○正森
委員 今お答えになったとおりなんですね。これはあくまで行政指導で、
法律で決めているものではありません。
きのう資料をいただきましたら、大蔵省は
平成五年三月二十六日付で「普通
社債、転換
社債及び新株引受権付
社債の適債基準及び財務
制限条項の見直しについて」というのを出しております。
これを見ると、長いから全文は読みませんが、「公募債の適債基準については、公募債市場のより一層の活性化を図るべく、早急に自由化を実現することを基本とし、現下の市場
状況等を踏まえつつ、着実な
緩和措置を講ずるものとし、」云々となっているのです。だから、
緩和措置を行う。
その内容は何かと見てみますと、今言ったように「無担保
社債について、「BBB格相当以上」まで
緩和したこと」と書いてあります。つまり、今まではAでよかったものが、限度を取り払って、限度を取り払うのなら適債基準を厳しくするのかといったらそうじゃなしに、限度は取り払う、適債基準は今までAだったのがBBBというように一段階下げることをやる。
それだけではないのじゃないですか。あなた方は財務
制限条項というのを設けておるようですが、それもさらに
緩和して、こうなっているのじゃないですか。「発行する当該
社債がA格相当の場合には、発行時に既存担保付
社債等を除く担保提供債務が純資産額の五〇%以下であることを要するとの現行の取扱いを
廃止する。」だから、
廃止してしまうのですよ。「ただし、発行する当該
社債がBBB格相当の場合は、発行時に既存担保付
社債等を除く担保提供債務が純資産額の二五%以下であることを要する。」というようにするのでしょう。
だから、担保付
社債の場合は、それが有効に
機能するかどうかはともかく、担保があるのです。ところが、無担保
社債についても、限度は取り払うわ、純資産額の必要量はこういうぐあいに
緩和するわ。それで、もともと
企業がどれくらいきちんと営業をやっているかということについてはBBBというように下げる。ということになれば、行政指導で強制力はないということですが、実際の業界では大きな影響力を持っていると思うのですけれ
ども、無担保
社債権者は十分に保護されない。
かつて、エクイティーファイナンスについて、一般の家計部門で、株のことなんかよく知らない人が買って、ワラント債が何物であるかも知らない、だから期間が徒過してしまってももうちょっと株が上がるまで待とうかなんて思っているうちに紙くずになってしまってえらい迷惑したという、これは私らも選挙民からいろいろ聞いているところであります。そういうことで一般債権者に迷惑をかけておいて、今度は無担保
社債の限度を取っ払うということで、また損失はそっちの方へかぶせるということではないですか。
これは私の危惧ではないのですよ。ここに持ってきましたが、「公
社債月報」というのがありますね。これは公
社債引受協会が出しているものです。これを見ますと、当時の羽田大蔵大臣が年頭所感というのを書いており、その次のページをあけてみると
日本銀行総裁の三重野さんもまた年頭所感というのを書いておるのです。非常にいいお顔で写っておりますが、その
平成四年一月号の巻頭論文があるのです。これは「
企業金融の環境変化と今後の展望-普通
社債の役割-」というので、三國陽夫さん、
株式会社三國
事務所代表
取締役というので、これは私的に適債基準といいますか格付をやっておる方のようであります。その方が論文を書いているのです。この方は公務員ではないから割と気楽に、気楽にと言ったら語弊がありますが、本音を書いているのです。
大蔵省は知っているかもしれませんが、この論文は、長く言うと時間がかかるので、まず第一に、
企業の
資金調達がかつての銀行に頼る間接金融からエクイティーファイナンスなど自分で資金を調達する直接金融に変わってきたという歴史を
指摘した上で、「現在みられる普通
社債への動きは、
企業の
資金調達が、銀行の支配や影響から一段と離れるという点が大きな特色である。まず、普通
社債は無担保であること。
株式とはまったく無
関係であることという二点から、銀行の支配や影響は
企業に及び難い。そして、銀行は投資採算上普通
社債の主たる消化先ではあり、えないことから、」利率の点その他いろいろですね、「銀行の枠外に
企業の
資金調達が位置づけられることとなろう。それは、
企業部門が銀行の仲介なしに家計部門から
資金調達を行う「直接金融」の時代の始まりである。」こういうふうに定義しているのです。つまり、普通
社債に大きく頼るというのは、これは家計部門から直接資金を銀行を経ないで獲得するという時代に入るのだということをまず
指摘しているのですね。それはある程度そのとおりだと思います。
そういうことを言った上で、こう言っております。今バブルが崩壊して不良債権がいっぱいあるということで「銀行融資の健全性が問われ始めている。」という問題提起をして、「今後、銀行投融資のリスクを低く抑えるためには、どのような銀行
行動をとったらよいのだろうか。」こうみずから問うて、第一は、これは言うまでもありませんが、審査の健全化である。つまり、バブルの時代には、土地があるということになればどんどん貸して、しかも普通は七割ぐらいで貸さなければいかぬのが、八割は超えて十割から十二割で貸すということ、ここにはそう書いてありませんよ、そこは私のアドリブですが、そういうことを
指摘した上で、第二のところでこういうことを言っているのです。
「第二に、系列グループヘの
資金調達を、銀行借入から投資家が直接投資できる有価証券の発行へと可能な限り移行させることである。」これが銀行の財政の健全化のために必要だと
指摘して、「さらに銀行は有価証券の保有を
原則として止めること、」こんなことはなかなかできないと思いますが、「同時に系列グループに対する救済融資を行う主力銀行の役割を放棄することである。」こんな大胆な提案をした上で、次が大事なんです。「系列、非系列に限らず、大
企業の倒産の損失は、」大
企業が倒産することをある程度予想しているのですね。大
企業というのは大体資本金十億円以上、こう言われておりますが、「大
企業の倒産の損失は、有価証券を通じて広く薄く投資家の負担に委ねざるをえないのである。」つまり、投資家に損失を負担させるのはやむを得ないんだ、こういうことを言って、「銀行の有価証券保有、あるいは主力銀行としての役割は投融資先にリスクが不在の場合のみ可能であったということは、いくら強調してもしすぎることのない事実である。」つまり、リスクのないところを銀行は負担せい、リスクのあるのは一般投資家、家計部門へということにならざるを得ないんだ、普通
社債の動きというのはそういうことになるんだ、こういうことが、この論文が中心的に言っていることであります。
その後でこういうことを言っているのですよ。「このことによって、有価証券投資の中に、多額の損失を被るものも生じよう。投資家が損失を甘受する上では、
企業内容開示
制度によるリスクの透明性と、」
ディスクロージャーが大事だということを言っているのです。「有価証券の価格形成における公正さとの二つが厳然と守られる必要がある。」この後の方は適債基準だとか
株価だとかいろいろなことを
意味しているのですが、その後で「しかる上で、自己責任
原則で投資を行うのである。納得した上で馬券を買い、外れた馬券が紙屑になったとしても、誰も文句をいわないのと同じである。」よう言いよったな。つまり、普通
社債を買うのは馬券を買うのと一緒だ。自己責任で買って、それで自分の見込みが当たらなくてそれが紙くずになった、馬券を買って外れたからといって文句を言うのはだれもおらぬだろう、自分が悪いのだというようになるだろうと、どんずばり
指摘しているのです。
そういうようなことになる可能性のあるのが本法案の
改正なんです。担保のない普通
社債についてまで限度を取っ払う、それでおまけに発行基準は大幅に
緩和する、こんな乱暴なことはない。バブルの時代にエクイティーファイナンスで失敗していろいろなところに迷惑をかけ、自分も
企業の遂行上迷惑をかけ、日産のように超一流の工場だったところまで閉鎖しなければならぬ、二千五百人の
従業員は解雇あるいは九州へ行かなければならない。地元の座間市だとか神奈川県を私調査しに行ったが、非常に大きな問題になっているのです。そんなことをやった
企業の都合のために奉仕するような
社債の限度枠を撤廃するということが一体だれの
利益になるものであるかということは非常にはっきりしているのじゃないですか、私はそう思わざるを得ないわけであります。
これについて、民事局長は何か答えなきゃしようがないような顔をしておりますが、後藤田
法務大臣、大臣は、大蔵やら通産と違って政治家ですから、一般投資家から票をいただいている政治家としての御感想を伺いたいと思うのです。
その前に、まだもう少し時間があるかもしれませんが、私は
あと一、二点
質問したいと思っているのですけれ
ども、通産省来ていますか。――通産省が来ておられるからちょっとだけ聞いておかなければいけませんね。
通産省も私の言ったことを大体肯定するような答申をいただいているのじゃないですか。ここへ持ってきました。それは産業構造
審議会産業金融小
委員会の中間報告であります。きのう通告しておきましたから読んできていただいたと思います。時間がもうなくなってきましたので、お答えしていただくかわりに私の方でそのさわりのさわりの
部分だけ読み上げさせていただきたいと思います。
第四章の第二節ですが、「エクイティファイナンスの
問題点と今後の可能性」の中でこう言っております。デットというのは、
社債、借り入れ等の負債のことですが、「①デットとエクイティの適切な組合せを
考えないで安易にエクイティに偏ったファイナンスを集中的に行った点、②低利調達を梃子に一部に行き過ぎた「財テク」に走る動きが見られた点、③無償交付や配当性向の引上げ等
株主に対する
利益配分が未だ十分に行われていない点等の
問題点が
指摘されている。」こういうように言っているのです。だから、通産省の
審議会でも、そういう点は明白に認めているのですね。別のところの第五章では、「最近のエクイティファイナンスについては、中長期的に円滑な産業金融を確保するため、
企業、銀行、証券
会社共にこれによる市場の混乱の反省に立ち、今後は、発行時のコストだけではなく
株主利益確保の必要性、
資金調達の
目的等をよく
考え、市場実勢を尊重し慎重な対応を行うことが必要と
考えられる。」こう言っています。
時間がありませんので、私の読んだところは書いてあるということだけ答弁してください。