○佐々木
委員 率直におっしゃってもおられるように、例えば酪農、畜産などについても、まだ具体的なものを今つくっているところで、これからの問題というようにもお聞きしておりますし、稲作だけではなくして、まさに畑作の問題だとかいろいろな問題がある。確かに、私
どもは拙速ではいかぬと思います。しかし、
方向づけについては、少なくともこういう
方向でというようなことは、できるだけ早くお示しをいただきたいと思うんですね。早くお示しいただくということが、討議の素材を提供していただくということにもなるわけですから、私たちもそれをつくることに積極的に参加をしていきたい、こんなふうに思っております。
そこで、時間の
関係がありますので、少し質問の
順序を変えて、ほかの
委員の方々が余りお尋ねになっていない問題として、
農地の流動に伴う登記の問題についてお尋ねをしたいと思います。
今度の二つの
法律案というか、
一つは改正になるわけですけれ
ども、
経営基盤強化法、これは従来の農用地
利用増進法、これは昭和五十五年にできているわけですが、これの改正、そしてそれに絡んで、関連する
法律案の改正まで含んでくるということになります。それからもう
一つこの
特定農山村法、両方の
法律に関連して、
農地あるいはその他の
土地の流動ということが非常に、これから今まで以上に積極的に行われるだろう、また行われなければ、この
法律の
意味合いかないということになるわけですね。
そういたしますと、その
土地の流動化に伴って、当然のことながら所有権の移転だとか
利用権の設定、あるいは信託ということもありますけれ
ども、さまざまな権利の移動、設定、移転などがある。そして、それがあった場合に、それを公にしてそれに対抗力を持たせるということのために、登記という手続がどうしても必要になってくるわけですね。
言うまでもなく、これは不動産に関する登記ということになるわけですけれ
ども、本来不動産に関する登記というのは法務局がその手続を行いますが、登記の申請というのは、当事者またはその代理人をもって行うことが原則になっている。そして、その代理人としてはだれでもがやみくもに素人がやれるわけではなくて、そのための専門的な登記手続の代理人として、司法書士の制度があるわけですね。それからまた、
土地家屋調査士も一定の権限を持っている。私や簗瀬さんのような弁護士の資格を持っている者もできる、こういうことにはなっておるわけですけれ
ども、何といっても登記の専門職ということになると、司法書士の皆さんだということになるのです。
ところが、この登記については、不動産登記法でもいろいろ例外を設けることができることになっているわけですね。例えば、官公署が一定の
条件のもとに登記事務を行うことができるということがある。
それで、昭和五十五年の農用地増進法の成立のときに、実はこの特例で、大きな特例が設定されているわけでして、
一つは、現行の農用地
利用増進法の七条と八条ですけれ
ども、市町村が農用地の
利用増進計画を定めたときには、その公告をする。そして、その公告の効果として、公告があった農用地
利用増進計画の定めるところによって、その
土地について
利用権が設定されたり移転したり、所有権が移転するという公告の効果があるのです。これについて「登記の特例」として十条で「第七条の
規定による公告があった農用地
利用増進計画に係る
土地の登記については、政令で、不動産登記法の特例を定めることができる。」こうなっております。
政令の方では、この代位登記、二条で定められておりまして、市町村がその当事者そのものにかわって登記の嘱託をすることができる。これには、相続による登記、事前登記というのですけれ
ども、事前、事後の登記というのがありますが、この移転などに当たって、つまり登記簿の上では名義人になっているけれ
ども、その人が死んでしまっている。そうすると、その相続人について相続登記をして、生きている人に所有名義をきちんとしなければ、それからほかの人に登記を移せない、こういう
関係になるものですから、その事前の登記として相続の登記な
どもあるのですけれ
ども、これも市町村ができるようにしている、こういうことになっているわけですね。
さまざまなそういう特例が設けられたわけです。そのために、この特例のために、これは
都市部におられる司法書士の方は余りそれに関与するということはないんだろうと思いますけれ
ども、地方、特に
農村地帯で仕事をしていらっしゃる司法書士の皆さんは、こうやって官の登記手続が行われるために、
一つは自分たちの仕事が、職域が侵されるというか、民業の方に影響があるというか、そういう悩みも持っておられるわけですね。そういう
地域では、
農地に関する権利の移転、設定などということが大きな業務の内容にもなっているわけで、これによる影響というのが相当あったということがありました。
そういうことについて法務省もおもんぱかったと思いますけれ
ども、司法書士会の皆さんだとか
土地家屋調査士会の皆さんなどとも話された結果だろうと思いますけれ
ども、その後に、こういう公共的な嘱託の登記について、特に司法書士会とは別に、司法書士の方々で構成される司法書士協会、それから
土地家屋調査士協会という社団法人を新たに設立することを認めたのですね。ここがこういう仕事に積極的に関与することにしている。法務省の民事
局長さんな
ども、こういう公共嘱託登記については司法書士協会も大いに活用されるようにということを言われている。そのパンフレットもあって、清水さんという当時の民事
局長が推薦文というか激励文というか、そういう一文も書かれているわけです。このときには、実は記録を見ますと、法務
委員会でこれについての質疑、もう亡くなられましたけれ
ども、社会党の横山利秋先生がお尋ねになって、
法務省民事局に対して質問をして、やりとりをしているということがございました。
それで、その復そういう協会ができた。しかし、その後の推移の中で、こういう農用地
利用増進法に基づく不動産登記について、どうもこの協会が余り活用されておらない。新潟の方の司法書士協会が会員の皆さんにアンケートをとったら、そういうような事例についてはほとんど市町村が登記事務をやってしまっている、こういうことのようですね。
それで、実は昭和五十五年にこの農用地
利用増進法ができて、先ほど御紹介したように政令ができたときに、その取り扱いについて、昭和五十五年十二月一日に当時の
農林水産省構造改善局長から通達が出ているわけです。その通達では政令の具体的な説明をしているわけですけれ
ども、特に第二の「登記の嘱託書」というところで、「登記令では、登記の嘱託は、市町村が行うこととなっているが、」「具体的な登記事務は
農業委員会が処理することが適当である。この場合において、
農業委員会事務
局長等が嘱託権者たる市町村に代理して登記の嘱託をするときは、嘱託書に市町村の登記の嘱託に関する委任状を添付することが必要である。」というように通達されている。
こういうこともあって、市町村といっても、実際には市町村の
農業委員会が行っているという例が多いようなのですね。もちろん、こういうように定まっておりますから、これをやめるわけにはいかぬだろうと思います。しかし、今度の
法改正と、それから中
山間地新法をつくることによって、恐らく
農地の流動化に伴う登記事務は必然的に多くなるだろうと思うのです。
そうなりますと、確かに今まで
農業委員会、市町村で登記事務を行ってきた。かなりの件数になると思いますけれ
ども、聞くところによると、中には本当に資格を持たず、あるいは
法律の勉強をしていない人が市町村または
農業委員会でそういう事務を担当する。もちろん、登記手続というのはある
意味では画一的な面もありますから、それに従えばできないではないのだけれ
ども、先ほど申し上げましたように、権利の移転、設定に伴う事前的な、例えば相続の問題などがかかわってくるということになると、ただ単なる形式的な手続では済まない
法律的な問題を含む場合があるのですね。
司法書士さんの方は、司法書士さんの資格には二つありまして、これは申し上げるまでもないと思いますけれ
ども、国家試験と、もう
一つは、一定の
条件のもとに登記官吏などを長くお続けになった人は特例として資格を認められる。しかし、いずれにしても素人ではないわけですね。特に司法書士の試験というものはなかなか難しくて、最近は非常に難関だと言われておるのですけれ
ども、これは憲法を初め、民法、不動産登記法はもちろんのこと、関連の
法律をしっかり勉強しなければならない。だから、そういう司法書士さんの場合には、それに関連する
法律問題についても対処していけるし、
法律相談まで含めておやりになれるわけです。しかし、市町村の吏員ではそこまでの
法律的な知識を持っている人もいないということになると、やはり権利の問題について、さまざま財産的な影響ということもあるわけですけれ
ども、問題が生じないとは限らないし、今までもあった。そしてまた、単純な手続でもその吏員がなかなかきちんとしたことをやっていなくて、何度も何度もまた法務局に足を運んで行ったり来たりしてというようなトラブルがあったように聞いているのですね。
それで、司法書士協会、
土地家屋調査士協会の方では、もっと積極的に自分たちを使ってもらった方がいろいろな面でいいのではないか。確かに手続の簡素化とか迅速性ということから、市町村がやる方が
農地の流動化のためにも早いのだという側面がないではないかもしれないけれ
ども、しかし、司法書士協会としても十分に対応していけるということを言っておられるのです。
この辺について、これまでの経過等を含め、それから、今度新たにこの
法律の改正と新しい
法律の設定、これを含めて、この登記事務についてどんな
考えをお持ちなのか、農水省と
法務省民事局の両方にお尋ねしたいと思います。
〔御法川
委員長代理退席、
委員長着席〕