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1993-05-12 第126回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年五月十二日(水曜日)     午前十時開議 出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 金子徳之介君 理事 萩山 教嚴君    理事 御法川英文君 理事 簗瀬  進君    理事 柳沢 伯夫君 理事 佐々木秀典君    理事 前島 秀行君 理事 宮地 正介君       上草 義輝君    内海 英男君       大原 一三君    久間 章生君       高村 正彦君    谷  洋一君       中谷  元君    鳩山由紀夫君       保利 耕輔君    星野 行男君       松岡 利勝君   三ッ林弥太郎君       宮里 松正君    村田 吉隆君       有川 清次君    石橋 大吉君       遠藤  登君    小川  信君       志賀 一夫君    辻  一彦君       野坂 浩賢君    鉢呂 吉雄君       山口 鶴男君    倉田 栄喜君       藤原 房雄君    藤田 スミ君       山原健二郎君    小平 忠正君  出席国務大臣         農林水産大臣  田名部匡省君  出席政府委員         農林水産大臣官 上野 博史君         房長         農林水産省経済 眞鍋 武紀君         局長         農林水産省構造 入澤  肇君         改善局長         農林水産省農蚕 高橋 政行君         園芸局長         食糧庁長官   鶴岡 俊彦君         林野庁長官   馬場久萬男君  委員外出席者         法務省民事局第 房村 精一君         三課長         農林水産省経済 嶌田 道夫君         局統計情報部長         農林水産委員会 黒木 敏郎君         調査室長     ――――――――――――― 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   鈴木 俊一君     村田 吉隆君   田中 恒利君     小川  信君   藤田 スミ君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   村田 吉隆君     鈴木 俊一君   小川  信君     田中 恒利君   山原健二郎君     藤田 スミ君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農業経営基盤強化のための関係法律整備に  関する法律案内閣提出第二四号)  農業機械化促進法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二五号)  特定農山地域における農林業等活性化のだ  めの基盤整備促進に関する法律案内閣提出  第六四号)      ――――◇―――――
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業経営基盤強化のための関係法律整備に関する法律案農業機械化促進法の一部を改正する法律案及び特定農山地域における農林業等活性化のための基盤整備促進に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻一彦君。
  3. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きのうは参考人の聴取がございましたが、連休前に引き続いて三法について質問いたしたいと思います。  まず質問順序を、ウルグアイ・ラウンドの方は後にして、農業三法の方から入りたいと思っております。外務省の方、お見えだったら、半ばぐらいまでは結構ですから、もし何だったら外してもらってもいいです。  それでは、まずお尋ねしますが、これは大臣にひとつ伺いたいのです。  新政策は、基本法政策目標を今日的な視点に立って具体化したものである、こうしばしば答弁されておりますが、三十年前に基本法が制定された時代と随分変わっておると思うのですね。  一つは、所得を均衡させ生産性を上げるということは変わりないと思いますが、その当時、地球環境農業といいますか、農業環境保全という問題は余り論議をされていなかった。私も昭和三十五年ごろにいろいろ勉強した時期がありますが、そういう論議は余りなかったと思います。  もう一つは、食糧自給率が当時穀物ベースでいえば八三%ぐらいあって、今日のように三〇%を割るというようなことはちょっと予想ができなかった。そういう意味で、食糧安全保障というものが必ずしもその当時、今のように論議されていなかった、こう思っております。  この二つは、農基法以降非常に大きな問題として浮上してきたのではないか、出てきたのではないか、こう基本的に思いますが、この点についてどう認識されているか、まずお尋ねしたいと思います。
  4. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおり、国民の食生活が大変変わってきたということが一つございます。その過程の中で、農業化学肥料、そうしたものを利用するようになった、あるいは機械化がどんどん進んでいった。そういう中で、環境という問題が大変クローズアップされてきた。それは、世界の人口が大変増加してきた、あるいは経済成長各国が目指した、いろいろな要素があると思うのです。  そういう中で、熱帯林の伐採問題でありますとかオゾン層破壊でありますとか、いろいろな意味で大きく取り上げられるようになりまして、ここへ来て、環境が大事だという問題が急激に世界の中で取り上げられるようになりました。今それに向けて世界各国が、農業環境というものをどうとらえるかということで大変議論をしておるところだと思いますし、私どももこの新政策の中でそういう視点をとらえてやっていかなければいかぬということになった、こう理解しております。
  5. 辻一彦

    ○辻(一)委員 食糧安全保障環境問題というのが今農業にとっては非常に大きな課題になっている、問題になっている、これはもう御答弁のとおりだと思います。  そこで、去年の四月にOECDの農相理事会は、前にも論議をしましたが、従来はガット先導役を引き受けて、計量手段等を開発して自由貿易化の旗を振っておったと思いますが、昨年の四月ごろ、あるいは少し前かと思いますが、かなり様子が変わってきて、地球環境と両立する農業政策農業の共存、こういう方向農相理事会等でも出している。この間、ブラジルの環境会議においてもそうでありますが、こういうことが今大きな流れになりつつあると思っております。  そこで、本来ならば、今日の問題に対処するために、一つ農業基本法見直し等が本当はまずなされて、その上に立って平場をどうするか、山手をどうするか、こういうことが順序としては取り組まれるべきであると思いますが、農水省の手法は、現実に出ている今日の大きな問題に実態的に対処していく、そういうものを積み重ねて、将来基本法見直し等に至ろう、こういうような手法で歩んでおるのではないかと思います。本来なら、基本法見直し等では食糧安全保障環境問題等が当然論じられるべきでありますが、今日の手法でいきますと、それは後送りになっている。  そこで、農基法が三十六年に制定されて、あれから三十二年たっておりますが、あれ以来、大きな農政、新政策の打ち出しというのは、今回が農基法に次ぐ画期的なときではないか。そうなれば、まずこの経営基盤強化法等々、今日対処する重要な法律の前文あるいは条文に環境保全という問題を当然入れるべきであると私は思っておりますが、そういうものはちょっと見当たらないのであります。これについての見解はどうなのか、お伺いしたいと思います。
  6. 田名部匡省

    田名部国務大臣 我が国における農業、なかんずく水田農業は、元来、それ自身環境保全機能を有していると私は思うのです。本法案によって規模拡大を進め、効率的かつ安定的な農業経営を育成していく、あるいは保有労働力が充実をしたり、土づくりによる地力増進、そういうものが推進されて、収奪型ではなくて持続的な農業確立や、効率化に伴う化石エネルギー化学肥料農業使用の節約によって環境問題への適切な対応におのずからつながっていく。したがって、今、後継者不足でこういうものが放棄されるという状態を何としても食いとめていかなければならぬということでありますので、これ自体をしっかり守ることが環境保全につながるということで、農村対策、あるいは農業対策といいますか、そういうものをしっかりやることが今一番大事なことだ、こう思っておるわけであります。そのために農地を集約して、担い手を育成していかなければいかぬということに考えております。  あとは、農業とかそういうものは、これは別途JAS法を制定して、よりそうしたものを利用しない農業というものをやはり誘導していかなければいかぬということで考えておりまして、環境保全への配慮と特別言わなくても、それ自体、全力を挙げて環境保全を図っていくというふうに考えております。
  7. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大臣は、日本では農業それ自体環境を維持するんだ、だから農業をちゃんとやっていけば環境保全につながる、こういうお答えのようでありますが、これだけ環境問題が大きな問題になっているときには、私はやはり効率的、安定的と並べて環境保全への配慮ということを本当はうたい込むべきであると思いますが、これについて、いかがですか。
  8. 上野博史

    上野(博)政府委員 ただいま私ども大臣の方からお話を申し上げましたことを実質的に繰り返すような話になろうかと思うわけでありますけれども農業自身環境保全の面で非常にいい機能を持っているということは、これはもう自明のことだと思うわけでございます。  ただ、その際に、肥料だとか農業だとかあるいは燃料の消費だとかいうようなことによって環境へ影響を与える面もある。その面を少なくしていかなければならないということを心がけてまいる。これが環境保全型農業の育成ということなんだというふうに我々は考えているわけでございます。  現在御審議をいただいておりますこの経営基盤強化法関係で言いますと、現在、耕作放棄地などが非常に多くて農業がなかなかうまく行われていない事態農業を取り巻く非常に厳しい環境条件のもとで今後の農業担い手をつくっていくということは、それはとりもなおさず農業の持っている、いわば必然的に内包をいたしております環境保全への機能、こういうものを維持、確保、増大をしていくということを意図するものである。それは当然のことだというふうに一つ考えるわけでございます。  それからもう一つ、こういう人手不足時代に対応するために、土地利用権を集積して、できるだけ規模の大きな効率的な経営をつくろうということがこの法律の趣旨でもあるわけでございますが、そういう大きな経営になりますと、またそれはそれで環境面への配慮という面でも十分なものができるということになってくる。  現在の我が国農業の実態、燃料であるとか農業であるとかあるいは肥料であるとか、こういうものの支出というものをざっと見てみますと、規模が小さい農業よりはどちらかというと規模の大きな農業の方がそういう面での資材の投入というものが少ない。価格ベースで見ておりますので、コストの面の問題があるということはあろうかと思いますけれども、少なくともインプットの量というのは少ないというふうに我々は考えているわけでございます。  したがいまして、規模の大きな農業経営をつくっていくということは、環境面でもプラスのメリットになってくるんではないかというふうに考えているわけでございまして、改めて環境への配慮をしながらやれという注意を要しないのではないかというふうに考えているところでございます。
  9. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大規模になれば肥料も少なくて環境配慮ができる、今こういうふうな見解を聞いたのですが、そういう面もいろいろあるとは思います。しかし、規模拡大して大型にするというのは、大体、効率的なねらいが中心ですから、したがって、堆肥や有機物を入れるのが少なくなる、大きな圃場に堆肥を入れるというわけにはなかなかいかない、そうなるとどうしても化学肥料を重視する、あるいは農業等も、今つくっているような一ヘクタールのようなああいう規模になれば、問題になっている空中散布だってないとは言えない。  そういう意味で、大型化をすればその中で肥料なんかの使用が少なくなり、そして環境保全ができるというのは、効率的を目指せば環境保全とは必ずしもなかなか両立をしないんじゃないか。その点で、相対立する概念であろうと私は思うのですね。どのようにして効率化考えながら、しかも環境配慮していくかということが非常に大事じゃないか。  そういう意味で、効率、安定的というのがありますが、並べて、環境保全への配慮ということがこれだけ国際的に問題になっている、しかも基本法以来初めての本格的な立法措置、言うならば農業理念をできる限り盛り込むべきである、こう思っておりますが、いかがですか。
  10. 入澤肇

    入澤政府委員 立法技術論的に申しますと、環境保全への配慮というのをこの法案の中に入れますと、農業自体環境破壊という対立概念になるんじゃないかというふうな指摘法制局からあります。  私どもは、農業の持っている環境保全機能というのは我が国では特に非常に大きなものがあるというふうに、先ほど大臣がお答えしたとおりでございまして、農業の持っている環境保全機能を評価すればするほど、そのやり方を具体的に考えていくことが大事なんであって、法律という中で、形式的に環境保全への配慮という規定を置くことによって、むしろ形式論理世界では対立概念を明確にするということになってしまうんじゃないかということが心配されます。  法制局もそういうことを心配しておりまして、環境保全への配慮という規定を入れなくても、十分にこの法律を駆使して農業政策をやることによって環境保全は図られるんだということを主張すべきじゃないかというふうに言っております。
  11. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一つは、平場もそうですが、山間地でとにかく国土保全水資源確保環境保全ということが、山手農業を維持することはそういう観点から非常に強く主張されておるわけですから、少なくも三十年ぶりに本格的な法改正といいますか、これをやる以上は、国際的に、国内的に最大の課題環境問題への配慮ということを一項並べて強調しておくということは大変大事なことじゃないかと思うので、このことをひとつ強く主張しておきたいと思います。  これは、後で社会党としても、こういうふうに変えてほしいという問題が最終的には幾つか整理されると思いますが、その一つにぜひ加えてもらいたい、このように思っております。  そこで、農業基本法の反省ということと構造政策がどうだったかということについて、一、二お尋ねしたい。  農基法の目的は、先ほどちょっと申し上げましたが、三十数年前ですが、他産業との所得の均衡を図る、生産性を上げる、そのために構造政策をとろう、二・五ヘクタールの自立経営農家をつくるというのが大体かなめであったと思うのですけれども、その当時言った自立経営農家というのはどういう概念であったか、簡単で結構ですから、お尋ねしたい。
  12. 上野博史

    上野(博)政府委員 自立経営農家でございますけれども、この概念は、それぞれの地域農家農村部というふうにお考えになっていいと思いますが、農家の方々が生活をしておられるそういう地域に住みながら、農業以外の産業に働いておられるいわゆる勤労者世帯、これを対象としてとりまして、その勤め先収入と均等、大体同じぐらいの水準以上の農業所得を実現している農家をいうという考え方でございます。
  13. 辻一彦

    ○辻(一)委員 概念は別として、しからば自立経営農家を目指した構造政策は実現したのかどうか。私の見るところでは、割り算をやって割り算が成立しなかった。集落の耕地を分子にして農家戸数を分母にして割って、農家の数が半数になれば大体面積は倍になる。都市工業農村労働力を誘引すればそういう割り算が大体成り立つというところにあったと思うのでありますが、これがどうも私の見るところでは挫折をしたと思いますが、この構造政策はどうだったか、いかがですか。
  14. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今までの政策がよかったかどうかということと関係あると思うのでありますが、確かに日本経済発展所得向上、それはそれなりに私は評価していいと思うのですね。ところが農業と他産業というものを比較した場合に、一方の工業化が進むことによっての就労条件でありますとか所得というものがどんどん伸びておった。それにつれて農家の方が一緒に伸びたかというと、やはり限られた農地で生産しておるものですから、結局価格に期待せざるを得ない。それもおのずから限界があるということで、今おっしゃるように問題はあったと思います。  そこで、ではどういう構造改善が実現したか、あるいは自立農家経営はどうであったかということになりますと、農業基本法の制定後いろいろ施策を講じた結果、酪農でありますとか養豚、採卵鶏、畜産、施設園芸あるいは経営規模拡大生産性向上が進んで、自立経営農家農業生産相当部分を占めるに至ったということは、これは一つ成果だと思うのです。それが他の分野と比べてどうかというと、まだまだ低いという部分もあるし、あるいは中には他産業並み所得、そういうものが得られておるのもある。それはばらつきがあります。総体的には今日の時点で比較すると、なかなかそういっていない。  加えて、当時は水田等機械を使うという考えがなかったわけですけれども機械化がどんどん進んで、そして数多くの人でやっておった水田経営というものはもう少人数でやれるようになったということで、都市就労の場を求めたということがあると思うのです。その中でも稲作など土地利用型の部門では、今申し上げたように規模拡大が進まなかった、あるいは生産性向上も停滞するということと、自立経営農家農業生産に占めるシェアも低い水準にとどまるなど、他の産業に比べて魅力がなくなったということで、どうしても農業構造確立に至ってないということは御指摘のとおりだろうと私は思います。このため、新規就農者の減少でありますとか耕作放棄地が増大する事態が生じて、今後一層構造改善を進めていかなければならないというふうに実は考えておるわけであります。  いずれにしても、今申し上げたように、我が国経済が類例を見ない高度成長を遂げる中で、農地価格が上昇し、農地資産的保有の傾向などが生じて農地規模拡大が思うように進まなかった、こういうのが原因であろうと思うのです。今後これらの点に配慮しながら、農業基本法目標を今日の視点に立って具体化していかなければならぬというふうに考えて、この新政策方向に沿っていろいろな施策を総合的、体系的に講じて、魅力ある農業農村というものを確立していかなければいかぬというふうに実は考えたわけであります。
  15. 辻一彦

    ○辻(一)委員 選択的拡大生産性向上という点があったのですから、そういう面で一定の成果が上がったということは事実です。しかし、構造政策挫折をしたと私は思うのですね。そこで、今大臣の言われるようにそれは確かに問題があったということは、挫折とは言いかねるが問題はあった、こういう表現であろうと理解をします。  そこで、農基法を今日的視点に立って対応する、発展させていく、こういうお話ですが、その構想は、自立経営農家が当時は目標が二・五ヘクタールの規模だった、それを今度は十ヘクタールとか二十ヘクタールというふうに経営体として置きかえているけれども、流れている理念は非常に共通したものがあるように私は感じるわけです。それならば、そのような一つの十ヘクタール、二十ヘクタールというような構造政策が、日本の今日の経済条件等々の中で、農業基本法が目指した、挫折と違った条件が生まれて、そしてこういう構造政策が成立し得る条件が新たにあれから出てきたと思っていらっしゃるのかどうか、そこらをお尋ねしたいのです。
  16. 入澤肇

    入澤政府委員 構造政策はいろいろな努力をして進めているのですけれども、思ったより進んでいないというのは先生御指摘のとおりでございます。  その理由は、土地所有権にこだわってなかなか農家土地を手放さない。そこで、所有権中心主義から利用権主義に、さらに最近では作業の受委託まで含めまして、利用ということを中心政策を展開するということで、構造政策をこれから転換していきたいというふうに考えたわけであります。こういうことができる条件としては、やはり安定した兼業先に恵まれた安定兼業農家、これが広範に各地に存在する、要するにこの機をとらえて構造政策を展開することがいいのではないかと考えているわけでございます。
  17. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いろいろな要素は変わっておりますが、農村を出た人が安心して全部心配なしに食べていける、社会保障社会福祉も含めて心配がない、最後に村に農地を残しておかないと社会保障にならぬ、そういう条件がそれほど変わっているようにもなかなか思えない。だから、私は共通した難しさがあると思うのです。そういう中で、今いよいよ、この経営体を育成しようという構造政策が具体的に打ち出されてきたわけですね。  そこで、私たちの住んでいるような北陸で九五%も第二種兼業農家があって、割と安定した雇用の場におって、そして農業もちょっとやっている、そういう集落には専業農家が少ないという状況と、それから北海道東北あるいは新潟等もそうでしょうが、平たん地、大きなところですね。専業農家が割合多いということ、それから兼業農家であっても第一種兼業農家、出稼ぎに行くなど周辺に安定した職場、雇用の場がない、そういう農村ですね。非常に状況が違うと思うのです。北陸、東海とか近畿等を見ると第二種兼業が多い。それから、今言ったように東北北海道等を見るとたくさんいらっしゃる専業農家あるいは第一種兼業農家が、一体認定制度という中で、認定をされた者はまずいろいろな条件が、優遇されて発展していく可能性条件がそろうだろうけれども認定されなかったところの農家は残されてしまうんじゃないか、あるいは差別されるんじゃないか、こういうような不安といいますか、あるいは感じを持たれるのも無理からぬ点があると思うのですが、これについてどう理解していらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  18. 入澤肇

    入澤政府委員 認定農家というのは、今度の法案で提案しておりますのは、企業マインドといいますか、経営マインドを持って農業発展させていこうという農家意味しておりまして、単に規模拡大だけを目指す農家だけを意味しているのじゃございません。  要するに、複合経営とか何かで、面積は同じだけれども土地利用効率を高めて所得を高めるような計画を立てた農家認定されますし、それから、経営改善給料制や休日制を設けて他産業と匹敵するような労働条件のもとで農業経営をやろうという農家認定になりますし、それからまた、面積を仮に縮小しても、花など高付加価値型の農業をやって所得を上げようとする農家認定対象になりまして、この認定農家が切り捨てだということにはつながらないということは、前回もこの委員会で御説明したとおりでございます。
  19. 辻一彦

    ○辻(一)委員 複合経営、いろいろなものを組み合わせてやるということと思いますが、専業農家がたくさんいるようなかなり広いところで、一軒や二軒なら複合経営でいろいろな組み合わせがあるけれども、大多数が複合経営で組み合わすというふうには実際としてはなかなか難しさがあると思うのですね。だから、そういうのを一体どういうように守りながら発展をさせていくかという問題ですね。  実は私は、去年の十二月に社公民の皆さんと一緒にジュネーブ、ガット本部、それからECの本部へ行ったのですが、その帰りにフランスヘ行って、フランス農業農務省に行って随分論議をしたのです。フランス農業の中から歴史と文化が生まれた、そして健全なフランス農村社会の存在こそがフランス国家を支えている、こういう論理を非常に明確に、鮮明に持っておるのですね。だから、農村集落がきちっと維持されるということがフランスの国を支えているのだ、こういう考え方をはっきり持っておる。  米の中からあるいは水田の中から歴史と文化が生まれたという、我々もその点では共通点を持つのですが、私の懸念するのは、今言ったような新政策を、かなり専業農家群が多いところでかなり強力に進めていけば、結局一部の離農であるとかそういうことが起こりかねない、そのときに、従来維持された農村集落の崩壊ということも、本格的にやったらあり得ると思うのですね。第二種兼業農家になっているのなら村の中に専業も兼業も混住してやっていけばできるのですが、そうでない条件のときにはなかなかそうはいかない。そういうような日本農村集落を維持していくという点、これも非常に、私は国として大事だと思うのですが、そこらを含めて、やはり今農家の皆さんが、何か差別されるのじゃないか、認定から漏れたらどうなるか、こういう不安を持っていらっしゃる、それに対してこたえるものがなければいけないと思うのですが、それはいかがですか。
  20. 入澤肇

    入澤政府委員 地域によって事情が違うと思うのですけれども、今御指摘のように、専業農家ばかりで構成されているような地域でどういう農家認定農家になるかということでございますが、そういう専業農家ばかりの地域でも、例えば共同して機械使用効率を高める、稲作の生産コストに占める機械の償却費は非常に高いものがございますから、それを削減していくために使用効率を高める、そのために共同利用する、あるいは農業とか施肥の投下につきましても合理的にやっていく、要するに、経営全体を合理化するということを地域ぐるみでやれば、それは認定対象になるわけでございます。  その場合に、個々の農家経営の努力をやって認定農家になるか、あるいはそういう請負的な作業体あるいは生産組織をつくってその生産組織が認定対象になるか、それはいろいろな地域によって事情は違うと思いますけれども専業農家だけの集まりのところでも、経営改善の努力はまだこれからたくさんやることがあると思うのです。そういう視点から考えていただければ、これは差別であるとか切り捨てであるとかいうことじゃないというふうに考えております。
  21. 辻一彦

    ○辻(一)委員 政府もいろいろの対応を考えておるとは思いますが、今度は地域の声を聞くというのは随分強調されておりますが、この認定に当たっても、地域の合意を得るとか声を聞くとか、こういうものを盛り込んでそういう不安が起こらないようにするということは、実際やっていく上で大変大事だと思いますが、そういう考え方はないのかどうか、いかがですか。
  22. 入澤肇

    入澤政府委員 認定農家の仕組みは、その前提としまして、市町村が基本構想をつくる、市町村が基本構想をつくるときには当然地域の識者とか農業関係者の意見を十分聞いてつくらせることになりますけれども、具体的に我々考えておりますのは、今全国の市町村に構造政策推進会議というものを設けております。農協とか農業委員会とか農業関係者がみんな集まって、その地域農業をどのように発展させていくかということで定期的に相談はやっていますけれども、この構造政策推進会議の組織をフルに活用いたしまして、市町村の基本構想の具体的な認定基準をつくる場合のいろいろな意見を申し述べる機関にしたいというふうに考えているわけでございます。
  23. 辻一彦

    ○辻(一)委員 かなり時間が過ぎましたから、これは我々としては地域の声を聞く、あるいは合意を得て認定考えていく、こういうことを一項どこかに盛り込んで、そういう不安を解消すべきだと思っておりますが、これは主張しておきたいと思います。  それからもう一つは、第二種兼業の非常に多い地域、福井、北陸やあるいは近畿、東海等は、見て回りましても似たような条件がありますが、この間、福井県の大野市、中は平たん部で三千ヘクタールくらいありますが、ぐるりは白山連峰に包まれた山の地帯。だから、平たん部、盆地ですか、そして山手と、両方持っている地域を社会党の調査団で一泊で行きまして非常に勉強になったのですが、それらは周辺に一時間以内に大体働く場がある。しかも、第二種兼業で、九五%以上はそういう安定した雇用の場がある。だから、むしろ専業農家の数が少ないわけですから、いい条件をつくってそこへ皆さんが委託するとか一緒にやっていく、一緒にやる場合には中心になってもらう、こういうやり方が割と進めやすい条件ですね。  大野の阿難祖領家という集落ですが、二十四戸で三十ヘクタール、ここは持っておった農機具を全部売り払って村の中心に建物を建ててそこに大型機械を集中してそれで全部やっている。そういう場合にはコストが半額くらいで米が生産できるという状況があるわけですね。だから、大野地区や福井の方では、今一ヘクタール単位、狭いところですからね、あそこは九十アールだというのですが、そういうのをふやして機械を有効に使っていこう、こんな方向に、集落農業という形でその芽がかなり出ているというふうに思うのですね。  私は、大きく言うとそういう二つ、もっと細かく言えば三つとかタイプがあると思うのですが、そういう地域には、今考えているような大型の圃場整備ということをやっていく、しかし、それは非常に負担がだんだん重くなっていく。今まで皆土地改良を大体やっておるのですから、また区画を大きくすればそれだけ負担がかかりますから、負担軽減を極力やりながら大型の圃場を考えるということも大事なことじゃないかと思いますが、これから後も、ああいう大型圃場をつくっていくについての負担軽減について、これから非常に大事だと思いますが、これについてはどうなのですか。
  24. 入澤肇

    入澤政府委員 御指摘のとおりでございまして、現在三反区画が中心なのですけれども、それを一ヘクタール以上の大型区画の圃場に変えていこうということで、低コスト化水田農業大区画は場整備事業などという名前で実施しております。これは通常の圃場整備事業が補助率が四五%なんですけれども、圃場の整備技術とか栽培技術とか営農機械の開発などいろいろな問題がありますので、特にこういう大きな規模の区画の圃場整備につきましては、補助率をかさ上げしまして五〇%にしております。  さらにそれに加えまして、平成三年度から、経営体へ農用地が連担されるというふうな場合には、一定の条件を付しまして、例えば一団地の規模が二ヘクタール以上の連担団地の占める面積が五割以上、これが十年間で大体五割以上を達成すると見込まれるような場合には、当該事業の年度事業費の一〇%相当額以内を促進費として土地改良区に交付するというふうなこともやっておりますし、それからまた、今回の法案におきまして、ことしの予算で担い生育成農地集積事業というのを予算でとりましたけれども、これは五〇%の補助率で、それに加えまして農林公庫等から事業費の一〇%を無利子で融資する制度を設けまして、実質的に負担が軽減されるように配慮しているところでございます。  このような努力を積み重ねていきまして、全体として土地改良事業、なかんずく圃場整備事業の負担の軽減を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  25. 辻一彦

    ○辻(一)委員 我々が調査に行った大野市で、市長さんも農協組合長さんも、集落の生産組合長、土地改良区理事長、随分と集まってもらってお話も聞き、現場も見ましたが、その中で出てくるのは、平場はそういうふうにしてまだやりようがある、何とかやりようがないとは言えない。だけれども山手の方へ行ったらこれはもうお手上げたと言うのですね。だから、日本的デカップリングというか、所得補償を日本的なものを考え山手の方で何か対策が立たないのか。例えば、六呂師という集落がありますが、スキー場のあるところですが、土地改良をやって、一反六万円ぐらい今償還がかかっておる。大変なんですね。だからもう耐え切れぬで皆町へおりてきてしまう。そうすると、後に残った人がこれまた大変だと言う。そういうように、山手の方は何をやるにしても条件がよくないので特別な対策を立ててくれ、これは非常に切実な声であったと思うのですね。  そこで、きのう入広瀬村の村長さんにもお話を聞きましたが、私たちも二年前にあそこへ一泊で行ってよく見てきたのですが、あれらを考えると、現在あるところのいろいろな事業、既往の施策、こういうものを最大限生かせば、行政力を十分使ってやれば、ああいうやり方もあるなどいう感じがしたのですね。山の上から見ると、一望のもとに農林水産省のあらゆる圃場事業、自治省も含めてずらっと全部展示展を見るような感じで並んでいる。随分山の上まで舗装して全部土地改良をやっている。一番高いところでは十アールに三百六十万から改良費が要った。幾らで売れるんですかと言ったら、それは言えない、それは言うわけにはいかないと言うわけですが、無理ないと思うのですが、そういう苦労をしてやっているああいうやり方も私はあると思う。  それから、去年の秋に山口県の、これはシャドーキャビネットの方で船方農場を見に行ったのですが、ここは山村ですから、強力な、個性のあるリーダーシップによって、若い人、中堅の人を相当数結集して山間地農業経営されていらっしゃる。こういう例は、全国で拾い上げれば幾つかあると思う。私の福井県にも似たようなところがありますが、しかし、すべての中山間地山間地にこのような強力な行政力や個人のリーダーシップを必ずしも期待するわけにはいかない。多くはそういうのがなかなかないから今困っている問題になっていると思うのですね。そういうところには、やはり公共の手、国の力によって山手の方を支えるというこういう施策強化しなくてはいけないんじゃないか。  そういう点で、平成の屯田兵という構想が示されたのですが、それは、山手の方の農地や林地を守るために、農協や森林組合あるいは第三セクター等、耕作放棄地やなかなか不利益な土地、そういうところを引き受けてやるときに、もともと採算が難しいんだから、それに対して人件費程度あるいは一般費用との差額、そういう人件費等の助成を行って、平成の時代の新しい屯田兵を配置するぐらいの覚悟がないと山手は守り切れないというなかなか示唆のあるお話を伺って、私どもちょっと感銘を受けたのですが、こういう考え方に対して、これは、今の特定農山村法の中でそれに対応できるようなところがあるのかどうかお伺いしたい。
  26. 入澤肇

    入澤政府委員 なかなかユニークなというか、ある意味では非常に重要な考え方だと思います。しかし、それに対して直接的に助成をするかどうかということについては、また別問題ではないかと思うのです。  我々は今、中山間、山場の農地保全等をやっていただく場合にいろいろな措置を講じようとしていますが、一つは、ことし、中山間の水と土の保全対策基金、これを全国で四百億円を目標に基金を積みまして、そして、その中からいろいろな維持管理経費を支出するようなことも考えておりますし、それからまた、予算としまして、中山間のいろいろな条件不利地域基盤整備を進めるという意味から、さらに補助率を高めてやろうということで、中山間地域の総合基盤整備事業、これも通常の基盤整備よりも高い補助率で実施するようにしております。  それからさらに、自治省にもお願いしまして、御承知のとおり、山村の方に千八百億円地方交付税の措置をやってもらったわけでございますが、こういう措置を具体的にやっていく。間接的かもしれませんけれども、周辺の条件整備をきちんとやるということが、まず山間の農地保全にとっては必要じゃないかというふうに考えておりまして、そこに住んでいる人に直接人件費の一部とか差額を補てんするということはなかなか難しいんじゃないかというふうに考えております。  むしろ、その地域の営農を活性化させて、そして農業によって所得を得る、それを助長するための政策体系を仕組むことが必要ではないかということで、今申し上げましたような基盤関係のいろいろな助成のほかに、今度は中山間地域立法で最適土地利用計画を目指し、その上でその地域の最適な経営改善計画を実現していく、そのための濃密指導を行う、さらに、その実現のためにバックアップシステムとして、低利の経営安定資金の融資をするというふうなことを考えているわけであります。  こういうふうにして、こういう政策が定着しますと、さらにその先に、今先生御指摘のような条件整備されることがあるかもしれませんけれども、私は、今の日本の全体の中山間地状況からしますと、今我々が提案している政策を着実に進めていくことが重要ではないかというふうに考えているわけでございます。
  27. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今もお触れになったと思いますが、農地保有合理化法人がありますね。この中に研修という項目があり、それに対して財政支援をやって、そして耕作放棄地あるいは採算の悪いところ等々をまとめて、ここを研修の場に活用して、そしてそこでもって山手の方を守っていく、研修をしながら。それに対して、研修に対しては人件費に相応するような何らかの助成ということが財政的に考え得るのかどうか。その点はいかがですか。
  28. 入澤肇

    入澤政府委員 新しく今回農地保有合理化事業の中に、農地保有合理化法人が持っている農地利用いたしまして、新しく営農に従事したい、農業に就職したいという人たちの研修をする仕組みをつくったわけでございますが、これは現在のところ、農協の職員になって給料を取りながら研修する、あるいは農地保有合理化協会が中心になっていろいろな資金を提供しながら研修をするという仕組みを考えておりまして、それに対して人件費を助成するというようなことまでは考えておりません。
  29. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは新たにこの研修というのを加えているわけですから、項目が加わっておれば、それに対して財政的な措置も考えるというのは当然だと思うのですが、いかがですか。名前だけふやして中身が伴わなければ、何もつけ加える必要はないと思う。財政措置が伴って、名前を出した、それを裏づける財政措置があって意味があると思うのですが、いかがですか。
  30. 入澤肇

    入澤政府委員 既存の、例えば二十一世紀村づくり塾等の予算もございますし、それから地域営農のいろいろな指導事業もございますから、そういう事業を活用しまして、講師の謝金だとか、あるいは研修する場のいろいろな必要な施設の整備とか、そういうものはできると思うのですけれども、人件費まではなかなか助成の対象にすることは、現在の財政事情のもとでは難しいのじゃないかなと思っています。研修という項目を入れましたので、既存の予算をフルに活用いたしまして、農地保有合理化法人が研修する場合の必要経費の一部あるいは相当部分を助成するようにはしていきたいと考えております。
  31. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは、研修の中にそういうものを活用していくというやり方が私は不可能ではないと思う。このことはまた、私も時間が限られておりますから、あとまた何人かで少しこの問題を詰めてほしいと思っておるのですが、ぜひ検討をいただきたいと思うのです。  それでは、今度の低利融資。要するに付加価値の高いものをつくって、それがうまくいかなかったらその分だけ融資をするという中身ですね。融資をするなら、限りなくゼロに近づけることが大事だと思うのですが。だから、私は、融資の利息をゼロに限りなく近づけるということは大事だが、小規模土地改良あるいは簡易土地改良というものに今度はいろいろな上乗せをして、そしてゼロに近いところへ努力してきたわけですね。だから、ちょっと工夫と知恵を絞れば限りなくゼロに近づく道があるのではないかと思うのですが、そういうことについて、何かこれから方向として考えるということはないのですか。
  32. 入澤肇

    入澤政府委員 今度提案しております経営安定資金、これはある意味では、従来の金融制度からしますと異例な制度でございます。要するに、災害でも何でもない、経営改善計画できちんと目標を立てまして具体的に実現可能だと思ってつくった目標が、いろいろな事情から実現できなかった、その場合に、目標と実際の費用の差額を低利で融資をするという事業でございますから、ある意味では本邦初演の事業でございます。  その場合の金利体系なんでございますが、自作農維持資金の災害資金は四分三厘、今度は四分ちょっとに金利が下がってなりましたけれども、これにバランスをとらなくてはいかぬというふうな金利体系のバランスの問題もございまして、それ以上低くならなかったわけでございます。しかし、中山間地域等におきまして、米の生産調整などをやりまして、生産調整の奨励金なんかを加えますと、いろいろな計算があるのですけれども一つの計算によれば一%とか一・五%とかいうふうな低利になります。いろいろな知恵を絞って工夫をして、可能な限り農家が借りやすいように努力をしてまいりたいと考えております。
  33. 辻一彦

    ○辻(一)委員 二月ごろにいろいろな農林省の説明を聞いた当時は、大蔵と交渉してなかなかこれに努力をしておったやに伺っておるのですが、農業災害の四・三%という壁がなかなか破れない、そのために横並びになったという経緯があったように思いますが、これはこれから何としてもひとつ交渉をやって、一歩一歩踏み出していく。せっかくことしの冬は頑張ったんだから、ここらは我々もバックアップしてもいいわけですから、ぜひひとつゼロを目指して、これから努力してほしいと思いますが、いかがですか。
  34. 入澤肇

    入澤政府委員 なかなか難しい問題でございますが、可能な限り知恵と工夫を凝らしたいと思います。
  35. 辻一彦

    ○辻(一)委員 なかなか苦しいところがあるのでしょうから、それ以上深追いはしませんが、よく知恵を絞って、なかなか皆頭はいいはずですから、まだまだひとつ努力をしてもらって、ゼロに向けて努力していく、そういう検討をぜひやってほしいと思っております。  ウルグアイ・ラウンドの問題について、一、二だけちょっと伺ってとどめたいと思いますが、この間、三月一日から四日まで、社会党の訪米団を出して、私も皆さんと一緒に参加をしたのですが、そのときに、大臣食糧安全保障という考え方について、言葉はアメリカも日本も同じように使うけれども考え方が違うのですね。それは、我々は、自分の国で自分の地域でできる限り自給するというのが食糧安全保障の基本であると考えるし、彼らは、安いところでたくさんつくって備蓄をしておいて、要るときに船で送ればいいという自由貿易が食糧安全保障の支えてあるという論理ですね。  なかなかかみ合わないのですが、私はそのときに実感したのは、我々は、私も学生時代だったのですが、戦時中に学徒動員で引っ張られて、腹がすいて、かついでおった豆かずの袋から少しポケットへコウリャンを入れて、それをかじって腹を痛めたようなことがありますが、そういう、国民を挙げて飢餓というか飢えの体験を我々戦時中とか戦後に持っている。これと似た体験は、私はイギリスやドイツも持っておると思いますね。だからイギリス、ドイツは、ECの農業政策によってそれがありますが、今一〇〇%、一一五%という非常に高い穀物ベースの自給率を達成している。私は、そういう共通の経験が大きく物を言っているのではないかと思う。  アメリカの方は、上下院だとか国務省、農務省で随分そういう論議をしましたが、我々も戦争では大変迷惑をかけたが、戦時中にあるいは戦後に、アメリカの国民の皆さんは我々のような飢えと飢餓の体験がないじゃないか、そこにどうしても食糧安全保障というものについての哲学の相違というか、かみ合わない点があるのではないか。日本のこういう食糧安全保障考え方を何としても理解をしてもらわなければいかぬ。我々は、これは世界に、変えることのできない国家の主張としてこれからやっていくんだ、こう言っていろいろな論議をしましたが、それについてどうお考えになりますか。
  36. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私も再三この問題については、今までの交渉の過程の中で随分やってきました。なかなか理解できないのですね。  例えば、食糧が非常に豊富なアメリカ、あるいはかつてはヨーロッパのようにしょっちゅう戦争をした国、あるいは日本のように周囲に安定的に供給できる体制があるか、米についてはタイ、東南アジアの方です、これも何かあった場合には一体どうするか。だから、国々によって不安な要素というのは違うと思うのですね。このことを私も、ヒルズ前通商代表だとかマディガン農務長官と話をしたのですけれども、なかなかこのことは理解できない。日本がアメリカのことを国民全部が理解しているかというとしないと同じで、アメリカの国民も日本のことが、言われた人はそうかなと思っても、あの二億からの国民が理解するかというとしないということがあると思う。  ただ、いずれにしても、将来の世界の農産物の需給というものは非常に不安定であることは間違いないわけでありますから、人口がどんどん増加をする、食糧、農地というものはもう限られておるという中で、私どもは国民に安定的に安心して供給する、これが基本的な、政治的な責任だと思っているのです。  ですから、ウルグアイ・ラウンドにおいても国境措置を講ずるべきだということの主張をしているところもそこに実はあるわけでありまして、新しく全部変わりましたので、これからもそのことを主張して、そうして可能な限り、やはり自国で自給をし、不足な部分についてはお互いが譲り合うということでやっていかないといけない、こう思っております。
  37. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が来たのでこれで終わりますが、もう一つだけ伺っておきたいのです。  RMAという全米精米業者協会、これのグレーブスという理事長さんほか、我々が行ったときに、訪ねていくよりも、昼食会に呼んで一時間余り懇談しましたが、お互いに言うべきは主張して、最後ほどちらもおまえの言っていることは間違っている、いやそっちも間違っている、こういうことで別れましたが、非常に誤解も持っているのですね。  一つは、日本食糧安全保障と言うけれども、一億二千万の人間がおって島国で一〇〇%自給できるはずがないじゃないか、こう言うんですね。我々は、今二九%になっているから、まずこれ以上下げさすわけにはいかない、それは半分を目指しているけれども、下げさすわけにはいかない。その中で米を自由化すれば、結局二〇%に落ちてしまうのだ、こういうことが許せないのだ、こういうことですね。一〇〇%という、自給というとそういう理解をしている。  それから、水田が環境保全にそれだけ必要なら山の方の田んぼには雑草を生やしたらどうですか、牧草を植えたらどうですか、こう言うのですね。雑草や牧草なら水田は割れ目が入って当分使いものにならなくなるし、水の保水等や貯水というのには全然役に立たない、そういうものでは国土保全環境保全水資源確保にはならないんだから、山の方といえども水を張って田んぼにする、水田にして米をつくることで環境保全をされ、国土が守られるんだという論議を随分したんですが、そういう理解が極めてされていない、ゆがんだ解釈をしている、誤解をしている、こういうふうに思いました。  幾つかそういう点はあるんですが、時間の点がございますから、もうこれで割愛しますが、もっとアメリカの方にもわからすような努力を、我々議員外交も通じてやるべきであると思いますが、いかがですか。
  38. 田名部匡省

    田名部国務大臣 委員を初め各党それぞれ行っていただいて、また一生懸命、私と会う以外の方々と話し合いをしていただく、あるいは団体の方も、向こうの農民との対話を図って理解を得る努力をしていただいているということについては大変感謝をいたしておりますし、私は私の立場でやりますけれども、これは総力戦でありますから、もうだれかれ問わず、全体として日本の立場を理解してもらうように今後も努力が必要だ、こう思っております。私も一生懸命頑張ります。
  39. 辻一彦

    ○辻(一)委員 終わります。(発言する者あり)
  40. 平沼赳夫

    平沼委員長 委員長から申し上げますけれども、定足数は足りていますので、ひとつ質疑を始めていただきたいと思います。  宮地正介君。
  41. 宮地正介

    ○宮地委員 では最初に、委員長に私からも申し上げておきたいと思います。  これは農業基本法以来の重要な日本の農政改革の第一歩とも言われるべき改革の重要な法案の審議を今しているわけでございますので、自民党の諸君におかれましても、相当の空席はきょうに始まった問題でございませんので、厳重に委員長からも、また自民党の理事の皆さんもどうか汗をかいていただいて、多くの傍聴の皆さんも国民の代表で見えているわけでございますから、ぜひ私からも強く委員長に要望しておきたいと思います。  そこで、今回の新農政、これによって日本農業が本当に活性化するのかどうか、これがやはり国民の最大の注視の的であろうと思います。特に昨年の六月の報告以来、今国会において関連法案が、今審議している三本の中でも、経営基盤強化に関しても七法案、またこの後JAS法あるいは林業二法等含めますと十一本、こういうことで、まさに日本の農政改革をやっていく大変な法案であります。国民の皆さんの中にはい一つは昨年の六月の報告からちょうど今十カ月、そして一年以内のこの法案審議、非常に拙速ではないのかという声もよく最近聞かれるようになりました。そういう点では、当委員会においても十分な審議をやっていかなくてはならない、このことは当然のことであります。昨日は参考人の陳述をいただきました。また、十四、十五には現地の視察にも参るわけでございます。そういうような状況の中で、やはり一番汗をかかなければいけないのはここにいる我々国民の代表であろうと私は思います。どうかそういう意味合いにおきまして、もう少し真剣に、自民党の諸君においても出席率を高めて、野党から批判のないように、午後の審議から、出席者を当然のことでございますから募っていただきたい。  まず農林水産省に伺いたいのは、昨年の六月から一年足らずでのこの重大な農政改革について、国民の間に聞かれる少し拙速ではないのかという声についてどういうふうにお考えになっておられるか、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  42. 上野博史

    上野(博)政府委員 このいわゆる新政策をまず発表する前の段階におきまして、私ども、数はそう多くはございませんが、有識者の方々にも十分御相談をいたしまして、御意見をいただいた上でまとめたということが前提としてあるわけでございます。  その後、発表いたしましてから、農政審議会の審議もお願いをいたしまして、具体的な取り進め方等について御意見もまたいただき、それを踏まえて実現をしたのがこれらの法律案でございます。あるいは具体的な予算措置になっているわけでございます。その間、また大臣にも地方にお出向きをいただきまして、直接農業関係者あるいは都道府県の関係者の御意見をいただくというようなことも何回も実施をいたしております用地方農政局を通じまして、もっと幅広くいろいろ御意見をいただくという努力もこれまでいたしてまいった次第でございます。  見方によれば、委員のおっしゃられるとおり拙速だという御意見もあろうかと思いますが、一方ではできるだけ早急に具体的な措置に着手すべきだという意見もあるところでございまして、十分に意見を承りながら我々としては進めてまいっているというふうに考えているところでございます。
  43. 宮地正介

    ○宮地委員 昨日の参考人の皆さんで、特に民間の代表である全国農協中央会の常務理事さん、あるいは全国農業会議所の代表である専務理事さん、今回のこの法案については一歩前進として評価はできるというお話の中で、果たして国民のニーズを十二分に吸い上げたのかどうか、こういう点については大変に、私が受けとめた感じではいま一歩、こういう感じを受けました。  今官房長は、そうした団体からの声は聞いた。それなりに努力はされたと思うのです。しかし、地方農政局等を通じて現場の一番苦労している農家の皆さん、農業生産者の皆さん、こういう方々の意見の聴取あるいは考え方、この新政策に対しての現実的な、現場で汗をかいている皆さんの声をどこまで吸い上げたのか、この点について御説明いただきたいと思います。
  44. 入澤肇

    入澤政府委員 今官房長から答弁がありましたように、この法案を提出するまでにいろいろな手続を踏んでおります。農政審議会の意見も聞けば、関係省庁の担当者による研究会も何度となく開く、あるいは学識経験者による懇談会を開きました。それからさらに、地方局を通じまして、地方局の例えは担当部長会議、それから次長会議局長会議、それぞれ新政策をめぐりまして各地方の意見を吸い上げて、それを本省で報告してもらい、それについて検討を加えて、さらに我々がまとめたことにつきまして逆にフィードバックするということもやっております。可能な限り手続を踏んだつもりであります。  また、新政策を出すに当たりましては、どうしてもここら辺で農政の転換を図らなくてはいけないといういろいろな世論の強い意見もあったわけでございます。それを踏まえて新政策を出したわけでございますが、せっかく出したところで一気がせいに、ある意味では、鉄は熱いうちに鍛えろということがありますけれども、省内のエネルギーが充満しているときにステップ・バイ・ステップで着実に歩を進めることがいいのではないかと思いまして、この二法を提案させていただいているわけでございます。
  45. 宮地正介

    ○宮地委員 率直に、私も今回の法案審議に当たりまして、農家の皆さんともひざ詰めでいろいろ意見を聞いてまいりました。そういう中で、一つ大きな皆さんの声は、このいわゆる新政策、新農政、こういうものが、現場といわゆる政府のつくった政策との間に大きな乖離があるのではないか。認識の違いが余りにも大き過ぎるのではないか。言葉をかえますと、まさにこれは絵にかいたもちではないのか。我々生産農家から見ると、余りにもかけ離れた、実態面との乖離を感じざるを得ない。法人化を進め、あるいは大規模化を進めていく。生涯所得二億円から二億五千万円の所得が取れるようにする。十ヘクタールから二十ヘクタールの規模農家をつくる。まことに結構な話だけれども、実態の我々の状況から見たら、まさにこれは絵にかいたもちである。努力目標としては十分理解できるけれども、我々の実態はそんなものではありません。  例えば、埼玉県の農家の実態などを調べますと、それはすばらしい生産性を上げている農家、深谷などでは、チューリップとか深谷のネギとかこういうものを複合的に経営をしてすばらしい生産性を上げている農家もあります。しかし、埼玉全体では、何と年間所得百万円であります。また、私の埼玉西部地域の都心三十キロ圏、四十キロ圏の農家の皆さんは、ほとんど兼業農家であります。月曜日から金曜日までサラリーマンとして都心で、近くの工場で汗水流して働いて、そして帰ってきて、土曜、日曜の連休を使って稲作をしている、こういう農家が大変多くございます。そういう方々から見ると、まさに今回の新農政のこの法人化や大規模化ということが絵にかいたもちに見えるのは当然だと思うのです。  そういう大変な農家をどう活性化させ、救済していくか。また、希望のある、またそうした後継の皆さん、若い人が担い手として参加してくるような、そういう活性化が本当にできるんだろうか、こういう疑いを持つのは私は当然だと思います。この実態面における乖離について農水省はどういうふうにお考えなのか、御説明いただきたい。
  46. 入澤肇

    入澤政府委員 私ども、この法案を提案するに際しまして、かなり実態を調査し、またいろいろな学者の論文も読み、分析をしたつもりでございますが、一つは、農政に展望がないではないかというふうな強い意見が各方面からあったわけでございます。それに対して、やはりこういうふうな農業をやったらこれくらいの所得が得られるんだという目標を出すということは極めて必要ではないかというふうに考えまして、一つの試算として、御承知のとおりの目標を出したわけでございます。  この法案は、そういう目標を実現していくための一つの最低限のミニマムスタンダード、あるいはシステムづくりというふうに位置づけていただきたいと思うのでございますが、この法案ですべてが解決するわけではありませんでして、私は、そこが農政の一番難しいところであり、また本質論だと思うのです。  農政は、私は運動論だと思います。一つ理念を掲げていまして、その地域ごとに地域の実態に合わせましてリーダーが旗を振って、そして一つ目標に向かって、地域ぐるみで目標に向かって進もう、そういうふうな運動論の世界、範疇に入るのではないかと思います。これから、その運動論を強固にしていくためにどうやったらいいかということについてさらに検討を加えなくてはいけません。  私どもは、この法案を提案する場合に、基本法以来、あるいは戦後の農政の各般にわたりまして制度論、それから制度の運用論、もう一つは運動論、その三点からアプローチをして、いろいろな検討を加えました。そういう観点で、今回この法案の新しい枠組みというのを提案しているわけでございます。それにつけ加えましてこれから必要なのは、繰り返しますけれども、運動論の展開が必要であって、その運動論のために我々は何をなすべきかということを早急に考えていかなくてはいけないというふうに考えております。
  47. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一つの大事な視点は、今構造改善局長が運動論展開の第一歩だ、こういうお話をされました。私は、それはもっともだと思うのです。ちょうど今ウルグアイ・ラウンドのガット交渉の最中であります。我々は、米の例外なき関税化反対、こういうことで、日本の米の農家を守るべきであるという立場で全力で国会決議に基づき闘っているわけですね。昨年の六月からこの五月までの約一年の間にスピーディーに処理されてきた。米をつくっている農家の皆さんの中には、大変な不安を持って、こんなに農林水産省がスピードアップして、報告から法案まで十一本、中身を入れればさらにそれプラス六本で十七本、こんなスピードアップして法案の審議まで来た。これは、ウルグアイ・ラウンドの交渉は交渉でやっておるけれども、もう既に裏では、この例外なき関税化というものを認める事前の対策を講じているのじゃないか、こういう不安を持っている農家も大変多いのですよ。この払拭をどうするのか。  また、ウルグアイ・ラウンド交渉とは全く関係ないのだ、このことを国民にわかりやすく、誠実に、これは構造改善局長の後、大臣にしっかりと答弁してもらいたい。
  48. 入澤肇

    入澤政府委員 新政策もウルグアイ・ラウンドの進行に関係なく、先ほど辻先生から御質問がありましたけれども、第二種兼業農家が圧倒的に増大している、それに加えまして、高齢化が進んでいる、耕作放棄地が進んでいる、我が国農業の実態を何とかして直さなければいけない、そのために何をなすべきかという視点から検討したのでございまして、ウルグアイ・ラウンドとは全然無関係にこの新政策を打ち出し、さらにこの法案を提案したのでございまして、私どもは、日本農業を守るのだ、それが我々農政官僚の一つの使命であると強く自覚して提案しているのでございまして、この点は十分に理解していただきたいと思います。
  49. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今入澤局長からお話があったとおり、これはもう大分前に、私ども党におったころに、米価その他の価格問題のときに、党内の議論を通じて、おっしゃるとおり猫の目農政ということもよく言われました。しかし、徹夜をして米価を決定する、それだけではどうにもならぬというので、いろいろな対策をそのときにあわせてやってきた。これは何年もやりました。私も農振協の幹事長を五年やりまして、五年間同じことを繰り返した。当時、こんなことをやっておっては日本農業はよくならぬ、本当に腰を据えて、米価のときだけではなくて、余裕のあるときから政策をやろうよという話をしたのでありますが、どうも終わってしまうとまたずっと、その繰り返しで来た。  たまたま前の近藤農林大臣が部会長のときに、もうやろうよということで私と随分話をいたしました。彼が農林大臣になったときにこれを手がけてくれた。たまたま私がそれを引き継いだという格好でやったことであって、ウルグアイ・ラウンドをどうこうということではなくて、日本農業がどうあるべきかという視点で本当に考えたのです。  ですから、今より農家をよくするにはどこに手をかけるかということで、それがまた国民から理解できることでなければいかぬという視点に立っていろいろと考えたのであって、決してウルグアイ・ラウンドを想定してやっているわけではないということは再三お答えしておるとおりであります。
  50. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、そうであるなら、農林水産省はもっとその真実と、今回の新農政のねらい、これからの方向、実態面との乖離をなくすこと、あるいは今申し上げたウルグアイ・ラウンド交渉のための前提条件づくりではないのだということを、あの消費税の導入のときにつくったと同じように、政府の広報のきちっとしたパンフレットを、少しぐらいお金をかけていいですからきちっとつくって、各地方農政局からそうしたきちっとした、正確な的確なPR、これからの日本農業活性化日本の農政改革を我々は本気でやるのだ、魅力のある農業、若い人たちが本当に希望を持って働く農業、これを我々はやるのだということを、少しきちっとしたリーフレットのような、パンフレットをしっかりつくって、地方農政局長が先頭になって国民に知っていただく。そして、政府と民間団体の農協や全農や全中や生産農家が、本当に官民、生産農家一体で日本の農政の改革をやるのだというあかしを示すべきだと私は思うのですよ。  構造改善局長、遅くないですから、そういうパンフレットをつくる用意がありますか。私は本気になってやるべきだと思うのです。
  51. 上野博史

    上野(博)政府委員 委員お話は全くそのとおりだと考えております。  それにつけましても、この新政策考え方が具体的に政策として実現をいたしますのは、今御審議をいただいております三法、あるいはその他の御審議をお願い申し上げておる各法律というものの成立が非常に大きな前提になるわけでございまして、ぜひとも御審議をいただいた上で成立方をお願いしたいわけでございます。その上で、そういう各制度それから考え方等々、国民の御理解を得るように一生懸命努力をしてまいりたいと考えております。
  52. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、政府広報誌のようなきちっとしたものを、小冊子でいいですからつくるべきだと思います。やはり相当認識にずれがあります。  実態面と、先ほど言ったように絵にかいたもち、あるいはウルグアイ・ラウンド交渉の前提条件づくり、こういうような認識をお持ちの農家の方も相当おります。今まで私も多くの方に会ってまいりました。日本農業政策というのは英語のノー政だと言うのですよ。口悪く言いますと、農林水産省の言うとおりやったら生産農家はみんなつぶれてしまうと言うのです。逆なことをやれば生き延びる、国民の中にはこういう大変厳しい声もあるのです。私は、やはり今、政府の農業政策の信頼の回復、このために生きた予算を思い切って使うべきだと思う。その努力を、具体的にやる決意を述べてください。
  53. 入澤肇

    入澤政府委員 先ほど申しましたように、これから農業を改革していく、農業発展させていくためには運動論を強力に展開しなければいけないということでございます。その一つの手段としまして、徹底して国民の理解を得るためのPR活動もやらなければいけませんし、それから従来の普及活動、あるいは農業委員会、農協の営農指導活動等も今まで以上に強力に展開していかなければいけません。そういう努力をこれからも政策面で強力に、抜本的にしていくことを改めて申し上げたいと思います。
  54. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ強く要請をしておきたいと思います。  そこで、具体的に付点がお伺いしてまいりたいと思いますが、まず、私は、今回のこの新農政の一つの重要な柱である法人化の問題それから大規模化の問題、有限会社とか合資会社とか、そういういわゆる家族的な法人化については推進をされております。いわゆる外資導入的な株式会社については再検討といいますか、これは少し見合わせておる、こういう状況になっております。私は、やはりこの基本に、農家の皆さんの生産性を上げるためには農業経営という哲学を入れたんではないかと思うのですね。これは、結構なことだと私は思います。  ただ、今後、この経営的な感覚、経営的な手腕を持ち合わせた農業生産者の人材の育成というのは、やはり並み大抵な問題じゃないと思います。今まで稲をつくり野菜をつくり花をつくる、また土壌を改良したり品質を改良したり、こういう大変な、いわゆる職人的な、現場的な、まさに土と水の中で泥まみれになって耕作をしている皆さん、ここで今度新たに経営のノウハウをプラスアルファしていかなきゃならない。これは、まさに人づくりの中でも大変な人づくりだと私は思う。  言うならば、中小企業の皆さんの中で職人さんがいます。家を建てる大工さんとかかわらを敷くかわら屋さんとか壁を塗る塗装屋さん、そういう方が経営をやって工務店の社長になって人を使っていくという難しさは、そうした業界でも大変な問題になっている。ましてや農業生産者の皆さんに経営のノウハウを教えて人材づくりをしていくということは、これは並みのものじゃない。ただ、金さえ投資すればてきるなんて、人づくりはそんな甘いものじゃない。これは、まさに国家百年の大計ですよ。国づくりや人づくり、まさにその基本は農業ですから。  そういう点について、今回の新農政はまだまだ第一歩ということであれば理解できますが、やはり根本的な人づくりについてもう少し踏み込んだ対応が必要ではなかったのか、こう思っております。  この点についてどのように今考え、今後の対応をされようとしているのか。
  55. 入澤肇

    入澤政府委員 農業発展のために、経営感覚にすぐれた経営体を広範に育成していくということが今回の新政策一つの大きなねらいでございまして、その意味では徹底して人づくりをやらなくちゃいかぬわけでございます。  今度の法案の中に提案しております農業経営改善計画というのも、まさに市町村、農業改良普及所、農協あるいは農業委員会関係機関と連携をとりながら濃密に経営指導を行うという体制を整備するということが前提としてございますし、それからまた、法人化を進めるという場合におきましても、経営内容の指導とか研修会は各地においてっくっていくということでございます。  現在、人づくりについて全国にどんな動き、実態があるかということを調べてみますと、かなりいろいろな試みがなされております。  例えば、名前を出してはなんですけれども、いい例ですから申し上げますと、この農水の委員会でも参考人として呼ばれたことのある森先生が森塾を全国で開いていますし、今村先生は今村塾というのを開いています。私どもは、二十一世紀村づくり塾運動を展開する中で、各地でこういう塾の育成助長ということも実は考えております。それから、全国農業会議所では、各地におきまして稲作の経営者協議会というのがございますけれども、その支部的な役割を各都道府県でやってもらっていまして、ここでは非常にすぐれた篤農家の養成、それから研修がなされております。  私どもは、こういうふうな各地におけるリーダーの養成を大いに助長していく、そういうことを中心に据えながら人づくりを徹底してやっていかなくちゃいけないというふうに考えております。
  56. 宮地正介

    ○宮地委員 具体的に、経営の手腕を持った、また感覚を持った人づくり、これはやはり少なくとも専門学校とか高等学校とか大学とか、こういうところに農林学部とか農学部、こういうものがありますけれども、現実は今、農林関係は逆に廃部の方向になっている。この実態もしっかり精査しないと、農林水産省、見誤ってしまいますよ。最近は、農学部とか林業だとか水産業だとか、こういうところの学部だとか専門学科とか学校は、日本全体がむしろ縮小方向にあるのです。残念ながら、埼玉県の国立の大学には農学部がないのですよ。幾ら格好のいい政策を出しても、現実に見たときにはないのですよ。  全国の四十七都道府県の国立大学の中に全部農学部があって、それでそこの農学部で皆さんがつくられた新農政のような考え方や具体的な施策を研究し、そこから人材が育っていくようなシステムが今縮小になっている、縮小。本当に新農政をしていくんだったら拡充していかなければいかぬ。そういうところにも乖離があるのですよ。口ではすばらしい経営のノウハウ、人材をつくりますと言っても、足元を見たら何ですかと。県立の高等学校の中の農業専門学校もだんだん縮小方向、大学の学部も縮小方向、新たな専門学校は全然できてこない。逆に、コンピューターシステムとか時代の最先端の総合大学とか総合的な高等学校や専門学校はどんどんできています。  そういう実態面から見ても、国は人づくりと言うけれども、実際は違うではないか。我々、現場を歩きますと、むしろおわびとおしかりをいただいています。国会議員、しっかり頑張ってくださいよと、涙ながらに訴える農家の方だっておりますよ。  一つの例を申し上げましょうか。私の地域に入間川という一級河川の大きな河川がある。その一級河川から農家の皆さんが水田の水に使うために樋管を引いた。そこから水をくみ上げて農家に、水田農業ですよ、そこに砂利が堆積をしてきた。取水が難しくなってきた。その堆積した砂利を除去するのにだれが負担していますか。農家の皆さんですよ。みんなが出し合って、また日曜、土曜に自分たちのブルドーザーを持っていってどかしているのですよ。建設省に言えば、これは河川管理じゃないから関係ありません、市町村の補助金でも出るんじゃないですか、こんな感じですよ。これが実態なんですよ。  本当にきめの細かい、農業生産者を本当に育成し守ってあげようというのなら、そういうところまで農水省が手を差し伸べて温かい指導をしてあげるべきだと私は思う。砂利は建設省の財産ですから持っていかないでください、どかす労働力と費用はあなた方がお使いになるお水ですからやってくださいですよ。こんな冷たい行政がありますか。  どうか、人材づくりにしても足元をしっかり見て、むしろ縮小方向になっている現在の状況というものを逆にはねのけて、新しい希望のある農政改革をやるのです、教育システムにおいてもこのように前向きに改善して取り組んでまいります、こういう御決意があるか、この点についてお伺いしておきたい。
  57. 入澤肇

    入澤政府委員 まさにそういう気持ちで新政策を打ち出しているわけでございます。  農業関係の学校、教育内容がだんだん縮小している、私どもそれを憂えているのですが、一番大事なことは、前提として、農業が職業として魅力あるということになりますと若者の心を引きつけることになりますから、またそういう希望者もふえると思います。それからさらに、農業が私ども日本の国家社会の中で名誉ある地位を占める、そのことについての国民的なコンセンサスが得られるということも必要でございます。  さらに、農村が住んで非常に住みやすいところである、一極集中を排除してバランスのとれた国家経営をやるためには、農村活性化が必要だということの国民的コンセンサスと具体的な施策がフォローするということが必要でありまして、農業農村の見直しが十分に行き渡らないと、私ども幾ら気持ちがあってもなかなかその実態がついていかない。そういう意味で、新政策を展開することによりまして、農業農村の復権を図りたいというのが真実の気持ちでございます。  同時に、そういう政策を展開する中で、各地でいろいろな問題が起きていることは私ども承知しておりますけれども、可能な限り心を込めて、その地域の実態に合わせまして行政を展開していきたいというふうに考えております。
  58. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一つ、大規模化の中で大事な問題は、私は昨日も参考人の方にお伺いしましたが、やはり相続税とか生前贈与の特例、相続税の特例、こういう事項がありますけれども、税制の角度からの哲学、考え方、これからの日本農業農地の流動化、拡大、この相関関係というものについて、私は見直しの時期に来ているのではないか。  今の相続税の制度なり贈与の制度でいくならば、現場の農業生産者の皆さんの声は、宮地さん、我々農家は一生懸命やっています。朝早くから夜遅くまで稲をつくり、野菜をつくり、花をつくって何とか今頑張っています。だけれども、おやじが死んで私が相続をしたときには、その相続をする土地はまず三分の一なくなってしまうんですよ。それで、耕作面積が縮小した中でさらに生産性を上げなさいといっても、これは限界があるんだ。今度は、自分が亡くなって子供に相続したら、その子供はまた三分の一なくなるんだ。親子孫三代になれば間違いなく我が家の農地はほとんどなくなってしまいます。特例によって猶予の制度はあるにせよ、大変です。日本とアメリカは、平均にして百対一の耕作面積の違いがあります。この日本の現在の相続税の制度あるいは贈与制度というものは、結果として農業生産者の耕作面積を縮小することになるじゃありませんか、こういう大変な厳しいおしかりをいただきます。  もう一つは、我々埼玉県のような首都圏三十キロ圏、四十キロ圏、地価が高騰してまいります。国土計画、都市計画の中で、市街化区域と調整区域の線引きが行われて、市街化区域に農地を持った方は坪百万とか三百万、大変な地価の高騰になっています。財産は確かにふえてまいります。しかし一方では、宅地化の波に押し寄せられて、おまえのところの市街化区域は宅地に供給せい、しなければ宅地並み課税だぞ、こういう中で先祖伝来の農業に専従しようとしてもなかなかできない。しかし、入間ゴボウだとか狭山茶だとか、日本の有数な野菜やお茶をつくっています。そういう今大変な変革のときを農家の皆さんは迎えながらも、必死になって生きているのですよ。  そういう意味合いにおいて、相続税や贈与税の制度の見直しとか、そういう宅地化に伴うところの新たなこうした変革期に対して、農家に対する適正なアドバイスなり方向性というものを示していかなかったら、今まで一生懸命何百年何十年と先祖の土地を預かって、日本国民の食糧の需給のために汗をかいてきた農家の方々は、私は報われないと思う。この点についてどう考えるか。今後見直していく決意があるのか。大蔵省あたりにがっちりと物を言っていく、それだけの勇気が農水省にあるのかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  59. 入澤肇

    入澤政府委員 相続税、贈与税の納税猶予制度があることは今御指摘のとおりでございまして、これは農業経営者が引退したり死亡した場合に、後継者がその農地を細分化しないで承継するということを前提にして、農業を継続できるように、昭和三十九年に生前一括贈与に係る贈与税の納税猶予制度が認められ、それから、昭和五十年に相続税の納税猶予制度が設けられたわけであります。  ところが、農用地利用増進事業を基軸といたしまして、貸借による農地の流動化を進めているわけでございますが、これら納税猶予制度の適用を受けている農地を他人に貸し付けると猶予措置が打ち切られるということで、何とか他人に貸している場合でも打ち切らないようにしてくれないかということを、毎年毎年私ども大蔵省主税当局に要求しているわけでございます。  しかし、なかなか税の根幹にかかわる大きな壁にぶち当たってしまって、今までのところ改善がなされていないわけでございます。この制度は農地のみに認められた特例制度であるというのが大蔵省の主張でございまして、この制度の適用範囲を拡大するということは、他の業種、例えば中小企業とか自営業等に波及するということも考えられまして、対象を貸付地まで拡大するということはなかなか難しいという壁にぶち当たっているわけでございます。  しかし、構造政策を展開する中で、可能な限り私どもは知恵を絞って、毎年、何とかこの大蔵省の厚い論理の壁をぶち壊すことはできないかと思って工夫しているところでございまして、今後ともその努力は続けてまいりたいと思っております。  また、都市近郊の農地の税制につきましても、いろいろな特別控除の制度がございますけれども、地価上昇等の実態をよく踏まえながら、特例措置が実質的に有効に働くように毎年毎年よくよくウォッチングして、税制の要求のところで主張していきたいと考えております。
  60. 宮地正介

    ○宮地委員 この点も非常に重要な問題ですから、私は、政治改革も非常に大事な問題であろうと思いますが、農政改革も重大な国家的な事業であろう、こう思っていますから、一つ一つ精査して、重大なところの節目、ポイントにおいては、ぜひ農水省も勇気を持って政府の中で対応してもらいたいと思うのですね。何か大蔵省に押されっぱなしで何でもはいはい言っているようなそんな時代じゃないと思う。大蔵大臣にぽんぽん物を言って、政府の中で、農業は、おれたちが日本の国を守っているんだ、このくらいの気概で頑張ってもらいたいと思うのです。ぜひ要請しておきたいと思います。  もう一つ、今回の法案の中の重要なポイントに、農業経営改善計画の認定制度の創設の問題、この問題について、今回新たに市町村長が認定をする。者市町村のいわゆる事業計画、それと相関関係において認定していく。認定された農家の方は税制上の問題とか金融上の問題とか大変な措置がある。一つは、認定されない農家との間に不公平を生じないか。それからもう一つは、農業委員会がいろいろフォローはするようですけれども、果たしてこの市町村長の認定によって的確な判断ができるのかどうか。もっと公平な、公正な第三者機関をつくって、そこで審議をして、認定一つの中に組み入れていくべきではないか、こういう声も大変聞こえてくる。こういう点についてはどう議論され、今後検討する余地があるかないか伺っておきたいと思う。
  61. 入澤肇

    入澤政府委員 今までも何度も御説明しているのですけれども、今回の農業経営改善計画認定制度は、現行の農用地利用増進法における農業経営規模拡大計画の認定制度を拡充した制度でございます。  この法案では、従来の制度は規模拡大ということに焦点を絞って運営されていたのですけれども規模拡大だけじゃなくて、地域の実態に応じまして経営の複合化などによって生産方式を合理化する、あるいは経営管理の合理化を図る、休日制、給料制を設ける、産業としての農業確立していくために必要な労働条件整備を図る、そういうふうな経営改善をやる農家認定対象になるわけでございまして、そういう意味におきましては不公平感というのは出てこないのじゃないか。努力をする農家が自主的に申請して、そして認定を受けるわけでございますから、上から選別するわけじゃございません。そういうことを御理解いただきたいと思うのでございます。  それからもう一つ、この認定制度の運用に当たりまして、農業委員会認定を受けた農業者に対しましていろいろな役割を分担します。一つは、農業者への利用権の設定等の促進を図るために、認定農業者の申し出の内容を勘案して農用地の利用関係の調整に努める。それから、必要に応じまして農地の所有者に対し利用権の設定等の勧奨を行う。あるいは、市町村長に対しまして農用地利用集積計画の作成の要請をするというふうなことで、それぞれ農業委員会はその法律に基づきましていろいろな役割分担をするわけでございます。  大事なことは、今御質問がありました認定制度の運用に当たって公平性というか客観的な中立性が保たれるかどうかということでございますが、認定制度の運用の基準となります市町村の基本構想、これの作成に関しまして、市町村、農業委員会農業協同組合、土地改良区、それから農用地利用改善団体等の関係機関、団体から構成されます市町村の構造政策推進会議、ここにおいて十分に検討いたしまして、客観的な基準をつくって、そして恣意的に裁量行為によって不公平がなされないようにするつもりでございますので、この市町村構造政策推進会議をフルに活用してやっていけばいいんじゃないかというふうに考えております。新しく第三者機関をつくるとかいうことは考えておりません。
  62. 宮地正介

    ○宮地委員 この点については、全国農業会議所とかあるいは現場の地方自治体とか生産農家の代表とか、こういう方々とは事前にどういうニーズを引き出す努力をされたのか、この点について簡単にちょっと御説明をしていただきたいと思います。
  63. 入澤肇

    入澤政府委員 この認定制度を初めといたしまして、その法案の作成過程、全国農業会議所それから全国農協中央会、それから市町村、自治省を含めまして地方自治体、その関係機関と意見交換を行いました。  言ってみれば全国農業会議所とか農業委員会の系統は、自分たちの法律に基づく権限を無視することのないように十分に配慮してもらいたいというのが具体的な意見でございましたし、自治省とか地方自治体にしますれば、新しい権限が付与されるということはある意味では歓迎しないという空気もございます。新しい事務がふえるだけだから、あるいは許認可の簡素化ということで削減してくるときに新しい権限を付与するような行為は可能な限り少なくしろというのが一つの方針であるように思われまして、いろいろな意見を勘案しながら法律として中に仕組むということにつきましては、現在提案しております内容が限度じゃないかと思うのです。予算措置といたしまして行っております市町村の構造政策推進会議、こういう機関をフルに活用するということで関係者の合意を取りっけたわけでございます。
  64. 宮地正介

    ○宮地委員 私、時間がありませんけれども、次に農業機械の問題について何点か少し確認しておきたいと思うのです。  実用化促進会社というのを今回つくられますね。この実用化促進会社というのは農業団体、生研機構あるいは農業機械メーカーが出資をして対応する会社でございますが、時間がありませんから途中の説明を省きますが、最終的に農業者の皆さんがこうした形でできた機械を購入したりレンタルで借りたりする、そういう場合に税制上の特例が二つあるわけですね。一つは法人税の特例で特別償却二〇%、もう一つは個人で買った場合には税額控除五%ということで所得税の中から対応する、こういう特例になっております。  しかし、実際に実用化促進会社から農業機械メーカーを通じて実用化された製品が、その商品の販売店や農業団体、こういうところに販売事業としてあるいはリース、レンタル事業として起こされるときには、国は農林漁業金融公庫等から長期の低利融資ができるようになっているわけですね。  私は、一番この農業者のところ、ここには税制上の特例は、今申し上げたように二〇%の特別償却と税額控除五%、百万円のものを個人で買えば五万円の税金が安くなる、簡単に言えばこういうことですね、税額控除ですから。それも結構ですが、農業生産者の皆さんはむしろ長期の低金利で買えるような、そういう援助というものを求めていると私は思うのです。販売事業やリース事業には長期の低金利で融資ができる制度になっているけれども、購入する生産者の農家のところにも長期の低金利の融資制度を導入すべきである、税制上の問題とダブルでやるべきである、私はこう思いますが、この点はどうなんでしょうか。
  65. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 今先生の御質問は、一つは、農業機械をリースするという場合に、リース会社が農業機械を取得して農家に貸し付けるわけですが、このたび、そのリースする会社が農業機械を取得する場合にも農林公庫資金を低利で融資する道を開いたわけです。そのほかに、今先生お話しのように農家個人が取得する場合にも、我々といたしましては当然低利融資をする道を開いておかなければいけないということで、現在農林公庫資金とかあるいは農業近代化資金、それから農業改良資金をもちまして、かなり低利な資金を貸し付ける道を開いております。  例として簡単に申し上げますと、例えて言いますと、農業近代化資金を農家が借ります場合には、金利といたしましては四・四五%、あるいは改良資金で借りる場合には、これは少しいろいろな条件がございますが、無利子、それから農林公庫資金の場合でございますと、これもいろいろございますが、四・四%というようなことで、それなりに、我々といたしましては、リース会社が借りる場合よりも、より低利な資金を用意しておるということでございます。
  66. 宮地正介

    ○宮地委員 それでは、こうした農業団体とかレンタル事業者が借りる場合には、長期低利融資の金利は幾らですか。
  67. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 リース会社が取得する場合に借ります資金は、一般的に農林公庫資金で四・四%でございます。
  68. 宮地正介

    ○宮地委員 いずれにしても長期低利融資、農家の方の場合は四・四から四・四五、事業を起こすところの団体は四・四、この辺は、長期低利融資というものはもう少し生産農家の方に重点的に検討すべきである。国が技術開発をして、資本を出して、そしてその製品ができ上がってくるのですから、これは当然のことだと思うのですね。どうかその辺について、時間がありませんが、今後十二分に検討していただきたいと思います。  次に、特定農山地域の指定要件について少し確認しておきたいと思います。  この要件の考え方で、現在政令として検討中の中に、「その他の要件」として「三大都市圏を含まないこと。」となっています。これは具体的にどういうことなんでしょうか。我々首都圏の埼玉県などは除外されるのでしょうか。
  69. 入澤肇

    入澤政府委員 中山間地域の要件といたしまして、一応、一二大都市圏の既成市街地等にないこと。三大都市圏というのは、首都圏整備法の既成市街地及び近郊整備地帯、近畿圏整備法の既成都市区域及び近郊整備地帯、中部圏開発整備法の都市整備区域ということになっております。  本来的な条件といたしましては、農林地の割合が一定以上であること。全国平均値が八〇・五%でございますので、それ以上。それから、農林業従事者の割合が一定以上ということにしてあります。
  70. 宮地正介

    ○宮地委員 ということは、第一の要件として、そのいずれかを満たすこと。①として「全耕地面積に占める急傾斜農地面積の比率が高いこと。」②として「林野率が高いこと。」  それから第二の要件として、次のいずれかを満たすこと。①として「土地面積に占める農林地面積の割合が一定以上であること。」②として「農林業従事者数の割合が一定以上であること。」  三として、「その他の要件」として「三大都市圏を含まないこと。」こういうことですね。  これは具体的に、我々埼玉県なんかは首都圏ですね。こういうところには、大滝村とか、私の選挙区にも名栗村とか、まさに前段の一、二に適合する大きなところがたくさんあるのです。まさかこういうところは除外するという意味じゃないでしょうね。
  71. 入澤肇

    入澤政府委員 恐らく今先生の御指摘の村々は、首都圏整備法の既成市街地ではありませんし、近郊整備地帯ではないのではないかと思います。ですから、埼玉県だから全部除外されるということではございません。
  72. 宮地正介

    ○宮地委員 また総括質疑の機会がありますので、時間が参りましたからきょうはこの程度で終わりにしたいと思いますが、最後に農林水産大臣、今までの議論を通じて、どうか農業生産者の立場に立った、まさに新農政であるべきである、こう私は思います。この点についての御決意を伺って、終わりにしたいと思います。
  73. 田名部匡省

    田名部国務大臣 全くおっしゃるとおり、農家の立場、むしろ私たちは、農家が、どうすれば自分たちが一番いい農業ができるのか、時代に合った、所得も他産業並みにし、環境整備しながら、魅力ある農業としてやっていけるのはこういう方法だ、そういうアイデアをむしろ大いに期待しながらこの法案をお願いしているわけでありまして、上から押しつけようなんということは全く考えておりません。本当に意欲的に、自分ならこれならばやっていける、そういうものを期待しながらやっていきたい、こう考えております。
  74. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。どうもありがとうございました。
  75. 平沼赳夫

    平沼委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三分開議
  76. 平沼赳夫

    平沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。倉田栄喜君。
  77. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党・国民会議の倉田でございます。  午前中、我が党の宮地委員から質問がございましたけれども、今回の新政策が、現場のまさに第一線の農家の方々の声がきちんと届いてつくられておるのかどうか。きのうも笠井参考人が、「農の岸国にとどけよ生のまま」、こういうふうなお話がございました。また同時に、その新政策で盛られている、また、今回のこの基盤三法に盛られている政策の内容が、果たしてきちんと実効性のあるものかどうか、絵にかいたもちにならないかどうか、それは私も全く同様でございます。そのような視点から、一つは、いわゆる農業担い手、主体の視点。それから、農地。今回の政策が、人と農地機能的に結びつけた政策である、そういう点は評価をいたしますけれども、実効性あるいはその実現性の部分について果たしてどうなのか。さらには三つ目、その具体的な方途いかん。こういうふうな視点から質問をさせていただきたいと思います。  まず主体、人、農業担い手、この観点からでございますが、そのまず前提の問題として、きょうは統計情報部長もお見えいただいているということでございますので、せっかくお見えいただきましたので、お聞きをしたいと思います。  まず、ずっと農家数の逓減が続いているわけでございますが、平成四年度の農業白書においては、総農家、そして、その総農家の中に販売農家、そして販売農家以外の自給的農家についてⅠ類からⅣ類までの分類がしてございます。よく私たちは、専業農家兼業の一種、二種、こういうふうに議論をすることがあるわけですけれども、この農家の定義あるいは農家のくくり方について、農水省としてどのような問題意識をお持ちなのかどうか。まず、この点を確認の意味でお伺いをしていきたいと思います。
  78. 嶌田道夫

    ○嶌田説明員 現在、農業センサスなどの農林統計におきまして、農家の定義を、経営耕地面積が十アール以上の農業を営む世帯または農作物の販売金額が十五万円以上ある世帯ということで定義しています。  これは、戦後といいましても二十五年でございますけれども、FAOが提唱いたしまして、一九五〇年センサスに我が国が初めて参加しました際に、国際比較をしやすいという観点から農業生産の総資源量をできるだけ幅広くとらえるということが望ましいというFAOの方針がございまして、このような方針に基づきまして、我が方といたしましても農家の定義を、実態に合わせまして、経営耕地面積、当時でございますが、西日本では五アール、東日本では十アール以上、販売金額は、当時の金額で一万円以上というようなことで決めた経緯がございます。現在でも基本的にこの考え方を引き継いておりますが、時代に合わせまして、経営耕地面積を全国一律に十アール以上とするとか、それから販売金額につきましても十五万円以上とするというようなことにしております。  また、先ほど先生からも言われましたように、前回のセンサスからは、商品生産を主たる目的とする販売農家、これは経営耕地面積で三十アール以上、それから販売金額五十万円以上でございますが、それと、あと自給を主体とします自給的農家と区分いたしまして、統計上は調査の重点を販売農家に置くということにしています。  したがいまして、私どもの統計の立場といたしましては、統計利用上の問題ということで、農家の定義を今申しましたようなことで定義しているということでございます。
  79. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今回の法案の中で、いわゆる認定農業者の制度が導入をされているわけでございます。農家の中で認定農業者というのをつくっていく、これが選別なのかあるいは農家の方々に選択の自由を幅広く保障するものであるか、当委員会でもさまざまな議論があるわけでございますが、この点をまず確認をする意味で少しお尋ねをさせていただきたいと思います。  今回のこの認定の制度については、県で基本方針をつくり、市町村において基本構想を練る、こういう形でスタートをしておるわけでございますが、まず、最初に市町村で基本構想をつくる。きのうも参考人の方々に対する質疑の中で出ておりましたけれども、市町村においてこの基本構想をつくるということについて、十分なスタッフあるいはその体制、できるのかどうか。そして市町村がその基本構想をつくったとしても、市町村計画としては、農業経営規模とか生産方式とか経営管理の方法とか、それから農業従事者の態様等に関する営農の類型ごとの効率的、安定的な農業経営の指標をつくる、そういうふうになっているわけですけれども、市町村がそれぞれの類型をつくる、この基本構想をつくる、つくることに市町村自体は責任を持つことができるのかどうか。そもそもつくれるのだろうかという質問はあれですけれども、つくれるだけの体制があるのかどうか、そしてつくったとして、そのつくったものに対して責任を持てるのか。例えば、安定的な経営体をつくる、個別的な経営体をつくる、あるいは組織的な経営体をつくる。一番大きな問題は価格の問題でもあるかと思うのですけれども価格そのものについては市町村は全然タッチすることはできない、こういう実質的な権限の問題もあるわけですから、つくったとしても、果たしてつくったことに対して、では市町村はどういう責任が持てるのだろうか、この点を一つ心配しますし、また、その内容も明らかにする必要があると思うのです。この点をまずお伺いしたいと思います。
  80. 入澤肇

    入澤政府委員 農業経営改善計画の前提といたしまして、各市町村は基本構想を策定することになっておりますのは御指摘のとおりでございます。  この基本構想の持つ意味は、その地域の育成すべき農業経営及び実現すべき農業構造目標を定めるということでございまして、関係機関や地域関係者が一致して取り組むべき運動目標を明確にするという意味がございます。さらに、もう一つ重要な意味は、市町村の農業公社あるいは市町村そのものを農地保有合理化法人として活動してもらうために、市町村の基本構想において指定するというふうな仕組みになっているわけでございます。  したがいまして、その地域でこういう作物をこのような経営規模でやったらばこのくらいの所得が上がりますというふうな目標をつくるのですが、これは当然その地域農業関係者の意見を十分踏まえて、市町村が行政的な判断でつくるわけでございます。そのときの価格の算定とか何かはそのときどきの市場価格をもって算定するようになると思うのですけれども、あくまでも運動目標でございまして、その運動目標の実現に向けて、市町村は農協あるいは農業委員会等と一緒になって営農指導をするという仕組みになっているわけでございます。
  81. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今回の新政策方向では、望ましい経営体、個別的経営体を、例えば稲作ですけれども十五万程度にする、あるいは組織的経営体は二万程度にする、こういうふうな一つの、平成十二年を目指しての目標値が示されている。そうすると、稲作については、育成すべき経営体として個別的経営体が十五万程度、稲作中心を五万程度にして、稲作プラス集約的作物を複合的にする経営体を十万くらいにする。これを全国的にするとすれば、都道府県、この県にはどのくらい、そしてこの県の中で市町村はどのくらいだろう、こういうふうに一つ目標値というものは出てくるのだと思うのです。  そうすると、先ほど、将来に向かって個別的経営体を、育成すべき経営体を育てていく、こういう視点での政策であろうかと思うのですけれども、まず第一点は、市町村で認定する一定の目標数がある、認定農業者数。これは今それぞれ、まさに市町村ごとに事情を聞きながらお話しになるのだろうと思いますけれども、今農水省の見通しとしては、例えば市町村ごとに自分たちが認定計画をつくって、認定農業者となろうと手を挙げる人たちが目標よりもオーバーするとお考えになっておられるか、あるいは足らないというふうにお考えになっておられるのかどうか。仮に目標よりもオーバー、ふえる人たちが出てきた場合に、それは国全体としてはこれくらいの数だというふうに決まっているわけですから、本来からいけばこれくらいで、それ以上は私たちの目標以上ですからちょっと認定できませんよということになるのか、それとも、やはり手を挙げた方々はきちんと全部認定をしていくことになるのかどうか。その辺を御心配になっておられる部分もあるのだと思うのです。  きのうの参考人質疑の中でも、いわゆる選別よりも選択を、農家の方々に、例えば今小規模であったとしても営農意欲のある、まさに土地を集積をして認定農業者たらんとする人たちをきちんと認定していくことができるのかどうか。希望をされる方にそれなりの意欲が認められるのであればやはり認めていくべきであろう、こういうふうに私は考えるわけですが、一方では十五万という全体の枠もある。この辺をどのようにお考えになっておるのか、お聞きしたいと思います。
  82. 入澤肇

    入澤政府委員 稲作について合わせて十五万、個別経営体で単一経営が五万、複合経営が十万、生産組織で二万の十七万経営体でという数字を出しまして、これはあくまでも一つの試算でございます。その数を上回るとか下回るとか、そういうことを私どもは問題にしているわけではございません。  この経営改善計画の認定農業者の数につきまして、それでは具体的にどの程度に見込むかということはなかなか難しい問題でございますが、参考までに現行の農業経営規模拡大計画の認定状況というのを見てみますと、平成四年十二月現在で、全国千二百二市町村で三万四百二十二人の方々が認定されております。  今度の認定計画は、先ほどのほかの先生の御質問にもお答えしましたけれども規模拡大だけでなくて複合経営所得向上させる、経営改善をする、あるいは労働条件改善を図る、給料日とか休日制とか要するに労働条件改善を図って、産業として農業を自立させていくのだという意欲に燃えて経営をやるのだという人たちも認定対象にしているわけでございまして、数は幾らあってもいいと私は思うのです。市町村の数であるとかその場合の人数制限ということは全く念頭にないわけでございます。
  83. 倉田栄喜

    ○倉田委員 農業のあり方の将来展望について、稲作の展望は確かに数の問題として、今個別的経営体十五万という数は出てくる。一方で市町村がつくる基本構想、認定制度というのは、農業だけの問題ではないのだろうと思うのですね。畜産もあり花卉もあり園芸もあり、それぞれ地域の中で農業をどういうふうにやっていくのか。とすれば、今鋭意検討をされているのだと私は伺っておりますけれども、その他のいわゆる農業としての、畜産にしても花卉にしても園芸にしても、やはり早く目標、計画というのを示されないと、この市町村の基本構想自体も全体の枠の中では実際にはなかなか前へ進まない、こういうことになっていくのだろうと思いますので、この点は意見としてだけは一応申し上げておきたいと思います。  そこで、個別的経営体、先ほど農家の定義というのをお聞きしたわけですけれども、個人または一世帯によって農業が営まれている経営体、そして他産業並みの労働時間で地域の他の産業従事者と遜色のない生涯所得確保できる。これは現実の問題ではなくて、目標とする平成十二年までにはこういうふうに一定の規模の人たちを持っていきたい、こういうことだと思うのです。  そうすると、稲作に限っていけばこういう方々は基本的には認定農業者、市町村でつくる認定農業者の方々がそういうふうになっていくのかなと思うのですが、その点どうなのか。そうすると、この認定農業者を希望しないというか、あるいはさっきちょっと御答弁がはっきりわかりませんでしたけれども認定農業者以外の方々、あるいは個別的、組織的経営体といわゆる自立的経営農家、この辺はどういうふうに区分けというのか、稲作に関連していけばどういうふうに位置づけをされておられるのかどうか、これはいかがでしょうか。
  84. 入澤肇

    入澤政府委員 一つの具体的な例で申し上げた方がわかりやすいと思うのですが、この前もこの委員会で私説明したことがあるのですけれども、ある県のある村では、二千世帯ございまして、そのうち五百三十数世帯が全部兼業農家の地帯なんですけれども、穀倉地帯でございまして、しかも都市近郊、大変な農業生産力を持っている地域でございます。従来は十アール当たり七俵とか八俵あるいは九俵とる農家もございまして、それが全部兼業農家なものですから、日曜百姓、片手間にやる、あるいは本格的な技術の伝承ができないということで生産力が落ちてしまったということで、各集落の意欲のある方、意識のある方々が集まりまして、何とかしてこの村の生産力を向上させようじゃないかということで、兼業農家のうち若手のいる農家二戸を選定いたしまして、そこに稲作の基幹的な部分の作業をお任せする、そしてその農家を稲作の専業農家として育成していくんだというふうな集落の合意、いわば村全体の合意ができたわけでございます。ところが、残った五百数十戸の農家がどうなるのかといいますと、そういう農家は、都市近郊なものですから、その他の利を生かしまして、今度は稲作から花とか野菜とか他の付加価値の高い換金作物に経営を転換する。そして専業的な農家と、それから兼業農家が自留地を持った他の付加価値の高い作物をつくって農業経営をやるという、両者が共存をするような仕組みになっているわけですね。  この認定制度というのは、そういう場合に、専業的にやる稲作農家認定対象になりますし、それから面積は縮小するけれども他の付加価値の高い作物を導入して農家所得を上げる、農業経営改善するという兼業農家の方々も認定対象になるわけでございまして、それぞれが共存共栄を図るような仕組みに持っていかなくちゃいけないというふうに思っているわけでございます。  同時に、もう高齢でとても農業をやっていられないという方々、土地持ちの非農家と言っていますが、この数も今七十六万戸ぐらいがさらにこれからふえていくと思うのですが、こういう方々も地代収入の上に年金を加えて生活を維持してもらうわけでございますが、その村々でいろいろな役割分担をしてもらうということで、村のコミュニティーの運営発展の役割分担をしてもらうということになっているわけでございまして、認定農家が選別とかということではございません。認定農家になりますと、流動化とかあるいはその他の面で一定の制度のメリットを受けることは事実でございますが、そのほかの特別な差別とかいうことはあるわけではございませんでして、全体として地域ぐるみでコミュニティーを活性化させていくということが大事じゃないかというふうに考えているわけでございます。
  85. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今構造改善局長からお答えいただいたわけですけれども、まさに今お話しのとおり、それぞれの地域の中に、実際的には稲作だけの専業、これは日本全国で見たときに、やっている地域というのは市町村ごとに考えた場合はそんなに多くはない、こう思うわけですね。そうすると、将来的に育成すべき経営体、稲作中心あるいは稲作を中心としながらその他の作物を複合的にするにしても、現在それぞれの立場でやっておられる方々が、ある方々はほかの花卉とか園芸とかに変更し、ある方々はまさに米を中心にするというふうに変わっていかなければならない。そういう意味で、新政策というものあるいは今回の基盤三法というものが、農家、農民の方々に本当に大きな変更というんですか、従来とは違う立場をあるいは迫っていくんだと思うのです。  それが、さっき出たように、果たしてこの新政策のPRの問題も、あるいはどういう法案の内容なのかということも、農民の方々が、現場の方々がどうなのかわからない、言われてみないとわからないみたいな状況の中で今進めていることは確かにどうなのかなという疑問を持ちますし、また、今私たちがこうして議論している内容にしても、果たして今局長がお答えいただいたように、地域の人ごとに、じゃ、あそこは後継ぎのいる農家だから、あそこに優秀な人がいそうだから、あそこに米の部分は集中的にやってもらいましょうということができるのかどうか。また、これができなければ、ある意味では十万なり五万なり、十五万の個別的経営体の育成ということは絵にかいたにすぎないということになるんではないのか。  つまり、個別的経営体を育成しようと言うんだけれども、果たしてそんなにうまく、それぞれ割り振りをしながらそういう人たちが出てくるのかな、こういう心配をするわけですが、その点については、今お答えになったのかもしれませんけれども、どういうふうに判断をなさっておられるのか、もう一度お伺いをしたいと思います。
  86. 入澤肇

    入澤政府委員 まさに、仕組みをつくってもその中身が充実しなければ絵にかいたもちでございまして、やはり中身を充実させるためには、これからいろいろな政策を展開しなければいかぬと思いますが、そのかなめになるのは運動論だと思うのです。具体的に目標を定めまして、運動の目標ですから、その目標を定めまして、それを実現していくために農協、農業委員会、普及員等の農業関係者が打って一丸となってそういう農家層をつくっていく、あるいはその地域農業活性化させていくという運動を展開しなければいかぬと思います。  その一つの仕組みとしまして、予算措置ではございますけれども、全市町村に市町村構造政策推進会議がございますが、その中に新しく営農指導センターというのを予算をとって設けまして、そしてそこに行けば、あるいはそこの人が出張って農家に行って経営指導それから技術指導、場合によってはマーケティングの指導もできるような仕組みに変えていきたいというふうに思っているわけでございます。
  87. 倉田栄喜

    ○倉田委員 要は、今それぞれの農村農業地域というものがある。それぞれ農業を営まれておる。これが、ある意味では土地を流動化し、あるいはそれぞれの作物もだれがどのようなものをつくるんだろうということについては、やはりそれぞれその地域ごとのまさに合意というものがきちんとできないと、そしてまた合意ができるだけの人というものがそこにいなければ、どうしても絵にかいたままだな、計画だけだな、法案だけになってしまうのではないのかということを心配をするわけです。その農業地域あるいは農村が果たしてそこのところをしっかりたえられるのかどうか。また、それぞれ市町村ごとにしっかりそめ合意をつくるために話し合いをしてください、こういうふうに言うわけですけれども、今局長お答えいただいたのは、話し合いの仕組みは市町村あるいは農協、農業従事者、この辺の人たちでやるということですか。
  88. 入澤肇

    入澤政府委員 農協、農業委員会、市町村はもちろんでございますが、場合によっては、その地域にいろいろな、引退はしているけれども農家がいらっしゃれば篤農家の意見も聞きますし、中小企業の経営者やあるいは農産物の流通、販売、加工に携わっている人たちの意見も聞いて指導するということにしたいと思っているわけでございます。
  89. 倉田栄喜

    ○倉田委員 どういう会議体というのか、その参加メンバーをどういうふうにやっていくのか、これも非常に大きな関心事項だと思いますので、それも早急に示されることを要求をしておきたいと思います。  同時に、確かにそれぞれ組織的経営体が他産業並みの労働時間で他産業並みの生涯所得、そういう経営体がうまくできたとして、果たしてそれで地域全体の集落の維持というものが可能なのかどうか、あるいはその地域全体の生産性というものがどうなっていくのか。個別的経営体は、確かに、若い人たちが自分たちもああいう農業ができるんだったらやりたいと、魅力ある人たちがですね。非常にうまくいっている農業経営体がそれぞれ地域に何軒か、何戸数かできたとしても、その地域集落がうまくいかなければどうしようもないし、また、その地域集落全体として農業生産というものが高まっていかなければどうしようもないわけですね。  確かに、農水省は今回新政策の中で、稲作についてはともかく若い人たちが魅力を持って、夢を持って入ってこれるようにそのモデルケースを想定をされたと思うのですけれども地域集落をどう考えるか、あるいは地域生産性自体をどう上げるか、この点についてはいま一つ明確ではないのではないかという気がしてなりません。それはもう一面、私たちが今農業問題をいろいろなところで展開をするときに、農業の持っている多面的な機能ということをよく議論をするわけです。治山治水、環境、国土の保全、そういう面で農業は非常に多面的な機能を有しているのですよ、こういう議論をするわけですけれども、今回の新政策の中で、今まで農業が果たしてきた多面的機能を維持する主体ということについては余り触れていないのではないのか、こういう心配というか、こういう問題点があるのではないのか、こう思うのです。  そこで、今私ちょっとがたがた申し上げましたのでわかりにくくなってしまったと思いますけれども、要約して二点だけ言いますと、地域生産性を高める、地域集落としての農業生産を高める、あるいは地域集落の維持を考えるということをするとするならば、個別的経営体の育成と同時に、それ以外のいわゆる現在の農業従事者、あるいは認定農業者まではいかないけれども農業を続けようとする方々、あるいは高齢者であるかもしれないし、もう高年齢になって農業に入ってくる人たちかもしれないし、あるいは女性がもっと農業に参加してくるケースかもしれない。こういう方々の役割というのは今回の新政策の中でどのように位置づけられておるのか、この点と、そして、農業の多面的機能、これを果たすためにはもっと多くの主体が必要だ、担い手が必要だ、こういうふうに考えるわけですが、この点についてはどういうお考えなのか、これをお伺いしたいと思います。
  90. 田名部匡省

    田名部国務大臣 この新政策では効率的、安定的な経営体の育成、それが生産の大宗を担うというために農業構造の実現をしなければいかぬということが大命題でありまして、今お話しのように、議論を伺っておって、全国これ全部違いますので、どこでどういうことをやろうかという指針というか、議論の段階でも、どこを念頭に置いて議論するかというと、全く違っているわけですね。例えば、二種兼業の多い、働く場所の多いところは、もう現にそれで生活が十分できておるというところもあります。しかし、この人たちもやがて、十年後は一体どうなるのか、あるいは今やっている人たちでも大体六十とか六十五歳、この人たちが十年後はもう七十五歳というときに一体どうなるかということを想定して、今からもうこの改革を始めていかないとなかなか難しいということが、どうしても私たちの心配のポイントになっているわけであります。そういう中で地域農業生産を担う意欲的な経営体というものを育成しておこうということでありまして、地域農業生産農地利用が縮小し、あるいは地域社会の活力が低下する、その結果として、国土でありますとか自然環境保全といった、そういう多面的なものが今度はだめになっていくわけですから、これは何としても防止しなければいかぬ。  そこで、いろいろなことを言ってみても、所得がやはりある程度のものにならないと、担い手といってもなかなかそこに農業をやろうとしないので、現状では規模がどうしても零細で、どんなに頑張ってもだめだということになりますので、規模を大きくしたい。しかし、そこには高齢農家もおれば兼業農家もおるし、それはそれでいいと思うのです。これは育成していかなければいかぬ。あるいは御婦人の皆さん、六〇%おるわけですから、これをどういうふうに位置づけて、むしろ責任といいますか、みんなが認めて位置づけをしっかりしてあげる、明確にしてあげるということも私は大事なことであろう、こう思うわけであります。  いずれにしても、本年一月の農政審議会の報告でも、同様の考え方に立った具体策のあり方を提言いただいておりまして、今後この報告などを踏まえながら、各般の施策を展開していく。その中で魅力ある農業農村確立していきたい。つまるところ、最終的には農家の皆さんが自分の実態、現状を把握して、自分のところはどうなっていくのだろう、これならば私はこういう選択をしていかなければだめだというところが私は最大のポイントであろうと思うのですね。これは、我々が幾らこうですよ、ああですよと言っても、農家の皆さん自身が十年、十五年の先を見通して、そしてどうしようかという考え方に立っていただかないと、それはおっしゃるとおり絵にかいたもちになると思うのです。そこのところを理解をしてもらう。  そのために、局長先ほどから、これは運動なんです、本当にそうだなと思っていただかないと、これはなかなか、私は嫌だというところにやろうといってもこれは進まぬわけでありますし、また、そういうところもあると思うのです。それはそれで十分何かで生活できていっているわけですから、それはそれで、嫌なものまで私ども何か一つの型にはめようという気はございません。どうぞいろいろ多様に考えて……。  もう一つども考えたのは、稲作の場合ですと、十アール当たり四十何時間、どんなに働いても一年間を通じて働くという状態にないわけですね。そうすると、いろいろなことをやりながら一年間ずっと働ける、そんな環境もつくりながら、そしてやはり意欲を持ってやっていただければということですから、それは、できるできないということは、これはまた、あります。ですから、地域の実情に応じて創意と工夫の中でこれはやっていただくしかないわけでありますから、しかし、個別にいろいろな問題はきちっと指導したり助言したりということをしていきたい、こう考えております。
  91. 倉田栄喜

    ○倉田委員 大臣の答えを聞いておりながら、どうもよくわからなかったところがあるのですけれども、要するに、確かに農家の方々が自発的に、意欲的に、自分たちがその地域集落の中でどういうふうにこの地域、この農業というのをやっていくんだ、これを持っていただくことが第一だということは、それは私もそのとおりだと理解をできるのです。  しかし、今私たちがここで議論をしておることは、例えば農水省の、今のこの農業三法にしても、こういう個別的経営体、こういう農家農業者というのをつくっていくんだ、これは一つの指針として、今ここでやっているわけでしょう。だけれども、それ以外の部分、それだけでは、例えば稲作に関して言えば、個別的経営体部分だけでは、その地域、あるいは地域集落の維持ということはできませんよ。例えば稲作を中心とする大規模稲作農家、この人たちだけで、現在の地域集落における水の管理であるとかあるいは畦畔の管理であるとか、こういうのが今まで多くの人数がかってやってきた、それを機械化ではっとやることで、水の管理とか畦畔の管理が果たしてできるんだろうか、こういう問題指摘もされているわけです。  そうだとすれば、やはり今の地域農業が果たしている機能的な多種多様な役割、これを維持するためには、個別的経営体の人たちだけ、そういう担い手だけでは結局だめなんだろう。だから、それ以外の人たちにも、ではそれ以外の人たちは農業の中でどういう役割、どういう位置づけを与えられているんですか、これを農水省としてどのようにお考えになっているんでしょうか、こうお尋ねをしたわけです。その点について、大臣がもし、いや、それはそれぞれの農業を自発的にやっていかれようとするならば、それはその方々が意欲を持って創意工夫をしてやってください、こういうのであれば、一方で組織的経営体を育成しようというこの政策と、ちょっと落差があり過ぎるのではないですか。  要するに、農水省が関与するのはやめまして、みんな自由にやってくださいよというのだったら、それは個別的に、意欲的に、自由にできることをやってくださいというのだったら、全体そうであるのならいいんですけれども、やはりそれでは大変難しい問題があるわけだから、魅力のある農業にするために、後継者が自分たちも農業をやりたいな、こういうふうに持っていけるために、いわゆるモデル的な農家農業を育てようとしているわけでしょう。だけれども、やはりそれだけではだめなんだという意識があるとすれば、それだけでは現在の農業農村集落維持というのは難しいんですよという意識があるのであるとすれば、それ以外の方々に対しては、農水省としてはどういうお考えを持っていらっしゃるのでしょうか、こういうことをお尋ねしたわけでございます。
  92. 入澤肇

    入澤政府委員 今大臣が答弁されましたのは、地域の実態に応じて、個別経営体を育成するところもあれば、地域ぐるみでの農業振興をとるところもあるというようなこと、要約すればそういうことじゃないかと思うのですけれども、全くそのとおりでございまして、地域の実態に応じて、個別農家をどんどん育成していくという条件に恵まれたところは、そのような誘導政策をとりたいと思っています。それからまた、どうもそういうことじゃなくて、集落営農の方がこの地域にはマッチするということであれば、集落営農という方法をとるような政策メニューも、現に予算として用意してありますから、そういうものを適用して、その地域農業生産を振興させていきたい。  そういう場合に、どうも地域の実態を見ますと、農協がリーダーシップをとって集落営農をやっているところもありますれば、あるいは生産組織をつくってやっているところもありますれば、いろいろな状態があるわけですね。それぞれに税制、金融、予算、それぞれの面でバックアップシステムができているわけでございます。  ですから、地域の実態に応じまして、個別経営農家、生産組織だけでなくて、集落営農あるいは地域ぐるみの集団的な取り組みというものを十分に評価していかなくちゃいけないんじゃないかというふうに思っているわけでございます。
  93. 田名部匡省

    田名部国務大臣 国の支援できるというのは、今局長からもいろいろお話がありましたが、国全体を見て、どういう農業をやろうかというと、税制だ、金融だ、いろいろな制度、そういうものであろうと思うのです。ですから、具体的に私もいろいろな優良事例のところをずっと見ておりますと、全部違います。  特に、農林中金等が資金の要請を受けたときなんかはきちっと、経費が幾らかかって、どういう状態になるか、それによってあと二十アールふやしていく、こうすれば三人で働いて十分収入が上がりますとか、そういうことを現にやって、また意欲的にやっているところもあります。あるいは、規模がどうしても小さくて、どこかに働きながらやっているところもある。あるいはお年寄りで、大変な農地を持って夫婦でやっているところもあるわけですが、この人たちもいつまでもそういう規模の大きい農地を自分でやれるかというと限度がある。ですから、年金と、あるいは土地を幾らか、二十アールなり三十アールは自分たちお年寄りで夫婦でやる、あとはその地代をもらう。そうして、そこで何かを生産して、それでもまだ収入がある。  農家の場合には、定年というのが幸いないものですから、そういう面ではやり方によっては、ですからどういうふうに組み合わせるかというのは、何といってもやはりここで個別的にできませんけれども、そういうのは創意と工夫の中で、そうして自分はその中におって、じゃ、どういうところでやっていくか、それから御婦人の方々はどういう分野を分担していくか、いろいろな組み合わせ方があると思うのです。  ですから私どもは、一律にこうやればいいんだということではなくて、集落ごと、個別経営体ごとに、農協とかいろいろな方が間に入って、そうして機械はこうした方がいい、借りた方がいい、買った方がいい、委託でやった方がいい、いろいろなやり方を計算して、とにかく今よりもいい方法は何だろうかということで御相談をいただきたい。私どもはそれに対して支援をしていきたい。モデルもつくっていろいろやってもらって、そうしてそれを見てもらうことも大事だ、こう考えておるわけであります。
  94. 倉田栄喜

    ○倉田委員 大臣お話は大体理解ができました。  ただ、もうちょっと私の言いたいことを補足させていただきますと、要するに個別的経営体にしても組織的経営体としても、いわゆる産業あるいは農業としての業の担い手をどうするかという視点は、確かに稲作については将来展望を示されているし、稲作以外の畜産とか花卉園芸についてはこれから示されるのであろう、こう思いますが、大臣よく、魅力のある農業、それから魅力のある農村、この集落の問題も言われているわけでございます。この集落担い手ということについては、まだまだ農水省の方からきちんとしたものが示されていないのではないか。その集落担い手のところに、もっと高齢者もあり、女性もあり、もっといろいろな形の多種多様な、いわゆるモデルとは言わないまでも、今大臣がお答えになった創意と工夫の中でそれなりに農業に参加されておられる方々もなくては、農業の持っている多面的な機能もまた果たされていかないだろうし、もっと細かく言ってしまえば、水の管理も畦畔の管理もできなくなってしまうおそれがあるのだから、この点もきちっとスポットを当てて施策を講じる必要があるのではないのか、この点を申し上げたかったわけでございます。  そこで、この点はおわかりいただけたと思いますので、次の問題に移りたいと思います。  今回の改正の中で、いわゆる農業生産法人の組織の拡充がされております。構成員の範囲の拡大も定められているわけでございますが、その中で「政令で定めるもの」こういうふうに書いてございますが、この政令で定めるものというのは、具体的にどのようなものを予定されておられるのか、お聞きしたいと思います。
  95. 入澤肇

    入澤政府委員 農業生産法人の要件の改正の中で、構成員の範囲の拡大につきまして二つ政令に委任しております。一つは、農業生産法人から「法人の事業に係る物資の供給若しくは役務の提供を受ける者」であって政令で定めるもの、もう一つが「法人の事業の円滑化に寄与する者であって、政令で定めるもの」というふうになっております。  この場合の政令におきましては、最初の「法人の事業に係る物資の供給若しくは役務の提供を受ける者」については、法人の事業に係る物資の供給または役務の提供を継続的に受ける個人に限定する。具体的には、産直をやっている個人であるとか、あるいは農作業の委託を受けている個人だとか、そういうふうな人に限定いたします。それからもう一つは「法人の事業の円滑化に寄与する者」については、法人の事業に係る特許の供与、新商品または新技術の開発及び提供等の契約を締結する者に限定して定めます。これは法人が予定されます。  以上でございます。
  96. 倉田栄喜

    ○倉田委員 ここのところが、企業の農業参入の是非の問題として議論をされておられるところだと思いますが、もういろいろお答えもいただいております。そこで、この問題については一点だけちょっと確認をさせていただきたいと思います。  いわゆる株式会社、その株式会社の問題については、さらに検討をする必要があるという方向であろうというふうに聞いておりますけれども、この株式会社の参入の是非についてはどういうお考えなのか、確認をしたいと思います。
  97. 入澤肇

    入澤政府委員 株式会社が一般的に農地を取得して農業経営をやるということは、今回も農地法の改正やっておりませんし、認めるつもりはございません。  では、農業生産法人の一形態として株式会社を認めることができるかどうかということも、今回農政審議会等におきましても議論になりましたし、我々もこの法案の作成過程で議論いたしましたけれども、やはりそれもいろいろ問題があるということで、現行の農協法に基づく農事組合法人それから有限会社、合名会社、合資会社の四形態を堅持するということにしたわけでございまして、農業生産法人としても株式会社を認めるというぐあいにしなかったわけでございます。これからの扱いも、現にそのようなことで十分検討してこの法案を提案しておりますので、その方向でいきたいと思っております。  農業生産法人の要件の緩和によって、新技術の提供とか特許の提供とかを行っている企業が構成員として助言する立場で資本参加するということはあっても、具体的に農地を持って経営をやるとか、あるいはその経営権を奪うとか、そういうことはないように二重、三重にチェックシステムがありますから、そういうことは心配ないと私は考えております。
  98. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今回、農業生産法人の構成員の範囲が拡大された、これが今後どういうふうになっていくのかどうか。農地取得ということについて、例えばその農地使用のあり方について、無秩序な農地使用、そういう心配がないのかどうか。この辺も含めて、現在の農業生産法人の現状、そしてこれがこれだけ構成員が拡大されたときにどういうふうになっていくと見通しをされておられるのかどうか。  同時に、そしてこのことが農業協同組合法あるいは農地法と整合性を果たして持っているんだろうか。例えば農業基本法ができて以来、自作農主義というのが言われているわけですけれども、この辺の整合性を持てるのかどうか、この点については農水省はどのようにお考えになっているんでしょうか。
  99. 入澤肇

    入澤政府委員 今回の農業生産法人の要件の緩和をする場合におきましても、基本的に問題になりましたのは、今御指摘になった農地法の耕作者主義ということでございます。これはいささかも変更するつもりはないわけでございます。  したがいまして、その枠組みの中でいろいろな要件を定めるわけでございますが、農業生産法人につきましては、農地制度上、農業経営を行うために農地の取得が認められる法人であるということで、現行制度上も、農地を取得する際には定款及び要件の具備を証する書面の添付、それからすべての農地を耕作すること、それから取得する農地効率的に耕作すること等の確認、それから許可時において農業経営の実施状況を報告する旨の条件を付す、こういうふうなことによりまして、農業生産法人の要件具備及び投機目的による農地取得でないことをチェックしております。  それからまた、農地を取得した後においてどういうふうな要件を課しているかといいますと、許可条件に基づく報告、それから農業生産法人台帳の作成、それから補正による要件の確認を行うとともに、要件を変えた場合には、農地法第十五条の二の規定に基づきまして一定期間内に是正措置を講じさせることとしておりまして、それでも是正しない場合には、その法人の所有する農地を国が買収するという方法を定められておりまして、この要件の維持によりまして、農業生産法人が農地法の耕作者主義の原則に反しないように指導をしているわけでございます。  さらに、今回、農業生産法人の要件の改正によりまして、この制度が悪用されないようにするために、現行の今申し上げましたような要件のチェックに合わせまして、事業内容、構成員の状況など、法人要件の具備につきましても報告する旨の条件を付するということ、それから農業生産法人台帳を毎年補正して、要件具備について常時チェックすることを追加するということにしているわけでございます。  それからまた、今度は農業生産法人が所有している農地を転用する場合には、当然のことながら農地法第四条または第五条の規定によりまして、都道府県知事または農林水産大臣の許可を受ける必要がございまして、今回の農業生産法人の構成要件の緩和が、こういうような二重、三重のチェックシステムによりまして無秩序な農地転用につながるものではないというふうに考えております。
  100. 倉田栄喜

    ○倉田委員 農業生産法人の構成員の具体の問題、づまり事業の円滑化に寄与する、こういうことで認められているんだと思いますけれども、今お答えもいただきましたけれども、基本的には企業の資本参加という形が認められている、この資本参加がいわゆる経営支配にならないようにするために、それはやはり十分な経営指導というものが必要になってくるのだろうと思いますし、今お答えいただいたそれぞれのチェックというものを十分に機能させていただかないと、資本参加が経営支配につながっていくおそれもなしとは言えないと思いますので、この点は特に要望をしておきたいと思います。  それから、今、生産法人のことをお尋ねいたしましたけれども、いわゆる組織的経営体、個別的経営体の問題含めて、農業担い手として法人化の問題があるんだと思います。これは家族農業経営についても、例えばその経営管理面を充実強化するために、必要に応じて一戸一法人化、こういうことも言われているわけでございますが、農水省としては、これは基本的には組織的経営体も個別的経営体も、あるいは自立的経営農家もある意味では一戸一法人ということで、法人化については促進をさせる、あるいはその法人化を活性化させる、こういう政策方向を持っておられるというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  101. 入澤肇

    入澤政府委員 農業担い手の議論は、これは非常に本質的な議論でございますけれども、欧米各国も含めまして、やはり家族農業経営というのが基本でございます。その家族農業経営が基本でございますが、そういう中で一戸一法人とかいって、法人の持っているメリットを十分に享受して経営をやるという家族農業経営もあるわけでございます。  私どもが法人化を進めるということは、経営マインドを持って経営計算をきちんとやった農家層を広範につくっていきたい、そのためには法人の持っているメリットというものを十分に享受できるようなことが必要ではないか、その一つの手段として法人化というものを挙げているのでございまして、一戸一法人ということも強制的に進めるわけじゃございませんし、家族農業経営のままでも、労働条件改善だとか、あるいは家産と資産の分離とか、経営と生活の分離とか、そういうことをきちんとやる農家があれば、それはそれでいいと思うのです。しかし、法人化ということがきっかけとなって、刺激となってそういうふうな農業経営の近代化が進むというふうに私ども理解しておりまして、その意味におきまして、法人化を推進したいというふうに考えているわけでございます。
  102. 倉田栄喜

    ○倉田委員 その法人化、一戸一法人化という形で家族経営をされておられる方が法人化されていく、あるいは共同で法人化をされる場合もあるんだと思うのですが、例えば相続の場合、午前中、三代続いたら農地がなくなりますよみたいな議論がありましたけれども、法人ということになってしまえば、これは結局相続ということは起こらないわけですから相続税の問題は発生しない、同時に、相続問題が発生しないわけだから、今自作農家に与えられている農地相続の特例措置というのも考える必要はない、こういうふうになるんだと思いますが、その辺のメリット、デメリットについてはどんなお考えでしょうか。  同時に、農家自体の法人化がどんなふうに進んでいくのだろうか、その展望もお持ちであれば、あわせてお示しください。
  103. 入澤肇

    入澤政府委員 家族経営の多くが家計と経営が分離していない、経営的視野からみずからの営農を評価して、これを経営発展につなげていくという素地が形成されていない、あるいは家庭内の労働関係が明確でなく、休日や給料制の仕組みの欠如がある、労働条件の面での立ちおくれがある、あるいは後継者問題や相続の際の家産の分割問題等、こういうものがありまして、要するに法人の方がいいのじゃないかというふうなことがあるわけでございます。  法人形態によりますと、今度は逆に、経営が切り離されまして経営に関する経理が明確になる、それから経営管理能力とかさらには資金調達能力あるいは取引信用力が向上する、それから構成員に相続が発生した場合であっても法人としての農業経営には影響がない、これは一つのメリットでございますが、そのために経営が安定的に継続できる、さらに雇用、労働関係の明確化と社会保険などの適用によって雇用労働者の福祉の増進が見られる、あるいは新規就農者がところによっては確保が容易になるのではないかというふうなことも指摘されております。  こういうふうに、法人化によりましてメリットもあるわけでございますが、相続税に関しましては、これは今先生御指摘のとおりに、農地を法人に売り渡している場合には、その構成員について相続税は問題とならないわけですね。それから農地を貸し付けている場合、一般の農家農地を貸し付けている場合と同様に農地の相続税が課されるわけであります。それから農地を出資した場合にも、出資に伴い、持ち分に対して相続税が課されるということでございまして、法人に農地を貸し付けている場合や法人に農地を出資している場合には、相続税の納税猶予制度の適用を受けられないことになります。この点は、法人化した場合のデメリットというのでしょうか、農家の持っている納税猶予措置の適用がないということでございますけれども、ただ、農地を出資していることによって相続問題が起きない、相続による経営の縮小の問題が起きないという非常に大きなメリットがあるということも、やはり相当考慮に入れなければいけないのではないかと思います。  それから、農業生産法人の展望でございますけれども農業生産法人は、昭和三十年代末から四十年代の後半にかけましてたくさん設立されまして、その数は、昭和四十九年に減少した後横ばいを続けまして、最近はやや増加傾向にありますが、平成三年一月時点で三千七百四十八法人となっております。その組織形態は、有限会社が五八%、約六割、農事組合法人が四一%、約四割で、合名、合資会社は極めて少ないということであります。作物別には、畜産が千五百八法人と最も多くて、その他が続いていますが、米麦作とか果樹等でございます。  今回、農業生産法人の要件の緩和によりまして、この数はもっとふえていくのじゃないかと思います。現に、まだ法案ができないうちから、法人化ということが新政策の大きな目玉の一つであるというふうなことが全国各地に伝わっておりまして、日本農業新聞などを読んでおりますと、各地で法人化の研究会というのが持たれているようでございます。その意味におきましては、この法人が数がふえていくのじゃないかというふうに展望しておりますが、幾つになるということは申し上げることはでさません。
  104. 倉田栄喜

    ○倉田委員 次に、今主体の問題をお伺いしたわけですけれども農地土地の方についてお尋ねをしたいと思います。  この土地の問題については、大きな視点からいけば、土地のいわゆる流動化という今までできなかったものが、果たして今回の新政策で計画どおりうまくできるのだろうか。現在も、農地については耕作権の強い保護の中にあるわけですね。例えば手放すときは離作料とかそういう問題も出てくるでしょうし、そしてまた、その農地自体の持っている資産保有的傾向というのは、なおまた生きているのだと思うのです。そういう状況の中で、果たして農地がうまく流動化していくのだろうか、今回の新政策というのは流動化するためにどんな具体策を用意しておられるのか、これを確認の意味で、まず最初にお伺いをしておきたいと思います。
  105. 入澤肇

    入澤政府委員 過去十年間の農地流動化の実績を見ますと七十一万ヘクタールくらいございました。それに有償の所有権移転の交換等、それから利用権の再設定なんかを含めますと、十年間で九十万ヘクタール流動化しております。我が国農地面積五百万ヘクタールでございますから、九十万ヘクタール、非常に大きな数字でございます。  これが今後十年間にどのくらいふえていくかというふうなお尋ねでして、我々試算しているわけでございますが、跡取りのいない高齢農家の持っている農地が四十二万ヘクタール、それから安定兼業農家の所有している農地が百三万ヘクタール、この人たちはいずれだれか担い手農地を結びっけないとその土地利用することはできないわけでございますから、農地を結びつけるということを考えますと、今までの二、三倍の百七十四、五万ヘクタールぐらいは流動化するのじゃないかなというふうに見ているわけでございます。  したがいまして、農地の流動化に対する政策を従来以上に強化するということが必要ではないかということでございまして、第一には、現在、農地法の第三条ただし書きに何行がで農地保有合理化事業のことを書いておりますけれども、これをきちんと法律上位置づけなければいけないということで、農業経営基盤強化法の中に農地保有合理化事業のことにつきましてきちんと位置づけたわけでございます。  さらに、農地保有合理化事業につきまして、従来の農地の売買とか貸借だけではなくて、農業生産法人に出資して農業生産法人を育成していく事業であるとか、あるいは農地等の売り渡し信託の事業であるとか、あるいは研修の事業等、経営面も含めて農地保有合理化事業というのを強化するというふうにしているわけでございます。その他、農地法の規制の緩和等も含めまして、流動化対策を強化するということにしているわけでございます。
  106. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今局長から農地保有合理化法人のお話がありました。これは、今回、例えば農地法三条の許可制から、この場合は届け出制に変更をする、それから農地保有合理化促進事業の事業内容を拡大をする、こういうことであると思うのですが、現在における農地保有合理化促進事業の事業実績、これはどういうふうになっておりますか。
  107. 入澤肇

    入澤政府委員 農地保有合理化促進事業というのは、規模縮小農家等から農地を買い入れまたは借り入れて、一定期間中間的に保有した後に、規模拡大農家に再配分する事業であります。  事業実施主体としては、従来は、都道府県農業公社、市町村農協だけだったのですけれども、昨年市町村農業公社も加えまして、四種類になりました。  そして、その実績を見ますと、昭和四十五年の事業発足以降、ほとんどが都道府県農業公社によるものでございます。これまでの累計でいいますと、農用地で十六万二千ヘクタールを買い入れまして、三万四千ヘクタールを借り入れて、これを十六万四千戸の担い手農家に再配分しております。公社の数で見ますと、昭和四十五年以降体制の整ったところから順次事業を開始いたしておりまして、平成三年には全都道府県に公社が設立されております。  それから、市町村段階の農地保有合理化促進事業につきましても、平成元年以降、市町村段階の農地保有合理化法人の有する土地利用調整機能に着目いたしまして積極的に推進するということで、特に農協につきましては、三年の未現在で二百二十三の農協が資格を保有し、うち八十八の農協が事業を行っており、毎年大幅な伸びを示しているところでございます。
  108. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それから、農地保有合理化法人ですけれども、今回、研修等の事業を行うことができるようになっている。この問題については午前中も質問が出ておりましたけれども、研修を行うことができるようになったとして、そのスタッフというか要員は、この農地保有合理化法人の中でちゃんと対応ができるのかどうか。これは午前中予算の問題がありましたけれども、スタッフの問題、できるのかどうか。  それから同時に、これは基本的な視点ですけれども、結局、農地保有合理化法人の研修事業というのは、実質上当該法人がみずから農業経営を行うことにほかならないのではないのか。そうすると、いわゆる農地保有合理化法人の中には例えば農協も参加できるわけですが、農協自体は本来は農業経営を行うことは組合員と競合関係になるからできない。しかし、農協がこの農地保有合理化法人の中に入っていって実質的に農業経営を行うということになってしまうとすれば、これは農協の構成員の利害とぶつかることになりはしないのかどうか、これは農地法、農業協同組合法の法体系から見て果たして整合性があるものと言えるのかどうか、こういう指摘もあり得るかと思います。この点についてはどういうふうに考えておられますか。
  109. 入澤肇

    入澤政府委員 前半の研修、農地保有合理化法人の研修のことにつきまして、まず私から申し上げます。  新規就農者につきましては、退職してから生活本拠を移転する、それから栽培、経営技術を習得させる、そして農地を取得して就農といった一連のプロセスを経なければいけない。当然のことながら多額の設備投資を必要としますし、お金もかかるわけでございます。  そこで、今回の法案では、農地保有合理化法人が中間的に保有する農用地等を積極的に活用して、これら新規就農者の実践的な研修を図ることを助長できないかということで、農地保有合理化事業の一環として、この研修事業というものを創設することにしたわけでございます。  具体的な実施方法としては、新規就農者は研修の終了後に農地の買い入れまたは買い入れを前提として研修を開始しますけれども、研修期間中は法人の職員として雇用される場合、あるいは農協の職員として雇用される場合もあります。そのようにして生活の安定がまず確保されなければいけないと思っております。  それから、研修内容につきましては、一部で農協だとか農業公社でも実施しているのでございますけれども、栽培経営技術に関しては県農業改良普及所の普及員だとか、あるいは農協営農指導員の指導を受けたり、あるいは地域農業事情に精通した農業者のもとで実践的に研修を行うなど、県、農協、地域挙げて指導をする仕組みをつくっていきたいと思っております。  その経費の面でございますけれども、補助金としましては幾つか用意しておりまして、例えば若い農業者入植促進事業であるとか青年農業者育成確保推進事業であるとか、あるいは畜産経営担い生育成総合対策事業とか、それぞれ、最初の事業は平成五年度予算一億六千四百万、それから二番の青年農業者の育成事業五億六百万、それから畜産の経営担い手四億二千八百万、こんな予算をとっておりますので、こういう予算を使いながら研修の実を挙げていきたいというふうに考えているわけでございます。
  110. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 後段の、農協が農地保有合理化事業といたしまして農業経営を行うこと、この問題についてお答えを申し上げます。  御案内のとおり、農協は農民の相互扶助のための協同組織でございまして、農協みずからが組合員の事業と直接競合するおそれのある農業経営を行うことは望ましくないのではないか、こういう意見があることは我々も承知をいたしております。  しかしながら、農村地域におきます高齢化あるいは担い手不足等、労働需給が変化をしております。そういう中で、農業担い手がいない場合に農地保有合理化法人たる農協が中間保有をしております農地利用いたしまして、御指摘新規就農者に研修を行うために行う農業経営でございますとか、あるいは産地形成のためのモデル経営等、農協みずからが農業経営を行うことがその地域農業振興のために望ましいという場合もあるわけでございます。  また、このような場合には、将来的には担い手農業者に引き継ぐという農地保有合理化事業の一環として行われるものでございますし、さらに組合員の多数の同意を得て行われる農業経営でございますので、組合の本旨に反するというよりは、むしろ結果的に組合員全体の利益に合致するというふうなことでございますので、農協の目的でございます農業生産力の増大に役立つことになる、こういうふうに考えられるわけでございます。  そういうふうな趣旨に合致するものといたしまして、農地保有合理化事業として行われるものであること、さらには組合員の三分の二以上の書面による同意を必要とすること。三番目の条件といたしまして、常時従事者の三分の一以上は組合員または組合員と同一の世帯に属するものであること。さらに、農業経営規程を作成し行政庁の承認を得ること。こういうふうな要件を満たす場合には、農協の農業経営を認めて地域農業の振興を図っていくことが適当であろう、そういう考え方に基づいてやっておるわけでございます。
  111. 倉田栄喜

    ○倉田委員 農協自身農業経営に参加することについては従来からさまざまな議論がある中で、今局長に御答弁いただいたその要件の枠組みの中でやっているんだ、こういうことでございました。  また、一方においては、確かに地域担い手がいないということであれば、もっと農協自身が積極的に、組合員の意に反しないのであれば農業経営に参加していってもいいのではないのか、こういう議論も私はあってもいいんだろう、こういうふうに思います。  同時に、今農協の問題で、これは全国的にどのくらいあるのか私も調べてみたのですが、ちょっとわからなかったのですが、農協自身農家の方々から農地を担保にとっておられる。これは相当数あるんだろうと思うのです。この農協が担保にとっておられる農地、これが今回の流動化政策土地を集めようというときに一つの障害になり得る可能性もあるのではないのか。実際に農協合併を進める中で、農地を担保にとっておって清算することができないという状況もあり得るのだと思うのですね。農協が担保にとっておられる農地、この点について農水省はどういうふうに把握しておられるのかどうかわかりませんけれども、把握しておられる状況、あるいは農地流動化を進める上で、担保がついている農地がネックにならないのかどうか、この辺はどういう認識をお持ちでしょうか。
  112. 入澤肇

    入澤政府委員 農協がどのくらい農地を担保にとっているか、法律的には抵当権を設定しているかということにつきましては、申しわけありませんけれども、その実態を把握しておりません。  ただ、抵当権つき農地につきましては、場合にょってはそれを売り渡すことが事実上困難な場合もありますけれども、今まで我々が地域で聞いている限りにおきましては、賃貸借だとかあるいは農作業の受委託による流動化を図る上で、抵当権が付されているということは特に支障になっていない。売買をする場合には支障になるけれども、最近の流動化の大宗は利用権の設定だとか経営の受委託でございますから、その意味におきまして特に支障になってはいないというふうに理解しております。
  113. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それから、いわゆる耕作放棄地が増大をしているという状況があるわけですけれども耕作放棄地利用ということに関してはどんなふうに考えておられるのか。また、その耕作放棄地の対策はどんなお考えですか。
  114. 入澤肇

    入澤政府委員 年々、中山間地域、あるいは都市近郊の、ある意味では優良な農業地域耕作放棄地がふえているということで、私ども頭を痛めているところでございます。  その原因としては、中山間地域では過疎化あるいは高齢化、労働力不足、それから圃場条件の未整備等が原因になっております。都市近郊では、農業をするよりも、ほっておいて他に転用した方がいいんじゃないかというふうな、資産の価格上昇の期待というふうなものが原因となって耕作放棄地になっているのではないかと思われます。  従来から、制度的には、この耕作放棄地を解消するために、現憲法下におきましてかなりぎりぎりの制度を用意しておるわけでございます。一つは、農用地利用増進法に基づく遊休農地に関する措置、それからまた、農振法に基づく特定利用権の制度等々あるのですけれども、なかなか発動要件が厳しくてうまく運用されてないという面もございますけれども、制度論的にはきちんと担保措置ができておるわけでございます。  しかし、大事なことは、中山間地域の実態なんかを見ますと、圃場条件をきちっと整備をする、要するに、農業生産基盤をきちんと整備するということが耕作放棄を防ぐ最大の理由じゃないかというふうに指摘されておりますので、今回私どももそのようなことを主内容として、土地基盤整備を進めていきたいというふうに考えているわけでございます。  これからの利用方法でございますが、今度の中山間地域の法律におきましては、都道府県が所有権移転等計画をつくりますが、そのねらいはあくまでも中山間地域の不利な条件のもとで最適な土地利用計画をつくってもらうのだ、最適農業的な土地利用計画をつくってもらって、その中でどのような作物をどのように作付したら所得が上がるか、経営改善されるかということを考えていくということでございまして、そういう観点から営農指導を徹底していきたいというふうに思っております。  そういう場合に、先ほどお話ございました集落営農的な方法をとる場合もございますし、農協や市町村公社が農地を借り受けて、当面必要に応じて耕作しながら、適切に管理して担い手に引き継いでいくというような手法を講ずる場合もあるとは思います。いろいろな方法を講じまして、農地として利用することが適当な農地につきましては耕作放棄をさせない、させている農地農地に復元してきちんと利用するという仕組みを考えていきたいと思っております。
  115. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それでは、時間がもう大分なくなってきましたので、最後に、方法論といいますか、これは農業機械化促進法の一部を改正する機械化の問題を中心にしてお伺いをしたいと思うのですが、いわゆる中山間地域あるいは条件不利地域、ここを機械化するということはなかなか難しいのだろう、この不利地域はなかなか機械化というのはできないのではないか、こういうふうに一方で思います。  というのは、今回の法案の中で、例えば、従来稲作を中心にやってこられた農業機械化というものを、野菜とかそういう園芸作物についても機械化の導入を図っていこう、こういうことだと思うのですけれども機械化をするということは、栽培方法というのを一定にしなければ機械を導入するということは難しいのじゃないのか。例えばそれは、畝の高さにしても、幅の広さにしても、一つの同じ様式があって初めて機械化が図られる、こういうことになると思うのですが、実際にはそれぞれの地域、例えば特に中山間地域においては気候、風土、それぞれに違うから、栽培についてはそれぞれの工夫があるのだと思うのです。温度とか風とがそれぞれの状況によって畝の幅も高さもそれぞれ違ったものに現実にはなっているのだろうと思うのですけれども、そういう状況を踏まえて、果たして画一化された栽培様式をもとにしたいわば機械化の導入が図れるのだろうか、こういう疑問を持つわけですが、この点についてはどのようにお考えになっておられますか。
  116. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 ただいま先生お話しのように、特に野菜というようなものにつきましては、栽培様式の統一というようなものも図りながら機械化を進めていこうというふうに考えておるところでございますが、中山間地のようなところでは、地理上もいろいろそういうことが困難であるということが当然予想されるところでございます。  我々といたしましては、先ほども構造改善局長からお話がございましたように、農道であるとかあるいは圃場整備とか、そういった基盤整備というものはできるだけやっていただくということになりますが、そういう中でも、やはりできるだけ必要な農業機械の開発ということも考えていかなければいけないと思っております。そのときには、先ほど申し上げましたような統一化した栽培様式ということでは難しかろうというふうに思っております。  したがいまして、中山間向き機械の開発ということで現在考えておりますのは、特にローカルにそれぞれトンカチ屋さんといいますか、メーカー、機械屋さんがいるわけでありますが、そういうところと都道府県の試験研究機関が協力いたしまして、いわゆる既存の農業機械を改良するという形での対応というものを一つ考えたいということで、現在そういったものに対する助成というものも考えておるところでございます。  それで、特にそのほか、そうではなくてもう少し汎用性があるというようなもの、例えば、地域特産物を含めました複数の作物に利用が可能となるような汎用機械については、これは生研機構においても十分開発、研究ができるわけですから、そういうこともあわせて進めていきたい、こんなふうに思っております。
  117. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それからもう一点、農業経営費に占める農機具代ですけれども、これは増加傾向にあるわけです。平成二年度は農業所得に対して一七・一%、十九万九千円の農機具購入費になっておりますし、平成三年度でいけばもっとこれはふえていると思うのですね。今回、新しい農業機械が開発をされていくときに、ますます農家に対して農機具費の負担の増加ということにならないかどうか。現在でも農家の方々にとっていわゆる機械化貧乏という言葉があるわけですけれども、高性能機械の導入はこれに拍車をかけてしまうのではないのかという心配もするわけですが、この点は農水省としてはどんなふうにお考えになっておられますか。
  118. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 ひところ、特に米価のときを中心にいたしまして、機械化貧乏といいますか、そういう言葉で随分いろいろと問題になったのでございますが、最近におきますと、その辺の農機具費につきましては、やや横ばいぐらいじゃないかというふうに我々は理解をしておるところでございます。しかしながら、依然として経営費の中に占める地位は、米価で言えば三割、今度統計の調査がちょっと変わりましたので、それで見ても二割というようなことで大きな地位を占めておりますので、我々もその節減ということは重要な問題というふうに意識しておるわけでございます。  今回の改正の審議をお願いしておりますこの法律の中におきましても、国あるいは都道府県が農業機械の効果的な導入に必要な条件を定める基本方針あるいは導入計画を作成しておるところでございまして、これに基づきまして、それぞれの農家経営状況あるいは利用規模に応じた適正な導入が図れるように、普及などの組織を通じまして指導を徹底していきたいというふうに思っております。  また、機械利用のあり方といたしましても、我々いろいろな形での共同利用というようなことも進めてまいっておりますし、また農業機械銀行方式によりまして、農作業の受委託あるいは機械利用の調整を進めるほか、今回新たに農業機械の賃貸、いわゆるリース、レンタルと言っておりますが、そういうような方式なども推進いたしまして、農業機械効率利用を一層推進してまいりたいというふうに思っております。
  119. 倉田栄喜

    ○倉田委員 新しい農業機械の導入は、農家のいわゆる機械化貧乏と言われる言葉に拍車をかけるというふうにはならないようにしていただきたいと思いますし、そこで農家の方々にはいいものが安く手に入るような状況も農水省としてきちんと指導していただきたい、こう思うのですね。  例えば、今の農業機械の流通経路ですけれども、系統系と商系と二つの系統がそれぞれ大体五〇%近くずつになっているのでしょうか。そこで、この点もいろいろな議論があるのだと思うのですけれども、系統と商系、きちんといわゆる競争原理が働くような今仕組みになっているのかどうか、この点について農水省はどんな御認識なのか。またいずれ議論をさせていただくといたしまして、この認識だけ簡単にお伺いをしておきたいと思います。
  120. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 農業機械につきましては、今先生がお話しのように農協系統と商人系で、農家販売段階でのシェアは五〇対五〇というような状況になっております。  したがいまして、まず農協と商業者間の一つの競争というのがここにあるわけでございますし、それから、特に農業機械の場合には、それぞれメーカーごとに販売店が系列化されておりまして、その系列ごとでの競争というものも展開されておるわけでございますので、我々といたしましては、農家としてはこういう競争原理が展開されている中で、機能あるいは品質面あるいは価格面から見て自分で選択をしていくという条件はそれなりに整えられているのではないかと思っております。
  121. 倉田栄喜

    ○倉田委員 同じものであればできるだけそれは安く購入できた方が農家にとったはいいわけですから、今お答えいただいたように農家の選択の自由がきちっと保障される、これは非常に大切なことだと思いますので、この点、特にまたよろしくお願いしたいと思います。  もう時間がなくなってしまいましたけれども、最後に農水大臣にお伺いをいたします。  いわゆる今回の新政策で、環境保全型農業ということも位置づけられております。この環境保全型農業というのは一体何なのか。一方で効率性、安定性、これを追求する中で、環境保全型農業というものがどんなふうに位置づけられているのか、この辺どうもはっきりいたしません。農水大臣として、この環境保全型農業は、一方で効率性、安定性を追求する中でどんなふうに位置づけておられるわけですか。最後にお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  122. 田名部匡省

    田名部国務大臣 なかなか両方うまくやるということは難しいことでありますけれども、しかし何といっても農家の皆さんにとっては、所得が低ければ後継者としてやろうという意欲は出てこないということ、これはまあおわかりいただけると思うのでありますが、それはそれとして我々全力を挙げて取り組むと。  しかし、もともと農業というのは環境を守ってきた産業であります。ですから、放棄地でありますとか担い手がいなくて荒れ果てるということがむしろ環境保全のためには非常にマイナスだということからすると、農業振興を図って農地をしっかりと引き継いで、そうして環境というものをあわせて守っていくということが大事なことだ、こう私は思っております。  それで、環境という場合にはもっと広義の意味があると思うのですよね。農業だけの環境もありますし、それ以外にも、環境庁がやっているような環境という意味での環境もあります。私ども環境という場合には、例えば農薬でありますとか肥料でありますとかそういうものは極力少なくする、あるいは農薬を使わない農業というものを進めていくということで、地球に優しい農業といいますか環境、それがまた人間の健康にも非常にいいという形のものを進めていかなければならぬ。あるいは森林もあります。あるいは治山治水、そうしたものも環境保全のためにはいろいろあるわけでありまして、これは各省庁と十分連携をとりながらやっていかなきゃいかぬことでありますが、いずれにしても、私どもといたしましては、農産物の単収や品質の低下を伴わず、環境への負荷の一層の軽減に努めていくという分野で全力を尽くしていかなきゃいかぬというふうに考えております。
  123. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今大臣農業環境を守ってきた、こういう側面からの御答弁をいただいたわけですけれども、また、今後も環境を守っていかなければいけない、こういうお話でございました。  一方で、農業農業経済合理性を追求してくる中で、例えば大規模化あるいは単作化あるいは化学化、機械化等によって、土壌に対する肥料あるいは農薬の大量投入、こういうことによって農業環境破壊しているのではないか、こういう指摘もされているわけでございます。  そういう中において、いわゆる環境保全型農業というのはもっときめ細かく位置づけられていくとすれば、これは今やっている農業のあり方自体にも、そして同時に、この中で安全性ということももっと前面に出てくるとすれば、農業価格政策にも当然影響してこざるを得ないのだろう。きのうの参考人お話の中にも、もしこの問題を論ずるのであれば、農業を生産者の面からだけではなくて消費者の面からも考えてほしい、こういうお話がございました。これは食糧というものが単純に安ければいいということではなくて、いかに安全なものを提供できるかというそういう議論をしていただきたいのだという趣旨ではなかったのかと私は思っております。  そういう意味で、この環境保全型農業というのを農業生産性の面にもっと位置づけていただきたい、こう要望して、私の質問を終わります。
  124. 平沼赳夫

    平沼委員長 鉢呂吉雄君。
  125. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、昨日、本会議農業白書に対する質問をさせていただきました。それと関連して、まず最初に大臣にお伺いをいたします。  新政策でも、国境措置については一定の国境措置を貿易関係でつけるということについて御質問をいたしました。それに対して、あくまでも関税化の例外、こういうことを求めて交渉していくという大臣の答弁であったというふうに思います。  それと関連いたしまして、私は四月の十四日にもここで大臣見解を求めました。コンニャク等のいろいろ輸入制限の農産物全体ができるかというようなことで外務大臣が発言したというような感触もあって、あのテレビ発言の翌日には意思統一をした、でん粉、乳製品等の十一条二項(c)のいわゆる国内で生産調整しているものについては輸入制限をすることができるということの明確化に向けて意思統一をしている、閣内統一しているという御答弁であったというふうに思います。  昨日の武藤外務大臣の御答弁、農業団体等々の話を聞いて慎重に対応する、慎重という言葉を二回使われましたけれども、私はこれまでのでん粉、乳製品等についての政府の見解と、これはかけ離れたものであるというふうに認識せざるを得ません。再質問ができませんから、我が党の方で外務委員会等で質疑をしていきますけれども、農水大臣は、閣内統一はあの答弁でされておるというふうに認識をしておるかどうか、まずもって答弁願いたいと思います。
  126. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私もきのうの本会議場での答弁を聞いておりまして、あの外務大臣就任のときの認識といいますか、米というものについては格別の重要性があるという認識があったと思うのでありますが、しかし、農業交渉における我が国を取り巻く困難な状況に言及しておることは間違いないと思うのですが、その後、今委員お話しのように、農業団体からいろいろとお話を伺って、これはもう従来の基本方針どおりいかなきゃいかぬ。  一つ一つの言葉でどうだったかというと、私もそれを確認したわけでもありませんので、ここで明確にお答えできないのでありますが、この発言の後に、私は閣議の前にお会いして、私も一応確認しました。いろいろちょっと自分が考え違いしておったこともあって、農林大臣の言うとおり今後はきちっと対応する、こういうことでありましたので、その後のことについては、もうあらゆる場でお答えしておるとおりだと私は理解しております。
  127. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 この間に至る経過ではなくて、まさにきのう本会議で、大臣も聞いていたと思いますけれども、従来の日本の乳製品等についての基本的な考えを踏襲していくという言葉は一切ありませんでした。慎重に対処していくということは、どういうことなんですか。
  128. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 委員も御指摘のように、我が国のウルグアイ・ラウンドに対する交渉方針、こういうものは閣内で意思統一をして交渉をやってきておるわけでございます。我々の方針としては、いつもここで御答弁申し上げておりますように、米のような基礎的な食糧や、国内で生産調整を行っている農産物については包括的関税化の例外とする、こういうふうな方針のもとで交渉しておるという状況については、現在も変わっておらないわけでございます。
  129. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 きのうは本会議の答弁でありますから、私はやはり閣内統一をせよということは前回四月十四日の質問でもしておりますから、これはやはり大臣、きちんとしたお答えをちょうだいしたいというふうに思います。
  130. 田名部匡省

    田名部国務大臣 閣内はきちっと統一をいたしております。  ただ、言われる言葉、どこかの一言といいますな言葉じりをとらえてそれはどうかというのは、私に尋ねられても私もお答えできませんが、統一していることだけは間違いございません。ですから、きのうの答弁、慎重にというのはどういうことだったのかと言われると、どういうことだったのかということは明確に私が答えるわけにはまいりませんが、いずれにしても、閣内で包括関税化受け入れられないということで統一していることは間違いございません。
  131. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は何も言葉じりをとらえて言っているわけではありません。私は、あのような発言については、従来の日本の対応と全く違う、断固受け入れるわけにはいかない、外務大臣見解を示せ、そういうふうに言ったわけです。それに対する答弁として、慎重に対処する、これだけですね。この前にはつきましたよ、いろいろ、慎重にという言葉をもう一度使って。それと従来の日本の方針とは全く相入れないものではありませんか。明確にしてください。
  132. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 昨日、鉢呂委員が本会議で総理に対しても御質問をされております。総理が答えた中に、これまでの基本方針のもとにというふうな言葉が入っておりますし、閣内でそういう、先ほど私が御答弁申し上げましたような方針のもとにやっておるというふうなことは間違いないわけでございますので、念のため補足させていただきます。
  133. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、乳製品等の問題について外務大臣にしか聞いておりません。ですから、これはこの場では私は前回も質問していますからきちんとした答えが出るだろうというふうに思っていましたけれども、今回も農水大臣、きょうも出ません。外務大臣にどう言ったかというようなことの発言もさっきありましたから、きちんと、これはまた次回いつか質問することがあると思いますので、私も外務委員会の方にはそういう形でやりたいと思っています。  これは大変な大きな問題です。それでなくても、この間随分マスコミは、関税化で妥協の方向に走った。いやそんなことはない、そういう外国からの訴えはあったけれども、そんなことはない、断固として基本的な方針は変わっておりませんと言ってきておりますけれども、あの外務大臣の発言は、そういう基本方針と相入れない。言葉じりでないですよ。きのうの本会議での発言、答弁ですから。  これはきょうも新聞にもう既に出ていますから、私も北海道から電話が来ていますし、日本農業新聞ですけれども、外務大臣について、本会議で慎重に対処する、そういうふうに書いてあります。私は、それ以上の答えはなかったから、そのとおりです、そういう答えでした。  慎重に対処するというのは、この期に及んでの答弁ではないというふうに思いますから、時間がもったいないからあれですけれども、これは委員長にも頼んでおきますけれども、こんな問題でああいう発言をしてもらったら困るわけでありますから、次回の答弁のときには、きちんとした外務大臣とすり合わせた答弁をしていただきたい。
  134. 田名部匡省

    田名部国務大臣 所管の私がはっきりと毎回申し上げておりますので、そのことを信頼をしていただきたいと思うのですが、いずれにしても、そういう疑念があれば、私からも外務大臣に再度申し上げたい、こう思うのであります。
  135. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は何も言葉じりを言っておるわけではありません。ですから、そのことはきちんと閣内で明確にし、対外的にも明らかにしておいていただきたいというふうに思います。  それでは次に移りますけれども、新政策、皆さんそれぞれ御質問しておりますから、一点だけ伺います。  いわゆる構造政策と農産物の生産者価格の問題について、農水省はどのように考えているのか。
  136. 上野博史

    上野(博)政府委員 この構造政策と生産者価格関係、どういうふうにとらえるかという、若干幅のある御質問がという気もいたしますけれども、今度の新政策経営体の育成を図っていく、できるだけ土地利用権を集積をしまして規模の大きい経営体をつくっていく、それによってコストの引き下げも図っていくという考え方をしているわけでございます。  一方で、価格政策の方につきましては、現在の価格政策の基本的な考え方を変えるという状況にはないというふうに思っておるわけでございまして、価格政策の基本的な考え方とすれば、それは生産費をもとにいたしまして、農業生産、再生産が続けられていく。それに需給事情等の経済事情を加味するということはあるわけでございますけれども、そういう考え方である。  両者を一緒にして考えますと、大きな経営規模経営体が育ってまいる、それによってコストが下がってくる、そうすれば、価格政策の面にそれはコストとして反映してくるということはあることはあろう、そういう考え方だろうというふうに思うわけでございます。  ただ、何回もお答えを申し上げておりますように、そういうコストと価格関係が十分タイムラグを持って、生産者の方に無理にならないような関係考えられていかなければならないであろうというふうに考えているわけでございます。
  137. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 次に移りますけれども経営基盤強化法、この中の目的、あるいはまた基本方針、基本構想、さまざまなところで農業経営のあり得べき目標の姿として、「効率的かつ安定的」という言葉が入っております。これがすべてであるのか、その辺についてお伺いをいたしたいと思います。
  138. 入澤肇

    入澤政府委員 すべてであるかどうか、その意味がちょっとわからないのですけれども効率的、安定的といいますのは、経営マインド企業マインドを持って農業経営をやるということを意味しているのでございまして、いわゆる効率一辺倒ということじゃございません。  農業経営基盤強化法は、これは構造政策のあり方をいろいろな角度から見直して、そして流動化とか農地保有合理化事業の内容を強化する、それから経営マインドを持った農業経営体を広範に育成していくということをねらっているのでございまして、これは効率一辺倒という言葉で評価するのは私は当たってないと思いますし、効率的、安定的という言葉は、先ほど申しましたように、企業マインド経営マインドを持った経営ということでございます。
  139. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 ちょっと答弁がわからなかったので、もう一度、一番最後の方、ちょっとお伺いしたいのですけれども
  140. 入澤肇

    入澤政府委員 効率的、安定的な経営体というのは、ある意味では、別の言葉で言えばプロの農業者ということでございます。農業産業として自己主張させるためにはやはりプロの担い手が必要だ。プロの担い手とは何か。この法律では、結局効率的、安定的な経営体、または解説的にいいますと望ましい経営体というふうに言っていますけれども、これは別の言葉で言えば、経営マインド企業マインドを持って農業経営改善をして、我が国農業生産担い手として自己主張する農家ということでございます。
  141. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 問題は、この法律については、国が基本方針なり基本構想にかかわるという部分法律を見る限りは出てきません。したがいまして、この「効率的かつ安定的」がすべてのものを物語るわけで、今の局長の話によりますと、プロといいますか企業的なマインドを持った経営形態ということなわけでありますけれども、そのことは、どこかこの法律条項に出てくるわけでありますか。
  142. 入澤肇

    入澤政府委員 効率的、安定的経営体という言葉を解説するとそういうことでございまして、その解説を法律の中でやっているわけではございません。
  143. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 実は、我々この法律の条項を見ますと、「効率的かつ安定的」しか出てきません。しかし、昨年の六月に発表された新政策は、稲作経営については十から二十、あるいは一千八百時間から二千時間の労働時間、あるいは生涯所得というような形が出てきますけれども、これを要するに、市町村なり都道府県が立てる方針なり構想にどのように反映をさせていくのか、あるいは反映をさせない、全く自主的な形でいくのか、この辺の関係法律的あるいは政令、省令、通達でどのように補完をするのかしないのか、この辺をお答え願いたいと思います。
  144. 入澤肇

    入澤政府委員 新政策の文章の中では、一つの試算としまして、稲作につきまして十ないし二十ヘクタールの農家層を育成していくんだ、つくっていくんだというふうなことを試算したわけでございます。  なぜそういう試算をしたかと申しますと、先ほどから申しますように、農業が何か非常に三Kの象徴のような職業じゃないか、なかなか魅力がない、そういう雰囲気のもとではどんな政策をやっても、農業農村は明るくならない。いろいろなマイナスの数字が並べ立てられているわけですね。耕作放棄地が増大した、新規就農者が少ない、あるいは高齢者が多い、そういうふうな現象を打破するためには、ここで思い切って局面の打開を図らなくてはいけない。そのためには農業農村が復権する決意を明らかにして目標を設定することが必要じゃないかということで、農業が職業として選択するに値する魅力のあるものとするにはどうしたらいいかということで、みんなで考えたわけでございます。  そのためにひとつ、各方面から、農水省は一向に展望を出さないとか目標も示さないで、やれことしは生産調整をふやす、今度は減らすとか、さっきもNO政、英語のノー政だなんというような言葉がありましたけれども、そんな批判があるわけでございます。私は、農政官僚として腹立たしく、いらいらしておるわけでございます。そういう雰囲気のもとで、何とかしてここで起死回生の一打を打ちたいということで、農業生産についてきちんと目標を出したらどうかということでございます。  その目標についてどういう視点から考えたかといいますと、生涯所得の安定、労働条件、労働時間、この三つの面で他産業と遜色のない数字が並べられれば、これは農業を職業としてひとつ選択しようじゃないかという機運が盛り上がってくるのじゃないかということで目標として出したわけなんです。運動の目標でございます。しかし、これは法律で具体的に定めるような話じゃございません。国のいろいろな政策体系の中で、一つの農水省の目標として新政策の文章に出しましたけれども法律で全国の沖縄から北海道まで、亜熱帯から亜寒帯まで多様な農業が展開されている日本状況の中では、法律一つの指標を示すというのはなかなか難しい。これは各都道府県の実態に合わせて農政をやっていくことがまさに必要でございますから、都道府県以下のレベルで定めることが必要じゃないかということでございまして、都道府県で基本方針を定め、それから市町村で基本構想をつくるというふうにしたわけでございまして、国がいろいろな指導はいたしますけれども、押しつけ的に上から法律的な強制力あるいは法律的な明文の規定をもってそういうことを示すのは妥当でないということで、法律にはあらわれていないのでございます。
  145. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今の局長の話によりますと、目標あるいは試算であって押しつけるものでないということでありますから、これはまさに市町村なり都道府県の自主的な主体的な判断で、これらの構想なり方針をつくる、あるいは営農類型をつくるというふうなことで確認をさせていただきたいと思います。  農村を回っていますと、あの六月の十町から二十町、そういうものが出ましたから、もう十町に何だかんだいくだろう、そういう施策にすべて農政が集約をされる。北海道でもなかなか十町から二十町というのは至難のわざでありまして、我々はそれができない者はやめるのかという声が非常に強いのですね。ただ、従来型からいきますとさまざまな計画があります。酪農肉牛近代化計画とかさまざまなものがありますけれども、それは法律も通達もありませんけれども、国が一定の方向を示す。例えば今、個別経営体が十五万戸だとか組織経営体が二万戸だとか、そうするとそれがもういわゆる現地市町村の段階まで全部張りつくという形をどうしてもこれまで想定するわけでありますから、そういうことが今後一切ないというふうなことを確認させていただきたいと思います。  同時に、「効率的かつ安定的」というふうなことですべての農業経営目標を言葉として言っているわけでありますけれども、やはりこれは従来型の発想だという視点ほどうしてもぬぐえない。それは局長はいろいろなさまざまた言葉を弄しますけれども、今日の農業経営からいっても、例えばこれは専業農業という、先ほど言いました企業マインドでというような形もあるかもわかりませんけれども、しかし局長が言うように、それは複合経営があってもいいし、さまざまな経営があるのだということでありますから、やはりこれは法律事項としては、これはこれとしていいかもわかりませんけれども、しかしそのほかのもっと言うべきことは、地域の自主的な、地域それぞれの特性に応じた農業形態はやはりそういうような法律事項としていかなければ、私は言葉足らずだろうというふうに思いますけれども、この点についていかがでしょうか。
  146. 入澤肇

    入澤政府委員 稲作につきまして、新政策では十とか二十とかいうふうに出しました。これは単一経営でやって、生涯所得で毎年、例えば三十年で割って均衡するような所得を得るためにはそのくらいの規模が必要になるのじゃないか、そういうところもあるということでございますが、同時に私ども、あの数字を出すときに都道府県に、ひとつ各都道府県ごとにその都道府県の平均的な生涯所得、例えば二億から二億五千万の中で毎年で換算すると、例えばここに福島県の例があるのですけれども、大体七百万ぐらいでございますが、そのくらいの所得を得るためにはどういう経営をやったらどうかというのを試算してみてくれと。四十九都道府県のうち四十数県が試算して、それぞれ目標を持っています。その実態を見ますと、かなり現実的でございます。  例えば、福島県の例でいいますと、会津平たん地域では、作物別に水稲三ヘクタール、それにイチゴ〇・二、メロン〇・一ヘクタール加えて、そして三人ぐらいの労働力でやると七百万ぐらいの所得が得られるというふうなこと。それから、これは中通り、中山間地域、阿武隈南部、それぞれの地域ごとに作物と面積それから労働力、生産量、そういうものを試算いたしまして目標を出しておりますが、そういうことをねらっているのでございまして、地域の実態に応じてこういう目標をつくっていくということを、もう一回確認させていただきます。  それから、効率的、安定的というのは、今までなかったというか、むしろ今までなさ過ぎたというふうな嫌いがあると私は思うのです。やはり経営マインドを持って経営農家生活、これを分離する。今多くの農家で、例えば複式簿記をつけて青色申告するような農家がどのくらいあるかといえば、非常に少ない。むしろ経営マインドを持って税金の申告をするような農家層を広範に育成していくということが必要じゃないかというふうに私ども考えておりまして、効率的、安定的ということは今までにあったのじゃなくて、まさに今日的な大きな課題じゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  147. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そのことについては見解が異なりますけれども、時間がありませんから、次に進みます。  次に、第四条二項四号の農地保有合理化法人の活動の拡充内容であります。  一つは、研修事業を行うことができるようになっておりますけれども、これについては、新規就農者のほかに、一定の制限を設けて農業後継者をこの研修事業に入れることができないかどうか、これがまず一点です。  それからもう一つは、先ほど来お話も出ておりますけれども、この研修事業について、国が一定の支援をすることができる道を早急に開くべきである。先ほども話がありましたけれども、農協あるいは農地保有合理化法人が保有する農地を使って行うということでありますが、これは研修、指導する場合にもいろいろな設備あるいは人件費等も非常にかかるわけですし、あるいはまた農協の職員にしてこれを行うとか、さまざまなことがお話ありましたが、やはりこれは農協等の組織にとっても非常に大変な問題であります、この研修事業あるいは農業経営という観点からとらえても。そうでありますから、ぜひとも国の一定の支援の道を開くべきである。  この二点について、まずお伺いいたします。
  148. 入澤肇

    入澤政府委員 まず、今度の研修事業でございますが、ここはまさに農地保有合理化事業の基本的な性格を変えた事業でございます。従来は、農地の売買あるいは貸し借りという物理的な、ハード的な面に着目した事業でありましたけれども、これからは経営マインドを持った経営体を育成していくんだ、その一助として農地保有合理化事業を使うんだということで、農地保有合理化事業に改めて研修事業ということを加えたわけでございます。  その対象として、今先生御指摘のとおり、新規就農者だけじゃなくて、農業後継者ももちろん対象にして、農地保有合理化法人の持っている、中間保有している農地で研修することも考えております。それに必要な経費につきましては、農地保有合理化法人がその研修をやる場合には、現在農地保有合理化法人にさまざまな形で一般会計あるいは特別会計で助成がなされておりますけれども、その範囲内でやる。  それからまた、農協に就職させて、農協から賃金をもらって、それでその農地保有合理化事業の枠組みの中で、農地保有合理化法人の資格を持っている農協がその中間保有農地利用して研修をする場合等々につきましては、先ほど申しましたけれども、各局で若手の育成のための経営指導費の予算をとっておりますので、そういう予算を駆使しながらやっていきたい。その予算は、一定の資材を購入したり、あるいは指導者に対する謝金を払ったりという予算でございます。  一般的に、この研修につきまして、賃金を払えというふうなことは、今の財政の枠組みの中でなかなか難しい。私ども、いろいろな努力はいたしますけれども、かなり難しいというふうに考えております。
  149. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 北海道でも、最近は、例えば農業会議がやっております青年人材銀行、この就農研修等の相談は非常にあるんですね。去年あたり、平成四年度で七百四十二件、しかし実際に就農する方は非常に少ない、決定する方が。去年で新規就農前の実習者というのが五名、体験実習者というのが二百二十一名、これは女性が百八十六名ということで、花嫁の関係もあって、こういうことの体験実習をやっておるんですけれども、いずれにいたしましても、非常に少ないわけです。  これはもちろん、一番大きなのは資金的な問題が大きいわけです。非常にリスクが大きい。これを担保するものがないんですね。相当の金額を自己資本で持っていれば別ですけれども、そうは大きなものを持っていないということですから、この辺が非常にネックになって、農業会議はただあっせんするだけですから、実際これをすべてを持つのは農協等の関係が、日常的な取引も出てくるわけですから、そういう意味では私は、しかも非常にそれだけ意欲がありますから、成功する度合いは高いと思います、いろいろ今までリース牧場方式だとか入っておりますけれども。しかし、必ずしも成功するかはわかりませんから、二の足を踏む。  そういう面で、こういう研修機関、研修事業があるということは非常に有意義ですけれども、この際にも、研修者の生活費ですとかそういうものが問題になってくるわけで、北海道でも農協等では、みずから地方自治体を交えて、これらのものについてさまざまな助成の道を開いておる。浜中町農協ですとか、そういうところはやっておるのですけれども、やはりこれに対して国が一定の支援をする。地財措置でもいいのですからこれを支援措置をする。先ほど言ったいろいろな事業はわかっていますけれども、なかなかそこまでは行っていないわけですから、そのことを道を開いてほしい。  時間がありませんから、中山間と特定農山法の法律と関連して言いますけれども、いわゆる耕作放棄地についても、この保有合理化法人が取得をする。現在の合理化法人は中間保有の形でありますけれども、これは売り先がない放棄地のようなところもいわゆる地財措置で、あの、ことしから発足します公有林といいますか森林を公有地として取得する、しかもそれを管理するという道を林業の段階は開いたわけでありますから、ぜひこれは農地段階に適用しなければならない時点だろう。私は、そういう努力は、農水省、水面下ではしておるというふうに思いますけれども、その辺どういうふうに考えておるのか、どこにその問題点があるのか。
  150. 入澤肇

    入澤政府委員 耕作放棄地を防ぐために、いろいろな努力を今までもやっているわけでございます。制度的には、先ほども申し上げましたけれども、農用地利用増進法に基づく遊休農地に関する措置、あるいは農振法に基づく特定利用権の措置、あるいは、やはり基本的に問題なのは基盤整備をやるということだし、それからまた、簡易な土地条件整備する、生活環境整備するということが必要でございます。  そういうふうなことをやって、耕作放棄地を少なくする努力はいたしますけれども、現に耕作放棄地になっているところの農地をこれからどのように利用していくかということ、その仕組みの一つといたしまして、農地保有合理化法人が耕作放棄地を買って、そして農地として手直しをして、それを農業経営を継続する人あるいはその経営拡大する人に譲り渡したり貸したりなんかしていくという仕組みは、今回の農地保有合理化事業の中でもやるようになっていますので、そういう既存の武器をフルに使って、耕作放棄地の解消に努力していきたいと考えております。
  151. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そういう道もあるのですけれども、あくまでもこれは高率助成とはいいながら受益者負担、自己負担が伴うということで、それだけの受益者、いわゆる耕作放棄地の所有者といいますか、意欲の低下しておる農業者にそれをやる意欲がない、基盤整備をやる意欲がない、そのことが非常にネックになっておるわけですから、そういう負担についても、角度を変えて、森林の公有地のような形の取得にまで地財措置をきちんととるべきである。このことについては、やはり早急に実現をすることを求められておるのじゃないか。  今回、福井県に行ったときにも、中山間でも第二種兼業で農外所得が大幅にあるところは、それなりに農外所得の資金で土地改良をやるのですけれども、就業先がない、本当に辺境地といいますか、そういうところの基盤整備はなかなか進まないということを、行政の首長さんもお話をしておりました。そういう点で、やはりもっと大胆に、公共事業並みといいますか、そういう形の中から、利用料金の中で、利用する段階でそれを負担していく、利用者が土地改良のかかった資金というものを負担していく、それもできる範囲でというふうな形でやることが必要でないかというふうに思います。  今農地の集積がなかなかいかない原因、私は二つあると思います。一つは、北海道で多いのですけれども、やはり農地を取得する――北海道価格が下落したといっても、現在の米の価格等でいけば非常に高い。そのことが、農地を取得した負債といいますか、経営にとっての問題がネックになっておる。  例えば北海道の南幌町は、水田面積が町内全部合わせても平均十町以上になっております。むしろその辺が苦しいわけで、しかも、土地改良をすることによって莫大な受益者負担があるという形で、大変な状況になっておる。一方でまた、先般福井県に行ったときにも、法人格にはしておりませんけれども、二十三戸で三十四町ぐらいの大きな共同経営をやっておりました。そこで一番のネックは、確かに労働時間も下がりますから直接生産費は下がるのでありますけれども、ほとんどが土地持ち非農家といいますか、土地持ち、農地持ちの提供している農家が、非常に資産価値があるものですから、それの見返りの地代相当分を求めてくる。やはりその農地を法人できちっと借りを安定して行うということになると、どうしても莫大な地代になる。形は変わりますけれども、これは出資配当という形も。そういう点で、非常に経営が不安定になっておる。  この法案のいろいろな事業を見ましても、やはり日本農地価格の大変な高水準がネックになって、あるいは流動しないという面もあるかもわかりませんけれども、取得しても、あるいは借りてもそのことが非常に大きなネックになって、農水省が考えている方向を阻害していく一つの大きな原因であろう。  このことについて、地代論なり農地の資産価値の高いことについて、農水省はどういうふうに打開をしていくのか、御答弁願いたいと思います。
  152. 入澤肇

    入澤政府委員 確かに、大規模にやっているところでいろいろな問題があると思います。  一つの方法といたしまして、例えば北海道のように大規模にやっているところで農家の負担金を軽減する方法といたしまして、農地保有合理化事業で無利子資金を借りて、これは五年ないし十年無利子で借りて、経営が安定してテークオフできるなどいう段階になりましたら農林公庫の三分五厘資金を借りる。そうしますと、三十五年で二分ぐらいに計算されます。こんなことを既に何年か前からやっていまして、一番活用しているのは北海道でございます。そういうふうないろいろな資金の組み合わせ、農地保有合理化事業と農林公庫資金の組み合わせ等によりまして、全体としての格差の軽減を図るというふうなことをやっております。  それからまた、土地改良事業につきましても、前々から説明していますように、大規模に区画整理をするような場合には、従来の圃場整備事業の上に上乗せした補助率の事業で採択する。さらに、いろいろ重ね合わせて土地改良事業をやっている場合の負担金の軽減対策としまして、計画償還の制度であるとか、あるいは一千億の基金を五年で造成して、それを取り崩しながら利子補給をして負担金の軽減を図るとか、いろいろなことをやっていまして、私どももいろいろな制約のもとで農家の負担金対策、負債対策について関心を持って努力しているということは御理解いただきたいと思います。
  153. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 この問題は、簡単には解決がつかないと思います。経営にとっては、いわゆる地代といいますか小作料といいますか、これが非常に圧迫要因になっていく。これは集積すればするほどそういう形があらわれる。先ほど言ったように不安定な形になっています。  同時に、今局長は、北海道はそういう担い手確保あるいは農地保有合理化の確保事業等を有効に活用している、五ないし十年の猶予期間を持ってと。まさに北海道は今は逆の場面があらわれてきていまして、買った当初、農地保有合理化法人が所有した段階の価格よりも、五年たって大幅に農地価格が下落をしておる、近傍類地の現評価ではまさに半分以下にもなっておるということで、この農地保有合理化法人の事業が大変ネックになってきております。したがいまして、五年後ないし十年後に引き受け手を確定しなければ、なかなかこの事業をやれない。この事業の本旨は違うのですけれども、そういう形になっております。  いずれにしても、五年後、十年後にそういう農地価格が下落するということは、農業をやる方にとっては非常にいいのですけれども、しかし、このことが非常にネックになって、県農業開発公社が有効に活用し得ていかない。やはりここは、そういうものについては国が一定の支援をする、農地売買差損に対して支援をするという道をとるべきではないかと思います。  それから、時間がありませんからまとめて聞きますけれども農地税制の改善であります。  農地保有合理化法人の場合でも、平成三年度の北海道の一件当たりの平均の買い入れ金額も一千四百十七万五千円ですから、面積で六・三ヘクタール、大変大規模なのですね。しかし、いわゆる譲渡所得の特別控除というのは八百万そのままでありますから、私は、こういうことではなかなか法人へ、農地保有合理化法人も含めてでありますけれども、移行していかない。何とか農地譲渡所得特別控除の八百万というものを一千五百万なり二千万なり、税制上の措置をする必要があるということを強く求めたい。  あわせて、やはり贈与税、相続税の納税猶予制度。これが、農業生産法人も含めてでありますけれども、現物出資をした場合には猶予措置が切れるということでありますから、これは何としても早急に国税当局とけりをつけて、このことがなければなかなか進まないということは、もう皆さん御承知のとおりだと思いますから、このことを実現していただきたい。  この三つについてお伺いをいたします。
  154. 入澤肇

    入澤政府委員 最初の、農地価格が下落している状況のもとでの農地の取得、農業経営をどうするかという問題でございます。  私ども北海道の方々からそういう実情を聞きながら、何か工夫はないかということで考え出したのが、今回農地保有合理化事業の中に位置づけました農地の売り渡し信託事業でございます。  これは、農地価格が下がったようなときに売り渡し信託を引き受ける。大体農地価格が下がっていますと、農地保有合理化法人が、買って差損ができては困るからということで買わないのです。しかし、そうなると離農したり規模を縮小したりして、農家対策にもとるところがあるということで、売り渡し信託制度を設けまして、契約時に時価の七割をあらかじめ信託の売り渡し契約者に無利子で融資する。そして、農地保有合理化法人が時間をかけながら売り先を見つけて決済をするというふうな仕組みを考えたわけでございます。これは一つの工夫であります。売買差損というのはなかなかできないけれども、それに近いような形で売り渡したいという農家、それから一本来的な責務である農地保有合理化事業をやらなければいけない農業公社、それぞれのリスクを勘案しながらつくった制度でございまして、まずこの活用を十分に図っていきたいと考えております。  それから、農地を売買したときの譲渡所得税の特別控除の八百万円。これは全体として見ますと、大体八割以上の案件がこの八百万円の所得控除を受けると無税になるような仕組みになっておりまして、無税にならないような、八百万円を超えるところは大体都市近郊の非常に地価の高いところの農地を売った農家でございます。この八百万円につきましても、私どもは税制当局に対して、農地の売買の実態、農地価格の動向等を踏まえまして毎年改定要求をしているのですけれども、これはまさに土地区画整理事業とあわせまして、農地について認められた非常に数少ない特例でございまして、先ほど相続税の問題でお話し申しましたけれども、これもなかなかガードがかたい。しかし、知恵と工夫を凝らしまして、十分にこれからも努力をしていきたいとは考えております。  それから、三つ目の納税猶予の問題も、先ほどと全く同じでございまして、知恵と工夫を凝らしながら努力をしてまいりたい。決していいかげんにやっているのではありませんで、毎年毎年、農業実態を十分踏まえながら厚い壁を破ろうとしておりますので、これはまた政治家の先生方の御援助、御協力を仰がなければいかぬところもありますので、ひとつよろしくお願いします。
  155. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 いわゆる農地保有合理化法人の農業信託問題についてはそれほど大きな効果は――いわゆる農地の下落に対処してというような局長の話でありますけれども、私は、五年程度でそれが売れなかった場合に、これはむしろ大変な事態になる。前貸しで七割相当、委託者といいますか、信託をする方に貸すわけでありますから、今の情勢では、これはもちろん五年の間に売れればいいですけれども、売れない場合にはこれはもとに戻すといった場合に、その資金の、担保したものがあるのかないのか、大変に大きな問題になるだろうというふうに思いますから、これはもう一工夫が必要だろうというふうに私は思っています。  それで、時間もありませんから、次に移ります。  特定農山村法の関係であります。これは私どもの方の中山間地域の活性化法も出ておりますから、これとの対比の形で若干質問をしたいというふうに思います。  まず、この法律の目的条項を見ますと、地域の創意工夫でこれらの地域活性化を図るのだという趣旨が基本になっております。しかし、もちろんそういうところ、いわゆる農水省の統計事務所の統計情報部のデータを見ますと、やはり中間地と山間地域は非常なまた差がある。今回これを二つにして、後で対象地域のところで御質問しますけれども、二つ合体をしておるわけでありますけれども、もう少し、先ほど言ったように就業機会、農外の就業機会がある地帯と、それから大変それが少ない、機会の少ないところとはやはりおのずから違うだろう。現状の農業経営の創意工夫ではなかなか何ともしにくいところ、そういうところに対する農水省の考え方、これについての基本的な姿勢というものを、今こそ、今の時点で、もちろんこの法律が第一歩だということを盛んに皆さん言うわけでありますけれども、やはりこのことを条文にも入れて、この法律のそこまで踏み込んだ、可能性として、今さまざまな事業をやらなくても、そこのことを踏み込んだ条文といいますか、やはりそこをつくっておく必要があるだろうというふうに思いますけれども、その点についてどのように考えるか。
  156. 入澤肇

    入澤政府委員 ちょっと質問の趣旨がよくわからないのでございますが、私ども、この中山間地域の農業は、我が国農業全体に占めるウエートが農業生産で四割、それから農家戸数農業従事者で四割という非常に大きなレベルを占めている。日本農業活性化のためには中山間地域の農業活性化が必要であるし、また、中山間地域の活性化のためには、そこの基幹的な産業である農林業の活性化が必要である、そういうふうな二重な意味で中山間地域の活性化対策を考えたわけであります。  もとより、これを考えるに当たりましては、各地域の実態をかなり広く調べました。うちの職員のかなり分厚い出張報告書もございますし、それから関係市町村をお呼びしてお話を聞いたこともありますし、農政審議会でも議論をいただきました。私自身もあちこち出かけまして、実態を見ました。  そういう実態の中で、今先生御指摘のとおり、何もしなくてもリーダーがきちんといてきちんと営農をやっておるところ、平場以上に所得を持っておるところもございます。実態として見ますと、日本の中山間地域というのは大変な地域資源を持っているというふうに認識していいのではないか。  ただ問題は、土地が粗放的に利用されておる。昨今の農業農村を取り巻く状況のもとで、ただ過疎化がいたずらに進行している。しかし、そういうふうな状況にあるけれども、そこで持っている地域資源を再評価して、そして農業生産活性化させる方法を考えるべきではないかということで、今回、最適農業土地利用計画あるいは最適農業改善計画ということを軸にして、中山間地域の活性化対策を考えてきたわけであります。これは絵にかいたもちだというのではなくて、現に各地でやっている例を参考にしながら考え出した制度でございまして、今私ちょっと手元に各地の事例がないので御説明できないのでございますが、たくさん事例がございますので、それを参考にしながらつくったということを御理解いただきたいと思います。
  157. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 もちろんそういう事例はないことはない、探せばそれはいっぱいあります。  ただ、農水省の考え方として私はお伺いしているのですけれども、私どもが農水省側とさまざまな話をした観点では、例えばこういうふうに文章の記載もあるわけですけれども、これは非公式ではありますけれども、大変重要なので読ませていただきますが、「農業上の条件が劣悪で将来とも農業担い手確保が見込まれないような農用地や恒常的に赤字となりかねない農用地を、農用地として保全管理する必要性や妥当性があるのか」という言葉、記載。  あるいは、いろいろな事業の中で一つの図式として、農地として不適当なところは林地なりあるいはまたさまざまな農業関連の事業の施設の敷地にというような発想が見えるところに、私は、この放棄地も二十二万を超えるか、あるいはもっと潜在的にはあるだろう。あるいは水田の復元を昨年からやっておりますけれども、なかなか復田ができないというようなことを考えた場合に、もっと耕作放棄地は潜在的にあるだろう。そういうものをそのままにして、あるいはなすがままに放棄地であれば雑種地から林地に変えていく、あるいは非農地として実質的には他に転用、利用されるという事態は、相当日本の中に存在している。やはりもう少し農地の全国的な確保という観点、五百万ヘクタールがいいのかどうかは別として、農水省としては相当深刻な農用地の確保ということに対して万全な態勢をとる必要がある。  私は、そういった面からいって、もっと経済効率、あるいは担い手があってもなくてもそこの農地保全していくという視点をきちんと持つべきだ。こういう点では、先ほど農水省が考えている、どうしてもやむを得ないところは他に、そういう考えと、どういうふうに考えておるか、お伺いしたいと思います。
  158. 入澤肇

    入澤政府委員 まさに先生御指摘のとおり、先ほど先生が答弁を求めなかったものですから、私はあえて答えなかったのですけれども耕作放棄地等につきまして市町村が買う道をもっと模索すべきじゃないかというような御趣旨の御発言がございましたが、耕作放棄地も、ちょっとした土地改良をやったりして農地に復元できるところはみんな農地法が適用されます。農地法は、午前中から説明していますけれども、耕作者主義ということで、現況農地主義というもう一つ農地法の性格論でございまして、市町村が農地を取得することはできないわけでございます。したがいまして、耕作放棄地であるという理由だけで市町村に一般的に耕作放棄地を買わせるということはできなかったわけであります。  そこで、今回のこの中山間地域法で、ここは農地として利用保全すべきだというふうなところがかなりあると思うのですけれども、そういうところに基盤整備を施したり、きちんとした条件整備いたしまして、土地利用計画をきちんとつくって、そして営農をするということをねらっているわけでございまして、まず耕作放棄地の解消のためにきちんとした土地利用計画をつくろうということで対応しようとしているわけでございます。  先ほど申しましたように、中山間地域の農業生産我が国農業生産全体に占める割合は四割でございますから、我が国農地保全するためにも中山間地域の耕作放棄地問題はゆゆしき問題でございまして、農地として利用できるものは可能な限り現場に復帰させる、現役に復帰させるという努力を積み重ねていかなければいかぬと思います。その仕組みの一つをこの中山間立法の中で位置づけたということでございます。
  159. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私も、ゆめゆめそんな簡単に放棄地を非農地化するという考えはないだろうと思います。しかし、今回の法案の中身を見ますと、具体的には資金融通政策が基本であります。やはりそういう全く条件の整わないところ、これは先ほども言いましたけれども、何とか基盤整備がひとつ必要だ。同時に、他の就業機会ということでなくて、まさに農林業で、まさに農業で就業機会を創出していく、そのことが求められておるのですけれども、その点に関しては、軸としてはあっても、事業としてはまだ起きていない。  農業そのものに対する国の支援というものが今求められておる。なかなかこの直接所得補償ということが、単純に耕作面積割とか頭数割で国の援助をするということが一気にいかないとすれば、やはり先ほどの繰り返しになりますけれども、林業の管理を今回地財措置でできるようになったわけですから、ああいう仕組みを、やはり個人ということでなくてもいいですから農協等に耕作放棄地等を集約して、そこに農林業、農業を営む場合にこれを国が支援する、地財措置で見る。これはコルホーズなんということでなくて、もう市町村ではそういう形でやっておるわけですから、その辺の考えをきちんとしていただきたいと思います。  それから、第十七条は、法律的には国が指導その他の援助をすることができるということになっています。これについては、いわゆる直接所得補償というような国の一定の支援ということができる条項というふうに受け取っていいかどうか、この点について局長の御答弁をいただきたいと思います。
  160. 入澤肇

    入澤政府委員 自治省でことしいろいろな措置をとっていただくということでございますが、私どもも一般会計で中山間地域の水と土を守る保全基金というのをつくろうとして、基本的に認められたわけでございます。これはまさに中山間地域におきます簡易土地改良をやって、それから圃場条件整備したり維持管理したりするために使うお金でございまして、今先生御指摘のあるいは先生の考えている趣旨に沿うものではないかというふうに理解しているわけでございます。  それから特定農山村法第十七条、これは「国及び地方公共団体は、基盤整備計画の達成に資するため、基盤整備計画の実施に必要な事業を行う者等に対する助言、指導その他の援助の実施に努める」というふうに規定されております。  国としては、中山間地域を対象といたしまして試験研究を充実させたりあるいは行政面で助言指導をやったり、情報提供等援助のほかに、各種事業の実施によりまして新規作物の導入、農業経営改善安定、農用地及び森林の保全を初め基盤整備計画達成に必要な支援措置を講じていく考えでございます。これらは皆、第十七条の条文、これはある意味では訓示規定でございますが、この条文を根拠にいたしましてやっていきます。  しかし、なかなかこれがあるからといって、直接所得補償ができるというふうには私は考えておりません。直接所得補償をする場合にはかなり厳密な規定が必要になります。いつどこでだれがどのような農業経営をやって、どのような所得が上がるのか、それから平場と比べてどのくらいそれが不利なのか、有利なのか、そこら辺につきまして、地域ごとに条件が違う中で標準的な姿、モデルというものをつくっていかなければいけない。それにはやはり現状からしますとなかなか難しい状況にある。そこで、今回は低利資金制度をバックアップの手段として持って、最適農業土地利用計画、繰り返し言っていますけれども、最適農業改善計画を実現していこうというふうに努力しているわけでございます。そういうものが定着していきますと、どういう地域でどういう農業をやったらどのくらいの所得が得られてという標準的な姿が明らかになってくると思います。  直接所得補償がもし行われるとすれば、ECのように基盤整備が十分に行われていて農業政策の大半を所得政策価格政策に投下できるというふうな状況下にある国々ではそういうふうなことができましょうけれども、私どもはまだ基盤整備事業でも、ちょうど目標の半分以下だという状況でございまして、やることはたくさんあります。価格政策構造政策を車の両輪として、両々合わせて農業政策をやらなければいけないような状況にございますから、直接所得補償に一挙に踏み切るということは、今の段階では無理だと思うのです。この条文は、広範な財政援助ということも行う根拠条文にはなりますけれども、これがあるからといって直接所得補償が実施できるというふうには考えておりません。
  161. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、一般的に幅広くということはよくわかります。あるいはまた、政府当局として直接所得補償というのがなかなか今とりにくいという局長の御答弁は、それ自体としては、そういう考えも政府当局として言うのはわかります。言っている意味合いは。そのことがこの十七条の「援助」という中に一般的に入るかどうか、このことについて、もう一度求めます。  そしてもう一つですけれども、時間が終了しますので、農林地の所有権移転等促進事業がありますが、この中に、先ほども触れましたけれども、やはりやり方によっては農地の転用、これが乱開発につながらないとも限らない。これは市町村の考え方によるわけですし、また農業委員会あるいは都道府県知事の決定というものが前提にありますけれども、やり方によっては、耕作放棄地がいろいろな関連事業という形で乱開発につながる可能性があるのではないか、もう少し歯どめをかけるものが必要がなというふうに思いますけれども、この二点、御答弁を求めたいと思います。
  162. 入澤肇

    入澤政府委員 十七条に基づきまして「助言、指導その他の援助の実施に努める」というふうに規定されておりますので、いろいろな政策をこの条文を根拠にして実施していきたいというふうに考えております。  それから、非常に誤解があるので私ども戸惑っているのですが、特定農山村法に言う所有権促進事業が、日本農業新聞に転用促進じゃないかという見出しつきで書かれたものですから、誤解が広がって非常に迷惑しているのでございますが、これは転用促進じゃないのです。中山間地域の実態、本当に山に入ってみますればわかりますように、畑や田んぼがぽつぽつとあって連担化してない。その間に耕作放棄地はある、あるいは林地はある。非常に合理的な土地利用がなされていないわけでございます。そういうところで合理的な土地利用計画をつくる、田寄せ、畑寄せをする、あるいは営農に必要な農道をつくる、あるいは営農に必要な農業施設をつくる用地を捻出する、そういうことを一件一件やっていたのでは、例えば一件ごとに農地法の三条の許可、四条、五条の許可、農振法の十五条の許可、あるいは場合によっては都市計画法の三十四条の許可を受けていたのでは、これは計画が進まないわけであります。  ですから、本邦初演でありますけれども、林地、非農用地も含めまして、一つの計画のもとできちんとした計画をつくって、移転計画が合意が得られればそれを公告して、公告した時点で法律上の効果が発生するという仕組みを考えたのでありまして、これが農地転用の促進につながるんじゃないかと、どこを押したら出てくるのか、私どもは全く理解できないのです。
  163. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 終わります。
  164. 平沼赳夫

    平沼委員長 有川清次君。
  165. 有川清次

    ○有川委員 今、農家はじり貧の中でかなり逼迫感と投げやり的な、そうした両面があるように思いますが、そうした中で新農政に期待をするその姿はあると思いますけれども、その新農政が本当に目に見えるような十分なものになっているかということが今問題になって、随分論議をされておるところでございます。絵にかいたもちにならないように、こういう気持ちもありますが、私も方向を過たないようにもしなければならぬというふうに思います。  論議をする前に、先ほど大臣の方から、近藤農林大臣農業基本法考えてみなければならぬのじゃないかと語った、こういうふうな意味の話がありましたが、先般の近藤農林大臣の時期にいろいろ論議がありまして、大臣が私案ででも基本法考えてみたい、こういう発言があったわけですけれども大臣はかわってもやはり農林大臣ですから、この新政策との関係はどのように考えられてきてどういう関連で思っていらっしゃるのか、お伺いしたい。
  166. 田名部匡省

    田名部国務大臣 話をしたのは、農業基本法をどうしようという話ではなかったのです。現実にいろいろな変化が出てきている中で、思い切った対策というものをやらぬといかぬ。そうかといって、長期展望とよく言われるのですが、世の中の変化が激しいときに長期的展望をやってもついていけるかどうかもわからぬ。しかしやはり、中期的に目標というものを立ててやっていかないとだめだというのは、だんだん後継者が不足しておったり高齢化が進んでおったり、当時からそういう兆候がもう見える。そのころから、厚生省で出生率の低下ということが随分言われまして、一体この時代になったら子供たちがどんな農業をやるのだろう、そういうことから話がずっと出たのであって、基本法のことで話をしたのではないわけです。  しかし、本当に今改革をすべきだということでは一致して、そして近藤大臣がこれを手がけてくれたということであろう、私はそう思っております。     〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕
  167. 有川清次

    ○有川委員 基本法じゃなくて、改革をすべき時期だという発想からだということであります。  しかし問題は、もう何回も前任者も言われておるのですが、これまで日本農業基本法制定以来じり貧に追い詰められてきて、しかも出生率の問題もありまして、どうにもならなくなってきて、思い切った施策が必要だ、こういう時期に来ておるということであれば、かつての農業基本法はよかったのか悪かったのか、どの点に欠陥があったのか、きちっと総括をして、その上で新しい法案をつくっていくということが基本ではないだろうか、このように思います。  新農政が三大節目になっておるわけでありますが、そういう意味から、かつての基本法では、規模拡大効率主義、さらには市場原理、国際競争力、こういうものが言われてきており、まさに貧農の切り捨ての面もあったわけです。一方で環境保全も言ってきてはおりまして、これは一致せずに今日に至っている。平場では、規模拡大で自然環境の負荷が大きくなって地方が落ち込み、土が病み、あるいは死んでいる。こういうことも言われる。化学肥料農業の過多使用、それで周辺に影響も出てきているのではないか、このように言われております。  農業経営規模拡大、他産業従事者と所得の均衡を図るという観点から、価格政策構造政策などをどのように組み合わせていくのか、これは農政推進上の大きな課題とされてきたところであります。現実には、三十年間の高度経済成長の中で、それが農村に大きな影響を与えてきた。  消費構造もでん粉質から肉質へ変わる。生産構造も選択性農業になってまいりました。また、農外雇用が増大して労働力が不足し、中学生が金の卵と言われるくらい大事にされた時代、都会に労働力が流入した。池田内閣の所得倍増論のころから急速に農村との所得格差が広がってきた。農地政策も大きく手おくれになりまして、田中内閣の列島改造論が走って、土地投機、農地、山林投機が仮登記で地価が急騰して、農地理事業団はつくったけれども、いまだにきちんと処理されていない。国境措置も書いてあるわけですが、構造改善が優先されまして、池田内閣の開放政策以来、きちっとした調整は今日に至っても行われていない。  こうした基本法以来三十年の総括をきちっとした上でないと、十年後には十ヘクタールから二十ヘクタールの大規模稲作経営、五-十ヘクタールの畑作複合経営に重点を置いた、規模拡大効率主義、市場原理、同じように競争原理の一層の導入ということは、また新たな選別農政のようなものを持ち込むことになるのではないか、このように思うわけです。  今の時点では総括がないわけですから、せよと言ってもしようがありませんけれども、今後、総括のような形のものをきちっと整理される意思があるのかどうか、ちょっと大臣の意思を聞きたい。
  168. 田名部匡省

    田名部国務大臣 何回かの白書の中で、総括か総括的なのか、出してございます。単純に申し上げて、日本のとってきた政策がよかったのか悪かったのかということになるわけですね。戦前の農業がよかったのか、今の農業がいいのか。しかし、その中ではいいものもあれば悪いものもあるということで、その悪い方を何とか手だてをしていかなければいかぬ。  いろいろ世の中の変化というものは、確かに高度成長の中で農地が高くなった、所得が上がった。しかし一方では、平均的に一・三ヘクタールの農地はふえたわけではありませんから、価格政策をせざるを得なかった。しかしそれも、三十アールやそのくらいの水田では、それ自体で生活できなかった。しかも機械化がどんどん進んだということで、大量の人で田植えをする必要がなくなったということで、結局若い人たちが都市就労の場を求めていった。いろいろあります。ありますけれども、そういうことを今申し上げても、これからどうするかということで私ども一生懸命になっているわけですから。  そのことでいきますと、基本法制定後、いろいろなことをそれなりにやってきまして、畜産でありますとか施設園芸の分野を中心生産性向上した。農家所得が勤労世帯を上回ったといっても、働きながら農業をやるから、足せば上回っているわけです。ですから、そのほかに麦あるいは稲とか大豆とか土地利用型の方がどうもうまくいかないということで、これを何とかしなければならぬという気持ちがありまして、これが他産業従事者と均衡する農業所得というものが得られていない、そういうことで、この点を力を入れていかないと、四六%の自給率、これを底上げすることもなかなか難しい問題もあります。  総体的に考えてみると、これはどこを見て言うかは別でありますが、全体的には農家の生活というものも、過去から見れば安定している部分もあるのだろう。しかし、そうでないところに力を入れるということはもう当然のことでありまして、先ほど来申し上げておりますように、新政策は、基本法政策目標を今日的な視点で、一体どこをどうすればいいかという観点に立ってつくり上げたわけであります。  何といってもやはり、今お話しのように、農家というのはもう壊滅的な状態だとか、農業はだめだ、だめだという話を私はよく聞くのです。この間も農業青年の人たちと懇談をいたしまして、だめだ、だめだと言うが、いいところもあるのだから、悪いところはここというふうに指摘しなさい。親がそう言うので、こう言っておりましたが。いずれにしても、意欲を持ってやれるような、そして、やはりそういうところには嫁の来手がない、私らによくこう言うものですから、それは、給料もらえない、そしてだめだめというところに本当にお嫁さんが来るだろうか、そういうことはやはり直していかなければいかぬということで、生涯所得でも労働時間でも、あるいはいろいろなことでもやれるように、他産業並み農業経営というものをできないかということで、いろいろ考えながらお出しをいたしているわけであります。
  169. 有川清次

    ○有川委員 今後見直しを、きちっと総括をするかしないかということを聞いたのであって、今おっしゃったようなことは、長く言われると後が質問できなくなるのですよ。ぜひ、わかっていますから、欠陥とよかったところ、このことで欠陥をどう克服するか、ここが大事なのですよ。新農政にそれが盛られているということなのだけれども、やはり効率主義、規模拡大、その辺が非常に大きく浮き彫りになっているから、四〇%以上を超える中山間、こういうものもあるわけで、私は心配して、なおその辺を聞いたところであります。  それで、次に、これは前にも質問がちょっとあったのですが、新政策で、自給率が逐年低下して、先進国でも異例に低い水準指摘して、世界食糧需給は長期的に逼迫基調にある、経済力に任せた食糧輸入の拡大は輸出国の環境破壊につながると分析しながら、自給率向上に対する具体的展望が示されていないわけですね。ただ、「低下傾向に歯止めをかけていく」としておるわけですが、十年後にカロリーベースで四六%を五〇%に、穀物ベースで二九%を三一%に引き上げる、このような方針になっています。この間、田中委員の質問で明確な答弁がなかったわけですが、どのような科学的な算定基礎のもとに見通しをされているのか明示をしていただきたい。あるいは、引き上げのプロセスも御説明を願いたいと思います。  あわせて、もう時間がありませんからずっと順次言いますが、米市場開放問題について、「地球的視点をも踏まえた食料・農業政策の展開が必要。」こうして、「一定の国境措置」が必要だとも述べられているわけですね。具体的に何を指しておるのか。構造政策価格政策を含めて、新政策は米市教開放への地ならしと言われており、けさほども質問がありましたが、一定の国境措置の意味するところを明らかにしていただきたい。これは、参考人の全中常務理事の石倉さんの方からも、大きな六つの基本の中に、国境措置をきちっとはっきりすべきだというのがありましたが、この辺の考え方についてあわせてお伺いします。
  170. 上野博史

    上野(博)政府委員 穀物自給率の問題につきましては、今委員がおっしゃいましたように、結論的に申し上げますと、現在の自給率の状況にかんがみまして、これ以上低下しないように歯どめをかけていくということを基本として考えているということでございます。  これにつきましては、余り詳しく、くどくは申し上げませんが、要するに、食糧の需要構造がまだまだ変わってまいる、たんぱく質重点のものになお移っていくというようなことで、えさの問題などございまして、こういう傾向のもとで自給率を上げるということについては、逆風の中でその努力をしろという話でございますので、実際見た目、考える以上に容易なことではないだろうというふうに今考えているわけでございます。  それから、この自給率に歯どめをかける。今、委員がおっしゃいましたように、私ども、長期見通していろいろな要素を最大に発揮して考えた場合に、今おっしゃったような数字が見通せるんだという見通しを示したわけでございますけれども、これについてどれくらいの金がかかるのかという議論、確かに、先般私、田中委員の御質問で答弁をさせていただいたわけでございますが、そのときにも私、なかなかその計算が容易でない、これは金で解決のできない問題がいろいろ要素としてございますので、にわかにお示しをするのは難しい、しかし検討してみたいということで、鋭意検討は今もいたしているわけでございますけれども、私どもの部内の議論でいいますと、一体必要な生産力が十分に整うのかどうかとか、その需要の構造というのが思ったとおりの話になるのかどうか、それが一定の金額をかければそうなってくるんだというふうな話になるのかどうかという、自信というものは持ち得ないところがあるわけでございまして、まことに申しわけないわけでございますけれども、数字でその努力の方向を示すということについては御容赦をいただきたいというふうに考えております。  それから、この新政策が米の自由化を視野に入れたものではないのかという点でございますけれども、これは、現在の我が国農業、特に土地利用型の農業を取り巻いております非常に困難な状況、老齢化の状況とか、若い方々が農業に就業しないという事態に対応して、何とか日本農業を生き長らえさせて、さらに発展をさせていくということのためにこういう措置が必要だということでございまして、そういう米の自由化問題との関係を視野に入れたものであるということは決してないということを申し上げておきたいと思います。
  171. 有川清次

    ○有川委員 この自給率のアップの問題、これは追及していけば時間がかなり必要になる問題です。ただ、今説明を聞くと、希望的な数字、観念的数字、そんなふうに見えるんだけれども、それなら、一五%とか、何か数字の違いがあってよかったんじゃないかと思うのだが、一%とか二%という極めて限られた数字を出された根拠というのは、ただ観念的なことだけであったのかどうか、もう少しつまびらかにしていただけませんか。
  172. 上野博史

    上野(博)政府委員 今手元に具体的な数字は持ち合わせておりませんが、考え方といたしましては、我が国の人口が将来どういうような数になっていくであろうか、それから、一人当たりのカロリー摂取がどうなるであろうか、そのときにどういうような食品の構成でそういうことが起こってくるであろうかということを、過去のトレンドあたりを用いまして先行きのトレンドを引いてみて、そしてそういうところから、大体これくらいの需要量、それぞれの食品といいますか、農産物のこういう需要というものが見込まれるのではないか、そのうち、国内の土地面積がどうなっていくであろうかというような保見通しであるとか、あるいは農業労働力の将来の見通しであるとか、そういうものも過去の趨勢などを考慮に入れながら検討してみてはじいておる。一定の幅を持って考えておるから、できるだけの要素、要件が整えばというようなことを申し上げておるわけでございます。     〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕
  173. 有川清次

    ○有川委員 それは、一応一定の、二%くらいのアップとかいうのには、過去の人口の動きやカロリー、食品構成、そういうものを見ながらトレンドとしてこうやった、ある程度科学的だという意味に理解をしていいですか。――それじゃ、それはまた別に譲ります。  それじゃ次に、流通対策と価格政策の問題でありますが、昭和六十一年以降、価格政策は非常に抑制的に運用されておりまして、現在の農畜産物の政策価格は五十年代初頭の水準まで低下をしておると思います。昭和六十一年十一月に農政審は、「二十一世紀へ向けての農政の基本方向」において、今後の価格政策構造政策を助長、促進する方向での推進が必要であり、このため「生産性の高い今後育成すべき担い手に焦点を合わせて、重点的な運用を行う必要がある。」との指摘に基づいて運営をされてきたことにもよると思いますが、このことは、農業所得に依存する大規模農家ほど大きな影響を受け、生産性向上、コストダウンに努力したメリットが相殺をされて、規模拡大の意欲を逆に阻害するなどの、構造政策助長、促進に対する逆効果になるのではないかという懸念がありますが、これについてどうお考えなのか。  それから二番目に、中山間など、規模拡大の困難な地域での特に稲作などが切り捨てになるという危険性があるが、どのように考えていらっしゃるのか、これは中山間は高付加価値のものをと言われておるわけですが、そういう関係でお伺いいたします。  私も福井県の大野市に現地調査に行ったのですが、いろいろすばらしいところも見せていただきました。一ヘクタール以上の土地改良も進めて規模拡大が進んでおった。しかし、これに対して大野市長が最後に言われたことは、米の現行価格が最低でも維持されることが基本です、安くなれば返済もできなくなる、このようなことを何としても守ってほしいという要請がありました。こうした声をどのように踏まえていらっしゃるのか。  先般、価格決定に当たっていろいろ畜産の論議もありました。牛肉の輸入自由化後、三年目にいるわけですが、乳用子牛、ぬれ子の価格が暴落をしてこれは底をついたと、きょうの新聞には、底じゃないかと言われておりますが、褐毛和牛も暴落したために、黒毛和牛と区別して保証基準価格を設定いたしました。ところが黒毛和牛も、きょうの日農新聞等にあるように、保証基準価格が雌の方では三十万四千円の基準を下回って二十八万五千六百円になった、しかし雄の方が三十六万を超えたから、辛うじて三十三万千三百円ということを確保した、こういうふうにありました。  こうして、次々に畜産の方も低下をする。養鶏、これはもう増羽の中で低迷をする。前も質問しましたが、豚の生産農家も落ち込み、非常に厳しくなってきておる、こんな価格低迷の問題があるわけであります用意欲が農家に出てくるのか。今度の新農政で複合経営を言われておるわけでありますが、その根本になるべき価格がすべて落ち込んでいくような状況の中で、果たして若い人たちが先行きに展望を持ってこのことを実施しようというふうに目の色を輝かすであろうか、この点が心配なのです。  そういう意味で、今度の新農政を進めるに当たりまして、国境措置をにらんで流通政策とか価格政策、どのように進めようとされておるのか、ちょっとお伺いをしたいと思います。
  174. 上野博史

    上野(博)政府委員 論点がたくさんありまして、なかなかまとめ切らない感じもあるわけでございますが、簡単にお答えを申し上げたいと思います。  今度の新政策で予定をしている望ましい稲作経営の姿、十ヘクタールから二十ヘクタールの経営規模を持つものということで御説明を申し上げておるわけでございますが、これは個別経営の場合でございます。それで、その場合の営農の体系といいますのは、中型機械を用いました一貫体系というものをもって我々として一応考えているわけでございまして、その場合には生産性は非常に大きく向上をいたしまして、労働時間あるいはコスト、両方とも大体農家平均の五、六割程度のところにとどまるのじゃないかというような見方をしているわけでございます。  現在でも、米の生産費調査などを使って分析をいたしてみますと、十ヘクタール以上層の大規模農家の生産コストというものは農家平均の六割程度という水準でございまして、規模拡大をすれば、その効果というのはかなり大きく上がってくるというふうに我々は見ているわけでございます。  先ほど来、基本法農政の総括の問題、いろいろお話がございましたが、やはり畜産、果樹、園芸、こういうものにつきましては、大幅な生産性向上規模拡大というのが実現をしているのに対しまして、稲作の方は非常にその向上の程度が小さいということがあるわけでございまして、逆に言えば、現在のこの厳しい環境でございますけれども、こういう環境をいわば逆手にとってといいますか、うまく利用をいたしまして、土地の集積ができれば非常に大きな生産性向上が図れる余地がなお残っておるというふうに考えているわけでございます。  それから、後段の中山間地域の稲作の問題については、構造改善局長の方からお答えを申し上げます。
  175. 入澤肇

    入澤政府委員 御指摘のとおり、中山間地域の中で稲作のウエートは非常に大きなものがございます。決して、中山間地域から稲作の撤退をねらっているということではございません。  中山間地域の稲作の現状を見ますと、生産額あるいは面積で三五、六%のシェアを占めております。我々がねらっているのは、単一経営ではなかなか経営改善ができない、所得向上も図れないので、稲作が中心のところは稲作を基軸にしながら複合経営を図っていくということで、中山間地域の農業経営改善を図っていただきたいというふうに考えているわけでございます。  さらに稲作につきましても、中山間地域の昼夜の温度差を利用した食味のよいお米の生産などができます。それから畜産との連携のもとで、堆厩肥を十分に投与した特別栽培米の生産地域に適したところもたくさんございます。そういうふうな工夫をしながら、稲作自体につきましてもその経営内容を改善してもらいますし、稲作プラス池の野菜とか花卉とか畜産とかで複合経営を図って経営改善をやっていただこうと思っているのでございまして、稲作の位置づけをないがしろにしているということはございません。
  176. 有川清次

    ○有川委員 それはわかりましたが、それなら価格政策をどうするのか、この辺をちょっとしっかり答えてください。
  177. 上野博史

    上野(博)政府委員 どうも申しわけございません。その点、何か落としたような気がいたしましたのですけれども。  価格政策の問題につきましては、これは現在の価格政策の基本的な考え方を続けていくという考え方でございまして、新政策の中で特段新しいアイデアを出しているつもりはございませんが、ただ運用の問題といたしまして、生産性向上等を図れるような体制ができ上がってまいったときに、それがコストに反映をする。そのコストの反映と具体的な価格の決め方との間のタイムラグの問題を十分に注意をしながらやるようにということが書いてあるというふうに理解をしておるところでございます。  価格は、これは政策的に決められるもの、あるいは市場価格のもとで決められているもの、いろいろあるわけでございますけれども、市場価格の方は非常にいろいろな条件によって、そのときどきの需給事情あるいは先行きの見通し等によってかなり動くという面がありますし、それから、自由化の影響を受けて非常に厳しい状況にあるという、基本的な現象として非常に厳しい状況が出ている面もある、それは、今委員おっしゃったとおりのことでございます。我々も大変心配をいたしておりますが、できるだけの措置を講じて自由化圧力への対応をしておるというのが現状でございます。  お米等の政策的な価格につきましては、これはやはりコストをもとに再生産のできるような価格を決めるというのが原則でございますけれども、それに需給事情というものがやはり一方で加わってまいるわけでございまして、基礎的に潜在的な過剰生産の状況というものがある場合に、そういうことが価格の決定にも反映をしてまいるということはこれは否めないわけでございまして、このところの抑制的な価格というのも、その辺が一つの要因としてあるだろうというふうに考えております。ただ、繰り返しになりますけれども、基本的な考え方としては変えるつもりはないということを申し上げておきたいと思います。
  178. 有川清次

    ○有川委員 価格政策、今お伺いしましたけれども規模拡大等をやって生産性向上してくれば安くなってもその分で補えるというような話で、今までもコストダウンをした分が目減りして、努力をしてそのコストを落とした分は価格が下がって、しかもそれ以上に下がってまいったという、農家の、先ほどもちょっとありましたけれども、国が言うのと反対をせよとか、いろいう言われる原因はやはりそこら辺にあると思うのですね。だから、この新農政、それなりに立派なのを努力されてつくっていらっしゃいますが、基本になる価格政策というのがきちっと一本すとんと農民に落ちるような状況じゃないんじゃないか、こういうふうに思いますので、その辺は、もうこの場ではこれ以上は言えませんが、きちっと今後努力をし、農民が、農家の皆さんが信頼されるような、自信を持つような価格政策というのを打ち出していくという努力を要請しておきたいと思います。  それから次に、規模拡大効率化、それと環境保全型、安全食糧との関係は相反するんじゃないかという感じがするわけですが、「我が国農業は、国民への食料の安定供給という重大な使命に加え、地域社会の活力の維持、国土・自然環境保全などの多面的な機能を有しておりこと述べて、環境保全型農業の育成を提起をされておるわけです。よって、農業経営基盤強化法の第一条に環境保全への配慮を目的規定に挿入したらどうか、私たちはそれを主張しましたが、政府の方の答弁では、安定的な農業経営は持続的な農業生産が前提となり、収奪型農業ではなく環境保全にも調和した農業となる、また、効率的な農業経営は合理的な機械利用、適時適切な施肥、防除などにより、化石エネルギーの節約、化学肥料、農薬の使用の節約などにより環境保全にもプラスになる、したがって、効率的かつ安定的な農業経営は当然環境保全配慮した農業経営である、このように述べられて拒否をされました。  果たして規模拡大機械化促進などによって、効率的な農業経営環境保全あるいは安全な食糧生産に調和したものになるのかどうか。原則は農業環境保全型であるべきなんですが、今までがそうじゃない、土も死んでおると私先ほども申し上げましたが、そういうのがあるわけで、そういうことで、これはどうお考えなのか、整理ができませんので、もう一回教えていただきたい。  それから、きのう笠井参考人にこの質問をしましたね、四十二ヘクタールつくっているということで、それと安全性とはどうですかと質問があったら、安全性を言うと、国の立場から、消費者を含めてこれは商社的でなければならない、こんなような意味のことを言われて、きちっとした回答がわからなかったのですよ。まあ、本人の考えだからこれはどうこうということはないのですが、確かに四十二ヘクタール、米、麦、裏作は麦ですね、そういうふうに生産した場合に、本当に有機肥料とか環境保全型、そしてそれが農薬を余り使わずに安全な食糧、こういうことにつながるのか、ちょっとそこを明確にしていただきたい。
  179. 上野博史

    上野(博)政府委員 この問題についての私どもの先ほどの答弁、既にお聞き取りをいただいておりますので、繰り返さないので、足らないところだけ補わせていただきます。  私ども考えておりますのは、現在の農業について、さらに将来的には環境保全型農業とでもいう、言いかえますと、環境に優しい農業、そういう農業に変えていかなければならない。これは規模の大きい農業規模の小さい農業も、現在の農業の状態からいえば、それぞれいわば同じように抱えた問題だ、対応してまいらなければならない課題であるというふうに考えているわけでございまして、非常にその規模が小さい現在の普遍的な農業環境に優しいんだというふうに、必ずしも言えないのではないか。そこが、じゃ規模が大きくなったときに、小さいのが環境に優しいから大きいのは環境に厳しいんじゃないかという話で理解をするということがそもそも問題なのではないか。  やはり小さいものも大きいものも、現在の農業のやり方でいえば、環境への影響というのは、もちろん規模によって、それが一ヘクタールの農業と四十ヘクタールの農業で一対四十の関係にある、絶対量で考えればその差はあるというのはそのとおりなんですが、単位面積当たりで見たときに、小さい農業であれば環境に優しい農業をやっているかというと必ずしもそうではないだろう。したがいまして、大小を通じて環境保全型農業というものはこれから対応していかなければならない課題でございまして、これは難しいことはいろいろございます、その辺はもう委員よく御存じのとおりでございまして、新しい技術の開発も、そのためにはしていかなければならないところはいろいろあるというふうに考えております。そういう意味で努力もしてまいりたい、こういうことでございます。
  180. 有川清次

    ○有川委員 この問題は、すとんと落ちないのですが、まあ希望的あるいは考え方、そういう観念的な面がかなりあるように思います。しかし、そういうものになるように全力を挙げてもらわぬと、これはまたチェックをせないかぬと思いますから、課題にしておきたいと思います。  それから、今の農業その他でちょっと私申し上げますけれども、先般、仙台湾の貝毒の問題があり、新聞に出ましたね。広島のカキが毒が出たということが報道されました。海が汚染されているから。岩手県の山田湾で、ホタテ貝の汚染から価格が大暴落をしておる。山田町の五〇%を占める漁民が死活の問題として悩んでおるというニュースも聞きました。  この湾には三本の河川が流入しておりまして、汚染の元凶は農地農業、畜産ふん尿の垂れ流し、家庭雑排水や製紙工場やへい獣処理あるいは食品加工工場、こういうところで使う次亜塩素酸カルシウム、つまり塩素系の過多使用によって微生物がいなくなる、そういう関係からだと言われております。宮古湾の昆布も打撃を受けておりまして、大船渡湾、広田湾、気仙沼湾など、風光明媚な松島のある仙台湾全体が海洋汚染が問題になっておるということを私は聞きました。現地調査をしたいと思っておりますが、自然のサイクルが、地下水の問題、川上から川下へ、工場と汚染のサイクルの中でだんだん海が侵されている。私たちは農林漁業ですから、そういう食を守る立場から考えると、農業がその環境破壊の一役を担っているのじゃないか、これを何とかせないかぬ、そう思っているときに、母親の母乳からダイオキシンが出たというショッキングなニュースもありました。  効率的なかつ安定的な農業経営の飽くなき追求が、こうした環境破壊、安全な食糧の生産を阻害してきたことを考えると、政府の言う、当然環境保全配慮した農業経営、こういうふうに私はどうしても言えないのではないか、このように思うわけです。ECでも、農業自身環境破壊者である役割を演じていることが広く認識されて以来、環境保全、安全な食糧の生産に配慮することが政策の基本的目標に据えられ、その中で、デカップリング政策も生まれてきたと聞いております。鉱工業の近代化と発展、人口の増大、農林業と他産業との格差の拡大など、効率的な農業経営の追求の結果が今日の自然破壊につなかったことを考えると、本来環境保全型であるべき農林漁業がその元凶になっていることにしっかり反省を求め、これからの農業のあり方についても、言葉だけでなくて実効のある環境保全型にすべきだ、このように思うわけであります。  そういう意味で、目的条文の中にきちっとそれを位置づけたらどうかということは申し上げたところでありますが、さらに昨日、梶井参考人の、今度の新農政は効率的が第一に来ておる、安全な食糧、安定的に生産、三番目に効率的が入るべきじゃないか、本末転倒しているんじゃないかという意見もありました。どうお考えですか。
  181. 上野博史

    上野(博)政府委員 安全な食品を供給するということは、何をおいても考えていかなければならない問題でございまして、私どももそのつもりで考えているわけでございます。効率性を考えれば、そういう意味でマイナスが生ずるとは思っていないということは繰り返し申し上げているわけでございまして、安全性を最初に、最高順位に置くということについて別段の異論は持っておりません。そういうことでなければならぬと思います。  それからまた、農業環境にいい、プラスをもたらす機能を持っておるということもそのとおりでございますけれども、逆にマイナスの影響を与えている面があるということも、これも委員のおっしゃられるとおりでございまして、日本の場合、水田農業だというところがヨーロッパの場合と少し違って、環境との関係で緊張関係が薄い、よりいいプラスメリットがあるんだというふうに我々は思っておりますけれども、しかし畜産公害等を考えますと、頭に置いて言われたのはその辺じゃないかと思いますが、ふん尿処理の問題をうまく解決しなければ日本の畜産の発展というのは考えられないし、そういうこともいろいろ技術的に、あるいは施設や何かをうまくつくるというような方向での努力をやって解決をしていかなければならない。  それから、漁業との関係でいいますと、水質汚濁を解決するために、私どもの仕事の分野でいえば集落排水のようなことを集中的にこれからやっていかなければならないというふうに考え、いろいろな面からも努力をしてまいりたい、かように考えております。
  182. 有川清次

    ○有川委員 もう時間の関係であとは言いませんが、私、ちょっと執念深い男でございまして、県議時代から畜産を言うものだから、また官房長はそれを言われたんですが、今言った仙台湾の問題は、私は近く現地をずっと見ます。そして、問題提起をして皆さんとねちっこく、海も安全であるように、そして農業もいいように、生活環境もいいように、選挙区外だけれども一つの事例として頑張ってみたい、このように思っています。  それから、次に中山間地の問題でございますが、農林業が基幹産業となっておる中山間地域、全国に四割を占める、そういう状況があるわけですけれども、今日まで各種の特別な施策も講じられてきたけれども、結果として過疎化、高齢化現象、後継者不足が出て、好転どころかますます深刻になっておる。皆さんが述べられたとおりであり、政府も言ったとおりなんです。  私は、そういう中で、集落の過半数が廃屋になったり、あるいは耕作放棄地がある、そういう集落をこの休みの間に随分回ってきました。その前も回りましたが、一、二、例を申し上げます。  A集落では三十戸の農家が十五戸に減って、そのうち十戸は単身の独居老人、もちろん後継者はおりません。病院や診療所もなくて、憲法で保障された人間が健康で文化的な生活を営む権利は保障されておりません。担い手のできないのは当然だというふうに思いました。  B集落では、十七戸のうち七戸が廃屋、十戸が残っておりました。高齢化した農家が畜産と畑、稲作の複合経営を営んでおられましたが、ここでは撤収もあったりするものだから、集中豪雨では洪水だとかがけ崩れが出たり、大変だということも言われました。ある老人は、こんな条件の悪いところでは若者は絶対に居つきませんよ、望みはないというふうに嘆いておられました。  C集落では、空き家が出てくると耕作放棄地ができて周りは雑草と雑木が広がって、次の人家近くまで追ってくる、そうするとイノシシや猿やタヌキというものもどんどん出てきて畑をやる、そうなればその周辺の農家は大変だ、これを撤収しないで維持するような、環境整備するようなことを何とかしてもらえないか、こういうことも言われました。その中でも、私、新農政の政府の受け売りをして説明をしたのですけれども、その程度のことをしても担い手は帰ってきません、もっと実効のある施策農村文化まで取り戻す政策を抜本的にすべきだ、こういうことも言われました。  そうしたことを考えると、山間地域の条件不利地域について、今度の農業振興対策ですが、単に収入が目標に達しないからといって十アール当たり五十万円、低利で、四・三%で貸すということだけでは、一つの過渡的な措置だろうとは言われておるのですけれども、とてもじゃないが困難だ、このように考えるわけです。  それから、D地区に行ったら、ある農水省の役員が、もうだれとは都合が悪いから言いませんが、現地視察をして、スイートピーを見て、これは何か、生育は種でやるのか苗でやるのか、流通は、所得は幾らぐらいになるのか、こんな質問が出まして、農林省で農業を指導している人かと思って唖然とした。ソバの白い花を見て、これは何の花が、ソバだと言ったら、麦の花はどんな花だと言った農林省の役員がおるというようにも言われておるわけですが、今それは聞きませんけれども、こういうのがあるわけで、ぜひ農水省の役員も、局長はいろいろな事例を知っているとおっしゃるが、足も運ばれただろうと思うけれども、四〇%以上ある中山間地域を、特にそこは足で歩いて実態をつかまないと、とてもじゃないと私は実感を持ったところであります。  この間、福井に行きました。池田町の町長さんですか、この人が、もう大変だ、これもさっき辻先生が言われたような、今屯田兵でも入れてもらわぬと対策はありませんよという話をされましたが、まさにそういうものを考えると、国土保全の立場からも、もっと思い切った政策が必要だというふうに思います。  そこで、提起なんですが、質問なんですけれども、県、市町村の行政、農協、農業委員会、こういう組織でいろいろやりながら国が認可して云々ということにはなっておるのですけれども、私は、直接生産する生産者の代表、消費者、働く労働者、これは兼業も多いわけですから、それから市場関係者、加工業者、中小企業者、こんな人も含めて地域論議をして、これにはきちっと資金的な財政援助をしてほしい。それが国の承認が得られなければいかぬということでなくて、そういう話し合いの中でできたものに対しては思い切った援助が必要なんじゃないか。全中の石倉常務も、地方行政の権限の確保と財政対策の対応、この重要性を強調されておりました。そういう広範囲にやれば、国民のコンセンサスも得られるのではないでしょうか。  もう一つ例を申し上げます。  環境保全農村型リゾートということで、私は岡山県の作東町小房地区に先般行ってまいりました。小さな集落で話し合いを積み重ねながら、県の補助金が二分の一、あと町が出して、国のリゾート法資金の援助は受けていない。今後どうするかは検討中だけれども、今のところは国のものは要らぬ。なぜか。拘束される、いろいろ思ったとおりに地域活性化ができぬという意味なのです。ここでは、廃屋、山林や畑すべてを借り受けて、自然が残った山村を非常に努力してやっていらっしゃいます。休耕田を利用した農業体験とか、山菜とり、シイタケ栽培、手すきの和紙づくり、炭焼き学習体験、渓流釣り、池釣り、こういう努力をされておるのです。いろいろひもがついて国が小言を言ってやるよりも、その地域で下から積み上げたものに対しては、理解をしたら金をぼんと落とす、これが活性化の道ではないでしょうか。
  183. 入澤肇

    入澤政府委員 いろいろな事例を御指摘いただきまして、ありがたいと思います。  私もいろいろなところを見ていまして、確かに絶望的になるところもあります。しかし、展望は明るいなと勇気づけられるところもかなりあります。この前もちょっと申し上げたのですけれども、やはり山村でも生き生きと農業をやっているところは、所得だとか、村全体が開かれるとか、アクセスが整備されているとか、美しい村づくりとか、いろいろな条件があると思います。そういうふうなことを前提にして、そういう村づくりをやっていきたいというのがこの法案でございまして、今御指摘の点二点についてだけ申し上げますと、先ほどから申していますように、具体的な営農指導をやる場合に、生産者の代表、消費者、それから流通関係者、これらの人たちも加わって、営農指導センターで濃密な営農指導をやる、マーケティング指導をやるということも考えているわけでございます。  それから、国の助成につきましても、最近は総合メニュー方式になっておりまして、拘束というかひもつきというものはなかなかないように工夫しております用地域で工夫をすれば弾力的にそれが認められるというふうな仕組みにだんだんなっておりますので、その線を守っていきたいと思っております。
  184. 有川清次

    ○有川委員 日本型デカップリングを私たちは主張をしておるわけですが、なかなか困難とおっしゃれば、そういう面をどんどん取り入れていただく意味で私は申し上げたわけで、やはり実のあるものにしていただきたい、このように思います。  そこで、時間がありませんので、ちょっと今度はいい例を申し上げます。  今私のところでは、肝属南部畑総という国の管理事業がありまして、これはちょっといろいろな問題があって、私問題意識があって調査に行ったのですが、結果としていい事例を二つ見てまいりました。  一つは、標高が二十メートルから六百五十メートルという非常に起伏の激しい急峻な山間地域ですが、ここでは四カ町を対象にして圃場整備と畑地かんがいがやられておりました。ここで、桜島の降灰もあるものだから、三ヘクタールに十一人がハウスを利用した周年栽培のネギをつくった。一人当たり大体三十アール、インゲンもちょっとつくっておるようであります。びっくりしたのですが、昨年は半年で六百四十万の粗収入があった、ことしは一千万を超えるだろう。これは二十年も農協の役員をされた人で、今町議なのですけれども、二十五年前からこれを主張してきたという人なのですが、非常にすばらしいリーダーがおるのです。それで、小さいネギを密植しましてやっておられるところでありました。  それからもう一つは、二十戸ぐらいの地域ですが、鹿児島は桜島降灰の関係もあって、北の方はもうたばこ耕作から撤収して灰が余り来ないところに移ったという関係もありまして、その上不況で帰るという希望が多かったというのもありますが、全部たばこ耕作をしようということで話し合いをしたところが、子供に帰れといったら全部帰った、それで全部後継ぎができたというお話がありました。  そこで、全体的に聞いてみましたら、ここ二つがいい例です。のぼせちゃいかぬわけですが、三十八団地造成をするうち、この二つだけはもともといいリーダーがおって成功した。しかし、ほかの三十六団地は展望がありません、これが参ったものですというのが、県や国の皆さんの悩みの話でありました。リーダーは自然発生的には生まれないわけでありまして、これをどう能動的にやろうとされるのか。資金投資をやればできるというような生易しいものではないと私は思う。高齢化が進んできますと、対象になるべき若者もいない。どうつくるのかというのが大きな課題だと思うのですが、その辺をどう考えていらっしゃるのかということが一つ。  二つ目は、基盤整備事業、これがやられて、道路がよくなり集落排水事業、こういうのがずっとやられてきたおかげで、できたのですね。ところが、今その中で工事がおくれておるのですが、かんがい事業もおくれておりますけれども、早くやらないと、土地改良してからもう四、五年たつじゃないかと。しかし水は来ない。前にも質問したことがあるのですが、そうしたら、平成七年に来る予定だけれども、まだ何年になるかわからぬと。なぜかと聞いたら、全体の補助をする方向は出しておるけれども農家がみんな納得してやるようになるかどうか、その区域によってダムが決まるというのですね、それまではできませんと。十年先になるかいつになるかわからぬ。今モデル的に一部取水をしているところだけが成功しておる。とすれば、思い切って早くそういうのを全体にやらないといけないのじゃないか、このように思うわけです。  そこで、私自身つくづく思いましたのは、どんなに道路整備をし、地域をきれいにして、そして水をやり、圃場整備をするか、よい環境をつくるか、この辺が入広瀬村の須佐村長が言われたような課題だと思うのです。ところが、これは一、二の例であって、私が前に言ったように、悪いところはもう手の施しようもないところがほとんどなのですね。基盤整備、道路、集落環境整備、そういうのにどのくらい金をかけようと考えていらっしゃるのか。十年後にはこれが完成する方向で進められておるのだが、あなたの方ではどう考えて進められておるのか。大臣を含めて、最後に意見を聞きたいと思うのです。
  185. 入澤肇

    入澤政府委員 先ほど来申し上げておりますように、農政、枠組みをつくっても、実際にやるのは地域の方々でございますから、その中でも大事なことはリーダーでございまして、リーダーの養成でございます。  全国各地でいろいろな動きがございます。いろいろな試みがございます。先ほど申しましたように、大学の先生方がいろいろなところで塾を経営して、そして地域の指導者を養成している。あるいは私どもも、二十一世紀村づくり塾運動というのを展開しておりまして、各県にその支部的なものがございまして、リーダーを養成しております。それから全国農業会議所でも、農業経営者協議会が中心になりまして各地域で篤農家の養成を図っており、意見の交換、研究発表等をやって、そうして自分たちの資質を向上させようと努力しています。そういう努力をやはり政策としてはきちんとバックアップしていかなければいけない、こういう地道な努力がリーダーの養成には必要じゃないかというふうに考えております。  それから、土地改良事業につきましては御説のとおりでございまして、できるだけ早く、早期に完工して受益を発生させるということが農業発展のためには必要でございまして、可能な限りの努力をしたいと思っております。これから中山間地域でいろいろな基盤整備をやっていかなければいけないのですけれども、一応、第四次土地改良長期計画によりますと、中山間地域の事業量シェアというのは大体四五%ぐらいを想定しておりまして、そうして集落排水につきましては、大体全国で三万集落対象に、中都市程度の整備水準目標整備をしたいと考えております。予算を適切に使って御要望にこたえていきたいというふうに考えております。
  186. 田名部匡省

    田名部国務大臣 いろいろな事例をお聞かせいただきましたが、そういうことがありますので、何とかその対策を講じようということでこの法案を提案いたしているわけでありまして、しかし、法律が通ればみんなうまくいくかというと、やはりそうではない。  私たちが優良事例のところを見てまいりますと、やはり人なのですね。企業は人なりとよく言いますけれども農業だってなりわいでありますから、やはり意欲的によく考えて研究してやっていかなければなかなか成功はおぼつかないと私は思います。そういう意味では、今度の担い手というのは、経営管理をしっかりしながら企業的感覚で農業というものに取り組んでいただきたいということで、これは時間がかかると思います。しかし、やらなければならぬことですから、そういうことで私どもも全力を挙げていきたい、こう考えております。
  187. 有川清次

    ○有川委員 時間が来ましたので終わりますが、最後に、今答弁の中で、人づくりを、リーダーを努力しているということだったけれども、若い人がいない、じいちゃん、ばあちゃんだけの山村が多いのですよ。そこのリーダーをどうするかというのをひとつびしっと考えて、じいちゃんを訓練したってしょうがないわけですから。これは要請しておきます。  それから、金がたくさん要る中山間のこの四五%の土地改良、環境整備を込めてやるということは相当大変です。自治体、建設省、環境庁、国土庁、運輸省、こういうのを全部網羅しながら、農林省だけ金がありませんから、その辺をぜひ連携してやるように要請して、終わります。ありがとうございました。
  188. 平沼赳夫

  189. 山原健二郎

    ○山原委員 中山間地出身の議員として、最初に、この中山間地の役割の重要性について大臣見解を伺ってみたいのです。  重要な農産物、林産物の供給地であることはもとよりですけれども、国土の環境保全、美しい景観や健康的な空間の提供などでも極めて重大な役割を持っているということです。森林の公益的機能経済的効果、ことしの林業白書によりましても、年間三十九兆円、それから水田の外部経済効果、算出方法にもよりますけれども、年間四兆円から十二兆円に上るという研究結果が出ております。水田のうち中山間地区域が四割としても、森林の公益的機能と合わせて、年間四十兆円あるいは四十四兆円もの公益的経済効果を森林と中山間地が発揮しているわけです。この大きな役割を中山間地域の農林業などが支えているわけでございます。  また、中山間地域の荒廃を食いとめる対策は、国土の均衡ある発展という課題から見ましても極めて重大であります。  ことし二月の国立環境研究所地球環境保全型国土利用研究チームで出している報告書によりましても、結論的に言うと、人口や経済活動の地域分散によって、輸送エネルギーの約二割が節約できる可能性がある、こういうふうに述べております。  また、中山間地域対策はひとりその地域のためだけのものではなくて、我が国社会が今後持続的に豊かな発展を遂げていく上で不可欠な課題考えるわけでございます。この点について大臣の認識を伺いたいのです。  したがって、今求められている中山間地域対策は、その役割の重さに応じた抜本的かつ思い切った方針を出すべきだと私は思うわけですが、最初にこの点についての見解を伺っておきたいのです。
  190. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今委員お話しのとおりでございまして、私どももそういう認識に立っております。  したがって、中山間地域は我が国農業の四割というものを占めておりまして、地域の基幹的産業である農林業の振興を初め、良好な生活環境確保する、あるいは農用地及び森林等の地域資源の適正な利用及び保全、さらには地方都市との道路アクセスの条件改善、あるいは医療、福祉の充実等を図る、あるいは定住条件整備を進めていくことは重要だというふうに認識をいたしております。  そのために、これまでも山村振興あるいは定住対策を初めとして各般の施策の推進に努めてきたわけでありますけれども農業経営担い手の減少、高齢化の進展等の状況から、関係各省庁の支援をお願いしておるところでありまして、先般も閣議でもお願い申し上げましたし、あるいは具体的に自治省、国土庁、農林省三省庁で勉強会を開きまして、今度の予算にも、千八百億という予算を自治省がこの地域の面倒を見るということでやったわけでありますし、国土庁も都市の人たちとの交流ということで、今いろいろと検討をいただいておるわけであります。  また、特定農山法案においては、中山間地域の条件に即応した新規作物の導入等による農業経営改善を図る、あるいは安定の促進、そうしたことで、農林業を中心としてその他の事業を含めた活性化のための基盤整備促進するため、所要の税制措置あるいは地方財政措置を含めて、関係省庁が連携あるいは協力をして総合的に措置をしていくということでございます。
  191. 山原健二郎

    ○山原委員 この法案が出まして、まず私は、隗より始めよということで、私の県、高知県の中山間地をずっと回ってみたのです。そうしますと、この高知県は県全体で人口の自然減となった最初の県なのです。出生者よりも死亡者の方が多いという全国最初の県になっているのですね。山間部に行くとその傾向がますますひどくなってきまして、集落そのものが消滅する事例がふえております。集落構成員の社会的生活の維持が困難な状態となっている、これをある学者が限界集落と呼んでおりますが、またそれに準ずる準限界集落が年を追って増加の一途をたどっています。放置しておけばあすは我が身という集落や自治体が広がっているのです。そういう地域農業、林業関係者あるいは自治体関係者からは、人が残れる、人が戻れる対策をという声が相次いていました。  ところが、発表されました法律案は、こうした切実な声にこたえるというものからはほど遠い内容になっているのではないか、残念ながらそう指摘せざるを得ないのです。  まず第一に、所得補償措置が盛り込まれなかったことでございます。EC型の所得補償などは日本になじまないなどという意見がありますが、なぜそう言えるのか、この点について伺っておきたいのです。
  192. 入澤肇

    入澤政府委員 ECで行われておりますような直接所得補償制度、これを今回見送った理由いかんということでございますけれども、まず、ECの農業条件と私ども日本条件がかなり違う。その一番違うのは、基盤整備等の構造政策が十分に展開されていないということが一つございます。  それから、先ほどから説明しているのでございますけれども、直接所得補償をやるためにはだれがどの地域でどういう農業をやってどのぐらいの所得を得ている、それが平場地域、他の農業地域と比べてどのぐらい差があるとかいうことがきちんと測定されないとなかなかできません。一つ所得補償をやるためにはかなり厳格な計算方式に基づいて、また、支出の方法もそうですが、支出した後の使い方についてもいろいろな制約がございます。私どもが今悩んでおりますのは、日本の全国各地の中山間の農業の実態を見ますと、そういうふうな標準的な農業経営が必ずしも計算できないような状況にございます。  そこで、今度の中山間地域の法律では、最適土地利用計画をつくり、最適農業経営改善計画をつくって、そこで農業としてやっていけるという見通しをきちんと立てていこうじゃないか、それをバックアップするシステムとして低利融資ということを考えたのでございまして、現時点で直ちに直接所得補償制度を考えることはなかなかできない。  それからもう一つ、人が残るような政策というので、実態を見ますと、かなり集落によっては、先ほども御説明がございましたけれども廃屋が目立つ。集落の再編整備ということがむしろ必要じゃないかということで、今回の法律の中では、生活環境整備の中で集落の再編整備ということもやれるようになっております。予算としても、集落の再編機能整備という予算を取っておりますが、中心的な集落に人を集める、家を集めるということが必要がなというふうに考えておりまして、そういう政策も展開したいと思っております。
  193. 山原健二郎

    ○山原委員 あなたの発言が、何となく音質が私と違うのか、ちょっと聞きづらいです。  農水調査室の出しているものを見ますと、その中で、国民的合意を得ることの困難性とか、あるいは対策地域農家の基準を引くのが困難であるとか、あるいは社会福祉的な援助を受けることについての農家自身の立場、感情などというのが出ているわけですが、ちょっとそれはそういうふうに理解してよろしいですか。違いますか。簡単に答えてください。
  194. 入澤肇

    入澤政府委員 要するに、直接所得補償をやるためにはそのための前提条件が必要だということでございます。どこの地域でどの程度、どういう農業経営をやるか、どのような農業所得が得られるか、平場と比べてどのぐらいの差があるのかというふうな計算が必ずしもできない。要するに、直接所得補償をやるための、我々が行政官として実施要綱、実施要領をつくるときの前提条件がなかなか今の時点で定められていないということがございます。  そういうことが実現できるように環境条件整備していこうというのが今回の中山間地域の法案の趣旨でございます。
  195. 山原健二郎

    ○山原委員 いろいろおっしゃっているのですが、例えば、対象地域農家をどう限定するかという基準づくりの困難さということも出ているわけですけれども、これは、新政策に沿った規模拡大のためには、いわゆる補助対策を集中する特定農家の線引きをやろうとしているわけですね。そういうことから考えましても、あるいは農家のプライドの問題とかいうことも出ているわけですけれども、これは所得補償を中山間地域の人々に対するいわばお恵みとかお情けとかいうふうな見方でしか見ていないという証明であるという感じもするわけです。結局、中山間地関係者からは、融資ではなく所得補償をという要求が一番強く出されているわけです。それは我が国全体の利益にかなったことだから要求しているわけですね。  また、国民の合意についてもいろいろ言われているわけですが、これも三年前の農政調査委員会が二千名を対象にした「住みよい農村環境に関する世論調査」の中で、農村景観や水資源保全のために国家が農村に補助金を出すことの是非を質問していますが、結果は、都市住民の六三・五%が賛成している。  総理府が先日発表しました「森林とみどりに関する世論調査」で、これからの森林整備のあり方を尋ねていますが、「経済効率を第一に考え整備すべき」という意見の九・八%に対して、「国土保全、災害防止などの役割を重視して整備すべき」という意見が八二・二%に上っておりまして、四年前の調査結果の七九・三%に比べても着実にふえているわけですね。  中山間地域に対して、環境国土保全に着目した特別な助成措置を講ずることについて、国民の合意というのは多数意見として広がりつつある、広がっているのではないかという点を私は指摘したいのですけれども、この点について、時間があればまた伺いたいと思います。  それからもう一点は、新規就農者など若手農業後継者の確保対策についても、法案が市町村に対策計画の策定を求めているにかかわらず、それを実効あるものにするための新たな助成制度は見送られたわけですね。ECでは、新規に農業を始める青年に対する国家的な助成が共通農業政策の力点の一つとなっているわけです。フランスでは、青年農業者就農助成制度によって、三十五歳以下の就農者に対し就農者助成金と特別融資が手当てをされているわけです。  一九九〇年時点の為替レートで助成額と融資額などを見てみますと、就農者助成金、夫婦で就農の場合、山岳地帯で最高約七百十八万円、普通の条件不利地域では最高約四百四十七万円、その他の地域で最高額三百四十六万円という一時金が交付される。それから、特別融資として、条件不利地域ならば利率二・七五%、こっちの場合は四・三%ですね。融資額は、夫婦の場合で限度が二千万円近い額になる。九〇年以降に経済指標の変動などはありますけれどもフランスでおおむねこうした内容の青年農業者就農助成制度が実施をされているわけです。  また、構造改善局長も、ことしの三月の農林水産省広報誌でのインタビューで「やはり新規参入者が一番求めているのは、はじめの運転資金と、もう一つは、研修です。」と述べております。その運転資金というのは、今回盛り込んだ融資資金だと答えるかもしれませんが、融資で事足りるような状態でないことは農林水産省自身が承知していることではないでしょうか。だから、少なくない自治体が独自に後継者確保対策をとり始めているわけですね。これは香川県の場合も幾つかの例が出ております。私の県にも、そういう農業後継者育成確保基金を設置しておる町村もあるわけです。いわゆる財政力の弱い中でも懸命に対策を図ろうとしているのが今の実情です。国はこうした自治体の努力を後押しする助成制度をつくるべきだと思いますが、この点はいかがですか。
  196. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 まず第一点は、フランスなどでは青年農業者の就農助成制度というようなことでの制度があるけれども、そんなものを日本にも設けられないかというお話だと思いますが、確かにそのような制度が就農援助金ということで直接就農青年に交付されるわけでございますが、我が国では、従来農業の助成体系といいますのは、集団であるとかあるいは組織を対象に行ってきておりますし、また、特定の職業につくことに対して国が直接個人補助を行ってはいないというような問題、また助成金の交付を受ける就農青年の心理面といいますか、どんな受け取り方をするかというような問題などもありまして、こういう制度はなじまないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それで、現在就農を促進するということは、これは非常に重要なことでございますので、個々の青年の皆さん方の自立的志向といいますか、そういうものを助長しながらやっていくのが一番いいのではないかということで、金融上、税制上の特例措置を講じておるわけでございます。  金融上といいますのは、先ほどもちょっとお話がございましたが、例えば農業近代化資金では、従来ですと施設資金といいますか機械施設資金、そういうものを貸しておりますが、就農者には初度的な経営資金も貸し付けるという道を開いたとか、あるいは農地等取得資金、どうしても農地の取得が必要になりますが、そういう場合三・五%資金でございますけれども、それの適用要件を緩和するとか、あるいは税制上におきましては、経営規模拡大計画の認定を受けた新規就農者機械等を取得する場合には五年間の割り増し償却をするというような制度を設けてきておりまして、またさらに、昨年は農業改良資金助成法、当委員会でも御議論願いまして、そのときにもこの問題いろいろ御議論があったわけでございますが、農外からの新規参入青年も含めまして、意欲ある青年を対象にしまして無利子の青年農業者等育成確保資金というものも創設したところでございまして、こういったものを通じまして青年の就農を促進していくのが適切ではないか、このように考えております。  それからさらに、自治体の方でいろいろな助成制度があるじゃないか、ああいうのを支援できないかということでございますが、国の方もこの青年農業者の育成確保対策は非常に重要なものというふうに理解をしておりまして、例えばその育成のためには、農業者大学校における教育、研修をする、その場合の施設助成とか各種の助成を国がするとか、あるいは円滑な就農のための情報の収集、提供あるいは就農相談あるいは先進農家等に実践的な研修をするというようなことにつきましても、いろいろと国が助成措置を講じてきておるわけでございまして、一方、先ほど先生からお話がございましたように、自治体はいろいろなことをやっておるわけですが、これらはこういった国の施策を補うということで、地域の実情に応じた弾力的かつきめの細かい、そういう国の施策ではなかなかそこまで行き届かないところをやっておるということでございまして、我々としては、国のそういった施策と地方のそういう対策とが相まって、青年農業者の確保に実効を上げていくということがいいのではないかというふうに思っております。
  197. 山原健二郎

    ○山原委員 おっしゃることはわかるわけですけれども、このままの法案内容では新規立法を図った意味がないといいますか、実効性が伴わない。これはどこへ行ってもそういう意見を聞くわけですね。少なくとも所得補償制度と、そして若手農業後継者確保育成のための助成制度の創設を盛り込む方向で、法律案を修正すべきではないかというふうに思うのです。殊に、自由化によりまして何をつくっても採算が合わぬというのはもうどこへ行っても聞かれる言葉ですし、シイタケをつくれば中国から入ってくる。すべてが行き詰まるような情勢にあることはもう一番あなた方が知っているわけですから、そういう点から考えまして、やはりこれは法律案としては不十分ではないか、修正すべきではないかということを考えますが、この一点について、簡潔にお答えいただきたいのです。
  198. 入澤肇

    入澤政府委員 私どもこの法案によりまして、中山間地域におきましても、また平場におきましても農業構造改善を進めていきたいというふうに考えておりまして、現時点におきましては最善の案を提案している、現状を分析した上で、私どもにできる限りの案を提案しているというふうに考えておりまして、直接所得補償が入らないからだめだということではないと思います。
  199. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つは、ソフト基盤対応の法案だと言われているわけでございますし、今回の法案、ソフト面の整備に焦点を当てて取りまとめたものであるということですね。でも、ハード面でも基盤整備について新たな対策が必要ではないのかという点です。補助率の一層の引き上げ、あるいは農家、自治体負担の軽減を図るという立場から、この点は当然やるべきだというふうに思いますが、この点について伺っておきたいのです。
  200. 入澤肇

    入澤政府委員 中山間地域、今までの対策は、山村振興法にしても過疎対策法にしましても、どちらかというと、計画をつくって、そしてハード中心にやってきた。今回の中山間地域の法案は、それに比べまして、経営改善を進めるということで、ソフトのいろいろな手法を組み合わせて提案したわけでございます。  しかし、中山間地域の基盤整備が必要であるということは私ども十分認識しておりまして、そのために、従来から土地改良事業の実施等に当たりましても、採択基準の緩和をするとかあるいは補助率の引き上げをするとか、新しく第四次の土地改良長期計画におきましても中山間地域に十分配慮して、集落排水だとか基盤整備をやるとか、いろいろな努力をしているわけでございます。  特に今回、中山間地域の集落の再編機能整備というふうなことで新しい予算も確保しておりますし、それからまた、中山間地域のために総合的な土地基盤整備事業を高率の補助率でやるということもやろうとしているわけでございます。  そのように、ハード面も無視しているわけではございません。
  201. 山原健二郎

    ○山原委員 農政審の一月に出した「今後の中山間地域対策の方向」の中で、現状に触れた部分がありますね。「中山間地域では、地形、土地条件の制約から平地に比べて整備コストが高くなることもあり、農業生産基盤整備は遅れておりこそれからまた、「基礎的な生活環境施設の整備や地方中心都市と結ぶ基幹的道路の整備は遅れている。」こうした指摘ですね。その上で、ソフト面での基盤づくりも十分ではなかった、こう言及しているわけですが、山村振興法あるいは過疎法の制定から長い期間を経ているにもかかわらず立ちおくれたわけですから、この農政審中間まとめの指摘からしましても、ハード面での基盤整備について、既存の立法にとどまらない手厚い対策が講じられてしかるべきだ。  例えば農地基盤整備にしても、一層の補助率の引き上げで農家負担や自治体負担を軽減していくという措置は、当然今とるべきではないかと思いますが、この点いかがですか。
  202. 入澤肇

    入澤政府委員 繰り返しになりますけれども土地改良事業の実施に当たりましても、中山間地域の条件にふさわしいように補助率を引き上げたり、採択基準を緩和したりして特別の措置を講じているわけでございます。  これからも、実態を見きわめながら、可能な限りの努力はしていきたいというふうに考えております。
  203. 山原健二郎

    ○山原委員 基盤整備という場合、山間地特有の地形や自然条件を生かした整備ということが大事だと思います。例えば、山間地にある棚田あるいは千枚田といいますか、谷間にある谷地田などの維持、保全整備を図る事業ですね。これは、国土保全水資源涵養、あるいは景観を保全する、あるいは水生動植物の生息地の保全など、プラスアルファの貴重な価値を生み出すものでありますから、そうした点に着目した基盤保全事業に助成する対策はとれないのかどうか。その点、伺います。
  204. 入澤肇

    入澤政府委員 先ほど申しました中山間地域の総合基盤整備事業というのは、補助率五五%、当初六〇%だったのですけれども、補助率の正常化で五五%になったのですが、これは通常の四五%、五〇%と違う高い補助率でやっております。谷地田の条件整備だとか、かなり条件が厳しいというところに配慮した政策でございます。これにつきまして、さらに自治省の方でも裏負担等について配慮してくれております。
  205. 山原健二郎

    ○山原委員 時間がなくなってきますので、森林問題ですけれども、ちょっと伺っておきます。  中山間地問題を論ずる場合、林業問題は欠かすことはできないわけでして、林業労働者の賃金や社会保障などの待遇改善策を求める声が非常に強いわけですね。今年度から交付税において、事業費規模で千八百億円程度の森林山村対策に関する財政支援を措置することになったと言われております。その中で、特に森林整備担い手対策のため、基金の設立も支援するとしておりますが、この基金が各都道府県で設立されるようにすること、また、その基金運用に当たって、林業労働者の社会保障の充実など待遇改善が図られるよう、農林水産省として指導を行うべきだと思いますが、この点についてお伺いをいたします。  もう一つ、時間の関係でついでに申し上げます。  これは、私の県ですが、高知県香美郡物部村の山林で先月大規模な山火事が発生をしまして、五百八十三ヘクタールが焼けました。そのうち、民有林が三百六十八ヘクタール、あとは国有林です。この消火のために実に六日間にわたって不眠不休の消火作業が行われたわけでございます。これに参加したヘリコプター三十七機、それから、村民、あるいは消防団、あるいは森林組合等の人たちが動員された数二千名、これで消火作業が行われたわけですけれども、その被害は、小さな村にとっては大変な被害額になっております。その焼け跡の木の伐採のための林道あるいは作業道路の整備、あるいは保水力を失った山の災害防止対策など、これは相当な金額を必要とするわけですが、こういうことに対してどういう対策があるのか、これをあわせて伺っておきます。
  206. 馬場久萬男

    ○馬場政府委員 お答えいたします。  最初のお尋ねにありました、森林整備担い手対策のための基金の造成でございますが、お話のありましたように、国土庁、林野庁、自治省、三省庁によります森林・山村検討会の検討結果として、平成五年度の地方財政措置として五百億円の交付税措置がとられたところでございます。これは、我が国の森林の適正な管理あるいは機能の発揮というためには担い手が必要だという観点からつくられたものでありまして、私ども、この措置を通じて、林業労働者の労働条件改善など、林業の担い手対策の一層の充実が図られるように適切に対処してまいりたいと考えております。  なお、現在のところ、平成五年度中に四十三道府県において基金の設置または積み増しが行われると見込まれているところでございます。  そこれら、二番目のお尋ねでございますが、高知県物部村の山火事は、おっしゃるように大変な被害でございました。面積的には三百六十八ヘクタール、十四億円という被害報告が県から参っておりますが、災害の発生後、私ども、直ちに担当官を現地に派遣いたしまして、被害状況の把握あるいは現地指導等を行っているわけでございます。  ただ、この被害の状況は、的確に調査をした上で、なるべく早く復旧対策を講じなければならぬということで、現在、県、村等と緊密な連携をとりまして、被害の態様に応じまして、被害木の伐採なり搬出、あるいは跡地の造林等、復旧対策を講じてまいりたいというふうに考えております。
  207. 山原健二郎

    ○山原委員 あと一問です。  最後に、所有権移転等の促進事業についてですが、農地法の規制を緩和することになることはもとより、都市計画法、農振法の開発規制を骨抜きにするものになるのではないかという危惧があります。また、農地転用についての用途制限はどうなるのかという疑問もあるわけでございますが、その点について、本当に農地を守ることになるのかどうか、この疑点があるわけですが、これについてお答えをいただきたいということと、もう一つは、大臣に一言伺いたいのですが、新たに法律をつくるからには、拙速でなく、内容を改めることも含めて、実効性あるものにして、これを成立さすことが必要ではないかと思いますが、私はその点を強く求めるわけでありますけれども、これについての大臣見解を伺って、私の質問を終わります。
  208. 入澤肇

    入澤政府委員 先ほども申し上げたのですけれども特定農山法案の農林地所有権移転等促進事業は、農地転用の転用促進だというふうなことでございますが、法律上具体的に申し上げますと、農林地がその基幹的産業である農林業にとっていかに最適に利用されるかという観点から、農林地の農林業上の効率的かつ総合的な利用確保を図るということ、それから、農林地が地域活性化に必要な施設用地として転用される場合には、そこでの農林業経営の継続、安定等の見地から、原則として農業者等による代替農地、農用地等の取得があわせ行われることを必要とすること、これは、法案第八条第三項第二号イ及びロに規定してあります。  それから第二に、農地転用のための権利移転等が含まれる場合には、農地法の転用許可基準と同様の要件による審査を行うこと、これは同条の第三項第四号、第五号ロ及びハ。  それから、農振法との関係におきましても、農業振興地域整備計画で適合要件といたしまして、農用地区域の用途区分に反した施設の立地を内容とするものであってはならないこと、これは同条の第三項第四号に規定しております。  対象施設につきましても、事業の活性化を図るための基盤となる施設に限定されます。また、施設用地取得者は、施設を適切、確実に整備すると認められる計画認定者に限定されております。これは同条の第三項第二号、第五号でございます。  策定手続におきましても、農業委員会の決定を経るということになっておりますし、農地転用のための権利移転等が含まれる場合には、都道府県知事の承認を受けるものとし、その際には都道府県農業会議の意見を聞くものとするという、現在農地法の手続を遵守することにしております。これは同条の第一項、第五項でございます。  したがいまして、内容及び手続双方の面から見まして、農地法に基づく農地転用の場合と同様の措置を講じておりまして、農地転用の緩和を行うものではございません。
  209. 田名部匡省

    田名部国務大臣 拙速ではないかというお話でありますけれども、事は急を要する話で、これ、計画を立てて実際にこの法案をお通しいただいて、実施段階でいろいろとやってまいりますと、まだまだ先のことになります。もう若い人たちは待っていられないわけでありますし、私どももそういうことを考えますと、この先対応を、十分農家の人たちと相談をしながらしっかりしたものにしていきたい、こう考えております。
  210. 平沼赳夫

  211. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 大分きょうは時間が過ぎましてお疲れだろうと思いますけれども、最後の質問でございますので、おつき合いをいただきたいと思います。  まず最初に、新政策に関連してお尋ねをいたします。  そもそも、今回提案になっております三つの法案も、いわばこの新政策を具体化するものである、こういうように私どもとしても承っております。構造改善局長お話によると、さまざまこれから新政策を具体化する手だてあるいは法律をつくってこの集大成を図っていかなければならない、いわば構造改善局がこの構造改善に関する法案について、他に先駆けてトップランナーとして走り出したんだ、こういうように聞いておるわけであります。  そこで一つには、今度の法案についても、これまでの審議でさまざま論議されておる、そしてまた私どもも、特に生産者の皆さんとの意見交換などもしております。御案内のように、きのうあたりからも、私の地元の北海道農民連盟の皆さんが、役員さんが上京しておりまして、皆さんとも意見の交換をさせていただいております。  言うまでもなく北海道の場合には、日本の中の食糧基地として重要な位置を占めておる、そしてまた、ほとんどすべての作目が専業的に行われている地域でもあるだけに、これからの新政策の具体化ということに対して皆さんが大変な関心を持つ、これは当然のことだと思うのですね。その中には期待もあるし不安もあります。特に、この新政策の全体像というものがまだ見えてこない、今度の法案が出された、だけれども、この後どういうものが続いてくるのかということが見えてこないということについての心配もあるんだろうと思うのですね。この点については、また後ほどお尋ねをいたします。  まず最初に、この新政策の具体化のための方向として、農林水産省大臣官房企画室がこの政策のポイントについて大変わかりやすくと申しますか、イラストなども使いながら出しているパンフレットがございます。わかりやすいようなんだけれども、やはりなかなか見えてこないというところがたくさんあるわけですね。特に、この「新政策理念と基本的視点」の中では、これは二ページですけれども、「国内的には、効率性追求一辺倒への反省の気運の高まりから持続的・安定的経済社会を模索するに至っておりこそれからまた、「農業農村を取り巻く状況も自給率低下、農業就業人口の減少などの面で大きく変化してきています。特に、農業経営を担う者の確保が深刻な状況になっており、国民的視点に立った食料・農業農村政策確立があらためて問われている」、つまり、農業の現状に対する危機感というものがやはりにじみ出ていると思うのですね。  こういう状況がどうしてできたのかということについては、これまでもさまざまな御質問があって、一つは、農業基本法農政といいますか、そう言ってはなんですけれども、自民党さんが長くやってきたこの自民党農政というか、そのツケが回ってきたんじゃないか、やはり失敗だったんじゃないかという意見があったり、それから、何といっても大きな要因というのは、農産物、食糧の市場開放、輸入が非常に拡大した、それが国内のさまざまな農業生産というものを圧迫している。あるいは価格の面で、この新政策の分析の中でも出されているけれども、米を初めとして昭和五十年度と変わっていないような価格になっておる。これでは所得が上がってこない、離農もふえている、後継者もいないということが深刻に語られているわけですね。  その中で、望ましい経営体像の提示ということがあるわけですけれども、特に稲作農家中心にしながら打ち出されている。これは今後十年を見据えてということですから、平成十二年を想定しているわけですけれども、そこでは、例えば平成二年に三百八十三万戸ある農家を二百五十万から三百万戸にするんだ、これはただ単に切り捨てるのではなくて、農家の戸数、これを一経営体として規模拡大したり、あるいは共同化したりというようなことでこの農家戸数は減じていくんだということですね。  稲作の姿としては、稲作中心に単一経営としては十ヘクタールから二十ヘクタール程度の経営規模、これが五万戸くらいだ。それから五ヘクタールから十ヘクタール程度の複合経営農家、これが十万戸くらいだ。それからまた、組織経営体を二万戸くらいを目標にするというようなことも言われている。個人経営体としては、きのう参考人で来られた笠井さんも、稲作農家はやはり家族経営体を基本にするということが望ましいと思うけれども、その限度というのは一人当たりで十ヘクタールくらいだ、夫婦二人でということになると二十ヘクタールくらいだ、これがもう精いっぱいだということです。そういうことが示された。これはこの政策についての御説明の中でも、例えば構造改善局長が私どもと前に意見交換したときにも、一つのメルクマールとしてこの辺が出ておりますね。これは図らずも、きのうの笠井さんの御発言とも一致しているんで、やはり私どもとしても客観的なんだろうなというように思っておるわけです。  ところが、この望ましい経営体像を稲作について示されると同時に、これにはやはり目標というものがあるだろうと思うわけですね。一つは、すべての面で自給率が低下してきている、こういうことが言われているので、過日私ども田中委員からも、例の穀物とカロリーについての自給率のお尋ねがあって、この具体的なお答えがちょっとまだ留保されている面があるようです。そしてまた構造改善局長お話だと、やはり自給率の減少には歯どめをかけていかなければならない、そして農地としては何とか五百万ヘクタールを維持していかなければならない、こういうふうにおっしゃっているわけですね。  それとあわせて、稲作を中心にしてという望ましい経営体像を提示されているわけですけれども、今後確かに需給状況というのは変わってくると思います。例えば米については以前と違ってだんだん消費量も少なくなってきている、だから逆に消費量も拡大しなければならないという工夫も、あるいは努力も一方でなされているわけですね。かつては国民が一人一年間で百キロぐらいは食べていたはずの米が、いろいろな食べ物が私どもの前にたくさんあるというようなこともあり、あるいは子供たちの食生活も変わってきたというようなこともあり、平均すると一人当たり一年間で七十キロをちょっと超えるくらいしが食べていないのじゃないかということもあるにはあるけれども、しかし、米が基礎的な食糧であり、この自給体制はしっかり守っていこうということは、きょうも鉢呂議員のお尋ねに対しても、ほかの大臣はともかく農水大臣からは決意があったと私どもは聞いておりますし、先日私が代表質問で宮澤総理にお尋ねしたときも、総理もその方針に、お米について自給体制を堅持することは変わっておらない、こう言っておるわけですね。これはやはりしっかりしておかなければならないと思う。  ところが、かつては非常にあり余っているということで、したがって生産調整をして減反を続けてきた稲作ですけれども、この米のできぐあいがこの二、三年悪いということもあって、政府米の在庫量も減っているというようなことから、二年続きでこの減反の見直しということが行われているわけですね。そういうことも絡むわけですけれども、一体この新政策の中では、この稲作について、お米の生産目標というのはこの十年見据えて、望ましい経営体像との関連で結構だと思うのですけれども、どのくらいの生産量というものを設定しているのか、これをひとつ数字で、できればお示しをいただきたいと思います。
  212. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 稲作に関します長期的な生産の見通しについてでございますが、これは平成二年一月に閣議決定されました長期見通しにおいて明らかにしているところでございます。これによりますと、具体的には米の完全自給を前提にいたしまして、平成十二年における稲作の作付面積は百八十三から百九十四万ヘクタール、それから生産量につきましては、九百五十から千十万トンというふうに見込んでおります。  それで、こういったフレームを基礎といたしまして、新政策におきましては、先ほど先生からお話がございました農業構造農業経営の展望を策定をしている、こういうことでございます。
  213. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 今数字で目標をお示しいただいたわけですけれども、ただ、この議論の中でも大変心配されておりますように、稲作農家はとにかく減ってきているわけですね。それから水田についても、減反減反で本当に減ってきているわけですね。全国ではピーク時に比べると、水田が三分の一ぐらいは減っているということが言われているわけですけれども北海道の場合なんかもっと減っているわけですね。四〇%を超える減反率、あるいは転作ということです。そして、この減反政策の中で、一つは米づくり農家が米をつくることの意欲を減退させてきたんじゃないか。これには一つ価格の問題も合わさっている。  かつては稲作農家の方々の夏場の米価の、闘いと言ったら語弊があるかもしれませんが、運動というのは米価の引き上げたったわけですけれども、最近では引き上げではなくて、下げないでくれというようになっているのですね。それくらい下げられ続けてきた結果だろうと思うのです。そうしたことが合わさって、減反と米価の低下あるいは据え置きということが合わさって、稲作農家が意欲をなくしてきている。もちろん転作によって他の作物に挑戦して成功している人、農家もないではないけれども、しかし、全般的に見ると、意欲をなくしてきているということが言えるんじゃないか。  そういう中で、望ましい経営体像を提示しながら、米についてはしっかり守っていく、つくってくれと言っても、果たしてみんながその気になってやれるんだろうかという心配があります。今一番深刻なのは担い手の問題だと言われているように、まさにつくり手の問題であるわけですね。いわゆる後期対策もことしで終わるわけで、水田の活性化対策というものが検討されるわけですけれども、この段階では米の生産量というのも減ってきている今の現状。  昨年は、八年間続いた北海道の稲作、これは豊作だったのですけれども、去年は、私の地元の上川地方、俗に上川百万石と言われているのですが、これも残念ながら九年目にして凶作でしょうね。昔だったら恐らく、十数年前だったら大凶作だったと思われるような天候の状況だったですから。しかし、皆さんの努力だとか品種の改良だとか、あるいは基盤整備ができているようなこともあって、何とか八〇%を切るということはなかったけれども、それまでがよかっただけに、皆さんとしては大変な不作感を持っているのですね。  特に、モチ米なんかは本当に通道したような状況で、そしてまた、ことしは、来月皇太子殿下の御成婚もあるということで、それにあやかって大変モチ米が使われるんだそうですけれども、それが足りない。場合によったら韓国あたりからの緊急輸入なんというのが出てきやせぬかということが、前にこの委員会でも大変話題になったくらいです。  こうした状況の中で、なおこれからも米について減反政策というものを続けていくのか、あるいは歯どめをかけて、ここまで減った田んぼ、水田、これを今度は、基盤整備などがまだまだ足りないところはきちんとやって、良質米をつくる、あるいは加工用の米などもきちんと生産計画を立ててやっていくというようなことで、生産者の方々の御協力を得るようにする。こういうことが、生産者に意欲を持っていただいて、それこそ経営マインドを持ち、経営意欲を持った農家を育てていくことにもつながるんじゃないかと思われるのですけれども、この減反政策の見直しについてどういうようにお考えになっているか。この辺は大臣にもお聞きをしたいと思っておるのですけれども、いかがでしょうか。
  214. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 米につきまして、減反政策をどうしていくかという御質問でございますが、一体全体米についての生産力が、特に担い手の高齢化といいますか、そういうようなものを背景としてどの程度になっているかということは、なかなかにわかに判断しがたいところでございますが、我々といたしましては、米についてはやはりまだ潜在的な需給ギャップというものがあるというふうに思っております。  したがいまして、この需給ギャップをいかに需給調整をしていくかということになるわけですが、その際に、単なる価格価格を下げれば皆さんつくらなくなる、上げればつくるというようなことで、価格で需給調整をやっていくという方法もあるわけでございますが、我々としては、その一環として、やはり生産調整はなお必要であるというふうにまず認識をしておるわけでございます。  それで、これまでの生産調整のやり方につきましては、今先生からもいろいろお話がございましたように、適地適作であるとか、あるいは生産者の規模拡大の意欲を阻害しているではないか、どうも適切ではないんではないかというような批判があったことも事実でございます。  したがいまして、新政策においては、この点どのように言っておるかということでございますが、「将来の米の生産調整については、市場で形成される価格指標やコスト条件などを考慮して、経営体の主体的判断により行い得るような仕組みとする方向に向け、」各般の条件整備を進めることが必要であるというふうに書かれておるわけでございます。  したがいまして、本年度から三年間ということで水田営農活性化対策をやるということになったわけでございますが、その際にやはり、今申し上げましたこの新政策方向にも沿いまして、意欲を持って稲作に取り組もうとしている農家あるいは地域ができるだけ稲作に集中してもらうようにしようということで、今回転作の緩和をしたわけでございますが、その転作緩和の面積を定める際に、担い手のウエートの高いところ、それから稲作の生産性の高いところ、それから稲作依存度の高い地域、こういうところを優先的に、今回まず転作緩和をしたということでございます。  それから、規模の大きな経営体の育成助長をしていくということで、効率的な転作営農の推進を図らなければいけないということで、いわゆる転作奨励金と従来言っていますが、その助成体系もそういった方向に見直したということでございまして、我々といたしましては、今申し上げました新政策の方針に沿って、今後もこの問題は進めてまいりたいと思っております。
  215. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 大臣のお答えの前に、ちょっと今のに関連して申し上げて、それから大臣の御意見をお伺いしたいと思うのです。  今お話がありましたが、そうすると米についての生産調整というのはなお今後も続けていく必要がある、こう言われているのですね。ところが、この新政策方向としては、例えば先ほどお示ししたパンフレットの十一ページにも表記されているのですけれども、「これまでの生産調整の方式は、ともすると適地適作や意欲ある農業者の規模拡大意欲を失わせているという問題点が指摘されています。」こう言われているのですね。私は、規模拡大意欲を失わせているというのではなくて、むしろ先ほど申し上げたように、生産意欲そのものを失わせているというか減退させている、こういうように表記すべきだというように思っておるのですが、その後で、生産者の「それぞれの主体的判断により生産調整を行えるような仕組みとしていくことが必要です。」こう書いてあるのですね。つまり、官製ではなくて生産者みずからが生産調整をする主体になっていくということが必要だというように読めるわけです。最後のところで、しかし「個々の生産者の選択に完全に委ねることが事実上難しいことなどの特性を有しておりこういう表現もある。そして、最後には「本年度で終了予定の水田農業確立後期対策に代わる新たな対策につきましてはここうありまして、「生産力の実態、在庫水準などを踏まえた適切な需給とするとともに、」「行政の関与の下での生産者団体を核とした取組みや地域の自主性の尊重を旨とした取組みが行われるようにする必要があります。」こうなっているのですね。  そうすると、この生産調整というのは、当面はやっていかなければならないけれども、やがては生産者が主体的に調整の主体になっていくというような方向を目指しているということなのか。そして、最後には「生産者団体を核とした」ということになっているから、生産者及び生産者の団体の意見を尊重しながら、あるいは場合によったらそちらに任せるような方向を目指すのだ、こういうようにも読めるのですけれども、そういう方向を目指しているということでいいのか、大臣、その点はどうですか。私はそれは好ましい方向だと思っておりますけれども
  216. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 大臣が答弁される前に一言。  今申し上げましたところはどういうことかといいますと、現在自主流通米が国の流通するお米の中で大宗を占めてきた、それで、自主流通米につきましては現在価格形成機構が設けられまして、そこで一応需要と供給によりまして一つの市場ができて、そこで一つ価格が形成されておる。そうしますと、今それぞれの地域では、自分たちの米は一体全体市場でどういう評価をされているであろうか、つくり過ぎれば値段が下がってしまうかもわからない、そういう価格の変動も見ながら、自分たちの地域の稲作をどんなふうに考えていったらいいのかというような機運も生まれつつあるわけでございます。  そうしますと、農業団体が核になって自分たちの村なり地域の稲作をどんなふうに持っていこうか、それで個々の農業者の皆さんの御意見も聞きながらそういうことをやっていけるようにしていってはどうかということで、今回も水田の活性化対策を策定する場合に、一歩でもそういうものに近づくようにしたいと思いましたが、今までかなり行政が目標面積を割り当てをしてきた、それを急に農業団体がやるというように変えていくことは、実際問題としてなかなか実効を期しがたいというような面もございました。したがいまして、そこは農家の意見も取り入れながら、行政と農業団体が共同でといいますか、そういう形で取り組んでいこうじゃないかというようなことに今回はとどまっております。
  217. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今局長からお答えしたように、なかなか難しいかじ取りを実はいたしておるわけです。余り過剰になっても相当の負担が伴う、そうかといって不足するとこれまた大変、結局、自由化をしていない中でどういうふうにやるかというのは、天候にも左右されますし、何といっても台風だ、冷害だということもあります。それで不足を来しては大変だということで、その間をうまく調整するものですから、どうしても農家の方から見れば、つくれとかやめろとかと言われるので何だということは痛いほどよくわかるのですけれども、実際にこれを全部管理してやっていこうという立場になると、なかなか難しいことであります。  いずれにしても、土地利用型の農業をしっかりしようということになりまして、政府が余り口を出すのではなくて、農家自身で何とかうまくいかぬかと思ったのですけれども、どうもそれもまた、長いことやってきたことを農業団体にやってもらおうと思っても、実は難しい問題があったのです。しかし、いずれにしても自主流通が八割を占めるようになっておりますので、こうしたことで今度制度別、用途別ということも不足に対応しなければいかぬということで、農家の皆さんの不満もよくわかります。しかし、新農政という観点から外れたことをするというのも、これから進めようとしているわけですから、この先どういうことが一番望ましいのか、いろいろと御意見を聞きながら、農家の意欲をそがないような形でやる道が何とかあるのではないかということで、いろいろと省内でも検討をいたしております。  いずれにしても、難しいかじ取りでありますけれども、意欲もそいではいかぬという気持ちは十分持っておりますので、規模拡大等そうしたものをいかに伸ばしていくかということも、私どもは大事な要素だと考えております。     〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕
  218. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 きのう参考人として来られた五所川原の笠井さんはなかなか御努力をなさって、私はこれは成功している例だと思いますけれども、同時に御苦労話もありましたし、かなり厳しい政府に対する批判もあったと私は思うのですね。これまでの農政には哲学がないということまで言われて、その具体的なあらわれ、言い方は、多いときにはつくるな、減らせと言い、足りないときには復円をしてふやせということが、つまり、一貫していないということでしょう。これは米に限らず、よく言われるのは牛乳なんかの生産調整もそうですが、これも非常に深刻なお話が出ているわけですけれども、稲作についても新政策目標にしている望ましい経営体像、果たしてこれで行けるのか、これはまだまだ議論しなければいけないと私は思っております。  確かに、さっき高橋局長お話しのように、米についてどうしても年間一千万トンぐらいは確保していかなければならないだろうと私ども考えておりますけれども、これで果たしてその確保ができるのかな、むしろこれからは過剰の心配よりは少ない生産量の心配の方をしなければならないのじゃないだろうか。また、一般的に考えても、何といっても多いことの悩みよりは足りないことの悩みの方が深刻だろうと私は思っておるのですね。多ければ多いなりに問題があることはわかります。問題になることはわかるけれども、国民的な視野に立ってということを新政策でも書いているわけですから、国民的な視野に立ては、足りないことの方がずっと心配なわけですね。だから、むしろ生産抑制というよりは、ここは生産に意欲を持たせてつくっていただく、生産量を確保するということに一番力点が置かれていかなければならないのではなかろうか。また、今までの趨勢を見てまいりますと、農耕地が少なくなっているという深刻な問題もありますけれども、そういう傾向から見ても、どうしても私は、米について生産過剰になるとは思えないので、この辺についてはあらためてまたしっかりと、お互いに議論し合いたいと思っております。  それから、新政策関連でもう一つだけですが、冒頭に申しましたように、新政策の全体像が見えてこない、構造改善局が中心になってこの法案をつくって走っているけれども、あとどのぐらいランナーがついてくるのだろうか。駅伝競走だったら十人なら十人で最後のランナーが見えるのだけれども、これが見えてこない。一体これからはどういうランナーがどういうような思いで走ってくるのかなということがあろうかと思うのですね。皆さんそこのところに大きな関心を持っているだろうと思うのですけれども、今の時点で全体像と言ってもなかなか難しいかもしれないけれども、この後に続いてくるものとして意識されているものあるいは用意されているものはどんなことなのか、お示しいただきたいと思うのです。
  219. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今後の新政策の具体化につきましては、現在農政審議会に設けられた二つの小委員会において総合的な検討を要する課題であるわけでありますが、酪農及び肉用牛生産、野菜、果樹、畑作物など、稲作以外の部門における望ましい経営の展望、そうした経営体の育成に向けた政策展開の基本方向農村地域における適正な土地利用確保と快適な空間の形成のあり方について、新政策に沿った具体策のあり方を御議論願っているところでありまして、今後できるだけ早い時期にとりまとめをいただいて具体策を講じてまいりたいと考えております。
  220. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 これは今程度のお答えでは、なかなか全体像が見えてこないのですけれども、官房長の方何かありますか、もう少し具体化できるような。
  221. 上野博史

    上野(博)政府委員 大臣にお答えいただきましたのを出るわけにはいかないわけなんですけれども、それ以上の持ち合わせがないというのが本当のところなのでございますが、これは先ほど委員お話の中にございましたように、今回の新政策、どうしても水田、稲作中心でまとめられている。したがって、北海道の畑作地帯であるとか畜産関係者であるとか、そういうところから、おれたちのことについてどういうふうに考えているんだというような非常に強い御要望もございまして、今大臣申しましたように、その他の部門についてのこれからのターゲットをはっきりさせ、それに向かってどういうような政策体系を編み出していかなければならないのかという、これは一つ一つ部門を単に挙げるだけだと非常に簡単なように見えるわけでございますけれども、畜産につきましても非常に環境は変わっているわけでございまして、そういう中で、将来的に、十年先に一体どういうような畜産経営というものを考えるのか。先ほど畜産公害の話も出ましたけれども、そういうものの処理の仕方やなんかも非常に関係があるわけでございます。  そういう各般の問題を踏まえた上で、じゃ、将来の望ましい姿というものに向かって、改めてどういうような政策を組み立てていくのかというのが次に参るわけでございまして、非常に奥の深い作業が続いているというふうにも我々としては思っております。これは、拙速と言われるのかもしれませんが、そう余りゆっくりやっているわけにもいかないという気分も非常にあるわけでございまして、平成六年度の予算編成やなんかとの関係考えながら努力をしてみたいというふうに思っております。  それから、今御議論いただいておるこの新政策三法というのがどうしても一番の中心になるわけでございますし、土地利用権の集積というものを、土地利用型の農業というものを考える場合に、非常に大事な要素だというふうに我々考えまして、これを一番手でまず何とか形をつくっていかなければならないというふうに考えております。そういう作業をやっていきます中におきまして、また、そういう問題についても改めていろいろ議論、検討していかなきゃならないところも出てくるかもしれない、その際にはそういうことも取り上げてまいらなければならないことがあるかもしれないというふうに考えているところでございます。
  222. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 率直におっしゃってもおられるように、例えば酪農、畜産などについても、まだ具体的なものを今つくっているところで、これからの問題というようにもお聞きしておりますし、稲作だけではなくして、まさに畑作の問題だとかいろいろな問題がある。確かに、私どもは拙速ではいかぬと思います。しかし、方向づけについては、少なくともこういう方向でというようなことは、できるだけ早くお示しをいただきたいと思うんですね。早くお示しいただくということが、討議の素材を提供していただくということにもなるわけですから、私たちもそれをつくることに積極的に参加をしていきたい、こんなふうに思っております。  そこで、時間の関係がありますので、少し質問の順序を変えて、ほかの委員の方々が余りお尋ねになっていない問題として、農地の流動に伴う登記の問題についてお尋ねをしたいと思います。  今度の二つの法律案というか、一つは改正になるわけですけれども経営基盤強化法、これは従来の農用地利用増進法、これは昭和五十五年にできているわけですが、これの改正、そしてそれに絡んで、関連する法律案の改正まで含んでくるということになります。それからもう一つこの特定農山村法、両方の法律に関連して、農地あるいはその他の土地の流動ということが非常に、これから今まで以上に積極的に行われるだろう、また行われなければ、この法律意味合いかないということになるわけですね。  そういたしますと、その土地の流動化に伴って、当然のことながら所有権の移転だとか利用権の設定、あるいは信託ということもありますけれども、さまざまな権利の移動、設定、移転などがある。そして、それがあった場合に、それを公にしてそれに対抗力を持たせるということのために、登記という手続がどうしても必要になってくるわけですね。  言うまでもなく、これは不動産に関する登記ということになるわけですけれども、本来不動産に関する登記というのは法務局がその手続を行いますが、登記の申請というのは、当事者またはその代理人をもって行うことが原則になっている。そして、その代理人としてはだれでもがやみくもに素人がやれるわけではなくて、そのための専門的な登記手続の代理人として、司法書士の制度があるわけですね。それからまた、土地家屋調査士も一定の権限を持っている。私や簗瀬さんのような弁護士の資格を持っている者もできる、こういうことにはなっておるわけですけれども、何といっても登記の専門職ということになると、司法書士の皆さんだということになるのです。  ところが、この登記については、不動産登記法でもいろいろ例外を設けることができることになっているわけですね。例えば、官公署が一定の条件のもとに登記事務を行うことができるということがある。  それで、昭和五十五年の農用地増進法の成立のときに、実はこの特例で、大きな特例が設定されているわけでして、一つは、現行の農用地利用増進法の七条と八条ですけれども、市町村が農用地の利用増進計画を定めたときには、その公告をする。そして、その公告の効果として、公告があった農用地利用増進計画の定めるところによって、その土地について利用権が設定されたり移転したり、所有権が移転するという公告の効果があるのです。これについて「登記の特例」として十条で「第七条の規定による公告があった農用地利用増進計画に係る土地の登記については、政令で、不動産登記法の特例を定めることができる。」こうなっております。  政令の方では、この代位登記、二条で定められておりまして、市町村がその当事者そのものにかわって登記の嘱託をすることができる。これには、相続による登記、事前登記というのですけれども、事前、事後の登記というのがありますが、この移転などに当たって、つまり登記簿の上では名義人になっているけれども、その人が死んでしまっている。そうすると、その相続人について相続登記をして、生きている人に所有名義をきちんとしなければ、それからほかの人に登記を移せない、こういう関係になるものですから、その事前の登記として相続の登記などもあるのですけれども、これも市町村ができるようにしている、こういうことになっているわけですね。  さまざまなそういう特例が設けられたわけです。そのために、この特例のために、これは都市部におられる司法書士の方は余りそれに関与するということはないんだろうと思いますけれども、地方、特に農村地帯で仕事をしていらっしゃる司法書士の皆さんは、こうやって官の登記手続が行われるために、一つは自分たちの仕事が、職域が侵されるというか、民業の方に影響があるというか、そういう悩みも持っておられるわけですね。そういう地域では、農地に関する権利の移転、設定などということが大きな業務の内容にもなっているわけで、これによる影響というのが相当あったということがありました。  そういうことについて法務省もおもんぱかったと思いますけれども、司法書士会の皆さんだとか土地家屋調査士会の皆さんなどとも話された結果だろうと思いますけれども、その後に、こういう公共的な嘱託の登記について、特に司法書士会とは別に、司法書士の方々で構成される司法書士協会、それから土地家屋調査士協会という社団法人を新たに設立することを認めたのですね。ここがこういう仕事に積極的に関与することにしている。法務省の民事局長さんなども、こういう公共嘱託登記については司法書士協会も大いに活用されるようにということを言われている。そのパンフレットもあって、清水さんという当時の民事局長が推薦文というか激励文というか、そういう一文も書かれているわけです。このときには、実は記録を見ますと、法務委員会でこれについての質疑、もう亡くなられましたけれども、社会党の横山利秋先生がお尋ねになって、法務省民事局に対して質問をして、やりとりをしているということがございました。  それで、その復そういう協会ができた。しかし、その後の推移の中で、こういう農用地利用増進法に基づく不動産登記について、どうもこの協会が余り活用されておらない。新潟の方の司法書士協会が会員の皆さんにアンケートをとったら、そういうような事例についてはほとんど市町村が登記事務をやってしまっている、こういうことのようですね。  それで、実は昭和五十五年にこの農用地利用増進法ができて、先ほど御紹介したように政令ができたときに、その取り扱いについて、昭和五十五年十二月一日に当時の農林水産省構造改善局長から通達が出ているわけです。その通達では政令の具体的な説明をしているわけですけれども、特に第二の「登記の嘱託書」というところで、「登記令では、登記の嘱託は、市町村が行うこととなっているが、」「具体的な登記事務は農業委員会が処理することが適当である。この場合において、農業委員会事務局長等が嘱託権者たる市町村に代理して登記の嘱託をするときは、嘱託書に市町村の登記の嘱託に関する委任状を添付することが必要である。」というように通達されている。  こういうこともあって、市町村といっても、実際には市町村の農業委員会が行っているという例が多いようなのですね。もちろん、こういうように定まっておりますから、これをやめるわけにはいかぬだろうと思います。しかし、今度の法改正と、それから中山間地新法をつくることによって、恐らく農地の流動化に伴う登記事務は必然的に多くなるだろうと思うのです。  そうなりますと、確かに今まで農業委員会、市町村で登記事務を行ってきた。かなりの件数になると思いますけれども、聞くところによると、中には本当に資格を持たず、あるいは法律の勉強をしていない人が市町村または農業委員会でそういう事務を担当する。もちろん、登記手続というのはある意味では画一的な面もありますから、それに従えばできないではないのだけれども、先ほど申し上げましたように、権利の移転、設定に伴う事前的な、例えば相続の問題などがかかわってくるということになると、ただ単なる形式的な手続では済まない法律的な問題を含む場合があるのですね。  司法書士さんの方は、司法書士さんの資格には二つありまして、これは申し上げるまでもないと思いますけれども、国家試験と、もう一つは、一定の条件のもとに登記官吏などを長くお続けになった人は特例として資格を認められる。しかし、いずれにしても素人ではないわけですね。特に司法書士の試験というものはなかなか難しくて、最近は非常に難関だと言われておるのですけれども、これは憲法を初め、民法、不動産登記法はもちろんのこと、関連の法律をしっかり勉強しなければならない。だから、そういう司法書士さんの場合には、それに関連する法律問題についても対処していけるし、法律相談まで含めておやりになれるわけです。しかし、市町村の吏員ではそこまでの法律的な知識を持っている人もいないということになると、やはり権利の問題について、さまざま財産的な影響ということもあるわけですけれども、問題が生じないとは限らないし、今までもあった。そしてまた、単純な手続でもその吏員がなかなかきちんとしたことをやっていなくて、何度も何度もまた法務局に足を運んで行ったり来たりしてというようなトラブルがあったように聞いているのですね。  それで、司法書士協会、土地家屋調査士協会の方では、もっと積極的に自分たちを使ってもらった方がいろいろな面でいいのではないか。確かに手続の簡素化とか迅速性ということから、市町村がやる方が農地の流動化のためにも早いのだという側面がないではないかもしれないけれども、しかし、司法書士協会としても十分に対応していけるということを言っておられるのです。  この辺について、これまでの経過等を含め、それから、今度新たにこの法律の改正と新しい法律の設定、これを含めて、この登記事務についてどんな考えをお持ちなのか、農水省と法務省民事局の両方にお尋ねしたいと思います。     〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕
  223. 入澤肇

    入澤政府委員 今御指摘のとおり、農用地利用増進法による嘱託登記事務につきましては、今先生が御指摘になりました通達によりまして、市町村が一般的に農業委員会に委任して処理することが適当であるというふうにされているところであります。  これは、市町村において当該登記事務を行うのは、農地法の許認可あるいは農用地利用増進計画の作成事務等を通じて農地の権利関係の移転等にかかわっている農業委員会が適当であるという判断からこのようなことになっているわけでございますけれども、このことによって、一般的に市町村が必要に応じてその事務の全部または一部を司法書士または公共嘱託登記協会に代行させることを否定するものではないことは言うまでもありません。このことについては昭和五十七年に日本司法書士会連合会と協議済みでありまして、この趣旨に従って、都道府県を通じて市町村を指導するということにしていたわけでございます。  今回、農林地所有権移転等促進事業を考えつきましたのは、率直に申し上げまして、この農用地利用増進事業の行政処分一括権利移転という前例がありますもので、これを参考にいたしまして、先ほど本邦初演と申しましたけれども、林地とか非農地も含めて一括して一つの計画のもとで権利の移転を行うということを工夫したわけでございます。その具体的な中身につきましては、これから政令でその手続を定めることになっています。今考えておりますのは、検討中でございますけれども、恐らく農用地利用増進法と同じように嘱託登記の手続を運用していくことになるのじゃないかと思います。しかし、現在の通達では農業委員会が適当であるというふうに書いてありますけれども、今先生の御指摘のようなこともありますので、今後の中身につきましては農用地利用増進法の運用の実態を十分に検討し、踏まえながら考えていきたいと思っております。
  224. 房村精一

    ○房村説明員 登記の取り扱いにつきましては先生から御指摘のありましたとおりでございまして、今回の新法による特例につきましても、ただいま農水省から説明がありましたように、これから政令で定めることになりますけれども、基本的には農用地利用増進法と同様の嘱託ができるという内容になるものと考えております。  その場合に、市町村が当事者にかわって嘱託ができるということでございますが、これはあくまでできるということでありまして、その実際の登記手続を市町村がみずから行わなければならないとしたものではなくて、これを司法書士あるいは先ほどから出ております公共嘱託登記協会にさらに嘱託をいたしましてその専門的能力を活用するということは、法律上は当然可能な仕組みになっております。  この公共嘱託登記協会でございますが、これは昭和六十年に、司法書士あるいは土地家屋調査士の持っております専門的能力を活用いたしまして官公署のなす嘱託登記を適正迅速に処理する、そういう目的を持って設立を認めることになったものでございます。私ども法務省民事局といたしましては、そういう協会の設立の趣旨からいたしましても、官公署が嘱託をするときは、できるだけこの公共嘱託登記協会を利用いたしまして、その専門的知識を活用していただきたいというぐあいには考えております。  しかしながら、各官公署、特に自治体につきましてはそれぞれ特有の事情もございますので、なかなか一気にその利用拡大するということにはなっておりませんが、嘱託登記協会の取り扱っております事件数あるいは報酬額というものは毎年着実に増加しております。  今後も、私どもといたしましても、公共嘱託登記制度の趣旨を各官公署に御理解願って、なお一層の活用をしていただくように努めていきたいというぐあいに考えております。
  225. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 構造改善局長から、昭和五十七年の通達で、この事務を主体である市町村が司法書士協会などに嘱託するということを否定するものでない、こういうお話がありました。否定するものでないというのは非常に消極的なんで、むしろ活用してほしい、活用しなさいというのならわかるんだけれども、否定するものでないというのは、本来やらないんだけれどもやらしてもいいよというふうに聞こえるんですよ。私は、本末転倒、あるいは原則と特例が逆転している、こういうように思うんですよ。これは必要があっていろいろな特例をつくっていることはわかる。けれども、本来はやはりやれる人がやるということなんで、資格を持っている人がやるというのが本来の筋なんですよね。ところが、必要があるから本来の資格を持っていない人、あるいは自治体にもやらせようということなんですから、この辺はもう少し考えてもらいたいと思うんですね。  司法書士会あるいは司法書士協会などについても、これについては積極的にやろうということで体制も組んでおられるようですから、今度の政令をつくることについては、従来のそのまま同じ政令をつくるということでは私はまずいと思うんだ。特に、さっき申し上げましたように、第二の「登記の嘱託書」のところでは、「具体的な登記事務は農業委員会が処理することが適当である。」と書いてある。それは今まで農業委員会、一生懸命やってきたと思いますよ。やってきたと思うけれども、「適当である。」こういう書き方だと、やはりみんなここでやりなさいよというふうにとれるんだな、これは。ですから、この辺は農業委員会、市町村、それから司法書士協会、土地家屋調査士会、どうか十分御協議をいただいて、お互いに協力関係を持ちながらやっていけるように、それぞれ農水省としても法務省としても考えていただければな、こんなふうに思っておるんですね。そのことをぜひ要望しておきたいと思います。  また、政令がどういうふうになるかというようなときには事前にお示しをいただければ、なおありがたいと思っておりますけれども、そんなことを要望申し上げておきます。  時間がなくなりましたので予定していた質問をはしょらなければなりませんけれども一つだけ、さきに鉢呂委員からも特定農山法案の十七条関連で御質問があったようですけれども、法四条農林業等活性化基盤整備計画、これについては十七条に国の援助の内容ということが書いてあります。この内容ですけれども、「その他の援助」というところ、これは財政的な援助ということは含まれるのでしょうか。そしてまた、含まれるとすればどんなことを具体的には想定されておられるのか、これをお示しいただきたいと思います。
  226. 入澤肇

    入澤政府委員 特定農山法案の第十七条におきましては「国及び地方公共団体は、基盤整備計画の達成に資するため、」「助言、指導その他の援助の実施に努める」というふうに規定されているわけでございます。この援助の中には財政上の支援も含まれます。  そして、平成五年度におきまして、この援助規定を根拠といいますか、予算関連法案なり法案が通ればということで、国は財政上の支援措置といたしまして、経営強化特別支援事業、これは新規事業でございますが、それによる営農技術、経営体制の整備、あるいは地域食品産業高度化総合推進事業だとか中山間地活性化資金等を活用した地域食品の高付加価値化、販路の開拓についての助成、それから特定農林地の利用管理等の促進事業等におきまして、農協とか森林組合等による農用地及び森林の保全管理の推進に対する経費、それから二十一世紀村づくり塾運動等については人材の育成等の措置を講ずることにしているわけでございます。  財政上の援助を含むということを明確に申し上げます。
  227. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 時間が参りましたので、ほかにも予定していた質問がありますけれども、他の委員の質問とも関連いたしますので、この際は割愛をしたいと思います。  ただ、いずれにしても、中山間対策として今度の新法が本当に生かされるのかということは、同僚委員からも先ほど重ね重ねお尋ねがあったところです。危惧の意見も表明されております。特に、人をどうやって育てるか、あるいはリーダーがいないところは幾ら条件がよくたってどうにもならないんだという話もあった。それだけに、今の十七条の中で財政的な援助が含まれるということですけれども、やはりその地域に住む方々も必死になってその地域の中で生きていく、あるいはその地域を生かそうということで努力をしている、その地域の中でどうやってなりわいとする、先ほどなりわいというお話がありましたけれども、まさになりわいとする農業の中でどうやってそれを生かしていくかということに本当に御苦労なすっているわけですから、その方々の努力にお報いできるような、そして伸ばしていけるような援助、それから人づくり、これをしっかりやらなければ、いずれにしても法律をつくっても魂の入らないものになってしまうのではないかということを私は恐れるわけです。まだこれからも議論が続くわけですから、この辺、ひとつしっかりとお互いに深め合っていきたいものだと思っております。  最後に、農水大臣、その辺を含めての、特に人づくりについてこんなことはという思いがありましたらお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  228. 田名部匡省

    田名部国務大臣 確かに高齢者が多いということはもうそのとおりでありまして、しかし、高齢者は長い間の経験というものを持っているわけです。ですから、そこにもうちょっと創意と工夫といいますか、新しい発想というものを加えていただくならば、私は、十分今までも村でリーダーとなって一生懸命やっている人たちおると思うのです。決して、まだまだ日本農業というものは捨てたものではないと思うし、私どももそういうことで、農山村、そうしたものが衰退していくことだけは何としても防がなければいかぬ。一極集中排除もそのこともあってやっておるわけでありますけれども、そのためには受け皿、あるいは東京で定年になった、子供たちが帰ってまた農業というものを継ぐという人もおるでしょうし、望みを捨てることなく、本当に次の世代の若い人たちに意欲を持ってやってもらうように、我々も、今やっていることは非常に産みの苦しみといいますか、いろいろあります。しかし、何年かたったときに、本当にいいことをやってくれたな、そういう自信を持って取り組んでいるわけでありますから、どうぞ次の世代の人たちのために、今私たちが立派なものをつくり上げる、こういうことで進めてまいりたいと考えております。
  229. 佐々木秀典

    ○佐々木委員 人づくりというのは、新たな担い手もさることながら、やはり今頑張っている人、それからこれまで頑張ってきた人、この人たちも大事にしないと後の人につながっていかないわけですね。そういう点での配慮、これは年金問題も含めてそうですけれども、やはりきちんとしていかなければいけないなという思いがしておりますので、そういう点でもこれからまた具体的ないろいろな対策をぜひ考えていただきたいということを申し上げて、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  230. 平沼赳夫

    平沼委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十二分散会