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貝沼政府委員 それでは、今
先生から
お話ございました五点について御
説明をさせていただきますが、最初に完熟堆肥の定義でございます。
先般、農蚕
園芸局長の方から
お話ししましたときには、完熟堆肥というのは外観から見て、あるいは水分の含量から見てというような
お話をいたしましたが、私どもは研究陣の方で、やはりそういうぐあいにはまいりませんで、実際には次のようなことを調べた上で完熟というような表現をとっております。
そこを
お話しいたしますと、
一つの点でございますが、堆肥の温度が周囲と同じ程度まで低下して、さらにその切り返しを行っても温度が上がらないというところが一点かと思います。
それから二点目は、堆肥の試料でございますが、これを六百度で電気炉の中で焼きましたときに減少します
有機物の量でございますね、これが二足に達したというところ。これはいわゆる発酵されやすい成分がほぼ発酵されてしまって、残っているものが変わらなくなっている。それが二点目です。
それから、今度は堆肥の陽イオンの交換容量が百ミリグラム当量、百グラムの
有機質に対して、この辺が大体普通の場合の食物残渣からまいります量でございますので、これが約百ミリグラム当量を超えた点。
それからもう
一つは、堆肥の中に硝酸態の窒素がかなりたまってきたとき、いわゆるアンモニアが酸化されて硝酸に変わっているときというようなことをジフェニルアミンテストというような方法で見ております。
それからもう
一つは、生物試験としまして、コマツナの種を用いた発芽試験で発芽率が一〇〇%に近くなったときということで、これによって植物に対する阻害物質がないということを見ております。
それから、そのほかでございますけれども、
一つは堆肥自身の分析値の中の炭素と窒素の比、CN比を見ておりますが、鶏ふん、豚ぷんというものを使いますときは窒素含量が高いものですから、既に二〇以下になっておりますけれども、それ以外の木質のものとかわらを入れた場合には非常に炭素の量が多くなっておりますので、それが発酵によって減ってきて二〇から三〇ぐらいになった、この辺のところをもって一応堆肥の発酵は終了しているという目安にしております。
それから二点目でございますが、家畜ふん尿のメタン発酵によるエネルギーでございます。これにつきましては、私ども昭和五十六年から平成二年までバイオマスの変換計画というような大きなプロジェクトを行いまして、その中で二相式のメタン発酵システムというようなシステムをつくりました。
ここで
一つ、
日本において問題になりますところは、冬季の温度が低いためにタンクを加温しなければいけない、このためのエネルギーをどこから持ってくるかというようなことがありまして、ヒートパイプの構造というようなことを行ったわけでございます。それで、この発酵装置の試作を行いまして、実際にここに少しの
技術改良を加えまして、能率のいい発酵システムを、具体的には沖縄県で二千五百頭規模の豚ぶん尿を対象として温泉熱に利用するというようなことが行われまして、これは三年間ほど稼働したそうでございますが、現在は維持管理の問題でとまっているということがございますけれども、そこで二千五百頭の豚ぷんの処理というものが行われております。
現在でございますけれども、メタン発酵装置の普及を図るために発酵効率を一層高める、それから施設建設及び維持管理費の削減がもう少しできないかというようなことで、さらに新しいプロジェクトを立てて研究しておりますが、この中にはもう少し民間
技術の導入とか、そういう水処理の問題とかというようなことを研究していく必要があるだろうということで進めさせていただいております。
それから、発酵温度でございます。発酵温度につきましては、堆肥の内部の温度が七十度から八十度というところが普通の発酵温度になっておりまして、これは温度が下がってきたときにまた切り返しして酸素の
供給によってまた上がっていくということの繰り返しで、先ほど
お話ししました堆肥の完熟というような終点に一応到達するかと思います。
それから、七十度、八十度というような温度でございますけれども、ここでは発酵と同時に病原菌の殺菌、それから寄生虫の卵、雑草の種子などが死滅させられますので、発酵
過程における非常に重要な問題かと思います。
それから、鶏ふんのような非常に分解されやすい
有機質の材料の場合では、適度な乾燥条件にありますと内部温度は百度を超えることもございまして、先般私が高い温度の
一つの例として百度というのを申し上げましたが、こういう場合にはありますし、それから、そういうところでさらに残っている微生物というのもこういう堆肥の中にはかなり散見されます。
その次のオキソニウムイオンでございますが、これは先ほど
先生御指摘の、私自身きょう訂正させていただきたいというふうに思っておりましたところで、酸素が酸化したあれでというのは間違いでございまして、
有機物が、ちょっと正確に読ませていただきますと、「微生物の酵素が酸素を酸化してさらにオキソニウムをつくるこというふうに議事録にございますが、そうではございませんで、微生物の酵素が
有機物を分解してさらにオキソニウムをつくるというふうなことの私の言い間違い、大変申しわけございませんでした。
それで、堆肥化の
過程におきまして、
有機物が微生物によって分解されて酸が出るわけですが、その酸の中の水素イオンが水と結合したのがヒドロニウムイオンで、H3O+というようなものでございますけれども、この結果出てまいります、堆肥から発生する酸度というのはそう強いわけではない、これは
有機酸から出てまいりますので強くないと思いますが、これ自身が作物に悪
影響を与えるということはないだろうと思います。
それからさらに、残りましたマイナスイオンの方の
有機酸によりまして陽イオン交換容量が大きくなってくるということから、むしろ土壌の化学的な性質を安定させる上では好ましい
影響を持っているのかなというふうに
考えられると思います。
それから、今のヒドロニウムイオンを含めまして水自体の構造、その辺のところは最近非常に論議されているところでございますけれども、植物に対してどういう
影響を持っているかということはまだ学会の方でもはっきしてないところがございますし、私どもも、水の機能、構造ということは今後の研究
課題というふうに
考えております。
それからもう一点、最後の点でございますが、畜舎の排せつ汚水からの燐の回収でございます。現在、私どもは、物質循環の高度化に基づく生態系調和型次世代
農業システムの開発ということで、畜舎の汚水中の燐の回収を
一つの目的としたプロジェクトを組んでおります。
この中の燐の回収
技術のストラテジーでございますが、
一つは乾燥法、それから活性汚泥法、それからろ過膜を使う方法、無機質の吸着法などでございます。それで、し尿処理とかあるいは食品工業の廃水では活性汚泥法が主でございますけれども、私どもは、畜産廃棄物からの回収、利用の面で有利と
考えられる燐の濃縮微生物を利用する、ですから、微生物の菌体の中に燐を取り込むような微生物を探索しまして、それを活性汚泥法あるいは吸着法に利用していくというような
考えを持っております。
それで、活性汚泥につきましては、現在試験的でございますけれども、かなり燐を取り込む、これは微生物か原生動物がはっきりしておりませんが、そういう系をつくりました。現在は、汚水中の燐の七、八〇%を回収する
技術として開発してあるわけでございますけれども、ただ
一つ残りますのは、窒素の除去の方がまだ解決されておりませんで、これについても引き続き行っていきたいと思っております。
それからもう
一つの、燐を吸着する方でございますが、これは物理的なあるいは化学的な吸着を目的としておりますが、現在のところ、今まで一番いい吸着材というのはサンゴの砂でございます。そのサンゴの砂の上に、燐酸カルシウムの形だと思いますが、その形で沈着していくというようなことで、これはまだ純粋な系ということで燐酸の溶液のいわゆる人工の尿というような形のものの実験を進めておりますけれども、そういう形の中では八〇%以上の回収が沈殿として出てくるというようなところまで進んでおります。
以上、この前間違えましたところの訂正をさせていただきましたが、御返事させていただきます。