ということは、先生指摘のとおりでございます。  私どもといたしましても、先ほど来言っております「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」の決定を踏まえまして、より早期に整備を図るべく最大限の努力をしてまいりたい、かように考えておりまして、当初言っておりましたような十年とか平成年度とか、そういったものよりもより早期にできるべく最大限の努力を払いたい。もとよりそのときどきの財政状況というものはあろうかと思いますが、本件につきましては、財政当局も私どもの話に非常によく耳を傾けていただいておりまして、今後とも、財政当局を含め、あるいは国会先生方の御指導もいただきながら、極力早く整備を図るべく最大限の努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  166. 鳥居一雄

    鳥居分科員 測地学審議会事務局に当たる文部省に伺いたいと思うのですが、六次の地震予知計画の推進につきまして建議がなされ、最終年度を迎えたわけですが、南関東直下の地震予知手法の解明、これは第一次以来第六次まで延々とこの予知手法の確立だと、こう言われながら来ているわけですが、どういう成果が上げられたのか、どんなふうに御評価されているのか伺いたいと思うのです。
  167. 長谷川正明

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  先生よく御承知のとおり、南関東地域につきましては、早い時期から観測強化地域というふうに指定されておりまして、測地学審議会が策定をいたします予知計画においても、観測体制の充実が特に必要な地域として重視され、その観測体制の充実度という意味からいいますと、東海地域に次ぐ状況ができ上がっております。また、特に先生が今御指摘になりましたような南関東地域、特に首都圏が持っております特殊性、つまりその社会的な重要性、あるいは観測研究の立場から申し上げれば、よく御承知のようなノイズ、あるいはローム層の堆積、そういう首都圏を中心とする南関東地域の特殊性ということに特に意を用いるといいますか、関心を高めまして、予知計画においても五次計画、それから現在走っております六次計画におきましては、南関東地域が特に特別の項目を立てた形で、その観測研究の難しさとともに、その重要性ということが位置づけられているわけでございます。  それで、今先生、どういう成果が上がったかというお話がございましたが、現在、第七次計画についての策定のための審議が、専門家の方々、大変精力的に御協力をいただきまして進んでおるところでございます。その審議の過程でレビューということも行っておりまして、その中で、大変困難ながらも、少しずつ地震前の異常な現象等、特に伊豆東方沖地震等の経験を踏まえながら、それなりに異常現象の検出といいますか、そういうことはできつつありますけれども、それと地震発生の前兆現象ということについて、理論的にきちんと説明できる段階にはまだまだ至っていないということが率直な現状でございます。研究を深めれば深めるほど、特に直下型地震の難しさということがわかってきておるということだろうと考えております。  そういうことを踏まえつつ、現在、先ほど申し上げました第七次計画の策定作業の中で、南関東地域、特に首都圏直下型地震というものの持っております難しさ、それとともに南関東地域の社会的な重要性といいますかそういうこと、あるいは現在における技術水準、観測水準というものを冷静に分析をしながら、南関東地域の地震ということを一つ大きな問題意識としてとらえながら審議が進んでいる、検討が進んでいるというふうに私ども理解しております。  以上でございます。
  168. 鳥居一雄

    鳥居分科員 それで、地震予知推進本部の立場で、平成年度予算で南関東直下の地震の予知手法の解明、そのための予算立て、これはどういうふうに進んでいくのでしょうか。では、まずそれを伺いたい。
  169. 石井敏弘

    ○石井政府委員 お答えいたします。  平成年度の政府予算案におきましては、南関東直下の地震対策につきましては、科技庁、文部省、運輸省等関係機関の連携協力によって全体の充実を図っていくという方向でございまして、この南関東地域の直下地震予知のための予算、こういう意味におきましては、一部概算になる場合もあるのですが、東海対応とかいろいろなことで案分推計というようなことも一部入りますが、私ども、いわゆる南関東というような意味で計算いたしますと、平成年度は、この関係の当初予算は九億二千万程度でございましたが、関係各省全体合わせますと、平成年度では三十四億四千万というような数字になっておるところでございまして、具体的には、科学技術庁におきましては約十九億八千万ということで、約二十億円ということでございます。また文部省におきましては、国立大学等におきます各種内陸地震予知等に関する基礎的調査といったようなことで、約六億二千万円、また郵政省におきましては、平成年度から新規に、これまで郵政省は、特にこの南関東地域における観測関係に関しては事業を有していなかったわけでございますが、平成年度におきましては、首都圏広域地殻変動観測施設の整備ということで、二億三千万、これはVLBI、いわゆる超長基線電波干渉計といったようなものの整備を要求いたしておるところでございます。  このほか、運輸省、建設省、通産省等におきましても、それぞれ南関東関連の施策につきまして、その一層の充実を図っていくということでの予算要求させていただいておるというようなことでございまして、私ども地震予知推進本部といたしましても、全体の整合性をとりながらそれぞれの施策が円滑に進んでいくよう、今後この予算が実現いたしました場合には、そのようなことで各省の連携も強化しながら進めていきたい、かように考えておるところでございます。
  170. 鳥居一雄

    鳥居分科員 地震予知推進本部の専門部会は、地震学者の専門家を代表するような予知連の会長あるいは測地学審議会の会長、工業技術院地質調査所長、科学技術庁の防災科学技術研究所長という皆さんを加えた専門部会がありますね。言ってみれば、直接研究陣の声を予算の上に反映させる、あるいは政治との重いパイプ役をこの専門部会というのは引き受けていると思うのです。この専門部会は、昭和五十一年に推進本部が設置されて、一、二年、二回開いただけで、何で開かれないまま今日に至っているのですか。
  171. 石井敏弘

    ○石井政府委員 地震予知推進本部につきましては、先生おっしゃいますように、専門部会あるいは各省連絡会、それぞれの下部機構も持っておりまして、これら下部機構の活動にも力を入れると同時に、推進本部自体といたしましても、毎年所要回数の本部会議を開きまして、そして関係各省全体のお話を伺い、あるいは今後行うべき問題等について議論をしておるというような形で活動を続けておるところでございます。
  172. 鳥居一雄

    鳥居分科員 いやいや、そうじゃなくて、専門部会というのはずっと開かれていないでしょう。専門部会をまるっきり開かなくなってしまったというのはどういうわけなのか、ということを聞いているのです。
  173. 石井敏弘

    ○石井政府委員 専門部会自体は開いておりませんが、この毎年開いております地震予知推進本部、その会議に、先ほど先生おっしゃいましたような予知運会長とか測地審の会長あるいは各研究機関のそれぞれの権威者といったような方も陪席していただき、陪席といいますか、同じ席に着いていただき、それぞれ意見交換をやって、実質的なそういった専門家の意見も取り入れながらやってきているというのが現状でございます。
  174. 鳥居一雄

    鳥居分科員 もう一つ聞いておきたいのですが、推進本部の第五十五回、第五十六回の幹事会で、一つは、首都圏の地震予知推進方策のワーキンググループ、これを設置しよう、五十六回の幹事会では、首都圏における地震予知のための観測研究の推進に関する検討会を設置しよう、これはその後動いているのですか。
  175. 石井敏弘

    ○石井政府委員 先生指摘検討会におきましては、これまでも必要な調査検討を行ってきておるところでございまして、科学技術振興調整費によりまして対応すべきような研究課題、こういったようなものもそういった場を使ってやっていくというような形で活動をいたしてきておるところでございまして、今後も私ども、この検討会を使いながらそういった問題に積極的に対応していきたい、かように考えておるとこでございます。
  176. 鳥居一雄

    鳥居分科員 最後に、大臣に伺いたいと思うのですが、振興調整費百億少々ありますが、これは言ってみれば、この中から何%かをソフトの方に振り向けよう、ハードはやはり井戸を掘らなければならないという点だと思うのですね。いずれにしても、南関東直下の地震の予知手法解明というのは緊急課題だと私たち認識しておりますが、御決意のほどを伺って、終わりたいと思います。
  177. 中島衛

    ○中島国務大臣 今鳥居先生から御指摘をいただきましたように、南関東地域は人口も集中しておりますし、いろいろな公的な施設等もあり、我が国にとりまして大変重要な地域でございます。地震は、一たん発生した場合、人命はもちろん社会経済に大きな影響を与えるものでありますので、地震予知は極めて重要な課題と認識をいたしております。しかしながら、南関東地域における直下型地震予知は、現在の科学水準をもってしても大変難しい課題でございます。  このため、政府としては、政府関係機関及び国立大学の緊密なる連携協力のもとに、南関東地域における地震予知のための観測研究の充実強化を図ってまいりたいというように思っております。また、今科学技術振興調整費のことにも触れられましたけれども、これらの有効活用も図ってまいりたいと思っております。  今後とも南関東地域直下地震を初めといたしまして、我が国の地震予知体制の拡充強化に努めてまいる所存でございます。
  178. 鳥居一雄

    鳥居分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
  179. 石井敏弘

    ○石井政府委員 先ほど先生の御質問の五年度政府予算案の説明につきまして、私ちょっとミスをしましたので訂正させていただきたいのですが、政府予算年度三十四億四千三百万、これはいいのでございますが、平成年度予算につきまして増額を言ってしまいまして、四年度は二十五億二千百万円ということで、四年度に比して九億二千二百万の増額ということで、増分率三六・六%、約三七%といったことでございましたので、訂正をさせていただきます。どうも大変失礼いたしました。
  180. 竹内猛

    竹内(猛)主査代理 これにて鳥居一雄君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして科学技術庁についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  181. 竹内猛

    竹内(猛)主査代理 次に、総理本府について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川俣健二郎君。
  182. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 きょう、ある判決が高裁で出まして、その判決は日本列島を走ったと思うのですけれども、十時から一〇一で判決があった。それはシベリア抑留者強制労働補償要求、これに対する提訴の判決でございましたが、まず民事局長、今井さん来ていますかちょっとその主文を読んでみてくれませんか。
  183. 今井功

    ○今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  今御指摘の判決でございますが、本日の午前に東京高裁で言い渡されました。主文は次のとおりでございます。  第一項「本件各控訴を棄却する。」第二項「控訴人らの当番における新請求を棄却する。」第三項「控訴費用(当番における新請求に関する部分を含む。)は控訴人らの負担とする。」以上のとおりでございます。
  184. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 これに対するあなたの感じ方を聞きたいところですが、それも今コメントというのは無理だろうとは思うが、大臣、私は、シベリア抑留に関する質問というのはきょうで十二回目なんでございまして、第九十一回国会から、予算委員会、本委員会ですね。二回目も本委員会。それから三回目は予算分科会。四回目はまた本予算委員会。五回目は分科会。六、七はまた予算委員会委員会。八はその当時援護法の社会労働委員会。それから九回目は衆議院の本会議。それから十回目は予算委員会、この分科会。十一回目は外務大臣に対する第二分科会。そしてきょうは十二回目なんです。  これはちょっと政治姿勢とも関係すると思うのですが、このごろの国会というのは評判が悪いというか、余り映りがよくない。きのう、おとついあたりの、何だか知らないけれどもああいう予算委員会、これは今どっちが悪いとかいいとかという講評の論議をする場じゃなくて、国会というのは非常に評判が悪い。したがって、あの国会のニュースというのは四番目だか五番目のNHKのニュースです。そういう中においても、このシベリア抑留に対するニュースはほとんどトップのように出され、そしてNHKなんか二時から解説などをやっておりました。私は、そういう意味において、国会というのはという不信の一つになっているのは、このシベリア抑留に対する政府の姿勢であります。なぜ私は十二回もやっているかといったら、客観情勢もどんどん進展してきているし、政府の考え方も変わってきておるだけに、聞くたびに変わっているというのは、それは客観情勢も変わっている。  まず、戦後に、シベリア抑留というのをどのように考えるか。いや、ポツダム宣言で武装解除して、南の日本の国、祖国へ帰ってくるところを、何を迷ったか北の方に行ったのが悪かった、こういう考え方だった。これはおかしいぞ、その言い方はないだろうと。数多くは言いません。  二番目の変わり方は、一体あれは捕虜かどうか、一九四五年の八月十五日をもって捕虜というのはいないはずだという考え方だった。だけれども、丸腰になって、全部武装解除させられて、銃を向けられながら極寒の地で強制労働、これは捕虜じゃないだろうか。さすが当時の外務大臣だった園田先生が、私も兵隊の経験がある、あれは捕虜以外にないだろうな、捕虜と定義づけてもいいと思う、こういうように変わってきた。  三番目は、昭和二十九年ですか、ジュネーブ条約というのが出た。それはどういうことかというと、イタリアの軍人がフランス、あるいはイギリスがドイツでと、お互いに捕虜になったのだが、ジュネーブ条約で、お互いに強制労働させたり何かしたのだろうが、それは自国が全部補償すべきだ、こういうジュネーブ条約に日本も調印したのでございます。ところが、フランス語ですから、記録を見ると、英語に直して国会にかけられた。それは「ザ・セッド・パワー」という、いわゆるどこで支払うべきか。簡単に言うと、この場合はソ連が払うべきか、日本が払うべきか、大論争をした。それは、「ザ・セッド・パワー」を直訳すると「当該国」だから、したがって、ソ連がお支払いすべきではないだろうか、そういう考え方で突っ張っていった。  ところが、安倍晋太郎さんが外務大臣の際に、間もなく私も六回目か七回目の選挙のときでしたが、したがって、いわばどさくさ紛れというか、あの「ザ・セッド・パワー」の解釈は間違っておった、こういうわけで官報を出した。その訂正の官報を出したことを御存じですか。どなたか答弁できる人はいますか、いませんか。外務省、来ていませんか。 きょうの分科会は、隣の外務省の第二分科会も申し込んでおったのでございますが、やはりこういう窮屈な日程の中の分科会ですから、そちらの方は遠慮しましたが。  時間がないから簡単に言うと、「ザ・セッド・パワー」というのは「当事国」といいまして、いわゆる祖国、自国だ、お互いに自分の国で払え、帰ってきた祖国で払えという考え方がジュネーブ条約です。したがって、私も調査した。後で申し上げますが、国会図書館でも調査した考え方を見せております。それは、年金で払う場合、一時金で払っている場合、あるいは月々払っていく補償もある。こういうことでございますが、それだけに私は、十二年の提訴の判決は、これは血も涙もないな、こういう意味で、日本列島のニュースになったと思います。  六十数万、もう十何万死んだ。五万六千人は向こうで死んできた。それはゴルバチョフのおかげで、その戦死者のあれをきれいに精査されて、こっちへ持ってきた。墓も、これから墓参団などを厚生省が中心になってやってくれておる。  問題は、強制労働させたので、これに対する考え方がないのか。ずっといったら、やはり払うべきだという世論もあった。そうしたら政府の方で一大事なのはここなんだ、大臣、政治家として考えなければならぬのは。総務庁のその機構をなくしてしまった。シベリア抑留者というのは五十何万いるわけですから、したがって、今いろいろ質問しようといったって質問できないぐらいに、機構がないんだよ。何の機構をつくったか。官房長官のところの総理府の中に、祈念事業をやろう、こういう程度の、四、五人しかいない機構になってしまったのです、そうされてしまった。どうせこれは大変だよということになったのでございます。  これに対してだれが答えるのかな、大臣が答える前にだれかが答えたらいいのじゃないかな。どういう経過なんだ、これは。
  185. 高岡完治

    ○高岡政府委員 総理府の立場でお答え申し上げます。  先生御案内のように、この問題につきましては、五十年代中ごろに戦後問題処理懇をつくりまして、そこでいろいろ検討していただきまして、そして、現在、総理府所管いたしております平和祈念事業特別基金におきまして、先生先ほど御指摘のような事業をやらせておるということでございます。  大まかに申し上げまして、先生お詳しいようでございますのでくどくは申し上げませんが、大略そういう経過をたどって現在に至っております。
  186. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 それだけの話なんだ。祈念事業をやろう、気の毒でした、こういうことでありました。  そこで、いろいろな解説がございます。今まで十何回やっている間に解説があります。そこで何回も取り上げている間に、国立国会図書館の方で、調査及び立法考査局社会労働調査室というセクションがある。そこの主幹で和田任弘さんという、今は退職されて、いない人ですが、「ISSUE BRIEF」というもので、「調査と情報第百五十四号」、大きく「「シベリア抑留」をめぐる諸問題」、こういうことで書いてくれております。  Ⅰ シベリア抑留の概要   1.シベリア抑留に至る経緯   2.ソ連地域における抑留日本人の状況   3.ソ連軍管理地域からの送還の概況  Ⅱ シベリア抑留をめぐる問題点   1.ソ中立条約とソ連の対日参戦これは多くは言わなくても、歴史的なことでございます。   2.ポツダム宣言第九項と日本人捕虜長期抑留   3.抑留者数と死亡者数   4.死亡者名簿と墓地所在地などの問題   5.強制労働とシベリア裁判  おわりに これだけのものをやれといったら大変なので、私のコピーで持ってきたのでございます。  問題は、国立国会図書館でこれだけのものをやっているのに、政府の方にこの機構がないんです。  そこで、私はこれにかかわる強制労働のところを読んでみます。皆さんに配ってあります二枚目。こういうことです。   5.強制労働とシベリア裁判   シベリアなどに抑留され、強制労働に従事させられた元被抑留者およびその遺家族六十二名は、昭和五十六年春から四次にわたって「シベリア強制労働補償請求訴訟」いわゆるシベリア裁判を起こした。 これが十二年前。  本訴訟は、捕虜の抑留中の労働に対する賃金、死傷病・労働災害に対する補償、その他長期抑留・強制労働による損害賠償等の支払いを国際法上あるいは日本国憲法、国内法上の権利として求めたものであるが、昭和六十四年四月十八日の第一審判決(東京地裁)では、原告側の敗訴となっている。   本訴訟の争点はいろいろあるが、最大の争点は、戦争捕虜の労働に対しては、その対価を支払う義務が国際法上も日本国憲法上もあるにもかかわらず、ソ連に抑留されていた原告らに対して労働賃金に相当する金額が支払われていないのは不当であるというものであった。 これは客観的にこの和田さんが書いております。 ところが、   現に、第二次大戦の交戦国中、アメリカ、フランス、カナダ、西ドイツ、オーストリアでは、戦後、自国民捕虜に対する各種の補償を規定した国内法令を制定している さっき言ったように、各国、ジュネーブ条約に判こを押しているのだから。  制定しているし、わが国においても、オーストラリア、ニュージーランド、東南アジア地域およびアメリカに抑留された日本人捕虜に対して、特別の予算措置を講じたうえ、労働賃金の支払いが行われた事実がある。 こういうことなのです。  ただし、その支払いは、抑留国の捕虜収容所が発行する「労働証明書」に基づいて行われている。南方から来た者、単刀に言うと。   ソ連の場合には、ほとんどの場合「労働証明書」は発行されなかったし、それらしきものが手渡されても、引き揚げの際に他の書類などとともに没収されたといわれる。しかし最近になって、 これは九一年、一昨年ですが、  最近になって、ソ連政府が抑留者の希望をいれて「労働証明書」を発行する意向であるとの報道が伝えられている。 二年前、ゴルバチョフの関係もあります。  もし、それが事実であるとすれば、 そこで事実関係が出てきたわけです。皆さん御存じのとおり、労働証明書を送ってよこした。  南方地域で米英軍などの捕虜となって抑留中に労働に従事した元日本兵と同様に、「労働証明書」に基づく労働賃金の支払いの可能性が出てくるかもしれない。今後の成り行きが注目される。 これは私が書いたものではない。本当は、政府もこういうようなことを考えるべきなのに、機構がないのです。国立国会図書館の調査及び立法考査局社会労働調査室主幹の和田任弘さん、もう一昨年定年になっておやめになったものだから、これは本当に得がたい考え方であり、大変な考え方を残してくれたと思います。南の方から来た人には払った、しかし、それは労働者手帳というのがあったのだ、北の方からは、払いたいのだけれども労働者手帳がないんだ、ところが労働者手帳が出てきた、送ってきたのです。そういう経過なのです。  これは、私は、別にその五十六万人の人力を何とかできないか、どんどん亡くなっていくわけだから、減りこそすれ、ふえやしない対象の方々です。ふえやしないのですから、どんどん亡くなっていくわけですから。したがって、問題は政府の姿勢、ここに問題があると思いますよ。こういうような経過を踏まえると、労働者手帳が出てきたのだから、やはり考える段階ではないのかな、こう思うのですが、これは大臣、いかがですか。
  187. 河野洋平

    ○河野国務大臣 長い年月がたって、その間に、日本と当時のソ連、今のロシアとの関係がさまざまな変遷を経て今日に至っておりまして、その間には、相手国の国情も随分変わり、日本の国内でも、今、川俣議員御指摘のように、国力も変わり、国の政治の態様も少しずつ変わってきたところもあるかと存じます。  こうした中で、関係者のさまざまな御努力があって、労働証明書なるものが入手されたということは、それなりの意味があるとおっしゃる方もあるでしょうし、その労働証明書の効力といいますか、そのものにまだまだ問題ありとする方も一方ではあるかもしれません。そして、それはまたそれとして、議員先ほど冒頭におっしゃったように、きょうはそれに絡む判決が出たということでもございます。その判決の内容については、私もまだ詳細承知をいたしておりませんから、この席でそれについてとやかく申し上げることはできませんが、それらを総合的に判断をする必要もあろうかと思います。また、この裁判の結果については、その結果に承服しがたいとおっしゃる方もございましょうし、これは一つの結論だと見る方もおられると思いますが、そうしたものも、やはり法治国家として一つの大事な参考になるのは当然のことだろうと思いますが、それらこれらを見ながら、行政は行政としての考え方を固めていかなければならぬのではをいか、こんなふうに思います。
  188. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 私はせっかく、今度の官房長官というのはやる気があるな、単なる権力、全力、暴力か、そっちの方ばかり見ている官房長官ではなくて、国民の方を見てくれている官房長官だなと尊敬しておるんですよ。今度の労働証明書というのは、やはりそれなりに考える余地があると思う。  そこで、ここまで政治家同士の話を皆さん聞いていると思いますけれども、高岡審議官、何かないですか。
  189. 高岡完治

    ○高岡政府委員 私どもの世代の人間からいたしましても、私どもの先輩がああいう状況でソ連に連れていかれ、そして大変厳しい気象条件の中で大変な御苦労をしておられた、そういうことにつきましては、本当に私ども後輩からいたしましても、いろいろな手記、いろいろなお話をお伺いするたびに、本当に大変な御苦労をなさったなと涙が出るような思いでそういうものを読まさせていただいております。そんな気持ちを胸に秘めながらも、私どもといたしましては、関係者の方々からの大変な強い御要望を受けまして、総理府といたしましても、戦後処理問題懇談会を開きまして二年半にわたり大変熱心に検討させていただきました。  その戦後処理問題懇談会の報告書で申し上げておりますことは、先生も十分御承知のことではございますが、やはりさきの大戦の惨禍というのは、これは広く国民一般に及んだわけでございまして、その惨禍の程度も、それは人によっていろいろと違うこととは思いますけれども、しかし幼児に至るまで、あるいは年老いた方に至るまでそういう惨禍はひとしく及んだところでございます。そういう方々のいわば納める税金によって、今私どもがやっております事業も賄われておるということ、一般国民がこうむっております。そういう惨禍の程度と、それからシベリアに抑留されて大変な御苦労をなさった方々とのその惨禍というものを比較するというのは、一概に比較というのはできないわけでございますけれども、そういった事情を十分に頭の中に入れながら、それでは一体、そういう抑留者の方たちの大変な思い、傷つかれたそのお気持ち、そういったものに対して、国として一体どうすればいいのかという、そういうものを総合勘案いたしまして、報告書においては、これもやはりまことに申しわけないことではあるけれども、一種の戦争損害というふうに考えざるを得ない。  しかし、戦後四十数年をたっても、なおかつこういう国家的な補償を求められるそういう諸先輩のお気持ちというものも十分やはり配慮しなければならない。では、国としてどういう対応をなすべきであるか、この結果出てきましたのが平和祈念事業特別基金というふうに私どもは考えておるわけでございまして、この戦後処理懇の援言に基づいてつくられたものでございます。その結果は、御案内のような書状でございますとか銀杯でございますとか、あるいは恩給等を全く受けておられません方々につきましては、慰労金というものを支給させていただいておるということでございます。  それから、その事業のほかにやはり一番大事なことは、基金法の目的でも言っておりますけれども、こういった非常な惨禍といいましょうか、苦しい思いといったものが、やはり後世に引き継がれていかなければならない、そのための事業といたしまして、私ども一般的な慰藉事業といたしまして、毎年、東京でございますとデパートを借りまして、抑留者の方々の大変な生活状況、そういったものを展示させていただき、若い世代の皆様方にも御理解をいただいて、これは国家として次の世代に引き継ぐ努力をしていきたい、こんなふうに思っておるところでございます。
  190. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 そんな説教みたいなことを何ぼ聞いたって、涙が出るような思いだ、こう言うけれども、そんな理由ないんだよ。南の方から来たのには労働手帳を見て払ったんでしょう。そうなんだよ、北から来た人には払えないということはないでしょう。四十数年たったというのは、今までやっていないからですよ。戦後だと思ってください、これが。戦後だと思ってくださいよ。当然払うべきでしょう。それから、五十九年の戦後処理懇だって、もう戦後処理は終わったと言ったんだよ、六人委員会では。終わった終わったと言いながら、韓国の慰安婦に補償を出そうとしているじゃないですか。政治はそんなものなんだよ、私はそう思うね。  どうですか、これ。労働手帳も出てきたのだから、やっぱり官房長官、今即座にはできないと思うが、判決の主文というのは。これが二分の一の薄さ、これの三倍の内容を、私、今井さんの方からもらったんですけれども、これも十分に検討しなきゃならぬだろうから、ひとつぜひ、これだけの阻害する条件がとれたんだから捕虜ではない、やっぱり捕虜だった、ジュネーブ条約の解釈を間違っておった、ここまで官報を出した、やっぱり労働者手帳がなきゃ払えないと。出た、そうしたらやっぱり考えるべきじゃないのだろうかね。その辺をひとつ聞いて、私は引き下がりたいのですがね。
  191. 河野洋平

    ○河野国務大臣 ジュネーブ条約の解釈といいますか、それをどういうふうに見るかということは大分議論のあったところだと思います。川俣委員の大変長年にわたる御努力もあったわけでございますが、まあ委員そうおっしゃいますけれども、行政には行政としてのこれまたいきさつもあって、ジュネーブ条約をどういうふうに読むかあるいは戦後処理懇の先生方の御提言を踏まえて、できる限りの限度きりぎりの措置といえばどういうことなのか、まあ行政は行政でそういうことを一生懸命努力をしてきたことはぜひお認めをいただきたいと思います。  しかし一方で、先生が今おっしゃるように、これまた、もう御高齢になられて、本当に今最後の思いを、気持ちを託しておられる多くの方々がまだまだいらっしゃる、そのお気持ちもまた大事にしなければならないというふうに思います。今るる仰せになられました先生のお気持ちは、私も官房長官としてよく伺って、頭に入れて、一つ次の段階、もしこうした問題にどう取り組むかという議論をするという場面があれば、私は、先生のお立場を頭に入れて発言をさしていただきたいというふうに思います。
  192. 川俣健二郎

    ○川俣分科員 大臣の最後のくだりのところに期待を寄せて、私はこれで終わりますけれども、何とかこれだけは政治的に解決しないと、まあこれ以上、野党も与党も評判が悪いわけですから、既成政党は。こんなことでちょうちょうはっししていたのでは、この次の選挙わからないですよ、皆さん――だれもいないけれども。ぜひひとつこれは前向きに、国民が挙げてやっているという証拠だと思う、あのニュースは。どうかよろしくお願いしたいと思います。  以上です。
  193. 竹内猛

    竹内(猛)主査代理 これにて川俣健二郎君の質疑は終了いたしました。  次に、北川昌典君。
  194. 北川昌典

    北川(昌)分科員 今シベリア抑留者の問題につきましては、川俣先生の方から御質問ございました。本当に該当者のことを十分胸にとどめていただくことがこれからの解決への道ではないか、このように感じます。そういう中で、私は軍人恩給欠格者の問題につきましてお尋ねをし、御要望も申し上げたいと思います。  平成元年に平和祈念事業が発足いたしました。もう既に四年を経過したわけでございますけれども、この中で慰藉の事業の対象者としては百八万人、このようにお聞きいたしておりますが、これまでに二十八万三千人の方々が請求されておるというふうに資料から見ておりますけれども、百八万のうち四年間で二十八万三千人というのは非常に数が少ないのではないか、このように感じます。申請者数を平成元年から四年まで教えていただきたいと思います。
  195. 高岡完治

    ○高岡政府委員 お答えいたします。  平成年度では十四万人の方から御請求をいただいております。順次申し上げますと、平成年度は十万三千人、平成年度が三万五千人、今年度はまだ途中でございますけれども、現在まで三万一千人の方から御請求をいただいております。なお、今年度の数字は一月末の数字でございます。
  196. 北川昌典

    北川(昌)分科員 こうして見ますと、発足した当時の年が十四万人、それから漸次減っております。漸次というよりか急激に減って三万前後ということは、この事業について対象者の方々が十分に内容を知っておられないのではないか、あるいはまたこの事業があることすら知っておられないのではないかと思うのですけれども、そこらあたりはどのように把握されておるのか。
  197. 高岡完治

    ○高岡政府委員 私どもといたしましても、一人でも多くの方に御請求いただきたいという気持ちでおるわけでございます。  そんな気持ちから、いろいろと広報予算等、これは基金自体に広報予算を計上いたしておりますのと、政府広報、これを利用いたしております。それから、政府広報の中でも地方公共団体に向けて、例えばいろいろな市町村便りでございますとか、そういうものを対象とした広報資料を提供する仕事を広報室でもやっておるわけでございますが、地方公共団体向けのものにつきましてもこういう事業を紹介するという形でPRをお願いしております。なお、欠格者のいろいろな関係団体の皆様方がいらっしゃいますので、こういう団体の皆様方に対しましてもいろいろと御協力をお願いいたしまして、団体を通じてもまた広報に努めております。  以上のような手段でいろいろとPRに努めさせていただいておるところでございますが、先生指摘のようにまだ四分の一程度の数しか出てきていないということは、大変申しわけないことだと思っておりまして、なお一段とPRに努めたい、このように考えております。
  198. 北川昌典

    北川(昌)分科員 いろいろPRに努めておられるというお話でございますけれども、市町村に資料を提供して、市町村から知らしめてもらうということでございますけれども、市町村自体がこの事業内容について十分承知していない分もあるわけであります。市町村長さんあたりは存じ上げているかもしれませんけれども、本当に担当者がこの問題について十分理解をして、こうした方々にお知らせをしよう、そういうところまでいっていないのでございますね。  この前お聞きしましたときも、週刊誌に広告を出すというお話もございましたが、お年寄りで週刊誌を見る人はごくわずかだと思うのです。私たちの田舎では週刊誌を見るお年寄りはいらっしゃいません。だから私は、前も提言いたしましたけれども、県の広報、市の広報、一年を通じて毎月出るわけでございますから、こういった方法もあるのではないかと申し上げました。どういう関係か、ずっと見ていますけれども、私が見た広報の中には一言も触れられていないのが事実でございます、中にはあるかもしれませんけれども。  そういったことから、繰り返しますけれども、この事業について知っている人、そして申請を出した方、同時に、後からまた申し上げますけれども、知っておるがこれはもらうに値しないという人、さらには全く知らない人、こういうふうに分けられると思うのです。一番効果がありますのは、テレビによく政府広報を出しますね。あれをやられたことがあるのかどうかわかりませんが、あれを繰り返し繰り返しやられますとかなり掘り起こしができるのではないかと思っておりますけれども、そういった周知徹底の方法についてはいかがなものでございましょうか。
  199. 高岡完治

    ○高岡政府委員 まず、地方公共団体に対する私どもあり方でございますけれども、地方公共団体に対しましては、毎年実は担当課長会議というのを私ども呼びかけまして、開かせていただいております。一番問題になっておりますこういうPRの問題につきましては、ぜひひとつ御協力をお願いしたいとお願いをしておるところでございます。特に、週刊誌でございますとか新聞とかテレビスポット、こういったものにつきましては大変多額の経費を必要とするものでございますから、地方公共団体の方々の御協力をいただいて、先ほど先生指摘くださいましたような市町村便り、県の広報、こういったものをぜひ活用させていただきたいということを繰り返しお願いしているような次第でございます。  私どもといたしましては、そういった結果、中には町内報というようなものにまで掲載をしてくださっているところもあるやに伺っております。確かに地方公共団体によりましては、非常に熱心にやってくださるところと、ちょっとどうかなというところもあるように聞いておりますけれども、これは私ども努力が足りないところだと思っておりまして、ぜひ息長く、根気強く御協力をお願いしていきたい、このように考えております。
  200. 北川昌典

    北川(昌)分科員 息長くとおっしゃいますけれども、これもシベリア抑留者と同じように、ほとんどが七十近い、六十代後半の方々なんですよ。そんなに息長くやられましては、とてもじゃないが周知徹底はできない。これは急を要する。せっかく慰藉事業として発足したわけですから、これが本当に該当者の皆さん方、適用する皆さん方にいち早くお渡しするというのが本来の姿であろうと私は思うのですけれども、それがまた四分の一強。これでは取り組みの姿勢についてちょっと疑わざるを得ないと思うのです。  もう一つは、経費を要するからとおっしゃいましたけれども、従前は週刊誌にというお話も聞きました。週刊誌も金がかかると思いますが、金がかかる割には効果が、見る人が少ない。お年寄りは、新聞は見られないけれども、週刊誌は見られないけれども、テレビは見るという方がほとんどだと思うのです。したがって、テレビを通じてやりますとこういう方々がわかって、承知して、そして役所にでも行って問い合わせをする。ところが今度は、役所自体にそういった窓口がないのですね、ほとんどの市町村が。行きましてもわかりません。だから、さっきおっしゃったような団体があるところはわかるにしても、団体のない市町村では役所へ相談に行きましてもわからないという状態があるということなんです。そこを十分御記憶いただいて、これからできるだけ早く周知徹底の方法をとっていただきたい。祈念事業ができたからこれを消化すればいいのだというような気持ちではいけないと私は思うのですね。そういった点、ひとつ十分御留意いただきたいと思います。  それから次に、慰藉事業の内容でございますけれども、これまた二十八万三千人の申請書を出された方のうち、書状を受け取った方が二十三万七千人、銀杯を受け取った方が十七万八千人、慰労の品をもらった方が四万七千人という状態でございますね。これは間違いございませんでしょうか。
  201. 高岡完治

    ○高岡政府委員 ただいまの数字は先生指摘のとおりでございます。
  202. 北川昌典

    北川(昌)分科員 そこで、今申請を出された方が二十八万三千で、二十三万でございますから、書状だけでもまだ四万人残っているわけなのです。銀杯が十万、さらに慰労の品が二十三万。これはあと何年すれば当面今まで出ている方々に全部贈呈できる、こういうことになるわけなのでございましょうか。先ほどから繰り返します、川俣先生もおっしゃっておられましたけれども、もう本当に先がだんだん短くなっている方ばかりなのですね。私もこの一年のうちに、こういった該当者の方で本当に、この方は、後で申し上げる書状、銀杯は要らないという運動を一生懸命されていた方たちでしたけれども、五人亡くなられた。次から次へやはり存命しないという状況にあるわけなのです。だから、書状は受け取ったけれども銀杯をまだもらわれないまま亡くなった方もいらっしゃるのかもしれない、こういう今の状態でございますが、これはいつごろまでに消化できますのか。     〔竹内(猛)主査代理退席、谷津主査代理     着席〕
  203. 高岡完治

    ○高岡政府委員 先生、実はその推計はなかなか難しいのでございますが、今大体月平均二千件から二千五百件の申請をいただいております。仮にこのままずっと出てくる、それからもう一つ参考データとして、これはおしかりを受ける数字かもわかりませんけれども、例えば恩給の場合一時恩給という一時金相当のものがございますが、これの申請状況を見ますと、大体対象者の四割の方からの申請が出てくる、それが大体最終的な数字になるようだというようなデータもございます。そういった二つの仮定を置きまして、しかもその事務の進捗状況といったものを加味して考えていきますと、大体今後十年ぐらいかかるのではないかというふうに思っております。  それから、仮に今のまま完全にストップした状態で考えてみますと、今後新規の請求がないという前提を置いてみますと、大体あと五年ぐらいで現在請求をいただいている方たちの贈呈事業というのは全部終了をする、こんなふうに考えております。
  204. 北川昌典

    北川(昌)分科員 五年でも、こうした該当者の皆さん方には非常に長いのですよ。そして、この慰労の品についてはやはり年配の皆さん方からということになっておりますね。この年配、年の順といいましても、一つ一つ束ねてみますと五歳も十歳もそう変わらぬわけですよ、この年代になりますと。したがって、でき得るならば、出された方は本当にひとつぜひということで願望されている皆さん方でございますから、その願望にこたえて早い時期に贈呈をするということが大事なことではないかと思うのですけれども、これは事務的におくれるのかそれとも予算関係でおくれるのか、そこらあたりどうなのでございましょうか。
  205. 高岡完治

    ○高岡政府委員 私ども今いろいろとやらせていただいておりますが、原因といたしましては、大体二十四億という事業規模でやらせていただいておるわけでございまして、その事業の中でやろう。この二十四億を全部消化するということは、実は大変申しわけないのでございますが、基金の事務処理能力からして限度きりぎりいっぱいであろう。ですから、予算が足りないからできないのかと言われますと、一概にそういうぐあいには言うことはできないというふうに思っております。  それで、今の処理期間でございますが、先ほど申し上げました一時恩給を受けられた方につきましては大体半年強ぐらいでお渡しができる、これは書状でございますけれども、そういう状況になっております。それから、そういう一時恩給を受けた経験のない方、そういう資格要件に該当しておられない方につきましては、おおむね一年間の処理期間で贈呈事業をやらせていただいておるという状況でございます。  それから、ちょっとくどくなって恐縮でございますけれども、実は事務処理手続につきましては対象者の方々から大変おしかりをちょうだいいたしております。というのは、書状のときにも銀杯のときにもあるいは新規事業のときにもそれぞれ実は住民票を添付していただいておるということでございましたが、御指摘を受けまして私ども検討いたしました結果、これを改めまして、住民票を出していただくのは最初の書状のときだけでいい、こういうことで事務手続を簡略化させていただきました。銀杯のときも新規慰藉事業のときも、これはいずれも私どもの監督いたしております基金の方から請求者の方に御案内を差し上げるということで手続を簡略化させていただいております。  それから、対象といたしております方々の年齢につきましても、新規慰藉事業が七十八歳程度というように大変申しわけない状況になっておりましたが、これは、現在国会で御審議いただいております予算案によりましてこれを昨年の件数からしまして倍憎いたしまして、四万件ふやしていただくようにお願いをいたしております。四万件をお認めいただきますと、来年度においては大体七十五歳に達した方に対しましてはこの新規慰藉事業の贈呈をすることができるという状況でございます。なお、銀杯につきましては、従来七十二歳ということになっておりましたが、これは現在七十歳にまで手をかける、こういう状況にまで至っております。そのように御報告をさせていただきまして、御理解を賜りたいと存じます。
  206. 北川昌典

    北川(昌)分科員 確かにそういう年齢の引き下げは当然のことでございますし、前進だと思います。慰労の品についても、昨年二万件が今度四万件ということです。ただ、銀杯については、六万四千五百件が三分の一以下の二万件という計画ではございませんか、来年度のあれとして。あと十万残っているのが、昨年並みに六万なら六万いきますとかなり皆さんに行き渡るわけなんですよ。ところが逆に減らして二万。あと五年かかることになるわけですね。これは確かに事務的な問題もあろうかと思いますけれども、できるだけ早くお手元にお渡しする、こういう姿勢を貫いていただきたいと思うのです。これは、予算関係じゃなくて事務的なとおっしゃいますが、確かに住民票の添付はなくなりましたし、そういった面では、御本人たちからいえば煩雑だったのですが、煩雑がなくなったということは言えますが、同時に、往復はがきを今出されますね。それもやめて、書状の贈呈をされた方には一定の順番が来ましたらこれを即贈るということにはならないのですか。もう既に書状の中で一つの名簿ができておるわけですから、その名簿に基づいて迅速に贈るということになりますと、事務の手続、量も減少できるわけですね。そういった点、いかがなものでしょうか。
  207. 高岡完治

    ○高岡政府委員 恩給欠格者の方に対します事業は、大変申しわけないことを申し上げるようでございますが、お許しを賜りたいのでございますが、生存者の方に対する事業であるということが一つございます。それから、往復はがきを出させていただいておりますのは、これは住所を確認させていただくというような意味もございまして、この二つの点から往復はがきを出させていただいておるというような状況でございます。
  208. 北川昌典

    北川(昌)分科員 四十年、五十年たちまして、生存者の方にという、これは慰藉としての気持ちが通じませんよ。生きておれば上げますが、亡くなったらもうそれで結構ですということでは、これは私は考え方が間違っていると思うのです。亡くなられても、書状を渡された方にはやはりお渡しするということにすべきじゃないか。  もう一つ申し上げるならば、こういった、非常におくれているわけなんですけれども、だんだん亡くなっていかれます。生存中のうちにお渡しするように何か、一時、金を借り入れてでも全部にお渡しするという、そしてまた次にというようなことはできないものか。これは大臣、ひとつ……。
  209. 高岡完治

    ○高岡政府委員 申しわけありません、大臣がお答えになります前に、ちょっと事務的なことを申し上げさせていただいて恐縮でございますが、実はこの銀杯につきましても、メーカーの製造能力の問題もございまして、いろいろ私ども、限られたメーカーでございますので、それでメーカーの製造能力を見ながら、それから、予算があればたくさんできるかと申しますと、やはりこれはいろいろな手続を経て事務的に処理していくものでございますから、基金の約七十人強の人数で今事業をやっておるわけでございますが、そういう事務処理能力からする制限もございます。この二つの点から、今やらせていただいておりますのが精いっぱいのところではないかと思っております。  それからもう一つ、先ほどの先生のお話でございますけれども、いわゆる残りの件数に対する来年度予算要求におきます要求件数でございますけれども、これはやはり高年齢の方にまず最初に差し上げていくべきではないかというようなことで、新規慰藉事業につきましてはとりあえず、七十七歳、七十八歳というのは余りにも申しわけないということで、倍増の四万件というふうにさせていただいたわけでございます。全体の事業経費が二十四億弱ということでございますので、そういった関係で、従来どおり銀杯につきましては二万件という要求規模にさせていただいたという事情でございます。
  210. 河野洋平

    ○河野国務大臣 御指摘のとおり、大変御苦労をいただいた方々、こういう事業を始めることになりまして、こうしたことが、こうした本当にささやかな慰藉の事業ではございますけれども、御苦労をいただいた方々に、幾らかでもその気持ちがこれで和んでいただくということでありますれば、本当にこうした事業を行う意味があるわけでございまして、先生指摘のように、それなら一日も早く届くように努力をするのは当然ではないかという御指摘は、全くそのとおりだと私は思います。  今事務方からお答えをさせていただきましたが、私も事務方の作業等の報告を聞いておりますが、少なくとも現状では、事務能力といい、今申し上げましたように銀杯の製造能力でありますとか、さまざまな能力が現状では手いっぱいという状況のようでございます。しかし、これは何か少しでも改善ができますように知恵を絞り、努力をして、先生の御指摘に幾らかでもこたえられるように最善の努力をいたしたいとともども考えておりますことを申し上げて、御理解をいただきたいと思います。
  211. 北川昌典

    北川(昌)分科員 ひとつ今のお答えどおり、できるだけ早くお願いを申し上げたいと思います。  この慰藉事業の対象者の中には、銀杯なんかこれはもう時代おくれの昔のもので、もらっても余りありがたみもないという方もかなりいらっしゃるわけでございまして、それは別にいたしまして、そういうものであるということです。そういったものでなくて、やはり、除隊後恩給適用者は兵役期間が恩給に通算をされた、また共済年金の場合も同じように兵役期間が通算された。ところがそういった共済にも恩給にも適用の職場に勤めていなかった方々は、兵役に行かれまして十年、十一年ぐらいおられましても、換算をしても、恩給が全くつかない。何もつかない。その期間が陥没をしておる。したがって、この陥没したものについては恩給にかわる個人補償をしてほしいという運動がずっと続いているわけなんですね。この皆さん方の言い分も十分わかるわけですが、きょうはこの点についてもいろいろと議論をしてみたいと思っておりましたけれども、時間も来ましたので今度また別の機会にぜひさせていただきたい。  と申しますのは、この運動に十年間本当に没頭されておった方が、個人補償を求めて運動されておった方がこの前入院されましたものですから、私もお見舞いに行きました。そのときが遺言になったと思うのですけれども、私は多くの皆さん方とともに運動してきたのだから、これをなし遂げるまでは死んでも死に切れない、しかしいっか私たちの気持ちを政府はわかってくれるだろう、それまで頑張るからここで私は死ぬわけにはいかぬとおっしゃいましたけれども、一週間後にお亡くなりになりまして、遺言だっただろうと思いますので、この問題については次の機会でひとつぜひ、シベリア抑留者と同じようなことになりますけれども、論議いただいて御検討いただくようにしていきたいと思っております。  時間が参りましたのでこれで終わらせていただきたいと思います。どうも御苦労さまでございました。
  212. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて北川昌典君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総理本府についての質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  213. 谷津義男

    ○谷津主査代理 次に、防衛庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  214. 上原康助

    上原分科員 せっかく防衛庁長官お座りになっていますので、すぐ特定問題というわけにはいかぬので一言二言だけ、防衛問題に注文と、我々が納得できないということを一、二点申し上げておきたいと思うのです。  今度の予算審議の中で余り防衛論議がなかったような感もして、防衛庁長官や防衛庁は助かったかもしらぬが我々はそうはいかぬという感じです。確かに防衛予算四兆六千三百八億余で伸び率も三十年ですか、三十二年余ぶりに低い伸び率だということをおっしゃっているわけですが、だが、中身をいろいろ吟味すべき点を見ますと、例えば大型輸送艦は依然として余り審議もしないまま取得をするとか、AWACSは私たちは専守防衛という立場からして問題がある。これは日本の防衛とか安全保障をどうするかというよりも、日米の構造協議あるいは通商問題でむしろ押しつけられてきたような感がしてならない。その他九〇戦車の問題にしてもイージス艦の問題にしても、取り上げれば切りがないほど、もっと冷戦構造終結後の日本の防衛をどうするかという面で中身を精査しなければいかない点が多いと思うのですね。FSXにしてもしかり。そういう点については一体今後防衛庁はさらに防衛予算の面をどう考えていこうとしているのか。今後のこともあるので、ちょっと防衛庁長官の基本認識だけ聞いておきましょう。
  215. 中山利生

    ○中山国務大臣 上原先生には、もう専門家でありますから言うまでもないわけでありますが、我が国は、専守防衛という信念を今日まで貫いてまいっておりますし、そのために最小限度の防衛力、基盤的防衛力というものを備えて、我が国が防衛について空白をつくることが周辺の安全保障のための障害にならないようにという精神のもとに今日まで来ているわけでありますが、その最小限度の防衛力を有効に活用するためには、やはり国内での何か侵犯があったときに部隊を迅速に移動をするということ、それから最近の世界的な大きな、冷戦構造の崩壊という大きな変化があったわけでありますが、これに対応して、いろいろな中期防衛計画の見直し、スローダウンというようなこともやったわけであります。  この半面、湾岸戦争などに見られますような科学技術の大幅な、長足な発展、兵器の性能の向上というものもありまして、我が国が本当に防衛力というものを有効に発揮していくためには、今言いましたような輸送力であるとかあるいは早期警戒能力、情報をいち早く収集をしてそれに対応する、そういう能力が必要とされているわけで、そういうことがこれまでの防衛力にとっての欠落している項目だということで、一面では防衛装備の削減、スローダウンをやる半面、また、その欠落機能についての補完ということに今回の予算などでもお願いをしているところでございます。私は、まさにこれは専守防衛そのものを象徴するような装備の調達だというふうに考えておりますので、上原先生にも御理解をいただきたいと思います。
  216. 上原康助

    上原分科員 この議論は短時間ではできないので、専守防衛なんてだれが考え出したのか、伸縮自在に、必要最小限度と言いながら軍事費においては世界第三位とか五位とか何をおっしゃいますか。それはとても納得できませんよ、AWACSにしても、今度取得しようとする輸送艦にしても。だから、そういう専守防衛とは何ぞやはいずれじっくり議論しましょう。我々はそういう理解はできない。冷戦構造下においてアメリカと一緒になってなぜこれだけの、四兆数千億円の防衛費まで国民の税金、本当にそれが日本の安全保障にとって必要なのかどうか、僕はもっと真剣に議論すべき段階だと思うのです。  そこで、きょうこれをやるわけにいかぬので、今中期防とかそういうもののスローダウンをする、防衛計画の見直しをやっている、作業をやっているということはちょこちょこマスコミを通してわかるわけですが、一体見直しの中身は何をしようとしているの。その中身の重要なものは何なのか。防衛庁がやろうとしている今の作業はいつまでに終わるのか。その点は、基本的な点だけでいいですから、これからの議論がありますから、明らかにしておいてください。これは防衛庁長官がいいんじゃないかな。
  217. 中山利生

    ○中山国務大臣 先ほど申し上げましたような周辺の情勢、また東西冷戦の終結等の大きな変化を見まして、我が国の先ほど申し上げました基盤的防衛力、最小限度の防衛というものはいかにあるべきかということが問い直されている、検討をする大きな課題であろうと思います。  そういうことで、中期防の中でも中期防の期間中に防衛大綱の見直しを含めた検討をするということになっておりますし、これは上原先生などともいかにあるべきかということは十分に御議論をしていくべきものであろうと私どもも思っているわけでありますが、まだまだ、ヨーロッパの方は何とかそれなりの体制ができ上がったと思っておりますが、アジア・太平洋地域におきましては、それぞれの国がそれぞれの考えを持っておりまして、まだ統一した安全保障体制、平和機構の構築というものができたとは言えない状況でございます。  そういうことで、私どもとしては、中期防で言われておりますように、中期防中の、あと三年あるわけでありますが、その間のこの周辺諸国の推移等を見ながら、それからさらに中期、長期の防衛体制というものを考えていかなくてはならないと思いますので、柔軟な気持ちでこれを検討していきたいと思っておりますが、庁内におきましても、どうあるべきかというようなことについては、ほとんどまだ手をつけていないというのが現状であろうと思っております。
  218. 上原康助

    上原分科員 作業は余り進んでいないということでしょうが、いずれたっぷり議論をさせていただきたいと思うのです。  今申し上げたように、それは野党の方もいろいろ反省というか、もっと今日の国際社会の変化に対応していく安全保障政策、防衛論というものをやらなければいかぬと私は個人的に思っている一人なんですが、余りにも距離があり過ぎる。しかし、それは政府にも大きな責任があるのですよ。秘密主義をとってきて、専守防衛と言って、基盤的防衛力なんて最近言い出したんだ。これは八〇年代は拡張路線だけとってきたんだ。そこで、そういういつも同じような答弁では納得できませんよ、それは。その点だけ指摘をしておいて、今度の防衛予算は、切り詰められたとはいえ、国民の立場から見ると依然として冷戦思考型の防衛予算になっているという点は紛れもない事実、その点は厳しく指摘をしておきたいと思います。  そこで、沖縄の軍用地、在日米軍基地のことでしょうが、返還方法について最近何か政府で検討をなさって米側に提起をしたのか、あるいは従来の返還のあり方について政策的というか制度的に変更しようとしておるのかどうか、明らかにしていただきたい。
  219. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 お答え申し上げます。  この返還予告の問題につきましては、先般公告縦覧のときにつくっていただきました十一省庁連絡会議、これの第一の議題ということで、これを何とかもう少し前広に返還予告をすることによって跡地の利用を容易にすることができるような制度をつくろうではないかということで、今まで会議を重ねてまいりました。現在は、御承知のように契約上は三十日前ということになっておりますが、事実上はいろいろな形で事前にお知らせは申しておりますけれども、制度的には三十日前ということになっておりまして、これを何とか変えられないかということで五回ばかりこの会議を重ねました。  そこで、一種のコンセンサスといいましょうか、それができまして、例えばもう少し、合同委員会で決まったときにお知らせをするとか、お知らせをする範囲を地主の方だけでなくて地方公共団体にするとかいうようないろいろな議論がございました。これを踏まえまして一つの案ができましたので、今米側にそれをぶつけまして米側の見解をとりつつある、こういう状況でございます。したがいまして、現時点において政府としてこう決まったものができたとかいうことではございませんが、何とか前広にお知らせできるような方法をつくりたいということで、今鋭意努力をしておるというところでございます。
  220. 上原康助

    上原分科員 いや、だから、それは防衛施設庁の案なの、それとも十一省庁の連絡会議検討した案なのですか。
  221. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 十一省庁連絡会議検討した案でございます。
  222. 上原康助

    上原分科員 その案があれば、案の中身を言ってくださいよ。皮だけ見せないで、中身を言いなさい。
  223. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 一応の案はもちろんできてあるわけでございますけれども、今米側にその案を提示いたしまして米側の見解をとっておるところでございますので、最終的にどのような形でおさまるかわからない、いわば米側との交渉の過程でございますので、現段階で具体的な案の内容を申し上げさせていただくことはお許しをいただきたい、かように考えるところでございます。
  224. 上原康助

    上原分科員 中山さん、施設庁長官は、重要なこっちが聞きたいこと、みんなが知りたい、国民の知りたいことになるとこういうふうに逃げるんだよね。基地の返還問題でさえそうだ。ましていわんや、防衛の装備の問題であるとかいろいろなことについてつくと、何やかんや言って、だからかみ合わなくなる。アメリカ側に提示してあるわけでしょう。提示しであるならば、アメリカがわかることはマスコミにもちゃんと出ているのじゃないか。それがなぜ国会の場で言えないんだよ。その中身を明らかにしなさい。それが一つ。こんな答弁では納得しませんよ、それは。納得できない。  それともう一つ、じゃ、返還方法あり方を再検討するという案をあるいは皆さんがつくったというならば、この土地建物等賃貸借契約書の内容は変えるの、変えないの。
  225. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 まず前段のところの、内容を具体的に言うべきだとおっしゃる点はよくわかるわけでございますけれども、何分にも米軍という相手のあるところで、今交渉中でございますので、もうしばらくお時間をちょうだいをさせていただきたいと思います。  それから、賃貸借契約の中の三十日という数字を変えるかどうかという問題は、これも今後の検討課題でございますけれども、具体的に何月何日に返るかというようなことをそう前広にお知らせするということはなかなか難しいのじゃないだろうか。大体いつごろ返るよということをまずお知らせ申し上げて、具体的に間近になってそれが何月何日であるというような形をとるのが適当ではないだろうか、かように今考えておるところでございます。
  226. 上原康助

    上原分科員 アメリカは情報公開法もあり、むしろ日本政府よりはオープンですよ。もっと民主的制度というものが定着している。それは、情報公開法に基づいて要求すれば出さざるを得ない、そんなのを言えないなんというのは納得できない。  それと、私はこの契約書を昔から問題にしているのですよ。こんな古証文があるから、三十日で契約、アメリカは契約主義でしょう、これを盾にとられたら、皆さんが前広にやると言ってみたってできないんだよ、これは。じゃ、今考えている、変更しようとしている、政策変更というのか制度変更かわからぬけれども、とにかく軍用地を返還する場合にはもっと早目に通報をやろうということでしょう。一部報道されているように、一千平方メートル以上は沖縄県や該当市町村にも事前に通報する、そういう中身になっているのですか。じゃ、逆にこっちから聞こう。
  227. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 重二お言葉を返して恐縮なんでございますけれども、私ども、米側とのある程度の合意ができました段階でありましたら、これはもう地元にも申し上げ、また先生の御質問にも明確にお答えができるわけでございますが、現在はいわばその案をつくりつつある過程でございますので、その過程のところの数字とかそういうようなものをここで申し上げるというのはいささか、ちょっとお許しをいただきたい、こういうことを再三申し上げているわけでございます。新聞報道につきましても、私どもから別にこういうことで今交渉しているということを正式に発表したものでも何でもございません。
  228. 上原康助

    上原分科員 あなた、こんな子供の使いでもあるまいし、私も質問してそういうあれで納得できませんよ、本当に。さっき私が聞いたら、案があると言った。しかも、防衛施設庁、防衛庁だけでなく、十一省庁で連絡会議で協議をして、案をつくって米側に提示したというわけでしょう。なぜそれが言えないの。それだけでも予算委員会とまるよ、本当に、本委員会だったら。こんなの納得できないよ。  防衛庁長官、これは責任を持ってくださいよ。だから、私は念を押したでしょう。協議をした上で、案があると言った、あなた方は。アメリカがどう回答するかについてまで私はとやかく言わない、相手のあることだから。これだけ返還軍用地の跡利用問題だとか返還のあり方が大変問題になってきて、その積み上げで皆さんやろうとしているわけでしょう。十一省庁で協議をして中身があるなら、何でそれを国民の前に言えないんだよ。長官、これはあなたが指示して出させるかどうかせぬと、私は納得できない。何でそんなの秘密にするんだ。
  229. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 再三のお答えになってまことに申しわけないのでございますが、確かに十一省庁の間で一つのコンセンサスができていることは事実でございます。しかし、これを国民に問い、あるいは県民の皆様に申し上げるためには、やはり相手の米側の意向というものが非常に重要でございますので、そのとおりになるのかならないのか、そこを確かめた上で御判断を仰ぐというのが我々がとるべき道である、こういうふうに考えておりまして、もうしばらくお時間を拝借したい、このように考えておるところでございます。
  230. 上原康助

    上原分科員 そのとおりになるかどうかは、中身を知らぬでどうしてそれを、どういう経過をたどったかわかりますか、あなた。それは長官から答えてください。これじゃ納得できない。
  231. 中山利生

    ○中山国務大臣 確かに、この予算委員会あるいは民主主義の社会の中で、地元が申し合わせをしたものが公表できないというのは私もちょっと理解ができないわけでありますが、しかし、事務方はいろいろ折衝の過程で、非常に厳しい規制の中で、しかも相手のあるアメリカとの交渉を行っているわけでありますから、事務方の苦労、立場というものもあるのであろうというふうに思っております。先生の納得のいくような形でまた協議をしながらお答えをしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
  232. 上原康助

    上原分科員 相変わらずこういうわずかな質問時間で、時間がたてば何とかなるというようなことは、私はそういう手法は余りよろしくないと思う。納得しかねますけれども、時間の都合もありますから……。  そうしますと、さっき申し上げた賃貸借契約書、これはたしか昭和二十七年か二十八年ころじゃなかったかね、これにある中身を含めて改定をするという皆さんの見解なのかどうか、これが一つ。それと、既に地元紙にはいろいろ報道されているその中身は否定も肯定もしないね、あなた。二点、はっきり答えてください。
  233. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 現在検討しておりますのは、あくまでも返還予告という点でやっております。その点に関しましては、契約書の中身ということからいいますと、例の三十日というのが一番大きな問題になるわけでございますが、これにつきましては、いついつ返すということについてはそう前広にはお知らせすることはできないのではないだろうか、何年後に返るのだとかというような、そういう単位の返還予告、これを今私は考えておるところでございます。  それから、新聞に発表されたことにつきましては、我々が公表したものでも何でもございませんので、私どもは関知をしておりません。
  234. 上原康助

    上原分科員 余り本当に何というのか、中身のないこんな答弁でやられるのは極めて不満ですがね。  そうしますと、前広云々言うのですが、要するに返還予告期間を改定したい、改善したいということでしょうから、跡利用のこともあるから。最大限どのくらいを想定しているの。
  235. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 これもこれからの交渉といいましょうか、折衝の中で決まってくる話でございますけれども、最大限何年とか何カ月とかというようなことになりますと、これは案件によって大分違うと思います。三年前にもうお返しできるということが言えるものもあるかもしれませんし、一年半前でしか言えないものもあるかもしれません。そういうような年限で切るということよりも、何か一つの制度としてこういう時期にお知らせを申し上げるというようなことの方がベターではないだろうかと今考えておるところでございます。
  236. 上原康助

    上原分科員 もちろんそれは返される基地の質、量の問題もあるだろうし、ケース・バイ・ケースということはだれだって想定しますよ。だが、改定するならやはり相当期間を置いてやるということでないと意味がないということを注文をつけておく。  アメリカからはいつまでに返事をもらうの。
  237. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 これはかねてから非常に地元からの御要望も強い問題でございますので、私ども期限は切っておりませんけれども、可及的速やかに返事をもらうようにただいま鋭意折衝をしておるところでございます。
  238. 上原康助

    上原分科員 話が前後するけれども、アメリカ側にいつ提示したの、皆さんの案というのは、米側には。
  239. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 本年早々でございます。
  240. 上原康助

    上原分科員 そんな答弁はあるかね。失礼だよ、あなた、本年早々なんて。本年早々とはいつかね。
  241. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 一月でございます。
  242. 上原康助

    上原分科員 時間かからないようにはっきり言いなさいよ、あなた。大体わかりましたが、極めて不満ですね、そういう答弁あり方は。もう知らぬ方でないから、こっちの方で少し我慢しておこう。  もう一点、沖縄県が、たしか二月の十九日だったと思うのですが、防衛施設庁に対して、軍用地内のいわゆる県有地、県財産ですね、米軍十施設内の県有地八百十・七ヘクタールについて正式に返還要請をしております。また、従来の契約方式についても改定をしたいという意向を明らかにいたしました。この件については政府はどう受けとめて、今後どうしていかれようとするのか、これは少しはっきり答えてください。
  243. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 まず、県有地の返還の問題でございますが、これは先生から御指摘ございましたように、二月十九日に沖縄県知事から那覇の防衛施設局長に十施設、面積にいたしまして八百十ヘクタールの返還申請がございました。それで私ども、これは県からの御要請でもございますので真摯に受けとめて検討したいということで、早速二十三日に県の方に来ていただきまして、その内容の説明を受けました。それで、これらを踏まえまして現在始めておりますけれども、返還要請地の現地調査だとか、それからまず現地米軍がそれに対して応じるのか応じないのかというような意向を確かめる手続を今進めております。いずれにいたしましても、これは県からの要請でもございますので、早急に結論を出していきたい、かように考えております。  それからもう一つは、県有地の契約の問題でございますが、昨年の四月三十日に沖縄県知事から那覇局長あてに、賃貸借契約はもう切れたよ、それで平成年度の分については改めて協議をしたいという御通知を私ども受けました。そこで、私どもの見解といたしましては、賃貸借契約は民法の規定に従いまして二十年間存続しておるというのが私どもの主張でございますので、その旨を知事に御回答しております。そのままずっと今まで推移をしてまいりましたけれども、いよいよ年度末になりまして、御相談を申し上げなければいけない時期になりましたものでございますので、去る一月二十一日に、県知事に対しまして賃貸借契約を結んでもらいたいという依頼文書を出したところでございます。それでまだ県からの御回答を得ていないというところでございます。  ただ、県有地のうちの行政財産の一部、特別会計の分でございますけれども。これは二月に従来の方法で覚書を締結している、こういう状況でございます。
  244. 上原康助

    上原分科員 時間が来ますのでやむを得ませんが、この県の返還要請についてはぜひ誠意を持ってこたえてもらいたい。また契約方式についても、これは前例がある。そういう面を含めてやっていただきたい。  さらに、要するに整理縮小、返還問題で一昨年でしたか、二十二事案のこの案件が進んでいるわけですが、そのほかにも、私が指摘をして八重岳周辺の基地返還についてはやれということで、入っていなかったができたでしょう、そういう面は、地元の意向も入れて。あるいは嘉手納マリーナにしても、また宜野座のダムの周辺の返還問題等も進んでいるやに聞いている。そういうことについては、冷戦構造崩壊であの狭い小さい沖縄に日本全国の七五%の米軍専用基地をいつまでも置く時代じゃないんだ、これは。その点はまとめて防衛庁長官、それはあなた、自衛隊だけコントロールせぬで、こういう基地問題についてももっと誠意を持ってこたえてもらわにゃ困りますよ、それは。まとめてお答えください。
  245. 中山利生

    ○中山国務大臣 沖縄における米軍基地につきましては、我が国の防衛が日米安保体制ということを一つの大きな柱にしておりますので、これの効果的な安定した使用というものは非常に重要なものと考えておりますが、先生従来から熱心に御指摘をいただいておりますような、沖縄県土全面積に対する基地の面積あるいは県民生活等にこの基地の使用や訓練等がいろいろと御迷惑をかけているということも事実であります。そういうことで、先生のおっしゃいますように、これまで続けてまいりました返還要求あるいはこの使用についてのいろいろな気配り、そういうものもこれからも根気よく要望を続けていきたいと思っております。
  246. 上原康助

    上原分科員 終わります。
  247. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、吉岡賢治君。
  248. 吉岡賢治

    吉岡分科員 平成四年十一月二十六日、防衛庁の厚生施設、防衛庁共済組合の直営であるグランドヒル市ヶ谷に宿泊していた長崎県大村市教育次長であります和田正昭さん、当時五十七歳、この方が死亡された事件について質問をしたいと思います。  まず概要について、遺族そして弁護士の聞き取り調査及びグランドヒル市ヶ谷の当直長斉藤さん、そして従業員の相馬さん、白水さん各氏の牛込警察署に出されました報告書、これらを含めて事実についての確認をまずさしていただきたいと思います。人の命がかかった真剣な問題でございますから、誠意を持ってお答えいただくことを冒頭申し上げておきたい、このように思うところでございます。  さてそこで、事実について私の方から明らかにしたいと思います。  まず、平成四年十一月二十六日十七時十七分ごろ、和田正昭さんはグランドヒル市ヶ谷の本館一五五四号室に宿泊の手続を完了されました。  十八時ないし十九時、本館地下一階の料理店都田川にて夕食をとられました。ママさんでございます福島稔子さんの十一月二十八日の証言によれば、ビール中ジョッキ一杯、日本酒一・八合、ギョーザ、ロースカツ定食ポテトサラダつき、これを注文されて食べられたといいます。  二十時三十分ごろ宿泊客竹島武郎さんが、五階男子共同トイレに男の人が倒れているとの通報をフロント小宮さんに行いました。現場へ急行した小宮さんは、うつ伏せに近い状況で小用トイレの前に倒れていた人を見たのであります。ワイシャツには血痕、眼鏡のつるが折損、四センチくらいの顔の傷があった、鼻からは血が流れていた、大丈夫かという問いに、大丈夫と答えた、酒のにおいがした、こういうことでございます。  本館一階、保安室の警備員長嶺さんを呼びに行かれ、現場へ戻って、歩けないために、あおむけになっていた本人を二人で一五五四号室へ運ばれました。失神していたかどうかわからないが、ううという声を聞いたということでございます。ベッドに寝かして部屋を出るとき、ドアをロックせず、自由にあけられるようにし、室内灯はつけたままにしておいた。二十一時ごろ、長嶺さんは保安当直長の斉藤さんに経過報告をしています。  二十七日零時二十分ごろ、宿泊者長谷川洋峯さんが五階の廊下に座っている男の人がいるのを発見をし、一階フロントの小宮さんに直接、五階廊下に男性が座っていると通報をされました。長谷川さんの証言によれば、座り込んで目を閉じ、パントマイムのように手や頭を動かしていたということのようであります。小宮さんは現場に直行され、一五五四号室から約二十メートルのところに浴衣姿で座っていた、そしてその浴衣のすそにふんがついていた状況であったと聞きます。ここでも大丈夫、歩けるかと聞き、大丈夫と言ったということで、よろけるので肩をかして真ん中のベッドに寝かせた。このときには実は脱ぷんをしていたのであります。脱いだパンツと床にふんがついていたというふうに言われるわけであります。そしてそれは相馬さんに連絡をし、清掃を指示されております。  零時三十分、警備員山本さんは入室し目撃したことは、ベッドのシーツと毛布が床に敷かれてあった。そして床に腰をおろし、捜し物をしているような姿勢であったと聞きます。零時四十分、相原さん、滝川さんが汚れたパンツ、靴下を整理して、一階のごみ箱に捨てられた。したがって、下着だけで寝ていた。毛布はかけていなかったということです。  そして、二時、四時も巡回をしておられます。見ておられるわけでありますが、寝ていたというようなことです。六時、長嶺さんが巡回して、本人の容体が変わっていることを発見。口から血と嘔吐物。身は震え、口はきかずであった。当直長斉藤さんに報告をした。六時五十分、救急車要請。七時十分、東京女子医大に急行。相馬さんは同行されております。九時二十五分、牛込警察署介入、古平警部外四名が調査に乗り出された。  そして、十一月二十八日十四時〇四分、和田さんは死亡されております。直接死因は脳挫傷。トイレのタイルに転倒したというように推定されるということであります。  以上が経過の概要であります。間違いはないのか。  この件については、人命にかかわることでございますから、本当はグランドヒル市ヶ谷の館長さんにお答えいただき、今後のことについても十分お考えいただきたいと思ったわけですが、参考人としてお呼びいたしましたけれども、来ていただけなかったのは非常に残念であります。その理由はなぜかということについても、私は疑問に思っているところでございます。したがって、真実の姿というものを再現するためにも、ぜひひとつ真摯なお答えをいただきたいと思います。長時間は要りません。簡単にお答えください。
  249. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 お答え申し上げます。  防衛庁共済組合は、今御質問の中にありましたように、隊員の福利厚生施設として、宿泊及び宴集会等の機能を有した市ヶ谷会館というものを設けておりますが、その利用は防衛庁、自衛隊の関係者のみならず、一般の方にも開放して運営しているところでございます。  お尋ねの、市ヶ谷会館において昨年十一月二十六日から二十七日にかけて滞在していただき、お亡くなりになりました和田様の事故につきましては、まず冒頭、心より御冥福をお祈りいたします。  事故についての事実の経緯の概要につきまして、御質問をいただく前に委員の方からかなり詳細な御発言がございましたので繰り返しは省略いたしますが、一部我々の認識と違うところにつきまして説明をさせていただきたいと思います。  まず、その二十六日の二十時三十分ごろ、和田様が当会館五階男子便所で倒れているという、他の宿泊者からのフロントへの通報がございました。それ以降につきまして、実は我々詳細に話も聞きましたし、報告を受けております。したがいまして、それ以前の夕食の件その他につきまして、ちょっと恐縮でございますが、今私正確には、夕食に何を食べたかということにつきましては承知しておりません。  そして御指摘がありましたように、倒れているという通報がございましたので、会館の職員が直ちに五階の男子便所に参りました。(吉岡分科員「わかっていることはいい。はっきりしたことだけ言ってくださいな。同じことを繰り返しているじゃない」と呼ぶ)そこで、今先生の方からお話がありましたように酒気を帯びている状況ということから、当館の職員等は、いわゆる相当お酒を飲んだ状態だということでお部屋にお連れしたわけでございます。それから、そのときの状況につきましては、大体先生おっしゃったとおりかと思います。会館の方ではその職員が声をかけたところ、大丈夫といったような明確な返事もあったということで、今申し上げたような判断でお連れして、お寝かせしたということでございます。  そして、翌日の零時二十分ごろ、お話のあったようなことがございましたが、私の聞いたところでは、その長谷川さんという方ではない、別の名前の方のお部屋の報告でございましたけれども、これはちょっと後で調べさせていただきます。いずれにいたしましても、廊下で座っておられたということで、声をかけたところ、大丈夫だという返事もあり、かつ御自分で立ち上がって帰ろうとされたといったようなこともあって、またそれを支えてお連れしたということ。そのほかにつきまして、先生からお話があったのと大体私の方も同じ報告を受けております。  それから、零時三十分、零時四十分と、これは小刻みに参っております。大体同じような状況の報告を受けております。  それから、最後のところで若干話が違いますが、先生も今御指摘がありましたように、二時、四時と行って、寝ておられる話がございましたが、これは定時巡回ということで二時に参っております。四時にも参っております。そして、御指摘がありましたように、六時にも定時巡回ということで巡回に見回ったわけでございます。そのときの状態につきましては、今先生からお話のあったとおりでございますが、我々聞いております報告では、六時からの定時巡回のときにこの状況を発見し、六時半ごろに部屋の方からフロントにこういう異常な状態が通報されている。それから、六時五十分に救急車を呼んだ。後の状況につきましては、大体先生のおっしゃっているようなことだと思います。
  250. 吉岡賢治

    吉岡分科員 時間がございませんので、急ぎます。  私は、今の経過を踏まえて問題がありますのは、グランドヒル市ヶ谷の従業員の皆さん、人命に対する認識の甘さと判断に誤りがあったのではないか、このように思っているところでございます。  私は、ここに和田正昭さんの死体検案書を持っています。監察医の木村寿子さんが解剖結果を明らかにされております。それによりますと、人字縫合の離開を示す大後頭孔縁より右頭頂骨、側頭骨に至る骨折、百ミリリットルの急性硬膜下出血、両側前頭葉及び側頭葉に見られた挫傷、随伴性外傷性クモ膜下出血、こういうようにあるわけでございます。これは倒れたぐらいでは普通起こらないと言われている。金属バットでたたいたように、一番かたい頭が骨折しておるわけであります。いいですか。人字縫合の離開といったら、これは三つに開いてしまっているわけであります。  そこで、酒に酔っていたというふうにおっしゃるわけでございますが、私はここで疑問に思いますのは、二十時三十分、トイレに倒れていたときに身体的な判断というものを医師にゆだねるべきで、なぜ救急車を呼ばなかったのかということについて言いたいわけであります。すべて泥酔状態、こういうことに判断をされたことに誤断があるのではないか、このように思っているところでございます。ちなみに申し上げておきますが、牛込署に報告されました報告書によりますと、お酒のことは書いてないことも明確にしておきたいと思います。  そしてそこで、大丈夫と本人が答えたということでございますが、人字縫合の離開があるにもかかわらず物が言えたのか。答えられたのか。これは医師の判断ということになりますけれども、物が言えないんじゃないかという状態だというふうに聞いているわけであります。私どもも、仲間の医師にも聞いているわけでございますから。そういう状態で、こぶは確実に出ておる。傷もあった。血も出ている。それは後で触れますけれども、一回目のときにはワイシャツを着ていらっしゃる。そのワイシャツに血が確実についているわけです。二回目の夜のときには、おっしゃるように浴衣となっておるわけです。そのときは着がえているということでありますから、現実に血がついているそのものも残っているわけであります。こういうことで、事実の問題を考えてみますとそういうことがあるのではないか。  さらに問題点は、零時二十分のことに触れたいと思いますが、廊下に出てパントマイムのような状態になっていたというのは、まさに脳内出血の特有の症状を示しているわけであります。脱ぷんをしていたということは、肛門が開いておる、こういうことになるのではないかと思うのです。  そして、そういう状況を見ておられて、要するところ、一五五四号室で床に寝かせて、室灯をつけ、ドアロックをしなかったということは異常に気がついていらっしゃるから、すぐ入れるようにドアロックをしなかった、こういうことになるのではないかと思うわけであります。  和田正昭さんの担当医でありました東京女子医大救命センターの曽我先生によれば、一回目、今申し上げた二回目どちらでも、ホテル側が救急車を呼び、病院へ対応しておれば命は助かったと見解を示されているわけでございます。  人命軽視であるというふうに私が言いますのは、先ほどからずっと経過を読みましたけれども、あの中に六人の従業員が携わっておるわけです。見ているわけであります。そういうことの中でこの異常が発見できなかったということについて私どもは、一体どうであったのか、人命救助に対する認識がきちっとなされておったのか、そしてまた職員の皆さん方も十分掌握され、的確な判断ができるようになっていたのか、その体制も含めて問題であるというふうに言わざるを得ないと思うのであります。二回にわたって人命救助のチャンスがありながら、救急車を呼ばれなかったことは非常に残念であります。酒ということにもしなるとするならば、大変な誤認である、こういうふうに言わざるを得ないと思うのですが、見解をお尋ねします。     〔谷津主査代理退席、主査着席〕
  251. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 まず最初に、冒頭先生の方から御発言がありましたその事実関係について、若干補足させていただきたいと思います。  我々の受けている報告でございますと、二十時三十分の状況について我々受けております報告では、顔に血がついているという事実は報告は受けておりません。  それから、牛込警察署に報告書を出しているという話でございますが、これは事情聴取を受けた事実はございます。  それから、これは後でもちろん我々結果として知ったわけでございますけれども、死亡に至った要因が先生指摘のように後頭部における脳挫傷あるいは側頭部における陥没であったということは、我々も後で承知しているところでございます。  そこで、御質問のポイントかと思います。その二十時三十分の時点での会館側の対応についてでございます。これは先ほどお話がありましたように、男子トイレで倒れているという通報を受けて早速参ったわけでございますが、これは事実として、その職員は和田様が酒気を帯びていたということと、それから会館職員が容体について和田様に声をかけたところ、大丈夫という明確な応答があったという事実がありまして、会館の職員としては、よくあるというわけではございませんけれども、異常にお酒を飲んで倒れられた状態というふうに判断をして、あのような介護をしたということでございます。  それからもう一つ、零時二十分の状態につきまして、確かに廊下で座っておられた、そのときの状況について御指摘がございましたけれども、そのときも大丈夫ですかと声をかけたところ、あるいは歩けますかと声をかけたところ、大丈夫だと明確に答えられた。ただ、みずから立ち上がって帰ろうとされていたけれども、非常にふらふらしていたという状況で、介護してお連れ戻した。  それから、部屋の中での状況についても、先生の御指摘のような事実があったわけでございますけれども、会館側の対応としては、その処理とかあるいは適切な介護をしたというふうに理解をしております。  それから、床に毛布を敷いて寝ておられた、あるいは寝ようとしていたということについて、私たち受けている報告では、零時半こるでしょうか、要するに、見回りに行きましたら、ライティングデスクの下で和田様が何か捜し物をしていた。そのときに床に毛布とシーツが敷いてあった。その後何回か、これは当直の方の注意で必ず見回りに行くようにと言っておりましたところ、そこの床のシーツの上で寝ておられた。  かつ、会館側が最初介護をした後ドアのロックをかからないようにしていたということは、大丈夫だと御本人はおっしゃっていたけれども、かなり酔っている状態ではないかという判断から、見回りに行ったときにのぞけるようにロックを外しておいたということでございますので、これも我々としては、会館側としてはこの事態に的確に対応しようとしたというふうに考えているところでございます。
  252. 吉岡賢治

    吉岡分科員 今の答弁を聞いていましたら、何も問題なかったみたいな話ですね。そんなことでいいの、本当に。どうなんだ。  公的宿泊施設でしょう。それではグランドヒル市ケ谷の安全配慮義務、これを尽くしていない、私はそういうふうに結論せざるを得ないと思うのです。率直に言ってくださいよ。人の命がなくなった。  私が言いたいのは、このことを契機に、これからこういうことが旅館業法に基づくいろいろな施設に対して、これからも日本じゅうにふえていきます。そういうことを考えたときに、こういうことを明確にしなきゃならぬと思っているからです。それを冒頭に申し上げながら、今から言ってみたいと思います。  契約行為というのは、チェックインからチェックアウトまで、この間安全配慮義務が生じる、このように思います。  そして、人命に対する訓練がなされた様子は、ホテル関係者六人が対応しながら、一度と言わず、こぶが出ておる問題や、そういうことをさわったりいろいろほおをたたいてみたりとかすることは、どこにも出てこないわけであります。返事ということだけなんですよ。先ほどからおっしゃっている。二度にわたって宿泊者の身体的な異常に的確に対応する判断力がなかったということを意味しておりますし、酒のせいという予断が引き起こしたことではないか。  三つ目の問題として、就業規則等に救急や人命に対することが実はうたわれていないのであります。これは防衛庁からいただきました。いわゆる防衛庁共済組合員職員人事給与規則、職務心得(職員用)、グランドヒル市ヶ谷というのをいただきました。読んでみましたけれども、そのことが明確にされていない。ほかのホテル業あるいは旅館業では、救急の場合はこうしなさいということを明確にうたっているんですよ。そういうところからもやはり問題がある。それと同時に、他のホテルでは明記されているというふうに言いましたけれども、五十七歳の人がトイレで倒れたら動かさずにすぐ救急車だ、これが常識というふうに言われているわけであります。  そして、問題はもう一つあります。ホテル従業員がドアロックしなかったのは、安全配慮に欠けることだと思う。廊下というのは通路であります。その間に、今おっしゃるけれども、あけておかなきゃならない存在というのは一体何なんでしょうか。きちんと鍵をかける。これによりますと、自分のロッカーにでもちゃんと鍵をかけてくださいと書いてある。お客様をお泊めして、そして鍵をかけるということができないとすると、第三者が入った可能性さえ考えられるわけですよ。先ほど言いました人字縫合の離開ということを考えてみますというと、そういうことも含めてやはり問題があるんじゃないか。  そして、従業員に虚偽の発言があるのは、先ほど申し上げたとおりであります。外傷はなかったと言われるけれども、血が外に出ていたということは一言も出てこない、おたくの方の話では。先ほど言いますように、ワイシャツに血がついているわけであります。それを今でも保管しておられるわけであります。そういう現実も指摘をしておきたい、このように思います。  それから、ついでに申し上げておきますけれども、警備員の長嶺清一さん、これが、営業部長の西野さんの発言では、体の弱い人だというふうに聞いております。事件後療養中というふうに聞いておりますのでも、入院先も教えてもらえない、こういうことですが、雇用のときに診断書をとっておられたのか、このことについてもお聞きをしておきたいと思います。  以上申し上げたような形の中で安全配慮義務というものを尽くしてない、こういうふうに言わなければならぬと私どもは思います。  そこで、今の質問にも答えていただきたいのですが、時間がございませんので引き続きやります。  次の問題ですが、人命は地球より重いと言われているわけであります。なぜ遺族に対しまして館長みずからが出てきてきちんとした対応をしなかったのか。遺族の言をかりれば、宿泊約款で宿泊者に部屋を利用する上でのサービス提供を内容としており、特段の事情がない限り責任なしとの見解、こういうことで対応しておられるわけであります。今申し上げました安全配慮義務、このことの欠落は明確な上でこのように言えるのかどうか、責任なしと。私は、そういう意味でぜひグランドヒル市ヶ谷の責任者の対応を、というより責任者の本件に対する見解も聞きたい。そして、防衛庁としても聞きたい。  さらに、最後になりますけれども防衛庁長官のこの問題に対する深い認識をいただきながら、遺族に対します、本当に気の毒なことをしたということと同時に、このことのきちんとした解明を図らないことには、うやむやに済ますというのは一番問題ではないか、このように思うところでございますので、ぜひ真摯なお答えをいただきたい、このように思います。     〔主査退席、谷津主査代理着席〕
  253. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 グランドヒル市ヶ谷における人命救助体制につきまして御指摘がございましたが、当該施設の運営に当たって、もちろん利用者が安心してここに宿泊できるということをモットーにしておりまして、こういった不測の事態あるいは急病、事故等が発生した場合の対応について定期的に、これはおおむね月一回打ち合わせを行っておりますほか、機会あるごとに職員はもとより警備員等につきましてもその周知徹底を図る等、人命の安全に特に心がけております。  若干具体的に申し上げますと、防災訓練といったようなものは年三回やっておりますが、直接こういった応急救護関係の教育は、例えば初任者は年一回、それから宿泊係全員、特にフロント係ですとか宿泊予約係ですとかこういった者に対する救急教育の機会教育、こういったものも月一回やっているわけでございます。  それから、先生指摘がございましたが、こういったことをきっかけとしてもっと安全対策をしっかりやったらどうかというお話がございました。我々としても、この事故が発生いたしました後、別におおむね月一回部外講師等による救急救護の応急研修等をしておるところでございまして、今後ともこういった点について万全の体制づくりをしてまいりたいと思っております。  それから、若干繰り返しになって恐縮でございますけれども、ドアロックをしないで出たのは異常性を認識していたからではないかという点については、確かにただお酒に酔って倒れられているというだけではなくて、かなりひどいという認識はしていたわけでございまして、その後当直長の指示によって若干きめ細かい見回り、それから定時見回りのときに必ずそこを見るといったようなことを指示したこともございまして、外から見れるようにそういう措置を応急的にこれはとったということで、御理解いただきたいと思います。  ただ、御本人が大丈夫、大丈夫と言っただけではありませんで、いろいろ調査では、我々も聞いておりますけれども、零時三十分のときに、捜し物をしているときに、見回りに行った職員が早く寝てくださいという話をしたら、わかった、わかったという返事もされているという報告を我々は受けておるところでございます。  それから、警備員の方についての御指摘がございました。この会館のこういった警備に要する人員は、月の延べ人員が百名を超えるという状況でございますので、率直に申し上げまして、一人一人の病歴まで会館側で承知しておるわけではございませんが、一般的に警備会社は、これは人命にかかわる仕事に携わる業務の性格上、そうした個人の心身状況については十分把握していると承知しておりますし、少なくとも本事案を担当した警備員につきましての行動、対応あるいは措置につきまして、特に問題がなかったと我々は承知しております。(吉岡分科員「安全配慮義務はどうだ、それを答えてください」と呼ぶ)いろいろたくさん質問されましたのでちょっと混乱をしましたが、安全配慮義務につきましては、先ほど申し上げました人命の救急体制及び訓練というものにつきまして、引き続き万全の体制を確保すべく努力してまいりたい、また指導してまいりたいと考えております。
  254. 吉岡賢治

    吉岡分科員 そんなこと聞いておらへんがな。安全配慮義務が果たされていないということを聞いておるんだがな。答えになってないですよ。ちゃんとしてくださいよ、委員長。
  255. 谷津義男

    ○谷津主査代理 時間が来ておりますので。
  256. 吉岡賢治

    吉岡分科員 委員長、それはおかしいよ。答えになってないんだから、答えてくださいよ。長官の方も答えてもらわなければ。
  257. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 御指摘の点につきまして、その会館は宿泊業務あるいはそのほか宴会、集会、その他のいわゆるホテルに類似する業務をやっております以上、当然のこととして善管義務、つまり安全配慮義務はあると思いますし、会館側は適切に対応したものと我々は認識しております。
  258. 吉岡賢治

    吉岡分科員 死んだんだから、適切じゃないでしょうがな。長官、どうですか。
  259. 中山利生

    ○中山国務大臣 私も、今お二人の問答を伺っておりまして初めて事実関係を伺ったわけでありますが、防衛庁に関連しておりますグランドヒル市ヶ谷という施設で、ただいまお話がありましたようなとうとい人命を失うというような事件が起きましたことをまことに遺憾に思っておりますし、和田さんに対しまして心から御冥福をお祈り申し上げたいと思っております。  今お話を伺っておりまして、そういう事態に遭ったときに私ならどうしたのかなということを考えたわけでありますが、最初に泥酔状態という一つの認識がありましたし、そういう飲食をする場所、ホテルなどでは往々にしてそういうこともあり得るのではないかな。それから、接客業といたしまして、お客様のプライバシー、少しぐらい酔っているときにむやみに、必要以上に踏み込んだ介護をされることを嫌う方ももちろんあるわけでありますし、先ほどからのお話を聞いておりますと、万全ではなかったかもしれませんが、とにかく持てる力、従業員の方々も一生懸命和田さんの健康状態ということを心配しながら夜遅くまで行動したということも事実であろうと思っております。  そういう意味で、人命ということはこれ以上にとうといことはないわけでありますから、今人事局長からお話し申し上げたように、これからも人命について、また健康や衛生等につきましても、なお一層訓練を強化いたしまして、このようなことの起こらないように万全の体制をしいていきたいと思っております。
  260. 吉岡賢治

    吉岡分科員 終わります。
  261. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて吉岡賢治君の質疑は終了いたしました。  次に、河上覃雄君
  262. 河上覃雄

    河上分科員 限られた時間でございますので、簡潔にお尋ねをいたしたいと思います。お答えも簡潔にいただきたいと思います。  厚木基地、硫黄島のNLPについてお尋ねをしたいと思いますが、平成三年から硫黄島でのNLPが開始されました。まず、平成三年から五年二月までのNLPの日数と回数、硫黄島と厚木基地、それぞれに分けて御報告いただきたい。
  263. 江間清二

    ○江間政府委員 お答えを申し上げます。  まず、厚木について先に申し上げさせていただきたいと思いますけれども平成三年につきましては、その年前半は行われておりませんで六月以降実施をされておりますが、平成三年の計で申しますと、三十三日間、回数にしまして千五百五十回実施をされております。四年につきましては二十八日間、千七百六十回、それから五年は十八日間、八百四十回ということでございます。  次に硫黄島でございますけれども、硫黄島は御承知のとおりまだ整備の途中段階過程でございますが、平成三年には六日間、三百十回行われております。それから、四年につきましては四日間、六百八十回、五年の一月、二月につきましては、八日間で千五百三十回という実施の状況になっております。
  264. 河上覃雄

    河上分科員 NLP代替施設のうち、隊舎の二棟は既に完成をいたしておりまして、残りの二棟も本年度末には完成すると伺っておりますが、これらの施設について、米軍の見解あるいは感想はどんなものなのか、お答えいただきたいと思います。
  265. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 ただいま先生指摘ございましたように、今年度末をもちまして硫黄島の施設は完成するわけでございますが、施設そのものにつきましては米軍は大変満足をしております。  また、訓練環境につきましても、非常に絶海の孤島でございますので、暗いところで本来のNLPができるという意味からして、訓練環境としても大変評価をしております。ただ、米側といたしましては、距離が厚木から千二百キロも離れておるということでございまして、即応態勢だとか隊員の士気だとか経費だとか、そういうような面から全部あそこでやるというのはちょっと無理なのではないか、こういうような見解を率直に持っておるようでございます。
  266. 河上覃雄

    河上分科員 施設庁長官、私も硫黄島へ行きまして、具体的に見てまいりました。今お話がありましたように、使いやすい施設であり、そして満足いただけるのではないのか。それに引きかえ、自衛隊の隊舎がいかにみすばらしいかということもこの目で見てきたわけでございますが、これらの諸施設の完成に伴いまして、硫黄島でのNLPを半分程度などと言わないで、それほど満足度があるわけだし、そして訓練環境としては評価でき得るわけでございますので、全面的な移転を要請したらいかがなものか、私はこう思うわけですが、ただいまの発言の中にも、そうはなかなかいかないとおっしゃっておりましたが、どうでしょう。すばらしいところなんですから、施設庁としては、防衛庁としては、全面的に硫黄島でNLPの訓練は実施する、この問題についてもう一遍御見解をお尋ねいたします。
  267. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 私どもといたしましても、何とか厚木の騒音を少なくするために硫黄島での訓練をたくさんやってもらいたいという調整を米側とやっておるわけでございますけれども、じゃ全部硫黄島でできるかということになりますと、先ほど申しましたように、即応態勢だとかあるいは時間それから経費、士気その他の面から全部を同島でやることは、これは米軍の運用上の問題にもかかわるだろうと思いますけれども、無理であるという見解をかねてから米側は示しております。  しかし、我々といたしましては、全部は無理でも、少しでも多くの訓練を向こうでやってもらうように今後も調整をしてまいりたい、かように考えております。
  268. 河上覃雄

    河上分科員 施設庁長官、平成三年は六日間、四年は四日間、平成五年はまだ始まったばかりでございますが、一月、二月で八日間、これだけしか硫黄島で行われていない。  今説明もございましたが、もう一遍お伺いしたいのですが、全面移転を受け入れられない理由は今述べられましたが、それは日本側としての見解なんですか。米軍側の御見解なんでしょうか。どちらでしょう。
  269. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 米側の見解でございます。
  270. 河上覃雄

    河上分科員 いろいろと具体的なこともお尋ねしたいと思うのですが、実は、私もこの問題についてはずっと毎年この場で質問をさせていただいております。ただいまの見解を聞きましても、毎回同じ。余り進展がない。変化したのは代替施設が本年末で完成する、この程度だけでございまして、あとは一向に何のさま変わりもない。甚だ遺憾に思っているわけでございます。  そこで、例えば一月、二月は受験期に当たります。子供たちも最後の総仕上げの時期を迎えまして、目指す学校へ入学できるような環境をつくってさしあげたいと私は強く思っているわけでございますが、平成五年一月、二月、厚木でNLPが行われたのは、一月、二月のたった二カ月間で既に十八日間、八百四十回行われておる。特に七十ホン以上五秒間継続した騒音測定の回数を見てみますと、これがまたかなり高い数値があらわれておりまして、一月で申し上げれば、十八日から二十九日の間の十日間、四百四十回行われているわけでございます。十八日は四十五回、十九日は六十七回、二十日は六十八回、二十一日は五十五回、二十二日は八十三回、二十五日は五十回とここまで二けたなんですが、二十六日は百二十一回、二十七日は百三十七回、二十八日は百六回、二十九日の最終日は四十九回と、七十ホン以上五秒間継続する騒音の回数がカウントされている。二月も八日から十七日、八日間、四百回行われているわけでありますが、最終日三日前から申し上げますと、十五日は百八十六回、十六日は二百十八回、十七日は百二十九回と大変な数値を示しておるわけでございまして、こんな環境下で本当に最後の総仕上げの受験勉強ができ得るのだろうか、一生懸命学んでいる学生も大変に心が定まりにくい状況にあるのじゃないのかと私は思うのです。  したがって、この一月、二月の受験期だけでも何としても硫黄島で全面的にやってもらう。どうでしょう、こういうことはできませんか。一月、二月の受験期は特に厚木はなしにして、硫黄島で全面的にやる。姿勢をお伺いしたいと思います。
  271. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 先生おっしゃるとおりでございまして、私どもも、受験シーズンであります一月、二月はNLPを避けてもらいたいという気持ちを持っております。それから、地元でいろいろな行事があるときにもなるべく避けてもらいたいということを、その都度私どもは米側に申し入れをしております。  今回のNLPの計画が我々に通知がありましたときにも、まさに先生おっしゃいますように、この時期は受験期であるから何とかNLPをやめてもらえないだろうかということを交渉したのでございますけれども、どうしても米側の運用上の必要性からこれはやらざるを得ない。それから、それじゃ全部せめて硫黄島でできないのかというお話をしたわけでございますけれども、先ほど来申し上げておるような諸事情、特にあの直後に「インデペンデンス」が出港したわけでございますが、出港前にはどうしても飛行機を厚木に返して、完全に点検して完全な状態にして出港していかないといけない、こういうような事情もあるやに聞いております。そういうことから、今回のNLPにつきまして我々文書をもちまして何とか自粛をしてくれないかという申し入れをしたのでございますけれども、残念ながらこういう結果になったということでございます。
  272. 河上覃雄

    河上分科員 申し入れはしているのですが、残念ながらだめだったということですが、今回だけではないわけですね。平成二年だってあったじゃありませんか。平成三年は、この期間に厚木のNLPはなかったですよ。四年だって随分やられているじゃないですか。平成年度は一千百七十回やっているわけです。そして、五年度もかなりの回数をやっている。今回もお願いをしたけれどもだめだ。これじゃ全然話にならないのじゃないのか。  すばらしい環境下にある、そして施設も満足いただけるものだ、ここまで条件をつくられたわけですから、もっと積極的に働きかける必要があるのじゃないかと私は思いますし、さらに強くそれは求めていただきたい。そして、そうしたいい環境の中で挑戦できるような体制をつくってさしあげたい。気持ちは同じなわけでございますでしょうが、これがその結果に結びつかなければ、これはもうそれだけじゃ通用し得ないような状況に来ているわけでございますので、ぜひともこれは強い要望を重ねていたしたいと思います。  ところで、二月二十五日に第一次の厚木騒音訴訟の最高裁の判決が出ました。基地の高度の公共性が免責理由とはならない、飛行差しとめは門前払い、このようになったわけでございますが、過去分の損害賠償については国の損害賠償を認める判断を示した。したがって、国は今後被害の発生源が日本の権限の及ばない米軍機などとしての責任回避は許せない、私はこう思いますし、米軍機、自衛隊機が頻繁に発着を繰り返す、特に住宅地に基地を置いている以上、その運用あるいは設置について絶えず損害賠償を求め続けることになる、このような見解もあるわけでございますが、これに基づいて、今回の最高裁判決につきまして、施設庁の御見解をまずお尋ねしたいと思います。
  273. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 まず、今回厚木の騒音訴訟、長い経過を経たこの訴訟につきまして、最高裁から一つの判断が出たということを我々厳粛に受けとめております。  それで、過去分につきましては、二審の判決が破棄されまして、もう一度東京高等裁判所に差し戻されたわけでございますので、そこでもう一度審理をされるわけでございます。この関係をどのように対処してまいるかということにつきましては、関係機関とも十分調整をして、対処をしてまいりたいと思っております。  いずれにいたしましても、厚木の周辺の皆様方の御理解が得られますよう生活環境の整備等には一層努力をしてまいりたい、このように考えております。
  274. 河上覃雄

    河上分科員 私も、施設庁長官の談話、ここにありますけれども、読ませていただきました。お答えもそうじゃないかと思いましたが、差し戻された高裁の審理を待つというのじゃなくて、現実に長い間NLPの騒音被害、あるいは古い過去になれば墜落という大惨事を経たこともあるわけでありまして、現実というものが横たわっているわけです。審理を待つなんという半端なことじゃなくて、最高裁の判決を厳粛に受けとめられる、こうおっしゃっているのですから、この判決を一助として具体的に、抜本的に見直しを図るべきだ、検討を開始するべきだ、私はこう思うのですが、その御意志はありますか。ありませんか。
  275. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 私ども、騒音の防止対策につきましては絶えず意を払っておりまして、やり得ることにつきましてはかなりのことをやってきたつもりでございます。ただ、もちろん住宅防音とかそういうものにつきましては、財政的な理由とかその他の理由によってまだ進んでないというところもございますけれども、騒音対策につきましてはかなりのことを今までやってきたつもりでございます。  それで、抜本的に見直すという意味がちょっと私にはあれでございますけれども、これは直ちに過去分の損害賠償について支払いをすべきであるという御主張でございますのであれば、これにつきましてはやはり関係機関と十分調整をさせていただきまして対処をしてまいりたい、かように考えております。
  276. 河上覃雄

    河上分科員 では、より具体的にお伺いをします。  防音工事対象世帯十万四千、一室、二室の工事は本年完了する予定になっております。完成の見通しはいかがか。そして、本来、五室全部追加工事をやることになっておりますのでは、現時点における追加工事はどこまで進んでおるのか。まずこの二つの点、お伺いします。
  277. 江間清二

    ○江間政府委員 まず、厚木の住宅防音工事事業の実施の状況でございますけれども、新規事業、いわゆる一、二室の最初の工事でありますけれども、これは平成年度でおおむね希望世帯に対しましては完了をする見込みになっております。したがいまして、今後は五年度以降希望世帯が出てくるものに対してそれを実施していく、こういう状況になっております。  一方、先ほど御質問の追加工事の方でありますけれども、厚木につきましては、四年度までの進捗状況は大体二三%程度という状態に相なっております。
  278. 河上覃雄

    河上分科員 追加工事に関してですが、今後どんな計画で臨まれますか。例えば年度別でこのくらいやりますよと出ますか。
  279. 江間清二

    ○江間政府委員 住宅防音工事の過去からの実施状況でありますけれども、やはり全国の希望世帯対象数というのが当庁の場合非常に膨大であるというようなこともございまして、まず一、二室の新規工事からということで手がけてまいりまして、その後、新規工事についてもかなりの達成の見通しが得られた段階から逐次追加工事を手がけておるという状況で、先ほど厚木について申し上げましたが、厚木についてはそういう状況になっているわけでございます。今後は、当然のことながら防音事業の主体は追加工事になってくると言えると思います。  ただ、厚木につきましては、私どもも騒音被害の状況というようなことも十分踏まえまして、住宅防音事業についてはできるだけの努力を払ってきたつもりでございます。住防予算の大体四割ぐらいをこの厚木に充当いたしまして、その進捗に努力をしてきたところでありますけれども、一方では、受け皿と申しましょうか、処理能力といいますか、そういう面での限界もおのずからございます。  したがって、いろいろな、また今後の予算状況というものもございましょうし、そういう面を考えながら対応していかなければいかぬと思っておりますので、今先生の御質問の、例えば今後年度計画で何年度にどれだけができるかというようなことについて、今の段階で申し上げられる状況にはないということを御理解いただきたいと存じます。
  280. 河上覃雄

    河上分科員 もう一つ。いわゆるドーナツ現象、これは解消いたしますね。
  281. 江間清二

    ○江間政府委員 先ほども答弁申し上げましたけれども、住宅防音の事業の状況というのは非常に対象世帯が膨大であるということで、それをともかくできるだけ進捗率を上げて対応をしていきたいというのが私どもの基本的な認識でございます。したがって、まずそこが先決という認識であるわけですが、同時に、今先生がおっしゃられましたいわゆるドーナツ現象と称される住宅に対する防音工事の助成ということにつきましては、地元の要望も非常に強いということを私どもも十分承知をいたしております。  そこで、この点につきましては今後の課題といいますか、そういう面でとらえ努力をしてまいりたいというふうに思っておりますが、ただ、では今ドーナツ現象を直ちに解消ができますねということになりますと、現在はそういう状況ではないということを御理解を賜りたいと思います。
  282. 河上覃雄

    河上分科員 何回やっても余り進まないとさっき申し上げました。防音についてもやはりこういっていたらくでございまして、施設庁長官の談話の最後にも、「今後とも厚木基地周辺住民の方々の理解が得られるよう、生活環境の整備等に一層努力していく」、こうおっしゃっていますが、これじゃ今後理解は得られませんよ。ますます激しくなりますよ。どんな理解を求めるんですか。どう思っていらっしゃるんですかね。  そこで、時間も余りありませんので、今般厚木基地内に大きな家族住宅を建てる、こういうお話が一月二十六日の合同委員会で決定をいたした、こういうことでございます。基地内のどこに建てるのか。そして、規模あるいはいつ着工なさるのか。いろいろと報告も求めたいわけでございますが、それとあわせまして、この厚木基地内の家族住宅建設は米軍の要請ですか。日本側からの申し出でございましょうか。そして、なぜこの時期に決定をなさったのか、その背景について。三つ、あわせて報告してください。
  283. 江間清二

    ○江間政府委員 御指摘のとおり、厚木海軍飛行場におきます家族住宅につきまして、平成年度の計画について、ことしの一月二十七日の合同委員会において日米間で基本的な合意がなされました。  その規模は、高層住宅九階建て一棟六十八戸ということでございまして、もとよりこれは厚木海軍基地の中に建設することを考えておるものでございまして、五年度から七年度までかけてこの建設を進めることで、現在予算の御審議をいただいておるところでございます。  これはどういう理由に基づくものかという点でございますけれども、これは関東地区におきます米海軍家族住宅の不足ということについては、かねてから米側の方からも要望がございますし、一つの深刻な状況になっているという背景のもとに立って、日本政府としてこれを自主的に進めていくことを判断したものでございます。
  284. 河上覃雄

    河上分科員 硫黄島でのNLPもままならない状況。防音工事もさほどの、今の御答弁目に見えて進捗するような状況ではないということもこれ一つ。そして今回の建設に対して、地元住民感情を逆なでするんじゃないのか、こうした状況の中では。NLPが恒久化されるんじゃないかという懸念等もございます。先ほど申し上げましたように、住民に十分理解を得られる、こうおっしゃっているわけなんですが、これじゃ全然私は得られない、あえてこう申し上げなければならない。  最後に、このような、場合によっては綾瀬では建設の撤回まで含めて要望等をしているわけでございますが、この要望等に対する見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  285. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 確かに、地元綾瀬の市長を初め地元の方々から、この建設について反対という御意見をちょうだいしております。しかし、ただいま施設部長が申しましたように、日米安保体制を堅持していくという基本方針を我が国が維持している以上、そしてまた関東地方の米軍の住宅が著しく不足しているという以上、やはり地元の皆様方の御理解を得ながらこの事業を進めさせていただきたいと思っております。  そして、我々といたしましては、何もしないでそれをやるのではなくて、硫黄島が来年は完成いたしますから、もっと硫黄島での訓練をふやしてもらいたいということ、それから今は予算の約四割を住防に費やしておりますけれども、こういうところにも力を入れていきたい、いろいろなことを努力をしながら住民の皆様方の御理解を賜ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  286. 河上覃雄

    河上分科員 終わります。
  287. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて河上覃雄君質疑は終了いたしました。  次に、小松定男君。
  288. 小松定男

    小松分科員 私は、基地問題について、特に埼玉県の所沢基地の問題につきまして質問をさせていただきたいと思います。これから申し上げるのは、私が個人ということではなくて、むしろ所沢市民を挙げてといいますか、市長を先頭にして、長年の懸案でありますし、米軍の基地返還の願いという立場で質問をいたしますので、ぜひひとつそのつもりでお聞き取りいただきたいと思います。  御承知のとおり所沢市は、埼玉県の西南部地区でも人口三十万人を超えた都市として非常に都市化をされてまいりました。これまで二回にわたりまして米軍基地の返還がされてきたわけでありまして、あと残っているのが約三分の一、面積でいいますと九十七万平方メートル、約百万平メートル、かなり広大な面積ですけれども、いまだに通信基地として利用されております。したがって、最近の市の都市計画その他がかなり具体的に組まれておりまして、この返還について強い要望があるわけです。  同時に、今までも歴代、何代も市長はかわったのですけれども、その都度いろいろな要請をしてまいりました。ところが、今残っているところについてはなかなか返還が難しいということで今日まで来ています。しかし、最近の国際情勢、ソ連も崩壊したし、大分国際情勢も変わってまいりましたので、今、ある意味では返還の時期もチャンスなのかなということもあわせて考えておりましたので伺いたいと思うのですが、この点についての状況をまず伺っておきたいと思うのですけれども、いかがでしょう。
  289. 江間清二

    ○江間政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま先生からのお話にもございましたとおり、米軍の所沢通信所につきましては、過去、四十六年と五十三年あるいは五十七年というそれぞれの時期に施設、区域の一部返還というのがございまして、当初の施設の約七割が返還をされ現在に至っております。御指摘のとおり、現在九十七万平方メートルの施設になっておるわけでございます。ここの施設は現在、名称にもございますとおり、まさに通信施設として現に使用され、機能しているところでございまして、施設の中には通信局舎等の建物あるいは多数のアンテナというようなものが設置をされておるところでございます。  この施設につきましては、五十年代以降、先ほど先生の方からもお話がございましたが、再三にわたりまして一部返還あるいは共同使用というような御要請が地元から出ておるところでございます。また、先般の二月にも所沢市、同市議会あるいは市基地対策協議会から同様の要請がございました。これにつきましては、私どももそういう御要請を受けまして米側の方とも照会し、協議をしてきているところでありますけれども、米側は、現在の提供施設の用地というのはもう必要不可欠である、地元要望は、技術的見地から通信施設の運用に支障を来すおそれがあることから御要望には応じられないということで、非常にかたい態度でございます。そこで、去る二月の御要請に対しましても再度米側と調整をやりましたけれども、従前と同様の理由で、遺憾ながら地元の要請に沿うことはできないと回答してきておるところでございますので、先生のお話の地元の御要望ということにつきましては、極めて困難であると申さざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  290. 小松定男

    小松分科員 その点については、一部暫定的に使用させてもらいたいということと、それからその残っている約九十七万平米の全面返還と二つに分けて要望しているものですから、二つに分けて私の方も考えて質問しているので、今の後の答えについてはもう少し後で問題を絞って伺いたいと思うのです。  まず全体のことについて伺うのですが、この所沢基地は、横田の基地とそれから新座市、清瀬の通信基地、これとの関連した受信基地になっておりまして、そういう意味では恐らく重要な通信基地と位置づけているのだと思うのです。  しかし、先ほど言いましたような国際情勢の中で、米軍も縮小するというような方針も私どもも一部伺っておるわけでありまして、また、これは大分前になるのですけれども、米軍の横田の基地司令官に市長も会ったこともあるようですけれども、そのときにも大変好意的な返事をもらったということも伺っていたのですが、好意的な返事と、実際にこれが使用できるということについては、具体的になると若干違うのかなという気はしているのですね。  そこで、国の機関としてこういう基地問題の窓口、きょう防衛庁の長官なりあるいは次官も見えておりますけれども、それと外務省も来ていると思うのですが、防衛庁の立場というのが、本当に基地返還に対する住民要望というものを相手方に伝えられる、そういう位置にあるのかどうかということに対して、若干私なりに疑問を持っている点があるのですね。というのは、先ほどの厚木の問題じゃないですけれども、防衛庁の立場というのは、日米安保条約、米軍との共同作戦、そういうものが中心になって、基地を縮小したり、そういうことに対する位置づけということが、果たして防衛庁に一応要請して、窓口はそこしかないということならばこれは仕方がないのですけれども、外交交渉ですから、むしろこれは外務省の方が的確なのじゃないかなと思って、きょうは外務省の方にも来てもらったのですが、その点、外務省はどういうふうに位置づけているのか、伺っておきたいと思うのです。
  291. 加藤良三

    加藤説明員 外務省といたしましても、所沢の通信施設、先生指摘の施設の返還につきまして、地元より累次要望がなされておることはよく承知いたしております。県からも市からも外務省に対して累次にわたってその種の要請がございまして、先ほど防衛施設庁の方からの御答弁にもございましたように、ことしは二月二十六日に所沢市長、市会議員の先生ほか関係者に外務省を来訪いただいたという経緯もございます。  私たちも、外務省として、日米安保体制の運用を預かるというその職務に照らしまして、常々米側とは緊密な連絡を試みているわけでございます。そして、このような地元からの要請内容も確かに米側の方に伝達いたしました。しかし、先ほど防衛施設庁の方からもお答えがございましたように、米側は、所沢の施設は日米安保条約上、必要不可欠な施設であり、返還は困難であると申している次第でございます。
  292. 小松定男

    小松分科員 この点については、私どもも、米軍の基地の返還運動についてはなかなか時間もかかるなということは、今までの体験の中ではしているわけですけれども、しかし現実には、防衛庁長官も今度恐らく防衛医科大学の卒業式には見えると思うのですけれども、あの近辺を見てもらって、防衛医科大学のすぐ裏が今言った基地になっていますから、ちょっと車であそこを通るとき見ればわかるのですけれども、もうほとんど何もないんですよ。ただ、地下にどんな程度の、通信ですから機械が埋まっていることがあるのですけれども、立っているのは何本か鉄塔が見えるくらいの話で、ですから、後で一時使用の問題が出てくるわけなんですが、住民感情としても、もう周りは団地がどんどんいっぱいできているし、ぜひ返還をしてもらいたいという強い要望がありますので、これからもそれが実現するまではそういう運動が続いてくると思うのです。これは全市民を挙げてという解釈で、先ほど言ったとおりですから、そういうふうに理解してもらいたいと思うのですね。ですから、そのことはおわかりいただけると思うのです。  そこで、今度は一時使用の問題なんですが、そういう状況の中で、実は基地に囲まれた中で東西道路、西と東を結ぶ道路で、これも恐らく先日、市長初め基地対策協議会のメンバーが要請に来て知っていると思うのですが、この東西を結ぶ道路の一時使用、返還ですね。これができますと、その先の道路につながりますから、ちょうど住宅の周り、真ん中を抜ける道路ができるわけですね。これは全面返還とは別に使用させてもらいたいということが一つですね。  それから、現在、基地のちょうど一番外れになりますが、そこに道路がもう既に、これは市の道路ですが、それを拡幅をしたいので一部道路の使用を認めてもらいたいということで、これはもう基地に沿ってそこは道路になっていますから、あとは拡幅をするだけです。  もう一つ、三点目は、残されている九十七万平米の外れに、私もそこの会長をやっているのですけれども、中国から帰ってきた人たちの残留帰国孤児の定着センターがあるんですね。そこの隣、ちょうど隅っこになるんですけれども、そこを日米共同のスポーツ広場として、それはまあ面積としてはそんなに大きい面積じゃないんですけれども、使用させてもらいたい。同時に、スポーツ広場として一時使用させてくれというんじゃなくて、あれだけの大きい面積の中で、雨が降ったりなんかしたときの水の遊水地がない。ですから、それにも活用できるということで、その広場を使用させてもらいたいというので、この三つだけ、全面返還とは別に要望がされたと思うんですね。ですから、この点についてどういうふうに理解しているのか、これは全面返還とは別にひとつ考えてもらいたいという立場で質問しているわけですから、答えてください。
  293. 江間清二

    ○江間政府委員 私、先ほどお答えをさせていただきました際に、一部返還あるいは共同使用ということを申し上げました。これは先般二月のときに、先ほど申し上げました地元の方から、今先生お話しのその三点について、それぞれ一部返還であり、あるいは共同使用という中身のものでありますけれども、その点について御要請がありまして、それの記憶が私有身、非常に鮮明だったものですから、先にその点をお答えさせていただいたわけであります。  これは繰り返しになって恐縮でございますけれども、その一部返還あるいは共同使用ということにつきましても、米側の方は、現在の提供中の用地は必要不可欠である、地元要望は、技術的な見地から通信施設の運用に支障を来すおそれがあるということで、遺憾ながら地元の要請に応ずることはできないというふうに回答してきているところでございます。したがいまして、地元の御要望ということはそれなりに理解はできるわけでありますけれども、そういう状況からしまして、その要望にこたえることは極めて困難であるというふうに考えておるということを御理解をいただきたいと存じます。
  294. 小松定男

    小松分科員 その点がどうも納得がいかない点があるのですね。これは市の方もそういうふうに言っておりましたけれども。  というのは、今技術的な問題も含めてということなんですが、今私が言った、例えば道路の問題、どこに技術的な問題があって難しいのかなということを、私もそれを聞いたものですから、あそこの場所に行って、例えば道路を抜いたときにどういう技術的な支障が来るのかなと思ってしばらく立って見ておったのですが、どうもそういうふうには受け取れない面がある。ただ、その気がないと、それを使用したり一部返還をするということはなかなか難しいんじゃないかなということは考えられるのですが、道路をつくったために直接基地に対して妨害になるとか、建物をそこへつくったりなんかすると、通信基地の場合はよくそういうことを言われる場合があるのですけれども、平面をそのまま利用する場合には、さほどそういうことが起きないんじゃないかなという気がしているのです。もう少しこの点は、今後現地を十分見て、そして、ただ単に市や市民が言っているからと簡単に受けとめないで、その辺を少し対米折衝の中では論議をしてもらえないかなというふうに感じたものですから、そのあたり、どうでしょうね、ちょっと答えていただきたいと思うのです。
  295. 江間清二

    ○江間政府委員 単に地元の要望と軽く受けとめないでという点については、私どももまさにそういう認識で、過去、先ほど冒頭に御答弁をいたしましたように、五十年来、同市の御要請というのがございましたものですから、その際にも米側と再三にわたってやっておりますし、その中でも非常に困難だということを米側は言っておるわけであります。しかし、この二月の御要請に対しても、それを受けまして米側の方にもそれを伝え、協議をいたしましたけれども、やはり同様の理由によって難しいというのが来ておるという状況でございます。  それから、平面云々という点がございましたが、私、先ほど、技術的見地から通信施設の運用に支障を来すおそれがあるということを米側は言っておるということを申し上げましたが、もう少し詳しく申し上げますと、アンテナの特性、あるいは十分な通信能力の確保のための緩衝地帯の確保、あるいはアンテナ相互の間隔を確保する必要があるというようなところがあるやに承知をいたしておるところでございます。
  296. 小松定男

    小松分科員 時間も余りありませんので最後に申し上げたいと思うのですが、いずれにしても、この問題については、全面返還とそれから一時使用と二つに分けて、私どもも、それだけは妥協といいますか、そういう線でもやむを得ないのじゃないか。本来ならば、住民感情からしても、もうあそこを返還してもらってもいいじゃないかというのが、率直な皆さんの声なんですね。しかし、いろいろな事情があって全面返還がなかなか時間がかかるということで、所沢の基地だけの問題じゃなくてそういう関連性が、横田の基地との関連性もあるものですから、そのあたりをにらみながらにしても、今言った一時的な使用の問題については、これはもう少し前向きで積極的にやってもらってもいいのではないかという気がするわけですね。  そこで、施設庁、私もまだ中へは、地下へ入ったことはないんですよ。聞くところによると、入れないわけではないんですね。これは大丈夫ですね。見せてくれますよね。その点だけ答えてください。
  297. 江間清二

    ○江間政府委員 現在のところ、通信施設は御案内のとおり米軍の施設、区域でございますので、そこへの立ち入りということにつきましては米側の管理権との問題になってまいりますので、米側の方に申し入れて、米側の方が了解すれば、立ち入るということについては可能な形になっております。
  298. 小松定男

    小松分科員 では、最後に大臣にお願いしておきたいと思うのですが、そういうことで、この所沢の基地の返還については非常に強い要望がありますので、相手があることですからなかなか困難な面もあると思うのですけれども、せめてそういう姿勢だけは持ってもらいたいと思うのですが、最後に大臣の決意をお伺いして、終わりたいと思います。
  299. 中山利生

    ○中山国務大臣 先生のお話にありましたように、全国の米軍、自衛隊の基地、騒音問題であるとかその他いろいろと住民の皆さんに御迷惑をかけ、またいろいろとお世話になっていることも事実でございます。  地域の住民の皆さんと円満に物事を行っていくということは、これは防衛あるいは日米安全保障体制というものを完遂していくためにも非常に大事なことだと思っておりますし、防衛庁にいたしましても外務省にいたしましても、全国の数ある基地の全面返還あるいは部分的な返還、利用ということにつきまして常に熱心に努力をしておりますが、何分にも、今おっしゃったように相手もあることでありますし、なかなか思うようにまいらないということが答弁にも歯切れの悪さを持っている原因だと思うわけでありますが、今おっしゃったような、部分的な利用について、なぜこれが利用させてもらえないのか、返還してもらえないのかというようなことについては、やはり地域住民の方々にわかりやすいように説明をして御理解をいただくということがこれからも大事なのではないかなと思っております。  今後とも、米側の方もかなり協力はしてくれているわけでありますから、両々相まちまして御要望にこたえていきたいと思っております。
  300. 小松定男

    小松分科員 終わります。
  301. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて小松定男君の質疑は終了いたしました。  次に、加藤万吉君。
  302. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 二月二十五日に、厚木基地問題、横田基地、両基地にかかわる騒音問題の訴訟について、最高裁が一つの見解を示しました。私は、厚木基地の騒音に関する問題につきましては、昭和四十三年から本件にかかわっております。住民の基地騒音に対する被害、それから来る人権、生活権への侵害は自来忍びがたいものとして、運動におき、時には裁判という形で展開をされ、今日では第二次訴訟を含めてそれぞれの裁判で争っているところであります。  最終的に住民があの判決を聞いてどういう感想を持ったか。私は、最高法廷である最高裁はこの苦悩を取り除いてくれるだろう、この生活権の侵害、人権の侵害と言ってもいいのでしょうが、それに対する救済は必ずしてくれる、そういう期待と確信を持っておったと思うのです。  しかし、残念ながら飛行の差しとめについては、自衛隊についても、また米軍機の飛行についても、その措置について最高裁は判断を下すことができませんでした。しかし、騒音被害については、大変厳しい政府に対する要求、あるいは最高裁としての見解を述べられた、私はかように実は判決文を読みまして思いました。  今まで地裁、高裁で争ってまいりまして、なかんずく高裁では、この騒音対策についてはいわば受忍の限度であるということで、公共性というものと受忍の限度とをはかりにかけまして、それは公共性が優先する、やはりこの場合には国家目的と言っていいのでしょうが、国家目的が優先するから、その騒音はそこに住む住民が受忍の限度として受け入れるべきものである、こういう判決でございました。しかし、今度の最高裁は、公共性といえどもその受忍の限度というものは、仮に高度の公共性があるとしても特別扱いをするものではない、いわば騒音という被害と住民の生活権とを同位置に置いて判断を下した、かように私は思うのであります。  それで、私は、今まで何度か防衛施設庁を通しまして基地問題の政府側の対応を迫ってまいりましたが、ことごとく、住民の人々が言うのは、施設庁へ行きましてもあるいは外務省に参りましてもそうですが、今私の同僚からも質問がありまして大臣が答弁をされておりましたように、住民の了解なしには、ないしは、住民がそのことを理解して、そういう言葉がしばしば返ってくるのです。ところが、現実に起きておる状況に対してのさてその措置はとこう見てまいりますと、その被害に対する措置は、住民の、大臣のおっしゃったと同じような位置で物をとらえるのではなくして、むしろ高裁が第二審判決で下したような、いわばそれは高度の公共性に対する受忍を認めなければならない、したがってその受忍の限度、限界いっぱいいっぱいで周辺整備を行う、そういう態度が今まで現実の施策としてはとられてきたのではないでしょうか。  さて、今度の最高裁の判決は、これを一歩踏み込みまして、たとえ高度な公共性があろうとも、それは住民の生活権と人権という立場から見て措置がされなければならない、横田については、その違法性まで指摘をしたわけであります。  どうでしょうか、この判決を受けて、政府側は、従来の施策に対する基本的なスタンスの問題として変更を求められているというように私は思いますが、見解をお聞きをしたいと思います。
  303. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、横田と厚木につきまして判決が出たわけでございます。特に、横田につきましては、これは最終判決でございまして、過去の損害賠償については支払いをするということでございますので、これは我々、判決の趣旨に従って適切に対処してまいりたいと思っております。  それで、厚木を含めまして全国いろいろな基地で今騒音訴訟等が行われておりますけれども、それぞれ基地には基地の特性がございますので、やはりその基地ごとの判断を仰がなければいけないのではないだろうかと私ども考えておりまして、司法の最高の機関である最高裁の判断が出れば、それに従って適切に対処していくというのが我々の態度でございます。
  304. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 厚木基地に限って申し上げますと、施設庁長官、従来の、厚木基地から出る騒音を初め被害に対して、二審の高裁では、それは受忍の限度内であると言ったわけですね。受忍の限度内であるということを最高裁は否定をしまして、高度な公共性といえどもそれは措置を講じなければならない、一言で言えばそういう判決内容ですね。したがって、基地被害というものに対しては、従来とってきたスタンスとしては当然変えるということがなければならないと私は思うのですが、その点はどうですか。
  305. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 厚木につきましては、最高裁では二審の判決とは違いまして、過去の損害分については二審の判断を覆しまして、これをもう一度高等裁判所に差し戻すという手続をとったわけでございます。したがいまして、もう一度高等裁判所でこれは議論をしていただく性質のものであろう、かように我々は考えております。  しかし、一方において、我々が厚木周辺の騒音対策についてより一層力を入れていかなければいけないということは、あの判決全体を見ても我々よくわかりますので、従前からも申しておりますような硫黄島の活用だとかあるいは住宅防音の建設の推進だとか、そういうようなことをもって周辺住民の皆様方の御迷惑を少しでも和らげるように一層努力をしていかなければならない、かように考えております。
  306. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 二審では、御案内のように、過去の被害についての損害賠償は認めなかったわけですね。今度の場合には、その損害はあるのですよという含みを持ちながら差し戻しをしたわけですね。一層これからは基地周辺対策整備に対しては力を注がなければならないという、一層というところが問題なんですね。まさにそれは、基地被害が住民生活に及ぼすさまざまな条件を排除しなければならないよという最高裁の見解があるから差し戻しをするという状況になったわけですから、一層というところを、本当の意味で最高裁の、国の最高判決ですから、その趣旨を生かすというところに核心が置かれる施策がこれから展開されなければいけないと私は思うのですね。どうでしょう、今厚木で行われている騒音対策のための防音工事あるいは夜間訓練の問題、さらには硫黄島への訓練の移転の問題、一層重視をしなければならないという立場から見て、具体的にどういう措置をこれからとられようとしていますか。
  307. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 まず硫黄島の問題でございますけれども、御案内のように、平成年度末にはあそこの施設が全部でき上がりますのでありますから、来年度からはあの施設をフルに使ってNLPをやってもらえる状況に相なるわけでございますので、私は、厚木の騒音はそれだけ減少をしていくというふうに考えております。  それから、住宅防音につきましては、これは先ほども答弁申し上げましたけれども、全予算の四割に近い予算を厚木に投じまして、今鋭意住宅防音を重点的に続けております。こうした努力と、こういうものは引き続き重視していかなければいけないものだと考えております。
  308. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 現在行っているNLPの夜間訓練時間などについての、例えば時間制限などということについて日米間で交渉される、ないしは実施計画に対する何らかの日本政府側からの要求といいましょうか、あるいは要請をされる意思はありますか。
  309. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 ただいまの時点で申し上げますれば、残念ながら硫黄島の施設はまだ半分しか使えない状況でございます。四百人のところが二百人、二十五機行くところが十数機しか行けない状況でございます。これがフルに使われるようになったときにどういう運用形態が考えられるのか、これは施設が完成いたしまして、米軍とも十分調整をして対処をしていくべき性格のものだと思います。施設が完成いたしますれば、何らかの形で、目に見えた形で厚木の周辺の住民の方々に、騒音が減ったなというようなことが言えるような施策がとれればいいなと思いつつ今進めておるところでございます。
  310. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 横田の判決で、このNLPの訓練は極めて違法性の強いものだという指摘がございました。住居専用地域で七十五以上のWECPNL、同時にその他の地域では八十以上のWECPNL、この騒音状態が違法性があるという指摘だろうと私は思います。  そこで、この違法性の解除という問題については、これから日本政府は本格的に考えなければいかぬと思うのですね。今アメリカで騒音問題に対する訴訟が行われております。騒音だけではございませんが、基地全般に対するNEPAの訴訟が行われております。そこで、アメリカは、日本で行っている訓練は決して指摘されるような状況ではございません、これはアメリカ側の主張ですが、アメリカ側は日本の環境基準を守って日本で訓練を行い、それが日米地位協定なり日米安保条約に基づいて行っているのであるから、指摘をされるような違法性を持った日本での米軍の行動は行われておりませんというのが答弁になっています。  その中に、例えばアメリカ大統領命令一二○八八号では、「「受け入れ国で一般的に適用可能とされている環境汚染管理基準を」遵守するよう要求するものである。」すなわち、国防総省も含めた行政機関が、現地の米軍のさまざまな基地使用に対しては受け入れ国の環境基準、そういうものを遵守する、そういう立場をとるという指示を出しています。こういう内容であります。  同時に今度は、合衆国海軍行動指令では、外国基地における米海軍の行動に対しては、「受け入れ国によって海軍の使用に供せられた施設、そして海軍がその運営に責任を負っている施設。海軍は、総合的適否を決める受け入れ国の環境基準ないし裁判権を守る最善の管理運営の実行を遵守する。」いわば、受け入れ国に合った環境基準の中で米軍は行動するように、大統領命令でも海軍の指示でもちゃんとそう行っていますというのが、この法廷における答弁なんです。  さて、最高裁が、この基地周辺には極めて違法性がある、こう指摘をしたということになりますと、今の違法性を脱出する状況というものをつくりあげなければ、米軍が日本の環境基準に合ったことを遵守していますということが成り立たなくなるのですね。先ほど施設庁長官は、この判決を受けて、一層遵守をする、こうおっしゃいました。遵守をするということは、結局日本における環境基準であるとか、あるいはさまざまな日本の国内法に基づくその条件を、アメリカがクリアできるような条件として整備をしなきゃならぬわけですね。どうでしょう。今の状況の中で、最高裁が指摘をしているように、日本の違法性が脱出できる状況というものが、先ほどの防音施設にいたしましても、あるいはこれから同じ周辺整備にいたしましても、それで可能になるでしょうか。  私は、先ほども紹介させていただきましたように、昭和四十二年から本件にかかわっています。ずっとやってまいりまして、あれだけ受忍の限度を超えている状況というものを、日本の環境基準に合わせて、いわゆる公共性といえども免れることはできない、免責規定はないということを言っているわけですから。日本の環境基準にもし合わせてやるとするならば、僕は、もはや厚木ではNLPの訓練というのは不可能だ、こう判断をせざるを得ないのです。どうでしょう、防衛施設庁長官。そういう条件整備がこれからの状況の中でできるでしょうか。
  311. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 確かに先生指摘のように、ただいま現在、私どもは、環境庁のつくりました環境基準に沿った防音対策ができていないということは事実でございます。しかし、毎年厳しい財政事情の中ではございますけれども、多額の予算を費やしまして、この状態を一刻も早く改善して環境基準に合うように今努力をしておるところでございます。したがいまして、我々は、今の状況が決していいのだというふうに理解をしているわけではないわけでございまして、そのために最善の努力をさせていただいている、このように御理解を賜りたいと思います。
  312. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 私は、その努力は認めないわけではないのです。ただ、先ほども言いましたように、違法性を脱却するまでの状況は、都市においてはできない、都市の周辺における基地の中では、NLPという訓練は、それを脱出することはできない。  一方で、これは防衛庁長官、考えていただきたいのですが、基地の使用という問題は、周辺住民が歓迎することはございませんけれども、やはり一定の理解がなければ基地機能というものが充足されることはないと私は思うんですね。厚木基地を周辺にいたしまして、大体人口はどうでしょうか、円周を広くとれば別ですが、ざっと六十万から七十万の人口、それぞれの人々が、もはや厚木という人口密集地帯では基地としての機能はまさに住民の反感の中にしか存在をしない。言うならば、基地機能そのものが喪失をしている、こう見るべきだと僕は思うのです。  それから、今防衛施設庁長官がおっしゃったように、我々は、日本の環境基準をできる限りマスターできるように今努力をしております、その努力は、私は認めないわけじゃない。しかし、その努力をしてもできないという限界が、あの騒音とあの人口密集地帯ではもうできないのではないか。となれば、これはもう硫黄島への移転しかないんですよ。全面的な移転しかないのです。ですから、硫黄島への移転という問題を本格的にこの時期に考えていくという姿勢にならなければいけないと思うのですね。  外務省、きょうおいでいただきました。どうでしょう。今の最高裁のそういうことを受けまして、アメリカ側がアメリカの軍に指示している大統領令なり、あるいは海軍指令なりのことは、日本の状況の中ではもはやクリアできないのです、そういう観点に立って、日米間の新たな交渉をこの問題について展開をすべきだと私は思うのです。たしか昭和四十八年だと思いますが、騒音問題に対して日米合同委員会で審議した以外、今日まで騒音問題に対する日米間の合同委員会での話し合いはなかったというふうに私は伺っておりますが、いかがでしょうか。
  313. 加藤良三

    加藤説明員 外務省といたしましても、米側とは常々合同委員会の場を含め密接な関係を保っているつもりでございます。そうした文脈の中で、基地問題については幅広い意見交換その他を行っているというわけでございます。  外務省といたしましても、今後とも日米安保条約の円滑な運用が図られることを一方で確保しつつ、その周辺の皆様に与える影響をできる限り少なくするよう、引き続き努力をしていきたいというふうに考えております。  先ほども防衛施設庁からの御答弁にございましたように、本土の各米軍施設、区域の夜間着艦訓練というのを減らすように代替施設としての硫黄島の施設整備を行っていることは、先生指摘のとおりでございますが、同施設は本年度中に完成することとなっております。そういう全体の中でこの問題を考えてまいりたいと思います。  いずれにいたしましても、外務省といたしまして、繰り返しになりますけれども、騒音とか地元に与える影響を少しでも少なくすることについて、さらに米側に働きかけていきたいと考えております。
  314. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 もっと直接的な答弁をいただきたいと思うのですが、最高裁の今度の判決を受けて、日米合同委員会で騒音問題をこの際、日本側から提起をして、例えば飛行訓練時間の問題、あるいは硫黄島への移転の問題などを含めて協議をされるという意思はありますか。予定があるというのじゃないですよ、意思がありますか。
  315. 加藤良三

    加藤説明員 私ども外務省としても、日米安保条約の運用に責任を持っているわけでございます。そういう枠組みの中で、合同委員会の場を含めまして、米側との間で、ただいま先生指摘の問題も含めて、そういう広範な意見の交換を行っていく意思は当然ございます。
  316. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 私の答弁を受けて、日米間で協議をする、あるいはそういう問題意識を持って協議をするというお話ですから、そこにぜひ私は期待をいたしたい、かように思います。  防衛庁長官、今度、自衛隊機の差しとめ問題については、これは民事訴訟ではない、これは防衛庁長官の運用上の問題であるから、いわば行政訴訟で争われるべきであり、またそういう判決を受けて、行政が、本来、行政の権限としてこの判決の上に立って自衛隊機のこの運用について考慮されるべきものであって、民事訴訟で争うべきものではないということで、実は差しとめ命令については民事訴訟で争えないという結論を出したのですね。防衛庁長官に、別にこれは質問を通告していなかったので申しわけないのですが、これもやはり最高裁の判決を受けて、自衛隊機の運航についても、私はこの際、再考慮されるべき状況にあるのではないか、かように思いますが、いかがでしょうか。
  317. 中山利生

    ○中山国務大臣 防衛問題については、もう長い間の御経験がありますし、先ほどお話がありましたように、防衛というものはやはり国民の皆さん、基地については基地周辺の皆さんの御理解と御協力がなければ全うできないということはそのとおりでございます。  また、NLPにつきましても、硫黄島にああいう施設をつくりましたのは、何とかして、できれば一〇〇%硫黄島でやっていただきたいというこちらの願いがああいうことになったわけでありますけれども、最高裁でも踏み込めないような日米安保体制というものもありまして、相手、アメリカというものがあるわけでありますから、なかなか思うに任せないというのが実情であります。  来年度になりますと、完全にまた硫黄島の施設も完成するわけでありますから、なお一層、硫黄島での訓練回数をふやしていただきたいという努力をして、先ほど施設庁長官から御答弁申し上げましたが、そのような努力を続けていく、また基地周辺の防音対策、周辺整備対策等についても、今の先生のお話の一つの基準をなお一層強化をするといいますか、今までできないところもたくさんあるわけでありますが、その完成をまず目指して、なお一層努力をしていきたいと思っております。  また、同じような意味で、自衛隊の飛行機の運用につきましても、首都圏の防衛あるいは訓練そのものに支障のない限り、地域住民のことを考えた運営をこれからも心がけていきたい、こういうように考えております。
  318. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 硫黄島への移転という問題、私どもは、インデペンデンスから直結して硫黄島でやるように、そのために、前の質問者がいろいろ質問しておりましたが、例えば硫黄島の整備、米軍家族の住宅の整備まで含めてどうするかという問題がこれからも残ってくると思います。飛行距離が長いという問題もこれはあるでしょう、訓練施設までですね。しかし、それは必ずしも解決できない問題ではないと私は思います。  時間が参りましたので、最後に一問だけ聞きますが、どうでしょう、最初、三沢でやり、それから岩国でやり、今厚木でやり、横田でやり、さらに今度は硫黄島、全体をひっくるめて日本におけるNLPの訓練機能というものは多くなっているのじゃないですか。私は、国際的にもアメリカだけだろうと思うのですね、外国基地でNLP訓練をやっているのは。ほかの国は、自国でやることはあるでしょうけれども、よその国でやっていることはない。日本においては、フィリピンの基地がああいう状況になって日本に移転をする、韓国の状況も日本に移転するなど考えてまいりますと、全体を通して日本におけるNLP訓練は多くなって、硫黄島が厚木の代替地ではない、むしろ厚木と硫黄島と一緒にやるというような状況がこれからも懸念をされるわけです。そういう意味では、米軍の訓練というものが、硫黄島なら硫黄島に移ることによって厚木が軽減されるということがなければ何ら意味がないのですね。この点だけについて、今、現状どうなっているのか、それから、これからもそういう状況は、いわゆる訓練機能として、日本のさまざまな基地が縮小される、訓練そのものが縮小されるという方向があってもふえることはない、そういう方針をとるべきだ、こういうように思いますが、いかがでしょうか。
  319. 谷津義男

    ○谷津主査代理 藤井防衛施設庁長官、時間が来ておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。
  320. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 NLP全体がふえているのか減っているのかという御質問でございますが、これは空母の行動に起因をしておりまして、空母の出入港が非常に多い年はふえますし、少ない年、例えば湾岸戦争なんかが行われていたとき、これは非常に減っておるということでございますので、一概に申すことは非常に難しいと思います。しかし、横須賀におります空母は一隻でございますから、NLPが非常に近年ふえているというようなことはないのではないだろうかというふうに考えております。
  321. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 終わります。ありがとうございました。
  322. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて加藤万吉君の質疑は終了いたしました。  次に、小沢和秋君。
  323. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 本日は、私の地元、福岡県芦屋町の航空自衛隊芦屋基地へのペトリオット配備と、飛行訓練により生じている騒音被害対策についてお尋ねをいたします。  まず、西部航空方面隊第二高射群第五、第六高射隊に現在配備されているナイキJにかわって、近くペトリオットが配備されると聞いております。これは全国的な切りかえの一環だといいますが、全体としてどういう計画になっており、現在どこまで進んでいるのか、芦屋への配備はいつ行われるのか、この切りかえのため、全部で幾らの予算が投入されたか、ごく簡潔にお答えください。
  324. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 ナイキJの後継といたしまして、昭和六十年度以降にペトリオットの整備を進めてきておりまして、既に予算的な手当てといたしましては、六個全体の高射群の手当てが終わっております。しかしながら、これは四年かかってつくられる、調達されるという、四年間の国庫債務負担行為で調達するものですから、実際に調達されておって、その部隊配備が換装を実際に行われておりますのは、六個のうちの三個でございまして、残りの三個につきましては、ただいま御指摘の第二高射群も含めまして、残り三個についてこれから逐次換装がされていくということでございます。それで、この第二高射群につきまして、平成年度に換装がなされるという予定になっております。  それから、予算につきましては、ちょっと経理局長の方から。
  325. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 ペトリオットの六個高射群の主要機材の調達につきましては、年によって若干のばらつきがございますけれども、おおよそ一千億前後の予算を組んでおるところでございます。合計いたしますと、今までおよそ五千八百億円と、単純に足したものでございますが、そのようなことになるわけでございます。
  326. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 今五千八百億円というお話でありましたが、それだけの膨大な予算をかけてナイキJからペトリオットに切りかえる理由は何かということをお尋ねします。  湾岸戦争でペトリオットがイラクのスカッドミサイルを撃破して有名になりましたが、ミサイルの侵入を阻止することがペトリオットへの切りかえの最大の理由がと思いますが、そう理解してよろしいでしょうか。
  327. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 これは、諸外国におきます航空機の性能が非常に向上をいたしておりまして、また搭載兵器の性能向上等もございまして、こういうことから多種多様な航空侵攻態様が出てまいっておる。これまでのナイキですとこれらに対応ができないということと、それからナイキの補給整備上の観点から、これは老朽化しておりますので、補給整備上の観点からも問題が生じておるということから、新たなペトリオットに換装する必要性が出てきたということでございます。  それから、後段に御指摘がございました湾岸戦争のときのスカッドミサイル対処能力というようなことで、ミサイル対処能力が主眼かという点でございますけれども、現在換装を進めておりますペトリオットにつきましては、ミサイル対処能力はかなり限定的なものでございます。そこで、平成年度からさらにこれを能力向上を図りまして、換装されたペトリオットをさらに能力向上型にかえていこうという事業を別途これは行っていくという予定にしておるところでございます。
  328. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 私の素人なりの理解では、これまでのホークとかナイキ、これはそれなりに飛行機の侵入であれば対応できるでしょうけれども、決定的にはミサイルの場合は全く無力だ。だから私、それが一番の理由がというふうにお尋ねをしたのです。  続いてお伺いしますが、湾岸戦争で非常に何かペトリオットがミサイルに対して威力があるように喧伝されているけれども、日本の場合で考えてみると、これは実際には非常に対応困難ではないかというふうに私は見ますが、いかがですか。
  329. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 ただいまも御答弁申し上げましたとおり、現在、先ほど申し上げた昭和六十年度から予算手当てをいたしまして換装を進めております在来型のペトリオットにつきましては、これはそのミサイル対処能力は限定的なものでございます。といいますのは、スカッドミサイルみたいなものは非常に高い入射角で入ってまいりますものですから、そういうものに対する能力というのはある程度限定されておるということでございます。ただし、先ほど申し上げましたように、そういうことに対応できるようにということで、別途、ペトリオットの換装とは別に、さらに平成年度から能力向上型のものに改善をしていこうということをあわせ行っているということでございます。そうして、その場合にはスカッドミサイル等に対しての対応能力が増大するということでございます。
  330. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 私が調べましたところでは、湾岸戦争当時、アメリカはイラク軍がスカッドを発射すると同時にインド洋上の早期警戒衛星で追跡を開始し、約五分でどこをねらって飛んでいるかを確認し、直ちにパトリオットの発射を指示したというふうに聞いております。それでもスカッドの弾頭が飛んでくるまでに二分しか余裕がなかったというのですが、日本ではそういうバックアップの体制がない。だからこれだけを導入しても非常に能力としては限定されたものにならざるを得ないのではないかというふうにお尋ねをしたわけです。いかがですか。
  331. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 その点につきましては、まさに御指摘のとおり、湾岸戦争のときにアメリカ等が運用しましたそのバックアップ体制があるなしによりまして限定的な能力であるという点については、そのとおりであろうと思います。
  332. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 今、軍事技術上の問題点を指摘したわけでありますけれども、私は何よりも申し上げたいのは、そもそもペトリオットを配備しても、日本に対しどこかから近い将来航空機が侵入してきたり、あるいはミサイルが撃ち込まれたりするような情勢なのかどうかということであります。私は、ソ連の崩壊によって、日本の近隣諸国に日本を攻撃する能力を持つ国はないと思うのですが、いかがですか。
  333. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 このペトリオットのみならず我が国の防衛力整備は、従来から申し上げておりますように、特定の国を想定して、それに対する具体的な対応として整備するというよりは、我が国として、独立国として必要最小限のものを、しかも諸外国の軍事技術水準に合ったものを整備していこう、そしてすべてのそういうものを備えたことによって力の空白とならずに、そしてこの地域の安定をもたらそうということでございまして、特定の脅威といいましょうか、そういった可能性を前提として整備しているというものではございません。
  334. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 ここで大臣にお尋ねをいたしたいと思うのですが、今自衛隊にとって必要なことは、ソ連の崩壊によって国際情勢が決定的に変わったことを直視し、中期防衛力整備計画を根本的に見直すことでないかと思います。確かに防衛庁もこの大きな情勢の変化を無視できず、最近整備計画の若干の見直しを行ったことは承知しておりますけれども、根幹の部分はほとんどそのままであります。ペトリオット配備のような根本的な、根幹にかかわるような問題についてまでメスを入れる必要があるのではないかと思いますが、どうお考えでしょうか。
  335. 中山利生

    ○中山国務大臣 お話にありましたような国際情勢が大きな変化をしたということはそのとおりでございまして、我々としてもそういう情勢の変化に常に対応をしていく、防衛というのは相手のあることでもありますから、周辺の状況あるいは科学技術の発達を常に見据えながら対応をしていかなくてはならないということは、そのとおりだと思います。  しかし、東西の超大国の対立といったような、世界を巻き込むような大きな危険というものは確かに遠のいたと思うわけでありますが、まだまだ我が国の周辺、アジア・太平洋地域におきましてはこれからちょっと予想ができないような情勢にある。また、国際関係、国と国との関係も非常に複雑なものを持っているということもありまし て、中期防におきましても、中期防の期間中に防衛計画の大綱を含めた防衛政策の見直しをするということになっておりますので、その期間に、これからの変化、防衛政策という大きなものを変えていくためには、ある程度中期的、長期的な視野を持った政策を立てていかなくてはいけないと思っておりますし、防衛というのは一朝一夕でで きるものではありません。装備につきましても、また隊員の精度につきましても、これはやはり長期間かけていろいろな事態に対応していくということが必要であろうと思っておりますが、今までの体制にあくまでも固執していくということではなくて、お話にありましたような情勢の変化に対応しながら効果的な防衛を果たしていく、そういう体制をこれからどうしたらいいのかということを御相談をしながら打ち立てていきたいと思って おります。
  336. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 今の大臣のお話では、予想できないような複雑さがアジアの情勢の中にはある、だから中長期的に考えていかなければならないというお話なんですが、私もいろいろな複雑さがあることは認めますけれども、中長期的に考えてみて、日本に対してミサイル攻撃をしかけてきたりあるいは航空機で攻撃をしかけてきたり、さ らに領土を侵略しようというような野心を持つ国があるというふうには私は考えられません。そういう立場から、もっともっと抜本的な見直しが必要である。このペトリオットのような兵器の配備は、私は、必要がないのではないかというふうに考えざるを得ないし、その点で抜本的な見直しを、芦屋基地にこういうようなものを配備するこ との中止も含めて考えていただきたいということを強く申し上げておきたいと思うのです。時間もありませんので、次の質問に移りたいと思うのです。  次は、芦屋基地に配属されております第十三飛行教育団の飛行訓練等の問題であります。  この飛行教育団は、ジェット機のパイロットを養成する一番最初の教育機関だと聞いておりますが、パイロットの卵は何人で、年間一人何時間、どのような飛行訓練を受けるのか、お尋ねをいたします。
  337. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えいたします。  芦屋基地は、今先生質問のとおりの基地でございまして、現在、年間五回ほどのコースを設けておりまして、約百名前後の学生の教育を行っておるところでございます。現在、在隊しております学生は六十七名でございます。それから、一期当たりの期間といいますか、教育の期間が二十九週間ということで、一人当たりの飛行時間という のは大体八十時間程度でございます。
  338. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 北九州市が毎年行っております芦屋基地の航空機騒音測定結果、ここに持ってきておりますけれども、これを見ますと、一日平均機数が平成年度に大きくふえております用地点番号一で申しますと、平成年度が十七・五機であったものが、平成年度には三十七・九機と倍以上にふえている。ですから、お尋ねをしたいのですけれども、最近、訓練の時間や回数が大幅にふえているのではありませんか。
  339. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えいたします。  今の先生の御質問でございますが、私どもの飛行訓練を調査いたしますと、従来から月平均約十二日ぐらい行っております。月間の着陸回数というのは、現在、約二千五百回程度でございまして、特に最近、御指摘のように、急激に回数がふえたとか減ったとかそういうふうな事実はないと承知しております。
  340. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 この調査結果というのは、市の職員が一カ所二週間ずつつきっきりで調査をした数字だから、私は、非常に信憑性があると思ってお尋ねをしたのですけれども、今のような回答ならば、これはそれで、先へ進みたいと思います。  訓練は、日曜、祭日を除いて連日のように夜八時過ぎまで行われていると聞いておりますけれども、地域住民にとってはその騒音が耐えがたい苦痛であり、せめて家族団らんの時間となる夕方からはやめてほしいというのが切実な声でありますけれども、いかがでしょうか。
  341. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 今の御質問でございますが、私ども手元といいますか、調査しました限りでは、土日は、もちろん平成年度以降は一切飛んでおりません。なお、夜間の飛行でございますが、これは月平均でございますが、二回しか行っておらないということで、連日連夜というようなことはちょっと承知しておりません。またなお、 この夜間飛行でございますが、私どもの航空自衛隊のパイロットにとっては必須の科目でございますので、月二回程度の訓練飛行については、何とぞ御理解をいただきたいということで、地元にもかねがねお願いしておるところでございます。  以上でございます。
  342. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 今のお話では、土曜日は最近は全く飛んでいないというお話だったようですが、私は、日曜、祭日以外は飛んでいるというふうに聞いておるのですけれども、その点間違いないかどうか、そして、土曜日は飛んでいないというぐらいであれば、土曜の夜ももちろんもう全くないというふうに理解していますけれども、その 点もう一遍確認しておきたいと思います。
  343. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 平成年度から、私ども国家公務員、土曜日も休日ということになりましたので、平成年度以降は土曜、日曜は一切飛んでおりません。  以上でございます。
  344. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 その点はよくわかりました。  未熟なパイロットが初めてジェット機に乗るということは、かなりの危険を伴うことだと思うのです。実際、これまでに七回墜落事故が起こっており、乗員九名が死亡、市民も九名がけがをしております。どのような安全対策を講じられておるでしょうか。
  345. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 過去の事故、先生今御指摘のように、三十八年以降七回ほど大事故が起きております。  それで、その都度事故の態様というのは変わっておりますので、最近の事例をちょっと申し上げますと、平成二年が一番最近の事故でございまして、平成二年の四月に、これは事故自体は(小沢(和)分科員「事故の内容はいいから安全対策のことを」と呼ぶ)安全対策につきましては、もちろん私ども万全の措置ということで、事故が起きました際には、まず徹底的な原因究明を行います。原因究明を行った結果、ある程度原因が判明いたします。そうすると、例えば機材等についての改善の必要があれば当然機材の改善、あるいは運用上の取り扱いとか、そういう点いろいろ、事故のそれぞれの態様に応じて、二度とそういう事故がないような対策を講じておるつもりでございまして、個々にそれぞれケース・バイ・ケースといいますか、対策は変わってまいります。特に御指摘がございましたら細部について御説明いたしますが、時間の関係で、もしこれでよろしゅうございましたら……。
  346. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 次に、飛行訓練のコースの問題でありますけれども、現在の訓練コースは、住宅密集地区の上空に設けられております。これは非常に危険なことではないでしょうか。かつて、訓練を開始したころは、この地域は人家もさして多くなかったのですが、その後急激に宅地化が進み、今は北九州有数の住宅密集地区となり、今もふえ続けております。こういう状況の大きな変化を考えれば、早急に訓練基地を移すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  347. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 芦屋基地は、先生承知のように海に面しておりまして、私ども、飛行訓練は、努めてといいますか主として、洋上のN空域という空域がございまして、こちらの方で主たる訓練は行うというのが通常でございます。市街地上空における飛行というのは必要最小限に限っておりまして、当然離着陸をする必要がございますので、風向きによっては市街地上空を一部がすめて着陸するようなこともございますが、努めて市街地にはかからないように、かねがね部隊の方には指導しておるところでございます。したがいまして、市街地の上を訓練空域にして訓練をしておる、そういうことは全くございません。  ただ、場周経路というのが設けられておりまして、着陸の際に順番待ちといいますか、そういう経路でございますが、そういうところが一都市街地の、具体的に申し上げますと、折尾の西端といいますか、その付近をかすめて着陸するようなことがございますが、この際にも、飛行する場合には細心の注意を払って訓練をしておるということでございますので、ぜひとも御理解をいただきたいということでございます。
  348. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 局長のお話を伺っていると、非常に注意をしておるようなお話ですけれども、例えばタッチ・アンド・ゴーなどの訓練などということになると、ぐるぐるぐるぐるまさに市街地上空を旋回するような形になるのですよ。その点は一言指摘をしておきたいと思います。  今騒音対策として住宅への防音工事やNHK放送受信料補助などが行われておりますが、防音工事は対象戸数何月に対して何月まで工事が行われたか、予算はどれほど使ったか、公共施設ではどうなったか、今後の工事計画はどうなっているか、あわせてお尋ねをいたします。
  349. 江間清二

    ○江間政府委員 お答え申し上げます。  芦屋飛行場周辺におきます住宅防音工事でございますけれども、対象戸数が、希望世帯で申しますと約五千二百戸ほどの世帯がございます。私ども住防工事を実施します場合には、人数に応じてでありますけれども、まず一、二室をやりまして、その後進捗に応じて追加工事というような段取りで進めさせていただいているわけでありますが、芦屋基地におきます。そのうちの新規工事につきましては、五千二百世帯を四年度まででやる段取りになっておりまして、その意味ではこれまで希望されている世帯に対してはおおむね一〇〇%完了するという状況でございます。金目の面では、これまで四年度まで含めまして約六十六億円を実施する見込みになっております。それから、追加工事については、その他希望世帯に対して、そのうち四年度までの実施状況は七百四十世帯ということで、これが約二十三億円、これまで四年度含めた見込みも含めまして二十二億円を使用するという状況でございます。  それからもう一つの公共施設というお尋ねであったと思いますけれども、これは住宅防音ということではなくて、御趣旨は学校等の防音ということだろうと思いますけれども、芦屋基地周辺におきましては、昭和三十九年度から三年度までの実績で見てみますと、学校等の防音工事ということで三十五件、総額約六十五億二千三百万円という状態になっております。  なお、今後はどうかということでございますけれども、学校あるいは病院等の防音工事につきましては、騒音の状況等を踏まえ、今後とも地元の要望に沿って引き続き努力をしてまいりたいというふうにまず考えております。それから、住宅防音につきましては、ただいま申し上げた数字からも御理解をいただけると思いますけれども、今後は追加工事の促進に努力してまいる所存ております。
  350. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 今、これらの工事対象区域、いわゆる第一種区域から外されている地域の人々から区域拡大の強い要望が出されております。私の手元にも八幡西区折尾地区自治区会連合会からの、対象区域を七十Wまで拡大してほしいとの陳情書が寄せられております。先ほど触れました北九州市当局が毎年行っている騒音測定の結果を見ても、すれすれで七十五Wに足りないところが何カ所かあります。これらの地域の人々もほとんど同じ騒音の苦痛を毎日受けていることを考え、この際対象区域を拡大すべきではないか。考えをお尋ねします。
  351. 江間清二

    ○江間政府委員 区域の拡大でございますけれども、ちょっと御趣旨は二点の種類に分けられるのではないかとまず理解をいたします。  まず、その一つは、現在引いておりますコンターの外辺部といいますか、そういうところにも被害を受けているところがあるではないかという御趣旨の点がまずあろうかと思います。これにつきましては、私どもは、そういうコンターを設定する際には、飛行場周辺の騒音の実態というものを保詳細に調査をしました上で設定をし、現実には、机上で落とすわけではございませんものですから、そのコンターに沿って河川でありますとかあるいは道路でありますとか、そういうような区域でそのコンターに沿って設定をするというような形で実施をしてきておるところであります。したがいまして、それをさらに区域的に拡大をするというようなことにつきましては、現在私どもも騒音の実情というようなことについては把握をしておりますけれども、特段の態様変更もございませんことから、区域の見直し拡大をするということは考えておりません。  それから、御趣旨の中にはもう一点、区域の拡大とおっしゃいます意味は、例えば七十五をさらに七十にしろという御趣旨がとも思いますが、その点につきましては、私どもは、先ほども申し上げましたように、対象世帯というものが非常に多うございますものですから、まずその区域に対する住宅防音の促進ということが先決であるというふうに考えているところでございます。
  352. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 時間が来ましたので、あと一言だけでおしまいにしたいと思うのですが、二月の末に横田、厚木の基地騒音についての最高裁判決が出されました。その中で、過去の騒音被害に対する損害賠償を認めております。こういう判決が出た以上、国としては、原告だけでなく、芦屋なども含め、全国の同じような条件下にある基地騒音被害者に対し損害賠償を行わなければならなくなったのではないかと思いますが、この点いかがでしょうか。これで終わります。
  353. 谷津義男

    ○谷津主査代理 藤井防衛施設庁長官。  時間が来ておりますので、簡潔に御答弁をお願いします。
  354. 藤井一夫

    藤井(一)政府委員 確かにそういう判決が横田について出たわけでございますけれども、騒音につきましては、その基地の置かれた場所あるいは機種、騒音の程度等によって区々、いろいろと違っておりますので、やはり一つの基地について結論が出たからといって直ちにすべてにわたって同じことをするというわけにはまいらない、かように考えております。
  355. 小沢和秋

    小沢(和)分科員 終わります。
  356. 谷津義男

    ○谷津主査代理 これにて小沢和秋君の質疑は終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  357. 塚本三郎

    塚本分科員 時間が少のうございますから、簡潔に答えていただきたいと思います。  私は、正月の二日からカンボジアに参りまして、自衛隊の諸君の活動状況等を視察及び激励に参りました。そこで、二つばかり気のついた点を御質問し、対処していただきたいと思います。  といいますのは、私は自衛隊の諸君と一晩ですけれども一緒にあの駐屯地で寝泊まりし、朝暗いうちから起床ラッパで起こされまして、そして諸君と行動を一日ですけれども、ともにいたしました。実は、夜、激励をした後ですけれども、同道いたしました党員で防大出身の党員と参議院の森田健作君、彼も一緒に参りまして、私が帰った後でなお隊員の幹部の諸君と夜中まで缶ビールを飲みながら懇談をしたとき、私には遠慮して言わなかったのですが、実は国会質問においても、派遣された諸君に対しては手厚くもてなす、手当てをすると宮下防衛庁長官もおっしゃり、そして我が党の代表も、たしか大蔵大臣橋本さんでしたか、防衛関連費が足りなければ予備費を使ってでもとまで、法案成立については御答弁いただきました。  ところが、現地に行きますると、実はその手当が作業の日だけしかついていない。お休みとかあるいは体の調子が悪くて仕事、作業しないときは手当ができていない。これはもちろんお金の問題もありますけれども、私が行きました冬の真っ最中でも三十五度でした。そして、自由にお休みでも町へ歩くというわけにいきません。自宅から通うのと違うのです。外交官が外国に行きますると、そのときから手当がついておるはずです。なぜ自衛隊だけそんなことになったのかという、やはりお酒を飲みますると若い指導者の諸君が愚痴をこぼすのです。ですから、これはぜひ改めていただきたい。  ここで我が党の和田一仁議員が質問しますと、実は業務に関する手当だというようなことをおっしゃってみえたが、実はそうでなくて、財政当局が極めて厳しいというようなことが問題になっておるようでございます。財政当局は、私は林大蔵大臣にも折衝いたしておりまするが、問題は、その立場に立つ防衛庁と国際平和協力本部がその気になって大蔵省にお願いをするということが第一歩ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  358. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 防衛庁長官からお答えございます前に、私の方から事務的な問題点等についてお答えさせていただきたいと存じます。  塚本先生には、わざわざ現地まで行っていただきまして、隊員の皆さんを激励してくださいまして、大変ありがたく存じております。また、平素から隊員の待遇等につきまして大変温かい御配慮をいただきまして、大変感謝しているところでございます。  この国際平和協力手当につきましては、私どもも法律に基づきまして昨年具体的な金額等を決めましたときに、いろいろ国内の類似の手当でございますとかあるいは国際的な先例等も勉強いたしまして、ああいう条件の厳しいところで難しい業務につくわけでございますので、私どもとしては精いっぱい手厚い手当を考えたつもりでございます。最高一日二万円、四千円刻みで五段階という、御案内のような制度をつくったわけでございます。  国際平和協力法第十六条は、これも御案内のとおりでございますけれども、「国際平和協力業務に従事する者には、国際平和協力業務が行われる派遣先国の勤務環境及び国際平和協力業務の特質にかんがみ、国際平和協力手当を支給することができる。」というふうに定めているわけでございます。(塚本分科員「時間がないから簡単に言ってください」と呼ぶ)したがいまして、この手当は、このように国際平和協力業務に従事したときに支給されるいわば実績給であるという考え方でございまして、そのような理由から休日等の業務を行ってない日には支給しないというふうにしたわけでございます。
  359. 塚本三郎

    塚本分科員 それは、業務で作業していなければ渡しては――ちょっと柳井さん、作業してないときは渡しちゃいけないと書いてあるわけじゃないのですよ。業務とは何だということ。一労働者で時間給と違うのですよ。何言っているんだ、君は。だから、そういうときは手厚くという大臣や大蔵大臣のその御好意を君たちは途中で遮るようなことをやるなよ。だから、業務自身は、向こうへ国を離れて行ったら業務じゃないか。それじゃ外交官の諸君はどうなんだということですよ。みんなそれを一律にカットするだけの度胸はありますか。大臣、いかがでしょう。
  360. 中山利生

    ○中山国務大臣 塚本先生には、私も行きたいのはやまやまなのですがまだ現地に行っておりませんのに、御激励、御慰問を賜りまして、本当にありがとうございました。その生の声として今のお話、本当にありがたく思っております。  私どもも、最初の話と違ったというようなことを隊員の諸君が思わないように、思われないように努力をしていきたいと思いますが、詳しいことは人事局長からお答え申し上げたいと思います。
  361. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 国際平和協力業務手当の性格につきましては、今事務局長の方から答弁がありましたので、今先生の御指摘の、十分な手厚いことをやると大臣が言ったじゃないかという点につきまして、率直に当時国際協力業務手当を政府部内で折衝した者としてお話しさせていただきたいと思います。  防衛庁といたしましても、当然のことながら防衛庁にいろいろあります手当、これは大体勤労に対する手当ということでございまして、そういう手当との均衡、それから御案内の掃海艇の派遣のときに特別にいろいろ手当を設定いたしましたそういう手当との関係、今回しかも国際平和協力業務そのものに着目した手当の設定が、例えば非常に勤務の厳しい、あるいは生活環境の厳しい一番ランクの高い例の二万円というものに始まりまして、我々防衛庁といたしましては、施設部隊が中心になって派遣されるあのランクでございますね、それが二万円の次の一万六千円というランクに設定できたということについては、それなりに我々は努力をして一生懸命やったということで、その点は御理解いただきたいと思います。  なお、その派遣手当と勤労に対する手当の違いにつきましては、私ちょっと正確にそこを申し上げる力がございませんけれども、我々としては、十分これからも職員の処遇につきましては考えてまいりたいと思っております。     〔谷津主査代理退席、主査着席〕
  362. 塚本三郎

    塚本分科員 大臣、やってはいけないとは書いてあるわけじゃない。どこまでが業務かということになれば、向こうじゃ冬だって三十五度、ちょっと暑くなれば四十五度まで行くのでしょう。ですから、体が悪くなって休んだときには、作業をしてないから君たちは手当はないんだみたいなこと。それじゃ、外務省もそういうふうにして全部やっているなら別だよ。この自衛隊だけに限ってこういうことをするということはいけませんぞ。  しかも、手厚くという気持ちを酌んで、やはり国を離れて出かけたら、全部そういうふうな日にちの中に組み入れてあげなきゃ、休みだったら自由にやってもいいぞといって、町に好きに遊びに行って好きなことできますか。それはしていけないことになっているのでしょう。それならば、拘束されているのだから手当の中に入れてみたって、我々国会がやってあげなさいと言うのだから、それはそういうふうに、財政当局にもわざわざ関連費がなければ予備費まで使ってと大蔵大臣が法律を通すときにそうおっしゃっておいて、いざとなったらそんなやり方はいかぬぞ。どうですか。
  363. 中山利生

    ○中山国務大臣 我が国の自衛隊にとっては、本当に初めての、業務の範囲内とはいいながら初めての業務でもありますし、また本当に先生がおっしゃったような劣悪な条件の中で、しかも六カ月間というものを完全に拘束をされた状態で外国へ派遣をされているわけでありますから、もしお話があったようなことがありますとすれば、私ども先生の御趣旨に沿ったような努力をこれからもしていきたいと思っております。
  364. 塚本三郎

    塚本分科員 よろしい。特に、これから交代で行く千歳の諸君は、零下何度の諸君が四十度のところへおいでになるのですから、もう行くだけで大変なことです。ですから、やはり大臣おっしゃったこと、我々も大蔵省に向かってよくお願いをさせていただく。そして、これからも行く人に対して嫌だなという気持ちを与えないようにぜひ一緒になって協力しますから、大蔵当局にも働きかけて、そして我々国会の意思というものをやはり、国の財政がパンクするような大きなことじゃないのでしょう。ですから、そのように気をつけていただきたい。  それから、もう一つ私が感じたことは、実はこの行っております部隊とUNTACとの間において、連絡員が行っておるけれども幕僚が行ってない。意思決定の機関に入ってない。後から行ったということもあります。あるいは私が推量すると、そうなると集団防衛という、いわゆる一部反対する勢力から非難を受けることを警戒なさっておいでになるかもしれない。しかし、意思決定にかかわらないことによって実はどういうことが起こるのか。  私行ってみたら、立派に道路ができておる。ところがアスファルトがまいてない。砂利が積んである。どうしてだと言ったら、アスファルトが来ませんと言うんです。シンガポールから持ってくる。いった、わかりません。こうでしょう。せっかく路盤だけできて、それで完成ができないんですよ。そんなことぐらい行ってどうなっているんだ、それでは日本がその分だけこちらから調達してもいいくらいのつもりで、意思決定に従っておったならば、経済大国として機動的に働くことのできる日本のやり方を自衛隊の中で建言して、そしてUNTACを動かすこともできたのではないか。  それから食事。大変うまくないんです。それは同じだから、仕方がない。これは向こうから支給するんだから。私は、よく行きまして、部隊で一緒に自衛隊の食事をいただく。そのいただくのに、国内の自衛隊の食事よりはるかによくないんです。それはいたし方がない、みんな一緒ですから。  ただ、私が言いたいのは、例えば朝暗いうちに起きてみますると、鉄条網の外に現地の御婦人の方がはたして、そしててんびん棒を担いで前に後ろにキュウリを山ほど積んで歩いているんです。一ドル上げれば全部買えるんです。私のことですから、買ってキュウリもみでもしてみんな一緒に食べようかと言ったら、責任者が先生やめてください、現地で物を買ってはいけません、こうなんですよ。それじゃ、野菜がまともに届いておるのか。UNTACが徴集をして買ってきてくださって、プノンペンからまた半日がかりで届けられるから、野菜は一〇%から二〇%みんな腐っているんですよ。  こんなことは話し合って、現地の物価をつり上げないようなことを考えつつ、新鮮な野菜が手に入るように、これぐらいのことは幕僚が出ておったらきちっと相談できると思うんです。ですから、連絡員で向こうから決まりました、後から行ったんですからだけではいけない。そういう点もやはり、肩書はいかがあろうとも意思決定に従うようなことをお考えになるべきではないかと思うが、いかがでしょう。
  365. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 御指摘のとおり、幕僚として意思決定に関与する、それが情報の交流というような意味で極めて重要であるという点は、まさにおっしゃるとおりだと思います。  しかしながら、まさにお話の中にもございましたように、三月から始まっておりますこのUNTACの活動で、九月に我々は派遣したわけでございまして、その時点で既に定足数がいわば埋まっていたというような状況もこれありまして十分なことはできなかったわけでございますけれども、次善の策としてLOという連絡員を派遣するということで、十分とは言わないまでもかなりの連絡調整、意見の交換ということはそれなりに果たせられていると私どもは考えております。ただ、これが全くパーフェクトだというわけではないという認識ではございます。  それから、野菜についてお話ございましたが、これは実を言いますと、昨年の十二月までは海上自衛隊の補給艦がございまして、これがシンガポールに二週間に一遍ぐらい行っておりまして、その段階ですとかなり新鮮なものが補給できたわけでございますけれども、これが引き揚げた後には、御指摘のとおりUNTACの方から供給されるというような状況になりまして、御指摘の中にありましたようなこともあるやに私どもも伺っておりますので、その辺についても今後十分我々の立場が主張できるような形に、現段階ではLOを通じてということでございますけれども、そういうことを配慮してまいりたいというふうに思います。
  366. 塚本三郎

    塚本分科員 局長、私は向こうから泣き言を言われて申し上げるわけじゃない。自衛隊は一言も愚痴をこぼしてない。しかし私は、こういうむだなことを言うことが、意思決定の中で日本の合理的な経済運営がなされておったならばこれらの問題は相当解決できたであろう。その問題の根本が、いわゆる幕僚を送り込んでいなかったところに意思決定ができないということが、実は問題ではないかということですから、その点を配慮していただいて、そして遠慮なく、後から行ったのですけれども、名前がなくても建言し、あるいは企画の中に入っておいでになるようだから、堂々とそういうことは合理的に運営できるようにしていただくように強く求めておきます。  それから次に、私は昭和五十八年と記憶いたしておりますが、この委員会において中曽根総理及び当時は谷川防衛庁長官に対して建言したことがある。それはいわゆる日米が洋上において合同訓練を行う場合、日本の艦船が油がなくなったらアメリカから借りることができる。ところがアメリカは、いわゆる物品管理法によって、なくなっても日本が貸してあげることができない。だから、わざわざ洋上から横須賀基地まで戻って、そして給油して戻ってくる。こんなばかなことありますかと言われて、私はここで総理及び谷川長官に申し上げて、直ちに改めていただくことができました。塚本委員のおかげでとおっしゃって、当時初めて洋上でもっていわゆる給油のために、長官もおいでになって、私もぜひ見にきてくださいということで、今でも知っています。旗艦「ひえい」から米艦のバジャーです。両方が助け合いしているところを私は洋上で見ました。  うまくいったと喜んでおったのですが、長官、昨年の七月、呉の軍港にイギリスの駆逐艦が入ってきた。台風が接近するから早く出ようということ、しかし途中で油が切れるかもしれないからということで、実は油を貸してくださいと言った。分けてくださいと言った。ただじゃない。ところが、物品管理法によってできませんと断られた。なぜならば、通達では、せっかく総理も長官も御好意でしてくださったけれども、洋上訓練という一項が入っているから港の中における助け合いはできない。恥ずかしいじゃございませんか。腹の中が煮えくり返る思いでイギリスの駆逐艦は帰ったのですよ。幸い事なきを得たけれども、もし不運に台風に遭って、洋上で油がなくて漂流したらいかがしましょうか。  こういうことを考えてみると、やはり日本の国は、特にお役人様に任せておきますとこういう形で、そごのないようにはいいです。だけれども、もっと我々は法律をつくるとき、大臣、長官のおつくりになるそういう規則等についてはよく目をみはっていただいて、彼らはいいことをやるよりも失敗なきを期するという、今の日本官僚のいわゆる欠点というものを私は教えられたような気がするのですよ。だれが考えたっておかしいでしょう。ただでくださいというのじゃないんだから。だからそういうことを思うと、もう少しそれは洋上訓練とわざわざ決めてしまうのですよ。だから港の中においては分けてあげることもできません、こうなんでしょう。  私は、あるマスコミのところでこれをやったら、そんなことを塚本さん言ってくるなら、おれたちがドラム缶持っていって助けに行こうじゃないか、日本のお役人の連中に恥をかかせてでも、ドラム缶持ってでも応援に行こうじゃないか、こんなことをマスコミでは言っておったことがあるのです。だから、こういうことを改めてください。  空だってそうですよ。新田原でもって訓練をしております。米軍機がおりてきて、ガソリン賞してください。だめなんですよ、これ。わかりますか。事故があって、緊急に着陸したものに対しては貸してあげることができる。あらかじめで訓練してなくなったものは貸してあげられないのですよ。長官、御存じないでしょう。  洋上訓練といい今の問題といい、緊急の場合に限ってということであって、いわゆる集団における訓練等はないものだから、業務に関してそういうことはやって、これからの訓練についてはできないということになっているのです。どれだけ制服の諸君が恥ずかしく思っているかわからないんですよ。私たちは、行っては一緒に彼らと寝起きをともにするから、聞こえてくるのです。おわかりでしょうか。ですから、そういうことを目が届いて改めていただく必要があると思うが、いかがでしょう。
  367. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 外国の艦艇等に対します給油につきましては、現在、事務次官通達等によりまして、日米共同訓練におきます洋上給油など、委員御指摘のとおり、一定の要件を満たすものにつきまして必要な措置を講じてきているところでございます。ただ、商業ベースでの調達が可能な場合などにつきましては、国の石油の貸与は行わないという取り扱いをしているところでございます。  委員御指摘の点も踏まえまして、米国その他友好国との協力関係の維持あるいは物品管理上の必要性、こういったものを踏まえまして、何が必要で何ができるかという点について十分に検討してまいりたいと考えております。
  368. 中山利生

    ○中山国務大臣 今局長からお答え申し上げましたように、確かにしゃくし定規といいますか規則に縛られて身動きができない、安全運転というようなところがあろうかと思いますが、その一方にはまたアメリカ以外のところとの協力体制を余り密にすると、集団安保がどうのこうのというような議論につながるおそれもあるというふうなこともあるいは考慮しているのかもわかりませんが、今お話がありましたように、これからお互いに船乗り同士とか軍人同士とかいう関係もありますので、またそういうところも柔軟に、どこまでできるのか研究をしていきたいと思っております。
  369. 塚本三郎

    塚本分科員 船は、総理、防衛庁長官まで改めるとおっしゃったので、洋上訓練の場合はできるようになった。しかし、空の訓練はまだできません。こんなばかな話は漫画みたいです。緊急着陸した場合はできる、訓練ということが実はできないなんというようなことは、これは我々が政治家として恥ずかしいことではないか。  思いやり予算六千億円という気の遠くなるようなお金を貢がせていただいても、実はアメリカやそういう友好国との間におけるお金だけで済む問題ではない。それに伴って、いわゆる規則等も全部見直しをして、我々が国会でこのように建言をし、それで大臣たちもごもっともだと思われてそういうふうになさっておるのだったら、全部そういう法律あるいは規則の整備等が追いついていない、お金だけでひとまずこうやって予算さえ通せばいい、これではだめなんです。  ですから、長官、新しくおなりになったのだから、一度本当にそういう陸海空の防衛部長クラスの諸君と一晩お酒でも飲みながら、私たちはしょっちゅうやっているのです、そうして御意見を聞くと、彼らは腹の底から聞かせてくれる。タケオへ行ったときなどはそういうことができませんでしたから、しかし帰ったときに彼らはそういうことを言っておりますから、その点を心に置いて、陸海空の規則の整備等に今から手をつけて、そして改めていただくということについての決意をお伺いいたします。
  370. 中山利生

    ○中山国務大臣 従来の慣習、法律制度で物事が動いてきていると思いますが、今先生から御指摘がありましたような不合理性というものはあちこちにあるのではないかというふうに思っております。そういうこともやはり普通の人間として、政治家としての感覚で直していくということも非常に私に課せられた使命であろうと思いますので、またよろしく御協力、御支援をお願い申し上げたいと思います。
  371. 塚本三郎

    塚本分科員 あとわずかしかありませんから、この間カンボジアへ行ってまいりました概括を申し上げてみます。  マスコミを見ますと、今にも戦争が起こって、そして一部の議員さんはいつPKOで自衛隊は引き揚げるのだと言わんばかりの御質問です。私は現地にわずか三日か四日しかいませんでしたけれども、プノンペンの町は建築ブームに沸き返っております。戦争などだれも意識しておりません。なるほど、現実にマスコミがうそを言っておると申し上げるつもりはありません。ポル・ポト派の強いところで存在意識を改めるためにパチンパチンと銃声が聞こえてきたり、あるいはまた戦闘らしきものが向こうの内輪げんかであることは事実あります。それはあたかも、例えば神戸の町で暴力団山口組が壊滅して、といってみても小さく分かれて、そして住宅街にまで鉄砲弾が飛んでいきます。だからといって、日本じゅう暴力の町だと誤解させる必要はない。同じなんです。  プノンペンの町はわずか六、七十万の人口ですけれども、五十の国がUNTACとして出かけてきております。十人ずつ行っても五百人の幹部の住宅が必要です。いいところは内乱でごちゃごちゃになっているから、実はどれだけ住宅が必要かということで建築ブームに沸き返っております。ところが、現地は御承知のとおりメコン川のはんらんによるデルタ地帯で、山がないのです。したがって、砂利がないのです。だから、自衛隊も御苦労なさって、へんぴなところへ山を見つけて行っておる。そこでカチンカチンとハンマーで石を割って、そしてわずかの砂利を馬車に積んでプノンペンの町へ運んで、なりわいを立てている人がたくさんある。ところが自衛隊が行きましたら、ががっと砕いてダンプではばっと運んでくる。そうすると、ダンプからこぼれる砂利を拾った方がお金になるのです。それを拾って馬車に積んで、とことこ一日往復でプノンペンの町に、住宅ブームに供給しておる。これが現地の実情なんです。  だから、公平に、そして選挙で民主的な政府を選ぶというところまでがUNTACの仕事ですから、これからのことについては私はまた外務委員会その他で申し上げるつもりでおりますけれども、自衛隊などは現地ではもう大変意気が上がって、そしてお休みになると自分たちでわざわざ町に行って缶ビールを買ってくる。七百人の施設大隊が二本ずつ飲んでも毎日千五百も空き缶ができる。わざわざそれをみんなでつぶして、そしてくず鉄で売って、その金で付近の学校にいわゆる黒板等を寄附しておる。  こういうふうに気を砕いてやっておるということですから、日本の国の信頼は大変なものです。いつ引き揚げるかなどばかなこと言いなさるな。彼らは夢にもそんなことは思っておりません。暑い中で御苦労なさって、大変に日本の国というもののいわゆる重みというものをあそこで宣伝してくださった。ところが、国内では全然違っておるのです。いつ引き揚げるかなんということを言っていて、現地で私は中央マーケットも二回、二日間行きました。野菜だけではないのです。金のブレスレットなど、もちろん物価が高くなるから少し金があるとすぐ金にかえていかないといけないからと。いうわけで、市場の中は金細工でいっぱいです。それが実は中央市場の実情でございます。  ですから、私たちは、心配しなさるな、特に極寒の北海道千歳部隊がこれから行ってくださるのだということですから、もう少し正しい行動を、PRを心がけていただきたいと強く要望申し上げるとともに、せっかく頑張っていてくださるいわゆる隊員の諸君に対して、手厚く給与の問題等大蔵当局とかけ合っていただきたい。以上、強く申し上げて、私の質問を終わります。御答弁いただきます。
  372. 中山利生

    ○中山国務大臣 大変貴重な力強いお話を承りまして、ありがとうございました。皆さんがいろいろなことを言っていただきますのは、向こうで一生懸命汗を流して頑張っておられる隊員諸君の生命とか健康とか、そういうものを心配していただいていろいろ引き揚げの話などをされていると私はありがたく受けとめているわけでありますが、現在の隊員の状況もお話のとおりであろうと思いますし、これから第二次派遣隊も行くところでありますが、この人たちも何とか無事に任務を達成して、平和な国の建設が達成できますように、心からお祈りをしておるところでございます。
  373. 塚本三郎

    塚本分科員 御苦労さま。終わります。
  374. 唐沢俊二郎

    ○唐沢主査 これにて塚本三郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして防衛庁についての質疑は終了いたしました。  本分科会補充質疑は終了いたしました。  これにて散会いたします。     午後九時三十九分散会