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田原参考人 こういう場でお話をしますのは初めてなのでどういう話をしていいのかよくわかりませんが、ここへ来る前に幾つか注意をいただきました。その
一つに、
委員の
方々には
質問をしないでくれと言われました。あるいは私はテレビの番組で
皆さんに嫌な
質問をするのできょうはしっぺ返しをしてやろうということではないと思いますけれども、
自由討論で
質問ができないのはいかがなものかという感じがいたします。
先週、実はここへ亀井さんと屋山さんが来られまして、その記録を読ませていただきました。きょうの
堀田さんを初め
皆さん政治改革に詳しい
方々でして、その点では私はいわば素人の一
ジャーナリストですから、きょうは
外野席から見ている
ジャーナリストとして、
皆さんに少しでも刺激になれば幸いだと思っています。
まず、
佐川急便事件が起きました。
金丸前副
総裁が逮捕されました。この問題については、私
自身を含めてジャーナリズムの責任の問題が大いにあると思います。この問題では考えなきゃいけないと思いますけれども、これはまた別の
機会に考えたいと思います。
この
佐川急便事件、
金丸逮捕事件などで、改めて
政治と金の問題がクローズアップされました。そこで、改めて、とても大事な、いわば
政治の根幹とも言える問題についてどうも
日本では欠落している、絶対なくてはならない重大な問題がないことが当たり前だと私
たちが思ってしまっていることを改めて思い知らされました。何かといいますと、このところ、
総理大臣あるいは
自民党の
総裁選といってもいいのですが、その
選挙のときに、本来
政治というものは、私はこの国をこうするんだ、私はこんなことがやりたいという
政策があって、そして
総理大臣あるいは
自民党の
総裁が選ばれるべきだと思うのですが、このところ、
政策を掲げて
総裁選に登場した人を私は知りません。長い間お目にかかってない。だれも
政策を掲げて登場してない。
これは
皆さんの前で申し上げるのはおこがましいと思いますけれども、そもそも
政治家というのは、この国をこういう国にしたいんだ、こういう
政策をしたい、今の
政治はここが間違っているんだということを掲げて、そのことを実行するために
政治家になられているのだと思いますが、このところ見てますと、
目的と
手段が逆転しておりまして、何か
総理大臣になることが、あるいは
大臣になることが、もっと言うならば
国会議員になることが
目的になっているかのごとく思えます。
国民からは少なくとも思えます。これを
目的と
手段を
取り違えているというふうに言えるのでしょうが、
目的と
手段が逆転してしまっている。
議員になることが
目的になっている。
総理大臣になることが
目的になっている。私の友人の
政治学者の岩井奉信さんは、これを
目的と
手段の取り違いであり、ここにいらっしゃる方は違うと思いますけれども、一般的には
議員になることが
目的、つまり
当選第一
主義になっている。この
当選第一
主義の
人たちが
選挙制度改革を考えるというのは
大変矛盾があると思います。いかがなものかと思います、ここにいらっしゃる方は違うと思いますけれども。
さて、しかし今までは
政策がなくても、
国家をどうするかという
基本理念がなくてもまあ何とかやってこられた。なぜならば、多くの
日本人は、この
日本を
ソ連のような国にはしたくない、
東欧のような国にはしたくないと思っている
人たちが多かったと思います。その点では自由民主党は、
ソ連のような国にしたくない、あるいは
日本はアメリカと仲よくやっていきたいんだということを強く打ち出して、とにかく多くの
日本人の
支持あるいは
賛成を得てきたのだと思います。それに対して
野党の
方々は、いわば
自民党だけに
政治を任せておくとどこへ暴走するかわからない、しばしば暴走しますから、それのウォッチャーとして、会社でいえばいわば
監査役としての
役割を果たしてこられたんだと思います。その一番いい例が憲法問題でして、
自民党が憲法を改定して
軍事大国などに暴走すると危ない、だから少なくとも三分の一を確保する、三分の一以上確保するというのが
日本の
野党の主たる
役割であったのではないか、私のような
外野席にいる者から見るとそう見えます。
しかし、
ソ連が崩壊した、
東欧が溶融しまして、世界は大きく変わりました。そこで、特に今の
自民党政府に対して
国民の求め、
ニーズが変わってきました。
ソ連のような国にはしたくない、
共産主義の
国家にしたくない、しかしそういう脅威はなくなった、さて新しい
時代に
日本の
政府は、
自民党はどうするんだ、何をするんだ、どういう
政策でこの新しい
時代に
日本を運営していくんだ、新しい
政策を、言ってみれば新しい
商品を求め始めました。
野党に対しても、もし
自民党にかわって新しい政権を担おうとするならば一体どういう
商品を提供するのか、どういう国にするのか、新しい
商品を求め始めていました。
ところが、現在ただいまのところどうもその
商品らしきものは出てこない。私はここが最大の問題だと思います。新しい
商品が出てこない。
商品は何かと
国民が突きつけていったら、出てきたのは
商品ではなくて、次から次へと
スキャンダルだった。ここが問題だと思います。今までも
自民党が汚い党だということは
国民の多くは知っています。何だ、うさん臭いことをやっているということも知っています。しかし、
日本国が
ソ連のような国にならないためには、まあ大目に見ていた、それでもいいじゃないかと。しかし、今新しい
商品を突きつけたときに、
商品が出てこないで
スキャンダルが次から次から出てきた。ここが私は問題だと思います。こういう
政治にはうんざりだと多くの
国民が思っていると思います。
そこで、
国民が今の
政治に突きつけたいわば
ニーズといいますかキーワードが
政治を変えなさい、
政治を変えてほしいということだと思います。ところが、
政治を変えろ、
政治を変えなさいという言葉を、ここにいらっしゃる方は
取り違えていらっしゃらないと思いますけれども、どうも
政界の
永田町の
方々の多くは
取り違えていると思います。重大な
取り違えがあると思います。
ここに先週三月十六日に私の毎週やっています
サンデープロジェクトで
ボイスリンクという
調査をやりました結果があります。
ボイスリンクというのは、大変短時間にコンピューターによる無
作為調査で多くの
調査がとれるので
特徴があるのですけれども、
サンプル数が千三百四十六件。その中で、今投票するとすればどの党に投票しますかという
調査をしました。
自民党が二四%、
社会党が一七%、公明三、
共産三、民社一となっています。大事なことは、それに対して
日本新党が一〇%、そして
支持政党なしが四〇%、
日本新党と
支持政党なし、つまり
既成政党以外のものを
支持したのが五〇%あります。これは
自民党と
社会党と合わせた四一%をはるかに上回っているということです。
つまり、
国民の多くが今求めているものは、
政治を変えなさい。
政治を変えなさいというのは、今の
政治嫌なんだ、今の
政治を変えないならやめてほしいという、率直に言えばそういう
ニーズだと思います。それを、
政治を変えるというのは
政治資金規正法の
改正だとか
選挙制度改革だとか思っている人がいる。これは間違いだと思います。そうではなくて、今の
政治を変えてほしい、新しい
政治をつくるというのは、つまりこの国をどうするんだね、
政策を掲げて
政治をやりなさい、そのことを
国民は求めている。繰り返し言いますけれども、それを、
政治を変えるというのは
選挙制度を変える、
政治資金規正法を変えるのだというふうに思っていらっしゃるのは、それはまさに
目的と
手段の
取り違えです。
選挙制度を変える、
政治資金規正法を変えるというのは、これは
手段の問題です。ここでどうも
永田町と
国民の間に大きな
ギャップがあるかのごとく思います。
そこで私は、実はこの
選挙制度改正は
賛成なんです。もちろん
政治資金規正法も
賛成なんです。しかし大事なことは、今の
政治を変えることです。
政策あるいはこの国をどうするんだということが出てこない、そこが問題なんです。それを、繰り返しますが、あたかも
選挙制度を変える、
政治資金規正法を変えるのが
目的であるかのごとく錯覚して、
皆さんは違うと思いますが、
選挙制度をどう変えれば我が党はどう得するのか、我が党の
議席がふえるのか減るのかという計算をしていらっしゃる方が少なからずいるようです。まさに
党利党略で
選挙制度の
改正を考えている方が、
皆さんは違うと思いますが、います。これは言語道断です。こういう人はやめていただきたい。今
国民が突きつけているカードは、とにかく今の
政治はよくありません、変えてほしい、変えられないならばやめてほしいと言っているのです。そこを、
政治資金規正法を
改正するとか、
選挙制度を変えればいいんだろうと思っていらっしゃるのは大きな取り違いだと思います。この点をまず御指摘したいと思います。
そこで、問題の
選挙制度改正あるいは
政治資金規正法の
改正ですけれども、さっき言いました
ボイスリンクのデータでこういうおもしろい
調査が出ています。
選挙制度を変えるべきかどうか。
イエス、
選挙制度を変えるべきが六四%あります。それに対して、
政界再編成が必要かどうかというのに対する答えとして、
イエス、
政界再編成七〇%。実は
政界再編成が
選挙制度改正よりも多いです。これは大事な問題です。さらに言いますと、
選挙制度を変えるとは一体何かといいますと、これははっきり言えば、今の
自民党一
党支配の構造を変えてほしい、政権交代できる
システムをつくってほしい、これが
政界再編成ということだと思います。政権交代できる
システムをつくってほしい、そういう
システムに変えたい、これが
政界再編だと思います。しかし、
政界再編を言っていてもできるかどうかわからない。
自民党のどこかが脱党して、分裂して、
野党のどこかと組み合わさる、それで新しい
システムができればそれでいいのだけれども、できるかどうか不
確定要素が多い。それに対して
選挙制度の
改正は、これはやれば、努力すればできるものなんです。だから、よりベターな方向としては
選挙制度の
改正をやってほしい、こうなるんでしょう。
さらに、じゃその
選挙制度の
改正をする場合にどんな
制度がいいか、これに対しても
ボイスリンクの
調査をやりました。それに対して、単純小
選挙区制、
自民党がどうも出すと言われている単純小
選挙区制がいいと答えた人が一七%、それに対して
比例併用がいいと答えた人が四〇%です。
社会党、
公明党が出すと言われていますけれども、
比例併用がいいと答えた人が四〇%。それに対して、どちらでもいい、あるいはよくわからないと答えた人が三六%あります。単純小
選挙区が大変少ないことが
特徴です。
じゃ、なぜこんなに少ないのか、私はこれは、
比例代表あるいは
比例併用に比べて単純小
選挙区が悪いということよりは、単純小
選挙区を
自民党が出しているという問題が大きいと思います。ともかく今の
自民党の
政治を変えたいんだ、これが大きいですね。それに対して、しかも
自民党の
先生方がぬけぬけと、単純小
選挙区でやれば
自民党は
議席がふえますよ、ふえるからその
自民党が
二つに割れればいいとか、そういうことを言っている。そうすると、今の
自民党の
政治に問題があるんだ、しかもその
自民党が
選挙制度を
改正して
自民党がふえるんじゃおかしいじゃないか、率直な
気持ちはこれだと思います。もしも
社会党なり
公明党が単純小
選挙区と出したら、こっちが多分ふえたと思いますね。単純小
選挙区がよくないよ、この
支持率が低いのは、単純小
選挙区が
選挙制度として低いというよりは
自民党が出しているから低いのだということが大きいと思います。このことを
自民党の
議員の
人たちも
野党の
議員の
人たちもよく考えていただきたいと思います。
さらに、じゃ今単純小
選挙区じゃなくて
併用あるいは
並立、いろいろなものがありまして、どっちがいいかという
議論がありますが、正直言って
国民の多くはよくわかりません。実は私はきょうこの場でお話しするにつきまして
自民党の方にも
野党の方にも
相当取材をしました。
取材をしてよくわかったことは、どの
議員さんもよくわかってないということがわかりました。よくわかってなくて、それはむしろ
併用か
並立かという問題です。これからむしろ詰めて
議論をしていくんだ、だから大事なことは、これからの
議論をどういう形でどうなされるかということが大事だと思います。
さらに、この
取材をする過程である重大なことを発見しました。それは
自民党の中で、もうここまで来ると
政治資金規正法と
公的助成と
選挙制度改革は一本
一括だという
意見の方が多いのですが、その
意見の中に実はある思惑を持った
推進派がいます。絶対に
一括でやるべきだ、
妥協は一切許せないよ、こう言っている人がいます。
妥協は一切許さない、
一括でやるべきだという人は、実は
妥協を一切許さなければ
野党が
反対するだろう、
野党の
反対で通らない、
廃案になる。実は、断固やるべき、
妥協は一切許さないという人はむしろどっちかといえばそうして
廃案になることを求めているのじゃないかと思います。こういう心やましい人は、やはり
皆さん断固、これは実は
表面賛成、裏は
反対だぞということをどこかできちんとやっていただかないと、
国民はこういうものに対して惑わされます。
これから大事なことは、これはせっかく
自由討論だそうですから、これから
選挙制度を詰めていくところでこの
討論の仕方がとても大事になってくると思います。
一つ提案したいと思います。
その前に、ですから、
並立制とか
併用制というのはいわば
連続線上にあって、これは
議論をしていけばどこか
多分解決の場所はあるだろう。それを、断固守る、あるいは
一括でここは
妥協しないというのはむしろ
廃案へ走ろうとするやましい
気持ちではないか。まあ余計なことを言いました。
さて、とても公開したわかりゃすい
議論を進めていただいて、この問題についてはせめて採決の
部分で
党議拘束を外していただきたい。実は、
自民党の
方々、
社会党の
方々も
公明党の
方々も、実際に
取材しますと随分違いがあります。この
選挙制度の
改革、今度の
政治改革というのは、実は今までの
自民党がどうなるか、
公明党がどうなるか、
社会党がどうなるか、正直言ってどうでもいい問題なんです。そうじゃなくて、新しい
政治をつくりたいんだという
基本の問題ですから、
討議拘束を外すというぐらいの決意でやっていただきたいというふうに思います。
勝手なことをいろいろ申しましたが、とにかく申し上げたいことは、どうも
政界の
方々の
認識と
国民のこの問題に対する
認識とに大きな
ギャップがあるようだ、ここは変な建前、駆け引きなしで、
野党、
与党皆さんが本気のけんかをやっていただきたい、こう思います。
雑駁な話を失礼しました。(拍手)