○内閣
総理大臣(宮澤喜一君)
カンボジアに部隊、
要員を送ることにつきましての決定は、
国際平和協力本部長としての私がいたしたものでありまして、その責任は、私が負わなければなりません。今度のような、とうとい
犠牲を生じましたことを心から申しわけなく思っております。かかる上は、今後とも
派遣要員の
安全対策に万全を期しまして、
派遣の目的を達成いたしたいと
考えております。(
拍手)
次に、法案の
審議に当たって、
政府は故意に
事態を安易なものと
説明をしてきたのではないかというお尋ねがございました。
国連の平和維持
活動が行われるような場合は、このたびの
カンボジアがいい例でございますが、十何年という
戦争にうんで、何とか
戦闘はやめて和解をしたい、しかし、自分
たちだけではなかなかそれができないというようなことから、各国が仲介をする、あるいはそれについて意見を述べる。今度の場合ですとパリ協定でございますが、そういう中で、しかし、その後の平和を確かにするために
国連の平和維持が求められる、そういう性格のものでございますから、平和そのものが、もし自分
たちだけで国づくりができれば、これは必要のないことでございますので、そういう意味での平和の脆弱さがあるということを申し上げてまいりました。
しかし、その際、
国連の平和維持
活動は、武力を行使いたしましたのでは、これはまた
戦争になるわけでございますから、それでは平和維持ということにならない。むしろ、
国連の信頼と説得に基づく作業でございますから、これは本来、決して容易なものではないということは申し上げてまいりました。殊に、
我が国の場合に、海外における武器の使用ということは殊さら慎重でなければなりませんので、そういう意味での制約を
法律に置いておりますことも御存じのようなところでございます。
そういうような脆弱な環境の中でこのたびの平和維持
活動が行われました。不幸にして武装解除が完全に行い得なかったこと、また
選挙に一派が参画することを拒否しているということはまことに残念なことでございますけれども、しかし、ここで
国連の平和維持
活動をやり遂げまして、
選挙を行い、そうして
カンボジア人の
カンボジアの国づくりにつなげていくことが、やはり私どもに課された任務であるというふうに判断をいたしております。
派遣要員の万全を期さなければならないことは申すまでもないことでございまして、先ほども申し上げましたが、
村田自治大臣兼
国家公安委員長に先般
現地に行っていただきまして、
我が国要員に対する装備の
強化、
現地支援体制の
強化などについて、
政府としても
努力をし、
UNTACの
理解を求めたところは御
報告をいたしたとおりであります。
事態はこのようなことで、十分な武装解除が行い得なかった、またポル・ポトによる
選挙不参加ということがございまして、
国際社会が当初期待したとおりの状況でないことは残念でありますが、事実でございますけれども、しかしながら、かといって、もちろん全面的な
戦闘が展開されているわけではございませんし、クメール・ルージュ自身が、自分
たちはパリ協定を忠実に履行するということをつい先日も申しておるわけでございます。むしろ彼らの主張は、パリ協定を忠実に履行するならば、ベトナム人は排除されるべきである、なおベトナム人がたくさんいるというのがクメール・ルージュの主張のようであります。それから
SNCが十分に機能を発揮していない、もっとパリ協定の求めるようにすべきであるという、パリ協定の忠実履行ということをクメール・ルージュは言っているわけであって、基本的な枠組みがしたがって崩れているとは
考えられません。
UNTACの
活動についても、これを受け入れておるわけでございます。
そういう状況でございますから、平和五原則というものが崩れているとは
考えない。むしろ、勝手に
選挙参加を拒否するという行動が許されるならば、
パリ和平協定で求められているものはみずから放棄することになってしまうということを私どもは恐れておるわけであります。
先ほども申し上げましたが、
有権者の九割に当たる登録が行われておりますから、
カンボジア国民が概して
選挙を希望しておることは明らかと思います。また、
シアヌーク殿下自身も、クメール・ルージュを含めまして国民に暴力行為の自制を呼びかけるとともに、
選挙への参加を呼びかけておりまして、シアヌーク自身が、
選挙延期の主張には自分は同意できないということを言っておるわけでございます。
御指摘のように、仮に
選挙を延期をせよとおっしゃいましても、延期をすることによって何を新たに期待するのか。
選挙を放棄するということになれば、それはパリ協定の求めておる基本が
実現をしないということになるのではないかということを恐れます。
十三年間の戦乱を、
カンボジア人が自分の手で国家を再建するための
努力をいたしておるわけでございますから、我々がここで、
日本だけが撤収をする、そして眼前に迫っております
選挙を、いわば現実に行い得ないような
事態にするということが、我々が国際的評価を得るゆえんではないと
政府は
考えます。
なお、海外
協力隊や農業専門家の
派遣についてお話がございましたが、これらは
国際平和協力法の定めるところではなく、
カンボジアからの
要請に基づくものでございますので、その
派遣についてを同一の基準で判断することは適当でないように存ぜられます。
なお、
選挙監視
要員の安全確保につきましては、先ほども御
報告をいたしましたが、安全のための防弾チョッキ等々の整備、それから
我が国からの短波受信用のラジオの確保、それからタケオ州の自衛隊宿営地にはインマルサット等々を設置をいたしておりまして、緊急
事態の発生に対しましての万全の態勢をとることにいたしております。
なお、この
選挙が仮に行われた後、
カンボジアの情勢がどうなるかということにつきましては、その後、
憲法がつくられるというふうにパリ協定は想定をいたしておりますが、基本的に、したがって、そのような
努力は
カンボジア人の手で行われるべきものであると存じます。ただ、そのような状況がどう展開してまいりますか、
国際社会としては、いずれにしても、
カンボジア人のそのような
努力を引き続き
支援をしていくということが必要であろうかと存じます。それがどのような形をとりますかは、その
事態になりませんと、ただいま判断がいたしかねますけれども、いずれにしても、
カンボジア自身の自助
努力に
協力をすることは必要であろうと思います。
それから、モザンビークヘの自衛隊
派遣につきましてお話がございました。このたび本部員を設けましたのは、
我が国が委託されております
輸送の管理、ムーブメントコントロールというものにつきまして、やはり本部と常に連絡をしていかなければ
業務を有効に能率的に遂行し得ない、こういう観点から五名の自衛官の司令部
派遣の決定をいたしました。撤回をいたすつもりはございません。
それから、戦後処理の問題一般につきまして、
我が国としては、サンフランシスコ講和条約あるいは二国間の平和条約で一般的には処理をされておると
考えますけれども、慰安婦等々の問題もございます。我々の気持ちをいかなる形であらわすことができるかにつきまして、誠意を持ってただいま検討をいたしております。
なお、ガリ事務総長の提案されましたような、いわゆる
国連の平和執行部隊について意見をお求めでございましたが、重装備をもって平和を執行するというようなことは今まで
国連がいたしたことのないことでございますし、
国連憲章におけるその地位も実は必ずしもはっきりいたしません。ガリ事務総長がいろいろ問題意識を持たれておりますことは十分
理解ができますけれども、したがいまして、新しい問題としてこういう問題を検討することはやぶさかではございませんが、ただ、そのことは、
我が国がそのような行動に参加できるか否かということは全く別の問題であると
考えております。(
拍手)
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