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清水(湛)
政府委員 まず第一点の、社債発行残高が現在の制限額にもう満杯になってしまって余裕がなくなったから今回限度を撤廃するのではないか、こういう御趣旨の
お話があったかと思いますけれ
ども、これは実はそうではないわけでございます。
企業の方からの要望の
一つとして、限度があるために
一般の市場から社債という形で資金を調達するのが非常にやりにくいというような要望はございましたし、それが
一つの背景になっていることは私
どもも否定するわけではございませんけれ
ども、そもそも社債発行限度規制というものの合理性について、これは既に昔から実は
指摘されていたところでございます。
この
委員会でも既に述べましたけれ
ども、このような発行限度規制をとっているのは先進国では
日本とイタリア
商法だけでございます。そして、イタリアの影響を受けた若干の国がこの発行限度規制をとっています。
これとても、当時の明治
政府がそういうような形で非常にドラスチックな形で社債権者保護を考えたのだろうと思いますが、実は、社債を発行する際にはそうなんですけれ
ども、社債というのは普通は長期のものでございますから、その後に資産
状況が悪くなった場合にはどうなるのかというようなことについての
規定は全くないし、それから
企業が銀行とか
特定のものから資金を借りるということについての規制は何もないしということで、そもそも社債が大衆というものを対象にするということではあるけれ
ども、そのような規制をする合理性はどこにあるのかというまず根本論がございまして、こういったたぐいの規制的な
商法は速やかに改むべきであるということが従来からも強く主張されていたわけでございます。
ただしかし、私
どもは、そういうことはあるけれ
ども、現実に今
商法にあって、少しでもそれが社債権者の保護という面で機能し得る要素があるということであるならば、これをそう簡単に廃止するということはやはり問題であるだろう。もし廃止するとするならば、少なくとも
商法が考えていた社債権者保護の趣旨より以上に強い社債権者保護のほかの
システムを考えないとそう簡単に発行限度の撤廃ということはできない、こういうことを従来
法務省は主張していたわけでございます。
それからもう
一つ、社債権者保護と申しますか投資家保護と申しますか、そういう
意味で、
企業のディスクロージャーだとか、あるいはこの社債は信用できるものであるか危ない社債であるかというようなことについて
一般国民が知り得る
システムを確立するということがやはり必要であろう。これはもう証券取引法の方の問題である。こういうようなことから、従来相当長期にわたっていろいろ
議論がされてまいりました。
そういうことの結果として、証取法上のディスクロージャー
制度とか格付
制度というものもかなり定着してまいりましたし、というようなこともありまして、この際
商法にきちんとした社債権者保護の
規定を設けて、そして限度撤廃をするということにいたしたわけでございます。したがいまして、ちょうど今バブルの崩壊で例えばエクイティーファイナンスができない、新株発行が事実上難しくなっているとかあるいは転換社債の発行が難しい、こういうような
状況がたまたま今出てきておりまして、また
商法の原則に戻って普通社債というもののウエートが非常に高まっているというような
状況があるということが生じているわけでございますけれ
ども、これはここ一、二年の
状況でございます。私
どもの社債発行限度撤廃についての
議論というのはもう昭和五十年代から始まっているわけでございまして、そういうような長い歴史的な経過を踏まえて今回こういう
改正をすることが適当だ、こういう判断に到達したわけでございます。
それから、第二点の社債管理
会社の問題でございますけれ
ども、御
指摘のように、担保付社債を発行する場合には、受託
会社というのがありませんとこれは発行できません。というのは、この受託
会社というのは社債権者のために、本来社債権者がそれぞれ担保権者なんですけれ
ども、多数の社債権者個人個人で抵当権者になるということは不可能でございますから、銀行あるいは信託
会社が社債権者にかわって抵当権を行使するという
意味でこれは必要でございます。
しかしながら、
一般の無担保社債については委託を受けて募集をするという
会社を置くことはで
きるわけでありますけれ
ども、これは強制されていないということに無担保社債についてはなっているわけでございます。のみならず、無担保社債の場合の
現行法の募集の委託を受けた
会社は、直接社債権者に対して
損害賠償責任を負うということにはなっていないわけでございます。不法
行為をすれば不法
行為責任は負いますけれ
ども、直接の
損害賠償責任を負うという
関係は、契約
関係がございませんので、ない。こういうようなことがございますので、それでは社債権者の保護にならない。
社債権者の保護のためには、そういう債権管理
会社を設置を強制するとともに、債権管理
会社は社債権者に対して善良な管理者としての注意義務を負うという義務を法定するとともに、一定の場合にはさらに強い
損害賠償責任を課するというような、いわば社債権者と社債管理
会社の
権利義務
関係、
損害賠償責任等の
関係を明確にしてこの社債権者の保護を全うする、こういうことになるわけでございまして、どうしても社債権者保護のためには、これは無担保債についてでございますけれ
ども、社債権者のための
権限と
責任を負う
機関を設置するということはこれは強制せざるを得ないということでございます。担保付社債であれば、これは当然そういうものは置かなければそもそも担付社債が成立しないという
関係がございますので、問題は無担保社債についてある、こういうことになるわけでございます。