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1993-02-26 第126回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月二十六日(金曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 粕谷  茂君     理事 石川 要三君  理事 小杉  隆君     理事 鴻池 祥肇君  理事 佐藤 信二君     理事 中川 昭一君  理事 串原 義直君     理事 中西 績介君  理事 松浦 利尚君     理事 草川 昭三君        相沢 英之君     粟屋 敏信君        臼井日出男君     内海 英男君        衛藤征士郎君     越智 通雄君        大石 千八君     岡田 克也君        唐沢俊二郎君     河村 建夫君        久野統一郎君     坂本 剛二君        高鳥  修君     戸井田三郎君        萩山 教嚴君     浜田 幸一君        原田  憲君     福田 康夫君        福永 信彦君     松永  光君        松本 十郎君     村山 達雄君        簗瀬  進君     柳沢 伯夫君        綿貫 民輔君     伊藤 忠治君       宇都宮真由美君     北沢 清功君        関  晴正君     竹内  猛君        富塚 三夫君     楢崎弥之助君        堀  昌雄君     松前  仰君        三野 優美君     水田  稔君        目黒吉之助君     元信  堯君        石田 祝稔君     北側 一雄君        倉田 栄喜君     宮地 正介君        児玉 健次君     菅野 悦子君        吉井 英勝君     中野 寛成君  出席国務大臣         内閣総理大臣         大蔵大臣臨時代 宮澤 喜一君         理         法 務 大 臣 後藤田正晴君         大 蔵 大 臣 林  義郎君         文 部 大 臣 森山 眞弓君         厚 生 大 臣 丹羽 雄哉君         農林水産大臣  田名部匡省君         通商産業大臣  森  喜朗君         運 輸 大 臣 越智 伊平君         郵 政 大 臣 小泉純一郎君         労 働 大 臣 村上 正邦君         建 設 大 臣 中村喜四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会 村田敬次郎君         委員長         国 務 大 臣         (内閣官房長官)河野 洋平君         外務大臣臨時代         理         国 務 大 臣 鹿野 道彦君         (総務庁長官)         国 務 大 臣 中山 利生君         (防衛庁長官)         国 務 大 臣         (経済企画庁長 船田  元君         官)         国 務 大 臣         (科学技術庁長 中島  衛君         官)         国 務 大 臣 林  大幹君         (環境庁長官)         国 務 大 臣 井上  孝君         (国土庁長官)  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長         兼内閣総理大臣 伊藤 博行君         官房内政審議室         長         内閣法制局長官 大出 峻郎君         内閣法制局第一 津野  修君         部長         人事院総裁   弥富啓之助君         人事院事務総局 丹羽清之助君         給与局長         国際平和協力本 柳井 俊二君         部事務局長         総務庁長官官房         審議官     池ノ内祐司君         兼内閣審議官         防衛庁参事官  太田 眞弘君         防衛庁長官官房 村田 直昭君         長         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁教育訓練 諸冨 増夫君         局長         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛庁装備局長 中田 哲雄君         防衛施設庁建設 黒岩 博保君         部長         経済企画庁調整 長瀬 要石君         局長         経済企画庁物価 小林  惇君         局長         科学技術政務次 渡海紀三朗君         官         科学技術庁長官 井田 勝久君         官房長         科学技術庁科学 長田 英機君         技術政策局長         科学技術庁科学 島  弘志君         技術振興局長         科学技術庁研究 石井 敏弘君         開発局長         環境庁長官官房 森  仁美君         長         環境庁企画調整 加藤 三郎君         局地球環境部長         国土庁長官官房 藤原 和人君         長         国土庁長官官房 藤田  修君         会計課長         国土庁土地局長 鎭西 迪雄君         国土庁地方振興 秋本 敏文君         局長         法務省刑事局長 濱  邦久君         法務省人権擁護 筧  康生君         局長         法務省入国管理 高橋 雅二君         局長         外務大臣官房審 須藤 隆也君         議官         外務省アジア局 池田  維君         長         外務省北米局長 佐藤 行雄君         外務省中近東ア 小原  武君         フリカ局長         外務省経済局長 小倉 和夫君         外務省経済協力 川上 隆朗君         局長         外務省条約局長 丹波  實君         外務省国際連合 澁谷 治彦君         局長         外務省情報調査 鈴木 勝也君         局長         大蔵大臣官房総 日高 壮平君         務審議官         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         大蔵省証券局長 小川  是君         大蔵省銀行局長 寺村 信行君         大蔵省国際金融 加藤 隆俊君         局次長         文部大臣官房長 吉田  茂君         文部省初等中等 野崎  弘君         教育局長         文部省学術国際 長谷川善一君         局長         文部省体育局長 奥田與志清君         厚生大臣官房総 瀬田 公和君         務審議官         厚生省健康政策 寺松  尚君         局長         厚生省老人保健 横尾 和子君         福祉局長         厚生省児童家庭 清水 康之君         局長         農林水産大臣官 上野 博史君         房長         農林水産大臣官 堤  英隆君         房予算課長         農林水産省経済 眞鍋 武紀君         局長         農林水産省構造 入澤  肇君         改善局長         農林水産省農蚕 高橋 政行君         園芸局長         農林水産省畜産 赤保谷明正君         局長         食糧庁長官   鶴岡 俊彦君         林野庁長官   馬場久萬男君         通商産業省通商 岡松壯三郎君         政策局長         通商産業省通商 森清 圀生君         政策局次長         通商産業省貿易 渡辺  修君         局長         通商産業省機械 坂本 吉弘君         情報産業局長         通商産業省生活 高島  章君         産業局長         工業技術院総務 松藤 哲夫君         部長         資源エネルギー 黒田 直樹君         庁長官         中小企業庁長官 関   收君         運輸大臣官房長 豊田  実君         運輸大臣官房会 楠木 行雄君         計課長         運輸省航空局長 松尾 道彦君         郵政省放送行政 木下 昌浩君         局長         労働大臣官房長 七瀬 時雄君         労働省労働基準 石岡慎太郎君         局長         労働省職業安定 齋藤 邦彦君         局長         建設大臣官房会 木下 博夫君         計課長         建設省住宅局長 三井 康壽君         自治省行政局長 紀内 隆宏君         自治省行政局公 石川 嘉延君         務員部長         自治省行政局選 佐野 徹治君         挙部長         自治省財政局長 湯浅 利夫君         自治省税務局長 滝   実君  委員外出席者         会計検査院長  中島  隆君         会計検査院事務 白川  健君         総局次長         会計検査院事務 阿部 杉人君         総局第一局長         予算委員会調査 堀口 一郎君         室長     ————————————— 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     福永 信彦君   内海 英男君     久野統一郎君   中山 太郎君     坂本 剛二君   浜田 幸一君     簗瀬  進君   竹内  猛君     北沢 清功君   二見 伸明君     倉田 栄喜君   宮地 正介君     北側 一雄君   菅野 悦子君     吉井 英勝君 同日  辞任         補欠選任   久野統一郎君     萩山 教嚴君   坂本 剛二君     福田 康夫君   福永 信彦君     河村 建夫君   簗瀬  進君     岡田 克也君   北沢 清功君     竹内  猛君   北側 一雄君     宮地 正介君   倉田 栄喜君     二見 伸明君 同日  辞任         補欠選任   岡田 克也君     浜田 幸一君   河村 建夫君     相沢 英之君   萩山 教嚴君     内海 英男君   福田 康夫君     中山 太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成五年度一般会計予算  平成五年度特別会計予算  平成五年度政府関係機関予算      —————◇—————
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  平成五年度一般会計予算平成五年度特別会計予算平成五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浦利尚君。
  3. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大蔵大臣冒頭お尋ねをしておきます。  きょう御出発なさって、飛行機の中で二泊をするという強行日程G7に出席なさるそうですが、今度のG7というのは非常に厳しい環境の中だと想像いたします。恐らく我が国に対する大変な貿易収支黒字問題、こうした問題が当然矢面に出てくると思うのでありますが、振り返ってみますと、あのバブル経済というのはもとをただせばプラザ合意にその源があるようなことだと思うのですが、そういった意味では今度のG7というのは大変覚悟を決めて行かなきゃならぬと思うんです。そのためには、当然かばんの中にある程度我が国景気浮揚内需拡大政策というものについての具体案を持って行かなければ向こうは納得しないと思うんですね。そのために先般アメリカ等に行かれて一定調整をしてきたものと私は理解するんです。  ですから、交渉前でありますから、かばんの中身を見せるという質問はするつもりはありません。しかし問題は、一番心配になりますのは、具体的なものを持って行かなければ、恐らくさらなる円高容認論というのが出てくると思うんですね。いろんな意味で理論的な言い方はあります。しかし、今度のクリントン新政権を含めて、森通産大臣も、EC黒字減らしの問題で、EC貿易削減のためのパッケージ提案というのをなさってきていますね。ですから、あらゆるところからこのG7では日本がその中心になってくると思うんです。  この際、大蔵大臣お尋ねをしておきたいのは、一番心配になる円高容認論、さらなる円高の進行、こういったことについて歯どめをかける自信があるかどうか、その覚悟のほどをまずお聞かせいただきたいと思うのです。
  4. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 G7に、お話しのようにきょう夕方立ちまして、国会のお許しをいただきまして行ってまいります。大変に予算委員会日程が立て込んでおりますときにそうしたことになりましたことを私もおわびを申し上げたいと思いますが、予算委員会の方は総理臨時代理をやっていただく、こういうことになりましたので、よろしくお願いを申し上げたいと思っております。  G7でどんな話が出てくるかというのは、まだ議題等は決まっておりませんけれども世界経済全体についての幅広い話をする、こういうことでございます。いろんな点で何かポケットの中に持って行くんじゃないかという話でございますが、G7の場はもっとフランクな話でいろいろ話をしていこう、何か交渉してどうしようとかいう話じゃありません。ありませんが、やはり突っ込んだいろいろなお互い意見交換をする場だというふうに理解をしておりますので、そういった形で対処をしてまいりたいと思っています。  お話のございましたように、日本にさらにいろんなことがある、要求をされるんじゃないかということでございますが、私は特段のものが特に何だこうだという話は、私はこういった場の性質上ないんじゃないかなと、こう思っておりますが、何といったところでG7の中で経常収支黒字なのは日本だけでございまして、皆赤字なんですね、ほかの国は。そうすると、一人だけ黒字になっていて、おまえだけじゃないか、おれら皆あれしているぞ、こういうふうな話というのは当然に出てくるのだろうと思いますから、いろんな話をし、また、日本が今までやってきているところの政策についても御理解をいただきながら、世界全体をやはりいい形に持っていくということが私は一番大切なことだろうと思いますので、そういった形でやっていきたい、こう思っています。  それに関連いたしまして為替の問題でございますが、私は、為替は本来はファンダメンタルを反映して安定的に推移することが望ましいものである、こういうふうに考えておりますし、この問題につきましては、まずG7各国の間でも共通の認識になってきているものだというふうに考えておるところでございまして、人為的に円高にしようとかなんとかといった話になることはあり得ないのではないか、こういうふうな認識を持っておるところでございます。
  5. 松浦利尚

    松浦(利)委員 御承知のように、イギリス等ではサミットについても完全秘密主義でやったらどうかというような話が出かかっております。これは報道によるんですから、正確かどうかわかりません。ですから、G7場等についてもある程度そういう形の議論が行われてくると思うんです。しかし、結果が国民にツケ回しが来るようなことになっては非常に困りますので、私は、ここで大蔵大臣が本当に、飛行機で二泊するというのは大変な御苦労が多いと思うのです。体に気をつけて行っていただきたいと思いますが、帰ってこられましたら、ぜひ、予算委員会冒頭で結構ですから、一日の日にその経過の御報告を簡単にしていただけることのお約束だけはしていただきたい。委員長、どうでしょう。委員長、どうですか。
  6. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 帰りましたならば、いろんな話、この場におきまして御報告を申し上げたい、こう思っております。
  7. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それでは、次の質問に入ります。  この前、渡辺外務大臣がお元気でした、早く元気になられることも期待をいたしますが、そのとき、総括質問カンボジアポル・ポト派丸太材等我が国に対する輸出問題等質問をいたしましたときに、経済制裁法案についてこの際検討を加えたらどうかという、そういう私の質問に対して、検討をいたしましょうという御返事をいただきました。  そこで、きょうは外務大臣おいでになりませんけれども、改めてお尋ねをしたいと思うんでありますが、現在、地域紛争が極めて多発しておるわけでありますが、これに対応して、国連が特定の地域に対して、不当な武力行使に対して経済制裁を加えるということは、現実イラク等において行われたことなんですが、問題は、我が国の場合には、この前もお話ししましたけれども、直ちに即効的に実行する体制というのが法体系の中ででき上がっておらないんです。  ですから、そういったことが、この前、カンボジアからの、ポル・ポト派からの丸太材輸入があった、それは前だとか後だとかといろんな疑問が、お互いに論戦があるわけでありますけれども、後であれ中であれ、現実日本に上陸しようとしておることは事実です。今、港でストップしておるようでありますが、そういう条件が起こってくる最大の理由というのは、我が国では外為法の適用による以外に方法がないんですね。ですから、やっぱり軍事力にかわる強制力を持ったものとして、我が国のような世界で言うところの経済大国の場合は、経済制裁法案というのは私は極めて有効な手段として使い得るんじゃないか、そう思うんです。  ですから、例えば国連が違反だと認定して、国連みずからが制裁を実施するという場合を含めて、直ちにその国連決定に対応できるということが必要じゃないか。そしてまた、国連が認定したときには、各国各国の判断において制裁を加えるということもあっていいんじゃないか。そういったことを考えてまいりますと、実際に我が国のように経済大国になってまいりますと、金融取引とかあるいは輸出入停止とか、郵便、電話、航空船舶等のサービスとか、あるいは貿易保険停止とか、あらゆる手段を直ちにこの法律で即効的に行うことができる、そういうことを私はぜひ行うべきではないか。  これは私が調べた範囲内ですから、もし間違っておれば指摘をしていただきたいのですが、ドイツ、フランス等では対外経済関係法、あるいは米国では御承知のように輸出管理法、あるいは英国では事例に適応した暫定権限法という法律が存在をして制裁を加えることができる、こうなっておるようでありますが、我が国でもこうした問題について、早急に宮澤内閣で、この前外務大臣検討すると、こう言われたのでありますが、やはり積極的に経済制裁法案の制定に努力をすべきではないか、実行を図るべきではないか、そう思うんです。  これは、これも聞いたところによりますと、障害になるのは、森通産大臣おいでですけれども、この経済制裁法案というのは、所管官庁外務省になるのか通産省になるのか、あるいは、これほど輸入大国でありますから、要するに企業利益と反するということも出てくるのですね。企業側利益に反するという場面が出てくるという意味で、そういったことがなかなか実現を困難にしておるという話を聞いておるわけです。こういった意味で、この前外務大臣経済制裁法案については検討しましょうということを言われたんですけれども、この際改めて、こうした有効な法案国連に即応して対応できるこうした法案の整備を図ることが私は非常に重要な段階に来ておるんじゃないか、こう思います。この点について御返事をいただきたい。森通産大臣、それから外務省の方でお願いいたしたいと思います。
  8. 森喜朗

    森国務大臣 松浦委員にお答えを申し上げます。  外務大臣が当委員会におきまして、考えてみたいというような御発言があったことも、私は伺っておりました。ああいう突然の御静養でございますから、その後関係省でございます私どもとまだそういう話し合いはいたしておりません。外務大臣のお考えが那辺にあるか、これもまた定かにいたしておりませんので、通産省としましては、今いろいろと御指摘がございましたように、東西冷戦が終わりまして、現在世界ではいろいろな、さきの湾岸紛争を初めとしてユーゴ紛争など、領土や民族や宗教等理由としている地域紛争大変増加をいたしておりまして、そのために通商問題につきましてもいろいろな案件が出てくることは事実でございます。  こういう状況の中で、世界各国は、一定紛争につきましては、国際連合安全保障理事会等の場において協調した制裁行動をとるように求められているところでございます。したがって、我が国としましても、こうした国際社会からの要請には適切に対応していくことが重要である、必要であるというふうに考えております。  国際連合制裁決議があった場合には、我が国はこれまで直ちに対象国との間の輸出入取引役務取引等の自粛を民間に対して要請をするとともに、外国為替及び外国貿易管理法等に基づくこれら取引等停止措置を機動的に実施してきました。今後も迅速にこれらの措置をとるということによって、国際連合決議には十分に対応でき得るものであるというふうに私ども認識をしておるわけでございます。  ただ、今先生からいろいろと御指摘がございましたように、非常に流動的な問題がございますし、またいろいろな意味での出来事も、さまざまな出来事も起きてくるわけでございますので、また外務大臣のお考えはどういうことにあったか、先ほど申し上げましたように、まだお話し、御相談申し上げる機会がなかったわけでございますので、通産省が今とっております通商貿易そのものを、責任ある官庁として、今申し上げたような考え方で対処していきたいと考えております。  ただ、この制裁法案所管がどこにあるかどうかということも、これまた外務省とも、また法制局とも御相談もしなきゃならぬことだと思いますので、私から今具体的なことを申し上げることは控えたいと思っております。  ただ、もう一つは、やはり企業利益に反するからやや通産省は難色を示しているのではないかなという御指摘がございましたけれども、やはり企業利益というものは国際秩序あるいは国際関係、また国内においても当然良識的な対応をしていくことは当然でございまして、企業利益に反するからそうした法律とかあるいはそういう取り決めというのは差し控えた方がいいという、そういう考え方通産省としてはいたしておりませんということをこの際申し上げておきます。
  9. 丹波實

    丹波政府委員 先生指摘のとおり、安全保障理事会におきまして経済制裁決定が行われた場合には、憲章二十五条によりまして加盟国がこれに従うということになっておりまして、これまでのところ私たちは、例えば一九九〇年の八月のイラクケースあるいは九二年六月のセルビア、モンテネグロのケースなどが、一つの例として申し上げますと、現行法令の枠内で関係省庁と協議しながらそれなりの措置をとってきたつもりでございますけれども、迅速かつ総合的に対応するという観点から、あるいは足りないところがあるという先生の御指摘も念頭に置き、かつ、それに対して外務大臣検討してしかるべきだということを申し上げておりますので、ただいま通産大臣の御答弁がございましたけれども通産省その他関係省庁とこの問題を今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  10. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ぜひ早急に御検討いただきたい。ただ、アメリカの例のスーパー三〇一ですね、これに対抗する手段としてという誤解も生まれる可能性もありますので、その点はぜひひとつ慎重に御配慮いただきたいということを申し上げておきたいと存じます。  それでは、御承知のように今年度から五カ年計画で新たなODA、開発援助に関する枠組みができ上がるわけですから、七百五十億ドルですか、この問題について少しく議論をさせていただきたいというふうに思います。  なお、環境庁長官がお急ぎのようですから、ODAにかかわる環境問題の部分についてだけ、冒頭ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  それは、御案内のとおり地球サミットがありまして、宮澤総理は、今後五カ年間でしたか、約一兆円近くの資金を投入するという発表をなさいましたですね。  そこで、この地球環境と経済援助というのは、それぞれの国の事情によっては相矛盾することになるわけなんですね。その理由というのは、要するに低開発諸国、援助を受けなければならない極貧国といいますか、そういった国々では、やはり何といっても開発中心主義なんですね。ですから、開発を先進国並みにどんどん進めていきたい。そのためには、自己資本として資源である熱帯雨林等をどんどん伐採をして輸出をする。先進国の、北側の勝手じゃないか。あんたたちは経済大国になり、経済がどんどん発展をして、そして今度は地球が破壊されるから環境を守りなさい、そのために金を出しましょうと言うだけでは問題が解決をしない。  ですから、ここに私は一つの論文を、非常に示唆に富んだ論文ですから全文読み上げたいと思うのですが、長官、よく聞いてください。   環境問題は、単に経済援助のみならず、二一世紀に向けての地球全体にとって極めて重大な関心事である。「貧しい国」にとって、経済開発こそが第一の国家目標であり、環境に配慮する余裕がないということはその通りであろう。しかし、途上国の経済開発に伴う環境破壊が地球全体に対して大きな外部不経済をもたらすこともまた事実である。先進国が何もせずに、途上国の経済開発に伴う地球規模での外部不経済を規制するように途上国が求めても説得的ではない。まず先進国の資源の過剰消費パターンを改  めなくてはならない。  その上で、途上国に対しては、地球全体の視野にたった規制を要求すべきである。それに必要な技術、資金は、これまでのトレンドから予測される援助額の見通しを上回って供与さるべきである、 これからが重要なんです。  それによって日本国民の生活水準が万一低下してもそれは、長期的な利益にかなうことであることを、政府は国民に対し説得する義務がある。 私、その通りだと思う。金を出したからといって貧しい国は満足しないです。やはりこれは経済開発というものを優先に考えるのだ。ということになれば、資源の浪費ということは許されない。場合によっては我が国の生活レベルをダウンさせる。生活水準が低下してもやむを得ないんだ、本当に二十一世紀、将来にわたって地球を守ろうとすれば、先進国はそれくらいの覚悟が必要なんだということを私はこの論文は指摘しておると思うのですね。  ですから、環境庁長官質問したかったのは、地球サミットで宮澤さんが金は出します、こう言ったけれども、これくらいの腹構えで、本当に地球環境を守るという姿勢を国民に向かって言う勇気があるのかどうか、そのことを環境庁長官お尋ねをしておきたいと思うのです。
  11. 林大幹

    ○林(大)国務大臣 松浦先生にお答え申し上げます。  今大変貴重な論文をお読み上げくださいました。これは率直に言いまして、心構えといたしましては当然あるべき姿であろうと私は思います。ただ、政府の施策といたしましては、現在よりもダウンする施策を政府が決めるということは、これは国民に対して果たして忠実であるかどうかという点からもまた議論が出てくるところでありますが、ただ、環境問題から考えますと、私は今の御議論の中に傾聴すべき点がございます。  時間がございませんので、ただ単純なお話だけ申し上げても御納得いただけないかもしれませんが、地球環境保全のために開発途上国が開発というものに非常な魅力を持ってきておることも事実でございますが、そのために今度新しく、先生も御案内のような地球サミットで採択されましたリオ宣言には、持続可能な開発ということを主張いたしておるわけであります。持続可能な開発というのは何かということでありますけれども、これは、今開発が必要だからやりますという現時点だけの開発じゃなくて、持続可能でなければいけない。持続というのは次世代まで、孫子の代までそれが必要であるという意味における持続でありますので、持続できないような開発はすべきじゃないということがこの地球サミットで採択された宣言の精神であると私は感じております。  実は環境庁が生まれて二十一年でございますけれども環境庁が生まれるまでは日本は開発開発で来たと思うのですね。しかし、その開発開発の結果が今先生の御心配のような環境破壊の面が今度出てきたものですから、それをどうしても食いとめなければならない、あるいは新しい社会構造をつくらなければならないというのが私は環境庁が生まれた一つの原因であったと思うのです。  ですから、その精神は今でも生かさなければならないし、こうした考えを踏まえまして、実は今政府部内としても環境基本法の策定に全力を挙げております。もちろん鋭意調整いたしました後には、これをまた議会の御審議を煩わせるということになりますので、その節はよろしく御審議をお願いしたいと思いますけれども、その基本法の中にもこのような理念は盛り込んでおりまして、つまり、環境というものをいかに我々の生活と結びつけなければならないかという理念と、それからそれに対する国民や国や自治体や事業体の責務は一体どこにあるのかということも踏まえて、今環境基本法の策定も急いでおりますので、こういうものを踏まえて、今先生の御心配あるいは御指摘なさいましたようなこともあわせて解決の中に織り込みたいと思っております。
  12. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ODA白書の九二年度版に、昨年の地球サミットにかかわる宮澤総理の発言等を文章で表現してあるのです。「援助の適切かつ計画的な実施を通じて、地球の緑、水、空気の保全、そして開発途上国の環境問題対処能力の向上に貢献していく。」言葉では非常にいいのですよね。しかし、実質的には、今申し上げたように貧しい国ほど開発至上主義になりがちだ、それを求めていくというその接点は、そう簡単には埋まっていかないのですね。  ですから、せっかく地球サミットが開かれて、宇宙で最も美しい星である地球を守ろうということになれば、覚悟としては、やはりある程度消費を抑える、浪費を抑えるというそういう政策も生まれてこざるを得ないのだ、環境を守るというのはそういうことなんだということも私は環境行政の中に取り入れてもらいたい。そのことを強くお願いをしまして、何か長官は、環境は大切ですから、どうぞ常任委員会の方へ行ってください。  それでは外務省お尋ねをいたしますけれども、どうもODAといいますと悪い部分だけ取り上げられがちですけれども、ODAというのは大変発展途上国等にとっては喜ばれておるということも事実なのです。ですから、ODAというのは、光というものが輝いている部分もあるが影の部分もあるということを理解した上で、今から申し上げることは影の部分だけになりますので、ああODAというのはつまらぬな、こういうふうに誤解して私が質問しておるのではありませんので、そのことを前もってお断りをして、今から悪い部分だけ申し上げます。  まず、スリランカのキリンダ漁港、これは現在どういう状態ですが。これは私どもがスリランカのキリンダに現実に行ってまいりまして、そのときにはせっかくつくった港が、インド洋の漂砂といいまして、その砂のために完全に港が埋まってしまって、国民の、これは無償援助でありますけれども、総額約十四億、第一期、第二期工事で約十四億強の無償援助をしたにかかわらず、実際は八カ月ぐらい港として使われたけれども、その後はもう放置してある。時々しゅんせつ船が来て、砂をかいて船の出入りをするようにはしておりますけれども、船は、漁船は海岸線のずっと奥の方に陸揚げしておるという状況なんです。  これを一体どうするのだ、こういう質問をしたことがあるのですが、その後これを改修するために、改めて平成四年、五年、六年にわたって二十一億五千八百万円の追加無償援助をするということになりましたね。私の申し上げたことが間違っておれば間違っておる、正確ならそのとおりと言ってください。
  13. 川上隆朗

    ○川上政府委員 お答え申し上げます。  キリンダ漁港につきましては、基本的に先生が今おっしゃったとおり、残念ながら漂砂の砂の流れが予想外に厳しかったということで漁港の埋没という事態になって、それを維持することが困難になったという事実がございまして、それをベースにしまして、スリランカ政府から新たに要請を受けまして、六十二年から平成元年にかけまして開発調査を新たに実施いたしまして、漂砂の動きを解明する努力を行い、有効と考えられる対策について調査を行った結果、今先生がおっしゃったように、新たな無償資金協力を供与いたしました。  具体的には、今工事中の状況でございますけれども、突堤の新設、主防波堤の延長、副防波堤の設置、防砂措置、しゅんせつ工事といったようなことを内容とした工事を行う予定でございます。
  14. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今御報告ありましたように、これは何を物語っておるかといえば、インド洋の漂砂がそれほど多いということを事前調査で察知しておらなかった。極端に言うと、事前調査がまずかったということを教えておるのですね。この無償援助をしておるお金は、これは国民の税金なんです。ですから、そのことをまず指摘をしておきたいと思うのですね。  それから、同じくスリランカのサマナラウェア・ダム、これも調査をしてみましたところが、実質的には、ダムができ上がって貯水を始めたら、漏水が発見された。水が漏れ出した。ところが、ダム工事というのはよく、水をためて漏水する段階が出てきたらそれをまたセメント等で漏水箇所を埋めていくというそういう作業も、実質的には日本の場合でも行われておるやにお聞きをしておるのであります。  ところが、私が調べた範囲内におきましては、これがずっと九二年の十月に漏水口が広がりまして、ダムの決壊のおそれがあったために、下流の十カ町村の五千世帯が避難をした。それで、スリランカ政府は専門家の調査団を派遣をして調べてみたところが、秒にして七千リットル、一秒間に七千リットル漏水するということが確認をされたので、慌てて貯水池の水を落とさざるを得なかった。それでスリランカの大統領は、貯水の中止と排水を命令をした。ですから、現在は一定の水準でなければならぬものを、ずっと貯水ダムの水を落としておる。細々と発電をしておりますよという外務省の説明はありましたけれども、こういう状況が現に存在をしておりますか。そして、これに要した金が借款等を含めて三百十七億。私の申し上げたことについて間違っておる箇所があったら指摘してください。
  15. 川上隆朗

    ○川上政府委員 スリランカのサマナラウェア・ダムについてのお尋ねでございますが、調査の段階というのは、実はこれは非常に長年にわたりまして国際的な調査が行われたという、いろいろな国がかかわりまして、スリランカ政府自身も行ったという事実はございますが、その辺は省かせていただきまして、基本的にそういう調査に基づきまして、日英の、イギリスの企業も入っておりますけれども、協調案件としてこの案件を取り進めておったわけでございます。  先生指摘のように、まず九一年六月の段階で漏水が見られたということで、追加的な円借款によってその修復を行った。それが大体終了した段階でダムの水位を上げた結果、漏水の量が、ダム自体ではもちろんございません、わきにあります山のすそ野から出てきたということでございますが、非常にふえた。我々の理解するところでは毎秒五立方メートルぐらい。ダムの水位を下げたことによって、今の段階では毎秒二立方メートルぐらいに下がってはおりますけれども、そういう漏水が見られたということでございます。  本件につきましては、調査自体は十分行われたというふうに承知しておりますが、地下の地質構造、石灰岩構造が予想外に非常に複雑だったということで、予期せざる事態を残念ながら招いたということでございます。
  16. 松浦利尚

    松浦(利)委員 結局、これに対してスリランカの大統領は何と言っておるのかといいますと、これも非常に私は示唆に富んでおると思いますよ。プレマダサ大統領が何と言っておるかといいますと、要するにプロジェクトを立案するときに現地専門家の助言を求めてくれ、一番地質に詳しい地元の人の助言をなぜ受けなかったのか、外国専門家よりも地元の専門家の方が地元の事情に通じておるではないか。当たり前のことをスリランカの大統領は発言されたのですね。ですから、初めから地元の専門家の意見を聞いておればこういう事態は避けられた。しかもそれに投じた金が三百十七億。しかもこれは円借款ですから、スリランカの国民の負担にもなるわけでしょう、返さなければいかぬのだから。これも事前調査の誤りだということが指摘をされるというふうに思うのですね。  あるいはインドのナルマダ渓谷ダム、これは参議院の堂本さんやら本委員会でも再三取り上げられたケースですから多くは申し上げませんけれども、これについては地元の住民の皆さん方の意見が反映をされまして、世銀では追加融資を行うという理事会においては、日本の代表は追加融資は待てということで反対票を投じておられますね。現在調査をしておるわけでありますけれども日本自身は、反対、追加融資は待ったらどうかということをされましたね。それは事実でしょう。それはいいことですが、やっておられるでしょう。どうですか。
  17. 川上隆朗

    ○川上政府委員 世銀における日本の対応についてのお尋ねでございますけれども、昨年の十月の世銀理事会におきまして、ナルマダ・プロジェクトの進捗に関しましては、住民の相当数が移転に関して同意すること及び包括的な環境行動計画の策定が完了するという条件が満たされるべきであるという主張をいたしまして、インド政府の一層の改善努力を強く要請するとともに、改善措置が明らかでない現段階におきましては、工事進捗のための融資は世銀として進めるべきではないという立場を明らかにいたしておると承知いたしております。
  18. 松浦利尚

    松浦(利)委員 しかしこのことも、日本政府がとった対応が正しかったわけですけれども、いずれにしてもこういう事態は、相手国、援助を受けるインド政府自身が融資する側の意見あるいは立場を、これは条件を無視した場合に起こってきた現象なんですね。しかも事前に十分調査されておらなかった。先住民の問題、こうした問題について事前に十分に調査をされなかったことの内答だと思うのですね。  ですから、今来年度の事業予算で、事業規模で一兆九千億という大変大きな国民の負担を援助に使うわけでありますけれども、事前調査というのは極めて重要な意味を持っておるのです。相手国の政治体制はもちろんでありますけれども、経済状況の評価とかあるいは事前の調査体制というものが極めて今までのこうした事例から見てずさんであったということを言っておると思うのです。  そこで、「経済協力評価報告書」というのが全議員に報告されるようになりました。これは私は結構なことだと思いますね。ところが一この二十四ページに「案件の妥当性」という部分があるのです。これは要請主義の欠陥を突いておると思うのですが、「案件は当然のことながら援助サイクルの当初の段階で性格付けが行われ、その妥当性の有無は援助サイクルの最後の自立発展性にまで影響を及ぼすので、きわめて重要な要素である。今回の調査でも幸い案件の選定はおおむね妥当との評価が多いが、」これは掲載したこのすべての内容について、「案件の選定はおおむね妥当との評価が多いが、その妥当性の有無は相手国からの要請がなされる段階でほぼその骨格が決まっており、我が国からはこれに必ずしも関与していない。」ですから、我が国は関与していないのです、要請主義だから。「したがって、個別の当該案件そのものが相手国の全体的な開発ニーズの中で最適の選択であったのか等は問われない」のだ。だから、相手から要請してきたら、その要請が必ずしも相手国のニーズに適合したものであるかどうかということは問わないんだ。これが要請主義の原則なんですね。  ですから、要請してこられたものの内容と住民との利益というのが必ずしも一致しない場面というのが出てくるのです。それが今言ったようなこういう条件になってくるのですよ。これがいみじくも、この検査結果、これは経済協力局が出したやつですよね。ですから後の方では、「政策対話の一層の推進や相手国との合同評価はこれにこたえるもの」だ、これからこういうことをしていかなきゃいかぬというふうに言われておるのが私はそのことの妥当性だと思うのだけれども、しかし、だからといって要請主義がなくなっておるわけじゃない。あくまでも要請主義中心なんですね。  これについて何らかの、何というのですかね、相手国民のニーズに適合したものであるかどうかという判定基準というものをぴしっと設けなければ、こういう状況というのはこれからも再三にわたって出てくるんだと思う。ですから、援助してやってもありがたみがない。ある国の政権を担っておるところはありがたいかもしれぬけれども、国民は一つもありがたがらない。だから逆に言うと、お金を出してやって嫌われる。それで、反対する住民が日本の国会あたりを駆け回る。これじゃ何のためにお金を出しておるのか、国民の方ではたまったもんじゃないですね。開発してやっておるのに相手の国民から批判を受ける、反対をされる。これはどうかして解決しなきゃならぬ私は重要な問題だと思うのです。  きょうは外務大臣がおられません。河野さん、外務大臣代理ですから、今申し上げたことは私は素人でもわかることだと思うのですよ。詳しく事情はわかっておらぬでも、ここにちゃんと書いてあるのです、そういうことが。だから、そういう点を改めることは必要だと私は思うのですね。ですからその点について、大臣、専門家でなくて結構ですよ、今のような問題についてどうお考えになられるか、ひとつ感想で結構ですから、述べてみてください。
  19. 河野洋平

    ○河野国務大臣 大変多数のODAのプロジェクトを全世界要請があって展開をしているわけで、冒頭松浦委員からもお話がございましたように、光の部分もあれば影の部分もある、委員は特にきょうは影の部分を取り上げるとおっしゃったわけで、具体的にお取り上げになった幾つかのプロジェクトについては確かに委員が御指摘になったような問題があることを、私もお話を伺っていて率直に感じました。  ただ、まことに代理がこんなことまで申し上げるのがいいかどうかと思いますけれども要請主義というのは、やはり何といっても相手国の立場というものを考えないODAはないわけでございまして、相手国からの要請というものを受けるというのは、これはまあ一つの原則であろうと思います。  そして、その相手国の要請が、政府が要請したのであって国民が要請したのではないだろう、国民の中には必ずしも喜んでいないものもおるだろうという御指摘については、なかなか政治の難しさというのは、百人が百人賛成するということだけをやるというわけにいかない部分も相手国の事情からいってあるかもしれない。もちろんこれは為政者の基本的な姿勢の問題もございましょう。一人でも反対者がいれば橋はかけないとおっしゃる為政者もおられたわけですから、そういうお立場の方からの御要請ならば、それはそういうことであるかもしれないけれども、やはり当該国の為政者といいますか政府が、長期的、全体的なことをお考えになって政策的な判断を下して要請をしてこられるということであれば、その要請をお受けをするというのは、まず一義的にこれはあってもやむを得ないことではないか。  しかし、プロジェクトとして仕事をする以上は、やはり現地の意向というものは全く考えないでプロジェクトが成功するかどうかということについては、これまでの、今委員幾つが御指摘になったプロジェクトの状況を見れば、だんだんそれは学習効果というものがなければいけないわけでございまして、恐らく経済協力局の担当者もそうしたことを学習をしながらよりよいプロジェクトの選択ということをやっていくに違いない、こういうふうに思っております。
  20. 松浦利尚

    松浦(利)委員 長官言われたことで結構ですけれども、ただ少し違うのは、私は要請主義を否定しておるのじゃないのです。ですから、要請主義に対する事前調査をもっと厳しく、もっと深く事前調査をすべきではないか、そのことを申し上げておるのです。相手国から出てきたから、ああそうか、それならいいわでは、これでは困るのですね。その点がずさんなんですよ。  ですから、これは二国間の問題ですから、国の間の感情の問題も出てくるかもしれませんね、余りいろいろ立ち入ると。しかし、金を出す側の国民の立場に立ってみますと、せっかく出してあげたのに向こうの国民から反対されたんじゃ、これはたまったもんじゃないですね。ですから、そういった意味では、今の要請主義に対して、やはり十分な調査と適正な審査ということは、これは当然のことだと思う。そのことを私は求めておるのです。御理解いただけるでしょうか。
  21. 川上隆朗

    ○川上政府委員 河野外務大臣臨時代理が既にお述べになったとおりでございますけれども、若干数字的な点につきまして申し上げますと、事前の調査の重要性ということは先生指摘のとおりでございまして、経験からいっても、事前の調査をきちっとやればやるほど成果としてはいいものが出てくるという経験を我々長年の評価等を通じて学んでおるつもりでございます。  そういう意味で、優良案件の発掘ということを、単なる相手側の要請主義、要請が出てくるのを待っているということではなくで、政策対話を通じてそれを補完しながら、その段階では事前調査の調査団を出すことによって十分調べるということで、毎年予算なんかの御配慮もいただきながら充実に努めているつもりでございます。例えばこのような事前の調査団は、九一年度だけを見ましても合計千二百件調査団が出ている勘定でございまして、例えば一日当たり三・三件の調査団が世界各地に散っているというようなことで、我々も我々の能力の範囲内で最大限の努力は行っているつもりでございます。  しかしながら、先生指摘のように、非常に一部残念ながらうまくいかなかった、事前調査が不十分だったではないか、こう言われますと、その点についてはそういう点があったと認めざるを得ないような案件があることも事実でございます。そういう案件をできるだけこれからなくしてまいるように、最大限の努力をやってまいりたいと思っております。
  22. 松浦利尚

    松浦(利)委員 いずれにしても、従来の調査、こういったものについてはもっと充実をしてもらいたい。  その方法としては、やはり大学とか研究機関を活用したらどうか。コンサルタント会社とか商社、こういったところではなくて、少なくとも大学とか研究機関というものも事前調査の中に組み込んでいく。そういう意味では調査陣の拡充強化といいますか、そういったことも私は考えていくべきだというふうに思います。それは、今お話がありましたけれども、調査陣容の強化という点についてはそういったところまで改善についての御検討に入っておるのかどうか、その点をお聞かせいただきたい。
  23. 川上隆朗

    ○川上政府委員 政府がODAを推進するに当たりまして行うべき調査というのは非常に多岐にわたっているわけでございますけれども、現在の実情は、基本的には無償資金協力の場合はJICAが中心になって行う、ある非常に専門性が要求される項目についてコンサルの協力も得るというような体制になってございます。  有償資金協力につきましては、基本的には政府自身が調査を行って、その後に海外経済協力基金によるさらに精査が行われるというスタイルになっているわけでございますが、開発調査につきまして、これは技術協力の一環でございますけれども日本の場合、やはり専門的な知見と申しますかノウハウと申しますか、それはやはり民間コンサルに依存しているという面もかなりございます。  したがいまして、そういう方々の助力も得ながら調査団を派遣するということになるわけでございますが、先生指摘のアカデミア等の御協力につきましても、そういう分野で専門的な知見を十分お持ちの方がたくさん存すると思いますので、今後いろいろな分野、特に環境分野等々、そういう点を配慮しながらやってまいりたいというふうに考えます。
  24. 松浦利尚

    松浦(利)委員 それじゃまたこれは大蔵大臣にもちょっとお尋ねをしておきたいと思うのですけれども、今お話がいろいろありました。そしてまた、これからの事前調査等も、私が申し上げた点も含めて、強化をするという御返事もありました。  ところが問題は、我が国の場合は、きょうの新聞報道にもありましたけれども、無償が少なくて有償が大部分なんですね。ところが、発展途上国は、無償でなくても有償でも金がないから借りられるところから借りていくんですよ。そうすると、だんだん円借款に伴う累積債務が増大をいたしまして、大変な負担を発展途上国、低開発国に与えておるのですね。  その一つの例としてザンビアがあるんですね。八六年には五十三億五千七百万だったのです、債務繰り延べ額が。ところが、それが九一年には百七十億八千三百万になっているのですね。ですから、このザンビアというところ、大変これは失礼な言い方になりますけれども、ザンビアという国で果たして百七十億近くの九一年度の債務、これが負担できるのか。ザイールで百六億、コスタリカで三十九億。百億を超しておるのはザイールとザンビアでありますけれども。  これは逆に言うと、円借款を与えたばかりに、それが負担になってくる。こういうことがなぜ事前にチェックされないのか。それじゃ、金借りて、金返すためにどうするのかという問題が起こってくるんですね。そうすると今度は逆に言うと、お金を貸してやって、さあ今度お金を返せと言ったときには、借金取りが憎らしくなるというのと同じで、その国からしてみれば、お金を借りたときにはありがたいけれども、それが累積すると、何だもっと繰り延べすればいいじゃないかというふうな開き直りになっていくわけですね。ですから、金があるから金があるからで、要請主義に従って金をどんどん出していくということは相手国の発展に障害を与えることにもなりかねないという、そのことがこの一つの例だと思うんです。これは一体どうするんですか、こういうもの、返せなくなったときは。その点について、金をお貸しになる、出すのは大蔵大臣ですから、これはどうなさいますか。
  25. 川上隆朗

    ○川上政府委員 ザンビアについてのお尋ねでございますが、基本的にザンビアに対していかなる形で我が国が援助を進めるのかということにつきましては、当然のことながら世銀・IMFを中心としたザンビアに対する支援体制というものが国際的にできておりまして、我が国だけではなくて主要国がこれに参加しているわけでございますが、そういう支援体制の中での世銀・IMFの分析等に基づきましたデータをベースにしまして、いろいろな議論を行いながら進めていくということでございます。やっていかなければならない、私はそう思っておるところであります。  単に金を貸してそれでおしまいという話ではないんだろう、こう思いまして、いろいろな点でのことを私はやってやらなくちゃならないだろうと思っています。したがって、追加的にいろいろなことをやってやるとか、その国の経済がどうなるかということについては、温かい気持ちでやってやるのが必要でありますし、どうしてもならないというようなときになりましたならば、例えばパリ・クラブ等で、国際的な形で借金をどうするかというような話し合いをしていかなければならない。これは私は非常に不幸な事態だと、こう思っております。そういうような形でよくやっていくということが私は大切なことだと思いますし、世界全体の発展というのを図っていくのが必要なことだと思います。  単に借金あるからもうお前のところはどうだというむごいような形のものでやっておったんじゃなかなかうまくいかない。そこを辛抱強く私は考えていくということが必要だろうと思います。しかし、借金は借金ですからね。これをはっきりすることははっきりしなければならない、これはもう当然のことだと思っております。
  26. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ぜひ心して行っていただきたいと思うんです。  それから、会計検査院の方が来て、院長がおいでだと思うんですが、会計検査院が二国間援助、ODAに対して検査院としてのチェックをしたというのは大変異例のことだと思うんです。私は、もう時間がありませんから申し上げませんが、ODAの調査結果を会計検査院が出しておられるのをここに持っています。ここにはそれぞれの金額、それから問題点の指摘がされています。これをここで一々取り上げておったのでは時間が足りませんから申し上げませんが、五カ国、六十七件を調査をされて、延べ日数にして三百二十四日間、会計検査院が検査をしておられます。  検査院は、まず国内調査を基本にして、国内調査をした上で現地調査を行っておられるんですが、それに要する経費が一千四百万円程度ですね。一千四百万円程度であれば、一兆九千億という毎年事業予算として使われていくものについては極めて微々たる経費だ、僕はこう思うんですが、これからはますますこういったODAに対する会計検査院のチェック機能というのは強化されてしかるべきだと思うんです。現在の陣容でやっていけますか。まあ大臣が目の前だからやっていけるというようなことを言われるかもしれぬけれども、実際は大変だと思うんですが、どうですか。
  27. 中島隆

    中島会計検査院長 会計検査院といたしましては、ODAにつきましては、援助対象国も非常に多くなりましたし、また金額も多くなっております。種々の制約はございますけれども、現在の条件のもと、最善の努力をいたしているつもりでございます。  六十二年に体制を整えまして現地調査を開始いたしまして、現在まで延べ三十二カ国の検査を実施しております。金額の非常に多い、あるいは件数の非常に多い国もございますし、そうでないところもございますので、一律にやっているわけではございませんけれども、金額、件数の多い国は二度、三度実地調査をいたしておりまして、できるだけ効率のいい調査を実施しているつもりでございます。  私ども、この検査の重要性にかんがみまして、より効率的に行うべく、職員の研修、さらに事前調査の徹底、あるいは予算の充実をさらに図りまして、この検査を実施してまいりたいと思っております。
  28. 松浦利尚

    松浦(利)委員 御苦労さまです。  大蔵大臣、私は会計検査院から陳情を受けて申し上げているわけじゃないんです。ODAの規模が大きくなればなるほどやはり、税金のむだ遣い等が行われておらないかどうか、こういうのを私は会計検査院が指摘するから理解できるんで、会計検査院報告書、ODAに関していろいろなことが具体的に出ていますよ、水漏れとか発電所の操業が大幅におくれたとか。これをこう見ますと、どこに問題点があるかということがよくわかる。もちろん、経済協力局はこれだけのものを国会に報告していただいていますね。しかし、両々相まって、会計検査院は金の使い方、それから経済協力局は実効、実際にそれが役立っておるかどうかということを具体的にチェックをする。  そうすると問題は、そういうことをするための資金的な裏づけというものが必要ですね。私は、会計検査院、ODAがこれだけふえてくれば、一院でしかないわけですから。ところがこのODAは、ほかの関係につきましては十一関係省庁が加わっておるし、在外公館も全部加わるわけでしょう。ですから、そういうことを考えれば、もう少しODAに対する、会計検査院に対して、出張等が海外にふえていくわけですから、もう来年度とは言いませんけれども、資金の増枠を会計検査院に与えるべきだというふうに思います。ぜひお願いしたいと思うんですがね。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  29. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 対外経済協力が金額的にふえているし、いろいろな仕事が出てきていも、うまくやっているかどうかというのについて、やはり会計検査というものは当然やっていかなければならないことは、私は御指摘のとおりであろうと思います。  ただこれは、今お話がありましたように、関係十一省庁にもまたがっておりますし、それから、それぞれのところがまず自己監査というか、自分で本当にうまくやっているかどうかということをチェックしながらやることも大切だろう、こう思っておるんです。そういったようなことも含めまして、いかなことをしたならば経済協力が効率的にいくか、また間違いのないようにいくかということの体制の中で私は考えていくべきものだろう、こう思っているところでありまして、今のお話も含めまして、いろいろな点考えてまいりたい、こう思っております。
  30. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ほかの質問事項もありますから、ODA基本法の問題等々、また改めて論戦の場をいただいて、基本法の問題等についても議論をさせていただきたい、こう思います。  しかし、いずれにしても、だんだんだんだん、年々ODAの規模が膨らんでいくわけですから、それに対する効果に対してのチェック機能として、会計検査院等にそのための、チェックのための予算の増額方をぜひお願いしたい。これは国民のためですから、ぜひお願いをしておきたいと思うんです。  それでは、大変お待たせをいたしましたが、被差別部落の問題について長官にお尋ねをしたいんですが、今度被差別部落の実態調査を行うというふうにお聞きをしておるんですが、現在まで指定された四千六百三カ所についてのみ調査を行うというふうに承っておるんです。ところが一方では、一千カ所と推定できる未指定地区があるんですね。一千地区という未指定地区があるんです。そういうものは除外をする。初めから差別をする、一千カ所は調査しないというんですから。現在指定されておる四千六百三カ所のみ調査をする、一千カ所は未指定だから調査をしない、これでは私は何か差別をなくするというスローガンに相反する方向に走るような気がするんですが。長官の歯切れのいい答弁を求めます。
  31. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 平成五年度に実施いたすことにいたしております同和地区の実態把握等の調査につきましては、平成三年の地域改善対策協議会の意見具申を尊重いたしまして、政府におきまして取りまとめました「今後の地域改善対策に関する大綱」及び「できるだけ早期にしっかりした調査を実施したい」という第百二十三回国会におけるところの前の岩崎長官の答弁を踏まえまして、これまでの地域改善対策の効果を測定し、同和地区の実態や国民の意識等を把握するために三億二千五百万の予算を計上しておるわけであります。  今回の調査の基本的な内容につきましては、これまでも関係省庁なりあるいは地方の公共団体、民間運動団体、さまざまの研究所、専門家の皆様方の御意見を伺いながら検討を進めてきたところでございまして、今後、調査事項等の調査の細部につきましては、総務庁内に設置いたしました同和地区実態把握等調査検討委員会におきまして、さらに関係の皆様方からの御意見を伺いながら決定をいたしてまいりたいと思っております。  今回の調査につきましては、ただいま申し上げましたとおりに、これまでの地域改善対策の効果を測定するためのものでありまして、したがいまして、調査の対象となる地域は、これまで特別対策といたしまして事業を行ってきた対象地域考えておるわけでありまして、一般対策が適用されてきたいわゆる未指定地区に関しましては、調査を行うという考えはないわけでございます。また、対象地域の確認を行ってきた十八年間というものは相当期間の年月ではないかと思っておりまして、事業実施の希望のある地域につきましては、地域住民の合意と選択及びこれを受けた地方公共団体の判断のもとにすべて確認されているものと判断をして差し支えないのではないかと考えております。  したがいまして、いわゆる未指定地区が仮にあるといたしましても、地域住民及び地方公共団体の意思に基づきまして対象地域とされなかったものでございまして、政府といたしましては、このような地区につきまして調査を行うことは適当ではない、このように考えておるところでございます。
  32. 松浦利尚

    松浦(利)委員 どうもその最後の、後段がちょっと理解できないのですよね。せっかく実態調査をするわけですから、未指定地区でも調査をなさったらどうですか。やはり初めから仕分けてしまうということは差別があるということじゃないですか。そういう実態がここに現に存在しておるにかかわらず、もう調査から、これは未指定地区だからと除外をしてしまう。それは意図的差別じゃないですか。これはまさしく、こんなことを言っちゃ大変怒られるかもしれませんが、人種差別撤廃条約を批准しておらないからできることじゃないですか。法務大臣、どうですか。法務大臣は指定するとか、そういうことは関係ない、行政は総務庁なんですけれども、そういうあり方についてどう思われますか。宮澤内閣の良心ですから。
  33. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は、国務大臣としてお答えします。  今、総務庁の長官から御答弁がございましたように、これは要するに、今の調査は平成三年秋のたしか地対協の意見書に従って、今まで実施しておる地域についてどの程度進捗しておるかといったようなことを検討しまして、調べて、そして残ったところはきっちりやっていこう、こういうことでやっておるわけでございまして、別段、差別といいますか、そういうような地域の差別解消とでもいいますか、それを推進するためにやっておるんであって、千カ所ばかり残っているからこれは差別を深めるというのは、それは全然逆の話でございます。  私も、実は総務庁長官をやりましたから、関心を持ってこの仕事を担当したんですが、現地へも行きました。ところがこれは非常に不思議なんですよ、率直に言いまして。やればやるほど残事業がふえてくる。それからやればやるほど未指定地域というのは出てくるんですよね。ここらがどうも、最初の踏み出しのときに、指定地域として届け出るといいますか、それらについて何かしらん引っ込みの考え方があったんではないかな、こういう私は感じもする。ところがこれ、だんだんだんだん進んでいきますと、地方団体にとっては特別な財政上の面倒がありますね。そうなるとそれに便乗してくるといったようなのは、だからどんどん後からふえてくるということで、これは昭和四十三年から二十何年やっているんですよ。ちっとも残事業が減らない。これは少々、どこに一体ふぐあいがあったのか、こういうようなことをいま一度やはり私はきちんと見直しまして、そしてやるべきことはきちんとやる、便乗するようなものはやらないといったようなきちんとしたことをするのが一番いいのではないかなと。  ただ、御質問の差別を拡大するためにやっているというところだけは、ひとつそうでないんだということを御理解していただきたい。
  34. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今大臣が言われた後段部分については、私の申し上げることが誤解されておれば訂正いたしますが、前段部分、僕は大臣が言われたことは非常に大切だと思うのですよ。そういうふうにしていかれればいいんじゃないですか。そういう方法をとってこれから見直されて、出発点に返って、どこにそういう隘路があったかということをちゃんと、ぴしっと整理して、そして進むということが大切だと思うんです。長官、それでよろしいでしょう。そういうふうに考えていただければ私も理解いたします。(後藤田国務大臣「ちょっと待って」と呼ぶ)ちょっと待たぬでいいですよ。待ちますか。
  35. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今の私は国務大臣としてのお答えでございまして、これは所管は総務庁の長官でございますから、私の発言が総務庁に御迷惑をかけるといけませんから、そういう立場で私の答弁は聞いておいていただきたいな、こう思います。
  36. 松浦利尚

    松浦(利)委員 大臣、前の総務庁長官ですから、大体継承されておるものと理解をしていいですな。首振っておられるからいいんでしょう、こうしておられるから。何かありますか。どうぞ、それでは簡単に一言。
  37. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 この問題につきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおりに十八年間という長い期間にわたって、ありましたらどうぞと、こういうふうなことで、実施事業の希望のある地域につきましては、地域住民の人たちあるいは公共団体の判断のもとにすべて確認されている、このように判断して差し支えないというふうなことになると思うのです。ですから、基本的には政府としては、この地区については調査を行うことは適当ではない、このように考えておりますということを再度申し上げさせていただきたいと思います。
  38. 松浦利尚

    松浦(利)委員 押し問答するつもりはありませんが、私は、法務大臣、前総務庁長官が言われたこと、そのことをぜひ念頭に置いていただきたい。そして人種差別撤廃条約も、いろいろな制約があると思いますが、これは法務大臣の所管ですけれども、できるだけ速やかに批准をしていただくように要望として申し上げておきたいというふうに思います。  どうぞ、法務大臣、総務庁長官、お引き取りください。  それから、もうあと十分になりましたが、新聞で大きく報道いたしておりました、九五年春を目途にする座間市の日産工場の閉鎖問題について若干お尋ねをしておきたいと思うのです。  座間工場の閉鎖について、通産省の方は、今回の日産のリストラ計画の把握は既にしておられたのかどうか。簡単で結構です、もう時間がありませんので。
  39. 坂本吉弘

    坂本(吉)政府委員 お答え申し上げます。  今回の日産自動車の座間工場のいわゆる構造改革につきましては、私の方でも会社の方から伺いまして把握しているところでございます。
  40. 松浦利尚

    松浦(利)委員 今までの自動車産業というのは、シェア重視の業界の過当競争から始まっておる、その体質がこの背景にあったのじゃないかというふうに思うのですね。ですから、今度の問題というのは、不況とかそういった問題は別にして、いずれにしてもすべての自動車産業に共通する問題点を持っておるというように思うのですね。ですから、こうした問題について、これから日本の産業界に与える影響も非常に大きいと思いますし、いろいろな分野について大変大きな影響を与えようと今しておるのですが、もう時間がありませんから、議論を抜きにして、質問の条項を申し上げたいと思うのです。  それで、まず通産大臣には、この閉鎖によって、座間市は、いいか悪いかは別にして、この日産座間工場の城下町的な色彩のある市だったというふうに思うのですね。ですから、あらゆるものがこの日産工場に集中をしている。その中で唐突に影響を受けるのが、工場周辺に集積している零細下請企業だと思うのですね。これに対して通産省はどう対応しようとしているのか、また、日産はこれに対してどうなさろうとしておるのか、その点についてまずお聞かせをいただきたい。  それから、自治大臣、本当に長い間お待たせをしたのですが、やはり企業城下町であればあるだけに、いいか悪いかは別にいたしまして、市の財政に特に税収の面で非常に大きな影響を与える。それに関連をして、関連企業の者、あるいはこの工場の消費を伴っておった商店街、こういったところの税収というものも大変大きな影響を受けてくると思いますね。そうすると、極端な言い方をすると、もう市の形態をなさない。かつての石炭産業等に見られたような人口に対する影響というものも出てくるのではないか。一体これをどうするのだ。  そうすると、この工場のあった跡地、当然これも日産は売却するというようなことになってくるわけですが、この工場という広大な敷地面積が一体どのように座間市の中で利用されていけばいいのか、こうしたものは看過できない大きな問題だ。しかも、これは今座間市だけに起こってきた問題ですけれども、恐らく将来、自動車産業等を含めて多くの基幹産業に見られてくる状況だと思うのですね、産業の空洞化という言葉は避けたいと思いますけれども。  いずれにいたしましても、そういう状況にどう対応するのか、この際、通産大臣、自治大臣の御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  41. 森喜朗

    森国務大臣 今松浦先生から御指摘ございましたように、自動車需要が低迷をいたしておりまして、それを背景としまして深刻な経営状況に直面しておることは、私ども我が国の自動車産業全体は、それぞれそういう状況の中で今さまざまな、いわゆるリストラといいましょうか、構造改善努力を行っておられます。そういう中で、今回目産自動車が座間工場での車両生産を中止をして、九州工場に移転するということを発表したわけですが、これも構造改善努力の一環というふうに私ども承知をいたしております。  ただ、今後日産自動車がどういう推移をしていきますか、まだ具体的な細かなことをすべて承知しているわけではございませんが、座間工場の工機部門、工作機械等をやっておられるわけでありますが、これはまだ将来ともに日産工場としては必要な部門だそうでございます。あるいは技術部門、これはこのまま事業を継続をしていかれる、そしてさらにそれをまた拡大する予定である、このように我々も伺っておるところでございます。  それから、これも委員が大変今御心配なさいました地元下請中小企業の活動等に与える影響、これも親事業者である日産自動車の対応も踏まえていかなければなりませんが、それを注視していくことがまず当面大事だと思っています。  通産省としましては、影響を受けます地元下請中小企業に対しまして適時適切な対策を講じていかなければなりません。具体的に言えば、下請取引あっせんの積極的な推進をしていくとか、あるいは低利融資の実施等の施策を進めていくとか、中小企業対策に万全を期していきたい、こう考えております。
  42. 村田直昭

    村田国務大臣 松浦委員の御質問に対し、自治大臣としてお答えを申し上げます。  座間市の税収は、市税が百六十五億円、これは市の歳入全体の六割を占めております、これは平成三年度の決算でありますが。そのうち、工場の操業等に関連する税目である法人市民税法人税割は約十五億円、これは市税の九・一%でございます。それから、固定資産税及び都市計画税は約六十五億円、市税全体の三九・四%ということになっておりまして、日産自動車座間工場が閉鎖された場合には、おっしゃいましたような影響がいろいろな面で非常に出てくると思います。まさに企業城下町的な色彩が濃いわけでありますから、その税収の減少について、御指摘になられましたような市民への影響を十分に考えていかなければなりません。  ついては、神奈川県で二月十六日に、知事が本部長をなさっております景気対策推進本部が発足をいたしました。そして、情報収集に当たっておる。そして、今後の取り扱いについて検討をしていく方針であると伺っております。そして、現在はまたこれらの正確なデータが伺える段階でないかと思います。  したがいまして、今後は県を通じ市の対応等をお伺い申し上げながら、自治省としても交付税それから地方債等の運用の中で、市の行財政運営上著しい支障を生じることのないように、地方自治の観点からよく対応をしてまいる、こういうふうに考えております。
  43. 松浦利尚

    松浦(利)委員 労働大臣、済みません。  労働大臣。  御承知のように、当然配転とかそういった状況が労働条件に影響を与えてくるのです。そうすると実質的には、社宅がありませんから、北九州の工場に行くとしても、そうすると、別居とかそういった状況が生まれてくるわけですね。これは、労働行政というのは労使間の問題が中心でありますから、なかなか答弁はしにくいと思うのですけれども、極めて、働いておる労働者にとっては、地元採用の人たちについては異動ということについても非常に厳しさを持つのですね。ですから、失業問題というものも当然派生的に生まれてくるわけですが、そういった問題について大臣からも御答弁をいただいて終わりたいと思います。よろしくお願いします。
  44. 村上正邦

    ○村上国務大臣 御指摘のように、北九州へ、そしてまた村山工場へこれは移るようでございますが、労働省といたしましても、今おっしゃられたような、やはりきめ細かなところに十分配慮していく必要があるということで、現在早急にそういうことについて把握に努めるようにいたしております。  いずれにいたしましても、失業者を出さないということで、大体具体的に移行するまで一年間あるようでございますので、十分そういうことも万々御指摘の配慮をいたしまして、指導していきたい、こういうように思っております。
  45. 松浦利尚

    松浦(利)委員 ぜひ、これは大きな問題ですから、政府においても積極的に対応されるよう最後にお願い申し上げまして、終わります。  ありがとうございました。
  46. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて松浦君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井英勝君。
  47. 吉井英勝

    吉井(英)委員 私は、中小企業の業者の皆さんと不況問題の懇談会をずっと重ねてまいりましたが、今まさに生死の境をさまよっているという深刻な状態です。そこへ円高の追い打ちということで、これまでから大手の企業は産業空洞化を進めておりますが、富士通など、テレビでも生産拠点を改めて海外へ移すのだということも言われておりまして、一層激しく進行していこうとしております。そういうときに、今も少しお話ありましたが、日産座間工場閉鎖という問題の発表があり、失業者の増大であるとか、あるいは何も座間市だけにとどまらないで、周辺にも一次、二次、三次と下請企業がありますから、かなり広範囲に中小企業の経営にとって深刻な打撃が今広がろうとしている。  そこで、まずこの座間工場閉鎖問題について伺いたいと思うわけです。  日産自動車は、座間工場はサニーなどを中心に年産二十六万台生産しているようでありますが、これらの閉鎖を含む大合理化計画を発表いたしましたが、これまでからの政府は、一九八五年のプラザ合意円高政策に転換し、前川リポートに基づいて経済構造調整といって内需拡大、設備投資であるとか海外直接投資の拡大など、これらを強力に進めてきております。こうした政策に沿って、自動車各社は北米を中心に一斉に海外投資を進めて生産拠点を拡大してきたわけでありますし、国内においても新鋭工場を各地に増設するなど同様のことがありました。ですから、今回発表された大合理化計画というのは、こうした政府のこれまでの政策とそれから自動車各社の企業活動の結果として起こるべくして起きたものではないか、私はこう思うわけであります。  通産大臣は、この点でその責任をどのように考えておられるのか、このことをまず伺いたいと思います。
  48. 坂本吉弘

    坂本(吉)政府委員 お答え申し上げます。  各産業における生産の状況、またその生産能力を形成するための設備投資のあり方、そういった問題につきましては、御指摘のような経済の一般情勢、また国際的な情勢、そういったものに対応してなされるわけでございます。  そういった点で、各企業において、将来の製品の需要想定あるいはそれに対するいろいろな経営資源の集中、そういったことに対応して各社においてなされるところでございまして、もちろん政策一つの要素とは存じますけれども、現在の体制におきましては、基本的には各社の自主的な判断というものがその基本にあるものと考えております。
  49. 吉井英勝

    吉井(英)委員 今日の事態をとらえるのに余りにも気楽な発想だと私は思うのですよ。  通産省からいただいた資料によりますと、自動車の国内生産台数は、一九八五年の千二百二十七万台が、一九九二年で千二百五十万台。その内訳ですが、国内販売台数は六百九十五万台で、輸出台数が五百六十七万台。つまり、この間の推移を見ておりましても、結局日本国内の自動車の需要のおよそ二倍を生産しているわけですね。こういうことをやっている。つまりこれ自体が私は非常に異常だと思うし、貿易摩擦や今日の円高の元凶になっているわけでありますが、その上海外の生産拠点の拡大によって、例えばアメリカだけでも日系メーカーの生産台数というのは八五年の三十六万台から九一年の百五十五万台に急増している。つまり、八五年九月のプラザ合意円高政策をとることになって、六年間でアメリカでの生産が四倍、この間ふえた自動車の生産台数は百二十万台ですね。日本の国内での需要の二倍を生産し、海外でもどんどん生産している。しかも、この点ではメキシコ、カナダ、ヨーロッパなどでも同様にどんどんふやしているわけですね。  バブル景気のときというのは国内需要がある程度ありましたから、この矛盾が余り顕在化しなかったわけでありますが、しかし、これでは結局国内工場の閉鎖が起こってきて当然だと思うのですね。円高政策をとってこういう海外への生産拠点の移転を進めておきながら、何かそれが個々の企業の御判断でというふうなことで、ある程度関係はあるかもしれぬがというそういう今の答弁は、政府の責任というものを全く感じておられない、こう考えざるを得ないのですよね。これは、通産大臣、どうでしょうね。
  50. 森喜朗

    森国務大臣 今、機情局長少し言葉足りずであったかもしれませんけれども、基本的にはやはり我が国は自由主義経済、そして企業が自主的に判断をし経営というものを考えていく、当然なことだと思いますし、政府はそれによってその環境を整えていく、それが基本的なやはりスタンスであろう、こう思っております。  したがいまして、今いろいろと委員からお述べになりました海外の拡大戦略というのは、必ずしも日本の自動車業界が海外で拡大戦略を自主的に進めていくということだけではなくて、当然それぞれの国々から企業進出の要請というものもございます。また、アメリカでもそうでありますしヨーロッパでもそうでありますが、その地域にとって、ぜひ日本の工場に進出を期待をする、特定の国の名前は差し控えますが、まさにヨーロッパなどでは政府の最高首脳が、ぜひとも我が国の自動車産業に進出してほしいというような要望もあって進められているものでございまして、必ずしも我が国の自動車産業がいわゆる外国に拡大戦略をとってきたというものではないと私ども承知をしておりますし、またその過程にありまして、十分政府としても相談に乗り、調整をしながら進めてきているということも申し上げておきたいと思います。  それから、輸出関係にいたしましても、自主的に例えば日本とアメリカとの間、あるいはヨーロッパが今話し合いを続けておりますけれども、モニタリングをやるとか、自主的にいろいろな形で企業がそれぞれの国の自動車産業あるいは需要動向、そうしたものを十分考えながら進めているということもぜひ御理解をいただきたい、このように思う次第であります。
  51. 吉井英勝

    吉井(英)委員 今のお話を聞いていると、これは貿易摩擦も円高も何か自然現象みたいな話になってくるわけでありますが、日産自動車は昨年九州の工場で、第一工場の三十六万台に続いて第二工場二十四万台新たに完成させて、年産六十万台体制ですね。アメリカで二十五万台の設備増設を昨年完了し、稼働させ、メキシコではさらにことしの秋に稼働を目指して十万台増設中です。つまり、海外に生産拠点どんどん移して、どんどん生産をふやしながら、国内でも新鋭工場だということでどんどん設備を増強して、一方、今度は突然工場閉鎖ということですね。  これは日経の二十四日付に出ておりますが、日産の社長はこういうふうな、九五年春に生産集約して、全社で五千人削減だという計画を打ち出す中で、一九九三年度には黒字に転換し、九五年度には一千億円以上の営業利益を目指すんだと。これは、企業からすればただもうけだけ考えればそれでいいというお考えかもしれないけれども、しかしこれでは、さんざん日産の座間への進出については、誘致に当たって市がさまざまなサービスに努めたり、労働者、下請中小関連業者の皆さん、地元住民の皆さんがそのことによって大きな打撃を受ける。本当にはかり知れない打撃を今受けようとしているわけでありますが、私は、こういう座間工場の閉鎖を含む大合理化計画については、企業の自由な活動だから仕方がないということだけじゃなしに、やはり企業には社会的責任というものがあるわけですから、この大合理化計画を撤回するように日産自動車に働きかけたり指導してもらいたいと思うんですよね。  その点で、通産大臣と労働大臣の決意を伺いたいと思いますし、また自治大臣には、この企業の進出に伴って道路であるとか上下水道、社宅、工場用地の便宜だとか、あるいは人口がふえれば保育所、学校、清掃その他さまざまな行政サービスを引き受けなければいけないわけですから、この点では施設とか人員面での整備をやってきているわけですね。一体、日産の進出に当たって地方自治体はどれだけのことをやってきて、今度撤退だということでどういう問題をこうむろうとしているのか。私は、自治省としては、まずこういう行財政上の影響について調査をしていただく必要があると思うんですよね。その調査と同時に、やはり自治省としても、自治体とそこに住む住民に大きな打撃がかかってくるわけですから、大合理化計画撤回を求める働きかけというものをやっていただきたいと思うんですが、それぞれの大臣の方から決意を伺いたいと思います。
  52. 森喜朗

    森国務大臣 今委員からもいろいろと前提のお話がございましたように、自動車産業全体はやはり需要が低迷をいたしておりますことは事実でございますし、また、それぞれ企業が将来の自動車の需要というものをいろいろな角度から検討しており、そういう中でそれぞれの企業がさまざまないわゆる構造改善というものを進めておられる。その一環として今度の日産の座間工場の生産中止ということをお決めになったことでありまして、これは企業がそういう対応を十分調査もし、検討も加えられた形だろうと思います。それを政府の方から差しとめるとか翻意を促すというようなことは、これは政府としてとるべき態度ではないというふうに思っております。  ただ、先ほど申し上げましたように、工機の部門あるいは技術部門というものは存続をし、さらに拡大をしたいという考え方もあるようだというふうに承っておりますから、今後の日産自動車の対応というものを政府としては注視をしていく必要がある、このように考えております。  それから、地元商店街あるいは地域経済等に対する心配というのは、これは当然あるわけでございます。また、下請関係の問題もございます。これは先ほど松浦委員の際にも申し上げましたように、今後の日産自動車の対応というものを十二分に注視をしていくということだろうと思う。そういう中で、その事態の推移に応じまして、影響を受けます域内の中小企業に対してどのような措置がとっていけるか、適時適切な対応策というものは十分とっていかなければならぬ、このように考えております。
  53. 村上正邦

    ○村上国務大臣 労働省といたしましては、先ほども松浦委員にお答えいたしましたように、何といたしましても離職者を出さないことが最重要であると考えております。  お話聞きますと、平成六年七月までは従来どおりの生産もする、こういうことでございますので、その間、下請関連企業を含めまして、その影響を受ける企業数もあると思いますので、具体的な計画が進められます一年間、その間十分な対策を講ずるよう日産自動車初め関連企業に対して指導してまいります。
  54. 村田直昭

    村田国務大臣 お答えを申し上げます。  この座間市という市は、先ほど松浦委員からの御質問にお答えしましたように、人口十万超でございますが、日産自動車その他の税収入の関係は先ほど申し上げたとおりでございます。それで、平成三年度の決算は、歳入が二百七十五億円、歳出が二百五十九億円で若干のプラス決算でございます。そして、平成四年度は交付団体になりまして、一億七千九百万円の交付を受けました。単年度の財政力指数は〇・九八五ということで、公債費負担比率は七・五、起債制限比率は七・〇。  したがって、今までの経営においてはおおむね通常の市として経営をしておるわけでございますが、今回の日産座間工場の移転等の動向に伴いまして、県では先ほど申し上げたように、知事が本部長になって、対策本部を設置をしてこれに対応する、こういうことでありますが、今両大臣からお答えがございましたように、これはまだすぐにそういった数値がすべてつかめるという段階ではございません。したがって、県と十分連絡をとり、また県を通じて座間市とも連絡をとりながら、今後の対応については、地方債そして交付税その他において市民の生活に大きなショックの出ないように対応しなければならないと思っております。
  55. 吉井英勝

    吉井(英)委員 私、今挙げられたようなとりあえずの数字じゃなくて、私は、これはかつて大阪の方で、非常に大きな規模のコンビナートの造成に当たって、幾ら自治体の方が支出をし、それが幾ら今度は税その他で歳入として入ってきてとか、費用分析をやったことがあるんですよね、学者の皆さんの協力も得て。やはり今度の場合そういうふうな影響の調査、それは直接の税収の問題だけじゃなしに、どういう自治体への影響があるか、私はこれは自治省として相当総合的な調査をまずやっていただきたいと思うのです。  そのことを申し上げたいのと、それから合理化計画を前提として、それを認めた上での大臣のそれぞれのお考えを伺ったわけですが、そうではなくて、根本は撤回を求めることなんだ、やはりその立場に立って進めていただきたい、そういうふうに申し上げておきたいと思います。  通産大臣にさらに伺いたいんですが、やはり日産のこの座間工場の問題にとどまらないで、根本にあるのは、国内産業を空洞化させて下請や中小企業を切り捨てていく今の大企業の海外進出をどのようにコントロールしていくか、規制していくかというこの問題、また、これまでそういう海外の進出などを後押しする税制、金融上の優遇措置がありましたけれども、これをやはり抜本的に見直さなければならないところへ来ていると思うんですよね。こういう点での大臣の見解というものを改めて伺っておきたいと思うのです。
  56. 森喜朗

    森国務大臣 経済というのは絶えず変化をしてまいります。それは国内的な問題もございましょうし、それから国際的な変化もあると思います。そういう意味では、国際的に進出をしていきますのは、先ほど申し上げましたように、単に日本の拡大戦略だけではなくて、それぞれの国からやはり要請あり、求められているというケースもあるわけでございます。そういう面での税制面とか金融面とか、いろいろな角度で政府はバックアップしていくということも、これは企業が前進をしていくことと同時に国際的な協調が進められていくということの両々相まつという面もあるかと思います。もちろん今先生指摘のように、それぞれの国もまたいろいろな問題が出てまいります。経済というのは、関係が深まれば深まるほどいろいろな意味でまた摩擦も生じてくるということは当然なことでございます。全体的には、世界全体のやはり自動車というものに対する、自動車のみならず各方面の産業にも言えることでありますが、調整はしていかなければならぬということは言うまでもないと思います。  それからもう一つ、国内のいわゆる下請等関連企業というものを空洞化させていくということは一つの目的ではないはずでありまして、むしろそうした下請とか、協力していただいた企業というものをやはりより経営的にもよくしていくということによって、やはり自動車、今の立場で言えば日産そのものが健全な経営になっていくということを求めているものであって、そのことが日本全体の経済を、またこれは体質を強化していくというふうに考えていかなければならぬというふうに私は考えております。
  57. 吉井英勝

    吉井(英)委員 日ごろ皆さんは、企業は社会的存在だからということで、企業献全容認論をよく展開されるわけですが、まさに企業は社会的存在だからこそ、ですから、これは企業としての社会的責任をこういうときにやはりしっかり果たしてもらう必要があると思うのですよ。そして、政府の方も、さまざまな税制上、金融上の優遇措置をこれら大企業が海外へ進出していくときにとっているわけですから、政府もまた社会的責任をこれらの企業に果たさせるようにするとともに、みずからも社会的責任を果たしていく。こういう点で私は、通産大臣を先頭にして、今回の問題について、これは一日産座間工場の工場閉鎖の問題ということにとどまらないで、日本の大企業の産業空洞化をどのように規制していくのか、そういう観点に立ってしっかり仕事をしていただきたい、このことを申し上げまして、次の課題に移りたいと思います。——労働大臣、結構ですから。  今日の不況は、特に日本の事業所の九九%を占めております中小下請企業の経営と国民の暮らしにとって深刻な事態となっております。政府は不況対策として公共事業の予算をふやしておりますが、問題はその中身だと思うのですね。国民の暮らしに密着したものか、中小企業に仕事が回ってくるものか、そのことが明らかにされなければならぬと思うわけです。  そこで第一に、政府の進めている大型公共投資で中小企業にどれほど仕事が回っているかということをまず見たいと思うのです。  第一種空港、国が責任を負う国際空港を民活でやろうとして関西国際空港株式会社をつくり、空港島の建設費を下げるために、空港支援機能を持つ島を分割して、分離して、それを海岸に沿って前島として大阪府につくらせるというふうな、こういうやり方で関西新空港が事業をやられておりますが、そこでまず運輸省に、この五百十一ヘクタールの島だけの部分、関西新国際空港建設事業で中小企業の受注した契約率は一体幾らなのか、これをまず伺いたいと思います。     〔委員長退席、鴻池委員長代理着席〕
  58. 松尾道彦

    ○松尾政府委員 ただいま御指摘の関西新空港でございますが、来年の夏開業前提で、今関空会社で精力的に工事を進めさせていただいております。現在約八四%ぐらいの進捗率でございます。現在御審議いただいています平成五年度の予算案でいきますと、全体で約九五%ぐらいの進捗率になろうかと思います。  ただいま先生指摘の件数でございますが、これは平成二年度でいきますと、国直轄事業でいきますと、二件で、国の部分が中小企業関係が二千万、それから三年度で四件で五千万という程度でございます。それから、関西空港会社が発注いたしております事業でございますが、平成二年度で七十八件で、事業費が約七十三億円中小企業に回っています。それから平成三年度でございますが、百件で四十二億円でございます。これは、関西空港の場合には五百十一ヘクタールという大変大規模な、水深二十メーターぐらいのところの埋立事業をやっておりまして、こういった技術力、しかも短期間に集中的に事業を実施するというふうな必要がございます。また、私ども国の関係の事業といたしましては、VOR・DMEといったような航空保安施設とかあるいはレーダー関係の諸施設ということで特殊専門的な機器でございまして、こういうふうな事情からこんなぐあいになっているようでございますが、引き続き一生懸命やっていきたい、このように考えております。
  59. 吉井英勝

    吉井(英)委員 今運輸省直轄分の方で中小企業の発注率〇・一%とか〇・二%というお話ありました。  それで、これは第三セクターというやり方ですが、国が多くを出資して株式会社方式でやっておりますが、関西新国際空港株式会社としての中小企業への発注率、これはこれまでのトータルで、総事業費一兆七十三億円の中で五・三%というところですね。そういうふうに、本当に大きな大型公共事業となるとほとんど中小企業には回らないわけであります。  私はこの点でちょっとこの機会に運輸大臣に伺っておきたいのですが、特に政府関係の官公需の発注率の中で、確かに今出ておりましたような三つの大型プロジェクト、これが大体三大プロジェクトの占める割合が三三・四%。三大プロジェクトというのは羽田沖展開とそれから新東京国際空港分合わせてになりますが。ですから、確かにその割合は大きいのですが、しかし、政府の官公需の中で中小企業への発注率の極端に悪いのが防衛庁の一四%と運輸省の二二・三%ですか。私はこの点では、今不況の中で特に中小企業に仕事を回すということで官公需法もつくって国としても取り組んでいるはずですから、この点で、この発注率を高める大臣としての決意というものを伺いたいと思います。
  60. 越智通雄

    越智国務大臣 先ほど政府委員から答弁をいたしましたが、運輸省の受け持っております公共事業、飛行場とかあるいは港湾とか、大型プロジェクトが多いのが現状であります。また、非常に技術的に難しい問題等もございます。非常に難しいとは思いますが、今後、先生の御趣旨のとおり努力をいたしていきたい、できるだけ中小企業に発注できるような努力、工夫をさらにさらに進めてまいりたい、かように思っておる次第であります。
  61. 吉井英勝

    吉井(英)委員 国の方の大型公共事業、それにリンクする形で地方自治体としても大型公共事業を進めた場合、地方自治体の方ではどうなるかということもこの機会に見ておきたいんですが、関西新空港を支援する施設として、さっきも言いましたように、大阪府として、大阪府の企業局の方で三百十八ヘクタールのりんくうタウンという、前島と言われているのを建設しておりますが、この事業では中小企業の受注率は大体幾らになっていますか。
  62. 関收

    ○関政府委員 お答え申し上げます。  ぜひ、先生御案内のとおりで、御理解いただきたいと思うのでございますが、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律に基づきまして官公需対策をいたしておりますが、地方公共団体につきましては、「地方公共団体は、国の施策に準じて、中小企業者の受注の機会を確保するために必要な施策を講ずるように努めなければならない。」という一条があるだけでございます。  私どもといたしましては、国の官公需の確保についての方針が決定いたしますと同時に、地方公共団体にも御協力をお願いする、あるいはまたそういう地方公共団体における事業で中小企業の方が受注を受けることができるような環境条件の整備をするということについては実施をいたしております。また、地方公共団体全体の中におきます中小企業の比率が六五・二というような状況を把握いたしておりますが、今先生指摘のような個々のプロジェクトでどのような比率になっているかということにつきましては、私どもとしては把握をいたしていない状況であることを御理解いただきたいと思います。
  63. 吉井英勝

    吉井(英)委員 これは官公需法七条により指導をするという立場にもありますし、その気になれば調べることができるわけです。  そこで、資料の配付をお願いしたいと思うんですが、皆さんにも私の調べましたのを少し見ていただきたいと思いますが、地方公共団体の個々の事業であれ、あるいは第三セクターのものであれ、実際に調べようと思ったらそう難しいことではなく調べることができるわけです。今私が伺いました話というのは、これはこの資料の右側の方を見ていただきたいんですが、これは第三セクターじゃなくて、ちょっと書き方がまずいんですが、大阪府企業局の事業ですから自治体事業になりますが、南大阪湾岸整備事業と言われているものです。これがこれまでの契約金の総額は、千二百八十九億円余り。この中で中小企業の発注率は一八・七%なんですね。ですから、地方自治体も、大型公共事業が不況対策だということでやっておったんじゃ中小企業には仕事が回らないということがこのことでもよく見ることができるわけです。  それから、関西新空港の方、会社としてやった分を、ここに左の上の方に載せておきました。  左の下の方には、東京臨海副都心開発で五つの第三セクターがつくられておりますが、それぞれの中小企業の発注率というのをここに載せておきましたが、これまでの三千九百八十二億円の五つの第三セクターでやった事業の中で、中小企業の受注した割合というのは一・五%ですね。ですから、第三セクターがやる、あるいは地方自治体が直接やるにしても、大型公共事業というのは本当に中小企業へ仕事が回ってこない。  あわせて、横浜市がやっているMM21、これはみなとみらい21か三菱みらい21かとよく言われるところでありますが、中小企業の受注状況がどうかというのを調べてみますと、これは九二年四月一日から昨年一年間横浜市が工事した分ですね。多くは第三セクターなりその他でやっておりますが、市が工事した分の五十二億円余りについて見ても、中小企業の受注率は一八・三%。これは大阪の南大阪湾岸整備事業に見られるのと大体同じぐらいの割合です。  そこで、従来、公共事業にしても、大型公共事業をやって大企業に仕事を回せば、大体仕事やお金が中小企業にも回っていくんだという、いわゆるトリクルダウン・セオリーというのがとられておりましたが、これはアメリカの大統領選挙でも既にそれはだめだということを訴えたクリントン氏が勝利したように、大体結果が出ていると思いますので、私はきょうはここでそのことは繰り返しませんが、問題は、そういうふうにしてやってきた、国も旗振り、後押しを受けて地方が大型公共事業として取り組んできたりんくうタウンなり臨海副都心と言われるもので、これはバブルの崩壊で大企業の方は計画の縮小や撤退に走ってしまって、自治体の方は採算見通しが狂ってきたり財政負担をこうむってひどいことになってきている、こういう事態にあるように伺っているんですが、補助金や負担金を出している国として、そういう今日の実情というのは、これらの例についてはつかんでおられますか。
  64. 関收

    ○関政府委員 私ども中小企業庁としての立場の御答弁ということで御理解賜りたいと思っておりますが、先ほど御答弁申し上げましたように、地方公共団体の発注につきましては私どももいろいろお願いをいたしておりますけれども、基本的に地方自治の原則のもとで、各都道府県のあるいは市町村の御判断により発注先等が決められているという実態であることを御理解賜れればと思います。
  65. 吉井英勝

    吉井(英)委員 私が今伺いましたのは発注率の話じゃなくて、事業をやってきて破綻をしたから、これは多くの場合は建設大臣認可などでやっているわけでありますが、そういう点で採算が狂ってきたりしていることについて、政府として今日の実態をつかんでおられるかということなんです。まあ質問の意図を酌んでいただけなかったならばあれなんですが、ですから中小企業庁の話じゃなくて、政府としてこれだけ後押しをしてやってきて、今こういうことになっている、採算割れになったりしているこの事態をつかんでおられるかということなんですが、お答えいただけますか。——これはまず政府の方で、採算が狂ってきたり、今深刻な事態を招いておりますから、しっかり把握をしていただきたいと思うんですね。  わずかの例ではありますが、以上の例でもわかるように、大型公共事業の中小企業の仕事を活発にする上での貢献というのは非常に小さくて、自治体の負担は非常に大きい。また、採算割れになったりしたときに、企業は撤退して終わりなんですが、残された自治体というのは、これまでの例からしても本当に深刻な事態をいつも受けているわけであります。  そこで、この公共事業予算をふやしても、こういうやり方では本当に中小企業や国民の期待する不況対策にはなりませんから、やはり公共事業ということを考えるときに、これまでの産業基盤整備対生活基盤整備というこの比率を逆転をする、そして生活密着型の公共投資へと、中小企業にも仕事が回る方向へと切りかえていただきたいと思うわけであります。  そういう点で、今も言いました国民の暮らしに役立つものだったら、例えばどういうものだったら中小企業に仕事が回るかという点で、これも一つの例を少し見てみたいと思うんですが、大阪府と東京都の例で見てみますと、大阪府建築部の建設事業の大きなものといえば、住宅、学校です。近ごろは学校はかなり比率減っておりますが、これらは分割発注などで中小企業にかなり仕事が回るんですね。一九九一年度で七六・〇%、これが中小企業の受注率です。東京都でも、都営住宅建設工事契約を調べてみましたが、一件八千万円を超える住宅建設などの工事で、九一年度では六三・三%、八千万円以下の小規模改修工事になりますと八三・一%、これぐらいやはり住宅など生活に密着した公共事業であれば中小企業への発注率は非常に高いというふうに見ることができるんですが、ちょっと数字が間違っていてはいけませんのであらかじめ申し上げておきましたが、もし中小企業庁の方で確認していただいていたならば、これで間違いがないかどうかだけ確認しておきたいと思うんですが……。
  66. 関收

    ○関政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来御答弁申し上げて、再三で恐縮でございますが、私ども、地方公共団体が発注いたしますトータルの比率については把握をいたしておりますが、個々の案件につきましてどれだけの比率が中小企業向けの発注に向けられておるかということについては把握しておりませんので、今先生指摘の数字の評価についても、御答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。
  67. 吉井英勝

    吉井(英)委員 私でも簡単に調べられるんで、これは突然の質問じゃなくて、ちょっとこれぐらいのことは調べておかれるように申し上げておいたんですが、住宅というのはすそ野の広い産業でありますが、大阪府なり東京都なりで住宅建設戸数がこの間どのように変化してきているかとか、それから国の住宅建設への、公営住宅対策費などの動きはこの間どのように変化してきているかということも伺いたいということで申し上げておいたんですが、これはお答えいただけますか。
  68. 三井康壽

    ○三井(康壽)政府委員 公営住宅の建設戸数の推移がどうなっているかというお尋ねでございます。  特に先生から御指摘を事前にいただきましたのは、一九七五年から五カ年刻みでどういうふうに推移しているか、それをお答えさしていただきたいと思います。  一九七五年度、昭和で申しますと五十年度でございますが、六万八千六百戸でございます。この時期が一番住宅難解消の時代で、五カ年計画の総戸数がピークの時代でございました。これが公営住宅につきましても一番ピークの建設戸数でございます。五年後の八〇年度、昭和五十五年度でございますが、五万六千六百戸。さらに八五年度、五年後、昭和六十年度でございます、四万二千二百戸。また九〇年度、平成二年度は三万七千二百戸でございます。  なお、本年度につきましては、十二月現在で地方団体との相談では四万一千五百戸、こういう計画でやや増加傾向を示しているところでございます。
  69. 吉井英勝

    吉井(英)委員 私、国の方と大阪府など地方自治体と両方、こういうとき国もしっかりやってもらわなきゃいけないし、地方自治体でも生活密着型の公共投資というのは大事ですから、見てみたんです。それで、事前にお話もしておいたんですが、大阪府の例で見てみますと、一九七〇年代の初期、最初の三年間ぐらいは年間建設戸数が大体九千戸ぐらいで、ほとんど新築なんですね。それで、九〇年代に入ってからの三年間を見てみますと、これは大体年間千八百戸ぐらいで、これはもう大幅ダウンなんですね。大体五分の一ぐらいに減って、新築は昨年と来年度はゼロ。ゼロでなぜそうなるかという、不思議に思われると思うのですが、実は建てかえはやるけれども、新築は減っているのですね。  今大都市部で、それじゃ、住民の住宅要求はないのかといいますと、これは新築住宅への、府営住宅への、公営住宅への応募倍率が十八・四倍とか、かつてのような数十倍とか百倍を超えるとか、そういう時代から確かに今建設省おっしゃったように、変わってはきているのです。しかし、依然として住宅の問題は深刻なんです。  ところが、この国の住宅対策費の方、一番わかりやすいところで八〇年代をちょっととってみると、もうちょっと長い年限でとった方がいいのですが、ちょうど臨調が言われ出した後の八二年と八七年のこの五年間で、この辺が非常に極端によくわかるからとってみたのですが、住宅対策費はマイナス二・七%なんですが、国の公営住宅の対策費はマイナス九・六%、大方一〇%近く公営住宅の対策費が落ち込んでいるわけですね。そして、現実にそういう国の予算が落ちてきている中で、つまり国から入ってくる補助金が減ってきますから、地方自治体の公営住宅への建設意欲は薄れてくると申しますか、そういう中で、かつて七〇年代の新築は全体で五分の一ぐらいなんですが、新築は今やゼロ、そういう事態になっているわけですね。  そこで、私は建設大臣にこの機会に伺いたいのですが、こういう国や地方の実態を見ながら、やはり公営住宅対策費をふやして、自治体の建設意欲を高めて事業を促進するとともに、今日都市部で本当に住宅に悩む国民の期待、それから増築なども含めて、もう少し広い間取りの公営住宅をとか、低家賃の住宅をという、こういう国民の期待にこたえて、大量建設の願いにこたえたこの事業を進める。それは同時に、これは中小企業にさっきも言いましたように非常に大きな割合で仕事が回りますから、私は、不況対策としてぜひ建設大臣にはこのことを積極的にやっていただきたい。とりわけ新築はうんと落ち込んでいるのですが、こういうものをもっと進めていただきたいと思うわけですが、これは建設大臣の決意を伺いたいと思います。
  70. 中村喜四郎

    ○中村国務大臣 お答えをいたします。  ただいま先生から御指摘をいただきましたように、公営住宅は比較的規模も小さいでございますし、また、その専門業種等に分かれておりますので、この中小企業の受注機会というものは、建てかえも新築も含めて、比較的高いということは私も十分認識しております。そこで、建設省といたしましては、現在進めております第六期住宅建設五カ年計画におきまして二十九万戸の公営住宅を建設するという目標に向けて、今達成に取り組んでいるところでございます。
  71. 吉井英勝

    吉井(英)委員 さて次に、国や自治体の官公需の中小企業への発注をふやす問題、先ほども少し触れ出したことですが、この点についても私は中小企業庁としての取り組みも特に求めたいし、通産大臣の方にも特に頑張っていただきたいと思っているのですが、これも具体の例として少し見ておきますと、大阪府の官公需の中小企業発注率を見ると、七〇年代から八三年まで五八%台から六〇%であったわけですが、民活論が言い出されたころから大企業の受注がふえて、九一年度では中小企業は五二・一%とかなり落ち込んでいるわけです。つまり、中小企業庁の方は、中小企業基本法二十条、官公需法四条、七条によって自治体にも指導しておられるのですね。指導しているのに現実の姿は逆になっている、これは一体どういうことなんでしょうか。
  72. 関收

    ○関政府委員 先生指摘のとおり、私どもは官公需法第七条に基づきまして、毎年地方公共団体、特に都道府県に対しまして、通産大臣名で中小企業向けの官公需の拡大に努力していただくようにお願いしていることは御承知のとおりでございます。  また、直接その発注をどこにするかというようなことは、それぞれまた地方公共団体の御判断という点もあるわけでございますが、私どもとしては、中小企業が発注を受けやすいような環境整備、条件整備には最大限の努力をさせていただいているところでございます。  ところで、今先生指摘のように、実は毎年毎年のその結果を見てまいりますと、年によって中小企業向けの発注実績に波があることも御指摘のとおりでございます。これは私どもどのような事情がということでいろいろ勉強いたしておりますが、一つは、先ほどもちょっと御答弁にございましたが、技術的な問題、あるいはまた官公需法の第三条にもございますが、国の場合におきましても中小企業の発注に最大限の努力をいたすわけでございますが、同時に、予算の適正な使用に留意しつつといいますか、効率性というようなことも十分配慮しながら発注先を決めていかなければならないという点もあろうかと思うわけでございます。  今先生申されましたこの実績は、各地方公共団体大変頑張っていただいていると思いますが、そういった技術的、経済的といったような事情からくる一つの変動ではないかと私ども考えておりますが、いずれにいたしましても、そういう場合につきましても、先ほど先生指摘ありましたが、例えば分割発注を可能な限り使うような形で中小企業の方々が受注を受けやすいような条件を整えるといったようなことにつきましては、今後とも全力を挙げて努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  73. 吉井英勝

    吉井(英)委員 大阪府は後退しておりますが、それでも伺ってみると目標六五%を設定して一応取り組んでいるというのですね。  ところが、東京都の方でも伺ったのです。目標値は持っていないというわけです。この東京都についてちょっと見てみますと、九一年度で五〇・四%が中小企業の受注率となりますが、中小企業庁の方でまとめられた全国の実績と比べてみても、大体一五%ぐらい低いわけです。現在の全国平均並みまで東京都が持っていくと、都の仕事だけでも中小企業に新たに二千五百億円の仕事が回ることになる。  それから、八五年から九一年にかけて全国の自治体で、これは中小企業庁のまとめられた資料に出ておりますが、全国の自治体での発注率七四・四%が、実は六五・二%へと九・二%、約一〇%近く落ち込んでいるわけです。これは、もし八五年の比率に戻せば、新たに一兆九千億円の全国の地方自治体の仕事が中小企業に回るという計算になります。この点では国自身の努力とともに、私は自治体への指導を、これはやはり官公需法七条などに基づいて指導を強めていただきたいと思うわけでありますが、大臣、どうでしょうか。
  74. 森喜朗

    森国務大臣 先ほど中小企業庁長官から申し上げましたように、また今委員からも御指摘がございましたように、官公需確保法第七条におきまして中小企業者の受注機会を確保するということで、その施策を講じるように定められておりますので、その契約、国等の契約の方針を参考にして中小企業者の受注機会の増大のための措置を講ずるように要請してまいりたいと思っております。そういう意味で、毎年大臣名におきまして、地方自治体に対しまして協力を求めるような書簡も出しておるところでございます。なお一層努力をしてまいります。
  75. 吉井英勝

    吉井(英)委員 毎年閣議決定される方針にも、地方公共団体に対し中小企業向け官公需発注の拡大を要請するということが盛り込まれておりまして、通産大臣は都道府県知事に通達を発しているわけですね。  そういうことでありますから、私今指摘しましたように、もう繰り返しませんが、全国の自治体でも中小企業への官公需の発注率を八五年の水準に戻すだけでも一兆九千億円。この不況の中で中小企業非常に苦しい思いをしているときですから非常に大きな効果を発揮しますので、ぜひこれはその方向で努力してほしいと思うのですが、同時に、これは先日の我が党の不破委員長質問で、国の発注率を三木内閣時代の目標の五〇%に引き上げることを求めたわけでありますが、国の姿勢を正さずして地方自治体にだけあれこれ言っているというのはおかしいわけで、ですから今、地方を指導するという立場で大臣言っていただいているわけですから、国の方もやはり三木内閣当時の五〇%というこの目標に向けて取り組むという決意をこの機会に改めて伺いたいと思います。
  76. 関收

    ○関政府委員 国及び国の機関につきまして、この中小企業向けの官公需の発注を拡大するということは非常に重要なことだと思っておりまして、私どもも、官公需法に基づきまして毎年の計画を立てますとともに、それを実施するための具体的な対策について、日々これを実施をいたしているところでございます。国の機関につきましても、年度途中に私どもから各省庁にお話を伺いまして、今後、年度後半に改善の余地はないかどうか、いろいろ御相談をするといったような努力も続けておるわけでございます。  ただ、先生指摘のような具体的に何%を目標ということにつきまして、ぜひ御理解いただきたいと思いますのは、私どもは毎年契約の比率を上げてまいりたいという努力をいたしておりますが、先ほども申し上げましたように、一つは経済的な効率性を図らなければならないという点、もう一つは、物によりましては技術的になかなかできないというような限界もあるということはぜひ御理解いただきたいと思うわけでございまして、そういった限界の中で今後とも最大限の努力をしてまいりたいと思っているところでございます。
  77. 吉井英勝

    吉井(英)委員 ところで、先日不破委員長質問の中でも、企業の政治献金というものが公共事業の分野でもその他の分野でもどれぐらいゆがんだ構造を生み出しているかということの指摘がありましたが、私は、これは国だけじゃなくて、地方の分野でも見ることができると思うのです。この点では、公共工事がふえ、大企業の受注割合が高くなっている背景に、やはり企業献金と国や自治体幹部の天下り問題があります。  これは国会でもよく論じられている問題でありますが、これを先ほど来問題にしてきました大阪府の例でくどいようですが見ておきますと、例えば大林組というのは大阪での自民党への政治献金は企業としては十一番目で四千六百八十六万円なんですが、同時に大阪の中川知事の政治団体への土建業界の政治献金二億円の中の大口献金企業です。その見返りとして大阪府企業局、土木部、建築部の三つの部局で受注実績第一位、この三部局だけで九一年度で百四十三億七千万円。さらに大林組というのは、ジョイントを組んで受注した関西新空港とりんくうタウンといった大阪府の入った大型事業では、空港島関係で千二百二十八億円、埋め立て用の土砂採取事業の全期間のすべてに入って七百十七億円、りんくうタウンで二百四億円、これらだけでも二千百五十億円の受注に加わっております。  やはり企業献金というものが、中小企業や国民 の立場に立った不況対策を進める上でも、その企業献金の禁止が必要なんだ、こういうことも指摘して、次にSSCの問題に入っていきたいと思います。  SSCの問題ですが、アメリカでは宇宙基地計画というのは縮小し、大幅設計変更、SSCは数年延期ということが発表されておりますが、宇宙基地の方についてちょっと見ておきますと、一九八四年、レーガン大統領が提唱し、八八年に宇宙基地協定の署名が行われました。八九年の六月には、参議院の外務委員会などではこの批准が強行採決まで行われる。日本では大急ぎに急ぐというやり方がされたわけですが、ところが昨年二月の段階では、アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、イタリア等がまだ批准しないままというそういう状況のもとで、日本は一九九一年度までで四百億円宇宙基地関係の予算を組み、一方、そのときにアメリカの下院ではNASAの予算削減と宇宙基地の中止勧告決議が行われるなど、そういう事態が既にありました。昨年は二百八十二億円の予算を組み、大体昨年度までで約七百億円近い予算を組んできたのですが、今年度また四百五十億円の予算案ですね。ところが、アメリカは縮小、大幅設計変更だ。つまり、今宇宙基地については、設計からして変わろうとしている、もう根本が変わろうとしておるわけです。ですから、四百五十億円の予算をそのままにしておくというのは全くおかしいわけであって、これは科学技術庁長官、削減して、検討をし直すべきだと思うのです。まずこのことを長官に伺いたいと思います。
  78. 石井敏弘

    ○石井政府委員 お答えいたします。  宇宙ステーション計画につきましては、おっしゃるとおり日米欧加の国際プロジェクトとして現在進めておるものでございますが、米国におきましては、クリントン大統領が二月十七日の経済政策演説の際に配付いたしましたステートメントの中で、宇宙ステーション計画は継続する、このような方針を明らかにいたしたところでございます。また同時に、投資効果を増すための計画見直しを発表いたしております。この宇宙ステーション計画は日米欧州四極で進めておりますが、それぞれの参加主体が宇宙ステーションの構成要素を分担いたしまして開発するというような方式をとっておるところでございまして、今回の米国の計画見直しというものは、米国が担当する部分を見直すというものでございます。また、米国政府からは、計画の見直しに当たりましては我が国が開発を進めております実験モジュール、JEMに影響がないようにしたい、かような意向も伝えてきておるところでございまして、また、見直しに際しましては国際パートナーとも十分協議する、かように申しておるところでございまして、我が国としてはこれまでの方針どおり、我が国が担当しております実験モジュールの開発を着実に進めてまいる所存であります。もちろん、今後とも米国の状況を十分把握し、我が国が主体性を持って状況に応じた適切な対応を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  79. 吉井英勝

    吉井(英)委員 これは日本でとりあえず全体として三千百億円負担という計画ですよね。それで、アメリカの都合で進んだりとまったり縮小したりというそういう状況に今置かれているわけですよ。しかも、アメリカは予算を継続とは言っておられるが、縮小するための予算とか設計変更のための予算を組んでいるということでしょう。私は、やはりアメリカの国家プロジェクトに協力するというものだから、アメリカの都合で振り回されてしまう。この点では科学技術会議十八号答申で、メガサイエンスの国際協力のあり方について、我が国は主体性を持って取り組むことが必要だとしているのではありませんか。どうもよそ様の都合で中身が変わるような、あるいは強気な発言は今はしておられるけれども、実際はどうなるかわからないという見通しも危うくなるような、そういうメガサイエンスについての国際協力のあり方というのは私はやはり抜本的に考え直さなければいけないと思うのですよ。この答申は宮澤議長が宮澤総理に答申したもので、その中でちゃんと主体性を持って取り組むことが必要だと言っているのですから、科学技術庁長官、やはりこの機会に我が国の立場としてはもっと主体性を持つということが私は必要だと思う。どうですか。
  80. 中島衛

    中島国務大臣 宇宙ステーション計画を初めとするメガサイエンスヘの対応ですが、我が国として主体性を持って取り組むことが必要であることは当然のことだと思います。今回の宇宙ステーション計画については、先ごろのクリントンの経済演説のことにつきましては今政府委員からお話をしたとおりでありますが、まだ十分な情報がとれておりませんので、これから情報収集に努め、我が国の対応を考えてまいりたいと思っております。  宇宙ステーションは、将来の本格的宇宙環境利用の基盤として、また有人宇宙活動に必要な基礎技術の習得、開発の機会として重要な意義を有するものとして、我が国の宇宙開発における重点項目の一つとして位置づけてやってまいりました。これからも関係各国と十分連絡をとり合いながら、これまでの方針どおり宇宙ステーション計画の中で我が国が担当する実験モジュール、JEMの開発を着実に推進してまいりたいというふうに考えておるところであります。
  81. 吉井英勝

    吉井(英)委員 現在、アメリカのロケットかロシアのロケットを使うかとか、宇宙基地そのものを果たしてアメリカでやるのかどうかとか、本当に根本からの計画の見直しがやられているんですよね。だから、そういう点でよそ様のことに引きずり回されるようなやり方はやはり根本的に改めるべきだ、この点重ねて申し上げたいと思うのですが、SSCの方については日本としてはどんな検討を行って、作業グループなどでアメリカ側にどんな意見を述べてきていますか。
  82. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 お答え申し上げます。  SSC計画は、先生御案内のとおり八七年にレーガン大統領の時代に計画が承認されて、ブッシュ大統領になってから予算手当てがなされて、ダラス近郊に建設中でございます。御指摘のとおり、アメリカにおいてもいろいろな議論がなされているわけでございますが、政府ベースにおきましては、九二年一月のブッシュ大統領訪日時の日米首脳会談におきまして、宮澤総理との間で、SSCを技術的その他の重要な観点から検討して、日本の参加が可能となるような国際的プロジェクトとしてこのプロジェクトを編成する方途を考察するための共同作業グループを設置するという合意ができました。この合意を受けまして九二年の四月及び七月に作業部会を開催すると同時に、サブグループをつくりまして何回か会議をしておりますが、これまでSSCの学術的意義、それから建設コスト等を含めましたフィージビリティーを中心に技術的な議論を行ってきている次第でございます。  もう一つ、作業部会の課題といたしまして、国際協力のあり方という課題があるわけでございますが、その課題に入ろうとしましたところで米国における政権交代がございましたので、SSCに関する新政権の意向を確認する必要があるという認識で日米双方が一致いたしまして、作業部会の作業は当面休止いたしまして、米新政権のSSCに関する方針が確定した時点で改めて作業部会の進め方について協議することということになっている次第でございます。  なお、米国内におきまして、先生指摘のとおり、財政赤字削減との関係で大型プロジェクトの見直しが行われているところでございますが、現時点における米国政府内における議論の状況に関しましてこれまで政府が接触して得ている範囲では、クリントン新政権としては基本的には本件プロジェクトを継続する意向という感触を得ていますが、実際の予算の規模あるいは今後のスケジュール等の詳細につきましてはさらに検討が行われている模様でありまして、九九年完成との当初のスケジュールがおくれる可能性があるというふうに承知しております。
  83. 吉井英勝

    吉井(英)委員 今大体、SSCの学術的価値と、技術的可能性や採算性と工程に関する見積もりを含むプロジェクトの計画性の問題、三つ目にアメリカの国家的プロジェクトというより国際的共同研究のプロジェクトとする可能性があるかどうか、こういう三つの点での検討がされているというお話がありましたが、その学術的価値という点で、昨年御紹介いたしましたが、アメリカ研究協会のシグマ・ザイの調査でSSCについて支持するというのは三%というのを昨年は紹介しておきましたが、その後アメリカの研究者の間で賛成者が急増したというデータはありますか。
  84. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 統計数字といたしましては新しい数字は掌握しておりませんが、作業部会の過程でアメリカ側の説明におきましては、いろいろな意見があることは事実であるけれども、三%という数字は、統計のとり方にもよるかもしれませんが、実態を必ずしも反映した数字ではないというような説明を受けております。
  85. 吉井英勝

    吉井(英)委員 アメリカ政府側の説明は説明として、研究者の中で三%という数字が出ております。私、今お聞きしたように、その三%がうんと急増したというデータはまだないということですね。  それで、日本では学術会議なり物理学会なりその他でどんな議論や検討が今行われておりますか。参加するとか参加しないとか、そういう学会等で意見がまとまっているのか。仮に参加するとしたら、トリスタンとか大型ハドロン計画のときのように学術会議等の正式な機関で議論もし、決定もしというふうなそういう手続というのは今はどこまで進んでいるのか、この辺を伺いたいのです。
  86. 長谷川善一

    ○長谷川政府委員 SSCに関しまして、その学術的意義という点につきましては、学術会議は一年三カ月ぐらい前でございますか、その物研連において議論をいたしました。結論的には、とにかくこれにつきましては「未到の高いエネルギー領域で陽子同士を衝突させることによって幾つかの課題を達成する、物質構造とか自然界の力の本質を解明するということを目標とするもので、意義はある。」というぐあいに言っております。  それから、現在、総理の方からお話がございまして、科学技術会議の方で御議論をいただいておるところでございます。  それから、文部省の方の学術審議会におきましては、これもやはり学術会議と同じでございまして、学術的な意義については、各種の議論はありますけれども、とにかくほかの学問分野の進展にも極めて大きい影響を与える意義のある計画であるということについてはほぼ一致した意見が見られております。正式な報告にはなっておりません。  決定に当たりまして、現在日米の作業グループが行われているというのは外務省の方から御説明のあったとおりでございますけれども、科学技術会議等におきまして今後各種の議論が行われ、そういうものを参考としながら政府で討議していくべきものというぐあいに考えております。
  87. 吉井英勝

    吉井(英)委員 一般的な意義ということで言えば、それは私も一般的には採算性の問題、それから基礎研究費重視でいくか、全部そういう方の財政負担は無視してこっちへ突っ込むかとか、あるいはその研究の順位とか段取り、全部無視してごくごく一般論で言うならば、それはおっしゃるとおりだと思うのですね。問題は、今いろんな議論が行われているというところですね。参加するという意見がまとまったわけでもないし、正式な機関等での手続というのが進んでいるわけでもないという、要するに今のお話というのはそういうことだと思うのですが、プロジェクトの採算性や計画性という面で、アメリカ議会の会計検査院の報告で、「アメリカ政府と議会がプロジェクトを継続して支援するかどうかを懸念していることが日本の貢献を決定していない主な理由だ、日本の大規模な資金協力の決定がなければ、議会は合衆国の資金をふやすか計画を延期するかに直面する。」ということを述べておりますが、本来アメリカの国家プロジェクトなんですから、アメリカ自身の資金計画は確立してないとだめじゃないかと思うのですが、この点は政府としてはどういう見解をとっておられるのですか。
  88. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 先生指摘の会計検査院報告にもございますように、本来アメリカのプロジェクトとして始めたという経緯はあるわけでございますが、アメリカの下院におきまして、こういうプロジェクトの成果は世界人類全体のためになるものでありますから、国際協力、外国からの資金協力をプロジェクト全体の、テキサス州と合わせて非連邦予算として三分の一ぐらいは資金協力を得るべきだというアメリカ議会の意向を受けて諸外国への援助要請となっているわけでございますが、御指摘のとおり日本側は資金協力をコミットしているわけではありませんし、日本がお金を出さなければこのプロジェクトはだめになるというふうにアメリカ側で一方的に決められても困るわけでございます。  その会計報告にも関連いたしますが、アメリカのワトキンス前エネルギー省長官は、辞任するに当たりまして、まずこのプロジェクトをそういうふうに外国の援助に依存するような形で進めるのはよろしくないということで、まずアメリカの政府または議会としてこのプロジェクトは外国の援助があろうとなかろうと完成するという決定をした上で外国と交渉をして、外国の援助が得られた場合にはその分だけアメリカ政府の負担分を減らしていくというやり方をとるべきだということを勧告してやめておりますが、日本政府といたしましても、このプロジェクトにどういう形で協力するかはこれからの検討課題でございますが、基本的にはアメリカがこのプロジェクトをしっかりと完成していくという決意をされることが前提条件と考えております。
  89. 吉井英勝

    吉井(英)委員 これは昨年の六月の下院でもSSC計画中止を決定し、上院で逆転する。宇宙ステーションにしてもSSCにしても本当に揺れているのですね。それなのに、このアメリカ国内で揺れているのに、どうも日本の方は、そのときそのときのアメリカの政権の意向にひたすら忠実に頑張っているような、そういう印象が非常に強いところです。  そこで、この機会に伺いたいのですが、アメリカ自身の資金計画が確立しなければだめだ、よその金がなくてもやるんだという、それが必要だというお話なんですが、日本が金を出すときは、これはやはりきっちりしたCERNのような国際共同研究機関として相互に対等、平等の関係で出発点からいかなかったらおかしいと思うのですよ。  その点で、この出発点から国際共同研究機関として出直すんだ、一から出直すんだという、そういう可能性はあるのかどうか、これはどうなんでしょうか、
  90. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 御指摘のような形で、本当の意味での国際協力プロジェクトとして最初から形成されることが望ましかったと考える次第でございますが、経緯的にアメリカが独自の決定で始めたものですから、これからどういう形で国際協力プロジェクトとして編成し直せるかということを作業部会で検討しましょうということになっているわけでございますが、先ほど御説明いたしましたとおり、作業部会はまだその段階までは行っておりません。ただ、日本側といたしましては、そういう点も含めてアメリカ側と協議したいと考えておりますが、実際上はヨーロッパの方ではCERNプロジェクトを独自に計画しているものでございますから、本当の意味の国際プロジェクトとなり得るかどうかという点につきましてはいろいろ問題があろうかと思います。
  91. 吉井英勝

    吉井(英)委員 現段階ではこれはアメリカのナショナルプロジェクトであって、国際共同研究機関になる可能性は非常に薄いと思うのですよね、非常に難しいと思うわけであります。  ところで、九一年の秋に谷川科学技術庁前長官は、記者会見でも科学技術委員会での私への答弁でも、基礎研究費の充実が日本はまず先だ、SSCへの負担はしないと明言されました。ところが、昨年一月にブッシュ大統領がやってきて、宮澤総理が二千億円の負担の約束とか共同作業グループの設置となったわけでありますが、今クリントン政権の方からSSCの延期が出される。やはりアメリカの国家プロジェクトヘの追随、こういうやり方を改めて、日本としては二千億円の負担はしない、SSCへの日本の参加についてもやはり現時点で改めて一から検討し直すのだ、そういうことが私は非常に大事なところへ来ているのじゃないかと思うのですが、この点はひとつ科学技術庁長官の方から御見解を伺いたいと思います。
  92. 中島衛

    中島国務大臣 我が国の科学技術政策において、基礎研究の推進に中心的役割を果たす大学、国立試験研究機関等の研究環境の改善が緊急かつ重要な課題であることは、谷川前大臣同様、私も十分認識をしておるところであります。  現在、昨年一月の日米首脳会談において設立された日米共同作業部会において、SSC計画の技術的その他の重要な観点を検討しております。我が国としては、この作業部会の結論をも踏まえまして、また我が国の研究開発動向等をも考慮して、SSC計画への対応を今後考えていく所存であります。
  93. 吉井英勝

    吉井(英)委員 SSCの問題について、とりあえずアメリカも延期で、私は、長官、もう少しはっきりした態度をとってほしいと思うのですが、とりあえず延期で要らないようですね。宇宙基地の方の予算も、実はアメリカ自身が大幅計画見直し、縮小という方向へ行こうとしているときですから、とりあえずは今要らないわけですよ。  ですから、この点で私はきょう文部大臣の方にも伺っておきたいと思うのですが、大学の荒廃が今随分問題になっております。国立大学協会の「中間報告」「第二中間報告」などで具体的な指摘もありますし、大学財政懇談会の「要望」、国立大学協会の「要望書」など、私も昨年これを取り上げてお話もしましたし、この点では随分今共通の認識といいますか課題になってきておると思うのですね。  この中で、やはりシーリング枠の撤廃による研究予算の増額とか教官の定員削減計画の廃止、研究支援職員の増員、高等教育費の公費負担の増額、現在先進諸国の半分だ、それから私学助成などを要望しておりますし、経団連その他財界筋もこの分野ではシーリング枠の撤廃、政府研究開発費をGNPの〇・五%から一%へ、五年間で二倍にと求めるなど、大体日本の国内で基礎研究費を何としてもこの機会にふやさなければいけない。アメリカの方の言っているプロジェクトヘのこれからの日本の政府の対応はともかくとして、今はとにかく延期だとか縮小とかいうときなんですから、金は要らないわけですから、私は文部大臣としてもぜひこの機会に科学研究費補助金や積算校費を五年間で二倍にふやす、これぐらいの、この点でのそういう要望があるときですから、具体的な計画をきょうはぜひお聞かせいただきたいと思います。
  94. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 今先生指摘のとおり、我が国におきます基礎研究分野にはいろいろな問題がございまして、各方面から非常に憂慮を示されているところでございます。私自身も自分の目でその一部を見まして、これは深刻な状況だということを強く感じているところでございます。  大学における学術研究というのは人類、社会の発展の重要な基盤形成でございますし、また次代を担う若手研究者の養成という使命を持っているわけでございまして、その振興充実は喫緊の課題だというふうに考えております。  大学の研究環境の劣化については今先生指摘のような問題がございまして、甚だ憂慮すべきだと思っております。そのような状態を考慮いたしまして、文部省といたしましては、昨年七月の学術審議会答申、「二十一世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について」という答申をいただいておりますが、それを踏まえまして、我が国の学術研究基盤を国際的水準に引き上げるということを目標にいたしましてその整備を図りまして、さらに柔軟で活力に満ち、世界に開かれた学術研究体制の整備を図りますために、研究費の拡充や大学の施設整備の改善など総合的な施策をさらに推進していきたいということを考えております。  なお、平成五年度の予算案におきましては、大学等における学術研究の推進を図りますために、科学研究費補助金について七百三十六億円、これは対前年度比九十億円増でございまして、また若手研究者育成のための特別研究員について採用人数千七百人分、これは対前年度比四百人増、額で申せば四十一億円、対前年度比十一億円増、研究基盤重点設備費三十六億円、これは新規でございますが、これらのものを計上することにいたしておりまして、今までいろいろな理由で十分でございませんでしたところに特に力を入れて平成五年度については検討しているところでございまして、これからもそのような問題意識で強力に努力していきたいというふうに考えております。
  95. 吉井英勝

    吉井(英)委員 文部大臣の方から努力したいというお話がありました。この間ずっと私は大蔵大臣に議論を聞いていただいておりまして、やはり日本の基礎研究費を本当にふやしていくという点で、歴代文部大臣、ふやさなければいけないというそういう御認識を持っていただいて、ところがやはり財政の面でなかなか大変だということで、なかなか大蔵省の方で積極的に対応していただけていない。  ですから、これは五年間で二倍にふやしていくというふうな具体的な計画を立てて、それに向かって前進しないことにはなかなか進まないわけですが、なかなかそこのところが出てこないのですね、いわばその日暮らし的にとりあえずのことは出てきても。  私はこの点で、今基礎研究費の五年で二倍化とという方針を出していくという上でも、また文部省関係の加速器とか放射光施設の大型プロジェクトだけでも大体今計画に上がっているので千六百億ぐらいありますが、そっちをやると基礎研究費予算が圧迫されるということで、これはなかなか簡単には予算化できないという問題なども抱えておりますが、こういう状況の中で、これは大蔵大臣としてもSSCへの二千億円の負担、やはりこういうものは日本としてはしないんだと、日本としては本当に考えるとすれば、それは外国のナショナルプロジェクトのためへの支出じゃなくて、ちゃんとした対等、平等の関係で国際協力として進められる場合のことであって、今のようなあり方ではSSCへの負担はしないんだと、それよりもまず日本の基礎研究費の充実に、具体的に五年なら五年の年次計画を持って、この年度は幾ら、こういう形で進んでいくんだという、この点で私はぜひ大蔵大臣にそういう決意を持って取り組んでいただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  96. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 吉井議員の御質問というか御提言、注意深く私も聞いておりました。議員は京大の理論物理か何かやっておられた方で、この方面は御専門だと、こう私は承っておりますが、いろいろなお話を聞かせていただきましてありがとうございました。  まず、アメリカのSSCの話でございますが、昨年、宮澤・ブッシュ会談でやりましたが、今お話しのような点も踏まえまして、いろいろな点でやはり考えていかなければならない問題があります。アメリカの研究に協力するんで、日本の研究は一体どうするのだというような率直な問題もあると私は思いますし、そういった点も踏まえまして、SSCに関しましてはそのフィージビリティースタディー、技術的な諸問題とか、いろいろな検討すべき点があるので、今検討しておりますので、その検討結果を待ってやらなければならない、私の方はその検討結果を見ている、こういうふうな状況でございます。  一般的に申しまして、私は、基礎研究費全体の増額をやっていくということは、国の将来を考える、特に日本が置かれている状況から考えまして、日本こそ基礎研究をやっていかなければならないことだと思っておりますし、今回の予算におきましても、大変財政事情苦しいときでありますし、一般的な歳出の伸びというのは三・一%でありますけれども、科学技術研究費はたしか八・五%の伸びを確保しておるところでございます。先ほど文部大臣からも、また科学技術庁長官からもお話がありましたけれども、例えば文部省の科学研究費補助金は対前年度の伸び率一三・九%、それから科学技術庁の各種の研究推進制度は対前年度の伸び率一七・八%というふうな形で伸ばしておるところでございまして、こうした研究費を将来のため、また乏しい財政でありますけれども、やったということは評価をいただきたいと思います。  しかし、これからどうするかというお話でございますが、国の財政事情は、もう御承知のとおり公債残高の累増、こういうことでございまして、極めて厳しい状況にありますので、そのときそのときの社会経済情勢に応じまして、各年度の予算編成において適切に対処していかなければならない問題だろうというふうに考えておるところでございます。
  97. 吉井英勝

    吉井(英)委員 時間になりましたので、せっかく通産大臣に残っていただいたり、質問あったのでお願いしていたのです。それから、官房長官にも大変申しわけないことになりましたが、SSCの問題につきましては、私は、今の議論で触れましたように、これは日本の基礎研究重視、こういう今のような形でのSSCへの負担はしない、そういう立場をとられることを求めまして、時間になりましたので、質問を終わります。
  98. 鴻池祥肇

    ○鴻池委員長代理 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      —————◇—————     午後一時一分開議
  99. 粕谷茂

    粕谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹内猛君。
  100. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、さきに五日の日に農林水産問題で質問をしましたが、あれに引き続いてまた農業問題を中心に質問をしていきたいと思いますが、その前にちょっと人事院の総裁が見えていますから人事院の方に。一番後に配置としてはなっていますけれども人事院総裁……
  101. 粕谷茂

    粕谷委員長 はい、見えております。それで、何かお尋ねになるんですか。
  102. 竹内猛

    竹内(猛)委員 人事院の総裁には、筑波研究学園都市がせっかくできて立派になっておりますけれども、これについて先般科学技術委員会でも質問をしましたが、多くの世論調査をしています。民間からもしているし、それから関連の機関もしておりますけれども、その中で特に著しく問題なのは、移転手当の問題です。  この移転手当は、もう既に二十年ぐらい前に移った方もいらっしゃるし、最近来た人もいますけれども、全部で一万二百十四名おられますが、その中で一〇%の移転手当をもらっているのが六千九十四、これが五九・七%、八%が千三百四、一二・八、五%が四百四十九、三%が千六百十、一五・八、ゼロ、七百五十七、七・四%という形で、こんなに五つの区別がある。  これは、同じ職場で同じ仕事をして、同じ物を食べて、同じ電話賃を払い、同じたばこを吸い、同じ酒を飲んでいる。それが賃金をもらう、お金をもらうときにはこんなに区別されたんでは、これは職場にいても同じ仲間がおもしろくないし、うちへ帰っても家庭でもこれはどうも隣と違うじゃないか、こういう形になっていく。このような差別をこれは何とかしてもらわなくちゃしょうがない。人事院、いかがですか。
  103. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 筑波研究学園都市移転手当、これは委員十分御承知のとおり、これは当初首都への過度の人口集中を緩和、あるいはまた高水準の研究、教育の効率的な推進等というような趣旨からできた研究学園都市への移転ということを円滑にするための手当でございます。調整手当支給地域である東京から非支給地域であります筑波研究学園地区への移転に伴う異動を促進、円滑にするという趣旨のものでございます。  したがいまして、移転手当といたしましては、法によりまして「当分の間」ということが書かれておりますし、基本的には研究学園都市の熟成の度合いに応じてこれが次第に収れんをして、収れんと申しますか、収れんしていくべきものであるというふうに考えておる次第でございます。  確かに今、私も公務員でございますので、いろいろな公務員の方の中に差があるというふうなことは、通常ちょっといろいろ問題があるというふうな御意見は確かにございますので、例えば移転職員とそれ以外の職員との間に手当で今委員が御指摘になりましたようにいろいろの差がある、これはある程度そういうふうな筑波学園都市の移転手当の性格からいいましてやむを得ないのではないかというふうに考えておるところでございます。  ただ、従来からいろいろな御要望がございます。これについては御承知のとおりに、昭和六十一年の見直しの際に見直しているところも御承知のとおりでございますが、すべて一律に支給しろという御要望、これにつきましては、現行の手当の趣旨を考えますと必ずしも適当ではないのではないかというふうに考えておるところでございますが、いずれにいたしましても筑波手当につきましては、あの一般職の職員給与法の附則に書いてございますように、平成八年までに改廃に関する勧告を行うよう人事院の義務として求められておるところでございますので、今後の取り扱いにつきましては、筑波研究学園地区の生活環境の状況やあるいは研究機関の充実の状況あるいは民間における賃金、物価、生活費の状況等を踏まえて、またこれは一番問題であろうと思いますけれども、関係当事者の御意見を十分にお伺いしつつ、その結論を得べく検討をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  104. 竹内猛

    竹内(猛)委員 今のお答えは三段階、三つの答えがありましたけれども、最後に物価や何かを調整をしてやるという話もあったけれども、もう既に二十年たっておりまして現地雇用者はゼロ、それからこの中身を見ると、上級職は大変恵まれていて、行(一)、行(二)というようなところが非常に粗末にされている、そういう傾向がある。これは少なくとも一つの職場にそういう賃金の区別が、差別があるということは同じ仕事をしている者はもちろんのことおもしろくない。それから今度は管理職と言われる者からしてみれば、これくらい管理のしにくい状況はないと思う。  それで、世論調査をすると一番問題に出てくるのは交通の問題、これは首都圏と内部の交通問題、これが八十数%まだ問題があると言っている。それから買い物の問題ですね。これは六〇%以上買い物に問題があると言っている。なお、車庫法によって、駐車場というものが余りないものですから、これにかかる費用が多い。そうすると賃金の少ない者ほど負担がかかる。そして、今十五万人の都市ですけれども、女性が男性より六千人も少ないという状態で、これは完成とか熟成とかという状態じゃない。まだこれからつくり上げなきゃならないというところです。  東京にいるときにはみんな一〇%くらいもらっていたものが、あそこへ行ったらだんだんだんだん削られていって生活が苦しくなっている。そうするとそれはいろんな意味に影響しますね、精神的に。ここでは精神調査もしておりますが、そうなると仕事に熱が入らなくていらいらもするという形になってくる。これでは本当の科学技術の町をしっかりつくっていくという形にならない。建物だけは立派だけれども、中身はこれはお粗末だ。それは人事院総裁だめだよ、そんな答弁では。しっかりしなきゃ。
  105. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまおしかりを受けましたが、やはりこの筑波手当と申しますと、これは成立するときの当初からの考え方というのは、やはりその筑波に対する移転の円滑さ、円滑にして十分な手当てをしていくということでございまして、これは法律にも「当分の間」というふうに書いてございます。  またおしかりを受けるかもしれませんが、ただいまのお話は、やはり同じ公務員でいろいろ違いがあるということでございます。これはこちらから例えば移転をしていった職員、あるいは権衡職員というふうに言っておりますけれどもそういう人、あるいは現地雇いの方、これはいろいろな条件に違いがあるわけでございまして、それを一律に見ていくということになりますと、やはり手当の性格というものから少し離れてくるのではないか。  したがいまして、これは必ずしもいつまでもそういうふうにしていくというわけではございません。今の御意見というものは十分に私も受けとめておりますので、平成八年度までにこれは必ず見直していく、見直さなければならないという規定がございますので、今言ったいろいろな生活環境の状況やあるいは研究機関の充実の状況を十分に把握をいたしまして、当事者の御意見、いろいろな世論調査もございます、そういうのを十分に伺いながら適切な結論を得てまいりたい、かように考えておるところでございます。
  106. 竹内猛

    竹内(猛)委員 平成八年に見直しをすると言うから、それは見直しは期待はするけれども、それまで常磐新線はできないんだから、今の現状がそのまま継続する。そうすると、移転手当ではなくて筑波学園都市手当、こういうふうに名称を変えて、全部にそれを給付するようなことにしないといけない。これについてどうです、総裁。
  107. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま私の申し上げていることは筑波手当、移転手当でございまして、筑波に勤務している職員に対してはその手当が要するに性格を変えてきて、筑波手当というものをしたらどうかという御意見でございます。  これはいろいろそういう考え方もございましょう。あるいは筑波に調整手当というような問題もございましょうが、やはり学園都市、研究機関というのは全国にいろいろあるわけでございまして、これは他の地域との、他の地域の研究機関に移転をしていった場合の均衡ということも考えなければならないのかなというふうに思われるところでございますが、筑波学園都市というのができた特殊な状況も十分に頭に入れながら、八年度までに妥当な結論を得たい、かように考えておる次第でございます。
  108. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それじゃ、人事院の総裁に二つ要請します。  ここに国土庁長官がいるけれども、国土庁は、もう移るべきものは全部移ったと言っている。全部移ったんだ、移転しちゃったんだよ。あとはその人間に本当に働きがいのある職場にするかしないかということなんだ。毎月毎月にもらう賃金、ボーナス、これが著しく違ったら、こんな不愉快なことはないんだ、これは。  だから、そういうのは八年と言わずに早く見直しをして、そうして筑波手当、これは筑波学園建設促進法という法律をつくってやっているんだから、ほかの研究機関なんか法律をつくってやったところはどこにもないんじゃない。あったら教えてくれよ。特別立法をつくってやっておいて、移ったやつを給料でいじめるなんて、こんなかわいそうなことはない。上の方に厚く下が薄い、こんなばかな話はないじゃない。  だから、そういうことを、あなたは前にはここの事務総長だった。人間の扱いはなれているはずだ。もう少し人間をうまく扱ったらどうだい。人間として扱ってくださいよ、人間として。余り職階制をつけないで。いいですか。そういうことを要請して、もう答弁はもらわないから、もう帰っていい。
  109. 粕谷茂

    粕谷委員長 人事院総裁、どうぞ。
  110. 竹内猛

    竹内(猛)委員 続いて本論に入るわけですけれども外務大臣がちょっと所用のためにおくれているから、外務大臣質問する分は先に送って、これから、これは農水大臣の方に先に行って、ちょっと前後がぐあいが悪いのだけれどもしょうがない、これは協力する意味で、  前回、農業基本法と新農政の問題について私は質問をして、随分長い質問をしたから、農林大臣はどこから答えていいかわからないと言っていた。そのとおりだと思うのです。大変申しわけない、これは申しわけない。これは私の方からおわびをします。今度は一つ一つ確かめていきますから、しっかり答えてもらわないとぐあい悪いですよ。  新農政は、十年先は一・五人の労働力で年間千八百から二千時間働いて、七百万から八百万の所得で、四十年間で二億二千ないし二億五千万の生涯所得が得られるようにするのが目標であると、こう説明をしている。したがって、それに到達するまでの間いろいろなことをやるために、農地法、土地改良法、農業機械に関する法律等々をこの国会に提出をしている。なかんずく中山間の問題も、また平場の問題についてもそれぞれ法律を出しておりますが、この目標とその手段について、今私が質問していることに間違いはないかどうか、まずこれについてひとつお答えをいただきたい。
  111. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 大体その方向で検討いたしております。
  112. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そうしますと、前回私がここで質問した、昭和三十六年に社会党を初め各野党の反対を押し切って通した農業基本法が三十一年を経過をしている。にもかかわらず、その中身はそのとおりに実現をしていない。農業が崩壊をして後継者が残らない。それから、中山間部においてはどんどんどんどん集落がなくなってしまう。そして、外国からは怒濤のごとく食糧が入ってくる。こういうような状態をつくってきた。そのときに、農業基本法をつくる中心の役割をした農林水産省の小倉武一さんは「もう農業基本法は死んでしまった」という本を書いているんですね。農林大臣どうですか、農業基本法、死んでいますか、生きていますか。
  113. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 農業基本法のことでありますけれども、これは生産性の向上でありますとか農家の所得の向上、そうしたものが基本でありますので、ただお話のように、長い時代でありますから、そのときどきの国際状況、そういうものが変わっていろんなふうに変動してきた。国内的に見ますと、農業以外での就業機会というものはどんどんふえていったわけですね。一方では、農業労働力がそういうところに進出していく。したがって、そういうところはさらに発展しますので、農地というものが利用されて、転換をしていくといいますか、そういうことがずっとありまして、農地そのものは大変高くなりました。そういうだんだんの経緯があるわけですね。  そういうことはあったにしても、農業の生産性を向上させるとか、あるいは農家の所得の向上を図るとかという基本的なところは変わってない、死んでない、私はそう理解するわけでありまして、そういうことについて、今後いろんな細部にわたる、基本的なところが変わるのであれば別でありますけれども、そうでないのはそのときどきに対応して進めた方がよろしいのではないか、こういうふうに考えております。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  114. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農林大臣の口からは、腐っても死んだとは言えないだろうね。言ったら法律意味がなくなるから、それはその程度の答弁しかできない。そんなことを言えば、みんな全国の農家の人たちは笑ってしまう。  やはりうそを言っている。二町五反歩の農家を百万戸つくる、どこにありますか。ないでしょう、そんなものは。それから、都市と農村との所得を均衡にします、これもうそだ。こういううそを言って、それで中山間が崩壊をした、こうなると、残っているものは何かといえば、農政審議会、農業白書、それからまあいえば、当たらないけれども、長期、十年ごとの見通し。これだって外れるばかりだ。これでは、これはどうにもならない。  なぜそうなったかというと、これは、目標に対する年次計画と財政の裏づけがないからなんだ。ここが問題なんだ。計画は立てるけれども、計画に対する予算の裏づけがなかったらできないでしょう。この辺は大蔵大臣に本当は聞きたいところなんだけれどもね。そうでしょう、防衛庁だけだよ、中期防なんといって何十兆なんという予算をつけて。あれだけが予算をつけているけれども、農林省のやつは、確かに土地改良何十カ年計画とあるけれども、あるにはあるけれども、これは土地改良だけなんだ。そうじゃなくて、農業基本法というのはそういうものじゃないでしょう。構造政策から価格政策から対外関係から所得政策まである。そこのところが抜けているからいけない。一番の心臓部を抜いてしまって化粧だけしたってきれいにはならないんだよ。だから、農業基本法が死んだと言われる小倉さんの言葉はまさに至言なんだよ、これは。もうあれはやめた方がいいですよ。  そこで新農政なんだ、今度は。新農政が出てきたけれども、これにも幾つかの疑問がありますから、次々と聞いていきますよ。  去年の六月に「新しい食料・農業・農村政策の方向」というのを出した。そして今この国会で議論をしておりますわ。その農政の理念というものに関して、私は幾つか質問をします。  まず第一に、「地域経済社会を活性化させ、さらに、国土・環境を保全していくためには、国民のコンセンサスを得て、まず食料の持つ意味、農業・農村の役割を明確に位置付ける必要がある。」と言っているけれども、どういうぐあいに具体的に進めようとしているのか、その点についてまずお答えをいただきたい。
  115. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 このところの農業就業人口の動き、特に老齢化の問題、現実的には委員が先ほどから言っておられますように、中山間地帯を中心といたしまして農業者の数が非常に減って活力が下がってきている。このままの状態で進めば日本の農業は一体どういうことになるのかというような問題意識がございまして、どうしても若い方々が農業につくような、そういう農業経営というものを目指して施策を展開をしていかなければならないだろう。  そういたします場合に、やはり若い方々が自分の一生の仕事として農業を選ぶということになります場合には、他産業と同じような労働条件、例えば就業時間あるいは他産業とほぼ似たような所得というようなものを得られるような、そういう形での農業というものが実現をしていかなければならないだろうということで、今後経営力のある経営体というようなものをつくっていくということが一番の眼目になるのじゃないかというようなことを中心としてこの考えがまとめられているわけでございます。
  116. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そこまではいい。大体わかるけれども、それじゃ、この次はどうです。農業の有する多面的な機能は経済効率性だけでは律し切れないいろいろなものがある。それを裏づけていくために今後農政の展開をしていかなければならない。経済の効率だけでなしに、あるいは競争の原理だけでなしに進めていかなきゃならないというのは、一体何をどうしようとしているのか。
  117. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 このところの我が国あるいは世界的な人々の関心といたしまして、やはり環境に対する、環境を守っていきたいという考え方が非常に強くなっているわけでございます。我が国の農業の場合には、特に欧米型の畑作農業と大変違うところがございまして、環境保全的な意味合いでの役割というものを大いに発揮し得るものだというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、これからの農業を考えていく場合に、その面での機能を十分に果たしていくということを考えながら施策を展開をしていかなければならないということが十分意識されているわけでございますが、しかし一方で、やはり先ほど申し上げましたように、これからの若い方々が農業で自分の一生を過ごしていくということのためには、先ほど申し上げましたような考え方というものが十分に展開をされる必要があるわけでございまして、両々相まった形での農業というものが実現をするように努力をしていかなければならないというふうに考えているわけでございます。
  118. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その次は、「農業生産を維持し、国内供給力を確保するためには、一定の国境措置と国内農業政策が必要である」と言っているが、「一定の国境措置」というものは一体どういうものであるか。どういう措置が国境措置なんだ。
  119. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 これは、我が国の農業の場合には、欧米、特にアメリカというようなところを考えてみました場合に、国土の条件というのが非常に違っております。大変急峻な地形のもとにあるというようなことでございまして、どうしても農業をやっていく上においてアメリカ等の農業を考えた場合と制約があるわけでございます。それはしかしながら一方で、農業というのは食糧の供給という非常に大事な役割も果たしているわけでございますけれども、先ほど委員指摘ございましたように、国土とか環境保全という面での多面的な機能も果たしていかなければならないというようなこともあるわけでございまして、どうしても条件の悪いところを補正をするということが必要だというふうに考えているわけでございます。  そういう意味で従来から必要な国境措置を講じてまいっているわけでございまして、関税であるとかあるいは数量的な管理というようなことでやってまいっているわけでございます。これらはいずれも、それぞれの個別の農産物をめぐります状況を考慮して措置がとられているということでございます。
  120. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ちょっとわかりにくいね。国境措置というのは、国際障壁をちゃんと残しておくということでしょう。  いいですか。ECには変動課徴金制度というものがある。そして、ECの域内におけるところの酪農なりそういうものについてはちゃんと守っている、これは。ずっと守っているんだよ。アメリカだってウェーバー制度があるでしょう、これは。日本がガットに入る前にもうそういう制度ができちゃっている、両方とも。そうでしょう。日本の場合には、農林省の予算三兆三千億よりも多い四兆円を超える食糧の輸入世界輸入大国だ、日本は。しかも、それはアメリカから入ってきている。それでまだ米まで開放しろといって欲張っている。これはまずいんだよ。  この間も、ここへ主婦連の和田副会長が来て何を言ったか。世論調査をすれば、一粒たりとも輸入することはまかりならぬと、こうおっしゃっている。また、御質問に答えて、やはりこれは環境保全のために、緑や水や空気をきれいにするためにガットの一括関税反対と、こうおっしゃったですね。極めて明快なお答えなんだ、これは。参考人が何人かいたけれども、一番わかりやすかった、これは。いや、本当ですよ。全部拍手した。  こういうようなことを農水省はなぜ言えないんだ。これは大臣から言わなければだめだよ。大臣から言わなきゃだめ。絶対にこの今のガットの問題についてはしっかり闘っていくという態度が必要なんですね、これは。
  121. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 ウルグアイ・ラウンドの問題については、もう再三申し上げておりますので御理解をいただきたいと思うのですが、国境措置については、実はもう輸入自由化した品目についても輸入急増に対処していろいろやっておるのはあるわけでありまして、グレープフルーツにつきましても季節関税というものを導入して、私の方とバッティングすることを避けて関税の率というものを変えておるわけであります。あるいは豚肉につきましても、差額関税制度をこれは導入しておる。生糸も事業団の一元輸入制度の創設をしておる。あるいは、牛肉・かんきつ及び十二品目交渉によって自由化した品目について、例えば牛肉の緊急関税措置の創設、こういうことをやりながら、やはり自由化したといっても、裸にしてさらしてしまえば、大幅に影響を受けるものについてはウルグアイ・ラウンドの交渉でも必要な国境措置というものが維持されるようこれまでの基本方針のもとで対処してまいりたい、こう考えております。
  122. 竹内猛

    竹内(猛)委員 さっき死んだと言った農業基本法の第十四条には、ちゃんと国境措置をうまくやれということが書いてあるんだから、残っている以上、法律を守ってもらわなきゃ困る。五億円もらって二十万円の罰金でいいというのも法律だ。農業基本法だって法律じゃないか。なぜそれが守れないんだ。おかしいじゃないか、これは。おかしいでしょう。そっちの方が守れないで、そっちの罰則の方だけ、五億円、二十万なんて、あれだけを一生懸命法律だといって守っているのは、これはおかしい。みんなそういうふうに思っていますよ。  そこで今度、次は、自給率の問題は、現在より歯どめをかけると言っている。一体自給率に歯どめをかけるということはどういうことです、どういう自給率を考えているのか。
  123. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 自給率につきましては、新政策でも生産性の一層の向上を図る、あるいは品質をよくして対抗しなきゃならぬ場面もあります。あるいはコストも余り差がありますと、安全だといっても競争に打ちかてないという場面もありますから、コストの面でも改善を図っていかなきゃならぬと、こう考えておりますし、いずれにしても可能な限り国内農業生産を維持して、拡大していこう、そして自給率に歯どめをかけていきたい。  こう言っただけではなかなかこれは歯どめはかかりませんので、実際に先般、農政審議会の報告もちょうだいいたしましたので、それらも踏まえまして、どこから手をかけるかというと、土地利用型農業、この部分が、担い手がいない、高齢化、放棄地と、いろんな問題を抱えておって苦しい状況にありますので、これを、経営感覚と申し上げておるのですが、まあ農家の実態、私もうちへ帰ってよく見るんですが、余り農業で入った収入がどうなっているかという実態が農家自身わかっていない点が多いんですね。その日その日市場に出した、入った売り上げ等はそのままポケットに入っているというようなことで、もう少しやっぱり経営感覚というものをきちっとやりながら、ある程度そろばん勘定といいますか、そういうことをやって、さらにどういうところに投資すればいいか、どういうむだを省けばいいかというぐらいのことは理解しながら農業をやってもらいたい。  これは自給率のことと関係がありますので申し上げておるのですが、そういうことで経営体も育成していこう、あるいは人材の育成、生産基盤の整備、優良農地というものは余りばらばらにならぬようにこれを保全していこう、あるいはバイオテクノロジーなど先端技術の開発普及、そういうものを全体的にやりながら自給率というものを、もう耕作面積が限られておりますから、収益も上がる、あるいは所得も上がるというようなことを考えながら自給率を、歯どめをかけたい、こう考えておるわけです。
  124. 竹内猛

    竹内(猛)委員 平成二年に出して十二年までの長期見通しというのがあって、それには少なくともカロリーで五〇%、穀物で三〇%ということが出ているはずだ。ところが、現在はカロリーではもう四六%ぐらい、穀物なら二九%でしょう。下がっているんですよ、これ。そういう状態というものをどこで歯どめをかけるかということについては、今の説明ではちょっとこれは脱線をしているから、僕の方から逆に指摘をしておきます、それは。そこに役所のそれぞれの局長さんがいらっしゃるけれども、ちゃんとそういうことになっているはずなんです。もうこんなことは何遍も言う必要はない。  次は、予算の問題です。  この新農政というものをやるには、新農政なんだから、従来と違うんだから、予算が少しは動かなければ新農政にはならない。まくら言葉が泣いちゃう。新農政でもないじゃないの。前の農林省の予算の踏襲であって、新農政なんてまくら言葉ばかりひっつけたって、これはしょうがない話だ。やっぱり農林水産省だけの予算の枠で足りなければ他の省庁と共同するなり連携をするなりして、少なくとも予算は前よりもふえましたと、そしてそれを集中的にやりますと、こういうようなことが言えなければ、これは魅力も何もない。  それについて、本来であればこれは農林水産大臣に聞きたいところだけれども、ちょっと大蔵大臣、ここにいるから、目の前に。やっぱり大蔵大臣に、一体この新農政というものに対して、予算が余りふえていない、これは寂しいですよ、本当に。情けないよ。どうです。
  125. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 農村の置かれた状況は大変な問題がありますし、たびたび委員指摘のようなことで、新しい方向づけをやっていかなければならないと、私もそう考えておりますし、新しい方向づけをするという形で、乏しい財政事情でありまして、大変厳しい財政事情でありますけれども、これにつきましては、相当に現下の予算の中でやってきたつもりでございます。もちろん全部というような話でもありませんけれども、特に農産物というのは時の豊凶の変動とか社会の変動が非常にございますし、国際環境の変化等に対応してやっていくための、そのための施策を講じていく、こういうことで考えてきたつもりでございます。
  126. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私はやはり、農林省に成りかわってと言っちゃ悪いけれども、少なくとも新しいものをちゃんと出すからには、まくら言葉だけをつけてあとは眠ってしまうんじゃなくて、まくら言葉が目を覚まして生きるように、そのためにはこれは元気を出して、予算はこう変わりました、新農政によってこういうふうに変わります、こういうぐあいにアピールするようなことにしなかったらこれはまずいですね。だから、全国の農協青年部の諸君が青山のあそこの青年館に集まって新農政の話を聞いても、どうも怪しいな、外国から米は入ってくるんじゃないか、これがまず一つ。もう一つは、農産物の価格が下がってしまうんじゃないか。それから、予算に余り色がついていない、これじゃ新農政じゃないじゃないか。古い農政にしんにゅうをかけているくらいのものだ。これはひとつ大蔵大臣のところで少し調整をしてもらって、農林省に元気をつけさせなきゃだめだ。これはどうです、大蔵大臣。しっかりやってくださいよ、本当に。
  127. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 先ほど申し上げましたように、新農政につきましては十分に配慮いたしまして、特に経常経費のものは非常に抑えたところでありますけれども、新農政につきましてはいろいろな点で配慮をしてきたと先ほどお答えしたとおりでございます。
  128. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これ以上言ってもしょうがないから次のところへ行きますがね。  最近、家族が、後継者がいなくなったら、今度は経営体というような言葉を使い出したね。家族経営というのが基礎でしょう、農業の基礎というのは家族でしょう。自分の土地を愛し、作物を大事にし、そして豊作を喜ぶというのが、これが農民の心理だよ。フランスだって、二十九ヘクタール持っていても家族経営ですよ。ECも家族経営なんだよ。ソ連のコルホーズ、ソフホーズが失敗したのは、家族経営じゃないんだ、これは。ノルマなんだ。割り当ての賃金なんだ。中国の人民公社もそうだった。そこで、やはり請負制ということと郷鎮企業で中国は今少し恵まれるようになった。だから、日本の経営というのは、農家というのは元来家族経営で、地域の活性化、部落の集合体、これが中心でなければならない。そういうときに、今度は後継者がいなくなったからということでうまいこと言っているけれども、これは難しいんだ。そして、いいですよ、それは、法人化も結構、農業法人も結構、有限会社も結構だしするけれども、やがて株式に土地を渡そうなんというような話になったら、これはうまくないんだよね。怪しいんだよ。株というのはやはり利益を追求するからどこからでも手が入る、目に見えない手がね。これはまずい。だから、株式は排除をして、まあ家族経営の届くところ、集落の目の届くところで経営をするというのが筋でしょう。その点について、これは大臣、どうです。
  129. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 この前も実は山形でしたかお邪魔したときに団体の皆さんと会いましたら、株式会社の参入問題のことを質問を受けまして、農協にも金がありますので、そういうことをしなくてもと、こういうお話がありました。私は、もう大いに結構だと、農協に金があるんならば一緒になって、そして特産品等はテレビのコマーシャルを通じてどんどんやってやるというようなことをやることは一向差し支えない話であって。ただ、私は、基本的には企業的感覚というにはやはり人と物と金と必要になってくるわけです。今の個々の農家で、経理もきちっとやる、企画も立てる、あるいはそういうこともするという人はいないわけですから。ただ、幸い、土地を持って一生懸命農業をやるという力は持っておるわけです。そこに人がいない、また金がないということになると、企業的感覚といってもそれは一向に感覚は成り立たないわけでして、そういうことを申し上げておるのであって、やるかやらぬかは農家の選択ですし、十分歯どめをかけて、企業が土地投機などに問題を引き起こすことのないようにということでやっているわけであります。  ただ、今申し上げたように、生産したものを加工する、そういう資金がない、そこにも行って働く、多様に就労の場を確保しようとするといろいろなことを考えていかなきゃならぬ、販売の会社も必要になるかもしれぬ。そういうことになると農家だけで全部を賄ってやっていけるかというと疑問もありまして、一般的な話で申し上げたわけでして、まあそのことについては心配ないようにやっていこうということでありまして、決して悪くしようと思っているつもりはもう全くありませんし、そういうものに支配されるなどということは、もう絶対それはさせないということで、農家が元気を出して本当にきちっとした管理をしながらやっていただきたい、こういうことで考えておるわけであります。
  130. 竹内猛

    竹内(猛)委員 法人化や大幅な農地の移動によって大型化をした場合に、これは一部には米の市場開放を前提としているのではないかという懸念があるということが言われているけれども、これに対するお答えと、それから、二月二十四日、これは産経新聞で、誤報だということになっているが、海外に援助米の問題があるけれども、援助米というのは前から出していることであっていいですけれども、二十五日、八郎潟の大潟村の人たちが縁故米というものを海外に売り出すという話になった。これは食管法十一条の違反だと思うけれども、この三つについて、産経新聞の問題と、それから大型化と八郎潟の縁故米を輸出することについて。
  131. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 自由化のことはもう毛頭考えておりません。このことは明確に申し上げておきたいと思うのです。  これは、援助米、小学生がコップ一杯というお話でしょうか。援助米は、新聞で小学生がコップ一杯援助したいというのが何か農林省のあれでだめになったという話がありましたが、あれは実は全く外務省から私の方に何にも来ておりませんし、できないわけではないんです。これはきちっと食糧事務所の許可をとってであれば、これは十分できます。私も福田先生から電話をちょうだいして、けしからぬ、こういうのでおしかり受けたんですが、いや、決してそういうことではなくて、ただ、もみで持っていくか精米で持っていくかということになると、保存するものがないとなると、それをどうやって配るかという問題が一つありますと。それから、運賃が相当かかるものですから、そういうことには問題があるといっても、私の方でだめと言うことはございませんのでというお答えをいたしておきました。  それから、秋田県の能代のことについては、ちょっと局長の方から答弁させます。
  132. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 二月二十五日付の一部の新聞報道によりますと、「あきたこまち」の生産者協会が縁故米方式により米の輸出をしようとしている記事が流れたわけでございます。それで、私どもまだこの具体的なねらいなり方法、その他内容についてつまびらかではありません。  現行食管制度上は、外国に住んでいます日本人の消費のために米を送る場合には、食糧事務所長の承認を受けることが必要とされています。それで、不正規流通の一環と考えられる場合には、承認することは考えておりません。  当件につきましては、秋田の食糧事務所に、秋田県とともにとりあえず本人の事情を聞かせることといたしております。その結果、不正規流通につながることが明らかになりますれば、必要な指導を行う等、しかるべく処置をする考えでございます。  それから、先ほどの援助米の話でちょっと補足させていただきますと、あれは食管法上は援助米の場合には外しておりまして、食糧事務所の簡単な承認さえ得れば出せることになっておりまして、私どもそういう人道的な援助については食糧庁としても積極的に対応するつもりでございます。残念ながらこの前の記事は全く誤りに基づいております記事でございまして、食管法が問題じゃなくて、むしろあの記事がああいうことの対応を阻害するということになることを私ども心配いたして、新聞社にも厳重な申し入れをいたしておるところでございます。
  133. 竹内猛

    竹内(猛)委員 援助米については、我々も援助米をちゃんとやっているんだからこれはいいですよ。それはいいけれども、八郎潟のやみ米をやっていることは、あれはどうしようもない。これは承知できないですね。  そこで、いよいよ自由化というかそういうようなものをして、牛肉とミカンを自由化してから三年たっている。牛肉は非常に喜んで生々発展をしているのか、ミカン地帯はよかったと言ってもろ手を挙げているのか、どうも、私の調査によると、牛肉だって非常に苦労している。子牛が随分値が下がっちゃった。オレンジの方も大変苦労している。あのときも随分手切れ企みたいなものや融資をやったけれども、うまくいかない。この二つについて、それぞれからひとつ御報告してください。
  134. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 私の方から牛肉についてお答え申し上げます。  御存じのとおり、平成三年の四月に牛肉の輸入の自由化をいたしました。それで、いわゆるチルド、冷蔵物の輸入がふえておりまして、それと品質的に競合する度合いの強い乳用種、そういうものを中心に枝肉の価格が低下をいたしております。このような枝肉の価格の動向を反映しまして、乳用種等の子牛価格の低下が見られております。それからまた、肥育経営につきましても、枝肉価格の低下に加えまして、素牛を導入したときのその素牛の価格が高かった、原料高だったというようなこともありまして、収益性が低下をいたしておる、肥育につきましても。このような状況に対処するために、乳用種等の子牛価格の低下に対しましては、肉用子牛生産者補給金、いわゆる子牛の不足払い、これを交付しているところでございますし、また枝肉価格の低下等による肉用牛の肥育経営の収益性の低下、これに対しましては経営安定緊急対策として助成金を交付しているところでございます。  ただ、この肥育の部門につきましては、導入したときの素牛の価格が低下をしてきておりますので、収益性は回復の兆しを見せておりまして、ことしの第三・四半期には発動いたしておりません、幸いなことに。そういうことで、今後とも牛肉をめぐるいろんな情勢を注意深く見守りながら、適切に対処をしてまいる所存でございます。
  135. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 お答え申し上げます。  まず、オレンジについてでございますが、オレンジの方は、いわゆる生果としてのオレンジと果汁の方と二つあるわけですので、まず生鮮オレンジについて申し上げますと、平成三年の四月に自由化をいたしたわけでございますが、三年は、たまたま輸入先でありますカリフォルニアが寒波であるということで、輸入量が前年対比で四四%ということで減少いたしましたが、四年につきましては過去最高の輸入量ということでふえております。  そういうことを背景にいたしまして、三年の国産かんきつへの影響でございますけれども、三年はほとんど影響がありませんでした。しかし、四年になりまして、晩かん類について、出荷時期の終盤でございますが、若干影響がありました。それから、四年産の国産温州ミカンにつきましては、価格が二年、三年と堅調でございましたけれども、四年産は価格がそれを下回るということで取引されております。これはどちらかというと、理由といたしましては、特に果実が小玉であったということで、その辺が大きく影響しているのではないかというふうに思っております。  それから、果汁の方でございますが、これは平成四年四月に自由化をされておりまして、その後、四月から十二月までの輸入量は、対前年比で一九二%というふうに非常に増加を見ております。しかし、四年について見ますと、国産温州ミカン果汁の需要は三年産の国産搾汁量を上回る水準ということで、需要の方が上回っておると思っております。  しかし、現在、輸入物のオレンジ果汁の価格が非常に低い水準でございまして、国産の果汁との価格差が非常に大きいということで、今後そういった面への影響を我々としても注意深く見守っていかなきゃいけないと思っております。  このようなことから、我々今まで、園地の整備とかそういったことでの生産性それから品種の向上、あるいは果汁原料用の価格安定対策、あるいは果汁工場の整備対策による国産果汁産業の体質強化ということをしてきておりますが、引き続きこういった施策を推進してまいりたい、こんなふうに思っております。
  136. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう一つ質問をしますが、八郎潟の干拓というのは、食糧の少なかったときに八郎潟を埋めて、新農村建設事業団がやったことですね。十五ヘクタールを分譲をして、これは所有権は確立をして、あぜがなくて一番近代化しやすいところであったわけですね。  ところが、この八郎潟が今大いにもめていますよね。いろいろもめている。これは大変にもめている。それで、八郎潟からも幾つも手紙が来るけれども、朝日新聞を不買同盟をする、八郎潟の耕作農民がね。ガットのことでもっていいかげんなことを朝日新聞は書くからけしからぬ、論説に抗議をしたら、その答弁もけしからぬということで、朝日新聞を買わないというような農家が、怒っている農家がありますけれどもね。  八郎潟というのは十五ヘクタールですよ。これから新農政がやろうとする十ヘクタールから二十ヘクタールのその真ん中。この八郎潟はうまくいっているかどうか、所得関係はどうなっているのか。
  137. 入澤肇

    ○入澤政府委員 今お話ございましたように、大潟村におきます一戸当たりの経営耕地面積は十五ヘクタールでございます。圃場は大体、一枚一・二五ヘクタールの大区画圃場でありまして、おおむね二つの団地、これは十ヘクタールと五ヘクタールの団地に集団化されております。その経営というのは、土地利用型を中心といたしまして、転作を通じた大規模な田畑複合経営をすることを基本としている。  そこで、その経営状況でございますけれども、私どもの調査によりますと、まず、平均作付面積、水稲だけで十一・四ヘクタール、これは転作がありますから十一・四ヘクタールなんですけれども、十アール当たりの労働時間は二十・五時間、これは全国平均の四七%でございます。それから、十ヘクタール以上層、大規模層の都府県の平均の八〇%という水準で、かなり生産性が上がっている。それから、コスト水準でございますが、これは十アール当たりの費用合計で見ますと八万八千円、これは全国平均の六三%、大規模層の平均の九一%という水準でございます。
  138. 竹内猛

    竹内(猛)委員 自由化をやり、それから、よかれと思った八郎潟が今のような状態ですね。  そこで、もう一つ、これは大臣に聞かなくちゃならないのですが、新農政をやる場合に、農地法で、あぜを取ったりいろんなことをするが、規模を拡大、そして機械化、近代化をやる。そのときに、農機具であるとか肥料であるとか農業というものは、価格は生産費所得補償方式で決めてくる、会社が。いまだに農機具の原価を教えてもらったことがない、肥料の原価も教えてくれない、これは企業秘密だ、こう言う。ところが、その機械を使って生産をすれば値段は安くなる、米の値も安くなる、そのためにやっていることだからね。そうすると、一体所得というものが、これではなかなか支えられないという形になるんじゃないですか。だから何とか、そういうものをやったら、農機具とか肥料とか農業とか資材というものに対してやはり一つの原価を明らかにするなり、農産物の価格を安定するなり、何かしなかったらこれは所得にならない。これはいかがですか。
  139. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 いろいろな諸資材のコストの問題につきましては、委員お話ございましたように、それぞれの企業企業秘密というようなものもあろうかとも思いますけれども、いずれにしましても、いわば市場価格で流通をしているものでございます。価格政策、これはいろいろ品目によりまして体制は違うわけでございますけれども、国が関与をする価格水準というものを考えてまいります場合には、当然農家の行います営農面でのコストと、それからその営農に使用いたします各種の資材の価格というものを把握をいたしまして、総合的なコストをもとにはじいてまいっておるわけでございまして、もちろん、農家の経営の合理化が進んでまいりますれば、労働時間の減少等を通じてそのコストの削減につながりますし、それから資材メーカーの努力もおれば、そういうものもコストの削減につながってまいるということで、トータルとしての把握の対象になってまいるというふうに考えております。
  140. 竹内猛

    竹内(猛)委員 今私は新農政に関して気になることを幾つか申し上げましたが、きょうは国土庁長官と自治大臣がお見えですから、この二つの省が過疎法あるいは山村振興法を担当されているはずですね。一体この過疎法と山村振興法によって中山地域の崩壊は抑えられたのかどうか、とまったのかどうか、薬が効いたかどうか、この辺をちょっと。
  141. 村田直昭

    村田国務大臣 お答え申し上げます。  今いろいろ質疑応答を伺っておりまして、過疎の問題、これは自治省としても重点施策でございます。いろいろ考えておったのでございますが、全国三千幾つある市町村のうちで、過疎市町村が千百九十九あるのですね。非常に多いのです。全体の三七%もあります。それから人口の方になりますと、平成二年度の国調で八百八万人、全国人口の六・五%。面積に比べればはるかに人口が少ない。面積は十八万平方キロでございまして、全国面積の四七・六%、約五〇%近い。これから全体の概念をつかんでいくと、いかに狭い国土の中でも、過疎の地域が広くて、市町村数が多くて、人口が少ないかということが一見明らかなわけでございます。  そして、特に過密過疎という問題が最近は非常に厳しくなっておりまして、過疎対策についてこれまで御指摘になられたと思いますが、過疎地域対策緊急措置法というのが昭和四十五年からございます。それから、その後に昭和五十五年から過疎地域振興特別措置法というのができまして、国や地方公共団体等において各般の過疎対策事業が実施をされてきたところでございます。  国土庁の方は井上大臣から後ほどお答えがあると思いますが、自治省としては、この二十年間において約二兆三千億円の過疎対策事業債を措置してきました。その結果、過疎市町村における基礎的な公共施設は、過疎対策事業債を主とする財政措置によりかなり整備がされてきたと思うのです。しかし、多くの過疎地域においてまだ人口の減少が引き続いておるばかりではありません。働き手の方になれば、若年層が流出をする、そうして高齢化が進展をするというような新しい過疎問題を生じてきておりまして、先生が先ほど来指摘をされるような、農山村が打ち捨てられているのかという御心配が本当にあると思います。平成二年四月には、産業振興による若者定住の促進と高齢者の福祉の増進などを目的とした過疎地域活性化特別措置法が施行されまして、過疎市町村についていわゆるゴールドプランが実施をされる、そして新過疎法の趣旨を踏まえて、過疎地域の活性化に向けて自主的、主体的な取り組みを展開をしておるというわけでございます。  自治省としては、これらの取り組みが円滑に実施できるように、平成五年度二千八百億円の過疎対策事業債を確保いたしますとともに、過疎地域の活性化に真に資する効果的な事業を重点的に支援するということから、さらにふるさと創生関連施策等をあわせて展開することによって、過疎地域における自主的、主体的な地域づくりを積極的に支援をしていきたい、過疎地域の活性化を図っていきたいということでありまして、本当に文字どおり農山村の活性化、特に山村対策というものが極めて国の大切な事業として浮上してきた、このことは私は心から感じておりまして、心を込めて対応していきたいと思います。
  142. 井上孝

    ○井上国務大臣 お答えいたします。  御承知のように、国土庁は、第四次全国総合開発計画のもとで、均衡ある国土の利用、開発ということを目指して、いろいろな種類の事業をそれぞれの各省にもお願いをして実施してきたわけでございますが、残念ながら東京一極集中という傾向は、鈍化はしておりますけれども、まだ進行しておるということは本当に残念だと思っております。したがいまして、今までの施策をさらに徹底をさして、何とか四全総の目指すところを実現したいと思っております。  今お尋ねの過疎山村、こういうところにおきましては、やはり若者が流出して人口構成が非常に高齢化しておって、活力がなくなってきておるということが最大の原因であろうと思いますので、私どもとしては若者に対する就業の場を何とかしてつくってさしあげたい、こういうふうに思っております。  特に、御指摘中山地域、ここではもう集落が維持できないとかあるいは農林地の保全がもう困難になってきたというような事情がございますので、従来からやっておりました、今自治大臣もおっしゃいました各種の過疎山村事業、これを今後とも続けて、農林業を初めとする魅力ある就業の場を確保して、また居住環境もよくしていこう、こういうことにより一層努力をし、各省にも御要請を申し上げていきたいと思っております。
  143. 竹内猛

    竹内(猛)委員 河野外務大臣代理がお見えになったから、質問します。  これはガット・ウルグアイ・ラウンドに関連することですけれども、二月の五日の日に本委員会で私は宮澤総理ほかにいろいろ質問する中で、総理が、農業生産と工業生産との違いはある、これを認められた。それから、ガット・ウルグアイ・ラウンドについては慎重にしなければならない、国会の決議を尊重すると、こう言われましたね。それから、今の中山地域という言葉が大体常識的な言葉になったということも言われた。これは大変いいことだと思うのですね。いいことだと思う。  そういうような段階のときに、国際情勢の中で、特に全世界的に見た場合に、この前も申し上げたんだけれども、一千七百万ヘクタールの原野と森林が崩壊をする、六百万ヘクタールの農地がつぶれる、これは二千三百万ヘクタールになりますね。それから、人口というのはやがて二〇〇〇年には五十三億になるだろう、それからその先になると八十五億にもなるだろう、今一日に二十五万ずつふえていくと。こういう状態があり、食糧の過剰生産をしているのはアメリカとECだけであって、ほかの国々は不足をしている、特に発展途上国においては不足をしている。そういう中で、日本においても自給率がだんだん下がっているのが現状なんです。先ほども申し上げましたが、そうですね。上がってはいない、下がっている。そういうようなときに、輸入量というのは、ことしの農林省の予算よりは輸入農産物の額が上回っている。こういう国はちょっと珍しい。これは近代国家では非常に珍しいですね。非常に危険なんだ、これは。  そこで、ガット・ウルグアイ・ラウンドに関連をして、もう既に六年も交渉が経過をしている、客観情勢もかなり移っているときに、きのうも串原委員がいろいろ質問をして、なかなか答えが今しにくいこともあったけれども、まとまったところでひとつ手を打って、それからまとまらない部分についてはそれぞれ事情がある。それは、ダンケル案に対してはほとんど修正案が出ているわけでしょう。これはまた、十五のうち農業というのは重大な問題ではあるけれども、それぞれの国でいろいろな意見が出ている。まとまったところで手を打って、農業と食糧と環境というものは、OECDあるいは平成二年のジュネーブ宣言、これに日本も入って八カ国で宣言をしている。あるいはFAO、MTOというようなところで十分に議論ができる、一国対一国でなしに複数の国々が話ができるということにしていったら非常に世の中は円満にいくのじゃないか、別に対立する必要はないじゃないか。こういうことを日本は訴えることができないかどうか。それは外務大臣、どうだろう。
  144. 小倉和夫

    ○小倉政府委員 先生指摘のとおり、世界経済が確かにいろいろ変わっておるということは事実でございますが、同時に、変わっているという意味は、御案内のとおりサービスとか知的所有権の問題とかそういう意味で、いろいろな意味世界経済が変わっておる。したがいまして、そういう変わった中で、新しい分野を取り入れて交渉しようというのが御承知のとおりウルグアイ・ラウンドでございますが、農業につきましても、実は開発途上国の問題も先生御案内のとおりあるわけでございまして、また開発途上国の利益、貧しい国々の貿易というものをどのようにウルグアイ・ラウンド全体の中で考えていくかということになりますと、やはり農業ということは非常に大きな意味を占めるわけでございます。  また、先生指摘の輸出補助金につきましても、これも規律を強めていくということは、また私どもにとってもそれなりの利益と申しますか、国際貿易をきちっとしていく上で利益があるわけでございまして、したがいまして、そういうようなもの全体を総合いたしましてやるということになりますと、確かにおっしゃるようにいろいろ難しい問題がありまして、いろいろ考えなければならない点、またいろいろ問題も出てきておりますけれどもお互いが何とかそれを克服しながらやっていくことが、やはり全体として世界貿易を円満な形に持っていくのがいいのじゃないか。そういうことでみんなが少しずつ努力し合っている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  145. 竹内猛

    竹内(猛)委員 少しずつ譲歩すると、松永大使みたいなことを言ったのじゃしょうがないじゃないか。交渉の真っ最中にああいうばかみたいなことを言ったらしょうがないじゃない。外務省、何だ、あれは。おかしいじゃないか、あの発言は。
  146. 小倉和夫

    ○小倉政府委員 恐縮でございますが、ちょっと事実関係だけ確認させていただきますが、本国会でも御質問がございましたので、早速のところ松永代表本人にも確認いたしましたけれども、一部の報道にもございますように、米の輸入について関税が幾ら幾らであれば農家に全く影響はないとか、そのような発言をした事実は全くないということでございます。  ただ、松永代表は、たまたま記者クラブの講演の前に、ジュネーブでダンケル事務局長と懇談いたしましたが、その際にダンケル事務局長が、関税化は日本の米産業を、米作を破壊する心配はないのになぜ日本がこの提案を受け入れられないのかというようなことを言っておったと。それに対してはもちろん松永代表から、いろいろ困難な日本考え方を言ったわけでございますけれども、そういうダンケル事務局長の見方というものを会見の中で紹介しましたが、そういったことが一部にいろいろ誤解を生んだような報道になったのじゃないかということでございますが、一応そういう事実関係だけ御報告させていただきます。
  147. 竹内猛

    竹内(猛)委員 本当に米の問題については、一生懸命頑張ったけれどもついに押し切られたというようなことのないように、牛肉やオレンジみたいに押し切られてしまって後は手切れ金みたいなものでやってみても、後がやはりいろいろ手当てをしなければうまくいかないという状態。米は日本の心であり、日本そのものなんです。  それで、全地域に、国土の保全、環境の保全、それから水、緑、それから文化、伝統、こういう大事なものですから、これを軽々に扱ってはいないと思うけれども、自民党の中にも三十二人の農村の有志が、あっちへ飛びこっちへ飛び、宮澤総理がもしあれについて賛成をするようなら不信任をくれると。野党と一緒になったら、これは通るかもしれない。こういうようなことになったのでは国会解散になっちゃうからね。だから、そういうことにならないようなことにしていくために、やはり国会の決議をしっかり守っていくようにしてもらいたい。  社会党からは、ただ反対するだけじゃありません。今三つの法案を、野党の皆さんとも、また自民党の心ある人たちと話をして、いろいろ提案をしているのですよ。地域農業振興法、中山間地帯の振興特別措置法、それから農村の青年が残るようにするための助成に関する法律。これは既に要綱が出て、法案を出しますが、その中心になっている考え方というのは、農業というのは物をつくるだけじゃなくて、この間主婦連のおばさんも言ったように、やはり環境を保全をする。水、緑、こんなことは言われなくてもわかるとおりですね。空気もきれいにする。それから、文化と伝統があるということ。ですから、効率とか資本の論理だけではなかなか割り切れないでしょう、これは。したがって、それについて特別な法律をつくろうということで、中山地域、農村地域の振興特別措置法というものをつくろうとしたのです。  ところが法制局が、それはなじまないと、こうおっしゃる。なじまないと言うのです。法制局がなじまなくたって、中山間地帯がだめになっていくのになじまないということはないので、これは大いにしなければならないと僕は思うのですよ。これは農林大臣、どうですか。
  148. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 かねてから熱心に中山間地のお話を承っておりますけれども、どういうふうにやろうかということになって、具体的な話になってきますとなかなか難しい問題がたくさんあるのですね。  私も、ECのデカップリングというものもよく話を聞いておりますけれども、一体どの程度の補償をすればそこに定住していくのだろうか、あるいはどの地帯から始まるか。ECも、最初は本当に山をやったのですけれども、だんだん広がって平地までいって、まあばらまきになっちゃったというようなことも聞いておりますし、そういう具体的な詰めをやっていくとなかなか、そこに住んでいるのは農家ばかりでない。そういう人たちは一体どうするかとか、さまざま出てまいりまして、やはり基本的には農業所得が他産業並みになる、あるいは環境もいいということにしない限りは、そこに残って定住して農業をやるかどうかという保証が全くないわけですから、やはり他の方が所得が向上し、生活環境もいいということになると、若い人はまたそのままいく。  ECは、一年間に十四万とかなんとか言われていますけれども、ではその程度で残るかどうかというと、問題があるのですね。日本の場合は一人当たり十五万、二十万というものを補償しないと。ということになると、一体国民にそういうことのコンセンサスを得られるかという問題等もたくさんありまして、お話はよくわかるのでありますけれども、実際にやろうとするとそういうことがあって、基盤整備も向こうは進んでおりますが、私の方はまだ全然進んでないのですから、そういうことでやはり所得が他産業並みになる努力をしてあげた方がベターであろう。農村工業導入法もございまして結構入っておりますけれども、そういうものも合わせながら、多様に就労の場を確保する。そして、その所得と農業所得ということとをつくり上げていきませんと、今七〇%が第二種兼業ですよね。そういう人たちはなくなるわけがないし、それはそれで指導しなきゃならない。むしろその方がサラリーマンよりも所得が高いわけですから、そういう環境も目指して多様に、やっぱり地域地域の実情に応じたようにやっていかないといけないだろう、こう考えております。
  149. 竹内猛

    竹内(猛)委員 時間がなくなっちゃうから、これだんだん締めくくっていかなきゃならないが、今度は官房長官としての河野官房長官にこれは要請をしたいんですね。  私どもは、縦割りであるから農水省が窓口になってこの中山間問題もしなきゃならないという形になる。しかし、もう農林水産省だけでは中山間の問題は手に負えない。自治省、建設省、環境庁、国土庁、それから運輸省、厚生省、文部省、こういう関係のある省庁が一緒になって、やはり中山間地帯に対して財政的な、あるいは交通的な、あるいは中小企業の導入、教育、あらゆる手だてをしなければだめだと思っている。そういう点からすれば、やはり農山村地域の活性化のための促進をする。そのために地域の農業というものをそれぞれの伝統と特徴によって振興する、それから中山間には特に特別な手当てをする、若い者が残るようにするという三つの法律を絡めていこう、こういうふうに考えているときに、それはなじまない、こうおっしゃられる人がいるんです。  だから、河野官房長官のお父さんは、いいですか、建設大臣のときに、関東が干ばつで水がなかったとき、あるいは北陸線が雪で埋まったとき、それを突貫工事をしようとしたら、役所から法律にそういうものはありませんと言ったら、何を言っているんだ、人命と財産は大事じゃないか、こんなものは法律を直せばいいんだ、こうおっしゃった。実に立派ですね。僕は本当に感激しているんだ、あれを。  そういう日本中山間地帯が今崩壊をしようとしているときに、してしまってからじゃ遅いんだから。それには、そんなものなじまないとかなじむじゃない。日本的なデカップリングを進めるために、それは法制局にちゃんと注意をしてもらいたい、そんなものは。ここで自治大臣も、全部ここにいる大臣は一緒になってやってもらいたいと思う。なじまないなんてそんなばかな話はない。そうすれば、我々は勇気を持って法律を出して一緒になってやりますよ。いかがですか。
  150. 河野洋平

    ○河野国務大臣 御激励をいただきましてありがとうございます。  お尋ね法律につきましては、関係省庁、大変努力をしておられるようでございまして、私は必ず法律がまとまって御提案できるのではないか。その中身については、いろいろまた委員からも御指導、御指摘も、いろいろ御注意もあろうかと思いますが、中山地域の振興について、農林水産省が中心になりまして関係省庁と鋭意折衝を続けてまとめるべく努力をいたしておりますから、ぜひまた何かのときには御助力をお願いを申し上げたいと思います。
  151. 竹内猛

    竹内(猛)委員 このことをぜひ申し上げたいと思うので、細かいことはもう言いませんが、先ほどから国土庁と自治省からるる述べたことで尽きている。このほかにリゾートの問題も実は聞きたかったけれども、もう時間がない。  きょうはまた、科学技術庁の政務次官見えているから、この前科学技術委員会で申し上げたのは、せっかく筑波にあれだけの建物をつくって、四千三百人以上の学者がいるんですよ。日本の学者の恐らく半分以上あそこにいるんじゃないか。そういう学者が失望しないように諮問十八号というのがあって、基礎研究というものはあそこがしっかりやるというのに、日本は道なんだな。基礎研究というのはほかでやってきて仕上げをそこでする。こんな逆さまなものはないと去年言ったら、幾らか基礎研究の費用がふえた。  そこで問題は、やはり研究費ですね、人頭割。一般研究費、それから出張旅費、それからプロジェクトのつくり方、こういうものについて、これはひとつ科学技術庁の関係だから、もっとそこに本当に、科学技術の中心地であるという誇りを持って学者がやれるようにしないと。さっきは手当の話をしたけれども、今度は研究の方をやる。どうもこういうふうに分けて恐縮だけれども
  152. 渡海紀三朗

    ○渡海政府委員 御激励をいただきましてありがとうございます。  先生、既に科学技術委員会のベテランでございますのでよく御承知のことと存じますけれども我が国が二十一世紀に向けて生活と社会の充実を図りながら、同時に国際社会に積極的に貢献をしていくためには、人類の共通の知的財産を生み出すという基礎研究の進展に、科学技術の振興に力を注いでいくということは、大変重要な課題でございます。  このような認識のもとで、平成五年度の政府予算案におきましても、一般歳出の伸び全体がわずか三・一%と非常に厳しい財政事情でございますから、そういう予算の編成になっておりますけれども、この科学技術振興調整費等も含めた科学技術振興費というのは全体で八・五%という高い伸び率を示しておるわけでありまして、格段に配慮はされているのではないかなというふうに評価をさせていただいておるところでございます。今後とも、しかしまだまだ不十分な点があるわけでございますから、政府の研究開発投資等の拡充に向けて全力を尽くして頑張っていきたいというふうに考えております。  また、先ほど来、人頭割等の中身の問題について先生の方から御意見もあったところでございまして、関係当局から少し詳細についてお答えをさせていただきたいというふうに思います。
  153. 島弘志

    ○島(弘)政府委員 国立研究所の人当研究費についてのお尋ねもございましたが、これは委員も御承知のとおり、かなり長い間諸般の事情があって据え置かれてきた、こういう事情もございます。これじゃいかぬということで、その間、科学技術振興調整費を使いまして、ちょっと趣旨が違いますけれども、重点基礎研究制度といったようなものを導入しながら、実質的な人当研究費に当たるものということで増強もしてまいりましたが、何分やはり人当研究費そのものを増強しなきゃいかぬ、こういう認識もございまして、ここ三年ばかりは御理解を得ながら増強をしつつございます。また、来年度の予算案の中には、この三年間の増額合計分相当分ぐらいの、かなり我々としては思い切った増額要求の案が入ってございまして、そういうことで努力をしております。  ただ、これで十分かと言われれば、そういうふうには私ども理解しておりませんで、今後とも各省とも相談しながら鋭意努力をしてまいりたいと思っております。
  154. 竹内猛

    竹内(猛)委員 特にこの委員会で取り上げたというのは、ここに大蔵大臣がいるから、大蔵大臣の耳にこのことをちゃんと入れておいて、いいですか、この科学技術の国際貢献というのは、これは大事ですよ。PKOの議論をするとなかなか議論がややこしくなる。これは、外務政務次官もきのう大分やられたですがね、余計なことを言ってやられた。ああいうことにならないんだよ、この科学技術を振興すれば。  ここに小杉さんがいらっしゃるけれども、一昨々年にちょうど戸塚委員長環境委員長と一緒にサウジアラビアヘ入った。あのときに、サウジの王様は何と言ったか。それは、あの汚い水をひとつ飲めるようにしてくれませんか。もう一つは、砂漠に木を植えてください、そういう技術を教えてください、お金はありますよ。それからまた発展途上国へ行って、その国の資源で、その国の土地で、そこに工場を建てて、その国を持続的に豊かにしていくために貢献をするというのが一番いい。これは東北大学の西沢学長の哲学だ。こういうような哲学を進めていくためには、やはり科学技術の平和貢献というのは、これは日本が一番誇り得るものであって、これならばもうもろ手を挙げて我々は賛成をしたいのですね。ややこしい説明は要らないんです。そうするには、この研究学園に対して、それは多ければ多いほどいいけれども、それは一定の限度のお金を盛り込んでやるようにしてもらいたいし、さっきのあれ、大臣聞いたかな、人事院の問題は。(林(義)国務大臣「はい」と呼ぶ)あれなんかも本当にかわいそうですよ。  まあ、そういうことを言いながら、終わります。
  155. 石川嘉延

    石川委員長代理 これにて竹内君の質疑は終了いたしました。  次に、北側一雄君。
  156. 北側一雄

    北側委員 公明党の北側一雄でございます。  まず最初に、カンボジア情勢についてお聞きをしたいと思っております。  最近、カンボジアの一部の地域で、一月の末ぐらいからプノンペン政府軍とポト派との軍事衝突があったということで、報道もされております。一部には、PKOの前提であります停戦合意が崩れているのではないかとの見解もございます。先日の公聴会でも、国会は撤退の判断をすべきではないかとの公述人の一人の方の御意見もございました。私はそうは思いません。そうは思いませんが、政府が、このような意見もあることですし、現在、カンボジア情勢をどう見ているのか、特に五原則との関係でどうごらんになっておられるのか、その辺の認識をお聞かせ願いたいというふうに思います。
  157. 池田維

    ○池田政府委員 お答えを申し上げます。  カンボジアにおきましては、局地的かつ限定的な軍事的緊張が存在しておりまして、特にこの二月の初めにプノンペン政権軍とポル・ポト派の間で一時この緊張が高まったことはございます。しかしながら、全体として私ども考えておりますことは、パリ協定の基本的枠組みというものは維持されておりますし、停戦の合意というものの枠組みというものはそのまま存続いたしております。したがいまして、我が国としましては、UNTACとも緊密に連絡をとりながら、引き続き現地の情勢を注意深く見守っているということでございます。  他方、五月の二十三日から三日間、総選挙が行われるということで、そのための準備が本格化しつつあります。まず、タイとカンボジアの国境におりました避難民が、既にもう三十一万人、ほとんどがカンボジアに帰還しております。それから、有権者登録が四百七十万人以上の人に対してもう既に行われておりまして、これは全有権者の九〇%から九二、三%程度ではないかというように見られているわけでございまして、そういう意味では、五月の総選挙に向けた準備というものが、UNTACの主導のもとに着々と進みつつあるということでございます。
  158. 北側一雄

    北側委員 私もおととし、去年と、二度カンボジアの方に行かしていただいております。去年の年末も行かしていただいたんですが、率直な印象なんですが、現地に行かしていただいて、さまざまなところを見させていただく、お話を聞かしていただく、そのときに受ける印象、実際の状況と、マスコミ報道等から受ける日本の国民の皆さんのイメージとの間に、相当これはギャップがあるんではないかというふうに思うわけなんです。これは、実際に行かれた方は多くの方がそういうふうに、私はそういう印象を持たれているんじゃないのかと思うのですね。今御説明ございましたように、一部の地域での衝突であるにもかかわらず、カンボジア国土の相当広範囲なところで衝突が起こっているかのような、また、近い将来国土全体で内戦が再発するかのごときイメージを持ってしまう。  カンボジアの情勢、また、我が国が初めてPKOに参加したこのカンボジアPKOの活動の状況について、私は、国民の皆さんが認識できるように、正確な情報提供というものをきちんとしていくことが非常に重要である、そのように思うんですね。これは、あのように本当に大変な議論をして成立したPKO法案、そして日本からも今たくさんの人が参加をしてくれております。今後も参加をしなければならない場面が多く出てくると思います。PKOについての国民の皆さんの理解というのは非常に重要である。そのためにも私は、今のこのカンボジアの情勢、日本のPKO活動の状況について、きちんと政府として情報提供をしていくということが非常に重要じゃないか、そのように思うわけでございます。この点、いかがでしょうか。
  159. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 昨年末にも先生に直接御視察をいただいたわけでございまして、ただいま御指摘の点はまことにそのとおりであると私も思っております。  私どもといたしましては、御指摘のごとく、やはりカンボジアあるいはその他の場所におけるPKO活動というものが、できるだけ正確に国民に理解されることが最も重要だと思っておる次第でございます。具体的には、私どもといたしましても、いろいろな新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等の媒体を通じて、現地の活動の様子をできるだけ正確に知っていただくということで、できるだけの情報提供をやってきたつもりでございます。また、各界の方々、先生方初め相当多くの方々が直接現地に来てくださいまして、いろいろ視察をしてくださいました。そういう際に、私どもといたしましては、できる限りの便宜供与をいたしまして、取材あるいは視察の便宜を図ってきたつもりでございます。もっとも、一部若干誇張された報道があったりすることはございましたけれども、やはり非常に多くの報道機関の方々が行かれて、新聞記事あるいは映像を日本に送ってくださいましたことは、私は全体として非常によかったのではないかと思っております。今後とも私どもとしてできる限りの情報提供をしていきたいと思っております。  なお、今後の広報及び派遣される要員の研修のために、私どもとしてもビデオの制作等を現在やっておるところでございます。
  160. 北側一雄

    北側委員 去年の末に行ったときの印象なんですが、いろんな方にお会いしました。日本の自衛隊の施設大隊の方、六百名今行っていただいているわけなんですが、そこでの道路の補修のところとか橋の補修の現場にも我々行かしていただきまして、見さしていただいたわけなんですが、非常にこの自衛隊の皆さんの仕事ぶりについては現地で評価が高かったわけですよ。明石さんを初めとするUNTACの関係者の方はもちろんなんですけれども、プノンペン政府のチア・シム議長と会見したときも、チア・シムさんの方から、短い会見時間の中で二度ほど、国道三号線の自衛隊の皆さんの工事については非常に感謝している、本当に立派な仕事をしていただいている、そういう評価を聞かしていただきました。また、そのほか文民警察に参加していると十五名の警察の方、停戦監視に加わっている八名の自衛官の皆さん、非常に皆さん大変な中、元気に活躍をされておりまして、それぞれ評価が高かったわけなんですね。  そういうことがきちんと、私は、広報活動としてやはり国民の皆さんに、こういうふうに評価されていますよ、こういうふうな活動をしていますよということを言っていかないと、これはだれが言うんだと思うわけなんですね。官房長官、いかがですか。
  161. 河野洋平

    ○河野国務大臣 大変ありがたい御指摘で、感謝をいたします。  先ほど柳井事務局長からも御答弁申し上げましたが、広報活動には我々も十分意を注いでまいりたいと思っております。現地でUNTACのスポークスマンがいろいろと発表などをしておられますが、私も、官房長官の会見でも、できるだけそうした現地のスポークスマンの発表もキャリーしたいというふうに思っております。  ついせんだっても、日本から参加している施設大隊の方々が積極的に献血を行ったというようなこともあって、現地には大変、そうした意味で、いろいろな意味で積極的に協力をしているという状況が知らされてきております。  御指摘のとおりと思いますので、これから先も努力したいと思います。
  162. 北側一雄

    北側委員 選挙監視団の問題についてお聞きをいたしますが、御存じのように先般の北京におけるSNCの会合で、五月の二十三日から総選挙をカンボジアで行うということが決定をいたしました。  そこで、日本の選挙監視団の規模な人ですけれども、どの程度の規模を予定されているのか。正式な要請はまだないと聞いておりますが、内々はあると思います。どの程度の規模を予定しているのか。また、その要員確保が現在どの程度進んでおるのか、確保できるのかどうか。その点についてお答えをお願いしたいと思います。
  163. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 お答え申し上げます。  国連からは昨年、かなり前でございますけれども、非公式に我が国から五十名程度を期待したいというお話がございました。まだ正式の要請には接しておらない次第でございますけれども、最近も、やはり非公式な形ではございますけれども国連側として考えている数はやはり五十名であるという確認を得ております。  それで、ただいま御指摘のごとく五月の下旬に選挙が予定されておりますので、ことしの初めぐらいからでございますけれども、私ども事務局におきましては、正式に政府として対応を決定することとなった場合に備えまして、そのような場合に適時適切に対応できるように準備を行っているところでございます。  具体的には、現在、外務省、自治省等関係省庁の御協力を得まして、NGOを含む民間の各種団体あるいは地方公共団体等から相当数の応募、推薦を受けております。この中には直接私どもの方に、自分はぜひ現地に行って選挙監視の活動に参加したいという方もおられる次第でございまして、現在選考作業を行っております。それで、面接を含めましていろいろ選考の準備をしておりまして、今後国連から正式な要請がありますれば、その時点の状況を勘案の上で、派遣時期等も含めまして正式に政府としての対応を決定するということになると思います。  今までのところ、ぜひやってみたいという方々が相当おられまして、非常に手ごたえがあるという感じを持っております。
  164. 北側一雄

    北側委員 今のお話では、要員確保の方はまず問題ないだろうというお話であったかと思います。  選挙が五月の下旬でございまして、恐らく一カ月間前後の参加になると私は思いますから、四月の下旬か五月の初めぐらいには参加をすることになるのかなというふうにも思っております。実際に参加するまでのプロセス、研修等が行われるのかどうか、そういうことも含めて御答弁をお願いしたいと思います。
  165. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 活動の期間につきましては、まだ正式には伺っておりませんけれども、今御指摘のような大体そういう期間であろうと存じます。  私どもといたしましては、選挙監視要員を派遣するに当たりましては、十分な準備をして派遣をしたいと思っておる次第でございまして、御指摘のごとく特に研修を考えております。今のところ、私どもの試案でございますけれども、大体二週間程度の研修を準備中でございまして、その中で、現地の情勢、それから国連平和維持活動とはどういうものであるか、あるいは安全対策、病気に対する心得、あるいはカンボジアの歴史、文化、さらにはクメール語もできるだけ勉強していただく、それから国連の公用語は英語でございますから、その方のカリキュラムも入れたいというふうに思っております。それから、やはり健康が大事でございますので、十分な時間をとりまして予防接種をきちっとやっていきたいと存じております。
  166. 北側一雄

    北側委員 五十名というのはかつてなかった参加になると思いますので、準備万端怠りなく参加をお願いしたいと思います。  そこで、カンボジアの総選挙が五月の下旬、二十三日から行われるわけでございますが、その後三カ月後に新憲法が制定をされて新政府が樹立をされるというふうになります。それで、先日もガリ国連事務総長の安保理への報告書の中にもございましたし、明石代表からもそういうお話があったかと思うのですが、総選挙後におけるUNTACのプレゼンスの問題、これについてお聞きをしたいと思っておるわけなんです。  ポト派は選挙に参加しないわけですね、そして武装解除もポト派については行われていない。こういう状況の中で、私は今、総選挙の後が非常に重要なときだというふうに思うわけなんです。選挙にだれが勝つのか、どの派が勝つのか、少数派の権利がどのように確保されるのか、ポト派に対してどのような対応がとられるのかといった先行きの見通しが必ずしも明確でない、そういう要素もございます。そういう中で、UNTACのプレゼンスというのが私は相当程度この総選挙の後も必要になってくるのはまず間違いないなというふうに考えております。  この辺のUNTACの総選挙後のプレゼンスについてどのような認識を持っておられるのか、できれば大臣の方からでもお答え願えれば……。
  167. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 委員指摘のとおり、総選挙の後、新政府の成立に至るまでの間は非常に重要な時期だと私ども認識いたしております。UNTACの選挙後の関与、さらには、UNTACの任務は一応九月十五日に終了するわけでございますけれども、その後の国連の関与の問題につきましては、もちろん今後の情勢を見きわめて判断する必要がございますけれども、我々としては、UNTAC及び主要関係国と密接に協議しながら対応してまいるつもりでおります。  なお、今般ガリ事務総長が来日しました際に宮澤総理と会談しましたが、同席しました明石代表からは、カンボジアの新政府樹立後も、カンボジア人が希望し、安保理が承認する場合には、小規模な国連の関与が残される可能性があるという発言がございました。
  168. 北側一雄

    北側委員 大臣、総選挙後もUNTACのプレゼンスというのは相当程度残るわけですね。新政府樹立後も、もちろんこれは新政府が望んだならばという前提つきでございますが、国連のプレゼンスというのが恐らく必要になってくると思うのです、カンボジアで。それは文民警察であるかもしれないし、民生部門であるかもしれない。その場合に、もし国連からこの日本から参加しているPKO隊員についてぜひ参加を継続してもらいたいという要請があった場合には、もちろんこれは五原則が満たされているということが前提でございますけれども、私は積極的にこたえていかなきゃいけないというふうに思うわけなんです。いかがですか。
  169. 河野洋平

    ○河野国務大臣 カンボジアの情勢はやはり選挙が非常に重要な場面になる、これは当然のことだと思います。そしてまた、選挙の結果いかんによって選挙後が非常にデリケートな環境になる可能性がある、これも委員指摘のとおりだと思います。それで、現在極めて流動的にさまざまな議論がなされておりますことは、委員もよく御承知のとおり、制憲議会選挙が行われた後、例えば大統領選挙を行うかどうかなどについても一部で議論がなされているところでございまして、どういう政権、どういう政府ができるかということについても現在はまだ不透明な状況でございますから、その点をとってみても、委員指摘のように選挙後かなり大事な場面が来る、つまり、安定した環境をつくるために大事な場面が来るというふうに思います。  それで、今委員お尋ねの、新政権樹立後も条件が満たされれば残るべきではないかという御質問でございましたが、日本のPKOは九月十五日まで滞在をする、PKO活動を継続をしてもいいという期間的なものを持っているわけでございますから、これらは今委員お尋ねのとおり、国連がどういう判断をするかなどを見ながら、まずはその範囲まで考える余地は十分あると思います。それを延ばすかどうかについては、これはまだ今定かに推論のできないところではないかと思っております。
  170. 北側一雄

    北側委員 このカンボジアの場合、大統領選挙が私は極めて大事なのかなとも思っておるのですね。大統領選についていつごろ実施されるのか、その辺の見通しをお持ちですか。
  171. 池田維

    ○池田政府委員 大統領選挙の重要性につきましては今先生の御指摘されましたとおりでございまして、恐らくシアヌーク殿下を大統領にしようというそういう考え方で大部分のカンボジア人の合意はあると思いますが、この大統領選挙をいつ行うのかといったことについてはいまだ具体的な考え方は提示されておりません。したがいまして、現在考えられますところでは、総選挙を五月に行いまして、そこで制憲議会ができます。その制憲議会の場において大統領選挙をいつごろ行うかというような議論が行われるのではないかというように考えられます。
  172. 北側一雄

    北側委員 それでは、同じくPKOの問題に関連いたしまして、まず、ソマリア情勢についてお聞きをしたいと思っておるのですが、私、昨年の十二月の九日に安全保障委員会質問さしていただきまして、このソマリア支援の問題について質問をいたしました。日本が一体何ができるのか検討していただきたいという質問をさしていただいたわけなんですけれども、その後、直後ですか、昨年の暮れに政府がソマリア及び周辺国に調査団を派遣をなされております。その調査結果についてまず明らかにしていただきたいと思います。
  173. 小原武

    ○小原政府委員 お答え申し上げます。  昨年十二月十六日から二十四日にかけまして、ソマリア人道支援調査団というものをソマリア、ケニア、そしてエチオピアに派遣いたしまして、関係各国や国際機関の関係者と協議いたさせました。  この調査団の調査結果につきましては、まず第一に、日本からの国際機関に対する数次の資金協力というものは高く評価されているということ、そして、今後とも可能な範囲で積極的に資金協力を行っていくことが重要であるという点でございます。ちなみに、昨年一年でユニセフ、国連高等弁務官事務所等に対しまして約二千七百万ドルの資金協力をしているところでございます。  第二のポイントは、ソマリア内部についてでございますけれども、社会インフラというものがすべて破壊されている状態であるということで、今後人道的活動を行っていくためには、ある程度自給自足できるような態勢を整えて行っていく必要があるというポイントでありまして、今後、将来に向けてソマリア内部に対する貢献を行っていく際に重要なポイントであると考えております。  第三は、周辺国に流出しているソマリア難民についてでありますが、この難民の帰還という問題が今後の重要な問題になるということでありまして、周辺国の事情に合った適切な支援を国際機関などと協調しながらやっていく必要があるというところでございます。  これらのポイントを踏まえまして、今後引き続きソマリアに対する人道支援を行っていくという方針でございまして、その一環としまして、調査団の帰国後、二月の十二日に、国連高等弁務官事務所、ユニセフ、国際赤十字などに対しまして九百六十万ドルの資金援助をしたところでございますし、また本二十六日、これに続きまして、さらに世界食糧計画に対しまして一千万ドルの資金協力を決定したところでございます。
  174. 北側一雄

    北側委員 経済支援の重要性というのはもう私もよく認識しておるつもりなんですが、それとともに、やはり法律上可能な範囲で人的な支援というのも行っていかないといけないわけでございまして、去年の安保の委員会で聞かしていただきましたのは、PKO協力法の中に「人道的な国際救援活動」というのがあるわけですね。これは従来、例えば紛争に起因するような災害についての救援活動、これについては従来国際緊急援助隊でやっていたケースもあるわけなんです。これがあの法律ができ上がるとともに、紛争に起因するものについてはもう一次的なもの、二次的なものを問わず、すべてこれはPKO協力法に規定されているところの人道的国際救援活動、これでやっていくんだというふうになっておるわけなんですね。  このソマリアの場合は、周辺国、エチオピア、ケニアそれからジブチ、こういうところに百万人を超える難民が発生いたしましてキャンプを張っている、そういう状況なわけですね。そこでの人道的な国際救援活動、周辺国での人道的な国際救援活動というのが考えられないのかどうか、その点の御報告をぜひしていただきたいと思うわけでございます。
  175. 小原武

    ○小原政府委員 お答え申し上げます。  資金協力のほかにも可能ないろいろの形の人的協力を含めましてやっていくことの重要性は、御指摘のとおりでございます。この調査団の帰国後も、国連の諸機関あるいは大きなNGOなどともいろいろ意見交換などをしてきているところでございます。  それらの意見交換を通じて感じますところは、既に周辺国におきまして援助を実施している機関は、基本的に日本の資金協力以外の協力についてもこれを歓迎するという態度でございますけれども、今何が一番、どういう形で自分たちに支援してもらいたいかというところになりますと、とりあえず一番欲しいのは資金であるという要請でございまして、まずそれにこたえるということで、先ほど御説明しましたように、二月に入りましてから二度の資金協力をしたところでございます。  今後とも、人的貢献の面も含めまして、我が国としてできる協力について検討を続けてまいりたいと考えております。
  176. 北側一雄

    北側委員 大臣、私の印象では、こういう特に途上国でなんですけれども各国が競って参加しているという印象をどこへ行っても強く受けるのですよ。競って参加している、競って手を挙げているわけですよ、自分たちがやるということで。  今のお話でもわかるとおり、それは経済支援は重要なんです。物すごく重要なんですけれども、やはりここ数年間我々が議論してきたことは、経済支援だけではなくて、やはり我々が汗をかいて貢献をしていくことが重要じゃないか、それで一体何ができるのかということをここ数年間ずっと議論をしてきたわけなんですね。このソマリアの例でも、周辺国については、ソマリア国内だけじゃないですよ、周辺国にいる難民、百万人を超える難民がいる。そこではさまざまなニーズがある。それに対してすぐこたえて人的貢献できる可能性というのは十分あったはずなんですけれども現実にはできていないわけなんですね。  そこで、大臣にちょっとお聞きしたいのですが、このPKO協力法の中に規定されている人道的国際救援活動、これについて、実施する体制というのがきちんとできていないんじゃないのかなというふうに、私これは前も質問させていただいたんですが、例えば民間のお医者さんとかそういう方であれば、登録制をしきまして、国際平和協力本部で登録をしていただいてきちんと掌握している、また、官の方であればローテーションを組むとか、そういうことをきちんと、いつでもそういう必要性があったら対応できるような体制をつくらないといけない。それが、法律ができ上がったにもかかわらずできていないんじゃないのか、そのように思うわけなんです。いかがですか。
  177. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の人道的な国際救援活動に対応するための体制でございますけれども、何分この国際平和協力法が施行されましたのが昨年の八月十日ということで、率直に申し上げまして、当面はカンボジアのPKOの方でいわば手いっぱいでございまして、現在のところ、まだ人道的な国際救援活動に対処するための体制は十分にはできていないということは事実でございます。今後この面の活動も実施していきたいと考えておりますが、そのためには、先ほどちょっとお触れになりましたようないろいろを人材の方々、いろいろな技量を持った方々の登録等も含めまして、具体的な方策を考えていきたいと存じております。  なお、この法律のもとでは、もとより政府機関によるいろいろな活動というものは、これは相当整備されているわけでございまして、ただ、それだけでは不十分でございますので、今後御指摘のような点を含めて検討していきたいと存じております。     〔石川委員長代理退席、鴻池委員長代理着     席〕
  178. 河野洋平

    ○河野国務大臣 一般論として申し上げたいと思いますが、どうも我が国はボランティア活動というものが他国に比べてやや活発でない面があるのではないかという感じが私はしております。それは一体なぜだろうかということを考えてみますと、私はボランティア活動に参加したいと思っている人は相当数いるんだろうと思います。しかし、そういうボランティア活動に積極的に参加したいという気持ちを持っている人を上手に組織化できない、オーガナイズできないということが一つ。どうもそういうノウハウが十分我が国には定着していないという感じを私は一つ持っております。  それからもう一つは、社会人になりますと、いわゆる終身雇用制というものが一般的だものですから、途中で会社をやめて遠隔の地にボランティアとして参加をする、一定期間ボランティアとして参加して帰ってくると、今度はなかなか社会復帰が難しくなるというようなことがあるのではないか。そういう社会の仕組みみたいなものがボランティア活動をやや鈍らせている面があるのではないか。  それからもう一つは、何といってもこのボランティア活動、特に国際貢献のための活動は、いっそういう要請があるかわからないわけですから、そういう人材をプールするといっても、どのくらいの期間体をあけていただくかというようなことがなかなか難しいところもあって、これは長い間経験を積み重ねることによってそうしたことができるようになってくる。我々は国際貢献にも本当に取りかかったばかりであって、そういう経験がまだない、そういう蓄積がまだないということに問題が少しあるのではないか、こんなようなことを考えております。
  179. 北側一雄

    北側委員 今の大臣のお話は、非常に重要な部分が私はあると思うのですね。  昨年末カンボジアに行ったときに、カンボジアで活躍をしておる日本のNGOのメンバーと、十名ぐらいおられましたけれども、懇談をしました。本当に自発性、自主性に基づいてとうとい貢献をされておりまして、非常に感動いたしました。その懇談の中で、多くの課題といいますか悩みについて聞かせていただきました。  今大臣がおっしゃったように、例えばお医者さんがこの国際ボランティアを決意しても、休暇を長期にとることはもうほとんど不可能なんだというようなこととか、それから場合によってはもう失業さえ覚悟しないといけないんだとか、また実際日本の国内の社会において我々のこういうボランティアの経験がキャリアとして評価されないとか、またお金の面でも、財政の面でも、実際今外務省でやっていただいているのも、外務省を中心にしてやっていただいている支援というのは、事業に対する支援なんですね。ところが、実際は管理費が物すごいかかるわけなんですね。こうしたものに対する支援がないとか、さまざまな問題点がたくさんあるわけなんです。  もちろん、これはNGOですから、NGOの自主性、自立性、そういうものは最大限に尊重しながら、私はNGOの持つ重要性からいって、この日本の国内でもっとNGOの皆さんが活動ができるような、そういうふうなバックアップができることがたくさんあるのじゃないのかな。例えばボランティア休暇とか、こういうのができるのじゃないのかな。そういうことを検討すべきじゃないかと私は思うのですが、いかがですか、大臣。
  180. 河野洋平

    ○河野国務大臣 最近は企業の中にもそうしたことに理解を示される企業が出てきたということを新聞か何かで私は拝見をしまして、大変うれしく存じました。これらがごく限られた企業ではなくて、大体どこの企業でもそういう国際貢献のためのボランティア活動には理解を示してくれるというようなことになってほしいものだというふうに私は思います。  NGOというのは、これはもう多種多様にあるわけで、さまざまなアイデア、さまざまな人たちがNGOとして活躍をなさるわけで、これは普遍的にどうするというわけになかなかいかないのがNGOのよさでもあり、問題でもあるわけでございますが、できるだけやはりNGO活動というものを大事にしながら育てていくという気持ちが必要だろうというふうに私は考えております。
  181. 北側一雄

    北側委員 大臣の立場としてなかなか率直にお答えしにくい部分もあるかと思うのですが、例えば、ちょっと私、提案です、これは。これは必ずしも国際ボランティアだけではなくて国内のボランティアでもそうだと思うのですが、例えばお医者さん、国公立の大学の、また国公立病院のお医者さん、こういう方についてはボランティア休暇制度を先行してとっていく、こういうことは検討されていいんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか、大臣、ぜひ。
  182. 河野洋平

    ○河野国務大臣 有力な委員の御提案として承っておきます。
  183. 北側一雄

    北側委員 時間ございませんので、次に、モザンビークの問題についてお聞きをしたいと思います。  もう時間がないので、先に、モザンビークの場合にこのPKOの五原則が満たされているのかどうか、仮に参加するとした場合ですよ、これは後の問題ですけれども。五原則が満たされているかどうか、それからどのような任務について現地のニーズがあるのかどうか、この点についてお答えをお願いしたいと思います。
  184. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 モザンビークにつきましては、御案内のとおり昨年の十月に停戦協定ができたわけでございます。その後、若干の期間停戦違反があるというような報にも接しておりましたけれども、その後は非常に落ちついておりまして、この停戦合意はよく守られているというふうに承知しております。基本的には、五原則には合致する状況であるというふうに考えております。ただ、モザンビークにどのような参加をするかというようなことにつきましてはまだ方針が決まっておりませんので、そういう意味で具体的にまだ判断をするという時期ではございませんけれども、基本的には五原則には合致するのではないかというふうに考えております。  それから、モザンビークにおきましての国連平和維持活動のニーズと申しますか、具体的な分野でございますけれども、これも御案内のとおり、昨年の十二月の初めに国連の事務総長報告書というのが出まして、この中でいろいろな分野を挙げておる次第であります。全体の規模といたしましては約七千五百名ということでございまして、ほかのPKOと同様に、軍事的な分野あるいは文民の分野と両方ございます。  細かいところは捨象させていただきますけれども、例えば軍事部門でございますと、停戦監視でございますとか、あるいは本部の中隊、歩兵大隊、いわゆるPKFでございますが、工兵大隊、兵たん中隊あるいは輸送調整中隊、航空部隊、通信部隊、医療部隊というような分野がございます。  それから、選挙が近づきますと、これは一応秋に予定されてはおりますが、若干おくれるのではないかというふうにも聞いておりますけれども、選挙監視要員、それから人道援助の調整関係の事務、あるいは行政支援というものが挙げられております。  なお、カンボジアと違いまして、いわゆる文民警察につきましては、今のところは配置の予定はないということでございます。
  185. 北側一雄

    北側委員 これも最後に大臣に一言聞いていただいてお答え願いたいのですが、カンボジアに行ったときに日本の停戦監視団に参加しているメンバーと懇談する機会がございまして、その方というのはプノンペンの停戦の監視をチームで十四人でやっているのですよ。その方以外はみんな、ロシア人とか中国人とかそれからガーナの人とか、みんな国が違うわけです、十四名で、英語が共通語で。停戦のモニュメントをやっているわけですね。  その方がこういう話をしてくれました、日本の方です。その十四人のチームの中心者、リーダーはロシア人なんですよ。ロシアの方なんですね。これまで自分はロシアの人とペアで一緒に仕事をして、また一日じゅう一緒にいて語り明かすなんという経験がまさかやってくるとは想像もしなかったと。それはそうだと思うのですね。自衛官の方々にとりましてはそうだと思うのです。隔世の感がする、すばらしい経験をさせていただいている、このような国際的な支援活動にロシアの方や中国の方や、そういういろいろな方と一緒になって参加することによって、自分たちの意識が今大きく変わってきていることを痛感しております、こういう話をされておられたんです。私は、この話は非常に重要な、参加している自衛官の方々の意識がこうした国際協力に参加することによって大きく変わってきている。  このモザンビークの場合も、今のお話を聞けば、カンボジアよりもまだ情勢がいいんじゃないかというような話もあるわけなんですね。日本が求められている人的貢献の選択の幅というのはたくさんあると思うんですね。そういう意味で、官房長官がおっしゃっている趣旨もよくわかるんですが、やはり参加できる、私、積極的な参加を考えて行くべきじゃないのかな、そのように思うわけです。官房長官、いかがですか。
  186. 河野洋平

    ○河野国務大臣 国際貢献が大事であるということは十分承知をしているつもりでございますし、ブトロス・ガリ国連事務総長の話を引用するまでもなく、国連のこうした活動にはできるだけ多数の国が参加をすることが望ましいことも私はよくわかっております。モザンビークに日本からも出すべきではないかということも、私は十分理解できます。  ただ、委員も御理解いただけると思いますが、モザンビークというところには日本の大使館もございません。日本からは漁業会社か何かが行って、何人かの日本人が仕事をしておられるという話は聞いておりますが、それ以外にはきちっとしたモザンビークについての資料というものは体系的に十分あるというわけではないのです。  それで、モザンビークのPKO活動に日本が期待されている、来てほしいと言われているということは、せんだっても政務次官がいらっしゃって、政府側、反政府側、両方と会って話を聞いてこられました。つまり、デザイラビリティーはそこでわかりました。デザイラビリティーはわかりましたが、それでは行くかということになれば、次にフィージピリティーの調査をするというのは当然のことではないでしょうか。どういう状況か、どういう国柄か、どういう状態になっているかというものをやはりきちっと調べてから出すというのが責任ある立場の判断として大事なのではないかということでございます。来週には外務省中心に調査団を現地に派遣をするということを今決めておりまして、二週間程度の調査ということになろうかと思いますが、そうした調査が終わって帰ってまいりますれば、現地の事情は今よりは数段わかってくる。その上でまたいろいろ検討をしたい。  私は、期待されていることもよくわかります。それから、五原則を満たしているか満たしていないかということが一番大事だということはおっしゃるとおりです。しかし、五原則を満たしていれば全部出すということでもないと思います。五原則を満たしているということを前提に、それから我が国我が国としての政治判断を下すということがこれまた大事なのではないかというふうに考えて、この問題は、委員の御意見は御意見としてよく伺いますが、慎重に検討させていただきたいと思っております。
  187. 北側一雄

    北側委員 以上で終わります。
  188. 鴻池祥肇

    ○鴻池委員長代理 この際、倉田栄喜君から関連質疑の申し出があります。北側君の持ち時間の範囲内でこれを許します。倉田栄喜君。
  189. 倉田栄喜

    倉田委員 公明党・国民会議倉田栄喜でございます。残りの時間、私の方から質問をいたします。  まず、私は、自治省より公表をされました九一年の政治資金収支について、自治大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  九一年の政治資金報告書によりますと、四千三百十五の政党や政治団体が集めて届け出た政治資金は一千八百五十七億円で、史上最高となっています。このうち、党費や借入金以外の寄附が九百五十八億円となっている。自治大臣は、これらの公表された金額について多いと思われるか、少ないと思われるか。これは結論と理由だけを簡潔にお答えいただければと思います。
  190. 村田直昭

    村田国務大臣 お答え申し上げます。  平成三年分の四千三百余の自治大臣所管の政治団体に係る政治資金の収入総額は、御指摘のとおりの額となっておりますが、政策の普及宣伝活動一つをとってみても金がかかるということは事実でありまして、政治にある程度金がかかることは、いわば民主主義のコストとして考えるべきものであろうかと思っております。これが多いか少ないかということは、一概に申し上げることは困難であろうかと思います。  もとより、政治資金は議会制民主主義を支えるために国民から寄せられる浄財でございますから、政治に携わる者はそれぞれがこのことを十分自覚し、国民の批判を招くことのないようにしていくことが何よりも重要である、このように考えております。
  191. 倉田栄喜

    倉田委員 多いか少ないか、いわゆる政治の世界のプロと呼ばれる人たちの中には、これは氷山の一角なのであって、例えば佐川急便事件、前自民党副総裁の金丸さんに渡された五億円の裏献金はたまたま発覚したにすぎないんだ、こう言う人もいらっしゃれば、純真な国民の皆さんには、どうしてそんなに政治に金がかかるんだ、こう思われている方も多いと思います。このいわゆる永田町の金銭感覚、それからこの庶民感覚の落差が政治不信の一つの大きな原因になっているのではなかろうか、こう思うわけでございます。  ところで、河野洋平官房長官は、昭和四十二年、神奈川五区から初当選されておられますが、私もその当時から長官の選挙区である平塚に住んでおりまして、長官が平塚駅前の街頭等で非常に熱っぽく演説をされておられた姿を今でも思い出すことができるわけでございます。  そこで、それから二十七年近くいわゆる政治の世界を波乱方丈に生き抜いてこられた長官に、率直に、いわば政治のプロとしてお伺いをするわけですけれども、その政治のプロの世界と庶民感覚との落差、そして政治、政治家に対する不信、これをどう解消するか、この視点からお答えをいただきたいと思うわけです。  まず、官房長官御自身の政治活動がいわゆる国家から支払われる報酬の範囲内で、先ほど自治大臣、民主主義のコストというお言葉もございましたけれども、可能なのかどうか、この点についてお聞きをいたしたいと思います。
  192. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員お尋ねのものは、いわゆる歳費と言われるものについてだろうと思いますが、ここに昭和五十七年七月二十一日の議員関係経費等に関する調査会の答申というものがございますが、その答申の中には、歳費とは「国会議員がその地位にふさわしい生活を維持するための報酬として受けるもの」である、こう書いてあって、歳費が政治活動をするための資金ではないというふうにその答申では言っております。  したがって、したがってというのもおかしいのですが、私は国からいただく歳費で自分の政治活動は賄っておりません。
  193. 倉田栄喜

    倉田委員 いわゆる民主主義のコストとして政治活動に伴う資金が必要である、これは今も長官お答えになったとおりなんだろうと思うのです。問題は、それではそのお金をだれがどのように負担をして、そしてその内容についていかに透明性を確保していくかということであろうかと思います。  国民の皆さんの中には、私たちは有権者として一票の、投票価値の問題はあるにいたしましても、一票の投票権は持っているけれども、多額の企業献金、あるいは金丸さんに渡された五億円の裏献金で、たまたま税金の確定申告の時期でございますけれども、国民の税金の使い方あるいはその使い方の順番が不当に影響力を受けるようなことがあったら、税金なんか払っていられるか、こういうお気持ちの方も実際多いと思います。  そうだとすれば、いわゆる企業献金、団体献金あるいは個人献金にしても、あるいはやみ献金、これはもう論外でございますけれども、これらの献金の影響力が過剰あるいは不当に発揮されているのではないかというこの国民の疑惑を、今の政治資金のあり方、今の制度、システムのもとで払拭できるのかどうか。  さらには、九一年度の収支報告でも、マスコミ等々で指摘されていることでございますけれども、その透明度はますます下がっている、こういうふうに言われているわけです。そうすると、どうも問題はあるのかもしれないけれども無理なのではないのか、こういうふうにも思えるわけでございますけれども、そこで、これは自治大臣と官房長官に、お二方にお尋ねをいたしたいと思いますが、本来、民主主義のコストというのはだれがどのような形で負担すべきなのか、そしてその透明性を確保するためにはどうしたらよいと考えておられるのか、それぞれにお答えをいただきたいと思います。
  194. 村田直昭

    村田国務大臣 倉田委員にお答え申し上げます。  政治と金をめぐる問題に端を発する国民の政治不信を解消するためには、まず何より政治家個人の政治倫理の確立が重要であると思います。これは、私は公明選挙の問題を自治省以来もう三十数年前から担当しておったのでございますが、まず政治家個人の政治倫理の確立が重要である、あわせて、政治資金制度のみならず、選挙制度を含めた制度面の抜本的見直しを行うことが不可欠であると考えております。  自民党では、昨年の十二月十日に「政治改革の基本方針」をお決めになりました。その中では、選挙制度を政策、政党中心の仕組みに改めて、この改革と一体として、政治資金の調達も政党中心に改めるということとしております。また、政治団体の数を制限をし、そして公開基準の見直しなど政治資金の透明性の強化を図ることとしておりまして、現在、その法案化に向けて鋭意作業中と承知をしております。  私の方でも、この各党の大変な御努力を注視させていただいておるところでございまして、今後、各党間で十分御論議をいただきたいと思っております。
  195. 河野洋平

    ○河野国務大臣 自治大臣から御答弁申し上げましたので、重複を避けたいと思いますので別の視点から申し上げたいと思いますが、本来、政治活動に要する政治資金については、国民の自発的な意思に基づく国民の浄財で賄われるというのが本来の姿だろうと思います。これをどういうふうにルール化するかということが問題だと思いますが、これらについて、政治改革の中でこれらのルール化が図られるということが望ましいと思っております。
  196. 倉田栄喜

    倉田委員 長官も今、国民の皆さんの政治あるいは政治家に対する不信、政治不信がもう頂点の、それくらいまで達しているということはおわかりだと思うのです。今長官は、自治大臣のお答えもそうでございましたけれども、制度改革をするのが望ましい、こういうふうにお答えになったわけですけれども、私は、もうやらなければいけないんだ、そういう強い決意が必要なんだと思うんです。  今、官房長官のお答えを聞いておって、そういう強い決意がどうもあらわれていないように思えてなりません。宮澤内閣官房長官として、望ましいということではなくて、これはもう本当にやらなければいけないんだという強い御決意があるのかどうか、確認をいたしたいと思います。
  197. 河野洋平

    ○河野国務大臣 かたい決心と強い決意を持っております。
  198. 倉田栄喜

    倉田委員 自治大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  今、政治家の報酬の話がございましたけれども、特に地方議員の方々の場合、いわゆる市町村というよりも町村議員によっては、いろいろさまざまな経費を差し引かれて手取り額が十五万円に達してないケースも多いかと思います。今、長官は、いわゆる政治活動には報酬以外の政治資金が必要だ、こういうふうにお答えいただいたわけですけれども、政治資金を集めない地方議員の方々の中には、この差し引きで残された現金支給額の中で必要な政治活動をやっておられるとほとんど生活費などは残らないのではないのか、こういう問題点もあるんだろう、こう思うわけです。自治大臣は、いわゆるこういうケースについてどんなふうにお考えになるのか。  このような場合、いわゆる職業としての政治家、こう言われることがあるわけですけれども、これは存在せず、まさに地方議員の場合は名誉職、奉住職にすぎないものではないのか。これでいいのかどうか、自治大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。
  199. 村田直昭

    村田国務大臣 お答えを申し上げます。  確かに、地方公共団体の議員の報酬については、かつては名誉職と考えられておった関係が非常に傾向として強かったと思います。しかし、戦後の自治体制度のもとでは、その考え方は変わりつつあるのではないかと思います。  平成三年四月一日現在の地方議会の議員の報酬は全国単純平均で、政令指定都市を除きますと、市議会議員が約三十六万円です。それから、町村議会議員が約十七万六千円となっております用地方議員の報酬については、その職務の内容に応じ、住民の理解と納得が得られるよう慎重に決定する必要があり、地方団体におきましては、第三者機関である特別職報酬等審議会というのがあるんですね。特別職報酬等審議会の意見を聞くなどにより、公正な額の決定に努めているというふうに考えております。
  200. 倉田栄喜

    倉田委員 先ほど自治大臣のお答えの中に、いわゆるこの政治不信を解消するにはまず政治家自身の倫理、これがまず大事である、こんなふうにお答えになりました。  あとは官房長官に残された時間お聞きしたいと思うんですが、いわゆるロッキード、リクルート、共和、佐川、その政治不信をますます高めるような事件が連続的に起こっている。官房長官御自身はこの原因をどんなふうにお考えでございますか。
  201. 河野洋平

    ○河野国務大臣 ちょっと時期を正確に忘れましたので、間違いであれば後で訂正させていただきたいと思いますが、ロッキード事件前後のことではなかったかと思いますが、行政改革を提言した提言の中に、行政手続法という法律をつくるべきじゃないかと。つまり、政治が行政の中に過剰な干渉をする、政治が行政に立ち入り過ぎるということが問題ではないのかと。本来、行政は、政治が定めた法律にのっとって、その法律の中で、法律の範囲内で仕事をする、その中にまた政治が過剰に介入をしていく、つまり過大な政治資金が政治家に渡される場合の一つケースとして、それによって政治力で行政を動かす、あるいは行政の中で動いているものの例えば順番を繰り上げるとか便宜を図るとかということを期待してその資金が渡される、これはつまり犯罪的な行為でございますが、そういうことがあるのではないか。したがって、行政は行政として、行政手続法というようなものをつくって、その法律に基づいて行政というものはちゃんと執行されるというふうにした方がいい、つまり政治と行政との、何といいますか、きちんとした一線が引かれているということが大事なんじゃないかという提案をされたことがあると記憶をしておりますが、それらも一つの問題ではないかというふうに思います。  もちろん、委員先ほどから御指摘のように、政治家の倫理観とかそういうものは根底にあるというふうに思いますが、その倫理観の問題と同時に、先ほど私ちょっと申しましたように、何かルール化する、制度化することができるとすれば、そういったようなことが一つ可能なのではないかと。  もちろん、選挙制度とか政治資金規正の法律の改善とかそういったものは非常に重要だと思いますけれども、それらと同様に、そうした面からも検討する必要があるのではないか、そんなふうに感じております。
  202. 倉田栄喜

    倉田委員 さまざまな御意見の中には、今お答えにもありましたけれども、必要なのは政治改革なのではなくて政治家改革だ、こういう御意見も国民の中にも結構あるかと思うんです。  それでは、どうしたらその政治家改革ができるのか。これはもはや私も、今長官から御答弁いただきましたけれども、政治家自身の倫理の問題であって、質の問題、それだけでもう済まされる問題ではないんではないのか、こういうふうに思うわけです。そこで、政治家に求められている倫理、それからこの政治不信をどう解消していくかという視点から考えてみたら、この政治家に求められている倫理、モラル、これを今長官もちょっとお答えいただきましたけれども、きちんとルール化していくことの方がいいんではないのか。  例えば、名前を出してしまって恐縮でございますけれども、竹下元総理、国民の中から強い議員辞職の世論調査が出ている。しかし、竹下元総理の個人の倫理観からいけばまたそれとは違う結論を出されておられる。ここに相当世論と政治家自身の倫理観のギャップもある。こういうことだとすれば、もはや政治家自身の倫理観に頼っていってはいけない、もっとこのモラルをルールにしていく必要がある、私はそう思います。そして、もしそうだとすれば、その政治家に求められるモラルをちゃんとルールにした場合、やっぱりそれがきちっと実行できるという意味で政治改革を抜本的にやっていかなければいけない、こういうふうに思うんです。  そこで、宮澤内閣は方針としてこの政治改革について、「変革と実行」というこういうスローガンを掲げられて臨まれていると思います。私はまあこの「変革と実行」、これもスローガンかとは思いますけれども、改革が求められている中であえて「変革」という言葉を使われた。そして今、国民の政治不信を解消するにはもう議論をしている段階ではなくて、そしてどうやろうかと実行している。実行は必要なんですけれども、実行だけではなくて、その政治改革を実現をしていかなければいけない、そういうところに来ている、もうそうでなければいけないんだ、こういうふうに思います。  そこで、あえてお尋ねをするわけですけれども、改革ではなくて変革、実現ではなくて実行、こういうふうな言葉をお使いになったところ自体に、宮澤内閣のその政治改革に対する決意の不足があらわれているのではないのか、こう私は疑わざるを得ないわけでございますけれども官房長官、いかがでございますか。
  203. 河野洋平

    ○河野国務大臣 どんな言葉を使ったかということよりも、やはり今委員おっしゃったように、もう実行していくこと以外にないというふうに思います。宮澤総理は、国際環境を初めとして、今変化の時期、変革の時期、その変化、変革をリードするのは政治だ、その政治が変わらなければいかぬということを言っておられるわけでございまして、この政治改革のために宮澤総理が費やす時間と力はどれだけ多くても惜しくないというふうに私は思っておるわけでございます。  それは、この思いはただ単に宮澤さんだけの思いではなくて、恐らく国会議員ひとしくそういう思いを持っていらっしゃるに違いない。今政治は変わらなくてはいかぬ、今、国会はいろいろ考えなければならない時期だというふうに多くの方が思っておられるのではないかと拝察をいたしまして、そういう思いがあれば必ず、各党間に相当な開きがあると言われる政治改革でございますけれども、今変わらなければいけない、変えなければならない、そういう基本的な思いが必ず合意を導き出す大きな力になってくださるに違いない、こう考えているところでございます。
  204. 倉田栄喜

    倉田委員 総理も所信の中で「きょうの後にきょうなし」というお言葉をお使いになりました。それは政治改革に対する強い熱意をあらわされたものだと私は受けとめております。そうであるならば、では具体的にどういう手順で、いつまでに実現をしていくのか、今国会でできるのかどうか。また、できるのかどうかではなくて今国会でやるのだという、そういう強い決意があるのかどうか。  これは御答弁いただきますと、各党間の協議でございますとか、例えば自民党あるいは社会党、公明党、いつ法案を提出をされるかそれ次第でございます、そうかもしれませんけれども宮澤内閣が何としても政治改革をやらなければいけないのだということであるとすれば、そしてその決意が本物であるとすれば、今国会で何としても実現するのだ、その手順はこうなのだ、こういうことがやはりきちんと詰まっていなければならないのだろうと思うのです。  お互いに、政権政党の自民党が出した改革法案、野党が出した改革法案、開きがあり過ぎまして、一生懸命に政治改革を実行しようと思いましたけれどもやはり話がつかなくてだめでした、これでは国民の政治不信は解消できない。それは政治と金、政治家に対する政治不信。最近は国会議員のバッジをつけていると、何か、おまえ国会議員だろうと言って殴られるケースもあるのだそうです。そういうことではやはり胸を張って国会議員として歩いていけない。これをきちんとやっていける政治改革が必要なのだと思うのです。  そこで、官房長官に、いつ、どのような手順で今国会でやるんだというそういう御答弁を、宮澤内閣官房長官としてお尋ねをいたしたいと思います。
  205. 河野洋平

    ○河野国務大臣 昨日だったと思いますが、自民党の政治改革本部に本部長として宮澤総理が出席をされて、党員、自民党国会議員の多くの方々からさまざまな御意見をいただいて、その御意見を謙虚に聞きながら、とにかく一日も早く自民党案をまとめようということを皆さんにお願いをしてきたところでございます。これは現在自民党の政治改革本部でこの作業をしていっていただいておるわけでございまして、政府の一官房長官などごときがそれについてとやかく言う立場ではございませんけれども、願わくは三月の早い時期に案をおまとめいただければと、これはもうひたすら期待を申し上げているわけでございます。  委員御案内のとおり、この国会は六月二十日が会期末ということでございますから、できるだけ早く提案をして、各党のそれぞれの案をお示しをいただいて、先ほども申しましたように各党間で、これはもうだれが悪いとかだれがいいとかということではなくて、お互いに虚心坦懐に話し合って土俵づくりに取り組むということでなければならないのだろうと思います。そのためには、宮澤総理・総裁は総理・総裁として強い決意を持って臨んでいるというのは、先ほど委員おっしゃったとおりでございます。
  206. 倉田栄喜

    倉田委員 私は、最初の方で、官房長官が御尊父の後を受けて、二十七年くらい前に平塚駅頭で強い熱っぽい口調で街頭演説をされておられたことを覚えておる、心の中に残っておると申し上げました。今長官の御答弁を聞きながら、その言葉の中に、また言葉じりをとらえるようで恐縮でございますが、私ごときがとか、願わくはとか、あるいは期待をしておるとか、そういう言葉がございました。そういう段階ではないということは、もう長官御自身も先ほど御答弁なさったとおりであります。二十七年間本当に政治の世界の中を波乱方丈に生き抜かれて、本当に庶民の心が、国民の声が長官のところに今届いているのかどうか。本当に政治不信は解消するのだ、そういう強いリーダーシップで宮澤内閣官房長官として、何としても今国会で政治改革、抜本的に実現をするのだというそういう強い強い決意、あるいは決意のみではなくて本当に実行いたします、実現いたしますと、そういう思いで臨んでいただきたいと思います。  そこで、残された時間、高齢化社会と出生率の低下の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。自治大臣と官房長官、御苦労さまでございました。厚生大臣、お見えになっていると思います。  いわゆる一九九一年の出生率一・五三ということで、一・五三ショックという言葉がございました。一方で、二十一世紀日本世界に類例のない質と量での高齢化社会を迎える、こういう指摘もされておるわけでございます。そこで、この出生率の低下について、一九九一年の特殊出生率一・五三、この数字をどんなふうに厚生省として思われておるか、また大臣としてはこの原因をどんなふうにお考えになっておられるのか、お考えをお聞きいたしたいと思います。
  207. 瀬田公和

    ○瀬田政府委員 済みません、技術的な問題でございますので私からお答えをさせていただきます。  出生率の低下の原因といたしましては、一般に未婚率の上昇や結婚した女性が産む子供の数の減少といったことが考えられるわけでございますが、近年、晩婚化の傾向はあっても生涯に産む子供の数は余り変化はしていないという実情にございます。最近の、先生今御指摘になりました出生率の低下というものは、晩婚化の傾向というか、すなわち二十歳代で女性が結婚をしないというふうな傾向が著しい上昇過程にあるというふうなことだろうと思います。すなわち、若い世代というのはまだ結婚をしていない、したがってまた子供を産んでいないというのに対しまして、その前の世代というのは子供を産み終えているために、先生指摘いただきましたように社会全体の出生率というものが低下をしている、そういう状況だろうと思います。  今後は、若い世代というものが一部分生涯未婚という形で残るということはやむを得ないと思いますが、大多数の女性は晩婚ではあっても結婚して子供を産むというふうに考えておりまして、結果として出生率は数年後には反転する時期が来るというふうに考えております。それで、平成四年九月の厚生省の人口問題研究所の推計によりますと、平成六年の一・四九を最低値といたしまして、その後は徐々に回復をいたしまして、いわゆる平成三十七年、二〇二五年には一・八〇というところまでは回復するだろうという推定がなされております。  しかし、いずれにいたしましてもこういった状況でございますので、子供を産み育てやすい環境づくりを進めるということが今後極めて重要なことになるだろうというふうに考えております。
  208. 倉田栄喜

    倉田委員 大臣、お願いします。
  209. 丹羽清之助

    丹羽国務大臣 お答えいたします。  先生は昭和二十四年生まれですね。倉田先生がお生まれになった当時は出生率が四・三二でありました。ずっとこう総じて低下の一途をたどっておりまして、現在は、ただいま政府委員からも御説明申し上げましたけれども、一・五三でございます。原因につきましては、今政府委員の方から申し上げたわけでございますけれども、高齢化社会と相まちまして、大変大きな社会問題となっておるわけでございます。  そこで、私ども厚生省といたしましては、とにかく女性の皆さん方が子供を産みやすいような環境づくり、こういうものを手がけておるわけでございます。具体的には、働く女性が年々年々増加しておるわけでございますので、働いても子供さんを預けることができるような保育所のいわゆる夜間延長であるとか、それから乳児保育の充実、こういうものをまず図っておるわけでございます。それから児童手当、戸井田先生などの御尽力によりましてこれも拡充をいたしておるわけでございます。そのほか育児休暇制度、こういうものがスタートしたわけでございます。これは男性でも女性でもどちらでも選択ができる、こういうことでございます。  こういうようなもろもろの、一年間に限って育児休暇制度というのはとれるわけでございますが、こういうような体制を整えながら、ぜひ御理解をいただきたいのは、戦前、戦中の産めよふやせよという発想ではなくて、女性が産みやすいような環境づくりの結果おのずと出生率が上がっていく、こういうことが望ましいんだ、こういうことで御理解を賜りたいと思っております。
  210. 倉田栄喜

    倉田委員 女性の方が産みやすい環境をどうつくるか、その産みやすいということだけに重点を置きますと、女性の方から見れば、女性は子供を産む道具ではないんだ、こういうふうな御意見もあるのだろうと思うのです。しかし、どう子供を、二十一世紀を預かる未来の宝を育てていくのかということは、これだけ出生率が低下する中で、先ほどの御答弁の中でも一・八〇までしか回復をしない、人口を維持するについては二・一必要なんだ、そういうことからしても、どんどんどんどん減っていく現状がある。これについてはやはり厚生省も、小手先だけのことではなくて、もっと抜本的なところから検討をしなければならないであろう、こういうふうに思っております。  もう一つ。実は、もう時間があと五分近くしかありませんけれも、いわゆる高齢化社会の中で厚生省は、これだけ子供の数が、出生率が低下をしていく中で、在宅介護という一つの方向で福祉政策を打ち出されておるわけでございます。今の日本の在宅介護制度というのは、いわゆる家族型介護、そういう状況の中で、長男のお嫁さんが長男の御両親の面倒を見るというふうな形で、それが主で、そこを補助的にホームヘルパーさんであるとかいろいろな形で補助制度がされている、こういう仕組みになっていると思うのですけれども、これだけ出生率が低下をしていきますと、大抵の方が長男であり、長女であってしまう、そういうケースも多くなる。そうすると、いわゆる一組の夫婦がそれぞれの二組の御両親の介護をしていかなければいけないような事態も出てくる、と同時に介護者自身も高齢化をしてくる、こういう問題ももはやそう遠くない時期に出てくるのだろうと思うのです。  厚生省として、いわゆるこの在宅介護の問題に今絞ってお尋ねをいたしますけれども、この在宅介護という視点から考えたとき、これから迎える高齢社会に対して今どんな政策課題を考えておられるのか、具体的にどんな検討がなされておられるのか、お聞きをしたいと思います。
  211. 丹羽清之助

    丹羽国務大臣 寝たきりのお年寄りというのは今、痴呆性のお年寄りを含めますと百四十万人おります。年間七万人ぐらいの割合でふえてきておるわけでございます。  そこで、私どもは、この在宅サービスと申しますか在宅介護、こういったものに力を入れておりまして、平成二年度からいわゆるゴールドプラン、こういうものをスタートさせたわけでございます。先生承知のように、ゴールドプランは、ショートステイ、デイサービス、ホームヘルパー、こういう中で在宅の介護の充実を図っていきたい、こういう考え方に立っておるわけでございます。それから、昨年から訪問看護センターというものを始めまして、おかげさまで大変評判がよろしくて、ことしを含めますと百四十三カ所、訪問看護センターというものができ上がるわけでございます。  こういうようなもろもろの体制を通じまして在宅のお年寄りのための手厚い体制を築いていきたい、こういう考え方に立っておるものでございます。
  212. 倉田栄喜

    倉田委員 私が今お尋ねをしたかったのは、今厚生大臣御答弁いただいたのは、今までの在宅介護を充実していこうというこういう延長上の施策であろうかと思うのです。私が今お尋ねをしているのは、これから二十一世紀を迎えたときに、一方で出生率というのは静止状態まで、二・一までは戻らない、そして物すごい量とスピードで高齢化社会を迎える、まさに総長男、総長女みたいな状況が生まれてきて、介護者自身も高齢化をしてくる、このような状態を迎えるときに、今の制度の延長のままで果たしてそれを支え切れるのかどうか、そういう危惧感から実はお伺いをしておるわけでございます。  抜本的に、本当にこれから迎える高齢化社会の中の介護の問題についてどう対応するかということは、もっと基本的なところから実は考え直さなければいけないのではないのか。同時に、その目前に迫ってくる種々の問題についてもさまざまな形で諸施策の充実を図っていかなければいけないのではないのか、そう思ってお尋ねをしたわけです。  もう一度厚生大臣に、今のままの施策の延長で果たして高齢化社会における在宅介護制度を支えられるかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  213. 横尾和子

    ○横尾政府委員 在宅介護の問題でございますが、厚生省が現在進めております在宅介護は、家族の方の負担に寄りかかって行うということであってはならないという基本的な考え方で進めております。例えて申しますと、ホームヘルパーの派遣は、家族のいる方であっても必要なときに迅速に対応するように、こういう方針で進めているところであります。また、在宅のみで高齢化社会に対応しようとするものではございませんで、必要に応じて特別養護老人ホーム、老人保健施設等の施設の整備を進めまして、そうしたものとの利用のミックスの中で、安心した老後が過ごせるようにするという考え方で進めております。  また、新たな観点からどうかというお尋ねがございましたが、在宅を支える上で、従来のゴールドプランに加えまして、例えば福祉機器の開発や普及が必要という観点から、今国会に関係の法案を提出させていただいたところであります。
  214. 倉田栄喜

    倉田委員 時間が参りましたので、最後に、私は、もっと根本的な視点から介護のあり方というものは変えていかなければいけないのではないのか、そういう意味からすれば、例えば介護休業制度であるとか、それもきちんと、もう法案化していかなければいけないと思いますし、また、近い将来の中でいけば、親族の介護を行う者に対しては公的な介護給付制度、そういうことも必要なのではないか。この延長としては一例えば在宅介護の専業主婦の方に対しては有給で、そういう時代も出てくるのではないのか、そういう気も実はしないでありません。  最後にもう一度厚生大臣のこの問題についてのお考えお尋ねをして、私の質問を終わりたいと思います。
  215. 丹羽清之助

    丹羽国務大臣 まず、介護休業でございますけれども、これは労働省を中心にいたしまして取り組みが今進められておるところでございます。職業と介護の両立を図り、選択の幅を広げていく、こういうような観点から、ひとつこの問題につきましては前向きに検討をしていくべきだ、こう考えております。  それから、もう一点の介護手当でございますけれども、自分の親を面倒を見る、それに対して公的な補助金を出すということが果たして我が国の社会制度になじむかどうか。私は、とにかくやはり自分たちでできることは自分たちでやる、自立自助の精神、こういうものが何よりも求められているのではないか。今の段階において、私はこの点については極めて慎重でございます。
  216. 倉田栄喜

    倉田委員 以上で終わります。
  217. 鴻池祥肇

    ○鴻池委員長代理 これにて北側君、倉田君の質疑は終了いたしました。  次に、松前仰君。
  218. 松前仰

    ○松前委員 一番最初に、佐川問題、金丸前議員の五億円の政治資金規正法量的違反の不起訴問題、これについて取り上げさせていただきたいと思います。  先日、私が総括の質問において、一番最後でありましたけれども委員会をとめるという形になってしまいましたが、そのときに、刑事訴訟法第四十七条ですか、その解釈の行き違いということでそういう形になったのでございますけれども委員長の方はそういう解釈をされました。私はそういうつもりではなかったのでありますが、いろいろその後御答弁などを調べてまいりますと、これは明らかに不起訴というような形になったその理由というもの、これについて私は大変疑問を感じるということでございます。ですから、きょうその辺について、この間の委員会がとまったところ、その辺から続けて、しばらくその五億円の問題について、その政治団体にお金が入ったかどうか、そういうところについて議論をさせていただきたい、そのように思う次第でございます。法務大臣はいらっしゃいますですね。  政治団体に入れられたという件についての情況証拠ですか、このことが中心になって裏金の五億円が政治団体に入ったんだということを、政治資金の取り扱いですか、金丸さんの取り扱い、政治資金の取り扱いの従来のやり方、それが情況証拠になっているということでありましたけれども、政府委員の答弁の内容をちょっと調べてみました。  大体、政府委員の濱局長のお話は毎回同じようなお話でありまして、余り内容は変わっていないので、一つだけ見ればすべて済んでしまうというようなことなのですけれども、一番最初に同僚議員の方から質問したときの回答、これをちょっと読んでみますと、これはちょっと省略してありますから、そのものずばりの言葉ではございません。従前の金丸前議員への政治献金の取り扱い状況については、関係証拠を検討した結果、金丸前議員の指定団体の収支報告書には金丸前議員から多数回あるいは多額の寄附がなされている旨記載がある。ですから、これは正当に金丸前議員がお金をこの指定団体の方に入れた、その寄附がきちっと記録をされている、こういうことであります。そうして、保有金報告書は提出されていない。ですから、金丸前議員はお金を自分で持っていたということにはならない。ですから、これは全部政治団体、指定団体ですね、で処理をされたんだということがあるわけです。ところが、そこの後に、ゆえに、「自己に対する政治献金をすべて指定団体に寄附することによってそこに集中させ、あるいは保有金を有しない取り扱いをしてきたという事実がうかがえる」ということなんですね。それで、これらの結果を踏まえて検察は不起訴にしたということを言っている。  あたかもこれはなるほどなというように聞いていると思ってしまうのでございます。ところが、よく考えてみると、これは矛盾しているというか、矛盾よりも論理が全く通らない。これはなぜかというと、その正しい処理の仕方を金丸さんがしていたとしても、これはただ単に正規の手続を立証したにすぎないのでございます。正規の手続はこれで完全に立証されている。だけれども、裏の手続は、裏の処理は、これは何の論拠、証拠にもならない。  なぜかというと、裏というのはこれは正規と同じことをやるものではないですから。なぜかというと、なぜ裏としたかというと、表の取り扱いとして書けなかったから裏にしたのでありますから。ですからこれは、裏の処理は裏なのであります。裏と表とは違うのでありまして、そうなると、裏の処理というもの、このことについて、その証拠がない限りこれは不起訴ということにはできるはずがないと私は思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  219. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今、委員仰せになられたお話の筋は私も非常によくわかるわけでございます。ただちょっと、正確に理解していただきたいと思いますので申し上げたいのでございますが、まず、前回のお尋ねのとき、あるいは今仰せになりましたその前のお答えにしましても、私が申し上げましたのは、要するに量的制限違反の告発事実、もう少し要点だけ申し上げますと、金丸前議員が受領した五億円を直接約六十名の者に分配したという量的制限違反の告発事実を不起訴処分にいたしましたその理由の説明の関係で、先ほど委員が御指摘になられました、その五億円は一たん金丸前議員の指定団体に入れられたと見られるのではないかということを申し上げたわけでございます。  もともと、今の、検察官の判断の過程を私御説明したわけでございますけれども、それはもう少し敷衍して申し上げますと、金丸前議員個人から直接約六十人の候補者に分配されたという告発事実につきまして、合理的な疑いを入れない程度に有罪の立証ができる場合に初めてその告発事実について検察官は公訴を提起することができるわけでございます。逆に申しますと、金丸前議員から直接約六十人に分配されたという告発事実について合理的な疑いがある場合には、証拠上、当該告発事実については嫌疑不十分という判断をせざるを得ないわけでございます。  そこで、先ほど委員がお触れになられました金丸前議員の指定団体に一たん入ったのではないかということについて、合理的な疑いが残る限りは、疑いが残る限りは、先ほど来申し上げております告発事実、量的制限違反の告発事実については嫌疑不十分という判断にならざるを得ないわけでございます。  それから、収支報告書に記載があるかどうかという関係で、裏金云々というお話が今あったかと思うわけでございます。結局、今申し上げましたように、前回のお答えで金丸前議員サイドにおける政治資金の取り扱い状況ということについて御説明申し上げたのは、金丸前議員の指定団体の収支報告書の記載内容というのは、これはもう既に公のものになっているわけでございますから、その点については証拠としても既に公になっているということで御説明申し上げたわけでございます。  そのほかの証拠について、どういうふうにどういう証拠で検察官が先ほど申したような判断に到達したか、どういう証拠によって、どういう事実を把握してそういう判断に到達したかということにつきましては、これは具体的な証拠の内容を御説明しなきゃならぬことになりますし、それは先ほど委員がちょっとお触れになられました刑事訴訟法四十七条の関係で制約があってお答えできないということを申したわけでございます。     〔鴻池委員長代理退席、石川委員長代理着     席〕
  220. 松前仰

    ○松前委員 私も法律専門家じゃないですから、一生懸命御説明されてますます難しくなってきた、わからなくなってきたのですけれども、しかし、今お話しになったのは、やはり六十人に直接渡ったかどうかということについての告発、これについてだけは、どうもその辺の証拠が十分調わないから余り疑っちゃいかぬ、そういようなことで不起訴ということになったんだと、そういうことだけ説明をされているように思うのでございます。それでいいんだろうか。そうだと思うのですね。  ですから、要するに裏金として処理されたということについて、これは証拠を全部出しなさいといったって、それを見て私どもがどうするということはできないのでありますけれども、本当にそれは裏金としてその五億円以外のお金が処理をされていたかどうかということを調査をする、調査をしたかどうかということぐらいはわかると思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
  221. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今委員が仰せになっておられるような点は、もちろん検察当局におきましては金丸前議員サイドにおける政治資金の取り扱いについて必要な捜査を遂げたわけでございますから、そういう今委員が御指摘になられた点をも含めて必要な捜査を遂げた結果、先ほど申し上げたような取り扱いの実情があるとの判断に達したということでございます。
  222. 松前仰

    ○松前委員 要するに、裏金として処理されたんだけれども、これは政治団体の方に入ったというようなこと、これは正規の取り扱いですね。指定団体収支報告書、正規の取り扱いがちゃんと、きちっとされている。  そうなると、全部、金丸さんは、そっちにそのことでもって入れたんだということを前から説明をされておるわけでございますから、その裏金の処理についてこれまで一言も前の委員会でもお話がなかった、そういうものがなかったということを証明をしていたような感じがするのでございますけれども、しかし、私さっきも申し上げましたように、国民の立場から見ますと、これは裏と表とは違うんだということ。これは表として書けなかったことがあったに違いない。それは何かというと、やはり大きなお金であるし、そして政治資金の問題がいろいろとそこから浮かび上がってくるし、またほかにもたくさんこういうものを処理をしていた、裏金の処理がたくさんあったんだということを、国民的な立場から見ると疑念が起こるのは当然であるわけでございます。  その辺が晴れないから、そこは本当にないんだということをきちっと全部証拠として見せてもらえば、国民の前に明らかにしてもらうなら、要するに、過去に金丸さんが扱ったこの種の裏金処理というのは全然なかったんだという証拠をきちっと出してくれるならば国民は納得をするでありましょうけれども、そうじゃないだろう、そこのところはっきりしないからどうも怪しいぞというのが国民の怒りだと私は思うのでございます。  この刑事訴訟法四十七条、訴訟書類の非公開というのがありますけれども、ここにただし書きでちゃんと「公益上の必要その他の事由があって、相当と認められる場合は、この限りでない。」こうちゃんと書いてある。そしてその例として、公益上の必要な例というのは国会法百四条とちゃんと書いてあって、報告、記録提出の請求のところでございますけれども、そういうことでありますから、国会として、この不起訴というものがやはりどうも裏と表、これを一緒くたにして考えていることでございますから、これはこの証拠としてこの辺を出していただきたいと思うわけでございますが、委員長、その辺を取り計らっていただきたいと思いますが。
  223. 石川嘉延

    石川委員長代理 後刻、理事会で協議いたします。
  224. 松前仰

    ○松前委員 じゃ、よろしくお願いいたします。  それで、不起訴の、この辺のことが私はどうも不当だというような形になる可能性が非常に強いと思いますよ、これは。もしそうだとしたら、私は、先走って言っちゃいけないかもしれないけれども、その結論が出たときに言わなきゃいかぬかもしれないけれども、言うチャンスがないかもしれないから申し上げますが、検察の立証能力とそれから事件の論理的な構成の誤り、その能力の低さ、論理的構成能力ですね、そういうものの低さというものを世の中に明らかにするということになるかもしれない。  もしそうであるとしたら、私はこの種の事件について不公平な例をつくる。前に申し上げましたように、まじめな議員がもしそういう問題に取り込まれてしまったらどうなるかというようなこと、これは恐らくきちっとした処理をするでしょう。するとなると、これはもしかすると所得税を払わなきゃいけないということになるだろうということになって、不公平が非常に大きくなる。政治の場に逃げ込めばみんな得をするというような、今まであっちこっちで市会議員がお互いに献金し合ったりなんかしておるのがありましたけれども、そんなことがやたらに政治の場で行われている。政治の場に逃げ込めばみんな得するじゃないかという、こういうのを何としても私たちは解消、なくしていかなければ、これは国民は納得しないんじゃないか、そう思うのでございます。  ですから、こういうのはきちっとしないと、幾ら今回これからいろいろ政治改革をやって法律をつくり上げても、これはまたそれが検察の手によっていいかげんになって、そして結局は政治改革になっていかないということになりますから、これだけはきちっと取り扱っていただきたい。委員長に強く御要望を申し上げる次第でございます。  それから次は政治改革の、そこにもう行きますけれども、今度は選挙制度の方にちょっと問題をずらしてみたいと思っております。  選挙制度、これは政治改革でそういう政治資金規正法等の法律、それと同時に、自民党の皆さんも同じでありますけれども、選挙制度もやはりこの際きちっと変えていかないと、これはどうもこれまでの日本の政治の膠着状態、腐敗状態というものが解消されないじゃないかということは、もう自民党の皆さん方も十分承知で、きのうも宮澤さんが長で、できるだけ早く政治改革の法律をつくって出したいというようなことをおっしゃったというふうに新聞に出ておりましたけれども、私たちもやはり同じような考えを持っている。  どうも今の中選挙区制というのは、まあマンネリ化したということもありますけれども、少しここらで新風を吹き込みたいというようなことを感じております。しかし、自民党の方々が提案されておりますと思われる、またよく見ておりませんけれども、新聞だけですけれども、最近選挙制度の改革を含めていろいろな制度が出てきている。それで単純小選挙区制度というのが出てきているようでございますけれども、この目的というのをもう一回どなたか、自治大臣、ちょっと御自分のお考えで、政府として答えられるわけないですから、ちょっとお願いします。
  225. 村田直昭

    村田国務大臣 松前委員がおっしゃいましたとおり、政府としてはまだお答えができないわけです。  自民党が要旨を決めております制度は単純小選挙区制でございます。これは各政党が一人の候補者を立てて選挙を争うということで、政策中心の選挙になりやすい、また、政権の選択について有権者の意思が明確な形で示されるというような特色を持っておりまして、有権者にとってはわかりやすい制度だと理解をしております。  なお、民主主義の国家でございます伝統のあるイギリスやアメリカの下院議員の選挙も、小選挙区制で行われていると承知をしております。  小選挙区制、単純小選挙区制、これは自民党の案としてまとまっておりまして、今連日のように熱心な討議が行われております。それから比例代表制、中選挙区制、その三つがいろいろと話し合われていると思うわけでございますが、私どもとしては、自民党その他各党の御論議をしっかりと注目をいたしまして、いい結論を出していただくようにお願いをしたいと思っております。
  226. 松前仰

    ○松前委員 その前に、法務大臣に御質問申し上げなかったのですが、今の議論を聞いておいていただければ結構だったのでございます。あともう法務大臣の出番はございませんので、もしあれでしたら……。申しわけございません。  それでは、今の小選挙区制の自治大臣のお考えということでお聞きをしたのですけれども、これはその前に、政治改革の委員会なんかでたしか出たと思うのですけれども、それをちょっと、これは新聞のものも入っているかもしれませんが、自民党の皆様方がおっしゃっております単純小選挙区制、これについての利点というか、それについて、今のお話とプラスして、二大政党による政権の交代ということを言われています。それと矛盾していますけれども、政権が安定化するということも言われておる。お金のかからない選挙、政党間の競争が政策中心になるとか、国際的緊急課題がスムーズに処理できるとか、国民が直接その責任ある政権を選択することができれば、国民は政治の直接の機会が与えられるから国民が政治に参加感を持つとか、いろいろありました。そのためには単独で政権をとった方がいい、こういうようなこと、わかりやすいというのが最後にあったように思います。大体自治大臣もそういうふうにお考えだったと思うのですけれども。  これは非常に国民受けする言葉でございます。単純でわかりやすい。だからこの制度は非常にいいのじゃないか。直接投票して、そしてその人が国会へ出てきてきちっとやってくれる、そういうことがあるのだけれども、私はこの選挙制度、非常に聞こえがいいのですけれども、よく吟味してみて、それでいろいろな例を、さっきイギリスとかアメリカのお話がありましたけれども、イギリスの中も調べてみたのですが、非常にはっきり言ってファッショ性が見受けられると私は思うのですね。もう一見これは民主主義みたいだけれども、実はそうならないという感じがする。私はそう思う。ですから、その辺についてまた御意見を伺いたい。それから、腐敗の温床をつくると私は思うのですよ。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕  それで、次々申し上げますけれども、まず最初に、単純小選挙区制度というのは、三乗の法則で得票率が増幅されて、その議席の数になってくるわけですね。この辺が非常にこの特徴なんです。ですから、二大政党になるというのですけれども、例えば五六%、議席で三分の二を得たいので計算したのですが、得票率が五六%のときに議席は六七%を得られるという。ですから、これは五六に対して六七ですから大分増幅されている。七〇%の得票率ですと九三%の議席を占めてしまう、こういうことですね。これが一つの大きな特徴でございます。ですから、これが一つの、これを使っていろいろな、先ほど政権が安定するとかいろいろな言葉がございましたけれども、そういうことになるのではないかと思うのであります。  別の言い方をしますと、五六%のところだけ考えてみると、四四%の意見は殺されるわけです。それはどこで殺されるかというと、これまでの選挙と違って議会の中で殺されるのじゃなくて、選挙区のところで殺されてしまうのですよ、一番最初で。投票したところで半分、四四%の人はもう意見を言わせないという形になる。ですから、これは何か四四%の人は、四年間を任期とすれば、四年間は黙ってろという、こういう非常に極端な、わかりやすいけれども、これは民主主義と言えるのでしょうか。逆に言うと、これはファッショ的な、もう黙れというものですから、これはもう一番大もとの、国民の一番直結したところで黙れですから、これはちょっと意見も言わせないというのですからね。そういう人たちが国会に出ていってやるのですから、当選した人は。ところが四四%の人たちは何も意見は言えない、国会へ出ていって。これはやはり民主主義のシステムではないのじゃないかというようなことがうかがえます。  そして、そのため、当然政権は安定するでしょう。それで、四年間の任期全うなんというのがしょっちゅう行われて、解散なんてないかもしれない。そして国会は三乗の法則でつくられた多数の上にあぐらをかいちゃう、そして論議の場がなくなってくる。そうすると、今度は国会議員は勉強しなくなるということもあって、国会が形骸化していく、名誉職的存在になる。だんだんそういうふうになっていく可能性がある。最初はならないかもしれないけれども、だんだんなると思うのですね。そして、地元で新しい力が出てくるじゃないかなんて言うけれども、これは必ずしも反対党であるという保証はないのでありまして、ですから、余り単純小選挙区制だけ言っていると、私は政治改革に全然ならぬような気がしてしょうがないのですが、どう思いますか。
  227. 村田直昭

    村田国務大臣 松前委員の御指摘は、どうしても今の段階では個人的な見解でお答えすることになると思いますので、その点御承知おき願いたいと思います。  小選挙区制だと、今御指摘になったようないろいろなことが出るだろう、いわゆる死票が出るじゃないか、五一、二%で当選が確定してしまうと死票が出てしまって少数意見は国政に反映されにくい、こういう意見が一般なんでございますが、ところが、死票があるということについては別の意見、批判があるということでございまして、当選人もそのことを踏まえて行動することになるから、これを死票としてのみとらえるべきではない、こういう有力な意見もございます。  それから、現在の中選挙区制は、長所として言われるのは、有権者にとって今の日本では四十何年続いておりますからなじみやすい、それから、議席数が得票数にほぼ対応しておってさまざまな民意が反映できるというような長所が言われております。ところが、短所としては、政策を同じくする候補者個人間の同士打ちがよくあるわけですね。例えば、現在は自民党同士でいろいろな同士打ちがあるとか、そういう個人本位の選挙が政治や選挙に要する資金の膨張をもたらすということはよく言われております。それから、政権交代が行われにくくて政治における緊張感が失われるというようなことも言われておりまして、この単純小選挙区制をとるか、現在の中選挙区制をとるか、あるいは比例代表制を導入するかというのは、それに対する政治家の判断、そういうものが基礎になると思っておりまして、自民党におきましてもこれはもう連日のように熱心な議論をして、現在もしていただいております。各党もそうだと認識しております。
  228. 松前仰

    ○松前委員 郵政大臣は何か専門家だということで、まあ余り質問しませんから。  今回士打ちとかいうお話ございましたけれども、選挙のときにそういうことがあるということなんだけれども、実際はこの小選挙区制をやったって、その前の段階での同士打ちはあるだろうと思うのですね、候補者になるために。大変ですよ、これは。こっちの方が泥沼の戦いじゃないかと私は思うのでありますが、それはそれとして。  それでもう一つ、さっきは二大政党でもって計算をしましたけれども、三つ大きな政党が出てくるとどうなるかというのです。今のイギリスがそうでございます。  イギリスは保守党と労働党、それと自民党でしたか、三つある。自民党も二〇%ぐらいですか、得票率を持っている。保守党は四〇%ちょっと超えたぐらいだったですね。それから労働党が三〇%ちょっとぐらいだったでしょうか。四〇、三〇、二 〇ぐらいの比率じゃなかったかと思うのですよ。そのときに過半数をとったのは保守党だったわけですね。四〇%の得票で過半数をとっちゃったのです。これは三大政党といいますか、三つの勢力が出てきた。ですから、三〇%、二〇%の労働党と自民党と加え合わせれば、これは二つ合わせれば勝っちゃったはずなんだけれども、そうはならなかったということがありまして、そして保守党がとった。そうすると、死に票は、これを見れば六〇%なんです。  だから、多様化の時代になってきているんですよ、今世の中は。もう二つの意見しかないんだよというのじゃなくて、今民主主義の時代であるし、またいろいろなことをみんな知ってきたということになると、それぞれ個人個人が自分で考え方を確立する時代ですから、そうすると多様化なんだ。多様化になってくればどうしても政党はたくさん出てきて、三大か四ぐらいになってくる。そうすると、これは四〇%の得票でも政権とっちゃうとか、三〇%の得票でも政権とっちゃう。そうすると死に票は物すごいふえるというようなとんでもないことが起こってきて、これは国民の意見を反映する議会にはならぬぞということになってくる。これはやはり大きな問題だと私は思うのでございますが、いかがでしょうか。
  229. 村田直昭

    村田国務大臣 私は、議会のいろいろな御討論を承っており、また宮澤総理の御答弁を聞いておりますと、一八八〇年のイギリスの腐敗防止法、あのことを非常に宮澤総理は意識をしておられるようです。あれは御承知のように罰則が非常に強いのでございまして、公民権まで停止してしまう。そして、そういう強い罰則になりますと、選挙違反をしないということがイギリスの場合は行われて、そしてイギリスでいわゆる公明選挙が行われるようになったという歴史的なことが報告をされております。  したがって、もし選挙法にそういう罰則を導入して、選挙違反をすれば公民権そのものも停止してしまう、その選挙区では二度と立つことができなくなってしまうというような罰則の強化と、あわせて国民の意識というものの高揚があれば、私は今松前委員が御指摘になったような欠陥をカバーすることがやっていけるのではないか、また、総理はそういうかたい決意をお持ちになって対処しておられるのではないかと拝察をしております。  それから、先ほど比例代表制のことは申し上げなかったのですが、比例代表制をもし採用すると小党分立になる可能性が多いと言われておりますね。そして、連立政権になる可能性が大きいから政権自体は不安定になるんじゃないか、また、政権を担当する政党の決定が国民の手の届かない政党間の交渉にゆだねられることになるのではないか、こういうような短所が指摘をされておるわけです。それをいかようにとるかというのはこれからの国会の御決定でございますから、私どもはその国会の各党間の御協議を心から待っておるところでございます。
  230. 松前仰

    ○松前委員 この議論をずっとやっていてもしょうがないんですけれども、先ほど言われました腐敗防止法、これはもう当然のことですよ。これは全部かぶせなきゃ、どのやつだってだめなんでありますから、それがあって、それと小選挙区制と結びつくということじゃないんでありまして、すべてなんですね、これは。  ですから、それは余り議論にはならぬと思うのですけれども、我々はだからこれについて前の臨時国会で、連座制強化とか企業献金の問題とか立候補制限とか、こういうものを法律で出してきているわけです。ですから、これは貫くつもりでございますから、これは自民党の皆さんも協力をしていただいて、そして本当にこの腐敗防止法というものはきちっと制定をする、そしてその中で選挙制度はうんと議論をして、一番いいものをやっていくというようなことをしていかなきゃいかぬじゃないかと私は思うわけでございます。  それで、もうちょっと行かしてもらいますけれども、まだ問題があるのですよ。これは三乗の法則というものによって政権をとっていくということになると、得票率よりも議席数が増幅をされるということになりますと、今の憲法の中で憲法の改正が可能になるということがあるのですね。というのは、議員の三分の二の多数で議決、それで発議をして、そして国民投票にかける。国民投票は半分以上あればいいんですよ。その条件は簡単に整っちゃうんですね。  ですから、これは何か私は勘ぐるに、そういうことを頭に置いて提案された方がいるんじゃないか、そういうふうに疑わざるを得ない。これはそういうことまで考えておられたんだったら、そうじゃないと思うけれども、大変なことだな。そんなことまで我々わからないと思ったら大間違いでありまして、これはみんな一生懸命勉強しているのでありますから、そういうところはやはりきちっと、今までのところ、何と言うんでしょうか、ごまかすというと変ですけれども、いつの間にかやってみたらそこは何か筒抜けに穴があいちゃったぞなんていうんじゃ困りますので、やはり憲法問題については、それはそれなりにきちっとやらなければいけない、そういうふうに思っているわけでございます。  これは衆議院だけの話でやっているんだけれども、本当は憲法問題までいけば参議院の選挙制度のところもやらなきゃいけない。それも含めて物事を考えないことには、これは本当にいいのかどうかというのはわからないわけですよね。  ですから、今ちょっと御議論させていただきましたが、じゃ、もう一つ先行きますと、これに公的補助、政党補助というのですか、これを加えようということはもうどの党も言っているわけでございます。  前の国会に出されました法案によりますと、議員数割二分の一、得票数割が二分の一というようなことに大体なっている。議員数割二分の一、これは全部議員に比例してやるということになっているのかどうか、私は自民党の皆さんの案を知りませんけれども、もしそうだとすると、議員数割二分の一でも問題あるんですけれども、やはり得票率の三乗で増幅されるというところが問題で、当選をしてきた人の数、それはもう民意よりもずっと増幅されている。それに対して補助がぼんと出るようなことになると、例えば自民党の方はたくさんお金をもらって我々の方はほとんどなくなるというような、こういうようなことになってしまって、ますます政権は単独政権に移行していく、こういうようなことになる可能性がある。もしかするとですよ。我々が逆かもしれないですよ、我々が全部とっちゃうかもしれませんけれども、そういう可能性がある。  これは、だから、ほかの国でいえば、ドイツなんかは財政基盤の弱い政党に手厚い措置をしているんですよね。社会民主党、寄附が九%でしたか、自由民主党二九%の寄附。逆だったかな。とにかく、数字はちょっと間違いかもしれませんから。財政基盤の弱い政党に手厚い措置をしているというようなことがある。  それから、私どもはどっちかというと得票率割がいいんじゃないかなんという意見が随分強い、これはすべてではありませんけれども。そういうようなことですから、公的補助もちょっと、議員数割なんということを持ち出してくるということ自体が、私はこれはもう何か仕掛けがあるぞ、それだから憲法改正の問題まで私は勘ぐったわけです。前のやつは議員数割二分の一ですから、これだってかなり増幅されるんですよ。五六%の得票率が六一%の政党補助になっちゃうんだから、相当これは増幅されてしまいます。  こういう選挙制度を出してくるんだったら、これはもう徹底的に私たちはだめと言わざるを得ないのでありまして、その辺は御承知おきをいただきたいと思うわけでございます。この辺は余り意見いただいてもしょうがないので、その次にもう一つ申し上げます。  それからもう一つ、これは言いっ放しで申しわけないのですけれども、これは郵政大臣にちょっと専門のところでお聞きいたしますが、何ですか、政策中心の選挙になる、しなきゃいけないということは盛んに言われている。二大、何ですか、小選挙区制もそうなんですけれども。しかし、テレビという情報手段があるにもかかわらず、何かテレビが、選挙のときに、五分だか七分か忘れましたが、そのぐらいのところで政見をしゃべって、そして順々にやって、それで投票しなさい、こんなのはちょっと近代政治としてはおかしいんじゃないか。  本当は、テレビでもって全国にすべてのことが、政治の中身がわかるように放送なりなんなりするべきだと思うのですが、議院運営委員会の方で何か検討されているようですけれども、そこまではいかなくても、もし全国は無理であるというならば、前に公開討論会というのがありましたね。あれをやめちゃったですね。昔あったやつ、立会演説会です、失礼しました。立会演説会というのをやめてしまいましたけれども、あれは本当はあった方がよかったと私は思うんですよ。昔はよかったです。それで、ただあれは、聞きに来る人が非常に少なかった。だから余り意味がないというのでやめちゃったのですね。  今度は情報手段があるわけですね。これは使えるかどうかというのは郵政省の方で検討してもらわなきゃいけないんだけれども、放送局はたくさんある。衛星放送もあるんですけれども、これはなかなか使い道難しいらしいのですが、とにかく、ローカル放送でもいいですよ。東京で日曜日にやっている書記長会談とか、委員長やらそのほか偉い人たちが、政党の偉い人たちがしゃべって、そこでぱっとしゃべられると、あれ、これは議論していなかったとびっくりして私たちもそれに従わざるを得ないなんて、そういうことも起こったりしますんですけれども、そうじゃなくて、みんながいろいろと意見を言える、議員が全部、地域で、そういうスタイルをとれないだろうか。例えばローカルのところに国が少し一時間くらいもらって、お金出すんでしょうか、何かそういうところにお金出して、そしてそこで討論する。五人の選挙区、選挙区で五人、私のところは五人ですけれども、五人の人が集まってそこで大いに議論をする。地域の問題も出るでしょう。そんなようなことができないんだろうかな。それはやはり郵政省として技術的に難しいとお考えになっているのか。その辺まで考えていないと思いますけれども、どうでしょうか、その辺の考え方は。
  231. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 この問題は、国会のテレビ中継の問題ですとこれは郵政省に関連してくると思いますが、今委員指摘の地方のテレビ局において政見放送をどうやるかというのは、地方の各政党の事情あるいはテレビ局の事情、むしろ私は自治省の方が管轄じゃないかと思うのでありますが。
  232. 村田直昭

    村田国務大臣 大変な御見識で、各般にわたって非常に尊敬をしながら伺っておりますが、選挙公営の問題では、御指摘になった立会演説会、これは昭和三十年代は花盛りだったんですね。ところが、あれはテレビ中継はされませんから、する場合もあるけれども原則としてないから、したがって、立候補者が各地域を回って、十カ所とか何カ所か、非常にそのために身柄を拘束されるわけです。  しかも、御指摘になったように、それを聞きに来る人がだんだん少なくなった、あるいは聞きに来る人が初めからどの候補の応援ということがはっきりして来る場合が多くなったというようなことから、立会演説会はこれはどうも余り効果がない、むしろテレビによるいわゆる政見放送の方が実際的ではないかということで、最近は政見放送が主体になったわけです。この放送時間等も、私も長い間これをやっておりましたから知っているんですけれども、最初の時間より少し長くなったんですね。今はテレビによる政見放送が主体になり、それは国でもその経費を見るという形になっております。したがって、テレビの利用ということは大いに、これからはマスコミ時代ですから、まさに郵政省ともよく御相談をしながらやっていかなきゃならぬことだと思います。  それから、先ほど来から承っておりまして気がつきましたのは、憲法改正の問題が、議院内閣制だと、もしアメリカのような大統領制、プレジデンシャルシステムを取り入れるということになると憲法改正の問題がどうであろうかということを私は感じるんですね。議院内閣制のままであれば、首相公選をやっていくこと、つまり、議院内閣制とは違う大統領制を導入することは、今地方自治体はそうです、知事が公選あるいは市町村長公選ですから。その両者の建前をよく分けて御検討お互いに研究をしていかなきゃならないな、このように感じました。
  233. 松前仰

    ○松前委員 議院内閣制のお話まで出て、首相公選制のところまで出ましたけれども、私は首相公選制はどうだとかいうこと言いたくないのです。  たまたま私がタクシーに乗ったときに運転手の方が、大体竹下さん、あんな悪いことをしてもう本当に困る。そうしたら一体どうしたらいいんだろうかという話になったんですよ。そうしたら、大体市長だって町長だって村長だって知事だって全部県民や市民や町民が直接選んでいるじゃないか、それなのに国会の首相だけはそうじゃない、議員が選んでおるんだ、だからあれは勝手なことを、国民から一つバッファーを置いて手が届かないところへ行ってしまっているから勝手なことができる、暴力団とも手をつなぐことだってできてしまう、だからこれは首相公選制の方がいいんだということをタクシーの運転手が言っている。  ということは、やはりもっと政治がよくなってくれよという願いだと私は思うのであります。そういうことでありますから、何も首相公選制にしなさいとかなんとかそんな議論はしませんで、ぜひともそういうちまたの意見、声がいっぱいあるということを知っていただきたいと思っております。  それから、国民投票制も、私どもはあのPKOの法案のときに、あのときには、やはりこういう大きな問題、選挙公約と異なる新しい大きな問題というのが必ずあるわけなんですね、四年もたてば。そういうときには、やはりこれは国民に信を問うということ、これは日本は選挙でやっていますけれども、選挙をやると大変時間がかかるし、膨大な仕事になってしまって、またその問題点が薄れてしまうということもあるから、ずばりそれでもって国民投票にかけていくという、ヨーロッパはやっていました。私が行ったとき、フランスでちょうどマーストリヒト条約の投票のときだったですけれども、本当にすばらしいと思いました。それから、デンマークも国民投票にかけてマーストリヒト条約を否決いたしました。これはやはり、否決したからというそれは関係ないけれども、とにかくすばらしい、国民が政治意識を高める一つ手段だなと思って感心していたわけでありますけれども、こういう制度。これは憲法を変えるのじゃなくて、そういう法律をつくるというようなことはできるわけですから、その辺についてはどういうお考えを持っているか、簡単に聞かせていただいて次へ進みたいと思います。なければいいです。村田国務大臣 憲法改正についてのお考え方ですか。
  234. 松前仰

    ○松前委員 いえ、国民投票。
  235. 村田直昭

    村田国務大臣 国民投票は、これは今の憲法ではたしか制約されておると思います。したがって、これをすぐ使うことはできない。国民投票制度自体が首相公選制と結びつくということは、またこれは憲法改正の問題だと思います。したがって、憲法改正を要する問題は、これは私個人の意見ですから、そういうふうに聞いてください。今の国会の情勢では、一番最初におっしゃったような状況がなければなかなかしにくいのじゃないか、このように考えております。
  236. 松前仰

    ○松前委員 この辺で終わりますけれども、次に経済の問題。大蔵大臣、五時に出発しないと間に合わなくなるそうでございますから、最初にちょっと一つだけ御質問をさせていただきます。  日本の経済は今不況ということで、その処置のために予算を今こうやって組んで、そして審議をしているということでございますが、日本の不況のために今度は円高が起こったというプラスアルファが出てきた。円高の追い打ちをかけられたと私は思っているわけなんでございます。毎日、新聞を見てもいいニュースはほとんどないのでありまして、一つ一つ言うと個人的な名前が出ますからやめますけれども、こういう状況の中で大蔵大臣は、先日ベンツェン米財務長官の発言などを受けた神経過敏な動きとか、そういうお話をどこかでされたように承っております。そして、余り騒ぐなというような感じでお話をされたのじゃないかと思うのですけれども、私は、それで済むのだろうかということをやはり心配するわけなんでありますが、その辺をひとつ。
  237. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 松前議員にお答えいたします。  その前に、いろいろと御配慮いただきましてありがとうございます。  私、この前から申し上げておりますのは、昨今の為替相場の動きにつきまして、いささか思惑的な動きである、神経質な動きであるということを申し上げまして、これは何が原因だろうかといえば、ベンツェンさんが言った話がもとである。何か急に質問がありまして、安いドルを望むのかね、こう言ったら、いや、高い円を望むんだ、こう言って笑い話になってしまったというのがそもそもの発端でありまして、そんなことで、ベンツェンさんも別に上げていこうとかなんとかという話ではない。そういったような、神経質になっているということは、やはり為替市場というのがちょっと不安定になってきていることかと思います。  私は、基本的には為替相場というのはファンダメンタルズを反映して安定的に動いていくことが望ましい、こう思っているのです。短期的に今申し上げましたようないろいろなことで動くというのは決して好ましい形ではない、そういったことでございますが、こういったことになりましたならば、やはり適時適切に対処をしていかなければならない、こう思っておるところであります。国際的に申しましても、私は、ファンダメンタルズを反映して動くべきであるということにつきましては大体国民的なコンセンサスができているものだろう、こう思っているのです。  ただ、そういったことがありますが、先生指摘のありましたように、日本は大変不況な状況であるということも御指摘のとおりでありまして、私たちもそういったことを勘案いたしまして、昨年の八月以来、総合経済対策を実施して十兆七千億円のことを考え、またもう一つ申し上げますならば、今度の予算にしましても、景気に配慮した予算という形でいろいろな施策を講じているところであります、円高にでもなればまたいろいろな問題が出てきますから、そういった点につきましてはまた一層のいろいろなことも考えていかなければならない。これは当然のことだと思いますが、私は、そういった中で現在の予算または財投その他のところでいろいろな施策をやっておりますから、これでもって十分やっていけるのじゃないか。そのほかにいろいろ工夫をしていかなければならない点があるだろうと思いますが、もとは、やはり円高が急速にやってくるといっていろいろな混乱状況を起こさないようなことの方が私は望ましいのじゃないかな、そういうふうに考えていることを申し上げておきたいと思います。
  238. 松前仰

    ○松前委員 これはますます何か赤字国債、本当に目先の問題で処理しなければいけないような状態になってしまったような感じがして、これは困ったな、そう思ってはいるのですけれども、何か減税をどうしてもせざるを得ないような状況に陥ってきたような感じがするのですけれども、それは別として、この日本はやはり何か、前もお話ししましたが、外的な要因でくるくる変わってしまうということがある。  例えば、それは大きな企業のところはいろいろ処理ができますが、またそこにみんな注目がいくのですけれども、実際は地場産業ですね、大事にしよう大事にしようと言って地元の人たちがやってきた地場産業がやられてしまうというケースが随分多いのですね。例えば一つは、円高でやられたのは燕でしたか、地場産業のステンレス技術を使ったスプーンなんかのがありましたね。あれは日本の中で地場産業のモデルみたいに言われていたのですよ。それでああいうようなことをやらなければいかぬぞということで、みんながやろうとしていたら円高でぽしゃってしまって、今やもう影も、形はありますけれども、ほとんど何も言わなくなってしまった。だれも言わなくなってしまった。そういうことが一つある。  もう一つ円高じゃなくて、今日本がどんどん経済成長をしてきた、そして地球環境……。  大蔵大臣、ちょっと時間があれですから、どうぞもう、G7へ行ってきちっとやらなければいかぬですから。ぜひ頑張ってきていただきたいと思います。  続けますけれども通産大臣の方にお伺いをすることになりますけれども円高とかそういう問題じゃなくて、金融の問題じゃなくて、環境の保護の問題。我々環境保護をしなければいかぬじゃないかということを盛んに言うのですけれども、それが逆に、これまでの外に依存する経済といいますか、外に依存し過ぎる体質というものがあだになって、今日、環境問題が日本の地場産業を痛めつけているというようなことがある。それは何かといいますと、木材の問題でございます。  マレーシアの、マレーシア・ショックだなんという話まで出て、名前までつけてしまうんですが、マレーシアの外材ですね。これが輸入が減ってくる、そして値段が上がってくる。丸太ですね、丸太の輸入。その結果として二倍ぐらいこれは上がっちゃったのかしら、かなりの値段の上昇がありまして、それが国内に入ってきて合板の会社に行くわけですけれども、その合板の会社は、原材料は値段高いですから、今度売るのに高くしなきゃいかぬ。値段をうんと高くする。高くすると、その合板から先行った私どもの地元にあります、地場産業としてもう一生懸命大事にしている家具ですね、家具工業の関係、ここのところが大きな痛手をこうむってしまうということになってくるわけでございます。  そういう状況に今なっているんだと私は思うのでありますけれども、その外に依存し過ぎるということがそういうことになっている。中を大事にしないということはまた後で申し上げますけれども、そういうことで今どういうことが起こっているかということを、通産大臣、おわかりですか。
  239. 森喜朗

    森国務大臣 松前委員にお答えをいたします。  なお、商工委員会等へ行っておりまして、先生質問に当初から出席をしていなくてまことに申しわけございません。  今御指摘ございましたように、近年、マレーシア等の外材の主要産地国におきましては、資源事情の悪化等によりまして伐採量が削減をされております。したがってまた、輸出制限も強化をされております。南洋材等の価格が大変急激に上昇いたしまして、これが合板価格にも影響を与えているということは私も承知をいたしております。  通産省といたしましては、合板を原材料として使用する木製家具業界を所管しているところでございますので、合板の安定的供給については重要な問題として認識をいたしております。したがいまして、本件につきましては、今後とも合板製造業界等を所管する農林水産省とも密接に連絡を図りながら、木製家具業界をめぐる環境の整備に努めてまいりたいと考えております。
  240. 松前仰

    ○松前委員 外から輸入した丸太、これが値段がぼっと上がってしまいますと、国内ではその合板と家具の関係とが今けんかをしているという状況で、やり合っているわけでございまして、何か外の問題で中がけんかを始めてしまうというような、けんかまではいってないかもしれないけれども、そういうような状況が生まれているということで、これはどうしようもない。これは何とかしなさいと言っても、なかなかどっちか引き下がってくれないとどうしようもないのでありまして、こういう状況をつくってしまったというこれまでの政策がやはり問題になってくるのじゃないかなと思うわけです。  それは何かといいますと、もう少し、外がどうであろうと中のもので資源というものを活用できるような体制づくりをしておいていかなければいけない。これは何かというと、山の問題でありますね。山林、国有林とか民有林の問題、この問題については昔から我が社会党、一生懸命努力をさせていただいて、皆さんに一般会計から投入するように、増額するようにというので一生懸命やっておったのでございますけれども、その辺をこれで見直してもらわなきゃいかぬというような感じがするのですね。これまでかなりないがしろにされていました。それで、山で働く人だって本当にどんどん減ってくる、高齢化してしまうというような事態ですから、山が本当に楽しくなるようなそういう状況づくりをしていく政策を、ぜひともこれは次の機会にはつくっていただきたいと思うわけで、今回の予算で修正していただければ一番いいです。それですけれども、ずっとこの先変えていっていただきたい、そういうふうに思うのですけれども大蔵大臣、いかがでしょうか。
  241. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 山というものを大事にしなければいけないということは、このごろ環境問題あるいは水の問題、国土保全というようなことから注目をされ始めましたけれども、実は、今松前委員の言われますように、外国からの、つまり木材需要というものはある段階からもう半分は外国で輸入をすればいいというようなことにずっとなってまいりましたものですから、山というものをそういう意味考えなくてもいいんだというような、そういう物の考え方がかなり長いことあったと思います。しかし、今御指摘のように、環境の問題から、あるいはその他の理由から、丸太の輸入というものがだんだん難しくなってくる。合板をどうするか、あるいは建材にしてもそうだと思いますけれども、そういうことがまた出てまいりました。そういう観点からも山というものをもう一度考え直さなければならないということを今度の問題は教えているように思います。農林水産当局でもそれはそう考えておられると思いますけれども、財政の見地からもそういうことはよく関係省庁と御相談をしてまいりたいと思います。
  242. 松前仰

    ○松前委員 今、南洋のマレーシアのところばかり申し上げましたけれども、実はアメリカも、カナダですか、そちらの方でも同じような問題が、値段が高くなっているということがございますので、ぜひともその辺は考えていただきたい。  林野庁長官、いらっしゃっていますか。その辺の、どうぞこの問題について決意をちょっと述べていただければ幸いと思います。
  243. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 御指摘のように、最近各国におきまして木材の輸出については大変制限的な動きが強いわけでございます。これは、中身は、環境保護もございますし、国内の木材加工産業振興のために原料の輸出をするのを規制するという動きもありまして、いろいろございます。  一方、我が国におきましては、戦後、全森林面積の四割に及びます一千万ヘクタールに及ぶ植林をしてまいっております。ただ、これは、残念なことにまだ成熟途上でございまして、直ちに切って供給するというにはやや成長が十分でない面もございます。一方、山村、農山村、あるいは林業に携わっている人たちの問題等、いろいろ生産基盤の未整備あるいは事業体の弱体というような問題がございます。  我々としましては、来るべき国産材時代に向かいまして、今申し上げましたような林業の生産基盤の整備であるとか林業の事業体の体質強化であるとかといった面も備えながら、国内において国産材の低コストで安定的な供給ができるような体制をつくってまいりたいというふうに思っております。
  244. 松前仰

    ○松前委員 ぜひとも政府の方でこの問題を重要視していただいて、これからの対処をきちっとしていただきたいと思います。  次へ行きますけれども、先ほどから私も、外的要因に敏感な日本の状況でありますから、何としても国内を充実していかなきゃならぬ。技術というものをきちっとまた位置づけていかなきゃならぬ。これまでちょっとどうも技術が低迷をしたというような感じがいたしておりますし、また、今の不況というものが、技術が飽和した状態であるというようなことも言われている。物づくりという応用技術の飽和というのは簡単に来るわけでありまして、次に来る基礎技術がないからこういうことになってしまうということですから、基礎研究の不足というものは私は否めないと思います。  そこで、この研究についてお金を出せということは一般的に言われるのでありますけれども、お金だけどんどん出してそれだけでもって済むだろうか。お金はたくさんもらったけれども、中身は全然進まないじゃないかというようなことが起こっているんじゃないか。私も現場で見ましたけれども、起こっていることは間違いない。ですから、その辺の制度、体制というものをもう少し各省庁で考えていただければ幸いだとは思うのでありますが、時間が大分経過しておりますから、ちょっと申し上げます。  国の研究補助、助成制度、これは非常に重要な制度でございます。それから、文部省の科研費と言われている科学研究費でしたか、これも非常に重宝しているわけなんであります。これは、民間が頼りにしているわけなんでありますけれども、そこの運用の仕方についてやはりちょっと問題がある。  何かというと、はっきり申し上げますと、一つは、研究を応募します、それが決定をされてきて、それからいざ研究に入って、その研究が終わって報告書を書く、その研究を実際にやる期間というのが非常に短いということでございますね。要するに、決定されてこっちへ来るというような時点が物すごい遅い。これでは何をやっているか。幾らお金をもらったって、お金だけたくさん来てしまって、おまえ研究を三カ月でやれとか四カ月でやれといったって、これは無理なことでありまして、研究というのはやはり一つ一つの積み重ねで時間をかけてやっていく、証明をしながらやっていく、検証しながらやっていくのが研究なんでありまして、それがいい研究が生まれてくる。三カ月で、たくさんお金をもらっていい成果を上げるといったら、恐らくこれは中身は、あっちこっちから集めたものを寄せ集めして、こうやって出すものに違いない。それが多いんじゃないかと私は思うのですね、今の日本。ですから基礎技術が生まれてこない、そういうように思うのでございます。  それからもう一つ、国の研究助成制度について問題点というのが、アンケートがありまして、これは総務庁で調べた「科学技術行政の現状と問題点」という中に書いてある。問題点、これは問題ありと答えたものは七二・七%もいるということです。それで一番多いのは、研究以外の業務量が膨大である、これは四六・一%もいる。契約決定が遅くて研究期間が短縮される、一七・九%というようなことがあるわけでございます。これは特に通産省の方なんですけれども、次世代産業基盤技術研究開発制度、石油代替エネルギー関係技術実用化開発補助金、新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託費というところにどうも問題があるようでございます。特に通産省に偏っているというのもまた一つの何かあれがあるようでございますけれども、この辺について、これは平成二年度のアンケートだと思うのですけれども、その後改善をされておるかどうかということをどなたか。
  245. 松藤哲夫

    ○松藤政府委員 お答え申し上げます。  研究開発に係る費用につきましては、これは大変貴重な国家の財源を使わせていただくわけでございますから、予算執行の適正を期する上で非常に慎重になりがちでございまして、私ども、実際の支出に当たりましては、研究開発の進捗状況、これに伴う実際の経費の支出やその見込みを調査確認の上実施しておるところでございます。  実際の運用は、通常は年を二期に分けまして、四月から九月までの上期の分は大体十一月ごろまでに支払いを完了しておりますし、下期、十月から三月の分につきましては三月の末に概算払いをいたしまして、その後もし適正な支出がそこまで及んでいない場合にはお返しいただくというようなことで実際運用しているわけでございますけれども、確かにプロジェクトを立ち上げるときには、民間側において研究組合を編成しますとかあるいは契約条件を詰めなければいかぬとかいろいろ手続がかかるものでございますから、新しいプロジェクトを立ち上げるときにはやや年度の途中で研究開発が始まるということで、先生指摘のような点もございます。  こういう点につきましては、もちろん単年度予算でございますから、予算の成立、国会において承認して以降準備を始めざるを得ないわけでございまして、いろいろ手続的な難点もございますが、しかし、研究開発を極力速やかに推進するという意味におきまして、予算の適正な執行とあわせてその点を我々としても考えていかなければいかぬと思っておりまして、今後とも適正な予算執行に努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  246. 松前仰

    ○松前委員 適正というところが、本当に研究者の意図どおりに、意図といいますか、研究者が研究しやすい形になっていく、そういう方向になるのかどうかというのが私は大変心配でありますけれども、要するに、今お話ありましたように、大変な手続が絡んで、そして時期がおくれる。研究者というのはその手続なんかもそんなに上手じゃないわけでありまして、文書をいっぱいつくらされる。これはもうすごいのですね、通産省のは。十八種類くらいたしかつくらされる。これをつくっているだけで時間を食ってしまって、研究なんかする時間がなくなってしまうのですね。実際に私は研究者をそばで見ておりますけれども、そういうのがしょっちゅう来る。何やっているんだか、書類を書いているんだから。書類を書いていて研究なんかできるわけないじゃないか。それなら我々の方のお金でやった方がいいじゃないかなんということになってくる。  そういうお役所仕事が研究者に全部はね返ってくるようでは大変困るわけでございますから、ぜひとも、これはアンケートでちゃんと出て本になっておりまして、これはちゃんと政府が出しているわけですよ。これに出ているのですよ。出ていて、それを改善をしていかないというのはちょっと問題がありますから、いずれにしても、ここに出ている状況をよく読んでいただいて、科学技術庁と通産省関係は、文部省も出ておりますけれども措置をしていただきたい。もうこれは、研究者本当に泣いていますよ。お役人の方は早く成果を出せ、立派な成果を出せ、基礎研究をやれといったって、そんなのはできるわけありませんよ。アメリカと日本とほぼ一人当たりの研究費は同じだと言いながら成果が全然違うというのは、そういうところにあるのじゃないかと私は思うのですけれども。  それから、文部省の方はどうでしょうか、そういうところについては。
  247. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 先生のお話の中にございました科学研究費、いわゆる科研費というのでございますが、これは非常に重宝していると先生からも評価していただいたのでございますけれども、これの改善につきましては、平成四年七月の学術審議会答申でも、「二十一世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について」などにおきまして、研究種目の改編とか研究者からの申請を受け付けるため学問分野を分類した分科細目の見直しなどの必要性が求められてまいったところでございます。  これらの中で、分科細目については既に大幅な改正を行いまして、平成五年度の科学研究費の公募から実施に移しております。これは、細目を二百から二百二十二に分けまして、さらに、特に申請件数の多い細目については、一細目当たり第一段審査員を三人から六人にふやし、その結果一般研究の審査員数を合計七百五十五人から一千九人に増加するというようなこともいたしまして、より綿密で、かつ少しでも早くということを努力しているところでございます。  これからも、学術的、社会的要請の強い研究課題や真に創造性の高い研究課題が適切に助成されてまいりますように、特に若い研究者の育成に意を用いながら、学術審議会科学研究費分科会の審議も踏まえまして制度の改善等を図っていきたいと考えております。
  248. 松前仰

    ○松前委員 どっちかというと、科学技術庁、比べるのは失礼かもしれませんが、文部省の方はかなり権威も出てきたように思っております。  ただし、今できるだけ早くというお話がありましたけれども、研究者は実際にお金をもらえるのは七月の半ばごろなんですね。半ばごろから実際に研究ができるという状況になる。四月から七月というのが、これは研究する時点としては非常にいい時点の人もいるわけなんですよ。その辺のところは全然研究が、全然ではないけれども具体的な研究ができないという、旅費とかそういうものが支給できないとか、そういうことがあったりして、どうもこの一年の研究にとってみれば、何というのでしょうか、会計年度というか、これが非常にネックになっているということも考えられるわけです。その辺をどうかよく知っていただいて、このお金が本当にきちっとした研究につながっていくように、実効的な使い方がされるようにお考えをいただきたい。  先ほどちょっと私、言い忘れましたけれども、非常におくれた例として、外国から招聘した人たち、研究者はそれに旅費を払うわけですけれども、その旅費はこちらへ滞在している間には払えなかった、本人が帰国してから払ったとか、そんな例がきちっとこの中に出ているのですよね。これは文部省の方じゃないんです、これは科学技術庁の方なんですけれども、そんな例がたくさんある。そういうところをほったらかしておいて、お金お金といってたくさんお金をもらったって全部湯水のようにどこかへ消えてしまうということになりますから、ぜひともそこのところは本当の研究、人づくりということを考えていただいて、対処をしていただきたい。  ちょっと総理総理のお立場で一言お願いします。
  249. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 いろいろ御注意をいただきました。よく行政で留意をいたしてまいります。
  250. 松前仰

    ○松前委員 次に移りますが、FSXの問題でございます。  これはまた技術の問題であるわけなんですけれども、共同開発をするということでFSXの共同開発をやったわけなんですが、やっている間にアメリカ側から、日本で開発した技術、そういうものもすべてアメリカ側に帰属するという、そういうようなことをアメリカは主張している。これはF16という戦闘機のところを改造してつくっていくわけでありますが、F16の派生技術であるとアメリカは主張している。その派生技術は原則的にアメリカに帰属するんだというので、ほとんど、ほとんどでもないけれどもかなりの部分の日本でつくられた技術というものが、武器技術輸出の項目によってどんどんただで、無償で使われていく形になっていくということが問題になっているという新聞記事もありました。  これは大変私は問題が大きいと思うので、それを使われること自体の問題もありますけれども、もう一つは、こういうことが起こるということを想定しなかったんだろうか。私も、実は人工衛星の開発で、放送衛星の開発でアメリカとやり合った経験がございます。アメリカとやりますと、本当に向こうはもう理屈が通らないことを言ってくる。例えば、足し算引き算でできるような回線設計というのがあるのですけれども、そういうようなものは、技術移転の部類に属するんだからお金を払えとか、もう本当に、足し算引き算、だれでもわかるのです。そんなことを言って主張するのです。それで、こっちも怒ってやりますと、向こうもかんかんになって怒ってくるというようなことがあったりして、とんでもないことが起こってくる。  そういうことが起こることは当然だと言う人がいるのです。これは最初にきちっとしなかったから問題が起こるのだ、最初にこれは契約上そういうことをきちっとしておかなかったから問題になったと。これ、記事を読みますと、かなり何かルーズに日本企業が、日本が参加していったように、アメリカの良心というものを信じながらやっていったような気がするのでありますが、このことについて、これは通産大臣なんでしょうか、防衛庁。
  251. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 次期支援戦闘機、FSXの日米共同開発事業につきましては、現在、米国から日本に対しまして、委員指摘の、ベースとなりますF16の機体の設計、製造等に係ります技術資料が逐次参っております。また、日本から米国に対しましては、主翼の設計、製造等に係る技術資料等を移転しているところでございまして、現時点で、日米間における技術交流によりまして作業は順調に進んでいるところでございます。  御指摘の、技術の独自性の判断に関します議論でございますけれども、この技術の独自性の問題につきましては、プロジェクトのスタート時に合意しております火器管制レーダー等四項目ございますけれども、これ以外の技術につきましては、今後、FSX技術運営委員会といったような場が設けられておりまして、ここで実務的に協議して合意をしていくという手はずになっているところでございます。現時点で、有償、無償等をめぐりまして日米間で意見の食い違いがあるというふうな状況にはないというふうに、私ども認識をしているところでございます。
  252. 松前仰

    ○松前委員 今全く日米間で意見の食い違いがないということは、問題はないということになるわけですかね。これは、ここに出ている記事はそういう形にはほとんどなっていない。とにかく、この一部米企業の技術を含むけれども大半は独自の技術である。これは一つは横河電機の多機能液晶表示、そして島津製作所は完全に独自技術であると主張している。だけれども、これはアメリカに全部帰属するのだというようなことをアメリカは主張しているということが、これが完全に行き違いがないということなんですか。
  253. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 個別の技術の改善等の中身に即しましてこれから実務的に詰めていく、こういうことになるわけでございます。
  254. 松前仰

    ○松前委員 それはわかります。そういう何か委員会があって、そこでやるということは十分わかっておるわけでございますけれども、私は、この委員会の中で、まだやっていないんですよね、これ。やっているのですか。
  255. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 これまで七回開催しておりまして、つい先日、八回目をやったところでございます。
  256. 松前仰

    ○松前委員 そうすると、それは、その中身は完全に合意しているわけですか、中身。
  257. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 この委員会におきましては、基本的にはプロジェクト全体の進行管理をやっているわけでございますけれども、その一環といたしまして、移転すべき技術につきまして検討をしておる。今後それが独自のものかどうか、日米双方それぞれの意見がございますので、この辺のすり合わせをしていくということでございます。
  258. 松前仰

    ○松前委員 私は、そこで、そんなところで今後やっていくというのは、一番最初の契約はそういうことはどういうふうに書いたりしたのですか、一番最初は。一番最初はしっかりしなければ、アメリカはキリスト教の国ですから、契約の国ですからとんでもないことになりますよ、これは。みんなやられますよ、これは。
  259. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 プロジェクトのスタート開始時に、先ほど申し上げました四項目につきまして合意をしていたわけでございますが、技術研究開発の常でございますけれども、実際に研究を進めていく過程でいろいろな新しい技術等々が出てくるわけでございます。それらにつきましてはその都度判断をしていく、かようなことになろうかと思っております。
  260. 松前仰

    ○松前委員 FSXというのは、つくりながら研究するのですか、これ。これは戦闘機として応用技術でしょう。これはそんなつくりながら研究をするような——科学技術庁の問題だよ、確かに。おかしいですよ、そういうやり方は。これはもうやられていますよ、完全に。これは私だって経験しているんだもの。これは契約の中になかったから一億円出しなさいと言って、科学技術庁からは渋々政府にかけ合って出したことがある。同じですよ、これ。  アメリカはとにかく書いてないことは全部、その後の問題として全部お金になって出てきます。これは恐らく、無償だからお金にならないけれども、だけれども、これはただで全部技術を提供してやることになる。日本のメーカーはたまったものではないですね、こんなことでどんどん武器として向こうへ、アメリカヘ行って。アメリカは世界の武器供給国第一位でしょう、ナンバーワンでしょう。そういうところへどんどん日本がそこを通じていくことになるじゃないですか。これはとんでもないことになりますよ。しっかりしてくださいよ、これ。
  261. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 実際にこの技術の移転の中身に即しまして判断がなされるわけでございますけれども、例えば技術供与を受けました側の開発内容に独自性がない、提供されました技術資料の単なる一部変更といったような場合には、もととなります技術を提供した者が変更分についても無償で使用し得るというようなことが技術交流のならわしになっておるわけでございまして、これは日本から米国に対しまして技術を提供したものにつきましても同様でございます。米国において改善改良等が行われましても、独自性がない場合には、これは日本側に無償で返ってくる、こういうことになるわけでございます。
  262. 松前仰

    ○松前委員 話を聞いていますと、何かこれ、開発していく段階においていろいろと何か技術が変わっていくような感じを受けるのですけれども、そんな戦闘機は怖くて乗れないじゃないですか。  だから、これは後で、最初に契約の中できちんとしなかったところが今次々と問題になってこういう状況になってきているということですよ。こんなずさんなことは私はないと思いますね。これはとんでもない。  ちょっときょうは三十三分までということで時間がなくなってしまいましたから、また別の機会で、別といってもこれは急がなきゃしょうがないのですけれども、討論をさせていただくということにしていきたいと思いますけれども、これはこれから後どういう形になっていくのですか。何回か、八回ぐらいやったのですか。その後、いつまでに、どういうふうにするつもりですか。
  263. 中田哲雄

    ○中田(哲)政府委員 先ほど申し上げました委員会は半年に一度程度開催をして、進行管理をしているわけでございます。今後具体的に米側で要望するような技術が出てまいりましたら、その時点でその技術につきましても十分吟味をしていく、こういうことになろうかと思っております。
  264. 松前仰

    ○松前委員 私にいろいろなことを聞いてください。私ずっといろいろなことで苦労してきましたからね、人工衛星の開発とか。  時間が来ましたので終わりますけれども、郵政大臣、大変申しわけございません、こんなところでひっかかってしまいまして。  それから、最後に文部大臣にサッカーくじのことを聞こうと思いましたけれども、それも時間がなくなりました。  これで終わります。
  265. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて松前君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。  中野委員、お許しをいただきまして、訂正の発言を通産大臣からいたします。
  266. 森喜朗

    森国務大臣 お許しをいただきまして、昨日関先生の御質問に御答弁申し上げました中で、住宅用の太陽光発電システムの技術実験試験の来年度の予算額を、私の記憶では二十五億円と申したと思いますが、二億五千万円の誤りでございましたので、この席をかりまして、おわびを申し上げ、訂正をさせていただきます。
  267. 粕谷茂

    粕谷委員長 中野君。
  268. 中野寛成

    ○中野委員 きょうは、大蔵大臣代理と外務大臣代理を中心にお伺いすることになりますが、総理御自身がお出ましをいただきまして恐縮でございます。  それではお尋ねをいたしますが、最初にちょっと、日本国民の最大関心事でございますので、通告質問の前に、これは常識的な問題だと思いますので、官房長官を中心にお尋ねさせていただきたいと思います。  国民待望の皇太子殿下の御婚約が決定を見ました。納采の儀も間もなくだということでございまして、御同慶にたえません。さてそこで、今最大の関心事は、御成婚の日はいつなんだろうか、このことを国民は心からお祝いをする、そういう気持ちで待ち望んでいると思いますし、また、それ以外にやはり、これは失礼ですが、あやかり組もいるかもしれません。いろいろな意味で、その日取り決定を国民は待ち望んでいると思います。この日取りは大体内定しているのでしょうか。いつごろになるのでしょうか。     〔委員長退席、中川委員長代理着席〕
  269. 河野洋平

    ○河野国務大臣 まだ内定も決定もいたしておりません。
  270. 中野寛成

    ○中野委員 うわさでは五月の下旬とか六月三日とか、いろいろなうわさが流されております。これは当然皇室としてもいろいろな御準備が必要だろうと思うのですね。  それからもう一つは、予算。皇室費として国家から出す予算と、そしてまた皇室の中で私的に御用意される費用があるであろうと思います。大体、いろいろとこれまた予測記事が出ておりますが、国庫から出す予算は二百億前後かなといううわさもありますが、そういう試算はあるのでしょうか。
  271. 河野洋平

    ○河野国務大臣 私の想像でございますけれども、御成婚の日取りは、納采の儀の日取りが決まって、それから後になるというふうに考えるのが常識だと思います。  それから、予算については、まだその日取りも決まらない現状でございますので、今ここで申し上げるものを持っておりません。
  272. 中野寛成

    ○中野委員 既に用意をして、例えば六月、うわさされる六月三日ごろだとすれば、既にいろいろなものを発注しておかなければ間に合わない時期を迎えているのじゃないでしょうか、本来は。失礼ですが、既に発注されたものもあると聞きます。これは国民が注視をしている大変おめでたい慶事です。ならば、中途半端なことはしてほしくないし、したくもないと思います。ゆえに、こうして皇室会議の議を経て決定をしたのでありますから、早急にスケジュールを決定し、予算を決定するのが当然だと思います。  今、我々はここで予算審議をしているのであります。まさか決まった予算の中から、予備費などというところから捻出しようとされているのではないでしょうか。現在、予算審議中です。既に決まったのです。ならば、当然出された政府予算をそのために修正してしかるべきであろうと思います。  二百億といえば、国民の目から見れば大変大きな金額でもあります。それを、しかも皇室の慶事、国家的な行事にいいかげんな形での歳出は、これはなしてはならないことだと思います。ゆえに、私はここで、これは予算のことにも絡みますから、大変突然の質問総理にお聞きするのは恐縮でありますけれども、これは官房長官及び大蔵大臣がしかと肝に銘じなければならないことだと思いますが、いかがでしょうか。
  273. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員おっしゃいますように、国民ひとしくお祝いをする大変重要な行事だと心得ております。ただ、現在御審議はいただいておりますけれども、まだ日にちの特定もできていないという状況でございます。この問題についてはもうしばらくお時間を拝借したいというふうに思います。
  274. 中野寛成

    ○中野委員 これを私にアドバイスした方が、予算が成立するまでわざと、予算修正とか補正予算のこととかいろんなことが絡むので御成婚の日取りをなかなか決められないんだというような、憶測であることを望みますが、しかし、そのような疑念を持つ人さえ生まれかけているのであります。車ほどさように、この慶事については国民の関心が高いということであります。政府は明確に、その日取りの決定、そして予算等についての真剣な論議と、そしてまた、国民の納得のいく決定をしていただきたい。決してこの慶事に水を差すようなことがあってはならない、こう思います。  これは大蔵大臣代理としてお越しですが、総理にやはりお聞きすべきことであろうと思います。
  275. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御注意の点はよく承りました。十分慎重に対応いたします。
  276. 中野寛成

    ○中野委員 それでは通告質問に移ってまいりたいと思います。  昨日韓国で金泳三第十四代大統領が就任をいたしました。三十二年。ぶりの文民大統領の誕生によって韓国が民主国家としてますます発展されることを期待をいたします。  金泳三大統領は、外交の重要な軸として米国と日本を挙げております。日韓関係はアジア・太平洋地域の平和と安定に極めて重要な影響を持つものでありますし、そしてまた、我が国の一番近い国として大切にしなければなりません。政府は、朝鮮半島の緊張緩和の促進と南北の平和的統一への国際環境づくりに向けて引き続き韓国新政府と協調協力関係を維持しつつ努力していくべきだと思いますしかるに総理は、未来志向に立つ協力関係強化を今日まで強調してこられました。  さて一方、日韓の間で問題となっております従軍慰安婦問題、貿易赤字問題、技術移転問題等の案件にどのように取り組んでいくのか。今後の全体としての日韓関係のあり方について総理の御見解、もしくは外務大臣代理となるのかもしれませんが、御見解をお尋ねしたいと思います。
  277. 河野洋平

    ○河野国務大臣 日韓両国は自由と民主主義という価値観を共有する国でございます。御指摘のとおり、日韓関係の発展は、両国のみならず東アジア地域の安定と繁栄にとり極めて重要でございます。  金泳三新大統領が選挙で当選をなさった直後に宮澤総理と電話でお話がございました。今後両国が未来志向を持って率直な意見の交換の上にともに歩んでいこうという極めて率直なお話し合いがあったというふうに伺っております。我が国にとりまして大事な隣国でございます。幾つかの問題はございますけれども、この問題には誠意を持って、本当に誠心誠意この問題を解決をするために全力を挙げながら未来志向的協調関係を持って歩んでいっていただきたい、こう考えております。
  278. 中野寛成

    ○中野委員 未来志向という言葉は大変便利でございまして、その言葉を使っていると各論についてはお答えがなくても済むのかいな、こう思いますが、しかし、今そのことについて問おうとしているのではありませんから、それはそれで結構ですが、さてしかし、日韓関係の重要性を考えますと、私はやっぱりいっときも早く御就任早々の金泳三大統領の訪日を招請されるとか、やはりかなりこの機会にひざを突き合わせて突っ込んだお話がなされるべきではないかと思いますし、また、東京サミットが間もなく開かれますけれども、ASEAN諸国の代表としてそのサミットに参加したいという御希望がASEANからはある。しかし、同時にまた隣国の韓国も、最近の成長ぶり、そしてまた国際社会における地位等を考えますと、同じような気持ち、まあ参加するかどうかは別にしまして、同じような気持ちを持ってサミットを注目しておられるであろうと思うのであります。来週早々にも、聞きますと、新しく韓日議連の会長になられた金在淳氏がお見えになるようでございますが、いずれにいたしましても、この金泳三大統領とひざを突き合わしてお話をされる、その中で未来志向型の日韓関係を具体的に詰めていく、このことが大切だと思いますが、できれば総理からお答えをいただければと思います。
  279. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御指摘のとおりと思います。いろいろ新大統領も、両国間の関係並びにお互いに協力して将来に向かってアジアのため、世界のために果たすべき責務についてお考えがおありになろうと思います。私もぜひお目にかかる機会を得まして、そういう意見交換をいたしたいと思っております。  なお、サミットとの関連でございましたが、片方でいわゆる百八カ国による非同盟の立場についてサミットでサミットに対して意見表明をしたいというスハルト大統領のお考えのようなお考えもございます。そういうことは一つでございますが、同時にまた、今度のサミットがたまたま東京で行われるということもございますけれども、やはりこの地域、アジアにおける情勢につきましても、できるだけこれをサミットで私から話をし、またサミットの中の討論の大切な一つの問題にしていきたいというふうに考えております。
  280. 中野寛成

    ○中野委員 そういたしますと、直接お話をしたいというお気持ちですから、訪日の招請ということは、やっぱりその中にお考えでございますか。
  281. 河野洋平

    ○河野国務大臣 両国は極めて近い間柄、物理的にもあるいは地理的にも近い間柄でございます。昨年は二回にわたって、公式非公式二回にわたって首脳の話し合いがございました。日韓両国には、今委員お話しになりましたように、日韓議連その他、人間的にも大変交流の場が豊富でございますから、さまざまなチャネルを通じてお話し合いのまず下地をつくるということも必要であろうと思います。恐らく新大統領は、これから内閣を組織をされて幾つかの準備をなさる。とりあえずはかなりお忙しい内政の仕事に携わられるというふうにも思いますので、両国でチャンスを見て、そうしたお話し合いの糸口を見つけたいというふうに思っております。
  282. 中野寛成

    ○中野委員 来週訪日をされる韓日議員連盟の金会長、新しい金泳三大統領とのお話で、できるだけ日韓関係についてこの韓日議員連盟を重視をしたいというお話をされたようでございますし、十分また来週そういうことも含めたお話がされることを期待をしておきたいと思います。  さて、今度は北朝鮮の核疑惑と日朝関係の問題についてお尋ねをいたします。  北朝鮮は、八五年十二月に核不拡散条約に加入をしながら、この条約の義務である国際原子力機関、IAEAとの保障協定の締結を長年拒否してまいりましたが、昨年四月にようやくこの協定を締結をいたしました。これに基づきIAEAは、これまで六回の核の特定査察を行い、その結果、核疑惑が十分に解明されていないとして、今月になり特別査察を要求したわけであります。またIAEAは、ウィーン時間の二十五日、これから一カ月以内の受諾要求、特別査察受諾をするようにと議決したという報道が今なされております。一方で北朝鮮の方は、この決議案採択に強く反発をし、核拡散防止条約、NPTからの脱退の可能性も排除できないと北朝鮮の大使が語ったと報道されております。これは国際社会の仲間としていかがであろうかと私どもは大変強い懸念を感じるわけでありまして、このIAEAの常任理事国としての我が国の態度というのは大変大きな意味を持つと思うわけであります。現在どういうふうにお考えでしょうか。
  283. 須藤隆也

    ○須藤(隆)政府委員 御指摘の北朝鮮の核兵器開発に関する疑惑につきましては、我が国のみならず国際社会全体の平和と安全にとって重大な懸念材料でありまして、この問題への取り組みは核不拡散の見地からも緊急かつ重要な課題であると認識しております。  我が国といたしましては、従来から、北朝鮮がIAEAの保障措置協定を早期、無条件かつ完全に履行するとともに、南北非核化共同宣言を誠実に実施し、これらを通じて一日も早く国際社会の懸念を払拭することを、日朝交渉あるいはIAEAの場において強く求めてきたところでございます。  日本政府といたしましては、今般の理事会におきましても、今回のこの特別査察が北朝鮮にとって核兵器開発に対する懸念を払拭し、また国際社会の信頼をから得るために不可欠なものであるということを踏まえて、北朝鮮が一刻も早く特別査察を受け入れることを強く求めてきたところでありますが、現地時間の昨日、先生指摘のような決議我が国を含む二十二カ国により共同提案され、投票に付されることなく採択された次第でございます。  また、これに対する北朝鮮の反応といたしましては、先ほど先生指摘のとおり、北朝鮮としては、不当な決議の採択に驚いているとか、原子力活動とは関係のない二つの軍事サイトに対する特別査察は受け入れないというようなことを言っております。  日本国政府といたしましては、今後とも、IAEAが北朝鮮によるこの特別査察の受け入れのために払っております努力を強く支持いたしますとともに、これに対して最大限の協力を行っていく考えでございます。
  284. 中野寛成

    ○中野委員 このことについて重ねて質問したいのですが、ちょっと時間の都合もありますから、北朝鮮関係をまとめてお尋ねをいたします。  日本と北朝鮮の間に行われておりました国交正常化交渉、これも九二年十一月、第八回目をもって決裂をいたしております。これは例の李恩恵問題が一つ理由とされておりますが、今後の交渉の日程も見通しがつかないという状況であります。しかも、そういう状況下で今回のこの核査察の問題が再び起こってきているわけであります。  我が国としては、この北朝鮮に対して、やはり言うべきことはきちっと言っていくという姿勢が極めて必要でありますし、核疑惑の払拭や李恩恵問題、北朝鮮に渡ったまま帰国できない日本人妻の問題など、我が国の立場を明確にしながら、日朝間における交渉、国際社会における北朝鮮対策、きちっとしたけじめを持ってやっていかなければならないであろうと思うのであります。  しかも、李恩恵という特定の人の名前だけがクローズアップされておりますが、私はこれは一つのシンボル的存在だと思います。むしろ、第二、第三、第四の李恩恵も存在するであろう、こうも言われるわけであります。そういう意味で、この李恩恵というのは、それこそ複数と考える、ゆえに単に一人の女性の問題ではない、このようにも思うわけでありまして、これらのことについて、包括的に北朝鮮との関係について再度お伺いをいたしたいと思います。     〔中川委員長代理退席、石川委員長代理着     席〕
  285. 池田維

    ○池田政府委員 お答えを申し上げます。  日本と北朝鮮との間の国交正常化交渉は、ただいま先生指摘されましたとおり、これまで八回行ったわけでございまして、最後の第八回目が昨年の十一月に北京で行われました。そしてこのときに、北朝鮮側がいわゆる李恩恵問題に関しまして非常に強い強硬な態度をとりまして、本交渉を途中で打ち切るという挙に出たわけでございまして、現在のところ次回の交渉のめどは立っていないという状況でございます。  しかしながら、我が国といたしましては、いつまでも本交渉を中断することはもちろん望ましくないというように考えております。そして、これは交渉でございますから相手のあることでございまして、北朝鮮側の出方を見ながら、今後機会をとらえて交渉を再開していきたいというように考えているわけでございます。そして交渉が再開でき得ました場合には、我が方としては引き続きまして、我が方の原則的な立場というものを十分に踏まえながら、誠意を持って粘り強く交渉していきたいというように考えております。  特に、ただいま御指摘の核兵器開発問題、この問題につきましては、この問題の解決なくしては国交正常化は困難であるという立場は、これまでも明確に先方に対して明らかにしてまいりましたが、この立場は引き続き堅持していきたいというように考えております。  また、先ほど御指摘のございました李恩恵問題につきましては、この問題についても協議することを避けて通ることはできないという旨を強調していきたいというように考えております。
  286. 中野寛成

    ○中野委員 先ほど李恩恵問題につきましても申しましたが、言うならば国際的に非常識な国というふうにこれはもう断言せざるを得ません。国際関係ですからめったに非礼なことを言ってはいけないと思いますけれども、今日までの我が国との関係や国際社会における現在の核査察の問題についての態度などを見るときに、やはり国際的に通用しない非常識な国と言わざるを得ない。私は、しかしそれが日本にとって極めて近いところに存在する、このことを我々は決して忘れてはならないわけであります。国民の納得のする、しかも国際社会に通用する外交を進めていかなければなりませんし、そこには政府の毅然たる態度が必要であろう、こう思うわけでありまして、これも重ねて総理もしくは官房長官にお尋ねをいたします。
  287. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員指摘になりましたように、極めて、私どもは誠心誠意交渉に臨んでおるにもかかわらず、本会談が中断をしたままになっていることは残念なことでございます。しかし、これも委員がおっしゃいましたように、こうした国が我が国と極めて近いところに存在する、このこともまた我々は忘れてはいけないわけでございまして、我々は誠意を尽くして、また、交渉に臨んでは毅然とした態度で、国際社会の中で十分にお互い話し合える、そういう状況をつくっていかなければならぬものと考えております。  李恩恵の問題にいたしましても、これらはいずれも信用、信頼の問題でございます。お互いに信頼感がなければこうした交渉はなかなかうまくいくものではないわけでございまして、極めて象徴的なものというふうに考えております。原則を崩さず毅然とした態度で交渉再開の折には交渉に臨みたい、こう考えております。
  288. 中野寛成

    ○中野委員 次に、国連改革とPKOについてお尋ねをいたします。  まずカンボジアでありますが、五月の選挙に向けて活動が進められております。UNTACの明石代表は、予定されている千人の監視要員のうち五十人を日本に派遣要請している。これは新聞のインタビューにそう答えているようでありますが、そのとおりでしょうか。そしてまた、その要請にこたえる御準備をしておられますか。
  289. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 選挙の監視要員でございますが、私ども国連から既に非公式に五十人程度出してもらうことを期待するというふうに聞いておりまして、ただいまお話ございましたように、最近も、まだ正式な要請ではございませんけれども、五十人という数字は確認されております。  その前提に立ちまして、私ども政府として正式に対応を決定することとなった場合に適時適切に対応できますように、現在選考の準備を進めているところでございます。目下、外務省、自治省等関係省庁の御協力によりまして、NGOを含む民間の方々、それから地方公共団体等から相当数の応募、推薦を受けまして、面接を含めた選考作業を進めているところでございます。
  290. 中野寛成

    ○中野委員 あわせまして、現在現地で活躍をしていただいております自衛隊の皆さんを中心にしたPKO部隊、たしか六カ月で交代だと聞いておりますが、いつごろの交代の御予定でしょうか。そして、交代をした新しい部隊の皆さんはいつごろまでカンボジアで活動をする予定なのでしょうか。交代時期には全体として千七、八百人というふうに、交代時期、瞬間には膨れ上がると聞いておりますが、そうでしょうか。
  291. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 現在、停戦監視員として八名の自衛隊員の方々が行っておられるわけですが、この三月の半ばで大体六カ月の時期が参りますので、中旬には交代という予定でございます。  それから、施設部隊につきましては、昨年何次かに分かれまして派遣されておりますけれども、最終的に現地にそろいましたのが十月の十四日でございます。したがいまして、三月から四月にかけまして交代の時期を迎えるということでございます。その後は六カ月ということで、六カ月ずつという考え方でございます。
  292. 中野寛成

    ○中野委員 千八百人ぐらいにトータルでなるんでしょうかということと、それから、新しくその三月からまたは四月から派遣された人たちは、このPKO部隊の任務の期間というか、作業の全体のトータルの期間との関係があります。いつごろまで活動されるのでしょうか。やっぱり六カ月ぎりぎりやるのでしょうか。
  293. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 失礼しました。  全体の数でございますけれども、私ども、この二千人の、法律上の二千人の枠の中で、いわゆる発令ベースで数を勘定しておりますので、交代の時期には、六百人の施設部隊につきましては千二百人というふうに、一時的にはそのような数になるわけでございます。  それから、停戦監視要員につきましては十六名ということでございます。  それから、派遣の期間でございますけれども、UNTACの活動そのものは昨年の三月十五日から十八カ月ということでございますので、ことしの九月の十五日ということになります。ただ、その後の、もしその予定どおり終わるという前提に立ちますと、その後の撤収の時間等も勘案いたしまして、我が国の実施計画上は十月の三十一日までの活動を予定してございます。ただ、実際にどこで終わるかということにつきましては、まだ今的確にはわかっておりません。
  294. 中野寛成

    ○中野委員 それではその続きをお尋ねいたしますが、同じく明石代表がそのインタビューの中で、新政権発足でUNTACが撤退した後も、引き続き数年UNTAC要員約二万人のうちの二十分の一ないし十分の一程度の国連のプレゼンスが必要だろうと述べ、日本にも要員派遣を求める考えを明らかにしたと報道されております。これらのことについての情報は入っているのでしょうか。また、そのことについての政府の見解はいかがなんでしょうか。
  295. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 ただいま御指摘の活動予定期間が延長されるかどうかという点でございますけれども、結論から申し上げますと、現時点ではまだ決まっていないというふうに承知しております。したがいまして、仮に延長があったといたしましても、その時点で国連から我が国に対しましてさらにUNTACへの協力の継続が要請されるかどうかという点も、今のところは不明でございます。したがいまして、現時点におきましては、その後の我が国の対応につきましてはまだ具体的に申し上げられる段階に至っていないということでございます。
  296. 中野寛成

    ○中野委員 現在のカンボジアPKOが無事に任務を果たし、そしてまたその後、国連要請があった場合には、それに的確に我が国として率先してこたえられるように御期待をして、また、要望をしておきたいと思います。  次に、モザンビークに移りますが、私は前置きを省略して申しますが、今後ソマリアであるとか旧ユーゴであるとかという状況の内容を検討いたしますと、なかなか日本からPKOを派遣するためのいわゆる五原則にうまくマッチするとは考えにくい。といたしますと、やはりモザンビークが一番ある意味ではカンボジア情勢よりも落ちついていると言っても過言ではないと思います。ならば、日本ができ得る限りPKOにおいても国際社会に貢献する姿勢を示そうと思えば、後のことも考え合わせ、モザンビークに対する派遣というのはより一層積極的に考えるべきではないか、このように思うわけであります。そういう意味では、せっかく先般柿澤政務次官がその調査に行かれて、大変派遣の環境がいい、五原則も満たしている、だから積極的に派遣すべきだと進言したという報道もなされておりますし、私はそのとおりだと思うんですね。  ところが、きょうの報道を見ますと、たしかこれは官房長官の記者会見でしょうか、これから調査団を派遣するというふうな報道がなされております。ところが、そういうものなのでしょうかね。というのは、ならば、柿澤政務次官の調査は何だったんでしょうね。子供の使いかいな、こう思いたくなりますし……。目的は、行った目的は違うんでしょうが、しかしあわせてこの調査もされたはずですね。また、本来他の国々は、派遣をするというまず姿勢を持った上で、一つの目的を持って調査に行くんですね。そういう意味では、今ごろから調査に行くというのは、何かこの三月からの派遣を先延ばしをして、別のもくろみを持っているというふうにこれは勘ぐらざるを得ない。  私はむしろ、先ほど冒頭申し上げましたように、積極的に考えるべきだ。言うなら、日本が派遣できるある意味ではチャンス。というのは、このモザンビークのほかにはあとちょっとしばらくないのではないかという気もいたしますし、日本の積極的な平和姿勢を示すためにも、今やっておく必要があるように思いますが、いかがでしょうか。
  297. 河野洋平

    ○河野国務大臣 委員おっしゃいますように、モザンビークは五原則に適合しているというふうに私も思います。そして、これは割合と、委員のお言葉をかりれば、日本がPKOに参加するのにしやすいところではないかという御指摘は、恐らく政治的な背景、つまりソマリアにしても、あるいはカンボジアにしても、和平協定をつくる場合には四つも五つもあるいは十も政治勢力があって、それを一つにまとめて和平協定をつくるということは非常に困難が伴いますけれども、モザンビークの場合には、政府対反政府という割合と単純な政治的な図式、これは必ずしもそれだけでいいかどうかわかりませんけれども、そういった今は図式で和平協定がなされておりますから、政治的には比較的単純な図式であるだけに、和平協定が守られやすい。これは、まあどういう言い方をすればいいかわかりませんが、比較的安全だといいましょうか、そういう政治的な環境だという御指摘はそうだと思います。  そしてまた、柿澤政務次官はそうしたことを確認をして帰ってこられました。柿澤政務次官は、政府側の方にも、高官にもお会いになったそうですし、反政府側の高官にも会って、両方からそれぞれ日本からの参加を期待しておるということを聞いて、調べて帰ってきておられます。その限りにおいては、私は、日本が出すのには割と出しやすい場所ではないかという意味、その限りはそういうふうに思います。  しかし、問題は、ただそれだけではなくて、まだまだどういうPKOの場に参加をするのか、どういった人たちに参加をしていただくのか。モザンビークといえば、まあ正直申し上げて、日本はまだ大使館も出ていないという国でございます。これはカンボジアのように大使館もあり、まあこれは非常に幸運なことですが、UNTACのリーダーは我々と非常に親しい人で情報も非常に的確に入るというそういう状況、しかも比較的日本が長くからおつき合いもあるカンボジアというところに出ていくのと、モザンビークとはそう同じではないのではないかという感じがまず一ついたしました。  それからもう一点、PKO、国際貢献のために日本から多くの人たちが参加をする、特に自衛隊が外地へ出ていってこうした作業に参加をすることは、まだ我々はそう歴史はないわけでございます。初めてカンボジアでこういう作業をしているわけでございますから、そのためにも、我々はさまざまな調査もし、政治的な判断もしなければならない部分が残っているというふうに私は思考いたしました。  で、柿澤政務次官を初め、これまでのモザンビークPKO参加問題でいろいろと情報も集め、非公式な意見の交換も積み重ねられて、私どものところにそういう御報告はいただきましたけれども、これらはいずれも言ってみればデザイラビリティーについての議論、つまり来てほしい、行く場所があるという議論でございまして、行くためにはどうするかというフィージビリティーの調査、議論というものもやはりしなければいけない。我々は日本からPKOに参加する方々にモザンビークに行っていただくためには、それなりの調査はやはりしてから判断をすべきものではないかというふうに考えたわけでございます。  で、中野委員は、間に合わないではないか、そんな悠長なことをしていたのでは間に合わないではないかというふうにおっしゃいましたけれども、PKOの作業はさまざまな分野に及んでおりますから、これは行って調査をしてみて、帰ってきた人たちの話も聞かなければいけませんけれども、やるべき仕事はあるかもしれません。あるいはやれるような状況であるかもしれません。あるいは逆に、ないかもしれませんが、そういったことは慎重に調査の結果を待って判断をしたいというふうに思ったわけでございます。  さらに、少し話が長くなって恐縮でございますが、日本が出ていく好機だというふうにもおっしゃいましたが、私は、ある点ではそういうふうに言えるかもしれません。しかし、問題は、やはりどれだけ求められ、どれだけ成果の上がる、効果の上がる仕事ができるかということをやはりきちっと判断をして出ていくということが大事なのではないか。その方により多くの意味を感じたわけでございまして、来週早々、来週には調査団に行っていただいて、さまざまな調査をして帰ってきていただきたい、こう考えている次第でございます。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  298. 中野寛成

    ○中野委員 大変懇切丁寧な御答弁をいただきました。しかし、長ければ長いほど、迷っておられるのかな、それだけ言いわけが必要なのかなと思わざるを得ないわけでございます。  旧日本軍の面影を残すカンボジアはだめで、そういう縁のないところならいいという議論をカンボジアPKOのときにはしたことがあるような気がいたします。そういうことを言った人がいるように思います。今度は、しかしカンボジアには行って、そして、今度は余りなじみのない遠いモザンビークではいかがであろうかというのは、これは筋が通らないと思います。私たちは世界のどこであれ、自然環境で言えば、今のカンボジアは極めて厳しい環境の中ですね。そこでやはり御苦労をいただいているわけです。  私は、このPKOというのは世界各国の平和に向かってのオリンピックだとも言われる。ある意味では参加することに意義があるとも言われる。先般いらっしゃったガリ事務総長は、象徴的な意味もあるとさえ、これはたしか総理に向かっておっしゃったのではないでしょうか。日本に来たときに発言をしておられる。  そういうことを考えますと、今の官房長官の御答弁は、ガリ事務総長がお聞きになると失望されるであろうと思います。日本は、しかも平和憲法を持っておって、その平和についての認識が国民に大変浸透しているからと総理が何かガリ事務総長にお答えになったとかならぬとかという報道もありました。私は、これはガリ事務総長はなぜそのとき怒らなかったのだろうかと。平和を望むがゆえにPKOがあるのではないのでしょうか。平和を望む国民性が日本人に強いのならば、PKOこそ日本は参加しなければいけないのではないのでしょうか。  私は随分と御丁寧な官房長官の御答弁を聞きましたが、実はこれ以上聞きたくない気持ちになりました。私はそういう姿勢ではなくて、もっと世界の平和に向かって積極的な姿勢を政府みずからが持っていただきたい、このことを強く要請を申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  さて、日米関係でありますが、先ほど林大蔵大臣G7に御出発になりました。これに先駆けて、二月十九日、アメリカのベンツェン財務長官は、ワシントンで経済政策について講演した中で、これはもう有名な話ですから詳しくは言いませんけれども、一層の円高を望むと答えました。米国の輸出促進につながるからだと語り、言うならば円高期待をはっきりと明言したわけであります。恐らくこれから開かれるロンドンのG7において、為替相場についてこれ以上の円高を食いとめたいとする日本と緩やかな円高を容認する構えの米欧との間で綱引きがされるであろうと予想されます。  けさほど林大蔵大臣は、何しろG7の国の中で我が国だけが黒字なのですからいろいろ言われるでしょうと、まさにこう笑顔でお答えになっておりました。しかし、そういうことだけで済まされるものでしょうか。国際社会における経済は極めて深刻であります。アメリカもヨーロッパも日本に対していろいろな形で厳しい要求をするであろうと思いますし、日本もまたそれに対してしっかりとした論理構成、理論武装をして対応していかなければいけないと思うのであります。  今思い起こしますのは、これも先ほど来指摘があります一九八五年のプラザ合意であります。竹下大蔵大臣、当時、円安・ドル高を是正するために協調介入に乗り出すとの声明に加わったわけであります。当時一ドル二百四十円台だった相場は急激に円高に動いて、一年半後、八七年二月には一ドルが百五十円台にまで到達したわけであります。その間の日本経済の苦しみ、国民の苦しみがどうであったかは既に御存じのとおりであります。その再来を心配しない人が果たしているでしょうか。ここ数日間の動きを見ただけでも、国民はただでさえ大変な不況下にあるときにこれがまた重なるとどうなるのだとみんなが心配をしているわけであります。笑顔で大蔵大臣が、いや、我が国だけが黒字ですから、そんなことも言われますよ、もっとざっくばらんに、のんびりとは言わなかったけれども、ざっくばらんに話をするために行くのだとおっしゃられた。しかし、国民は重大な決意を持って政府がこれに対応してほしいと思っているのでありますが、いかがお考えですか。
  299. 河野洋平

    ○河野国務大臣 まず最初に申し上げておきたいと思いますことは、渡辺外務大臣、林大蔵大臣それぞれ訪米をされまして、ベンツェン財務長官とはお会いになりましたが、渡辺・ベンツェン会談、林・ベンツェン会談、いずれもベンツェン財務長官から円高についてのお話はなかったというふうに私ども報告をいただいております。事実そうしたお話し合いはなかったと思います。  さらに、ベンツェン財務長官が円高容認の御発言をしたという今委員からのお話でございますが、引用されております話はベンツェン財務長官が、弱いドルを望むかと言われて、にやっと笑って、いや、強い円がいいなと、これは明らかにジョークで言われた、そしてみんなが大笑いになって終わったということがキャリーされているわけでございまして、ベンツェン財務長官が円高を容認しているとは私どもは思っておりませんし、恐らくきょうお立ちの林大蔵大臣も、G7においてそうしたことがあるというふうに想像して出発をしておられるとは思いません。
  300. 中野寛成

    ○中野委員 ベンツェン財務長官のその発言の模様は私もテレビのニュースで見ました。確かに官房長官おっしゃるように、にやっと笑っての発言であったことは私も記憶をいたしております。しかし、その表情の中にまさに本音が出たと私は見ます。そうではないでしょうか。あの講演の中で、やはり経済問題、アメリカの経済問題について語ったのですよ。そして、アメリカの経済情勢を考えればそう思っているに違いないとだれもが思うではないですか。そしてそのとおりに彼は答えたにすぎないのではないのですか。  しかし、そういうことはないであろうと安易にたかをくくって林大蔵大臣が出たとしたら、これは国民の心配はなお一層増しますよ。むしろここでは、大蔵大臣はしっかりとした気持ちを持って出かけたのです、少々向こうの方で責められても日本の方はこれに対して徹底的に日本の主張を貫く、場合によっては決定的対立も辞さない、例えば欧米が協調介入して円買い、ドル売りをする場合にも、日本が孤立してでもドル買い支えをするというぐらいの決意で大蔵大臣は行きましたから大丈夫ですとは言えないのですか。
  301. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほど一九八五年以来の円高についてお話がございました。局面としては、円高という意味で似ておるかもしれません。そこでこの際G7にとって大事なことは、実はあのときもそうでございましたけれども日本ができるだけ内需を拡大をしてそして世界経済の不況回復に大きな役割を担ってもらいたいということだと思います。この点は当委員会におかれましても、長い間、政府の政策についても御批判があり、予算につきましても御批判があって、これだけでは十分この不況回復の役に立たないではないかという御指摘が幾たびかございましたが、同じような考え方G7の国が幾つか持っておっても、それは不思議ではございません。  そういう立場からいいますと、この際円高というようなものが内需拡大に役立つか役立たないかといいますと、実際にはむしろ非常に攪乱的な要因になる。これはプラザ合意の後と同じ状況でございまして、これ以上円高になれば日本企業活動というものはそれだけ余計脅威を受けるわけでございますから、期待をされている投資の復活であるとかあるいはもろもろの景気拡大の努力というのは、急激な円高をいたしますとむしろそがれる結果になるということは、これはだれでもわかることでございます、現にプラザ合意の後でそういうことであったのでございますから。  そこで、したがって我々の立場はもとよりですが、アメリカの立場から見ましても、その他の国の立場から見ましても、日本円高を強いていく、あるいは円高に急激に誘導していくということが結局世界経済のこの際のためにはならない、むしろ結果は逆になるということは十分に私は、我々が主張すべきだし、また主張する根拠があるというふうに考えております。
  302. 中野寛成

    ○中野委員 私は今日までの過去の経緯から見て、日本国民が、とりわけ現在の経済状態から見て、これらのことについても、とりわけ神経をとがらせている、心配をしている、このときに政府が国民に対して少なくとも安心をしてもらうために毅然たる姿勢を示すということが大事なのであって、言いわけになってはならないと思うのです。  これはよく経済企画庁もおっしゃるが、経済、景気が例えば悪くなりかけたときに、そう簡単に悪くはなりませんよと言ってその悪くなるのを長引かせる、遅くするというような心理効果というのはありますよね。しかし時に、この前地の質問のときにどなたか閣僚の方が、あんまり景気が悪い悪いと言うといつまでたってもよくならないということを、これは通産大臣でしたかね、お答えになったような気がしましたが、しかし私は、こういうときには悪くなっていることを率直に認めて、そしてこれ以上悪くしないためにこうしますよ、そしてこうしてよくするんですよという、政府が悪いことを認めることが逆に国民に安心感を与えるのではないでしょうか、景気が一番悪くなったときには。私は、何かその心理効果も考え合わせまして、政府がとってこられた今日までの発言、態度というのは逆のような気がしてならないのです。  そこで、このことについてはこれまた、先ほど来言いたいことを申しましたから、御要望にしておきますけれども、そういう中で日米関係をこれから考えていくのでありますが、そのときに思い出しますのは、二年半前にいわゆる宮澤訪米団、各党政調・政審会長がお供をさせていただきました。私もその一員でお供させていただきました。あのときに、ニューヨークでもワシントンでも、どちらかというと、共和党の方はブッシュ大統領とクエール副大統領で、あとの方は大体、宮澤人脈はやはり民主党かなと思わされるようなお顔ぶれに会わせていただいたわけであります。フォーレー下院議長が主宰をされた討論会といいますか会議で、十人ぐらいのアメリカの議員の皆さんお見えでした。また、その他の機会に私は申し上げましたけれども、日米構造協議、日本側がお約束したこと、公共投資四百三十兆円の実施や保有税の導入、農地の宅地並み課税、大店法改正、カルテル課徴金引き上げなど、こういうことは大体政府と大きな企業とが決意をすればできることだ、だから日本は実現しますよ。そしてそれによって日本の経済はますます強くなりますよ。そして、これは一般国民まで知らなくてもいいのに、日本国民は全部知っていますよ。  ところが、アメリカは逆に、日本から提起した問題、財政赤字の削減、貯蓄率の引き上げ、そして企業活性化、輸出振興、教育などなど、それらについては、国民の負担がふえたり貯蓄をしてもらったり教育について国民みんなが協力したりしなければいけない。すなわち、国民みんなが知って、理解して、協力しなければいけないテーマがアメリカ側にある。しかしアメリカは、国民が知らないところか、その指導している、そのときにフォーレー下院議長が集めてくださった十人近くの国会議員だって、日米構造協議でアメリカが何を約束したか知っていますかと私が聞いたときにだれも知らなかったのを、総理、御記憶でしょうか。  今、ところが、その後クリントン政権が誕生をして流れが変わってきたような気がいたします。この指摘したこと、そのことをクリントン政権はかなり多くの項目についてみずからの欠陥として指摘をし、その改善を訴え始めたような気がいたします。このことについての総理の御認識をお聞きしたいと思いますし、しかしそれをアメリカがやるときに、日本の協力だけではなくて、日本側にもまたいろいろなアメリカ側からの協力要請、また注文がつくだろうと思います。今後どのように展開すると思いますか、日本はどう対応されますか。
  303. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 たまたま御一緒に旅をさせていただいたときのことを御言及になられましたので、私からお答えを申し上げますが、確かにせんだってのクリントン大統領の演説を読んでおりますと、あの当時、中野委員が御指摘になり、また日米間で議論されておりましたアメリカ側の問題は、貿易赤字である、なかんずく財政赤字である。その問題について、クリントン政権が正面から取り組もうという姿勢が具体的にせんだっての演説に見えております。  今それについてのいわばキャンペーンをやっておられるようでございますけれども、これからそれが具体的な法案になって国会で議論をされることになるだろうと思いますが、簡単に申せば、増税を含む部分と歳出削減を含む部分とがございます。いずれも、今まで言われていながら具体的な着手に至らなかった施策でございますから、これだけで十分であるか、これだけで説明されているような計数上の成果を上げ得るかどうかという問題は、それはあるだろうと思いますけれども、方向としては明らかに新しい方向をクリントン政権が目指しているということはおっしゃるとおりだと私は思っています。そのことは歓迎すべきことだと思います。  したがいまして、そういう土台の上に立って、私は急にとは思いませんけれども、アメリカとしてもかねて言われているとおりのことをやる。したがって、日本としても、マクロの面でもあるいはミクロの面でも、できるだけのひとつ努力をお願いしたい。今度こそは自分たちも自分たちに求められるていることをやるのであるから、そういうことを望みたいということは、これは必ず言われるであろう、私はそういうふうに思っております。
  304. 中野寛成

    ○中野委員 私は、これからクリントン政権が果たして、まだスタートしたばかりでございますから、中には演説倒れもあるかもしれません。ですから、すべてがすべて、まだ彼らが実行するまでこれは見続けなければいけないと思いますが、しかし、目指している方向は、アメリカの欠点を的確につき、それを是正しようという姿勢だけははっきり見えてきたと思います。そういう意味で、これからも政府としても、アメリカとの日米関係についてより緊密な関係を持ちながら、総理御答弁の内容の御努力をぜひともお願いを申し上げたいと思います。  用意した質問がたくさんあり過ぎまして、ちょっと時間があれですが、それで少々、ちょっと途中省略をいたします。  私たちは、他の社会党、公明党両党と一緒に、三党で減税案を初めとする予算修正案を提出をいたしました。これにつきましては、改めて党対党として協議する機会がありますので、きょうこの場で詳しく触れようとは思いませんし、また別のこの予算委員会の場があると思います。  ただ、言えますことは、この予算修正案は減税に重点を置いておりますし、また、その財源策として将来、アメリカのクリントン政権がそれこそ打ち出したような思い切った行政改革、これなどは実に三十九兆円、四年間で三千二百五十億ドル、最初は五千億ドルと演説して後で修正しましたが、四年間で三千二百五十億ドルの財政赤字削減に取り組むと数字を挙げて明言している。日本円に換算すると三十九兆円。こういうふうな具体的な歳出削減目標額を明らかにして、そして新行財政改革五カ年計画というふうなものをおつくりになり、そしてまた場合によっては、景気が回復すれば、ひとつ法人税その他国民の皆さんも協力してくださいよという前提の中で減税を図っていく、そのために特例公債をやむを得ず発行するということの全体としての大きな計画というものが必要だと思うのです。  そのことを前提に置きながら、このことについては質問をいたしませんけれども、ただ、通産大臣、経企庁長官にも御答弁をお願いしたいなと思いますが、第二次の景気対策が必要だと考えますか、どうでしょうか。すなわち、ここでただ前回の十兆七千億円の景気対策のような公共投資偏重の対策は私はとるべきでないと考えております。なぜならば、同対策に盛り込まれた公共事業費約五兆二千億円、用地費などを除いた国、地方の合計でありますが、このうち約三割に当たる一兆六千億円以上の支払いが九三年度に繰り越される見通しのようであります。政府は、野党の減税、赤字国債発行はけしからぬと与党の方はおっしゃっているようでありますが、去年二兆二千五百六十億円も建設国債を発行して、消化できないような公共投資をやっているのであれば、それはやはりちょっとかっこ悪いのではないでしょうか。やみくもに公共投資偏重というのは必ずしもいいとは言えない。  第二次景気対策を考える中で、私は十項目について、実はこのペーパーは政府委員にきのうお渡ししていますから、全部は読みません。タイトルだけ読みますが、第一は、公共投資の配分を根本的に変えること。第二は、学校や官公庁のOA化・ハイテク化の推進をすること。第三は、中小企業対策の強化を図ること。第四は、住宅対策の強化。第五、株価対策。第六、年金生活者対策。第七、不良債権土地買い取り支援政策。また、公共住宅などに使える土地があれば国や地方公共団体等に積極的に取得させるという方法。第八は、円高対策。第九は、輸入促進政策。第十は、余暇対策の充実。  これらのことを積極的に進めていかなければならないと思いますが、これについて通産大臣と経企庁長官、代表してお答えをいただければと思います。
  305. 森喜朗

    森国務大臣 今中野委員からお示しありましたのは、なぜか私どもの手には入っておりませんので、今お聞きしただけでございます。  御承知のように、今予算委員会でこうして遅くまで御熱心に御審議をいただいておりますのも、平成五年度の景気に配慮した予算を一日も早く通過させていただきたい、そして先回の補正予算に裏打ちをいたしました総合経済対策との間に切れ目のないようにしたいというのがまず私どもの一番の希望でございます。そのことによって景気の低迷が何とか動き出してほしいなというのが私どもの一番の希望でございます。  しかし、今通産省といたしましていろいろと生産財、資本財あるいは耐久消費財のいわゆる在庫調整というものを見ております。その指数も見ております。鉱工業指数も見ております。やや少しよくなったものもございますし、逆に堅調であったものがまた少しちょっと疑問を感ずるような動きがある。非常に微妙なところだと思っております。したがって、この一|三月というものの動きを私どもは重視をして、四|六で本当に底をついてくれるのかなという希望を持ちながらこの予算に大きなやはり一つの期待感を持っていることは事実でございます。  しかし、もちろん最終的に、今御質問がありました次のいわゆる景気対策というものを考えるのか。このことは最終的には総理が御判断をなさることだと思いますが、私どもやはり通商と産業政策をお預かりをしている官庁でございますので、もう既にどんなことがあっても常に次の手、次の手を打つように考えておくように、これは私は次官を初め企業庁長官にも命じております。  私は、昨年総合経済対策の基本といいましょうか、政府と協力してつくりましたときに党のその仕事に当たっておりましたから、そのあたりから絶えず公共事業のあり方というものについては私は個人的にいろいろとやはり疑問を持っておりました。確かに、公共事業を中心といいましてもどうしても土木事業が中心になってくる。ということになれば、やはり波及的効果というのはどうしても制限されるのではないかな。そういう意味では私は公共事業というものをもう少し、この時代時代にやっぱり大きな変化があるわけでございますから、先ほど中野さん具体的な御指摘がございましたような情報システムでありますとか、あるいは学校でありますとか大学病院でありますとか、そうしたところ、仮に整備をすればその中に当然医療機械等が必要になってくる。これなどは輸入拡大にもつながるということでもありますが、そうしたことも含めた新しい新社会資本というものでしょうか、これは私の個人的な持論なんですが、ぜひこういうことも含めてよく検討するように、これはやっぱり備えあれば憂いなしでありますから、これからの景気動向を見据えながらでありますが、通産省としてはそのことを十分に考え検討しておく必要があるということで指示をいたしております。  さらにもう一つは減税の問題でございますが、私はやはりその減税の論というのは、今自民党、また政府の中にもいろいろな論議がございます。財源というものは大きなものがございます。恐らく中野さんの政党も、恐らく公明党さんも社会党さんも皆さん赤字財源によって出すことがいいのか悪いのかという相当な私はやはり議論はあると思う。ほとんどの皆さんその議論を持っておられる。しかし、やはり私は問題は、いい悪いという論議はそれぞれの考え方だろうと思いますが、本当に最終需要の低迷を動かせる、惹起させていくだけの効果があるのかどうかということをよく私は考えておく必要があると思うのです。  あたかも今の景気は所得税減税をやれば必ずよくなるんだよという空気、そのことだけに者どうも目的を追い過ぎているのではないだろうか。本当に効果があるのかどうかということを私はやはり今よく考えてみる必要がある。  そういう意味では減税のあり方にもいろいろあると思う。これもまた当然財政当局も、総理自身もお考えのことだろうと思いますが、いろいろな、政策減税ともかみ合わせて考えていくということも一つの方法なのかもしれませんが、今は私どもはやはり政府の一員として減税ということを考えずに、まず私どもは今の予算を上げていただくことによる景気動向を注視していく。同時にまた、今申し上げたように、もしもということがあれば次にどういうことがあるだろうかということを今事務的に検討をしている、真剣に検討をしている、こういうことでございます。
  306. 船田元

    ○船田国務大臣 中野先生にお答えいたします。  もう既に通産大臣から子細にわたりまして御答弁がございまして、私もそのとおりであろうと思いますけれども、若干重複してない部分について御説明申し上げたいと思いますが、これまでの景気対策はどうも公共投資偏重ではないか、こういうことではございましたけれども、例えば昨年八月の総合経済対策にしても、あるいは今御審議をいただいている平成五年度の予算にしましても、確かに公共事業の推進ということが大きな柱ではありますが、もちろんそれだけではなくて、財投資金の積極的な活用によって住宅投資とか民間設備投資の促進を行う、あるいは中小企業対策等によって内需の拡大を図る、こういうこともございますし、また金融機関の不良資産問題への対応策など金融システムの安定性の確保のための施策、こういったこともやらせていただきたい、あるいはやらせていただいているということでございまして、単に公共投資に偏重しているということではないということは御理解いただきたいと思います。  また、公共投資につきまして、例えば建設技能労働者の過不足がどうなのか、ネックの問題でございますけれども、この建設技能労働者の不足率は二十二カ月連続で前年同月比で減少しているということなど、需給の緩和の動きは確かに続いておるわけでございます。その点では人手不足ということは建設関係では特にないということもあります。それから主要建設資材の価格も安定的に現在推移をしております。そういう面での、価格面でのネックということも特にないということでございます。もちろん、先ほど先生指摘のように若干の繰り越しがあるのではないかということは、あるいはそうかなと思っておりますけれども、今必死になって公共事業の、特にこの間の八月対策の中に盛り込まれた、特に補正予算が成立をしなければできなかった部分については今必死になって執行に移しているという状況でございますので、なおその努力を我々は続けなければいけない、このように思います。  なお、新たな対策ということでございますけれども、私どもとしては、現状、よく注意はしておりますけれども、まず平成五年度の予算を上げていただく、一日も早く上げていただくということが最大の景気対策であろうというふうに思います。  しかし同時に、経済というのは生き物でございますから、ここ数カ月の景気の動向を注意深く見守って、そして万が一ということがあればそれはやはり機動的に対応していく、そのことは決して怠ってはいけないな、こういう心づもりも、あるいは腹構えも持っている、このことだけは申し上げておきたいと思います。
  307. 中野寛成

    ○中野委員 若干の繰り越しがとおっしゃいましたが、決して若干ではありません。私どもの調査でもかなり膨大な繰り越しがある。これは、本来無理な計画を組んで、そしてそれを無理やり押し込んで、そして余りそうだから無理やりまた押し込むとむだが出てくるんですね。別にむだな使い方はしてほしくない。やっぱりきちっと堅実に使って、そして余るものは余らせる、恥を忍んで余らせる。そのことの方が健全な財政のためには必要なのでございますから、そのことを乱暴にはやらないでいただきたい、こう思います。  それから、通産大臣からは減税をやれば景気が回復するようなことをおっしゃるのはと言われましたけれども、前提条件を幾つか並べているわけで、公共投資だけではだめでしょう、減税も必要でしょうと申し上げているわけで、論理を途中からひっくり返さないように。わかってやっておられるのでしょうが、そのことはひとつ重ねて申し上げておきたいと思います。なお、時間が迫ってまいりましたので恐れ入ります。通産大臣、経企庁長官、結構でございます。ありがとうございました。  大変お待たせをして申しわけありませんでした。色覚異常対策についてお尋ねをいたします。文部大臣、労働大臣、厚生大臣、厚生大臣は特に一緒に取り組ませていただいた仲間だと思っておりますので、今度だけはいい御答弁がいただけるのではないかと期待をしながらお尋ねをしたいと思います。  色覚問題、これは色盲、色弱と通称言われます。この色覚異常者は、重ねて申し上げますが、大体全国で三百万人いると言われております。また、色覚遺伝子を持っている人が三百万人ないし五百万人と言われているわけでありまして、トータルいたしますと、約八百万ぐらいの方々にとっては心配なことなのです。このことが、皆これは先天的なものですから、自分がそうであるとかというのはほとんどおっしゃいませんし、どうしてもそういう団体ができて活発な運動をするということもありません。恐らく国会で、もう十年ぐらい前になりますが、私が取り上げたのが、そのとき恐らく皆さんが、初めてだという顔をされた方がいらっしゃいました。  私は今日まで文教委員会やこの予算委員会等でこの問題を取り上げてまいりました。そのおかげで平成元年三月に文部省がこういうパンフレットをつくってくださいました。これに大変御努力いただいたのはリクルート事件にひっかかっちゃった高石さんが大変熱心に取り組んでくださった、きっかけをつくってくださった記憶があります。「色覚問題に関する指導の手引」といって、これは大変専門の先生方のお集まりをつくっていただいて、調査研究をして、こんなすばらしいパンフレットをつくってくださったのですね。  この中にはとりわけ子供たちに対してどういう指導が必要か、どういう配慮が必要かということを詳しく書いていただいているのです。また、これだけ発行しただけではなくて、教科書の色分けを全部色覚異常者にもわかりやすいようにつくりかえてくださいました。このことについても文部省には感謝をしたいと思います。しかしながら、まだこのパンフレットを、いろいろな学校の先生に聞くと見たことないとおっしゃる方がいらっしゃるのです。僕は、すべての先生方にこれが行き届いているのかなと思ったら、どうもそうでもないようなのですね。文部省、どのくらいおつくりで、どういうふうにこれを活用をされているのか、そのことが一点。  それから、労働大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、このパンフレットの中に、こういう文章があるのですね。「企業等との相談の例」として、「求人条件に「色覚異常不可」とする鉄道会社に、色覚異常のある生徒が強く希望したため、とりあえず会社を見学に行かせたところ、生徒の熱意にうたれ、会社側では業務に支障のない職場を考慮してくれて入社することができた。」という例が入っているのですね。ところが、この色覚異常不可と最初から採用条件に書いている企業はまだしも良心的なのです。これを書いていなくて、健康診断書に書いてあるのを見て採用をはねてしまうという企業が今でも何と多いことか。理由がわからないままに不採用にされた子供たちがやっぱりいるのです。  実際に、確かに、例えば私の例で言えば、赤と緑がどちらもその区別がしにくくて、どちらも極端に言えばグレーに見える。ですから、私の場合には自動車の運転免許証は危ないから取らない方がいいということで私は免許証を持っていない。ツバキの花が五メートル離れると葉っぱと花とどこにあるのかわからない。近づいて見れば形でわかります。そういうことは全部この中に、文部省がつくった資料の中に書いてくださっている。  一番つらいのは、ここで一生懸命総理大臣に質問しても、総理大臣がイエスかノーか、どっちの答えをしようとしているのかな、顔色がわからぬ。このくらいは何とでも調整できますけれども、やっぱりこういう採用条件にどういう企業がどういう条件をつけているか、また実際は、今いい方の例を文部省は挙げていただいておりますが、これが悪い方の例があると何にも書かないではねているということになってしまう。そういう実態調査を、中小企業の場合は人手不足ですから、逆に言えばある意味では緩和して採用してくださるかもしれないですよ。大企業の方がかえってこういう問題についてはたちが悪い。いろいろな理由をつけて採用しない。  私は、例えば電車の信号は見分けにくいからそういう人はだめですということをもし認めたとしましょう。しかし、私に言わせれば、その信号はいずれ償却するのでしょう。ならば、償却するときに色覚異常者でもわかる信号に順番にかえていったら、全部償却する、十年か十五年か知らぬけれども、そのときには色覚異常者でも運転士として採用される環境が生まれるのではありませんか。一気に全部かえろと言われたって、それは膨大な費用がかかりますからかえられません。しかし、いずれはかえるのです。かえるときに色覚異常者にもわかる信号にかえたらどうでしょうか。  幸い警察庁等の御努力によって自動車の運転免許証がこれを理由にして不交付になることは最近はなくなったようです。でも、名古屋で開かれた先年のデザイン博でこのことにやはり着目された方がいらっしゃって、あの信号機に丸、三角、バツをくっつけたデザインを発表された方がいらっしゃいました。全国の交通信号をそういうふうに、償却するときにかえていったらどうでしょうか。いずれの日か色覚異常者も不便を感じなくて済むときが来るでしょう。努力を前向きにするということが必要だと思います。  それから、厚生大臣に、もう聞くまでもないと思いますが、このことについて私も厚生省には幾たびか申し上げました。平成元年にこういう内々の色覚異常対策についてペーパーをくださいました。内容は厚生省にとっても不都合な部分があると思いますから申し上げませんが、ただ、日本眼科学会の内部には色覚異常研究班があって、当該治療法、いろいろな治療法が今言われておりますので、研究している模様だ、しかし、結論が当時出ていなかった、ただ、眼科学者が過敏になっておって、詳しい情報収集が困難だ、しかしながら、厚生省の依頼があれば、眼科学会として何らかの形で当該治療法に関する研究を行う可能性があるとの感触を得ている、鋭意交渉中だというぺーパーをいただきました。しかし、その後何の御連絡も御報告もありません。  民間で、色覚異常が治りますという宣伝をしたり、または大々的に宣伝をしなくても治るよと言っていろいろな方法で治療をされている研究所と称する場所などもあるようです。私は、効果があるのならばそれを研究し、積極的に教育機関でもPRし、子供たちに治るように全部適用させてやったらどうでしょうか。保険でも適用したらどうでしょうか。もしこれが治らない、インチキならば、これは詐欺ですからしっかりと取り締まったらどうでしょうか。中途半端に置くというのは罪つくりです。治るのならもっと率先して、文部省でも厚生省でも推奨してあげてください。治らないのならインチキですから、やめさせてください。どっちかはっきりしていただきたい、そう思うわけであります。  時間の都合でまとめて御質問申し上げましたが、文部、労働、厚生、三大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  308. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 先生指摘のこれでございますが、これは平成元年の三月に刊行いたしました。十万部印刷いたしまして、全国のすべての小中高等学校に二部ずつ配ったのでございます。そして、文部省主催の全国レベルの会議でも参加者にさもに配付いたしまして、手引書の活用と各学校教員への趣旨の徹底を図るように指導してまいったわけでございます。  都道府県におきます教員研修会の講座などにおきましては、この手引書を使用いたしまして色覚異常の児童生徒に対する指導等について研修を実施しているという報告も受けておりますが、まだ見たことないという先生がいらっしゃるということで、さらに一人に一つずつあればなお結構なんですけれども、残念ながらこれも余りお安くないものですから、にわかに全部というわけにもちょっとまいりません。仮に全教員百二十万人に一冊ずつ配付するとなりますと一億円近いお金がかかるということで、急には無理かと思われますので、一つの方法といたしまして、この「指導の手引」の中からそのときそのときに必要な基本的な部分のエッセンスなどを特別に取り出して、そしてそれをさらに広く配付するというようなことは考えられるかなというふうに思っております。  いずれにいたしましても、色覚異常の子供たちも非常に一人一人が大事な個性を持ったかけがえのない子供たちであるという人間尊重の考え方に立ちまして指導を行っていきたいと考えております。
  309. 村上正邦

    ○村上国務大臣 色覚異常者の中には、仕事の内容から見てその仕事についてもさほど問題ないと思われるにもかかわらず、就職を拒否される例もあると聞いています。このようなことはまことに残念なことであると考えます。聞くところによりますと、印刷だとか出版などの業種においては、募集の際に、募集の条件としてこのような色覚異常者を不可としているところが多いようであります。  このため、労働省といたしましては、こうした色覚異常者の職業上の諸問題について実態をおっしゃるように調査いたしまして、求人者に適切な採用選考が行われますよう啓蒙、指導に努めてまいりたい、こう考えております。
  310. 丹羽清之助

    丹羽国務大臣 私は中野先生のもとでこの問題について勉強さしていただいた経験を持つ者でございますが、先生、もう私から申し上げるまでもなく、この原因というのが率直のところまだ究明されておりません。したがいまして、治療方法もございませんので、私どもといたしましては保険の適用はいたしません。これ、断言申し上げます。  ただ、厚生省といたしましては、何とか基礎的な研究をしていきたい、こういうことで、平成元年度から基礎研究を始めておるわけでございまして、その中で中枢神経機構、これに非常に密接に関連がある、こういうような効果も出ておるわけでございますので、引き続きこの問題につきまして誠意を持って取り組んでいきたいと思っております。  また、関係団体とも、御指摘のようなお話がございましたものですから、早急に連絡をとりまして対処していきたい、こういう決意でございます。
  311. 中野寛成

    ○中野委員 文部大臣から何しろお安くないのでということでございますが、実はそのパンフレット、大変効果を発揮している、有効に活用されていると思うのですよ。中身も大変、私が読みましても、よくここまで研究をしてくださった、私の体験に照らし合わせても納得できるところが多いのです。私は、せっかくのものですから、一億円とおっしゃいましたが、私、一億円てそんなにもったいないんでしょうか。八百万人の人たちが心配しているのです。今、色盲、色弱者、色覚異常者が三百万人としても、その人たちのために一億円投ずることがそんなにもったいないのでしょうか。私はとてもそうは思えません。正直言って情けないです。私はもっと、本当は何十億かかけてもおかしくない。別に身体障害者の方々と比べようとは思いません。思いませんけれども、そのためにつき込まれている費用と考えてください、人数も含めて。そういうふうに考えると、別に文部省だけを責めるつもりはありませんけれども、しかし、考え方を変えていただきたいと思います。  また、労働大臣は、せっかく調査をするとおっしゃっていただきました。実は、その調査を今ほどはっきりとお答えになった労働大臣、初めてです。やはり情に厚い正義漢の村上労働大臣であればこそ、こう思います。ぜひともその調査を早急にできるだけ広範にしていただいて、その結果を御報告し、また、足らざるは是正をしていただきたい、心からお願いを申し上げます。  また、平成元年からやっと厚生省が基礎研究に入ったとおっしゃられました。厚生省が研究に入ったという言葉を聞くこと自体実は初めてですが、実はそれまでは厚生省は、本当は、これは遺伝子に基づくものですね、先天的なものですわ、治るはずはないという前提で決めつけておったでしょう。しかし、やっぱり科学技術の問題や医術の問題やいろいろ研究していく中で、単に眼科の問題としてではなくて、遺伝学会にも協力を求めなければいけないでしょうし、いろいろな視点から研究することによってこの問題の真相を突きとめることができると思うのですね。これはなかなか学者に自主的にやってくださいと言ったってそう簡単に取り組んでくれる問題ではないのです。これこそ役所が積極的に進めていただかない限りこの問題は前向きに解決いたしません。そのことをぜひとも御理解をいただいて、積極的な御努力をいただきたいと思う次第であります。  どうですか、一億円という数字が出てしまいましたが、それは別にいたしまして、この問題の大きさ、深刻さをひとつ大蔵大臣代理としての総理大臣も御認識をいただいて、今後の|広範な、いろいろな役所に関係するのです、実は。運輸省にも関係をいたしますし、そして自治省にも関係をいたしますし、ほとんど全部の役所に関係する問題だと思うのです。総理から最後に一言御所見をお述べいただきたいと思います。
  312. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 よくお話を承りましてわかりました。事務当局にも御指摘の点は十分検討をするように申しておきます。
  313. 中野寛成

    ○中野委員 最後に一言だけ。  ただ、私をごらんいただければわかりますように、日常生活、また日ごろの仕事に何ら差し支えがあるものではないということだけは——変にこれがとても障害があるような印象を持たれますとかえってそれは余計な認識と差別を生みます。そうではなくて、むしろこの色覚異常に対する過度の偏見が差別を生んでいるということをむしろ御認識いただいて対策を講じていただきたい、そのことを念のために申し上げておきたいと思います。ありがとうございました。
  314. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る三月一日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時八分散会