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市川委員 公共事業が景気に対する効果ということはよくわかるのですが、しかし公共事業も、高度成長期と今では公共事業の景気波及効果というのは変わってきていると思うのですね。経済の専門家が大体おっしゃっていることは、高度成長期は一兆円の公共事業を打ては二ないし三の効果がある。乗数効果が二ないし三あった。二兆円か三兆円のGNPを引き上げた。今は一・四ぐらいの効果しかないんじゃないか。
また、ある研究所の分析によりますと、公共事業と減税の生産誘発係数あるいは労働者増加係数、この二つの
角度で分析している研究所の発表したデータを見ましても、生産誘発係数ではコンマ
幾つの違いで公共事業の方がある。コンマ
幾つの違いですね。一ポイント違うんじゃなくて、一四・
幾つというこの数字が公共事業の方が高いと。また、就業者というか労働者増加係数では、やはり〇・
幾つの係数で今度は減税の方が高いというデータも出ているわけです。
今は、公共事業をした場合に、昨年の三月前倒しをしました。また、総合経済対策で十兆七千億に及ぶ事業規模の、二兆円の公共事業費を昨年補正予算でやったわけですが、地方はこの消化不良を起こしている面もあるわけですね、消化不良。それから、業者に言わせますと、公共事業というのは最近魅力がなくなってきた。単価が安い。だから、そういう
意味での消化不良もある。それと、鉄鋼とか素材産業にはすぐ効き目はあると思うのですが、これが回り回って消費者の購買力をつけるという
意味においては、ちょっと公共事業の効果というのはいま
一つ回りくどい。むしろ、公共事業とあわせて減税という、消費者の購買力をつけることによって消費を喚起する、これをやはり
考えるべきだと思うんですね。
自民党の三塚政調会長は、恐らく予算成立後に補正ということをかなり示唆した発言をされているわけですし、あるいは武藤税制
調査会会長、
自民党の方も、まあ大幅な赤字公債を発行するという前提で減税を
考えないとということもおっしゃっているわけでして、当初予算を出したときに後で補正で減税というのは、これは不見識ということはわかっているんですが、そういうメンツの問題ではなくて、もう相当景気が冷え込んでいる、公共事業だけではちょっと無理じゃないのか。
この間梶山幹事長も、NHKの討論会で、果たしてこの当初予算だけで景気が回復するのかどうか、減税というものを
考えなきゃならないのかどうか。もし戻し税ならそのタイミングをいつにしたらいいのか、そういうことも勉強したいということを討論会でおっしゃっていましたね。ということは、頭にあるわけですよ、みんな。口に出すと、予算を御審議いただいているときに補正に言及するのはけしからぬと、こう言われるから言わない。だけれ
ども、皆さん頭の中では、今の不況はちょっときついぞ、予算を通しただけではこれは無理だ、やはり何かやらなきゃならないんだということは、みんな
考えているんですよ、
総理。
総理もお
考えだと僕は思うんです。
立場があるゆえに言えないという面もあろうかと思うんですが、私
たちも四兆円とか五兆円の減税という減税規模に踏み切るのに相当議論をしたんです。ちょっと無
責任過ぎるのじゃないのか、四兆円というのは。二兆円でいいんじゃないのか。いや、二兆円ではちょっと景気効果が弱いんじゃないのか。財源はどうするのか。赤字公債というのは避けたい。だけれ
ども、四兆も五兆もというお金になりますと、そう経費の節約とかほかの手段では金額が出てこない。
政府は、消費税を導入するときに、赤字公債の脱却ということを
一つの理由に挙げておりました。したがって、赤字公債を出すということは財政原則から見て決していいことではない。借金を後代の人
たちにツケを回すという
意味において、これを避けるべきだ。しかし、今公債残高がゼロであるなら、これは
政府の言い分も御立派ということで我々も納得するんですが、既に百七十兆に近いものをつくっちゃっているわけですね。建設国債が百兆、赤字公債が約七十兆というものをもう既に出しているわけです。出しているから四兆円や五兆円は足してもいいではないかと言うつもりはないのですけれ
ども、それほど
政府がきれいごとを言う資格はあるのかと言いたいのですね、僕は。今まで百七十兆の残高、赤字公債は七十兆近いものを出している。その
政府が、今景気が深刻で、財源を赤字公債に求めるのは財政原則から
考えて好ましくありませんと言うのは、
政府の口から言える資格は私は余りないのではないのか、そんなふうに思うのですね。
ですから、与野党のだれもがみんな、この予算が成立する、この予算だけではやっぱり景気を押し上げることはちょっと難しいのじゃないのかという危惧を持っている。そして、私
たちは、減税をやったらどうか。本来なら、野党の方で赤字公債を出して減税をやれなんということは普通は言えないわけですよ。だけれ
ども、やっぱり不況が非常に深刻だ。午前中るる申し上げたとおりでございまして、したがってこの際、赤字公債やむを得ないと。ただ、これが
制度改革の減税ですと赤字公債をビルトインしてしまいますので、やはり単年度にして歯どめをかけておく必要がある、戻し税。こんなことで今提案をしているわけですが、もし
国会の与野党で話し合いがついてやるということが決まれば、
総理、これは従わざるを得ませんよね、
総理は。どうですか。