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冬柴委員 さて、こういうことで、額はともかくとしまして、そういう面に新しい補助金交付という形で乗り出されたことを先ほど申しましたように高く評価しているわけでありますが、憲法論に立ってこの
法律扶助制度を考えましたときに、憲法というのは、特に第三章の規定というのは、国と
国民との
権利義務を規定するという構造になっております。先ほど
法務大臣が挙げられました三十二条もその第三章の中の一カ条でありますから、国と
国民との
権利義務の関係にあるわけであります。したがいまして、そこで言う
権利者とはだれか。これはここで「何人も、」と書いてありますから、日本
国民及び日本に現在する
外国人というふうに私は読むわけでありますが、そういう人
たちが
権利者であります。義務者はだれかと言えば、日本国家であり、もっと具体的には日本国
政府だと思うわけであります。したがって、私的な団体である弁護士会あるいは財団法人
法律扶助協会が
国民らに対して義務を負っていない、負っているということがないことは明瞭であります。
そういうふうに考えていたときに、今
法務大臣が最初の答弁で、今日、補助金というものが、
行政というものが相当な実効をおさめてきているから、いましばらくこれで推移をし、将来の問題としてもっと違う方法も考えるというお話をされました。だけれども、ここで
法律扶助の現実を見てみましたときに、
外国、これは
制度とか法意識も全然違うわけですからなかなか比較はできませんけれども、その金額におきましても、例えば
法律相談の件数においてもあるいは扶助された
事件の件数においても、人口比等も考えても、非常に格段に日本の場合その数が劣っているということは客観的事実でございます。
それは、日本弁護士連合会が百万円の資本金で昭和二十七年に設立した財団法人
法律扶助協会という私的団体が、運営費の調達についてはそれこそ「草を食み石に爪を立てる」ような闘いをして四十年間やってきて、ようやく今日に至っているように思われるわけでございます。それは、運営費に対しては国は一切補助をしていないわけでございます。これは、私的団体が行うものに対して
政府が公的資金を使うということは困難なことはよくわかるわけですけれども、じゃどうして運営してきたのかということになりますと、日本の弁護士は一万四千人ぐらいしか登録されていませんが、毎年弁護士会から一億数千万円が補助金として財団法人
法律扶助協会に拠出されている。また、
法律扶助事件を担当した弁護士が、その地域によって拠出割合は違うのですけれども、いただいた報酬の一部を寄附する。大阪弁護士会では一五%。こういうものの累計額が約一億弱あります。それからまた、弁護士が
事件の依頼者に慫慂して、例えば贖罪寄附とか、そういうものを
法律扶助協会に寄附をしてください、あるいは寄附金に非課税の扱いを受ける団体の指定を受けているからこちらへ寄附してください、こういうことで集める金が実に数億円。四億、五億という金をそういうところから集めてきてようやくこの
法律扶助協会の運営が成り立っているという事実があるわけでございます。
これ以上これをふやすということはとても困難でありますし、無料
法律相談も今までは日本船舶振興会から寄附金によってようやく行われていたという事実があるわけで、毎年四千数百万円日本船舶振興会からいただいた寄附金によって初めて無料
法律相談が行われてきた。今回
政府からいただくことになるわけですけれども、そういう姿があるわけでございます。これが果たして
大臣のおっしゃる、補助金によって進められた
法律扶助事業が相当な実績を上げつつあるから、いましばらくこれを見守るというのは、私としては不満足なのでございます。
昨年十月、個人視察でお隣の、韓国へ一泊二日で行ってきました。そのときのことを、
調査の結果を十二月八日の法務
委員会で、私がここで申し上げたわけでございますけれども、その大韓民国は一九八六年、つい最近ですが、大韓
法律救助法という
基本法を
制定いたしました。そして、
我が国の人口と比較しますと、向こうは人口は約三分の一です。約四千万人。予算規模では、予算書もいただいてきたのですが、日本の約十三分の一でございます。この国が今執行されている九二年度予算で三十九億ウォン、すなわち邦貨に直して六億五千万円を
法律扶助事業に拠出をしているわけでございます。私はこういう見聞きしてきたことをここで報告をいたしました。
また、
基本法を文献で持っている国は数限りなくあるわけでして、日本を除くG7はもちろん全部持っていますし、北欧の三国あるいは旧英領の国々、オランダ、シンガポール、スリランカ、ザンビア等々、数え上げたら切りがないほど
基本法を
制定して
国民の裁判を受ける
権利を保障しているわけでございまして、イギリスやドイツの例はここで挙げませんけれども、大変な金額を拠出してこういうものを保障しているわけでございます。
それで、
法務大臣はさきにいましばらくはこのままでいきたいという趣旨をおっしゃいましたけれども、私は
我が国においても
法律扶助基本法を
制定するための
調査くらいは着手ざれたらどうだろう。この
調査もあるべき仕組みについて例えば
法務大臣の諮問機関に諮問をする、あるいは諸
外国の立法例等も
政府自身が
調査をされるということで
調査費を計上される、少なくとも
平成六年度の概算
要求で、ことしの八月になりますが、この金額は別としまして、
調査費を
要求していただいてはどうか、私は強くそのように考えるわけですが、その点について
法務大臣の御意見を伺いたい。