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1993-02-19 第126回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月十九日(金曜日)     午前十時十七分開議  出席委員    委員長 粕谷  茂君     理事 石川 要三君  理事 小杉  隆君     理事 鴻池 祥肇君  理事 佐藤 信二君     理事 中川 昭一君        相沢 英之君     愛野興一郎君        粟屋 敏信君     臼井日出男君        衛藤征士郎君     越智 通雄君        大石 千八君     大野 功統君        岡島 正之君     唐沢俊二郎君        久間 章生君     久野統一郎君        倉成  正君     関谷 勝嗣君        高鳥  修君     戸井田三郎君        中山 太郎君     浜田 幸一君        松永  光君     松本 十郎君        宮里 松正君     村山 達雄君        柳沢 伯夫君     綿貫 民輔君  出席国務大臣        大 蔵 大 臣 林  義郎君        労 働 大 臣 村上 正邦君  出席政府委員        経済企画庁調整 長瀬 要石君        局長        経済企画庁調査 土志田征一君        局長        外務省経済局長 小倉 和夫君        外務省経済局次 林   暘君        長        大蔵大臣官房総 日高 壮平君        務審議官        大蔵省主計局長 斎藤 次郎君        大蔵省主税局長 濱本 英輔君        大蔵省証券局長 小川  是君        大蔵省銀行局長 寺村 信行君        大蔵省国際金融 中平 幸典君        局長        厚生大臣官房総 瀬田 公和君        務審議官        通商産業省通商 岡松壯三郎君        政策局長        通商産業省通商 森清 圀生君        政策局次長        通商産業省貿易 渡辺  修君        局長        中小企業庁長官 関   收君        労働大臣官房長 七瀬 時雄君        労働省労政局長 若林 之矩君        労働省労働基準 石岡慎太郎君        局長        労働省職業安定 齋藤 邦彦君        局長        自治省財政局長 湯浅 利夫君  委員外出席者        参  考  人 三重野 康君        (日本銀行総裁)        予算委員会調査 堀口 一郎君        室長     ————————————— 委員の異動 二月十九日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     岡島 正之君   内海 英男君     関谷 勝嗣君   唐沢俊二郎君     久野統一郎君   原田  憲君     久間 章生君   松永  光君     大野 功統君   柳沢 伯夫君     宮里 松正君 同日  辞任         補欠選任   大野 功統君     松永  光君   岡島 正之君     石原慎太郎君   久間 章生君     原田  憲君   久野統一郎君     唐沢俊二郎君   関谷 勝嗣君     内海 英男君   宮里 松正君     柳沢 伯夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成五年度一般会計予算  平成五年度特別会計予算  平成五年度政府関係機関予算      —————◇—————
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  開会に先立ちまして、日本社会党護憲民主連合、公明党・国民会議日本共産党及び民社党それぞれの所属委員に対しまして、与党の理事及び事務局をして御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。  平成五年度一般会計予算平成五年度特別会計予算平成五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、これを許します。越智通雄君。
  3. 越智通雄

    越智(通)委員 粕谷委員長と私とは、昭和四十七年十二月の選挙で初当選さしていただきました。以来二十年の歳月がたちましたが、粕谷委員長には、予算委員長として大変御苦労していただいているのを心から敬意を表する次第であります。  あのころは一年生議員でも自民党に随分質問の時間というかチャンスを与えてくれたように記憶いたしておりまして、一年間でいろいろな委員会で七回立たしていただいた覚えがあります。もちろん予算委員会では無理でございましたけれども、たしかこの場で、国鉄運賃の値上げに関する連合審査で、大蔵委員として質問をさしていただいたのを鮮やかに記憶いたしております。先輩から諭されまして、議員となった以上、委員会が開かれれば必ず出席するように、そして質問機会があれば名のり出て質問をさしてもらえ、それが勉強のゆえんである、そして一人前の議員にやっと育っていくんだから怠るのではないぞと強く諭されたものでございます。しかし、それだけの時間、いろいろやらしていただきました。昨年もこの予算委員会経済問題の集中審議のときに、ここで宮澤総理、また当時の羽田蔵相と、例えばノンバンクの問題とかBIS規制とか、当時まだ余り意識されてない問題について議論をさしていただきました。後で野党の先生から、自民党にしては相当あなたは厳しくやるねと、褒められたのかからかわれたのか知りませんが、覚えております。しかし、野党議員のいないところで質問するのはきょうが初めてであります。  議員が、本会議で適正に選ばれた委員長、その委員長が決められた委員会が開催されているにもかかわらず、全然出てこない。これは私は大変な、何と申しますか、義務違反だと思います。まあ辞表を出したり引っ込めたり、あるいは人に笑われるような牛歩をやったりする方々もいらっしゃいますけれども、しかし、今一番経済の問題が大事なんです。  きのうのクリントンさんの演説を聞いていても、ほかは何にもしゃべらなかった、数十分間の演説すべてが経済であった。どこの国も今、世界経済の中で、経済の問題、それも自国の経済だけでない、世界経済に対する寄与というか責任という意味で深刻に議論している。その予算委員会に、ほかの佐川急便の問題その他のことをひっ絡めて、出てこない。予算人質にとらないとたし か前には言った人もいたと思うのですけれども、明らかにこれは予算人質にとっているじゃありませんか。私は非常に遺憾に思います。ぜひこうしたことを国民の皆様にわかっていただきたいし、また、野党議員諸君にも心を入れかえてもらいたい。個々に会うとかなりしっかりした、物のわかった人もいるのですが、どうして集団となるとあのように非常識な行動をとるのでしょうか。ぜひ、委員長を初め理事諸兄の御努力によって、野党議員も入っているところでさらに審議を真剣、深刻に続けさせていただきたいと、まず心から冒頭にお願いしておく次第であります。  実は質問予告をしていないことから始めて大変申しわけないのでありますが、今申し上げましたクリントン大統領演説、私は、いろいろなことをテレビを通じて、あるいはけさの新聞を通じて知ったという程度ではございますけれども大変感銘を受けております。林大蔵大臣はこの間ベンツェン財務長官にお会いに行かれました、二月の十三日でございますか。実はその一週間ほど前、私も二月の四日に上下両院合同祈祷朝食会に参列するためワシントンに行かせていただきました。幸いにして朝食会の前にクリントン大統領夫妻、ゴア副大統領夫妻と握手をし、就任のお喜びを申し上げる機会を得ました。若々しい、そして輝きのある政治家だと思いました。そして、その後の一時間ほどの朝食会間じゅう、壇上のこの方々を咫尺の間というかまさに目の当たりに観察をいたしました。そして、そのスピーチを聞いて、なるほど、これだけのアメリカ国民の心を得るにふさわしい魅力のある人だなということを痛感したわけであります。  クリントン大統領政権の発足に当たっては、いろいろと不安材料があるような報道もなされております。私は大統領がシカゴで市民対話から始めたのにちょっと驚きました。行政の長として議会に対する演説の前に市民集会に出られて意見を述べられているのはちょっとどうかなと思いましたし、また、その後大統領執務室からテレビ報道をされました。これも何かパフォーマンスという感じもするなと思いましたが、きのうになってやっとわかりました。あれだけの大演説をぶついわば前ぶれとしてそうした手順を踏んだのでございましょう。そうだとすれば相当に、言い方が失礼かもしれませんが、したたかな計算をして事に臨まれたな、こう思ったわけであります。  数十分の演説の間、何遍も上下両院方々拍手を送ったようであります。最後に立ち上がって拍手をしている上下両院議長の姿が写真に載っております。フォーリー下院議長とは私、ワシントンでよく御懇談いたしましたし、また、ついこの間日本に来られたときにもお目にかかりました。たまたま同い年でございますけれども向こうは十二回当選、今二十五年目の議員をされている方です。フォーリーさんからいえば、クリントンさんは日本流に言うと一回り半ぐらい若いわけですけれども、驚きと尊敬とそして期待を込めてクリントンさんのことを語っていたし、あの写真のところに写っている彼の顔も、心から民主党の長老として現大統領に声援を送っているという感じがいたしました。それは単に演説がうまいとか、手順、段どりがすぐれているということではなくて、それだけではなくて、あの中身が人をして引きつけるものを持っていたからだと思います。増税あり減税あり、歳出カットあり歳出増あり、そして最もびっくりしたのは思い切った増税であえて打って出た。日本マスコミ等はかけだと言っております、ギャンブルという意味のかけだと。そうかもしれません。しかし、町の反響は結構いいように報道されております。  それに比べると日本の場合には、財政をどうしようという大きな構想、長期のビジョンが十分聞こえてこないうらみが多いと思います。クリントンさんの演説を聞かれまして、林蔵相、どのような御所見を持っていらっしゃるか、お伺いさせていただきたいと思います。     〔委員長退席鴻池委員長代理着席
  4. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 クリントン大統領演説は、二月十七日午後九時、日本時間では十八日の午前十一時から上下両院合同会議演説をされたのでありまして、私もその時間に聞こう、こう思っておりましたが、残念ながら、国会の方であちらこちら行っておりましたので聞き漏らしたのは残念でございますが、あの後で内容は読まさせていただきました。  今、越智議員お話ありましたように、越智議員クリントンさんにこの前行かれてお会いになられました。私も一月に、この前ベンツェン財務長官に会ったときに、お話ベンツェンさんだけとしようと思ったのですが、ベンツェンさんから大統領にもちょっと会っていったらと、こういうことでお話をする機会を持たせていただきました。まだそのときには内容ははっきりしておりませんでしたが、御指摘のありましたように、私は、大変な大きなパッケージで問題を提起しようとしておる。まさにアメリカ再生を目指してやっておられる方向だろうと思いますし、大変大胆な私は提案だろう、こう思っています。そうした意味で、お話がありましたように、増税もあれば減税もある、カットもあれば増加もある、いろいろな点が含まれておりますが、方向づけをしているというのは私は大変立派なことだと思いますし、選挙で戦ってこられた後でありますから、勇気を持って私はやっていくと。  特に私が感銘いたしましたのは、アメリカ国民に犠牲を強いてまでやっていかなければならないという政治家勇気というのはやはり大いに評価しなければならないものだろう、私はこう思っておるところでございます。そういった意味では大変格調の高い演説だったと私は思います。日本新聞その他にもいろいろな批判はありますけれども、私はやはりこうした形でアメリカ再生をしていく、新しい方向づけをやっていく方向が出て、それで皆さん方が、それはいろいろ議論はあるでしょう。私は、議論をされた上で、やはりそういった大きな方向へ向かっていくことを心から期待をいたしておりますし、大きな方向としては大変立派なことじゃないかな、こう思っておるところであります。  それは、私はクリントンに会ったときに、まず大変立派な選挙をやりましたということの話をいたしました。と同時に、一つ私の方からお願いをしたいのは、やはりアメリカは強くなってもらわなくちゃならない。向こうから、日米協調でやっていこう、こういうふうな話がありました。日米協調も、私たちも一生懸命やるつもりでありますが、それよりやはりアメリカが強くなってもらうということが必要ではないか、国際競争力を強化してもらうことが私は必要だろう、こう思います。そういった方向をとってもらいたい。  もう一つ申し上げますならば、ドルが健全な通貨であってもらいたいということを私は申し上げたんです。それは一つには、健全な通貨というものはインフレーションなき状況でなければならない。単に国際的な価値がどうだこうだということでなくて、まさに通貨として国内的にも対外的にもその価値が安定したものである。それはやはり言うまでもありません、再生の問題について節度を持ってやるということが必要である。今まで長いことアメリカ財政赤字に悩んでこられたわけであります。毎年毎年やろうということがなかなかできなかったということも事実であります。そういったことに対して勇気を持って取り組んでいかれるという姿勢を私は大変評価しておりましたし、また、そういったことを特に申し上げたところであります。  したがって、アメリカがそういった形でやられるということでありますが、今すぐに日本がどうだという話は、私は正直言ってすぐになかなか出てこないんだろうと思う。まず内政をどうしていくかというのがアメリカにとりまして私は大変なことだと思いますが、そうした意味で、世界の第一の経済国であるアメリカと第二の経済国であるところの日本とが相協力して、やはり世界経済の発展に協力していかなければならない。私は、こういったアメリカをもろ手を挙げて歓迎いたした い、こういった気持ちであることを申し上げておきたいと思います。
  5. 越智通雄

    越智(通)委員 さすが林大臣、私と全く考え方は同じでございます。まあ個人的に言えば、私が一高の一年生のときの三年生、輝ける先輩でございました。以来御尊敬申し上げておりますので、ぜひきょうも私と一問一答のつもりで、御本人でお答えいただきたいと思います。  今のアメリカに対する考え方は私も全く同じでございまして、行ったときに、いわゆる双子の赤字アメリカ財政赤字国際収支赤字とどっちをとるかという言い方じゃありませんが、どっちにウエートが置かれているかなと思ったときに、やはりクリントン政権はまず財政赤字、こういう印象で私も帰ってきました。そして、やはりそうだったなと今思っているわけであります。  そして、さらにすごいなと思うのは、これだけの演説をして、あしたからというか何か知りませんが、遊説が始まるんですね。全閣僚があのアメリカの広い地域に飛ぶんですね。そして、大統領の提案した財政再建策というか経済再建策というものを国民に訴えていく、説得していく。これはやはり見習うべきというか、私どもとしては十分考えなきゃならぬ政治のあり方だ、こう思うんです。  かって私は日米協会日本にございます日米協会で、アメリカ経済痛み日本経済痛みと考えると言いましたら、大変在日アメリカ人に評価されました。そういう思いでやってほしい。そのかわり日本の困っていることは、一高の寮歌じゃありませんが、「友の憂いに吾は泣き」ですよ。そういう意味で、日本の困っているときはアメリカも一緒になって悩んでくれよということを申し上げました。そういう気持ちでこれからやはり日米経済協力というのをやっていかなきゃならない、こんなふうに思っております。  しかし、今申し上げたように、日本が、じゃ同じように遊説をするというにしては、やはり日本財政をどうするんだという構想が十分でない。かつて大蔵省のにしきの御旗は、赤字公債なくすんですということでした。これは何遍も何年までにと言いながら、志を得ずして十五年間続いたわけでありますね。毎年大蔵委員会で、これは特例だよ、これはもう五年もたてば返すんだよ、いや十年だよと言いながらやってきたわけであります。それじゃ今の財政は何がにしきの御旗なんですか。何をもってするか。財政の現状は依然として硬直化しているんじゃないんでしょうか。財政は百八十何兆という国債をしょっているわけです。赤字公債は出さなくて、建設公債なら何ぼ出してもいいという話ではない。それならば、いつまでにどうするということを宮澤内閣として、林蔵相として国民に何とお訴えしていくのか、御所見があれば承りたいと思います。
  6. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 大変財政状況が厳しいということは、私から御指摘するまでもありません。議員はよく御承知でありますし、五十八年以来の大変な税収の落ち込みを来しておるのも事実でありますし、そうしたことをどう回復をしていくか。そのために昨年の夏から総合経済対策をやってまいりました。その前には、三月に緊急経済対策をやってまいりました。そうしたものの流れの一環といたしまして、今回は、平成五年度については景気に配慮をした予算をつくってやっていこう、こういうふうな形でやってきたわけでございます。  御指摘のように、大変な公債の累増があります。だから、建設国債といえどもその例外でないということは私も御指摘のとおりだ、こう思いますが、そうした中で景気を当面回復していくということのために、やはり公共事業をふやしていかなければならない。もちろんそういった建設国債を使うというところだけではありません。財政投融資の問題、地方単独事業の問題、そういったものをひっくるめて政府のやる仕事は精いっぱいふやしていこう。昨年やりました補正とあわせまして、平成五年度におきましては、政府のいわゆるIGというやつが九・五%にもなる、災害を入れると一一・八%にもなる、こういうふうな大きな形でもってやっていこう、こういうことで当面の景気対策をやっていくつもりであります。  と同時に、私は、やはり財政というのはバランスをとっていかなければならない。中期財政目標という形で別途資料はお出ししておりますけれども、なかなか難しい話である。全体として五%程度のものに国債を抑えていかなければならないという話でありますし、少なくとも残高が累増しないようなことを考えていくということはどうしても必要なことだろう。こういった形でお出ししていますが、この道だってそう簡単にやれる話ではありません。また、安易な財政でやっていくならば、必ず子供や孫たち負担を残していく、そういったことを今の時代にすべきではないだろう。私たちの子や孫の時代ということになりましたならば、恐らくや高齢化社会になりまして、若い働き手がない。そのときにお年寄りの負担をだれがするかということになれば、そのときの若い人たち負担をしなければならない。そんな時代に、我々の今の時代がますます負担になるようなことをするのはどうかなという私は気持ちを持って、今の財政をやっていかなければならないものだろう、こういうふうに考えているところであります。  大きな何かデッサンを描け、こういうふうなお話でありますが、私もそういったことが必要だろうと思います。それは、だけれども、今申し上げました高齢化社会にどう取り組んでいくか、こういうふうな問題、それから当面景気を一体どうしていくかという問題、諸問題ありますので、そういった方向づけ政府としても自民党と一体になってやっていかなければならないものだろうと思っておるところでございます。
  7. 越智通雄

    越智(通)委員 蔵相のお考えというか宮澤内閣姿勢をやはり国民にもっとクリアな格好で訴えるという政治が必要だ、こう思うんです。  この予算委員会中期財政計画というのを出すようになりました。昔は審議の途中でやっと出てくるぐらい。最近はこの予算委員会審議始まりと同時に、既にことしも出ていますのでも、余り皆さんはこの議論をされませんというか、大変失礼な言い方ですが、余り信用しておらぬのでございますよ。よく読むと、希望が出てこないんですね。国債の利子はずっとふえていく計算をしているわけですよ、実際には、いつも足らないという計算だけ書いてあるわけです。収入はこのくらいになるんじゃないかな、支出もこのくらいふえるだろうな、このくらい足んないよ、足んないよという見通し論なんですね。見通しも必要だけれども政策目標ももっとあるべきじゃないかと思うのです。最初、出せ、出さないという大議論をしていたのはもう二十年ぐらい前になりますか、そのころはまだこの中期展望政府意思決定みたいな意味がありましてかなり議論されたんじゃないかと思うんですが、私は、この紙が出ているから平成五年度予算だけ審議しているんじゃない、長い展望の上で今ことしの分を、五年度分を議論しているんだという格好はついているかもしれませんが、実質上の意味が余り出てないんじゃないかな、これはぜひ一遍お考えいただきたい、こう思っております。  あとちょっとの間、政府委員にいろいろ細かいことを伺わしていただきたいと思うのです。  まず第一に主税局長にお伺いしますが、平成四年度の税収というのは、減額補正としては最近になく大きかったわけですね。四兆円補正したのは、減額したのは余り今まで例はないと思っております。それで、減額した年に起こりがちですけれども、減額したけれどもまだそこまでいかなかったという事態にならないかどうか。減額するときに、余りでっかく減額できないものだから、まあこの程度でおさめるかというので、四兆減るでしょうと計算しておいたら五兆減っちゃったといったら大変ですね。  今現在、平成四年度の税収はどのぐらいの収納率で、出納整理期間が終わって帳簿が締まると き、ちゃんと黒になりますか、とんとんになりますか。平成三年のときも危ないな、危ないなと言いながら、あれで幾らでございましたか、二千億だか三千億だか黒になりました。平成四年度の税収見通し主税局長からお伺いしたいと思います。
  8. 濱本英輔

    濱本政府委員 お答えを申し上げます。  平成四年度分の税収見通してございますけれども、一番直近の実績といたしまして十二月分、昨年の十二月分税収が明らかになりました。  十二月分実績によりますと、この月分といたしましては、対前年同月に対しまして一三・一%の高い伸びになっておりました。その理由は、この年の特殊要因でございますけれども相続税につきましての新規相続分が入ってきたこと、あるいは地価税収が収納されたことということがかかわっておると思います。この結果、補正予算伸率に対しまして十二月までの累計の伸率が接近いたしまして、その姿を見ます限り、補正予算の見積もりで想定しております税収動向の基調に大きな変化はないと今観察できると思います。  先ほど収納率お話がございましたけれども進捗割合で、十二月終わりましたところで五三・一%でございますから、何と申しましても平成四年度どうなるかというのはこれからでございまして、やはり春の確定申告とそれから三月期の決算法人の行方、これを私どもは注意深く見守っておるところでございます。  現在の状況はそういうことでございます。
  9. 越智通雄

    越智(通)委員 心配していますのは、減額補正の主たる要因法人税の減収でありました。法人はその後もっときつくなってきたんじゃないかな、こういう心配があります。また、申告所得の方は、今申告期間が始まったわけです。税理士さんたちの意見を聞くと、譲渡所得を申告する人が余りいない、ほとんどない、土地が売れてないのですから。ですから、思いのほかに申告所得税が伸びないんじゃないか、あるいは縮んじゃうんじゃないか。もちろん源泉の方も、ボーナスは思ったより悪かったんでしょう。そしてその後において、後ほどお伺いしたいと思いますが、雇用状況がこうだとすると、源泉所得税の方も伸び悩んできたらば大丈夫ですかという懸念があるので今聞いたわけでありますのでも、今以上のお答えはこの段階では無理でしょう。  だとすると、主税局長平成五年度の税収、これは平成四年度の税収と同じだと言うけれども、それは、六十一兆とか六十二兆は当初予算ベースで同じなんであって、補正後に比べれば四兆何がしかふえる計算していますね。そんなにうまく平成五年度の税収はふえると責任を持ってお答えできますか、お伺いいたします。
  10. 濱本英輔

    濱本政府委員 御指摘がございました平成五年度の税収見積もりでございますが、例年と同様に、政府経済見通しの諸指標をもとにいたしまして、個別税目ごとに積み上げを行いまして、これに税制改正によります増収見込み額千億強を織り込みまして、六十一兆三千三十億とさせていただいておるところでございます。  この六十一兆三千三十億という数字の感じでございますけれども平成三年度の当初予算が六十一兆七千七百億、平成四年度の当初予算が六十二兆五千四十億でございますので、この五年度、現行法に基づきます当初予算のレベル、ただいま六十一兆三千三十億と申しましたものの中から増収分を引きました六十一兆一千九百六十億というレベルは、控え目なレベルであるという感じがいたすわけでございます。  越智先生のただいまのお尋ねは、当初予算ではそうであろうが、補正予算と比べると相当伸びておるが、四年度の補正予算、つまり五十七兆六千三百十億円からの伸びというものは大丈夫であるかというお尋ねであろうかと存じます。これは先ほど申し上げましたように、当初予算政府経済見通しに依存しておりますが、政府経済見通しに依存すると申します場合に、経済見通しをもとにして計算し、かつ税制特有のいろいろな経済を受けての収納の度合いというものを見積もるわけでございますけれども、そのでき上がりました姿全体をGNP弾性値において比較してみますと、たまたまこの五年度の税収のGNP弾性値は、過去の平均的な弾性値でございます一・一程度ということになっております。  一・一程度という弾性値は平均的なものであって、おまえ大丈夫かとさらにお尋ねがあるような気がいたしますけれども、こういう局面、非常に難しいことではございますが、ややもいたしますと、景気が勢いをなくしておる、明らかになくしておるという局面で税収見積もりをいたしますときには慎重になると申しますか、これは当然のことだとは思いますけれども、さっきちょっと越智先生から御指摘がございました、過去にもそういう減額補正をしたという実績、これはございますけれども景気が悪くなり減額補正をする、しかし実際はその補正を逆転いたしまして収納が割合伸びるということもございます。それは、悪くなったところから回復に向かいましたときには弾性値が割合高くなるということがございます。そういうことも込めて、期待も込めて五年度を見ておるわけでございまして、私どもはこれが適正な見積もりであるというふうに考えております。
  11. 越智通雄

    越智(通)委員 税収はかねてから、積み上げ計算のやり方とマクロの計算経済成長率に弾性値を掛けて計算する両方からやって、おおむね合うところが結論だと感じておりますが、もしマクロの計算だけだとすると、三・三%の経済成長率が狂ったときはもろにかぶるわけでございますよ。  経済成長率というのを、昭和三十年から三十九年間、政府が何と言って、実際はどうだったかという勉強をしたことがあります。たまたま私が経企庁長官を平成三年度にさせていただきましたときは、三・八と言ったら三・五、あるいは訂正して三・四になったかもしれませんが、コンマ五未満の変化というか見違いですね、上にしても下にしても。これは実は数少ないのですよ。三十八回のケースの中で五回しかない。そして、かつてのころ、かつてというのは昭和三十年代、四十年代は大体上にはねたのですよ。七%と思ったら一〇%いっちゃった、こういう話でございましてね。  ところが、昭和四十年代の真ん中辺から、正式にいえば昭和四十五年ごろから、たまたま私が「転換期の財政」という本を書いたころに感じたのですが、危ないなと思い出した。あらゆる歳出が税収にはね返ってくる方にいっているのと、それには関係ない方にいった場合には、弾性値は相当変わるのです。百億の金で道路をつくって生産効率が上がるようにしてというような話と、百億のお金を、まあ大変御無礼な言い方ですけれども、何かこう、医療保障とか何かに使っちゃいますと、はね返りが違うのです、税収に対するはね返りが。ですから、四十五年以降は下に狂った例が多いのです。昭和五十年代は十年のうちで八回下へ狂っているのですよ。ですから、今度も三・三というのを、いろいろ御議論あると思いますけれども、大きく狂ってくれなきゃいいがなあと非常に心配しているのです。  ですから、そこにいきなり弾性値を掛けてやっているとすれば、私の今申し上げたような下に狂う危険というのは依然として残っている。そのときに一番心配なのは、林蔵相、秋になってどう手当てするかということです、それを。どう手当てをするか。大変なんですよね。大きな減額が出てきた場合に、税収見積もりに下へ向かっての狂いが出たときに、どういう格好財政を運営していくか。  今盛んに減税の話が出ております。きょうは時間がないので減税論には入りません。しかし、その財源として赤字公債その他がありますけれども、その議論もきょうは時間がないからいたしませんけれども、そんなことよりも今の予算平成五年度の予算、執行できなくなったら大変だという意味で今申し上げているのです。  ですから、逆に言うと、よほど景気が早くピッ クアップしないとだめなんですよ。いずれ待ってという話じゃないのですね。物すごく急いでいると思います。これはやはり景気をいち早くよくして、計算したような経済成長率を達成して、その上で税収も確保していかないと、この秋が財政当局としてはピンチになりますよと、なるかどうかわからない、なるかもしれませんよという懸念を、心配性な発言かもしれませんが申し上げているわけです。  その場合に、対策をどうするかの前に、やはりクリントンさんじゃありませんけれども、歳出をもう一遍よく将来に向かって検討しておかなきゃならない。七十兆の予算の中で、一項目で十兆超しているのは三つでございましょう。国債費と地方財政社会保障と、これがまあいわば横綱三人で七十兆の半分を使っているわけでしょう。この三つの大きな項目について将来計画をきちっとおっしゃらなきゃいけないのじゃないか。  順番が通告と逆になりますけれども、厚生省お見えになっていると思いますが、ゴールドプランという、社会保障、厚生省行政としてはこうありたいという長期計画、お出しになっています。財政当局として、それがそのままいったときに本当にそれをフォローアップできる、賄うと申しますか、だけの自信がありますかと、今後の社会保障費という、これは実は中期計画の中で一般経費の中に入っちゃいますから別項目になっていませんけれども、どのくらいのことをどうお考えになっているか、厚生省の局長さん、お願いいたします。
  12. 瀬田公和

    ○瀬田政府委員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいましたように、今後の高齢化の進展等に伴いまして社会保障の給付費というのは増加していくということでございまして、それにかかります社会保障の負担、すなわち保険料の負担も、それから財政的な負担も長期的には上昇していくことは避けられないというふうに考えております。  昭和六十三年にちょうど国会の求めに応じまして、保健、医療、年金といった現行制度をそのまま踏襲するというそういった仮定のもとに試算をした「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担展望」というのをお示しさせていただいておりますが、社会保障負担、すなわち保険料の負担につきましては、昭和六十三年度で国民所得比、大体二%強ぐらいでございまして、現在一二%弱ぐらいで推移しているというふうに思っておりますが、これが二十一世紀の初頭になります平成十二年度には一四から一四・五%ぐらい、それから平成二十二年度には一六・五から一七、一八%ぐらいに増加するものというふうに私たち想定をいたしております。  これに従いまして、社会保障にいただいております国庫負担の額につきましても、昭和六十三年度には国民所得比で四・一%ということになっておりまして、現在も四%台で推移しているわけでございますが、これが二十一世紀初頭の平成十二年度には五%台に乗るものというふうに私たち考えているわけでございます。  なお、「生活大国五か年計画」等によりまして、社会保障の給付は今後の急速な高齢化、年金制度の成熟化によりまして増大は避けられないけれども、そのための負担というものが国民経済にとって過重なものとならないように、年金、医療の効率化や所要の改革を進める必要があるという御指摘もいただいておりまして、ただいま厚生省といたしましては、厚生年金制度等の改正に向けまして真剣に検討しているというところでございます。
  13. 越智通雄

    越智(通)委員 林蔵相、今厚生省の答弁の中で、社会保障の負担は一二%切るぐらいとおっしゃったけれども大蔵省のつくった国民負担率の推移では一二・五になっているのです。まあいいです、その細かなことは。  さっきの話で昭和四十七年、僕らが出てきたときはどうだったかというと、国税の負担が一三・三、地方税がその半分六・四、それよりも社会保障負担は小さくて五・九、足して二五・七。  それが二十年たって今どうなったか。国税は一三・三が一六・九に上がって、三ポイント何がししか上がっていない。地方税は六・四が五割上がって九・二になった。社会保障の負担は五・九が一二・五に上がっている、倍になっている。だから、二五・七%の国民負担が今三八・六になっている。  今の局長のお答えでは、社会保障負担は一四までいくだろうと、そのまま乗っけていけば国民負担は四〇%を超すのですよ。こういうマクロのところでもう一遍、何というかな、目標というか枠というかシーリングというか、考えなきゃいけないんじゃないでしょうか。三八・六というのはやはり高い。国税がどうしてこんなに三八・六の中の一六・九で、社会保障がこんなに国税に次ぐ高さまでいかなきゃいけないか、そこら辺の大きな見方をしていただきたい。地方税が何で九・二%ぐらいでやっているか。地方の時代と言うならば、地方に仕事を回しましょう、税収も回しましょう、そして地方でやってもらいましょうという考え方が大きく出てもいいんじゃないか、この負担率を見ていても思うわけです。  そんな中で、次の問題に行きますと、その地方と国との間の貸し借りが最近大変ややこしいのですよ。いいんですかね、ああいうのがずっと続いていて。ことしもいろいろな、借りたという格好をとるか、あるいは渡すものをちょっと延ばしてもらったと言うべきか、特例措置四千億とか法定加算の繰り延べ二千九百二十四億とか、いろいろやっているわけです。いつまでも続かないのじゃないですかね、これが。  地方財政をどういう方向で今後持っていくかという一つのビジョン。自治省の局長さんお見えですか。平成五年度予算に絡んで、地方財政をこれからどう持っていくというお考えがあったらお話しください。
  14. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 国と地方の関係から申し上げますと、国も地方も国民生活の福祉の向上というものを基本にいたしまして仕事をしているわけでございますから、まず国と地方の間の役割分担がどうあるべきかということから議論をすべきだと思います。  この場合に私どもの立場は、住民の身辺にある行政というものはできるだけ身近な地方公共団体で仕事をすべきである、こういう考え方に基づいて事務の配分をしていただきまして、これに基づいて税財政の制度というものをつくっていくべきであるというのが基本的な考え方でございます。  こういう考え方からいきますと、現在の国と地方との役割分担ということから見ますと、まだまだ地方に権限がおろされていいのではないかという部門もたくさんございますので、こういう部門をこれからも積極的に受け入れていく必要があるというふうに考えているわけでございますし、また財源面で考えますと、国からのいろいろな補助金というものがたくさんございますけれども、こういう国の補助金というものが地方の自主性を損なわせるという意味から見ますと、地方の事務に同化定着しているようなものにつきましては、できるだけ補助金を廃止してもらって、これを地方の一般財源で受け入れる、こういう基本姿勢でこれからの地方財政の運営をしていくべきではないかと思っているわけでございます。  そういう観点からいきますと、これからの地方財政の基本になりますのは、何と申しましても住民の負担をしていただく地方税でございますが、この地方税だけでは、経済力の格差が非常に大きい我が国の現状から見まして、どうしても税源の偏在というものを是正するための手段としての地方交付税というものが、これは欠くべからざるものとして出てくるわけでございます。したがいまして、地方税とそれを補完する地方交付税というものをうまく組み合わせることによりまして、今後の地方財政運営を自主的なものに高めていく努力をこれからもすべきではないかと思っております。  たまたま平成五年度におきましては、国と地方 との関係におきまして、国の厳しい予算編成というものを踏まえまして地方から一定の協力をしたわけでございますけれども、これはあくまでも今後の地方交付税の安定的な確保という立場も考慮いたしまして、国に対しましてお貸しをするということでやったものでございまして、基本的には、こういう貸し借りというものをなくして、地方は地方の財源として独立して運営をできるような、そういう財政運営にしていくものが一番望ましいのではないかと思っております。
  15. 越智通雄

    越智(通)委員 局長にもう一点お伺いします。  国の方は百八十二兆円の国債の残高を抱えることになっております、平成五年度末。地方公共団体は現状、一体どのくらいの地方債の残高をお持ちでございますか。
  16. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 地方団体の借入金の総額でございますが、平成四年度末で総額七十七兆円ぐらいになろうかと思います。五年度末の見込みといたしましては八十一兆円ぐらいになるのではないかというふうに考えております。平成五年度の地方財政計画が七十六兆円ということでございますので、ほぼ一年分の財政規模に当たる借入金の残高が現在あるわけでございます。
  17. 越智通雄

    越智(通)委員 今のお話にありましたように、国の予算が一般会計で七十兆ぐらいのときに、地方財政計画全部合わせると同じくらいに七十兆ぐらいあるわけですね。そして、これをネットで合わせたときに五割ぐらい重なるというのが今までの財政の仕組みでございますね、傾向というか。片や七十兆の予算を組んで二年半に近い借金をしょっているのですよ、国が。片や、今局長おっしゃったように一年分しょっているのですよ。だから地方がいいとは言いませんけれどもね、楽だとは言いませんけれども。ここにもやはり大きなアンバランスというか何というか、問題点が残っている。  何よりも国の方は早くこの利払いの負担から逃げなければいけないのだけれども大蔵省予算委員会に提出されている国債整理基金の資金繰り状況の仮定計算は、今十兆円、十一兆と言おうか、十兆九千七百億の利払い費が十年たったら十二兆七千億になりますと、こう書いてあるのですよ。減らないのです。ふえるのです、一割以上。とっととっとふえていく。やはりこれはほっておいてはいけないのじゃないですか。国債費の中、今年度の分でいえば、償還や何かあります、それは三兆かそこらです。利払いは十兆です。その根っこになる利払いの方がふえていくのですよ。減るという計算は全然出てこないのですよ。その先行くと十二兆八千六百まで書いてある。今、十年間を言ったのです、私は。もっと先まで出ていますけれども。  これはやはり国の財政としては、この国債の整理をどうするかということは、新しい財政構想の中できちんとした回答を出して国民に訴えていかなければいけない状態だ、こう思いますので、特に蔵相にお願いをしておきます。  実は、この後金融と思いましたが、労働大臣のお時間もあるようなので、質問通告の順を変えまして、労働省の方に二、三お尋ねをさせていただきます。  景気が非常に心配されております。だけれども、今回はまだ大丈夫だろうと去年あたり言っていたときには、雇用はしっかりしている。ついこの間だったのです、人手不足は。ですから、雇用はしっかりしている、したがって、それの所得もある程度確保されれば消費は堅調にいくだろうという前提で数字も出ていたし、御答弁も、当時、去年の予算委員会、そういうお話だったと記憶いたしております。今それが狂ってきたわけです。  きのうも鴻池委員からお話が出ておりました。ちょうど中年を過ぎたぐらいの方々が三十何人、課長職ぐらいの方々が退職のやむなきに至ったところもあります。それから、大きな大きな重工業のところで、希望退職を募ったわけじゃないけれども大体やめろというお話が出て、現状はまだ数十人だといううわさも聞いています。アメリカ系の方はもっとストレートに来ています。出社に及ばずですね。二、三の在日米系企業で話が出ています。さらに、昨今は、この二月の末に至って、四月に採る予定の大学卒業生に向かって、あれは取りやめだと、こう来ているわけですよ。  私は、こういう労働不安が何よりも消費に響くと思うのです。収入が落ちた面もあるでしょう。だけれども、自分の会社は大丈夫かな、自分の首は大丈夫かな。実は、終身雇用制度は弊害が言われましたけれども、大きなメリットがあった。悪いことさえしなければ、その会社に入って六十の定年まではそこそこいくだろう、常務、専務までいけるかどうかわからないけれども、まあ支店長だか部長だかいくだろうと。その最後のころには子供も、娘は結婚させなければならぬ、息子は就職させなければならぬ、自分のうちもちゃんと持たなければならぬ、一つの人生設計ができていたのですよ。大変大きなデパートが、将来ともそこに勤められると思ったところが、大きなスーパーさんの傘下に入ってしまうというと、今すぐ首切られるわけじゃないけれども、おれの人生設計が狂うのじゃないかとみんな恐れおののくわけですね。その不安、それを支えるものは何だ。金ですよ。何かためておかなければ危ないなという。それはあなた、年金があるよと言われても、年金だけでそうそうやれるかどうかわからない、十分でない。やはり今使えないぞ、安い社宅に入っている間にせっせとどこぞへ貯金しておこう、こういうようなことが消費に影響してきているのじゃないか。  労働大臣、ことしの雇用状況、そうした不安をかき立てるような情勢に対してどういうふうに対処していただくか。  もう一つ言い忘れました。ボーナス出せないから、自分のうちの製品を買えといって切符を渡した会社があるというのでしょう。ますます売れませんね、その会社の物は、そんなことをしたら。これはある意味じゃ労働条件の違反じゃないですかね。ボーナスだからいいのでしょうか。月給だったら、それは現物支給はいいのですかね。  そういうことについて、労働省として、労働大臣として、この不安をどうやって解消していただけるか、ぜひお話を伺わせていただきたいと思います。
  18. 村上正邦

    ○村上国務大臣 今、先生の切々たる雇用状況の不安についてのお話を賜りました。景気の現状は依然として低迷を続けております。そうした中で、有効求人倍率がこの三カ月連続一倍を下回るなど、厳しい雇用情勢が続いております。また、今おっしゃられましたように、一部では管理職や中高年齢者を対象とした希望退職の募集や勧奨退職といった動きも見られております。そしてまた、希望を持って新しい社会に門出をいたします新卒のこうした就職が一たん決まっていて、内定していて取り消し、こういう状況が出ておりますことに対する警戒を要する状況であると認識をいたしております。  私は、このような状況の中で最も大事なことは、もう当然でございますけれども、できる限り失業者を出さないようにすることが第一義であろうかと考えます。そのため、大蔵省の御理解も得まして、雇用を守る事業主を援助するための雇用調整助成金について五百九億円という大幅な予算を計上いたしております。  また、この年明け早々でございましたが、これも異例と言われておりますが、一月の六日に全国の職安課長を本庁に招集いたしまして、雇用調整助成金の活用によって事業主の方々にできるだけ失業者を出さないよう要請をいたしました。職安の窓口で誠心誠意、不幸にして職をなくした方々に対しての再就職の促進に努力することも強く指示いたしました。  私自身も、福岡そして埼玉の出先の職安に参りまして、つぶさにそういう状況を視察もしてまいったところであります。そしてまた、先日、経営者団体に対しまして、安易な雇用調整の動きが広がらないように協力を強く要請もいたしております。  今後ともあらゆる機会をとらえ、雇用を守る努力を事業主に要請するなど、今おっしゃいましたように、働く人たちの心理的不安を和らげるため、全力を挙げあらゆる努力をしてまいりたい、労働省挙げましてそうした努力をしてまいる所存でございます。
  19. 越智通雄

    越智(通)委員 労働大臣、よくおわかりのとおり、失業というのは一番怖い話なんですよ。ブッシュさんが、あえて言えば、負けたのは七%の失業率じゃないのでしょうか。いろいろな政策を打たれたけれども、いまだに七%。アメリカはかって五%を危機ラインと言ったのです。五%になったらばセクレタリー・オブ・レーバーは帽子を食うという表現をしたことがあります。どういう意味がな、腹を切るという意味がなと、当時、私はアメリカにいて、帽子を食うというのはどういう意味だかよくわからなかったのですが、要するに責任をとるという意味だったのですね。五%が危機ラインと言われたことがあるのです。  日本の失業率で今までの最高は三%でございますよ、終戦直後は別としまして、ここのところでは。これは円高のときです。ちまたに六千万人の働いている人の三%といったら、百何十万人ということですから、これは大変な政治上の問題になりますね。選挙なんて言っていられないですよ、これは。この失業を出さないということですね。  ところが、失業の先に来るのは、実は倒産なんですよ。倒産件数が結構ふえてきて、円高のときは毎月二千件。年に直して二万件を超すのです。去年が大体一万四、五千件ですから。ただ、これは注意して見ていかないと、最近の倒産は手形が落ちないで倒産するのじゃなくて、不動産にどかっと金をつぎ込んでいますから、手形も何も回らないうちにぱたっといくのですね。ですから、統計でいうと、商工リサーチの統計の方が真実に近いので、手形交換所の不渡りの枚数を勘定しても深刻さがわからない。この倒産がずっとおくれて失業へ来るので、何を申し上げたいかというと、まだ雇用状況は悪くなる可能性がある、危険性があるということを心配しているわけです。だからこそ今早急に手を打っていただきたい。  そんな中で、どんどんそういうことをやっているのはどこだというと、大企業なんですよ。中小企業は給与も低いし、厚生施設も少ないかわりに、そういうときには首は切れぬです、これは。私の家の家業も三十人ほど人を雇っている紙屋でございますけれども、まあいわば一家主義でございますから、家族を入れれば百人からの人間の生活を預かっているという思いで、私の一番上の兄などは社業にいそしんでおりますけれども。しかし、だからといって、今の大企業と中小企業のこの労働環境の差というものは、今以上に広がっちゃまずい。もともと差があるんです。だからこそ大企業、いい学校を出ていい大企業に入った人がハッピーで、中小企業に来る人は、そんな早稲田、慶應なんか出たような人は来ませんから、これは正直な話。ただ、田舎に行くのは嫌だ、自分のうちの近所で間違いないところへ勤めたい、そんな出世もしたくない、海外勤務も望まない、そんなんじゃない、親が病気だからうちから通いたい、そういうような要望で来ている方々ですけれども、この差をなるべく縮めることが労働行政の目標であって、こういうときに首が切れないだけ何をしているかというと、待遇が縮まっちゃうおそれがあるんですね。これは失業じゃないけれども、見えない失業というんでしょうか、見えない労働条件の悪化が出だしたら困る。そこも、労働大臣、手を打っていただきたい。  何か御所見があれば、中小企業労働者の配慮をぜひ伺わせていただきたいと思います。
  20. 村上正邦

    ○村上国務大臣 御指摘のように、中小企業と大企業の間の賃金や福利厚生、労働時間の格差は、昭和六十三年ごろまでは拡大する傾向にありましたが、この二、三年は縮小の動きが見られるものの、依然として大きな格差があると、同じような認識に立っております。  そこで、勤労者福祉の面でのこの格差是正のための施策を進めていくのが今後の大きな課題であろう。そういうことからいきますと、中小企業の労働力と申しましょうかそうした確保法に基づきまして、雇用管理の改善の促進、また中小企業勤労者福祉サービスセンター事業の拡充などによって、できる限りその格差の是正に向けてなお一層の努力をしてまいりたい、このように思っている次第であります。
  21. 越智通雄

    越智(通)委員 では、労働大臣、どうもありがとうございました。よろしくぜひお願い申し上げます。  次に、金融の問題、時間がありましたら最後に国際経済に入りたいのですが、あるいは金融でもう時間いっぱいになってしまうかもしれません。  まず、現在の金融についての認識を日銀総裁にお伺いしたいのですが、ある会合であなたに私は、昨年末の日銀券の市中の流通量は三十九兆円、それはおととしの暮れとほぼ同じであった、経済が成長していく過程の中で、一つのシンボルというかメルクマールとして年末の日銀券の流通高というのは今までも注目されてきたけれども、こういうことでいいのかなというか、ちょっとこれじゃ消費は伸びそうもないなという意味でお伺いいたしましたところ、一月のお休みがことしは曜日の関係で短かった、去年は長かったという御説明がございました。この日銀券の流通は今どういうふうになっている、ないしはなっていくとお考えになっているのか、御見解を承りたいと思います。     〔鴻池委員長代理退席、委員長着席〕
  22. 三重野康

    ○三重野参考人 お答えいたします。  委員御案内のとおり、現在、やはり銀行券というよりは、委員もいつもおっしゃいますようにマネーサプライ全体を見ておりますが、銀行券自体は最近は二%前後の伸びが続いておりまして、まだ景気がこういうような状況でございますから、銀行券自体も急速に大きく伸びを高めるというふうにはなっていないというふうに思います。
  23. 越智通雄

    越智(通)委員 そこで、今総裁がおっしゃったように、ではマネーサプライ、CDプラスM2のラインが、たまたま私が経企庁長官をさせていただいていた一九九一年、平成三年の第一・四半期というか夏前ごろから急速に落ちているわけですね。総裁どうお考えか知りませんが、私は、マネーサプライの伸び率というものは、経済の名目成長率とある程度パラレルで走っていいのじゃないか、世に言うマネタリストの論理でありますけれども。しかるところ、その後の一年半のマネーサプライの伸び率の落ち方はすさまじくて、今恐らく一%を切っていらっしゃる。下手をすれば、とった期間、この三カ月とかこの一カ月とかとれば去年より減っておるという状態もあると思うのですが、こんなにマネーサプライが減っているというのは、これからの景気の回復にどうなるのでしょうか、お考えを伺わせていただきたいと思います。
  24. 三重野康

    ○三重野参考人 越智委員のような非常な専門家はつとに御案内のとおりだと思いますけれども、マネーサプライと実体経済の間には以前はかなり安定的な、しかもマネーサプライが先行指標としての安定的な関係がございました。それが一九八〇年代の後半以降、完全に失われております。  というのはなぜかと申しますと、これも御案内のとおりでございますが、特に日本の場合はマネーサプライの波動と実体経済の波動、今名目成長率のことをおっしゃいましたが、非常にかけ離れておりますのは、これはやはり資産価値の高騰、要するにバブルの発生、崩壊ということと金利の自由化、この二つが背景にあるわけであります。したがいまして、名目成長率を大きく離れて動いて、それがまた動いているわけでありますが、現在はどちらかといいますと、資産価値がうんと上がったときにいわゆる名目成長率から離れた動きが、巻き戻しで今のところに戻ってきているという段階でありまして、したがいまして通貨の流通速度あるいはマーシャルkといいますもの は、傾向線のところへほぼ戻ってきたという段階が現在の段階だというふうに解されます。したがいまして、もともとの先行指標というよりも、今はほとんど景気の同時指標というふうに私どもは見ておりまして、現在非常にマネーサプライが停滞しておりますのは、今の景気の停滞と、それからいわゆる資産の取引が非常に停滞していることのあらわれというふうに見ております。  したがって、これからどうかということでございますけれども、やはり景気がよくならないとマネーサプライはなかなか伸びない。しかし、そうは申しましても、巻き戻しが一段落をしたところでございましたので、いわゆる前年比の伸び率というのはここのところようやく下げどまりということになってきておりまして、ごく最近は金融機関もひところに比べれば貸し出しに対して積極的になっておりますので、金融機関の貸し出しの伸び率、マネーサプライの伸び率も若干ながらふえていくというふうに思っております。
  25. 越智通雄

    越智(通)委員 マネーサプライがこの状況で私はいいとはなかなか考えられない。ただ、どうやればそれが伸びていくかというところに苦しいところもあります。  そんな中で、それじゃ今、日銀はどういうふうに各銀行の融資の態勢を指導されているのか。十一月の貸し出しを見ると、総貸し出しは前年同月に比べて一・八%しかふえていないのに、不動産業向けの貸し出しは五・〇%ふえているのですよ。不動産向けの貸し出しを締めなければいかぬといって、平成二年度、三年度は随分頑張りましたね。平成二年度では、総貸し出しが五・六%ふえているときに、不動産業向け貸し出しは〇・三しかふえていない。平成三年度はともに三ないし四%がらみ。今日、逆に不動産業向け貸し出しがこのように通常の貸し出しの三倍近くふえている、二・五倍。全体のマネーサプライの量はそう関係ないと言うなら、今度は貸し出しのごの中身というか、どういうふうに総裁は御認識でございますか。
  26. 三重野康

    ○三重野参考人 委員御案内のとおり、日本銀行は、市中銀行の貸し出しについての窓口規制は一昨年に廃止いたしております。したがいまして、市中銀行の貸し出し自体の中身についてあるいは総量について細かい指導はいたしておりません。しかしながら、いわゆる金利機能を通じてのコントロールということをやっているわけであります。  今委員指摘のことについて、ちょっと私手元に数字は持っておりませんので詳しく御答弁はできませんけれども、恐らく——その前に、いわゆる不動産業に対する総量規制は、これは大蔵省のおやりになったことでございます。もちろん、私は関係ないということは、もちろんそう言う気はございませんけれども。現在の不動産業に対する貸し出しのふえているのは、公的な、いわゆる公共事業その他の関連とか、いろいろな問題でふえているわけでありまして、いわゆるバブル発生のときのような不動産の投機のための貸し出しがふえているわけではないというふうに理解をいたしております。
  27. 越智通雄

    越智(通)委員 実は不動産関係をちょっと聞こうと思っていたのですが、その前に、今のお話の中で気になることが二つある。  一つは、金利を通じて金融の調整をしているとおっしゃった。金利を五度も下げて、何でマネーの流通量は伸びないのですか。金利を下げれば金の量は出ていくのが当たり前でしょう。それが、マネーサプライが縮むというか伸び悩むというか、私はおかしいと思う。それをおかしいとお考えになるか、直そうとしていらっしゃるのか、それとも当たり前だとお考えになっているのか、そこは非常に大事なところだと思います。  金利は、日銀公定歩合歴史上最低の二・五まで持ってきました。最高は九ですよ。最低が二・五ですよ。そこまで来たのです、まだやれないかどうかという議論はもちろんありますけれども。なのに金が出回らないとしたら、一体金利政策というのはどうなっているのという議論一つある。  もう一つは、個々の銀行の融資は指導しないとおっしゃるけれども、それならば、日本銀行考査局は何をしているのですか。考査にいらしたときは、法令違反事項の摘発ではなくて、これは大蔵省銀行局検査部の仕事であって、皆さんは経営指導をされているのではないのですか。二週間も向こうの銀行に入り込んで、考査役が常務さんたちと相対でいろいろ話をして、それにさかのぼる六カ月ぐらい前から向こうに資料をさんざんつくらせて、出させた資料に基づいて何をしているかといったら、それは銀行の経営について指導されていると私は理解しておりますが、その日本銀行だからこそ伺っているのですよ。ぜひ御見解を賜りたいと思います。
  28. 三重野康

    ○三重野参考人 公定歩合は六度下げましたけれども、まあそれはどうでもいいことだと思います。  公定歩合を下げた結果、我々は民間の貸出金利を下げることによって経済の実体面に影響を及ぼそうとしているわけでございます。これも委員の御案内のとおりでございますけれども、市中の短期プライム、長期プライムは極めて着実に下がってきておりまして、短期プライムレートは、ピークは八・二五が、今半分以下の四%まで下がっております。長期プライムレートも、七・九%が今五・二%まで下がっておりまして、もし債券指標がこのままでございますと、来週さらに長期プライムレートは下がるということになると思いますが、これはいずれも日本銀行の公定歩合の下げた三・五%をかなり上回る下がり方をしているわけであります。  そういう意味で、私どもの金利政策のねらいは貸出金利にはあらわれているというふうに見ておりますが、それが、委員が御疑問のように、なぜボリュームに反映しないのかということでございますが、これは先ほども申しましたように、現在のマネーサプライは、要するに、バブルの発生と崩壊、金利の自由化、この二つによって大きく乱れていたわけです。  例えばの話でございますけれども、マネーサプライは、CPを発行して大口預金に入れる、両建てで非常に上がってきているわけでございますね。そういったものが、バブルの崩壊によって両建てがどんどん落ちていっているわけです。そういうことでございまして、いわゆる前年比の統計からはマイナスになっておりますけれども、ストックで見る場合には、それほど、今委員が御懸念のほどには下がっていないということが言えると思います。  しかし、そうは申しましても、現在のこれだけの金融緩和期のときに市中の貸し出しの伸び率が非常に低いというのは、これは戦後初めてのことではないかと思います。それはなぜかと申しますと、やはり金融機関が、バブルの崩壊に伴いまして、いわゆるツケが金融機関の資産に回ってきている、不良資産の増大を見ている。この不良資産の増大をどういうふうにしてやるかということは非常に大きな問題でございます。しかも、バブルのときに金融機関の出した貸し出し態度に対する反省もあります。そういう意味では、金融機関の今の姿勢というのは正常化と言ってもいいわけでありますけれども、しかし、正常化といいましても、金融機関の貸し出しがいろいろな意味で実体経済に大きな影響を及ぼしますもので、そういう意味で、我々はよくその辺を注目しているわけであります。  それからもう一つ、貸し出しについて何も指導をしてないと。私の申しましたのは、かつての窓口指導を行いましたように、今期はおまえのところは幾らしか貸してはいかぬとか、あるいは中身をこうじるとか、そういう一々具体的な指導はいたしておりませんけれども、全体的な貸し出しの量がどうなるかについては、十分また向こうの話も聞き、こちらもアドバイスをしているところであります。  考査のことにお触れになりましたが、それは委員のおっしゃるとおりでありまして、二週間入り ますが、これはむしろおっしゃいましたように経営の内容についてのアドバイスをするために考査をしておりまして、もちろんそのためには貸し出しが、変な不良資産がどのくらいあるかとか、そういうことも多い場合には注意をいたします。それだけではなくて、経営自体に関するいろいろなアドバイスをいたしておるつもりでございまして、何も知らぬ顔をしているという意味ではないというふうに理解をしていただきたいと思います。
  29. 越智通雄

    越智(通)委員 私、日本銀行にそんなにつらく当たるつもりじゃないのですけれども、ただ、もっと反省をしてもらいたいと思っているのです。あのバブルのころに、あれだけ野方図に不動産業者やなんかにも貸したじゃないですか、市中銀行が。その市中銀行に考査に行っているのじゃないですか。また、その市中銀行が自分たちで、勝手にというか、ノンバンクをつくったわけですね、何銀ファイナンスとか何とかクレジットとか。そこにだって担保なしに貸しているじゃないですか。担保は何だといったら、そのノンバンクがさらに貸した人からとった担保が回ってきているだけじゃないですか。そういう意味では、もうちょっとあの時代のことも反省してもらいたいなと思っているのです。  その中で、今金が出回らないのは、銀行自身が実は不良資産を抱え込んでしまった。それから、銀行が実はたくさん株を持っている、持ち合いで。その株が下がってしまった。そんなことから銀行が大変憶病になっているといいますか、それはわかるのです。  もう一つ、今おっしゃらなかったけれども、僕は去年からずっと、いや、もう一年半前に橋本大蔵大臣の臨時代理をしばらくやらせていただいたときから常に言っているのは、BIS規制について反省しなければだめだということを申し上げているのです。これは銀行局に答えてもらいたいですね。  国際決済銀行の規制で、この三月三十一日現在での貸し出しと自己資本の比率を八%にしろ。貸し出しから見れば八%、自己資本の方から見れば十二・五倍の貸し出し。これは私は前からおかしいと申し上げている。  何がおかしいか。銀行で一番大事なことは預貸率じゃないのか。自己資本と貸し出しの比率というものはそんなに大事なものじゃないだろうし、それを全世界あらゆる種類の銀行で八%という同じ比率にしていることもおかしいし、まして一番おかしいと思うのは、たった一日、三月三十一日の値段で全部決着するんですよ。大学の入学試験の日に風邪引いたから一年棒に振るみたいな話でございましてね。そしてこの三月三十一日をクリアすればいいかというと、毎年来るんですから、この仕組みは。それを毎年クリアしていかなきゃならない。そんなに大事なものなんだろうか。  それじゃ、そんなに大事な問題を決めたBIS規制の基準というのは、国内法的には一体どこに法的根拠があるんですか。何法何条に基づいて各銀行にそれを強制しているというか、やらそうとしているんですか。ですから、私が言っているのは、BIS規制をもうちょっと緩和してもらうように国際決済銀行のところへ行って話してほしい。これは大蔵大臣と日銀総裁が行っているんですよ。おたくだけ、国際決済銀行の会議は日銀ですか。それじゃ日銀さんが行っていらっしゃるにしても、そのBIS規制の中身で、株式の含み益は四五%しか見ない。長い株価ならいいです。三月三十一日だけの株価ですからね。極端に言えば、あの日だけ株上げれば助かるんですよ、一日だけ。おかしな話なんですね。ですから、そこら辺BIS規制を、この三月の分はしょうがないでしょう、やらなきゃならない。大体通れそうだと言っている。だけれども、そのこと自身が、実は銀行が金が出てこない心理的な一つの障害になっているんじゃないかという懸念は多くの人が語っているわけですから。しかし、将来のことがあるからこのBIS規制の見直し、これをぜひ検討してもらいたい。銀行局長からお話を賜りたいと思います。
  30. 寺村信行

    ○寺村政府委員 BIS規制につきましてはいろいろな御議論がございまして、昨年の三月四日の本委員会委員から御指摘がございまして、その根拠規定という御質問がございまして、実はそれを踏まえまして昨年通常国会で金融制度改革法で根拠規定を盛り込むことにいたしまして、間もなくそれが実施に移されますから、それに基づきました所要の措置を講じようと思っております。  それから、BIS規制そのものにつきましてはいろいろな御議論がございますが、現在G10諸国の銀行監督当局の合意事項ということになっておりまして、銀行経営の健全性の基準あるいは国際的に活動している銀行間の競争条件の平等確保の観点から、こうした合意に基づきまして、我が国としてもその基準を適用していく必要があると考えているところでございます。  それで、その合意内容を変更する手はというお話なんでございますが、それには関係各国のすべての了解が必要でございまして、現時点ではなかなかその了解をということは困難な状況だと思います。  それから、仮に我が国が単独でそのBIS規制の実施をおくらせるということを決めたといたしますと、八%の自己資本比率を達成できなかった銀行が海外市場におきまして格付が下がりまして、資金調達コストが上昇する、あるいは海外での業務展開に際しまして外国の銀行監督当局から不利益な取り扱いを受ける、こういった問題もございますので、現時点におきましてはいろいろな方策を講じまして、この基準を達成することが必要であると考えております。  具体的に先ほど委員が、株式の価格によってBIS規制の基準が、BIS規制が非常に影響を受けるということは問題ではないかという御指摘がございましたが、確かに私どももそれは大変問題ではないかと考えておりまして、実は二月の八日に大蔵大臣から所見を公表いたしましたけれども、特に株式の含み益というのは、金融機関の不良資産が増大しているという現状では、長い目で見れば今後における不良資産の償却原資として位置づけることが適当ではないか。してみると、この株式含み益に依存することなく八%を達成することが当面必要ではないか。そのために自己資本調達手段の多様化を図る必要があるのではないか。円建て永久劣後債ですとか優先株等につきまして、これから検討をするということを公表したところでございます。
  31. 越智通雄

    越智(通)委員 あと証券関係と国際金融関係を御質問する予定で通告いたしましたが、済みません、時間の配分で、なくなりました。ただ、最後に私から、それでは大蔵大臣にお願いしておきます。  証券市場の先行きの見通しが見えないのです。二月底割れ、三月底割れはないだろうと思います。また、大蔵省もそうお考えのようです。だけれども、どういうような証券市場にすれば日本経済にいいか、また現在のような証券市場のままで景気の回復が来ることはないのです。一万七千円ぐらいでしょうかきょうは。一億株、二億株の商いが毎日続いたら、あれだけの証券会社はみんな赤字ですよ。銀行の合併話は出ても、株屋さんの合併話は出てこない。弱り過ぎちゃったんです、合併するにしては。そして、株をもてはやそうとしても、値上がりしますから買いなさいということは言えても、お持ちになれば十分配当が来ますというせりふは全然言えないのですよ、配当性向が低過ぎちゃって。よっぽど銀行に預けるとか郵便局に預けた方が得やないかという議論になってしまう。  このままでやっていくと日本の証券市場は行き詰まっちゃうんじゃないか。かつてニューヨークと兜町は同じぐらいの金額、ボリュームでした。大阪の北浜がロンドンと同じぐらいでした。そんなでっかい証券市場を二つ持っている日本はすごいなという話でもありました。だからこそ外国の証券会社がメンバーにしてくれと言ってもきまし た。同時に、日本はそういうところが海外へ出て、アメリカ国債やなんかの買い付けもいたしました。それが一つの貿易黒字の還流の手だてにもなっていたわけであります。今そういう道が一斉に曲がり角に来てしまったということをぜひ御認識いただいて、予算を通すことが大事でありますけれども、その暁に、ひとつ日本の証券・金融市場をどう持っていくか、先ほど申し上げました大きな財政経済再建構想の中でお考えをお述べいただきたい、心から大蔵大臣にお願いいたしまして、時間が来ましたので終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  32. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて越智君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。    午前十一時四十八分休憩      —————◇—————    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕