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廣瀬政府委員 まず、各公安
委員会がしました
指定に対しまして、どういう
団体が
審査請求、さらには行政
訴訟に及んだかということについてでございますが、現在まで
国家公安委員会に対しまして不服申し立てをした
暴力団は、五代目
山口組、四代目会津小鉄、二代目
工藤連合草野一家、沖縄旭琉会、
合田一家の五
団体でございまして、いずれも棄却をいたしました。このうち
山口組と会津小鉄、二代目
工藤連合草野一家、この三
団体が現在
取り消し訴訟を提起したというところでございます。
五
団体の
審査請求のときの向こうの言い分でございますが、大体大同小異でございまして、五つほどの向こうの主張がございます。
一つは、
暴力団対策法は憲法に違反する無効な
法律である。二つは、
指定は傘下
組織を含む全体を
一つの
団体としてなされたが、傘下
組織は別の
団体であるので、
指定は違法である。三つ目は、自分たちは
暴力団ではなくて任侠
団体であるので、
暴対法の要件を満たさない。四つ目は、
指定に当たりまして
構成員やそのうちの
犯罪経歴保有者の氏名を明らかにしなかったのは違法である。五つ目は、その他
指定のいろいろな
手続がございますが、その
手続に違法がある。大要そういう五点でございます。
これに対しまして
国家公安委員会はいずれも棄却をいたしておりますが、次のような考えから棄
却をいたしたものであります。
一つは、
暴力団対策法は、
暴力団員が
民事介入暴力行為や
対立抗争等により
国民に
被害、迷惑を及ぼすことを
防止する
法律であり、憲法に違反するとは到底考えていない、
基本的にはそういう認識でございますが、まず、行政機関であります
国家公安委員会におきましては、そもそも国権の最高機関たる国会が合憲と判断して
成立させた
法律について違憲性の判断をする権限がないので、違憲の主張については判断しないという、違憲の判断は挙げて裁判所ということで突っぱねております。
それから、二つ目でありますが、
指定された
暴力団は傘下
組織の
構成員を含め一全体が一体性のある
団体というふうに認められますので、
暴対法三条による
指定は適法である。
三つ目でありますが、任侠
団体というふうに言っておるわけでございますが、現実には多数の
暴力団員が
暴力団の威力を背景として資金の獲得を行い、また他の
暴力団と
対立抗争を起こしている
実態を見ますと、
暴対法の「
暴力団」という定義には十分当たるという判断でございます。
四つ目は、
暴対法三条二号の
犯罪経歴者要件でございますが、これはその要件を十分満たす
犯罪経歴保有者がたくさんいるということが証拠により認められている、一々氏名等を明らかにする必要はないというふうに申しております。それから、
指定の
手続、これは各公安
委員会とも大変慎重、適正な
手続をとっておりまして、その
指定の
手続には一切違法はないということでございます。
以上五点の
理由から、いずれの
審査請求も棄却したというものであります。
そのうち、先ほど申し上げましたように、三
団体が行政
訴訟に及んだということでありますが、
国家公安委員会の裁決の
取り消しというものにつきましては、会津小鉄と草野一家、この二つだけでございまして、これも大体、現在裁判が開始されたところでございまして、向こうがどう出てくるかという
内容につきましてはまだわかりませんが、これも先ほど申しました
審査請求に対する
対応と同じ考え方で
対応してまいりたいというふうに思っております。
それから、再就職の関係でございますが、
全国で二十一の
都道府県におきまして、
社会復帰協議会というのができました。これは職安の
方々、あるいは自分のところは
暴力団を本当にやめたいという正業につく気のある
暴力団員なら就職させてもいいよという温かい企業がたくさん名のり出てきていただいておりますが、現在までに成功したのは約二十例ということでございます。
それから、株の買い取り請求の実例はどうかということでございますが、これは幾つか事例として掌握しておりますが、例えば
暴力団組長が仕手集団の男と共謀しまして株を買い集め、その会社に行きまして、
暴力団の
組長が、経営権をとるぞ、あるいは大株主はやくざが上位株主になれば困るだろうというようなことを言いまして恐喝罪で
検挙されたというようなこともございますし、あるいは証券関係の証券金融会社からの借入金等によりましてたくさんの株を買い占めた上、そこの傘下の
組長がその株を発行している会社に行きまして高値でその株を買い取るように要求したというような事例を把握しているところでございます。