○山口(那)
委員 そうしますと、単純な推定は成り立たないのでありますが、この調査をした中でこれだけの実態が浮かび上がった。これを単純に引き伸ばすと、年間で三千億円は下らないだろう、こういう数字も出ているわけでありますが、これは確かな推定とは言えないと思いますが、ただ資本金一億円以上の会社について調べてこれだけ出てくるわけですから、これを全企業に広げれば、これはもう莫大な数字になるだろうと思います。
そこで、この使途不明金の処理は税法上どうなされているかといいますと、例えば
法人税基本通達では「その費途が明らかでないものは、損金の額に算入しない。」要するに、この損金あるいは必要経費というものは、納税者側が立証できたものについてこれを納税者側の利益に認めるという
制度ですから、立証できなければ損金あるいは必要経費として認めない。いわば当然のことが通達で書いてあるわけでありまして、別段使途不明金について特別な処置がなされているわけではありません。
そして、例えばこの使途不明金の事実があったとしても、その法人が赤字であれば何ら課税という結果には結びつかないわけであります。黒字の場合のみ、その黒字幅において課税という結果に結びつく。ですから、巷間、課税を覚悟で使途不明金を出している、こういう言われ方をするわけでありますが、課税とこの使途不明金の額とは直接には結びつかないわけですね。
先般問題になりました金丸事件、これに幾つかの建設業がやみ献金をした、こういう報道もなされました。それは、幾つかの会社の実態調査によりますと、全部使途不明金として会社内では処理しているのだ、こういう供述もあるようであります。
翻って、この使途不明金なるものを考えてみますと、一般論として申し上げますが、私は弁護士として実務に長年携わってきたわけでありますが、弁護士がさまざまな事件にかかわるときに、やはり企業にはこの使途不明金というのが浮かび上がってきます。その使い道を調べていきますと、これが違法な行為に使われている、こういうことがやはり少なくないわけですね。例えば政治資金規正法に違反して政治家に献金がなされるとか、あるいはわいろであることを
承知で贈賄として使われるとか、さまざまな違法な行為に使われておる、こういう実態があるわけであります。
したがいまして、さらに申し上げれば、今回の政治改革法案、これは与野党ともに幾つかの考え方を出しているわけでありますが、
自民党案におきましても、政治家個人に企業、団体が献金をするというのは違法だ、やってはならない、これを犯罪として処罰する、こういう立て方をいたしております。それから、
社会党、公明党の案におきましては、もう全面的に企業、団体の献金は禁止する、こういうことで犯罪として取り扱っております。ですから、今の時代の流れを見れば、使途不明処理をして政治家個人に献金をするということは与野党ともに認めない、違法である、こういう
認識に立っていると言わざるを得ません。そのほかにも、このやみ献金に限らず使途不明というのはわかっていながら違法な使途に使われているということが実情であることにかんがみますと、これは税法の世界では必要経費性が立証できなければ納税者の不利益にというふうに扱われるわけでありますが、この使途が合法性の立証ができなければこれは違法という推定が働く、こういうふうに基本的にとらえるべきだというふうに私は思うわけですね。
そこで、その使途不明金を出した場合には、やはり何らかの法的制裁を考える必要がある。
現行法ではどこを探しても使途不明金という規定は出てきません。したがって、これを抑制するという仕組みがありませんので、野放しになっているというのが実態だろうと思うのですね。それが証拠に、
国税庁の調査におきましても、過去十年近く見ましてほとんど減っておりません。減るどころか微増している、だんだんふえてきているというのが実情であります。したがいまして、これを違法という
認識のもとに何らかの制裁を工夫していく必要がある。
そこで、お尋ねですが、まず
大蔵省に伺います。
税制の面からいきますと、これまでは何ら対策を講じない、これを商法、刑法の分野の問題だということでずっと取り扱ってきたようであります。しかし、使途不明金を出すということは、受け取った側は当然納税に結びつかないということにもなるわけでありますから、その意味でこの使途不明金を出した側が受取人側の本来払うべき税金をかわって負担をする、いわば代替して納税をする、こういう考え方も成り立ち得ると思います。それから、税法の中には重加算税というような、いわば所得に課税をするというのではなくて、一種の隠ぺい仮装に対する制裁、こういう手だても含まれているわけですね。ですから、この使途不明金に対しては制裁をする、こういう考え方もあるだろうと思います。そして、
先ほど申し上げましたように赤字、黒字で課税の結果には結びつかない、しかも、課税されたとしても直接使途不明金の額とは関係ない、こういうのが
現行法の建前でありますから、私はこの代替課税あるいは制裁課税という考え方に立ちまして、この使途不明金の額そのもの、これは調査をすればわかるわけでありますから、この額そのものに対して何らかの課税
措置をとるべきである、このように考えるわけでありますが、
大蔵省の考え方はいかがでしょうか。