○池田
政府委員 ただいま
武装解除が行われていない段階で
日本からの要員が出ていったということに対する御批判がございました。
確かに、この
パリ和平協定を実施する上で
武装解除をどのように実施していくのかというのが一つの大変重要な課題であったわけでございまして、結局これまでの間、
カンボジア各派、
ポル・ポト派を除きます各派、それから主要関係国すべてが大変な時間と
努力をかけて
ポル・ポト派を説得しようとしたわけであります。そして特に外交的には、我が国がタイと一緒になりまして、去年の夏から秋にかけまして四回にわたって
武装解除の条件が何かということを徹底的に話し合う機会を持ちました。このときには、
ポル・ポト派に従来最も近いと思われていた中国の支援というものも受けまして、中国が側面的に
ポル・ポト派と話をするという形で行ったわけでございます。しかもこれは
日本とタイと中国だけではなくて、実は、その他欧米諸国を含めました関係諸国が
安保理の決議を出しましてこの
日本とタイの
努力を支援するということで、国際社会を代表した形で
ポル・ポト派と
武装解除の条件を話し合ってほしいという決議を出したわけでございまして、そういう過程を経て、結局、
ポル・ポト派が果たして
武装解除に応ずるための本当に誠意のある条件を出しているのかどうかということを話し合ったわけでございますけれども、結論的には、彼らの主張には根拠がないということがわかったわけでございます。
それは、ベトナム人が
カンボジアに住んでいるということでございまして、例えばベトナム兵の存在あるいは
SNCの強化といった問題は、これは
パリ和平協定にございます。ですから、
パリ和平協定に従ってこういった問題を解決するということであれば、これはもう関係国が
協定の許す限りにおいてその
ポル・ポト派の主張も入れて妥協できる余地があるわけでございますが、
カンボジアに何十万とベトナム兵がいるからもうだめだということになりますと、これはもうどちらが誠実な主張をしているかということは明白でございます。
こういう過程を経まして、国際社会全体が、
ポル・ポト派が拒否をしているがゆえに
カンボジアの和平全体をおくらせるということはできない。これは、
パリ和平協定というのは、それこそ何年もかかって当時の
カンボジア人とそれから国際社会の英知を集めたものでございます。ただいま先生も御指摘になられました
パリ協定そのものは、恐らくその当時考えられていたものの中では最善のものでございます。そしてこれを、一派が必ずしも従わないために、それでは和平の過程をおくらせるか。では、おくらせた場合に、いつまでおくらせればできるのだ。それが、例えば半年であればできるのか、あるいは一年であればできるのか、もしそういったところで具体的な条件というものがわかっていればもう少し待つということはできたと
思います。
しかし、それを待っても、幾らたっても、やむを得ない、しょうがない条件ではないかということになったわけでございまして、そういう過程を経て、中国、タイを含めまして、これまで
ポル・ポト派に一番近かった国々も、それから
カンボジア三派も、シアヌーク殿下を初めといたしまして、これはもうやむを得ない、
選挙を行おうと。しかしながら、その場合でも
ポル・ポト派に対して窓口をあけておく。我々は
ポル・ポト派に対して見切り発車をしたことはございません。いまだに、
ポル・ポト派がもし和平の肩へ乗ってくるのであれば、いつでもこれを歓迎するという姿勢をとっているわけでございます。そういった形をとらざるを得なかった。これは確かに理想的な形ではないと
思いますし、やむを得ない形になったわけでございます。
しかしながら、ことしの一月の二十八日に北京で
ポル・ポト派のキュー・サムファン議長も入れました会合を開きましたときに、
選挙をいつ行うかという議論をしております。そのときに、
選挙を五月の二十三日から行うという決定を行っているわけでありまして、キュー・サムファン議長、この場に出ておりましたけれども、それは反対しませんでした。
したがいまして、クメール・ルージュを含めた形でこの
選挙の日にちというものは確定したわけでございまして、そういった
意味で、大変な
努力を重ねて、できるだけ理想の形に近づけた格好で
選挙を行いたいということであったわけでございますが、残念ながら今のような
ポル・ポト派の主張というものがあり、しかもそれはいつまで待ってもそれで和平が進むというものではない、そういう見通しがつかない以上、やむを得ずやはり
カンボジア国民がこれだけ平和を熱望している以上、それにこたえなければいけない、これはもう
カンボジア人と国際社会の義務でございますしたがいまして、一派だけの拒否権のためにそれをおくらせるということはできなかったということでございます。