○須佐
参考人 ただいま御指名をいただきました新潟県入広瀬村長、須佐と申します。
本日は、本
委員会に
参考人としてお招きをいただきまして、
意見開陳の
機会を与えていただきましたことを、まことに光栄に存じます。せっかくの
機会でございますので、この
法案の御
趣旨とされます中山間地の
活性化に向けてのいろいろな実践例等を例示申し上げながら、率直に存念を申し上げたいと存じます。
冒頭申し上げたいと存じますことは、御
審議の日程にございます中山間地等の
地域の農山村の
活性化のための特別立法等について御配慮を賜っておりますことについて、当該の
地域行政を担当する者の一人として、改めて衷心より
敬意と感謝の意を表するものでございます。
さて、本日の発言の要旨につきましては、お許しをいただきまして、お手元にメモを用意させていただきました。その順序を追いまして申し上げたいと存じます。
「はじめに 新潟県入広瀬村は」となりまして、最後に「むすび」となっております。時間の制約もございますので、要旨のみ申し上げてまいりたいと思います。
まず、新潟県入広瀬村、我が村は新潟県の東南端に位置しまして、二百七十二平方キロメートルという広大な、典型的な豪雪山村ということでございます。今我が村では、そこに住まいする若者を含めて、村民が誇れるふるさとをつくりたい、このようなことを念願しながら
行政を進めておるところであります。
さて、中
山間地域の
現状認識等について私の考えておりますことをまず率直に申し上げてみたいと思います。
まず第一点は、この農山村
地域の
現状でございますが、深刻な後継者難の問題がございます。
今
農家の家庭のお茶の間の話題は何だろうか。あそこの後継ぎは帰ってくるだろうか、あそこの息子は帰ってくるか、娘さんは帰ってくるか、こんな問題が
最大の話題であるということが申し上げられるかと思います。
高齢化の進行は避けて通れない
事態となっておりまして、現在二五・六%の老齢人口比率となっております。県下の平均は一六・四、これまた二〇%近い姿でございます。
耕作放棄地の増加ということがありますが、未
整備の
農地を耕しております老農夫、このことにつきましては、一昨年ですか、きょうおいでの辻先生初め皆様がお越しの際に、私が長岡までお迎えに出まして、あの山地をバスで御
案内しながら、この未
整備の
農地はいつ捨てられるだろう、この
農地が捨てられたときこの集落の灯が消えます、こんなことを申し上げたことがございます。聞きますと、全国では二日に
一つずつ集落が消滅している。こんなことを聞きますとき、本当に肌寒い思いがいたします。これはよそごとではないんだ、自分のことなんだ、こんな思いで、深刻なものとしてこういう数字を受けとめております。
さて、若者が定住を拒むものは何だろうか。それは若者がふるさとを誇りを持って語れないことでございます。あなたはどこの出身だと問われたとき、我が村の青年は何と答えたでしょう。私は長岡市の近くのふにゃふにゃだと言って、つい入広瀬村と言わなかったというのであります。大変寂しいことであります。ふるさとを誇りを持って語れない、こんな寂しいことはありません。
その原因とするのは、私の考えるに、まず
農地が未
整備であること、雇用の場があっても都市との格差が大きい、あるいは文化、スポーツ活動の拠点がない、
生活環境の都市との格差が激しい、こういうものがあるのではあるまいかと思います。
そして、
市町村の行財政はどうか。中山間地を抱える
市町村の行財政能力は、
一つの数字をもってしましても、財政力指数が極めて厳しい。もちろんいろいろな国や県の御
支援を得ながら、我が村についていいますならば、経常収支比率は六一・七、公債費比率は一一・六、この辺において健全でありますが、財政力は極めて厳しいのでございます。自主的な
地域基盤整備計画の策定というような問題がありますが、こうした問題について、後継ぎ等の定住不在の中でどこまで可能かということが言えるかと思います。今山村にありましては、競うがごとく
市町村独自の
地域活性化事業を
展開をいたしていることも事実であります。
さてそこで、誇れるふるさとの創造に向けて、今我が村は何をやっているか、簡単に要点のみ申し上げてみたいと思います。
まず、若者定住と
地域の
活性化のために、
農地の
基盤整備事業を一〇〇%
実施をいたしました。これに対しましては農民の負担の上限を定めました。平均いたしましての年賦償還金が二万二千七百円でございましたので、これを上回る元本のすべての繰り上げ償還援助を行って、二万二千七百円、このところにおいて圃場
整備が完成をいたしたのであります。この負債整理援助
施策の執行等については
行政訴訟も起こされましたが、幸いにして高裁判決をもって確定し、このような姿に相なっておるところでございます。
農林道等は、山間地でありますから極めて厳しい。舗装をしなければいけない。全村の耕作道を含めた農道の舗装工事は完成をいたしました。幸いにして我が村では、今耕作放棄地は見受けない
現状にございます。
次に、財団
法人のドリーム・クリエーション入広瀬という財団をつくりまして、寄附行為三千万円をもって定住
支援基金二千万を充当し、
農地受託耕作あるいは特用作物のクワイの団地栽培等を進めることにし、この四月一日より本格的な業務に入っております。また、国の御
支援をいただいて、ドリームホームタウン構想等の
推進の
支援を本財団をもっていたしたい、こう考えております。
次に、若者等後継ぎ定住
支援戦略
事業を、基金一億二千万を設定し、定住
支援金の給付、言うなれば、都市から村に帰ってきての格差の補てんということになりましょうか、そういう
意味における給付でありますとかあるいは公営住宅の家賃の補助でありますとか、都市との交流
支援であるとかあるいは
農業後継者に対する利子補給であるとか、このようなもろもろの
施策を本基金をもって実行いたしておるところであります。
その四として、自然休養村
事業の
展開あるいは温泉開発と
施設整備等で、入り込みも二十万を突破をいたしております。もろもろの都市との交流施設の運営を通じて、
地域に活力を育むべく
努力をいたしておるところであります。
次に、めくりましてその五といたしましては、若者就業センターの建設ということで、これは県単の補助あるいは県の融資
事業等を入れて四棟のバイタリティーセンターをつくり、ここに約二百名近い若者が安定雇用の場を得て、雇用の場を開拓いたしたのであります。山間
農村には都市からの工場進出はなかなか大変であります。こうした形で行われました。
農村工場団地の
整備、企業の導入、あるいは地場産業の
振興等で、林構、新林構等による山菜工場の
経営等も、幸いにして今日二億数千万円の収入を得るようになりました。言うなれば、これが我が村の一村一品と言うことができようかと思います。
都市並みの
生活環境整備に向けて、全村の集落排水
事業等で
平成六年の七月には全村域に完成をいたします。今日九五%の普及になりまして、これらについては維持管理基金三億円設定し、後顧に憂いなきような対応をとっているところであります。農水省の集落排水のできない一部
地域等については、厚生省の補助
事業をもって
実施をいたしました。
集落再編
事業を昭和四十六、七年度に行っております。
それから、都市住民の定住
促進というようなことで、
平成三年と四年、宅地無償提供により、我が村に定着しませんかの呼びかけに対し、十二世帯が決定し、恐らく本明年中には新集落の誕生を見るのではあるまいかと思っております。
あるいは山菜共和国のイベント等でいろいろな
事業を進めております。
何よりも、雪国なるがゆえに雪国の意識の改革をしなければいけない、このようなことで全村域の生活道路の無雪化、あるいは落雪
対策条例を制定をしまして、雪国というものは怖くないんだ、嫌ではないんだ、怨念の雪はまさにこれは
地域活性化の財源である、財産である、こんな形に仕向けたいということでもろもろの
施策を進めているところであります。
そこで、新たな
活性化施策の
展開としましては、前段触れたドリームホームタウン構想の
推進、国土庁の「過疎地にふるさとを」
事業の
推進、グリーンツーリズム
事業の
展開、農林省の御補助をいただいて都市との交流計画策定等を進めたいとしております。その三としては、「山村で休暇を」の林野庁の
事業の導入、緑の触れ合いのプロジェクト
事業の
展開。特にこの
事業については、トゥスティーインの滞在型温泉ホテルの
整備等について、今
検討を進めておる経過にございます。
その五として、
農村集落
環境整備事業の
実施で、ナチュラルグリーンパークの
整備、都市との交流のためのもろもろの施設の
整備、雪国山野草、黒木林の植栽、冬期はクロスカントリーのスキー場の
整備等を今
検討し、いろいろな御
指導をいただいている経過にございます。
三としての、長寿社会を迎えての福祉の里
づくり等については、特にここの時間の
関係もあるので説明を省くことといたします。
そして、誇れる
地域社会の創造のために文化スポーツ基金を設定し、国際交流
事業の
展開等を通じ、中国揚州市との提携七周年を経て、今中国の調理士等を村に入れまして日中友好飯店の
経営等をしまして、着実な実績を上げている経緯にございます。その他、
地域づくり振興基金の設定と
政策の継続、五億五百万円の基金を設定し、
事業を
推進しておるところであり、住民のためにではなく、住民の求めるものは何か、百の宣言よりも
一つでも
政策実行、このようなことをモットーに進めているところであります。
〔金子(徳)
委員長代理退席、
委員長着席〕
次に、第三に申し上げたい問題は、中山間地
活性化への所見であります。
今、過疎農山村の共通する
行政課題は何かということであります。これは、誇れる
地域社会の創造に向けて、言葉の遊びではないんだ、集落の灯を消さないために何をなすべきか、若者等の後継ぎ定住等
地域活性化のために、あるいは
高齢化等長寿社会を迎えて福祉の里
づくりのために、誇れる
地域社会の構築のために何をなすべきか、こうした問題があろうかと思います。
さて、その一の問題については、賦存する資源、土地、
自然条件等を活用し、
地域の
創意工夫の中であらゆる諸
制度を駆使し若者等後継ぎ定住
施策を
推進すること、これ以外にない、このように考えております。
第一点として、
制度を改め、
農地整備を
推進してほしいということであります。
農地の放棄は集落の灯が消えるのであります。中
山間地域における圃場
整備事業費の分析等をそこに例示をいたしましたが、中
山間地域の我が村における事例等を見ますならば、何と田面の圃場
整備に費やす金は、十五地区の合計は四七・二%、道路、用排水路
事業等に係る経費が五二・八%であります。いわゆる年賦償還金の五二・八%は、道路、用排水路の経費、そういうものが農民の負担になってまいった、こういうことが言えるかと思います。
私は、こうしたような実態からいたしまして、田面
整備費三〇%から四〇%
程度、道路、用排水等は、地区内であっても、言うなればこれは社会資本である、私はこんなふうに見ておりまして、国、県、
市町村等で一〇〇%負担をし、年賦償還負担を十アール当たり、少なくとも上限を設けて
整備をする。この
農地整備なくして集落の灯は守ることはできない、このように考えているところであります。
次に、グリーンツーリズム
事業の
展開等のためにも、美しい田園風景がその前提である、私はこのように考えております。
第二点は、都市との交流等
活性化のために、農用地、林地の有効利用を
推進することでございます。
もろもろの
事業の
整備、あるいはまた都市との交流の不可欠のものとして、ナチュラルグリーンコースというような形で、企業のゴルフ場ではなく、いわゆる
一定の基準を設けての
山間地域の若者定住と交流のために、こうしたような設備を公設をもって
整備することが必要な問題として
検討されるべきではないか、私はこのように考えているところであります。
第三点の問題は、就業
機会の拡大というものが明記されておりますが、
政策、
制度としての
実施にこれを移してほしいと思います。
若者よふるさとに帰れと申しましても、安定雇用の場がなければ定住しないのであります。安い
労働力を求めるのではなく、適正な
労働条件のもとに、この内容を明示しながら、若者よふるさとに帰ってもらいたい、このように考えております。
できることならば、広域
行政圏等を単位とする中
山間地域町村に若者就業センターを
市町村で建設、
整備せしめ、相当
規模の雇用企業の進出を促すというようなことが
行政としてあっていいのではないか、このように考えます。幸いにして、今は若者就業センター設立については県費の助成がございます。補助残については過疎債が認められるようになりました。大きなる進歩と思って、この点は歓迎をいたしております。
私
どもはこうしたような
事業を通じて、一人でもいいから若者にふるさとに帰ってほしいと念願をいたしているところであります。
緑の触れ合いプロジェクト
事業等の一層の拡大を期待したいと思います。
第五点として、集落再編
事業を
実施すること。
第六点として、都市並みの
生活環境を
整備すること。まず、雪国にあっては生活道路の
整備、集排
事業等による下水道施設の
整備、これらが必須要件である、このように考えております。
都市からの定住
促進等も、いろいろ
環境も
整備されてまいりました。私は勇気を持ってこれらの
事業を進めたい。それにドリームホームタウン構想等を進めながら、こうした問題の
取り組みを
展開したいと思っております。
さらに第八点として、若者等後継ぎ定住
支援戦略
事業に対する積極的な
支援をお願いしたい、このように思います。
誇れる
地域社会の構築のために何をなすべきか等については、特にそこに記載のとおりでありますが、国際交流基金を設定せしめて、農山村の若者を積極的に国際交流に参加せしめることも大切であると思います。
第四点。いささかショッキングな表現でありますが、百姓のせがれもゴルフかという観念があってはならないと思います。今公民館主催で催されるいろいろな教室が開かれているような時代でございます。こうした問題についても御
理解をいただいて、私は、パブリック方式による公営ナチュラルグリーンコースの
整備等が今後の
課題としてあるのではあるまいか、このように思うのであります。
結びといたしまして申し上げたい問題は、この
特定農山村
地域における
農林業活性化のための
法律案につきましては、その
趣旨、
事業の
活性化のための
基盤整備に向けての
取り組み等についてはまことに適切であると歓迎いたしたいと思います。しかし、中山間地集落の
現状認識については、前段触れたとおり、いささか甘さがありやしないかというふうな感じもなしといたしません。
また、ソフト面でのいろいろな
整備計画等を重視することは当然でありますが、同時に私は、集落
崩壊の瀬戸際に立つ多くの中
山間地域にあっては、問題解決に向けて今なすべき
施策は何か。多数がよかれとする諸
事業の積極果敢な実行である。ハード面におけるいろいろな
予算の
整備等について御配慮願わなければいけないと思っております。
前段で触れたとおり、美しい田園風景の維持存続なくして農山村
地域の
活性化は望めないのであります。今、新潟県下の中
山間地域の圃場
整備率は三二・六%ということであります。約六五%がまだ未
整備であるということであります。
農地が
崩壊したとき集落の灯は消えるのであります。それらの
意味におきまして、国土保全の見地から、山間地における圃場
整備の問題、
基盤整備の問題について一層の御配慮を願わなければいけないと思います。
就業
機会の拡大という項目提示は評価できるのでありますが、その具体的な案についてはハード
事業にゆだね、かつ企業対応は通産
行政の分野であるといういわゆる縦割り
行政であってはその効果は望めないと思います。こうした問題について、一層の御配慮を願いたいということであります。
その他もろもろの問題について記載いたしてございますが、もうお示しの時間が参りましたので、この辺をもって
意見開陳を終わりたいと思いますが、特に七番目に、
地方財政上の
措置等についてでございますが、幸い我が村のドリーム・クリエーション入広瀬等については、県の条例により税の不均一課税等が規定されております。この点、大変県の
施策に
敬意を表するところであります。
その二の、
農業経営基盤の
強化のための
関係法律の
整備等については、そこに記載のとおりであります。そこの問題については、財団
法人の問題等、いわゆる
法律に示す
団体の問題の表現に少し誤解もあるようでございますので、特にこの問題については説明を省きたい、このように思います。
御指定の時間、三分超過いたしましたことをおわびしまして、以上で発言を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)