○堀込征雄君 私は、
日本社会党・
護憲民主連合を代表して、自由民主党
梶山静六氏外二十三名提案の
政治改革関連四
法案について
質問いたします。
さて、言うまでもありませんが、相次ぐ
政治腐敗事件は、
国民の
政治に対する怒り、不信となってあらわれ、まさに
日本の
政治は危機的な
状況にあります。今や
政治改革の実現は、私ども
国会に籍を置く者にとって
国民への責務であり、是が非でも実現しなければならない命題であります。
今日、私どもは、戦後半世紀にわたって積み上げてきた体制を全面的に見直し、新しい
時代を展望し、切り開かねばならないときにあり、私どもは今度の
政治改革を通じて、腐敗と汚職の構造を断ち切るとともに、内外の課題に的確に対応できる
理念と理想に燃え、リーダーシップのある
政治を実現しなければなりません。
しかも、
政治腐敗の根深さは、
金丸事件で明らかになったように、公共事業を請け負う業界、業者がその請負額の一定額を
政治献金として、あるいは裏金として納めるという、あきれるばかりの
実態が明らかになったのであります。私どもは、こうした政官財癒着の構造を根底から変えなければなりません。地方分権を推進するとともに、
国会を
国民の目に見える開かれたものにする
国会改革など、課題は山積しています。このたびの
政治改革法案は、そうした戦後の
政治、経済、
社会全体の
改革の第一歩であることを確認し、どうしても実現しなければならないことを、まずともに肝に銘じたいと思うのであります。
さて、
自民党の
法案について幾つか伺います。
まず、
政治改革に対する姿勢と熱意についてであります。
政治改革をどうしても実現しなければならない課題としてこの
法案を
提出されたことと思います。しかし、そのためには、今日の腐敗
政治を招いたみずからの深い反省と、
改革のための自己犠牲の精神と、党利党略、私利私欲を超える高い
政治理念が必要であります。とりわけ、
政権与党として長年にわたって
政権を担当してきた自由民主党こそが、謙虚な立場に立って、
国民や
野党の声に耳を傾け、譲歩し、少数党に配慮する姿勢がなければ、
政治改革は実現しようはずもありません。
しかるに、自由民主党が今回
提出された
法案は、四
法案一括処理を前提とし、単純小
選挙区制を柱としております。みずからの議席が大幅にふえ、少数党は大幅に議席が減る
制度を持ち込むなどということは、当初から
政治改革を実現する熱意と
決意を持ち合わせていないと断ぜざるを得ませんが、いかが考えますか。(
拍手)
しかも、政府提案ではありますが、海部内閣のときに小
選挙区並立制を提案したのは一昨年八月のことではありませんか。わずか一年余りの間に単純小
選挙区制に変えた真意はいかなる事情によるものか、伺いたいのであります。
今日の
日本の
政治に対する
国民からの不信を思うとき、
議員自身が身を切る覚悟、身を切っても
改革を実現する
決意がなければなりません。にもかかわらず、五百の小
選挙区をつくって、
自分が長年培ってきた地盤にしがみつき、自己の議席、自己の利益だけを守ろうとする単純小
選挙区制を語ることは、
改革とは無縁の自己保身、自己利益のためのものと言わざるを得ないのであります。
政権党として、多数党として、真に
日本の
政治の歴史的
改革の実現を望むならば、あるいはまた真剣にこの時期を失してはならないと思うならば、まず党利党略、私利私欲を捨て去ることであります。すべての
野党が反対し、成立するはずもない単純小
選挙区制を取り下げることであります。
そこで、伺います。四
法案一括ということですから、単純小
選挙区制が通らなければ、せっかくの
政治政章が、そしてまた
時代の
改革が流産するということになります。この四
法案は、単純小
選挙区制が通らない限り、廃案にする
決意なのかどうか。たとえそのとおり廃案になっても構わないと考えているのかどうか。もしそうだとすれば、
提案者の
政治改革は見せかけのものであり、
国民を欺く以外の何物でもないと思いますが、いかが考えますか。
次に、小
選挙区制の
制度そのものについて伺います。
顔が見える、
政権の安定が図れる、
政権交代が起きやすいと主張されました。しかし、実際に
政権交代が起きやすいかどうか、詳細に検討されなければなりません。きのうの
答弁で、参議院の一人区の例をとって、小
選挙区制は
政権交代が起きやすいと主張されました。しかし、参議院の一人区での結果は、
昭和五十八年、第十三回
選挙、
自民党が二十四名、
野党二名の当選であります。
昭和六十一年、第十四回
選挙、自民二十三名、
野党三名、
平成四年、第十六回
選挙、自民二十四名、
野党二名という結果であります。たった一度、
平成元年の第十五回通常
選挙だけ自民三、
野党二十三と逆転しているだけであります。
つまり、一人区での
選挙結果は
政権交代が起こりにくい。圧倒的に
政権与党に有利である。仮に
政権交代が起きるとしたら、八九年
選挙などのように、消費税導入など
政権党の失政があった場合のみ極めて劇的に起こるということを示しているにすぎません。むしろ、小
選挙区制は圧倒的に
政権与党に有利であり、
政権交代は起こりにくい
制度であることを示しています。しかも、八九年の
選挙結果だけを見れば、併用制でも比例代表制でも
政権交代が起きていたのであります。小
選挙区制だから
政権交代が起きやすいという
理由にはなっていないのであります。
もう
一つ、諸
外国の例を見ても、例えばきのう石井
議員が
答弁をされました、クリントン
政権への大統領制での
政権交代の例をお取り上げになりました。しかし、アメリカの下院では、一九五四年以降四十年間、民主党が多数を占めているのであります。議院内閣制であれば
政権交代は起きていないのであります。イギリスにおいても、一九七九年以来
政権の交代が起きていません。しかもイギリスでは、北部が労働党、南部が保守党と地盤化が進んでおり、
政権交代に実際に参加できるのは一部の伯仲した
選挙区の
選挙民のみという
実態があります。つまり、小
選挙区制は、アメリカでもイギリスでもうまくいっていない、いわば
時代おくれの
制度になりつつあるという
実態を見る必要があるのではないかというふうに思うわけであります。(
拍手)
小
選挙区制ならば
政権交代が起きやすいというのは、一体どんな論拠で言われるのか、具体的、実証的に明確な
答弁をいただきたいと思います。
次に、小
選挙区制の欠点は、宿命的な弱点として、多くの死に票を生み、
国民の声が適正に議席に反映されないという点であります。五一%の得票で完全に当選するだけでなく、多党化のもとでは三〇%台の得票で当選可能であり、六割から七割の
国民の声が国政に反映されないことになります。しかも、三乗比の法則と言われる、得票数に比して議席数は多数党に三乗に加算され、過大議席が生ずるという結果となりますから、ますます多数党に過度な議席が集中することになり、一
党独裁が進むことになります。
マスコミのシミュレーションでも、九二年の参院選をもとに試算すると、仮に五百の単純小
選挙区制を実施すると、
自民党が四百五十以上の議席を占めるだろうと予測をしています。これでは
日本の民主
政治を推し進めることにはなりません。
こうした多数党に過大な議席が集中することについて、あるいは少数党の議席がほとんどなくなることについて、それは全く問題ないと考えているのかどうか、明確な
答弁をいただきたいと思います。
小
選挙区制の持つこうした欠点を補うため、世界各国で比例代表制もしくは両者の組み合わせ型に進展してきたのが、世界各国の
選挙制度の歴史であります。現在、小
選挙区制が採用されてきたイギリス連邦諸国でも見直しが検討され、特にニュージーランドでは、
国民投票により単純小
選挙区制から比例代表併用制への移行が多数を占める事態になっているわけであります。
もともと
選挙は、
国民の声を代表する代表機能と、その
国民の
政治的意思を
政権として統合していく統合機能が必要であります。社公両党提案の併用制こそ世界の趨勢であり、
政権交代可能な、
国民の多様な意思を
政権に統合していく意味でも、顔の見える小
選挙区の長所を生かし、理想的な
制度だと思うのであります。
そこで、比例制についての考え方について伺います。
参議院の比例
選挙の結果を見ますと、
昭和五十八年
選挙で
自民党の得票率は三五・三%、議席は五十人中十九名、
昭和六十一年、三八・六%で二十二議席、
平成元年
選挙、二七・三%で十五議席、
平成四年
選挙、三三・三%で十九議席と、いずれも過半数を割っています。これほど民意が正確に反映される
制度はないわけであります。
こうした
実態を考えますと、比例制を取り入れることについて、自由民主党は、民意が反映される
制度では困る、みずからの議席数が過半数を割ってしまうという党利党略から否定しているとしか思えないわけですが、なぜ比例制を否定するのか、明確な
理由を示してください。
きのう石井
議員は、
野党に、少数党でも自信を持って
選挙を戦えばいいではないかと言われました。どうぞ
自民党の
皆さん、比例制でも
政権がとれますから、比例で過半数をとって安定
政権をつくられたらどうですか。そのままきのうの石井先生の
言葉をお返しを申し上げたいと思います。(
拍手)少なくも比例制こそ
日本の
実態からいうと
政権交代を可能にする
制度だと思いますが、いかが考えますか、明確な
見解をお示しをいただきたいと思います。
次に、
政権の安定を図れるのは小
選挙区制だ、連合
政権は不安定で単独
政権は安定するという考え方でありますが、これにも幾つかのごまかしがあります。比例制は得票率と議席数が一致する
制度であり、
有権者の選択、判断が反映される
制度であります。民主
政治のもとでは、もとよりこの
国民の声を全く無視してよいということにはならないと思うのであります。
政権が安定しないから少数
意見は切ってしまえという
自民党の論理は、余りにも乱暴な
見解であります。しかも、ドイツでの五%条項を初め、世界各国でこうした弊害を除く知恵が生み出され、実際に実行されている
実態を見ると、小党分立になり、
政権が安定しないという論理はいかにも飛躍したものであり、小
選挙区制を加えて比例制一の欠点を補完する措置を講ずることで十分であり、だから小
選挙区制の方がすぐれているという
理由にはならないと思いますが、いかがでしょうか。
さらにまた、単独
政権が安定的で連合
政権が不安定だとする論理も全くわからない論理であり、なぜそうなのか、わかりやすく
説明をいただきたいと思います。
きのう以来、イタリアの例を持ち出されています。しかし、イタリアにおいては
個人名投票を含めた独特の
制度であり、社公提案の併用制とは大きく異なることをまず
理解されたいと思います。また、連合
政権のイタリアで大腐敗事件が起きている、単独
政権の
日本でもイタリアに負けないくらいの腐敗事件が相次いでいることについて、具体的になぜなのか、御
説明をいただきたいのであります。
区割りについて
一つだけ
質問をいたします。
全国五百の小
選挙区の区画を行うことになります。格差二倍以内といたしますと、最小
選挙区が十六ないし十七万人、
最大選挙区が三十二ないし三十四万人ということになります。実際に区割りを行う場合、多くの市や区を分割した
選挙区にしなければならないと思いますが、どのくらいの市や区を分割しなければならないか、伺いたいと思うのであります。
また、市や区によっては七つにも八つにも分割しなければなりません。例えば、札幌市は四つの
選挙区に、仙台市は二つか三つ、横浜市は七つか八つ、名古屋は五つ、大阪は六つぐらいに分けなければならなくなります。このような
制度が実際に
選挙民になじむものかどうか、実際として可能と思っているのかどうか、明確な
見解をお示しをいただきたいと思います。
次に、
政治資金について伺います。
私は、
自民党にはさすがに立派な識見を持った、
政策にも精通された方がたくさんおられると感じている一人であります。しかし、事故治と金の問題になると、これほどだめな
政党もないと感じているものであります。これほど腐敗とスキャンダルを繰り返してきた
政党もないのであります。今回の
自民党提案の
政治資金規正法の改正案も、これほどの腐敗とスキャンダルの中では全く不十分と言わざるを得ないのであります。
戦後、腐敗事件が起きるたびに
政治改革が叫ばれてきました。しかし、その都度、
自民党の消極姿勢もしくは反対で、徹底した腐敗防止や
政治資金の規制ができなかったのであります。昨年の第百二十五回臨時
国会では二十一項目の処理を行いましたが、
企業・
団体献金の
禁止、指定
団体の数の制限、
政治資金規正法違反の罰則強化、連座及び公民権停止規定の強化など、
野党の提案事項はいずれも
自民党の反対で引き延ばされたのであります。今度こそ
国民の期待する
政治資金の規制を行わなければなりません。その
国民の批判にこたえる形でようやく
自民党も重い腰を上げ、今度の提案にこぎつけたわけであります。まずは、相次ぐ腐敗事件を起こしてきたのは
企業であり、
企業献金をどうするかが
国民の
関心事であります。
自民党案では、
企業・
団体献金を
政党及び
政治資金団体に限定をする、五年間の経過措置を置いて年間二十四万円までを
資金調達団体に認めるとしていることにつきましては、不十分ではありますが、一歩前進であります。しかし、
政党への
寄附限度額を、事もあろうに二倍にふやしているのは何としても納得できないのであります。一方で公的助成を導入するわけでありますから、この際、
献金枠を減らしこそすれ、ふやす道理はないと思うのですが、いかが考えますか。
次に、
企業・
団体献金そのものの考え方について伺います。
昨日、津島
議員から
説明がありましたとおり、確かに
昭和四十五年の最高裁判決がありました。
企業もまた自然人たる
国民と同様に、国や
政党の特定の
政策を支持、推進し、または反対するなどの
政治的行為をなす自由を有すると判断されて以来、
企業による莫大な
献金がなされてきました。しかし、今日の
日本は
企業社会と言われるほど
企業の
社会的影響力が強く、莫大な
資金力と影響力を有する
企業が国政を左右しかねない
実態を見るとき、この判決は、私ども
国会の手によって
実態的に見直されるべきときではないかと思うのであります。
また、
企業や
団体は
政治的行為をなす自由を有すといっても、参
政権の主体ではそもそもありません。少なくとも個々の
政治献金が
政治家や
政治を動かすことのないよう、厳格に規制されなければならないと思うのであります。ロッキード、リクルート、佐川と続いた歴史の反省に立つならば、そしてまた、
企業献金が本来的に何らかの見返りを期待してなされるものである以上、これを
禁止すべきときではないかと思うのであります。
なぜ、この際、
企業・
団体献金の
禁止に踏み切れないのか、その
理由を明確に示してほしいと思うのであります。あわせて、社公提案の
政治資金規正法改正案が成立した場合、自由民主党としては何かお困りになる点があるのでございましょうか。具体的にお答えをいただきたいと思うのであります。
次に、
政党交付金法について伺います。
この
法律によって、三百億円を超える金額が各
政党の得票率等によって配分されようとしています。にもかかわらず、
自民党案では
企業・
団体献金を温存し、
政党への
寄附枠を倍増しようとしています。小
選挙区制になれば身内同士の争いがなくなり、地元のサービス合戦もなくなり、金がかからなくなる、だから単純小
選挙区制がよいと一方で言っておきながら、
政党交付金ではまだまだ足りないから
企業献金を温存するという理屈は、だれが聞いても通らないものであり、金権腐敗事件を引き起こした反省を全くしていないと言わざるを得ません。(
拍手)
政治にはコストがかかる、そのとおりであります。しかし、そこにはおのずと限界があります。一体、
自民党の
皆さんはどの程度の
政治献金を必要としているのか。この
交付金法の額は、全体の
政治資金の何分の一程度を想定しているのか、また小
選挙区制を導入することにより、現在の
政治資金のどの程度の割合で減少を見込んでいるのか、具体的にお答えをいただきたいものだと思います。
最後に、この
法案は、
国民の厳しい
政治不信の中で、注視と期待を集めています。私どもは議会人として、そうした
国民の期待にこたえ、どうしても成立させる責務を負っています。
政治家一人一人が、良心の問題として、この腐敗きわまった
政治構造にどれほど深い反省と痛みを持ち、
改革への
決意と
理念を持ち合わせているかこそが問われています。私どもは、
金丸事件に至った
野党としての責務に深い反省を持ちつつ、この
法案を
提出しているのであります。
しかし、何といっても、長い間
政権与党にあった自由民主党の
諸君が、個々の
政治家の良心として、どれだけこの
金丸事件に至った
政治構造に深い痛みと反省を持っておられるか。そのためにリーダーシップを発揮して、どんな譲歩もするという姿勢を持ち合わせているかどうかこそがかぎであることを申し上げ、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔塩川正十郎君
登壇〕