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1993-02-18 第126回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年二月十八日(木曜日)     午前十時三分開議 出席委員    委員長 平沼 赳夫君    理事 金子徳之介君 理事 萩山 教嚴君    理事 御法川英文君 理事 簗瀬  進君    理事 柳沢 伯夫君 理事 佐々木秀典君    理事 前島 秀行君 理事 宮地 正介君       岩村卯一郎君    上草 義輝君       内海 英男君    大原 一三君       久間 章生君    高村 正彦君       鈴木 俊一君    谷  洋一君       鳩山由紀夫君    保利 耕輔君       星野 行男君    松岡 利勝君      三ッ林弥太郎君    宮里 松正君       有川 清次君    石橋 大吉君       遠藤  登君    志賀 一夫君       田中 恒利君    辻  一彦君       野坂 浩賢君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    山口 鶴男君       倉田 栄喜君    藤原 房雄君       藤田 スミ君    小平 忠正君   出席国務大臣        農林水産大臣   田名部匡省君   出席政府委員        農林水産大臣官        房長       上野 博史君        農林水産省経済        官房長      眞鍋 武紀君        農林水産省構造        改善局長     入澤  肇君        農林水産省構造        改善局次長    中道  宏君        農林水産省農蚕        園芸局次長    高橋 政行君        農林水産省畜産        局長       赤保谷明正君        食糧庁長官    鶴岡 俊彦君        林野庁長官    馬場久萬男君        水産庁長官    川合 淳二君   委員外出席者        国土庁防災局防        災企画局課長   仲津 真治君        外務省経済局国        際機関第一課長  北島 信一君        大蔵省主計局主        計官       寺澤 辰麿君        運輸省港湾局技        術課長      田村  勇君        建設省河川局水        政課水利調整室  藤巻 捷春君        長        自治省財政局準        公営企業室長   板倉 敏和君        農林水産委員会        調査室長     黒木 敏郎君     ―――――――――――――  本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ――――◇―――――
  2. 平沼赳夫

    平沼委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石橋大吉君。
  3. 石橋大吉

    石橋(大)委員 おはようございます。久しぶりのトップバッターでして少し上がっておりますが、きょうは大変好天でございまして、田名部農政の将来もかくあれば、こう思っておるところですが、ぜひひとつ、そういう新しい大きな希望の持てる新農政展開に向けて、懇切丁寧なる御答弁をいただきたい、このことだけ最初に申し上げます。  最初に、ガット農業交渉関連をいたしまして三つ四つ、ちょっとお伺いしたいと思いますが、まず初めに、アメリカの米の関税化要求と今後の交渉関連をいたしまして、二月五日付の日本農業新聞によりますと、一月十五日にジュネーブで行われたアメリカEC日本、豪州の大使級非公式会合の中でアメリカ政府は、例外なき関税化は新ラウンド合意に欠かせない、これがなければファストトラック延長は困難になるなどとして、日本政府関税化を受け入れるよう迫った。また、米国政府は、関税化を受け入札なければ全米精米業者協会の三〇一条提訴を思いとどまらせることはできないなどとして、日本の譲歩を迫った、こういうふうに伝えられているわけであります。  これが事実かどうかということが一つと、それからさらに、二月十三日の日本経済新聞によると、クリストファー米国務長官渡辺副総理・外相との会談の席で、ガットウルグアイ・ラウンドの焦点である農業交渉関連をして、「コメ問題は日本市場をコントロールしているという市場あり方のシンボルとしての問題だ。米国輸出業者が参入できる状況になることが重要だ」、こう言って日本米市場開放を強く求めた、こういうふうに伝えられているわけであります。米問題をファストトラック延長の条件にしようとしたり、日本市場閉鎖性の象徴に仕立てたりしようとしているアメリカの新政権姿勢を見ていると、アメリカ国内経済再建を最優先させるというクリントン政権は、国内的には保護主義を一層強化をしながら、米問題はこの際一気に日米国間交渉で解決しよう、こういう格好に出てくるのではないかというふうにも思われるわけであります。  この間の交渉経緯と今後の見通しについて、ちょっとまず最初に伺いたいと思います。
  4. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 まず第一点目の、一月十五日に行われましたジュネーブ交渉でございます。  これにつきましては、各国の抱えておる問題につきましてそれぞれ意見を述べ合うというふうな非公式会合でございましたが、我が国は、例外なき関税化につきましては問題がある、米及び生産調整をしている品目については関税化例外とすべきである、こういう要求を、要求といいますかそういう主張を行っておるわけでございます。  これに対しまして、アメリカとか、あるいはECもそうでございますが、例外は設けるべきではないというふうなことで、多くの国がこの我が国主張に対して反論をしておる、こういう状況でございます。そういうものの一環としていろいろと日本側を責めるということは交渉の常でございまして、いろいろな場、あらゆる場において我々も主張しておりますが、相手国相手国の弱みをつくというのが交渉の常でございまして、そういうものの一環としてそういういろいろな主張が行われたということでございます。  それから、アメリカにおきます外相国務長官との会談でございますが、これにつきましても、御指摘のように、日本の米の問題について言及があったわけでございます。しかしながら、従来から米の問題につきましてはアメリカ側はそういう主張をしておるわけでございまして、特段今までの主張と異なるような主張がこの外相クリストファー国務長官との間にあったというふうには我々受け取っていないわけでございます。  いずれにいたしましても、これは交渉事でございますので、我が国輸入国としての立場交渉結果に反映されるように、今後とも頑張ってまいりたいと思っておるわけでございます。
  5. 石橋大吉

    石橋(大)委員 引き続いてガット交渉関連をして伺いますが、アメリカ大統領がかわりまして、これから後のアメリカ対外貿易政策基調が変わるのか変わらぬのか、この辺の見通しについてちょっと伺いたいと思うのです。  御承知のように、一月の五、六両日、私たち超党派ジュネーブヘ行きまして、ガットダンケル事務局長などに会いまして、米の関税化例外扱いを求める、こういうことでいろいろとやってまいりました。そのときに、ダンケル事務局長にも率直に質問をぶつけてきたのですが、アメリカ大統領交代によってアメリカ対外政策経済政策が根本的に大きく変わるのではないか。レーガン、ブッシュ、二人の共和党大統領下の十二年間におきましては、非常にイデオロギーともいうべき自由貿易主義を強調しまして、農業交渉の場においてもそういう方向に沿って自由化を進めてきた、こういう経過があるわけですが、しかし、十二年ぶりの民主党政権が登場したことによって、こういう共和党時代の極めてイデオロギー的な自由貿易主義は大きく変わるのではないか、簡単に言いまして、管理貿易主義というか、かなり保護主義的なものに変わっていくのではないか、こういう見方もあるわけであります。  いずれにしましても、そういうアメリカ大統領交代したことによって、これからの経済政策対外政策がどういうふうに変わっていくか、この辺の見きわめなしに積極的にウルグアイ・ラウンド農業交渉を進めることはできないのじゃないか。各国ともそういう姿勢にしばらくはなるのではないか。したがって、一月二十日の大統領交代の時期まで、あるいは三月二日のファストトラックの事実上の通告期限までに農業交渉が終結をする、そういうことは期待できないのではないか、こういう質問ダンケル事務局長にぶつけてきたのですが、ダンケルさんはそのときには、アメリカの新政府ガット農業交渉に積極的でないなどという見方は間違っている、こういうようなことを言っていましたけれども、結果的には私どもが心配したとおりというか、予想したとおりにやや長期化をしているわけであります。  いずれにいたしましても、まだ、大統領がかわって経済関係のスタッフが全部決まっていないというような経緯もありますから、今の段階でどういうふうにアメリカの新政権経済政策対外政策が変わるか、ちょっと見きわめつけにくいところもあるかもしれませんが、もしできれば、この辺の見通しについて、農水省考え方をちょっと承りたいと思います。
  6. 田名部匡省

    田名部国務大臣 お話しのような状況でありますし、交渉事ですから、勝手な話とは言いませんが、こうありたい、こうすべきという意味はいろいろ出るわけです。私どもは、そういうことにあまり惑わされてもいかぬし、姿勢だけはきちっとしながら対応していかなければならぬ、こう思っております。  先般の渡辺外相クリストファー国務長官会談でも、従来から言っていることをお互いに言い合ったというふうに私たちは受けとめておるわけでありまして、格別変わったということではない。大分激しくなったのではないかという御意見もありますが、私が一年数カ月、ヒルズ通商代表マディガン農務長官と会っても同じような姿勢で、非常に強硬であったわけです。ですから、そういうことから見ると、そんなに変わったとは考えておりません。  また、おっしゃるように、クリントン政権対外貿易政策というものが体系的に整理された形で明らかになっていないということはあります。特に、先般のクリントン大統領渡辺外相との会談でも、ウルグアイ・ラウンドは成功裏に終結させなければならぬということをお互い主張をいたしておるわけでありまして、私はそういう意味からすると、前のブッシュ政権と基本的な立場というものは変わらないであろう、こう思います。  ただ、一つ言えることは、国内経済を重視するのだ、雇用をどんどん創設する努力をするということからすると、米によってアメリカ経済の立ち直りはないし、雇用の創設も図れるものではないということを考えておるわけでありますが、いずれにしても、当面米政権ウルグアイ・ラウンドに関して取りまとめる具体的な方針というものを注目していく必要がある、こう考えております。
  7. 石橋大吉

    石橋(大)委員 三つ目ガットに関する質問ですが、今申し上げましたように、超党派議員団ダンケル事務局長アメリカストーラー通商代表部公使ECベック公使などと会っていろいろとやりとりしてきましたが、米の輸入、米の関税化例外扱いにしろ、こういう点については非常に厳しいわけですね、例外化は絶対に認められない。ウルグアイ・ラウンドの場で米の関税化についてイエスと言わなければ、その後はアメリカ日本との二国間交渉などにおきまして、より厳しい結果を招くことになる、こう言ってストーラー通商代表部公使などはかなり脅迫的でさえもあるのです、時間がなくて余り私たちもやりとりできませんでしたけれども。  考えてみると、しかしガットというのは非常に基本的な原則と同時に、非常にたくさんな例外の体系だと言ってもよかろうと思うのですね。そういう点で極めて複雑怪奇な国際条約といえば国際条約だ、こういうことが言えると思うのです。  例えば、明示的な例外措置として輸入数量制限輸出補助金余剰農産物処理輸出数量制限などがあり、また黙示的例外措置として国家貿易政府間商品協定、ウエーバー、枠外灰色措置として残存輸入制限あるいは可変課徴金、いろいろな形で数多くの例外措置があるわけですね。しかし今日、米だけについては断固として例外扱いは認めないというのがアメリカEC姿勢だ。  私、個人的な言い方ですが、この際、このドンケル・ペーパーを国際条約にでもしてそれに違反するところは厳しく制裁でもするか、何かこれくらいの非常に厳しいものを感ずるわけです。しかしこれは、今言ったように、ガットの今までの交渉積み重ねの中で、ある意味ガットというのは例外の固まりだ、こういうような感じからすれば、そういうガットの基本的な性格や歴史的な積み重ねなどから言えば非常に異様なことになるのではないか、こういうふうに思われるわけであります。逆に言えば、そういうガットの歴史的な経過に照らして、米の輸入、米の関税化例外扱い断固としてやはり貫いていくべきだし、貫いてもいいんじゃないか、こういう思いを逆に強くしたりするわけです。この辺について、ちょっと農水省考え方をお聞きしたいと思います。
  8. 田名部匡省

    田名部国務大臣 各党それぞれECアメリカ、あるいは団体の皆さんも一生懸命日本立場というものの説明に行っていただいてそれなりの成果が上がっておる。これからも、むしろ積極的に国を挙げて努力するということはやはり大事なことだと私は思う。そのことが、ウルグアイ・ラウンド問題がなかなか進展しない、これは何も日本だけではなくて、今までは米、米と、米だけが象徴的に扱われたという嫌いがあるのですが、いよいよ他のサービスとか知的所有権とかいろいろな分野も表舞台に出てみると、こっちの方もまた問題がある。報道で知る限りにおいてはどうもアメリカも、新政権のもとでダンケル案というのはちょっと直さなければいかぬのじゃないか、修正しなければならぬのではないかという話も伝え聞いておるところであります。  いずれにしても、おっしゃるようにガットの規制に関してはいろいろの例外はあるわけです。委員おっしゃるとおりでありまして、ウルグアイ・ラウンドにおきましては例外なき関税化方向ダンケル・テキストにおいて示されておりますが、我が国は、米などについては例外にすべきだ、この主張をずっと続けてまいりました。したがって、今後とも米及び水田稲作の格別の重要性ということにかんがみて、国会決議を体して国内産で自給するということで対処をしてまいりたい、こう考えております。
  9. 石橋大吉

    石橋(大)委員 もう一つガット関連して質問しますが、時間もありませんので簡単にします。  御承知の有名なレスター・ブラウンの研究所が出している「環境未来予測」、去年の六月に出ていますが、これなんかを見ますと、恐らく農水省も基本的にはそういう認識において一致しているのじゃないかと思いますが、一九五〇年代から八五年にかけて見られた穀物、大豆、食肉、魚類、こういった基本的食糧の一人当たり生産量が飛躍的に増大した時代は終わりを告げた。一人当たり生産量が横ばいか減少という新しい時代に突入しつつある。そして、この新しい動向というのは楽観できない。とりわけ世界経済の最下層であえぐ十億人前後の人々にとっては極めて深刻な問題になっている、こういうふうに言われているわけですね。いわば、かなり過剰基調で推移をしてきた世界食糧生産も、八〇年代の後半に入ってから、一人当たり人口にすれば逆にマイナスの方向に転じつつある。したがって、これからは、九〇年代から二十一世紀にかけては、農産物自由貿易主義というよりは国際的な食糧農産物配分をどうするか、国内的な配分をどうするか、これがむしろ各国あるいは国際的な大問題になっていくのではないか。また別の表現で言えば、軍事的な安全保障にかえて食糧的な安全保障というものがますます重要になってくる。こういうことをレスター・ブラウンの「未来予測」の中でも警告をしているわけです。  新農政に対する情勢の認識などにおいて展開をされておる農林水産省長期見通しからいっても、恐らくこの点は一致をするのではないかというふうにも思っておりますが、そうなってくればなってくるで、やはりガット交渉あり方というものは根本的に大きく変えていかなきゃいかぬ、こういう状況になろうと私は思っておりますが、この点について少し簡単にお答えをいただきたいと思います。
  10. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 世界食糧需給状況でございますが、これにつきましては、先進国におきまして過剰問題を抱えている一方で、発展途上国中心に飢餓の問題と、こういうふうな状況でございます。中長期的な世界農産物需給につきましては御指摘のような状況でございまして、なかなか予測が難しい、こういう状況でございます。  いずれにいたしましても、食糧輸出国輸入国あるいは先進国開発途上国の別を問わず、いかなる事態にあっても国民の生存を維持するに必要な食糧供給を行っていくことは各国の最も基本的な政治的責任である、こういうふうに考えているところでございます。したがいまして、ウルグアイ・ラウンドを初めいろいろな国際交渉の場におきまして、我が国は、基礎的食糧については食糧安全保障の観点から、国内生産を維持するために必要な国境措置を講ずることができるよう主張をしてきておるところでございます。今後ともこのような方針交渉に当たってまいりたいと思っているわけでございます。
  11. 石橋大吉

    石橋(大)委員 ガット関係につきましてはこれぐらいでおきまして、次に新農政中心にして幾つか、これも非常に広範多岐にわたっておりますので全部の問題点に触れることはできませんが、幾つ質問をしたいと思います。  まず最初に、新農政農業基本法関係についてですが、農業基本法を改正する必要はあるのかないのかということについて聞きたいと思うのです。  御承知のように、農業基本法第一条は「国の農業に関する政策目標」として、「農業生産性向上すること及び農業従事者所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むことを期することができることを目途として、農業発展農業従事者の地位の向上を図る」、こういうふうにしているわけであります。  また、家族経営発展自立経営の育成を目指しまして、第十五条において、「国は、家族農業経営を近代化してその健全な発展を図るとともに、できるだけ多くの家族農業経営自立経営になるように育成するため必要な施策を講ずるものとする。」こういうふうに規定をしているわけであります。  さらに、「協業助長」ということで第十七条は、「国は、家族農業経営発展農業生産性向上農業所得確保等に資するため、生産行程についての協業助長する方策として、農業協同組合が行なう共同利用施設の設置及び農作業の共同化の事業の発達改善等必要な施策を講ずるとともに、農業従事者農地についての権利又は労力を提供し合い、協同して農業を営むことができるように農業従事者協同組織の整備、農地についての権利の取得の円滑化等必要な施策を講ずるものとする。」こういうふうに規定をしているわけであります。  ここで伺っておきたいのは、新農政の中には農業従事者という言葉家族農業経営という言葉もなくなっているわけであります。あるのは個別経営体組織経営体、こういう新しい言葉であります。そして、協業にかわって法人化が非常に大きく取り上げられているわけであります。こういう問題は、見方によっては家族経営協業発展的形態であって、その本質においては変化はない、こういう説明が恐らく返ってくるんじゃないかなという気もしないことはないのですが、どっちにしても新しい概念や経営体の構想が明らかにされているわけですから、この際農政を抜本的に一新する、こういう意味も込めて、農業基本法を改正する必要があるのじゃないか、こういうふうに思いますが、どうですか。
  12. 田名部匡省

    田名部国務大臣 今お話にありましたように、農業基本法というのは農業生産性向上でありますとかあるいは所得において他産業並みということを掲げておるわけでありますが、この法律、基本法の制定後、いろいろな施策展開してまいりました。その結果として、畜産施設園芸分野ではこれは大変な成果が上がってきた、こう考えておりますが、一方、稲あるいは麦、大豆、どちらかというと土地利用型の農業というものはなかなか生産性向上が立ちおくれておる、あるいは他産業従事者と均衡する農業所得というものはなかなか得られない、ここが我が国農業の一番の問題点でありまして、一方では自給率向上ということをうたっておるわけでありますが、ここに手をかけなければ、自給率向上目標達成ということも非常に困難であるわけであります。  このような状況から見ると、農業基本法政策目標というものは今日においても私は妥当なものであると考えておりますし、むしろこれからの発展を期して今後とも追求していかなければならぬというふうに考えております。  昨年取りまとめましたこの新農政においては、他産業並みの労働時間あるいは他産業並みの生涯所得ということを目標にしておるわけでありますが、この基本法政策目標をむしろ今日的な視点に立って具体化したものであるというふうに私は考えております。  また、この新政策における経営体とか法人化という考え方は、いずれも基本法における今お話し家族農業経営発展あるいは協業助長ということに合致するわけでありますが、いずれにしても、農家皆さん農業をしっかりやってもらわなきゃならぬ。そのためには一体どういう手だてをしていくか、従来のとおりでいいのか、そういう視点に立っていろいろと検討したものであって、そういうことからいくと、私は、おっしゃるようなことではなくて、その趣旨に沿っておるというふうに考えております。
  13. 石橋大吉

    石橋(大)委員 今大臣から、次に質問したいことに対する答えが半分ほどあったような気もしないことはないのですが、農業基本法を変える必要はないという考え方ですが、それならそれで、次に、一体、この三十年間の基本法農政をどういうふうに農林水産省としては評価をしているのか、総括をしているのか。この点は新しい農政が成功するかどうかということも含めて極めて重要な問題だと思いますので、そのことについてちょっとお伺いしたいと思うのです。  農水省の新農政推進研究会編著の「新政策そこが知りたい」こういう解説書が出ていますが、この中にも、例えば二ページから三ページにかけてだったと思いますが、「農業に魅力を失った青壮年層が非農業部門に流出し、農業経営を担う者の確保の面で深刻な状況に直面している。このことは、耕作放棄地や低利用・未利用地の増大といった現象をもたらしているが、やがて国内食料供給力の低下をもたらし、将来的には国民生活の安定に影響を与えるおそれがある。仮に、現在の農産物貿易国境措置を維持し、価格政策をはじめ国内政策を現状のまま継続したとしても、現行政策延長線上に農業農村の明るい将来展望は見えてこない。」いいですか。「現行政策延長線上に農業農村の明るい将来展望は見えてこない。」したがって、「農業農村我が国経済社会の中での役割を明確に位置付け」、「その上で、兼業化過疎化高齢化の著しい進展といったことも踏まえつつ、」「新たな政策的対応を図っていくことが必要となっている。」こういうふうに言われているわけですね。  一体、現行政策上のどこにそういう意味で問題があったのか。基本法農政自立経営農家中心にして、今度の新しい経営体もまた同じく他産業並み所得農業経営の拡大を通じて実現をする、そういうことが基本的な目標になっているわけですが、この三十年間の基本法農政が目指した自立経営農家、基本的には成功しなかった。大きく進んだのは兼業の拡大という形になって、規模の拡大も思うようには実現しなかった。こういうこともありますので、三十年間の基本法農政のいい面は積極的に引き継ぐとしても、これがもたらした今日の農業農村の荒廃というようなことを考えたときに、この際やはり引き継いではならないものもあるのじゃないか、それらの問題点をどういうふうにお考えになっているのか、余り詳しい話はいいですから、基本的なことだけちょっとお伺いしたいと思います。
  14. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 今、委員の御質問の中に既にかなりなお答えが入っていたというような感じもするわけでございますけれども基本法の制定後、畜産とか施設園芸という分野におきましては非常に発展が見られたわけでございまして、農家の総所得が勤労者世帯を上回るというような成果も上がっているわけでございます。  しかしながら、稲、麦、大豆というようないわゆる土地利用型の農業につきましては、今先生お話ございましたように、非常に今問題があるわけでございまして、担い手の減少であるとか、高齢化状況が非常に著しく進んでいる、あるいはしかし、それにもかかわらず規模拡大が十分でない、耕作放棄地が増加をしている。それから、農業従事者農業所得というものが他産業従事者所得と必ずしも均衡がとれていないというような事態が起こってまいっているというところに問題があるわけでございます。  こういう事態の背景といたしまして、もちろん我が国の経済が非常に発展をしてまいったということが一番バックボーンとしてあるわけでございますけれども、他産業での就業の機会がふえまして、農業からそういう他産業部門へ農業労働力が移行をする、それが兼業の進化というような形になり、それが必ずしも個々の農業の経営規模の拡大につながってまいらなかったということが一つ大きな原因としてあるのじゃないかというふうに考えているわけでございます。  それからもう一つは、都市化や非農業部門発展ということから、こういう部門の土地需要が非常にふえたわけでございまして、農地転用が膨らんでまいったということがあるわけでございます。これは農地の減少につながるというだけでございませんで、農地価格が非農地価格の上昇に伴って高くなってまいるということ、それが農業上の土地利用を非常に困難にする、規模拡大を困難にするというようなことが起こってまいったということが二点目として言えるのではないかというふうに思っております。  それからもう一つは、他産業の生産性向上が非常に著しかったために、農業の方が必ずしもそれに追いついていない。農業自身の生産性向上も相当大きい。世界的な基準で考えると、かなりいい方に属するのじゃないかというふうに思うわけでございますが、国内的に見ますと、必ずしも他産業の生産性向上についていけなかった。それが農業従事者と他産業従事者との間の所得の不均衡をもたらしているというようなことが問題としてあったのではないかというふうに考えるわけでございます。  これらの要因につきましてなかなか対応がしづらい問題ももちろんあるわけでございますが、可能な限り農政分野で対応することによって克服しなければならない問題もあるということで新政策という考え方を提起するに至った、こういうことでございます。
  15. 石橋大吉

    石橋(大)委員 次に、新しい経営体に本当に大規模な農地の集積が可能なのかどうか、あるいはいかにしてそれを実現するのか、このことについて伺いたいと思います。  これは新政策の一番眼目中の眼目と言ってもよかろうと思いますが、新政策では十年程度後の効率的、安定的経営体像ということで、十ないし二十ヘクタールの稲作単一経営五万戸、五ないし十ヘクタール程度の複合経営十万戸、一ないし数集落の組織経営体二万集団、こういう具体像が示されているわけであります。  今もちょっと言いましたように、基本法農政下の三十年、自立経営農家や中核農家農地を集積し、規模拡大による他産業従事者並みの所得確保をひたすら追求してきたけれども農家一戸当たりの農用地面積は一九八八年で一・一ヘクタール、ほとんど規模拡大に見るべき成果を上げることができなかった。しかし、最近になりまして、昭和一けたのリタイアとともに、三ヘクタール以上層を中心にかなり大幅な耕地の借り入れによる規模拡大が進んでいることは、九〇年センサスの実態により明らかにしているとおりであります。しかし、それにしても、新政策方向で示された農業構造を実現するためには、今後十年程度で過去十年間の農地流動化実績七十一万ヘクタールの二ないし三倍に相当する百七十五万ヘクタール程度の農地流動化が必要であり、従来にも増して積極的な政策的な視点が心要である、こう言われているわけであります。  そういう立場に立って、農水省としても関係法の改正や二十一世紀型水田農業モデル圃場整備促進事業を初め、担い生育成、農地集積事業など、農地の集団化した利用の促進のためのいろいろな事業が具体化をされようとしているわけであります。私もその画期的かつ積極的な姿勢はそれなりに評価するものでありますが、果たして目的とする農地の集積を実現することができるのかどうか、この点で新農政は画餅に帰するのではないかという専門家の厳しい評価も一部にあるわけであります。どうしてこれを実現するのか。  御承知のとおり、平成二年の基幹的農業従事者は、昭和六十年に比べ一五%減少して三百十三万人、そのうち六十五歳以上が二九%、六十歳以上では四八%を占め、高齢者に非常に傾斜した構造になっているわけです。そういう意味で、これから昭和一けたのリタイアが進めば農地は一段と流動化する、こういう潜在的な条件はあると思うけれども、実際問題として、それがちゃんと規模拡大に結びつくのかどうかは、やはりこの三十年の基本法農政経過に照らしてもそう簡単ではない、こういうふうに心配をしているわけであります。  そういう困難をいかにして克服し、十年程度の間に目標とする新しい経営体を実現するのか、この点について伺いたいと思います。
  16. 入澤肇

    ○入澤政府委員 先生御承知のとおり、我が国農地の現状、零細分散錯圃という現状でございますが、これを克服して、経営体農地を集積し、連担化する、これが新政策の基本的な課題でございますし、また、農地政策の基本的な課題でもあるわけでございます。  従来、いろいろな事業をやっているわけでございます。御承知のとおり、一つは、農政は運動論でございますから、地域の実情に応じまして話し合いを積み重ねる。集落で何回も何回も話し合いを積み重ねまして、それで地域農業の担い手に農地利用集積されるように利用権設定事業をやる。あるいは農業委員会の、いわゆる農地銀行活動というふうに言っていますけれども、担い手に関する農地の情報収集、提供等をやる。あるいは農業公社が間に入りまして、農地の売買とか貸借事業をやる。農地保有合理化促進事業と言っておりますけれども、こういういろいろな事業をやっているわけでございます。  そのほか財政面でも、規模拡大を図ろうとする者に特別な助成措置を講じたり、あるいは低利資金を融通したり、また、土地改良事業の面におきましても、通常は五〇%の補助率なのですけれども、さらに負担軽減を図るという意味で、名前は長ったらしいのですけれども、二十一世紀型水田農業モデル圃場整備促進事業などという新しい事業もやっているわけでございます。  最近の農地の流動化状況、今先生おっしゃったとおり着実に進んでおりまして、過去十年間で約七十一万ヘクタールが移動しております。利用権の再設定とか自作地の有償所有権移転のうち、交換面積も含めますと、七十一万ヘクタールというのは九十万ヘクタールにカウントされる、こういう状況でございます。  今後十年間の状況をどういうふうに見通すかといいますと、現在六十歳以上で後継ぎのいない高齢農家の保有農地が四十二万ヘクタールございます。それから安定兼業農家、これは第二種兼業農家のうちの、世帯主が恒常的勤務をしている、自営兼業だ、こういう農家の保有農地が百二万ヘクタールもございます。要するに、出し手となり得る者の所有する農地が非常に増加している。かてて加えまして、農地の貸し付けに対するアレルギー、必要なときに返還されないとか、あるいは返すときに出作料が必要だとか、こういうふうな農地法のアレルギーも解消してきている。こういうことから、先ほど先生がおっしゃったとおり、これからの十年間では、過去十年間の二、三倍、百七十五万ヘクタールぐらいは農地が流動化するのではないかなというふうに推計しているわけです。  問題は、これを新政策目標である大規模の経営体にどういうふうに集積させていくかということでございますけれども、この流動化の可能性を現実のものにしなければいけないということで、先ほど申しました従来の施策を抜本的に強化することが必要じゃないかなというふうに私は考えております。そういう意味で、農用地利用増進法の抜本改正、それから農地法の一部改正も内容といたしました農業経営基盤の強化のための関係法律の整備に関する法律案、これを今国会に提出して、これから御審議をいただくことになっておるわけでございます。  具体的にはそのとき御審議いただきますけれども、まず第一に、育成すべき農業経営、それから実現すべき農業構造の目標を定める。運動論ですから、まず目標を定めて、リーダーを養成して、そして一定の方向に向かって進んでもらうという仕組みをまずつくるということでございます。それから、新しく、農業公社が買って中間保有している農地農業生産法人に出資する、あるいは売り渡し信託等を進める、そういうふうに農地保有合理化促進事業を抜本的に改めます。  さらに、効率的、安定的な農業経営体に農用地が利用集積するということと並行しまして、そのような農業経営体に対する税負担の軽減、機械、施設等の割り増し償却とか、必要な資金の貸し付け、ここら辺も法律の中に盛り込みまして、今まで以上に強力な政策展開して、可能な限り零細分散錯圃という農地状況を克服したいというふうに考えているわけでございます。
  17. 石橋大吉

    石橋(大)委員 次に、今言った農地の集積をどうするかという問題と並んで新農政のかぎを握る問題は、新しい経営体の担い手をどう確保するか、これがもう一つの大きなかぎだと私は思うのです。この点について伺いたいと思うのです。  新しい個別経営体組織経営体の担い手について、新政策ではこう言っているわけです。「個人の意欲を重視し、経営感覚に優れた効率的・安定的な経営体を育成するため、自主性、創意・工夫の発揮と自己責任の確立に向けて、」云々、かなり高度な経営体の担い手像がここに明らかにされている、私はこう思うのです。そして、この新しい経営体を担う人材の確保策として、新規就農相談窓口の体制強化と就農希望者に対する就農情報等の提供、農地保有合理化法人の保有する農地を活用した研修の実施など、新しい政策が具体化をされているわけであります。  これはこれで非常に重要なことだと思いますし、大変有意義なことだ、私はこう思っておりますが、しかし、これで果たして新しい経営体の担い手として必要な担い手の数を確保できるのかどうか、非常に難しいのではないか、こういうふうに心配をするわけであります。  単純に考えてみても、十ないし二十ヘクタールの稲作単一経営の担い手五万人、五万戸つくるというわけですから最低五万人必要だ。五ないし十ヘクタールの複合経営の担い千十万人、十万戸ですから、一経営体一人としても十万人。一ないし数集落の組織経営体の担い手、一集団一人としても二万人。単純にいって、十七万人の担い手が必要になってくる、こういうことになるわけですね。  もちろん、全部が全部新しい新規就農者でこれらが担われなければならない、こういうことはないと思います。今やっている人の中からも相当数出てくる、こういうことは当然考えられていると思いますが、それにしても、かなりの部分は新規の担い手を積極的に開拓するというような政策を抜きにして、この十数万に上る新しい経営者、担い手を確保することは非常に難しいのではないか、こういうふうに私は思うわけです。  簡単に、今言ったような計算からすると、十年程度後に実現すべき経営体、こういうことになっていますから、毎年一万人から一万数千人の担い手を確保する、それであっても、十年でやっと目標数が確保できるかどうか、こういうことになるわけですね。  さっき言ったように、もちろん全部が全部新人で確保しなければならぬということはないと私は思いますが、かなりの部分はやはり新しい担い手によって確保する。そういう担い手をどういうふうにして確保し、養成をしていくか。私はある程度、今出されている政策以外に、例えばそういう担い手をちゃんと登録して、集中的な養成確保のための施策を具体化する、こういうことがもっとないと、事実上不可能なのではないか。そういう意味でいえば、フランスの青年就農者助成制度なども大分前から私ども申し上げておるわけですが、この際、もう少しそういうことも参考にしながら、担い手の確保策について、思い切って具体的な政策をとる必要があるのではないか、こう思いますが、どうでしょうか。
  18. 高橋政行

    ○高橋(政)政府委員 ただいま先生お話しのように、農業に従事する青年農業者といいますか、そういうものをどういうふうに確保していくかということは、我々としても、非常に重大な事項である、重要な課題である、こういうふうに思っております。  ただいま先生からお話がございましたフランスには確かに就農援助金ということで、直接農業者個人に助成金を交付するという制度がございます。それについてでございますが、我が国では一般的に助成の仕方といたしまして、集団とかあるいは組織、共同利用、そういったものに対して助成をしていく、そんな体系になっておりまして、特定の職業につく人に対して個別に助成するというようなことは今までやってきておりませんで、そういった助成のやり方の違いというようなものが一つございますし、また世論とか国民的な感情からいたしましても、そういうことに助成金を出すということについてなかなか受け入れがたいといいますか、なじみがたいというような面があるのではないかというふうに思っております。  しかしながら、この青年農業者を育成確保するということは重要な問題でございまして、まず何といいましても、基本的には青年にとりまして農業農村を魅力あるものにするということが最も大切なことであるわけでございますので、従来から農地の集積等を進めるとか、あるいは生活環境あるいは共同利用施設の整備といったような助成措置を講じながら、何とか農業そのものを魅力あるものにするという施策がまず第一に必要なのではないかというふうに思っております。  直接農業者の育成ということに関係して申し上げますと、昨年も当委員会でもいろいろ御議論をいただいたところでございますが、やはり個々の青年の皆さん方の自立志向といいますか、自立心といいますか、そういうものを助長しながら就農を促進していくということが必要ではないかというふうに考えまして、農外からの新規参入青年も含めた意欲ある青年を対象にいたしまして、無利子の青年農業者等育成確保資金というものも創設したところでございます。  我々といたしましては、こうした資金を活用するとともに、さらに五年度におきましては、農業青年の育成確保事業というものも予定しておりまして、その内容につきましては、先ほど先生もおっしゃいましたように、いろいろな就農の相談をするとか、あるいは情報の交換をするとか、あるいは実践的な研修を行うとか、そういうのを県とか国レベルだけではなしに市町村段階までもう少しおろしまして、きめの細かい育成確保措置をとっていきたい、こんなふうに思っているところでございます。
  19. 石橋大吉

    石橋(大)委員 残り時間が少なくなりましたが、次に中山間地対策について、条件不利地域対策、EC型の対策、こういうものを参考にした政策を具体化をすべきではないかということについて伺っておきたいと思います。  「新政策そこが知りたい」という農水省関係者も入ってつくった解説書によりますと、今やはり農山村の人たちは、この条件不利地帯に対する所得補償政策は何らかの形で具体化してほしいという点では非常に切実な希望を持っているわけですね。ところが、農水省は基本的には非常にこの点について消極的なんですね。この解説書の中でもかなり詳しく考え方が述べられていますが、「EC型条件不利地域対策(直接所得補償方式)の検討」ということで、二百十二ページに書かれています。  本対策については、EC内部においても、  ①「条件不利地域」について客観的基準に基づく線引きが難しく、対象地域が拡大傾向にあること  ②行政負担の大きさに比し、その効果(特に人口の維持、景観の保持)が必ずしも明らかでないこと 等の問題点指摘されている。   このような対策を我が国に導入することについては、  ①我が国では、各地で多様な農業展開されており、対象地域・農家の限定を一律的に行うのは技術的に難しいのではないか。また、実施するとすればバラマキ的になってしまい、十分な政策効果が得られないのではないか。  ②ECの条件不利地域に対する直接所得支持政策は、規模拡大が進んでいるECにおいて、それまでの農業近代化路線を柱とした構造政策の見直しの中で拡充強化されてきたものであり、今後規模拡大等構造政策の更なる推進が必要な我が国農業にそのまま適用することは適当でないのではないか。  ③ECの条件不利地域に対する直接所得支持政策は、福祉・社会保障的側面を有しており、その色彩が強くなれば、中山間地域等で積極的な農業展開している農家の労働意欲を減退させることにならないか。  ④職業人たる農業者に対して広く直接所得補填をすることについては、国民のコンセンサスが得られにくいのではないか。  ⑤また、個人に対する給付金の支給は、転作補助金、価格政策における不足払い等の事例はあるものの、従来からの農業助成体系と異なり、関係方面の理解が得られにくいのではないか。 こういう事例を挙げながら、つけ足しに「研究は今後とも続けていく」というふうに付記はされていますが、考え方としては非常に消極的です。こういうふうに受けとめられるわけであります。  特に、構造改善局長の法案説明なんかでも言われていますが、ECの場合は、今も言いましたように、かなり構造政策が進んでいる、しかも日本ではそうではない、こういうことが言われてきております。しかし、さっき言いましたように、この条件不利地帯、特に中山間地に対する何らかの形での所得補償方式というものは非常にやはり切実な期待があるわけでありまして、一定の条件の中で何とか私たちは具体化をしていく必要があるのではないか、こう思っておりますが、そういう意味で、この点改めてどうかということをちょっとお聞きしておきたいと思います。
  20. 田名部匡省

    田名部国務大臣 委員は今いろいろなお話をされましたが、私もEC型のいわゆるデカップリングというもので本当に地域全体が活性化するであろうか、あるいは定住が本当に促進していくのかなということが考えられます。あるいは、農家といっても職業人でありますから、国民から見て本当にそういう合意を得られるかという心配があります。  確かに、中山間地の農業が厳しいということはよくわかっておりますし、それなりの対策は立てなければいかぬ、こういうことでは認識しているわけでありますけれども、何といっても地域の自主性、創意工夫、これを生かして取り組みを支援するということが一番大事であって、何か補助金が出るんだということで本当に意欲が出てくるかなという心配と、一体だれにどういうふうに配分するかということになると、これまた問題がありまして、二種兼業が非常に多いわけですから、それでもう応分の、サラリーマンと同等の収入を得て、それで一方では農家のいささかの収入があるというので、統計上はサラリーマンよりも多いことになっている。そういうこと等をずっと分析してみますと、なかなか国民的な合意は難しいかな。それから一方では、まあうまくやっている人もおるわけですね。そうすると、経理をきちっとやってもらう、あるいは税を一体負担させるかさせないかといういろいろなことが出まして、今度はそれじゃ税務調査等も入ってやらなきゃいかぬとか、大変なことが起きてくるということも考えられるわけですね。  ですから、従来から有利な補助率の設定でありますとか採択基準の緩和、そういうことをやってきておりますけれども、この平成五年度では、さらに集落機能の再編あるいは強化、それから農林地の利活用、経営の改善、安定、そうしたものを図るための新たな制度を創設するなど、対策を強化する予定にいたしております。  どれがいいかというのは、これをやれば絶対いいということはなかなか難しいだろうと思うのです。ECの場合も、例えば条件不利地域は経営面積が三ヘクタール以上で五年以上の営農継続を約束するというのです。同じに持ってきたのでは三ヘクタールなんか日本ではやっている農家がいない。あるいは大家畜の一頭または農地一ヘクタール当たり一万七千円。ですから、一農家当たりの平均年間支給額というのは十四万ですよね。十四万円もらえると、本当にそこにみんな若い人たちも住んで農業やれるかとなると、これもまたどうも問題ありそうな気がする。  いろいろ考えておりますが、いずれにしても我々の考えられる範囲内で一応やって、その結果としてどういうことが、また問題が起きてくるのか、これは少し長い時間をかけて、そしていい方向にどんどん持っていく、そういうことをしていくのが一番いいであろうということで考えております。よろしくどうぞ。
  21. 石橋大吉

    石橋(大)委員 最近、中山間地は、特に環境の保全や国土の保全、景観の維持などという意味国民的な財産として非常に評価をしなきゃいかぬ、こう言われているところですから、やはりそれも金をつけなければ、かすみを食って生きていくわけにいきませんので、少しやはりそういうのでちゃんとした検討をお願いしたい、こういうふうに思います。  もう時間がありませんが、最後に二つだけ簡単に申します。  一つは、価格政策関係についてです。価格政策について新政策の中でこう言っているわけですね。「今後の価格政策展開に当たっては、次のような考え方を踏まえて検討を進めていく必要がある。すなわち、効率的・安定的経営体が生産の大宗を占めるような農業構造を実現していくことによりコスト削減に努めながら、このような農業構造の変革を促進するため需給事情を反映させた価格水準としていく必要がある。」ここが大事なところですが、「その際、価格低下と育成すべき経営体の規模拡大などによるコスト削減にタイム・ラグが生じないように努める必要がある。」  これは規模拡大に向けて汗水垂らして借金して、努力をすればするほどその成果はすぐ価格政策にはね返って下げられるということですから、息つく暇もないし、そういうことでは規模拡大に夢を託することはできないのじゃないか。こういう価格政策あり方というものはきちっと考えなければいけないんじゃないか、こういう気がしているわけですね。まあ、十年ぐらいはある程度据え置いて、少しは余裕が持てる、借金も返せる、こういうことにするか、それができなければ別途何らかの形でそういうことが期待できるような政策を具体化をするか、何らか考えないと、このままの運用ではやれないのじゃないか、こういう感じがしますが、それが一つ。  もう一つは、農村の女性対策ですね。どうも、農業の六割はもう既に女性によって担われている、こう言いながらなかなか女性問題が重視をされてこなかった。やっと去年、農林省としても「新しい農山漁村の女性 二〇〇一年に向けて」などという報告書を出されておりますが、やはり農村の女性の主体性、自主性がもっと尊重されるようにするということと同時に、女性は高齢化社会の中でシングルライフが非常に長くなっていますから、そういう意味では農業者年金などよりももっと厚生年金に近いくらいな年金制度を含めてきちっとしたことをやらないと、いつまでたっても女性の確保はできないし、回り回って担い手も確保できない、こういうことになるわけですが、この点だけ、ちょっと簡単にお答えいただきたいと思います。  以上です。
  22. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農産物価格政策でありますけれども、これはもう国土の条件の制約というのはあるわけですね、日本の場合には。そういうことを考えますと、土地利用農産物中心に国際価格に比べて割高にならざるを得ないという面はあるわけです。しかし、今後とも生産性向上と体質の強い経営体の育成を図っていく。これは総理府の世論調査で見ましても、七〇%近い人が生産性向上を図りコストを下げよという条件つきなんですね。それで国内で生産すべきだ。ですから、私ども国民の理解と納得が得られる価格水準を目指さなければならぬというところがまた反面あるわけです。  しかしながら、タイムラグのお話でありますが、おっしゃるとおり、これはやったからすぐぼんと下がる、下げられるというものでもない。それぞれ、米価決定でありますとか、いろいろなものがありますので、その中でどの程度にやって、何年かかってそういうものができていくか、そこにタイムラグが生じないようにしていかなければならぬ、そういう考え方であります。
  23. 入澤肇

    ○入澤政府委員 女性の農業者年金加入問題についてお答え申し上げます。  御指摘のとおり、農業就業人口に占める女性の割合が約六〇%、女性が極めて大事であります。年金の加入者の実態でございますが、平成三年度末で五十三万人、このうち経営主あるいは後継者として加入している女性は二万二千人で、加入者の四%になっています。これは女性の場合には農家に嫁いできて農業に専従していても農地等の不動産の名義人になっていない、そういうことから加入率が低いということになっております。  この農業者年金制度でございますけれども、経営移譲、農地権利移動による農業経営の近代化、それから農地保有の合理化を目的として実施されている政策年金であるということから制約があるのですけれども農業に従事する女性には、既にこういう状況を勘案いたしまして、国民年金の上乗せ給付を行う全国農業みどり国民年金基金というものが平成三年五月に発足して、整備されております。  こういう状況を踏まえまして、これから総合的に検討しなければいけないということでございますけれども、三月に入りまして、構造改善局の中にこの女性の農業者年金問題、加入問題も含めまして検討会を設置して、具体的に作業を行っていきたいと思っています。これは年金制度につきましては、年金の被保険者数それから受給権者数の見通しなどを踏まえまして五年ごとに保険料とか給付水準の見通しを行う、いわゆる財政再計算を行っておりますので、この機会に検討会の中で具体的に考えていきたいというふうに考えております。
  24. 石橋大吉

    石橋(大)委員 時間が少しオーバーしましたから、これで終わりたいと思います。  ぜひひとつ、今指摘した問題点をちゃんと解決して、農業農村の期待にこたえるように頑張っていただきますようお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  25. 平沼赳夫

    平沼委員長 野坂浩賢君。
  26. 野坂浩賢

    ○野坂委員 久しぶりに農林水産委員会質問をさせていただくわけでありますが、田名部農林大臣とは予算委員会でしばしば論戦をいたしました。田名部さんの御発言は、予算委員会で最後に決意表明を常にされます。こういうことを私の質問でも同僚議員の質問でも同じように言っておられます。本当に将来に展望の持てる足腰の強い農業にしよう、その方法は今新政策検討本部で懸命にやっておる、こういうことが締めなんですね。私のときにも、足腰の強い農業にする、展望の持てる農業にする、こう言って、いつも自分に激励をし、人にも激励をしておる。農家はそういうことにこたえて一生懸命やってまいりました。  今私が申し上げましたことは、きのうの農林水産大臣の所信表明がここにありますが、このとおりのことを意味しておるのかということ、足腰の強い農業とは、所信表明で述べたことを言っておるのだ、こういうふうに理解していいんでしょうか。
  27. 田名部匡省

    田名部国務大臣 これで全部終わりという考え方ではありません。いろいろと農政審等にも御検討をいただいておるものもありますし、これからまだまだ、土地利用農業ということでありますけれども、他にもたくさんありますので、それらのことも今後十分詰めて早期に考え方を示していきたい、こう考えております。
  28. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、これは考え方の一部であって、田名部農林大臣在任中に諸施策は提出をする、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  29. 田名部匡省

    田名部国務大臣 そのように努力いたしてまいります。
  30. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この所信表明に対する質問ですから、これの順番でよくわかるように質問したいと思います。  今は、諸事情の変化の中で、従事者の減少や高齢化の進行、山村等における過疎化の進行など、近年農業情勢というものは大きく変貌しておる、私もそう思うのです。大きく変わってきた。だから、基本法農政というものを推進して昭和三十六年からやってきた今日、三十年過ぎておりますが、基本法と現実の農業というものは大きく変貌しておるというふうに考えてよろしいか。その点、いかがです。
  31. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おおむね農業基本法にのっとって今日まで努力をしてまいりました。したがって、それ相当に成功した部分もございます。特に、畜産でありますとか施設園芸分野ではそれなりの成果を上げてきた。しかし、土地利用型においてはなかなか生産性向上等見られない。あるいはそこには、何といっても他産業並みの労働時間も得られない、所得も少ないということ、そのために今度法案をお願いして、この面にひとつ力を入れていこう。そうでありませんと、自給率向上向上と話ばかり言っても、ここが上がらないと実際には生産性向上にならぬわけでありますから、そういうことにも努力をしていきたい、おおむね農業基本法にのっとって今日までもやってきましたし、足りない部分はそういうことにのっとってこれから進めていきたい、こう考えております。
  32. 野坂浩賢

    ○野坂委員 田名部さんは農林大臣ですから、基本法農政に沿って成果があったということも言いたいんでしょうけれども基本法農政というのは、一つ自立経営農家です。それから畜産と果樹です。これが中心で進めなければ将来の農業というものはよくならぬ。昭和三十六年に明確にされておるのです。いいですか。畜産は随分振興した、よくなった、こう言っていらっしゃる。しかし、輸入自由化によって日本の牛肉は五〇%を既に割っておる。そしてその前までは、ぬれ子は平均で十三万円だった。今一万五千円ですよ。そうでしょう。経産牛は今や四百キロが十三万円しかしていない。これで畜産農家はどこも隆々としておりますか。私は基本法というものはあっていいけれども、現実というものは、あなたがおっしゃったのとは違って惨たんたるものであるということをはっきり申し上げておきたい。私は答弁を求める気はありませんが、私は現実のことを今申し上げておるわけです。  だから、基本法に問題があるから、あなたはこう書いてあるのじゃないですか。「新しい食料・農業農村政策方向」の中には、効率性追求一辺倒への反省の機運が高まる、従来は経済効率だけを考えておった、だから問題もあったんだ、今は環境の保全をしなければならぬ、こういうことがありますね。基本法にもないことで言ったのは初めて。自給率というものを歯どめをかけなければいかぬ、自給率は何%だということもちゃんと今度は述べたんですよ。だからそういう意味では、基本法農政とこの新農政方向というもの、これは現実に合わしてやろうとするあなたの努力、だから基本法農政というものは見直す時期に来たと言わなければならぬ、私はそう思っておるのです。農業はこれでは本当に助かりませんよ。その点はあなたはどうお考えですか。ほかの産業だなんてなまっちょろいことを言っておったら、十年たったら農業は切られるのです。
  33. 田名部匡省

    田名部国務大臣 そのときどきの経済の変動でありますとか、経済は生き物ですから、いろいろなことで外国の影響も受けるし、円高もあれば円安もあるという中で、影響が出てくるものは、何も畜産に限らずいろいろなものがあると思うのです。しかし、基本法とそれはまた別の問題でして、私は今自由化の影響で確かにおっしゃるとおり大変な状況ということもわかっておりますし、そのためにいろいろな対策も立てております。また一つは、環境問題がこれだけ大きく取り上げられるようになった。昨年のブラジル・サミットでこのことが大きく取り上げられたということもございまして、生産性向上を図りながら環境保全型農業の確立を目指す。  ですから、これは基本法をつくってもその中には動きというのがあって、それを根底から全部づくり直さなければならぬことかというと、変わるたびに基本法をつくればそれはそれでいいのかもしれませんが、しかし基本的なことはやはりしっかりと踏まえて、そこでどうしても変えていかなければならぬ部分というのは、その時代の変化に伴って、あるときにはそこをちょっと力を入れて支援していくということでいいのではないかというふうに考えておりまして、基本法に外れたものは一切やらないということではなくて、時代に合ったそのときどきに問題に対応しながら、ここでまた御議論いただいたり、その方向に向かって努力していくということで考えでいいのではないか、こう思います。
  34. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私は決して感情的に物を言っておるわけではないのですが、基本法をやってから三十二年なんです。そのときどきに経済情勢は違うから、もう直さぬで表面を糊塗してやればいい、簡単に言えば農業基本法はお蔵入り、新農政方向が綱領的存在で出ていく、こういうふうに考えるのですか。もうそろそろ手をつけていかなければならぬじゃなかろうかなと私は思うのですけれども、そんなことはする必要はないと政府はお考えなんですね。そうですか。
  35. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 若干補足をさせていただきたいと思いますけれども農業基本法のねらいといたしますところは、農業生産性向上あるいは農業従事者所得と他産業従事者所得の均衡を図ってまいるというところが最大の眼目として挙げられているわけでございまして、このような大目標につきましては、これは新しい新政策考え方におきましても一番太い柱になるものだというふうに考えているところでございます。  そういう意味で、農業基本法の枠の中で我々の新しい政策を実施してまいるという考え方であるということでございます。
  36. 野坂浩賢

    ○野坂委員 完全にかみ合うというところはないので、それでは、具体的に私は聞いていきます。  食料の自給率というのは、こう書いてありますね。「可能な限り国内農業生産を維持・拡大し、食料自給率の低下傾向に歯止めをかけていくことが基本である。」これがあなたの方針ですね。初めて政府はこの自給率というものに手をつけました。カロリーベース幾ら、穀物自給率幾らということが書いてありませんが、何%ですか。大臣、あなたの農政の基本ですね、これは。
  37. 田名部匡省

    田名部国務大臣 閣議で決定をいたしました五〇%が基本でありまして、今まあ穀物では三〇%になっておりますけれども、全体として何とか五〇%まで上げようということでありますから、そのための努力をしていく。そのためには、わずか三%といっても、一生懸命努力をしているそこから三%でありますから。  一番問題のあるところは何かというと、先ほども申し上げましたように、土地利用型の農業というものが弱体化しておるものですから、これを上げなければ、小さいところだけではなかなか五〇%に達しないということで、そういう努力をするという方針をとっておるわけであります。
  38. 野坂浩賢

    ○野坂委員 田名部さん、一九九〇年には、平成十二年にはカロリーベースは五一%というふうに決まっておるのです。今は四六%なんですよ。いいですか、穀物の自給率は、平成三年は二九%です。これを三〇%にするということになっている、こういうことですか。これよりも上になるのですか、下げるのですか。私が言う五一%と三〇%にはいたしますと。十年かけて効率的、安定的経営体をつくるのですから、それに合わせてこういうベースを決めたんじゃないのですか。これは政府案ですよ、私が言っておるのは。
  39. 田名部匡省

    田名部国務大臣 「新しい食料・農業農村政策方向」の前提となっておりますこの長期見通しでありますけれども、平成二年の一月に閣議で決定をいたしました。これによりますと、供給熱量ベースで五〇の自給率、これはおっしゃったように二〇〇〇年までということで、これに向けて新政策の方もいろいろと創意と工夫の中で、こうすることによってこの五〇%を達成ができるということでやっておるわけであります。(野坂委員「穀物ベースで幾らですか」と呼ぶ一穀物ベースで三一%であります。
  40. 野坂浩賢

    ○野坂委員 農政審議会の答申とは若干違うところがありますけれども、私はもうそれには触れません。あなたが言ったことは金科玉条として、穀物自給率は三一%以下にはならぬ。ここで約束をしてもらいます。いいですね。  それで、それをするために何を考えておるのかということですね。霞が関農政というは、問題を出します、他の産業と同じように収入がなければならぬ、同じような労働時間でなければならぬ、その答えを出しなさい、こう言ったら、年間の農業所得は大体八百万円だと。そこで、それぞれ集団を十ヘクタールから二十ヘクタールを五万戸とか五ヘクタールから十ヘクタールまでを十万戸とかそういう経営体、これがあなたの言う効率的、安定的経営体だと思うのですよ。もし違ったら言ってください。そういうことをやりますよと。年間農業所得は八百万円ですね、こういうふうに大体しておる。生涯賃金というのは二億五千万。そうすると、この八百万円の積算の根拠を示してください。
  41. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 新政策では、稲作の場合に十ヘクタールから二十ヘクタールの稲作を主体とする個別農業経営体というものが将来の農業経営体の一つの目安として示されているわけでございます。これは、今後の新政策考え方で、農業が魅力のあるものとして若い農業後継者などが農業に従事をする、そういう魅力のあるものとして、大体年間の労働時間あるいは労働条件というようなものが他産業並みである、あるいは農業所得が他産業に従事した場合に得られる所得と遜色がないというようなことを一つの目安として考えていかなければならないというふうに考えてお示しをしたわけでございます。我々の新政策考え方というものを目に見えるような形で御理解をいただくということのために、あえてああいう数字を明示したということであるわけでございます。  その考え方の根拠といたしまして、一応農業従事者の年間の所得というようなものを八百万程度というふうに仮置きといいますか、として考えたということはあるわけでございますが、これは、現在他産業の従事者が給料という形、あるいは退職金というような形、あるいは年金というような形で生涯に獲得をいたしております所得の総額というのが大体二億から二億五千万ぐらいじゃないかというふうに考えたわけでございます。  これを、農業従事者のライフサイクルとでもいいますか、若いときに従事をして、だんだん子供を育て、老境に入っていく。他産業の従事者の場合ですと、従事期間が長くなればだんだん収入が上がっていくというようなことがあるわけでございますが、農業の場合には、いわば一定のペースで収入が得られる。若いうちは他産業に比較して割に多い。しかし、何といいますか、年齢を加齢いたしますとともに、相対的にはあるいは少なくなる。しかし、労働の方も補助的なものに変わっていくというような、そこら辺に、就業の形態、所得の収入の上がり方、差があるわけでございまして、これを生涯の獲得所得というようなことで考えてならしてみて、単年度に八百万ぐらいというようなことが一つ考え方として出てまいるということで、我々が説明の際に用いている数字であるということでございます。  したがいまして、一つの我々の新政策考え方である今後の農業就業者の姿というものを仮定的にしろ明示的にお示しをするために、こういうような数字を踏まえて計算をしているということでございます。それ以上のものではないということを御理解いただきたいと思います。
  42. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あなたの言葉を一言で言うと、推測をして書きました、こういうことなのです。今、農家農水省を信頼をしてあなた方の言うとおりにやってきた。減反をしろと言えばする、米をつくるなど言えばつくらない、転作をせよと言えば転作をする、そして今日の農業がある。だから、あなた方が八百万円くれる、そういう収入ができるような方向で絵をかいている。これは十年先の経営形態になってからの話じゃないでしょう。これは今の話でしょう、そうですね。私がもっと知恵をかしてあげましょう。  田名部農水大臣は、予算委員会で私の質問に答えて、こう言っておるのです。いいですか。「農家全体で収入がどのぐらいあるかというと、平均で七百九十九万ぐらいあります。」こう言っておるのです。そのうち農業で得る金が百十一万です、だから第二種の方は八百六十万円もらっておりますよ、専業は七百二十八万円です、あなたは明確にこう言っておるのです。だから僕は、これが八百万だなと見たのです、あなたの言ったのを。僕はあなたを常に信頼していますから、だから八百万だなと見たのです。今農家所得というものは八百万円というものが構想として考えられる、こういうことですね。――農水大臣の方がいいだろうと思うな、自分の言ったことを私が読んだのだから。
  43. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 先ほどのように、その新政策の中に示されております経営体の経営規模ということから今の議論が出てまいっておるわけでございますので、積算の根拠とでもいいますか、事務的な説明で申し上げさしていただきたいと思います。  現状の農家所得状況ということにつきましては今先生お示しのとおりでございますが、私どもは他産業就業者の生涯の獲得所得ということを計算の発端にいたしておりまして、それが二億ないし二億五千万である、それを、農業就業者が若いころに就業して老齢でリタイアするというころまでにずっと平均的に収入を上げていくということで考えた場合に、大体年間八百万ぐらいというふうに考えていいんじゃないか。これは若いうちはやや余計稼ぐ、年をとって補助的な労働に移ればやや少なくなるという若干の違いはあろうと思うわけでございますが、まあ押しなべて申し上げまして大体そういうふうに考えればいいんじゃないかということで、先ほどの数字を申し上げたということでございます。
  44. 野坂浩賢

    ○野坂委員 議論すると時間がたちますので、もうしませんが、八百万円の積算根拠を、現在の物価高に合わせて、資料で、文書で全議員に配ってください、両院。私は帰って農家皆さんに、八百万円になります、積算の根拠はこうですということを報告しますから、今のようなことではちっともわかりません。わかっていないのです、みんな。だれもわかったような顔をしておらぬ。だから、ぜひ出してもらいたい。  それから、十年たつと今のサラリーマンは八百万円よりも高くなりますよね、委員長。これは常識です、ベースアップがあるんだから。だから、それにも合わせて現在の状況から見てどうなりますかということも書いてください。お願いしておきます。責任を持って出してもらいたい。  そこで私は、たった今米価や乳価の闘いが始まるんです。農水大臣は、畜産振興した、赤保谷さんそうですよ、振興してないけれども振興しておると言うんです。振興しています、こう言っていますよ。そうすると、これからの肉価とか乳価とか、三月二十七、八日ごろ、米とか、それは現在の米の値段で積算をしておるんです、明らかに。そうすると、それを下げると収入は減になるので、この価格は、米価その他は理論的に下げることはない、私はそう確認せざるを得ない。そういうふうに考えてよろしいか、農林大臣
  45. 田名部匡省

    田名部国務大臣 いろいろな価格の決定は、そのときの状況を判断をして、経済状況もありますし、農家の実態というもの、そういうものを積算して決めるわけでありまして、今から幾らになるとか据え置くとか上がるとかということは、これはお答えできないわけでありまして、まあやはり実態に合ったやり方ということでやることは、これは当然であります。
  46. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私はだんだんあなたの発言に疑問を持つようになりました。新農政方向というのは、指標を出して、農家皆さん、ここについてきてください、これからこういう方向でやっていけば必ずあなた方の所得は保障できます、農業は他の産業と比べて遜色のない産業になります、そう言っておる反面に、そのときの事情だ、出たとこ勝負だ、こういうことだったら、農家はとてもついてこれません。  ついでですから、あなたにこれから中山間地帯について聞きますけれども、中山間地帯でこれからは非常に緊急な問題だとあなたはきのうおっしゃった。そこで高収入の作物をつくるんだ、高付加価値のものをつくるんだ、そう言いましたね。何をつくるんですか。かつて政務次官が私に、何をつくったらいいかと聞いたら、人がつくらぬものをつくったらいい、農林省の政策以外のことをやれ、こう言ったのです。政務次官がですよ。だから、本当に我々は真剣にこの農水委員会で、どうしたら農業者を守れるか、どうしたら日本の国土の保全ができるか、環境の確保はできるか、血眼になってやらなければならぬのに、そういう、皆さんが笑うような言葉が平気で答弁に出てくるということは、私は納得できぬ。だから、あなたから明確に答えてもらわなければならぬ。
  47. 田名部匡省

    田名部国務大臣 明確になるかどうかわかりませんが、まあ押しなべて、国民のニーズに合致したもの、求めているもの、例えば農薬、健康のためにそういうものは嫌だというんであれば、そういうものを積極的に取り入れることもあるでしょうし、あるいは、これは全国一律にまいりませんので、どこで何をつくるかとこう言われても、北海道は北海道に適した作物というものもあるし、あるいは九州や、沖縄は沖縄に合ったものということですから、何をやればよくなるということは、これはまあ幾ら我々でも、これをやりなさいというわけにはまいりません。地域の自主性、創意工夫、そうしたものがやはり農業でも求められるのであろう、こう思います。  ですからそのための、私はいつも申し上げておるんですが、上から押しつけてこうだというのはもうやめよう、皆さんがこうすればうまくいけるというものを地域でよく相談して、そして案を持ってきたものに我々が支援をしていこうということであって、つくるものまで一々、一体農林水産省としてやるかどうかというのは、やはり問題があると思うのですね。ですから、そういうことで、何をつくるかというのは、花がいいというところもあるでしょうし、あるいはさっき言ったように、手がかかるけれども無農薬のいい米をつくるとか、そういう努力は、やはり農家自身にやっていただくということだと思います。
  48. 野坂浩賢

    ○野坂委員 よくわかりました。農林省の農業政策というのは限界に来た、みんなで考えてほしい、それを受けてやります、こういうことですよね、委員長、農林大臣が言っておることは。  だから、私はあなたに一つ聞きます。  高収益で高付加価値のものの作物をつくる、目標所得を決める、現実の所得はここだ。この差額、例えば乳価なんかは不足払いをやっていますね、よく田名部さん御存じの不足払い制度。これを農水省は得々として、新農政はここにありと言わんばかりに、この差額は銭を貸してあげます、一反、十アール当たり五十万円を限度として貸してあげます。無利子かと思ったら、低利息で貸してあげます。百姓が損をしてバンザイをしておるところに、銭は貸してやる、そのかわり利子は取るぞ、これが新農政の真髄ですか、いいところですか。そうじゃなしに、そのぐらいなものは補助金が出せなければ無利子でやる、このぐらいな情けがあっていいではないですか、損をしておるのですから。それを損をした上にまた利子まで取るというのは、余り農政とはいえないのではないですか。いかがですか。大蔵省が悪いのですか、それは。
  49. 入澤肇

    ○入澤政府委員 中山間地域の農業につきましては、本当に先生の御指摘のとおりでございまして、地形等立地条件に恵まれませんし、平たんな農地が少ない。そういうことから、一般的に規模拡大もできないわけであります。したがいまして、平場に比べて条件が不利だ。ここの農業の活性化というのは、我が国農業振興のためには必要不可欠だということですね。それは中山間地域が農業就業者、農家戸数、農業生産、全部それぞれ四割の地位を占めている。ですから、我が国全体の農業振興しようとすれば、中山間地域の農業振興は不可欠であるし、また、中山間地域を活性化しようとすれば、その基盤的な産業である農業を活性化することはもう必要不可欠、こういう状況から、こういう前提から、何とかして中山間地域農業対策、新しい政策展開できないかと思って、今工夫しているわけであります。  今大臣が地域の実情に応じて申しましたけれども、例えばその中山間地域、条件不利といっても、ある意味では有利な条件もあるわけでございます。そういう例を全国各地、調べてみますと、例えば気象、立地条件等を利用して新しい作物を導入するということで、夏季冷涼な気候を利用した夏秋野菜、ナスなど、こういう栽培をして所得を上げている。あるいは標高差を生かしてミニトマトをつくる、あるいは昼夜の温度差を活用して、高品質あるいは高価格のインゲンマメをつくるとか、あるいは清流を利用してクレソンを栽培するとか、冷涼な気象条件を生かして新テッポウユリをつくるとか、その他特産ウドだとか自生フキだとかワサビの加工だとか、いろいろなことをやって所得を上げている例がございます。  この中山間地域の農業経営をどうやっていくかということは、これからの政策課題でございますけれども、私ども職員を派遣しまして、全体的に見てみますと、土地利用がかなり粗放化している。そこで、最適土地利用計画、その土地利用計画に基づく最適経営改善計画ということをねらった運動が展開できないかということで、いろいろな事例を今調べて、また実現可能性のある目標をつくろうとしています。  例えば、先生の御出身の中国地方の例でございますが、農業労働力、夫婦二人で百五十アールの水稲と大豆、水稲百二十アール、大豆三十アール、百五十アールで百六万の農業所得。この農家は、集落の水稲オペレーターとして別に二百万程度所得がございますが、こういう農家が、中山間地域で我々が経営改善をやってどの程度まで所得を上げられるかということで、農業試験場とか県庁とかなんかといろいろな検討を加えまして、例えば、この農家では水稲を百二十アールを八十アールにする、それから大豆は三十アールそのままで、そのほか花を四十アール導入する、そして、所得として七百五万だとか、こういうふうに具体的な所得目標を掲げられるように指導してまいりたい。  そこで、今回、新しくそういう目標に対して、新しい作物を導入したりあるいは技術が伴わなかったりして収入が上がらなかったという場合に、その差額を低利で安定資金、生活の資金を安定的に融資をするという制度を工夫したわけでございます。これはECのデカップリング、これを直ちに導入しろという御意見もございますけれども、なかなかそれは難しい。なぜ難しいかといいますと、先ほどから大臣やら官房長が答えておりますけれども、中山間地域、農業基盤が十分整備されていない。それから直接所得補償になりますと、社会福祉なのかというので、やはりこれは国民的なコンセンサスを得る手続が必要だ。問題は自助努力を前提といたしまして、経営基盤をきちんと整備して、経営改善計画をつくって、そして農業をやっていくんだ、この地域は農業をやっていくんだ、その農業が安定的、断続的に発展していくんだということをまず示した上で、その農業に対しては低利資金を供給しようということなんです。  低利資金、私ども率直に申し上げて、低ければ低いほどいいと思います。しかし、自作農維持資金の災害資金だとかなんか、四分三厘という金利がございます。この金利体系というのは全体としてバランスがとれていますから、その金利体系を壊すわけにいかない。そこで四分三厘という資金にしたのですけれども生産調整の奨励金とかなんかを加えますと、これは四分三厘がさらに実質的には低利になるというふうなこともありますので、いろいろな努力をして可能な限り低利に持っていって、農家負担が軽減されるように努力をしてまいりたいということでございまして、この安定資金制度が定着をしますと、私は中山間地域の農業一つ曙光が見えてくるんじゃないかなというふうに考えております。
  50. 野坂浩賢

    ○野坂委員 なかなか入澤さんは剛腕だということを聞いておりましたけれども、制度は結構だと私は思います。ただ、田名部さんは無利子がいいと思っておる、あなたは。ところが、邪魔になったのは災害ですよね。災害が三分三厘で取っておるのです。だからこれが乗り越えられない。私は災害が起きたら、これも無利子で結構だと思うのですよ、本当に、生活ができぬのですから。そのぐらいのことを面倒見るのは、国の愛情ある政治というのはそんなものですよ。だから、それは無利子にする。だからこれも無利子にして、農業というものを拡大強化する、そういうことを私は要望したいと思うのです。田名部さんも入澤さんもそういうふうに考えたんだろうと思うのですよ、最初は。そう思いませんか。私の言っておることは無理がありますか、いかがです。
  51. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農家の負担はなるたけ軽減したいというふうに私は考えておりますし、規模拡大する土地改良の負担等も、もう本当に私の願いとしては、こんなものただでいいじゃないかというぐらいの気持ちはあるのです。しかし、他とのバランスもある、こういうことを考えると、そうもいかぬが、しかし、なるたけ軽減してあげる。あるいは、私は基本的に農家が土地を買ってやるということはそれだけ負担になりますから、借りたりいろいろなことを考えで、もうかった中から少しずつ払っていける方法とか、いろいろなことを考えながらやっていく必要があるとは思います。  ただ、今すぐ全部そういうことは、ただで全部やれるかということになると、なかなか難しい面もありますが、目指すところはやはり農家に極度の負担をかけないという気持ちというものは常に持ちながら、どうすればそうなるかということはこれからもずっと検討していく課題であろう、こう考えております。
  52. 野坂浩賢

    ○野坂委員 大蔵省おりますか。農水省は、心の中では、現在の疲弊した農業の現状、生活ができないという実情、したがって生活が困窮して農業が荒廃するということで、利息は取らぬでもいいじゃないかというのが真意だと言っておるんだ、大臣は。邪魔しておるのは大蔵省なんだ。ことしの予算折衝のときでも、あなたのところが交渉に来て、それでもね、災害があるんでね、こういって利息を取ることにしたんじゃないですか。我々議員は、自民党も含めて利子は取らぬ方がいい、こう言っておるんだ、みんな。そういうことで大蔵省としても考えてほしいと思いますが、どうです。
  53. 寺澤辰麿

    ○寺澤説明員 お答えいたします。  平成五年度の予算編成の過程で、農林省からは、昨年六月に策定いたしましたいわゆる新政策を実現すべく、いろいろな要求、制度の創設等の要望があったことは事実でありまして、私ども、農林省の皆さん農業に向けた大変力強いといいますか、ほとばしるような情熱を感じたわけでございます。  ただその際、農林省の要求の中に、確かに有利な条件であればあるほどいいということはそういう要望の中にありますけれども、財政当局として非常に税収動向が悪い、限られた財源の中でいかに有効に財源を配分するか、新政策に盛られた、規模が大きくて効率的な経営体を育成するというふうな政策に向かってどういうふうな手段を組み合わせたらいいか、他の金利体系、補助との関係等々いろいろ検討いたしまして、先ほど農水省から説明がございましたような中山間における状況政策の誘導の仕方等を踏まえて、無利子ではなくて、他の近代化資金等とのバランスがとれた金利体系というふうに決めさせていただいたということでございます。
  54. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私たちの切なる要望というものを、林大蔵大臣やこの間まで予算委員会の理事をしておった何とかというの、次官等によく言っておいてください。本当に、木を見て山を見ぬというのが大蔵省のこのごろのやり方ですから、十分に配慮してほしい。  そこで農水大臣、あなたにまた聞くが、できるだけ農家負担は軽減をしたい、こういうことですね。十ヘクタールから二十ヘクタールの農家五万戸、五ヘクタールから十ヘクタールの複合経営農家を十万戸、法人を二万、こういうもので大体食糧は七五%供給できる。いよいよまた構造改善事業が始まる。入澤さんどこだ、こっち見ておって。  そこで、言うなれば、このものを農協が初めて「新農政に対する見解」というものを出しました。これからの基盤整備事業、構造改善事業は、農水大臣も先ほど言ったように、土地利用農業というものは不十分だ、思わしくいってない、こう言われましたね。だから基盤整備事業は全額国庫負担、公的負担でやってもらわなければ、農家の現状は耐えられないという論文が発表してあります。この期待にこたえてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  55. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私は、企業的な感覚ということを申し上げておりまして、やはり事業経営というのはあらゆる面を計算をして、この場合の新農政プランもそういうこともいろいろ考えながら、一体どの程度の費用というものがかかりながら、一体どれだけの収益が上がっていくか。そうすると、その中で十分返していける、あるいはそれが不可能ということになれば一時土地を借りて、そうして、さっき申し上げたような何年かかけて、一遍に土地を買うということは農家の負担になりますので。  ですから、そういうことを十分それぞれが、自分のところは一体どれだけのものがなるかというのは全部違いますから、そこできちっと計算をして、地域の実情に応じてそういうことはやるというのが企業的な感覚ということを私は申し上げておるので、何でもただでもらってやらなければやれないというのでは、はながら事業的な感覚ではないわけでありまして、そういうことをできる、そういう計画のもとにやっていく、こういうことでありますから。しかし、自然相手ですから、凶作もあればいろいろなことがあるでしょう。そのときはまた別途対応していくので、通常の収穫で大体どのくらい上がるかという計算、経費は幾らかかって利益はこのくあい、そうすると給与としてこれだけは使えるという、その程度の目安というものをきちっとやりながらやってほしい、こういうことで考えておるわけであります。
  56. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私は、あなたの話を聞いて、明るい展望に立つ農業というよりも、暗い展望に立つ農業というものを感じます。言うなれば、今土地改良その他をやって、前は畜産をやった人がみんな赤字できゅうきゅう言った。今は野菜をつくる人も、いわゆる土地利用農業もみんな赤字なんですよ。みんな大変なんです。今返すのは容易ではありません。だから、三反歩を一区画にしたのです。今度は余計に大きくするということになれば、とてもとても農家は負担できない。私はそう思うのです。  もう時間が来ましたから、ダンケルの話はできぬですけれども、ではもう一つ聞いておきます。  これから十年で今言ったようなことをちゃんとつくります、二十ヘクタールとか十ヘクタールとか、そういう経営体をつくる、それが効率的で安定的な経営体だというのですよ。それが本当にできますか。過去十年間で七十一万しかできなかった。それもやいやいやいやい言って。今度は十年間で百七十五万ヘクタールです。できますか。あなたのものを読んでみると、受け皿にするものについてはこうやるこうやるということは大体書いてある。出すものは何も書いてない。出しっ放しだ。いわゆる横面を張っておるだけなんだ。どうして出させるかということが一つも書いてない。とてもこれは出しません。だから私は、暗いと言うのです。出させる方法というものを、報奨金とか奨励金とか就職を世話するとか、何も書かないで、出せ出せ。声だけですよ。そして、あなたの話を聞いたら、絶望して、みんなおれたちの祖先伝来の土地を放さぬ、こういうことに新農政方向は結果的になるだろうと私は思いますよ。自民党のあなたの同僚はみんなうんうん言っておられるじゃないですか、先輩ですよ。そういう状況というものを一体どう見るかということが一つ。  もう一点は、ことしは、農業に従事した新規学卒者は千七百人だ、Uターンした三十五歳以下の人は二千三百人。毎年下がっておるのです。最近一遍も上がってこない。四千人ですよ、千七百人と二千三百人合わせて。これが十年続いたらどうなりますか。四万人しかおりませんよ。あなたの言うこれ、みんな得々として配っておるけれども、「新政策のポイント」、三百八十三万戸が二百五十万戸から三百万戸になりますと書いてありますね。そういうのはインチキなんです。まず、四千人で四万人だったら、四十年間就農して一人当たりの平均は三十一ヘクタール、これをつくらなければもたぬですよ。そういう計算になる。だから、土地を出す者を大事にしてやらなければ、農地の蓄積なんてできません。本当に日本農業を、今三百十万人おるのです。三百十万人の農家が四万人になったら一体どうなりますか、日本の国土は。そのためには我々は尽くせるだけのものを尽くしていかなければいけない。  それと最後に、大蔵省がせっかくおいでになっているから言っておきますけれども、あなた方は、今農水大臣はできるだけ農家の負担を軽減したい、できるだけ負担を少なくしたい、補助金を上げたい。今度は一括法案で全部下げる法案を出しているのですよ。自民党の皆さん、そうでしょう。こんなことがありますか。これで新政策というものは高揚するわけはない。五〇%のものはみんな削っていく、七〇%なんてもってのほかだと下げる。全部一括法案で下げておる。これが自民党農政あり方、自民党政治のあり方、こういうふうに我々は受け取らざるを得ない。考えてもらわなければならぬ。日本農業を殺すのですか。  農水大臣はせっかく留任をされて、あなたは信用があってなられた。なる者がないからなったんじゃない。請われてなられた。だから、多くの農家皆さんの期待を担って、期待にこたえて新政策というものはやってもらわなければならぬ。その点についてはあなたはどう考えておるのか。私は、本当に明るい農業という展望に立てるかということを不安に感じ、そして非常に心痛をしております。だから、我々が出しておる地域農業振興法、中山間地帯の特別措置法は金額まで入れてこれから提案します。社会党案でこの議場で議論してもらえば、日本農政の将来は輝けるものとなるだろうということを私はこの際申し上げておきた  そういう点について、農水大臣の見解をこの際聞いて終わりたいと思う。
  57. 田名部匡省

    田名部国務大臣 だれもなり手がないからなったということはマスコミを通じて私も承知いたしておりますが、現状のままで日本農業はいいだろうか。私も青森県で農業県ですから、私のおやじの方もおふくろの方もみんな農家でありまして、何とかしてやらなければならぬということをいつも考えるのですね。そうしたときに、今のままでいいと思っている人はだれもおらぬわけです。ですから、今よりよくするには一体どうするか。他産業にどんどん従事する者はおる。これは所得もいいし休みもある。そういうことから、後継ぎも担い手も育たぬという状況でして、一方では、やはり農家といえども子供が生まれてないのです。ですから、いよいよ後継者が不足をしておる、これを何とかしたい、こう思っていろいろとない知恵を私なりに出したのもあります。  いずれにしても、そういうことから考えていきますと、それはいろいろもっといいというのはあると思います。しかし、考えられる範囲内で最良のものということでやっているわけでして、確かにおっしゃるとおり、もう耕作面積の少ない人たちは、一方ではそれで生活できないものですから、どこかに働きに行っているわけです。それをなくして、全部農業生活ができるようにしようというのではない。それはそれとして大事にしていく。ただ、農村社会を崩壊させたくない。それには、今住んでいるところからそういうところに行くためには、道路の整備でありますとかいろいろな施設もつくっていかなきゃならぬ。あるいは三、四軒、私のところでも谷間にぼつぼつと住んでいる人たちもおる。それでは教育も福祉も進まない。そういう人たちを一カ所に集めて集落をつくって整備もしてやらなければいかぬ。  そういうことを考えながら、一体一番だめなところはどこかというと、やはり土地利用型の農業が一番苦しい。ここに担い手が育っていかない。いいところは、耕作面積が少なくても収入はたくさんある人たちはもうそれで喜んでやっているわけですから、そういうところと、あるいは働きに行く場所があってそれで生活をしていくところとを分けて、やはり手の届かないところ、そこは今全力を挙げて担い手も意欲を持ってやれる、収入もある、労働時間も短縮できる、それには機械も相当、今度お願いする法律の中にもありますけれども、労働も余りきついものではないようにしてやろう。いろいろ考えておるわけでありまして、どうぞ、何がベターかというのは人それぞれの考え方があると思うのですが、私どもいろいろな検討をした中、あるいは優良事例を見て考えた中で、これが今考えられる最良のものだというふうに考えて進めておるわけでありますから、ぜひ御理解をいただきたい、こう思います。
  58. 野坂浩賢

    ○野坂委員 石橋さんがちょっと中に、こっちへ来ておるものですからもう一遍申し上げます。  最良のものだとおっしゃっておりますけれども、最低のものなんです。これは。そうでしょう。本当にもっと真剣に時間をかけて十分議論させてもらいたい。残念ながら時間が参りましたから多くを申し上げません。  それから入澤さん、あなたに申し上げておく。僕は四年前に農業者年金の問題でここで質問したことがあります。厳しくやった。そのときに、女性の地位の向上と、働く農業の現状は女性が中心だということは農水省も認めたんだ。あなたが死んだら奥さんはちゃんと遺族年金をもらうのです、七五%。主体的な役割をする女性は農業者年金を遺族年金でもらえない。こんなばかなことありますか、そう言って追及したら自民党の皆さんも、それは附帯決議でこの次の再計算のときには遺族年金出せるようにしよう、女性参入も考えよう、こういうことになりました。  来年、いよいよ再計算の時期が来ましたね。そのときに女性の地位の利用だとか女性の働き手を大事にしようと幾ら農水大臣が表明したって何にもない。言うだけ。カエルのほおかぶりみたいなものだ。うどん屋のかまと一緒だ、言うばかりで。だから、言うなれば女性の地位の向上のためにぜひ御検討いただきまして、提案をしてもらいたい。そういうことを要望しておきますが、あなたの決意を聞いておきたい。  それから二番目。もう一つ農水大臣、先ほどあったけれども、米のいわゆる例外なき関税化による輸入自由化。これは何遍も議論したことですから、ECアメリカがいろいろなことがある。あるけれども、あなたは十分に多国間の中で理解してもらって必ず守り通す、こういうふうにおっしゃった。それについてもう一度この農水委員会の中で明確な態度を示してもらいたい。  外務省、おいでですか。あなたのところは、僕が予算の総括質問をやるといつも田名部農水大臣はいいこと言うのです。ところが渡辺美智雄外務大臣は、奥の手は見せぬとか、いや外交だからなかなか難しいんだとか、いろいろなことがある。今度塩飽さんが定年が延長になりましたね。後ろから鉄砲を撃つのです、みんな、財界の皆さん、自民党の偉い人。交渉しておっても交渉にならぬ。向こうの人が新聞持って、日本の世論はこういうことですよ、あなたの言っていることと違うじゃないか。こういうことであれば、とても我々の闘いというものは前向きになってこない。だから国論は一本化をして、どのような事態があろうとも、国会では三度も決議をしたこの事態を踏まえて、外務省と農水省は違いがない、一本であるというようなことをこの際確認しておきたいので、農水大臣の決意表明の後、外務省の見解もあわせて述べてもらいたい、それで私の質問を終わりますから。
  59. 田名部匡省

    田名部国務大臣 ウルグアイ・ラウンドは今交渉しておるわけでありまして、交渉中でありますので一切お任せをして交渉に当たらせてもらいたい、こう考えておるわけであります。ただ、中には国内でもいろいろな考え方の人がおって、いろいろ言うもんですから、何となく印象が悪い。日本は全部そういう考えではないという印象を与えることは、私はまことに残念だと思う。  たびたび試合に例えて申し上げますが、試合中でありますから、もう頑張れという応援で結構なんです。それ以外のことを余り言うもんですから、選手もこれは一生懸命にやる意欲がなくなってくると思う。ということがあるので、全力を挙げて頑張りますので、どうぞ先生方も国内の世論を統一のためにぜひお力添えをいただきたい、こう考えております。
  60. 北島信一

    ○北島説明員 ジュネーブウルグアイ・ラウンド、特に農業交渉は非常に難しい状況にございますけれども政府方針は非常にはっきりしております。これまでも基本方針を踏まえて外務省としても最大限の努力を払ってきているわけで、農水省それから外務省、二人三脚で一生懸命交渉しているわけでございます。意見の不一致とか、そういったことは決してないというふうに考えております。  今後とも一生懸命交渉してまいりたいと考えていますので、御支援と御理解をちょうだいしたいと思います。
  61. 入澤肇

    ○入澤政府委員 先ほども石橋先生の御質問にお答えしましたけれども、今回の財政再計算を行う機会に、農業者年金基金が政策年金であるという性格、それから現在行っております全国農業みどり国民年金基金の性格、こういうことも踏まえまして、女性の加入問題につきましても各方面の意見を幅広く聞きながら検討してまいりたいと思います。
  62. 野坂浩賢

    ○野坂委員 以上で終わります。
  63. 平沼赳夫

    平沼委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十九分開議
  64. 平沼赳夫

    平沼委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。志賀一夫君。
  65. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 私はまず、農業問題、中でも農政の柱とも言うべき食糧自給率の問題について、一番目にお伺いをしたいというふうに思います。  国は、平成二年閣議決定した西暦二〇〇〇年を目標年次といたします「農産物の需要と生産の長期見通し」の中で、低下傾向に歯どめをかけ、供給熱量で五〇%の達成という目標を立てたのでありますが、食糧自給率は低下の一方で、ついに昨年、平成三年度におきまして、三〇%を穀物自給率で割りまして二九%というような事態になっておるわけであります。さらにまた、カロリーベースで見ましても年々自給率が低下をいたしまして、平成三年度で同じように四六%と、前年対比一%低下をいたしましたことは、我が国の将来の重要な食糧確保という視点から考えた場合に極めてゆゆしき問題ではないだろうか、そんなふうに思うわけであります。  また同時に、平成三年の九月に総理府が実施いたしました「食生活農村の役割に関する世論調査」の結果では、外国産の方が安い食糧輸入した方がいいという方はわずかに二割に足りないような状況で、一方で米を初め食糧全般について、多少高くても国内での生産を望む方々が七三・二%ということで、二年前と比べますと二%も支持率が上がった、こういうふうに結果報告をされているような次第であります。  このような世論の動向に積極的にこたえる姿勢政府にあるのかどうか、私は、年々低下していく食糧自給率にどの辺で歯どめをかけるのか、これからの具体的な方策と、そしてまた方針についてもあわせてお伺いをしたい、そんなふうに思います。
  66. 田名部匡省

    田名部国務大臣 我が国食糧自給率は、畜産物消費の増加、どういっても飼料が必要になってまいりますので、そういうことで、食生活の変化に伴って低下傾向にあるということは今お話しのとおりであります。  国土の条件に制約があるものですから、国民に対する食糧の安定供給確保するためには、輸入に相当程度依存せざるを得ないわけであります。しかし、輸入については、世界食糧需給見通しが非常に不透明、人口は相当ふえると予想されるし、開発途上国でこれが増加傾向にあるということからいたしますと、何としても国内の自給を高める必要があるということでございます。  このため、昨年取りまとめました「新しい食料・農業農村政策方向」においては、生産性の一層の向上など、品質でありますとかコスト面での改善を推進することによって、可能な限り国内農業生産を維持拡大して、自給率の低下に歯どめをかけていくことが基本だというふうに考えておるわけであります。  このような観点から、先般農政審の方からちょうだいした報告などを踏まえまして、第一に、土地利用農業における経営感覚にすぐれた効率的、安定的な経営体を育成していこうということでありまして、第二点で、経営体を担う人材をまず育成確保する必要がある、第三点で、生産基盤の整備及び優良農地、これはできるだけ一カ所に、永久にと申し上げたらいいか、将来にわたって農地として確保していこうということを考えておるわけであります。その上で、バイオテクノロジーを中心とする先端技術の開発普及、この辺に力を入れていきませんと、目標の五〇%というのはなかなか難しい、こう考えております。  そのほかに、何といっても今農業が衰退すると同時に、農村地域の定住の条件を整備しておきませんと、だんだん過疎が進んでおりますし、そういうところに、所得でありますとか労働時間でありますとか住む条件を整備して、若い人たちが残れるような、そういうものをやっていこう。総合的に進めていきませんとなかなか、どれをやればそこに定住するということでもないようでありますから、総合的に検討しながら進めてまいりたい、こう考えております。
  67. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 閣議決定をしました西暦二〇〇〇年の「農産物の需要と生産の長期見通し」、その中では平成十二年度の穀物自給率を三一%と試算して、昭和六十二年度の穀物自給率三〇%を最低限として自給率向上を目指す、こういう基本的な考えをこの中でうたっているわけでありますから、当然にして、この目標に対してどのような手段と方法を用いていくのか、こういう具体的な施策をやはり農水省としては鮮明にすべきではないのか、そんなふうに思いますが、いかがでしょうか。
  68. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 例の長期見通しの数字を実現いたしますために、先般公表いたしました新農政考え方というのもあるわけでございまして、土地利用農業におきますいろいろな問題点を克服するために、経営感覚にすぐれた効率的な安定的な経営体を育成してまいる、あるいは生産基盤の整備や優良農地確保をしてまいる、それから技術的な開発も行ってまいるというような諸般にわたります政策を積み上げまして、所要の農地面積も五百万ヘクタールぐらいを維持しながら、長期見通しに盛られているような水準での食糧の自給というものを考えてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  69. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 自給率向上を図っていくというためには、今大臣が、いろいろなところから総合的な対策を立てる必要がある、こういうふうに言われたわけでありまして、その点については私も同感だと思うわけであります。  しかし、米以外のあらゆる作物を逐次見てまいりますと、牛乳にいたしましても、あるいは肉類にしましても、大豆、野菜等にいたしましても、それぞれの作物が年々低下をしている。それが総合的に全体の自給率を低下をさせるという事態になっているわけでありますから、私は、やはり作物ごとに自給率向上のための年次計画を立てて、生産の確保あるいは価格対策等含めまして総合的に生産計画を立てるというところまで考えていかなければ、この「需要と生産の長期見通し」の目指すところは実現できないのではなかろうか、そんなふうに思うわけでありますが、その辺具体的な計画があるのかどうか、ひとつお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  70. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 長期見通しの数字をいかに達成をしていくかということになるわけでございますが、現実に今農業生産に携わっておられるのは個々の農業者の方々なわけでございまして、これらの方々が十分にお考えをいただきまして、あるいは創意工夫をされまして、自分の経営の持っていき方をお考えになられる、その上でそれに我々としては必要な援助をすべきところはしてまいるということでこの計画を達成しなければならない。その考え方一つとして、私、先ほど申し上げましたように、安定的な経営体をつくる、効率的な経営体をつくる、そのために必要な農地の集積ができるような手当てを今後してまいるとか、あるいは基盤整備を十カ年計画に従って効力をしてまいるというような裏打ちをしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  71. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 世界の先進諸国と言われる国々では、日本とある特定の国を除いては、いずれの国々も非常に食糧自給率は高い数値を示しているわけでありますが、日本を含めて二九%という低率の自給率の国は、先進諸国ではどういう国々があるのか。世界最大の農産物輸入国である我が国は、残念ながら農産物という視点からいえば後進国の部類に属するのではないかというふうに思うわけでありますが、見解と対応をお聞かせいただきたい、そんなふうに思います。
  72. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 我が国の穀物自給率二九%というこの数字でございますけれども先進国というのをどういう基準でとるのかという問題はあるわけでございますが、いわゆるサミットの参加国の中で言いますれば一番低い数字である。あるいはOECDの諸国というふうに若干枠を広げて考えますと、我が国よりほんのわずかでございますけれども、オランダの方が低いというようなことで、低い方から二番目というような水準にあるということでございます。
  73. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 食糧安全保障という視点から考えて、今の年々低下する自給率を考えた場合に、果たして日本の将来に不安はないのか、こういう疑問を抱かざるを得ないというふうに思うわけであります。  御承知のように、昨年度は端境期における米の操作も、好天が幸いいたしまして作柄も平年並みということで何とか乗り越えることができましたけれども、極めて冷汗物であったことは御承知のとおりだったと思います。  アメリカでは冷戦終結後の今でも輸出管理法を持ち、自国の経済及び農業の安定に利用していることは御承知のとおりでありますし、また、EC諸国は共通農業政策をつくりまして、お互い農業市場シェアの確保に努力していることは私たち承知をいたしているところであります。我が国が今日、将来への施策に手放しの状況でよいのかどうかという疑問を抱かざるを得ないというふうに私は思うわけでありますが、その辺についての政府の考えをお聞きしたいというふうに思います。
  74. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるように、諸外国に比べて自給率が非常に低い、これは問題あるとは思いますが、一億二千万の胃袋を賄うだけの農地がまた一方ではない。しかも、ECのように農村社会と都市とがきちっと区別されていない。混住社会の中で、工場もあり住宅もあり農地もありというようなハンディキャップが実はあるわけです。そこへ持ってきて経済が非常に高度成長を続けてきた、所得向上するということで、従来以上に国民皆さん方がいろいろなものを求めるようになったということで、四兆五百億というもう世界最大の農産物輸入国になったわけであります。  私どもも、一たん緩急あるといいますか、そういうのを考えると、国内で何でもかんでも賄いたいという気持ちはあるわけですけれども、それは不可能である。一方では、農業もそれぞれ農家が自由に耕作をしておるものですから、計画的に、ここでは水田をやりなさい、ここではこういうものをやりなさいと言うこともできない。しかし、その中で基礎的な食糧であります米、これは一〇〇%自給を達成している。必要なものはできるだけ国内で賄う努力をしていく必要はあります。  従来は余り肉食でなかった日本がここのところ肉に対する国民の嗜好がうんと高まって、それで畜産が盛んになってきた。この畜産振興しようとするとどうしてもえさが必要になってまいります。それをまた賄うだけの土地もありませんし、勢い輸入に依存する、これが穀物の自給率の低下に。率が、非常にウエートが大きいものですから、ベースで見れば三〇%ということで、おっしゃるとおり、なかなか国内で全部賄えないという実態、さりとて食糧安保ということを考えますと、最低限のものはやはり常に確保しておくという努力が必要であろう、こう考えております。
  75. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 大臣の言われることもごもっともでありますけれども、しかし、大臣とのいろいろこういった議論の際に、よく大臣農地が少ないというふうに言われるわけでありますが、静かに考えてみますると、農地利用度合いというのが十五年、二十年前と比べますと大変低下しているということが一つの原因だというふうに言うことができますし、同時にまた、後でお聞きするわけでありますが、いろいろな農地開発事業が行われている。しかし、行われてきたそういう農地開発事業が、農家の意欲もさることながら、国あるいは県、市町村、そういったものの一体的な指導性がないために農地がどんどん荒れでいっている。せっかく公共投資をした、こういう大規模開発の農用地が全くもったいないなと思うようなところがやはり全国的にもかなりな面積になるのではないか、そういう一つの事例を考えますと、私はやはりそういった面でもっと自給力向上をさせるための、具体的な手だてというものはあるんじゃないか。農地が確かに一億二千万の人口を養っていくだけのものはないけれども、しかし、かなりな程度まで引き上げる可能性はある、その可能性について、やはり積極的にやっていく農政が今ないのではないか、そういうふうに指摘をせざるを得ないというふうに私は思うわけであります。  今御承知のように、農業離れ、後継者不足、それから今申し上げましたけれども、年々荒れ地が三万ヘクタールから四万ヘクタールというふうに増加しているのが現状でありますし、また、例えば養蚕が極めて不況になっておりまして、そのためにも、私の福島県内なんかでは桑畑が伸びほうだいに放置されている状況が各所に見られます。  そういうことを考えますと、供給熱量五〇%を達成するための一つ目標を国は立てておるわけでありますから、これに向けてどういう手だてをすべきなのかということを、もっとやはり英知を絞って努力をすべきではないのか、そういうことを強く、強く申し上げたいというふうに思いますし、また、その所見も承りたいと思います。
  76. 田名部匡省

    田名部国務大臣 おっしゃるとおり、私のところでも大変な後継者不足であります。お年寄りの人たち農業をやっておるわけでありますけれども、次の時代、一体どうなるかというと跡を継ぐ者がいないというところが現に出ておりますし、やっておってももう趣味程度にやっているとか、いろいろあります。  加えて、この土地の高騰が農村にも及んで、そして非常に土地が高いものですから、農業をやるよりも何か中古自動車に貸した方がいいとか、いろいろなことが出てまいりまして、それにもってきて、発展していくと、そこに農家でない人たちが住むようになってくるという混住社会といいますか、そういうものが出てきておって、どうもこのままにしておっては、一方ではそういう開発をしても、現にある農地が放棄地が多いということから、何とか新しい農業政策の中でそういうものを集約して、あるいは連担化を図ったり、いろいろなことをしながら、そこには所得が少ないものですから、せっかくおる若い人もどこかに勤めた方がいいわけでありますから、そういうものはやはり所得は他産業並みに。  あるいは、この前北海道に行ってまいりましたが、北海道では、二十三人ぐらい町の方から農家に就職してもらって、それで給料を払って働いてもらっているという農家がありました。現実的に所得が同じであれば、環境のいい自然の中で働いた方がいいという人もおるだろうと思うのです。そのためにも、やはり一定の収入というものは上がる体制、そういうものがなければ、人を雇いたいと思っても給料を払えない。現に今農業経営をしておっても、子供に給料を払わないとかあるいは子供の嫁さんにも給料を払わない、払わないのじゃなくて払えない、払える程度やっていないわけですから、そこに農業後継者を何とかしよう、こう思っても、ただで働くのでは、子供たちだってどこか働きに行った方がいいと言う。そういうところに、今度は嫁不足の問題でしばしば指摘されますけれども、そういうところにはまた嫁の来手もないというところをこの新農政によって整備していこう。おっしゃるとおりのことを考えながらこれを整備していきたい、こう考えておるわけであります。
  77. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 今いろいろお話がございましたが、後で関連する法案が出た際に、いろいろ私の意見も申し上げたり、またお聞きをしたいところがありますが、今はそれとの関連で、実はこの前もこの席上でお聞きをいたしたのでありますが、福島県内の問題でありますけれども、国営母畑地区総合農地開発事業、この問題について、昨年の十一月、政府に対して質問主意書を出しておるわけであります。そのことについては、受益者の負担軽減、本来ならば、こういう総合農地開発事業というすばらしい事業計画ができたのに、それがだんだん政策の変更等によってどんどん縮小されて、そして果てはその負担金の軽減の問題ということで議論をせざるを得ないというようなことは、非常に私は農業の将来を考えた場合に寂しいことだとさえ思っているわけであります。  それは別にいたしまして、この母畑地区の事業が非常に大幅におくれてきたのは、一つは、開田抑制という国の政策の変更による原因でありますし、またもう一つの大きな原因というのは、予算確保が十分でなかったために事業がどんどんおくれてきた、そういうことが挙げられるというふうに思うわけであります。これらの原因というのは、やはり国の政策変更によって農家がこの事業に対する熱意を喪失してきた結果、一層そういうことになったと思うのでありますが、その辺についてはやはり国の政策の変更によるところのものが多分に大きいものがあるというふうに私は言わざるを得ないので、この責任についてはやはり明確にしていただきたいものだ、こんなふうに思うわけであります。
  78. 入澤肇

    ○入澤政府委員 一般的に申し上げますと、国営土地改良事業、これは非常に広範囲な地域に及ぶ大規模な工事でありますので、その施行地域に係りまして、その後の、事業着工後の物価変動とかあるいは地元の要請等を踏まえた整備水準の変更、あるいは着工後におきまして、これは土地改良一般なんですけれども、地形とか地質等の自然的条件の変動が生ずることがありまして、それによる事業費の変動等がありまして、やむを得ず計画変更ということが一般的に行われているところでございます。  今先生御指摘のとおり、いろいろな政策上の要請等がありまして計画変更を余儀なくされるということは、ある意味ではまことに残念でございますけれども、大規模に、広範囲にやっているという土地改良事業の性格上、ある程度までやむを得ないというふうに考えているところでございます。しかし、農家に対して不測の損害あるいは負担の増高を来さないように、可能な限り努力はしてまいっているということでございます。
  79. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 昨年の十一月末だと思いますが、ここの関係者の皆さんから、数百名の署名によります陳情書をいただいたわけであります。その中で、こんなふうに書かれているわけであります。   償還額については、当初から今日まで十アール当り年に米一俵相当額、三年据置き、十五年償還と説明を受けてきました。ところが、平成元年の秋頃、突然、償還額は十アール当り年に四万七肝円で十七年間の償還額になる予定であると聞き及んだ時は全く信じられない思いでありました。 と述べてあります。  さらにまた、  平成三年十一月に開かれた土地改良区の総代会において、始めて償還額は、十アール当り二万二軒円で三十五年間の償還となる旨の説明を受けたのであります。   着工以来二十数年を経過した今日まで、事業費や償還額が当初計画よりもこのように大幅に増額するなどということを、何も知らされておりませんでしたので、大変なショックと不安を覚えました。ただ今現在に至るも、償還額算定の資料等は受益者に対して一切明らかにされてはおりません。 こんなふうに述べているわけでありますが、その経過等についてお聞きをしたいと思います。
  80. 入澤肇

    ○入澤政府委員 まず、この地区の土地改良事業の計画変更に基づく事業費についてでございますが、地区全体の受益面積とか工事計画につきまして十分な調査を行う、その結果を踏まえまして、受益農家等の要請も踏まえまして、毎年度この地区でも総代会を開催しております。その毎年度の総代会におきまして事業の実施計画を説明し、また、実際の工事に当たりましては、地域ごとにその都度受益者の意向の確認を行いながら実施してきたわけでございます。  この母畑地区の事業計画の変更案では、今先生御指摘のとおり、農家の従来の計算方式による年償還額というのは、十アール当たり平均約五万三千円となります。しかし、土地改良事業で計画償還制度とか、あるいは平準化事業の負担金の軽減対策だとか、それから基幹的施設に対して市町村が助成を行う、そういうふうないろいろな助成措置、軽減措置を適用しますと、御指摘のとおり償還期間は三十五年というふうになります。しかし、こういうふうな軽減措置を図る結果、農家の総償還額は当初の百六十六億円が百四十三億円というふうに軽減されます。  現在、土地改良区におきましても、この制度の適用につきまして要請がありますので、十分に関係機関と協議を行いながら、受益農家に十分説明をして理解を求めていきたいというふうに考えております。
  81. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 現実にはそういうふうに陳情書では言っていますので、受益者にとっては理解しがたい、こういうことが、勢い今回の計画変更についてはなかなか同意書を出しがたいという雰囲気をつくっているようであります。  次に、私はもう一度お聞きをしたいと思うのでありますが、土地改良法によりまして、御承知のように受益面積が五%以上の増減がある場合、あるいはまた事業費が労賃や物価等の自然増の部分を除いて一〇%以上に及んだときには事業計画の変更を行わなければならない、こういうふうに聞いておるわけでありますが、五十一年の第一回の変更後今日まで十七、八年になりますが、この間一度も計画変更してこなかったという理由はいかなる理由なのでしょうか。事業費にいたしましても、四十七、八年当時では十アール当たり約四十万であったものが、今日、平成二年度でいいますと十アール当たりの事業費が二百六十万、そんなふうに何倍もはね上がっている。この間の計画変更を、土地改良法で規定をされながらしてこなかったというのはいかなる理由に基づくものなのか、お知らせをいただきたい。
  82. 入澤肇

    ○入澤政府委員 御承知のとおり、この事業は、農用地造成それから農業用の用排水施設の整備、それから区画整理、こういう各事業を一体的に実施する国営の総合農地開発事業として昭和四十二年度に着工したわけでございます。  着工後はかなり着実に事業の推進に努めてきたところでございますけれども、その後、減反政策だとかいろいろなことがありまして農業を取り巻く情勢が変化があった、こういうふうなことで、昭和五十一年にこの事業にかかわる土地改良事業計画の変更をまず行ったわけでございます。  現在二度目の計画変更を行うために必要な手続を進めているというところでございます。
  83. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 いや、私がお聞きをしているのは、土地改良法によって今申し上げたような面積の五%、事業費で一〇%、こういう規定があるにもかかわらず、その時点で事業計画の変更をしなければいけないというふうになっているのに、なぜしなかったのか、十七年も八年も間を置いてきた、そこに農家皆さんが不満を持ち、そんなに事業費が上がったのかということで驚き、そしてこれにはなかなか承服しかねる、了解しかねる、こういうのが現状なので、なぜその間十七、八年も事業計画の変更をあえてしなかったのかという点についてお聞きをしているのです。ひとつ明快にお答えいただきたい。
  84. 入澤肇

    ○入澤政府委員 なかなか明快にといってもあれですけれども、国営土地改良事業、今申しましたように、この地域は非常に重層的にいろいろな事業を組み合わせている、それから広範囲にやる大規模な工事でございます。物価変動、地元の要請による整備水準の変更だとか、あるいは着工後、これは公共事業一般なんですけれども、地形とか地質等の調査を追加的にかなり濃密に行います。そういう自然的条件の変動が生じたこともありまして、事業費が増高した。しかし、可能な限り当初計画のとおり遂行したいという気持ちで努力を行ってきたのですけれども、しかし残念ながら当初計画のとおりいかなかったということで、地元の要請を受けまして計画変更を行ったということが事実でございます。
  85. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 どうも私の質問と外れた答弁をしていると思うのですね。やはり私はまともに、なぜしなかったのかという点について絞って正確にお答えをいただきたい。そのことに対する十分な理解がなければ、今度の、長い間十七、八年という間を置いた以降の第二回目の計画変更で、受益者の皆さんから納得がいかない限り同意書を得ることはできませんし、そうでなければまた前に進まないということになるわけですから、その辺はやはりいま少しわかりやすく御説明をいただきたいと思うのです。
  86. 入澤肇

    ○入澤政府委員 この事業につきまして、受益農家などから事業の促進に対する要請がありました。この実態を踏まえまして、その都度、母畑地区の土地改良区の総代会におきまして、毎年度の事業の実施計画を説明して了承を得るという手続を繰り返し繰り返しやってきたわけでございます。実際の工事に当たりましても、受益者の意向の確認をその都度行ってやってきたわけでございますが、その過程において全体の意向を取りまとめるということに時間がかかったということが、計画変更までにかなり時間がかかったということの理由でございます。
  87. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 どうもわかりません。その御説明では、私も帰ってぜひ同意書に判を押してくださいという話も進められません。やはりこれは困ったことだと思うのですね。  前にちょっと進めさせていただきたいと思います。  償還金の返済完了後でなければ、農地の売買も農振法の適用除外もされないかということについてお聞きをしたいと思います。
  88. 入澤肇

    ○入澤政府委員 土地改良事業の受益農地につきましては、一般的に農業振興地域の農用地区域というふうになっているわけでございまして、土地改良事業の実施中だとかあるいは実施完了後八年を経過しない地区内農地につきましては、原則として農用地区域から除外してその指定を行うことはできないというふうにしているわけでございます。  しかし、耕作目的で売買する場合には、償還金の返還が終わっていなくても、農地法三条の規定により許可ができるということになっております。
  89. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 私は、質問主意書でも指摘をし、回答を求めたわけでありますが、それにはなかったわけでありますけれども、緩和措置が講じられて、年償還金が五万四千円から二万一千円に引き下げられても、受益者にとっては農業経営上採算は難しいという不満を表明している。土地改良事業について、その採算要件の一つとして、受益農家の負担が事業によりもたらされる年間所得増加額の四割以内であることを目途としているとされているが、当地区内における十アール当たり年償還金二万一千円は、この要件に照らして妥当な額であるかどうか、具体的な数値を示して説明をしていただきたいというふうに思います。  さらにまた、償還期間を三十五年に延ばすことについても、事業参加表明以来償還終了まで、実に六十年を超える超長期間となり、二世代、三世代後までそのツケを回すことになる。この償還計画が実施されるとすれば、せっかく配分を受けた農地を放棄せざるを得なくなるから、賛成しかねるというふうに言っているのであります。  これが陳情書の中身に書いてあることでありますが、そういうことを考えますと、この三十五年という返済計画というのは、大変農家の面倒を見てくれてありがたいなというふうに思う人もいるかもしれませんけれども、しかしそれはお役人の机上プランなんだ、こう指摘している農家も意外と多いことを考えれば、やはりこれは計画を変更して、いま少し農家の期待する方向に変えるべきではないかというふうに思うわけであります。国営事業が全国各地に数多く実施されておると思いますので、一律的、画一的に負担金の軽減ということは一応いいとしても、しかし地域によって非常に落差もあり、地域の事業の経過等についても考えればいろいろ事情もあるということを思えば、やはりその実態に沿うような軽減措置を弾力的に考えでいいのではないか、そんなふうに思うのですが、いかがでしょう。
  90. 入澤肇

    ○入澤政府委員 まず、土地改良事業の施行の基本的要件といたしまして、技術的可能性であるとかあるいは経済的妥当性ということのほかに、土地改良法施行令第二条第四号におきまして、土地改良事業の受益農家が「当該土地改良事業に要する費用について負担することとなる金額が、これらの者の農業経営状況からみて相当と認められる負担能力の限度をこえることとならないこと。」というように定められております。  このため、受益農家の負担につきましては、受益者負担の年償還額の事業による年間所得増加額に対する比率、これを所得償還率というふうに言っていますけれども、これが四割以内になるようにというふうな行政指導を行っております。  今回の変更後の事業計画におきまして、この地区の事業は、十アール当たり年償還額五万三千円、年間所得増加額との比率である所得償還率はこの四割以内の二七%ということで、一応の基準は満たしているわけでございます。  しかし、今先生御指摘のとおり、農家負担を軽減するという観点から、県、市町村それから土地改良区とも十分協議いたしまして、現在我々が持っている手段、計画償還制度であるとかあるいは平準化事業を活用するということによりまして、この五万三千円を年償還額十アール当たり二万一千円というふうに軽減するようにしていきたいなと思っているわけでございます。  同時に、さらに一層の軽減を図るという観点から、これは一般論じゃありませんけれども、この地区につきましては千五沢ダムがございますから、その有効利用ということも図りながら、受益者負担金の軽減について、関係機関と協議しながらさらに最大限の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  91. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 その辺についてはわかりましたが、この際、千五沢ダムについてお聞きしたいと思います。  このダムは、五十年の四月に完成したわけですね。河川管理者の完成検査を受けなければならないというふうに河川法三十条に基づいてなっているわけでありますが、十七、八年も完成検査を受けないで今日まで放置しておくという事態は、一体いかなる理由なんですか。
  92. 入澤肇

    ○入澤政府委員 御指摘のとおり、この事業で造成しましたダム等の河川工作物の使用開始に当たりましては、河川法第三十条に基づきまして建設大臣の完成検査を受けなければいけないということになっておりまして、このために、その前提として事業計画の変更が完了し、用水計画が確定する必要があるというところで、現在、事業計画の変更手続を進めているのです。  それで、一生懸命受益農家説明してその意向の最終確認を行うための同意の徴集を行っているのですが、なかなかこれが円滑に進んでいない。これが要するに完成検査を受けるまでに至らない最大の理由でございます。しかし、可能な限り、この最終確認を行うための同意の徴集を行いまして、かんがいに必要な用水量を確定した後に、この千五沢ダムの有効利用が図られるように、福島県等を初め関係機関と十分に協議を行っていきたいというふうに考えております。
  93. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 今の第二回目の計画変更と何らかかわりなく、当初の河川管理者の方からの承認を得てこのダムが完成しているわけでありますから、今回の第二回の計画変更とはかかわりなしに完成検査を当然受けなければならない、その上でダムの工作物の利用をしなければならぬというふうにこの河川法に書かれているではありませんか。これをなぜこのとおりに履行しないのかということを私はお聞きをしているわけです。
  94. 入澤肇

    ○入澤政府委員 繰り返しになりまして極めて恐縮でございますけれども、こういうダムの使用の開始に当たりましては、その前提として河川管理者である建設大臣の完成検査を受けるということが必要条件でございまして、その必要条件を満たすためには現在の土地改良事業の計画の変更を完了しなくちゃいけないということでございます。この計画の変更を完了するためには、その前提としてまた用水計画が確定する必要がある。この用水計画確定に今鋭意努力をしているというところで、若干時間がかかっているというところでございます。
  95. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 どうも理解の仕方が違うと思うのですね。五十年の四月に完成した。そうすると、それは当初の計画によって認可を受け、そしてダムの工作物ができたということなんでありますから、やはりそれに基づいて完成検査を受けて、そして水の利用をする、こういうようなのが順序だというふうに思うのです。第二回目の計画変更についてはそれとは直接かかわりがないわけであります。その辺は分離して、私は第二回目の今の計画変更を云々しているのではないのであります。それは許可条件、最初のダムの許可の際にとった条件に基づいて完成検査を受けなければならない。受けなきゃならないのにもかかわらず、なぜやってこなかったのかという点をお聞きしているわけです。ごっちゃにしないでください。
  96. 入澤肇

    ○入澤政府委員 今のダムの湛水試験は受けているのですが、使用の許可を受けるためには、先ほどから申しておりますとおり、河川管理者の完成検査を受けてこれに合格した後でなければ当該工作物を使用してはならないという河川法三十条の規定がございますので、その完成検査を受ける前提としての作業を継続しているわけでございます。
  97. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 後でまた時間がある際に議論したいと思いますが、これはやはりそうではないのですね。ちゃんと完成検査を受けなければならない。しかるに、問題指摘にとどめますが、やはり完成検査が終わって合格したということになって初めて水の利用ができ、それからまた水の管理費を取るという順序でなるわけですね。ところが、水を利用し、管理費も今取っているわけです。私は事実を確認しているわけですから、これはいいあんばいのことを言っているわけではないのですよ。そういうことをあえて法を踏みにじってやっているところに問題があるのではないかというふうに思います。  ただ、それはそういうふうにおくらせてきたというのは、やはり農水省の、おらじのダムだからこのダムをいつまでも守っていたい、こういう考え方が支配的だから、私から言えば届けをやらなかったのではないだろうかという推測が成り立つのですね。やはり地元としては、河川管理者の方がおいでになっているわけですから、もしこのことについて答えることがあったらひとつ回答していただけませんか、建設省。
  98. 藤巻捷春

    ○藤巻説明員 先生今御指摘の完成検査の件からお話しさせていただきたいと思いますけれども、御承知のように、完成検査を受けて合格いたしますと、水利権に基づきます実際の取水が可能になってまいります。ところが、当初許可いたしました水利権の量とそれからその後の事業変更に伴います水利権の量とが異なってまいりますので、その水利権の量を確定した上でないと実際の取水はできないということになります。  したがいまして、先ほど農水省の方からお答えがありましたとおり、計画変更が前提になって、その段階で水利権量が確定した暁に完成検査をする、それに合格してその水利権に基づいて取水ができるということになるわけでございます。
  99. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 またそれ議論すると時間がかかりますから、それは今議論しません。先を歩いているのですね。ずっと前に行き過ぎているのですよ。  それは別にして、福島空港もいよいよ三月二十日にスタートします。福島空港周辺である須賀川市を初め一市四、五カ町村、この地域は非常に水の足りない地域であります。ですから、やはりこの千五沢ダムの水の利用、多目的利用というのは非常に高い関心を持っています。それからまた同時に、今出川という川がありまして、その川に今、今出川ダムをつくろうということで、建設省でも多分に調査費をつけて調査中だと思いますが、この二つのダムを、関連の中で、地域の総合的なダムの利用、総合的なダムとしての位置づけをし、そして水の利用を広域的にしなければならないという地域的な要請があるわけであります。  したがって、これらについてやはり私が最終的に言いたいことは、農水省のダムでおらじのダムだからこれはいつまでも建設省の所管にはやらないよというこの姿勢をやはりこの辺で変更していただいて、建設省と農水省の間で十分協議をして地域要求にこたえていただく、このことがやはり地域の農家負担の軽減にもつながることでありますし、また地域の要望にも沿う結果になると思いますので、そういう点でこれから十分御考慮いただきたいと思いますが、そういういわゆる事業計画の変更ができた以降において、そういった事態に十分対応する考えがあるかどうか、まず建設省の方へお聞きをしたいと思います。
  100. 藤巻捷春

    ○藤巻説明員 千五沢ダムを含みます母畑地区の事業計画につきましては、私ども、現在農水省におきまして事業計画の変更手続が進められていると聞いております。したがいまして、建設省といたしましては、当面農水省の当該事業に対する対応を見守りながら考えてまいりたいというふうに考えております。
  101. 入澤肇

    ○入澤政府委員 ただいまの先生の御提案も踏まえまして、かんがいに必要な用水量が確定した段階におきまして、この千五沢ダムの水が有効に利用されるように、関係省庁と十分に協議をしてまいりたいと思います。
  102. 志賀一夫

    ○志賀(一)委員 わかりました。ありがとうございました。
  103. 平沼赳夫

    平沼委員長 宮地正介君。
  104. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、きょうは最初ウルグアイ・ラウンド交渉と新農政の問題等について御質問をしてまいりたいと思います。  まず、田名部農林水産大臣アメリカ政権ブッシュ政権からクリントン政権交代をいたしました。ウルグアイ・ラウンド交渉の中におけるまず米問題について、この政権交代によってどのような変化が起きてきているか、この点についての分析と現状、この点についての認識をまず求めたいと思います。
  105. 田名部匡省

    田名部国務大臣 ウルグアイ・ラウンドにつきましては、アメリカ政権交代前に交渉の大筋決着を図るべく、昨年末来努力を払ったわけでありますが、市場アクセスあるいはサービス、知的所有権、貿易ルール等の広範な分野において各国から問題が提起されまして、アメリカ政権交代を機に交渉が停滞した状況になっておるわけであります。  今後の見通しでありますけれどもファストトラックの延長問題を初め、クリントン政権がこのウルグアイ・ラウンドに対するどういう方針というものを立てるのかというのが明確でありません。したがって、依然として不透明な状況になっておるわけであります。いずれこのファストトラック、どの程度の延長にするか、あるいはダンケル合意案、やはりアメリカもどうもこの案は余りいい案とは言えないという声も聞こえております。  いずれにしても、米につきましては、私どもは従来からの基本方針にのっとって、包括関税化、これは認めるわけにはまいらないという立場で今日まで交渉してまいりましたし、これからも国会の決議を体して全力を挙げて取り組んでいきたい、こう考えております。
  106. 宮地正介

    ○宮地委員 今大臣は、クリントン政権のいわゆる米問題を中心としたガットウルグアイ・ラウンドの対応については全く不透明である、非常に戸惑っておる、こういう御発言がございました。さきの渡辺外務大臣の訪米によりまして、クリントン大統領との会見の中でも、大変にクリントン大統領は明快に具体的に、あるいはクリストファー国務長官も大変より具体的に発言がなされたことは、我々として大変重大な関心を持っているわけであります。  大臣も御存じのとおり、クリントン大統領は、日本の米市場のこの閉鎖状態、これはまさに市場開放の閉鎖のシンボルである、象徴的なものであるというので、米問題をターゲットにして、場合によっては、今後の日本政府の努力次第ではスーパー三〇一条、これを発動あるいは議会に提案をする用意がある。おどしにもとられますし、また、私は、クリントン大統領の本音が出たんじゃないかな。また、クリストファー国務長官はさらに、アメリカの米の輸出業者日本に参入できるように努力をしてもらいたい、こういう具体的な提案までされたと聞いております。これはまさにブッシュ政権のときよりも手ごわいな、日本政府がぼっとしていると大変な事態になるのではないかな、こう懸念をしたのは私一人ではなかろうと思います。  今大臣は不透明であるという認識でとどまっておりますが、私は、そんな甘い分析では今後の交渉をやっていくのが大変難しいのではないか、もっと農水省は、外務省と連携を当然とっておると思いますが、分析についてシビアに、また人脈を、どう対応するかについてもシビアに努力する必要があるんではないか、今の大臣の答弁は大変に私は不満であるし、甘いのではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  107. 田名部匡省

    田名部国務大臣 一年二カ月くらいこの交渉に当たってまいりまして、従来からも同じようなことを私は指摘されてきたわけですね。ECに参りましても、包括関税化、これはどうしてもやらなければいかぬ、私の方はそんなものはバランスを欠いておるから認められぬ、こういう交渉をずっとしてまいりました。したがって、受ける感じというのは委員と私ではいささか違うのかなという感じがあります、ずっと言われ続けてきた私と新聞紙上でああいうふうにばっと言われたという印象とでは。私どもは情報もとっておりますし、外務省、外務大臣からもいろいろとお話を伺いました。その話の中では、ウルグアイ・ラウンドそのものは成功させていかなければならぬということの話があります。その中でまた渡辺大臣も、その努力はしていくつもりであるが、農業だけではなくて知的所有権とかサービス、関税、市場アクセス、そういうものもあるので、全体を眺めてどう調整するかだ、そういうやりとりがあったわけですね。  それは三〇一条も言ったかもしれませんし、いろいろなことを言う。何といっても交渉事ですから、相手の嫌がるウイークポイントをついていくというのは、これは何もアメリカばかりでなくて、EC交渉してもそのとおり。ただ、ECの方は米の取引がないものですから、アメリカほど米、米と言わない。むしろ豚肉とか切り花はどうだとかという交渉事の方が多い。アメリカばこれによってアメリカの経済が大きく変わるものでもないと私は思うのですね。雇用を創出する、国内経済を重視するということと一緒に考えてみると、米を日本に輸出することによってたくさんの雇用が創出するわけでもない、四百億ドルに上る赤字も解消するわけでもない。ですけれども、どうも日本というのは、米というと大騒ぎをする。これを何とかあける努力をしようというのは、当然向こうの考えられることであります。しかし、さっき申し上げたように、市場アクセス、サービス、知的所有権、貿易ルール、こういうのが表へ出てきてから、こっちの方でまた大変な争いになって、結局、全体として不透明な状況になってしまったというふうに実は私は判断しておるわけであります。
  108. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣は少しおごりがあるのじゃないかと私は思うのですよ。あなたはアメリカの要人と直接接触をして現場で汗をかいている、それは私たちは大変敬意を表しますよ。我々は新聞記事を見ているからという、そういうばかにしたような発言はやめてもらいたい。我々だって国会議員として真剣にこの問題に取り組んでいるのです。当事者とだってきちっと、我が党の委員長だってダンケルにも会っているのです。そういうおごり高ぶったような発言はやめてもらいたい。  そういう中で、私は、特に今回のクリントン政権というものが、アメリカの経済の再活性化、財政赤字の解消、内政の経済の活性化、財政再建というところに焦点を当てて大統領選を戦って当選した大統領であります。ブッシュさんも確かに湾岸戦争等において外交的、防衛的には大変な成果があった。一時は八〇%を超える支持率もあった。しかし、一年にして内政で負けたと言われております。クリントンさんは、逆に言えばアメリカ経済の活性化にかけている。そういう中で、今日本の貿易黒字が世界的に、昨年一年間で一千億ドルを超えた。対米黒字も四百三十億ドルという黒字になっておる。世界の金が今日本に全部集まってきてしまっている。そういう中で、日本の貿易黒字の解消について、相当強い姿勢クリントンさんは持っていると私は思う。  そういう中で、米の問題というものが市場開放の閉鎖の一つのシンボルだというのは、決して量の問題とか輸出入のそうした数量的な問題を私は言っているのじゃないと思うのです。むしろ日本アメリカの貿易収支の中において、日本が一方的に四百三十億ドルも一年間で黒字になっているじゃないか。世界の金も一千億ドル以上集まってしまっているじゃないか。世界の経済も低迷し、アメリカの財政も大変、そして経済が低迷をして失業率も七%を超えている。生首が飛んでいる。何とかアメリカ経済を活性化しなければならない。そのためには、アメリカの製品をもっと買ってください、何とかこの貿易収支のインバランスを解消するために日本政府は努力をしてもらいたい。私は、その一つの事例として米問題がターゲットにされて出されたと思うのであります。  ですから、あなたが米問題で御苦労されていることに私は敬意を表します。しかし、そうしたバックグラウンドがあっての発言なんだという認識、それをしかと受けとめて、日本政府は全体的な立場でこのインバランスの解消に努めないと、米というものが本物のターゲットにされてしまうおそれがあるのじゃないか、こう私は危惧をしての御質問なんです。再度お伺いしておきたいと思います。
  109. 田名部匡省

    田名部国務大臣 別におごって答弁したつもりはありませんが、そう聞こえたのであればおわび申し上げます。  ただ、前にも何回もこの委員会で答弁しておりますとおり、一体、何で米にこれほどアメリカが関心を持つのか。要するに、日本が包括関税化を認めることによって、いろいろなところからあれもこれもというのが出てくるということは各国が言っております。ですから認められない、日本主張は、認めるわけにいかぬというのが、毎回申し上げてきたとおりでございます。  仮に米が自由化すれば、それじゃあとのものはおさまるのか。これは全く別な次元の話であって、別の分野は別の分野でどうしてもやるわけですから、結局、ウルグアイ・ラウンド全体の交渉の中でそれぞれの国がどうしてもやりたくないというものはそれぞれある、米以外にも。ですから、そういうものと一緒になって、結局、全体不透明になっているというふうに、おっしゃるとおり確かに黒字は大変な黒字だという指摘も何回もされました。されましたが、しかし、それは農産物で起きたわけではなくて、他の分野で起きている問題であって、ですから、マクシャリーとのテレビの対談で申し上げたときにも、やはり貿易というのは節度を持ってやる必要があるのではないでしょうか、相手の足腰が立たないほどやることによって農業分野に今度は切り込まれてくる、農家の人たちはそういう印象でとらえるわけですから、そういうことも申し上げてまいりました。  いずれにしても、賛成する国はわずかでありまして、百カ国以上の国が、包括関税化を取り入れてガットウルグアイ・ラウンドを成功させたいという国が圧倒的に多いものですから、私の立場からすると、これは容易なことではないとは思っているわけです。これは半分くらいも賛成があれば別ですけれども、何カ国もない中で、この包括関税化を認めないという交渉をこれまで随分やってきました。ですから、受け取る印象としては、ブッシュ政権クリントン政権はそんなに変わったというふうに私は受け取っていないものですから、従来と変わりのないアメリカのかたい態度であるということを申し上げたのであって、これは容易なことでないことは百も承知の上で交渉に当たっているつもりであります。
  110. 宮地正介

    ○宮地委員 やはりクリントン政権もそういう点ではむしろブッシュ政権よりも手ごわい、甘く見ていると大変な政権であるな、こうむしろ深刻に受けとめておるのが私の率直な心境です。それだけに、農林水産大臣も、より的確な米政権の分析と、また、今回大変親日派の閣僚が少ないとも言われているわけですから、そうした人脈の開発を積極的にやっていきませんと、私は今後の事態が大変厳しくなるのではないか、こう懸念をしているわけであります。  そこで、先ほど少しお話ありましたが、ファストトラックの期限が三月二日ということで、既に今後の交渉期限についても延長問題がいろいろ言われております。短いところでは三カ月とか、あるいは一年ぐらいかけてやらないと、いろいろやはり状況は厳しいのではないか、こういう議論もあるわけでございますが、この辺については今どういう情報入手をしておられるか。また、この延長によって今後の対応が、特にアメリカECにおいてどのように推移していくと分析をされておるか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  111. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 お答えいたします。  アメリカファストトラックの期限の延長の問題でございます。二月十二日の日米外相会談の際、カンターUSTR代表より、ファストトラックの期限についてはこれの延長を求めていく方針だというふうな意向が示されたわけでございます。しかしながら、そのタイミングでございますとか延長期間の幅でございますとか、そういうことについては言及がなかったというふうに聞いておるわけでございます。この延長につきましては、現在のアメリカの新政権状況からして、いろいろとその観測といいますか憶測といいますか、そういうものが流れておるわけでございます。  一つには、できるだけ早くウルグアイ・ラウンドを仕上げる、あるいは現在のモメンタムといいますか交渉の勢いをそがないためには短期間の方がよろしいというふうな意見もあるわけでございますが、ただ、余り拙速でもいけない、こういうふうな意見もありまして、なかなか予測は難しいわけでございますが、一般的に言われておりますのは、数カ月から一年程度の延長になるのではないか、こういうふうな観測が一般的に行われておるわけでございます。いずれにしましても、このファストトラック自身はアメリカ国内法の手続でございますので、我々の方でどうこうコメントするのは適当でない、こういうふうに考えております。  いずれにしましても、我々としましては、この期間がどういうふうになってくるかというふうなことも注視しながら、委員指摘のように、この交渉は大変厳しい交渉でございますので、よく作戦も練りながら交渉に臨んでまいりたいと思っております。
  112. 宮地正介

    ○宮地委員 東京サミットが七月に行われます。恐らくその前に、この予算の成立いかんによっては、四月ごろ宮澤総理がアメリカに訪米という状況になるのではなかろうか。当然そこで日米首脳会談が行われるわけでございますが、当然またここで、この米問題についての宮澤・クリントン会談の中でいろいろ議論が行われることは十二分に予想されるところであります。  農林水産大臣クリントン政権が誕生いたしましてから、今あなたがこのウルグアイ・ラウンド交渉、特に米問題で接触した閣僚はどなたとどなたですか。そして、その感触はどういう感触ですか。
  113. 田名部匡省

    田名部国務大臣 これはもう世界的にECアメリカも全員がわりまして、EC側とは先般お会いしましたが、アメリカは会っておりません。
  114. 宮地正介

    ○宮地委員 とするなら、あなたもやはり早い時期に訪米をされて、少なくともクリストファー国務長官とかあるいは農務長官とかカンター通商代表とか、関係のそうした閣僚と日米会談を行うことが私は大変重要なことである。その用意はありますか。
  115. 田名部匡省

    田名部国務大臣 できるだけ早くお会いしたい、こう思っておりますが、まだ向こうの人事が大変おくれておりまして、農務長官以下のスタッフが決まっておりませんし、だれがこれからの交渉に当たるかということも明確でありませんので、その辺も見通しながら、できるだけ早い機会にお会いしたい、こう考えております。
  116. 宮地正介

    ○宮地委員 今回、渡辺外務大臣は初めて政府専用機をお使いになって行かれました。ちょうど昨年、私は決算委員会の理事で、この専用機の中を千歳で拝見させていただきました。同行記者団全部乗れ、相当なスペースもありまして、やはりこの専用機は今後の日本の外交で積極的に世界を飛ばすことは有意義なことだな、こんな感じで見させていただきましたが、ぜひ総理の訪米のとき随行されたらどうですか。あるいは総理の訪米前に、あなた今、農務長官の次官級がまだ決まっていないから、下が決まっていないからと言っていましたが、いいですよ。まずトップ会談をやってきたらどうですか。まず心と心の会話が大事じゃないのでしょうか。やはり、日本農林水産大臣アメリカ国務長官あるいは農務長官、この人間関係のきずなをつくることが最も外交交渉の基本じゃないのでしょうか。人間外交をされたらどうですか。その決意はありますか。
  117. 田名部匡省

    田名部国務大臣 そのようにも考えておりまして、いずれにしても相手の都合等もあるわけでありますから、よく検討してみたい、こう思っております。
  118. 宮地正介

    ○宮地委員 どうも大臣、迫力ないですね。これまでいろいろ汗をかいてきたんですから、もっと迫力を持って積極的に乗り込んでいったらどうですか。ちょっとお疲れのようだという声もありますよ。この際、日本の米問題のエキスパートとして、今連続して農林水産大臣に推挙されているのですから、どうか使命と責任を持ってもっと積極的に、私は、できれば総理が訪米する前ぐらいに乗り込んでいって、農務長官や国務長官と現状の日本の状態というものをしっかりとお話しして、そして人間的に田名部農林水産大臣の人柄なり人格を売り込んでくることも大事じゃないかと思いますよ。ぜひそうした御努力、遅くともせめて宮澤総理の訪米のときにはともどもアメリカに行くぐらいの検討をぜひ政府内でしていただきたい、このことは強く要望しておきたいと思います。  また、先日農林水産省の方から、いわゆるウルグアイ・ラウンド農業交渉における米以外の農産物関税化について、関係国打診の問題についての事実関係については全くない、こういういわゆるコメントが宮本国際経済課長の名前で出されました。この問題は、一部報道機関の報道として、誤った報道なのか、あるいはそうした誤解を招くような交渉事が行われていたのか、この点がやはり国民として非常に重大な関心を持っているわけですね。この点について、大臣、どういうふうに国民に御報告されますか。この点について御説明いただきたいと思います。
  119. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 宮本課長名で役所が出しているあれでございますので、ちょっと説明させていただきます。  我が国は、ウルグアイ・ラウンドにおきまして、米のような基礎的な食糧でございますとか、あるいは国内生産調整を行っている農産物につきましては、関税化ができないというふうな主張を行っているのは御承知のとおりでございます。アメリカを初め、ECも含めまして各国から、これは一切例外なしで全部関税化しろというふうなことで、あらゆる機会に責められておるわけでございます。  そういう交渉の中で、相手国から関税化要求、これは関税化しなさい、これはこういうことで関税化したらどうですかとか、当然いろいろ話が出るわけでございます。そういう関税化の話が出たときには、こちらからその品目について、こういう理由でこれは関税化できません、したがって、我が国はこの関税化例外が必要なんです、こういうふうなことで反論をしていることはございます。  そういうふうなことでございますが、我が国関税化につきまして関係国に打診を行った、こういう事実はないわけでございます。こういうことをこの紙には書いてあるわけでございます。
  120. 宮地正介

    ○宮地委員 これは恐らくガットの十一条二項(C)の問題でいろいろ議論をされている、そういうことの中でこうした報道がされたのではないか。私も、皆さんのお立場を考えますと、大変に困ったことだなと。事実無根である、こういうことですから、これ以上は私は質問はいたしませんが、今後とも最大の注意をしながら外交交渉というのをやっていきませんと、外といろいろやっておる間に内側から弾が飛んできて大変な事態になる、こういうことになりますと国益に大変損になりますので、今後の交渉事についてはどうか十分気をつけてやっていただきたい、こう思うわけであります。  そこで、昨年の六月にいわゆる新農政の取りまとめが、農林水産省としても今までいろいろと事務次官を中心に研究されておりました、その取りまとめができた。こういうことで、昨年六月に私も個人的には御報告をいただき、そしてさらにそれが総理の諮問機関である農政審議会にかけられまして、本年一月に農政審から中間報告が取りまとめられてきた。  私は、率直に言って、これは二十一世紀に向けて日本農業の活性化、日本農業あり方、こういうことについて農林水産省が、当初事務次官をヘッドにしまして、外部の有識者等、こういう方の意見をいろいろ聞きながら取りまとめてこられた。大変敬意を表していたわけであります。今回、こうした新農政の中間取りまとめから法案が具体化して、この農林水産委員会に提案をされてくる、今こういうスケジュールになっているわけであります。  まず第一点、確認しておきたいのですが、これはまさか、このガットウルグアイ・ラウンド交渉のいわゆる裏づけ的な相関関係にある、そういうためにこうしたものがつくられたものではない、こう信じておりますが、この点についてまず確認をしておきたいと思います。
  121. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 このいわゆる新政策考え方を検討し始める当初の段階におきまして、私、個人的な話でございますけれども、総務審議官をやっておりまして、最初の、出発点の段階に携わったわけでございます。その段階の話としまして、この場でも大臣初め関係者の方から何回にもわたりまして話を申し上げておりますように、このところの特に土地利用型の農業状況を見まして、農業の担い手の老齢化であるとか、あるいは数の減少であるとか、あるいは耕作放棄の状況であるとか、そういうことをこのままの状態で手をこまねいておるとすれば、我が国農業の先行きの問題として非常に難しい問題に立ち至るのではないかということで、抜本的な対応策を考えてみる必要がある、この点を中心にして議論を始めたということでございます。
  122. 宮地正介

    ○宮地委員 これは、ウルグアイ・ラウンド交渉というのを視野に入れた中でも検討されているのですか。
  123. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 ウルグアイ・ラウンドの問題につきましては、るる御論議をいただいておりますように、その際、私どもからお答えを申し上げますとおり、基本的な方針は一貫をいたして交渉に当たっているわけでございます。したがいまして、その実現を図ってまいるわけでございますけれども、このいわば内と外の関係の問題は我々の主張のとおりに実現をしていかなければならない、そのことはそのとおりとしても、国内の現状の問題として、今私が申し上げましたような非常に重大な問題が起こっているということから検討に着手したということでございます。
  124. 宮地正介

    ○宮地委員 当初、この新政策検討本部、本部長が、一番最初は甕事務次官、そして、取りまとめたころには浜口事務次官、局長さん五人と食糧庁長官林野庁長官等が入ってこの検討本部が平成三年五月に設立をされて、約一年、平成四年、昨年六月に報告書を提出して解散、こういうことになりまして、この検討本部が農政審議会に一応報告をされ、総理の諮問機関である農政審議会が、平成四年の八月から新農政の検討に入った。ちょうど平成四年七月に農政審のメンバーが入れかわって任期切れになりまして、昨年八月から検討に入った段階で新メンバーでスタートをした、ことしの一月で中間報告、こういう流れになっているわけですね。  やはりこれだけの重要な新農政について、そして今回具体的にこの中間報告に基づいて法案化されて、既に閣議決定をされて当委員会に提出をされてきているわけであります。手続の面においては私はそんなに問題ないと思っておりますが、ただ、国民の議論がどこでなされるチャンスがあったのか。この法案の提出に当たりまして、本格的に議論されるのはこの国会なんですね。確かに、昨年の六月に報告が出された、参議院のいろいろな委員会で若干議論されたようですが、本格的にはまだ議論されていない。法律になって出てきて初めて法律の審議、そしてこの新農政の審議、これがこの国会で行われる。ちょっとそういう点について議論が未熟ではないのかな、もうちょっと積極的に国会なりに議論を求めて、そしてできるだけ多くの国民の声を反映して、そして取りまとめて国会に法案として出してきた方がよかったのではなかろうかな、こんな感じがしているんです。この辺の手続上の問題と、国民の議論をもっと積極的に、昨年の六月に報告された時点からことしの中間取りまとめのこの期間の間に、もっと積極的に国民にアプローチをすべきではなかったのか、こんな感じがしておりますが、この点についてはいかがでございましょう。
  125. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 新政策の懇談会を開き、そこで有識者の方々にいろいろとお話をいただく、またその検討の過程におきましては、具体的に現場の農業者の方々にもお話をお聞きをする、あるいは去年の六月にまとまりましてから後は、大臣にも地方まで足を運んでいただきまして、直接農業者の方々から御意見をいただくというように、できるだけの努力はしてまいったつもりでございます。  ただ、今先生からお話がございましたように、去年の六月にまとまりまして以来、国会の場の御論議といいますれば、臨時国会、それからこの通常国会ということでございまして、先生のおっしゃられるような感じがないと言えないこともないという気持ちは、私自身、今お話を承っておりましていたします。ただ一方で、その結論をできるだけ早急に具体的な政策に実現をしてまいらなければならないという要請もあるわけでございまして、事態の進展をいっときもそのままにしておかないという意味におきましては、この新政策考え方を具体的な政策として立案実行を図っていかなければならぬということもあるわけでございまして、私どもは、今国会におきましてたくさんの法案を御審議をいただくようにお願いをすることになるわけでございますけれども、その御議論の前にできるだけこの新政策考え方の基本の部分につきましても御論議をいただきたいというふうに考え、対応したいというふうに考えている次第でございますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
  126. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、さきの臨時国会のあたりでやはりきちっと議論できるように、農林水産省等が国会に対してそれなりにアプローチすべきではなかったか、率直に言ってその点について配慮が欠けていたと思うのですね。そういう点について、ましてや二十一世紀に向けての重要な農業活性化の問題ですから。特に企業参入の問題などについては大変重要な問題ですね。今後共同化していく、あるいは有限会社とかこういう会社法人化していく。今まで土地を持っていた農家の方が、一部とはいえ全く土地を持ってない方に運用をさせていく。そうした日本特有な土地と農業という関係があるわけですね。それをすぱっと企業参入の非常に新しいアイデア、経営手法、共同化、あるいは十万ヘクタールのところに焦点を当てて大型農業化していく。大変理論的にはわかるのですが、現場を歩いてみますと、現場の農家の方と農水省皆さんがお考えになっているいわゆる理論的な一つ政策との間に相当まだ乖離があるわけですね。この乖離を埋めるのが私はまさに国民の代表である国会の仕事だと思いますね。そこのところがやはり私は大変今回は未成熟ではないのか。ぜひ今後十分こういうことを教訓にしていただいて、皆さんの努力、また大変、外でありますが、ウルグアイ・ラウンドという状況がありますから、これとの相関関係がないとはいえ、やはり視野に入れざるを得ない、そういう時代の流れ、要請というのがあるわけですから、そういう中での御苦労は多としますが、ぜひこれは大きな教訓として、今後法案の議論の中でも徹底してその乖離を埋めていただきたい、また、誠意ある対応の答弁も求めたい、こんな感じをしております。  そこで、来年の七月まで今の農政審の皆さんの任期がある。これは最終報告はいつごろ取りまとめるつもりでいるのですか。今のは中間報告ですね。この点について確認しておきたいと思います。
  127. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 基本的な部分、中間報告であるとはいいながら、新農政考え方の基本的な部分について、一わたりの具体的な対応策を農政審から御報告をいただいているというふうには考えるわけでございまして、さらに、稲作以外の他の作物についての施策あり方等、残りの部分の検討をお願いをしていくことになるわけでございます。現在のところ、まだその成案をいつごろいただくかということについて、はっきりしためどを持っているわけではございませんが、可及的速やかにその結論は得たい。これは稲作の方が、いわば土地利用型の農業の方が一歩先に行くという形になりますものですから、それに余りおくれない形で、それ以外の分野農業につきましても考え方を取りまとめたい、かように考えているところでございます。
  128. 宮地正介

    ○宮地委員 いずれにしても、タイムリミットは来年の七月までですね。今の衆議院議員の任期は来年の二月までですから、恐らくそれまでに解散・総選挙もあるだろう、こう言われているわけです。できれば現衆議院議員の任期中にしっかり最終報告をまとめられるようにこれは努力していただきたい、このことは要請しておきたいと思います。  そこで、少しテーマを変えまして、釧路沖地震の問題の中の一つの大事な問題についてちょっとお伺いしておきたいと思います。  今回の釧路沖地震で、特に釧路市の特別会計、いわゆる公営企業会計でやっているところの穀物の荷役機械、あの釧路港の港湾が破壊されまして、そして穀物の荷役機械が四基、約十七億です、これが稼働できない状態になってしまった。もう一つは石炭の荷役の機械一基、これが約四億六千万、合わせて約二十一億六千万。この荷役の機械が壊れまして、特に穀物の、飼料の荷役の方は今一基、四百トン稼働で一基だけ何とか復活されてきたようであります。これは北海道の酪農の、特に牛の関係の方にとっては大変に今影響が出てきているわけですね。釧路港に持っていっても荷役機械が動きませんから、非常に苦労しておる。苫小牧の方に少し回さなきゃならない、こういう状態なんです。  ところが、この約二十一億六千万の荷役機械が壊れて、修理をするのにやはりこのくらいの予算が必要。釧路市の公営企業の特別会計ですから、これはなかなか自治省も今苦労しているわけですな。まず起債で恐らくやらざるを得ない。起債というのは借金ですから、二年間据え置きで、その後十年間かけてやりますから、例えばざっと二十一億六千万ですと、この釧路市の企業特別会計の方は毎年、起債にしても二億を超える返還をしなきゃならない。今回の地震は、まさにこれはもう激甚的な災害ですね。運輸省当局も、港湾の方の国庫負担で何とかということで苦労していただいたんですが、なかなかこれは難しい。そして、起債をした以上、今度は実際にこの穀物の荷役機械を動かす場合には、酪農の方々の使用料に場合によってははね返る可能性もある。今どのくらい使用料を使っているかといいますと、一基約七百二十二万円、これは月ですよ。酪農の方々の配合飼料のいわゆる荷役の機械が稼働している場合、三基でございますから、月約二千百万です。これは年間にしましても大変なものです。そういうようなことで、この措置をどうするかということが非常に重要な問題なんです。  まず、自治省にお伺いしておきますが、今回の釧路沖地震で特別地方交付税を平成四年度の分で前倒しをして三月に手当てをする、こう言われておりますが、大体この積算はできたのか、どのくらいを特交でまず対応すると考えているのか。国土庁には、なぜ今回の釧路沖地震が激甚災害の扱いにならないのか、この点についてまず御報告いただきたいと思います。
  129. 板倉敏和

    ○板倉説明員 お話ございました釧路港の荷揚げ機械の復旧でございますが、これは港湾整備事業という公営企業の事業として行われております。そういう地方公営企業として実施をされておりますことから、損害保険金などほかに活用できる財源を除きまして、現行制度上は地方債をもって充てるということになるものと考えられます。この場合には、今回の被害が事業の規模に比べましてかなり大きなものであるということから、その元利償還金をすべて事業に伴う収入で回収することは難しいのではないかという印象を持っております。  こうした点を踏まえまして、現在地元におきましては、応急復旧に精力的に取り組みます一方、財政面を含めました復旧のための具体的方策を検討中でございますので、北海道を通じましてその意向をよく聞きました上で、復旧が円滑に行われますように、関係省庁とよく相談をして対処してまいりたいと考えております。  御質問の四年度の特別交付税の問題は、現在積算中でございますが、一般的な公共施設の被害等に対しまして対処するということで、現在積算等の作業をしておるところでございます。
  130. 仲津真治

    仲津説明員 御説明申し上げます。  今回の釧路沖の地震災害につきましては、被害の規模それから地域の範囲ということから考えまして、市町村レベルの被害状況によって局地的な災害ということで、局地激甚災害についての検討が行われる、必要となるということかと思われます。そのためには災害の被害状況の把握が先決でございまして、現在、関係地方公共団体及び関係省庁において鋭意調査を進めていただいているというところでございます。  いずれにいたしましても、公共土木施設の災害復旧事業は急がれますので、これらの事業の計画を固めていただきまして、そして円滑に進めていただく。その場合に、国としては、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法というような法律がございますので、こうした法律を適用することによって通常の公共事業よりは手厚い支援を国が行うことになろうと思います。  さらに、各市町村ごとの査定事業費というものが激甚災害の基準に達する場合には、年度末になりましてその指定を受け、その年に受けた激甚災害に係る地方負担額の累計、今後起こる災害もあり得るということでございますが、そういうものもあるとすればそれを含めて、累計に応じましてより高率の国の補助を受ける、適用されるということになる、そういうことでございます。
  131. 宮地正介

    ○宮地委員 今国土庁は公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法、この適用でやる、こう言っていますけれども、実は今の荷役の機械はこの法律の適用外なんです。これは適用されないんです。そこに今問題がある。ですから、自治省はやむを得ず起債で対応する、こうなっている。  港湾の破壊、あるいは先ほど言った穀物の、飼料の、酪農家に対して大変影響のある荷役機械です。運輸省、農林省、何らかの措置で対応できないのかどうか、この点確認しておきたいと思います。
  132. 田村勇

    ○田村説明員 先ほど先生のお話にもありましたように、このたび釧路港の穀物などを取り扱う荷役機械が大きな被害を受けております。このことを十分承知いたしております。現在復旧工事を急ぎまして、二月からは一部使用可能となっておりますけれども、今後は、応急復旧を急ぐとともに、できるだけ早く本格的な復旧が進められるよう努力してまいりたいと思います。  それにいたしましても、先生御指摘のとおり、港湾管理者が災害復旧事業債等によって対応するということになっておりますので、釧路市にとりまして、財政規模も小さい市でございますので、その対応に大変苦慮されているということも聞いております。今後、市の具体的な復旧計画を聞いた上で、関係省庁とどのような対応が可能であるのかということについて十分検討してまいりたいと思っております。
  133. 赤保谷明正

    ○赤保谷政府委員 私どもの方としましては、災害があった直後、担当課長を現地に派遣しまして被害の状況調査をし、ともかくえさがなくなっては困るということで、幸いにしてというか、釧路港に政府助成の備蓄飼料穀物一万五千トン余りございまして、ほうっておくとちょっとショートするという状況のようでございましたので、その飼料穀物を貸し付けをするということで、物量としてはしのげる、そういう措置を講じております。  ただ、港湾施設の復旧の経費、それをどうするか、先ほど来御議論になっておるわけですが、これにつきましても私ども非常に関心を持っておりまして、今運輸省の方からもお話ございましたけれども、完全復旧に向けての協議を各省庁とよくしていく。私ども、当面は物量の確保、それぞれの方で手分けをした、復旧費については関係省庁とよく協議をしてまいりたい、こう考えております。
  134. 宮地正介

    ○宮地委員 農林水産大臣、今お話をしていて、この約二十一億六千万、特にこの穀物荷役機械十七億、この機械が破壊したことによって釧路市の公営企業特別会計がここで起債を起こすわけですね。十七億借金をする。これは今回の災害によって起きる。この起債の借金を今後穴埋めするために公営企業会計が例えば赤字になっていくとか財政が厳しくなっていけば、これは今度は使用料の値上げにつながるのですよ。そうしますと、まさに今御心配のように、今度は酪農家皆さんのえさのいわゆる値上がり、使用料が値上がりしますからその関係のコストが上がってくるのです。これはかえって酪農経営を深刻化させる大きな要因なんですよ、これを私は今言っておる。ですから、今運輸省は、港湾が破壊したから、この港湾の破壊に伴って荷役機械に対しては、直接には公共土木の施設の国庫負担事業としてはできないけれども、何らかの形で今後市の災害実態に合わせて財政的な措置を検討したい、こう前向きなんです。  ところが、今あなたの部下の方の答弁では、今申し上げた、結果的に酪農業者に、もしこの起債の分が財政的に大きな負担になって使用料転嫁になると酪農経営に大変深刻化なりますよ。でありますから、農林水産省もこの問題は、ただ荷役機械が壊れた、こんな短絡的なとらえ方をしていますと、はね返ってきますよ。こういう懸念で私は質問しているのです。  大臣、この問題について私は、総合的によく調査をされて、農林水産省としても価格に転嫁されないための何らかの措置を検討すべきである、こう思いますが、いかがでしょう。
  135. 田名部匡省

    田名部国務大臣 災害が起きまして報告を聞いたときに、私もそう思いました。公社経営のことでもある、しかしさりとて私の方のそういう酪農家に負担がかかっていくということでは大変困るわけでありまして、お話は十分わかりました。よく各省庁と調整しながら、どういう方法があるのか十分検討してみたい、こう思っております。
  136. 宮地正介

    ○宮地委員 それから自治省、平成四年度の特別地方交付税の前倒しに努力をされて本年三月に何らかの措置をする、これは私は高く評価したいと思う。自治省に申し上げたいのは、今の荷役の問題についても、恐らくこの十七億、さらには石炭の分を入れますと二十一億六千万、これだけのいわゆる修現代がかかるわけです。さらにそのほか、それに伴うところの旅客の上屋とか貨物の上屋とかオープンヤードとか船舶給水施設等を入れますと、総計約二十七億四千五百万、約二十八億の大変な被害の状況なんです。一釧路市の財政規模の中から見れば、これは大変に大きいです。二十万足らずの市の財政規模ですから、恐らく一般会計二百五十億くらいでしょう。その中で一挙に二十七億四千五百万の被害が出るというのは大変な財政負担です。そして、それが特別会計、自治省としては、特別会計ですから直接はこの名目で釧路市に今後平成五年度以降の地方交付税、あるいは特別地方交付税はなかなか難しいかもしれませんけれども、起債相当額、企業特別会計が起債を自治省に申し込んだその相当額については、今後平成七年度以降、平成七年度以降ということは起債の返還が始まる年です、二年据え置きですから。例えば荷役機械の修現代として二十一億六千万、保険とかいろいろあって実質十五億になるか十八億になるかわかりません。例えば二十億なら二十億の起債を自治省にお願いをして、平成五年度の起債で措置をした場合、自治省がその相当額は、平成七年度以降釧路市に対して特別地方交付税を年額、十年間にわたって別途二億円程度のその相当額、十で割った二億円、一応これは概算です、これを特交で上乗せをするくらいの配意をすべきではなかろうか。そうしてあげなければ、釧路市の財政は大変厳しい。まして釧路市はこの企業特別会計に対して、場合によっては釧路市としても補助金を一般会計から繰り入れる用意がある、こう助役は私に報告しております。そういう点も配慮した場合、自治省は今回、今申し上げたような措置をやる考えがあるかどうか、決断をしていただきたいと思います。
  137. 板倉敏和

    ○板倉説明員 先ほどの御答弁と若干重複をいたしますけれども、現在市の方は応急復旧に取り組んでおるということでございまして、本格的な復旧の資金の計画ですとか、それ以降の経営の見通し、これらにつきまして具体的な考え方はまだ示されておりません。当面、例えば地方債をどれだけ起こさなければいけないのか等々から、今後よく検討しなければいけない事柄だろうというふうに思っております。私ども、先ほど申しましたとおり、その辺の市の考え方、計画等をよく聞きまして、各省庁と相談をしながら対応をしてまいりたいということでございます。
  138. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、今回の釧路沖地震はまさに天災であります。セクショナリズムにならずに、どうか内閣としても積極的に被害者の立場に立って善処をしていただきたい、このことを強く要望し、また水資源汚染問題については別の機会に質問をさせていただきたい。  終わります。
  139. 平沼赳夫

    平沼委員長 藤田スミ君。
  140. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、まず他用途利用米の問題についてお尋ねをしていきたいと思いますが、資料の配布を委員長にお断りをしておりますので、お願いをいたします。  今、農民の中で、この他用途利用米の問題が大きな問題として指摘されております。私は、今ここに青森県常盤村のビラを持ってまいりましたが、そこには「他用途利用米が〃義務化”されました。全稲作農家のみなさんへ一律に配分されます。」と書かれております。このビラであります。そして、「他用途利用米は水稲作付可能面積に対し一律に配分されます」として、水田百アールの場合七俵と例示までしているわけであります。また同様に、青森県の田舎館村では、村と農協の連名で、「全量確保することが義務づけられました。」と文書が出されているわけであります。  まず最初にお伺いいたしますが、農水省、義務化されたんでしょうか。また、これは青森県常盤村や田舎館村に限ったことではありません。全国至るところでやられていると思わざるを得ません。農水省として、このような行き過ぎについて正すべきであります。いかがでしょうか。
  141. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 御案内のように、米につきましては、家庭用それから業務用それから加工利用等々、それぞれの固有の需要があるわけでございます。その中で加工用需要につきましては、大体百四十万程度の原料が供給されているわけでございますけれども、おおむね自流米が三分の一、他用途利用米が三分の一、それから規格外米が三分の一というふうなことで供給されてきたわけでございます。  他用途利用米は、御案内のように、五十九年、第二次過剰米処理が終わったことを受けまして、転作を強化していく中で、価格の低い米であれば加工需要に回せるという需要サイドの意向もありましたし、また農家側も転作の一つの形態として取り入れていくということであれば対応できるのではないかということで、逐次収量がふえてきたわけでございます。  ただ、平成三年産の米の不作の影響を受けまして、昨年転作を緩和したわけでございます。そういう中で、当初お願いした数量の半分程度にとどまったわけでございますけれども、そういう中で、他用途利用米から一般の主食用米への転換というのは、現場でも転換ということが行われましたし、そういうことを受けまして、昨年策定いたしましたポスト後期対策ではさらに今年度、他用途利用米につきましての数量の増加ということをお願いせざるを得ないような事態になったわけでございます。  他用途利用米は、御案内のように、ほかに比べてつくりにくさが価格の面であるということは事実でございます。そういう点からしますと、需要に合った供給をするためには、それぞれの地域地域あるいは農協ごとに自分の目標とするものの消化をするということにおらないと、全体的にいろいろな問題が起きてくるのではないかというようなことで、そういう積極的な指導というのがこういう表現になっておるのではないかと、今見て直観したわけでございます。  御案内のとおり、これは法律的には義務でも制度でもないのは事実でございますけれども、やはりたびたびの国会決議に従いまして、主食用のみならず加工用米につきましても国産で供給するということを系統自身も考えています。私どももそういう方向に沿って指導している。その熱意がこういうことになったのではないかと思います。ただ、今申し上げましたように、制度でも義務でもございませんので、その辺は十分説明して、納得いただいてつくっていただくというような指導をやりたいというふうに考えております。
  142. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 義務化されていると書かれているけれども、法的義務でも制度でもない、熱意の余りのあらわれだとしたら是正する、こういうふうに御答弁をいただきましたので、承知をしておきます。  また、他用途米について、その経理について極めて不透明で、多くの農民から疑問の声が出されております。  他用途利用米は、契約書である売渡委託書を生産者と農協が取り交わす、農協に対する販売委託契約であるわけでありますが、ほとんどの生産者はこの売渡委託書というものを見たことがない、売渡委託書の説明も聞いたことがないというのが現状であります。政府として、このようないいかげんなやり方を放置していいのか。また、政府として、この売渡委託書に記載されているそれぞれの項目について、生産者に対してきちんと約束を履行させなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  143. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 御指摘のように、他用途利用米の生産・集荷につきましては、生産者から一次集荷業者が委託を受けて指導を行う、ほとんどは農協でございますけれども、それを委託をして、指定法人との間で生産・出荷契約を締結することになっておるわけでございます。  私ども、そういう際に、他用途利用米の問題というのが、米の全体的な需給あるいは今後の需要に合った稲作生産を進めていくという際に、極めて大きな重要な一つのテーマだというふうに考えております。そういう趣旨を十分理解を得た上でやっていただくのが一番適当であるし、そういうことをやっていただいておるというふうに考えておるわけでございます。  しかし、御指摘のような話もございますので、私どもとしましても、系統あるいは関係県を通じまして、さらに趣旨の徹底に努めていきたいというふうに考えております。
  144. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ちょっとわかりかねます。私の方からもう一日言いましょう。  各農家に委託書を交付すること、農家の了解と納得を得て進めること、契約事項については、特に精算項目については全農が履行するようにすること、こういうお考えだというふうに理解していいですね。
  145. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 おっしゃっていますように、農家の理解を得てやっていきたいと思っております。ただ、ほかの、農家にとりましても自流米で売れれば、同じ米ですので、高いし、また政府米でも高いわけでございます。そういう中でつくってもらうわけでございますので、やはり大乗的な見地に立って理解をしてもらうということはぜひ必要なんで、その辺は十分議論を尽くして、納得してやっていただくというふうに持っていきたいと思っています。  それから、契約書につきましては、あるわけでございますので、そういう方向でやっていく必要があろうかと思います。
  146. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 方向などとんでもないのです。この委託書を見てください。ちゃんと「私は」と個人になっているのです。「全農に対し」、こういうふうに、頭の言葉を見てください。「私の生産に係る別紙の」云々と、「貴農協が経済連を通じ全農に委託することを一任します。」これ委託書。個人と全農との売り渡し委託契約でしょう。  だから、そういういいかげんを言い方、ちょっと困るわけですよ。はっきりしてください。委託書、これは民法上言ってもはっきりしていることですがね。これを履行するのが当たり前、こういうことでしょう。
  147. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 おっしゃっておるような答弁をしたつもりでございますけれども、生産者は単協を通じて全農に委託する、委託の内容につきましては、それを履行するということが大切であろうと思います。
  148. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 他用途利用米については、販売価格とコストの差額については全農にプールされていると聞きましたが、それは事実ですね。
  149. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 他用途利用米の販売価格というのは、御案内のとおり、生産者の手取り保証額を頭に置きまして、仮渡しの金利でありますとか運賃とか在庫の保管に要する経費等を見込んで、需要者団体と全農の間で決定しておるわけでございます。実際、全農側としましても、こういう手取り保証額とか、金利、運賃、在庫の多寡がまたこれに影響するわけでございますけれども、それらを見込みまして、価格契約を需要者との間でしているわけでございまして、年により相違はありますけれども、差額が発生しているのも事実であります。  ただ、そういう差額につきましては、従来から系統の中にあります他用途利用米共計委員会におきましていろいろ論議いただきまして、他用途利用米の生産・集荷対策でありますとか需要拡大対策等々に充てておるわけでございます。全農にも一部残っているのはございますけれども、大体そういう方向に差額を使って他用途米の有効な生産・集荷活動に当たっているというのが実態でございます。
  150. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この売渡委託書を見ますと、こう書いています。「共同計算に関する事項」のところで、「他用途利用米販売代金、仮渡し金の金利負担、運賃等、共同精算の上、精算すること。」こうなっています。  それが始まった八四年以来、一度として生産者に対して、幾らで売れてコストがこうなって幾ら余りました、余ったものは全農がプールしておりますという報告、説明、そしてまた、それに基づく精算、そういうことをされたことはありません。本来なら生産者に返還すべき金を返さないこと自身が全く契約違反ということになりはしませんか。
  151. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 他用途利用米につきましても、減反が強化する中で、逐次数量をふやしてきたわけでございます。そういう中で、例えば平成元年産米でありますとか二年産米につきましては、需要にかなり生産がオーバーしたということで、在庫量につきましても五万トンとか八万トンの在庫を抱えてきたわけでございます。そういうこともございまして、一方で、需要拡大対策、それからまた他方で集荷あるいは集荷促進対策等々に使ってきたわけでございます。  そういうことで、全農にプールされます差額の余りといいますか、差益といいますか、それはそう多いものではないというふうに私ども伺っておるわけでございます。
  152. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 幾ら差額が多かろうと少なかろうと、「精算する」と書いてある以上、余れば返す、そしてまた、余らなければこういうことになっていると報告するのが当たり前のことなのです。この委託契約書がある以上、そんなことは当たり前のことなのです。しかも、この共同計算が果たして正確になされているのか、極めて不透明と思わざるを得ないわけであります。  これは青森県の例ですが、農協に出された全農の文書によりますと、九〇年の他用途利用米の販売価格は八千五百八十円、しかし、九二年十二月に全農東京支所から青森経済農業協同組合連合会に出された文書では、販売価格は八千二百五十円となっているわけであります。農水省説明では、販売価格は他用途利用米協議会で決められ、フィックスされている、つまり固定化されているということでありますから、このような価格の違いが出てくるのは、もともとおかしいはずであります。なぜこのような二重価格が生じたのか、明らかにしてください。
  153. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 今資料をいただいたわけでございますけれども、ちょっと私、あの資料に即して今答える能力がございません。後刻、検討させていただきたいと思います。
  154. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ぜひ調査をお願いいたします。これはいかに共同計算なるものがいいかげんかという見本の一つですよ。だから、ぜひ厳密に調査をしてください。  さらに、もう一つの問題は、全農がこの他用途米で巨額な利益を上げながら、それを生産者に返還していないのではないかという問題であります。  他用途利用米の生産者価格はほとんど横ばいで推移しておりますが、他用途利用米の需要の方は、おっしゃったように八九年から輸入ピラフに対応するということで、破砕精米、初めは他用途利用米を破砕する、こういうのが原則だったですが、ここでトン当たり四万円も高い丸米が加工米飯業界に供給されるということになりました。九二年産米では、その数量は実に二万二千トンに及んでおります。原料となる生産者手取り額が引き上げられていない中で、これまでよりトン当たり四万円も高く売るわけですから、当然のこと、利益が上がっていることは自明の理であります。この新しい需要分だけで、私どもが計算すると、取り扱いを始めて八九年から四年間で、全農は約三十億八千八百九十五万円の利益を上げている、私たちの計算ではこういうふうに出ました。これは当然売り渡しを委託した農民のものであります。  もう一度申しますと、ここに私はこういう表を持っております。この表は破砕精米そして丸玄米、丸玄米といって二つ目に書かれているのは、これまで使われていたみそ、お菓子それから玄米茶に入れるお米のことです。こういうものも一部これまで確かにあったのです。この破砕精米の総売上高を合わせ、それを両方の販売数量で割ったら総平均価格というのが出てまいります。ずうっとそういうことで平均価格をこの表の一番右の端に書いております。この下の方は加工米飯用丸米価格、これがいわゆる冷凍ピラフなんかに回される、全く普通の米のように使われる、その方の米であります。  私どもは、加工米飯用丸米価格から総平均価格を引いていくと、一九九二年は四万三千五百一円高く売れているわけです。扱った数量が二万二千トンですから、九二年は九億五千七百二万円利益を得たということになりまして、結局この四年間で見ても、三十億八千八百九十五万円、こういう数字が出てくるわけであります。先ほどからも言っておりますし、皆さんもお認めのように、本来それは売り渡し委託をした農民のものであり、契約した農民に返却すべきであります。どうですか。
  155. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 原単位当たりの比較は御指摘のとおりかと思います。ただ、他用途利用米につきましても、稲作生産でございますので、自然の影響を受けるということで豊凶がございまして、需要を超えるものにつきましては抱えておく必要があるし、それから不足する場合にまたその対応というのが必要なわけでございます。  例えて今申しますと、平成元年、二年産というのは豊作であったということで、その産米につきましては、元年産は五万四千トン、二年産は八万六千トンという在庫を抱えたわけでございます。そういう点で、在庫の金利・倉敷あるいは売却価格についての値引きをした。さらにまた四年産につきましては、逆に昨年の三年産米の不作ということを考えまして、生産者に対する保証額、手取り額を増額させたというようなこともありまして、あの原単位だけで単純にそういうことは出てこないと思います。  差額につきましては、その使用等につきまして、系統の中に共同計算委員会というのがございまして、そこでいろいろ御論議をいただいて、さらにそれを理事会に諮って管理しているということで、私はきちんとした対応ができているのではないか、できておるというふうに承知いたしております。
  156. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 差額は共同計算委員会でされている、そういうお話でございました。私は、不正があるとかないとか言ってない。オープンにしてくれもともと、そうでしょう。私が仮にこれを売るということにしましょう。そして、それは売り渡しの委託なんです。そして契約した文書の中にも、ちゃんと後で計算して精算する、こうなっているのです。だったら、どういうことになったか報告をし、返すに足りないお金だったらそれはプールするよとかなんとか報告して当たり前じゃないですか。  しかも私は、このプールされたお金は、今の御説明でももう既に消費拡大、在庫、そういうふうなことで資金は使ってしまったというふうに聞くわけですが、そういうことなんですか。
  157. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 他用途米につきましても、やはり生産者の委託を受けて一括全農が対応しておるわけでございますので、生産者に対しては特殊な説明というのは必要であろうかと思います。それは系統内部で十分末端まで説明するような指導はいたしたいというふうに考えています。  それから、今までの差額につきましても、先ほど言いましたように販売促進対策あるいは需要拡大対策等に使っておりまして、全農にあるものにつきまして、正確にちょっとお答えはできませんけれども、一部あると思いますけれども、そう多くはないんじゃないかというふうに理解しています。
  158. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そんなことでみんながそうですかというふうに納得することができますか。私はそのことで、この金額の使途について資料を出すようにもうずっと要求をしているのです。そして、待ってくれ待ってくれで、とうとうきょうの午前中までに提出するという約束までいただいたのにまだ出されていないのです。考えてみれば当たり前のことでしょう。もしそういうことをして資料を提出したら重大な違法行為の裏づけになる、そういうことからあなた方は出せないんじゃありませんか。人のお金を本人が知らないうちに使ってしまったわけで、このことを見逃してきた監督官庁としての農水省の責任は極めて重大であると言わなければなりません。  大臣、厳正で迅速な事態の解明と農水省の厳しい責任を要求するものでありますが、いかがでしょうか。
  159. 鶴岡俊彦

    ○鶴岡政府委員 要求された資料につきまして、私どもが調整できるものは早速出したいと思っております。  それから、今のお話につきましては、私ども全農に対して請求しておるわけでございます。それは、もし先生にきょうこれまでに出すと約束してあって出せなかったのであれば、私はおわびをいたしたいと思っています。  それから、これにつきましては、私は、やはり委託契約の話でございますので、契約に則して対応してくれると思っていますので、それは十分経済連あるいは一次集荷業者を通じまして、委託者にわかるような説明をさせるよう努力したいと思います。
  160. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 こんな不透明な米の販売をしておいて、農民にまるで法律で義務化されたかのようにして供出を強制することは、私は決して許すことはできません。私は、最後に大臣にこの問題に対する御見解をお伺いしておきます。
  161. 田名部匡省

    田名部国務大臣 他用途利用米については、国内産で自給するということでありまして、生産者の方々にその趣旨を十分理解してもらうことが必要であります。今お話を伺っておって、生産者団体に対しても今後指導を徹底してまいりたいと思うし、生産者にも十分わかるように説明をするようにいたしてまいりたい、こう思っております。
  162. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ちょっと委員長、議事録を……。
  163. 平沼赳夫

    平沼委員長 速記をちょっととめて。     〔速記中止〕
  164. 平沼赳夫

    平沼委員長 それでは、速記を再開してくださ
  165. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それでは、次の問題に入ってまいります。  けさほどから問題になっていると思いますけれども、米の輸入自由化の問題です。日本政府代表は、日本は包括的関税化の原則そのものに反対しているわけではない、ごく限られた一部の品目について例外となるよう要求しているにすぎないと発言された、これは政府の公式文書の中に書かれていることであります。  大臣日本政府は包括的関税化の原則に反対をしているのではないでしょうか。これは明らかに方針転換ではありませんか。今度のような方針各国に明らかにしたならば、東京サミットで議長国としてウルグアイ・ラウンドを成功させるということを名目にして例外なき関税化の原則受け入れを表明する危険性は極めて高いと判断せざるを得ないわけであります。東京サミットでこれまでの方針を変更しないとの保証を私は大臣にここで明確に表明をしていただきたいわけであります。
  166. 田名部匡省

    田名部国務大臣 従来からもう何回も申し上げておりますように、私どもは今まで貫いてきた方針、これは最後まで国内産で自給するとか、あるいはこの国会決議の趣旨を体してやるということには変更ございません。
  167. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この文書はどうなるのですか。わかるように説明してください。包括的関税化の原則そのものに反対をしているわけじゃない、ごく限られた一部の品目について例外となるよう要求しているだけである。
  168. 眞鍋武紀

    眞鍋政府委員 今おっしゃられたのでございますが、要するに包括的関税化そのものに反対である、こう言っているのですが、原則そういう関税化をするとしても、米とか生産調整をしている品目については例外にしてほしい、こういう要求をしておるわけでございますので、いずれにしましても、我々は米及び生産調整をしているようなそういう品目については例外を設けてほしいというふうに要求をしているというのは、前から御説明しているとおりでございます。
  169. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もともと官僚の言葉というのはわかりにくいし、日本語も大分外国から聞くとわかりにくいのです。こういうあいまいな表現は以後慎んでいただきたい。一層国際的な誤解を拡大することになるわけですから、きっぱり言うところは言った方がいいのです。イエスとかノーとがはっきりした方が私はいいと思います。  次に、新政策の問題についてお伺いをいたします。  まず、先ほども言われておりましたけれども指摘しなければならないのは、この新政策の進め方の問題であります。  政府の、農水省の検討文書を見ましても、国民の合意を得て、そういう表現がありました。この問題は、農基法農政、いや戦後の農政の抜本的転換、すなわち家族経営農業から企業的農業への転換、そして九割の農家を切り捨てるという大改革を中心内容とするものだけに、国会でのその妥当性についての審議を待って進めるべきが当たり前であります。しかし、農水省はそのようなことを極力避け、次々とみずから決めた新政策に基づいてその既成事実化を進めてきました。こういうやり方は、既に発足しました自主流通米の価格形成機構、そのときもそうでした。私たちは何度も国会の論議を要求したのです。大臣、このような大改革を国会での審議を極力避けるようなやり方で進めたことについて、まず反省を求めたいわけであります。
  170. 田名部匡省

    田名部国務大臣 反省をと言われましても困るわけでありますが、極力、私もみずから各県を訪問して意見を聞きましたし、それぞれ地方の農政局長を初めいろいろな意見を伺いましたし、従来からいろいろなところのデータを集めまして、優良事例等、こうすることによって非常にうまくいっているというのも調査をしたり、いろいろやりました。そのやったものを、農業団体も入っておりますし市町村長さん方もお入りいただいて、農政審等で専門家の皆さん意見も十分伺ってやっておるわけでありまして、大体そういうことで大方の意見は賛成、反対意見がむしろない中で決まりましたので国会の議論をお願いしたい、こういうことでありますから、決して何か無計画にやっているわけではなくて、望ましい方向というものを、一つの案をつくりまして、そうしてお願いをしている、こういうことであります。
  171. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 集中審議など一度もしたことないのです。私は、臨時国会でもこの問題について集中審議しましょうということを理事会で提起をいたしました。そしてみんな賛成されたのです。それでも積極的な政府の働きかけがなかった。だから私は申し上げているわけであります。  この問題、これからの農政の進路にかかわる問題です、日本農業の進路にかかわる問題です。したがって、私はここで委員長に要望いたします。新政策については、これからの農政の大変革であるわけであります。委員会として現地調査もし、公聴会も開き、参考人質疑もやり、十分新政策の妥当性について審議を行われるよう、お取り計らいをお願いしたいわけであります。
  172. 平沼赳夫

    平沼委員長 いずれその件に関しましては、理事会でよく協議をさせていただきます。
  173. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そこで、我が党は、昨年の秋に全国七道県、十八市町村にわたって、新政策が果たして妥当なものか、日本農業農村にどのような影響を与えようとしているのか、リアルに明らかにするために全国調査を行ってまいりました。時間が限られておりますから、ほんの一部にすぎませんが、その結果に基づいて質問をしたいと思います。  まず、私ども調査で明らかになったことは、十ヘクタールから二十ヘクタールの大規模な経営体農業生産を担わせるという規模拡大政策が多くの問題を招くということであります。どこでも指摘されたことは、大規模な経営体に生産を担わせることによって過疎化の進行が起こり、地域の集落の維持ができなくなるのではないかということでありました。大臣はこの問題についてはどうお考えでしょうか。
  174. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私も随分回りましていろいろな意見を伺いますと、どうも自分の身に置きかえて、そんな広い農地がないという意見が非常に多いんです。これはないところに無理に進めようというものではない。ただ、やれるところもあるわけですね。そういうところが、現にもう放棄地もあれば、耕作面積がばらばらになっていまして、効率も非常に悪い。そうしたものを考えたときに、もっと機械が効率的に働けるようにできぬだろうかということでやっておるわけでありまして、おっしゃるように北海道から九州まで、あるいは沖縄まで、それぞれの条件がみんな違うわけでありますから、必ずしもこの法律によって何が何でも、嫌な人まで無理にさせようというのではないのでありますから、意欲を持って取り組みたい、その取り組むところには、税の面でありますとか土地改良等の補助率をどうするとか、いろいろなことも考えながらやっているわけでありまして、どうも余りない人がわあわあと反対されるので、私も行ってみて、実は困ったなと、こう思っておるのでして、やれるところの人の反対というのなら別でありますけれども、秋田県に参りましたときも、大体一時間二十分私がお話をして意見を伺ったんですけれども、むしろ激励されまして、いやあよくわかった、これでしっかりやってくれと、こういう激励をいただきましたが、余り反対という声はなかったし、北海道でもそうでした。まあ多少いろいろなことのこまい問題はありましても、大筋我々が考えている方向でよろしいという意見が非常に多かったことをつけ加えておきます。
  175. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大臣を前にして、大臣がとってもすばらしいもんだと旗を上げている新政策に、そういうのはぐあい悪い、そんなものは全然違うよって言うのは、なかなかこれは勇気の要ることでしてね。私が思うに、それはきっとまた、その大臣に会われる皆さんも必ずセットされて、そういうことを言う人をちゃんと座らせていると思うわけです。そして、そういう大規模でやってくれたらいいよというところをほんまに大臣に一回マップでも見せてもらいたいものだ。そういうところほど、これ以上規模を拡大したら集落が成り立たなくなる、そういう切実な声を、実は私は北海道でも滋賀県でも大潟村でも、そのほかのところでも、聞いてまいりました。私たちは中山間ばかり回って意地の悪い結論を出したわけではありません。  それから、私はきょうは青森ばかり言って本当に恐縮ですが、御出身の青森は日本一の出稼ぎ県です。全国の出稼ぎの四分の一を占めているわけであります。先日、その青森県の森田村から出稼ぎに行った原田さん親子が東京の江東区のガス爆発で亡くなられました。私は早速にこの原田さん親子を弔問してまいりましたけれども、なぜ出稼ぎに行くのか。もう農業では食べていけないからだ、政府農産物価格政策では食べていけない、さらに、青森の農村部は男の人が働けるような製造工場が進出してこないで、みんな女の人が低賃金、長時間労働型の企業で働く、そういうところはできてきたとしても、そういうところは少ないし、だから出稼ぎに行かざるを得ないんだ、こういうことを言われたわけであります。  この青森県で、規模拡大をやって九割の農家が切り捨てられるというこの新政策をもし進めていったならば、農家が離農し、東京などに家族ぐるみで移ってくるようになるでしょう。ただでさえ出稼ぎで集落の機能が落ちているのに、さらに深刻な事態に陥ることは明らかであります。青森県のことですから、大臣はいかがですか。
  176. 田名部匡省

    田名部国務大臣 青森県もこれまた全部一緒ではありませんで、それぞれ八戸周辺の農村、青森、弘前、このあたりはみんな働く場所が確保されるわけです。そうでないところは大体積雪寒冷地帯で、冬は農作業というのは全くできない地帯でありまして、何とか各市町村で農村工業導入法とかいろいろなことでやるのですけれども、今おっしゃったように、どちらかというと女性の方々の働く場というものは進出してくるわけであります。大変雪が多いものですから、地理的にも遠いということで、東京の方の企業の人たちが余り積極的に出ようとはしないわけでありますが、しかし、ここ二、三年で企業が大変進出してきてくれております。したがいまして、農業でも、例えば加工とかいろいろなものを進めながら就労の場を確保するとかいろいろなことを努力をして、あるいは都市に近いところは道路整備をしてその村にいながらにして働けるような環境、これは県を挙げて私ども今一生懸命努力をいたしております。  確かにおっしゃるとおり出稼ぎでは日本一と言われておりますから、一日も早くそういうことのないように私どもは努力をしておるということでありまして、決して農村をだめにするという気持ちは全くありません。むしろ、何とかそれを維持して頑張っていってほしい、こういうことでやっております。
  177. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 農村工業導入法の問題についてもここで私議論しましたよね。私は青森、青森と言いますが、要するに農業県ですから、だから、農業県を視察しよう、調査しようと思ったら、大阪は近郊農業が生きていますよ、私はこれを大事にしたいというふうに心から思っていますが、やはり国民食糧を賄っているのは紛れもなく青森であり、秋田であり、山形であり、新潟であり、北海道であり、九州であり、そういうところですから、私はそこへ行くわけです。そして、農村工業導入法のときも私は青森へ行きまして、名前は今忘れましたけれども、ウイスキーの工場ができるというのでえらい期待されていたけれども、村の方は一生懸命準備しているけれども本体が一向に来ない。私は就労の場を確保する努力をされているということを否定するわけじゃありませんし、そういうふうな就労の場をその地域地域で確保できるようにしていけばいいというふうには思っていますけれども、現実はそういうことになっていない。そういうことになっていない中でこういうふうな政策が出されてきたら、自分たちはもう農村から追い出されるのか、そういう不安を持つのは当たり前のことじゃありませんか。  時間がもう参りましたので、私はこの後大規模農家の実態の問題だとか価格政策の問題について議論をしていきたいと思いましたけれども、ぜひ集中審議でまたそれをやっていきたいと思います。いずれにしても、現実に日本農業を担っている農家の経営が成り立つように今何をするべきか、農民は何を要求し、それにどう政治がこたえていくのか、そのことが大事なことじゃないでしょうか。農業というのは大地に足をつけてする仕事なのです。だとしたら、農政も大地に足をつけてやろうじゃありませんか。現実から出発するべきです。それが何かこういうふうに現実と余りにも乖離した新政策が出されたことに、私は戸惑いと同時に、これはやはり米の輸入自由化を前提にしたものではないかという不安も強く抱かざるを得ません。何としてもこれは撤回し、そして改めて検討していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  178. 平沼赳夫

    平沼委員長 小平忠正君。
  179. 小平忠正

    ○小平委員 委員長、御就任おめでとうございます。大事な案件を抱えた委員会ですから、よろしく綱さばきを御期待申し上げます。  そして田名部農相、今我が国農政が内においても外においても大変な時期に御留任されて、まずまずの活躍を心から御期待申し上げます。頑張ってください。  そこで、私も今質問を聞いておりまして、今回、政府が昨年六月に出しましたいわゆる新政策、そして先月出された中間報告、これらの推移を見るにおいて、私どもが国会において十分審議をすることなく、構造立法を初めとする幾つかの法案を策定をし、この国会に提出をし、あるいはこれをしようとしていることに対しては、やはり私も、国会軽視の感を免れない、こう思います。私としては、これについては苦言を呈したいと思います。私も個人的に何度か農水省に中間の時点での報告等を求めました。しかし、一切これもなく、こういう形で突然に発表されて、それが私どもの耳に入る。私も農水委員の一人として、できるならばこういう大事な問題は事前にお聞きしたかった、そんなことをこの経緯について思います。  そこで、この新農政、何もしないよりはした方がいいですから、その意味においてはこれらに着手したことについては評価をいたします。しかし、問題はその中身なので、これからどう進められていくのか、そこのところを思いながら幾つかの点にわたって質問いたします。大臣には後でちょっと御答弁いただきますので。  そこで早速、農業基本法のことですが、私は、新農政の推進に当たってまさに基本的な問題は農業基本法にあるのではないかと思います。言うなれば農業基本法農業の憲法であり、三十年前にできた基本法がこのままでは新農政と乖離していると思いますので、そういう意味では、これについて前の農相が勇気ある発言、見直し等の発言も一時ありました。しかし、田名部農水大臣はこれについて余り言及されていない、そんなことを私は残念に思います。  このことを思いながら、今回の新政策、私は幾つか評価したい面もあるわけであります。言うならば、従来の効率性のみを重視した農政を反省し、農業の持つ外部経済効果を評価していること、また、国内農業生産の維持拡大を打ち出したこと、今後育成すべき経営体目標を示したこと、環境保全型農業の推進を打ち出したこと、これらは評価をいたします。しかし、問題は、これをいかに国民的なコンセンサスを得て具体的に政策として反映するかということだと思います。その意味からも、重ねて申し上げますけれども農業基本法の抜本的改正、これが必要ではないでしょうか。特に、重ねて申し上げますけれども農業基本法農業の経済合理性を追求する法体系になっており、本当に大臣どうですか、新政策とはやはりなじまないと思うのですね。これについて、見解といいますか、御意見をお伺いしたいと思います。
  180. 田名部匡省

    田名部国務大臣 農業基本法のことでありますけれども、基本的には基本法方向で私はよろしい、こう思っております。  ただ、どんな基本法をつくってみても、やはりそのときどきに事態というものは変わっていく、あるいはその年だけに限っても問題が出てくる等、いろいろなことが考えられると思うのですね。ただ、生産性向上させ、そして所得が他産業並みというような基本的なことは、これは不変のものであっていいわけでして、その中で、例えば後継者が不足してきたとかあるいは高齢化が進んだとかいろいろな場面というのはあると思うのです。そのことを一体どう変えていくか。基本法を変えることなのか、あるいはそのときにマッチした進め方でいいのかというところの議論はあろうかと思うのですが、基本的なことを変える場合には基本法の改定ということは私は当然あってしかるべきだと思いますが、今やっている内容というものは決してその方向と別な方向へ行っておるわけでもないのですから、これでとにかく私は進めてよろしいということを考えておりますし、またおっしゃるように、環境問題でありますとかいろいろなことが昨今、あるいは安全性、そうしたものが国民の中に高まってきたということを考えると、あるいは国土の保全でありますとか、いろいろなことを考えると、ただ合理主義あるいはそうしたことだけでやれないという面もある。そういうことを加味しながら、新しい政策の中で、基本は変わっているわけではありませんので、そういう方向で進めるということでありますから、今後とも我が国農業発展を期して全力を挙げて努力をしていきたい、こう考えております。
  181. 小平忠正

    ○小平委員 私は見解を異にいたします。やはり農業基本法は、当時農業として自立していけるという、どちらかというと強気の時代にできた法ですよね。しかし、御承知のように農業というのは大きく環境が変わりました。だからこそ今は新農政が策定されたわけだと思うのですね。そうなると、これはこれとして新政策をやろうというのでは、やはり無理があると思うのです。やはり平たく言って、農業の置かれている状況というのは、経済合理性を追求できた時代と今は違う。したがって、農業というのは、言うならば非生産効果の高い産業である、であるけれども守り抜いていかなきゃならないんだ。特に最近は、農業だけではなく環境という問題が言われていますよね。そういう意味においては、農業が持っている意味というのは、単なる食糧という面だけじゃなくて、いわゆる世界の環境という意味合いにおいても、我が国農業をしっかりと守っていくことはそれに非常に寄与する、私はこう信じております。したがって、そこのところの精神をここで改めて問い直すということは私は必要だと思うのですが、大臣、私はそういうことで見解を異にいたします。  時間もあれなんで、次の点へ進ませていただきます。  この新政策で育成すべき経営体についての件でありますが、今まで我が国農政で欠落していた大きな点というのは、政府農業の将来展望を示し得なかったことじゃないかと思います。この点、新政策においては十年程度を見通した望ましい経営体の指標が指示されたことに対しては評価をいたします。しかし、問題はその中身であります。  この新政策では、一つは稲作を主とする個別経営体は十五万戸程度で、このうち稲作単一系は十から二十ヘクタール、これを五万戸程度、野菜などの集約作物との複合経営については五ないし十ヘクタール、これについては十万戸程度、稲作を主体とする組織経営体は二万戸程度と、こうしておりまして、この個別経営体組織経営体によって稲作生産の八割程度のシェアを確保したい、こうしておりますけれども、果たして今の農業の現状からしてこのことが可能でしょうか。私は、このことは単に絵にかいたもちのような、そんな危惧をいたしております。これを具現化するにはやはり具体的なアプローチが、そしてプロセスが必要だと思うのですけれども、これについてはどのようにお答えいただけるでしょうか。
  182. 入澤肇

    ○入澤政府委員 先生御指摘のとおり、非常に難しい課題に我々は挑戦しようと思っているわけでございます。現に我が国農地状況というのは、一農家当たり大体十四筆に分かれて持っているというふうに、零細分散錯圃であります。しかし、そういう中で重労働から解放するという観点からも機械の使用効率を高めなくちゃいけない。そうしますと、やる気のある農家、望ましい経営体農地を集積させていく、連担化し、また集積させていくことが非常に重要な課題なわけであります。従来からこういう政策に向けて、構造政策と言っていますけれども、いろいろな政策をやってきているわけでございます。  しかし、政策の中では、一、二例申し上げますと、切り捨てということは、これは一片の通達とか法律でできるものじゃございませんでして、地域の実情に応じて話し合いを積み重ねながら、地域農業の担い手に農地利用集積されるように利用権を設定する事業をやっています。これは農地利用増進事業と申しております。  それからまた、農業委員会が一生懸命、掘り起こし活動というふうに言っていますけれども農地銀行活動などをやりまして、農地が担い手に集積できるようにいろいろな活動をやっています。  それからまた、各都道府県それから農協それから市町村の農業公社ができまして、公的な機関が介入いたしまして、農地の売買とか貸借等の権利移動のお手伝いをするというふうなこともやっております。  こういういろいろな手だてをやっているのですけれども、今後の農地状況を見てみますと、かなり大規模に流動化が進むのじゃないかということが見通されるわけであります。午前中も御答弁申し上げたのですけれども、今までの十年間で七十一万ヘクタールが移動した。これに利用権の再設定だとかあみいは所有権の移転の交換を含めますと、九十万ヘクタールぐらい流動化する、こういうふうな状況だったのですけれども、今後さらに、六十歳以上で後継ぎのいない高齢農家が持っている農地が四十二万ヘクタールもございますし、それから安定兼業農家、これは第二種兼業農家のうち世帯主が恒常的勤務をやっている、自営兼業でございますが、そういう人たちの保有農地が百二万ヘクタールもある。こういう農地を担い手に集積させていかなくちゃいかぬ。出し手となり得る者の農地はもう十分にあるわけでございますが、これを具体的に農業経営を担っていく人たちに集積させなくちゃいけない。  それで、これからどのくらい面積が出てくるかなというふうに考えますと、今申し上げました四十二万ヘクタールとか百三万ヘクタール、こういうふうなものを勘案いたしますと、過去十年間の二、三倍、恐らく百七十五万ヘクタールぐらい農地の流動化が見込まれるのじゃないかなというふうに見ているわけでございます。今後はこういう大規模な農地の流動化ということをどのようにして具体的に進めていくかということが大きな課題になるということでございまして、今国会に農用地利用増進法、農地法等の改正を内容とする法律案を提出してこれから御審議をいただくことになっているわけでございます。  大事なことは、私は、農政というのはやはり理念を掲げてそれに向けてリーダーが旗を振っていく、地域の話し合いを通じながら集落のコミュニティーを維持しながら、なおかつ農業生産を維持していくということが極めて大事でありまして、そういう場合の目標を定めることが必要じゃないかというふうに考えております。この法律でも、育成すべき農業経営それから実現すべき農業構造の目標を定めまして、関係機関とか地域の関係者が一致して取り組むべき運動目標を明確化するということをまず定めております。それから、新しい方法といたしまして、農業公社が農業生産法人に農地を出資する、そして農業生産法人の財務基盤、経営基盤を強化して、家族農業経営と並んで法人経営も進めていく。さらに、農地の売り渡し、信託等を含めて農地保有合理化事業を抜本的に強化する。こういうふうな手段を講じつつ、さらに農業経営体に対しまして税負担の軽減や必要な財政上、金融上の助成措置を講じていくということで、運動論を強力に展開しながら、可能な限り担い手となる農家農地を集積していくということで、施策の拡充を考えているわけでございます。
  183. 小平忠正

    ○小平委員 それでは、経営体のいわゆる所得の問題でちょっとお聞きいたします。  この新政策では、個別経営体なり組織経営体の主な従事者の年間所得を八百万円、大体このくらいにしておりますね。これでいきます場合にはどのような米価水準を想定されているのか。ということは、米価が今後これ以上下落した場合にこの八百万円というラインを維持することは、私はもう不可能だと思うのですね。  なぜかというと、一つの例をもって言いますと、北海道において、過去酪農という経営がこの道をたどりました。御承知のように根釧地区、今地震で大きな被害を受けた釧路のあの一帯ですね。いわゆる政府の指針に従って規模拡大をして、大きなサイロをつくったり畜舎をつくり、そういうところにいわゆるゴールなき規模拡大を続けた、そういう姿がございますね、北海道の酪農。ところが、結果としては、ほとんどの皆さんは大きな借財を抱えて、そして逃げ道がなく、そこにもってきて過般の牛肉の自由化、このダブルパンチを受けて、経営は危機ところかもうどうしようもないところまできていますよね。  これを思い起こすときに、水田についても、あるいはほかのこういう集約農業にしても、やはり同じ道をたどるのではないか。この新政策にのっとってこういう方向に進んでいった、いわゆる規模拡大してきましたら、同じ結果、負債にあえぐ農民をあちこちにつくってしまう。これについてはどのように考えておられるのか、ひとつわかりやすい御答弁をいただきたいと思います。
  184. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 新政策個別経営体一つの要件としまして、私ども、他産業の従事者と遜色のない水準の所得を獲得できるということが大事な要件だというふうに考えているわけでございます。そういうことで、将来の担い手の経営体の姿のようなものとして、稲作の場合の個人の農家の経営規模として十から二十ヘクタールというようなことをお示しをしているわけでございますけれども、具体的に所得水準をどう考えるかということにつきましては、これはいろいろ条件の変化もあって難しいところがあるわけでございまして、新政策の中に直接的にその目標を掲げているというものではございません。  ただ、今お話がございましたように、そういう将来の安定的な農業経営体というものを考えてまいります場合に、規模なりなんなりを考えてまいります場合に、他産業と農業所得と見合うというようなことから、どの程度の所得が上がるような農家というものを、農業経営者というものを考えるかということで、先ほど、午前中にもお話を申し上げましたが、二億なり二億五千万くらいの生涯の収入というものを得られる、それが通常の他産業従事者の生涯所得であろうということで、これをライフサイクルとでもいいますか、若い時代農業に就業をし老年になってリタイアする、その間の毎年の所得というふうに当てはめて考えてみた場合に、大体八百万ぐらいになるのではないかというふうに考えたわけでございまして、この水準というのは、一番最初に申し上げました他産業の所得水準というのが現状でのお話でございますから、前提としては、現状のいろいろな条件のもとでそういうことを考えたということでございます。  ただ、具体的に、じゃそのときの米価がどうだこうだという話になりますと、なかなか難しいこともあるわけでございますけれども、現状での所得農家所得というものが八百万ぐらいに上がる、それからそういう経営体が用いられる技術体系というものが現実にどういうものであるのかというようなことも検討をいたしまして、個別の農家でございますれば十なり二十ヘクタールぐらいの経営ならやれるし、それによって先ほど申し上げましたぐらいの他産業就業者並みの所得というものを現段階で確保できるのではないか、こういうことで申し上げているということでございます。  あくまでも経営体の姿を考えて、目に見えるように、御検討のための一つの姿としてお示しをしている、そのための前提の計算としてそういう数字を用いているということでございます。
  185. 小平忠正

    ○小平委員 上野官房長おっしゃるとおりになればそれはもう言うことなしですが、果たしてその実現が非常に難しいような気が私はいたしますね。  それで、じゃもう一つ、今のそういう計画で十から二十ヘクタールということなんですが、そうなると、当然今度は捨てられる側の農民が出てきます。そこで、この規模拡大に即応して農地を提供する側になる兼業農家や高齢農家に対する農政上の位置づけというか、このことが当政策、新政策では明快に見えておりません。したがって、このことが小規模農家の切り捨てにつながる。これではいわゆる政治の原点である弱者救済ということに相反します。したがって、これらに対しての配慮がどうこの中に盛り込まれているのか、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  186. 入澤肇

    ○入澤政府委員 十とか二十ヘクタールということについて若干補足させていただきますと、先ほど先生おっしゃいましたとおり、農政目標がない、それで目標を出したということは非常に評価されるということは非常に私ども感激しているわけでございますけれども、要するに農業が他産業と比べて遜色のない職業である、誇りを持って選択し得る職業であるということを示すためには、やはり何らかの形で目標というものがあっていいのではないかということで、所得と労働時間、労働条件の改善と、三つの観点からいろいろな検討を加えて目標を示したわけでございます。  ただいま稲作についてだけ新政策ではあのような形で出したのですけれども、同時に、各都道府県における地域の実態に応じまして、どういう経営をやったら生涯所得として二億とか二億五千万取れるんだろう。生涯所得二億とか二億五千万ということは三十年の農業のライフサイクルからしますと大体八百万、一千万ということで、八百万とか一千万という数字を出したわけでございます。八百万とか一千万という所得確保するためにどういう経営でどういう作物をつくったらいいのかというのがその次の課題で、たまたま稲作について、単一経営であれば十とか二十、複合経営であればどのくらいの規模というふうなことが示されたわけでございます。  これは、これから法律を制定していただきまして、各都道府県ごとに、具体的にその地域ごとに経営規模、作物の組み合わせ方等について指針をつくってもらうことにしております。私ども途中経過で検討しましたときに、例えば三ヘクタールでも十分に八百万とか一千万取っているところもございますし、一ヘクタールちょっとでも取っているところもございます。ですから、あれは稲作について一つの物差しとして提示したものでございまして、このぐらい所得があれば他産業と比べても十分に遜色ないものとして選択できるんだよという、その勇気を与えるための一つの指針というふうに御理解していただきたいと思うのであります。  そこで、今の御質問なんですけれども、そういう目標を掲げたからといって、達成しない、その目標に適合しない人たちを一方的に村から追い出すとか切り捨てるとか、そういうことではございません。集落を基礎とした地域の関係者が十分な話し合いをしながら、育成すべき経営体農地利用を集積させるということがこの新政策の課題でございまして、そういう中でそれぞれの地域の農業者がどのような選択をするかということが、話し合いがなされなくちゃいかぬわけでございます。  いろいろな事例がございます。例えば、ある県のある村では二千世帯ございますが、そのうち農家が五百数十世帯、全部兼業農家だ。全部兼業農家だと、最初は一反歩当たり十俵くらいとれた。ところが、だんだん手抜き作業になったり、あるいは技術の伝承ができなくなって六俵とか七俵とか非常に少なくなってきた。そこで村の関係者が、特に長老の方々が心配いたしまして、この村の立地条件を生かして生産性を上げ、収穫を上げていくにはどうしたらいいだろうかというような話し合いを重ねながら、二戸の農家をまず特定いたしまして、その農家に稲作を全部任せるというふうな選択をいたしました。現在はその地域では五戸の農家がグループをつくってやっていますが、じゃ、それ以外の五百数十戸の農家はどうやっているかといいますと、これはまた自作地、自留地を持って他作物をつくる、換金作物をつくって、そしてその所得が大体村全体で均衡するような努力をやっています。  要するに、専業的になっていく農家、それから生産組織に入って役割分担をする農家、それから兼業農家として他の作物、例えば花とか野菜をつくって所得を上げていく農家、それから、もう高齢で年金生活だけで十分だというところは土地持ちの非農家として地代収入をいただいて生きていく農家、そういう農家が集落の中で、村の中でそれぞれの役割分担をする、いろいろな農業について、あるいはコミュニティーの中でやらなければいかぬことはたくさんあります。そういう役割分担をそれぞれやってコミュニティーを維持していこうということでございまして、そういうふうな例をたくさん調べながら、また、そういうふうな例に学びながら、これから農政展開していくということでございまして、切り捨てということではございません。  それからまた、そういう機会に、兼業農家の兼業機会をどうやって確保していくかということでございまして、それにつきましてはいろいろな問題があるかもしれませんけれども農村工業導入の措置だとか、あるいは労働省とも十分に連係プレーをやりまして、転職の相談活動をやるとか、就業訓練等の離農者の他産業への円滑な就業を促進するような事業もやりますし、それからまた今度は、新しく農地保有合理化法人が持っている農地を使いまして研修をやるとか、あるいは離農希望者から農地の売り渡し信託を引き受けて、あわせて委託者に対して無利子の資金を貸し付ける農地信託等の事業も行う、いろいろな事業をやりながら村全体の活性化を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  187. 小平忠正

    ○小平委員 それでは局長に、ちょっと視点を変えてお聞きいたしますが、それをそうやって育成していくためには、当然その担い手が必要ですね。ところが、もう既に御承知のように平成三年は千七百人でしょう、新規就農者は。Uターン組だって何人でしたか、二千三百人ですか、要するにUターン組は。昨年、平成四年はまだ出ていませんね。何人でしょう。間違いなく千七百人から減っていますね。そういうような現状の中で、今この新政策では、十年後では個別経営体を三十五万から四十万戸と予定しているのでしょう。こんなこと実際可能ですか。そこのところはどうなんですか。
  188. 上野博史

    ○上野(博)政府委員 今おっしゃられた数字というのは、将来十年後ぐらい先を見通した場合に、私どもが今御検討をお願いしておりますこの新農政考え方農業を支えていく方々の姿になるというふうに考えているわけでございますけれども、現在の基幹的農業者の数、そういう数字の実態から考えまして、今申し上げられたその程度の数字というのは実現性が十分にあるというふうに考えております。  先ほど来の御議論を聞いておりまして、ややその発想が逆なのではないかなというふうに私受けとめたわけでございますけれども、現在の土地利用農業我が国の姿でございますと、だんだん老齢化をして後継ぎがいない、土地は耕作放棄という状態になってくる、そういうものがふえてくる、これではやはり農村とか農業とかいうのは先行きが非常に薄いというふうに考えるわけでございまして、そういう状態のもとでどうやって先行きの農業農村というものを考えるかということになりますと、やはり若い人が自分で将来の自分の職業として、あるいは自分の住みかとしてその地域なり地域の農村なり農業というものを選ぶという、その魅力というものがやはり私は必要なんではないか。この魅力を備えるということは、とりもなおさず、所得で言えば、他産業で村を出てよそのところに就職をするのと余り大差のないような水準の所得が得られる、労働時間も大して違わないというような、あるいは生活環境ももちろんあるわけでございますけれども、そういう条件を整えることこそ、現在の新規就農者の問題等に対応する道なのではないかというふうに考えるわけでございます。
  189. 小平忠正

    ○小平委員 そういうふうに考えるその基本の立脚点が違うということなんですけれども、例えばほかの例で言いますと、今度羽田に新空港ができますね。今のはもう手狭である、古いし、新しいのをつくる、これはそれでいいと思うのですよ。でも農業というのは、今やっているその人たちのことを無視しては切りかえができないと思うのです。今上野さんのお話というのは、これはぱんと切り捨てちゃってこっちをやろう、そういうことでしょう。私は物と人は違うと思うのですよ。そんな意味において、非常に危惧をいたしております。  では、それにあわせてもう一点、現状の問題点で、農地の税制のことなんですけれども、私の北海道においても非常に流動化が進んでおります。そしてそれは賃貸よりは、どちらかというと離農とかそういうことで譲渡、所有権を移動をするのが、これが主流になっております。その場合に、現下の農地譲渡に伴う税制というのは、所得控除額が八百万円でしょう。そしてこれは、幾ら今バブルがはじけて農地が下落しているとはいいながらも、十から二十ヘクタールに大規模に動かそうとするときに、八百万の所得控除では全然足りないですよ。もうそれ以上の額がなければ離農できませんし、そこのところでやはり限度額を超えている売買が実際にもうある。ですから、売る方も、売ったって全然残らないということなんですよ。それが一点。  それからもう一つは、基礎控除後の税額が国税が三〇%、それから地方税が九%、合わせて三九%ですよ。これもやはり非常に高いと思うのです。私は、借財等の返済に苦しんでいる農家皆さん、基礎控除額が八百万円、これも低い、今度は税率は高い、それではもうダブルパンチで離農はできない、また、新規に拡大しようとしても拡大はできない、こういう状況に置かれております。したがって、これらについてはどういうふうにされていくことなのか。これは大蔵省の見解も必要でしょうけれども、まず農水省としてはどう考えておりますか。
  190. 入澤肇

    ○入澤政府委員 土地譲渡にかかわる特別控除の水準というのは、これは釈迦に説法でございまして、申しわけないのですけれども、土地所有権に対する私権の制限の程度、それからその土地の使途の公共性の強弱を勘案しまして、四段階に分かれているわけです。収用等対象土地は五千万円、それから特定土地区画整理事業等の対象土地は二千万円、それから特定住宅地造成事業等の対象土地は千五百万円、そして私どもがやっております農地保有合理化対象土地は八百万円というようになっているわけでございます。農地保有の合理化をさらに促進するという観点から、私ども、毎年毎年特別控除額を引き上げるように要望してきております。  平成元年度改正におきましては、一年限りの措置として五百万円から八百万円に引き上げられたわけでございますが、平成三年度改正におきましてこれが恒久化されたというところでございます。そのときには収用等のグループ、三千万円が五千万円に引き上げられて、それと農地保有合理化等のグループのみが引き上げられて、あとは全部据え置きということになっております。  平成三年度における農地保有合理化等にかかわる農地の譲渡のうち、八百万円以下の譲渡の割合というのは大体七二%だということで、我々引き上げる要求をしたのですけれども、なかなかさらなる引き上げが困難であったということでございます。  それから、譲渡所得税の税率につきましては、これもなかなか私ども低税率を一生懸命考えているのですけれども、譲渡所得税制の根幹にかかわる問題であるということで、引き下げが困難であるという状況にございます。
  191. 小平忠正

    ○小平委員 ちょっと時間が迫ってきましたので、幾つかまだあるのですが、もう一つ。  法人のアクセスなのですが、これについてはやはり資金力にまさる法人に席巻されないように、またこれが農地の土地投機につながっていかないようにしなければならぬと思うのですね。これについてもお考えをお聞きしたいのですけれども、ちょっと時間がないものですから、このことをしっかりとやる、そのためにできた農地法ですよね。農地法を今改正するのにここのところがやはり大きなポイントなもので、農地が法人の土地投機の対象にならないように、この点に十分に留意をしていただきたいと思います。  最後に、大臣、ちょっとラウンドのことでお聞きいたします。よろしいですか。  私も昨年末、またことしのお正月、ジュネーブにも出向いてまいりました。いろいろな場を通じてこのラウンドの状況を私なりに勉強させてもらっておりますけれども、最近思うことは、どうもガットの精神というもの、このことを、我々が海外に行って向こうの連中と外交交渉、議員交渉しましても、例えばダンケル氏ももう十年一日のこと三言うことは、日本皆さん、お国はガットの恩恵を受けて戦後の今日の繁栄があるのでしょう、こうくるのですよね。それに、だからいわゆるお米のような閉鎖性はいかがなものかな、そういう論法でくるわけです。  私はそういう中で思うのですけれども、このガットの真髄というのは自由貿易だ、そして究極の目的というのは関税を下げていって最後はゼロにするということだと思うのですよ。そして世界が自由に貿易をし合う。それでは、言うならば強い分野が、強い産業を持ったところが弱い産業の分野の国に対して席巻するという形になってしまうと、農業のみならずほかの分野でもやはりいびつな構造になるし、特に農業においては、機械化を進めた企業経営による大規模な農場経営というのは、言うならば自然荒廃の最たる原因になりまして、これが環境破壊、自然破壊につながっていくと思うのですよ。したがって、もうそろそろこのガットの精神というのは見直そうじゃないか。ガットというのは自由気ままに貿易をし合うことじゃなくて、自由貿易は確かにそのメリットはあった、でもそれが今日まで来た時点においては、それを見直して、今後はいわゆる調和というか、強い産業を持った国は弱いその同じ分野の産業を持った国に対して配慮をするという、この調和をし合うということを基点に置いていかないと、ガットは逆に崩壊すると私は思うのです。  したがって、今お米でもって日本は責められています。しかし、実際にアメリカにおいてもECにおいても、お米というのは向こうはメジャーなものじゃないのですよね。マイナーどころか、ECベック公使なんかはノーインクレスト、関心がないまで言いましたよ。マイナーどころじゃないですよ、もっと低い表現ですよ。ですから、お米というのは貿易上実際のメリットとは違うわけでしょう。そういうことを考えるとき、ぜひ大臣、これからこのラウンドの問題でいろいろな外交交渉に当たっていかれると思うのですが、ひとつそのガットの精神を見直そう、そこのところを考えていかれて、七月には東京サミットがあります。所管の大臣としてもこのガットのいわゆる基本的な理念の見直しということ、どうですか、このことを海外に向かって訴えていかれたらいかがでしょうか。私はこんなことを常日ごろ思っているものですから、一言私の意見を申し上げて、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  192. 田名部匡省

    田名部国務大臣 私も競争というのは、競争条件が互角でやるときに競争というのはできますし、条件が全く違うのに競争といっても競争にならぬということはもう何回も申し上げてきましたし、貿易そのものはやはり節度を持ってやるということは大事なことだと思うのですね。これを言うと、すぐヒルズ通商代表にしてもマディガン農務長官にしても、アメリカの自動車産業が日本にやられたじゃないかという話をされるのです。前にそういうことがあったから非常に言いにくい話ですけれども、私は、全体としてやはり節度を持ってやる、相手が足腰が立たぬほどやってしまうとやはりいろいろな問題が出てくるということを、最近いろいろなところで申し上げておるつもりであります。  おっしゃるとおり、この米問題についても、私どもは、生産調整を行っている場合一定の輸入制限が認められておる、この趣旨はやはり生かしていかなければいかぬということを申し上げました。この前、デンマークの農業大臣と会ったときにも、いや私の方だって自動車は全部輸入しているんです。酪農はこれだけ盛んですけれども、えさは全部買っている。それは、ないものは買わざるを得ないのであって、あるところに節度なしにやると摩擦が起きてくる。ですから、私の方だってないものは農産物を四兆五百億、大変な量を買っておるのですよ、買ってないわけではないということを申し上げております。  おっしゃるとおり、環境問題等がこれだけクローズアップされるといろいろな問題が改めて議論されて、FAOの事務局長に会いましたとき私は申し上げました。これは我々が言うのでなくて、FAO自体が、一体食糧というものは将来どうあるべきかということをあなた方がきちっと整理して、そしてこのガットなりウルグアイ・ラウンドに提言するべきだということを実はこの間申し上げてまいりました。そのとおりだと私は思うと言っておりまして、まあまあ行くたびにいろいろな方にいろいろな話を実はしているわけでありますけれども、おっしゃるとおり、貿易というものはそうあるべきだというふうに私も考えております。
  193. 小平忠正

    ○小平委員 終わります。
  194. 平沼赳夫

    平沼委員長 次回は、来る二十二日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時九分散会