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清水(湛)
政府委員 会社の業務の執行の適正を図る、これは会社の計算のみならず、業務執行について法令等に
違反することがないようにきちんとしたチェックをするための組織といたしまして監査
制度が非常に重要な位置づけを持っているということは、御指摘のとおりでございます。
実は、この監査
制度の抜本的な改善と申しますかそういうものがなされたのは
昭和四十九年
改正でございます。それまでの
監査役というのは
会計監査だけでございました。しかし、御承知のように、
昭和三十年代の後半から四十年代にかけまして山陽特殊綱の倒産とか大きな
企業が相次いで倒産したわけでございますけれ
ども、その原因の多くにいわゆる粉飾決算が背後にあったというようなことがございました。
そこで、四十九年
改正におきまして、単純な
会計監査からさらに職務執行も監査をする、つまり取締役の日常の業務執行についても法令、定款に
違反することがないように
監査役が監視するシステムに改めるとともに、取締役会に出席して
意見を述べるとか、会社の営業
状況について取締役から報告を求めるとか、株主総会に対する提出議案の
調査権、あるいは
監査役の任期も二年に伸長するというような大々的な改革がされたわけでございます。と同時に、
商法特例法が制定されまして、大会社の計算書類及び附属明細書については
監査役の監査のほかに
会計監査人、これは
公認会計士あるいは監査
法人でございますけれ
ども、そういう専門的な監査も受けなければならないというようにいたしたことはよく
委員御存じのとおりだと思います。
さらに、
昭和五十六年に至りまして、いわゆるロッキード
事件等が起きたというようなことがございまして、さらに徹底した監査
制度の充実強化を図る必要があるということから、
監査役が取締役の法令、定款
違反行為を報告するために取締役会の招集権まで
監査役に認めるとか、報酬についてもその独立性を保持するために
監査役の報酬は別に定めるとか、さらには取締役に対して営業
状況の
調査、報告を求めるというにとどまらず、使用人に対してもそういう請求をすることができる、いわば使用人を使って会社の
状況を
調査することができる、こういうふうに改めたわけでございます。
そういう
意味で、
監査役の権限は数次にわたる
商法の
改正によりまして非常に強化されてきたということが間違いなく言えるわけでございまして、それなりの成果を相当に上げていると私
どもは考えております。しかしながら、依然としていろいろな不祥事が絶えないというようなことがございまして、一体それはどういうところに原因があるのだろうかということでいろいろな研究、
検討がされたわけでございますけれ
ども、結局、権限を与えてもそれがうまく行使されていないということにも
一つの問題があるのではないか。
今回の
改正におきましては、そういうような
観点から
監査役の権限を行使しやすくする、そのためには、例えば任期も二年というような不安定な期間ではなくて、三年に延ばしてあげれば少し
監査役も物を言いやすくなるであろう。さらに、大会社につきましては、
監査役は一種の独任制の機関でございますので、ひとりでいろいろ会社に対して注文をつけるというのじゃなくて、
監査役会というような組織をつくって、
監査役会としていろいろな報告をするということにすれば物も言いやすくなるのではないか。さらには、社外
監査役というような
制度も
導入いたしまして、より第三者的な立場から公正な
意見を述べてもらうことも必要であるというようなもろもろの、要するに既に
法律によって与えられている権限を適切に行使し得るような場面をつくってあげることが大事なのではないか、こういうことで今回の
改正がされているわけでございます。
もちろん、この
監査役につきましては、こういう
制度的な改善をいたしましても、
委員御指摘のように、現実にいろいろな不祥事が起きております。中には
監査役みずから率先して法令、定款に
違反する
行為をしたというようなケースも最近あるわけでございますが、私
どもといたしましては、このような
制度改善によりまして、例えば
監査役協会というような
監査役の集団があるわけでございますが、そういうところで本当に会社の正しい監査
制度のあり方はどうあったらいいかというような研究、
検討が非常に熱心に続けられている。そういうものがだんだん会社の監査の中にも成果としてあらわれてきているというようなこともあるわけでございまして、今回の
改正がどの程度まで監査
制度の充実改善に寄与するかということについてはいろいろな考え方があろうかと思いますけれ
ども、大いに期待をいたしたいというふうに思っているところでございます。