○山口那津男君 私は、公明党・
国民会議を代表いたしまして、ただいま
政府より提案のありました
自衛隊法の一部を
改正する
法律案に対し、若干の質問を行うものであります。
この法案は、
海外における
災害及び
紛争などの
緊急事態の発生に伴い、
生命、
身体の保護が必要となった
在外邦人の救出を行うため、
自衛隊が
政府専用機などの
自衛隊機による
邦人の
輸送が行えるよう法
改正しようというものであります。
近年、
国際化の著しい進展に伴い、
海外で活躍する
邦人も六十万人を超え、また青年
海外協力隊、国際ボランティア
活動あるいはPKOへの参加など、
我が国の国際的な人的貢献
活動もようやく広がってまいりました。
他方、世界は冷戦の終結に伴って、これまで抑制されてきた民族問題、領土問題、ナショナリズム、宗教上の対立などによる
紛争が各地で表面化し、今後も
地域的な不安定
状況が続くものと
考えられます。
我が国は、昨年のPKO
協力法の成立によって、こうした
地域紛争等によって被害を受けた人やそのおそれのある住民などへの人道的救援
活動を行うことが可能となりました。
このような
状況の中で、
海外の
緊急事態において
生命、
身体の保護を必要とする
邦人の救出に当たって、その
輸送任務を行うため
自衛隊機を派遣することについては、その
趣旨、目的自体は基本的に理解できるものであります。しかし、
自衛隊の
海外派遣であることに変わりない以上、派遣に際しての基本的な原則を明らかにし、運用に当たっても慎重な配慮が必要なことは当然であります。私は、そうした観点から、
自衛隊機の派遣に関連して、以下の重要な諸点について
政府の明確な答弁を求めるものであります。
初めに、
政府は一昨年一月、
湾岸危機に伴う
避難民
輸送のために、現行の
自衛隊法に明確な規定がないにもかかわらず、
自衛隊法第百条の五第一項に規定する「国賓等の
輸送」の「等」に難民も含まれるとして強引に特例政令を定め、
政府の独断で中東への
自衛隊のC130
輸送機の派遣を決定いたしました。
公明党は、難民救出という目的はともかくとしても、
自衛隊法上明確な規定がないまま、特例政令というまことにこそくな
手段で、なし崩し的に
自衛隊を
海外に派遣しようとすることに強く反対いたしました。
結局、中東への
自衛隊機の派遣は、国民の強い批判と、
避難民をめぐる客観
情勢の変化等によって、
政府は
自衛隊機の派遣を断念したのであります。
今回、
在外邦人の
輸送任務の追加に当たって、特例政令ではなく、
自衛隊法改正という手続をとったことは、一昨年の反省の上からも当然の
措置であります。
総理並びに
防衛庁長官は、一昨年の特例政令による
自衛隊機の派遣決定について、現在どういう見解をお持ちか。また、
自衛隊の任務の法的根拠の重要性についてどう認識しておられるのか、まず明確な所見を伺いたいのであります。
質問の第二は、
在外邦人の救出について、
我が国はこれまで、「
在外邦人の救出または在外財産の保護のため、武力行使を目的として
外国に派遣することは許されないが、武力行使を目的としない、
避難民を
輸送するという、全く平和的な目的に限定すれば憲法上許される」としつつも、
自衛隊法上規定がないとして、むしろ
在外邦人の救出のための
自衛隊派遣には消極的で、民間等の
輸送手段に頼ってきたのが実情でありました。今回、方針を変更し、
自衛隊による
在外邦人の救出
輸送を行おうとする理由について
説明願いたいと思います。
また、過去の
緊急事態に際して、
邦人輸送に
自衛隊機を使用すればより適切な
措置がとれたと
考えられるケースがあったのか。あれば、具体的に伺いたいのであります。
第三は、使用する
航空機についてであります。
法案では、「
航空機による当該
邦人の
輸送」とあり、
航空機は主として
政府専用機の使用を
政府は
考えているようでありますが、法文上の限定はありません。
現在二機ある
政府専用機は、
平成三年十月十八日の
政府専用機検討委員会において、
防衛庁に所属することが決定したわけでありますが、
防衛庁所属とした理由及び法案においてなぜ
政府専用機だけに限定しなかったのか、お答えいただきたいのであります。
さらに、護衛のための
戦闘機等の派遣も将来想定しているのか、また、憲法上、護衛のための
戦闘機の派遣も許されると
考えているのか、この際、明確な答弁を求めるものであります。
第四に、
自衛隊機の実際の派遣に当たっては、
現地において予想を超える
事態や各種のトラブルが起こり得る可能性がありますが、場合によっては
紛争等に巻き込まれるのではないかとの危惧もあります。
昭和五十三年六月六日の衆議院
内閣委員会における
政府答弁では、派遣の前提として、当該
外国の同意の
必要性を述べておりますが、
政府は、
自衛隊機の派遣に当たっては、当該
外国の要請あるいは同意を得なければ派遣しないのかどうか、また、相手国から仮に安全の保障がなくても、場合によっては派遣するのかどうか伺いたいのであります。
政府のこれまでの
説明では、危険なところには派遣しない旨
説明しておりますが、具体的な派遣の原則をどこに置くのか、明らかにしていただきたいのであります。
また、
政府専用機の最大搭乗人数は三百五十人程度と言われておりますが、
輸送対象者は数名程度でも派遣されるのか、派遣の具体的基準があるのか、伺いたいのであります。
さらに、
自衛隊機の派遣の最終決定者は
外務大臣か、
防衛庁長官が、あるいは
総理大臣か、不明確であります。仮に国連等の要請により難民
輸送の任務を
政府専用機で行う必要が出てくる場合、
邦人輸送と競合する場合が
考えられ、その場合、
防衛庁だけでなく、
政府として統一した方針が必要になることもあり、私は、派遣の決定に当たっては、緊急の安全保障
会議や閣議を開き、
政府全体の責任において決定すべきであり、また、速やかに
国会にも
報告すべきであると
考えますが、
総理の所見を伺うものであります。
第五に、武器の携行についてであります。
邦人救出
輸送に当たり、基本的には武器を携行するのかどうか、もし武器を携行するとすれば、その目的、武器の範囲はどこまでか、また、武器の使用はいかなる
状況下で許されるのかについても明らかにしていただきたいのであります。
第六に、法案では、「
外務大臣から当該
緊急事態に際して
生命又は
身体の保護を要する
外国人として同乗させることを依頼された者を同乗させることができる。」とし、
外国人の同乗を認めております。しかし、この
外国人には相手国
政府の要人等も含まれると
考えられ、その亡命等に
協力することにもつながりかねず、
日本政府の
紛争介入といった新たな政治問題にも発展するおそれもあり得ると
考えるのであります。その意味で、この
外国人の同乗については、政治的に慎重な対応が必要であると
考えますが、
政府の所見を伺いたいのであります。
次に、現在
我が国は、昨年の通常
国会において成立したPKO
協力法に基づき、カンボジアのUNTACへの参加をいたしておりますが、PKOへの参加に対する国民とアジア周辺諸国の一層の理解を得る観点から、PKOへの参加や国際的な
災害・
人道救援活動、
海外における
邦人輸送などの
海外での平和任務については、通常の
自衛隊組織と区別された専門組織を設置し、日ごろより専門の教育訓練等を行っていくべきであると
考えるのであります。
現在、
防衛庁は防衛大綱の見直し作業を行っておりますが、新しい防衛大綱の中に、こうした
国際貢献のための新組織の設置を盛り込む
考えはないか、伺うものであります。
最後に、朝鮮半島の
情勢について伺います。
北朝鮮は三月十二日、核兵器の拡散の防止を求める国際社会の意思に背を向け、核拡散防止条約、いわゆるNPTの脱退を宣言いたしました。北朝鮮の核開発の疑惑は深まるばかりであり、
我が国の安全にも脅威を与えるものと強く憂慮せざるを得ません。
こうした中、去る二十一日、在韓米軍ロバート・リスカシ司令官は上院軍事
委員会の公聴会において、朝鮮半島
情勢について、北朝鮮の経済危機を
説明した上で「北朝鮮は、万策尽き絶望にかられて自己抑制がきかなくなったうえ、攻撃に走る可能性があり、米軍は懸念を強めている」と述べたと報道されております。
政府は今日の北朝鮮の現状をどう認識しているのか、また現在、米国を初めとする
関係各国の説得が続けられておりますが、今後の見通し及び
我が国としてこの問題にどう対応する
考えか、
総理並びに
外務大臣の所見を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
内閣総理大臣宮澤喜一君
登壇〕