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1993-04-28 第126回国会 衆議院 政治改革に関する調査特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成五年四月二十八日(水曜日)     午前九時三十三分開議 出席委員   委員長 田邉 國男君    理事 大島 理森君 理事 北川 正恭君    理事 中西 啓介君 理事 野田  毅君    理事 浜田卓二郎君 理事 左近 正男君    理事 堀込 征雄君 理事 伏木 和雄君       石井  一君    衛藤征士郎君       奥野 誠亮君    佐田玄一郎君       佐藤謙一郎君    自見庄三郎君       島村 宜伸君    武村 正義君       津島 雄二君    戸塚 進也君       額賀福志郎君    葉梨 信行君       穂積 良行君    星野 行男君       細田 博之君    増子 輝彦君       池田 元久君    大畠 章宏君       菅  直人君    小林  守君       後藤  茂君    佐藤 観樹君       田並 胤明君    早川  勝君       細川 律夫君    松原 脩雄君       井上 義久君    北側 一雄君       渡部 一郎君    木島日出夫君       川端 達夫君    柳田  稔君  出席政府委員         自治大臣官房審 谷合 靖夫君         議官         自治省行政局選 佐野 徹治君         挙部長  委員外出席者         衆議院法制局第 臼井 貞夫君         一部副部長         自治省行政局選 松尾 徹人君         挙部選挙課長         自治省行政局選 中野 正志君         挙部管理課長         自治省行政局選         挙部政治資金課 大竹 邦実君         長         参  考  人         (読売新聞社論 島   脩君         説委員長)         参  考  人         (産業経済新聞 清原 武彦君         社常務取締役編         集局長)         参  考  人         (朝日新聞社論 中馬 清福君         説副主幹)         参  考  人         (毎日新聞社論 清水 幹夫君         説委員長)         参  考  人         (日本経済新聞 田勢 康弘君         社論説委員)         特別委員会第二 田中 宗孝君         調査室長     ――――――――――――― 委員の異動 四月二十八日  辞任         補欠選任   大原 一三君     佐田玄一郎君   島村 宜伸君     星野 行男君   池田 元久君     佐藤 観樹君   岩垂寿喜男君     松原 脩雄君   土井たか子君     早川  勝君   大野由利子君     井上 義久君   倉田 栄喜君     渡部 一郎君   川端 達夫君     柳田  稔君 同日  辞任         補欠選任   佐田玄一郎君     大原 一三君   星野 行男君     島村 宜伸君   佐藤 観樹君     池田 元久君   早川  勝君     土井たか子君   松原 脩雄君     岩垂寿喜男君   柳田  稔君     川端 達夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  公職選挙法の一部を改正する法律案梶山静六  君外二十三名提出衆法第六号)  衆議院議員選挙画定委員会設置法案梶山静  六君外二十三名提出衆法第七号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案梶山  静六君外二十三名提出衆法第八号)  政党助成法案梶山静六君外二十三名提出、衆  法第九号)  公職選挙法の一部を改正する法律案佐藤観樹  君外二十四名提出衆法第一〇号)  衆議院議員選挙画定等審議会設置法案(佐  藤観樹君外二十四名提出衆法第一一号)  政治資金規正法の一部を改正する法律案佐藤  観樹君外二十四名提出衆法第一二号)  政党交付金交付に関する法律案佐藤観樹君  外二十四名提出衆法一三号)      ――――◇―――――
  2. 田邉國男

    田邉委員長 これより会議を開きます。  梶山静六君外二十三名提出公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院議員選挙画定委員会設置法案政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党助成法案並びに佐藤観樹君外二十四名提出公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院議員選挙画定等審議会設置法案政治資金規正法の一部を改正する法律案及び政党交付金交付に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となりました各案につきまして、議長に対し、公聴会開会承認要求をいたしたいと存じますが、これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 田邉國男

    田邉委員長 起立多数。よって、そのとおり決しました。  なお、公聴会は来る五月十八日火曜日開会することとし、公述人の選定その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  4. 田邉國男

    田邉委員長 起立多数。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――
  5. 田邉國男

    田邉委員長 本日は、各案審査のため、午前中、参考人として、読売新聞社論説委員長島脩君、産業経済新聞社常務取締役編集局長清原武彦君、朝日新聞社論説主幹中馬清福君に御出席をいただいております。  なお、午後は、毎日新聞社論説委員長清水幹夫君、日本経済新聞社論説委員田勢康弘君の出席を予定しております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本委員会での審議に資するため、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序でありますが、島参考人清原参考人中馬参考人順序で、お一人二十分程度に取りまとめて御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。御発言は、着席のままで結構でございます。  それでは、島参考人にお願いいたします。
  6. 島脩

    島参考人 島でございます。  提案されております政治改革法案に関連して、政治改革論議についての私の考え方を申し述べたいと思います。  国政を預かる政党政治家に課せられた重要な役割一つは、利害調整機能であろうと思います。複雑に絡み合う国民各界各層利害をどのように調整して大局的な立場から国益に沿った施策を展開するか。近年、特に国際政治経済の動向が国民生活に直結するようになり、その政治利害調整機能は一層重要性を増しております。しかし、現実政治はこれとは逆に、利害調整機能が著しく後退しているように見えます。国民価値観多様化して、調整が難しい政策課題がふえていることは確かでありますが、それに政治スキャンダルが加わって、政治改革、みずからの改革は遅々として進まない。こういったことに対する国民のいら立ちが募って、政治危機的状況にあると言われるようになっておるわけであります。  政治改革というのは、政治が本来の利害調整機能を取り戻し、国政をリードしていくには、国権の最高機関である国会をどうやって再生すればいいのか。新しい時代認識のもとで、国会みずからが議論し、決定し、抜本的改革を断行することであると私は考えます。この機会を逃せば、単に政治改革の道が遠のくというだけではなく、日本政治後進性を改めて内外に印象づけ、日本という国への信頼性を大きく損なうことを覚悟しなければならないと思います。  これまで、政治スキャンダル発生のたびに、私たち政治記者も随分肩身の狭い思いをしてきました。今や政治抜本改革ができるかできないかではなく、やらなければならない。今のような有権者政治を冷笑しているような事態は一刻も放置すべきではないという焦燥感に駆り立てられている次第であります。この国会でぜひとも四法案を成立させていただきたい。危機感切迫感を持って取り組んでもらいたいというのが私の第一の要望であります。  今度の政治改革の直接の発端は、リクルート事件から東京佐川急便事件、金丸問題に至る一連の不祥事でありますが、より本質的な問題は、やはり許認可権限補助金支配行政、それに伴う政治行政化、それに選挙制度等ゆがみがもたらした政治そのものにかかわる構造的な問題であろうと思います。  現行の中選挙区制のもとで個人本位選挙が長い間続いた結果、個別利益誘導型の政治が定着し、選挙地盤が私有財産化し、政党間の討論や政策論争は二の次になっています。後援会派閥中心選挙を争う限り、常に支持者や業界の利益を代弁する役割を宿命づけられることになります。これらの実態はここにいられる国会議員方々が身をもって体験されていることであって、多弁を要さないと思います。もちろんこれには選挙民の側にも問題があります。ここをつかなければ、幾ら政治家のモラルを嘆き、政治資金規制強化選挙違反腐敗防止に知恵を絞っても、なかなか効果を上げることは難しいだろうと思います。政治システム全体の転換が必要だと考えます。  私たちが、読売新聞の場合、特に四法案一括処理を当初から主張し続けてきているのも、腐敗や利権の絡む構造が国会議員選出過程と不可分の関係にあるという認識に立ったからであります。  当委員会においても、これまでの論議を聞く限り、各党一括処理の方向で足並みをそろえておられるように見えます。これも同様の理由からだろうと考えます。この立場を堅持して、選挙制度改革を含めて、ぜひ抜本改革をやり遂げてほしいと思います。  その選挙制度でありますが、単純小選挙区制の自民党案民意の集約を目指すものであり、他方、社会、公明両党提案の小選挙比例代表制民意の公正な反映に重点が置かれております。考え方としては確かに水と油ほど違いますけれども、双方とも中選挙区制の弊害を認め、選挙制度改革が必要であるという点では一致し、もはや中選挙区制の改革公約になっていると断じてもいいと思います。もともと選挙制度は各国ともいろいろ違います。これなら絶対という制度はない以上、やはりお互い歩み寄って、接点を見出す努力が不可欠になるだろうと考えます。  ここで私の私見を申し上げれば、今回の選挙制度改革は、どのような国家像日本は志向しようとするのか、そのためにはどんな議会にすればいいのかといった問題を判断基準にすべきではないかと私は思っております。  国際情勢の激変、日本の置かれている立場考えれば、これから二十一世紀に向けて日本はさまざまな国際責任国際貢献を求められるようになります。そのたびごとに、これまでとは違った、大小さまざまな政治決断を迫られる局面が出てくることは間違いないでしょう。これまでのように、大国の舞台のそでに隠れて一国安泰主義を決め込むことはもはやできないし、そういったことは許されるはずもないでしょう。そういった世界からの課題に的確迅速に対処するには、やはり政権党責任を持って決断する必要があるだろうと考えます。そのためには、民意を集約する小選挙中心選挙制度が望ましいと私は考えます。その政権党の選択が間違ったり失政があれば、次の総選挙で野に下り、政権交代となる可能性が高い。そういった問題を通じて政治緊張感が生じ、有権者政権を選ぶという立場から、そのときどきの政策課題問題点を真剣に考えるようになるだろうと思います。有権者意識改革というような面でも、私は小選挙制中心の方が望ましいだろうと思います。  この点、比例代表の場合、多様な民意を正確に反映はしますが、政治が動かない、政治が機能しないおそれがありはしないか。政策決定にこぎつけることはできても、タイミングを逸しはしないか。あるいは多党化して小党がキャスチングボートを握るなど、政局不安定化を招くのではないか。さらにまた、公約に基づいて政策を実行し、その結果について責任を問うという議会政治の面では、責任の所在が不明確になるという面も私は心配するわけであります。  先ほど申し上げたように、国際化高齢化の進行とともに、国民の間の利害が複雑に絡み合い、あちら立てればこちら立たずといった二律背反的な政策課題がふえております。また、世界日本との調和という問題もあります。行財政改革に見られるように、民意、世論というものはとかく総論賛成各論反対に陥りがちであります。特に犠牲痛みを伴う問題を嫌うし、現状維持既得権擁護に傾く傾向があります。政治もそれに迎合しがちであります。第二臨調の場合は、土光さんのカリスマ性で、国鉄、電電の民営化等々の改革を断行でさましたが、これは本来国会がやるべきことだっただろうと思います。そういったことが、比例代表制あるいは民意の公正な反映価値観多様化の縮図となったような国会の中でやれるのかどうなのかということに疑問を感ぜざるを得ないわけであります。  しかし、現実問題として、単純小選挙区制、自民党案が成立する可能性はほとんど絶無でございます。私は、せめて海部内閣時代比例代表並立制妥協が成立しないものかというふうに個人的には考えておりますけれども、これもどうも無理なようであります。とすれば、今民間政治臨調が出してきている小選挙比例代表連用制は、妥協の誘い水にはなるではないか、この案に私は期待をかけざるを得ないのが現在の心境であります。  この民間臨調連用制については、与野党妥協を優先し過ぎたという点もあって、理念、哲学がないという批判があります。これはそのとおりだろうと思います。しかし、現実に歩み寄るには、これを軸に与野党論議する以外にない。  この案は小選挙区の定数が三百になっておりますけれども、この三百ということになれば、選挙区の区割り海部内閣時代に作成した案の手直し程度で、新たな区割り案作成必要性はなくなり、次回選挙からの実行が可能となるというメリットがあります。また、勢力分野は現在の与野党議席数に近いものになるという試算もありまして、こういったことを総合的に考えれば、連用制現実的な案のように見えます。  ただ、比例代表名簿複数政党が結合することと政策との関係はどうなるのか、あるいは第二票、小選挙区制のゆがみを是正する際の第二票の扱いについても種々問題があることは事実であります。  もう一点、民間臨調の案では、総理府の外局に政治資金委員会をつくって、政治資金収支報告書のデータベースをつくる、ここまではいいのですけれども、その後に違反事件調査をするという項目がありますが、これが政党活動に公権力が介入するという問題を生じないのかどうか、こういった点をもっと議論してみないとにわかに賛成できない面もあるわけであります。  いずれにせよ、連用制を軸に歩み寄りを図るほかはないというのが私の考えてあります。  政治資金制度については、企業・団体献金の廃止で与野党に違いがありますけれども、政党中心型への転換という意味では大きな差はありません。小さな相違点にこだわって、改革実現そのものをおくらせることがあってはならないだろうと思います。したがって、この点も与野党歩み寄りを十分図ってもらいたいと要望しておきます。  最近、もし与野党間で妥協が成立しなければ解散・総選挙という声があります。これらの人々は一体選挙で何を訴えるつもりなんでしょうか。政治改革、これだけ時間をかけて論議し、国民も注目している政治改革を途中でほうり出して選挙に持ち込む、その場合に政治改革なるものを一体どういうふうに選挙民に説明しようとするのでしょうか。この辺が私には理解できません。また、中選挙区制はだめだ、退路を焼き切る、こういうふうに言いながら、そのだめなものをもう一度選挙民に押しつけて選挙をやるということはどういうことなのか。この場合の政党としての責任はどうなるのか、これは問わなければならないだろうと考えます。特に政治指導者宮澤首相を初めとする各党党首の力量と責任が問われている、これがこれから会期末にかけての大きな注目点だろうと思うわけであります。  私は党利党略というものをすべて否定するのは現実的ではないと思いますけれども、今ある政党のことを余り考えていては思い切った改革も実現できないし、妥協も成立しない。政治をすべて変えて新しいものをつくるという発想、それが政治改革であるという発想が必要だと思います。  いろいろ各党の案についてシミュレーションが行われていますが、これが果たして次の新しい選挙で当てはまるのかどうなのか。私はもっと違ったものになるのではないかという考えを持っております。それよりも、とにかく今、これまで中選挙区制のもとで政治行動を行ってきた政治家のイメージ、中選挙区制のもとで批判されてきた政治家行動、そういった部分を削り取らなければ政治の再生は難しいだろう、この点をしっかり認識しておいてもらいたいと思います。  政治を志す有能な人たちが晴れて当選して中央政界へ登場しても、その翌日から選挙区の世話、金集めにエネルギーの大半を費やし、次の選挙で当選することばかりを考え政治家として、国政考え国政に貢献する時間は少ない。恐らくそうした方々はこんなはずではなかったと思っていられるに違いないと思います。こんなことを繰り返していますと、政界に人材が集まらなくなる。公的補助もそういう意味では我々は賛成であります。本来ならもっと選挙民が身銭を切っても政治活動を助け、参加意識を持つということが必要なんでありますけれども、やはりこの際は政治改革をその突破口にしてもらいたいと思います。  戦後、既に半世紀近くたって、政治経済行政社会制度、あらゆる面で制度疲労が生じております。そういった制度時代に適合するように改めなければいけないんですけれども、政治改革はすべての改革土台だろうと思います。しかし、その土台づくりが一番おくれているのが現実であります。個別利害選挙区あるいは部分的な利益を優先する小政治を改めて、やはり国家的利益世界的な平和と安定という立場からの政治が必要だろうと思います。歴史に対して責任を持つ大政治を展開するような、そういった日本政治仕組みをつくってもらいたいと私は思います。日本はそういった歴史に対する責任を持つだけの国力、資格を備えておると思います。あとは、それを背景に政治家がどのような心構えで取り組み、国際社会に貢献していくかということだろうと思います。もっと気力を持って、気迫に満ちた政治が展開できるような仕組みをつくってもらいたい、それが政治改革だろうと考えます。  政治は動機は正しくても結果が悪ければいけない、政治は結果責任であるというふうによく言われます。確かにそういう面はありますけれども、近年は、さきに述べたように、二律背反的な政策課題がふえている。国民に対して痛み犠牲を説かなければならない。日本の進路についていろいろな議論をしなければいかぬ。国民にそういった厳しさを説き協力を求めるためには、政治家がみずから厳しく行動を律することが必要だろうと思います。その意味では、政治は結果責任ではあるけれども、その以前に、政治を実行する手段としての道徳の比重が非常に重要になってきているということを考えてもらいたいと思います。  政治制度を変えるだけではなしに、その政治制度の変革を通じて選ぶ側も選ばれる側ももう一度意識改革をする、そういった政治改革意識改革を通じて日本政治というものを強固なものにしていく、それが今回課題になっている政治改革であるというふうに思うわけであります。  以上で私の発言を終わらしていただきます。(拍手)
  7. 田邉國男

    田邉委員長 次に、清原参考人にお願いいたします。
  8. 清原武彦

    清原参考人 清原でございます。  私は、産経新聞の編集論説を担当しておりますと同時に、さきに第八次選挙制度審議会委員を務めさせていただき、今また政治改革推進協議会民間団体にも加わっておるということで、二重三重の人格を持ってこの場に出ておるわけでございますけれども、私なりに自己矛盾がないよう考え方を整理し、きょうはできるだけ明確に私の考えを申し上げたい。もし表現に不用意な点あるいは失礼に当たる点があればお許しをいただきたいと、最初にお願いいたしておきます。  なお、私のこれから申し上げます点は、ただいまの島参考人が言われたことと基本認識においてはかなり一致している点がございますが、あえて重複を恐れずに申し上げます。  第一に、最初に私が強調いたしたい点、これは政治改革論議の中でまず最初にクリアされなければいけない、しかし、国民の目には意外に明確に映し出されていない点がある。それは、なぜ今政治改革が必要なのかという点、これが一番本質的な問題だと思うわけですね。政治改革といっても、人それぞれに別の考え方で物を言っておられる面があるのではないか。  ただ、そうした中で、私は、今なぜ政治改革かという点で落とし穴が今の議論にあるとすれば、それは政治と金の問題、これが強調される余り、もう一つの大きな本質的な点が見落とされている。それは何かといいますと、今の激変する国際情勢東西冷戦状態に終止符が打たれ、今世界は新しい国際秩序を求めて動いている。その中で日本がいかに対応するか。敏速な決断、動きが求められている。そういう中で政治がそれに対応し切れていない面があるのではないか。例えば、湾岸危機のときの対応しかり、あるいはウルグアイ・ラウンド、米の自由化の問題に関する対応しかりだと私は考えております。それは決して政治家皆さん個人個人責任だけに帰する問題ではなくて、私は、やはり大きな政治システム、それが戦後の長い期間の間で制度疲労を起こして機能しなくなっている、あるいは当初予想された国際情勢と今の情勢が大きく転換している。ですから、体の丈が変われば着物も変えなければいけないのですが、その辺がおくれているのではないか、こういうことでございます。  つまり、私が申し上げたいのは、政治と金の問題、これは共和、佐川あるいは金丸前副総裁の逮捕、こうした問題をめぐって国民の間の政治不信が高まり、緊急に解決されるべき問題である、その点には異存はありませんし、この政治改革への追い風は大いに利用されるべきでありますけれども、もう一つ根本を見据えて、今日本が求められている大きな政治民意を集約して敏速に対応する政治、そうしたものへのシステムづくりという観点を第一にお考えいただきたい。この点の整理がつかないと、下手をすればせっかく盛り上がった政治改革の機運も、結局は末梢的な部分処理に終わって、根本問題は先延ばしにされかねない、そうした危惧を持っておりますので、あえて強調するわけであります。  そこで、私は、これから五つの点について考え方を申し述べ、皆さんにぜひ今国会での御処理をお願いしたいと思います。  第一は、島参考人も言われましたけれども、与野党間においてほぼ合意ができている点、それは現在の中選挙制度弊害、これはもはや放置できないところに来ているということで、新しい制度を導入しなければいけないという点でおおよそのコンセンサスができているというふうに考えます。そこで、まずこの点を明確に合意いただいて、中選挙区はとにかく廃止する、そして新しい制度に踏み込む、この点を第一に御確認をいただいて次の議論に進んでもらう。既にもうそういう段階とは思いますけれども、これが第一。  それから第二点。しからばどういう新しい制度を導入するかという点でございますけれども、これは私は、先ほど申し上げました私の基本認識から御理解いただけると思いますけれども、民意を集約した大きな政治、これを第一に考えるべきだろう。それから、やはり政治緊張感をもたらすために政権交代可能な制度、そしてまさに日本の新しい国際秩序づくりへの参画が求められているようなときにどういう政策を打ち出すか。そういうことを選挙でもあるいは国会内においても活発に議論がやりとりされる政党本位、政策本位のシステム、そういう選挙考えますと、やはり小選挙区のメリットを生かした選挙制度中心にお考えをいただきたい、これが第二点でございます。  第三点。ただし、私は、先ほど大きな政治の実行という点を強調する余り、政治と金の面は二義的であるかのような印象を皆様にお与えしたかもしれませんけれども、これはもちろん国民政治不信解消という意味で、政治改革の大きな柱であります。と同時に、選挙制度改革どこの政治と金の問題、つまり具体的に申しますれば、選挙制度改革政治資金規正法の強化、改正、この問題は車の両輪であります。ぜひこれはやはりこの国会処理していただきたい。  第四点。今、この選挙制度政治資金の改正は車の両輪と申し上げました。両輪である以上、片一方が外れれば車はひっくり返ってしまいます。ぜひ今国会一括処理をお願いしたい。もちろんこれに付随しまして、政党への公的助成の問題、こうした問題も一括処理さるべき問題であると考えます。  第五点は、具体論というよりは、これはお願いでございますけれども、政治改革は今国会が恐らく最後のチャンスであろう。これだけ国民の世論が高まり、皆様方も一生懸命取り組んでおられる、この時期を失して抜本改正が見送られれば、将来このようなチャンスはまたと来ないのではないか。そういう意味において、ぜひ今国会で今私が申し上げたような諸点、できれば、選挙制度改革は衆参一体で考えられるべきですので、参議院選挙制度改革もと申し上げたいところですが、これは現実には無理でございましょう。ですから、今私が申し上げましたような点については、ぜひ今国会で解決をお願いしたいと思います。  さて、今申し上げました五点のうち選挙制度改革、これがやはり大きな政治を行う上で一番大事な点であると私は考えます。  よく議員の皆様あるいは学者の方などから、政治改革論議選挙制度改革論議に矮小化するなという言葉が聞かれます。私は、これは逆ではないか。つまり、まあ鶏が先か卵が先かの論議ですが、政治が正しく改まれば制度改革する必要がないという議論もあるでしょうけれども、やはりこの四十年間のよどみ、これは制度を大きく変えることなくして大きく変わることはないというのが私の認識でありますし、基本的には金のかかる政治あるいは派閥政治あるいは選挙において地元への利益誘導、後援者への利益誘導、こうしたものは、やはり同一政党が複数の候補者を出すことによって政策よりもそうしたことの方が選挙戦においては大きなウエートを持つ、そうした制度面に由来して今の政界の勢力分布あるいはシステムがつくられてきているわけですから、私は、政治改革の根本は選挙制度改革にある。逆に、政治改革論議をただ単に政治と金の問題というふうに短小化しないでいただきたい。もしそういうとらえ方ですと、次々にスキャンダルが起き、そのときどきの大物政治家が傷つき、倒れ、そしてその段階でまた国民はその問題を忘れ去って同じような状態が繰り返されていく、そういうことになってしまうのだろうと思うわけですね。  それで、選挙制度改革について、先ほど申し上げた小選挙区のメリットを生かすべきだという私の考えを敷衍して、さらに二、三申し上げます。  理論的には、私は自民党さんが提案されました単純小選挙区制、これが一番すっきりしている、それから先ほど申し上げた民意の集約、大きな政治、これを行う上には一番適したシステムであると考えます。そして、将来的にはそうした方向に進んでいくことを希望するわけであります。  ただ、現状において、今現実に存在する中小規模の政党議席数において中小規模である政党、こうした政党に対して、法律を変えることによって、制度を変えることによって、言葉はきつくなりますが、事実上抹消してしまうというようなことになりはしないか。そういう懸念があるとすれば、やはりその点は現在の段階でとる処置としてはいささか過激に過ぎるのではないかというふうに考えます。そうしますと、私は、海部内閣のもとで出されました小選挙比例代表並立案、これが今申し上げた私の考え方、さらには現実に即した処理に照らしてベストに近い案ではなかろうか、こういうふうに考えております。  ちなみに、自民党さんは、平成元年五月に政治改革大綱で、小選挙区と比例代表制を組み合わせた形の新しい選挙制度の導入を検討、考えるということを言われ、これを公約に過去二回選挙を戦い、そして海部内閣のもとではこの法案が党議決定されて国会提出された。やはり私は政党の党議決定というものを重く考えていただきたいと思いますし、こうした過去の経緯があるにもかかわらず、今回この案があっさりと葬り去られてまた別の案が出てきたという点については、まだ国民の前に十分説明がなされていないのではないか、こういうふうに考えます。  ところで、もう一つ国会提出されております社会、公明両党提案の、これは小選挙区と比例代表の併用案でありますね。並立と併用の違いというものは国民には非常に理解しにくいと思いますが、併用案というのは事実上これは比例代表選挙であるというのが私の認識でありますし、先ほど申し上げた民意の集約による大きな政治ということを行うには不適当な制度であるというふうに考えております。  民意を鏡のように反映するというのは非常に響きのいい言葉でありまして、耳に受け入れられやすい。私は一度日米のあるシンポジウムに出席いたしましてアメリカ側の学者と議論した際に、アメリカ側の学者から、いっそのこと日本の議員の半分ぐらいは世論調査方式の無作為抽出で選び出したらどうかという過激な案が出たわけですね。つまり、世論調査というものは、それをもとに政治家皆さんがいろいろ政策考えるわけですが、その世論調査の一部をそのまま国会の中に組み込んでしまうという案でございまして、私はこれについては、今申し上げたように、それならば国会は要らないじゃないか、世論調査を見て総理大臣が政策を決めりゃいいじゃないか。やはり議会制民主主義、代議制民主主義というのは、国民の意向を議員の皆様が受け取り、吸収し、それをさらに高いレベルでの情報あるいは分析、見識等をもとにそしゃくして、民意を集約して行うべきものであるというふうに考えます。ですから、鏡のような民意反映というのは、一見言葉の魔術がありまして、これをそのまま受け入れると日本政治は混乱に陥るという考え方でありますので、社公案の併用制案には反対であると申し上げざるを得ません。  そこで、もう一つ、今浮上してまいりました、これは民間側の政治改革推進協議会民間政治臨調連用制案というものでございます。これは、言葉自体もそうですが、内容もちょっとわかりにくいところがあるのが欠点といえば欠点。それと、並立制案と併用制案のどちらに近いか。これは読みようによっては並立制案そのもの、読みようによっては併用制案ということですが、私は、どちらかというと併用制案だろうと思うのです。実体的には併用制案。ただし、過剰議席の処理において、それは小選挙区よりも比例代表の方からその過剰議席の分を削るという発想に立っているという点で、並立と併用の中間ということかなということですね。ですから、私は基本的に併用制案に反対でありますので、この案にも必ずしも全面的には賛成しがたい。ただし、現実に即した考え方という点、しかも小選挙区制のメリットを生かそうという工夫が施されている、そういう意味では非常によく考え抜かれた案でありまして、私は、これは十分検討に値する案であり、皆様方が今後与野党間で接点を求められていくという中で、十分これをもとに議論し得る、そういったたき台になる案であろうと思います。  また、この連用制案については、結果的に現在の各党議席と異ならない、余り変わらないようにつくった、そういう現実性を重視し、思想がないんじゃないかという批判も一部に出ております。私は、これは若干この案が曲解されておるのではなかろうか。つまり、私が申しましたように、やはり小選挙区のメリットを重視するという点にかなり配慮が行われておる。したがいまして、この制度に基づいて選挙が行われた場合、第一党はやはり過半数をとるんだろうと思うのです。厳密にシミュレーションしたわけではありませんけれども、恐らくそういうことになるのではなかろうか。私は、小党分立あるいはそうした二つ、三つ、四つの政党による連立政権というものは、政治の不安定化をもたらすという意味で反対でございますが、そうした意味ではこの案は併用制案よりはそうした弊害はないということ。  それから、これは政治論でございますので、皆さんいろいろ見解の相違もおありでしょうけれども、この制度が導入されれば、政界再編といいますか、今の各党の勢力地図、そうしたものに大きな地殻変動を及ぼす、そうした起爆剤ともなり得るかもしれない。そうした意味では、将来的には小選挙区制への移行という可能性をも秘めた案であろうと私は私なりに理解いたしております。  以上、選挙制度改革については特に詳しく私の考えを申し上げましたが、その他の点については冒頭では割愛さしていただきます。  ただ一点、一つこの冒頭の発言の機会をおかりして申し上げたいことは、今回自民党さんが提案されました公職選挙法改正案、この中に選挙予測報道の規制に関するくだりがございます。私は、選挙に関して世論を的確に把握し、報道、評論を行う、これは報道の自由ということももちろんありますし、と同時に有権者選挙に対する関心を高め、理解を深めさせるという意味で、やはりマスコミ機関として当然に行うべきことであろう、重要な使命であろう、こういうふうに考えております。  もちろん私はこのことを盛り込まれた趣旨は存じております。選挙直前の予測報道によりましていわゆるアナウンスメント効果が発生し、選挙戦を有利に戦っている者が逆に不利になるというような面があるのではないか、そうしたアナウンスメント効果の存在自体は私は必ずしも否定するものではありません。ただ、そのアナウンスメント効果によって有権者の意思決定、針がどちらの方向に振れるか。これは時には絶妙なバランス感覚で針が振れることもあれば、時には行き過ぎた振れ方もありますでしょう。行き過ぎた面があるとすれば、私は、それは民主主義が当然に払う代価の一つでありまして、むしろそうした規制を行うことによって民主主義自体を危うくする、そうしたことの方を恐れるべきだろうというふうに考えておりますので、この点はぜひ皆様の賢明な御判断をお願いいたしたいと思います。  以上で私の発言を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  9. 田邉國男

    田邉委員長 次に、中馬参考人にお願いいたします。
  10. 中馬清福

    中馬参考人 中馬でございます。  私は、本委員会皆さん政治改革に関しまして従来になく真剣に論議していらっしゃることに対して、まず敬意を表したいと思います。  政治改革は、私たち有権者の非常に長い間の願いでありました。政治家皆さん方も、これまで繰り返し繰り返しその必要性を強調してこられました。しかし、我々有権者側から見ますと、政治改革というのは、政治家皆さん自身が自分の、つまりおのれの身を切る、それぐらいの覚悟を固めない限り、これは実行できるものではありません。これまでできなかったということは、それだけの決意が政治家の皆様方になかったということではないかと私は考えております。  今回はどうでしょうか。正直に申し上げまして、私たちの耳に入ってまいりますのは、どうせかけ声だけだろう、また同じことではないかということが多いのでございます。これまでのことを思いますと、これまた無理からぬことだというふうに考えます。  しかし、政治家を信頼しないというだけではなくて、最近では政治そのものを信用しないという人々がふえてまいりました。これはもう放置しておけない。政治家の皆様方は取りかえることはできますけれども、日本政治そのものは取りかえることが。できません。したがって、今度はぜひ、今御審議いただいている政治改革の関連法案を十分に審議していただきまして、実のある成果を上げていただきたいと思います。これはいわば政治家個人のためではなくて、日本政治の復権のために国会議員がおのれをむなしくして考える、これができるかどうかがこの政治改革をなし遂げられるかどうかのかぎではないかというふうに私は考えます。  そこでまず、今申し上げました日本政治の復権、そのための政治改革とは何だろうかということから考えてみたいと思います。  御存じのとおり、今政治不信が渦巻いております。ロッキード、リクルート、共和、佐川、そして金丸事件と、金にまつわる政治腐敗国民をして政治不信の極に達せさせたということは、もうこれは言うまでもございません。これを直さない限り、政治の復権などということを口にすることもできないわけでありまして、政治改革の最大のポイントがここに置かれたのは当然であります。  これを私は仮に古典的政治改革と名づけるといたしますと、もう一つ政治改革をやらなければならない、政治の復権を図るために政治改革をやらなければならないテーマがございます。これは現代的政治不信といいましょうか、日本だけではございませんで、世界各国に広がっている現代の政治そのもの政治システムを含めて政治そのものに対するそれぞれの国民の漠とした不信、不安、そういうものであります。これは決して日本だけでない。こういう政治に対する漠とした不信、不安が国民をいわば不安にし、それがさらに政治への無関心につながっていく、これが現代のいわゆる政治不信のもう一つの特徴であろうというふうに私は考えます。  これはどうして生じたかといいますと、やはり政治というものが、国民の非常に多様化してまいりましたところの意識あるいは暮らしのあり方、彼らの求める要求、そういうものとどんどんかけ離れてしまいまして、かけ離れたといいますよりも政治がそれに追いつかなくなって、それに遣い越されていったわけでありますが、ここで両者のギャップが開いてまいりました。情報革命の最近の進み方が激しいことは御存じのとおりでございますけれども、人々の意識それから生活様式というのはもう一カ所に閉じ込めることができないで、非常に世界的な感じで広がっている。枠がどんどん壊されて、先行していっているわけです。ところが政治は、どこの国もと言っていいのでしょうけれども、それに対応するだけのシステムをつくり得なかった。人々は政治を無視しても暮らしていけるということをいわば実感として持ったわけであります。これは、繰り返しになりますけれども、日本だけではなくて、ヨーロッパ諸国の政治状況も似たような状況にあることをおわかりいただけるかと思います。つまり、選挙制度というものは万能ではありません。どういう選挙制度をとっても、今の、現代が抱えるところの漠とした政治不信政治不安というものを解決するすべをまだ私たち人類は見つけていないということを申し上げたいと思います。  政治改革を論じるときに、どうしてもやはりここのところを見落としがちなんでありますけれども、ぜひこの点を見落とさないで、政治改革というものの原点を考えていただきたい。つまり、どういうようないい選挙制度を導入しても、それだけでは政治改革、つまり政治が信頼されるということにはならない、これはイコールではないということがまず考えていただかなければならない点であります。国民政治そのものに呼び戻す、これが政治が信頼される第一歩でありまして、それこそまた政治改革の真の目的だと私は思います。政治資金の問題とかそれから選挙区制の問題とかこれからいろいろと議論があろうかと思いますけれども、そういうものもすべてはそういうような国民政治に呼び戻すということを実現するための手段である、これを確認しておきたいと思います。  それでは、国民政治に呼び戻すにはどうしたらいいのでしょうか。  まず、政治と金の問題を克服して、政治家国民から尊敬される、そうなることが第一であります。これはどうやるか。もう既に幾たびとなく国会論議され、またさまざまな結論が得られようとしているところまで来ております。これはいわば処方せんはでき上がっている、これを実行するかどうかであります。  この金の問題につきましてはまた後ほど触れることがありますが、これと同じぐらい大事なことは、有権者がどうやって政治参加というものの実感を得るか、これが国民政治に呼び戻す大事なポイントであります。そのためには、まず自分の一票というものが本当に政治反映されているのだ、こういう実感を持たさなければなりません。自分の一票がせっかく投票しても死に票になるかもしれない、そんな選挙制度ではなかなか投票に行く気もしないのではないでしょうか。だから、国民政治に呼び戻すためには、まず一票を投じるときに本当に政治とつながっているという実感を与える、そのためには議席配分というものに民意がなるべく正確に反映されなければなりません。さらに、政党というものが政策を示し、その政策を見た上でその政党に一票を投じる、こういう政党政策中心選挙制度がいいことは言うまでもありません。こういうふうに有権者に意識を持たせますことが、これまで言われておりますところのいわゆる若い人たち政治離れ、これをいわば直していく第一歩ではないだろうか、これが私の考えてあります。  私は、以上のような角度から、現在御審議中の政治改革関連法案を点検してみました。その結果の私の考え、私見は次のようであります。  まず、政治資金の規制であります。  私は、企業及び団体からの献金は、この際、社会党、公明党の両方の案のように一切禁止する、ここへ踏み切る時期が来ているというふうに考えます。これまでの例で明らかなように、さまざまな例外を設けながらも、企業・団体の献金を認めてきたことが結局は諸悪の根源になってまいりました。さまざまな例外をつくりますが、それがまた抜け道をつくる、こういうことの繰り返してございます。したがって、この際、さっぱりとこの問題に決着をつけていただきたいと思います。  しかし、どうしてもこういうものは過渡的に段階を追ってやるんだということでありますならば、今回民間政治臨調が提案した中にございます政党に限って企業及び団体の献金を認める、こういう過渡的な手段もやむを得ないかもしれません。しかし、その場合は必ず政治資金委員会を設置すること、あるいは連座制の新設を行うという民間臨調の案であるほかの二本の柱も同時に盛り込んでいただかなければならない。要は、政治資金の透明性をどう確保するか、あるいはこれは非常に残念なことでございますけれども、国会議員の中にそういう違反をする人が出てくるならば、罰則をさらに強化していかなきゃならない。さらに、監視機構というものも、これも非常に国会議員を疑うようで悪いのでありますけれども、これもやはり整備していかなきゃならない。こういう透明性と罰則強化と監視機構の整備、こういうものが成って初めて公的助成という問題を考えなければならない。つまり、以上の三つなしに公的助成ということは、これはやはり筋が通らないと私は考えます。  なお、池田内閣以来政治記者として永田町をウォッチしてきた人間として、この政治と金の問題について一言申し添えます。  それは、金の問題というものがいわば非常に条件なしに語られ過ぎているのではないかということであります。私が存じ上げているすべての政党の議員さんで、それほどお金がたくさんあってゆったりとした選挙をしていらっしゃる人は寡聞にして知りません。ほとんどの方がお金を非常にやりくりしながら選挙をやっていらっしゃいます。私は、政治と金を考えるときに、最も政治と金について国民に不信を抱かせたものは何であるか。これは、過去におきましては、自民党の総裁選挙、これがいわゆる金まみれと言われるものの根源にあったと言わざるを得ません。再びあのような狂乱状態が復活するようなことがありますと、どんなに選挙制度を変えてみましても、金権政治というものはなくならない、これが私の実感であります。一言申し添えておきます。  次に、選挙制度について申し上げます。  もとより、選挙制度というものは、絶対にこれが正しい、これしかないというものはありません。世界じゅうどの国を見ても、さまざまな工夫をしております。その国の風土、つまり政治風土というものと選挙制度というものは密接に絡み合っていることは皆様御存じのとおりであります。したがって、我々としても、比較検討した上で、自分の国に適したよりましな選挙制度をつくり上げていく以外にございません。日本政治風土から考えまして、この中選挙制度というものが長い間続いてまいりましたが、これもまたそういう国の政治風土と無関係ではなかったと思います。しかし、この中選挙制度というものがさまざまな問題をはらんできたことは皆様御存じのとおりであります。いわゆる五五年体制以後の日本政治のシステムに果たして中選挙区制が妥当であるかどうかということは、私たちも疑問を感じております。  私は、この選挙制度というものの優劣を決める場合に、三つのいわば物差しを考えます。以下、その重要度の順に申し上げますと、第一は、民意をできるだけ正確に反映することであります。第二は、候補者本位ではなくて、政党政策本位の選挙が戦えることであります。第三は、選挙仕組みがなるべくわかりやすいということであります。  この三つの物差しを機械的に当てはめてみますと、第一の要件に合うのは何と申しましても比例代表制であり、第二の要件というものは、これは比例代表制も小選挙区制も両方とも合格。第三の要件は、つまりわかりやすさという点からいいますと、文句なしに小選挙区制であります。この選挙制度というのには一長一短がありますけれども、私個人の考えは、まず第一の要件、つまり民意をできるだけ正確に反映できるもの、これが選挙の最大の柱であるべきだ、こういう立場をとっております。しかし、御存じのとおり、あるいは先ほど申し上げましたとおり、ベストというものはありません。お互いに譲り合っていかなければならない。これが選挙制度の宿命であるとするならば、折衷案というものも、これは当然登場するでありましょう。ただし、その場合でも、この第一の要件、つまり民意をできるだけ正確に反映するというものに比重を置いたものでないと本旨にもとってまいります。私は、以上の考えから、自民党の単純小選挙区制案よりも、社会、公明両党の小選挙区併用型比例代表制案の方がよいと考えております。  よく、選挙制度を決めるに当たりまして、政権交代を容易にするあるいは安定政権をつくる、こういうような目的を唱えられる方がいらっしゃいます。これはどういうふうに考えたらいいのでしょうか。私は、政権交代を望むものでありますし、また政権が安定することを望む点ではやぶさかではありません。また、民主国家として、政権交代のない国というのは恐らく民主国家という分類に入れてもらえなかったケースがございますから、これも私はうなずけるところがあります。しかし、この政権交代を容易にするとかあるいは安定政権をつくるということがイコール小選挙区制ではないということを私たち考えなければなりません。この政権交代考えましたときに、現在の中選挙区制でも、仮に定数是正を十分に行い、さらにどの政党政権を獲得するという意欲を燃やして政治活動を行われるならば、これは理論上は不可能ではありません。何もその点は小選挙区制の独壇場ではないのであります。  私は、この政権交代のための小選挙区制を唱えられる方々考え方というのを次のように整理してみたいと思います。つまり、政権交代を可能にするためには二大政党制がいいのである、その二大政党制のためには小党乱立ては困る、したがって比例代表制を排して単純小選挙区制ていこうではないか、こういう論理の組み立て方であります。しかし、私に言わせますと、これは明らかに発想が逆さまであります。まず、自分で、あるべき政権、あらまほしき政権というものを想定いたしまして、それに沿うような選挙制度をつくろうとする、こういうのは本当の意味政治の復権にはつながらないのではないか、こういうふうに私は思います。そういうふうな形でまいりますと、有権者というのは政治をますます無視し、あるいは政治離れを進行させ、むしろこれは将来に禍根を残すだけではないでしょうか。また、皆様御存じのとおり、欧米の現状が示しますように、今や必ずしも小選挙区制というものが政権交代の道を開くとか政治の安定をもたらすとか、そういうふうにはなっていないのであります。もはや仕組みの問題だけでこのことを論じることはできません。  私は、十年後とかあるいは二十年後を思わざるを得ません。老人の比重が非常に大きくなってまいります。医療問題や年金問題、こういう要求というのは非常に切実になってまいりますでしょう。一方では、環境問題あるいはエネルギー問題、こういうものがもう避けて通れないところに来ております。他方、日本の国際的な役割を求める声は世界的に大きくなってまいります。こういう内外の要求というものが多重的あるいは多層的になってまいります。これはどんなに政治仕組みで抑えようといたしましても、国民あるいは国内外の要求というものは一つにまとめるということは困難になってまいります。これを無理やりに政治のあるいは選挙のシステムで封じ込めようといたしましても、これは恐らく政治は残ったけれども政治を支える有権者政治から離れていったということになるのではないでしょうか。こういう時代でありますから、私は、人口が四十万人か三十万人かというところの市あるいは町村から一人の割合で地域優先型の代表選手が出てきて政治を担うという単純小選挙区制で乗り切れるかどうか、大きな疑問を感じております。  それでも、比例代表制というものは、小党乱立を招いて、和をたっとぶ日本には向かないと言う人もあるでしょう。あるいは、この制度では個人を選ぶのではないから僕らには全くなじめない、こう言う人もあるだろうと思います。そういう心配がある以上は、完全な比例代表制を直ちに実行することは無理であるし、無理は禁物であります。私は、そこに社会党と公明党が今示している併用案の効用がある、こういうふうに考えます。つまり、民意反映と顔の見える選挙、この両立を目指していらっしゃる、これは多くのシステムの中では割合によくできた仕組みではないか、これが私の考えてあります。もちろんこの制度には多くの問題があります。最大の問題はいわゆる超過議席の問題であります。またほかにもさまざまな問題がございますが、例えば超過議席の問題は、ドイツの例で言いますと最高六議席ということを実現しております。これはやりようによっては、あるいは考えようによっては超過議席の問題は解消可能であろうかと存じます。  本日の新聞を拝見いたしますと、昨日はいわゆる一票制の問題が論議されたそうでありますが、こういう制度の手直しその他は十分に与野党で御検討されて、ぜひこの選挙制度も含めて今国会で立派に政治改革の第一歩がしるされるように願っております。  最後に、政治改革というものは、いわばあしたの政治、あさっての政治というところまで念頭に置いて行ってもらいたいということと、もう一つ政治改革には終点はないということであります。今回でおしまいということはないのでありますから、それほどのいわば試行錯誤というものを恐れずに、とにかく手をつける、これを望んで、私の意見を終わらさせてへただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  11. 田邉國男

    田邉委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  12. 田邉國男

    田邉委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  この際、委員各位に申し上げます。  議事整理のため、質疑のある委員の方は、挙手の上、委員長の指名により発言されますよう、また、発言の際は、所属会派及び氏名並びに質疑をする参考人の氏名をお告げいただきたいと存じます。なお、一人一回の発言は、五分以内にまとめていただくようお願いいたします。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  13. 戸塚進也

    ○戸塚委員 自由民主党の戸塚進也でございます。  最初に、島参考人清原参考人に共通のお尋ねをしたいと思います。  最初は、実はお二人とも非常に熱心に、今国会中に中選挙区でないことをやれ、私も全く同感で、一生懸命頑張っているわけでありますが、与野党を通じてといいますか、これは野党さんのことはよくわかりませんが、与党の中、私どもの中にも中選挙区ということに対する非常に愛着もある。事実、私も選挙区へ帰ると、選挙民から、進也さん、あなたがどこかに選挙区を移るなら私も家引っ越して行くなんて、それはお世辞だということを言う人もいますけれども、でも、そのくらい言ってくれる人もいる。それからまた、ある方から見れば、これはおれの陣地なんだ、おれがこの領主なんだなんていうような感じもなきにしもあらずだと。そういった人たちに、この際、この考えを断ち切って、今のお二人のおっしゃったようなことに持っていってもらわなければならない。そのために、もしお二人が説得をする立場になったら、その方々に対してどういうことを説得されるか、これをひとつ教えていただきたい。  二番目は、今国会でこれが成立てきなかった場合に、これは清原参考人に言わせれば、もうこれでおしまいだ、こういうふうなお話がありました。実は私もおしまい、そういう感じを持っているのです。そのおしまいという意味は、次の選挙をやったって自民党はある程度議席もとると思うし、各党もとると思いますけれども、一番私が恐れているのは、今国会でできなかったときに国民国会に対する不信、そういうものが高まって、結局、国会の中で二十一世紀を見据えて大きな大きな課題に挑戦していこうと思ったときに、国民がそれに全然協力してくれなくなる、大きな法案なんかはもう全然相手にされなくなる、こういったように、国際的にも非常に重要な時期に国会国民から離反してしまう、そのことが私は一番恐ろしいと思っていますが、お二人は、もし今国会でこれが成立てきなかった場合にどういうふうになっていくとお考えですか、教えていただきたい。  それから、中馬参考人は企業献金について非常にはっきりおっしゃいましたが、私は見解が違います。私は、やはり企業・団体献金というのは秩序を持って、今までのように不透明とか墓とかそういうものは絶対にいけないけれども、この日本の国の活力や毎日の日常生活をやっているのは企業であります。その企業の人々がこの日本の国を、企業の人も繁栄し、また日本の国も繁栄し、世界も繁栄するために、それなりの政治に対しての献金をするということは、私はそれは何ら間違ってもいない、ただ秩序を持ってやらなければいけない、将来はなるべく個人献金に切りかえていかなければいけないというようなことであろうと思います。私が国会の質問で、宗教団体や学校法人が政治に金を使っていいのかと言ったら、それはある程度許される、こういうことを社公の方々も言っておられるわけです。それならなぜ企業だけそうがんじがらめにしなければならぬのかと思いますが、お二人の参考人は企業・団体献金についてどうお考えになっていらっしゃるか、これを伺いたい。  次に、公的助成については、お二人の参考人ともこれは必要だとおっしゃいましたが、今自民党は二百五十円、三百億を出しています。これは私ももちろんその程度かなと思いますが、実は本当に政治にかかるコストというのを考えますともう少しあってもいいのじゃないかと思うのですが、将来的にはどんなふうに考えていらっしゃるか。  最後に、国会議員というものをどういうふうに理想像として考えたらいいか。私は、国会議員である以上は、質素な生活をして、そして一日一日ともかく一生懸命に国家のために尽くす、そういうことで頑張っていくということが大事だと思っていますが、お二人が描いていらっしゃる理想像を教えてください。  最後に、中馬参考人に伺いたいと思いますが、民間臨調についての評価はお述べになりませんでしたが、社公案が全くよろしくて、臨調案はまあ御自身ではどうかなとお考えになっていらっしゃるのかどうなのか、その点についてぜひ伺いたい。  それから、企業・団体献金については、私が先ほど申し上げたのが私の意見でありますが、この点について中馬参考人はどんなふうにお考えになっていらっしゃるか、その点について教えていただきたいと思います。  以上です。
  14. 田邉國男

    田邉委員長 まず、島参考人からお願いします。
  15. 島脩

    島参考人 非常に盛りだくさんの御質問で、ちょっと返答に困っております。  第一点ですけれども、自民党が今まで包括政党としていろいろ多面的な利益というものを何とか処理できた、今までは。しかし、これからは日本の国は、これからの四十年、五十年を考えた場合、とてもそういう個別的な利益というものを優先させることはできないし、また同時に、政策本位で公共的な立場からの政党本位の政策というものを打ち出していかなければならない。現行の中選挙区制だと、例えば同じ自民党でも、農村議員は農村のいいことを言い、中小企業のところでは消費税に反対し、片一方では賛成、いろいろやりながらもなおかつ当選できる仕組み。しかし、これからはそういった固定の支持層に対しても、場合によってはそういった支持層を敵に回すような政策もやらなければならない。ということは、つまり個人本位でなしに政党本位でいかなければいけないのだから、したがって選挙制度改革が必要である、残念だけれどもと、こういうことを私は言い得ると思います。  それから、二点目は何でしたっけ。
  16. 戸塚進也

    ○戸塚委員 今国会で成立てきなかった場合。
  17. 島脩

    島参考人 今国会で成立てきなかった場合、私はやはり政界再編というものは、またこれの有無にかかわらずいくのだろうと思います。  私のもともとの考え方というのは、日本政治が変わるためには、社会党が変わるかあるいは政権党が分裂するか、この二つの一つで、社会党が変わることを期待していたのですが、どうもなかなか、恐らくは自民党の分裂の方が先になるのじゃないか、そういう予感をしております。  それから、三点の……
  18. 戸塚進也

    ○戸塚委員 企業・団体献金
  19. 島脩

    島参考人 企業・団体献金、これは最高裁判決で、私は、企業献金というものも一挙に廃止するのはまだ時期尚早である。ただ、今までの企業献金の中では、やはり国民政治協会などを通じた金の方がむしろきれいなんです。問題はそのアウトサイダー、例えばリクルートにしても佐川急便にしても共和にしても、こういう国民政治協会を通さない金の方がむしろ問題であるというふうに私は思います。
  20. 田邉國男

    田邉委員長 以上ですか、もう一点は……
  21. 戸塚進也

    ○戸塚委員 公的助成。
  22. 島脩

    島参考人 公的助成は、先ほど私が申しましたように、これはやはり国民が本来は身銭を切っても政治活動を助けるというのが本来のあれで、現に今は個人献金などといっても、九千万人の有権者のうち二万人にも満たないというような状況ではとても政治資金は賄えないであろう。しかも、政治資金本来の趣旨というのは、金持ちでなければ出れない制度ではいかぬのだと。つまり、戦後の大衆民主主義の時代では、とにかく金がなくても志ある者は出て、それで浄財を集めて出るのだというような趣旨もありますから、私は、個人献金が今のような状態では、やはり企業献金はある程度必要であるというふうに思います。
  23. 戸塚進也

    ○戸塚委員 国会議員の理想像。
  24. 田邉國男

    田邉委員長 清原参考人、お願いします。(発言する者あり)
  25. 戸塚進也

    ○戸塚委員 結構です、結構です。済みません。
  26. 田邉國男

    田邉委員長 いや、清原参考人、お願いします。
  27. 清原武彦

    清原参考人 中選挙区を廃止するに当たって地元の人にどういうふうに説明をなさるか。皆さんは中選挙区のもとでそうした後援会組織等に乗って選ばれてきておるわけですから非常に御説明しにくいだろう、その点は御理解申し上げます。ですから、マスコミの立場として国民に訴えるのと皆様方が説明される仕方には若干の違いがあるかと思いますが、基本的にはやはり今の日本が置かれている状況というものは非常に難しい状況だ。先ほど申し上げました国際情勢転換期にあって、下手をすれば日本は孤立しかねない。そうした国のある意味では存亡の問題というものは、帰するところ選挙民の身に降りかかってくるわけですね。日本が国際的に孤立したと、既にこの間の日米会談でもかなり率直なやりとりがあり、日米経済摩擦は経済戦争になるのではないかというような危惧の声も聞かれますが、率直なやりとり大いに結構。ただし、日本がそうした中で国際的に孤立した場合のその国民の身に降りかかる影響度、そういうものをやはり国民皆さんに理解してもらうこと、これが大事だと思うのですね。ですから、地元のために頑張る、あるいは戸塚進也のために票を入れていただくのは大変ありがたいとおっしゃるのはこれは当然なんですが、しかし、その辺は中央の政治と地方分権とを今後明確化していく中で、やはり大きな国の政治というものを考えるための選挙制度システムが必要なんだという点を御説明いただきたいと思います。  第二点、今国会でだめならどうなるか。私は今言ったような危機感を持っております。つまり、まず日本という国の将来を憂える、そのために政治改革というものは今国会がもはやタイムリミットである、それほど激しく国際情勢は動いている。ですから、そうした状況にいつまでも制度が対応し切れなければ現実政治が対応していく、そうした中で政界再編といったような動きが出てくるかもしれない、そういう予感を持っております。  以上です。――ほかにございますか、私に。
  28. 戸塚進也

    ○戸塚委員 企業・団体献金はいかがでしょうか。
  29. 清原武彦

    清原参考人 企業・団体献金は、これは企業自体の存在を悪と認めるような議論にはくみしないという趣旨から企業献金を認める議論もありますが、やはり今の許認可制度、それにまつわる、皆さんには失礼ですが、族議員と言われる存在、そうした状況の中でやはり一つ政治腐敗のもとになりかねない面があるわけですね。ですから、理想的には企業献金というものは将来なくした方がよかろう。ただし、それは公的助成の問題とも絡むわけですし、私は、政治に金がかかる、ある意味では金がかかるのは当然ですから、そういう意味では公的助成は行うべきである。しかし、公的助成は今の選挙制度ではできない。すべて全部、選挙制度政治資金、公的助成が絡んでくる問題ですので、そうした意味一括処理を行い、さらに経過措置を経て、企業献金、団体献金は将来廃止の方向に向かうべきである、こういうふうに考えます。
  30. 田邉國男

    田邉委員長 中馬参考人、お願いします。
  31. 中馬清福

    中馬参考人 私への質問は、二点だと思います。  まず、企業献金の問題であります。  私、述べましたとおり、企業及び団体と申し上げました。原則から申し上げますと、政治に対する、政治にかかる金は個人が原則として負担すべきであるということが私の原則であります。つまり、政党というものは、今忘れられておりますけれども、自分たちの目指す政治を実現するために集まっている人たちの集いであります。これは当然そのための金は自分たちで負担する、これが大原則であります。今戸塚さんは、秩序を持ってという表現と、なるべく将来はなくするということをおっしゃいました。この二点がよくこの企業献金、企業・団体献金の性格をあらわしているのじゃないかと思うのです。秩序が保てるならば、あるいは将来なくすとおっしゃるということは、やはりこれについてのデメリットということを頭に描いていらっしゃるからこういう二つの条件をおつけになったわけでございますけれども、私たちが申し上げたいのもこの点であります。つまり、企業というものは株主がいて従業員がおります。これが、だれの意向によってこの企業が献金をするのか、あるいは団体が献金をするのかということが非常にあいまいでございます。ですから、ここのところは一度完全に鎖を断ち切っでいいのではないか。先ほど別な参考人から御意見がありましたとおり、日本の官僚、政治家、企業、そのいわゆるトライアングルが生み出すところの族議員システムというものを変えませんと日本政治というのはよくならない、これが私の企業・団体献金全廃論の根拠であります。  第二の問題、民間臨調の構想についてどう考えるかということであります。  実は私は、本日ここにお招きいただいたときに、自民党とそれから社会、公明両党の法案に限ってお話を申し上げました。というのは、この民間臨調の案は正式な法案ではございません。したがって、まだ私はどういう内容なのか、説明は伺っておりますけれども、案として正式に審議するところにいっておりませんので、故意に今回この問題に触れませんでした。  私的な考えを以下申し上げます。  まず、私は、この連用案と申しますものは、社会、公明両党が出していらっしゃる併用制とは根本のところで違っているものだというふうに理解しております。この制度の利点といいますものは、まず併用制そのものが、社会、公明党が出していらっしゃるものではいろいろと問題がある。先ほど申し上げましたとおり、いわゆる超過議席の問題がある。こういうものを正そうとする、これはプラスの面であります。もう一つのプラスの面は、小選挙区制で多数の議席を獲得した政党への議席配分をわざと不利にして、それで激変を避けた、これも一つの利点と申せましょう。ところが、この利点は、裏返しますとまた非常に不利な点になってまいります。つまり、なぜ小選挙区制で圧勝した政党に比例部分の議席配分を避けなければならないのか。あるいは、比例部分に投票した一票が、小選挙区の制度の結果、小選挙区制の投票の結果次第で生きたり死んだりすることになります。これは確かに小選挙区制で多数の議席を獲得した政党への議席配分をわざと不利にするという点は評価する一方、今申し上げたとおり、これでは一体何のための選挙区改正なのかという問題もまた新たに出てまいります。つまりこれは、先ほど別な参考人がおっしゃったとおり、哲学とか理念というものがやや欠けているのではないだろうかというふうに思います。つまり、妥協ということをまず念頭に置かれた結果、民意の正確な反映とかいう面での配慮がちょっと政治的になり過ぎている、あるいはとにかくこの時期だから何とか通そうではないかということで、足して二で割るという感じを私は抱いております。  しかし、先ほどから繰り返し申し上げましたとおり、選挙区制そのものに絶対のものはございませんので、この連用制というものが皆さん審議で十分に参考にされて、これがうまく取り入れられるようなことが可能であれば、それは非常に歓迎するところであります。繰り返しますけれども、そういうような連用制の持っているプラスを生かしながら、社会党、公明党の両党が一緒で出していらっしゃる案を軸にした選挙改革ができればいいのではないか、これが私の意見であります。
  32. 池田元久

    池田(元)委員 社会党の池田元久でございます。  きょうは先輩記者に物を申すような形でやりにくいのですが、よろしくお願いいたします。  島参考人清原参考人にお尋ねをしたいと思います。  中馬さんもおっしゃったのですが、政党の姿や政党制というのは選挙制度があってできるんではなくて、世界の各国を見ても、政党の姿があって、それに合った選挙制度ができるというのが歴史的な事実です。確かに選挙制度をてこに二大政党をつくるとかという考えがあることはあるんですけれども、私は、第八次選挙制度審議会考え方も、そういう選挙制度によって現実政党の姿を変えようという、やや不遜といいますか、そういった考えがあるのではないかという感じがいたします。  それで、民意の集約論というのは、オウム返しといっては大変失礼なんですが、盛んに議論されております。私は、民意反映、これはもうあえて言う必要はないのです。民意の集約論があるものですから、あえて民意反映ということを言わざるを得ないのですが、民意反映というのは、これはもう自明の理だと思います。民意の集約は、小選挙区制と結びつけて民意の集約ということが出てくるところに誤りがある。私も民意反映と集約というのは必要だと思います。そして、これは憲法にも書いてありますけれども、できるだけ選挙というのは民意を正確に反映する。民意反映論を体して鏡のような形に映すのかということをよく言いますけれども、大体そんな鏡のような形に映す選挙制度ができるわけがありません。多少曇りがある形で民意反映する。できるだけその鏡の曇りを取らなければならないというふうに考えております。そして、その民意反映した議会、全国民の代表たる議員によって構成された議会でまさに民意の集約と統合を行うのが、これが基本的な日本政治システムではないかというふうに考えます。  先ほどから、冒頭から、どうも日本政治にはリーダーシップがない。ですから、強力な政権といいますか安定政権民意を集約した政権が必要だというふうに聞こえますが、皆様おわかりのとおり、これはリーダー個々の資質によるわけですね。別に選挙制度によってリーダーシップがなくなるとか、そんな議論ではありません。これは自民党の党首の名前は出しませんけれども、顔のないリーダーとかいろいろ言われておりまして、まさにリーダーの資質によるのではないか。それからもう一つは、自民党は安定多数をとっているわけですね。安定多数をとっていながらリーダーシップがない。これはやはりその政権党である自民党のシステムに問題があるんではないか。選挙制度とはちょっと無縁なところの議論ではないかという感じがいたします。  そして、選挙制度審議会も、政権交代可能性が高まるとか、余りそれを前面に出すのはやはり邪道だと思うのですが、確かに私も政権交代が必要だと思っていますから、その議論は重要だと思います。ただし、小選挙区制による政権交代というのは、起こる場合はトラスチックに起こる。三乗比の原則とか言われます。しかしながら、イギリスの例を見ても、これは得票率トップの政党議席数二位になったケースがいっぱいあるわけですよ。労働党、保守党の間で逆転現象が起こっている。この辺が大変問題があるのではないか。アメリカの例を言えば、むしろ議席が固定化するといった欠点があるのではないか。政権交代を言うんなら、もう併用制を実施しても、これはもう第一党の自民党は五〇%以上とっていませんから、これは過半数割れを起こすわけでありまして、一挙に政局流動化が起きる。むしろマイルドな変化でいいんじゃないかという感じがいたします。  それからもう一点、やはり多様な民意といいますか、現在の社会は、余り多くを申しませんが、多様な民意がございます。そういったものに合った幾つかの政党制、政党ができるということは、これは政治的な現実なんですから、そこから日本政治の閉塞状況を破るシステムを考えるのがいいんじゃないかという感じがいたします。  以上の点をお二人に聞きたいのです。  もう一点、企業献金のことを戸塚さんがおっしゃいましたので、私は企業献金は、もうこれは国民の普通の常識からいって、営利会社が金を出すのですから、どうしても見返りというものは、これは心理的に考えます。ですから、昭和五十年ですか、参考人方々も現場の記者として恐らくいらっしゃったと思うのですが、三木内閣のときに、企業献金は大変問題だ。といいますのは、田中金脈問題が起きまして、日本はその後いっぱい疑獄事件が起きましたから、今はなれっこになっていますけれども、当時はまだ政治家政治はそれに対してうぶでありましたから、結局企業献金はまずいんじゃないかということで、自民党も党議決定をして法案として出したわけです。その内容は、政治資金規正法の附則で、企業献金を個人献金に切りかえる方途を五年間をめどに検討しよう、こういう立派な附則がついているわけです。ですから、この辺は一つの大きな過去のそういった歴史があるのですから、企業献金について自民党案というのは再考する余地が大いにあると思いますので、その辺、三人の方々に一言ずつコメントをお願いしたいと思います。
  33. 島脩

    島参考人 選挙制度についてのメリット、デメリットは、これはもう各国でも実施して、それぞれがいろいろ議論されている問題で、私はきょうの最初に述べましたように、そういうものを離れて、今二十一世紀を展望した日本政治考えた場合、日本においては何を導入したらいいのかということであって、諸外国の例は余り参考にする必要ないというのが私の立場でございます。そういう意味では、こういう困難な時期である、いろいろ国際的に責任も果たしていかなければならない時期であるから、やはり民意を集約して決断できるような政治あるいは政権を担当する政党はどこなのかというようなことを国民選挙たびごとに真剣に考えて投票する仕組みがいい。  それでまた、これの裏腹な問題として、失政があった場合は次の野党が政権を当然握るチャンスが生じてくる。今の状態においては、多数党になることを競い合うというような状況にはもう全くないわけですよね、中選挙区制のもとにおいては。僕は比例代表制のもとにおいても恐らくそうなるのじゃないかと思いますけれども。だから、政権を担う気概を持てるような選挙制度という意味では、僕はむしろ小選挙区制主軸の方がいいのではないかというふうに考えるわけであります。  それから、比例代表の場合、政権をとったら、ではその政党がどうなるのかという、例えば幾つかの政党が連合政権をつくる場合ですね。池田さんの社会党の場合は、政権をとったら自衛隊も認めるのだ、エネルギー政策もこうだとおっしゃるのだけれども、選挙の前にどうなのかというのはなかなかわからない。選挙が終わってから初めてそういった話し合いが始まるというようなことでは、やはり政権選択の選挙としてはどうも余りよくないのじゃないか。  それからもう一つ政治資金の問題については、私はこの三分の一、三分の一、三分の一、個人が三分の一、企業が三分の一、国庫補助が三分の一、こういうような仕組みというのをしばらくやって、この改革がもし実れば、その上で、むしろ企業献金をやめるかわりに国からの支出をもっとふやすとか、そういうことを考えた方がいい。まずこれをやって実績を上げる。それを国民に知ってもらって、なるほどと、じゃもっと国庫補助を出していいじゃないかというような方向へ、そのためにもまず改革が必要である、こういうことを力説したいわけです。
  34. 清原武彦

    清原参考人 池田さんにお答えします。  最初に、政党の姿があって選挙制度ができるとおっしゃいましたが、そうした側面ももちろんあるでございましょう。ただ、やはり制度に沿って政党の姿が変わり、定着していくという面は間違いなくあると思います。  中選挙制度のもとで既に四十年近く自民党の一党支配政権が続いておる。そうした中で、社会党は今の制度のもとでどういう政権獲得の展望を持っておられるのかと私は常々疑問に思っております。中選挙制度というものは、場所によっては一〇%、二〇%の得票でも当選するわけですから、ある意味では私は比例代表制に近いと思いますし、そうした中で、ある意味では第二党、第三党がそうした中に安住して、一定議席の獲得に甘んじて、政権獲得を目指しておられない。これは杞憂であれば幸いなんですが、例えば社会党さんは衆議院の過半数議席を獲得するに足るだけの候補者を毎選挙出しておられませんね。全候補者が当選しても過半数を占めることができない。そうした状況の中で私は社会党さんが中選挙区あるいは比例代表制にこだわる理由がよくわからないわけでして、むしろ政権交代可能性は小選挙区の方でふえる。そうしたことは前々回ですか、参議院選挙一人区で自民党の三勝二十三敗、状況によってはそうしたことが起こるわけですから、自民党さんの方がそうした点を心配されるのはわかる。社会党さんがそれに反対するのがむしろ不思議だというのが私の考えです。政権交代の緊張性をはらんだ制度のもとでは政党の姿もおのずと変わってくる、ちょっと失礼かもしれませんが、私としてはそういうふうに考えております。  それから、民意反映民意の集約については先ほど私申し上げましたので、繰り返しになりますので多くは申しませんが、さっき私が余り申し上げなかった点、つまり、十人十色と申しますけれども、やはり民意反映というものにできるだけ近づけようとすれば、どうしても多党分立、小党分立になる。これを切るためには、西ドイツ、今のドイツで五%条項というようなものがございますが、こうした点が今の日本で適用されるのかどうかという問題。それから、やはりどうしても比例代表になりますと、第一党は五〇%に及びませんので、連立政権となる。その連立政権の構想が選挙する時点で有権者にわかっていない場合、有権者は自分の票がどのような形で政治反映されてくるかわからないわけですね。そうしたデメリットというものは無視できない。  最近の衆議院選挙の際、公開討論会の席上である野党の方が、仮に選挙後に連立政権というような場合、政策はどうするのかと聞かれまして、そんなのは一夜でまとまるよとおっしゃったのを記憶しておりますが、選挙が終わった時点で一夜にして政策がまとめられても、それは有権者にとっては甚だ迷惑な話でありまして、やはり政党のその政策に対する責任というものは、選挙の前後を問わず常に明確にされなければならない。そういう意味でも私は比例代表制のデメリットというものを強く感じております。  以上でよろしゅうございますか。
  35. 中馬清福

    中馬参考人 私は、選挙改革政党関係というのが今お話に出たわけでありますけれども、いかなる選挙制度を採用なされようとも、今求められているのは政党のいわゆる活性化であります。活性化というのは、それぞれがさまざまなグループをつくってただ競い合っている姿を言うのではなくて、政党として何を国民政策として訴えて同感を得るかという、そういうことの意味での活性化であります。残念ながら社会党を含めて一部の野党にこの政党活性化の動きが見られていない。このために、選挙制度を幾ら変えても、政党が活性化いたしません限り、政治のいわば活性化は生まれないというのが私の考えてあります。  最近の有権者の意識の多様化を先ほど申し上げましたけれども、同時に、世界的に今流行しているあるいはその流れとなってきているNGO、つまり非政府活動というのが世界的な注目を今浴びておりますけれども、私は、こういうようなものを今の既存の政党はどういうふうにその政策に盛り込み、これを政治反映されるかということに注目しております。したがって、選挙制度政党を変える、あるいは政党選挙制度を変える、この二つは別に一方通行ではなくて、この両方の絡み合いというものが一体となって日本政治の変革につながるというのが私の意見であります。  もう一点、選挙制度についてさまざまなやり方がございますが、結局のところは、個人ではなくて政党選挙運動をやる、こういうシステムをつくりません限り、お金の問題はいつまでたったって片がつかない。あるいは個人の人気投票になって、いわばどぶ板型の政治家が出てくる。私は、これからの問題は、そういうような政治家を求めているのではないのでありますから、どういうようなシステムになろうが、政党が先頭に立って選挙運動もやるし政策活動もやる、これがかぎではないかということをお答えしたいと思います。
  36. 衛藤征士郎

    ○衛藤(征)委員 自民党の衛藤でございます。  それぞれの参考人にお尋ねいたしたいと思いますが、その前に、三参考人の御意見、私の理解に間違いなければ、こういうふうにお話しになったのかなと思っております。島参考人は、単純小選挙区制がベストだ、ベターは比例代表並立制である、しかし、この一、二とも無理であろう、連用制に期待している、こういうようなお話があったように思います。また、清原参考人におかれましては、ベストは比例代表並立制、海部案だ、こういうようなお話だったと思います。また、中馬参考人は、わかりやすさからいくと単純小選挙区制だ、民意反映からいけば併用制だ、民意の集約も単純小選挙区制であるが、自分としては社公案がベターだと思う、こういうようなお話だったと思います。  このお三方の御意見、大変参考になりました。これを踏まえまして、私は特に選挙制度についてお尋ねいたしたいと思いますが、島参考人から、これから先は与党総裁のリーダーシップに期待したい、指導力が問われている、こういうようなお話がありましたが、私は、あえて言うならば、野党第一党の社会党の山花委員長なり赤松書記長なり、野党第一党のやはり首脳のリーダーシップというものも問われておるんじゃないかなと思うんですが、この点について島参考人はどのような御所見をお持ちであるか、お尋ねいたしたいと思います。  それから、清原参考人にお尋ねを申し上げたいと思いますが、公職選挙法には衆議院議員の定数は四百七十一とうたっておるんですが、この連用制の案が、これは民間臨調、いわゆる臨調サイドでありながら、なぜ五百という数字を出してきたのか、その背景。当然この四百七十一以下で出すべきではなかろうかなと思うんですが、民間臨調という立場でありながら五百という数字を出してきたのはなぜだろうかということをお尋ねいたしたいと思いますし、また、さらには、自民党案の単純小選挙区制案は五百でありますが、この五百という定数についてどのような御所見をお持ちでございましょうか。例えば、今申し上げましたように海部案は四百七十一、それからもっと言うならば、比例並立制でいくならば小選挙区の定数は三百という数になりますし、さらには社公案でいきますと二百という数字になるのですが、二百から五百という数字が出ておるんですが、清原参考人におかれましては、もし単純小選挙区制であるとするならば、どの定数がベストでありベターなのか御所見を伺いたい、こう思います。  それから、最後になりますが、中馬参考人にお尋ねいたしますが、中馬参考人は社公案が望ましいということでありました。そして御所見の中に、これから迫りくるいろいろの諸課題について、むしろ多党化現象、そして連立内閣を生み出す社公案の政権の方が、高齢化社会、まあ暗に出てきましょう医療の問題、年金、福祉、国際貢献、こういう問題を国民の多様な意見反映しながらクリアしていく方がベターなんだというような御意見がありましたが、私はこれはちょっと疑問を覚えるわけでして、果たしてクリアできるだろうか。特に、これから高齢化社会を迎えまして、もう目の前に年金一元化問題等が起こっているわけでありますが、当然、財政、税制の抜本的な、ダイナミックな改革をしなければならない。そのときに果たしてこの多党化現象のもとの連立内閣でこれをうまくクリアできるだろうかということが大変心配なんです。  ヨーロッパの政党等におかれましては、連合、連立のときには必ずスリーアンダーライン条項、ツーアンダーライン条項、こういうようなことで大変苦悩している。しかも、結果的には少数政党が主張するところの、こう言うと語弊がありますが、福祉偏重型の、ややばらまき型の大変財源を必要とする案に落ちつかざるを得ないというようなことを考えたときに大変心配な面があるわけでありますが、この点について、社公案の御所見をお持ちの中馬参考人にお尋ねを申し上げたいと思います。  以上であります。
  37. 島脩

    島参考人 私の発言は、こういうふうに言ったはずです。宮澤首相を初め各党党首の力量と責任が問われるというようなことで、私はそのとおりだと思います。それは宮澤さんだけがやってもだめなわけで、特に妥協が必要な場合ですから、各党の党首が自分の党内を抑えるということが必要だと言って、やはり指導者のかたい決意というものが政治改革の成否を左右するという認識に立っております。  それで、現に我々は、四月の読売新聞の社説を読んでいただければわかりますけれども、「党首の力量が試されている」というタイトルの社説も掲げて、宮澤首相の評論家的態度、山花さんの自党案に固執する態度両方を批判しております。  以上です。
  38. 清原武彦

    清原参考人 幾つか御質問があったと思いますが、最初に私の先ほどの発言につきまして、ベストは並立案というふうに言ったというふうに一言で締めくくられましたが、これには若干の留保をつけたつもりでございます。私は、ベストは単純小選挙区、ただし、現実においては無理があるので、現状では第一に並立案、さらに連用制案も与野党の接点として十分検討に値する、こういうのが私の考え方でございます。  それで、お尋ねの公選法の定数の問題、確かに自民党案の並立案では四百七十一であった、それがなぜ連用制では五百かということでございますが、連用案については、まず小選挙区が三百、それから比例代表が二百、こういうことになっておりますね。小選挙区を三百としたのは、一つは、これは試算によりますと、一票の格差の問題を考えると、一対二未満におさめるには二百八十以下だと非常に難しいという技術的な問題がございます。したがいまして、社公案の併用制案で小選挙区の議席は二百、比例代表が三百となっております点は、私は技術的にも問題があると見ております。そうした技術的な問題。  それから、できるだけ早くこの新しい制度による選挙を実施に移すべきだということを考えました場合、選挙制度審議会の並立案で当時区割りがつくられておりますね、三百。この区割りが直ちに採用されることはないでしょうけれども、有力なたたき台になり得る。そういうことで、小選挙区三百、比例代表二百というのは現実に照らして無理のない案がな、こういうふうに考えております。  なお、自民党の単純小選挙区五百というのは、これは単純小選挙区に割り切った場合、五百議席は多過ぎるということで、三百ないし四百、そうした形に改められるべきではないかと思います。  以上です。
  39. 衛藤征士郎

    ○衛藤(征)委員 私がお尋ねしましたのは、行革審にしろ臨調にしろ、いわゆる行革をするという精神からすると四百七十一以下に、あらゆる工夫をしてでもそういう定数にすべきではなかったのかということをお尋ねしているのです。
  40. 清原武彦

    清原参考人 非常に痛いところをつかれておりまして、私ども産経新聞も、行革キャンペーンを推進する中で、議員はまず隗より始めよということで定数の削減を主張し、地方議会等でもそれが実現されております。ですから、基本的には衛藤さんのおっしゃることには私は賛成です。  ただ、一面では、さっき申しました日本の置かれておる現状への危機感、そうしたものから現実というものも無視できない、そういう観点からの発言と御理解いただきたいと思います。
  41. 中馬清福

    中馬参考人 私への御疑問は当然発するものだと思います。  私はこういうふうに思います。つまり、二大政党時代が、仮にどういう選挙制度かわかりませんが、実現したとします。この二大政党がこれから、つまりさまざまな国民のニーズがふくそうする時代においての二大政党が仮に実現したとしますと、恐らく二大政党はサービス合戦になるわけですね。今非常に心配されたことが二大政党でやはり起きまして、そういうことで競い合うということ、これの可能性の方がむしろ私に言わせれば高いのではないかと思っております。  私が申し上げますのは、政治というものは恐らくこれからは調整型の政治、そういうものが求められるのではないでしょうか。調整型ということは、結局、方向がたくさんある中から政治が非常に我慢しながら調整していかなきゃならない、その多様な要求を調整していかなきゃならないという仕事が政治に課せられたこれからの大きな役割である。そういうふうに考えますと、この連立というものをイコール混乱というふうに受けとめるのではなくて、むしろ連立によってさまざまな意見が集まってくるわけですから、その政党がその意見をどういうふうにして集約し、どういうふうに政治に実現させるかという意味では、その小さな政党、大きな政党それぞれが責任を負わなきゃなりません。それがありませんと次の選挙では敗れるわけでありますから、結局、これは意見を集約し、さらにそれを調整するという役割考えますと、連立の方がむしろ大きな、さまざまな国民の要求を整理し、実現するのには適しているのではないか、これが私の意見であります。
  42. 田邉國男

    田邉委員長 質疑者と参考人に申し上げますが、多くの委員に質問をしていただくために、質問と答弁は論点を絞って簡潔にお願いをいたしたいと思います。
  43. 井上義久

    井上(義)委員 公明党の井上でございます。  本日は、三参考人におかれましては、大変貴重な意見を賜りまして、大変ありがとうございました。  政治改革委員会論議ももう五十時間を超えておりまして、我々の決意といたしましては、四法案一括して処理をする、それから今国会中に結論を出す、それから次の選挙は新しい制度でやる、さらに、あえて申し上げますと、相打ちで現状維持は許されない、各党とも妥協点を見出す、合意点を見出す努力をすべきである、こういうふうに決意をいたしている次第でございます。  そういう前提に立ちまして、最初島参考人、それから清原参考人にお伺いをいたしたいわけでございますが、参考人の御意見、いわゆる国際情勢が激変をし、また、高齢化社会の急速な進展という、日本政治決断を迫られていることはたくさんある。そういう中で、国民価値観多様化しているわけでございます。しかしながら、今の政治がそういった役割を十分に果たしていないという認識でございます。そういう意味で、民意を集約して敏速に対応できるような政治のシステムをつくらなければいけない、そのためには二大政党、二大政党をつくるためには小選挙区だ、こういう御議論だったろうと思うんです。  そこでお伺いしたいんですけれども、一つは、委員会の中でも議論されてきたわけでございますけれども、単純小選挙区というのは確かに政権交代が起きる、それの可能性というのは比例代表も私は同じだと思いますけれども、単純小選挙区で政権交代が起きた場合は非常に大きなぶれが生じるわけでございまして、果たして価値観多様化している国民の現状、それから日本人の国民感情からいって、そういう大きなぶれというものを果たして望んでいるのかどうかというのがまず第一点でございます。  それから第二点目は、いろいろなシミュレーション、これは実際選挙をやってみなければわかりませんけれども、おおむね比較第一党が圧倒的な多数の議席を得る可能性が非常に高いわけでございます。そういたしますと、いわゆる政権議会との緊張感というものがなくなってしまうんじゃないか、議会役割は形骸化してしまうんではないか、このように思うわけでございます。特に、島参考人おっしゃいましたように、国会の機能というのは利害調整する機能ということが重要でございまして、そういう意味で、そういう議会のあり方についてどのようにお考えなのか。  それから三点目に、そういった点から私どもの提出をしておりますこの小選挙区併用型比例代表制、小選挙区の利点というものを取り入れまして、多様化する民意反映をしながら、なおかつ小選挙区を併用したことによりまして政権を担い得る基軸政党というものを、恐らく二大政党ということであろうと思いますけれども、この基軸政党というものを育てていこうということで、お二人のおっしゃっておられます。そういう小選挙区の利点というものを十分に考慮した案ではないか、このように思うわけでございますが、その点お伺いしたいと思います。  それから、中馬参考人にお伺いいたしますけれども、今回の政治改革の一番の目的が、いわゆる有権者政治に再び戻ってくることである、そのまず第一が政治資金の問題である、第二が選挙制度の問題だ、このような認識を示されまして、私どもも同感するところがたくさんございます。  そこで、政治資金の問題でございますけれども、一括かそれとも政治資金優先がという議論がずっとあったわけでございまして、私どもは一括処理を主張してきているわけでございます。といいますのは、今までさまざまなスキャンダルが起きましたときに、我々も、いわゆる企業・団体献金を全面的に禁止をする、あるいは収支の透明度を高めるとか、あるいは罰則を強化するというようなことを繰り返し繰り返し主張してきたわけでございますけれども、多数党の自民党の反対でことごとくつぶれてきた。これは、現行中選挙区制を考えますと、やはりお金をかければかけるほど選挙に有利だという現状がどうしてもあるわけでございまして、お金をかけて議席を維持し、そして政権を維持してきたという側面が私は一方ではあるんだろうと思うんですね。したがって、現行の自民党が多数を占めている議会の中で、この制度の根というものが抜本的に変わらないと、もちろん政権交代とか抜本的な政治改革ということは別にしても、そこがなくならない限り、なかなかやはり自民党の皆さん賛成をなさらないだろうという意味で、これだけを切り離してやるということは事実上できませんし、やはり根本的な腐敗防止というのは選挙制度を含めた抜本改革だ、こういう認識をしているわけでございます。その辺の、今なおかつ、もしその制度改革ができなければ政治資金だけを切り離してやれ、こういう世論も随分あるわけでございまして、その辺について中馬参考人はいかがお考えかということ。  それからもう一点は、これも委員会議論の中で出てきているわけでございますけれども、どうしても併用制は多党化して連立政権になりやすい、国民政権を直接選べないということが繰り返し出てきているわけでございまして、我々はそれに対して十分な反論をしてきたつもりでございますが、この点は中馬参考人いかがお考えなのか、お答えいただければと思います。
  44. 島脩

    島参考人 私は、小選挙区制でむしろトラスチックな変化というものがあった方がいいという立場で論じているわけです。やはり議院内閣制というのは政党政治でありますし、それでやはり政治指導者決断してやっていくことに、それで失敗したら責任をとるというようなことでいいわけでありまして、例えば今おっしゃったようにスキャンダルがあっても現実政治はなかなか変わらないわけですね。よしんば比例代表制になったとしても、例えば前々回の参議院選挙で女性問題あるいは消費税、もろもろの問題で社会党が一人区で二十三勝三敗というのがありましたけれども、比例代表の方ではそんなに差がないわけですよね、自民党を上回ったけれどもそんなに差がない。そういう意味では相当の腐敗政治が行われていてもなかなか政治が変わらない、むしろ小選挙区制の方がトラスチックな変化が生じて、国民政治家緊張感を持って臨むというようなこと。それから同時に、もし野党がいつまでも政権をとれないようだったら、当然政界再編ということも出てくるわけで、そういう努力が行われるような政治仕組みにしたいというふうに思っております。これが私は小選挙区制がいいと考えるもので、しかし、現実問題として難しいということは、私もこれは承知の上で発言しているわけであります。  それから、切り離しというのは、これはやはり現在の選挙制度が、先ほど申しましたように、いろいろ許認可行政とか補助金行政との絡み、それから選挙区の個別的、部分利益の優先というようなものと絡み合っている以上、やはり腐敗防止だけをやっても余り意味はない、やはり根本的なものを断つ必要があるだろうというふうに僕は考えます。
  45. 井上義久

    井上(義)委員 済みません、質問が三点ございまして、二点目が、先ほど申し上げましたけれども、いわゆる比較第一党が圧倒的な議席を占める可能性が非常に高いということで、議会緊張感がなくなるのではないか、政府との関係緊張感がなくなるのではないか、国会の持っている利害調整機能というものが失われていくのではないか、これが第二点目の質問だったのですが。
  46. 島脩

    島参考人 それは、第一党がたくさんとることは、理論的というよりも現実的にあり得ることだろうと思いますけれども、二回、三回と選挙をやっているうちにそれは当然修正されていくものと僕は思います。だから、一、二回は恐らく野党が不利だから、したがってそういう緊張感の欠いた議会が生まれるからだめだと短期的に考えるのじゃなしに、むしろこういう制度をやっていくことによって政治が変質していくというふうに私は思います。余り短期的に考えない方がいいのではないか。
  47. 清原武彦

    清原参考人 第一点、単純小選挙区の場合、政権交代によるぶれが大きいとおっしゃる御懸念はわかります。ただ、選挙制度にベストの案はないわけですし、そうした中で一長一短を考えた場合、どれを重視するか。私は、やはり今の制度のもとで四十年近く自民党の一党支配が続いている、そうした中で政治にどうも緊張感がない、しぼんだ風船のような、そうした感じを国民も受けておると思うのですね。やはりそうした緊張感を持った政治、そうしたものを生み出していく上で、常に政権交代があり得るという制度が必要であろうし、また、先ほど制度政党を変えるのか、政党制度を変えるのかという議論もございましたが、制度政党を変えるという観点に立ては、現実的な政策を打ち出さない限り、国民はなかなか政権を担う党としての負託を与えない、そういうふうに考えます。そうした意味では、小選挙区のもとにおいてそれぞれの政党が切磋琢磨し、接点というものもそれだけふえてくるのではないかというふうに期待しているわけです。  第二点の、比較第一党が大きな数字をとって議会に緊張がなくなるのではないかというのは、そうした結果になることもありましょう。しかし、私は海外特派員としてアメリカの議会等も見ましたし、イギリスの議会を見ましても、単純小選挙区に基づいて選ばれた議員は非常に活発な政策論争をやっておる。政党本位、政策本位の選挙になる以上、政策における日ごろの蓄積、研磨、そうしたものが試されるわけですから、議会もおのずと活性化するし、それに政治改革一つの柱としては、これは先ほどは言及する余裕がありませんでしたが、やはり国会運営の改革、これはぜひ行っていただきたい。今回、政治改革法案をめぐって、それぞれ提出者側が答弁に立つ、そういう双方向の議論のやりとりというのは非常に好ましい傾向ですが、そうした意味で、議会運営を改めることによって国会はさらに活性化する、そういうふうに考えます。  政治資金の切り離しは、先ほど申しました理由で反対で、私は一括処理立場に立っております。  以上です。
  48. 中馬清福

    中馬参考人 私への質問は二つあったかと存じます。  第一は、端的に申し上げますと、この四つの法案一括処理するのかしないのかというお尋ねだったかと存じます。  現在、自民党案と社公両党案がこの国会審議されている最中であります。したがって、審議している最中であるということを考えますと、当然これは一括してこの法案を全部上げていただくという、これがもちろんベストでございます。ましてやこの四つの関連法案はいずれもさまざまに入り組んでおりまして、一方がなくて一方がいいというものではないという観点に立ちますと、一括処理を当然のことと考えます。  しかし、私たちは過去に苦い経験を持っております。海部内閣のときに結局まとまったものまで流してしまう、こういうようなことがあのときの国民における政治不信をますます大きくしたことは忘れてはなりません。ベストと、ベストの反対のワーストということであれば、せっかくまと。まったものも流してしまう、これが最悪の選択であります。したがって、最善と最悪ということのぶつかり合いを我々は今一番恐れておりますけれども、この後まだしばらく国会もございますし、会期延長も可能であるとするならば、一括処理ということをまず念頭に置きながら審議を進めていただく。  ただし、繰り返しになりますけれども、せっかくでき上がったもの、国民が一番期待している政治改革、つまりお金の問題について何にもなさらないままでおしまいということになりますと、これはまた、国民の不満というものは恐らく海部内閣のときをかなり上回るものになる。これは議員の先生方にはぜひ覚悟しておいてもらわなければなりません。  それから第二の御質問は、いわゆる小党乱立の問題についての考え方についてであります。  私は、先ほどるる申し上げましたとおり、小党乱立といいますか、国民の要望が多様化していく結果、志を同じゅうするグループが、政治的なグループがこれから非常にふえてくることはもう避けられない、こういう観点で私は物事を考えます。したがって、それを、いかなる選挙制度であろうが、この多様化した要求というものをくみ上げていくにはどうするか、ここのところを考えます。最近のフランスの総選挙の結果、それから先ほどのイギリスの総選挙の結果、さらにはアメリカ大統領におけるペロー現象などを勘案いたしますと、これは日本だけではない、先ほど繰り返し申し上げましたけれども、日本だけではない現象であります。そういたしますと、小さな政党がこれからふえてくる、連立内閣、連立政権がこれから日本政治をかなり支配する、このことをまず念頭に置かれた上で、その場合にどうするのか、その少数の政党が競い合っていくときにどうやって混乱をなくすのかということを考えることが私は政治改革の出発点ではないか、これが私の意見であります。
  49. 小林守

    ○小林(守)委員 社会党の小林守でございます。  まず最初に、中馬参考人に対しましてお聞きをいたしたいと思います。  先ほどのお話の中で大変感銘を受けて受け取った言葉がございました。人々は政治を無視してでも暮らしていける、そういう認識になっているのではないかというようなお話がありましたわけなんですが、これを既成の政治家である私どもといたしましては大変厳しく深刻に受けとめなければならない、そういう一点があるわけであります。人々は政治を無視しても暮らしていける、これは、そこで言っている政治というのは既成の政治というふうに言えるかと思います。  もう一つの受けとめ方としては、私はこの言葉の中に、新しい生活の現実、それから新しい価値観、そういうものが生まれているのではないか、そのように受けとめて、それに対応する的確な政治システムが求められているんだというふうに受けとめさせていただいたわけであります。  要は、今日の国際化社会の中で、国家主権というような枠ではなくて、既に世界市民とかそういう言葉が現実のものとして、先ほどのお話の中でも、NGOをどう位置づけるんだというような観点もございましたけれども、環境とか人権とか平和や公正という価値については既に国家の枠を超えて国際化している、そういう状況が生まれているわけでありまして、それを私は、人々は日本の既成の政治を無視しても暮らしていけるという中に受けとめていきたいな、そんなふうに思っているわけであります。ですから、国家の統治機構とか統合機能が極めて混迷しているという日本の現状に対して、人々はもっと超えた問題を認識しているんだというように受けとめる必要があるんだろうというふうに思います。  そういうことで、これからの新しい、国民の、世界市民の求めている政治システムというのは、多様な民意反映そして調整、これが求められる政治なんだろうというように思います。そういう点で連立政権が望ましいというような見解になられているんだろうと思いますし、私もそのとおりだ、そのように思うわけでありますが、中馬参考人に、単純小選挙区制につきまして、自民党案の方では、政権交代可能な二大政党化を図れるんだというようなことと、民意の集約としての安定政権というふうな言葉が、やはり国家主権を強化する、国家の統合機能を強化する、そういう観点から打ち出されているのではないか、そのように思えてならないのですが、私は、ですから、そこで言っている安定政権というのは、自民党政権の固定化であり永続政権化、こういうものを目指しているのではないか。そして、国民はそういうものに対してはますます離反をして、政治を無視しても生きていける、暮らしていけるというようなところに広がっていってしまうのではないか、そんなふうに思えてならないんです。その辺についてお伺いをいたしたいと思います。  それから、島、清原参考人に対しましては、ちょっと大ざっぱなまとめ方になろうかと思いますが、なぜ今政治改革なのかということを振り返ってとらえてみるならば、何といっても政治腐敗に対する憤り、公正を求めているんだというふうに言えると思います。選挙制度政治と金の問題、これは車の両輪だというようなお話ですけれども、どう聞いてみましてもウエートは選挙制度に置かれている、そのように思えてならないわけであります。  そういう観点から、国民がまず民意反映として最も望んでいるのは、政治と金の汚れた関係をどう断ち切っていくんだ、これが最大の課題なんだということです。我々も、選挙制度関係も一体のものだ、そういう取り組みで進んで考えております。しかし、それはウエートの置き方は一体のものであって、お聞きします意見では、どうも選挙制度の方へ話を転化してしまっているのではないか、そのように思えてならないわけであります。企業献金こそ政治腐敗の温床であるという歴史的なさまざまな事件の事実を考えるならば、この際企業献金を廃止すべきではないか、禁止すべきではないかというのが私の考え方でありますけれども、もう一度その点についてお伺いをいたしたいと思います。  以上でございます。
  50. 島脩

    島参考人 政治腐敗を断ち切ることをすべてに優先させるべきだ、そのとおりでございますが、私は、それだけではいけないということ。やはり根本的には、日本の利権構造と中選挙区制というのは絡み合っている、だからそこを断ち切らなければならないということを冒頭に申し上げた。スキャンダルの対応にだけ追われている日本政治というのは僕は貧しいというふうに思います。  それから、したがって、そういうことから、国民政治を無視しても暮らしていける、私はそうあってはいかぬと思うのです。現実政治は、僕が冒頭に申し上げたように、こういう困難な時代になって、例えば、消費者と生産者、あるいは高齢者と若年層、あるいはまた輸入業者と輸出業者、さまざまな分野でいろいろな調整を要するものがあるわけですよね。彼らが政治を無視しているというのは、政治は何もやってないということです、そういう肝心な問題については。だから、そういうものを政治本来の機能を発揮してうまく調整し、むしろ有権者国民から政治が頼りにされるというか、進路をこういうふうにやはり政治が持っていってくれるのかという、無視されていることで反省しているだけでは僕は本当に困ると思うので、むしろそういうふうにならないようにするための政治改車であるというふうに私は思っています。  それから、企業献金の問題は、先ほど僕がお答えしたとおり、まずこの改革案をやってみて、その上で、なるほど政治が、かなりわいろ性の濃い資金も追放される、しかしまだ問題があるということならば、当然国庫助成金のさらなる増額というようなものも出てくるでありましょう。まず実績を上げていただきたいということでございます。
  51. 清原武彦

    清原参考人 私の発言につきまして、政治腐敗の問題と選挙制度、車の両輪と言いながらもウエートは選挙制度改革に置かれているとおっしゃいましたが、確かにそういうニュアンスの発言だったかと思います。  ただ、誤解をいただきたくないのは、私は、選挙制度改革政治腐敗の根絶、この二つの問題は二律背反の問題とはとらえておりません。表裏一体ということを申し上げたつもりでございます。ですから、現在、先ほど中馬参考人が言われたように、自民党の総裁選の腐敗ということを取り上げられました。これはやはり派閥が存在する。なぜ派閥ができるか。中選挙区で政権政党になるためには、少なくともその選挙区での定数の過半数以上の候補者、複数候補者を出さなければいけない。必然的に派閥ができるわけですね。あるいは同じ党の候補者が同士打ちをするとなれば、これは政策で争うよりも、やはり地元へのあるいは後援会への利益誘導、そうしたものにどうしてもウエートが置かれる。そうした意味で、選挙制度を改めることによって政治腐敗も正すことができる。そういう趣旨で車の両輪と申し上げたわけであります。  やはり政治家皆さんは、選挙で当選をして国会に出てこられなければ、いかに達見を持っておられても、それを国政の場に反映できない。あるいは総理・総裁を目指される方は、議員バッジがなければ総理・総裁になれない。となれば、現在の選挙制度のもとでどうしても金がかかる。あるいは金を集める能力が派閥の領袖としての資質、資格となる。そういう状況のもとでは、いかに片方のところだけ蛇口を締めても、結局水は別の方向にあふれてしまう。裏に潜ってしまうわけですね。過去に政治資金規制強化を行い、その結果いろいろな抜け穴が発案された。パーティー券方式しかり。そうした点は皆様御存じのとおりであります。ですから、私は、制度改革が必要だ、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  52. 中馬清福

    中馬参考人 国家をどういうふうにしていくかというのは、現代の政治が直面している大きな問題であります。したがって、単純小選挙区制を自民党が導入しようとしているのは、彼らが永続政権化をねらっているのかという御指摘でありますが、私は必ずしもそういうふうには見ておりません。自民党がいわゆる永続政権化をねらって単純小選挙区制を出すというそういうようなものよりも、むしろ今、世界じゅうが問われている国家をどう構築していくかについて、政権を持っているだけに自民党はむしろ真剣に考えていらっしゃるのだろうと思うのです。その結果、どうしても現在のままでいった場合には国家の機能が非常に侵食されるおそれがある。そういうことで、この際、やはりその根幹であるところの政治改革、さらには選挙改革を行って小選挙区制ということにたどり着かれたのであろう。その点、私はもう少しその辺は理解してよろしいかと存じます。  さらに、日本政治風土と申しますものは、激変を好みません。したがって、小党乱立とか政権がくるくるかわるということについては、本能的に恐怖感を抱いておるのも事実でございます。したがって、そういうような国民の意識ということから考えて、単純小選挙区制の方が政権が安定するであろうという御発想は、私は私なりに理解できます。  しかし、先ほどからるる申し上げているとおり、決して安定しないのですね。小選挙区制を採用したから安定するというほど簡単なものではなくなってきている。そこに国家の今問われている問題があるわけでありまして、それを抜きにして単純小選挙区制をおとりになっても、これは決して成功はしないだろう。それよりはむしろ、これからの国家というもののあり方、あるいは、先ほど述べましたとおり、NGOその他のものをどういうふうに政治に参加させていくかということを考えておかないと、恐らく、制度だけいじっていても、後ではまた行き詰まるのであろう。それほど今の国家が抱えている問題は重い、私はそういうふうに考えております。
  53. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  中馬参考人一つお伺いをいたします。  参考人選挙のよしあしをはかる第一の基準に、民意の正確な反映というものを挙げられました。しかも、それは非常に重要な基準であるということも言われました。まさに私はそのとおりだと思います。しかし、参考人はそういう立場を前提にしながら、社公の併用制、これがいい案ではないかとおっしゃられております。しかし、今これが採用されているのはドイツであります。顔の見える比例代表制ということから評価しておりますが、実際我が国でこれが行われますと、顔の見えるのは自民党の議員だけになってしまう。野党の方は辛うじて、小選挙区制で負けて比例代表で救われる、シャドーキャビネットならぬシャドーステーツマンになってしまうんではないかと思うわけであります。  こうした組み合わせによって、結局比例代表のよい点が小選挙区制を持ち込むことによって壊されてしまうんではないかという問題についてどう考えるのか。小選挙区効果と言われている問題であります。現にドイツでは、三回ほどこれが施行された結果、十ほどあった政党がもう三回目にはわずかに三つぐらいになってしまう、まあ五%条項の問題もありますけれども、そういう効果があるわけでありまして、まさにこの制度はそういうことをもたらすんではないか。そうしますと、やはり制度によって民意を鋳型にはめてしまう、閉じ込めてしまうという、先ほど参考人がお話しされた小選挙区に対する批判がみずからにはね返ってくるんではないかと思うわけであります。  どうしても、この二つの併用をやりますと、目の前の選挙運動は小選挙中心になります。そして当選された議員だけが有権者にとって身近な議員として目の前にあらわれてくるから、そういうことになっていくのも避けられない歴史の必然ではないかと思うので、この問題に対してどうお考えになるのか、お聞きをしたい。  もう一つ島参考人に対してお聞きしたいのですが、中馬参考人から小選挙区制論者に対する厳しい批判として、民意の集約を第一に考え考え方というのは、自分であらまほしき姿を先に立ててそれに沿う選挙制度をつくるという考え方であって、これは論理が逆立ちしているんではないか、これではますます国民政治から遠ざかるんではないかという批判がぶつけられました。私は、島参考人の話を聞いてみて、まさにその批判が当たるんではないかと感ぜざるを得ません。国際情勢の激変、世界からの与えられた課題に的確に敏速に対応するために民意の集約が必要なんだということを参考人はおっしゃられました。  その内容が、例えば自衛隊の海外派兵、あるいはそれをつくるための財政的基盤の確立のための消費税の税率の引き上げ、あるいは米の自由化、あるいはさらには憲法をつくりかえることなども参考人のやらなければならない課題として挙げられているのであれば、まさにこれは国民の多くの支持なしにやってはならないことではないか、議会制民主主義、国民主権の憲法からいっていけないんではないか。民意の集約という考え方は、要するに三〇%台、四〇%台の得票、支持しかないにもかかわらず、小選挙区制によって六割、七割、八割の議席をとる、単純小選挙区制の場合には九〇%を超えるという、それをまさに民意の集約と称しているわけでありますが、重ねて、中馬参考人から厳しく指摘されたこの問題に対して、民主主義、国民主権という観点からどう考えているのかをお聞きをしたい。  この二点。
  54. 島脩

    島参考人 あらまほしき、こうおっしゃいましたけれども、小選挙区制において実際に投票して決定するのは有権者でありますから、これはやはり有権者の動向によってそのときどきの政権が決まるということで、だれがあらまほしきを考えているのか、それはわかりませんけれども、そういうことは当たらないだろうと思います。  それから、今たまたま消費税その他の話が出ましたけれども、先ほど中馬参考人は、政権党として自民党は真剣に考えているとおっしゃいました。これは、真剣に考えているというのは、とりもなおさず政権党としての責任感を持って行動しているということだろうと思います。  それで、例えば消費税、これは将来の福祉財源、高齢化社会の福祉財源として、恐らく当時の自民党としてはやりたくはなかっただろうけれどもやらざるを得なかった。農産物の自由化もしかり。これは本来ならばやりたくない。やりたくないけれども、やらないといっていれば国際化時代に対応できなくて日本が孤立化しちゃう。こういうような問題というものがまだまだ私は出てくるだろうと思う。これは比例代表併用制のもとではなかなかこういう問題に的確に対処できないであろうということを申し述べておきます。
  55. 田邉國男

  56. 清原武彦

    清原参考人 今のあれですか、島さんへの質問と同じ質問でございますか。
  57. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、もうお二人大体同じ立場ですから、聞いてないです。
  58. 清原武彦

    清原参考人 いや、一応御指名でございますのでお答えしますけれども、各政党とも同じ土俵の上で選挙を戦うわけでありまして、初めから特定政党に有利というようなことで制度考えているわけではありません。
  59. 中馬清福

    中馬参考人 私は、選挙制度というのは、最初に申し上げたとおり、さまざまな案があって、一長一短あるということを申し上げました。つまり、比例代表制という民意をほぼ完全に反映できるというシステムは、同じような、今度はそういうことを是とする方と、しかしそれではまとまるものもまとまらないからやはり単純小選挙区制がいいんだという、これは選挙制度をやる場合必ず古典的な論議の対象でありまして、いわゆる民意反映論あるいは国政過半数論というふうに呼ばれているシステムだろうと思うのですね。これがどちらかがぴたっとうまくいけば言うことはございませんけれども、世界の国を見ましても、完全比例代表制あるいは完全単純小選挙区制というのは非常に難しゅうございます。したがって、選挙制度を変えるたびにだんだん折衷案になっているのが世界選挙制度の趨勢ということが言えるかと思います。  さて、そういうような立場で私はこの折衷案というものを推したわけであります。顔が見える見えないということについて、私は自民党が見えて野党が見えないという考えには必ずしもくみしません。これは場所にもよりますし、また、むしろ野党の方々が顔が見えるような努力を選挙制度とは関係なしにもっとやっていただきたいというふうに考えている一人でございますので、顔の見える見えないというのはむしろ政党の努力にまちたいという考えてあります。  私は、したがって、折衷案は全然よくない。つまり、おまえが言う小選挙区制を取り入れたがゆえにせっかくの比例代表制のプラスも消えたではないかという、これも御意見としてはそうだろうと思います。しかし逆に、小選挙区制を主張する側から見ますと、なぜおまえはこの比例代表制を入れたんだ、このためにおれの言い分は全くなくなったじゃないかということになります。そうすると、この二つの中でどちらを選択するかというと、最初に申し上げたとおり、民意反映という点では、小選挙区制を取り入れてもまだその比例代表制の方からおつりが出る、したがってそちらの方を選択する、こういうような立場であります。
  60. 柳田稔

    柳田委員 民社党の柳田でございます。  三人のお話を聞いておりましていろいろ思うことがあるのですが、私は、今政治に課せられた最大の責任は、今のこの世界の動き、大変急激な動き、どう的確に、よりベターに判断をし、決断をし、実行するかであろうと思います。  これは国の外だけに限らず、国内においても高齢化社会が来るということで大変大きな課題を今我々は持っておるわけであります。国民サイドからいえば、一番いい方向を選択するように国会にお願いするしかない。つまり、間違いのない判断を国会や内閣がしてほしい、その制度がどうあるべきかというのが私は最初議論ではないかと思っておるのです。  抽象的なことを言うよりは具体的なことで質問したいと思うのですが、昨年PKO法案国会で成立をいたしました。あのときにいろいろなことがあったわけですが、日本としても初めて対応しなければならない問題だ、何としてもしなきゃならない。しかし、そのする方法に対して、自民党さん初め、社会党さん、公明党さん、我々、共産党、みんな意見が違ったのです。さらに新聞の方も、論説を読んでおりますと各紙各様で、基本的なところは一致した点もありましたけれども、意見の違うところも大分見受けられました。  しかし、考えてみますと、一番最初の自民党政府から出された原案から、今回、今できている法案、例えば国会の事前承認なりPKFの凍結なり、さらには五原則なり、いろいろなところが修正をされて現在施行されておるわけでありまして、自民党さんに言うと怒られるかもわかりませんが、私は、大分ベターになったなと思っておるのです。  つまり、何が言いたいかといいますと、一つの大きな政党が出された案であっても、これほど世界が変化をする、その変化に対して的確な判断が下せるかどうか、そう思ったときには、いろいろな意見をくみ上げながらよりベターな案にしていくのが今の日本政治状況を考えた場合に最適ではないかと思うのです。  そうしますと、やはり比例という選挙制度に結びつくかと思うのですが、いろいろな御意見国民にもある、また新聞にもある、国会の議員の中にもある、その意見を集約して的確な判断をするためには、私は比例がベターではないかな、基本的にはですよ、というふうに思うのです。この私の考え、私は今の政治状況、そう思うのですが、このことについて、島さんと清原さん、どういうふうに思われるか。  中馬さんにはもう一つ質問したいのですけれども、きょう出席されて大変ありがたいことだと思うのですが、きょういろいろともう二時間近く議論していますけれども、出席議員の顔を見て、大分空席も目立っておりますが、政治改革に対する決意が、先ほどちょっとお話がありましたので、今のこの会議に参加した感想も述べていただければと思います。  以上です。
  61. 島脩

    島参考人 国政の重要な問題について、政権党各党と協議したりあるいは少数党の意見に耳を傾けるというのは、これは何も、どんな選挙制度のもとでも当然のことであります。議会というのは、まず討論と説得でありますから。ただ、最終的にはやはり多数決で決するというのが議会政治のあり方で、その責任を持つのが政権党である、こういうことだろう。したがって、議論はこれはいかなる選挙制度のもとでも行われなければならないだろう。  ただ、併用制の場合には、そういった政権の主体というのはどうしても小党による連立、連合政権ということになる。その場合に、多様な意見がいろいろ出た場合に、果たしてそれをちゃんとその内閣で集約できるのか。もし辛うじて議論の結果対応できたとしても、その対応は非常に手おくれになるのではないか、あるいはその前に非常に調整に手間取って結局はやれなくなるのではないか、そういうようなことを私は言っているわけであります。  したがって、そういう意味では議論はするけれども、やはり政権党は安定していた方がいい。それは、現在の野党が次に与党になろうが、とにかくそういう緊張関係にあった方がいいというふうに考えます。
  62. 清原武彦

    清原参考人 世界の動きに対応するための政治改革であるべきだという御意見には敬意を表します。  ただ、具体的な例といたしまして、PKO法案の成立過程において、少数政党意見が組み入れられたためによりベターな案になったということでございますが、ベターになったかあるいは原案の方がよかったか、これは恐らくここにおられる議員さんの間でも見解を異にすることであろう。私が指摘したい点は、あの法案はたしか三国会でございましたかにまたがって、非常に難産の末に生まれた。しかし、国際情勢はどんどん先に進んでいってしまう。したがいまして、湾岸危機の際に、日本は具体的に目に見える形で人あるいは物の貢献ができなかったということで、このツケを大きくしょい込んだということは、皆様御存じのとおりであります。  私は、そうした意味で的確に対応するということは、タイミングを失せずということも含め、さらに内容面においてもすべての国民を満足させるわけにはいかない、大局的に大きく判断してやらなければいけない、それには決断が要るし、決断するためのシステムが要る、そういうふうに考えております。
  63. 中馬清福

    中馬参考人 今回、この会議を拝見いたしまして、いわば政府対政党という形ではなくて、与野党がいろいろ意見をぶつけ合っていらっしゃる、これ、やり方について私は非常に感銘を受けております。こういうような中からさまざまないわば妥協が生まれる、あるいはよりよい方向が打ち出される、そういう意味で、こういう与野党が本気でぶつかる場がふえていくことを私は期待しています。  と申しますのは、私は安全保障が担当でございますが、安全保障の問題について、私は、非常に日本のケースは不幸な経過をたどったと思っております。つまり、自衛隊を自民党は全くもう無条件にかわいがって育てる。野党の皆さんは、おれは知らない、おれはこの誕生には関知してないということで放置される。その結果、猫かわいがりされた自衛隊と、一方ではそれを認知されない自衛隊というものが非常に不安定な立場に置かれます。  私は、政治と軍事というものは並行し、かつ政治が前を走っているという、ちょうどガンが飛ぶような格好で動くべきものだと信じております。今の状態はそうではなくて、まさに政治と軍事の関係というものは、自民党のいわば竹やかし、野党の素知らぬそぶりで今日に至っておりまして、いわゆるシビリアンコントロールというものが形骸化するのは、これは無理からぬことであります。そういうことを常々考えておりますので、ぜひ、安全保障問題につきましては、こういうような場で与野党がそれぞれの御意見をぶつけ合うというような方向に国会が進むことを期待しております。  以上です。
  64. 増子輝彦

    ○増子委員 自由民主党の増子輝彦でございます。  先ほど来、三人の参考人の皆様方から大変貴重な御意見を伺いまして、大変ありがとうございました。  実は、私も、新しい時代認識といたしまして、この時代認識して、激動する国際社会に誤りのない対応をしていくということには全く同感でございますし、そのために国家のリストラクチャーを今必要としていること、そして新しい国家像、国家理念をつくって、これらの厳しい時代に対応していかなければならないと、そういうふうに思っているわけでございます。  そういう意味でも、新しい政策決定のできる政治改革というものを、まさしく私は今最も重要なものだと思っているわけであります。政官財のトライアングル構造を変えながら、民意が集約され、反映された政党本位の、そして政策本位の政権交代可能な緊張感のある政治システムというものをどうしてもつくっていかなければならない今時代だと私は思っております。  そういう意味で、三年前のリクルート疑惑や、あるいはこの我々の今の任期の中に起きてまいりました共和だとかあるいは佐川問題あるいは残念ながら金丸前自民党副総裁等の問題を、我々は深く深刻に考えていかなければならないと思っておりますので、そういう意味で、今度のこの政治改革というのは本当に私は待ったなしであり、どうしてもやらなければならないものだと、全国会議員あるいは政治にかかわる者がこれは認識をしなければならないと思っております。  そういう意味で、今回、何らかの結論を出さなければ、これは国会としてあるいは国会議員としてその責任を果たすことができないだろう、そういう実は考え方に立ちまして、お三人の方に幾つかの御質問を申し上げたいわけであります。  まず最初に、中馬参考人に、実はただいま私が申し上げた、今回はラストチャンスである、今国会でこれをやらなければ大変なことになるという観点から申し上げますと、実は島参考人清原参考人は、今国会がどうしてもやらなければいけないある意味では最後のチャンスであろう、どうしても今回まとめろというような御意見と私は思ったわけでございますが、中馬参考人はこの件につきましては若干ニュアンスが違うような、今国会で必ずしもやる必要はない、まだ先があるではないか、そういうような実は感じに受けとめられたわけでございますが、この件につきましてひとつ中馬参考人の御意見をお伺いしたいということ。  さらにもう一つ中馬参考人に加えてお聞きしたいことは、やはり島参考人清原参考人は、この政治改革、両方から出されているものにつきましては一括処理をすべきだという共通の考え方を実はされておりましたけれども、この件につきましても、中馬参考人についてははっきりとしたお考えを私は聞き取れませんでしたので、この二つをまず、中馬参考人がどのようにお考えになっているかということをひとつお尋ねをいたしたいと思います。  次に、お三人の方でございますが、今度の自民党の単純小選挙区案にいたしましても、社公の併用型にいたしましても、あるいは民間政治臨調が出しました連用制の案にいたしましても、場合によっては海部内閣のときの並立というような案もあるわけでありますが、いずれにしてもこの全部の、今回の可能性のあるものとして言われている中には全部小選挙区が入っているわけですね。そうしますと、小選挙区となりますと、たとえこれが二百からあるいは五百の幅のある数の中にあっても、どうしても区割りの問題というものが重要な今後の大きな問題になってくるかと思います。そういう意味では、一対二の一票の格差というものを守るという観点からすれば、どうしても一対二を厳格に守っていくことが大事なのか、あるいはこれを守りますと行政区画の分割あるいは部分結合あるいは飛び地、こういった問題が出てまいりますので、この区割りというのは非常に小選挙区を導入する場合に重要な私は問題点になってくると思いますが、一対二の格差を守るべきなのか、あるいは場合によっては若干一対二は外れてもやるべきなのか、この点について三人の方にお聞きをしたいということでございます。  さらに次の点につきましては、やはり先ほど来語が出ている、それぞれの参考人皆さんから言われていることは、民意の集約、反映、これが非常に重要であるということが問われているわけでございますが、この点につきましては、やはりこれは衆参一体のものでなければおかしいと思います。そういう意味では、衆参一体ということから考えていきますと、この衆議院の役割から着目していくことが大事でございましょうが、参議院のあり方、参議院の制度とか参議院の役割という点から考えていきますと、参議院の選挙制度、こういったものについてどのようなお考え方を持っているかということをまたこれお聞きをいたしたいと思います。  最後に、選挙予測報道の件につきまして実は清原参考人がおっしゃられましたが、島参考人中馬参考人についてはこれについては何の見解も示されておりませんが、マスコミの立場からすればこれはやはり大変重要な問題かと思います。これについて、ひとつお二人の御見解を例えればありがたいと思います。  以上で終わります。
  65. 島脩

    島参考人 今私は、民間政治臨調連用制というものは実のところこれはかなりいい案ではないかな、妥協案としてはですよ。先生今おっしゃったように、三百議席にしたことによって市町村の分割も避け得る、あるいは一対二の格差是正も行える、こういう利点もある。したがって、もしあの案がこの場で、各党の協議の中でああいう案が合意できたのだとすれば、とにかく、もし我々が社説を書く立場になれば、理念、哲学がないけれども政治妥協としてはこの辺がいいのではないかというふうに恐らく我が社の社説は書くだろう。しかし、民間臨調妥協案として出したものにしてはちょっと、もう少しましな案がないのかという、つまり理念、哲学という意味で、そういう点でひっかかるわけですけれども、あれを軸にやはりここで合意、妥協を図られるということが一番望ましいのではないかというのが現在の私の考え方です。  それから、衆議院選挙制度の問題は、これは衆議院がどういう形になるかということによって、本来的には私は、衆議院がどちらかというと小選挙中心、参議院の方は比例代表というのがいいのじゃないかと漠と考えておりますけれども、これは衆議院の選挙制度がどういうできぐあいになるかによってまた議論の余地が出てくるだろうと思います。  それから、選挙予測の報道については、全く清原参考人と同意見でございます。
  66. 清原武彦

    清原参考人 初めに、区割りの問題で、一対二で頑張るべきか、あるいは例外を認めてもいいのかということですが、私は頑張るべきだと思います。一票の格差の問題、これは政治改革以前の問題ということ、つまり憲法十四条の法のもとにおける平等の規定に沿って当然に行われるべきものでありまして、人間は、一人の人間を半分に割ることはできないので、一・九対一、これまでは認められるとしても、二対一以上というものは基本的に認めるべきではないし、それがあると、例えば農村部と都市部との声の大きさ等によって政策ゆがみも出てくる、そういうふうに考えております。  そして、この一対二未満の抜本是正というものは、現在の中選挙区のもとで百を超える選挙区をいじって改正するよりは、抜本的改正の中で容易に実現され得る、そういうふうに考えております。  それから、衆参一体の選挙制度改革を行うべきだとおっしゃるのは同感でございます。現実的に今国会で参議院の方は無理にしても、ぜひこの点を念頭に置いてお取り組みいただきたい。その場合、衆議院は政党主体、参議院はやはり個人主体という、そういう院の性格づけを行い、そうした性格に沿った選挙制度というものを考えるべきでしょうし、参院の独自性というものはやはり良識の府というところにありますので、必ずしも議席数は今のような数は必要ない。ただし、議員の推薦制というような、これは憲法の議員は選挙によって選ばれなければいけないという規定に触れますので、憲法論議にまで波及いたしますけれども、そうした点にも突っ込んで御検討いただくべきだろう、そういうふうに考えております。
  67. 中馬清福

    中馬参考人 先ず最初、私だけに与えられた質問にお答えします。  私は、これでまた先があるからいいじゃないかという表現は全然いたしておりません。まず、今審議をしていらっしゃる最中に、一括がいいのか一括が悪いのかなとと言うことは随分失礼なことになります。私は、当然、一括でやっていただきたい、そのつもりで一生懸命やっていただきたいということを先ほど申し上げた次第であります。  問題は、あと残った日にちの間にこの単純小選挙区制の実とそれから併用制の案と妥協ができるのかできないのか、時間的にそれは可能かという問題があります。さらに、連用制というまだ法案になっていないものがここに絡んでまいりました。いわば三つどもえの争いになってくる可能性が多分にあります。まだこの連用制がどういうようなものであるか詳しくは検討されておりませんので、これは相当時間がかかるのではないかと思います。  私は気になりますのは、一体今の国民は何を願っているのかということをさまざまな世論調査で拝見いたしますと、選挙区制の問題もさることながら、とにかくお金の問題、政治腐敗を何とかしてくれということが多い。これを我々もまた考えに入れなければなりません。  今申し上げた、まず時間の問題と、それから国民の世論ということをやはり常に私たちは頭に入れておきます。また、この単純小選挙区制と比例の併用制がいわば大きな妥協、大妥協というものができるか、これもまた見ていかなければなりません。  つけ加えて申しますならば、選挙制度というのは手段であります。目的ではございません。選挙制度をやるということは政治改革をやるというための手段でありますから、この手段をええころかげんにやって、とにかく時間がないからこれでいこう、さあ政治改革はこれで終わったというようなやり方は避けていただきたい、これが私の願いであります。  次に、共通の問題がございました。一票の格差の問題は、私も一対二というのは守るべきだという立場に立ちます。  また、参議院の改革につきましては、これもさまざまな案が出ておりますが、衆議院が今回政治改革について一つの方向をお示しになれば、必然的に参議院もまたこの参議院のあり方、参議院の定数のあり方その他が当然これは自然に浮上してぐるし、それをまた期待しております。  それから、三番目の予測報道については、私も別の参考人と同様、自民党の案に対してこれは慎重にしていただきたい、こういうふうに考えております。
  68. 松原脩雄

    松原委員 社会党の松原でございます。  まず最初清原参考人にお伺いをしますが、先ほどのお話では、併用制は比例制だ、したがってこれは民意の集約ができないから大きな政治ができないんだ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、私どもの社公案の併用制というのは西ドイツをモデルにしているわけですね。西ドイツのモデル、西ドイツの併用制に従えば、比例代表によって民意反映させる、それに小選挙区を加味する。したがって、選挙民に顔が見えるとともに、もう一つ政治的効果が与えられているわけです。先ほども指摘がありましたけれども、大きな二大政党を軸にして、比較的、そんなに多数でない小政党政治に参加するというふうな、いわゆるソフトな二党制とでも称するようなそういう政治形態をつくってきた。  実際、じゃ西ドイツの戦後政治政治が小さかったかといいますと、私は決して小さくないと思います。いわゆる政権交代もちゃんとできましたし、それから途中では大連立というふうな大政治もできた。それから最終的には東ドイツをのみ込んで統一ドイツができ上がった。そういう意味では非常に大きな政治をやったんじゃないのかというふうに思いまして、それをモデルにしている我々の社公併用案がどうして小さな政治しかできないというふうにおっしゃるのか、ちょっと西ドイツとの関連で御説明をしていただきたいと思います。  それから二つ目に、実は社公案は我々はベストだと思っている。自民党も自民党案がベストだと思っていますね。それについてお互いにこうやって議論しているわけですが、島参考人清原参考人は、ずばり連用制も含めていわゆる民間政治臨調案に踏み込まれました。いわゆる外から観察されるのをお仕事とされている皆さん方の目から見て、我々社公案あるいは自民党案が、それぞれ我が案がベストであるという形で突き進んでいったときに、みんなが切望する、ぜひとも政治改革法案を成立さしたいというそういう状況が生まれるものかどうか、皆さん方の御判断を改めてお伺いしておきたいと思います。  それから次に、島参考人ですが、連用制について理念、哲学がないというふうにおっしゃっていますが、いわゆる民間政治臨調の説明によれば、これはソフトな二党制ないしツーブロック制なんだ、あるいは穏健な多党制なんだ、こういう政治思想に基づいてでき上がった制度だというふうに説明しております。それがもし、私もまだ検討しておりませんけれども、正しいとするならば、これも一つのいわゆる理念、哲学ではないのか。むしろ、並立制が先ほど望ましいとおっしゃったけれども、並立制というのは余り、選挙制度哲学としては木に竹を接いだようなものであって、それこそ哲学がないんではないかというふうに私は思っています。  それから最後に、中馬参考人にお伺いしたいんですが、企業政治献金を禁止すべきだというふうに主張なさいましたが、しかし、妥協で過渡的に、民間臨調案にあるような、いわゆる政党に対して企業献金を過渡的には認めてよろしいということをおっしゃいましたけれども、そこには個々の政治家あるいはその関係政治団体には企業献金は切ってしまう、企業献金はすべて政党に集中するというお考えのようですが、なぜそういうふうな分け方をされたのか。  それとの関連で島参考人清原参考人にお伺いをしますが、先ほどから族議員を退治しなきゃいけないという趣旨のことをおっしゃった。それは選挙制度と絡みでやるべきだとおっしゃいましたが、族議員退治のためには、やはりその許認可権と関係しできますので、いわゆる政治家個人もしくはその関係政治団体に対する企業献金についてはどのようにお考えになっているのかお伺いしたいと思います。
  69. 清原武彦

    清原参考人 最初に併用制案についての意見を求められましたけれども、私は社会党さんが、今までは中選挙制度に固執されてこられたのが、今回小選挙区を組み合わせた併用制案に進まれたということは大きな前進であるというふうに評価いたしております。ただし、基本的にはやはり小党分立それから連立政権による混乱、そうしたものについて懸念を持っておるということは先ほど申し上げたとおりです。  しからばドイツと比べてどうかということでございますが、ドイツの場合は御存じの五%条項で小党乱立ということを避け、基本的には三つくらいの政党の組み合わせで政治が行われる、そうした形になっておりますですね。併用制の場合はこれが最小限度の形かな。社会党さん、公明党さんの案ではブロック別の比例代表ということになっておりますが、これですとやはり相当小さな政党の乱立という事態が予想されますし、やはり私はこの案には反対であるというふうに申し上げます。
  70. 島脩

    島参考人 連用制について、これは、この案というのは結局はやっぱり各党を何とかして歩み寄らせたい、そのために各党のいろいろな言い分を集めてとって、それで特徴としてはやはり各党が非常にのみやすい案ではないかということが一つ。それから、やはり今までの現有議席との差に著しい変化がないというような意味で、何か非常に現実に余り配慮し過ぎたという意味で、私は、哲学、政治という面で欠けている面がある。特にまた、第二票の場合に、小選挙区のゆがみ比例代表で是正するというようなこういう発想もちょっと僕は理解しがたい面があるわけであります。  だけれども、私はこの案というのは、先ほど申しましたように、大いにこれを中心妥協を図ってもらいたいという希望は持っておるということです。  それから、族議員の問題にお触れになりましたけれども、族議員というのは本来、私は、これは業界と役所とそれから政党との間に入っていろいろな利害関係調整して、それで立法化するという、本来は族議員というのは、僕は有能な族議員というのは日本政治に必要だと思うのです。しかし、現実を見ると、どうしてもその中へ入って癒着といいますか、それをあれすることによって票をもらい金をもらうというようなところで、曲がった方向へ行っているので、これは本来の趣旨とぽ違う。それで、現に新しいニューメディアとか何かいろいろなものが起きてくると直ちにそれにまつわる議員連盟というものをつくって、それがまた癒着の構造に入っていくというような面があるので、僕は族議員はすべて悪――本来の有能な族議員だったら僕は必要だろうという立場なんです。  しかし、これとの、また政治献金との絡みで、したがって自分が関係する業界についてはやはり僕は政治献金というのはもらわない方がいいであろうというふうに個人的には考えますけれども、もしその人が、制度のもとで何がおかしい、おれはもらっている、だけれども公明正大に届け出て使うということであれば、それもまた一つの行き方だろうというふうに私は考えます。
  71. 中馬清福

    中馬参考人 私への質問はいわゆる企業・団体献金の禁止の問題であります。  私は、最初に申し上げましたとおり、原則として比重は全面禁止にかけております。しかし、これができる、実現するまでにもしもそういう移行期間が必要であるとするならば、政党に限ってそれを認めるという民間臨調案に賛成せざるを得ない。といいますのは、やはり政治献金というものの透明度を高めること、あるいは政党がさまざまな政治中心になっていくという二つの点からいって、政党以外には認めたくない、これであります。したがって、政党だけに限った場合には、将来の企業・団体献金の禁止という大目標に向かうのに、非常にスムーズに行うためにも、この程度ならば許せるという私の意向であります。
  72. 田邉國男

    田邉委員長 それでは、質疑はまだ尽きないところでありますが、予定の時間が参りましたので、午前の参考人に対する質疑はこの程度で終了することといたします。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)  この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十分休憩      ――――◇―――――     午後三時五十九分開議
  73. 田邉國男

    田邉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいま御出席いただいております参考人は、毎日新聞社論説委員長清水幹夫君、日本経済新聞社論説委員田勢康弘君であります。  この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本委員会での審議に資するため、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序でありますが、清水参考人田勢参考人順序でお一人二十分程度に取りまとめて御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、清水参考人にお願いいたします。
  74. 清水幹夫

    清水参考人 毎日新聞の清水と申します。  私がここで申し上げたいことはとりあえず五点ございます。  第一は、今こそ勇気を持ってこの国会政治改革選挙制度改革の実現に努力されるべきであるということであります。  何事であれ、長い間続いてきた制度あるいは慣行を改めるということには非常に勇気が要ります。ましてやこの社会秩序を形成する根幹の問題でございますから慎重になるのはやむを得ない面もございます。しかし、今、日本政治システムをめぐって求められているのは、私はまず壊すことから始めるということだろうというふうに思いますし、そういう時代に差しかかっているんだというふうな認識を私は持っております。要するに、既成の政治を解体するということでありまして、ひたすら現状肯定を志向するような発想を壊すということが、今、国会あるいは各政党あるいは主権者一人一人に求められている歴史的な使命だというふうに私は考えております。  第二は、取引あるいは野合は排除すべきでありますけれども、妥協は大胆かつ勇敢にやるべきだというふうに考えます。妥協イコール悪だとは全く考えておりません。排除すべきなのは、何の主体性もない、あるいは筋道もなしに自分の立場の都合だけで取引するなり野合するなりということでありまして、議会制民主主義のもとで十二分な審議を行った末で妥協点を見出すということは、むしろ議会政治の本領ではないかと言っても差し支えないのではないかと思います。  第三に、この改革はどういうことなのかという原点を常に念頭に置いていただきたいということでございます。つまり、政治行政化してしまった結果、本来黒子であるべき官僚制度、官僚というものが国のかじ取りを左右してしまう、逆に政治が住民サービスに走るというような本末転倒な構図、これを本来の機能に是正する、戻すというものであること。今、要するに問題になっているのは、政治に求められている重要な課題がたくさんあります。そういう課題とそれを解決するために求められる現実政治の力量、この辺に大きな乖離が生じたということだろうと思いますね。この乖離を埋めるためにその改革をしようというのが本来の政治改革選挙制度改革でありましょうし、この辺の意義を改めて直視すべきであるし、そうであるならば、この選挙制度改革政治改革国会政党自身が実現できないというのは、よほどのお人よしてはないかというふうなことも言わざるを得ないということになります。  四番目に、同時に、この現行の選挙制度政治の決定システムをどのように変えるかという点になりますと、ある意味では、選ぶ側、主権者たる有権者の側の問題でもあるわけですね。つまり、いつの間にかよどんできた物欲的な民主主義といいますか、ある人に言わせると草の根のたかり主義だ、こういう厳しい言葉も出ますけれども、そうした有権者の側の問題もあわせて、その辺でよどみを断ち切ろうということであります。  最後に、仮にこの選挙制度あるいは政治改革によってこの政治システム政策決定システムを変えればすべて理想的な政治になる、理想的な政治が実現するというふうに考えるわけではありません。要するに、制度というものの生命は、それを運用する、運用の衝に当たる人でございますから、それが肝要でございまして、選挙制度といえばすなわち議員であり有権者である、したがって、その政治改革というものはこの両者の共同作業によって成り立つんだというふうに私は考えておりますし、その辺を原点にひとつこの国会での改革の実現を図っていただきたいというふうに思うわけでございます。  この政治改革あるいは選挙制度改革というものは一体なぜ今この時期にやるのかということは、私は割と、この時代背景といいますか、そういうものを考慮に入れながら日ごろ考えてきたわけです。  戦後、ある意味では日本社会秩序の中で、例えば議会制民主主義あるいは自由主義経済というものが、相当な程度といいますかほとんど社会秩序の基本として定着してきたわけです。ところが、その中で、社会秩序の各論の部分時代の使命を終えたといいますか、役割を終えたといいますか、あるいは時代に合わなくなったというような部分が出てきたわけですね。で、その逆に有権者の方も一九七〇年から八〇年代にかけまして非常に価値観多様化したという現象が非常に色濃くなってきまして、例えばさきの国鉄の分割・民営化にしましても、国民の足たる国鉄が分割して民営化するというような発想は、今まではそれは出なかったわけですね。  しかし、公社制度というものはそれなりに役割を終えたということ、あるいは利用する側の価値観が非常に変わったという点が一緒になってきまして、必然的にそういう分割・民営化ということになった。電電にしてもそうだろうし、税制にしてもこの直間比率というものをやっぱり見直さざるを得なくなったという時代に入ってきたわけだし、これは参議院の全国区制度も当然そうでありました。  こうしたむしろ社会の秩序の根幹の部分にある、国民一人一人の足の問題とか選挙制度という問題を、この制度を変えようという発想は、戦後しばらくの間はそれは出なかったはずでございます。しかし、いよいよこの衆議院における選挙制度もそういうところに来たという認識を私は持っているわけでございます。  これは例えば政党役割といいますか、その辺でもあるわけでございまして、例えば八九年の参院選では消費税という問題も抱えた選挙でしたけれども、社会党が勝利をおさめた。その翌年の九〇年総選挙になりますと、今度自民党も勝利をおさめるし、しかし、社会党も勝利をおさめたという現象がございました。当時これはどういう現象かというふうなことが議論になったと思いますけれども、私の理解は、これは自民党と社会党の五五年体制というふうに、似てはいるけれども内容は全く違う。つまり、イデオロギーというものが全く取り去られた後の自社両方に責任を持たせたということであって、社会党といえどももう政権政党と同じように責任を持ってもらう、有権者にとってみれば、ということだったろうと思いますね。  それは税制にしても米の問題にしても北方領土の問題にしても、今や一つ政党ですべての有権者のニーズを吸い上げることは不可能になったということの裏返しだろうと思いますし、国会の場でいえば、今までの五五年体制と言われた自民党と社会党さんが第一党、第二党を占めた時代国会というのは、オール・オア・ナッシングですね、大体において。それでは主権者たる国民の方は非常に被害の方が大きいわけでありまして、そうじゃなくて、自民党、社会党及びその他の野党すべてが国会のマネジメントに責任持ってやってください、効率的にしてくださいということの意思表示だったろうと思いますね。  その辺は、当時格好のテーマとして消費税という問題、これは不幸にして強行採決する形で非常に不完全なまま私は法案化がされたと思いますけれども、しかし、その後期待されたほどの修正といいますか、よりよき法案にするためのマネジメントというのは残念ながら機能されなかった。そこで昨年の参院選というのは、逆にまた有権者の棄権がふえて、どうも国民の選択というのはもとに戻ってしまったかなというような感じを持つわけでございます。  それはさておきまして、要するにこの問題の核心というものは、政治の力量というものを政策中心政治という形で取り戻し、国会審議を効率的に機動的にやれる体制をつくろうということだろうというふうに思いますし、いろいろな御意見がございましょうけれども、今一番必要なのは、まずそういう原点に返って合意を図ることだというふうに思うわけでございます。つまり、議論なき政治議論なき選挙というもの、根本的にこれを改めなければならないでしょうし、それがまた政策本位の選挙というものへとつながっていくことだろうというふうに思うわけでございます。  この選挙制度というものを考えますときに、私個人としては、この現在の中選挙区制がすべて政治の諸悪の根源だというふうに決めつけるのはいかがかなというふうに思っております。例えば、それは政党の側にとってすれば、同一政党から非常に複数の方の候補者を有権者に選んでもらうという体制ですし、少数党の候補者も非常に出やすい、ましてや無所属の方というものは非常に出やすいわけですね。それから、新人が比較的出やすい制度であることは間違いないでしょうし、選ぶ方にとってみれば選択の幅は広いというような、建前的に言えばそういう長所もあるわけでして、それなりに今日、これまで続いてきた理由があると思います。  しかし、だからといいましても、今日このときに至ると、やはりそれを超えて、なおかつこの中選挙区のままで今求められている政治改革をなし得るんだというような説得力がもうなくなったというふうに考えざるを得ないわけでございます。その理由はもう皆さんいろいろ御意見をお聞きでしょうし、よく我々も新聞等で報じておりますように、基本的にはもう一票の格差の問題が出てきてしまうし、非常に個人中心選挙である、政策選挙にならないというような点、その他もろもろ弊害が言われております。  ですから、この際、私はどうも、床をある部分張りかえるあるいは壁をある部分塗りかえるというような修復作業あるいは改造ではもはや再生はできない。そこで、簡単に言ってしまえば、とにかく家を建てかえてみようじゃないかというようなことを私は考えております。  それでは一体この選挙制度、どういう制度がいいのだというふうになるかと思いますけれども、御承知のとおりこの選挙制度、ベストというものが、一〇〇%この制度がいいというものは見当たらない。それこそ二百もあるというぐらい、この選挙制度というものは何がベストかというものは悩ましい問題であるわけであります。  いずれにしましても、今各党、自民党あるいは社会、公明両党案という出されている案を、おれの方が絶対だ、私の方が絶対なのだというふうに絶対と絶対がぶつかっていては国会というものは成り立たないわけでございまして、いずれにしても、粘り強く調整して接点を見出して合意点を見出すというほかにこの新しい制度を実現させる近道はないわけでございます。  私個人的に、じゃどういう制度がベストと考えるかあるいはベターと考えるかと言われますと、私個人として考えているのは、先般の選挙制度審議会一つの結論として出された並立制というものが現実的あるいは妥当性のパーセンテージが比較的高いのかなというふうに考えます。  ただし、これは例えば定数配分を最低限フィフティー・フィフティーあるいは小選挙区の方を二百、比例代表を三百という案もいいのか、その辺はまだ私も結論を見出しておりませんけれども、最低限フィフティー・フィフティーという条件をいろいろ持っていますけれども、その辺が妥当性があるのかなという感じもしますが、しかし、もとよりこれもベストの実とも言えませんし、いろいろ欠点もある制度でございます。  したがいまして、こういう今回の審議を私も拝聴させていただいて、これが本来の国会審議なのですね。今まで政府案に対する賛成か反対かの御意見の発表じゃなくて、お互いに御自分の立場を披瀝して相手を説得するという作業が本来審議なはずでございまして、そういう意味では、こういう御審議そのものが私は政治改革の第一歩を踏み出しておられるというように実感を持っておりますけれども、問題はこの先でございます。  要するに、この国会でどうしても結論を出していただきたいし、そういう最終段階に至るところで必要なのは、冒頭申し上げた妥協は大胆かつ勇敢にということでございまして、この辺、じゃ一体どの辺が妥協点かと言われると私もすぐ結論的なことはまだ申し上げられませんけれども、理屈から言えば、この制度改革、ある意味では政権交代を容易にするのだ、可能にするのだということでございますれば、例えばそれでは今政権を持っている自民党が社会党、公明党案の併用制に賛成するということも理屈としては成り立つのではないか。私はそうせよと言うわけではございません。文字どおり御参考のために申し上げると、理屈としてはそういう議論も成り立つということであります。  それから、いろいろ私どもマスコミを初め、前々回の参院選あるいは前回の総選挙というものを各党案に照らしたシミュレーションというものもございますが、余り意味がないとは言いませんが、そう余り大きな意味もないと思いますし、その辺、選挙というものはそのときどきの時代政治状況、社会状況によって有権者が選択するわけでありまして、余り事前に机の上での御議論に左右されることはないのではないかというふうに思うわけでございます。  時間が来ましたので、最後に、いずれにしてもこの制度は一〇〇%ベストというものが見当たらないとすれば、一つは、自民党にとって与野党が歩み寄った段階でこの辺が合格点だという段階、それから社会党さん初め野党にとってこの辺が合格点だ、百点ではないわけです、合格点ですから、というあたりで合意点を見出すという姿勢がどうしても必要になってくるだろう。  それからもう一つは、この選挙制度というものは、一たんつくればそれが未来永劫アンタッチャブルというものではないでしょう。私は憲法でもそうだと思っていますけれども、とにかく家を建てかえてみて、不都合が起きれば私は時間をかけていろいろな修繕をしてしかるべきだろうと思いますし、もともと、最近はそうでもなくなってきたように思いますけれども、どうも国会での御審議法律案に対する修正というものが余り活用されていないと思います。こういう社会基盤の基本にかかわる選挙制度をすぐ修正、修正と言うのはおかしいではないかという御議論が必ず出ると思いますけれども、私は余りそれにこだわる必要はないのではないかと思います。  やはり時間をかけて不都合な点は手直しをしていく、そして各党とも、あるいは有権者の側も納得がいく制度につくり上げていくということであってしかるべきだろうし、参議院における比例代表導入のときを考えますと、たしかあのときも一票制にするか二票制にするかとか、名簿を非拘束にするか拘束にするか、いろいろ御意見、お考えが出ましたけれども、どうもあれも、一時は不都合が出たら修正してみようということがたしかあったはずですけれども、そのままになってきているというものもございますので、なかなか今回の改革についても非常に、一たんできてしまうとなかなかこの制度は変わらないというふうに思われるかもしれませんが、私はそうではなくて、やはり選挙制度といえども改良を加えていくということで、立法技術的にはこれは先生方のお考えにお任せしますけれども、時限立法的なものはなじまないのか、あるいはそういう見直しという条項案をかなり厳密におつけになった結論を出されてはいかがなものかというふうに考えております。  以上でございます。(拍手)
  75. 田邉國男

    田邉委員長 次に、田勢参考人にお願いいたします。
  76. 田勢康弘

    田勢参考人 日本経済新聞の田勢康弘でございます。  お釈迦様に説法をするような心境で伺いました。昨今の政治改革論議、とりわけ選挙制度改革論議をそばで拝見しておりまして感じたことを申し上げさせていただきたいというふうに思います。  率直な印象としましては、相撲取りが自分の得意わざを意識しながら土俵の広さやルールを決める。舞の海はなるべく広い土俵を、突き押しの曙はなるべく狭い土俵を、そういうような我田引水にも似たような雰囲気を感じ取っております。  各党からさまざまな御提案がなされ、またいわゆる民間政治臨調からも連用制という第三の案が示されております。これらの案を一つずつ私なりに考えてみますと、いずれも一長一短、やはり税制改革と同じで、ベストの選挙制度はないというのをこの事実が証明しているのではなかろうかというふうに思うわけであります。  政治改革を進めるためには、どうしても選挙制度を変えなければならないというのがどうやら国会での多数意見のようであります。世論調査などでは必ずしも国民の大多数が選挙制度改革を望んでいるわけではないという結果も出ておりますけれども、皆様方の御意思が、これをなし遂げなければ政治改革はできないんだということであるとすれば、ぜひ話し合いで妥協の道を見つけていただきたいというふうに思うわけであります。  しかしながら、申し上げたいことは、選挙制度改革政治改革の最大の目的であってはならないということであります。まるで現行の中選挙制度が諸悪の根源のように言われておりますが、これも私なりによく考えれば、それほどひどい制度だというふうにはどうしても思えないのであります。日本の伝統的政治風土、すなわち二者択一を余り好まないというような風土に根差した欧米流の選挙システムとしては、それなりによくできている制度というふうに私は考えております。  次に申し上げたいのは、政権交代可能な選挙制度といううたい文句についての疑問であります。  我が国で長い間政権交代が行われなかったことは紛れもない事実でございますけれども、これは必ずしもこの現行の中選挙制度に問題があったためというふうには私は理解しておりません。簡単に言えば、まことに失礼ながら政権をゆだねるに足ると多くの国民が感ずるような包括的な野党が存在しなかったということが最大の理由ではないかと思うわけであります。つまり、与党への積極的な信託というよりは、野党への信頼の欠如による一党支配が長く続いたということではなかろうかというふうに考えております。  また、国民の多くが本当に政権交代を望んでいるとすれば、現行の制度でも政権交代は十分に可能だと思うわけであります。例えば、今この時点で総選挙が行われれば、現在の世論の動向からして、恐らく与党が単独で過半数を占めることは不可能ではなかろうというふうに推察いたします。だとすれば、総選挙後の首班指名で野党が一致結束すれば一瞬のうちに政権交代は可能である、それが現在の選挙制度ではなかろうかというふうに思うわけであります。  次に申し上げたいのは、何のための政治改革なのかという議論がかなり不足してはおりませんかということであります。  私は、政治の最大の任務は、国家としての意思決定にあると思っておりますしかるに、その役割が現在全く放棄されている。つまり、ディシジョン・メーキング・システムとしての機能が発揮されていないというところに大きな問題があるのではないかというふうに考えております。国会議員のことを英語ではローメーカーといいます。つまり、法律をつくる人々ということですが、我が立法府は法律の多くを行政府にゆだね、立法府みずからがつくる法律はほんのわずかというのが現状であります。つまり、行政府に過度に依存した立法府の体質、これを変えることが一番大きな政治改革の目的ではなかろうかというふうに思っております。  確かに、日本行政府、官僚システムは、世界に冠たる優秀な組織ではありますけれども、この官僚システムが効率的に機能したのは、やはり冷戦構造というものが存在して、日本が余り外交や安全保障問題に煩わされなくても済むというこの冷たい戦争、つまり私なりに言えばむしろこれは冷たい平和の時代だったのではないかと思うわけですけれども、この恩恵を最も享受してきたのが我が国であり、我が国の政治システムではなかったかと思います。  しかしながら、この優秀な官僚システムも、その能力を発揮するためには常に三つの条件、つまり、前例があること、予算が計上されていること、また下から上がるボトムアップ方式ですから十分な時間があること、この三つが満たされた場合のみ日本の官僚は十分な仕事をなし得る。しかるに、世界情勢は現在こういう三つの条件を全く満たさない。これがどこの所管であるのかも判明せず、前例もなく、予算も計上されていない、しかもすぐに決断しなければならないというような問題が、湾岸戦争をきっかけにこれからメジロ押しに我々の前に立ちはだかってくるのだというふうに思います。そのときには、日本の官僚システムではもうどうにもならない。そのときこそ本当は政治の本来の役割であるディシジョン・メーキング・システム、この国を一体どうするのか、どうする気なのかということを決める、これができなくなっているということがやはり問題ではなかろうかというふうに思うわけであります。  次に申し上げたいのは、政治には金がかかるという言葉への疑問であります。  これはある種の迷信に近い言葉にさえ私には思えるわけです。よく一枚のはがきを何万人に出すのに幾らかかる、ポスターをつくるのに幾らかかるという議論が出ますけれども、これほどの情報社会日本で、はがきを一枚もらったぐらいでその政治家に一票を投じようというような国民が一体今どれだけいるでしょうか。そういうことを考えれば、やはり政治に金がかかるというのではなくて、政治に金をかけているのではないかというふうに言わざるを得ないと思います。  このような現実があるのも、一つには、やはりこの立法府、国会という場で国会議員がいかなる活動をしているかということが選挙民に見えないという現状があるからだろうと思われます。国会で本当の意味議論がなされ、政治家の演説が国民の心を打つようなことが行われていれば、決してはがきを出さずともポスターを張らずとも、政治家の存在というのは国民に理解され得るというふうに考えております。  金がかかる最大の理由の一つに現行の中選挙制度ということを指摘する向きが多いわけでありますけれども、これも私は、中選挙制度のせいにするのは少しおかしいのではないか、ナンセンスなのではないかというふうに思います。システムが悪いから金がかかる、違法なまでの金がかかるというのは、我々一般国民のレベルに照らしてみれば、刑法や刑事訴訟法が悪いから他人のものをちょっと失敬してもいいのだという理屈とさほど変わらないのではないかというふうに思うわけであります。悪法も法なりと言います。いかに悪法であっても、その法を遵守するというのが一般国民の最低限の義務でありますし、ましてその一般国民の上に立つ選良である政治家となれば、この法律を守れないというのは理屈にはなっていないのではないかというふうに思われます。  現在、国民政治に全く期待していないというのが、まことに失礼ながら現状ではなかろうかと思われます。先ごろ、財界の大物リーダーが、建設業界の違法献金問題で進退問題が取りざたされた折に、私は会員によって選ばれた、会員の支持がある限りやめないというような趣旨のことを言われて、いまだに、きょう現在も財界の大物の地位に座っておられる方がおります。この論理は、選挙民によって選ばれたのだからやめる理由はないというような、この建物の中でつい最近も聞いたあの論理と極めて似通っております。私がこういうことを申し上げるのは、やはり国民はこういうことに非常に敏感に反応しているのではないかという気がするからであります。  こうしたことの積み重ねで、国民は我が国には本当の意味でのリーダーがいないというふうに感じ始めております。本当のリーダー、私なりに解釈すれば、すなわち、国や国民のために命を捨てられるか、そういうようなリーダーこそ本当の政治の指導者たる人であるというふうに考えております。政治家国民から信頼を得るためには、その活動政治家としての生きざまそのものにやはり何か訴えるものがなければ国民の信頼はから得ないという気がいたします。  その意味で、カンボジアで亡くなった日本人ボランティア中田さんの父上の態度は、まさに公人そのものの態度でありました。我が国も捨てたものではないというようなことを感じた国民は、多分非常に多かっただろうというふうに思います。もはや本当に立派な人は我が国の指導者層ではなく庶民の中にいるのではないか、それが一般国民の実感ではなかろうかというふうに思うものであります。  最後にお願いを一つ申し上げます。  政治家方々からいろいろ名刺をいただく機会がございますけれども、我が国の政治家方々の名刺には、党の役職でありますとか何とか委員会理事とかいうものが非常に大きく書かれております。この私の疑問かつお願いというのは、なぜ衆議院議員というふうに大きくお書きにならないのかということであります。アメリカでは、上院議員は死ぬまでセネターと呼ばれるわけでありますし、下院議員はコングレスマンと呼ばれて、ずっと尊敬をから得ているわけであります。あのマンスフィールド元駐日アメリカ大使は、大使の間じゅうもずっとセネターと呼ばれ、今もセネターと呼ばれております。  どうか衆議院議員であることにもっとプライドをお持ちになり、かつお持ちになれるような政治にしていただきたいということを申し上げまして、各党の各選挙区案についてお尋ねがあればお答えしたいと思います。  とりあえず、失礼いたしました。ありがとうございました。(拍手)
  77. 田邉國男

    田邉委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  78. 田邉國男

    田邉委員長 これより両参考人に対する質疑に入ります。  この際、一言申し上げます。  議事整理のため、質疑のある委員の方は、挙手の上、委員長の指名により発言されますよう、また、発言の際は、所属会派及び氏名並びに質疑をする参考人の氏名をお告げいただきたいと存じます。なお、できるだけ多くの委員に質疑をしていただくために、質疑と参考人の答弁は論点を絞って簡潔にお願いいたしたいと存じます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  79. 大島理森

    ○大島委員 まず、清水参考人にお伺いをし、次に田勢参考人にお伺いしたいと思います。  清水参考人は、長い間こういうマスコミの中にあられていろいろな経験をされたと思いますが、第一点に伺いたいのは、各紙、今、政党の支持率でありますとかあるいは政治に対する支持、あるいは世論調査をされておられると思うのです。その数字を見つつ、今日的、長い御経験の中で非常に特徴的な何か観点があれば、ひとつその点についてお話をちょうだいしてみたい。つまりそれは、国民が今政治に対して何を思っているかということを、まさに社会の木鐸という立場から率直にどうその点を見ておられるかということをお聞きしたいということが理由であります。  そういう観点から、先ほどまさに、選挙制度は選ぶ人と選ばれる人の共同作業ではないか、こんなことをお話しされました。そういう中で、どうしたら選ぶ側の人が選挙というシステムを通じて政治に参画する、参加しやすい、参加することに意義を持つ、そういう点が重要だよということをおっしゃっておられるのではないかと思うのです。  この委員会でも、社公案と我が党の案、それぞれベストと思って今日まで議論をしておりまして、そこの論点の一つは、民意の集約か、あるいは民意をストレートに国会反映させるかという、私は基本的には同じだと思うのでございますが、そういうところが論点になる。そういう論点から考えますと、また清水参考人考え方から見ますと、いわば小選挙区制というものの観点、あるいは比例制、両極にあるわけですが、どちらに重きを置いた考え方が今日の日本にとっていい制度で、あるべき姿であろうかということについて、御意見をいただければありがたいと思います。  それから、田勢参考人のお話を伺っておりますと、制度というのは確かに、どんな制度もいい点も悪い点もあるし、中選挙区制が私はすべて悪いとは思っておりません。ただ、御結論で言っておられることは、そこに参画しようという政治家の高い責任こそがすべての政治改革の原点だというふうな言い方をされているように思われるのです。もちろんそのことは私ども一人一人、政治に直接参画する者の心構え、気概、責任感、こういうものは当然に、それでなくても十数万前後の人間の支持を得て上がってきている者にとって、田勢さんから見るといささか足らぬぞと名刺のお話まで出されましたが、一言で言えば、非常に高い責任感を持って、ここにおられる委員のみならず国会議員はまじめにやっておりますということを私は申し上げたいのでございます。そう映らないところにいろいろな問題があるんだろうと思うのです。  そういう中に、冷戦構造がつぶれたよということも言っておられました。行政政治関係についてもおっしゃっておられました。あるいは野党さん、野党さんというか包括的野党、政権をとれる野党の仕組みをつくれば今の制度でもできるじゃないかということもおっしゃっておられました。それはまさに中選挙区制というものの中で本当にできるのかできないのかという、これもマスコミ、理想と現実の接点におられる論説委員として見た場合に、今の中選挙区制で今まさに田勢さんがお話しされたようなことが、その政治家の心構え、責任感だけでできるんだろうか。そこに今実は我々一歩進んで制度論をやっているんだということを申し上げたいし、そのことに対してもっと深く、やはり選挙制度仕組みを変えなきゃならぬ、つまり民主主義の原点というのは制度国民の信頼の担保がなきゃ崩れていく、そういうふうなところに私ども来ているんじゃないか。それは国民考えてもらわなきゃならぬし、我々も考えなきゃならぬということで、今、制度論の議論をしている。  もちろんこれは目的ではございません。目的ではないけれども、手段だからこそ、民主主義というのはそういう制度、そういう手段が崩れたらおしまいなわけで、だからその制度あるいは手段、そういうものをもう一度つくり直そうということでやっているわけで、そういうことに対してほとんど、余り価値を見出さないような御意見を今出されたので、その辺についてさらに田勢さんの御意見を聞かせていただければありがたい、こう思うのです。  以上です。
  80. 清水幹夫

    清水参考人 第一点の、最近の私どもの世論調査あるいは政党支持率、内閣支持率、何回も定期的にやっていますけれども、私が最近注目しているといいますか、私自身が興味を持って見ているせいかもしれませんが、一つ申し上げますと、例えば昨年十二月の調査でこういう数字がございます。つまり、政界再編というものをどう評価するかという質問に対して、積極的に支持するという答えが三〇%ございました。どちらかといえば支持するというのが三〇%、同じ率でございます。六割に達するわけですね。政界再編を支持しないと否定する方は一一%にすぎない。しかも、その中身をクロスさせた部分を分析しますと、積極的に支持するという方が自民党支持層でも二四%いらっしゃる。どちらかといえば支持するというのが自民党支持層の中に三七%もいらっしゃいます。  それから、もうちょっとさかのぼって、これはその二年前になりましたから一九九〇年の二月の調査で、衆参のいわゆる俗に言うねじれといいますか、参議院では野党の方の議席が多くなったという現象に対する、こういう選挙を終わってみての評価を聞きましたところ、議会制民主主義の上からもいいことだというのが四八%、約半分に近い。国会運営上支障が起きるという答えが一八%でしかなかったわけであります。もちろんこれはわからないという答えが三〇おございまして、それはなかなかやってみないとわからないという正直な答えもあったのですけれども、何も不都合じゃないんじゃないですかという答えが四八%もあったということでございます。  それから、そのときの調査で、これは何回も聞いているのですけれども、例えば政権のあり方、これに対する答えが、例えば自民党単独政権がいいというのが一二%、それから自民と中道の連立による政権がいいというのが一九%、それから自民と社会党の連立というのが二九%あるのですね。  これを十年前の調査に比べますと、例えば自民単独というのがいいというのが十年前は一七%あった。それが今回一二%に減っている。自民と中道というのが十年前は二八%あったのですが、今回といいますか、九〇年の調査では一九%。逆に自民と社会党の連立というのが十年前は一七%だったのが十年後には二九%に達しているというような、極めて著しい変化がございました。  これは、先ほど私申し上げたように、直近の何回かの選挙を通じて、やはり民意というものは、もちろんチェック機能というものに対する期待感が野党に大変大きいわけですけれども、同時に、政治の展開あるいは政局の運営について、あるいは国会の運営について、社会党を初め野党も同じ責任という土俵で効率的な国会審議をしてほしい、あるいは政治政策決定をしてほしいということだろうというふうに思います。ですから、政権として今までの自民党に対する評価、これはお認めになるけれども、さりとて非常に偏った多数を与えるという選択もしない、最近、というところで逡巡しながら投票行動を行うのであろうというふうに私なりに分析しているわけであります。  第二点の、民意の集約という点なのか、あるいは比例代表という一つの最大言われる民意を公正に拾い上げるという制度なのかというふうなことでございますが、これは言うまでもなく併用制というのは実質的には比例代表制ですよね。そのときに選挙制度審議会でも並立か併用かと非常に議論が分かれて悩んだというふうに聞いてもおりますけれども、それぞれプラス面、マイナス面がもう同じ、相当な程度同じ、同量程度あるのだろう、要するに単純小選挙区と併用制というのは。同量程度プラス・マイナスがあるということで、さあこちらだという即断はなかなかできないのだろうと思うのですが、私は、ですから、先ほど個人的には、議席の配分の比率は条件はつけましたけれども、並立がある程度の妥当性というふうに申し上げたのは、それは小選挙区というものの導入を是認するからでありまして、結局はそれには比例の部分をどうかみ合わせるかという問題なわけです。  やはり比例代表というものは、私はどうしても気になるのは、例えば今の参議院における比例代表の経験もあるわけですけれども、それよりもう少し小党に広がった場合、あるいはドイツのように三%なり五%条項が日本の場合できるのかということ、これは恐らく憲法的な問題になるのでしょう、そういうふうに切り捨てということになりますとね。というところがどうしてもひっかかるし、その辺クリアするのが難しいかなという感じは持っております。
  81. 田勢康弘

    田勢参考人 簡単に申し上げますと、現行の制度でも政治改革は当然できると思います。ただし、私は、中選挙区制が一番望ましいということを申し上げているわけではありませんが、選挙制度改革に関して一つ大きな疑問がございます。それは、現在の中選挙制度でも日本政治システム一つの問題は、新規参入が非常に難しいということであります。つまり、前途有為な志の高い青年が政治世界を志そうとしてもなかなか入ってこれないというのが大きな問題だろうと思います。  なぜ入ってこれないか。たくさん理由は考えられると思いますけれども、一つは、日本社会の流動性がないといいますか、例えば私のような一介のサラリーマンがもし選挙に出ようとすれば、会社をやめなければならない。落選しました、また入れてくださいというわけには、日本社会システムは認めないということですね。したがって、どうしても弁護士であるとか医者の人であるとか、そういう人たちが多くなる。二世が多くなる。地元で会社を経営している人とかそういう人に限られてくるということですね。これが選挙制度を変えて、小選挙区にしろ比例代表を何らかの形で組み合わせるにしろ、非常に政党中央の意思決定というものが大きく作用してくるのだろうと思いますけれども、そのときにこの全く何のコネクションもない前途有為な若者が政治に今よりも入ってこれるかどうかということを考えると、より新規参入が難しくなるのではないかなという疑問を感じております。  もう一つは、決してこのままでいいということを言っているわけじゃありませんで、事ここに至っては、もう政治改革イコール選挙制度改革なんだというふうに皆様方がしむけてこられたわけですから、ここで何ら妥協ができないということになれば、それに対する一般国民の挫折感、失望感というのはより大きいだろう。そういう意味では何か妥協点を見つけてください、しかしながらそれがすべてではありませんよということを申し上げたいわけです。
  82. 菅直人

    ○菅委員 それじゃ、幾つか質問をさせてもらいたいと思います。  お二人それぞれに質問をしたいんですが、今、田勢さんの方から新規参入の問題が言われたんですが、実は今回の質疑を通して議論を非常にしている部分と、必ずしも議論がそこまでいっていない部分一つに、私は、政党というもののあり方論というか、あるいはこれからの政党というものがどういう機能を持たなきゃいけないのかという議論がまだ十分に必ずしもできていないというか、わからないというような気がしています。  そこで、それに対して御意見があればぜひ聞きたいんですが、つまりどういうことかというと、政党というのは、普通であれば思想、信条を共通にする人たちが任意に集まる団体みたいなことになるんでしょうが、実際の今の議会制民主主義においては、ある意味では、何といいますか、裁判制度がちょうど個人がいろいろ問題があったときには訴えると同じように、国政への参加のシステムとして政党考える必要があるんじゃないか。そうすると、いわば社会の公共財的機能をもう持っているんじゃないだろうか。特に、今回与野党とも出している法案では、税金をかなり、公費助成を受けるというシステムを提案していますから、そうなれば、そういった面からも政党というものがいわばそういう社会的な、公共的なシステムというふうに、より強くそういう側面が出てくるんではないか。  そのときに、今おっしゃった仲なんですが、候補者決定というものを政党は行うわけですが、そのシステムを、アメリカなんかの場合は予備選挙方式とか、イギリスもまたオーディションのようなやり方をやっているようですが、そういうシステムをガラス張りにしていくということが非常に必要なんではないか。こういう点で、政党というものがこれまでのように、どの派閥について何とか公認をとるとか、どこの親分についたら何かこう力で推してくれるとかということでないシステムというものを考えなきゃいけないんじゃないか。  それからもう一つ、同じ問題でいうと、議員というのは党に忠誠を尽くすのか国民に忠誠を尽くすのかという当たり前のような問題ですが、これはどちらかといえばあるいは野党側の方が抱えている問題かもしれないと思うわけです。つまり、党員が党首を決め、基本政策を決めるシステムを持っているわけですが、私は、どうも党員の機能と議員の機能と有権者の機能というものをもう一回きちんと区分して考える必要があるんじゃないか。公認を決めるのは党かもしれないけれども、議員を決めるのは有権者だ。そういう中で議員は有権者責任を持つべきであって、党そのものに一〇〇%責任を持つという考え方ではない方が今の議会制民主主義に適するんじゃないか。  こんなことをいろいろ考えているわけですが、そういった問題について両参考人から、いろいろなところを見ておられると思うので、御意見があればぜひ聞かしていただきたいのが一点です。  もう一点は、実はきょう朝からずっとマスコミの方に、我々のいかにだめかということをいろいろ御指摘を受けているんですが、朝のうちもちょっと一言発言をしたかったんですが、別に朝の社が特にどうこうというんじゃないんですが、私は、今の国対政治と呼ばれるものを支えている大きな枠組みは実はマスコミにあるんじゃないか。つまり、国対政治というのは国会でやられているだけではなくて、それをまさにマスコミがいわばそのシステムを支えて機能さしている。二言目には政策論争にすべきだ、すべきだと言うけれども、私が実感している限りは、政策を言うよりは、金丸さんがこう言ったとかだれだれがこう言ったという方が断然大きな記事になるわけで、政策論争というのはどちらかといえばなかなか中心的な話題になりにくい。もちろんこれは当事者である我々にも責任があるわけですけれども、マスコミそのものの対応の仕方にもそういった側面があるんではないか。これは別にこんな席だから申し上げるわけじゃないんですが、それについても感想を聞かしていただければありがたいと思います。  以上です。
  83. 清水幹夫

    清水参考人 政党の機能という御議論になりますと、これはもうそれこそ一晩御議論の論争になると思いますけれども、基本的には、とにかくこの現在の代議政治、議院内閣制というようなことの原点は、結局、国民の主権ですね、これを最も円滑に働かしめる手段として工夫されたものであるという、これ教科書的ですけれども、そういう原点に戻らざるを得ないわけでして、本来国民全体にある主権を円滑に働かしめるというために工夫されたものだということで私はおのずと解決していく問題ではないか、こういう政党の機能というのは、というふうに思うわけでございます。  もう少し言うと、もっとそれよりも、例えば、今日本の議院内閣制というのはイギリス型でございまして、立法府の身分のまま行政府の長も兼ねられるという制度までさかのぼって実は見直しする必要もある時代になったんではないか。イギリスのように政権交代が二大政党下であるという前提ならばわかるんですが、今日のような自民党の長期政権のもとで、立法府の身分でしかも行政府の長も兼ねるというのは、その辺こそむしろもう一回議論になってもいいんではないかというふうな感じがいたします。  それから、我々にも責任があるということはある程度は認めますけれども、逆に言いますと、例えば、私どもよく議論するのですけれども、予算委員会は相当な部分報道もするが決算委員会は全然しないではないかと言いますね。私も、特に予算というのは大事ですけれども、逆にこれがどう使われたのかというチェックこそ、むしろこれが、衆議院がおやりにならないなら参議院の有力な機能じゃないかというふうな感じもするんですが、そうすると、いや、テレビもしませんし、こういう答えも実ははね返ってくるんですね。それは逆でありまして、相当な御議論、今この特別委員会、これは皆さんの身分に関する議題だからということは申しませんが、こういう議論の中身、猛烈な迫力ある議論をされるとそれは報道するわけでありまして、どうも皆様方予算には大変に熱心だけれども、決算の御議論というものはどうも報道するに足らないと言わざるを得ないような部分もあるということを私常々申し上げるところなんでございます。
  84. 田勢康弘

    田勢参考人 二つお答えいたします。  第一点の政党ですけれども、やはり日本議会制度の発端がいわゆる藩閥政治だったというようなこともあって、なかなかパーティーという概念が日本の民主主義の中に溶け込んでいくのにはかなり時間がかかるだろう、溶け込んでいったにしても一定の限界があるだろうという気がいたします。それが一点。  もう一つは、アメリカの予備選挙システムそれからイギリスの候補者選考委員会システムですけれども、これはやはりなかなか日本政治風土には一つはなじみにくいんではないかという気がいたします。どうしても有力者の後ろ盾ですとか、そういうもので候補者が決まるという時代がこれからもやはり続かざるを得ないんではなかろうかという気がいたします。それは、ある種日本社会全体にある、きれいな言葉で言えば和をたっとぶ、普通の言葉で言うと談合的体質ということなんでしょうけれども、そういうものはなかなか一晩では消えないんではないか。  もう一つはジャーナリズムに関する御指摘でございますけれども、全く菅先生御指摘のとおりだと思っております。  問題点は二つあります。一つは、やはり政治ジャーナリズムが政治政界を混同しているということが一点。もう一つは、永田町と同じ目の高さでしか物を見ていない日本政治ジャーナリズムの限界というのがあるんではなかろうか。  しかしながら、そういう問題点に気づき始めているジャーナリストも少しずつ出ている。この前途は政治改革の道よりももしかしたら遠いかもしれません。
  85. 細田博之

    ○細田委員 私は、二つの問題についてお伺いしたいと思います。  一つは、御両人ともお使いになっていらっしゃいます政権交代ということでございます。  アメリカにおいては、民主党、共和党も、多少の政策の差はございますが、かわったからといって突然大きな政策の変更があるかというと、基本的には余りないような気がいたします。その中でも、しかし税制を少し変えなきゃいかぬとか、まあいろいろなことはあるわけでございますけれどもね。我が自民党が今政権交代可能など言っているのは、やや社会党に対するやゆを込めている面がありまして、あなた方は防衛の問題でも外交の問題でもその他のいろいろな問題でも、原子力その他ですね、本当に変われるんですか、あなた方が変わらないと交代ができない、しかし交代する必要があるから制度も変えなきゃいけないんですよ、それで単純小選挙区制云々と、こう言っているわけでございますが、よく考えてみますと、皆様方がおっしゃっている政権交代というのは、第一には、とにかく長い政権が続きますと腐敗するじゃないか、だから腐敗防止のためにはかわる必要がある、これは一つ理由があると思いますね。  アメリカなどでは、もうそのためも含めて役人も上の方が全部かわってしまうようなシステムをとっているわけでございますが、ただ腐敗だけのためというわけにも本当はいかないんで、政権交代可能という場合には外交関係がやっぱり安定していなきゃならないでしょう、日韓、日米その他重要な関係がありますし。あるいは安全保障も、突然防衛費が減ってみたりふえてみたりと、政権が交代するたびに変わっていいのかどうかという問題もあるし、定員の問題やPKOの問題もあると思うんですね。  そのときに、まじめに考え政権交代可能性という場合に、どういう継続性を持つ政権を頭の中で描いておられるかということを御参考までに教えていただきたいと思うわけでございますし、それから、まあ原子力などについてはまたあれですから言いませんが、もっと大きな問題は、多分そういう安保とか外交は継続的に、原子力もそんなに変わってもらっちゃいけないよというところになったとしても、例えば分配の問題ですね。一体、雇用者というかサラリーマンその他に対する分配というものがいいのか悪いのかという問題は非常に今後問題になるでしょうし、年金の問題でも六十五歳に上げていいのかいけないのか、税制についても消費税や環境税をどうするのか、予算の配分もどうするのかという問題すべてが政権交代という背景にはあって、かってイギリスでは労働党と保守党が余りにも違う政策でこれをやって、国有化したりなんかするものですから、どうもちょっといけないぞというので保守が長く続くような傾向も見られたと思うんですが、余りこういう腐敗のことばかり考え政策の中身を考えない場合には、逆に、先ほどおっしゃっていた短所である役人任せの政治になって、余り変えられない。  要するに、自民党がいけないから、悪いことしたから、今度は新政権だ、政界再編もして、似たような、自民党から割れた人と社会党、公明党の一部がくっついて新政権でやってもらえばいいんだ、しかし中身はそんな変わらなくていいんだ、もう安定してやってくれれば、腐敗さえしなければいいんだというふうにも言っておられるように聞こえてしまうんですが、そうではないはずなんですね、政治の姿というのは。  そのときにどの程度許容して政権交代というイメージを持っておられるのか、余りにも大きな問題ですから、清水さんと田勢さんだけにお伺いするというのは不公平な感じもあるかもしれませんが、やはりそのイメージがなければ、政権交代というものが真剣に議論され得ないと思うんですよ。今まで全くそういう議論はないんですね、この委員会では。それが第一点でございます。  それから第二点は、非常に細かい問題かもしれませんが、使途不明金問題というのが今度非常に大きく出たわけですね。これは出す方の側から見ると、非常に大きくこれは政治とかかわっておりまして、まあ何らかの対応が必要なんじゃないか。この政治資金規正法というのは受ける方だけやっているんですが、出す方の罪の意識が全くないわけですし、逆に言うと、我々もありがたい面もあったんでしょう、多分一部の人にとっては。そのときに、一体これをどういうふうに考えたらいいのかという点について、お考えがあればお聞かせ願いたい。  以上、二点です。
  86. 田勢康弘

    田勢参考人 アメリカで見聞きした具体的な例を一つだけ参考に申し上げたいと思います。  一九八八年の大統領選挙、今回の前の大統領選挙ですけれども、そのときに共和党と民主党の間にアメリカン・アジェンダというプロジェクトが組まれまして、これは簡単に言いますと、共和党が勝っても民主党が勝っても最低限我が国がやらなければならない政策は何かということを議論する会合であります。片一方、民主党はカーター大統領、共和党はフォード大統領、この大統領経験者が中心になって、それぞれの政党から、学者を含めて、官僚OBも含めて、例えばブレジンスキーであるとかUSTRの代表になったカーラ・ヒルズであるとか、こういうそうそうたるメンバーが加わって、超党派で一週間アトランタで合宿をするというのが行われました。ここでまとめられた内政、外交に関する政策というものが新しい大統領当選者に手渡される、それがどういうふうに実際のブッシュ政権政策になったかは検証しておりませんけれども、こういうシステムがアメリカでは機能しております。  もう一つは、日本で本当に国民政権交代ということを今望んでいるのかということへの疑問であります。  これも抽象的なことを申し上げても仕方ありませんけれども、仮に今野党を中心にする連立政権ができたとします。恐らく問題は、総理大臣官邸の総理執務室にある日の丸を片づけるかどうかというところから始まるんではなかろうか。現在カンボジア、モザンビークに出しているPKOを引き揚げるかどうかというところから始まる。また、今もしできれば、七月の東京サミットで一体新しい野党による政権が今までと違ったことを果たしてできるかできないか、そのときにどういう混乱が生じるか生じないかというようなことを考えますと、やはり与党のみならず各党ともに、今政権をとったら何をするかという議論をやはり十分にしていただく必要が最低限あるだろうと思います。  もう一つは、使途不明金の問題ですけれども、直接的な答えになるかどうかわかりませんけれども、やはり金を出す側、それから受け取る側だけでもだめで、我々、今公共事業をめぐる大手ゼネコンからの献金というのが一体どういう背景で行われているかという実態を調べておりますけれども、これは非常に日本的なシステムといいますか、自己完結型の、つまり東京大学工学部土木学科を卒業した人たちで構成する社会で、そこに政治世界がある種調整役のような形で入っていって、発注から設計、監督、すべてこの一つの同じかまの飯を食べた人たちの間で行われているというのがこの世界だろうと思うんです。  ですから、こういうことを考えましても、出す方と受け取る方だけ押さえてもだめだ。ここにでき上がっているある種の三角形、トライアングルの少なくとも一辺を切らない限りはなかなか問題の解決は難しいというふうに思います。
  87. 清水幹夫

    清水参考人 私はぜひお願いしたいのは、この選挙制度という議題での当委員会の今審議ですけれども、これは今細田先生がおっしゃったようなテーマで、ひとつテーマごとに質問と答弁をそれぞれの党がその立場になってやっていただきたい。それで私は有権者が判断するんだと思います。それはもう挙げてそれぞれの政党の力量の問題でございますから。私は、それをどう判断するか、どう評価をするか、こういう御議論の前提は、有権者といいますか国民をもう少し信頼された上での御議論の方がよろしいんじゃないかというように思います。  そういう意味では、こういう審議スタイル、私もちょっとさっき触れましたけれども、私が考える本来の審議は、今こういう、この議題におけるこの審議なんですね。重要なテーマをめぐってひとつ実行に移されてみてはいかがでしょうか。  それから第二点、これまた大きな問題で、一言で言えというのもなかなか無理なんですけれども、一言で言わせてもらうと、企業・団体献金はもう禁止すべき時期なんだということだけは申し上げたいと存じます。
  88. 北側一雄

    ○北側委員 公明党の北側でございます。  両参考人に二点質問をさせていただきます。  まず一点は、数々のこうした政治腐敗事件、これと制度改革との関連なんですけれども、確かに政治家の倫理というものがもちろん先決でございますし、選挙制度改革もすべてではないと思います。また、絶対の選挙制度なんていうのもないというふうに思います。しかし、数々のこうした政治腐敗を生む構造的な要因というのがやはりあるんではないのかというふうに私は思います。中央集権のもとでの余りにも多くの行政許認可権限、補助金行政、また、族議員であり、それに群がる企業、こうした利権構造をやはり断ち切っていく方向で制度改革をしていく必要があるんではないのかと私は思うんですね。現行の中選挙区制というのは、そういう意味では今の現状を温存していく方向で働きはしないのか。やはり現状を変革をしていくためには選挙制度改革というのは非常に重要であるというふうに私は考えておるんです。この点、両参考人がどうお考えか。  もう一点は、両参考人とも選挙制度改革につきまして妥協が必要であるというふうにおっしゃっておるわけなんですが、先ほど清水参考人は、妥協は大胆かつ勇敢に、それが議会政治の本領であるというふうにおっしゃいましたが、私も全く同意見でございます。今国会選挙制度改革を含む抜本的な改革をしなければいけない、また、しようとする以上は、各政党が自己の立場に固執していては結局何の改革もできないで現状が残ってしまう、これだけはもう何としても避けねばならないというふうに思っております。選挙制度を初めとしまして、与野党歩み寄りまして一定の妥協点というものを何としても見出さないといけない。もし自己の立場にあくまで固執して妥協点を求めようとしない人がいるとしたら、それはこの政治のシステムを抜本的に変えようとしていることを好ましく思ってない人でございまして、私は改革に不熱心な人であるというふうに思うんですね。もしそういう人が目につきましたら、ぜひマスコミの皆さんにも指摘をしていただきたいというふうに思うわけでございます。  そこで、この妥協案としていろいろな妥協案が考えられるかと思うんですけれども、今、第三案として、民間臨調皆さんに御尽力いただきまして連用制その他の案を出していただきました。これについて、この連用制、また政治資金の方も含めましてどのような御意見をお持ちなのか、ぜひ参考に聞かせていただきたいというふうに思います。
  89. 清水幹夫

    清水参考人 前段の、利権構造を断ち切るという問題、これはもう全くそのとおりです。そのための御議論でございましょうし、私どもも、いかにそれを制度的に断ち切れるかというところを申し上げているわけですが、ただ、基本のところは、私の考えは、やはり今日の政治腐敗というものの根源ですね、これが生じる根源というのは国民の常識を無視するところから始まっているんじゃないかというふうに私は常々考えているわけであります。  ただ、国民も、かすみを食って生きているような聖人君子のような徳を望んでいるわけではありません。もう例外的な徳を望んでいるわけではないと思うんですね。要するに世間並み、要するに堅実な生活者が持っている感覚、こういった範囲内の徳を求めている、それを期待しているわけでありまして、その徳をやはり政治を担う方々は必ず原点として思い起こしていただければ、この辺は、今言った政治腐敗の問題はかなり、制度的にというよりも、むしろ遠回りのように見えて近道的に実現していくのではないかという感じを私は抱いておるわけであります。
  90. 田勢康弘

    田勢参考人 非常におなかのすいた人の目の前にまんじゅうが一つあると仮定します。我々下々は死にたくないからそのまんじゅうに手をつけます。しかしながら、食べてはいけないまんじゅうであれば、それに手をつけないというぐらいの倫理観を持った人が本当の意味での公人であるだろう。それは、政治腐敗の問題はやはり政治家の性根の問題にかかわる問題だということが一つと、もう一つは、制度改革といっても、選挙制度を変えたからといってすぐにこの政治腐敗が断ち切られるというふうには言えないんではなかろうかというふうに思います。  制度を変えるという意味で言えば、やはり刑事事件になるような問題を起こした人については何年かの間被選挙権を持てないというようなシステムにするということが一つと、これまで長いこと自由経済体制を守るという名目で認められてきた企業献金、これはもう、自由経済体制なんていう主張はもはや冷戦構造が崩壊した今となっては余り通用しないわけですし、出す企業側からすれば、何の目的もなく企業のお金を出すということは限りなく背任行為に近いわけですね。目的があるとすればこれは贈賄に近くなるわけです。いずれにしても、この性格があいまいな企業献金はやはり廃止へ向かう、廃止すべきだろうというふうに思います。  連用制についてでありますけれども、個人的な見解ですが、これまで出たさまざまな案の中で最も理解しにくい、わからない案だろうと思います。三百、二百という配分になっておりますが、ある党が小選挙区三百全部をとった場合には比例は全く一議席も来ないというのがこの制度のシステムです。そうすると、この比例に投じられた国民の意思というのは一体どこへ行ってしまうのかという疑問も抱くわけです。  もう一つは、都道府県単位の連用ということになっております。ここに問題点は二つあると思います。一つは、この都道府県単位の小選挙区の候補者と比例の名簿に載る人、この仕分けを現実政治の問題として各党がそれぞれ都道府県レベルでおやりになれるのかどうかということですね。現在の与党は、県によっては小選挙区の配分以上の現職議員を抱えているところがあるわけですから、そういうことができるかどうかということと、もう一つは、一つの県で小選挙区全部同じ党がとれば、当然のことながらその党の名簿第一位の候補者は決して議席は持てないわけですから、そうなると、私がもし政治家であれば、やはり他党の候補に小選挙区で投票するように自分の後援会員をしむけるということも考えるだろうと思うのです。そうなった場合に一体政党政治というのはどういうことになるのかという疑問が出てくるんではないかというのが私の率直な感じです。
  91. 北側一雄

    ○北側委員 清水参考人は、連用制の問題は。
  92. 清水幹夫

    清水参考人 失礼いたしました。  最大の欠点は、連用制の最大の欠陥は、これは民間政治臨調の方が言われているわけですね、要するに、現在の各党の議席とそう変わらない結果が出ますよ、こういうことでございまして、これはどうも、それでは何のための、改革する意味があるのかなというふうになりますし、どうもその辺が私にはよくわからないわけでございます。とすると、余りにも両案の折衷を考え過ぎた嫌いがあるんじゃないかというふうに思います。いろいろ欠陥はやはりどうしても出ている案だというふうに思いますね。  しかし、さはさりながら、これは最初から賛成だ、反対だと言うよりも、やはり第三の案として御議論の対象には、それはもちろんされてしかるべきであろうし、とことんこの辺の内容、プラス面、マイナス面、あるいは自民党案、社公案にとってどう折り合いがっくのか、つけられないのかという御議論はしてしかるべきだろうというふうに思います。
  93. 大畠章宏

    ○大畠委員 日本社会党の大畠章宏でございます。  常に斬新な切り口で、そしてまた高度なジャーナリズム精神を発揮しながら庶民の心をつかまえている両氏に、心から敬意を表しながら、幾つか御質問をさせていただきたいと思います。  先ほど清水参考人それから田勢参考人からいろいろ御意見をいただきました。清水参考人の方からは、一〇〇%よいものはないけれども、とにかく家を建てかえてみたらどうか、こういうような御趣旨のお話がございましたし、また田勢参考人からは、日本の伝統といいますか、風土的に二者択一の制度というのはなかなか日本人に定着しにくいといいますかなじみにくいというようなお話ですとか、あるいは国家としての意思決定システムそのものをもうちょっと見直したらどうかとか、あるいは政治に金がかかるというのはこれは迷信であるというような趣旨の御発言がございました。  こういうものを踏まえながら、今日私も一政治家として活動をさせていただいているのですが、過日私どもの委員会の中でも発言がございましたけれども、飛行機に乗っていて、おりるときにバッジを見て、あんた国会議員か、おれは国会議員と一緒にこの飛行機に乗っているということを考えたら非常に不愉快だ、そういう発言を受けて、非常に驚いたし、また国民政治家といいますか政治に対する不信感の強さを改めて感じた、したがってこの国会の中で、何とか政治家そして政治に対する国民の信頼感を取り戻すために、全力でこの選挙制度並びに政治資金規正法の問題も含めて改革したい、そういう御決意のお話も伺いました。  そういう意味からちょっとお伺いをしますと、やはり国民の不信感の大もとというのは、政治家と金という関係がどうも不透明である、そういう感じもいたします。特に、私自身も思うのですが、政治家とお金という関係を何とか透明化するとともに、その元凶となっていますこの企業献金、午前中もちょっとその話が出たのですが、企業献金をどうするか、そういう問題について御両名のお話を伺いたいのです。  特に企業献金については、これもきょうおいでの新聞社の方の記事ですが、政治家に献金を出す側も反省をということで、経済同友会の代表幹事の方の、政治家も責められるべきだが、献金は企業や国民が行っている、献金で政治家が動く政治がいいのか考えるべきだ、そういう談話が載っておりました。  また、今一ドル百十円時代に入りまして、企業の方でも、企業献金といっても、結局企業が努力をし、そしてその中で多くの方々が働いて益を出す、その一部が献金として回ってくるわけでありますから、企業としてもそう出せる状況はなくなってきたのじゃないか。逆に言いますと、法人税という形で企業の責任を果たしている、したがってできるならば企業献金はもうやめたいということも私は企業側の方にあると思うのです。過日も私質問しましたけれども、選挙のときにこれだけ出せよということで、ぽんと金融業界からある党が大量の金を借りて、その支払いだけを企業に回すということがあったということが報道されているところでありますけれども、そういうことを果たして企業側がこれからも応ずるかどうか。  あるいは、逆に言えば、保険金としての企業献金というものがあったかもしれないけれども、果たしてそれだけ払うだけの激変をする日本社会経済事情等々、それだけの保険金を払わなければならないという日本の、政治的にそういう時代はもう過ぎ去ったと思うのですね。  したがって、私はこの際、企業献金あるいはまた使途不明金問題にも踏み込まなければならないと思うのですが、清水参考人田勢参考人に、この企業献金あるいは使途不明金問題についてどのような感じを持っておられるか、お伺いをしたいと思います。  さらにもう一つですが、選挙制度の問題で、私どもの併用制にも、超過議席という問題と、一票二札の、二記載という問題等々指摘をされております。また、連用制についても、二票制というものがどうもいま一つであるという御意見もいただいておりますけれども、この問題について清水参考人田勢参考人はどのようなお考えを持ち、また、これをこういうふうに変えればいいじゃないかというものがございましたら、そういう考えもあわせてお答えいただければと思います。  以上であります。
  94. 清水幹夫

    清水参考人 第一点の企業献金の問題ですけれども、先ほど田勢さんも言われましたけれども、もうそういう企業の負担というよりも、その名目が成り立たなくなっているんじゃないでしょうかね。  これは何のために献金するのか、メリットがあるからだと言ったらこれは贈収賄につながってくるでしょうし、いや、メリットはないけれども出すんだと言ったら、出す方はこれは背任になりますし。そこで、都合のいいのは自由社会を守るということだったんでしょう。必ずそういう名目で出されてきたわけですよ。これは田勢さんも指摘されましたけれども、もうないんです、そういう名目は。  ですから、もうそういう時代的にも出す理由が見当たらないという時代なので、これから一体どうなさるのかな、この制度のままだとというふうに、私は注目して見ているのでございますよ、今度の選挙近くなってきたら。  私は、究極的にはやはり公的資金で政治活動を賄うという考え方賛成なんです。  もちろんそれは前提がございますよ。もう常識的なあれですよ。要するに、例えば収支きちんとガラス張りにするということはもちろんでございますけれども、例えば選挙運動における違反の場合は、秘書さんどころか運動員の違反まで全部連座制にかかるというようなイギリス方式、あるいは第三者による監査の徹底的な充実ですね、機構の。こういう前提があっての話でございますけれども、ただ、なかなか皆様方そういう面は積極的におやりにならないから、私どもはまだ時期が早くてとても賛成できないということになるのですけれどもね。  究極的には、私は、そういう形ならば有権者の方はといいますか主権者の方もそれだけの負担はしましょうということで、私はかなり合意は成り立つのではないかというような感じを強く持っております。  それから第二点の、併用制だけではなくて、この二票という問題は、これはどうなんでしょう、どうしても一票で小選挙区、要するに人を選ぶ、具体的な人の名前を書くというものと、それをそのまま党の得票、党への支持だというところがどうしても選ぶ側からすると無理が生じるでしょうし、たしかこれはこの前の参議院の全国区を改正するときにも大変な御議論あったですね、一票制か二票制がというのは。どうしてもその辺がクリアできないんだろうと思いますね。  それで、例えば連用制についても、問題になるのが、二票制がどうしてもひっかかってくるわけですね。というのは、小選挙区でとった分はかなり、逆に言うとマイナスの評価をされちゃって、それはもう皆さん、小選挙区でとった票はそれでもうパスですよ。それで、その次、議席を調整するために比例代表、二票目を使うわけでしょう。ということになると、これがまた、じゃ二票というのはどういう形の投票なのかなというのがどうしても払拭できないわけですね。この辺、乗り切れないという問題が生じますので、これは本当に悩ましい点だろうと思うのでございます。私も、それならば一票ということについてなかなか理屈も成り立たないのですけれどもね。
  95. 田勢康弘

    田勢参考人 企業献金の問題は、先ほど長々とお話ししましたので、繰り返しは避けたいと思いますが、基本的には廃止すべきだろうと考えております。  一つ問題は、衆議院議員の歳費は月額百二十九万七千円だというふうに伺っておりますけれども、これはやはり余りにも少な過ぎるという気がいたします。ここを、政治の質を高めていただくということを前提にして、大幅にやはり議員の歳費をまず上げる必要があるんじゃないか。公費負担というのをやはり行く行くは真剣に考える必要があるだろうと思います。  社会党、公明党の併用制についてでありますけれども、連用制よりは論理が通っているというふうに思います。しかしながら、いろいろな方が御指摘のように、やはりこの超過議席の問題、結局、どこが過半数か選挙が終わってみないとわからないというようなことが一つの問題かなということと、もう一つ、素朴な疑問は、野党第一党の日本社会党が、何ゆえに小選挙区、単純小選挙区に乗らなかったのかな、政権を本気でとる気はないんだなという感じがいたします。論理的に言えば、多分一番政権に近いのはあの制度ではないかなという気がするわけです。
  96. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫です。  最初に、清水参考人からは、今の日本政治のあり方として、どこが中心的な問題であり、国会は今優先して何をやるべきだと考えているのが、一般論でなくて具体的にお示しいただきたい。  その一つの参考になるかわかりませんが、四月十九日付の清水さんのやられております毎日新聞のアンケート調査結果が出ていたわけでありますが、今の政治に満足をしておりますかという設問に対して、「満足」が二%、「ある程度満足」が一九%、「余り満足していない」四二%、「満足していない」三六%と、七八%が満足していない。このアンケートは、どの点が不満なのかという設問がないのですけれども、それを示唆するいろいろな設問があります。「金丸前副総裁のようにばく大な蓄財をしている政治家はほかにもいると思いますか。」「たくさんいる」六四%、「少しはいる」三三%、足しますと九七です。「いない」がたった一%。「竹下元首相は責任をとるべきだと思いますか。」「議員辞職すべきだ」八二、「自民党を離党すべきだ」一一、「今のままでよい」四。「東京佐川急便事件は検察や国会で解明できたと思いますか。」「できた」二%、「ある程度できた」一三%、「あまり解明されていない」三七%、「解明されていない」四五%。そして、最後の設問で「現在検討されている政治改革の中で、あなたはどれを優先して実施すべきだと思いますか。」「政治腐敗防止のための制度確立」が五三%、「政治資金の規制」二三%、そして「選挙制度改革」というのはわずか一九%。  こういうあなたの新聞のアンケートの世論調査の結果が出ておるわけでありまして、私は、これが国民の声であり、政治不信を解消するために、まずは金の問題だ、金と政治のけじめをつけるのが先決だというふうに受けとめたわけでありますが、率直にお答えいただきたい。  田勢参考人に対しては、先ほどの公述の中に、選挙制度政治改革の最大の柱だという考えはおかしいと明確に述べられました。私もそのとおりだと思うわけであります。かなり皮肉を込めて、政治改革イコール選挙制度改革を仕掛けてきたという言葉まで使われているわけでありますが、そういう中から、金がかかるのが中選挙区制のせいだとか、政権交代ができないのは中選挙区制だ、そういう立論は間違っているとおっしゃられました。その部分は私もそのとおりだと思います。  そして、何をなすべきかの結論で、ディシジョン・メーキング・システム、それができる政治をつくれというのが最初の結論部分だったかと思うのですが、実は七年前、国会は、選挙制度の問題については、定数抜本是正の決議を上げているわけであります。最大格差二倍未満の抜本是正をやれ、六人区・二人区なくす、国会はこういう決議まで上げて国民に約束をしている。それすら全くできないで七年だったと思うわけでありまして、もうディシジョン・メーキング・システムの前提が崩れているので、やはり国会はみずから決めた国民に対する約束をきちっと守るというのがまずは何はともあれ先決ではないかと思うのですが、それに対する御意見と、三月九日付の日経新聞の社説の中にいろいろ論じておりまして、「政治改革選挙制度政治資金選挙法などの改革を一括して行うべきだ、との議論は一見もっともであるが、実現性ということになるとオール・オア・ナッシングに陥るおそれがある。今日の政治不信は放置できないところまで立ち至っており、出来るものから改革の一歩を踏み出すべきだと考える。その意味選挙制度改革なしに政治改革はありえない、との主張に必ずしもこだわるべきではない。金丸前副総裁の脱税容疑は政治家のモラルと政治資金のあり方に直接かかわるものであり、まずこの面から政治の立て直しに取り組むべきだろう。」これが三月九日付日本経済新聞の社説の結論であります。先ほどの毎日新聞の国民の世論調査の結果とかなり符合しているなと思うわけでありますが、これがまず優先課題だと私は思っているわけですが、田勢参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  97. 清水幹夫

    清水参考人 堅実にまじめに汗をかいて正直に生きるということがばかばかしくなる、ばかばかしく感じられるという社会というのは決して活力は生まれない、むしろ衰退していくということだろうと思いますね。ですから、今一番政治に求めているものというものを私なりに解釈すれば、そういう堅実に生きている人たちに自信と勇気と展望を与えるものを、そういう政治を展開することだというふうに私は思うのですね。  具体的に、ではどういうことかといいますと、要するに、政策決定システムが非常に不明瞭で不公正だということ、どうも国民に一人一人の目に見えないところで、どうも密室のようなところですべてのものが決まって、それで押しつけられるというふうなところ、その辺の不透明感、これはもう政治政策決定システムだけじゃなくて、今問題になっている政治家と金の問題もそうだと思うのですね。ですから、その辺をガラス張りにすることが、私は具体的にこの今一番必要な政治役割だろうというふうに思うわけであります。  今回の金をめぐる不祥事に対するけじめ、この金と政治の問題にけじめをつけるということは、これは当事者あるいは当の政党が御自身、当然やらなければならない話でありますけれども、今こうして御審議になっているこういうもろもろの全部を含めた政治改革というものをこの国会でなし遂げるということが、やはり私は最大のけじめだろうというふうに考えております。
  98. 田勢康弘

    田勢参考人 一番心配しておりますのは、日米関係であります。さきの宮澤総理とクリントン大統領の会談、これは全く日本側の対応は、虚をつかれたといいますか、日本側の視点と向こうが日本を見る視点が全然違っていたということ、非常にずれているわけでありますが、この準備段階から、日米首脳会談終わった後の円高を含めて、この間この国会でそういう議論が真剣に行われたというようなことを不幸にして私は聞いておりませんけれども、そういう議論、冷戦構造がなくなって、アメリカとどういうふうにつき合うかというのを、それぞれの党でいろいろなお立場がおありでしょうけれども、しかし立場立場として、やはり議論をしないでいいということではないんではないか。それは、対ロシア支援の問題にしても、やはり国際情勢日本政治的混乱を理由に待ってくれたりはしないわけですから、そのときに我が国としてどうすべきなのかという議論がやはり行われる必要があるな、それが私が先ほど申し上げましたディシジョン・メーキング・システムとしての役割ということであります。  それから、国会決議のお話をされましたけれども、国会決議というのは決して法的な拘束力はないわけですから、ある意味でのモラル規定のようなものだろうと思いますので、これはディシジョン・メーキング・システムの役割というふうには私は考えておりません。
  99. 柳田稔

    柳田委員 民社党の柳田です。  お二方に二点お聞きしたいと思います。  まず第一点は、政界再編についてであります。この国会の場で、選挙制度を含み、政治資金の改正を含み、いろいろと議論をされておりますが、一方では、我々の委員長である大内委員長も党大会の場で政界再編について言及をいたしましたけれども、いろいろなところでこの政界再編という声が大分出てくるようになってまいりました。私自身は、今回議論をされておる選挙制度政治資金、これはぜひとも答えを出さなければならないと思っています。ただ、これは百点満点中四十点くらいかな、あと残り六十点は政界再編をすべきだと、そういうふうにも思っているわけなんですが、まずお二方に、この政界再編についてどのようにお考えになっているか、お聞かせ願えればと思います。  もう一点は、午前中とも同じような質問になるかと思うのですけれども、マスコミさんと我々政治家というのはある面で似ているのではないかな。というのは、いろいろなところに行って情報を収集してくる、そして物事については判断をしなければならない。判断をしたところで、新聞の方々は社説に書いたり記事に書くわけです。我々は、判断をしたら国会議論をする。マスコミさんの場合は、記事を載っけたらその次は、これがよかったかどうかは責任を問うようになるかと思いますよね。販売部数が伸びるとか落ちるとかいうことに答えが出てくるかと思うのですが、我々政治家というのは、判断をしたら次には決断をしなければならない。決断をしたら実行をしなければならない。そして、実行したらその実行に対して責任を負わなければならない。選挙に勝つか負けるかということに相なるかと思うのです。  いろいろなところに行っていろいろと御意見なり話を聞いておりますと、国民は白黒、判断の方に入るかと思うのですが、白黒をはっきりさせるのが好きなんじゃないか、どっちかだというのが好きなんじゃないかという話もよく聞くのですけれども、私は逆に、実行するとき、これはいろいろな意見を吸収して、できれば中庸の方を歩いてほしい、決断、実行についてはそういう実行をしてほしいと、そういうことも聞くような感じがいたしておるわけであります。  選挙制度についてでありますけれども、いろいろな例が、最近では大変大きな課題がありまして、消費税のときもいろいろな意見が出ました。PKOも出ました。ウルグアイ・ラウンドも出ております。これは国民の間だけではなくて国会の場でもありますし、皆様書いておる社説にもいろいろな差が出ております。  私自身は、今の日本政治土壌といいますか、国民考えている意見というのはいろいろな、多様な意見があるんではないか、その多様な意見国会は吸収して判断をし、決断をし、実行しなければならないんではないかと思っでいるのです。小選挙制度一つの大きな政党とある一つの大きな勢力が拮抗して選挙戦を戦うのであれば、これは理解がいくわけでありますけれども、多様な意見がまだたくさんある間でこの小選挙制度を導入するというのは、私はまだ時期が早いのではないか。政界再編ができれば、したいと思って努力をするのですが、できれば、私は小選挙区制でもいいと思っているくらいなのですけれども。ただ、今の国民意見というのは多様じゃないかと。いろいろと調査をされておる新聞の論説委員方々ですから、国民の御意見の広さ、多様さについてお話を願えればと思います。
  100. 田勢康弘

    田勢参考人 政界再編のお話ですけれども、私がよくわからないことの一つがこの政界再編論議なんであります。何のために政界再編を求めるのかというところがどうもはっきりしない。このはっきりしない一番大きな理由は何かと考えているわけですけれども、どうもかなり初めのころにこれを言い出した人が金丸さんだったというせいがあるのではないかという気がするわけですね。  何を目的に政界再編をするのか。総選挙の結果、新しい勢力分野ができて、それを基軸に政党の結合というようなものが行われる、これは洋の東西を問わずどこでもあり得ることなんだろうと思いますけれども、まだその選挙の日程も視野の中に入っていない段階、いわば年中行事のように政界再編の必要というようなことをいろいろなリーダーの方々がおっしゃる。その本当のねらいがどこにあるのかなというところがいま一つ理解できませんし、最近ではそれに加わって、必要があれば新党をつくるぞというような発言も随分マスコミを通して散見するわけでありますけれども、これまでの我々が政治歴史で学んできたことは、やはり新党結成とかそういうものは、暮夜ひそかに、はかりごとは密なるをもってよしとするという形で突然出てくる、この意外性が国民の人気を引きつけるというのが今までのパターンだったわけですけれども、連日のようにそういう話が新聞をにぎわすというのはどういう政治状況になっているのであろうかという気がいたします。  もう一つ、多様性ということでありますけれども、やはりこの多様性ということは政治にとって非常に重要なことだろうと思いますけれども、ただ、この多様性がやはり小党乱立を是認するということとはまた違うだろうというふうに思います。冒頭に申し上げましたように、野党にもし包括的な政党があれば、これらの多様な意見は吸収し得るというふうに思うわけです。それが、この多様性を備えた政党こそがやはり政権を担当する、し得る政党なんだろうというふうに思います。
  101. 清水幹夫

    清水参考人 私も、政界再編というのは一体何が目的で、再編してどうするんだろうというふうに常々、どう見てもなかなか理由づけが見つからないわけでありますが、不思議なのは、既成の今の政治あるいは政党のままで、どうもどことどこが一緒になることが再編みたいな感じですけれども、私から見るとそうじゃないんで、私は冒頭、壊すことから始める時代に差しかかったと申し上げたのは、要するに、今の政党も、先ほど政党の機能論も御質問ありましたけれども、この辺の過去を引きずってきた、あるいは長い間の政党活動の中で生まれてきたひずみあるいはゆがみ、そういうものをやはり政党側自身、今の既成の政党側自身が一回全部殻を脱いてみて、そこからの御議論だろうと思うのですね。どうもその辺の議論なしにかなり先の話を、今の田勢さんの話じゃないですけれども、公然とおやりになっているのでは、これは実際問題としてはなかなか進む話ではないのじゃないかというふうに思います。  先ほど私、世論調査で特徴的なものを挙げよという御質問に、再編に関連するのを今数字を持ち出したのですけれども、どうもそういう有権者の方、民意の方はかなり既成の政治システムを壊す方に柔軟に傾いているということだけは、私ども調査をして感じられるという点であって、どうもその辺も、政党側御自身とあるいは有権者の方との体温の差がまだちょっとあるのではないかなというふうに思います。  それから第二点の多様性の問題。確かに今俗に十人一色と言えますけれども。十人十色と言いますけれども、むしろ今は一人で十色ぐらいの価値観をお持ちだろうと思うのです。それを時と場合によって使い分けるというようなこともなさるわけでありますから、政治の方もそれを機敏に、しかも有効かつ効果的に吸い上げるということが必要なわけでして、それが今の政治システムあるいは選挙制度では十分に機敏に的確に吸収し得なくなっているのだろうというふうに私は思うわけであります。だからこそこの制度を根本から変えようという考えが出るのだろうし、そういう意味で、むしろ発想は私は逆のように思うのですね。これだけの、一人で十色を使い分ける価値観を余すところなくすくい上げるための今の御議論であろうというふうに思うし、ある人は、制度疲労じゃなくて政治家自身が今の制度の中で疲労されているんじゃないかというふうにおっしゃる方もいますね。ある程度私も当たっているかなと思います。そういう考えを持っています。
  102. 増子輝彦

    ○増子委員 田勢参考人にちょっとお伺いをしたいと思います。  先ほど日本のリーダー論について若干話がございました。今の日本政治にはリーダーがいないのではないか、国民あるいは国家のために命を捨てることができなければ真のリーダーとは言えないというような話でございましたけれども、私、ここ一年ほど実はずっと世論調査を注意をして見ておりますと、一つの支持率、不支持の問題が出ているわけであります。日本のような政治の中で支持率が本当に不支持の半分ぐらいでずっと政権を担ってきているというのは、世界でもやはり珍しいケースではないのかなと。そのときにいかにしてリーダーというものは自分のリーダーシップを発揮していくかということは、これからの特に複雑な世界情勢の中で、よりリーダーシップというものが求められている中で、果たしてどういうふうに今後のリーダーというものは、単に国家国民のために命を捨てるということは当然でございますが、それ以外の先見性とかあるいは決断力だとかあるいはいろいろな形での調整機能だとか、そういったものも当然入ってくると思います。そういった点についてどういうふうに考えているのか。  私は、実は、責任の所在を明確にして出処進退を明らかにすることができるかどうかということがリーダーの最も大切な条件の一つだというふうに考えているわけでございますけれども、この辺についての見解をひとつお聞かせ願いたいということ。  それから、二つ目に制度の件についてでございますが、先ほどいわゆる日本の有為な青年が、志を持つ青年がなかなか出にくいのではないのかというような話がありました。私は、単純小選挙区制であれば、自民党の今出しています五百の選挙区の単純小選挙区制、これの方がむしろ青年とか婦人の進出する機会というものは、党内のきちっとした公認決定システムというものが公平、公正に行われれば、むしろ多く出てくることが可能ではないかと思っているわけであります。  といいますのは、現在選挙に出るためにはどうしても、昔から言われております地盤、看板、かばんというものがなければできない。実際にいろいろなこれからの新人候補者を見ましても、やはり官僚出身があるいは世襲という形でなければ出にくいという状況がますます日本政治制度の中には実は顕著になってきているということは否定できないと思います。それはなぜかというと、やはり政治にお金がかかるというよりは選挙にお金がかかる。そのお金をどういう形で調達するんだというところに、実は制度とお金の絡みというものが大変重要な問題として出てくると思います。当然、当選第一主義ということになってまいりますから、それだけの投資をすれば当選を果たさなければならない。ますますそこにお金と政治のかかわり合いというものが出てくると思います。  そういう意味では、逆に私は、単純小選挙区の方が新人やあるいは婦人や、そういう女性がどんどん出馬をし、志を持って政治の場に出てくる可能性が大きいのではないかと、そういうふうに考えているところですが、この件についてもう一度見解をお伺いしたい。  それからもう一つだけ。地方分権についてでありますが、今の官僚システムの中でいけば、当然これは中央との関係というものは非常に大きいわけでありまして、中央集権という形になってまいります。当然この中央集権の機構というものを変えること、これは地方分権ということにもつながってきますし、これがいわゆる政治改革の大きな柱の一つであります。補助金の問題あるいは許認可の問題、こういったものを積極的に地方に権限移譲するということはかねてより言われているわけでありますが、なかなか実行できない。ここにもやはり制度を変えることによって、選挙だけをやる政治家でない政治家をつくっていくシステムというものが当然必要になってくるのではないか、そういうふうに思っているわけですが、この三点についてひとつ御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  103. 田勢康弘

    田勢参考人 第一点の指導者の定義でございますけれども、責任の所在、出処進退、これは全く私もそのとおりだろうと思います。  太平洋戦争敗戦の後、永野護という人が敗戦真相記という文章を書いておりますけれども、なぜ日本が戦争に負けたか。その中でこの永野という人が言いたかったのは、やはり日本歴史の中でも最も指導者がいない、いわゆる人材の端境期にこの太平洋戦争が起こったということを書いております。そういう意味では、非常に危険な時代に突入しているかなどいう気もいたします。  私が言いますリーダーというのは、何も力ずくで物事を引っ張っていくというようなリーダー、英雄のようなリーダーではなくて、やはりその人の生きざまがそれを見る日本国民に何がしかの感動を与える、ああいうふうに生きてみたいものだと思える人物、それがこれからの、そしてまた日本の風土にふさわしいリーダーではないかなと思います。  二点目の新規参入の問題です。アメリカの例えは下院議員の選挙、小選挙区制で行われておりますけれども、アメリカは日本と違って、二十年も三十年も議員をやる人は非常に珍しいのです。そういう国でありながら、現役の当選率といいますか現役が出てくる確率は九〇%を超えております。あの国でさえもかなり新規参入が難しいということが言えるのではないかなというふうに思います。  それから、選挙に金がかかるというお話でした。情報社会ですから、テレビを通して議論をするというようなことが行われて、そのテレビの放映権のようなものは公費が出すということにすれば、ほとんど金はかからないで済むというふうに思います。  地方分権に関しては、全くそのとおりでありますけれども、中央政府が持っています一万件を超す許認可業務、これを地方にばらす、分権するだけではなくて、やはりこの許認可そのものを、規制そのものを大幅に緩和する必要があるだろう。ここから同時進行的に手をつけないと、本当の政治改革はなかなか進行しないというふうに思います。
  104. 細川律夫

    ○細川委員 今度の私どもの政治改革法案の中に、政党に対して公的助成をする、こういう制度導入が入っているわけなんです。これは、これからの政治というものを政党中心政策中心政党にしていこう、こういうことでいわゆる公的助成を導入するんですけれども、一方では、これは国民皆さんからどうしても同意を得なければいけない。そういうことからすると、当然企業献金を廃止をする、企業献金は一切だめだというようなことをきちんとしない限り、私は国民皆さんから税金を政党にいただくわけにはいかないんじゃないかというふうに思っているんです。  そこでお聞きをしたいんですけれども、政党政治活動については、その費用というものはどういうふうに分担をしたらいいのか。例えば私は、党費で賄うとかあるいは個人カンパ、そういうのもあると思いますけれども、一体その政党の運営資金をどのように調達するというか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。  それから、公的助成をしてもらうにはどういう条件が必要なのか、ちょっとダブるところもあるかと思いますけれども、お聞かせをいただきたいと思います。  以上です。田勢参考人にちょっとお願いいたします。
  105. 田勢康弘

    田勢参考人 政治活動に対する公的資金といいますか、公的助成というのは欧米先進国でも行われているわけですし、私はやるべきだろうと思います。  ただ、その場合に、政党というものの概念が非常にあいまいな現状で、政党への助成ということが正しい選択かどうかという議論は残るだろうと思います。現在のような政治情勢であれば、議員個人への助成という形にした方が現実的ではなかろうかなというふうに思います。
  106. 田邉國男

    田邉委員長 それでは、質疑はまだ尽きないところでありますが、予定の時間が参りましたので、本日の参考人に対する質疑はこの程度で終了することといたします。  参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、来る五月十一日火曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二分散会