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1993-02-03 第126回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月三日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 粕谷  茂君    理事 石川 要三君 理事 小杉  隆君    理事 鴻池 祥肇君 理事 佐藤 信二君    理事 中川 昭一君 理事 串原 義直君    理事 中西 績介君 理事 松浦 利尚君    理事 草川 昭三君       相沢 英之君    愛野興一郎君       粟屋 敏信君    井奥 貞雄君       石原慎太郎君    臼井日出男君       内海 英男君    衛藤征士郎君       大石 千八君    大野 功統君       狩野  勝君    金子徳之介君       唐沢俊二郎君    倉成  正君       高鳥  修君    戸井田三郎君       中山 太郎君    萩山 教嚴君       浜田 幸一君    原田  憲君       真鍋 光広君    松本 十郎君       村山 達雄君    柳沢 伯夫君       山本 有二君    綿貫 民輔君       有川 清次君    伊藤 忠治君      宇都宮真由美君    関  晴正君       富塚 三夫君    楢崎弥之助君       堀  昌雄君    松前  仰君       三野 優美君    水田  稔君       目黒吉之助君    元信  堯君       石田 祝稔君    二見 伸明君       宮地 正介君    児玉 健次君       辻  第一君    正森 成二君       中野 寛成君  出席国務大臣         内閣総理大臣  宮澤 喜一君         法 務 大 臣 後藤田正晴君         外 務 大 臣 渡辺美智雄君         大 蔵 大 臣 林  義郎君         文 部 大 臣 森山 眞弓君         厚 生 大 臣 丹羽 雄哉君         農林水産大臣  田名部匡省君         通商産業大臣  森  喜朗君         運 輸 大 臣 越智 伊平君         郵 政 大 臣 小泉純一郎君         労 働 大 臣 村上 正邦君         建 設 大 臣 中村喜四郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     村田敬次郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)河野 洋平君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 鹿野 道彦君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      北  修二君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 中山 利生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      船田  元君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中島  衛君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 林  大幹君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 井上  孝君  出席政府委員         内閣官房内閣外         政審議室長         兼内閣総理大臣         官房外政審議室         長       谷野作太郎君         内閣官房内閣安         全保障室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障室         長       児玉 良雄君         内閣法制局長官 大出 峻郎君         内閣法制局第一         部長      津野  修君         国際平和協力本         部事務局    柳井 俊二君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  陶山  晧君         防衛庁参事官  高島 有終君         防衛庁長官官房         長       村田 直昭君         防衛庁防衛局長 畠山  蕃君         防衛庁経理局長 宝珠山 昇君         防衛施設庁総務         部長      竹下  昭君         防衛施設庁建設         部長      黒岩 博保君         経済企画庁調整         局長      長瀬 要石君         経済企画庁総合         計画局長    田中 章介君         経済企画庁調査         局長      土志田征一君         環境庁長官官房         長       森  仁美君         国土庁長官官房         長       藤原 和人君         国土庁長官官房         会計課長    藤田  修君         法務大臣官房司 濱崎 恭生君         法法制調査部長         法務省刑事局長 濱  邦久君         法務省保護局長 杉原 弘泰君         外務省アジア局         長       池田  維君         外務省経済局長 小倉 和夫君         外務省経済局次         長       林   暘君         外務省条約局長 丹波  實君         外務省国際連合         局長      澁谷 治彦君         外務省情報調査         局長      鈴木 勝也君         大蔵大臣官房総         務審議官    日高 壮平君         大蔵大臣官房審         議官      永田 俊一君         兼内閣審議官         大蔵省主計局長 斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 濱本 英輔君         大蔵省銀行局長 寺村 信行君         国税庁次長   瀧川 哲男君         文部大臣官房長 吉田  茂君         文部大臣官房総         務審議官    岡村  豊君         文部省高等教育         局私学部長   中林 勝男君         厚生大臣官房総         務審議官    瀬田 公和君         厚生省年金局長 山口 剛彦君         農林水産大臣官         房長      上野 博史君         農林水産大臣官         房予算課長   堤  英隆君         農林水産省経済         局長      眞鍋 武紀君         食糧庁長官   鶴岡 俊彦君         通商産業省通商         政策局長    岡松壯三郎君         通商産業省産業         政策局長    熊野 英昭君         運輸大臣官房長 豊田  実君         運輸大臣官房会         計課長     楠木 行雄君         運輸省運輸政策         局次長         兼内閣審議官  和田 義文君         郵政大臣官房財         務部長     新井 忠之君         労働大臣官房長 七瀬 時雄君         建設大臣官房会         計課長     木下 博夫君         建設省建設経済         局長      伴   襄君         自治大臣官房審         議官      松本 英昭君         自治大臣官房審         議官         兼内閣審議官  小川 徳洽君         自治省行政局長 紀内 隆宏君         自治省行政局選         挙部長     佐野 徹治君         自治省税務局長 滝   実君  委員外出席者         衆議院事務総長 緒方信一郎君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月三日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     金子徳之介君   石原慎太郎君     萩山 教嚴君   臼井日出男君     山本 有二君   越智 通雄君     狩野  勝君   浜田 幸一君     井奥 貞雄君   松永  光君     大野 功統君   柳沢 伯夫君     真鍋 光広君   竹内  猛君     有川 清次君   市川 雄一君     石田 祝稔君   不破 哲三君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     浜田 幸一君   大野 功統君     松永  光君   狩野  勝君     越智 通雄君   金子徳之介君     愛野興一郎君   萩山 教嚴君     石原慎太郎君   真鍋 光広君     柳沢 伯夫君   山本 有二君     臼井日出男君   有川 清次君     竹内  猛君   辻  第一君     正森 成二君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  平成五年度一般会計予算  平成五年度特別会計予算  平成五年度政府関係機関予算      ―――――◇―――――
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  平成五年度一般会計予算平成五年度特別会計予算平成五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 質問に入る前に、「衆議院予算委員会証人喚問要求」を、日本社会党護憲民主連合、公明党・国民会議、民社党が「平成五年度政府予算案審議に当たり、佐川急便問題に関しその真相究明等のため、左記の者の証人喚問を要求する。」という文書を今予算委員長に提出をいたしますので、よろしくお取り計らいをお願いをいたします。
  4. 粕谷茂

    粕谷委員長 後刻理事会で協議をいたします。
  5. 堀昌雄

    堀委員 まず最初に、カンボジアにおきまして、プノンペン政府ポル・ポト派に対して先月末以来攻撃を開始している。ちょっと私どもの予想しない状態が今カンボジアで起きておるわけでございます。この今の事態というのは、少なくとも私ども認識をしておりますPKO協力法案の中に盛られております五原則に照らしても、これは重要な対応が迫られている、こう思うのでありますが、まず最初渡辺外務大臣から御答弁をいただきます。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいまお話しのように、我々の予想以外の事態が発生したことを非常に心配をいたしております。しかしながら、両派とも、パリ協定はこれは遵守するんだ、破られていないということは、ポル・ポト派もそういうことを言っておりまして、一方、プノンペン政府の方も、自分たち地域に侵略されたのを奪還するためにやったんだというようなことを言っておりますが、これらに対しては自重をするように日本政府としては申し入れをいたしております。  それらの具体的な状況説明につきましては、アジア局長から説明させます。
  7. 池田維

    池田政府委員 お答えを申し上げます。  現在、現地軍事情勢の把握につきましては鋭意努力をいたしておりますが、私どもの承知しておりますところでは、現在のところ本格的な戦闘は行われていないということでございます。  すなわち、カンボジアの西部のバタンバン州におきましては、一時プノンペン派の軍隊が約二十キロの近くまで迫ったと言われておりましたが、昨日のUNTACの報告によりますと、四十キロまで退却したというように言われておりまして、そういった意味では、この地域では緊張は緩和しつつあります。その他、北部のシエムレアプ州とかあるいはクラチエ州におきましては、若干の停戦違反がありまして、そこでにらみ合いは続いておりますけれども、これも今のところそれほど大きな戦闘には至っておりません。そういったところから、全体といたしまして情勢はそれほど大きく展開していないということでございます。  他方、私どもといたしましては、双方、つまりプノンペン政権の軍、それからクメール・ルージュの軍に対しまして自制を呼びかけてきておりまして、昨日も我が方の今川大使を通じましてプノンペン政権外務次官に対し自制の呼びかけをいたしました。それから、ポル・ポト派に対しましては、現在責任者プノンペンにはおりませんけれども、帰ってきましたら直ちに申し入れをするということをやっております。それから、明石代表からフン・セン・プノンペン政権の首相に対しましては、別途きのう話し合いをいたしまして、自制を呼びかけるということをやっていると思います。  そういった意味で、全体の情勢は一時伝えられていたほど悪い方向には動いていないというように承知いたしております。
  8. 堀昌雄

    堀委員 今の答弁を聞いておりますと、本格的な戦闘にはなっていない。この今のプノンペン政府側攻撃というのは、一体それじゃどういう状態で、どういう重大器を使って、どうなっているのか、答弁を求めます。
  9. 柳井俊二

    柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいまアジア局長から、現地情勢につきまして答弁がございました。カンボジアに限らないことでございますけれども、長年戦争がありまして、停戦合意ができたという場合に、これが完全に守られて平和になるのがもちろん望ましいわけでございますが、ただ、現実の問題といたしましては、停戦違反というものは時々あるわけでございます。カンボジアにおきましても、そういうような状況が今まで遺憾ながらございまして、むしろ、それゆえにこそ国連平和維持活動というものを行う意味があるわけでございます。  すなわち、長年の戦争の後に和平ができましても、現実の問題といたしましては脆弱な点がございますので、これを国際社会が、国連という形でございますが、停戦監視員あるいはその他の要員を出しましてこの停戦の遵守を確保するというのが、まさにPKOの目的でございます。したがいまして、繰り返しになりますが、現実の問題としては停戦違反というものはあるわけでございまして、最近のカンボジアにおける事態もそのような停戦違反というものであるというふうに考えております。
  10. 堀昌雄

    堀委員 私の質問に全然答えていないじゃないですか。本格的な戦闘ではないというのなら、どういう火器を使って、どういう戦闘をやってるのかということを答弁を求めているのに、全然関係 のない答弁をされたのじゃ困りますよ。
  11. 柳井俊二

    柳井政府委員 御質問趣旨をあるいは取り違えたかもしれません。その点はおわび申し上げます。  どのような火器を使ってどの程度の規模戦闘を行ったかという御趣旨でございますならば、これは今UNTACの方で調査をいたしておりまして、まだその辺の詳細につきましては発表がございません。いろいろ伝えられております。あるいはロケット砲を使ったとか、あるいは小火器を使ったとか、いろいろ言われておりますが、正確なところにつきましては、UNTAC調査の結果を待っているというところでございます。
  12. 堀昌雄

    堀委員 今の答弁を聞きますと、どういう状態での戦闘が行われているかはつまびらかになっていない。しかし本格的な戦闘でないという判断は、じゃどこからきているのですか。そこのところをはっきりしてもらいたい。
  13. 柳井俊二

    柳井政府委員 本格的という意味はいろいろ意味があると思いますが、恐らくアジア局長答弁申し上げましたのは、まあ全面的にと申しますか、停戦合意が崩れるほどの規模あるいは地域的に見まして全面的な戦闘が行われたというものではないということを申し上げたものだと思います。  すなわち、今回の事態は、五つの州で戦闘が行われたという発表でございましたけれども、これはこの五つの州に関しましても、何も五つの州全体で戦闘が行われたということではございませんで、その一部の地域戦闘があったということでございます。ましてや、カンボジア全土戦闘が行われたというものではないわけでございます。
  14. 堀昌雄

    堀委員 一カ所で小火器で行われたというのなら、私はそれは本格的な戦闘でないという認識は成り立つと思うのですが、今の話を聞きますと、五つの州にわたって戦闘が行われておる。今の話では、私ども新聞情報だけではわかりませんが、少なくともプノンペン政府正規軍ポル・ポト派戦闘をするという以上は、それなりの戦闘が行われておると認識するのが相当ではないのか、こういうふうに私は判断するのですが、これは政治的な問題ですから、渡辺外務大臣答弁を求めます。
  15. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 今お話がありましたように、具体的な戦闘の形態その他についての情報を握っているわけではありません。しかしながら、全面戦争になっているという状態でもない。確かに五つの州で、五つの州全部がやっているわけではないですから、州の中のどこか一カ所とか二カ所とか、細かいゲリラ的な戦闘があったということは事実であって、なぜそれが起きたのかということにつきましてもまだ想像の域を出てないのです。  実は、選挙を前にいたしまして既に住民登録が終わったのだけれども、そこにポル・ポト派勢力拡大をしてきた。そうすると、それらの人が今度は選挙に行かなくなってしまう。そういうことを危惧した政府側がそいつを追い出しにかかったのじゃないかとか、いろいろ説はありますよ。ありますが、確実なところはまだつかんでいない。しかし、本当の戦争という状態よりも、お互い勢力拡張のための威嚇のし合いみたいなことは、それはあったことは事実でございます。それが本当に本質的なパリ協定を守らないという姿勢に出ているのか、いや、それは守るのだ、守るけれども、出先でいろいろないざこざはあったということは事実でございますが、それらについてUNTACとしても、それが明らかな、もう協定は将来とも守らないのだという立場じゃない、こう見ておるわけですから、我々といたしましても今の段階において、それはもう完全な協定違反が将来もずっと続いていくのであって、だから自衛隊をすぐ引き揚げるとかどうとかというような状況にはないということを申し上げたわけです。
  16. 堀昌雄

    堀委員 PKO協力法のいわゆる五原則というものについて、まず渡辺外務大臣から御説明をいただきたいと思います。――これは大臣答弁だよ。そんなのだめだ。
  17. 粕谷茂

  18. 堀昌雄

    堀委員 私が大臣答弁を指名しておるときに政府委員答弁させるというのは、これはちょっと問題がありますからね。
  19. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 正確を期すために今資料を取り寄せただけであって、要するに五原則というのは、一つは、紛争当事者の間で停戦合意が成立しているということがまず第一です。合意が成立している。それから、当該平和維持軍活動する地域の属する国を含む紛争当事者当該平和維持軍活動及び当該平和維持軍への我が国の参加に同意している。これは同意したから行ったわけですから。それから、平和維持軍が特定の紛争当事者に偏ることなく中立的な立場を厳守する。したがって、我々はこれは中立的にやっております。上記の基本方針のいずれかが満たされない状態が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができるということが第四番目。五番目は、武器の使用は要員生命等の防護のために必要な最小限度のものに限ること。これもそのとおり。  問題は、第一番目の、紛争当事者の間で停戦合意が成立しているということですね。その合意が、実は停戦合意はあるのだが部分的に停戦合意違反の箇所があるということも事実であります。しかしそれは、だからといってこの合意は全然もうだめになっちゃったんだという段階には至っていないというのが現在の我々の認識でございます。
  20. 堀昌雄

    堀委員 今の外務大臣答弁の中で、要するに合意が成立しておる、こういう話なんですね。しかし、この政治情勢を見ると、ポル・ポト派カンボジアにおける選挙に対して協力の意思がない。そこで、選挙人登録を彼らの地域では認めていない。こういう基本的な、政治的な背景があるのですね。  だから要するに、停戦合意というのは、その裏側に停戦合意が政治的あるいは現実的な情勢の上に成立しているのなら私はこの合意はそのまま続くと思うのだけれども、その後ろ側にある、背景にあるところのこれから行われる選挙に対してポル・ポト派は反対だから要するに今の選挙人登録を認めていない、やらしていない。それをそれではやらせるようにしようと言ってプノンペン政府がやろうとすれば、これは単なるいざこざとか紛争ではなくて、その背景にあるものは、これは戦争に発展し得る重要な問題がその背景にあるから問題が起きているのであって、これが時間がたつにつれてこの戦闘というのは、さっき本格的な戦闘ではないという話でしたが、本格的な戦闘に移る可能性現状分析から見て非常に高い、こういう判断を私はするのですが、どうですか、外務大臣
  21. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは我々も心配しないわけではありません。心配はしております。おりますが、御承知のとおり、あそこはシアヌーク派もあればソン・サン派もあれば、そして現在のプノンペン政府派もあればポル・ポト派もあるということですね。その中で、ポル・ポト派と現在のプノンペン政府派が比較的大きな戦力を持っておったということも事実。そして片や、それぞれ助っ人がついておりまして、それはアメリカとかあるいはその他の国、ベトナムとかそれから片っ方は中国とかいうふうにみんな今まで助っ人がおったわけですよ、武器援助、その他を援助しておったわけですから。  しかし、そういうものも全部やめようということで国連会議をやって決まったわけですね。それで中国ポル・ポト派に対する援助をやらない、アメリカの方もソン・サンシアヌークに対する援助はやらないというようなことで、それからベトナムも、それはソ連からベトナムを通してやっておったわけですが、これもやらない、もちろん兵隊も引き揚げるというような、年数をかけた国際会議の結果パリ協定というものは結ばれたわけですから、我々は一部分的にその中の一派の中のまた少数派がそういうようなことをやったとしても、じゃそれではもうまたもとへ戻ってもいいんだというわけにはなかなかいかないもので あって、国連としてはできるだけ忍耐強く説得をしながら、今後とも選挙は、もう出てくるなというのじゃなくて、今からでも遅くないですよ、選挙人に加入してくださいという努力は、これは五月まで先があるわけですから続けていこう、これはやっている最中なんですよ、いまだに。したがって、日本だけが今の段階でこれは停戦合意が崩れたんだというように断定的に申し上げるというわけには私はいかないのではないか、そういうように考えております。
  22. 堀昌雄

    堀委員 非常にカンボジア情勢というのは複雑な要素がかみ合っておるわけであります。その複雑な要素がかみ合っておるもとになっておるのは、やはり五月における選挙というものが一つのターミナルになっているわけでして、そこへだんだんだんだん近づいていくわけですね。現在、まだ一月ですからね、この紛争が起き始めたのは。一月から紛争が起き始めて、そうしてだんだん、それは全面的な戦闘になるとは私は思いませんけれども、しかしお互い自分たち支配範囲を広げるということが選挙の結果に影響してくるわけですからね。  だから、この選挙がなければ私もそんなに心配しないのですけれども後ろ側選挙という重要な政治課題があって、その政治課題に対して今のプノンペン政府側とそれからポル・ポト派は基本的に考えが違う。そのためにポル・ポト派選挙人登録をするなと言って抑えているということですからね。これは今外務大臣のおっしゃるように大したことなしにいけば、私も大変それは、カンボジアのために我々も平和を願っておるわけですから、いいことだと思うんですが、私は、少なくともあの地域情勢、そうして今の選挙という極めて大きな政治課題があるのに、これからますますこういう条件は加速をする可能性がある、こう判断をするのです。  これは極めて基本的な政治判断でございますので、宮澤総理大臣の御答弁をいただきます。
  23. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 従来ポル・ポト派が言っていることは二つありまして、一つは、十分に武器を持ったベトナムの勢力が本当にゼロにはなっていない、相当の者がまだいるという主張、これはどうも事実に徴して余り説得力のある主張ではないように思われますが、もう一つの主張は、SNCというものをつくったけれども、これは公平ではない、甚だしくフン・センといいますか、そういう中央勢力に加担をする嫌いがあって、そしてUNTACもどうもそのことを黙認しているではないかと、こういう主張でございます。  それで、第二の主張は、それはクメール・ルージュからいえば、何かそう思う節があって主張しているのだと思います。このことは、違っている、違っていないということは簡単に実証もできないことでございますけれども、そういう状況の中で選挙が行われるということは、それはフェアな選挙ではない、こういうことであろうと思うのでございますが、しかし、事実に徴して考えますと、SNCはそういうふうにどうも公平でないという批判はしょっちゅうクメール・ルージュはしておりますけれども、SNCの会合にはキュー・サムファン代表はずっと出ておるわけでございます。  御承知のように、先般北京でSNCが開かれましたときにもキュー・サムファン氏は出ておりまして、そして選挙を五月の二十何日にやろうという一応合意がありましたときに、キュー・サムファン氏はその会議の席には現実にいて、そしてそれについていわば沈黙をしておったということでございますので、それらのことを考えますと、今のSNCのあり方、UNTACのあり方にはいろいろ恐らく不満があると思いますのですが、全体をつくり上げているバリ協定そのものは否定をするつもりはない、こういうのがクメール・ルージュの立場であるように思われます。  したがいまして、それが和平の枠組みが壊れていないと私どもが考えている基本的な理由でございます。もうバリ協定がだめだ、こういうことになりますとこれはまた違うことが生まれるかもしれませんが、そうではなくて、そのやり方についていろいろクメール・ルージュとしては意見がある、異存がある、こういう主張のように思われます。それが基本的な私ども判断でございます。  次に、この数日起こっておりますことは、プノンペンなりあるいは幾つかの都と東京との通信状況は極めて良好でございますので、そこまでのことはわかっておるのでございますけれども現地で、ある村でこういう衝突があったというようなことになりますと、プノンペンとそことの状況がわからないというのが今の様子でございますが、どうも総合的に判断いたしますと、これから先を今予断することができませんが、ここまではフン・セン自身が、これはこれでどうもクメール・ルージュに対してUNTACが思い切ったことができない、クメール・ルージュがだんだん領域を拡大しているではないかということを非常にフン・センとしては不平に思っておったわけでございますけれどもUNTACに対して不平に思っていたんですが、ここで登録が終わりましたものですから、その間に失われた失地の回復をしておこう、こういうのがフン・セン氏の主張であるように思われる。  今度これだけ報道が大きくなりましたのは、パイリンというところに近づいたということがあって、そのパイリンというのはまさしくクメール・ルージュのいわばドル箱と申しますか、御承知のような幾つかの事情からこれが一番の中心点でございますので、そこへフン・センがしかけるのではないかということで非常に注目が集まったけれども、先ほど政府委員が申し上げましたように、二十キロまで行ったけれども四十キロのところまでまた下がった。  フン・セン氏の説明では、それがかつてのフン・セン軍のいわば縄張りであったので、そこまでクメール・ルージュが来たのは、これは、この数カ月の間に自分の縄張りに先方がいわば不法に進出した、失地を回復したのであるというのがフン・センの説明のように思われるのでございます。  そういたしますと、長くなって申しわけありませんでしたが、大きな何か全面的に両方の間の戦争が起こるということでは、ただいままでのところはでございます、なくて、フン・センはUNTACに対する自分の不満というものを一応失地回復の形で表明をした、それからクメール・ルージュはSNCに対する不満を選挙をボイコットするという形で表明をしておる、こういうことであろうと思うんでございますね。  これは今日までの判断でございますから、我が方の、今川大使というのが現地の大使でございますが、今川大使はそれらの関係者といろいろ話をしておりまして、大使の総合判断としては、確かにここのところ停戦協定の違反が目立っているけれども、全体として大きな衝突に発展する意思をフン・センもクメール・ルージュも持ってやっているわけではないというふうに明石代表等々も含めました判断今川大使が伝えてきておりますので、私どもとしては、まず今としてはその判断を尊重してよかろうか。しかし、これは今日までのことでございますから、現地状況の変化には絶えず注意を払っておらなければならないと思いますことは堀委員の御指摘のとおりと思います。  それから、それならばクメール・ルージュがこの五月何日の選挙に向かってこれからどうするか、何を意図しているかということにはいろいろ観測がございますが、一般的には、支配人口で一〇%ぐらいもあろうか、支配地域で一五%ぐらいもあろうか。これもごくごくふわっとした話でございますけれども、そういう状況の中で、選挙で全体の多数を得るという感じには恐らくなってはいない。しかし、そういう状況の中でクメール・ルージユがこれからどうするかということは、今からまだ二、三カ月の時間がございますので、それは経緯を見ていなければわからないのではないかと思いますが、いずれにしても、先ほど申しましたようにパリ協定全体が選挙登録まで参りました。そして、このままいけば五月の何日に選挙 がある。そこまでのパリ協定の基本をクメール・ルージュが崩そう、それを否定しようというふうには見えないということと、今までの状況でしたら、停戦違反というのは先ほど申しましたような程度である、こう判断しております。  ただ、言われますように、これは今日までのところのことでございますので、事態を十分注意をいたしておかなければなりません。法に定められました条件が欠くようなことがないことを祈っておりますし、またそういう説得に努めておりますが、事態の推移は十分注意をして見てまいります。
  24. 堀昌雄

    堀委員 日本からも実はUNTACに派遣をされておる人たちがいるわけでございますから、私もこの事態が平穏に解決をされることを望む一人でありますけれども、何と申しましても、五月の二十日過ぎに選挙があるという、これが一つの重要な政治課題でございますので、政府としても派遣員の生命財産に万一のことがないように十分情報を収集しながら対応をしていただきたい、こう特に要望をいたしておきます。  それでは本来の質問に入らせていただきます。  私は、宮澤総理がまだ閣僚でいらしたころにこの委員会で既に一回問題を提起しておるのでありますけれども、要するに憲法九十八条は、御承知のとおり「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」こういうふうに憲法九十八条は規定をいたしておりまして、憲法九十九条は、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」こういうふうに実は憲法は述べているのでございます。  そこで、皆さんのお手元に実は私のパンフレットをお配りしてございます。時間がありませんから、これはよくごらんをいただければ私が何を言いたいかというのはここに述べておるわけでございますが、この今の国会の旧館というのは、要するに、構造からその他多少の違いはありますが戦前に建てられた、大日本帝国憲法のときに建てられた構造と様式がそのまま続いておる。  多少違いますのは、私は一九五八年、昭和三十三年五月の選挙で当選をしてまいりまして現在在職三十二年を超えておるのでありますけれども、当初のときは私どもの座っておりますいすは、あそこにあるあの平たいいすがここに全部並んでいたんです。そして閣僚はこういう大きないすにずるっと座っていた。それを私は、宮澤さんが、当時の大臣は何をしていらしたか、経企庁長官、通産大臣、大蔵大臣と経済関係大臣をしていらっしゃいましたので随分何回も論議をさせていただいておりますが、そのときに、憲法四十一条は「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」と、こういうふうになっております。帝国憲法は、要するに天皇を中心とする完全な官僚独裁のような憲法でありますから、要するに、国務大臣及び政府委員は何ときたりとも議会に出て発言することを得と、こう書いてあるんですね。発言してもよろしいと書いてあるんで、それは権利ではなかったわけなんですね。  そういう状態の中で、実は皆さんは、今私どもと、いすの大きさはちょっと違うんですよね、それはこう小さいんですけれども、これについて衆議院側で配慮をして今のこのいすに変わったんです。もとはあのいすだったんです。その経過をちょっと事務総長、ひとつ答弁をしてください。
  25. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 現在の議事堂でございますが、本格的な議事堂ということで大正九年の一月に起工されまして、昭和十一年の十一月に竣工いたしております。約十七年の歳月を費やしております。それで、昭和十一年の十二月二十四日に召集されました第七十回の帝国議会から使用されまして、最後の帝国議会であります第九十二回帝国議会まで使われました後、引き続き第一回国会から百二十六国会まで使われておる、こういう状況でございます。  それで、ただいまお話がございました予算委員室のいすでございますが、現在大臣席でお使いいただいておりますものにつきましては、御指摘のとおり竣工当時に使っておりました形式の安楽いすをそのまま使っております。委員席につきましては、ただいまお話ございましたように、当初は本館内の他の委員会室で使っております、ちょうどあの後うにありますああいう形でございますが、それを使っておりましたが、昭和四十六年の八月に現在の回転式のいすに改めております。
  26. 堀昌雄

    堀委員 これは衆議院の事務局側が、幾ら何でも憲法等に書かれておる国権の最高機関ということは、少なくとも私は国会が最高機関であって、そうして行政と司法というのがその次のランクだというふうに認識するのが相当だと思っていますから、その最高のものが、そういうそこにある平たいいすで、ひじかけもないいすにずっと座っていたんですね。そうして閣僚は戦前のままだということに対する事務当局の配慮なんですね。政治的な話でこうなったんじゃないんです。私は、このことが憲法九十八条に一体どういう関係を持っておるのかということを実は伺いたいわけです。  もう一つあります。本会議で、今国権の最高機関の私どもは、あの議場の下の席に座っておりますね。後ろの方、私は今、党の中で一番古いものですから、その私の座っているところは大分高いところへ来ていますけれども、しかし、フロアとしては下のフロアですね。そうしてあそこにひな壇と称する高いところがあって、そこに閣僚は全部並んでいるわけですね。国権の最高機関の方が下にいて、二番目のランクのものがひな壇で座っている。これも憲法九十八条の趣旨を体したら、ここの憲法九十八条で、「国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」というふうに書かれているのですが、私はやはり国務の一部だと思うんですね、あそこに座っているということは。  ですから、フランスの議会を見てみますと、フランスの議会は高い壇の上には議長とそれの関係者だけがいるわけでして、その他の閣僚は前列、一番最初の前列にいるのですね。そうしてフランス議会は開会中は週に何回か内閣に対する一般質問というのが行われるようでありまして、それを傍聴いたしました。そうすると、ちょうど今の衆議院の本会議場で「議長」と、こう言って自民党の方が発言をされるぐらいのところに、通路に実はマイクロホンが立っていまして、そして閣僚は全部前列に座っていて、前列に適当にマイクロホンが置かれています。そして議員の方は、例えば首相なり農林大臣なりを指名をして、この問題についてはどう考えるかとこちらのマイクでやると、首相なり農林大臣が立って議員の方を向いてそのマイクで答える、こういうふうになっているんですね。  そうすると、私は、建物は別に上の壇があってもいいし、そうして議長及び副議長その他の国会職員がその上に立っているのは、これは要するに議長の影響力の間における関係者でありますから問題ないのですが、要するにひとつ閣僚はこの際、皆さんの席、一番後ろにあるのですからね、後ろから一々出ていくのは時間がかかりますから、だから時間を節約するためにもフランス式に一番前列に閣僚は全部座っていただければ、そうして壇は、演壇があるのですから演壇は使ったらいいと思うのですね、せっかくあるのですから。しかし少なくともひな壇から皆さんはおりて、一番後ろにいたのではまずいからフランス式に一番前列に座ってもらうというふうな改革をひとつしていただきたい。これが第一点ですね。  そして第二点は、こちらのいすは回転いすで、あれですが、これはいすを同じにしたらどうかと思うのです。そちら側もこの回転いす、これと同じものでちっとも構わないと思うんですね。そうすれば、私は何も国権の最高機関だから我々が上の方に行こうなんて思っていませんけれども、この憲法九十八条が規定をしておることは、四十一条で「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」あと立法機関の話をまたこれからしますが、少なくとも同じレベルにある ということに正すのが憲法九十八条の正当な解釈である、こう認識をしておりますが、宮澤総理大臣、いかがでございましょうか。
  27. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 国会のあり方につきまして行政府の責任者でございます私が決して批判がましいことを申し上げるつもりではございませんので、この点は誤解のないようにまずお願いをしておきまして、ただいまの御質問でございますが、帝国憲法ができましたその過程の中で、恐らく伊藤博文等々の人がプロイセンその他を実地に見、話を聞かれて、そしていわゆる帝国憲法ができたものと考えておりますが、この議事堂そのものが、先ほど事務総長の言われましたように大正九年に基礎プランが決まって昭和十一年にできたということは、もう明白に帝国憲法下でございますので、議事堂のしつらえというものが帝国憲法の考え方を背景にしてつくられたということは、それは明らかなことであろうと存じます。その残滓と申しますか、そのままのことが今の、新憲法と仮に申しますが、現憲法までそのまま引き継がれておる事例をただいま幾つが御指摘になられたと思います。  私も、おっしゃいますことはいかにもそのようだなと、議員の一人として申し上げますならば、そう思います。憲法が変わりましたときにいろいろしつらえが変わるべきであったろうということでございますれば、いかにもそうではないかというふうに私も思っております。  ただ、そこまでのことを申し上げまして、行政府の立場として申しますと、国会の御意思でこのしつらえをいろいろに変えるべきであるということであれば、国会の御意思を実現いたしますための必要な予算措置は、これはもとより国会の御意思を尊重してやってまいりたい。これは行政府の長としてのお答えの部分でございます。
  28. 堀昌雄

    堀委員 今お話しのように、行政府の立場はわかりますが、宮澤総理は自由民主党の総裁でもあられまかね。そして、やはり衆議院議員でございますね。衆議院議員、自由民主党総裁のお立場で私の提案はどういうふうな御判断でございましょうか。
  29. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 一人の議員として考えますと、帝国憲法から現在の憲法に変わりましたときに、帝国憲法時代のしつらえというものは今の憲法の精神に合わないと考えられます限りにおいて、やはり改めることが適当であったのではないか、こういうふうに考えます。
  30. 堀昌雄

    堀委員 今、あったのではないかというお話なのですが、その今の新憲法ができたときに、私が聞いておりますところでは、尾崎行雄さんがあの壇をとるわけにはいかないのかというふうに事務方にお話しになったけれども、当時は財政不如意で、何かあれをおろすのは大変な費用がかかってできないということで、尾崎議員もそれはやむを得ない、こういうふうな話を聞いたことがあるのですが、事務総長、ちょっとそこでひとつ答えてください。
  31. 緒方信一郎

    ○緒方事務総長 現在の本会議場のいわゆるひな壇でございますけれども、じゅうたんの下の板床の下がもうすぐコンクリートになっておりまして、それで、外の議長室の前の廊下と同じレベルでつながっておるわけでございます。もちろん財政的な問題と言えば言えるのかもしれませんけれども、構造的にあれを壊してやりかえるということは非常に困難なことであると技術者は申しております。
  32. 堀昌雄

    堀委員 私はひな壇を壊せという話をしているのではないのですよ。要するに、閣僚は一番後ろの席に座っておられるから、ひとつ一番前の席に座ったらどうですか、フランスと同じように。議員として同じことで、何も閣僚を格下げするわけでもなければ、要するに、総理だけで出ていられるような場合にほかの閣僚は皆後ろの席にいるわけですから、議員として一番前にいたってちっとも構わない。だから、ひとつこの際今の壇は、あれはもう衆議院の議長、副議長及びその関係者があの壇の上におられることについては何ら私は異論を挟むものではありませんけれども、どうも憲法四十一条を正しく解釈すれば、国権の最高機関の方が下にいて、行政機関の方があの高いひな壇に座る理由がない、こう思うのでありますが、積極的な理由があれば、皆さんの中でどなたでも結構ですから、お答えいただけませんか。
  33. 粕谷茂

    粕谷委員長 堀委員に申し上げます。  質問ですが、答弁者どなたにしますか。
  34. 堀昌雄

    堀委員 だから、どなたでもと言ったのですけれども、どなたでもというわけにもいきませんでしょうから、ですからこの問題は国民が十分判断をして、私は構造を変えるとか、できないようなことを求めているのではなくて、後ろの席に座っているのだから、前の席に座ることにして壇からおりたらどうですかと、これだけのことなのですね。しかし、これは憲法にかかわる重要な、後から今度申しますけれども、重要な課題につながっておるから、それを申しておるわけです。  その次に入ります。よろしいですか。もし御発言があるなら……(宮澤内閣総理大臣「いえ、いえ」と呼ぶ)いいのですか。  憲法四十一条は、今私が申しておりましたように「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」こうなっておりまして、そうして、憲法七十二条は「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、」議案でございますよ、「議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。」第七十二条です。第七十三条、内閣の職務。  内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。  一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること。  二 外交関係を処理すること。 三番目、これが国会に関係するところでありまして、  三 条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。  四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。  五 予算を作成して国会に提出すること。  六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。  七 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定すること。 こう、以上なっているのでありますが、この議案というものの具体的な事例は、今の三番目の「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」という項と、五番目の「予算を作成して国会に提出すること。」この二つが憲法七十二条にいう議案の中身なんです。それを憲法は明示をしておるわけですね。にもかかわらず、現在は、御承知のように、内閣の提案する法律がそのほとんどを占めておるというのが実は現在の状況ですね。ですから、私は、どうしてもこの問題はきちんとした処理をしていただかなければならない、こう思います。  第一国会から今日まで内閣が提出いたしました法律案は七千百三十四件、そのうち五千九百六十四件が実は成立をしております。そうして、衆議院の議員提案の立法は二千五百十五件、成立八百六十九、そうして参議院が八百七十七提案して、百三十七が実は成立をしております。そこで、提出件数比率は、閣法六七・八%、衆法二三・九%、参法八・三%の比率となっています。  これは、どうしてこういうことになっているかというと、皆さんに差し上げている中にありますが、内閣法第五条で、内閣総理大臣は法律案及び議案を国会に提出しと、ここに「法律案」という言葉を実は恣意的に内閣が入れている。そうすると、「議案」と書いて法律案と書いていないと十二条、そうして議案であるから、その後ろに議案の中身が明示しであるにもかかわらず。だから、そういう意味では、予算の編成権は政府にある。 さらに、条約についての批准を求める必要があるということは、これが議案の中身であって、その他の法律案は要するに今の憲法四十一条で「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」ということは、立法は全部議員が立法をし、提案をし、論議をし、採決をして法律になる、これが今の四十一条の憲法の趣旨であると私は解しているわけであります。宮澤総理大臣の御認識を承りたいと思います。
  35. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 この問題につきましては、事柄の性質上、正確には法制局長官がお答えをするのがよろしいかと思いますけれども、この問題は、つまり内閣に法律案提出権があるかどうかということにつきましては、この憲法ができますときの制憲議会の審議において御議論になっておりまして、その際、金森国務大臣から今の憲法第七十二条、すなわち、ただいま堀委員の言われました「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出しこということ、この議案というものには当然法律案そのものが含まれるという意味は、同じころに制定されました内閣法が、これも今、堀委員が言われましたが、「内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出しことございますので、議案は法律案を含む、こういうふうに伝統的に解釈されてきたものというふうに承知をいたしておりますが、問題はむしろ、内閣にこういう権限があるないと申しますよりは、本来的に国会がもっと衆法あるいは参法、国会の法律案の発議がたくさんあってもいいのではないか、慣行の問題としてそれが非常に少ないというそのことは確かに言えることではないかと思っておりますが、内閣に法律案の提出権がないわけではない、あるということは憲法制定当時からそういう解釈で一貫をしておるものと心得ておりまして、なお正確なことがお入り用でございましたら、法制局長官からお答えをいたします。
  36. 堀昌雄

    堀委員 いや、法制局はいいです。  実は学者の中にも二つの意見がございます。そして、私の意見に賛成の方は、佐々木惣一さんとか田畑忍さんは私の意見に同じでございますが、東京大学の多くの憲法学者の皆さんは、議院内閣制だから、要するに今の議員が提出したものとみなしていいのではないかという解釈が、実は今総理がおっしゃった議案の中に法律案を含める、こういう認識になっておるようであります。  実はちょっと私自身の過去の経験を一つ申し上げますと、私は昭和三十三年六月二十六日に、当時文教委員をいたしておりました。一九五八年の五月の選挙で私どもは百六十六名当選をいたしました。そのとき、たしか議員総定数が四百七十八ではなかったかと思うのでありますが、それに対する百六十六でありますから大変な数でございまして、そこで私たちは委員会の志望を認められないで、党から一方的に私は文教委員、だれだれはどこ委員という規定で、実は文教委員になったわけでございます。  五月の二十五日に当選しまして、そうして、六月の二十六日に実は学校長の管理職手当に関する法律というものが文教委員会にかかりました。そうして、その中で私が質疑をしております最中に、私の斜め後ろにおられました、この間お亡くなりになりましたが、新潟県選出の稲葉修衆議院議員が、私が一息ついたところで突然大きな声で何かおっしゃったわけですね。そこで、私はどうなったのかと思いましたら、前の方に辻原弘市、それから櫻井奎夫等の理事が、文教委員長は坂田道太さんでありましたけれども委員長席へ殺到しまして、うわあっとこういうことになったわけですね。私は国会へ出てきてまだ一カ月余りで、一生懸命勉強してまじめな質疑をしているのにそういう事態が起こった。これが強行採決と言われるものですね。だから私は、一九五八年といいますと今からもう三十五年前でありますけれども、国会へ来て最初質問なんです、これは。その最初質問をやっている最中に強行採決。  この強行採決がなぜ起こるかという問題は、閣法という形で多数党の自由民主党と政府が、それも政府がつくったのを自民党がそれから見るのじゃなくて、自民党の皆さんは法案作成の過程でいろいろと接触をしながら政府案ができてくる、こうなっていますから、政府と多数党が一つになっているわけですね。これが議員同士のディスカッションで強行採決やるといったって、それはできないですね。結局、私どもが政府とやっておるときに強行採決というのは起こるのですね。  だから、私が今この問題で申しているのは、この間、私どもが牛歩をやります。そうすると大変な国民からの批判があります。当然です。しかし、昔はあんなことやらなかったのですよ。どういうことかというと、本会議の討論やその他は時間に制限がなかったのです。だから、六時間も七時間もあの壇上で、要するに、そういう強行採決の後は私どもはいわゆる反対討論をやって、抵抗の意思を国民の皆さんに理解していただくということにしていたのですが、そのうちに自民党の皆さんがせっからになってきて、発言時間がだんだん縮められて、今や十五分ぐらいですかね、平均すると。十五分で討論が終わっちゃうのでは、それは何か抵抗の手段を考えなきゃいかぬというのが実はああいう牛歩という格好になって、国民の前に私たちの抵抗の意思をあらわす手段になっているわけです。  だから、国会の今度の政治改革の中で最も重要なのは、私は国会改革だと思うのですよ。国会改革をきちんとしないで、あと政治改革なんかあり得ないのです。だから、そのためには、私は要するに今の閣法をやめて議員立法にしたい。  私は、一九六〇年、昭和三十五年から公職選挙の特別委員をいたしまして、今回は予算委員になりまして外れましたが、この前のときに公職選挙の特別委員長にお願いをして、この選挙法やその他の問題は、これは政治家固有の問題なので政府との間で論議をするという話はおかしいんじゃないですか、議員同士でひとつ論議をしましょうということで、委員長が了解をしていただいて、公職選挙の特別委員会では、前の国会は、要するに委員が手を挙げたら委員長は何党の方でも順番を見ながら、あるいは何回も手を挙げていればそのことも配慮しながら、一人五分間の発言を認めていただくというのを実はやっていただくことにしました。  そうしましたら自民党の若い方から、堀さんのおかげで私たち初めて議員になったね、自覚が持てるようになった、これまではただ黙って座っているだけだった、それが手を挙げれば自分たちの意見を野党の皆さんにぶつけられるし、また、野党の質問に我々は答えられる、初めて自分は議会に来た思いがする、こういうことを自民党の方から伺いまして、私は大変それはよかったんだな、こう思っているのでありますが、これは公職選挙の特別委員会に限らず、予算案は、これは政府の提案でありますから、私どもと政府がやるのが当然でありますし、もう一つ条約の批准の問題も、これは議案として政府が提案をして、それで政府と論議をするのが当然でありますが、その他の法律案はこれからひとつすべて議員立法で、議員同士で論議をするということにすれば、まず議員の皆さんは勉強しなきゃなりませんね。勉強しなければ、いつ何とき何を聞かれるかわからぬということでありますから、そのためには議員が勉強しなきゃいかぬ。  ところが、ここでまた一つ次の政治改革の問題に移るのでありますが、今の選挙制度では私なかなか勉強が難しいんじゃないかと思うのですね。私どもが当選をしましたときに、上のクラスに横山利秋さんという先輩がおられました。この方が昭和三十三年の総選挙で最高得票で当選をされたのです。私どものグループの一人でございましたので、一年生はひとつ横山さんに最高点で再選できるような秘訣を一遍聞け、こういうふうに言われまして、私どもの仲間は横山さんに、どうしたらああいうふうになるのですかということを聞きましたら、横山さん、何でもない、金曜日の夜の夜行で選挙区へ帰って月曜日の夜行で東京へ戻ってくると。要するに金帰火来ですわ。ですから、 土、日、月と三日間は選挙区でしっかりやって、そうして国会は、衆議院は火曜日から金曜日までしかないから、金帰火来ということで夜行列車で帰ってやりさえすれば必ず通るというのが横山利秋さんの私たちに対する話でございました。  私もそれを遵守して、銀河という夜十時ごろの東京発ですかで帰りますと大阪へ七時ぐらいに着くのですが、同じ列車で横山さんが乗っていきますと、午前二時か三時に名古屋へ着くのですね。それで私は、横山さん、そんな夜中に着いたんじゃ大変でしょうと言いましたら、いや、一刻も早く帰って、一寝入りしてから選挙区を回らなきゃだめだ、こういう話でして、これが今の実は中選挙区制というものの非常に大きな問題点ですね。今これが個人本位の選挙制度です。  そこで、私は外国の議会の方たちといろいろ国際関係をやっておりましてお会いをすることがあるのですが、私は当選十一回なんと言いますと向こうの人はびっくりするのですね。大体、政党本位の選挙制度のところは五、六回でチェンジをするのですね、みんな。それは党が決めることですから五、六回でチェンジする。十一回なんというのは考えられない、こういう話なんですね。しかし、これは実は個人本位の選挙制度なものですから、その票が安定した場合には、前回の選挙は党の方針で無所属、社会党推薦ということで選挙に出ましたけれども、十万票以上の票をいただくということで、私の選挙区の一番古い、長老であります原健三郎さんよりは上に行って四番目で当選するということができたわけでございます。  ですから、やはりここは、今度は議員がしっかり勉強するためには二つの問題が要るのです。その一つは、ドイツでは要するに公務員が政党の仕事をやってよろしいというふうに法律でなっておりまして、そのための費用も実は予算に組まれて、かなりの人たちが行っております。   ドイツでは、連邦官吏法五十二条で、官吏は特定の党派でなく全国民のために奉仕すべきことが規定されているが、一方同法第五十三条は官吏の政治活動を認める規定を置いており、従って政党への加入も自由である。   これにより官吏がその地位に基づき政党で直接働くということはできないが、例えば、官吏が連邦議会内の院内会派に出向してその会派のために働くということは行われており、その場合、その者の給与は、議会予算として計上される会派手当から支払われている。例えば野党社会民主党(SPD)の場合、その院内会派に勤務する課長クラスの職員約九十名のうち、約半数が官吏出身者で占められているという(一九九〇年現在。ちなみにこの当時SPDの院内会派に支給されていた会派手当額は年間約二千八百万マルク、日本円にして約二十三億円である)。  ドイツが議会の問題を重視しているというのは、今の官吏が出向して法律案をつくる手助けをするというだけではなくて、院内会派に支給されているSPDの会派手当がこの一九九〇年で二千八百万マルク、日本円にして二十三億円国が出しておる。私は、こういうことは大いにドイツのやっておりますことを見習って何としても、今の憲法及びその他の問題で議員立法を中心にすることには何ら抵抗はないのでありまして、問題は私たちのそういう能力の問題、ですから勉強しなければいけません。同時に、それを手助けする仕組みの問題、当然今の衆議院法制局のようなものも大いに強化をして、人的にも強化をされるということが必要でありましょうが、私はこれらの問題を含めてひとつ宮澤総理の御見解を承りたいと思います。
  37. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 恐らく憲法を制定されましたときに制定者の考え方としては、政府も提案権があると、これは私は思いますのですが、しかし議員は当然に提案権があって、そうして議員提案のものが議員同士のディベートによって決まっていく、当然そういうことを想定しておられたであろうと思いますし、そのことは今も堀委員の仰せられますように大切なことではないかというふうに一人の議員として考えます。殊に選挙法というようなことになりますと、これはお互いの問題でございますので余計そういうことではなかろうか。  私としては、政府の一般論として、法律提案権というものを、これはあるものと考えておりますけれども、いかにも閣法が多うございまして、衆法、参法というものは少ない、それが議会のあり方に影響しておるのではないかという御説には、私も議員の一人としてそういうふうに考えます。(発言する者あり)
  38. 堀昌雄

    堀委員 浜田さんの御卓見は御卓見として承りますが、要するに、今政府委員というシステムがありますね。これは大日本帝国憲法五十四条で、国務大臣及び政府委員は何どきたりとも国会に出席して発言することを得と、こう書かれておるわけで、それが来ているのでありますけれども、私は政府委員というのは説明をするのは必要だと思いますよ。さっきの、今のカンボジア情勢について、そういう具体的な問題について説明をしていただくのはいいと思うのでありますが、私のこれまでの経緯の中で、この問題は大変重要な問題でありますから政府委員から答弁させますなんということを言う閣僚がおられるわけですね。私はかつて、そういう方が要するに防衛庁長官であったときに、党内で、とんでもない、憲法無視だ、そんな大臣やめさせろと言ってやめていただいた経験があるのです。  ところが、最近はどうも皆さんが余りそういう認識がないものですから、最近でも時々重要な政治的な問題を政府委員答弁させる。政府委員というのは官僚でありますから、ここで私ども答弁を求めているのは政治家としての答弁を求めているわけなんでありますから、そこらのところで私はそういう政府委員答弁なんと言われたらお断りしますが、さっきのような今の実情とか具体的な問題は、これはやはり閣僚の皆さんがそこまで全部承知しておられるわけではないので、そういう説明をする一種の説明員ですね、そういう形での政府委員の発言は相当だと思いますけれども、少なくとも政治にかかわる論議をしておるときに、それが重要だから政府委員答弁させますなんという閣僚は、今後はひとつ自由民主党としてもそういう人が閣僚にならないようにお考えをいただきたいと思いますが、それは要望でございます。  ですから、そういう問題を通じてやはり私たちは、憲法が定めておる、要するに国会は国権の最高機関であって、唯一の立法機関であるということに対する認識を強めると同時に、しかし今のままでは議員立法はなかなか私どもも十分にできませんから、ドイツの例に倣って、要するに国会に予算をもっとつけて、そうしてそれは何も私は官僚の皆さんでなくても、学者とかいろいろな関係者を私どもが国会の経費の中で支出をしながら委嘱をして協力をしていただいて、そうして数多くの議員立法を私たちができるような条件をつくるためには、これはやはり経済問題なんですね。予算がなければ、この今のドイツのように、一九九〇年にSPDに二十三億円行っているわけです。私ども、いきなり私どもに二十三億円下さいとは言いませんけれども、少なくとも学者の皆さんに協力をいただいて相当な費用をお渡しできるような、要するに会派に対する政治立法のための費用をひとつ考慮していただきたい、こういうふうに思うのですが、宮澤さん、どうでしょうか。
  39. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 基本的には、国会が国政審議のためにお入り用な費用は、これは惜しむべきものでないと思います。今、会派と言われまして、政党のようなものができてまいりますとあるいは会派であるかもしれませんし、そうでありません場合には個人の立法事務費であるかもしれませんが、国会が国政審議にお入り用な出費を決して惜しむべきではないということは、基本的に私はそう考えております。
  40. 堀昌雄

    堀委員 一応今の政治改革のこの問題についてはここまでにいたしまして、そこでお伺いをしたいのは、今度政治改革の中で、政党本位の選挙制度というものがどうしても今の改革をやっていこ うとすれば重要になります。そこで、自由民主党では今、小選挙区制を次の選挙制度の原案といいますか、試案といいますか、対案といいますか、案にしておられるようでありますけれども、そこは、これがちょっとどちらに聞いていいかわかりませんが、自治大臣、ひとつ所管でございますからお答えをいただきたいと思います。
  41. 村田敬次郎

    村田国務大臣 堀委員にお答えを申し上げます。  小選挙区制は明治時代にも大正時代にも施行されたことがありますが、おのずから時代が違いますので、現在の時代に相応する制度を考えなきゃいけないわけでございますが、御承知のように、今御指摘になられましたように、昨年の十二月十日に自民党として決定したものがあるわけでございます。これは小選挙区制を前提とし、政治資金についても相応のことを考えておるわけでありまして、先ほど来御指摘になられたような、必要な経費は国権の最高機関である国会がお出しになるということについて総理もお答えになったわけでございます。まさにそのとおりであると思うわけでありまして、実際に選挙制度それから政治資金規制制度が合理的にできるような制度を十分御論議をいただいて、それに対して対応さしていただきたいと、このように思っております。(発言する者あり)
  42. 堀昌雄

    堀委員 そこで、政党本位の選挙制度には、確かにイギリスにあるような小選挙区制というものもありますし、イタリーがやっているような比例代表の選挙制度もあります。  そこで、要するに今の小選挙区の問題というのは、現在でも金帰火来で選挙区へ帰って選挙民との間の関係をつなぐことになるんですが、選挙区の範囲が狭くなって、そうしてそこで一人ずつ立つわけですね。私どもの党でございましたら、小選挙区になれば選挙区が五百十二できるんでございましょうね、一区一名でしょうから。ですから、五百十二名も候補者をこれまで立てたことはありませんから、そこへ複数で出ることはないと思うのですけれども、与党の場合には、政権党でもありますから、当然そこに自由民主党公認と無所属という保守の皆さんが出てくるという問題もありましょうから、要するに狭い範囲で、今私は尼崎市という町に住んでおりますが、人口五十万です。しかし、今の人口一億二千万を約五百で割るとすれば、大体二十万程度の範囲になりますでしょうね。そうすると、私の住んでいる尼崎市というのは選挙区が二つになるほど小さくなってしまうわけですね。  現在私どもは兵庫県二区という選挙区で出ておりますから、要するに大阪から神戸の間ですね。要するに尼崎市、西宮市、芦屋市、北の方へ行きまして伊丹市、川西市、宝塚市それから三田市、そうして淡路島と。これはどうして淡路島が私ども選挙区にくっついているのか、交通手段が選挙区からないんですから。要するに明石から渡るか、神戸から船で行くかしかない淡路島が選挙区になっているんです。まあ仕方がありませんが、これだけ広い選挙区で選挙をやっているからいいんですが、二十万の選挙区で同じ党とその関係者が出て争うということになれば、金帰火来ではなくて、要するに自分の所属する委員会の日がなかったらほとんど選挙区に帰っているという事態が起きてくるんじゃないか。  ですから、私の言う政党本位の選挙制度で、しかし議員が自分の選挙区のことについて気を使わないで政策をしっかり勉強して、政策で争う政党のあり方による選挙制度ということになると、どうしてもやはりこれは比例代表というのが、そういう今から新しい国会改革をやるためにも比例代表というのが極めて適切ではないかと、こういうふうに思うのでありますけれども、これは今担当が自治大臣でございますから、自治大臣の御見解をまず最初に承りましょう。
  43. 村田敬次郎

    村田国務大臣 お答えを申し上げます。  自民党では、先ほど申し上げたように昨年の十二月十日に、単純小選挙区制を前提として、政治資金もそれに対応するものをつくったわけでございます。そして、これは自民党として決定をしておるわけでございますので、その線に沿って今非常に検討を党内でもいろいろとやっていただいておるようでございます。したがって、その案、まあ単純小選挙区制の場合は、堀委員がおっしゃったように、比例代表制を導入した場合よりももっともっと意見がはっきりと出やすいというようないろいろな長所があるわけでございまして、それを踏まえてしっかりと対応していきたいと、こう言う私も自民党員でありますから、考えておりますが、このことについては国権の最高機関である国会でよく御相談をしていただきたい、こういう意味でございます。
  44. 堀昌雄

    堀委員 今議員席から、通らないものを云々というような御発言がどなたかございましたが、実は参議院は今自由民主党が多数派ではなくて、その他の党の方が多数派でございますね。恐らくその他の党はこの単純小選挙区制には反対だと私は理解をしておりますので、間違っておればお許しをいただきたいのですが、そうすると、衆議院は自由民主党が多数ですから通りますけれども、参議院は通らないというようなことは、私はやはり政治の場としてはいかがかと思うのですね。  やはりみんなの意見が集められて、そうして最も望ましい案を、要するに選挙制度のようなものは与野党が十分協議をして、その上でひとつ議員立法で出すということになれば、これは衆議院が通れば参議院も通る、こういうことになるので、選挙制度の法律案の取り扱いは、やはり私どもはおのおの、私どもの後ろに有権者がおられるわけでございますから、そういう有権者の意思を代表しながら各党の議員がそういう話し合いをする結果、最も望ましい、そうして今の国会改革にもふさわしいような、議員が勉強できるそういう選挙制度を考えるということが私は極めて重要だと思うのです。  実は私は、後藤田法務大臣とはこの問題でいろいろとマスコミの取材を受けたりいろいろしたこともございまして、比例代表の問題はどうも顔が見えないということを後藤田法務大臣がおっしゃっているわけですが、特にもう一つ問題がありますのは、小選挙区もそうですが、拘束名簿の比例代表というのは順位を政党が決めますから、有権者はその党に投票しますが、この人を通したいと思っても、その人の順位が下の方であれば一生懸命やっても通らないという、こういう問題がありますので、私は比例代表も実は二票制でやるような比例代表がいい。順位は、やはり名前を書いたもので投票する、そうして政党名で投票するものと二つあって、そうして、要するに個人名が一番多い者が政党の当選の順位になる。これは私は公職選挙委員会で公式に実は参議院の現在の比例代表に関して提案をしておるのでございます。  実はこの参議院の比例代表というのは、竹下元総理が自由民主党の選挙制度調査会長になられたときに、私が選挙制度審議会の委員をずっといたしておりまして、第一次、第二次、党の方針で二回続けて審議会の委員をやった者はあと二回休めというので三、四を休んで、五、六と選挙制度の審議会の委員をやっておりまして、その中で私が参議院の比例代表に触れておりましたので、竹下さんが、堀さん、ひとつ今の全国区というのはどうも適切でないように思うので参議院に比例代表の制度を入れたいと思う、どうだろうかという御相談がありました。私は大変結構なことだと思いまして、実は御協力をしたのですが、そのときには、その前が、全国区が個人名投票でございましたので、要するに二票制にすると実に複雑になりますので、一定期間は拘束名簿にして、今の全国区の個人名投票から別のシステムとして比例代表が動くようにしたい、こういう考えで実は拘束名簿でどうでしょうかということで現在の参議院の比例代表の制度はできたわけでございます。私どもはその委員会においてもこの問題を推進をして今日になっているのでありますが、しかし、今申し上げましたように、政党が恣意的に順番をつくる問題というのは依然として残っているわけでご ざいますね。  私はそこで、この前、公職選挙委員会で、もうここまで来れば個人名を書いても問題ありませんので、二票制にして、候補者の順位については全国区で自分が望ましいと思う候補者の氏名と政党名を書いた一枚の紙を投票用紙にして、それは分割をして処理をすれば国民の選択をした順位で比例代表が行われるということで、公職選挙の特別委員会で既に具体的な提案をいたしておりますが、やはり問題は、私はそういう意味では、この選挙制度改革だけは何とかひとつ与野党が協議をして、皆お互いが納得できる案をつくるということが一番合理的であって、自由民主党でお決めになっているのですからそれは一回おやりになったらいいのですが、それが廃案になったらその次はひとつそういうことを考えていただきたい、こう思うのでありますが、これは自由民主党の話でございますからあれですが、総裁としての宮澤議員のお答えをひとつ伺いたいと思います。
  45. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 小選挙区制あるいは比例代表制、おのおのいろいろな長所、短所がございますことは今さら申し上げるまでもないことでございますけれども、自由民主党が先般「政治改革の基本方針」を決定いたしました際には、現在の中選挙区制度を抜本的に改めるとするならばやはり小選挙区制がいいのではないか。と申しますのは、それによって先ほどから御指摘のように個人個人の選挙ではなく政策を中心にして何党と何党との争いということになりますので、国民としては政策を中心とした選挙がやりやすい。つまり、どの政党に政権を持たせるかということを政策を中心にして投票しやすいという、これは大変なメリットであると思いますけれども、そういう長所があるではないかということであったわけでございます。  しかし、その反面、それならば死に票が出るという御意見があって、死に票を救おうとすればそれは比例代表制が一番いい。比例代表制になりますと、今度はいろいろな意見がそのままスペクトラムのまま出てまいりますから、そういう場合には政権というのは連立にならざるを得ないだろう。連立の政権というものは非常に弱いものであって、大きな改革などができにくい。そこはいろいろ議論があるところだと思いますけれども、政権はやはり強い方がいいか、いやむしろいろんな意見を持った連立がいいかということは議論があるかもしれませんけれども、やはり政権がしっかりしたものであるためには小選挙区ではないかというのが、私ども自由民主党の基本方針が指摘しているところでございます。  ただ、堀委員の言われますように、これはやはりお互いの問題でございますので、よく言われます土俵の問題でございますから、そこは恐らく自民党は自民党の案、あるいは他の党はおのおのの党、会派の案をきっとおつくりになられて、そしてその間に国民の見ておられる前で御議論があってという、そういうプロセスは私はどうしても必要だ。そうでありませんと、お互いの土俵の問題でございますから恒久的な案というものはできにくい、それは私はそのとおりに考えます。
  46. 堀昌雄

    堀委員 政治改革については以上で区切りをつけまして、これから経済問題についてお伺いをいたします。  まず、宮澤総理にお伺いをいたしますが、先ほど申し上げましたように、経済企画庁長官、通産大臣、大蔵大臣と経済閣僚を御歴任になって総理になっておられます。歴代総理の中では最も経済、問題にお詳しい宮澤総理でございますので、現在の日本の経済状態についてどういうふうに現状認識をしておいでになるか、そうしてこの現状に対して政府としてはどのような対策をお考えになっておるかをまずお伺いをいたします。
  47. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 基本的には、我が国が本当に高齢化社会に入りますまでにまだ十年余り間があるというふうに考えております。そして、今の世界の他国との関連で申しますならば、我が国の技術力であるとかその他いろいろな総合点を考えますと、あるいは置かれた環境、地域的な環境等を考えますと、日本経済はまだまだ非常に強い潜在力を持っておる、そういうふうに考えておりますので、他方で我々の生活環境というものはいかにも不十分でございますから、この潜在力を持っておりますうちに生活環境の豊かな国もつくりたいし、また世界に対するいろいろな意味での貢献もしたい、そういうふうに日本の経済は運営されなければならないし、またそれだけの潜在力を持っておるというのが基本的な考えでございます。  それは申し上げるまでもない、むしろ釈迦に説法かもしれませんが、そういう基本的な考えを持っておりますけれども、ただいまあります日本経済の現状というのはいかにも活力を欠いております。それは近因で申せば、やはり一九八五年のプラザ合意によります非常な円高、それに対応するために財政上のいろいろな経済対策を講じましたり、あるいはドルの急速な下落を防ぎますために、円の急速な上昇を防ぎますために為替の介入をしたというようなことから、いわば過剰購買力が発生をした、一九八五年から数年間のことでございますけれども。その過剰流動性が最終的には土地に向かい、株式に向かった。また、非常な低金利となりましたために、設備投資というものが大変に安いコストで行われることになりましたので、設備投資が過剰になった嫌いがあるかと思います。  つまり、金利が安く、過剰流動性が生じ、株、不動産のいわゆるバブルが生じたということで全体、その裏側が出ておるのがただいまのバブル後の現象というふうに思いますので、したがいまして、これに対応するためには、まずバブルの後始末をどうしてもしなければなりませんが、これには基本的に、殊に金融機関、証券市場等々が、国民経済の血液とでも申す部分が影響を受けましたので、これが全く後遺症をなくするに至りますまでにはかなりの時間がかかると思いますけれども、それはそれでよろしいので、今当面必要なことは、そういう機能を喪失しないような緊急対策をしておかないといけないというのがいわゆる血液循環に当たる部分への対応であるというふうに思っております。それからその次に、バブルの結果は家計にも一種の逆資産効果をもたらしておりますから、これは多分に心理的なものではございますけれども、やはりその自信というものを回復するための処理が必要である。それから、企業におけるバブルは、結局設備投資についての意欲が全く失われているということでございますから、これはもともと過剰の設備投資がございますので損益分岐点が高くなっております。これは多少の時間をかさなければならないだろう。それらのことがいわゆる経済循環外のことでございます。  経済循環の問題は、もうよく御案内のように、これは在庫の処理がどれだけ早く行われるかということでございますけれども、基礎資材、資本財はほぼ済もうとしているのではないか。耐久消費財のところがまだ残っているということでございますので、在庫の処理の時間を待たなければならないと思いますが、しかし在庫がはけました後も、先ほど申しましたような背景がございますので、すぐにはそれが購買力になり、あるいは設備投資になるというわけにはまいらない、先ほど申しましたような理由でございます。  そういうふうに全体を見ておりますので、まず国が地方団体と一緒になりましてやはり公共事業をして、そして経済が沈滞しておりますから、殊にだんだん地方にもそれが及ぶ嫌いがございますので、幸いにして雇用問題はまだ深刻ではございませんけれども、しかし、いろいろ考えますと、やはり国が中心になって公共事業をやっていく。幸か不幸か生活関連の施設というのは非常に我が国ではおくれておりますものですから、そういうことをやれる、住宅もそうだということで、そこに最大限の力を国も地方も注ぎまして、それによりましていわば病状の回復を待つとでも申しますか、そういうさつき申しましたような、殊に循環部分が終了するのをやはり促進をするということと、別に、バブルの結果生じました、これは多少 長い時間を要する問題でございますけれども、一応その解決のめどがつく、緒につくというようなところまで持っていって民間経済活動につなげたい、そういうふうな認識をしております。
  48. 堀昌雄

    堀委員 現在の不況の認識、いろいろあると思うのでありますけれども、国民全体が過剰流動性の中で、何だかこれからもずっと大体これでいくんじゃないかというような錯覚を持って、企業も家計もかなり物を買って、あるいは設備を拡大をしてきた。しかし、やはり経済というのはそんなに甘くないものですから、そこでこうがさっと下がってきた。  今、そういう意味では、企業もリストラクチャリングをやっているわけですが、家計もリストラクチャーをやってもらわないとちょっと伸び過ぎてきているのではないか。だから、ある意味では私は、今のこの不況というのは、日本経済の将来の発展のために、これを最も有効に将来につなげるためにも、対策を考えていく必要があるのじゃないだろうか、まずそういうのが今の私のこの現状に対する基本認識でございます。  今お困りになっている方ももちろんたくさんございます。どういう形に今の世帯構成がなっているかといいますと、総世帯数を一〇〇といたしまして、これが大体四千五十万六千世帯でございまして、それで、高齢世帯がそのうちの一一%、母子世帯が一%、生活保護世帯が一%、その他の世帯が八七%、こういうことでありますので、要するに一三%は大変所得の少ない皆さんでありますから、この部分には十分配慮していかなければいけないと思うのでありますけれども、その他の一般世帯については、やはり何と申しますか、安易に消費をふやすような方向を今とることが将来的な日本経済にとって果たしてプラスかどうかという点については、ちょっと私としては疑問を持っておる一人であります。  それからもう一つは所得減税の問題でありますけれども、各党所得減税について触れられておりますけれども、ちょっとここでどうしても申し上げておかなきゃならぬことがあるのです。  それはどういうことかといいますと、所得減税というのは所得税を納めておる人たちだけに有効に働く手段でございますね。もう時間がありませんから、私の方で主税局の資料を読み上げますけれども、現在所得者数は、給与所得者が四千八百三十五万人、農業所得者が百十二万人、農業以外の事業所得者が六百八十二万人、合わせて五千六百二十九万人というのが所得者数でございます。納税者数は、給与所得者が四千百五十八万人、農業所得者が二十五万人、農業以外の事業所得者が三百十七万人、合わせて四千五百万人でありまして、差し引きをしますと、要するに所得税の非課税者が一千百二十九万人あるわけであります。  所得減税を行いますと、その今の税を納めている人たちは減税ということで負担が軽くなりますから、それだけある意味では可処分所得がふえるわけでありますけれども、この今の私が申し上げておる一千百二十九万人は、所得税は納めておられません。ところが、この皆さんも今は消費税は納めておられるわけですね。消費税は納めていて、その上に今の、それはもちろん所得税の納税者も消費税を納めていますけれども、所得税の納税者にだけ減税をやるということは、どちらかというと、所得税を納めていない方というのは所得が、まあ把握の問題もありましょうけれども、納税をしていられる方よりは所得が低いということが非納税者であるという方でありますから、要するに生活の状態でいけば、現状で今、ちょっとさっき申し上げました老人世帯とか母子世帯とか生活保護世帯とかそういうものも含んで、この皆さんは恐らく納税者ではないと思うのであります。そういう所得の低い層の方には所得税減税という効果は及ばないというのが私は所得税減税というものの本質的な姿勢だと思うのでありますね。  そこで、ただ、この皆さんも年金だけは、実は国民年金なり厚生年金なり共済年金なり、年金は皆さん払っておられるわけですね。それは保険料として毎年出しておられる。もしこれから所得減税をやろうというときには、この皆さんを含めて所得効果の起こるような経済的な対応が必要なのではないか。その場合には、所得減税を階層別にやった場合に、減税の方はもう何でもありません、簡単に出るわけですけれども、今の低い所得階層の皆さんに対しては、今の年金の保険料を一定額軽減をすることによって要するに可処分所得がふえるような対応を考える。ただし、年金会計が、そんなことをやったのでは年金に影響しますから、それは、その年金保険料の減額分については一般会計から補てんをして、少なくとも要するに今私が申し上げた総世帯の四千万世帯というものがひとしくやはり所得減税があるときには税を払ってなくてもプラスになるというシステムをひとつこれから考えていただきたい。  簡単に四兆、五兆の減税というのは、それは可能でありましょうが、この皆さんのことが私は脱落していると思うのですね。それがやはり経済上の公正な対応でなければならぬという意味では、この課税問題に新しい観点から、政府の皆さんを含め、自民党の皆さんを含めて対応をしていく必要があるのではないかというのが私の今の課税問題に対する一つの考えでございますが、ひとつ林大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  49. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 堀議員からいろいろと御指摘ございました。率直に申しまして、私どもは今、所得減税をやることにつきましては否定的な考え方をいたしておるところでございます。今の経済情勢、先ほど総理から御答弁ありましたけれども、私は今の情勢をもってやるならば、現在の財政、予算その他の対策をもってやれば十分景気回復もやれる、また若干時間はかかるかもしれませんけれども、将来的にはうまい方向に、安定成長の軌道へ持っていける、こういうふうに考えておりますから、そういったふうな形で、言われているところの所得減税というのはどうかなということを改めて申し上げておきます。  しかし、その上で今の先生の御指摘でございまして、もしもやるならば、確かに所得減税で所得税を払っている人と払ってない人といろいろ差があるじゃないか、特に生活保護者であるとかどうだ、こういうふうなお話がございますから、私はそれは当然の御議論だろう、こう思います。むしろそういったことを、いろいろ考えていかなければならない点はあるだろう、こう思いますが、それならばそこに政府から何か支出を出すかということになると、じゃどのくらい出すのだとかどうだという話はいろいろまた議論のあるところだろう、こう思いますし、それから年金問題につきまして申し上げますならば、年金につきましては、国民年金については政府の方が今三分の一の国庫補助をやっております。これをどうするかという問題がある。私は基本的にはそこは、それをいじってやるというのは、年金制度が持っているところのいわゆる積立方式と申しますか、年金制度の本質に触れるような問題になるだろう、こう思っていますので、これも相当慎重に考えていかなければならない話じゃないかな。問題の御提起はわかりますけれども、いろいろそれぞれの問題におきまして、大変大きな問題を含んでいるということは申し上げておきたいと思います。
  50. 堀昌雄

    堀委員 私は長く大蔵委員会におりまして、税の公平その他の問題で、所得税というのは少なくとも総合所得にならなければなりませんけれども、現在は必ずしもそういうふうになっていない。総合所得にするためにはどうしても番号が要るんですよ。それを私は大蔵委員会で何回か言ってまいりまして、アメリカではソーシャル・セキュリティー・ナンバーということでそういういろんな金融資産の把握もきちんとできるとなっているのです。何か政府部内でも今の番号制についての御検討が行われているようでありますが、その番号のベースを、要するに住民登録の番号にするのか、年金番号にするのかというお話がありますが、私はこれはどうしても年金番号でなければならないと思うのですね。そして、もしこの年金番号で番号制ができましたら、私は、年金にさわ ることなく、要するに、アメリカでやったことがありますが、いわゆるマイナスタックスを下の方の所得税非課税者に行うことが可能になると思っているのですね。  マイナスタックスというのは、減税をするときに、減税をするというのは取るのを減らすのですけれども、マイナスタックスというのは、逆に国が減税に相当するような部分の費用を非納税者に渡すという意味で、アメリカではこれをマイナスタックスという言葉で一回実行したことがあるのでありますけれども、私はいろいろな経済的な問題については、やはり国民ひとしく、憲法十四条にいう法のもとに平等な対応を私どもはこの段階ではもっと真剣に考える必要があるのでないか、こんなふうに考えておりまして、そのためには、今の所得税の問題も、金融資産からの収入その他は皆源泉分離になっておりますけれども、税率からいいますと実は五〇%の人が二〇%の源泉徴収で済んでいるなどということはやはり所得税の体系としても問題がありますから、どうしても私は速やかに番号制を導入をして、そうして総合所得課税という所得税の原則をきちんとするということがまず必要だと思うのですね。  それからもう一つ、今の所得減税の中で、消費税は実は所得税の非課税の方も払っておられるわけですね。ですから、国に対して税を払っているけれども、所得税を払っている者だけが減税になるというのもやはり公平を欠きますので、そこで私は一九八五年の国会で、実はEC型付加価値税というものを提案をさせていただきました。このEC型付加価値税というのを私が提案しましたのは、税金を取ろうという話じゃないんです、実は。要するに、税を公正に納めていただきたいということを担保するために、インボイスをつけて、送り伝票をつけて、そうして取引の過程を国税庁が手に持っていて、コンピューターで試算をして、要するに申告漏れのないような申告所得税の体系をつくりたいというのが実は八五年の願いでございました。  そこで、ちょっと最近の状態を国税庁からいただいておるのでありますけれども、ちょっとそれをもう時間がありませんから読み上げますと、これは平成三年七月から平成四年六月までの間の実績でございますが、所得税の「実地調査」、「簡易な接触」、「調査等合計」、こういう欄になっておりますが、調査等件数は実は七十四万一千三百三十件と大変大きな数字でございます。実地調査というのが十六万三千八百九十四件ございまして、その中で申告漏れのあった件数が十五万二千七百七十三件、九〇・四五%の皆さんが申告漏れがあった。十六万人で九〇%ですからね。それで、簡易な接触という調べ方では、これはきっちり調べてないものですから、今の申告漏れのあった件数は五十七万二千二百十一件の中で三十六万七千百三で、その申告漏れの比率は六四・一五%、こういうことになっておりますね。  しかし、どちらにしても依然として大きな申告漏れが申告所得では行われているということは間違いがございません。ですから、そういう意味では、要するに今消費税が私の提案したのと似ても似つかない、インボイスのない一種のブックエントリーのようなものになっておりまして、これも実は資料を見ますと脱税がありまして、実地調査では六万四千二百六十七件調査したのに対して三万九千八百三十七件、六二%が実はやはり消費税でも脱税が行われているのです。これは業者の側の申告の問題でありますけれども。  ですから私は、そういう意味では、やはり今の消費税というのをインボイスをつけるということを、ひとつぜひ私が提案した原点に返ってやっていただきたい、それが一つ。ただし、私は山中貞則さんとこの問題について最初にお話をしたときに、山中さんが私にこういうことを言われました。自分は長いこと税金の問題をやってきたけれども、我々人間が生きていくために必要なものには税金をかけないというのが私の基本的な考えだ、こういうふうにおっしゃいました。しかし、私が提案しました後で売上税というこれはインボイスのついた税制が提案されましたけれども、これはもう例外がいっぱい広がってどうにもならないので御承知のような経過になりました。  そこで私は、次にやるのはひとつ山中さん、あなたのお話わかるけれども、例外なしにしようじゃありませんかという話をいたしまして、例外なしにするかわりに、しかし税率は、私最初は五%と言っていたのですが、三%にしたいと思いますと。山中さんが、どうして堀さん、それは三%だと聞かれましたから、当時のCPIの上昇は日本では一%以内だったわけです。ところがアメリカのCPI、四・五%、ドイツは二%程度でありますが、その他の欧州のフランス、イギリスその他の国は全部四%台の実はCPIの上昇だったわけであります。そこで、日本は一%以内だから、三%の要するに付加価値税の税率というなら物価を含めて四%だから、よその国のCPIの上昇と思っていただいても問題ないのじゃないだろうか、そのかわり例外なしにしたいというお話をしましたら、山中さんが、うん、それならわかる、こういうお話になったのでありますが、山中さんは今のお考えがございました。  そこで私、この前イギリスに行っていろいろ調べてまいりまして、今度はまたECは付加価値税、また税率も上がりますし大変な状態でありますけれども、イギリスは御承知のようにゼロ税率という制度をとっております。そこで大蔵省の関係者を含めて、日本もやはりゼロ税率にしたいなという話をしたら、その大蔵省の主税局の関係者が、先生、ゼロ税率なんというのは税務署職員の物すごい手数がかかって、これはもう大変な制度ですから、先生、そのゼロ税率だけはやめてくださいという話ですから、まあ税務職員が過重な負担になるよりも、それなら根っこから、要するに生鮮食料品、それから生鮮食料品を乾燥したもの、それから塩干、塩物にしたもの、それから冷凍したもの、本体は生鮮食料品でありますが、それを乾燥し、冷凍し、あるいは塩蔵したものの範囲に限って食料品非課税ということにして、そうしてひとつインボイスをつけて、この今の大変な申告漏れを担保するように、今の消費税の改革をひとつ皆さんで検討をしていただけないかと八五年に提案をして、結果的には消費税ができたのですが、九三年にもう一遍――そうしてこれで入った税収は、八五年のときには基礎年金目的税にしてください、こういうふうに限定しておりましたが、今度は幅を広げて社会保障目的税にしてください、年金も医療も老人福祉もすべてを包含した社会保障目的税にしてください、皆さんからいただいた、まあ消費税でも付加価値税でもいいですが、この税は全部皆さんに社会保障でお返しをいたしますというシステムにして、今の食料品の非課税及びインボイスの導入を行っていただきたい、こう思うのでありますが、まず林大蔵大臣の御答弁をいただきます。
  51. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 最初のお話で、納税者番号制度というお話もございました。これにつきましてもお答えしておきますが、政府の税制調査会でいろいろとこの辺の問題につきましては検討しておりまして、委員御指摘のように、住民台帳でやるのか、セキュリティー番号でやるのか、いろいろな問題がありますから、その点を鋭意検討してもらっているところでありまして、私も税の公平を確保するというところになれば、やはり脱税者がおってはおかしい、こういうこともございますし、また、税のいろんな所得についての公平を図るためにはそういった方向でやった方がいいのではないか。もう一つ言いますと、それによって国民のプライバシーをどうするかという問題もありますから、そういったことを考えながらやっていかなければならない問題であるというふうに思っておるところでございます。  それから、今の消費税のお話。私も先生から、ちょうどやるときに、そのEC型付加価値税というお話をいろいろ聞かせていただきました。時間もあれですから、詳しくなりますから、余り詳しいことをお答え申し上げませんけれども、インボイス方式の導入も党としていろいろそのときも考 えたところであります。ただ、何しろやはり広く薄いところの税制をやっていくということがこれからの高齢化社会に対してはどうしても必要だろう、こういうふうな形でいろんな点で考えていく、まず、導入することのためにいろんな点で御理解をいただく、またわかっていただくということが必要だろうというような観点もございまして、また、中小企業者に対することも配慮いたしまして、ああいった制度をやってきたところでございます。そういった意味で、インボイスの問題というのは、私は、ヨーロッパもやっているわけですから、日本だけができないという話でもないんだろう、こう思いますから、その点も検討させていただきたいと思います。  それから、生鮮食料品のお話でございますが、先ほどちょっとお話ありましたゼロ税率などということにしますと、それをどこまでやるか。例えば、生鮮食料品を運んだところの運送費をどう、そうでないところの運送費をどこまで税金をまけるかなどということになりますと、大変な複雑なことが出てくるわけでございますから、その辺も法律の技術の問題として私は考えていかなくちゃならないのだろうと思います。  社会福祉の問題、目的税にするというのも、また、これはやったときにはやはり社会福祉が相当必要である、高齢化の時代を控えて必要である、こういうことでありましたけれども、これを目的税にいたしますと、もうそれだけに限定されちゃう。逆の意味もございまして、私は、今のような格好で、確かに国の財政全体としては社会福祉と高齢化社会の費用がかさんでいく、こういうことの中で、こうした税金を扱っていくというのでいいのではないかなと考えております。  先生から、もう長年のこれは御提案でございますし、私も非常によく聞いておりますから、常に私たちとしては先生の御提言、十分に考えていろいろと勉強させていただきたい、こういうふうに思っております。
  52. 堀昌雄

    堀委員 時間がもうわずかになりました。  けさの、日本経済新聞を見ますと、「公定歩合、週内にも下げ〇・七五%有力、年二・五%に」、こう新聞が出ておるわけでございます。現在、いろんな情勢の中で金利が下がることは、ある意味では経済関係にとってはプラスの問題だろうと思うのでありますけれども一つ問題なのは、金利が下がりますと今度は貯金金利も下がるわけでございますね。  実は、私は、福田さんが大蔵大臣をしておられるときに同じような情勢がございましたので、福田さんのところへ武藤さんと一緒に行きまして、ひとつ福祉定期預金というものをつくってくださいということをお願いをいたしまして、要するに、高年齢層の皆さんあるいは生活保護とか、今の所得の少ない皆さんにひとつ一般の金利よりは高い定期預金をつくるということで制度をつくっていただいて、それは今日まだ現存しておるわけです。ただ、福田さんが大蔵大臣をしておられたころというともう二十年近くになりますかね、ですから国民の皆さんはこれを御存じありません。  ですから、金利の低下は結構ですけれども、さっきから私が申し上げておる、弱い立場におられる、家計としても十分な収入が、あるいは高齢であるとか病弱であるとか母子家庭であるとか、いろいろな諸条件で恵まれない皆さんに対しては、やはり何らかの対応を講じておくことは極めて重要だと私は考えておりまして、もう一遍、この福祉定期預金というものが制度として今あるわけですから、政府としても、今度金利を下げるときにはひとつぜひこういう対象の皆さんはここに、福祉定期預金にあれすれば、ほかの一般の定期預金よりは高い金利がつくんですよと。金利の問題は、そのときと今とでは情勢が違いますから、新しい段階で、最もそういう福祉定期を必要とする皆さんに必要な範囲の金利をまた新たに考えればいい、こう考えておりますので、この今の新聞で年二・五%なんということになりますと、これにつれて預金金利が下がりますから、それはそういう所得の少ない皆さんには大きな影響を与えると思いますので、今、福祉定期預金について、もう一遍現時点で洗い直して、今の低所得の皆さんにマイナスにならないような対応をひとつお願いをいたしたいと思うのでありますが、林大蔵大臣のお考えを伺います。
  53. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 弱者に対する福祉定期預金というお話でございますが、私は、余りこれが今使われていないんじゃないかな、こう思っております。また、使われていないということがいかなる原因にあるのか、また、現実に弱い方に貯金をしろと言ったところでなかなかできないということも、私は現実問題としてあるだろうと思うのです。本当でありますならば、生活保護世帯は生活保護費であるとか、老齢者は老齢者に対して年金であるとか、母子家庭は母子家庭でそれぞれ金を出しておりますから、そういったことと今のお話のような話がどういうふうになっていくのか、さらに検討してみなければならない。私も弱者を何とかしなければならないという気持ちは持っておりますが、それが公定歩合の引き下げ云々とどういう影響をしてくるのか、もう少し私も勉強してみたいなと思っております。詳しくは、何でしたら政府委員から答弁させますが、私はそういうふうな気持ちを持っていることだけ申し上げておきたいと思います。
  54. 堀昌雄

    堀委員 時間もほとんど終わりましたので、最後に宮澤総理大臣に伺っておきたいのでありますけれども、要するに、私どもは国際的に見て非常に、もう日本だけで物が処理できるという時代ではございません。しかし、アジアの諸国は、日本がかつて侵略をしたことについて何らの反省をしていないというふうにアジアの諸国の皆さんは考えているわけであります。  私、韓国へ行きましたら、韓国では一九一〇年以来の日韓併合によるところの極めて厳しい官憲の弾圧の問題を事つまびらかに伺いました。要するに、名字も変え、名前も変え、言葉も日本語にしろなどというちょっと考えられないほどのことがあの日韓併合の中で行われておるということについては、私どもは厳しく反省をしなければならぬと思っているのであります。  詳しくは、実は今度の分科会で森山文部大臣にお尋ねをいたしますが、私どもは、日本の過去にアジアの皆さんに対してこのような侵略行為でこのような被害を与えたということをやはり歴史教育の中に示すことは必要ではないのか。  ドイツではこれをちゃんとやっております。前のシュミット首相が私たちに、堀さん、我々には信頼される友人の国があるけれども日本は本当に信頼される友人の国がありますか、こう聞かれたことがあります。それは今の歴史教育の中で私たちが何らの反省をしていないということに関係をしておりますので、ひとつこれは分科会で森山文部大臣に提案をさせていただきますが、最後に総理から、そういう私どもが過去の戦争で犯した過ちは過ちとして認めない限り、本当にアジアの諸国は心を開いて日本との友好が深まると思いませんので、その点についてのひとつ明確な御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  55. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 我が国が過去においてまことにアジアの人々に耐えがたい苦痛を与えたことは事実でありまして、そのことは政府もいろいろな機会に遺憾の意を表明してまいりました。  昨年、私、韓国に参りましたときにも、そういうことを率直に認めて陳謝をいたしたわけでございますが、また、先般も東南アジアにおきまして、同様の気持ちでこの問題について私の考えを述べております。  堀委員の言われますように、一つはやはり、これから我が国を担う若い人たちに我が国の過去におけるそのような問題について十分認識を持ってもらう必要がある。それは、私どもはまだ記憶しておりますけれども、若い世代はそうでございませんから、やはり一つは教育の問題であろうと思います。  実は先般、アジアに参りましたときにも、そういう趣旨のことをバンコクの演説で申しました。堀委員の御心配のような、我々の後に続く人たち に日本の過去におけるそのような過ちについて十分認識を持ってもらうということが、これからそれらの国と我々がつき合っていくために最も大切なことの一つであるというふうに考えております。
  56. 堀昌雄

    堀委員 終わります。
  57. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて堀君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ―――――◇―――――     午後一時開議
  58. 粕谷茂

    粕谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。三野優美君。
  59. 三野優美

    ○三野委員 社会党の三野です。予算委員会、初めて質問いたしますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  まず最初にお断りしたいのは、実はせんだって本委員会で、自民党の委員から、正しい日本語、美しい日本語をぜひ国民に教えるという話がありまして、まことに感銘を受けて聞いたわけですが、さて、困ったなと。実は私はそういう話を聞いて、私のところの部会長なり理事の方から、おまえ、きょう質問せよと言われたものですから、実は正しい日本語でしろと言われると、私はもう熱出して寝るしかないなと思って、ゆうべは実は寝ずに考えちゃったわけです。  実は私は、山の中の百姓でして、しかも讃岐のダムの奥でありますので、学校も行っていません。したがって、残念ながら美しい、正しい日本語を知らないわけでありまして、讃岐語と百姓語が標準語だと思っているものですから、そういう点ではまことに質問の中で皆さんに失礼な言葉が出るかもわかりませんが、その点ひとつお許しをいただきたいと思うのです。過去にもそういうことでおしかりを受けたことがありますが、その点は、もうこれはひとつお許しをいただきたいと思います。  まず最初に、私どもの見解を述べて、宮澤総理にまず聞きたいと思うのは、実はけさの新聞を見ますと、我が党の首脳部が米の自由化について何か誤解を受けるような発言をした、こういう話がございました。もし、我が党の首脳部に米自由化について誤解を受けるような発言があったとするならば、それはまことに党として遺憾であります。  私どもは、私は一党員でありますが、去る党の中央委員会で、国会決議に基づいて米は絶対に自由化はまかりならぬ、こういう決議をしているわけでありまして、この点はいかに党の首脳部の発言であったとしてみても、それは誤解を受けるような発言であったとすれば取り消します。これは党を代表して、私はこの際申し上げておきたいと思うのであります。  さて、実は、この米の問題は単に米なり食糧だけではない、これはもう総理も御承知のとおりです。この間も私は、自民党の委員の方からまことに立派な質問をしていただいて勉強になりました。私も地域で座談会では、人口が毎年一億ずつふえちゃうよ、五十年後には世界じゅう食うものがなくなっちゃうんだ。五十年後といえば、私の息子はまだ生きているであろう、今かわいいあの孫の時代はもう中堅なんであります。そのときに世界じゅうが食糧難で大変困ることがもうだれにもわかっておりながら、一億二千万がこの谷と山との間を、小さい島を掘って生活をしている。しかも、今でさえ早くもカロリーで四七、八%と言われる、穀物で三〇%の自給率だと言われるわけですね。  そういうことを考えてみると、まさに命にかかわる問題ですから、自動車や電機とは違いますよ。かてて加えて、もうこれは随分ここでも議論されたと思いますが、地球上全体の環境の問題であるし、日本列島が今、既にもう山から島から田畑が荒れ続けている。山村では、私の四国でもやはり百姓する跡取りがなくて過疎が続いている。この現状を見るときに、やはり今の世界の食糧、とりわけ日本のこの環境というものを考えてみると、まさに、言い過ぎかもわからぬけれども、一粒たりとも米を入れることはまかりならぬ。  それは他の産業と違うということを私は宮澤総理自身がアメリカなりヨーロッパに対してやはり説得しなければならぬと思うのです。そして、むしろ自給率を全体として高めて、今だって餓死している人がおるわけですから、できるだけ食糧は地球全体のものとして、生産できるところは精いっぱいして、やはり利害関係だけではなしに、一人もかつれて死なないように援助するべきではないか。こういうことで、私は、それこそ近くあるサミットにおいては、その点を強調して理解を求めるべきではないのか。自動車とか電機だとかいう話とは違うんだということを言うべきだと思いますが、総理、どうでしょう。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ただいまもお話がございました。また先般も、御指摘のようにこの委員会で御議論がございましたように、人口と食糧との関係、殊に人口は急増し始めておりますので、それとの関連における問題あるいはまた環境問題について非常にお互いの関心が高くなりました現在、農村あるいは水田というようなものが環境に与える影響等々、いろいろな観点がこの問題には確かにございます。  そういう意味で、広く将来を見ながらとらえなければならない問題である点は、私は御指摘のとおりと思います。国会におきましてたびたび御決議がありましたのも、そういう観点をも踏まえてのことかと思いますので、政府といたしましては、十分それらのことも考えながら対処をいたさなければならないと思っております。
  61. 三野優美

    ○三野委員 総理、この点はしかとひとつお願いをして、サミットでこの問題だけはすべての国民にわかるようにちゃんと言ってもらいたいということをまず申し上げておきたいと思います。  次に、これは急に申しわけありませんが、建設大臣、御承知のように、二月一日の夜、東京都かで水道工事の爆発で四名が亡くなりました。これを見ると、労働大臣は行かれたようですけれども、建設大臣は行っていないのです。御承知のように、あなたがかつて建設委員長をしていた当時、私も建設委員会でお世話になったことがあるのですが、近年非常に大災害が多い。かつてはあの松戸の事故、自衛隊の体育館の事故。見てみると、ここで起きている事故というのは、まさに突発的なものではなしに、人的な不備が明らかになっている。今度だって、当然中央監視室におらなければならぬにもかかわらずおらずに、しかも合理化の結果でしょう、監視員たる者が他の現場へ行って測量している途中にガスが充満してきて爆発してきた。まさに守るべきことを守らずにやっているわけ。労働者が言ってみても、なかなかそうはいかない。  それで、私はこれらの一連の事件を見ていますと、実は被害に遭っているのは、東北や九州や四国で農業がつぶされて、稼がなければ飯を食えない兼業農家の人たち、いや専業農家なんだけれども、それで出稼ぎに来た人が皆犠牲になっているわけ。今度もそうですね。それで、私はどうもこれらの一連の事故を見ていると、すべてがそうなんですが、発注者がその安全についての責任体制を持っておらない。今の制度は、受注者、仕事を受注する者の責任になっているわけ。発注者の管理監督というのは全くないわけですよ。過去の事件は全部そうですね。かてて加えて、悪いけれども、これを監督すべき建設省も、ほかの省庁と同じように行革で人減らしばかりされる。そういう指導監督をする能力さえも建設省も失ってしまっている。しかも、発注者の責任というものが明確にされない。そして、結局は嫁さんや子供を地元に残して出稼ぎに来た僻地の百姓が犠牲になる。  どうですか、建設大臣。あなた、これらについて、やはり今までとは角度を変えた、発注者も責任を持つんだ、こういう形にやりかえるべきではないかと思うのですが、ひとつこの点について建 設大臣の意見を聞いておきましょう。
  62. 中村喜四郎

    ○中村国務大臣 このたびの事故に際しましては、お亡くなりになりました皆様方の御冥福をお祈りしながら、本当にこういった事故が起こったということに対しては極めて残念であり、建設省といたしましては、安全対策というものを機会あるごとに徹底してきたところでありますが、こうした事故が起こったということを重大に認識いたしまして、今後対応を検討していかなければならない、このように考えております。  先生もう御承知のとおり、事故の原因、責任につきましては、労働基準監督署、そして警察において今調査をしているところでありますが、この原因を究明しながら、我々は今までの安全対策の中で進めてきた重大な手続をきちっと確認しながら、さらに今後こういった事故が起こらないようにしていくためには、施工条件の複雑化、労働者の高齢化、工事環境の変化に対応する安全対策が重要であると考えています。特に、一人一人の安全対策、またチームワークの中での安全対策、そして今御指摘をいただきましたようないわゆる発注する側の工事の積算のあり方、工期の設定のあり方、こうしたものが、事故を起こさないような環境づくりというものにやはり十分に対応していかなければならない、このように考えております。  特に、今回の場合は、沖積層部においてのガスが出てきたということが原因ではなかろうかと言われておりますので、その辺は原因がはっきりいたしませんから今の段階では明確に申し上げられませんが、シールド工法によって他の工事も行われているわけでありますので、この機会に安全を点検し、指導を徹底していきたい、このように考えております。
  63. 三野優美

    ○三野委員 建設大臣、もちろん労働基準監督署だとかさまざまな機関があるけれども、やはり建設業については建設省がもっと責任を負わなければいかぬですよ。やはりそうでないと、こういうことが次々起こる。しかも、こういう事件が起きたらば、東京で起きたら東京の範囲で二十日か十五日か、影響のないように指名停止するだけで、ほとんどこういう事件が起きた場合にも責任は問わないというのが――形式的にはとっていますよ。何の実害がないような処置しかしないのですよ。ですから、もうちょっとその点については、むしろ私は建設省が前に出るべきだということを申し上げておきたいと思います。  さて、続いて政治改革に関連をしまして、国民の間に大変政治不信が出ているわけですが、まず五億円の問題についてお聞きしたいと思うのです。  この問題はしばしば議論されてきましたけれども、国民の大きな批判の中で事が進められて、検察は結局は不起訴という結論を出しました。  実は、法務大臣が今度かわったときに、私は徳島に近いものですから、女房も徳島県ですし、お寺も徳島ですから、それで徳島へよく行くのですが、徳島の人が、今度は三野さん、大臣がかわったから、今度はしゃんとしておるから心配ない。ぞ、こう言うのですよ、徳島の人が。ああ、そうかいな、そう思っておるわね、こう言った。私も、検察庁の対応の仕方は今まで不十分だったと。法務大臣は今度は警察庁の方ですから、少し親戚だけれども、余り身内ではないものだから、これはちょっとちゃんとやるかなと思っていたところが、ぐずぐずといってしまって、結論が出る前に、はやあなたがしゃべるというようなことになってしまって、これは非常に困ったものだと思っているわけです。  さて、そこで刑事局長に聞きますが、自民党副総裁であった金丸さんは、佐川の渡邊社長から献金をしたいという話があった。しかし、いや、余り銭は要らぬぞな、こう言ったと金丸さんは言っている。しかし、ある日突然事務所に金が届いていたと。余り金額が大きいものですから、これは私個人ではなしに仲間の衆にくれたものだな、陣中見舞いだな、こう思って、それならばみんな分けたらどうや、こういう話を私聞いたことがあるのです。そこで、その指示を受けた生原さんが竹下派の六十人くらいの人に分けた、こう言う。  いずれにしても、五億円が金丸事務所に届いた、それは金丸さんも確認をした、それを竹下派と言われる、新人中心でしょうが、大臣経験者以外の人に分けろと言った。  東京地検はお調べになって、あそこの事務所へ来たことだけははっきりしているのですが、分けたのですか、分けていなかったのですか、これをちょっと聞いておきましょう。
  64. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今委員が御指摘になっておられます五億円の使途でございますけれども、これは、検察当局が金丸前議員及びこの五億円の分配を受けたと取りざたされている約六十名の候補者に対する政治資金規正法の量的制限違反事件及び収支報告書不記載事件、それと所得税法違反事件等の告発を受理いたしまして、必要な捜査を行ってきたところでございます。  このうち、委員もう御案内のとおり、量的制限違反事件につきましては、この五億円は金丸前議員から一たんその指定団体である新国土開発研究会に寄附されて、その団体から約六十名の候補者に分配されたというふうに見られる。告発事実にあるように、五億円が金丸前議員から直接に約六十名の候補者に分配されたというふうに認定するに足る証拠はないという理由によりまして、さきに、検察当局が一月二十九日の日に再度の不起訴処分を行ったという報告を受けているわけでございます。  一方、残りの告発事件であります政治資金規正法の収支報告書不記載事件や所得税法違反事件等につきましては、検察当局が約六十名の候補者の特定等のために幅広く捜査をなお続けているところでございますので、今申し上げた以上に、御指摘の五億円の使途についてのお答えは、これ以上のお答えは御遠慮させていただきたいというふうに思うわけでございます。
  65. 三野優美

    ○三野委員 そうしますと、金丸さんの新国土なんとかという指定団体に入ったのは何月何日で、そこから出たのは、何月何日に幾らずつ出ていますか。これをひとつ聞かせてもらいましょう。――自治省でもどっちでもいいよ。書いたものを見せてもらおう。
  66. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今お答え申し上げましたように、この五億円が一たん金丸前議員の政治活動に関する寄附として金丸前議員に寄附された。その後で、金丸前議員からその金丸前議員の指定団体である新国土開発研究会に寄附された。その団体から約六十名の候補者に分配されたというふうに見られるということまではお答えできるわけでございますけれども、それ以上のことはお答えいたしかねるわけでございます。(三野委員「どうして」と呼ぶ)それは、先ほど申し上げましたように、現在その点も含めて、この政治資金規正法上の収支報告書不記載罪あるいは所得税法違反事件等の関係でなお捜査を続けているところでございまして、今まさしく委員が御指摘になっておられる点も含めて、なお捜査を、捜査の対象として続けているということでございます。
  67. 三野優美

    ○三野委員 東京佐川から金丸先生個人に五億円渡したという。それを受け取った。それを何日に、どこで受け取って、その受け取った金丸先生が新国土開発、政治団体、そこに何日に入れてるの、それを聞いているわけなんです。そして、新国土開発に入っていますね。それをちょっと、いつ入っているというのをちゃんとしてください。  それで、入ったものが、それから向こうは六十人に渡されたと言われるんだけれども、捜査しているけれども、その指定団体から出ているの、出てないの、自治省。質問に答えてください。
  68. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 これは政治資金規正法上の収支報告書にかかわる問題であるというように理解をいたしておりますけれども、現在手元に資料ございませんけれども、私の記憶では、これらにつきましての記載はないというように記憶をいたしております。
  69. 三野優美

    ○三野委員 ないと言っているかね、東京地検、検察庁。記載がないと言っている。記載がないということになると、金丸事務所へ来たことだけは間違いないわな、これはない。じゃ、金丸事務所へ来て、いわば政治資金規正法に基づいて新国土開発に入った記載がなかったわけ。自治省、それは間違いないね。なかったとすれば、ポケットに残っているじゃない。そこのところを私は聞いているわけ。国土開発に入金した記載がなかったの、それとも国土開発から出た記載もないの、どっちなの。自治省、もう一遍。
  70. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 ちょっと手元に資料がございませんので、先ほどお答えいたしましたような私の記憶と申しますか、それでお答えさしていただきますと、記載はないというように記憶をいたしております。
  71. 三野優美

    ○三野委員 新国土開発へも行ってない。そうすると、金丸先生が受け取っただけははっきりした。政治資金として日本列島のどこにもない。そうすると、金丸先生に残っているんじゃないの。だって、受け取ったって政治資金で報告した人も全国どこにもない。残っているんじゃないの。  さて国税庁、どこもないで金丸先生の懐に残っているんだよ。税金をどうするの。国民は、そこのところなんだ。政治資金としてそれぞれにちゃんと記載されて、それぞれのルートを通じて政治活動に使われておっていれば、いわば量的違反。六十人もらった人も量的違反。これで二十万になるかもわからぬわね。二十万かもしらぬ。それなのか。そうでなしに、ポケットへ行っておったとすれば、税金は払ってもらうか、どっちかしてもらわなきゃ困るわけ。国税庁、どうする。
  72. 瀧川哲男

    ○瀧川政府委員 御指摘の点は個別の問題でございますので、具体的な答弁は差し控えさせていただいておるところでございますが、一般論として申し上げますと、政治家個人が提供を受けた政治資金につきまして、これは所得税の課税上どうなるかといいますと、それは雑所得の収入として取り扱うこととされているわけでございます。その政治資金収入から、その政治家が行いました政治活動に使われたそういった金額を控除いたしまして、残っていればそれは雑所得として課税される。したがいまして、政治家個人が受けた政治資金の全額をもし政治活動に使ったといった場合には、課税関係は起きないわけになるわけでございますが、例えばそれを自分のために私的な消費に使ってしまった、あるいは私的財産の形成に使ってしまったということになりますれば、それは当然課税の対象になる。  また、政治資金を政治活動のために使用することを託された秘書さん等が、その政治資金を例えば自己のために使っちゃったというようなことになりますれば、その秘書等につきまして課税関係が生ずる、こういうことになります。
  73. 三野優美

    ○三野委員 そんなこと聞いておらぬがね。いわば政治資金であれば、我々のところも言ってくるわな。ちゃんとおまえ、もろうたの全部報告せいよと。使い先も報告せいよ、これが政治資金だ。どこも政治資金は行ってない。私的な財産になったんじゃないの。そんな答弁はだめ。答弁になっとらぬ。できません、これでは。ちゃんと質問に対して答えてもらわな困るがね。そんなの困る。そんな相手が子供みたいな話がどこに通るの。だめよ。質問に対して答えろよ。  我々百姓にもわかるように言えよ。おまえ、ようけ学校へ行っておるんじゃろうが。学校へようけ行っておる者は、学のない者にわかるように説明するのが責任じゃ、学校へ行っておる者の。ちゃんと答えてくれぬかね。そんなもので済むか、おまえ。どないして説明するの、国民に。簡単なことでないか。――一般論じゃない、具体的なことを聞きよるんじゃがね。個別なこと聞きよるんよ。答えなきゃだめ。記載しとらぬと言いよるでないの。――そんなものわかっとる、政治資金でないがな。政治資金でないのがわかっとるのに、届けしてないのに。政治資金でないがね。そんなもの、おまえ、子供みたいに言うな。届けでなかったら政治資金でないがね。そんなものが通るか。政治資金でないじゃない。(発言する者あり)
  74. 粕谷茂

    粕谷委員長 ちょっと三野委員にお尋ねいたしますが、要するに政治団体に入ってない、記載はされてない、そのされてない金はあるのかないのか、こういうことをお尋ねですか。そうでなくて、記載されてないからそれは所得とみなされて政治献金ではない、そう言っているのですか、どっちなんですか。(三野委員「金丸事務所に残っとるんじゃろ」と呼ぶ)いやいや、残る金が政治資金規正法にかなっているかどうかは、委員長が一々答えるのはおかしい話でありますが、しかしこれは質問趣旨が徹底しませんと、それは答弁者もなかなか正確に答えられませんから、それでお尋ねしているのです。  もう一回、じゃ御質問をしてください。
  75. 三野優美

    ○三野委員 委員長に言います。  東京佐川の渡邊さんから五億円を受け取った、これは金丸さんが認めていますからね。公的な場で言っているから、受け取ったのです。それは、国土開発何とかというところも記載されてないというんですね、さっき聞くと。もちろんその先はなお記載されてないわね。そうすると、金丸さん個人が受け取ったことになる、記載されてないんですから。  政治資金というのは、全部記載しなきゃならぬわけ。記載されて初めて政治資金になる。だれかが私のポケットに入れたからといって、これは政治資金になるわけじゃない。いいですか。それは、私のポケットへ入れてくれたのは、私的にくれたわけ。そうすると、その五億円は金丸事務所に残っているんですねと、こう聞いているわけなんです。それ以上のことはないのです。
  76. 粕谷茂

    粕谷委員長 選挙部長に私から申し上げます。  政治献金をされたものが記載をされてないといった場合には、政治献金でなくて一般的な所得とされるのかどうか、その辺を明確に答弁をすることでこの問題は処理できるのではないかと思います。  選挙部長
  77. 佐野徹治

    ○佐野(徹)政府委員 私どもの方では、自治大臣が政治資金の収支報告書を受理をいたしますので、それに記載があるかどうか、これは公表もいたしておりますので、その点につきましてのお答えはできるわけでございます。  受理されたお金が政治資金であるかどうか、政治活動に関する寄附であるかどうか、これは事実関係、実態に即して判断されるべき問題であると考えておる次第でございます。
  78. 三野優美

    ○三野委員 今話があったように、五億円来たのが政治資金であるかどうかはっきりさすのは、政治資金規正法に基づいて届け出ることによってはっきりするわけ。それが届け出てなければ、私のポケットへはめて、政治資金であるかどうかわからない。それは政治資金とは言えない。私個人がもらったことになるわけ。ですから、それは政治資金ではなしに、五億円、金丸事務所にあるんですねと、それを私は刑事局長に聞いたわけです。あなた、お調べになって、もう決着したと、二十万で。しているんだから、だから政治資金なんて勝手にそんなに解釈できるはずがないのです。  政治資金規正法に記載されたときに初めて政治資金と言えるのであって、載らなければ政治資金なんて勝手に、後から、いや、あれは政治資金であったなんて勝手な解釈ができるはずがない。だから、それは個人的な献金で、個人的な受け取りですから、金丸さんが受け取ったのか、生原さんが受け取ったのか、あそこの事務所にあるはずです。それを聞きよるわけだ。だから、その答えが出るまでだめだ。不記載であるかどうかなんて、そんなのわかるか。政治資金だなんてだれも言ってないもの。だれが政治資金と認めるんだ。
  79. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今の委員の御指摘の点のうち、収支報告書に記載されていない場合には政治活動に関する寄附とは見られないんだという点は、そこはちょっと誤解があるんだろうと思うのです。  端的に申し上げますと、政治資金の収支報告書に記載してないからといって、必ずしもそれが政治活動に関する寄附とはならないわけではないわけですね。その証拠に、これは改めて申すまでもございませんけれども、収支報告書の不記載罪というのがあるわけでございます。
  80. 三野優美

    ○三野委員 じゃ聞くが、あなた、記載されてないけれども五億円は政治資金だというと、政治資金のどこに使うたのです。それがはっきりせなんだら、あなた、政治資金と言えぬじゃないか。言うてみい。どこへ使うた、五億円の行方。それなら明らかになるんだ。政治資金をどこに使うた。勝手に説明したっていくか。
  81. 濱邦久

    ○濱政府委員 まず、今の委員の御質問趣旨をちょっと確かめさせていただきますけれども、確認した上で正確なお答えをしなければなりませんので。  要するに、収支報告書にこの五億円の入出金に関する記載がないじゃないか、だから、指定団体に入ったということは、指定団体に入った政治資金というふうには言えないんじゃないかと、こういう御趣旨のお尋ねかと思うわけでございます。違いますか。
  82. 三野優美

    ○三野委員 違う。五億円、金丸さんの事務所、受け取っただろう。だから私が言ったのは、あなたが言うように、それが国土開発何とかいう政治団体に入ったというのだったら、いつ入ってどこの通帳にあったのと、これを聞きよるわけ。それがどう政治活動に使われていると、そこがはっきりしなければ政治資金と言えぬじゃないの。自治省の方は、どこも記載ありませんと、こう言う。記載がないのに、政治活動に使うたという証拠、どこにあるの。それをちゃんとしてもらわぬと、あなた、進まぬがな。それをちゃんとしてくれよ。それまでだめや。
  83. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  まず、委員のお尋ねにかみ合っているかどうかも含めて私からお答え申し上げますけれども、要するに、政治団体に対してなされる寄附、これは それだけで政治活動に関する寄附、こういうことになるわけです。そこを、そういうことを申し上げているのです。(三野委員「入っているの。入っていないと言っている」と呼ぶ)いや、ですから、そこは、委員は指定団体に入ってないんじゃないか、こういうことをおっしゃっているわけでしょう。自治省御当局からお答えがあったのは、要するに、収支報告書にそういう記載がなかったというお答えであるわけです。ですから問題は、指定団体に入ったかどうかということは、先ほど自治省の御当局からもお答えありましたように、実態として指定団体に入ったかどうかということを判断しなければならぬ、こういうことになるわけですね。  じゃ、もう少し詳しく御説明させていただこうかと思います。(発言する者あり)
  84. 粕谷茂

    粕谷委員長 御静粛にお願いします。
  85. 濱邦久

    ○濱政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、政治資金規正法では、指定団体も含めた政治団体の収支報告書に係る不記載罪というものがあるわけでございますから、政治団体においてもその公表されない裏金があり得るということは、そういうことを意味していることになるわけですね。  ですから、それは委員のお尋ねにも関連するわけですけれども、先般の検察審査会の議決で指摘しておられるのも、金丸前議員から直接約六十人の候補者に分配されたのではないかという疑いがあるという指摘であるわけですね。ですから、委員が前提としておっしゃっておられる、収支報告書に記載がないから政治活動に関する寄附ではないんじゃないかという点は、ちょっと誤解があるということを申し上げているのです。
  86. 三野優美

    ○三野委員 じゃ聞きますが、収支報告書に報告がない、ないけれども指定団体に五億入っていたの。入っていたという何か証明ある。それをまず出してください。
  87. 濱邦久

    ○濱政府委員 先ほど申し上げましたように、検察審査会の不起訴不当の議決、今申しました趣旨の指摘をも含めた不起訴不当の議決を受けまして捜査をした結果、金丸前議員からその指定団体に入れられたというふうに見られるという判断を検察当局において行ったわけでございます。その証拠関係の内容について立ち入って詳しいお答えはいたしかねますけれども、ある程度の時間をいただきますれば、私の方から御説明を申し上げたいと思います。
  88. 三野優美

    ○三野委員 もう捜査打ち切ったわけなんですよ、この限りにおいては。したがって、隠す必要はないのであって、もし、収支報告書による届け出はなかったけれども指定団体に入っておったというのであれば、何月何日どこのに入っておったの、それをやはりしてもらわぬといかぬわな。
  89. 濱邦久

    ○濱政府委員 まず、先ほど私がお答え申し上げましたように、この五億円をめぐる事件につきましては、その五億円の使途をめぐりまして、先ほど申し上げました政治資金規正法上の収支報告書の不記載罪等の告発事件についてなお捜査を進めている段階でございます。  したがいまして、この今御指摘の点を含めまして、証拠関係の内容に立ち入ったお答えはいたしかねるということでございます。(発言する者あり)
  90. 粕谷茂

    粕谷委員長 ただいまの件につきまして、刑事局長かち再度答弁をさせます。  濱刑事局長
  91. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  まず、委員がお尋ねになっておられます五億円がいつ金丸前議員に入ったかという点につきましては、これはもう委員も御案内のとおり、確定いたしました略式命令裁判の中で、平成二年一月中旬ころ、金丸前議員の事務所で金丸前議員と生原元秘書が共謀して受け取ったということになっているわけでございます。  それから、今委員がお尋ねになっておられます、金丸前議員から一たんその指定団体に入ったと見られるということについて御説明申し上げるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、私が裏金と申し上げたのは、要するに、政治団体に入ったけれども、その収支報告に記載されていないという意味で裏金というふうに申し上げているわけでございますが、そういう意味で、政治団体においても公表されない裏金があり得るということを先ほど申し上げたわけでございます。  それで、この政治団体に裏金があり得るとしても、本件では指定団体の収支報告書に五億円に関する記載がないんだから、そのことを根拠に本件五億円が指定団体の裏金ではなくて金丸前議員個人の裏金のまま支出されたと解することができるかということが問題になるわけですね。ということについてをも含めて、先ほど申しましたように、東京地検において、証拠関係から、収支報告書に記載はないけれども、金丸前議員の指定団体に入ったと見られるという認定をしたというふうに報告を受けておるわけでございます。
  92. 三野優美

    ○三野委員 私は、だから聞いているのは、あなたは記載してないからそいつだけを今度、今調べるんやと、こう言うんやけどね、記載はされてないけれども、入ったという事実確認はどういうようにしてしたの。それを聞いたの。だから、何月何日、どこの通帳に入っていたんですかと。それは政治団体の通帳でなければ、金丸個人の通帳ではいかぬですから。それを聞いているわけです。
  93. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  先ほどお答えいたしておりますとおり、本件五億円の場合につきましては、一方では指定団体の収支報告書に記載がない、他方においては金丸前議員の保有金に係る収支報告書も提出されておらない、またその旨の記載も存在しない、こういうことでございます。したがって、収支報告書の記載、収支報告書に記載があるかないかだけによっては、本件の五億円が指定団体の裏金として寄附され支出されたのか、あるいは個人の裏金として保有され支出されたのかを決めることはできないわけでございます。  金丸前議員におきましては、生原元秘書が代表者になっております、先ほどからお話の出ており ます新国土開発研究会を指定団体として届け出ておるわけでございまして、しかも、指定団体とは、これはもう改めて申し上げるまでもないわけでございますが、本来、政治家が個人として寄附を受けた政治資金を取り扱わせるための政治団体として指定され、届け出られたものであるわけでございますから、その存在を無視して、金丸前議員が個人として受け取った裏の政治資金はすべて個人の裏金として保有され、あるいは支出されたというふうに評価することはできないということが一つあるわけでございます。  そういうことも含めまして検察当局において検討したわけでございますが、金丸前議員が受領した本件五億円が、その後指定団体に寄附された上、その裏金として管理、分配されたのか、それとも金丸前議員個人の裏金として保有されたまま分配されたのかということは、何度も申し上げているとおり、収支報告書への記載によってだけではなくて、五億円の取り扱いの実態に即して判断するほかないという結論に達するわけでございまして、そのために、金丸前議員や生原元秘書がいかなる認識のもとに本件五億円を取り扱い、あるいは管理し、分配したのかということが重要になってくるわけでございまして、その観点から関係証拠を再吟味して、必要と認められる捜査を行ったというわけでございます。  先ほど申し上げましたように、検察審査会の議決書にもあるわけですが、金丸前議員や生原元秘書は、本件五億円の取り扱いについて、本件五億円は金丸前議員の指定団体である新国土開発研究会に一たん寄附した後、その団体から約六十名の候補者に分配したという供述をしている。これは議決書にもそのとおり指摘されているわけでございます。国会における証人喚問の際も、これと同様の趣旨と認められる証言をしているところでございます。  それで、再捜査の結果を考慮しましても、これらの供述は、一面におきまして、金丸前議員サイドにおける従来からの政治資金の取り扱いの実情、もう少し詳しく申し上げますと、従前の金丸前議員への政治献金の取り扱い状況について関係証拠を検討いたしました結果、金丸前議員の指定団体の収支報告書には金丸前議員からの多数回あるいは多額の寄附がなされている旨の記載があるわけでございまして、金丸前議員の保有金報告書は提出されていないということとも相まって、金丸前議員においては、自己に対する政治献金をすべて指定団体に寄附することによってそこに集中させ、あるいは保有金を有しない取り扱いをしてきたという事実がうかがえるわけでございまして、そういう点を考慮いたしますと、先ほど申しました金丸前議員あるいは生原元秘書の供述について信用性がないとは必ずしも言えない。他面において、先ほど来繰り返し申し上げておりますように、本件五億円が金丸前議員個人の裏金として保有されたまま直接ほかに分配されたことを積極的に認定するに足る証拠もないということでございます。  以上がその理由でございます。
  94. 三野優美

    ○三野委員 五億円が、さっき出たように平成二年の一月の中旬ごろに金丸事務所へ届けられた。この五億円を指定団体に入れたと言うんだけれども、それならば、指定団体にいつ、何月何日、どの名義の通帳に入っているんですか。その通帳がやはり指定団体のものであるのか、金丸個人かそれとも生原個人の通帳やらわからぬ。そこらをちゃんと出さなきゃいかんがね。国民はそういうところを知りたいわけ。  いや、そうではなしに、いや保有金として持っていたんだけれども、それも記載していないとなると、それが政治資金になったんだ、裏金にしろ政治活動に使われたという証拠を出してみてください。政治活動のここにこういうように使われた、それがなかったら、政治資金であるやらどうやらわからぬじゃないの。国民はそこのところを聞きよるわけ。政治活動に使われたというのだったら、裏金にしろ何にしろ、それは違法であることは間違いない。しかしそれが政治資金に使われたというのであれば、政治活動のどこに使われたということだけは国民にはっきりせぬと、国民はわからぬがね。そこのところを聞きよるんじゃがね。だから、その答えが出るまでだめ。  それと、言っておくが、私が最初断ったのは、わしらみたいに百姓で学のない者でもわかるように説明するのが、おまえら学校行ってる者の仕事じゃろうね。わかるように言ってくれ。
  95. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  先ほどお答えいたしましたように、金丸前議員の指定団体に入ったと見られる理由は、先ほど御説明したとおりでございます。――いえ、先ほど御説明したとおりでございます。したがって、指定団体に入ったものであれば、それは政治活動に関する寄附ということになるわけでございます。そういう理由、お答えを申し上げたわけでございます。
  96. 三野優美

    ○三野委員 だから、それを出せよ。いつ、だれの名前の通帳に入れたのか、それを出してくれ。現金で置いとった。それなら現金を、それをどこの政治活動に使ったか、それをはっきりしてもらわなきゃ困る。
  97. 粕谷茂

    粕谷委員長 三野委員にちょっとお尋ねしますが、私も委員長席でお聞きしておりましても、通帳と申しておりますが、通帳が必ずしもあるということでもないと思うのですよ。それで、現金で保有している場合もあると思うのです。それでまた、現金のまま、それはやみ政治資金としてどなたかのところへ行くかもしれませんね。  ですから、その辺をもう少しわかりやすく刑事局長に、刑事局長の方が理解が乏しいのかもしれないから、あなたの方から砕いて、この金はいつ入って、どうなって、それは数字であらわれていないということであれば、どうして認定したんだ、その認定した事実を、あるいは事実がなければどういう証拠とか証言によって認定したんだ、そうお尋ねになっていただいたらいかがでしょうか、もう一回。
  98. 三野優美

    ○三野委員 委員長の言うとおりでいいです。あなたの言うとおりで、通帳でなくて現金を置いたかもわからぬ。しかし、とにかく政治活動に使われなければいかぬのだからね。だから、委員長の言うとおりで結構です。  ですから、私は、それは現金、現ナマで持つこともあるだろう、通帳へ入れたときもあるだろう。しかし普通は、五億円の金というのは、政治団体に入ったというのであれば、そこに記載されて、通帳に一たん入れるかで、すべきことなんです。だから、政治資金で出すのなら、そうするはずなんだ。それはそれとして、結局、やっていなければ、現金でだったらどこに使うたのか。それだけ言ってください、どこへ、幾ら。(発言する者あり)
  99. 粕谷茂

    粕谷委員長 御静粛に願います。
  100. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  委員も御案内のとおり、政治資金規正法の第四条の四項によりますと、「「政治活動に関する寄附」とは、政治団体に対してされる寄附又は」もちろん「公職の候補者の政治活動に関してされる寄附をいう。」というふうに明確に書いてあるわけでございます。したがって、指定団体に対してなされた寄附であれば、それだけで政治活動に関する寄附ということになるわけでございます。
  101. 三野優美

    ○三野委員 だから、それを出してくれ、入ったという証拠を。いやいや、委員長委員長が言われたとおりに、政治団体に入ったのなら入ったという証拠を出してくれたらいい。そこでまだ寝よるのか、あるいはそれから使うたのか。とにかく政治活動に使うていなければどうにもなりませんからね。だから、そこのところを出してくれというのだから、もうさっきのでいいんです。それが出るまでだめ、それが出るまでだめ。(発言する者あり)
  102. 粕谷茂

    粕谷委員長 協議をいたしまして、三野委員質問に対して再度濱刑事局長から御理解いただけるように答弁をいたさせます。  刑事局長
  103. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  まず前提として、先ほどからお答え申し上げておりますように、証拠関係の内容に立ち入ったお答えは差し控えさせていただいているわけでございますが、そのゆえに、先ほど私は、金丸前議員の指定団体に入ったと見られるという理由について若干御説明したつもりでございます。  もう一度、委員おっしゃっておられるのは、その証拠を出せとかいう御趣旨のお尋ねかと思うわけでございますが、証拠の内容に立ち入ったお答えは、これはいたしかねるわけでございますけれども、先ほどもお答え申し上げましたように、既に公になっております検察審査会の議決書にもございますけれども、金丸前議員あるいは生原元秘書の供述として、本件五億円の取り扱いについては、金丸前議員の指定団体である新国土開発研究会に一たん寄附した後、その団体から約六十名の候補者に分配したというふうに供述しているわけでございますし、また、国会における証人喚問の際もこれと同様の趣旨と認められる証言をしているということで御理解をいただけるのではないかというふうに思うわけでございます。
  104. 粕谷茂

    粕谷委員長 三野委員、御理解いただけませんか。(三野委員「できません」と呼ぶ)じゃ、どの辺が御理解いただけないか、それをまた御発言していただきたいと思いますが。
  105. 三野優美

    ○三野委員 じゃ、委員長に言おうかね。  政治指定団体である国土開発何とかというところに入ったと、こう言う。ところが、自治省は入っていないと、こう言う。記載されていない。記載されていなければ、入ったという証拠は何もないわね。で、本人がそこへ入れた。それは貯金通帳に入れぬでも、現ナマでもそれはそうだわな。入れたと言うたからそうだろうというだけであって、それを裏づける何の、我々を納得さす証拠は何もないのです。それでは困る。  ですから、それが実際に入ったというのであれば、入ったというものをちゃんと示してもらわないと、国民は納得しない。そこのところはある。また、そこへ入ったとしてもその次がまたありますけれども、それはまあその問題が決着してからにしましょう。そこのところがまだわからぬ。入ったという何も証拠は出ていない。
  106. 粕谷茂

    粕谷委員長 三野委員、私とあなたと一問一答する立場にはないのです。ないのですけれども、これは委員会の運営上、委員長として私が受けた印象を申し上げます。  捜査の段階で、入ったのだろうというふうに認定をしたのだと思いますよ。その認定がけしからぬということであれば、これはまた別の問題になると思いますがね。認定に基づいて結論を申したんだろう、こういうことを再三刑事局長はお答えをしているのですが、その認定を認めないのか、認めるのか、こういうところに来ているのじゃなかろうかと思いますがね。
  107. 三野優美

    ○三野委員 委員長、私は、認定したならば、こうこういう理由で、こういう事実があったものですから認定しましたというのでなければ、国民はわからぬですからね。自分だけ認定しただけではだめ。本人が言うただけでは、それはいかぬ。
  108. 粕谷茂

    粕谷委員長 それは、私がお答えをしてはおかしいんですけれども、今の刑事局長答弁の中に、生原証言とか検察審査会とかいうところに出たもので認定をしたということを申し上げているのですが、それでも理解できませんですか。
  109. 三野優美

    ○三野委員 委員長、これはそれこそ委員長と余りすべきことではないんだけれども委員長が言うものだから……。  だから、検察審査会は不服なんです、これは。ああいう結論はだめなんですと、こう言ったのですわね。本人が言うたからというだけでは困るのです。それを、いや、入ったのだというならば、こうこういうところへ、こういう方法で入ったのだということを国民にわかるようにしてもらわないと。だから検察審査会は文句を言ったのですからね。それはだめよ。それは問題にならぬ。
  110. 粕谷茂

    粕谷委員長 刑事局長、補足説明をもう一度やってください。
  111. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  要するに、委員がお尋ねになっておられますのは、この五億円が金丸前議員からその指定団体に入ったと認める理由はいかん、こういうことをお尋ねになっておられると思うわけでございます。  それは先ほど来るる私の方で御説明したとおりでございます。ただ、先ほどお答えの中で申し上げましたように、証拠関係の内容に立ち入ったお答えはいたしかねるわけでございますけれども、それゆえに先ほど、既に検察審査会の議決書にも書いてございますし、公になっている証拠関係としては、先ほど触れましたように、金丸前議員、生原元秘書の供述、これが、本件五億円は金丸前議員の指定団体である新国土開発研究会に一たん寄附した後、その団体から約六十名の候補者に分配したという供述をしているわけでございます。また、国会における証人喚問の際にもこれと同様の証言と認められる証言をしているということでございます。また、先ほどるる説明いたしましたように、金丸前議員サイドにおける従来からの政治資金の取り扱いの実情ということもその判断の材料になっているわけでございます。
  112. 三野優美

    ○三野委員 本人が言うただけではだめよ。
  113. 粕谷茂

    粕谷委員長 三野委員、御質問を続行していただけませんか。
  114. 三野優美

    ○三野委員 納得せぬ、そういうことでは。
  115. 粕谷茂

    粕谷委員長 三野委員、御発言を願います。
  116. 三野優美

    ○三野委員 質問に答えてくれませんからできません。
  117. 粕谷茂

    粕谷委員長 十分でないということで、御発言をいただきます。そうすれば、刑事局長、そのほかの者にも何回でも答弁をさせます。
  118. 三野優美

    ○三野委員 私が言っているのは、委員長、発言しろしろと言うけれども、国民にわかるようにしてもらわなければ困るわけ。政治資金に使ったと言うならば、政治資金のどこに使ったのか。政治団体に入ったって、入ったと本人が言ってみたって、今までも、さっき刑事局長言ったでしょう、金丸さんの事務所というのはそんなことばかりずっと従来やってるんや、従来の慣行からいったらそんなもんじゃと、いつも報告もしてないし、どこへ金が行ったかわからぬわねと。それに従ってやったらばそうだろうということなんだろう。金丸さんや生原さんがここで言ったから、それで間違いないだろう、そんなのは国民だれが納得しますか。そんな回答では何で質問続けられますか。冗談じゃないですよ。委員長もやはりちゃんと国民に責任持った運営してくださいよ。だめよ。
  119. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  まず、委員のお尋ねの前提として、一つの事実を認定するについて、証拠物が何かあるではないかということが一つ前提になっているのかもしれないと思いますけれども、これは一般的に申し上げまして、犯罪事実について捜査を進め、証拠を集める場合に、必ずしも物証が常にあるとは限らないわけでございます。  本件につきましては、先ほど申し上げましたように、物証からの認定ということではなくして、端的に申しますと、金丸前議員及び生原元秘書の供述というものが一つございます。それが信用できるかどうかを判断するに当たって、例えば金丸前議員サイドにおける従来からの政治資金の取り扱いの実情はどうなっていたかというような事実関係等をも調べて、そういうものを情況証拠として、先ほど申しました金丸前議員あるいは生原元秘書の供述が信用できるかどうかということを検証していくという手順を踏まざるを得ないことになるわけでございます。  その意味で、私先ほどお答え申し上げておりますように、指定団体に入ったと見られるという証拠としては、先ほどるる説明申し上げた証拠関係によってそういうふうに認定されるということを御説明したつもりでございます。
  120. 粕谷茂

    粕谷委員長 三野委員、理解いただけましたか。――どうでしょうか、三野委員、もう一度御発言をいただいて、どことどこの答弁が不明確だ、こういうようなことで御質問いただけませんか。(三野委員「もうしません。納得できない。 私は不満だから言っているんじゃない。納得できない。だから、質問者が納得できるような回答をもらえ……」と呼ぶ)  発言を求めて、立って言ってください。発言を求めて、立って言ってください。(三野委員「同じことなんです。納得いくような答弁をしてください。不満だからと言っているんじゃないんです。納得できないから」と呼ぶ)  三野委員、ぜひこういう機会ですから、御発言を続行していただきたい、こういうふうに思います。せっかく委員会を開いておりまして、そして国民があなたの御質問をやはり注目をしていると思いますので、ぜひ不明確なところはただしていただく、そういうことで御発言を続行していただきたいと思います。――それでは、三野君の質問に対して濱刑事局長より再々再度答弁をさせます。濱刑事局長
  121. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  先ほどお答え申し上げましたように、指定団体に入ったと認められるということであれば、これは、その後それが何びとにいつ出たかということを確定するまでもなく、先ほど申し上げました政治資金規正法の四条四項によりまして、それは政治活動に関する寄附ということになるわけでございます。  先ほどお答え申し上げましたとおり、政治活動に関する寄附であるかどうか、要するに委員は、政治活動に関する寄附と認められるかどうかという前提について疑問を持っておられるというか、お尋ねになっておられると思うわけでございますが、指定団体に入ったという事実が認定されれば、それは政治活動に関する寄附になるわけでございます。  ただ、さらに委員のお尋ねをそんたくして、その先、その五億円が指定団体に入った後どうなったかというお尋ねでございますと、これは、いつだれにということはお答えはいたしかねるということを申し上げているわけでございます。(発言する者あり)
  122. 粕谷茂

    粕谷委員長 各党の理事の方、ちょっとお集まりいただきたい。――刑事局長から答弁をさせます。濱刑事局長
  123. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  委員の重ね重ねのお尋ねの一番のポイントは、五億円が金丸前議員の指定団体に入ったと認められるということの根拠はどういうことかということをまず一つお尋ねになっておられると思うわけでございます。その点、委員は先ほど来証拠を示して答えろということでございますけれども、先ほど来お答え申し上げておりますように、起訴をされていない事実関係について、証拠関係あるいは事実関係の内容に立ち入ったお答えは、これも何度も申し上げておりますとおり、刑事訴訟法四十七条等の法令上の制約があってお答えできない部分があるわけでございます。  ただ、今委員お尋ねになっておられるところを踏まえてぎりぎりのところでお答え申し上げているわけでございますけれども、その一つは、金丸前議員や生原元秘書は、本件五億円の取り扱いについて、本件五億円は金丸前議員の指定団体である新国土開発研究会に一たん寄附した後、その団体から約六十名の候補者に分配したというふうに供述していることが検察審査会の議決書にもあらわれておりまして、これは公になっておりますので申し上げられるわけでございます。  また、国会における証人喚問の際も、これは証言としてあらわれているわけでございますから、これも申し上げられるわけでございますが、今申し上げたと同様の趣旨と認められる証言をしているところでございます、その供述が、金丸前議員あるいは生原元秘書の供述が信用できるかどうかということをもちろん吟味しなければならないわけでございますが、これも先ほど来るる申し上げましたように、従来、金丸前議員サイドにおける政治資金の取り扱いの実情はどうであるかということについても捜査をして、今申しました事実認定の情況証拠として把握した、こういうことでございます。  もう一度申し上げますと、従前の金丸前議員への政治献金の取り扱い状況につきましては、金丸前議員の指定団体の収支報告書には金丸前議員からの多数回にわたるあるいは多額の寄附がなされている旨の記載があるわけでございまして、金丸前議員の保有金報告書は提出されていないということとも相まって、金丸前議員においては、自己に対する政治献金をすべて指定団体に寄附することによってそこに集中させて、保有金を有しない取り扱いをしてきたという事実がうかがえることなどを総合考慮して、先ほど申しましたように、金丸前議員あるいは生原元秘書の供述、その点に関する供述は信用性のないものとは言えないというふうに判断したということを申し上げたわけでございます。  それから、したがいまして、指定団体に入ったという事実が認められるといたしますと、それがいつ、だれに配られたかということをまつまでもなく、政治団体に対する寄附自体が政治活動に関する寄附というふうに政治資金規正法上規定されているわけでございますから、その点は争う余地がないことになるわけでございます。  ただ、委員がさらにお尋ねになっておられる御趣旨をそんたくいたしますと、要するに、それでは六十数名の候補者に渡ったという事実はどのように特定されているのかということをさらにお尋ねになっておられるのではないかと思いますけれども、この点は、先ほど来、法令上の制約があってなかなかお答えはしにくいわけでございますけれども、検察当局としては、現在も約六十名の候補者の特定のための捜査を続けているということでございまして、これまでのところ、この約六十名の候補者が具体的にだれであるかということの特定がなされたという報告は受けていないということでございます。
  124. 三野優美

    ○三野委員 委員長、さっきからあれを繰り返して言っていますけれども、まことに失礼だけれども、今の答弁を聞いていると、金丸証言、委員会における証人喚問、そのとき尋問されましたね、あるいは生原さんの話、それによるとということなんですね。それによると指定団体に入れた、こう言っているわけです。まことに失礼な話だけれども、二人とも政治資金規正法違反者なんです。言葉は悪いけれども、犯罪者なんです。だから、金を受け取った、あるいは金をどこかへ持っていっておる人がそう言ったからそうだろうなんて、そんな日本の検察なのかね。それで国民は納得するかね。  問題は、もしそれが政治資金であると言えば、政治資金であったという事実関係を国民の前に明らかにしなければ、国民はそこのところを聞きよるわけなんです。もし政治資金に使われていなければ、ポケットに入っていれば三億何ぼ税金を払ってもらわなければいかぬでしょう。三億何ぼ追徴金を含めて要求されたら困るものだから慌てて、政治団体に入れました、こう言っているだけなんです。国民はそう見ているわけです。そこのところが国民の心配や疑惑に一つも答えることにならぬわけです。  違法な事件を起こした犯罪者が言ったから、検察庁はそれを納得しましたと、濱刑事局長、あなただけが一緒に納得しているんじゃないの。そんなことは国民の納得することに一つもならぬ。だから国民は、ちゃんとしろよ、国会全体もさることながら、野党だってそこのところちゃんとしないじゃないかと、こう言って我々もおしかりを受けているわけです。だから、そこのところを国会の責任でちゃんとする、そこが政治改革に入るんじゃがね。私は、質問の第一項目の入り口のところでとまってしまっている。これでは一週間、十日かかるがね、こんなことをしておったら。だから、そんな答えではだめです。
  125. 粕谷茂

    粕谷委員長 それでは、三野優美君の残りの質疑は後に譲り、二見君の質疑を許します。二見伸明君。  三野君、発言席から退席をしてください。――席をかわってください。  二見伸明君。
  126. 二見伸明

    ○二見委員 最初に、外交、防衛問題について、総理の御見解を承りたいと思います。  総理は、過日東南アジアを訪問された際に、この地域の平和と安全のためにアメリカの関与とプレゼンスが必要だということをお述べになりました。ASEAN諸国内には、いわゆるアメリカ軍が撤退する、そこに軍事的空白ができる、そうすると、日本中国がここへ出てくるんじゃないかという懸念を持っていることは私も承知しておりますし、ASEANへ行ったとき、そういう懸念も表明されたこと、私自身もこの話を聞いておりますから、その懸念はよくわかります。  そういう状況の中で、総理があえてアメリカの関与とプレゼンスの必要性ということをお述べになったのはどういう背景というか、状況認識をされているのか、それをまずお示しいただきたいと思います。
  127. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 二見委員のよく御承知のとおり、今ASEAN各国は経済的に非常な上昇の勢いにございますし、冷戦後の国際情勢もありまして、少しずつこの地域の安全というものについても考えつつございますことは、ASEAN拡大外相会議が先般、政治・安全保障の問題についても議論をすることになったことからも明らかでございます。ただ、この地域は、それと同時に多様性、開放性といったようなところに特色がございまして、各国のいろんな物事についての考え方が必ずしも一様ではございません。  例えて申しますならば、今後の二十一世紀を展望して、自分の国の安全にとってどこの脅威があるかというようなことにつきましても、率直に物を言う立場になりますと、おのおのの国がみんないろいろな思惑を持っておることも御承知のとおりでございまして、その中には、今二見委員の言われましたような、何国何国というようなことについての脅威を感じている国も確かにございます。その際に、大多数のいわばコンセンサスとして言えそうなことは、そういう複雑な思いの中で、領土的な野心といったようなものを持っていない、しかも安全保障の力を持っている、いわばデタントとしての力を持っている、抑止力としての力を持っている国がアメリカであるということは、ほぼ関係国が合意を暗黙には私はしつつあるところだと考えます。  それで、私が、将来のこの地域の安全の仕組み、決して急ぐわけではないが、それを考えていくときに、やはり一番安定勢力としてのアメリカというものは欠かせないのではないでしょうかということをバンコクの演説においても呼びかけた、こういう経緯でございます。
  128. 二見伸明

    ○二見委員 アメリカのアジア・太平洋地域におけるプレゼンスについては、中国はどちらかというと公式には余り歓迎はしてないというふうに思います。否定的な感じを私は受けますけれども、ASEAN諸国は前向き、好意的だというふうに私も理解をいたしております。  そういう中で、総理があえてアメリカのプレゼンスに言及したということは、そういうアメリカ側の、関与した方がいい、プレゼンスがあった方がいいというだけではなくて、日本として積極的に、具体的にアメリカの関与、プレゼンスのために具体的な提案なりなんなりを持った上でそういう発言をされたのではないかと私は思うわけですけれども、具体的な提案は念頭にあるのでしょうか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 二つ三つのことを関連して申し上げたいと存じますが、私がこのことを話しましたときに、質問が記者会見であったのだと思いますけれども、私は、日本は再度軍事大国になるつもりは全くない、したがって、万一何かがこの地域に起こりましたときにも、日本は警察官としての役割は果たす用意がございませんということを一つ申しております。  それからもう一つは、自分はアメリカのプレゼンスが大事と思いますにつきましては、日本としていわゆるホスト・ネーション・サポートと申しますか、接受国負担と申しますか、アメリカ日本における駐留についての毎年負担をだんだんふやしておりますのもそのような意味合いもあるという説明もいたしておりまして、すなわち、あす、あさってのことではないにいたしましても、これから先のこの地域における安全保障の枠組みを考えましたときには、やはり安定勢力というものを入れておくことが大事ではないか、こういう考えで申したところでございます。
  130. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、現在、例えばいわゆる思いやり予算というのを日本でやっておりますね。ずっと額を上げていって、九五年でしたか、そこで頭打ちというか満額になって、それからずっと横になりますね。その段階でさらに米軍のプレゼンスを、関与がしやすくなるために何らかの負担なりなんなりも考える必要があるというふうにも決めていられるわけですか。
  131. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そういうことを思って申したわけではございません。今の日米間の約束というのは、いわゆるその最大限に達しましたときには、もうそれ以上負担をするという根拠はなかなか探しがたいように私は思っておりますので、それはピークに達しましたときにそれを維持すればよろしいのだと思っていまして、そういうことを私思って申したわけではございません。
  132. 二見伸明

    ○二見委員 私も、アジア・太平洋地域の平和と安全を保障するための枠組みづくりというのは必要だと思います。  ヨーロッパでは、CSCEが設立されたのは一九七三年の七月、何とか機能するようになったのは九〇年の十一月、十数年間かかってやっと動き出してきた。しかも、ヨーロッパには片っ方にNATOがあり、片っ方にワルシャワ条約があり、あるいはECだとかいろいろな枠組みがあった。ところが、この地域には、二国間の取り決めはあるけれども、そうした大がかりな、まあ経済的な枠組みはASEANとかAPECとかあるけれども、アジア全体を包んでしまうような枠組みというのはありません。だから、今公明党としては、アメリカやロシアを加えた全アジア平和会議というものをつくるべきだと我々主張しておりますけれども、もともと枠組みがないところにいきなりつくっても、つくるということはかなり時日もかかるし、そう簡単なものじゃないというふうに思います。ということになれば、既存の機構、APECとかあるいはASEAN外相会議とかあるいはEAECとかそういういわゆる経済をベースにした各国の話し合いがある、それに日本アメリカやロシアや中国も加わって、それを、今までは経済の話だったけれども、むしろこれからはそれに加えて安全保障についてお互いが話し合いをしていく、そうした相互理解を深めていく、そうしたことが私はこれから大事になってくるのではないかというふうに思います。  日本は、総理おっしゃるように、ここでポリスマンというわけにいかぬのです。そうなれば、そういう安全保障について、そういった既存の機関を使って安全保障の話し合いをしていこう、こういうことを日本は積極的に提唱していってもいいのではないかと思いますけれども、総理の御見解はいかがでしょうか。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私の考えも大体二見政審会長のおっしゃっていらっしゃることと同じような思いでございまして、確かにCSCEをつくり上げましたような、それも時間もかかりましたが、しかしつくり上げるだけのいろいろな仕組みの成長がございましたのですが、この地域はそういうものがない。まあないという点も今までは一つの私はいいところであったのかもしれないと思いますけれども、こういう冷戦後の世界になるとやはり何か欲しいな。しかし、その何か欲しいがその何かを、一体アジアとはどこまでのことを言うのかというようなことについてもコンセンサスがあるわけではございませんし、しかし漠然とやはり何かが欲しい。しかし、日本がそれを先に立って言い出すことはどうも私は適当ではない。我々は、狭い意味でのASEANのメンバーではございません。拡大外相会議には入れてもらっているけれども、やはりそれは余り先に立って言うことでもなさそうである。だがしかし、やはりだんだ んに何かが要るのだろうということがお互いにわかり始めてまして、まさにASEAN拡大外相会議がそういう政治・安全というようなところへ、経済からもう一つ広い視野を持とうとしたこともその証拠であろうと思います。  具体的にはこれが一番今育っていく芽だと思っておりますが、同時に、おっしゃいましたように、APECというものは、これは今のところ経済、純粋経済的な仕組みでございますが、域外からはAPECの首脳会議をやろうというような意見があったりもいたしますように、APECというものも経済ではあるがかなりたくさんの国が入っておりますので、自然経済の話をしていくともう少し広い話に発展していくかもしれない。今そういうことはございませんが、そういうあるいは契機になるかもしれないといったあたりから自然にだんだんそういう話が熟していく、そういうのが自然のプロセスではないかというふうに私は思っておるところでございます。     〔委員長退席、鴻池委員長代理着席〕
  134. 二見伸明

    ○二見委員 このアジア、この地域でやはりこれから考えなければならぬと思うのは、一つは大量破壊兵器の拡散防止、これは特定の国名を挙げてはいけませんけれども、適当ではないと思いますけれども、それは大変心配されるところでありますし、もう一つ武器輸出だと思います。しかも東南アジア、ASEAN諸国は経済がかなり伸びてきた。今までの持っている武器が老朽化してきたので、更新をしなければならぬというので武器をどんどん買い集めています。もちろん、一方では中国は、軍事予算は増加の一途をたどっているし、軍事の近代化ということでかなり軍備増強もしている。そうすると、この地域に向けて武器がドーンと入ってくることは考えられます。  一九八九年の世界の武器市場の統計を見ますと、世界全体で四百五十億ドルの武器輸出が行われた。そのうちの三〇%はこの地域だ、アジアだ、こう言われているわけです。それがこれからどんどんふえていくことになると、これはやはり安全保障という面から見ても決して好ましい状況ではない。私たちは武器輸出は禁止すべきだということを主張してきた。日本政府国連武器の移転登録というものを提唱し、そういう方向になってきた。むしろ、ですから私はここで、このアジア地域への武器の輸出というか輸入というか、出す方にすれば輸出、これはアメリカ、ロシア、いわゆる五大国が武器輸出大国なのですね。そこら辺の自制も含めて、この地域への武器の輸出、武器の移転というのは規制する。それはぜひとも日本としても主張してもらいたいと思いますけれども、この点についての総理の御見解はいかがでしょうか。
  135. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 この地域の将来に関しまして心配な問題の一つは、今二見委員の言われました問題だと思っております。  幸いにして今までのところは、お互いの隣国同士を眺めてみて、軍拡競争をするというような、そういう差し迫った感じにはなっておらないのは幸せでございますけれども、それでも、今度訪問いたしましたいろいろな機会に、例えば南沙諸島というような話は会話に出るわけでございます。そういうことがございますので、今おっしゃいました問題は、私もかなり将来気をつけなきゃならない問題だと思っておりまして、それで、おっしゃいましたように、通常兵器の登録制度を国連我が国が提唱いたしまして、まあみんな賛同してくれているわけでございます。これが何がしかの抑止力に私はなってくると思います。  実は、昨年のサミットでこの問題を、東南アジアと限定したわけではございませんけれども、旧ソ連がこうなりました後、どうも武器の拡散が、大量破壊兵器はもとより、通常兵器までありそうなふうでございますので、この問題を実は取り上げたわけでございますけれども、昨年のミュンヘンの段階ではなかなか各国ともまだどういうふうにという確たる考えもない。のみならず、実は率直に申しますと、核兵器と生物化学兵器とそれから長いミサイル、これについては拡散ということにやはり非常に気をつけなきゃいかぬという空気はあるのでございますけれども、通常兵器となりますと、ほとんどそれに伴う、罪悪感という言葉はちょっと適当な言葉じゃございませんが、余りいいことじゃないよというような感じがちょっと生まれていないので、その辺のところが私は、これから我が国あるいはその周辺だけの問題じゃございませんで、冷戦後の世界のやはり大きな問題ではないかというふうに思います。
  136. 二見伸明

    ○二見委員 私は、やはり武器輸出の問題というのは厳しくしていくべきだと思います。ソマリアにしても何にしても、大国の武器があそこに輸入されて、それで今や部族紛争が起こっているわけですから、これは東南アジアに限定したことではないけれども武器輸出というのはむしろ大国の良識としてこれはやめる、このくらいの私は決意があってしかるべきだろう。もちろんその過程において、それぞれの国の国内産業にいろいろな影響が出てくることはわかるけれども、それは乗り越えなきゃならない試練だというふうに私は思っております。  ところで、カンボジアについて若干伺いたいと思いますけれども、今回のプノンペン政権による軍事攻勢というのは、私は大変遺憾だというふうに思っております。UNTACは、自衛権を超えたもの、こういうふうにきのう発表いたしておりますけれども、政府としてもこの問題は自衛権を超えたものだという御見解を持っているのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  137. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 プノンペン政府が多少行き過ぎがあったということは、そう思っております。したがって、プノンペン政府に対しましても、行き過ぎのないように今後してもらいたいということは申し入れてあります。
  138. 二見伸明

    ○二見委員 問題は、PKO派遣のいわゆる五原則が崩れたかどうかということがこの問題の大きなポイントだと私は思います。パリ協定を破棄するという宣言があれば、これはもう当然五原則は崩れたというふうに我々認識しておりますけれども、まあそこまでの段階ではないというふうに我々は思います。  また、SNCにはポト派の代表が参加しております。また、今回のプノンペン政権の軍事攻勢は、今後、軍事件業部会、MMWG、この中で取り上げられるというふうに私は聞いておりますし、これも格が上がってサンダーソン司令官主宰の会議でもってこの案件を取り扱うことになるだろうというふうにも聞いております。しかも、このMMWGにはポト派も入っている。そういうことを考えると、現時点で五原則が全く崩れてしまったという判断はまだできる段階ではないだろうというふうに思います。  これらの機関から、SNCからポト派が出ていってしまう、あるいはその下部機関というか、もっと下の事務レベルみたいなMMWGのところからもポト派が出ていってしまう、こういうことになると、これは五原則は崩れたというふうに判断するのかなという感じはいたしております。また、それ以外にもこの五原則が崩れたかどうかの判断の基準というのは、外務省はどういうものをお持ちでしょうか。
  139. 柳井俊二

    柳井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生いろいろな状況についてお触れになったわけでございますが、特定の機関あるいは機構というものに出席するかどうかという点も、もとよりこのカンボジアの和平の先行きにとって重要なことだとは思いますが、停戦合意が崩れたというような判断との関連におきましては、例えば全面的な戦闘再開というようなことがあるかどうかというような点も含めまして、具体的な状況、そのときどきの具体的な状況に照らして総合的に判断すべきものであろうというふうに考えております。
  140. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、例えばパリ協定破棄宣言はしていない、SNCにも形の上では残っている、それでもやはり五原則が崩れたという事態も当然あり得るわけですね、これは。
  141. 柳井俊二

    柳井政府委員 繰り返しになりますけれども、 実際の具体的な状況に照らしまして総合的に判断すべきものだと思いますが、全面的な戦闘再開というような事態になれば、これは一つ重要な判断基準になろうというふうに考えております。
  142. 二見伸明

    ○二見委員 ポト派が選挙に参加しないことが決まりましたけれども、これは今後のカンボジア情勢にやはり大きな不安定要因としてこれからも残っていくことになりますか。
  143. 柳井俊二

    柳井政府委員 このパリ和平協定の最終的な目的が、平和な公正な選挙を通じまして新しい安定したカンボジアの政府をつくるということでございますので、これに、これまでの国連あるいは関係国からの再三の呼びかけにかかわらず、ポト派が参加しないということは遺憾だと思っております。  ただ、今後の問題につきましては、まだ、選挙が五月の下旬に予定されておりますので、時間もあることでございます。そこで、最終的にポト派がどういうふうに出てくるかという点につきましては、まだ予測しがたい点もあろうかと思います。いずれにしましても、ポル・ポト派に対しましても今後とも門戸は開いておくということでございます。最終的に参加しないということになれば、これは一つのやはり不安な要素になるということは言えると思います。
  144. 二見伸明

    ○二見委員 いわゆる要員の撤収の問題ですけれども全面戦争が起これは、当然これはもう五原則の前提が崩れるわけですから、撤収は当たり前ですけれども全面戦争までいかなくても、いわゆる武力紛争が拡大したということになりますと、要員の撤収ということもあり得るのですか。またその場合、要員を撤収するかどうかというその判断の基準というものもあるのだろうと思います。その点については今どういうふうに考えていますか。
  145. 柳井俊二

    柳井政府委員 この点は、二見先生よく御承知の点でございますけれども、国際平和協力法では、第一に紛争当事者間の停戦合意が存在しなくなったと認められる場合、第二に国連平和維持活動が行われる地域の属する国及び紛争当事者のこのような活動の実施及び我が国の参加に対する同意がなくなったと認められる場合、それから第三にこの活動がいずれの紛争当事者にも偏ることなく実施されなくなったと認められる場合におきましては、国際平和協力業務を中断し、また、このような状況が長引くということになりますれば派遣を終了させることが必要になってくるわけでございます。そのような場合には、実施計画を変更いたしまして派遣を終了する、すなわち要員を引き揚げるということになっているわけでございます。もちろん現在そのような状況ではございませんし、また何らかそのような状況が生じた場合におきましては、第一義的にはUNTACとして、国連側として判断を下すことになると思いますし、恐らくは日本政府判断もそれに一致したものになるだろうというふうに考えます。ただ、どういう状況でそうなるかということにつきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、具体的な状況に照らして総合的に判断する、こういうことだろうと思います。
  146. 二見伸明

    ○二見委員 UNTACに対しては、ポト派のみならずプノンペン派も不信感を持っております。これは私は、UNTACの非常に厳しい置かれた状況からいうとやむを得ないと思う。というのは、武力を行使しない、武力で威圧をしない、しかも四派に全部中立だということになれば、これはこちら派が、おれの方がと、こういろいろな不満が出てくるのは当たり前です。そういう厳しい中でUNTACは現在活動をしているわけであります。だから、ある面では、UNTACがあそこに存在しているからこの程度の武力衝突で済んだのだという私は見方も成り立つんだろうと思う。もしUNTACが引き揚げたらどうなる、いなかったらどうなるんだろう。  私は、このPKO協力法のときにいろいろ議論いたしましたけれども、十三年間も内戦をしてくれば、戦争お互いに殺し合ってきたんですから、パリで和平協定にサインをしたから明くる日からニーハオというわけにはいかぬです、こんなことは。不信と猜疑心が渦巻いているのは、まさにあの地域なんです。ですから、これからもいろいろな小競り合いみたいなことはあると思います。あるからUNTACが必要なんです。そうなると、UNTACがもし引き揚げてしまえば、もう一度内戦が再発するだろう。ポト派とプノンペン派お互い攻撃が始まって、犠牲を受けるのは、犠牲になるのはカンボジアの名もない庶民だ。大量殺りくだって始まるだろう。  そう思いますと、私は、UNTACの置かれている立場というのは、大変微妙で難しい立場かもしれないけれども、何とかこれは支援しなきゃいかぬ。このカンボジアでの和平、平和の回復のこの壮大な事業を何としてでも成功させなきゃならぬ。そのために日本としても、このUNTACに対してはできるだけ全面的な支援をすべきだというふうに思っております。その点について、総理大臣あるいは外務大臣
  147. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 認識は同じでございます。  御承知のとおり、仮にUNTACが撤退するというようなことになれば、軍事の力からいえばそれは二対五になるのか、二対四になるのかわかりませんが、片っ方は武装解除していないわけですから、片っ方はある程度武装解除をやっているわけ。しかし、国民全体の、その統治下に入っているということになれば、九十何対数%と、圧倒的多数の方は現在のUNTACの直接の関係、管轄下にあるわけですから、そういう中にあってやはり力で、腕ずくで、武力を持っているからということだけで暴れまくるようなことがあって、かつてのように何百万という人が殺されるというようなことは、到底国際社会は認めることはできない。恐らく私は、安保理にもそういう話が出てくると、そうなれば。  そういうようにならないようにするためには、やはり今の平和を維持させる、持続させるということにまず当面いろいろな方法を考えながら取り組んでいくことが一番いいんだろう。その方がカンボジアのためにも世界のためにもなるんじゃないか、そう思っておりますから、UNTACに対するできるだけの法律で許された支援はやるべきだ、そう思っております。
  148. 二見伸明

    ○二見委員 カンボジアに展開して活動している要員の生命、身体の安全はどうかという、これは我々も大変気になります。自衛隊はタケオ、カンポット、これに展開をしておりますが、ここは紛争地域から大分離れているので無事だというふうに伺っております。それから停戦監視員が八人、これもやはり活動しておりますけれども、これも紛争地域からかなり離れたところであるので、別に身体、生命の安全には差しさわりはない。  問題は、文民警察ですけれども、サムロンとシエムレアプ、この辺で文民警察がいろいろ活動をしている。これは紛争地域から近い。ですから、それに対して私たち大変心配をいたしております。この事業が成功するためにも、私は、派遣した要員の生命、身体の安全というのは本当に大事なことだ。ここでつまずくとPKO日本が今後、ほかのところ、いろいろなところにPKOを出しにくくなるし、国民の感情もまた非常に複雑なものになってくるだろうというふうに思います。そういう意味では、派遣されている要員の安全確保に私は万全を期してもらいたいと思いますし、その点についての外務大臣の御見解もお願いをしたいと思います。
  149. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 文民警察も日本だけが行っているわけではございません。他の国ももちろん行っているわけです。したがいまして、我々といたしましては、各国共同のもとで安全の確保ということについては最大限の注意を払ってまいりたい、そう考えております。
  150. 二見伸明

    ○二見委員 五月に選挙が行われて、新しい政権ができて、それにすべてを移して、九月にはUNTACとしての任務は終了するということに今のスケジュールはなっております。  私、先ほど、選挙にポト派が参加しないことは不安定要因になるんじゃないかと伺ったことは、 新政権ができたけれどもポト派は参加していないということになると、この新政権を脅かすような存在になりかねないのではないか。そうすると、UNTACが引き揚げてしまうと新政権対ポト派とのいろいろないざこざ、交戦も全く可能性ゼロというわけにいかないだろう、そういうことを私たちは懸念しているわけです。UNTACも九月以降さらに任務を継続させるかどうかは、現地の新政権とポト派の両方の意向も当然あることだけれども、安保理で決めることです。日本は安保理の非常任理事国でありますけれども、今ここで、だから提案するということではない。新政権に移行された後のカンボジア情勢を見ながら、場合によってはUNTACの任務の延長ということも安保理で提案しなければならない場合も出てくると思いますが、そういう点についての外務大臣の御見解、いかがですか。
  151. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 まあそういうふうになることは実は考えてもみたくはないのですが、しかし現実の問題として、それはないとは断言できません。先ほど言ったように、カンボジアの中でどのくらいの国民がどっち派を支持しているかということは選挙によってわかるし、選挙に参加する数も大体つかめるわけですから、登録している人、していない人の数というのは。圧倒的な、もう九割以上の者は登録している。その中でどれくらいの投票があるのか、どれくらいの賛成、反対両方あるのか、選挙をやってみなければわかりません、これは。その結果が大いに私は国際社会においても尊重されることであろう。先ほど言ったように、またあそこで内乱が起きるようなことは、十数年かけてせっかくまとめ上げてきたわけですから、それは国際社会においても、もうもとのもくあみになることは何が何でも避けなければならぬ。  そういうようなことで、今後のことでありますから断定的なことは申し上げられませんが、十分に注意をしながら、万全の策もあわせて検討をしていく必要があるだろうと思います。
  152. 二見伸明

    ○二見委員 カンボジア問題は、大変複雑で難しい歴史的な背景もありますし、難しい問題であります。選挙が行われて新政権ができて、それで後、平和に国づくりが始まっていくならばいいけれども、さらに不安定要因がある場合のことも我々は視野に考えてカンボジア問題を考えなきゃならぬというふうに思っております。  質問内容を変えます。  国連に、日本が常任理事国になる、ならないという問題がありますので、それについてまず最初に総理の御見解を承りたいのですが、渡辺外務大臣は、昨年九月二十二日の国連総会での演説で、  国連中心主義を掲げ、平和国家として歩んできたわが国は、その国際的な地位と責任に相応しい貢献として、財政面のみならず、人的な貢献、さらには新たな平和秩序の構築のための政治的な役割を強化していかねばなりません。わが国は現在、安保理非常任理事国として、平和的な世界の実現のために努力しております。そして私は、将来にわたり、協調と協力の精神にのっとりわが国のこのような能動的な国際貢献を一層強化・推進して参る決意であることを申し上げ、私の演説を締め括ることといたします。 これは、我が国国連安保理常任理事国を目指すということをえんきょくに述べたものだと、こう言われているわけでありますけれども我が国政府としては国連安保理常任理事国を目指すという基本的な方針はもう決まったのかどうか、決まっているのか、決まったのか。その点は総理、いかがでしょうか。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 一昨年の暮れに国連で安保理事会関連の首脳会議がございまして、その際、安保理事会理事国の衡平な分配と拡大という決議が全会一致で総会でございましたのに関しまして、ことしの六月までに各国の考え方を出すということになっておるわけでございます。  それで、我が国立場を、少し長くなって申しわけありませんけれども申し上げますと、国連がこれだけ大きな仕事をすることになりましたについては、それはこの二、三年の実は大きな変化でございますが、国連というものがやはり一九四五年当時と違いましてこれだけの加盟国を持つに至りましたから、その国連全体の正当性といったもの、あるいは実効性というようなもの、あるいは公平性とでも申しますか、そういうものを持ちませんと、みんなのために国連が働いている、大国のためではないというそういう信頼性をから得なきゃならないという問題がございます。さしずめ国連活動のコアになっております安保理事会についてですから同じ問題があるわけでございまして、どうしても安保理事会というものはやはりここで理事国の数と分配とを再検討しなければならないというところまでは、これはすべての国の私はコンセンサスがあるのだと思います。  その場合に、例えば日本という国を考えますならば、これは安保理事会のやはり常任の国でなければおかしいなと、それだけの財政的な貢献もしてまいりましたし、そういうことに不同意だという国は私は少ないのだろうと思います。ただ、それから先は複雑でございまして、そういう国は日本ばかりではないであろうと、ドイツだという国もあると思います。それからまた地域的にいえば、これは仮定の話でございますので、それとしてお聞き取りいただきたいのですが、例えばインドはどうだろうとか、ナイジェリアはどうだろうとか、ラテンアメリカなら仮にブラジルであるとかいうようなことは、ごくごく常識的に考えが浮かぶわけでございますけれども、それでいいんだというコンセンサスがあるわけでもございません。ですから、極端な議論をする人は、今そういう幾つかの国と手を組んで、そうして安保理事会の改組を言い出せば、それは数の力でやればやれるじゃないかというような思想には我が国はくみしたくない。それでは安保理事会というものが本当に有効に今後活動できなくなってしまいますから、そういうことはいたしたくない。やはり、ですから相当時間がかかりましても、みんなでわかった上で、本当に安保理事会が有効に動けるようなものに改編をすべきではないかと思っておるわけでございます。  しかし同時に、その過程ではもう恐らく国連憲章全体にさわらざるを得ないのではないかと思っておりますので、それが不可避であるとすれば、それはもう今、この一九九三年の国連という五十年近い歴史を経た国連が新しいものになっていくという大きな仕事にどうもつながらざるを得ないのだろうと、そこまで考えますと、それは多少時間のかかる仕事でもあるかもしれないというようなふうに大体全体を見ておりますので、したがいまして、今我が国が、何が何でもは言葉がいけませんが、ひとつ安保理事会の常任理事国になればいいんだと、そういうような短兵急な考えを持っているわけではございませんので、今申しましたようなプロセスが進んで、国連の正当性と信頼性と有効性と、それを損なわない形でこの問題が実現するために努力をする、こういう立場でございます。     〔鴻池委員長代理退席、委員長着席〕
  154. 二見伸明

    ○二見委員 ドイツのキンケル外務大臣は昨年の国連総会で、ドイツも常任理事国入りの希望を初めて表明いたしました。キンケル外相は、安保理常任理事国になるからには、憲法を改正して国連の作戦にドイツ兵が参加できるようにはっきりさせる、こう言っております。  我が国はそういうわけにはまいりませんし、またそういう議論は準備もありません。今総理は何が何でもということではないんだとおっしゃったけれども、要するに安保理常任理事国になるということになると、いろいろな政治的な役割というのが出てくる。今までとは違った役割が出てくる、負わなきゃならない。そうすると、どういう問題があるのか。入った場合に、常任理事国になった場合には、今までとは違ったこういう課題があるんだと、いろいろな問題点というものをオープンにして、国内でもこの議論は私はすべきだろう。私は安保理常任理事国に日本がなることを否定するものではありませんけれども、経済大 国だから安保理常任理事国になるのは当たり前だという一種の覇権主義的な考え方はとるべきではないと思っている。むしろ、常任理事国になることによってどういう政治的責任が起こってくるのかというようなことを率直に国民の前に明らかにしていく、そういうことも必要なのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  155. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 おっしゃることはよく私に理解できるところでございますが、実はそれに関連いたしまして、最近、ブトロス・ガリ事務総長がこうなった場合の国連のあり方について幾つかの提言をしておられます。これは読みようによりましては、国連規約の四十三条といったような新しい、文字どおり事務総長の指揮に入る国連軍と申しますか、そういう国際的な、各国の主権を超えた国連軍というようなものを、一種の理想形かもしれませんけれども考えておられるようでもあるといったような、その問題ともこの問題は結びついて議論されるようになるのではないかと考えますので、今おっしゃいました問題意識は私もはっきり持っておりますが、どういうものへそれが展開していくかということはやはり慎重に見ておらないといけない。おっしゃいましたことはよくわかっておりますし、問題は、かなりそういう幅広い展開をしていくかもしれないということも考えておく必要があるだろうと思います。
  156. 二見伸明

    ○二見委員 例えば、国連憲章では、紛争の解決に平和的手段が功を奏しないときには武力を行使してもいいよと、これは認めていますね。我が国の憲法では、それはだめですね。個別自衛権はあるけれども、集団的自衛権は憲法上ないというのが今までの政府の見解であり、そしていわゆる集団安全保障体制の中で日本が、今ガリ報告のようなことに日本が現行憲法下で参加できるのかどうかということは、やはりこれは大きく議論しなきゃならぬ問題ですね。これは、常任理事国を目指すということになると、そういう問題を全部整理しなければいかぬわけです。常任理事国になりました、その問題はできませんと言っていられるのか、あるいはそこまで、常任理事国になれば政治的責任としてそういうところまで本気になって考えなければならなくなるのか、そういう点はいかがでしょうか。
  157. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 理屈を言えば、それは現行憲法の中で常任理事国に参加できないということはないのですよ。ないけれども、政治問題とするといろいろ難しいことが私はあるだろうと、そう思っております。また、日本が常任理事国に入れてくれ入れてくれという旗を振ることは、いろいろな思惑も絡まっておりますし、必ずしも日本が常任理事国になることを希望している国ばかりあるわけじゃありませんから、まあ静かに黙って出すものだけ出してもらえばいいという国だってありますよ、それは。日本が政治的に力をこれ以上持つということについては、それはおもしろくない国だってありましょう。  しかし、負担金という点などから考えれば、これはPKOを見ても、アメリカ三〇%とか、日本はそれは一二%とか、ロシアは一一%とか、それは中国が〇・九%とかね、それはイギリスが六%とか、フランスが七%とか、どの国から比べたって、アメリカに次いでダントツ、国際的負担は多い。また、カンボジアなどはもっと出してくれと言われているわけですから、現に。国連のあれだって、一二・四五%というものは国連の通常負担金を持っておりますが、これだって、それはソ連よりも多いし、ドイツよりも多いし、フランスよりも多いし、イギリスよりも多いし、イタリアよりも多い。圧倒的に多いわけですよ、これは。大きな国が、それはイギリスとイタリアを合わせたって九%だけれども日本は一二・四五ですよとか、中国とイギリスとイタリアを合わせたって日本は多いですよと、こう言えることは言えますから、国民にも自信を持ってもらいたいのは、それだけの国際貢献をやっているわけですからね、これは。  だから、日本もそれだけの持つべきものは持ってやっているのだから、今度これだけ世界情勢が変わって、国連の機構改革もしなければならぬという事態になってくれば、当然日本は常任理事国に入ったっていいじゃないかと現に言っている国も幾つかあるわけですからね、大国の中でも。だから、それを拒む理由もないのですな、これは。待ってましたというほどでもないが、それはえんきょくに断る理由もないから、それはいつでも受ける用意はありますという程度を、どういう表現にするかは別として、そういうことを言っているのですよ、一番わかりやすく言えば。  以上です。
  158. 二見伸明

    ○二見委員 日本に常任理事国になれと言われて、日本は断る理由はありませんわな。  ただ、例えば多国籍軍の問題がこの前ありましたですね。あのときは日本は非常任理事国じゃなかった。今は理事国ですね、非常任理事国である。それで、安保理でもって一つの武力制裁を決定する、日本は今までそういう立場になったことは一回もありません、戦後。今度初めて特定地域に対して武力制裁をするとかなんとかという、決定するかどうかはわかりませんよ、安保理ではその決定権があるわけだから。それに日本が入っている、日本がそれに賛成をする。しかし憲法では、賛成はするけれども憲法上それに参画することはできない。ここでは決定OKだ、しかし参加することはできない、こうしたことによって生ずるいろいろなあつれきというのがあり得るのではないか。  そこら辺もきちんと整理しておかなければ、しかも常任理事国ということになれば、非常任理事国とは違ってこれは相当政治的な影響力というか、ウエートが大きいと思う。そうしたこともきちんと整理を今のうちからしておく必要があるのではないかということを申し上げたいのです。それを整理しないで、入っちゃった、後になってがたがたした、これでは困るわけだ。その点は、憲法とのきちんとした整合性のもとに日本としてはどう考えていくのか、このスタンスだけはきちんとしておいてもらいたいということが私の質問趣旨なんです。いかがですか。
  159. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それは十分よく考えておかなければならない問題と思っています。
  160. 二見伸明

    ○二見委員 防衛問題について二、三お尋ねいたしますが、防衛庁長官、同じ茨城県でございますので。  政府は、現在、昭和五十一年に決められた防衛大綱の見直し作業に入っておりますけれども、作業の手順及び見直しの時期はいつまでか、明らかにしていただきたいと思います。平成七年の三月末までなのか、もっと早いのか。また、これに民間の有識者による懇談会を置くのかどうか、そうしたことも含めて防衛庁長官の現状をお示しいただきたいと思います。
  161. 中山利生

    中山国務大臣 今、国際情勢、東西冷戦の解消。それからSTARTⅡ条約の締結など、総じて平和の方向に向かっているということは確かでありますし、防衛政策というのも常に世界の情勢、周辺の情勢あるいは科学技術の発達ということを見ながら、謙虚な気持ちで見直しを続けていかなくてはいけない、精力的にそれを遂行しているというのが実情でありますし、今度の中期防も時期を待たずに早目に修正を、見直しをしたということでもございます。  その中期防が平成七年まででありまして、次の中期防を策定するというような日程もございますので、大綱の方も見直すのかどうか、これからの変化を見ながら判断をしていかなくてはならない。それまでには、この前もちょっと記者会見で申し上げたのですが、七年に次期防を策定するとすれば、少なくとも六年度中ぐらいには一つの目標といいますか、見積もりをつくっていかなくてはいけないのではないかというようなことを申し上げたわけでありますが、それまでにもあと二年あるわけでありますし、七年中ということになればあと三年ある、その間にこの情勢がどのように変化するかということもまだ不透明でございます。  大綱というのは、御承知のように我が国の防衛 というものをきちっとすることによってこの周辺地域の安全保障体制に対する空白をつくらない、それが地域の安定に大きな貢献をするのではないかということ、そのための最小限度の整備をしていくというのが大綱の精神でございます。別表もございますが、そういうものを現時点では見直す必要はないと思っておりますが、この二年後、情勢の変化によってあるいは大綱も見直す必要が出てくるということも十分考えられるわけであります。そういう日程でこれから勉強をしていくということでございまして、今確たるスケジュールができているわけではございませんが、常識的に見てそのくらいのことになるのかなと思っております。  また、大綱を見直すということになりますと、政策の大きな変更にもつながると思いますので、これは国会の御議論あるいは各界の有識者の御意見なども十分に参照していかなくてはならないと思っております。よろしくお願い申し上げます。
  162. 二見伸明

    ○二見委員 大綱の基本となっているのは、基盤的防衛力という考え方であります。この言葉は、それだけ取り出すとどうということない言葉なんだけれども、昭和五十一年にこの基盤的防衛力という言葉が使われてもう二十年近くたっているのです。政府は、これは戦時じゃなくて、仮想敵国があるわけじゃない、平時なんだということでずっと言ってきた。しかし現実には、仮想敵とは言わないけれども、潜在的脅威ということでソ連が念頭にあったことは事実です、今までの防衛政策は。基盤的防衛力という言葉は、それだけ取り上げれば何でもない、無色透明な言葉なんだけれども、十数年間使われてきて手あかがついている、この言葉は。また、平時だと言いながら、五十一年のときの国際情勢と今は全く違うのです。  そういうことになれば、同じ基盤的防衛力という言葉を使ったとしても、バックグラウンドが違うわけだから、私は、大綱はきちんと見直すべきだというふうに思います。できれば基盤的防衛力という言葉も、私は、新しい表現に、もっとわかりやすい表現に変えた方がいいのではないか、今日的な状況に合うように変えた方がいいのではないかと思いますが、その点については、これは防衛庁ですかね、また、
  163. 中山利生

    中山国務大臣 おっしゃるとおり、大綱ができましてからもうかなりの年数がたっておりまして、情勢が大きく変化したことは間違いがございません。しかし、先ほど申し上げましたような大綱の精神そのものはまだまだ現在でも通用すると思っておりますし、御承知のように我が国の防衛は専守防衛ということで、これは専守防衛といいますと非常に簡単なようですけれども、防衛に専念するという、この二千キロ近い細長い島国を、あらゆる事態に備えて、しかも最小限度で防衛をしていくというのは非常に難しいわけです。まあ攻撃をする方は、一人か二人でも自分の好きなところを攻撃できるわけでありますが、守る方は、あらゆる事態に備えた整備をしていかなくてはならない。  現在の防衛力でも、これでは多過ぎるという議論と、まだ足りないのではないかという議論もあるわけでありますが、これからの、先ほども申し上げましたように、国際情勢の推移を見ながら、各界の御意見なども承りながら、これからのあるべき防衛、防衛力の整備の姿というものを、これからも研究を、精力的に検討をしていきたいというふうに思っております。
  164. 二見伸明

    ○二見委員 例えば陸自ですわ、今定員十八万だけれども、それを十五万にするということも検討の対象になっているのかどうかですね。また、PKOに自衛隊が協力隊員として派遣されることになった。そういうことになると、これは今までの大綱には書かれてない新しいことですね。そうした国際貢献における自衛隊、国際貢献に参加するということを、協力するということを自衛隊の主要任務とするというような位置づけも、この大綱の見直しというか検討の中で考えるのかどうか。そうして、その延長線上には自衛隊法三条の改正ということもあるわけですけれども、そうしたことまで防衛庁としては視野に入れてこの見直し作業を始めているのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。  同時に、これはちょっと時間がありませんので、この問題を締めくくって総理にお尋ねしますけれども、そうしたことを考えて、大綱は単なる見直し、字句の修正ということにとどまらず、むしろ新しい大綱をつくるんだというそのぐらいの意気込みで私は取り組んでもよろしいのではないかと思いますが、まだ内容が決まってないので御返答しにくいんでしょうけれども、私はそのくらいの意義あることだろうというふうに思いますし、日本のこれから平和国家として世界に絶対覇は唱えないという今までの立場を明らかにしながら、新しい大綱というものをつくるんだと、私は見直してはなくて新大綱だというふうに思います。  その点について総理の御見解をいただき、その前に防衛庁長官
  165. 中山利生

    中山国務大臣 三条に新しい任務としてつけ加えるということになりますと、これはもう防衛庁というものの性格が全く変わってくるわけでありますし、防衛庁だけの判断ではできない、これはやはり政府あるいは国民全体の御意向を受けた政府の決定であろうと思うわけでありますが、そういうわけで、現在のところ、大綱の見直しとかそういういろいろな周辺の状況の検討はしておりますが、そこの三条につけ加えてもらうということは全然考えておりません。  また、定数の削減等につきましても、やはり先ほど申し上げたように、我が国の中にきちっとした防衛力が整っているということが外敵の侵攻を妨げている、防いでいるというような意味もあります。ただ、今申し上げたように、防衛力全体の装備などを含めた整備、しかも、この中期防が終わるまでは何とかなりますけれども、その次の時代になりますと若年の、青年の数が明らかに減ってくるわけであります。そういう意味もありまして、そういう人数等の整備等も含めて恐らく大綱の中には出てくるのではないか。おっしゃるような全く新たな大綱をつくるというぐらいのつもりで、柔軟な気持ちでこの問題には対処していきたいと思っております。
  166. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それは大変重要な問題を御提起になっていると思うのですが、確かに今の防衛計画の大綱は五十一年でございます。私が外務大臣をしておりまして、坂田防衛庁長官のころに議論をしたのでございますから、随分昔になりました。  それは確かに非常に世の中は変わりましたので、他方で自衛隊に対する国民の支持というものも、理解というものも随分進んできたという事実もございます。いずれにしても、しかし防衛計画の大綱というのは、ある意味でおっしゃいますように仮想敵を持たない、いわゆる独立国としての最低限といいますか、ミニマムといいますか、そういう思想であったと思いますので、これから後それはもう一遍考え直しても、現実に持たなければならない装備なり態勢というのは私はそんなに変わることはないであろうと思いますけれども、確かに随分時間もたっておりますし、世の中の認識も変わってきておりますから、その辺のことはもう一遍新しく考え直してみることが入り用かもしれないと思っております。  ただ、気をつけておかなければなりませんのは、その結果いろいろ法律等々を改正するというようなことに仮になってまいりますと、世の中における自衛隊に対する支持は随分高まっておりますものの、この自衛隊関連の法律改正は、国会では常にいつも大変難しい状況に立ち至るという経験を持っておりますものですから、そういうことまで考えますと、その辺のことはどのようにしたらいいのかということもおのずから思わざるを得ませんので、もうちょっとその辺をよく見きわめさせていただきたいと思います。
  167. 二見伸明

    ○二見委員 外務大臣、ウルグアイ・ラウンドについて伺いますけれども、ウルグアイ・ラウンドにおける農業交渉について、我々は大変重大な関 心を持っております。  先日、来日いたしましたフランスの国民議会の議員さんとたまたま昼食会で一緒になりまして、いろいろな話をしました。そうしたら彼は私に、アメリカ主導で農業交渉が妥結すればフランス農業は崩壊するだろう、現在百万の農業人口は五年後には三十万に激減してしまうだろう、農地は放棄され、国土は荒廃する、こう非常に厳しい意見を申しておりました。私はその話を聞きながら、国内での我々の議論と余り変わらないことを言っておるなと実は思ったわけであります。我々はこの例外なき関税化というものに対して非常に危機感を持っておりますし、したがって、例外なき関税化には反対であります。  ところで、外務大臣は二十八日の当委員会で、農業は七十点でもよいではないかと呼びかけている、こう答弁されました。その前にはウルグアイ・ラウンドがだめになってしまえば各国で報復措置が行われて大変だという認識を示された上で、農業分野については七十点でいいのではないかというふうに呼びかけている、こういう御発言だったというふうに思います。  私も、このウルグアイ・ラウンドがもし失敗をしてお互いに貿易戦争が始まる、報復のやりっ放しになるということになれば、結局日本が傷つくだけではない、世界全体が傷ついてしまうのだろう、その認識も私は十分持っておりますけれども外務大臣があえて七十点、こう言われたことは、これは関税化やむなしということにつながるのではないかと思いますが、この七十点というのはどういうことでしょうか。
  168. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 特に点数が六十五点であっても八十点でも私は構わないのですが、要は、完全主義とか完璧主義でいこうとしてもそれは無理ですよと、どこの国でも事情がみんなあるんだから。特に農業問題については、先ほどフランスの話が出ましたが、似たような話を私も聞いてはいるんですよ。しかし、フランスといえども、絶対自分のことだけ通してECの中がけんかになってしまっていいということは言っていませんわね、これは。やはりそれはECの中で絶対多数の人がまとまっていくのならそれにはなるべく足並みをそろえていきたいという気持ちは一万あるわけですから。しかし、アメリカの今言っているようなことではだめだということは言っているんですよ。  我々も国会決議もあるし、例外なき関税化ということには反対だと圧倒的多数の党がみんな言っているわけですから、だからそれは念頭に置いて物を言わなければならぬのであって、それは今例外をつくるとすれば、じゃ例を何十つくるのかねと。米だけでいいのかねと。いや、そうじゃないよ、麦もそうだよ、お乳もそうだよ、あれもそうだよ、かれもそうだよと十も十五も二十もあるわけですわな。全部それは例外にしてしまうのかねという問題がいろいろありますから。これは、米の包括関税化はみんな反対だということはよくわかっていますよ。わかっていますが、じゃその他のものも一切全部反対なのかというようなことについては議論をしていませんからね。だから相手の意見も聞きながらまとまれるようなことで、それは国内に大きな被害がないというようなことでまとまるのならそれはまとめた方がいいんですよ。これをまとめないで世界の経済を縮小させてしまうということになれば、それは農家だって次男もいれば三男もいるわけだから、みんな。就職口をどこかに求めてやっているわけですから。だから貿易国家日本としては、やはり四十兆以上の輸出があるということで、何らかの形でそこで生活している人はいっぱいいるわけですからね。そういうものも念頭に置いて考えていかなければなるまいということを言ったのです。
  169. 二見伸明

    ○二見委員 一月十九日のTNCでダンケル議長は、ガット体制から最も恩恵を得ている貿易大国がこれまでのところ種々の理由からラウンド終結のためのリーダーシップを発揮していないことに不満が集まっていることを自分は感じているという発言をしました。この貿易大国というのは複数だそうでございまして、日本アメリカとECを暗に指しているのではないかと言われております。  これは対してECは、ウルグアイ・ラウンドの早期成功裏終結をすべての国が望んでいるというシグナルが米新政権に向けられることを望む、こう発言をしております。これは恐らく農産物輸出国であるアメリカに対する批判だというふうに私は受けとめております。  一方、アメリカは、サービスや知的所有権の問題、MTOの設立、アンチダンピング等に関してダンケル合意案の修正を現在要求をいたしているというように聞いております。言うなれば、ウルグアイ・ラウンドは農業分野だけではなくてその他の分野でもいろいろな議論が出てきている、これが現状だろうというふうに思います。アメリカ議会の一括承認手続、いわゆるファストトラックの要請される交渉期限は三月二日でございますけれども、今後の展開はどういうふうに見ておられるのか、その点をまずお尋ねをしたい。  それとあわせて、クリントン政権のガット戦略をどのように分析されているのか。クリントン・アメリカの新政権のガット戦略をどういうふうに分析されているのか、それも同時にお尋ねしたいと思います。
  170. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結論から申しますと、クリントン政権のウルグアイ・ラウンドに対する対応につきましては、現在同政権内で鋭意検討中だということではっきりした統一見解が出ているとは思っておりません。しかし、一般的に同政権はウルグアイ・ラウンドを重視する立場をとっている、これは事実だろうと私は思います。我が国としても、米国を含む他の主要国とともに引き続きウルグアイ・ラウンドを交渉に導くように努力をしていきたいし、アメリカでもウルグアイ・ラウンドについて今早急に、ここ短い数週間で結論が出せるという状態ではないかもしれませんが、延びれば延びるように、どこらのところでまとめていくのか、今後の話し合いになっていくだろうと思います。
  171. 二見伸明

    ○二見委員 アメリカの三月二日をさらに何カ月延長するかによってこの最終案、最終的な決断の時期というのが決まってくるのだと思います。  いずれにいたしましても、このウルグアイ・ラウンドというのは農業だけではなくていわゆる十五分野ワンパッケージですね。十五の品物が一つのふろしきに入っていて、このふろしき全体をイエスかノーか、これは賛成、これは反対というそういう選別的な賛否は問えない、こういう仕組みになっております。我々はあくまでも米の自由化、包括、例外なき関税化に反対でございますけれども、いずれにいたしましても何らかの形で一つのパッケージができ上がることは間違いない。その場合に、日本政府としてはそのパッケージに対してイエスとも言えるし、ノーとも言える、こういう立場だと思いますけれども、その点はどうでしょうか。ノーと言うこともあり得るのか、すべてイエスなのか、イエスもあればノーもあるということになるのか、この点いかがでしょうか。
  172. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはもっと交渉の結果を見なければ今は何とも言えません。
  173. 二見伸明

    ○二見委員 大変これはクリティカルな微妙な問題だと思います。さらにこの点について議論をしたいと思いますけれども、これは別の機会にいろいろさせていただきたいと思います。  ところが、米に関する国会決議というのがあります。三度にわたります。総理はこの決議をどういうふうに受けとめておられますか。
  174. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 米については自給を本体としていくべきであるという国会の御意思を示されたものと考えております。
  175. 二見伸明

    ○二見委員 法制局長官、お尋ねします。  国会決議については、平成二年九月二十六日の衆議院農林水産委員会で大森内閣法制局第一部長は、純粋の法理論としては法律と同様な意味での法的拘束力を国民に対してのみならず政府あるいは国会議員に対しても有していない、しかしながら政府が国会を構成する議員の意思として示された決議の趣旨を尊重して行政を遂行するのは 然、こう答弁をいたしております。改めて法制局長官としての御見解を承りたいと思います。
  176. 大出峻郎

    ○大出政府委員 一般論としてお答えを申し上げたいと思いますが、いわゆる国会決議といいますのは、これは議決の形式で行われる衆議院なりあるいは参議院の意思表示であり、政府が国会を構成するそれぞれの議院の意思として示された決議の趣旨、これをできるだけ尊重して行政を遂行すべきであるということは、これは当然のことであるというふうに考えております。その意味におきまして、政府はいわゆる国会決議の趣旨というものを尊重し、その実現に努力すべき政治的な責務というものを負うものと考えるわけであります。  ただ、しかしながら、いわゆる国会決議といいますのは、これは法律という形式のものではございませんので、それとは違っておりますので、法律と同じような意味での法的拘束力というものは一般にはないものであるというふうに考えられるわけであります。  平成二年九月二十六日の衆議院農林水産委員会における内閣法制局第一部長答弁も、以上のような趣旨を述べたものであるというふうに考えております。
  177. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると長官、一般論としてで結構ですけれども、政府は、国会決議は政治的に非常に重いものだということで尊重しなければならぬ、しかし状況の変化その他いろいろありまして、国会の決議はこうだったけれども、違った結論も出してもいいのですよということになりますか。そういうフリーハンドを持っている、国会決議は決議だ、しかし行政府の判断は、最終的な判断は国会決議と違っても構わないのだということになりますか。
  178. 大出峻郎

    ○大出政府委員 先ほど申し上げましたように、法的拘束力、こういうような意味でのものはない、一般的にはないと思いますので、そういう意味からしますというと、違法であるとか無効であるとか、そういう法的評価を受けるということにはならないだろうと思うわけであります。  ただ、先ほど申し上げましたように、国会のそれぞれの院の意思として決められたものを、行政府としてはこれについてできるだけ尊重すべきである、こういう政治的な責務というものを負っておるということでございますから、ただやみくもに無視していいとかいうことにはならないのは当然のことだろうと考えております。
  179. 二見伸明

    ○二見委員 実は米に関する国会決議、衆参での国会決議というのは、法律ではありませんから法的な拘束力がないのはそのとおりだと思います。しかし、その政治的な重みというのは私は相当大変なものだろう。だから、このウルグアイ・ラウンドの決着というのは宮澤内閣にとっても物すごい政治決断を要することだろうと私は思います。  例えば六十七国会では、日米繊維交渉が国会決議に反するとして当時の田中通産大臣は不信任案を提出された、こういう経緯があります。国会では三度にわたって衆参で米の例外なき関税化反対という決議をしてきた。この両院の意思というのは非常に重いものだというふうに思います。もしこの決議と全く違う決定をするということになりますと、日米繊維交渉のときを一つの例とするならば、大変言いにくいけれども農林水産大臣の不信任案に匹敵する、あるいは内閣不信任案に匹敵するような大きな決定の変更だというふうに私は思います。そのくらいこのウルグアイ・ラウンドというのは重大な政治的課題を持っているのだというふうに思いますけれども、総理の御認識はいかがでしょうか。
  180. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そのように心得ております。
  181. 二見伸明

    ○二見委員 農林大臣にお尋ねしますけれども、米の関税化を容認する人たちは、七〇〇%あるいは一〇〇〇%という高い関税をかければ実質的には入ってくる米がない、だから米は守られるのだ、こう言っておりますが、私はこの考え方は非常に安易で甘いのではないかな、危険ではないかなというふうに思います。というのは、この国境措置についてアメリカは、市場を開放するための関税化だ、これがアメリカの基本的な考え方です。したがって保護するためだとは思っておりません。したがいまして、関税化をした段階で国内農業がこれからも守られるような高い関税が設定できるかどうか、これはかなり疑問だと私は思っております。  そういう意味で、高い関税をかけさえすれば大丈夫だという関税容認論者の考え方というのはかなり甘いのではないかなと思いますけれども、農林大臣、御見解はいかがですか。
  182. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お答え申し上げますが、何百%の関税になるのかどうかということは決まっているわけではなくて、いろんな説でこう置けばということでありますから、その先のことは今後のいろんな話し合いの中で、交渉経過でいろんなことがあるだろうとは思うのですけれども、しかし、今お話しのように関税化というのは輸入数量の制限措置を撤廃することは間違いないわけですから、それにかえて内外価格差をもとにして関税を設定するわけですから、輸入禁止的な効果を持つとは思われません。したがって、ダンケル案では逐次下げていくわけですから、そういうのは全く、計画どおり米価が下がっていくのか、まあ下がるんだという説もあります。しかし、そのとおりいくかどうか、これはわかりません。わかりません仮定の話で議論しているのですから、その辺は問題があるのではないかと思います。  ただ、いずれにしても我が国としては、国内で生産調整を行っておる米、その他もありますけれども、そういう農産物については生産制限の実効性を確保していかなければならぬ。そのために輸入の量的な管理といいますか、そういうものが必要になるわけですね。また、三度の国会決議、これも趣旨を十分体して国内産で自給するということがありますし、そういうことで包括関税化というのは受け入れられないという主張を実はいたしておるわけであります。
  183. 二見伸明

    ○二見委員 この問題、もう一点農林大臣にお尋ねします。  国境措置ばかりが議論になっておりますけれども、国内支持も農業分野で大きな話題の一つですね。国内支持というものがどういう形で最終的に決まるかわかりませんけれども、もし国内支持が決まった場合に、今まで日本がとってきた、我が国がとってきた米価政策ですね、毎年一遍生産者米価の引き上げとかいろいろな議論がありますね。いわゆる米価政策には影響があるのかどうなのか、その点はどうでしょうか。
  184. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 ウルグアイ・ラウンド農業交渉においては、市場アクセスあるいは国内支持、輸出競争、この三分野が今議論が行われているわけであります。このうち今お尋ねの国内支持については、私どもは、大豆、大麦、小麦それから米、これらを穀物セクターとして一括して取り扱うこととしているわけです。したがいまして、国内支持の水準を内外価格差、外国との差がありますね、それと数量に基づいて計算することにしておりますので、その観点からすれば、仮に国内支持の削減について合意に達したからといって我が国の米価政策のあり方を直ちに拘束するものではないというふうに考え、そういうふうになるというふうには考えていない。  いずれにしても、米の政府買い入れ価格は食管法に基づいて適正に決定していくというふうに考えております。
  185. 二見伸明

    ○二見委員 総理お得意の経済問題で二、三お尋ねしたいと思います。  総理は一月二十八日の当委員会で、九二年四‐六月期〇%、七―九月期マイナス〇・四%だった、三・三%というのはこの低いベースからの出発、前期比ないし前年比との議論なので実現できる、こう答弁されました。  私は、それ以前に、果たしてこの平成四年度、一・六%というものが達成可能なのかどうかという、もう一つ議論があるんだろうと思います。  一・六%を達成するには、四―六月がゼロ、七―九がマイナス〇・四ですから、一・六を達成するためには十―十二月が〇・九四、一―三が〇・ 九四、年率に直すと三・八%という成長をしなきゃなりません。どうも年率が三・八%の成長をしている景気状況じゃありませんね、これは。恐らく鉱工業生産指数もたしか落ちているはずです。そうなると一・六というのはこれはかなり難しいのではないか。極端に言いますと、一・六%の達成というのは無理だ、場合によれば一%を割り込むことだって考えられるぞ、三・五を一・六に下方修正したけれども現実はそれでは済まないぞ、もっと落ち込むぞというふうに私は見ておりますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  186. 船田元

    ○船田国務大臣 二見委員にお答えいたします。  今二見先生御指摘のように、今年度上半期の実質GNP、この実績が前期比で四‐六月は〇・〇、それから七―九月期はマイナス〇・四%、これはもちろん御指摘のとおりでございます。そして私どもとしては、そのような状況も十分に頭に入れながら、昨年三月にはいわゆる緊急経済対策、これはまあ公共事業の前倒しということを中心にやらしていただきました。その結果として、四年度上半期の契約率というのが目標をかなり上回った達成状況となっているという現実が既にあります。そして、八月には御承知のような十兆七千億円という史上最大規模の総合経済対策、これを決定して、この効果も既に実体経済に発現し始めていると考えられます。さらに、先般十二月の補正予算の成立によりまして、この八月対策の効果は今後さらに一段と本格的に経済の実態に非常に大きなプラスの影響を及ぼしてくるというふうに私は思います。  現状において、住宅投資、これは堅調に推移をしておりますけれども、その住宅投資にさらに刺激を与えるということと同時に、そのことが全体の経済状況の最終需要というものに対してかなり大きな伸びを与えるんじゃないか、こういうことを十分に期待ができるわけでございまして、政府としては、四年度の実質経済成長率について一・六%程度、これは先般、見通しのときに一緒に発表さしていただきましたけれども、これは一・六%程度になるだろうということと私どもは十分に見込んでいるという状況でございます。
  187. 二見伸明

    ○二見委員 十―十二月期の統計は恐らく三月ないし四月にならないと出ないと思います、政府の方は。しかし、民間では速報値として十―十二月は四捨五入して〇・三、年率に直すと一%という民間の調査期間の発表もあります。  私は、経済企画庁長官は大丈夫だとおっしゃるけれども、十―十二月で〇・九四、一―三月で〇・九四、年率に直してそれぞれ三・八という高い水準の経済活動が行われているというふうには決して思えません。それは、住宅投資もふえてきている、今までの予算も効いてきている、効いてきているから民間速報値では七―九のマイナ〇・四がプラスに転じた。プラスに転じたからといって、それが大きく生産に弾みがついているわけではない。そうなれば、船田さん、私は、今の言葉は恐らくそう言わなきゃならないんだろうけれども、一・六はできないと思いますよ。できると胸を張って言えますか。  できませんと、いいですか、どういうことになるか。一・六%を割り込むと九二年度の補正予算で見込んだ税収が確保できなくなる、大幅な減収増ということになるわけです、一%程度ということになれば。そうなれば、第二次補正が必要になってくる。大蔵大臣、この点は、今の経済情勢全く心配ないというふうに考えますか。この判断、私はこの判断はここで、この場だけのやりとりにしたくない。というのは、十二月にあの補正予算の審議をしましたね。そのとき私は宮澤総理と、三・五大丈夫ですか、追加をしなきゃいけないんじゃないですかと言ったら、いや大丈夫です、大丈夫です。予算が上がってしまったらばんと一・六に下方修正している。景気の問題みんな深刻なんだから、お互いに、実は本当は○・九四、これは難しいんなら難しいんだ、努力するけれども難しいんなら難しいんだと、はっきり全部洗いざらいさらけ出した方が私はわかりやすいと思う。一・六%間違いないから税収の心配はありませんなんて、そういう建前の議論でこの問題の認識を終わらしたくないのです。いかがでしょうか。
  188. 船田元

    ○船田国務大臣 お答えいたします。  決してその心配をしてないというニュアンスではなくて、もちろん実態を見ておりますと、大変在庫の調整もまだなかなか終わっていないという状況もあり、また、いわゆるバブルの崩壊ということで、いわゆる資産デフレが実際に経済の実態にいろいろと影響を及ぼしている。この状況は私ども大変深刻に受けとめているわけであります。  しかしながら、やはり先ほど申し上げたような去年三月の緊急対策、そして八月の総合対策、これをきちんと今実行に移しつつあるという状況でございまして、我々としては決して手をこまねいて見ているわけではなくて、そういうこれまでとってきた政策、それが実体経済にできる限りいい影響を及ぼしていくように、こういうことで、例えば前倒しをさらに行ったり、さらには、この八月対策につきましても、これができるだけ早く経済の実態におりていくようにということで、いろいろな許認可事項の簡素化とか、そういうこともいろいろと各関係省庁にお願いをしながら今一生懸命やらしていただいている。こういうことでございますので、そういう努力の結果として、一・六というのはこれは達成できるであろうという気持ちでやっております。  ただ、それと、一・六%程度というふうに申し上げておりまして、これはかっちりと一・六%ということで、それが外れたらもう全くだめなんだというような性格の数字ではないということまでは言ってもよろしいかなと、こう思っております。
  189. 濱本英輔

    ○濱本政府委員 お答え申し上げます。  二見先生の御心配いただいております点、御趣旨よくわかりますが、補正予算の税収見積もりと申しますのは、従来からそうでございますけれども、当初予算と異なりまして、見積もり時点で判明しております課税実績、それから大法人に対します個別の聞き取り調査、そういうものの結果を積み上げまして個別税目ごとに計上しておるわけでございまして、先般の四兆八千七百二十億円の減額補正につきましてもこのような作業を経たものでございまして、いわばその成長率の見通しと直に連動して計上しているというものではないということが一つございます。  十二月末の税収が先般明らかになったわけでございますけれども、月分といたしましては、前年の同月に対しまして一三・一%の増ということになりました。こういった今の足元の状況から見まして、補正予算の見積もりにおきまして想定しました税収動向の基調に大きな変化は認められないと申し上げて差し支えないと思います。  もとより、しかしこの税収の進捗割合というのはまだ半分程度でございまして、この後、今春の確定申告それから三月期決算法人の申告が待っておりまして、この状況を注視してまいりたいと思っておるところでございます。
  190. 二見伸明

    ○二見委員 一・六%程度ということだそうですけれども、一になると、〇・六は誤差の範囲だ、これは言いにくい話ですね。一・六が一・〇になった場合、〇・六というのはちょっと誤差の範囲とは言いにくい数字にはなろうかと思います。しかし、頑張ろうとおっしゃるんだから、私はその努力に期待をしたいと思います。  それで総理、総理は、経済情勢の変化に細心の注意を払い機動的対応を怠らないようにする、こう本会議答弁されましたですね。この機動的対応というのは具体的に何を考えておられますか。
  191. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 今度の不況の実態が御承知のように金融とか証券とかそういう方にかなり関係をしておりますものですから、財政に関します部分は御審議をいただいておりますこの平成五年度予算でベストを尽くしておるというふうに考えておるわけでございますけれども、いろいろ金融関連あるいは証券関連では、ただいま現にこの時点で議論になっておりますように、各金融機関の 不良債権の処理の問題であるとか、あるいはさらに進みまして住専の問題であるとか証券市場の問題であるとか、いろいろな問題が御承知のようにございますので、だんだん問題の整理は進んでおりますけれども、しかし、いろいろ急いであるいはいろいろ決断をしながらやっていかなきゃならない問題が多々その辺にございます。そういうことも含めまして申し上げておるつもりでございます。
  192. 二見伸明

    ○二見委員 機動的対応ということになりますとぱっと頭に浮かぶのは、一つは財政による追加措置、もう一つは金融政策だろう、この二つだろうというふうに思います。そして私は、公共投資中心の財政対策では今回の不況を脱するにはちょっと力不足ではないか  その理由はいろいろありますけれども一つは、公共事業というのはGNPの六%強を占めるにすぎませんし、したがって、今回の不況の牽引力にはちょっとなりにくいんではないか。もう一つは、公共事業用地の不足がやはり深刻になっている。公共用地の保有割合を示す公共用地取得率は一年分を下回っている県が過半数を占めている。このうち〇・五%を下回っている自治体は十県以上に上っているというふうに聞いています。ですから公共事業というのは、それはかなり有効な対策ではあるけれども、GNPの六%強だということと用地の問題でかなり制約があるんではないか。  もう一つは、公共事業のいわゆる消化の問題がある。したがって、公共事業一辺倒というのは景気対策としては決して当を得たものではないというふうに思います。しかも、公共事業の波及効果というのは建設業と製造業に偏ることになります。ところが、今回の不況というのはあらゆる分野にまでわたっているわけですね。雇用調整から業績悪化、すべての分野にわたってきている。しかも、経済がかなりサービス化が進んでいる。GNPというものを産業の分野で見てみると、六〇%はサービス業であるということになる。そうすると公共事業というのは、回り回ってサービス業に行くかもしれないけれども、なかなか直に効く話ではありません。  そういうことになると、公共投資では景気効果に偏りがあるし、今申し上げたようないろいろな課題も含めて幅広い需要喚起というのは公共事業だけでは無理ではないか。だから我々は、それは財源がないのを承知の上で、特例公債を発行することによって四兆円規模の減税を我々は要求しているわけでありますけれども、総理としてはあくまでも機動的措置、財政対策としてはこれからも公共事業一辺倒で行くということになりますか。
  193. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 総理への御質問でございますが、財政を預かる私としてお答えを申し上げておきたいと思います。  もう御承知のとおりでございますし、今の予算、大変厳しい収入の中で不況に十分配慮した予算を組んで公共事業費また財政投融資また地方単独事業などいろいろとやっておるところでございます。  御指摘のような点がありますけれども、私たちは、今のこういった形でやっていくならば、私は明るい時代が必ずその次には来るものだ、こういうふうに考えておるところでございまして、今の四兆円云々というようなお話がございます。しかしながら、これは特例公債という形でやりますと、それからの問題は当然考えていかなければならない話でございまして、これは私から二見委員にもう説明するまでもない私は問題だと思います。  赤字国債というものをいかに財政当局として苦しい思いをして解消することに努めてきたか、そしてまた、これは財政の規律を守る上におきましてやってはならないことではないか、こう考えておるところでございまして、私は、単に現在のところをどうするかという問題でなくて、将来にわたって我々が子や孫の時代に対してまでも責任を持った政治をやっていかなければならないことだ、こういうふうに考えておりまして、いろいろなことをやっていかなければならないものだと思っております。  総理からもお話がございましたように、いろいろな金融対策、証券対策というものをやらなければならない、こういうこともあると思います。それもやはり今回のこの不況がかつてなかったような形でありまして、いわゆる金融問題が非常に大きなウエートを持ってきたということのあらわれだろうと思いますし、そうした点で、総理から御指摘ありましたような諸点を中心にいたしまして、いろいろなことを私たちは総合的に対策を進めていかなければならないと考えておるところでございます。
  194. 二見伸明

    ○二見委員 減税について大蔵省が非常に厳しい、特に赤字国債、特例公債に厳しい姿勢をとっていることは私も承知いたしております。  これは恐らく、一度これを発行すると歯どめがきかなくなるだろう。せっかく平成二年度に特例公債の発行をゼロにしてしまった、それをまた、ここで減税だからということで特例公債にその財源を依存したならばまた歯どめがなくなってしまうんだろう。そうした強い抵抗感が大蔵省にはある、私はそれはわかります。我々も、赤字国債でやろうとするには党内で相当の議論をして、ここまで踏み切った。もし赤字公債でやる以上は償還計画というのはきちんとしなければいけない。安易にまた発行しようというようなことはもう政治の責任としてあってはいけない。  私は、そうしたきちんとした責任を持った上で赤字公債というものは発行していい場合と発行していけない場合と分けていいんだと思う。平成二年度に特例公債ゼロになった、だからこれからもあくまでもずうっとゼロで行くというのがいいのか。ゼロにしたのは、こういう緊急の事態が起こったときに特例公債が発行できるためにゼロにしたんだ、こういう解釈だって成り立つわけだ。今でも特例公債をこんなに発行しなければなりません、去年も発行しました、おととしも発行しました、ことしも発行しましたということではなくて、こういうどうしても発行しなければならないときに、それは背に腹はかえられぬというようなときに特例公債というものは発行すべきだ、そのくらい私は特例公債については考えてもいいと思うのです。何が何でもだめだ。  総理へお尋ねしますけれども、今回の不況のみではありません、今後ともいかなる事態になっても特例公債は絶対に発行しない、こういうかたくなな態度というのはずうっととり続けていくのかどうか、政府としては。私は、特例公債は決して好ましいことではないけれども、背に腹はかえられぬ、角を矯めて牛を殺すようなことがあってはいけない、そういうときにこれは思い切って発行してもいいんではないか。しかし、けじめというか歯どめというかそれはきちんとする、これは政治の責任だと思いますけれども、いかがですか、これは。
  195. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 私がお答えいたしますが、特例公債というのは、もう二見委員今御指摘のとおり、私は、やはり厳に避けなければならないものだろうと思うのです。やむを得ざる措置として、ゼロにしたからそれは何か発行するためにやったんだと、こういうふうなちょっとニュアンスに聞こえましたけれども、そういうことではなくて、本来やはり財政の規律として我々は持ってはならないことだろう、こう思っているんです。それですから、あるいはいろんな点があると思います。  しかしながら、例えばこの前、湾岸の問題がありましたですね。あれもはっきりと湾岸という形で費用が必要である、しかも財源は必ずこうしてやりますという形でやったということがありますね。これも極端なことを言えば特例公債かもしれません。これも本当あれでよかったのかどうかという問題は私はもう一つあると思いますよ。もう一つあると思いますが、そういったことがある。  ただ私は、今の所得税減税云々という話を見ておりますと、これはいろんな問題がまたあると思うんです。発行するに当たりまして、一体果たしてそれが効果があるんだろうかどうだろうか、今 もお話がありましたような景気対策として効果があるかどうかということも考えていかなければならない、こう思っています。特に、消費がなかなかふえないという状況もある。そのときに所得税減税をやって、果たしてどれだけの効果があるだろうか。それから、それは消費になかなか向かわないでみんな貯蓄に向かうんじゃないかというような話もございます。それから、一体そんな消費に向かったところのものが果たして全体の経済を上げていくのにどのくらいの役に立つだろうかというような問題もあります。  そういったことでございますから、私は単に赤字国債云々ということではなくて、その全体像を見て経済の中でどうしてやっていくかということで考えておるわけでありまして、そういった意味での所得税減税というのは私たちは非常に否定的であるということを申し上げておるのでございます。
  196. 二見伸明

    ○二見委員 特例公債も建設公債も借金であることに変わりない、もうそうおっしゃるならば、むしろ特例公債あるいは建設公債両方ひっくるめてGNPのどのくらいまでならば認められる、これを超えてはいかぬ、こういう一つのルールをつくるのが私は当たり前だと思う。むしろ、そういうルールをつくって、その範囲内であれば例えば特例公債でもいいよというぐらいの、そういう何かきちっとした公債政策というものを明らかにする必要があると私は思うんです。ただ、だめだだめだ、財政の規律だ規律だ、それだけではこの問題は解決しない。  また、減税をすればそれが果たして消費に向かうのかどうか、これはきのうきょうの議論じゃなくて、これはもう二十年くらいこの議論をやっているわけだ。いつも我々が減税を主張すれば、それは貯蓄に回るんじゃありませんかというのは、ずうっと言われてきた。二十年間決着のついていない平行線の議論であります。平行線の議論だから、その議論をここでやってもしょうがありません。しかし我々は、今の経済事情などを考えると、それなりに消費への影響を与えるだろう、二十年前の議論と今とでは社会環境も違ってきているし、私はかなり効果はあるだろうというふうに思いますし、そういう民間からの、そういう立場からの調査結果もあるわけです。大蔵、政府側の資料だけが正しいわけではない、このことだけは申し上げておきたいと思います。  減税については、今申し上げたように、景気対策の面からいきますと、やはり今も言ったように、私は戻し税という方式での減税がいいと思っております。もう一方、やはり税の問題を考えたときに、負担増あるいはひずみの問題、これはある。ですから、一つには税制改革というものを、いわゆる総合課税も含めて負担のあり方をどうしようかという抜本的な税制改革の議論というのは、これはしなきゃなりません。直間比率の問題もあるんです。これはしなきゃなりません。  しかし、それはちょっと大きな話ですから、ちょっと置いておきましょう。景気対策も全く念頭に置いていないわけではないけれども、負担増あるいはひずみを解決するために、私は二つのことを申し上げたい。  一つは入学金なんです。例えば入学金は大学で、これは平成元年ですけれども、千九十六億円の入学金を払っている。短大で五百三十億円、合計千六百二十六億円の入学金を親が払った。では、その年の私立大学等経常費補助金は幾らかというと二千四百八十六億五千万円、実に入学金収入というのは私学助成費の六五%に相当するのです。逆に言うと、私学助成費がたくさんあれば、入学金はそんなにたくさん払わずに済むということになる。しかも、入学金の納付というのは一カ所きりか、そうはいきません。親の立場からすれば幾つか保険掛けなければならぬから、この大学にもこの大学にも、このように全部掛ける。だから三つも四つも、金額にすれば二百万も三百万も五百万も払うことになる。入るのは一カ所だ。その入学金はその大学にとっては大事なこれは経常費ですから、これは返すわけにいかぬでしょう。しかし、親としては大変なことであります。これはまじめに考えなきゃならぬ問題だと思います。  それで文部大臣、お尋ねいたしますけれども、そうなると、例えば私の息子が五カ所に受かった。で、五カ所に全部入学金を払った。で、入ったのはこの大学だ。残り四カ所は要するに払いっ放しですね。むしろそれは、入学してこないんだから親に返せと、そういうシステムをつくる。そうすると穴があきますね、これは。穴があいたところは私学助成で補てんをする、こういう仕組みを私は検討してもいいんじゃないかと思うのです。  もう一つは、これは大蔵大臣、また減税の話かと言われると困るのだけれども、例えば三百万、五百万入学金を払った。そうすると、それは所得税の減税の対象にしてはどうか。入学金減税だ。そういうことだって私は検討してしかるべきだろう。これは通産省だったかな、経企庁だったかな、国民生活白書、あれを読んでいきますと、四十五歳から四十九歳がもうこの負担が物すごいと出ている。これは現実の問題なんです。私はこの二点は検討してもらいたいと思いますけれども、まず文部大臣、いかがでしょう。
  197. 森山眞弓

    ○森山国務大臣 お答えいたします。  先生御指摘のように、特にこの入学のシーズンになりますと、非常にその負担増をひしひしと感じられるということはもうよく私も経験者としてわかっておりますが、入学金というのはほかの納付金とちょっと性格が違いまして、御存じのように、学校にとっては合格した人がどのぐらいちゃんと入学してくれるかどうか、一定の期間の間に把握しなければならないというものでありますし、また学生にとっては、それを払うことによってその大学には必ず入れるという立場を得ることができる、ちょっと表現が変かもしれませんが、手付金みたいなものでございまして、予約金とでも申しましょうか、そういう性格のものでございますので、おっしゃいますように、返せないというのはまあやむを得ないのかなあという感じがいたします。  しかし、余り高いものを取らないようにと、額については十分配慮してもらいたいということはかねて申しておりまして、協力していただいているのでございますが、さらに、同じころに納付いたします初年度の授業料ですとか、また施設設備費などにつきましては、発表後、余り短い期間の間に払うようにということを強く言われないようにということを特にお願いいたしまして、これの面では大変効果が上がっていると考えております。  もちろん、私学助成につきましては御協力をいただきまして、わずかではございますが、毎年少しずつ予算計上さしていただいておりまして、これからも努力いたしてまいりたいと存じます。
  198. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 二見さんの教育の減税は随分前から御議論あったところだということも承知をいたしておりますが、私は税制の問題として考えたときに、一つには、教育に出しているからその子供だけということになりますと、子供を出してないところは一体どうするのだという極めてプリミティブな議論が一つあります。  それからもう一つは、その入学金とか教育費をその分だけやるということになったら、そんな生計費的なものを一体減税の対象にするのはどうかねと、こういうふうな議論はあるんだろうと、こう思います。  そうした中で、やっぱり所得税減税というものはおのずから限界があるんじゃないかな。むしろ今お話がありました四十五歳から四十九歳ですか、その辺のことにつきましては、年齢十六歳から二十二歳までの子供を持っている、扶養親族を持っているというところは、この前の税制抜本改革のときに改正をいたしまして、一般の扶養控除額三十五万円にかえまして四十五万円の扶養控除にしますと、こういうふうなことをやっているので、その点も考えてこれはやったんだというふうに御理解いただければありがたいと思っております。
  199. 二見伸明

    ○二見委員 特定扶養控除を三十五を四十五にしましたですね。ですから、入学金減税というのは、場合によれば四十五をさらにアップすることではないかなと思って、党としてはそういう提案を、さらに十万円アップして五十五万円にしろという提案は昨年いたしております。そのこともひとつ御検討をぜひともいただきたいというふうに思います。  もう一つ自治大臣、住宅ローン減税というのがありますね。国税の世界ではローン残高の一%を税額控除しております。国税でやろうと思ったら、これでは六千億円ぐらいの税収減になる。その上これを、割合を二%にするとさらに六千億円になる。これは国税では到底今の状況じゃ無理だな。それならば、これは地方税の分野だな。住民税の世界で国税でやっていると同じような住宅減税というものを私は検討してもらいたいと思う。いかがでしょう。
  200. 村田敬次郎

    村田国務大臣 二見委員にお答え申し上げます。  お述べになりましたように、所得税においては住宅取得のための借入金の一定割合を所得税額から控除するという制度はもう設けられているわけです。住民税においてはこういう制度は御指摘のように設けられておりません。  ただ、地方税においては住宅取得を促進する観点から、固定資産税あるいは不動産取得税の特例措置など多くの配慮が既に行われておりまして、これらにさらに個人住民税において特例措置を創設することは適切でないという配慮をしておりまして、御指摘の意味はわかるのでございますが、現在のところそのように考えております。
  201. 二見伸明

    ○二見委員 今までのいきさつはいきさつとして、私は、新しい政策提言としてこれは真っ正面から受けとめて、自治省内で検討をぜひともしていただきたい。いろいろな手当てがあるのは知っています。しかし、住宅減税に対する要求も強いし、住民税の世界でぜひともこれはやっていただきたい、このことを申し上げておきます。  それから、もう一つの方です。  総理、公定歩合の話ですけれども、きょうとかあしたとか上がるとか下がるとか、いろいろなうわさがありますけれども、これは、公定歩合の引き下げ、引き上げというのは日銀の専管事項ですね。ですから総理にこれを聞くわけにいきません。一般論としては上がる下がるだけれども、これからやるのは下がる話です。  総理としては、現在の経済情勢は公定歩合を、これを決めるのは日銀ですよ、公定歩合を引き下げてもいい環境になった、引き下げるべき情勢になったという御判断はされておりますか。認識はいかがでしょう。
  202. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 これは、おっしゃいますように日銀総裁の御判断にお任せしていいことだと思います。
  203. 二見伸明

    ○二見委員 最後に、地方分権について一、二点、総論的なことをお尋ねしたいと思います。  平成元年十二月二十日の「国と地方の関係等に関する答申」では、「これまでの官主導でどちらかと言えば中央集権型であった意思形成や資源配分のパターンを個人、地域等が主体的に参加し決定していくものに改め、自由で幅広い選択を可能にする社会の構築を進めるべきである。」「ともすれば行政の全国的な斉一化、平準化に偏りがちな現行の国・地方を通じた行政システムは、社会経済の変容と新たな課題に応えて、変革の時期を迎えつつある。」また、「地域間の差異を多様性として受け止め得る住民の自律意識を確立することは重要である。」こう述べて、私は、大変これは画期的というか、今までと違ったいい提言だなというふうに思っております。これは行政の立場から、中央官庁の立場からいけば、行政の画一性とか公平性とか全国の統一性、これを強調してきたのが今の中央官庁のあり方です。それとは相反する考え方だと私は思っております。  ですから、むしろこれからの地方分権というのは、それではお尋ねしたいのは、地方分権というのは、今まで国が持っていたいろいろなことを県に移すわけですね。その地方分権の受け皿というものは、県なのか市町村なのか。私は、生活に密着している行政体は市町村ですから、市町村に国も権限を移す、県も市町村に権限を移す、そして自由に町づくりをさせる、そうした発想で分権というのは進めていくべきではないかというふうに考えております。これは基本的な考え方でお尋ねします。  もう一つ。総理、暮れになりますと、予算編成時期になりますと、知事以下どかっとやってきまして、東京事務所を中心にして、三泊四日ぐらいでもってたくさんの職員が来て陳情合戦をやりますね。箇所づけ問題もある、補助金欲しい、いろいろな陳情にうわっとやってくる、十二月の時期は。あの時期というのは、私は世界で恐らく日本だけだろうと思う。ああいう補助金を獲得するために押しかけてくるということは、私は日本だけだろうと思います。あの姿は私は地方自治とはほど遠い姿だと思うのです。しかも、それにかかる経費というものもばかになりません。  私が調べた、これは県名は言うと差し支えがありますので言いませんけれども、近畿地方のある県では、東京事務所、江戸時代でいえば江戸屋敷だ、江戸屋敷には職員が十二名いて、年間の予算額というのは、人件費を除いて平成三年では七千万円。九州地方のB県では十七名いて、人件費を除いてこれは二千九百万円。人件費、別ですよ。じゃ知事さんはどのぐらい出てくるかというと、そのA県では、上京回数は年に二十回、平成三年度。それで、一回当たりの旅費というのは、この知事さん一人に限って四万九千円です。もちろん一人で来るわけじゃない。たくさんの随行を連れできますから、それは莫大な額になると思います。九州地方のB県では二十一回来る。一回来る一人当たりの旅費というのは九万五千円です。一人当たりです。一回当たりですね。それに随行がたくさんついてくる。これは非常に異常な事態だろう。もちろん中央のいろいろな情報も知らなければならないから江戸屋敷を置くことを私は否定するわけじゃありません。江戸屋敷を置いて何人かの人、職員がいて、いろいろな情報を収集する、これは大事な役目だと思うけれども、しかし、予算を獲得するために知事がたくさんの職員を連れて年に何十回も出てこなければならぬ、この事態はやっぱり異常だと思います。  地方へ行きますと、うちの市長は中央の官庁に窓口がないから能力がないとか、県へ行ってもろくろく話もできないから能力ないとか、そういうことでもって見ている。私は、これもやっぱり異常だろうと思います。そうしたことを、まず最初に、市町村に権限を移譲するという分権の基本的な考え方を総理はどういうふうに考えておられるか。また、年末に押しかけてくるあの様子が果たして地方自治という立場から見てまともなものと思うかどうか。その二点について伺って質問を終わりたいと思います。
  204. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 いつぞやも申し上げましたので繰り返しませんけれども、もう富国強兵の時代は終わりましたし、戦後の復興も済みまして、いわば地方として持っていなければならない生活の基盤というかシビルミニマムというのは整っておるわけでございますから、そういう意味では、身近な行政はなるべく身近なところがやった方がいいというのが本当だと思うのでございます。それは市町村ということだと思いますが、ただ、いきなり市町村ということにちょっとやっぱり不安がございますものですから、そういう意味では県あたりにも見ていてもらいたいところがあるというのは本当だと思いますけれども  ただ、それを後のお尋ねとくっつけて申しますと、そのためには、権限移譲ということも大事ですが、財源をやっぱり渡しませんとどうしてもその年末の行事になるわけでございまして、まことに私はあれは異常なことだと思っております。
  205. 二見伸明

    ○二見委員 以上で終わりますが、この分権の問題は中央の意識の変革がまず大事であろう。政治変革とか政治改革と言いますけれども、いろいろな改革がありますけれども、まず行政の、中央か ら地方への縦割りの行政をまず改めることが二十一世紀を控えた日本のこれからの大きな課題ではないかというふうに思います。  以上申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。
  206. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  次に、宇都宮真由美君。
  207. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 社会党の宇都宮真由美でございます。初めてなのでよろしくお願いいたします。  まず総理にお伺いしたいのですけれども、竹下さんの議員辞職の件に関しまして総理は、一月二十八日のこの予算委員会で、竹下さんに議員辞職を言うつもりはあるかという質問に対して、進退は一人一人の政治家が判断することだというふうな、これは要約でございますけれども、そういう趣旨答弁をなさったと思います。そして、二十九日の委員会では、本人の意図せざることであれば、その場合、責任を感じる、感じないは本人が考えることである、また竹下元首相は、自分の作為、不作為いずれも関係なかったという立場で証言しているのではないかと思う、そのような答弁をなさったのですけれども、この御答弁についてお伺いしたいと思います。  このことは、皇民党の褒め殺しを中止させるために暴力団が介入したという事実の存在は明らかだろうと思うのです。このことは、竹下さんも首相在任中に暴力団の介入を知ったというふうに、要するに後で知ったという証言をなさっています。  それを前提にいたしまして、総理が言われるのは、仮にこういう事実が存在したとしても、竹下さんがこういう事実に直接間接に関与したわけでもなく、また当時は知らなかった、そういう場合には責任をとらなくてもいい、要するに議員辞職はしなくてもいいということをおっしゃっていらっしゃるのか。それとも、議員辞職をするべきかどうかということには判断をしないで、総理としては竹下さんが議員辞職をするべきかどうかという判断はなさっておらず、要するに竹下さんが自分で考えればいい、そういうことなのか、御答弁いただきたいと思うのですけれども
  208. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 まず最初の問題でございますけれども、何度も申し上げておりますが、やはりお互い会議員と選挙民との関係というものは、選挙民から我々が信頼を受け、負託を受けて国会に出てきている。その信頼になお我々が値するか、負託をちゃんと実行できる立場にあるか。それが失われれば、選挙民に対してそれは我々の立場を失うわけでございますから、そこのところの判断はやはり最終的には自分自身がしなければならない。あるいは選挙があれば、それは選挙民がする場合もあるわけでございますけれども、最終的にはそういうものだろう。憲法が議員の身分を失わせることについて大変に重い規定を置いておりますのは、私は選挙民と議員とのそういう信頼関係、負託の関係を重く見ているからであろうというふうに考えておりますので、いつもそういうお答えを申し上げております。  それから、次のお尋ねでございますけれども、それでもというさらにお尋ねがあって、この暴力団が関与云々ということがあるではないかという、そういう形のお尋ねがしばしばございますので、その件につきましては私が知っておりますことは、いわゆる東京佐川事件に関する東京地検の冒頭陳述と、それから国会における証言において竹下さんがお述べになったことと、その二つでございます、それを超えて私が事実関係を存じませんのでコメントする立場にございません、こういうふうにお答えをいたしておるところでございます。
  209. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 ちょっとよくわからないのですけれども、じゃ、総理は、皇民党の褒め殺しを中止させるために暴力団が介入したという事実があるかどうかについてはどういうふうに、竹下さんの証言と、そして冒頭陳述しか情報がないということなんですけれども、その中でどういうふうに御判断なさっていますか。
  210. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私が知っておりますことは、事実かどうかは別として、知り得ていることは二つございまして、一つは冒頭陳述における、ちょっと読みますが、被告人渡邊が、交際のあった政治家がいわゆる右翼団体の活動に苦慮していることを知り、この件の解決を石井に依頼し、同人の尽力により、同団体はその活動を中止した旨の冒頭陳述、これが、真偽はともかくといたしまして、冒頭陳述では被告人渡邊という人がこういうことをしたということが述べられております。  それからもう一つは、平成四年十一月二十七日と思いますが、当院における証言において、竹下元首相が、石井さんという方がこの問題に介在したという事実を昭和六十三年十二月以降に承知した、この二つが私が聞いております。ただ二つのことでございまして、それを超えて私は直接の知識を持ち合わせておりません。
  211. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 ですから、竹下さんが衆議院における証言で、自分自身が、六十三年十二月以降に暴力団、石井さんが介入したということを知ったというふうに御本人が述べていらっしゃるわけですから、その事実は、総理としても事実は真実だとお考えになられるわけでしょう。御本人が言ってもそれは真実かどうかわからないと言われますか。
  212. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 宣誓の上で証言をしておられますので、この竹下証人の陳述は真実と考えます。
  213. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 じゃ、まず一つは、いつ知ったかは別にしまして、皇民党の褒め殺しを中止させるために暴力団が関与した、石井さんが暴力団員であるということは明らかだろうと思いますので、暴力団が介入したという事実があったことは明らかだろうと思います。それに対して竹下さんが、積極的または直接間接に関与したか、そしてそれを事実があったころ同時に知っていたかどうかということは明らかにはなっておりません。というか、竹下さん自身はお認めになっておりません。ただ、後で知ったということは認めていらっしゃいます。  それを前提にして、こういう事実があったことを後で知った場合、この場合について国会議員として議員辞職という責任をとる必要があるとお考えかどうか、このあたりについてはいかがでしょうか。
  214. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 お尋ねの意味は、十二月に承知をした、承知をしたということにとどまるわけですから、それについて御自分の作為、不作為ということは明らかになっていない、そういうことにまで責任をとられるべきかどうか、こういうお尋ねに帰着いたしますね。  それはもう私はすぐれて個人的な判断によるとしか申し上げようがないんじゃないかと思います。自分がしたことだ、仮にこれでございますと別の判断があり得るかもしれませんけれども、全く作為、不作為ということに関係がないという立場でのお尋ねでございますから。そういたしますと、それについての責任の感じ方というのは極めて個人的なものではないかと私は思います。
  215. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 私がお聞きしているのは、それは、進退を決めるのは、議員辞職をするかどうかというのは竹下さんが決めることです、これはもう否定いたしません。当然のことだと思っています。ただ、それに対して、それぞれ一人一人がやめるべきかどうかということに対して判断をすることはいいのではないか、してはいけないということはないだろうと思うのです。むしろ今私たちが知りたいのは、ある意味ではそういうことに対する総理の倫理観といいますかそういうものが知りたいわけであって、進退を決めるのは御自身が決めること、竹下さん御自身が決めることというのはわかっているのですけれども、それをあえて総理御自身はどう考えるかというそこのところを聞いているのですけれども
  216. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 これは大変お尋ねになる立場も難しいお立場だと思うんですけれども、仮に、全く関係のないことについて責任を感じるかどうか、こういうお尋ねでありますと、それはな かなかお答えは難しいんじゃないかと思いますが。仮にでございますよ。
  217. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 要するに、全く関係のないことだから、要するに自分には全く関係のなかったことだから責任をとらなくてもいい、そういうふうに言われるわけではないんですか、それとも違うんですか。
  218. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 実際の状況についてしか申し上げようがない。と思いますですね。
  219. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 私が思うには、例えば竹下さんが議員辞職をすべきと考えるかどうか。例えば、いろいろなところでアンケートとか世論調査とかしています。それに対して、竹下さんがやめるべきかどうかというふうな質問に対しては、やめるべきだという答えと、やめるべきではないという答えと、どちらとも言えないという答えと、あとは、自分はいろいろ考えているけれども言えないとか言いたくないとか言うべきでないとか、そういう選択肢しかないと思うんですよ。その選択肢で私はすべて入っているんじゃないかと思うんですけれども。総理のお答えは、要するに自分が考えるべき問題じゃなくて、本人が考える問題だと。それは明らかなんですけれども、それに対して、自分のことじゃないことでもいろいろ考えることはこういう重大な問題になったらあることですから。ですから、何というか、総理のお答えは私から見れば真正面から答えていただけてない、そういうふうに何かちょっと横にそらされているなという気がするんですけれども、議員辞職すべきと考えるかどうかという質問に対して、すべきか、すべきでないか、どちらとも言えないか、それとも、いろいろ思っているけれども言えない、そのどれかに当たるんじゃないかと思うんですけれども
  220. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 大変平ったく申しまして、このことについて、いわば町の声というのはかなり端的に町の声というものの考え方があるんだろうと私は思います。そのことは決して大事じゃないことはございませんけれども、ただ、議員の身分ということになりますと、先ほども申しましたように、わざわざ憲法が三分の二という規定を置いておるということはやはり大変大事に考えなければなりません。殊に、お互い議員という立場で考えますと、町の声がこうだからということだけで短絡していいともなかなか言い切れないところがあるということだけを申し上げておきたいわけです。
  221. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 いや、町の声がこうだから云々と言っているわけではなくて、そういうことに対して国民一人一人が考えて、これだけ世間を騒がせた大きな事件ですから、それに対して、竹下さんがやめるべきかどうかということに対して国民の一人一人が自分の問題としてその評価をしているわけですよ。だから、総理のお立場で言えないと言われるんだったらわかるんですけれども、そういう自分の倫理観なり道徳観念に基づいてそういうことを判断なさらないというのはちょっとよくわからないんですけれども
  222. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それはそれとしまして、ただ、この予算委員会という公の場において、しかもこれは仮想の話と申せない種類のことでございますので、私が申し上げるべきことでない、先ほどるる申し述べましたような理由からそう思っております。
  223. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 ということは、考えているけれども申し上げるべきことでないということですか。やめるべきかどうかについては、やはり御自分の倫理観なり道徳観なりで判断はしている、だけれどもそれは言うべきではない、そういうふうにお考えなわけですか。
  224. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 本質的にこれは御本人が考えられるべき問題だというふうに思っておるからでございます。
  225. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうしましたら、それはちょっと私には納得いかないんですけれども、本当はそういうことに対して、いろいろこの問題については世論調査も行われております。昨年十二月初めの毎日新聞の世論調査でも、竹下さんはやめるべきだというふうに考えている人が七八%、そして年末までに竹下さんは議員辞職すべきだ、そういう決議をした自治体も八十九もあるということが報道されております。そういうことを見ましても、それは国民一人一人が竹下さんはやめるべきかどうかというテーマについて判断しているんだろうと思うんです、やめるべきかどうかということを。それを総理はなさらない。するべきではないと言われるのは、私にはちょっとわからなくて、むしろそういうところで判断をしていただいた方が、国民の皆様にも総理の人間像みたいなものが身近にわかって、総理と国民との間が身近になると思いますし、特に今、政治家不信、政治不信ということが言われています。政治のことはわからない、政治家は何を考えているかわからない、政治が腐敗しているというか、そういうことがこれだけ言われているときに、そういう率直な意見がお聞きできないということは非常に私は残念だと思うのですけれども。  そうしたら、それについては言うべきでないということを前提にしまして、そうしたら、もし仮に、竹下さんが当時から知っていた、あるいは関与していたということになれば、それでもやはり総理としてはそういう判断はすべきでないとお考えですか。
  226. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それは全く仮定のお尋ねでございますので、お答えできません。
  227. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 仮定仮定と、仮定の質問といいましても、仮定を立てていろいろ考えるということは多々あるわけでございますし、仮定の質問だから答えられないというのでは、総理の全くお考えがわからない。こういう政治家と暴力団との関与に対して、総理がどういうお考えを持っていらっしゃるのかということが全く私たちにはわかりません。それでいろいろな、何というか、国民の信頼を集めることができるかどうか、国民に対して、そういうことについては答えられないで済ませられるのかどうか、お聞きしたいと思いますけれども
  228. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そこのところはちょっと違っておりまして、政治家が暴力団というようなものとかかわり合いを持つなんてことは、これはあるべきことでないということははっきり私は申し上げております。
  229. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうしたら、そういう事実があれば、それに対しては政治家は議員辞職という責任のとり方をすべきとお考えでしょうか。
  230. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そういうことは好ましくないことだというふうに考えますけれども、その後段のお尋ねはやはり前段にお答え申したところに帰っていくと思います。
  231. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 いや、そういう場合もやはり、やめるかどうかというのが自分自身の判断というのはわかるんですよ。それは当然なんですよ、自分自身が判断するということは。だけれども、そういうことに対して、議員として、要するにほかの人の問題については判断できない、判断すべきでないとやはりお考えなわけですか。そういう事実があってもほかの者は判断すべきでないと。
  232. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 今いろいろお尋ねになっていらっしゃいますが、これは全く架空の問答をしているわけではありません。そうではありませんから……(発言する者あり)静かにお聞きください。そうではありませんから、私がうっかりお答えをしてはならぬということを言っているのです。
  233. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 うっかり答えたらいけないというのが、どうして答えてはいけないのかわからないのですけれども、この答えでわかるのは、総理がどういう道徳観というか、暴力団と政治家との接触についてどういうふうな考えを持っているか、それに対して、要するに、政治家がどういう責任をとるかによってその行為がどの程度悪いと考えているかということと結びつくと思いますので、だから、どのくらいのいけない行為だと、程度を考えているかということを、国民が判断する上にその責任のとり方というのは大事だと、どういう……。
  234. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 いや、それは、政治家が暴力団とかかわりを持つなんということは断じてあってはならぬこと、これはもう極めて明瞭だと思います。
  235. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 では、断じてあってはならないことだけれども、その責任をとるかどうかは、もう本人が決めることだから、ほかの人は言うべきじゃない。そしたら、御自分がもしそういうことが、総理に関しては決してないとは思いますけれども、御自分がもしあれば、どういう責任をとろうと思いますか。
  236. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私は暴力団とかかわり合いを持ったことはありませんし、これからもそういうつもりはございません。
  237. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 私としましてはどうもはっきりとお答えをいただいていないという気がするのですけれども、今、何といいますか、暴力団といいますか、そういう暴力団員の市民生活というか、それに対する脅威といいますか、というのは年々大きくなっていると思います。暴力団員が市民生活に関与してくるということ、そういう背景もありまして、一九九一年五月八日ですか、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律というのも国会で成立いたしました。それも、こういう法律が表現の自由等との関係からいろいろ問題もありましたけれども、そういう法律を成立させなければならないという背景には、やはり「暴力団員の不当な行為によって市民生活の安全と平穏が脅かされている実情」がある、そういうことが趣旨説明でもなされています。  そして現在、私たちの周りを見てみても、大きな事件では伊丹十三監督の事件とか、民暴という言葉が生まれるように、例えば民事事件に対する暴力団員の介入、交通事故への示談あるいは債権の取り立て等、市民がいかに暴力団から被害を受けているか、そういうことは本当に枚挙にいとまがないくらいいっぱい行われています。そういうときにあって、私たち政治家は一般の市民の方以上にそういう方との接触については潔癖でなければならないと思っています。だから、そういう人との断じてあってはならないことということは、やはりそういうことがあればそれこそ議員生命を失う、そのくらいのことだというふうなことを言うのに何のはばかりもないと思うのですけれども、それでも総理は、そういうことがあっても、そのやめるかどうかは本人が決めることだから御自分の判断は言わないというふうにおっしゃられますか。
  238. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 暴力団、殊に新法ができましてからなおさらでございますけれども、こういう人たちとのかかわり合いを持つということはもう一般的にあってはならぬことですし、私ども政治家がそういうことがあっては断じてならないことだというふうに私は思っておりますことは、宇都宮議員の決して人後に落ちるものではございません。その点については、おっしゃっていらっしゃること、私は全く異存がございません。
  239. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 私は、私も総理の人後に落ちないと思っていますけれども、そういうことがあれば、もう自分で議員はやめるということぐらい言い切れますけれども、総理はそこまでは言えませんか。
  240. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 私はそういう人とかかわり合いを持ったことはないし、今後も持つつもりはございません。議員がおありになると言っているんじゃありませんよ。私はそういうことは今後もかかわり合いを持たないと考えております。
  241. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 余り言ってもあれですけれども、どうもかみ合っていない。何かちょっと正面からお答えいただいていないと思うのですけれども。  では、もうお一方だけ。後藤田法務大臣、法の番人として、こういうことに関しましてどういうふうにお考えか、ちょっと言っていただきたいのですけれども
  242. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 総理大臣と全く同意見でございます。
  243. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 何というのか、このあたりが、ごく普通の一般の国民に政治がわかりにくいと言われる一つの原因ではないか。本当に、例えばこういう会話が友人との会話とか普通の会話だったら、やめるべきかどうかなんということについても、私もそう思うとか、いや、私はやめる必要ないと思うとかいうふうな会話がぽんぽんと行き交うのですけれども、それが行き交わないというところが残念なような気がいたします。  次の質問に移らせていただきたいと思います。  所得税の減税についてなんですけれども、まず、一月二十八日のこの予算委員会で、林大蔵大臣は、今のところ所得税減税は考えていないというふうに言い切られました。そして総理は、提出している予算案をベストと考えているというふうに言われましたけれども、一方では、ここ数カ月の経済動向に注意し、機動的な対応をする必要があるというふうなことを言われています。そしてまた、この予算を成立させていただき、その時点の日本経済の動向を考えても遅くはないのではないかというふうに言われているのですけれども、先ほどの質問にも出ていたかとは思うのですけれども、機動的な対応という中に所得税の減税も入っているのかどうか。予算成立後の所得税減税ということをすべきかどうかということも検討の対象になっているのかどうかということを、ちょっと総理にお聞きしたいと思います。
  244. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 総理への御質問でございますが、担当でございますから私からお答えをさせていただきますけれども、今予算案をお願いをしておりまして、この予算案をやれば、不況に配慮した予算でございますし、私は必ずや立派な、日本経済は安定的成長の軌道に返るものだ、そう信じております。そういった意味で、私は、この予算案をぜひ通していただくことが先決の問題ではないかというふうに考えておるところでございます。  今、いろいろと配慮していかなければならないというようなお話がございます。それは、今回の不況の問題というのは、単に予算、財政の問題だけじゃありません。金融の問題その他の問題についていろいろな配慮をしていかなければならない点が多々あると思います。金融の秩序が非常に重要になってきたということも事実でございますから、そういった点すべての問題について注意深く配慮をしながらやっていくというのが我々の態度だ、こういうふうに御理解を賜りたいと思っております。
  245. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 言われていることはよくわかりましたけれども、私の問いに対する答えとしては何となくわからないのですけれども、総理が言われた機動的な対応をする必要があるという機動的な対応の中には、所得税の減税をするというふうなことも含まれているのかどうか。要するに、機動的な対応というのはどういうことを考えていらっしゃるのか、具体的にあればということです。
  246. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それは先ほど二見委員から御質問がありましてお答えを申し上げたところでございますけれども、今度の不況の中に、循環的なものばかりでない、いわゆる資産価値の下落による銀行でありますとか証券でありますとかいう問題があって、そして、それについては御承知のように、例えば銀行の不良債権をどういうふうにして処理するとか、あるいはいわゆる住専と言われる住宅専門の諸企業の処理をどうするかとか、証券市場の活性化をどうするとか、そういうもろもろの問題がございまして、これは御審議願っております予算とはまた別のそういう問題がございますので、それらを日々動向をよほど注意して見ていないといけない、そういう問題の処理も機動的にやっていかないといけないということを申し上げようといたしておりましたので、財政につきましてはこの予算に盛られましたところをひとつお認め願いたいということでございますので、所得税減税というようなことを考えておるわけではございません。
  247. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 この予算案がベストだと考えていらっしゃるということは、出された方がそういうふうに考えていらっしゃるということは当然だろうと思うのです。ただ、予算案ということは、や はりことしの四月から少なくとも来年の三月までを見越してつくられていると思いますので、少なくともこの年度内には補正予算等を組まなくても十分このまま、この予算でいけば景気も回復もできるし十分やっていけるという御自信はあるわけですよね。
  248. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 予算案を出しますに当たりまして、政府の経済見通しを出しました。三・三%の成長をやっていこう、こういうことでございまして、それの達成のためにはこういった財政的な措置をとる。そのほかにもいろいろやらなくちゃいかぬ問題があると思います。先ほど総理からお話がありましたようなことがありますが、私は、こういった形でやれば必ず達成できるものだと信じて、お願いをしておるところでございます。
  249. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうしましたら、来年の三月、少なくともですよ、見通した上での、三月までの経済動向を見据えた上でのベストである、今のところは補正予算なんかは考えていないというふうにお聞きしてよろしいのでしょうか。
  250. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 予算を出しております。ですから、この予算を修正をするとか、補正を初めからやるなどということは当然考えられない話でございまして、予算というのは来年についてこんな形で運営していきましょう、こういうことでの財政の枠組みでございますから、その点をぜひ御理解を賜りたいと思います。
  251. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そういうお答えが返ると思っていましたけれども、いろいろ新聞報道等では、これを成立させた上で早期の補正予算を考えているとかいうふうなことも言われていますので、このあたりもわかりにくい点なんですけれども、そういうふうな報道もなされております。  それでお聞きするのですけれども、確かに景気というのは私など素人にはもちろんどうこうというのは読めませんけれども、まず、今の予算では景気回復には十分でないという声もいっぱいあります。私たちも、いろいろ消費者の消費意欲をそそるためにも減税をすべきだ、今の公共事業だけではだめだというふうに考えております。そういう声、意見が、まあそういう景気回復ができるかどうかなんということは経済の専門家の意見が多くを占めるのでしょうけれども、そういう意見があるということ。そしてもう一つは、やはり重税感というのが私たち国民には強いということで、そちらの方からの所得税の減税をしてほしい、すべきだ。景気回復の点からも、そして重税感という観点からも、そういう所得税の減税ということが言われています。  そういう中で、そういうことをお考えになっていないということなんだから無理かもしれませんけれども、私たちはこの予算案の組み替えをすべきだというふうなことを考えていますが、この予算で完璧に大丈夫だ、全くそういうことを、今所得税減税をするようなそういう予算の組み替えをする必要は全くないというふうにお考えなんでしょうか。
  252. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今お話がございまして、景気回復についていろいろな御意見がある。私も御意見があることは十分に聞いておりますし、どこへ行きましても景気悪い、景気悪いというのは、今言っておられるところは確かだ、私もそういうふうに聞いています。事態はそんな生易しいものではないということの認識は私も持っておるつもりでございます。  しかしながら、こういった予算をやり、経済、金融その他の問題が相当正常化してまいる、そして事態がだんだん回復基調になっていくならば、私は相当いい形に行けるのじゃないか。基本として申しますならば、日本の経済力というのは私は大変強いものを持っておる、こう思っておるわけでありまして、もうだめだ、だめだなどと言うとますますだめになるわけでございますから、経済力というものはやはり自信を持ってやっていただくということが一番大切なことじゃないか、こう思っておるところでございます。  それから、もう一つの重税感というようなお話がございました。所得税の減税も、かつて重税感というようなことが言われておりましたから、この前の税制の抜本改革のときに相当大きな形での税金を下げるということをやりまして、その辺は随分変わってきた。それは、この前の税制改革をやります前の状態までにはまだ私はいろいろな形でもっての負担は上がっていない、まだまだ相当な低い段階にありますから。  さらに私は、税金というものをどうするかということは考えていかなければならない。お互い会議員でありますから、国会議員というのはかつてはやはり税金をどうするかというのが一番大きな問題だったのですね。王様から取られるのをどうするか、こういうことでやったわけですから、税金というものについて常に見張っていかなければならない。と同時に、やはり財政のその金をどういうふうに使うかということを監視していくのが国会だ、こう思っているところでありまして、そういった点でいろいろな御議論をいただきながらやっていかなければならない。そういった意味で、今お願いをしているものは私たちはベストのものだろう、こういうふうに考えてお願いをしていることを申し上げておきたいと思います。
  253. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 今回の予算はやはり景気回復ということが一番大きな柱だろうとは思います。そして、その景気回復を公共事業を中心にしてしようというふうな形の予算だろうと思います。  そこで、公共事業関係費につきまして少しお尋ねしたいんですけれども、ただ、この公共事業を見る場合、確かにこれによって景気回復をしようというのはもちろんなんですけれども、ただ景気回復のためだけではなくて、やはり将来を見越して少しでも社会資本の整備ができるように、また、「生活大国五か年計画」というのも昨年の六月ですか出されたわけですので、そういうことにも配慮した公共事業でなければならないだろうと思います。  公共事業の関係費は八兆五千六百五十四億円ということなんですけれども、そのほとんどの八兆一千三百億円を建設国債で賄おうとしています。このあたりは、建設国債も将来に資産を残すとはいえ、やはり次の世代に借金を残すということには変わりないだろうと思うんですけれども、私たちにとって今一番の大きな困難でありかつ重大な問題である景気を回復しよう、景気対策を建設国債、将来の、次の世代に残す借金でもってこの今の私たちの困難を解決しようとしているということ、このあたりにつきましては、公共事業関係費における建設国債の割合というのが余りにも多いということ、このあたりについてはどのようにお考えなんでしょうか。
  254. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今お話がございました中で、景気に配慮した予算を私たちは組んでいるということを申しました。公共事業の関係は、お話しのような形の中で非常に苦労して建設国債を出したわけであります。そのほかにも財政投融資の金を相当につき込んでやっておりますし、また、地方単独事業というようなものにつきましても、相当な金をつぎ込んでやっておる。いろいろな形をやりまして、政府のいわゆるIGと申しますか、政府関係投資が九・五%の増、これは補正を入れましてもそういうことでございますから、相当な金を政府の方としてはつぎ込んでやっておるところでございまして、そういったことをぜひお考えいただきたい、こう思っております。  それから、財政投融資ということになりますならば、大体借金でありますから、そのまま使い捨てるということではない、その仕事の方からいろいろと金が返ってくる、こういうことでございます。  建設国債にいたしましても、将来の負担ということでございますが、これは将来にまた資産が残るわけであります。例えば、家を建て増すとかなんとかということ。先生のお宅でもどこか自分たちだけで今使うという金に使うんじゃなくて、将来の、例えばお子さんとかなんとかに家を建てる。家を建てるんであったならば、今全部現金でやらなくても、将来子供たちが大きくなったらこのうちに住まわせるよ、こういうことであるなら ば子供たちにもある程度の負担をさせてもいいではないかということは、私は素直にあるんだろうと思うんです。今の消費だけをやるためにその負担を子供たちや孫たちに与えるなんということは、やはりお互い、今生きている世代としては避けるべきじゃないかな、こういうふうに思っているところでありまして、そこが赤字国債と建設国債との差だというふうに御理解を賜ればありがたい、こう私は思っておるところであります。  いずれにいたしましても、景気には相当配慮いたしまして予算を一生懸命やりたいと思いますので、ぜひ御賛同をいただくように心からお願いを申し上げる次第でございます。
  255. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 建設国債が将来資産を残す、そして赤字国債の場合にはそれがないということで、両者の差が物すごくあって、そして赤字国債の方は絶対だめだけれども、建設国債についてはそれに比べて安直にというか、何か安直に出しているというふうな感じがするのですけれども、公共事業関係費の割合をこれほど多く建設国債、まあ私思うには、余りにもちょっと多過ぎるのじゃないか。ほとんど建設国債に頼っているということは、やはり次の世代に借金を残しているのじゃないか。  確かに先ほど言われました家を建てる場合に、親と子供が建てて、親も借金払って、子供も一緒に借金払って、将来子供に家を残す。ただ、そういうところはあろうかと思うのですけれども、そのときに違うのは、この場合だったら要するに子供の意見は聞けないということですよね、今。親が勝手に今いいということをしている。親が今いいと思うことをしていて、それはひょっとしたら将来の子供たちにとっては、こんなもの役に立たない、もっとこっちの方がよかったということにもなるかもしれないわけです。そしてまた、将来子供たちにも残るという確実性も必ずしもないわけです。  そういう意味で、やはり資産が残るとはいえ建設国債の発行には慎重にならなければならないと思うし、余りに赤字国債との違いというのを強調して、一方は絶対だめで一方はいいというふうなものでもないだろうと思うんです。それで、この公共事業を建設国債に頼り過ぎているのじゃないかという気がしますもので、そういうお尋ねをしているわけなんですけれども
  256. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今、例を引きまして家のときのことを申しましたが、私どもも、建設国債だから何でも無制限に出してよろしいなどとは考えておりません。建設国債というのはまさに公共事業に使うわけでございまして、公共事業というのは、やはりそのときの社会資本として非常に有益なものでなければ使わない、こういうことで出しておるわけでございます。そういったものについての選別もやっている。そもそも建設国債にいたしましても赤字国債にいたしましても、いずれもやはり将来の負担を残すわけですね。そういったことについてはやはり我々が考えていかなければならぬ。  御指摘のように、子供たちの意見を聞けないじゃないか、こういうふうなお話もありますよ。確かに聞けません。聞けないからこそ私たちが、現在のものについてお互いがやはり責任を持って、子や孫たちのことも考えてやっていくということが現在における政治家の私は役割ではないかな、こう思っているところでございまして、ぜひそういった点で御勘案をいただきたい。  大体、建設国債にいたしましても、全体の公債残高の規模は今よりふえないような格好で持っていこうという形で中期財政計画も出しているわけです。現実問題としてはなかなか守れないという難しい問題がありますけれども、私たちはそういった公債政策の歯どめというものは常に考えながらやっていかなければならない、これが原則だろうと思います。ただ、今回のこの不況でございますから、この不況に対応してやはりいろいろなことでやっていくためには、将来に残るような公共事業をやっていくということが大切なことだろう、それによって回復ができるのじゃないか、そう信じてやっていることを申し上げておきたいと思います。
  257. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 おっしゃられるとおりだと思うのですけれども、そうしましたら、将来に残す借金はできるだけ残さないようにするのが私たちの務めだろうと思います。それで、今回は新規に建設国債を八兆一千三百億円出して、そして本来ならば今回償還すべき国債に関して借換債を二十一兆七千八百六十三億円出しているということは、できるだけ今、将来に残さないために我々で借金を消しておくということに関しまして、この借換債の額と新規建設債の発行額ということは、どのように大蔵大臣としては評価なさっていますか。
  258. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 借換債と申しますのは、国債を発行いたしますときに、中期のもの、五年債であるとかありますが、大体十年物で出している、十年で償還、こういうことになっています。そうしたものでありますが、十年で償還ということになりますと相当大きな規模になりますので、今は大体六十年で償還をするというのが、大体の見当をつけてやっているところであります。いろいろなものがありますけれども、政府の建物を建てる等々の形におきましては六十年で償還する。その六十年の償還でございますから、返すということでありますから、十年物をかえていかなければならない。発行しました国債は、そのときに返さなくちゃなりません。しかし、返したならばその穴埋めはどうするか、こういうことでございますから、その穴埋めのためにまた新しい国債を出していく、こんな形で順繰りにやっていきまして、六十年で償還をいたします。こういうふうな格好にしておるわけでございまして、そういったことを御勘案いただきたいな、こう思っているところでございます。
  259. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうしましたら、次に公共事業の内訳なんですけれども、大きな項目として、今回の公共事業は内訳として、住宅対策に九千八百七十九億九千万円、下水道環境衛生等施設整備、これについて一兆四千三百五十億円、道路整備について二兆四千百一億円ですか、それぞれ前年度比を見ますと、住宅対策が六・一%の増、下水道等七%の増、道路等については四・八%の増で、まず予算全体の伸び率が〇・二%というところからすれば、伸び率だけ見ればかなりの伸び率なんで、公共事業のこの住宅とか下水道とか道路の部分にすごく予算を充てているぞということになるのですけれども、ただ、公共事業関係費の全体の割合を見ますと、住宅が一一・六%、下水道が一六・八%、道路が二九・二%。これは前年を見ますと、住宅が一一・四、下水道が一六・五、道路が二九・三。そしてその前を見ますと、やはり住宅が一一・四、下水道一六・三、道路が二九・三と、その構成はほとんど変わってないわけなんですね、構成比といいますか。  昨年の六月に「生活大国五か年計画」というのをつくられたわけですから、この公共事業に対しても、そういう五カ年計画が見えるような予算、公共事業費の割合にするべきではないか、また、できなかったのか。私はしてほしかったと思うのですけれども、そういうことができなかったものか、そのあたりは大蔵大臣としてはどのようにお考えですか。
  260. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 公共事業の事業別配分の話でございますけれども、私ども、五カ年計画の趣旨も考えまして、いわゆる生活関連の分野に重点的な予算を配分しているつもりでございます。  今シェアのお話がございましたけれども、例えば住宅・下水道環境衛生等の分野に限って見ましても、四十年度のシェアは全体で九%でございました。それが五年度の予算では三〇・一%となっております。それから、そういう長期のタームでなくて、二年度と五年度と比べましても、住宅・下水道環境衛生等の分野は、二八・五%であったのが三〇・一%というぐあいにシェアのウエートが上がっております。したがいまして、私どもは一生懸命そういう生活関連の分野に重点的に配分するように努力いたしておりますし、今後ともこういう努力はぜひとも継続していかなければなら ぬというぐあいに考えておるところでございます。
  261. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 例えば公共事業関係費の下水道の分野は、九一年から九二年に関しては、一六・三%から一六・五%になって〇・二ポイントの伸び。そして九二年から九三年についても、一六・五から一六・八で〇・三ポイントの伸びということで、ちょっとこれは何かさっき言われたのと数字が違うようなんですけれども。そういうふうに私は見ているんですけれども。だから、九二年の六月にできたわけですから、九二年から九三年、昨年から今回の予算に対しては、やはりそこで、その計画ができた一番初めての予算ですから、それも今の内閣の大きな方針としてこれは出されているわけですから、それが見えるような、だんだん上がってきているのはわかるのですけれども、去年からことしにかけて、前年度から今年度にかけて大きく変わったというところは、そうしたらどこかあるのでしょうか。
  262. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 下水道についてのお尋ねがございましたので、下水道について例えば申し上げますと、四年度の全体の公共事業の中に占める下水道のシェアは一二・五でございました。これが五年度は一二・九ということでございます。このように単年度としても〇・五程度のウエートということでございますから、ほかのものに比べてかなりの伸びを示しているわけでございます。例えば公共事業全体は五%の伸びでございますが、そういう下水道、環境、住宅等の分野は七・一%の伸びを確保しておるわけです。したがいまして、そういう生活関連の分野を除いたその他の公共事業は四・一ということで全体の伸びをかなり下回っているということでございますし、今申し上げましたように、伸び率、シェア等を見ても、そういう生活関連の分野に重点を置いていることはおわかりいただけるのじゃないかなという気がいたしております。
  263. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 さっき四年度と五年度の伸び、四年度から五年度にかけてこれだけ伸びたと。いつも予算を言われる場合には、どれだけ、どこを重点にして、どこを伸ばしてこっちを削ったかというふうな、どこに重点を置いているかということを前年度対比でいつも言われるのですけれども、それだけでは、私はそこだけを見ていてこれだけ生活関連のところに重点を置いたということは必ずしも言えないのではないかと思います。額が少なければほんの少し額をふやしただけでも伸び率は大きくなるわけで、額が大きければ少々伸ばしたところで伸び率は大きくならないというところもございますので、むしろ私はその構成の方が大事だと。例えば、道路にこれだけ、下水道にこれだけ、住宅にこれだけという、どれだけの割合を占めるかという構成比といいますか、そっちの方がむしろ大事じゃないか、もちろん額もですけれども。だから、前年度に対する伸び率ですべて説明するのは私はどこかおかしいのではないかと思います。  そして、下水道で四年から五年にかけての伸びを言われましたけれども、そうしたら前年度の三年度から四年度に対してはどのくらいの伸び、それに比べて「生活大国五か年計画」ができる前と後でその伸び率というのがどれほど大きく変わっているのか。今までと同じようであれば、その計画というのが今回の予算を決める目玉にはなってないのじゃないかと思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
  264. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 やや繰り返しになって恐縮でございますけれども、構成比自体も四年度と五年度で、先ほど申しましたように、下水道等という分野で申しますと、〇・五ぐらいウエートが上がったということでございます。  それから、下水道の伸びを四年度と五年度を比較しますと、例えば、これは御質問でございますのでお答えするわけでございますけれども、四年度の伸び率は下水道は五%程度の伸びでございますが、五年度におきましては約七%、六・九六ということで七%の伸びということでございます。したがいまして、伸び率で対比しましても、四年度の伸びに比べて五年度の伸びは二ポイント上回っているということでございます。
  265. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 少し変わっているということはわかりました。ただ、ちょっと資料が違うのかもしれないのですけれども、公共事業費八兆五千六百五十億円の配分については、九一年、九二年、九三年とそれほど差がないような気がいたします。  それで、次の質問に移らせていただきたいと思います。  防衛予算なんですけれども、防衛予算は四兆六千四百六億円ですか、二%の低い伸びということで、また対GNP比も〇・九三七%、四年続けて一%を下回っている。生活大国に配慮して、そして軍縮の方向、伸びているのは伸びていますけれども、防衛予算はできるだけ少なく抑えたということなんですけれども、ただ、一般会計に占める割合というのは、平成元年から平成五年を見ましても、六・五から六・三、六・二、六・三、六・四と、全く減っていないわけですよね。かなり安定した地位をずっと、シェアを保っているということが言えると思うのですけれども、そのあたり、生活大国と軍縮というのが必ずしも結びつかないかもしれませんけれども、やはり生活大国を目指して、そして世界が軍縮に向かっている今では、防衛費が歴然とずっと同じ割合を占めているということはちょっとどうかなと思うのですけれども、このあたりも伸び率だけで判断するのは間違いじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  266. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 防衛費につきましては、御承知のように過去かなりの程度で伸びてきております。いわば防衛費の削減ということが具体的な姿をあらわしたと申しますか具体化しましたのは四年度予算からと申して過言ではないと思うのでございますが、そういう意味で、五年度予算は昭和三十六年度以来の低い伸び率でございますけれども、確かに過去根っこが非常にふえ続けたという意味で、シェアの点では公共事業のような長期的に見て劇的な変化があったということではないわけでございますが、これからいろいろな諸情勢を考えながら、防衛費をどうしていくかということを今後とも一生懸命勉強してまいりたいというぐあいに考えております。
  267. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 ただ、これからもやはり防衛費は、さっきも言いましたように、生活大国の実現というビジョンからいきましても、そしてまた軍縮ということからいきましても、防衛費というのは削減されるべきものではないかと思っているのですけれども、この点につきまして、今までずっとこの数字が変わってきていないということから考えまして、将来、防衛費については人件費の問題とか後年度負担の問題とがあって動かせる部分が少ないとは思うのですけれども、そのあたり等考えまして、今後の防衛費はどういう方向に、軍縮をどういうふうにしていくかということなんですけれども、どういうふうにしていこうとお考えですか。
  268. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 御指摘のとおり、防衛関係費の構造については、過去の契約に基づく支払いでありますところの歳出化経費、それから人件糧食費というような硬直的な、義務的な部分がかなりの部分を占めております。したがいまして、例えば五年度予算におきましても二%に抑えたということの意味は、その他実質的な、政策的な部分を非常に抑えたということでもあるわけでございまして、それを全体として義務的に増加する部分を含めて二%に抑えたということでございますから、非常にこれは低くすべく効率的な防衛予算を計上したものというふうに私どもは考えているわけでございます。  御質問は、将来にわたってどういうふうにするんだというお話でございますが、これにつきましては、昨年の暮れに中期防衛力整備計画というものを平成七年度までありますものを見直しをいたしまして、これを全体として歳出ベースで五千八百億円の削減をいたしました。これに基づいて今後この中で年度年度で予算を検討していくということになろうかと思います。  さらにその先を申しますと、これは先ほども答弁がございましたように、防衛のあり方の検討というものを平成七年度までに詰めて、そもそもの防衛の今後のあり方というものはそこで検討させていただくというふうに考えているところでございます。
  269. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 中期防を見直したということで、それはそれで、十分か不十分かは別としまして、見直すのはいいことだと思いますけれども、それで、正面装備についても中期防を見直していろいろ削減しています。ただ、削減していますけれども、今回もいわゆるAWACS二機、一機が五百七十億だったっけ、そういうのはしっかり予算に入っていますし、イージス艦についても入っています。そして、これらの購入費というのは、輸入というか、アメリカに支払われるものでございます。だから、この防衛費の削減については、日本の防衛産業が打撃を受けることになったというふうな報道、新規購入の大きな部分を米国からの輸入が占めているために国内防衛産業はその防衛費抑制の波をもろにかぶることになった、そういうふうなことは言われていますけれども、米国から購入するということになれば、対米貿易黒字ですか、その削減にもある意味では役立つので、その意味ではいいかなとも思うのですけれども、ただ、そういうふうに対米関係になると、貿易黒字の問題もあってこれからますます削減しにくいのじゃないか。だから、そういう意味で余りに米国からの輸入、正面装備の輸入の部分が多く占めるようになりますと、ますます削減しにくくなるのじゃないかというふうな気がするのですけれども、このあたり、兵器類に関する対米貿易のあり方など、どのようにお考えでしょうか。     〔委員長退席、鴻池委員長代理着席〕
  270. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 AWACSとイージス艦を例に挙げられて、アメリカからのものを防衛予算に計上する、それは切りにくくなるのではないかという御指摘でございますが、私どもといたしましては、長くなりますから詳しくは申しませんけれども、AWACSはAWACSとして、これは、専守防衛の我が国といたしましては、有事平時を問わず情報収集能力の向上という意味で極めて有用なものであるという自主的な判断をして導入を決めたものでございます。それからイージス艦は、これは護衛艦、四個護衛艦のうちの三個までについてはこのイージス艦を整備いたしましたので、残りの一護衛隊群の、残りの部分について手当てをしたということでございまして、これにつきましても我が方としての必要性を判断した上で導入をしたということでございまして、決してアメリカからのものであるからということで計上したわけではございません。  ただ、御指摘のアメリカからの輸入の部分がふえるとどうなるかという問題をそれなりの問題としてお答え申し上げますと、これは全体として全調達額の約一〇%程度のものがアメリカからの輸入ということに相当いたしまして、それほど大きなものではございません。これがふえているという傾向も特にございません。
  271. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 じゃ、そうしましたら、こういう国内の防衛産業にしわ寄せがいったということは、これからずっとの傾向ではなくて今回限りのことというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  272. 畠山蕃

    ○畠山政府委員 今回限りといいますか、国内防衛産業との観点をお考えいただいて大変ありがとうございます。この国内の防衛産業の基盤の問題というのは、私どもも基盤的防衛構想を考える上に極めて重要な視点だとは思っております。ただ、それも、それ自体として取り上げて考えるというよりは、防衛ニーズがまずありまして、それをできるだけ国内にお願いをするという考えでございます。  そういった意味で申しますと、全体の防衛予算が伸び率が低い、額が総体的に小さいということになりますと、全体のパイが小さいですから、その限りにおいて国内の防衛産業がそれなりに、以前に比べて総体的に伸びが十分でないということは事実でございます。今後の防衛予算の伸びがどうなるかということにもよるわけでございまして、その中においてAWACS、イージス艦等アメリカ等から輸入されるもののシェアが格段に増大していくわけではないとすれば、それほどの影響は、変化はないというふうに思います。
  273. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 総理が出されております「美しい日本への挑戦」という本、読ませていただいたのですけれども、言われていることはほとんど全部と言っていいくらい賛成でございまして、その「美しい日本への挑戦」に書かれているような美しい日本をつくるために頑張っていただきたいと思うのですけれども、その中に、兵器産業というのはもう本当に市場経済が一番ききにくい世界である、だから日本には、兵器産業というのは市場経済の邪魔になるものだからなるべく入ってほしくない、そういう気持ちがある、これは市場経済を攪乱する要素であるとまで言われているのですけれども、そのお考えは今も同じお考えでしょうか。そしてまた、丘器をアメリカから多く輸入して日本にしわ寄せがいったという今回の防衛費のあり方、これについてどのようにお考えでしょうか。
  274. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ちょっと言い過ぎているかもしれないと思うのですけれども、私の言おうとしましたことは、日本は軍事大国にならないということをずっと考えてまいりますと、そうすると、日本のそういう軍需産業というのは育たないから日本の経済というのはだめになるんじゃないか、そういう物の考え方が世の中にございますけれども、私は、それはそうは思わない。軍需産業が余り大きくなるということは、もともと武器というのは再生産的なものじゃございませんけれども、それと別に、やはりあれはコストの競争のきかない社会でございまして、それから一つのものを使いますと継続してそれを使わなきゃならないという要素がございますので競争もききにくいという、これがアメリカの軍需産業にあらわれた通弊だということを実は言おうとしたのでございます。言おうとしたのでございまして、しかし、そうは申しても、先ほど政府委員が申しましたように、アメリカからの調達は一〇%ぐらいということは、やはり日本の産業に支えられている防衛庁のハードウェアの部分は大きいのでございますから、これは決して大事でないとかいうことを申そうとしたのじゃございません。  そうじゃございませんが、国全体として軍需産業が余り大きな割合を占めるということは、その国の経済にとっては決して好ましいことではない、いかにもアメリカは軍需産業が大きいからそこからたくさんの研究費が出て、いろいろ、宇宙もこうだ、あれもこうだ、だからという話は余り信用しない方がいいということを実は申そうとしたわけでございます。
  275. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうしましたら、現在の兵器産業といいますか、軍需産業の日本における状況は現状を維持していこうというふうにお考えなんでしょうか。
  276. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 軍需だけをやっている産業というのは日本には恐らくそんなにございませんです。それから、やっておる限りでは非常に優秀なものをつくっておられますので、そういう意味では大切に考えるつもりではございます。
  277. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 軍需産業だけやってないというのはわかるのですけれども、その軍需産業の規模といいますか、今日本のそれは、現状を維持していこうというお考えでしょうか。
  278. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 恐らく国内経済の発展に害になるほど大きくはないし、また世界を脅威するようなものでもないと思いますので、そう思います。
  279. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 次に、ウルグアイ・ラウンドについてちょっとお尋ねしたいんですけれども、この問題に関しましてはいろいろの閣僚の方が、少しずっといいますか、大分といいますか、ニュアンスの違う発言をなさっています。例えば、この予算委員会を見ただけでも、田名部農水大臣は従来の基本方針にのっとって修正要求を粘り強く続けているというふうな御答弁をなさっていますし、 首相は国会決議もあり国内産で自給するという決意で臨んでいるというふうに言われています。ただ、渡辺外務大臣は、世界じゅうどこに行ってもラウンドを成功させなければ大変だと、私は農業交渉では六十五点でも七十点でもいいじゃないかと思っているというふうな発言をなされています。  このあたり、この三人の大臣の方の意見というのはどの程度、自分のしかわからないから人と比べてどの程度違うかというのはわからないかもしれないのですけれども、内閣として、全体として同じ意見でやっていると考えてよろしいのでしょうか。それとも少しは違うのでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。
  280. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは立場も幾らか違いますし、人も違うし、しゃべり方も違うし、言葉遣いも違いますから、見たところ多少違うように見えるかしれませんが、考えていることは違ってはいないのです。
  281. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 そうしましたら、やはり内閣は一致してその国会決議を守る、守って交渉を続けているというふつに考えてよろしいんでしょうか。
  282. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それで結構でございます。
  283. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 それはわかりました。  ただ、そういう方向で、方針で交渉を続けているということはわかるのですけれども、もうウルグアイ・ラウンドも大詰めに近い。この時期に来ましたら、その私たちの基本方針が果たして世界で通用するのかどうかその見通しを知りたい、そういう時期に来ているのじゃないかと思うんです。私ももちろん国会決議に基づいて交渉すべきだと思いますし、それが日本の農業にとっては正しいことだと思っていますけれども、ただ相手があることですから、幾ら正しいことでも相手にわかってもらえない場合もあるわけです。そこで、私たちの基本方針が通る見通しについて、じかに交渉に当たっていらっしゃる各大臣の方にお聞きしたいと思うんですけれども
  284. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 本当に御理解のあるいい見通しをされていらっしゃいます。これはやはり相手のあることですから、だから我々としては、日本の国会の決議は最大限にこれは尊重するようにして努力をしているわけです。しかしながら、日本の言うとおり一〇〇%いけばこれは一番いいことなんですが、できるだけ我々の主張に近づいてもらうように努力は今後も続けてまいります。またしかし、この見通しについては、アメリカも新政権になって人がかわったばかりでありますし、フランスとEC、アメリカとの関係もまだ固まってないし、我が国我が国の主張を一歩も譲ってないというような状態なので、まだ見通しについてははっきりわかりません。
  285. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 じゃ、農水大臣いかがでしょうか。
  286. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お答え申し上げますが、見通しについては不透明な部分が多くてわかりません。わかりませんと申し上げますのは、ウルグアイ・ラウンドは農業だけやっているわけでないものですから。例えば市場アクセスでありますとかサービス、知的所有権、貿易のルール、そういうもの一緒になってやっているわけですね。それで、今お尋ねのように、私も何回も各国の関係者とお会いして日本立場というものを説明をいたしておりますけれども、なかなか理解してもらえない、理解できない部分というのがあるんですね。  例えば、日本の米は主食であるということすらこれがわからない。主食というのは、なぜ米が主食だろうか。日本は米ばかり食べるのか。それ以外のものも食べるわけですね。アメリカの場合でも、パンが主食かというとパンでない、じゃ内かというと肉でもない、総合的に主食なんですね、向こうは。例えて申し上げましたが、それ一つを理解させようと思っても物すごく時間がかかるということがありまして、それで米の分野というのは、例えばEC、ヨーロッパにおいては米を輸出したり輸入したりしていることはない。みんな違うわけです、その各国の抱えておる問題というのは。ですから、同じ米だけで土俵にのっているならまだ話の仕方とか理解の仕方というのはわかると思うのですが、それは別のものでありますので、それとこれと、じゃどうやって話し合いをしていくかということの困難性というものがありまして、各国それぞれの問題を抱えて今日までなかなか進展を見なかったということだろうと思います。  また、アメリカのこの新政権の方針がどういうものであるかということは、今かわったばかりですし、ヒルズ通商代表もマディガン農務長官もかわるという中ですので、私どもわかりませんと申し上げたのは、どういう考え方で対処するのかという基本的な考えがわからない。したがって、従来のような考え方で来るのかどうかということもわからぬものですから、先ほど申し上げたようなお答えをしたわけでありますが、いずれにしても各国、ECもかわりました。不透明な部分も非常に多いということであります。  ただ、私ども、年来の我が国の主張が交渉結果に反映されるように一生懸命努力していることは間違いないわけでありますから、今後とも国会決議を体して交渉していきたいということであります。
  287. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 じゃ、米の分野じゃないところで交渉をなさっています通産大臣、いかがでしょうか。
  288. 森喜朗

    ○森国務大臣 今外務大臣や農林大臣からもお話ございましたように、それぞれの国がそれぞれの問題を抱えているわけです。特にクリントン政権がスタートいたしまして、基本的な方針といいますか、それに担当される方々の人事そのものもまだ明確ではないという点がございます。しかし、それぞれの国が協力をしてこのウルグアイ・ラウンドを成功に導いていくということは極めて大事なことでございまして、それぞれのその国が持っておる、抱えております困難な問題を、私ども日本も米の問題も同時に一緒に考えて解決をしていかなければならぬ、私はそのように考えております。  ただ、米につきましては、先般のこの委員会で我が党の保利委員がるる申されましたように、食生活でありますとか農業問題でございますとか文化の問題でございますとか、大変重要な問題を含んでおるわけでございますから、政府としましては、総理からもお話しのとおり基本方針のもとで努力をしていかなければならぬと考えております。  ただ、通産省といたしましては、自由貿易を進めていくということは極めて大事なことでございます。クリントン新大統領といえども自由貿易主義者であるというふうに私どもは承知をしておるわけでございますから、この自由貿易体制の維持と強化、さらにそのことが世界の繁栄につながっていくということだけは間違いがないことでございまして、そういう重要な課題に積極的に取り組んでいく、そして一日も早い早期の解決を願っておるというのが私ども立場でございます。
  289. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 ここまで、大詰めといいますか、ずっと長くやってきて、ここまで来てまだその見通しがわからないというのがちょっと私たちは、特に農家の方は不安になるところだろうと思うのです。ある程度の見通しを言っていただければ――そうわからないとはっきり言い切られると残念なのですけれども、ただ、要するに国会決議に従って交渉はしている。一方では、ウルグアイ・ラウンドは絶対に成功させなければならない、この点も一方の命題としてあるのではないかと思います。  そのときに私たちが心配するのは、ウルグアイ・ラウンドを成功させなければならないということはわかるのですけれども、ウルグアイ・ラウンドの成功をとるか、国会決議をとるか、そういうせっぱ詰まった状況に至る可能性があるのではないか。新聞等のマスコミなどで、現場に行かない、そういうマスコミ等の情報でいろいろ判断している者にとっては不安なところなのですけれども、そのあたりはいかがなのでしょうか。
  290. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほどからお答えいたしておりますように、我々は国会決議を尊重して、それを実現するため最大限の努力をしているということは事実です。  世界の何十カ国も集まって話をこれはしておるわけですから、ウルグアイ・ラウンドをつぶしていいなんという国はどこにもないのですよ、どこの国も。しかし、米だけがウルグアイ・ラウンドじゃありませんからね。今言ったようにたくさんのものが交渉のテーブルにのっているわけですから、だから、どこの国も多少ずつ、自分の主張ばかり言っておったのでは絶対これはまとまりませんから、多少ずつ譲り合ってまとめていくという傾向にあることは事実です、いろいろな品目について。したがいまして、我々といたしましては何とか、国会決議で米の例外なき関税化はだめだということは我々言われておるし、それから食糧自給を旨として考えてくれということもそれは事実でございますので、最大限努力はしてまいりたい、そういうことであります。
  291. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 ただ、そうしましたら、ウルグアイ・ラウンドは絶対に成功させなければならないというのがあります。それで、渡辺外務大臣は農業交渉では六十点でも七十点でもいいじゃないかというふうに言われています。それは、国会決議が通るということが百点だろうと思うのです。農業交渉に関しましては、三度の国会決議が通る、その意見が通るということが百点だろうと思うのですけれども、そういう意味では国会決議のとおりにならなくてもいい、成功のためにはいい、そういう判断をなさっているわけでしょうか。
  292. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、国会決議だけを点数に置いているわけじゃないのですよ。ウルグアイ・ラウンド全体を置きまして、全体でみんなそれぞれ国々によって自分のところの主張があるわけですから、みんなが一方的に主張をしておったのではそれはまとまらないです、絶対にこれは。だから、みんなが少しずつ譲り合ってまとめていっているのですから、特に今や農業問題、スポットが当たっているので、そこで、非常にこれは粘り強い主張をみんなしているわけですよ。  したがって、それはダンケルさんが言うようにすばっと割り切れないところがあったっていいじゃないかということを言っているのですよ。だから全体とすれば、多少それはダンケルさんの言うとおりにならないけれども、そこは譲り合って何とか全体をまとめるようなことができないかという意味で言っているのであって、それは点数が七十点と言ったのが悪いのかいいのかわかりませんが、要する、に、各国それぞれみんな百点を要求しておったのではまとまりませんねということを言おうとして言ったわけです。     〔鴻池委員長代理退席、委員長着席〕
  293. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 だから、各国譲り合って成立させなければならないというのはわかっていますけれども、農業交渉につきましては、米の自由化はだめだというのが農家の方の一番の関心事、それが守れるかどうかということが一番の関心事だと思うので、農業交渉での妥協、いろいろな部分で妥協しないといけないと思うのですけれども、その米の部分での妥協ということは考えてないというふうに考えてよろしいでしょうか。
  294. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お答えしますが、交渉、まあ交渉というよりもいろいろ話し合いをいたしてみて、日本の、包括関税化というものは受け入れられないというのは大体私の方だけなんですね。あとは、乳製品でありますとかいろいろなものがあります。その中で、世界の多くの国は輸出補助金というものでやっているわけですね。輸出補助金と包括関税化というものは同じものでないものですから、議論がかみ合わないところがあるのですね。そこで、公平を欠いている、バランスが欠けているんじゃないか。要するに、輸出補助金はなくするわけでないんだ、ちょっと下げるんだ、今まで生産調整をしてきた、そういうものはみんな関税に置きかえるということはけしからぬ、こういうので交渉をやっておるわけですから、これは国会の三度にわたる決議を体して交渉を一生懸命やっておるつもりであります。  ただ、今のところは同じもので交渉していないものですから、なかなか一致点というものは見出せない。しかし粘り強くやらなければいかぬということで、何回でもこのことは、日本立場というものの理解を求めるための努力をしているということでございます。
  295. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 言われていることはわかるのですけれども、私の質問に対してそれこそかみ合っているかどうかというのがわからないのですけれども、要するに、国会決議を譲らない、米での妥協は、これからのウルグアイ・ラウンドを成功させるための選択肢の中に米で妥協をするということは入っていないのだ、そういうふうに考えていいのかどうかということを言っているんですけれども
  296. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お互いに主張しているものは、物が違うものですから、何と妥協するかといっても妥協のしょうがない。じゃ、サービスをこうするから米をこうしろというのか、そういう話にはなかなかならぬものですからこじれて、こうしてもう私が就任してからも一年二カ月もやっておるわけですけれども、なかなか前進を見ないということなんです。交渉事ですから、腹を据えてやる以外にない状況にあることはそのとおりでございますから、一生懸命、とにかく国会の決議以外のことでこれをやるというわけにもまいりませんし、皆さんの国会決議というものを体して私どもやっておるということで御理解をいただきたい、こう思います。
  297. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 国会決議に基づいた基本方針で頑張っている、そして妥協は考えていない、そういう強い覚悟で頑張っていただいているということを信じまして、またそのようにお願いいたしまして、終わりにしたいと思います。  次に、国連の問題についてお聞きしたいと思うのですけれども、昨年の十二月三日に国連安保理がソマリアへ多国籍軍を派遣する決議をいたしました。このことは、これから今後の国連の役割を考えるにつきまして非常に大きな問題を提起していると思います。私たちも国連中心主義ということをずっと唱えてきていますし、また平和憲法は、日本国憲法は戦争が終わった直後につくられたもので、国連が理想的なものと考えて、そういう国連の力を当てにしてといいますか、そういう国連に期待してつくられた、国連が有効に機能するということを前提にして日本国憲法もあるのではないか、そういう思想があるのではないかと思っていますので、いずれにしましても、私たちにとりましては、今後国連の役割をどういうふうにしていくかということは非常に大事なことだと思っています。  それに関して、多国籍軍のソマリアへの派遣ということは非常に大きな幾つかの問題を提起していると思います。そして、いろいろと、湾岸戦争に始まりまして、東西の冷戦が終わった今、国連PKO活動というものが注目されていますし、だんだんと活動の場が大きくなっているように思います。それに対して、私たちもそのときどきに応じた対応をしなければならないのですけれども、そろそろ、その場その場で個別的に対応を考えていくのではなくて、ある程度の大きなルールをつくっていく必要があるのではないかな、そういう時代になるのではないかなという気がいたしています。国連のルール、それに対して日本がいかに対応すべきかのルールづくりが今問われていると思うし、国連中心主義を唱えるのであれば、そのルールづくりに積極的に関与する必要があるのではないかと思っています。  そこでまず、このソマリアへの多国籍軍の派遣というのは、一つには、目的が今までとは違って、飢餓の救済という人道的援助という目的のために行われました。そういう目的のために手段としては武力行使も構わないという決議でございます。そのことに関して、目的とその目的を達するための手段として武力行使をするということ、それは国連の任務として、この場合は多国籍軍にゆだねたのですけれども、まずは国連がそういう人 道的援助という目的のために武力行使をするということは、国連の役割として、私たち日本の国としては是認していいとお考えでしょうか、どうでしょうか。
  298. 澁谷治彦

    ○澁谷政府委員 ソマリアの件につきましては、人道援助そのもののために武力を使うということではなくて、人道援助を実施できるような環境をつくるために武力を使う、まあ若干正確に申し上げるとそういうことになると思いますけれども、これはもちろん人道援助を実施する人たちも委員御指摘のような点について悩んでいるところでございますけれども、ああいうソマリアのような惨状を考えた場合、これはやむを得ざる措置であったということで日本もこれに賛成した経緯がございます。
  299. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 目的と手段と言いましたけれども、要するに目的の達成のために手段があるわけで、目的を達するために武力を使うということだから余り差はないと思うのですけれども、ただこの問題は、私は日本の方向を決める上に、要するに日本でリーダーシップをとっていらっしゃる方の意見が聞きたいわけで、本来外務大臣に聞きたいのですけれども、かわりに総理が答えるということで外務大臣が退席されたわけなんで、総理として答えていただきたいのですけれども国連がそういう人道的援助という目的を実現するために要するに武力を使うということ、そういう役割をこれから国連に与えるべきと考えているかどうかということをお尋ねしたいのですけれども
  300. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 ただいま政府委員が申し上げましたように、この問題は、人道援助をソマリアに向かってやっている、その人道援助が目的に到達しないような積極的な妨害が行われておりましたために、その妨害を排除しなければならない、そうでないとたくさんの飢餓者が出るということで、妨害排除のために武力を行使することもやむを得ないではないか、そうでないと人道的な援助が届くところへ届かない、こういうことが国連の議決の内容であって、そのこと自身には我が国もやむを得ないという判断をいたしたわけです。ただ、それは妨害を排除するために武力も辞さないということでございますから、そういう行動の部分に我が国は参加することはできない。
  301. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 それは、ソマリアの場合に限らず、将来の国連をつくる、どういう国連にするかということを今、これから国連改革といいますか、どういう国連にするかということを質問しているわけですから、将来の問題として、人道援助のために武力行使をするという役割を国連に与えることに賛成だということでよろしいでしょうか。
  302. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 そういうお尋ねでありますと、将来の問題であれば、国連規約第四十三条によって国連軍というものができ得ることになっております。かってできたことはございませんから、お尋ねに対して将来の問題としてお答えいたしますが、四十三条で国連軍というものをつくるときに国連は加盟国一つ一つと特別協定を結ぶということになっております。その特別協定の内容は、やったことがありませんのでわかりませんが、想像しますと、各国から兵力を拠出してもらって、そして軍事委員会のようなものができて、そこで議論をして、国連の、文字どおり、総長ですか議長ですかわかりませんが、その指揮下にそういう各国の拠出された兵力が入る、こういうことが一番純粋な形の国連軍であろうと思います。  したがって、それは多国籍軍ではない。多国籍軍ではない、国連の指揮下にある軍隊である、そういう意味では各国の主権を離れた軍隊であるのかもしれません。これは協定の書きようによると思う。それは将来のことで、ガリ事務総長はそういう提案をされましたから、かつて国連でそういうことはやったことがございませんので、それは加盟各国がこれから検討しなければならない問題であるというふうに昨年外務大臣我が国立場を表明いたしました。今でもそう考えております。
  303. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 では、それについてはこれから検討するということですか。それとも、そういう国連軍ですね、これからの国連の役割として国連軍をつくって、その国連軍が活動するようなそういう役割を国連に与えること、そういう国連づくりを目指して積極的に日本も頑張るということなんでしょうか。それとも、それはまだ決まってなくて、検討しているということなんでしょうか。
  304. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 まずはっきりしておきたいと思いますのは、それに我が国が参加するかしないかをちょっと別にして考えさせていただきます。  理想として、国連が自分のそういう軍隊を持って、そして戦争の未然防止をしたり、紛争の間へ入ったり、あるいは人道的ななにを排除したりということは、ブトロス・ガリ事務総長の今度の提案の中の思想だと思うのですけれども、しかしそのためには、例えばアメリカが自分の軍隊を自分の指揮から離して国連事務総長の指揮下に置くか、本当にそういうふうにするだろうかという現実の問題がやはり私はあるように思いますね。ですから、事務総長の理想は理想として、その実現性というものはやはり加盟各国がコンセンサスを出さないとできない問題じゃないか。そう簡単に実現する問題とは思いませんけれども、事務総長がそういうイニシアチブをとられたのは、これだけ国連があっちこっちから引く手あまたになりますと、そういうことでもしないと本当に平和の維持ができないという、そういう意識から出られたのでしょうと思います。そのイニシアチブは買いますけれども、なかなか実現性に向かってはいろいろな問題があるだろうと思っております。我が国がそれに参加するかしないかは、また全く別の問題と思います。
  305. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 私も、我が国が参加するかどうかというのはまた別の問題として考えております。ただ、そういう実現性は今あるかどうかは別にしまして、これから国連、つくっていくわけですから、そういう国連にするのに日本も力をかす、かすと言ったらおかしいのかな、協力するという立場がどうか、それはまだ決まってないということなんですか。――決まってない。  それで次には、もしまだ決まってないのだったらあれかな、我が国が参加するかどうか、参加できるかどうかという問題になるのですけれども、これについては総理、どのようにお考えでしょうか。
  306. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 それはどういうものができるか、特別協定がどうなるかあたりは全く未知数でございますから、考え方は大変難しいと思うのでございます。非常に理想的な形でございましたら、そこに参加する人たちは国際公務員になって、そうしておのおのの国籍は離れている、こういう形としてでも考えるのかもしれませんけれども、大変それは今からは直線で考えにくい話でございますものですから、今のお尋ねににわかにお答えを申し上げることは難しゅうございます。
  307. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 すごく重大な問題だと思って、これから本当に国連中心主義を唱える我が国としては国民的な議論にしていかなければならないと思っていますし、ある意味ではもうガリ総長がそういう提案をしているわけですから、もう動いているわけですから、早急に日本としての対応というか姿勢を決めていかなければならない時期に来ているのじゃないかと思いますので、まだ決まってないということなんですけれども、ぜひ早く検討して、私たちもやりますけれども、していただきたいと思います。  最後に、今回のカンボジアの件についてお聞きしたいのですけれども、午前中の質問で、まだ停戦合意が崩れたとは判断しない、だから撤収は考えていないというふうな御答弁があったと思うのですけれども、その停戦合意が崩れたかどうかというのを、午前中の回答では、全体的な戦闘になっていなくて、まだ小規模でみたいなお話があったと思うのですけれども、私が判断しますのは、やはり停戦合意という以上は、一つの勢力と勢力のトップ同士の合意だと思うので、その合意 が崩れたかどうかというのは、確かにその規模紛争規模によって、衝突の規模によって判断する部分もあるかとは思うのですけれども、やはりその紛争というか衝突がだれの意思に基づいて行われているか、やはりその勢力の集団のトップの意思に基づいてそういう紛争、衝突が行われているとすれば、たとえ規模は小さくても、私はその停戦合意が崩れたと言える場合があるのではないかと思うのです。  それに照らして考えてみますと、明石代表とフン・セン首相との会談の中で、政権軍のポル・ポト派への攻撃が自派支配の地域の安全保障のためのやむを得ない行為であることを強調したというふうに言われていますので、フン・セン首相の意思に、トップの意思に基づいてこの衝突は行われると思うのです。そうだとすれば、規模も確かに問題にはなりますけれども、この点はすごく大きな問題で、やはり撤退すべきかどうかということも、すなわち停戦合意が崩れたと言えるのかどうかということは検討しなければならない問題だと思いますのと、もう一つは、撤退するかどうかというのはやはり総理が判断、最終的には閣議決定で実施計画を変更して撤収するということになるんだろうと思うのですけれども、そういう場合に、けさの御答弁だと、余りにも情報が、カンボジア情報が、現地の今の現状に関する情報がちょっと少ないんじゃないかなという気がしたのですけれども、そういう意味では、撤退しなければならないような状況状態が起こってもすぐ撤退ということはできないんじゃないかと思うのです。  そういう意味でこのPKO協力法については問題があるんじゃないかという気がするのですけれども、この二つ、停戦合意が崩れたかどうかの判断、それとそういうときの撤退が果たして法律に決めているように簡単にできるものかどうかということについて、どのようにお考えかをお聞きしたいと思うのですけれども
  308. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 無論、十分慎重には考えてまいりますけれども、通信情報関係で申しますと、我が国はいろいろ特殊な工夫もいたしまして、プノンペンあるいは必要な地点との連絡は円滑に行われております。通信には事欠いておりませんで、むしろそれから先の、ある村できょうの午後に何か撃ち合いが突然あったというようなことになりますと、その情報がしかるべき前線に入ってくるのに時間がかかっている。それから、もうすぐ終わってしまう、だれが何をしたのかということもよくわからぬというような、そういうあたりの情報は時間がかかりますけれども、全体の局面をとらえたり、あるいは明石代表なりサンダーソン司令官なり、全局面の判断情報のおくれはまずないものと考えていただいてよろしいと思います。そういうことに立ちまして、けさほども停戦合意というものが崩れているとは思わないということを申し上げたのでございますし、これからもその辺は大変慎重に、よく情報をとって判断をいたしたいと思います。  むしろ、けさほどもどなたかから御質問ございまして、文民警察の人はかなり奥に入っている場合がございますものですから、そういうところに突発的に何かがあったりすることは心配しておりまして、そことも十分連絡をとっておりますので、全体的に局面判断を誤ることはない態勢はとっておると思います。慎重の上にも慎重を期してまいります。
  309. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 じゃ最後に、あれだけお答えいただいてないと思うんですけれども停戦合意が保たれているか崩れているかの判断は、いわゆるトップの意思ですよね、その戦闘がトップの意思によって行われたかどうかということも関係していると思うのですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。
  310. 宮澤喜一

    ○宮澤内閣総理大臣 これは、けさも大体お答えいたしたつもりですけれども戦闘と言われるほどのものではなくて、まあ失地回復とか何かによる局地的なものというふうに今考えておりますし、トップの意思はむしろ、SNCにポル・ポトのキュー・サムファン代表が出ているし、軍事委員会にも出ているということでございますから、そこのところは、トップの意思は、そういういわば積極的なものとして確認されておるというふうに思っています。
  311. 粕谷茂

    粕谷委員長 宇都宮君に申し上げます。  持ち時間は大変大幅に過ぎておりますので、委員長としてはできるだけ質問者の気持ちも配慮してと思いましたけれども、もう一言で終わらしていただきます。
  312. 宇都宮真由美

    ○宇都宮委員 最後だけ、もう終わります。  私たちは戦闘判断しておりますし、その戦闘であるかどうかということは、規模だけではなくてトップの意思に基づくことが大事だと、それも判断の重要な材料だと思うし、今回の場合にはフン・セン首相の意思に基づいて戦闘が行われていると私は思っています。少なくともフン・センさんは認めていると判断しています。
  313. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて宇都宮君の質疑は終了いたしました。  次回は、明四日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十三分散会