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ダーリンプル参考人(
通訳)
渡辺先生、私の母校の出身でもあります
シドニー大学出身のマードックは
オーストラリアの学者でございまして、私もよく存じております。また、
大使として、マードックの著作が日本におきまして高く評価されているということは非常にうれしいことでございます。
また、マードック氏は、日本において影響力を持っているというだけではなくて、
オーストラリアにおける日本研究の創設者と言われる地位を持っております。また、彼やその他の
人たちが、十九世紀の終わりから二十世紀の初めにかけまして日本研究という基盤をつくったその上に、
オーストラリアにおきましては日本研究が非常に盛んに行われるようになりました。今では十万以上の学生生徒が日本語を勉強し、日本の文化を勉強し、日本の歴史を勉強しております。また、
人口比率からいいますと、日本語を母国語としておられる日本の国を除けば、日本語を勉強する
人々の割合が一番高いのは
我が国であります。
私自身は日本語が話せなくて大変申しわけないのですけれども、
大使館におります
大使館員の若い
人たちでも、私の隣にいる人のように、大変見事に日本語をこなす館員がふえております。
私は外交官でありますので、個人的に東京の現状がどうなっているかということに関しましては注意深く物を言わなければならないと思っております。もちろん、人間が集中しておりますし、いろいろなことが集中して東京で行われているということは私も承知をしておりますが、それは、東京が日本の
政府の所在地であるということとともに、東京というのは
世界のビジネスのセンターであるというゆえんでありましょう。
日本以外の外国の
人たちはなかなか理解できないことなのですけれども、日本の場合は、東京以外の地方
都市あるいは
地域を見ましても、相当の経済活動が行われているのです。このことが外国の人にはなかなかわかってもらえません。例えば、名
古屋を
中心といたします中部経済圏、これはカナダよりも大きな経済規模を持っております。また、九州という経済圏をとってみますと、韓国を含めるアジアの
地域のどの国の経済よりも大きな経済的な
存在となっております。したがいまして、
オーストラリアもその現状に合わせて我々の努力を分散させようとしておりまして、領事館を札幌、仙台、名
古屋、大阪、神戸、福岡に開設をしております。
今私が申し上げましたような日本の
都市というのは、東京に比べれば小さい
都市ではありますけれども、それ自身かなり大きな
都市であります。したがいまして、
首都機能をどこかに
移転するという場合に、今言いましたような大きな
都市のどこかに
移転するということであれば、結局その
移転先でまた過密の問題を起こしてしまうのではないかと私は思います。例えば、
首都機能を大阪に
移転するということになれば、今度は大阪の方に過密の問題が生まれるということになりましょう。
外国人は、日本の地方経済の規模がどれぐらいであるかということがなかなかわからないということを申し上げました。しかしながら、私の目から見ますと、日本の方々も、日本というのは非常に小さな国なのだというような思い込みといいますか、強迫観念というようなものを持っておられるような気がいたします。事実としては、日本はそれほど小さい国ではありません。確かに
人口密度は高い数字を持っておりますけれども、
世界の
いろいろなところに比べて
人口密度がそれほど高いというわけではありません。日本の
国土の七〇%は山岳地帯あるいは森林地帯ということでありまして、余り手がつけられておりません。ということで、日本でもし
首都を
移転されるということであるならば、既に
人口が多い大きな
都市の
一つにそれを移すということは余り
意味がないように思われます。
ということで、
渡辺先生が御
質問なさいました、
立地は、それから規模はどうか、それから
期間はどうかという
質問に返ってまいります。
私は、これまでの話の中で、二十世紀の初めに行った
オーストラリアの
経験と今皆さん方が
調査をしておられる件というのは、歴史的な
状況も、また規模も全く違うということは皆さんの注意を喚起いたしましたし、私もそう言いました。そういう違いはありますけれども、やはり我々の
経験から何か得ていただく、何か示唆を得るということは言えると思います。
言いかえますと、例えば新しい
首都の
立地をどこにするか、これはやはり現在の非常に大きな
都市から余り離れていないところということが示唆されます。簡単にアクセスができる、
大都市にもすぐ行けるようなところであります。
次に、規模の問題でありますが、
最初に言いましたように、巨
大都市からもう
一つ大きな
都市へ
移転するということはどうも
意味がないように思われます。ですから、既に大きくなり過ぎているようなところではないところに
移転をすることが望ましいように思われます。
次は、どれくらいの
期間でということでありますが、
オーストラリアの
計画者が悩みました問題というのは
資金難、
資金が十分ないという問題でありましたが、日本の場合はそれに直面なさることはないでしょう。
しかしながら、他方、我々が
経験しなかった別の問題に皆さん方が直面なさる可能性もあるのではないかと考える次第であります。それは
土地を取得するという問題であります。
地域住民とどういう合意に到達することができるか、これが問題になり得るだろうと思います。例えば東京の中でさえ、
土地を利用するということにつきましで皆様いろいろな
経験をしておられます。そういう
経験からしましても、あるいは成田にあります新東京国際空港においてどういう
経験をなさったかということなどを考えてみますと、やはり新
首都を
建設する、あるいは
首都機能を
移転するといいましても、何か古いものを新しいものに建てかえるにせよ、あるいは全く何もないところに何かをつくるにせよ、十分
土地を担保することができるだろうかというところに困難性があるのではないかと思われます。
次に、
渡辺先生は、どのような機能が
移転にふさわしいかとお聞きになりました。それに対して私はコメントできる立場にはありませんけれども、私なりの考えでは、最低限やはり立法府と
行政府の
中心的な組織というのは
移転しなければならないように思われます。やはりそれを達成するためには相当時間がかかるのではと思います。
以上です。