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1993-01-29 第126回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年一月二十九日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 粕谷  茂君     理事 石川 要三君  理事 小杉  隆君     理事 鴻池 祥肇君  理事 佐藤 信二君     理事 中川 昭一君  理事 串原 義直君     理事 中西 績介君  理事 松浦 利尚君     理事 草川 昭三君        相沢 英之君     愛野興一郎君        浅野 勝人君     粟屋 敏信君        井奥 貞雄君     石原慎太郎君        石原 伸晃君     臼井日出男君        内海 英男君     衛藤征士郎君        越智 通雄君     大石 千八君        狩野  勝君     唐沢俊二郎君        倉成  正君     佐藤 敬夫君        高鳥  修君     戸井田三郎君        中山 太郎君     浜田 幸一君        原田  憲君     原田 義昭君        松永  光君     松本 十郎君        村山 達雄君     森  英介君        谷津 義男君     柳沢 伯夫君        渡瀬 憲明君     綿貫 民輔君        伊藤 忠治君    宇都宮真由美君        北川 昌典君     関  晴正君        竹内  猛君     富塚 三夫君        楢崎弥之助君     馬場  昇君        堀  昌雄君     松前  仰君        三野 優美君     目黒吉之助君        元信  堯君     市川 雄一君        二見 伸明君     宮地 正介君        児玉 健次君     不破 哲三君        藤田 スミ君     吉井 英勝君        中野 寛成君     米沢  隆召 出席国務大臣        内閣総理大臣  宮澤 喜一君        法 務 大 臣 後藤田正晴君        外 務 大 臣 渡辺美智雄君        大 蔵 大 臣 林  義郎君        文 部 大 臣 森山 眞弓君        厚 生 大 臣 丹羽 雄哉君        農林水産大臣  田名部匡省君        通商産業大臣  森  喜朗君        運 輸 大 臣 越智 伊平君        郵 政 大 臣 小泉純一郎君        労 働 大 臣 村上 正邦君        建 設 大 臣 中村喜四郎君        自 治 大 臣        国家公安委員会 村田敬次郎君        委員長        国 務 大 臣 河野 洋平君        (内閣官房長官)        国 務 大 臣 鹿野 道彦君        (総務庁長官)        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)     北  修二君        (沖縄開発庁長        官)        国 務 大 臣 中山 利生君        (防衛庁長官)        国 務 大 臣        (経済企画庁長 船田  元君        官)        国 務 大 臣        (科学技術庁長 中島  衛君        官)        国 務 大 臣 林  大幹君        (環境庁長官)        国 務 大 臣 井上  孝君        (国土庁長官出席政府委員        内閣法制局長官 大出 峻郎君        内閣法制局第一 津野  修君        部長        人事院総裁   弥富啓之助君        人事院事務総局 丹羽清之助君        給与局長        人事院事務総局 福島  登君        職員局長        国際平和協力本 柳井 俊二君        部事務局長        警察庁刑事局長 國松 孝次君        総務庁長官官房 八木 俊道君        長        総務庁行政管理 増島 俊之君        局長        防衛庁参事官  高島 有終君        防衛庁長官官房 村田 直昭君        長        防衛庁防衛局長 畠山  蕃君        防衛庁教育訓練 諸冨 増夫君        局長        防衛庁人事局長 秋山 昌廣君        防衛庁経理局長 宝珠山 昇君        防衛庁装備局長 中田 哲雄君        防衛施設庁総務 竹下  昭君        部長        防衛施設庁施設 江間 清二君        部長        防衛施設庁労務 荻野 貴一君        部長        経済企画庁調整 長瀬 要石君        局長        経済企画庁調査 土志田征一君        局長        環境庁長官官房 森  仁美君        長        国土庁長官官房 藤原 和人君        長        国土庁長官官房 藤田  修君        会計課長        法務省刑事局長 濱  邦久君        外務省北米局長 佐藤 行雄君        外務省欧亜局長 野村 一成君        外務省経済局次 林   暘君        長        外務省条約局長 丹波  實君        外務省国際連合 澁谷 治彦君        局長        大蔵大臣官房総 日高 壮平君        務審議官        大蔵省主計局長 斎藤 次郎君        大蔵省主税局長 濱本 英輔君        大蔵省証券局長 小川  是君        大蔵省銀行局長 寺村 信行君        国税庁次長   瀧川 哲男君        文部大臣官房長 吉田  茂君        厚生大臣官房総 瀬田 公和君        務審議官        厚生省健康政策 寺松  尚君        局長        厚生省保健医療 谷  修一君        局長        厚生省老人保健 横尾 和子君        福祉局長        厚生省児童家庭 清水 康之君        局長        厚生省保険局長 古川貞二郎君        農林水産大臣官 上野 博史君        房長        農林水産大臣官 堤  英隆君        房予算課長        農林水産省農蚕 高橋 政行君        園芸局長        食糧庁長官   鶴岡 俊彦君        通商産業省通商 岡松壯三郎君        政策局長        通商産業省産業 熊野 英昭君        政策局長        中小企業庁長官 関   收君         運輸省運輸政策         局次長     和田 義文君         兼内閣審議官         郵政大臣官房財 新井 忠之君         務部長         労働大臣官房長 七瀬 時雄君         労働省労政局長 若林 之矩君         建設大臣官房長 望月 薫雄君         建設大臣官房会 木下 博夫君         計課長         建設省住宅局長 三井 康壽君         自治大臣官房審 松本 英昭君         議官         自治省行政局公 石川 嘉延君         務員部長         自治省行政局選 佐野 徹治君         挙部長         自治省税務局長 滝   実君  委員外出席者         予算委員会調査 堀口 一郎君         室長     ————————————— 委員の異動 一月二十九日  辞任         補欠選任   石原慎太郎君     佐藤 敬夫君   臼井日出男君     石原 伸晃君   越智 通雄君     狩野  勝君   中山 太郎君     谷津 義男君   浜田 幸一君     井奥 貞雄君   松永  光君     原田 義昭君   柳沢 伯夫君     浅野 勝人君   水田  稔君     馬場  昇君   目黒吉之助君     北川 昌典君   吉井 英勝君     藤田 スミ君   中野 寛成君     米沢  隆君 同日  辞任        補欠選任   浅野 勝人君     森  英介君   井奥 貞雄君     浜田 幸一君   石原 伸晃君     渡瀬 憲明君   狩野  勝君     越智 通雄君   佐藤 敬夫君     石原慎太郎君   原田 義昭君     松永  光君   谷津 義男君     中山 太郎君   北川 昌典君     目黒吉之助君   馬場  昇君     水田  稔君   藤田 スミ君     不破 哲三君   米沢  隆君     中野 寛成君 同日  辞任        補欠選任   森  英介君     柳沢 伯夫君   渡瀬 憲明君     臼井日出男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成五年度一般会計予算  平成五年度特別会計予算  平成五年度政府関係機関予算      —————◇—————
  2. 粕谷茂

    粕谷委員長 これより会議を開きます。  平成五年度一般会計予算平成五年度特別会計予算平成五年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市川雄一君。
  3. 市川雄一

    市川委員 私は、公明党・国民会議を代表しまして、佐川問題の政治的道義的責任の所在あるいは不況対策、そして福祉問題あるいは今病院の経営が非常に悪化している実態、PKOの問題、大体こういう問題について総理並びに関係大臣の所信を伺いたいというふうに思っております。  最初に佐川問題でございますが、総理は昨年十二月十二日、内閣改造後の記者会見におきまして、佐川問題について、国民いらいらは痛いほどわかっている、こういうふうにおっしゃっておられるわけですが、国民が自然に持っている感覚政治家感覚はどうしてもずれるんだという趣旨の話もされておられますが、そのずれを我々は埋めようとしているわけでして、総理自身は、国民いらいらは痛いほどわかっている、この永田町と国民の間にずれがある、いらいらしている、どういうふうにこれを解消しようと今お考えですか、まずその点を承りたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この問題につきまして、政府としてはもとより、検察、警察等々、法に従って真相解明をしてまいりましたし、また一部は裁判所におきまして公判も行われている。そういういわば法の、当然のことでございますが、定めるところに従って進められておることが、国民立場から見ればいかにも間延びがしておって、もっと端的にこうはこうと、白、黒と言えないものかと国民が感じられることは無理もないことでございます。同時に、しかし、政府としてはそういう法にのっとって事を運ばなければならないということもまた事実でございますが、その間にまず国民の感じておられることと、いわゆる庶民感覚とでも申しますか、一つずれがあるであろう。  もう一つは、国会国会のお立場において真相解明に極めて熱心に努められておることも、これも国民がよく知っておられます。喚問あるいは尋問等々も行われました。しかし、恐らく国民が見ておられるところ、必ずしもその中から白黒というものが見えてこない。これも、しかし、国会国政調査という、そういう権限、責任に基づいてやられることでございますので、いわば市井の人が考えるような白、黒の端的なやりとりというものは、これはおのずから一つのルールがございますでしょう。そこにもあるいは国民が一種の焦燥感を持って見ておられる点があるかもしれない。そういうことを背景にああいうことを申しましたが、しかし、やはり真相解明というものは行われなければならないということにおきましては、政府におきましても国会におきましても同様に考えておるわけでございますので、多少の時間がかかるということは国民に理解をしていただかなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。
  5. 市川雄一

    市川委員 総理施政方針演説の中で、佐川事件真相解明は重要であるが、「政治改革こそがすべての変革出発点」だ、こういうふうに話をされたわけですが、この文脈を聞いていますと、佐川事件真相解明は重要であるが、政治改革こそがすべての変革出発点だと、何か制度改革の方へ真相究明よりも重点を移している、こういう感じを受けたわけでございます、総理佐川事件幕引きをも考えておられるのかなと。この点はどういうことでしょうか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私の申し上げたいと思いましたことは、佐川事件というものは、真相はあくまで解明されなければなりません。それはもちろん今後の関係方面みんなの努力によることでございますが、残念な事件でありますが、このことは既に起こってしまったわけでございますから、もう一度こういうことが起こらないようにするにはどうすればいいかということは、やはり真相解明、あるいはそれにも増して大事なことではないか。それはやはり政治家の倫理の問題でもありますけれども政治改革の問題であろう。  政治改革につきましては、この真相解明と同じ、並行していわゆる緊急改革はやらせていただきましたが、まだ抜本改革をやっておりませんので、これをいたしまして、今後こういうことが起こらないためのやはり一つの担保を築いておかなければならない。そういたしませんと、国民が十分な政治に対する信頼を取り戻していただくわけにいかないのではないか。こういうことを強調しようといたしましたので、佐川事件についての解明はもう終わった、幕引きをすべきだというようなことを全く考えておるわけではございません。
  7. 市川雄一

    市川委員 十分な真相解明が行われて初めてどういう制度改革をやるべきかという議論が本来あるというふうに私たち考えているわけです。  別の角度から総理に伺いたいと思いますが、昨年十一月二十四日、この予算委員会のこの場所で総理に私は伺いました。  この佐川問題あるいは竹下内閣誕生にかかわる皇民党関与の問題、皇民党の褒め殺しをとめるために暴力団関与の問題。いわゆる国会国会として自浄能力を発揮するために証人喚問をしたり、あるいは国会でいろいろな追及が行われる。検察検察法律に基づいて、法律法律の手順に基づいて真相究明努力する。同時に、政権与党として自民党は、自民党に所属する人が起こした事件、また、しかも政権与党ということで、政党としてかなり国民に対して重い責任を持っている政党でございます。したがって、その党に所属している人が起こした事件、これについて自民党自由民主党として事の真相解明を行う責任があるのじゃないのかと。総理は、それはある、こうお認めになりました。総理自身先頭に立っておやりになったらどうですかと。そのとき総理は、この事件の事実関係はきちんとしておくことが大事である、関係する人が現に党員であり、活躍していれば、党規の問題になることが考えられる、それとしてわかれば公にする、こういう趣旨答弁をされたわけでございます。  総理、あれから二カ月経過されたわけですが、総理自身自由民主党総裁として、この佐川問題あるいは暴力団関与の問題について、自由民主党自由民主党として国民が納得いくようにこういう真相解明努力をしたという事実がございますか、どうでしょうか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 昨年、そういう御指摘がございましたことをよく承知をいたしておりますし、私もまたそのようにお答えをいたしました。  私どもの党におきまして構成されております役員会において、竹下首相においでをいただきまして、時間をかけまして事実関係について御質問をし、またそれについてのお答えを願ったわけでございます。そのときには既に国会における証言等々明らかになっておりましたので、それらをもとに役員会の方から代表者幾つかの点について御質問をいたし、それについてお答えがありました。  これにつきましては、記者会見におきまして党の責任者会見をいたしております。内容につきましていわば発表をいたしておりまして、そういう形で私ども調査の結果を公にいたした、そういう経緯がございます。
  9. 市川雄一

    市川委員 恐らく十二月二十二日の臨時役員会でのことをおっしゃっているんだろうと思うのです。私たち新聞で拝見をしました。しかしこれ、総理は御出席はされていらっしゃいませんね、この会合には。総理自身の判断として、竹下首相疑惑は晴れたと、こういうふうに今時点ではお考えでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私は出席いたしておりません、通例役員会には出席いたしませんので。ただ、責任のある役員会がこの問題についての調査をいたしました。役員会からの報告によりますと、国会等証言で述べられたこと等々以外に新しい事実関係のものは別に出てこなかった、したがって役員会としては調査はこれをもって終了する、また新しいことが将来あれば別でございますが、という報告を受けております。
  11. 市川雄一

    市川委員 したがって、総理としては竹下首相疑惑は晴れたという今御認識でしょうか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 国会証言等々で明らかになりました以上に新しく疑いを入れるような点はなかったというふうに役員会は結論をしております。
  13. 市川雄一

    市川委員 まあ役員会でおやりになった、そのこと自体は従来の自由民主党になかった努力として我々もそれなりに評価はしますが、ただ、事が事だけに、例えば役員会で行われて記者会見された。記者会見で、我々は新聞で読んだ。新聞の報道だけですと、何か非常に簡単な会見しかおやりになってないんじゃないかという気がするんですね。  例えば、竹下首相は、昨年の衆参の予算委員会証人喚問におきまして、皇民党暴力団関与の事実を金丸氏から、元副総裁金丸氏から総裁選の一年後、昭和六十三年十二月以降に知ったというふうに証言されているわけですが、この十二月二十二日の自民党役員会では、金丸氏が渡邉氏を通じて石井会長に褒め殺しをやめるよう依頼した事実があったかどうか、あったということなのかあるいは経世会のメンバーが暴力団稲川会会長に依頼したということなのか、だれがどのようにしてやったということなのか、どういう内容のことを竹下首相が知ったということなのか、竹下氏の亡くなられた青木秘書が当時竹下首相へ事前に報告されてなかったのかどうか、こういういろいろな疑問点が残るわけでございまして、役員会でもこういうやりとりがあったというふうに総理報告を受けておるんでしょうか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私の受けた報告によりますと、役員会の中からこの問題について代表者を選びまして、そして幾つかの質問の項目を協議をいたしました結果、決定をしまして、それについて竹下総理との間で質疑応答をいたした。  私の聞いておりますところでは、その質問事項は、大体世の中と申しますか、一般にこの問題について疑問とされておるあるいは問題とされておるすべての点を網羅して、網羅的に質問をし、そして答えを得ておる、そういう報告を受けております。
  15. 市川雄一

    市川委員 世間的に言われている問題を大体網羅的、網羅したと言う。事が事ですから、もし総理がおっしゃるように、十二月二十二日の役員会解明をもって、総理国会答弁された、自由民主党自由民主党として、政権与党として事の真相解明をやりますというふうに国会答弁された、その答弁のあかしとして十二月二十二日の役員会がある、こうおっしゃられるのであれば、これはそれだけ網羅的な質問をしてということですから恐らく議事録もおとりになっていらっしゃると思うので、それをひとつ公開されたらどうですか、そこまでおっしゃるのなら。そういう御意思はありませんか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 質疑応答につきましては、その後の記者会見において説明をし、また記者会見質問に応じて答えをしておるというふうに存じておりますが、この質疑応答について議事録というものが残っておりますかどうか、私つまびらかにいたしておりません。よく党の方に聞いてみたいと思います。
  17. 市川雄一

    市川委員 要するに、総理大臣になる前、総裁選、それから総理大臣在任中に竹下首相はこの事実を知ったという意味において、普通の人のやったこととは違うもっと重い政治的道義的な責任がある。そういう意味において総理も恐らく自由民主党においてみずから真相究明をいたしますとおっしゃったわけですから、内容は言えないんだけれども、きちっと皆さんが知りたがっていることは全部聞いたんです、そうしたら全く何もなかったんです、こう言われても、何か身内同士調査で終わっちゃって、中身は記録がありますかどうかと言われますと、何かやはり国民は、我々自身も納得がいかないと思うのですね。やはり自由民主党として、総理総裁先頭に立って指示をして、究明をせよということで役員会が開かれ、やったのであれば、胸を張って国民の前にこういうことでしたと発表していいんじゃないでしょうか。  どうでしょうか、総理、もう一度お伺いしたいと思います。議事録があれば発表されますか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私どもは、開かれた党でございますから、この問題について覆い隠すというようなことを考えておることはございません。そうであればそういう調査は何もすることはありませんので、真相発見のために役員会が良心を持って、時間をかけて御本人からお話を伺ったのでございまして、その意図については、どうぞひとつ誠実な意図を持って、事実を発見したいと考えてやりましたことは、御了承をお願いいたしたいと思います。  また、その中のある部分をこの世の中から隠そうと仮にいたしましても、開かれた党でございますので、これはどこの政党もそうだろうと思いますが、そういうことはできるものではございませんので、それはいわば公然と開かれた形で行ったということは、これは御信用いただきたいと思います。  なお、議事録がございますかどうか、これはよく党の方に聞いて見たいと思います。
  19. 市川雄一

    市川委員 いや、開かれているとかいないとか、そういうことを申し上げているわけではありませんでして、自由民主党が開かれた党だというふうには思いますけれども、やはりやりとり中身をきちっと出して、中身を知りたいという意味で申し上げているわけで、開かれていないとか、そういうことを言っているわけではありません。  別の角度から伺いましょう。  この佐川問題、昨年、臨時国会証人喚問が行われ、私もここでいろいろな御質問を申し上げました。やはり残っている、事実関係究明というのはまだ残っているわけでして、これはこれで関係者証人喚問を要求してこれからもやっていきたいと思っておりますが、やはり竹下内閣誕生のときの暴力団関与、それを竹下首相総理大臣在任中にその事実を知った、したがって竹下首相に結果責任があるのではないのか、この問題が一つあると思うのです。  しかし、国民の多くは、国会やりとりを聞いていて、竹下首相が一年後に知ったというのもちょっとまゆつばじゃないかとみんな思っていると思うのですよ。もうこれは前から知っていたんじゃないかというのは、大半そう思っていると思うのですが、それがなかなか今の時点では立証できないわけですから、証言の何か食い違いとか矛盾とかということで、点と点を結ぶと知っていたんじゃないかということは十分うなずけるのですが、知っていたというその物証がない限りは推測するしかないわけですが、国民大半はそう思っているわけです。  それはそれとしまして、いずれにしても発足後知ったわけですよね。この結果責任というものを総理はどうお考えですか。同じ総理という立場で、総理大臣にはそれだけの重い結果責任があると私たち考えておるわけですが、総理はどうお考えでしょうか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この点につきまして私どもが知っておることは一、二ございます。  一つは東京地検の冒頭陳述でございますが、これはもう繰り返して申し上げませんけれども、被告人渡邉という人が、交際のあった政治家がいわゆる右翼団体の活動に苦慮していることを知り、この件の解決を石井に依頼し、同人の尽力により、同団体はその活動を中止したと述べておるにとどまっておりまして、それ以上について何も示唆をいたしておりません。  それから、国会における国政調査の中で、竹下首相が、石井さんという方がこの問題に介在したという事実を昭和六十三年十二月以降に承知したということを証言されたと承っております。  それだけのことを私どもは知らされておるわけでございますけれども国会における喚問あるいは金丸氏の場合には尋問でございましたけれども、それ以上に及んでおりませんので、そこから私が立ち入ったコメントをすることがどうもできない。ここまでのことでございますと、これをどういうふうに解釈すべきか、どうコメントをするか、それはやはり差し控えなければならない。もう一つこれ以上先のことが示されていないように思います。
  21. 市川雄一

    市川委員 竹下首相証人喚問で、察知したと。何がきっかけで察知したのですか、いろいろ金丸元副総裁と話している中で察知した、詳しい事情は最近の新聞報道で知った、こういうことなんですが、察知したのは一年後とはっきりおっしゃっているわけですね。一年後には事実関係を知ったわけでしょう。皇民党の褒め殺しをとめるために暴力団関与しているという事実をいつ知りましたか、こういう質問に対して、一年後に察知したと、こう言っておるわけですから、それはちょうど総理大臣在任中でありますから。しかも、その聞いた人が、自分がオーナーをしている派閥の会長から聞いているわけですから、これはかなり聞いた人としては重い人から話を聞いているわけですね。何かわけのわからない人から聞いているわけではないわけでして、そういう意味で、総理は、何がないと判断できないのですか。  要するに、私が今質問して言っているのは、竹下内閣誕生のときに暴力団関与があった、それを一年後に総現在任中に知った。しかも、疑惑としては、これは証拠はありませんが、疑惑としては事前に知っていたんじゃないかという疑惑はある。しかし、それはまだ立証はされていない。しかし一年後には知った、総現在任中だと。これだけでは結果責任はない、こういうお考えなんでしょうか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 昭和六十三年十二月以降に知ったということを証言しておられるわけでございますが、その結果責任という意味が十分私によくわかりません。
  23. 市川雄一

    市川委員 結果責任責任のとり方はいろいろあると思うのですよ、責任のとり方は、どういうふうにとるかという。だけれども、その結果と一事前に知っていれば、これは確信犯ですから問題になるのですけれども、事前には知らなかったと一応なっているのだから、結果としてわかったと。普通、結果としてわかったという場合は、これは被害者というふうに言われるわけですね。結果としてわかった、おれは知らなかったんだ、みんなが勝手にやっちゃったんだと。だけれども総理の場合はそうはいかないんじゃないですかということを申し上げているわけで、やはりそこに何らかの政治責任が伴うんじゃないんでしょうかということを言っているわけです。私が言わんとする結果責任。  だから、総理は議員辞職を迫られるということを恐らく頭に置いて、今私の質問をかわそうとして、結果責任という意味がわからない、こうされているんだろうというふうに思うのですよね。もちろん私は議員辞職に値するというふうに思って今質問をしているわけですよ。その結果責任は私は議員辞職に値するというふうに考えて今質問をしているわけです。こちらの、ちゃんと先に申し上げますとね。総理は別の考えがあるかもしれません。  いずれにしても、総理大臣在任中に知ったということについて何らかの結果責任政治的道義的な責任というものがそこに伴うんじゃないのか。全くなしという御認識でしょうかというふうに総理に聞いているわけでございます。
  24. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私が竹下議員にかわって申し上げるわけにはいかないわけでございますけれども、恐らくああいう長い時間かけて証言をし、質問答えられておるお立場考えますと、このことについて御自分の作為または不作為いずれ関係がない、こういうふうなお立場証言、御質問答えておられたのではないかと想像いたしますけれども、それはかわっては正確に申し上げられません。
  25. 市川雄一

    市川委員 総理は、作為、不作為はなかったという証言の姿勢を推測されたわけですが、私は、政治的道義的な結果責任があると、何らかの。その道義的結果責任を感じてその政治家がどういう身の処し方をするかということは、これはまた別の問題だと僕は思うのです。だけれども、いずれにしても責任はある。そういう責任を明らかにしないと、あいまいにしておきますと、総理政治改革できませんよ、そういう倫理観では。やはり何か「変革と実行」ということを一方で言いながら、ですから、結果責任を問うというのは一番厳しい責任の問い方ですよね、自分が意図してないわけですから。また、自分がその時点では関知してないわけ。だけれども、結果としてその責任を自分が負わなきゃならないというのは、一番これは責任のとり方としては重い、また非常に過酷な責任のとり方だろうというふうに僕は思います。  しかし、一国の総理というものにはそれだけの政治的道義的な重みというものがあるんじゃないのかということを僕らは申し上げているわけで、それが何か、総理に聞いても、何となく答えたくない。答えたくないという気持ちはよくわかるのですよ。よくわかるのですが、答えていただかなきゃ困るわけでして、これは押し問答になるでしょうから、総理答えたくないということで、じゃ別の角度から伺います。  我々は、結果責任がある。ですから、やはりその結果責任として議員辞職に値するというふうに我々は考えておるわけです。ですから、昨年の臨時国会では竹下首相の議員辞職勧告決議案というものを出そうとした。ことしも出す決意でおりますが、方針ておりますが、総理はそういうふうに聞くと、議員の辞職の問題は議員本人が判断すべき問題、それから議員と選挙民の神聖な関係だから議員本人が判断する、こうお逃げになるんですが、まず、じゃ、私は議員辞職に値する、それだけの重い道義的責任があるというふうに考えておりますが、総理は先ほどと同じ答弁でしょうか、この問題について。
  26. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 市川書記長も言われましたように、本人の意図せざること、私は、作為、不作為いずれとも関係がないというふうに申し上げたのですが、その場合、責任というものを感じる、感じないということは、やはりそれは、したがいましてその御本人がどう考えられるかということに私は尽きていくかと思います。
  27. 市川雄一

    市川委員 私は総理の倫理観を伺っておるわけでして、総理がどういう倫理観で政治のモラルというものを考えていらっしゃるかという角度で伺っておるわけで、しかし、おっしゃりたくないということですから……。  その総理答弁を聞いていて、代表質問以来、私ちょっとおかしいなと感じているのは、竹下首相を人から強制してやめさせることはできない、こうおっしゃる。これはそのとおりですよ。我々も強制してやめさせろなんということを一回も言ったことはありません、そんなことは。それはそのとおり、強制してやめさせることはできない。最終的には本人の判断しかないと思うのですよ、憲法上の立場からいえば。あるいは選挙で選挙民の支持があるかないかということで決着をつけるということしかないと思うのです。これは、総理の言っていることは、そういう意味では本人が決断する問題ということはわかるのです。  それから、本人と選挙民の関係ということもわかるのです。選挙で当選するのか落選するのかで決着がつく、これはあくまでも一般論でございまして、我々は何も強制的にやめさせろということを言っているわけではないのであって、政治的道義的モラルを感じるなら議員辞職を決断したらどうですか、議員辞職に相当するんじゃないんですかというモラルを申し上げておるわけで、総理は、それを何か第三者的な立場に身を置いてその判断をずっと避けているわけですね。避けていらっしゃる。それで何か憲法上のことを言ってみたり、一般論を繰り広げたりして、総理自身の倫理観というものを聞いているのに、それを避けちゃっている。極めて残念に思います。  したがって、竹下首相については我々はもう一度議員辞職勧告決議案をこの国会に出したいと思っております。国会提出前に理事会でつぶさないようにお願いを申し上げたいと思いますし、それから委員長にお願い申し上げますが、佐川事件真相究明のために六人の証人喚問を社公民の理事が要求しておりますが、私もこの場でその点をお願い申し上げたいと思います。  佐川清佐川急便グループ前会長、竹下登元首相、小沢一郎元自由民主党幹事長、小針暦二福島交通会長、松沢平和堂グループ元社長、生原正久元秘書、この六名の証人喚問をぜひ実現し、真相究明が一歩でも進むようにお取り計らいをいただきたいと思いますが、委員長、どうでしょうか。
  28. 粕谷茂

    粕谷委員長 承りました。後刻、理事会がありますので、そこで協議をしたいと思います。
  29. 市川雄一

    市川委員 次に、不況の問題を伺いたいと思います。  正直に言って、この不況問題で私たちが率直に感じますことは、総理、一九九一年の夏以来五回にわたって公定歩合の引き下げを行った。それから、昨年、たしか三月の終わりですか、公共事業の前倒しをされて、その後八月十八日に金融対策、八月の二十八日に景気対策、こういう手を打たれていることはよく承知しているんですが、しかし、一昨年からの総理経済企画庁長官の発言というものを伺っておりますと、在庫調整の底打ち、景気が底を打つ、回復の兆しが出てくるというこの時期の判断を何回か誤っておられませんか。それは率直にお認めになりますか、どうですか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 在庫調整の具体的な時期の判断について、見通しが十分でなかったということは認めなければならないと思います。  時日について考えますと、今過ぎたことを振り返って考えますと、一番早く在庫調整が行われた部分は、ちょうど九一年の公定歩合の引き下げが行われましたのは七月でございますけれども、あのころに例えば鉄鋼業界は在庫調整をしております。しかし、それはほとんど世の中の注目を浴びておりませんで、世の中はまだ景気が順調に進行しておるかのような印象を持っております。したがって、本当に在庫調整という言葉が注目を浴び出したのは九一年の十二月のことでございますので、実際はかなり遅い。  それから、今日までの経緯を見ますと、いわゆる原材料部門あるいは資本財につきましては在庫調整がほぼ終わったのではないかと今見ておりますけれども、耐久消費財、殊に家電製品等々の在庫調整はなおまだ完了していないように見えます、かなり進みましたが。  その理由は、申しわけをするのではございませんけれども、在庫調整をしようにも消費者の方が一向に購買意欲を出してこないということから、在庫調整そのものが思うように進んでいないという部分が家電などについてはあったのではないかと思います。そういう、つまり業界の在庫調整の意図とはまた別に、値下げをしても消費者側が十分にそれに反応しないということから在庫調整がおくれた部分もかなりあったようでございまして、この辺の品目別あるいは業種別と申しますか、そういう正確な見通しは十分つけ得なかった、そういうことを振り返りまして反省をいたします。
  31. 市川雄一

    市川委員 しかし、何回か景気回復の時期の判断あるいは在庫調整の終了時期の判断を誤っだということは、もっと別の意味を私は思うんですよね。ただ不十分でした、申しわけありませんでしたでは済まない問題を含んでいるんじゃないのか。  例えば去年の三月四日の衆議院予算委員会において宮澤総理は、中長期的に見れば日本経済は基本的にすぐれた潜在力を持っている、経済の見通しは大変明るい。中長期的な潜在力があるというのはわかるのですけれども、経済の見通しが明るいというのは、去年の三月の時点で言える言葉なのかなというふうに、今思いますと非常に疑問を感ずるわけですね。  それから、同じく参議院の予算委員会では、野田経済企画庁長官は、在庫調整も一—三月期から四—六月期がピークではないか、去年の六月には在庫の底を打つ、夏には景気が回復する、こう盛んに言っていたわけです。それがどうも秋のようだ、それが今度は年末のようだ、今度はことしの春口だ、こういうふうに変わってくるわけですね。  これは、ただ単にこの在庫調整の見通し、分析が十分でなかったということではなくて、やはりバブル経済がなぜ発生したのか、なぜ崩壊したのか、そのバブル崩壊の後遺症、これは一体どういう傷跡を日本経済に残したのか、この辺の分析がやはり十分でなかったことから起きたのではないのかというふうに私は見ているのです。  ですから、何回も見通しを誤ったと言って今率直に総理認められたわけですけれども、今から振り返ってみて、どうしてそういう、何回も何回も見通しを誤ったのか。私はバブル経済の見方に、政府の見方にちょっと甘さがあったのじゃないかと見ているのですが、総理は今から振り返ってみて、何回も何回も見通しを誤ってきたその基本に何があったのかということをどういうふうにお感じでしょうか。
  32. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 今おっしゃいました御指摘の点は、私もほぼそういうふうに自分で考えております。つまり、在庫調整でございますと、普通の場合はこれは循環をするものでございますから、ある時間がたつと在庫調整というのは終わる。業界としても恐らく私はそう考えておったと思いますが、それが順調に進まなかった原因は、それはやはり一つバブルの崩壊というものがあったのではないかと言われるのは私も同様に実は考えておりまして、もう少し申しますならば、バブルが崩壊したということは、まず消費者の側でいえば逆資産効果でございますから消費意欲というものが非常にそれで衰える、その限りにおいて在庫調整がおくれるということがございます。それから、企業の側にしてみますと、資産がそれだけ非常に不良になったということでございますから、企業の投資意欲というものも当然のことながらそれだけ鈍る、これがまた生産財、資本財への在庫調整をおくらせることがあると思います。  それからもう一つ、さらにバブルの結果、金融機関、証券会社等々、いわば経済の血液というべきものを担当するそういう経済の部分が、いわゆる融資能力というものを極端に失ってしまった。それは不良資産のゆえ、それはバブルのゆえ、そういうふうになってまいりますから、市川委員の言われましたことは、私はやはりそのように考えるべきだと思っております。
  33. 市川雄一

    市川委員 複合不況という言葉が言われているんですね。これは京都大学名誉教授の経済学者宮崎義一さんが「複合不況」という本をお出しになった。今ベストセラーで大分売れているそうです。この本にかなりバブルの分析が実証的に統計を駆使して行われているのですが、私も政府のバブル認識を分析する上で非常に対照的な参考になったわけですが、ところが総理、今総理はこういうふうにおっしゃったわけです、今という時点で。  ところが、総理政府の認識は九一年の段階は相当甘いですよ、バブルの認識が。今総理がおっしゃったような認識持っていないです。ここに私は、不況の初期段階における景気の診断、病状診断を誤ったのじゃないかというふうに思うのですね。要するにバブルというものを甘く見ていた。  証拠というか、申し上げましょう。九一年の経済白書、九一年、一昨年ですね、一昨年の七月に出された経済白書に、実際の価格がファンダメンタルズ価格から乖離している場合バブルが発生している、こういうふうに、前後いろいろなことを書いてあるのですが、バブルを定義しているわけですね。「資産価格の変動はファンダメンタル価格からのかい離であるとみることができる。」こういう認識なんです。  要するに、その前に経済白書では、例えば鉄道の線路が、鉄道が通るようになった、発表された、それで地価が上がった、あるいは何か公的な計画が発表になって地価が上がった、これはファンダメンタルズ価格であってバブルではない。そういう土地価格を引き上げるに足る計画、立地条件がよくなって価格が上がる。そうでない、何にもそういう要素がないのに価格が上がる、ファンダメンタルズ価格と地価が非常に差がつく、これがバブルだ、こういう説明なんですね。  この説明ですと、バブルの崩壊というのは、総理、健全に戻ったということなんです。バブルが崩壊したということは、価格はファンダメンタルズ価格に戻った、こういう認識になってしまう。当時、いろいろな新聞を調べてみますと、エコノミストもかなり一般的にそういう見方なんですね。ですから、バブルという蜃気楼が消えた、国に何か損失が生まれたわけじゃない、こういう見方になるわけです、この経済白書の見方は。バブルは蜃気楼だ、ファンダメンタルズはしっかりしている、設備投資も二けたで続いていたし、土台がしっかりしている、失業率も物価上昇率もいろいろな点でそう悪い状態にない、だからバブルという蜃気楼は消えたのだ、もとへ戻ったのだ、こういう認識なんです。  どうですか、大蔵大臣、経済企画庁長官、この九一年の経済白書のバブル認識をどう今の時点でお考えでしょうか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 それは、大蔵大臣も経済企画庁長官も当時御在任でございませんので、私もそうでありませんけれども、しかし、私が申し上げるべきだと思います。  その白書の考え方は、やはり経済のいわゆるファンダメンタルズということを中心に考えているのだと思います。私は、その考え、間違いだと思いませんけれども、これからも大事だと思いますが、実体の経済は貨幣現象として行われておりますから、それが仮の姿だと言ってみましたところで、そういう意味では経済というものは貨幣現象である限りはいつでもそういう要素を持っているわけで、それによって経済が動くわけでございますから、ファンダメンタルズは大丈夫だという指摘ならばよろしゅうございますけれども、そのことでこの貨幣現象である経済を説明するというのは、それは私は無理だろうと思います。
  35. 市川雄一

    市川委員 ですから、もちろん誤りと言うとちょっと言い過ぎかなというふうには思っているのですが、しかし、誤りですよ、このバブルの見方は。金融自由化という前提で考えますと、もう今はGNPの何十倍のお金が動いているという状況を考えますと、一国経済主義というのはもう通用しないということを考えますと、やはりこういうことはこれからも何回も起きてくるかもわからない。  ですから、こういう認識ですから、総理、翌年の経済白書がまた極めておもしろいことを書いているのです。九二年の経済白書。「「バブル」の発生と崩壊の景気への影響についてみると、」「家計の消費に及ぼすマイナスの影響(逆資産効果)は軽微なものとみられる。」「軽微」ですよ。こういう不況診断が生まれてきたのですよ。それから、「「バブル」の崩壊自体は設備投資の回復を緩やかにする要因ではあるが、回復に深刻な悪影響を与えるものではない。」冗談じゃないですよ。今、逆資産効果というのはやはり消費を冷やしているわけですから。それが「軽微なもの」という見方。それから、企業の設備投資は深刻な影響はない、悪影響を与えないという、これも全く間違っているわけですね、企業はもう今はいろいろな意味で大変で、設備投資どころじゃないというのが実情だと思いますから。ですから、いわゆるファンダメンタルズを重視してバブルというものの見方をある意味では誤っている。バブルの持ついわゆるスパイラル現象というのか、金融資産と金融の負債が両建てでどんどんふえていく、両建て化現象というものをこの白書、政府は見てない。  ですから、どうですか、バブルの発生と崩壊は、景気への影響について見ると、家計の消費に及ぼすマイナスの影響(逆資産効果)は軽微なものだ、それから企業に対する影響は、設備投資の回復を緩やかにはするが、深刻な悪影響を与えるものではない、こう言っているのです。これについて、総理、どうですか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 白書というものの性格を実はちょっと本当は申し上げたいのですけれども、それは御存じでございますから省略いたします。  白書を書くエコノミストの立場からいえば、仮にバブルが崩壊して土地の価格が下がり、株の価格が下がったとしても、何もそれを売るわけではないし、自分が持っているとも決まらないし、したがって実質の購買力にそれが大きな影響を与えるはずはない、こう考えるのでございましょうか。それならしかし、資産効果も資産効果としてそんなに大きなはずはないわけですが、そういう貨幣を離れての実体経済といいますかそういうことを中心に物を考えているのではないでしょうか。  企業の場合でも、その設備投資というものは、企業の持っている資産がバブル崩壊によって落ちたといってもそんなに、企業の方が少し影響を受けると書いてあるとおっしゃいましたけれども、家計には軽微のはずである、はずであると言っても、しかし、家計が現にそう考えなければ経済はそのように動くので、貨幣経済というのは私はそういうものだと思いますから、白書というものの性格は今申し上げませんが、今の実際の経済の政策選択の立場からいえば、やはりそれと離れた別の判断も必要だというふうに思います。
  37. 市川雄一

    市川委員 いや、白書というのは一つの文章として残っている認識ですから申し上げているわけで、経済企画庁長官の発言なんかもあるのですが、長官かわっちゃいましたから、今船田長官に聞いても余り意味がありませんので。意味がないというのは、その発言について、前の長官の発言の責任を持てということを聞いても意味がありません、そういう意味です。済みません。誤解のないように。  ですから、白書を言っているのですけれども、しかし僕は、吉冨さんという経済企画庁のエコノミスト、非常に優秀な学識を持っておられて、それなりに著作も拝見していたのですが、この吉冨さんでさえもちょっとやはり間違えているのですね。一九九二年、去年の七月では、総理、企画庁にあった考え方はやはり在庫循環型の不況、不況感が強かったと思うのです。要するにそこに、クレジットクランチという、貸し出し能力の低下という、簡単に言うと、そういう金融からきている面を、全く見てなかったわけではないと思いますが、かなり軽視したのじゃないか。ですから、在来型の不況という見方、不況観、不況診断。だから、どうしても在庫調整がいつ終わるかというところへ不況の診断が行ってしまう。で、その診断を、そっちの見通しを誤った。  例えば吉冨さん、まあいらっしゃらない方のことを言うのは恐縮なんですが、新聞に出ていることですから、「生産の落ち込みが止まり、ややプラスに転じるという意味での在庫調整の終了は七—九月期から十—十二月期にかけてで、秋口には調整のメドがついてくると言える。」これは去年の十六日の発言なんですけれども。  が、総理の発言をずっと追っかけてみますと、去年の九月ごろから総理の発言は変わっているのですね。それまでは、総理も在庫調整、在庫調整ということを盛んにおっしゃっているわけですよ、総理の発言それから野田企画庁長官。最近になって総理の発言は、金融という問題があって、複合不況だとか、要素が複雑であるとか、深刻であるとか去年の恐らく九月、十月以降だと思うのです、総理の認識が変わる、明らかに発言を読んでいて変わってくるのは。それ以前は、総理を初め経済企画庁長官も、企画庁も白書も、やはり在庫循環型の不況という見方が主流だった。だから、どうしてもいつ在庫循環が終わるのか、底を打つのかという見方が支配的で、したがって公共事業前倒しだ、十兆七千億の公共事業だ。もちろん、公共事業が不況対策にだめだなんということは申し上げません。これもそれなりに有効だと僕は思いますよ。  ただ、私が申し上げたいことは、不況の病状診断が、分析が的確でないと、これからの日本経済の運営というものを誤ってしまうのではないかという危惧を抱いているわけでして、何か知らないうちに発言が変わってきて、最近気がついたのだというのでは困るわけでして、やはり政府として、最初見ていた不況の性格が、最近になって気がついたら不況の性格が違うと、明らかに政府は認識が違ったのだということを明確に言ってくれますか、総理。それならそれで話はわかる。が、何かずるずるずるずると、みんなが知らないうちに発言が変わって、いや、最近はこうなんですと言われても、何か政府はわかっていらっしゃるのかなと非常に疑問を感ずるわけですね。  ですから、在来型の不況観に引きずられていた、そうでないという、その辺の景気の初動段階における不況判断というものに、私は、ちょっと見方、角度が違っていたのじゃないか、それが見通しを誤らせてきたのではないのか。最近になって総理はそれに気がつかれて、かなり別の角度の発言をされているわけですが、総理、どうですか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 実は昨年の春過ぎから政府部内でもいろいろな議論をいたしておりました。何分にもしかし、このバブルということが我が国として最初の経験であったものでございますから、これをどのようにとらえていいかということになかなか迷いがございまして、明確な見通しをその段階、去年の春ごろの段階で持ち得なかった。しかし、実体経済の方がなかなか思うように在庫調整が進んでこないといったようなことから、先ほどこれは市川委員が、書記長が言われましたように、在庫循環だけで物を考えて、そっちに大変な重点を置き過ぎたのではないか、資産のバブルということを十分考えていなかったのではないかと言われることは、これは事実に徴して私はそうであったと、これはそう申し上げざるを得ない。事実が実際それを証明いたしましたので、その点はやはり、初めてのことではございましたが、十分先を見通し得なかったということを申し上げざるを得ないと思います。
  39. 市川雄一

    市川委員 総理は率直にお認めになられた。  それで、私も決して経済の専門家ではないのですけれども、この不況問題を随分、ずっと去年から追っかけてきまして、バブルというのは一体どうして発生したのか、どうして壊れたのか、どういう後遺症が残ったのかということに関心を持って、いろんな方のお話も伺ったし、本も拝見をしたわけですが、その中で、ガルブレイスの「バブル物語」という本がございまして、チューリップの球根を例にして説明をしているわけですが、いわゆる株と同じなんですけれども、現金で球根を買う、球根を担保にして金を借りる、借りたお金でまた球根を買う、その球根をまた担保にして金を借りるという。要するに、その例を引きながらガルブレイスはバブルという現象については、まあスパイラルというかスパイラルというとらせん状というのかキャッチボールというのか、いわゆるお金がある、株を買った、株を担保にしてノンバンクから金を借りた、そのお金でまた株を買った、その株を担保にまたお金を借りたという、このいわゆる資産と負債の両建て化、そこに信用供与というものがそのバブルに生命力を吹き込むわけですね、エネルギーを吹き込んでいるわけですね。信用供与、お金を貸すという、そういう信用供与の急増に裏づけられて発生するファンダメンタルズ価格を超えた資産価格の高騰がバブルだというのが、これはガルブレイスが規定をしているわけです。  こういう見方でこのバブルの発生、崩壊というものを見てみますと、非常に筋が通る、わかりやすい。ですから、バブルは蜃気楼であって、蜃気楼が消えただけだ、何ら損失は生まれていないんだというのは、これはちょっと余りにも一方に偏り過ぎた見方であって、膨大な負債というものが残っているわけでございます。  先ほど総理もおっしゃいましたが、そこでどうでしょうか、アメリカは、総理、ブラックマンデー、一九八七年の十月十九日、起きたときに、早速何で株の大暴落が起きたのか、これを調べて公表しているんですね。ブラックマンデーから約三カ月後に、ブラックマンデーに関するアメリカ証券取引委員会の研究、一九八八年二月に公表されています。それから、N・F・ブレイディを議長とする株価安定特別委員会のレーガン大統領への報告書、一九八八年一月。何でブラックマンデーが発生したのかということをかなり分析しているわけです。  今回のバブルの発生と崩壊、その傷跡というのは、今後の金融自由化というか、金融自由化も大きな要素なんですけれども、戦後の日本の経済の中で初めての経験と総理もおっしゃいましたけれども、初めての現象が二つ起きていると思うんですね。  一つは、いわゆるクレジットクランチという、信用逼迫という、まあBIS規制、ことし三月という問題もあるんですけれども。もう一つは、事業法人におけるエクイティーファイナンスの失敗。ワラント債、転換社債を安い利子で大量に発行できて膨大な資金を調達できた。したがって、低利で膨大な資金が調達できるわけですから、どうしても設備投資の判断が甘くなる。それが設備投資に向かった。しかし、株は右上がりに上がっていくと思っていたら、ある日突然暴落してしまう。ワラント行使ができない、転換ができない、株に転換できない。したがって、これを借りかえる、リファイナンスしなきゃならない。これが今年度約十兆円。全体で二十三兆。こういうこのエクイティーファイナンスの失敗という問題、それからクレジットクランチという、これは恐らく戦後経済で初めての現象だというふうに言えるんじゃないかと思うんです。  そういうことが起きているだけに、要するにもう大分たっているわけですよ、バブルが終わってから。そういうときに、もうすかさず政府の機関できちっとした分析をして国会あるいは内閣に報告するという、そういうことをやった方がいいんじゃないのか。これからやるかやらないかより、まず少なくともバブルについてはそういうことをきちっと分析する必要があるんじゃないか。どうですか、総理、どこかでやらせる気はありませんか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 後ほど大蔵大臣からお答えをいただきたいと思いますが、そのガルブレイスの話ですが、何世紀か前に、オランダだったと思います、チューリップの新しい新種が出るということで球根についての非常なスペキュレーションが起こったという、そういう歴史上の教訓を我々持っておるわけですけれども、我が国の場合、いわゆるプラザ合意以後に生じた過剰流動性というものが最終的に株や土地に向かった、その間に仮需要が発生したといったような教訓を今我々は見ておるわけですが、それは確かにかなりきつい教訓でございましたけれども、そこはやはり日本経済の実体が強うございますから、この教訓を今克服しつつある、しようとしておる、十分にできると私どもは思っておりますので、それが今の、この教訓をやはり大切にしなければならぬとは思います。  それで、市川書記長の御質問の中で、今そういう意味での金融機関の資産が傷んでおるのではないかとか、あるいはワラント債であるとかエクイティーファイナンスであるとか、そういうものの始末をしなければならない時期に来ているだろうと言われることはもうそのとおりでありまして、その点につきましては大蔵大臣からお答えを願った方が、具体的に願った方がいいと思います。
  41. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 市川議員の御質問お答えをさせていただきます。  今総理から御答弁いたしましたようなことで尽きると思いますが、今回のこの不況は、市川さんは複合不況、こういうふうにお話が最初にございました。私も大変今までの不況とは違った様相を持った、また原因を持ったところの不況だろう、こう思っておりますし、昨年の八月、総合経済対策の中でもいろいろ出ておりまして、そういったいろいろな物の観点がありましたが、特に今エクイティーファイナンスであるとかあるいはクレジットクランチであるとかというお話がありました。  大蔵省の中にも財政金融研究所というのがありまして、そこで館さんを中心としました館龍一郎先生ですが、中心といたしまして今勉強をしているところであります。なかなか難しい問題でございますが、勉強ができましたならば、その経過は発表できるものなら発表いたしたい、こういうふうに考えております。  それから、当面の問題でございますが、エクイティーファイナンスで、今お話もございましたが、この平成五年度におきまして償還をしなければならない、大変だというような話がいろいろと新聞でも伝わっておりますし、御指摘の宮崎さんの本の中にもそんな話が出ております。私も読ませていただきましたが、そういった問題につきまして大蔵省といたしましても聞き込み調査をやったところ、その今のエクイティーファイナンスの問題、五年度の償還の問題については、大体償還のめどがついている、こういうふうな話の報告を受けているということは申し上げておきたいと思っております。
  42. 市川雄一

    市川委員 総理、ですから、アメリカのまねをしろということを申し上げているわけではありませんでして、戦後経済の中で経験する新しい重要な経験だったわけですから、なぜバブルが発生したのか、なぜ崩壊したのか、それが日本経済にどういう影響を与えたのかという分析をきちっとさせて、それを国会報告する、そういうことをなさいますかやってほしいということを申し上げているわけで、それはどうですか。
  43. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 先ほど申しましたように、財政金融研究所で今勉強させているところでございますので、その結果ができましたならば御報告させていただきたい、こう思っております。
  44. 船田元

    ○船田国務大臣 市川書記長にお答えいたしますが、先ほど来御質問をずっと聞いておりまして、確かに大変難しい経済運営局面、これは我々も非常に重大なことと考えております。  先ほど来総理からも、あるいは大蔵大臣からも御答弁申し上げましたけれども、今回の景気調整局面における特徴というのは、やはり資産価格の大幅な下落、これはある意味では安定成長期以降初めて経験をした事態である。その経済に与える影響の見通しは、確かに初めての経験ということでもあり、困難な面もあったことは否めないわけでありますけれども、しかし私どもとしても、何とか政府として入手可能な統計の収集あるいは分析を行い、さらには産業界からのヒアリング、あるいは企業経営者の意見も参考にして、現在の政策、国際環境も十分に考慮しながら、何とかその都度その都度最善の判断を行えるようにということで努力をしてきたつもりでございますが、なおその点においておしかりもございます。全力を尽くしていきたい、このように思っております。
  45. 市川雄一

    市川委員 なぜこんなことを繰り返し繰り返し申し上げるかというと、バブルが発生し、崩壊し、その崩壊した後遺症というものが当初私たち考えていた以上に日本の経済に重い傷跡を残している。これはやはりまだみんな、専門家の方々は気がついていますけれども、まだみんな気がついていないんじゃないのかという気がしてならないわけでして、後でも触れるんですけれども総理、やはり金融自由化というものを甘く見過ぎていたというのが大きいと思うのですね。  経済一流、政治三流、こう盛んに言われていたんですが、一流のはずの経済の方々がみんなこのバブルに、あぶくに手を出して失敗しているわけですから。何も政治が三流と言われているから言っているわけではありませんでして、決して経済も一流でなかったということが明快になったと僕は思うのですね。このバブルに手を出したということで。金融自由化というものを非常に甘く見ていた。  例えば裁定取引。今回のバブルの崩壊の一つのきっかけになったのは裁定取引だと言われているわけですね、専門家の分析ですと。それからインデックス売買。日経平均株価二百二十五種の指標を売買する。いわゆるどこかの会社の株を幾らで売り買いするというのじゃなくて、日経平均株価二百二十五種の平均株価、これをインデックスとして売買する。先物実物売買。  そうすると、日本の証券会社は、株価を上げる、とにかく上げさえすればもうかる。上げればいいんだ、上げる一方だ、これが日本の証券会社の体質だったと僕は思うのです。とにかく上げる、上げる、上げる。ですから、株主の皆さんから株券を預かる、必ずもうかりますから預けておいてください。これは上がらなきゃもうからない。これがバブル崩壊までの日本の証券業界の体質だった。いろいろな人が証言していますよ。野村証券に右へ倣えしていれば間違いないんだ、とにかく上げればいいんだ、腕力で上げるんだ、株価上げればもうかる。  ところが、この裁定取引というのは株価が暴落してももうかるのですね、この取引の手法は。そうするとアメリカは、ソロモン・ブラザーズとかいろいろ言われておりますが、アメリカは要するに上げてももうかる、下げてももうかるという二つのわざを持っていた、二つのわざを。日本の証券会社は上げるだけのわざしか持っていない。自由化して入ってきた。これはかないっこないと思います。上げてももうかる、下げてももうかるというわざに熟達した人と、上げることしか考えない。また、預かり証券なんという体質がありますから、上げることを一生懸命考えちゃう。株価を下げてもうけようなんという発想のない証券会社と、下げてももうかる、上げてももうかる、これはどうにもならない。  ですから、ある意味では、バブルの崩壊というのは、結果論ですが、見えていたのではないのか。金融自由化というものを甘く見たのではないのか。後でもこれは触れようとしたのです。  ですから、ビジネス・ウイークという雑誌が分析しておりますよね、アメリカの経済を。アメリカ経済をトータルで見た場合は、確かに日本経済の方が今ファンダメンタルズがいいように見える、アメリカ経済が何か弱っているように見える。だが、そうじゃない。五つのセクターにアメリカ経済というものを分けて見た場合、在来型の鉄鋼とか家電とか、その部分がアメリカ経済は日本に負けている。しかし、証券とか銀行とかハイテク産業とか航空産業とか石油とかエネルギー産業、この部分では十分日本経済に太刀打ちができる。それからあと農業。  ですから、優位のものが、アメリカが世界経済の中で優位に立っているもの、これは自由化することによって海外に出ていって劣位のものと戦えば、これは優位のものが勝つに決まっているわけですから、そういう考え方がアメリカに生まれているとしても間違ってはいないと思うんですね、当然。日本経済がうまくいき過ぎているのではないのか。この世にソ連と日本さえなければ世界は心休まるんだということを言われた時期もあったぐらいですから。  ですから、要するに金融が自由化した、向こうは裁定取引とかインデックス売買とかそういうノウハウ、まあ言ってみれば日本の証券会社が経験したことのない未経験の取引手法にこちらは熟練しているわけですね。ある意味では手だれないわけです。この人たちが自由化を要求した、日本は応じた、乗り込んできた。そして、一九八九年の十二月の終わり、一九九〇年の一月の始まり、これは株価が暴落を始めるわけですね。裁定取引が一つのきっかけだった、こう言われているわけですが、もちろんそれだけではないと思います。ですから、やはり自由化というものを甘く見ていたのではないのか。  まだほかにも言えることはあるのですけれども総理はたしか大蔵大臣のときだったんだろうと思うのですが、一九八五年ですか、プラザ合意、その後の円規制の転換を一九八六年か何かにやっていますよね。そこから金融の、円・ドル委員会で恐らく討議されたんだろうと思う、自由化というものを。お米の自由化というのはもう大騒ぎになるのですね、日本じゅうが。金融の自由化というものをだれも騒がなかった。銀行も甘く見ていた、金融業界も甘く見ていた、我々も何となく楽観していた。そのうちにバブルが崩壊して、初めて金融自由化の厳しさというものがわかってきた。やはり金融自由化というものに対してもっと、日銀も甘かったんじゃないか。  ですから、本来なら金融引き締めをやるべきときに、その引き締め時期を誤ってしまった。金余り現象を推進してしまった。バブルに手をかしているわけでして、銀行も、BIS規制という問題があるのですから、自己資本比率を高めることに力を入れなければいけないのに、逆にノンバンクにお金を貸して、バブル、水膨れに手をかしてしまって、今膨大な不良債権で苦しんでいる。ですから、金融自由化というものの持つ意味政府も経済界も金融界も日銀も甘く見過ぎていたのではないか、それがやはりバブルというものにつながっていく、こんなふうに私は思うのですが、総理はどんな感想をお持ちですか。
  46. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 総理の御答弁の前に、私から考え方を申し上げさせていただきます。  今お話、いろいろとございました。私も詳しく聞いておりましたが、私は思いますのに、この金融の自由化というのは、日本の経済がこれだけ大きくなってきまして、日本の国内だけの金融でやっておったんでは到底できないし、また国際的な金融市場と一緒になってやっぱりやっていかなければならないということであります。  それから、自由主義経済体制でありますから、金利の自由化、その他のものも漸次進めていかなければならない。私はそれは一つの大きな基本的な方向だと思うんです。その中で、今までやってきました中で、今のバブルの問題が出てきたところでありまして、バブルの問題につきましては、お話しのように、政府もあるいは金融当局者も、また企業の方も、それぞれ私は責任があったかと思います。確かに過去の歴史を見ますと、公定歩合を少し下げるのが遅かったとかどうだとかというような議論はあると思いますが、そうした状況にあって、どういうふうな形で経済をうまく運営していくかというのは常に考えていかなければならない、お互いが考えていかなければならない問題だろう、こう思っています。  そうした意味で、例えば先ほどもちょっとお話がありました、証券界では売り上げるだけだ、こういうふうなお話もありました。結果としてそういうふうなお話になっていたかと思いますけれども、証券界の中でも売りでもうけるというふうな話は昔からあったと私は聞いておるところでありまして、証券というのはまさに市場であります。その市場というものが、私は、円滑に動くというような形には、できるだけいろんな統制を排して、自由な形での市場が生まれるということが一番望ましいことだ、こう思っているんです。その中でいろんなことを私は考えていくということが必要だろうと思っております。  また、もう一つのお話にございましたけれども、アメリカと日本との産業界の比較優位の問題がある。アメリカが証券の問題に確かにいろんな点ですぐれている。それは私もそうだと思います。今までの歴史から見てすぐれています。しかしながら、それでもって、だから日本の証券にすぐに入ってきて、やってきて日本のなにをやるというような話では私は短絡的にはない話だろうと思うんです。  比較優位の原則というのは国際経済の中で働いていくということはこれは当然のことでありまして、それでこそいろんなお互いの貿易ができ、いろんな交流ができ、その交流をすることによって日本とそれから諸外国との経済が同時的に発展をしていくところのモメントだろう、私はこう思っているところでございまして、そうした形でこれからも自由化の問題は慎重なことをやらなければならない、こう思いますが、同時に、今のようなバブルの問題等につきましては、それがもたらした影響というのは御指摘のようにそう簡単な話ではなかったということも私は事実だ、こう思います。そういったことで、これからも注意して政策運営をやっていかなければならないだろう、こう思っているところでございます。
  47. 市川雄一

    市川委員 金融自由化の持つ重要な意味というものを、私は、政治家も含めて、金融界、銀行界、証券界、軽く見過ぎていたと思いますね。そのしっぺ返しを食らったと僕は思うんです。ですから、これからの経済の運営においてこの金融自由化の持つ意味というものを十分に考えるべきことではないかというふうに思うんですね。  そこで、先ほどから申し上げてきたことを具体的に申し上げますと、じゃ、バブルが崩壊してどういう後遺症が残ったのか。これは恐らく政府も認めざるを得ないだろうと僕は思うんですが、それはデータの、統計というか数字のとり方は角度によって多少の違いは出てくると思いますが、一時は主婦が株に手を出していた、株でもうかったわなんという話もあったわけでして、経済企画庁が発表した国民総資産残高の推移によりますと、一九八九年末、日経平均株価は三万八千九百十五円、これで計算しますと八百九十兆円の株式時価総額があったわけです。これが一九九〇年末、日経平均株価二万円台の時点の額でございますが、五百九十四兆円に減少、生まれたキャピタルロスが約三百兆。これは平均株価がまだ二万円台ですから、これを、一万七千円まで下がったわけですから、一万七千円で計算しますと、生まれたキャピタルロスが四百九十八兆円になるわけでございます。これが一九八九年から一九九〇年に株価が一万七千円に下がったまでの理論上の計算です。四百九十八兆円。  このうち個人株主がどのくらい当時いたのか。銀行が持っています。企業が持っています。個人が持っています。これを東京証券取引所の要覧一九九二年版で、一九九〇年度末の株式分布というのが出ておりますが、個人株主の所有分が二〇・四%。したがって、単純に計算しますと、四百九十八兆の二〇・四%ですから百一兆六千億の個人のキャピタルロス。これは単純計算ですから必ずしもこのとおりのロスかどうかはわかりません。  もう一つ、朝日生命が取得価格から計算した個人投資家の株式含み損、一九九一年末で約十一兆二千三百億円。平均株価が頂点に達した一九八九年末現在、そのときの個人投資家の株の含み益、これは総額で四十七兆八千三百億。したがって、一九九一年末では、一九八九年に莫大な株の含み益を持っていた、それが含み益を失い、さらにキャピタルロス、含み損を生んだ。約五十九兆円。これが朝日生命レポートが発表した数字なんですが、これは取得価格から見た個人株主のキャピタルロスの推定でございます。こういう五十九兆円のキャピタルロスが生まれているわけですね。  ところが、当時、経済企画庁は、「「バブル」の発生と崩壊の景気への影響についてみると、」「家計の消費に及ぼすマイナスの影響。(逆資産効果)は軽微なものとみられる。」という、ある意味では非常に楽観的過ぎることを言っているわけですね。実態は五十九兆円のキャピタルロスを生んで逆資産効果、もう物を買いたくないという、余り買うのをやめようというそういう個人心理が働いているときに、その影響は軽微なものだ、軽いものだ。ここに非常に僕は大きな認識の落差があり過ぎると思うんですね。余りにも認識の落差があり過ぎる。  だから、さっきから何回も繰り返し申し上げているように、バブルに対する見方が甘いんじゃないのかそうすると景気の診断を誤りますよ、新しい不況ですよ、これをしっかり分析しておかないと今後の日本経済の運営誤りますよという意味で繰り返し繰り返し申し上げているわけですが、金額がジャスト五十九兆かどうかは別として、かなり個人株主にこういう膨大なキャピタルロスが生まれたということについて、大蔵大臣、どうですか。
  48. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 基本的に申しまして、株というのはハイリスク・ハイリターン、こういうことだろう、こう思うのです。投資家がそういった形でやっていくわけでありますから、いわゆる銀行から借り入れをする、あるいは銀行に預金するように必ず確定してやれるという話でありません。そうした意味で、リスクがある話であります。それが通常の形で動いていくならば私はどうだということではありませんが、今のバブルの問題、先ほど市川先生からお話がありましたが、まさにチューリップのような話というのがあります。そういったチューリップのような話になるということ自体が私は一体どういうことだったのかなということは、なぜそんなことになったのか。一億のと言っては申しわけありませんけれども、一部の人の中で、将来必ず上がっていくんだという神話ができておったということも私は事実だろうと思います。これは、土地の価格が必ず高騰していきますよという神話があったと同じようなことが私はあったと思いますので、その神話の是正、株というのは上がったり下がったりするものだというのが原則だということをやはりもう一遍考え直していかないとどうにもならないのじゃないかなと思っています。  そういった意味で、私は、今のお話で個人投資家云々ということ、確かにお話しのように、私も数字でははっきりしておりませんが、個人投資家の方々の含み損が六十兆にも近いようなものになった、大変なことだな、こういったことはどうしていくのかなと。それはやはり基本的には今のような考え方でありますけれども、そのときどうしていくか。再びやはり、本当は個人投資家が資本市場に出てもらうことが一番望ましいわけでありますから、そういったことをどうしていくか、また、そういった形によって証券市場の活性化をどう図っていくかということをまじめに私たち考えていかなければならない。非常に問題だというふうに受けとめております。
  49. 市川雄一

    市川委員 要するに、個人消費、景気が悪くなって残業がない、残業手当がなくなる、あるいは今企業で三Kと言われていますよね、広告費、交際費、交通費を切れという。残業手当はない。そういうものは切られていく。そこへ逆資産効果というのが働いてくる。逆に言うと、バブルのときの資産効果で、たんすの中がいっぱいというか、買い過ぎる、買い過ぎというのが一つはあって消費を冷やしているという見方もあるのですが、いずれにしてもこの逆資産効果というのは大きいと思う。  もう一つ、金融業、銀行界がどういう失敗をしたのか。今、後で大蔵省に不良債権の額を本当は聞きたいと思っているんですが、これは退職サラリーマンの例で言いますと、サラリーマンが退職して三千万の退職金を手にした。ちょうどNTT株が売り出しで、一株三百万の時価で人気があった。三千万で十株買った。今までこれを売らないで持っていますと、今一株五十五万ですか、六十万で計算して六百万。二千四百万、これは損するわけですね。大きな損害ですね。これは自己責任だからしょうがないといえばしょうがないんですけれども。  しかし今度は、これではバブルではまだないわけでして、退職サラリーマンが三千万で一株三百万のNTTの株を十株買った。十株を今度はノンバンクに持っていった。そして、七掛けで二千百万の金を借りるわけです。二千百万でまた一株三百万のNTT株を七株買った。七株買ったその株をまたノンバンクへ持っていって、七掛けで千四百七十万、金を借りた。またそれでNTT株を買う。これは、このとおりやった人がいるかいないかは別として、いわゆるバブルの一つの過程を見る。  これは専門家の間では乗数が三・三三倍と言われているわけでして、三千万掛ける三・三三倍で、三千万が一億に膨らむわけですね。これがいわゆるバブルのスパイラル現象。三千万という元手が三千万の株券にかわり、株券を担保にして七掛けで二千百万の金を借り、二千百万でまた株券を買って、その株券がまた千四百七十万の借金を生み、千四百七十万の金でまた株券を買う。これは土地でも同じことが行われたわけです、土地、不動産。不動産でも同じことが行われた、あの当時。株でも不動産でも、両方で、土地を買う。担保にして金を借りる。そのお金でまた土地を買う。その土地を担保にして金を借りる。したがって、土地の値段が上がる、株価が上がる。みんな下がると思ってないから、どんどんどんどん上がっていくと思ってバブルに手を出していった。  ところが、バブルがはじけてみたら、このサラリーマンは十株三千万の元手を完全に失い、まあ三十三・三株のNTTの株を処分しますと二千万ですから、一株六十万で計算して二千万。そうすると五千万の延滞債務が個人投資家に残る。この個人投資家は三千万の退職金を失っているわけですから、五千万の借金が残った。これは返せない。これはノンバンクの不良債権。これは土地で貸した場合も同じですよね、ノンバンクの不良債権。ノンバンクの不良債権ということは、全国銀行が、ノンバンクは預金業務をやってないわけですから、全国銀行からお金を借りている。だから大手の銀行を含めた不良債権、こういう形で不良債権が発生した。  それにプラス、今度は銀行が自分の資産を運用するために株を運用していますよね。自分の資産運用のために株を運用している。その銀行が保有している巨額の株、これもキャピタルロスを生んでいるわけでして、これも東証要覧等の調査によりますと、金融界が持っていた株が一五・七%ですから、さっきのキャピタルロス総額の四百九十八兆のうち七十八兆、七十八・二兆円のキャピタルロスが金融界を直撃しているわけですね。  しかも、ことし三月に、国際的な約束でBIS規制を達成しなきゃならない。自己資本比率八%のBIS規制を達成しないとならない。日経平均株価が千円下がりますと株式評価額が約三・六兆円下がる、銀行のBIS自己資本比率を〇・一%引き下げる、こういうふうに専門家の間では計算をされている。この膨大なキャピタルロスというのは、銀行にとっては自己資本比率を下げた。  こういう、バブルが崩壊して銀行に巨大な、かなり巨額の不良債権が生まれた。不良債権が生まれただけではない。持っていた株、運用していた株がキャピタルロスに見舞われた。キャピタルロスに見舞われただけではない。今度は国際的な約束事であるBIS規制、一九九三年、ことし三月末までに自己資本比率八%を達成しなければならない。日本の銀行はみんな非常にあっぷあっぷしておるわけです、これは。  民間にお金を貸すと、リスクウエート一〇〇%で、総資産が、計算としては分母がふえる。したがって自己資本比率が落っこちてしまう。民間貸し出しはできない。信用協会の保証をとってこい。信用協会の保証がつくとリスクウエートが計算上減る、こういう仕組みになっていまして、キャピタルロスがある、不良債権がある。そこへBIS規制が来ている。これは、貸し渋りというと何か貸す能力があって自分の意思で渋っているように見えるんですが、そうではなくて、貸し出し能力が完全に低下してしまった。これが金融界のバブルで受けた傷跡だと僕は思うのです。こういう非常に深刻な傷を受けていますよね。  この点について、大蔵大臣、どうですか。そんな簡単なものじゃありませんよ。
  50. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今、個人の問題とそれから銀行の問題と両方お話をいただきました。個人でもってノンバンクに行ったりなんかしてやったならばというお話がありました。そこはある程度まで個人の責任であるし、これをどうだこうだというところまでは私はない。  正直申しまして、私もNTTの株を一株持っていたんです。まだ持っています。買ったのが二百五十五万円、上がって三百万円ぐらいになっちゃったんです。喜んでいたらさあっと落ちちゃって、もうどうにもならないから今持っているというのが、一株持っているのです。何もありません。ありませんが、そういったこと……(市川委員「認識を聞いているだけです。簡単にしてください、済みません。時間がない」と呼ぶ)それで大変な、私は難しい状況だと、こう思いますし、そういったことを一々なにするということはありませんが、銀行もいろいろな形で不良のところを持っているのも事実であります。しかしながら、やはりまだそれは顕在化しているわけではございませんから、私は銀行が、銀行の健全性をますますやっていきながらこれからやっていかなければならない、こう思っています。  簡単に申し上げますし、もしも御要望があれば政府委員をして答弁させますけれども、BIS規制の達成も何とかこれはやれるものだというふうに私は考えております。
  51. 市川雄一

    市川委員 要するに、このバブル崩壊が与えた個人、金融界に対する傷跡は惨たんたるものですよということを言っているのであって、大蔵大臣、どうも答弁がかみ合わない。そんなのんきな話を聞こうとしているわけじゃないんですよ、株を売ったとか売らないとか。申しわけないけれども。  ですから、私が言いたいのは、大蔵省はディスクローズをまずしっかりしてもらいたいということを一つ言いたいのです、ディスクローズ。ディスクローズすることによって銀行の自己責任ということが明確になると思う。これをまあ一つは言いたいのですが、その前にもう一つ、事業法人はどういうバブルの影響を受けたかということを指摘しておきたいと思う。これも先ほどの同じキャピタルロスの計算でいきますと、現状一万七千円で事業法人が受けたキャピタルロスが百四十九・九兆円、巨額なキャピタルロスですね、事業法人。  それから、これはデータのとり方で変わるのですけれども、一九八六年から八九年までの四年間のエクイティーファイナンス、総額が九十四兆四千億、一九八七年から八九年でとりますと総額五十六兆円、かなり巨額のエクイティーファイナンス、いわゆる将来株が上がったら株に転換しますよという転換社債やワラント債、これを海外でかなり日本の事業法人は資金調達している。専門家に言わせると〇・五とか〇・八という、ただ同然とは言いませんが、それに近い利子でこれだけの資金を調達することができた。だから、銀行からお金を借りる必要がなかった。それで、もしそれが将来株式に転換できれば利回り一%ぐらいの負担で事業法人は済むわけですから、これは非常に事業法人にとっては魅力的な資金調達であったわけです。  それは株が上がる、どんどんどんどん上がっていくんだという前提での判断であって、株が暴落した、さて返還期限が来た。ところが、リファイナンスしなきゃなりませんから、企業はこれだけの、経済白書の指摘でも、一九九二年から九四年までの三年間で約二十三兆円のリファイナンスの資金が必要だ、こう言っているわけで、これ、六%の社債で借りかえるか何か手当てをしなければならないのです。この金利負担。〇・五%とか〇・八とか一%という安い金利で資金が調達できるから設備投資をしたわけです。その設備投資が、一九八六年から八九年までの四年間でエクイティーファイナンスが九十四兆円で、設備投資に回ったのが三分の一で、約三十一兆円の設備投資が行われた。恐らく六%か五%の利子を払おうと思ったら、企業家は設備投資をためらった、やらなかった。二%だからやろうというのでやった。ある日突然買いかえしなきゃならない、金利が六%に上がってしまう、こういうことから起きた設備過剰、これは有効需要が不足して設備が過剰になったというのと事態は私は違うと思うのです。低利で巨額の設備投資をやった、ある日突然資金調達コストが上がってしまった、したがって持っている設備が、金利が重くなって設備過剰になっている、こういう傷跡が事業法人には残っている。  大蔵大臣は、先ほど今年度十兆円のリファイナンスについて見通しがついたということをおっしゃった。これは余り意味を持たないのですよ。見通しがないなんて言っていないのですから、だれも。だから、恐らくリファイナンスするだろうということはわかっているのであって、そのリファイナンスの結果、利子が重くなるというところに意味があるので、それが設備投資を抑制に回るということですよ、リファイナンスするということは。リファイナンスができないなんということはだれも指摘しておりません。株を売ってしまうのじゃないか、それで株が暴落するのじゃないかという心配をみんな持っていたのですが、それが自己資金とか、あるいは社債の発行で十兆円のリファイナンスの見通しがついたということを大蔵省が発表したことはきのうの新聞で拝見しました。しかし、お金持ち三十社でしょう。お金持ちの企業があったという感想を言っている人もいましたよね。二百社とか三百社がそうなるかどうかわからないわけでして、しかも自己資金を使えば、設備投資に回そうと思っていた金をある意味では使っちゃうわけですから、これは設備投資が起きない。景気の立ち上がりのばねにはならない。  したがって、ここでも申し上げなきゃならないのですが、九二年、昨年七月の経済企画庁の分析は、「「バブル」の崩壊自体は設備投資の回復を緩やかにする要因ではあるが、回復に深刻な悪影響を与えるものではない。」と、極めて落差のある認識なのです。景気診断、誤っていると私は申し上げたいのです。その景気診断の誤りがやっぱり不況対策を私は公共事業一本やりにしているのではないのか、こんなふうに思うわけでございまして、したがって、総理、私が申し上げたいことは、バブルがなぜ発生したか、なぜ崩壊したか、その傷跡がいかに深いか、金融自由化のもたらした日本経済に与える影響というものは、これは十分今後分析をしておかないと、今後の日本経済の運営に誤りを犯すのではないのか、そういう立場と、もう一つは、公共事業一本やりの景気対策でいいのかということなのですね。  こういう点から見ても、個人もキャピタルロスで個人消費が冷えている、企業も設備投資意欲が減退している、銀行も貸出能力が低下している、こういう中でやはり私たちは大幅な減税をやるべきではないのかというもう一つの、二者択一で考えるのしゃなくて、要するに、この公共事業、公共事業が景気に与える影響、これはこれで我々も評価しているわけです。だけれども、デパートの業界の発表でも、これはもう統計をとって以来、デパートの売り上げが落ちて「消費不況深刻」という、こういう報道もあります。だから、バブルの崩壊、景気の診断に誤りがあった。  これはこれとしまして、今後の問題として御提案をしたいのですが、四兆円か五兆円規模の減税をやったらどうか。財源はどうするのか、こういう話がすぐ戻ってくるのですが、私たちは、赤字公債を発行したらどうか。財政原則からいえば赤字公債の発行ということは好ましくない。我々も反対してきました。しかし、今の不況、このように分析してまいりますと、極めて深刻である。歯どめのない赤字公債はまずい。したがって、単年度で戻し税方式でやったらどうか。約四兆円か五兆円で標準四人世帯で十万円ぐらいのお金が戻っていく、これを五月の連休前ぐらいに、総理、思い切ってやったらどうですか。  こんなことを私たち考えておりますが、公共事業一本やりじゃなくて、今個人消費が冷えているわけですから、そこへ減税というもう一つの手だてを考える必要があるんじゃないでしょうか。組んだ予算はベストで手をつけませんという姿勢では話にならないわけでして、予算を修正してでも減税をやるべきだというふうに考えますが、総理並びに大蔵大臣のお答えを承りたいと思います。
  52. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 いろいろとお話を聞かしていただきました。いろいろな途中の話はもう市川さんは省略して、結論だけ私が申し上げた方がいいのだろうと思いますが、結論で申し上げますならば、今私たちの方は、せっかく不況に配慮した予算をやり、九・五%という高い政府投資をやる、こういう形でやっておりますので、ぜひこの予算の成立をできるだけ早くやっていただきたい。これを実行することによりまして、私は、経済がなだらかな成長の過程に回復するだろう、こう思っておるところでございまして、赤字公債もというようなお話がありました。  しかしながら、財政を預かっている者といたしましては、長い間赤字公債のことで非常に苦しんできたのが財政の立場でございます。しかも、将来にわたりまして、これは我々の子供や孫たちに大きな負担を負わすものであります。現在私がやっておりまして、正直に言って二〇%も金が国債費に取られる、こういうふうな話でありますから、それがさらにふえていくということになれば、一体私たちの子や孫の時代にどういうことになるのか。その点を、もう百も御承知かもしれませんけれども、私は十分考えてやらなくちゃいけない。  何とかこう、今の形でいろいろなことを工夫をしながらやっていくという形で乗り切っていくのが私たち責任ではないか。それは現在の問題だけではありません、将来にわたっての我々の責任ではないかということを強く感じていることを申し上げて、御答弁とさせていただきます。
  53. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ほぼ一時間余り、いわゆるバブルが砕けたことによる経済への影響についていろいろお話を伺いました。私はそのことはそのとおりであると考えお答えをいたしましたが、大事なことは、しかしそれは我々にとって大切な教訓ではございましたが、これに対応する準備は十分にできておるということを申し上げておきたいと思います。  当面、御心配のありましたことは、今市川書記長が御自身でおっしゃいましたように、そのいわゆるエクイティーキャピタルであるとかあるいはワラント債であるとかいうことについての対応は企業でも金融機関でもできておりますし、またいわゆる八%の自己資本比率の問題も各行とも達成できるということがわかっております。また、銀行についてのディスクロージャーもこの三月には行われるわけでございますし、債権の引き取り機関についてももう既に発足をしたということでございますから、これに対する対応は政府も金融機関も企業も十分にいたしておって、その点の御心配は私は要らないと思いますが、もとよりしかし中長期的にこのバブルの崩壊が残した後始末をしていかなきゃならない。  その中で、先ほど企業について言われましたことは、確かに数年間二けたの設備投資が続きましたから過剰という問題があるほかに、金利負担が大きくなったということは損益分岐点が高くなったということでございますので、それは企業がやはり長期的に克服していかなければならない問題と思います。  個人についていえば、逆資産効果というのは、私は資産効果と同じ意味で、それが現実に損になってあらわれたわけではございませんので、消費者に心理的な影響を与えていることは、これはわかっております。しかしながら、事態が正常化するに従ってその心理的な影響は私は消えてくるであろう。警戒すべきことは、雇用の問題に問題が発展いたしますとこれはいけませんが、幸いにして、十分注意もしておりますが、パートがなくなるとか残業手当がなくなっていくとか、そこらのことはございますけれども、基本的にやはり雇用の問題ということになれば、政府がこれだけの公共投資をいたしておりますし、それは企業を通じて雇用に必ずいい影響があると思いますので、その点は対応の仕方は十分にあるというふうに考えております。決してこの事態というものは、確かに経験をしたことはない事態ですけれども、そんなに、我が国の経済の力をもってすれば越えられないことではないというふうに思います。  最後のお尋ねでございますが、今のようなそういう家計の消費の減退というものほかなり心理的なものでございますから、むしろ経済活動全体がよくなることによってそれを解消していくという方が本当の道ではないかと考えまして、このような予算を組みまして御審議を仰いでおるわけでございます。もちろん、事態の変化に従いまして絶えず注意して対応しなければならないということは心得ておりますけれども、どうぞこの予算を早く執行させていただきたいということをお願いを申し上げておきたいと思います。
  54. 市川雄一

    市川委員 午前中の質問は終わりたいと思います。
  55. 粕谷茂

    粕谷委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      —————◇—————     午後一時一分開議
  56. 粕谷茂

    粕谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。市川雄一君。
  57. 市川雄一

    市川委員 午前の質問の最後になりましたけれども、四兆円か五兆円規模の減税をしたらどうかということを申し上げました。  総理国会で話し合いがついて減税が合意された場合、総理はこれに従いますか、国会で話し合いがついた場合。どうですか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 話し合いがつくということは、どういうお話し合いの態様か、まあその場になりましてまた……。
  59. 市川雄一

    市川委員 公共事業が景気に対する効果ということはよくわかるのですが、しかし公共事業も、高度成長期と今では公共事業の景気波及効果というのは変わってきていると思うのですね。経済の専門家が大体おっしゃっていることは、高度成長期は一兆円の公共事業を打ては二ないし三の効果がある。乗数効果が二ないし三あった。二兆円か三兆円のGNPを引き上げた。今は一・四ぐらいの効果しかないんじゃないか。  また、ある研究所の分析によりますと、公共事業と減税の生産誘発係数あるいは労働者増加係数、この二つの角度で分析している研究所の発表したデータを見ましても、生産誘発係数ではコンマ幾つの違いで公共事業の方がある。コンマ幾つの違いですね。一ポイント違うんじゃなくて、一四・幾つというこの数字が公共事業の方が高いと。また、就業者というか労働者増加係数では、やはり〇・幾つの係数で今度は減税の方が高いというデータも出ているわけです。  今は、公共事業をした場合に、昨年の三月前倒しをしました。また、総合経済対策で十兆七千億に及ぶ事業規模の、二兆円の公共事業費を昨年補正予算でやったわけですが、地方はこの消化不良を起こしている面もあるわけですね、消化不良。それから、業者に言わせますと、公共事業というのは最近魅力がなくなってきた。単価が安い。だから、そういう意味での消化不良もある。それと、鉄鋼とか素材産業にはすぐ効き目はあると思うのですが、これが回り回って消費者の購買力をつけるという意味においては、ちょっと公共事業の効果というのはいま一つ回りくどい。むしろ、公共事業とあわせて減税という、消費者の購買力をつけることによって消費を喚起する、これをやはり考えるべきだと思うんですね。  自民党の三塚政調会長は、恐らく予算成立後に補正ということをかなり示唆した発言をされているわけですし、あるいは武藤税制調査会会長、自民党の方も、まあ大幅な赤字公債を発行するという前提で減税を考えないとということもおっしゃっているわけでして、当初予算を出したときに後で補正で減税というのは、これは不見識ということはわかっているんですが、そういうメンツの問題ではなくて、もう相当景気が冷え込んでいる、公共事業だけではちょっと無理じゃないのか。  この間梶山幹事長も、NHKの討論会で、果たしてこの当初予算だけで景気が回復するのかどうか、減税というものを考えなきゃならないのかどうか。もし戻し税ならそのタイミングをいつにしたらいいのか、そういうことも勉強したいということを討論会でおっしゃっていましたね。ということは、頭にあるわけですよ、みんな。口に出すと、予算を御審議いただいているときに補正に言及するのはけしからぬと、こう言われるから言わない。だけれども、皆さん頭の中では、今の不況はちょっときついぞ、予算を通しただけではこれは無理だ、やはり何かやらなきゃならないんだということは、みんな考えているんですよ、総理総理もお考えだと僕は思うんです。  立場があるゆえに言えないという面もあろうかと思うんですが、私たちも四兆円とか五兆円の減税という減税規模に踏み切るのに相当議論をしたんです。ちょっと無責任過ぎるのじゃないのか、四兆円というのは。二兆円でいいんじゃないのか。いや、二兆円ではちょっと景気効果が弱いんじゃないのか。財源はどうするのか。赤字公債というのは避けたい。だけれども、四兆も五兆もというお金になりますと、そう経費の節約とかほかの手段では金額が出てこない。  政府は、消費税を導入するときに、赤字公債の脱却ということを一つの理由に挙げておりました。したがって、赤字公債を出すということは財政原則から見て決していいことではない。借金を後代の人たちにツケを回すという意味において、これを避けるべきだ。しかし、今公債残高がゼロであるなら、これは政府の言い分も御立派ということで我々も納得するんですが、既に百七十兆に近いものをつくっちゃっているわけですね。建設国債が百兆、赤字公債が約七十兆というものをもう既に出しているわけです。出しているから四兆円や五兆円は足してもいいではないかと言うつもりはないのですけれども、それほど政府がきれいごとを言う資格はあるのかと言いたいのですね、僕は。今まで百七十兆の残高、赤字公債は七十兆近いものを出している。その政府が、今景気が深刻で、財源を赤字公債に求めるのは財政原則から考えて好ましくありませんと言うのは、政府の口から言える資格は私は余りないのではないのか、そんなふうに思うのですね。  ですから、与野党のだれもがみんな、この予算が成立する、この予算だけではやっぱり景気を押し上げることはちょっと難しいのじゃないのかという危惧を持っている。そして、私たちは、減税をやったらどうか。本来なら、野党の方で赤字公債を出して減税をやれなんということは普通は言えないわけですよ。だけれども、やっぱり不況が非常に深刻だ。午前中るる申し上げたとおりでございまして、したがってこの際、赤字公債やむを得ないと。ただ、これが制度改革の減税ですと赤字公債をビルトインしてしまいますので、やはり単年度にして歯どめをかけておく必要がある、戻し税。こんなことで今提案をしているわけですが、もし国会の与野党で話し合いがついてやるということが決まれば、総理、これは従わざるを得ませんよね、総理は。どうですか。
  60. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 公共事業と減税とどっちが乗数効果が大きいか。確かに市川書記長の言われますように、それは議論のあるところだと思います。その国の経済の発展ぐあいにもよりますし、そのときの不況の状況にもよると思うのでございますけれども一つ申し上げたいのは、雇用の観点からいいますと、比較的公共事業が雇用の不安を防止する役割を果たしやすいと思います。それから、いわゆる生活大国ということで生活開運の整備をしたいというときに、そういうことも、今度の不況脱出の際のこれを契機にしたいというような気持ちもございます。それから、今ですと比較的土地が入手しやすい、そういう状況の中で公共事業を地方でもやれるというような、そういうそれなりのメリットがあるということ。  しかし、おっしゃいますように、公共事業でしたら基礎資材、建設関連のものにすぐに日が当たりますが、例えば耐久消費財というようなことになりますと、それはもうまさに減税でなければという、それもおっしゃる点が私はよくわかるような気がしますが。  ですから、どっちということ、こっちであって絶対こっちではないというふうに私は思っているわけじゃございませんけれども、今としてはやはりこういうことでお願いをしたいと思っているわけで、そのときの経済状況がどこまでどうなっているのかということは、残念ながらやはりかなり後になって振り返らないとわからないということは先ほど御指摘になられたところでもありますものですから、事態を楽観はしておりませんけれども、やはりこの予算を成立させていただいて、そうして、それまでの間十分注意はしておりますが、その時点における日本経済はどういう動向になっておるのかというようなことを考えても遅くはないのではないかというような気もいたしておりまして、まあ国会においていろいろ御議論のございますことは十分大切に拝聴をいたさなければならないとは思っております。  財源云々のことは、それはそういうことにもしなりましたときのことでございますので、今といたしましては、どうぞこの予算の成立につきましてひとつよろしくお願いを申し上げたい。なおしかし、御発言、御提言は十分注意をして承っております。
  61. 市川雄一

    市川委員 ぜひ、私たちとしては、そういう減税をやることによって個人消費を喚起する、減税を、総理の決断を御要請申し上げたいと思います。  次に、モザンビークのPKOの派遣について現在政府が検討しているというふうにきょう新聞の報道で拝見したのですが、今どういう段階の検討をされているのか、まずそれを伺いたいと思います。
  62. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私は新聞で知っただけでして、知らないのです、外務省としては。ですから、出どころは何か防衛庁というから、防衛庁に聞いてもらった方がいいんじゃないですか。
  63. 中山利生

    中山国務大臣 お答え申し上げます。  今外務大臣からお話がありましたように、そういう決定、確定的なお話があったということはきょうの新聞を見て承知したわけでありますが、御承知のように、もう既にモザンビークに対する国連のオペレーションが始まった、十月までの選挙までに完遂をしたいという方向であることは承知しておりますし、また新聞報道その他で、ソマリアはともかくとしてモザンビークは行かれるのではないかとか、いろいろな個人的な質問も受けております。  そういうことで、事務方としては、本部の方から御指示があった段階で勉強を始めるというのでは間に合いませんから、もし行くとしたらどういうことができるのか。また、モザンビークというところの気候風土、宗教、人々の生活、あるいは政治問題、社会問題、そういうことも一応調べておかないと対応もできない、御相談にも乗れないということでありまして、恐らく担当者は勉強をしているのではないかと思いますが、まだ確定的に、新聞に載っているような態度で勉強を進めているということはございません。
  64. 市川雄一

    市川委員 そうしますと、国連当局から日本のしかるべきところへ要請が来た、こういう段階ではないということでしょうか、外務大臣。
  65. 柳井俊二

    ○柳井政府委員 今仰せのとおりでございまして、まだ国連からは正式な要請は参っておりません。  昨年の十二月に、事務総長がモザンビークにおきます国連平和維持活動につきまして報告書を出しまして、これは安保理が承認してこの活動を開始するというところまで決まっております。詳細につきましては、私どもも情報収集に努めておりますけれども、まだ正式な要請には接しておらない状況でございます。
  66. 市川雄一

    市川委員 総理にお伺いしますが、渡辺外務大臣と総理の発言がややニュアンスが違うのかなという感じで承っておりましたが、PKFを凍結して、昨年PKO法案が成立したわけでございます。  この凍結解除について、私たちもマスコミの取材を受けました。私たちは、まずカンボジアにおけるPKO活動を成功させる、これがもう何といっても第一義的であって、現在の時点ではアジアや日本の国民世論というものを慎重に見守る、そういうときではないのか。したがってPKFの凍結解除は今の段階では考えることは時期尚早である、このように判断をいたしておりますが、総理の御見解を改めて承りたいと思います。
  67. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 何分にも我が国として初めての経験でございますし、法律成立に至りますまでには長い、しかも国会における御熱心な御審議の経過がございましたので、私も、今カンボジアで平和協力隊の諸君のやっておられる活動をよく国民に見ていただいて、間違いなくきっと国民はこれを支持してくださるものというふうに実は信じておりますが、そういうやはり幅広い国民の支持をこの際ぜひ確かなものにしておきたいと考えております。  三年後には法律の見直しということもございますが、まずどういう種類の平和協力活動であるかということをよく国民に納得をしていただいて、そういう世論の支持というものをやはり熟したものにしておく必要がある。したがいまして、三年後の見直しについて予断を持たずに、もう少しこの経験を積み重ねていったらいかがかなというふうに私は思っております。
  68. 市川雄一

    市川委員 次に、PKOのことで一つ御提案を申し上げたいのです。  結論から先に申し上げますと、アジアにPKO共同訓練センターをつくったらどうか。日本の国に置くのではなくて、アジアのどこかの国にPKOの共同訓練センター、そこへ日本が出資する、日本がお金を出してアジアにPKOの共同訓練センターをつくる。このことによって、アジア諸国に、日本のPKO活動に対する取り組みの基本姿勢というものが、私は理解を深めていただけるんではないかというふうに思います。決して一部で言われているような、何か武力行使を前提としてPKOが出かけていくようなことをさんざん言われたわけですけれども、そういうものではない、回復された平和を守るとうとい活動だという、そういう意味で自衛隊がそれに参加しているんだということがアジア諸国の皆さんに十分わかっていただけるのではないのか。  あるいは、国連に対する日本の一つの協力として、日本の国際貢献のあり方としても一つ実のある話ではないかというふうに思いますし、アジア共同訓練センターができますれば、各国の人たちがそこで当然人間同士の交流をするわけでして、そういう交流の積み重ねがまた日本に対する理解を深めていただく。これは費用のかかることですから、今ここですぐ、やります、やりませんというお答えを求めるのは無理かもしれませんが、一つの日本のアジアにおける理解を深めるという、あるいは国連に協力するという、こういう視点から決して悪い話では私はないと思うのです。  アジアにPKOのアジア共同訓練センター、日本が費用を負担してつくるという、こういうことについて、これは外務大臣、あるいは総理で結構なんですが、どんなお考えでしょう。聞かしてください。
  69. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 先般、明石代表から、日本に設置したらどうだというような話があったことがございます。したがいまして、この話は私はまじめに検討する必要がある、どこに置くかということも含めましてね。  ただ、PKOの訓練センターというのは軍事演習をやるところじゃありませんから、そこで出かける国の歴史や文化や語学、そういうようなものをいろいろ勉強したり、あるいは風俗習慣、保健衛生というようなことなども、現実に自衛隊だって勉強さしてから出ていますからね。だから、この吹こういう人が出かける、交代で行くわけですから、だからそういうふうなあれがあれば便利なことは間違いない。したがって、国連平和維持活動へ我が国が今後継続的に参加していくというようなことになった場合は、研修センターというようなものの必要性というものは十分考えられることでございますので、将来の課題としてひとつ真剣に検討していきたいと思います。
  70. 市川雄一

    市川委員 総理、どうですか。
  71. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 今、外務大臣のお答えになられましたことで結構と思います。
  72. 市川雄一

    市川委員 大きい問題はちょっと終わりの方、後にしまして、ちょっと個別の問題を伺いたいと思います。  建設大臣に伺いますが、建設省ですか、地価が高騰した結果、従来の賃貸住宅政策では年々上昇する家賃の負担に対応できない、賃貸住宅居住者の生活を圧迫している。そこで、私どもは、家賃補助や、民間賃貸住宅を地方自治体や住宅供給公社が借り上げ、公共賃貸住宅として安い家賃で供給するいわゆる借り上げ住宅を、委員会やいろんなところで提案をしてまいりました。  先日、二十五日、我が党の石田委員長の代表質問における借り上げ住宅の提案に対して、総理は、民間の優良な賃貸住宅を借り上げ、公的賃貸住宅としての活用を平成五年度から実行したい、こういう御答弁をいただいたのですが、平成五年度の供給戸数、どのくらいになるのか、まずそれを伺いたいと思います。
  73. 中村喜四郎

    ○中村国務大臣 御答弁申し上げます。  我が国の居住水準は確実に向上をしてきているわけでありますが、ただいま書記長御指摘をいただきましたように、賃貸住宅がややもすればそれに対して立ちおくれた状況にございます。五年ごとの住宅統計によりますと、六十三年度に発表されたデータですと、三千七百八十一万世帯のうち三七・五%、千四百一万軒が賃貸住宅に住まわれているわけでありますが、平均面積が四十四・三平米でございます。持ち家が百十六・八平米でございますから、非常に立ちおくれた状況にございますので、かねてより公明党さんからも御指摘をいただいておりました、特にストックの不足しております中堅層の賃貸住宅をどのように充実するかということが大きな課題となっているわけであります。  そこで、土地所有者の方々に賃貸住宅をつくっていただきまして、それに対しましてのいわゆる家賃の補助、建築費の補助あるいは金融公庫の融資枠拡充、こうしたものを進めていくことによりまして、特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律案というものをことし提出を予定しております。それによって、来年度二万戸程度のものを計画させていただいております。
  74. 市川雄一

    市川委員 平成五年度二万戸というふうに今伺ったのですが、今後の方針、この借り上げ住宅を今後もふやしていく、こういうお考えなのかどうか。我々はもうちょっと大量にふやしたらどうかというふうに考えておりますが、その辺の方針を伺いたいと思います。
  75. 中村喜四郎

    ○中村国務大臣 お答えさせていただきます。  ただいま答弁させていただきましたように、借り上げ方式は極めて有効である、このように考えておりますので、この考え方を周知徹底いたしまして、制度の定着を図りながら強力にそのことを推進していきたい、このように考えております。
  76. 市川雄一

    市川委員 次に厚生省に伺いたいのですが、骨粗鬆症という、いわゆる骨がすかすかになって骨折しやすい、こういう病気があるわけですが、高齢になるとかかりやすい。特に御婦人、主に女性が五十歳を超えますとかかりやすいというふうに言われております。一たんこれにかかりますと非常に回復が困難で、予防しかないというふうに言われているわけですが、寝たきりのお年寄りの一位が脳血管障害、二位が大腿骨頸部骨折なんですが、この大腿骨頸部骨折の原因が骨粗鬆症と言われている、骨がすかすかになる、こういうことで、今全国で四百万から五百万人ぐらいの人が推定されております。  それで、これは要するに予防が一番。ではどうやって予防するか。骨密度測定という機械があって、骨密度測定機で測定をする。問題は二点。成人病予防健診の検査項目にこの骨密度測定を加えてもらいたいということが一つ。それからもう一つは、これは厚生省のお話によると、全国の保健所にまだ五、六台しかない。病院は診療用に六百台ぐらい持っているようですが、保健所には五、六台ぐらいしかまだないということでございますので、ぜひ、この高齢化社会ということ、それから寝たきりのお年寄りを少なくするということ、予防というものに力を入れるという意味において、成人病の予防健診の検査項目に骨密度測定というものを入れたらどうかということ、それから保健所にそういう測定機をもっと普及したらどうかというこの二点について、厚生省の見解を承りたいと思います。
  77. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 お答えいたします。  実は、私の肉親にもこの病気で悩まされた者がおります。私も大変関心を持っております。厚生省といたしましては、平成二年から予防教育を実施しております。食生活や、書記長御案内のような運動を通じて予防に取り組まなければならない、こう考えております。  お尋ねの件でございますが、予防健診の検査項目でございます。現在、厚生省内部で研究中でございます。書記長の御意見は十分に傾聴に値するものといたしまして、今後検討をさせていただきたいと思っております。  それから、保健所に骨密度測定機を導入すべきだ、こういう御意見でございますけれども、成人病検査に導入する前にまずモデル的に設置する方向で前向きに検討をさせていただきたい、このように考えております。
  78. 市川雄一

    市川委員 ぜひ力を入れてやっていただきたいと思います。  次に、各種の年金、手当。児童扶養手当法によりますと、児童の定義は十八歳未満。したがって、満十八歳になりますと誕生日でこの手当は打ち切られる。国民年金法、厚生年金法でも、加算の対象となる子は十八歳未満ということですから、満十八歳になると支給が打ち切られる。まあ年齢で、誕生日でやるというのはある意味では公平なやり方だというふうに思うのです。  ただ、ちょうど高校在学中なんですね、十八歳というのは。それで高校が、義務教育ではありませんが、半ば義務教育に近い程度に高校の進学率というものは高いし、ちょうど高校生を持った親というのは教育の負担が重いときでありますから、誕生日で切るというそのことが果たしてどうなんだろう。これを満十八歳に達した日を含む年度末、そうすると高校卒業までは支給されるということになるわけですが、満十八歳に達した日を含む年度末まで延長するという法律の改正をすれば、これは可能なわけでございます。四月に生まれた人と翌年の三月に生まれた人が一つの学年にいるわけですから、約十一カ月の差があるわけでして、一カ月三万八千二百二十円掛ける十一カ月で約四十二万の差が出てくるわけでして、この辺検討の余地はないのかどうか。  誕生日で切らないで、満十八歳に達した日を含む年度末というふうに法律を改正できないのかどうか、厚生大臣に伺いたいと思います。
  79. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 書記長御指摘の問題は、実は前々からいろいろ論議を呼んでおるところでございます。  平成六年に財政再計算時の年金改正がございます。遺族基礎年金の支給期間の問題とも絡めまして、ただいま御質問の児童扶養手当の支給期間の延長も、検討すべき課題と承っておきたいと思っております。
  80. 市川雄一

    市川委員 早急に解決する課題として、ぜひ御検討をいただきたいと思います。  次に、きょうの新聞を拝見しますと、いわゆる骨髄移植手術が昨日行われたというのが一つの話題で報道されております。  きょう私が取り上げるのは、公務員、国家公務員あるいは地方公務員が骨髄バンクのドナーになる、その場合に病欠扱い、有給休暇をつぶす、病欠扱い。観光旅行するわけではないんですよね。非常に善意のボランティアとして、白血病あるいは重症の再生不良性貧血、血液の難病で苦しんでいる方々のお役に立ちたいということでドナー登録をしよう。すると、検査に三日とか四日、実際四、五日職場を休んだりしなきゃならない。厚生省としては何とか十万人のドナーバンクをつくりたいというふうに発表しておるわけでございます。  ただ、これは血液とまた違って、白血球の形、HLAというのが一致するかしないかということが非常に一つの大きなポイントにあるわけですが、兄弟で確率が四分の一、他の人間では数百から数万分の一の確率でしか型が一致しない。したがって、骨髄移植を広く行うためには、多数の提供者、ドナーの登録が必要なわけでして、厚生省は当面十万人を目標にしたい、こう言っているわけですが、こういうことについて、総理、どうですか。公務員というのが、自分がやりたいというのはいいことなんで、いいことをやろうとしているのに、もうちょっとその条件を緩めてあげるということが必要だろうと僕は思うんですよ。  したがって、けちけち有休をつぶせとか、そういうことをおっしゃらないで、法律の改正をするなり人事院規則を変えるなりして、特別休暇の扱いにきちんとして、そして行き足をつけてあげる、こういう措置が望まれているんですが、どうも自治省が足を引っ張っているんですね、自治省が。せっかく地方自治体がその気になってやろうと思ったら、自治省が通達を出して、ぴしゃっと病欠扱いにしろとやったんですね。だから、自治体の盛り上がりがぴしゃっと沈んじゃったんです。  何でそういうことを自治省がやるのか、僕は非常に理解できないんですけれども、どうも自治省というのはお上意識が強過ぎて、地方自治体を従えているという意識が強過ぎるんではないのか。やはり地方自治体がそういういいことをやろうとしたら、いいぞ、法律の改正が必要ならやってやるぞぐらいの、こういう自治省じゃなきゃしょうがないと思うんですよ、生活大国だと言っているのに。それを何か、自治省がぴしゃっとしてしゅんとなってしまったという経緯があるわけです。  きょうは人事院総裁にもお越しいただいておりますので、この点について人事院の方でどういう御検討をされているのか、まず伺いたいと思います。
  81. 弥富啓之助

    ○弥富政府委員 お答えを申し上げます。  骨髄移植療法におきます骨髄提供者、いわゆるドナーでございますが、これの休暇の問題につきましてはしばしば国会に取り上げられておりまして、私もしばしば御答弁を申し上げておるんでございますが、社会的な関心や社会的な要請が高まってまいりましたことは十分に承知をいたしております。ただいま仰せのとおり、本日の朝刊におきましても、初の全国規模の移植といたしまして大きく報道をされております。  この問題につきましては、人事院といたしましては、白血病及び重症再生不良性貧血に対する骨髄移植というものの重要性を十分に念頭に置きながら、何しろ人命にかかわる重要な事柄であると認識をいたしておりまして、ドナーの公務員制度上の取り扱いについてなるべく早くいい方の結論を得るよう、引き続き積極的に検討をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  82. 市川雄一

    市川委員 典型的な国会答弁ですね、今のは。そういう答弁をしているとだめなんですよ、官僚答弁というかね。  きょう新聞に出ています。これは宮城県の病院で行われて、宮城県で小学校の高学年の男の子がこの骨髄移植の手術を昨日受けたわけですが、御両親の談話が新聞に載っております。非常に胸打つものがございました。「私たちの息子にとって幸運にも適合者が見つかり、また、骨髄移植ができると聞いた時は本当にうれしく思いました。見ず知らずの方の善意によって骨髄液を提供していただき、本当に感謝しております。息子ともどもお礼をいわせていただきます。本当にありがとうございました。」ドナーの方はこれはもちろん匿名でございますが、提供した方の談話です。「何の取りえもない私でも健康でいるということだけで、病床で難病と必死に戦っている方を救う手助けができることを知った時、迷うことなく骨髄バンクに入る決心をしました。私の骨髄幹細胞の移植を受けた方が、少しでも快方に向かってくれたらそれだけで私は幸せです。もっと大勢の人がバンクに登録し、一人でも多くの患者さんを救うことができたら、と願います。」  こういう関係者のコメントがあるのですが、国家公務員の中でそんな大勢いるわけじゃないんですよ、総理。わあっといるというのなら別なんですけれども、そういう行き足をつけようというので厚生省、国がやっているんですよ、国が。厚生省が十万人と。それを自治省が足引っ張っているんじゃ、これはしょうがないと僕は思うんですよ。それで人事院に聞くと、何か模範的な国会答弁みたいな、いつ改善されるんだかわからない。これは総理ひとつ、生活大国を掲げているわけですから、ここで即答は求めませんが、やる方向で自治省を少しきつく指導していただいて、やる方向でぜひお考えをいただきたいと思いますが、ちょっと総理、一言。
  83. 村田敬次郎

    村田国務大臣 市川委員の御指摘は、大変私は同感であります。実はこれは段階がありまして、休暇を骨髄バンクのドナーについては提供しないという例が従来はあったわけですが、十二月にこの問題が発生したときに、私は就任直後でございましたが、人命に関することだから必ずやれという指示を直ちに下しました。その結果、病気欠席であれば提供ができるという結論になって、それを自治省から各地方公共団体に通知をした、こういう段階であります。  したがって、市川委員の御指摘はその後の、病気欠席の取り扱いでなしに特別休暇を出せ、こういう指摘であると思います。大変ごもっともであると思いますが、地方公務員の場合は国家公務員の例によるという地方公務員法の規定がございまして、直ちにそれを適用することができません。したがって、先ほど人事院総裁お答えになりましたが、人事院総裁には、事人命に関することだから特別休暇がとれるというように取り計らってはどうかということで、私から先般対応を要請をしたところでございます。したがって、総理からも御答弁があるかもしれませんが、その方向に沿って努力すべきであると思っております。
  84. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 自治大臣の御答弁はお聞きのとおりでございますが、人事院総裁お答えになられましたことも、私は市川書記長の御発言の趣旨を前向きにとらえてお答えをなされたように承りましたが、いろいろまたお考えいただけるのではないかと思います。
  85. 市川雄一

    市川委員 前向きにとらえての御答弁というふうに受けとめます。  次に、最近病院の経営が赤字になりましていろいろな問題が発生しております。これはゆゆしき事態ではないかというふうに認識をしております。ここで一々一々赤字経営の実態を数字で読み上げるつもりだったのですが、時間も差し迫っておりますからその辺のことは省略いたしますが、全国の民間病院の約六五%の病院が赤字経営。国公立の病院の中も赤字がふえているんですね。特に自治体病院は赤字が多い。ただ、国公立は一般会計からある程度支援を受けたりなんかしますから倒産するということはまず考えられないわけですが、民間病院の場合は倒産するわけですね、病院が破産してしまう。そのことによって患者が困る、地域の医療が困る、こういう社会的な問題を含んでいるわけでございます。  最近、この病院の赤字に目をつけて、乗っ取り屋と称する人たちが暗躍している事件が全国で多発しております。その手口を見ますと、やはりバブルがはじけてから病院はいわゆる構造不況業種扱いされて、銀行がお金を貸してくれないわけですね、民間病院に対して。したがって、どうしても運転資金に困って危ないお金に病院が手を出す。そうすると、運転資金に困っていることにつけ込んで融資を持ちかけてくる。融資をする条件として自分たちが抱えているお医者さんを送り込んでくる。送り込んできて、病院の院長を交代させる。それで病院の経営の実権というか主導権を握ってしまう。そして今度は、経営の実権を握った上で手形を乱発する。例えば一億円の手形を発行する。これを暴力団絡みの金融で、例えば二千万の利子を先に取るということで八千万もらう。それで一億借りたことになる。その八千万のお金を病院の経営に入れるのではなくて、自分たちのほかの借金の返済に充てたり、ほかの資金にこのお金を使う。  では、その一億円の取り立てはどうなるのかというと、診療報酬債権、これが担保になっておるわけでして、どこの病院でも大体二年先に診療報酬が支払われる。したがって、診療報酬というものをどんな病院でもみんな二年先のものを抱え込んでいる。この債権が担保になっている。——失礼しました、二カ月。二カ月先の診療報酬債権が担保になっている。診療報酬債権をつけて請求しますと請求者にお金が支払われるというのが今の法律の枠組みですから、だれが請求しても請求した人のところへ金がちゃんと入ってくる。  こういう事件が最近起きているわけでして、結局病院が経営が苦しい、赤字だ、運転資金が困った、いろいろなところへ声かける。銀行は貸してくれない。いろいろなところへ声かける。その中から甘い話が来る。金貸してやろうじゃないか、そのかわり医師を送り込むぞ、院長をかわれ、経営権を取られちゃう。それを利用して今度は手形を乱発する、診療報酬請求権を担保にして手形を出してお金を取る。これはもう患者は全くすごい目に遭うわけです。  結局私が申し上げたいことは、国公立ももちろんそうなのですが、民間病院が赤字経営だというこの赤字が持つ意味、医療の荒廃を生んでいるということ、これを申し上げたいわけです。二重の意味で医療の荒廃を生み出している。一つは、どうしても薬づけ、検査づけという方向へ走りやすい。もちろん良心的なお医者さんも大勢いますから、全部が全部の病院でそういうことをやっているというふうには申し上げませんが、薬づけ、検査づけになりやすい。それからもう一つは、そういう危うい運転資金に手を出すことによって倒産や何かに追い込まれていく病院が多い。医療の荒廃の兆しが見えているわけでして、こういうことに厚生省が今どの程度の関心、感度でこういう問題を見ているのか、まず大臣の御所見を伺いたいと思います。
  86. 古川貞二郎

    ○古川政府委員 お答えいたします。  医業経営のお尋ねでございますが、御指摘のように医業経営は、医療経済実態調査等を見ましても大変厳しくなっているという状況がございます。私ども、数字で申し上げますと、民間病院である医療法人につきましては、百床当たりの医業収入の伸びが三・七%、それに対して費用、コストが八・二%というようなことで、医業収益といいましょうかそういうのが厳しい状況である、こういうことは十分認識しておりまして、これに基づいて私どもは、中医協の申し合わせによりまして、隔年、医療経営実態調査というものを実施いたしまして、そこで医業経営、医療機関の費用あるいはコスト、収入、そういったこと等を踏まえ、それから賃金なり物価の上昇等も踏まえまして診療報酬の改定の是非を検討する、こういう仕組みでございまして、私どもその点は十分認識しておるわけでございます。
  87. 市川雄一

    市川委員 数字的なことを伺っているわけじゃありませんでして、民間病院の赤字経営というものは医療の荒廃の兆しを見せている、これは非常に危険な兆候のあらわれでして、ただシステムとして診療報酬をこういうシステムで運用して見直していますというそういうことではないので、つまり危機意識というのか、現状まずいぞ、危ないなこれは、何かきちっと手を打たなきゃまずいな、こういう判断があるのかないのかということを聞いているわけです。どうですか、これ。
  88. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 お答えいたします。  私も多くの病院経営者や医療現場の方々から、大変経営状態が厳しくなってきておる、こういうことを、生の声を聞いております。私自身も十分に書記長と同じような認識に立っております。  いずれにいたしましても、良質の医療確保のために、医療経営の健全化のために全力で頑張っていきたいと思っております。
  89. 市川雄一

    市川委員 どうも大臣の答弁から気迫が伝わってきませんね。こういう民間病院が赤字で医療が荒廃の危機、兆しが見えているというのに気迫がない、気迫が。やっぱり政治家は気迫がなきゃ。そうでしょう。これはやっぱりまずいぞ、手を打て、こういうものが大臣に欲しいですな。何かここでうまく答弁していれば済むみたいなことでは困るのですよ。まだ実態認識が弱いようですね。  いろいろ調べたのです、これ。本当は一時間ぐらいかけて厚生省ちょっとねじ巻こうと思っていたのですが、時間が詰まってきました。  やっぱり一つは国公立と私立の病院ではいわゆるファンダメンタルズが違うわけですね、基礎的条件が。国公立は土地、建物、医療設備というものをある程度既にあるか公的資金で賄ってもらえているわけですが、私立の病院は診療報酬が収入源ですから、そこに基本的な違いが一つある。そういうものが違っているにもかかわらず、国公立ても赤字が出ているわけです。  それから、最近は医学、診療技術の進歩に従って医療機器が高度化しているわけでして、設備を絶えず更新していないとやはり十分な適切な医療サービスが提供できない、国公立に患者が行ってしまう、民間に来なくなってしまう、ですからこういうこともしなければならない。これはそういう医療機器を利用した回数で診療報酬を払っているのかもしれませんが、新しく導入したとか設備を入れかえるというものは診療報酬の対象には私はなっていないと思うのです。それから、厨房の職員、食堂の職員、事務職員あるいは掃除のおばさんとかそういうものは診療報酬の中には入っていない。  何で今まで顕在化しなかったか。昭和五十五、六年までは薬価差益それから検査差益というものがあって、病院全体の収入の約五割から六割を占めていたわけです。ですから、そういうものがむしろ保険外の費用負担に充てられて経営がある程度維持されていた。しかし、皆さん御承知のようにここでも問題になって、薬価益は悪だという感じになって、今これが約一〇%ぐらいに下がってしまった。したがって、これが経営を圧迫しているという問題も一つあるわけでして、薬価益で負担させるのかどうか、これはまた別の考え方で考えなければならないと思いますが、こういう問題がある。  それから、看護婦さんが不足している。これはなかなか簡単に解決できないと思うのです、この看護婦さんの不足の問題は。去年とおととしこの場で取り上げましたけれども、これは待遇改善をしなければならない。これもやはり病院の負担に恐らくなるだろうというふうに思います。  では、どのくらい借金しているのかという、これはあるデータですが、公私病院連盟の調査では、赤字病院が支払っている利息が百ベッド当たり三千二百四十万、これを年利六%で計算しますと百ベッド当たり五億四千万の借入金になるわけですが、これはどういう単位、ここに調査結果が載っているのですが、要するにこの借金の七割が返済されてない、返されてない。したがって、新しい医療機器を買うとかそういう設備投資ができない、こういうかなり深刻な事態が民間病院で起きている。  何度も繰り返し申し上げて恐縮ですが、国公立が赤字でいいというふうには私は思いません。国公立も赤字を是正する何らかの対策が必要なんですが、国公立はまずつぶれないということですよ。だが、民間病院はつぶれてしまうということ。患者にすごい迷惑がかかる、それから地域の医療に影響を及ぼす。したがって、まず、国公立もそうなんですが、民間病院の赤字問題というのは放置しておいていいのかどうか。どうも厚生省の感度がいま一つ弱い。民間病院の許認可は地方の知事がやっているんだ、厚生省じゃないんだ、何か所管が違うみたいな、非常にそこに現状認識に甘さがあるのではないかという気がしているのですが、厚生大臣、どうでしょう。この民間病院の赤字が深刻だという認識があるのかどうか、これをひとつ調査してみようという気持ちがあるのかどうか、この二点伺いたいと思います。
  90. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 書記長と認識、気迫は同じつもりでございます。  いずれにいたしましても、大変民間病院が厳しくなってきております。そこで、どうして厳しくなってきているのか、今書記長からお話がございましたように、いわゆる看護婦、大変もう人件費が上がっております。看護婦を中心とする人件費の高騰によるものなのか、あるいは最近民間病院でどんどんどんどん高額機器というものを入れております、こういうことによるものなのか、あるいは医薬品の購入状況によるものなのか、こういうものを早急に総合的に調査していきたい、このように考えております。
  91. 市川雄一

    市川委員 何かいま一つぴんと来ないな。あんまり危機感が伝わってないんですね、総合的に調査します。要するに民間病院の赤字の持つ重要な意味というのは大臣おわかりなんでしょうかこれが医療荒廃につながるということ。それとも、厚生省は民間病院はほったらかしという方針なんですか、ほったらかし。どっちなんですか。  あなた方のこの医療法改正によると、「人口の高齢化、医学医術の進歩等に対応し、患者の心身の状況に応じた良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保する」と、こう立派なことを書いてある。その割には、民間病院の赤字に対して非常に厚生省は鈍感だと思います。民間病院の赤字の深刻な実態、何か全国くまなく全部調べろといってもそれは無理でしょうから、世論調査もある程度アトランダムに、重点的にやるわけですから、まず民間病院というものに問題意識を明確に持って、赤字の実態、なぜ赤字が生まれたのかということを含めて調査をするお考えはありませんか。まず調べるのが先決ですよ。調査なくして対策は生まれてきません。どうですか、大臣。
  92. 丹羽雄哉

    丹羽国務大臣 ただいま書記長に申し上げましたように、早速調査をいたしたいと思います。  いずれにいたしましても、我が国の地域医療は民間医療機関がなければ成り立たないということは十分に認識をいたしておりますので、御了解をいただきたいと思っております。
  93. 市川雄一

    市川委員 民間病院がなければ成り立たないと言う。それが民間病院が赤字で今こういう状況なんですから、もうちょっと危機意識を持って、敏速に対応していただきたいと思いますね。  最後、もう時間が来ました。一点だけ厚生省に伺います。  特別養護老人ホームの問題でございますが、老人福祉法で特別養護老人ホームに医務室の設置が義務づけられております。養護老人ホーム及び特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準によれば、医務室には「入所者を診療するために必要な医薬品、衛生材料及び医療機械器具を備えるほか、必要に応じて臨床検査設備を設けること。」とまで具体的に規定をされておるわけでございますが、しかし一方で、特別養護老人ホームの医務室での診療に対して保険適用を、保険診療を申請しますとこれは却下される、こういう矛盾があるわけでして、しょうがないからお医者さんが兼任で、近くのお医者さんを頼むとそのお医者さんが来て診る。保険適用でやる。そのお医者さんが病院で受けている保険診療の資格でやる。そうすると診療請求はどこへ行くかというと、このお医者さんの方が診療請求して収入を得るわけですから、特別養護老人ホームの医務室としての収入は生まれないわけでして、結局この医務室のメンテナンスが厳しくなるという、こういう矛盾した問題を抱えていると思うんですが、この点について今すぐ解決しろというのは難しいかもしれませんが、やはり何らかのきちんとした検討と対応が必要だと思いますが、厚生大臣の答弁を伺って、質問を終わりたいと思います。
  94. 古川貞二郎

    ○古川政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、特別養護老人ホームにおきましては措置費という制度で対応いたしておりますので、今御指摘のように措置費で見るものについては措置費で見る、しかし措置費の対象にならないものを診療報酬で見ているという調整の問題があることは事実でございますので、十分調査といいますか検討いたします。難しい問題がございますが、検討いたします。
  95. 市川雄一

    市川委員 終わります。(拍手)
  96. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて市川君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  97. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党を代表して、宮澤首相及び関係閣僚に質問をいたしたいと思います。  まず最初に佐川の問題ですけれども、佐川・暴力団疑惑解明について、首相は、今後も真相解明に力を尽くす、それからまた国会調査に協力をするということを言明されましたが、その気持ちにお変わりありませんね。
  98. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  99. 不破哲三

    不破委員 この真相究明を尽くすためにも、現在まで、昨年の臨時国会などで、どこまで事が明らかになり、明らかにすべき何が残っているかを整理することが、私、大事だと思うのです。  それで、幾つかの点を述べたいと思うのですが、第一点は、佐川急便全体からけた外れの金額が政界に流れたと言われている、これも全貌解明が非常に大事な課題です。実は昨年の臨時国会で、十二月八日に参議院で渡邉被告の尋問が行われた際に、参議院の予算委員長がけた外れの金額が流れたと言われている。そのけた外れを示すものとして、暴力団と政界に三千四百億円の金が流れたという数字を挙げています。それぐらいのことが公に言われているぐらいのものです。これを解明しないままに幕が引かれたということがあっては重大でありまして、まだこの点はほとんど国会での解明が進んでおりませんが、佐川清元会長の証人喚問を含めて、ここにどうしても解明のメスを入れていく必要がある。これが第一点だと思います。  それから第二点は、その中で資金の流れが少なくとも一定部分まで明らかになっているのは、東京佐川から金丸氏への五億円の献金ですね。この献金の問題について、そこまでは明らかになったが、その後の流れが明確でない。  この点で、検察側も起訴をやらないということを決めたのに対して、東京の第一検察審査会が不当だということを決定したのは、私は非常に重要だと思うのです。ただ不当だと決めただけではなしに、あの決定の中には、まず、金丸秘書の生原氏が五億円の金は政治団体に入れたんだとしているが、それはどうも信用性がない、もともとやみの裏金だから、政治団体ではなしに、個人の裏金として扱われたことがほぼ確実だという判定をしている。  それからまた、この金は、総選挙に立候補を予定していた経世会等を中心として大体六十人ぐらいに分配したとする生原供述は、一応具体的であり信用できるという認定をしておるわけですね。しかも、この立候補者の資金を受け取ったか受け取ってないかについて、検察の調べに対して調査に応じた議員その他が述べていることは、内容が皆、形が同じ過ぎる、形式が同一でとても信用に足りないという判定までしている。ですから、これはそれを追及すべきだということを検察審査会が明確にしているわけですね。  それで私、その後の仕事は確かに検察の仕事なんだが、国会としては事の政治的道義的責任という立場から解明に当たるわけですから、先日もこの席で時効のことが問題になりましたが、時効があって検察は動きがとれなくなっても、国会の場では時効はないのです、政治的道義的な責任の追及に関しては。ですから、国会の場では、そういう違法の献金が行われ、しかも違法のままやみに葬られたということについては、あくまで二月六日の時点を過ぎても追及する必要がある。これはロッキード問題のときに灰色高官という言葉で、時効になった政治家でも追及する必要があるということが確認されたとおりであります。その点で私は、ここまで問題が提起されているのに国会がそれを明確にしないまま終わったとしたら、これは国会として国民責任を果たせないと考えるわけですね。  それであのときに、生原供述によりますと、経世会等を中心に六十人ぐらいに分配したと言われています。それで、当時のを調べてみました。経世会の総選挙の立候補者が八十五人でした。そのうち閣僚経験者が三十人で、これは常識からいうと省かれることになっています。そうすると残りが五十五人なんですね。その五十五人のうちで当選者が四十二人、落選十三人。ですから、六十人ぐらいと言われると、大体この五十五人の大部分は入っているのではないかと推測して誤りないと思うのですけれども、問題は、そこまではっきりしているのに、いまだにだれも、その時期に、その種類の金を金丸氏の方からもらったということについての発言も言明もない、その調査も及ばない。私は、これでは本当に国政の場からこの疑問に対してこたえたということにならないと思うのですね。  まず、この限られた方々はすべて自民党の党員政治家であります。ですから、宮澤さんがよく言われるように、党規に照らして問題を解明するというのであれば、これは当然解明できるはずの話であります。挙げた五十五人の中には閣僚に列席されている方も何人がおいでのようですけれども、そういう五十五人についてやはりここまで問題は明確になっているのですから、経世会の会員であろうがあるまいが、これは自民党の党員政治家ですから、自民党総裁として明確に調査して国民の前に報告する責任があると思います。  それからまた、四十二人の方は国会の構成員なんですよ。国会の構成員にこういう問題が出ているのに、国会調査能力がなくて調査できませんでしたということを言っていたのでは、これは本当に国会としての責任が果たせないわけですね。国会とは別のところにいろいろな問題があって、それに対して調査の手が及ばないというのじゃない。国会の構成員が主としてかかわったこういう事件であるにもかかわらず、そして五億円の金が六十人に流れたということまで明確にされているにもかかわらず、これがあいまいなままでは問題の解明が終わりにならない、これは明確だと思うのです。  それで、その点について私は解明の必要があると思いますが、そのことを、自民党総裁としての責任を含めて、総理の見解を伺いたいと思うのです。
  100. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 党員である者に、法を犯した、あるいはその疑いがあるというような問題がございますと、それは自民党としても、自民党責任においてそれを調べるということは大事なことだと思います。  それから次に、国会国政調査のあり方につきましては、これは私がかれこれ申し上げることは適当ではないと存じます。
  101. 不破哲三

    不破委員 それで、この資金の受領に関しては、検察審査会の議決でも、「選挙の軍資金として渡されたという量的制限違反の寄附受領罪が認められる公算」が十分大きいというように述べられているわけですね。ですから、これは私が先ほど申し上げたように、時効の有無にかかわらず、政治的道義的責任として自民党としても当然調査すべきだ。  それからまた、国会としても、この点の解明なしには国民の前に国会が真剣に取り組んだと言えない、そういう性質の問題だということを申し上げたいと思うのです。  それから第三点は、暴力団関与の問題です。この問題については金丸氏、竹下議員それぞれの証言あるいは尋問への答弁がありましたが、だれが頼んだかということについては事はいまだ明確ではありませんが、自民党の側から暴力団の石井氏に頼んで、それでその暴力団が動いて皇民党の妨害を抑えた、このことについては金丸氏も竹下氏も認めているわけですね。金丸証言では、暴力団に助けてもらったからお礼を言ったという。お礼の会合をわざわざ持ったということを認めている。それからまた、竹下証言でも、御当人は後だと言っていますけれども、あの過程で石井氏が介入したということについてはわかったという意味のことを言っている。つまり、竹下内閣の成立過程に暴力団がかかわったという事実は、あの金丸竹下証言を通じて関係者が確認しているわけですよ。私はそれだけでも事は非常に重大だと思うんですね。一国の内閣の成立に、しかも勝手に出てきたわけじゃなくて、自民党の側から、自民党の首脳部の関係の側から頼まれて暴力団が出てきたということが確認されたわけですから。  それで私は、そういう事の重大性にかんがみて、一体どうしてそういう暴力団に依頼するということが起こったのか、このことを解明しないでは佐川問題を究明したと言えないと思うんです。  それで、金丸証言では、中尾氏と青木秘書が相談したんじゃないかという。それで、竹下証言では青木秘書は全然関係してないはずだという。もともと渡邊供述では、これは金丸自身が自分にじかに頼んだと供述して、それが法廷でも紹介されている。そういうことですから、私はこれをただ暴力団が動いたのは明確だ、しかしだれが頼んだかはわからない、そういうままで事を済ますわけに絶対いかない。これを済ますとしたら、これは単に竹下内閣責任であるだけでなしに、竹下内閣の次の次を担うわけですけれども、現在の宮澤内閣の責任にもなるわけで、私はこの点の究明は絶対に必要だと思うわけです。その点について総理の見解を求めます。
  102. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この点につきましては、平成四年九月二十二日の東京地検の冒頭陳述は、被告人渡邊がとございます。この点は今不破委員の言われましたこととは違っておるように思います。  それから、国会におかれまして竹下金丸両氏に対して種々喚問、尋問をせられましたことはよく知っておりますが、その結果としてただいま言われましたようなことにつきまして明確な結論が出たというふうには私どもは承知いたしておりません。
  103. 不破哲三

    不破委員 まず第一点でいいますと、あなたが読んだのは検事の冒頭陳述です。私が紹介したのは法廷で読み上げられた渡邉供述です。ですから、渡邉供述にはもっと詳しいことがあるわけですね。  それから、国会証言で明らかにならなかったと言うけれども金丸氏は石井会長に会ってお礼を言ったことを認めているんですよね。そのお礼というのは自民党の側から、彼は自分じゃないと言っているけれども自民党の側から暴力団に頼んで皇民党を抑えてもらったそのお礼だということを認めているわけですね。やっぱりこの国会の同じ構成員として、国会がやったそういう国政調査内容で、証言についてはちゃんと聞いてくれないと私は議論が進まないと思うのですよ。冒頭陳述ばっかり言っていたんでは、これはその後の議論進まないわけですからね。  ですから、竹下氏も、「察知」という言葉ではあるけれども、石井氏の介入はあったということを私は知ったと言っているわけですから、介入があったということは内閣の成立に介入したということなんですよ、これは、皇民党を抑えることで。それをこの両証言で認めているわけですからね。だれがそれを頼んで、だれがこういうことをやったのか、それを明らかにしなかったら、これは真相解明と言えない。私はここで宮澤首相と押し問答をするつもりはありませんが、少なくとも問題点は、こういう点だけは最低解明しないと、この国会とまた宮澤内閣が佐川・暴力団疑惑解明に真剣に対処したと言えないと思うので提起したわけです。  こういう点を明らかにする上で、私は次の六名の証人喚問予算委員会に要求したいと思います。今時に全体にかかわる、第一点にかかわる問題としては、さっきも申しましたように佐川清佐川急便の兄会長、それから特に第二点、第三点にかかわる問題としては竹下登議員、小沢一郎議員、金丸信前議員、それから生原元秘書、それから事のいきさつに深くかかわっている小針暦二福島交通の会長、以上五名の証人の喚問で、私が述べた三点について、国会としてより究明することを委員長に要望したいと思うのです。
  104. 粕谷茂

    粕谷委員長 要望は承りました。後ほど理事会で協議をしたいと思います。
  105. 不破哲三

    不破委員 私、今六人と言ったつもりだったんですが、五人と言ったという話がありまして、これは名前を読み上げた六人ですから、訂正します。  それで、私は、この問題は集中的な議論を予算委員会証人喚問して行った上で、それですべてが尽くせるわけではありませんから、ロッキード事件の経験も踏まえて、佐川・暴力団疑惑究明する特別委員会を設置して、そして本当に国民が納得するような真相解明に当たることが国会の今後の運営にとっても大切だと考えていることを申し上げて、次に進みたいと思うのです。  それで、次の問題はいわゆる政治改革の問題ですが、佐川事件の教訓からいっても、ロッキード以来の数々の汚職、腐敗事件の経験からいっても、私は、やはり最大の教訓は、そういう疑惑事件が企業からの献金を当然とする政治的な風潮、土壌の中から生まれている、ここにやはり最大の教訓があると思うのですね。  それで、この問題は、私どもが企業・団体献金の禁止として提起しますと、この前の暮れの党首会談でも、宮澤首相は社会的存在論をすぐ言われました。しかし、社会に存在しているものはすべて社会的な存在なんで、社会的存在だからといって献金の権利があるわけではないのですね。余談になりますが、竹下議員は参議院での証人喚問の中で暴力団の社会的存在論を展開したのを記憶しておりますから、すべては社会的にあるのです。  問題は、企業というのはどういう社会的存在か。営利を目的とした社会的存在だというのが企業の特徴ですね。それで、しかも企業を構成するスタッフ、それから従業員、すべてはこれは個人個人からいえば政党支持の自由を持った有権者から成っている。ですから、企業人がいろいろ献金するのならこれは別ですけれども、個人として。企業が企業として集めた金を政治献金して政治に影響力を与えるということになれば、これはどうしても利益誘導の性格を持つ。これは企業家自身、経営者団体の代表自身が認めていることですね。ですから私は、そういう莫大な全力を持っている企業が、特定の政党や特定の政治家を支持して政治に介入するということは、いわば国民が有権者として、主権者として選挙をし、政治を選んでいく、その権利の侵害になる。そういう点で極めて厳格な態度で事に当たるべきだと考えるんですが、総理の見解を伺いたいと思います。
  106. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 本会議で御質問がございましたときに、私が企業も社会的存在であるので云々と申し上げましたのは、この問題についての最高裁判所の大法廷の判決を引用して申し上げたのでございまして、この大法廷の判決は、「であるから、自然人たる国民による寄附と企業の寄附を別異に扱うべき憲法上の要請はない」と。つまり、寄附をするということは、これは認めていいことだという、それを引用して申し上げたのでございます。  次に、企業による献金は利益誘導だ、それ以外にあり得ないというふうに言われましたが、利益誘導という言葉に尽くせないもの、つまり国の政治がこうあってほしい、あるいはこういうことが望ましい、まあ例えば何々党のような政治になってほしくないとか、例えばそういったような意思表示というものは企業としても体制について持っておることはしばしばございますので、そういう意味政治の上に財政的な貢献をしたいということは私は十分あってしかるべきことだと。ただ、おのずから企業の献金には節度がなければならないだろうと思いますし、また、自民党の今回の「政治改革の基本方針」におきましても、やはり企業と個人との、何と申しますか、余り深い関係というのについては問題がなしとしないので、個人に対する献金はもうごくごく例外にして、政党としてそれを受け入れるということに、一般にしたらどうだろうかという考え方を「政治改革の基本方針」では採用いたしております。     〔委員長退席、小杉委員長代理着席〕
  107. 不破哲三

    不破委員 今宮澤さんは、党首会談のときよりは多少遠慮した言い方をしていましたが、党首会談のときには、市場経済体制を擁護するという献金なら利益誘導にならぬのではないかと、市場経済体制ということをたしか私に言っていました。体制という言葉ですね。(宮澤内閣総理大臣「ちょっと今遠慮しました」と呼ぶ)まあ遠慮されたようですが。しかし私は、体制ということも、政治であれ経済であれ主権者国民が選択するものですから、これはもう一般論として成り立たない議論だと思うのですが、大体実際問題としても、今の日本で市場経済をどうするかというようなことが政治の争点になってないわけですね。  それで、私たちについて言えば、私たち日本共産党は、今提案しているのは、資本主義の枠内での民主的改革を提案しています。それからまた、将来の社会主義についても、市場経済を引き継ぐんだということを、これはもう早くから明らかにしているわけですね。  それで、経済の体制的な問題で、今問題になっているとすれば、今宮澤さんが言った、この党のやり方がいいんじゃないか、そこが問題になっていると思うのですよ。つまり、市場経済の中でも、自民党関係の深い大企業が特権的な地位を占めるとか、あるいはかなり外国に比べて横暴なことをやっても大目に見られるとか、そういう政治のやり方が今問題になっているわけで、それが私は、こういう党のやり方の方がいいと思うから政治献金でこの党を支えるという企業の行動になっている。そこをやっぱりお互いに深く考えてみる必要があると思うのです。  それで、例えば幾つか例を挙げますと、自民党政治資金報告書から大口献金の企業をずっと、企業や産業を見てみますと、国の行政や財政と非常に深いかかわり合いのある企業、産業、つまりいわばそういう国の行政、財政のあり方から特別な利益を得ている企業、産業が大口献金者のリストの中にずらっと並んでいるのですね。  例えば幾つか例を挙げますと、通産省が毎年一千億円以上の技術開発に関する補助金、委託金というのを出しています。これは大体成功払いと言われますが、回収されるのはほんの一部で、大体は補助金みたいなものですね。それをずっと私ども各社別に分けて試算してみましたら、大体この七年間、毎年三十億円以上の補助金を受けている企業が六社あります。これは日立、東芝、三菱を初め、多い企業になると年間六十億円以上の補助金を受ける。これは全部自民党の大口献金企業ですよ。それで、この六社でいいますと、献金総額が二億四千万円ぐらいですから、公表されているのは。それで一社何十億もの補助金が来るということになると、こういう利益を得ている企業と政権党の間に一体政治献金の授受があっていいのかという疑問が当然生まれる。  それからまた、軍事費の問題でいいますと、軍需産業との関係がいつも問題になって、それで軍事費削減に政府が熱心でない背景の一つがそのつながりに言われたりもするのですけれども、例えば九一年度を見ますと、防衛庁の調達額は一兆四千百六十三億円ですね。それで、そのうちで三菱重工や川崎重工や石川島など上位十社が大体三分の二を占めていますよ。九千億円占めていますから、大体三分の二を占めている。全部これまた自民党の大口献金会社です。献金総額が三億三千万円余り。  それから、建設関係でも官公需ですね、中央、地方の。これは九〇年度の調査ですが、その年の完成工事高で一千億円以上の会社というのが十六社ありました。大成建設、鹿島建設などを初め十六社ありました。これも全部大口献金会社ですよ。それで、受注額の合計が二兆七千四百六十二億円、献金額が四億一千四百五十六万円。こういうふうに、政府の行財政とかかわりがあって、そのことから特別な経済的な利益がある企業がずらっと大口献金企業に並んでいる。これが利益誘導ではないかという疑問を国民が持つのは当然だと思うのですね。  それから、逆の例を言いますと、日本は環境アセスメントの法律がないので、世界で驚かれています。だから、大型プロジェクトをどんどんやっても、ばらばらなアセスはあるけれども、総合的なアセスメントはない。それからまた、公害・環境行政の大気汚染なんかの後退が指摘をされています。そういうことが問題になると、やはり建設、自動車、石油、鉄鋼、そういう大産業がどうしても問題になってきますが、これも全部自民党の大口献金産業ですね。  ですから私は、政府はやはりそうやって一方では国民生活に非常に密着をし、一方ではそういう大企業と深くかかわりある行政、財政をやっているわけですから、そこが企業の献金で支えられていたら、これは利益誘導という批判を受けて当たり前なんですよ。だから財界の代表者が、私たちが自分たちの利益に関係のない献金をしたら、これは企業としては背任粟になる、だから当然利益誘導と結びついているんだということを平気で公言するわけですね。  ですから私は、そういう特権的なやり方に対して、企業献金をやって何か特権的な利益を受けようというのは、リクルートとか佐川とか特殊な企業だけではなくて、やはり日本の経済と政治の構造がそういう形で財界寄りにゆがんでいる、そこに国民の批判があるわけですから、私はここで思い切って、戦後選挙制度審議会が発足したときには企業・団体献金の禁止というのが目標の最大の旗印だったわけですから、そこに自民党としても政府としても立ち返るべきだ、踏み出すべきだということを強く主張したいのです。いかがでしょうか。
  108. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 さらに先ほど御紹介いたしました最高裁の判決の中には、「会社が、納税の義務を有し自然人たる国民とひとしく国税等の負担に任ずるものである以上、納税者たる立場において、」意見の表明その他の行動を地方、国の施策に対ししたとしても、これを禁ずる理由はない。そのとおりだと思います。  ただ、たまたまそういう企業がいろいろ国の施策の上から補助金を受ける、研究費補助を受ける等々のことは、それはあるかもしれないと思います。しかし、その間のその因果関係を別に推定すべきものではないであろう。納税者としての考えを表示する上で、国または地方の施策に対して自分の意思をあらわすために政治的な献金をする、寄附をするということは、まさに最高裁そのものが認めておることだというふうに思います。
  109. 不破哲三

    不破委員 幾ら最高裁の判例を持ってきたってだめなんですよ。企業献金を禁止する法律がないのですから、最高裁が企業献金を違法だと言うわけないのですね。その法律国会で制定しようじゃないかというのが私の提案なんですから。  それで、この点でいいますと、アメリカでは一九〇七年にティルマン法という法律ができて、これは企業献金をきっぱり禁止していますね。それまでの大統領選挙は、それぞれの候補者が企業の支持を争い合って、大変な金権選挙だった。それで、それをきっぱり——私、法律を読んでみましたが、もう至極簡単明瞭な、企業の献金はこれを違法とするという、いわば法一条ですよ。それに対していろいろな条件づけたりなんかしないで、この一条の法律でこの企業献金を禁止してしまった。  市場経済でいえば日本よりも先輩の国ですから、私は、総理はちょくちょくアメリカに行かれるようですけれども、やはりそういう歴史的に主権者の権利の尊重という点で世界でも早く企業献金の禁止に踏み切った、そういうことこそ学ぶべきであって、市場経済を云々して、日本のように大企業の献金をいつまでも横行させるという金権政治を温存すべきでないと考えますが、改めて、判例じゃないのです、政治問題としてその禁止の方向に踏み切るつもりはないかどうか、伺いたいと思います。
  110. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 この判例は法律がないからいいと言っているのではありませんで、積極的に理由を挙げて、企業といえどもそういうことをすることは別に間違いでないということを言っておるものと私は思って引用をしたのであります。  なお、今の点は、したがって私は企業といえども政治献金をしてはいけないというふうに思いませんし、これを禁止する法律考えるつもりはございませんけれども、先ほども申しましたように、自由民主党政治改革の基本を考えましたときに、やはり個人との関係はなるべく薄くした方がいい、政党との関係で、政党がひとしくこれを受け入れるということの方がいいのではないかという考え方のうちには、特定の企業の利益を個人が代表をするというような形で、その間に金銭の関係が非常にたくさんあるということは適当ではないという判断が働いておるものと思います。
  111. 不破哲三

    不破委員 この問題は、本当にこれをずうっと放置してきたからこそ金権事件が多発するわけであって、日本の政治としては避けるわけにいかない問題だということを強調しておきたいと思うのです。  もう一つ伺いますが、衆議院の定数是正の問題ですけれども国会では八六年に、次は抜本是正をやる、定数格差二対一未満の抜本是正をやるという決議をしました。それからまた、公職選挙法にはもともと、選挙区の定数の問題は、「五年ごとに、直近に行われた国勢調査の結果によって」変えていく、これを「例とする。」というように書かれていますね。ところが、実際には抜本是正は去年の臨時国会では行われませんでした。その後でといいますか、自民党の方は選挙制度そのものを小選挙区制に変えるという案を決めたことは私は承知しております。しかし、この選挙制度を変えるという問題と、現在施行している中選挙区制度について、この抜本是正を国会が決め、法律が決めているということはおのずから別の問題なんですね。  それで、いろいろな党が将来の選挙制度についていろいろ決めることはあることですけれども、これは衆参両院の多数の支持を得て、国会で通らない限りは一つの党の案にすぎないわけです。現実に施行されているのは、中選挙区制度が衆議院では施行されている。それについて抜本是正をしなきゃいかぬという国会の決議もあれば、五年ごとの是正を義務づけた法律もある。  総理は、自民党が選挙制度の変更案を決めたからといって、この国会決議や法律の抜本是正の義務づけをいつまでも回避していいとお考えでしょうか。
  112. 村田敬次郎

    村田国務大臣 政治改革の言うなれば政府の門口にありますので、今の御質問お答えをしたいと思うのです。  おっしゃりましたのは、中選挙区制を前提としての不破委員考え方でございました。しかし、これは政府でもあるいは自民党でも非常に年来詳しく研究をしておりまして、九増十減案においてはもう放置することのできなくなった選挙区間の定数是正をあくまでも緊急措置として是正をしたものと認識をしておりまして、自民党の「政治改革の基本方針」におきましては、小選挙区制の導入を前提としております。「選挙区間の人口格差は二倍未満とすることを基本原則とする。」ということで、これは単純小選挙区制を前提としております。したがって、この議論が一つ自民党の党案としてまとまったわけでございますので、総理が本会議等で御答弁をなさっておられますように、この自民党案もひとつ十分お考えをいただき、各党間で協議をしていただきたい。その後に、恐らくこれは議員提案の形で出されるものと想像しておりますが、その法案の提案を待って対応していきたい、そういう考え方でございます。
  113. 不破哲三

    不破委員 あなたが前提にしているのは自民党の案なんですよ。私が前提にしているのは現に施行されている現在の選挙制度なんですね、中選挙区制というのは。頭の中で前提にしているわけじゃないんです。それで、その自民党の案が、じゃ、衆参両院で多数を得て通るまでは、何年かかるかわかりませんが、通るまではその抜本是正をやらないで済むというのがお考えなんですか。
  114. 村田敬次郎

    村田国務大臣 この国会政治改革に寄せておられる総理の決意というのは、私どもは並み並みならぬものであると感じております。と申しますのは、一八八三年の英国の腐敗防止法、これはグラッドストーン内閣のとき成立したものでございますが、あの法律によって英国における腐敗というものは一掃されたと言われております。連座制の強化であるとかあるいは公民権の永久停止等を含む極めて厳しい罰則によってこれが実現をされた。しかもそれは、総理はそのグラッドストーンの英国法というのを非常に尊重して言っておられまして、今まで日本ではそれがなすべくしてできなかった。したがって……(不破委員質問答えてくださいよ。あなた方の案が通るまではやらないつもりかと」と呼ぶ)私は、中選挙区制を前提としている案というものには、今までの各党の対案にはお答えをすることはできない。中選挙区制そのものでは解決をできないものがあるから、新しいいろいろの選挙区制、それから政治資金規制の考え方が出ておる、このように私個人としては理解をいたしております。
  115. 不破哲三

    不破委員 そうすると、つまり、自民党が自分の党の考えから小選挙区案を決めたから、もう現行中選挙区制について抜本是正をやると決めた国会の決議は無効だと言われるわけですね。もう自民党は勝手に廃棄しちゃったわけですか、国会決議は。
  116. 村田敬次郎

    村田国務大臣 これについては長い長い経緯が政府側にもあります。私も、自治省の選挙局でその問題をずっと検討しておりまして、三十年以上にわたる検討の結果で、現在の中選挙区制では解決できないいろいろな問題があるという疑問点があったので、長い検討が積み重ねられたと了承をしております。したがって、今後の各党の議論の上で結論を出していただく、それに対応して検討する、決定していくということであると思います。
  117. 不破哲三

    不破委員 国会決議は要するに、じゃ、もう自民党が決めちゃったから要らない、もう無視するということですね。官房長官、一人で首振っていますけれども、今の自治大臣の答弁は、これはもう中選挙区制を前提にした国会決議は無視する、そうなんですね。
  118. 河野洋平

    ○河野国務大臣 国会決議の有権的解釈は国会にあるというふうに私は考えております。したがって、国会決議をどういうふうに考えるかということは、これはもう国会でお決めになることであって、我々がこれはもう要らないとか、これはもう無視するとかと言う立場にはないというふうに思います。
  119. 不破哲三

    不破委員 今のはちょっと一種の詭弁でして、自治大臣ははっきり否定した、しかし、河野官房長官は解釈はそっちに任せる。しかし、自民党の方向は決まっているということですから、私はここに大変重大な問題があると思うのですよ。  国会で決めたことについて、それでもうその国会が、この選挙制度を変えた後なら話は違いますよ。まだあなた方のは通っても何でもないんですよ。それを自民党が決めたからといって、現在施行されている中選挙区制度で、総選挙があったとすればこの中選挙区制でやろうというわけですから、それについて抜本是正が決まっているのにもう自民党は無視する。これは、選挙制度を変えようという話と、今施行されている制度についての是正の問題とは全く概念が違うのですよ。次元が違うのですよ。そうすると、小選挙区制が通らなければいつまでも抜本是正しないで済ますということになるのですね。私は、ここに非常に重大な問題点がある。  それで、総理を敷衍して、グラッドストーンまで出して、腐敗防止法との比較を言いましたが、日本の選挙制度の歴史からいえば、戦前二回、明治、大正に小選挙区制をやって、これがもう腐敗の限りの選挙になって、短期間で廃止されたということを私は日本の政治家なら記憶すべきだと思うのですよ。  それから、戦後、現行中選挙区制度を決めたときに、提案者はたしか小沢一郎議員のお父さんだったと思いますけれども、小選挙区制をなぜとらないか、あれは腐敗選挙になるからだということをわざわざ理由にして国会に提案して、現行制度を決めた。その小選挙区制をイギリスの腐敗防止法と比較して、宮澤さんの決意がかたいから、抜本是正なんかやるまでもなしに今度通してみせる、こんな乱暴な話はないですよ。  私は政府に対して、自民党がいろいろな、たとえどんな党略的な選挙制度の案であろうと、党として決める権利はそれはあるでしょう。しかし、それがあるからといって、現行の制度について、国会が決め、法律で義務づけられた義務を回避する理由にはならないと思います。  ですから、先ほど申し上げた企業・団体献金の禁止の問題と、それから定数の抜本是正の問題を、やはり政府としても、今の制度がある限りは、緊急の問題として真剣に取り組むべきだということを申し上げて、総理の見解を最後に聞いて、次に移りたいと思います。
  120. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 前国会でいわゆる緊急改革分を法律として成立させていただきましたが、その中にいわゆる九増十減というものを盛っております。これは一票の価値についての最高裁の考え方というものを私ども尊重しながら、今の制度のもとにおいても、この九増十減であれば、いわゆる三対一に達しない、一票の格差の問題を回避できる、こう考えて御提案をし、成立をさせていただいたわけでございますから、もとより小選挙区というものが実現するのが望ましいと思っておりますけれども、そうでない現状にかんがみてこの九増十減ということをいたしましたのは、万一、小選挙区というものが実現しない、する以前に、仮に現行のもとで選挙が行われるとなれば、この九増十減ということで処理ができる、こう考えておるわけでございますから、国会の決議に違反するような点はないと思います。     〔小杉委員長代理退席、委員長着席〕
  121. 不破哲三

    不破委員 私は先ほど申しましたように、抜本是正の義務、総理は今九増十減で議論されたようですが、九増十減をやっても格差二・七七なんですよ。それで、国会が決めたのは二未満にするということを決めているわけですから、それは抜本是正を回避する理由にはならないのです。それからまた、自民党が単純小選挙区制を決めたということも回避の理由にはならないのですよ、これは党の決定にすぎませんから、国会が採択するまでは。だから、この問題を企業・団体献金の禁止とあわせて政治改革の中心問題として取り組むべきことを主張して、次に進みたいと思います。  次は不況対策の問題ですが、私は、不況問題の第一に中小企業の問題を取り上げたいと思うのです。  そのことを考える際に、一体日本の経済の中で中小企業というものの比重がどれぐらいを占めるか、これが我々が議論をする上で大事な点になると思いますので、通産大臣に伺いたいのですが、どんな統計でも結構ですが、日本の事業所の中での中小企業の数、比重、または従業者の中での数、比重、そういうものを御紹介いただけたらありがたいと思います。
  122. 森喜朗

    ○森国務大臣 細かい数字でございますから、長官から答弁させます。
  123. 関收

    ○関政府委員 お答え申し上げます。  幾つかの計数で御説明申し上げたいと思いますが、まず事業所の数でございますけれども、中小企業が全事業所の中に占める比率が約九九%でございます。また、従業者の数でございますが、約七九%ということでございます。  なお、業種別に全体の生産に占めますウエートを簡単に御説明申し上げますと、製造業の出荷額で見ますと約五二%、それから小売業の販売額で申し上げますと約七八%、それから卸売業の販売高では約六二%ということでございまして、いずれの数字におきましても極めて大きなウエートを占めておりますことは御指摘のとおりでございます。
  124. 不破哲三

    不破委員 今お話がありましたように、やはり日本の中小企業というのは、この中小企業というのは中小企業法で指定されている、製造業でいえば三百人未満、それから商業でいえば五十人未満の企業になると思いますが、大体事業所数でいえば九九%、それから従業員でいえば約八割なんですね、仕事についている者の。それから、工業でいつでも半分以上を占めていて、商業でいえば八割近くをやはり占めている。まさに日本の経済全体からいえば、簡単に中小企業と言うけれども、むしろ多数派なんですね、実際には。私は、その中小企業が今の不況の中でどんな深刻な状態になっているかということを私たちは深刻に考えないと、本当の意味不況対策にならないと思うのです。  それで、これも実は党首会談のときに話したことですけれども、従来から政府考え方には、不況になったときに大企業にてこ入れをして、大企業が立ち直って栄えれば、おのずから周りに潤いが行くという考え方がずっとありました。しかし、これは先日のアメリカの大統領選挙でも、おこぼれ経済学という名前でえらいこっぴどい議論になったんですね。つまり、大企業を支えたら、やがては経済全体や消費者や中小企業におこぼれが回っていくだろうということでずっと経済を運営したけれども、これじゃだめだと。もっと直接に、消費者や被害を受ける中小企業へ直接に政治の光を当てる必要があるという議論が、いわば大統領選挙のアメリカでも基調になったわけですね。  私はそういう目で、党首会談のときにも、もっと直接やるべきだということを言ったのですが、実は私、不況のたびに考えるのですけれども、不況が来るたびに政府の中小企業施策というのは貧弱になってくる、貧しくなってくる。ここに日本の経済における中小企業の役割に全く反する政治のゆがみがあるということを痛感せざるを得ないのです。  その点で、私、三つの角度から伺いたいのですけれども一つは対策予算の問題です。中小企業対策予算はことしの予算の中でどれくらいの比重を占めているでしょうか。
  125. 森喜朗

    ○森国務大臣 先ほど長官から数のことを申し上げましたが、先生もう御承知だと思いますが、大体日本の中小企業というものの地位というのは、昭和三十八年から平成三年を見ましても、事業所の数も従業員の数もほとんど変化をしていない。そういう意味では、今おこぼれ経済というふうなお話ございましたけれども、日本の経済の一つの構造として、中小企業の活躍の場といいましょうか経済活動の機能というのは、私は定着をしつつあるというふうに見てもよろしいのではないかと思うのです。そういう意味で、中小企業政策の基本的な考え方というのは、中小企業のまず自主努力を前提としなければなりません。そして、経済社会の中で中小企業の有する能力と可能性を最大限に引き出していくということ、そういう環境を整備するということが中小企業予算の大事なところだと考えております。  こうした認識の中で、平成五年度の中小企業対策の予算は、中小企業の厳しい景況に配慮する意味で、小規模企業対策の強化、さらにエネルギー環境問題、それから時短、労働力確保等の中小企業の構造改革支援等、緊急な課題に重点を置いて施策の充実を図っております。予算額にいたしましては千九百五十一億円を計上いたしておりまして、これは地方財政により措置される経費、これは一般財源化いたした分でございますが、この七十五億円を加えますと、前年比七十億円増ということで、実質的に従来のベースからまいりますと大幅に伸びている、このように考えております。
  126. 不破哲三

    不破委員 その千九百五十一億円というのは財政の中ではどれぐらいのウエートを占めますか。比重です。
  127. 関收

    ○関政府委員 御指摘の千九百五十一億円でございますが、今年度の一般歳出に占める比率を試算いたしますと、〇・四九%ということであろうかと存じます。
  128. 不破哲三

    不破委員 ことしは中小企業基本法が制定されて三十周年なんですよね。あの基本法制定のときには、これから中小企業の施策を予算面を含めて充実するということを政府は天下に公約したのですね。その制定時の中小企業予算が予算に占めた比重はどれぐらいだったか、御報告願います。
  129. 関收

    ○関政府委員 制定時ということでございますけれども、それと同じ時期ということで、昭和三十八年度の予算ということで御理解いただければ、〇・五七%と理解をいたしております。
  130. 不破哲三

    不破委員 中小企業予算を充実すると約束した中小企業基本法が制定されたときが〇・五七、今がさっきの話で〇・四九なんですね。ここのところを私は政府側によく考えてもらいたいと思うのですよ。  ちょっと私、表を用意してきたので見てほしいのですが、これがこの三十年間の中小企業予算の動きです。これは、上が一般歳出に対する比重、下が、赤が一般会計に対する比重ですが、出発点がここですよね、さっき言った〇・五七。それで、法律ができて数年は上がったのです。比重が。〇・八八ぐらいまで上がりましたよ。それから後、もう一般歳出の中に占める比重がこう下がってくるわけですね、このように。それで、もうこの数年間は、三年ぐらい前から、基本法をつくったときの予算を割ってここまで来ているわけですね。  私は先ほど中小企業の日本経済に占める比重を申し上げた。中小企業庁長官も具体的数字を挙げて言った。多数派なんですね。その多数派に対して、この困難な時期に、あるいはふだんからですけれども、組む予算が一%、二%あっても当たり前だと思うのですね、これは。しかし、いまだかつて一%を超えたことがない。〇・八余りが最高で、とうとう〇・五を割って〇・四台に落ち込んでしまっている。これで一体、中小企業に対して、不況下で本当に真剣な対策を立てているかどうか。これでは絶対にできないわけですよ。  先ほど森さんはいろいろ項目を挙げられましたけれども、どの項目も規模が小さくなるわけです、手当ての。膨大な、しかも日本経済の体制を支えている中小企業の自殺者が急増するという、また倒産、廃業が相次いでいるという中での緊急出動もできないような予算しか組めないでいる。私は、ここにやはりまず政府の基本姿勢として、世界でも中小企業の比重は日本は高い国ですけれども、この程度の中小企業対策で一体この不況下に、また日本の状況のもとで安住していいのかどうか、この根本問題をまず政府に問いたいのです。総理、いかがですか。
  131. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 中小企業基本法ができましたのが昭和三十七年だったかと思いますが、私はそのころの状況からずっと見ておりまして——八年でしたか、昭和三十八年でしたが、そのころからずっと見ておりまして、中小企業の問題というのは非常に変化をしてきました。  日本が高度成長を遂げ、新しい段階に入ってくる段階で、中小企業の果たす役割というものも、やはり先ほど通産大臣からお話がありましたように、自主的な努力というものを中心としてやる、あるいはいろいろな形での共同行為を、今までやったものを全部自主的な形に持っていくといういろいろな形の変化がありました。そうした変化の中で、政府が特に財政の面からいろいろな点で援助すべきところは十分な援助をしてきたと考えておりますし、今後もそういったことはやっていかなければならないのじゃないかなと、こう思っておるところでございます。  中小企業につきましては、中小企業金融公庫等政府系中小企業金融機関の貸付規模の拡大であるとか信用機関の限度額の引き上げであるとか下請企業対策の強化など、いろいろなことをやってまいりましたし、また小規模事業者を活性化するための小規模事業対策を強化をいたしました。これは、今回特に地方の方へこれを移すというような話はいろいろありましたし、そのほかエネルギー問題、時短、労働力確保等の問題につきまして、中小企業のやっているところの構造改革を支援するなどというようなことを予算の面でもやってきたところでございます。  以上、御説明を申し上げました。
  132. 不破哲三

    不破委員 そういう項目を幾つか挙げても、肝心の予算の裏づけが薄いわけですから、極端に薄いわけですから、これは本当にうつろに聞こえるんですよね。だから、あなたは大蔵大臣なんだから、大蔵大臣として財政をどれぐらいこの分野につき込む決断があるのか。これは政策的決断の問題ですよ、本当に日本の情勢に見合った。その点では全く今度の予算は貧弱と言わざるを得ない。  一例を挙げますと、例えば、さっき私は大企業中心の技術開発には毎年一千億円以上のものを出していると言いましたが、中小企業に対しては、同じ技術開発でも、ありとあらゆる項目全部集めても四十億程度ですよ。大企業の一社分にも満たない。そういうことがやられているわけですから、私は、この点はこれは抜本的な考え方の施策の転換が要るということを主張したいのです。  それから二番目の角度は、官公需の問題です。国と地方自治体の発注を官公需法もつくって中小企業にできるだけ回すようにするということがやられました。それで、これは今から十七年ぐらい前になりますか、三木内閣の時代に私ども質問して、三木総理が、その当時は国の中小企業発注比率が三四%ぐらいだったんですが、それをせめて五〇%までしたいということを努力目標としてやったんですね。ところがその後、若干は上がってきたんだけれども、八〇年代に入ってからずっと低迷が始まって、特にこの数年間はずっと下降線ですよ。それで、三木総理の時代と今とは、NTTの関係が省かれていますからそれの補正をすると、大体三木答弁のところに逆戻りしているわけですね、今の国の官公需の中小企業発注比率は。  それから地方公共団体も、これは一時は七四%台まで発注率が高まったんです。それが最近大幅に下がって、現在、一番新しい数字で六五%に落ちていますね。ですから、あの官公需法ができてから、これもできてかなりになりますけれども、初めの何年間かは引き上げがやられた。ところが、八〇年代に入ってそれがとまって、この三、四年は大低落ですよ。私は、これは法の精神にももとるし、そして今の中小企業の実態にも日本経済の実態にも合わないと思うんですね。  例えば、地方公共団体と国の発注比率を最高時に戻しただけでも、中小企業向けに二兆円以上の新しい需要が生まれるはずです。それから、三木総理の約束のとおり国を五〇%発注に引き上げれば、さらに一兆円以上の中小企業救済になる。この点で、一体最近の低下傾向をどう考えていて、どういう手を打つつもりなのか、これを伺いたいと思うのです。
  133. 森喜朗

    ○森国務大臣 不破先生おっしゃるとおり、この数字を見てまいりましても、たしか六十一年三九・八%まで参りまして、かなり努力の効果は出てきたわけですが、その後、確かに少しずつまた低下をしております。平成三年で三七・三ということでございますから、確かにそういう御指摘は当たるかと思いますが、まあすべてがこれに当たるわけではございませんけれども、ちょうどやはりバブルのころでございまして、大変民間景気といいますか、民間の需要といいますか特需、そちらの方にどうしてもやはりウエートがかかっていった、そういうことも一つ影響があったかと思います。  それからもう一つは、例えば本四架橋でございますとか羽田沖展開でございますとか、そういう大変中小企業に扱いにくい大規模工事が非常に多かったというようなことが、この数字から見て私どもはそういう見方ができるわけでございます。  先ほど先生おっしゃるとおり、官公需におきます中小業者の受注機会の確保というのは、これはいわゆる官公需確保法によって国の契約の方針を閣議決定をいたしておるわけでありますから、努力をいたしておるということは言うまでもございません。特に、今申し上げましたように、近年大規模工事でその性質上どうしても中小企業に発注が難しいという、そういうものが増加しておるという事情はございますけれども平成四年度の閣議決定におきましては、契約目標額を、史上最高の四兆四千三百四十億円を設定をいたしておりますので、通産省としましても、今後とも各省庁に対しましてこの数字に近づけますようにさらに努力をするよう要請をしてまいりたい、そして中小企業の受注機会の拡大に努力をしたい、こう考えております。
  134. 不破哲三

    不破委員 それで、今通産大臣が言った大型工事が多くなっている、これはこの面からも考えるべき問題があるのですね。私は、政府は公共事業を重視すると言っているけれども、やはり公共事業の中で日本の国民生活に必要な公共事業、これはヨーロッパに比べてもまだまだ非常におくれているわけですよ。下水道にしても、公共住宅にしても、都市公園にしても、あるいはお年寄りの施設にしても、障害者施設にしても。そういう生活、福祉に密着をした公共事業にもっともっと重点を置けば、国民の期待にもこたえ得るし、それから業者の関係からいっても中小企業の需要にもつながって法の精神にもかなう。これは一挙両得なわけですから、その面も、もう大型事業不可避なんだ、重点が国策なんだとあきらめないで、大いにその面からも転換を図ってほしい。それが実は地方自治体には国の場合以上に落差が激しくて、地方自治体だけでも一割低下しますと二兆円の需要減ですからね、これは。そういう面の自治体ですから義務づけはできないわけですけれども、しかし、大いに注意喚起して、官公需という問題も国の中小企業政策として大事なんだということを、大いに光を当ててほしいと思うのです。  それから三番目は、下請の問題ですよ。下請問題で、これはバブルの時代に政府も振興基準の改定なんかやって、拝見しましたが、やはり日本で親企業と下請企業の関係が対等、平等でない。これは国際的にも大きな問題になっているわけですね。去年は、ある財界の会長が、大企業の会長が雑誌に、国際的に批判を浴びている日本型経営の特徴の一つとして、親企業と下請企業のいわば対等でない関係を指摘したことがあります、これはまずいと、批判されると。それで、政府の振興基準にもそのことを、このままでいけば国際的に問題になるということまで書かれていました。  ところが、今度の不況下で、親企業の下請企業に対するやり方というのは、本当に乱暴な状態が各所に生まれている。そのことについてちょっと伺いたいのですが、例えばこの通産省が通達した振興基準によると、親事業者が自分の生産を減らしたときは、一割減らしたら一割以上、下にしわ寄せするなということが書いてあるんですね、まあ平たく言えば。自分の生産量の変動の程度以上に下請を変動させるなど書いてある。それからまた、単価を決めるときにも、ちゃんと下請企業の適正な利益を含んで、労働条件の改善も可能になるような単価を協議して決めると書いてある。これは一例ですけれども、そういうものが通産省の通達で各業界に流されていますね。  じゃ、一体これが今この不況の中でのいろいろな産業で守られているかどうか。全くそれに反する事態が広範に起こっていると思うのですが、政府はどういう見方をしていますか、この点について。
  135. 関收

    ○関政府委員 先生御指摘のように、下請振興基準につきまして平成三年にも一部を改正いたしております。改正を含めまして、私どもは親企業及び親企業の団体に対して、ぜひこれを遵守してくれるように関係局長名及び私の名前で依頼をいたしておりますし、またその後、それが改善されているかどうかということをフォローアップする意味での全国約四万の中小企業に対して調査をし、その結果を踏まえてまた必要な対応をするということで、実は昨年の二月及び昨年の十二月に二度、役所名での振興基準の遵守についての通達をお出ししたわけでございます。  さらに、こういった基準がしっかり守られますように、私どもとしての体制その他につきましても整備をいたしておりまして、昨年四月からは検査をいたします検査員の、これを全体を責任を持って監督いたします上席下請代金検査官というものを新たに設置をいたしまして、この運用の厳正化に努めるということにいたしております。  それからまた、暮れにおきましては、特に事業面で厳しい面もございますので、昨年の十二月には、下請の条件及び下請の量につきまして、関係団体に対し特段の配慮をしていただくようにお願いをいたしたところでございます。  なお、当然のことながら、今後ともこの下請代金支払遅延防止法が遵守され、また、下請振興基準が達成されますよう最大限の努力をしてまいりたいと思っているところでございます。
  136. 不破哲三

    不破委員 これも非常に重大な問題でして、大体政府の通達行政で、通達は乱発するけれども、乱発するというのは言い過ぎですが、通達は出すけれども、しかしその実施の保証がないというのが一番問題だと思うのですよ。  それで、現状認識でも、ことしの一月の「日経ベンチャー」に中小企業庁の下請担当の責任者が、特に自動車、電機などの不況業種を中心に、大幅な受注減に陥っている。それで、一次下請で大体三割、二次、三次の下請になると五割近く減っている。しかし、生産統計によると上の方は一割なんですね。それがもう三割、五割と減らされて、もっとひどくなるだろう、こういう状態がある。  私はこの間朝日新聞を読んで驚いたのですけれども、その問題になっている自動車で、トヨタの記事が出ていました。この記事によりますと、乾いたタオルを絞るとまで言われるコスト削減でトヨタは有名だが、今度も部品業者の締めつけが自動車業界の中でずば抜けているというのですね。それが支配的になりそうだ。新聞の記事ですから完全に正確かどうかわかりませんけれども、名誉会長の言葉として、下請部品メーカーを「まだまだ締めないといかん。ただ、締め過ぎて死んでしまったら元も子もない。そこは上手にやる」ことまで記者に語っている。  徳川時代の生かさず殺さずという農民政策を思わせるような言葉が平気で出てくる。それが、今中小企業庁長官が言われたような、下請をちゃんとしなさいという通達が去年もことしも出ている中で起きて、公のマスコミに出ても、それは当たり前のこととしてまかり通っている。私は、こういう状態を日本が放置していたら、国際的な恥であるだけでなしに、日本の経済を支える中小企業という広大な部門がやはり大変な危険なことになる。やはりここに思い切って政府が施策をやってこそ不況の打開にもつながるんだということを強調して、政府努力を求めたいと思うのです。  それで、次にもう一つ不況の問題で、打開策として言いたいわけですが、やはり政府が言うように、内需の拡大ということは、これは不況打開の根本ですね。しかし、この点で私、昨年来いろいろなことを感じているのですけれども一つは、政府と財界の間に昨年の暮れに論争がありました。財界の方は減税をやれと言う。政府の方は賃上げをやれと言う。これは労働大臣と経済団体の論争だったのですけれども、これは、自分のところでやるべきことをやらないで、それで他にだけ注文するというのは、本当にこれはまずい議論だと思って拝見しておりました。やはり内需を拡大するときに、内需の六割を占めている個人消費の拡大にそれぞれの部署でベストを尽くすことは当たり前であって、私は、政府は率先して減税やるべきだ、それから経済団体は率先して賃上げやるべきだ、それが両々相まって個人消費の拡大について大きな効果を及ぼす、こういう立場で当たるべきだと思うのですね。  私たちは、この委員会でもいろいろな議論がありましたが、減税をやる際に赤字国債の発行ということは反対です。というのは、七〇年代の後半に、日本が世界経済の機関車なんておだてられて、赤字国債の発行に踏み切って拡大財政をやった。その結果、例えば七〇年代前半だったら、予算のうちの借金の利子払いは三%ぐらいでしたよ。それが今一六%。予算組んでも六分の一は借金の利子払いをしなきゃいけないという事態になっているわけですから、十数年かかってこういう状態ですから、私たちは今それを繰り返すべきではないと思っています。  ですから、そういうことも考えて、私たちは所得税中心の減税二兆円。それから、せめて、消費税全廃を求めるところですが、自民党も一たん公約した飲食料品への非課税を実現する、これはすぐ消費に響きますから、これはやるべきだ。これは赤字国債を出さないでも、この程度の減税なら今の予算の総点検やれば十分できる。そういうことで私たちは提案していますが、政府はあくまで一切減税はやらない、この本予算でやるつもりはない、それで押し通すつもりなのかどうか、そこのところをはっきり伺っておきたいと思います。
  137. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 現在、政府予算を提出しておりまして、その中には歳入の方もありますし、歳出の方もございまして、現在の案では、私の方では今おっしゃったような消費を目的としたような所得税減税というのは考えでないことは、もう委員おわかりのとおりだと思います。  私たちの方といたしましては、住宅投資も相当に増加してきておりますし、政府関係投資を五年度も四年度補正予算の実績見込み額に対しても九・五%の増というような形で、相当な増加を見込んでおりまして、こうした形によりまして民間の需要がつくことにより消費もおのずから私はふえてくるものだ、こういうふうに確信をしておるところでございます。  不破議員御指摘のように、赤字国債を出すのはおかしいではないかというお話でございまして、私も全くその点については同感をするものでございます。長いことかかって赤字国債をやって、どんな苦しいことを皆財政当局としてかつてやってきたか、今さらながらあります。再び赤字国債を出さないような形でやっていかなきゃならない。それはもう全く意見を共通にするところじゃないかと思います。そうした中で、苦しい中での財政をやっていくということで今考えているところでございます。  その次に、消費税をどうするのか、やめたらどうか、こういうふうなお話でございましたが、消費税の問題につきましては御承知のとおり長い経緯がございまして、国会でもいろんな御議論があったところでございます。その中でやりまして、また最後には食料品だけでもと、こういうふうなお話もあって、それも国会のお話でやらない、こういうふうな話になっていたことも想起していただきたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  138. 不破哲三

    不破委員 減税の問題は改めて提案をしたいと思っているのですが、基礎控除、それから配偶者控除、扶養控除ですね、それぞれ十万円アップするということで私たちは二兆円減税をやれば、これは国民生活に対するかなり目に見えた援助になると考えています。  それで、内需の問題でもう一つ私が重大に思っているのは、生産の海外移転が日本の景気に大きな影響を及ぼす程度にまで広がってきていることですね。それで、自動車、電機が不況の中心だと言われますけれども、私も改めて数字調べて驚きました。  九一年度の統計を見ますと、日本のメーカーの生産の中で海外生産が占める比重は、乗用車で二〇%、カラーテレビで六三%、ビデオ二九%、冷蔵庫三二%、扇風機四五%、電子レンジ五六%。もうずっと海外移転、海外移転と、直接投資推進と言われている中で、物によってはもう日本のメーカーの製品の大半が海外生産で占める。そこまで来ているわけですね。  それで、従業員数にしても、例えば自動車のトヨタ、日産、本田の三社を調べてみましたら、四三%は海外従業員です。それから、電機十社を調べてみましたら、三八%は海外従業員です。これぐらいに今の中心的な不況業種は生産を海外に大幅に移している。  しかも、今の不況乗り切り策として、さらにもっと移そうということが電機でも自動車でも問題になっているわけですね。例えば、調べてみましたら、トヨタの今年度の生産計画は、国内生産は若干減らして海外生産を二六%増しという計画です。それから日産の経営計画は、来年度の目標、九四年度ですが、これは九一年度に比べて、国内は現状維持で、海外生産は七割増しという目標です。それから電機産業でも、各社それぞれ移転を促進していますが、例えば、今大体海外に全部移しちゃっている業種のほか、普及型のビデオとかエアコンとかあるいは音響機器とか、そういうものを大体全部移していこうというのが出ていて、経済紙を見ますと、松下がどこへ移す、三菱がどこへ移す、もうそういう記事ばっかりですよ、連続。それで、生産の海外移転が最大の不況乗り切り策の柱になっている。  一方で、政府や社会一般に対しては内需の拡大を企業が要求する。自分の方は内需を減らして、いわば外需ですか、拡大の方にばっかり走る。私は、これは非常な自己矛盾であって、この不況で内需の拡大にそれこそ各分野が一番頭を痛め、苦しんでいるときこそ、こういうとうとうたる海外生産移転の流れは自己規制すべきだし、政府としても凍結すべきだ。それぐらいの覚悟でこれに当たらないと、一番不況業種と言われているところがどんどんどんどん不況を激しくする自己運動をやっているわけですから、私はそこら辺を今本当に真剣に考えるべきときだと思うのですが、総理の経済的見解はいかがでしょうか。
  139. 森喜朗

    ○森国務大臣 我が国の企業が海外進出をしてまいりますことは、企業自身の自由な経営判断、こういうことで行われるということは、これは大原則だろうと思います。政府といたしましては、さきに前川リポートの提言もございましたので、国際的な調和のとれた産業構造への転換を図るという観点から、海外直接投資が円滑に行われるようにその施策を実施してきたところでございます。  今お話しのとおり、私も先般、日本・EC閣僚会議に参加してまいりましたけれども、やはり日本の企業の投資というものにつきましては、ヨーロッパ各国ともかなり期待をされておられるというのもまたこれ実態でございます。不破先生、今数字をおっしゃいましたけれども、我が国の海外投資の数字からまいりますと、アメリカの二五%、ドイツの二〇%に対しまして我が国は六%ということでございますので、必ずしも海外投資、進出というのは非常に多いということの、国際的に見てそういう数字だということは言えないと思うのです。  ただ、委員長おっしゃいましたように、この面に対して雇用の深刻化あるいは技術開発面での影響を通じた産業活力の低下、いわゆる産業の空洞化を引き起こす懸念があるのではないか、こういうお話でもございますが、企業の海外展開が現時点の雇用状況に悪影響を与えているとは考えられない。技術開発につきましても、海外事業展開の一方で、国内においてより付加価値の高い製品の生産という形で絶えざる生産技術の向上が図られているというふうにも考えておりまして、我が国企業の海外進出が産業の空洞化を引き起こしているというふうには私ども考えておらないわけでございます。  また、我が国製造業の海外生産比率を見ましても、先ほど申し上げましたような他の主要先進国に比して低い水準にとどまっているというふうに申し上げます。  また、先生からも今ございましたが、何か国内が苦しいから海外に逃げるというような、必ずしもそのようなお話でもございませんでしたけれども、逆に言いますと、一九八九年には六百七十五億ドル、対外直接投資でございますが、逆に一九九二年のこれは四月から十一月までの数字でございますが、二百三十億ドルというふうに逆にぐんと低下をいたしておるという数字も出ております。
  140. 不破哲三

    不破委員 これだけ日本経済が不況で悩んでいて、政府も一体になって内需拡大に当たっているはずなのに、通産行政だけが、だけとは言いませんが、ほかもおかしいかもしれないから、通産行政が全く逆の方向へ行っている。  それで、今森さんが言われたように、たしか二年ほど前の経済審議会の報告で、もう産業の空洞化の心配はなくなったという報告がありますよ。ところが、去年あたりから、各産業から海外進出の話が出るたびに、これはマスコミにも出てますけれども、産業空洞化の心配がもう必ず出てきているんです、これは。ところがそれは、その産業空洞化というのは即内需の空洞化ですよ、その産業に関しては。だから、不況の中で内需拡大にあれだけ力を入れながら、通産行政としてはどんどん出ていけ出ていけと今までどおりのことをやっていたんでは、これは本当に政府が一体になって当たるということにならないと思うんです。  それからまた、各国で歓迎されていると言いますけれども、例えばヨーロッパでは、今自動車産業がヨーロッパも不景気でかなり人員削減なんかが出てきている。それが日本に責任を転嫁する動きがあるということが言われていますよね。つまり、日本の工場が乗り出してきたからヨーロッパの自動車産業がひどくなったんだという声が上がっているということは、既に各国から伝えられていますよね。ですから、これもそう簡単に、歓迎されている、歓迎されているというふうには言えないわけです。  例えば宮澤さん、この「生活大国五か年計画」、これにももう無条件で海外投資は促進というのが柱になっているんですね。私は、前川レポートの話がありましたが、私たちはそのときから心配していましたけれども、こういう時代になって、政府が言うように、総合経済対策の効果が出て、数カ月後には明るいというような展望なんかそう簡単には開かれないと私は思いますが、そういう時代であるだけに、従来、これはよしと思ってやってきた産業政策であっても、この時代に対応してやはり率直に再検討するぐらいの気持ちを持たないと、本当に真剣な政府の取り組みにならないと思います。そのことを要望したいと思います。  最後に、時間がもうあとわずかになりましたので、農業問題について一つだけ聞きたいのです。  ガットのウルグアイ・ラウンドで、かなり交渉がいろいろジグザグしておりますけれども、私は、ガットでアメリカやEC諸国のような農産物輸出国の間の取り決めがどうあろうと、日本の米に関して外国の輸入を認めない、この基本策はどんな場合でも譲るべきでないと思いますけれども総理の端的な見解を伺います。
  141. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 お答え申し上げます。  今お話にありましたような考え方で今日まで交渉をいたしてまいりました。もうくどく申し上げることはないわけでありますけれども、何といっても国土でありますとか自然環境、こういうものを守った上に、それぞれの土地の条件の悪いところでありますけれども、長いこと地方の経済のために大変役立ってきておるわけでありますから、そういうことを考えてみますと、さらに国会決議というものもございますし、国内産で自給するという基本で臨んでおります。
  142. 不破哲三

    不破委員 それを交渉面で一貫してほしいと思うんですけれども。ただ、私、その点で一つ心配なのは、一方でそう言いながら、政府が実際に国内で実施している農業政策が、どうも米の市場開放を前提にした方向に方向にと流れているように思えて仕方がないんです。  それで伺いたいんですけれども、去年農水省は、「新しい食料・農業・農村政策展開の基本的視点と方向」という、いわゆる農業新政策を発表しました。この中で、例えば平成十二年といいますからもう七年後ですね、七年後に焦点を当てて、日本の稲作は十ヘクタール以上の規模をいわば基準にするという方向を打ち出していますね。この日本の稲作十ヘクタール以上というのは、大体どういう根拠から出てきたのでしょうか。つまり、稲作を十ヘクタール以上の規模の農家を主力にするんだ、七年後からはというのが農水省の基本政策ですよ。どういう根拠から十ヘクタールということが出てきたのですか。
  143. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 基本的な考え方でありますけれども、農家の後継者がどんどん不足してまいります。したがって、他産業並みの労働時間を確保する、あるいは所得を確保する、他産業並みということでやってまいりますと、今おっしゃるような規模の程度のものをいたしませんと、そこへ到達をしないということであります。
  144. 不破哲三

    不破委員 それで伺いたいのですが、一体十へクタール以上の稲作農家というのは日本にどの程度あるのかということが問題だと思うのですよ。こういう農家があってこれを育てるんだと、こういう方向へということならわかりますよ。例えば田名部さんの選挙区のある青森県では、一体十へクタール以上の稲作農家というのは今どれぐらいありますか。
  145. 田名部匡省

    ○田名部国務大臣 全部をやろうというわけではなくて、可能なところ、意欲的に規模を拡大して、そしてやりたいというところをやろうということであって、何も土地のないところとかに無理にこれをやれ、こういうことではないので、意欲的な農家をいかに育てるか。企業的な感覚でやれる人たちをどんどん一方では育てる。しかし、どうしてもそれができないところ、あるいは中山間地、そうしたものはまた別途に考慮しようということでございます。
  146. 不破哲三

    不破委員 しかし、農水省の計画では、七年後に十ヘクタール以上の単一経営五万が日本の米の主力になると書いてあるのですよ。これが目標だと。  青森県には、農水省の調査によりますと、六万六千四百十三戸の稲作農家がありますが、三ヘクタール以下が六万三千八百六十二戸で、十ヘクタール以上の農家は十九戸しかないのですよ。つまり、ほとんど例外しかないんですね。  宮澤さん、広島で御存じですか。広島では、五万八千六百四十戸のうち五万八千五百三十九戸、九九・八%が三ヘクタール以下ですよ。それで、十ヘクタール以上は四戸ですよ。  だから、もうそれぞれの選挙区で考えてごらんなさいよ。北海道と秋田以外はほとんどないんだから。そのない農家を、これを基準にしますというのでは、これは絵にかいたもちであって、まさに市場開放のために、今現実に農業を担っている農家を全部対象外に置くという政策がどうしても出てくるのですよ。本気でこれからの日本社会の中で農業を担える農家を育てようと思ったら、やはり現に農業をやっている農家の少なくとも主要な部分の経営が成り立つような方策を考えないと、これは私は、農業を守るということを言いながら、実際には大部分の農家を切り捨てることにしかならない。これが実は市場開放に備えての農業政策を、一方でウルグアイ・ラウンドを守る守ると言いながら、国内でやっているんじゃないかという心配をする一番の理由なんです。やはり現在の日本の農業を担っているのがどういうタイプのどういう農家であるかということから出発して、その農業が成り立つように政策をやってこそ日本の農政になるのじゃないですか。  今、ヨーロッパでも家族農業の見直しということが言われていまして、日本よりは比較的穀物農家は大規模なんですけれども、それでも最近の統計を見ますと、小規模農家の比重がだんだんふえていますよね。だから、あのような本当に図式的な仕事をやるのではなしに、やはり現実の農家が求めている要求にこたえる農政をやらないと、本当の地に足のついた農政にならない。私は、農水省だけでなしに、この問題は総理自身がいろいろな点で交渉に当たられる問題ですから、この点で総理考えをお聞きしたいと思うのですが、いかがですか。
  147. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 私は、昨年農水省でつくられましたいわゆる新計画、基本的に考え方はこれでいいのではないかと、支持をしていきたいと思っておりますけれども、なお御指摘の点はよく自分も勉強してみます。
  148. 不破哲三

    不破委員 以上、幾つかの問題を取り上げましたが、やはり私は、今の日本の政治がぶつかっている問題を考えるときに、企業献金の問題を言ったのは、やはり政治の主役がそういう全力のある大企業主役じゃいけない、国民が主役という形で政治をやらないと、経済の問題も農業の問題も平和の問題もうまくいかない。そこに思い切って政治を転換するのが今の日本で求められている改革の方向だと思いますので、そのことを最後に申し上げまして、質問を終わります。(拍手)
  149. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  150. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党を代表いたしまして、目下厳しい経済環境にある我が国の経済問題、そして昨年から引き続きの政治改革の問題、外交問題として日米、日ロの関係について政府の見解をただしたいと思います。  まず最初に、経済問題でございます。  いわゆるバブルの崩壊がきっかけとなって始まりました今回の複合不況は、時がたつにつれまして実体経済にも影響が及ぶ今や極めて深刻な事態に立ち至っております。今さら言うまでもなく、毎日のように報道をされます景気の実態や先行きを示す各種の経済指標は、従来にない異常値が相次いていると言っても過言ではありません。政府はこの景気の現状を一体どう見ているのか。昨年は、御承知のとおり、三・五%経済成長目標をできるできると言い続けながら、暮れになって一挙に一・六%成長という下方修正がなされました。これは少なくとも結果的には経済運営の失敗でございまして、その失敗はイコール政府の景況観の甘さ、実体経済の分析の甘さ、そしてまた、それがゆえに後手後手になった経済政策等々に起因するものであると思います。いわば政策不況と言ってもいい一面があるのではないか。  そういう意味で、昨年の轍を踏まないという観点から、政府は現時点において景気の実態をどう見ているのか何が問題なのか、そして今後の経済の見通しをどのように展望しているのか。いわばいつごろマクロ経済は明るくなっていくのか、これは一番国民が知りたいところです。その点について簡明にお答えいただきたい。
  151. 船田元

    ○船田国務大臣 米沢書記長にお答えをいたします。  今書記長が御指摘をいただきましたように、我が国の経済は現在調整過程にありまして、引き続き低迷をしている、これは言うまでもありません。特に需要面におきましては、個人消費、これが低い伸びとなっております。住宅建設は回復の動きは見られるわけですが、設備投資は製造業を中心にかなり減少をいたしております。公共投資は堅調に推移をしております。産業面を見ますと、在庫調整の動きから鉱工業生産は停滞傾向で推移していまして、企業収益は引き続き減少をいたしています。企業の業況判断、これも減速感が続いております。なお、雇用面につきましても、生産の停滞傾向等を反映した動きが続いておりまして、有効求人倍率はさらに低下をしているわけであります。  それから、今回の景気動向に非常に特徴的なのは、先ほど御指摘をいただきましたように、株価と不動産価格の大幅な低下ということがあることは間違いありません。金融機関の不良資産の増大による内部蓄積の減少から、金融機関の融資対応能力が低下をする、あるいは金融システムの安定性の問題への懸念を生むということがありまして、それがまた実体経済に影響を与えている、こういう状況でございます。  政府としましては、このような状況が進展をして、これ以上国民生活に悪影響を及ぼすことがないように、適切かつ機動的な経済運営に努めることが重要である、こう考えております。  これに基づきまして、私どもとして、昨年三月に緊急経済対策、昨年八月には総額十兆七千億円規模の総合経済対策、そして平成五年度の予算におきましても、公共投資の着実な実施を初めとして、景気に十分配慮した予算編成をさせていただいているという状況でございます。こういうことによりまして、私ども政府の投資額というのは、平成四年度の補正後の実績見込み額に対しまして、五年度では九・五%増と相当な伸びを見込むことができるわけでございます。こういうことによって公共投資が切れ目なく執行される。このことを通じて、現在調整過程にある我が国経済は、五年度前半にかけては公共投資や住宅投資が引っ張っていくという形で成長が見込まれまして、こうした中、個人消費、設備投資についても徐々に回復に向かっていくということが見込まれます。そういうことによって、五年度後半には我が国経済は国内民間需要が主導するという形でインフレなき持続可能な成長経路へと移行していく、こう期待がされるわけであります。私どもとしては、平成五年度の国民総生産の実質成長率は三・三%程度になる、このように見込んでおります。  以上でございます。
  152. 米沢隆

    米沢委員 ことしの後半ぐらいには明るい見通しが立つという話でございますが、いろいろと実業界の皆さんの話を聞いたときに、ことしの後半、いわば夏ぐらいから明るくなるだろうと言う人はパーセントにしてはかなり低いものではないか。そういう意味では、政府の経済政策、経済成長目標というものを余り信用されていない。ここが逆に今、不況の最大のポイントではないか、そう思うのでございます。  政府は、今もおっしゃいましたように、九三年度の実質経済成長率見通しを三・三%、名目で四・九%成長するという御判断のようでございますが、先ほど申しましたように、民間の調査機関の予測から比べたらかなり高いものでございます。同時に、IMFなどの国際機関も、世界経済全体の回復のおくれを指摘する中で、日本の成長率見通しを二%台に下方修正したということは御案内のとおりでございます。  例年、成長見通しを抑えるように求める大蔵省が、今回は高く設定するように働きかけたと仄聞するわけでありますが、それは、赤字国債を出さないため、税収をできるだけ大きく見積もるためだとも言われております。これが本当だとするならば、まさに財政の論理を取り繕うための成長率の設定でございまして、そういういいかげんな成長率を政策目標に、政府目標にして、そしてそれが達成できる、できない、逆に議論することすらおかしいのではないかという気さえするのでございます。  私は、総理は三・三%成長というのはそう大きな数字ではない、こうおっしゃっておりますが、あえて三・三%成長実現のための、いわば不況脱出のためのシナリオをどう書いているのか、このことをもっと具体的に教えていただきたいと思います。  と同時に、昨年も三・五%成長できるとずっと言い繕いながら、結果としては年末に一・六%と半分に下方修正する。一体、そういう経済政策、だれが責任を持っておるのかということでございます。ただ、残念でした、一・六%に下方修正しますということだけで終わるようなものであったら、経済成長率というのは一体何なのだという議論にさえなるんではないか。私は、この三・三%の経済成長目標というのは、達成できなければ総理は腹を切るぐらいの気持ちで経済運営をしていただくというぐらいの重いものでなければならぬのじゃないか、こう思うんですが、御答弁いただきたい。
  153. 船田元

    ○船田国務大臣 今、米沢書記長、るる御指摘をいただきましたが、まず、平成四年度の当初の経済成長の見通し三・五に対して一・六であったあるいは一・六の見込みである、こういうことに対する問題でございますが、これにつきましては、先ほどもちょっと前にお話をしたわけでありますが、今回の経済不況、従来の在庫のサイクル、こういうことでの一般的な好不況、こういうことに加えまして、やはり資産デフレ、資産価値の下落ということが実体経済に非常に大きな影響を与えている。これは、我が国が経済安定成長を行いましてから初めての経験であるということもございまして、なかなかその見通しに困難な面はあったということはぜひ御理解いただきたいと思います。  しかし、そういう中で、私どもとしては、例えば月例経済報告における表現の問題とか、できる限り実態に即した把握を心がけてきたつもりでございまして、この点につきましては今後とも実体経済に即した、そして経済運営におきましても誤りなきを期していきたいというふうに感じております。  それから、OECDやIMFが平成五年度のといいますか、これは外国機関でございますから暦年ということで計算を、見積もりをしておりまして、私どもの経済見通しは会計年度でやっておりますんで、若干のずれはございます。しかしながら、OECD、IMFが二%台、しかもその前半、こういうことで数字をはじいておるわけでありますけれども、これについて一言だけ申し上げますと、私どもの三・三%というのは、過去、まあ昨年の八月における総合経済対策、そして今度の平成五年度の予算編成においても、景気に十分に配慮をした、そういう予算編成をさしていただいている、これが実体の経済に一日も早く影響が及ぶようにということで最大限の今努力をしているわけでございます。  そういうことを盛り込んだ上で、この三・三%は決して達成不可能な数字ではないということで、あるいはまた政策努力も含めまして盛り込んだつもりでございますけれども、OECDの数字などでは、果たしてそういう私どもの総合経済対策の効果、それから九三年度予算の内容が十分にあるいは適切にこの数字の計算に織り込まれているかどうかということを考えますと、若干、私どもとしては完全には織り込んでいないんじゃないかという点は指摘できるんではないかというふうに考えております。  いずれにしましても、私どもとしては、今後さらに経済の実情ということを十分に把握をしながら、誤りなく機動的な財政運営をやっていきたい、経済運営をやっていきたい、こう考えております。
  154. 米沢隆

    米沢委員 昨年が昨年でございましたから、それなりに学習効果を積んでこれからの経済政策に生かされるとは思いますが、総理、ちょっと眠そうですが、三・三%成長ができなかったらどうしますか。
  155. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほどから経済企画庁長官が説明をしていらっしゃいますとおり、政府としては、昨年の夏の総合経済対策以来、その延長線上でこのたびの平成五年度予算も組んでおりまして、これで経済の地合いはかなり変わっていく。そういたしますれば、家計における消費性向あるいは企業における、なかなか設備投資を大幅にとはまいりませんでしょうけれども、少なくとも在庫循環の、在庫整理の終了あるいは金融機関、証券市場等も多少ずつは整理がついておりますので、そういうことから、まあまあ経済が正常に動き始めれば、今までが低いのでございますから、マイナスというようなことを言っておるのでございますから、三・三%程度の成長というのはそう実は高いものでない、これはやっぱりやっていける、我々の目標として手の届くところにあるものと私は考えています。
  156. 米沢隆

    米沢委員 私はその責任を問うておるわけでございます。  総理は、野党の減税要求に対しまして、今後の経済情勢については細心の注意を払って見守り、機動的対応を怠らぬようにしたいと判こを押したように言っておられますが、この「機動的対応」というのは、これからの景気の動向いかんによっては我々の要求する減税の追加措置もあり得る、こう読んでいいのか。マスコミは一応「含みを残した」と好意的に書いてありますが、大蔵大臣はノーとおっしゃっておられますね。この「機動的対応」というのは、ただ従来どおりの公共事業の前倒しとか公共事業の追加とかあるいは第六次の公定歩合の引き下げ等々プラス減税という選択もあり得ると考えでいいですか。これからの景気動向いかんによってはですよ。
  157. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 先ほど申しましたような見方をいたしておりますから、まずこの予算が時期どおりに新年度から執行をさせていただくことができますれば、それで私はかなり経済の地合いは、昨年の夏以来のことがございますので、変わっていくというふうに考えておりまして、まずこの予算を成立させていただきまして、経済動向をやはりよく見ていきたい、こう思っております。
  158. 米沢隆

    米沢委員 まあ返答しにくいところではありましょうが……。  今年度の予算編成におきまして、先ほど経企庁長官の話にありましたように、厳しい財政状況にもかかわらず、景気対策重視の予算が組まれたということはよく承知いたしております。私も公共投資の増額は、景気の落ち込みや社会資本の整備がおくれている現状で、当然の選択であるとは思います。しかし、あえて申し上げるならば、果たして公共事業だけでこの複雑な様相を呈する今次の不況と景気の冷え込みから脱出し得るのかという疑問がやはり残るわけでございます。まあ高成長の時代あるいは景気循環型の不況であるならば公共事業、公共事業でそれなりに取り繕うことはできるかもしれませんが、今回の不況の複雑な様相からして、ただ公共事業だけをやれば何か景気がよくなるかのごとき政府の方針というのは一体どういうものだろうかという気持ちが私はするわけでございます。  まあ言ってみれば、景気対策に資する公共事業と言いながら、財政事情にかんがみ、結局公共事業は建設国債が発行できるから公共事業、財投を景気対策の観点からいわゆる公共事業に利用しやすいから公共事業というようなものがかなり前面に出て、何か総合経済対策と言いながら、結局財源の関係で公共事業が選択されたというふうにしか見えないような感じが私自身はしておるわけでございます。何か公共事業こそこの景気に対する乗数効果が高いんだ、高いんだと、何か古典的な経済理論に余りにも埋没し過ぎているんではないかという疑問なしといたしません。経済は心理学とも言われます。今回の不況はバブル崩壊後の、余り今日まで経験しなかった複合不況であるにもかかわらず、何か総合的にと言われるほど景気のために何をなすべきかという議論が余りなされていないのではないか。これは首相の、総理の総合調整能力の問題と同時に、経企庁の存在そのものが問われる話だと思っておるのです。どうでしょうか。
  159. 船田元

    ○船田国務大臣 これまでの景気対策が公共事業に偏り過ぎてはいないのかな、こういう御指摘だと思いますが、米沢書記長御承知のように、これまでの景気対策が必ずしも公共事業のみではないということは御理解いただけると思います。住宅建設促進それから設備投資の促進のためのこれは一部分の減税あるいは融資、さらには中小企業対策等を含めた総合的なものであるということは、少なくとも昨年八月の対策でも言えるわけであります。  さらに今回、先ほどもお話し申し上げたように、バブルの崩壊による資産デフレ、これが経済の実態に影響を与えているということにもかんがみまして、やはり金融システムの安定などについての対策なども総合的に私どもとしては行っているつもりでございます。  それと、先ほどいわゆる公共事業というものの乗数効果が高い、それがどうも古典的になってきたんじゃないか、こういう御指摘でございますが、私どもの経験則からして、また昨今の状況からしても、古典的でもうだめだということでは決してないとは思っております。特に、御参考まででありますが、建設資材の値上がり等も割合安定をしております。それから、建設業における労働力の需給状況というものも、これも公共事業を行う上において支障が生じるというような状況でもないということでございまして、公共投資の拡大ということだけを取り上げてみても、決して今の経済の中で消化できないということはありませんので、その点では十分公共事業についてもバランスのとれた対策をとっている、こう私は理解をしておるわけであります。
  160. 米沢隆

    米沢委員 確かに、投資減税だとか住宅減税とかあることはありますよ、項目としてはね。微々たる数ですよ。ほとんど公共事業、八割ぐらいを占めるんじゃないですか、総合経済対策といえば。これはやはり公共事業偏重の経済対策だと言っても言い過ぎではないと思うんです。いわゆる減税より公共事業の方が景気浮揚効果があるというのが政府の一貫した物の見方でございまして、まあいろいろと経済モデルなどを使って証明されるとか言って得意に説明をされておりますが、それは理論上のことでありまして、実際は、うそとは言わないけれども、うそもたくさんあると言ってもいいのが現実の私は乗数効果ではないか、そう思うのです。現に、ときどきの経済状況によって乗数効果なんか幾らでも変化するのでございますから、そういう意味では私は、古典的な、公共事業は乗数効果が高いというそういう論に埋没しておると言っても、これは言い過ぎではないと思うのでございます。  現に、昨年三月に緊急対策をやりました。前倒しをやったのですよ。前倒しをやったものはその年の十月か十二月ぐらいには効果が出てきておかしくないのじゃないですか。ところが、結局は下方修正で報いる。こんなのは大体、公共事業の前倒しがどれだけの景気浮揚のために乗数効果が発揮できたかと言われたら、実際そういう計算をして出してもらいたい、私はそう思うのでございます。  特に、減税は貯蓄に回るとよく言います。それは確かに一部は貯蓄に回るかもしれません。しかし、これだって、減税の時期や仕方を工夫することによって大分変わるはずだ、こう思います。貯蓄貯蓄と言って、何か貯蓄するのが悪いようにおっしゃいますが、景気のためには貯蓄が悪いというふうに聞こえるのでございますが、しかし、貯蓄されたものが日を置かずして消費に回ることだってあり得る。あるいは貯蓄したものが個人の資産形成に使われることもあり得る。あるいは貯蓄そのものは間接的には投資財源を大きくするという、郵便局に行っては財投をふやし、銀行に貯金したものは民間の設備投資に回ることでございますから、貯蓄そのものを単純に貯蓄というもので見るのではなくて、貯蓄イコール広範なプラス効果もあるというふうに見たら、私は、景気浮揚効果という観点からはもっと縮まっていく、乗数効果はかなり縮まっていくという性格のものだというふうに思うのでございます。  現に公共事業だって、御案内のとおり、用地や補償費割合というのは全体で、平均で約二〇%だと聞きます。都市計画分野では四〇%強だ、道路分野では約二五%ぐらいだと野村総研がはじいておりますが、これだって公共事業の貯蓄じゃありませんか。  その上、公共事業、公共事業とおっしゃいますが、今は北海道や東北、寒いところは実際できるのですか。確かにトンネルだとか箱物だとか配慮はされておるとは聞いておりますが、実際東北地方や北海道地方、公共事業を幾ら積んだって仕事できないじゃありませんか。沖縄から北海道に至るまで即効性があるのは減税しかないのです、これは。  そういう意味では、ただ単に公共事業を積み増して、公共事業が景気をよくするというメカニズムだけに頼って全体の日本経済を浮揚させていくというのは、やはり偏った物の考え方だと言っても私はいいと思うのでございます。まあ言うならば複合経済、複合不況というものに対しては、単に公共事業だけではなくて、その他の減税等の経済政策も視野に入れた柱を立てて議論をもっと詰めてもらいたいということを私は申し上げたいわけでございます。  特に、公共事業だけに頼るマイナス面はないのかという議論もこのごろ出てまいりました。例えば、総理大臣、あなたは食い物は何が好きですか。例えば、あなたが肉を好きだとする。しかしながら、肉が好きだからといって、肉だけは建設国債を使って買えるからといって、肉だけ食うておったら健康はおかしくなります、お医者さんは病人に対して、肉が体にいいと言いながらも、毎日肉ばかり食えとは言いません。必ず野菜を食わしたり魚を食わしたり、バランスをとって健康回復を私は図るはずだと思う。今、日本の経済が病んでおるとするならば、公共事業という肉だけ食わして、あとは肉だけ食っておればエネルギーが強いんだからいいんですよという議論はいただけない。野菜だって、エネルギー源は小さいかもしらぬけれども、野菜を食って初めてバランスのとれた景気回復というものになる、健康はよくなるということではないでしょうか総理
  161. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 米沢議員にお答えをさせていただきます。  私の方で今予算案でお願いをしておりますのは所得減税なしと、恐らく米沢さんのお話はいろんな形で所得減税をと、こういうふうなお話だろうと私は拝察をしまして出てきたわけでございますが、公共事業の中で、今お話がありました北海道の問題であるとか土地の問題であるとか、そういったものは一応除外して計算をいたしましても、やはり消費を直接にやるというよりは乗数効果というのは高いんだろうというのが、まあ我々の一般的な考え方であります。  また、もう一つ申し上げますならば、公共投資一辺倒で考えているわけではないのでありまして、先ほど企画庁長官から話のありましたような点もございますし、また、私は、今回のこの不況の問題というのは、やはり金融問題に非常に大きな影響が出てきている。金融や証券に御承知のようないろいろな問題が出てきている。バブルの崩壊、こういうふうな話でございますから、そういったものの影響というものを考えていかなければならない、こういうふうな形での対策も新しくとっているところでございまして、そういったことをいろいろ勘案いたしまして、先ほど企画庁長官からお話し申し上げましたような格好で、景気が着実な安定成長の軌道に乗せられるものと信じておるところでございます。
  162. 米沢隆

    米沢委員 先般の本会議における自民党の三塚さんの質問の中に、   今回の不況は、資産デフレの影響が強く、さらに成長を支えた産業の回復の兆しがいまだ見られないことなどから、土木中心の従来型の公共投資だけでは景気は回復しない可能性が大きいのであります。   我が国経済は、言うまでもなく民間主導であります。個人消費、民間設備投資、住宅投資に回復が見られない限り、日本経済の確実な成長はなく、平成五年度政府見通しの三・三%成長の達成は不可能であります。 見る人は見ておるのですね、これ。見る人は見ておる。  同時に、先ほどから乗数効果の話が出ておりますが、所得税減税の効果については、政府は、まあ私は故意に過小評価しておると思いますが、公共投資は一・三九、減税は〇・五三だと言っておられますが、民間の研究機関の試算によれば、所得減税は一・四三、公共投資は一・五六、少々差はありますが、見方によっては全然違う数字も出ておるということを申し上げておきたいと思います。  さて、次は、減税財源がないというのがまた政府の専売特許でございます。一言私は言わせてもらいたいのでございますが、今年度の予算編成においては、所得減税の実施という項目は検討の対象にもならなかったというのが事実ではないか。我々の要求に対して、財源がありませんの通り一遍の冷たい答えで実際今済まそうとされておる。問題は、大体やる気がなくて検討もせず、ある金はみんなほかに使って、ありません、当たり前の話だ、そんなのは。要するに、所得減税なんかする必要がないというところから始まって、政策の優先順位、まさにプライオリティーの置き方そのものに問題があった。彼我の差は大変な大きなものがあるという感じで私はおるわけでございます。  特に、赤字国債を発行したくないとこうおっしゃる。確かに赤字国債賛成だと言う者はだれもおらぬ。やっぱりできるならば赤字国債は出さないように努力しようというのが普通の人の考え方だと私も思います。健全財政の立場からいったらまさにそうだと思うんです。しかし、大蔵省が出しました資料なんかによりますと、九三年度予算の中に隠れ借金、いわば隠れ赤字公債みたいなのが三十七兆円もあるという。三十七兆円。これに国債償還積み立てを約十五、六兆やめているのを、もしこれ隠れ借金だとするならば、隠れ借金は約五十兆ですね。これは赤字国債と全然変わらない。隠れておるから逆に始末が悪いというのが、まさにこの隠れ借金約五十兆という問題ではないでしょうか。赤字国債発行したくないと言いながら、自分の都合のいいときは隠れ借金という形で赤字国債的なものをちゃんと予算の中に組み込んでおる。これは首尾一貫しないのではないか、こんなのは。 要するに、これは歳出への切り込みが足りない。行財政改革が中途半端なために毎年積み上がってきたのがこの隠れ借金であり、イコールそれは隠れ赤字国債というものに変化しているんではないか、そう思うんでございます。本格的な行政改革に背を向けて、減税実施には赤字国債しかないよというレトリックで減税要求をノーと言われる、まさに私は怠慢だと言っても過言ではないと思います。どうですか、総理
  163. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 今、隠れ国債というお話がございました。そういったことに努力をしてやらなければならないじゃないか、こういうことでございますが、これらがそれぞれのところにおきましていろいろな点で行き詰まってきたところでございますし、それを安易に特例国債によってやるという形でなくて、いろんな形で処理をする、また特定の目的に限ってだけやらせるというのがこの隠れ国債でございまして、詳細につきましてはなんでしたら政府委員の方から答弁をさせますけれども、そうした形でいろいろと努力をして特例国債を出さないような格好での処理をしたというのが実情でございます。おっしゃるほどの大きい金額にはなってないと思いますが、政府委員の方から答弁をさせます。
  164. 斎藤次郎

    ○斎藤(次)政府委員 いわゆる隠れ公債というのがどういうものであるかということについては、実は明確な定義はないわけでございます。私ども、従来からこれに関連しまして、予算委員会に「今後処理を要する措置」という形で、いわゆる赤字公債、建設公債以外に、今後政府としていろいろ措置をしなきゃいかぬ事項というようなものを一覧表としてお出ししております。その合計が先ほど来沢書記長がおっしゃった額でございまして、それについては私ども別に隠しているわけではなくて、予算委員会にもお出しをしておりますし、事あるごとにそういうものがあるということは御説明しておるわけでございます。  なぜそういう措置があるかといいますと、いずれも各年度のそれぞれのいわば予算編成の過程で、それぞれ制度の具体的な運用状況なんかを見まして、そういうものをやってもこれはその制度自体の運用に支障がないというような十分な検討を経て、ほとんどのものについては法律をお出しして、国会で十分に御審議をいただいて、その上で講じている措置でございますので、そういう意味で歳入歳出の穴を埋めるいわゆる単なる歳入補てん債という形での赤字公債とは厳然と違うものだという私どもは認識をいたしておりまして、今年度の財政制度審議会の答申にもそういうことがはっきりと明記してあるわけでございます。
  165. 米沢隆

    米沢委員 隠れ借金をつくらねばならぬのは、税収が不足しておる、同時に歳出の切り込みが足りない、行財政改革にメスが入っていないということの長期に積もり積もったものがそういう形で出てきておるというふうに理解するのが隠れ借金のすべての考え方ではないか、そう私は思います。  中長期的に財源の枯渇が予想される中で、また現に厳しい財政状況の中で、何も我々は安易に所得税減税を赤字国債でなんということを言おうというつもりはないんでございます。私は、今までの質問の中で、今度の不況の複雑な側面に照らして、そして不況が長期化が懸念されるという折から、景気回復の中で、公共事業だけではなくて減税という柱を打ち立てるべきではないかという意味で、減税の必要性を先ほどからるる申し上げておるつもりでございます。  私は、この際、この中長期的な財源の基盤の造成という観点から、再度思い切った行革の断行を求めたいと思います。  土光臨調以来今日の第三次行革審に至るまで、民間の知恵や力をかりまして、政府も行革努力を続け、補助金についても幾多のメスが入れられたということになっております。それは努力されたことも敬意を表します。  ただ、国鉄、電電の民営化以外目に見える大きな、本格的な行財政改革はなかったのではというのも、私は率直な思いが強いのでございます。すっかり何か行革の熱は冷めたような感じがします。新しく閣僚になったばかりでございますが、皆さんの中でいろんなところで物をおっしゃっておられますが、行財政改革を徹底的にやらにゃいかぬなんという声は余り聞いたことがない。今、民間はリストラクチャー等を中心にして、大変な死ぬ思いでやっておられるわけです。そういうものに比べたら、やはり官僚は官僚だという感じがするのが今の国民の冷めた見方ではないか、私はそんな感じがしてなりません。いまだ実質的に、実際は官僚が予算を持っておる、補助金の配分権も持っておるような感じがする。許認可権を通して、一部の業界や族議員や派閥の利益に奉仕するような官僚主権の行政というものに今どっぷりとつかり込んでおるんじゃないかという指摘をしてもおかしくないと私は思うのでございます。これがまた、いわゆる政治改革との関連でも今問題になっておると言っても過言ではありません。そういう意味で、私は、行財政の抜本的な改革、大胆な改革、それを宮澤政権の柱にしてもらいたいのです。  御案内のとおり、行政、財政にわたる地方分権は、言うばかりでほとんど進んでおりません。年末の、地方から動員かけられて、あの予算獲得合戦のすさまじさを見ても、いかに我が国が中央集権国家であり、いかにむだな出費を強いられているかがわかろうというものです。このごろ年末に人を集めるときには、各地方から名前まで、名簿まで出させて、おい、おまえ来ぬのか、ここの町長はどうしたんだと言うんだそうですね。一体これは何ですか、こういう行政は。予算編成のあり方にも本当はメスを入れてもらわなきゃならぬ。地方分権というのはみんなこれは言葉ばかりなんでございます。  補助金にもメスは入れたとはおっしゃいますが、あんな小さなところまで中央官庁が一々指図することないじゃないか、本当に。補助金の係だけでもみんな係長がおるという。県があり市町村があり、そして中央があり、地方の出先機関があり、このためにどれだけむだなエネルギーを使っているか。小さな補助金なんかみんなもう地方に、我々が言っておるように第二交付税みたいにして渡したらどうなんですか。中央の画一的な議論をするときには、それは中央の役割があるだろう。しかし小さな、この橋をどうするとか、がけをどうするとか田んぼの中に何かつくるなんという、そんなものまでみんな中央が支配しなきゃならぬ理由はどこにあるんだ、実際。いつまでたっても、何か明治国家が、明治の政府がそのまま引き継いたような、そういう国家というのが今の日本の本当は現状ではありませんか。  時代は変わった。地方自治体だってもう子供じゃないんです。もっと地方分権に力を入れてもらわねばなりません。補助金行政にもメスを入れてもらわねばなりません。本格的な中央省庁の再編、全然メスが入っていない。かなり行革審あたりでは提起されたはずだ。ところが、官僚が邪魔をしてだめたと言う。それこそ官僚主体の政治じゃないか、そんなもの。国民の主体の政治ではない。許認可の整理だって全然進んでいない。それぞれ行政が毎年毎年変わっていきますから、それなりに許認可権はできたりつぶれたりすることはあると思いますが、許認可権の整理削減が答申されてからも現にふえておるじゃありませんか。昨年の三月末で一万九百四十二件、一年間で二百二十五件もふえておる。一体これは何をやっておるんだ。行政事務の地方移譲、大幅な簡素化など、挙げれば切りがない。今日まで行革審などで指摘をされてきたものがいまだ手つかずになっておるものを集めただけで相当のものがあるだろう、それだけ相当の行政の怠慢が明らかになるのではないかそう思うのでございます。  定員を減らすと、補助要員だといってアルバイトを使う。みんなこうからくりをつくりながら役人はうまく対応しておる。私は、こういうところにやはり相当の冗費が出ていることを考えねばならぬ。そのために行革は言われたわけでございますが、一回熱は上がりましたが、今や下がっておる。そして、財源が足りない、国債償還もこれから大変だ、中期財政計画もうまくいかない、そう言いながら、行財政改革を徹底的にやろうという声が出てこない。これは私は大変大きな問題だと思うのでございます。総理考えることはないですか。
  166. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 これは本会議でも申し上げたことでしたけれども、やはりこの辺で考えを大きく転換しなければいけないと思いますのは、明治以来の富国強兵、これらはもとより中央集権でなければできなかったでありましょうし、戦後の戦災復興というようなこともそうでありました。が、今まあこうして、大体国民生活の基盤、シビルミニマムと言われるものはもうほとんど全国に整ってきたわけですから、もう中央が余りそういうことのお世話をしなくても、むしろ身近な行政は地方にやってもらった方がいい。ふるさと創生なんというものは、したがってなかなか人気があるのはそういうことであろうと思うのです。ですから、そういう意味で中央と地方との関係というのは、やはりここまで来ましたらもう百何年の伝統を離れて考え直した方がいいというふうに私も基本的には思っておるのです。  それで、行政については権限の移譲というようなことができる、何とかかんとか努力をしてやりつつあるのですが、財政の方、財源の方、つまり行政と財政、行財政をもう一遍中央と地方とで再配分してみるぐらいでありませんと、やはりなかなか本当のことはできないのだろう。しかし、それはもうおっしゃるように大変な実は事業になりますから、すぐにそれが財政的に効果があるとかいうことを考えずに、もう少し将来に向かって地方と中央の関係をはっきり行政面でも財政面でも見直そうではないか、そういう百年余り持ってきた課題じゃないかと思いますが、そういうふうに私はやはり考えています。考えていますが、このことは大変大きな仕事になる。  今の行革審でも、実は政府の役割の見直しということを課題としてお願いをしておるのでございますけれども、絶えずそういうことは一生懸命考えておりますけれども、非常に大きな仕事だと思います。
  167. 米沢隆

    米沢委員 大きな仕事だからどうしようというんですか。何か、大きな仕事だから大変難しくてできませんというふうにしか聞こえない。  総務庁長官、新しくなられたばかりでございますが、そういう意味では、内閣の中であなたが行政改革のいわゆる旗振り役になってもらわなければいかぬ、頑張ってもらいたい。決意を一言聞いておきたい。
  168. 鹿野道彦

    ○鹿野国務大臣 まさにただいま米沢書記長からの御指摘の点は、最も重要な課題だと思っております。今日までも臨調、行革審の答申に沿って着実なる成果は上げてきたところでありますけれども、これから推進をしていかなきゃならない地方分権等々の問題、いわゆる国から地方へ、そして官から民へと、大きな柱がまだまだ残っておるわけであります。  ただいま行革審でも、総理から申し述べられたとおりに、いわゆる政府部門の役割の明確化あるいは縦割り行政の弊害をどうやって除去していくか、こういうふうな問題に取り組んでいただいて御審議をしていただいているわけでありますが、私どもといたしましては、今日までの行革審の答申に沿って平成五年度の行革大綱も昨年決めさせていただきましたけれども、着実に成果を上げていくべく、まさにこれからが行政改革重要なんだ、こういうふうな認識のもとに、国民の皆様方から理解をいただきながら、御支援をいただきながら、この行政改革という大きな課題を推進をしてまいりたいと思っております。
  169. 米沢隆

    米沢委員 ぜひ全力を挙げて頑張ってもらいたいと思います。  例年、行革大綱等をつくって一生懸命やっておると。確かにそれは行革という名前であるかもしれませんが、それは当たり前のことでございまして、毎朝起きて飯を食って、掃除をして洗濯をするぐらいのものでございまして、今私が申し上げるのは、部屋の移りがえをしたり、物を切ったり、物を捨てたり、そういうものをするのが抜本的な行政改革だという観点で、鹿野総務庁長官の健闘を祈りたいと思います。  ただ、今、御案内のとおり第三次行革審におきまして、新聞報道等によりますと、例えば特殊法人の再編合理化を打ち出したい。住宅・都市整備公団の民営化、日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団の統合、国際観光振興会の廃止、かなり意欲的なものが出ておりますが、本当はこういうものが、答申を受けたならば必ず実行されなきゃ意味がないんですね。しかし、答申する方はもう疲れておる。言うけれども何もしてくれない。実際、これが今までの行革推進のあり方ではなかったのか、そう私は思うのでございます。そういう意味で、こういうものをある程度皆さんの責任とか歯どめみたいな感じで本当は心の中に持ってもらわないと、ああ私のときはちょっと無理でした、やったけれども無理ですといって流れていったら、行革なんか一向に進まない。  私は、そういう意味でぜひ、大内委員長の代表質問でも申し上げましたが、新行革五カ年計画をつくってもらいたい、場合によっては、二十世紀末までの目標を持った新行革七カ年計画をつくってもらいたい。確かにこの中には金目にならぬものもたくさんあります。しかし、金目になるものもたくさんあります。そういう意味では、このような新行革計画をつくって、そこから出てくる金目のものは国債償還財源に振り向ける仕組みをつくった上で、私は、減税財源の短中期の減税国債を発行してもらいたい、そう思っています。赤字国債ではありません。  湾岸戦争のときに、御案内のとおり短期国債を発行されました。これは、石油税や法人税が必ず出てくることを前提にした短期国債でございました。私は、今度は、新行革五カ年計画を担保にして減税国債をつくってもらったらどうか。所得減税については、もし物価調整減税ならば二兆円以上、景気対策に配慮するならば四兆から五兆円の減税、それぐらいの中短期の国債をつくる。そのかわり、単なる赤字国債ではない。行革を一つの担保にし、あるいは決算剰余金や一般の歳出見直し等々、臨時的に出てきたやつはみんなそこにほうり込むような減税財源というものを国債でつくるというぐらいの踏み込みはあってしかるべきではないかと思うのです。総理大臣かな、大蔵大臣かな。
  170. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 行政改革を推進しなければならないことは、政治家として当然の私は仕事だと思いますし、いろいろな今御提案がございました。しかしながら、私は、行政改革の問題とそれから財源の問題というのはやはりいろいろと考えが違うんだろう、こう思います。必ずそれが結びついてどうだという話にはすぐにならないんだろう、こう思っておりますし、したがってそれを担保にしてというのは、どういう形で担保にするかというのは非常に難しい、私は正直申しまして難しい問題であろう、こう思っておるところであります。  そういった意味で、今やりますと、私が思いますのに、かって赤字国債を発行せざるを得なくなったときのことを想起するわけでありまして、そのときだって、最初は十年の償還で必ず返済をする、こういうふうな話でありました。しかしながら、やってみたらなかなかできなかったというのが過去の歴史でありますから、その辺までやはり考えてやらなければならない。単に私は今こういうふうにしてやるというよりも、これは米沢さんよく御承知のとおりでありまして、そういった国債の残高をふやしていくということは、後代あるいは私たちの子や孫にいろいろな負担を残すことであります。今でも二〇%の費用を税金の中で負担をしておる、さらにまたその負担をふやすということは、子や孫に対して顔向けできなくなるんではないかということを考えて、私は申し上げておるところでございます。
  171. 米沢隆

    米沢委員 最初、大蔵大臣はちょっと異なことをおっしゃいました、行政改革は金の問題じゃないと。しかし、金の食いやすい体質というのはあるでしょう。金の食いやすい体質を金の食いにくい体質にすることがまさに行政改革です。金そのものじゃありませんか。入ってくるものをどうそれで対応するか。金を食いやすい体質ならば、百円あっても足りなくても、金を余り食わないような行政体質になっていったならば、百円で足る、五十円でつりが来るかもしらぬ。私は大蔵大臣としてそれは不見識だと思うな、そんな言い方は。  さて、宮澤総理は二十六日の本会議で、生活大国構想の実現に関連いたしまして、九四年度、平成六年度に、税制、累進税率の緩和等々、税制などのいわゆる高齢化社会の国民負担のあり方もそろそろ考えなければいかぬから、幅広い視点から検討したいというふうにおっしゃっています。これは一体どういう意味なのか。税制改革、あの累進税制を緩和したい、簡素化したいというだけの税制改革なのか。  しかし、高齢化社会の国民負担のあり方もそろそろ考えにゃいかぬということは、来年は御案内のとおり年金改革等がある。国庫負担をもっとふやしてくれという話もある。そういうものを含めて、例えば消費税が議論されたときには、高齢化社会に対応するためにも必要だ、国際化が進展する中でも消費税が必要だという議論がなされました。結果としては減税優先の形でおさまりまして、そのときは高齢化社会のために消費税を使うという話はなかった。この平成六年度の、今おっしゃっている税制改革というものは、いわゆる最初に消費税が導入されて意図された高齢化社会への対応という、その歯車が動き始めるような税制改革なのかどうか、その真意は一体どういうところにあるのか、総理の明確な答弁を聞きたい。
  172. 林義郎

    ○林(義)国務大臣 税制改革の問題につきましては、私はいろいろ議論があると思います。かつて税制の抜本改革をやりまして、大幅な所得税、法人税の減税をやりました。それに引き続きまして消費税という形でやったのも、所得、資産、消費につきましてのバランスのとれた税制改革をやっていこう、こういうことでやってきたところでございます。  私は、現在のところそういった形でやってきておりますが、もう一つ申し上げますならば、二十一世紀に来るであろう高齢化社会に向かいまして、どういった負担をしたならばよろしいかということを考えていかなければならない私たち責任があるだろう。ちょうど平成七年度におきまして、年金制度の一元化等々の問題もございます。私は、その問題がいろいろと御議論される、またそういったときの問題は、やはり税制改革の問題について、税をどうあるべきかというようなことについての議論をすべき一つの時期ではないかなあと考えておるところであります。  ただ、先ほど申しました基本的な問題がございますから、そういった基本的な問題どこの問題をどう組み合わせてやるかというのは、さらに検討してまいらなければならない問題だろうというふうに考えておるところでございます。
  173. 米沢隆

    米沢委員 次は、政治改革の問題について御質問をいたします。  去る一月十三日に、東京第一検察審査会は、佐川献金に係る金丸氏の量的制限違反並びに被疑者氏名不詳の旧竹下派議員六十数人の量的制限違反に関しまして、検察の捜査が厳正かつ十分に尽くされたとは言えないとの理由で、東京地検の不起訴処分を不当とする議決が行われたことは御案内のとおりです。後藤田法務大臣は、さきの本会議でその件について、再捜査中であるということを改めて明らかにされました。この際、国民検察不信を払拭するためにも、全力を挙げて頑張ってもらいたいと思います。  この東京第一検察審査会の議決の理由は、私も国民の実感そのものだと思いますし、裏を返せば、今回の佐川事件の捜査に対する検察不信のなせるものだと言っても私は過言ではないと思います。法務当局はこの事態をどういう感想を持っておられるのか。  この一連の佐川急便疑惑解明に当たって、今回ほど検察不信の声が上がったことはありません。検察は法に照らして厳正に捜査したとおっしゃっておりますが、結果はじくじたるものでございまして、検察審査会の議決でもわかるように、国民の納得を得るようなものではなかった。立件の前提になる証拠収集の難しさ、疑わしきは罰せずの大原則もありますが、何か陣容も含めて検察の体制に問題があるのではないか。法務大臣の見解を聞きたい。
  174. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 佐川事件に係る量的規制違反の捜査の結果、検察としては、証拠に照らして起訴するに足るだけの嫌疑がなかった、こういう結論を一応出したわけでございますが、それに対する検察審査会のそういった不起訴の処置は不適当であった、こういう検察審査会の議決があったわけでございますから、検察当局としては、当然、調べを再起をして、そして今日熱心な捜査を私はしておるものと、かように考えますし、同時にまた量的規制の方の問題は、これは公訴時効がもう切迫しているんです。そういうような意味合いからも捜査の結果の結論は急いでおるのではないかな、かように私自身考えております。もちろん、当然のことですが、検察としては法と証拠に照らして適正な私は捜査をやっているものと、かように考えております。  なおまた、今度の佐川事件の捜査について、検察に対する国民の不信感、これをどう思っておるんだ、こういう話でございますが、これは当然のことながら、国民立場に立ては、どうもやはり検察がもう少しやってもらいたいという気持ち、これは私は国民立場に立てはよくわかると思います。ただしかし、私ども立場に立って見ますと、やはり検察の捜査というものは、現行法の枠の中で、デュープロセスとでもいいますか、適正手続ということでやりますから、おのずからそこに捜査に制約があるんだ、この点はぜひひとつ理解をしていただきたい。そして、そういう制約の中では、私は、当然これは捜査官は一生懸命に仕事をやっているものと、かように考えておるわけでございます。
  175. 米沢隆

    米沢委員 この金丸事件の再捜査という問題は、時効の期限が近づいたというのが本当は問題なんですね。時効の制約もあり、不起訴処分が覆される可能性は極めて低いというような言い方ももう既になされております。いわば、時間との闘いだというわけですね。  そこで、この時効が成立するのは一体いつなのかと、いつが起算日になっておるのかという疑問が残るのです。さきの国会では、濱刑事局長の口からは一月中旬と聞いたような記憶があります。きょうはもう既に一月二十九日。最近では、世上では二月上旬だとも言われる。考えてみれば、五億の受け取りの日付は生原証言でも明らかにされませんでした。ましてや、配付された氏名不詳の受取人がいつ受け取ったなんというのはわかるはずがない。特定できません。特定できないのに時効成立の日が特定できるのか。そういう意味ではなぜ二月中旬なのか。実際のところは、どっちも特定できないのに、公訴の時効の特定日があるなんというのは、これはまたおかしい話でございまして、はっきりと時効成立の日を示してもらいたい。
  176. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 御質問のような捜査の技術的な点につきましては、局長が来ておりますから、それからお答えさせていただきたいと思いますが、先ほど私がお答えしたのは、政治資金規正法上の量的違反、これについてのことを申し上げたわけでございまして、今まだ、不記載の問題とかあるいはまた所得税法違反といったような問題は、これはこの公訴時効が来ているわけじゃありませんから、それらはまだ捜査を継続しておる、かように御理解しておいてほしい、こう思います。
  177. 濱邦久

    ○濱政府委員 お答えいたします。  今委員がお尋ねになっておられます公訴時効、これはもう委員御案内のとおり、犯罪行為が終わったときから進行するということになっているわけでございます。犯罪行為が行われたかどうかあるいはその犯罪行為がいつ行われたかということは、これはもう改めて申し上げるまでもなく、捜査当局が証拠によって事実を確定した上で判断するということになるわけでございまして、現在捜査をしている事件について、公訴時効がいつ完成するかということについて確たることを立ち入って申し上げることはいたしかねるわけでございます。  ただ、先ほど委員がちょっと御指摘になられました平成二年一月中旬云々というお話でございますが、これは本件、今委員が御指摘になっておられますところの金丸前議員が五億円を受領したのは平成二年の一月中旬とされているわけでございます。この五億円の分配に係る証拠関係等から合理的に判断いたしますると、さらに具体的なことは差し控えさしていただきますけれども、御指摘にありましたように、五億円の分配に関する量的制限違反事件については、公訴時効が極めて切迫しているものというふうに考えられるわけでございます。  もう少し申し上げますと、仮に、これは仮定の話でございますけれども平成二年一月中旬に受領した五億円がその後分配されて、一月末が行為のときというふうに仮に仮定いたしますると、この法定刑から申しまして公訴時効期間は三年でございますので、平成五年の一月末というふうに、仮に事実を仮定して申し上げますとそういうことになるということでございます。
  178. 米沢隆

    米沢委員 だから総選挙前が常識。しかし、選挙が済んだ後もらったというなら、またそこまで延びるということですね。  時効によりまして捜査は終結したといたしましても、この件に関し国会政治的道義的責任の追及は終わらない。そういう意味で法務省は、国会国政調査権の行使に協力するために、本事件の捜査経過と結果について国会報告されるように求めたいと思いますが、いかがですか。
  179. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私は、こういう事件について、国会での質疑応答につきましても、これはやはり私は誠意を持ってお答えしなきゃならぬ、こういう基本的な考え方を持っております。  それから同時に、国政調査権に基づきまして、それで資料の要求とかいろいろなことがあるわけでございますが、それらについても、私は、基本的にはできる限りは国会調査権に御協力をしなきゃならぬ、こういう基本的な認識で対応いたしたいと思いますけれども、何しろ私どもの仕事は、御案内のように、それぞれの人の名誉であるとかあるいはまた人権の問題であるとか、場合によれば裁判そのものにも影響するとか、いろいろなことがあるわけでございますから、やはり私どもが御協力できるにしても、それはやはり法令で定められておる範囲内で、許される限度でなければ到底応ずることはできない、こういう立場にもあるわけでございまするので、そこらの点はひとつ十分国会の皆さん方のお立場においても御理解をしておいてほしいなと、かように思います。
  180. 米沢隆

    米沢委員 私は、先国会に引き続き、佐川急便あるいは皇民党事件、また新たに今騒がれております金びょうぶ事件竹下さんとの関連等々、まだ疑念はたくさんありますし、政治的道義的責任を追及するという意味でも、既に我が党委員から予算委員会証人喚問を六人出しておりますが、その実現のために全力を挙げていただくように委員長にもお願いしたいと思います。次は、ちょっと大事な問題がありますので、時間の関係で、残ったら金びょうぶ事件について話を聞きたいと思いますが、まず外交問題の日ロの問題について、総理大臣並びに外務大臣に見解を聞いておきたいと思います。  まず最初に、東京サミットに政府は議長国としてエリツィン大統領を招請することを決めたのかそれとも来日は既定の事実となっているのか、それとも来ないこともあり得るのか。どうでしょうか。
  181. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 簡単に申し上げますが、決めておりません。白紙であります。
  182. 米沢隆

    米沢委員 ロシアのコズイレフ外相は、サミットへの参加と我が国との懸案であります北方領土問題を含む日ロ間の関係正常化問題とは関係がない、こうおっしゃっているそうだと聞いております。旧ソ連の経済支援等を話し合う東京サミット、招待される側の国が、招待する当事国の関係正常化問題とは関係ないと拒否して、日本との関係については、北方領土問題で日本が押しつけがましい態度をとらなければ我々は焦ることなく両国間で絡み合った問題を話し合う用意ありまるで支援は当然、来てあげると公式の姿勢をとっておることは、昨年九月の突然の来日中止、その後のロシア側の理不尽な弁明、これ見よがしの韓国並びに中国訪問などと照らし合わせますと極めて遺憾千万、非礼な態度だと言わなければなりません。政府はどう考えておるのですか。
  183. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 大変失礼な話でございますから、それはそれなりにもちろん抗議をしております。しかしながら、背景がいろいろございますし、ここで日本が腹を立てて感情的になることは一層日本にとってプラスになることはない、そういうように判断をいたしまして、我々は国際世論という問題もございますので、予定どおり十月末には東京で対ソ連邦、独立国家群ですな、CIS支援会議を実行するとか、あるいは国際社会においていろいろ協調を要請された問題についてはほとんど日本はそれに参画をして、ソ連に対しましてはやるべきことはみんなやっておりますから、言うべきことは今後とも言わしていただきたいと思っております。
  184. 米沢隆

    米沢委員 先ほどの外務大臣の答弁では、まだエリツィン大統領を呼ぶかどうかは決めていないとおっしゃいました。それで、今回の東京サミットは、我が国にとりまして、アジアの声を反映させるとともに、北方領土問題等日ロ間の関係正常化の問題について、主題のテーマではないけれども先進国首脳に理解を求めると同時に、我が国が日ロ交渉のイニシアチブをとる最高のチャンスだ。したがって、ロシア招請という外交カードはフルに、最大限に使わるべきだと私は思います。総理の所見はいかがでしょうか。  あわせて、サミット前のエリツィン大統領の訪日は実現する見込みがあるのかどうか。
  185. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 総理お答えする前に申し上げますが、まずエリツィン大統領のサミット前の訪日については、あるともないとも今の段階では確言できません。ただ、できることであるならば、なるべく早い時期に訪問をして、日ロ関係を正常なテーブルに着けることがよいのではないかというようなことで、日ロ両国の外相間で話し合いをしておる。  それから、エリツィン大統領の招請問題は先ほどのとおりでございます。日本は議長国でございますが、議長国の専断、専行だけでできるものでもございませんので、参加国の意見を聞いて総理大臣が最終的に判断されるものと思います。
  186. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 御発言の趣旨はよくわかっておりますので、ただいま外務大臣から申し上げましたようなことで考えてまいります。
  187. 米沢隆

    米沢委員 次は、大変これまた非礼千万な行為だと思いますが、エリツィン大統領は第七回の人民代議員大会開会中の昨年十二月の八日、我が北方領土を含む千島列島に自由経済ゾーンを創設することなどを骨子とするクリール諸島の社会経済発展計画に関する大統領令に署名し即日発効した、こう伝えられます。  その内容は、北方領土を含む千島列島全域のロシア帰属を確認した上でその全域を経済特区とし、地区当局が外国投資家に最高九十九年間土地を賃貸することができる、あるいは企業投資に優遇税制を設けるなど、いわば外国からの投資を促進し、千島列島を国際化してしまおうという企てだ、こう言われています。  昨年九月にも、香港の企業が、我が領土である色丹の土地を五十年間賃借する契約を南クリール地区当局と締結した問題がありました。このときは、日本政府の抗議やロシア外務省の良識ある行動でその企業が契約の実行を断念したことで決着をした事件があったわけです。  今回は、大統領令に基づいて政府公認で外国企業が千島列島の土地を賃借できるようになったわけで、まさに我が風との領土交渉を逆なでする行為だと言わなければなりません。特に、外国企業誘致に熱心だったサハリン州のフョードロフ知事に至っては、この大統領令の発効について、「日本政府は不満だろうが、私は気にしていない。この領土はロシアのものであり、日本人が現実主義者なら、あきらめたほうがいい」とまで語ったと産経の外電は伝えております。  どこに法と正義の支配があるのか。政府はこの件について、手はこまぬいてはいないだろうけれども、この現状をどう認識されてどう対応されているのか、明確な答弁をいただきたい。
  188. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 我が国の固有の領土である北方四島につきまして、ロシア側が第三国の企業に賃貸するというようなことは、いたずらに今後日ソ間の正常化の妨げになることはあってもプラスになることはない。そういう点で、我が国としては到底これは容認できないということは強くロシア側に申し入れをしております。  我が国といたしましては、どこまでも法と正義の原則に従って領土問題はこれを解決するということでありますから、それは額面どおり受け取っていかなきゃならぬと。そのタイミングその他については、いろんな政治情勢等もございますから、それらについては話し合いをする用意があることも伝えてあるところでございます。したがいまして、これについてロシア側が今後どういう態度に出てくるかは注意深く見守っていかなければならぬと存じます。
  189. 米沢隆

    米沢委員 その上、賃貸だけではなくて、この同じ人民代議員大会においては土地の私有を認める憲法改正案を採択した。すなわち、外国企業への土地の賃貸どころか、憲法は外国人への土地の売却をも容認したわけです。こうして北方領土に外国人所有の土地ができたり、外国企業との賃貸契約が九十九年も続くなんという姿が出現いたしますと、我が国の領土返還要求は単にロシアだけが交渉相手ではない、いろいろなものを交渉相手にしなければならぬようになってくるのは、これは当然でございます。いわば今回の大統領令によりまして、我が国の領土交渉は全く新しい局面を迎えたと言わなければならぬと思います。  実際今、外務大臣は抗議をしておるという話でございますが、打開の道はあるのか。北方領土返還要求の基本方針を変えていかねばならぬ、再構築していかねばならぬ事態に来ているのではないか。総理、見解を求めます。
  190. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これはやはり外交ですから、いろいろな駆け引きもあるでしょう。それから、一部には日本に対する世論の分裂をねらった揺さぶりだという見方もそれはあるでしょう。いろいろございますが、我々はやはり均衡のとれた、バランスのとれた形での拡大均衡といいますか、日ソ間の交流を深めていくということはもちろんやるつもりでございます。しかしながら、一方的なやり方に我々が全面的に従っていくということはやりません。やはり国内の世論を統一していくことがここへ来て非常に私は重要であると考えております。
  191. 米沢隆

    米沢委員 外交だからそれなりの駆け引き等があるのだと思いますが、しかし、今外務大臣のおっしゃるような方針でいく限り、かなり北方領土の返還というのは、既成事実をあっちにつくらせてしまうのですから、それを排除できない限り極めて難しい局面に立ち至るのではないか。私は、もう一回ロシアとの外交交渉においてそれなりのあり方を、かなり強い態度で臨まない限り、そう簡単にはいかないのではないかと外務大臣の答弁を聞きながら考えました。  また、昨年十二月十一日、現在ロシア議会内で最大会派となっております市民同盟のリーダーが、大統領令を支持すると表明した上で、日本は大統領令を利用して同地域に積極的に進出しロシアの国内世論を変化させるようにすべきだと、これまた今日までの領土交渉を形骸化させて日本を愚弄するに等しい、形を変えた恫喝外交とも言える発言だと私は思います。  人によっては、日本のエコノミックアニマル的な体質からして、この発言に応じてあちらに行って企業活動をしようとする人も出てくるのではないかという声もある。もしそういう事態になったときに、まさか日本の企業の進出を、どうぞ行ってよろしいですよと言うはずはないと思うのですが、外務大臣、どうですか。
  192. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これらのことにつきましても、我々としては今後日ロ関係を正常化し平和条約を結ぶことにどういうことが一番役立つか、そして我々の従来の主張を確保していくためには何がよいか。いろいろなやり方等につきましては、今後とも正確な情報をとりながら具体的に政府として決めて、それぞれ対処していきたいと考えております。
  193. 米沢隆

    米沢委員 非常に厳しい事態にあるという感じがしてなりません。そういうことも考え合わせますと、昨年十月、日本が議長国となりまして旧ソ連支援東京会議が開かれて、今冬の人道支援の実施など、今後の支援体制などが協議されましたけれども、先ほどより議論しておりますように、このような一連のロシアの動きを見ますと、我が国の努力に感謝するどころか、我が国の善意に砂をかけて報いるようなものだという感じがしてなりません。  また、ミュンヘン・サミットで決めました国際収支不足を補う二百四十億ドルの対旧ソ連支援の資金協力も、IMFが融資の条件とするロシアの財政赤字や物価を抑える経済調整プログラムが守られていないために、本格的な融資が今実行は見送られているのが現状でございます。いわば支援しようとする支援の前提条件が、自助努力がないために崩れてしまっていると言っても過言ではないのではないか。  そこで改めて政府にお聞きしたいことは、我が国の旧ソ連、とりわけロシア支援の論理と今後の方針に検討の余地はないのかどうか、これが一つ。  もう一つは、先進七カ国が国際的枠組みを実施してやろうとしております対ロシア支援、これはもう一年間前提条件が崩れたまま。そのとき計算した二百四十億は全然別の数字に置きかわっておるのかもしれない。自助努力そのものがほとんどなされていない、成功していないがゆえに、この対ソ支援は下手をするときれいごとを言いながらどんどん膨らんでいく可能性もある。私は、そういう意味で再度見直しの時期に来ているのではないか。少なくとも我が国の努力に感謝するという、そういう立場を要請するためにも、そんなのはちょっとやめるとやるぐらいの強硬手段が議論されるのが東京サミットの主要なテーマだと、私はこう思うのですが、腹を決めて答弁してもらいたい。
  194. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 日本がロシアに対して、北方四島が解決しないことを盾にとって協力しないんじゃないかという国際世論のあることも事実でございます。しかし、これにつきましては、私はこの間もミッテラン大統領を初めECの首脳部の方に、多くの方にお会いをして説明をちゃんとしました。やはり説明をしなきゃわからぬのですよ。我々は、やはりロシアが共産主義を捨てて、それで政治の改革を行い、民主主義、人権尊重、市場原理という我々と同じような体制に持っていこうというその努力、それは高く評価しているわけですから、したがってそれについて先進国が応援する程度のことは日本はやっているのですよ。やっているのです。ミッテラン大統領もパリ・クラブでもこういうふうなことをやってくれたというようなことをおっしゃいましたが、パリ・クラブというのは日本ですからね、あれは。ドイツとフランスと日本というのが大債権者ですから。アメリカとかイギリスとかは半分以下ですから、もっと。貸しありませんから、余り。冷戦ですから。我々は六十数億ドル貸しがあっても、それは棚上げしましょうということもやっておるし、一方、棚上げしながら新しいニューマネーも出しますという交渉もやっておるわけですから、交渉が遅いの、額が少ないとかおっしゃいますが、それは今言ったように、向こうの内部の体制ができない、だれがサインしていいかわからない、それじゃ貸しょうがないし、やはりいろいろ規則に合ったように直していかなきゃならぬ。そういうことでおくれたのも事実ですが、去年の末には一億ドルの人道援助も無償でCIS諸国に出しましょうということも日本はもうちゃんと宣言をして、もう準備をどんどん進めているわけですから、やることはやっているんだということは、国内の人も自信を持って、これは知ってもらいたいのですよ。  そのかわり、ドイツと同じことをやれと、それはできませんよということを私ははっきり言っているのです。なぜならば、ドイツはロシアに攻め込んだ国で、何百万か殺傷して、それでしかも領土の三分の一も今度は返してもらうという話になっているんだが、日本はロシアと戦してないのですから、ソ連とは。中立条約があったが破られて、戦争が、こちらが白旗上げてから押しかけてきて北方四島を占領して、そして六十万人も連れ去って、そういう事実があるわけですから、一言もごめんなさいも何もないんだからね、これは。だから、そういうものについてはドイツと同じくはできません。  しかしながら、我々はそれで賠償金よこせとかどうとかということはやらないから、せめて五六年の共同宣言のところへ一遍戻って、そこにプラスアルファをしながら進めていこうということをやっているわけですから、そういう点も粗筋を言うとそういうことであって、これはもう腹をちゃんと据えてやっておりますから、ぐらぐらしませんから、御安心ください。
  195. 米沢隆

    米沢委員 極めて重要な外交案件でございますので、今御答弁のように腹を据えて、そして日本の国益を損なわないように、ぜひ全力を挙げて頑張ってもらいたいと思います。  時間があと五分しか残っておりません。そこで、五分でおさめる質問をしたいと思います。  一つは、今度渡辺外務大臣は訪米される日程が決まったとか聞いております。クリストファー国務長官との会談が二月に予定されているそうでございますが、一つは、その会議の席上に——先般クリストファー国務長官も、日本とドイツの常任理事国入りについて賛成だ。国連が発足した直後の一九四六年の現実ではなく、一九九三年の現実に合わせるべき時期に来ておるという表現で賛意を表された。渡辺外相も至るところでその気持ちを発露をされておる。もし、この日米会談の首脳会談でクリストファー国務長官から、ぜひ常任理事国入りのために日本も努力をしてくれと言ったときにあなたはどう答えるのか、これが一つ。  国連のガリ事務総長が来月これまた日本に来られるそうです。そのときも、いわゆる「平和への課題」というガリ提案に対して日本の外務省はどうこたえてくれるのかという質問があるはずです。  この二点について外務大臣の答弁を求め、できれば総理答弁もあわせて求めたいと思います。
  196. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 総理お答えする前に一言申し上げます。  二月の十一日から十二、十三、十四というところで、金曜日が一つ週日なんですが、運休になりがちのところなので、国会のお許しが得られるならば、予算審議の最中でございますが、ぜひとも得られれば訪米をしてクリストファー国務長官との話もしたい。  どういう話をするかということについては時間がありませんから申しませんが、いろいろ今までの日米関係でやってきた問題について、外交の継続性というものもございますし、政権がかわったからといってそう急に変わられても困る話でもありますから、我々の立場立場として理解を求めていかなきゃならぬ、そう思っております。  したがって、ここで常任理事国入りの話が出たらという仮定の問題については、今はお答えするわけにはまいりません。  また、ガリ事務総長がおいでになります。これについて新しい国連の提案が、PKO等にもう少し武力を持たしたことを提案しているのが一部ございますが、その中身が、平和部隊の中身がよくまだはっきり具体的にわかっておりません。おりませんので、我々としては非常に興味を持ってその提案は受け取っておりますが、それにすぐ参加するどうのということでなくて、もっと大いにその必要性なりその効用なり、メリット、デメリットなり全部をもっと勉強していく必要がある、そういう考えでございます。
  197. 宮澤喜一

    宮澤内閣総理大臣 ただいま外務大臣が言われましたことに尽きておりますけれども、国連のいわば改組、この新しい時代に向かっての改組、殊に安保理事会についての改編ということは、昨年、具体的に加盟国の意見の一致がございまして、ことしの六月までに、我が国もそうでございますが、各国がそのための具体論を提出するということになっておるわけでございます。  我が国の基本的な立場は、確かに四十何年たっておるわけでございますし、安保理事会については一度だけ定数をふやしたことがございますけれども、今の世界の情勢をそのまま有効に機能できるようにやはり新しい考えをすることが必要であろうということは、これはもう基本的にそうでございます。そうでございますが、この話は必ずや国連の全体の規約に、国連の全体の改組に発展するに決まっておりまして、そうなりますと、終戦後にできました国連というものの全部のいわば見直しになる。それは極めて複雑であるし、かつ高度な政治問題になると思います。  また、安保理事一つとりましても、安保理事会の常任理事国になりたいと考えておる国、またこの国を推したいと考えている国、これだけたくさんの国家が加盟することになりましたので、当然かなり複雑な動きがございまして、やり方を間違えますと、安保理事会そのものがせっかく機能し始めましたのにまたその機能を損なうような結果になる心配もございますから、我が国としてはよほどその辺は慎重に事を進めないといけない。もちろん我が国が常任理事国になることについては恐らく非常にたくさんの国の支持があるであろうと思われるのですけれども、それだけで事が済みませんで、やっぱり全体を見直してあっちこっちの地域的な代表というようなことになっていくでございましょうから、どこかとどこかが組んで無理に事を仕上げちゃったというようなことではかえって後の安保理事会が動かなくなるという問題がございますから、その辺は慎重に考えていくべき問題であろう。  我が国に期待が寄せられている、恐らく我が国が常任理事国になるということ、そのことだけについて言えば、それはそれを期待する国は私は少なからずあると思いますけれども、そうかといって、今のような非常にたくさんの、しかも地域的な希望であるとかあるいは人種的な連携であるとか、そういうことに過ってインボルブされますと、大変に全体として難しい問題になる心配があるということを考えておかなきゃなりませんので、それで先ほど外務大臣の言われましたようなお答えになるものと思います。  それから、もう一つの問題は……(米沢委員「ガリ提案」と呼ぶ)ブトロス・ガリ提案というのは、事務総長が、このように世界あっちこっちからいわば引く手あまたのような状況になりました国連が、今のままではなかなか世界のニーズに合わないということから、先般ああいう提案をされました。そのイニシアチブをとられた意欲には私どもとしても共感を持ちますけれども、しかし、例えばあの中で、何と申しますか、いわば平和をつくり出すと申しますか平和を執行するといいますか、つまりあの中ではピースメーキングという言葉を御承知のように使っておりますけれども、今までの平和維持という感じと違うもう少し積極的な、いわば重大器等を用いてでも平和を招来したいという考え方は、従来国連にはなかった考えでございますので、その意欲はわかりますけれども、これはやはり国連の加盟国がみんなで議論をしていかなければならない問題であって、そのゆえに昨年渡辺外務大臣が、我が国としてもこれを新たな問題として検討すべきところだというふうに言われたわけでございます。  ガリさんがそういうことについての背景を今度来日されてあるいは言われることがあるかもしれませんが、私どもとしては、昨年外務大臣が表明されましたように、基本的にその意欲は買いますけれども、しかし、本当に国連全体としてそういう考えが支持を得ることができるのか、またそういうことが現実に可能であるかというようなことはよく考えなければなりませんし、いわんや、それともう一つ別の問題として、仮にそういうことに多くの賛成が得られたとしても、それが我が国として参画できる種類の行動であるかどうかということをもう一つまた別に考えなければなりませんので、ガリ事務総長からお話がありましたときには、そのようなことをお答えをしておきたいと思っております。
  198. 米沢隆

    米沢委員 残念ながら時間が来ましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  199. 粕谷茂

    粕谷委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。本日は、これにて散会いたします。    午後五時十分散会