○佐々木秀典君 私は、
日本社会党・
護憲民主連合を代表し、ただいま
議題となりました
農業構造関係三
法案に対し、総理並びに
農林水産大臣、外務大臣に質問をいたします。
まず初めに、私は、
宮澤総理が
我が国の
農業の
現状をどのように認識されているかについてお伺いをいたします。
農業の曲がり角、
農業の危機という言葉はこれまでに何度となく使われてまいりましたが、私は、今日ほど
農業、
農村の危機的
状況が深刻の度を増しているときはないと考えております。すなわち、先進国の中では最低の
食糧自給率、
担い手の流出、
農業構造改善の立ちおくれ、
農家負債の
増大、中
山間地域を
中心とした過疎・
高齢化の急速な進展と
後継者の不足、優良
農地の荒廃と
耕作放棄地の
増大など、どれ一つをとってみても、あすへの明るい展望は全く見えてこないのであります。
特に、
農業後継者に関しては、
平成三年度の
新規学卒就農者がわずかに千七百人という
状況であり、それはもはや一
産業というよりは、一企業の新入社員というべき数字になっているのであります。また、
耕作放棄地に関しても、
平成二年度現在で二十二万ヘクタールにも及んでおり、一億二千万人の日本
国民に最低限のカロリーを
供給するのに必要な耕地面積とされる五百万ヘクタールの維持も危うくなっており、またそれは
農村地域の
過疎化につながっているのであります。
総理は、このような
我が国農業、
農村の危機的な
状況をどのように認識しておられるのか、ぜひお聞かせをいただきたいのであります。(
拍手)
総理、なお
政府は、昨年六月に農林水産省が打ち出した「新しい
食料・
農業・
農村政策の
方向」いわゆる新
農政に基づいて
農政の
転換を図られようとしています。しかし、これまで猫の目
農政とも評されてきた
農政を
転換し、
国民的なコンセンサスが得られる
農政を確立するための前提としては、なお解決すべき多くの
課題が残されているのではないでしょうか。
その一つは、
農業基本法農政の見直しであります。
昭和三十六年に制定された
農業基本法は、当時の所得倍増
計画に対応して制定された経緯もあり、
農業に対しても工業と同様の
経済合理主義が貫かれた法体系となっています。そして、この効率性のみを重視した基本法
農政こそが、今日の
我が国の
農業、
農村の荒廃、先進諸国に類を見ない
食糧自給率の低下を招いた最大の原因なのではないでしょうか。
本来、
農業、
農村の果たす
役割は、農作物の
供給だけではなく、
国土・
自然環境の
保全、
地域経済社会の
活性化、都市住民の
余暇空間の提供など、多面的な外部
経済効果を有しております。加えて最近は、
環境保全型農業の展開も大きな政治
課題となっており、このような考え方は今日の国際的な潮流でもあります。
ところが、
政府の新
農政には基本法
農政の反省が欠落している、そう指摘をせざるを得ませんし、この際、
農業、
農村の持つ
役割を明確にした上で、
農業基本法にかわる新しい
農業・
食料基本法を制定すべきであると考えますが、総理、これについていかがお考えでしょうか、お
示しください。(
拍手)
もう一つの重要な
課題は、ガット・ウルグアイ・ラウンドの
農業交渉問題であります。
新ラウンド
農業交渉は依然として先行き不透明のままでありますが、
政府は、自国の基礎的
食糧
の自給という視点とともに、
地球規模での
環境問題や飢餓、貧困問題をいかに解決するかという視点からも、あくまで米を初めとする農産物の例外なき
関税化には反対すべきであります。(
拍手)
来る四月十五日からの日米首脳会談、七月初旬に
我が国で開催予定の先進国首脳サミットに臨む総理の決意をお
示しいただきたいと存じますが、あわせて、このたび渡辺前外務大臣にかわって就任された武藤外務大臣、これまで大変柔軟な言動がいろいろと問題となり、特にまた一昨日来、その御発言が物議を醸しておるようでありますので、この際、これについての明快な意思表明をお願いしたいのであります。
また、この問題と関連いたしまして、本年一月、
農林水産大臣が打ち出された国際
食糧援助基金構想も、ぜひ構想だけに終わらせず、現在ただいま
世界じゅうで五億人を超えると言われる飢餓に苦しむ人々に対して、国連の機関を通じた
食糧の援助、
農業の技術援助などの
強化充実を
世界に訴えていくべきであり、これこそ平和国家日本に最もふさわしい国際貢献策であると考えますが、これについての
農林水産大臣の御所見をお伺いしたいと存じます。(
拍手)
次に、
議題であります
農業構造関係三
法案に関連して、
政府の考え方をお伺いいたします。
まず、
農業経営基盤強化法案についてであります。
政府の新
農政においては、今後の十年を見据えて
育成すべき
農業経営体については三十五万から四十万戸を想定し、稲作
経営については十から二十ヘクタールの単一
経営五万戸程度を
目標にしておりますが、その実現性は極めて疑問視されています。
今回、この
法律案では、これまでの
農用地利用増進事業を改組、拡充し、効率的かつ安定的な
経営体の
育成に向けて、
農用地の流動化にとどまらず、各種
政策を総合的に
実施することとされています。しかし、十から二十ヘクタールの
農地を集中させるには、過去十年間に流動した七十一万ヘクタールの二倍以上、百七十五万ヘクタールの
農地流動をしなければなりません。今回の
法律整備で、この
目標の実現が果たして可能なのでしょうか。総理大臣のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。(
拍手)
また、この
法律案の中には、
農業経営改善計画の
認定制度が盛り込まれております。この
計画によって
認定された
農業者には、
農地の集積や
生産、
経営にかかわる
施策を優先的に投入するなど、対象を
認定農家に絞り、強力に大
規模稲作
農家を
育成しようとするものでありますが、逆に、
認定されない
農家は各種
施策の対象外とならざるを得ないのであります。これは明らかに小
規模農家の選別であり、これまでの基本法
農政の路線と同じものと言えます。この点に関して、
政府はどのように考えておられるのか、御答弁をお願いいたします。
さらに、本案の中には、
農業生産法人に関して、
資金の出資者も
構成員として認め、
事業も、他で
生産されているものも含めて、農畜産物の加工、貯蔵、運搬、販売、
農作業の受託などを行えるようにしております。問題は、企業の資本参加に道を開いたことであります。この場合、出資比率二五%以内という制限をつけ、議決権を企業に握られないようにしてあるとはいうものの、企業の持つ企画力、財政力などを考えるならば、議決権以上に実際の発言力は強くなると言わざるを得ません。
生産法人要件の緩和が企業の
農業支配と将来の
農地取得につながらないような、はっきりとした歯どめを明確にするべきであると考えますが、農水大臣、いかがでしょうか。(
拍手)
次に、
特定農山村
法案について質問をいたします。
まずお伺いしたいのは、この
法律案の新
農政の
推進に当たっての位置づけてあります。そもそも新
農政では、一方で大
規模経営体の
育成、市場原理、競争原理の一層の
導入が強調され、他方では、
農業の持つ多面的
機能は
経済効率性からは律し切れないと言い、
環境との調和を強調するなど、異なった二つの
農業哲学が混在するとでも言うべきものであります。このような
方向性の不明確な新
農政を
推進する上で、効率性の極めて低い中
山間地域農業をどのように位置づけておられるのか、農水大臣の明快なお答えをいただきたいと思います。(
拍手)一また、本
法案では、高付加価値型
農業への
転換をうたい、
農家が付加価値の高い作物を
導入できるよう
政策誘導しようとしています。しかし、一村一品運動や有機農産物など、
地域特産物は激しい産地間競争にさらされています。今、改めて高付加価値型
農業の
導入と言われても、果たして中
山間地域において、品質、数量、販売面での見通しが立てられるのでしょうか。極めて疑問でありますが、農水大臣、どのようにお考えでしょうか。
さらに、本
法案の関連
措置として、この高付加価値型
農業の収益が
目標収入に達しない場合、その差額に対して融資を行うという新しい融資
制度を
導入しようとしております。しかし、御存じのとおり、今日の
農家経営は、農機具や肥料の購入費、土地改良の負担金など種々の負債でがんじがらめであり、それが相次ぐ離農、
後継者不足の原因にもなっているのであります。このような中で、新たな負債を重ねるような
制度導入が果たしてどれほどの効果を持つか、疑問であります。
先ほど、我が党の
辻一彦議員から、
農業再生の手だてとなる社会党・
護憲民主連合提出法案の
提案理由の
説明がありました。本日、これについての実質
審議がなかったのは残念でありますけれども、今後、この本
会議あるいは
委員会において十分な御
審議の上でこの我が党の
法案が成立することを強く望み、皆様に御協力をお願いするものであります。(
拍手)
しかし、それにいたしましても、この中
山間地域農業の
振興を図るためには、その
法案の中でも提案されておりますように、思い切ってこの際、既にEC諸国で行われている直接的な
所得補償制度を
導入すべき時期に来ていると思うのでありますが、この点について、改めて
農林水産大臣の御所見を伺いたく存じます。(
拍手)
最後に、私は、この
機会に政治腐敗の根絶と政治倫理の確立を初めとする政治改革の断行について、総理にお伺いをいたします。
さきに東京佐川からの五億円の不正献金の受領を認めて議員を辞職した金丸元副総理は、さらに、長年にわたる利権に絡んだ各種企業からの莫大な献金を摘発され、検察に逮捕、起訴されるところとなりました。一方、もう一人の疑惑の人、竹下元総理は、野党こぞっての要求や、多数の地方議会からのこれまで例を見ない決議にもかかわ
らず、依然その職を辞さないままにいます。そして、政治家と金にまつわる疑惑は、この二人にとどまらず、さらに広がり深まって、
国民の政治不信はその極に達しているのであります。
かかる疑惑の全容を解明し、失われた
国民の政治に対する信頼回復のために、我が党は公明党と共同で政治改革関連六
法案を提案いたしました。
総理は、今現在、この政治改革についていかに考え、何をなされようとするのか、決意に満ちた御答弁を求めて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣宮澤喜一君
登壇〕