○稲葉政府
委員 恩給の
改定方式につきましては、
委員ただいま御
指摘がありましたように、戦後何回か
改定方式の変遷を経ているわけでございます。
当初は公務員
給与追随方式ということで、行(一)の俸給表をそのままなぞって仮定俸給表をつくっておりました。
それから、昭和四十年以来は消費水準または物価方式ということで、これは公務員の年金
制度が恩給から共済に移ったというようなことも踏まえておりますけれ
ども、いわゆる通し号俸を廃止したことによりまして
給与に追随することが困難になったことから採用したものでございまして、何か
給与以外の指標として適当なものがないかということから消費水準または物価というような方式をとられたわけでございます。
それから、その後昭和四十一年には恩給法が改正になりまして二条ノニというのが追加されまして、これによりますと、「年金タル恩給ノ額ニ付テハ
国民ノ生活水準、国家公務員ノ
給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動が生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ
改定ノ
措置ヲ講ズルモノトス」ということが追加されたわけでございます。その後、恩給審議会方式というのがとられてきたわけでございますけれ
ども、この恩給審議会方式によりましての恩給のベア率は、物価にプラスして
給与と物価の差の六割を追加する、いわば六、四の比率で決められていたということになるかと思います。
しかし、その後昭和四十八年に至りますと、石油ショック等によりまして大幅な物価上昇がございまして、それに伴って厚生年金等も大幅に増加したわけでございまして、そういったものをとらえまして、恩給についても公務員
給与の大幅な改善に従っていかなければならないのじゃないか、そのようなことがございまして、公務員
給与改定率の一律アップ方式をとってきたわけでございます。
その後さらに、この方式によると一律アップでございますから、いわゆる下に厚く上に薄いというような改善はできないので、公務員の
給与表の
改定に従って上薄下厚方式をとりたいというようなことで公務員
給与改定の回帰分析方式などというのをとられたこともございましたが、ただ、先ほ
ども御説明しましたように、第二次臨時行政調査会あるいは第一次行革審で、確かに恩給というのは一種の年金的な要素も非常に含んでおりますので、他の公的年金が物価スライドでいっている中で、恩給が公務員のスライドでいっているというのは突出しているんじゃないか、この改善が必要なんじゃないかという御
議論がございまして、そういった御
議論を受けまして慎重に検討したわけでございます。
何度も御説明するようでございますけれ
ども、恩給というものは他の公的年金と違って国家補償的な特徴を有する年金
制度であるというようなこと、それから、原則として既裁定者に限っており、また
受給者も
高齢者ばかりであるというようなことで、これは他の公的年金
制度と横並びにすることは必ずしも適当でないということで現在の総合勘案方式がよろしいのじゃないかという
結論を得たわけでございます。
これはたまたま昭和四十一年に改正になりました
法律の中に「総合勘案」という言葉があるのでございますが、その中で
数字として使えますのが、文言としては「
国民ノ生活水準、国家公務員ノ
給与、物価」とあるのでございますけれ
ども、
国民の生活水準というのは毎年毎年のフローとしてとらえていくというのがなかなか難しい
数字でございますので、その中で結局、国家公務員の
給与と消費者物価が毎年のフローとしてとらえられる指標じゃないかということで、それを総合勘案していくのが適切じゃなかろうか。そしてまた、全面的に物価というようなことになりますと、これは国家補償的な特質を持っている年金ということから、物価も適当ではない。それじゃ公務員
給与が適切かというと、やはりそうはいっても、ほかの年金と似たような性質を持っているので適当でない。
そういうようなことで、その辺を総合勘案するのがいいのじゃないかということで現在の方式になったわけでございますが、その中身につきましては、その年々の
状況によりまして総合的に判断しているということでございまして、そのルールがあるかというと、そういうルールはないのでございますけれ
ども、ただ、できるだけ、余り大きな変動があっては
受給者の
皆様方に不安を与えるということで、経済情勢に大きな変動がない最近の間におきましては、勘案の、いわゆる率のようなものは同一のようなもので推移しているのでございますけれ
ども、じゃそれがルールかというと、必ずしもそうでないということで御答弁とさせていただきたいと思います。