○入澤
政府委員 十とか二十ヘクタールということについて若干補足させていただきますと、先ほど先生おっしゃいましたとおり、
農政に
目標がない、それで
目標を出したということは非常に評価されるということは非常に私
ども感激しているわけでございますけれ
ども、要するに
農業が他産業と比べて遜色のない職業である、誇りを持って選択し得る職業であるということを示すためには、やはり何らかの形で
目標というものがあっていいのではないかということで、
所得と労働時間、労働条件の改善と、三つの観点からいろいろな検討を加えて
目標を示したわけでございます。
ただいま稲作についてだけ新
政策ではあのような形で出したのですけれ
ども、同時に、各都道府県における地域の実態に応じまして、どういう経営をやったら生涯
所得として二億とか二億五千万取れるんだろう。生涯
所得二億とか二億五千万ということは三十年の
農業のライフサイクルからしますと大体八百万、一千万ということで、八百万とか一千万という数字を出したわけでございます。八百万とか一千万という
所得を
確保するためにどういう経営でどういう作物をつくったらいいのかというのがその次の課題で、たまたま稲作について、単一経営であれば十とか二十、複合経営であればどのくらいの規模というふうなことが示されたわけでございます。
これは、これから法律を制定していただきまして、各都道府県ごとに、具体的にその地域ごとに経営規模、作物の組み合わせ方等について指針をつくってもらうことにしております。私
ども途中
経過で検討しましたときに、例えば三ヘクタールでも十分に八百万とか一千万取っているところもございますし、一ヘクタールちょっとでも取っているところもございます。ですから、あれは稲作について
一つの物差しとして提示したものでございまして、このぐらい
所得があれば他産業と比べても十分に遜色ないものとして選択できるんだよという、その勇気を与えるための
一つの指針というふうに御理解していただきたいと思うのであります。
そこで、今の御
質問なんですけれ
ども、そういう
目標を掲げたからといって、達成しない、その
目標に適合しない人
たちを一方的に村から追い出すとか切り捨てるとか、そういうことではございません。集落を基礎とした地域の
関係者が十分な話し合いをしながら、育成すべき
経営体へ
農地利用を集積させるということがこの新
政策の課題でございまして、そういう中でそれぞれの地域の
農業者がどのような選択をするかということが、話し合いがなされなくちゃいかぬわけでございます。
いろいろな事例がございます。例えば、ある県のある村では二千世帯ございますが、そのうち
農家が五百数十世帯、全部兼業
農家だ。全部兼業
農家だと、
最初は一反歩当たり十俵くらいとれた。ところが、だんだん手抜き作業になったり、あるいは技術の伝承ができなくなって六俵とか七俵とか非常に少なくなってきた。そこで村の
関係者が、特に長老の方々が心配いたしまして、この村の立地条件を生かして
生産性を上げ、収穫を上げていくにはどうしたらいいだろうかというような話し合いを重ねながら、二戸の
農家をまず特定いたしまして、その
農家に稲作を全部任せるというふうな選択をいたしました。現在はその地域では五戸の
農家がグループをつくってやっていますが、じゃ、それ以外の五百数十戸の
農家はどうやっているかといいますと、これはまた自作地、自留地を持って他作物をつくる、換金作物をつくって、そしてその
所得が大体村全体で均衡するような努力をやっています。
要するに、専業的になっていく
農家、それから生産組織に入って役割分担をする
農家、それから兼業
農家として他の作物、例えば花とか野菜をつくって
所得を上げていく
農家、それから、もう高齢で年金
生活だけで十分だというところは土地持ちの非
農家として地代収入をいただいて生きていく
農家、そういう
農家が集落の中で、村の中でそれぞれの役割分担をする、いろいろな
農業について、あるいはコミュニティーの中でやらなければいかぬことはたくさんあります。そういう役割分担をそれぞれやってコミュニティーを維持していこうということでございまして、そういうふうな例をたくさん調べながら、また、そういうふうな例に学びながら、これから
農政を
展開していくということでございまして、切り捨てということではございません。
それからまた、そういう機会に、兼業
農家の兼業機会をどうやって
確保していくかということでございまして、それにつきましてはいろいろな問題があるかもしれませんけれ
ども、
農村工業導入の措置だとか、あるいは労働省とも十分に連係プレーをやりまして、転職の相談活動をやるとか、就業訓練等の離農者の他産業への円滑な就業を促進するような事業もやりますし、それからまた今度は、新しく
農地保有合理化法人が持っている
農地を使いまして研修をやるとか、あるいは離農希望者から
農地の売り渡し信託を引き受けて、あわせて委託者に対して無利子の資金を貸し付ける
農地信託等の事業も行う、いろいろな事業をやりながら村全体の活性化を図っていきたいというふうに考えているわけでございます。