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1993-06-02 第126回国会 衆議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年六月二日(水曜日)     午前十時開議 出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 金子徳之介君 理事 萩山 教嚴君    理事 御法川英文君 理事 簗瀬  進君    理事 柳沢 伯夫君 理事 佐々木秀典君    理事 前島 秀行君 理事 宮地 正介君       岩村卯一郎君    上草 義輝君       内海 英男君    大原 一三君       久間 章生君    高村 正彦君       鈴木 俊一君    鈴木 宗男君       住  博司君    谷  洋一君       中谷  元君    鳩山由紀夫君       保利 耕輔君    星野 行男君       増田 敏男君    松岡 利勝君       宮里 松正君    山本  拓君       有川 清次君    石橋 大吉君       遠藤  登君    北川 昌典君       志賀 一夫君    田中 恒利君       辻  一彦君    野坂 浩賢君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       山口 鶴男君    倉田 栄喜君       藤原 房雄君    藤田 スミ君       小平 忠正君  出席国務大臣         農林水産大臣  田名部匡省君  出席政府委員         農林水産省農蚕 高橋 政行君         園芸局長         農林水産省食品 須田  洵君         流通局長         農林水産技術会 貝沼 圭二君         議事務局長         食糧庁次長   永田 秀治君         林野庁長官   馬場久萬男君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部景 横田 直和君         品表示監視課長         厚生省生活衛生 牧野 利孝君         局食品化学課長         農林水産省経済 嶌田 道夫君         局統計情報部長         農林水産委員会 黒木 敏郎君         調査室長     ————————————— 委員の異動 六月二日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     住  博司君   星野 行男君     増田 敏男君  三ッ林弥太郎君     山本  拓君   村岡 兼造君     鈴木 宗男君   辻  一彦君     北川 昌典君 同日  辞任         補欠選任   鈴木 宗男君     村岡 兼造君   住  博司君     加藤 紘一君   増田 敏男君     星野 行男君   山本  拓君    三ッ林弥太郎君   北川 昌典君     辻  一彦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林物資規格化及び品質表示適正化に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出第五  九号)  林業改善資金助成法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四一号)(参議院送付)  林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第四二号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。遠藤登君。
  3. 遠藤登

    遠藤(登)委員 前島委員の時間をいただきまして、緊急的に、特にニュージー産のリンゴ輸入解禁問題などについて、若干の質問をさせていただきたい。  それで、このJAS法関係では、これは消費者あるいは生産者にとって一定の前進を図るということだと思いますが、特にその安全性の問題、これは食は命なりということがありますが、この安全性の問題について、消費者を含めて重大な関心を示されているということであります。それで、アメリカにおいてもヨーロッパにおいても、既に有機農業法、特に有機農産品の問題については有機農業法というのが農業法等の中できちっと制定されて、環境とか安全性の面からも重視をされて、それなりにその振興に力を入れられている。我が国の場合は試験圃場の設置など、ようやく新農政においても、中山間を含めて有機農業という言葉が展開をされておりますが、環境の面からも一言述べられている状況がありますが、具体的に有機農業振興させる、あるいはそれをもっともっと重視をするというようなものが見えない。まあ、いわば有機農業に対しては緒についたという状況じゃないか。  したがって、アメリカあるいはヨーロッパ等においてはちゃんと有機農業法制定をされて、その振興に努めながら、JAS規格JAS法等によって基準規格制定をされて整備をされてきている。考えてみれば、日本の場合は逆じゃないか。JAS法等によって規格あるいは基準が設定をされて、それから生産の問題についてようやく手をつけた、こういうことでありますが、具体的にどう振興するのかということも定かでないという状況があるのではないだろうかと思うのであります。  したがって、これは新農政関連をして、環境あるいは安全性を伴う非常に重要な有機農業振興について、このJAS法との関連もありますが、もっともっと重視をしていく必要があるのではないか、こういうふうに思うのでありますが、どんな考え方を持っておりますか。
  4. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 我が国有機農業につきましては、ただいま先生からお話がございましたように、ECとかあるいはアメリカ、そういうところと比べまして歴史が浅いということは事実だろうというふうに思っております。  我々も有機農業につきましては、消費者皆さん方が健康を求めるといいますかあるいは自然を求めるというような、そういう消費者ニーズ対応いたしまして有機農業というものが発展してきておるわけでございまして、そういった生産者方々がいろいろな工夫をしながら取り組んできておられる、それに対しましてやはり支援をしていくということの一環といたしまして、それぞれの取り組みにおける技術の確立ということがまず大切だというふうに思っておりまして、現在有機農業に先駆的に取り組んでおられる皆さん方の、農家における一連技術、それを実践的にいろいろな効果あるいは問題点を実証いたしまして、それを技術情報として整理するというような基礎的なことですね。  それから、各地有機農業実践現場から、土づくりであるとかあるいは病害虫防除といったような個別技術情報、そういったものを集める。そうした技術を、生産者普及事業とかそういうものを通じながら返していくというようなことを現在やってきておるところでございます。  そのほか、有機農業に新たに取り組みする人たちには無利子農業改良資金を用意いたしまして、生産者に対して支援を行っていくというようなことをしておるところでございまして、今後、より効果的な支援というものを考えていきたいというふうに思っておるところでございます。
  5. 遠藤登

    遠藤(登)委員 それはもっともっと、やはり今地球規模環境問題、食の安全性の問題、食糧問題が問われている昨今でありますから、中長期的にこの有機農業というものについて、有機農業振興のための法律制定を含めて、早急に検討されることを強く要請をしたいというふうに思います。  それから、このJAS法の規定によって、アメリカあるいはヨーロッパを初め海外の有機農産物が、この法に合致すれば輸入するということにつながると思うのでありますが、そういう外国産の有機農産品の法的な扱いとかあるいは対応などについて、どのような対応考えていらっしゃいますか。
  6. 須田洵

    須田政府委員 お答えいたします。  これまでのJAS法におきまして、加工食品主体のものでございますけれども、そういうものにつきましても一応内外無差別ということで、内外の差をつけないというのが一つの原則でございますので、外国からも同じような、その規格基準に適合したものははいれるような仕組みになっているわけですが、このたび提出しておりますこの特定JASといいますか、そういうものにおきましても同様に、外国においてこの特定JASを活用して日本に入れたいという場合は可能なような、国内と同じように扱える、そういう仕組みにしてございます。  ただ、実際にどういうものが入ってくるか、これは外国の側の取り組みにもよろうかと思いますけれども、現実の今の実態におきまして、私ども見ますと、有機についての農産物について、有機農産物を入れようという若干のいろいろなトライはあるようですけれども、なかなかそれをまとめて日本に持ってくるということについては、いろいろコストの問題ももちろんございますけれども、実際入ってきてから、場合によっては虫がいれば薫蒸しなくてはならぬということになっておりますので、そうしますと、薫蒸してしまえばまさに有機としての意味合いがなくなってしまう、そういうようなこともございまして、大量にまとめて入れるというのは実態として非常に難しい。ごく一部の例で、しょうゆのメーカーが有機大豆輸入するという試みもございましたけれども、極めて小ロットずつに区切ってやらざるを得ないとか、そんなような実態になっておろうかと思います。
  7. 遠藤登

    遠藤(登)委員 時間がありませんからずばり入っていきますが、ニュージー産のリンゴを買えという問題、これは大臣初め皆さん心配をされてきた経過については理解をするのでありますが、現在国会が開会中である、あるいは委員会審議も行われているという状況がありますね。そして衆参の国会先生方が、二百五十六名を超える反対署名要請大臣あてにも提出をさせていただいた経過があります。  この解禁をめぐる扱いについて大臣が決裁をしたということだと思いますが、決裁する前にちゃんと国会にあるいは委員会等報告をすべきじゃないか。大体、解禁決定をやってニュージー側に通告をして、そして国会関係者解禁決定したという一連の通知ですね、これは解禁事後対策をきちっと説明をする、あるいは解禁に至った経過をきちっと説明をする、それが建前じゃないですか。これは理解と納得を生産者消費者を含めてきちっとしていくということが大事な要件なのではないかというふうに思いますが、その点について、今後行政対応として、この重大な問題についてそんな対応はあってはならないのではないかというふうに思いますが、これまでの経過なり事後対策、あるいは国会対応などについて改めてお聞かせをいただきたい。これは時間がありませんから、簡単に要約をしてきちっと説明をいただきたい。
  8. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおり、二百五十名以上の国会議員方々からの署名があったことは私十分承知をしておりますし、国内でも賛成、反対いろんな意見がございました。しかし、これは多数決で決めるとか、政治的に決着をするとかという種類のものではないものですから、単純に防除体制ができたかどうかということの判断でいたすわけでありますから、まあ御意見は御意見として十分承りながら私の方で対応した。  決定した際の連絡ということについては徹底しない向きもありましたので、その点については遺憾に思います。思いますけれども、どういうふうにこれを報告をすればそれで納得いただけるものか、あるいはそれでよかったというのか、やっぱり賛否のあるものというのはなかなか問題がありまして、私どもも苦慮いたしました。いたしましたけれども、そういう趣旨でやったものですから、それでこの輸入解禁しないということになれば新たな貿易摩擦というものがここに発生する。高度な判断からいろいろ考え決定をいたした次第であります。
  9. 遠藤登

    遠藤(登)委員 いや、決定するに当たって、少なくとも所管委員会等報告をするとかあるいは国内事後対策も明確にするとか、そういう手だてをこれはきちっと、今後そういう問題についてはそうあるように強く要請をしたい。  それから、これは単に、いわば植物防疫法上の問題だ、あるいは技術的な問題だとおっしゃるけれども、安全性の問題とか病虫害の問題とか、あるいは事後対策の問題とか国内に対する影響の度合いとか、そういうものについてこれは万全の配慮をして対応しなきゃならないのではないか。単なる技術的な問題だ、行政上の問題だ、それが問題なければぼんぼんと対応せざるを得ない、対応する、これだけの問題で、今後アメリカ初めオーストラリアその他要請があるというふうに聞いておるのですが、単なる行政ベースあるいは技術上の問題だけで処理するという姿勢に立っていらっしゃるんですか。そうあってはならないと思うんです。
  10. 田名部匡省

    田名部国務大臣 事後どういう対策をとるか、まあこれはこれからのお話でありまして、どういう影響が出るのかというのは我々も定かではありません。  ただ、リンゴ産業振興策というものはやっていかなきゃならぬ。今までは反対という団体生産者皆さん意見だけであって、こうしてくれというものがなかったものですから。しかし、いろいろと聞いてみると、こうしてほしい、ああしてほしいという意見もあるようでございますので、そのことは十分団体意向も踏まえて適切に対処していきたいと、これはもうこちらでできることでありますから、そういうふうに考えております。
  11. 遠藤登

    遠藤(登)委員 もう一つ、これは昭和五十一年にアメリカからイネミズゾウムシなどというのが検疫の網をくぐって日本に入ってきた。そして全国の水田が大変な苦労をした。もし火傷病やコドリンガが侵入するなんていえば、日本のいわば落葉果樹はほとんど全滅をしていくのではないか、こういうふうに心配をされている。これは完全防止をしてもらう、そして、もし入ったら、だれがどのような責任をとるのかということを明確にしていただきたい。
  12. 田名部匡省

    田名部国務大臣 まず、そういうものが入ってこないように万全の体制をとる、これは専門官を向こうに常駐して徹底的に検査をいたします。まあ万一ということでありますから、そういう場合には早急に全額国庫負担撲滅防除、それを図る考えでありますし、そういうおそれが仮にあるとすれば検査でわかるわけでありますから、輸入禁止措置を含めた所要の措置というものをとるわけでありますから、万全を期してやりたい、こう思っております。
  13. 遠藤登

    遠藤(登)委員 それからニュージー以外に、アメリカを初め解禁要求が強まっているという話を聞くのでありますが、どういう状況ですか。どう対応しようとするのか。
  14. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 今お話がございましたように、現在、アメリカあるいはオーストラリアなどからリンゴ輸入解禁要請があることは事実でございます。また、最近新聞などでも御承知かと思いますが、アメリカからもそういうことを言ってきております。  我々はこれに対しては、あくまでも技術的な問題であって政治的に云々する問題ではないというふうに言ってきておりますし、対アメリカのことで申し上げますと、まだ現時点でも火傷病消毒技術の評価が終わっておりませんし、そういったことで検疫技術上の問題もまだ未解決のまま残っておるところでございます。  したがいまして、これはあくまでも技術的な問題ということで、そういった技術的な問題が解決されない限り輸入解禁することができないという考え対応しておるところでございます。
  15. 遠藤登

    遠藤(登)委員 今国内農業状況が大変な状況にあるのは御案内のとおりでありまして、これは国会対応についても、あるいは事後対策の問題を含めてきちっと対応していただきたい。  それから、そういう解禁要求などについては十分、少なくても病虫害の侵入が完全に防除できる、防止できるということをきちっと確認をして慎重に対応されるよう強く要請をして、終わらせていただきます。
  16. 平沼赳夫

  17. 前島秀行

    前島委員 昨年の特定農産物ガイドライン基本方針、通達が出て以来、また、年がかわって政府の方のJAS法の改定の意向というものが出てきた段階で、いわゆる有機農業に携わっている人、生産者消費者を含めてさまざまな反応といいましょうか、さまざまな意見が一斉に出てきたと思います。特に、一生懸命に有機農業を長い間こつこつとやってきた人たち、真剣に、健康で安全な食糧をどう確保していくか、そういうことを一生懸命に取り組んできた人たち、そういう人たちから、特にこのガイドライン、あるいはJAS法改正について批判的な意見が出てきたと私は思っています。  その出発点は、そもそも政府がやろうとしていることは基本的に逆ではないか。というのは、最近の消費者健康志向といいましょうか安全志向、あるいは本物志向という形の中で、有機農業有機農産物が見直されてきたので、急に流通の側面からだけ物事を対処しようとしているのではないか。有機農業というものは流通だけではないんだ、安全だけではないんだというもっと大きな課題を含んでいるので、まず第一にこの有機農業というものをどう評価するのか。そして、昨年出てきた、今我々も議論してきましたあの新農政具体化という過程の中で有機農業をどう位置づけるのか。そして、具体的に日本農政を展開する中で、有機農業というものをどう育てていこうとするのか。  こういう生産だとか加工だとか流通という一連政策の遂行される中で、あるいは有機農業を育てていく過程の中で、その一環としての流通の問題としてこの種のことがされるなら我々は理解するけれども、そういうものが一切ない中で流通部分だけが、確かに市場に出ていること、あるいは市場にまがいものが出ていることを規制するということはいいけれども、その基本的なところが何ら示されていないで、何ら具体化されていない中で、流通問題だけでもってすることは本末転倒ではないかという意見が多く出されているし、我々も関係者からそういう意見をたくさん聞いてきているわけですね。  そういう面で、私は、第一にこのJAS法あるいはガイドライン、これを進めるに当たって有機農業というものをどう評価しているのか、これから新農政を展開する中で、具体化する中でそれをどう位置づけようとしているのか、この辺の基本的なところを、まず大臣にひとつ聞かせておいてほしい。
  18. 田名部匡省

    田名部国務大臣 有機農業につきましては、化学合成された農薬あるいは肥料等を使用せずに生産された農産物を求める生産者方々が、さまざまに工夫しながら取り組みを実は拡大してきておるわけであります。  有機農業は、通常の農業に比べて労働力が、まあ時間も多くかかる、あるいは収量も劣るという面がありますが、消費者安全性志向あるいは自然志向にこたえながら、地域の資源の物質循環システムを巧みに生かした農業のあり方の一つとして位置づけ、支援し、推進していくことは重要だ、こう考えております。  お話しのように、私も、特に御婦人の方々が多いのですが、いろんなものが出ているが本当だろうかという疑問をぶつけられまして、私も自炊をいたしておるものですから、買いに行くといろんなことが書いてありますけれども、本当かな、うそかな、そう思うとまた……。ですから、そういう疑いは晴らしていくということが我々に大変必要だと思うし、あるいは今申し上げたように、何とかしかし安全、健康、そういう面からもこのことはやはり育てていかなければならぬ、おのずから限界はまだまだありますけれども、緒についたばかりでありますから。  しかし、そういうことを踏まえて、技術情報収集、あるいはこれを提供する、そして積極的にやりたいという人には無利子農業改良資金の貸し付け、そういうものをしながら育てていかなきゃならぬ。これはあくまでも需要供給関係でありますから、その辺も十分配慮しながら安全な食糧というものをつくっていきたい、努力していきたい、こう考えております。
  19. 前島秀行

    前島委員 今大臣が言われたように、需要供給関係だから云々と、ここが基本的に私は問われているんだろうと思うのですよ。私たちもきのうの澤登さんの話とか有機農業に携わっている人たち、あるいは有機農業運動をやっている人たちから、今回いろいろな意見を聞きました。私自身、有機農業に直接携わっていませんからなかなか本質というのはわからない面もあるのでありますけれども、そういう人たち意見をさまざま聞いてきますと、有機農業というのは、現在の近代的なといいましょうか農業技術体系、あるいは現在の農産物流通システムだとか消費構造だとか、あるいは、言っていいと思うのですけれども、国の農業政策等々にあるさまざまな矛盾といいましょうか内在する問題をどう克服するかという取り組みでもある。したがって、消費者健康志向だとかあるいは消費者安全性志向、それにどう対応するかということも当然だけれども、有機農業はそれだけではないのだ、要するに近代農業が持っている生命だとか環境破壊という性格をもどう克服していくかというふうな課題を含めて有機農業を追求しているんだ、こういう意見なんです。  だから基本的に、大臣が言われるように需要供給関係なんだから、ふえてきたから事をやればいいんだというものでは、私はない。そこのところの理解がないもので、やはりきのうの澤登さんのああいう発言にもなるんではないだろうかなと私たちは思っております。ある意味でいったら、いわゆる新農政効率化だとか大規模化だとか法人化というものと相矛盾する部分もある、そういうものを含んだ有機農業運動でもあったと私は思うのです。それが今、消費者安全志向健康志向本物志向という形の中で期待が持たれてきているということもまた事実なんです。そこをどう行政が積極的に取り入れて、農政の中で展開していくかということも求められているんですね。そこが見えてこないもので、まがいものをなくそうということはいいんだけれども、そのまがいものをなくそう、流通を整備しようということでもって本来の有機農業というものが矮小化されてしまうんじゃないだろうかということの不安が表明されて、今回の改正についてさまざまな意見が出ていると私は思うわけですね。  そういう角度から、じゃ、具体的に政府は何をやろうとしているのか。予算の面から見たって微々たるものですわね。まあ、二、三年前にその対策室ができた程度なんですよ。しかし、片っ方で関係者の方の要望というのは、総合的な有機対策推進をしてほしい等々の要望があるわけです。局長、具体的に数字をもって、具体的にこういうことをこれから有機農業推進のために、育成のためにやるんだというところを示してほしいと思うのです。
  20. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 まあ、我々これから有機農業を育てていくという立場に立って、今後どういうふうにしていったらいいかということをいろいろ検討してきておるわけでございますが、その中でやはり何といいましても、先ほどもちょっと申し上げましたが、有機農業技術をどう確立していくかということが重要なわけでございます。  それで、現在いろいろと各地有機農業をやっている方がおられまして、いろんな個別の技術というものが見られるわけでございます。例えて言えば、土づくりをどんなふうにやるかとか、あるいは病害虫防除についてもどんなふうにやるかというようないろいろな技術を持っていらっしゃる。そういうのを我々が掘り出してきて、そういうのを集める、情報収集をするということがまず一つ。  それから、それだけではだめなわけでございまして、体系的なまた一つ技術として農家で実際に実践をしていただいて、そこに普及員とかあるいは試験場、そういったところが行きまして、いろいろなその技術効果あるいは問題点を調査して、それを一つ情報として収集するということをまずやっておるところでございます。  それで、こういうようなデータを、また普及所を通じまして農家の指導に当てていく。さらに、そういうような人たちが、ぜひひとつ有機農業をやりたいという人がいますと、そういう今申し上げましたようなデータに基づきまして指導すると同時に、必要な資金を無利子で改良資金からお貸しするというようなことをやってきておるということでございまして、今後そういったことを一つ一つ積み重ねながら、まず技術の確立ということをしっかりとやっていきたい、こう現在は思っているところです。
  21. 前島秀行

    前島委員 言葉で言うと、何か一生懸命たくさんやっているように言いますけれども、予算の数字で見ますと笑い話になっちゃうんですよ。今、有機農業技術実証調査事業、このことを言っているのでしょうね。一生懸命で事実を調査する。これの予算幾らですか、ことしの予算。局長、言ってみてくださいよ。技術体系をやるために、じゃ、予算幾ら組んでいますか。  それから、無利子のをすると言うけれども、その有機農業導入の資金、資金の枠は幾らですか。ちょっと具体的な数字、あったら言ってください。
  22. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 まず、先ほど申しましたいろいろな技術の確立とかそういうことに使っております予算が、全部で六千二百万程度でございます。それから、有機農業導入資金ということで、現在農業改良資金でそれを用意しておるわけでございますが、貸付枠といたしましては一億ということでございます。
  23. 前島秀行

    前島委員 大臣、この数字で、一生懸命これから有機農業をやりますと、心配するなどは、恥ずかしくて、正直言って言える数字じゃないと私は思うんですね。全部で、億じゃなくて六千二百万でしょう。六千二百億なら、まあ、あれしますけれども、方なんですよ。これは言葉としては、一生懸命で基礎調査をしています、これから技術体系をつくりますと言葉はあるけれども、具体的な裏づけは私は何もないと言わざるを得ないと思うんですね。ここにやはり有機農業に携わっている人たちが、本当有機農業というものを位置づけてくれているんだろうか、有機農業というものが日本農政の中で理解されているんだろうかということの不信感というのが前提としてあることは間違いないんです。だから、今度の一連ガイドラインの発表以来、あるいは今度のJAS法改正以来、やっぱり疑問を提起して、そう簡単に賛成できないという声があるのは、私はそのとおりだなというふうに思わざるを得ないわけですね。  したがって、ぜひここは、これから新農政を展開する中で、この有機農業をどう位置づけていくのか、どう育成していくのか。これはやはり、今世界的な規模での安全性健康志向という動きの中で、私は当然やらにゃいかぬ、率先してやらにゃいかぬ農政上の課題だろうと思いますね。特に、環境という問題もまた大きな課題になってきている。農業における環境の位置づけの問題ということもあるわけなんで、まずここのところをぴしっと、これから新農政を具体的に展開する中で有機農業というものを位置づけるんだということをぜひお願いをしたい。言葉だけに走らないで、具体的に来年度予算の中で数字でもって出てくるように、六千二百万円の予算で有機農業をやっていますとはこれは言えないんでありまして、ぜひその辺のところは基本的な問題としてお願いをしておきたいというふうに思います。  それから次に、ガイドラインの問題についてちょっと伺いたいんでありますが、いわゆるガイドラインが去年の秋に出て以来、さまざまな問題点が指摘されていることは今さら言うことがないと思うんですね。もう大臣局長も、それぞれの関係者からこうこうこうだということは具体的に指摘されているんで、私から改めてこういう問題があるとは言わないんでありますが、その見直し問題というのが当初からあるわけでございますが、このガイドラインの見直しというのを具体的にやる意思があるのかないのか、ここをまず最初にお聞きしたいと思います。
  24. 須田洵

    須田政府委員 委員おっしゃいましたように、ガイドラインにつきましては昨年の十月に公表いたしまして、この四月から実施に入っているわけでございます。その発表過程におきましても、それまでのいろんな論議も踏まえまして、やはり有機農産物等につきまして、表示の基準になるものは今まで何もない、そこで、まずはその第一歩ということでやってみよう、こういうことで踏み出したわけでございます。  その公表の際までにもいろいろな論議のございましたことも踏まえまして、実際にやってみて、やはりこういう点を直した方がいいというようなことがもしあれば、それはやはり見直しをするということは十分あり得る、こういう考え方で取り組んでいきたいというふうに考えております。
  25. 前島秀行

    前島委員 要するに、見直す方向がどうかということなんですよ。
  26. 須田洵

    須田政府委員 今、実施しましてまだちょうど一月か二月でございますので、それなりに実施状況をフォローしておりますけれども、現在の時点でここをこう直すとか、そういうようなことを申すにはまだちょっと早いのではないかという感じがしておりますが、内容的にいろいろな論議のあるのは、減農薬の扱いとか、あるいは無農薬と有機農産物の優良誤認の問題とか、もういろいろ論議されておる点については我々もそれなりに理解しておりますので、そのあたりを中心に、もっといい知恵がないかどうかということで考えていくのだろうという感じを持っておりますけれども、今の段階でさらに踏み込んで、具体的にこうしたいというようなものはございません。
  27. 前島秀行

    前島委員 今の時点で具体的なことはと言うのならば、では逆に問題の認識としてできるかどうかという点で、今局長が言われたように、一番混乱しているのは減農薬、無農薬ということですね。ヨーロッパアメリカ等々では、有機農産物という一本に絞ってそこに基準云々を置いているんだけれども、日本の場合は、この減農薬、無農薬という新たな基準ということをしたことが混乱の要因であることは、これはもう間違いないですね。  具体的にどれがどういうことでということは、もう局長もいろいろ聞いているから私は言う必要がないと思うのですが、この辺の紛らわしさがあるということなんで、例えばその辺のところを問題点として位置づけられるか。具体的にどうするかはこれからの議論としても、私たちの方は、紛らわしいのはやめて有機農業一本という形で置いて、あとは工夫という形の方にという認識で一致できるかということですね。この辺のところはどうですか。一番重要な問題だと思います。
  28. 須田洵

    須田政府委員 今、前島委員がおっしゃいましたような議論があることは私も承知しておりますが、一方におきましてガイドラインを設定する際に、大変いろいろ議論もし、悩んだ面がございます。  率直に申しまして、例えば減農薬というような表示について、それを設けるべきか設けざるべきかという、そこの出発点からいろいろな議論をしたわけでございます。これは結果的にいろいろ議論のある中で、減農薬はこうやるんだということで、農薬の使用回数等もセットで表示するということを前提にして、まずはこういうことでやってみようということで踏み出したわけでございますけれども、一方において、仮にその減農薬というものを全く、減農薬自体の表現をしてはだめだというふうには、本当に減農薬のつもりでやっている方に対してそういう表示規制はできないと思いますから、そういうことができない以上は減農薬表示について野方図にしてしまうという面が一方では出てくるわけでございまして、そこらあたりが非常に悩んだところでございます。  それと、減農薬表示をするということの一方では、その定義が、五割以下とかというような定義がどうしても必要になるものですから、そういう一応の基準設定をしておるわけでございますけれども、そこらあたり、本当にいっそ有機農産物だけでやるというのも、それも一つ考え方だとは思いますけれども、なかなか今の日本実態でそこまできれいに割り切れるかどうか、いろいろ知恵を出していかなくてはならぬのではないかという感じがいたしております。
  29. 前島秀行

    前島委員 そういう面で見直しの際に、要するに検討事項といいましょうか、いろいろ工夫を要する点であるということは私も一致できると思いますので、いろいろな面でそこのところは検討してほしい。  それと、いわゆるガイドラインが非常に紛らわしい要因の中で、まだいろいろな例外的な認識といいましょうか、例外的な扱いというものがあるんではないかという不信感も片っ方であるわけですね。ガイドラインをつくってかなりの整理はされてきているけれども、まだ紛らわしい部分がある。  例えば、ここは例外にしているんじゃないかという中で紛らわしい部分として、生態系農業だとかあるいは自然農法、こういう言葉で扱っている部分は、これはどういう位置づけにしてあるのか。これは例外として扱っているのですか。もし例外じゃないとするなら、どういう規制といいましょうか、どういう扱いになっているんですか。
  30. 須田洵

    須田政府委員 有機農産物等につきましては、従来から独自の基準を設けて、それに基づく生産を行った者に対しまして、例えば天然栽培とか自然栽培とか、そういった独自の表示を行って今日まで実績を積んできたという生産者も多いわけでございます。こういう生産者ガイドラインに基づきます表示を行う場合におきまして、消費者等から一定の信頼を得で、従来の用語による表示をしております。その表示自体を全面禁止するということは、必ずしも現実的でないというふうに考えられますので、ガイドラインによります一括表示はもちろんした上で、その枠外に、例外としてこれらの用語の使用も認めたところでございます。  そういう意味での例外というようなことにもなろうかと思いますが、具体的な適用に当たりましては、やはり消費者からその農法の基準について問い合わせがあった場合には、明確にこういうふうにやっていますということが答えられる内容のものかどうかとか、あるいは相当量の流通実績があるとか、やはりそういう中身をしっかり判断しながら考えていかなくてはならぬというふうに考えております。
  31. 前島秀行

    前島委員 やはり行政が、国が一定のガイドラインあるいは法律に基づいて基準を設定すると、これは影響が大きいんですよ。私はまた、それだけの権威がなければいかぬとも思うし、いろいろ市場の中でまがいものを整理していこうではないかということで出発したガイドラインあるいはその延長線上での特定JASの導入という形の中で例外を認めていくということになってくると、行政のあるいはガイドラインの権威もまた疑われて、私は混乱の要因に拍車をかけていくんではないだろうかという気もするわけですね。そういうガイドラインに例外を認めること等々によって、要するに農業そのものに選別を与えていくという結果にもなるだろう、こういうふうに思うわけです。  そういう面で、やはりガイドラインなり新しい制度の導入というのは権威あらなくてはいかぬし、それからそれがぴしっと守られるということが大切なので、こういうように安易に例外を持って、これは特別扱いにしていくということになったならば、もうすべてが崩れてしまうんではないだろうかと思います。その点、また今後の取り扱いを検討する中で、この辺の問題について、私はぜひ整理をしていってほしい。これ以上言いません。  もう一つガイドラインに当たって、やはりある程度ペナルティーみたいなものを持っていかないとだめじゃないかという点もあるのでありますが、この点はどうでしょうか。
  32. 須田洵

    須田政府委員 委員も御承知と思いますが、ガイドラインはあくまでもガイドラインでございまして、きのうも議論がございましたが、それである以上、具体的にそれに違反したということに対して何らかのペナルティーを科すということは、実際上できないと思います。  ただ、そのガイドラインによります表示がなされている限りにおいては、具体的に氏名といいますか、つくった人の名前とかあるいは確認責任者とか、そういう固有名詞がさらされるという側面があるわけでございまして、そういうところがぎりぎりのところだろうと思います。
  33. 前島秀行

    前島委員 ともかく、ガイドライン市場における一定の整理と言っては語弊がありますが、それができたという面は、私は率直に評価していいと思うけれども、ただし、依然としての紛らわしさ、それから逆にまがいものという部分もなきにしもあらず、あるいは取り扱い上のアンバランスという面で、果たして公平が確保されているのか等々、私は問題があることは間違いないと思うので、いつということはともかくとして、見直し規定があるわけでありますから早急に見直して、ガイドラインが権威あるものに、公平が確保できるようなものにぜひ見直しを早急にやってほしい、こういうふうに思います。  JAS法について二、三伺います。  いわゆる有機農業というのをいろんな人たちから聞いてみると、生産者消費者の基本的な合意という、そこのところから出発してきている。そしてお互いに、生産者消費者の命に責任を持とうではないか、片や消費者生産者の生活に責任を持とうではないか、こういう基本的合意に出発して、相互の連携というところが大きな原動力になって、私はある意味でいったら、日本農政の中でままっ子扱いされたと言ったらちょっと言葉が悪いかもしれませんけれども、そういう存在で出発をしてきた有機農業は今日大きな発展を遂げてきた、こういうふうに言っていいと思うのですね。  それで、いわゆるこの生産者消費者の提携という顔の見える関係が原動力であったんだが、今回のこのJAS法特定JASの導入というのは、この消費者生産者の提携、顔の見える関係、それにかわって国が特定JASという資格、許可を与えることによって、その直接の連携の信頼にかわるものとして制度化しようという趣旨だろうと私は思うのですね。有機農業にかかわっている人たちに言わせると、顔の見える提携、顔の見える相互の信頼関係には基準なんか要らないのです、こう言うのですね。だから紛らわしいことを持ち込んでくれるな、こういう意見もある。片や、市場有機農業という形の中でいろいろなものが出てきている。また、消費者要望がある。だから、一定のルールも必要だ。これも私も理解できるわけですね。  そうすると、今度の特定JAS法の制定、運営に当たっては、この顔の見える信頼関係にかわる権威のあるものでなければ私は困る。要するに、これからは消費者は国が法律であれする標準をお互いの顔の見える関係にかえて信頼しよう、こうしているわけでありますから、ここが私は今回のJAS法の導入の最大の問題だろうと思うのです。  そうすると、まず第一に安全性という問題ですね。これだけ有機農業が見直されてきたし、消費者が求めているというのは、やはりそこに安全性を求めているからだろうと思うのです。そうすると、生産者なり消費者が求めている安全性というのは、今度の法改正の中で、あるいは特定JAS制度の導入の中でどう確保しているのか、ここは重要な点だろうと思うのですが、その辺をどういうふうにとらえていますか。
  34. 須田洵

    須田政府委員 食品の安全性という問題につきましては、基本的に食品衛生法で対応するということになっておりますことはもう御承知かと思います。  ただ、JAS法におきましても、より安全性の高い食品を求める消費者意向といいますかニーズというものもきちっと踏まえた対応をするということは可能でございまして、これまでの加工食品の関係JAS規格におきましても、例えば食品衛生法上使ってもいいよというふうに認められている食品添加物よりもぐっと絞った、使える添加物を非常に数を減らした、そういう規格をつくるというようなことも、これまでも対応してきております。  これからの特定JASの中におきましては、まさに特に一次産品のようなものにつきまして、従来はある意味では農薬の使用というのは当然一定の使用規制を守ればそれはそこまでは使ってもいいわけですけれども、それを無農薬、極端には無農薬とかそういうような非常に制限したものを規格としてもつくっていくというようなことにもなるわけでございますから、実質内容としてそういうより安全性を高めるということに、規格の内容をどうつくるかということにもちろんかかわってまいりますけれども、内容次第ということはございますけれども、そういう面での対応というものは可能だというふうに考えております。
  35. 前島秀行

    前島委員 そこは局長、微妙でしてね。私たちもこの安全性というのを今度の一連の中でどう確保していくかというのは重要な課題であると思っています。同時にまた、政府の今回の法案の改正の提案趣旨の中に安全性ということを強調しているし、求められていると、こう言っているわけですね。したがって、私たち一連の今度の法案の対応の修正案の一つに、いわゆるこのJAS法の中に安全性ということを、安全に責任を持つということを入れたかった。ここがまた重要な最大のポイントだと思っていた。そうしたら、このJAS法という法の体系の性格から、どうもここはだめだと、こういう返答も返ってきた。  片や、これから政府農政を展開していく中で、安全ということは何も厚生省の云々じゃなくして、つくる側の責任としてもやはり責任を持っていかなくちゃいかぬ、こういうことだろうと思うのです。そういう面で、やはりJAS法の中に安全性を求めるということは法体系として限界があることは私たちは事実だろうと思う。思わざるを得ない。  そういう面で、いわゆる今度のことを機会に、あるいは消費者等々の求めという大きな流れの中で、命にかかわる食物を生産していくというこのあり方として、やはり生産の側の食の安全ということは責任を持つべきだと思う。そういう面で、有機農業のあり方、有機農業の発展という形でやはり新しい法律をつくって、安全性の問題あるいは有機農業の育成、展開という問題を、私たちは独立法としてつくっていくべきではないか、こんな考え方を持っている。ここは、今局長なり大臣にこのことをすぐ答弁しろと言っても無理だろうと思うので、そこは求めませんけれども、私はJAS法の中で、ここで安全性が確保できるんだということを、そう簡単なものじゃないし、そんな軽々に言えるものでもないというふうに思っています。  そこで、これ以上安全性のことはあれしませんけれども、具体的に特定JASを運営するに当たって、先ほど言いましたような信頼を得るために、運営上あるいは今後やっていく上で何点かぴしっとしていかないと信頼も得られないだろうし、ますます混乱が生ずるではないかというふうに思いますので、まとめて二、三お聞きします。  例えば、今度の特定JASというのはつくり方のJASなんだから、生産行程という生産する過程の中でチェックができるのか検査ができるのかというのが、私は一つ重要な柱だと思っているのですが、この生産行程における検査体制、チェック体制はどうするのかということが一つ。それからその格付機関というのが非常に重要になってくるのですが、この格付機関の認定といいましょうか充実ということをどう考えているのか。あるいは、この生産行程管理者あるいは小分け業者の資格要件等々が、今度のJASの信頼性を得る意味で重要なポイントではないかと思っています。時間がありませんものですから、この辺のところをまとめて、どういうふうに確保しようとしているか、担保しようとしているのか、簡単にでいいですから答えていただきたい。
  36. 須田洵

    須田政府委員 おっしゃいますように、生産行程のチェック、検査というものは、非常に生命線といいますか最も大事だというふうに私どもも考えております。  時間もございませんので簡単に申しますと、例えば有機なら有機規格制定された場合におきましては、やはり中立的な第三者である格付機関、これは農林水産省の機関、それから都道府県、さらには非営利法人である登録格付機関、そのいずれかになるわけでございますが、あらかじめ生産者なり圃場等を登録する。さらに生産期間中において基準に合った生産方法で生産されているかどうか現地確認を行う。それから、当然必要なことは記録の記帳の義務づけというようなことが必要になりますが、そういうものの定期的な確認。さらには、生産量の把握なり出荷状況の確認というようなことを行うことによりましてチェックをしていく、こういうことに尽きるわけでございます。  いずれにしましても、その場合に具体的にチェックをするという場合に、すべて格付機関によるチェックというもので可能かどうかということは、現実に今ございます例えばアメリカヨーロッパ等外国の例から見ましても、生産者みずからがきちっとその生産管理をする、チェックをしていくというものと一体的なものでなければ、実際上はやはりスキームとして動いていかない。しかし単なるそればかりではまずいので、第三者機関によるチェックももちろんかみ合わせながらやっていかなくちゃならない、その辺のバランスといいますか、そういうものを相伴いながらきちっと体制をつくっていく、こういうことだろうと思います。  それを具体的に、例えば有機なら有機農産物規格をつくるときに、その規格に対して守らせるためにはこうしたらいいんじゃないかという、その格付機関あるいはその生産行程管理者の基準の問題とか、そういったことを全体的にきちっと詰めて合意形成をしていく、納得のいくものをつくっていく、そういうことが必要ではないかというふうに考えております。
  37. 前島秀行

    前島委員 時間がありません。大臣に最後に、具体的な今の細かい点については後の委員にお願いしますが、大臣、やっぱり私は、今度の特定JASの導入に当たって一番大切なことは、有機農業を営々とやってきた、市民運動的な草の根運動からやってきて、ようやっと今日有機農業の重要性が認められて、農政でも認知されてきているわけですね。そういう面では評価されていいと思うのです。これからやはり、このJAS法の運営に当たっても重要なことは、そういうこつこつとやってきた人たち意見あるいは経験、技術というものを十分生かして尊重していくということが一つと、同時にやはり、私が最初に言いましたように、農政の中に有機農業というものをぴしっと位置づけていくのだ、そういう二つのものがないと、ガイドラインから出発した今回の一連の問題については、混乱だけが生じてしまうのではないだろうかという点を心配します。  そういう面で、この二点について大臣の見解を伺って終わりたいと思います。
  38. 田名部匡省

    田名部国務大臣 お話にあるとおり、私どもは生産者を守る立場と、消費者もまた守っていくという両面をやっぱりきちっとやっていかなければならぬ立場にあります。ですから、有機農業、こうしたものは消費者が求めてどんどんふえていくであろう。しかし、おのずから限界もあると思うのです。品目にもよるし、いろいろ技術的なこともありますから、これから一生懸命取り組みます。まだ緒についたばかりでして、先ほど予算の指摘もありましたが、昨年度から融資の制度もやってきたわけでありまして、これからいろいろやっていきます。そういう中で、本当生産者も喜んでつくれる、消費者も安心して食べられる。これはもう信頼関係ですから、十分意見を聞きながら、みんながいいという方法でいくのが一番いいと私は思っております。  今、二つのことについて、今後十分御意見を承りながら、一番いい方法で実施をしていきたい、こう考えております。
  39. 前島秀行

    前島委員 終わります。
  40. 平沼赳夫

    平沼委員長 志賀一夫君。
  41. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 私はまず、有機農業というものを新農政の中でどのように位置づけて対応しようとしているのか、こういうところにスポットを当ててお聞きをしたいと思う次第であります。  御承知のように、新農政の根幹は、やはり従来どおり高生産、効率的な農業、こういうのが一貫して流れている思想であります。同時にまた、今回新しい一つのとらえ方としては、環境保全型農業、こういうことでの対応もまた同時に取り入れているところでありますが、そういう新農政の中で、一体この有機農業というものを、二十一世紀を展望した中でどのような位置づけをして持っていこうとしているのか、その辺に対する基本的な考え方について、まずお聞きをしなければいけない、そんなふうに思っているところであります。
  42. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今委員お話しのように、新農政との関連で申し上げますと、環境に優しい農業ということで私ども環境保全型農業を進めていく、こういう立場にありまして、その中でも特に農薬、肥料、そうしたものを極力使用を減らすという方向と、これは一致しているわけであります。ただ、今のところそれぞれ生産者方々が工夫しながら取り組みをしてきておるわけです。実態としてはそういう方々がおる。それがどんどん市場に、まあ顔の見える同士でやっている信頼関係のうちはいいんですけれども、だんだん市場にも出回るということになると、どうしてもそれは価格が高いものですから、本当だろうかという疑問というものも出てくるようになってきた。これに私どもどうこたえていくかということでございます。  お話しのように、品種によっては十分いけるというものもありますけれども、そうでないものは労働時間が、手間が非常にかかる、あるいは収量も劣るということで苦労しているというのも、私は現場を見まして話も十分伺いました。しかし、着々と伸びておることは事実でありますし、農薬をどんどん減らして安全なものをつくっているというところも多いわけであります。それは消費者の方が安全志向がどんどん高まるものですから、あるいは自然志向といいますか、そういうものにこたえて、価格はどうしても高いものですから一生懸命になるということは、私はそれなりに結構なことだと思っておりますし、一つ農業のあり方として位置づけて支援をしていく、あるいは推進をすることは重要だというふうに考えております。  そのためには、当面、技術情報収集をするとか、あるいはそれを提供して本当に安心してやっていける体制というものを指導していかなければならぬ。そのためにいろいろなことをしていかなければならぬということと、無利子農業改良資金の貸し付け、そういうこともやってみて、本当に取り組む。これはつくる方に不安もあるものですから、そういうことがなくなっていけば、もっともっと支援措置というものをとっていかなければならぬというふうに考えております。  いろいろ検討して、本当消費者にも生産者にもいい方向があれば、その支援をどんどんしていきたい、こういうふうに考えております。
  43. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 今、お話は十分わかるわけですが、この間も実は出向きまして、百貨店のジャスコというところですか、見てまいりましたが、その中で有機農法でやったものの値段はどれくらいかといいますと、二、三割高い、こういうふうなことでありますけれども、しかし実際にかかる手間賃それから苦労というものは、もうとてもとてもそんなものじゃないんですね。そういう苦労をして貴重な有機農産物をつくるというのは大変なことなんです。  そういうことから、今までの有機農産物というのは、顔の見える範囲内で、信頼性の中で培ってきたというのが現実でありますけれども、これから国で有機農法というものを取り上げて大々的にやっていこうということになりますると、その辺が農水省が言う、新農政が言う高生産、高能率農業というものとどう整合性をとってやっていくのか、その辺とのバランスをどういうふうにやっていくのかというのは、やはり相矛盾した方向であり、それをどう整合性を保ちながらこの有機農法を広めていくかというのは、農政の中できちっとした方針、考え方を持っていかないとどうにもならなくなるのではなかろうかと、そんなふうに思うんですが、いかがでしょう。
  44. 田名部匡省

    田名部国務大臣 お話はよくわかるわけでありますけれども、現実の問題として、委員お話しのように二割、三割高いそういうものを全部の国民が求めるかどうかというのは、これは我々もわかりません。しかし、安全な食品というものを求めていることはこれは国民みんな同じでありますから、そういうことでは我々も、さっき需要供給と言いましたが、求めるものはどんどん伸びていく可能性はある。しかしながら一方では、まだ技術的に、良質米と同じようにスタートの時点ではどうも多収でないという面もあったり、いろいろ研究していかなきゃならぬ面もあります。  いずれにしても、新農政の規模拡大とそれとは違うじゃないか、おっしゃるとおりそうでありますし、物によってはなかなか難しい、無農薬というものでやれないというものも中にはまだあるわけであります。ですから、どっちかというと中山間地とか手のあるところで、私の県等は米なんかも大分共同でやってどんどんふえて、もう町長が先頭に立ってやっているところもありますし、そういうものを支援をしていくという方向で、いま少し支援体制をやりながらいろんなふうに技術的にも進めながら行く段階であろう、こう思っております。
  45. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 どうもその辺、不明確な状態にありますけれども、前に進みたいと思うのであります。  この有機農法に対して、先ほどもお話がございましたが、ECにおいても環境保全型農業として、食の安全性の視点から有機農業法を一九八五年に法制化し、また米国では九〇年農業法を制定して、大型農業の限界から環境保全と食の安全性重視ということで有機農業法制定しているわけであります。  その間にはECにおいてもアメリカにおいても、早くは一九六〇年代からかなりな歴史的な経過を経て、そういう有機農業法というものを制定するまでに至っているわけであります。したがって、その内容においても非常に事細かに規定をして、そして本当に立派な有機農業法をつくっているなというふうに思われるような状態の法律をつくっているわけであります。  そういう点から考えますと、今回の有機農業を、いわゆる特定JAS法ということでの制定ということではやはりその必要性を認めながらも、今大臣答弁にありましたように、まだまだ固定化し安定化しているということではありませんで、そういう点からいいますと、ここで特定JAS法ということで有機農業を位置づけるということは、やはり余りにも拙速で間に合わせ的なやり方ではないのかと指摘せざるを得ないと思うのであります。やはりもっと十分いろんな試行錯誤をやりながら積み重ねをやった以降、必要であれば法制化に踏み込む、こういうことで、もしつくる場合には立派な法案をつくっていく、こういうふうにすべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
  46. 須田洵

    須田政府委員 アメリカなりECなりの有機農業への取り組みについては、今志賀委員からもお話ございました。  ただ、内容的にちょっと私の方から説明いたしますと、例えばアメリカ有機農業法にしましても、いわば強制法的なものでございまして、これはカリフォルニア州を初めとした各州の長い間の歴史的な積み重ね、そういう州法でずっと積み重ねをしてきた集積としまして、全体として、要するに有機というからには生産者流通業者もこういう基準でなければ絶対流通してはだめだ、あるいはっくって取引してはだめだ、こういう法制の仕組みになっているわけでございます。そこをやはり日本がそういうものにすぐに移行していけるか、移行といいますかそういうものに対応できるか。  今提出いたしましたJAS法改正というのは、これはJAS自体は任意でございます。任意といいますか、特定JASといいますかそういう基準をつくったとしますと、そのJASを受けたい人は受ける、受けなければそれで自分で自由に流通する、そういう関係になっておるわけでございます。そういう形を通じて取り組んでいかないと、いきなりすべての、例えば産直でやっている方々も含めてその規格基準でなければおよそ取引ができないというふうに抑えつけるといいますか強制化するというのは、やはり日本のプロセスとしては無理があるのではないかという感じがするわけでございます。  また一方においては、先ほども大臣も申し上げましたように、具体的に有機だけではございませんけれども、いろんな特別の生産方法をとったと称した表示が非常に乱れている、そういうものに対して対応を早くしないと、本当にまじめに生産しつつあるその有機の芽を逆に摘んでしまうということにもなりかねないので、そういうような意味では、まずはこのJAS法という仕組みから入っていくのが、やはり今の状況としては一番妥当なのではないかなという考え方でございます。
  47. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 JAS法に適用した理由についてお話があったわけでありますが、しかし本来JAS法というのは一般的な食品の品質と表示の制度ということで規格をしてレッテルを張ってきたわけでありますが、そういうJAS法の持つ性格、食品の品質とそれに関する表示の規格に関する一般的な法規という点からいって、これを新鮮な野菜のようなもの、有機農産物、まあ傷みやすい、そういう日常生活に必要な農産物を、いわゆる特定な農産物だということで特定JASという考え方でありますけれども、しかしそういうものとどうもなじむものではないなというふうに私は思っているわけであります。  だから、ここで無理をして、その特定JASなんという言葉、表現を用いて、このJAS法の中にこういった有機農産物を取り込むというのは若干無理があるなというふうに思うのですけれども、その辺はいかがですか。
  48. 須田洵

    須田政府委員 今の委員のお尋ねの点でございますけれども、私どももその基本論については、このJAS法改正を検討する初期の段階から大分議論したことでございます。本当に重要な議論だと思います。  ただ、従来のJAS法というものがいわゆる加工食品主体規格基準をつくってそして品質表示基準をつくっていく、そういう考え方でございますけれども、物事の考え方として、必ずしもそういう枠組みにいつまでもこだわる必要があるのかどうか。ということは、やはりこれだけのいわゆる特別表示食品とかそういうようなものが現実にいろいろ出回ってきているそういう状況の中で、その問題はどちらかというと、本当にそういうものでつくったかどうか、そういう生産方法でつくったかどうかということをはっきりさせてほしいという、そういうニーズが強まっている以上、それを一次産品的なものも含めて幅広く製法JASといいますか、つくり方JASとして認証するという方途があってもよろしいんじゃないか、こういう一つ考え方の転換と申しますか、そういうふうなことを今日すべきではないかと、かように考えた次第でございます。
  49. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 今のJAS法の本来持っている性格からいって、やはり生産段階まで踏み込んだこの法の規格なり評価なり、そういうものを考えよう、対応しようということであれば、やはりそれはおのずと無理があるというふうに私は思うのであります。現実にいろんな問題が、混乱している問題がありますけれども、しかし一方で決して、有機農業をやっている農家皆さんは、何もそんなものを今急につくってもらわなくてもいいよ、おれたちは今まで生産者消費者の直結の中で信頼の関係で今日まで営々と築き上げてきたんだから、そんな法案を今無理してつくらなくてもいいよ、こういう意見が圧倒的に多いんです。  そういうことを考えれば、しかも今無理してJAS法に取り組んで、そして不十分なままでの一つの規制をやっていくそのこと自体は、やはりどうも現状をむしろ十分把握していないのではないかとさえ私は思っているわけで、いま少しく、やはりこの問題については、最初の大臣の答弁にもありましたように、もっともっと積み重ねをしていろんな経験を経た上で、蓄積をした上で、一つの方向づけをしていく、農政の中でのやはりそういった苦労、積み上げの中から一つの間違いのない方向づけをしていくというのが本来の農政のあり方ではないのかな、そんなふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  50. 須田洵

    須田政府委員 今委員がおっしゃいました現実に、今有機で取り組んでいる生産者の声、そういうものも十分くみ上げながらこういうスキームの検討をしていく、これはもう当然だろうと思います。  それで、いろんな声もございますけれども、私どもこのJAS法改正に取り組んで以来、いろんな賛否の声といいますか、いろんな声を聞いております。あるものは手紙で来るのもございますし、いろんな声がございます。もちろん厳しい批判の声もございますけれども、その中には、生産者の中には、例えばガイドラインとかこういうJAS法改正のラインというもの、これによってようやく自分たちもスポットライトといいますか脚光を浴びて見直されるようになってきた、そういう声とか、こういうものに即してきちっとこれからやっていくようにしたいとか、それから従来産直でやっている方々も、産直とはいえ内部での基準ぐらいはそろそろつくらなければだめだなとか、いろいろな反応が現実に今あらわれております。  そして、そういうような中で、私ども取り組みますこのJAS法というものは、JAS法につきましてはあくまでも先ほど言いましたような任意の世界でございますから、従来やっている産消提携といいますか、従来からやっています産直自体についてそれを規制するとか介入するとか、そういうものではないわけでございます。そういうような形で、お互いに顔の見える同士でやっている方については、それをそのまま継続していけるものだというふうに考えられます。
  51. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 前に進みたいと思いますが、先ほどもこの有機農産物関係の予算についてお話がありました。私も、やはり全体的に見た場合に、これだけ法の改正に農水省が熱意を持って取り組もうというなら、それにふさわしい予算をやるべきではないかというふうに思うのであります。  具体例で申し上げますと、後でもいろいろお話し申し上げたいと思いますが、宮崎県の綾町では、国の予算にほぼ近い一億二千万円の予算を町でとって、専従の職員も四名経験者を抱えて、そしてこの有機農法に積極的に取り組んでいる例もあるわけですから、宮崎県の綾町にほぼ匹敵するくらいのわずかな予算で有機農法をやろうというのはどうもちょっとけた違いの考え方で、その辺からも農水省自体の姿勢が問われているというふうに、あるいは有機農法に対する、農業に対する熱意の尺度にもなっているのではないか、そういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  52. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 先ほどもいろいろ申し上げましたが、我々の方といたしましては、現在は先ほど申しましたそういう技術的な面での確立を何とかするということと、有機農法をやりたいという人たちに少しでも支援をするというような金融措置などを考えたわけでございまして、今後ともそういった支援措置につきましては十分考えていきたいというふうに思っております。     〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕
  53. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 特定JAS法を制定するという一つの基本的な考えの中に、量から質へ、健康安全志向とそれから本物志向、こういうふうな一つ消費者ニーズ対応した対策をしていかなければならぬ、こういうふうに言っているわけでありますが、この全体の流れというものを見た場合に、そういう消費者ニーズに合うような総合的な施策があるのかといえば、必ずしも十分ではないと私は考えざるを得ないわけであります。  やはり生産流通、消費という各般にわたる総合的な、具体的な施策というものが当然その中には出てこなきゃならぬけれども、そういった施策がこの法案の改正の中には見えないな、どうも一時を糊塗するだけのものであって、一貫した有機農法、農業を一層進展させようという熱意のほどがうかがわれぬな、こういうふうに思っているわけですが、その辺についてはいかがでしょう。
  54. 須田洵

    須田政府委員 そのJAS法自体の中では、具体的な政策体系として、生産、消費、流通にわたっての、こういうふうにやっていくというようなものはもちろん入ってないわけでございます。  ただ、先ほど来も御説明しておりますように、また志賀委員も御認識のように、消費者のニーズに対応した食品の適正な供給、その適正な供給の場合には表示が重要でございますから、その表示をまずしっかりしなくちゃならぬ。その表示のもとになるのは、物づくりといいますか、物の基準をしっかり固めていく必要がある。そういったこともこの法律取り組みを通じて促されてくる、こういうことになるわけでございます。  また、その結果、表示というものを契機といいますかきっかけにいたしまして、生産のあり方といいますか、例えば有機なら有機生産基準をつくったといたしますと、その基準に合うような生産取り組みはどうすればいいかというようなことが、引き続いてやはり問題として起こるはずでございます。  それから流通につきましても、こういう特定農産物といいますか特定JAS流通を適正にやっていくためには、現在の卸売市場とかいろんな流通の姿としてどういう取り組みをしていかなくちゃならぬのか、その流通のつなぎ役としてはどういうふうに対応しなくちゃならぬかといったような、ある意味では派生的なテーマといいますか、そういうようなものがかなりこの法律改正を通じましてインパクトを持っているんではないかこのように認識しております。
  55. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 ひとつこの問題については、今後もやはりいい努力をしていただきたい、そんなふうに申し上げたいと思います。  この改正案の中で、私は、生産者消費者に非常に誤解を招くのではないかということから、有機農産物一つに用語を統一した方がいいのではないかというふうに思うわけであります。それは、無農薬あるいは減農薬、こういうふうになりますと、無農薬の方が有機農産物よりいいんだという誤解を招くところもありますし、また転換期間中の有機農産物というような、そういう表示もあるわけですが、こういうものは、いろいろ解説はあるようですけれども誤解を招くもとになりますので、こういうのは一切なくす。ガイドラインの中からなくす。もう有機農産物一本やりでやることがいいのではないかというふうに思いますが、いかがでしょう。
  56. 須田洵

    須田政府委員 先ほどもガイドラインをめぐりまして議論があったわけでございますが、ガイドラインの中で、大きく分けまして、有機農産物、そのほかには無農薬、減農薬と、大別しますと三つのカテゴリーがあろうかと思いますが、それについて、やはり減農薬なり無農薬というものがガイドラインとしては必要だということで判断して、いろいろな議論をした末に、そういうものを中に入れた形で設定されているわけでございます。  このあたりにつきましては、先ほども見直しの問題等に関連しまして、先々においてそういう見直しの際に、具体的にどう扱っていくかということをまた議論していかなくちゃならぬのではないか、かように認識しております。  現在時点でガイドライン自体を有機一本にする、それも一つ考え方とい。いますか、そういう主張をされる方ももちろんおられますけれども、なかなか今の時点では、いましばらくはそういう形でやってみて、それらの具体的な実施状況なり問題点等十分踏まえた上で、これから検討していくことだろうというふうに考えます。     〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 特に転換期間中の有機農産物だというような表示は、これは六カ月前から無農薬で、堆肥による土づくりをやってというような規定なんですけれども、こういう表示はまさに適当じゃないので、誤解を与えますから、こういうものはやはりできるだけ速やかになくした方がいいんではないでしょうか。  それから、減農薬あるいは減化学肥料栽培農産物というようなものについても、やはりこれはもうその土地柄あるいは土質、いろいろありますし、農薬や化学肥料の使い方も種々雑多であります。また、自分のところで幾らやっても農薬が周囲から飛んでくればまたそれにプラスになるということもあり得るわけでありますから、そういう点を考えても非常に不正確、不鮮明な表示ですから、こういうものをやっぱりできるだけ早くなくした方がいい、こういうふうに思います。十分速やかな検討をしていただきたいというふうに思います。  それから私、お伺いいたしたいというのは、この平飼い鶏卵とかあるいは地鶏とかいうのはどういうものを言うのか。安全志向本物志向ということであれば、それなりの詳しい解説が必要ではないのか、こんなふうに思います。こういう言葉は大分古い時代感覚の、もうまさに外れた不適当な用語なんです。これはたまたま商店で、それを一つのネームにしながら宣伝をするために用いたもので、法律用語の中にこういったものを入れておくこと自体がどうもおかしいのではないかというふうにさえ私は思っているわけで、いま少しやはり鮮明な、わかりやすい、現代的な言葉での扱いをすべきではないか、そんなふうに思うのです。
  58. 須田洵

    須田政府委員 地鶏とかあるいは平飼いの卵とか、そういう畜産関係につきましても、この特定JASの対象になるものがかなりあるのではないかというふうに考えられますが、現実に今そうした名称で、一つや二つの店ではなくて、かなりのチェーンストアその他で売っております。私も土曜、日曜はスーパー、ずっと随所を回りますし、現実にそういう商品を手にとることができるわけです。あるいは放し飼いとかいろんな名称で表示してあるわけでございますけれども、特にその中でもやはり地鶏のたぐいについては、そういうものの出回りが非常に多いのではないかというふうに考えられます。  一つの参考としまして、例えばフランスでラベル・ルージュ制度、赤ラベルと言っている立派な制度がございます。かなり歴史のある制度でございます要するに、一定の赤ラベルに適合するしっかりした鳥をつくるということで、その鳥の飼い方なり飼養基準といいますか詳細に、マニュアルといいますかそういうものの基準というものがございまして、そういうものに適合した生産方法をとったということであればラベル・ルージュが張れるという、そういう仕組みでございます。その中には、当然のことながら、例えば安全性との関連で言いますと、えさについての抗生物質の扱いはこうするんだとか、そういうようなことも事細かに書いているわけでございます。  現実に外国にもそういう例もあるというようなことから見ますと、この地鶏等の問題についても、それから現実に今表示が乱れているといいますか、いろんなものが現実に出回っているというその実態から見まして、そのまま放置することができないのではないかなと、そんな感じがしております。
  59. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 次に私は、先ほども申し上げましたが、宮崎県の綾町では条例をつくって、大変この有機の方に力を入れて、岡山県でもやっている、こういうふうに聞いているわけでありますが、特定JASマークつき生産品、あるいは製品とするための規格、あるいは生産行程検査、認証、残留農薬等の検査等、農水省の機関あるいは都道府県、登録格付機関、こういったものがかかわる、こういうふうに書いてあるわけでありますが、これの費用というか人員というかはどれくらい今後必要なものというふうに試算をして一応考えておられるのか、その辺をまずお聞きしたいと思います。
  60. 須田洵

    須田政府委員 格付機関としましては、今委員おっしゃいましたように、農林水産省の機関、それから都道府県も考えられますし、それから三つ目には登録格付機関が予定されておるわけでございます。  ただ、具体的にどの機関が格付機関になるかということは、具体的な規格に個別の品目といいますか、何を取り上げるかということによって、例えば有機農産物あるいは有機野菜というものを取り上げたときにその場合の格付機関はどうするかということで、単に格付機関のみならず、具体的にその生産行程のチェックをどういうふうにやっていくかということも含めて、基準づくりとあわせて関係者間の論議の積み重ねと合意形成をしていかなくてはならぬ、そういうことでございます。  したがいまして、今の時点で具体的にどれだけの人員が必要であるか、あるいは費用がどのくらいかかるかといったことについて現在計算するとかそういうようなものはございません。
  61. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 私の一つの提案でありますが、法律ができるたびに国の許認可事項というものが非常に多くなってくる。やはりできるだけ地方にそういった許認可権を移譲する、こういうことが大事だ、こういうふうに言われているわけでありますが、それと同列でもありませんけれども、可能な限り、私は、市町村でこういったものができる場合に条例等を制定して、市町村にこれらの業務をできるだけ担当させる、していただく、こういうふうにした方が、特に有機農産物というものを考えた場合に、非常に生産者消費者の顔の見える関係になるのではなかろうかな。そういうふうに考えますと、ぜひそういったことも、ひとつこれからの検討課題として十分考慮されていいのではなかろうか、そんなふうに思うんですが、いかがでしょう。
  62. 須田洵

    須田政府委員 登録格付機関につきましては、先ほど申しましたような三通りといいますか、三つの類型が考えられるわけでございますけれども、委員がおっしゃいましたように、可能な限り地方といいますか、ローカルなベースで現場により近いところで格付機関が存置するというのも一つ考え方だろうと思っております。  そういう意味では都道府県、さらには登録格付機関、これもいわゆる地方ベースでも十分設置することはあり得ると思いますから、それにその格付機関にふさわしい実質内容を備えている限りにおいては、そういうものが登録格付機関になることも可能なわけでございまして、そういったことも含めまして、現実的に例えば取り上げる品目によりまして、その品目についての認証といいますか格付はどこが一番妥当かということをより現実的に詰めながら決めていくということになるのではないかと考えております。
  63. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 ぜひそういった視点でこのことはやってほしい。そうでないと、やはり市町村も笛吹げと踊らずで、こういった新しい仕事に熱意を持ってこないのではなかろうかというふうにも考えますので、ぜひそういったことにウエートを置くような今後の対策考えていただきたいというふうに思います。  ここで私は、私どもの毎日食べている主要な輸入農産物、大豆とか小麦とかソバとか、もう七〇%以上が私どもの胃袋に入っているわけでありますが、これらの輸入農産物輸入先、それからどれくらいの量をどれくらいの価格で、総量で輸入しているのか、この明細をひとつ資料として提出していただきたいなというように思います。
  64. 須田洵

    須田政府委員 とりあえず手元にあるものでございますが、今先生がおっしゃいました大豆、小麦等についての輸入実績につきまして、大蔵省の通関統計によりますと、一九九二年の数字でございますが、まず大豆については、総輸入量は四百七十二万五千トン、総輸入金額は約十二億三千四百万ドルとなっておりまして、一位の米国が三百九十万トン、約十億一千二百万ドルとなっております。それから小麦については、総輸入量は五百九十七万九千トン、総輸入金額にいたしますと約十一億七千六百万ドルとなっておりまして、一位の米国が約三百四十二万九千トン、金額にしますと約六億五千四百万ドルとなっております。  大体そのような数字になっております。
  65. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 これは後で明細な資料をひとつ提出していただきたいと思います。  それでこれらの農産物でございますけれども、どこでどの程度のチェックをしているのかということが私どもの気にかかるところなんであります。健康安全食品、そういう点で一体どうなっているのか。それから、JAS法にどれくらいの、どういう品目でどういうものが入って、現に入っているものはこういうものがあるよということであればお話をお聞きしたいと思いますし、また、今後特定JASに入る可能性、どういう種類のものでどの程度ということがもしおわかりになれば、推定できればお話をいただきたい、こういうふうに思います。
  66. 須田洵

    須田政府委員 今お尋ねの御趣旨は、外国から有機農産物として輸入されるものとして、これまでの実績としてどうかということが一つ。それから、今後特定JASにのっとってそういうものが入ってくるかどうか、その見通しいかん、こういうことだと理解させていただきますと、まず第一点については、先ほども申し上げましたけれども、これまで有機農産物として輸入するというのが事例としては非常に少のうございます。私どもの掌握しているものとしましては、しょうゆの原料といたしまして有機大豆を購入しているという例が若干ございます。それから有機のカボチャを輸入した事例もございます。現在は大体その程度の非常にわずかな量ではないか、有機に関する限り非常に少ないのではないかという実態でございます。  今後におきましては、私どもの特定JAS法によって、内外無差別という原則でございますから、外国から輸入する場合においても、もちろん国内特定JASとまさに同等の品質基準であり、そういう生産方法でちゃんと生産されたものだということが明確である限りにおいては当然輸入ができるわけでございますが、その場合に、輸入品についての問題というのは、宿命といいますか限界といいますか、ややそういうようなものが多少あるような感じがいたしますのは、物によってでございますけれども、いわゆる輸入の際の薫蒸というプロセスが十分考えられるわけです。  そうした場合に、一たん薫蒸した場合には、今まで入ったものについては、それまでは有機として通り得ても一たん薫蒸してしまえば、国内に入ってからいわゆる有機特定JASに適合するものとしては表示ができないという仕組みに今してありますので、これは国内有機農産物についても同様でございまして、つくったときは有機農産物としてつくった、生産行程どおりちゃんとやった、しかしそれを流通過程でどこかで何かかけちゃったというような場合においては、それはもうそれ以降は通用しないということでございますから、その表示はできないという仕組みに今しておりますので、そういうものとも同じ意味におきまして、輸入有機農産物についてもそういう問題点はやはりつきまとうだろうというふうに考えます。  したがいまして、今どのくらい入るかということについては全く見当はついておりません。
  67. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 一つ、私があるところに行きまして、ドラム缶に山菜が入っておりました。その山菜を今度はお湯で、どの程度かわかりませんが煮立てて、そして今度はそれをとって小さいビニールの袋に入れて、どこどこ産という地元の山菜として売り出す、こういうふうなことをやっているところもたまたま現実に見ていますが、私がそれを見て感じましたのは、やはり消費者に対してJASであれ特定JASであれ、あるいはJASに入らないものであれ、原産国の表示をきちんとして、そして製造場所はどこというふうに明確な表示をすべきではないのか。それが消費者にとっては当然の要求だし、ある意味では健康、安全、そういった意向対応するものではないかというふうに思うのですが、そういう表示を今後すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  68. 須田洵

    須田政府委員 原産国表示の問題につきましてはいろいろ御指摘のあるところでございますが、輸入加工食品の原産国表示につきましては、JAS法に基づくJAS規格及び品質表示基準による表示ということで、その中には原産国表示をしなさいというふうに義務づけをしております。  これは加工食品の場合でございますけれども、一方問題は、一般の農産物になったときには、一般の農産物につきましては個々の商品ごとに品質のばらつきがあることや、個々に包装されずに販売される場合が多い、そういう流通形態等から見まして、なかなかそれそのものとしてJASになじまないという事情がございます。  そういうこともございまして、このために青果物の一般品質表示ガイドラインという、これを平成三年四月でございますけれども二年前に、これはあくまでもガイドラインでございますから法制じゃございませんけれども、そういうものを策定いたしまして、何とかこの問題を少しでも前進しようということで表示の指導を行っているわけでございます。その中で、輸入農産物につきましても原産国を明確にするように指導しているわけでございますが、今後このガイドラインについての指導徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。  率直に申しまして、現在のところ、そのとおりきちっとやっているかどうか、やっている店も結構多いですけれども、必ずしも全部が守られてはいないんじゃないかという実態でございます。
  69. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 今の点については今後も行政指導を強めて、消費者が安心してどこの国のものであれ食べられる、こういうようにひとつ行政指導を強めてほしいということを特段御要請申し上げておきたいと思います。  今、ちょうど麦価の審議会が開かれているところでありますが、麦価について若干お聞きをしたいと思います。  時間がありませんかも端的にお聞きをいたしたいと思いますが、まず一つは、昭和六十三年度で小麦の自給率が一六・六%に向上させたものの、その後漸次低下しまして、平成三年度は一二%に下がっております。こうした状況の中で、平成五年度の国内産麦の生産動向はどうなっているのか、今後の見通しもあわせてお聞きをしたいと思います。  それから、小麦の契約基準数量は、平成五年度で八十五万三千トンとされておりますが、この供給の見通しはどの程度なのか、そしてまた、今後この基準数量に対する供給不足による未達成の数量はどの程度発生するのか等を明らかにしていただきたいと思います。  同時にまた、今後の小麦に対する生産対策、麦の自給率向上の目標とその施策の具体的な方策についてもあわせてお聞きをしたいと思います。  次に、本年度の麦価についてお聞きをしたいと思います。平成四年度の麦類生産費は、一俵当たり対前年比で〇・四%増の九千九百十円でありますが、現行価格上どうしても八百円引き上げていただかなければならぬ、こういうような状況にありますので、その件について。  それから、物価と経済事情等の変化で農産物価格は七%も上昇しておりますが、農産物価格と購入価格、こういうものとの、いわゆるシェーレ現象がだんだん大きくなってきているという事情にあります。そういう状況からも、やはりこういった経済事情を十分参酌をして今度の麦価を決めるべきだ、こういうふうに思いますが、本日の麦価の審議会においてどのような方針で決められるのか、決めようとしているのか、その辺について、この際お聞かせをいただきたい、こんなふうに思います。
  70. 嶌田道夫

    ○嶌田説明員 まず、五年産麦の生産見通してございますが、都府県の生産見通しにつきましては、青刈りを含む四麦の作付面積は十六万九千二百ヘクタールと、前年に比べまして約一一%の減少となっています。  作柄につきましては、現在は取りまとめているところでございますが、例年収穫期の気象に左右されるものの、これまでにおきます現地からの情報によりますと、一部で低温や湿害の影響が見られますが、おおむね順調に生育している状況にあるという状況にございます。  なお、北海道につきましては現在調査している段階でございます。
  71. 永田秀治

    ○永田(秀)政府委員 ただいま統計情報部長が御説明したとおりでございまして、北海道の作付面積は公表されていないこと、都道府県を含む作柄につきましては、例年収穫期の気象に大きく左右されるということで、現段階におきまして供給見込み等を申し上げる状況にはなっておりません。
  72. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 麦の生産対策でございますが、我々は長期見通しで一応その数量あるいは作付面積を示しておりますので、そういうものを頭に置いて安定的な麦生産の確保に努めたいと思っております。  具体的には、最近非常に麦が災害でやられたわけですが、よく見ますと、そういうところでも結構うまくやっている人はやっている。そうすると、どうも基本的な技術が徹底していないのじゃないかということで、まず基本的な技術の励行運動を去年から始めたところでございます。また、雨に非常に弱いということで、収穫期の雨対策ということで、排水対策であるとか乾燥施設の増強、そういったようなことに今月を入れております。  さらに、やはり麦は何といってもスケールメリットが非常に発揮しやすい作物でございますので、期間借地あるいは作業受委託、そういうものを通じて作付規模の拡大をいかにしていくか。それからさらには、やはり品種が外国のものに比べてめん適性が弱いということもありますので、ASW並みの品種の開発あるいはわせ品種の開発、そういったものに力を入れていきたいというふうに考えておるところでございます。
  73. 永田秀治

    ○永田(秀)政府委員 麦価の点でございますけれども、お尋ねの点で、再生産を確保できる水準でないということでございますが、麦の政府買い入れ価格は、生産性の向上に資するよう配慮して定めるということでございまして、現在生産地の平均規模以上層の生産費を基礎として算定を行う、いわゆる主産地方式を採用しているところでございます。  それから、現行価格以上の生産費のかかる経営というのもあると思いますけれども、現行算定方式は、生産性向上を価格に反映させることによって国内麦作の体質強化に資していく、こういうことでございます。  それからもう一つ、物価との関係でございますけれども、ただいま申し上げたとおり、本年産麦の政府買い入れ価格につきましては、従来どおりの算定方式、主産地方式によって算定してございますが、現行価格とほぼ同じ水準になったことを踏まえまして、据え置くこととして本日米価審議会へ諮問をして、現在御審議を願っておるところでございます。  以上でございます。
  74. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 麦価にしましても、やはりこれは我が国食糧の自給率の向上、こういう視点から考えた場合に、現実に麦価が低い、生産費を割っているという状態等を十分配慮して価格を決めないことには、自給率の向上というものは、大臣が幾ら閣議決定して方向づけをしても、現実的にはだんだん自給率が下がっているという状況でありますから、そういうことを十分に配慮して今後の麦価を決めてほしい、決めなければいけない、こういうふうに思いますので、その辺十分御考慮いただきたいということを御要望申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  75. 平沼赳夫

    平沼委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  76. 平沼赳夫

    平沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。倉田栄喜君。
  77. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党・国民会議の倉田でございます。  今回のJAS法改正において、いわば初めて有機農業あるいは有機農法というものが、JAS法の中ではありますけれども、取り上げられるに至った。そこで、午前中の質疑からもずっと続いておりますけれども、いわば新農政においてこの有機農業というのはどんなふうにどこに位置づけられておるのか、こういう質問がそれぞれ委員方々からございました。大臣、御答弁をいただいたわけでございますけれども、改めて私はもう一度冒頭、この点について大臣に実はお尋ねをしたいわけでございます。  と申しますのは、今回のJAS法改正、この提案理由説明のところに、いわばその生産方法、第一次産品、「この分野での規格・表示の適正化を図り、消費者の適切な食品選択等に資する観点からこういう提案理由の説明がございまして、この部分について、いわば今まで農水省として生産の現場に偏りがちであった農政から、消費者にもっと目を向けていこう、こういう視点が「消費者の適切な食品選択等に資する観点」、こうあるのだというふうな見解もございます。  ところで一方、そこで取り上げられている有機農業あるいはその有機農業の従事者の方々は、今までの農政生産者に偏りがちだったという観点からいえば、ここは全くいわばまま子扱いにされておったというかあるいは疎外をされておった、こういうのがきのうの質疑の中にも参考人の方々からあったわけでございます。  そこで、いわば新農政において有機農業というのがどんなふうに位置づけられているのかということは、これは大変重要なことであると思うわけでございますが、大臣の御答弁を聞いておりますと、これから有機農業というものに対しても支援をしていきましょう、消費者方々生産者方々のそれぞれの声を聞きながらやってまいりましょう、要旨はそういうふうな御答弁であったと思うのですが、一番大切なことは、例えば今までの農政あるいはこれからの新農政の中に有機農業有機農法のあり方というのがどの位置で、どの位置ということもちょっとなかなか難しいかと思うのですけれども、どういうとらえ方、例えば有機農法というのが根本的なところに来るのだということでは恐らくないだろう、こう思うのですね、それは生産性とかあるいは日本の気候条件、そういうものがいろいろあるわけですから。そこで、その新農政において、これから有機農法も生産者方々の声を聞いてやっていきましょう、また消費者方々の声も聞いていきましょう、こういう御答弁でございますけれども、それは、有機農法、有機農業というのは農政の中において一体どこに位置づけられているのだ、こういう質問に対して、どうもまだ私自身はちょっとわかりづらいところがありましたので、もう一度この点、大臣に御答弁を最初にいただきたいと思います。     〔委員長退席、簗瀬委員長代理着席〕
  78. 田名部匡省

    田名部国務大臣 なかなか難しい質問ですが、環境に優しい農業、保全型農業とも言っているわけですが、いずれにしても私どもは健康に害のあるものであってはいかぬということで、この新農政の中に位置づけておるわけであります。  一方では、これは意識したというわけではないのですけれども、消費者に安全への志向といいますか、そういうものがどんどん高まってきた。食品に関する限りは、特に毎日食べるわけですから、これも当然のことだと思うのです。そういう消費者のニーズに合わせて生産者の方でもその努力をしておった。そう多いわけではないのですけれども、比率から見るとわずかですけれども、そうした努力をして、多少価格は高いけれどもその努力をしてきておるということでありますから、これは今新農政で、安全な食品、環境に優しいということとは一致するわけでありますから、これはこれとして私どもは取り上げて進めていかなければならぬ分野、こういうふうに理解しておるわけであります。  ただ、現在やっておる状況を見ておりますと、生産者方々が、確かに創意と工夫の中でやっておるわけですけれども、それがまた一つには産直といいますか、もう決まった方々に提供しておる。それはそれで私は悪いごとではないと思うのです。それが今度はどんどんふえ出して市場にまで入ってくるということになると、顔が見えない部分ですから、これは本当にそうやってつくったものかどうか。価格が同じならばこれは問題ないのですが、どうしてもそういうものは高いわけですから、高いだけ、払うだけの価値があるのかどうかという不安というものが消費者側にはあるわけですね。そこのところをどう整理するかということで、私どもがこのことをお願いをして、やはり消費者の側も本当に安心してやれる、生産者の方もちゃんとやっていますよ、これは信頼関係ですから、本当はこういうことはなくても信頼の上で成り立ては一番いいことでありますけれども、なかなかそれを確認してないものですから、どうも疑心暗鬼にならざるを得ないという部分はあるということであります。  しかし、いずれにしても、物によっては手のかかる作業あるいは収量も劣る、こういうことでありますので、何としても私どもは、農薬を使わない、あるいは化学的な肥料等も使わない方向で進めていく必要がある、そのための農業のあり方の一つ、こういうふうに位置づけて支援をしていくということが大事だ、こう思っております。
  79. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今回のJAS法改正の趣旨という点では、今まさに大臣御答弁いただいた中にありました。私も、その点は評価できることだと思うのです。その有機農業、農法というものをどんなふうに位置づけるか、これからの農政一つである、そこまで今お答えをいただいたわけですが、その一つということが結局農政のあり方についてどうなのかということを、実は私はお尋ねしたかったわけです。なかなかその辺のところは難しいところであって、大臣も今すぐお答えをいただくというわけにもいかないのかもしれませんけれども。  実は、私がこの点にこだわりますのは、つまり今までずっといろいろな厳しい条件の中で有機農業あるいは有機農業運動というものをやってこられた方々は、きのうの参考人の御意見にもございましたけれども、いわば現在の農薬、化学肥料、これを多投をしていく、そして生産性を高めていくというこの農業の基本的なあり方、まあここが基本的なあり方かどうかということはまた違うのかもしれませんけれども、現在の農業のあり方に対して、いわばこれではいけないんだという自己批判的なところからスタートをしているのではないのか。  そうすると、農水省としても、この自己批判的な部分からスタートしている、この自己批判の部分をどうとらえるのか。いわば、なぜ現在の農業が農薬と化学肥料の多投型になっているか。この点について、例えばいろいろ指摘があるわけですけれども、生産者にとっては、楽をしてたくさん収穫したい、こういう要求がぱっとあるわけですね。そうすると、消費者の方としては、安くて形や色つやのよい良質な農産物を、ぜいたくな要求だと思いますけれども、季節に関係なく一年じゅう食べたい。さらには市場関係者からいけば、取引荷口単位を大口化して、そして生産物を規格化して市場取引の効率化を図って、いわば取扱量の増加を図る、そのことによって市場を誘導して手数料収入をふやしたい、こういう市場関係者の論理というものがある。  こういう生産者の論理や消費者の論理、市場取引業者の論理、それぞれいわば個別単位の合目的な要求、合理的な選択、これが個々にずっと追求をされていった場合に、実は全体としての農業という枠でくくった農薬の安全性とか生産のあり方とかそういう全体の合目的、合理的なものとは必ずしも一致しないのではないのか。いわば個々の生産者の合目的な行動、楽をして生産性を高めたい、消費者の安価で形のよい同じもの、色つやのよいものを一年じゅう食べたい、こういう個別の合目的な要求がそれぞれ突っ走ったときに、全体としていわゆる生産の現場をゆがめてしまうのではないのか。  こういう有機農業にかかわる方々の自己反省、反省というか目的意識から、結局現在の農薬とか化学肥料の多投型と言われる農業というのは、それぞれの個別の合目的、合理性の追求が今みたいなことを招いているのではないのか、ならば、それぞれの個別にもう一度立ち返ってやらなければいけないのではないのか、こういう有機農業運動にかかわる方々の自己批判。昨日も参考人の方々が、いわゆる農業というのは生命産業なんだ、このままでいってしまうと土壌も植物も人間もだめになってしまいますよ、こういう本当に強い叫びであったわけでございます。  農水省として、こういう有機農業運動にかかわる方々の自己批判から始められている、いわばその自己批判というのは現在の農政のあり方に関する批判でもある、これをどうお考えになっておられるのか。そういう意味で、実は有機農業の位置づけということを、なかなか難しい問題かもしれませんけれども、あえてお聞きしたわけです。  そこで、大臣にこの点、この有機農業運動にかかわる方々の自己批判からスタートしているこのあり方、これを今農水省としてはどうおとらえになっておられますか。
  80. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 有機農業につきましては、先ほども大臣からお話がございましたように、消費者皆さん方健康志向自然志向といいますか、そういうものを背景にして伸びてきたといいますか、生産者皆さんがいろいろな工夫をして伸びてきたという要素があるわけでございます。  まず、先ほど環境農業というようなことも含めてのお話でございましたから、その辺から、ちょっと長くなるかもわかりませんがお話をしておきたいと思いますのは、まず、我々はやはり現在の農業につきましては、単収向上をいかにやるかとか、労働力不足というような中で、化学合成資材に過度に頼り過ぎるというような面もあることは否定できないと思っておるわけです。  そうしますと、やはり農業がそれ自身、今後とも持続的に発展していくというためには、そういう環境に負荷を与えないような形での農業をどうやっていくかということ、これは我々としても真剣に考えなければいけないということで、新政策でもこれを環境保全型農業というふうに位置づけまして、できるだけ農薬とか化学肥料とか、そういったものの投下を少なくしていこう。そして、では、そのときに生産性というものを全く無視していいのかという議論になりますが、当然生産性の向上ということとの調和も図りながら、ひとつできるだけそういうことをやっていこうじゃないか、日本農業全体についてそういうことをやっていこうじゃないかということを考えているということがまず一つでございます。  その中で、では有機農業はどういうふうな位置づけになるかといいますと、化学肥料とか化学物質を使った薬品というものは一切使わない、そういう農業形態というふうに位置づけておりますから、ある意味では環境保全型農業の一方の極といいますか、極端なといえばおかしいのですが、そういう一方の極に位置するものというふうに位置づけておりますが、一般にだれでもわかっていただけると思いますが、では、その有機農業日本農業の全体を占めてしまう、あるいは世界の農業全体を占めてしまうということがあるかといったら、それはだれもそんなことは余り考えていないのではないかと思うわけです。そこはやはり消費者皆さん方の、先ほど申しました健康志向なり、そういうことと関係しながら健全に発展させていく必要がある、あるいは育成させていく必要があるということで、それに取り組んでいきたい、こう思っておるということでございます。
  81. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今局長からもお答えしたことでありますが、いずれにしても、私どもは、この無農薬で栽培に取り組んでおる方々というのは全体で一%までいっていない、〇・八%ぐらいでしょうか、これがどの程度まで普及していくのかということは、やはり健康志向がうんと高まってくるに従ってこちらもふえてくるであろう。その場合に、収量が減ったのではなかなか生産者取り組みがたいということもありますので、これは技術的にももっと研究して、そして収量も余り変わらないということになっていけば、そんなに価格面で高くなくてもやっていける状態ということは消費者にとってもいい状態でありますから、そういうふうに力を入れていかなければならぬ。これはJAS法JAS法として、今の実態に、どんどん出てくるであろうことにきちっと対応しなければならぬことでありますけれども、このことによって生産というものは伸びていくだろう。  ただ、一つ言えることは、農薬とか化学肥料というのも適正に使って、健康には害がないという中でやっていることは間違いないわけでありますから、何か使うことは全部悪だということになると農業生産というのは成り立たぬという部分が現状ではあるわけです。ただ、きちっと守って使っているかどうかというと、これはまた確認しておりません。ですから、多投はよくない、これをどんどん減らすという方向の中で、より安全な食糧というものを生産するということも、また消費者の側からもこれは理解してあげないとならないことだろう。しかし、全然使わないでやれれば一番いいわけでありまして、目標としてはそういう方向で本当にやっていけるようなことに向けていくことは、努力目標としては大事なことだと私は思うのです。  どこまでこれが伸びていけるかということは、さっき申し上げたようなことが一にして解明されていけばいいことであって、ただ、環境に優しいということですから、何としてもこれは全体としては使用を減らすという中で、もう使わなくてもやれるというふうにいくことを目標にして、我々は努力していかなければいかぬと考えております。
  82. 倉田栄喜

    ○倉田委員 実は、環境保全型農業有機との関係については、最後の諦めとしてお伺いをしたかったわけですけれども、今お話の中に大分出てまいりましたので、引き続いてこの点についてお伺いをいたします。  先ほど局長から、現在農水省として、有機というのはいわば環境に優しい農業というのか、環境保全型農業の一方の極に位置する、こういう御答弁でした。結局、農水省がお考えになっておられる環境保全型農業というのは、いわば生産性の向上を図りつつ環境への負荷をいかに軽減していくのかそういう意味で農薬をいかに減らし、化学肥料をいかに減らしていくのか、こういう方向として、今位置づけておられると思うのです。  そこで、今大臣の御答弁があったわけですけれども、いわば有機本来の、本来ということはおかしいかもしれませんけれども、今回定義をされる有機というのは、一つの方向として、目標として進めるのであればその方向に向かって努力をしたい、こういう御答弁でございました。そこに向かう、つまりネックは何なのかということを言われると、いま一つは、確かに有機というのは生産性が落ちるのではないのか。だから、生産性が今の農業、今の農法と同等にあるいはそれ以上になればこの問題はクリアできる。そして同時に、化学肥料とか農薬は多投しないかわりに結局労力を多投しなければいけないのではないのか。そうすると、後継者のいない中でそんなことはなかなかやっておられませんよ、こういう二つの問題があると思うのですね。  しかし、純粋に環境の保全あるいは生命産業、植物、人間、環境、土壌というものを有機的にとらえて考えるならば、いみじくも今大臣おっしゃったように、目標としてはそういう方向に向かっていくべきである。そうだとすれば、目指すべき目標はやはり有機だ、こういうことにきちっと、それは生産性の問題とか労働多投型みたいなことになってしまって無理かもしれないけれども、その問題を一つ一つクリアするために、その目標に向かって努力というかあるいは具体的な支援策というのが根本的なところから、農水省として必要なのではないのか、こういうふうに考えるわけですが、大臣いかがでしょうか。  あるいは局長でも結構ですが、農水省の今の位置づけ、今大臣はいみじくも目標としての方向である、環境保全型ということも考えればその方向がいいとおっしゃったわけですから、そうであるとすれば、有機農業の位置づけあるいは具体的な支援策ももっと積極的にやっていかなければいけない、こういうふうに私は思いますが、この点についてお答えいただきたいと思います。
  83. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 実は、新政策で示されております環境保全型農業というものについても、我々まだ取り組み始めたばかりというような状況でございますが、そういう中では、まずできるだけそういった化学肥料、農薬を減らそう、それにはどうしたらいいかということで今いろいろな仕事を始めておるわけです。  簡単に言いますと、施肥の仕方一つをとっても、こういう土壌であればどういうような施肥が一番いいのかというのは科学的に分析されるわけですから、そういうような施肥基準に基づいて実際にどういうような肥料をやるか、これは各県の試験場にお願いいたしまして、それぞれ土壌条件に合った施肥の仕方の基準をつくろうということで今始めたところでございます。  また、防除一つにしましても、できるだけ小さな狭い地域で的確に病害虫の予測をしまして、それに基づいて農薬を散布していくということをしていけばこれも非常に節減できるじゃないか。あるいは、そもそも農薬を使わないで特定の昆虫、性フェロモンですか、そういうものを使うとか、あるいは線虫防除のために線虫に抵抗のある作物を植えるとか、これは農薬を使わない方法ですが、そういうようないろいろな個別技術を開発しているといいますか、今そういうことを一つやっておるということです。  それからもう一つは、経営全体としてといいますか技術体系として、コストとの関係で、コストを低くしてどこまで減らしてうまくいけるか、採算が合うかということを、幾つかの実験農場をつくりまして、そこでそういう実験を繰り返しながら一つ基準をつくっていこうということで現在取り組んでいるわけですね。これが全体の一つのやり方ということでやっております。  それに比べまして有機の方も、これも先ほどからいろいろありましたが、その辺の農法、技術の確立というところまでまだなかなかいっておりません。むしろ先進農家がいろいろなことをやっておるわけでございまして、そういうような技術を我々がいろいろ調べてきて、そしてそれを実施しながら普及しているという段階でございますが、行く行くはこういうものにつきましても、一つの科学的な根拠を持ったものに仕上げていくことによって全体としてそういう流れに持っていくということではなかろうか、こう思っておりまして、今的確に、いついつどういう段階までいくとかということまで申し上げることはちょっと難しい段階でございますので、御理解願いたいと思います。
  84. 倉田栄喜

    ○倉田委員 きのうの澤登参考人ですか、生産性も有機で上がるのです、決して労働力を多投しなければいけないというものではないのです、もっと少なくて済むのです、こういうお話がございました。この問題は、農水省として真剣に研究して、そして検討していただいて、また実際有機農業に携わっている方々、昨年やっと改良資金を予算化されまして、これが第一歩だと評価いたしますけれども、ここでとどまってはならない、もっと研究しなければいけないし、検討をして、有機農業従事者の方々を育てる、そういうことに積極的に力を入れていただきたいと思いますので、この点、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  85. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおり、きのうもお話があったようでありますが、有機農法に適した品種を選ぶことが必要だ。これは土壌と非常に関連しておりまして、病気に強い品種であれば十分いけるわけですから、要するに病気になるために農薬を使う、こういうことになるわけですから、それは、ではどこでも通用するかというと、土壌とそういうものと一致していきませんとなかなか難しい問題があります。  ですから、今局長も答弁したように、私どももその県の土壌に合ったものは何なのか、これさえ見つけることができれば十分これでやっていける、こう思いますので、全部に適用するかどうかは別として、そういうことで今農家方々個々に工夫しながらやっておるわけですから、そういうことも大事にしながら、そういう方々の指導もいただきながらそういうものを普及していく、そのためには、予算が必要であれば支援措置はこれからどんどん努力していかなければいかぬ、こう考えております。
  86. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今大臣から本当に核心をついた御答弁をいただいたわけですけれども、いわゆる種の問題ですね。現在の種が化学肥料そして農薬、これが与えられることを前提としての種、だからやはり病気にも虫にも負けるのではないのか。だから、これを前提としない種を開発していくということは本当に大切なことだと思いますので、ぜひ研究をしていただきたい、こんなふうに思います。  それから、この今回のJAS法改正によっていわば有機農産物というのが市場に乗ってくる、この視点から実は質問をさせていただぎたいと思いますが、先ほど私は、市場関係者の論理というのを申し上げました。つまり、できるだけ規格のそろったものを、そして大口に、そしてできるだけ一年じゅう、そして取扱量を増加していきたい、そのことによって手数料も多くなっていく。これはやはりそれぞれが、従事をしておられる方々にとってはそういう要求だと思うのですが、もう午前中何回も出ておりましたけれども、有機というのは特定の生産者消費者が直接結びつくことによって、いわば市場関係者の手数量が省かれることによって成り立っていた部分というのはあるだろうと思うのです。生産者の大変な部分消費者が支えていく、そこで生産者消費者の信頼関係というものがあった。しかし、今回JAS法改正によって、有機がいわば市場商品として流通化してくるということになれば、その辺、今の有機が持っている生産者消費者の信頼関係であるとかいうものが壊されてしまいはしないか、これが一つ。  それから、先ほどの市場関係者の論理でいけば、有機農産物規格を求める、あるいは有機農産物の大規模生産を図ってもらいたい、あるいはそのために、ここは有機の産地というのを形成したい、そういう市場の要求、これが有機というものの本来のあり方をゆがめでしまうことになりはしないか。  かつて農業は全部有機だった、この基本認識からスタートして、まさに市場論理が農業多投型、化学肥料多投型農業生産の現場を変えてしまった。今ここにもう一度有機というものをとらえ直してみよう、そして大臣も、これをもっと研究して、将来一つの目標として考えていく必要があるんだ、こういうふうにおっしゃいました。その方向に進めていかなければいけないのですけれども、またまた市場論理がこれをゆがめてしまうことにならないのか、この心配をするわけです。ゆがめないためにも、きちっとした有機農業の原理であるとか栽培方法であるとかあるいはその表示の基準であるとか、そして有機をきちんと育てよう、有機農業者に対してきちんとした支援策をしていかなければならないんだ、こういうふうに私は思っておりますので、この点からの農水省の現在の御認識をひとつお伺いしたいと思います。
  87. 須田洵

    須田政府委員 今委員がおっしゃいましたことにつきましては、基本的な考え方としましても、私どもは十分その点を踏まえながら今後も取り組んでいかなければならぬのじゃないかというふうに考えております。  ただ、現在の有機農産物流通実態というものから見まして、いわば従来産直なり顔の見える同士でやったものから一般流通にスイッチしてといいますか、切りかわって、そのマーケットを一般流通が奪うような、そういう単純な図式ではないんじゃないかなというふうに見ておりまして、いろいろな結びつき、誘因があって、有機農産物の取引というものが産直中心に今まで進んできたことは実態でございますけれども、午前中もちょっとお話がございましたように、いわゆる産消提携といいますか、そういうものでやっていくというその枠組みを超えて、なおかつ一般流通からも消費者としては買えればな、信頼できるものを買いたいときは買いたいなという、そういうニーズというものが自然に膨らんできている、むしろそういう実態だと思うのです。  そういうものを救うためにはといいますか、それに対応する意味では、いわゆる市場流通といいますか一般流通といいますか、そういう経路の中でも、率直に申しまして、ある意味ではこういう有機農産物のような取引として一般流通本当にぴしゃっと対応できるようなものなのかどうかということ、いろいろな難しい問題がやはり現実的にあると思うのです。  したがいまして、そう単純な論理で対応していくことは私はおのずから限度があるんじゃないかなと思いますけれども、そういう中で単に規格化し、大量生産化してやっていくという、それは一定の技術水準が高まって具体的に可能であれば、それはそれで可能な限り生産性を上げるというのは当然あっていいと思いますけれども、いわゆる有機農産物をつくり上げてきた今までの理念なり考え方というものの原点が崩されないようにやっていく、そういうことは必要だろうというふうに思います。ですから、必要以上に値をつり上げて、高く売らんがためにその市場を活用するとかそういう動機ではやはりなかなか続かないんだろうというふうに考えております。
  88. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今局長の御答弁の中にも、消費者の信頼をいかに確保するか、そういう趣旨で今回のJAS法改正があり、本年四月一日から施行されました有機農産物に対するガイドラインの問題があったと思うのです。これは、私は正しい方向だと思います。ただ、問題は、このことによって本来の有機というのを、有機生産者をゆがめることがないように、また同時に有機というものをきちっと育てていくように、種の問題にしても研究をしていただきたいし、具体的に支援策を講じていただきたい、こう思うわけでございます。  そこで、ガイドラインの話に移らせていただきますけれども、四月一日から有機農産物ガイドライン、六種類ということで農水省発表されまして、現在施行されている状況でございますが、このガイドライン一つとっても、有機にとっては本当有機農法新時代の幕を開くものではないのか、こういうふうに言われているわけですね。  そこで、このガイドラインを策定された目的は今まで随分議論をしてきましたので、もうそれは結構だと思いますが、このガイドラインの実施の状況と、四月一日から実施をされて、以前に対してどんな変化があらわれてきておるのか。例えば六種類の表示項目があるわけですけれども、現在どんな表示が一番多くなっているのかどうか、この点について、現在の農水省が把握されている状況を教えていただきたいと思います。
  89. 須田洵

    須田政府委員 四月のガイドライン施行後の状況について、私どもの出先機関が調査したところによりますと、一つには、ガイドライン表示を行うためには、その裏づけとなります生産地の体制が必要なわけです。いろいろ必要な表示もしなければなりませんし、そういう意味では、現時点では量的に十分でないということもございまして、つまり定義にひたりかない得るものはということだと思いますが、直ちにその多くの事例があるというわけにはいかないわけでございますが、四月以降、デパート、スーパー等を中心にガイドラインによる表示に取り組んでいる例が着実に見られております。なお、生協につきましては、生協だけではございませんけれども、目下、今準備中というところもかなりございます。それから、今後実施する店舗も、そういう意味では徐々にふえてくるのではないかというふうに見ております。  その表示の内容を見ますと、有機につきましては、その定義に合致するものは非常に少ないということでございまして、それから減農薬の問題、いろいろ論議はございますが、率直に申しまして、これについては、農薬をどのぐらい使ったかということを、使用状況をあわせて書かなければだめだということで、ガイドラインがそういうふうになっておりますから、併記しなくちゃならぬというのが縛りとしてはきついといいますか、なかなか対応しにくいというようなこともあると思うのでございますが、減農薬について、ガイドラインにのった減農薬表示というものは比較的少ないという感じがしています。また、ガイドラインに基づかないいろいろな多種多様な表示があるわけでございますが、これについては明確に減っております。つまり、ガイドラインにはのらなくても、自分で今まで勝手に有機とかいろいろな表示をつけていたわけでございますけれども、そういうものが次第に減っているというようなことが実態でうかがえるかと思います。つまり、それだけ従来、そういう裏づけなしにただ書いていたということだろうと思います。  特に、私どもで最近ちょっと調べましたところでは、卸売市場ですね、市場につきましては、実はガイドラインの施行前の昨年の十一月と施行後の五年五月、この約半年ばかり離れた時点で比較をいたしまして、卸売市場におきます青果物に特別表示を付したものの割合でございますが、有機その他、それについては、大田市場が一番顕著でございますけれども、昨年の十一月時点では、実に約一五%ぐらいそういう有機その他の表示をしておったわけでございますが、それが五年五月、現在時点では〇・七%と、全体の割合はもう激減しているということでございます。つまり、裏を返せば、それだけ従来そういう表示をしていたということでございます。そのことは、従来はそういう基準も何もなかったわけですから、それはそれでまかり通ったのかもしれませんけれども、やはりこれだけガイドラインも出てくると、そう勝手にもできないという実態が出てきているのではないかというふうに見ております。
  90. 倉田栄喜

    ○倉田委員 そのガイドラインの中で、今お答えの中にもありましたけれども、やや減農薬、減化学肥料、この表示の問題についてはいろいろありました。どういう問題点があるかも既に御承知でもありましょうし、また、午前中の議論にも出ておりました。やろうとしておられることは非常に評価できると私は思うのです。環境保全型農業の位置づけとして、ともかく現在の農薬多投型あるいは化学肥料多投型の農業というものは見直していかないと、これは生産従事者そのものも体に受ける影響は大変だし、環境に与える負荷も大変なものである、だからともかく地域ごとに減らしていくんだ、こういう農水省の発想であるとすれば、それは大いに評価をしてもいいのだろうというふうに私は思っておるのです。  ただ、今申し上げましたように、やはり五割というのは、その思想からきたときに少し甘いのじゃないかということと、これは問題点として指摘されておることでございますけれども、じゃ何に比べて下げた、五割減ったと言えるかとなれば、まさに地域ごとにばらばらになる。そして先ほどのそれぞれの一般的な基準は何なのかということになると、せっかく方向としては正しいし、いい方向なのですから、これもきちっと基準なり考え方なり、あるいは五割から将来的にももっと可能であれば減らしていくんだということをきちっと示していく必要があるのではないのか、こういうふうに思いますが、この点における問題点の整理を、農水省の方から現在のお立場というのをお答えいただければと思います。
  91. 須田洵

    須田政府委員 今、五割の問題のお尋ねでございます。  私は、率直に申しまして、このガイドラインをどうこなすかといいますか、どう対応するかということについて、昨年の夏以来大分苦慮したわけでございますが、減農薬というものの表示が、その分野について何もコメントしないといいますか、一定の位置づけも何もしないというふうで一体済むのかどうか、先ほどもちょっと申したことでございますが、そういう発想から入っていったわけです。しかし、やはり自分が減農薬だ、農薬は明らかに減らしたんだという自信がある以上は、それは別に書くこと自体について絶対だめだというふうにはいかないだろうということになりますれば、減農薬というものをもし位置づけるとすれば、本当に私は減農薬でつくったんですと胸張って言えるような方はその自信のほどを書いてください、そして表示してください、そのことに尽きるわけでございます。そういうガイドラインみたいなものができないかなというふうに当初考えたわけでございます。  しかし、やはり減農薬という表示ができるできないというその一定の定義といいますか、仕切り線みたいなものがどうしてもなければならぬ、こういうことでやむなく五割というところにとりあえずしたわけでございます。別に五割でなくちゃならぬとか、率直に申しまして明確な根拠というものはないと思いますけれども、一応減農薬というからには、少なくとも半分以下にというのが考え方であろうかと思います。率直に申します。ですから、減農薬をめぐってのいろいろな論点、私どもも十分聞いておりますし、何かいい知恵がないかという姿勢で、この問題について今後も考えていきたいというふうに思っています。
  92. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それぞれ地域ごとに従来から五割下げればよいということになれば、従来使っていた基準というのがどこかにあるわけですけれども、それがどういうふうに公表されるのかとか、いろいろ問題があるのだろうと思うのですね。なかなか皆さん、逆にそういうものは公表しないのかもしれない。そういう技術的な問題はあると思いますけれども、私は農水省の立場として、いわば現在の農業というのが、もう何回も繰り返すことになってしまいますけれども、農薬多投型だ、化学肥料多投型だ、これは単に環境だけの問題ではなくて、生産そのものも実は危機に追いやっているのではないのか、こういう問題意識に立っていただいて初めて評価できるものだと思うわけです。  もちろん環境にも負荷を与えている。同時に、例えばよく言われる、連作障害を防止するためにまさに大量の土壌消毒をしてしまう、物すごい薬を土の中に注入をしてしまう、もうそれだけでは間に合わなくなってしまって、上そのものもそっくり取りかえなければいけなくなってしまっているような、そういう生産地もある、こういうふうに聞くわけです。ここにやはり大きな問題意識、生産という観点から見た大きな問題意識があるのではないのか。今回の減農薬あるいは減化学肥料の表示ということも、実はそこにも問題意識を置いて今後進めていただきたい。五割ということに別にこだわっているわけではない、こういうふうに局長御答弁いただきましたけれども、いわば土壌をどう生かしていくか、生産性をどう維持し、高めていくかこの観点もなければならないと思うのですが、この点について農水省の基本的な認識はいかがでしょうか。
  93. 須田洵

    須田政府委員 今委員がおっしゃったような問題意識は我々も同じように持っておりますので、そういう意味から再び減農薬の問題についてあえて申しますと、先ほどの割合の問題もさることながら、いわゆる土づくりとかあるいは有機との関連とか、そういうものとの組み合わせての農薬削減とか、そういうもうちょっと中身に食い込んだ仕切りというようなものが可能なのかどうか、そんなことも考えていかなくちゃならぬだろう。全国的な基準といいますか、共通的な一応の基準ということをやはり出す以上は、ある程度、余りばらばらにはなかなかいかないものですから、しかも今の区分ですら、三区分だ、六区分だという、多いというふうに言われているぐらいでございますから、さらにまた細分してとかなんかというふうには現実的にいかない。そこらあたりを、今とりあえずああいうものを示しているわけでございますが、今後はそうした点も含めまして、問題意識はそう違わないと思いますので、勉強していきたいというふうに思っております。
  94. 倉田栄喜

    ○倉田委員 少し細かな話になりますけれども、ガイドラインについてもう少しお聞きしたいと思います。  今回のガイドラインにおいて、ガイドラインに定める以外の用語の使用を一応禁止しておられるわけですけれども、例外を設けてあります。これも午前中質疑ございましたけれども、この例外を設けることが原則的な部分を壊しはしないのかということがあるものですから、特にこの例外の部分についてはっきりとお尋ねをしておきたいと思います。  それは、例外というのは、「従来からの明確な基準による農法で自然等の表示を冠する」もの、そして「表示の枠外に表示した場合を除く。」こういうふうに書いてあるわけですが、この例外を置いたということは、農水省としては何を想定してこの例外を置かれたのか、そして「従来からの明確な基準」とあるわけですけれども、「従来」というのはどういうことなのか、「明確な基準」というのはどういうことなのか。これはやはりきちっと答えておいていただかないと、この例外がまさに原則の部分を、せっかくつくったものを取り壊してしまうというおそれなきにしもあらずと思いますので、この点はひとつ、例外が余りにも利用されてしまうということがないように明確にお答えをしていただきたいと思います。
  95. 須田洵

    須田政府委員 午前中も申し上げたことでございますが、さらに補足して申しますと、例外という言い方自身ちょっと誤解を招くと思うのです。要するに、ガイドラインならガイドラインにきちっとそれは適合している、そのことが前提でございまして、有機なら有機とか減なら減とか、そういうことが大前提でございます。その基準に合わないものを例外だから許すとか、そういうような意味での例外ではないということをまずはっきりしておきたいと思うのです。  ただ、その表示の問題として、そういう意味では満たしているということを前提として、従来から自然栽培とか天然栽培とか、そういった独自の表示を行って消費者等から信頼を得ている、そういう従来の用語を全く突然もうやっちゃだめだというのはやはりちょっと現実的ではないんじゃないか、つなぎとしまして、そういう考え方でございます。  したがって、ガイドラインによる一括表示の枠外ということでございまして、ガイドラインの表示の基本ラインはもちろん準拠した上でということでございますが、そういう意味で、これらの用語の使用もそういう枠外ということで認めた方がスムーズにつながっていくんだろうな、そういうガイドラインになるべく準拠した表示が、普及させていくという観点からもやはりいいのではないかというふうに考えた次第でございます。  ただ、委員がおっしゃった言葉の厳格な定義につきましては、こういうものだというものは明確にあの表現以上のものは特にございません。ただ、先ほども申したことでございますけれども、要は、消費者等から、具体的なそういう農法についての表示があったときに、あの表示でやっているけれども大丈夫なのとか、あるいはどういう農法でやっているのですかと聞かれたときに、それにちゃんと答えられるようなものでなければ、あるいは問い合わせがあったら、それはこうですよということが説明できるようなものでなければまずいんじゃないかということを私は言っておりまして、内部的には、そういうようなことについてもこれから整備をしていく必要があるのではないかと考えているものです。  また、当然のことでございますけれども、相当量の流通実績というものもやはりあってしかるべきだろうと思います。現時点ではそのように考えております。
  96. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それから、ガイドラインについては、その施行状況を見て見直しを行う、こういう方針が出されておるわけでございますけれども、現段階でこのガイドラインの見直しについてはどのようなことをお考えになっておられますか。
  97. 須田洵

    須田政府委員 四月に施行したばかりでございますので、とりあえずの施行状況は先ほど御説明したとおりでございますが、それなりにその施行の効果というものが出ていると思うのでございます。しかし、まだまだもっと十分フォローしなくちゃならぬという感じがします。  というのは、ガイドラインに基づく表示について、今準備中のところも結構ございますので、そのように聞いておりますので、それらも全部踏まえた上で、一定期間後に、その用語の周知度等につきましてもその普及状況等も調査しながら、まずどういう状況になっているかということをいずれかの時点で広く調査をする、そういうところから始まるんだろうと思いますが、具体的な中身についてこう見直しをするというものについては、明確なものは今のところはございません。
  98. 倉田栄喜

    ○倉田委員 次に、いわゆるつくり方JASと言われるものの創設についてお伺いをいたしますけれども、今回の特定JAS、つくり方JAS規格の対象である生鮮一次産品ですが、これが果たして全国一律の基準になじむものかどうか、あるいは地域によって生産方法の差異というのが現実にあるわけですけれども、これをどんなふうに反映をしていくのか、この点についてちょっと疑問を持つわけですけれども、どんなお考えでしょうか。
  99. 須田洵

    須田政府委員 この点については、昨日も参考人からもそういうお話もあったわけでございますが、私どもとしてはこのように考えております。  一つは、生鮮一次産品については、やはり生産物がその生産地域の自然条件等の影響を確かに大きく受けることは事実だと思います。しかしながら、特定JAS規格につきましては、生産物自体についての基準ではないわけです。物というのは製品JASではないというようなことです、言いかえますと。つくり方といいますか、製法だというような意味でございます。物そのものについては、天然の物については物のでき上がりというのは非常に変化するわけで、気候その他によっても変動いたしますから、そういうような意味での基準というのはおのずから難しいわけですけれども、その生産物の生産方法ということで明確な特色があって、かつ商品選択上重要な指標になるというものについて基準を定めようというものでございますので、その場合の特別の生産方法によることを表示するに当たって、少なくとも満たすべき共通の生産方法の基準を設定するということです。  ということは、言いますと、共通的に例えば有機農産物なら有機農産物という、有機農法でやったというのであればその基準として、この基準、この基準と幾つか指折れる基準があろうと思います。全国どこでやっても、地域差はあっても、この共通ルールだけは守るというものがあるはずでございます。現にアメリカでもかなり広範にわたって、州によってもいろいろな生産事情が違う中で、一つの統一基準としてあるわけです。ヨーロッパでもそうであるわけです。  それから、畜産の関係でございますけれども、フランスのラベル・ルージュ制度、これも地鶏等の仕組みで、それぞれのラベルの差が少しあっても一定のミニマム基準といいますか、こういうような基準は満たすようにしろ、さらにその上乗せで、若干基準を上回っても、一部はそういうこともあってもいいという考え方のようでございますが、そのように考えていきますと、現にそういう外国等の例もございますし、日本の場合、確かに南北に細長いとかそういう地域事情もございますけれども、これは全国共通のミニマム基準という形で、特定JAS規格の性格を損なわない形でやるようにできるのではないかというふうに考えております。
  100. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それで、今回JASの中に取り込まれてくる有機野菜であるとか朝どりだとか地鶏だとか、いろいろなことを考えられておるのだと思いますが、実効性を確保するためには、一つ規格に合致しないものは、有機農産物という表示、これは禁止した方がいいのではないのかという考え方もあると思うのです。この点についてどうなのか。  それから、先ほど御質問申し上げました、いわば有機農産物ガイドライン、これを有機農産物のつくり方JASにしていくのかどうか、どういうふうに関係をしていくのか、この点についてはいかがでしょうか。     〔簗瀬委員長代理退席、委員長着席〕
  101. 須田洵

    須田政府委員 規格に合致しないものについて、先ほど申しましたように、JAS仕組み自体は任意の制度ですから、自分たちは受けたくないと思えば受けなくてもいい、そういう仕組みであるわけですが、そういうような意味ではすべて規格に合致したものでなければ流通してはならぬというアメリカの制度とは違うわけでございます。これは午前中も申し上げたことでございますが、考え方はそういうことでございます。  ただ、有機農産物としてもし特定JAS規格で定めた基準が一般に周知されまして、社会通念として定着するようになってくる、そういうふうになりますれば、明らかに特定JAS規格基準に適合しないものに対して有機農産物と表示することにつきましては、不当表示とされるようなこともあり得るのではないかというふうに考えております。
  102. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今回、いわゆるつくり方JAS特定JASという形で、いわば生産の方法だとかあるいは原材料だとか、そういうものに着目をしてJAS規格として取り入れてくる、今回の改正がその具体的な中身をとるものではなくて、その大枠をつくるものである、こういうことであります。同時に、今まで有機というものがきちっと考えてこられなかった。そうすると、JASの中に有機というものを取り入れてくるときに大枠をつくる、具体的な中身はいわばJAS調査会の中で決めていくことになる。そうすると、まさにこのJAS調査会の中で有機というものをどんなふうに、何を取り上げてどういうふうに決めていくのか、ここに今までの有機従事者あるいはこれから市場化されていく方の市場関係者であるとか生産者、そしてまた有機の研究をしてこられた方々、これらの方々の声がどういうふうに直接的に適切に反映されていくのか、これが非常に重要なことになってくるのだろうと思うのです。  そこで、これは改正部分になっておりませんけれども、例えば四条の中のJAS調査会の専門委員の選任に当たっては、こういう有機関係従事者であるとかあるいは生産者であるとか市場関係者、この方々JAS調査会の中できちっと発言をし、実際に有機のことをよく知っておられる方々の声を反映できるようなことが必要なのではないのか、そういうふうに思うわけでございますけれども、例えば現在の四条の中には、これは行政関係の職員または学識経験者とあるだけであって、有機従事者の方々もここに入ってきたらいいのではないのか、こういうふうに思いますけれども、この点についてお考えがあればお伺いをいたしたいと思います。
  103. 須田洵

    須田政府委員 確かに委員がおっしゃいましたように、これからの特定JASの一番の決め手といいますかポイントは、それぞれの規格をつくる過程といいますか、それが非常に大事だろうというふうに思います。  これまでも、加工食品等につきましてJAS規格というものはつくられているわけですが、約二年ぐらいにわたって、立ち上がりから最後仕上がりまではそれくらいの相当時間をかけて、最後はJAS調査会、その手前では専門委員会ということで、何回も幾重にも打ち合わせをして意見調整をしながらやっていく。意見調整をする過程においては、当然のことながら、これまでの加工食品の例で申しますと、それぞれのまずメーカーといいますか、その取り上げようとする規格の業種のメーカーサイド、それからそれを流通する関係者、さらにいわゆる消費者関係、それらの委員構成で具体的な専門委員会等を構成しまして、それで意見を練り上げていく、こういう形をとっております。  その点につきましては、今後の新しい特定JASにおきましては、さらに関係者といいますか、ある意味ではもっと広くなるかもしれませんが、その関係者間の意見調整をじっくり積み上げていくということが重要だろうというふうに考えております。
  104. 倉田栄喜

    ○倉田委員 最初の大臣の御答弁の中に、有機というのが一つの大きな目標である、こういうふうな御答弁がございました。そうだとすれば、本当有機というものをどんなふうに育てていくのか、また、今までずっと有機にかかわってこられた方々がある、そしてこれからかかわろうとしている人たち、実際に現場でかかわっている人たちの声、これが一番生かされていかなくてはいけないのだろうというふうに思いますので、これはぜひ強く要望申し上げておきたいと思います。  同時に、もう一点お尋ねをしておきたいと思いますけれども、今回、生産方法に着目をして、その特色を生かしていくことで特定JASというものをつくってこられた。そうすると、生産方法についても、いわば安直にJAS調査会の中で一つのやり方というものが決められてしまえば、それでまさに生産の現場が規定をされてしまう。私は最初、市場関係者の論理が生産の現場をゆがめてしまったという、こういう有機農業運動の自己批判というお話を申し上げましたけれども、まさに今回のJAS法改正の中で大枠をつくる、そして具体的な中身はJAS調査会で決める、そしてそこに参加をされる専門委員方々が決めていく。この決めていくことが、まさに有機の現場というものをゆがめてはならない。ゆがめないためには慎重にやらなければいけないし、品質であるとか生産であるとか取引であるとか、あるいは現在の状況というものをやはり十分に考慮をして、まかり間違っても有機生産現場をゆがめないようにする必要があると思うわけですが、この点についてはいかがでしょうか。
  105. 須田洵

    須田政府委員 具体的な規格づくりに当たって、委員の御趣旨は、どういう姿勢といいますか考え方でこの規格づくりに取り組んでいくか、こういうことだと思います。そしてそれを制度的にどういう形で担保していくかといいますか、そういうことでもあろうかと思いますが、やはり今申し上げましたように、特に特定JASというようなことになりますれば、例えば有機なら有機というものを取り上げたときに、有機農産物をめぐる現況なり、どういうふうになっているかということ、さらには今後どういうふうに展開していくのか、消費者ニーズがどういうふうに変化しているのか、多面的に生産、消費、流通、それぞれのいろいろな分野についての有機にかかわる分野の動向なりあるいは今後の展開なりというものを、全体を視野に入れながら、先ほど申しましたように調査会あるいは専門委員会のフレームに乗せながら審議をしていかなくてはならないのじゃないか、具体的な規格づくりに当たっては、当然そのように考えております。  それからもう一つは、生産行程のチェックというようなことが非常に重要な要素になりますので、基準づくりもいいですけれども、それとあわせて、じゃ、そういうものをどういう生産行程チェック体制でやるのか。あるいはそれを検査する格付機関、どこがどうやるのか、具体的にやるのかといったことも含めて論議をしていかなくてはならないのではないかと考えております。
  106. 倉田栄喜

    ○倉田委員 次に、生産行程の検査はどのような内容のものか、それからまた、格付機関としてどのようなものを考えておられるのか、それから生産行程管理者を設けられた趣旨、そして承認、認定の基準はどんな内容で考えておられるのか。  ここのところでまた有機の現場へ返れば、今まで有機をやっておられた方々というのは、農協という言葉でいえば、いわば農協から自立独歩の形で有機に取り組んでこられた。この方々が、生産行程管理者制度、つまりある意味では農協が一つの大きな主体となるときに、農協と離れたところでやっておられた方々が、スムーズにここでうまく円滑に両者の意思疎通が図れるのかどうかという問題も一つあると思いますので、今局長ちょっと簡単に言われましたけれども、この生産行程の格付機関、それから管理者制度の承認、認定の基準、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  107. 須田洵

    須田政府委員 生産行程管理者制度というのは、特に一次産品のような特定JAS考える場合に、一番の重要な要素だと思っております。  まず特定JAS規格におきます格付というものに当たっては、御承知のように、有機農産物とか地鶏等につきましては、生産者がグループを形成して自主的な生産管理体制を持って生産に取り組んでいるというようなケースが多いわけでございます。それから認証をめぐる特徴としては、今までのJAS規格とは異なりまして、長期間にわたる生産過程のチェックが必要になるわけです。それから圃場とかそういう生産現場、非常に多数に上って広く分散していることになるわけでございます。  そういう特徴がございますが、そういう中でどういうふうにやっていくかということになりますれば、欧米の有機をめぐる仕組みも同じようなものでございますが、これはどうしても、生産行程管理者制度ということで、みずからも生産方法の管理をちゃんとやっていくということで位置づけをしていく。そしてまたラベルもそこで張れる、ちゃんと正しいことをやっていればラベルもみずから張ってもいい、そういう仕組み考えざるを得ないということでございますが、その場合におきましても、今委員もおっしゃったように、従来の工場生産的な、かなりの大工場とかいうものとは違って、一次産品ということになりますれば、例えば農協とかそのぐらいの単位ですと非常にいろいろやりやすい面もあろうかと思いますけれども、先生御指摘のとおり、農協までいかない生産者グループとか十分考えられるわけです。そうしたものでもきちっと生産管理をやるんだ、そういう一定の承認基準に沿ってやらせてもいいのじゃないかということが認められれば、そういうようなものでもやれるように、道を開くようにすべきだろうと考えております。  そういう場合には、非常に零細で、非常に遠く離れてとか、格付のための費用の問題とか、いろいろ出てくるわけでございますけれども、そこはいろいろ知恵を働かせて考えていくことにしなければならぬのではないかと考えております。その点については、一つ申しおくれましたが、あえて農林水産大臣承認という形で生産行程管理者を位置づけたいと思っています。もしまずいことが起きたときは、承認の取り消しとかあるいは罰則とかいうようなものもかかる規定になっております。
  108. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今回のJAS法改正で、いわば有機行政の中に取り入れるという仕組みでもあるわけです。ここに、従来からやってこられた有機方々意見、あるいはこの方々が逆に不利になるようなことがないように、生産行程管理者制度についても十分考えていただきたい、こういうふうに思うわけです。  時間がなくなりましたので、最後に一点だけ。  私は、きのう澤登参考人の御意見をお伺いしながらいろいろ思ったことがあるのですが、最後にその中で一つ生産行程の管理なんてそもそも無理ですよ、不可能ですよ、こういうことをおっしゃっておられました。それはいみじくも今局長の御答弁の中にもあったわけですけれども、これもやはり先ほどの消費者の信頼を確保するという観点からいけば、いわゆる表示あるいは生産行程管理者の認証というものにいかに信頼を与えていくか、これは重要なことだと思うのです。単純に、いわば生産行程管理者として認定をされて、その方々が業務として認定をしていく。これが、最初のうちはいいですよ、一年か二年たっていくうちに、実際その生産の現場を、だれがどんなふうに栽培をしていつどんなことを、本当に農薬かけなかったのか、化学肥料を使わなかったのか、こういうことを実際チェックすることは不可能だという認識に立ては、結局業務というのは形骸化してしまうのではないか、こういうおそれもあると思うんですね。これが形骸化してしまえば、せっかくJAS法として消費者の信頼をから得るために今回の改正をしたとしても全く意味ないということになる。  そうだとすれば、この形骸化防止のためにもきちっとした対策を、生産行程管理者をきちっと認証して、そこに有機従事者の声もきちっと入れると同時に、この形骸化の防止をするということも考えていかなければならないと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  109. 須田洵

    須田政府委員 確かにそのようなことが一番重要だというふうに思っておりまして、端的な話でございますが、一番性悪説に立って何か必ず悪いことが起こり得るというふうに考えますと、恐らくそういう考え方ではスキームはこういうものはできないだろうと思います。アメリカの制度でも、それから欧州でもそうですけれども、一つのチェックポイントといいますかになることは、みずからがちゃんとしたものを出すという、その生産者の組織といいますか、みずからがちゃんとしないと、結局承認取り消しとかそういうふうになったら社会的な信用を失って、結局自分たちがどこにも物が出せなくなる。そういう制裁と裏表の関係にあるがゆえに、信用を損ねるようなことはできないということで頑張っていかなくちゃならない。やはりその相互作用といいますか、それがポイントになると思います。それなしには、なかなか実際上難しいという感じがいたしております。  そういう点もあわせながら、しかしそれだからといって任せっきりというようなことでは、先ほど言いましたような、委員のおっしゃったようなことにもなりかねないわけでございますから、時によりまして第三者機関等からの、いわゆる格付機関からのチェックをするなり、これは生産行程管理者からは農林水産大臣も直接報告を徴収したりすることはできる形になっておりますので、そういう仕組みも活用しながらやっていく。まあ取り締まり一方というようなことではなかなか難しい。みずからもある程度管理をしていくということの、そういうバランスでやっていかなくちゃならぬのじゃないかなというふうに考えております。
  110. 倉田栄喜

    ○倉田委員 時間が参りましたので、あと日付表示とか原料原産国表示の問題とか、それから食品に関する製造物責任の問題について質問をさせていただく予定でございましたが、次の機会に譲らせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  111. 平沼赳夫

    平沼委員長 藤田スミ君。
  112. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 JAS法改正案について質問をいたします。  今回の特定JAS導入によって、今問題になっております青果物等特別表示ガイドラインがそのままJAS規格になるのではないかという心配が各方面から強く出されているわけであります。関係者皆さんからは、最大限、百歩譲っても、何ぼ何でも有機農産物に限るべきであって、無農薬や減農薬表示はもう特定JASでは認められない、こんなものは論外だという主張がありますが、この点については確約できますか。
  113. 須田洵

    須田政府委員 有機農産物等の特別表示ガイドラインにつきましては、学識経験者等によりまして構成した検討委員会で平成三年四月から四年三月までの九回にわたって検討して、その後も関係者意見をできるだけ踏まえまして制定したものでございますが、現時点では最善のものだというふうに認識しておるわけでございます。  ただ、先ほど来も申しておりますが、何分このガイドライン我が国では初めての試みということでございますので、またさまざまな意見がございますことも踏まえまして、今後普及状況等を調査して、施行後一定の時期に必要に応じて所要の見直しを行っていく考え方でございます。  したがいまして、そのようなものでございますので、このガイドラインJAS法改正というのを、これはJAS法改正ではどういうものを特定JASとして取り上げるかということで改めて検討するといいますか、そういうものであるということでございますので、ガイドラインで取り上げたものがもちろんストレートに特定JASの対象になるというその関係にはなってないわけでございます。しかし、例えば有機のような農産物を一番中心に考えた場合には、ガイドラインのままでは実効性が十分担保されないということで、それをより実効性が確保されるような措置という意味では、特定JASというものの制度の対象にしていくことがより望ましい、そういう関係にあるということでございます。     〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕
  114. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 特定JASについては改めて検討する、ストレートにガイドラインで定めたもの全部をこの特定JASにするんじゃない、こういう上に立って取り組んでいくというふうに聞いたわけですが、私は、もう一度はっきりしてほしいわけです。  これは、欧米の方でも表示をされているのは有機農産物ということで、先ほどからもいろいろ論議を聞いておりますと、減農薬表示については、御自身率直に明確な根拠はないということまでおっしゃっているわけですが、まことそのとおりだ。無農薬や減農薬表示というのは非常にあいまいになるわけでありまして、だから、そういう点ではやはりここははっきり消費者の要求していることにこたえる。つまり、幾ら何でも、百歩譲っても有機農産物の表示、それ以外はとても認めることはできない、そういう立場に農水省自身立つべきだというふうに思いますが、もう一度お答えください。
  115. 須田洵

    須田政府委員 JAS規格として、特定JASとして具体的にどういうものを取り上げるかということについて、あるいはどういうものを取り上げないということについて、現時点で私の方から勝手に申し上げるというような性格じゃないような感じがいたします。  先ほど来も申し上げておりますように、もちろん発想としては有機農産物のようなものという発想でこの制度を考えたことは確かですけれども、じゃ具体的にどういう規格を取り上げてどういうものを取り上げないとか、それはやはりその関係する生産、消費あるいは流通とか、多くの関係者の間での論議を十分積み重ねた上で考えていくべきものだろうというふうに考えます。  ただ、一つ申せることは、法律制度の対象として具体価なルールをつくる、基準をつくるということになりますれば、その運用がそれなりにきちっと運用できるというよりどころのはっきりしたものである必要が出てくるだろうという感じはいたします。
  116. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 消費者団体は、ガイドラインができる前から意見をるる農水省に言ってきた。そしてガイドラインができて、それに対しても意見を強く言った。ところが、それについてまともにこたえられないまま、見直しをするということさえもおっしゃりながら、今度特定JASを取り入れるということになって、非常に厳しく抵抗をしておられるわけです。だから私は、今回これを発足させるに当たっても、消費者団体の代表が了解をしないまま発足をするというようなことはあってはならないというふうに考えるわけであります。  このJAS調査会の運営について、きのうも消費者の代表の方から、消費者団体意見が十分反映されていないという指摘がありました。だから私は、今後この問題を決めるに当たっては、消費者意見を十分聞き、かつその了解を得て進める、これは約束をしていただきたいわけですが、いかがですか。
  117. 須田洵

    須田政府委員 きのうそのような御発言もあったわけでございますが、私どもとしては、従来JAS規格については、調査会なり専門委員会を通じまして、消費者団体関係皆さん方にも当然御参加いただいて、何回も論議を積み重ねながら規格をつくっていく、そういうプロセスを今日までも経てきたつもりでございます。そのような意味では、自分たちの主張がなかなか十分通らないというような発言がございましたけれども、そういうことは本当にあるのかどうか、過去のことも本当によく調べる必要がある、そのように私も言ったぐらいでございまして、これは内部のことでございますが、大変気にしているわけですが、ただ、率直なところ、こういうことは言えようかと思います。  JAS規格をつくるという場合に、規格の内容について、例えば食品の添加物等について先ほどもちょっと出ましたけれども、食品衛生法上はこれだけの種類の添加物を使ってもいいというのを、それをぐっと削減してJAS規格をつくっている経緯はございますが、消費者団体の方からすれば、さらにそれをもっと少なくということが当然あり得るわけで、そういうことがメーカーサイドとの関係でなかなか折り合いがつかないといいますか、それで問題は、規格が、実際メーカーがやれない、対応できないものであれば、せっかく規格をつくっても今度はJASにのってこないことになってしまう。そこのところが非常にジレンマといいますか、難しい面があってなかなか折り合いがつかなかったという部分もあるいはあったかと思います。しかし、この点は特に大変だったというような意味での問題点はそうないように私は聞いております。特定JASの問題にこれから取り組んでいくに当たりましては、当然のことながら、消費者サイドの意見というものをきちっとやはり反映させていくようにしなくちゃならぬというふうに考えております。
  118. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そもそもこの改正の趣旨を見ましても、消費者が健康安全志向本物志向等にニーズを変化させていくことにこたえて、つまり消費者の要求にこたえてこれをやる、こういうわけです。そしてまた、消費者にとってもJASというものは商品を選択する上の一つの権利の保障として大事なものであるわけでありますから、特に今回のように消費者のためだといって出発はしているけれども、消費者の方はノーだというふうに、しかも、有機農業に取り組んでいらっしゃる研究会の皆さんもそうですが、日本消費者団体の主たるところが寄って意見を言っている以上、ここのところの納得を得ないと本当のものにならない。残念ながら、今回のこの法律案というのはその枠を決めるというのであって、中身の問題を決めるというものじゃありませんから、話をしていても全く抽象的になるわけですけれども、そういう点で、本当消費者の納得を得た、合意を得た上で事を進めるべきだということを私は申し上げておきたいのです。  今までも聞いたよ、だけれどもメーカーとの関係もあって、やっぱり折り合うところは折り合って、こうなって、結果としては不満が残ったのだろうというような言い方はちょっと困るわけでして、きのうもそばの話が出ておりましたが、実際私たちは、消費者団体皆さんと話をしているときでも、本当消費者意見というものがこういう一番消費者の生活の中で密着しているものにどこまで反映されているのかなという点では、私自身もいっぱい持っています。しかし、今回は、もうそういうことにはならないように、消費者の合意を得ることが特定JAS発足の前提であるという点について、大臣、ひとつもう一言お答えをいただきたいのです。     〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕
  119. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私は、これを提案するについて、いろいろ考えて、先ほどもお答えしたのですが、消費者生産者があると思うのです。まじめに一生懸命取り組んでいる人たちが損するようなことがあってはいかぬ。というのは、こういうものはどんどん高く売れ始めてくると、名前だけはついても、市場に出てくるということはあってはならぬわけですね。それから一方では、そういうものを消費者が買わされるということ、これは守ってやらなければいかぬという立場で、余り善悪説に立ってどうこうということはしたくないのですけれども、ただ、今申し上げたようなことで、本当生産者消費者というのは、これはもう仲間内ですから、お互い信頼の上に立ってやることは大事なことであって、そういうことでありつつも、どうも消費者方々に不安というものが残るとすれば、それを排除していかなければならぬ。余り規制とかなんとかという考え方でなくて消費者人たちが了解できる、そういうものをやっていかなきゃいかぬし、一方には生産者もおるわけでありますから、いろいろな意見を伺って、これならばよろしいという方向を見出す努力というのは必要だと思うのです。  ただ、いろいろ意見がありまして、それを調整するのが我々の仕事であって、何でもかんでも片っ方の言うことが通らぬと絶対何にもできないかというと、そうでもないのでありまして、極力消費者方々もお入りいただいて、専門委員会などの場を通じて意見を十分踏まえて、これはそう難しい問題ではなくて、どっちにもいいことであれば進むわけでありますから、そういうふうにしたい、こう思っております。
  120. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 一々反論していたら全く切りがありませんけれども、やはりこれは、JASの表示をすることによって消費者は、有機農産物をいわば差別商品化というのですか、そういうふうにされて、安全とか健康とかのイメージのものは高く買わされるというような結果もつくるということで、消費者団体はこれに待ったの声をかけているということも御理解をいただきたいし、それから生産者消費者、私は決して対立の関係で申し上げているのじゃないのです。むしろ、これまで有機農産物を求めて消費者生産者が産直運動などの中で築き上げてきたものは、そういう規制とか表示とかというものじゃなしに、そういう中で実にお互いに、つくる側を理解し、それを支援する消費者、また消費者の気持ちを理解して生産者はつくるという関係をつくってきたので、そういうものがむしろこの特定JASによってつぶされるのではないかという心配が出されているわけです。そういう中で私は、特に今回の場合は、生産者意見ももちろん大事ですが、消費者のニーズということをあなた方が前面に出しているなら、これは合意を前提に進めるべきだということを申し上げているのでありまして、その点は再度申し上げておきたいと思います。  ところで、今回の表示問題では、生産にかかわっておられる皆さんからの批判も極めて強いわけであります。それはなぜかといいますと、有機農業農政の中に積極的に位置づけることもなく、当然政府有機農産物生産振興対策も全くお粗末なままで、有機農業の発展のために必要な価格不安定や自然条件による収穫減に対する補償制度を進めるという構えも見られない。これでは規制だ けが入って、せっかくの生産者の努力がかえってやる気をなくすという方向に行ってしまうのじゃないかという点で指摘をされているわけでありますが、政府のお考えをお聞かせください。
  121. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 有機農業につきましては、御存じのように化学合成されました農薬、肥料を使わないで生産された農産物というものを求める消費者のニーズというのが高まってきておりまして、そういうものに応じまして生産者皆さん方がいろいろ工夫されて取り組みをしてきた、それがいろいろな形で拡大をしてきておるということではないかと思っております。  それで、こうした有機農業につきましては、通常の農業に比べますと非常に労働力が多くかかるとかあるいは収量が劣るというような面もあるわけでございますけれども、先ほど申しました消費者のそういったニーズにこたえるということで、我々といたしましても今後中山間地域などを中心といたしまして、そこにある地域資源の物質循環システムをうまく生かした農業のあり方の一つと位置づけて推進支援していくことが重要ではないか、こんなふうに思っているということです。
  122. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それが批判されているもとなんですよ。その中山間のところに絞ってやって、それでまるで支援策でもとっているような顔をされるところにそもそもの有機農産物にかかわってきた皆さんの批判があるわけなんです。  私は、時間が限られていて十分言えませんけれども、本当に今回のやり方は欧米のとってきているやり方と道なんだ。欧米のとってきているやり方は、これからもっと安全な、できるだけ農薬を多投下しない、そういう生産者側、つくる側も食べる側も環境も、みんなが安全な農業を進めていきましょうという立場に立って有機農業というものを位置づけ、そして有機農業の上にかかわるいろいろな困難があります、その困難を支援する一つとしてこの表示という問題が位置づけられているわけでして、そこが全く皆さんのやり方と違うわけです。  しかしながら、私は、有機農業というものにようやく着目されたという点については評価しないわけではありません。これはやはりぜひとも支援策を強化していただきたい。大臣有機農業というのはそんな簡単なものではないのです。私は消費者で、余り生意気なことを言えませんけれども、ぜひとも有機農業本当に生きていける農業として発展できるように、これは安全、健康を志向する消費者の要求にこたえて、日本農業全体がそういう方向に大きく進んでいくためにも大事な施策だと思います。いかがですか。
  123. 田名部匡省

    田名部国務大臣 JAS法有機農業農政の中に位置づけて育成しろということとはちょっと違うのではないだろうかと思うのです。結果としてみんなが有機農法というものを取り上げてくると、それに対して我々は支援をしていくということではないのかなと私は思うのですね。  ですから、余りこれがあるから、そっちをやるからこっちをきちっととかいうことではなくて、現状、いろいろと消費者皆さんの話を聞くと、本当かうそかわからぬものがどんどん売られているという批判にこたえるものでなければならぬと私は思うのです、これは消費者を守るために。ですから、その結果として、全体のわずか一%弱のこの農業をどう展開していくかというのはこれからでありまして、やはり生産性も上がり、いろいろなことで、先ほど来申し上げておるように土壌の条件とかいろいろなことがありますので、そういうことにはこれから力を入れて、そうしてこれがどんどんふえていく。結果的には到達するところは一緒であっても、スタート時点では私はちょっと違うような気がしております。
  124. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 余りこだわっていたら話が進みませんからあれですが、有機農業を進めるための政府の施策の前進、これはそれこそ特定JASを取り入れようと取り入れまいと求められてきているものですから、私はそのことを改めて今申し上げているにすぎないわけであります。  大臣がおっしゃったように不当表示という問題でありますが、今回の特定JASの導入も、大臣がおっしゃったように、そのきっかけは公正取引委員会による有機農産物や無農薬野菜の不当表示の警告にあったわけであります。警告ですから極めて緩やかな行政行為であったわけですが、しかしこれは大きな効果を奏したというふうに私は思っています。  公正取引委員会においでをいただいておりますが、公正取引委員会は景表法に基づくもっと厳しい処罰ができる権限を持っているわけであります。公正取引委員会として一罰百戒の摘発をすることもできるというふうに考えるわけですが、この点に関して御答弁をください。
  125. 横田直和

    ○横田説明員 ただいま先生御案内のとおり、有機農産物ではないものについてあたかも有機農産物であるかのような表示がなされていれば、当委員会といたしましては、これを調査の上、厳正に対処いたします。しかし、実際にどのような措置をとるかは個別具体的な事象を踏まえまして判断いたしますので、事案の中身によっては排除命令相当ということもあるかと思いますけれども、そういうものについてはいたしますが、それぞれの個別具体的な事案に即して判断し、厳正に対処していきたいと考えております。
  126. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が限られておりますが、このチェックの問題ですが、工業的に生産するものに対する規格であるJASを自然条件に左右されて不安定な農業生産物に適用することが妥当なのかどうか、品質を担保できるというふうに言えるのかどうかという問題は非常に大きな問題であります。  例えば、有機農産物生産にとって欠かすことのできない堆肥におがくずを使っている例は多いのですが、これは生産者の責任ではなしに、全く生産者自身も気づかないうちに、例えばおがくずにCCA処理剤のものがまじっていて、そして土壌にクロムとか砒素とかの有毒物質が混入することになって、とても有機農産物生産する土壌にならなくなるというようなこともあります。さらに、日本のように狭い耕地では、有機農産物生産を営んでおりましたら、隣の農地から農薬が飛んできたとか空中散布の農薬が入ってきたとかということで、厳密に規定していけば、こういう事態になれはこれからも有機農産物認定から外されていくということになりはしませんか。要するに、外界と遮断されていない、絶えずいろんな化学物質が混入する中で、そういう中で生産されている農産物JASで担保しようということ自身が非現実的なんじゃないか。  もう一つの問題はチェックの問題ですが、これも私いろいろ調べました。要するに農薬の種類だけでも四百五十種類もありまして、その一つ一つの農薬が農産物に残留しているかどうかを厳密にチェックしていこうと思ったら、つまり四百五十種類検査せないかぬ。そのための試薬が一つ一万円ですから、一つのキャベツを検査するだけでも四百五十万円かかって、しかもその検査をする人は相当のベテランでも一日に大体三検体ぐらいで、キャベツ一つで百五十日かかるんだ。つまり、膨大な検査対象、それから膨大な農薬の種類というのに対してコストも人員も非常にかかるじゃないかということが問題になるわけです。  こういうことに対してあなた方は、その生産行程のチェック、つくり方の問題であって、そういうことを一々に調べていけばそれは見つかることもあるだろうなんというような開き直り方もされるわけですが、それではJASということで突きつけられた消費者は納得できないわけです。そこのところをわかるように話してください、簡単で結構ですから。
  127. 須田洵

    須田政府委員 まず製品の、加工食品のJASであるその制度にこういう生鮮品がやれるかという、チェックができるかという問題、これは一口で申しますとなかなか難しいことはもちろん承知でございますけれども、いわゆるアメリカなりヨーロッパなり、さっき言った強制保護的なものか任意的な保護であるかということの違いはありますけれども、具体的に先ほど言いましたような生産者のみずからのチェックと、それから第三者的なチェック、それをかみ合わせることによって何とかやってきているという有力な前例がある、日本とそれは違うかもしれませんけれども、そういう点がございます。  先ほどおっしゃいました具体的な残留農薬等のチェックとか費用との関係、これは確かに現実に取り組む場合においてはやはり一つの問題といいますか、課題一つになろうかと思いますけれども、これについては全部が全部残留をやるというふうにはいかないかもしれませんけれども、やはりこれは調べた方がいいんじゃないか、ポイントを絞ってでも調べた方がいいんじゃないかということであれば、我々も残留農薬の検査もあわせてやはり考えざるを得ないだろう、そこら辺は現実的に取り組んでいかなくちゃならないんじゃないかというふうに考えます。
  128. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 厚生省にわざわざおいでをいただいておりますので、もう一々に反論できないまま終わるのがとても残念ですけれども、最後に厚生省の方にお伺いいたします。  食品添加物の全面表示が今実施されております。これに対して新日本婦人の会は昨年の五月、四十三都道府県で千二百八店のスーパーマーケットを対象に食品の安全度チェックに取り組んだわけですが、中身は極めてずさんなものでありました。厚生省として食品添加物の点検を全面的に進めるべきだというふうに考えておりますが、その点とういうふうに取り組まれるおつもりか、お答えいただきます。
  129. 牧野利孝

    ○牧野説明員 食品添加物の表示につきましては、平成三年七月に新しい表示制度に移行したこともございまして、従来より関係業者に対しまして監視、指導を行ってきているところでございます。しかし、不適切な表示も一部に見られるとの指摘もございまして、ことしの七月に実施いたします夏期の食品一斉取り締まりにおきまして、食品添加物の適正表示について監視を強化するよう都道府県、市、区あてに指示したところでございます。今後とも食品添加物の表示の適正化に努めてまいりたいと思っております。
  130. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたので、これで終わります。私は反論しませんでしたが、それこそ科学的な農薬の残留チェックというのはほとんど不可能、これから品川にありますあの消費センターを充実させていくという方向も打ち出されておりますけれども、それをやったとしても非常に難しい。それからこの生産行程のチェックというのは、なおさらこれもまた非常にあいまいな点があります。こういう点については、これまた繰り返しになりますが、本当消費者生産者、この両者の意見をよく聞いて進めていくべきだということだけ申し上げて、終わります。
  131. 平沼赳夫

    平沼委員長 小平忠正君。
  132. 小平忠正

    ○小平委員 今回のJAS法改正につきましては、昨日も参考人意見聴取の中でいろいろと質疑、議論がございました。特色ある製造方法に着目をした特定JAS規格の内容にいろいろと議論が出ておりますが、従来のJAS規格が製品の品質を向上させるという役割を果たしておることとすれば、この特定JAS規格安全志向さらには本物志向、こういう消費者の多様なニーズを満足させる製品を消費者が安心して選べる基準をつくろうということであろうと、私はそれなりに評価はいたしております。  そこで、まずお尋ねしたいのでありますが、この特定JAS規格は物のつくり方についての規格ですから、従来のJASにはない行程検査が必要となってきております。特に生鮮一次産品のようなものが対象となっており、そういう意味においては特徴があると思います。いわゆる食生活を初めとする生産や物流の面で変化を与えることになると思うのでありますが、生産者消費者あるいは流通業者にとってこの特定JAS規格制定がどのような効果影響を与えていくことになるのか、それについて基本的なお考えをまず大臣からお伺いしたいと思います。
  133. 田名部匡省

    田名部国務大臣 近年、特別な生産方法を表示した食品というものが大変増加をいたしております。これは外見から内容を判断するというのは非常に困難ということがございまして、私どもにいろいろな意見が実は寄せられておるわけであります。  今回の特定JAS規格制度の新設によって、消費者が生鮮一次産品も含めてこれら食品を購入する際のよりどころができる、こういうことになるわけでして、安心して選べるようになるほかに、流通業者にとってもみずから生産過程をチェックすることが必要でなくなるわけでありまして、効率化が図られていくだろう、こう思います。それから生産者にとっても、せっかく努力しておるのに、しない者も何か表示さえすれば同じように売られるということでは、正直者はばかを見るといいますか、やはりそういうことを防止していかなければならぬ、言ってみれば生産者にも、生産上の努力が正当に評価されるということで、ますます意欲を持って取り組む生産者が多くなることを実は期待しておるわけであります。
  134. 小平忠正

    ○小平委員 特に最近、消費者は、グルメといいますか、そういう傾向の中で安全志向という傾向にございます。したがって、せっかく努力したことが報いられるようにという御答弁を今大臣からいただきましたが、私も、それは確かにそのとおりだと思います。しかし、そこで大事なことは、例えば地鶏あるいは鶏の平飼い卵とか、そういうことが一例ですけれども、そうでない、例えばブロイラーでやっている養鶏家は、じゃ努力をしないのかといったら、それはそれなりに努力しております。したがって、今大事なことは、それ以外はいかぬという決めつけはいかぬと私は思います。  これについてはまだ後でも質問いたしますけれども、そういう消費者のニーズに合った、生産に努力した形が個々に報いられるということはそれなりに効果があると思います。私も同感に感じるところはあります。そこで、この規格制定することはそれとして、問題点は、規格の内容をだれがどのようにチェックするかということではないかと思うのです。本来、今までのJASですと、製品を持ってきて検査をしてみれば、その傷みぐあいとか目方とか、一目瞭然わかる面がございました。しかし、この特定JASの場合は、仮に有機野菜を例にとってみますと、お店屋さんの店頭に並べられている野菜を幾ら見ても、規格で決められた有機の栽培方法がきちんと守られていたかどうかということを判別するのは不可能だと思うのです。そこで、市場消費者にとってみれば、それをどうやって担保するというか、そういうことが極めて重要になってくると思うのですが、ここの部分で今のことがざる法的になってしまったのではいかぬと私は思うのです。  そこで、政府は、新たに生産行程管理者というものを格付機関の下に設けて、ここで現場の生産方法のチェックを行おうとしております。しかし、この有機栽培というのは全国あちこちで、点として散らばっております。そういう中で、効率的なチェックというのはなかなか難しいではないかと私は思うのです。政府は、一体それをどう効率的にチェックをし、そして生産行程管理者としてそれをどう、例えばだれをとか、あるいはどのようにとか、この制度をこれから効率的につくり上げていくのか、そこのところのお考えをお聞きしておきたいと思います。
  135. 須田洵

    須田政府委員 確かに、生産行程のチェックというのが最も重要な点になってくると思います。  先ほど来も御説明しておりますが、一つには、そのためには、有機農産物なら有機農産物規格が設定された場合におきまして、中立的な第三者である格付機関の存在が絶対必要だろうと思います。それで、その格付機関におきまして、あらかじめその生産者、圃場等を登録する。それから、生産期間中において基準に合った生産方法で生産されているかどうか、現地確認を行う。それから、生産管理記録の記帳の義務づけと定期的な確認を行うということも必要だろうと思います。さらに、生産量の把握なり出荷状況の確認を行うといったようなことによりましてチェックすることとなるわけでございますが、それを格付機関がきちっとやるのだということが前提になるわけでございます。  ただ、先ほど来も申しておりますが、有機農産物等につきましては、生産者がグループを形成して自主的な生産管理体制を持って取り組んでいるケースが多いといったようなこと、あるいはその生産の期間も非常に長期化するといったことを踏まえますと、どうしても、そのあたりを踏まえました特定JAS規格のそういう格付実態に即した円滑な制度というものをつくる必要があるということになってくるわけでございます。  そういう意味で、具体的に申しますと、農協や、それ以外の生産者の組織する法人あるいは販売業者等でありまして、生産方法の管理について団体内部の取り決めがあって、かつ、それに基づいて的確な営農指導を行っているということが前提になるわけですが、そういうものを持っていますれば自主的なチェック体制ができる、もって生産管理を行うことができると想定されるわけでございまして、そういう機能というものも生かしながら、しかし、先ほど申しましたような格付機関によるチェックというのを最終的な歯どめということにして制度を仕組む。  この考え方というのは、アメリカ、ECの有機農産物の認証制度、それからフランスのラベル・ルージュ制度と大体同じような考え方で、実際、生鮮品的なものばかりでございますから、畜産物等も含めましてそのようなやり方をしている。その陰には、そういうものを支えているものとしては、生産者組織でみずからが何らか信用を失墜するようなことになって承認の取り消しというようなことになりますれば経済的なあるいは社会的なきつい制裁を受けざるを得ない、そういうところのないようにみずからも努力しなくちゃならぬ、そういう面を機能的に生かしながらやっていくということだろうと思います。そのように考えております。
  136. 小平忠正

    ○小平委員 せっかくつくりますこの生産行程管理者ですから、これが有効に機能して、そして大事なことは、このことが消費者からきちんと評価を受けていくことだと私は思います。今の御答弁の中でもアメリカやフランスのラベル・ルージュ制というお話がございましたけれども、我が国の場合はまだそこまで到達しておりませんので、問題は、この制度がきちんと作動するというか、農協であってもいいと思うのですが、ただ、そこのところに言うならば中立性ですとか本当に信憑性とか、そういうことがきちんと定着してこないといかぬと思うので、それは、政府がせっかくこういうことで進めていくのだったら、そこをきちんと指導していくことがこれから進んでいく方向に向かって大事なことだと思いますので、ひとつそこのところを特に留意していただきたいと私は思います。  次に、特定JAS規格制定に当たって、今私は、信頼性とか信憑性ということについてお尋ねしたのですけれども、今も申し上げましたように、これが決まっていけば、今後は本当に多方面に影響は出てくると思うのです。そのときに、この規格を決めるのには広く関係者意見が十二分に反映されるように進めていくのはもちろん、時間もかけて行うべきであると思います。  そこで、このJAS法にはJAS調査会という規定があって、学識経験者による検討の上、規格が定められることになっておるのですが、昨日の参考人の意見聴取の中で、和田参考人ですかの意見の中にも、JAS調査会のメンバーも務めたが、消費者意見が十分反映されていたとは言えない面もある、こんなような趣旨の発言もあったやに聞きましたが、やはりそういう意見を取り入れていくことはなかなか難しい面もあると思います。そこで、今後個々のものについて特定JAS規格制定していくに当たって、各方面の意見を聞いてこれをどう反映させていくのか、そこのところのお考えをお聞きしておきたいと思います。
  137. 須田洵

    須田政府委員 もしこのJAS法改正案が成立、認めていただけますならば、直ちに消費者なりあるいは関係業界に対しての制度自体についての説明なり、さらに大事なことは、意見をいろいろ聞いていくということがどうしても避けられないプロセスであろうというふうに考えます。そして、どのような特定JAS規格制定するのかということについて、生産者あるいは消費者あるいは流通業者、流通業界もあるかと思いますけれども、幅広く意見聴取をしたり、それから一種の調査といいますか、アンケート調査的なものも含めた調査もしていかなければならぬじゃないかなというふうに考えています。そういう結果を十分踏まえて具体的な規格制定の検討に着手していくのだろう。ですから、検討に着手する、ある具体的な規格をつくる、その場合に、その検討に着手する前のいろいろな意見を聞くということが非常に大事だろうというふうに考えております。
  138. 小平忠正

    ○小平委員 有効に機能的にこの制度が取り入れられていくようにしていかなければならぬと思います。  この特定JAS改正については今までの見地から一歩前進である、私もそう考えております。そこで次に、先般設定されたガイドラインでは有機栽培、それから無農薬、減農薬、大きく分けてそういう一つの指標が出されました。そこで、私は有機農産物についてお尋ねをしておきたいと思います。  私はこれについてまず一番先に思いますことは、消費者はこれを見てどれが安全かということをまずとらえると思うのですね。このことは、私は、今ウルグアイ・ラウンドというこの交渉過程の中において、特に海外からの食料品、これはポストハーベストも含めて非常に実態はわからない、だからこれは危険ですよという、このことは今までの経緯の中でもってある程度消費者には行き渡ってきたと思います。だから、なおのこと我が国国内生産する農産物は安全なのだということを広めていくことは私は大いに効果があると思うのですね。  したがって、こういうことはよろしいのですけれども、しかしそこで思いますことは、有機栽培万能じゃいかぬと思うのです。これは昨日も私も申し上げましたけれども、例えば有機栽培というのは、これは農薬、化学肥料を使わないで、いわゆる堆肥でやる、緑肥でやる、こういうふうにまず短絡的にとられると思います。しかし、私は、堆肥だってその成分においてあるいはそのもとの姿を考えたときに、絶対的にそれが安全であるとは言えないと思うのですね。  そこで、新政策を先般発表されて、そして新農政、過般の委員会でもございました。それにおいては生産性を高めて、そして品質のよい農産物をこの政策に沿ってつくっていこう、こういうことになったわけでしょう。ということは、農民の皆さんもそれにおいては適切なる農薬や化学肥料、これも政府の指導に沿って、これは危険だから使わないものは使わない、これは使ってもいい、そういう基準の中でそういうものを適切に利用して、そして収穫に努力をされていますね。そのときに、ただ農薬や化学肥料を使うからといって、それだけで有機農産物より劣る、そういう見方をしてはいかぬと私は思うのです。  そこで、もとに戻って、この有機農産物、これは本当に安全なのか、また、有機イコール安全という考え方は少し決めつけ過ぎじゃないか、そんなふうに思うのです。特に堆肥の施用ということも観点に置いて、政府はこの有機栽培について基本的にどうとらえておるのか、お尋ねをいたします。
  139. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 このたび有機農産物についてガイドラインを定めたわけでございますけれども、このガイドライン考え方でございますが、これはECあるいはアメリカなどにおきまして有機農産物について公的な表示基準を設定しておるわけでございます。ここに共通する基準といたしましては、先ほど先生からお話がございましたように、堆肥などによる土づくり重視していること、それから化学合成された農薬や肥料を使わないということが要件とされておりますので、我々としてはそれを参考にして今回ガイドラインを決めさせていただいたわけでございます。  確かに堆肥であれば、じゃ全部いいのかということになるわけでございますので、堆肥によります土づくりにつきましては、ガイドラインの中には特別に定めておりませんが、地力増進法に基づきまして現在地力増進基本指針、これは国が定めまして、県段階でもまた計画を定めておりますが、その指針等に基づきまして適切な施用方法などを示しておるところでございまして、我々としてはそれに従った施用をされるように指導をしていきたい、こう思っておるわけでございます。
  140. 小平忠正

    ○小平委員 地力増進法、私は堆肥というものは安全と言う前に、まず農業の基礎は土づくりである。そういう意味からいうと、確かに有機質の堆肥というのは一番であります。無機質から比べても格段の差がありますよ。そこから始まって、そしてそこに安全性の高い良質な農産物をつくっていく、これが基本であることは、これはもう同じ考え方であると思います。  そこで、堆肥については、私の知る範囲では、欧米諸国では歴史の違いもあって、我が国以上に堆肥についての概念が一歩進んでおりまして、有機農産物という意味においても未熟な堆肥を使用することはどうかな、この検討もなされているかに聞いております。言うならば、未熟な堆肥を使うことによって、例えば燐の問題とか硝酸塩の地下水汚染の問題とかありますね。それから、堆肥といってもいろいろありまして、例えば都市廃棄物、言うならば家庭生ごみ、これも堆肥になっていきますね。でも、その原料というか、何かというと、これはまたすぐにわかりません。そういうことの基準も、こういうガイドラインを設定されていくのでしたら、そこにもきちんとした、何といいますか位置づけというか指導がなされていかないと、本当の意味の有機栽培になっていかないと私は思うのです。  現に、有機栽培といいましても、完全有機かそうでないかという区別があるでしょう。今の有機栽培では、完全有機ではないでしょう。例えば、農水省の決めている中においても、有機栽培と表示できる中においては、幾つかの農薬、化学肥料を使っているでしょう。使っていても有機栽培と言っていいという範疇はありますよね。ですから、私は、完全有機栽培という名前でなければ、有機というのは、実際には無機質の肥料も使っている面もあるし、農薬も使っている面もあるんだ、しかし、それは安全だから使っているんだ、そういうことが実態ですよね。ところが、消費者はそのことは理解はし得ないと思うのです。もう有機となったらまるっきり農薬や化学肥料を使っていない、こんなふうにとらえられていると思うのですね。  私の言いたいことは、そういう中で、決して有機栽培を否定するものではないのですけれども、この実態というものをきちんと示していかなければ、消費者が誤った考えを持っていかれてしまうとまずいですし、また反面、生産する側の農家皆さんも、物によっては、野菜とか果物とか小規模な範囲の中では有機質主体の生産もできますけれども、でも、例えば米だとか麦だとか、大豆だとか、こういう土地利用型の農産物については有機だけではなかなか難しいと思うのです。したがって、そこに化学肥料も投入しながら、そして堆肥も加味しながらやっているわけですね。そんなことも考えると、生産者側からのことも考慮していくことも必要である、こう思うのです。  重ねてお伺いするようですけれども、いわゆる有機というものの定義、それから堆肥というものについて、もう少し具体的に見解をお伺いしておきたいと思います。
  141. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 先ほどちょっと舌足らずであったかと思いますが、おっしゃるように、今の堆厩肥についてどういうような指導をしているかということでございますが、我々といたしましては、地力増進法に基づきまして、先ほど申しましたように地力増進基本指針というものを定めております。そこで水田それから普通畑、それぞれにつきまして、やはり堆厩肥は、完熟した堆厩肥をどの程度施用するのがいいかという量をそれぞれ都道府県別に定めまして、その使用について指導をしているということでございます。それで、都道府県におきましては、その指針を受けましてまた同じように主要な作物ごとに施用基準を設定いたしまして、普及所などの土壌診断施設を活用いたしまして土壌条件に応じた施用をしているということでございます。  特に堆肥につきましては、完熟でないものにつきましては、作物に生育障害をもたらすとか悪臭をもたらすとか地下水に影響をもたらすとかいうようなこともあるわけでございますので、今申し上げました技術指導の中で、完熟した堆厩肥を適正に使用するようにということでの指導をしているということがまず一つです。  それから、特に最近の例では、汚泥肥料といったようないろいろないわゆる堆肥があるわけでございますが、これにつきましても、効果があります反面、重金属とかいうようなものが含有するというおそれもあるわけでございます。これらにつきましては、肥料取締法に基づきまして一定の規制値を設けて、品質が保証される、そういったものの利用をするようにということで指導をしておるところでございます。
  142. 小平忠正

    ○小平委員 私は、この一つ基準をつくるということ、これは今申し上げましたように、一歩前進であり、評価はいたします。しかし、重ねて申し上げますけれども、健康や環境影響のない範囲で農薬や化学肥料を適切に活用して生産性を高めていく農業のやり方についても正当に評価をしなければならない。何でもかんでも有機でなければならない、そういうことではいかぬと思うのです。また、何にも増して有機が一番である、そういう意識を形成するというか、そのための基準規格ではない。言うならば、我が国農業の形態の一つとして、調和のとれた姿をつくるための一つの物差しをつくるのだ、そう考えていかなければならぬと思うのです。その意味においては、そのことも含めて、農業、いろいろと多岐にわたっております、そこを十二分に配慮しながらこのことを進めていっていただきたいと思います。何かございましたらひとつ。
  143. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 ただいま先生がおっしゃった点、我々も非常に重要なところだと思っております。それで、新政策におきましては、そういった環境への配慮ということで、持続性のある農業生産を今後は考えなければいけない、環境保全に十分配慮をしていこうということで、環境保全型農業というものも打ち出しておりまして、これは日本農業をひとつそういうものにしていこうではないかということでございまして、これがまず我々の目指す方向でございます。そこではできるだけ農薬とか肥料というものはむだのないような使い方をしていこうということを言っておるわけでございますが、この場合、我々として、生産性を全く無視していいというふうには考えておらないわけでございまして、当然、生産性の向上と調和をされた形で、今申し上げたような環境保全型農業はどういうふうにしていったらいいかということを追求していきたいという考え方でございます。
  144. 小平忠正

    ○小平委員 終わります。
  145. 平沼赳夫

    平沼委員長 有川清次君。
  146. 有川清次

    ○有川委員 長時間それぞれ、長時間というよりも、それぞれの立場で論議をされまして、重複の面もあろうかと思いますが、かなり政府側の考え方もわかってまいりましたけれども、私も、以下、とりわけ有機農業の問題について絞りながら質問をしたいと思います。  今回のこのJAS法の中で有機農業が取り上げられてきたこと、これ自体は一つの脚光を浴びてきた問題として評価をするわけでありますが、ただJAS法規格の中でこれが取り上げられた、そういう短絡的な問題ではないのではないだろうか、このように思います。生産者の側の健康、消費者を含めて健康、安全、こういうことで有機農業が強く叫ばれ、地域からそういう運動が盛り上がってきておるわけであります。  今回のJAS法案も新政策関連で提起をされておるわけでありますが、さきに可決いたしました農業三法審議の際にも私も、幾多の人も申されましたが、その中で、十分な新政策に対する論議が行われないままに、さらにまた農業基本法についても十分な論議がされないままに、具体的な問題だけが出されてきて困るんじゃないか、そのために論議がかなり重複したりふくそうして、尽くし得ないという状況があったと思います。新政策の中に位置づけられた重要法案だというふうに思いますが、そういう意味では同じような形で提起されることを非常に遺憾に思うところでございます。拙速に法律を立案するのではなくて、農業の総括あるいは新農政についての十分な討論を行った上で、その論議を生かした形で法案をつくる、そういうことをどうしても踏まえていただきたいものだと思います。既に済んでおるわけでありますけれども、今日行き詰まった農業の再生を図る、そういう意味で諸法案が出たし、新しい農政も出たわけでありますが、ある意味では日本農政の大きな転換を迎える、そういう内容を含んでおるだけに、このことをしっかり早い時期に十分総括をやってもらうように私たちは申し上げ、大臣の見解をお伺いしておきたい。  ただ、その前に、大臣が今までの答弁の中で言われた言葉で、大変申しわけありませんが、結果として有機農業をやるのだから、それをやっていこうという人に対して支援をするのだ、そして、有機農業をどう展開するかはこれからなのだ、こういうふうな御趣旨の答弁がございました。私は、どうも評論家的で、日本農業の中軸にあって責任ある立場の人が言うべき言葉ではないのではないだろうか、そんなとらえ方でいいのだろうか、何かお偉方がそう言うからおれたち支援していくんだという、そんなとらえ方が全体ににじみ出ているように感ずるわけです。  もう一つは、環境に優しい農業というのを打ち出した、それとたまたま有機農業は一致する、そういうような立場で取り組んだという意味もおっしゃいました。これも非常に安易な法案づくりのような感じがしてなりません。猫の目農政というのが言われて久しかったわけですが、そうではないと執行部は思われるかもわかりませんけれども、何かそんな感覚があるような気がしてならないのです。大臣のきちっとした御意見をまずお伺いしたいと思う。
  147. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私も、このことに随分長いことかかわってきた一人です。この間も消費者団体方々と懇談会をいたしました。先ほども小平委員からも農薬を使用した問題が出ましたが、率直に申し上げて、実態として〇・八%くらいの方々がこれに取り組んでおる。これも長いことやっておるのです、いろいろ研究しながら。そのときに私は申し上げたのですが、今日本でつくられているものは大体全部安全です。そんな健康に害のあるものをつくっている農業はありません。  ただ、より安全なものということになると有機農業ということになってくる。有機農業というと、どこでも何でもやれるかというと、条件がありまして、土壌に合ったものでなければいかぬ。そういう研究というものはまだまだなかなかなされていない面もあるわけですね。地域にもよりますし、どういう土壌にどういう農産物が適するかというのは、これだけ、北海道から沖縄までということになると、全部が研究できている状態ではない。  そういうことを考えますと、これは力を入れてやっていかなければならぬ。より少なく農薬等を利用するということはいいことでありますから、環境に優しいというのもそういうことで言っているわけです。だからといって、余りこれを強調すると、あとは全部危ないのかということでとらえられると少し問題があるので、我々はそういうことを考えながら、ただ現状を見たときに、いろいろな消費者のニーズはどんどん高まって、健康だとか安全志向本物志向、そういうことできておりますので、これに私どもがどう対応していくか。  これは本当かどうかわかりませんけれども、私たちも確認できないのですけれども、産直でお互いにわかり合ってやっている分にはいいのです。別にそれまでは否定するものではない。それは結構よかったらおやりいただいていいのですが、市場に出回って普通の商店に並んできますと、これは確認しているわけではないものですから、消費者の方からもいろいろと苦情が来る。これが価格が高くなければいいのですが、有機農業というだけで価格は高くなるわけです。そういうところで、これは何とかしなければいかぬということで私どもやっております。  しかし、現に今までもこつこつと努力されておる方々がおりますので、いろいろな情報の提供でありますとか融資制度、そういうものを整備しながら支援をしていこう、こういうことをやっておるわけであります。生産物を適正に評価し消費者に提供するための情報、こういうものは早期に必要になってきておるということでございまして、おっしゃるように、おまえの言うことは何か少し猫の目農政じゃないのかと指摘いただけば、これは率直におわびしなければならぬことかもしれませんが、実態としてそうであって、ですから、これは変な例ですが、交通取締法ができたから自動車が売れて運転免許証取得が多くなるというものではなくて、これはこれとしてきちっとやってもらう、しかし一方では、そのことによってこれをつくる人たちがだんだんふえていくということを我々は助長していかなければならぬし、方向としては、消費者がより安全なものを志向しておるということでありますから、その方向に向かって私どもも努力をしていきたい、こう申し上げておるわけであります。
  148. 有川清次

    ○有川委員 そういう細々したことじゃなくて、日本農業の方向なり、そういう中で有機農業をどう位置づけるかとか、農業三法なりそういうものも論議があったけれども、基本法を見直しながらどうするかというこの据え方が極めて弱い、あいまいだ、不十分だ、私はこう言っているわけなんです。そこをまた機会を得て論議しなければならぬと思いますが、そういう意味では、たった一日ぐらいで、参考人があって二日ですが、こんな大事な法案を会期もぎりぎりになってはたばたと済ませる、そんな代物でないと私は思うのですよ。  きのう参考人が来られました。賛否両論ございます。賛成をされる方も反対をされる方も、一歩前進だというような意味のかかわり合いはあったと思うのです。そういう意味で、みんなが非常に目を向けて真剣に論議する大事な法案だから、十分な論議をできる保証を国会の場でしてほしいな、そういうふうに私は考えるわけです。  そこで、第一点ですが、昨年の十月に制定され、ことし四月から施行されました有機農産物ガイドラインですが、これについてはその表示があいまいではないのか、現場の意見を反映したものと言えるのかなとの意見も見られたところであります。そもそも有機農業について行政はこれまでの間どのように対応されてきたのか。消費者とも話をされたという話もありますが、その辺はどうだったのか。有機栽培の野菜という規格から入るのではなくて、やはり有機農業を明確に位置づけながら、今後の展開の方向、そして振興するための条件整備、そういうところから入るのが先決だったのではないだろうか、こういうふうに思います。  澤登さんの証言がありましたが、これは自然のありのままで、昔はそういう農業をしておったのだ、それがだんだん崩れて今日こうなったという御意見がありました。さらに、先ほど来ずっと大臣も言われて、当局も局長も言われておりますが、有機農業は収量が落ちる、労力が要る、こうした固定観念で常に何回も言われました。澤登参考人はそう言われましたか。そうではなかったでしょう。現実には、そうした固定観念だけでなしに、労力も要らない、経費も安くつく、そういう有機農業栽培方法もあるわけです。それを、常にそれに眼目を置かれるという考え方に非常に問題があるというふうに思うし、行政がこれまでどうタッチをされてきたのか、全国のどこどこにどんなグループがあってどんな方法で有機栽培をされてきたのか、きちっと把握されながらやられているのかということが疑わしくなるわけです。  大臣の方は、今一%程度だけれども、収量が減っておる、収量がふえて価格の面でもよいということになれば広げられる、伸びるだろう、こういうことも先ほどおっしゃいました。それは全くさっき言った評論家的で、基礎的にこうやるんだ、そういうふうにつくるという今までの行政の指導の中であるいは調査の中で踏まえた言葉としてはいただけない内容だと思います。今までどのように関係をされたのか、その辺を含めてちょっと答えてください。
  149. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 我々、有機農業の現状なりをどんなふうに把握しているかということだろうと思います。  平成三年度に全国的にアンケート調査、これは農業団体を通じてやったわけでございますが、まず取り組みの事例といたしましては、全国で千四百九十五の事例がございまして、農家数では約二万五千戸でございます。これは有機農業あるいはこれに類する農法ということで調べたものでございますが、そのうち有機農産物ということでやっておるのが約三割、その千四百九十五の事例のうち約三割がそういう状況でございます。  それから、作目別ではどういうような部分に多いかと申しますと、これは有機農業あるいはこれに類するものも含めてでございますが、米が五一%、野菜が三五%、これが圧倒的でございまして、あと果樹が九%程度でございます。  それから、経営が成り立つ理由といたしましては、需要と販路それから価格の安定というのを挙げている人が多くございます。それから逆に、経営が苦しいという理由といたしましては、やはり労働が非常に重荷になっているとか病害虫の多発であるとか収量が不安定であるというようなことを挙げておる方が多いわけでございます。  そのほか、確かに単収につきましては、一般の単収よりも低い方もあるわけですから、全部が全部高いということではございませんで、高い人もございまして、平均的に言えば一、二割減収というようなことでございますし、労働時間も、ばっと見ますと概して一、二割、あるいは多いもので三、四割というのがございます。それから、販売価格では、やはり同程度か一、二割高いというような状況でありまして、今後の取り組み意向としては、継続または拡大したいという方が九割を占めておったというような現状でございます。
  150. 有川清次

    ○有川委員 御答弁いただきましたけれども、時間がないので、今具体的な中身、私聞かぬでもよかったのです。たまたまおっしゃったのですけれども、ある程度の調査やらはいろいろされておるわけですが、現実には、先ほど局長の答弁がありました施肥基準とか線虫の対策とか、いろいろな研究についても、どこまでいろいろ農業を減らしたらコストがどうなるかとか、そういうことを各県でも今研究を始めたところである、さっきこういう答弁がありましたね。今ごろそれをやっておって、参考人も言われたように、私は主客転倒だと思うのですよ。まずそういう面におけるいろいろなことを皆さんが努力しながら位置づけて、安心して需要も拡大し、さらに価格が安定する、そういうものをやっていくべきだったのではないか、このように思います。これは答弁要りません。  そこで、大臣にちょっと聞きますけれども、農業経営基盤強化法、これでいろいろ論議をしまして、提起がありました。規模拡大が基本に据わっておるのですね。小平委員から先ほど質問がありましたが、必ずしも全部有機農業というわけにいかぬのじゃないか、いわゆる土地利用型農業の場合というのがありました。規模拡大を基本に据えられたそのものと、この有機農業をまた今度新法案の政策一つとして据えられた、その関連をどのように考えられておるのか、そこをちょっと明確にしてください。
  151. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今局長からも御答弁ありましたように、米については五一%という実績がある。私の県でも米を非常に熱心にやっている地区がありまして、これは町長が先頭に立ってやっている地域なんですけれども、やりようによっては成り立つと思うのですね、規模拡大しても。恐らくきのうの参考人の方も、何をやるかによっては手もかからぬし収量も上がる、こういうことをお話しになったと私は伺っておりますが、それなんですね。それさえやれば、有機農業というものは必ずしもだめだというものではないと私は思う。  ただ、それは土壌がみんな違うものですから、それを研究して、ここにはこういうものが適作だ、これが出ていかないと、ただ進めろ進めると言っても、今申し上げたように、一方では収量が悪いとか労働時間がうんとかかるとかというところもあるわけです。ですから、適作でないものをやるとそういう結果になるということで一%弱の程度でおりますけれども、これは別として、私ども本来的には、うんと健康にいい、農薬を使わない農業をやってくれれば大いに結構だし、それを目指しておるわけです。  ただ、一挙にいくかとなると、もう少し私どもも研究をしたり、いろいろな事例の情報をとったり、その情報をやる農家方々に流してやっていく。少し時間がかかるものですから、先ほどから答えがぴしゃっとしないとおしかりをいただきますけれども、方向としてはそういう方向であるべきだというふうに考えておりますから、成功さえすれば進むと私は思っておるわけです。
  152. 有川清次

    ○有川委員 有機農業については、澤登さんもおっしゃっていましたけれども、もう三十年やっておるんだ。各地域で私もずっと、自分自身も模索しながら農家を指導して研究しておるわけですよ。そうすると、その間、やはり健康を考えながら、環境に優しい農業ということを考えると、なぜ今まできちっとした調査や農民と一緒に悩むというような農政ができなかったのかな、こういうことを非常に残念に思います。  時間がありませんので次に進みますが、有機農業の基本はやはり土づくりだというふうに思いますし、農業自体が土づくりが原点だと思いますが、その土づくりは時間と労働力が非常にかかる。そういう意味で、あるいはまた有機農業の認定には、三年から五年経過しないとぴしっと評価できにくいというのも言われております。今日、土がこれまでの農法の中で病気になったり、死んでいたりということのために、病害虫が発生したり、収穫が大激減をするというのがあったと思うのですね。  今度の新政策の中で言われているように、中山間において振興すべき農業として有機農業考えるならば、高付加価値農業と言われてずっと今までの論議の中で出ていますが、高付加価値農業というとらえ方には問題があると私は思いますけれども、今の現状はちょっとそういう状況がありますが、土づくりを行っていく際の所得の減収分、三年から五年ですね、何らかの財政的な援助、とりわけ中山間の場合には、条件不利地域である上にそういうことをやるわけでありますから、その辺については何らかの支援をもっとすべきではないか。こういう策もなしに、ただ評論家的に見ておって、うまくいけばさあ乗るぞというのでは、指導の場にある皆さんとしてはいただけないのではないだろうか。有機農業導入資金というのがあって、無利子農業改良資金を貸し付ける、その予算枠が一億円。千人いらっしゃっても一人わずか十万ですか、こんな金にしかならないわけで、さっきもちょっと意見がありましたが、その辺をもっと支援体制というのを、位置づけがはっきりしておれば支援体制もはっきりするのですが、位置づけがあいまいな中で、これは任意制だから、やらしてみてよかったら乗ろうというようなことでは、全体として広がりができぬのではないかと私は思いますので、見解をお聞かせ願いたい。
  153. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 有機農業への取り組みを円滑に進めるということで、特に取り組み当初の経営の安定を図るということが必要なわけでございますが、これにつきましては、今先生からお話がございましたように、我々といたしましては、まず個人の経営ということでございますので、これは農業改良資金対応するということが適当ではないかということで、その必要な施設、機械、資材に対して無利子の改良資金が借りられるようにということで、昨年度この資金を設けたところでございます。それで、この資金の償還期間は一応七年となっておりまして、当初三年間は据え置くということになっておりますので、我々といたしましては、この資金を利用していただいて、ひとつ経営に円滑に乗っていただくということではないかというふうに思っております。  また、いろいろ堆厩肥づくりというようなことも当然必要になるわけでございますが、これにつきましては、いろいろ畜産との結びつきとかというようなことで共同で仕事をやられる場合には、また別途助成事業なども用意はされておるところでございます。
  154. 有川清次

    ○有川委員 資金対策は、貸し付けはあるのですよ。こんな金じゃ、一億ぐらいじゃ全国にどうしようもないのじゃないかという意味で申し上げているわけなのです。  それで、私は前にも言ったかもしれませんが、お茶の栽培をしておる人がうちの近くにいらっしゃるのですけれども、有機農業でやろうということでされて、二年間は虫がついて全くお茶にならなかったというのですね。これが三年目になったら、お茶の葉を食べる害虫をまた食べる益虫が来て、三年目から何とかお茶が金になり出したという話をされまして、であるから、有機農業をやるとすれば、やはり二、三年分の生活保障をきちっとせぬとできませんよ、こういう話もありました、内容によってはいろいろ違うでしょうけれども。そういう意味では、広げていこうということであっても、なかなか簡単にいかないのじゃないか。  それからもう一つは、種子の問題もさっきからいろいろ出ておりますが、今業者がF1などをつくってどんどん種を販売する、こういう形でやられておりますが、これは一過性のもので、二年目はその種をまた使ってもどうにもならぬという問題が出てくるわけですね。昔、農家皆さん、私たちの家庭は、家の周りに、いろりの周りにずっといろいろな種が下げてあるものでした、縁側とかね。それを同じ場所で使うから抗体ができて、対応ができるわけです。今の種はよそから、どこで使ったのかわからぬけれどもそれができて、種そのものに病気があるということがありますが、こういう対策を含めて、現実には助成などもう少し真剣に考えなければならぬと思いますが、その辺の考え方について、今は予算が一億だから、きょうあしたどうこうしなさいというわけにいかないのだけれども、これからの考え方についてきちっと御回答いただきたい。種子の問題もお願いいたします。     〔委員長退席、萩山委員長代理着席〕
  155. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 我々といたしましては、個人の人が営農をやる場合といたしましては、現在、金融措置というのはとり得べき一つの重要な手段でございます。したがって、それをいかに利用していただくかということでございまして、確かに今先生がおっしゃいますように、農業改良資金も現在一億円程度ということでございますが、これは昨年の十月にやっと施行されたというような状況でございましたので、その程度の枠になっておりますが、我々といたしましては、生産者、そういう有機農業を目指す人たち需要に十分応じられるようなことは今後考えていかなければいけないというふうに思っております。
  156. 有川清次

    ○有川委員 時間がありませんから次に進みますが、国の研究機関が土づくり等を基本に有機農業についてこれまでどれだけ研究され、かかわってこられたのか私は非常に疑問に思うところがあるわけです。ここがしっかりしないと農家の指導というのが生かされてこない、こういうように思います。それは先般、二月二十三日、農林水産委員会で私が堆肥づくりについて具体的に質問をいたしました。これに対する政府見解を聞いたわけでありますが、五点について私はこれは間違いだ、このように思っております。よって、政府見解を再度確認したいと思いますが、ちょっと時間がないようですので、一応五点についてもう一回、どこに出しても間違いのない回答をいただきたい。時間があれば反論いたします。  一つは、完熟堆肥についてどう判断しておるのか。二つは、家畜ふん尿のメタン発酵によるエネルギー化について進めておる、そういう評価の見解が述べられましたが、それと実態ですね。三番目は、発酵温度についてまちまちでありました。これについての見解。四番目が、オキソニウムの生成についてでありますが、これも微生物の酵素が酸素を酸化してオキソニウムをつくる、こういうような見解が述べられたのですが、とても私は理解ができませんので、納得するように説明を願いたい。五番目は畜舎の排せつ汚水からの燐の回収、こういうことも言われておりますので、その辺のことについて御見解を願いたいと思います。
  157. 貝沼圭二

    貝沼政府委員 それでは、今先生からお話ございました五点について御説明をさせていただきますが、最初に完熟堆肥の定義でございます。  先般、農蚕園芸局長の方からお話ししましたときには、完熟堆肥というのは外観から見て、あるいは水分の含量から見てというようなお話をいたしましたが、私どもは研究陣の方で、やはりそういうぐあいにはまいりませんで、実際には次のようなことを調べた上で完熟というような表現をとっております。  そこをお話しいたしますと、一つの点でございますが、堆肥の温度が周囲と同じ程度まで低下して、さらにその切り返しを行っても温度が上がらないというところが一点かと思います。  それから二点目は、堆肥の試料でございますが、これを六百度で電気炉の中で焼きましたときに減少します有機物の量でございますね、これが二足に達したというところ。これはいわゆる発酵されやすい成分がほぼ発酵されてしまって、残っているものが変わらなくなっている。それが二点目です。  それから、今度は堆肥の陽イオンの交換容量が百ミリグラム当量、百グラムの有機質に対して、この辺が大体普通の場合の食物残渣からまいります量でございますので、これが約百ミリグラム当量を超えた点。  それからもう一つは、堆肥の中に硝酸態の窒素がかなりたまってきたとき、いわゆるアンモニアが酸化されて硝酸に変わっているときというようなことをジフェニルアミンテストというような方法で見ております。  それからもう一つは、生物試験としまして、コマツナの種を用いた発芽試験で発芽率が一〇〇%に近くなったときということで、これによって植物に対する阻害物質がないということを見ております。  それから、そのほかでございますけれども、一つは堆肥自身の分析値の中の炭素と窒素の比、CN比を見ておりますが、鶏ふん、豚ぷんというものを使いますときは窒素含量が高いものですから、既に二〇以下になっておりますけれども、それ以外の木質のものとかわらを入れた場合には非常に炭素の量が多くなっておりますので、それが発酵によって減ってきて二〇から三〇ぐらいになった、この辺のところをもって一応堆肥の発酵は終了しているという目安にしております。  それから二点目でございますが、家畜ふん尿のメタン発酵によるエネルギーでございます。これにつきましては、私ども昭和五十六年から平成二年までバイオマスの変換計画というような大きなプロジェクトを行いまして、その中で二相式のメタン発酵システムというようなシステムをつくりました。  ここで一つ日本において問題になりますところは、冬季の温度が低いためにタンクを加温しなければいけない、このためのエネルギーをどこから持ってくるかというようなことがありまして、ヒートパイプの構造というようなことを行ったわけでございます。それで、この発酵装置の試作を行いまして、実際にここに少しの技術改良を加えまして、能率のいい発酵システムを、具体的には沖縄県で二千五百頭規模の豚ぶん尿を対象として温泉熱に利用するというようなことが行われまして、これは三年間ほど稼働したそうでございますが、現在は維持管理の問題でとまっているということがございますけれども、そこで二千五百頭の豚ぷんの処理というものが行われております。  現在でございますけれども、メタン発酵装置の普及を図るために発酵効率を一層高める、それから施設建設及び維持管理費の削減がもう少しできないかというようなことで、さらに新しいプロジェクトを立てて研究しておりますが、この中にはもう少し民間技術の導入とか、そういう水処理の問題とかというようなことを研究していく必要があるだろうということで進めさせていただいております。  それから、発酵温度でございます。発酵温度につきましては、堆肥の内部の温度が七十度から八十度というところが普通の発酵温度になっておりまして、これは温度が下がってきたときにまた切り返しして酸素の供給によってまた上がっていくということの繰り返しで、先ほどお話ししました堆肥の完熟というような終点に一応到達するかと思います。  それから、七十度、八十度というような温度でございますけれども、ここでは発酵と同時に病原菌の殺菌、それから寄生虫の卵、雑草の種子などが死滅させられますので、発酵過程における非常に重要な問題かと思います。  それから、鶏ふんのような非常に分解されやすい有機質の材料の場合では、適度な乾燥条件にありますと内部温度は百度を超えることもございまして、先般私が高い温度の一つの例として百度というのを申し上げましたが、こういう場合にはありますし、それから、そういうところでさらに残っている微生物というのもこういう堆肥の中にはかなり散見されます。  その次のオキソニウムイオンでございますが、これは先ほど先生御指摘の、私自身きょう訂正させていただきたいというふうに思っておりましたところで、酸素が酸化したあれでというのは間違いでございまして、有機物が、ちょっと正確に読ませていただきますと、「微生物の酵素が酸素を酸化してさらにオキソニウムをつくるこというふうに議事録にございますが、そうではございませんで、微生物の酵素が有機物を分解してさらにオキソニウムをつくるというふうなことの私の言い間違い、大変申しわけございませんでした。  それで、堆肥化の過程におきまして、有機物が微生物によって分解されて酸が出るわけですが、その酸の中の水素イオンが水と結合したのがヒドロニウムイオンで、H3O+というようなものでございますけれども、この結果出てまいります、堆肥から発生する酸度というのはそう強いわけではない、これは有機酸から出てまいりますので強くないと思いますが、これ自身が作物に悪影響を与えるということはないだろうと思います。  それからさらに、残りましたマイナスイオンの方の有機酸によりまして陽イオン交換容量が大きくなってくるということから、むしろ土壌の化学的な性質を安定させる上では好ましい影響を持っているのかなというふうに考えられると思います。  それから、今のヒドロニウムイオンを含めまして水自体の構造、その辺のところは最近非常に論議されているところでございますけれども、植物に対してどういう影響を持っているかということはまだ学会の方でもはっきしてないところがございますし、私どもも、水の機能、構造ということは今後の研究課題というふうに考えております。  それからもう一点、最後の点でございますが、畜舎の排せつ汚水からの燐の回収でございます。現在、私どもは、物質循環の高度化に基づく生態系調和型次世代農業システムの開発ということで、畜舎の汚水中の燐の回収を一つの目的としたプロジェクトを組んでおります。  この中の燐の回収技術のストラテジーでございますが、一つは乾燥法、それから活性汚泥法、それからろ過膜を使う方法、無機質の吸着法などでございます。それで、し尿処理とかあるいは食品工業の廃水では活性汚泥法が主でございますけれども、私どもは、畜産廃棄物からの回収、利用の面で有利と考えられる燐の濃縮微生物を利用する、ですから、微生物の菌体の中に燐を取り込むような微生物を探索しまして、それを活性汚泥法あるいは吸着法に利用していくというような考えを持っております。  それで、活性汚泥につきましては、現在試験的でございますけれども、かなり燐を取り込む、これは微生物か原生動物がはっきりしておりませんが、そういう系をつくりました。現在は、汚水中の燐の七、八〇%を回収する技術として開発してあるわけでございますけれども、ただ一つ残りますのは、窒素の除去の方がまだ解決されておりませんで、これについても引き続き行っていきたいと思っております。  それからもう一つの、燐を吸着する方でございますが、これは物理的なあるいは化学的な吸着を目的としておりますが、現在のところ、今まで一番いい吸着材というのはサンゴの砂でございます。そのサンゴの砂の上に、燐酸カルシウムの形だと思いますが、その形で沈着していくというようなことで、これはまだ純粋な系ということで燐酸の溶液のいわゆる人工の尿というような形のものの実験を進めておりますけれども、そういう形の中では八〇%以上の回収が沈殿として出てくるというようなところまで進んでおります。  以上、この前間違えましたところの訂正をさせていただきましたが、御返事させていただきます。
  158. 有川清次

    ○有川委員 もう時間がありませんから内容は触れませんが、一回ゆっくりした時期に話し合いをしながら、やはり有機農業本当に役立つように、研究機関がさらに自信を持って指導してもらうように要望しておきたい、このように思います。  ただ、今述べられたので、完熟堆肥は外観ではなくてその性質にあるという、ここがきちっと確認をされたのではないだろうか、このように思います。メタン発酵によるものの問題については、出てくる残渣の取り扱いというのが、なお一層臭気を放つというふうに理解をしておるのですが、対応など、今後また実際の経験の中からお伺いをしたい。  それから、発酵温度の問題については、微生物の有効菌が温存をされる限界は大体三十八度というふうに私伺っておるわけであります。しかし、六、七十度、その辺で発酵させながらという、それで切り返す中で酸素がというお話がありましたが、堆肥の中の炭素分、そういうものがまたさらに熱を持って、炭素と酸素ですが、そういう形になっておるのじゃないかと思うし、あるいはまた害悪を与える発酵温度というのも五十五度ぐらいのところにはある、いわゆる嫌気性菌が非常にはびこりやすい、こういうものがあるということも聞いておりますので、その辺は私実験しておりませんから、いろいろ研究をして御指導願えればと思います。  オキソニウムの生成については、また今後の課題にさせてください。  燐の回収については、そういう方法が、私もこの間静岡の調査に行ったときに、農村排水事業で、新しい処理場が燐を取り除くことができる、微生物だというのを伺ったことがあるわけですが、その辺は今後検討させてもらいながらいきたいと思っております。  今私がわざわざこの問題をこの委員会で取り上げましたのは、前が不十分な状況の中で、私の通告も悪かったのですが、議事録にあのまま残っておれば政府のメンツにかかわると思って、一応訂正方、しっかりしたものにしてもらった方がよかろうということで申し上げたところでございます。いずれにいたしましても、堆肥づくり、非常にきちんとした指導をとっていけるような体制をさらに研究されながら前進をさせてもらうことを強く要請をしておきたいと思います。  次に、また本論に入りますが、今回のいわゆる特定JAS規格ですけれども、生産方法に特色がありまして、これによって価値が高まると見込まれる農林物資と定義されております。従来の製品検査ではチェックできないために、生産行程管理者による格付業務の実施を行う、このようにされており、先ほど来盛んに質問もあり、一定の考え方はわかったわけでありますが、このつくり方というものを果たして正確に、厳密にチェックができる、そういう保証がどのようにあると思っていらっしゃるのか。  それからもう一つは、一次産品の生産行程を管理し把握する場合に、その性質上、現場に近く、全国的な広がりを持つことが必要だというふうに思いますが、どのような人を生産行程管理者として今考えていらっしゃるのか。この間の中央青果の田中専務、参考人が言われました、十二名現地に派遣をしながらやっていますと。しかしこれは、今一割程度だけれども、広がってくればとても手に負えない。そういうものが、今度改正になってその辺が進んでまいりますと問題になるわけであり、また、生産行程管理者の役割というのは非常に重要なことと答弁の中でもございました。資格要件としてどのようなものを考えていらっしゃるのかそうした人たちに対して行政の側はどのように指導しようとしているのか、この辺についてお伺いをし、それがしっかりしたものによる検査体制が厳密でなければ、どうしても消費者の信頼を損なうという問題があるわけでありますから、そういう意味で、特にその辺をもう一回確認の意味でお伺いしたい。     〔萩山委員長代理退席、委員長着席〕
  159. 須田洵

    須田政府委員 生産行程管理者の点につきましては、先ほどから説明しておりますけれども、いわゆる一次産品といいますか、そういうものについての、円滑に、かつ適正に格付をしていくという意味ではやはり必要な措置というふうに考えておりますが、具体的な、どういう者が生産行程管理者になるか、まずそのイメージを、生産行程管理者というと何か特定の人というような感じがしますものですから、そこをちょっと御説明させていただきたいと思うのです。  要するに、先ほどから申しておりますように、一定の生産者グループ、これはもちろん、大きな単位としては農協とかそういうものも入るわけでございますが、そういうグループとして、そのグループ内において自主的な生産管理体制をとって取り組んでいるケース、こういうことになるわけでございます。その生産者の中の、その組織内のいわゆる取り決めといいますか、こういうふうに責任体制をとっていくんだとか品質管理なり生産管理のやり方はこういうふうにやっていく、そういう責任分担体制といいますかそういうものがある。さらに、当然のことながら、的確な営農指導を行える、そういう体制にもなっている。こういうことが幾つか具体的な要件として必要になろうかと思います。  結果的に申しますと、有機のようなものについては、余り一定サイズ以上で限るとか、大きな単位のものでなければだめだというふうに決めつけられないだろうと私は思っています。ということは、そういう意味では、一つは農協はもちろん考えられますが、あるいは販売会社のようなケースもございますし、それからさらに農協以外の、生産者の組織するいろいろな法人が考えられるというふうに思います。そういう組織体あるいは法人単位で生産行程管理者という位置づけになるわけでございます。そういう意味では、イメージとして生産行程管理者といいますと単一の一人といいますか、そういうふうに思いがちでございますけれども、その点については、そういう一種の組織体のようなものであるという御理解をしていただこうと思います。  そこで、そういう生産行程管理者によります仕組みというものを、具体的に規格基準をつくることと並行して、今有川委員も、具体的な営農指導なり、生産行程管理者に対する指導なり、そういうことをどう考えるかということを今おっしゃいました。私は、その点は非常に重要だと思います。  この点については、特定JASというものが一つの枠組みとしてこの法制によってできましたならば、やはりその規格づくりに取り組んでいくということになろうかと思いますけれども、先ほども申しましたように、具体的な規格をつくるに当たっては、相当程度の年月を積み上げながらやっていかなくてはならぬということになろうかと思います。したがいまして、その中での生産行程管理者に対する必要な指導体制というものをどういうふうにしいていくか。これは、一方においては格付機関の問題があろうかと思いますが、食糧事務所とか国の出先機関ももちろん考えられるわけでございますが、そういう機能の強化といいますか、そういうものと相まって、生産行程管理者に対する指導体制といいますか、もしこの法律が通りましたならば、そういうことの体制づくりというものに着手していかなければならぬのではないか、かように考えております。
  160. 有川清次

    ○有川委員 かなり明らかになってわかってきましたが、組織単位でやられるということですけれども、それに対する例えば食糧事務所とかそういうところの指導については、含めて考えていらっしゃる面もあるようですが、それはいいとして、農協とか法人とか、具体的にはそのグループの中から、団体の中から、指導に入ったり、かなり労力を使うわけですから、そういう意味では、財政的なカバー、そういうのは何か考えていらっしゃるのか、全く自主的な、それに任せてやるということなのかというのが一つと、それから、一定に決めつけられないだろう、こういうことが言われましたが、そうすると、地域によって、あるいはその団体によって、組織によって、一つ規格というものの判断基準というのがまちまちにならぬか。一定の最低基準を言って、それであとは自由に任せる、もっと地域に任せる、こういうことなのか。そこら辺をちょっと明確にしてください。
  161. 須田洵

    須田政府委員 生産行程管理者に対して、何らかの支援といいますか、財政的な支援といいますか、そういうものについては、事柄の性格上、任意の制度でございますから、その任意の制度にのるかのらぬかという、その選択の問題になりますので、それに対して直接何か助成をするというふうには、やはり難しいのじゃないかなというふうに考えております。  それからもう一つは、各地でみんなまちまちになるんじゃないかという御指摘につきましては、規格基準自体は、先ほど御説明しましたけれども、全国一本といいますか、共通的なこういう基準だということで、これはもう決まってくると思います。それはただ、県によって、それに何か上乗せみたいなことが部分的に一部出てくるというようなことはあるいはあり得るかと思いますけれども、原則として一本というふうにお考えいただきたいと思います。
  162. 有川清次

    ○有川委員 財政的援助は任意だから考えていないということなのですが、具体的に走って、これが実行されて進み出すと、大変な時間と労力というのがかかってくるように思うのですね。そこまで持っていかないといけないというふうに私は思うのですが、そういう意味で、その辺の援助については起こってきた今後の状況によって判断をする、そういうことなのか、あるいは、もうそれは一切ありませんよということなのか。そこをちょっとお伺いしたいと思います。
  163. 須田洵

    須田政府委員 いわばこれからの有機農業の、仮に有機農業という問題に一つ絞った場合にでございますけれども、有機農業振興のためにいろいろな各種生産奨励をとっていく。そのために、農蚕園芸局長も申されておりますけれども、これまでの施策の延長線上に立って、今後どうしていくか、そういうことはまた別にしまして、この規格、格付をめぐって、直接的に財政的に支援するというのはなかなか難しいんじゃないかというふうに考えます。
  164. 有川清次

    ○有川委員 時間がありませんので、次に移ります。  小分け業者による格付、これに関しても入れかえ等の危険性は十分に考えられると思いますが、これに対してはどうされていくのか。今、見た目では判別しにくいつくり方のJAS、こういうことになっておるわけですから、小分けの際の十分な管理が必要だと思いますが、その辺について見解をお聞きします。
  165. 須田洵

    須田政府委員 小分け業者といいますか、そういうものを位置づけたというのは、もう先生も御承知と思いますが、要するに生鮮品のようなものにおきましては、段ボールで出荷したものでも、途中の段階で、チェーンストアとかどうしてもある段階で小袋包装に小分けをしなくちゃならぬ。その過程がどうしても避けられない。そうでないと消費者に渡らない。そうすると、せっかく有機でつくったものだということが格付をされておっても、その途中でおかしくなったのでは最後まで通りませんので、やはりそこを何とかつなぐというシステムとして補強していくといいますか、補完しておこうということでございます、趣旨は。  しかし、途中で入れかえとかいろいろな問題が起きてはやはりまずいわけでございますので、その小分け業者自体についても、農林水産大臣の承認というかなり重い仕組みにいたしたい。何かまずいことがもしあれば、いろいろな報告をきちっとさせますけれども、そこで問題があれば、当然のことながらその承認の取り消しというようなことも考える。それから、もろもろの罰則も必要だというふうには考えております。
  166. 有川清次

    ○有川委員 罰則を含めて大臣の承認という、そういうことであれば、担保ができるのかどうか心配しておりましたが、十分な管理の担保も展望があるように思いますので、こういうのでくくるのは余りいいことではないのですけれども、きちっとしていただきたいと思います。  最後に、消費者は安全な食糧を求めております。その意味で消費者に資するためには、縦割り行政という弊害に陥らずに、消費者のニーズにこたえて積極的な行政を図っていくということが必要だと思いますが、例えば、安全といえば、食糧ですから厚生省ですね。あるいは環境に優しいということであれば環境庁、いろいろな省庁がかかわってくるわけでありますが、これらとの横の連絡、打ち合わせ、協議、そういうことがきちっといくような体制が好ましいと思うのですが、それについてはどのようにお考えですか。
  167. 須田洵

    須田政府委員 委員の御指摘のとおりでございまして、食品の安全性確保につきましては、輸入食品も含めまして、食品衛生法に基づいて厚生省で適切に対処されているというふうに考えておるわけでございますけれども、農林水産省としても、当然国民の信頼にこたえて、国民が安心できる食生活を送れるように、生産から消費に至る各段階を通じまして食品の安全性を確保していくことが必要であるというふうに考えております。  このため、私どもとしましても幾つかのことをやっておりますが、一つ国内における農業などの適正使用の徹底、これは農蚕園芸局の方でございますが、それから生産加工流通、消費の各段階におきますモニタリング体制、その整備を進めておりますし、それから食品の安全性についての相談体制の整備も積極的に図ってまいりたいというふうに考えますし、そのほかにも、委員承知と思いますが、輸入食品のチェックといいますか、その水際のチェックにおきましては、厚生省の食品衛生法の指定検査機関として農林水産省の所管の多くの団体がいわばその検査を具体的業務としてやっておる、そういう連携体制にもなっておるわけでございます。  なお、これから食品の日付表示の問題とかいろいろな問題をめぐりましても、何かと、特に厚生省との連携関係が重要だというふうに我々は思っておりまして、我々自身も、この安全問題に対する取り組みをやはりできる限り強化していきたいというふうに考えております。その過程で厚生省等各省庁とも連携をとりながらやっていきたいというふうに考えております。
  168. 有川清次

    ○有川委員 以上で終わりますが、厚生省との関係で、水際作戦、私も現地に二回、横浜まで行ってみましたけれども、取り扱う量も非常にまだ少ないし、これで十分だとは言えないし、こういうJAS規格になってくるとなお大事だと思いますので、十分な連携をとっていただきたい。  それから、最後に大臣要請をしておきます。  法律ができますと、参考人もおっしゃいましたけれども、JAS法が、規格、いろいろ進んでいくとひとり歩きしてなかなか変えられないというのです。だから、こういう内容については、まだ未成熟なものもかなりありますから、今後きちんと皆さんが安心して食できる、あるいは安心して生産できる、そういう体制考えた信頼性の持てるものをつくっていくように努力を最大限されるように要請いたしまして、終わります。どうもありがとうございました。
  169. 平沼赳夫

    平沼委員長 田中恒利君。
  170. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 ちょっと風邪を引いて声が出ませんので大変優しくなりますが、よろしくお願いします。  先ほどから同僚の先生方がそれぞれ有機農業についての問題点を御指摘になって、大臣初め皆さんの御答弁をいただいておるわけでありますが、私はそれらの答弁を聞きながら、どなたもおっしゃるのは、この有機農業有機農法というものと日本農政がどういう関係になればいいのか、どういう位置づけをすればいいのか、これはきのうもきょうも、発言をされた人が全部おっしゃったことだと思うのですよ。そういう意味で、農林大臣はどういうようにお考えになっておられるのか、このことをまずお伺いいたします。
  171. 田名部匡省

    田名部国務大臣 有機農業につきましては、農薬、肥料、そういうものを使用せずに生産された農産物を求める消費者のニーズに対応して、生産者方々がさまざまに工夫して今日までやってきたという経緯がございます。  有機農業は通常の農業に比べて、先ほど来もお答え申し上げましたが、どうも労働時間が多い、あるいは収量も劣る面もあるということでありますが、しかし、消費者安全性志向あるいは自然志向にこたえながら、まあどちらかというと条件の悪い地域で、収入が上がるものですから頑張っておる、まあ平場もありますけれども、水田等はありますけれども。いずれにしても、この地域の資源の物質循環システムを巧みに生かした農業のあり方の一つとしてこれを位置づける、あるいは支援し、推進をしていくことが必要だというふうに私ども認識をいたしております。  ただ、まだ非常に、〇・八%程度でありますので、これらの点を踏まえると、技術情報収集、提供、あるいは無利子農業改良資金の貸し付け、そういうものをやりながら、各県の農業試験場等に土壌の研究をお願いするとかいろいろなことをしながら、終局的にはこれは農薬を減らす、日本農業というものの方向であります。先ほど来も申し上げましたが、農薬を使えば全部危険かというと、決して、健康に害のない利用というものが今とられているわけでありますから、全部がそういうことになれば理想的でありますけれども、なかなかいろいろ問題がありまして、そういう面で私どもは、とにかく意欲的にやっていきたい、そういう人たちを育てていく、支援していくというふうにとらえております。
  172. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 大臣、今の御答弁、役人が書いた答弁書だと思うのです。ある程度わかるところもあるのですが、どうも国会の答弁というのはこれだからおもしろくないのです。今政治改革でわんわんやっておるが、中身のことはさておいて、与野党が議論をし合って、なかなかいいですよ。ああいう論議をしてもらいたいのですよ。今の御答弁について、いろいろな人が、だんだん回数が後になるにしたがってあなたの生の声が、いわゆる断片が聞かれたのですよ。それに対しては反論したいところもありましたが、それをやってもらいたいと私は思うのだな。  私は、私自体も有機農業の問題については大変古いいろいろな思い出があるわけであります。たしか佐藤隆さんが農林大臣のころに私は、当時、全国有機農業研究会の会長は一楽さんでありましたが、この方は農林中金で佐藤さんのかつての上 司であります。佐藤さんのお父さんがたしか彼と東大で同級であった。こういう関係があって、あなた、佐藤大臣と会って、日本有機農業というものについて自分の考えを率直に述べてみなさいといって合わすような手順をしたのです。ところが、あの人はとうとう会わなかったのです。  しかし私は、私も有機農業研究会のメンバーの一人でありますから、この国会で、当時農林省の技術はバイオテクノロジーということを大臣の所信表明で何回か聞かされたんですよ。バイオもいいが、今日本各地で農民の動きとして、生産者消費者の共同作業として有機農法というものが非常にふえてきておるんだ、これについて農林省はどういうように実態を把握しておるかそれも大切じゃないか、それをやりなさいということを強く申し上げました。それから、佐藤さんとも個人的に懇意だったからしばしば部屋へ行っていろいろな話をした中に、その話をしたわけであります。そうすると彼は、何かやる、何かやりたいといってつくったのが有機農業研究室であります。今環境保全研究室になっておりますが。  そういう経過がありましたし、この問題についてはたしか、もう亡くなったが、立派な方でしたが、自由民主党の参議院の中西一郎さんですね。この人が生きておったら、この法律をどう見るか。私はしばしば夜寝る前に考えるのですよ。あの方は非常に立派な一つの世界観、宇宙観をこの農法と一緒に結びつけてお考えになった人だと思っておりますが、あの方がたしか一九八七年に自民党の中に有機農業議員連盟をつくりましたね。相当大勢の人が入っていらっしゃるのです。私はその翌年に社会党の中で有機農業研究会をつくりました。今四十名ぐらいのメンバーがございますが、相変わらず毎月一回か二回勉強会や視察などをやっております。  そういう形でこの有機農業にはいろいろな思い出があるのでありますが、私は一言で言えば、農林水産省はまだこの農法についてのノウハウを持っていないと思うのですよ。先ほど来大臣の答弁の中にも〇・八%ぐらいの生産量とか、農家戸数は幾らかと聞いたら二万五千戸ぐらいだ、こう言うのですが、稲作が五十何%でとか言うのだが、あれは、有機農業研究室が調査を二回やっておる。なかなか立派な調査だ。私は結構なことだと思うのだ。あれは非常に参考になっておると思いますが、あの調査を通して類推をしておるのでありまして、実態はまだ確実につかめていないのですよ。有機農家が何月あって、どれだけつくって、どれだけ宅配に行って、どれだけ市場へ行って、どれだけがいわゆる消費者生産者が直接結びついて販売ルートに乗せておる、販売というか産直といいますか、まだわかってないですよ。ノウハウを十分持っていないのですよ。そこは、今度のような法律、一挙に駆け上るということには、多少じゃない、大分無理があると私は思っておるのであります。  そういう点について、なぜこんなに早く、私は基準をつくるということについては賛成です、ああいうおかしなものが出ましたからね。だから、これはやはりやった方がいいと思っていましたが、しかし、JASという規格までそんなに急いでつくらなければいけない理由がちょっとわからない。これはそのことをやるだけの指導力や考え体制を持っておるかというと、私は非常に心配なんですよ。  今、全国の有機農業をやっておる一番大きいのは有機農業研究会でしょう。あるいは消費者組織は、東京、京都周辺はほとんど全部が、この形ではこれは困る、だから何とかしてくれという要請書を出して、もう半年か一年も反対運動をやってきていらっしゃるのでありますが、そういう中でなぜこんなに早く急いでやらなければいけないのか、それがわからないのです。わかるように説明してください。
  173. 須田洵

    須田政府委員 今、田中委員がおっしゃったような指摘といいますかそれもいろいろ聞かれるわけでございますが、率直に申しまして、やはりこの有機のほかにも、地鶏その他特別の生産方法をとったものと称するものが、やはり日本のこの商品経済の展開が、食品をめぐる商品経済というものが、その動きというものが非常に急展開しておるわけでございますが、そういう中で少なくとも表示問題として放置できないということがやはり非常に多いわけでございます。そういうものに対する取り組みというものの中で、さらに有機という問題について、有機農産物ということについてもし限って言った場合に、アメリカなり欧州なりの取り組みから見てもかなりおくれているわけでございます。  ここで、釈迦に説法でございますが、アメリカなり欧州の有機に対する取り組み、それは相当活発にやっておりますけれども、例えばアメリカ有機農業法を見ましても、先生も御承知のように、やはり有機というものの位置づけといいますか、基準をはっきりつくってその基準を全体に守らせるという、内実としてはあの法律自体が有機農業振興法ではないわけだと思うのです。どちらかというと表示を、表示といいますか有機農業というものは、農産物というのはこういうものなんだ、それを遵守しなさいという一種の表示をきちっとさせるという法制だというふうに私は理解しております。内実といいますか、実質の内容でございます。  それで、やはりそういうものから見たときに、アメリカなり欧州の展開から見ますと、それらは先生も御承知のように、いわば強制法的なものでございます。単なる一般流通だけではなくて、産直関係といいますか、そういうものもすべてこの定義に沿わなきゃだめなんだというふうになっているわけです。それはやはり、そこまでいけるのは、カリフォルニア州とか各州の長い歴史的な積み上げがあるからこそ、それができるんだろうというふうに私は思います。  それで、アメリカの制度が日本の制度にすぐできるとかあるいは同じでなくちゃならぬ、そんなことは必ずしもないと思いますが、それにしましても全体の対応のおくれといいますか、少なくとも表示面から見た場合の対応のおくれというものほかなりやはり大きいのではないか、かように判断する次第でございまして、そういうような意味で、いろいろ御論議がございましたけれども、有機ガイドラインというものをっくってそれをお示ししたわけですが、それ自体があくまでもガイドライン、それはそれなりの限界しか持たないということでございますから、そこをやはり法制的にももう少し裏づけを持ったものに枠組みを用意していくという、枠組みを用意していくことを通じて具体的な有機農産物等についての生産のあり方なりなんなりの議論も全体的に幅広く起こされていく、そういうようなことをむしろなすべき状況にあるのではないかかように私どもとしては判断しておる次第でございます。
  174. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 局長さん、それで、当面あなたが中心にならないといけぬのだろうが、今の段階でこの基準の問題が表へ出てから今日まで十五団体か、婦人組織、主婦連を初め地婦連、たくさんある。生協ぐらいだな、一歩前進と言っておるのは。それから、有機農業研究会、こういう団体と早く、仲直りができるかどうか知らぬけれども、やはり話し合いをして、これは徹底的に協力も要請しなかったら進みませんよ。  今あなた、規格の管理責任者、これなんかの構想を聞きましたが、あなたがおっしゃるような方でやらないと、恐らくやれないでしょうね。しかし、そういう諸君の、私は全部とは言わぬけれども、相当数の人がこの問題について必ずしもああそうですかと言いませんよ。そして、彼らはこれまでの農林省のとった態度、それに対して妙な考えを持っておることも事実、妙なという言葉は余りようないけれども。これは、例えば改良普及員なんかでも地域の農業の発展、農民の振興のために努力してくれておりますよ。しかし、やはり有機農業なんかという点は余りやらなくて、この有機農業をやっておる人は村の中でも何かちょっと違う人だというように、ついこの間までは思っておったのですよ。ところが、最近ブームになって、必ずしもそういう空気ではない。  私は、二十年ほどかけてミカンの有機農業のグループをつくりました。私がつくったというわけではないが、私は相談相手になりまして、それは東京でもちょっと有名であります。これは、私どものミカンの生産量、約三分の一ぐらいを占めるまで大きくなっておりますが、しかし、彼らは三人から出発しましたが、その三人から出発してからの間の歩みというのはなかなか真剣なものでしたよ。  だから、そういうのがこれからの日本農業を担う諸君だと思うからこっちも一生懸命になっておるわけですが、この有機農業グループの中にはそういう人がたくさんおると思うのですよ。だから、そういう諸君とどうしても一遍徹底した、あなたの考えを言ってどこまでやるかわかりませんが、やはり根強くやっていただくことが必要だと思いますから、そういうことを早急にやってもらって、この法律がスムーズに動くような体制をつくらなければ、あなた、この消費者も必ずしも、それは市場の場合は、特定JASの場合は一般市場だから、不特定多数の対象だから、これはやはり私は基準をつくってもらっていいという人が大勢いらっしゃると思うのですよ。だけど、生産地の方になっていくと、そのことをめぐってやはり不安が大分ありますから、だからそういう点はぜひやってもらいたいと思いますが、いいですか。
  175. 須田洵

    須田政府委員 私もこの問題、昨年からずっと取り組んでおりますが、今まで農林水産省と、ある意味では農林水産省の方が、従来から接触していなかった多くの生産者、グループとか個人の方とかあるいは消費者団体の方ももちろん含めまして、いろいろな方から批判なり反対の声も含めて、率直なところいろいろ意見を聞いています。  それで、私どもは、反対なりいろいろ疑問を持っておられる声に対して、私ども自身もそういうものの持つ意味合いをよく受けとめながら、十分むしろそういうことを我々の行政の中でも糧にしていくような姿勢で取り組んでいかなければならぬのじゃないか。これはやや私、個人的な感触でございますが、非常に勉強させられる面もございました。  やはりそういう姿勢で、今田中委員がおっしゃいましたように、多くの方々が、その法制なりそういうものに取り組むに当たっての利害関係が、ある意味では現実的な利害関係も若干関係はしてくると思います。そういうものも関係しながら、またそのいきさつ的な意味でのいろいろな意見を持たれる、そこのところは私どもの意図を早速、できる限り早期によく説明をしていくという取り組みを私どもとしてはやっていかなければならぬ、かように考えております。
  176. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それから、一つ農蚕園芸局にお願いをしておきたいと思うのですが、有機農産物有機農業というのは中山間地帯が一番適しておるというか力を入れたいと思うところでありますし、この間三法が、中山間活性化の法律が出たわけですが、この中に、私たちはデカップリングの芽を出したいと思っていろいろな折衝をやって、結局附則でそれらしい足跡ぐらいが描き出されたという状況になっておりますが、ああいうものを、何もデカップリングという必要はありませんが、有機農法の内容を充実させるという意味で少し政策的にバックアップしてみる必要があるのじゃないか。  というのは、有機農業というのは、農林省自体の調査の結果を見てもわかりますが、三年から五年ぐらいまでは大体赤字からとんとんなんですよ。あれでもうけることはできません。それは、土を完全に有機に変えなければいけませんから、その間に四、五年かかるのですよ。だからほとんど赤字です。そういう場合に何か差を、名目はあなたたち知恵があるんだからよく考えてもらって助成をしていく、そういう方策は考えられないか。私は、一つ課題としておもしろいじゃないかということを農林水産省の何人かの人に申し上げておるわけですが、ぜひ検討していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  177. 高橋政行

    高橋(政)政府委員 先ほどもそれに似たような御意見があったわけでございますが、今の助成制度といいますか、あるいは金融制度を含めての中でそういう個人に対する所得補償的なものが可能であるかどうかということに関係すると思いますが、我々としては、基本的には金融的な手法によって対応するということが筋ではなかろうかというふうに思っておるわけでございますが、今後のこういった有機農業実態などもよく検討させていただきたいというふうに思っております。
  178. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 個人的な援助はだめですと大蔵省はいつも言うんだ。それはそれで受けとめて結構です。しかし、何か個人的なことでもグループでやっておるのだから、そういうグループに対して積極的に支援をしていくという方策をつくっていく。そのほかにも幾らでもありますよ。そういうことが有機農政というものを環境保全型農業一つの大きな柱としてああいう特に困っておる中山間地帯に樹立をさせていく。いろいろな体制をつくるということが日本農政の中に有機農法というものの位置づけをどうするかということだと私は思いますから、非常に具体的で、法案の審議で言うのはあれだと思ったのですけれども、問題としてだけ提起しておきますから、御検討いただきたいと思います。  ガイドラインは実施されてまだわずかですけれども、傾向としてはどういう傾向が出ておりますか。
  179. 須田洵

    須田政府委員 四月に施行されましてまだ一月ちょっとというデータでございますけれども、ガイドライン表示にのっとったものも四月以降デパート、スーパー等を中心に取り組んでいる例が着実に見られておりますが、全体的にはまだ少ないという感じがしております。  この理由としては、やはり四月からいきなりすぐに対応できるかということになりますと、生産地側の準備とか、そういう体制整備の問題が恐らくあろうかと思いますし、また、有機農産物の定義に合致できるようなものというのはおのずから限られておるというような実態を示しているかと思います。ただ、生協その他これから実施する店舗も、あるいは準備中のところもふえているというふうに聞いております。  ただ、内容的に見まして、私ども顕著に言えますことは、ガイドラインにのっとっていない店でも従来有機とか勝手に表示しているところが多かったわけですが、そういう表示が非常に減ってきている、それは顕著に言えると思います。それから、先ほども申し上げましたけれども、卸売市場で具体的に今まで有機有機というようなあれで入ってきて、入荷量としてもそういう記録になっているようなものが、ガイドライン施行後急激に減っておる、そういう傾向が見えます。  今のところ、そのような状況でございます。
  180. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私たちも党として五月二十七日に築地の市場を視察いたしました。今局長さんが言ったような傾向を直接に見ることができました。当日の入荷量の大体一%が有機農産品、しかもその中は、減農薬というか、あのラベルが非常に少ないですね。純然たる有機か無農薬がというふうな方向が出てきております。それはなぜだと聞くと、どうも買う人が無農薬の方がいいとか有機の方がいいとかということで買わない、来る量も少なくなってきた、そんなことも言っておったし、市場の場合は小売店が案外出ておるというような話もしておりまして、まだ期間が短いのですから方向としては言えないが、やはり減農薬というものについてはずっと減ってくるのではないかという感じを受けました。  それは、生産者も、減農薬ということでいろいろなうるさいあれが出てきて、嫌がるというわけじゃないけれども、そういう傾向があるし、消費者も、少々農薬が少ないという表示だけでは、全然ないという方が安心だという意欲が出ておるのではないかと思って帰ったわけで、私どもは、減農薬というものについてこの際再検討をすべきである、こういうふうな感じを持って帰っておりま す。一日の調査ですから十分ではありませんが、今の特徴を聞きながら、改めてこの問題について我々も検討していきたいと思っております。  しかし、さっきのお話で、仕切り直しとまではいかなくても、検討するのか、せぬのかということについては状況を見てからだ、こういう答弁でありましたが、それは大体どのくらいなのか。あれを見ると、ガイドラインは、一定期間経過後、施行の実態を見て見直すことを予定する、こういうことになっているわけですが、一定の期間というのは大体どの程度を考えておるのですか。
  181. 須田洵

    須田政府委員 固定した期間というようなイメージではなくて、ガイドラインをやってみて、具体的な運用状況というものは一通り全体として総括できるという意味での期間としてある程度は見るべきだろう、そういう趣旨でございます。  ただ、たしか昨年の十月に公表するその前後でございますが、一定期間というのは大体どのぐらいだというふうに聞かれたときに、約二年ぐらいはというような、そんなことで口頭で申し上げておりますが、それについては、必ずしもそういうことにこだわらずに、もしその前にむしろやった方がいいと考えればそれに対応するようにしなくてはならぬというふうに考えております。
  182. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私どもは、減農薬はもう廃止した方がいい。諸外国の例を見てもそんな減農薬なんかいうのはないんですからね。日本だけなぜそんなものが要るんだ。むしろあっさりいわゆる無農薬、農薬を使ってない、肥料を使っておりません、それから有機農業一本でやったんですという、一〇〇%有機農業で押した方がこれは一番正しいし、正確だと思っておるんですよ。だからこれは再検討をしてもらいたいと思っておりますが、いずれにせよこういう特定JAS規格の改定は、今の減農薬の改定については、一つはこのガイドラインの総括が、やってみて、そしてその結果に基づいてという問題が一つありますね。それから二番目には、生産者消費者市場、この三者の一定のコンセンサスが、理解がやっぱり必要ですね。それがないと、その前提の上に立ってこの問題について最終的な結論が出る、こういうふうに理解していいですか。
  183. 須田洵

    須田政府委員 特定JAS規格の点につきましては、先生おっしゃいましたように、基本的にやはり生産者消費者理解を得た上で制定するということが基本だろうと思います。そういう意味では、ガイドラインとの関係につきましても、有機農産物ガイドラインの実施状況等を見きわめた上で検討に着手することにいたしたいというふうに考えております。
  184. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 今、三百九十二の規格がありますね。大半が農産物ですが、この規格決定の際に公聴会というもので広く生産者消費者意見を聞くことが望ましいといったような趣旨の法律が、第十三条に五項目にわたって公聴会の規定がありますね。三百九十三のJAS規格が今日までに制定されておるんだが、この公聴会が行われたのか行われないのか。
  185. 須田洵

    須田政府委員 今までこの公聴会の開催をその利害関係人から農林水産大臣に対して請求されたことはございません。
  186. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 これはなぜかね。三百九十二品目というこの規格、しかも一規格の設定に二年間かかるというんだな。それだけたくさんなものをつくっておるのに公聴会が一遍も持たれないということが、実はこの規格設定をめぐって国民の間に潜在的に蓄積された不信ですと私は思っておるんだが、なぜこれをやれなかったのか。
  187. 須田洵

    須田政府委員 二年ぐらいかけて具体的なその規格づくり、三百九十三規格、それらについて先ほど来も申し上げておりますが、調査会あるいは専門委員会等の論議をずっと積み重ねて何とかまとめるという過程を経ておりますので、特に公聴会の開催を請求されるというようなことには至ってないというだけだと思います。
  188. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 農林大臣にそういう要請がなかったということでしょうかね。そこのところは今の規格の設定をめぐって、極めて限られたごく一部の技術者、あるいは農林水産省や規格を受ける団体や会社の組合などの担当者、ごく少数の人々の世界でこれが処理されておったということだと思うんですよ。しかし、これからの有機等の規格はそういうことであっては、これだけ食品に対する安全性というのが高まっておるんですから、これは許されないですよ。もうやれないですよ。今、食べ物に対する安全性というものは主婦を中心にして異常な高まりを示しておるんですから、そういう中で何々の規格をつくるということになったら、みんなやっぱりいろんな意見を持っておりますから、今の状態では私はできないと思うんです。  ところが、今日まで三百九十三もの規格ができておって一遍もやれなかったというところに今の規格制度の大きな盲点があると思うんですよ。それを克服せなけりゃ正しい、国民が信頼をするJAS規格というのはできないと思うんですよ。それについてどういうお考えですか、大臣
  189. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私どもが考えた中でこれが一番のものだ、こう思って御提案申し上げているわけですが、言われる意見というのは賛成の意見もありますし、反対意見もあります。しかしながら、私どもは、このまま放置して好きなようにしておいていいんだろうか、むしろその方が生産者にとってもマイナス、消費者にとってもマイナスということで考えたわけでありまして、言っている中をよく話して、この間も消費者団体方々生産者、これらの女性の方々ですが、懇談会をいたしました。いろんな意見を伺って、我々も考え方を述べまして、大体おおむね、まあ完璧というわけではないですけれども、私どもの思っていることはよく理解していただいたと私は思っております。ですから、どの方法をやってみても、自分に合えば賛成でありますけれども、そうでもないものには反対というのはよくわかります。わかりますけれども、実態として放置しておいていいかということになると、それはできない。消費者方々が常にその表示に対して不安というものを抱くということはやはり解消していかなきゃならぬということをいろいろ考えました。  減農薬についても、おっしゃるとおり、それに対しても五割というのはどうだとかこうだとかという意見もありますけれども、しかしそれをなくした場合にどうなるかということも考えてみました。これは、全くアメリカのようなぴしゃっとしたものにすると、努力している人も、じゃあもうやめたということになってもいかぬし、みなんやはりそこを目標にして努力していただきたい。それがだんだん定着していけば途中でこれは必要なくなるかもしれませんけれども、初めて我が国が取り入れる制度としてはこれが一番皆さん意見を集約した形の中でベターなものであろう、こう考えて御提案を申し上げておるわけであります。
  190. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 大臣の答弁は私の質問に答えていないよ。三百九十三、現在規格決定をされておる。そのことがいいか悪いかは別ですよ。私だって規格は必要だと思いますよ。しかし、その際に公聴会というものがこの法律に基づいて、やらなきゃいけないとまでは言わないけれども、やるようになっておるんだ。ところが、三百九十三もやっておるのに一遍も公聴会が開かれなかった理由は何だ、それでいいのかという質問なんですよ。その質問に答えてくださいよ。
  191. 須田洵

    須田政府委員 お許しを得て私からお答えさしていただきますが、要するに基本的に、三百九十三規格を詰める過程で公聴会も開ける、そういうようなあれになっておりますけれども、問題は、関係者間、生産関係それから消費関係、それぞれについての意見の調整といいますか、それをより丁寧にやるというところがやはり基本だろうと思うのでございます。形式的な公聴会をやればそれでいいということでは必ずしもないのじゃないかという感じがいたしておりますが、ただ、今後の特定JASも含めたこういう規格づくりというような過程において、これまでのいわゆるJAS調査会、あるいは専門委員会もやっておりますけれども、そういうものにおきます検討とあわせまして、必要に応じて公聴会の開催をするというようなことも検討してまいりたいというふうには考えております。
  192. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いろいろな理屈つけたってだめだよ。いろいろ言ったって、今のJAS規格の進め方の中にそういう密室的な傾向があるということですよ。密室というのは悪いこととは言いませんよ。実はこのことはもう日常茶飯事に近く、ジュース工場などで私もよく聞いておるのですよ。そういうことはそこの工場長は知っておるが社長は全然知らぬのだ、責任者だけれども。そんなのはたくさんあるのですよ。  だから規格というものは、今法律がこういうふうに出て、有機農産物の問題ができて関係者などでわあっと言っておるけれども、一般の市民は全然関係ない、わからないということで終わっておるのだが、これからの開かれた社会はそういうわけにはいきませんよ。特に安全性の問題がこれほどやかましゅうなってきた世の中だから、規格の設定に当たっては公聴会の制度を利用して、広く国民に、こういうものができた、こういう形でできておりますということを普及宣伝して知ってもらう、そして理解、協力を求める、こういうことがこの公聴会の目的だと思うのですよ。  小さな技術的な問題は、それは技術者で結構ですよ。やはりそういうことをやらないといけないので、そういう意味で、今回のこの法律改正の中に、民主的なルールとして調査会なり専門委員会なりにいろいろな各層の人々を集める、そういうことを十分考えなさい、今までとは違った体制でやらなければいけませんよということを私どもは言っておるわけでありまして、そういう点について、これまでの反省の上に立って進めるべきは十分進めてもらうという姿勢がやはり必要だと思うのですよ。余りへ理屈言って逃げ口上でやられたのでは、こっちの方はまじめに審議をし、まじめなものをつくろうと努力しておるということですよ。どうですか、大臣、いま一遍答えてくださいよ。
  193. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農林物資規格調査会の意見を聞かなければならないということになっておりまして、この調査会あるいは専門委員方々意見というものをいろいろと十分聞いてやってきたわけでありますけれども、お話しのように公聴会は行わなかったわけでありますが、JAS規格の検討に当たりましては、生産者消費者関係者意見というものを私どもまだまだ直接聞かなければいかぬ、こう思っております。この調査会における検討もあわせ、必要に応じて公聴会の開催も検討していきたい、こう思っております。
  194. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それから、本法には随所に、政令、省令にゆだねるということが多いのですよ。だから具体的にはよくわからない面がありまして、これはほとんど政令や省令や通達にゆだねられておるわけです。今の日本行政の一大特徴でありますが、何か今度大胆な改正案が出されて、国会終末の大仕事になるというふうにも聞いておりますが、いずれにせよ本法にもそういう政省令に依存する場合が非常に多いのですけれども、何か政省令を新しく出す場合には、やはり事前に徹底して利害関係者を中心に広く関係団体などについての理解を求めた上で出していくといったような処置などを十分に配慮していただきたいと思っております。もちろん私ども国会にも一定の内容をお知らせいただきたい、こんなふうに考えておるわけであります。何か政省令で決めることが非常に多いし、世の中変わっていくのだから、法律ではなかなか応用動作がきかないという面があることはわかりますが、しかし、やはり政省令に対する一定の歯どめも立法府としてはしておく必要があると思いますので、お答えをいただきたいと思います。
  195. 須田洵

    須田政府委員 今回の改正に伴いましての政省令でございますが、政令につきましてはほとんど形式的なものしかございません。条が変わったとか、そういうようなものでございます。具体的に実質的にあり得るのは省令の方だと思います。政令については、中身は条が変わるとか、そういう極めて形式的なものだけでございます。ですから、実質的に省令だけだと思いますが、私どもとしましては、JAS制度が円滑に運営されて所期の目的を達成していくためには、生産者消費者流通業者等関係者理解が不可欠でありますので、今後ともJAS調査会及びその専門委員会の場を通じましてJAS制度運営でのその意向の反映に努めてまいりたいと思いますが、そうした中で実質的に最も意見を求める必要があるのは、先ほど来も出ておりますが、やはり具体的な特定JAS規格だと思います。  それで、規格に伴う生産行程管理者とかあるいは格付機関とか、そういうものを具体的にどうするか、そこのところが一番重要だと思っておりますが、そこについては、先ほど言いましたようなことで、専門委員会等の場を通じて十分意見を聞いていくというようにいたしたいと思いますけれども、もし省令等の中でもこれはやはりお聞きすべきかなというようなことがあれば、いろいろな機会を通じて意見を聞いていきたいというふうに考えております。
  196. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 あと二つでやめますから。  一つは、外国から入ってくる農産物ですね、これとこの制度との関係はどういうふうになっていくかということです。  ついでに言っておきますが、もう一つは、最近、表示の問題をめぐって、いわゆる製造月日をつけるのと賞味期限が終わったというのをつけるのと、これは外国からの要請が来たようだが、農林水産省は関係者を集めていろいろな検討をやっておりますね。これはどういう形で展開をしていくのか、その点もあわせてお知らせをいただきたいと思います。
  197. 須田洵

    須田政府委員 まず、第一点の外国有機農産物へのこのJAS法におきます対応というのがどうなるかということでございますが、現在のJAS制度も、内外無差別の原則ということで、外国産の製品もいわゆるJASマークをつけられるようなものであれば同じように取り扱われるというふうになっておるわけでございますが、この点につきましては、今度特定JASということでつくり方JASを導入する場合におきましても、外国のものについても同じように、海外がもし取り組みたいということであればそういう取り組みができるような、従来と同じような枠組みにしております。  従来と申しますと、今回国内特定JASについてこういう措置をとってやりたい。格付機関はあくまでも日本国内判断するわけでございますが、生産行程管理者とかそういう仕組み外国についても導入していくということでございます。ただし、実際それによってどのぐらい入るかということについては、先ほどもちょっと申しましたが、水際におきます薫蒸とかそういう処理がもし生じたときには、もうそれ以降は特定JASマークがつけられない、そういうものでございます。  それから、第二点の日付表示の問題につきましても、現在鋭意作業を進めております。時間も貴重な時間でございますから、経緯的なものは一応飛ばしますけれども、いわゆる消費者にとって、製造年月日表示というものでは、食品の品質がいつまでもつのかわかりにくくなってきているというような実態とか、それから製造年月日表示が、ある意味では過度の日付管理によります配送コストの上昇とか返品等の誘因になっているのじゃないかというもともと国内的にも論議のあったところへ、国際的にも、EC及び米国から、従来からの製造年月日表示を見直して賞味期限表示への統一を図るべきだといったような声が寄せられた。そういう内外の声に対応して、現在、食品表示問題懇談会ということで我が省でもやっておりますし、これは食品衛生法の関連がございますから、厚生省の方も並行してやっております。両省で、私どもの関連ではJAS法関係が主体がと思いますが、それらについて、いわゆる学識経験者を中心として今勉強をやっているという状況でございます。  この点については、外国からの言い分とかそういうようなことももちろんわかりますけれども、ただ、一方においては、この製造年月日表示というのが日本独得の仕組みといいますか、制度でございますけれども、それなりにやはり長い間なれ親しんできている、そういう実態もございますので、これについては、食品の種類とか日もちの度合いとかそういうことにもよるわけで、余り一義的には決めがたいのではないかというふうに感じますけれども、よく慎重に詰めて結論を出していくようにしたい、かように考えております。
  198. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 終わりますが、最後に大臣にちょっと頭に置いておってもらって、これからの日本農政考える場合の一つの問題としてお考えをいただいておきたい。  私は、この規格の表示の問題をめぐって、先ほど前島理事の方からも意見が出ておりましたが、やはりこの法案の中に安全性といったようなことが何かの形でちょっときっかけでも持たれないものかという問題点考えて、第一条のところに品質とかいろいろ書いておるのですが、その中に食品の安全性、こういうことを入れたらどうだという意見を言って、実はいろいろ、我々は専門家じゃないから法制局とも相当な議論をしたのです。そうしたら、これはだめだと言うんだな。  しかし、考えてみると、特殊な規格をつくるというのですが、これは、有機農業が国民的な期待を持たれておるのは食品の安全性という問題であります。そしてしかも、そのためにこの法律に基づいて生産行程にまで入ったこれができるかどうかということが実は議論されておるのですが、しかしいずれにせよ、商品そのものでははっきりしないのだから、生産行程にまで入った指導なり管理なりということが必要になってくるというところが出ておるのですよね。そうすると、いわゆる品質改善ということなんですが、これは安全性というものを規範にして仕組まれなければいけない法律だということも言えると思うのですよ。  だから、私は、そういう意味で、私らの方は政治家だから、政治家としてはどうしてもこれは安全という問題が何かの形で一字、三字ぐらい入ったらいいんだが、考えられぬのかと言ったけれども、法制局は頑として聞かぬですね。それはできない、法律の体系が崩れるとか言って非常に強い。だから私たちは後退して、それならそれに類したと思われる字句を入れたらどうだと言ったけれども、それもだめですね。  何かよう考えたら、食品衛生、安全性の問題は非常に各方面に関係していくし、非常に大きな問題でありますから、それだけに敏感であって結構だし、法制局はそういう法制局であることも必要なんだろうが、しかしやはりどうも、日本法律体系の中にそういう問題のあり方をめぐっての、まあ城争いもあってもいけませんが、縦割り行政とかなんとか言われておりますが、そういう問題なども含めて、やはり国民が安心してやれるような法律のあり方というのを、これはよほど根本的に偉いところでも考えてもらわなければいけぬなと思いました。  それは私の感想ですから、大臣、もしお考えがあったら聞かしてもらいたいし、考えがなければいいのですが、いずれにせよそんなことを感じましたので、私の所見として申し上げて、今後の参考にしていただきたいと思っております。
  199. 田名部匡省

    田名部国務大臣 いろいろ難しい問題もあろうと思うのですが、ただ、この安全、安全と言うと、あとはそうでないのかという議論もあり、これまた意見を聞きますとなかなかまとまらぬ話になってくるわけです。自分たちがつくっているものは安全なんだ、ちゃんと基準を守って人体に影響ないような作物をつくっておる、それを片方が安全だというと、こっちは安全でないのかということになりまして、いろいろ御意見あります。どういう方法が一番いいのかよく考えてみたい、また、後でいいお知恵がありましたら拝借もいたしたい、こう思います。
  200. 平沼赳夫

    平沼委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  201. 平沼赳夫

    平沼委員長 この際、本案に対し、金子徳之介君外三名提出の修正案及び藤田スミ君提出の修正案がそれぞれ提出されております。  両修正案について提出者から順次趣旨の説明を求めます。佐々木秀典君。     —————————————  農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  202. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議及び民社党を代表して、農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。  修正案は、お手元に配付したとおりであります。  修正の第一点は、生産の方法に特色があり、これにより価値が高まると認められる農林物資規格の新設に対応し、農林物資規格調査会の専門委員の選任に当たっては、現場の農業生産者流通業者、消費者などの意向が反映されるよう、その構成をさらに明確化したことであります。  修正の第二点は、日本農林規格制定に関する規定に「当該規格に係る農林物資の品質、生産、取引、使用又は消費の現況及び将来の見通しを考慮する」とする文言を加えることであります。  以上が、修正の趣旨及び内容であります。何とぞ全委員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  203. 平沼赳夫

    平沼委員長 藤田スミ君。     —————————————  農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  204. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 日本共産党の修正案の趣旨説明を行います。  今回のJAS法改正案は、多くの消費者団体有機農業生産者から異論が出されている青果物等特別表示ガイドラインをそのまま特定JASにするのではないかとの強い危惧が出されているところであります。また、特定JAS規格設定の審議の場となるJAS調査会においても、消費者意向が十分反映され得ないなどの問題が指摘されたところであります。  この改正案は、これまでの「学識経験のある者」を「農林物資の品質、生産、取引若しくは使用若しくは消費に関し専門的知識のある者」に改め、JAS調査会でこれまで明文上位置づけられていなかった消費者などを明文化し、その調査会における位置を高め、よって消費者意向に沿わない規格設定を行わないように歯どめをかけるものであります。  また、安易な特定JAS規格制定が行われないように、その設定に当たっては、「当該規格に係る農林物資の品質、生産、取引又は使用若しくは消費の現況及び将来の見通しを考慮する」との規定を加え、その歯どめを行うものであります。  どうぞ、委員各位の御賛同を得られますようお願いいたします。
  205. 平沼赳夫

    平沼委員長 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  206. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案並びにこれに対する金子徳之介君外三名提出の修正案及び藤田スミ君提出の修正案について採決いたします。  まず、藤田スミ君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  207. 平沼赳夫

    平沼委員長 起立少数。よって、藤田スミ君提出の修正案は否決されました。  次に、金子徳之介君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  208. 平沼赳夫

    平沼委員長 起立総員。よって、金子徳之介君外三名提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  209. 平沼赳夫

    平沼委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  210. 平沼赳夫

    平沼委員長 この際、本案に対し、金子徳之介君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議及び民社党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鉢呂吉雄君。
  211. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、公明党・国民会議及び民社党を代表して、農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   最近の食品の生産流通及び消費をめぐる状況は大きく変化し、従来日本農林規格の対象になじみにくいとされてきた食品分野において様々な表示の食品が多く流通しており、この分野での規格・表示の適正化を図ることが喫緊の課題となっている。   よって政府は、今後とも日本農林規格制度及び品質表示基準制度の充実に努めるとともに、改正法の運用に当たっては、左記事項に十分留意して、消費者の適切な選択に資するよう万遺憾なきを期すべきである。      記  一 有機農業農政上の位置付け及び今後の展開方向を明確にするとともに、中山間地域をはじめ各地域における有機農業振興を図るための方策を検討すること。    また、中山間地域などにおいて有機農業への取り組みを助長するため、必要に応じ所要の措置を講ずること。  二 いわゆる特定JAS規格制定に当たっては、利害関係人の意向が十分に反映されるよう農林物資規格調査会及びその専門委員会において十分な調査審議を行うとともに、必要に応じ公聴会を開催するなど慎重に検討を行うこと。  三 特定JAS規格に係る専門委員の選任に当たっては、生産者流通業者、消費者等の意向が十分反映し得るような構成となるよう配慮すること。  四 有機農産物等に関する特定JAS規格については、本年四月に施行された有機農産物等の特別表示ガイドラインの実施状況等を見極めた上、その検討に着手するとともに、有機農産物生産者流通業者、消費者関係者意向を十分踏まえたものとすること。  五 特定JAS規格の認証については、消費者の信頼を得るため品目の特性に応じた適切なチェック体制を整備すること。    特に、生産工程管理者の認定を行うに当たっては、その業務の重要性にかんがみ、消費者の十分な理解が得られるよう配慮すること。    その際、当該農林物資生産工程に関する事項を記載した帳簿を事務所に備え置く等生産工程管理者の業務の実効性が確保されるよう生産工程管理者に対する適切な指導、助言等に努めること。  六 小分けを行う際には、適正な表示が行われるよう小分け業者に対する十分な指導に努めること。  七 本法の制度の円滑な運用を確保するため、食料品消費モニター制度の強化等消費者情報提供対策の充実に努めるとともに、農林水産消費技術センター等の検査体制の整備充実を図ること。  八 国民の信頼に応えるため、生産から消費に至る各段階での食品の安全性を確保し、今後とも安全な食品の供給に努めること。この場合、いやしくも縦割り行政の弊に陥らぬよう関係省庁との密接な連携の下で、安全性確保のための体制整備を行うこと。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  212. 平沼赳夫

    平沼委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  金子徳之介君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  213. 平沼赳夫

    平沼委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田名部農林水産大臣
  214. 田名部匡省

    田名部国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。     —————————————
  215. 平沼赳夫

    平沼委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 平沼赳夫

    平沼委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     〔報告書は附録に掲載〕
  217. 平沼赳夫

    平沼委員長 次に、内閣提出参議院送付林業改善資金助成法の一部を改正する法律案及び林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。田名部農林水産大臣。     ————————————— 林業改善資金助成法の一部を改正する法律案林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  218. 田名部匡省

    田名部国務大臣 林業改善資金助成法の一部を改正する法律案及び林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案の二法案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  まず、林業改善資金助成法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  林業改善資金助成制度は、昭和五十一年に発足して以来、林業普及指導組織等の指導と相まって、林業生産の高度化、林業労働安全衛生施設の導入及び林業後継者等の養成のための無利子資金の貸し付けを通じて、林業経営の健全な発展、林業生産力の増大及び林業従事者の福祉の向上に寄与してまいりました。  しかしながら、近年の林業をめぐる情勢の変化には著しいものがあり、林業就業者の減少、高齢化が一層進行する中で、特に次代の林業を担うべき後継者が著しく減少し、林業の担い手の脆弱化が危惧されており、すぐれた技術及び経営感覚を持った担い手を幅広く養成確保するとともに、福利厚生の充実により、林業労働に従事する者を確保することが急務となっております。  また、林業改善資金の償還期間及び保証制度につきまして、借り受け者の利便を図る観点から見直すことが求められております。  政府といたしましては、このような状況を踏まえ、次代を担う林業者の養成確保等を図る観点から本資金制度を改正することとし、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。  第一に、意欲ある青年林業者等の養成確保を図るため、現行の林業後継者等養成資金を再編拡充して青年林業者等養成確保資金を創設することであります。  青年林業者等養成確保資金においては、林業外からの新規参入青年等も含め幅広い層に対応し得るよう、貸付対象者の範囲を新規参入者等を含む青年林業者、林業労働に従事する者その他の林業を担うべき者に拡大するとともに、資金内容を拡充して、林業の経営方法または技術の実地の習得その他近代的な林業経営の基礎を形成するのに必要な資金とすることとしております。  第二に、林業労働に従事する者を確保するため、現行の林業労働安全衛生施設資金を再編拡充して林業労働福祉施設資金を創設することであります。  林業労働福祉施設資金においては、従来の林業労働に係る労働災害を防止するために普及を図るべき安全衛生施設を導入するのに必要な資金に加え、林業労働に従事する者を確保するために普及を図るべき福利厚生施設を導入するのに必要な資金を新たに貸付対象とすることとしております。  第三に、林業後継者等養成資金及び林業労働安全衛生施設資金の再編拡充に伴い、借り受け者の利便を図るため、償還期間を延長するとともに、保証制度についても、従来の保証人による保証のほか、物的担保の提供によることもできることとしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  続きまして、林業等振興資金融通暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  林業等振興資金融通暫定措置法は、昭和五十四年に制定されたものであり、以来、本法に基づき、林業経営の改善及び国内産木材の生産流通の合理化を図るために必要な資金の融通措置を講じてきたところであります。  しかしながら、近年の林業を取り巻く状況は、林業の採算性の低下、林業従事者の減少、高齢化の進行等極めて厳しいものがあり、伐採その他の林業生産活動は著しく停滞しております。また、製材品輸入の増加、非木質系建築用資材の増加等により、木材の生産流通を担う事業体を取り巻く状況も厳しくなっております。  このような状況に対処し、木材の生産流通の一層の合理化を図ることにより、来るべき国産材時代に備えた木材の供給体制を確保することが求められております。  政府といたしましては、このような状況を踏まえ、林業等振興資金融通暫定措置法について所要の改正を行うこととし、この法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。  第一に、木材の生産流通の一層の合理化を図るため、本法の目的として、木材一般の生産流通の合理化に必要な資金の融通に関する措置を講ずることを位置づけるとともに、これに伴って農林水産大臣が策定する基本方針に定められる事項を改正することとしております。  第二に、木材の生産及び流通に関する合理化計画の制度の拡充であります。  森林所有者の伐採活動を促進するため、合理化計画の作成主体につきまして、森林所有者を追加することとしております。また、事業者間の連携を強化することにより、事業規模の拡大等木材の生産流通部門の構造改善を進めるため、木材製造業者等が共同して構造改善に関する措置を内容とする合理化計画を作成することができることとし、その作成主体に地域の林業の振興を図ることを目的とする第三セクター及び木材の需要者等の関連事業者を追加することとしております。  第三に、素材生産業者の機械化の促進を図るため、第三セクターとの共同の申請に基づき構造改善に関する措置を内容とする合理化計画の認定を受けた素材生産業者に対し、税制上の特例措置を講ずることとしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、これら二つの法律案につき、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  219. 平沼赳夫

    平沼委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る十日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十五分散会